天龍「龍田改二に違法改造で対抗する」 (80)


天龍改二記念SSという訳でもない、というか発表前に書き始めたので天龍改二が未定扱いになっているのは仕様です。






―工廠―


天龍「そういう訳だ、協力してくれ」

明石「いや協力って……」

夕張「しかも違法改造って! そんなの手伝える訳ないでしょ!」

天龍「俺が欲しいのは少しの設備と技術のある人手と部品、あとはそれを使ってるのを黙ってもらう事だけだ。他は自分でやる」

夕張「じ、自分でって……」

明石「龍田さんに先に改二が実装されて焦っているのはわかりますが、あまり無茶な改造はどんな悪影響が出るか……」

天龍「焦っている……だと……? 俺が、焦っている様に見えるのか?」

明石「ち、違うんですか?」

天龍「俺は別に焦っちゃいない。先に言っておくが龍田に嫉妬してる訳でもねぇ。寧ろ逆だ」

夕張「逆……?」

天龍「良いか、俺が前線を離れて随分経った。それからずっと遠征の引率……いや最近はそれすら少なくなった。大発が積めねぇってな」

天龍「する事と言えばたまに鎮守府周辺の哨戒程度……だがそんな日々も、改二さえ来れば変わると思っていたんだ」

天龍「そこへ龍田の改二が発表された……嬉しかったよ、姉として誇らしかった」

天龍「龍田やチビ共が思ってたのと、あと青葉のバカが期待した反応とは違ったみたいだがな。丁度今のお前らみたいな顔をしていた」

夕張「……」


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天龍「同型艦に改二が実装されれば、大抵もう一隻にも遠からず実装される」

天龍「だから俺は……俺か龍田かのどちらかに改二が実施されるなら、どっちが先でも良いと思ってたんだ。早いか遅いかの違いだってな……」

天龍「……俺らは所詮旧式の軽巡、ハナから戦艦みたいな立ち回りができるとなんざ思っちゃねぇよ」

天龍「それでもだ。改二さえ……改二さえ来れば、せめて後発の軽巡に追い付くくらいの性能を得られるかもと期待していたんだ」

天龍「南西海域、特別海域の前半、他の軽巡が戦ってる前線に行けると……!」ワナワナ

天龍「……だがしかしだ!!」

天龍「待ちに待った改二! それで龍田は何を得た!?」

天龍「大発の搭載能力、対空火力と対潜能力の向上、それでいて燃費は据え置き……」

天龍「素晴らしい! これまで以上に輸送任務に使える様になったじゃねぇか!」

天龍「……では何を引き換えにした? 大幅な火力低下だ! 副砲も大型電探も水偵も積めなくなった!!」

天龍「改二で……待ちに待った改二で! 龍田は支援向けの艦娘になったんだよ分かるかァ!!!」ダンッ!!

明・夕「「!!」」ビクッ!

天龍「姉妹艦の少ない艦の改二は概ね性質が似る。俺も龍田と似た性能になるんだろう」

天龍「俺は! 改二に期待できなくなったんだよ!!」

天龍「このまま放っておいたら、俺は改二になって尚俺は戦場には立てねえんだよ!!」


天龍「良いか! この先俺が敵と撃ち合う為には! もう自力でどうにかするしかねぇんだ!!!」

明石「い、いやでも……良いじゃないですか、対潜・対空特化! 軽巡としてはそういう戦い方も……」

天龍「俺はそんなのは望んじゃいない!! 俺は後ろでコソコソする為の艦じゃねぇ!」

天龍「…………だから頼む……」

天龍「……少しで良い……協力してくれ……」

明石「う……」

夕張「で、でも……」

天龍「……もちろんタダでとは言わねぇ」ゴソゴソ

明石「な、何を……」

天龍「……間宮券だ、20枚ずつある。協力してくれるなら、前金代わりにやろう」

夕張「……っ!」

天龍「……どうだ?」

明石「う……うぐぐ……」


――――

―――

――


――
―――


天龍「じゃあこの辺は俺の資材置場兼作業場として使わせてもらうぜ」

天龍「傍目には物の配置が換わっただけ……いや元々ゴチャゴチャしてるからそれすら気付くまい」

明石「は、はぁ……」

*

ガチャガチャガチャ

夕張「へぇ、意外と整備の方も手慣てるのね」

天龍「艤装はもうあちこち自分でいじってるからな。もうあちこち改造してんだぜ」

明石「それで天龍さんの艤装、変なクセが付いてたんですね……」

*

赤城「タ級のマントを、ですか?」

天龍「あぁ。余裕があれば何枚か持ち帰ってほしい」

加賀「わざわざ赤城さんの手間を取らせてまで何をしようと言うの? ヒーローごっこがしたいならゴミ袋でも使いなさい」

天龍「アホぬかせ。明石が検体に欲しがってるってのを伝えに来ただけだ」


明石「――で、このマントどうするんですか?」

天龍「…………はぁっ!」ズバァッ!

マント「……」ピカピカ

夕張「うーん、全然効いてないわね」

天龍「まぁ旧式軽巡対大戦艦じゃあ仕方ねぇか。これでも相当研いだんだがな」

明石「お陰で整備し辛いんですよ、危なくて……」

*

夕張「元の軽巡天龍の事を考えると、防空型になるのを避けるのは難しいかも……」

天龍「ふむ……つまりは対空と火力両方とも、あわよくば耐久と装甲も上がるようにすれば良い訳か」

夕張「そんな贅沢な仕様にするのは流石に厳しいと思うけど……」

天龍「なら俺が第一号になるまでだ」

夕張「簡単に言うわね」ハァ

*

明石「改めて天龍さんの艤装をチェックしましたが、やはりもう上限一杯です」

天龍「普通に強化する余地はもう無いって事か」

明石「そうですね」

天龍「じゃあいよいよ普通じゃないやり方をするしかねぇな」


天龍「……」

吊り下げられたタ級マント『……』

天龍「……」ジーッ

タ級マント『……』

明石「……あれは?」

夕張「目を鍛えるとかなんとか……」

*

明石「じゃあ改めて、改良の方向性は……」

天龍「第一に火力と雷装の向上。昼でもリ級eliteと渡り合えるくらいは欲しい」

天龍「対空と対潜は放っておいても上がるだろうからこっちから何かする必要はねぇだろう」

夕張「大発は?」

天龍「それもそのうち勝手に積める様になりそうだからどうもしなくて良い」

天龍「防御面も欲しい所だが、足が遅くなるのはちと困るな……まぁそっちもおいおい対処するとして……」

天龍「総じて、目指すは軽巡版摩耶改二、もしくは高火力版五十鈴改二ってところか」

天龍「そうそう上手くは行かねぇだろうが、まぁあくまで目標だ。一先ずはやってみる事だな」

*

天龍「……」

タ級マント『……』

天龍「……はぁっ!」

ズバッ!!

タ級マント『……』バサッ

天龍「違ったか……」


明石「それにしても難儀な性格ですねぇ……」

明石「古い軽巡としての能力の限界と、その性能なりの適切な運用法を理解しつつ、それでもあくまで砲雷戦で戦いたいなんて」

夕張「まぁ一言で表せば『ワガママ』で済む話だけどね」

天龍「やめろ。挑戦的と言え」

*

●REC

天龍「第一回射撃試験。脚の艤装を少し調整した。速力が多少落ちたが衝撃吸収性能は3%程増してるはずだ」

天龍「20.3cm連装砲2基4門の一斉発射。今まではどうしても照準がブレたが……」

……ドドォォォン!!

天龍「うぉ……っ! やっぱり3%じゃ大して変わんねぇな……!」ビリビリ

*

天龍「そうだ、装甲が要らなくなれば装甲を強化する必要は無くなるんじゃねえか?」

夕張「随分思い切った発想の転換だけど……どういう事?」

天龍「当たらなきゃ良い」

夕張「いやシャアじゃないんだから。まぁ究極はそうだろうけど無理でしょそんなの、どう考えても」

天龍「いや……」


天龍(目隠し)「……よし、来い!」

夕張「……」ドドォン!!

天龍「よっ……おぁっ!」ドガッ!

天龍「チッ! いきなり当たっちまった……」

明石「無茶ですよそんな。目隠しして音と気配だけで弾を避けるなんて……」

天龍「赤城と……あと長門ならできる」

明石「あの人らは色々おかしいので……」

*

明石「技術者として『リミッター解除』をパワーアップみたいに扱うのは忍びないですけど、艤装の安全装置を少しずつ切って行くのが一番手っ取り早いかもですね」

天龍「あぁ、それはもうやった」

明石「……はい?」

天龍「安全装置らしきものはもう取った状態で使ってる」

夕張(「らしき」……?)

