倉石「石澤! SからE! そしてXだ!」 (70)

石澤「……!///」


倉石「そうだ良いぞ! その調子だ!」

倉石「SからEィィ――ッ! 良いぃ――ッ!」

倉石「そしてXだ石澤! SからE! そしてX!」

倉石「ヘイヘイヘイ! Sッ! Eッ! エェ――ックス!」


石澤「っ……!///」


…パシッ!


「わ……1ー0」


倉石「オッケー! 良いぞ、石澤!」


石澤「……///」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1535023266

石澤「……!///」


倉石「石澤! もっと! もっと緩急をつけろ!」

倉石「何をやってる! 単調になってるぞ!」

倉石「石澤、S! エェスゥッ! S!」

倉石「からのE! イイ――ッ!」

倉石「行け、X! 行け行け行け!!」


石澤「っ……!///」


…パシッ!


「……2ー0」


倉石「イイぞ、石澤! その調子で行け!」


石澤「……///」

石澤「……!///」


倉石「パターン6! 6だ石澤、シィ――ックス!」

倉石「ヘイヘイ、石澤! 石澤――っ!」

倉石「激しく! 激しくだ! もっと激しくだ、石澤!」

倉石「行け、S! そうだ、イイぞ! からの、E!」

倉石「ゴー! Xゴー、石澤! S! E!」


石澤「っ……!///」


…パシッ!


「すっ……3-0」


倉石「んんん~っ! ナァイスX! ナァイスX、石澤!」


石澤「……///」

石澤「……!///」


倉石「慌てるな石澤! ペースを掴め!」

倉石「そうだ! それで良い! 良いぞ、石澤!」

倉石「そこだ! パターン変更!」

倉石「パターン6からパターン9! シックスからナァーインッ!」

倉石「シックス! ナァーインッ!」


石澤「っ……!?///」


…パシッ!


「……3ー1」


倉石「何をモタモタやってる! 練習であれだけやっただろう、石澤!」


石澤「……///」

石澤「……!///」


倉石「そうだ、そのまま! そのままパターン6!」

倉石「良いぞ、石澤! グッド! グ――ッド!」

倉石「6! 6! シィックス! シィ――ックス!」

倉石「行け、石澤! パターン9! 6から9!」

倉石「シックス! ナァーインッ!」


石澤「っ……!///」


…パシッ!


「……ふぉ、4-1」


倉石「良いぞ石澤! どんどん行け、石澤ーっ!」


石澤「……///」

石澤「……!///」


倉石「石澤、A! Aだ! A――ッ!」

倉石「そうだ! 流れるように! 良いぞ!」

倉石「AからのF! A! F!」

倉石「A! F! A! F! ゴーゴーゴー、石澤!」

倉石「ゴォ――ッ! A! F!」


石澤「っ……!///」


…パシッ!


