【艦これ】高雄「大規模作戦を越えて」 (134)

とある鎮守府の高雄さんのお話。

※下のスレッドの続きとなっています。前スレッドを踏まえた内容もありますので、こちらを先に読んでいただければ幸いです。

高雄「賑やかな執務室」
高雄「賑やかな執務室」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1527074369/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1531139090


七月某日 執務室

バタバタ

大淀「提督!」

提督「どうした?」

大淀「先ほど、作戦本部からこのような連絡が」

提督「なになに?」



提督「『先日提出された報告書の内容を鑑み、貴鎮守府の艦隊の前線投入命令は撤回する』」

高雄「撤回、ですか」

提督「撤回らしいね。ただ、続きがある」

提督「『代わって貴鎮守府には前線への輸送船団護衛任務を命ずる。詳細は別添の資料を参照せよ』」

大淀「こちらがその資料です」

提督「ありがとう」

提督「それから?『貴官の報告は遺憾ではあるが、その率直さは大いに評価するところである。今後もその率直さをもって麾下の艦娘を統率されたし』だと」

高雄「顔は立てていただけたようですね」

提督「みたいだね。前線参加を辞退してこの回答なら上々だ」


提督「ふむふむ……そうか、民間船もいるのか……」

高雄「行動計画を決めますか?」

提督「うん。すぐに来られるのは……霧島だな。霧島を呼んでくれるかい?」

高雄「了解しました」



……
霧島「状況は理解しました。では行動計画と艦隊編成を検討しましょうか」

提督「頼めるか?」

霧島「頼まれましょう。何名かお借りしても?」

提督「もちろん。この部屋でやるかい?」

霧島「ええ。お許しが出ればすぐにでも」

提督「じゃあすぐに頼む」

霧島「了解です」


翌日

霧島「いかがでしょう?」

提督「うーん……」

高雄(あら?いつになく険しい表情ね)

霧島(いつもならこんなに悩むことはないと思うのだけど)

提督「図上演習はやったかい?」

霧島「いえ。取り急ぎ計画を立てただけですので、図上演習はまだ」

提督「そうか」

霧島「今お時間をいただければすぐにいたしますが」

提督「執務は少し止めても大丈夫かな」

高雄「ええ。問題ありませんよ」

提督「じゃあやろう。名取ー、この間の作戦会議で使った海図出してもらえるー?」

名取「は、はい、すぐお持ちしますね」パタパタ


高雄「準備完了しました」

提督「よーし。順を追って戦力の推移をみていこうか」

高雄「はい」


五十鈴「まず第一段階、敵の潜水艦隊を掃討」スッ

霧島「第二段階で前衛の機動部隊基幹の艦隊を撃破」スッ

龍驤「この時点で前線に泊地に最初の船団を送るんやな」

霧島「命令ではそうなっているわね」

摩耶「じゃあ出すぜ」スッ

提督「……」


赤城「……なるほど」

霧島「ああー……ごめん、やっぱり考え直すわ」

摩耶「ん?何で?」

赤城「この機動部隊が進出してきたら、船団は海の藻屑ですね」コツコツ

摩耶「げえっ!」

比叡「ほんとだ!何で事前の索敵に引っかかってるのに放置してるの!?」


霧島「この機動部隊は確か、動きが鈍く練度も低いため、脅威度が低いと判定されていたのよね」

赤城「そうです。空母と重巡各四隻が基幹の部隊で、敵主力を撃破する上では比較的重要度が低いと判断された部隊です」

五十鈴「でも水雷戦隊基幹の護衛艦隊からしたら脅威なんてもんじゃないわよこれ」

高雄「敵艦隊が動かない、と希望的観測で作戦を決めるわけにはいきませんよね」

霧島「参考までに聞くけど、赤城がこの艦隊にいたらどうする?」

赤城「かの艦隊の索敵能力が未知数ではありますが、捕捉できればみすみす見逃す理由はありませんね。全力を持って船団を叩きます」

霧島「そうよね。そう言うと思ったわ」


摩耶「相手の練度が低いならどうにかならねーかな?」

長良「私たちだけならどうにかできるかもね。でも足が遅くて戦場にも慣れてない輸送船守って逃げ切れる?」

摩耶「あー……それはさすがにきついな」

霧島「この機動部隊に対抗するために必要な戦力は?赤城だけでは厳しい?」

赤城「敵の練度が低いとはいえ、四対一では数に差がありすぎますね。少なくともあと一隻は必要です。私抜きの場合なら三隻、あるいは飛鷹型の二隻で組むべきですね」

龍驤「それでも船団守り切るのが限界やろなあ。二隻で行くなら艦戦かなり多めにしとかなあかんやろうし」


赤城「更に、もしこの機動部隊を撃破するなら空母だけで四隻は投入したいところです」

霧島「そこまでやるなら三個艦隊ぐらい投入しないといけないわね」

五十鈴「三個艦隊同時投入なんてできるの?」

大淀「二個艦隊は同時投入可能ですが、それ以上は私たち自身の指揮能力の関係で避けるべきとされています。三個艦隊以上の同時投入は、前例も多くありません」


摩耶「じゃあどうする?」

霧島「二個艦隊の中に無理矢理機動部隊組み込む?」

五十鈴「でもこれ以上駆逐艦減らすのはまずくない?」

赤城「護衛を行う二個艦隊に機動部隊一個艦隊が同行するという形式ならどう?指揮系統を分けてしまえば指揮能力の問題は解決すると思いますが」

比叡「ああー」

霧島「それなら何とかなります……かね」

長良「明日明後日の訓練内容を変更して試してみますか?」

霧島「今からでも変更できる?」

長良「はい。訓練対象艦と内容を伝えていただければすぐにでも」

霧島「それじゃ、すぐに新しい案の詳細を決めるわね」


赤城「編成は護衛部隊二個艦隊と機動部隊一個艦隊で決まり?」

霧島「司令、それでよろしいですか?」

提督「うん。そうしてくれ」

霧島「了解しました。すぐ行動計画策定にかかります」

提督「頼んだ。長良も負担をかけるけど、よろしくな」

長良「大丈夫です!お任せください!」



提督「さて、どこで執務が止まってたんだっけな」

高雄「工廠関係の決裁ですね」

提督「そうだった。じゃあそれからやろう」

高雄「はい」


霧島「お待たせしました。船団護衛の修正案です」

提督「ありがとう」

提督「ふんふん……やっぱり燃料弾薬はかなり使うな」

霧島「よろしいですか?あまり使いこむと、鎮守府の継戦能力低下が心配ですが」

提督「懸念はあるが、ここは下手に使い惜しむ局面でもないだろうと思うよ」

霧島「もっともです」

提督「それに、念のため本部に資源の追加を要請しておいた。まだ通るかは分からないけどね」

霧島「敵主力撃破のためならともかく、船団護衛のための資源追加要請が通るでしょうか?」

提督「分からんね。大淀には想定される脅威を強調して伝えるように頼んでおいたけど、どうなることやら」


大淀「その甲斐はあったようですよ。本部から『要請を受諾する』と回答がありました」コツコツ

提督「よし。その感じだと八割ぐらいは通ったかな?」

大淀「それが、まさかの満額回答でした」

提督「素晴らしい」グッ

高雄「良かったですね」

霧島「えらく気前がいいのね」

提督「で、条件は?」

大淀「あくまで今後補充される資源の先渡しという形ですので、作戦後しばらくの間は、資源の補充ペースが低下することになります」

提督「そういうことね。大規模作戦後は遠征を中心に艦隊を運用するようにして対応しようか。後で神通にも伝えておこう」

高雄「早く第四艦隊も運用したいところですね」

提督「そうだな。こればっかりは金剛の着任を待つしかないか」


二週間後

神通「第一艦隊、出撃準備完了しました」

足柄「第二艦隊、出撃準備完了よ」

赤城「第三艦隊も準備完了。いつでも出られます」

提督「了解。時間になったら所定の行動計画に従って出撃してくれ」

神通「了解しました」

比叡「司令。訓示とかは言わないんですか?」

提督「特に考えてなかったんだが、言ったほうがいいかな」

比叡「はい」

霧島「大規模作戦にふさわしい訓示をお願いします」

提督「そうか。それじゃ……」


提督「まずは全員に向けて」

提督「背伸びをする必要はない。訓練でやったこと、今の自分にできることを確実にこなしてくれ」

提督「それから各艦隊旗艦は、艦隊間及び鎮守府との連絡を密にすること。万が一不測の事態が生じたときは執務室に私がいるから……」

高雄(ゴクリ)



提督「判断を押し付けて責任回避を図るよーに」

高雄(あらっ)

比叡「ぷっ」

霧島「らしいわよ赤城」

赤城「これは良いことを聞きましたね」

高雄(実際良いことをおっしゃっているのに、わざわざかっこよくない言い回しをなさるのね)クスッ

足柄「そういうことなら、私も面倒な判断全部提督に投げようかしら」

満潮「あのねえ……」

霞「作戦当日に気の抜ける訓示なんて、バカじゃないの?」

黒潮「でもこのほうがうちらしくて面白いやん」


提督「それと確認だが」

提督「今作戦で護衛する船団には、その全てに民間船が含まれている」

高雄(!)