明石「えっ、身体は大丈夫なんですか?」

天龍「初めは事故りそうになったが、もう加減には慣れた。まぁ結局大した性能向上にはならなかったがな」

明石「でも定期検査の時は何も……」

天龍「そん時だけちゃんと付け直してるんだよ」

明石「そんな暴走族の改造車みたいな……」

*

夕張「ねぇ、やっぱり防空や対潜特化も悪くないんじゃないの? この上に輸送能力も高かったらそれはそれで割と活躍できそうだけど……」

天龍「何べんも言わすな、俺がしたいのはあくまで水上艦との殴り合いだ。爆雷投げるだとか飛行機を撃ち落とすとか、ンな事は柄じゃねぇ」

夕張「あなたも大概に強情ね……」


明石「こうなったら……ある意味一番手っ取り早い方法で行きますか」

天龍「なんだそりゃ?」

明石「他の艦娘の艤装を使うんです。単純にカタログスペック上の性能は上がります」

天龍「後付けの装備はともかく本体の艤装も他の艦娘の艤装なんか積めたのか?」

明石「普通は拒絶反応を起こすので無理ですよ。ゆっくり時間をかけて慣らせばマシになる程度です」

天龍「よし、それで行こう。どうせなら――」

*

●REC

天龍「第三回……航行しけ……主機を……あ゛ー、流石に重巡のをそのまま積むのは、キツい……!」

天龍「パワーが上がってる感じはする……だが……この状態で戦闘は……無理だな……」

……ザァーッ……

天龍「駄目だ気持ち悪い……二日酔いが3つ同時に襲ってきたみてぇだ……うぶっ、ぉぇっ……」

*

明石「やはり流石に拒絶反応が激しいですね。重さもありますし」

天龍「摩耶改二のなら親和性高いと思ったんだがな。防空繋がりで」

明石「いや関係ないですって。普通は上級艦種の艤装を積んで歩くだけでもかなり無理があるんです」

明石「アレルギーの幼稚園児に10kgの小麦粉を運ばせる様なものですよ」

天龍「まともにやって強くなんかなれるか。ただでさえ旧式だってのに」

*

天龍「……」

タ級マント『……』

天龍「……ふっ!」

ズバッ!!

タ級マント『……』

天龍「……ここでもないか」


天龍「そうだ、装備を四つ積める様にするにはどうすれば良い?」

夕張「こればかりはどうにも……」

天龍「排水量ならお前と大して変わらねぇじゃねぇか」

夕張「軽巡夕張は元からそういう設計だからねー。あなたより2倍以上重い5500t級の川内とかだって三つが限界なのよ?」

天龍「むぅ……」

*

●REC

天龍「もう二十日目か。第一三回航行試験……」

天龍「川内型、阿賀野型のパーツを今度は部分的に組み込んだ。これなら負荷もまだマシだ。ずっと風邪みたいなボケた感じがするがな」

ザァーッ……

天龍「おぉっ、これなら……ここからちょっとずつ慣らすか」

*

夕張「……」……ドドドォン!!

……シャッ!

天龍(目隠し)「……よっ……ぅおあっ!?」ドガァン!!

明石「おぉー……1ヶ月目にして初めて躱せましたね」

天龍「一発だけ躱せてもしょうがねぇ。よし来い! もう一回だ!」


天龍「……」

タ級マント『……』

天龍「……はっ!」

ズバッ!!

タ級マント『……』ピリッ

天龍「……ほぅ?」

*

―食堂―

天龍「あぐあぐ……」ムシャムシャガツガツ

電「天龍さん、最近ご飯の量が増えたのです?」

Bep「豚角煮、焼肉、豚カツ、牛ステーキ、極太ヴルスト……肉料理ばっかりだ」

暁「それも重いのばかり……見てるだけで胸焼けしそう……」

雷「ちゃんと野菜も食べないとダメよ?」

天龍「うるせぇな、分かってらい」

*

●REC

天龍「第二十七回射撃試験。そろそろ動きながら的に向けて撃ってみる」

シャーッ……ドドォン!! バシャァァン……バシャァァン……ガキィィン!!

天龍「っし! 命中だ。他人の艤装にも段々慣れて来たな。つっても15㎝砲だからまだ目標には程遠いが」


――ドォンドォンドォン!!

天龍(目隠し)「……よっ……はっ……はっ……!」

――バシャァァン! バシャァァン! バシャァァン!

夕張「おぉ! やったわね! 3発連続回避成功よ!」

天龍「はぁ……はぁ…………4ヶ月かけて、やっとか……」ゼェゼェ

明石「十分早過ぎる位だと思いますけど……」

*

―執務室―

提督「最近天龍が何かやってるらしいな」

鳳翔「えぇ。自主トレーニングしている様子自体は前から見られていましたが、最近は多くなったとか」

提督「ダイエットかな」ハハハ

鳳翔「噂ではボディビルを始めたとか夏に向けて身体づくりをしているとか……」

提督「はぁ!? ボディビル!?」

*

―執務室のドア前―

<ボディビル!?

天龍「……よし、バレてねぇな」

夕張「この辺適当な提督で助かったわね」


●REC

天龍「第四十六回射撃試験。全身あちこちに古鷹型の部品を組み込んだ」

天龍「今の俺は2割方重巡だ。キツいが初めの頃よりはマシになった」

天龍「20.3cm2基4門の一斉発射……前は駄目だったが、今なら安定して撃てる筈だ」

シャーッ……ドドォン!! バシャァァン……ドガァン!……バシャァァン!

天龍「ふぅ! 手応えありだ! 今の俺なら20㎝もフィット砲として扱える!」

天龍「……だがまだ実戦は無理だな……これじゃあ二戦もしたらもうヘバっちまいそうだ」

*

天龍「ここと……ここの部分はもう大丈夫だ。普段通りに戦える」

天龍「後は主機とここと……。やっぱり高雄型は流石に背伸びし過ぎか。古鷹辺りだな」

夕張「どんどん天龍だった部分が減っていくわね……」

明石「最終的に出来上がる『天龍違法改』は果たして天龍と呼んで良いんでしょうかね」

天龍「まるでテセウスの船だな。まぁどうだって良い、俺の自我がある限りは俺だ」

*

●REC

天龍「第六九回航行試験。ひとまず艤装が形になったからその試験航海だ」

スィーッ!! ザザザーッ!! ドォンドォン!! ススーッ!!

天龍「おぉっ! 行けるぞ! 身体の負荷も気にならない位になってる!」


天龍「……」

夕張・明石「「……」」

タ級マント『……』

天龍「……!」カッ!

ズバッ!!

タ級マ/ント『……!!』スッパリ

天龍「……ふぅ」

夕張「おぉぉぉ!」

明石「前は全然歯が立たなかったのに……」

天龍「何だか、切れそうな所が見えた……つっても信じねぇだろうな」

*

――ドォンドォンドォンドォン!!

天龍(目隠し)「……」

シャッ! シャッ! シャッ! ガキィン! 
シャッ! ガキィン! ガキィン! シャッ!

――バシャァァン!!

明石「成功です! 視覚以外の感覚だけでランダムな砲撃の連続回避成功です!」

天龍「8ヶ月がかりか……時間かかったな」

明石「いや普通8年がかりでも無理ですよこんなの」

夕張「こればっかりは天龍の元々持ってたセンスの賜物と見て間違いないわね」


――
―――

夕張「さて……」

明石「諸々の調整も済んで、いよいよお披露目ですね」

<ガチャッ

天龍(違法改造)「へへっ、どうだ?」バーン!

夕張「わーお……これはまた、ケレン味のある感じに……」

明石「よく見たらいろんな艦娘の艤装がミキシングさせてあるのがわかりますけど――」

明石「天龍さんの艤装の色に統一させたら案外気にならないですね」

夕張「さて、改めて性能を確認すると……」

夕張「装甲と耐久は微増に留まってるけど、代わりに火力、雷装は大幅に向上して神通改二にも匹敵するぐらいになってるわね」

夕張「対空も五十鈴に準じるくらいまで上がってるし、正に当初の想定通りのライト版摩耶ね」

夕張「後は天龍本人の眼力と直感回避が合わされば、スペック以上の強さが出るかも」

夕張「ただし代わりに対潜は据え置き、大発も搭載不可、燃費は大幅悪化……」

夕張(これ提督的には逆に使い辛いんじゃ……)

明石「今、体調は大丈夫ですか?」

天龍「軽ーい頭痛と眩暈はするが問題になる程じゃねぇ。これなら無視できる」

天龍「よし。じゃあ早速行くか」

夕張「えっ? どこに?」

天龍「執務室」

今夜は一旦ここまで
続きは夜が明けてから投稿します

今更となりますが、独自設定を多く含むのでご注意ください


―執務室―


ドアバーン!!

