これからの二人【ようダイ】 (14)

二十二の夏

晴れて希望通りのファッション系の職種に就き、一年が経とうとしていたころ

私の部屋に同居人ができた。

クタクタになった帰り路、久々に会った尊敬する先輩はどうにも記憶の中と雰囲気が違っていた

なんだかぐったりとしていて、やつれているような

それに、こうして声を掛けるまで私に気づかなかったようで

反応も過剰なほどの声を挙げる

それを見た私はただ事では無いことを悟り、さっきまでの疲れを忘れて急いでその場を後にした


先に言っておく、私は、渡辺曜はダイヤさんだから助けたのではない

aqoursのメンバーであれば誰だろうとそうしただろう


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ダイヤ「...すみません」

意外とすんなり事情を話してくれた、ダイヤさんは全く悪くないのに丁寧に謝罪の言葉までつけて

事情自体はなんてことない、単純明快なことだった。

ダイヤさんだって人間だったってだけだ、完璧超人の機械じゃない

家からのプレッシャー、過剰な習い事、不慣れな業務

そして望まない結婚の話を前に限界が来てしまった。

たったそれだけ、当たり前のことなのに誰一人として気が付かなかったのが恥ずかしい

そして不慣れなのはダイヤさん事態も同じで家を飛び出した後、何をすればいい分からず駅前のベンチで座り込んでいた

そこへ偶然通りかかったのが私だった。

それを聞いたときに私が浮かべたのは安堵だった。

私で良かった、もしもあのままでは家の人たちに見つかり、いつものダイヤさんに戻ってしまう

自分の傷を隠すのが上手いってことは知っているから

ダイヤさんへの返事は一つ、もう決まっている

曜「ダイヤさん...」

ダイヤ「なんですか?」

曜「私と一緒に住みませんか?ちょうどよかった一人だと心細くて」

その後は1時間にわたる説得の末、家事手伝いという名目で私の一人暮らしの家で同居することになった

その後、あまり大事にしないためにルビィちゃんにだけ事情を説明しさりげなくフォローを入れておいてと頼むと

曜「....ダイヤさんの事は言わないでね」

とだけ念を押して電話を切った

それは、「ダイヤさんは私が守る」という私なりの意思表示だったのかもしれない

その後の夜の事はよく覚えていない、ダイヤさんにたらふく酒を飲まして愚痴を聞いていたりしてたと思う

ただ、次の日の朝はダイヤさんのおかげで寝坊もせずに久々のまともな朝食を食べて仕事へ向かったことは新鮮で一生忘れないと思う

話はここからだ

突然だけど、それから二年後へ跳ぶ

当然ダイヤさんが居なくなったことは旧友たちの耳へ届き、予期せぬ形でのaqours再会となった

それから鞠莉ちゃんの援護の元、ルビィちゃんの説教がさく裂

今ではあのルビィちゃんが実の父親で地主を土下座まで追い込んだことはお酒の席では鉄板ネタだ

当然今では全部解決している

が、ダイヤさんはまだ私の家にいた

端からみたら窮地を救ったヒーローと救われたヒロイン

当然なんらかの特別な関係で一緒にいるのだろうと思うだろう

目の前にいる小学生前からの幼馴染も

千歌「え!?曜ちゃんとダイヤさんってそういう関係じゃなかったの?」

果南「以外だねー」

この調子だ

千歌「だって...ねえ?」

果南「うん、もう同棲して二年でしょ?」

「「普通はエッチなことの一度や二度くらいするでしょ」」

曜「いやー...私達はそういう関係じゃなくて...」

千歌「...それ、本気で言ってる?」

果南「今の言葉、ダイヤが聞いたら悲しむから絶対やめな」

曜「....分かってるもん」

正直、今ダイヤさんの事を一番分かってるのは私だもん...

確かに何度かアピールがあったことはある

ただその時はまだ同居したての頃だった、つまり冷静になる前だった

あの時のダイヤさんを抱くことはできない

何も払うものがないからって無理に体で返そうとする人を抱くことはできない

果南「...だけどさ、今は違うでしょ?」

曜「うん、今は違うよ、だけど」

一回タイミングを逃すと、どうにも次のタイミングを見つけられない

果南「まあ、一度軽い気持ちで誘ってみたら?二人とも大人なんだし」

果南「そういう行為イコール結婚とか付き合うってことじゃないってことは分かってるでしょ?」

曜「...果南ちゃん」

曜「ずっと一緒に暮らしてきた人を抱くってことは、重みが違うんだよ」

曜「それに、私はダイヤさんとの一歩目を軽々しく踏み込みたくない」

果南「ごめん...」

千歌「今のは果南ちゃんが悪いかなー?」モグモグ

千歌「だけど、今のままじゃ何も変わらないよ?」

曜「うん...」

千歌「なーんか、曜ちゃんはなんも変わんないなー、優しすぎて踏み込まなくて相手が可哀そうになるの」

曜「そんなことあった?」

千歌「内緒ー!!」

曜「なにそれ?」

千歌「ふふっ...まあ、私から言えるのは誰かにとられちゃう前に思いは伝えといた方が良いよってことかな?」

果南「経験者は語る?」

千歌「うっさい!!」ポカッ

果南「痛い!」

曜「うーん、想いを伝えるって言ってもそれができたら苦労は...」

千歌「だってさ、ダイヤさんも我慢してため込んでてそんなことになっちゃったんでしょ?」

曜「・・・」

千歌「曜ちゃんが同じことを繰り返してどうすんの?」ゴクゴク

曜「...ごめん、そろそろ帰るね」

千歌「うん、今日も家で待ってるんでしょ?」

曜「二年間も...待たせちゃったからね」

ガラガラ ピシャッ

果南「それじゃあ、私もそろそろ」

千歌「果南ちゃんは朝まで私とサシ飲みだー!!」

果南「えー...」

「ただいまー」

時刻は十二時過ぎ、しかし彼女の声が聞こえる

「おかえりなさい、幼馴染飲み会の方はどうでしたの?」

「思い出話に花咲かせてたよー!」

「それは良かった、それとお酒の入った状態での入浴は危険ですので明日にしてくださいね」

「はーい!」

今座っているのは約七百回は食事で囲んだいつものテーブルだ

ここで七百回も向かいに座る彼女へ語り掛けたんだ。

なら、一回目もここで...

「ねえ、ダイヤさん」

「なんですの?」

「これから何がしたい?」

「それはどういう?」

「うーん...えっちなこととか?」

「な!?///何を言っているんですの!?////」

「あと、結婚の事とか子供の事とか、まだ全然遊んでないし」

「....曜さん、それがどういうことか」

「分かってるよ」ニッ

「つっ...ばかぁ」グスッ

ギュッッ

「まだ、二年しか経ってないんだね」

「もう、の間違いでなくて?」

「ううん、まだ、であってるよ」

「そう....」

「それで、どうしますの?さっきの言葉の意味分かっていますよね?」

「まあ、まだ時間はあるから、ゆっくり話していこう」

「これからの事を」

終わり

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