ソ連尉官「自分達が」 国民党兵「魔王と戦う?」 (249)

国民党兵「そりゃ食えるんすか、だんな」

ソ連尉官「同志、少し口を閉じてもらえませんかね」

国民党兵「すいやせんねだんな、あっしはお喋りなもんでして」

ソ連尉官「くそ、もうちょっとマシな部下を持ちたい…」

ソ連尉官「失礼、続けてください」

領主「よかろう、話を続けるぞ。まずは…」


これは異世界に飛ばされた軍人達の物語である…

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1371878761

乗っ取り禁止なのでこちらに
PCともしもしの両方から投稿するのでID時々変わるかも

1941年、ベルリン
ttp://www.youtube.com/watch?NR=1&feature=endscreen&v=hjTKOndywlw

ワー!ワー!

SS兵士「総統閣下万歳!ライヒ万歳!」

SS佐官「いやあ、いつ聞いても総統閣下の演説は素晴らしいな。君もそう思うだろう?」

ドイツ佐官「ええ、そうですな」

ドイツ佐官(ファシストめ…)

大将「そこの君、ちょっといいかね」

ドイツ佐官「はっ!それでは私はこれにて失礼します」


コツコツコツ・・・

大将「君はもう知っていると思うが、我が国はソ連との国境に大量の兵力を配備している」

大将「総統閣下は行動を起こすつもりのようだ」

ドイツ佐官「そんな!不可侵条約を結んだばかりではありませんか。それにイギリスも・・・」

大将「ウンターミーネン・ゼーレーヴェ、ゼーレーヴェ作戦は中止だ。」

ドイツ佐官「しかし、不可侵条約を破るなど・・・」

大将「そうだ、これはプロシア軍人のやる事ではない!だが命令なのだ」

ドイツ佐官「それで、私への話とは?」

大将「君を含めた数人に前線の指揮を執ってもらいたい」

ドイツ佐官「・・・了解しました」

ドイツ佐官「しかしなぜそれを直接お申し付けになるのですか?わざわざご足労くださらなくても」

大将「君は、ナ・・・いやSSが嫌いなようだな」

ドイツ佐官「いえ、決してそんな事は」

大将「気をつけたまえ。ヘル・フリッチュのようになりたくなければな」

大将「君のような優秀な人材は・・・失いたくない」

1941年、南ロシア

ソ連尉官「全員、整列!」

ソ連兵士「・・・。」ビシッ

国民党兵「えーっとえーっと」モタモタ

ソ連尉官「同志、あなたにはやる気という物はあるのですか?」

国民党兵「お許しくだせぇだんな!あっしはいきなり選ばれたもんで!」

ソ連兵士「同志、中国人の教育は航空部隊だけの筈では?」

ソ連尉官「その筈だったんですがね・・・せめてモスクワに留学させてから・・・」

ソ連尉官「仕方がありませんね、まずは隊列の組み方、規律についてお教えしましょうか・・・」

ソ連兵士「こんなのが数十人か・・・先が思いやられるな」

1941年 6月22日、ロシア南部

ソ連尉官「今日の教練はここまで!」

ソ連尉官「なにか質問は?」

ソ連尉官「よろしい、転回!」

ソ連尉官「解散!」

タッタッタ…

ソ連尉官「ふう…そろそろ何とかなってきたな」

ソ連尉官「あの変な言葉遣いには慣ないが…」

ソ連尉官「さて、書類を片付けて寝るか」

同日、独ソ国境

ドイツ佐官「諸君、今夜より我が国はソビエト連邦に宣戦布告する」

ドイツ佐官「これは我が国の存続をかけた戦いである!失敗すれば…東方生存圏は無くなるだろうな」

ドイツ佐官「宣戦布告後、まずは爆撃機と近接支援機が攻撃を開始するだろう」

ドイツ佐官「そこでわれわれ捜索大隊の任務は主力と離れて先行し、敵の拠点を制圧する事である!」

ドイツ佐官「30分後に作戦開始!かかれ!」
シャイセ
ドイツ佐官(くそっ、こんな卑怯な真似をしなければならないとは…)

ドイツ兵「閣下?」

ドイツ佐官「ああ、すまんちょっと考え事をしていたんだ…」

ドイツ佐官「ソルダーテン…いや、ソルダート、まだ死ぬんじゃないぞ…」

ドイツ兵「閣下…」

ドイツ佐官「秒読み開始…」

……………

ドイツ佐官「10秒前…9,8,7,6…」

5…………

4…………

3…………

2……

1…

ドイツ佐官「状況…開始ッ!!」

ブロロロ…

ゴオオオオ…ヒューン…ダダダ…

ドイツ佐官「作戦開始から二時間…ルフトヴァッヘは随分と派手にやっているな」

ドイツ兵士「見渡す限りイワンどもの残骸ばかりですな!」

ドイツ佐官「我々はルビコン川を渡ってしまった…ならばヴェアマハトの練度を見せつけてやるまでだ」

ドイツ佐官「ガガッ…第一中隊はそのまま前進、第二中隊は迂回して敵を包囲せよ」

ドイツ兵士「閣下、捕虜を捕まえました」

ドイツ佐官「先行部隊に発見されていなかったのか?運のいい奴だな…」

ドイツ兵士「こいつらです!」

ソ連尉官「………。」

国民党兵「ナニモシテナイ!ワタシナニモシテナイ!ニエットルスキー!」

ドイツ佐官「どうも。煙草は如何かね」

ドイツ佐官「タバコ、トゥバーク、あー、シャガレータ…」

ソ連尉官「ご心配なく、ドイツ語は話せます」

ドイツ佐官「よろしい。君の身柄は国際法によって保護されている。憲兵隊に引き渡すまでご同行願いたい」

ソ連尉官「次の戦争ではドイツと我が国が手を組むのだと思っていましたがね…」

ドイツ佐官「その時はよろしく頼むよ。そっちの東洋人は?」

国民党兵「ニヒトシーセン!ニヒトシーセン!フレンデ!ハイルドイチュランド!」

ソ連尉官「…彼は中国国民党の下士官です。彼にも相応の待遇を」

ドイツ佐官「…いいだろう」

ドンッ…

ドイツ佐官「どうした!?」

ドイツ兵士「イワンの砲撃です!」

国民党兵「ひぃぃぃ」

ドイツ佐官「まさかそんな骨のある部隊が居るとはな…」

ドイツ佐官「ここから離れるぞ!乗車急げ!」

ドカーン

ドイツ兵士「閣下、危険です!」

ドイツ佐官「運転手!早く出せ!」


………………

ドイツ佐官「集合。何台やられた」

ドイツ兵士「オートバイが二台…装甲車が一台です」

ドイツ佐官「…分かった。地図を」

ドイツ佐官「コンパスはあるか?落としてしまったようだ…」

シュッ カランカラン

ドイツ佐官「…!」

ドイツ兵士「グラナーダ!」

ドイツ兵士「伏せろ!」

スッ…

ドオオオオン

…………………

ドイツ佐官「衛生兵……」

ソ連尉官「………」

ドイツ兵士「うぅ…うぁあ…」


視界が…………




……………?

何だ…あれは……?
とうとう迎えが…………

?「この人にー、あとこの人もー」

?「ふふふ、楽しくなりそう!」


・・・・・・・

ドイツ佐官「ここは…」

ドイツ兵士「何処なんだ…?」

ドイツ佐官「何人いる?」

ドイツ兵士「一人…二人…」

ドイツ兵士「大隊本部のほとんどと、あとは捕虜たちです」

ドイツ佐官「大丈夫かね?」

ソ連尉官「な、何とか…」

ドイツ佐官「どうやらソ連軍の残党の襲撃を受けたようだな…自分達を囮にするとはやるじゃないか」

ソ連尉官「何の事です?」

ドイツ佐官「本気で知らないのか?」

ソ連尉官「あなた方の国の攻撃でこちらの前線は総崩れでしょう、そんな強固な部隊が都合よく現れるとは思いませんが…」

ドイツ佐官「そうか…それはいいとして、我々はなぜ無傷なんだ?」

ソ連尉官「貴方も私も兵士たちも血まみれだった筈ですが…」

ドイツ佐官「━そして、此処はどこなんだ?」

ドイツ佐官「…偵察に出した兵士が戻って来たようだな」

ドイツ佐官「話を聞く限りここの風土は西ヨーロッパのものに近そうだ」

ドイツ佐官「だが、あり得ないほど高い山や不思議な植物…どういうことだ、これは」

ワアアアア…

ドイツ佐官「どうした!」

ドイツ兵士「申し上げます!その…」

ドイツ佐官「はっきりしろ!」

ドイツ兵士「ちゅ、中世程度と思われる軍団が我々を取り囲んでおります!」

ドイツ佐官「あれほど歩哨を立てておけと言っただろうに…!」

佐官は帽子をかぶり直し、制服を整えてからテントを出た

先程ここを本部にすると決めてから設営したものだ。

「何だこれは…」

彼は思わずうめいた。報告通り本当に回りを中世風の装束を着た兵士たちが埋め尽くしていたからだ。

「おい、捕虜たちの縄を解いておけ」

「はっ?」

「どんな事になるか分からん…人手は多い方がいい」

そして前に一歩進み出て、腕を後ろで組み、胸を張って声を出す。

出来るだけ気だるげに、動揺を悟られないように。

「どうも!我々はドイツ第三帝国国防軍、第………捜索大隊である。貴官たちは?」

落ち着き払った対応をするとは思わなかったのだろう。
中世装束の兵士たちは顔を見合せ、やがて一人のリーダーらしき男が進み出て来た。

「ご立派なことを喋り散らすのも結構だがな、俺たちは苛ついてるんだ。
とっとと金目の物を出しな。財布を軽くした方がいいだろ?」

「貴官は追い剥ぎかね?」

「追い剥ぎだって?おいおい、言いがかりは止めろよ。[ピーーー]ぞ?」

何だこの頭の悪そうな男は
ベルリンの幼年学校でこういう物言いは卒業した。

こいつの頭はユーゲント以下だな。

その後適当な問答を繰り返しつつ、後ろ手で合図を送る。

「さっきから舐めやがってよ!いいぜ、皆殺しにしてやるよ!」

「弓兵…前へ!」

「Marsch!Marsch! Auf von zalt! Sch?tzenreihe!」

号令で兵士たちが整列する。
ソ連兵や捕虜たちも見よう見まねで一列に並んだ

「Schuetzen! Stellung! Marsch! Marsch! Feuer Frei!」

発砲音が響きわたり、薬莢が転がる。

音がなり止んだとき目の前に立っている追い剥ぎは一人もいなかった。

「さて、死体を検分させて貰おうか」

ドイツ佐官「これは…正規軍か?鎧をこんなに配備しているとは金持ちだな」

ドイツ佐官「ご丁寧に紋章まで着けて追い剥ぎか」

ゴソゴソ

追い剥ぎ「ぐっ……痛ぇ…」

ドイツ佐官「君に質問したいことがある」

追い剥ぎ「何なんだ!あの武器は何なんだ!雷が落ちたと思ったらみんな倒れてた!お前ら…!」

ドカッ

追い剥ぎ「うっ!」

ドイツ佐官「聞かれた事にだけ答えればよろしい」

ドイツ佐官「君たちはどこの所属かね」

追い剥ぎ「………。」

ドイツ佐官「言いたくないのかね?ならば紋章など付けるものではないぞ」

追い剥ぎ「……俺たちは装備を奪って着ていただけだ。これは正規兵のものさ」

ドイツ佐官「嘘はないな?」

追い剥ぎ「う、嘘じゃねえ!」

ドイツ佐官「よろしい…ではさようならだ」カチャッ

パンッ

ドイツ佐官「…君たちは歩哨を立てない失態をしでかした」

ドイツ兵士「も、申し訳ありません!」

ドイツ佐官「だが先程の射撃はなかなか良かったぞ。さあ荷物を纏めて出発だ…」

ドイツ佐官「しかし追い剥ぎ程度に打ち倒されて装備も奪われるとは、ここの正規兵は弱いんだな」

ドイツ佐官「もしかしたら政治が乱れているのかも知れん…厄介なことだ」

ドイツ佐官「それで、彼はさっきから随分と大人しいが」

国民党兵「……。」

ソ連尉官「いえ、もしかしたら国際法が採択されて黙秘権ができるかもしれない、
ということを伝えた途端にああなりまして」

ドイツ佐官「…静かなのは結構な事だな」

ソ連尉官「しかし我々の拘束を解いてしかも武器まで渡してよろしかったのですか?」

ドイツ佐官「私が逆に聞きたいのは、君がどうしてそれほど冷静に
この状況を受け入れてるのかという事だな」

ソ連尉官「まあ…状況が状況ですから」

ドイツ佐官「目の前に立っているのは裏切り者だぞ?祖国への忠誠はないのか」

ソ連尉官「忠誠ですか…私の父親はポーランド人で、先の大戦ではドイツ側だったので…」

ソ連尉官「しかもそのせいで子供の頃までシベリアでしたからね」

ソ連尉官「先程は反撃する間もなく包囲されてしまいましたので、部下も一人も死んでいませんし」

ドイツ佐官「通りで抵抗しないはずだ…いや、通りなのか?」

ソ連尉官「ともかく私には祖国への忠誠というものがよく分からないのですよ」

ソ連尉官「軍人になったのも金銭的な理由ですし」

ドイツ佐官「そうか…そういう考えもあるのだな」

ソ連尉官「所で、一面草原しかありませんが…我々は何処に向かっているのでしょうか」

ドイツ佐官「一度は死を覚悟したからな、恐らく簡単には戻れないと見ていいだろう」

ドイツ佐官「となるとこの世界での本部を設営しなければならん」

数ヵ月後……

米兵「あー、イッヒイスト…」

自衛隊「イッヒではなくヴィーアでは?」

ドイツ兵「H?nde hoch!」

米兵「誰なんだ?このコスプレ野郎共は…」

英軍曹「Halt!」

ドイツ兵「Achtung!」ザッ

英軍曹「やあ。私がこの部隊の指揮官だ」

自衛隊「…どうも。なぜニ次大戦の制服を着ているのですか?」

英軍曹「ニ次大戦?何だねそれは」

米兵「スコット野郎、俺が聞きたいのはな、どうしてこのクソドイツどもが俺たちに銃を向けてるかだ」

英軍曹「そりゃあ君、目の前で閃光が起こったと思ったら完全武装の兵士が立ってたからだろう」

米兵「じゃあ説明してくれ!この状況を!」

英軍曹「いいだろう…だがまず君たちを我々の本部に案内しよう。紅茶でもどうだね。何だったらハギスでも…」

英軍曹「そうそう、抵抗なんて考えない方が身のためだよ。言語が通じないってのはね…分かるよな?」

自衛隊「くっ…」

英軍曹「Achtung,sie sind Freund.Nicht Schie?en.」

米兵「何て言ったんだ?」

英軍曹「撃つなって事だよ。さあ行こう」

数ヵ月後……

米兵「あー、イッヒイスト…」

自衛隊「イッヒではなくヴィーアでは?」

ドイツ兵「H?nde hoch!」

米兵「誰なんだ?このコスプレ野郎共は…」

英軍曹「Halt!」

ドイツ兵「Achtung!」ザッ

英軍曹「やあ。私がこの部隊の指揮官だ」

自衛隊「…どうも。なぜニ次大戦の制服を着ているのですか?」

英軍曹「ニ次大戦?何だねそれは」

米兵「スコット野郎、俺が聞きたいのはな、どうしてこのクソドイツどもが俺たちに銃を向けてるかだ」

英軍曹「そりゃあ君、目の前で閃光が起こったと思ったら完全武装の兵士が立ってたからだろう」

米兵「じゃあ説明してくれ!この状況を!」

英軍曹「いいだろう…だがまず君たちを我々の本部に案内しよう。紅茶でもどうだね。何だったらハギスでも…」

英軍曹「そうそう、抵抗なんて考えない方が身のためだよ。言語が通じないってのはね…分かるよな?」

自衛隊「くっ…」

英軍曹「Achtung,sie sind Freund.Nicht Schie?en.」

米兵「何て言ったんだ?」

英軍曹「撃つなって事だよ。さあ行こう」

英軍曹「閣下、ただいま戻りました」

ドイツ佐官「よろしい。その者たちは?」

英軍曹「はい、偵察任務の途中で遭遇したのでつれて参りました」

ドイツ佐官「見たことがない装備だな。それは自動小銃か…」

米兵「触るんじゃねえ!」

ドイツ兵「抵抗するな、この!」

ドイツ佐官「客人だ、丁寧に接したまえ」

ドイツ兵「ヤヴォール!」

自衛隊「どういう事だ…?さっきまでドイツ人たちが何を言っているかわからなかったのに」

ドイツ佐官「それについては彼が説明しよう」

ソ連尉官「了解しました。まずは初めまして、お二方。我々の基地にようこそ」

ソ連尉官「最初に我々が誰なのか話す必要がありそうですね」

米兵「早くしてくれ、頭が痛くなってきた…」

ソ連尉官「この基地にいる者はみな、だいたい1930年から1950年くらいまでの年代…ああ、元の世界と表現しますが…その同じ、元の世界のその年代にいたようです」

自衛隊「ひょっとしてナチスという組織やソビエトという国が存在する世界でしたか?」

ソ連尉官「やはりご存じでしたか。貴殿方は同じ世界から来ていたようですな…。それならば話が早い」

英軍曹「私たちに共通しているのはだね、元の世界で死にかけていたということなんだよ。
銃弾、スコップ、爆発、パルチザンのナイフ…何でもいい、それにやられて血液が傷口から流れ、視界が薄れてきた…」

