アイマスSS「坂の途中」 (16)

俺の住む1LDKのアパートは時計坂と呼ばれる坂の途中にある

大家さんやその義母である1号室に住む一の瀬の婆さんによると昔は木造の下宿のようなアパートであり

風呂は無くトイレは共同で戦前に建てられた代物で

アパート最上部には時計がありいつしか近所の人々がこの坂を時計坂と呼ぶようになったとのこと

俺の住所は社長律子小鳥さんの三人しか知らない、アイドルの子たちに何度も聞かれたが全てはぐらかしている

そして誰にも教えないで欲しいと三人には頼んである

彼女たちが友人の家に遊びに行くような感覚で来てしまったらスキャンダルの原因になるからだ



さて、前置きが長くなった 

話を始めよう

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ある春の休日、俺は朝から溜まっていた洗濯をこなすと部屋の掃除をし仕事の資料をまとめると時刻は11時過ぎ

小腹が空いたのでたまには近所で外食しようとドアをあけるとアパート前面の駐車場で大家の音無郁子さんが女性と立ち話をしていた

P「大家さん、おはようございます」

郁子「もう昼前ですよ、お仕事は休みなんですか?」

P「はい、たまには近所で外食しようと思いまして」


すると大家さんと立ち話をしていた女性が驚きながら俺に話かけてきた

?「ああ、春香のプロデューサーさん!」

P「あっご無沙汰してます、お母さん」

春香母「郁子ちゃん、プロデューサーさんここに住んでるの?」

郁子「五号室にお住まいですよ、えーと春香ちゃんの事務所の人なんですか?」

春香母「ええ、春香の担当プロデューサーさんなの、いつも春香がお世話になってて」

P「大家さんは春香のご家族とお知り合いなんですか?」

郁子「はい、知り合いと言うか何と言うか」

すると1号室のドアが開き中から一の瀬の婆さんが出てきた

一の瀬さん「なんだい、宴会の相談かい私に知らせず宴会なんて許さないよ!おや管理人さん久しぶりじゃないか」

春香母「お墓参りの帰りにちょっと寄ってみたら郁子ちゃんとばったりそこで会って」

一の瀬さん「嬉しいね、まだここの事を覚えていてくれるとは五代君と春香は元気かい?」

春香母「はい、今は園長先生ですよ春香はアイドルになりました」

一の瀬さん「天海春香だっけ?賢太郎から話を聞いたけど小さい頃しか覚えてないし芸名使ってるからテレビに写ってるのが春香だと思えなかったよ」

郁子「お義母さん、5号室のPさんが春香ちゃんの事務所の人だったんですよ」

P「はい、765プロダクションで天海春香の担当プロデューサーをしています」

一の瀬さん「へえ、あんた会社員だって言ってたけどどおりで部屋で宴会やった時にアイドルの本が沢山あったわけだ、それにしても5号室とはね」

郁子「お義母さん、そのへんにしておきましょう一緒に買い物行くんでしょう」

一の瀬さん「四谷さんは朝から出掛けたみたいだし宴会は出来ないね、管理人さん今度は春香も五代君も連れてきておくれよ、昔みたいに5号室で宴会やろう」

P「何で俺の部屋でいつも宴会やるんですか!?」

郁子「私とお義母さんは買い物行くけどおばさまはどうします?」

春香母「プロデューサーさんはこれから外食するんですか」

P「はい、茶々丸でランチでも食べようと」

春香母「良ければご一緒して宜しいですか、色々春香の事でお話したいので」

P「はい、こちらもお聞きしたいこともありますから」


かくして俺は春香のお母さんと茶々丸にてランチを食べることになった

朱美「久しぶり~管理人さん」

春香母「朱美さんもお変わりないようで」

マスター「おやPさん、昼に来るのは珍しいですね管理人さんとはお知り合いで?」

P「いや~芸能事務所での担当のアイドルのお母さんなんですよ」

朱美「えっ?あんたが春香の担当なんだ!偶然ってレベルじゃないね」


春香母「私もさっき知りました、朱美さんランチ2つお願いします」

朱美「色々話があるだろね、ランチ2つりょーかい」


春香母「どこからお話したら良いのかしら?私とあのアパートと音無家のこと」

P「いえ、無理にとは言いません」

春香母「春香のためにも聞いてもらいたいんです」

P「わかりましたお伺いします」

私、最初の夫と死別してるんです

最初の夫と義父のお墓参りに今日は東京に来ました

惣一郎さ…最初の夫は高校時代の地学の先生でした、ちょうど春香と同じ年頃ですね

年は20代後半だったのでプロデューサーさんぐらいでした

私のほうが一方的にス好きになっちゃって卒業したら親の反対を振り切って押し掛けるように結婚しました

郁子ちゃんは義理の姪と叔母と言うことなります

幸せでした、大好きな音無先生と結婚出来て

この幸せがずっと続くと思っていたんです

夫が急病で亡くなったのは結婚して一年もしなかった頃です

