ロゼッタ「マリオカートに参戦…ですか?」(433)

マリオ「隠しキャラ、もとい隠しゲストとして任天堂から依頼が来てる。
    ギャラクシーと連動して、ミステリアスな女性ドライバーとして
    ブレイクしてほしいとのことだが…どうする?」テガミポイー

ロゼッタ「…ふむふむ。
     レースごとに観客の皆さんの投票で参戦するか否かが決まって、
     その時点で少なくない給料が発生。
     上位に入ったり総合成績が良ければ更に追加給金。
     至ってシンプルな給料体系ですね」

マリオ「…………」

マリオ「…その。特にお金には困ってないだろ?
    断って貰っても全然かまわないんだけd――」

ロゼッタ「いえ、ぜひ出たいです!
     お金が欲しいというわけではないんですが、
     非常に興味があるので!
     マリオファミリーに認められた証でもあるんでしょう?
     こんな光栄なことはありません!」

マリオ「そうきたかぁ…まあ本人がやる気なら、いいんだけど…
    一度登録しちゃうと、取り消せないぞ?」

ロゼッタ「そのようなこと、いたしません!」

マリオ「……それじゃあ、キノコ王国に連れていくから
    付いて来てくれ。
    手続きがあるみたいだから…」

ロゼッタ「はい!」ルンルン

~キノコ王国~

キノじい「…はい。これにて契約は成立ですじゃ。
     早ければ1週間後には、観衆の前で正式に参戦することになりますぞ!
     ロゼッタどの、頑張って下され!
     その美貌と笑顔で王国中を虜にして下されば我々も鼻高々ですじゃ」

ロゼッタ「び、美貌だなんて、そんな…」

マリオ 「(…やっぱり強引にでも止めといた方がよかったかな…)
     じゃあ、ピーチ、デイジーたちに会いに行くぞ。
     女性同士、色々と教えてもらってくれ。
     運転のノウハウとか、コース取りとか…」

ロゼッタ「ええ、何から何まで有難うございます」





マリオ「…あと、命の守り方とか」ボソッ

ロゼッタ「……はい?マリオ、何か言いましたか?」

ピーチ「……マリオったら、本当にロゼッタ連れてきちゃったんだ」

マリオ「まあ、依頼があった以上、聞きに行かなきゃならない立場だし…」

デイジー「こーんな箱入りお嬢様につとまるの?」ハアー

ロゼッタ「こんにちは、ピーチ姫、ロゼッタ姫。
     でも心配ご無用です、こう見えて割と動体視力はいい方なので。
     みなさんに負けないよう頑張ります!」

ピーチ「…マリオ、ちゃんと危険性は説明したかしら?」

マリオ「…キラキラ目を光らせたロゼッタにたじろいで何もしてません」

ピーチ「えええ……」

デイジー「えええ………」

ロゼッタ「??」

ピーチ「ところでロゼッタ、一応聞いておくけど。
     マリオカートに対する知識ってどのくらいあるの?
     できるだけ詳しく答えて」

ロゼッタ「マリオカートについての知識、ですか?
     みなさんがカートに乗って、コースを何周かして、順位を競うんですよね?
     実際に見たことはないですが、録画した物なら何度か観たことがあります。
     最後の最後まで気が抜けない、白熱した試合展開に感動しました。
     私も実は、いつか自分も走ってみたいな、と思っていたのです」

デイジー「今回から、カートに加えてバイクも選択できるらしいけどねー。
      たしかに、こうして呼ばれて参加できるってのは嬉しいしワクワクするわ!
      頑張り次第でマリオやクッパにも勝てるってのもいいわ」

マリオ「むむ、俺もそうは負けていないつもりだが。
    …まあ、全勝なんてこともできないしな。そういった、下剋上や
    大逆転もマリオカートの醍醐味だ」

ロゼッタ「それに、何回滑っても転んでも吹き飛んでも、
     皆さんすぐに運転を再開するなんて……」

ピーチ「…やめて。慣れてしまった自分が悲しいけど、
     あんまり思い出したくない光景だから…」

ロゼッタ「勝手に衝撃を最小限に抑えるバリアまで貼ってくれるなんて、
      すごく未来的で優秀なカートですよね!」



マリオ「えっ」

デイジー「えっ」

ロゼッタ「??」

ピーチ「あちゃあ…」

ロゼッタ(ニコニコ)

ピーチ「…マリオ、悪いことは言わないわ。
     今ならまだ間に合う。ロゼッタを連れてキノじいの所に向かって
     契約を取り消しに行ってちょうだい」ズイッ

デイジー「…こんな知識しかない子をいきなり飛び込ませたら、
      最悪、1レース目の1周目で死んじゃうわよ!?」ヒソヒソ

マリオ「あ、ああ。そうだな。今なら何とか間に合う…
    いや、間に合わせてみせる!
    ロゼッタ、やっぱりこの話はなかったこt」

ダダダダ…!

ルイージ「おーい、兄さーん!
      キノじいが張り切っちゃって、大々的にロゼッタをPRしてるよー!
      すっごいよね、憧れちゃう人気ぶりだよー!
      もうファンクラブまでできたんだってー!」

ロゼッタ「あらあら、まあまあ!
      これはますます、挑戦し甲斐があるというものですね!」

マリオ「」

ピーチ「」

デイジー「(これ、死んだんじゃないの?)」

ルイージ「そして!しかと見よ!これが――僕が苦労に苦労を重ねてゲットした、
      ロゼッタファンクラブ会員証、それもNo.0005のカードなのだ!
      すごいだろ兄さん!」ドヤア

デイジー「何やっとんじゃあああ!」スパコーン

ルイージ「グエッ」



マリオ「…マンマミーヤ」

ピーチ「ああもう!こうなったら、正式参戦までに死に物狂いで
    …いや、死んででも体に覚え込ませてロゼッタを鍛えるしかないじゃない!
    一刻の猶予もないわ!さっそく連れていくけど、構わないわね!?」ダダダッ

ロゼッタ「え、ちょ、ちょっとピーチ姫!?私をどこへ連れて行こうというのです!?」

ピーチ「コースに決まってんでしょうが!死にたくなかったら走る!」

デイジー「わ、私を置いてかないでよピーチ!付いてくからね!!」ダダダ

マリオ「……南無、ロゼッタ。
    そっちはまかせたぞ、ピーチにデイジー。
    ……さてと、念のため1UPキノコを乱獲しておくかあ」ダッ

ルイージ「」チーン

ズシンズシン…

クッパ「ん?緑のヒゲの横にロゼッタファンクラブの会員証が落ちてやがる。
    1桁とは緑のヒゲの癖に生意気な奴だ、ワシが貰っといてやろう」スッ

ルイージ「」

ルイージは放置された。

ピーチ「…さあ、着いたわ」ピタッ

ロゼッタ「はあ、はあ…ここは?」

ピーチ「一番レース頻度の高いキノコカップ、
     その中で『色々と』動きが大きいコースよ。
     そう、ここは――」

デイジー「…キノコキャニオンね。
      ピーチったら、いきなりとんでもないコースを選ぶわね…」

ロゼッタ「わあ、自然の地形を活かした爽やかなコースみたいですね」

ピーチ「…うん、過去作で慣れた私たちなら、そういった感想でも
     間違っちゃあいないんだけどね…」

デイジー(ピーチ、今更だけどメタいよ)

コンチワー ハネブロックキュウビンッスー
ゴチュウモンノ カートイッシキ トドケニマイリマシタッスー

ガシャン!!

ピーチ「ありがとねー」

イエイエー ソレデハマタ ゴヒイキニー

ピーチ「とりあえず、スタンダードカートを3台用意しといたわ」ポン

デイジー「ピーチったら気が利くぅ!ありがとね!
      うわあ、スタンダートカートだ!
      初心者向けで最近乗ってないから超新鮮だったり!」

ロゼッタ(初心者向け?上級者向けのカートもあるということでしょうか?
      スピードが出やすい代わりに曲がりにくい、とか?)

ピーチ「悪いけど時間がないの。
     運転操作を説明するから、さっそく乗り込んでもらうわよ。
     覚悟はいい?しっかり付いて来てね」

ロゼッタ「はい!」グッ

ピーチ「これがアクセルペダル。踏むとカートが加速していくわ。
     どのみち一定速度で加速は止まるから、
     基本的に走行中は目いっぱい押し続けてね」

ロゼッタ「はい」

ピーチ「これがブレーキペダル。踏むと急停止やバックができるわ。
     大抵の減速はアクセルペダルを踏まなくすることで行うから、
     あまり使わないといえば使わないけど…
     障害物に突っ込んだときとかは覚えておいて」

ロゼッタ「はい(へえ、ブレーキペダルってバックにも使えるんだ。
      知らなかったです、勉強になりました)」

ピーチ「そしてハンドルに付いてるこれがジャンプボタン。
     押すとカートが少し  跳ねる  わ。
     その瞬間はハンドル片手持ちになっちゃうけど頑張ってね」

ロゼッタ「は……」





ロゼッタ「はい!?」

デイジー(ブフォ)

ピーチ「…何か?」

ロゼッタ「…あのー、どうしてカートが跳ねるんですか?」

ピーチ「高低差のあるところで飛距離が少し増えるわ。
     テクニックがあれば障害物を躱せたりするし便利よ」

ロゼッタ「え?え?カートに…飛距離?」

デイジー「というかロゼッタ、あんた録画でレース内容見たは見たんでしょ?
      ならなんとなくわかるんじゃないの?」

ロゼッタ「え、あの、単に走行運動の結果跳ねていると思っていたのですが」

デイジー「だーかーらー、それを補助するのがジャンプなんだってば」

ロゼッタ「!?!?」

デイジー(目を白黒させてる、可愛い)

ロゼッタ「というより、カートの設置部分のタイヤにジャンプ機能を持たせられるとは
      思えないんですが…」

ピーチ「…キノコ王国の技術は凄いのよ」メソラシ

ロゼッタ「…はい、わかりました。少し混乱していますが」

ピーチ「とりあえず、今の3つをしっかり使いこなせればひとまず走行はできるわ。
     じゃあ、カートに乗って。最初のセクションだけやってみましょう」

デイジー「んー?ピーチ、このコースってセクション制じゃないよー?」

ピーチ「そのうちわかるわ」

デイジー「それに、アイテムは?ロケットスタートの技術は?」

ピーチ「今は黙ってなさい」クワッ

デイジー「…うん、了解」ビクビク

ロゼッタ「お二方は、どうされるのですか?」

ピーチ「万が一のことを考えて、左右を並走させてもらうわ。
     そのくらいの技術はあるから大丈夫よ、とりあえずコース取りは気にせず走って。
     じゃあ…いつでもどうぞ」

ロゼッタ「わかりました、お願いしますね」ブロロロロ…



ロゼッタ(よし、アクセル踏んで順調に加速。
      何気に運転免許くらい持っていますからね、フフン。
      お二人をびっくりさせてしまいましょー―)


ジャンプ台―奈落―キノコ―奈落―コース「やあ」

ロゼッタ(うっ、早速、レースに非現実な障害が現れました…!
      しかし!カートのバリアに守られている今の私に、恐れることなど――)

ピーチ「あ、言うの忘れたけど」ブロロロロ

デイジー「衝撃の際に体を硬直させちゃダメよ!」ブロロロロ

ロゼッタ「えっ?」ビュン!


ドゴオオッ!!!


ピーチ「……」

デイジー「……」

ロゼッタ「……………………」

ロゼッタ「……………………カハッ」ゴフッ

デイジー「きゃあああ!なんか吐血したんだけどぉ!」

ロゼッタ「――――――――――」

デイジー「そしてそのまま失速して奈落に落ちたんですけどぉ!!
      ジュゲムぅ、はやくきてくれー!!」

ピーチ「あー、私もあんなことあったっけ…」ハイライトオフ

ジュゲム「困りますねー、こんな初歩の初歩のジャンプで瀕死になるような人を
      コースに連れて来てもらっちゃ…」

ピーチ「あと1週間でなんとかまともなレーサーにするから!
    それまで大目に見て!お願いジュゲム!」

ジュゲム「…まあ、ピーチ姫がそこまでおっしゃるなら。
      あ、もう少しスタンバイしておいた方がいいですかね?
      なんだかまだまだ落ちそうな感じがありますし」フヨフヨ

ピーチ「あ、お願いするわ。ポケットマネーから特別手当出しておくわね」

ジュゲム「ありがとうございます」


オーイ 1UPキノコモッテキタゾー
アリガトー デモサスガニ スーパーキノコデモヨカッタワヨ
ドノミチ ヒツヨウニナルダロー?
…ソウネ



ロゼッタ「……ハッ!?今のは…夢!?」

デイジー「そんな訳ないでしょうが」スパコーン

ロゼッタ「痛い!?痛いです!」

ロゼッタ「うっ、思い出すだけで吐き気が…
     どうして回復しているのか知りませんが、ありがとうございます。
     しかし、なぜあのようなダメージを受けたのでしょうか」

ピーチ「ハア…言いそびれていたけど、いい加減言っておくわ。
     このカート…いえ、用意されている全てのカートね。
     激しいレースに耐えるための耐久性は確かにあるけれど…
     搭乗者のバリア機能なんて…一切ないわよ?」

ロゼッタ「……」





ロゼッタ「What?」

マリオ(言っちゃったよ)

デイジー(というか、あんたが真っ先に言っておきなさいよ!)

ロゼッタ「…いえいえ、ちょっと待ってください」オロオロ

ピーチ「……」

ロゼッタ「常識的に考えて、マリオやクッパはともかくとして
      ピーチ姫やデイジー姫があんな衝撃に耐えられるわけがないじゃないですか。
      おまけに甲羅や雷だってぶつけられるのでしょう!?
      私に冗談を言おうとしても、そうはいきませんよ!」

ピーチ「さらわれ慣れているうちに体力付いただけよ?
     クッパ城を彷徨うなか、間違ってマグマに落ちることもあったくらいだし。
     マリオと一緒にフライパン片手に冒険だってしたし」

デイジー「私も、ギャグ補正ありきとはいえビンタ1発でクッパ倒したこともあるし」

ロゼッタ「」

ピーチ「まあ心配しないで、素質はあるはずだから」ガシッ

デイジー「死ぬのは仕方のないことって開き直れば、なんとでもなるよねー!」ガシッ

ロゼッタ「」

ロゼッタ「」

ロゼッタ「マ、マリオ、私ですね、ちょっと考え直しm」

ピーチ「マリオなら1UPキノコを本格的に収穫しに行ったわよ?」

ロゼッタ「」


ピーチ「はい、続き続き。とりあえず今の箇所を繰り返すわ。
     経験値ためていきましょー」

デイジー「怖がると余計に舌を噛むからねー。女は度胸よ度胸!」

ロゼッタ「嫌です、死にたくないですー!……」ズルズルズルズル

~マリオ談~
重症10回、瀕死重体を64回経験したところで目の光を失ったため
チコに補助してもらうことにした。
スターの力をすこし貰って、なんとか耐えることができるようになりました。
チコの重さの分、重量級扱いになっちゃうよ?とからかったが
そんなこと気にしない、と涙を流して喜んでいました。めでたしめでたし。

2日後・・・

ロゼッタ「……」ブロロロロ

ロゼッタ(車体重心を崩さず…この!角度で!連続で!飛ぶ!)ギン!


ダン!ダン!ダン!ダーン!!

ピーチ「よし!そのままゴールへ!」

ロゼッタ「はい!」


デイジー「グオオオオオオオオオルゥ!!
      とうとう、キノコキャニオンを3周走破したじゃない!
      なかなかの成長っぷりよ、ロゼッタ!」

ロゼッタ「は、はい!長く苦しい戦いでした。…本当に、本当に!」ウルッ

ピーチ(…………そう、長く苦しい戦い、だった。ロゼッタも相当頑張ったけど、
     あと5日しかないのに、1コースを完走しただけじゃ遅すぎる!
     アイテムの使い方、避け方すら全く教えていないのに!
     感動しているところ悪いけど、更にレベルの高いコースで特訓していかないと…!)

ロゼッタ「ふふ、わかっていますよ、ピーチ姫」

ピーチ「え!?」

ロゼッタ「これでも、全然時間が足らないのでしょう?
      自分の実力不足は嫌というほどわかりました。
      すぐにでも、次のステップへ…!」

ピーチ「…駄目よ、今日はここまで。一回体を休ませた方がいいわ。
     回復アイテムでも気力までは回復できないんだから」

ロゼッタ「…はい。確かに、ボロボロですねえ」

ピーチ「あ、そうそう。当然だけど、HPを全回復させておきなさいよ。
     絶対に」

ロゼッタ「……はい?わかりました。それでは」スタスタ



デイジー「さあ、かえろー」

ピーチ「私たちはダメ」ガシッ

デイジー「ふみゅ!?」

次の日・・・

ロゼッタ「…あの。本当にここでいいんですか?」

デイジー「う、うん。問題ないわ」

ロゼッタ「しかし、ここ…
      また、キノコキャニオンではないですか」

ピーチ「私、最初はより難しいコースを…って考えたわ。
     でも、間違ってることに気付いたの。
     先に、アイテムの使い方について教えておいた方が、万倍役に立つってことに」

ロゼッタ「はあ。そういえば、これまではアイテムボックスというものがコースにありませんでした」

デイジー「昨日のうちに、私たちで設置しておいたよー」

ロゼッタ「そこまでやってくれたのですか!助かります!」

デイジー「…すっごく良心が痛むけどねー」

ロゼッタ「??」

ピーチ「まずは基本のおさらいから。
     アイテムを持っていない状態でコース上のアイテムボックスに触れると
     アイテムが1個手に入るの。どのアイテムかはランダムだけど、
     下位を走っているほど強力なアイテムが出やすいわ」

ロゼッタ「はい」

ピーチ「アイテムには、キノコやスターの加速系、甲羅やサンダーの攻撃系、
     バナナなどの設置系があるわ。使い方によって、あるいは効果範囲によって
     2つ以上の役割を果たせる場合もあるけれど。
     ちなみにアイテム使用はこのボタンで行うわよ」

ロゼッタ(変なボタンが左にあると思ったら…)

デイジー「でも、結局のところアイテム使用の意義はただ1つよ。
      自分を加速させたり他者を遅らせたりして自分の順位を上げるため。
      おのずと、どのような局面でどのアイテムが使えるか、使われやすいかは
      決まってくるんだよね」

ロゼッタ「なるほど…」

ピーチ「たとえば、体験済みかとおもうけど、ジャンプ中にアイテム攻撃を食らうと
     単純にスピードロスするうえにジャンプ失敗でジュゲムの厄介になるから、
     ジャンプ成功時と比較して相当なビハインド状態になるわね」

デイジー「逆に言えば、効果的なアイテムの使い方ができるから
      ジャンプ中は攻撃を狙われやすいんだよね」

ロゼッタ「……ん?」





ピーチ「というわけで、前を走るロゼッタめがけて後続の私たちが甲羅を投げまくるから
     ダメージの受け流し方を学んでほしいの」

デイジー「打ち所が悪くなければ、きっと、いや多分、maybe死なないから。
      緑甲羅を躱す特訓にもなるし、ね!?」アセアセ

ロゼッタ「」

~ロゼッタの日記~

今日は、ピーチ姫とデイジー姫にアイテムの使い方を教えてもらいました。

私が10~20mくらい先を走っていると、後ろから緑甲羅や赤甲羅が飛んできます。

最初は平地でぶつけられてみましたが、5メートルくらい激しく吹き飛ばされた後
地面に叩きつけられました。どこにそんなエネルギーが詰まっているのでしょうか。
ちなみにこの段階で、チコに守られていたにもかかわらず気絶してしまいました。

ジャンプ中に甲羅を当てられたときは、もっと大変なことになりました。
せっかく培ってきた重心安定の心得も、吹き飛ばされては滅茶苦茶です。
酷い時には、意識のないまま頭から足場に叩きつけられたりしたそうです
ちなみに、そのあとどうなったのかは全く記憶がありません。

ただ、私は割と賢いので、ピーチ姫が持ってきた1UPキノコが
順調に減っていることをコッソリ確認して察しちゃいました。えへへ。

私が笑い出すようになってからピーチ姫とデイジー姫がブルブル震え出しましたが
その理由はよくわかりませんでした。えへへ。

とりあえず、わたくし、ろぜったは、まだしっかりいきています。
あしたもきっといきていることでしょう。                おわり

ロゼッタ「…ハッ!危うく取り返しの付かない落ち方…いえ堕ち方をするところでした」

ピーチ「そそそそうね」

デイジー「ロゼッタさん、あなた天才よ」

ロゼッタ「ふふふふふふ」

ピーチ「あは、ははははは」

デイジー「ホホホホホホ」



ロゼッタ「とりあえず、ですね」

ピーチ「な、なに?」




ロゼッタ「緑甲羅の避け方を教えてください」

ピーチ「あ」

~ロゼッタの日記(続)~

なるほど。後ろを一瞬振り返りながら軌道を確認すれば、
緑甲羅なら躱せなくもない、ということですか。凄いですね。



……聞いて5秒で諦めました。



ちなみに、「こんな感じよ?」とピーチ姫に実演してもらいました。
甲羅の軌道を読みながら巧みにかわす、
あるいは軌道が外れていることを見て取ってそのまま走る、
ということをあっさりやってのけるピーチ姫は尊敬してしまいます。

赤甲羅をぶつけた時も、経験の賜物か意識をしっかり保ったまま
凄いでしょ、と言わんばかりに手を小さく優雅に振りつつ
ジュゲムに引き上げられてきました。

デイジー姫は、「さすがに私はあそこまで余裕はないかなあ」と
羨ましそうに見つめていました。

もはや2人とも人間ではないと思います。

~ロゼッタの日記(続2)~

驚きの事実です。驚きの事実です。驚きの事実です。
…大事なことなので2回…いえ3回書きました。

ジャンプ台でジャンプする瞬間にジャンプボタンとやらでジャンプすると、
ジャンプした分飛距離が伸びるとともに、ジャンプアクション成功ボーナスで
少し加速できるそうです。

よって、ある程度以上の腕なら、走行ルート中のジャンプ台は
全てジャンプアクションするのが当たり前だそうです。

どうしてジャンプすると加速するのでしょう?
というより、ノーコストの加速装置が備わっているのなら
常時加速すればいいのではないでしょうか。

まあ、そんなことはどうでもよく。
問題は、ジャンプ中は体を車体から大きく乗り出さなければならないことです。
ますます意味が分かりません。ただ加速するだけでは駄目なのでしょうか。
生身の体にも甲羅は容赦なくヒットするのですが。運営は馬鹿なのでしょうか。
とりあえず、その特訓もするということです。


明日まで生きている自信がなくなってきました。ごめんなさい。
そろそろ遺書を書きたいと思います。

4日目・・・

ピーチ「とりあえずね、私考えたの。とにかく時間がないし、
     ジャンプアクションを鍛えるのにこのコース程うってつけのコースはないって」

ロゼッタ「はあ…」

デイジー「うん、ピーチの言いたいことは分かるよ?
      確かに、ここでジャンプアクションが完璧なら、きっと大抵のコースで大丈夫だろうね。
      それは、すっごく、わかるんだけどね?


      一言言わせて。鬼かあんたは」

ロゼッタ「気になる発言ですが…ここは、なんというコースですか?」





ピーチ「……DKマウンテンよ」

ロゼッタ「マウンテン、というからには高低差が激しそうなコースですね、
      なるほど、あの火山に見守られながらのレースと言う訳ですか。
      レースに御加護がありますように」

デイジー「……」

ピーチ「何言ってるの?


    あの火山『を』まるごと使ったコースよ」

ロゼッタ「…………………………
      えっと、スタート地点、ここですよね?全然離れてるんですけど…」

デイジー「タル大砲でひとっ飛びだからねえ」

ロゼッタ「なるほど、タル大砲でひとっ飛び…………」

ロゼッタ「……………………」

ピーチ「……………………」

デイジー「……………………」

ロゼッタ「………………………………」ダラダラ

デイジー「…………(沈黙が怖い)」

ロゼッタ「……つかぬことを伺いますが。
      どこまでタル大砲で飛ばされるのですか?」

ピーチ「ほぼ山頂、ざっと1 kmくらいね。時間にすると5秒程度、あっという間よ」

ロゼッタ「……バランスを途中で失うとどうなりますか?」

ピーチ「一応、失速突入してもジュゲムが拾ってくれるわ、大丈夫なはず。
     ただ、繰り返すけどカートがバリアを貼ってくれるわけじゃないから、
     風圧によって自分の体が潰れたり呼吸困難になったり…までは面倒見切れないわよ」

ロゼッタ「」

ピーチ「…あ、そうそう。関係ないって笑い飛ばしてほしいんだけどさ。
     ちょっとマリオになんとなしに聞いてみたの。


     生き物の体って、バラバラになるくらい損傷が激しいと1UPキノコでも復活できないんだって。
     ……………………本当に気を付けてね?」

ロゼッタ「」ガクガクブルブル

デイジー「…さ、さーて!ここで、ジャンプアクションについて説明しちゃうぞー!
      ロゼッタちゃん、よーく聞いておいてねー?」ニコー!

ロゼッタ「…はい」

デイジー(あかん、黄昏モードに入っとる)

デイジー「私たち『お姫様』ポジションのジャンプアクションは、
      大きく分けて次の3パターンよ!ロゼッタなら簡単に覚えられるわ!」

ロゼッタ「…わかりました」

デイジー「よーし、人生諦めモードながらも耳を傾けてくれて嬉しいぞー。
      じゃあ、簡単な順に説明するわね!
      1つ目!
      
      ジャンプした瞬間に、
      『車体を1~3回ほどキリモミ回転』させた後、
      『片手ないし両手でハンドルを持つことのみ』で体を支え、、
      『両足を後ろにピンと投げ出してうつ伏せ滑空姿勢』を取る!

      ね、簡単でしょ!」

ロゼッタ「ちょっと耳が遠くなったようです」

デイジー「…え、聞こえなかった?だから(略) よ」

ロゼッタ「…………」プルプル

ピーチ「デイジー、それ、私たちの間隔が麻痺してるだけだから」

デイジー「えー?でも、キリモミ回転はカートが勝手にやってくれるし、
      あとは風圧に任せて体を後ろに投げ出せばいいだけだし、一番楽だと思うけどなー?
      おまけに任天堂さんのCERO:A的な計らいで、ドレスの中も自動で隠してくれるんだよ?
      覗かれる心配ないんだよ?」

ロゼッタ「(ポン!)ああ、やっぱり私は今日が命日なんですね」エガオ

デイジー「ちょ、待って待って!早まりすぎ」

デイジー「続けて、ふたつめー。

      ジャンプした瞬間に、
      車体は特に回転させず、
      『片手でハンドルを持ったまま体を大きく投げ出し』、
      『完全に体が後ろを向くまで振り返る』!
      そのとき、『もう片方の手は真上方向に』ピンと向け、
      脚は『頭より高い位置までアクロバティックに持って行く』こと!

      これは結構難しいけれど、決まると観客にアピールできるよ!」

ロゼッタ「そんなアピールできなくてもいいです!許してください!」ウワーン

デイジー「なんかグダグダになってるけれど、最後の3つ目ぇ!」

ロゼッタ「…もう、好きにしてくださいよぅ…」

デイジー「じゃあお言葉に甘えて。
      
      ジャンプした瞬間に、
      『車体を水平回転させ』、
      『くるりと優雅にスピンしつつ小ジャンプ』、
      『後ろを振り向いたら両手を上に広げつつ最高の笑顔で決めポーズ!』
      これが決まったときの大歓声ったら凄いのよ!」

ロゼッタ「…………あれ?失礼しますが、
      2つ目…いえ1つ目よりも簡単に聞こえるのですが」

デイジー「うん、アクションを決めるだけなら簡単だよ。
      ……決めるだけなら」

ロゼッタ「と、言いますと?」

ピーチ「よく考えなさいよ。このジャンプアクションは唯一、『体が完全にカートから離れる』アクションなの。
    カートとの相対速度をしっかり計算してスピンジャンプしないと、体とカートがぶつかって怪我をするわ。
    …それだけならまだマシだけど、下手をするとカートに乗り直し損ねて何十メートルも下に生身の体で真っ逆さまよ」

デイジー「あれは痛かったなあ、ははは」ハイライトオフ

ロゼッタ「…………もうゴールしてもいいですか?」ハイライトオフ

ロゼッタ「…そういえば聞きそびれていました。
      わざわざ、このようなアクションをする必要性が感じられないのですが」

デイジー「そりゃ、このレースがエンターテイメントも兼ねてるからよ。身も蓋もない話だけどさ」

ピーチ(『他の集まり』で否応なしに鍛えられた人が参加するから、たまたま問題にならなかったのよね。
     ロゼッタは下地なしにいきなり挑戦させられてるから…ほんと、不幸というかなんというか)

ロゼッタ「そんなの…あんまりじゃないですか…」

ピーチ「…まあ、今となってはロゼッタに逃げの道は残ってないから。
     さあ、タル大砲に向かいましょう。
     その後の急斜面で、今伝えたジャンプアクションを少しずつこなしていくのよ?」

ロゼッタ「せめて最初の段階で体が持つといいですねえ…」





――Yahooooooo!

マリオ「流石にマジで死にかねないから、保険で『緊急キノコ』持ってきてやったぞ」ザザーッ

ピーチ「あら、私も一応アイテムボックスから『スター』は大量に確保してたんだけどね。ありがと」

ロゼッタ「そういうことは先に言ってくださいよ頼みますから!ありがたく頂戴しますよ!!」

~ロゼッタの日記(続3)~

もしかしたらいらっしゃるかもしれない、この日記を盗み読んでいるそこの貴方。
必死に覚える、という言葉を『言葉通りに』使ったことはありますか?
すなわち、「何十秒後に死ぬんですね」といろいろ諦めてしまうような境遇に
突き落とされつつも、何かを得ようともがいてみる場面、です。

――自慢ではないですが、最近の私は掃いて捨てるほどあります。
ちなみに一切嬉しくありません。

まあ、瀕死状態で復活、をおおよそ確約されているだけでも御の字なのでしょうか。
現に、こうやってしぶとく特訓できているわけですし。
だんだん私も感覚がおかしくなってきてしまったのかもしれません。
いろいろと手遅れなのかもしれません。

4, 5日目が終了した時点で、生と死の境目が朧げになってきて、
悟りでも開けそうな気がする今日この頃です。



なお、ピーチ姫がレース順位よりも「生き永らえること」を最重要課題としてくれた結果、
6日目と7日目はドッスン耐圧我慢大会とエンドレスマグマ身投げと
宇宙旅行(僅かながらの空気はフローされてるから大丈夫!byマリオ)が
笑顔で待っているそうです。

わぁい。


 ・
  ・
パンパン、パパパパーン!!

ワー、ワーーーー!!



シグナルジュゲム
「Ladies and Gentemen!大変長らくお待たせいたしました!
そして、割れんばかりの大歓声、誠に、誠にありがとうございます!
司会進行冥利に尽きるというものです!

それでは…

レースの数だけドラマがある。
コースの数だけ駆け引きがある。

マリオカート、第2008回大会の開幕を、私シグナルジュゲムが宣言いたしますっ!
今日は思う存分お楽しみくださいっ!!」


――ウオオオオオオオオオ!

イイゾー!
マッテマシター!
ユウキュウ トッテキタシ トコトンサイゴマデ タノシムゼー!
シグナルジュゲムサン キョウモステキー!

シグナルジュゲム
「しかも、今日はただ大会が開かれるだけじゃありません!
ご存知の方はとっくにご存知でしょうが、念には念を押して――。
今大会から、新しいレーサーがこの大会に急遽参戦だあ!改めて紹介させて頂きましょう!
――それでは、ご登場願います!
――――ロゼッタさん、どうぞっ!!」

ワアアアアアア!




ロゼッタ(いよいよ、ですね)
――私は、立ち上がる煙幕に包まれながら、会場のど真ん中に、ゆっくりと躍り出た。

~大会前夜~

ピーチ「・・・キノじいから連絡が入ったわ。参加延期の淡い期待もあったけれど見事に裏切られて、
    明日の大会からスタンバイしなきゃいけなくなったみたいよ」

デイジー「まあ、あれだけ告知して人気が高まってれば、運営側も暴動は起こしたくないよねー。
      私たちも人気を奪われないよう、レースもおめかしも頑張らなきゃ!」

ピーチ「うふふ、そうね。まあ、そう簡単に負けてあげる気なんてないけれど。トップクイーンの座は揺るがせないわ」

デイジー「ちょい待ち、何気に勝手に二番手にするなあ!」ウガー



マリオ「……さっきからロゼッタ本人抜きで駄弁ってるけど、ロゼッタはどこなんだ?」

ピーチ「ん」クイッ

マリオ「うん?」クルッ



ロゼッタだったもの「」チーン

マリオ「…あの黒く焦げた物体、ロゼッタだったのかぁ」

デイジー「マリオったらひどーい、ヒーローの風上にも置けないわね。
      メイクがぐっちゃぐちゃになるの気にせず、人目も憚らず号泣してたよ。
      全身砕かれてマグマで爛れて肺を潰されかけて。
      『もうどこにもお嫁に行けません』って。
      …ブルル、過去の自分の経験まで生々しくフィードバックぅ…」

マリオ「ま、まあ繰り返し1UPキノコ使いすぎて治りが遅くなってるかもしれないが
    痣や後遺症含めて最終的に完治することは変わりないから大丈夫、だろ、うん」

デイジー「加担した私が言えた義理じゃないけれど、呑気な事言ってるんじゃないわよ…」

マリオ「いやいや、呑気なもんか。だいいち、俺だって無理やり特訓に付き合わされただろ」

デイジー「うぐぅ……」

~更に回想~

ロゼッタ「ひいっ、やめ、やめてくだ―」ポロポロ

ピーチ「泣きじゃくりたい気持ちはよーっく分かるけど、大会本番で死ぬよりマシでしょ。
     私も心を鬼にするから頑張りなさい!最初はロゼッタも割と意気込んでたじゃない!」

ロゼッタ「お願いでずがら、他のことならなんでもじまずがら―」ポロポロ

ピーチ「そーれ、マグマ飛び込み58回目ー」ドンッ!

ロゼッタ「あっー」



―ボチャン

ロゼッタ「いやあああああああああああああああ!!死ぬ、死にますからああああ!」





マリオ(…様子を見に来たら地獄絵図が広がっていた件について)ガクブル

マリオ「あのー、ピーチ?ピーチサン?」ガバッ

ピーチ「!?きゃあ!マリオ!?驚かさないでよ…ってか何やってるの!?」

マリオ「いや、デイジーがさぁ。
    『男のくせに、女の子が死にかけているのを気にも留めないなんて有り得なくない?
    せめて罪滅ぼしというか連帯責任というか、自分もおんなじ苦しみを味わいなさいよ。
    あ、女の子のあられもない姿を見ないように潜っとけやコラ』とかいうもんで。
    俺も暇じゃないんだがなあ」

ピーチ「…それで、馬鹿正直というか律儀というか、『マグマの中で潜水してる』の!?」

マリオ「ははは、何を言ってるんだピーチ!」ケラケラ

ピーチ「そ、そうよね。流石にマリオでもやりすぎというか、体が持たないわよね」

マリオ「これ、マグマだから、『潜水』じゃなくて『潜炎』だぞ。ピーチはうっかりさんだなあ」

ピーチ「」

マリオ「あとさ、初心者はまず部分的に炎に当たるファイアバブルやファイアバーで
    ゆっくり慣らしていった方がよくないか?30年前に初めてマグマに落ちた時の絶望感ったら…」

※現在のマリオさんは耐久値がカンストしており温泉に浸かる程度の影響しかありません。
  ダメージを受ける描写があったとしたらただの『ノリ』です。

ピーチ「…私も責任があるから飛び込んでやるわよ。勝負よ、マリオ!」

マリオ「え、いや、これって勝負とかいう問題じゃないんじゃ…といってる間にムキになって飛び込んでるし」

ピーチ「……いやいや、やっぱりこれアッツイ!熱いわよ!なんで平気なの!?
     間違いなく30分も入ってれば『熱中症で倒れる』わよ!」

マリオ(そもそも俺たち、通常の暑さ程度じゃ熱中症も味わえない強さだけどな)



デイジー「やっほー、今のロゼッタどんな感じー?
      …………嫌ああああああ!?なんか全身溶けてない!?
      モロに目撃しちゃったんですけどぉ!?どうしてくれるのよ!
      確実に夢に出てうなされるわよコンチクショー!
      ロゼッタ、早く上がりなさい――って反応できるわけないよねー!
      ピーチ、はやく引き上げて1UPキノコを!!」

マリオ「タイミングよく 1UPキノコを 投げろ!」

ピーチ「ここは『タイミングよく 腕をつかんで 引き揚げろ!』じゃない?」

デイジー「アクションコマンドとか要らないから!!…ってツッコんでる場合じゃなぁああい!
      しょーがないなあああああああ!!」ドボン!

ロゼッタ「」

ロゼッタ「」

ロゼッタ「」

ロゼッタ「」シュウウウウウウウウ

ロゼッタ「……………………」ムクッ

ロゼッタ「あれ?なんでわたしいきてるの?」

デイジー「間一髪1UPキノコが間に合ったからに決まってんでしょうが!
      こらそこ!マグマ我慢大会とかいうアホな夫婦漫才してる暇があったら手伝えぇ!」

ロゼッタ「わぁい、わたし1UPキノコだいすきー!あはははは!」



~回想終わり~

デイジー「あれ?よくよく考えてみると、特訓に付き合ってるどころか邪魔してない?」

マリオ「…ソンナコトナイヨ」

ロゼッタだったもの「…………」

ロゼッタ「マリオ、で、す、か?」ヨロッ

マリオ「ああ、とりあえずお疲れさん。あとは、天に運命委ねて明日を待つとするか」

ロゼッタ「…………ふふふふふ。明日、そう、明日ですか。
      実際のレースとなれば1UPキノコひとつ頂けない、どうしたらいいのかしら。
      ああ、生きているって素晴らしい!明日も明後日も生きているといいですね!」

デイジー「うわあ、色々と重症だあ」



ピーチ「あー、残念だけど、疲れた体に鞭打って、あともうちょっとだけ頑張ってもらわなきゃいけないわ。
     日付が変わる前に、何コースかこなしておきたいの」

ロゼッタ「ええ!?まだ、なにか、準備があるので、すか?」

ピーチ「…まあね」


 ・
  ・
シグナルジュゲム
「さぁて!この大会、観戦は初めての方もいらっしゃるでしょう!
ベテラン観戦者にはごめんなさい!くどいようですが大会の進行方式を説明させて頂きます!
会場中央の特大スクリーンをご覧ください!」

パッ!(選手らの顔写真が表示される)

シグナルジュゲム
「映し出されていますように、会場にはロゼッタ選手をはじめ、総勢24名の強者・曲者レーサーが
出番はまだかと首を長くして待機しています!
レースは1コースごとに、観客の皆様に事前投票を受け付けます!

走りを観たいと思うレーサーに、お手元のボタンからこぞってご投票ください!
その結果により、参加者12人を決定いたします!
ただし、6コース走り切ったレーサーは応募を締め切らせて頂きますのでご了承ください!
また、参加者決定後に、実際に走ることになるコースを決めていきます!

登録者全員が最低4コース走るまで、レースを続けさせていただきます!
その間に投票受付中のレーサーが12人を切った場合、運営側のランダム抽選で
成績無関係を前提としてレーサーを補填します!

レース終了後、各コースでの順位に対応したポイントを平均処理し、
その点数を指標に総合順位を決定いたします!
順位とポイントとの対応表はお手数ですがパンフレットをご覧ください!」

シグナルジュゲム
「なお、通常の大会ではランダムシャッフルによるコース決定となっておりますが…
初参戦のレーサーがいる場合、救済ハンデとして、重複しない範囲でのコース選択権が与えられます!
また、第4レース終了時点で応募を締め切ります!
ただし、本人の希望がある場合は補填レーサーとして抽選に掛かる場合はございます!
ロゼッタ選手、短い時間ですが第1コースの選択を考えておいてください!」



ピーチ(そう、これは大きい。ひとまず4コース分、穏やかなコースを走り込んでおいた甲斐があった。
     ひたすら選んで行けば、火傷を小さくできるはず!)

デイジー(ピーチ、考えたわね。過酷なコースでの異常特訓で耐性をある程度付けてからなら、
      洞察力も確保できて気持ちもだいぶ楽になること請け合いよ!)

ロゼッタ(ピーチ姫、デイジー姫、ありがとうございます。これならなんとか、戦えそうな気がします。
      さて、私がまず選択すべきコースは――――)

>>52
×第4レース  ○第4コース

シグナルジュゲム
「それでは観客の皆さん!今から5分間、投票を受け付けます!!
誠に勝手ながら、それ以降の投票は無効となりますのでご注意ください!」

~第1コース投票結果~
ルイージ
マリオ
ワリオ
クッパ
デイジー
ヨッシー
ドンキーコング
ピーチ
キングテレサ
キノピオ
ベビィマリオ
+ロゼッタで計12名


ルイージ「見て、見てよ兄さん!僕が投票1位だって!兄さんに勝ったよ!やったー!」

マリオ(まあ、観戦歴の長い人たちは『第1コースはアレだな』って察しがついてるからな)

ピーチ(初参戦レーサーが捻くれてない限り『第1コースはアレだな』って察しがついてるもんね)

デイジー「いつも思うけど、観客にキノコ王国の住民多いのにピーチってそんなに票集まらないよね」

ピーチ「逆よ、逆。『姫様に危険な目にあってほしくありません!』って人がほかのレーサーに流れちゃうから。
     支持率が高いのも困ったものね」

デイジー「そんなもんなんだ(じゃあ結局選ばれているのはいいんだろーか)」

ロゼッタ「…………」ジーッ

ベビィマリオ「わあーい、なんとか滑り込めたでちゅ!」キャッキャッ

ロゼッタ「ちょっとボク?どこから紛れ込んだの?駄目よ、子供…子供?というより赤ん坊?が
     こんな過酷で危険な場所にいちゃ!ママの所にお帰りなさい?」ヨシヨシ

ベビィマリオ「あ、新入りさん!だいじょーぶ、2人乗りデッドヒートまで出来ちゃうから
        こんなレースくらいおちゃのこさいさいでちゅ!体当たりでお化け沼に吹っ飛ばされたって
        根性で乗り切りまちゅよ!」

ロゼッタ「」ピシッ

マリオ「あー、ロゼッタ。この大会に必要なのは運転免許じゃない。
    生き抜くためのHPと気力があればそれでノープロブレム」

ロゼッタ「あ、はい」トオイメ

マリオ(むしろ赤ん坊の癖に冒険経験値やばいことになってるからな…)

シグナルジュゲム
「それでは参加者も決まったところで。ロゼッタ選手、第1コースの選択をどうぞ!」

ロゼッタ(スゥー……)「ルイージサーキットでお願いします!」

観客(やっぱり)

観客(まあ鉄板だよな。初心者でも運転が非常にしやすいし)

ピーチ(うわあ、観客の皆さんもしたり顔だし…まあこれでいいのよ)

シグナルジュゲム
「なるほど、ルイージサーキットですね!それでは、『呼び出し』ましょう!ぽちっとな!」

ロゼッタ「えっ」

ポンッ!!ズゴゴゴゴゴ…!!