ドイツ佐官「そして私は光を目にした。いや、私を含めた全員がだ!
ついに迎えが来たかと目をつぶる、
するとどうだ、数秒後この世界に無傷で立っていたんだ」

英軍曹「そういうことだね。俺と部下は最初途方にくれてあちこち歩き回りましたんだよな。」

英軍曹「すると敵国、ドイツの軍人を目にしましたわけだ。…でも、俺には引き金が引けなかった」

英軍曹「奴さんはズボンのと下着のシャツだけ着けててな、しかも略帽すらまともに被ってなかった」

英軍曹「それで奴さんもまた途方にくれた表情をしていたんだよ。」

英軍曹「俺に銃を向けておきながら、それ以上何もせず、俺と顔を見合わせてね…」

ドイツ佐官「そうして我々はここに基地を作った…過去の事は取り敢えず水に流すという条件でな。」

米兵「だいたいの事は分かった。だが俺が分からんのは…」

ドイツ佐官「何故時代の違う自分達が?だろう?」

ドイツ佐官「我々は偵察を送って地図を作成すると同時に情報収集も始めた」

ドイツ佐官「情報収集とは言っても単なる聞き込みだがな。何しろ人手だけはある」

ソ連尉官「その結果、この世界には我々とはまた別に元の世界出身の者達がいた事が分かりました」

ソ連尉官「我々は連絡を取ろうとしました…しかしそれは叶わなかった。話を聞く限りでは20世紀前半の出身者ばかりのようなのですが」

ソ連尉官「なんと彼らは伝承の中の人物だったのです」

自衛隊「待ってください…仮に、仮にその話が正しいとして、
我々が来るのはあなた方が伝説になった後なのでは」

ソ連尉官「そうですね…何らかの綻びが生じたのかも知れません」

米兵「なんてこった…」

ドイツ佐官「そうそう、君たちはどうしてこっちに?」

自衛隊「分かりません…合同演習をしていただけなのですが」

ドイツ佐官「集団でいたとなれば、他にも君の部隊の人間がこちらに来ている可能性が高い」

ドイツ佐官「現にここにいる者たちの仲間が次々と発見されているからな」

英軍曹「偵察は俺の担当だ、探して欲しいなら名前か特徴を教えてくれよ」

ああウムラウト文字化けしちゃうのね


ドイツ佐官「というわけで、君達にもこの基地にいて貰いたいのだが」

米兵「ここ以外にも元の世界の人間の集団はあるのか?」

ドイツ佐官「あることはあるが…知る限りではここが一番大きいぞ」

自衛隊「…私は行く当てがないのでここにします」

自衛隊「せめて部隊の上官殿と合流してから指示を仰ぎたい」

米兵「…俺もだ」

ドイツ佐官「よろしい。今日から君たちはこの基地の一員だ!」

英軍曹「あー、しかし、いくつか守ってもらう事があるよ」

英軍曹「第一に…君たちは下士官兵かな?」

英軍曹「…そうか、君たちを一緒の分隊に配属するが、そこの指揮官の命令には従ってほしい」

英軍曹「ただし分隊長には数ヵ月に一回の試験と、新任投票が課せられるから不満があればその時に言ってくれ」

米兵「随分と民主的だな」

英軍曹「色々な国籍の兵士たちがいるしな…口には出さなくても不満はあるはずだ」

ソ連尉官「これは初期のソビエト労農赤軍のやり方を真似たものです」

ソ連尉官「結局…その、粛正や土地のしがらみで上手く行かなかったのですが」

ドイツ佐官「こちらではそういうしがらみが無いからな、上手く行く…と思う」

自衛隊「プロイセンは保守的だと聞いていましたが」

ドイツ佐官「正直元の世界のように官職にしがみつく必要が無いからな」

ドイツ佐官「精々裏の農園で作った野菜を優先的に食えるくらいだ」

ドイツ佐官「ああそう、勿論私にもその義務は課されている」

ドイツ佐官「本当はカリスマがあって優秀な者に指揮を執って貰いたいのだがな」

英軍曹「第二に、持ち回りで裏の農園で働いて貰いたいんだ」

ソ連尉官「この国はひどい荒れようのようでして、村の盗賊撃退や魔物の撃退を手伝ったら結構な量の野菜を貰えたのです」

ソ連尉官「この世界の農業ははっきり言って稚拙ですね!牛の使い方もよく分かっていないし、鉄製農具も満足に普及していません」

ソ連尉官「ただしそれを魔法で補っているようです。村に必ず一人は魔法使いがいるわけです」

ソ連尉官「我々としてはそんな不確定な物には頼ってられません。だから鍬と鋤を持って大地を耕さねば」

ソ連尉官「そういうわけで、あなた方にも耕作をお願いしたい」

ソ連尉官「欲を言えばジャガイモやさつまいもが欲しいところですが」

英軍曹「ただしジャガイモは病気にやられると恐い、将来的にはクローバーとカブを間に挟みながら大麦と小麦を育てるつもりだ」

ソ連尉官「つもり…とは言え、まだ目指している段階ですがね」

ソ連尉官「劣悪な技術力の元での農作業はキツいですよ、覚悟してください」

英軍曹「第三に偵察と防衛任務だ」

ソ連尉官「大雑把とはいえ地図がありますから偵察はやり易いと思いますが、情報はあればあるだけ有り難いです」

ソ連尉官「農地も一応柵で囲って監視塔を建てましたが、それでも畑泥棒や盗賊がいますからね」

ドイツ佐官「盗賊についてだが、最初少人数だった時はよく襲撃を受けていたんだ」

ドイツ佐官「はじめは一人二人撃ち殺せば撤退したんだが、今度は大人数で来やがった」

ドイツ佐官「奴等には遮蔽物の概念がないからな…アメリカーナは何て表現するんだ?」

米兵「七面鳥撃ちか?」

ドイツ佐官「それだ!監視兵と歩哨だけで事足りたんだが、それを何度もやられると睡眠不足になる」

英軍曹「適当なのを痛め付けて縛り首にしたのを街道に置いておいたんだが」

自衛隊「し…縛り首?」

英軍曹「クズにはお似合いだからね。君の時代ではもう一般的じゃないんだろうが」

英軍曹「まあ、生首をバリケードにするのは流石に寝覚めが悪いからね。
昼間は大勢農地で働いて、夜は歩哨をこれ見よがしに立てる、これが一番だ」

ソ連尉官「お陰で滅多な襲撃は無くなりました。しかし今度は魔物が来るようになって…」

ソ連尉官「だから防衛も構成員の義務というわけです」

ドイツ佐官「以上。守れるかね?」

自衛隊「ええ、それならば…。」

米兵「てっきり掟って言うからもっとわけわからんものだと思ってたぞ」

ドイツ佐官「よろしい。では何か誓えるもの…そうだな、祖国の国旗に対してでも誓ってくれ」

ドイツ佐官「復唱せよ!」

ドイツ佐官「私は、この基地の構成員として命令に服従し、忠誠を尽くすことを誓います」

「「私は、この基地の構成員として命令に服従し、忠誠を尽くすことを誓います」」

「「私は、いかなる脅威に対してもこの基地を防衛し、そのためには持てるすべての技術と知識を提供することを誓います」」

「「私は、油断なき優秀な兵士であること、勤勉なる労働者であることを誓います」」

「「かくして祖国よ、銃よ、知識よ、技術よ、私を守り賜え!」」

ドイツ佐官「そうそう、構成員同士のトラブルだが…」

ドイツ佐官「今のところはそれほどないが、あまり大きなものだと憲兵隊の創設や軍法会議、銃殺を検討しなければならなくなる」

ドイツ佐官「基本的には目には目を、歯には歯をで対応するつもりだが、そのうちまともな法律を作らねば」

ドイツ佐官「争いは無い方がいいが近くに娯楽施設も無いからな…ストレスがたまるのだろう」

ソ連尉官「ただしこのご時世ですから、庇護を求めて人々がやって来るのも時間の問題です」

ソ連尉官「ありがたいことに貨幣制度もありますから、
そうですね、これだけ男が居れば…娼館も来るでしょうな」

ソ連尉官「軍医は居ますがそれほど薬があるわけではありませんよ!
こちらの薬や代用品で満足しなければなりません」

米兵「分かったよ、性病にかかるのは自己責任って事だな」

ドイツ佐官「あとはストレスを解消することとして銃を撃ちまくることがあるが」

ドイツ佐官「無駄遣いは止めてくれよ。そのうち火縄銃程度は揃えたいがな…」

ドイツ佐官「その代わりだが運動をやる場所はあるぞ。フスバールとかだな」

米兵「フスバール?」

ドイツ佐官「フスバールはフスバールだろ」

米兵「フスバール…フシュバール…フッシュ…ああ、フットボールか」

米兵「おい、訛りが強くて聞き取れないぞ!」

ドイツ佐官「そうだ、言語が通じるとはいえそういう問題もある」

ドイツ佐官「ちなみにドイツ語には尊称があるが、英語にはないぞ。
ドイツ人の上官を相手にするときは出来るだけ丁寧な言葉遣いでな」

英軍曹「金稼ぎとしてこっちの現地人を雇ってから訓練を施し、傭兵をやらせる事も考えているんだ」

ドイツ佐官「その場合はお目付け役として送り出すこともあるだろうな、だから言語は考えて使うべきだぞ」

一週間後…

ドイツ佐官「人手も増えてきた事だし、そろそろ人数と国籍をはっきりさせなければな」

ドイツ佐官「というわけで頼んだ」

・・・・・・

ソ連尉官「そこの中国人!出番ですよ」

国民党兵「イ…イッヒ?ワタシ?」

ソ連尉官「その喋り方は止めてください…数ぐらいは数えられるでしょう」

国民党兵「ダ、ダー!」

コツコツ

ソ連尉官「それで、どうしてソ連に派遣されたのですか」

国民党兵「だんな、前にも言いましたがね、本当にくじ引きで選ばれたんでさ」

国民党兵「なんでも精鋭はみーんな航空部隊に行っちまったらしくて、うちの部隊からはあっしが」

ソ連尉官「もうちょっと…何処かの大学を出てるとか、留学したとか…」

国民党兵「数と文字が読めますぜ!」

ソ連尉官「…まあ、こんなものですか…急に決まったらしいですし」
ポニマーニェ
ソ連尉官「Внимание!」

「「「はっ!」」」ザッ
スターナヴィッ
ソ連尉官「СТАНОВИСЬ!」

タタタッ

国民党兵「四角形に並ばせてどうするので?」

ソ連尉官「あなたはかけ算も知らないんですか!!!」

ソ連尉官「ああいや、うちの国もそんなもんでした…」

ソ連尉官「えーっと…縦が…」

ドイツ佐官「おお、早かったな」

ソ連尉官「言葉が通じるのほど有り難いことはありませんね!
我が国固有の号令がどう伝わっているのかが気になりますが…」

ソ連尉官「集計の結果は以下の通りです」

ドイツ軍 一個中隊
ソ連軍 一個中隊
イギリス軍 一個小隊
フランス軍 一個小隊
日本軍 一個小隊
国府・中共軍 一個小隊
その他 二個小隊

ソ連尉官「この集計には我々の回りで働いてくれている兵士要は本部付けの兵士は含まれていません」

ソ連尉官「軍医もです。」

ドイツ佐官「この その他とは?」

ソ連尉官「色々ですね。ポーランド、スロバキア、ルーマニア…あとはイタリア。南米出身もいましたよ」

ドイツ佐官「やはりあちらで死にかけていた者達が送られてくるのだろうか?」

ソ連尉官「恐らくは…。そうだとしたらこの世界には数万人を越す我々の…あー、同胞がいる事になりますな」

ドイツ佐官「我々の規模はぎりぎり大隊と言った所かな」

ドイツ佐官「それと…そろそろ我々の部隊に分かりやすい名前をつけるべきではないだろうか」

ソ連尉官「そうですね…>>38なんてどうでしょうか」

ドリフターズ

ありがとうドリフターズにするわ
それ以外に上がった名前は師団の固有名として使うかも

ここまでの登場人物

・自衛隊
日本出身、自衛隊所属
たぶん知識は豊富
現代の価値観キャラがいると大変やり易い

・米兵
米国出身、海兵隊所属
態度は悪い
動かし方がわからない

・ドイツ佐官
ドイツ出身、年齢は50ちょい
名前にフォンが入るユンカーの息子
保守的な騎兵主義者だったが電撃戦を間近で見たため、先進技術を崇拝するようになる
多少の事は多目に見るおおらかな人

・ソ連尉官
ポーランド系。父親が第一次大戦中ドイツ軍で砲兵をしていたため幼少までシベリアに抑留されるが、逆にそのお陰で大粛清を乗りきった
優秀であったために士官学校を卒業してそれほど経たずに小隊を任された
大酒飲みでニコチン中毒だが真面目

・英軍曹
1943年、シチリア島に投入されたコマンド部隊の一員だった。アルジェリアでも戦った歴戦の士
ドイツのブランデルク部隊に好意を抱いていたためにドイツ人に対しての偏見はあまりない

ちなみに、枢軸軍負けたことは全員知っている
それでもあまりいがみ合いが生じないのはドイツ佐官のカリスマと魔法で押さえているため
魔法って便利だね
そのうちそれを知ったときの話も書きたい

戦車や野砲の類もない感じですかね
個人的にはポーランドが好きなので、その他の連中も活躍して欲しいところですね

自衛隊「ド、ドリフターズですか?」

ソ連尉官「そうです」

自衛隊「あの八時にやっていた…」

ソ連尉官「何の事です?」

自衛隊「なんでもありません…」


ドイツ佐官「そろそろ補給将校と諜報将校を決めるべきだな」

ドイツ佐官「諜報は…やっぱり君に任せよう」

英軍曹「諜報は任せてください」

英軍曹「ですがその為には少し階級を引き上げて貰いたいですね、命令系統が面倒になるから」

英軍曹「補給は…確か日本のがいたはずですよ」

英軍曹「なんでも輜重輸卒とか呼ぶらしくて」

ドイツ佐官「ではその彼を呼んで話を聞くとするか」

Du!

ドイツ佐官「そうそう、彼を呼んでくれたまえ…」

タッタッタ…

日本将校「お呼びですか、閣下」ザッ

ドイツ佐官「うむ、我がドリフターズ大隊も大所帯になってきたからな、そろそろ補給も考えねばならん」

日本将校「大隊に補給が必用なので?」

ドイツ佐官「便宜上大隊と呼んでるだけだからな。旅団と同じく自前の補給システムが欲しいんだ」

日本将校「しかし、武器火薬はこっちに来た兵士たちが持ってきた物しかありませんがネェ」

日本将校「近代的な装備の中でなら補給を考えるべきでしょうが、この世界の文明の度合いから言って、現地調達で事足りると思いますヨォ」

ドイツ佐官「近代的、というのは?」

日本将校「あなたの国の隣国にナポレオンって人がいたんですがネェ」

ドイツ佐官「それくらいは知ってるが」

日本将校「ナポレオンですら補給がおっつかなくて現地調達で賄って、しかもそれで上手く行きましたからネェ」

ドイツ佐官「つまり…補給部隊は必要ないと?」

日本将校「補給部隊はですネェ、無防備な上に伝統的に足がトロいですからネェ」

日本将校「閣下が大規模な戦いや、攻城戦をやりたいとお考えなら必要でしょうがネェ」

ドイツ佐官「ああ、その通り、私は将来的に攻城戦をやろうと思っている」

日本将校「そりゃ本気なんですかい!?」

ドイツ佐官「こんな開けた土地では防衛がやりにくいからな」

日本将校「そうですかァ…自分のお薦めはですネェ、平地に囲まれた小高い丘か、船着き場付きの城ですネェ…補給がやり易いですヨォ」

ドイツ佐官「それと、傭兵をやるとなったら攻城戦にも防衛戦にも兵士を貸し出すべきだからな」

日本将校「攻城戦は悲惨ですヨォ…持久戦になって補給が途切れたら」

ドイツ佐官「だから同時進行で諜報網を張り、各地に包囲下でも物資が流せるよう協力者を作る」

ドイツ佐官「そして実際に派遣するのは我々が訓練した現地人というわけだ」

日本将校「あァーそれはいい考えですネェ!遥かにイイ!」

日本将校「ではひとまずは商人との交渉や荷馬車の用意でいいですかネェ」

日本将校「そうそう、火器の補給は難しいですからネェ、鍛冶屋と交渉して石弓でも作って貰えないか頼んでみますワ」

ドイツ佐官「よろしい、頼んだぞ」

バッ…カツカツカ…

ドイツ佐官「しかし特徴的な話し方だな…」

ソ連尉官「あっちの世界では食料から何から合理化した補給を提案したようですが…」

ソ連尉官「何でもあの喋り方のせいで敵が多かったらしくて、遠隔地に護衛も着けず補給に行かされ、馬賊にズドン!だそうです」

ドイツ佐官「人生ってのは難しいもんだネェー」

ソ連尉官「…真似するのは止めてください」

ドイツ佐官「近辺の村の手助けをしてたら魔物や盗賊の数が減ってしまった」

ドイツ佐官「そうすると警備や作業員としてしか兵士たちを派遣できない」

ドイツ佐官「畑があるとはいえ、収穫は数ヵ月に一回だからな、やはり金がないと」

ドイツ佐官「というわけで以前考えていた人員の養成にそろそろ手を出そうと思う」

ソ連尉官「でも、周辺の村は驚異がなくなったお陰で結構儲かってますよ。今更傭兵になろうとする人間はいますかね」

ドイツ佐官「その通り!だから遠くから徴発するしかないわけだ」

ドイツ佐官「この近辺の土地はいい感じに肥沃だからな…山岳地帯や荒れ地、戦争中の土地なんかがあればいいんだが」

ドイツ佐官「情報部長、諜報網は現在どのようになってるかね?」

英軍曹「村は余所者がいるとすぐバレますから、大きな町に派遣してます」

英軍曹「市民登録もなしに潜伏できる程ですから政治的にかなり混乱しているんでしょうね」

ドイツ佐官「国の事はわかったか?」

英軍曹「いくつかの小国に自由都市が乱立しています。連邦や都市同盟のようなものはありませんね」

英軍曹「人間側には今のところ四つの大国があるようです」

ドイツ佐官「どんな名前なんだ?」

英軍曹「それぞれに方角の名前がつけられてますね。単純でよろしい」

ドイツ佐官「分かりやすいのはいいことだ。それで魔物は?」

英軍曹「隊商に紛れ込んだり、商人から聞いたりした結果、やはり魔物も群雄割拠の状態にあるようですね」

英軍曹「しかし昔は単一の王国だったらしくて、分裂したとはいえ古の王国の勢力は絶大です」

ドイツ佐官「人間と魔物の関係はどうなんだ」

英軍曹「ここらじゃ珍しいですが、ごく普通に混ざりあって生活していますな。もちろん種族間の偏見はそこそこあるようですが」

ドイツ佐官「では我々もその争いに参加させていただこう」

英軍曹「別にこのままここに駐屯して衣るだけでいい気がしますが…」

ドイツ佐官「何もせずこのままゆっくりと死を待つのは耐えられんのだ。兵士たちの士気を保つためにも闘争に参加し、この世界に溶け込む必要がある」

ドイツ佐官「そして溶け込む事に成功したら我々はこの世界の一員だ!そこが我々の祖国となる」

ドイツ佐官「せっかく助かった命だからな。半狂乱になって頭を撃ち抜くのでは勿体ない」

ドイツ佐官「教導戦闘中隊、集合!」

ザザッ

ドイツ佐官「これより諸君らにはこちらで徴用した兵士たちの訓練に当たってもらう」

ドイツ佐官「私たちも教育には尽力するが、彼らは文字が読めないことは確実である」

ドイツ佐官「本能に訴えかけるような素晴らしい訓練をしてくれたまえ」

ドイツ佐官「Sie haben Fragen?」

「「「Nicht, Herr Kommandierender General!」」」

・・・・・・・・・・

ソ連尉官「本能に訴えかける、とは?」

ドイツ佐官「ルーマニア流にやるのさ。乗馬鞭を振り回し、罵倒して個性を失わせ、朝から晩まで訓練させるんだ」

ソ連尉官「それは時代錯誤ではありませんか、同志」

ドイツ佐官「文明の度合いが低いからな、まずは忠実に命令を実行できる部隊を作り出し、さらに別の部隊の教育に当たらせるわけだ」

ドイツ佐官「同時に識字率もぐんと上がるし、お陰で軍人はインテリの職業であると見なされるようになる!」

ドイツ佐官「そうなったらしめた物だ。立身出世を目指して志願兵がさらに増えるだろう!」

ドイツ佐官「鞭を拳骨に変えるのはそれからだな、インテリを殴ってもしょうがないからね」

ソ連尉官「なるほど…しかし教導部隊の兵士たちに殴れるでしょうか」

ドイツ佐官「殴れない場合はきつい訓練を課すようにしろと言ってある」

ドイツ佐官「結局は一時的に個性を失わせて寝ぼけていても集団で戦わせられれば成功だからな」

ソ連尉官「集団戦法を目指しているのですか?」

ドイツ佐官「この時代じゃあ散兵は自殺行為だし、近くに仲間がいないのに逃げるな、というのは要求しすぎだからな」

ソ連尉官「となると給料や食料が大変ですね…」

ドイツ佐官「数週間前から基地の回りに町ができ始めてる、しばらくはそこでなんとか賄えるだろう」

ドイツ佐官「出兵に当たっては…うちの補給将校の腕の見せ所だな」

教導兵「ちゅうたーい、整列!」

ザッ

教導兵「かしらー右!」

ザッ

教導兵「前向けー、前!」

ザッ

教導兵「休め!」

ザッ

教導兵「教導戦闘部隊とは何だ?」

「「「同志の模範となり、同志と共に戦場に赴き、同志と共に戦う部隊であります!」」」

教導兵「教導戦闘部隊の目標は何だ?」

「「「同志を教育し、同志から教えられ、互いによき戦士となることであります!」」」

教導兵「よろしい!基地司令同志に敬礼せよ!」

ザッ

「「「万歳!万歳!万歳!」」」

・・・・・・

ソ連尉官「これは…なかなかいい感じですね!」

ドイツ佐官「正直言って予想外だな…もっとかかると思っていたが」

ドイツ佐官「早速行動に移ろう。町の領主から仕事を貰ってきた」

ソ連尉官「どのような任務ですか?」

ドイツ佐官「族が終結しつつある…正規軍でも大変な相手だそうだ」

ソ連尉官「ここで教導部隊が活躍すれば名声も上がるというわけですね」

ドイツ佐官「そうだ。そこで君に指揮を執って貰いたい」

ソ連尉官「はっ!了解しました!」ザッ

ソ連尉官「では、作戦会議を開始します」

日本将校「作戦会議ですかァ、いい響きですナァ」

ソ連尉官「我々の組織はそこまで大きくなったのですよ。大きな進歩です」

英軍曹「町で情報を集めたが、敵はどうやら地図のこの辺りに集結する腹積もりらしいよ」

ソ連尉官「平原ですか?なんとも大胆な…」

英軍曹「戦乱続きでどこの領主も兵士を回せないからね、略奪し放題だよ」

英軍曹「財布が重いということは歩みものろいというわけだね。とっとと叩いてしまおうか」

ソ連尉官「リーダーはいるのですか?」

英軍曹「所詮は烏合の集だけどね、いくつかの賊集団が集まってるらしい」

英軍曹「そして最高指導者は略奪で儲けている…となると、目立っていい装備を着けているだろうね」

ソ連尉官「なるほど、ありがとうございます」

日本将校「発言してもいいですかネェ」

ソ連尉官「どうぞ」

日本将校「今回の作戦は平原の村になりそうですナァ、なら食料を現地調達で賄えますかネェ」

ソ連尉官「略奪の標的になる位ですから、そうですね」

日本将校「じゃあ薪を持っていく事にしますワァ、兵士たちに温かいおまんま食わせてやりまショ」

ソ連尉官「いいですね。お願いします」

ソ連尉官「では、こんな所でよろしいでしょうか」

ソ連尉官「教導部隊と選抜射手を連れていきましょう。小隊長は腕利きの射手を一人ずつ提供してください」

ソ連尉官「武器庫の主任とは話をつけておきます、日誌にも記入するのでご心配なく」

ソ連尉官「では解散!明朝、広場に集合してください」

一日後

日本将校「Essen mit stehendem」

日本将校「これで合ってますかネェ」

ソ連尉官「とりあえず伝わってはいますよ。みんな立って食べてます」

日本将校「粥にして立って食べた方が消化にいいですからネェ」

ソ連尉官「肉は食べさせなくていいのですか?」

日本将校「肉はですネェ、腹が重くなって動きにくくなるんですよネェ」

日本将校「本当は普段もっと肉を食べさせてやりたいんですけどネェ、農業だけで手一杯ですからネェ」

ソ連尉官「やはり基地をもっと拡大すべきなのですね」

日本将校「そうですなァ、家畜はいいですヨォ、臭いですけど雑草食べてくれますしネェ」

ソ連尉官「まあその話は追々…」

日本将校「しかし食料も提供してくれるとは、うちの司令は随分と吹っ掛けたんですネェ」

ソ連尉官「都市で純粋な職業軍人を維持するとなったら金がかかりますからね、
攻撃なんてするとなるとさらに莫大な資金と時間がかかるでしょう」

日本将校「となると外部に委託した方が早いわけですナァ」

ソ連尉官「食料ぐらいは大したことないのでしょうね」

ソ連尉官「それでは30分後に偵察分隊を出しますよ、準備はよろしいですか」

国民党兵「あの…だんな、こんなに少ない兵で大丈夫なんですかね」

ソ連尉官「あれ、あなたいたんですか」

国民党兵「酷いですぜ…だんな」

ソ連尉官「ほんの冗談ですよ、冗談」

ソ連尉官(本当に気づいてなかったなんて言えない…)