提督「補給線を維持する重要性は私から言うまでもないが、万が一、任務と人命の二者択一を迫られるような局面になったら、その時は人命を優先して行動してくれ」

高雄(これが、提督が一番伝えたかったことなのね)

足柄「分かったわよ」

神通「了解しました。提督にご迷惑をおかけしないよう、任務に全力を尽くします」

足柄「相変わらず真面目ね~。提督の訓示聞いてたでしょ?」

赤城「要するに船団に手出しをさせなければよい。そういうことですね」

提督「そういうことだ。よろしく頼むよ」

神通「お任せください」


……

高雄「全艦隊、予定通り出撃しました」

提督「了解。以後艦隊からの連絡と情報の整理は臨時の窓口に任せる」

暁「任せて!」

天龍「各機器とも動作に問題なし。通信状態は良好だぜ」

高雄(これで不測の事態にならない限り提督も執務に集中できるわね。ちょっとギリギリになったけど、提督に提案して良かったわ)

高雄(人員配置も問題なし。ちゃんと引継ぎできるよう、私もちゃんと監督しておかないとね)


赤城「索敵機が船団を発見しました。位置は事前の情報通り。以後、本艦の戦闘機隊第一中隊第二小隊が船団の上空直掩にあたります」

神通「了解しました。各艦、針路速力このままで合流予定海域に向かいます」



……
暁「船団との合流完了、と」

響「第一艦隊、第二艦隊で船団外周を固めて、第三艦隊は少し距離を取って後続。予定通りだね」

天龍「ここまではな。問題はこっからだ」


筑摩「……見つけました。例の機動部隊です」

赤城「艦隊の位置は?」

筑摩「事前の情報通りです。特に動く様子はありませんし、こちらの索敵機にも攻撃してくる様子もありません」

赤城「そう……しばらくはそのまま触接を維持しなさい」

筑摩「了解です」


……
白露「船団は無事前線泊地に到着、だね」

那珂「結局今回は全然攻撃なかったねー」

時雨「とりあえずは一安心かな」

高雄「まだ帰り道もあるわ。油断は禁物よ」

高雄(とは言っても帰途は空荷だし、行きよりは安心かしらね)


……
利根「……んん?」

赤城「どうしました?」

利根「まずいぞ。往路で筑摩が捕捉した海域に例の機動部隊がおらぬようじゃ」

霧島「なんですって!?」

赤城「索敵機を増やしましょう。鳳翔さん、出せますか?」

鳳翔「出せますよ。待機中の第二小隊を上げますね」

赤城「お願いします」


荒潮「あら?あんなところに味方機なんて居たかしら~?」

足柄「どこどこ?」

荒潮「二時の方向、仰角三十度ってとこかしら」

赤城「利根、筑摩、帰還中の機体はありますか?」

利根「いや、ないぞ」

筑摩「私の機体でもありません」

霞「ということは……」

陽炎「見えた!深海棲艦艦載機です!友軍にあらず!」

神通「全艦、対空戦闘用意!」

龍驤「直掩隊、急行!打電される前に叩き落せ!」

赤城「一戦交える必要がありそうね。戦闘機隊、全機発艦!」


……
五月雨「直掩隊、敵艦載機部隊と戦闘に突入しました!」

涼風「行きじゃなくて帰りに攻撃って、奴ら一体何考えてんだ」

由良「偶然かもしれないけど、行きより帰りのほうが油断しがちだからそこを狙ったのかもしれないわね」


……
龍驤「ちっ。艦戦は全部落としたけど、他がすり抜けよったな」

赤城「私たちで第一段の防御線を構築します。第三艦隊は単横陣へ」

霧島「了解!」

満潮「あ、赤城さんもそっちなの??」

赤城「私がそっちにいても護衛対象が増えるだけですからね」

龍驤「出来るだけ落とすけど、そっちも覚悟はしときや」

霞「分かってるわよ」

神通「みなさん、お気をつけて」

比叡「大丈夫。任せて」


……
五月雨「敵艦載機、撤退します。筑摩さんと霧島さんが小破、赤城さんと龍驤さんも至近弾で損傷はありますが、全艦戦闘に支障なし。船団には被害ありません」

涼風「赤城さんと龍驤さんで誘引するのが成功したからいいけど、危険な賭けだよなあ」

由良「何とか耐えた……のかしら」

高雄「そう思いたいけれど……まだ次があってもおかしくはないわよね」


……
鳳翔「敵機動部隊、発見しました!我が艦隊から距離約八〇海里、一時の方向、徐々に接近してきます!」

赤城「龍驤!攻撃隊発艦用意!送り狼で敵機動部隊に打撃を与えます!」

龍驤「そう言うと思たわ!攻撃隊全機発艦用意!準備でき次第小隊ごとに発艦や!」


……
由良「ええ!?船団守り切るのが精いっぱいって言ってなかったの?」

五月雨「提督、どうします?」

提督「現場に任せる。それに、このまま接近して砲撃戦にもつれ込む危険性を考えると」

高雄「航空攻撃で少しでも敵の戦力を削いでおくほうが望ましいですね」

涼風「確かに」


……
筑摩「敵空母二隻撃沈、二隻は損傷して遁走中。重巡も一隻は撃沈。しかし、重巡三隻を基幹とする部隊が船団に接近中です」

赤城「砲撃戦に持ち込むつもりですね。私はともかく、龍驤は艦載機収容のため離脱しなさい」

龍驤「いや、赤城も艦載機収容せなあかんやろ」

比叡「一時的に指揮権預かってもいいなら、私たちだけで追い返してくるわよ」

足柄「そういうことなら第二艦隊も出るわ。黒潮と大潮で赤城と龍驤の直衛をして、残り四隻と第三艦隊から四隻で迎撃に向かう。これでどう?」

赤城「ではそれでいきましょう。第三艦隊の指揮権は比叡に預けます」

比叡「預かります。迎撃部隊は私に続いて!」

神通「第一艦隊各艦は、第二艦隊の穴を埋めるため配置を変更します。急いで!」


……
大淀「うーん……大規模作戦だとやっぱりこうなるんですねえ」

高雄「他の鎮守府でもあるのですか?」

大淀「あるみたいです。特に、司令官が作戦行動に介入することが少ない鎮守府はこのように柔軟な対応を取ることが多いようで」

涼風「提督はそこんとこどう思ってんの?」

提督「現場がやりやすいのが一番だと思ってるよ」

涼風「だろうと思ったよ」


……
霧島「主力の重巡は撃沈ないし撃破。他の艦は全艦撃沈または撤退」

比叡「これで完了、かな」

利根「待て待て。どうやら艤装が浮かんでおるようじゃぞ」

足柄「艤装?艦娘の?」

利根「そのようじゃな」

比叡「じゃあ艤装を回収したら船団に戻って赤城や龍驤とも合流しよっか」

足柄「そうね。そうしましょう」


……
五月雨「戦闘の結果、空母と重巡の艤装をひとつずつ回収したそうです」

由良「訓練計画も見直しが必要そうね。後で長良姉さんにも伝えておきます」

提督「うん。頼むよ」

提督「空母……空母か……」

高雄「あの……何か?」

提督「いや、何でもないよ。ちょっと気になったけど、これは作戦の後で良いんだ」

高雄「そうですか」


……
提督「おかえり。みんなよく帰ってきた。任務も完遂したし、成功と言ってよさそうだな」

神通「提督のおかげです」

霧島「本当に。提督が最初の案を却下していなければ大変なことになっていました」

提督「そうか?却下した覚えはないがなあ」

比叡「またまた~」

提督「ともかく、お疲れさま。しばらくはゆっくり休んでくれ」

提督「瑞鶴と鳥海は着任おめでとう。歓迎するよ」ニコッ

鳥海「ありがとうございます」ペコリ

瑞鶴「よろしくね」


提督「それから赤城、相談というのは何かな?」

赤城「単刀直入に言えば、第三次の船団護衛に瑞鶴を参加させられないかということですね」

提督「なるほどな。確かに瑞鶴には船団護衛に出てもらえないかとは思っていた」

高雄(提督がお考えだったのはこのことだったのね)