なにも なかったはずの だだっぴろい かいじょうに
ルイージサーキットが あらわれた!▼

ロゼッタ「…………会場にコースを呼び出すだなんて、何て無茶苦茶な…
      通りで観客がこんな街中の会場にのんびり構えているはずです」

ピーチ「さすがにレインボーロードとかのアップダウンや規模が尋常じゃないコースは
    実況中継でごまかすけどね。キノコ王国の技術力は世界一よ」

クッパ「それは聞き捨てならんな。クッパ軍団とて負けておらんぞ」

ロゼッタ「だったらカートにバリア機能くらい付けてほしかったですね(小声)」

シグナルジュゲム
「さあ、レーサーたちがスタート地点にスタンバイ完了しました。
本当にレースが始まろうとしています、その瞬間を見逃すな!
それでは――レース、開始です!」

――ピィーッ、ピィーッ、ピィーッ、パアァーン!!


ビュン! ビュン! ビューン!



ロゼッタ「……結局ロケットスタートとやらを教わってないじゃないですか!!
      あああ、いきなり離されたんですけど!待ってください!」ブロロロロ

ピーチ(あ、ごめん)

ロゼッタ(レースが…始まって、しまいました。
      私のことを応援して下さる観客の皆さんの声、しっかり届いています。
      こっそりチコたちまで駆けつけてくれているの、私にはお見通しですよ。

     ……なんてことになっていますが、正直、私は順位なんて気に留めず走破することだけで精一杯。
     ピーチ姫の策によって余裕はある。…あるはずなんですが、全然実感が湧かない。
     駆け込みで走り込んだはずのこのコースが、魔物が棲む初見コースに見えて仕方がない。

     体が、固い。本当に死んでしまわないか、ただただ、怖い)ガチガチ

ロゼッタ(……ハッ!)

シグナルジュゲム
「おーっと、マリオ選手、クッパ選手に押し負けて珍しく砂地に乗り込んでしまったぞ!
今日は調子が悪いのか?大きくトップ集団から離されます!」

マリオ「やれやれ、砂地に乗り上げただけでこの叩かれっぷりとは
    優勝候補のプレッシャーとは恐ろしいな、まあわざとなんだが」

デイジー「私もいるよーん。いやはや、アンナトコロニバナナガアッタナンテ」

マリオ(とりあえずまあ、ロゼッタの少し前を走って、臭い所の障害物は掃除してやるか)

デイジー(私たちの責任もあるし、フォローしてやらないとね。場合によっちゃスリストもあげられるし)

ロゼッタ(マリオ、デイジー姫!助かります!
      …そうですね、ここまでお膳立てしてもらっていて、なんて我儘。
      下を向いている暇があったら前を向くべき、です!
      恐れていても何も――始まらない!)

シグナルジュゲム
「おっと、ロゼッタ選手!どこかぎこちない運転でしたが、ようやく走りが安定してきたか!
そしてここでパワフルダッシュキノコをゲットした模様!一気に加速します!
後ろをチラ見しつつ前を走っていたマリオ選手、これは慌てたか!
前方不注意で流れ弾の緑甲羅を食らってしまった!」

マリオ(失礼な。加速中のロゼッタが食らうことになってただけだ。
    そのままこちらもキノコでリカバリ、と)

デイジー(おー、重量級だけあってMAXスピード維持できるとホント速いね。
      まあ私に追随される程度のコース取り・ドリフトは改善の余地が有るけど…
      細かいことは気にしない!どんどん先頭集団に接近できてるよ!)

シグナルジュゲム
「…そして今、ロゼッタ選手、ピーチ選手を抜いて7位に!」

ロゼッタ(集中、集中、集中っ!)

シグナルジュゲム
「甲羅やキノコの使用タイミングは必ずしも最適とは言えませんが、
猛追でひとまず5位に付けました、中々の健闘です!」

観客「ウオオオオオオ!」


ピーチ「…………うーん、どう思う?」ジーッ

クッパ「ふむ。このコースだけに関すれば気に留めるほどのことでないが、
    レース全体で見るとよろしくないな…」

シグナルジュゲム
「デイジー選手、ロゼッタ選手の前を4位で走り…おっと、急加速してきたドンキーコング選手、
勢いそのままにデイジー選手を大きく横に押しやりました!

そのまま間髪入れずロゼッタ選手に対し、強者の洗礼とばかりに進路上にバナナ設置!
しかし!これはドンキーコング選手を狙ったマリオ選手の緑甲羅軌道上!奇しくも相殺されます!
ロゼッタ選手、漁夫の利で助かった!」

ドンキーコング「ぐぬぬ…」

デイジー「お・か・え・し」トンッ

ドンキーコング「ウホーッ!?」バァン

シグナルジュゲム
「おおっと!デイジー選手、素早いドリフトから態勢を取り戻していた!
ドンキーコング選手の前にしなやかにカートを差し入れて、設置したるや偽アイテムボックス!
これは避けられない!たまらずドンキーコング選手吹っ飛んだ!」

ロゼッタ(あ、赤甲羅を引きました。…このまま使うと、デイジー姫を追尾してしまいますね。
     防御アイテムも持っていないようですし、ここは保持、と)

デイジー(何を甘ったるいこと言っとるか。とっとと撃ちなさい)

ロゼッタ(……え、直接脳内に!?えっと、そんなことできませんよ!)

デイジー(そこまで不干渉貫いちゃうと庇ってること丸わかりじゃないの!
      …いや、けっこー既に厳しいかもだけど。ピーチがジト目で私たち見てたし。
      とにかく、そっちからの攻撃は一切遠慮しないくらいでちょうどいいわ)

ロゼッタ(…………本当に、すいません)ヒュンッ

デイジー「わわ、赤甲羅が来るよ!外周のダッシュボードで振り切らなきゃー!
      あー、これ無理ゲーだわ。防御アイテムもないしぶつかるぅ、うーわー(棒)」ドカーン

ロゼッタ(お先に、失礼します)

マリオ「おうデイジー、漢だな。先に行くからすぐ追いつけよ」

デイジー「男じゃないよ!」

ロゼッタ(えっと。このコースは加速系のアイテムがあれば砂地をショートカットして
      時間短縮が図れるんでしたっけ。先ほどまでは道路で使っていましたが。
      あ、あそこですね。ちょうどいい塩梅にトリプルダッシュキノコがあります!
      練習時間はそれほど確保できませんでしたが、一応成功もしましたし…
      やってみましょうか!)ダッ

マリオ「あ、緊張した状態でそれはちょっとフォローできないから待っ」

ロゼッタ「ヤッフゥ!」





ゴンッ!!

ロゼッタ「はうっ」

マリオ(いわんこっちゃない)

ロゼッタ(…………痛い、すごく痛いです。
      ドカンに頭を盛大に擦って意識が一瞬飛びました。…あ、王冠がどこかに行った。
      まあいいです、この程度で済んだのなら!命の方が大事ですよ、ええ。  
      さて、再加速です!」チラッ



マリオ「ぶつかったドカンなんか気にしないで前見ろ前!!」

ロゼッタ「はい?」



目前のドカン「余所見すんなや」



ガンッ!!!!!!!!!

シグナルジュゲム
「おおっとロゼッタ選手!ややキノコを贅沢に使いつつも…いや、むしろ
 不慣れを見越したキノコ確保と見れば聡明、賢明な判断か!
無事に砂地を抜け、とうとう3位にまで躍り出ました!素晴らしい活躍です!」

マリオ「なんかドレスがところどころ赤く染まってるが…だいじょぶ?」

ロゼッタ「……………………ええ、ええ、計画通りですよ。
      側頭部を激しく殴打されて生暖かい感触が頬を伝っていたところで、
      激痛が頭を駆け巡っていたところで、微妙に視界がぼやけていたところで、
      順位を上げたことは確かなのですから何も臆することはありません、はい。
      ここまで私としては完璧な走りなのです。何も臆することはないのよ、ロゼッタ。
      ここまで過保護なサポートを受けておいて愚痴を零すのは罰当たりにも程があるというものだわ、
      何も臆することはないのよふふふふふふふふふふふふふふ」ダラダラダラダラ

マリオ「よし、大丈夫だな(逃避)」

ワァァ!

マリオ「っ!?この警告音は!!ロゼッタ止まるんだ!」



ワリオ「オラオラ、みんなまとめて吹き飛んじまえ!!」

シグナルジュゲム
「おおっとワリオ選手、不運な巻き込まれ事故で下位に甘んじていたかと思いきや!
起死回生、トゲゾーの甲羅をスロー!青い閃光が瞬く間に1位のキングテレサ選手めがけて猛進します!

おやおや!?地を這わなくなったトゲゾーですが、思いのほか先頭グループ固まっている!
これは誰が巻き込まれてもおかしくない状況です!慌てて2位以下の選手、減速!
キングテレサ選手も擦り付けようと慌てて減速!…おっと、ロゼッタ選手、接近音に気付いていないのか
減速しなーい!

トゲゾーの甲羅、結局キングテレサ選手に着弾!
ロゼッタ選手巻き添え!両者、大爆発で吹っ飛ばされたあ!」

ロゼッタ「がふぅ!?」

マリオ「」

キングテレサ「ぐっ!…おのれ、タダでは済まさんぞ!」

ロゼッタ「……………………………………………」

シグナルジュゲム
「おや、どうしたことか。ロゼッタ選手、突っ伏したまま動きません!
脳震盪でも起こしたか、後続にどんどん抜かされていくままだ!」

ロゼッタ「……………………」

ロゼッタ「………………………………………まだ、はしれ、ます!」ユラリ

シグナルジュゲム
「なんとかロゼッタ選手持ち直した模様です!」

マリオ(ホッ)

第1コース結果
1位 ルイージ
2位 ヨッシー
3位 キングテレサ
4位 マリオ
5位 ドンキーコング
6位 ロゼッタ
7位 デイジー
8位 ワリオ
9位 クッパ
10位 ピーチ
11位 ベビィマリオ
12位 キノピオ

シグナルジュゲム
「……はい、御覧の通りの成績となりました!観客の皆さん、贔屓のレーサーは活躍されたでしょうか、感嘆する走りを見せてくれたでしょうか!とにもかくにも、走り切ったレーサーたちに盛大な拍手をお願いします!」

パチパチパチ・・・!!

マリオ「ってか、見かけないと思っていたらルイージが1位だと!?凄いな!」

ルイージ「ふふ、トゲゾー様様だよ。…でも、まさかそこまで影が薄かったなんて喜びも半分だよー…」

ヨッシー「最後に投げられた赤甲羅を飲み込んで躱せたら私の勝ちだったんですけどね」

ピーチ「ちょっと待ちなさいそこの恐竜」

キノピオ「姫様!お怪我は、お怪我はございませんか!」

ピーチ「あなたは、私を気遣う暇があったら私に向かって甲羅でも投げなさいよ。
    おまけにカミナリ雲取っておきながら減速して擦り付けを諦めたでしょ?」

キノピオ「そそそ、そんなことできませんよ恐れ多い!そんなことする位なら棄権します!」

ピーチ「忠誠心と事なかれ主義は別物なのよ?…よし、決めた。上司命令よ。
     今日、私に向けて最低一回は攻撃を当てなかったら、あなたクビね」

キノピオ「えっ…ま、まあ姫様に攻撃しないで済むならレース人生を終える位…」

ピーチ「そうじゃなくて、城仕えをクビ」

キノピオ「」ガーン

クッパ「それは流石に可哀想だろう?いくらワガハイがピーチ姫を攫う度に毎度のごとく無能警備をさらけ出すとはいえ」

キノピオ「」グサッ

ピーチ「まあ最近は公務から逃げて羽伸ばそうっていう下心もあって、流されるまま攫われてる節もあるけどね」

クッパ「がっはっは!それは面白い冗談だ!……え、マジで?」

ピーチ「身の安全は確保してくれる上にじきにマリオが助けに来てくれるし、
     様変わりするお城で敵情偵察兼ねたレベルアップできるし、
     軍団のみんなに料理振る舞ったりクッパに洗剤ケーキ振る舞ったりできるし、
     割と楽しくなってきている自分がいたりして~。
     あ、キノじい達にはヒミツね?」

マリオ「色々と初耳なんだが」

クッパ「大丈夫か、この王国 」

ピーチ「マリオブラザーズがいるから平気平気。いざとなったら私も出動するし」

ルイージ「そゆことそゆこと」

クッパ「めっさ開き直ってやがる。紐で吊るしても絵に閉じ込めても籠の中に捕えても懲りてないというのなら…
    今度は久しぶりに本気になって石にでもしてやろうか」グフフ

ピーチ「なにそれ楽しそう!解き甲斐がありそうね!」

クッパ「えええええ…ドンビキですわぁ…」

ロゼッタ(聞いているだけで頭が痛くなる会話ですね…)

???「……」


サワッ

ロゼッタ「キャ!?!?」サッ

ワリオ「よっ、新入り。いい結果、『出してもらえて』良かったな」

ロゼッタ「いいいい、今お尻撫でられたんですけど!」カァ

ワリオ「おいおい、言い掛かりはよしてくれよ。あんた長身だからな、振ってた腕がちょいと当たっちまっただけだぜ?」

ピーチ「結構肉付き良かったでしょ?」

ワリオ「どっちかっつーと女性っぽくない硬さだったな…ハッ!?」

デイジー「サイテー!」プンスカ

ピーチ「この女の敵が。殴るわよ」バコン!

ワリオ「痛ぇ!『たった今フライパンで殴ったわよ』の間違いだろうが!」

マリオ「…ワリオ。らしくないぞ。ワルで売ってるお前でも、ここまで露骨な嫌がらせは久しぶりじゃないか。
     それに、『出してもらえて』って…」

ワリオ「おー、イッテェ…あん?そんな事、お前が一番分かってんじゃねーのか、マリオ?
     むしろお前が『らしくねえ』んだよ」

マリオ「…………」

ワリオ「新入りが参戦してくる、それも女で重量級っていうんで、何気に楽しみにしてたんだぜ?どんな男勝りの奴に巡り合えるかってな。
     クッパ、お前もそうじゃないのか?」

クッパ「…いや別に、そこまでは…」

ワリオ「ケッ、日和やがって」ペッ

ロゼッタ「………………っ!」

ワリオ「それが、蓋を開けてみればどうだ。マリオとデイジーにおんぶに抱っこじゃねえか。これならまだ、びりっけつでもしっかり走ってくれた方がよかったってもんだぜ。
     観戦歴の長い奴なら八百長モドキだってすぐに気付くだろうぜ。――お前さんよぉ、やる気あんのか?」

デイジー「しょ、しょーがないじゃない!いろいろ問題があってロゼッタは経験が乏しすぎるんだから!慣れるまで大目に見てやってよ!」

ワリオ「…女々しいこと、この上ないな。そうやって気楽に構えている奴に、
    現に上の順位を取られているっつーのが何よりも気に食わねぇ。
    お遊戯か何かと勘違いしてるなら、とっとと退散してもらいたいもんだねえ。言いたいことはそれだけだ。
    あんまり繰り返すようだと…俺もなかなか、黙ってないぜ」スタスタ…

ロゼッタ「……」





ロゼッタ「……息が、詰まりました。すいません、そもそも私が最初からしっかりしていれば…」

デイジー「気にしない、気にしない!アイツの性格が悪いだけだからさ」

ロゼッタ「ワリオ、さんでしたっけ。どのような人なのですか?」

マリオ「まあ、とにかく勝負事は勝たないと、いい順位じゃないと気が済まない奴だ。
    運転は荒っぽいがのらりくらりとこなして、優勝候補に挙げられるくらいの実力は持ってる。
    というか、アイテムを使ってライバルを蹴落とすことにおいてはワリオの右に出る奴はいない、
    と言ってもいいかもしれん」

ロゼッタ「そ、そうなんですか!?」

ピーチ「また、厄介な奴に目を付けられたものね…でもねマリオにデイジー。
     さっきのコース、ワリオほどは批難しないけど、傍目から見て色々と庇いすぎよ。
     これで私まで周りをウロウロしていたら確実にペナルティを食らっていたわ」

マリオ「…は?ペナルティ?何のことだ?」

ピーチ「うわあ、呆れた。まさか知らなかったんだ。ほら、大会規約の……ココ。

    『特定のレーサーあるいはレーサーグループを、著しく利する、あるいは相互に援護する行動を継続的に取り続けた
     レーサーあるいはレーサーグループがいた場合、参戦中のレーサーならびに観客はコース終了から
     次のコースが開始されるまでの間に、外部あるいは内部からその行動を審判に告発することができる。

     その行動がカメラチェックで確認でき、かつ庇う側の意図的行為であると判断されたならば、
     運営は庇った側のレーサーについて、次の1コースあるいは2コース以上の参戦不可を通達することができる』

     って書かれてあるわ」

マリオ「…マジですか?」

ピーチ(コクッ)

デイジー「じゃ、じゃあどうすればいいの!?」

ピーチ「…別に慌てる必要は多分ないわ。ロゼッタを気にせず、自分の走りをすればいいのよ。
     できるわよね、2人とも」

マリオ「仕方ない、か」ヤレヤレ

ロゼッタ「わ、私も精一杯走らさせて頂きますので!
      マリオもデイジー姫も、私のことは気にせず本来の走りをぜひお願いします!」アタフタ

デイジー(そうは言ってもすっげー不安です)




――この時私は、1UPキノコを持ち込めない現状にため息を付きながらも、
あちこちに血の色が掛かった青色のドレスを恨めしげに見やりながら
『次からは自力で走ることになる、頑張らなきゃ』くらいの気持ちで佇んでいました。


中途半端に走れてしまった、いい成績を手にしてしまった私は――どこか、慢心の気持ちが蠢いていたのかもしれません。

ロゼッタ(第2コースには、ピーチビーチを選択。
     このコースもまた、段差・障害物ともにほとんどない、非常に走りやすいコースです。

     道があまり舗装されていないことに加えて水辺があるのが少し厄介ですが…。
     まあ、水辺があるということは逸れたアイテム攻撃がそのまま消え去ってくれるということでもあり、
     安全にも貢献しているとのこと――)


第2コース参戦レーサー
ワリオ
ドンキーコング
キングテレサ
クッパ
ヨッシー
キノピコ
マリオ
ベビィマリオ
ベビィルイージ
ピーチ
デイジー
+ロゼッタで12人


ロゼッタ(ルイージはしょげていましたが、マリオもピーチ姫もデイジー姫も外れていないことにとりあえず一安心。
     …しかし、他の3人の顔色が芳しくありません)

マリオ「…ピーチの言う通りだな」

ロゼッタ「え?」

マリオ「ロゼッタへの援護、消極的な走りを感じたのか、俺とデイジーの票がかなり下がってる。
    自慢じゃないが、優勝候補の俺が2コース目の投票結果でここまで順位を落とすケースはあんまり記憶にない。
    まあ、単に『優勝が遠ざかったから今回は諦めた』とかの理由ならまだマシなんだが。
    このままだと俺はともかくデイジーは圏外になりかねないな」

ロゼッタ「うっ……」

ピーチ(逆に、貪欲な走りを見せたワリオの票が急上昇してるわね)

デイジー「私は崖っぷちとかゆーな。…で、かといってロゼッタを見放して手助けしないんじゃ本末転倒だし…
      ど、どうすんのよ?」



マリオ「…大丈夫だ、まだ奥の手はある」キリッ

シグナルジュゲム
「さあ、レーサーたちがスタート地点にスタンバイ完了しました。
それでは――第2コースも、張り切ってまいりましょう!」

ロゼッタ(口頭で教わっただけですが…ロケットスタート、次のコースくらいで使ってみたいものです。
      今回は、皆さんのスタートをよく見ておきましょう。観察させて、もらいます!)ジーッ



――ピィーッ、ピィーッ、ピィーッ、パアァーン!!

ビュン! ビュン! ビューン!




ロゼッタ(…う、うーん。タイミング、わかったようなわからないような…
      トントントン…このくらいのタイミング?いえ、トン、トン、トン、このくらい?
      まあ、今悩むのはこのくらいにしておきますか…)ブロロロロ

ロゼッタ(このコースは、跳ね返りの緑甲羅は気にしなくていい。当たるとしたら赤甲羅。
      要するに避けようがないから当たったらその時、ということで走ればいいんですね、うん。
      防御アイテムがあればストックしておくとよいとのことです。

      また、水辺を突っ切る際に加速アイテムはぜひ欲しい、と。
      マリオは『そもそも水中でのペダル操作に慣れないうちはやめた方がいいんじゃあ…』と
      ぼやいていましたが、そうも言っていられませんね)

マリオ「悪いな、お先に」

デイジー「んもー、薄情だなあ。―それじゃ頑張って。死ぬのは、駄目よ?」

ロゼッタ「縁起でもない事言わないでください」



ロゼッタ(お二人とも、あっさりと私を抜かしていきました。
      最高速は私の方が断然速いとのことですが、微塵も感じさせない走りです。
      特にマリオは、凄まじい速さであっという間に見えなくなってしまいました。さすが優勝候補。
      観客のボルテージも上がっている気がします)

ピロロロロロロ…パン!

ロゼッタ(あ、トリプル赤甲羅。これはラッキーです、どんどん投げてしまいましょう)

ブン! ブン! ブン!



ワリオ「ぶっははは!こりゃケッサクだ!出たよ、素人丸出しの使い方!」

ロゼッタ「っ!?な、なんですか一体!レース中ですよ!
      それに、なんですか素人って!赤甲羅なのですから前を攻撃するのは当たり前でしょう!」

ロゼッタ(同じく重量級のワリオ。技量の差から、すぐ後ろにまで付かれていたのですか。
      相変わらず私って、まるで後方の状況確認、警戒がなっていませんね。悲しくなります)

ワリオ「おつむが弱いようだから、いい事教えてやるよ。俺って親切ー。
     そんな投げ方しても、前の奴には1発分の効果しかねーぞ」

ロゼッタ「…え?」

ワリオ「硬直時間中のアイテム攻撃はムダだからな。
    投げるなら、硬直が解けたと同時に次弾が当たるような時間差で投げろや。
    相手の防御アイテムを見越して2発撃つならまだ分からんでもないんだが、
    3発一斉に投げるのはただの阿呆だわ」

ロゼッタ「…そ、そう!相手が使いかけのトリプル防御アイテムを持っている可能性も…
      防御アイテム2個に対して3発投げるのなら無駄じゃありません!」

ワリオ「可能性の低いくっだらねえ賭けだな。というか、1発の着弾のために3発分消費するのが馬鹿だと言いてぇんだよ、俺は。
    効率悪すぎだろ、頭使えや。できれば3発着弾、最低でも2発着弾を狙うのがいいんだよ!
    それができないなら、時機を待ちつつ防御、更には付近のレーサーへの牽制に使った方が遥かに賢いんだけど、わかるぅ?
    それとも箱入りお嬢様には難しかったか?んん?」

ロゼッタ(そんな定石が、あるなんて。確かに、理にはかなって、いる。
      言い訳したくはありますが…勉強不足にも…程がある)

ワリオ「ま、あんたが馬鹿打ったおかげで俺は大助かりなんだけどな。イイもんやるよ」ポイッ

ロゼッタ「…ひっ、赤甲羅…!」

バァン!!

ワリオ「じゃ、お先―!よし、スターで一気に飛ばすぜー!」ブロロロロ

シグナルジュゲム
「ワリオ選手、ロゼッタ選手のマズイアイテム駆使を逃さなかった!結果として、
 最小のコストで最大の結果を得て見せました!これは、経験の差が如実に表れてしまったか!」



ロゼッタ「…いたい、です」ツー

ロゼッタ(砂地であることが幸いしましたが…咄嗟に庇った左腕が、そのまま吹っ飛んだ際に下敷きにまでなって…
      痺れるように痛い。折れた、かもしれません。そうか、甲羅の飛ぶ速度って腕力でも結構変わるんですね、
      正直…みじめで、泣きたいです)

ロゼッタ(…ですが、よし。そこそこ激痛が走りますが、なんとかハンドルに手は添えられる。
      意識も…しっかりしている、右手を主に使っていけば問題ない、問題ない…)イイキカセ

ポイハナ(トコトコトコトコ)

ロゼッタ「わ、わ、せめて確実に避けられるあなたに当たるわけには、まいりません!」ザザッ



ゴオオオオォォォーッ!!



ロゼッタ「…?」クルッ

ロゼッタ「ひいっ!?」サッ

キラー「ゴオオオオオォォォ!」ビュー!!

ロゼッタ「ハァ、ハァ、ハァーッ!し、心臓が止まるかと思いました!
      あ、あれがキラーという弾丸なのですね、あんなのに轢かれたらひとたまりもありませんよ!
      あ、でもあんなに速く走れて、いいなあ…」

ピロロロロロロ…パン!

ロゼッタ「…これは、えーっと、確か…きょだい、キノコ?」


ググググググ…!

ロゼッタ(巨大)「か、体に活力が…こ、これは!」

ポイハナ「でけえ」

ポイハナ「元々あの人ノッポだからな」

パリン!パリン!

ロゼッタ(巨大)「す、すごい!当たり判定が大きくなるので不安でしたが、
          甲羅やバナナも難なく破壊して走れるのですね!更に他の人を踏み潰すことができる、と!
          私にとってこれは中々利用価値の高いアイテムですね!」


ビュン!


ロゼッタ(巨大)(おまけに、ダッシュキノコほどの速度はありませんが、水辺でも減速しない!
      コース取りが下手な私にとっては非常に助かります!…むむっ)

ゴオオオオォォォ!

シグナルジュゲム
「おーっと、巨大化したロゼッタ選手の後方から、2体目のキラーが迫ってきたぞー!」

ロゼッタ(巨大)(とりあえず、キラーはこの体ではじくとして、次のアイテムボックスまでの距離は確か…)


シグナルジュゲム
「ロゼッタ選手、特にキラーを気にしていませんが大丈夫なのかー!」


ロゼッタ(巨大)「…………あれ?よもや、キラーに当たり負けする、んですか?」

ガツンッ!!

ロゼッタ(巨大)「いやぁー!!」



ベビィマリオ「おおー、やっと追いついてきたでちゅか?」

ベビィルイージ「んー、なんか轢いた気がするでちゅ。もし新人さん轢いてたら困りましゅ」

ベビィマリオ「救護義務なんてものはないでちゅから大丈夫でちゅよ」

ベビィルイージ「それもそうでちゅね。キラーは急に止まれない、でちゅ」

ロゼッタ(元)「あ、元の姿に戻りました…心なしか、血がにじんでいる面積が広がっている気が。
うん、考えないことにしましょう。むしろ、大きくなっていたからこれだけの怪我で済んだ、と
考えていかないとやってられませんね。加速、加速です!」ダッ

ロゼッタ「パワフルダッシュキノコ!」ビューン!

ロゼッタ「よし、スター!」キラキラキラキラ

ロゼッタ「そして…サンダー!!」ドッカーン



~11 th/12~
ロゼッタ「…あ、あれ?これだけ強いアイテムが出てるのに、1人しか追い抜けない?
…あ、あの遠くに見えている人が10位でしょうか…って、スター使用中でしたか。

――そうでした、私以外の下位集団の人も当然強いアイテムを手に入れているはず、
そう簡単に追い抜きを許してはくれないわけですか。おまけにスターでサンダーも回避された、と」

ロゼッタ「…詰んでいませんか?くっ、こうなったら……!」

ロゼッタ(スゥーーッ)

ロゼッタ「前の人たちが設置アイテムに引っ掛かって足止めされるのを祈りましょう。
あはは、混戦になっていないと走りやすくて、私としてはありがたいですね!!
おまけに、私が好むライン取りに障害物がほとんど落ちていませんし!きっと神様の思し召しです!」



ロゼッタ(結局。消極的極まりないけれども事故らず走ることをモットーに走った結果、
11位でコースを終了しました。後ろのキノピコさんにスター状態のキノコダッシュで
猛追されたときはもう駄目だと思いましたが…。軽量級なのが幸いしました。

今度こそ独力で走り切れましたね!文句は言わせません!)

第2コース結果
1位 マリオ
2位 ワリオ
3位 クッパ
4位 ピーチ
5位 ドンキーコング
6位 ベビィマリオ
7位 デイジー
8位 キングテレサ
9位 ベビィルイージ
10位 ヨッシー
11位 ロゼッタ
12位 キノピコ

シグナルジュゲム
「今回のコースは、マリオ選手の素晴らしい走りが冴えわたりました!
まさに、非の打ちどころがない走りです!ワリオ選手、クッパ選手の攻撃を振り切ってのゴールなので
非常に価値も高いと言えるでしょう!」

マリオ「ふふん、どんなもんだ」

クッパ「こしゃくな、トゲゾーをキノコでかわしてのけるとは…!」

マリオ「バナナガードを捨てた賭けに出て、確率の低いダッシュキノコを手に入れられたのが
    勝因ってこったな。これが俺の勝負運だ」

ピーチ「やるじゃない、マリオ!私も負けてられないわ!」

クッパ(というか周り重量級のところに軽量級で滑り込むピーチ姫も凄いとワガハイは思う。
     このコースが付き落としの危険性ないとはいえ)

マリオ(割と同感)

ピーチ(いやまあ砂地多かったし)

マリオ(あ、聞こえてたか)

係員「マリオさーん、ちょっといいですかー?」ヒラヒラ

マリオ「ん?どうした?…なんかあったみたいだから行ってくるよ」スタスタ

デイジー「お疲れー。さてと、ロゼッタの様子を見に行きましょうか!」

ピーチ「そうね!」スタスタ

ワリオ「……」





そして。第3コース参戦レーサーの受付が終了した――。

ピーチ「…え?」

デイジー「…な、なんで?」

ロゼッタ「…………嘘、ですよね?」





第3コース参戦レーサー
クッパ
ワリオ
ベビィマリオ
ワルイージ
ルイージ
ファンキーコング
キノピオ
ほねクッパ
ピーチ
キングテレサ
ベビィデイジー
+ロゼッタで12人

クッパ「ああ、ワガハイとほね野郎が同時存在していることか。
     あれはパラレル的存在だから気にしなくてもよいぞ」

デイジー「違うわよ、バーカ。とうとう私が圏外になっちゃったことについてみんな驚いてるのよ。
      ほんと、酷い話よね!こうなったらベビィデイジーを全力で応援しようっと!」

ピーチ「違うわよアホンダラ!私もロゼッタも、

    マリオが、マリオが一気に圏外に追いやられたことがショックなのよ!」

デイジー「え?…あ、ほんとだ!?嘘でしょ!?さっきは1位だって取ったのに!」



クッパ「……なんだ、そのことか。ワリオのほくそ笑みを見て、なんとなくではあるが予想は付くぞ」

ピーチ「な、なんですって?」

マリオ「…もう一度、言ってもらえるか?耳がおかしくなったみたいだ」

運営「ですからね。申し訳ありませんが次の2コース、大会規約により、
    あなたの参戦不可を通知させてもらいたいんですよ」

マリオ「ちょ、ちょっと待ってくれ!さっきのコース、俺が利他行為をいつ誰に働いたというんだ!」

運営「誰に、というのは先ほど11位で走り終えたロゼッタ選手ですよ」

マリオ「…正気か?1週目早々に追い抜かしてから、近くを走ったことは一切ないんだぞ。
    言い掛かりも甚だしい。話にならないな」

運営「…そうですね。1コース目のテコ入れは薄々気付いていましたが、まあ流しました。
   そして、2コース目はまったく気付きませんでした。…ワリオ選手に指摘されるまでは」

マリオ「……ワリオ、だと!?どういう、ことだ」

運営「ワリオ選手が言ったんですよ。

    『アイツの走り方、なんか不自然なんすけどー。以前このコースを走ってた時と比べて、妙にフラフラしてるし、
     アイテム交換もなんか雑だし、珍しく後方への甲羅投擲が多い気がするんすよ』って」

マリオ(なん…だと…!?)

運営「ビデオ検証しても、最初は全く何もわかりませんでした。言い掛かりじゃないかと思ったくらいでしたけどね。
    何十回と繰り返しスロー再生しているうちに、驚くべきことがわかりました。


    マリオ選手。あなた、アイテムを設置しようとしたレーサーを、ロゼッタ選手のライン取りの外に誘導していますね」

マリオ「……」

運営「アイテム設置に絶好のポイントを前方あるいは後方のレーサーが通過しようとするたびに、
    超ピンポイントで攻撃を仕掛ける。前方への攻撃は自分が食らわないよう相殺する目的とも取りたくなりますが、
    常日頃のマリオ選手なら難なく直前で回避できるものばかりです。後続への攻撃は猶更。
    少なくとも、反撃を考慮しないでやっていい攻撃じゃないですよ。


    結局、狙われた選手は設置物を相殺されるか慌てて避難行動を取るしかない。
    そして、そういったポイントをロゼッタ選手のライン取りに対してプロットしたところ、
    適合率は驚異の98%でした。どうですか、行為を認めますか?」

マリオ「……ハァ。こりゃまいったね、降参だよ。煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

運営「あ、やけにあっさりですね」

マリオ「まさかそこまでワリオに見抜かれていたとは…いや、ロゼッタを孤立させること目的で
     駄目元で告発してみた線もあるか。所詮、一度走りを眺めただけでトレースするのは無謀だったようだな」

運営「あー、一度彼女の走りを視ただけでトレースしてのけたと。驚きを通り越して呆れますね」

マリオ「…で、俺の処分は?」

運営「ですから、次の2戦の参加不可、それ以上でもそれ以下でもありません」

マリオ「…え、それでいいのか?俺が言うのもなんだが…軽すぎやしないか?」

運営「まー、今後も繰り返されるようならその時は考えますが…
    我々もお気持ちは分かりますからね。彼女をひとり巣窟に放り込むのは気が気じゃないでしょう。
    お互い穏便に、ということで。では、もう戻って頂いても構いません。

    投票結果は2戦分、細工させてもらいますけどね」

マリオ「…りょーかい」

マリオ「…というわけで、残り2戦は助太刀できなくなった、すまん」

デイジー「…奥の手ってそういうことかぁ。でもほんと、どうすんのよ?
      なんだか…嫌な予感がするんだけど」

ロゼッタ「…………大丈夫ですよ、少なくとも走り切るだけなら」

ピーチ(…なんだかロゼッタ、意気消沈してない?)

マリオ(余計なお節介、しちまったか…自分の力だけで走り切ったと一応満足したつもりが、
     結局は助けられていたっていう体たらくを突き付けられたからな)

ピーチ(あ、そうか。…この話、ロゼッタの前でしたのは失敗だったわね)

ロゼッタ(…酷く、自分が滑稽でした。己惚れも甚だしい)

ロゼッタ(そんな曇りがかった心地で…第3コースを、迎えるのでした)

ロゼッタ(そして、そんなときに…ワリオが、おもむろに近づいてきたのです)



ワリオ「へえぇ、次はマリオもデイジーも出ないのか。
     お守りもなしに、アンタ大丈夫かねえ、グヘヘヘ」

ロゼッタ(なんて白々しい…)キッ

ワリオ「なんて白々しい、って言いたそうな目だな。だが言っとくが、今回に限れば悪いのはあいつらだぜ?
     そこんとこ…間違えるなよ?」

ロゼッタ(そう、なのかもしれません。でも…納得はしたくありません)

ワリオ「まあ、そんなことはどうでもいーや。ちょいと聞きたいんだが、

     

     次のコース、どこを指名するつもりだ?」


ロゼッタ「え?」

ワリオ「俺はよ、マリオカート64で初参戦したとき、ルイージサーキットやノコノコビーチは一切眼中になかった。
     しょっぱなからクッパキャッスルだのヒュードロ池だの、難コースを選んだもんだ。
     起伏も障害物もなーんもないコースなんて、面白くねーだろ?」

ロゼッタ「そ、それは人の勝手というものでは、ないですか?貴方の考えを否定する気はありませんし、
      貴方に私の考えを否定される気もありません」

ワリオ「…ほんと、ツマンネ―奴だな。じゃあ次はモーモーカントリーか?ヘイホービーチか?
     それともヨッシーフォールズで外周だけ走ると決め込んでるのか?」

ロゼッタ(……悔しいくらい的確に、候補を当てられてしまいました)

ワリオ「うーわー、図星かよ。心底がっかりだわ…。
     そりゃ初参戦で簡単なコースを主体に選ぶのはよくあることだがよぉ、
     全部が全部そればっかりってのはねーわ。お前さんよぉ、もう走る価値ねぇわ。
     これ以上大会を汚すようなら、とっとと帰ってくんねーかなあ?」ニヤニヤ

ロゼッタ「…………!!」



その言葉は、酷く私に、突き刺さったのです。

ワリオ「…おっと、まあ俺の勝手な独り言だけどな、失敬失敬。
    そんじゃ、楽しみにしてるぜえ」ヒラヒラ

ロゼッタ「…………」



シグナルジュゲム
「さて!まさかのマリオ選手の一回休みという波乱がありましたが…気を取り直してまいりましょう!
さあ、ロゼッタ選手!――第3コースの指名を、お願いします!」



ロゼッタ「……………………キノコキャニオンで、お願いしますっ!」



ピーチ「えっ!?」

デイジー「ちょ!?」

マリオ(……ワリオの奴が、何か仕掛けやがったな…?いくらジャンプ訓練に走ったことがあるとはいえ、
    走り込んだわけじゃさらさらない!危険すぎるぞ!)



ワリオ(ニヤリ)

シグナルジュゲム
「さあ、気を取り直しまして、第3コースはキノコキャニオン!
ここで一転して、起伏のあるジャンピングコースとなりました!
どんな戦いが繰り広げられるのか私も楽しみです!

それでは――第3コース、スタートォ!」



ロゼッタ(勢いで選んでしまいましたが…こうなっては、もう走り切るだけです。
      ああ、それと。ロケットスタート、やってみます)ジーッ



――ピィーッ、ピィーッ、ピィーッ、パアァーン!!

ロゼッタ(やりました!我ながら中々のタイミング把握、成功です!!)ビューン!

ロゼッタ(し、しかし結構なGが掛かりますね……っ!?



      目の前のワリオが…スタートして、ない!?
      よけないと…ま、間に合いませんっ!?)



ドゴンッ!!



ワリオ「うおっ、ビックリさせんなよコノヤロウ(無傷)」クルッ

ロゼッタ(顔面をハンドルに強かに打ち付けて悶絶中)

ワリオ「うわ、怒りも失せる間抜けっぷり。まあ、頑張れや」ブロロロロ

ロゼッタ(痛い……ワリオに、文句を言いたいですがぁ…!
      碌に制御もできないまま前方確認もせずダッシュを仕掛けた私が確かに一番問題です、ねぇ…!
      ひどく心配そうに、ピーチ姫が横を、通り過ぎていきました…)

ブロロロロ…
ロゼッタ(ようやく走り出せましたが…よく考えると、なぜ、ワリオは初動が遅かったのでしょう?
      …ま、まさか最初から私の行動を読んでいて罠に嵌めるために!?
      だとしたらやっぱり、酷い話です…!こ、今後もマリオやデイジーがいないことを幸いに、
      罠を仕掛けられるのでしょうか…?)ビクビク

ピーチ(…なーんか、迷いがあるっぽいわね。あんまり考えあぐねていると命取りになるわよ、しっかりしなさい!)

ドンキーコング「お、トリプルバナナ。俺のキャラには合ってるが、狭い道がないこのコースだと
          それほど旨みがないな。防御に使うのもいいが…アイテム交換率上げるために、
          ジャンプ台手前にテキトーにばら撒いとくウホ」



トン、トン、トン



ドンキーコング「…あちゃ、バカみたいに一直線に設置しちまった。誰が引っかかるんだよこんなバナナ…
          これならまだ、ジャンプ着地点に仕掛けといた方がよかったぜ…もっと精進せにゃ」ブロロロロ


ロゼッタ「あ、あからさまなバナナがあります。踏むと間違いなく即落下コース、避けなきゃ、絶対に避けなきゃ…!
      ドリフトをうまく利用して…」グググッ


グイイイィィ!

ロゼッタ(逆 ハ ン ド ル!?)



ロゼッタ「きゃあああああ!!」バナナフミー

フィッシングジュゲム(以下ジュゲム)「お、今回のレース初仕事か」

ロゼッタ(…だいぶ、他の人たちと離されてしまいました。連続の加速アイテムに頼るしかありませんね…
      ただ、ピーチ姫にも
      
      『キノコ足場の連続地帯で加速するのは相当のドライビングテクニックがないと自殺行為よ!』
      
      と釘を刺されましたし…それ以外の平坦と言えなくもない地形で、できるだけ使っていくしかなさそうです)



ピロロロロロロ…パン!



ロゼッタ(あ…キラーです!これならば話は別、早速使っていきましょう!)


ゴオオオオオォォォォォ!
ロゼッタ(…なんだか、変な感覚、です。自分ではあまり制御できませんが、
      しっかりとコースに沿って颯爽と前進していく。キラーの殻に包まれていますが、
      周囲の状況が頭で分かる。ああ、星船に近いものがあるかもしれませんね)

キノピオ「うわぁ、キラーが追いかけてきました!ロゼッタさんですね!
      吹っ飛ばされるわけにはいかない…使いますっ!」

ロゼッタ(…前方のキノピオがスターを使用。勢いそのままぶつかりましたが、
      お互い少し弾かれるだけで、キラーとなった私が吹っ飛ばされることはありませんでした。
      よし、きょだいキノコと違って、今度こそは身の安全は保証されていそうですね!

