梨子「悪意にも無関心にも」 (62)

放課後、音楽室
 
ポロロ~ン♪
 
梨子「0を1にする、か」
 
梨子(でも今までみたいなやり方じゃ駄目なんだろうな。行き当たりばったりとか、μ′sの後追いとかじゃ)
 
パチパチパチパチ
 
梨子「誰?」
 
ダイヤ「いい音色ですわね、梨子さん」
 
梨子「ダイヤさん」
 
鞠莉「とマリーもいるよー☆」
 
梨子「お二人はどうしてこんなところまで?」

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ダイヤ「見回りですわ。もうすぐ下校の時間ですので」
 
鞠莉「こんな遅くまで学校に残っている悪ーい娘には……お仕置きデース!」クワッ
 
梨子「す、すみません」ペコッ
 
ダイヤ「気にせずに。まだ下校の時間ではありませんので」
 
梨子「あっ……そうでしたね」
 
ダイヤ「そういうことです。ところで今日は練習しなかったのですか?」
 
梨子「はい。千歌ちゃんと曜ちゃんとルビィちゃんは三人で衣装の生地を買いに、善子ちゃんと花丸ちゃんは夏祭りの演出のために会場の下見に行きました」
 
ダイヤ「そうでしたか。梨子さんはその夏祭りに使う曲を?」
 
梨子「ええ。ちょうど一段落したところです」
 
鞠莉「だったら私達とちょっとティータイムでもしましょっ」
 
ダイヤ「鞠莉さん、無理に誘っては──」
 
梨子「いえ、いいですよ」
 
梨子(ちょうどダイヤさんと鞠莉さんには色々聞いておきたいこともあったし)
 
鞠莉「じゃあけって~い☆ 理事長室までレッツゴー!」グイッ
 
梨子「わかりましたから、強引に腕を引っ張らないでくださいってー」

理事長室
 
ダイヤ「東京から戻って来て三日が経ちましたが、まだスクールアイドルを続けるのですわね?」
 
梨子「はい、千歌ちゃんはその気です。もちろん私も、他のみんなも」
 
鞠莉「そうね。あの程度の敗北でロストハートしてるようじゃ、スクールアイドルはやってけないわよ。そこの硬度10は『東京に行かせることがどういうことか』って危惧してたけどね」
 
ダイヤ「そうでしょう。わたくし達はあの後で解散になったのですから」
 
梨子「そういえばダイヤさんと鞠莉さんは、果南さんと三人でスクールアイドルやってたんですよね?」
 
鞠莉「イエース☆」
 
梨子「東京で折れてなかったら続けるつもりでしたか?」
 
鞠莉「モチのロンよ。……あのハグ魔がヘタレてなければ──」
 
ダイヤ「果南さんはヘタレてなど……いえ、何でもありませんわ」
 
梨子(ダイヤさん、何か隠してるのかな?)

ダイヤ「数値上の結果だけ見れば残念でしたが、aqoursはよくやれたと思いますわ。票が入っていないからといって、誰も興味を示さなかったという訳では──」
 
鞠莉「ノンノン! 世の中は目に見える結果が全てなのよ!」
 
ダイヤ「鞠莉さんっ!」
 
鞠莉「ソーリー♪ でもそれが事実よ。どんなに思ってても見える形で提示されなければ意味がないの」
 
梨子「……わかってます、あの時思い知らされましたから。でも諦めるつもりはありませんからね」
 
鞠莉「ほらね、この娘達はそんなに弱くない。ダイヤは過保護なのよ」
 
ダイヤ「わかっておりますわ、1stライブの件で」
 
鞠莉「そうそう。ダイヤったらその時だって発電器を──」
 
ダイヤ「ぶーですわ!」クワッ
 
梨子(ああ、やっぱり)
 
鞠莉「このツンデレの言うことは話半分に聞いときなさい、ってことよ」

梨子「ダイヤさんと鞠莉さんはずっと私達が本気かどうか確かめてきたんですよね?」
 
ダイヤ「ええ」
 
鞠莉「そうよ」
 
梨子「やっぱり。いずれこういう形で壁にぶつかることも予想していたからですか?」
 
ダイヤ「その通りです。ルビィから『東京行きの許可を貰いたい』という話を聞いた時はゾッとしました」
 
鞠莉「で、私がオッケーしたからって、もう無理矢理迫ってきてキャンセルさせようと……きゃっ♡」
 
ダイヤ「別に破廉恥なことをしようとした訳では──」
 
鞠莉「壁ドンまでしといて?」
 
梨子「かっ、壁ドンっ!?」クワッ
 
ダイまり「「梨子(さん)!?」」ジー
 
梨子「……何でもないです」
 
梨子(やっば。危うく趣味バレするとこだった)

梨子「それにしてもダイヤさんと鞠莉さんって仲がいいんですね」
 
ダイヤ「鞠莉さんとは長い付き合いになりますので」
 
鞠莉「腐れ縁ってヤツね」
 
梨子「果南さんも?」
 
ダイヤ「ええ」
 
鞠莉「イエース」
 
梨子「いいなぁ、そういう関係って」
 
ダイヤ「心配する必要はありませんわ」ポンッ
 
鞠莉「時間が解決してくれるものよ、そういうのって」ポンッ

梨子「ありがとうございます。……とは言うもののどうやれば7,000組の中を駆け上がっていけるものか」ハァ
 
鞠莉「7,000ねぇ~、実質その1/3もあるかだけど」
 
梨子「へっ!? 鞠莉さん、それってどういう意味ですか?」
 
鞠莉「その数値、ソースはダイヤよね?」
 
梨子「はい、東京から戻って来た時に」
 
ダイヤ「ええ。『その中でもよくやれている方です』と伝えましたわ」
 
鞠莉「なるほどねぇ……果たしてその中の誰もが本気で優勝、ジャパンイズワンを狙っていると言えるのかしら?」
 
梨子「あっ、言われてみれば確かに」
 
梨子(毎年全国制覇を狙っていく部もあれば、お遊び程度で構わないって感じの同好会もあるよね)
 
ダイヤ「鞠莉さんっ!? どうしてそんなことを?」
 
鞠莉「ちょっとハードなことばかり伝えてきたから、ねっ」
 
梨子(気にしてはいたんですね)

ダイヤ「鞭役に徹しようと決めていたのに日和ってしまうつもりですの?」
 
鞠莉「先にデレたのはダイヤじゃーん!」ブーブー
 
ダイヤ「それは……ルビィが泣いていたので」
 
鞠莉「このシスコーン! さっさと謝りなサーイ!」
 
ダイヤ「……それはおいおい」
 
梨子(ダイヤさんも気にしてはいたんですね。ルビィちゃんにキツく当たってきたこと)
 