高雄(ということは長良さんがここに呼ばれたのは……)

提督「でも通常のペースで訓練していては間に合わないな」

赤城「訓練のペースを最大限まで引き上げれば間に合いませんか?」

提督「間に合うと思うが、確証がないのでそこは長良に聞こう」

高雄(やっぱり)


提督「どうかな。訓練のペースを上げれば第三回の船団護衛に瑞鶴を参加させられそう?」

長良「他の艦の訓練を延期しても構わないのなら、船団護衛用の艦隊運動訓練まで何とか詰め込めますね」

提督「分かった。それなら他の娘たちには申し訳ないが、瑞鶴の訓練を最優先してくれ」

長良「了解です!鳥海さんはどうします?」

提督「瑞鶴の次に優先してくれるかな」

長良「分かりました!すぐ計画用意しますね!」

提督「頼むぞ」

赤城「無理言って悪いわね」

長良「いえいえ。今回の作戦に私は出撃しませんし、ちょっとでも力になれるなら何でもしますよ!」

赤城「頼りにしてるわ」

瑞鶴「着任早々迷惑かけます」ペコリ

長良「大丈夫。任せて」グッ


数日後

初春「全艦隊、船団と合流。配置完了じゃな」

子日「今回は無事に行けるかな~」

北上「行きもだけど帰りも問題だよね~」


……
祥鳳「あら?」

川内「どうかした?」

祥鳳「索敵機が敵艦隊を発見しました。距離はまだ百海里以上ありますけど……」

榛名「先日、船団を襲撃した艦隊でしょうか?」

祥鳳「いえ。空母は一隻いますが、基幹は重巡四隻のようです。空母はあくまで護衛程度に見えますね」

古鷹「……夜戦かな」

川内「夜戦狙いだね。この艦隊がどこから来たかも気になるけど、まずは船団を守らなきゃ」

榛名「そうですね。船団は針路を変更したほうがいいと思います」

古鷹「同感です。それに遭遇戦に備えないと。第二艦隊は先行するよ」

川内「お願い。第一艦隊も配置を変更するからね」

榛名「第三艦隊も船団前方に展開しましょう。空母のお二人は船団後方についてください」

川内「それじゃ、各艦隊の配置変更が完了したら針路も変更するよ」


……
初霜「船団は針路を変更、当初予定より北寄りを進んでいます」

若葉「問題はさっきの敵艦隊だが……そろそろ接敵するだろうか」

球磨「会敵予想時刻まで三十分を切ってるクマ。もういつ戦闘が始まってもおかしくないクマ」


……
榛名「見えました!二時方向、距離三万!敵艦隊です!」

加古「あれか。巡洋艦が四、いや五かな。後ろのが軽巡だとしたら祥鳳が見つけた艦隊で間違いないな」

古鷹「執務室!この海域に友軍はいますか!?」

初霜「当該海域に友軍がいるという情報はありません!」

古鷹「ありがとう!全艦、戦闘用意!」


……
若葉「戦闘終了。古鷹と綾波が中破、榛名、青葉、衣笠が小破したが、第一艦隊と船団には被害なしだ」

球磨「何とか乗り切ったクマね」

初霜「それから艦娘の艤装を複数回収。内訳は重巡一、軽巡一、駆逐艦二つですね」

高雄「戦果もだけど、よくそれだけ回収できたわね」

球磨「半分くらい艦数の暴力クマ」

初霜「ただ、今後さらに戦闘が起きた際には投棄も覚悟しなければいけない、とのことです」

提督「それは仕方ないね。その時は躊躇せず投棄するよう、念を押しておいて」

初霜「了解です」


……
川内「任務完了、全艦帰投したよ」

提督「ん。みんなお疲れさま」

古鷹「すいません、ご迷惑おかけして……」

提督「迷惑なわけないだろう。見事な指揮に素晴らしい戦いぶりだったよ」

古鷹「ありがとうございます」ペコリ


さらに数日後

瑞鶴「まさか本当に初出撃が船団護衛になるなんて……」

赤城「不満?」

瑞鶴「そうじゃないですけど、ちょっと意外な感じしません?」

飛鷹「確かに違和感はあるわよね。単独で船団護衛とか航空機輸送ならまだしも、機動部隊で船団護衛なんて」

山城「そんなこと言ったら、船団護衛する戦艦なんて聞いたことないのだけど」

陸奥「あら。大西洋じゃ戦艦も船団護衛をしていたらしいわよ」

瑞鶴「そうなの?何か変な感じ」

隼鷹「ま、今にあたしたちが出る意味も分かるって」

瑞鶴「今に、ねえ」


赤城「隼鷹、早くもその時が来たわよ」

隼鷹「お。見つけた?」

赤城「見つけました。空母四隻を基幹とした機動部隊ね。護衛に戦艦及び重巡の姿もあります」

隼鷹「我が艦隊上空には……敵機なし。触接されている様子はないね」

赤城「では先手必勝と行きましょう。全艦、攻撃隊発艦用意!」

隼鷹「よしきた!」

赤城「艦隊最大戦速。陸奥と山城は針路を風上に取って先行を」

陸奥「了解」


……
望月「敵空母四隻とも撃沈または撃破、重巡も二隻撃破だってさ」

提督「さすがだな」

三日月「はい。それに、発艦準備中を攻撃できたのは幸いでした」

長良「問題は残りの艦隊か。まだ距離はあるけど、どうするのかな」


……
飛鷹「まだ戦艦と重巡は残っているわね」

隼鷹「じゃあ第二次攻撃だな」

瑞鶴「損耗も結構あるけど、帰りのことは考えなくて大丈夫?」

赤城「このまま砲撃戦にもつれ込むと我が艦隊への被害も大きくなります。ここで敵の手数と戦意を少しでも削るべきでしょう」

陸奥「不本意ではあるけど、私も赤城に賛成ね。船団もいるわけだし、砲撃戦は最小限にするべきだと思うわ」

山城「同感ね」

赤城「決まりですね。第二次攻撃隊、発艦用意!」


……
三日月「第二次攻撃で残った戦艦を撃沈しました」

望月「でも残りが船団に接近かあ。しつこいなあ」

長良「向こうも後がないからね。高速を武器に迎撃をかいくぐって船団に一撃、っていう算段かな」

夕張「こっちはどう対処する感じ?」