ソ連尉官「何事もまずは演習ですよ、いきなり大軍を動かしたら会計担当が過労死してしまいます」

国民党兵「難しいことは分かりやせんがその言葉信用しますぜ、だんな」

一方集結地近く…

手に手に武器を持った盗賊たちが、目をらんらんと輝かせながら集まっていた。
気の早い者は酒盛りを始め、誰もが勝利を疑わなかった。

「さあ注げ!」

「兄貴、今日も上手くいきそうですね」

「だな!今度は取り分を半分にしてやるぜ!」

「ありがとうごぜえます、兄貴!」

ドーン!

突如雷鳴が響き渡る。盗賊たちはそれを雷鳴と認識した。
盗賊たちは不思議に思った。雨も降っていないし雲も出ていないのに何故?

「兄貴?」

「……」

「へへ、酔っぱらって寝ちまったんだな」

「いや待て!おい、こいつ胸から血を流してるぞ!」

今度は雷鳴が二発響いた。

そしてドサッと倒れ込む音が二回。

「魔法だ!魔法を使われたぞ!」

「畜生、何処から…」

元々浮き足立っていた盗賊たちは、さらに混乱した。

そこから数十メートル、草むらには数人のライフル銃を構えたドリフターズの兵士が隠れていた。

「いい腕だな、だが無駄弾を打つなよ」

「分かってるって」

「そこから10メートル左に一人」

「了解」

雷鳴が響き渡り、また一人盗賊が頭を砕かれて倒れた。

「ブルズ・アイ!」

「どうも」

「よし、こんなもんでいいか、とっととずらかるぞ」

偵察分隊が発砲するのは一人五発までと厳命されている
彼らはそれぞれソ連式のマントであるパラートカやカーキ色のスモッグを着て、頭には月光を反射しないよう略帽のみを被っていた。

村に置かれた前線指揮所に戻った偵察分隊員は、報告をしてから輜重隊員にライフル銃を渡し、太鼓とクロスボウ、石の入った袋を受けとった。

「あれはどんな意味があるんですかい」

「じきに分かりますよ」

事前に作った地図に偵察分隊の報告に基づいた情報が書き込まれていく。

「敵は分散しているようですね」

「焚き火の数と煙の量が少ないですナァ、飯を食うためじゃなさそうですネェ」

「では…今ですね」

「教導部隊、準備せよ!」

号令によって村のあちこちで休憩していた教導隊員が集合し、分隊長の命令で整列する。

分隊長はドリフターズ兵が任命され、もしもの時のために短機関銃をマントの下に隠し持っていた。

「教導部隊、密集陣形!」

教導兵達はみな、大きなカイシールドを持ち、真っ黒なマントで身を包んでいる。

防具はつけておらず、頭にだけ町の守備隊から借りた兜を装備していた。

「教導部隊…前進!」

最前列は盾を構え、盾と盾の隙間から槍や剣の切っ先を突き出している。

二列目は石を詰めた袋を肩からたすき掛けにし、クロスボウを背負っていた。
そして手には松明か太鼓を持っている。

三列目以降は石のほか、手には斧や剣などの雑多な武器を手にしていた

「だんな…あっしらは数十人、敵は数百人ですぜ」

「大丈夫ですよ。それよりやっと人が数えられるようになったんですね」

先行した偵察分隊員は草原のあちこちに散らばり、伏せてその時を待っていた。

本隊が二、三十分歩くと怒号や罵声、そして悲鳴が聞こえてくる。
混乱に陥った盗賊たちが上げる声だ。

「ぜんたーい、止まれ!」

「二列目ー前へ!」

二列目の兵士たちが進み出ると、松明で兵士たちの兜だけが照らされ、闇に浮かび上がった

「太鼓ー、叩け!」

合図で太鼓が叩かれ、異様な光景に盗賊たちの動きが止まる

「なんだお前ら!」

「し、死神だ…!」

指揮官…ソ連尉官の襟章を着けた彼は、笑いをこらえるのに必死だった。
まさか自分達を死神だと思うとは。

陣形から数歩離れた所にいる彼からもその声が聞こえたほど、盗賊は動揺していた

「ち、畜生!やってやる!」

「野郎共、突撃だ!」

「俺たちゃ散々仕事してきたんだ!今更死神なんぞ恐れるか!」

動揺から回復した盗賊たちが教導部隊の陣形に向かって突撃する。

「だんな、まずいっすよ…」

「大丈夫です」

「Арбалет,БЕИ!!」

合図で前面に展開していた兵士たちがクロスボウを放ち、撃ち終わるとそれを後列の兵士に渡した。

突撃を開始していた盗賊たちが矢に居ぬかれて転び、地面をのたうち回る

すると後列の兵士は装填済みのクロスボウを渡し、それを最前列の兵士が打つ間、後列の兵士は渡されたクロスボウに矢を装填した。

「くそっ…数はこっちが上なんだ!押しきれ!」

尚も盗賊たちの勢いは収まらない。

盗賊たちが破れかぶれに投げた斧が教導部隊の前列の兵士を切り裂いた。
しかし教導隊員たちも引き下がらない。

「бросить камень!」

三列目以降の兵士たちが一斉に空に向かって石を放り投げる

雨あられと降る石に盗賊の不運な者は頭を割られ、あるものは石を浴びてうろたえる。

阿鼻叫喚をバックに、太鼓持ち達は淡々と太鼓を叩いていた。

これにより、盗賊たちの頭には『太鼓のなる方角に敵がいる』という印象が刷り込まれる事になった。

「今だ!偵察分隊、やれ!」

指揮官は息を吸い、大声、かつロシア語で指示を出した!

草むらに潜んでいた偵察分隊達が一斉に起き上がり、クロスボウを一発撃ち込み、石を投げ尽くすと太鼓を叩いた

「畜生!囲まれたぞ!」

「あと何人いるんだ…!」

周りに大軍がいると思い込んだ盗賊たちの士気はこれで大きく低下し、次第に後退りを始めた。

「最前列、下がれ」

これで本陣の陣形は元の形に戻ったことになる。
そして続けた。

「やれ!」

分隊長たちは手に持った斧で盾を叩き始め、すぐに部下たちもそれに従う。

盾が織り成す暴力的な音を響かせ、怒号や罵声を上げ、じりじりと密集陣形のまま盗賊たちににじり寄って行った

「ヒ、ヒイッ!」

「助けてくれ!殺される!」

逃げる盗賊たちの背中に石が浴びせられ、何人かが倒れる。

隠れる必要の無くなった偵察分隊の
放つ矢が盗賊に突き刺さる。

最早、場の主導権は教導部隊が握っていた。

・・・・・・・・・

盗賊の半数が倒れるか殺されるかした頃、司令官は命令する。

「そろそろいいでしょう。倒れている盗賊たちを捕縛しなさい」

兵士たちは手に縄をもち、盗賊を捕縛していく。虫の息の物には剣によって慈悲が与えられる

盗賊たちが放棄した戦利品も回収された。

「だんな、どうして奴等を逃がしたんですか?」

「その方が宣伝になりますからね」

大勝利だった。教導部隊は捕虜とともに本部へ凱旋した。

今は歩兵だけだけど、騎兵とこの世界の大砲的存在の魔法使いの兵士はどう調達するのだろうか?
割と手ごろな歩兵と違って騎兵と魔法使いは自前で育てようとすると手間と時間かかるだろうし、騎兵に至ってはコストもかかる

ソ連尉官「教導部隊、総勢50名帰還しました、同志」ザッ

ドイツ佐官「了解。ご苦労だった」

ドイツ佐官「それで、戦果は?」

ソ連尉官「敵の半数を戦闘不能にしました。残りは逃走、何人かの賞金首を捕まえております」

ソ連尉官「我が方の損害は死亡が一人、負傷者が数人です」

ドイツ佐官「おお!大戦果じゃないか」

ソ連尉官「有り難うございます、同志」

ソ連尉官「賞金首以外の捕虜はどうしましょうか」

ドイツ佐官「町にいた奴隷商の商隊を呼んだから全部引き取って貰おう」

ドイツ佐官「奴等に個人的な恨みはないが、略奪したぶんガレー戦で心暖まる体験をしていただかなくてはな」

ドイツ佐官「先程領主に使者を送った、報酬もすぐに支払われるだろう…」

ドイツ佐官「さ、宿舎に戻って休みたまえ」

ソ連尉官「はっ。失礼します」

あまり出てこない方がいいかと思ってたんですが、ダラダラ投稿なのでレスに返信することにします

>>46
ポーランドさんたちは諜報と騎兵訓練で活躍して貰うつもりです
1940年代には騎兵は既に時代遅れなので騎兵担当は年齢高めの共和国軍人になると思います

>>67
今のところは歩兵だけですが、派手さがないので砲兵や戦車も出すつもりです
一撃でやられていた事にすれば連れてこれますので
最終的にはどうにかして近代兵器を使わせたいですね

すみませんトリップつけ忘れました

国民党兵「……。」

ソ連尉官「おや、お悩みのようですね」

国民党兵「だんな、あっしは解らなくなってきました」

ソ連尉官「何がですか?」

国民党兵「この世界でも人殺しをして、捕虜を売り払って金を稼ぐのが正しいのかが…です」

国民党兵「だんな、あっしはしがない農民の出です」

国民党兵「さっき売り払った捕虜どもの手を見やしたか?」

ソ連尉官「…いえ」

国民党兵「あいつらの手にはコブがありやした…農民の手ですぜ」

国民党兵「そいつらを売っ払うのがこの世界に溶け込むという事なんですかい?」

ソ連尉官「…まともな事を仰るのですね。驚きました」

ソ連尉官「そうですね…彼らは人の財産に手を出した」

ソ連尉官「だから復讐されたのです。簡単なことだ」

国民党兵「だんな!あんたの言うことは滅茶苦茶だ!その復讐とやらに無関係なあっし達が…」

ソ連尉官「我々は対価を受け取ってその手伝いをしただけです」

ソ連尉官「…納得行かないかもしれませんね。ですが我々の行動が正しいのかどうかは後世の人間が決めることでしょう。我々はただ仕事をこなしただけだ」

ソ連尉官「難しいことを考えて疲れましたね、もう寝ましょう。あなたの言動については忘れます」

国民党兵「だんな!…いえ、何でもないです。失礼しやした」

・・・・・・・・・・

ソ連尉官「25年前、我が国はポーランドの侵略に対して抵抗し、そして反撃時に略奪を行った」

ソ連尉官「彼の組織も、国民党も、共産党も、一般兵士ほとんどが農民だ」

ソ連尉官「恐らく大多数は盗賊と変わらないのだろうな」

ソ連尉官「略奪は戦争の常か…」

数か月後…

ドイツ佐官「いやあ、我々の組織もいよいよ小国並みになってきたな」

ソ連尉官「協力者が日に日に増えてますからね。元の世界では未だに戦争が終わってないのでしょうか…」

ドイツ佐官「ベルリンは陥落し、我が祖国はソ連と英米に蹂躙される…」

ドイツ佐官「だが今の私には関係のないことだ。どうする事も出来ない」

ソ連尉官「拠点の移転はどうしましょうか?」

ドイツ佐官「自由都市の連合が辺境の古城を譲ってもいいと言ってきている…」

ソ連尉官「防御はやり易いでしょうが、商売には響きますね」

ドイツ佐官「また一から基地建設するのも面倒だしな…」

英軍曹「絶妙な位置ですよ、ここは」

英軍曹「自由都市が回りを囲っているお陰でそれぞれが牽制しあって我々に手を出せないようで」

ドイツ佐官「その自由都市が大国に制圧されたり、魔物に飲み込まれる心配は?」

英軍曹「中心からは外れてますし、今のところ南の王国が魔物との緩衝地帯になってますから、目下の驚異はありませんよ」

ドイツ佐官「ほかの国々はなぜ南の王国に支援を送らないのだろうな」

ソ連尉官「みな大っぴらには言わないのですが、魔物の国の統治はそれほど悪いものではないらしいんです」

英軍曹「どうやら魔法が関連しているようなのですが…」

ドイツ佐官「魔法使いに話を聞く必要があるな」

ドイツ佐官「よし、頼んだ」

ソ連尉官「私ですか…」

ドイツ佐官「うむ。私はちょっと衛生委員との話があるからな」

ソ連尉官「分かりました…」

ドイツ佐官「よし、何処かの城を奪う作戦は撤回だ。ここの近辺を陣地化したまえ」

ドイツ兵士「ヤヴォール!」


ソ連尉官(あれ、結構本部から出歩いてる気がするぞ…私は別に本部にいなくてもいい人間なのだろうか…)

ソ連尉官「…というわけで、あなたの都市の魔法使いを紹介していただけませんか」

領主「よかろう、だが条件がある」

ソ連尉官「我々にできることなら何なりと」

領主「つまりだな…」

………………

ソ連尉官「我々が」

国民党兵「魔王と戦う?」

………………

国民党兵「そりゃ食えるんすか、だんな」

ソ連尉官「同志、少し口を閉じてもらえませんかね」

国民党兵「すいやせんねだんな、あっしはお喋りなもんでして」

ソ連尉官「くそ、もうちょっとマシな部下を持ちたい…」

ソ連尉官「失礼、続けてください」

領主「よかろう、話を続けるぞ。率直なところ、わしは君の組織を重要視している」

ソ連尉官「何故です?」

領主「南の王国に支援を送りたい、との考えは多かれ少なかれこの世界の人間が考えている事じゃ。」

領主「だが暗黙の了解のようなものがあっての…」

領主「この世界には黒魔法と白魔法が存在する。君はこの世界の人間ではなかったはずじゃの?」

領主「そうやって他の世界から来る人間はここじゃそれほど珍しくないから説明するのじゃが…」

領主「白魔法は人間、黒魔法は魔物、大抵そのように出来ておる。例外もあるにはあるがな…わしには専門外じゃから、詳しいことはわからん」

領主「何故ここでその話をしたかと言うとじゃな、白魔法は雨を降らせたり、雲を吹き飛ばしたり、土地を豊かにしたりする事が出来るのじゃ」

領主「じゃが反対に戦争で使おうとすると敵の怪我を直してしまったり、敵に加護を与えてしまったりする。」

ソ連尉官「つまり…生活では使えても戦争では意味がないと」

領主「いかにも。じゃが黒魔法はまったく逆なのだ、あれは攻撃的な物じゃな…」

ソ連尉官「しかし日常生活では使えない」

領主「察しがよくて助かるの。魔物は黒魔法しか使えんが為に、土地を豊かにするため技術に頼った…」

領主「その結果、あちらでは魔法を使わずともそこそこの生活を出来るようになったのじゃ」

領主「魔法というものを習得するには才能と訓練が必要となる。だから魔法を使えるのは限られた人間だけじゃ」

国民党兵「待ってくだせえ、それじゃ黒魔法を使える魔物がすぐに人間をやっつけちまうんじゃないですかい」

領主「魔法を使うには二つの条件の他に、土地がその魔法による…何と言えばいいのかの、"気"が必要なんじゃ」

領主「その為には土地で儀式を行わねばならぬの」

ソ連尉官「という事はその儀式を妨害するだけで魔法を使われるのを阻止できるのですね」

領主「そういう事じゃな。じゃから逆に、人間側もあちらで魔法を使うことが出来ないのじゃよ」

国民党兵「どういう事ですか、だんな」

ソ連尉官「つまりですね、魔物の土地を制圧しても、白魔法の儀式を行わなければ作物を育てられないのですよ」

ソ連尉官「犠牲を出してまで土地を奪うメリットがない」

領主「その通り。そして儀式を妨害されたら元の木阿弥じゃ。たくさんの国が存在するここでは、その間に同じ人間に背後を急襲されんとも限らんからな」

領主「そうなると同じ人間同士で争っていた方がマシという訳じゃな」

ソ連尉官「それで、どうしてそれが魔物の統治が歓迎される理由なのですか」

領主「先程も言ったが、魔物の技術は実際大したものじゃ。魔法に頼らなくとも農業ができる」

領主「そして魔法は一部の人間に独占されている…後は分かるじゃろ?」

ソ連尉官「…なるほど」

領主「…君のようにしがらみの無い者に対してだから言えるがの、わしはまだその独占階級にいたい」

領主「何も自分の利益のためばかりではないのじゃぞ。この世界の人間…人間種にいきなり技術を渡すのは早すぎる」

領主「そして魔物と人間の対立、これがあることでこの世界はうまく回っておるのじゃ」

ソ連尉官「……。」

領主「魔法を使うには二つの条件の他に、土地がその魔法による…何と言えばいいのかの、"気"が必要なんじゃ」

領主「その為には土地で儀式を行わねばならぬの」

ソ連尉官「という事はその儀式を妨害するだけで魔法を使われるのを阻止できるのですね」

領主「そういう事じゃな。じゃから逆に、人間側もあちらで魔法を使うことが出来ないのじゃよ」

国民党兵「どういう事ですか、だんな」

ソ連尉官「つまりですね、魔物の土地を制圧しても、白魔法の儀式を行わなければ作物を育てられないのですよ」

ソ連尉官「犠牲を出してまで土地を奪うメリットがない」

領主「その通り。そして儀式を妨害されたら元の木阿弥じゃ。たくさんの国が存在するここでは、その間に同じ人間に背後を急襲されんとも限らんからな」

領主「そうなると同じ人間同士で争っていた方がマシという訳じゃな」

ソ連尉官「それで、どうしてそれが魔物の統治が歓迎される理由なのですか」

領主「先程も言ったが、魔物の技術は実際大したものじゃ。魔法に頼らなくとも農業ができる」

領主「そして魔法は一部の人間に独占されている…後は分かるじゃろ?」

ソ連尉官「…なるほど」

領主「…君のようにしがらみの無い者に対してだから言えるがの、わしはまだその独占階級にいたい」

領主「何も自分の利益のためばかりではないのじゃぞ。この世界の人間…人間種にいきなり技術を渡すのは早すぎる」

領主「そして魔物と人間の対立、これがあることでこの世界はうまく回っておるのじゃ」

ソ連尉官「……。」

ソ連尉官「それで、どうして我々が魔王を倒すのですか?」

ソ連尉官「対立を維持したいのならわざわざ倒しにいく必要はないのでは?」

領主「うむ…それがの、近頃新しい魔王が誕生したそうじゃ」

領主「この魔王の政策は過激で…しかも元からいた将軍も優秀であると来ている」

領主「魔物たちの小国を吸収して、南の王国の前線に迫る勢いでな」

ソ連尉官「それを倒して新しい魔王を立てるのですか?」

領主「今度は我々の思い通りになる魔王を立てるのじゃ。そして小国を乱立させ、うまい具合に前線を停滞させる…」

領主「これは秘密裏にしたい事での、じゃから君たちのような組織に頼みたいのじゃ」

領主「引き受けてくれるかの?」

ソ連尉官「申し訳ありません、私がこの場で決めることは…」

ソ連尉官「一度本部に持ち帰ります」

領主「ああすまん、即決してくれなくて構わんのじゃ。じゃが考えてはいて欲しい…」

ドイツ佐官「魅力的…実際魅力的な話だな」

ドイツ佐官「報酬は?」

ソ連尉官「協定です。都市国家郡は我々の独立を保証、四つの王国もこれに従う、と」

ドイツ佐官「ほとんどの国がそれに従うというわけか…」

ドイツ佐官「ああ、胡散臭いなこれは」

ソ連尉官「そもそも協定が守られる保証はあるのでしょうか?」

ドイツ佐官「問題はそこだな。それに独立が保証されるだけではなんとも安い対価ではないかね」

ドイツ佐官「よし、もっとふっかけてやりたまえ。我々は魔法使いと知り合えさえすればよいのだからな」

ソ連尉官「我々は1000人にも満たないのですからね。単体で魔王と戦えというのはどうにも…」

領主「まあ、そう言うとは思っておった」

ソ連尉官「申し訳ありません、ご期待に添えず」

領主「逆にこの条件で呑まれていたら君たちが心配になっていたぞ」

ソ連尉官「そうですか」

ソ連尉官(勿体ぶらないで欲しいですね)