ダイヤ「コホン。数値の件について補足しておくなら、解散してからきちんと登録を抹消せず放置したままのグループも多数ある、と言われております」
 
鞠莉「私達はそこんトコちゃんとしてたけどね」
 
梨子「ダイヤさんもいますしね」
 
ダイヤ「梨子さん……ありがとうございます」ペコッ
 
鞠莉「でもダイヤって案外抜けているのよ。この前だってアイスを落っことして──」
 
ダイヤ「ぶっぶーですわ!」クワッ
 
梨子「はは……」

ダイヤ「何にせよ、始めて三ヶ月でイベントに招待されるのは凄いことです。そこは誇っていいでしょう」
 
鞠莉「私達の後釜として運営がチェックしてただけかも」
 
ダイヤ「話の腰を折らないでください、鞠莉さん」
 
鞠莉「はーい☆」
 
ダイヤ「その中で0票は仕方ありませんわ。あの手のイベントは皆、あらかじめ決めていた贔屓のグループに投票するものですので」
 
梨子「なるほど、そうですよね。私達はあくまでぽっと出な訳ですしね」
 
ダイヤ「ええ。他校のグループはどこも3年4年と代を重ね研鑽を積んだところがほとんど、それに固定ファンも多いですし」
 
鞠莉「だから芸術って評価するのが難しいのよね。絵とか文章もね」
 
梨子「分かります。みんなが『面白い』と噂の小説を読んでみても、『これって単に流行りに乗ってるだけで中身がないんじゃ?』って感じることもあるので」
 
梨子(まあ、流行り物にすぐ飛び付く私も私だけど)

ダイヤ「どこでどういう動きをすれば加点、みたくスケートのように明確な基準が設けられているとかではありませんからね。審査員ごとに何を重視するかも違いますので」
 
鞠莉「どこがポイントに繋がるか分からないから、みんな四苦八苦って訳よ」
 
梨子「なるほど。そういえば千歌ちゃんが『私達、このままμ′sの後追いでいいのかな?』って悩んでました」
 
ダイヤ「千歌さんが?」
 
梨子「はい」
 
ダイヤ「んまぁ、千歌さんなりに色々考えているのですわね。確かに今でもμ′sの猿真似をするグループは多いものですし」ムスッ
 
梨子「……なんか不満そうですね」
 
ダイヤ「当然ですわ! その手の輩などわたくしから言わせれば、人気なり話題なりに乗っかって単に点が欲しいだけのプライドもへったくれもない俗物でしかありませんもの!」
 
梨子「うわぁ、なかなか過激な言い分ですね」
 
ダイヤ「もちろんみんながみんな、とまでは言いません。中途半端が嫌いなだけですわ!」
 
鞠莉「ほんっとダイヤってば抜くところで抜けないんだから」ハァ
 
梨子「そうなんですか」
 
梨子(私も他人のことは言えないけど)

鞠莉「まあトップを目指す戦略としてはベターなんだけどねぇ。妹モノが一本売れたら、どこの出版社もこぞって妹妹アンード妹で売り出そうとするどこぞの業界みたく」
 
ダイヤ「μ′sとライトノベルをいっしょくたにしようなどぶっぶっぶーですわ!」クワッ
 
梨子「ふふっ、見てて飽きないなぁ」
 
鞠莉「だってダイヤ。マリーと漫才コンビでも──」
 
ダイヤ「組みませんわよ」
 
鞠莉「オゥ……じゃあ果南とペアで」
 
ダイヤ「どうぞご勝手に」
 
鞠莉「で、マネージャーはダイヤね」ニコッ
 
ダイヤ「わたくしを巻き込まないでください!」

鞠莉「もちろんギャランティは払うから、2割」
 
ダイヤ「はい? 三人なのですからせめて3割は」
 
鞠莉「ダイヤのケチー」ブーブー
 
ダイヤ「ケチではありませんわ。正当な労働の対価を──」
 
鞠莉「舐めてるのっ! 単なる裏方風情が、表舞台に立つメンバーと対等な権利を要求しようなどとは!」
 
ダイヤ「地球上のあらゆる裏方の人に謝りなさい! 何事も目に見えないところで汗水垂らして頑張っている人がいてこそでしょうに!」
 
梨子「あはは……どちらの言い分にも一理ありますよね」

梨子「今日は色々とありがとうございました」ペコッ
 
ダイヤ「どういたしまして。わたくしとしても梨子さんから少しでも肩の荷が下りたようで幸いですわ」ニコッ
 
鞠莉「いつでも気軽に遊びに来ていいからね~♪」
 
梨子「……それは理事長としてどうかと」
 
ダイヤ「それと最後に一ついいですか?」
 
梨子「何ですか?」
 
ダイヤ「もし梨子さん達現aqoursが優勝を目指さない『同好会』レベルで構わないとしても、わたくしはもうそれを咎めるつもりはありませんわ」
 
鞠莉「ダイヤってばちょっと日和り過ぎじゃなーい?」
 
ダイヤ「いいではありませんか。どんな物事にせよ、付き合い方は人それぞれなのですから」
 
梨子「人それぞれ……そうですよね」
 
鞠莉「やる気やら方向性の違いから解散、ってのも珍しくないしね。海外のバンドグループなんかしょっちゅうだし」
 
ダイヤ「ええ。とにかく今の六人できちんと話し合って決めてくださいね、今後のこと」
 
梨子「はい、もちろんです。失礼しました」
 
梨子(やる気、かぁ)

翌日の放課後、部室
 
梨子「おはよう、みんな」
 
ルビィ「ピギッ!?」ビクッ
 
花丸「ずらっ!?」ビクッ
 
善子「ヨハッ!?」ビクッ
 
梨子「なぜに固まるっ!?」
 
梨子(大丈夫だよね? ダイヤさんも「時間が解決してくれる」って励ましてくれたんだし)
 
ルビィ「ち、千歌ちゃんと曜さんは?」
 
梨子「千歌ちゃんなら今日は家の手伝い。曜ちゃんは私もちょっとわかんないな」
 
ルビィ「そう、ですか」

善子「なら今日は練習なしでいいの?」
 
梨子「うーん、そうね。フォーメーションとか演出の再確認の時間にしましょ」ニコッ
 
花丸「良かったずらぁ。30℃を超えるって予報が出ていたし」ホッ
 
梨子「そうだったね。これからは熱射病の対策も考えとかないとね」
 
梨子(千歌ちゃんも曜ちゃんも抜けてるところがある分、私がしっかりしなくちゃ!)
 