「ふぁ、ふぁ……5-0///」


倉石「ナァーイスナイスナイス! ナイスA! Fだ、石澤!」


石澤「……///」

誤)>「ふぁ、ふぁ……5-0///」

正)>「ふぁ、ふぁ……5-1///」


石澤「……!///」


倉石「きいてるぞ、A! そこだ、石澤!」

倉石「A! からの、A! ハリーハリー!」

倉石「どんどん行け! 石澤、行け!」

倉石「攻めろ攻めろ攻めろ攻めろ――っ!」

倉石「A! F! A! F! 石澤、ゴォ――ッ!」


石澤「っ……!///」


「……しっ、あ、んんっ、6-1!///」


倉石「良いぞ良いぞ石澤ーっ! どんどんAを攻めろ!」


石澤「……///」

石澤「……!///」


倉石「動け! 全身を使え、石澤! 石澤ーっ!」

倉石「!? 何をやってる石澤!」

倉石「焦るな! Aを攻められても落ち着け!」

倉石「バックだ! バック! バック、石澤!」

倉石「行け、石澤! 行け行け行け――っ!」


石澤「っ……!///」


「ゴホンッ……7-1」


倉石「ナイスバック、ナイスバック! ナイスバック、石澤!」


石澤「……///」

石澤「……!///」


倉石「そうだ、石澤! 左右! 左右に!」

倉石「前後も混ぜろ! その調子だ!」

倉石「ゴーゴーゴー! 行け、石澤、行けっ!」

倉石「ナイスバック! そのままバックでS!」

倉石「S! 良いぞ! E! そのまま!」


石澤「っ……!///」


…パシンッ!


「8-1」


倉石「ナァーイスX! 良いぞ、石澤! ゴーゴーゴー!」


石澤「……///」

  ・  ・  ・

「11ー2、インターバル!///」


倉石「……」

石澤「ハァ……ハァ……///」

倉石「……相手は格下だが、まずまずだな」

石澤「ハァ……ハァ……///」

倉石「だがな、石澤」

石澤「ハァ……ハァ……///」


倉石「この指示は、流石に恥ずかしい」


石澤「ハァ……ハァ……///」

倉石「これが、お前のやりたかったバドミントンなのか?」

石澤「ハァ……ハァ……///」

倉石「反応がないとそうなのかどうか、わから……ない」

石澤「ハァ……ハァ……///」

倉石「……」


倉石「返事!!!」


石澤「はっ……///」ブルッ…

石澤「……///」ジワワ


倉石「石澤、返事」


石澤「……ひゃ」

石澤「ひゃい♡」



おわり

HTML化依頼出しときます
気が向いたら続けてこのスレで書きます


台詞の9割がコーチで笑う

あるだろうとは思ったけど……
もっとやれ

自分のバドミントンそれでいいのか・・・

初めて見るはねバドSSがこれとは……

こんなん笑うわ

書きます


綾乃「……だって、臭かったんだもん」

エレナ「えっ……?」


綾乃「あんなのズルい、あんなの卑怯じゃん」

綾乃「最後の方なんか、目がシパシパしたし」

綾乃「……だから、私負けてない」

綾乃「あんな臭いの、絶対反則だもん」



コニー「……」

コニー「……?」


フレ女一同「っ……!?」

理子「……えっと」


綾乃「ねっ? そう思うよね? ねっ?」

綾乃「前衛出たら、ウッってなったよね?」

綾乃「……ねえ、なんで?」

綾乃「なんであんな臭いのに、平気でいられたの?」


コニー「……」

コニー「臭い……?」


フレ女一同「っ……!」

なぎさ「……おい」


綾乃「だって、本当に臭かったんだもん」

綾乃「臭いなんか、どうやったってレシーブ出来ないじゃん」

綾乃「……スマッシュの時なんか、最悪」

綾乃「シャトルと一緒に、スパイスが飛んでくるんだよ?」


コニー「……」

コニー「スパイス……?」


フレ女一同「っ……!?」オロオロ!

悠「……え、えっ」


綾乃「あーあ! あんなに臭いなら、準備しとくんだった!」

綾乃「ラケットと反対の手に、団扇を持ってさ」

綾乃「……こう、こうやって……こんな感じで」ブンブン

綾乃「大変だけど、臭いからしょうがないよね、うん」


コニー「……」

コニー「ねえ」


フレ女一同「っ!」フイッ!


コニー「……?」

空「……」


綾乃「私、バドミントンじゃ負けてない」

綾乃「あんなの、試合じゃないもん」

綾乃「あんな攻撃……私、認めない」

綾乃「ううん、攻撃じゃなくてテロだよ、あんな臭い」


コニー「……」

コニー「ちょっと」


フレ女一同「っ!」フイッ!