三日月「陸奥さん山城さんと第二艦隊が迎撃に向かうようです」


……
陸奥「なるほど。駆逐艦を先行させてくるわけね」

山城「チッ。あまり嬉しくないわね。行儀よく重巡の後についてきなさいよ」

高雄「私たちが先行して駆逐艦を蹴散らしましょう。お二人は巡洋艦に集中していただければ」

陸奥「分かったわ。山城、用意は良い?」

山城「射程には捉えたわ。いつでもいいわよ」

陸奥「それじゃ、始めようかしら」

陸奥「目標、敵重巡!全砲門、開け!」

山城「主砲、撃ち方始め!」


……
三日月「巡洋艦は全艦撃沈、駆逐艦も全て撃沈または撃破したそうです」

望月「艤装もいっぱい拾えたってさー」

夕張「これで終わり、ですかね」

提督「確信はできないが、こっちとしてはそろそろ終わってほしいな」

夕張「ほんとですね」


……
白露「ふう~」

夕立「やっと着いたっぽい~」

時雨「まだ帰りもあるけどね」

那珂「そうだよ~。最初の時は帰りに攻撃されたんだし、最後まで気を引き締めなくちゃね」

陸奥「赤城。帰りの索敵、私と山城の水偵も使う?」

赤城「ちょうどその相談をしようと思っていたところです。そちらが問題ないなら使わせていただきましょう」


……
皐月「船団は無事解散。それぞれの港に帰っていったよ」

文月「艦隊も鎮守府に帰投中。予定通りだね~」

名取「後は帰ってくるのを待つだけ、ですね」

提督「だな。大淀、前線の戦況は分かるかい?」

大淀「まだ決着はついていませんが、攻略はほぼ所定の計画通りに進んでいるとのことです」

提督「そうか」


那珂「艦隊帰投でーす☆」

提督「お疲れさま。みんな無事で良かった」

高雄「戦況はいかがですか?」

提督「さっき連絡が入った。前線の攻略作戦も成功したようだ」

白露「おおー!」

五月雨「良かったあ」

摩耶「あたしたちが頑張った甲斐もあったってことだな」

提督「ああ。大ありだよ」


提督「今夜は全員ゆっくり休んでくれ。それから明日は軽く総括をする予定だけど、参加する元気のある人間だけでいいからな」

高雄「提督がお疲れでしたら、どういたしますか?」

提督「その場にいるメンバーで勝手にやってくれ」

エー?

提督「そんなに私がいたほうがいいか?」

夕張「そりゃそうですよ何言ってるんですか」

摩耶「最悪執務室まで引っ張ってくるからな」

足柄「私も手伝うわよ」

提督「そんなことしなくてもよっぽどじゃない限り私も出るから安心しろ」

提督「霧島。本当に私が出られないぐらい体調が悪かったら代理で進行しておいてくれ」

霧島「了解しました」



翌日 執務室

高雄「時間ですね」

提督「ん。なんだかんだ全員揃ったか」

高雄「そうですね」

高雄(私も一応確認していたけど、やはり提督もきっちり確認なさっていたのね)

提督「じゃあ、始めようか」

提督「みんな疲れたら部屋に帰ってもここで寝てもいいからなー」

ハーイ エッイイノ? イイノイイノ


高雄「まずは各作戦時の旗艦から報告をするという形でよろしいでしょうか」

提督「うん。そうしてもらおう」

高雄「はい。ではまずは……」

足柄「神通から?」

神通「私でよろしいですか?」

赤城「第一艦隊旗艦でしたし、問題ないでしょう」

高雄「ええ。神通さんからお願いします」

神通「分かりました」


……
提督「大体話すべきことは終わったかな」

高雄「提督から、何かございますか?」

提督「いや、特にない」

摩耶「だと思ったよ」

霧島「まあそんなこと言わずに、一言ぐらい締めの言葉をくださってもいいではありませんか」

提督「そうか。じゃあ一言二言しゃべろうか?」

高雄「お願いします」

比叡「司令官らしくビシッと締めてくださいビシッと」

提督「よっしゃ。任せとけ」

高雄(この感じ、また冗談を交えそうだけど……どうかしら)


提督「改めてお疲れさま。急な命令変更もあったが、みんなの力で無事作戦を終えることができた。ありがとう」


提督「それと、今回船団に被害を出すことなく任務を完遂できたことはとても大きい。撃沈数自体は前線の艦隊と比べるべくもないが、前線の作戦成功は我々が護衛に当たった船団あってのことだ。」

提督「花形という印象も強い前線での作戦行動はなかったが、この三回の船団護衛を完全に成功させたことは誇るべきだし、私自身も君たちを大いに誇りに思う」

高雄(これは……提督は、私たちが前線に参加できなかったことも気にかけてくださっているのね。提督の前では誰もそんな素振りを見せなかったのに)

高雄(確かに、私も前線に参加できなくて残念でなかったと言えば嘘になる。任務は成功したけれど、強敵を撃破したわけでも、鎮守府や国を滅亡の危機から救ったわけでもない)

高雄(それでも提督は私たちのことを誇りに思ってくださっているのね。そういうことなら、提督の思いにこれからも応えるために、一層頑張らないと)


提督「それに、今回の任務の成功は、今後の我が鎮守府にも少なからず影響があるだろう」

高雄(そこまで視野に入れていらっしゃるのね。具体的にはどんな影響が……)

提督「まあ、短期的には次も大規模な船団護衛任務が下りてくるとか、他の鎮守府が休んでる間の警戒を任されるとか、そういう方向になるんだろうがなー」

アー ダヨネー

高雄(あら。もう冗談モードに切り替えなさるのですか)

提督「もしそうなっても私は大人しく任務を受けるし、君たちには拒否権はないので大人しく任務に精励するよーに」

エー? ヤレヤレ ショーガナイナー

高雄(もう。途中までのかっこよさが台無しですよ)クスッ

高雄(安心してください。私もみんなも提督についてまいりますから)