梨子「ところでルビィちゃん達は何を調べてたの?」
 
ルビィ「そ、それは──」
 
善子「わざわざ覗き込むというの? 混沌のるつぼを」
 
梨子「混沌のるつぼ?」

ルビィ「『スクールアイドル板』って聞いたことありますか?」
 
梨子「うん、名前くらいなら」
 
ルビィ「そこを見ていたんです」
 
梨子「そうなんだ。私達aqoursの名前も出てたりするの?」
 
花丸「出ていますよ、たびたび」
 
梨子「じゃあ結構注目されてるってことだね、私達」
 
善子「そうね、悪い意味で」ハァ
 
梨子「それってどういう感じなの?」
 
善子「こんな感じよ」つPC
 
ルビィ「しばらくは誉め言葉が多かったんですけど、イベントの日の晩くらいから風向きが変わったんです」

aqoursについて語るスレ その4
 
梨子「その4って、つまり結構話題になってるってことかな?」
 
183.名無しが輝く物語(庭園)
東京のイベント0票で草
 
184.名無しが輝く物語(筍)
> > 183
ソースは?
 
185.名無しが輝く物語(庭園)
> > 184
ほれ
 
https://i.imgur.com/5inBIVH.jpg
 
186.名無しが輝く物語(筍)
これはひどい
 
梨子「どうして……アレって参加者だけに配られたんじゃ」
 
ルビィ「他校のスクールアイドルの中にも、ここに書き込んでいる人は珍しくないそうなんです」
 
梨子「そっか、匿名だもんね。あり得るよね」

187.名無しが輝く物語(どくだみ茶)
凄いグループが出てきたと思ったけど大したことなかったな
 
188.名無しが輝く物語(聖雪)
しょせん井の中の蛙よ
 
189.名無しが輝く物語(江南省)
一年目のカッペが調子に乗って落ちただけだろ
 
190.名無しが輝く物語(マリモ)
でも道産子スノーは9位やぞ
出身地は関係ない
 
191.名無しが輝く物語(炭素)
同意
あとこういう場は推しに投票するもんやししゃーない
 
梨子「ダイヤさんも同じこと言ってたなぁ」
 
梨子(というかこの関西弁の人、ダイヤさんじゃないよね?)
 
ルビィ「そっかぁ、お姉ちゃんと梨子さんが」
 
梨子「うん、昨日ちょっと鞠莉さんと三人でね」

192.名無しが輝く物語(グレイトマリーの聖域)
スローテンポなあの曲なら仕方ない
それにランタンの演出が使えなかったのも大きい
でも歌も動きも悪くはなかったし次に期待
 
193.名無しが輝く物語(モダン焼き)
アップテンポな曲でないとこの手のイベントは厳しいって訳だよ
aqoursのはゆったりだしねぇ
 
梨子「案外擁護の意見もあるんだね」
 
善子「そうね、こうやって他人から指摘されて初めて気付くこともあるものね。それより問題は──」
 
194.名無しが輝く物語(TELーphone)
あのヨハネって奴が入ってからだろaqoursの迷走は
 
195.名無しが輝く物語(どくだみ茶)
堕天使アイドルとか舐めてるの?
 
196.名無しが輝く物語(江南省)
ニコ生のノリ持ち込むなっての
 
梨子「やっぱり」
 
花丸「ドンマイずら」ポンッ
 
善子「ずら丸……ありがとね」
 
ルビィ「個人攻撃は良くないですよねぇ」

花丸「でも反対意見ばっかりでもないんだよ」
 
197.名無しが輝く物語(がっちり金庫)
一昨年は同じコンセプトで決勝まで進んだグループもいるからねぇ
ただそこと比べると色々中途半端なのは否めないが
 
梨子「ほんとだね。この人は肯定と否定、両方の意見挙げてるね」
 
198.名無しが輝く物語(聖雪)
ラブライブは遊びじゃないから
2/3はお遊び感覚ってマジならふざけてる
 
ルビィ「あの娘と同じこと言ってる」
 
善子「アイツが書き込んだんじゃないの?」
 
花丸「でもこういう意見を言われると悔しいなぁ」シュン
 
梨子「花丸ちゃんでも悔しいって思うの?」
 
花丸「マルだって手を抜いてはいないずら! 『やる気がない』って決め付けられるとむうっとしちゃうなぁ」ムスッ
 
梨子「あっ……ごめんね、花丸ちゃん」ペコッ

199.名無しが輝く物語(わかめ)
二年前の先輩達は歌うことすらできなかった
それと比べたらよくやれてるよ
 
梨子「ダイヤさん達について知ってる人もいるのね」
 
200.名無しが輝く物語(がっちり金庫)
メンバー総入れ替えしてますが
 
201.名無しが輝く物語(筍)
当時一年だった三人は解散して、後輩達が同じ名前使って再結成でおk?
 
202.名無しが輝く物語(炭素)
> > 201
せやで
 
梨子「そういえばダイヤさん達のグループもaqoursだったよね。そういう偶然ってあるんだね」
 
善子「まさに運命の巡り合わせってヤツね」
 
花丸「なんだか素敵ずらね、そういうのって」

203.名無しが輝く物語(いちご)
以下、好きなメンバーについて語るスレ
私は渡辺
 
204.名無しが輝く物語(庭園)
にわか乙
 
205.名無しが輝く物語(いのしし)
曜推しはにわかという風潮なんなの
 
ルビィ「やっぱり曜さん人気ですよねぇ」
 
梨子「っていうかみんな飽きたんだね、考察するの」

206.名無しが輝く物語(炭素)
ルビィ一択
 
207.名無しが輝く物語(庭園)
ロリコン乙
 
208.名無しが輝く物語(輝)
ルビィちゃんしゅき♡
妹にしちゃいたい♪
 
209.名無しが輝く物語(船)
ルビィママによしよしされたいだけの人生だった
 
210.名無しが輝く物語(わかめ)
> > 208、209
ナカーマ
 
211.名無しが輝く物語(寺)
ルビィちゃんと来世でも一緒になりたいずら
 
212.名無しが輝く物語(堕天使)
> > 211
語尾語尾
リトルデーモン4号最高
ニコ生でもコメ数一番だしね

213.名無しが輝く物語(庭園)
ルビィ推しに占拠されててワロタ
 
ルビィ「うゆぅ//」モジモジ
 
よしりこまる(納得♡)キュン
 
214.名無しが輝く物語(無限の花園)
ルビィってあの黒髪パッツンの妹?
ダイヤだっけ?
 