コニー「……」

立花「……羽咲」


綾乃「……何」

綾乃「だって……あんなの、ずるいし」

綾乃「途中、鼻をつまもうと、何度も思ったし」

綾乃「だから――」


立花「羽咲ッ!!」


綾乃「っ!?」


立花「ワキガも、実力の内だ」



コニー「……」

コニー「っ!?」バッ!


フレ女一同「っ!」フイッ!


コニー「……」

コニー「……!?」

綾乃「……でもっ」


立花「良いか、羽咲」

立花「確かに、彼女のワキガはひどい」

立花「試合中、何度も抗議しようかと、真剣に悩んだ」

立花「……だがな、羽咲」


綾乃「……」


立花「お宅の子、ワキガがひどいです、なんとかしてください!」

立花「――なんて、そんな事言えるわけないだろうが!」



コニー「……ねえ」

コニー「ねえ、ちょっと! ねえ!」


フレ女一同「……」


コニー「……!?」

綾乃「……だけど」


立花「でもな、羽咲」

立花「お前は、一人なんかじゃなかったぞ」

立花「バドミントンは、風の影響を受けないよう……」

立花「……体育館の扉は締め切ってやる、だろう?」


綾乃「……」


立花「だから、全員臭い思いをしてたんだ!」

立花「全員、コニー・クリステン線にやられてたんだ!」

立花「わかるな!?」



コニー「そんなに!? 私、そんなに!?」

ズイッ!


フレ女一同「っ……!?」

…スザザザッ!


コニー「……!?」

綾乃「……そんなの、知らないもん」


立花「そうだな、羽咲」

立花「でも、覚えておいて欲しい」

立花「お前だけじゃなく……全員」

立花「全員が、何故入国審査で通したのか、って思ってたんだ」


綾乃「っ! 密入国かも知れないし!」

ダッ!


立花「あっ、おい! どこへ行くんだ、羽咲!」

立花「ファブリーズしろ! 羽咲! 羽咲――ッ!」



コニー「……」


フレ女一同「……」


コニー「……」

  ・  ・  ・

コニー「――ちょっと良い?」


綾乃「……待って」

…スタスタスタスタ

綾乃「……」クンクン

綾乃「良いよ、何?」


コニー「……ねえ、どうして立ち位置を変えたの?」


綾乃「風下だと、きついから」


コニー「……」


綾乃「? どうしたの?」


コニー「……」


コニー「ママに言いつけてやるんだから!!」



おわり

どれくらい臭いのか検証して


草じゃなくて臭

コニー・クリステン線は草

書きます


倉石「石澤! パターンB! クマさんだ!」

石澤「っ……!」


倉石「そうだ、良いぞ! その調子だ!」

倉石「拾え! もっと掬い上げるように、そうだ!」

倉石「シャケ! シャケ! シャケ! シャケ!」

倉石「チャンスだ! 両手を広げて大きく! おぉ――きくっ!」


石澤「がおー!」


…パシッ!