領主「君たちは盗賊を駆逐し、魔物を狩ってくれたのう。とすると次は国家間で戦争に参加するのじゃろうな」

領主「交渉が纏まった後に金さえ払えば仕事をやり遂げ、それ以上要求することはない…」

領主「厳しい軍規、高い教育、兵士たちはよく訓練されていて、略奪も強姦もしない」

領主「被害を受けた都市の施設を積極的に使い、なおかつ金払いもいい」

領主「おまけに本拠地は急成長を遂げている」

領主「君たちが敵に回ることは大きな驚異になるだろうな」

ソ連尉官「照れますね」

領主「君たちを傭兵ではなく正規兵として召し抱えるのもいいじゃろう」

領主「下手な正規兵よりよっぽど訓練されておる」

国民党兵『だんな、そろそろ気味が悪くなってなりやした』コソコソ

ソ連尉官『黙って誉められておきましょうか』ボソボソ

領主「何が言いたいのか、といぶかしがっているかも知れんの」

領主「…わしが言いたいのは、君たちを雇った国が勝つであろうということじゃ」

ソ連尉官「まさか!」

国民党兵「買い被りすぎですぜ!」

領主「冗談や世辞などではない。君たちは魔法を使うと聞いておる」

ソ連尉官「閣下、我々に魔法使いなどおりません、ならばどうして魔法使いを探す必要がありましょうか」

領主「しらばっくれるでない!」ガンッ

国民党兵「落ち着いてくだせえ…」

領主「君は…君たちは…誰なんじゃ!何が目的でここにいるんじゃ!」

ソ連尉官「衛兵!」

衛兵「はっ」

ソ連尉官「閣下はお疲れのようですね、僭越ながら我々は帰らさせていただきます」

領主「待て…!」

ソ連尉官「ではお大事に、閣下」

領主「ぐ…っ!」

ソ連尉官「ということが」

ドイツ佐官「企むも何もないんだが…」

ドイツ佐官「魔法については知識が手に入ったし、魔法燃料の精製や火薬の技術に転用できないか知りたいだけなんだがな」

ドイツ佐官「だが相手を疑心暗鬼にさせておくのは良いことだ」

ソ連尉官「あの領主を信用なさらないのですか?」

ドイツ佐官「立て板に水のごとく話すのは信用できないな」

ドイツ佐官「魔法については多分正しいことを言っていると思うが、国家間の話についてはわからん」

ドイツ佐官「この世界の文明状況で、それほど簡単に条約が守られるとは思えん」

ドイツ佐官「しかし、魔王を倒す任務はいいかもしれないな」

ソ連尉官「魔物の土地を獲得するのですか?」

ドイツ佐官「そうだ。我々は元より白魔法に頼る必要はない…」

ドイツ佐官「となれば、白魔法の使えない魔物の土地へ行けば…」

ソ連尉官「人間に攻められる心配が減ると?」

ドイツ佐官「その通り」

ソ連尉官「しかし、今度は魔物に攻められるのでは」

ドイツ佐官「だからこその魔王征伐というわけだ。魔王を倒して我々は奥の方に引っ込む」

ドイツ佐官「そして境界線には緩衝国家を置いておく。魔物と人間の合議制のあやふやな国をだ」

ソ連尉官「そうすれば人間に攻められたときも、魔物に攻められたときも介入の理由ができますね」

ドイツ佐官「そして、実験や白魔法の手助けを借りたいのなら人間界にあるこの基地を要塞化し、そこでやればいい」

ソ連尉官「素晴らしい計画ですね、わくわくして来ました」

ドイツ佐官「だが1000人に満たない我々だけで広大な魔物世界に侵攻できるわけがない。退路と補給路を絶たれて全滅だ」

ソ連尉官「では、どうするのですか」

ドイツ佐官「そうだな、人間たちを戦争に引っ張り出さなければ」

ドイツ佐官「それまでは様子見としよう。あの領主と関係が悪化したところで我々には何の影響もない」

ソ連尉官「そして、あの領主は我々に頼るしかない…」

ドイツ佐官「私を悪党だと思うかね?」

ソ連尉官「いいえ、特には」

ドイツ佐官「そうか、それは良かった」

第二章終わり的な感じで

登場人物
・国民党兵
国民党の兵士。農民の四男で、共産党の思想と国民党の思想に対しては何とも思っていない
食べるために国民党に参加した
話し方が上品とは言えないが、少なくともどんな相手に対しても敬意を持って話しかけている。略奪は嫌い

・日本将校
満州において作戦行動中に馬賊に捕らえられ、その場で射殺された
ねちっこい話し方のせいで誤解されやすいが、上官として悪い人間ではない
補給部隊が軽視されていた日本軍で補給が大好きな物好き
自分の運んできた食料を食べ、自分の運んできた弾薬で戦う兵士を見る事を至上の喜びと考えている

日本部隊宿舎

右むけー右!

捧げー筒!!

古参兵「貴様ァ!やる気が足らんぞ!」

初年兵「 申し訳ありません!」

古参兵「根性叩き直してやる!そこへなおれ!」

ドガッバキッ


ドイツ佐官「あれは近代軍隊なのか?」

日本将校「まァ昔からあるしきたりってやつですナァ」

ドイツ佐官「拳骨ならまだしも、火かき棒や棍棒はやりすぎではないかね」

日本将校「ずっとそうやって教育して、熟練度を上げてきましたからネェ」

日本将校「みてくださィ、あれが我が国名物の三八式歩兵銃どのでありますワ」

初年兵「三八式歩兵銃どの!申し訳ありません!」

古参兵「何が申し訳ないんだ!?」

初年兵「泥をつけてしまったことであります!」

古参兵「たるんどるぞ貴様!許して頂けるまで謝れェ!」バキッ

初年兵「うぐっ…」

初年兵「三八式歩兵銃どの!粗末に扱って申し訳ございませんでした!以後このようなことが無きように…」


ドイツ佐官「…武器を大切にするのは良いことだな」

日本将校「お恥ずかしいことですネェ…」

上等兵「どうだ!歩兵銃どのはなんと仰っているか!」

初年兵「な…なにも仰っておりません!」

上等兵「貴様は恐れ多くも陛下から頂いた…」

ドイツ佐官「ちょっと待て!」

日本兵士「! 傾注!」ザッ

ドイツ佐官「今なんと言った」

上等兵「な、何の事です?」

ドイツ佐官「貴官が先程言った事だ!」

上等兵「お、恐れ多くも陛下から頂いた…」

ドイツ佐官「それだ!」

日本将校「どうしたんですゥ?」

ドイツ佐官「神格化だ!宗教を作るぞ!」

日本将校「そ、そうですカァ…」

ドイツ佐官「ああ、それとここではそういう前時代的なしごきは止めたまえ」

ドイツ佐官「我々はこの世界の人間ではなく、立派に文明化された生物なのだからな」

上等兵「は、はっ!」

ドイツ佐官「しごきがやりたいなら教導部隊へどうぞ。ただし疲れはてて余計な言いがかりは付けられなくなるだろうが」

上等兵「も、申し訳ありません!」


日本将校「いやァ、貴方があれを止めるとは意外でしたナァ」

ドイツ佐官「どうしてだね?」

日本将校「貴方は大分保守的な考えだと思ってましたから」

ドイツ佐官「アレは裏切り者を徹底的に排除した精鋭部隊を作るときにやるものだ…それも志願者で構成された部隊でな」

ドイツ佐官「徴兵者や一般兵にあれをやっても逆効果だぞ。少なくとも私は士官学校でそう学んだつもりだ」

ドイツ佐官「というわけで宗教を作ろうと思うのだが」

ソ連尉官「宗教ですか!?」

ドイツ佐官「貴官の国では禁止だったか」

ソ連尉官「名目上はそうですが、イコンを個人的に持っている兵士もいますよ」

ソ連尉官「しかしどうして宗教を?」

ドイツ佐官「うむ、手っ取り早く人民を教育し、傭兵風情である我々の統治を正当化するためだ」

ソ連尉官「教育、ですか?」

ドイツ佐官「そうだな、例えば神への敬意のために一週間に一度以上身体を湯で清めてから祈りを捧げるというのはどうだろう」

ソ連尉官「風呂ですか」

ドイツ佐官「そうだ!風呂はいいぞ。だが不潔は一番良くない」

ソ連尉官「幸い水は豊富ですからね」

ソ連尉官「しかしその風呂を炊くための薪の伐採のために森林が禿げ上がったりしたら笑えませんよ」

ドイツ佐官「うむ…確かに…」

ソ連尉官「予算的な事も考えて、現実的なのは公衆浴場ですかね」

ドイツ佐官「地下水や湧き水はあるのだろうか?」

ソ連尉官「それも調査せねばなりませんね。まわりの自由都市で天然水を売りにしている所がありましたから、湧き水はありそうですが」

ドイツ佐官「おっと、宗教からずいぶんと話が逸れてしまったな」

ソ連尉官「そもそもこの世界にどのような宗教が存在しているのか調べねばなりませんね…」

ドイツ佐官「そうだな。情報委員に頼むとしよう」

ドイツ佐官「大統領閣下万歳!」

日本将校「な、何ですかァ、急に…」

ドイツ佐官「いや、我が国の政治体制をどうしようかとな」

日本将校「ほゥ、我が国、と…」

ドイツ佐官「…我々の、だ」

日本将校「閣下はァ…我々の傭兵団を国に仕立て上げるつもりなんですかァ?」

ドイツ佐官「そうだ」

日本将校「随分と…それはァ…」

ドイツ佐官「つまりだな、我々の同胞を助けて身を寄せられる組織が欲しいんだ」

日本将校「えェ?閣下は以前、死を待つのが嫌だからとォ…あのソ連の方からお聞きしましたがァ」

ドイツ佐官「う、うむ…それもある、それもな…」

ドイツ佐官「私は権力欲にとり憑かれているのかも知れんな…」

日本将校「では何故大統領制なのですかァ?それなら帝制にすればいいんじゃァ…」

ドイツ佐官「権力を集中させてみろ、私は寝首をかかれたくはないぞ」

日本将校「大統領制でもクーデターはありますがァ…」

ドイツ佐官「そうではない、私は参謀長として陸軍の面倒を見るわけだ」

ドイツ佐官「そして大統領にはカリスマのある象徴的な人物を…あー、我々の操り人形にして着けるわけだ」

日本将校「めちゃくちゃですなァ…閣下」

ドイツ佐官「大統領より国王の方がいいかもしれんな。外の世界の人間が権力を握るのを認めるほどこの大陸は寛容ではないだろう」

日本将校「しかしそれでは軍が強くなりすぎるのでは?」

ドイツ佐官「そこでだな、内務省軍と国境警備軍、それか民兵団を作り、そこに強力な軍隊を持たせるんだ」

ドイツ佐官「そして陸軍を含めて互いに反目させる!これでクーデターを防ぐわけだな」

日本将校「それじゃア、諸外国に攻撃されたらひとたまりもないじゃないですかァ」

ドイツ佐官「問題はそこだ。軍同士の対立をうまい具合にして、いざという時には強制的に戦わせられるようにしなければ…」

日本将校「閣下、貴方はいったいどこを見てるんですかァ…」

ドイツ佐官「我々が死んでからの事をだよ、きみ」

ドイツ佐官「だが今の状況でこんな夢物語を語ってもしょうがないな」

ソ連尉官「そういえば魔王の方はどうするのですか」

ドイツ佐官「魔王の動きはどうだね?」

英軍曹「魔物の世界をほぼ手中に納めているようです」

ソ連尉官「この戦役にあたって人間がわが軍を送ったりは…」

英軍曹「それが、どこの宮廷もどこの評議会も他国の出方を伺っていまして…」

ソ連尉官「魔物側の領地を切りとる絶好のチャンスでは?」

英軍曹「いやぁ、年代記作家から話を聞いたのですがね」

英軍曹「魔物側が一メートルでも人間の土地を獲得したら前線である南の国に兵士をこぞって送るらしいんですがね」

英軍曹「そもそもそこまで追い詰められないと兵士を送らない上に、最近は人間同士の争いが激しいんですな」

英軍曹「むしろ魔物が南の国の力を弱めて、そこでこちらが南の国の領地を奪えないだろうか、と部下に話す王様までいるそうです」

ソ連尉官「それを大っぴらに部下に話しますか…気持ちは分かりますが」

数ヵ月後

領主「どうじゃ、そろそろ…」

ソ連尉官「無理です」

…………

ソ連尉官「とうとう焦ってきているようですね」

ドイツ佐官「いやぁ、心が痛むな」

ドイツ佐官「今のところどんな条件を提示している?」

ソ連尉官「前払いに千人が数年暮らせる量の食料、そして大量の金…カネでなくて金ですよ、金!」

ドイツ佐官「この世界でも金は貴重なのだな」

日本将校「確か一人の人間が一年間に飲み食いする量は1トンなんで…千トンを数年分ですか!こりゃあ太っ腹ですナァ!」

英軍曹「この世界の栄養状態はそこまでいいとも言えませんから、もう少し少なくなるとは思いますが」

ドイツ佐官「…彼は我々をバカにしているのか?穀物は腐るぞ。野菜も、肉も!」

日本将校「売れってことなんじゃないですかネェ」

ドイツ佐官「そんな余剰生産物があるなら栄養状態をまともにして、人口増加させれば良いのにな」

ソ連尉官「仕事がないのでは?」

ドイツ佐官「それにしたって、農民とか、農民とか…」

ドイツ佐官「そうか、魔法で無理矢理生産力を上げているわけか…」

ソ連尉官「もしかしたら我々の人口増加に当てさせて、魔物との戦争の兵士に仕立て上げるつもりなのかも知れませんね」

ドイツ佐官「我々と言ったって…我々の大隊はほとんど男だぞ」

ソ連尉官「私たちではなく城下町の市民たちですよ」

ソ連尉官「腐りそうになったら我々は慌てて食料を格安で売り払うに違いない…そうなると、大部分はここの城下町で消費することになる」

ソ連尉官「城下町の人間、要は我々の兵士ですが…多大な損害を出したとしても結果的に魔物の土地を手に入れて…そして、そこに城下町の人間を植民させればいいわけですから」

ドイツ佐官「その後我々を追い出すのか?素晴らしい考えだな」

ドイツ佐官「いつまでもこうしてだらだら話を続けているわけにもいくまい、今回の会議で決まったことを確認しようか」

ソ連尉官「はっ。一つ目は水源に的を絞った土地調査です」

日本将校「水はですネェ、軍隊の生命線なんですネェ」

日本将校「概ね綺麗ですからそのままでも飲めるでしょうが、赤痢やらなんやら怖いですからネー」

日本将校「井戸掘って使わせて貰いまショ」

ソ連尉官「二つ目は憲兵隊の強化です」

英軍曹「最近他国の連中も脳みそつけて来やがりまして、本部の近くも怪しい連中がウロウロしてる訳ですな」

英軍曹「城下町も広くなってきましたし、そろそろ憲兵隊の増強をしましょう」

ドイツ佐官「ドリフターズ兵から出すのかね?」

英軍曹「いえ、こちらの世界で現地徴用です」

ドイツ佐官「それじゃ裏切り者が混ざりやすくなるんじゃないか」

英軍曹「ですから憲兵隊の中にもスパイを入れてあります。スパイを見つけたら…とりあえず吐かせましょう」

ソ連尉官「…続けますね。三つ目は貿易協定の締結です」

英軍曹「我々の現在地は南の王国の国境近くですね。南の国と言えば香辛料!そして魔王軍との戦争で培った先進技術です」

ソ連尉官「この南の国と交易するのはかなり利益をもたらすでしょうね」

ドイツ佐官「ということは…我々が普段使っている胡椒はどうしてるんだ」

ソ連尉官「我々が持ってきたのもありますが、やはり報酬で手に入れていますよ
あとは日本人の作っている味噌や醤油ですかね」

ドイツ佐官「贅沢だな!」

ソ連尉官「そもそも胡椒が高いのは産地が遠いせいです。いつかは独占してやりましょう」

ドイツ佐官「…君も中々酷いことを考えるな」

ソ連尉官「我々の生活費の為です」

ソ連尉官「四つ目は衛生課、会計課、諜報課、測量課、技術課…などの整備です」

ソ連尉官「我々も大所帯ですからね、細かい区分を作らなければ」

日本将校「衛生課は大事ですヨ。今までは衛生委員しかいませんでしたからネェ」

日本将校「まず始めに部隊の健康診断、城下町の市民の健康診断、あとは優先すべきは娼館の抜き打ち性病検査ですネ」

日本将校「突撃一番なんて大層なものはありませんからネェ、出来れば利用しないのが一番いいんですがネ」

ソ連尉官「議題はこんな所でしょうか。何かご質問はありますか?」

…………

ドイツ佐官「それでは以上で会議を終了する。解散!」

数ヶ月前、地球、現代

?「ここが地球か…」

?「ふふふ、私の世界を面白くしてくれそうな人を探さなきゃね…」

……

男「あー、つまんねぇな」

男「なんか面白い事…非日常を体験したいぜ」

男「学校はつまんねーし、クラスメートは普通の奴らばっかだし」

男「・・・ん?この道は?」

スウ・・・

?「ねえ君、面白い事を探してるんだっけ?」

男「なんだてめえ!」

男「ああそうさ!大人はきたねーし回りはマジメ君ばっかりでよ!」

男「平凡な男子高校生の俺も人生がクソつまんなくて不幸だと思ってたところだぜ」

?「それなら・・・君に機会を与えてあげようか」

男「何だよ、そりゃ」

?「ファンタジーの世界のね、魔物の国を君の好きにさせてあげる」

男「そりゃ面白そうだな!」

?「やりたい?」

男「たりめーだろ。早く連れてけ!」

?「ふふふ、後悔しない?」

男「男は勢いだぜ。これさえあればなんでも出来るからな!」

?「いいよ・・・じゃあ目を閉じてね・・・」

魔物の国

男「ん・・・」

男「チッ、あいつ、俺をちゃんと魔物の世界に・・・おっ」

グオオオオ・・・

男「ドラゴンか!へっ、面白そうじゃねえか・・・」

男「おい!俺はどうやって戦えばいいんだ?」

?「まあまあ慌てないでよ。念じるだけでいいんだ、自分の腕が武器になるようにね」

男「それを早く言え!」ブツブツ・・・

シュン!