天龍「提督ー!」

提督「うわぁっ!? 誰だノックもせずに……誰!?」

天龍「俺だ俺。改造して生まれ変わった天龍様だ」

提督「はぁ!? ……確かに人の部分は天龍だけど……どうしたんだその艤装?」

天龍「半年ちょっとかけて改造した。……って、それは良いんだよ。今日出撃があったな?」

提督「あ、あぁ。沖ノ島沖のな……まさか」

天龍「その通りだ。俺を組み込め」

提督「いやいやいや。士気が高いのは結構だが天龍では……」

天龍「俺では、何だ。不安か?」

提督「疑う訳じゃないぞ? でも、その、何だ……折角艤装を改造してまで来てくれた所悪いが……」

天龍「……分かった。そりゃそうだ、いきなり言われてもだしな」

提督「そ、そうだ。そうだとも。天龍じゃ無理とか、そういうんじゃないぞ?」

天龍「はいはい分かってるよ。んじゃ、邪魔したな」スタスタ


<バタン


天龍「……」

天龍「…………」


――
―――

―沖ノ島沖―


リ級『――そんなバカな。何かの見間違いじゃないのか?』

チ級『いや、間違いないです! 確かにこっちに向かってます!』

ル級『どうした、何を騒いでいる?』

チ級『先頭の艦隊が、軽巡くらいの艦娘が1隻だけで攻め入って来たと……』

ル級『1隻? 偵察ではなく攻撃を? まぁいい。適当に始末しろと言え』

チ級『わかりま……えっ、嘘!? そんな馬鹿な!!』

リ級『どうした急に大声出して』

チ級『ぜ、前衛艦隊、全滅……全く勢いを落とす事無く、こちらに向かっています……!』

ル級『全滅!? たった1隻の軽巡にか!?』


<ザァァァァァァッ……


リ級『あ! もしかして、あれが例の……!?』


天龍「……へへへっ、さっきのは肩慣らしにもなりゃしなかったが……」

天龍「てめぇらなら、楽しませてくれるよな……?」


ル級『ニヤニヤして気色悪い奴め……迎撃体制! たかが軽巡1隻、目に物見せてやれ!!』

ガシャッガシャッガシャッ……

リ級『敵艦……射程内!』


ル級『撃ぇ!!』

ドドドドドドォン!!!


天龍「へっ……」


シャッシャッシャッシャッ!! ガキィン!!

イ級『ギャァァァッ!!』ドガァン!!

チ級『う、"打ち"返した……!?』

リ級『ふざけた真似を……かかれ!』

ザァァァァァァッ!!


天龍「ひぃふぅみぃ……一隻はル級か」

天龍「……1分だ」


ドドォン!! ドドォン!! ズバァン!! ドドォン!!

ロ級『グァァァッ!!』<撃沈>

チ級『嘘……』<撃沈>

リ級『そん……な……』<撃沈>

天龍「っと、こんなもんか」

ブン!! ビシャッ

天龍「残りはお前だけか?」ニタァ

ル級『……!』ゾクッ

天龍「flagshipのル級……軽巡が1隻だけで相手にするにはちょっとしんどいな……」

天龍「ま、力試しには丁度良い!」

ザァァァァァァッ!!

ル級『(馬鹿な……私は……こいつを、恐れている……!?)』

ル級『(軽巡! たった1隻の軽巡相手に! 何故……!?)』

ガコォン……

ル級「ガァァァァァッ!!」

ル級『軽巡如き! 図に乗るなぁっ!!』

天龍「っへへへへ!! おらぁ!!」

バッ……!!!


――
―――

ヲ級『全く情けない話ね……戦艦が軽巡にやられたなんて。居眠りでもしてたんじゃないかしら』

ヲ級『艦載機、行きなさい。調子に乗った事を後悔させてやるが良いわ』

深海艦載機群『……』ブゥゥン……

深海艦載機群『……!!!』ドガガガガガガッ!!!

ヲ級『……は?』

天龍「……やっぱり、対空能力は特に鍛えてもないのにいつの間にか上がってるな」

天龍「前は脅威だったヲ級改の艦載機が、今じゃまるで紙飛行機だぜ」

ヲ級『う、嘘……! こんなの嘘よ!! 艦載機! それから随伴艦! さっさと奴を沈めなさい!!』

リ級「グォォォォォッ!!」ドドォン!!

ト級「ガァァァァァッ!!」ドォンドォン!!

ニ級「グァァァッ!!」ダァンダァン!!

天龍「へっ……」

シャッシャッシャッ!! バシャァァン! ドドォン!! スッ! スッ! ガキィン!
ブゥゥゥゥン……ズドドドドド!!

深海艦載機『……』プスプスプス……

ト級「ガハッ……」<撃沈>

リ級『そん……な……』<撃沈>

天龍「遅ぇ……止まって見えるぜ!」

ヲ級『えっ、そ、そんな、嘘……』

シャァァァァッ!!

天龍「後はお前だけか……」チャキッ

ヲ級「ギィィィィィィッ!!(こ、来ないで!)」

天龍「うるせぇ、耳障りだ! そこをどけぇ!」

ズパァン……!

ヲ/級『あ……が……』<撃沈>


――
―――

ル級1『どうしますか!? もうすぐにでも来ます!』

ル級2『逃げるなら今しか……!』

タ級『ふざけるんじゃないわよ! 戦艦が寄り集まってたった1匹の軽巡に追い払われたなんて良い笑い物だわ!』

タ級『全艦! 何が何でも沈めなさい!』

ル級1『えぇい、ままよ!!』ドォンドォンドォン!!

ル級2『沈めぇぇぇえっ!!』ドォンドォンドォン!!

ドドォン!! ドドォン!! ドドォン!!
バシャァァン! バシャァァン!


天龍「おぅおぅ、流石は主力艦隊。派手なお出迎えだな!」シャッシャッ!!

天龍「ほらよ! チップだ!」ドドォン!!


二級「ギャァァァッ!!」<撃沈>

ル級1『どうなってるんだあいつは!? 軽巡が戦艦の間合いから撃ち返して来たぞ!』

タ級『この、生意気な!!』ドドォン!!

シャッシャッ!! ガキィン! シャッ!!
ドドォン!!

ル級2『ぐぁぁっ……!! 目、目がぁっ……!』

天龍「あばよ」

ガコッ……!
シャァァァァッ……

ル級1『魚雷……! 下だ! 危ない!』

ル級2『う、うわぁぁぁぁあああ!!!』

ドガァァァァン!!

ル級2『プスプス』<撃沈>


ル級1『くそぉっ!! あいつめ――どこへ消えた!?』

天龍「後ろだ」ドスッ

ル級『……ごふっ……(い、いつの間に……!?)』

ズバァッ!!

ル級1『……』<撃沈>

天龍「さて、と。後は……お前だけだな」ニヤッ

タ級『こ、この……!!』ドドドォン!!

ザァァァァァァッ……

天龍「情けない奴め。軽巡相手に戦艦が逃げながら砲撃たぁな」ガキィン! ガキィン!

タ級『(無理……! こんなの、私には! さっきあぁは言ったけど、こんなの無理!)』ドドドォン!!

天龍「……」ガキィン! ガキィン!

スーッ

タ級『何でこいつ私の砲撃をあんな刀なんかで弾けるのよぉ!!』

シャァァァァッ!!

天龍「じゃあな。丁度いい肩慣らしだったぜ」

スパァン!!

タ/級『や……やめ……て……』<撃沈>

―――
――


――
―――

―鎮守府 桟橋―


提督「天龍……」

鳳翔「天龍さん……」

天龍「ほぉ、わざわざお出迎えしてくれるとは感激だな」

天龍「どうだ提督。一人で沖ノ島沖の深海棲艦共を掃除してやったぞ」

提督「……無断出撃だぞ、それは分かってるな?」

天龍「じゃあ俺一人だけで沖ノ島沖を制圧した事に免じて許してくれ。普通に攻略するより手間も資源も浮いたはずだ」

提督「まさか……本当にやったのか?」

天龍「案外呆気なかったぜ。ガンカメラの記録なら……ほれ」ポイッ

……スタスタ

提督「お、おい……」

天龍「風呂だよ風呂。覗くなよ」スタスタスタ……

提督「どうしちまったんだ、天龍は……血の気の多い奴とは思っていたが、まさかこんな事をしでかすとは……」

鳳翔「天龍さんの処遇は……どうしますか?」

提督「とりあえず記録を見てから決めよう。本当に一人で全部やってしまえるんなら、営倉入りさせるより前線に出した方が良いかもしれんし」


―ドック―


明石「提督に直訴する所までは読めましたけど、まさか勝手に飛び出すなんて……」

天龍「まぁ提督がいきなり出撃許可出すとも思ってなかったしな。そこまで含めて俺の想定範囲だ」

夕張「しかしこの記録映像……無茶苦茶ね」っタブレット<ガキィン! ズドォン! ギァァァッ!!