「げ、ゲーム! マッチワンバイ、倉石!」

「21ー3、21ー4、21ー1!」


倉石「よぉーしよしよし! 良いクマさんだった、石澤!」


石澤「……」

  ・  ・  ・

石澤「……」


『――惜しかったね』

『やっぱ強いよ、石澤は』


石澤「っ……!?」


『まあ、逗子総合だし……当然か』

『でもアイツ、言われた通りクマさんしてるだけじゃあ……』


石澤「……」

石澤「……」


『ラリー中、指示通りクマさん出来るだけでも、凄いと思うよ』

『そうかもしんないけど……』


石澤「……」


『あんなうるさく言われてクマさんやったって、全然楽しくないよね』

『……』


石澤「……」

   ・  ・  ・

石澤「っ……!」


倉石「石澤、ゴーゴーゴー! ゴォ――ゥ!」

倉石「どっしりと! そうだ、どっしりとだ!」

倉石「からのぉ、ダッシュ! ダーッシュ! ハリハリハリー!」

倉石「ゴー! クマさんゴー! 行け、石澤! クマさん!」


石澤「がおー!」


「9ー1」


倉石「オウケェェイ! もう一本! もう一本ハチミツ!」


石澤「……はぁ……はぁ」

石澤「っ……!」


倉石「そうだ、良いぞ! 走らせろ! 走らせろ!」

倉石「浮いたぞ! チャンスだ、石澤!」

倉石「でんぐり返し! からのぉ、首かしげ!」

倉石「モタモタするな、立て! 早く立て、石澤!」

倉石「ゴー! 石澤、振り抜け! 行け行け行け――ッ!」


石澤「がおー!」


…パシッ!


「て、10-1」


倉石「その調子だ! 良いぞ、石澤! ナァーイス、クマさん!」


石澤「……はぁ……はぁ」

石澤「っ……!」


倉石「石澤! 浮いたぞ、チャンスだ! ゴーゴーゴォ――ゥ!」

倉石「でんぐり返し! からのぉ――」

倉石「にゃん!?」

倉石「ノーノーノー! ノーだ、石澤!」

倉石「可愛いだろうが、石澤! 石澤ぁ――っ!」


石澤「にゃーん!///」


…パシイィッ!!


「いっ……11-1、インターバル!///」


倉石「……」


石澤「ハァ……ハァ……///」

倉石「……」

石澤「ハァ……ハァ……///」

倉石「何故、ネコちゃんをやった?」

石澤「ハァ……ハァ……///」

倉石「指示通り、クマさんをやれないのか?」

石澤「ハァ……ハァ……///」


倉石「お前は、クマさん以外は可愛すぎる」


石澤「っ!///」ビクッ!

石澤「ハァ……ハァッ……!///」

倉石「良いな、可愛いネコちゃんはやるな」

倉石「パターンB、クマさんだ、良いな?」

石澤「ハァ……ハァ……///」

倉石「反応がないと何の動物さんかわから……ない」

石澤「ハァ……ハァ……///」

倉石「……」


倉石「返事!!!」


石澤「はっ……///」ブルッ…

石澤「……///」ジワワ


倉石「石澤、返事」


石澤「……わ」

石澤「わんっ♡」



おわり

>>34
誤)>「げ、ゲーム! マッチワンバイ、倉石!」

正)>「げ、ゲーム! マッチワンバイ、石澤!」


書きます


「肉まん」


 才能。


 努力ではどうしようも無い事を人はこう呼ぶ。
 彼女達の事を語る上で、この言葉は避けて通れない。
 人が、彼女達を見る時は、才能に恵まれていると思うのだろう。


 バドミントンの才能。


 身体能力や、反射神経、その他諸々の、バドミントンに関する様々な要素。
 生まれながらにそれに秀でているのは、とても素晴らしい事なのかもしれない。
 才能を活かし、能力を伸ばし、自分の思い描くように、伸び伸びとプレーをするためには。


 ……けれど、それによって失われつつあるものも、ある。


 それは、彼女達の――母娘の、‘普通の’、当たり前の関係。
 家に帰って「ただいま」を言うと、「おかえり」と返ってくる。
 そんな、あえて触れるまでもない、
日常的なやりとりが失われたのは、バドミントンの才能があったから。
 ……いや、違う、そうじゃないな。


 彼女に、あの娘の‘普通の’母親でいる才能が無かったのだ。


 あまりにも大きすぎるバドミントンの才能に、母親としての才能がついてこられなかった。
 簡単に言ってしまえば、そういう事になるのだろう……残念ながら。


 だけど、彼女は娘を愛している。


 だから、彼女は出て行った。


 試合で破れた時、いつでも甘えることが出来る存在は不要。


 これが、彼女が出ていった理由だ。
 母親に甘えたい時期の娘に対して、あまりに酷な話だろう。


 彼女が出ていった後の娘は、ひどい有様だった。
 だが、それも当然だろう。
 母親が、急に居なくなってしまったのだから。
 しかし、娘は、母親ではなく……自分を責めた。