      かなりの距離があったはずですが、12位から11位に上がれました!
      ちっぽけな差かもしれませんが、ここから先はそれほど前との距離はありません!
      ビリにならないよう、少しでも追い抜いておきたいとこr)



キラー「あ、すまん、11位に追い付いた時点で距離有りすぎや。時間切れ」ポンッ



ロゼッタ「――ジャンプ台直前で放り出さないでほしいんですけれどもっ!!
      ば、バランスがっ!?」フラッ

キノピオ「あっ」スター使用中

ロゼッタ(キノピオがスターで近づいてくる!…あ、でもピーチ姫に攻撃を躊躇する
      ジェントルマンなキノピオなら、同じくお姫様の私は見逃してもらえるかm)

キノピオ「そりゃ」

シグナルジュゲム
「キノピオくんの強引なタックル!ロゼッタくん…じゃなかったロゼッタ選手、吹っ飛ばされた―!」

ロゼッタ「なんでですかーっ!?(ギャラクシーでも親切にさせていただきましたよねー!?)」ドッカーン

キノピオ「忠誠を誓ってるのはピーチ姫だけですし。お、都合よく谷底に落ちていきましたね♪」




デイジー「あとでキノピオシメる(観戦中)」パキポキ

マリオ「待て待て俺がやる(観戦中)」ゴゴゴゴ

ジュゲム「大丈夫っすか?」

ロゼッタ「グズッ…満身創痍、です、が。走り切って、見せますよ」ボロッ




そのとき、ロゼッタに、電流走る――!




ロゼッタ「かはっ」ゴボッ

ジュゲム(あ、復帰直後にサンダー落ちた)

ロゼッタ「…これは、ちょっと、ほんかく、てきに、まずい、かも…」ボタボタ

シグナルジュゲム
「おーっと!現在8位で走るルイージ選手、アイテムルーレット停止早々!
やや勇み足でサンダーを使用しましたっ!たまらず他の選手、アイテムをドロップ!
しかし致命傷にはなっていない!平坦なエリアで攻撃を貰ったことで影響を最小限に抑えられたか!
しかしトップ集団でキノコ連続地帯に差し掛かるクッパ選手、ファンキーコング選手、ワリオ選手は流石に…



おおおおっ!?ワリオ選手、なんということだ!
サンダー、あるいはトゲゾーを見越しての作戦か、この順位までスターを温存していたぁ!
やや賭けであったかもしれませんが、今回ばかりは使用タイミングの采配、大成功といったところでしょう!
クッパ選手とファンキーコング選手がモロに大減速するのを尻目に、サンダーの影響を一切スルーし、
単独1位に躍り出たあ!」

ファンキーコング「チックショー、追いつけねえぞ!」

クッパ「くっ、おまけに落下を防ごうと思わずブレーキを掛けてしまうとは…!」

ワリオ「へんっ!驚くのは――まだ早いってもんだぜぇ!」ドンッ!

シグナルジュゲム
「こ、これはー!?ワリオ選手、1位にとって入手確率の低いダッシュキノコを見事獲得、これは僥倖!
キノコ地帯を越えた先のゴール手前で、迂回すべき谷を絶妙な角度から飛び越えるファインプレイ!
このショートカットにより、ラスト1週にして更に大きなアドバンテージ!」

ファンキーコング「調子に…乗ってんじゃ、ねえ!」シュバッ

シグナルジュゲム
「ファンキーコング選手、改めて手にした赤甲羅を、無防備状態となったワリオ選手目指して投げる!」

ワリオ「あらよっと!」ギュン!

シグナルジュゲム
「なんとワリオ選手!赤甲羅の行動をバッチリ読めていたか!
一見すると不可解なドリフトを効かせながら、通り過ぎた、設置されていたバナナを見事盾にしてのけました!
衝突直前に超近距離のバナナの陰に隠れるならともかく、10メートル以上も後方のバナナを
視えないレール上に『仕掛ける』という芸当、これはうまい!

今回だけでなく、ワリオ選手のあるときは優美な、あるときは狡猾なアイテム活用・逆用法は
観客の皆さんもご存知のことでしょう!惜しみない拍手が送られています!」

マリオ「ロゼッタの奴、コンディションが最悪に近くなっているのか…走りがフラフラだな。……こ、これは」

デイジー「ね、ねえ、マリオ。これ、もしかすると…」



1st WARIO 3 / 3 LAP LAST SPART !
12th Rosalina 2 / 3 LAP



デイジー「ロゼッタ、ワリオがゴールする時点で周回遅れにされちゃったりしない!?
      というか、前半エリアでモタモタしてるし、その可能性かなり高いわよ!?
      ワリオ、独走状態だし!ど、どうしよう!?」

マリオ「…ま、まさかぁ。は、ははは」

ワリオ「よしよし、このコースは貰ったも同然だな…お、赤甲羅か。
     1位にしちゃ珍しいアイテムばっか引くな、できればトリプルバナナがいーんだけど。
     だがアイテム交換して防御アイテム掴み損ねたら嫌だし保持しとくか…

     ん?あれ、まさか…ロゼッタ、か?マジかよ、超おっせーな。
     ……うっし、会場を盛り上げるためにも、目標を『周回遅れの選手を作る』にランクアップさせてやるか。


     …そうと決まれば、この甲羅くんの使いどころも、ちと変わってくるってもんだな」グフフ

ロゼッタ(体が、鉛のように重い。そして、意識を失いそうになるくらい、あちこち痛い。
      …しか、し。走り切って、みせますよ。既に、観客には、呆れ笑われているかも、しれませんが。
      レースを途中で棄権して、失望されることだけは、されたくない。
      
      私にも、多少なりとも誇りというものが、きっとある)

ブロロロロ・・・

ロゼッタ(マリオが教えてくれました。
     障害物が排除されているからこそ、私は走って来られたのだと。
     そして、障害物が一たび現れれば、酷く弱みを曝け出すのだと。
     …私に、状況を見て臨機応変にライン取りを選択する技量はまだまだない。
     とにかく今は、気付き次第先手先手で避けておくしかない!)


―ヒュー


ロゼッタ(幸い、断トツの最下位なら後ろは気にしなくていい、だから…)

――ヒュー

ロゼッタ(…え?なんの、音?)クルッ

ロゼッタ(!?)



赤甲羅「ヒュゴオオオォォォ!!」



ロゼッタ「!?…な、なんで?どうして!?」

~ピーチの解説~
皆、知ってる?
赤甲羅はね、前方に撃たれてから1秒にもならないくらいのタイムラグを経てから、
ターゲットをロックオンして追尾をし出すの。

1位に肉薄している2位の人が撃ったり、1位の人が撃ったりして
追尾をしようとした頃に前方のレーサーを索敵できなかった赤甲羅はね、
目標を見失って闇雲に走り去ってしまうのよね。

トゲゾーなら1位が撃った場合でも問答無用で引き返してきて自爆するのに。


この時の軌道は、本当に追尾スタイルではなく、コース中央を走るだけ。
1周もしないうちにどこかに消えるといわれているわ。


ただし、その間も当たり判定はしっかりあるから、設置物と互いに相殺し合ったり
――長い旅路を経て下位グループの誰かにとばっちりで当たったり、するのよね。

繰り返すけど、追尾はしないから、コースの端に寄ってしまえば避けられることは
避けられるんだけど…当然、ロゼッタは知る由もなかったのよね。

ロゼッタ(私の順位は、12位。これは間違いありません。赤甲羅が、追いかけてくるはずが、ない。

     げ、幻覚ですか!?なにが、なにや、ら…どうすれば!右、それとも左に!?)


――ドッカーン!!


ロゼッタ「…………っ!」ドサッ

ロゼッタ(……後ろから、誰か…ワリオ!?ああ……そういう、ことです、か。
     間抜けな私にもようやく呑み込めましたよ。どうやったのかは存じませんが、
     追尾しない赤甲羅を面白半分に当てられたのですね。なんて、酷い。


     そして…ワリオから見て、もはや私のカートは目と鼻の先。


     周回遅れに、される?


    それだけは、何としても、避けなければっ!)

シグナルジュゲム
「ロゼッタ選手、流血具合から明らかにコンディションが悪いと思われますが、
なんとか持ちこたえて走り出しております!流石に周回遅れは御免被りたいという気持ちが強いか!
…しかし非情にも、ワリオ選手がどんどん差を詰めております!」


観客「オォイ!もっと真面目に走れよ、新人だからって何でも許されるわけじゃねえぞ!」

観客「そもそもそんなことくらいで怪我してるんじゃないわよ!」

観客「帰れー、帰れ!!」

ロゼッタ「…っ!」グサッ



デイジー「マリオ、止めないで!私、アイツラとちょっと拳で話を付けてくるだけだから!」ジタバタ

マリオ「気持ちは痛いほど分かるが我慢しろ!オーディエンスにとって、いまや怪我なんてしないのが
     常識になっちまってるだけなんだ!それでロゼッタが異常に虚弱だと錯覚しちまってるだけなんだ!
     誰も悪くない!」ガシッ

デイジー「はーなーせー!!」

ワリオ(あーあー、雰囲気まで敵に回した絶望感で、俯いたまま走り出しちまったよ。
    視野広く持っとかねーと、思わぬアクシデントに見舞われるぜ?
   
    ――こんな風に、な!!)

シグナルジュゲム
「ワリオ選手、最後のキノコ地帯でとうとう…ロゼッタ選手を完全に捉えた!
ロゼッタ選手、ジャンプアクションが出せません!ライン取り自体がややふらついていたこともあり、
――とうとう横に並ぶに至ったぁ!

そして、なんと…跳ねて空中にいる間に、そのままカートを激しく接触させました!」

ワリオ「へへっ、重量級同士といえど、ここまで勢いに差がありゃ…」ガツン!



ロゼッタ「きゃああ!!」フラァ

ワリオ「…マジで?当たり負けが甚だしいなオイ」



シグナルジュゲム
「これはロゼッタ選手、どうしようもありません!
重心が安定していなかったところを大きく吹き飛ばされコースアウトだ!
必死の形相のロゼッタ選手、むしろカートから振り落とされないようにするので精一杯といったところか!
そして、ワリオ選手が颯爽とゴールに向かって行く!」

――周回遅れに、されて、しまった。

ベテランと超初心者の差と言ってしまえばそれまでですが、
言いようのない無力感、絶望感に苛まれます。
滲み出てくる涙をゴシゴシと袖で拭い……



ファンキーコング「まだ勝負は、終わって、ねえぜ!!」 ビュン!

シグナルジュゲム
「これは2位のファンキーコング選手、強運!トリプル赤甲羅を確保、
最後の切り札になり得るかー!」

ワリオ「!!」



視界が、警戒が、明らかに疎かになりました。

顔を上げ前を向いた私に、待っていたものは――
距離にして5 cmにも満たないところに広がる、一面の緑。



「えっ」と面食らう暇すらなく、一体何なのか認識することもできず。
全てがスローモーションに感じた後……



何かが砕ける鈍い音、耐えがたい激痛、そして浮遊感。
それらと共に、私は意識を失うことになりました。

シグナルジュゲム
「こ、これはアクシデント!周回遅れとなったロゼッタ選手、
ワリオ選手がウイニングショットで後方に放った強烈な勢いの緑甲羅に顔を打たれたぁ!!
体勢を崩し、カートからも振り落とされてしまいました!無人のカートが、無情にも勢いそのまま去っていく!


…ロゼッタ選手、ど、どうやら意識がありません!
横を他のレーサーが通り過ぎて行っても、ピクリとも動かない!
深刻な状況である模様です!


――えっ。……た、たった今、大会運営から通達がありました!
運営判断で、ロゼッタ選手はコース棄権扱い!直ちにコース外へ搬送し、応急処置を施すとのことです!
救命チームが担架を持って、ロゼッタ選手のもとへ向かいます!
観客の皆さん、ロゼッタ選手はすぐに元気になりますのでご安心ください!」

マリオ「…なにっ!?もう一度言ってみろ!」

運営「で、ですから。まさか、こんな怪我人が出るなんて最近は全く想像してなかったので、
    1UPキノコのストックがないんですよ…」

デイジー「何よ、それ!私たちだって、持ち込み禁止になってるから泣く泣く持ってこなかったのよ!?
      あんたたち、責任取りなさいよ!」

運営「ひええええ」

ピーチ「…ここで言い合っていても仕方ないわ。マリオ、とりあえず会場外から速攻で1UPキノコを持ってきて。
     私たちは私たちで、代案がないか考えてみるから!」

マリオ「よしきた!」ダッ

デイジー「ロゼッタぁ、死んじゃいやだよぉー!ウワーン!」

チコ「うわーん!」

チコ「うわーん!」

チコ「うわーん!」

ピーチ(どうする。どうする、私。おそらく猶予は数分もない……ハッ!)

ピーチ「ねえチコ、貴方たち、観客席で観戦してた時、ロゼッタから魔法の杖預かってたりしてない!?」

チコ「…グズッ、こ、これのこと…?」スッ

チコ「でも駄目だよ、確かにママは回復魔法くらいこの杖で使えるけど、
   相当な高等魔法だし、だいいち杖は使用者を選ぶし…!
   誰かに、代わりに、使ってもらえばいいってものじゃないんだ…!
   だいたい、杖を携帯していいなら、こんな怪我だって負うことなかったのにぃ…」

ピーチ「いいから  貸 し な さ い 」バッ

チコ「!?」

ピーチ「杖無しでも、できるはずなんだけどね。
     使うのは、ほんと、久しぶりだから…補助の魔法具が欲しいのよ」

ピーチ(スゥー…)



ピーチ「『みんなげんきになあれ』!!!」

クッパ「懐かしっ!」



ロゼッタの杖「えー、マスター以外の言うことききたくn」




ピーチ FP:9999 魔法Lv. 85

ロゼッタの杖「喜んで従わさせて頂きますぅ!!」パアアア

FP 9995/9999
ピーチ「よし、問題なく魔法発動!これで…!」




ロゼッタには こうかがないみたいだ…▼




ピーチ「え、そんな…馬鹿な!?」

クッパ「あ、今の状態が戦闘不能だからじゃないか?」

ピーチ「そ、そっか。それなら…

    『おねがいカムバック』!!!」パアアア

ロゼッタ「」ピカーッ

ロゼッタ「――っ!ハァッ、ハァッ!!あ、あれ?私…」

FP 9993/9999
ピーチ「やった、大成功!!苦労した甲斐があったわ!!」

クッパ「…苦労ってなんだろうな」

ピーチ「ロゼッタ、大丈夫?」

ロゼッタ「…そうです。たしか、ワリオに抜かされたと思ったら目の前に緑、甲羅、が…」ガクガクブルブル

~ピーチ談~
体力的には回復したロゼッタでしたが、その後に待っていたのは信じられない光景でした。
壊れかけのロボットの如く、のろのろと震えながら顔に手をやり完治していることを理解してからも、

震えは一切止まらず、挙動もろくに定まらず。顔はゾッとするほど青白く。
ペタンと力なく座り込んで――ただ、泣く。ひたすら、泣く。

周りの私たちや、救護班が唖然とするのには一切お構いなしに、子供のように泣きじゃくる。
時に肩を抱えながら、時に顔を手で覆いながら、時に虚ろな目で天井を見つめながら。

あのときの最後の攻撃を食らったことで…辛うじて積み上げてきた意地が、意気込みが、
ポッキリ折れてしまったのでしょうか。

私は、ロゼッタを宥めることに最大限気を配った。
あと1戦、どんなノロノロ走行でもいいから走破してみなさい、と励ました。

――なんて、愚かなことをしたのでしょう。


私が目にしたのは…
コース開始からハンドルを持つ手が震え続け、
あからさまな設置アイテムを避けきれず、

しまいには横を『通り過ぎた』緑甲羅を視界に収めてしまっただけで…
激しい動悸、発作を起こして走行不能となり、
観客の怒号が飛び交う中を救護班の肩を借りて弱々と会場を後にするロゼッタの姿だった。

~王国病院の一室~

医師「ふうむ。とりあえず、もう外傷は全く見当たりませんな。……精神的にはかなり参っているようですが。
    何をするにも目が虚ろで、会話はおろか、碌に相槌すら打ってくれません」

デイジー「そう……」

マリオ「…どうする?俺たちが今すぐ見舞ったところで逆効果っぽいぞ?
    今はそっとしといてやろうってのが俺の意見なんだが」

ルイージ「しばらく面会拒絶状態にしてもらうってこと、兄さん?」

マリオ「ああ。ついでに俺たちも大反省会&対策会議、だな。ロゼッタを振り回しすぎた。
    後悔先に立たずではあるんだが」

ピーチ「……一応、幸か不幸か、ロゼッタはしばらく登録抹消ということで話が付いたわ。
     観客にも『やめたいなら止めないよ』的な雰囲気が漂っていたから、
     利害の一致で丸く収まると思う。このまま、完全に選手登録を外す段取りに入るわ」

ルイージ「それはそれで、すごく寂しいなぁ…ピーチ姫はそれで納得してるの?」

ピーチ「…納得してるわけ、ないでしょう!!」バンッ!

マリオ「…だな」コクッ

ルイージ「ご、ごめん」

ピーチ「これ以上無理強いさせてたら、本当に精神を崩壊させてしまうから、仕方ないのよ!
     …でも結局、マリオカート初、途中棄権っていう汚点は嫌でも残る。
     ロゼッタに、取り返しのつかない重荷を背負わせ、ちゃった。
     私が、もっと、しっかり判断していれ、ば」ボロボロ

医師「ま、まあまあ。彼女もそこまで、ヤワじゃないと信じていますよ。まあでも、そうですね。
    今日の所はお引き取り下さい。数日すれば、会話もできるようになるでしょう、きっと」

マリオ「だ、だがな……」

チョイチョイ
マリオ「…ん、どうしたんだピーチ」コソコソ

ピーチ「実はさっき、コッソリ扉の隙間から様子見てきたんだけど。
    
    『帰りたい!帰りたいの!!ほうき星の上にある わたしの家に帰りたいの!』とか
     涙でぐしゃぐしゃになった顔で叫んでたわ……」コソコソ

マリオ(……トラウマ再発しとる、これはヤヴァイ)ダラダラ

マリオ「みんな、撤収!」

ピーチ「…そうね、そうしましょう――」グスン

――無機質な病室で。
――――電灯は付けず、ただあるのはわずかな窓明かり。
――――――そして、とあるインタビュー画面を映し出す、備え付けのテレビが1台。

視点すら覚束ない私の前で、映像は無情にも動き出す。



『いやあ、酷いもんですよ。まさか4コースごとき完走できないだなんて。
もう俺、ロゼッタ選手のファンやめます』

『特訓に特訓を重ねたらしいけれど、どんどんボロが出る感じだったのよねー』

『所詮、ピーチ姫やデイジー姫とは鍛え方がまるで違う、箱入りお嬢様だったんですよ。
ま、来るところを間違えたってことっすね』



ロゼッタ「…………」

――どうして、こうなってしまったのでしょうか。

――私は、本当に、テレビを眺めているのでしょうか。
意識があるようで、思考が、意思が、行方不明。
絶望からの現実逃避?幼児退行?はたまた精神崩壊?

肉体は一応回復…したはずなのですが、今の私の体にはあちこち包帯が巻かれています。


世の中には、幻肢痛という症状があるそうです。
事故などが原因で腕や脚を切断しても、脳が部位を失ったことを追記できていないため、
存在しないはずの部位に痛みを感じるという、対処の難しい症状とのこと。


私の場合、どういうわけか、その逆の兆候が見られるという判断でした。
五体満足のはずなのに、各部位に激しい損傷を受けたことを恐怖と共に脳に焼き付けてしまったため、
処置されていない腕や体を見るだけで猛烈な嫌悪感と不安感に襲われパニックに陥る。


ガタガタ震えていたところに自分で巻くための包帯を持たされると発作が和らいだあたり、
その通りということなのでしょう。これについては、伝言ではありますが、
『1UPキノコ乱用し過ぎも明らかに原因の1つだ、本当にすまない』とマリオから謝罪されました。

ロゼッタ「…………」

――――今後、どうなるのでしょうか。

ロゼッタ「…ふ、もうわかり切ったことでしたね」

ピーチ姫が既に動いてくれているようです。反対する気などありません。
実力も努力も碌にない新参者は用なし、戦場を去るのみです。

そもそも、私などには無理だったのです。
チコたちも大層心配してくれています、私たちの家に帰りましょう。
自業自得の汚名を背負いながらも、分相応の生き方をすればよいのです。

色々と投げやりになりながらも、そんな自分を気にも留めない。
どうして苦しみながら視ていたのだろうと若干苛つきながら、テレビを消す。

ふと横を見ると、お見舞いの品。きっとマリオたちでしょう。
色とりどりのフルーツが入った籠に、少しだけ気が紛れます。
さらに視線を横にスライドさせ…。



ロゼッタ「ああ、これは」

『ソレ』を、乱暴に掴み。

ロゼッタ「汚れてしまいましたし、要りませんね。新調しましょう」



ポイ、と杜撰に投げつける。


――親切に畳んでおいてくれたのでしょうが、
元の蒼い色など見る影もなくなり血で汚れた、私のドレス。



ロゼッタ(ごめん、なさい)



我ながら素晴らしい軌道を描いて――やや大きめのゴミ箱に収まって、

ポスン、と音を立てました。

壁に掛かった時計をみれば、既に日付が変わろうとしています。
一刻も早く元気になって、皆さんに安心してもらわなければ。
そのためには、やはり、十分に寝るに越したことはないでしょう。

簡単に身を整え、ベッドに横たわり、眼を閉じて眠りに入ろうとした、その時。


コンコン。


ロゼッタ(……!?)ビクッ

不気味な、ノック音が響き渡りました。

もちろん、回診に来るような時間でないことは知っています。

マリオたちも、こんな夜中に改めて見舞いに来るわけがありません。

かといって、一般の方が探し当てられる病室というわけでもありません。
ピーチ姫が手を尽くしてくれたらしく、VIP扱いとなっているようですから。


――では一体、誰が?


扉の方を凝視するばかりで、身を隠すどころか、ベッドから起き上がることもままなりません。
金縛りのように体が動かない中、心拍数だけが上がっていきます。

そして。こちらの返答も待たず、ガシャッと扉が乱暴に開けられたとき。
私は、自分の運命を正直呪いました。

面会拒絶の札だなんてなんのその。そこに立っていたのは。



「うおっ、なんでいなんでい!お休み中でも着替え中でもなく、普通に起きてるじゃねえか!
とっとと返事しろよバーカ」


私の精神にトドメを刺した張本人の…ワリオ、だったのです。

なるほど、無礼千万のこの来訪も、ワリオということなら納得ですね。


――みたいなことを考える余裕など、私にはありませんでした。


頭が、胸が、体の節々が、たちまち不調を訴えます。
顔がこの上なく青白くなっていることさえ、自分でわかってしまいます。
距離を取ろうにも、改めてベッドに寝転ぶことしかできません。
それが、何になるのでしょうか?


――何を、されるのでしょうか。
この期に及んで、おぞましい乱暴でも、されるのでしょうか。


結局のところ、力のない私は。
「いっしょう、のおねがい、で、す。…これ以上、私を苦しめないで、ください…!」ボロボロ


震えて目を瞑りながら、全てを天に委ねて泣くことしかできなかったのです。

しかし、それを聞いた彼は我関せずと、私の口に無理やり毒物を放り込み、
更には、あろうことか口を抑え息の根を止めようと…!


















ワリオ「ニンニクだ、食え」ガシッ

ロゼッタ「ぶふぅっ!?」ジタバタ

ロゼッタ「きゅ、急に何するんですか!…って、途轍もなく息が臭いんですけれども!
      もしかして、ニンニクをまるごと1個、生で食べてしまったのですか!?嫌ああ!」

ワリオ「おうおう、元気になっただろ、ガハハハハ!俺が丹精込めて栽培した特級品だからな!」

ロゼッタ「……そういえば、少し体が軽くなったような(別な意味で死に掛けましたが)」

ワリオ「そうだろうそうだろう。マリオの野郎は馬鹿だから、弱ったら1UPキノコさえ使っときゃいい、
     みたいな発想をしてるみたいだが、気力アップにはガツンと刺激的な物を摂取しなきゃな!
     俺なんか、どうにもやる気が出なかったらニンニクに限るっていう生活を長らく続けているぜ!」

ロゼッタ「…でも今の場合って、継続的な摂取による効能およびブラシーボ効果とか関係なく、
      臭いで強制的に覚醒しているだけですよね!?」

ワリオ「……そうというかもしれないし、そうでないかもしれない」

ロゼッタ「……あの。本当に、どうしてこんな時間に、来られたのですか?」

想定しない斜め上の驚きがあると、却って落ち着くとはこのことでしょうか。
すこし恐怖と緊張は解けましたが、この人の意図がよくわかりません。
――恐る恐る、聞いてみました。

ワリオ「いや、緑甲羅に運悪く当たって棄権したっていうんでな。
     流石に人として見舞わなきゃ駄目だろーと判断しただけだ、言わせんな」



――本来ならば。
頬を掻いて逸らし目で佇むワリオに対し、認識を改めて

『ああ、そうだったのですか。わざわざありがとうございます。
夜分の来訪とはいえ、失礼なことをしました』とでも言えばよかったのでしょうか。

しかし、私は聞き捨てならないワードを耳にしたことで、
怯えから一転、怒りが、激昂が沸き起こったのです。




――緑甲羅に、『運悪く』当たった?

ロゼッタ「何が――」

ワリオ「ん?」

ロゼッタ「何が、運悪く当たった、ですかっ!」

一度火が付くと、私の口は止まることを知りませんでした。

ロゼッタ「あのタイミングで、あなたの1位は確定だった!
     
      後ろに緑甲羅を投げつける理由なんて、何もなかった!
  
      偶然ではありません、必然です!

      ワリオ、あなたの嗜虐心のせいで、私は心身共に深い傷を負うことになったのですよっ!
      ピーチ姫やマリオ達がいなければ、今頃本当に命を落としていたかも知れなかった!
      私があなたに、何をしたというのですか!」



ボロボロと再び泣きながら、喚きたてる。

――ところが、ワリオは、というと。大層冷え切った目をしながら。




「…あぁん?そう解釈してんの、お前?だったら、見舞いに来るこたぁなかったかな、おい」

などと、言ってのけるのでした。

ロゼッタ「そういう解釈って……他に、何があるっていうんですか!」


売り言葉に買い言葉。私が更に激しく怒りの言葉を口にすると、
ワリオは少し…10秒ほどでしたか、考え込んだ後…


ワリオ「……おいロゼッタ、今から話す事、二度としゃべらねえからよぉく聞いとけ」

ロゼッタ「……え?」





――改まって、驚くべき言葉を紡ぎ出しました。










ワリオ「俺は…マリオカートが大して上手くない」

ロゼッタ「――はい?優勝候補の一角であるあなたが?何の冗談でしょうか?」

そう睨みつけると、ため息を吐いてワリオは淡々と語り出しました。



ワリオ「新入りのお前には分からんだろうがな。たとえば、マリオは俺の事、どう評価してたよ?
     どうせ何か聞いてるだろ?」

ロゼッタ「…『荒い運転だがのらりくらりとこなす、アイテム使用のエキスパート』との評価でした」

ワリオ「わりかし的を得てるな、くそぅ。…俺は、細かいライン取り計画とか、
    運転制御とかがどうも好きになれなくてな。優勝候補の中では断トツに運転が雑だ」

ロゼッタ「そうなのですか!?」

それは初耳、です。ワリオの様子は酷くバツが悪そうで、嘘を付いているようには思えません。

ワリオ「分かりやすいのが、あくまで1人で走り抜いてタイムを競う、タイムアタック走行だな。
    悔しいことに、重量級ながらマリオに勝てた試しが一度しかない。
    それくらい走りに無駄があるってことだ。唯一勝ってた『ワリオスタジアム』のタイムアタックも、
    ショートカットの影響がデカすぎるってことで二度とコース候補に挙がらない始末」

ロゼッタ「ワリオ、スタジアム?」

ワリオ「おう、マリオカート64で初参戦が決まった時、有り金はたいてすっげぇコースを自分で用意して見せたんだぜ。
    本来のコースはかなり長いが、スタート直後のスーパーショートカットで1周10秒を切れるっていうトンデモなコースだ。

    …ネタがバレて出禁コースになった」

ロゼッタ「」

ワリオ「ま、それはおいといて。前に言った通り、初参戦の頃から難しいコースにも果敢に立ち向かった俺だが、
    まあ戦績は悲惨なもんだった。だが、正しい走りとやらを身に付けようとする気はやっぱりなく、
    それでいて何が何でも勝ちたかった。いい順位をキープしたかった。

    だから俺は――打開勢になることを決心した」

ロゼッタ「だかい、ぜい?」

ワリオ「もともとは『走行テクそっちのけで、アイテム運ばかりに頼って苦境を打開しようとするセコイ奴ら』って
     意味合いだな。評判は悪い方に傾きがちだ。そこで俺は考えた。



     アイテム運すら凌駕するだけのアイテム捌きができれば、あとは走行テクが並程度まであれば、
     優勝争いに食い込める上に観客の受けも決して悪くないだろう…ってな」

ロゼッタ「……!」

ワリオ「他人を叩き落とすってのは、俺のモチベーション的にも相性抜群だったみたいでな。
     どんな周囲状況で誰がどのコースを通りそうか、どんなアイテムを好むか、
     たちまち頭に描けるようになった。

     それに、どの順位でどのアイテムがどのくらいの確率で出るかって情報も、
     試行錯誤の上頭の中に保管済みだ。すげえだろ?」フフン

ロゼッタ「は、はい」アゼン

ワリオ「今回の緑甲羅の場合を分かりやすく説明してやる。

    俺はゴール直前、あと3秒もあればゴールできる。
    一方、位置関係から、2位のファンキーコングが最後のアイテムボックスに
    到達した可能性が高いこともわかる。

    そして、2位の選手は、低確率ながら、トリプル赤甲羅を引くことができる。
    実際、引き当てていたみたいだしな」

ロゼッタ「待ってください。その状況ならば、やはり1位確定ではないですか。
     1発目の赤甲羅すら、届く前にゴールできる。
     おまけに防御アイテム所持状態なら、2発目が来なければ食らわないのでは」

ワリオ「ロゼッタよう、お前、全体を考えろ。下位がサンダー撃ってくるかもしれねぇだろうが。
     サンダーで減速食らいながら防御アイテム手放したところに、
     ファンキーコングがサンダー食らう直前にぶん投げてた赤甲羅が飛んで来たらギリギリ間に合っちまう」

ロゼッタ「…あ」

ワリオ「サンダー、そして間隔を空けて放たれた3つの赤甲羅。あとは、サンダー食らったファンキーコングのリカバリ、運転技能次第。
     これらが噛み合うと、俺の頭の計算では、超低確率ながらも逆転されちまうんだなこれが。
     もっと言うと、サンダー食らった瞬間に手放したアイテムってな。ごくまれに自分に当たり判定持って追加クラッシュしちまうんだよ。

     つまり、『サンダー+赤甲羅2発までなら確実に逆転されない』って確信が持てた段階で…」

ロゼッタ「……手持ちの緑甲羅は僅かながらリスクを孕むので、速やかに自分の意志で捨てておきたい。
      それも、前に投げるのではなく、万が一の赤甲羅を1個相殺できるならそれに越したことはない。

      ――緑甲羅を後ろに投げるのが…『最適解』!?」

ワリオ「おお、よくできましたー」パチパチ

ロゼッタ「そ、そこまで深い読みがあったなんて。……微妙に屁理屈っぽいですが」

ワリオ(ま、レース中に手酷く攻撃してきた奴が後ろを走ってたら、腹いせにワザと当てたりはするけどな。
     観客も喜ぶし。流石に周回遅れの初心者には意図的にやらねーわ)

ロゼッタ「…………」

ワリオ「で、どうするよ、お前」

ロゼッタ「……えっ?」

ワリオ「もうピーチが登録抹消に動いてるんだって?俺も賛成だわ。
    だが、勘違いするなよ。俺の場合、お前の体が心配とかいう話じゃない。
    無難に走ろう無難に走ろうという思いばかりで、
    ちっとも勝利欲がない奴は要らんというだけのことだ」

ロゼッタ「……」

ワリオ「逆に、どんなに下手な奴でも、死に物狂いで上位を目指そうとする奴がいたら俺は応援する。
    …まあ俺を追い抜かそうとしたら痛い目に遭わせるけどな」

ロゼッタ「上位を、目指す…」

ワリオ「そうだな…例えば、俺が2コース目終了時にお前を焚き付けて、
     結果としてキノコキャニオンが選択されたじゃん?
    
     もしあの時、お前が
     
     『どれだけ挑発しようと、そんなこと知りませんよ。私、勝ちたいんで。
      地味で面白みがなかろうと、走り慣れたコースを選択させて頂きますよ』

     みたいなセリフを返していたら、むしろ評価を上げてたぜ」

ロゼッタ「……それは…ワリオらしい、ですね」フフ

ワリオ「さて、と。オレ的にも恥ずかしいし、内緒話はここまでだ。
    おそらく、マリオカートwiiシーズンで戦うことはもうないだろーな。
    そんでもって、オレが下しているお前の評価は最底辺だ。

    お前さんが気概を見せれば、次のシーズンはどうなるか分からんが。
    あんまり失望させてくれるなよー?んじゃ、バーイ」

ガチャッ。 バタン――。

ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「……私は、どうすれば」





私は、悩む。いつまでも。
でも…不思議と、窓に映る満月のように、気は晴れやかになっていました。

ピーチ「本当に、大丈夫なのね?」

ロゼッタ「はい。お見送りありがとうございます」


久しぶりに手に取る、魔法の杖。周囲にはたくさんのチコたち。
見送ってくれるのは、ピーチ姫たち。



マリオ「今回は、本当に済まなかった。きっと心の傷はそう簡単には癒えないだろうが…」

ロゼッタ「そうかも、しれません。でも、きっと大丈夫」

そう、きっと。



デイジー「ほんとに、ほんとぉ!?もう少し、入院しておいた方がいいんじゃないの?
      なんだったら、キノコ城で静養するとかでもいいのよ!」

ピーチ姫も頷いてくれますが、そこまで甘えるわけにもまいりません。

ルイージ「誰がなんと言おうと、僕はロゼッタのファンさ!
      悪く言う奴は、僕がチョチョイとぶっ飛ばしてやる!」ブンブン

マリオ「ルイージにできるかなぁ」

ルイージ「酷いよ兄さん!」プンスカ

…と、そこに。

ロゼッタ「ひゃっ!?」

ワリオ「あ、悪い、手が滑った」

ピーチ「アンタは、もーーーーっ!!ちっとも懲りてないみたいね!」



突然現れたワリオ、しでかした行為に怒り心頭のピーチ姫。



ワリオ「ガッハッハ、ロゼッタ喜べ。俺も見送りにきてやったぞ。感謝しろぃ」

ピーチ「マリオ、この不届き物、フォーメーション4-2でぶちのめすわよ」バッ

マリオ「よしきた」バッ

ワリオ「な、なんかヤバめな雰囲気…?」タジッ

ロゼッタ「……あ、すいません。お二人とも、手を降ろして頂けないでしょうか」


――ちょっと、勇気を出してみます。


ピーチ「どうしてよ!?飽き足らず女性のヒップを触るような輩は消えてなくなればいいのよ!
     ロゼッタにトラウマまで植え付けておいて!!」

ロゼッタ「いえ、それには及びません」

ザッ。

ワリオの元に、ゆっくりと歩み寄る。

ワリオ「…なんだよ?」





ロゼッタ「私、絶対に、この戦場に帰ってきますから。
      そのとき、ぜひ勝負していただけますか?



      正々堂々と、『お返し』させていただきますので」

一同(ポカーン)

ワリオ「……ハッハッハ、こりゃあいい!なかなかどうして、面白い奴じゃねぇか!
     いいぜ、その時は相手になってやるよ!」サッ

屈託ない笑みを浮かべ、握手のための手を差し伸べてくるワリオ。
彼も、決して悪人ではないのかもしれません。

ロゼッタ「はい、よろしくおねがい致し…」



グッ……ボキィっ!!!

ワリオ「あ」



ロゼッタ「」ダラダラ

ロゼッタ(うわぁい、手の甲の骨が折れたみたいです)

ロゼッタ「スーパーキノコでいいので1つくださぁい……」グズッ



前途多難ではありますが――頑張っていきたいと、思います。

~第2章~




ロゼッタ、記憶喪失になる

???「グハハハ…とうとう、この時がやってきたのだ――。

    さしものワガハイも、待ちわびていたところなのだ――!

    それでは皆の者、豪快で、恐ろしく、かつエレガントな進軍を期待しているぞ!
  
    かかれ!」



「「「「イエッサー!!!」」」」

~キノコ城~

――マリオです。
ロゼッタ騒動の件から、やや時は過ぎ。
突然ルイージ、ヨッシーと共に、キノコ城にお呼ばれしました。
ヨッシーを呼ぶということは食べ物関連か?…安直か、流石に。


最奥の部屋に招かれてみれば、ドレス姿のままベッドにうつ伏せに寝転がり、
足をバタバタさせているお姫様が1人。

だらしない、ああだらしない、だらしない。


そして、腕をブンブン振り回しつつ、いきなりこんな爆弾発言をした。


ピーチ「野球大会に出るわよ!」

マリオ「そのセリフは色々とマズクナイ?」

ルイージもヨッシーもポカーンとしてるじゃないか。というか、何故に野球?

ルイージ「どうして野球?」

ピーチ「だって!テニスもゴルフもバスケットボールも、おまけにバレーボールとかもやってきたけど、
     野球だけやってないんだもの!…あ、サッカーもだった!この2種をやらずして、
     スポーツ選手とは呼べないわ!」

ヨッシー「マリパのミニゲームとか」

ピーチ「あんなのノーカン!というわけで、野球場とサッカー場の建設を計画してるんだけど、
     耐久性バツグンのフィールド作成を業者に頼むとお金はともかく完成に何年もかかるのよ!



     というわけで私たちで造っちゃいましょう!」

マリオ「えっ」

ルイージ「ちょっ」

ヨッシー「わぁお」

キノじい「先ほどから話を聞いていれば…姫様、いけませぬ!息抜きにマリオ殿たちと歓談されるくらいならともかく、
      長丁場工事に付きっ切りで公務を放置するなど以ての外でございますぞ!」

ピーチ「ふっふっふ、甘いわよキノじい。私がそんなヘマをすると思う?これを、見なさい!」バサッ

キノじい「…なんと!?」ペラッ ペラッ ペラッ

ピーチ「公務に縛りつかせようと、年単位のスケジュール表を先に渡したのが仇になったわね。

    この通り、数度の接見の場を除けば、向こう半年分のお仕事は処理済みなのよ!
    文句を言われる筋合いはないわ!このために一心不乱で頑張ったんだから!」ムフー

キノじい「それは物事の判断タイミング的に意味がないのでは…いえ、今回はじいの負けですな。
      好きになさってください、はぁ…」ガックリ

マリオ「……まあ時間はあるし、別にいいけど。でも、せっかくなら、
     個人的にはちょっと行きたいところがあったんだがなぁ」

ピーチ「え?」

ルイージ「いやさ、久しぶりにロゼッタの様子を見に行かないかってことで、
      今回はヨッシーも交えて旅行計画練ってたんだけど。
      今日も、ピーチ姫を誘う話を持ち出そうとだね」

ピーチ「そういうことはまず私に話を通しなさいよ!着替えとかの準備してくるわ!」ダッ

マリオ(ズコーッ)

ルイージ「変わり身はやっ!」

ヨッシー「…お腹すいた」グゥゥ

~ほうき星~

ロゼッタ(あれから、1年くらいになるでしょうか)

ロゼッタ(惑星との距離をものともしない通信網により、ときどきピーチ姫とのメールのやりとりは行えています。
      ありがたいことです。みなさん、お元気なようで。

      そして、嬉しいニュースが飛び込んできました。
      なんでも、3日後に皆さんが遊びにきてくださるそうで。
      本当に楽しみですね!

      そして、今私は何をしているかというと…)



ロゼッタ「ふんっ……ハァ、ハァ、腕立て伏せ、終わりました!」

ロゼッタ(絶賛、体力増強のため筋トレ中です)

ピーチから勧められるがまま行っていますが、中々大変ですね。
しかし、レーサー復帰のためには努力はしなければなりません!
……いまいち、効果を実感できていないのがちょっと悲しいですが…)

ロゼッタ(それだけではありません。

     かつてワリオは、勝利のために思い切って自分のコースを作ってしまったそうです。
     凄い、ですよね。そこで、ちょっとアイデアをもらうことにしました。

     ほうき星のあちこちにある、広大な氷の地面、複雑な地形。
     これを使って、私だけのコースを作ってみたい、と思い立ったのです。
     とりあえず、『ロゼッタプラネット』という名前にしておきました。

     幸い、魔法の杖さえ使えば、コースを掘ったり整えたりするのはそれほど苦ではありません。何百年と似たようなことはやってきていますからね。



ロゼッタ(簡単すぎず、難しすぎず、そして私の個性が出るコースにできたらいいですね)


まだ外観すらできていませんが、少しずつ、少しずつ形にしていこうと思います。

と、その時。

外にいたチコたちが、なにやら騒いでいます。
気になって、私も外に飛び出してみました。

どこからともなく、いつしか見たような軍艦が、のっそりと上空に現れました。

ロゼッタ「ほ、砲撃されているのですか!?大変です!」

そして。よく見ると、本当に見覚えのある飛行船。



ロゼッタ「……クッパ、シップ?一体どういうことですか!?」

ガッシャーン!!

キノピオ「何事ですか!?」

ルイージ「破壊音、そして地響き!どうせこういうのは、アイツの仕業だよ!」

ヨッシー(出されたクッキー爆食い中)パクパク

クッパ「ガッハッハ、マリオにルイー…じゃなかった、緑のヒゲ!
泣く子も黙るクッパ様が来てやったぞ!」

ルイージ「なんでわざわざ言い直したのさ!」ウガー



ヨッシー「マリオさんのお菓子も食べていいですか?」

マリオ「しょうがないな。そのかわりよく味わって食べろよ?ピーチのことだから、
    場合によっちゃ家ひとつ建つくらいの超高級菓子が混ざってることもあるからな?」

ヨッシー「わーい!」

クッパ「…………」

マリオ「あ、クッパじゃないか。というか、なんか体がデカくないか」

クッパ「(反応が)おそいぞ マリオ!」

マリオ「キノコ城並みの大きさじゃなかっただろ、そりゃ。今度は何をしでかしたんだ?
    きょだいキノコか?カメックパワーか?はたまたスターの杖とかの封印されていた神器アイテムか?」

クッパ「ワガハイもついにスターのパワーを身に付けた!!ガーッハッハッハッハ!」

ピーチ(クッパの左手の上に立ちすくんでいる)

キノピオ「姫様!」

キノじい「これ、クッパ!姫様を放すのじゃ!」

クッパ「ワガハイが素直に返すはずがなかろう!ピーチ姫は頂いていく!」

ピーチ「……………………」

ピーチ「巨大化には巨大化よね」ニヤリ


ムクムクムク…!