男「おっ!燃えてきたぜええええ」

バシュウ

バシュッ

グオオオオ・・・

男「ヘッ、弱いな」


数週間後

魔王「さあかかってこい」

男「勝った」

魔王「何だと!君には聖帝の名前を与えよう」

魔王「この土地を修めたまえ」

数ヵ月後

姫「聖帝さまー」

悪魔娘「おにーちゃん」

魔物娘「ご主人様!」

エルフ「主様」

村娘「ry

ドイツ佐官「・・・なあ、いつまでそのくだらない報告を聞いていればいいんだ」

英軍曹「はっ、閣下が魔王のことをお知りになりたいと仰ったので」

ドイツ佐官「どうしてそこまで分かってるんだ?」

英軍曹「魔王がその話をよく人に語るからだそうです」

ドイツ佐官「話を聞く限りでは魔王は随分強そうだが・・・」

英軍曹「歴代魔王のなかでもトップクラス、一撃でドラゴンを葬り去り、ひと薙ぎで盗賊が100人吹っ飛ぶとか」

ドイツ佐官「・・・流石に誇張が過ぎるんじゃないか?」

英軍曹「私もそう思いますが・・・しかし彼が強い事は間違いなさそうですよ」

英軍曹「現れて一ヶ月で魔王軍の一部隊の指揮官となり、ほぼ一人で戦功を挙げる」

英軍曹「それが前魔王の目に留まり呼び出され、その場で決闘を申し込む」

英軍曹「しかも勝ってしまった!それで将軍やら魔物やらを回りにはべらせているそうです」

ドイツ佐官「羨ましい限りだな。それでその魔王がどうして人間世界に迫っているんだ」

ソ連尉官「それが、魔王はかなり好戦的な質らしくて」

ソ連尉官「側近の強硬派に魔物は不当に差別されていると吹き込まれたらしいです」

ドイツ佐官「どうしてそこまで詳しくわかるんだ?」

ソ連尉官「諜報部の功績もありますが、それともう一つ」

ソ連尉官「どうぞ、入ってきてください」

スタスタ

魔法大臣「お初にお目にかかる。私は魔王様のもとで魔法の研究、そして魔法使いの管轄をしていた」

ドイツ佐官「これはこれは…綺麗なお方ですな」

魔法大臣「ふっ、私の青い肌を綺麗と言うか」

魔法大臣「女だからと舐めない方がいいぞ。私がその気になれば…」

ドイツ佐官「フロイライン、私の態度は謝りますが、貴女はここに争いに来たのですか?」

魔法大臣「…失礼した。」

魔法大臣「私はあなた方の国に…何と言うんだったか?」

ソ連尉官「亡命、です」

魔法大臣「そうだ、その亡命を希望する。手土産は新魔王の情報、魔術、そしてこの国で働くことだ」

ドイツ佐官「なぜ亡命を希望されたのですか?」

魔法大臣「新魔王のやり方には着いていけない。そしてあいつはどうやらカリスマがあるようだが…私には単なる好色なガキにしか見えん」

ソ連尉官「が、ガキですか…」

魔法大臣「あいつの振る舞いは子供のようだな。敬意と言うものが感じられず、自分のやり方が通らなければ癇癪を起こす。そして根性でものを考える」

ドイツ佐官「あー、駄目な臭いがしますな、それは」

魔法大臣「そういうわけだ。了承してくれるか?」

ドイツ佐官「貴女は魔王の側近なのですか?」

魔法大臣「いかにも」

ドイツ佐官「しかしその証拠が…」

魔法大臣「この建物の外にいる衛兵は外套の下に武器を隠し持っているようだな。そしてそれは魔法ではない…」

魔法大臣「私を雇ってくれればすぐに仕組みを解明し、それを生産できるようにするぞ」

ドイツ佐官「何と!それは…しかしよく気がつきましたな…」

ソ連尉官「ですが貴方を雇うと我々が魔王から攻撃されるのでは…」

魔法大臣「あいつは自分の腰巾着にしか興味がない。反対している貴族たちを古くさいジジイ扱いしているからな」

ドイツ佐官「貴女の事情はわかりました。雇用に当たっての貴女の希望は何かありますか?」

魔法大臣「山の麓の森を…できれば洞窟を用意してほしい」

ドイツ佐官「それは…何故ですか?」

魔法大臣「なに、単なる気分だよ。それくらい頼んでもいいだろう」

ドイツ佐官「…本当に亡命希望者ですか?」

ドイツ佐官「まあいいでしょう、ご用意致します。それでは用意ができたら使者を送りますので、それまでは城下町の宿屋にご滞在ください」

魔法大臣「うむ、ありがとう」

ソ連尉官「本当に彼女を雇うのですか?」

ドイツ佐官「彼女は希望を聞かれても報酬の話をしなかった…魔法使いならいるだけでもありがたいからな」

英軍曹「宿を指定したのは監視しやすくするためだね。あそこは諜報部の鳥籠みたいなもんだ」

ドイツ佐官「実際半信半疑ではあるが、まあ本物だったら儲けものだろう」

英軍曹「青い肌を持つのは禁断とされる魔術に手を出した代償であると歴史作家から聞いてるよ」

ソ連尉官「高名な魔術師であるのは分かりましたが…その代償に巻き込まれたりは」

英軍曹「そうだな、我々はまったく魔術に頼っていないわけだから、それで魔術的な損害を受けても痛くも痒くもないんだな、これが」

ソ連尉官「あの勘の良さでスパイに気づかなければいいんですが…」

ドイツ佐官「恐らく…監視されることくらい重々承知ではないかね」

ドイツ佐官「逆にそれくらいしなければ我々を頼りなく思ってしまうだろう」

魔物世界

大臣「陛下、ゴブリン部隊から食料が支給されていないとの陳情があったのですが…」

魔王「そんなもの根性でなんとかしろよ」

魔王「いいか、俺が中学生の時はな…」

エルフ「魔王様すっごーい」

大臣「陛下、これ以上配給が滞ってはゴブリンが反乱を起こしかねませんぞ」

魔王「えー?俺強いし、一人でも戦えるんだけど」

魔王「じゃあゴブリンどもに不満があったらかかってこいって言っといて」

大臣「陛下…!」

魔王「ジジイはうるさいなー、まったく。これ以上時間を取らせんじゃねえよ」

衛兵「閣下…お下がりください」ヒソヒソ

衛兵2「魔王様がお怒りになりますと、手がつけられなくなる故」ヒソヒソ

大臣「くっ…失礼します」

…………

大臣「あんな若造にこの国を任せねばならんのか」

将軍「大臣どの、誰に聞かれているか分かりませんぞ」

大臣「構うものか。この国は死んだも同然じゃ」

将軍「しかしあの魔王が就任してからというもの、我が国の勢力が拡大しているのも事実ではありませぬか」

大臣「同時に元々の領地からの収穫も収入も減っていることをご存知かな?」

大臣「我が国が延びているように見えるのは広大な土地から無理矢理収穫しているからに過ぎぬ」

将軍「我々が獲得した土地には鉱山や穀倉地帯も含まれているはず。そこならば…」

大臣「貴殿は武官だから知らないのも無理はないが、征服した土地からの収入というものは激減するものなのだ」

大臣「その鉱山の採掘量は占領以前に比べて五十分の一にも満たぬ」

大臣「同時に穀倉地帯の収穫、あれは種もみまで食料に回しているのじゃぞ」

将軍「そ、それでは我が国はいつかは…」

大臣「確実に滅びるじゃろうな」

大臣「軍隊も維持できないじゃろうし、占領地が拡大したせいで治安維持ができておらぬ。国は荒れ放題じゃ」

ギャハハハ…
カッコイーイ
マオウサマー

将軍「…そして指導者はあの状態、ですか」

大臣「奴は支持を集めておる。そしてこれに気づいている魔族は少ない」

大臣「後は転げ落ちるのみ、じゃ」

数か月後
魔王「ドワーフの国を攻撃しよっかなー」

将軍「はっ!して、いつから?」

魔王「んーと、今から」

将軍「恐れながら陛下、戦役を行うには兵たちに召集をかけませんと…」

魔王「いいじゃんいいじゃんテキトーでー」

将軍「しかしながら陛下、ドワーフの国は先進技術を有しており大変強力です」

魔王「そんなの俺が全部倒すしー」

魔王「無理を道理でねじ曲げる!これが魔王ってもんでしょ?」

将軍「陛下、現在我々が動員できる兵士はわずか…」

魔王「守備隊もいらないの!つべこべ言わずに召集かけるんだよ」

魔王「俺は気が長い方だけど…怒らせないでね?」

女元帥「魔王様…素敵…」

エルフ「今日の夜伽は私がするの!」

女剣士「ずるーい!」

キャハハハ
マオウサマー

魔王「ギャハハ!俺は明日から戦争するんだからさー、勘弁してよー」

将軍「……。」

魔王「あれ?お前まだいたの?さっさと出てけよ」

将軍「…」バタン

魔王「うーん礼儀がなってないなー」

魔王「やっぱり軍人はダメだねー」

女元帥「私も…軍人」

魔王「女元帥ちゃんは別!」

女元帥「そう…なの?」

魔王「もち。こーんな可愛い娘が…


………………

将軍「ぐうっ…!」

大臣「なぜ泣いているのだ」

将軍「今までの無茶な戦役のせいで…私の部下は…!」

大臣「…わかっている。反乱を起こしたとしても我々に勝ち目はない…」

大臣「古参が何とか奔走してこれじゃ。我々は倒れるわけにはいかぬ…!」

国境地帯

英軍曹「魔王軍がドワーフとかいう種族の国に攻撃をかけるという情報があった」

英兵士「貴方が直接行かなくとも我々だけでも大丈夫ですが」

英軍曹「魔王軍ってのは…いや、魔王ってのは強いんだろ?直に見てみたいからな」

英軍曹「ハハハ、安心してくれよ、まさか闇討ちを仕掛けようってんじゃない。その魔王をいかにして集団で倒すか考えたいだけだ」

英兵士「そうですか…了解しました。」

英軍曹「第一分隊は私についてこい。後は持ち場に移動しろ」

英軍曹「王都…魔王国の首都にはいくつか我々の隠れ家を築いてある」

英軍曹「いずれも魔法使いの学士…ああ、我々の世界で言うところのインテリや、商人が用意してくれた」

英兵士「あの魔法大臣のコネでしょうか?」

英軍曹「あの御嬢さんのお陰でもあるが、頭のいい奴は魔王領が滅茶苦茶になりかけているのに気が付いてるからな」

波兵士「魔族と我々人間ではすぐにバレてしまうのでは」

英軍曹「君はポーランド国内軍だったか。説明しておくと、この世界では魔族と人間が混ざって生活しているのはおかしな事ではないんだ」

英軍曹「逆に言えば魔族の商人が我々に協力するのはその為でもある」

英軍曹「ほとんど偏見がないのに加え、魔王が政権を握ろうが人間の王が政権を握ろうがあまり関係ないのさ」

英軍曹「その隠れ家も有効活用してくれたまえ。補給、休息…情報交換など…まあこれは基本的な事かな」

英軍曹「話が長くなったな。さあ行動開始だ」

英軍曹「Dismiss!!」

「「「Yes,sir!!」」」

攻撃が始まった。

魔王「お前ら!攻撃だ!」

魔王は真っ黒な鎧の上から真っ黒でやたらに襟の立ったマントを羽織っていた。
そして回りは甲冑を着込んで馬にまで鎧を着せた騎士が固めている。


英軍曹「でかい声だな…」

英兵士「もうちょっと言うことは無いんですかね」


魔物「うおおおお!!!」

ゴブリン「ドワーフどもを打ちのめせ!」

ザッザッザッザッ…

魔王軍に統率など無かった。皆我先に勝手に突撃を開始し、折角作った陣形が無駄になってしまっている。

しかしその数と攻撃的な真っ黒さ、兵士たちが上げる雄叫びと地面を揺るがす足音は、相対するものを震え上がらせる。

ドワーフ「くそっ…条約違反だぞ」

ドワーフ将軍「魔王には技術の大切さが分からなかったようだな」

ドワーフたちの後ろには、現実世界で大砲が主流になってからも活躍していた兵器ートレバシェットが控えていた


一方、丘の上で伏せているドリフターズの偵察分隊。
双眼鏡を手にし、戦場を観察していた。

英軍曹「1000…900…」

英軍曹「あらまあ、最初から全力疾走とは…」

英兵士「何人…何体ほどですかね」

英軍曹「ドワーフは密集陣形を組んでいるとはいえ、二千居ればいいくらいだな。それでも凄いけど」

英軍曹「一方魔王軍は数万を越えている。あんな大軍が通ったら通り道は略奪でペンペン草も生えないんじゃないかな」

そこに、先程別れた国内軍兵士が姿勢を低くして丘を登ってきて報告する。

波兵士「軍曹、野営地に潜伏させていたスパイからの報告が来ました」

英軍曹「おお。それでどうだった」

波兵士「明らかに釜の数が不足、焚き火も不足、食料置き場にはネズミが」

英軍曹「食糧置場を燃やしてたかい?」

波兵士「いいえ…そのまま放置して、食べられてないものを別の場所へ」

英軍曹「Stupid!!!!!!」

波兵士「!?」

英軍曹「バカだ…本当のバカだ…」

英軍曹「誰か進言する者は居なかったのか?ネズミは焼き[ピーーー]か窒息させるかしないと死なないんだぞ…」

波兵士「食糧事情から察するに、魔王軍は飢えているようですね…」

魔王軍陣地

ザッザッザッザッ…

先代魔王から仕え続け、なおかつ貴族出身で幼い頃から父親に教えを叩き込まれていた彼も、その間違いには気づいていた。

将軍「食糧徴発隊を組織して近くの村に送り込んでおけ」

魔物「はっ!」

将軍「食糧庫も新しく作るんだぞ」

部下に命令して早馬を出したあと、例の将軍は魔王の元へと駒を走らせた。

ザッザッザッザッ…

将軍「魔王様、なぜ食糧庫を燃やさなかったのですか」

魔王「あ?今から突撃するところなんだけと」

魔王は心底面倒くさそうに言い放つと、左を向く。

魔王「そんなの勿体ないからに決まってんじゃーん。ね!」

女元帥「食べ物…大事」

将軍「その食糧がネズミに食べ尽くされていてもですか?」

女元帥「ネズミ…かわいい…」

魔王「元帥ちゃんもそう言ってるんだからいいだろ?食糧は別に用意しろよ」

将軍「…はっ」

ザッザッザッザ…

将軍「くそっ、食中毒で死んでしまえばいいんだ」

将軍は早くもこの戦いが無意味であることを悟っていた。
部下を出来るだけ失わずに撤退しなければ…

…………

英兵士「距離…400」

波兵士「あの魔王のそばにいる少女は誰なのでしょうか?」

英軍曹「最近就任した元帥らしい。元帥なんて階級が元々あったのかすら微妙だがな…」

英軍曹「大貴族の娘、魔王のコネで元帥に就任、軍事的な才能に関しては父親の戦術書を読んだだけらしい」

英兵士「そんな者の元で戦わねばならないのですか…」

英軍曹「とはいえ、中世あたりじゃこっちの世界でもよくあったことだからな」

………………
300メートル。ドワーフ軍の隊列の後ろにあったトレバシェットから一斉に石が投射され、魔王軍の戦列を蹂躙した。

魔物「報告します!第一部隊長戦死!」

魔物「陛下!前列の兵士が…」

魔王「うるせえ!突撃するんだよ」

魔王「魔法部隊、攻撃」

魔物「陛下、遠すぎて効果が…」

魔王「………」ドシュッ

不幸な魔物は上半身と下半身を別々にされ、意見を言おうとしていた者は震え上がった。

ザッザッザッザッ…

魔物「魔法部隊…火の魔法、攻撃!」

ゴオオオオ…

後列の方にいた魔法使いたちの杖から火が放たれ、一部はドワーフ軍の隊列に命中したものの、大部分は力を失って地面に向かって落下し、不幸にも魔王軍の隊列を焼き払った。

魔王「どうして支持通りに動かねえんだ!」

ザッザッザッザッ…

魔王軍隊列のドワーフの隊列からの距離が100メートル程度になる。
ここでドワーフの指揮官はクロスボウを構える指示を出す。

一方、魔王も弓兵隊による射撃を指示していた。

魔物「弓兵、構え!」

魔物「放てぇッ!」

大量の弓兵が弓をつがえ、一斉に撃つ。
斜め上に向けて放たれた大量の矢たちは空気を切り裂き
失速してドワーフ軍の隊列の遥か手前に、雨のように落下した。


ドワーフ「バカなんじゃないか?あいつら」

「「「わっはっはっは!!!」」」

ドワーフたちは盾を叩き、鎧を鳴らし、大声をあげて魔王軍を嘲笑う。

魔王「ムカつく…舐めんじゃねえぞ」

魔王はさらに弓を撃つように命じたが、すべて失敗した。頭に血の昇った魔王によって弓部隊の指揮官は斬り殺された。

魔王「騎士を出せ!」

後列より魔王軍兵士を轢き殺しながら重装騎士の一段が進み出る。

騎士「お呼びですか」

魔王「奴等に突撃だ!根性見せろ!」

騎士「はっ!」

先代魔王から仕え続けていた老練な将軍たちによる辛うじて行った布陣は無駄なものとなった。

騎兵は弓に弱かった。

騎士「全隊、目標は目の前の敵だ!突撃!」

「「「「突撃!!!」」」」

蹄が音をたて、土を巻き上げながら馬たちが突進する。

騎士たちを率いていた隊長はベテランではあったが、慎重さや戦術のうまさといった物には欠けていた。

つまり、どこまでも部下として主人に盲目的だった。

「「「「うおおおお」」」」

「「「「突っ込め!!!」」」

喚声は統一されておらず、騎士たちはそれぞれプライドが高く自分勝手だった。
隊列は早々に崩れ、列を乱して剣やランスを振りかざしながら突撃する。

「構え…放て!」

ドワーフたちがクロスボウを放った。

少数とはいえ、技術の高いドワーフの作ったクロスボウだ。
矢じりは簡単に鎧を通し、馬に当たればからだの深くまで突き刺さる。

早速騎士たちの半数が倒れるが、騎士たちはなおも突撃を止めない

「第二射…放て!」

ただでさえレバーによって高速化されたクロスボウにドワーフの筋力があれば…それは弓と同じほどの連射速度を誇った。

馬のいななき、悲鳴、鈍い音。

それが何度も続けば、もはや十数騎の騎士しか残っていなかった。

「くそ…あそこにさえたどり着けば…」

騎士たちは面あての下で毒づき、そして魔王への忠誠を思い起こす。

「魔王様万歳!」

目標は前面に展開しているドワーフのクロスボウ兵たち!味方のごくわずかに届く援護射撃のおかげで少しだけ鈍っている。奴等を突き[ピーーー]のは今だ!せめて一矢報いて…!

すぐに彼らの希望は潰えた。

ドワーフのクロスボウ兵たちは騎士が近づくとすぐに大盾の中に隠れ、そして盾の合間から突きだされた槍が騎士たちの愛馬を突き刺し、落馬した騎士たちは捕虜になるか殺された。

しかし弾薬を無駄にするわけにもいかなかった。
第一魔王軍の後方部隊が多すぎる。これは装甲車両を連れてこなければ難しいぞ…

軍曹はひとしきり考えたあと、涙を飲んで何もしない事を決めた。

「前列は何してんだ!」

「魔王…前列は…全滅」

「はぁ!?んなわけねーだろ!」

「全滅の…基準は…」

「そんな事聞いてねえんだよボケ!攻撃できんのか!出来ねえのか!」

「ひっ…ぐすっ…こわいよ…」

「ピーピー泣くんじゃねえよ糞女!」

「ごめっ…ごめんなさい…ぐすっ…」

魔王は完全に頭に血が昇っていた。
俺が何故。俺の軍は何故。何故あんなにちっぽけな軍隊を倒せないのか!今までは簡単に殲滅できたのに!