215.名無しが輝く物語(降伏勧告)
> > 214
「さん」を付けろよデコ助野郎
 
216.名無しが輝く物語(無限の花園)
すまない
でも似てないよなあの二人
まさか……
 
梨子「そこは同意」

217.名無しが輝く物語(廃寺イビルテンプル)
お前は知り過ぎた
 
梨子「ええっ!? こっわ」

218.名無しが輝く物語(TELーphone)
姉妹といえば聖雪もだっけ?
 
219.名無しが輝く物語(堕天使)
聖雪って聖闘士○矢っぽくてカッコよくない?
いけすかないとこあるけど
 
梨子「うんうん、私も名前聞いた瞬間それ浮かんだわ」
 
220.名無しが輝く物語(みかん)
> > 209
亀だけどあの六人で一番ママなのは梨子ちゃんだからJK
きっと優しいお母さんになるよ
あとルビィちゃんは娘にしたい
 
梨子「お母さんって// ……そりゃいつかは好きな人との間に子どもだって欲しいけどさ」


梨子「だんだん書き込みの間隔が長くなってきたね」
 
ルビィ「ここって朝になると人がいなくなるんですよ」
 
梨子「なるほど。でも見られてるものなんだね、私達って」ハァ

ルビィ「でもどうしてこんなに叩こうとするのかなぁ? みんな一生懸命なのに」

善子「妬ましいのよ、私達が」
 
花丸「いつの時代にも成功者は非難されてきたものずら。……まだマル達は成功と呼べるような結果なんて出せていないのにね」
 
梨子「そうかな? あのイベントに呼ばれただけでも凄いんと思うけど?」
 
ルビィ「お姉ちゃんもそう励ましてくれたよねっ」
 
善子「だからこそよ。他人の悪いところしか見ようとしない連中にとって、自分より上手くいってる者が躓くのは最高に美味い酒の肴なのよ!」
 
花丸「坊主憎けりゃ袈裟まで憎いとも言うずら。気に入らない人のことは一挙一動貶したくなるんだよ」
 
梨子「そんな人がここに集まってるってこと?」
 
善子「そうよ。地獄から湧き出た人ならざる悪鬼が集う場なのよ、スクドル板はね」
 
花丸「大袈裟だよ、善子ちゃん。さすがにみんながみんな、とまでは思わないなぁ」
 
善子「ヨハネよっ!」
 
梨子「ちゃんと良かったところは誉めてくれた人もいたしね。だからあのイベントに出た意味はあったはず、aqoursの名前だってより多くの人に知って貰えたんだから」
 
ルビィ「ですよね。……でも」
 
梨子「でも?」

ルビィ「これを見るとプラスよりマイナスの方が大きかったんじゃないかって……」つスマホ
 
梨子「私達の公式アカウント?」
 
ルビィ「スライドしてみてください」
 
梨子「うん」スイッ
 
https://i.imgur.com/YouoCG9.jpg
 
梨子「そんな……フォロワーが半数以下に……先週は10万行ってたのに」
 
ルビィ「そういうことです」
 
善子「スクドル板だってイベントの晩に盛り上がっただけだしね」
 
梨子「私達、失望されたってことなの?」
 
花丸「注目していたのに、蓋を開けたらそうでもなかった……って思われちゃったんだね」
 
善子「やんなっちゃうわね、イベントの結果一つで掌クルクルって」
 
花丸「信用を積み重ねるのには長い時間が掛かっても、失うのは一瞬。人の世は世知辛いずら」

241.名無しが輝く物語(江南省)
ファンもロリコンばかりで救いようがないな
未だにフォローしてる連中もロリコンだろう?
 
242.名無しが輝く物語(どくだみ茶)
敗北者を支持する見る目ない連中がまだこんなにいるのか
 
梨子「私達のファンが減ったのまで嘲笑うなんて……何なの?」
 
善子「悪鬼ね」
 
ルビィ「また悪鬼?」
 
梨子「リトルデーモンと何か違うの?」
 
善子「似て非なるものよ。リトルデーモンはこのヨハネと同じ、人間の幸せを願う存在なの。ヨハネが堕天したのだって人間界に干渉する度合いについて、他の天使達と揉めたのが──」
 