クッパ「ピーチ姫にはワガハイのために…っ!?」


ズドーン!!


マリオ「…あ、ペパマリの『巨大スター』」

ドット巨大ピーチ「クッパ、よくもお城を壊してくれたわねー?」

クッパ「ふ、ふん!これでもまだ、ワガハイの方が数倍大きい!
     力負けするワガハイではないわ!」ブンッ




ドット巨大ピーチ「こっちは『無敵補正』あるんだけどー?」キンッ

クッパ「すんませんでした」

ピーチ「まったくもう!なんなのよ、時間が押してるときに!」ガミガミ

クッパ「いや、あの…ピーチ姫攫って、ワガハイのために
     スーパーサイズの誕生日ケーキを焼いてもらおうと…ハイ…」ボロッ

ピーチ「…なんだ、そういうこと。ケーキくらい、言ってくれれば焼いてあげるわよ」

クッパ「マジでか!?」

ピーチ「た・だ・し!人件費はキノコ王国、というか私が全部持つとして、
    材料費や設備費は折半だからね!」

クッパ「お、おう。洗剤ケーキとかいう落ちはないよな!?」

ピーチ「いや、さすがに誕生日ケーキでそこまで性根腐ってないわよ…」

クッパ「いやっほう!それはよかったのだ!」

マリオ「よかったじゃないか、クッパ。でも今後はキノコ城襲うような大ごとにするなよ?」

クッパ「うむ、そうだな。今後は気を付けるとしよう。
    侵略行為がちょいと無駄になってしまったが、致し方あるまい」

マリオ「……侵略行為?」クワッ

クッパ「…あ」

マリオ「詳しく、教えてもらおうか」

クッパ「えー、えーとだな。こんなにスムーズに交渉が終わるとは思っていなかったから、
    人質というか王国質というか、クッパ軍団に適当に侵攻を任せておいたのだ。うむ」

マリオ「……はああああああぁぁぁぁぁぁぁ」

ルイージ「面倒事が増えただけじゃないか…」

ピーチ「よしんばその人質作戦が成功してケーキを私に作らせたとして、
     後で私やマリオ達に制裁食らうだけじゃないの」

クッパ「うぐぅ」

ピーチ「…それで?どこに侵攻したというの?」

クッパ「ぶっちゃけ、ワガハイも把握しとらん。
     『ピーチ姫が慌てる程度には素早く広範囲に動け』とは言ってあったが…
    ちょいと確認してみるのだ」



クッパ「それで、カメック。一体、どこを攻撃したのだ?」

カメック「…申し訳ありません。他の業務に多忙でして、
     ハンマーブロス軍に全権委任しておりまして…
     ちょっとテレパシーで確認取ってみます」ホワンホワン

クッパ「そ、そうか」




カメック「応答せよ、ハンマーブロス軍隊長、ブロタロウ。
     今、どこにいる?状況を伝えよ」

ブロタロウ「それがですねえ…」


・・
・・・
~作戦決行前~
ハンマーブロス「おいどうするよ、こんな短期間で暴れ回るのって難しくないか?」

ハンマーブロス「そうだよな、でもクッパ様の誕生日ケーキはぜひ完成してほしいし…」

ブロタロウ「やはり、ターゲットが決まらないよなぁ。相手側に地の利があると、あまりにも侵略しにくい」

ハンマーブロス「…あ!いい事考えた!この際、時間稼ぎさえできればいいんだからさ!
        一度侵攻した所を再侵攻すればいろいろと楽じゃないか?」

ブロタロウ「!!お前、天才だな!よし、じゃあもう一回宇宙侵略してみっか!」

ハンマーブロス「「はーい」」

・・・
・・

ブロタロウ「というわけで、またギャラクシーを荒らしてます」

カメック「…だそうですが」

クッパ「」

~ほうき星~

ハンマーブロス「というわけで、またパワースター奪わせて頂きました」シレッ

ロゼッタ「ええっ!?ちょっと、困りますよ!!なんて勝手なことをするのですか!!」

ハンマーブロス「まーまー。あ、そうだ。ロゼッタ姫、こちらにどうぞ」

ロゼッタ「え、え、ええ?何処へ連れて行こうというのですか!!誰か、助けて下さーい!!」

チコ「あわわわわ……大変なことになった、どうしよう…!!」

ロゼッタ「…………?」チョコン

ハンマーブロス「すいませんねー。今回の台本ですと、ロゼッタ姫にはここでマリオ達を出迎えて頂きたいんですよ。
          というわけで、マリオ達がやってくるまでに、ここの居心地をちょいと確かめてもらいたいなぁ、と」

ロゼッタ「はあ…?普通に出迎えてはいけないのですか?」

ハンマーブロス「『全部のパワースターを集めてくれてありがとう』とミッションコンプリートを宣言する支配人の役ですから。
           あ、もちろん、マリオ達に見つからない範囲でならこちらの特製ワープブロックでいつでも帰宅されて構いませんよ」

ロゼッタ(そんなまどろっこしいことをせず、普通に会いたいのですが…時間もすごく勿体ないですし、はぁ…)

ブロタロウ「おーい!コースのスタート地点へのスターリングを設置しに行くぞ、早く持ってこーい!」

ハンマーブロス「すいません隊長、まだ休憩中なんであと5分だけ待ってくださーい!」

ブロタロウ「ならしかたない、しっかり休んどけー!」

ハンマーブロス「ありがとうございます隊長!…ふいぃ」



ロゼッタ「……なんだか、大変そうですね。私も手伝いましょうか?
      非力ですが、魔法なら結構自信があります」

ハンマーブロス「いえいえ、我々のことはお気になさらず。
          ただ、間違っても、準備中のスターリングに触れないでくださいね」

ロゼッタ「スターリング…はて、どこかで見たような」

ハンマーブロス「飛翔物等『甲種』取扱者でないと、触れた瞬間に意思とは関係ナシに一方通行で大きく飛ばされてしまいますからね。
          おまけに今回のスターリングの行き先は…ブルル、考えただけで眩暈がする。本当に、絶対に触っちゃいけませんよ!」クルッ



ロゼッタ「あ、もしかしてこれのことですか?」ヒョイ



ハンマーブロス「」

シュルルルルルル……!!

ロゼッタ「心配なさらずとも、スターリングはチコの化身。これまでも何度か触れたことがありますが、
      星の力が宿った杖を持つ私には影響ありま…」チラッ

ロゼッタ「…あれ?」






~天文台~
筋トレの際に机の上に置かれた杖「」ポツーン

ロゼッタ「きゃあああああああああああああ!!!」ドッカーーーーーン!!

ハンマーブロス「うわああああああああああ!?やべえええええええ!」

ロゼッタ「嫌あああああああああああああ!?
どこまで、飛ばされるんですかーーーーーーーーー!!?」


――ケーコク! ケーコク!

ロゼッタ(な、何?何の音?)

――ステージセンタク シタモノニ ツグ!
――キノコオウコクノ データベースニテ ユウコウナ ショウゴウデータ ナシ!
――シッコウシテイルカ ミトウロク!
――『ザンキシンセイ』ガ カクニン デキマセン!

――セイトウナ チョウセンシャデハ ナイモノト ハンダンシマス!
――『ザンキセイド』ガ テキヨウ サレマセンノデ ゴリョウショウ クダサイ!

ロゼッタ(い、一体全体どういうことなのか…ザンキシンセイってなんですか!?…って、
      そう言っているうちに、みるみる地面が近付いてくるっ!?)


ドッシャーン!!!!!

ロゼッタ「」ベチィッ


~チャンピオンシップギャラクシー~
マスター オブ ギャラクシー

Wecome to the Galaxy!

ロゼッタ「……ゴホッ、ゴホッ!!……結局こちらでも吐血沙汰ですか…!?」

ロゼッタ「……ゼェ、ゼェ…それで、一体ここは?」






ヒュウウウウウウゥゥゥ……
ロゼッタ「……なに、ここ」





ロゼッタ(狭い、狭すぎる足場。下を覗くと、地面すら確認できない眩暈のする高さ。
      思わず仰け反ってしまいました。

      ……私にも流石にわかります。落ちると…死ぬんだと。杖がなくては、浮遊することもできません。


ロゼッタ「どどどどうやら、難関コースの入口に来てしまったようで、すね。対策をかかか考えなければ。
      …あら?藁が敷かれてありますよ?なんでしょう?」


風吹く浮遊島の上を、足をガクガク震わせながら這って移動してみます。
その先にあったものは。

カンペ「ここにヨッシーを待機させ、舌を使ったアクションで先に進ませるように。
 
    流石の超人マリオもヨッシー無しではこのセクションは死ぬしかないから仕方ない。

    逆にヨッシーがいると楽勝とか言われそうだがなアッハッハ!
                                                ブロタロウ」



ロゼッタ「…………………………………………………………………………………………
      ………………………ヨッシーさん、いないんです、が」ガクガクブルブル

そして、今頃になって、先ほど聞こえた天の声(?)の重要性を察知する。


冷や汗が止まらない。確認したくない。認めてしまいたくない。


勘違いであってくれと願いながら、俯いた状態から、少しずつ、少しずつ、上を見上げる。





なぜ見えるのかは、さっぱりわかりませんが。その数字が、ハッキリと脳裏に焼き付き。


これは嘘の情報ではない、と頭が理解してしまい、私はたちまち放心しました。






Rosalina ×1
LIFE 1 キケン!!!


ロゼッタ(ママ。…本当に、終わってしまったかも、しれません)

~クッパシップ本艦~

クッパ「ガハハ、どうだ速いだろう!ワガハイの最新鋭の軍艦ならば、こんなチンケな距離など1日で跨ぐのだ!
    お前らの旅行計画を2日も短縮してやるぞ!特別に乗せてやったことに感謝するのだ!」

ピーチ「はいはい、ありがとうね。でも着いたら真っ先にロゼッタ達に謝って、問題が起きてたら回復に努めるのよ?
     それまではケーキの話もなしだからね。パワースター集め直しは…
     さすがにあなたの誕生日まで間に合わないだろうし、深刻な問題になってない限り猶予してあげるから」

クッパ「なーに、それならば楽勝なのだ!誕生日まで2週間も余裕はある!」

マリオ「それにしてもルイージ、よくビビらず戦艦に乗り込めたな?」

ルイージ「なんだか、躊躇してもクレーンで強制回収される未来が見えたんだもん…」

ヨッシー「ペロッ。この砲台は……っ!食べられる。

     ペロッ。この設備は……っ!食べられないことはないけど、まずい。

     ペロッ。この食事は……っ!青酸カリが入ってるけど、美味!いただきまーす!」

クッパ「待てい、特に最後、いやホントに」

クッパ「…原因が分かったのだ。懐かしのゲドンコ星人の残党が現代に潜んでいて
    無差別テロを仕掛けていたのだ。とりあえず毒キノコの姿焼きの刑に処しておいたのだ」

ルイージ「そ、それって大丈夫なの!?」

クッパ「まあワガハイたちと奴らとでは、もはやレベル差甚だしいし大丈夫だろ。
    だからこその陰湿な作戦なのだろうが…

    まあ酸の沼に落ち慣れているワガハイたちを倒したければ仕込量がまるで足らん。
    せめて青酸カリ99%入りとかにしろ。下痢ぐらいは起こせるぞ」
    
ルイージ「それってただの青酸カリの山盛りだよね」

ピーチ「やることが陰湿ねー(モグ)……ん、確かに美味しい。
     でもレディとしてトイレに篭りたくないから一口ずつに留めておきましょ」

マリオ「残すの勿体ないから(モグ)……ある程度俺たちで食って(モグ)……
    残りはヨッシーに食べてもらおうか」

ヨッシー「やれやれ、しょうがないですねー(パクパクパクパク)」

クッパ「なんかすまんな(パク)」

ピーチ「酸の沼に落ちるきっかけを作った第一人者が今更何を言っているのかしら」ウフ

マリオ「そうだそうだ」アハハ



ヨッシー「一応言っときますけど、私の場合はマリオさん笑ってられませんからね。
     今じゃ気にしてませんけど」パクパク

マリオ「あ、はい、乗り捨てまくってすいません」

~ほうき星~

マリオ「…………」

ルイージ「…………」

ヨッシー「…………」

クッパ「…………」

ピーチ「……………………ロゼッタって」








ロゼッタ(スヤァ)








ピーチ「石畳の道の上で寝る趣味でもあるのかしら?」ユサユサ

ロゼッタ「……ん」

ロゼッタ「…んーーー」ノビー

ロゼッタ「…あら?どうして私、こんなところで寝ていたのでしょう?」

マリオ「なんかあったのかな。…おい、大丈夫か?」

ロゼッタ「……?」パチクリ

ロゼッタ「きゃっ!?こ、これは失礼しました!こんなところで寝転んでいるのをお見せするなんて、恥ずかしい!」

ピーチ「寝転ぶというか寝入ってたけどね。どういう神経してるのよ、ロゼッタ」





ロゼッタ「……え?あ、チコたちからお聞きしたんですね、私の名前を。
     知らぬ間に仲良くなってくれたようでなによりです!」

ピーチ「……はい?」

ロゼッタ「既にご存知のようですが、改めまして。

     私、このほうき星にてチコたちと共に暮らしております、ロゼッタと申します。
     宇宙飛行中に運命の巡り合わせで、立ち寄られたということでしょうか?

     恐縮ながら、皆さんを楽しませることができるような大したものはないかもしれませんが、
     ゆっくりしていってくださいね。私たちは歓迎いたします」


マリオ「!?」

ルイージ「!?」

ヨッシー「!?」

ピーチ「!?」

クッパ「あ、なんだか凄いヤバイ予感がする」

ルイージ「えー!!記憶喪失ぅー!?」

ヨッシー「そうとしか、考えられませんよ!」

チコ「うわーん!」

チコ「うわーん、ママに何をしたのー!?」

ルイージ「い、いやいや。チコたちのことは覚えてるみたいだったじゃないか。
      とりあえず、主治医の診断結果を待とうよ、ねっ!」ナデナデ



バタン。



Dr.マリオ「診察終了っと」

ピーチ「…………」

ロゼッタ「……えっと、終わり、ました、けど?」

ルイージ「先生!ロゼッタの具合はどうなんでしょうか!」ガシッ

ヨッシー「先生!治るんでしょうか!」

Dr.マリオ「こらこら、いっぺんに聞くんじゃない。ちゃんと説明するから落ち着け。

     まず、状況から。
     どうやら患者は、前回クッパがギャラクシーを侵攻しパワースターを奪った時以前の…というより、
     俺がロゼッタと初めて対面した時以前の記憶しか持っていないようだ。
     ごく最近住み着くようになった新入りチコのことなんかも忘れているみたいだな。

     ここ数年、あるいは10年くらいの記憶が完全に失われている」

ルイージ「なん…だと…!?」

Dr.マリオ「体調自体は全く問題なさそうだ。問診でも、特に痛みや辛さの発覚はなかった。
      あと、チコたちが言うには、昨日ハンマーブロスに連れ去られてからはロゼッタの姿を全く見なかったそうだ」

ヨッシー「げ、原因は?」

Dr.マリオ「うむ。実は先ほど、そのハンマーブロスたちに事情聴取もしてきた。
 
      その内容、万全な体調。記憶の喪失、そして俺たちが先ほど見た、地面で寝転んだ…いや、まるでどこかから『飛ばされてきた』ような姿。

      


      これらのことを総合すると…思い当たるものが、一つだけある」ビシッ

クッパ「そ、それは!?」

Dr.マリオ「うむ。十中八九、ロゼッタが罹ってしまったものは…





  『ゲームオーバー症候群』だ」




ピーチ「なんて、こと」フラァ

ルイージ「げーむおーばー、しょうこうぐん?ヨッシー、聞いたことある?」

ヨッシー「いえ、全くないです」

Dr.マリオ「そうだな…」ポンッ



マリオ「それを説明するためには、すこし昔話をする必要があるな。
    なにせ…知り得る唯一の患者が、俺自身だからな」


ルイージ「え…!?」

マリオ「今は笑い話にもならない何十年も昔…あの頃の俺は、マリオカート参戦時のロゼッタみたいな状態だった。
    いや、お助け情報もないからそれ以上かもな。

    チビの状態でクリボーやノコノコに体当たりされると命を失うこと、
    奈落の底やマグマに落ちると命を失うこと、
    とにかく身の回りの致死要因に恐れおののいていた。
    正直、ピーチを助けるのを諦めかけた事だってあったさ。

    ダメージを受けると痛い。死ぬときはもっと痛い何かを感じる。
    なんか『自分の命はあと何個ある』ってことを理解できて、
    緑色のキノコを食べると命が増えることを知った時は驚いたうえで大層有難がったもんだ」

ルイージ「…ははは、よくわかるよ」

マリオ「だが、繰り返すが、当時の俺はちょっと運動神経がいい程度の男、それだけだ。
    クッパの仕掛ける罠が多く、激しくなるにつれ、どんどん命は削り取られた。
    …で、あるとき、全部の命がなくなった」

ルイージ「…!!」ゴクリ

マリオ「そうしたら、どうなったと思う?…何故か、自宅前で寝てたんだよ。
    おまけに、クッパがピーチを攫ったこと、助けるために冒険に出た事、一切合財忘れていた。
    ぼけーっとしている俺を発見したキノピオの一人が、

    『こんなところで何をやっているんですか、ピーチ姫を助けに行ってくださいよ!!』と
    
    若干無責任にまくしたてるもんで、しどろもどろになりながらも冒険を再開したが」

クッパ「そう、だったのか…てっきり、難なく突破しているものだと」

マリオ「あはは、あの罠の量で、冗談きついぜクッパさんよ」

マリオ「ただ…なにかがおかしい。そう思った俺は、キノピオを宥めつつ、あることを依頼した。
    
    『常に誰かに自宅前を見張らせて、異常があったら状況を書き留めておいてくれ。
    あと、声を掛けた時の俺の発言も記録に残しておいてくれないか』と。

    俺は、残りの命の数を注視しながら、冒険を続けつつ…
    だいぶ確信が持てたところで、最終実験をした。

    1-1から1-4まで突破した後、自分の意志で帰宅して、キノピオと会話をした。
    その後、今度は1-4であえてマグマに飛び降り続けて自宅に飛ばされてみた。
    ――マジで嫌な思い出だったけどな。
    というか、飛び降りている時点では自宅に飛ばされるトリガーなんてわかってなかったわけだから
    やっぱり博打もいいとこだったよなぁ。

    実は他に原因があって、『仮説を試してみたら本当に死んでマリオさよなら』の
    可能性も捨てきれなかったわけだし。

    自宅に飛ばされたとき…

    俺は――この地点でジャンプした、ダメージを受けた、立ち止まった…みたいな、自分の行動を、まるっきり忘れていた。
    キノピオに渡しておいたコースの注意点が書かれた紙を返してもらったところ、その通りの攻略ができた。
    あのときの衝撃は…忘れられん」

マリオ「今俺たちが生活して、カートに乗って、スポーツで汗を流して、パーティを楽しんで…っていう空間を『現実空間』、
    ひとたび突入してみればワールド構成の冒険が待っている空間を『ステージ空間』と俺は勝手に呼んでる。

    前者の空間で命を失うと、本当に死んで二度と生き返らない。瀕死状態までなら1UPキノコでなんとかなるがな。

    後者の空間は、それよりは挑戦者に優しい。1UPキノコの事前ストックが効くし、
    ストックが切れて『ゲームオーバー』になっても現実空間に飛ばされるだけだ。

    ただ、そのときに少なくない記憶を失う。そのことを、俺はキノコ王国の住民で最初に理解した」

ルイージ「なんだって…!?」

クッパ「そんなことが…」

ルイージ「……ってことは、兄さんは何回かぶんの冒険については、
      今でも一切記憶を持ってないんだ…悲しいなあ…」

マリオ「いや?持ってるぞ?」

ルイージ「え!?」

マリオ「というか、それに関連する今からの話がロゼッタの記憶を戻す特効薬だしな。

    
    …あるステージでゲームオーバーになった場合、
    一定期間の記憶を失って現実空間に飛ばされる。

    …そして、あるステージが原因で失った記憶は
    躓いたステージをクリアすることで完全に元に戻る。

    さっきの場合だと、キノピオに返してもらった攻略のためのメモ書きを利用して
    楽々1-4をクリアし直した瞬間、さきほど1-4でマグマに落ち続けた記憶が
    猛烈な勢いでフラッシュバックしてきたわけだ。さすがに軽く吐いた」

ヨッシー「こ、怖いですねえ…」ブルブル

マリオ「ここまで判明したら、やることはただ一つだ。

    めんどくさいことこの上ないのは承知で、新しいステージを1つクリアするたびに
    傾向と対策を纏めて自宅に持って帰った。ついでに、飛ばされる自宅前にはご丁寧に
    『ゲームオーバーでこういうことが起こってるぞ、部屋の攻略本(自作)見ろや』と看板を立てておいた。

    この虱潰しな攻略法で、たびたびのフラッシュバックに悶え苦しみながらも、
    なんとかピーチ救出にこぎつけた訳だ」

ルイージ「で、でもそれだったら、僕に起こってもよさそうなものだけど…」

マリオ「ルイージは割と自宅待機が多かった。それこそ、今言ったような現象、
    立てられた看板にすら気付いていないほどの引きこもり状態でな。

    いざ冒険に出ても、難しいステージをこなすのは基本俺。
    おまけにマリオワールドで残機大量にくれてやっただろ。
    ここまでしたらさすがにゲームオーバーになる方が難しいっての」

ルイージ「本当にありがとうね、兄さん」グズッ

ピーチ「…そして、『残機』っていう概念をマリオから初めて聞き、重要性をさんざん説かれて対策に乗り出したのは、
     クッパ城で囚われていた私よ」

クッパ「な、なに!?」

ピーチ「今のキノコ王国には、命のストックを管理する銀行みたいなもの…残機バンクが備わっているわ。
     マリオが余らせた残機は、私の魔法を駆使すれば価値を損なわずプールしておけるみたいなの。
     もちろん、余らせた人の提供意思があって初めてできることだけれどね。

     ステージに挑戦したい人は、残機制度を利用すれば、初期残機数がある程度与えられる。
     そのうえ、仮にゲームオーバーになったとしても、その直前にバンクから残機が補填されて、
     記憶の欠落がごくわずかで済む。つまり『本来の意味でのゲームオーバー』には成り得なくなったのよ。

     この素晴らしいシステムがなきゃ、ステージを一般公開して観光地化するなんてこと、絶対にできないわよ」

ルイージ「残機バンクって、残機が湧き出る打ち出の小槌じゃなかったの!?」

マリオ「ピーチと一部キノピオ以外は知らないトップシークレットだったとはいえ、勘違いも甚だしいな。
    俺の苦労あってこそなんだぞ」ポンッ

Dr.マリオ「…で、残機申請の存在すらきっと知らなかったロゼッタは、
      残機バンクの保護から漏れたってことだ。
      失われた記憶の期間が長いのは、おそらくだが年齢に対して
      割合的に効いているからだろうな」←年齢2桁

ルイージ「あ」←年齢2桁

ヨッシー「え」←年齢2桁?

クッパ「ふぁ?」←年齢2桁

ピーチ「女性に年齢の話は禁句よ」←年齢2桁





ロゼッタ「ほとんど会話の意味はわかりませんでしたが、何か納得いきません」←年齢3桁

ルイージ「…話を纏めると、ロゼッタがミスしたステージをロゼッタ自身にクリアしてもらえれば、
      ロゼッタの記憶は戻るんだね?」

Dr.マリオ「…まあ、そういうことになる、な。話は非常に簡単なんだ。
      問題は、徐々に難しくなるステージ群のあるポイントで苦汁を舐めたかつての俺とは違い、
      いきなり相当に難しいステージを選んでしまった上でゲームオーバーになったことだ。
      正直言って、ハードルが高すぎる。いつになったらクリアできるやら…!」

ピーチ「それでも、やるしかないじゃない!行きましょう、そのステージへ!
     まず私たちが挑んでみて、しっかり対策を伝授して、それから…!
     マリオ、ハンマーブロスでも誰でもいいから、案内させて!」

マリオ「そうだな!」

ルイージ「ロゼッタの記憶のため!僕も頑張るぞ!!」

ヨッシー「私もです!」

クッパ「ワガハイの失態だからな。しかたない、協力してやろう!
    …あ、いや、ゼヒ協力サセテクダサイ。そんな目で睨まないでピーチサン」

ロゼッタ「状況はあまりつかめていませんが…本当に、感謝いたします」フカブカ

ブロタロウ「あ、えっと、その。

       マリオがこの星に降り立ったと同時にステージロックが掛かる様、
       プログラム設定しておりましたので。

       パワースターを規定枚数集めないと、もう誰も挑戦できません」

マリオ「」

ピーチ「」

クッパ「」

ロゼッタ「パワースターを散らせたのですか!?」

クッパ「そ、それで、今回の場合、規定枚数は何枚なのだ?
    10枚か?20枚か?」

マリオ(聞いちゃだめだ聞いちゃだめだ聞いちゃだめだ)










ブロタロウ「241枚です」

クッパ「」

ロゼッタ「」ガーン

ガシッ

クッパ「!?」

ピーチ「うふ、ふふふふ、ふふふふふ。ねえ、クッパ?」

クッパ「はい、なんでせうか」

ピーチ「ちょっと、クッパシップ借りていい?いまからとんぼ返りでキノコ王国に引き返して、
     あなたの誕生日ケーキを作っておいてあげるから。
     あ、ロゼッタもこれ以上ゴタゴタに巻き込まれないよう、一度連れていくわね」ニコッ

クッパ「は、はい。思う存分使い倒してやってください」ビクビク

ピーチ「そして、マリオ、ルイージ、ヨッシー、クッパ。あなたたちは…」

マリオ「お、おう」




ピーチ「1週間…いえ、3日以内にパワースター241個集めた報告をしなさい!
     約束破った場合は二度とケーキ作ってあげないし食べさせないから!」

クッパ「はあああ!?あまりにもひどいのだ!唐突にやりなさいと言われても限度がある!」

ルイージ「僕たちに至っては巻き添えなんだけど!?」

ピーチ「やれ」ギロッ

クッパルイージ「「やらせていただきます」」

マリオ「やれやれ…」

ヨッシー「ケーキぃ…」







ロゼッタ「ノリについて行けません…」

チコ「ついて行かなくて全然いいと思うよ」

クッパ「という訳でぇ!

    これより、パワースター回収作戦を開始する!
    1人あたりのノルマは60個程度となっている!

    なあに、クッパシップはまだまだある、物量攻めで行けば楽勝だ!
    ワガハイに任せておけ、とカッコよく宣言しておきたいところだが、
    諸君らのプライドを保たせてやる上でもやめておいてやろう!

    ともかく諸君!後れを取らぬように!」バン!

マリオ「はい、指揮官。ステージには個人あるいは数人のグループ単位でしか突入できません。
    あんな馬鹿デカい船ごとなんて夢のまた夢であります」ビシッ

クッパ「そそそそそんなことは分かっておるわ!ジョークだジョーク!」

ルイージ「あわわわ、僕まったく、そんなにスピーディに回収していける自信がないよぉ」

ヨッシー「そんな、いまから弱気じゃいけませんよルイージさん」

マリオ「あと、1人当たり60個と言ってたな。ちょっと修正していいか?
    2人あたり大体120個、ということにしておこう。俺とクッパ、ルイージとヨッシーで固定ペアを組む」

クッパ「なに?どういうことだ?」

マリオ「なに、ジャンプ力はあるが防御力が心配なルイージと、死角を補うサポートに長けるヨッシーを組ませたい。
    それだけだ。一方のこちらは、2人がそれぞれスター先で独立して暴れ回るって感じだな」

ヨッシー「わかりました。ルイージさんのお守りはまかせてください」

ルイージ「お守りってのは言いすぎだって!でもヨッシーが居れば心強いよ、よろしく!」



マリオ「そして、今は緊急時だからな。
    旅行バッグに詰め込んできたもの、惜しみなく配らせてもらう」

ルイージ「うん!」

ヨッシー「ありがとうございます!」

クッパ「おいおい…」

マリオ「……じゃ、頑張るとしますか!」

~空島ギャラクシー~

マリオ「よしクッパ、スターの力とやらで巨大化してくれ」

クッパ「いいだろう…ふんっ!」



グググググ…!!



マリオ「うはっ、便利だなー。で、俺もきょだいキノコで巨大化っと」グイーン

クッパ「で、どうするのだ?」

巨大マリオ「ルイージとヨッシーにはもう伝えてあるが…
        俺たちのペアは『水平特化ペア』、あっちのぺアは『垂直特化ペア』だ」

クッパ「はあ?」

巨大マリオ「すぐに意味がわかるさ。おれはこっちにありそうなパワースターを超スピードで取りに行く。
        …クッパはあっちね」クイッ

クッパ「え?その作戦、巨大化する必要…あったか?巨体になったぶん、動きはもっさりになるんだぞ?」



チッチッチ

巨大マリオ「その体の方が障害物を吹っ飛ばしやすいだろ?
        それに言ったじゃないか。1人あたり60個じゃなくて、2人あたり120個って」

クッパ「だから、どう取りに行くのだと聞いている!」

巨大マリオ「だーかーらー…」ガシッ

クッパ「……え、ちょ」


巨大マリオ「スターリングを逐一っ!探すなんてっ!かったるくてやってられない、から!
        こうやって!お前をまず!遠方の!スターのポイントまで!
        ジャイアントスイングでとばすんだよぉ!」ブオオォ!!

クッパ「ぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁーーーーー…」キラーン

巨大マリオ「ふう…お次は、俺だな!」

パパパパパパーン!

マントマリオ「じゃあひとっ飛びするか。…よし、押しのける空気くらいはあるな!」フワー




マントマリオ「はーやーいーぜー!!」ビュゥゥ!!

マネック「マ、マッテ…」ゼェゼェ

ディノパックンJr.(くっくっく、誰か来ないかなぁ。卵を少しでも叩いたら、たちまち卵ひび割れて、オレっちドドーンと登場!
          驚き固まる奴らを一飲みなのさ、ああ楽しみだなぁー♪)




クッパ「ぐわあああああああ!…おおおおおお、ちょうどいい所に足場がある!
    ええい、着地だ着地!ボディプレースッ!!」

ディノパックンJr.(よっしゃ、卵の殻に待望のひびがでk)



ドッズーーーーゥン!!!……プチッ。



クッパ「ふう、ようやく止まったか。
    …お、おおおお!パワースターが落ちているのだ、これはラッキー!
    やはり日頃の行いがよいということだな!」

~ヨースターギャラクシー~

看板「ヨッシーに乗り続けながらⒶを押し続ければふんばりジャンプ!」

ルイージ「Ⓐボタンって…なんだろう?」

ヨッシー「なんでしょうね?まあ、そんなことは気にせず…」パクッ

看板「いつもよりちょっと高く跳べて便r…」





ヨッシー「青コウラ咥えて羽根ヨッシィー!!」ブワーーー!!

ルイージ「消化しそうになったら一度吐き出して即回収。
      実質無限飛びできるよね、ほんと便利だよねー」

看板「」

フラワーマーク「」

~ほりほり鉱山ギャラクシー~

マネック「「「ギャアア!アイツニ アタルト メッチャイタイ!ニゲロォー!」」」

マリオ「なんか雑音が聞こえるなあ…まあいっか。
     USAで鍛えたボーリングスキルなめんなやぁー!!」ザクッザクッザクッ

ドリル「」



【クッパは逆方向へ飛ばされている】

~もくもくけいこくギャラクシー~

――オマエ 雲 のれるカ?

ルイージ「ヨッシーが飛べるし、別に雲ルイージ?になる必要ないよね」

ヨッシー「3つまで雲の床が作れるだけとか…で?っていう」ハン

雲フラワー「」



マネック「「「オオッ コイツハ ヨワソウダ!フクロダタキ!」」」ダッ

ルイージ「ぎゃああ、お化けぇ!こうなったらオバキュームゥ!!」ギュイーーーン

マネック「「「エッ アッ ソノッ マッテクダs」」」シュウウ・・・

ヨッシー「ああ、おいしそうだったのにぃ…」ガッカリ

マリオ「順調だな!」パワースター ゲット!

ルイージ「順調だね!」パワースター ゲット!

ヨッシー「順調ですね!」パワースター ゲット!

クッパ「…そりゃお前たちは順調だろうなコノヤロウっ!」パワースター ゲット!

~キノコ王国~

ワー、ワー!!

キノピオ「わーい、七夕祭りだ―!」

キノピオ「違うぜバーカ!100年に1度の星くず祭の開幕だって!
      しかも姫様のお触れによると、今回は、期間がずっと延びて開催されるそうだぞ!
      ほんと楽しみだな!」

キノピオ「…星くず祭って、ちょっと前にやらなかったっけ?」

キノピオ「1000年に7日間しか起きない設定のくせに、しょっちゅう現れる幻ポ○モンとかもいるから、
      細かいことは気にすんな!」


~キノコ城テラス~
ピーチ(ほうき星の支配人であるロゼッタが招かれている以上、星くず祭の意義的に、
     期間を延ばすことになんにも問題ないわよね、うんうん、めでたいめでたい)シレッ

デイジー「びええええ、今度は記憶を失うなんて…!ロゼッタ可哀想すぎるよ…!
      グズッ、わたし、デイジーっていうの。よろしく…ね」ボロボロ

ロゼッタ「ロゼッタです。…きっと、本当はとても良い親友関係だったと推測します。
      本当に…本当に…ごめんなさい」シュン

デイジー「…!いいっていいって!絶対なんとかしてみせるから!」ニコッ



ピーチ「とりあえず、私はカメックたちとケーキ作りの打合せに行くけど…2人はどうする?
     付いてくる、それとも休んでおく?もちろん、星くず祭を楽しんできてもいいわよ?
     まあ、いずれの選択肢も、私かデイジーの少なくとも1人はロゼッタの傍にいることが前提になるけど」

デイジー「うーん、ケーキ作りは手伝える腕前ないけど…最初の打合せくらいは、よかったら聴いておきたいかな。
      ピーチがどんな誕生日ケーキを作るのか興味があるし。ロゼッタもそれでいいかな?」

ロゼッタ「はい、全然問題ありません。こちらからお願いしたいくらいです。よろしくお願いしますね」

カメック「え?今、なんと?」

ピーチ「だからー。あなたたち、まさか…

     『キノコ王国あるいはクッパ城に備え付けのキッチンで作ればいいや』

     とか考えていないわよねー?」

カメック「…それで、よろしいのでは?」

ピーチ(フゥー)




バンッ!




ピーチ「甘い!甘すぎる!砂糖で埋もれて原型を留めていないケーキより甘いわ!
    いーい?クッパは、『スーパーサイズの誕生日ケーキを作ってくれ』と言ったのよ!
    自分の上司を軽く見てるんじゃないの?」

カメック「で、ですから。ウエディングケーキくらいの大きさがあれば十分d」

ピーチ「聞いて呆れるわね…それでもクッパの側近?」

カメック「ムカッ。どういうことです!」

ピーチ「フリップを用意したわ。実際にご覧ください」サッ





カメック「…これは、NEWスーパーマリオブラザーズWiiの一幕ではないですか」

ピーチ「ご名答。このときクッパは、私の誕生日にケーキを送り込んできた。
     それも、1段当たりの高さがコクッパ7人衆を上回るほどのケーキを用意して見せたわ。
     …誰が作ったのかは知らないけれど。

     そして、それが『あのケーキ、すごく大きかっただろう!ガッハッハ』みたいに特に取り沙汰されることはなかった。

     つまり、クッパの認識だと、身長の2倍分くらいのケーキは『ビッグサイズ』の範疇に入らないのよ」

カメック「そのりくつはおかしい…あれ、おかしくない?」

カメック「ま、まさか…」

カメック「な、なんだってー!」

カメック「で、では10メートルくらいのケーキをこしらえることに致しましょうか。
     さすがにこれなら、クッパ様も満足して…」

ピーチ「ふぅ、あなたたち、なーんにもわかってないわね。

    クッパはわざわざ、『巨大化した状態で』ビッグサイズのケーキをご所望したのよ?
    巨大化状態を基準として考えなきゃ話にならないでしょ!」

カメック「「「えっ」」」

ピーチ「わたしなりに軽く計算した結果…クッパを満足させるのに必要な大きさは…




 



     ざっと、高さ100メートル!!」バーン!!

カメック「「「な、なんだってぇーーーーーーーーーー!!」」」

デイジー「」

ロゼッタ「」

カメック「そ、そんな大きさのケーキ、作れるわけがありません!」

ピーチ「心配ご無用。帰還途中にちょっと図面解説に起こしてきたから。みんな、よく眺めるように」



カメック「……クッパ城前に、我々カメック部隊で専用の巨大キッチンを…作成?」ゲッ

カメック「……ピーチ姫が巨大化状態で混合、撹拌、運搬できる特殊器具・設備・操作盤の設置?」ヒキッ
 
カメック「……横幅80メートル、高さ10メートル、全長1キロメートルのベルトコンベア付き超巨大多段式連続焼成レーン?」マッサオ

ピーチ「本当は全体を一気に焼けたらよかったんだけど、さすがに温度ムラが避けられないから。
     とりあえず、厚さ1メートルを限界として、90段分のスポンジをせっせと焼きまくるのよ。
    
     あとで、更にスライスして何百枚となったスポンジ間にクリームやフルーツを散りばめつつ、
     大型クレーンで慎重に慎重に積み重ねていって100mにするわ」

ロゼッタ「」バタリ

デイジー「あ、ロゼッタが泡吹いて倒れた」

デイジー「……じ、自重で潰れちゃうから、これ幸いと、見えない内側部分を土台で稼ぐってのは?」

ピーチ「そんな手抜きしなくても、固定化の魔法を私かカメックが掛けるわよ」

デイジー「ざ、材料がぜんぜん集まらないんじゃない?」

トゥルルルル
ピーチ「あ、キノじい?そう、ピーチよ。実はお願いがあって…
    卵と牛乳と砂糖とバターと小麦粉と洋酒とチョコレートと、あとフルーツなんでも。流通近況どうなってたかしら?
    …オール過剰で値崩れ気味?よろしい。

    各生産者に、『昨年度の出荷量の1.1倍よりも過剰に抱える分について、
    キノコ城のクッパシップ停留所に持ってきた全量を王国が適正価格で買い取る』というお触れを今から1時間以内に出しなさい。
    順次クッパ城に向けて送るから。いいわね?」ピッ

ピーチ「というわけで、材料の問題も解決したわ」

ロゼッタ「強引すぎますっ!?」

デイジー(…あれ?聞くところによると材料費って折半じゃなかったっけ…)

ピーチ「それではカメック部隊!各部の製作を今日、明日中に終わらせてね!
     それ以降は私だけ戦地に飛び込むわけだから…無理とは言わせないわよ?
     ああ、腕が鳴るわぁ…」フフフ

カメック「」

カメック「」

カメック「――――うおおおおおおおおおおお、こうなりゃヤケだぁ!
     我らカメック部隊の本領発揮といこうではないか、明日と言わず今日中に、
     キッチンの完成品をピーチ姫にまざまざと見せ付けてやるのだ!」メラメラメラメラ

カメック「うおおおおおおおお!その通りだぁー!」ダダダダ

カメック「クッパ様ばんざーい!!!!」ダダダダダ




ピーチ「用は済んだことだし…じゃあ、帰りましょ」ラン ララン

デイジー「せ、せやな」

ロゼッタ「」ボウゼン

~キノコ城 城下~
星くず祭の 真っ最中!!

デイジー「ピーチったら『念のため図面チェックに入るから私お留守番ね』だなんて…
      つまんないのー。ちょっとは付き合いなさいよ」ブツブツ

ロゼッタ「ピーチ姫が現れては城下も大騒ぎになってお祭りどころではなくなってしまうでしょうし、
     仕方がないのでしょうか…。せっかくのご厚意ですし、私たちは楽しむことに致しましょう」

デイジー「……今さら、マリオカート騒動でロゼッタを嫌ってる人がイチャモン付けてきたりしないでしょうね(小声)」ミワタシ

ロゼッタ「はい?」

デイジー「あー、何でもない何でもない。じゃあ、そうしよっか!適当に見て回ろ!資金は大量にもらってきたし!」

ロゼッタ「はい!ほうき星とは逆の立場から接近イベントを知り得ることはこれまでなかったので…
      実は、期待に胸が膨らんでいます!」ワクワク

デイジー「あはは、今のロゼッタの記憶の中じゃ、最近の接近イベントと言ったら100年近く前の話なんだよねぇ。スケール大きいなあ」

焼きそば屋「いらっしゃい、やきそばだよー!スターピース5個付きで、お値段なんとたったの10コイン!
       18コインなら焼きそば・スターピースともに倍増しするよー!」

リンゴ飴屋「リンゴ飴作り続けて15年!培ってきた技術使って、見てくれよこの、精巧な星型の飴を!
       そんじょそこらの陶芸師にも負けない芸術性!これが、たったの15コインで貴方の手に!
       ……え?リンゴ飴売ってないのかって?いいじゃねえかそんなこと、味はしっかりリンゴだぜ!」

かき氷屋「ウチのかき氷は、天然氷を切り出してその日のうちに使い切る超限定物さ!
      細かすぎず粗すぎず、心地よい冷たさ・口溶けと、自然の甘さを提供するよ!
      蜜はドドンと、迷ってしまう64種類!蜜の追加は1コインだから気軽に申し出てね!」

ロゼッタ「わあ…すごい活気と行列ですね」

デイジー「うんうん!どれもこれも、みんなおいしそう!」

デイジー「そうだなぁ…おじさん、すいませーん!リンゴ味の星型の飴くださーい!はい、15コイン」

リンゴ飴屋「はい、毎度」ズイッ

デイジー「…あっまーい!でもなぜだかしつこくない甘さでいつまでも舐めていられそうね!
      …ねえねえ、ロゼッタも何か食べてみない?」

ロゼッタ「……うう、すいません。なんだか、ボリュームを見ているだけでお腹いっぱいになってきて…」ゲプッ

デイジー「えー?そんなに量あるかなあ…ペロッと。じゃあ、飲食系はやめて遊戯系にしようか」テクテク









くじ屋「外れ無しのくじだよ、1等はなんと!シャインとパワースターのセットだよ!」

ロゼッタ「!?」

デイジー「どうどう、落ち着いてロゼッタ、あれレプリカ」

ロゼッタ「あら、これは一体、何ですか?」ハテ

射的屋「おう、別嬪さん2人ね。ここはいわゆる、射的屋だ。
     そこの線の位置から、自分が持ってるスターピースを景品に向かって投げつけてくれ。
     景品を奥に落としたら、お嬢さんたちのものになるってわけさ。

     ただし、横や前に倒しても無効。
     あと、挑戦にお代は要らないが、投げた分のスターピースはこの屋台のモンになる。
     ああ、それと。屋台荒らしを防ぐため、景品を1個手に入れた人は今回の祭の中で再挑戦できない。

     …ルールは以上だな」

デイジー「へえ、ロゼッタやってみる?…あ、でもスターピース持ってたっけ?」



ポワワワーン…ドサッ…



ロゼッタ「チコのおやつ用に、100個ほど異次元空間に常備してあります」ドヤァ

デイジー「…杖があるだけでロゼッタ活き活きしてるなあ」

ロゼッタ「それでは…面白そうなので、やってみたいと思います」サッ

ロゼッタ「」ズーン

射的屋「それじゃ、スターピースは貰っとくぜ、ありがとさん!大漁大漁!!」ホクホク





デイジー(信じられないくらい…すさまじくノーコンだった!?
      あれれー?ほうき星の主だよね!?スターピースの使いこなしスキルがそれでいいの!?)アングリ

デイジー(…いや、そもそもからして、まぐれ当たりしたスターピースにしても、後ろに倒すだけの勢いが全然ないよ!
      もしかしてロゼッタ、体つきの割に、凄まじい運動音痴!?)