明石「スペックだけ見れば装甲が薄くて対潜能力が無い代わりに火力が高い五十鈴さん改二なんですけどね」

明石「これだけの戦果が挙げられたのは、やはり目と感覚を極限まで鍛えたお陰でしょう」

夕張「それで、身体の方は大丈夫?」

天龍「普通に戦ったより身体がだるいような気はするが、艤装の所為か久々の実戦だったからかは分からん」

天龍「まぁ確かなのは、もう俺は今までの俺じゃないって事だ。もうただの遠足の引率じゃない。やっと、前線で戦えるんだ!」

天龍「フンフフーン♪…………ん? 何だあれは」

夕張「えっ?」

天龍改艤装(一部)『……』

明石「見ての通り、天龍さんの艤装ですよ。違法改造の時に使わなかった分の」

天龍「そんなのとっといてどうすんだよ、とっとと解体しちまえば良いじゃねぇか」

夕張「えぇっ、捨てちゃうんですか?」

天龍「要らんだろ、もう。何でも捨てずに保存するから工廠があんなに散らかってるんだろ」

天龍「まぁそのお陰でバレずに改造できたんだが」

夕張・明石「「……」」


―夜 執務室―


天龍「……んで?」

提督「……天龍。君を…………俺としては大変不本意ではあるが……」

天龍「……」

提督「……作戦メンバーに組み込む事にした。艤装の無理な改造も特別に不問にする」

天龍「っしゃ!!」

提督「但し! もう無断出撃は駄目だからな? 一応俺たち軍人なんだから、その辺の秩序は守らないと」

天龍「わーってるよ! で!? 次の出撃任務は!?」

提督「待て待て、慌てるな。特別作戦が発令されている訳でもなし、明日の午後にでも伝えるから」

天龍「分かった! 楽しみにしてるぜ! おやすみ!」ドビュン!!

提督「あぁっ、おい……行ってしまった……」

提督「……ボディビルじゃなくて艤装の無断改造だったのは……良かったのか悪かったのか……」


―翌朝 定時訓練―


龍田(改二)「て、天龍ちゃん……その艤装、どうしたの……?」

天龍「自前で改造した。もう情けない天龍ちゃんからは卒業したぜ」

天龍「……じゃあ、始めようか」

龍田「お手柔らかにね?」

暁「……始め!!」

龍田「ふっ……!」

天龍「はぁっ!!」

ギィン!! ガギィン!! ギャリリリッ!! ガギィン!!


雷「わぁ、凄い勝負ね」

電「速過ぎて何が何だか分からないのです……」

響「……多分、龍田さんじゃ手も足も出ない」

雷・電「えっ!?」


キィン! ギィン! ガィン!!

龍田「っ……くっ……!」

天龍「へへっ……!」

ガキィン! ガキィン!
スッ!

龍田「……!!!」

暁(龍田さんの喉元に天龍さんの剣が……!!)

暁「そ、それまで! 天龍さんの勝ち!」

天龍「ま、ざっとこんなモンだな」

龍田「凄かったわ……全然付け入る隙がなかった……艤装だけじゃなくて天龍ちゃん自身も強くなってるわ……」

龍田「しかも、本気じゃなかったわよね?」

天龍「そりゃそうだ。本気でやったらお前が真っ二つになっちまう」

龍田「まぁ怖い」ウフフフ

雷「凄い! 天龍さんが勝ったの、初めて見たわ!」

龍田「そうだったかしら? 実は私の方が負け越してるのよ~?」

電「そ、そうだったのです!?」

響「数少ない天龍さんの勝ち星もしつこさに根負けした龍田さんが勝ちを譲ってたのかと」

天龍「残念、勿論お互い本気の勝負でだ」


―朝食の時間 食堂―


龍田「天龍ちゃん、何だかイキイキしてるわね」

天龍「そりゃイキイキもするさ。しばらく遠足と近海哨戒ばっかりだった俺がやっと前線に戻れるんだからな」

龍田「元気なのは良い事だけれど……くれぐれも気を付けてね?」

天龍「わかってら。調子に乗り過ぎて自滅なんて情けねぇ最期はごめんだ」

龍田「分かってるなら良いのよ~…………本当に気を付けてね?」

天龍「ママか! くどいぞ!」

龍田「だってぇ……今の艤装、勝手に手を加えて勝手に作ったものなんでしょう?」

龍田「そんなので最前線まで出たら……」

天龍「手頃な海域で実戦テストはしたし整備も欠かせねぇよ。大丈夫だ心配すんな!」


―――
――


――
―――

―北方AL海域―


天龍「行くぞおらぁぁぁぁああぁああ!!!」

シャァァァアア!!
…………ズガァァァァァン!!!

リ級・チ級・ヘ級『『『プスプスプス……』』』<<<撃沈>>>

夕立「あぁっ、待って! 夕立の獲物ー!」

天龍「へっへへへ! 残念だったな、出遅れたお前が悪い!」

夕立「ブーブー!」

*

ヌ級「グォォォォォッ!!」

深海艦載機『……』ブゥゥゥゥン!!

白露「敵空母、艦載機を発進!」

時雨「皆、対空戦闘用意!」

天龍「要らねぇよ」ズドドドドド!!

深海艦載機『!?!?!?!?』ドガガガガガガッ!!

天龍「ついでに……」ドドォン!!

リ級1『ぎゃぁぁあっ! 目、目がぁっ!!』

リ級2『痛い、痛いぃぃぃっ……! そ、そうか……あいつが……報告にあった、異常な軽巡……!』

天龍「ふぅ。夕立、残りはお前にやるぞ」

夕立「えぇぇ!? あれじゃつまんないー!」

天龍「贅沢言うなよ、俺だって久々の前線でウズウズしてんだから……」ニタッ

天龍「他のザコ共もやっちまって良いぞ。重巡は目を潰したからその後で良い」

村雨(な、なんか今日の天龍さん、怖ぁ~……)


――ドガァァン!!

護衛要塞『『『グァァァッ……』』』<<撃沈>>

北方棲姫「コ、コナイデ……!」ガタガタ

天龍「どうした? 俺が怖いか?」スーッ

北方棲姫「……ッ!!」コクコクコク!!

天龍「そうか……」

天龍「……そうだ……その顔だ……!」ニヤァ

北方棲姫「ヒッ!?」

天龍「もっとだ! もっと見せろぉ! その怯えた顔! 恐怖に慄くその顔を! もっと俺に見せろぉぉぉおぁ!!」

ザァァァァァァッ!!

北方棲姫「ギャァァァァァァァアッ!!! クルナッ!! コナイデェェェェ!!」

天龍「ぎゃっはははははははっ!!!」

ザシュッザシュッザシュッザシュッ!!

*

タ級『あいつだ! あいつが例の!』

ル級『嘘!? 何でよりによってここに来たんだ!』

天龍「楽しいなぁ! 楽しいなぁ戦場は!!」ズバァン!! ズバァン!!

ワ級『ギャァァァッ!!』

天龍「夕立! お前はいつもこんなに楽しかったのか!」ズドォンズドォン!!

夕立「いつもは楽しいけど今日は天龍さんのせいで全然楽しくないっぽい!」

天龍「そうか! そいつは残念だったなぁ!!」カキィンカキィン!

ル級『くそぉ! 何なんだあいつは!!』

タ級『この、化物め!!』

天龍「ヒャハハハハハハハッ!!!」


―ドック―


白露「MVP全部持って行っちゃったね……」

春雨「私何もできませんでした……」

村雨「村雨も……」

時雨「仕方ないよ。今までずっと鬱憤が溜まってたんだから」

夕立「でも夕立は何だか……そう、不完全燃焼っぽい! 気持ちはわかるけど納得はできないよぉ!」

春雨「じゃあ……後で演習でも行きませんか?」

夕立「賛成ー!」


―リランカ沖―


バシャァァン! バシャァァン!

天龍「ほらほらどうしたflagship戦艦様に重巡様! 相手は当たれば一撃の軽巡だぞぉ!?」ヒョイヒョイ

天龍「……おらぁ!」ズバァン!!

ツ級「グァァァッ!!」<撃沈>

天龍「よし、カス野郎は潰した! 今だぞ!」

赤城「露払いありがとうございます。全機発進!」バシュバシュ!!

加賀「天龍、すぐにそこから離れなさい」

天龍「その前に……ついでだ! てめぇも沈め!!」ドドドォン!!

タ級「ギャァァァッ!!」

*

バシャァァン! バシャァァン!

天龍「ところで……」ガキィン! ガキィン!

赤城「何ですか?」ヒョイヒョイ

天龍「あんたは、いつからそれができるようになった?」ヒョイ ガキィン!

赤城「それ……あぁ、これですか。やろうと思った時にはもうできましたね」ヒョイヒョイ

天龍「流石は……やっぱり赤城は違ぇな」ガキィン! ガキィン!

赤城「いえいえ。天龍さんこそ、たった半年でものにするなんて、大したものです」ヒョイヒョイ

天龍「お褒めに預かり光栄だ」ガキィン! ヒョイ

軽巡棲鬼「クソォ!! 何デ奴ラニハ当タラナインダ!!?」ドォンドォンドォン!!