花丸「ふむふむ、やっぱり善子ちゃんって優しいんだね」メモメモ
 
善子「だからヨハネっ!」
 
梨子「わかってるよ、花丸ちゃん。それで、悪鬼ってどんな存在なの?」

善子「何人かに1人の割合で産まれてくる、他人の痛みが想像できない者よ」
 
花丸「産まれながらの咎人ずらね。どれくらいいるのかなぁ?」
 
善子「ある本によれば約25人に1人とか聞いたことあるわね。ただアジア圏なら1,000人に1人ぐらいしかいないとか」
 
ルビィ「おっかないねぇ、そんな人がいるなんて」
 
花丸「大きな戦争を起こした時の指導者達は、みんな悪鬼だと言われているずら。大企業のお偉いさんや政治家なんかにもいるらしいね」
 
梨子「花丸ちゃんも詳しいのね」
 
花丸「小説にもたびたび出てくるからね、悪役として」
 
ルビィ「そうなんだ、みんな酷いこと平気でするの?」
 
花丸「そうずらよ、ルビィちゃん。毎日ルビィちゃんの見ていないところで有ること無いこと言いふらして……気が付いたらルビィちゃんはクラスで独りぼっち──」
 
ルビィ「ううっ、嫌だよぅ……独りぼっちなんてぇ……」グスッ
 
花丸「……ごめんね、ルビィちゃん。まさかそんなに怖がるなんて」
 
梨子「それが悪鬼のやり方なのね、確かに酷いね」

善子「何にせよ、ヨハネは地獄の住人達に負けるつもりはないわよ!」
 
梨子「そうだね。気にしてたら向こうの思う壺だしね」
 
ルビィ「ですよねっ。最後に書き込んだ人だって」スイッ
 
249.名無しが輝く物語(みかん)
aqoursは再び立ち上がるよ
悪意にだって無関心にだって負けずにね
 
梨子「そうだよね、うん。負けちゃいられないよ」
 
善子「ええ、何度でも立ち上がってやるわよ!」
 
花丸「美しいものを美しいと感じられず、誰かを貶めねば喜べない彼らこそ不幸なのかもしれないずらね。ところで梨子さん」
 
梨子「どうしたの、花丸ちゃん?」
 
花丸「梨子さんはどっちの方が辛いですか?」
 
梨子「どっちって、悪意と無関心?」
 
花丸「ずら」コクッ

ルビィ「ルビィは悪意かなぁ。一生懸命頑張ってるのを馬鹿にされたら、やっぱり泣きたくなるもん」
 
梨子「だよね、私もルビィちゃんと同じだよ。私だって遊びでやってきたつもりはないから」
 
ルビィ「それにルビィの場合、いっつもお姉ちゃんと比べられてきたし」
 
花丸「マルも見てきたよ。でもそのたびに『ダイヤさんはダイヤさん、ルビィちゃんはルビィちゃんなんだから比べたら駄目ずら』って注意してきたよ」
 
ルビィ「そう、だったんだ。ありがとっ、花丸ちゃん♡」ニコッ
 
花丸「どういたしまして」ニコッ
 
善子「私は無関心ね。アンチが沸くのは『人気のバロメーター』って割り切ってるからね」
 
梨子「なるほど、そういう考え方もあるね。でも悪く言われて辛くないの、善子ちゃんは?」
 
善子「ヨハネだっての! もちろんヘドが出そうになるけど、ニコ生とか見てもらえない方がぐっとくるわよ。一人で空回りしてるみたいで」

花丸「マルも無関心かなぁ」
 
ルビィ「花丸ちゃんもそっち側かぁ。どうして?」
 
梨子「別に派閥争いしてるんじゃないからね、ルビィちゃん」
 
花丸「人は独りでは生きてはいけないもの、見放された時の孤独が人の心を消し去ることもあると思うんだ。それを想像して生まれる恐怖もね」
 
梨子「そうだね、孤独が人を悪鬼に変えることもあるよね」
 
ルビィ「そういうのってあるんですか?」
 
梨子「うん。小さい頃アキバで起こった通り魔事件とかね。私は現場に居合わせた訳じゃないけどね」
 
善子「ああ、あったわねそんな事件。もう10年になるはずよね?」
 
花丸「7人もの方が亡くなったはずだよ。ご冥福をお祈りします」
 
梨子「その犯人も職場でのトラブルや、ネット上でのいざこざで『居場所を失った』って供述したんだって」
 
ルビィ「梨子さん……」

梨子「もちろん人の命を奪ったことは許せないよ。だけど、独りになる寂しさはわからなくもないから」
 
梨子(ピアノが弾けなくなった時、まるで「そんな梨子に価値はない」って見放されたような孤独を感じてきた私には。本人らにその気はなくても、あの頃の私には──)
 
ギュッ
 
梨子「みんな……」
 
ルビィ「大丈夫ですよ、梨子さん」
 
善子「ヨハネ達がついてるわよ、梨子」
 
花丸「もっとお話したいずら。梨子さんと」
 
梨子「ルビィちゃん、善子ちゃん、花丸ちゃん……ありがとね」ニコッ
 
善子「だからヨハネだってば!」

梨子「あの人にもみんなみたいに仲間や友達と呼べる人がいたら、悪鬼なんかにはならなかったのかな? ってね」
 
花丸「かもしれないずらね。ありがとう、ルビィちゃん♡」ニコッ
 
善子「そうね、リトルデーモン4号♡」ニコッ
 
ルビィ「ピギッ!?」
 
梨子「ふふっ、モテモテだね、ルビィちゃん」ニコッ
 
善子「とにかく、スクドル板やTwitterなんかで大勢が支持してる意見だからって『人の総意』だと勘違いしては駄目だからね」
 
花丸「何も語らずとも、見ている人はいるものだよ」
 
ルビィ「みんながお喋りって訳でもないもんねっ」
 
梨子「それもそうね。ところで三人とも、ラブライブ優勝は目指すつもりだよね?」
 
よしまるびぃ「もちろんっ(よ)(ずら)!」
 
梨子「わかった。じゃあ改めてフォーメーションの打ち合わせにしましょ」

下校時刻
 
梨子「んん~っ、じゃあ今日はお開きにしましょ」ノビー
 
ルビィ「うんっ。お疲れ様、梨子さん」
 
花丸「梨子さんの説明、とても分かりやすかったずら」
 
梨子「ありがとね、花丸ちゃん」ニコッ
 
ルビィ「じゃあ帰ろっか、お姉ちゃんが見回りに来る前に」
 
梨子「そうだね」
 
善子「梨子、ちょっといいかしら?」
 
梨子「どうしたの、善子ちゃん?」

善子「ヨハネよっ。もし千歌がまた凹んでたら、梨子が励ましてあげなさいよ」
 
梨子「千歌ちゃんが? この前ので立ち直れた気がするけど?」
 
善子「それはそうだけど、もしスクドル板を見てたら……」
 
梨子「ああ、確かにね」
 
善子「千歌を見捨てないであげてね。私もニコ生始めたばかりの頃、同じようにボロクソに叩かれて辛かったから」
 
梨子「そうなんだ、経験あるんだね」
 
善子「ええ。そんな時って愚痴とか弱音とかついつい出ちゃうものだから、わかってあげて」
 
梨子「うん、ありがとね。優しい堕天使さん」ニコッ
 
善子「信じるからね、梨子のこと」
 
梨子「わかった。大丈夫だよ」

バス内
 
ルビィ「それじゃ、ルビィ達はここで」ノシ
 
梨子「うん、お疲れ様」ノシ
 
花丸「お疲れ様ずら」ペコッ
 
***
 
淡島神社参道前
 
梨子(あれって曜ちゃんと果南さん?)
 
梨子「すみません、降ります!」ポチッ
 
ピンポーン♪
 
運転手「はいよっ!」

下車
 
梨子(二人は何の話してるんだろう?)
 
曜「やっぱりaqoursに戻るつもりはないの?」
 
果南「曜……何度聞こうが同じだよ。その気はないって」
 
梨子(説得してる? 曜ちゃんが果南さんを?)
 
曜「果南ちゃんは悔しくなかったの? 二年前のあの時」
 
果南「もう忘れたよ、あの時の気持ちなんて」
 
曜「嘘だよね、目が泳いでる」
 
果南「……だとしたら?」
 
曜「やっぱり……負けず嫌いだもんね、果南ちゃんも」
 
果南「曜ほどじゃないよ」
 
梨子(曜ちゃんは引き続きラブライブ優勝を目指すつもりだね。千歌ちゃんはどうなんだろ?)