 バドミントンで――試合で負けたから。


 ……と。
 母娘の関係よりも、バドミントンの存在が上に位置している。
 彼女と娘は、とても仲が良く、二人が笑っている姿は、理想的なものに見えた。
 だが、繋いだその手の反対には、常にラケットが握られていたのだ。


 バドミントンさえ無ければ。


 こう、何度思ったことだろうか。
 バドミントンさえ無ければ、今でも、普通の家族としてやっていたのかも知れない。
 そして、それは有り得ないと、すぐに首を振る。


 バドミントンなくして、彼女は彼女足り得ない。
 母親が存在しないのに、娘が存在出来るわけがない。


 勿論、娘にバドミントンをやらせないという道もあった。
 彼女の手にはラケットと、反対の手に、娘の手が。
 そして、娘の反対の手には、情けない父親の手が握られていたのかも知れない。
 でも、そうはならなかったし、誰だってそうしようとは思わないだろう。


 娘の球が、ネットを越えて彼女の元へ返った時の、あの二人の顔を見たら。


 彼女が出ていってから、娘はバドミントンにのめり込んでいった。
 シャトルのように飛ぶのではなく、ただ、深く……深く、沈み込むように。
 彼女が居た頃とは別人のように、淡々と、黙々と。
 娘は、そうする事で母親が帰ってくると信じていたのだ。


 その姿は、とても痛々しいものだった。


 だから、止めようとした。
 バドミントンは、もう辞めなさいと言おうとした。
 言おうとしたんだ……言おうとしたんだよ!
 そんなの、当たり前だろう!?


 ……でも、言えなかった。


 娘のためを思って家を出た、彼女の思い。
 母親を思って強くなろうとする、娘の思い。
 噛み合っていないようで、バドミントンを介してきっちりと噛み合っている。
 彼女達は、こういう形でしか、母娘としていられないとわかっていたから。


 子は、親に似る。


 娘は娘で、彼女の‘普通の’娘でいる才能が無かったのだ。


 どうして、こういう所ばかり似てしまったんだろう。
 背が低いとか、そういう所ばかり……。
 いや、それは今考えても、仕方のない事だ。
 だって、もうそろそろ――


「ゲーム! マッチワンバイ、神藤!」


 ――娘が、ここへ来るから。
 おめでとうは、笑って言ってやりたいじゃないか。

温度差
いや好きだけどね

  ・  ・  ・

「おめでとう、綾乃。凄いじゃないか」


 僕は、バドミントンにはあまり詳しくない。
 けれど、周囲の人間は綾乃はとても強いと評価しているし、
この子自身もまた、有千夏がそうであれと思った通り、強くあろうとしている。
 現に、綾乃は圧倒的な点差をつけて、決勝戦まで勝ち上がってきた。


「うん」


 だと言うのに、この子の顔には以前のような笑顔はない。
 勝利すると言う作業をこなしているだけに、僕には見える。
 機械的に体を動かし、無機物のように感情を見せることも無い。
 以前のこの子とは、まるで別人のようだ。


「決勝戦の相手の子は、とても強いらしいよ」


 僕は、バドミントンにはあまり詳しくない。
 そりゃ、見ていてわからないという程では無いけどもね。
 それでも、彼女達に比べれば、知っていると言うのすらおこがましい。


「どうせ勝つから」


 だけど、それで良かった。


「そうかぁ……」


 そうじゃなかったら、



「じゃあ、帰ろうか」



 こんな事、言えやしないだろうからね。

  ・  ・  ・

「……」


 決勝戦は辞退させる。
 居なくなった有千夏に代わり、綾乃のコーチをしている人に、そう告げてきた。
 あと一勝すれば、なんて色々と言われたけど、それでも強引に。
 競技者として、バドミントン選手として、その先の結果はとても価値があるものなのかも知れない。