P「そんな事があったんですか…」


春香は美少女と言っても差し支えないほど目鼻立ちが整っているがこの母はまるで女優のように美しい

高校生の娘がいるので40半ばのはずだか30前半でも充分納得出来る

誰に似ているかと言えば昔再放送で見た西遊記の三蔵法師の女優さんに良く似ている

時折ハンカチで目頭を抑え過去を話す春香の母はぎょっとするほど美しい

春香母「ところで話は変わりますけどプロデューサーさんお付き合いしてる人とかは?」

P「格好つければ仕事が恋人状態ですね、今は娘さんをトップアイドルにすることしか考えてません」

春香母「春香はプロデューサーさんが好きなんですよ、男性として」

P「ええっ!まさかっ!10も年が離れてるんですよ」

春香母「間違いありません、春香があなたの話をする時の目は高校生の頃惣一郎さんの事を考えていた私の目と同じですから」

P「…例えそうだとしてもアイドルとプロデューサーです、想いに応えるわけには…」

春香母「いえ、想いに応えて欲しいとは言いません、むしろそう言って貰えて安心しました本当に春香の事を大切にしてくださっていると」

P「…ありがとうございます」

春香母「夫もその事に気づいて凄く心配しているんです、春香が好きな人と結婚出来るなら嬉しいけどまだまだ未熟な頃に私と同じ悲しみを背負う事になるんじゃないかと」

P「俺じゃたいした事出来ないかもしれませんがアイドルの天海春香もあなたの娘五代春香も立派な大人になるまで必ず守ります」

春香母「不思議な人ですね、惣一郎さんにも夫にも似てて春香が好きになったのがわかるような気がします、親子ですから、では最後にあのアパートと私の事を話をさせてもらいます」

あの一刻館は今の建物になる前は木造の古いアパートでした

一の瀬さんや郁子ちゃんのお婿さんの賢太郎君、朱美さんも今も4号室に住んでいる四谷さんもその頃からの住人です

夫に先立たれたあと家で悲嘆に暮れていた私を見かねた義父が私を一刻館の管理人の仕事を任せてくれて私は音無家を出て

アパートの管理人室に住むようになりました

親戚に幼い女の子の未婚の母だった人がいるのでそちらに任せようかと悩んだらしいとずっと後に義父から聞きました

お分かりだと思いますけどあのアパートの住人は変人揃いで管理人が長続きしなかったのも私が管理人になった理由です

そして5号室に2つ年下の浪人生が住んでいて頼りないけど優しくて真面目な人で弟みたいに思ってたんですが、私が管理人になってしばらくたったある夜に泥酔して

私の事を好きだと連呼しながらアパートに帰って来ました

もう二度と人を好きになる事なんて無いと想っていたのに

P「それって春香から聞いたような…」

春香母「はい、春香の父、つまり私の夫ですそれで再婚を決意したわけじゃありませんけど」

P「単行本15巻分ぐらい色々あったと聞いてます」

春香母「あの子のちょっとドジな所と人一倍優しい人を思いやれる所は夫に似たんですよ、それに三歳で二宮に引っ越すまで親子三人で管理人室に住んでました」

P「大切な思い出の場所なんですね」

春香母「春香を産んで一刻館に帰って来た時の事を今でもはっきり覚えています、何を春香に言ったかも」

春香のお母さんの話を聞き目頭が熱くなり涙をこらえる

今度家庭訪問として春香の親父さんと呑もうかな、俺の部屋で

春香のお母さんを時計坂の駅まで送り坂を登ってアパートまで帰る くれぐれも春香に俺がここに住んでると教えないで欲しいと念を押した

坂の途中で若い浪人生が美しい管理人に愛を叫び続けたのはこのあたりだろうか

坂の途中に愛がある

数日後765プロダクション事務所

春香「おはようございます!プロデューサーさん」

P「おう、おはよう桜饅頭あるぞ食べるか?」

春香「はい、珍しいですねプロデューサーさんがお饅頭買って来るなんて」

P「本当は柏餅にしたかったんだがな」

春香「…柏餅無かったんですか?」

P「売り切れだった…」

春香「…残念ですね」

P「いや、この饅頭も捨てた物じゃないぞ今お茶淹れるから一緒に食べよう、小鳥さんもどうですか?」

小鳥「喜んでいただきます」

P「実は昔の曲なんだけど春香に歌って貰いたいのがみつかって今関係先と交渉してる」

春香「本当ですか!でも歌なら千早ちゃんとかもっと上手い人が居ますよ私で良いんですか?」

P「うん、この曲を再度世に出すには春香が最もふさわしいと思う」

春香「あっ、ありがとうございます、私嬉しいです…」

P「泣くなよ、明るく歌う曲なんだから」

春香「曲名を教えて下さい」

P「悲しみよこんにちは」








春香ちゃん,おうちに帰ってきたのよここはね

パパとママが初めて出逢った場所なの


終わり

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