曜「もう一度頑張ろうよ。千歌ちゃんもそれを望んでる」
 
果南「千歌がね……」
 
梨子(そういえば千歌ちゃん「果南ちゃんも誘ったけど、断られちゃった」って話してたなぁ)
 
果南「曜は悔しくないの?」
 
曜「悔しいよ。千歌ちゃんがあんなに落ち込んでるのだって初めてで──」
 
果南「そうじゃなくて」
 
曜「何が?」
 
果南「千歌がどうとかじゃなくて、曜自身はどうなのさ?」
 
曜「……悔しいに決まってるでしょ。衣装作りだって、振り付けだって、練習だって……やれるだけのことはやってきたんだから」
 
果南「最初からそう言えばいいのに。曜は口を開けばいつも千歌ちゃん千歌ちゃんってさ」
 
梨子(うんうん、確かに)

曜「そうかな?」
 
果南「そうだよ。別に千歌と一緒でさえあれば、スクールアイドルでなくてもいいんじゃない?」
 
曜「……そこは否定しないよ」
 
梨子(そうなんだ。まあ曜ちゃんなら他のことでも上手くやれそうだけど)
 
曜「果南ちゃんだって悔しかったなら、もう一度やればいいだけじゃん」
 
果南「だからその気はないっての」
 
曜「なんでさ?」
 
果南「時間は限られてるから」
 
曜「だからこそ全力で──」
 
果南「余計なことに割いてる時間も気力もないの、将来を考えたらね」
 
曜「そんなものだったの? 果南ちゃんにとってのスクールアイドルは」

果南「それはないよ。少なくともあの頃の私は全身全霊を懸けていた」
 
曜「だったら──」
 
果南「今はもう、それだけの価値を見出だせない」
 
曜「……そっか。じゃあいいや」
 
果南「曜にしてはあっさりだね」
 
曜「そうかな?」
 
果南「千歌じゃないから?」
 
曜「そういう訳じゃ──」
 
果南「曜にとって、私はそれほど価値のある人間じゃないんだね」ウルッ
 
曜「そんなことは──」

果南「わかってる。少しからかっただけだよ」ニコッ
 
曜「果南ちゃんのイジワルー。私にとって果南ちゃんだって、大切な幼なじみなんだから」ムッスー
 
果南「でも千歌のために水泳部辞めたんでしょ。私のためにそこまではしないよね?」
 
曜「……ま、まあ」
 
梨子(果南さん……曜ちゃんや千歌ちゃんとの間に溝があって寂しいのかな?)
 
果南「別に千歌を妬んでるとかじゃないよ。『誰かのために何かしたい』っての自体は何ら悪いことじゃないしね」
 
梨子(同意)
 
果南「だからって自分を疎かにしちゃいけないからね」
 
曜「わかってる」
 
果南「まあ、曜ならそこんとこしっかりしてるだろうね」
 

曜「じゃあ私、夏祭りの衣装作りあるから」
 
果南「うん。最後に一つ、忠告しとくよ」

曜「何さ、忠告って」

果南「何か一つのことに拘り続けられるってのは凄いことだと思う。そういう点で私は曜を尊敬してる」
 
曜「果南ちゃん……ありがと」
 
梨子(ちっちゃい頃から飛び込み続けてきたんだよね、曜ちゃんって。凄いよね)
 
果南「でも行き過ぎた執着は誰かの迷惑になるだけだよ。自分にも、周りの人にもね。怖くなるよ……その日が来るのが」
 
曜「……考え過ぎだっての」
 
果南「杞憂で終わればいいけどね」
 
曜「じゃあね、まあ」ノシ
 
果南「うん、また」ノシ
 
曜「……果南ちゃんの馬鹿っ」ウルッ
 
梨子(曜ちゃん……泣いてるの? 追わなくちゃ──)

ガサッ
 
果南「誰かいるの?」ギロッ
 
梨子(気付かれたっ!?)
 
果南「出てきた方が身のためだよ」スッ
 
梨子(仕方ない、か)
 
梨子「すみません」
 
果南「梨子ちゃんだっけ? 盗み聞きとは感心しないよ」
 
梨子「たまたまです。バスの中から二人が見えたので」
 
果南「そっか。……恥ずかしいとこ見せちゃったね//」
 
梨子「いえ。ところで果南さんってスクールアイドルやってたんですね。ダイヤさんや鞠莉さんと」
 
果南「三ヶ月ほどだけどね」

梨子「その頃に千歌ちゃんや曜ちゃんには話したりしなかったんですか?」
 
果南「高校と中学だからね」
 
梨子「あっ、そうでしたね」
 
果南「そういうこと」
 
梨子「果南さんは別に私達のスクールアイドル活動に反対って訳じゃないんですね」
 
果南「誰が何をしようと個人の勝手だからね。ただし、私は鞠莉やダイヤみたく支援するつもりはないからね」
 
梨子「わかってます」
 
果南「まっ、陰ながら応援はするよ。ようやく千歌が見つけた本気で取り組めることだしね」
 
梨子「千歌ちゃんが?」
 
果南「ああ。千歌の奴、今まで何やっても長続きしなかったからね。良かったって思ってる」
 
梨子「そうだったんですか。関係あるんですかね? 普通怪獣がどうとかってのと」

果南「普通怪獣ねぇ、未だにそんなこと言ってるんだ」ハァ
 
梨子「果南さんにも話してたんですね、その件」
 
果南「あの曜と比べられたら千歌でなくてもね」
 
梨子「やっぱり」
 
果南「確かに曜は何やらせても人並み以上にこなすけど、私から言わせればそれら全てが曜自身の努力の結果だよ。決して初めから何でも持って産まれた訳じゃない」
 
梨子「そうですよね、わかります」
 
梨子(私のピアノもそうだって言えるのかな?)
 