ロゼッタ「」ズーン

デイジー(そういや、マリオカートの時も…どうもバナナや甲羅を投げる力が弱弱しかったな…。
      追尾を勝手に行う赤甲羅はともかくとして、緑甲羅を投げるときとか、
      前のカートに引き離される始末だったもんね…あの時は単に運転しながらの投擲に
      慣れてないからと思ってたけど…)

ロゼッタ「…なんだか、自分にイライラしてきました。スターピースが…」

デイジー「あわわわ!考え込み過ぎだって!さあさあ、忘れて次に行きましょ!」サササッ

テクテク

ロゼッタ「…あら?」

女の子「つまんないつまんない、つーまーんーなーいー!!」ジタバタ



ロゼッタ(10歳にも満たないでしょうか…女の子が1人、遊歩道の段差に腰掛けて、愚図っています。
     恰好こそ、お面にフランクフルトに水風船に、とあちこちの出し物を手にしている状態。
     ですが、いかにも、退屈極まりない、という顔をしています)

デイジー「ロゼッタ、あの子が気になるの?お人よしだなあ。せっかくだから声かけてみよっか。
      それじゃあ…おーい、そこのあなたー。不満タラタラな顔をしてどうしたのー?」

女の子「…?おねーさんたち、誰?」パチクリ

デイジー「通りすがりの、ただの観光客よ。それよりもあなた、お祭りを満喫しているように見えるけど?
      何がそんなにつまらないって言うの?」

女の子「パパが屋台にかかりっきりで、ぜんぜんあそんでくれないの!
    おこづかいだけ、ポンとわたされて『回ってきていいぞ』とか言うけど、
    一人で回ったって、つまんないの!」

デイジー「…あちゃー、商売に夢中過ぎてパパから放置されちゃったか。ママはどうしたの?」









女の子「………………………………ママ、いないもん。
    わたしが小さい時に、病気で死んじゃったんだって」

ロゼッタ「…!!」

デイジー「え、あ、ごめんなさい!」ペコッ

女の子「ううん、いいよ…でも、こういうにぎやかな所に来ると、他の人はいいなーって思うの。
     だって、パパかママの片っぽが働いている間だって、
     もう片っぽは一緒におしゃべりしたり遊んだりしてくれるでしょ?

     パパはママのびょうきを最後までなおそうとがんばって、いっぱい借金しちゃったの。
     お金をかせげている間はパパもうれしそうだから、お祭りはすきなの。
     …でも、自分が楽しむぶんには…あんまり、すきじゃないの」ショボン





ロゼッタ「……」

ロゼッタ「……」

ロゼッタ「あの、提案なのですが。私があなたのママになるというのはどうでしょうか」

デイジー「ちょっ!?」

女の子「…?どういう意味?パパとけっこんするってこと?」

ロゼッタ「あ、そ、そういう意味ではなくてですね。私も、星くず祭の間は
     このあたりで生活していると思うのですが…その間だけでも、
     あなたのママ代わりになって、おしゃべりしたり遊んだりしてあげられたらな、と」

ガバッ

女の子「ほんとに!?いっしょに屋台回ってくれる!?」

ロゼッタ「ええ」

女の子「それにあきたら、いっしょに公園であそんでくれる!?」

ロゼッタ「はい」ニコッ

デイジー「ちょちょちょちょっと待ったあ!ロゼッタ、あなたはやるべきこと、心配すべきことが
      ワンサカあるでしょ!寝泊りは当然キノコ城だし!」

女の子「え、キノコ城!?…もしかして、え、偉い人なの?」アトズサリ

ロゼッタ「いえ全然」フッ

デイジー「おい」

ロゼッタ「…とにかくですね、夜になったら一旦お別れしないといけませんが、
      次の日になったらまた会えるということですよ。それだけで十分です」

サヤカ「わああぁーい!!わたし、サヤカっていうの!よろしくね!」ピョン ピョン

ロゼッタ「ロゼッタといいます。よろしくお願いしますね、サヤカ」

サヤカ「ママって呼んでいい!?」

ロゼッタ「ええ、いいわよ」ホホエミ

デイジー「うおぅ、お母さんになり切ってるし…お人よしすぎるんだから、もう…」ハァ

~公園~
ロゼッタ「あらあら、サヤカったら、最初から屋台には飽きてしまっているの?」

サヤカ「屋台はまた明日から行けばいいもん!それよりもね、私、
    ママがいたら…ずっとやってみたいなーって思ってたことがあるの!
    とりあえず今日お別れする前に、やっておきたいなって!」

ロゼッタ「…やってみたいこと?」

サヤカ「うん!『キャッチピース』!あるていど離れたら、
    まず、ママがスターピースを私に向かって投げて、私が落とさず受け取るの!
    そしたら、今度は私が投げ返して、ママがキャッチするの!」

デイジー「あー、要するにキャッチボールのスターピース版ね。
      まあ、スターピースだけ使って遊べる事って言ったら、そのくらいしかないか。
      …ロゼッタ、大丈夫?あんまり(凄まじく)コントロールよくないけど…」

ロゼッタ「任せてください…じゃあサヤカ、いくわよー!」キリッ



ぽんっ



デイジー(飛距離…じゅ、十メートルくらい?いや、8メートルくらいかな。
     なんだかさっきよりは、距離も精度も格段に上がってる。なんでだろう?
     気持ちをパワーに乗っけてる、とか?まさかねぇ。
     …まあ、体格にしてはしょっぱいのは変わらないけど…)

サヤカ「じゃあ、今度はわたしのばんー!」



ぼすっ…テン テン テン。



サヤカ「ちょっとママ、そのくらい落とさないで捕ってよー!」

ロゼッタ「そ、そうね、失敗しちゃった」

デイジー「…………む」




サヤカ「あのー、あんまり言いたくないんだけど、ママってスポーツ苦手?」

ロゼッタ「そ、そんなことないわよ?現にほら、サヤカよりスターピースを遠くに投げられてるじゃないの」

サヤカ「そうかなあ…」

ロゼッタ「それにほら、受け止めるときの音の大きさが違うじゃないの。…ですよね、デイジー姫」

デイジー「あー……誠に残念だけど、ロゼッタ、あなた恐ろしいくらい大間違い。
     サヤカちゃんの認識が圧倒的に正しいよ」

ロゼッタ「…え!?」

デイジー「十何往復見てりゃ流石に分かったけどさ。
      ロゼッタは我流で勢いよくスターピースを投げてるだけよ。

      腕、腰、脚の動きがバラバラ、重心も不安定、全然『線』の動きができてない。
      このままだといくら続けても成長しないんじゃないかなあ…厳しいようだけど」

ロゼッタ「」

デイジー「…サヤカちゃんには、正直驚いたよ。子供の体格のせいで見かけの飛距離こそないけど、
      全身が連携で躍動して、ビシっとしなるバネの力を余すことなく、かつ力むことなくスターピースに伝えてる。
      スタミナをほとんど浪費しないから、このまま百球以上投げ続けられるだろうね。
      コントロールもかなりいい。…正しい形の反復練習で相当努力したんだろうね。

      ロゼッタは、サヤカちゃん…いや娘に技術を教えてもらうべきだよ」

ロゼッタ「そんなに!?」

サヤカ「へっへーん」

デイジー(そーだよ、まさに名案じゃない?ママ役のためなら、ロゼッタのモチベーションにも繋がるし)

オーイ サヤカー

サヤカ「あ、パパが呼んでる。今日の販売、終わったのかな?
    ねえ、いっしょにきてよ、私の分は、のこしておいてくれてるはずだから!」グイグイ

ロゼッタ「え、残すって…何を?」




サヤカ父「いやあ、サヤカの母親代わりになってくれるなんて、感謝しても仕切れないですよ、
       本当にありがとうございます。お祭り中は好きなだけ、食べてってくださいな」グズッ

ロゼッタ「……」ジーッ


クルクルクル…
サヤカ父「ほい!できたぞ!」

サヤカ「わーい!パパ、ありがとう!…おいしー!ぜっぴんだね!ママもどうぞ!」

デイジー「にゃるほど、綿飴か。ベタつくのが難点だけど、これぞお祭りって感じがする逸品だよね!
      …あ、それとも見るの初めてだったり?」

ロゼッタ「……」ジーッ

デイジー「あ、うん、聞くまでもない凝視振りだね。
      不思議だよね、なんでこんな形状になるのかなぁ?原料は砂糖だけらしいよ?」

ロゼッタ「…ふむ。加熱してザラメを溶融させながら釜を高速回転させ、遠心力でザラメを吹き飛ばし、
      非常に小さな孔を通して受け皿側に糸状の冷却ザラメを発生させているのですね。
      単純明快な機構ながらよく考えられています」

デイジー「見ただけでわかったの!?」

ロゼッタ「私、スピン力学にはちょっとばかりウルサイんで」

デイジー「そういう問題かなあ…っていうかスピン力学って何さ…」

サヤカ「ねえママ、半分こ!はい!」サッ

ロゼッタ「ふふ、ありがとう。では、いただくわ」パクッ





ロゼッタ(素朴で…奥深い甘さが、芸術的な形状とともに、脳内を駆け巡り…)

~キノコ城~

ピーチ「へえ、なるほどね。よかったわねロゼッタ、娘との団欒を楽しんだ上に、初めての綿飴を堪能できて。
     星くず祭を満喫してもらえて、私、とってもうれしいわ」ニコッ

ロゼッタ「……はい」

ピーチ「で、ロゼッタは。綿飴は美味しく頂けるけど…
    時間を割いて私が丹精込めて作って見せた料理は、一口も食べられないっていうんだ、へえー」ピキピキ

ロゼッタ「……」ダラダラ

デイジー「(パクッ)…悔しいけど完敗。美味しいよ、ほんと。
      いくらお腹いっぱいだからって、これを食べたくないだなんて…どうかしてるよ、ロゼッタ」プンプン

ロゼッタ「も、申し訳ありません…でも限界で…」

ピーチ「……なーんてね。食べられないものを、無理に食べてもらおうとは思ってないわよ、心配しないで。
     …意外に小食なのかしら?食事風景みたことないから気付かなかったわ。次からは気を付けるわね?」

ロゼッタ「……はい」

ピーチ「それじゃ、デイジーがロゼッタの分も食べ終わったら、仲良くお風呂でも入りましょうか」

デイジー「ピーチは食べないの?働きづめはエネルギー持たないよ?」

ピーチ「フッ。間もなく、ケーキの味見をエンドレスですることになる私に、その必要があると思う?」

デイジー「あー、うん。ないね。こんなおいしい料理なら喜んで平らげるよ。
      そして、お風呂待ってました!

      ロゼッタ、ここの…というかピーチの浴場はすっごいんだよ!
      100人は余裕で入るだろうっていうお風呂を、スイッチ一つでありとあらゆる種類に瞬時に切り替えられるの!
      アロマ風呂、ワイン風呂、牛乳風呂に電気風呂、砂風呂に天然温泉!上がった時には気分サイコーよ!」

ロゼッタ「聞いているだけで圧倒されますね…」

ピーチ「最近、温度が物足りなくて高圧ルームの120℃熱湯風呂をバリエーションに加えてみたわ。入ってみる?」

デイジー「謹んでお断りいたします」

~脱衣場~

キャイキャイ
ピーチ「……」ヌギッ

デイジー「…よしっ、まだ勝ってる」チラッ

ピーチ「」グサグサッ

デイジー「まーまーピーチさん。才能でいろいろ勝ってるんだから、
     胸 の 大 き さ  くらい負けたっていいじゃないのー
     そのうちいいこと あ る さ♪」トントン

ピーチ「……フフフ、オモシロイコトイウワネ、デイジー。ジョウトウジャナイノ」ユラァ

デイジー「ふふん、今度ばかりは負ける要素ないんだなあ、これが」ニヤニヤ

ピーチ「わかってない、わかってないわよデイジー。むしろ…今度ばかりは、あなたも…!
     敗北者として名を連ねることになることを…!」ニタァ

デイジー「…あ、しまった。そういうことか。うわぁ…」クルリ

ロゼッタ「…え?え?ええ?」

ピーチ「さあ脱げ。早く脱げ。いますぐ脱げ。
     デイジーの高笑いをこの場から消し去っておやりなさい」

デイジー「自分に至っては目の光を失いかねないことを放置してまで私を苦しめようとするなんて、
      ピーチ、なんて恐ろしい子…!でもまあ、なんでもいいや!ぬーげ!ぬーげ!」キャハハ!

ロゼッタ「えええええ!?そ、それは、急かされなくても脱衣所ですから脱ぎます、けど…。
      言いようのない恥ずかしさがあるのですが…!」





スルリ





ロゼッタ「そ、その、あんまり見ないでください…」カアア

ピーチ「………………………」

デイジー「………………………………………あれ?」

ロゼッタ「あ、あの、なんでしょう?」

ピーチ「…おかしいわね。確かに私より少し胸は大きいけど」

デイジー「『だいぶ』の間違いなんじゃないk」

ピーチ「フライパンの刑」ベゴンッ!

デイジー「」チーン

ピーチ「…おかしいわね。確かに私よりほんの少し胸は大きいけど…
    デイジーと同じくらいというか…覚悟、じゃなかった、想定していたより小さいというか。
    ……………………いえ、ちょっと待ちなさい。違和感の原因に気付いたわ。

    ロゼッタ、あなた、体の線、細すぎじゃない?体重、何kgくらい?」

ロゼッタ「ええ!?そ、それは言わなければなりませんか!?」

ピーチ「言いなさい」

ロゼッタ「…………えっと、その。すごく恥ずかしくて、あまり知られたくないので…
      特に男性陣には、絶対にばらさないでくださいね?」

ピーチ「わかってるわよ、口は堅いから!」フフ

ロゼッタ「その、実は……






            64 kg、なんです…!」カアアアァァ

ピーチ「」

デイジー「なんだってぇ!?」ガバッ

ピーチ「……ねえデイジー、あなたは何kgくらい?ロゼッタが64 kgなら、40 kgぐらい?」

デイジー「いやいやいや!どこのアイドルよ!体力、筋力付けまくらなきゃならないのに、
      そんなヒョロッとしていいわけないじゃない!60 kg手前にコントロールしてるわよ!
      だいたい、ピーチと同じくマリオカートWiiで『重さ補正のない(やや軽い)中量級』だったでしょ!?」

ピーチ「えーっと、確か…区分は…
        重さ補正なし軽量級・・・40 kg未満
        重さ補正 +1軽量級・・・40~45 kg
        重さ補正 +2軽量級・・・45~50 kg
        重さ補正 +3軽量級・・・50~55 kg

        重さ補正なし中量級・・・55~60 kg
        重さ補正 +1中量級・・・60~65 kg
        重さ補正 +2中量級・・・65~70 kg

        重さ補正なし重量級・・・70~85 kg
        重さ補正 +1重量級・・・85~100 kg
        重さ補正 +2重量級・・・100 kg以上
    だったわね。

    ロゼッタは確か…重さ補正なし重量級だから、70 kgはないとおかしいんだけど」

ロゼッタ「70 kgだなんて…太り過ぎですよ!
      風の噂で耳にしました、自制して体重を50 kg以下に抑えてこそ大人の女性なのだと。
      だというのに、私は50 kgどころか60 kgも越えていて、悲しくなってくるのです…」グスン

デイジー「んなアホな。体格のこともちっとは考慮してあげなさいよ…
      というか50 kgなら私たちだって余裕で越えてるって宣言したばっかりじゃない」

ロゼッタ「そ、そうなのですか?…ええっと。先ほどのものは、失われた記憶の間に挑戦したという、
      マリオカートとやらの話、ですか?話に聞くには、チコを含めてその重さだったとかいう…」

ピーチ「…あ、そうか、そうだったわね。チコのこと忘れてたわ」

ロゼッタ「標準的なチコって、体重40 kgくらいありますからね」フフ

ピーチ「なるほど、それで」









ピーチ「…………………………………ちょっとまってけいさんがあわない」ブルブル

デイジー「そこの体重計に乗れぇ!!」グイッ

ロゼッタ「きゃっ!?」



体重計「42.0 kgですね」

ピーチ「」

デイジー「」

ロゼッタ「…あれ?痩せてます、やった!」

ピーチ「(100年で更に痩せたってことなのね!)ロゼッタ、身長何cmよ!!」

ロゼッタ「え?えーっと、確か…205 cmくらいだったと思いますけど」





体重計「BMI 9.99ですね」

デイジー「痩せスギィ!!!」ガガーン

ピーチ「どういう、ことなの…」フラフラ

デイジー「というか、どんな食生活送ってたらそんなことになるの!?」

ロゼッタ「え、食生活ですか?私の場合…まず、水」

デイジー「食生活を聞かれて最初に水って答える人、初めて見たよ…」

ピーチ「…奇遇ね、私もよ…」

ロゼッタ「水は大事ですよ?水がないと、紅茶も淹れられないんですよ?」

ピーチ「水が大事なのは知ってる。そして、
    決して『紅茶が淹れられないから』って理由じゃないことも知ってるわ

ロゼッタ「あとは、ライ麦パンとミルク、ラズベリージャム、
     そしてアプリコットの香りのする紅茶ですね」

デイジー「ふむふむ」

ピーチ「ふうん…優雅ではあるけど、正直言うと、まるで栄養が足りてないわね。で、お昼ご飯は?」

ロゼッタ「はい?」

ピーチ「はい?って何よ」









ロゼッタ「今ので普段の1日の食事は全てですが…
      たまにチコたちとパーティを開いて追加で星くずパンを食べる以外では」

ピーチ「」

デイジー「そりゃあ綿飴半分でお腹いっぱいになるよっ!」

ロゼッタ「ほ、星くずはミネラルが豊富なんですよ?」

デイジー「ビタミンは!?脂肪は!?炭水化物は!?」

デイジー「ハーッ!ハーッ!信じられない!」

ピーチ「ちょっと頭を整理するわ。とりあえず…お風呂に、入りましょう、か…」

ロゼッタ「…は、はい」





ロゼッタ(チャポン、と静かに入った浴槽。デイジー姫が言う通り、素晴らしい心地でした。
      全ての疲れが、汚れと共に洗い流されていくようです。
      ただ…2人が深刻そうな顔で黙りこくるのが、少し気懸りでしたが。



      …訂正。2人がブツブツ何かを呟いているのが、かなり気懸りでしたが)

~ベッドルーム~

ピーチ「とりあえずロゼッタ、今のロゼッタの体、おかしいわ。おかしすぎる。
    普通の人の体は、そんな栄養失調状態じゃまともに動けないもの」

ロゼッタ「で、ですが私は」

ピーチ「うん、能力が高いわけではないけど、割と普通に動いているわよね。
     で、ちょっと試したいことがあるの。――そこのベッドに寝転んでくれるかしら?」

ロゼッタ「……?別に構いませんが…」ゴロン


ガチャッ



デイジー「ほい、持ってきたよピーチ。今更、1UPキノコなんて何に使うの?
      それも、こんなにたくさん」ドサッ

ピーチ「ちょっと、ね。デイジー、今からちょっと実験をするから、
     ロゼッタが死にそうになったら1UPキノコが尽きるまで
     与え続けてちょうだい。いい?」

ロゼッタ「ええ!?実験!?死にかける!?どういうことですか!?」


デイジー「なんかよくわからないけど、ピーチが言うんなら何か理由があるんだよね、わかった。
      油断せずスタンバイしておくね」スッ・・・




ロゼッタ(ピーチ姫は不吉な言葉を口にした後…何かに、誰かに、祈りを捧げ始めました…
      1分ほど経ったでしょうか。すると、ピーチ姫の頭上を星々が輝きながら旋回し出し…!!)

ピーチ「天空にて世界を守りし星の精たちよ、
     どうかその強大なる力と、万人との絆を以て
     神器の衣を砕き給え…!」




 

パアアアアアアアアア!!!!








ピーチ「……『ピーチフラッシュ』っ!!!!」カッ――!!!






ロゼッタ(私の体が、一条の明るすぎる光に、包まれました)

デイジー「な、なに?なにが起こったの!?」

チョール「ほっほっほ、マリオパーティ5依頼じゃな!」

マール「急に呼び出されるから、すわ一大事かと焦っちゃったわ~」

ハール「やれやれ、TPOをわきまえてほしいものだね」

ニール「まあ、困った時ならいつでもボクたちのこと、遠慮なく呼んでほしいね」

ネール「いつでも優雅に美しく、私たちは駆けつけますから」

テール「それで、僕たちがなにをやったかというとですね」

ダール「私たちの力を使って、ロゼッタ殿の強化を完全解除したのですな」

ティンク「つまり、能力アップが全部なくなって初期状態にされたってことだね!」

ピーチ「そういうこと。わかった?デイジー」

デイジー「だから、それが何だっていうn」チラッ



ロゼッタ(全身が痙攣したまま白目を剥いている)チーン

デイジー「」

ピーチ「…やっぱり」

デイジー「えいえいえいっ!!……なにこれ!?なにこれ!?
1UPキノコを使ったそばから、元の状況に悪化するんだけど…!?

      これ、すっごくまずくない!?というか、なんでこんなことに!?」

ピーチ「…かつてクッパがスターの杖を奪った時、杖の傍にいるだけで
     杖の力に影響されて、クッパは力を付けていったわ。
     それと同じことが、より悪い方向に起きているの」

ロゼッタ「」ピクピク

デイジー「悪い方向!?」セッセ

ピーチ「ロゼッタはね、魔法なら私をも超すくらいの技術を持ってる。
    さっき専用の機械で魔法Lvを図ってみたら、Lv128だったわ。
    私はまだLv85なのに…まあ、FPは圧勝だったけど。

    問題は、それが災いして、ありとあらゆる行動で
    『基礎体力が足りない?魔法の力で補え!』ってことを無意識に続けてきたことよ。
    …杖を直接には触っていない状態でも、ね」

デイジー「基礎体力を無意識に補うですって!?」

>>257
×図って  ○測って


ピーチ「100の力を出したいけれど、80しか持っていないから、
     魔法で30補って、余裕を持って力を発揮する。
   
     それが続くと、体が衰えて力を70までしか用意しなくなる。
     いままでと同じ行動を取ろうとして、魔法で40補う。

     …こういうことが繰り返された結果、今のロゼッタがあるみたい。
     つまり、『基礎体力は低いけど魔法は強い』んじゃなくて、
     『魔法が強すぎるせいで、0同然のはずの基礎体力がちょっとはあるように見える』のよ!」

デイジー「なんと。じゃあ、今の状況は…」

ピーチ「その魔法の援助を断ち切ってみたわ。自重で死にそうになってる」

デイジー「なるほど、これはわかりやすい」

ピーチ「クッパ含む私たちの場合は、
     『なんか強くなってる気がするな!よし、特訓を倍にするか!』みたいに
     負荷をより掛けて自分を追い込めるから問題はなかった。

     ロゼッタの場合、基本的にほうき星の管理とチコたちとの触れ合いで
     やることが終わっちゃうっていう生活を何百年と続けてきたから…
     …ああ、本当にロゼッタって記憶を戻せるのかしら…!?」

デイジー「とりあえずさ、状況はわかったから、ロゼッタ回復してあげようよっ!」

ピーチ「ロゼッタの杖を、寝転ぶロゼッタの体の上にでも置けば一発で治るわよ?
     …こんなふうに」ポン

ロゼッタ「…ハッ!?」ガバッ

デイジー「早く言ってよ!!」

~ピーチ説明中~

ピーチ「…というわけで、ロゼッタ。あなたは無意識に魔法に頼り続けてきた結果、
    魔法無しだと生命活動を維持するという最低限のことも出来なくなっている状態よ。
    
    記憶を取り戻すよりも、まず先にこっちをどうにかしないと冗談抜きにまずい。
    さっきみたいにいつ何時、ブーストリセットの魔法や仕掛けに掛かるかわかんないんだから」

ロゼッタ(杖に触れたことで、体中に再び魔法の力が巡り、体調を取り戻しました。しかし、私の体が、
     まさかそんなことになっていようとは。俄かには信じられません)

ロゼッタ「本当に本当なのですか?私もかつては魔法も知らずに草原を駆け回っていた遠い過去がありますし、
      実感が湧かないのですが…勘違い、ということは」

ピーチ「……えい」バッ

ロゼッタ「あ、杖をどこへやるのですか…え、ちょっと、まさか」



ピーチ「『ピーチフラッシュ』おかわり」パアアアアアア

星の精たち「はーい」

ロゼッタ「――――――――っ!?――――――――っ――――!!」モガキ

ピーチ「はい、杖返すわね。…信じ切るまで何回でもやるわよ?」

ロゼッタ「ええ信じますよ、信じますとも、信じますから。
      しかし、そんなに私の生活に問題があったのでしょうか…」ボロッ

ピーチ「…………ロゼッタ、今からいくつか質問するから、『はい』か『いいえ』で答えてちょうだい」

ロゼッタ「…?わかりました」



ピーチ「質問その1、『特に汗を流すような運動は最近やっていない』」

ロゼッタ「はい」



ピーチ「質問その2、『ちょっと重い物を動かそうとするとき、抱えて運ぼうとする前に杖の方に手が伸びる』」

ロゼッタ「…は、はい」



ピーチ「質問その3、『椅子に座っている状態で、本棚の本を取ろうと思った。
     この程度のことでも、取りに行くことはなく魔法の力で手元に引き寄せる』」

ロゼッタ「…………はい」

ピーチ「質問その4、『そもそも、浮遊移動するばかりで、滅多に歩こうとしない』」

ロゼッタ(そ、そんなことは流石に――)


・・
・・・
ロゼッタ「はい、星くずパンの完成よ。みんな、テーブルに集まって!」スィー

ロゼッタ「紅茶を淹れようとしたら、ポットの水が足りませんね。泉から(魔法で)汲んできた水が、たしかあちらに…
      よし、(念動力で)持ってきて、(魔法で)浄化して、追加しておきましょう。

      …ああ、水が足りなくなったら、今の一連の作業を自動処理してくれる魔法をポット自身に掛けておきましょうか。
      本を読んで待っている間にカップに注ぐところまでやってくれれば便利ですね!
      どうして今まで気付かなかったのでしょう!」フフフ

ロゼッタ「今日も無事にほうき星の管理をこなせました…そろそろ就寝ですね。
      チコ、おやすみなさい。明日も平和であるといいですね」フヨフヨ

チコ「寝ながら魔法の力でベッドまで漂っていけるって、いつ見ても便利だよね。さすがママ!」

チコ「おやすみなさーい!」
・・・
・・

ロゼッタ(…………あれー?)

ロゼッタ「え、でも、まさか、流石に…」ダラダラ





ピーチ「認めたくないのなら…質問を言い換えましょう。
    10秒以内に自信を持って『右手』か『左手』で答えてね。
    間違えたらあと10回はピーチフラッシュを食らわすわ。


    『歩くとき、右足と一緒に前に出すのは?』」

ロゼッタ「…………」フッ

ロゼッタ「すいません、歩いていないことを認めるので寛大なご措置をお願いします」

デイジー「うわあ…そういや、ロゼッタって某忍者アニメみたいに両腕を横に伸ばしたまま移動してばっかりだっけ。
      そうか、地面を足で蹴るって動作がないなら、基本的に腕を振る意義ないもんね。
      私たちも気付いてあげるべきだったかな、うん…」

ピーチ「…ハアァ、ここまでとはね。半ばお手上げ状態よ」バンザーイ

デイジー「どうするの?ピーチはピーチで、まもなく忙しくなるでしょ?
      私も一応考えてはみるけど…ぶっちゃけ自信ないよ?」

ロゼッタ「すいません…」

ピーチ「…とりあえず、マリオに連絡を取ってみるわ。何かアドバイスをくれるかもしれないし、
     ついでにパワースター獲得状況も確認できるしね!電話、電話っと」







マリオ「おう、パワースターか?とりあえず今日だけで120枚集めといたぞ。
    まあ、ステージ入ってすぐパワースターを献上してくれるクッパJr.とかも居たし。
    これでだいたい折り返し地点だな!」

ピーチ「」

マリオ「4人で協力したら本当に捗ってな…っておい、クッパ、暴れるんじゃない!
    …え?納得いかないだぁ?もともとは自業自得だろ!落ち着け!」


コレガ オチツイテ イラレルカァ! ウガー!

ザザーッ・・・



マリオ「悪い悪い、邪魔が入った。…で、なんだ?もう一個の要件って」

ピーチ「あ、ああ、それなんだけどね。ロゼッタのことで…」カクカクシカジカ




マリオ「……なるほど、状況は把握した。大変なことになってるみたいだな」

ピーチ「そうなのよ…何か、解決策ないかしら?ちょっと思い浮かばなくて…」

マリオ「ああ…配管工としての提案だが。
    ロゼッタが本当に本気で体質を何とかしたいなら、特効薬がないこともないぞ?」ウーン

ピーチ「嘘!?本当に!?……ロゼッタ、あなたが本気になれるなら、マリオがなんとかしてくれるって!」

ロゼッタ「本当ですか、こんなにあっさりと!?ありがとうございます!」

ピーチ「…で、何をすればいいの?……まず、キノコ城にワープ土管を置く?それで?」

ロゼッタ(ワープ土管ですか…あまり話が見えませんが…深い意味があるのでしょうか)



ピーチ「…なるほど。きょだいキノコで大きくなったロゼッタにワープ土管を飲み込んでもらって、
    相互に行き来できるようにするのね!飲み込んだ後に体が元の大きさに戻っても害はない、と!
    それでそれで?」キラキラ

ロゼッタ「えっ」



ピーチ「…ふむふむ!マリオとルイージが土管を使ってロゼッタの体の中に入り、
     無駄な組織を破壊したり、失活している組織に刺激を与えて活性化させたりして、
     健康な体を取り戻すのね!完璧でエレガントな作戦じゃないの!」

ロゼッタ「」

ピーチ「必要に応じて水をがぶ飲みしてもらったり、冷気を吸い込んでもらったりするかもしれないし、
     脳を弄るかもしれない?まあ、ロゼッタも本気だから許してくれるでしょう。この作戦で決まりね!
     妄想も捗るわ!CMを作るとするなら・・・・・・」



~ロゼッタのお腹の中で、マリオとルイージが大冒険!~
 
    キノコ王国を襲う(かもしれない)ナゾの病、ゲッソリ病の調査に乗り出した、マリオとルイージ!
    だけど、兄弟揃って、ロゼッタに吸い込まれちゃった!

    マリオとルイージは ロゼッタの体の中を! そしてロゼッタは キノコ王国を大冒険!
    それぞれを切り替えながら 道を切り開いていく!

    2人が体内を刺激すると…ロゼッタが底力を発揮!
    ロゼッタが水を飲むと…マリオ達の行動範囲が広がる!

    マリオとルイージで ブラザーアクション!
    ロゼッタでパワフルアクション!

     でっかいロゼッタが大暴れする 巨大化バトルも一新!
     豪快アクションで 敵をぶっ飛ばせ!





ピーチ「ゲーム化したら間違いなく流行る!CERO上がりそうだけど!」

ロゼッタ「ちょっと待ってくださいぃーー!!!」ガバッ

ロゼッタ「えっと、本気ではありますが、もうちょっと、ですね。
      穏便な作戦をぜひ、ぜひにお願い致します」ガクブル

ピーチ「我儘なんだから、もう…あ、マリオ?
     もうちょっと乙女のプライバシーが保護される作戦の方がいいんだって」

マリオ「まあ、そんな反応が返ってくることは分かってたけど。じゃ、基本を貫くくらいしかないだろ。
     ほどほどに『ピーチフラッシュ』で魔法の力を抑えて、よく食べよく運動しよく寝る。
     それで少しずつ基礎体力を取り戻すんだ」

ピーチ「…本気?何年かかるか分からないわよ?」

マリオ「俺たちの域まで急成長させるのは夢のまた夢だが、ごくごく普通の域まででとりあえず良しとするなら…
    なんとかならんでもない。…ちょうどいいや、そこにマールいるんだよな?」

ピーチ「ええ、呼び出したばかりだから居るけど…それが?なになに…ふむふむ…」メモメモ

ーチ「ちょっと料理作ってくるから、暇ならガラス棚の中のお菓子でも食べといてー!」バタバタ

ロゼッタ(マリオから何か聞き出したピーチが、颯爽とキッチンに去っていきました。
      一体何が始まるというのでしょう。日付も変わろうというときに、不安一杯です。
      明らかに、今から寝させてくれる雰囲気ではありません…)

デイジー「よいしょっと。へえ、ピーチが作る料理に負けず劣らず、ほっぺたが落ちそうなお菓子ばかりじゃない。
      それじゃ、遠慮なくいただきまーす!…うん、絶品!」パクッ

ロゼッタ「あ、あの。そんなに食べて、太りませんか?」

デイジー「…いい加減学習しなさいよ。この程度、ちょっと走れば消費できるカロリーなんだってば。
      ロゼッタにとっては一食にも値するかもしれないけどさ」

ロゼッタ「……見ているだけで胸焼けしてきます」

デイジー「そう?まあ、ロゼッタが食べることはないわよ。ピーチが作ってくれる料理を期待しましょ?」パクパク

【修正】

ピーチ「ちょっと料理作ってくるから、暇ならガラス棚の中のお菓子でも食べといてー!」バタバタ

ロゼッタ(マリオから何か聞き出したピーチが、颯爽とキッチンに去っていきました。
     一体何が始まるというのでしょう。日付も変わろうというときに、不安一杯です。
     明らかに、今から寝させてくれる雰囲気ではありません…)

デイジー「よいしょっと。へえ、ピーチが作る料理に負けず劣らず、ほっぺたが落ちそうなお菓子ばかりじゃない。
     それじゃ、遠慮なくいただきまーす!」パクッ

ロゼッタ「あ、あの。そんなに食べて、太りませんか?」

デイジー「…いい加減学習しなさいよ。この程度、ちょっと走れば消費できるカロリーなんだってば。
     ロゼッタにとっては一食にも値するかもしれないけどさ」

ロゼッタ「……見ているだけで胸焼けしてきます」

デイジー「そう?まあ、ロゼッタが食べることはないわよ。ピーチが作ってくれる料理を期待しましょ?」パクパク

ロゼッタ(…あ)

菓子箱の中のスターピース「」チョコン

ロゼッタ(星くずですか!こちらでも食用にされているのですね、ちょっと嬉しくなります!
      …こちらでは、どのような味がするのでしょうか?)ソワソワ

デイジー「…お?ロゼッタ、このスターピースに興味津々?
      私もまさか、こんな風に見ることになるとは思わなかったけど」

ロゼッタ「ちょ、ちょっとだけ食べてみても構わないでしょうか?」ソワソワ

デイジー「くくく、好奇心が勝っちゃったか。そりゃあ、いいに決まってるじゃない。
      …あ、ピーチが呼んでる。料理運んでくれってことかな?

      じゃあ、ロゼッタはここで待ってて。感想聞かせてね!」ダッ

ロゼッタ「……本当に、綺麗」ツマミ

ロゼッタ「…ふふっ」パクッ

デイジー「呼ばれて、やってきたよー。それにしても、キノコ王国でもスターピース食べるんだね!
      高級菓子にまでなってるなんて!ロゼッタも喜んでるみたいだったよ!」

ピーチ「スターピース…?入ってた覚えがないのだけれど…」

デイジー「え?私もちゃんと、この目で確認したよ?」



ピーチ「……………………それ、スターピースじゃなくて、はじける食感が癖になる『こんぺいとう』よっ!
     しまった、ロゼッタのHPで1粒食べたら…!」


    こんぺいとう:威力6(=キラキラおとし)  ロゼッタ(杖無し・魔力あり)最大HP:5


ピーチ「瀕死よ!」ダッ

デイジー「」



チュドーン!!

ピーチ「…遅かったか」

ロゼッタ「」チーン

デイジー「もう1UPキノコ係、誰かに代わってほしいんだけど…」ガクッ

ロゼッタ「……………………生きているって、いいですね」シンミリ

ピーチ「記憶をなくす前のあなたも、似たようなことを度々口にしていたわ。
     まあそれはともかく、さっさと席についてちょうだいね」

ロゼッタ「……」ノロノロ

デイジー「…はい、暗い話はやめやめ!で、ピーチ?これから何をするの?
      料理を食べてもらうってことはわかるんだけど」

サッ
ピーチ「はい、料理No. 01『キノコ炒め』。キノコだけを使った、シンプルながら味わい深い一品よ。食べてみて」

ロゼッタ「…はい、それではいただきます。
     ……なるほど、調味料の使用を最低限に留め、キノコ本来の味を最大限主張させている。
     さっぱりしすぎている感があり主役にはなれませんが、どんな料理とも引き立て役としてマッチすること請け合いでしょうね。
     それに、工夫する箇所が少ないからこそ、料理人の腕が如実に表れる。さすがピーチ姫といったところでしょうか」

ピーチ「うん、感想および賛辞、有難く頂戴するわ。…たった三くちでフォークを置いたのは頂けないけれど」

ロゼッタ「うう…」

ピーチ「まあ、予定通りだけどね。
     
     じゃあ、マリオとルイージに体中を操られる作戦、題して『マリオネット作戦』を断念しまして――」

ロゼッタ(ホッ)





ピーチ「これより、『催眠ループ作戦』を始めます」

ロゼッタ「……え?」





ピーチ「マール、お願い!」

マール「オッケーよピーチちゃん。『ママの子守唄』!」♪~

ロゼッタ「え、いきなりなんd」

ロゼッタ(スヤァ)バタリ

ピーチ「続けてチョール、お願いします!」

チョール「ほいや。『すっきり爽快』!」パアァァァ

ロゼッタ「…あ、あれ?私、今寝てました?」ムクッ

ピーチ「さあさあロゼッタ、まだ料理が残ってるから食べなさい?」

ロゼッタ「…ですから、まだお腹一杯になったばっかりで…あら?妙に…お腹が空いている?
      確かに、これならもう少し食べられそうですが。一体何をしたのです?」モグモグ

チョール「快眠状態で体の組織が活動をしやすいところに、結果として消化促進効果を重ねて効かせたのじゃよ。一瞬で消化完了じゃ!」

マール「おまけに、快眠状態って普通は連続では限度があるけど、チョールの技の効果には覚醒効果もあるから、
     メリハリ効かせて半永久的にループが可能なのね!…まあ、どこかしらに精神摩耗はあるだろうけど」

ロゼッタ「ご、強引すぎませんか?」

ピーチ「さあ、限界まで食べなさい。そしたらまた催眠掛けるから」

ロゼッタ「…え、そ、そんな!人権無視もいいところではないですか!?」

デイジー「サヤカちゃんと明日遊べなくなってもいいのー?」

ロゼッタ「…!!」

デイジー「今のままだと、ピーチはロゼッタを隔離して別の対策を探しかねないよー?
      サヤカちゃん悲しむだろうな、1日でママに裏切られるなんて。

     それに、ロゼッタが体力を付ければ、それだけまともにサヤカちゃんと遊べて
     ママの役割をこなせるんじゃないのかなー?」

ロゼッタ「……わかりました。やります、やればいいのでしょう!
     開き直りますよ、よろしくお願いしますっ!」

ピーチ「その言葉を聞きたかった」ニヤリ

ピーチ「よし、じゃあ再開しましょう!食べて食べて!」

ロゼッタ「はいっ!」パクパク

マール「『ママの子守歌』!」♪~

ロゼッタ(くー)バタリ

チョール「『すっきり爽快』!」パアァァァ

ロゼッタ「」シャキーン

ピーチ「料理No. 02『キノコソテー』。びりびりキノコを使うことで、同じ炒め物でもキノコ炒めとは違う旨みを醸し出すわ!」

ロゼッタ「旨みだけでなく、ピリッとした辛さもアクセントになっていて美味しいですね。
      使うキノコでこうも変わってくるものですか」パクパク

マール「『ママの子守歌』!」♪~

ロゼッタ(スゥー)バタリ

チョール「『すっきり爽快』!」パアァァァ

ロゼッタ「」シャキーン

デイジー「……」

ピーチ「まだ残ってる!」

ロゼッタ「は、はいっ!」モグッ

マール「『ママの子守歌』!」♪~

ロゼッタ(スヤァ)バタリ

チョール「『すっきり爽快』!」パアァァァ

ロゼッタ「」シャキーン

ピーチ「料理No. 03『キノコステーキ』。キノコと緊急キノコを絶妙な配分でカットしてこんがり焼く!
     染み出した成分が混ざり合うことで、まるで高級ステーキのような味わい!
     腕さえあれば極めて安価で済む、庶民の味方よ!」

ロゼッタ「…!これは、キノコを食べているというより、確かに肉のよう!目を瞑って食べれば、一層区別が付きませんね。
      信じられない味の変貌です」パクパク

マール「『ママの子守歌』!」♪~

ロゼッタ(フラァ)バタリ

チョール「『すっきり爽快』!」パアァァァ

ロゼッタ「」シャキーン

デイジー「……………………」

ピーチ「まだ残ってる!」

ロゼッタ「言われなくても、分かっていますっ!」モグッ

マール「『ママの子守歌』!」♪~

ロゼッタ(グゥ)バタリ

チョール「『すっきり爽快』!」パアァァァ

ロゼッタ「」シャキーン

ロゼッタ「……すっきり爽快という割に、少しずつ倦怠感が出てきたのですが」

ピーチ「強制的に組織を動かす以上、諦めて!」

ロゼッタ「……ですよね、知ってました」トオイメ

デイジー「…………私、見てるだけ?お腹空いてきたんだけど」

ピーチ「デイジーは…これ!」サッ

デイジー「…『ナカマモネガーウ』バッジ?なにこれ?」

ピーチ「スターパワーが全然足りないわ!ひたすら願っておいてちょうだい!」

デイジー「ええええー…殺生だよ…」



ピーチ「料理No. 04『ハニーキノコ』!火を通したキノコにハニーシロップを掛けるとあら不思議、
     手間は少ないのに絶妙なマリアージュが…」

ロゼッタ「っ!?」ピタッ

ピーチ「……」

ロゼッタ「…………………」

ピーチ「チッ、『失敗料理』に引っ掛からなかったわね」

ロゼッタ「『チッ』ってなんですか!?フェイントやめてくださいよ!」

~次の日~

ピーチ「うーん、まあこんなところかしら。10皿も平らげれば上出来ね。
    じゃあ私は仮眠を取るわ、もしかしたら今日からケーキ作りに入るかもしれないし。あのカメックたちの気合の入りようならね。
    そのときはキノじいに行動方針を書いた手紙を渡しておくから、昼に読んでちょうだい」

デイジー「無茶するなあ。本当に大丈夫?」

ピーチ「大丈夫、だと思う。まあ、なんとかなるでしょ。お休みなさい…すぅ」バタン

デイジー「そのままベッドに倒れ込んじゃったよ。大丈夫かなホントに。
      …じゃあロゼッタ、私たちは今日もサヤカちゃんと一杯遊ぶことにしよっか。
      なんでもピーチが言うには、変に筋トレメニューを沢山与えるより、
      日常行動でロゼッタのやる気を引き出しつつ運動させたほうがよっぽどいいらしいから」

ロゼッタ「…………お腹が一杯でないのに、まるで腹部をねじられているかのような…
     凄まじい不快感と共に胃もたれと吐き気がぁ…満身創痍なんですがぁ…」タエダエ

デイジー「日頃使ってない組織をフル稼働させたからね、しゃーない。あ、ピーチから書置きがあるんだった。えーっと…

      『私が寝た後、星の精たちに出力2割くらいのピーチフラッシュをロゼッタに掛けてもらってちょうだい。
       つまり、行動の2割分を基礎体力で何とかしなくちゃいけない状態ね。もちろん杖はデイジーが預かっておいてね。
   
      護衛は引き続きデイジーにお任せするわ。行動としては自由行動でOKよ。ただ、とりあえず部屋の壁から壁まで往復させてみるとかして、
      状況を始めのうちに自覚させておいて』

      だって。みんな、お願いできるかな?」

星の精たち「了解」パアアアアアアア!