「……」


 有千夏と綾乃の間には、僕が割って入る隙間も無い、
バドミントンでの、深い繋がりが存在している。
 入っていけない愛情の形が、この母娘の間にあるんだ。
 それを寂しいと思ったことは、まあ、当然あるよ。


「……」


 だけどさ、そんなの、当たり前の事だと思うんだ。
 男親が、母と娘の繋がりに入れない所があるなんて、どの家庭だって同じじゃないかな。


 有千夏と綾乃の関係は、‘普通の’ものじゃない。


 でも、それで良いと思うんだ。


 当たり前の事が、当たり前に出来なくたって良い。
 それを受け入れて、それから、どうするか一緒に考えていけば良い。
 どんな才能が有るとか無いとか、そんなものは、一切関係無い。


 だって、家族なんだから。


「コンビニ、寄って帰ろうか」


 気の抜けた表情で隣を歩く綾乃に言う。
 ただ、頷きだけが返ってきた。

  ・  ・  ・

「冷めないうちに、食べようか」


 コンビニを出て、袋を漁りながら言う。
 すぐ食べるから袋は大丈夫、って言おうとしたけど間に合わなかったんだよね。


「……なんで?」


 綾乃が、小さな、消え入りそうな声で言った。
 質問の意図は、わかる。
 この子は、どうして「帰ろう」と言ったのかを聞いているんだろう。
 理由は色々とあるけど……一言で言うなら、僕が父親だからだ。


 父親だったら、母親の教育方針に口出しする権利はある。


 親としてのキャリアは、僕も彼女も全く同じなんだ。
 だから、僕がああ言ったことも、
綾乃がそれに従ったのも、有千夏は怒ったりはしないと思うよ。
 ……なんでわかるかって?


 だって、彼女は僕の奥さんだもの。


 勿論、本当は、三人一緒が良かったんだけどね。
 僕が、君達二人の、バドミントンの才能に及ばなかった結果が、この現状だ。


 でもね、諦めるつもりは無いよ。


「う~ん……熱ちちっ!」


 家族全員で、笑ってる未来を。


 さっきの質問の答えだけど、食べ終わってからにしようか。
 それからでも、遅くはないだろうから。



おわり

書きます


綾乃「お父さん、モテ期だって」

有千夏「……ん?」

綾乃『それじゃあね』

有千夏「待って、綾乃」

有千夏「待っ――……」

有千夏「……」


フレ女一同「……?」

コニー「ママ……?」


有千夏「おうち帰る」


一同「!?」

コニー「ママ!? 急に何言い出すの!?」

有千夏「おうち帰る」

唯華「一体、何が……?」


有千夏「心太朗さん、モテ期」

有千夏「私、おうち帰る」


コニー・唯華「……はあ?」


有千夏「帰るううう! おうち帰るううう!」


一同「っ!?」

コニー「どうしてそうなるの!?」

有千夏「心太朗さんがモテ期だからよ!」

唯華「旦那さん、モテ期なんですか?」

有千夏「そうよ! だから、今すぐ帰らないと!」


有千夏「モテ期って、モテモテって事でしょう!?」

有千夏「心太朗さん、取られちゃう!」

有千夏「だから、私、おうち帰る!」


唯華「もう遅いかも知れませんけどね」


有千夏「ふぬぐあああああ!?」


コニー「ちょっと唯華! ママで遊ばないで!」

唯華「ごめん、つい」

コニー「だっ、大丈夫よママ!」

有千夏「本当に!? 本当に、そう思う!?」オロオロ!