魔王はドワーフが何故有史以来独立を保っていたか、今までの戦いが簡単だったのか考えもしなかった。
離脱した将軍の働きになど何の興味も持ってこなかったのだ。

ドワーフが殺し、魔物が殺し、倒れ、倒され、そして戦いは続いた。

「こいつら弱いぞ!これなら…!」

ドワーフたちは希望を持ち始めた。魔王軍とはいえ損害が大きくなれば撤退するはずだ!

今度はドワーフの希望が打ち砕かれる番だった。
突如側面の森から軍勢が飛び出してきた。
ドワーフたちは動揺しながらも四番目の列と五番目の列を崩し、L字型の防御を敷いた。今までの魔物であればこれで撃退できたはずだった。

この魔物たちは違った。

魔物たちが腕に巻いた布を見て、ドワーフは絶望した。

あれは…先代魔王軍の重鎮…

将軍、魔王軍に将軍階級はたくさん居れども、日常的に将軍と呼ばれるただ一人の魔物!

精鋭部隊を率いた将軍は組織的に行動し、前線で部下と一緒に徒歩で戦って士気を高め、そして自らも沢山のドワーフを倒し、部下たちと一緒にドワーフ軍の後列を壊滅に追い込んだ。

挟撃されたドワーフ軍は総崩れとなった。

「何とか間に合ったか…」

ドワーフの敗残兵たちを追撃する必要はない。あの二千人がドワーフの動員できるほぼすべてで、最早彼らには降伏しか残されていない…

「酷いな…」

魔物たちは何十にも折り重なって倒れ、死体で地面が見えないほどだった。
明らかに背中から剣を振り下ろされたであろう者もいた。

将軍は黙祷を捧げ、魔王のもとへと向かった。これで魔王も懲りただろうか…

最早用は済んだ。帰るぞ
軍曹はそう命じ、分隊のあるものは本部に戻り、ある者は隠れ家へと移動した。


「お前グンポー会議にかけるわ」

魔王は怒り心頭という様子だった。

「グンポーとは?」

「お前は裏切り者って事だよ」

何故ですか!そう抗弁する気力も残っていなかった。
将軍はうなだれ、両脇を兵士に固められて連れられていった。

その様子を元帥が物陰から見ていた事に魔王は気づかなかった。

そして元帥は魔王の彼女を呼ぶ声を聞き、慌ててその場を離れた。

ちらし
やっとドワーフ戦終わった…しかし地の文多いなこりゃ

補足するのを忘れていた言語ですが、話し手が意識して話せばその国の言葉になります。
例えばイギリス兵が日本兵に話しかけた時、

・何気なく話す
イギリス兵「what's up?」
↓魔法によって翻訳
「どうした?」←日本兵にはこう聞こえる

・意識して単語を発音する
イギリス兵「what's up?」
↓翻訳されない
「わっつあっぷ?」←日本兵にはこう聞こえる

自衛官「閣下!私であります。定時連絡に参りました」

魔法大臣「どうぞ。入って構わん」

自衛官「失礼します」

魔法大臣「最近は森で迷わんようになったな」

自衛官「最初は大変でしたよ…案内人を雇わなければここまで来れなかった程で」

魔法大臣「迷惑をかけてすまんな。ここでなければ満足に実験が出来んのだ」

自衛官「我々の本部ではダメなのですか?」

魔法大臣「貴殿方は何も思わんだろうが、私のやっている事は異端とされる研究だからな」

魔法大臣「城下町の人間たちは私を怖がるだろう」

魔法大臣「私は元々人間の魔術師だったんだが、真理を追い求めたらこのザマだ。白目は真っ黒に、瞳は赤く、肌は青くなってしまった」

魔物大臣「おまけに角まで…ふふふ、気味が悪いだろう?」

自衛官「えっ?そうですか?」

魔物大臣「え…気味悪いとは思わんのか」

自衛官「え、えーっと、その…涼しげでいいかと」

魔物大臣「…お世辞を言うときはもうちょっとまともな単語を使いたまえ」

自衛官「しっ、失礼しました!」

魔物大臣「そっ、それにしても…くくっ…す、涼しげ…はっ、あはははは!」

自衛官「……」



米兵(区別するために以下マリンコ)「聞いたぞ、お前最近あの青肌娘の所に入り浸ってるらしいな」

自衛官「いや、それは単なる定時連絡で…」

マリンコ「定時連絡は持ち回りだろ?頭を下げて変わってもらえるよう頼んでるそうだな」

自衛官「まあ…否定はしない」

自衛官「同じ日本人はいるけどな、何十年も時代が違うと話が合わなくてな…酒を飲んだ時くらいだ、違和感なく話せるのは」

自衛官「まあそういうわけであの娘の方が気が楽でいいんだよ」

自衛官「黙ってても自慢げに実験の話をしてくれるからな。お互い話し相手に飢えてたわけだし」

マリンコ「いや、確かにあの娘は美人だとは思うが、どうしてあの娘なんだ?ほら、城下町に行けばその…普通の肌色で同じくらい可愛いのはいるだろ」

自衛官「俺、青肌好きなんだ」

マリンコ「えっ…」

自衛官「アスタロットとか…そういう感じの…」

マリンコ「お、お前の国にそういう文化があったのは俺も知ってるがよ…」

マリンコ「そ、そうか…」

マリンコ「すまん、やっぱ引くわ」

魔法大臣「今日は二人か」

ソ連尉官「申し訳ありません、事前の連絡もなく来てしまって」

魔法大臣「別に増えたとしても構わんよ、入るがいい」

自衛官「では、自分はここで立哨を」

魔法大臣「尉官どの、彼にも聞く権利があると思う」

ソ連尉官「閣下もこう仰っている事ですし、貴方も来てください」

自衛官「はっ!」

・・・・・・・・

魔法大臣「魔王軍について聞きたい?」

ソ連尉官「ええ、魔王がドワーフの国を襲ったのはご存知ですか?」

魔法大臣「それは知っていたが…まとうとうドワーフまで攻めるとは」

ソ連尉官「率直に言って、魔王単体ででドワーフの国を潰せるでしょうか?」

魔法大臣「国を破壊するというのは流石に難しいが…千名程度の軍勢なら」

ソ連尉官「そうですか…実は、先の戦いでは魔王が最前線で剣を振るうことが無かったのです」

魔法大臣「それじゃあ勝てても大損害だ!奴の力で強引に勝っていたようなものなのに」

ソ連尉官「実は将軍と呼ばれる人物の直属兵の奮戦によりドワーフたちは敗走したようなのですが」

魔法大臣「将軍!彼がとうとう最前線に出たのか…それで、将軍はどうなった?」

ソ連尉官「投獄されました」

魔法大臣「魔王め…」

魔物大臣「魔王のやつは最近戦術とやらにはまったらしくてな、あんな綻びだらけの戦術もどきでも何とかなっていたのは将軍の直属兵のお陰だ」

魔物大臣「だがそのせいで何人の直属兵が死んだか…」

ソ連尉官「それなら魔王を見捨ててしまえば…」

魔物大臣「将軍の部下に対する思いやりは厚い。そしてもし魔王がくだらん戦いで派手に負けたら求心力は失われる…」

ソ連尉官「そして魔王軍は分裂してしまう、と…」

魔物大臣「最終的には魔王が前線に出れば何とかなる話ではあるがな」


使い魔「難しい話してるねー」

自衛官「ねー」

使い魔「どうして今日は二人なの?」

自衛官「難しい話してるからじゃないかな」

使い魔「へー、そうなのー」

使い魔「おにーさん、薪割り手伝ってよ」

自衛官「ああ、いいよ」

自衛官(二足歩行の犬ってかわいいなあ)

自衛官「よさっくがーきをっきるー」

使い魔「へいへいほー」コーン

「ヘイヘイホー」コーン

自衛官「こだっまはーかえっるよー」

使い魔「へいへいほー」コーン

「ヘイヘイホー」コーン


魔法大臣「ぷっ…なんだ、あの歌は」

ソ連尉官「さあ…分かりません」

ソ連尉官(あれは民謡か?民謡をどうやって翻訳しているのやら…興味深いな)