ロゼッタ「ぐっ!?か、体が重い…!」ガクッ

ロゼッタ「…な、なんとかゆっくりとなら、歩けないことも…くぅっ!」ヨロヨロ

デイジー「おーい。右足と右手が同時に出てるよー。…まあ、この負荷が現状だと限界っぽいね。
      外見だけじゃなくて内臓とかにも負担は掛かってるだろうし、安全に行こうか。
      じゃあ、この状態でサヤカちゃんに怪しまれないように今日も一日頑張ろう!」オー

ロゼッタ「は、はいぃ……」ヨロヨロ

ロゼッタ「……」

ロゼッタ「あの、すいません。お花を摘みに参りたいので一度解除していただけませんか」

デイジー「あー、お城のすぐそばに立派な植物園があるよ。一緒に行ってみようか!」

ロゼッタ「…………」

デイジー「ん?どうしたの?」

ロゼッタ「えっと、デイジー姫。お手数なのですが。化粧直しをしたいので一度解除していただけませんか」

デイジー「化粧道具、ピーチから適当にくすねてくるから、ここですれば?」

ロゼッタ「……………………大変恐縮なのですが、お手洗いに参りたいので一度解除していただけませんか」

デイジー「扉出て右、たった30メートル先だよ。さあ、今日も一日頑張ろう!」ニコッ





ロゼッタ「なんでもしますからどうかお願い致しますデイジー様」ドゲザ

デイジー「…あ、うん、調子乗ってごめん」

ロゼッタ(あ。…どうでもいいことですが、土下座の姿勢の方が楽でいいですね)

デイジー「はい、杖ね。でも…今日の昼食夕食はともかく明日からはトイレにも自力で行かせろって
      ピーチからのメッセージがあったから…頑張ってね、ご愁傷さま」

ロゼッタ「鬼ですか!……ちょっと待ってください、昼食に夕食…!?」サアッ

デイジー「うん、その時間になったら一度お城に戻れってさ。
      さっきまでの食事はとりあえず朝食と認めるとしても、しばらく一日三食のまっとうな生活が続くから
      覚悟しておきなさい、ってことだよ」

ロゼッタ(不快感に加えて絶望感と眩暈までいらっしゃったようです…)

ロゼッタ「まっとうな、とはおっしゃいますが食事量が尋常ではないでしょう!」

デイジー「確かに一般市民からすると尋常じゃない量だけど…
      残念ながら、スポーツやその他イベント事でエネルギー消費しまくる分の補填として、
      私やピーチでも楽々平らげる量なんだよなあ、これが。毎日食べるとは言わないけどさ。

      大体、パーティで体より大きいフードの早食い競争とかもやってきたし」

ロゼッタ「……………………考えるのはやめました……とりあえずお手洗いに行ってきます……」

~キノコ城 城下~

サヤカ「ねえママ、あっちの店に行ってみようよ!」

ロゼッタ「…え、ええ、そうね。一体何があるのかしら」ギギギギギ

デイジー(油が切れたロボットみたいだなぁ)

サヤカ「わあ、金魚すくい!ママ、どっちが多く捕まえられるか勝負しよっ!」

ロゼッタ「う、うわー。サヤカ、掬うの上手ね!ママ、手先がふ、震えて全然捕まえられないわ」ブルブル

サヤカ「はいっ、タコ焼き買ってきたから半分こね!
     『お嬢ちゃんカワイイねグヘヘヘ』とか褒められて、1パック分サービスしてもらっちゃった!
     だから1人1パック食べられるよ!」サッ

ロゼッタ「」

ロゼッタ(サヤカには申し訳ないのですが、後で地獄が待っているのに、余計な物を食べたくありません……!
      ……デイジー姫、どうか、お助けを…!)

ポンッ

デイジー「安心して、ロゼッタ。不審者は私がきっちり成敗してくるから。
      というわけで、心おきなくタコ焼きを食べておきなさい」サムズアップ

ロゼッタ「」

サヤカ「一回、屋台巡りはやめて、キャッチピースの続きをしようよ!」

ロゼッタ「そ、そーれ」ポイッ

テン、テン、テン。

飛距離:2m

サヤカ「…………」

ロゼッタ「えっと、サヤカ、これは、その」

サヤカ「ママ…私と遊ぶの、嫌になっちゃった…?」ジワァ

ロゼッタ「」

デイジー「サ、サヤカちゃん!ちょっとこれには深いわけがあってね!ロゼッタは全力を出せなくなってるのよ!
      …あれ、こっちが素だって表現した方がいいのかな?と、とにかく、決して遊ぶのが嫌になったわけじゃないから!」

サヤカ「…昨日の、今日で?」

デイジー「そう、そうなの!第一、このロゼッタの顔がサヤカちゃんを嫌ってるように見える?見えないよね!?
      ってか、むしろサヤカちゃんに嫌われたに違いないと蒼白になってる顔だねこれ!」

ロゼッタ「」

サヤカ「…わかった。ママを信じる。だって私のママなんだから。
     疲れてるみたいだし、ベンチでおしゃべりなら…してくれるよね!」ニヘラ

ロゼッタ「サヤカぁーーー!!」ガバッ

サヤカ「え、え、ええ!?どうしてそんなに泣いてるの!?」

デイジー「色々と辛いことがあったんだよ、うん」メソラシ

サヤカ「というわけで、膝枕がいい!」

ロゼッタ「グスッ…ええ、そのくらいなら喜んでやらせてもらうわ」

サヤカ「とうっ」グイッ

ロゼッタ「わぷっ」

サヤカ「ママ、軽―い!」ケラケラ

デイジー「…………ロゼッタが寝るんかーい!」

ロゼッタ「さ、流石に親が娘に膝枕をしてもらうわけには!」

デイジー「ロゼッタさんや、思いの外に楽な姿勢であることを脳が知覚して、
      全身が抵抗を諦めてまっせ」

ロゼッタ「…仕方ないじゃないですか」

ロゼッタ(サヤカは、身の回りで起きた出来事を、面白おかしく話してくれました。
      特に力がこもったのが、キャッチピースについての話。

      サヤカの地元では野球というスポーツが盛ん。子供たちは小さいころから野球選手に憧れて、
      野球のボールを買ってもらうまではスターピースを投げ合って、
      キャッチボールや野球の真似ごとをして遊ぶようです。なるほど、それで投げ方を鍛えられたのですね)

サヤカ「…でね、こんな握りの形から投げるとストレート!…これならカーブ!
     …こっちならスライダー!…そんでもって、こうするとフォーク!
     まあ、握り方をとりあえず覚えてるだけで、実際に投げられるわけじゃ全然ないけどね」

ロゼッタ「へえ!面白いわね!」キラキラ

デイジー「……握ってるのがスターピースだけど、ロゼッタ理解できるの?
      実際の野球のボールにはある縫い目の空気抵抗がうんぬんかんぬん、って話なんだけど…」

ロゼッタ「握り方、縫い目への指の掛け方によってボールに掛ける回転ならびに進行面を絶妙に変え、
      球速との兼ね合いを考えつつ打者付近で大きく変化するように工夫するのですよね!
      私の頭の中には、スターピースの表面に縫い目がしっかりイメージできています」

デイジー「スピン力学のちからってすげー!」

サヤカ「ママ、こんなにすぐわかるなんてすごい!カーブくらいならすぐ覚えられるんじゃないの!?」

ロゼッタ「そうかもしれないわね!ちょっと試してみましょう!」スクッ

デイジー「おいちょっと待った、それはカーブを凄まじく冒涜した発言だし、スターピースじゃ勝手が違う
      …っていうか、ロゼッタを変に調子に乗らせないでサヤカちゃーん!!」




~昼食タイム、キノコ城~

ロゼッタ「…………手首がグキッといきました…」ジワァ

デイジー「うん、知ってた。頭で理解するのと実際に体が動くのとは別だよね。特に今のロゼッタの体力だと…。
      よくサヤカちゃんにばれないように我慢したね、えらいえらい。
      一旦杖を返してあげるから治しておいでー」

ロゼッタ「はい…」グズッ

キノじい「おっと、デイジー姫。姫様から手紙を預かっておりますのじゃ」

デイジー「ありがとー。さて、なになに…?」




手紙「ケーキ作りに掛かり切りになっちゃった。ロゼッタの昼食と夕食、デイジーが作ってあげて。
    明日の朝食にはなんとか戻れるようにするから。    ピーチ」

デイジー「……えっ」





デイジー「よし、なんとかなるものね。料理No. 15『キャシーディナー』!
      凄腕料理人キャシーさんの考案した、キノコをパスタと一緒に炒めた豪華な逸品!」

失敗料理「やあ」

ロゼッタ「……は、はい(やっぱりデイジー姫、怒っていますね…うう…)」パク

デイジー「できたっ!料理No. 16『キャシースペシャル』!
      木の実の甘さと素朴な芋の味が見事に融和し、濃厚な味を醸し出す!」

失敗料理「しっかり別々に味を主張しておくぜ」

ロゼッタ「……………………」パク

デイジー「まだまだ行くよ!料理No. 17『キャシーデラックス』!
      ポテトとキノコステーキを混ぜ合わせて、どうしてこんな料理ができるのか私にもさっぱりわかんないやアハハ!
      達人の発想は理解できないなー」

失敗料理「また会ったな」

デイジー「私もちょっと味見してみよっと!…………マズゥイ!!」グハッ

ロゼッタ(…………あ、違った。単に、凝った料理を作るにはデイジー姫の料理の腕が足りなすぎるだけですね)

デイジー「…うう、ごめんね。ピーチみたいに料理上手じゃなくて。作り直すよ…」

ロゼッタ「大丈夫です。既に食べ始めてしまったがために気付きましたが、
      味のまずさくらい、量に比べれば些細なことですから。無心になればなにも怖くありません」シンダメ

デイジー「それは現実逃避とか諦めの境地とか、満足の境界線を低次元に落とし込めただけじゃないかなあ」

ロゼッタ「とりあえず、言えることは……サヤカのためなら、頑張れます!」バクバクッ

デイジー「お、おう。母親って大変なんだね。じゃあ引き続き、失敗料理を生産してくるよ…」

ロゼッタ「あんまり応援はしたくありませんが、応援しておきます」フフッ








デイジー「なんだかよくわからないけど、こんなものができちゃった!
      料理No. 49『かみなりドッカン』!威力5の全体攻撃ぃっ!」

かみなりドッカン「さあ食え」

ロゼッタ「私が食べたら即死するものに限ってなんで上手にできるんですか!?」

~クッパ城~

オーライオーライィー! ピピーッ!
カメック(クッパシップが延々と往復し、ケーキの材料がひっきりなしに下ろされていく…)

カメック「お、おいどうした、さっさと運べ!ピーチ姫に何を言われるかわからんぞ!」

カメック「お、おう」



ブオオオオオオオオオッ!
ピーチ(巨大)「ハアアアアアアアアアアアアアアアーっ!!」シャカシャカシャカシャカ

カメック「うおっ、すごい風圧っ!?iいいか、くれぐれも材料を落とすんじゃないぞ!」

カメック「ラジャー!…ピーチ姫―、こちらに届いた材料、置いておきますよ!」

ピーチ(巨大)「ありがと!ちゃんと、ロット指定通りの分量ずつにしてる?ダブルチェックやったわね?
         間違えると1ロット無駄になるわよ!!」シャカシャカシャカシャカ

カメック「もちろんですとも!というか、こんな作業増やしてたまるものですか!」フンス

ピーチ(巨大)「あなたたちが用意してくれた器具、丈夫なうえにとっても使い勝手がいいわ!
         容器や殻を自動で外してタンクに貯めてくれる機器まで作ってくれたし!
         さっすがクッパが誇る魔法使い部隊ね!…あ、きょだいキノコ切れそう。1個お願い!」シャカシャカシャカシャカ

カメック「ほいさっ!」ヒョイ

ピーチ(巨大)「(バクッ)よし、助かるわ!じゃあ続けてやっていきますか!炉の方の準備はどう!?」シャカシャカシャカシャカ

カメック「最新鋭の機器に魔法制御も駆使し、繰り返しテストで空間全域において設定温度の±1℃以内に収めています!
     実際にスポンジを焼くときの温度ムラも±5℃以内となっております!」ビシッ

ピーチ(巨大)「上出来よ!でも油断しないで、どこか1か所でも異常が発生してストップすると全工程がホールドになっちゃうからね!
         おまけに規模が規模だから、作り貯めしておくスペースがないわ!
         魔法で異次元収納とか恐ろしく高度で疲労するようなことをやりたくなかったら、メンテナンス欠かさずにっ!」シャカシャカシャカシャカ

カメック(我々は100人以上総動員で3交代制でヒイヒイ言ってるのに…歴戦の姫は次元が違いますねえ、やれやれ)

~一方、どこぞのギャラクシー~

マリオ「パワースター、150枚目ゲーット!!」グリーンスター ダケドナ!

ルイージ「やったね兄さん!」

ヨッシー「……でもマリオさん、なんだかペース落ちてませんか?」

クッパ「そうだぞ!このままでは3日間で間に合うかヒジョーに怪しい!
    もっとカリカリ急ぐのだ!」

マリオ「大丈夫大丈夫、ピーチとの連絡で期限延びたから。というか延ばさざるをえなくなったから。
     ロゼッタの体力づくりをちょっと優先させたいんだと」

ルイージ「あー、基礎体力をつけ直すっていうやつ?大変そうだね、ロゼッタ大丈夫かなぁ」ポン

リオ「それに、1日120枚ペースはやっぱりしんどいからな。ペースを落とせるなら落としておきたいだろ?」

ルイージ(兄さんは少なくとも全く疲れてないよね)

マリオ「というわけで、適当なギャラクシーをステージにしてスマブラごっこやろうぜ。初期ライフ3で、ライフ0になったら負けな」

クッパ「おっ、いいな!道中で残機も結構増えてきたことだし!」

ヨッシー「いいですね!」

ルイージ「えええええ…」

――ピーチたちの計画の遅れを見越して遊んでいた。

~夜、キノコ城~

ロゼッタ「」チーン

デイジー「サヤカちゃんとの午前・午後の触れ合いに、昼食・夜食の完食!お勤めご苦労様っしたー!」ケイレーイ

ロゼッタ(事前にトイレに向かっていたため事なきを得ましたが…お腹の感覚が…相変わらず…絶不調です……うぷ)

デイジー「あはは、面白い顔をしてるね。どう、少しは体の動かし方に慣れてきた?」

ロゼッタ「……まあ、多少は」

デイジー「それはよかった!じゃ、もう少し『ピーチフラッシュ』の効力を強めても大丈夫そうかな!30%くらい、行っとく?」

ロゼッタ「そそそそれはまだ、早いのではないでしょうか!?当分、20%でよいかと!無理はいけません、はい!」

デイジー「えー…」

ロゼッタ(オモシロクナーイ、と口を尖らせながらも、デイジー姫は諦めてくれました。
      …お気持ちにお応えしたいのはやまやまですが、お腹だけではなく、既に体の節々が悲鳴を上げている状態。
      スターの精たちの技の副産物で眠くはないのですが、少しでも早くベッドに倒れこみたい状況です)

デイジー「じゃあまあ、今日はこのまま寝ることにしよっか。ピーチの部屋のベッド譲ってあげるからさ。
      眠くはないだろうけど、しっかり体を休ませておくのよ!じゃあね!」スタスタ

ロゼッタ「え、勝手にベッドを使わせて頂くというのはちょっと…」

デイジー「ピーチなら許してくれるって。それにちょくちょく遊びに来てる私は、専用の部屋ひとつ貰ってるし―!」ヒラヒラ

ロゼッタ「そ、そういう問題なのでしょうか…(バタン)ああ、行ってしまいました」

視界に映る、鮮やかな絵画に彫刻。
なるほど、ベッドから改めて部屋全体を見渡してみれば、この部屋も思いのほか趣にあふれていたのですね。
それでいて、決して華美すぎず派手すぎず。棚などの調度品との融和もしっかり図られています。


ーーこれは、覚醒効果が作用していなくとも、中々寝付きたくなくなる環境ですね。
そんなことを、ゴロンと背中から倒れこんで、考えます。

カチカチ、と無機質な時計の針の音だけが、僅かながら耳に入ってきます。
枕もとの小さな明かりだけを付けた状態で、ボーッと時計を見やりました。



カチカチ。
カチカチカチ。
カチカチカチカチカチカチ――――。



ロゼッタ(…わかっていましたが。本当に眠れませんね…)

1時間経過。

2時間経過。

3時間経過。

そろそろ、横になったままというのも、少々馬鹿らしくなってきました。
…もう少し早く気付けばよかったですね。

ふと、悪戯心が働いて、ベッドから身を起こします。
全体の照明は消したまま、童心に帰って…薄暗い部屋を探検することにしました。

探検とは大げさだなぁって?いえいえ、この部屋の広さをなめてはいけません。
さすがはピーチ姫の寝室。壁伝いに1周するだけで150…いえ、200メートルは優にありそうです。
そんな中を、目新しい物を訪ねて、のそのそと彷徨って回る。
私からすれば立派な探検と言ってよいでしょう。


今にも動き出しそうな、躍動感に満ち溢れた銅像。
…近づいたら目が赤く光って剣を振りかざそうとしたなんて馬鹿な話が、
ああああるわけありませんよね、あ、はは、ははは。

中から何か飛び出てきそうな絵。
…触れようとしたら表面が波打っていたのはきっと気のせいです。目の錯覚です。

デイジー姫がお菓子箱を取り出したガラス棚。
…いかにも貴重なトロフィーや盾が飾られているようでしたが、それよりも
「絶対にロゼッタを絶命させるスイッチ」とかが仕込まれていそうで、
まともに見ることができませんでした、はい。…トラウマって怖いですね。

眺めるたびに口を小さくポカンと開けつつ、へぇ、とかほぅ、とか月並みの感想とため息しか出てこない自分に苦笑いしていたところで、
到着したのは衣裳棚。これがまた、本当に大きいこと。引き出しが何十個あるのでしょうか、数える気にもなりません。

試しに、大変無礼ではありますが一つ開けてみました。

暗がりで、はっきりと見えたわけではないのですが、
如何なる社交場に出ても恥ずかしくないこと請け合いの立派なドレスばかりです。

こ、ここまでするのが普通なのでしょうか。ちょっと眩暈がします。
…き、きっと来賓対応回数が尋常でないピーチ姫だからこそなのでしょう。そういうことにしておきましょう。





情けなくも現実逃避をしつつ視線を泳がせて…ふと、目に入った小さな引き出しがありました。

気付いたのは本当に偶然。何せ、ほぼ反対側にあった隅っこの引き出しですから。
非常に些細なことなのですが、数センチだけ閉まり切っていなかったのです。

閉めておいてあげましょう…そんな、軽い気持ちで私は近づいていきました。




取っ手に指を掛けた…その時です。





ロゼッタ(……?この感触…術式が仕込まれている?)

興味が勝ってしまった私は、閉めるはずの引き出しを
ゆっくりと…ゆっくりと開けて、中にあった袋を取り出してみました。

…私の解析が正しければ…どうやら、『固定化』の魔法が掛けられているようです。
何故?という気持ちが渦巻きます。

固定化魔法の使い道は、主に2つ。

一つは、ケーキ作りの時にもピーチ姫が漏らした通り、
「本来柔らかい・脆い物体の強度、硬度を高めて破壊されないようにする」というもの。

もう一つは、「物体の状態を保存して、時間による腐敗、風化、劣化を防ぐ」というものです。

どちらの使い方にせよ、一般に衣服について固定化を掛けるのは無駄としか言いようがありません。

強度のためならば、普通の服を固定化するよりも、最初から魔法の力を編み込んだ戦闘服を用意した方がよほど頑丈で長持ちするものを作れます。
そして、魔法の力を編み込んだ服については固定化が発動しない、という歯がゆいことになる始末。
「どうしても本来は頑丈にできないもの」を無理やり強化するときのみ、固定化が意味をなすと言っていいでしょう。

状態保存のためというのもおかしな話です。衣服なのですから、速やかに服屋に修繕してもらうか、
修復不可能なほど損傷が激しければ捨ててしまえばよいのです。
「国宝級のアイテムが傷ついた、専門家が到着するまで是が非でも保全しなければならない」みたいな、
ごく限られた状況下でのみ価値が出てくる。その程度の魔法なのです。



どうしても、どうやっても結論が出なかったので…失礼に失礼を重ねて、袋を開封してみることにしました。
私にしては、かなり大胆な行動かもしれません。

と、その時です。



ーーヤメナサイ。
ロゼッタ(…え?)



ーーーーソレ、アケテハ ナラナイ!
ロゼッタ(…っ!!)ビクッ




身の毛もよだつ恐怖感と共に…
どこからともなく聞こえる声に、思わず手を放しました。
取り返しのつかないことをしでかしたのでは、とパニックに。



盗もうとする輩へのトラップが仕込まれていたのでしょうか。
もう瀕死になるのはこりごりと、ぶわっと汗を噴き出しながら遮二無二、後ずさります。

五秒。十秒。三十秒。
ロゼッタ(…………何も、起こらない)

ほっとして、へたりとその場に座り込みました。
…しかし、落ち着いて考えてみれば、どこか変な話です。
警告の段階で諦めれば回避できるトラップなど、ピーチ姫の部屋にまで侵入した不届き者への仕打ちにしては
…これまた随分と手緩くはないでしょうか。

ロゼッタ(…………)スッ

血迷った…かどうかはわかりませんが、もう一度近づき、落とした袋を再び抱えます。




ーーアケテハ ナラナイ!



ロゼッタ「…………感情のこもっていない人工知能の声…というわけではないですね」



何故でしょう、どこか警告者自身が震えている気がします。



ロゼッタ「かといって、ピーチ姫の声、でもない」

こんなに気弱そうなピーチ姫はちょっと想像できないですしね。

ああ、そうですか。








ロゼッタ「…これは、私の心の声ということですか」










第六感というものか、はたまた虫の知らせというものか。
時計の秒針が二回りほどする間、考えて…意を決して、開けてみることにしました。

ファサッ…。


ロゼッタ「……なんでしょうか、これ?」



「ソレ」を広げてみたものの、最初はいまいちピンと来ませんでした。
そんなに警告を発するようなものには思えないのですが…。


青と赤が半分ずつくらい…いえ、青い下地が今にも赤に浸食されようとしている、
という方が正しいでしょうか。視る者全てを遠ざけてしまうような…禍々しい、酷い有様のドレスです。

ロゼッタ「というより、まさかこれって…夥しい量の血ですか!?痛々しいですね、一体どういう状況でこんなことに…」





そこで、ようやく私は気づく。



…このドレス、どこかで、見たことがないでしょうか。それも頻繁に、日常的に。
ああ、そうでした。血の部分がなければ、私が日頃身に着けているドレスそのもーー

ドクン。


視界が、ぼやける。


ドクン。


なぜでしょう、息が苦しくなる。動悸が、激しくなる。


ドクン。



全く理解できないまま、津波のように押し寄せてくる感情。フラッシュバック。
激痛。
嘔吐感。
後悔。
絶望。



ナニモ カンガエラレナイ。



気付けばドレスは手をすり抜けてカーペットに落ち、体は抵抗もなく横倒しとなり――
ほどなくして、私の意識も失われていたのでした。

「――――っ!――――っ!!」



ロゼッタ(…誰かが、私を、呼んで、いる?)


その人が、とっても悲しんでいる気がして…静かに、瞼を開けました。

ピーチ「ロゼッタ、ロゼッタ!目を覚まして!お願い!」ボロボロ

ロゼッタ「……………………」パチッ

ロゼッタ「…………ピーチ…姫…?」

ピーチ「……ああ、ロゼッタ!よかった……!!」

ロゼッタ「…すいま、せん。私、昨日寝付けずに。部屋を探索していて、それであのドレスを見つけて、それで…」


ピーチ「もういいの、わかったから。話さなくても大丈夫。大丈夫、だから……っ!!」ダキッ




泣き腫らしたピーチ姫にソファにて待つように言われ、待つことしばし。

荒れていた私の精神も少しずつ安定してきたところで、ハーブティーの淹れたカップをお盆に、ピーチ姫が戻ってきました。
私が黙ってそれを一口飲むのをきっかけに、ぽつぽつと言葉を紡ぎ始めました。

『今』の私の記憶にはないけれど、マリオカート参戦にあたって、『未来』の私が、
筆舌に尽くしがたい、とてもつらい思いをしたこと。

状況全てを把握しているわけではないにせよ、『未来』の私が病室のごみ箱に…汚れきったドレスを捨てたらしいこと。

病院関係者からそれを受け取り、一時は捨ててしまおうとしたけれども、どうしても捨てられなかった、というピーチ姫の想い。



ピーチ姫は、時たま嗚咽を漏らしながら…赤裸々に語ってくれました。



ピーチ「…はは、ここまで血が染み付いて赤黒くなってると、キノコ王国の技術を以ってしても、元の状態に戻すのは無理なんだって。
     強引に漂白しようとすれば、元の透き通る青い色まで台無しにしちゃう。

     惰性で固定化まで掛けて、これ以上ボロボロにならないように…不衛生にならないようにはしてみたけど、
     いつか解決策が見つかるわけでもないのに…我ながら女々しいわよね、全く…」

ロゼッタ「……………………」

ピーチ「おそらく、悲惨な状態のドレスを見ることで、断片的ながら記憶が繋がったのね。
     それも、まるで知りようのないはずのロゼッタの心の奥底に眠っている恐怖が、悲しみが暴走して。
     …ふう、もはや、百害あって一利なしの代物になっちゃったみたい。
    
     ようやく今度こそ、捨てる決心がついたわ。このことは、綺麗さっぱり忘れなさい」




ピーチ姫は立ち上がって、座ったままの私の頭を優しく撫でる。
私はただ…撫でられるがまま。




そして一呼吸おき、ピーチ姫は改めて、ドレスを前にして両手をかざす。

きっと、今から魔法で焼き尽くそう、滅しようとでもしているのでしょう。
手が眩く輝きだしています。




ロゼッタ「…………」

ロゼッタ「……………………っ!」サッ

私はーー思わず、ドレスをテーブルから掴み上げ…胸元に抱え込んでいました。

ピーチ「…え、ロゼッタ、どうしたの?」

魔法の向ける先を失ったピーチ姫が、困惑してこちらを見やります。



ロゼッタ「…………正直言いますと、今でも…このドレスを見るだけで吐き気がします。
      …ですが、初見時のような激しい嫌悪感、というものはありません。

      それよりも…ピーチ姫との絆を…信頼関係を…感じて、とても嬉しいのです。
      …私に、向き合う時間を、いただけませんか?」



特訓の疲労と合わせて、辛さは倍に。それでも、ほのかに感じるこの暖かさ、心地よさを捨て去るのは…惜しいと、感じてしまいました。

ピーチ「……で、でもまた発作が起きたら…!」

ロゼッタ「大丈夫です、そもそも吐き気や嫌悪感は食事の方で慣れっこになっていますから、不本意ながら!
      …今ここで、このドレスが失われることの後悔の方が、大きい気がするのです。
      どうか、私の我儘、お許しいただけませんか…?」

ピーチ「……ハア、わかったわよ。一度言ったら、ロゼッタって案外頑固だものね」フフ

ピーチ姫の顔に若干ながら笑みが戻って、私としてもうれしい限りです。

ロゼッタ「……ピーチ姫」

ピーチ「ん、なぁに?」

ロゼッタ「私、頑張りますから。今まで以上に、一刻も早く記憶を取り戻せるように」

ピーチ「…そう、わかったわ!私ものんびりしてられないわね!明日の朝ごはんも覚悟しておいてちょうだいよ!」

ロゼッタ「あ、はは、はい。お手柔らかにお願いいたしまーー」ビクッ

ピーチ「……ロゼッタ?」







ロゼッタ「…………」プルプル

ロゼッタ「すいませんとりあえず今は吐きそうですいや吐きます」ウプッ

ピーチ「えっあっちょっと待ちなさい私に向かって倒れ込んでこないでえええええ!!!」



ーーとりあえず、とっさにピーチ姫がドレスを投げ飛ばしてくれたおかげで、血濡れのドレスは汚れずにすみました。

え?その他?ノーコメントでお願いします。
何事かと今更駆け込んできたデイジー姫に、ピーチ姫が腹いせで回し蹴りを食らわせたのも、たぶん私のせいではありません。


ズラズラッ…


ピーチ「さあ食べなさいロゼッタ、限界に挑戦よ」ユラァ

デイジー「コノ恨ミ晴ラサデオクベキカァ…」ユラァ

ロゼッタ(うわぁい、お二方とも目がマジです、睨み殺されそうです。
      保身のためにも、料理を全部平らげなければならない模様です)ガクブル



ーーまあ、でも。
頑張ろうという思いが沸々と湧き上がってきて、
私はフォークとナイフをせっせと動かし続けたのでした。

ピーチ「…焚きつけた私たちが言うのもなんだけど、かなり食べたわね。ひぃ、ふぅ、みぃ…15皿も。
    すごいじゃない!これで私も、心置きなくケーキ作りに向かえるわ!じゃあ行ってくる!」ダッ

デイジー「やれやれ…ピーチ、タフだなあ。じゃあ、私たちも行こうか!
      星の精さーん、とりあえずピーチフラッシュを25%くらいで…」

ロゼッタ「…いえ。今日は30%に挑戦してみようと思います。昨日からの体力増強など微々たるものですが、
      余裕を捨てればこのくらいはカバーできるはずですから」

チョール「…え、いいの?ほいっと」パアアァァァァァ

ロゼッタ「ぐっ…………!さすがに、辛い、ですねえ…!!でも、気力次第でなんとかして…みせますっ!」ギチギチ

デイジー「お、おおーっ!なんかロゼッタ燃えてるねー!必死に歩いてていつの間にか疲労骨折とかやめてよねー、キャハハ」

ロゼッタ「いざとなったらスーパーキノコでごまかします!」キリッ

デイジー「うん、私ね、ロゼッタの持ち味のおしとやかさも好きだよ?あんまり打算的にならないでね…?」

ロゼッタ「サヤカ、ママが荷物持ってあげるわ。手がふさがってたら不便でしょう?」

サヤカ「…手が震えてるけど、だ、大丈夫なの?」

ロゼッタ「だ、大丈夫よ!…たぶん」

サヤカ「そ、そう……?」



サヤカ「ちょっとトイレ行ってくるー!待っててね!」

ロゼッタ「ええ、わかったわ。…さてと」スクッ スッ・・・ スッ・・・

デイジー「ええっとロゼッタさん。何をやっていらっしゃるのかな?」

ロゼッタ「はい。サヤカが戻ってくるまで、スクワットをして少しでも体を鍛えようと。
      大したスピードではありませんが…時間を有効活用ですっ」ノロノロ・・・

デイジー「私含めてすっごく恥ずかしいからやめなさい」

射的屋「お、なんでい。また来てくれたのかい?」

ロゼッタ「投げ方もなんとなく学びましたし、今度はしっかり投げて景品を手に入れて見せますっ!
      サヤカ、これはリベンジ戦なの。応援していてね!」

サヤカ「ママ、頑張れー!」

デイジー「(事前に魔法の杖を一度回収したと思ったら、スターピースの引き出しをやってたのか…)
      いいカモだなー。おー、がんばれー(棒)」











射的屋「……なんだ、その。流石に良心が痛むから、景品どれでも1個持ってけよ。
    散々スターピース恵んでもらったし」

デイジー「前回と合わせて、200個超えたんじゃないかなあ」

ロゼッタ「」ズーン

サヤカ「よしよし」ナデナデ

デイジー「ねえねえ、私もちょっとだけやってみていい?見てるだけってのもつまんないし」

ロゼッタ「…はい、では残り少ないですが差し上げます…まだ非常用の第3倉庫以降がありますし…」

デイジー(一体いくつスターピースの備蓄があるんだってばよ)

デイジー「んーと。握りやすい、このスターピースでいいや。狙い定めて…えーい!」




ヒュゥー……ガコンッ!!





デイジー「あ、普通に当たった」

ロゼッタ「」

射的屋「うおっ、そっちのお嬢さんはとんでもなく上手いじゃねぇか!
     しかも、侵入禁止のラインから体を全く乗り出さない正々堂々っぷり、惚れ惚れするぜ!
     ほれ、景品どうぞっと」

デイジー「ありがとー!じゃあロゼッタもご厚意に甘えて、景品選びなよ!」

ロゼッタ「……はい」グズッ

ロゼッタ(もっともっと…強くならなければ…!)

~夜~

デイジー「くー」スヤァ




ロゼッタ「――――――――97」

ロゼッタ「――――――――98」

ロゼッタ「――――――――99」

ロゼッタ「――――――――100」

ロゼッタ「――――――――101」



マール「…こんなに夜遅く、何をやっているの?照明も付けずに。
     百鬼夜行の真似ごと?お百度参り?」

ロゼッタ「ハァ……ハァ……は、話しかけないで、くださいよ。どうせ寝られないので、
      体を鍛えるために『しゃとるらん』なるものをやっているだけですから。
      この部屋、おあつらえ向きな広さをしていますし」

チョール(思いっきり歩いている時点で本来ならリタイア扱いじゃがのー。
      まあ、運動すること自体に意義があるから立派なことじゃ)

マール「まあ、必要なら『すっきり爽快』で補助できるけどね、何度も言うように精神摩耗には効果がないのよ。
     ストレス貯め込み過ぎないようにね」

ロゼッタ「まだまだ、です。とりあえず100往復するまでは終われません」

マール「100往復なら今さっき終わったじゃない」

ロゼッタ「…あ、そうでした!…確かに疲労がたまっているようですね、終わりにしましょう」

マール「はい、引っ掛かった。片道ごとにカウントしてるから、まだ51往復目ー。
     ……本当に疲れてるじゃない」

ロゼッタ「」







ロゼッタ「…………なら、のこり半分もこなすまでですっ!」テクテク

マール「…ピーチちゃんに怒られるかもだし、強制的に眠らせようかな」

チョール「やめてあげなさい」

―――30%、35%、40%。

自分の限界を見定めつつ、少しずつピーチフラッシュの効果を高めていく。



―――40%、45%、20%、20%。

時には限界を見誤り、内臓の方が深刻なダメージを受けていてドクターストップ。
お腹を押さえて身悶えながら、ベッドで1日寝たきり、なんてことも。



…それでも、めげない、投げ出さない。



今までとは比べ物にならない量の栄養素よ、筋力と健康の糧となれ。
昨日より、百歩…いえ、千歩多く足を踏み出せる自分を目指せ。

ロゼッタ「ピーチ姫がケーキを作り終えるまでに、
      自分の力だけで体をカンペキに動かせるようになりますよ…!」





デイジー「それはペースを考えてもあまりにも無謀で不可能な話なんだけど」

ロゼッタ「ですよねー」ガックリ

~ギャラクシー~

マリオ「よっしゃあー!240枚目のスター、ゲットだぜ!」

ルイージ「あっといっちまい!あっといっちまい!」ルンルン

ヨッシー「明日はクッパの誕生日ですし、ケーキできてるでしょうからさっさと食べに行きましょうよ!
      (さっそく、最後の一枚も油断せず取りに行きましょう!)」

クッパ「心の声と逆になってるぞー」

マリオ「しっかし、ちょいと先読みして『241枚集めきったぞ』ってメールをピーチに送ったんだが、
    全然返事がないな…何かリアクションが欲しいんだが…」

ルイージ「ケーキ作りに精根尽き果ててグロッキー状態になってるとか」

マリオ「はっはっは、まさか。ピーチに限ってそれはない」

ヨッシー「ないない」

クッパ「ないわー」ガハハ

~クッパ城~
ピーチ「…………」フラフラ

デイジー「……」ジーッ

ピーチ「右を見ても、ケーキ。左を見ても、ケーキ。

     前を見ても、ケーキ。後ろを振り返っても、ケーキ。

     上を見上げても、ケーキ。下には片づけ損ねて踏ん付けた廃棄ケーキ…

     口の中も、寝る所も、みんなケーキ…」ウワゴト

ロゼッタ「」

ピーチ「飴にも負けず、風邪にも負けず――
    氷にも焼成炉の熱さにも負けぬ丈夫な体を持ち――
    欲はなく怒る暇もなく、いつも無表情に働いている――

    一日にケーキ40ホール分とクリームと余りのフルーツを食べ――
    あらゆる工程を、自分の感情を挟まずに――
    よく指導し状況把握し、そして忘れず――
    ケーキとケーキの間の陰の小さな仮眠スペースにいて――


    東に腐りかけのフルーツあれば、行って勿体ないと自分で食べるしかなく――
    西に疲れたカメックあれば、行って回復魔法を掛けてやり――
    南に死にそうなノコノコあれば、行ってもう働かなくてもいいと言い――
    北に不注意による配分ミスがあれば、作り直しにすぐさま取り掛かりつつ、
    お願いだからやめてと言いながら、味の悪い大量の不良品を頬張り――」ブツブツブツブツ

デイジー「……ピーチがここまでなるなんて。なんて魔境なの…!」

ロゼッタ「あわわわ…」

ピーチ「大体、カメックたちったら酷いのよっ!交代制で働いて、負担は遥かに小さいくせに、
    ちょっと感心したり褒めたりしたら、すぐにミスをするんだからっ!
    超特大ボウルを頭上から落とされたときとか、
    きょだいキノコと毒キノコを間違えられたときなんかは殺意を覚えたわ!」

カメック「で、ですからー、何かの間違いじゃないですか?流石にそんな素人は我らカメック部隊に居ませんって」

ピーチ「実際に気絶したり毒に苦しんだりしたでしょうが!言い訳無用!」

カメック「ひいいいいいいいい!」

デイジー「どうどう、抑えて抑えて」

ピーチ「……ふ、ふふ、ふふふふ。オーッホッホッホッホ!でも安心しなさい、デイジーにロゼッタ。
     紆余曲折あったけれど、まもなくケーキは完成するわ!クッパの驚く顔が今から楽しみで仕方がないわ!」

デイジー「……そのこと、なんだけどさ。やっぱり、作ったケーキ、クッパが心停止するくらい大きすぎるんじゃあ…」

ロゼッタ「そ、そうですよ!」アタフタ



ピーチ「今から楽しみで仕方がないわ…!」ゾクゾク

デイジー「だから、ちょっと頭を冷やしてだねー」




ピーチ「ああ、今から楽しみで仕方がないわぁ……っ!
     仕上げに取り掛かるから、貴方たちは首を長くして待っておきなさい!」グヘヘ

デイジー「ソウデスネー、ワカリマシター」

ロゼッタ「タノシミデスネー」

ディアボロ「あれ.....ここは.....どこだ....レース場?」
ディアボロ「ッ!」
ロゼッタ「今のところ一位だし猛スピードでゴールだッ!」
ディアボロ「おれのそばに近寄るなーーーーーッ!!!!!」
ロゼッタ「あれ?なんか轢いた?....まぁいいや♪」

今日のボス「ロゼッタに轢かれ死亡」

ロゼッタ(ああ、そうだ。忘れずに、伝えておかないと)