*

港湾棲姫「オマエガ……北方ヲメチャクチャニシタ奴カ……!!」

天龍「お前らがそれを言うのか? 侵略者共め。まぁそうだな、お前らの縄張りにはちょこっと入っちまったかもな」

天龍「……お前んとこのチビ助もたっぷり可愛がってやったぜ」ニタァ

港湾棲姫「……コロス!!!」

天龍「やってみやがれ……長門、陸奥! 援護してくれ!」

長門「……分かった。任せろ」

陸奥「一応気を付けてね?」

那珂「な、那珂ちゃんは下がってまーす……」コソコソ←対潜装備

天龍「おらぁ!」ブン!

港湾棲姫「コノォ!!」ガギィン!!

天龍「ほぉ受け止めたか! 流石にそこらの連中とは違うか!」

ギィン! ガギィン!! ドドドォン!! ガギャァン!!

港湾棲姫「シネェェェエ!!!」グワッ!!

天龍「生意気に怒ってるのか、化物が!」ギィィン!!

天龍「だがお前の負けだ!」バッ!

――ドガガガガガガガガガァン!!!

港湾棲姫「グァァァァアアッ!?」

港湾棲姫『(どこから……まさか、この軽巡は……この砲撃を隠すための……囮……)』

天龍「こっちには仲間の力がある。弾着確認! 流石は長門姉妹だ!」

長門「礼には及ばんさ」

陸奥「じゃ、トドメはお願いね?」

港湾棲姫「コ……コノ……」プスプス

天龍「残念、死ぬのはお前だ。じゃ、アディオス」

――ザンッ!!


―ドック―


キュィィィィィン……バチババチバチ!!

明石「それで、どうですか調子は?」

天龍「意外と戦ってる時は違和感ねぇな。これもコンバットハイとかいうヤツかな」

天龍「だが記録見たら分かると思うが、ちゃんと小刻みに休憩しながら戦ってるぞ」

夕張「艤装はともかく、身体の方もちゃんと休ませないとダメよ?」

天龍「今まで散々休んでたのにまたお休みかよ。まぁそれも承知してるさ。次の出撃の後は休暇だ」


レ級『へぇー、あいつが例のおかしな軽巡か?』

ヲ級『既に奴1隻のために甚大な被害が出てるわ。かなり危険な相手よ』

レ級『ケケケッ、面白ぇーじゃん! 久々に楽しませてくれそうじゃん!』キャッキャッ

レ級『あいつはウチがやる、手出しすんな!』

*

天龍「ほう、レ級は俺とサシの勝負がしたいらしいな」

長門「どうするんだ? 深海棲艦相手に正々堂々と戦ってやる義理はあるまい」

天龍「だな。でも折角だ、こっちも俺だけで相手してやろう。本当に危なくなったらその時にだけ頼むぜ」

陸奥「まぁ、死なない程度に頑張ってね」

天龍「おうよ」


レ級『まずは……小手調べだ!』バシュバシュ!!

天龍「魚雷か……へっ!」バッ!

ポチャンポチャン…………ドガァァァァン!!

レ級『あれ、魚雷が……爆雷にぶつけさせたのか! すげぇなあいつ!』

レ級『じゃあこれならどうだ!』

深海艦載機『……』ブゥゥゥゥン……

天龍「もう……見飽きたわ!」ズドドドドド!!

天龍「飛行機なんざ効くかァ! そろそろ本気でかかって来やがれ!!」

―サーモン海域北方―


レ級『へぇー、あいつが例のおかしな軽巡か?』

ヲ級『既に奴1隻のために甚大な被害が出てるわ。かなり危険な相手よ』

レ級『ケケケッ、面白ぇーじゃん! 久々に楽しませてくれそうじゃん!』キャッキャッ

レ級『あいつはウチがやる、手出しすんな!』

*

天龍「ほう、レ級は俺とサシの勝負がしたいらしいな」

長門「どうするんだ? 深海棲艦相手に正々堂々と戦ってやる義理はあるまい」

天龍「だな。でも折角だ、こっちも俺だけで相手してやろう。本当に危なくなったらその時にだけ頼むぜ」

陸奥「まぁ、死なない程度に頑張ってね」

天龍「おうよ」


レ級『まずは……小手調べだ!』バシュバシュ!!

天龍「魚雷か……へっ!」バッ!

ポチャンポチャン…………ドガァァァァン!!

レ級『あれ、魚雷が……爆雷にぶつけさせたのか! すげぇなあいつ!』

レ級『じゃあこれならどうだ!』

深海艦載機『……』ブゥゥゥゥン……

天龍「もう……見飽きたわ!」ズドドドドド!!

天龍「飛行機なんざ効くかァ! そろそろ本気でかかって来やがれ!!」


レ級『何だぁアイツ、かかって来いって言ってるのか? 上等だぁ!!』

ザァァァァァァッ!! ドドォン!! ドドドォン!!
バシャァァン! ガギィン!! バシャァァン!

天龍「面白れぇ、面白れぇぞてめぇ! 通常種最強と呼ばれるだけの事はある!」

ドドォン!! ドドドォン!! ガシュッ…………ドガァァァァン!!
ズドォン! ズドォン! バシャァァン!

レ級尻尾『グァァァッ!!』

ブォン!! ガギィン!! キィン!! ガキィン!!
ドドォン!! ガキィン!

天龍「へぇ! 便利なもんだなぁその尻尾! 三つ目の腕みてぇだな!」

ズドォン! ガキィン! ガキィン! ドドォン!!
ギャリギャリ……ガギィン!! ズドドォン!!

レ級『ギイアアアァァッッ!!(中々強いなお前! 楽しいぞ!)』

天龍「何て言ってるのか分かんねぇが……楽しいって言ってるのか?」

天龍「……俺もだ」ニタァ

レ級『……』ニタァ


加賀「気色悪い顔で睨めっこしてるわね。あれは何の儀式なのかしら」

赤城「大食いチャレンジに挑んでいる時の加賀さんも同じ顔をしている時がありますよ」クスッ

加賀「!?」


レ級『楽しい……あぁ楽しかった……でも、この辺でお終いだ』

レ級尻尾『グォアアアアアッ!!』グルッ!

天龍「うおっ!?」

ズドドォン!!!
ドガァン!!

赤城「天龍さん!!」

天龍「痛てて……モロに喰らっちまった……」<大破>

天龍「……だが……」

レ級尻/尾『グアアッ……!?』

ズル……ドシャァッ
……ズバババ!! ……ブシュッ!

レ級『ま、マジか……完全に……不意打ちしたつもりだったのに……逆に、あの一瞬で……切り刻まれるなんて……』<大破>

天龍「……あばよ、楽しかったぜ」

……ズバッ!!

レ級『……あぁ、ウチも……楽しかっ…………』<撃沈>


天龍「ふぅ……」

陸奥「天龍! 大丈夫!?」

天龍「あぁ、普通に自走できる。他の敵艦は?」

赤城「あなたがレ級と戦っている内に全員海の底です」

天龍「ははっ、つくづく頼もしい仲間達だぜ」


―ドック―


天龍「今更だけどよ、直るのかこれ? 初めて大破させちまったが」

明石「一応工廠の妖精さんも艦娘の艤装として認識してくれていますし、直る筈です」

明石「修理完了予定は……同レベル帯の重巡と同じ位ですね。軽巡にしてはちょっと時間かかります」

天龍「まぁそれは分かってた事だしな。んじゃ、俺はそろそろ部屋に戻って休む」

明石「是非そうしてください。おやすみなさい」


――
―――

―廊下―


天龍「はぁ……はぁ……ぅぐっ……! ……はぁ……」ズルズル

天龍「部屋……俺の、部屋は……」フラフラ

グニャ~……

天龍「くそっ……視界が……」


表札『天龍』


天龍「ふぅ……やっ……と……」

<ガチャッ……バタン

天龍「う、うぐ……」ドサッ

……ズキズキズキ!

天龍「あぐ……あ、頭が……」ズキズキズキ

天龍(……こころなしか、あの艤装の副作用が……段々酷くなってる気がする……)

天龍「……」

天龍「負けるか……負けてたまるか、こんな程度で……」

天龍「……」

夕べは寝落ちしてすみませんでした
続きはまた夜に

遂に公式で天龍改二が実装されましたが、本SSはあくまで二次創作という事で公式の天龍改二は敢えて無視するものとします


―数日後 南方海域前面―


伊勢「それにしても凄いよねー。自力で改二になっちゃうなんて」

長門「まぁ正確には改二とも少し違うんだがな」

扶桑「そろそろ前哨艦隊と遭遇するわ。天龍、対空用意、お願いね」

天龍「了かーい! 天龍ちゃん行っきまーす☆」

鈴谷「えっ……」

熊野「て、天龍さん……?」

天龍「……ん……? 俺今、何て言った……?」

長門「い、いや。何でもない。なぁ?」

伊勢「そ、そうだね! うん! 対空戦闘頼むよ!」

天龍「あ、あぁ……」ジャキッ

*

タ級『喰らえ!!』

リ級『沈めェこのバケモンがぁぁぁ!!』

ヒュルルルルル……
ガキィン! ガキィン! ガキィン! ガキィン!