提督「というわけで私からもこれでおしまい。他に何かあるかい?」

シーン

提督「では総括もこれで終わりだ。みんなお疲れさま。解散」

オツカレサマデース



高雄「今からどうなさいますか?」

提督「そうだな__」

白露「提督ー。白露たちとドッジボールやらない?」

提督「お。やるか。メンバーは?」

白露「とりあえず白露型全員!」

提督「よーし乗った。他にも呼ぶか?」

白露「まだ呼ぶよ。村雨ー、誰とやりたいー?」

村雨「そうだなあ」


村雨「赤城さん、一緒にやりません?」

赤城「いいですよ」

村雨「他に誰とやりたいですか?」

赤城「そうね……では飛龍、瑞鶴、」

飛龍「はいっ」

瑞鶴「わ、私も!?」

赤城「そうですよ。後は、たまには鳳翔さんにも来てもらいましょうか」

鳳翔「うふふ。私はいいですけど、戦力にはなりませんよ?」

赤城「問題ありませんよ。一次メンバーはこのあたりでいい?」

白露「もっちろん!」

夕立「提督さん、早く行くっぽい!」

提督「よーし行くか」ガタッ

高雄「ご無理なさらないでくださいね」

提督「ああ。ありがとう」ニコッ

ハヤクハヤクー オー


高雄「……はぁ」

金剛「高雄」

高雄「金剛さん」

金剛「今から私たちはtea timeにしますけど、高雄も来ナイ?」

高雄「お邪魔でなければ喜んで。妹たちもご一緒しても?」

金剛「モッチロン大歓迎ネ!」ニカッ

高雄「ではお言葉に甘えさせていただきます」ニコッ


金剛型姉妹の部屋

金剛「テートクはいつも執務室で何を飲んでるノ?」

高雄「その日によって違いますね。日本茶も紅茶もコーヒーもお飲みになりますよ」

比叡「飲み物にはあんまりこだわりないよね」

霧島「好き嫌いも少ない方ですしね」

摩耶「ただし甘党だな」

榛名「じゃあお砂糖は多めに使うの?」

摩耶「いや、飲み物にはそんなに入れないかな」

高雄「その代わりにミルクはよく入れるわよね。コーヒーもカフェオレのほうがお好きだし」


金剛「ということは、紅茶もミルクティーが一番好みカナ?」

高雄「そう思います。ミルクティーをお出しすることが一番多いですね」

金剛「なるほどネー」

比叡「そういえば、ロイヤルミルクティーはやったことないよね?」

高雄「ええ。さすがにそこまでは」

榛名「お姉さま。今度提督にご用意してみてはいかがですか?」

金剛「ソウネー。Stewed teaはチョット手間だケド、テートクのためなら練習しようカナー」


金剛「そうそう、高雄や摩耶にもテートクの印象を聞きたかったのデース」

高雄「提督の印象、ですか」

金剛「比叡や霧島からはある程度聞いたんですケドネー」

榛名「私も聞きたいです」

摩耶「印象っていってもなあ」


摩耶「あたしは第一印象通りだったな」

鳥海「第一印象はどうだったの?」

摩耶「『普通っぽいけどちょっとクセありそう』って感じ」

金剛「あー。ちょっと分かるカモ」

鳥海「私はそれほど気にならなかったけど……比叡さんはどうでした?」


比叡「普通に『話しやすそう』って感じかな。ほら、司令って気さくだし、着任の挨拶した時もにこってしてくれるし」

高雄「分かります。最初の挨拶で笑顔を見せてくださったのは嬉しかったですね」

霧島「意識的にせよ無意識にせよ、あれは良いわよね」

金剛「ちなみに霧島はどっちだと思っテルノ?」

霧島「意識的だと思っています。ああ見えて意外と思慮深い方ですから」

榛名「意識的にしては自然すぎると思うのだけど」

比叡「高雄はどう思う?」

高雄「どちらかといえば無意識だと思いますね」

高雄「でも提督自身が笑顔でお迎えになることで、新しく着任する娘を安心させられることは提督も意識しておいでだと思います」

金剛「フムフム」

比叡「確かにそんな感じするね」


金剛「私生活のほうはどうナノ?」

高雄「私生活は……謎、ですよね」

比叡「謎だよね。っていうか、司令に私生活の時間あるのかな?」

摩耶「業務外の時間なんて、誰かと遊ぶか飲むか寝るかしかしてないんじゃないか?」

霧島「多分そうね」

鳥海「じゃあ趣味とかもないのかしら?」

比叡「私は聞いたことないなあ」

霧島「比叡姉さまに同じですね。摩耶は?」

摩耶「あたしもないな。姉貴は?」

高雄「私も特に……あっでも」

榛名「何かあったの?」

高雄「先日の夜間直の時にですね」


……
提督「~~~♪」

高雄「提督?」

提督「ん?あっ、声に出てたか」

高雄「ええ」

高雄「何を歌っていらしたんですか?」

提督「ミュージカルの曲だよ」

高雄「ミュージカル、ですか」

提督「うん。親の影響でね」


高雄「先ほどの曲、続きもあるのですか?」

提督「あるけど、これ実は二人で歌う曲なんだよね。だから一人では歌えないんだよ」

高雄「そう、なのですか」

提督「うん。しかも男性と女性で歌う曲だから、一人二役というわけにもいかないしね」

高雄「女性……」

提督「ん?」

高雄「その……私も一応女、ですけど……私では役者不足でしょうか?」

提督「歌は得意?」

高雄「君が代や軍艦あたりでしたら何とか……」

提督「歌えるね。じゃあやろう」

高雄「は、はい」


高雄「結構難しいですね……」

提督「そりゃ高雄は知らない曲だろうし楽譜もないんだ。こんな短時間でこれだけ歌えれば上出来だよ」

高雄「恐縮です。またご指導いただければ、もう少しは上手く歌えるでしょうか?」

提督「今これだけ歌えているんだ。もっと上手くなるよ。ま、今度は執務以外の時間にやろうか」

高雄「ええ。いつになるか分かりませんけど」クスッ

提督「確かにそうだな」ハハッ


……
高雄「ということがあって」

比叡「へーそうなんだ」

霧島(音楽も嗜むとは意外ね)

摩耶(全然キャラじゃねーぞおい)

金剛「歌うのも好きナノネー」

高雄「お好きみたいですね。いつもは私たちの迷惑にならないように部屋でこっそり歌っているとおっしゃっていましたけど」

榛名「迷惑だなんて。提督の歌、榛名もお聞きしたいです」

摩耶「でも執務室でいきなり歌い出されても困るしな」

金剛「そういう場を作れば歌ってくれるカナ」

比叡「いいですね。今日の打ち上げでお願いしてみます?」


金剛「榛名」ヒソヒソ

榛名「はい」ヒソヒソ

金剛「噂通りの強敵みたいネ」ヒソヒソ

榛名「ええ。霧島の分析通り、対抗するより協力して提督に振り向いてもらうよう努めるほうが賢明かと」ヒソヒソ


高雄「?どうかしましたか?」

金剛「高雄、」

高雄「はい」

金剛「テートクの奥さんの座をかけて、私とbattleデース!」

高雄「え……ええ??」

榛名「榛名も全力で参ります!いざ勝負!」

高雄「え、あ……どうすれば?」

摩耶「さあ」

鳥海「まあ、そうなるわね」


金剛「今更デスケド、高雄もテートクのこと好きデショ?」

高雄「え、ええ」

榛名「提督と一緒にいると楽しい?」

高雄「楽しい……というよりは落ち着きますかね」

「「ああー」」

摩耶「あいつの周り、いつもうるさくないか?」

高雄「確かに賑やかだけど、提督のお側にいたら安心しない?」

摩耶「それは……ある、かなあ」


比叡「私はあるなあ。だからみんな執務室に来たがるんじゃない?」

霧島「そうでしょうね」

鳥海「ということは、執務室にいる人はみんな提督LOVE予備軍……?」

比叡「まさかぁ!いや、でもあり得るかも……」

金剛「ウーン、rivalは多そうネー」

霧島「人当たりも付き合いもいいですからね」


榛名「でも色男っていう雰囲気ではないのもいいですよね」

摩耶「あの顔で色男は無理だろ」

比叡「ぶふっ」

金剛「なかなか言いますネー」クスクス

霧島「確かに容姿は普通よね」

榛名「でも、そんな提督に「好きだ」とか言われたらーとか、想像することない?」

高雄「!」


(「好きだよ」ニコッ)

高雄「////」

摩耶「えー……そんなこと言うキャラじゃないから想像したこともないな」

鳥海「確かに」

霧島「あら?高雄、どうしたの?」ニヤニヤ

高雄「えっ!?///」カオマッカ

比叡「あれー?何思い出したのー?」ニヤニヤ

高雄「な、何でもありませんから……///」

榛名「何かあったのですか?」


比叡「司令に「好きだよ」って言ってもらえたんだよねー」ニヤニヤ

金剛「What!?」

榛名「本当ですか!?」

高雄「い、いえ、あれは恋愛とかそういう意味ではなくてですね……///」

金剛「その表情じゃ説得力ゼロデース」


霧島「まあ、実際のところは(前回参照)っていう感じだったんですけどね」

金剛「あー。そういう感じネ」

摩耶(それで、あの時声かけたら赤くなってたのか)

榛名「それでも提督に「好き」って言ってもらえたのよね?」

高雄「ええ、まあ……///」

榛名「いいなあ……」

金剛「酔った勢いでなら言ってくれるカナ?」

比叡「あの時も飲みの席だったし、お酒が入ればチャンスはあるかもしれませんね」


金剛「とにかく、私と高雄は恋敵という訳デース」

榛名「私とも恋敵ですね」

高雄「は、はあ」

摩耶「金剛さんも榛名さんも、こんな短期間であいつのこと好きになるとかすげえな」

鳥海「摩耶はどのぐらいかかったの?」

摩耶「えっとなー……って、あたしは特に恋愛感情は持ってないからな?」

比叡「なーんだ残念。摩耶もからかえるかと思ったのに」

摩耶「なんでだよ」


金剛「面倒な話は置いといて、テートクLOVE同士、テートクに振り向いてもらえるように頑張りマショーって話デス」

高雄「ええっと……そうですね、こちらこそよろしくお願いします」

摩耶「そんなんでいいのか?」

金剛「今日のところはOkayデース」

榛名「せっかくなら同じ思いの人たちといろいろ話したいと思っていたので」

高雄「それで誘ってくださったのですね」

金剛「そういうことネ」


金剛「ちなみに、他にもテートクLOVEな娘、いそう?」

高雄「そうですね……摩耶、どう?」

摩耶「そうだな……」



摩耶「ぱっと思いつくのは祥鳳かな。うちで最初の空母ってのもあって大事にされてるし。陸奥さん赤城さんは提督と仲良いけどそこまで恋愛感情はなさそうだから後は……軽巡だと長良型と夕張、駆逐だと十九駆と白露型は全体的に提督好みっぽいし仲も良いから提督LOVEになる可能性大だろ。それに明石と大淀も提督との関係は良いし何かきっかけがあれば提督LOVEに転ぶんじゃねえかな……とりあえずそんなもんか」