果南「自分で勝手に比べるだけならまだいいんだ。何か一つでも『わたしは曜ちゃんより出来ることがある!』って誇れるものが見つかれば解決するんだからね。それこそゲームの腕とかでもいいんだ」
 
梨子「ですよね。私だって曜ちゃんと比べたらピアノくらいしか取り柄ないですし」
 
果南「でも気にしてる?」
 
梨子「全然。世の中には色んな人がいるってわかっているので」

果南「だね。ただ千歌の場合、周りに曜と比べて馬鹿にする奴がいたのさ。『曜は何でも凄い。それに引き換え千歌はそうでもない』とか、『何でも途中で投げ出す口先三寸女』だとかね」
 
梨子「ああ……ありそうですね」
 
梨子(ネット上ならともかく、リアルで連日そんな言葉浴びせ続けられたらキツいかも)
 
果南「まっ、見つけ次第私が『お話』してたけどね」
 
梨子「『お話』、ですか」
 
梨子(どんな「お話」かは聞かないでおこ)
 
果南「世の中は常に競争なんだ、社会に出る前からね。わざわざ重荷を一つ増やすのも馬鹿馬鹿しい」
 
梨子「今の果南さんにとって、スクールアイドルは重荷なんですか?」
 
果南「……私も将来のために色々勉強しなくちゃいけないんだ、なんだかんだ勉強から逃げてきたから。要領のいい鞠莉や、コツコツと積み重ねられるダイヤと違ってね」
 
梨子「確かにあの二人はそういうタイプって感じしますね」
 
果南「おっと、つい愚痴が出ちゃったね」
 
梨子「いえいえ、気にしてませんよ」

果南「趣味と同じだよ。自分に余裕があるからこそやれるってのは」
 
梨子「それはわかります。でもこういう考え方もあるんじゃないですか?」
 
果南「どういう?」
 
梨子「本気でやりたいからこそ、徹底的に無駄を省いてやろうってするとか」
 
果南「ふーむ、なるほどねぇ」
 
梨子「私もある趣味があって、一時期母から貰った飲み物代をそれに充ててたんです。その間は水道水で済ませてました」
 
梨子(案外貯まるのよね、この方法で)
 
果南「一応聞くけど、どんな趣味?」
 
梨子「乙女の秘密です」キッパリ
 
果南「そっか。でもそれもまた続けるための努力と呼べなくないかな?」

梨子「そうなりますね。そして何事もバランスが肝心だと思ってます。私もその趣味に夢中になり過ぎて、ピアノを疎かにしないよう気をつけていますので」
 
果南「はは……あるある。でも私はそのバランスが取れる気がしないんだ。だからスクールアイドルはやらないよ」
 
梨子「はい、私も無理強いする気はないので」

梨子「では失礼します」
 
果南「うん。最後にちょっと頼み事があるんだけどいいかな?」
 
梨子「頼み事? 何ですか?」
 
果南「千歌が傾き過ぎないよう、見ててあげて」
 
梨子(たぶん勉強を疎かにするな、ってことだよね?)
 
梨子「はい、わかってます」
 
果南「それと曜のことも。あれで結構溜め込むところあるから」
 
梨子「もちろん。曜ちゃんも大切な友達ですから」
 
果南「じゃあ頼むよ」ノシ
 
梨子「頼まれました」ノシ
 
梨子(行き過ぎた執着が誰かの迷惑になる、か)
 
梨子(私も千歌ちゃんにばかりベッタリしてる訳にはいかないのかな?)

晩、ベランダ
 
千歌「いやー、0から再スタートするって決めたはいいけど、0どころかマイナスからかもねー」ニコッ
 
梨子「マイナスから? どうして?」
 
千歌「だってもうわたし達『大したことない』ってイメージ付いちゃったから」
 
梨子「もしかして見ちゃったの? スクドル板」
 
千歌「……うん。もうみそっかす扱いだったね」
 
梨子「だけどあそこの意見が全てじゃないよ」
 
千歌「わかってるつもり。でも数字は嘘つかないから」
 
梨子「ランキングとフォロワーのこと?」
 
千歌「うん。堕天使アイドルの件でわかってたのにね、調子に乗ったら叩かれるって」
 
梨子「アレだって千歌ちゃんなりには真剣だったんでしょ? 私も最初はおふざけかと思ったけど」

千歌「まあ一応。ゴスロリとか需要あるかなー? って」
 
梨子「でしょ。こっちの心情も知らないで『調子に乗ってる』なんて失礼しちゃう!」プンスコ
 
千歌「梨子ちゃん……ありがとね」ニコッ
 
梨子「どうしてありがとうなの?」
 
千歌「わたしの代わりに怒ってくれて」
 
梨子「ああ……どういたしまして」ニコッ
 
千歌「でも裏方事情なんてみんな知ったこっちゃないと思うんだ。ちゃんと誰が見てもわかる形で示さなくちゃいけない」
 
梨子(鞠莉さんと同じようなこと言うんだね、千歌ちゃんも)
 
梨子「千歌ちゃんって案外リアリストなんだね」
 
千歌「失礼しちゃうなぁ、梨子ちゃんってば。わたしはそんなちゃらんぽらんじゃ──」
 
梨子「六月の中間試験の勉強、誰が見てあげましたか?」
 
千歌「梨子ちゃんです。その節はどうもお世話になりました、このご恩は一生忘れません」ペコッ
 
梨子「そういうとこ。千歌ちゃんはいちいち主語がおっきいのよ」
 
千歌「いいじゃん。やるからには一番目指さないとっ!」
 
梨子(これで六人全員が引き続き「ラブライブ優勝を目指す!」ってので決まりだね)

梨子「それもそうね。なれるかはともかく、そういう気持ちで臨まなくちゃね」
 
千歌「なれるのっ! 絶対にっ!」クワッ
 
梨子「ふふっ、言霊の力ってのもあるしね。私だって気持ちは同じだよ、一番を掴みたいってのは」
 
千歌「ピアノやってた頃もそんな気持ちで?」
 
梨子「うん。一度折れちゃったけどね」
 
千歌「でも梨子ちゃんは立派だよ。小さい頃からずっと続けてきたことがあるんだから」
 
梨子「ありがと。でもそれは周りに褒めてくれる人がいたからだと思う」
 
千歌「だよね。……曜ちゃんもそんな風に話してた」
 
梨子「千歌ちゃん……でもね、何か新しいことを始めるのに遅いなんてのはないと思う」
 
千歌「……うん。とにかく今は夏祭りと予備予選について考えなくちゃね」
 
梨子「そうだね、一つ一つ積み重ねてかなくちゃね」

千歌「目に見える結果を出してかなくちゃね。口先だけなら見放されるんだから」
 
梨子(未だに抱えてるんだね、「口先三寸女」って馬鹿にされてきたこと)
 