天龍「何か俺ばっかり狙われてる気がするなぁ」

鈴谷「人気者は辛いね~」

伊勢「お陰でこっちは狙いやすいから楽で良いよ……っと!」ドドォン!!

タ級「グァァァッ……」<大破>

伊勢「んじゃ、トドメはお願いねー!」

天龍「キラリーン☆ 天龍スペシャルを喰らいやがれぇぇええ!! ……はっ……!?」ヨロッ……

扶桑「えっ?」

長門「どうした天龍!?」

天龍「いや、何でもねぇ! だりゃあ!」ズバァン!!

タ級『おの……れ……』<撃沈>

天龍「……」


―入渠ドック―


扶桑「今日の天龍……何かおかしくなかった?」

伊勢「うん……何度か急に変な事言い始めるし……」

鈴谷「『キラリーン』って、何か阿賀野みたいだったよね。その前は那珂っぽい感じだったし」

熊野「キャラを変える事にしたんでしょうか」

伊勢「いやキャラとか言うのはやめようよ……」

長門「それで、当の天龍は何処へ行った?」

扶桑「後で行くと言っていたけれど……」


―ドック近く 倉庫裏―


天龍「う……くそ……」フラフラ

ズキズキズキ

天龍「あぁぁ……あた……ま……が……」ヨロヨロ

天龍「はぁーっ……はぁーっ……ぅぐ……ぉぇっ……」

天龍「こんな……こんな、ぐらいで……」

天龍「路線変更しな…………ぁ゛あ゛っ! 引っ込め!! 出て来るな!!」

天龍「くそぉっ…………」ゼェゼェ


―更に数日後 サーモン海域―


三隈「またこの海域の掃討ですの……毎度毎度どこから出て来るのでしょう……」

雲龍「正に海の底から湧いて出ている様ね」

サラトガ「……敵艦発見! 装甲空母鬼も1隻確認しました!」

天龍「よーし、やせ……ん゛あ゛ぁ゛!! ……陽のある内に片付けるぞ!」

天龍「あのデカいのは俺の獲物だ。横取りは無しだからな!」ドギュン!!

瑞鶴「はいはい。一応、気を付けてね」バシュバシュ!!

装甲空母鬼「オ前カ……最近調子付イテイルノハ!』

天龍「だったら何だってんだ!!」

装甲空母鬼「私ガ沈メテアゲル!!」ドドドドド!!

天龍「上等だ! やってみやがれぇ!!」ガキィン!ガキィン!ガキィン!

――
―――

*

―――
――

天龍「へっへへへ……」MVP!

瑞鶴「ホント、最近大活躍ね。」

三隈「三隈も改造してみようかしら……」

サラトガ「おめでとうございます!」

天龍「ぴゃあっ! やった……え゛ぇ゛い! 重巡洋艦の良いとこ……黙れ、出て来るな!」

雲龍「て、天龍……どうしたの? よくある中二病ごっこ?」

天龍「キラリー……えぇい、やめろ! 俺の身体だぞ! 俺の……く…………!」ガタガタブルブル!!

瑞鶴「天龍!? きゅ、急にどうしたの!? 落ち着いて!」

天龍「あ、あぁぁ…………」ブルブル…

天龍「あ゛ぁぁ゛あぁ゛あ゛あ゛ぁあ゛あ゛ぁあぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

……ドシャッ

雲龍「天龍!」

サラトガ「天龍! しっかり!」

瑞鶴「提督! 大変なの! 天龍が急に――」


―――
――


――
―――


天龍「――はっ!?」パチッ

天龍「ここは……」

明石「ドックです。瑞鶴さんたちが運んできたんですよ。今は運び込まれてから半日後です」

夕張「事情は聞いてるわ。突然何かに憑りつかれたみたいな言動をし始めて、直後に意識を失ったと……」

明石「話して貰いますよ、何があったのか」

天龍「…………改造艤装を使い始めて少しした頃から……段々、戦った後の反動が大きくなって行ってたんだ」

天龍「始めは軽い眩暈だったが、段々頭痛、吐き気もし始めて、それも重くなって行って……」

天龍「その内、歩くどころかただ立ってるだけでも辛くなって来たが……」

天龍「南方海域で戦った辺りから、無意識に他の艦娘が出て来る様になった」

夕張「他の艦娘?」

天龍「無意識に那珂や阿賀野の口癖が飛び出したり、自分の事を重巡だと思う様になったり……」

明石「那珂、阿賀野、重巡……それってもしかして……!」

天龍「……あぁ。改造の時に取り込んだ艤装の本来の持ち主だ」

夕張「艤装に天龍さんの意識が乗っ取られつつある……艤装に精神汚染されてるって事?」

天龍「みてぇだな」

明石「……!」

――
―――

夕張「どんどん天龍だった部分が減っていくわね……」

明石「最終的に出来上がる『天龍違法改』は果たして天龍と呼んで良いんでしょうかね」

天龍「まるでテセウスの船だな。まぁどうだって良い、俺の自我がある限りは俺だ」

―――
――

明石「じゃあ、このままだと天龍さんの自我は……」

天龍「このままならな。またしばらくは修行の日々だ」


夕張「まさか、まだあの艤装を使うつもり!?」

明石「駄目です! 危険過ぎます!」

天龍「危険なんざ百も承知だ! しょうがねぇだろ! 他にどうやって強くなる!」

天龍「重巡の主機を初めて積んだ時だって辛かったがしばらく訓練すれば慣れた。精神汚染ぐらい……」

夕張「強くなる……強くなる……他にないの!? 貴女自身の存在が無くなってしまうかもしれないのよ!?」

天龍「今までと何が違う!? 性能で一部の駆逐艦にも劣る軽巡! たまの哨戒しか仕事がない軽巡! そんなの居ないのと同じだろう!!」

<ガチャッ!

龍田「いいえ、違うわ!」

天龍「龍田……」

龍田「天龍ちゃんが消えて無くなっちゃうなんて……そんなの絶対に嫌……」

龍田「駆逐艦の子達だって悲しむわ。天龍ちゃんの思ってる以上に、天龍ちゃんを慕っている子はいっぱいいるのよ? 提督だって……」

天龍「そいつらが好きなのは『駆逐艦より性能の低い情けないイキリ軽巡』の天龍だろう!」

天龍「『数値以上の性能を発揮する強い軽巡』の天龍を誰が求めている!? 否! 俺の他に誰一人『強い天龍』を求めなかった!」

天龍「どいつもこいつも『情けない天龍』を見て笑いの種にしていた! それが何よりの証左だ!」

天龍「いつでも誰でも馬鹿にできて! 指を差して嘲笑える艦娘である事が求められる理由なら消えて無くなった方がマシだ!!」

龍田「……っ!!」

――バチィン!!

天龍「……!」

龍田「……天龍ちゃんの……馬鹿っ……!」グスッ

<タッタッタッタッタッ……!