金剛「……Okay. それと摩耶もデスネ」

榛名「ええ。摩耶もカウントしましょう」

摩耶「は?え?何で??」


鳥海「いや、摩耶も結構提督のこと見てるんじゃない」

摩耶「まあこの中じゃ一番着任早いし、他の娘も提督も分かりやすいからこのぐらいは普通じゃねーの?」

比叡「顔ぶれには同意だけど、そんなするする出てこないよ普通」

摩耶「そ、そうか……」ポリポリ

霧島「あら?摩耶も実は~?」

摩耶「いやいやないから。ないからな?」


夜 食堂

提督「それでは、任務完遂と新たな仲間の着任、そして皆の無事を祝して、乾杯!」

「「乾杯!」」

ワー オツカレサマー



一時間後

金剛「Hey、祥鳳!ちょっとこっち来るネー!」ガシッ

祥鳳「えっ!?ちょ、ど、どうしたんですか?」

高雄「いいから行きましょ!」

祥鳳「え、あ、はい」


祥鳳「そんな話してたんですか!?」

金剛「そうデース。でも私たちの部屋じゃあんまりたくさんは呼べなかったネ」

榛名「だから、これから続きを話しましょう!」

祥鳳「いいですね!ぜひぜひ!」


敷波「だからってこのテーブルでやらなくても……」

高雄「あら。あなたたちも入ってるわよ」

敷波「はえっ!?」

磯波「私たちも、ですか?」

綾波「何の話をしましょうか?」

敷波「ちょ、ちょっと綾波……」

比叡「綾波たちが司令と遊んだときとかに面白いことなかった?」

綾波「そうですねえ……あ♪」

敷波「あ、綾波!?待ってあれはだmむぐぐ」

霧島「話して」ニッコリ

敷波「んーー!んんーーー!!」ジタバタ

綾波「分かりました♪」


綾波「一回私たち三人と司令官でトランプして遊んだことがあるんですけど」

……
綾波「そろそろいい時間ですね」

提督「だね。次で最後にするか」

磯波「そうですね」

綾波「あ♪」

敷波「何?」

綾波「この勝負、もし私たちの誰かが勝ったらご褒美くれませんか?」

提督「できる範囲ならね」

敷波「い、いいの??」

提督「いいよ。個人的にそういうことできる機会もないしね」

綾波「や~りましたあ♪」


……
比叡「へー」

祥鳳「いいなー」

榛名「それでそれで?」

綾波「それでですね~」


……
敷波「あ、あれ……私、勝っちゃった?」

提督「お。敷波が一番か」

綾波「それで?敷波は何をお願いするの?」

敷波「え、ええー?何も考えてないよー……」

提督「何でもいいけど、思いつかなかったらまた今度にするか?」

敷波「あー……う、うん、そうしよっかなー……」


磯波「敷波ちゃん」

敷波「うん?」

磯波「ほら、この間見た漫画にあったあれとかは?」

敷波「あれ?」

綾波「あー!あれ!いいと思う!」

磯波「だよね!」

敷波「な、なんだよー」


提督「なになに?」

綾波「」ゴニョゴニョ

提督「それやって怒らないかな」

綾波「大丈夫です」グッ

磯波「敷波ちゃんのために、お願いします」

提督「わかったよ」スクッ

敷波「だからー、なんなのさー」

提督「今やるから待ってろ」


提督「ほいっ!」ガバッ

敷波「えええええ!?」

綾波「さっすがあ!」

磯波「すごい……!」

提督「まあ君たちぐらいの体格ならね」

敷波「ちょ、何してるんだよー!?////」

提督「ん?お姫様抱っこってこれで合ってるよな」

綾波「はい♪」


……
「「えええええ!?!!?」」

祥鳳「提督、お姫様抱っこなんてしてくれたの!?」

綾波「そうなんです!」


……
磯波「提督、結構慣れてるんですか?」

提督「多少はね。昔は近所の小さい子にやってたこともあるから」

敷波「し、司令官?も、ももも、もういいよ?///」

提督「そう?じゃあ降ろそうか」

敷波(ほっ。でも、もうおしまいかー……)