梨子「ところでさ、千歌ちゃんに一つ質問していい?」
 
千歌「うん。何でもどうぞ」
 
梨子「千歌ちゃんにとって、悪意と無関心ならどっちの方が辛い?」
 
千歌「えーっと……つまり悪口を言われるのと、そもそも見向きもされないのならどっちが嫌かってこと?」
 
梨子「うん、そんな感じ。先に言っとくなら、私は悪意の方が辛い」
 
千歌「そっか。でも梨子ちゃんのこと悪く言う人なんてそんなにいたの?」
 
梨子「特にいなかったけど。だけど私としては自分にだけじゃなくて、誰か他の人にだって『嫌だな』って感じる」
 
千歌「うん、わかるよその気持ち。やっぱり梨子ちゃんって優しいねっ」ニコッ

梨子「どうも。でも往々にして相手のことがよくわかってないから『アイツはこういう奴なんだ』って決め付けてることもあるよね」
 
千歌「ネットとかならね、まだスルーもできるし。……でもわたしの場合、そうじゃなかったから」
 
梨子(千歌ちゃんの普通コンプレックス、想像以上に根が深かったのね)
 
千歌「行動が伴わないって、みんなわかってるから──」
 
梨子「それはこの間までの千歌ちゃんでしょ!」
 
千歌「梨子ちゃんっ!?」ビクッ
 
梨子「千歌ちゃんが一生懸命なのは、私がよーくわかってる! ううん、私だけじゃなくてaqoursのみんなも、他の知り合いの人達も」
 
千歌「梨子ちゃん……」
 
梨子「人は変わっていける! 私は身をもって理解してる!」
 
梨子(千歌ちゃんのおかげでね。今は恥ずかしくて伝えないけど//)
 
梨子「それでも千歌ちゃんを悪く言う人がいたら、私が関節技でも掛けてやるんだからっ!」プンスコ
 
千歌「できるのっ!?」ヒキッ
 
梨子「……簡単なのなら。護身用に」
 
千歌「……そ、そうなんだね」

梨子「じゃあ改めて悪意と無関心なら、どっちが嫌?」
 
千歌「そりゃどっちも嫌だけど……今は無関心かな」
 
梨子「そっか。理由とか教えてくれる?」
 
千歌「うーん……誰からも関心を持ってもらえないのってさ、お化けになるようなものだと思うんだ。ちょっと変な例えだけどね」
 
梨子「怪獣の次はお化けねぇ」
 
梨子(千歌ちゃんは最終的に合成獣【キメラ】にでもなっちゃうつもりかな?)
 
千歌「うん。こっちからはみんなが楽しくお喋りしてるのがわかるんだ。でも自分はその輪の中に入っていけない。どうしてかわかる?」
 
梨子「うん。姿が誰の目にも映らないし、声も届かないからだよね? お化けのイメージって十人十色だけど、私はそんな印象があるな」
 
千歌「そんな感じ。みんなのすぐ近くにいるのに、いつも独りぼっち。気付いてもらいたくて色々試してみても、全部が無駄な一人芝居」
 
梨子「千歌ちゃん……」
 
梨子(曜ちゃんの「腰巾着」呼ばわりされてきた、千歌ちゃん自身の経験からきてるんだよね?)
 
千歌「0ってことは、つまりそういうことだよね? 誰一人、わたし達に興味を持って──」

梨子「そんなことないっての!」
 
千歌「どうしてそう言い切れるの?」ムスッ
 
梨子「投票システムの都合上、一人一票しか入れられないんだから。きっと私達のパフォーマンスを見て、何か感じた人はいるよ」
 
千歌「だけどフォロワーは半数以下に──」
 
梨子「数値上はね。でもイベントの後にフォローしてくれた人もいる以上、失望した人だけじゃなくて興味を持ってくれた人だっているんだよ」
 
千歌「……そっか。そうだよね」ニコッ
 
梨子「まあ、プラスよりマイナスが大きかったのは否めないけど」ハァ
 
千歌「どうして『前向きにいこう!』って決めたとこで出鼻を挫こうとするかなぁ?」ハァ
 
梨子「あっ……ごめんね、千歌ちゃん」ペコッ
 
梨子(私が千歌ちゃんに失望される可能性だってあるもんね、私もネガティブじゃいられないな)

千歌「いや、弱音ばっかり吐いてるわたしが悪いんだから。わたしに取り憑くネガティブホロウめー、除霊してくれるー! きえーいっ!」ブンブン
 
梨子「ペ○ーナ!? でもそういう気持ちまで0にする必要はないと思うよ。昔の曲に『涙の数だけ強くなれるよ』って歌詞もあるくらいだし」
 
千歌「なんか素敵なフレーズだね。今度その曲も聴いてみたいな」
 
梨子「今大きな成功を重ねてる人達だって、みんな今の私達と同じようにいっぱい躓いて悔しい思いをした時期があるはず。そうした経験が強さをくれたんだと思う」
 
千歌「だよね。諦めなきゃいいんだもんね!」
 
梨子「そういうこと」
 
千歌「昔の凄い人の伝記とか読んだら、みんなそうだもんね」
 
梨子「千歌ちゃんってそういう本は読むんだね。文字がいっぱいなのは苦手なのに」
 
千歌「ま、まあねっ!」アセアセ
 
梨子(どうせ漫画版だろうけど)

梨子「とにかく千歌ちゃんは見るもの全てに怯えなくていいんだからね。『嫌われたら』とか『見放されたら』とかいちいち気にしてたら、結局何もできなくなっちゃうから」
 
千歌「うん、だよね。明日からまた練習、頑張ってこう!」
 
梨子「うんっ!」
 
千歌「じゃあもう遅いし、今日はこれぐらいで──」
 
梨子「ちょっと待って、最後に一つ」
 
千歌「なぁに?」
 
梨子「さっきお化けがどうとかって言ってたけど」
 
千歌「うん」

梨子「もし千歌ちゃんがお化けになったとしても、私が絶対気付いてあげるからね」
 
千歌「梨子ちゃん……ありがとねっ。……ううん、待てよ?」
 
梨子「どうしたの?」
 
千歌「なんかわたしが近々亡くなること前提みたいな話だよね?」
 
梨子「あっ……かもね。じゃあ私がお化けにさせない! それでどうにか」
 
梨子(あの日、四月の海に飛び込もうとした私を止めようとしてくれたみたいにね)
 
千歌「……そういうことにしとくね。あの日だってわたしが気付かなかったら、梨子ちゃんがお化けになってたかもしれないんだし」
 
梨子(あれっ!? これって以心伝心ってやつ//)ポッ
 
梨子「……そうなるね。改めてこっちこそありがとね」ペコッ
 
千歌「どういたしまして。お休み、梨子ちゃん」ノシ
 
梨子「うん、お休み」ノシ
 
梨子(どんなに暗くて寒い夜でも、太陽は必ず昇る。明日は来るよ、私達のために)
 
終わりです

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