天龍「……」ジンジン

夕張「……」

明石「……」

天龍「俺の……艤装は、どこだ……?」

明石「……提督の指示で、工廠のある区画に封印しました。研究・調査が完了次第、解体します」

天龍「何……?」

夕張「仕方ないでしょ……安全に使えない兵器なんて、ある意味敵より怖いわ」

天龍「う、嘘だろ……そんな……」ブルブル

明石「天龍さん……こればっかりは……」

天龍「嫌だ……嫌だぞ、そんなの……!」

天龍「また……また俺に、無駄飯食いのポンコツに戻れっていうのか……?」

天龍「嫌だ! そんなの絶対に嫌だ!」

天龍「半年! 半年だぞ! いや自分で艤装をいじる事を覚えた所まで含めたらそれ以上だ!」

天龍「努力して! 研究して! 考えに考えて! 血反吐吐く思いでようやく作り上げたのがあの艤装なんだぞ!」

天龍「それを! それを奪うのか! 俺の血と汗の結晶を!」

……ゴソゴソ

天龍「見ろ……! 北方AL海域で獲ったMVP勲章だ! 5年振りに獲ったんだぞ! あの艤装のお陰でだ!」

天龍「なのに……! 折角戦える様になったのに……!」


夕張「……貴女の言った通り、待てばじきに正式な天龍改二が開発されるわ。それを待ちましょう」

明石「正式な、貴女だけの艤装です。それなら安全に戦えますし、ね?」

天龍「そんなのはクソ喰らえだ! 何の為の自前改造だ!」

天龍「何も知らない奴に……オモチャでなくなる事だけ危惧している奴に!」

天龍「『自然にゆっくり強くなればいい』とか『やっぱりのまま元が一番』とか、『無理をしなくていい』とか『そのままの君でいてほしい』とか!!」

天龍「俺がどれだけ苦労したか! どれだけ辛酸を舐めさせられたかも知らないクセに!」

天龍「そんなありきたりの常套句で!! 俺の努力を否定されてたまるかァ!!!」

天龍「ハァーッ……ハァーッ……」

夕張・明石「「……」」

天龍「何でなんだ……何で俺は……戦っちゃいけない……」

天龍「どうして俺は……情けないポンコツでなくちゃならないんだよ……」

夕張「天龍……」

明石「……あと1、2時間もすればドックから出られるでしょう。それまでは安静にしていてください」

ガチャッ……バタン

天龍「……」


――
―――

―数日後 食堂―


天龍「やっと真っすぐ歩ける様になったな……」っ焼き魚定食

天龍「ふぅ……」パン……パキッ

鬼怒「ありゃ、珍しい人がいる。隣いい?」

天龍「ん……? 誰かと思えば、もはや遠征での使いやすさでは俺など及ぶべくもない鬼怒様じゃねぇか。隣は良いが遠征の仕事は良いのか?」

鬼怒「いきなり敵意剥き出し! 今日はお休みなんだよー。いただきまーす!」

天龍「ハァーッ……」

鬼怒「そういえば、最近凄かったよねー! 天龍の活躍! 一人で艦隊1つ分の戦果なんて!」

天龍「……何だそれは? しばらく出撃できない俺を馬鹿にしてるのか?」ギロッ

鬼怒「ひぃっ!? 違うよぉ!」

鬼怒「鬼怒が連れてる駆逐艦たちも皆言ってるよ? 最近の天龍凄いって」

天龍「……」

鬼怒「怖いくらい迫力あるとか、何で今まで埋まってたんだろうって!」

天龍「……明石か? 夕張か? それとも龍田か?」

鬼怒「えっ、何の事?」

天龍「どうせその辺に俺の喜びそうな事言えって言われたんだろう」

鬼怒「何でそんなに卑屈になってるのさ。そんなんじゃないよ。本当だよ!」

天龍「どうだか……」

鬼怒「もう……! 皆、天龍を見直してるんだよ。変な言い方だけど……」

鬼怒「もう今までの天龍じゃないんだって! 天龍は本当に凄く強くなったんだって! 憧れるくらい格好いいんだって!」

鬼怒「でも心配でもあるんだよ。頼れる上役が居なくなっちゃうんじゃないかって。急に活躍し出したからこそ無理し過ぎちゃうんじゃないかって」

鬼怒「……阿武隈がそうだったもん。改二になってから特別海域にも引っ張りだこになったし……」

天龍「……」

鬼怒「まぁ阿武隈は正規の改二だし、単純に比較はできないけど……」

鬼怒「とにかく! 天龍が思ってるほど、皆が皆天龍の事を馬鹿にしてる訳じゃないんだよ!」

天龍「……ふん…………」

天龍「…………参考くらいにはしておく」

鬼怒「……そっか」


―鎮守府 桟橋―


天龍(……)

――
―――

鬼怒『あ、忘れるところだった……これ! 鎮守府に居た駆逐艦の子達が書いたお見舞いの色紙!』

天龍『何だ、やっぱり仕込みか』

鬼怒『違うよー! 会ったら渡してって暁ちゃんから渡されたの! 今龍田は出てるから、その代わりに鬼怒にって!』

―――
――

天龍(……)っ色紙

雷『早くよくなってね!』

電『おからだ、おだいじに』

夕立『次は夕立が勝つからね! それまで負けちゃダメだからね!』

天龍(……)

天龍(……今更、何を迷ってるんだ、俺は……散々考えた事だろうが……)

天龍(正規の改二じゃ絶対……俺が思う様には戦えないから……だから危険は承知でやったんだ、改造を!)

天龍(死ぬなら海で死にたい……畳の上なんて御免だ……)

天龍(……畳の上……なんて……)

天龍(…………くそっ……何なんだ、この感じ……!)

天龍「どうすれば良い……どうすれば……」


―鎮守府 屋内―


<ザワザワ……バタバタ

天龍(何だ、騒がしいな)

天龍「あ、おい提督! 何があった!」

提督「近海で対潜哨戒してる艦隊が想定外の艦隊に出くわした!」

提督「龍田とガンビア・ベイ、それから雷と電だ! 皆対潜装備だから水上艦には対処できないんだ!」

提督「急いで増援を送ってやらないと……」タッタッタッ……

天龍「……」

天龍「…………」ギリッ

タッタッタッタッタッ……


―工廠―


ガチャッガチャッガチャッ!!

天龍「くそっ……どこだ! 何処へやった!」

天龍「全く……こんなに散らかしやがって!! 何処に何があるか分かりゃしねぇ!」

天龍「早く……早く見つけねぇと……!!」

ガサゴソガサゴソガサゴソ!!

天龍「……はっ!?」

天龍改艤装(一部)『……』

天龍「……」

天龍「……」ガサガサガサ!!

天龍(未改造)艤装『……』

――
―――

天龍「そんなのとっといてどうすんだよ、とっとと解体しちまえば良いじゃねぇか」

夕張「えぇっ、捨てちゃうんですか?」

天龍「要らんだろ、もう。何でも捨てずに保存するから工廠があんなに散らかってるんだろ」

―――
――

天龍「……とっといて正解だったな」


―鎮守府近海―


バシャァァン! バシャァァン!

電「うぅぅ……」

雷「大丈夫よ! もう助は呼んだわ!」

ブゥゥゥゥン……バシャァァン! バシャァァン!

龍田「ベイちゃん……艦載機は……」

ガンビア・ベイ「無理無理無理……多過ぎるぅっ……」

龍田「くぅっ……」

ブゥゥゥゥン……ブゥゥゥゥン…………ズバァッ!!
ズドォン! ズドォン! バシャァァン!

龍田「いつまで持つかしらねぇ……」

電「も、もう……だめなのです……電たちは……もう……」

雷「諦めちゃダメよ! しっかり!」

ドドドォン!!

龍田「! 雷ちゃん! 電ちゃん!」

雷・電「「――ッ!!」」


――ザァァァァァァッ!!
ガキィン!

天龍(改)「ふぅ……ギリギリで間に合ったな」

龍田「天龍ちゃん!?」


天龍「龍田……俺が間違ってたとは言わねぇぞ」

ドドドォン!! ドドドォン!!
ガキィン! ガキィン!

天龍「その辺の話はまた後だ……とにかく今は! お前らを生かす!」

ブゥゥゥゥン……ズドドドドド!!
ガキィン! ガキィン!

天龍「くっそ……急に元の艤装に戻したらパワーの無さが際立つな! 余計に腹が立つわ!」

ガキィン! ガキィン! ガキィン!

天龍「お前らとっとと逃げろ!」

ベイ・電「「……!」」コクコクコク!!

雷「……応援が来るまで、絶対に沈んじゃだめだからね!」

ドドドォン!!
バシャァァン!

龍田「きゃっ!! ……逃がしてはくれないみたいね……」

天龍「くそったれ……」

ドドォン!!

ヘ級「グッ……」<小破>

ホ級「カァッ……!」カキィン!

天龍「ちっ! この艤装じゃ当たっても効かねぇな! 近付くしかねぇが……」

ドォンドォンドォン!! バシャァァン! ガキィン! ドガァン!

天龍「ぐわっ!!」<小破>


龍田「天龍ちゃん!」

天龍「騒ぐな掠り傷だ!」

ドォンドォン!!
バシャァァン! バシャァァン!

天龍「くっそ……ベイ! 友軍は!」

ガンビア・ベイ「えぇと……あと、15分!」

天龍「長過ぎだ……それまで持てば良いなぁ!」

ドォン!! ドォン!! ガキィン! ガキィン!

ヘ級『アイツ……最近見ナカッタ変ナ軽巡カ!』

ホ級『デモ弱ッテルミタイダ! 今ナラ倒セル!』

ドドドォン!! ドドドォン!!

天龍「ちぃっ……攻撃が激しくなって来やがった……さては俺が本調子じゃないって感付きやがったな!」

ドォン!! ドォン!! ドォン!!
バシャァァン! バシャァァン!

天龍(ふざけやがって……あの艤装さえ使えれば……! この程度の連中に!)

天龍(力が……! 力があれば!! こいつらを守れるのに!!)

ガンビア・ベイ「あと……10分……!」

ドドドォン!!

電「っ!!」

天龍「危ねぇ!!」バッ!

ドガァン!

天龍「ぐぁぁああっ!!」<中破>


天龍「畜生め……! ふざけ倒せやぁっ!」ドォンドォン!!

電「て、天龍……さん……」

天龍(何で……こんな時に、何で俺は弱い……!!)