魔法大臣「すまない、話を戻そう」

ソ連尉官「率直なところ、魔王軍は数以外は我々の敵ではありません」

魔法大臣「だが数はかなり重要だぞ。分散されて領地を荒らし回られたらいずれ飢え死にだ」

ソ連尉官「そうです。だからまず彼らの勢力を削ぐ必要があります…」

魔法大臣「しかし下手に分裂させたら、この大陸はさらなる混乱に…」

ソ連尉官「魔王領の周り一面を敵だらけにし、動員兵力を減らさせるというのはどうでしょうか」

魔法大臣「なるほど!それなら結束を維持させたまま、相対する兵力を減らせるな。ふーむ、考えもしなかったぞ…」

魔法大臣「もっと早くからそれを知っておきたかったな…今となっては…」

ガチャッ

自衛官「薪割り終わりましたー!」

使い魔「おわりましたー!」

魔法大臣「ふふふ、それでは遅めの昼食といこうか」

魔法大臣「貴方たちも食べていったらどうだ」

ソ連尉官「申し訳ありません、私は本部に仕事を残してきておりまして…」

魔法大臣「そうか、それは残念だな」

ソ連尉官「代わりに彼を置いていきますので、それでは失礼」カチッ


魔法大臣「嵐のようだったな…」

使い魔「ええ?ご主人様たち、二時間は話してたよ」

魔法大臣「そ、そんなに熱中していたか…」

魔法大臣「腹も減っただろう、客人に手伝わせて悪かったな」

自衛官「いえいえ、これくらい」

魔法大臣「ふふふ、貴方には特別に私の手料理を食わせてやろう」

自衛官「なんと!それは楽しみですね」

マリンコ「それで何か進展はあったのか」

自衛官「進展って?」

マリンコ「あの青肌娘の事だよ。今日も行ってきたんだろ」

自衛官「なんだ、引くわとか言ってたくせに興味津々だな」

マリンコ「いいだろ娯楽もねえんだし」

自衛官「ほら、釣りとか、散歩とか、食事とか…」

マリンコ「俺はな、コーラ飲んでピザ食って野球見て寝てえんだよ!」

自衛官「野球なら司令官に言ってみたらどうだ、娯楽になるだろうから喜ばれるんじゃないか」

自衛官「コーラは…確かファンタが第二次大戦のドイツ製だった筈だぞ。作り方分かる奴いるんじゃないか」

マリンコ「まずは炭酸水がないといけないけどな」

自衛官「炭酸水の他に…せめて蜂蜜か砂糖、レモンがあればレモネードができるんだが」

マリンコ「畜生、どれもこっちじゃ高級品だ…」

マリンコ「ああそうだ、それで青肌娘はどうなった?」

自衛官「スープを食わせてもらった」

マリンコ「あの娘料理できたのか」

自衛官「大臣になる前は普通の魔法使いだったらしいぞ、美味かった」

マリンコ「マジかよ!随分進展したな」

自衛官「スープだぞ?」

マリンコ「そりゃお前、手作りの料理とか最高じゃねえか」

自衛官「案外家庭的だなお前」

マリンコ「うるせえ。じゃあ次はお前が食事に誘う番だな」

自衛官「楽しそうだなお前…」

マリンコ「そう言うなって、ブラザーだろ?」

自衛官「ブ、ブラザー?お前酔ってんのか?」

マリンコ「ああ、わりと酔ってる」

自衛官「娯楽がないからって飲み過ぎるなよ…」

マリンコ「じゃあ酒場でねーちゃん引っ掻けようぜ!」

自衛官「親父かお前は!心に決めた娘がいるから止めとくわ」

マリンコ「ああ、ちくしょう…」

自衛官「食事なんだがなあ、あの娘は洞窟からあまり遠くへ行きたがらないらしいんだよな」

マリンコ「引きこもりは良くないな」

自衛官「単に出不精ではな…いや、出不精もあるかも知れないけど、どうも人嫌いっぽいんだよ」

マリンコ「じゃあ尚更お前には心を開いてるってことだな」

自衛官「そうなんだよなー、そこが嬉しいんだよなー、まあまた進展があったら教えるわ」

マリンコ「ハハハ!お前も話したがりじゃねえか」

自衛官「そう言うなって…」


マリンコ「あ、中隊長どの」

ソ連尉官「こんばんは。どうかしましたか?」

マリンコ「実は俺の国のスポーツにベースボールってのがありまして…

マリンコ「それで何か進展はあったのか」

自衛官「進展って?」

マリンコ「あの青肌娘の事だよ。今日も行ってきたんだろ」

自衛官「なんだ、引くわとか言ってたくせに興味津々だな」

マリンコ「いいだろ娯楽もねえんだし」

自衛官「ほら、釣りとか、散歩とか、食事とか…」

マリンコ「俺はな、コーラ飲んでピザ食って野球見て寝てえんだよ!」

自衛官「野球なら司令官に言ってみたらどうだ、娯楽になるだろうから喜ばれるんじゃないか」

自衛官「コーラは…確かファンタが第二次大戦のドイツ製だった筈だぞ。作り方分かる奴いるんじゃないか」

マリンコ「まずは炭酸水がないといけないけどな」

自衛官「炭酸水の他に…せめて蜂蜜か砂糖、レモンがあればレモネードができるんだが」

マリンコ「畜生、どれもこっちじゃ高級品だ…」

マリンコ「ああそうだ、それで青肌娘はどうなった?」

自衛官「スープを食わせてもらった」

マリンコ「あの娘料理できたのか」

自衛官「大臣になる前は普通の魔法使いだったらしいぞ、美味かった」

マリンコ「マジかよ!随分進展したな」

自衛官「スープだぞ?」

マリンコ「そりゃお前、手作りの料理とか最高じゃねえか」

自衛官「案外家庭的だなお前」

マリンコ「うるせえ。じゃあ次はお前が食事に誘う番だな」

自衛官「楽しそうだなお前…」

マリンコ「そう言うなって、ブラザーだろ?」

自衛官「ブ、ブラザー?お前酔ってんのか?」

マリンコ「ああ、わりと酔ってる」

自衛官「娯楽がないからって飲み過ぎるなよ…」

マリンコ「じゃあ酒場でねーちゃん引っ掻けようぜ!」

自衛官「親父かお前は!心に決めた娘がいるから止めとくわ」

マリンコ「ああ、ちくしょう…」

自衛官「食事なんだがなあ、あの娘は洞窟からあまり遠くへ行きたがらないらしいんだよな」

マリンコ「引きこもりは良くないな」

自衛官「単に出不精ではな…いや、出不精もあるかも知れないけど、どうも人嫌いっぽいんだよ」

マリンコ「じゃあ尚更お前には心を開いてるってことだな」

自衛官「そうなんだよなー、そこが嬉しいんだよなー、まあまた進展があったら教えるわ」

マリンコ「ハハハ!お前も話したがりじゃねえか」

自衛官「そう言うなって…」


マリンコ「あ、中隊長どの」

ソ連尉官「こんばんは。どうかしましたか?」

マリンコ「実は俺の国のスポーツにベースボールってのがありまして…

魔法大臣「…それで、この薬をこれと混ぜるとだな…」

自衛官「おおーこれは…」

………………

魔法大臣「私の師匠がだな…」

自衛官「面白い人ですね」

………………

使い魔「ご主人様…」

魔法大臣「何?もうそんな時間か」

自衛官「では、そろそろおいとまさせていただきます」

魔法大臣「待て、質問がある」

自衛官「はい、何でしょうか」

魔法大臣「その、次は…いつ来れるんだ」

自衛官「閣下がお暇な時でしたら何時でも」

魔法大臣「ふふ、夜中でもか?」

自衛官「閣下がお望みとあらば!」

魔法大臣「ふふふ、そうか」

魔法大臣「そこまで我が儘は言わないから安心してほしい」

自衛官「私は構いませんが」

魔法大臣「からかうのはよせ。使い魔、入り口まで送っていってやれ」

使い魔「はい!ご主人様!」


………………

使い魔「ご主人様の話、つまんなくないの?」

自衛官「いや?俺も科学にはそれなりに興味があるしな」

自衛官「それに頭のいい人と話すのは面白いぞ…難しいけどな」

使い魔「おにーさん、淡々と人の話聞いてくれそうだもんね」

自衛官「相槌は打ってるぞ、一応」

使い魔「それじゃ僕の話も聞いてくれるかな」

自衛官「いいけど…どんなこと話すんだ」

使い魔「えーっとね、ご主人様の普寝起きの様子とか、料理の練習してるところとか…」

自衛官「詳しく話せ、すぐに!」

使い魔「ね?ご主人様もなかなか可愛いところあるでしょ?」

自衛官「俺は元々そう思ってた」

使い魔「そうなの?」

自衛官「そうだよ」

自衛官「閣下の使い魔は君だけなのか?」

使い魔「んーとね、僕以外にも猫型とかネズミ型とかいるよ」

自衛官「おお、可愛らしいな」

使い魔「えへへ、ありがとう!でもね、ご主人様は僕たちをこき使ったりはしないんだよ」

自衛官「それでこそ閣下だな」

使い魔「でしょ!料理だって自分で作るし、時々畑仕事も手伝ってくれるし」

自衛官「他の使い魔はどこに?」

使い魔「いつもあの洞窟にいるのは僕だけ。他のみんなはご主人様の呼び掛けに応じて集まるって感じかな」

自衛官「逃げ出したりとかしないのか?」

使い魔「まさか!ご主人様は僕たちのご主人様なんだよ!」

使い魔「ま、ご主人様はおにーさんに会うのを楽しみにしてるみたいだからまた来てね」

使い魔「あ、もちろん僕も楽しみにしてるよ」

自衛官「ハハ、そりゃ嬉しいな…」

兵士「認識票を」

自衛官「これです」

兵士「確認した。今日の貴官の配属は…偵察分隊だな」

自衛官「どこまで行くんです?」

兵士「この地点なら恐らく20キロもないと思うが…詳しいことは分隊長から聞いてくれ」

自衛官「了解しました」


分隊長「お前は?」

自衛官「識別番号○○であります」

分隊長「うん、確かにこの分隊配属だな」

分隊長「今回は国籍を混合しての配属だ。よろしく頼む」

・・・・・・・・・・・・

英軍曹「情報部長だ。階級は軍曹…とは言っても便宜的に階級を上げて貰ってるけどな」

英軍曹「さて、今回私が直々に作戦要項を説明するのは、先日情報提供を受けたからだ」

英軍曹「どうやらドワーフ軍の残党が潜伏している集落があるらしい」

英軍曹「ドワーフは魔王軍の捕縛の対象になるが、我々人間であれば大丈夫だ」

英軍曹「彼らは助けを求めている。それを助け…ここまで護衛するんだ」

英軍曹「何か質問は?」

自衛官「部長」

英軍曹「何かね」

自衛官「銃の使用許可は」

英軍曹「やむを得ない時に限る。資源は有限だぞ」

英軍曹「だがドワーフの技術があれば弾薬を気にせずとも良くなるかもしれない」

英軍曹「よって自分たちの安全を第一、ドワーフの安全を第二、銃の事はその次だ」

英軍曹「他に質問は?」

英軍曹「よろしい。解散!」


自衛官「部長、少しよろしいですか」

英軍曹「どうした」

自衛官「私が元の世界から持ち込んだ銃は…その…出来れば持ち出したくないのですが」

英軍曹「あの兵器か…確かにあの連写性能には驚いたな。だが君にはべつの銃を貸しだそう」

自衛官「本当ですか!?」

英軍曹「君の国の方針の話は聞いた。私には信じられんが未来ではそういう考えがあるのかもな」

英軍曹「だが理由はそれだけではないよ。もし、もしの話だが…それがろ獲されてコピーでもされてみろ」

英軍曹「我々の兵器では太刀打ちできなくなる。だからどのみち使えないんだ」

自衛官「な、なるほど…」

英軍曹「そういうわけだ。さあ安心して任務につきたまえ」

自衛官「はっ!」

分隊長「まずはここから南に向かおう。南の王国は魔王軍との戦いに備えて警備を強化している」

分隊長「だが範囲が広すぎて防備しきれてない。警備はザルだ」

分隊長「念のため…見ろ、証文だ。表向きは行商人という事になっている」

分隊長「野戦服の上からこのローブを羽織れ」

分隊長「分隊、作戦開始!」


兵士「分隊長、分隊規模で大丈夫なのですか?」

分隊長「あまり多すぎると目立つということだろう、だがあっちでうちの情報員の支援を受けれる事になってる」

兵士「それは俺たちの世界の人間なんですか?」

分隊長「ドワーフ領の近くとあれば多分魔物なんじゃないか」

兵士「そうですか…」

分隊長「全員、警戒を怠るなよ」

分隊長「一時間ごとに小休止。道が荒れてる、体力は温存しておけ」

…………………

分隊長「クソ!嵌められた!」

兵士「どういう事ですか!?」

分隊長「ドワーフの残党なんて嘘だ!囲まれてる!」

分隊長「総員、陣形組め!」

自衛官「発砲許可は!?」

分隊長「構わん!ただし全員撃ち殺すんだ!」

パパパパパ…

敵兵「」ドサッ

敵兵「脚が!脚が!!」

敵兵「何なんだあの武器は!」

敵兵「くそっ…引け!引くんだ!」

分隊長「粗方倒したな…」

敵兵「うう…」ズルズル

分隊長「…。」ドスッ

分隊長「総員着剣、死んでるか確かめろ」

自衛官「あ、あの…情報を吐かせれば」

分隊長「それもそうだな」

分隊長「こいつが一番良さそうな装備してるな…おい、誰の差し金だ?」ツンツン

敵兵「ぐ…」

分隊長「次は脚だ」ザクッ

敵兵「ぐあああ!」

敵兵「わ、われわれは南の国の部隊だ…貴様らを殺すように命令された」

分隊長「まあ魔王がこんなことを考えるわけがないな」

分隊長「とりあえず南の国が我々を挑発していることは分かった」

自衛官「どうするんですか?」

分隊長「とりあえずは報告だ。こいつらは…そうだな、全員殺しておけ」

自衛官「…。」

分隊長「怖じ気づいたか?」

「このビビり野郎!」

「そんなんじゃ青肌娘は振り向かねーぞ」

「ギャハハハ!」

自衛官「お、俺は!国家から与えられた任務の時だけに…!」

分隊長「お前の祖国はこっちにない。お前に命令は来ない。お前は生きなければならない。だからお前が殺すんだ」

自衛官「く…クソッ!」

自衛官「やってやる…!畜生!」

グサッ…グチュッ…グッ…

分隊長「そこじゃダメだ、刺す場所が違う」

自衛官「ちくしょう…!」

…………………

分隊長「みんなご苦労だった。私が報告をしておくから諸君は休息をとれ。解散!」

分隊長「ああ、お前は残れよ」

自衛官「何のご用ですか」

分隊長「そう嫌な顔をするな。さっきの事についてだ」

自衛官「あれは虐殺です!」

分隊長「虐殺、か…」

自衛官「あなたは元の世界でもああやっていたんですか!?」

分隊長「まあ、銃剣で突き刺すくらいはな」

分隊長「まー想像してみろ。お前は倒れている。しかし無傷だ」

分隊長「這いつくばっていたら回りの味方がほとんど倒されてしまっていた、ということだと思え」

分隊長「制圧しに来た敵はマヌケにも、お前たちが死んでいるか確かめずに素通りした。背中を無防備に見せてな」

分隊長「怒りに燃えるお前の手にはサブマシンガン!さあどうする…」

自衛官「…。」

分隊長「撃つだろ?」

自衛官「…撃ちます」

分隊長「お前はなかなか技能がありそうだから、多分元の世界でも軍隊で叩きこまれたんだろう」

分隊長「俺がわざわざ言わなくてもそれくらい知ってたはずだ」

自衛官「…戦う覚悟はできてます。しかしそれは自国の為にやむを得ないときだけだ」

分隊長「軍人なら誰しもそう言うだろうな。お前の言葉が嘘じゃなさそうなのはなんとなく分かるよ」

分隊長「だがこれからはその祖国のためでなく仲間のために剣を振るわなきゃならん」

分隊長「あの場で一人でも帰していたら銃の事がバレちまう」

自衛官「でも銃剣を使う必要は…!」

分隊長「そりゃ弾薬節約のためだよ」

分隊長「撃つのも刺すのも変わらん。お前は仲間のために戦って仲間のために殺した。そう考えとけ」

分隊長「肉を穿つ感覚はどうだったか?生暖かい返り血は?…すぐに慣れるよ」

自衛官「でも…!」

分隊長「よく聞け未来人、俺の祖国はもうない。元の世界でも地図から消えた。もう帰れない!」

分隊長「お前の祖国もなくなった。この基地こそが俺達の祖国だ。そして仲間たちが同胞だ。分かったか」

パチパチ…

自衛官「焚き火っていいよね」ガサガサ

パチパチ…

自衛官「分かってる…分かってはいるんだ」

パチパチ…パッ…パチパチ

自衛官「銃撃ならまだしも…刺殺はな」

ソ連尉官「いい夜ですね」

自衛官「し、失礼しました!」バッ

ソ連尉官「着帽していないのに敬礼する必要はありませんよ」

自衛官「申し訳ありません…」

ソ連尉官「混乱しているようですね」

自衛官「あの…どこから聞いてました?」

ソ連尉官「そもそも貴方より前にいたのですが…」

自衛官「ど、何処に!?…でありますか」

ソ連尉官「あなたの斜め後ろの壁際ですよ。そこでタバコを」

ソ連尉官「回りを注意深く観察すべきですね」

自衛官「返す言葉もありません…」

ソ連尉官「あなたは刺殺が嫌だと仰いましたが、確かに銃は罪の意識を軽減する働きがあります」

ソ連尉官「それでも撃てない人は撃てませんがね。撃てるだけ大したものですよ」

自衛官「…。」

ソ連尉官「おっと…火が弱くなってきた」ガチャガチャ

ソ連尉官「サモワールも持ってきましたよ。どうですか紅茶でも」

自衛官「い、頂きます…」


ソ連尉官「同志、あなたは…私よりいくらか年下な程度でしょうか」

自衛官「自分は…」

ソ連尉官「私も戦争状態でなければ人殺しなどしません。しかし今は戦争状態でない」

自衛官「どうして…どうして殺せるのですか?」

ソ連尉官「私が思うに、何かをするには理由が必要です」

ソ連尉官「それさえあれば大抵の事はできる」

ソ連尉官「祖国のため…友人のため…家族のため、それが単なるお題目だったとしても、兵士はその為に戦います」

ソ連尉官「後ろから拳銃を振り回した政治委員が追っかけてくる、こういうのでもいいんです。大切なのは理由です」

自衛官「それが人殺しを肯定するのですか?」

ソ連尉官「イギリス人から聞いたのですがね、ポーテューズという人物がこんなことを言ったそうです」

ソ連尉官「"一人の殺害は犯罪者を生み、百万の殺害は英雄を生む。数が殺人を神聖化する"」

ソ連尉官「だから我々は神格化されなければならないのですよ」

ソ連尉官「そして罪の意識を分散させ、罪悪感とうまく付き合って生きる。これが出来なければ我々はこの世界に呑まれてしまうでしょう」

自衛官「…。」

ソ連尉官「殺戮、疫病、不健康、この世界にいきなり我々の良心を持ち込んではいけません。我々の論理を押し付けるためにはまず力を蓄えなければ」

ソ連尉官「殺人の是非を我々の論理で問うのはそれからです」

パチパチ…

自衛官「ふう…」

パチパチ…

自衛官「なかなか厳しい言葉だったな…」

ガチャガチャ

国民党兵「隣は?」

自衛官「ああ…いいよ」

国民党兵「随分と深刻な顔ですぜ、同務」

自衛官「ああ…ちょっとな」

自衛官「お前は…俺たち日本人を仲間だと思うか」

国民党兵「国籍なんて関係ありやせんや。基地にいれば仲間ですぜ」

自衛官「恨みとかは…」

国民党兵「そりゃあ国に言うべきであって兵隊さんにゃ関係ありませんや」

国民党兵「相手が別にこっちを嫌ってないんならこっちからわざわざ相手を憎む必要もないですわな」

自衛官「そうか…」

国民党兵「あっしは飯のために戦ってる訳なんすが、同務はどんな理由で?」

自衛官「俺は…」

国民党兵「あっしも…最初は戦いは嫌でした」

国民党兵「捕虜を売っぱらったり、口封じの為に殺すのが正しいのかは分かりやせん」

国民党兵「だんなの言う通りこの世界のしきたりとやらに合わせるのが正しいのかどうかも…」

自衛官「合わせるべきではないと?」

国民党兵「完全に合わせてしまったら…あっし達が向こうの世界で生きていた、という証拠がなくなっちまいます」

自衛官「そうか…」

国民党兵「でも、それを基地司令にい話したらこういう風に答えてました」

国民党兵「自分の属する集団の考えと別の考えを、心の中で持つ事ができるのが我々であり、それが近代の人間という奴だ。だから難しく考えなくていい、と」

国民党兵「同務、あっしはただ…自分の世界の人間であり、こっちで肩を並べて戦った人間でもある仲間たちが…目の前で死ぬのが嫌なだけなんでさ」

国民党兵「だから仲間が危険に晒されたら戦う、晒される可能性があっても戦う。そして敵を殺す。これでいいんじゃないすかね」

自衛官「魔法大臣閣下が、でありますか?」

英軍曹「そうだよ、暗殺だ。怖いね」

英軍曹「どうやら彼女は異端扱いらしくてね、彼女の一族にとっては面汚しらしい」

英軍曹「一応我々も監視はするつもりだけど、この世界の森は思いの外危険でね」

英軍曹「だからあの洞窟にいたままでは保護がしづらい。こっちの本部に来てもらえるよう頼んでくれないかい?」

自衛官「了解しました。お伝えします」

魔法大臣「そうか、とうとうこの時が来たか…」

自衛官「上が貴女を保護するために本部に来ていただきたいと言っています。ご同行願えますか」

使い魔「おにーさん達の家に行けるの?やった!…ご主人様?」

魔法大臣「…ここは、この洞窟は私のすべてだ」

魔法大臣「元々一族を追放される前はここで実験をしていた」

魔法大臣「この机の傷、壁の染み、日に灼けた本…すべてに思い出がつまっている」

自衛官「しかし、命あっての思い出ではありませんか」

魔法大臣「…。」

使い魔「ちょ、ご主人様!どうして服を脱いでるの!?」

魔法大臣「見ろ。私の肌は青く、そして異端の紋章が…」

自衛官「それはもう聞きました」

魔法大臣「そ、そうだったな」

魔法大臣「…単刀直入に聞く。世辞抜きで答えてほしい」

魔法大臣「わたしの青い肌は…醜いか?」

自衛官「何故です?」

魔法大臣「…実験によって肌がこうなった時、回りの魔術師達がそう言ったんだ」

自衛官「その青い肌になったのは、異端の実験に手を出したせいですよね。なぜ手を出したのですか?」

魔法大臣「…知的好奇心が、抑えられなかった」

自衛官「それならば貴女のその青い肌はむしろ誇るべき事ではないですかね」

自衛官「何かをとことんまで突き詰めた結果そうなったんですよ。それって凄く格好いい事じゃないですか」

自衛官「少なくとも、自分は貴女を尊敬します」

魔法大臣「そうか…!そうなのか…!」

魔法大臣「…ありがとう。もうちょっと…この青い肌と、腰をすえて向かい合ってみようと思う」

自衛官「ああそれと、自分は貴女の青い肌が好きです」

魔法大臣「それって…」

自衛官「私は尊敬する貴女を失いたくない。着いてきて頂けますね?」

魔法大臣「…時間をくれ。荷造りを済ませる」

使い魔「考えたらご主人様脱ぐ必要なかったよね」

魔法大臣「…それは言うな」

使い魔「ね?ご主人様にも可愛いところあるでしょ」

自衛官「そうだな」

魔法大臣「う、うるさい!」

自衛官「荷物は纏まりましたか?」

魔法大臣「ああ」

自衛官「では…状況開始!」

使い魔「それ前に訓練開始の合図だって言ってたじゃん」

自衛官「ああ、そうだったな…」

自衛官「他の使い魔達は?」

使い魔「おにーさん優しいね、あの子達なら後から合流するから大丈夫だよ」

魔法大臣「そうはいくか、お前たちは私の娘や息子に等しいのだぞ」

使い魔「なら子供を信用するのも親でしょ。大体ご主人様まだ結婚もしてないのに…」

自衛官「一言多いけど、そんなに嬉しそうな顔で言っても説得力がないな」

使い魔「ああもう!早く出発しようよ!」

ガサゴソ…

魔法大臣「道はわかるのか?」ヒソヒソ

自衛官「何度も通ってますしね」ヒソヒソ

使い魔「まったく…他の子達を待ってたせいで遅くなっちゃったじゃん」ヒソヒソ

自衛官「ちゃんと働いてもらうから大丈夫だ。我々の回りをひし形に囲むように散らばれ、お前は後衛だ」

自衛官「何かあったら、お…自分に知らせること」

使い魔「はいはい、りょーかい」

自衛官「くれぐれも無理をするなよ」

使い魔「分かってるってば!」

ガサガサ…

自衛官「…」ピタッ

魔法大臣「どうした?」ヒソヒソ

自衛官「驚いた。こんなところまでわざわざ来るのか」

暗殺者「…。」

暗殺者B「…。」

自衛官「音で気づかれるとまずい、迂回しましょう」ヒソヒソ

使い魔「おにーさん、あいつら本職じゃないみたい。剣はしまったままだし」ヒソヒソ

自衛官「よく観察してるな。引き続き頼んだぞ」ヒソヒソ

ガサガサ

スッ…

自衛官「!」ゾクッ

カチャッ…パーン

暗殺者C「ぐはっ…」

自衛官「くそっ、今ので気づかれたか!」

自衛官「みんなを集めろ!走るぞ!」

使い魔「わ、わかった!」

タッタッタ…

魔法大臣「何故わかった!?」

自衛官「こんな森の中で光るものと言ったら矢じりか剣しかない!」

自衛官「出来れば使いたくなかったが…」

パシュウウウウ…パンッ

魔法大臣「何だそれは!?」

自衛官「信号弾です!これで救援が来る!」

自衛官「走れ走れ!」

暗殺者「追え!」

暗殺者「その異端女を引き渡せ!」

自衛官「…」スタッ

魔法大臣「どうした?何故止まったんだ!」

自衛官「いいから行って!」カチャカチャ

パパパッ…ドサッ

自衛官「…訓練のお陰だな」

なろうの奴?
魔法の世界にソビエトがそっくりそのまま召喚されるの

使い魔「回りに敵はいないみたい」ガサガサ

自衛官「よし、走るのはやめだ」

使い魔「引き続き見張っとくね」

自衛官「ありがとう」


魔法大臣「私のせいか…」

自衛官「あれはあなたの一族の差し金ですか?」

魔法大臣「そうだ」

自衛官「それならばわざわざ自分達で出張って来なくても、プロに頼めばいいのに」

魔法大臣「一族の汚点は自分達の手で抹消したいというわけだろう」

自衛官「変な拘りだな…」

自衛官「その禁忌とやらには肌が青くなる以外の作用はあるのですか」

魔法大臣「…病気だ」

自衛官「では何故あなたは健康なのですか?」

魔法大臣「…あ」

自衛官「おおかた肌の青くなった者はすぐに始末して、そのあと病気が元で死んだということにしているだけでしょう」

自衛官「本当に危ない病気であれば貴女の一族だけでなく国が総力を上げて追ってくるはずですよ」

魔法大臣「そんな…」

自衛官「急ぎましょう、我々に異端なんて関係ない」

パンッ

自衛官「これで五人目か…」

自衛官「結構な数がいるな」

使い魔「おにーさん、その…」

自衛官「どうした」

使い魔「ここからちょっと先に敵が集まってるみたい」

自衛官「まさか、誘導されてるのか…」

自衛官「全員止まれ!伏せろ!」

使い魔「後衛の子からも、敵がこっちに向かってるって…」

自衛官「くそ、一網打尽か…」

パーン

ガガガガ

自衛官「何だ!?」


日本兵「手を上げろ!」

日本兵「武器を捨てて膝を地面に着け!」

暗殺者「何だお前たちは!邪魔立てするなら…」

ドンッ

日本兵「邪魔立てが何だって?さっさとしろ」

日本兵「二等兵、こいつらの手を蹴り飛ばせ!」

日本兵「手を縛り上げろ!」

自衛官「味方だ、助かった」

自衛官「さあ行きましょ「死ね!」

魔法大臣「!?」

自衛官「くそっ…」スチャッ

ドスッ!

暗殺者「がっ…」

自衛官「やかましい奴で良かった…」

自衛官「ふう…大丈夫ですか?」

魔法大臣「はあ、はあ…ありがとう、助かった」

魔法大臣「おい!出血してるぞ!」

自衛官「…これは返り血…です」

魔法大臣「まさか、人を刺したのは…」

自衛官「ご心配なく、初めてではありません。二回目です。ご心配なく…」

魔法大臣「すまなかった。わたしのせいで貴方に…罪を…」

自衛官「…閣下」

自衛官「閣下のために戦っても…戦う理由を貴女のためにしてもよろしいでしょうか?」

魔法大臣「…私などでいいのか?」

自衛官「…貴女だからです」


日本兵「おい!味方だ!」

日本兵「無事だったか…」

米兵「よう、英雄どの」

自衛官「すまん、恩に着る」

米兵「そういえばお前、前に自分が浮いてるって言ってたがそんなことはなかったぞ」

自衛官「どういう意味だ?」

米兵「信号弾を見て、銃と弾倉だけをひっつかんで我先に飛び出したのは誰だったと思う?」

日本兵「おい!その話はもういいだろう!」

米兵「こいつらだよ。日本人たちだ」

米兵「お前はワールドカップやオリンピックを見たことがあるだろ、戦ってるのは赤の他人なのに何故か応援せずにはいられない」

米兵「それが同胞ってやつだ」

日本兵「生まれが何十年も違うとはいえ、貴様だって同じ日本人だろう。もしかしたら俺の友人の誰かの孫かも知れないだろ?」

日本人「そう考えるといてもたっても居られなくなってな」

自衛官「…ありがとう」

日本兵「…なあ、話題が会わないかもしれないし、疎外感を感じるかもしれない。それでも俺たちははらからなんだ。もう少し頼ってくれ」

ドイツ佐官「無事に来たか…」

ソ連尉官「魔術書に薬品、使い魔も何体か連れてきたようです」

ドイツ佐官「おお、ありがたいな」

ソ連尉官「暗殺者どもは我々の本隊が片付けたでしょう。先行していた日本分隊が彼らを保護したようで」

ドイツ佐官「美しいナショナリズムだな」

ソ連尉官「ナショナリズムはお嫌いですか?」

ドイツ佐官「私だって近代の人間だから好きだぞ。だが私はプロシア人なんだ」

ドイツ佐官「愛国心はプロシアに対してなら感じるがドイツに対しては感じなかった」

ドイツ佐官「それなのにザクセンの田舎者がドイツ万歳と唱えてるのがおかしくてな」

ソ連尉官「そうですか」

ドイツ佐官「君はどうだね?」

ソ連尉官「ポーランドにもソ連にもあまり興味はないかな…家族は守りたいと思います…まあみんな死んでしまいましたが」

ドイツ佐官「…すまなかった」

ソ連尉官「いえいえ。自然に死ぬのは誰にも止められませんから仕方のない事ですよ」

魔法大臣「ここが新しい家だぞ」

使い魔「わあ!広いねご主人様!」

自衛官「地下室は石造りになってますので、実験はそこで」

魔法大臣「実験室まで用意してもらって…すまないな」

自衛官「いえいえ」

魔法大臣「何か礼がしたいのだが」

自衛官「それじゃあ一杯のスープと…炭酸水や蜂蜜を購入するつてを教えていただきたいのですが」

魔法大臣「蜂蜜なら作り方が分かるぞ。炭酸水も…あった、これだ。ここに書いてある商店に行って頼めば持ってきて貰えると思う」

魔法大臣「スープの具は何がいい?」

使い魔「愛情!」

自衛官「じゃあ自分も!」

魔法大臣「ふふふ、まったく…」

魔法大臣「だがまず用意をしなければな。荷ほどきをして、鍋を出して、材料を買って…何日かかかると思う」

魔法大臣「また…以前と同じように来てくれるのか?」

自衛官「勿論です!」

魔法大臣「そうか…ふふ、ありがとう」

ここで一旦終わり
ちらし
>>192
そうそれです
ゲートとか書籍化されたような作品と設定が被ってもまあ仕方ないかと思うけど、ssとかのネットのみで公開されてる創作と被ると妙に悔しいな…ちくしょうワルシャワ条約機構軍にしてやる