コニー「勿論よ! だって、ママのダーリンでしょ!」

有千夏「そう……そうね! そうよね!」


有千夏「心太朗さん、私のダーリンだもんね!」

有千夏「浮気なんか、するはずない!」

有千夏「モテ期だからって、平気よね!」


唯華「でも、強引に言い寄られたら?」


有千夏「心太朗さあああああん!?」


コニー「唯華! 唯華――ッ!」

唯華「ごめんごめん」

コニー「とにかく落ち着いて、ママ!」

有千夏「無理! 無理よ、そんなの! 帰る!」

コニー「帰ってどうするの!?」

有千夏「そんなの、決まってるでしょ!」


有千夏「まず、言い寄る女の前に立ちはだかるわ!」

有千夏「心太朗さんは、私が守る!」

有千夏「ネット際の攻防になっても、絶対勝つ!」


唯華「既に、ベッド際の攻防かも知れませんよね」


有千夏「ひぎいいやああああ!?」


コニー「ママ!? 唯華、もうやめてあげて!」

唯華「ごめん、楽しくなってきちゃった」

コニー「そうだ! 電話! 電話するのよ、ママ!」

有千夏「携帯、今持って無い!」

コニー「私の貸すから! 番号わかる!?」

有千夏「わかる! コニー、頼れる娘だわアンタ!」


有千夏「心太朗さん……心太朗さん……!」

有千夏「嘘と言って、心太朗さん……!」

有千夏「なんで……なんで出てくれないの……!?」


唯華「あー、これは」


有千夏「おおおいいしょおおおおい!」

ガツァンッ!


コニー「私の携帯――っ! 唯華――っ!?」

唯華「ごめんごめん、ね?」

コニー「モテ期っていうのも、冗談かも知れないじゃない!」

有千夏「えっ!?」

コニー「綾乃が、ちょっと意地悪しただけかも!」

有千夏「あっ、綾乃が!? なっ、なるほど!?」


有千夏「そっ……そうよね!?」

有千夏「この歳になってモテ期って……無いわよね!?」

有千夏「もっ、もう! 綾乃ったら!」


唯華「だと良いですね」


有千夏「やなのおおおお! 心太朗さあああああん!」


コニー「唯華! いい加減、ママで遊ばないで!」

唯華「……はいはい、わかったわよ」

唯華「旦那さんって、どんな人なんですか?」

有千夏「素敵!」

唯華「具体的には?」

有千夏「具体的に!?」


有千夏「私と結婚したのよ!? 私と!」

有千夏「その意味が、わかるでしょう!?」

有千夏「わかれ! 小娘!」


唯華「じゃあ、モテても不思議じゃないですね」


有千夏「はあっ、あっ、あああああ!?」ガタガタ!


コニー「唯華!? なんで追い打ちをかけたの!?」

唯華「ごめんね、小娘って言われてイラッとして」

唯華「でも、旦那さんは貴女を選んだんですよね」

有千夏「っ! そう! そうなの!」

唯華「プロポーズの時とか、どんな感じだったんですか?」

有千夏「ぷっ、プロポーズの時?」


有千夏「え、っと……ちょっと、もう!///」

有千夏「うっふふっ、えー?///」モジモジ

有千夏「知りたい?/// 聞きたい?///」ウズウズッ


唯華「その思い出があれば、耐えられますね」


有千夏「何に耐えろって言うのよおおおお!?」


コニー「聞いてあげてよ! 何なの!?」

唯華「ごめんね、もう本当にイラッとして」

唯華「旦那さんって、格好良いんですか?」

有千夏「世界一格好良いわよ!」

唯華「写真とか、持ってたりします?」


有千夏「当たり前でしょう! ほら、帽子の裏に!」

カポッ!


一同「……」


有千夏「ほら、格好良い!」

有千夏「今までモテ期が来なかったのが、不思議なくらい!」


一同「……」


有千夏「何、この空気」

コニー「……ママ、怒らないで聞いて」

有千夏「何よ、コニー。急に改まって」

唯華「冴えないおじさんですね」

有千夏「コニ――ッ!! こっここ、コニィャァ――ッ!!」カーッ!