綾波「ちょっと待ってくださいね、写真撮ります」

磯波「あっ、私も」

提督「おお。分かった」

敷波「待って、写真はだめだってー!///」ジタバタ

綾波「はい、チーズ♪」カシャ


……
綾波「で、撮ったのがこれです」

祥鳳「ほんとうにお姫様抱っこされてるー」

榛名「いいなあ」

敷波「見せることないじゃーん!消してってー!///」

磯波「あれ?私と綾波ちゃんが送った写真、消したの?」

敷波「う……そ、それは……」

霧島「どうなの?」ニヤニヤ

敷波「……」モジモジ


敷波「消して、ない///」

高雄「かわいい!」

綾波「かわいいですよねー♪」

比叡「わたしも敷波みたいにかわいくなりたかったなー」ニヤニヤ

敷波「やめて、もうやめてってばー////」


白露「提督の話と聞いて!」

夕立「飛んできたっぽい!」

時雨「ぼくたちも入れてよ」

金剛「もっちろん大歓迎ネ!」


金剛「白露たちは何か提督と面白いことなかった?」

白露「そうだなー」

村雨「お姫様抱っこみたいにインパクトのある話はないよね」

時雨「あっ、でもあれがあるよ」

比叡「なになに?」

時雨「提督と間接キスした話」

「「間接キス!!?!??」」

村雨「あったあった」

涼風「っても、回し飲みしただけだからなー」

金剛「それでも間接キスは間接キスデース」

榛名「提督って、そういうのあまり気にしないの?」

村雨「あんまり気にしてないみたいですね」

五月雨「最初の頃は執務室で提督の飲み物をもらうこともよくありましたし」

綾波「ありましたね~」

高雄「うらやましいわ」


時雨「でも、それを言ったら高雄さんのほうがうらやましいよ」

白露「そーだそーだー」

高雄「どうして?」

時雨「僕たちの鎮守府で秘書艦が二か月も変わらないの、高雄さんが初めてだよ」

高雄「変わってない、なんてことはないわよ。私だって出撃することもあるし、旗艦じゃないこともよくあるでしょ?」

霧島「それでも秘書艦をやった日数では高雄が断トツよ」

祥鳳「私や比叡さんも多いほうですけど、それでも多くて週に二回ぐらいでしたよね」

比叡「うんうん。そんな感じだったね」


五月雨「それに、私たちの人員配置で提督が直接決めてるのは秘書艦だけなんですよ」

高雄「あっ……確かに」

高雄「でも秘書艦って言っても、執務室が広くなってから仕事はだいぶ分散してるし、私と提督以外にも大勢執務室にいるからそこまで特別でもないと思うのだけど」

涼風「それは高雄さんが秘書艦でいるのに慣れきってるからじゃないかな」

敷波「うんうん」


比叡「改めて考えると、なんで高雄だけ固定なんだろうね。あ、変な意味じゃなくて、確かに仕事の手際は良いし真面目だし提督に対して失礼なこともしないんだけど」

高雄「それは私もずっと気になっているのですけど……なぜでしょうか」

夕立「提督さん、高雄さんのことが好きっぽい?」

高雄「そ、そんなことは……///」

村雨「あ。高雄さんもまんざらじゃないんですね」ニヤニヤ

五月雨「提督と高雄さんならお似合いだと思います」ニコニコ

高雄「そ、そうかしら……//」


比叡「それに、高雄はもう司令に「好き」って言ってもらってるもんねー」ニヤニヤ

「「ええっ!?!!??」」

高雄「そ、その話はちょっと……///」

綾波「本当ですか!?」

時雨「詳しく!」

ワイワイ


深夜

高雄(あー楽しかった。盛り上がってすっかり遅くなっちゃったわね)テクテク

高雄(片付けもお風呂も終わったし、あとは寝るだけ__)

~~~~♪

高雄(あら?この歌声は……)


中庭

提督「~~~♪」

提督「」クイッ

提督「ふう……」

高雄「提督?」

提督「ん?高雄か?」

高雄「ええ」


高雄「もうお休みになったかと思っていました」

提督「そのつもりだったんだけど、気が変わって夜更かししているところだ」

高雄「あら。珍しいですね」

提督「たまにはね。高雄はもう寝るところかい?」

高雄「そのつもりでしたけど、お邪魔でなければ私もたまには夜更かしようかと思い始めたところです」

提督「邪魔なものか。歓迎するよ」ニッ

高雄「ありがとうございます」ニコッ


高雄「改めて作戦完遂おめでとうございます」

提督「おめでとう。高雄もお疲れさま。連日の秘書艦から第二艦隊の旗艦までありがとう」

高雄「お気遣いありがとうございます。」

提督「打ち上げも楽しめたかな?」

高雄「ええ」

高雄(主に提督のことで盛り上がったからなのだけどね)

提督「それならよかった」クイッ


高雄「打ち上げといえば、その際に秘書艦のことが話題に上ったのですけど」

提督「ほほう」

高雄「その……最近は私が秘書艦を任されることが多いのは何か理由があるのでしょうか?」

提督「そのことか」


提督「ものすごく大ざっぱに言うと、高雄が適任だからだな」

高雄「これ以上ないほど大ざっぱですね」クスッ

提督「ややこしいことを考えるのが嫌いだからね」

高雄「またまた」

提督「それはそれとして、もう少しちゃんと説明聞きたい?」

高雄「提督がお話ししてくださるのでしたらぜひ」

提督「そう言う気はしてたよ。じゃあちょっと遠回りして話すか」


提督「多分予想の範囲内だと思うけど、神通たちに艦隊編成を任せ始めたころに秘書艦の人員配置も任せようとしたんだよ」

高雄「やはりそうでしたか」

提督「うん。そのほうが艦隊の運用にも支障が出にくいし、秘書艦やってもいいかどうかは私じゃなくて神通や筑摩あたりに言えばいいから、みんなの意思も反映しやすいかなと思って」

高雄「ではなぜ提督が指名する形のままに?」

提督「それがね」


……
提督「どうだろう」

神通「それは……合理的ではありますが、私としては、秘書艦は提督がお決めになるほうが良いと思います」

提督「それはなぜ?」

神通「提督のご希望やお考えを考慮できないからです」

提督「そうかな。希望ぐらいあれば君たちに言えば済むと思うけど」

神通「失礼ながら、提督がご自分の希望を私たちにおっしゃるとは思えません」

筑摩「訓練担当の長良さんたちもですけど、間宮さんや伊良湖さんも、提督にはもっといろいろ希望を言ってほしいと言っていますよ」

提督「確かに五十鈴には一度言われたけど、そうか間宮と伊良湖もか」

筑摩「そうですよ。せめて秘書艦ぐらいご自分の希望を通してはいかがですか?」


提督「しかし、そんなことしたら今以上に人選が偏るぞ。負担も集中するし、やりたくない娘がいたってやりたくないと言いづらくないか?」

神通「この鎮守府に限ってそんなことはないと思いますが……」

筑摩「それに、提督は秘書艦を断られたこと、ありませんでした?」

提督「……あったな。何回か」

筑摩「そのぐらい提督には気軽に意見できますから、大丈夫ですよ」

提督「そうかねえ」

神通「それに、提督と秘書艦の関係は業務にも執務室の雰囲気にも影響します。その意味でも、提督が一番負担なく関われる艦娘を選ぶべきかと思いますが」

提督「あー。それは一理あるな……分かった。二人がそう言うなら、秘書艦はこれまで通り私の一存で決めさせてもらおう」

筑摩「そうしてください」


……
高雄「部下の方から「もっと我を通せ」と言われたわけですか」クスクス

提督「そうなんだよ。説明しながら自分でも何言ってるのか分からないね」

提督「とにかくそういう経緯で、出撃や訓練計画も考慮しつつ、自分の気分に従って秘書艦を頼んでいるわけだが」

提督「特に高雄が多いのは会話していて一番楽だからだね」

高雄「楽、ですか」

提督「うん。いや、楽と言うのはあまり良くない言い方だな……どう言えば良いと思う?」

高雄「え?ええと、ええと……どう言えば良いでしょうか」

高雄「と言いますか、私は提督の心を読む力はありませんよ?」フフッ

提督「ごめんごめん」ハハハ


提督「分かった。居心地がいい、だな。僕にとっては、高雄といるのはとても居心地がいいんだよ」

高雄「へえ……」

高雄(私も提督のおそばにいると心が落ち着くのだけど、提督も同じように思っていらっしゃるということかしら……なんだか素敵な気持ちになるわね)

提督「まあ高雄がどう思っているかは別だけどね」カタスクメ

高雄「ご心配なく。私も提督の隣はとても居心地がいいですから」ニコッ

高雄(好きになった方の隣なんですもの。居心地が悪いわけありません)

提督「そう言ってもらえるのは嬉しいな」ニコッ


提督「精神的に負担がなさそうなのは良かったけど、業務のほうで疲れとかはないかい?非番の日も他の娘より少ないし、毎日あの量を処理するのはそんなに楽じゃないと思うんだが」

高雄「確かに楽ではないときもありますけど、他の方の力も借りられますし、お休みは充分いただいていますよ。業務に加えて責任もある提督に比べれば、疲れというほどではありません」

提督「疲れは他人と比べるものじゃないよ。でも、ありがとう。これからも頼むよ」ポンポン

高雄「ええ。お任せください」

高雄(!提督が私の肩を!提督から私に触れてくださったのは着任の時以来だわ!)

高雄(……でも提督と間接キスした娘が何人もいて、敷波ちゃんなんてお姫様だっこまでしてくれたのよね。こんなことで喜ぶなんて、我ながらちょっと初心すぎじゃないかしら……)

提督「?どうかした?」

高雄「い、いえ。何でもありません」


提督「そうだ。私も高雄に聞いておきたいことがあるんだが、いいかな」

高雄「ええ。何でしょうか?」

提督「上官相手に言いにくいかもしれないが、高雄たちからみて私が直した方がいいところとか好きではないところとかあるかな」

高雄「直した方がいいところ、ですか」

提督「うん」

高雄「私は特に思い当たりませんが……例えばどのようなことを気になさっているのですか?」