この米兵はWW2の軍人じゃなさそうだな。ベトナムで死んだのか?もしくは中東? 
それとも在日米軍の海兵隊員で、この自衛官といっしょに合同演習してたのかな。

>>204
現代人です

ドイツ佐官「馬を使おうと思っている」

ソ連尉官「馬ですか?」

ドイツ「まずは戦場での連絡要員として、次に前線で戦う実働部隊としてだ」

ソ連尉官「しかし戦場の中心はやはり歩兵ですよ」

ドイツ佐官「その通り。だから騎兵はあくまでも補助だ。この大陸がモンゴルのような風土だったならまだしも…」

ソ連尉官「ヨーロッパと同じだったらいくら金がかかるか分かりませんからね」

ソ連尉官「しかし導入したとしても…我々士官以上のものはある程度乗馬訓練を受けているとはいえ、戦闘訓練は出来ませんよ」

ドイツ佐官「適任がいる。25年前に君の祖国を相手取ってなんとか引き分けに持ち込んだ国だ」

ソ連尉官「ポーランドですか!なるほど…」

ドイツ佐官「ポーランド騎兵来たり、という知らせだけで戦車に守られたドイツ兵が恐慌状態に陥るほどだ。我々も同じことをせねばな」

ソ連尉官「実際は機械化されていたと聞きますが…」

ドイツ佐官「その通り。乱暴に纏めてしまうが…近代戦において機動力をいかして回り込むのは騎兵も装甲車も変わらん」

ドイツ佐官「この世界の甲冑を着込んだ騎士とまともにやりあっては駄目だ。だから機動力を生かして敵を牽制する」

ソ連尉官「…敵の後方を襲撃する」

ドイツ佐官「疑似撤退をして敵を釣る!」

ソ連尉官「列を乱して逃げる敵を踏み潰す…」

ドイツ佐官「いいぞ、これだ!騎兵の力を騎士に見せつけてやろうじゃないか」

波士官「まさかこの歳になってから騎兵をやるとは…」

ソ連尉官「すみません、若いポーランド兵はほとんど馬に乗れないらしくて」

波士官「いいですよ、馬に乗るのは楽しいですしね」

波士官「馬は狡猾にして冷酷、そして扱いにくい動物です。でも一度信頼を得ればとてもいい相棒になってくれます」

ソ連尉官「なるほど…ではまだ特定の主人に馴れていない若い馬を買うべきでしょうか」

波士官「馬は訓練されてなければ銃声や砲火だけでパニックになってしまいます。それに尖ったものを目の前にすると立ち止まってしまう」

ソ連尉官「ランスチャージや突撃が出来ない、と…」

波士官「その通りです。だからまずは調教をするべきなのですが、やはり年を取って戦場慣れした馬の方が手っ取り早いかと」

波士官「これまでは食料や物資を人力で運んでいましたが、馬があればさらにたくさんの量を素早く運ぶことが出来るようになるはずです」

波士官「期待は裏切りませんよ」

ソ連尉官「分かりました…では補給将校に掛け合ってみます」

ドイツ佐官「ニセ情報の上に我々の偵察部隊を襲った南の王国にもお返しをして差し上げなければな」

英軍曹「どうします?」

ドイツ佐官「首は流石に持って帰ってきて無いよな…」

英軍曹「くそう、こんな事なら一人か二人生かしておくべきだった」

ドイツ佐官「だが今我々が南の王国にご挨拶をした所でどうにもなるまい」

ドイツ佐官「魔物相手だと報酬が少ないからな、相手をするのも面倒だ」

英軍曹「南の王国には盾になって貰うのですね」

ドイツ佐官「そうだなあ…贈り物でもしてあげようか」

ドイツ佐官「使者は彼にやって貰おう」



ソ連尉官「また私ですか…」

国民党兵「だんな!この水美味いですぜ!」

ソ連尉官「それは手を洗うための物ですよ」

ソ連尉官(この時代にどうしてそんなしきたりが…)

外交官「は、はは…なかなか個性的なお方ですな」

ソ連尉官「すみません、彼は緊張しているようでして」

国民党兵「あっしはいつも通りですぜ!」

ソ連尉官「そうですか…」

ソ連尉官「今日お伺いしたのはあなたの国…南の王国の国王陛下にお渡ししたい物があるからです」

外交官「それはそれは有り難うございます。我が王もお喜びになるでしょう。しかし何故ですか?我々には正式な国交もないのに」

ソ連尉官「先日我々の部下がですねぇ、貴方の国の兵士から大変お心のこもったすっっっばらしい歓迎を頂いたのですよ」

外交官「そうですか。友好とはいいものです」ピクッ

ソ連尉官「従兵!」

はっ!

ガラガラッ

ソ連尉官「この通り、刀まで頂きましてねぇ」

ソ連尉官「この紋章など大変美しいですな!」

外交官「そ、それは…!」

ソ連尉官「我々がこのような美しいものをずっとお預かりしておく訳にもいきませんので、お返しさせていただく次第です」

外交官「そ、それはそれは…」

ソ連尉官「そしてこれが我々からの贈り物です。どうぞお納めください」パサッ

外交官「おお…!」

英軍曹「何を渡したんですか?」

ドイツ佐官「うむ、地図だ」

英軍曹「地図?」

ドイツ佐官「武器を贈って圧倒的な技術力の差を見せつけてもいいが利用されると厄介だ」

ドイツ佐官「地図なら写しを持っているしな、渡したところで敵が多少強くなるだけだ」

英軍曹「どこの地図ですか?まさか我々の…」

ドイツ佐官「まさか!南の王国のだよ」

英軍曹「いつ測量したので?」

ドイツ佐官「色々やりようはある。旅芸人や行商に紛れて少しずつな」

ドイツ佐官「無学な者にはわからんだろうが、王や貴族には我々の言いたいことが分かるだろう」

ドイツ佐官「貴様の国は丸裸だ、その気になればいつでも地図を他国や魔物に売り飛ばせる」

英軍曹「なるほど!国王の顔が見ものですね」

……………………………

南国王「くぬぬ…」

南国王「精鋭部隊が全滅?武器が送り返されてきた?どうなってるんだ!」

外交官「どうやら敵はかなりの技術力を持つようです…」

南国王「死体は調べたのか!」

外交官「剣か槍による損壊が酷くて…誰が誰だかも」

外交官「こんなものを送り付けてきました」ペラッ

南国王「あっ…!くそっ…何てことだ…!」

昔のことになるが、こんなことを言つた兵卒がいた。
たれが言つたかは詳しいことは忘れたが、確か東北の農村生まれの某とかいう兵卒が米を食いたいと言う。
日本小隊は数ヵ月も米らしきものを口にしていなかつたからであろう。

小隊員が味噌や醤油をつくらんとせるをソビエトや独逸の上官が大層興味を持ったものである。
結局我らはそれを作りせしめたが、米がなくては何とも味気なく感じられた。

この場所でいささか薄味とはいえ肉やパンが喰えるのはありがたいことではあるが、こうも続くと故郷の味が懐かしくなつて来た。

日本兵「上官どの、それは…」

ソ連尉官「これですか?これはカーシャです」

日本兵「カーシャ、でありますか?」

ソ連尉官「ああ、つまり、雑穀を水や牛乳で柔らかくなるまで煮てですね…」

日本兵「お粥、でありますか」

ソ連尉官「お粥ですね」

ソ連尉官「これはГречиха посевнаяの実を中に入れてます」

日本兵「ええと、つまり…」

ソ連尉官「ちょっと待ってください、これです、この世界のこの植物を使いました」

日本兵「こ、これは…!」

日本将校「どうしたんだァ?…あァ敬礼はいらんぞ、私も君も今着帽してないからな」

日本兵「はっ、隊長どのにお話を伺っていたのであります」

日本将校「失礼のないようにナ…ん、それは」

日本将校「蕎麦じゃないか!いったい何処で!」

ソ連尉官「そ、それはですね…」

日本将校「ほぉー、この台地に…」

ソ連尉官「もとの世界じゃあり得ないような高さの山がありますからね、ここだけ気候がウクライナのようになっているようですね」

日本将校「この世界の世界地図が欲しい所ですナ」

ソ連尉官「我々の知りうる地域の他にも、東の方に大きな王国と小さな国家が沢山あると聞いています」

日本将校「東の国…」

ソ連尉官「しかしどのような文化圏かは分かりません。交易船や隊商が出ている事は確かなのですが、そこまで行って自分の目で見ようと考える人は少ないらしくて」

日本将校「まァ…価値が見いだせなければそうでしょうナア」

ソ連尉官「雨が沢山降り、夏は蒸し暑い場所らしいです」

日本将校「…希望が見えてきましたワ」

ソ連尉官「何のです?」

日本将校「温暖で湿潤な国があればコメを食べられるという事ですヨ」

ソ連尉官「…魔法を使って気候を作り出してみてはいかがですか?」

日本将校「…あッ!」

・・・・・・・・・・

日本将校「これを土産にもってってくれないかネェ」

自衛官「了解しました」

日本将校「これは味噌、これが醤油だナァ」

日本将校「それと頼みたいのが温度を上げる魔法と水を生成する魔法についてとナァ、東方の国について聞いてきてくれヨォ」

自衛官「小隊長どの、何を作るのか伺っても宜しいでしょうか?」

日本将校「米だ!君もそろそろ食べたいだろォ?」

自衛官「…ハッ!行って参ります!」

日本将校「ヨシ、頼んだァ!」

・・・・・・・・・・
自衛官「…という訳でして」

魔法大臣「食に関するあなた達の情熱は素晴らしいものがあるな」

自衛官「我々はいつも情熱的ですが」

魔法大臣「あなた達の表情は読みにくいのだよ…さて、コメについてだったな」

魔法大臣「コメはあなたの考えている通り東方の国で採れるものだ。ちょっと待て…」ガサゴソ

使い魔「掃除しようよ、ご主人様」

魔法大臣「うるさい、掃除などしなくても死にはしない」

魔法大臣「あなたもそう思うだろう?」

自衛官「ハハ…」

魔法大臣「よし、これだ。これと…このような民芸品を作っているらしい」

自衛官「これは…竹と漆!?」

魔法大臣「何だ、知っているのか」

自衛官「どちらも我々の世界においてコメと同じ地域で生産される物です」

魔法大臣「ふーむ、その元の世界の東方についてもいつか聞きたいものだな…それで、これがコメの種となるものだ」サラサラ

自衛官「これをもっと輸入する事は出来ますか?」

魔法大臣「少々値は貼るだろうが…あちらには腐るほどある上に誰も買わないらしいから少々程度でなんとかなるだろうな」

魔法大臣「輸入の仲介をして欲しいと言うのだろう?報酬も家も貰っているのだからそれくらいはやらせてくれ」

自衛官「有り難うございます。何か自分に出来ることがありましたら…」

魔法大臣「それじゃあ昼食を食べていってくれ。その土産を食べてみたい」

魔法大臣「これは?」モグモグ

自衛官「それは醤油と呼ばれるものです」

魔法大臣「ショーユ?」

自衛官「ええ。平たく言えば大豆を発酵させて絞ったものです。細かい作り方は本部の仲間に聞かなければ分かりませんが…」

魔法大臣「これと似たようなものがあると文献で読んだな…確か魚醤とかいうものだ」

自衛官「アンチョビ…」

魔法大臣「あなたの世界ではそう呼ぶのか?一度食べてみたいものだ」

魔法大臣「それにしてもこの醤油は旨いな…少し臭いはあるが」モグモグ

自衛官「それは生の魚や山菜などありとあらゆる物に合いますよ。自分の母国料理の基本です」

魔法大臣「一般市民が魚を生で食べるのか!?」

自衛官「ええ、そうですが…」

魔法大臣「となると、新鮮さを保つ技術は開発可能という訳だな…」

魔法大臣「ああ、別にあなたにその技術を全て話せなどと言うつもりはない。それに…どうやって作るか分からないだろう?」

自衛官「…面目ありません」

魔法大臣「いや、一般市民が違和感なく使うほど技術が浸透しているくらいだというのは素晴らしいことだよ」

魔法大臣「魔法で出来たことを技術で代用できるのか…ふふ、ますます夢が膨らんできたぞ」

ドイツ佐官「駄目だ」

日本将校「…えっ?」

ドイツ佐官「駄目だ」

ソ連尉官「…何故ですか?」

ドイツ佐官「魔法には頼りたくない…基本的には、だが」

ドイツ佐官「我々はこの世界の支配者層と戦うんだ。彼らと同じ武器で勝負していてはいつか負ける」

日本将校「そ、そうですかァ…」

日本将校「湿度と温度が維持できればいいんですがねェ…」

ソ連尉官「その米はどれくらいの温度ならば耐えられるのですか?」

日本将校「我々が持ち込んだものは北海道…ああ、イタリー半島くらいの緯度であれば…」

ソ連尉官「…ダメですね」

ソ連尉官「そう言えば公衆浴場を作る計画がありましたね」

ドイツ佐官「その後の進展は?」

ソ連尉官「ありました!地図上の…」

日本将校「その熱を利用して栽培できないですかねェ」

ソ連尉官「そこそこ離れてますし手入れも大変だと思いますよ…」

ソ連尉官「それにその熱や蒸気を取り込めても閉じ込めておく方法がありません。ビニールのようなものがあれば別ですが」

日本将校「魔法ですねェ!」

ドイツ佐官「駄目だ」

日本将校「そこを何とかお願いしますよォ!」

ドイツ佐官「駄目!!!!」

ソ連尉官「硝子を使っては?」

日本将校「高すぎますよォ…」

ドイツ佐官「しかしそれ以外の道もあるまい」

ソ連尉官「労働するしかありませんね」

ドイツ佐官「今のところ魔王軍は進撃を停止したし時間があるぞ。働くようなら考慮してあげよう」

かくしてわが小隊は労働に従事することになつたのである。

あるものは商店の手伝いを、あるものは私塾の教師などをする。
労働と聞いて我らも工場で煤だらけになりて鼻をかくことも出来ぬような場所に行かされたるを覚悟したが、そうはならぬかつたのであつた。

我々の組合の印を見せれば町では信用されるもあり、憲兵がさりげなく監視しに来るのもあれば、町人たちはこぞつて我らを雇おうとしたのだ。

日本兵「そうだ、そこに二を代入して…」

日本兵「畑にはこれを撒くとよく育つぞ。ここに書いておいた…なに、字が読めないのかい」

日本兵「布切れじゃその汚れは落ちないな、重曹はないのか…」


ドイツ佐官「おお、上手く行っているようだな」

日本将校「少し拍子抜けしましたワ、てっきりもっと大変になるかと」

ドイツ佐官「だがあまり技術を教えすぎるなよ…渡せるものがなくなるからな」

日本将校「分かっておりまス」

自衛官「あの…私は」

日本将校「貴官には我々と大臣との仲を取り持つという立派な仕事があるでしょォ、気に病まんでくれヨ」

自衛官「…というわけです」

魔法大臣「なるほど、ついに普通の仕事にも手を出し始めたか…」

魔法大臣「いや何、別に批判してる訳じゃない。だがあなた達がこの世界に定住するつもりなのか分からなくてな」

自衛官「我々は…」

魔法大臣「元の世界に戻りたいか?」

自衛官「それは…」

自衛官「…私は既に祖国の命令なしに銃を扱い、敵を殺しました」

自衛官「だから私はもう祖国の軍人ではないのかもしれません…少なくともここでは」

魔法大臣「だがそれはすべてやむを得ない事だ」

自衛官「そうでしょうか…?本当に私がやるべきだった事は自分の命を「やめろ」

魔法大臣「…それ以上言うな」

魔法大臣「あなたは大分参ってきているようだな…休みが必要だ」

魔法大臣「…近々調査のために南東に行こうかと思っている」

自衛官「閣下、貴女の命が狙われているのですよ」

魔法大臣「だから護衛が必要なんだ、来ないか?」

日本将校「調査ねェ」

自衛官「はっ」

自衛官「土壌、鉱石の採取と交易が目的のようであります」

日本将校「アア、そういやあの地方には温泉があると情報部員が言ってたなァ」

自衛官「温泉が…?」

日本将校「温泉があるということはネェ、活火山があるという事だネェ」

自衛官「活火山………」

日本将校「活火山があることで分かるのはあの地方が新しい地層であることとかァ…」

日本将校「もしかしたら水はけがいい土地があるかもしれないことかナァ…ま、そのうち利益になるかもしれないヨ」

自衛官「そうですか…」

日本将校「いいヨ、行ってきなァ」

日本将校「書類はこっちで手配しておくからさァ」

日本将校「…部隊員番号…貴官に対象の護衛を命ずる、命令復唱!」

日本将校「どうやら仲良くやっとるようだねェ彼は」

英軍曹「ええ、そりゃもう」

日本将校「だが彼一人で大丈夫かなァ」

英軍曹「大臣閣下自身がが断ったのです、彼一人で十分だと」

英軍曹「まァ一応監視を着けますがね」

日本将校「くれぐれも無粋なことをするもんじゃないよォ」

英軍曹「分かっておりますとも…ふふふ」

英軍曹「日本人の軍人は堅物で古臭いのが多いと聞いていましたが」

日本将校「君ィ…日本人の軍人の前でそりゃないよォ」

英軍曹「おっと、大変失礼をいたしました」

日本将校「そりゃあ私…僕だってネェ一応自分が大日本帝国軍人であることに誇りはあるよォ」

日本将校「でもその『軍人としての振舞い』はァ内地や外地の安全なところでやるもんだからネェ」

日本将校「臨機応変に行かないとネェ」

日本将校「どうやら仲良くやっとるようだねェ彼は」

英軍曹「ええ、そりゃもう」

日本将校「だが彼一人で大丈夫かなァ」

英軍曹「大臣閣下自身がが断ったのです、彼一人で十分だと」

英軍曹「まァ一応監視を着けますがね」

日本将校「くれぐれも無粋なことをするもんじゃないよォ」

英軍曹「分かっておりますとも…ふふふ」

英軍曹「日本人の軍人は堅物で古臭いのが多いと聞いていましたが」

日本将校「君ィ…日本人の軍人の前でそりゃないよォ」

英軍曹「おっと、大変失礼をいたしました」

日本将校「そりゃあ私…僕だってネェ一応自分が大日本帝国軍人であることに誇りはあるよォ」

日本将校「でもその『軍人としての振舞い』はァ内地や外地の安全なところでやるもんだからネェ」

日本将校「臨機応変に行かないとネェ」

英軍曹「なるほど、素晴らしい考えでありますな」

日本将校「今の僕は大日本帝国の将校でもこの組織の将校だヨ…どうせなら普段できなかった事をやりたいネェ」

英軍曹「貴方のような方が何故恨まれてしまったのですか?」

日本将校「君ィもうちょっと遠回しな言い方は出来ないのかねェ」

英軍曹「申し訳ありません、性分で」

日本将校「まァ…頑なに自分の誇りを突き通したい同僚からは恨まれたしねェ…勿論それもひとつの考えではあるがネ」

日本将校「確かに士官学校は厳しかったヨ、でもそこで全てが学べる訳じゃないからネ」

日本将校「一方型破りな性分な同僚からは中途半端だと思われてたみたいだヨ」

英軍曹「それは…」

日本将校「自分の考えをしっかり持って貫き通すべし!こんな考えだったみたいだネ彼らは」

日本将校「まァ友人も敵も水物だよォ…次は失敗しない事を祈るばかりサ」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年11月19日 (火) 02:36:12   ID: JY3WlrnV

このスレ期待してたのに落ちちまったのか…ソ連

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