――クッパの誕生日が来る、ということは。
マリオ達がパワースターを集め切る、ということ。





それは、星くず祭の終わりを…私の帰還を意味するのだから。

サヤカ「…ええーっ!今夜で星くず祭、終わっちゃうの!?」

ロゼッタ「……ええ、そうよ」

サヤカ「…………嫌、嫌だ!それって、ママとお別れしないといけないってことでしょ!絶対絶対、反対なんだから!」

前もって理解はしているはずのサヤカ。しかし…気持ちの整理がそう簡単に付けられるはずもありません。
私でもこんなに辛いのです、幼いサヤカにとってはなおのことでしょう。
それだけサヤカにママとしての役割をこなせていたのだ、と嬉しくもありますが――。

あちこち回って、キャッチピースをして、いろいろな話で盛り上がって。
本当に楽しいひと時でしたが、終わりの時が近付いてきたようです。

サヤカ父「こらサヤカ、ロゼッタさん…いや、ママを困らせるんじゃない!」

ロゼッタ「…心配しないで、サヤカ。お別れしても、ママの心の中に、サヤカはずっといるから。
     サヤカの心の中にも、ちゃんとママがいて――これからずっと、見守っていてあげるから。……ね?」スッ

サヤカの頭を優しく撫でようとします…が、サヤカ自身の手によって、乱暴に跳ね除けられてしまいました。
パシン、という高い音が響きます。そのまま泣きながら走り去っていくサヤカを…私は、すぐに追いかけることはできませんでした。



ロゼッタ「申し訳、ございません…」

サヤカ父「一体全体、どうしてあなたが謝るんですか。感謝してもしきれないくらいのものを頂いたというのに…。
      本当に、ありがとうございました」フカブカ

ロゼッタ「いえ、私は大したことは…」

サヤカ父「サヤカが別れをあんなに惜しんでいるというのが、大したことをしてのけた何よりの証拠ですよ。
      …さてっと、よそは祭の終了時期を知らないみたいですが、私は店じまいの段取りに移らせてもらいますか。
      仕込をやめてキリ良く在庫を売り払って、最大の利益を叩きだして見せますよ!」ニヤリ

サヤカの父親に元気をもらって、体の制約に逆らいゆっくりと…しかし確実な足取りで、ようやくサヤカを追いかけ始めるのでした。

デイジー「綿飴にそれほど仕込要素ってないんじゃあ…無理に安く売り払うくらいなら、
      なんなら今日の最後に定価で私たちが残り全部買い取るよ?仲間たちに配って食べてもらうからさ!
      だから気にせず日が暮れるまで仕込を続けて、売り上げの限界に挑戦したらいいのよ。はい、前金のコイン!」ドサッ

サヤカ父「おお、こんなに大金を軽々と…いや、そこまで贔屓にしてもらっては、流石にズルいというものですよ。
      受け取れません。 叩き売り価格でなら喜んで売らせて頂きますが」

デイジー「むう、頑固な人ねー。じゃあ、泣きついてくるのを待ちましょうか、なんてね」

サヤカ父「それにしても…前々から思っていましたが、貴方たち一体何者なんですかねえ」

デイジー「ひっみつー!気になるなら、今度『大会』があるときに観光に来るといいよ!
      じゃあ、私もロゼッタの護衛しに行きまーす!」

サヤカ父「……護衛?」ハテ

サヤカ(ママがいなくなるだなんて、そんなの、嫌だよう)



――公園の奥にある、一本の大きな木。たぶん、公園の中で一番大きい木だと、思う。



お日様ポカポカ状態で、幹にもたれ掛かって目をつぶると、あたたかくてすっごく安心できた。



――まるで、ママに抱きしめられているみたいで。




残念ながら、30分もしないうちに、はだ寒い、雨でも降りそうなくもり空になって――
いまのわたしの気持ちみたいで、また涙がこぼれてきた。



さらに30分くらい…経ったかな。
ママ…ううん、ロゼッタさんが、落ち着いたというか、疲れ切ったというか…ゆっくりと現れたの。

ロゼッタ「ハァ、ハァ……くっ、2週間近く経つというのに、
      50%を克服するのに四苦八苦しているというのですか、我ながら情けないですね…っ!」

――ロゼッタさんと、バッチリ目が合っちゃった。
今さらながら、慌てて木の裏側に隠れたの。意味なんか、ないのに。

サヤカ「ロゼッタ…さん。どうして、ここがわかったの?」





ロゼッタ「…ねえサヤカ、そのまま…隠れたままでいいから聞いてちょうだい」

サヤカ「……」

ロゼッタさんが、優しく、静かに語り掛けてくる。







ロゼッタ「ママはね…本当は、もはや、この惑星の住民ではないの。だから、星くず祭が終わったら、
      サヤカと一緒にサヤカの故郷に帰ることはおろか、キノコ王国に…この星に留まるすら許されないのよ」

サヤカ「……っ!?」

ロゼッタ「そして…ママには、サヤカみたいに私のことを待ってくれている者が、星がたくさん…たくさんいるの。
      その子たちの行く末を見届けてあげることが、ママの使命であり責任であるのよ」

サヤカ「…………」

ロゼッタ「ちょっと難しかったかしら。でもこれだけは言っておくわ。
     ママは、サヤカのママになれてとても幸せだったし、いつまでもサヤカにママと思われたいと願っている。

     さっきは『ロゼッタさん』なんて呼び方をされて、すごく悲しかったわ。
     今夜お別れするときは、今まで通り、『ママ』って呼んでくれることを期待しているわ」

サヤカ「……」





ロゼッタさん…ううん、ママが立ち去る音が聞こえる。
でも、どうしても勇気が出せなくて…わたしは、じっとしているだけだった。

ザッ…。

サヤカ父「よっ、サヤカ」

サヤカ「うひゃあ!?お父さん、いきなり頬っぺたを突っつかないでよ!それに、お商売は!?」

サヤカ父「お前が泣き去る姿が目に焼き付いて、居ても立っても居られなくなってな、一旦探しに来ちまった。
      ……結婚の妄想が恐れ多くなるくらいのママじゃないか、こんな別れ方でいいのか?サヤカは満足なのか?」

サヤカ「…だって」





サヤカ父「バッカモーン!そんなメソメソする子に、お父さんは育てた覚えがないぞ!情けない!
      感謝の印にプレゼントを送ってママをビックリさせるくらいの気持ちでいないでどうする!」

サヤカ「え、えええーっ!?そういう流れなの!?」

サヤカ父「…あー、コホン。もちろん、お金がかかるプレゼントはナシだ。
      そんな余裕はないし、あの人たち…相当なお金持ちっぽいからな、
      大してありがたくも無いだろう。

      いいか、サヤカ自身の気持ちをこめたプレゼントを探し当てること、
      それが今日のサヤカの宿題だ!期限は今日の夕方までっ!よーい、スタートゥ!」ババーン

サヤカ「そ、そんなぁーーーっ!」ダッ

でも…パパ、背中を押してくれて、ありがとう。ちょっぴり勇気が出てきたの。

~キノコ城~

ピーチ「……ZZZ」グー

デイジー「戻ってくるなりパタリと寝ちゃったよ…まあ、ケーキ完成したならいいの、かな。
      あーあー、PC付けっ放しにしてー!…ああ、マリオのメールを読み損ねてる!
      …スター集め切った!?超重要事項なんですけど!起きろー!」ゲシゲシ

ロゼッタ「まあまあ、酷く疲れている様子ですし…」

デイジー「そんなこと分かってるけどさ、ピーチに指示してもらわないと私たちも動けないでしょ!」

ロゼッタ「今夜に星くず祭の終了を宣言してもらって、クッパの誕生日を祝って、明日の朝にはクッパシップでこの惑星を発つ。
      それだけ分かっていればなんとかなりますよ」ペロッ

デイジー「しかもそれだけじゃないよ、他のメールもワンサカ、リアルタイムで来てる!
      さすがピーチ、この量を普段は読み切ってるのか…!なになに…?

      『ご当選おめでとうございます!厳選なる抽選のうえ、貴方は選ばれました!
      クリックして進んで、すぐに会員登録を…』
      
       …え、何?お姫様に詐欺メール送る、怖いもの知らずがいるの?


      『体の節々が痛むそこの貴方!今ならこの健康青汁が、なんと毎月10コインで届きます!』
      
      …十分ピーチは健康だよ!?一時的に不調に陥ってるけど!


      『ニンテンドーからのお知らせ【次回作の打合せについて】』
   
      …これは保護だね、絶対。消すなよ?絶対に消すなよ?


      『(本文がありません)』
      
      ……悪戯かしら?差出人…『なっちゃん』って誰よ…あれ、じゃあ悪戯じゃないのかな?
      ううむ、さっぱりわからん…


      『ピーチ姫、こんにちは!私たち、フェアリーランドの妖精なの!
       キノコ王国と友好を深めたくてメールを出させてもらったわ!ついては条約を結びたいんだけれど…』
     
      軽っ!?内容に対して砕け過ぎじゃないかしら、この文面!?国家間のやりとりがこんなんでいいの!?」

ロゼッタ「……」ペロペロ

デイジー「ふう…ところで、何食べてる…というか舐めてるの?自分から間食するなんて珍しい」

ロゼッタ「ふふ、ピーチ姫が、余った材料でキャンディをいくつか作ってくれたんです。
     今舐めているのはココナツキャンディというものらしいですよ。甘い物をたべてばっかりだと太りそうですが。
     デイジー姫もおひとつどうですか?」

デイジー「へー、食欲が出てきたのは凄くいいことよ。じゃあ遠慮なく。
      …あ、これはびりびりキャンディだね。ピリッとした刺激がたまらないんだよねー。
      じゃあ、いただきまー…」チラッ

ロゼッタ(1本目を舐め終わって、2本目に移ろうとしている)

デイジー「……ロゼッタ。私、やっぱりそっちのキャンディの方がいいなあ。交換してくれないかしら?」

ロゼッタ「目移りするのはわかりますが、駄目ですよ、いくらデイジー姫の頼みと言えども。
      この綺麗な赤い色を見た時から、食べようと決めていたのですから」フフン

デイジー「いや、ロゼッタが食べるとあんまりよろしくない気が…」

ロゼッタ「ピーチ姫が手ずから渡してくれたお菓子に、流石に致死トラップが仕掛けられているはずはないでしょう。
      それでは、どんな味か確かめてみましょう」ペロッ

デイジー「致死じゃないけどさぁ…」







ロゼッタ「アツゥイ!!」 HP -1

デイジー「うん、ファイアキャンディだからねー」

サヤカ「…ママへのプレゼント、間に合うかなあ」

あれこれ迷ったあげく、四つ葉のクローバーの花冠に決めたはいいけれど。
公園のどこを探しても、三つ葉のクローバーしか見つからない。
まだ夕方まで時間はあるけれど、さすがにこのままじゃまずいかも…!

「お、おやおや?お嬢ちゃん、こんなところで何をしているのかなあ?」

不意に、声を掛けられちゃった。

サヤカ「…えーっと、誰だっけ?」

タコ焼き屋「酷いなあ、タコ焼き1パック、サービスしてあげた仲じゃないかー…グフフ」

サヤカ「あ、タコ焼き屋のおじさん!あの時は、ありがとうございました!
     お店の方は放っておいていいの?」

タコ焼き屋「いいのいいの、道楽でやってることだし、儲けなんて気にしないよ。
       そんなことより、俺のロリコ…いや迷子センサーが発動してね。何か困りごとかい?」キリッ

サヤカ「迷子じゃないよ?でも、四つ葉のクローバーを探してるのに、全然見つからないの…」

タコ焼き屋「それは困ったね…よし、俺も一緒に探してあげようじゃないか。
        そ、そそそそのかわり、キミの写真、1枚取らせてもらって構わないかな!?
        それさえあればおじさん、百人力だよっ!」

サヤカ「えっ?」

タコ焼き屋「よし、一眼レフの準備オッケー!さあ、さあさあ」

サヤカ「え、えええ……?」ヒキッ


ボカッ!!



タコ焼き屋「ぐふっ……」バターン

「やれやれ、危ない危ない。危うく変態の毒牙に掛かるところだったよ~?」

サヤカ「…この人、変態さん?」

「そうだね…おっと、四つ葉のクローバーを探しているんだっけ~。
 どれどれ…お、これなんか、どうだろう?」サッ

サヤカ「…ああっ!四つ葉だ、こんな一瞬で見つかるなんて、凄い!お兄さん、何者?」

「フフッ、『幸運』の花言葉を持つ四つ葉のクローバーだもの、
クローバー側としてもそうやすやすと見つけさせるわけにはいかないと思っている。
見つけるにはコツがあるのさ。植物の気持ちになって、相手の警戒心を解くことが大事なんだ。

サヤカ「な、なんだかすごいね」ゴクリ

「まあ、初心者には難しいよね。でも大丈夫!植物に成り切れる、すごいアイテムがあるんだ。
ちょっと試してみるかい?」スッ

サヤカ「うん、お願いします!」

「どうだい、順調に四つ葉のクローバー、探せてる?」



サヤカ「ウン!」



「それはよかった。…ところで。クローバー、もといシロツメクサの花言葉って、
葉の数で変わる上に、同じ枚数でも真逆の意味を併せ持ってたりして、複雑で興味深いんだよね~。

例えば、平凡な三つ葉のクローバーにも、『約束』とか『私を思い出して』とかがある一方、
コワーイ花言葉があるんだけど、知ってる?」

サヤカ「ンー、ワカラナイ」





「そっか。答えはねえ……………………『復讐』だよ」





サヤカ「ヘー。ヨツバ、ヨツバ」

ロゼッタ「…………」ジーッ

サヤカ父「…こうして貴方に綿飴づくりを見せられるのも、今日で最後ですか。
      私としてはあくまで商売道具であって、それ以上でもそれ以下でもないですが…
      ここまで気に入って貰えると、ちょっとむず痒いですね」

ロゼッタ「……そう、ですね。すっかり気に入ってしまいました」

デイジー(ピーチに頼めば、綿飴機の一つや二つ簡単に調達してくれるだろうけど…
      まあ、野暮ってもんだよね。…あはは、童心丸出しで覗き込み続けるロゼッタが自然と客引きになって、
      ますます繁盛してるや。でも正直、私はちょっと退屈かなあ、ふあああ)

~夕方~

ロゼッタ「……サヤカ、遅いですね…」

デイジー「確かに、遅いなあ」

サヤカ父「大丈夫ですよ、サヤカならきっと今頃、ロゼッタさんへのプレゼントのため駆け回っていることでしょう。
      おっと、ばらしたことは内緒にしておいてくださいね?」

ロゼッタ「え、プレゼントですか!それは楽しみですね!ふふふ…………」





ロゼッタ(……………………おかしい。喜ぶべきはずなのに、妙な不安が拭いきれずにいる。
      …何か、嫌な予感が…する)

デイジー「あ、あれって…クッパシップ!マリオ達、キノコ王国に戻ってきたんだ!
      よし、迎えに行きましょう!…って、あれ?ロゼッタ、どうしたの?そっちじゃないよ?」

ロゼッタ「すいません!私、やっぱりサヤカを探しに参ります!デイジー姫はそちらに向かわれても構いませんよ!では!」ダッ

デイジー「ええ!?そんなこと言われても…」ポリポリ

デイジー「しょうがないなあ、私も付いてくー!」ダダッ

サヤカ、サヤカ。



あちこち、あてもなく駆け回る。




サヤカ、どこにいるの!?




…現在、ピーチフラッシュの効果は50%。正直、中々キツイ負荷ですが。
ここまであちらこちらへ動き回ったのは、今日の中で初めてかもしれません。


今日の昼前、サヤカに語り掛けた場所から、更に奥。
ピリッとした違和感――『ナニカ』を察知して、公園の奥にやってきました。
私の後ろを、デイジー姫がピッタリ付いてきています。心強いですね。

右へ曲がり、左へ曲がり、左へ曲がり、前へ突っ切り、右へ曲がり。



前へ突っ切り、左へ曲がり、右へ曲がり、右へ曲がり、左へ曲がり。



デイジー「あっれー?この公園、こんなに広かったっけ?ハッ、もしや幻術!?」

ロゼッタ(…デイジー姫も、気付きましたか。しかし、これは五感を狂わされているわけではない、と思います。

      何者かによって、実際に『空間が歪められている』という説明が妥当ですね)




――デイジー姫。速やかに、私に杖を戻してください。緊急事態です。




そう、言おうとした矢先でした。




目の前に広がる、一面のクローバー畑。
その中央に倒れ伏す、サヤカ。

デイジー「サ、サヤカちゃん!!」ダッ

ロゼッタ「!!!」

デイジー姫がサヤカに真っ先に気付き、駆け寄っていく。
すぐさま、私も可能な限り全力で…全力で駆けていく。

ぐったりしたサヤカを抱き寄せ、オロオロするデイジー姫を…





ロゼッタ「…はああっ!」ドンッ




なけなしの勢いを以てして、突き飛ばす。




デイジー「……え」

思わずサヤカを放してしまい体勢を崩していきながら、驚き目を見開くデイジー姫。
その視線の先には、『誰も映っていない事でしょう』。

デイジー「え、嘘、なんで?サヤカちゃんは?ロゼッタは?どこに行ったの!?」マッサオ

ピーチ「ZZZ…」

ピーチ「ZZZ…」

ピーチ「ムニャ…あ、ちょっと、マリオ、何やってるのよ…みんな見てるわよ…むしろ凝視してるわよ…」

ピーチ「ぐぅ…まだやるの?…え、そ、そんな回数まで?正気?この…変態!」

ピーチ「…ああ、ちょっと!もう無理!壊れる、壊れちゃうからぁ!やめてぇ!」




ピーチ「これ以上速度貯められたら鍵扉どころかキノコ城全壊するわあっ!!」ガバッ






ピーチ「……ゼェ、ゼェ…なんだかおっそろしい夢を見ていた気がするわ…」

ドンドンッ!

デイジー「大変よ、ピーチ!サヤカちゃんとロゼッタが攫われたのっ!ウワーン!」

ピーチ「……なんですって!?詳細を手短にっ!!」カクセイ

デイジー「ご、ごめんなさい。わ、私、なんにもできなかった。それどころか、ロゼッタに庇われちゃったっぽいの…」ポロポロ

ピーチ「詳細って言ったのに…え、庇われた?基礎体力で圧倒的に上回るあなたが?」

デイジー「グズッ…えっと、倒れたサヤカちゃんが目に入ったから、2人で駆けこんだんだけど…
      一番乗りしたばっかりの私を、ロゼッタがドンッて押しのけて…
      それで、気が付いたらサヤカちゃんもロゼッタも視界から消えてて…」

ピーチ「…その説明から推測するに、ロゼッタは最初からあなたを突き飛ばす目的で駆け込んだっぽいわね。
     …罠のネタが分かってた?…………ロゼッタが得意な魔法って、確か」

デイジー「…………空間系の魔法」





ピーチ(…………っ!)

デイジー「ど、どうしたの急に?」

ピーチ「デイジー!私が眠りこけてた間、メールを盗み見たりした!?」

デイジー「あ、うん、ごめん」

ピーチ「今は許すわ。それで、意味深なメールが飛んでこなかったかしら?」

デイジー「…うーん、詐欺メールと通販と任天堂と妖精と…あ、『なっちゃん』って人から空メールが送られてたよ」

ピーチ「……っ!ビンゴじゃ、ないのっ!!デイジー、現場へ案内して、いますぐっ!」ダダダッ!

デイジー「りょ、了解っ!!」ダッ

マリオ「……あ、ピーチから電話だ」Prrrr

マリオ「おー、寝てたのか?こちとら無事にパワースターを241枚集めて、まもなくキノコ王国に着陸…」

マリオ「……………………」

マリオ「はああああああああああっ!?マジか!
    おう、わかった、場所の案内をすぐ頼む!それじゃっ!」ピッ



クッパ「どうしたのだ、そんな大層な剣幕で」

ルイージ「い、一体何があったの?」



マリオ「かなり確証の高い推測、という段階だが。…………

    ロゼッタが――
    ディメーンの野郎に空間転移で攫われたらしい」


クッパ「なんだとぉ!?」

ルイージ「なんだって!!?」

ヨッシー「…??」

デイジー「ディメーン?って誰のことよ!」ダダダッ

ピーチ「割と新参の敵よ!現実に絶望し、予言書に従い世界を作り替えようとしたノワール伯爵っていう奴の手下…
     というのが表の顔だったんだけど、実は伯爵をも利用して、ピュアハートの力で世界を征服しようとしていた極悪非道な奴!
     倒し切ったはずなのだけど…!」ダダダッ

デイジー「強いの?」ダダダッ

ピーチ「戦闘力的には私たちの足元にも及ばないけど、次元を超えた転移魔法で好き勝手移動できる厄介者ね。
     人の心を操る魔法も持ち合わせているみたいだし、ゲリラ戦法に出られたらどうしようもないわ。
     油断した隙を衝いて一撃で葬らないと、人質取られ放題よっ!」ダダダッ

デイジー「厄介極まりないねっ…!そいつがそこまで賢くないことを祈るよ!」ダダダッ

ユサ、ユサ。
誰かが、倒れている私の体を乱暴に揺さぶる。

ロゼッタ「…………うぅ」ムクッ

「ようやく目が覚めましたか。呑気なんですから、全く」

視界には天井…では、ありません。
緑のような、青のような、赤のような…定まらない色、距離感の隔壁。
その光景は、横にも、前にも、地べたにさえも広がっています。
平衡感覚がおかしくなりそうです。


どうして、自分はこんなところで倒れているのか。
…いえ、その前に。そうだ、あの子を、救い出さないと!



ロゼッタ「サヤカっ!どこ、どこにいるの!?」

「…その『サヤカ』というのが、ここに迷い込んだ小さな女の子で合っているのなら…
ほら、そこに寝かせてあります。幸い、気絶しているだけのようですね」

女性の言葉にハッと振り返ると…そこには、無機質な地面を枕にして、すぅすぅと寝息を立てるサヤカの姿。
…間違いない、今度は『先ほどのように』幻覚ではありません。
感極まって、涙ぐみながら抱きしめます。

「…感動の対面であるのは重々承知の上ですが、我々には、とにかく時間がありません。
あなたにも、強制的に協力して頂きますよ」



……ああ、いけない。こちらの女性のことを、すっかり忘れてしまっていました。
今さらですが、敵ではないと願いたいですね。


ロゼッタ「あなたは…ええと、どちら様、ですか?」

実は、記憶を失う前の私の知り合い…という線もなくはなかったのですが、杞憂だった模様です。
問うと、彼女は左手で眼鏡をくいっと持ち上げ、しっかりと掛け直し…

ナスタシア「わたくし、ナスタシアと申します。
       …まあ色々あって、ピーチ姫のサポートの元、ディメーンに関する諜報活動を行っておりました。
       結局、後手に回ってしまっている有様ですが、この通り…」




そう自嘲するナスタシアの右腕は…肘から先が、ありませんでした。

ロゼッタ「…た、大変ですっ!はやく治療を…いえ、杖がなければ無理な話でしたか…」ガックリ

ナスタシア「ご心配なく。最低限の治療と痛み止めは済ませました。…少しは魔法の知見があるようですね」

ロゼッタ「…む、ちょっといいですか?この傷跡…
      通常の衝撃、斬撃では有り得ないほどスパッと斬られています。
      まるで、空間ごと『無くなった』ようですね」

ナスタシア「…っ!失礼しました、かなりの魔法の使い手と見受けられます。一瞬でそこまで読み取るとは…!
       その通りです。辛うじてメールのボタンを押すことはできましたが、
       次の瞬間には肘の先がPCごと消し飛ばされていました。
       あと1秒、腕を引っ込めるのが遅ければ…体ごと消し飛んでいたかも知れません」

ロゼッタ「…いえ、たまたま私の得意分野であっただけですよ」





――して、対峙しなければならない敵とは。

ナスタシア「…この異空間の製作者、『ディメーン』。かつてマリオ達に負け、滅ぼされた存在。
       …厳密には私も滅ぼされるべき存在だったのですが、恩赦を頂きました。

       用心深いピーチ姫は、キノコ王国の災いとなり得る強大な、あるいは特異体質の敵と戦った場合、
       仮に倒したとしても、一定期間は生存・潜伏を疑い続けて、調査を惜しまないようですね。
       私も、ノワール伯爵亡き今、ピーチ姫の元で情報収集にあたっておりました。

       さすがにもう大丈夫でしょう…と高を括っていたところに、このありさま。
       …しかし、自分の不甲斐なさを悔やむのは後で結構。
       …ここで、伯爵様が『守って見せた』世界を傷付け、滅ぼしてしまっては…
       悔やむことすら、一生許されなくなってしまう」

そう、強い口調で言い切る彼女には、疲労と焦りが垣間見えました。



ロゼッタ「そもそも、マリオ達によって滅ぼされたといいながら復活しているのはなぜなのですか?」

ナスタシア「…わかりません。もともと幻影や分身体を使って神出鬼没な行動を取る男でしたから。
       咄嗟に入れ替わって、本体は生き延びていたのかもしれません。
       一応、転移魔法を行使できるのは本体だけ…というのは分かっているのですが」

それはそうでしょう。分身体まで転移魔法を好きに使えるならば、
本体が寝ている間に世界征服など楽にできそうです。

ナスタシア「…今は、何故復活できたのかは後回しです。それよりも都合が悪いのが、
       以前よりもかの道化師の転移能力が上がっているらしいことです。
       本当に、一刻も早くなんとかしなければ…!」



「それは、無理な相談だね~」



空間把握に長けている私は、すぐに気付きましたが…やや遅れたナスタシアは、大層驚いたのか、
後ずさって尻もちをついてしまいました。



おどけた表情の仮面と、ひょうきんな服装。なるほど、この道化師が…。

ディメーン「ボンジュール、マドモアゼル ロゼッタ。 ボクは不死身の道化師、ディメーンさ。以後、お見知りおきを。
       戻って来てみたら、ボクについて噂しているものだから驚いたよ~」

ロゼッタ「私の名前を何故知っているのかはさておき…私たちを、ここに捕らえる目的は一体なんですか?
      …まあ、十中八九、交渉材料なのでしょうけど」

ディメーン「分かってるなら、話が早くて助かるよ。この数年で、ボクもケッコー、チカラを付けたけど…
       確実に勝つためには必要だからね~。

       絆の力とか、一致団結とか、ボクは大っ嫌いなんだけど…芋ズル式に崩壊していく綻びになってくれるなら、
       ちょっとは好きになってあげてもいいかな」

ロゼッタ「…………戯言を」

ディメーン「それにしても、ロゼッタ。キミには驚いたよ!
       色々観察してて、デイジーって子より圧倒的に劣る能力しかないことがわかった。
       そのくせ、デイジーって子をまず転移させようとしたら、
       罠に『ギリギリで』気付いて捨て身で助けちゃうんだから。
       興味を惹かれたのと、その勇気に免じて、デイジーがキノコ城に駆けていくのは見逃しておいてやったよ」

ロゼッタ「…それはありがとうございました」

ディメーン「…おっと。ピーチ姫ご一行がご到着だ。ちょっと表の世界に行ってくるね~。
       キミたちは、そこで遠慮なく寛いでいるといいよ。お茶は出せないけどね、んっふっふ」シュンッ


――――ピーチ姫。どうか、無事でいてください。

シュパッ。

ディメーン「やあ、お久しぶり…」


ピーチ「ヒステリック・ボムゥーーっ!!」カッ!



ドドドドドドドカアァァーン!!



ピーチ「これにて一丁上がり!……と、行ってくれればよかったんだけれどね」

ディメーン1「そうは問屋が卸さない、ってね!残念でしたー!」ケラケラ

ディメーン2「でしたー!」

ディメーン3「でしたー!」

ルイージ「わわ、分裂したよ兄さん!気持ち悪い!」

ディメーン1「失礼だね、芸術的と言ってくれないか?」

マリオ「…どうしたよディメーン、今回はルイージに執着してないのか?」

ディメーン1「あーんな予言書、もはや何の未練もないね。そしてそこのトゲトゲくん、キミには御礼を言うよ。
        確かに、預言書を盲信するより、我が身を信じて信じ切る方が遥かにエレガントだと分かったのさ。

        そう…我が身を極限の境地に、真の頂に持って行ける最高の『参考書』を…ボクは手にしたんだよね~!
        まさに天啓!いや、むしろ天命!世界は、ボクを見捨ててはいなかった!」

クッパ「最高の…参考書、だと!?」

ディメーン2「この世の理、全てが記された古文書さ。ボクが言えるのは、ここまで。後は勝手に想像したらどうだい?

        

        ああ、そうだ。キミたちもやきもきしてるだろうから、本題に入ろうか。
        薄々気付いている通り、ナスタシアとロゼッタ…あ、あと一人女の子がいたっけ。
        まあ、餌の役割は果たしたから、もうどうでもいいか。
        
        彼女たちは、ボクによって異空間に捕らえられている。
        生かすも殺すも、キミたちの態度と…ボクの気分次第だね~」

デイジー「…な、何が望みなのよ!!」

ディメーン3「そうだなあ…たとえばここで、『主要メンツ、全員自ら命を絶て』と命令したところで、
       流石に人質に対して重すぎる命令だから、命令が意味をなさないでしょ?」

ピーチ「まあ、当然ね。そこをはき違える私たちではないわ」

ディメーン3「というわけで、ボクからはただ1つ。『何もするな』」

デイジー「…え?それって、どういう…」

マリオ「…………要するに、どんな破壊活動も、攻撃も、ひたすら黙って…されるがままにしろってことか。
     こちらがブチ切れて抵抗した時点で、彼女たちの命は尽きる。…我慢さえしておけば、とりあえず生き永らえると。
     時間稼ぎの抜け道をあえて与え、思考を鈍らせ、己の鬱憤晴らしを兼ねて戦意を吸い取ろうとする…ありがちな作戦だな
   
     (頃合いを見計らって、どうせ何か仕掛けてくるだろうがな)」

ディメーン1「なんか耳障りな言い方だけど…ピンポンピンポン、だーいせーいかーい!
        さっすがヒゲヒゲくん。抵抗1回につき、もれなく御一人様、三途の川へご招たーい!

        ほらほら、ボクの方が先にバテて、御免なさいもうしませんって土下座して謝るかもしれないよ?
        可能性があるっていいことだよね~!」

マリオ(趣味も手癖も悪いぜ、まったく)

デイジー「」ブチィ

ピーチ(癪に障ることこの上ないけど、先手を取られた以上…仕方ない。
     なんとか解決策を考えないと…)ギリッ

クッパ「…フン。面白いじゃないか、ワガハイは別に構わんぞ?受けて立つのだ!
     せいぜい楽しませてもらおう!」

ルイージ「そりゃないよ、見損なったよクッパ!
      そりゃ、クッパにしてみればキノコ王国のことなんてどうでもいいかもしれないけどさあ…!」

クッパ(…黙って耐え切ってやるわ!って意味で啖呵切ったんだけどなー)ションボリ

マリオ(俺は分かってるぞ)ポンポン

ピーチ(私も私も)フフ

ピーチ「…分かったわよ、じゃあそれd」








ダダダダッ…

デイジー「お嬢様打法――――ハリセンビンタァ!!!!」バチコーーン!!

ディメーン1「…………」キンッ

デイジー「チッ。普通に、変な壁で防がれちゃったか。でも、こいつが本物みたいね!」





ディメーン1「…ハァ。マドモアゼル デイジー…なにやってくれちゃってるのかなあ?」




ピーチ「ちょっと、馬鹿っ!何勝手に攻撃してるのよっ!?」

デイジー「まだピーチ、OKの返事出し切る前じゃない。取り決めの違反行動には当たらないもんねーだ!」

ピーチ「大馬鹿者っ!」バシンッ

デイジー「…痛っ――ちょっと、なにするのよ!」

ピーチ「そういう言葉の綾で済む問題じゃない!!」

デイジー「…へ?」

ピーチ「あんな危険行動をする奴に、迂闊に言質を取らせたら…
     どんなことをされるか、想像くらい付くでしょう!?」

ディメーン1「……フライングかあ、いけないなあ。はーい、全員オリジナルに戻ってね~」

ディメーン2「おー」シュバッ・・・

ディメーン3「りょーかい」シュバッ・・・


ディメーン「……さってと。まあ、1回は…1回だね。ちょっと――用ができたよ。
       いやいや、面白くなってきたね~。帰ってきたとき、どんな顔してくれるかな~」シュン!




デイジー「…あ」サァッ

ディメーン「…ふふふ、想定外の出来事だけど、ますます面白くなってきたね…!
       ワクワク、ゾクゾクが溢れてくるよ~!」シュン!


ロゼッタ「今ですっ!」



シュッ!!



ディメーン「……っ!」クルッ



ロゼッタ(何があちらであったのか知りませんが、今はおいておき。
      空間が歪むのを感知して、思い切り投げた…残り少ないスターピース。
      事前に引き出しておいたのは不幸中の幸いでした。


     …しかし。


      あまりに弱い。弱すぎる勢い。コツンという音がして、終わり。
      10メートルほど先のディメーンに当たりこそしましたが、まるでダメージがありません。
      所詮、私の腕力と投球技術ではこの程度です。

ディメーン「うーん、本当にキミ、空間移動に対して勘が冴えてるね~。
       なんなら、弟子にしてあげようか?なーんちゃって」

そんなことを言われたところで、慰めにもなりません。
――おまけに。

ディメーン「でもね、どんなにお粗末な攻撃だろうと、ボクを狙ったのはいただけないな。
       そんないけない事をする愚か者には、相応の罰が、報いが必要だよね~」



――あまりにも不吉な言葉を吐き出させる原因としてしまったようでした。

ディメーン「ちょーっと、その子、起こさせてもらうよ?」

――掲げられた両腕が光り、サヤカに投げかけられる。
単なる覚醒魔法のよう――魔法が行使されて、しばし。
サヤカが、ゆっくりと両目を開けていきます。


サヤカ「……あれ?ここ、どこ?…………ママっ!?どうして、何がどうなってるの?
     …あ、クローバーを見つけてくれたお兄さん!」

ディメーン「ははは、子供は単純でいいよねえ。ちょっと親切にするだけで、あっさり人を信じるんだから。
       でも、おかげで色々と計画が捗ったよ、ありがとう」

サヤカ「…お兄、さん?」

――どんな誑かし方をしたのか知りませんが、その時とはおそらく…打って変わって冷えた口調に、
サヤカは困惑しているのでしょう。…あんな輩をサヤカに見せてはいられません。
手を引っ張り、私の体の陰に隠れさせます。

ロゼッタ「…あの人に、何をされたか覚えてる?」

サヤカ「……えっと、四つ葉のクローバーを集めやすくなるアイテムだよって言われて、
     変な葉っぱを頭に付けることにしたの。

     本当にどんどん見つけられたんだけど、なんだか意識がぼんやりしてきて、
     体が勝手に動き続けて…あんまり、何をして何をされたか、覚えてない……」

ロゼッタ「……そう。怖い思いをさせちゃって、ごめんね」


抱きしめて安心させてあげたいのはやまやまですが、警戒を怠らず、道化師を睨み続けます。
効果があるかどうかはすこぶる怪しいものですが。

サヤカ「それと…結局、プレゼント間に合わなくて…ごめんなさい」ションボリ

ロゼッタ「……いいのよ、十分」

敵を見据えながらも、少し震えているサヤカを後ろ手で…撫でてあげます。

ディメーン「いやあ、実はさっき、ピーチ姫と我慢対決をすることになってね?」

――ディメーンは、絶対的な立場から、面白そうに顛末を語って聴かせます。
その内容に、私も、ナスタシアも、凍り付いてしまいました。
どうしてそこまで、堕ちることができるのか。
サヤカは現実離れしすぎているのか、ポカンとするのみ。



…理不尽な理由をでっち上げられ――誰か、1人が、殺される……!?



――更には。

ディメーン「まあ、ルールを知る由もなかったキミたちは可哀想だよね。そ・こ・で!
       生きるチャンスを、与えようじゃないか。イッツ、チャンスターイム!
       話し合いでも、多数決でも、殴り合いでもいいからさぁ。





        キミたちで、犠牲者一人決めて、該当者を始末してくれない?
        ボクも決定に従い、黙って観てるからさ!」


到底、受け入れがたい選択を、迫ってきたのです。

固まって動けない3人の足元に、フッと…1本のナイフが転移されてきました。

ディメーン「ルールせつめーい!今から10分以内に、誰か一人の息の根を止めること!
      使いたかったらそのナイフ、使ってもいいよ~!
      んっふっふ、ボクに効かない魔法を施した特製ナイフだけどね!

      10分以内に決着が付かない、付けようとしない場合は、
      仕方ないけど全員お陀仏になってもらうから、そこんとこよろしくね~!
      どのみち、全滅してることすら、表の世界にはばれないからね~!
      まだ、逃げ道を用意してあげているんだから感謝してよ~?


      それじゃあ…計測、開始しまーす!サイコーのショーを見せてくれ!」


ディメーンが、猟奇的に、満面の笑みでこちらを眺めています。
私は、何も考えられず、指一本動かせません。



――ナスタシアが、ため息を一つ付いて、確かな足取りで…
隻腕でナイフをしっかりと握り締めました。

狙うは…私――――の後ろでビクッと震えた、サヤカ。

サヤカは、状況を飲み込むことができず、ただただ呆然としています。

ロゼッタ「何のつもりです、ナスタシア!協力し合うと言ったばかりではないですか!」

ナスタシア「だからこそ、ですよ。自分の命が惜しいとか、そんな世俗的判断ではありません。
       単純に、どう考えても、私と貴方の2人が生き残った方が、戦力となるだけの話です。
       サヤカには…運がなかったと諦めてもらうよりほかにありません。

       そもそも、私か貴方かどちらか1人でも退場した時点で、サヤカも確実に死にますよ?
       何を躊躇うというのです?一時の情で戦局を見誤ってはなりません」


サヤカはようやく危機を理解して――理解してしまって、
口をパクパクさせながらどんどん蒼白になっていきます。

ロゼッタ「でもっ!」

ナスタシア「お黙りなさい!この男は、やるといったらそれ以上でもそれ以下でもないことを
       平然としでかす男です!私が一番知っています!」

確かに、正論そのもの、かもしれません。
私には、反論に使える具体的な材料などありません。
でも……。

ロゼッタ「……………………一つ、聞かせてください。
      確かにサヤカは非力ですが、それを言うなら私も戦う術を全く持たない。
      …貴方だってそうでしょう、一体何の能力があるというのです?」

ナスタシア「…暗示、催眠術などの精神操作を少々。
       体力も、片腕のみとはいえ…少なくとも子供よりはあるつもりですが?」

ロゼッタ「精神、操作…」

ディメーン「ま、僕にはバレバレ!おまけに全然効かないけどね~!」

ナスタシア「分かっているから暴露したんですよ!それに、弱った時になら効くかもしれないでしょう、
       寝首を掻かれないことですね」

ディメーン「油断しても戦力差甚だしいことを理解してる、ナスタシア?
       己惚れるのもいい加減にしてほしいものだね」

ディメーンは嘲笑するだけ。
そんな中、私は…考え、考え、考える。




…そして、どうしようもない絶望の結論に至り…全てを割り切ったのです。
それしか、策はないのだと、分かってしまったので。

サヤカをやや乱暴に振り払い。ゆっくり、ナスタシアの方に歩いて行き。




ロゼッタ「なるほど…そういうことなら、ナスタシアを死なせるわけには参りませんね。
      そのナイフで刺す役目、せめて私にさせてください。
      …あ、不意打ちでナスタシアを刺すとかはしないのでご安心を」







え、と固まるナスタシアの手から――指を引きはがし優しくナイフを貰い受け。
鋭い切っ先を、サヤカに向ける。

サヤカ「…ママ?嘘…だよね?」

この世の終わりという表情のサヤカ。しかし、動じてはなりません。
しっかりと、言い聞かせなければ。

ロゼッタ「ほーら、左右に動いちゃ駄目よ。怖がって避けられると、上手く心臓に刺さらないでしょ?
      却って痛いことになっちゃうのよ?」

サヤカ「……………………っ!」

絶望して、足がすくんで逃げ出すこともできず、大粒の涙を流すサヤカ。



ロゼッタ「大丈夫、何も考えなければ痛くない、痛くないわ。
      痛かったとしても一瞬で済むから、さあ」

サヤカ「いつものママに戻って!お願い!」ボロボロ



3メートル、2メートル、1メートル。
サヤカとの距離が、ほぼ0になって――。

ナイフを、心臓に、違うことなく突き刺しました。

サヤカ(ああ、もう…どうでも、いいや。
     わたし、悪い子だったから、やっぱりママに嫌われたのかな。
     パパも、ごめんなさい――さよなら……)






サヤカ(…あれ、…………痛くない。ここは、天国?)





思わず目を瞑ってしまったけれど、どこも痛くない。
恐る恐る目を開けたら……






ママの振り上げたナイフは、そのまま腕を捻られて…
ママの胸に、深々と…刺さってた。

時が、止まったみたい。


ロゼッタ「ディメーン、ピーチ姫に伝えてください。
      私は、邪悪な脅しなどに屈することなく…勇敢な最期を遂げた、と」



――怖い思いさせて、ごめんね。
そんな声が聞こえた、かもしれない。

ママはニコッと笑って…笑ったように見えて…
次の瞬間、ドバっと血を吐いて倒れ込んだ。




ナニガ オコッテイルノカ、ワカラナイ。



ナスタシアさんとかいう女の人が、絶叫しながらも必死に駆け寄ってくる。
私は、体中に浴びちゃった赤い血で、一瞬なんにも考えられなくなって……
たちまち泣きじゃくって、ママにすがりついていたの。

サヤカ「ママ、ママ!」ボロボロ

必死に、何度も何度もママを呼ぶけれど、目を閉じたまま…全然返事がない。
ナスタシアさんが、へなへなと座り込んでしまった。

ディメーン「ほいほーい、空間把握で心停止かくにーん。
       これにて、チャンスタイムしゅうりょー!