コニー「私じゃない! 私が言ったんじゃないって、ママ!」

唯華「でも、優しそうですね」

有千夏「そう! そうなの! 誰にでも優しいの!」

有千夏「誰にでも……」


有千夏「誰にでもおおおおお! 心太朗さあああああん!」


コニー「んんんん!」

唯華「ごめん、ちょっと誘導した」

有千夏「帰る! おうち帰る!」

コニー「落ち着いてママ! どうして靴紐結び直してるの!?」

有千夏「……コニー、アンタには見せたことなかったね」

コニー「えっ?」

有千夏「私の、本気の走りをさ」

コニー「走って帰るつもりだったの!?」

唯華「無理しない方が良いですよ、若くないんですから」

唯華「それに、もう遅いですし」


有千夏「遅くない! 遅くないもん間に合うもん!」


コニー「ママ! さすがに語尾に『もん』は!」

唯華「コニーのママ、楽しい人だね」

唯華「もう一回、電話してみたら良いんじゃないですか」

有千夏「それで、何かが変わるとは思えない」

コニー「いや、電話が通じたら変わるよ!?」

有千夏「どいて、コニー」

…グッ

コニー「ママ!? くっ……クラウチングスタート!?」

有千夏「吹き飛ばされたくなかったら、そこをどきなさい」


唯華「あ、旦那さんに電話通じましたよ」


有千夏「!?」


唯華「私の携帯、壊さないでくださいね」

コニー「唯華! ナイス!」

コニー「でも、どうして番号がわかったの?」

唯華「コニーの電話を使う時、指の動きを見てたから」

コニー「何その特技!?」

唯華「ほら、だって私、主将だから」

コニー「……!?」


有千夏「し……心太朗さん?」

有千夏「えっ!? え、ええと……そのね?」

有千夏「きゅ、急に声が聞きたくなっちゃって……かな」

有千夏「やっ……やだもうっ!/// も~うっ!///」クネクネッ!


コニー「あんなママ……見たこと無い……」

唯華「見たいものでも無いと思うけど」

有千夏「ええっ!?/// で、でもぉ~……」チラチラッ


フレ女一同「……」


有千夏「うぅん、もう!/// 心太朗さんったら!///」

有千夏「あ・い・し・て・る///」

有千夏「うん……うん……それじゃあね///」

有千夏「はーい、おやすみなさい///」


フレ女一同「……」


有千夏「……何?」

有千夏「コニー」

コニー「なっ、何!?」ビクッ!

有千夏「綾乃が、アンタに宜しくって」

コニー「やっぱり綾乃、怒って……」


コニー「――って、ねえ、待ってママ」


有千夏「ふふっ……笑っちゃうよ……」

有千夏「あの子、本気で私と戦いたいんだと」ンーッ!


コニー「何、しれっと幕間感出してるの!?」

有千夏「心配ないよ――っ!」パタパタ!

有千夏「これは私も望んだことだから――っ!」パタパタ!

コニー「ママ!? リボンがパタパタしてるよ!?」

有千夏「あの子が立派に成長しているんだと……うふふっ!」パタパタ!

有千夏「受け取っておくよっ」パタパタ!


唯華「喜んでる所、すみません」

唯華「モテ期の話、何も解決してませんけど」


有千夏「……」パタ…パタ…

有千夏「嫌な子だね」…ピタッ

有千夏「人の心を覗くのはコートの中だけにしときな」


唯華「見ればわかりますから」

唯華「とにかく、あまり騒ぎは起こさないでくださいね」

有千夏「ふうん? もし、起こしたら?」


唯華「旦那さんに言いつけます」


有千夏「……」

有千夏「!? 心太朗さんに!?」

有千夏「どうやっ……あっ、番号!」


唯華「……」ニコリ!


有千夏「っ……!?」

有千夏「……」


有千夏「おうち帰りたい」



おわり


むしろモテ期来なくても愛想尽かされるという可能性は考えないのだろうか……

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