天龍(力が!! 強さがあれば!!)

ドドドォン!! ドドドォン!!
ドガァァァァン!!

天龍「……ぁっ……」<大破>

天龍(こいつらを……! 仲間を……! 守る力があれば!!!)

ホ級『今ダ!』

ヌ級「グォォォォォッ!!」バシュバシュ!!

龍田「天龍ちゃん!」

雷・電「「天龍さん!!」」

ドドドドドドドドドドォン!!!

天龍「――」

ガンビア・ベイ「あ、あぁぁ……!」

龍田「天龍……ちゃん……」


天龍「――」グラッ

――ズシャッ
ブクブクブクブク……

ホ級『ハハハハハッ! ヤッタゾ!!』

ヘ級『残リハザコダケダ!』

電「うそ……」

雷「そん……な……」

ガンビア・ベイ「後……5分……だったのにぃ……」

龍田「天龍……ちゃん……」


――バシャァァン!!!


天龍(?)「……」バッ!

ホ級『ナ、ナンダ!?』

天龍(?)「……」ブン!

――ドスッ!!

ホ級『……ハ……?』ブシュッ!

ザァァァァァァッ!
ザシュッザシュッザシュッ!!

ホ/級『ナン……デ……』<撃沈>

ヘ級『ナンダコイツ、急ニ……』ドドドォン!!

天龍(?)「……」サッサッサッ

――ズバァン!!

ヘ/級『……ヘ?』<撃沈>

天龍(?)「……」ドドドォン!!

イ級×2「「ギャァァァッ!!?」」<撃沈>

天龍(?)「……」クルッ

ヌ級「ヒッ!?」

天龍(?)「……」ザァァァァァァッ!!

ヌ級「ヒ、ヒィィィィィィイッ!!」バシュバシュ!!

天龍(?)「……」ズドドドドド!!

ボチャンボチャンボチャン……

ヌ級「ア、アァァァ……」

天龍(?)「……フフフ……どうだ、怖いか?」

――ズバァン!!

ヌ級「ギャァァァッ……」<撃沈>


天龍(?)「フゥー……」シャッ

龍田「て、天龍ちゃん……なの?」

天龍「……どうやら、そうらしいな。あぁ間違いなく、俺は天龍だ。お前らの良く知るな」

電「よ……よがっだの゛です゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!」ブワッ

雷「もうだめかと思ったわよぉお゛お゛!」ブワッ

ガンビア・ベイ「良かった! 本当に良かったぁぁああ゛あ゛あ゛!!」ブワッ

天龍「うわぁ、何だ何だ急に!!」

龍田「天龍ちゃん……」

天龍「龍田……」

龍田「ゴメンね、心配させて」

天龍「それは……お互い様だ」

電「と゛こ゛ろ゛で……その装備はどうしたのです?」

龍田「そういえば……前のとも元のとも違うわね」

天龍「あぁ、これか? ……何だろうな」

雷「え、どういう事……?」

天龍「駄目だ沈んだ……って思ったら急に力が湧いて来て……気付いたらこうなってた」

龍田「何……それ……」クスッ


ザァァァァァァッ!!

夕立「大丈夫!? 応援に来たっぽい!! ……あれ?」

天龍「よお夕立、遅かったな。獲物はまた俺が全部頂いちまったぜ」

夕立「えぇぇぇぇ!?」ガーン

川内「……あれ、天龍!? 何でいるの!? 確か艤装が使えないって……」

天龍「それは後で話す……あー、しまった……また無断出撃しちまった……」

ガンビア・ベイ「また?」

天龍「前の改造した時に勝手に出撃してな。今度無断出撃したらお咎め無しとは行かないって提督に警告されてたんだった……」

夕立「えぇぇえ!?」

天龍「……どうしようか」

川内「どうしようってって……」

龍田「……」


―鎮守府 桟橋―


提督「皆! よく無事で戻ったな!!」

電「司令官さぁぁあん!!」ダキッ!

雷「もう会えないかと思ったわぁぁああっ!」ダキッ!

提督「よしよし……所で、天龍……また艤装が変わってるのは一旦置いておくとして……無断出撃2回目だな」

天龍「言い訳はしねぇ」

提督「良い覚悟だ。ともあれ罰として1週間営倉に……と言いたい所だが……」

天龍「?」

提督「お前たちが帰って来るまでに鎮守府内に残った艦娘が一斉に無断出撃し始めた。それも全部まとめて処罰するだけの営倉はこの鎮守府には無い」

提督「本当に、次こそは無いからな!」

天龍「おいおい、良いのか?」

提督「……どうしても入りたいなら入っても良いぞ?」

龍田「……―☆」パチッ

天龍「……フフッ……ご厚意に甘えさせてもらうさ」

提督「……よし! さぁ! まずはドックに行ってこい! ゆっくり浸かれ!」

龍田「じゃあ、ね。また後で」

天龍「あぁ……」


―工廠―


天龍「で、調査結果は?」

明石「前例の全くない事なので、全てが推測ですけど……この天龍さんの艤装は、『天龍改二』と見て間違いないです」

天龍「違法改造じゃなくてか?」

夕張「正真正銘、天龍専用の天龍改二ね。更に正確に言えば、『ウチの天龍オリジナル』の天龍改二って所かしらね」

夕張「ついさっき本部で計画として持ち上がった正式な天龍改二とは、仕様も性能も全然違うし」

明石「今の所、こんな事が起きた詳しい原因は分かりませんが、天龍さんの中から生まれた天龍さんの艤装には間違いないです。以前の様な不具合を起こす事も無いでしょう」

天龍「確かに……アレを使った時のだるい感覚は無かったな」

夕張「性能を見てみると、違法改造と比べて火力と出力は若干落ちた代わりに、対空が更に上昇、回避・命中もぐんと上昇……装甲も……」

明石「違法改造の艤装に比べてちょっとだけ守備向けですね。ちょっとですけど」

夕張「本人の艤装になった事で親和性も上がった事も考えると、プラマイで言えば結果的にはプラスかも。天龍本人の超絶センスが失われた訳でもないし。パワー型からテクニカル型になったと言えるかもね」

天龍「……ちっ……こんな事ならもっと攻めたいって祈るんだった……」ボソッ

明石「何か?」

天龍「……何でも」

夕張「とにかく……天龍の正式な艤装でなきゃこうは行かなかった可能性は高いわね。違法艤装で行ってたら、今度こそ天龍の意識が消滅するか、良くて多重人格者になってた可能性が高いわ」

明石「ね? 捨てないでおいて良かったでしょ?」

天龍「うるせぇ、そのくだりはもうやった!」


<ギャーギャー
<アハハハハ

―――
――


――
―――

―1ヶ月後 北方AL海域―


村雨「天龍が新しい艤装と一緒に復帰してから、また戦果が伸び始めたわね」

天龍「前ほど無茶はできなくなったけどな」

時雨「それでも十分凄いよ。並の軽巡じゃ真似できない。勿論僕にだって」

白露「駆逐艦寮でも評判だよ! 最近の天龍さん、凄くカッコいいって!」

夕立「特に六駆の4人は毎日の様に天龍さんの活躍を熱弁してるっぽい~」

天龍「そうか? 可愛い奴らめ……嬉しい限りだ」

春雨「私も……早く改二になりたいです……」

天龍「……俺の口からは何とも言えんが……艤装を勝手に改造するのだけはやめとけ」

春雨「は、はい! それはもちろん!」

白露「あっ! いっちばん先に敵艦発見! 砲雷撃戦用意!」

天龍「っし! おしゃべりはお終いだな」スラッ……

天龍「夕立、此間は競り負けたが、今日は俺が全部頂くぞ?」

夕立「ヨーイドンで始めるなら負けないっぽい!」

村雨「じゃあ位置について……ヨーイ……ドン!」ズドォン!

天龍「へっ!」シャァァァァッ!!

夕立「ぽーい!」シャァァァァッ!!


リ級『来た……奴だ! 例の、鬼の軽巡だ!』

チ級『このっ、このっ! 来るなぁっ!!』ドォンドォン!!


ヒュンヒュン……ガキィン! ガキィン!
ザァァァァァァッ!!

――バッ!


天龍「フフフ……怖いかぁ……?」





おしまい


以上となります。

皆々様、ありがとうございました。
こんな改二だったら良いなぁSSとして書いたはずが、あり得たかもしれないもう一つの改二SSとして完成するとは思いませんでした。

誰が何と言おうと、私の鎮守府の天龍は情けない負け犬などではなく、性能の低さを腕でカバーする古強者キャラです。
強者キャラの天龍が居たって良いじゃない……

あと誰にもバレなかったので白状すると、展開の元ネタはアイアンマンです。


読んで頂いた方、ありがとうございました。



以下、過去作のステマ
提督「赤城が飯を食わなくなった!?」
提督「赤城が飯を食わなくなった!?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1423126647/)

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