魔王が死んだ (5)

魔王が死んだ、勇者と相打ちになったのだ。

世界は人間のモノとなり、ついでに俺の夢も儚く散った。

やっぱり本物には敵わない。

絵本に描かれた勇者に憧れて旅を続けていたが俺は勇者になれなかった。

俺の十年は本物の勇者の一年に負けたのだ。

俺は所詮、偽物で英雄にはなれない。

森の中で一人、挫折していた。

少女「…あの!あなたは勇者様ですよね!私を助けてください!」

そう…偽物は英雄にはなれないのだ。

偽勇者「えっと…君は?」

少女「魔王の娘です!」

なぜなら偽物は、人の世界を敵に回すことになるのだから…

偽勇者「ハア?魔王の娘?」


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偽勇者「魔王の娘って…君ね!そんな嘘はついちゃダメだぞ!いくら子供でも捕まって処刑されるぞ!」

少女「本当です!私は魔王の娘なんです!お父様の夢のためあなたの力が必要なんです!」

目の前の少女が嘘を言ってるようには見えないが魔王の娘にも見えない。

魔族らしさがないのだ。

偽勇者「うーん困ったな…もし仮に君が本当に魔王の娘だとしても勇者に助けを求めるのはおかしいんじゃないか?」

偽勇者「そんなことしたら勇者に捕まるか…殺されるよ、それに俺は勇者じゃない、ただの偽物だ」

少女「なぜ勇者様が私を[ピーーー]のですか?勇者様はそんな事はしません」

偽勇者「しませんって君のお父さんは勇者に殺されたんでしょ?」

少女「違います!父を殺したのは勇者じゃありません!勇者を騙る不届きものです!」

少女「だって!本物の勇者はこの絵本に描かれてますから!」

少女は絵本を俺の前に差し出す。

俺が憧れた存在しない勇者の物語だ。

人も魔物も最後には魔王まで救った優しい勇者の物語だ。

少女「あなたは勇者様です…だってあなたの服装は絵本と同じですもの」

少女「私の知ってる勇者様は人も魔物も救った優しい方です!」

突然、轟音が鳴った!

偽勇者「危ない!」

少女「きゃ!」

俺は少女を抱えて跳んだ…その瞬間さっきまでいた所には無数の氷の刃が刺さっていた。

魔法使い「魔王の娘ですね…あなたの力が必要なので…あなたを捕らえに来ました」

魔法使い「抵抗してもしなくても痛めつけようと思っています…だから逃げないでくださいね」

偽勇者「本当に魔王の娘なのね」

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