提督「例えば、すぐに頭脳労働を部下に押し付けるとか、訓示を真面目に言わないとか、歌がうるさいとか、そんな感じかな」

高雄「結構気にかけていらっしゃるのですね」

提督「まあね。高雄からは特に注文もないかい?」

高雄「ええ。最初こそ冗談が多いのは意外でしたけど、今では楽しませていただいていますから」

提督「それはありがたい」


高雄「あ。ただ、」

提督「ただ?」

高雄「年頃の女の子を気軽にお姫様抱っこするのは控えたほうがよろしいかと思いますね」クスッ

提督「おっと。その話が高雄から出るとはね」

高雄「先ほど綾波から聞かせてもらいまして」

提督「やっぱり綾波かー」ポリポリ


提督「正直なところ、敷波ならいい反応してくれるかなーと思ってやった節はあるんだよね」

高雄「実際にいい反応をしてくれたようですね」

提督「だね。気軽にやったのは否定できないけど、あれは磯波と綾波へのネタ提供みたいなものだから許してほしいかな」

高雄「提督自らネタを提供なさるのですか」クスクス

提督「上官がふざけることによって部下もふざけたり冗談を言ったりしやすくなるわけだよ。ネタ提供も大事な任務だ」キリッ

高雄「なるほど。以前おっしゃっていた「気の抜ける場所」づくりには必要なことですね」

提督「好意的に言えばそういうことだね」

提督「敷波はその犠牲になったわけだけど」クスッ

高雄「かわいそうに」クスクス



提督「一応確認だけど、敷波はそれを嫌がってはなかったかい?」

高雄「ええ。ただ恥ずかしがっていただけでしたよ」

提督「そうか。ならいいんだが」

高雄「?何を気にしていらっしゃるのですか?」

提督「いやあ。私なんかにお姫様抱っこされるのは普通に嫌なんじゃないかとまだ気になっていてね」

高雄「まさか。提督にお姫様だっこしていただけるなんて、私なら嫌でないどころかむしろ嬉しく思いますよ」

提督「えっ?」

高雄「あっ……」

高雄(つい口に出してしまったわ……さすがにはしたなかったかしら)

提督「……本当に?」

高雄「え、ええ」

提督「そうだよな。高雄が嘘ついたところなんて見たことないしな」

提督「そうか……それなら」



提督「いつも世話になっているお礼に、しようか?お姫様抱っこ」

高雄「!」

高雄「本当に、してくださるのですか?」

提督「高雄が望むなら」

高雄(この表情にこの口調……本当にやってくださるおつもりね)

高雄「そういうことでしたらよろこんd……あ、でも」

提督「ん?」

高雄「敷波ちゃんは軽いから大丈夫でしょうけど、私ではその……重くはありませんか?//」

提督「いや、何とかなると思うよ」

高雄「本当ですか?無理なさらないでくださいね?」

提督「大丈夫だよ。ただ、背筋だけは伸ばしておいてくれるかな」スクッ

高雄「背筋を……分かりました」スクッ


提督「それじゃ、いくよ」

高雄「はい……」

高雄(ち、近い……!提督の腕も背中に回されているし……///)

提督「ふー……せーのっ!」ガバッ

高雄「きゃっ!」


提督「よし、これでどうだ」

高雄「これが、お姫様抱っこ……///」

提督「うん。私もそんなに力があるわけじゃないけど、やり方さえちゃんとすればある程度は何とかなるもんだ」

高雄「そ、そうなんですね……」

高雄(本当にお姫様抱っこをしていただけるなんて///)

高雄(見上げるとこんな近くに提督のお顔が……まるで恋人のような……////)

高雄(提督……)ドキドキ

提督「?どうかした?」

高雄「い、いえ。何でもありません……///」

高雄(私はこんなにドキドキしているのに、涼しい顔なさって。ずるい方です)

提督「?そ、そうか」


提督「それじゃ、そろそろ降ろすよ」

高雄「え、ええ」

提督「ほいっ」

高雄「よっと」



高雄「……///」

提督「あー……やっぱり、あんまり良くなかったかな」

高雄「い、いえ。私は、嬉しかったです。本当に……///」

提督「そ、そうか。それなら良かったよ、うん」ポリポリ


提督「そろそろ寝るとしようかな」

高雄「そうですね。お部屋までお送りします」

提督「おおっと。淑女を送るのは紳士たる私の役目だよ」キリッ

高雄「えっ!?///」

高雄(提督が、送ってくださるですって!それに『淑女』って、私のことよね!)

提督「いや、何でもない。忘れてくれ」クルッ

高雄「な、なぜですか?」

提督「ちょっと調子に乗ってしまったからね。やはりこういうのは私には似合わないよ」

高雄「そうでしょうか」

提督「そうだよ」


提督「むしろ、今のは「紳士じゃないでしょ」っていうツッコミ待ちのつもりだったんだけどね」カタスクメ

高雄「そ、そうでしたか……」

提督「うん。摩耶あたりならツッコんでくれたかな」

高雄「かもしれませんね」

高雄(はあ。ご冗談への対応はまだまだね……じゃなくて、)

高雄(なるほど。提督はご自分をそういうふうに捉えていらっしゃるのね。男性らしさ、あるいは紳士らしさは不釣り合いだと)

高雄(だから自分をかっこよく見せようとなさらず、むしろ面白く見せようとされている、と)

高雄(私たちにセクハラの類を一切なさらないのもそういうことなのかしら……また提督の気になることができてしまったわね)


提督「冗談ももっと分かりやすいやつにしないとな。さ、戻ろう」

高雄「あの……提督?」

提督「ん?」

高雄「あー……いえ。戻りましょうか」

提督「ああ」


テクテク

高雄「いろいろお話しさせていただき、ありがとうございます」

提督「こっちこそ。高雄は聞き上手だから、調子に乗ってしゃべりすぎてしまうから自重しないと」

高雄「私にとってはありがたいことですけどね」

提督「そうかい?」

高雄「そうですよ」ニコッ


高雄「それと、」

提督「それと?」

高雄「提督がその……紳士らしさをお出しになりたいなら、私はいつでも歓迎しますから」

提督「それはありがたい。とは言っても生憎紳士らしさは持ち合わせてないから、演じるというほうが正しいんだろうけどね」

高雄「女の希望に応えてくださるのは充分紳士らしいと思いますよ」

提督「やめてくれ。そこまで持ち上げられるとさすがに照れるよ」ニコッ

高雄「たまには良いではないですか」ニコニコ

提督「そうだね。たまには良いかな」


提督「それじゃ、また明日な」

高雄「ええ、また明日。お気を付けて戻ってくださいね」

提督「ありがとう。おやすみ」

高雄「おやすみなさい」

テクテク


高雄型の部屋

ガチャ

高雄「ただいまー」

高雄(もう二人とも寝ているかしら。起こさないようにそっと……)

鳥海「あ。おかえり」

摩耶「遅かったな」

高雄「あら。起きてたの?」

摩耶「もう寝るところだけどな」


鳥海「それより、こんな時間まで何してたの?」

高雄「え゛っ!?ま、まあ、ちょっとね」

鳥海(怪しい)

摩耶(提督絡みだな。間違いない)

鳥海(でも今から話を聞いたら明日に影響しそうね)

摩耶(今日は寝るとして、ほとぼりが冷めないうちにまた比叡さんあたりにいじってもらうか)


高雄「さ、早く寝ましょ」

摩耶「だな」

鳥海「姉さん、明日も秘書艦でしょ?」

高雄「?ええ、そうよ」

摩耶「ふーん……」ニヤニヤ

高雄「な、なによ」

鳥海「頑張ってね」ニヤニヤ

摩耶「頑張れよ」ニヤニヤ

高雄「分かってるわよ」


高雄(ふう……今日一日でいろいろありすぎたわね。作戦の総括に始まって金剛さんたちとお茶会、夜の打ち上げもしっかり盛り上がって、ようやく終わりかと思えばまさか提督と二人きりでお話しできるなんて……うふふ♪)

高雄(戦力や頭脳として評価していただけるのも嬉しいけれど、性格や提督との接し方をお気に召していただけるのはそれ以上に気持ちいいわね)

高雄(でも今日のことでまた提督の気になる一面を見てしまったし……本当の提督がどんな方なのか、もっともっと知りたいけど……)

高雄(……悩んでも仕方ないわね。まだ道は長そうだけれど、焦らず一歩ずつ提督に近づいていきましょう。その先には、きっと今以上に素敵な世界が待っているのだから)


読んでくれたみなさん、ありがとうございます。

今回はここまでにします。
この続きはまだ完成が見えないので、一旦時間を置かせてください。
続きに興味のある方は、次の投稿までまたしばらくお待ちいただけると幸いです。


大っ変間隔が開いてしまいましたが、続き書き始めました。お納めください。
(手違いでSS速報Rのほうに立ててしまってますけど、今のところR要素はない予定です。今のところは)

【艦これ】高雄「秋の日々は混乱のうちに」
【艦これ】高雄「秋の日々は混乱のうちに」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1543204477/)



ようやく完結編までたどり着きました。
どうぞお納めください。

【艦これ】高雄「クリスマス」
【艦これ】高雄「クリスマス」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1545549292/)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年07月30日 (月) 11:12:23   ID: n33Sq3Dl

横須賀海軍工廠出身の艦娘(山城、陸奥、比叡、秋津洲、高雄、天龍、妙高、能代、鳳翔、天城、龍譲、飛龍、翔鶴、翔鳳、瑞鳳、龍鳳、千代田、雲龍、大鯨)こいつら小栗上野介忠順の墓に一度は墓参りをして礼を言わないとバチが当たるぞ。

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