       いやいや、泣ける話じゃないか。即興にしては上出来だよ!
       じゃあ、僕は一旦あちらの様子を伺ってくるかな、アデュー!」シュンッ




サヤカ「あああああああああ!」ボロボロ

ナスタシア「…これが…これが、貴方の出した答えというのですか。
      理解不能、です。理解したくも…ありません」

サヤカ「ナスタシアさんっ!魔法使いなんでしょ!
     魔法で、ママを蘇らせてよ!一生のお願い!」ボロボロ

ナスタシア「…あいにく、そのような技術もなければ、魔法の力もまるで足りません…」

サヤカ「うええぇぇぇん!!!」ガバッ

ナスタシア「いくらせがまれても、不可能な物は不可能です!分かりなさい!」グズッ



クイクイッ。



ナスタシア「ですから、私には無理だと言っているでしょう!」クルッ





ロゼッタ「……あのー」ドクドク





サヤカ「……えっ」

ナスタシア「えっ」

ロゼッタ「倒れた体勢なので代わりに教えてほしいのですが。ディメーン、いなくなりました?
      見張りの分身体とかもいないですね?」ドクドク

ナスタシア「……は、はい」

ロゼッタ「そうですか…………」フゥ

ロゼッタ「………………………………………」

ロゼッタ「痛い痛い痛い痛いっ!?現在進行形で吐き気千万、死んじゃいますっ!なんですかこの痛みゴホッ!?
      ってまた血を吐いてしまいましたか!?何が痛みが一瞬で終わるですか、
      そんな無責任なことを宣った人は出て来て反省してくださいよーーーっ!!!!
      ナスタシア!早く、早く暗示で鎮痛を、鎮痛をお願いします!」ドクドクドクドク

サヤカ「」

ナスタシア「」


――びっくり。ママが生きていました。

ピローン。

ナスタシア「…は、は、はい。暗示を掛けました。……しかし、ど、どうして!?心臓が再び動き始めて…!?
        いや、そもそもナイフの軌道は、心臓を的確に破壊したはず!」


ロゼッタ「ゴホッ…口の中も血だらけなので、背景説明もせず言葉少なに解説するとですねゴホッ、
      今の私の体、50%…半分は魔法の力で動いているのですよ。

     要するに、心臓がズタズタに破壊されて血液循環が停止し、ATP機構やらが働かなくなろうが、
     各組織は出力50%確保…生存ラインぎりぎりで動き続けるくらいならできるみたいですね。
     一か八かの賭けだったのですが、上手くいきました。今だけは特異体質に感謝ですね」

サヤカ「え、じゃあママって不死身なの!?」

ロゼッタ「…残念ながら、全ての力を生命維持に費やすから、まともに歩くこともできないわ。
      それに、重要臓器の機能不全で死ぬことはないけど、ちょっとタイムラグを作れただけで、
      このままだと出血多量によるHP切れで死ぬわね」

サヤカ「……っ!それじゃ、意味がないよ!!」


…涙が引っ込んだのもつかの間。
やっぱり、ママは死んじゃうんだ。それを知り、再び涙があふれてくる。
…でも、ママは――口元から血を流すことも気にせず、優しく語り掛けてきた。

ロゼッタ「ねえサヤカ、今でもママのこと、好きでいてくれている?」

こく、と小さく頷いた。

ロゼッタ「ありがとう。ママも、サヤカのこと大好きよ。
      ――このピンチを切り抜けるために、ママの命をサヤカに預ける。
      だからサヤカも、ママの言うことを信じて…言う通りに動いてほしいの。
      できる、かしら?」

サヤカ「…………わかった。私、頑張る」



ママは、私をしっかり抱きしめてくれた。血の匂いはきついけど…あったかい。



ロゼッタ「と、いうわけでですね。ナスタシア。
      あと一回だけ、私の大博打に、付き合って頂けないでしょうか?」

ナスタシア「…わかりましたよ。どうやら、貴方たちと心中するしかなさそうですね」



やれやれと呆れた感じで、ナスタシアは肩をすくめて苦笑いする。
…そう。脱出するなら、3人揃って、一人も犠牲者を出さないで。

ロゼッタ「とりあえず、確証があるわけではないのですが。

      『警戒無くこちらに戻ってきたディメーンに大きなダメージを与えることができれば、
      異空間が崩壊して元の世界に戻れる』ことを大前提としますが、よろしいですか?」

ナスタシア「異議ありません。行使者が弱れば魔法の維持力も連動して弱まるのは道理に適っていますし、
       そもそもその前提がなければ我々は本当に詰んでいますから。希望的推定もやむなしです」

ロゼッタ「そして、相手の魔法防御の高さや、こちらの魔法行使の制約を考えて、魔法による攻撃は論外。
      一方で、物理防御は低そうです。

      先ほど、自分では手を下さず離れたところから私たちで仲違いさせようとしたのも、
      わざわざ特製ナイフを調達したのも、肉弾戦の万が一を恐れていることの証左…
      物理的なダメージを与えるほかに道はない」


――空間把握だけで死亡を確認するあたり、ズボラな所まで私と似通っていますね。
全然嬉しくありませんが。これは是が非でも体力を付けないと。


ナスタシア「…残念ながら、その通りです。しかし、遠方に現れるディメーンを物理的に攻撃するなど…
       さきほどのようにスターピースを投げる位しか術がない。他に策があるのですか?
       言っておきますが、私でも貴方の投擲に比べて少しはマシ、という程度ですよ?
       いえ、片腕というバランスの取れていない状態では負ける可能性すらあります」

ロゼッタ「…いえ。また、スターピースを投げてみようと、思います。
      先ほどコツンと弱弱しく当てた時、僅かながら…ディメーンが条件反射で慌てて躱そうとしていました。
      つまり、一度転移したら数秒は待機時間が必要になる、みたいに、連続の空間転移には制約がある。
      速度さえ十分なら、スターピースを叩き込めるはずです。

      おまけに先ほどの一発で…威力を過小評価している可能性も大です。
      もう馬鹿な真似はしないだろう、とでも考えて、防御壁を張られたりはしないでしょう」




そして、温めていた作戦をサヤカとナスタシアに披露します。





サヤカ「……そんなこと、できるの?」

さすがのサヤカも、半信半疑。いえ、二信八疑くらいでしょうか?

ナスタシア「冗談じゃ、ないのですか?そんな意味不明で無謀な作戦、聞いたことがない!」

――いえいえ、ところがどっこい、大真面目な作戦なのですよ。



題して…「マリオネット作戦」という作戦名は、どうでしょうか。
おかしくなって、小さく笑うのを、2人は不思議そうに見ていました。

ピーチ(――ああ、ああ)

何が、サイコーのショーだ。こんなの、最低、最悪だわ。



戻ってきたディメーンが持っていたもの。――血濡れのナイフ。



ディメーン「いやあ、実に…実に素晴らしい寸劇が繰り広げられたよ。キミたちにも見せてあげたかったね、ふふ」

デイジー「……ロ、ロゼッタは?サヤカちゃんは?も、もちろん生きているわよね!?」

ディメーン「あー、うーん。どうだったっけな。
       …あ、そうそう。ピーチ姫、ロゼッタから伝言があるんだった。
       一字一句違えずに伝えるから、よーく聞くといいよ」ニヤリ



――『ピーチ姫に伝えてください。
――私は、邪悪な脅しなどに屈することなく…勇敢な最期を遂げた、と』だって。
――うん、間違いないね!



皆の目が、見開かれる。
デイジーの目から、一筋の涙が…こぼれ落ちていく。

デイジー「嘘よ…そんな、の」

ディメーン「そうかもね、そうじゃないかもね?
       さあさあ、どうする~?もはや守るべき者がいなくなったと開き直って、
       一気に反撃し出すかい?
       まだ全員死んだわけじゃないから、我慢を続けてみるかい?
       はっはは、究極の選択だねー!好きな方を選ぶといいよ!」


――狂っている。こんなことが、許されていいの!?


私たちのモチベーションは、もはや総崩れ。
ただただ、無気力、無抵抗。
あのマリオが、クッパでさえも、言葉を一言も発せず俯くまま。


キノコ王国のトップとして、時には少数を捨てなければならないのは分かっている。
でも、それでも…っ!

ディメーンは本当に、好き勝手に爆撃をしてくれている。あたり一面、焼け野原。
…いえ、私たちが動かないでいるから、まだ周辺住民には手を出さないでいる、と考えればマシか。

特に、今もしも城下に目を付けられでもしたら、どれだけの民が犠牲になることか。
星くず祭が開催中で、避難も一切済んでいないというのに。

戦闘力としては、いくら開きがあるとはいえ…
こちらの攻撃は当たらず当てられず、攻撃されるまま。ジリ貧ね。

――と、思った矢先。



マリオ「ピーチ、かわせっ!」


一瞬の隙を衝かれ、思いもよらぬ激痛が、頭を襲う。
ぐわん、ぐわんと脳が直接ハンマー攻撃でも食らい、揺さぶられるような感覚。

激しい発作に見舞われ膝をつきながらも、自分の体を確かめる。

ピーチ「……な、何?今、何が起こったの?マリオ、見えた?」

マリオ「よくわからんが…通常の魔法で、そうはダメージは受けないはずだ。
     転移魔法を利用して、何かやろうとしたな?」

ディメーン「んー、60点だね。せっかく、余所見している間に頭部を切り離して痛みも感じさせず即死させようとしたのに…
       頑丈だなあ、腹が立ってくるよ」ムカッ

――何よ、その反則行為。

ピーチ「…へえ、ずいぶんと器用なことができるようになっているじゃない。
     馬鹿に凶器を持たせるといいことがまるでないわね」

ディメーン「褒め言葉と受け取っておくよ~。
       …そう!これまで、物体全体の境界面が魔法行使の分解能だったボク!
       しかし、偉大な古文書のおかげで、さらに細分化して、切り離しての操作が可能となった!
       いやあ、僕って天才!?」

ピーチ「結局あなたって物に頼ってるじゃない。
    そんなことができるのなら、陰からコソッと私たちを始末すればよかったのじゃないの?」

ディメーン「甘い甘い。これは『復讐』なんだよ?そんなの、何の意味もないじゃないか。
       敵は分かっているのに為すすべもなく蹂躙される、そんな気持ちを味わってもらわなくちゃ!」



ピーチ(そんな気持ちなら、ロゼッタの訃報を聞いた段階で、なっているわよ…っ!
     これなら曖昧なままのほうがどれだけよかったことか…っ!)

………ふと、違和感。
何か、つじつまが合わなく、ないかしら。
いえ、気のせいか。



…気のせいじゃ、ない。




……ロゼッタの訃報が嘘か否か?それは関係ないわ。
あの夥しい血、誰かが致命傷を負ったことは疑いない。
つまりどう転んでも、胸をなでおろす状況は有り得ない。



そうじゃ、なくて。
そもそも、壮絶な最期を遂げた、みたいな回りくどいことを、ロゼッタが意味もなくディメーンに語らせるかしら?
伝われば当然こちらの指揮は下がる、それはロゼッタも重々承知のはず。
その仰々しさで言わしめた、意味……。

ハッと、気付いた。
ロゼッタが死んでいるのではなく、『ディメーンを騙し通せて、生きている』としたら?
言葉に隠された意味も、ガラリと変わってくるのではないかしら…?



…そういう、ことね。




だとしたら、ロゼッタは『待っている』。




タイムリミットがあることも確実。
でも……一本の、細い、細い、光明が見えた。

気付かれないように、感付かれないように、自然に振る舞え、私。
どんな会合よりも、演説よりも、気を引き締め過ぎてしすぎることはない。

ピーチ「…もう、アッタマに来たわ、マリオ。
    生きているかも分からない人と天秤にかけて、現実世界を危険にさらすわけにはいかない。打って出るわよ!」

マリオ「…っ!?いいのか!?」

ピーチ「仕方のない、ことよ。…じゃないと、ロゼッタが浮かばれないわ」ポロポロ



慌てず急げ。拍を調節しなさい。態度の急変を悟られないように。

ピーチ「それに、よく考えたら、人質たちが危害を加えられてるわけないじゃない。
     そんなことしたらディメーンにとって、交渉材料を失うだけなんだから。違う?
     あぁ、馬鹿な真似をしちゃったわ」

ディメーン「へえ?ナイフの件はどうなってるの?」

ピーチ「さっきの血はブラフ、どうせただのギミックよ。
     悔しかったら、遺体の一部でも見せてみなさいよ」ハン

ディメーン「ふーん、そんなこと言っちゃう?案外薄情だね、お姫様」

ピーチ「ペテン師の言葉を聞くだけで信じるなんて馬鹿だもの。
     私、現物を見て確かめるまで信じない性質だから」

ディメーン「あ、そう。じゃあ、言われた通り、死体を持ってこようか。待っててね」

ピーチ「……え、ま、まさか。……ううん、どうせハッタリよ!有り得ないっ!」

ディメーン「もう、おそーい!」シュンッ



ピーチ(…うん。こんなところ、かしら。あとは神に祈るのみね。
ロゼッタを信じるなら……ディメーン、『もう、おそい』のよ)

表世界から、異空間へと、世界が、繋がる。


空間が、歪み始める。


――ディメーンのお出ましですか。
チャンスは、たったの、一度きり。



そして……私、ロゼッタは……地に伏すことなく。
止め処なく血を垂れ流しながらも…人形のように生気を失った状態でありながらも…
ナスタシアに支えられ、しっかりと立っている。



『ディメーンの再度の転移の兆候を掴む瞬間まで、一切の感情、発奮を捨て、
HP保持に努めなさい』



ナスタシアの暗示が効きました、と、暗示が切れた瞬間に理解しました。
――ディメーンが現れるまで、あと3秒。

ロゼッタ「距離15、高さ3!」ビシッ

サヤカ「はいっ!」

サヤカの手には、やや小さめのスターピース。



『いい?私が指差しとともに距離と高さをメートルで指示するから、
転んでもいい、くらいの気持ちで、全力、最高速で…投げ切りなさい!』

『うん!一球にぜーんぶ込める!』

サヤカが、投球モーションに入ろうとする。
小さい体ながらも、狙い見極め、無駄の全くないフォームが見られるはず。

『でも、わたしの力じゃ、とても遠い距離まで勢いが出ないよ?』

『ふふ。サヤカの持つスターピースは、あくまで感覚をずらさないため。
敵に当てる必要はないの。……というより、サヤカの投擲が完璧なら、『絶対に当たらない』わ。


――ママの空間把握能力、信じなさい』

ナスタシアが、声高らかに……新たな暗示を。
私の脳は、命令を速やかに書き換える。

ナスタシア「ロゼッタ!この暗示宣言後、
       『1秒間、生命活動維持をカット!サヤカの身体動作の完全相似模写を最優先とせよ!』」

ロゼッタ「ハイ」スッ・・・


サヤカが、脚を振り上げる。
私も、脚を振り上げる。

サヤカが、胸を張り、全身を躍動させ、スターピースに勢いを与える。
私も、胸を張り、全身を躍動させ、大きなスターピースに大きな勢いを与える。

サヤカの拳の中で、スターピースは…加速する。
私の拳の中で、大きなスターピースは…たちまち加速する。


サヤカに全てのモーションをクイックにしてもらって、更に相似拡大効果を上乗せ。
私の体は、サヤカに操られ、鈍い音を立てながらも、傷口を広げつつも、動く、動く。

『無意識に魔法の力を使って』、自分のまるで意図しない方向に、意図しない速さで、
セーブもなしに動くものだから、鎮痛暗示が意味をなさないほどに、痛い、痛い、痛すぎる。
組織の停止、無酸素状態の襲来までも。涙を堪え、歯を食いしばる。
――お手本があれば、動かすことは、できるっ!

ディメーンが現れる、1秒前。
でも、これで、届く――。

――しかし、大きな誤算に気付き、愕然としました。




――このままでは…勢いはあっても、当たらないっ!?




サヤカとの位置関係から、補正した距離情報を手短に伝えましたが、不十分だった…?

体格差を考慮した補正が間違ってしまっていた…?

いえ、サヤカが狙って投げるには高低差がありすぎる不慣れさが原因…?。

モーションを早めてしまったために、リリースポイントが狂った…?

身体動作にガタが来た、あるいは模写が不完全…?



とにかく、このまま投げては…当たらない事だけは、直感で分かってしまいました。
微妙にずれた、そっぽの方向に飛んで行って、終わりでしょう。

ロゼッタ(……万事休す、ですね)



――まあ、博打は博打なりに、最善は尽くしました。潮時というものでしょうか。
――最後の最後で、結局サヤカを裏切ることになってしまいましたが、許してくれるでしょう。




……なーんて諦めができるほど、人間、できてはいないのです。





なんとしてでもマリオやピーチと合流し、にっくき敵を叩きのめし。
ケガなんてどこへやらと全身完治させ。


また、サヤカと一緒に笑いながらキャッチピースをして。
一緒に綿飴を半分こするのです。







ロゼッタ(……………………わた、あめ)

ロゼッタ「……っ!」キッ

暗示が解けた、直後。スターピースが手元を離れる、直前。
神経を研ぎ澄まし、集中、集中、集中っ!!

生命活動さんは、1回じゃなくて2回お休み。
組織へ注がれようとした全身の魔力を奔流とし、投げる右手に萃(あつ)める。
耐え切れず、手首が腫れ、血を流し、どんどん裂けて行きますが、あとで何とでもなるでしょう。



血飛沫まで巻き込みながら、スターピースの周りが光り、空間が渦を巻く。





ロゼッタ「はあああああああああああぁぁぁーっ!!」




とうとう、私の体から離れた、スターピースは。

ゴオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!

自分でも信じられないくらいの高速で、うなりを上げて飛んで行き…
出現したばかりのディメーンの腹部に、しかと、突き刺さったのです。

ディメーン「か、はっ!?」

一条の弾丸に、気付いたころには、もう遅し。


――馬鹿な、何が起きた!

――まずい、空間が、割れていく!?

ボクの行動に、不備などなかった。なのに、どうしてアイツは皮一枚繋がって生きている!?
いや、生きていたところで、このスターピースの勢いはなんだ!?



景色はたちまち、表世界へ。



あの3人は墜落、しかしすぐさまピーチ姫が駆け込んでいく。
確実に助けられ回復を施されるだろう。



ディメーン「何故だ…何故だ!許さない許さない許さないっ!ふざけるな!」

初めて事が上手く運ばなかったことに、煮えたぎる湯のように怒りが込み上がってきた。

ピーチ「ロゼッタ!!やっぱり生きてたのね!」ポロポロ

デイジー「うわーん!」ダキッ



ロゼッタ「ぎゃふ(吐血)」チーン



ピーチ「…って、とんでもない重体じゃない!!
     『みんなげんきになあれ』!『おねがいカムバック』!10連打ァ!!!!」パアアアアアアアアアアア



ロゼッタ「…ふう。なんとか、生き永らえちゃいました」パアアァァァ

ルイージ「びえええええ、よかったよおおおお」

デイジー「顔ぐっちゃぐちゃじゃん、気色悪いよ」グズッ

ルイージ「なんか理不尽だよぉ!」ビェェ




ピーチ「ナスタシアも。お疲れさま、そして本当に…ありがとう」

ナスタシア「ふふ、こちらこそ、意外性の塊の彼女に助けられました。本当に、いい友人をお持ちですね。
       …ああ、やはり両手があると安心します」ホッ

サヤカ「ママ、ありがとう!うわーん!」ダキツキ

ピーチ「ああ、この子が噂のロゼッタの子供ね。本当に…本当によく、耐え抜いたわ。
     ロゼッタに似たのかしらね」

ピーチ姫が、微笑みます。

ロゼッタ(サヤカが、血濡れではありますが満面の笑み…いえ、涙。ええ、これで一安心。
      さあ…形勢逆転、反撃の狼煙と行きたい所!
      …まあ、私の出る幕はないでしょうが!)グッ

サヤカ「…でも、さっきのボール…じゃなくてスターピース、周りに風を纏って、物凄い速さで飛んで行ったね。
     一体、何をしたの!?わたし、あんなことやってないよ!?」

ロゼッタ「……どうしても、最後の最後でスターピースの軌道がずれることに気付いたのよ。
      だから、体中の魔力を振り絞って、強烈なスピンを掛けながら強引に軌道修正したの。

      回転体は、物理的に回転軸方向を保とうとする復元力が働くから…
      回転軸方向が進行方向に一致すれば、おそらくブレを抑えられると思って。
 
      まあ、体の限界も考えずに行き当たりばったりで試したから、
      腕が雑巾みたいに千切れる寸前までダメージを受けたけどね」

サヤカは、一瞬息を飲み…ますます目を輝かせました。

サヤカ「凄い、凄いよ!ママ!物理?とか、理論は難しすぎて、よくわかんないけど!」ピョンピョン

ロゼッタ「ええ、まさか綿飴機から連想して機転を利かせられるとは。本当によかったわ!」

サヤカ「そうじゃなくて!…あ、えっと、それもそうだけど!



    ママが投げたの、きっと『ジャイロボール』……

    いや、それどころじゃない。『ハイスピンジャイロボール』だよ!」





ロゼッタ「…じゃいろ、ぼーる?」

サヤカ「一流の野球投手でも、投げられるのがほーんの一握りしかいない、すっごく強力な投球法だよっ!
     初速からの減速を極限まで抑えられて、ストレートが物凄く伸びるボールになるの!

     ママはそれをいきなり投げられたんだよ!」キラキラ

ロゼッタ「まあ、まあ!それは喜ばなければならないわね!」

…まあ、ズルをしているのだけれど。せっかくサヤカが飛び上がらんばかりに喜んでいるのだもの、
言わないでおきましょう。

と、そのとき。


ふたたびピリッとした空間のざわめきを感じ取り、慌ててそちらを見やります。
何事か、と不思議がっていたピーチ姫たちも、私に釣られて。



――分かりきってはいましたが、倒し切ったというわけでは…さらさらなさそうですね。
中空にクルクルッ…と空間を割って、ディメーンが現れました。


今度はしっかり防御壁を引っ提げて現れる徹底ぶり…流石に警戒したのでしょう。
苦悶の表情…というよりは、憤怒、激怒の感情がありありと伺えます。
目に入ったもの全て、焼き払って灰にしてしまいたい、といわんばかり。

ディメーン「ふざけるな…ふざけるなっ!今のボクは最強、無敵なんだ!お前らごときに負けるはずがない!
       …もういい、出し惜しみなどしないでフルパワーを出してやる!後悔しても、遅いからな!」

マリオ(いつものニヤケ節はどこへやら、か。すっかり逆上して隙を作ってくれてるのはいいが…『スーパージャンプ(RPGver.)』!)

ルイージ(かといって、無茶苦茶に暴れられるってのも困るんだよね!『スーパージャンプ(スペマリver.)』だっ!)

マリオとルイージが、それぞれ別々の死角方向からジャンプ攻撃を仕掛けます。
しかし、マリオの強烈な踏みつけも、ルイージの大砲のような叩き上げも、空間転移によって難なく避けられてしまいました。

あの2人ですら、スピードで追いつかないなんて。

あわやぶつかる、というタイミングで、2人はひらりと体をそらし、そのまま見事着地。
拍手喝采の動きですが、警戒しながら戻ってきた本人たちは不満そうです。

マリオ「…やばいな、今ので速度不足だと、もう転移後のまぐれ当たりに賭けるくらいしかないぞ。
    そもそも当たったところで、防御壁を壊せるかもよくわからん。あれがなけりゃ、一撃なんだが」

ピーチ「…こうなったら、ロゼッタ。貴方にも戦ってもらうわよ。いいわね?…デイジー、杖を返してあげて」

デイジー「わかった!はいっ!」

ロゼッタ「…は、はい。出る幕、ありましたか…」

気力的に、かなり限界なのですが……。傷こそ完治していますが体中血だらけで、いざ戦ってやろう…という気概も中々見せられません。
…しかし、緊急事態は未だ続いているので仕方がないでしょう。久しぶりに、杖をしっかりと手にします。
キラリ、と杖が輝きました。よろしくお願いしますね。

ピーチ「手短にロゼッタの攻撃魔法の威力、効果範囲を教えて。作戦を立てるわ。
     私よりも魔法Lvが高いんだもの、期待しているわよ!」

ロゼッタ「…ええっ!?きゅ、急にそんなこと言われて、も…!」



――ま、まずいです。なんだか、ハードルをかなり高く設定されている気がします。
そんなに大したことはできません。幻滅されそうなのですが…!

ロゼッタ「…………すいません、そういうことなら、ご期待には沿えません。
     ――――実は私、『回復魔法』と『空間魔法』以外は一切使えないんです。
     そもそも、敵と対峙するなんで経験がまるでなかった、もので」

私の声は、尻すぼみ。
耳にしたピーチやマリオは驚天動地。魔法使いとして有り得ない、という顔を思い切り向けてきます。

ピーチ「……はああああああっ!?何よそれ!?」

ロゼッタ「それに加えて…ピーチ姫も薄々気付かれていると思いますが。
      私は最大FPが貧弱なせいで、まるで魔法Lvの高さを活かせない体たらく…本当にすいません」シュン




空間魔法は、FP燃費が唯でさえ凄まじく悪いのに。
行使すること自体は 『簡単』 なのですが…。

ピーチ「…私も悪かったわ、いきなり実践投入は難しいもんね。気を落とさないでちょうだい。
     …じゃあ、回復はお願いできるかしら?」


…それが、それすらも容易ではないのです、私の場合。


ロゼッタ「……えっと、私の回復魔法はFPを最大値近く消費するので、
      杖が戻ったとはいえ今はちょっと…だいぶ体の枯渇領域に還元してしまいましたし…」ビクビク

ピーチ「どうしてよっ!?回復魔法ってそんなにFP使わないでしょ!?本当に魔法Lv高いの、ロゼッタ!?」

ロゼッタ「す、すいません、全然お役に立てず…」グズッ


――やはり、魔法使いとして未熟者もいいところです、よね。


デイジー「ま、まあまあ落ち着いてよピーチ。ロゼッタ、じゃあどういうことならできる?
      きっと役に立てる場面もあるはずだよ!」

ロゼッタ「…………ディメーンの攻撃を食らいそうなとき、私の空間転移で緊急避難させる、くらいなら」

ピーチ「…よし。じゃあそれだけは頼むわよ。
    でもね、この件が片付いたら、ロゼッタはちょっと魔法の覚え直しね」

ロゼッタ「…はい!そのときはぜひ、ご教授願います!」

――よかった、少しは役に立てて。
でも、ピーチ姫に失望されないよう、精進しなくては。

ピーチ姫は、私を戦力に考えるのは難しいと捉えたのか、私およびサヤカのことをデイジー姫に任せて戦闘態勢に入りました。
私は私で、サヤカをしっかり庇いつつ、付近の様子を伺い続けます。


デイジー「…………ねえ、ロゼッタ。ちょっと聞いていい?」


と、そこに。デイジー姫が耳打ちしてきました。


ロゼッタ「はい、なんでしょう?」

デイジー「ロゼッタって、ほうき星を管理する中で、星の表面をいろいろ開拓していったんだよね。
      自分よりずっと大きくて重い物だって沢山あったでしょうに、どうやって動かしたの?
      今の話聞いてると、ロゼッタ1人じゃ何百年もの時間があったとしても無理そうなんだけど…」

ロゼッタ「チコたちのおかげです。私の魔法の杖は少し特殊でして、周囲の星々やチコから少しずつ魔力をおすそ分けしてもらい
      集積することができ、私にそれを還元してくれるのですが…。

      大勢のチコたちが集い、住み着くほうき星は、それ自体が魔力の聖域。
      チコやほうき星から魔力を供給される限り、最大値こそ定まれど、私は繰り返しFPを使用することができます」

デイジー「へえ、でもやっぱり一度に行使できるFPは限られるんだ…」

ロゼッタ「…いえ。本当の本当に一大事、という場合では、何千ものチコたちに集まってもらい、
      直接FPを転送してもらって問題に立ち向かう、ということができなくもありません。
      その場合、限界値を大幅に超えた出力で魔法を繰り出すことができます」

デイジー「…………ねえ、ロゼッタ。仮に…仮にだよ?
      FPが使い切れないくらい潤沢にあったとしたら、どのくらいのことができるの?」


ロゼッタ「そうですね…昔話になってしまいますが。
      ほうき星を管理しているとき、何千ものチコたちにFPを借り受けて、一致団結して――。






      このままでは衝突を免れないような直径数百キロの巨大隕石をやり過ごしたことなら、
      三百年くらい前にありますよ。一週間ほど目を覚まさない副作用付ですが」



デイジー姫は、何故かあんぐりと口を開けていましたが…今はどのみち関係がないことでしょう。
ここにはチコたちもいないのですから。

さあ…集中しなければ。
なけなしの勇気を、もう一度振り絞ってみます。

――ディメーンが、現れました。

右に。左に。上に。前に。後ろに。

肩車をしながら。
高笑いしながら。
リズミカルに踊りながら。
フヨフヨと漂いながら。
木々の陰に隠れながら。
屋根の上に腰掛けながら。



「「「「「さぁ~て、ボクがどこにいるか、わかるかな~?」」」」」

推定、百体以上。頭がおかしくなりそうです。




そんな中でもマリオ、そしてクッパは不敵に笑って、腕をポキポキと鳴らせてみせます。

マリオ「ここから本物を探し当てるのはしんどそうだが…とりあえず片づけるか。
    時間稼ぎに付き合う気はない、全体攻撃を駆使して一気に行くぞ」

クッパ「…だな。ディメーンの魔力を削ぎつつ、撃墜数勝負でも洒落こむとするのだ!」

さすが、我らがヒーロー、そしてそのライバル。心強い限りです。

ピーチ「油断しないでよ、どうせ本体はどこかから不意打ち仕掛けてくるんだから!」

司令塔のピーチ姫が警戒を呼びかける中、マリオとクッパが主体となって薙ぎ払い始めます。

マリオ「ツギツギジャンプ!」バキッ

クッパ「ファイアブレス!」ゴォォォ

マリオ「ウルトラジシーン!」グラグラッ

クッパ「衝撃波なのだっ!」ビシャーン!

ルイージ「た、高い所から手あたり次第ファイアボール撃っておこうっと…」

クッパ「ルイージ、真面目にやれ!スマブラ初心者か!」



それでも分身体は減った傍から増え続け、中々数を減らしてくれません。



マリオ「めんどくさいから『ヤッツケーレ』で体当たりしまくるか」ポコッ ポコッ

クッパ「ううむ、それは真面目…なのか?」

ルイージ「兄さんだけバッジ効果ずるいよー…」

そのとき、炎が私に目がけて迫ります。

とっさにサヤカを庇いつつ後ろへ…身をそらす必要もなく、横から伸びてきた長い舌に絡めとられました。

ロゼッタ「ありがとうございます! 助かりました!」

ヨッシー「まあ、お安い御用ってことで。デイジーに護衛を任せられたからには守り切って見せますよー。
      後でお菓子の一つでも下さいね」

ロゼッタ「はい、そんなことでいいなら喜んで!……え、デイジー姫に頼まれた?」



どうしたことかと振り返ると、何やらデイジー姫が身振り手振りも交えながらピーチ姫に嘆願中。
策でも浮かんだのでしょうか…?ここからではよく聞き取れません。

ピーチ「…へえ。大して有効策もないし、それが本当なら、試してみる価値はありそうね。
     わかった、デイジーは別行動を許す。その間はカバーするから」

デイジー「うん!」

ピーチ姫が、おもむろにポケットから電話を取り出し――。

ピーチ「ああ、カメック。急ぎ、クッパ城にて待機中のクッパシップを、残りの積荷そのままで全速力でキノコ王国の外れの公園まで誘導して。
     …え、理由?いいから急いでっ!

     30分以内に着いたら、ケーキの材料費全額こっちで負担してあげる。
     1時間超えたらクッパ城焼き払う!オーケー!?分かったらとっとと動きなさいっ!」

ロゼッタ「い、一体どうしたというので……」



大声の命令にたまらず驚き、口を挟もうとしたところ、これまた突然に待ったが掛かりました。
声の主のナスタシアは、妙に差し迫った様子です。

ナスタシア「ちょっと、待ってください!何をするのか知りませんが、大変なことになりました!
       速やかに場所を移してくださいっ!」

――今度は一体、何が。

ピーチ姫が、咄嗟に電話を保留しナスタシアに注目します。

ピーチ「ナスタシア、何か感付いたのっ!?」

ナスタシア「本体はどこかに潜んで分身体を作り続けていると勘違いしていましたが、どうも違います!

       分身生成間際のディメーンをマリオが殴り倒してみれば同じく分身体であった、というケースが見られます!
       私が知り得ていた過去の情報からすれば信じられませんが、
       そのくらいの芸当は分身体にもできるようになっている!

       だったら…本体がここにいる必要、ないでしょう!?」

ピーチ「…まさかっ!」


ピーチ姫が、顔を真っ青にします。


ルイージ「どういうこと、兄さんっ!」

マリオ「そうか…こいつらおそらく、全員が分身体だ!本体はとっくに離脱してる!
     そんでもって、アドを取るために、おそらく新たな人質確保に躍起になってるぞ!」

クッパ「お、おい…じゃあ、まさか向かった先は…!?」




――まだまだ往来盛んな、キノコ城、城下っ!

ピーチ「助かったわナスタシア、全員、城下に向かうわよっ!悪いけどこっちは放置!」

分身体はワラワラ居続けますが、幸い人気はない。
後ろ髪を引かれつつも、全員、ピーチ姫に釣られて駆け出します。
…私はピーチ姫に、サヤカはデイジー姫に速やかに担がれて。

…いやまあ、サヤカをこんなところに取り残すのは論外なのですが、
なんとも恥ずかしい絵ですね。




しかし、ナスタシアの機転もむなしく。
判断の遅れは如何ともし難かったようで。


すこしばかり…遅かったようでした。

ピーチ「なんて…こと」



既にキノコ城前の広場には、ディメーンの魔法に囚われの身となっている人々が集められ、
ひしめいていたのです。

無傷というわけでもなく、抵抗したのか負傷者、重傷者も多数出てしまっている…なんということでしょう。


その数は、軽く三桁にのぼります。


ディメーン「んっふっふ!これでまた、形勢逆転だねっ!
       いやいや、こーんなお祭りを呑気に開いてくれているなんて、大助かりだよ!」



「姫様!お助け下さい!」

「うわーん、死にたくないよー!」

「このままじゃ、うちの子が死んじゃう!」

「痛い…痛いよう…!」



聞こえてくる悲鳴、鳴き声。慟哭。
ぎりっ、とピーチ姫が唇を噛み、血が滴り落ちました。

ディメーン「さ~てと、今度はしくじらないよ、マドモアゼル ピーチ。
       少しでも抵抗すれば、1人ずつ、1人ずつ、あの世に送っていくからね。

       どうあがいても、1人や2人ならともかく、全員を同時に助けることなんて夢のまた夢だしね!
       …いやあ、最初からこうしておけばよかったかな」


ナスタシア「まったく、どうしてそう、無駄に実力を付けているのですか!
       ここまで同時並行で術式展開することなど、とてもできなかったはず!」



ああ、どうしたらよいのでしょう。事態が好転した、などと考えていた過去の私を叱りたい。
思う存分魔法を発揮するディメーンを、ただ呆然と眺めるばかり。





ただ……同じ、空間魔法の使い手として。



ロゼッタ「羨ましい、なあ」


そんな言葉が、口から出てしまいました。

ピーチ「ロゼッタ、羨ましいってどういうこと?不謹慎よ」

ロゼッタ「…あ、大変申し訳ございません!ですが…
      私も、あれだけ自由に空間魔法を使い倒せたら少しはお役に立てたのに、と思いまして。

      何百年もの間――空間魔法について色々と研究・考察し、頭の中や紙の上ではそれなりの数の空間魔法を
      仕立て上げてきたのですが、FPが少ないばかりにどれもこれも使えずじまいで…
      
      たとえば、ディメーンが今行使している空間魔法も、FPがありさえすれば私にもおそらくできる程度のものです」



私の渇望が耳に入ったのか、ディメーンはケラケラと笑い出しました。

ディメーン「はははっ!頭が狂ったのかな?
       こんな高等な魔法が凡人にできるわけないだろう、マドモアゼル ロゼッタ!」

ピーチ「何よ!どうせ、さっき自慢してた『参考書』とやらの賜物でしょ!
     自分じゃ編み出せもしなかったくせに偉そうに!」



ディメーンが、囚われた1人のキノピオに爆撃を仕掛け、内壁に叩きつけました。
完全に意識が無くなり、流血も。一刻を争う状況です。
たちまちピーチ姫も口をつぐみ、涙を堪えて怒りに震えるしかありませんでした。

ディメーン「確かに参考書のおかげ…しかし、それを活かせるのは、ボクの実力あってこそ!
       さっき言わなかったっけ?

       というより、常人じゃその凄さ、真意、存在意義にすら絶対に気付けないんだよね!相当に狂気ものの書物だし!」



そう言って、ポン、と古ぼけた一冊の本を異空間から取り出します。



マリオ「狂気もの…?どういうことだ?」

ディメーン「執筆者は相当な切れ者のようでね…まあ、既にそいつを超えているだろうけど。
       どうにも『選ばれた者のみに空間魔法の極意を伝えたい』という想いから、
       カモフラージュを散りばめている。ページが引き千切られていたり、所々黒く塗り潰されていたりね。

       中でも初見で面食らったのが、一見して魔術書とはまるで無縁な…
       フィクション小説の体裁をとっているところさ」

ピーチ「フィクション、小説…!?意味が分からないわ」

ピーチ姫が話を促しつつ、隙を必死に伺います。
それを知ってか知らずか、ディメーンは大層得意そうに続けます。

ディメーン「そう…表の顔は内気な少女、しかし裏では平和な世界を脅かす悪意に魔法を駆使して人知れず立ち向かう暗躍者。
       時には意中の男性に正体がバレかけたりしてあたふたする、板挟みに遭う複雑な恋愛事情。
       ここまで言うと興味が湧くかもしれないが、傑作なのが文才なんて一切なくて…
       
       いや、わざとか、流石にマジ書きでこれはない。
       そんなこと、ボクが許したとしても宇宙が許してくれないな。
       大昔に、あまりの黒歴史創造に血反吐を吐きながら改悪に改悪を重ねて執筆したに違いない。

       全てが稚拙で素人の書き殴りっぷり。ワンパターンで先が読め過ぎる勧善懲悪ものの展開。
       ボクもうわぁ、とドン引きしながら読み進めたけどね。
       合間合間に超重要な術式のヒントが、数式が散りばめられているのだもの。
       どんなに馬鹿丸出しな書物でも、ボクにとっては聖書だよ」

ピーチ「まるであなたみたいな趣味の悪さね…」







ロゼッタ「……………………ん?」

ディメーン「そして、これがその代物…
       『星に願いし亜空の魔女 ~おたすけウィッチ、三日月に舞う~』だね。
       いやあ、タイトルもふざけ過ぎて逆に天才と思わせないかい!?」

ピーチ「星に願いし亜空の魔女……なんて厨二設定なの…!」





ロゼッタ「」

ロゼッタ「」

ロゼッタ「……は?」

マリオ「…………ロゼッタ?どしたの?」ユサユサ

ディメーン「それに、一緒についてたメモ用紙があったんだけどさー。


       『シリーズ累計150万部突破の超大作!書店にて全10巻、好評発売中!
        ① おたすけ☆ウィッチ、その名はロゼりん!
        ② 古の遺跡と風を司りし巫女
        ③ おたすけ☆ウィッチ、三日月に舞う
        ④ 激闘!紅蓮の使者現る
        ⑤ 内気な魔女の恋愛事情
        ⑥ 挫折と涙と、シューティング☆スター!
        ⑦ 星降る夜の舞踏会
        ⑧ スターダスト・ラブソディ
        ⑨ 響け!疾風の協奏曲
        ⑩ おたすけ☆ウィッチと空中庭園!            』


       だってさ。第3巻執筆時点で第10巻までのタイトル付けの皮算用までするなんて、
       素面だとしたら頭のネジが緩んでいないか気になる思考回路だね」

ロゼッタ「えっちょっ待って」ガクガク

ピーチ「…本当にそれ、参考書たりえるの?」

ルイージ「……………………」

ディメーン「性的知識もないのに官能めいたことを無理やり書こうとしてさ。
       こそあど言葉で誤魔化すわ、ますます稚拙さが露わになるわ、急に場面が飛んで逃げるわ、
       いつの間にか距離が縮まってるわ、そのくせ強引に三角関係とか描写しようと空回りするわ…

       知的なボクですら…いやボクだからこそ顔が強張る展開が目白押しだったよ、うんうん」

ロゼッタ「ゴフッ(吐血)」

ピーチ「うわあ、それはないわー…」

クッパ「…………………………………………」

ディメーン「極めつけにさ、隕石が落ちてきたときに、フィクションにありがちなご都合展開で回避するんだけど、
       その時の主人公が

        『この顛末がまぐれではないかって?違うわ、私は真に驚くべき魔法を編纂して見せた。
        でも、ここで語ることはできないわ。だって、私の人生という限られた日記に記すには、
        余白が狭すぎるんだもの(キリッ)』

         って独り言で締めくくるんだよ。もう大うけで大うけで。――あー、語れてすっきりした。
         少しは誰かに共感して貰いたかったんでね。

         こんな内容のくせして、空間魔法の極意を散りばめた一冊なんだからamazing!」

ロゼッタ「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

ピーチ「さっきからうるさいわよロゼッタ!?ってか、なんで吐血してるの!?」

マリオ「うわあ」

ルイージ「うわあ」

クッパ「うわあ」

マリオ「…なあディメーン、その本、どうやって入手した?」

ディメーン「宇宙空間に漂っていたところを偶然拾ったよ?」

マリオ「…ロゼッタ、負の遺産であることに気付いてちゃんと焼却処分した?」

ロゼッタ「ちゃんと原本除いてブラックホールに放り込みましたよっ!!」グズッ

マリオ「きっと奇跡的にホワイトホールから無傷で出てきちゃったんだな……
     ってか原本は現存する上に複製までしたのかよ」

ピーチ「…え?」

ルイージ「」

クッパ「」

ロゼッタ「……すいません、今のなしで」

ディメーン「???」

ピーチ「ロゼッタ……………………あなた、まさか」


ロゼッタ「そんな目で私を見ないでくださいぃーーーーーーっ!!」

ロゼッタ「死にたいです…いっそ殺してください…」orz

サヤカ「私はママに生きていてほしいよ!?死にたいなんて言わないで!」

茶化す気持ちなど全くないサヤカだけが、唯一の救い……っ!




サヤカ「だから、頑張って!ロゼりん!」




ドグシャァアアアア!!
立ち上がろうとして言葉の刃に切り裂かれ、地に倒れ伏しました。

マリオ「大変だ!ロゼりんがまた血を吐いてるっ!」

ルイージ「頑張れロゼりん!負けるなロゼりん!」

ピーチ「わ、私は信じてるからね!ろ、ロゼりんは強い子だって……!」

クッパ「ロゼりんロゼりんしつこいぞ!いい加減にしてやれ!全く酷い奴らだ、なあロゼりん」

ロゼッタ「」

ナスタシア「…が、頑張って、ください?」アセ

ロゼッタは めのまえが まっくらに なった▼

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