周子「ある日。ある昼。そぞろ歩き」 (21)

(事務所)

P「周子。午後暇?」

周子「暇ー。めっちゃ暇ー」

P「デートしない?」

周子「…」

周子「いいけど。午後に打ち合わせある言うてなかった?」

P「うん。テレビ局の人とLiPPSのドキュメンタリーの打ち合わせをする予定だったんだけど、あちらさんの担当者が急病でダウンしてキャンセル。後日に繰り越しだとよ」

周子「ほーん」

P「というわけで出かけよう。ちひろさんに早退届はすでに出してある」

周子「よっしゃー」

P「ふぅー」

周子「バンザーイ」

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P「行きたいとこある?」

周子「京都」

P「今からは無理だろ。他には?」

周子「宇治(京都市)」

P「同じでしょうが。他には?」

周子「他にはないかな」

P「じゃあバッセン行くか」

周子「バッティングセンターかぁ」

P「嫌?」

周子「嫌じゃないよ。でも歩くのがだるいからそこまでおんぶしてーん」クテ-

P「立って歩きなさいな」

周子「抱っこでもいいよ」ガシッ

P「歩けい」

周子「けち」

(バッティングセンター)

周子「平日の昼だと人がいないねー」キョロキョロ

P「だなぁ」

周子「こういう貸切状態だとすごくリッチな気分」

P「わかる」

周子「適当に言うただけやのに」

P「適当に相槌うっただけなのに」

周子「それにしても…人のいないバッティングセンターって物悲しいねぇ。あ~、やだやだ。ここは野球少年の集う場所じゃなかったのかね!」

P「みんな学校や会社があるもの」

周子「なんと」

P「ほれ。いいから打とうや」

周子「オッケー。おっ、ここはカード制なんだね」

P「そ。3000円で12ゲームのでいいかな」

【バッティングセンター】
その名の通りバッティングを楽しむ施設。バッティングマシーンから発射される70~135kmの軟球を打ち返すのが基本的な楽しみ方だが、稀にキャッチャーミットで捕球練習をする人やバッティングに飽きてグリップバント(バットの根元の部分でするバンド)で遊ぶ人も見受けられる。バットは施設側で用意してあるのでちょっとした運動や暇つぶしに最適。各バッティングセンターにも個性があり、「24時間営業」「20年以上前の野球カードを販売している」「実際の野球選手の投球モーションが映し出される」「ボウリング場と合体」など多種多様。1ゲーム20球程度で200~300円。ほとんどの店舗にはついでのように「ストラックアウト」の機械も置いてある。
小学生の頃にイチローは、通っていたバッティングセンターに「イチロー専用打席」のセッティングをしてもらっていたらしい。

チャリ-ン...カシュ!

P「よーし。打つぞー」グッ

周子「プロデューサーって野球とかソフトボールとかやってたん?」

P「中学まで野球やってたよ」

周子「お、じゃあ期待。かっこいいところ見せてよ♪」

P「任せておけ。惚れさせてやる」

周子「もう惚れてるよ」

プレイボ-ル!

P「いくぞー」

シュッ!
ブルンッ!

P「…あれ?」

周子「ストライーク。1球目は空振り♪」

P「ま、まだ目が慣れてないかな」

シュッ!
ブルンッ!

P「あるェー?」

周子「駄目やん」ニヒヒ

P「見てろ、見てろよ。次こそはホームラン打つから」

周子「ハイハイ。期待しとるわ」

P「行くぞ!」

カキ-ン!

周子「お、いい当たり♪」

P「それ見たことか」

周子「ピッチャー返しだけどね」

P「次が本番だよ」

シュッ!
ブルンッ!

周子「ほーん♪」

P「…」

シュッ!
カキッ!

周子「ファールボール」

P「ぐぎぎ」

シュッ!
カキ-ン!!

P「はい! きた!」

周子「ナーイバッチ♪」パチパチパチ

P「やったぜ」

周子「シューコを甲子園に連れてって(裏声)」

P「声真似うまいなぁ」

シュッ!
ブルンッ

シュッ!
カキ-ン!

シュッ!
カキッ!

P「あんまり当たんねぇ!」

周子「スイングがへなちょこだねぇ♪」フフフ

(しばらくして)

P「打てなかったなぁ」

周子「あはは。想像してたよりはマシだったよ。どんまい。ちょこP」

P「まさかへなちょこのちょこP?」

周子「へなちょこのちょこP」

P「汚名返上だ! もう1ゲーム!」カッ!

周子「ダメダメ。次はアタシの番だから。バット貸してーな」

P「周子も打つんだ?」

周子「かっとばす!」

P「ホームラン見たいなー」

周子「任せといて。お茶の子さいさいだよん」

P「言ったな?」

周子「打てなかったら何でも言うこと聞いたげるよ」

P「よっし。打てなかったら1週間お菓子のつまみ食い禁止な」

周子「つまんないなー。すけべな命令とかしたいと思わんの?」

P「していいならするけど」

周子「いいよ別に。打つし♪」

P「いい度胸だ。打てなかったら覚悟しておきたまえ」

周子「上等」

プレイボ-ル!

周子「いくぞー」

シユッ!
カキ-ン!!

テレッテッテ-♪

周子「お、ホントにホームラン♪」

P「」

周子「(打つつもりじゃなかったんだけどなぁ…)」

(しばらくして)

周子「いやー、楽しかったね♪」

P「だな。周子、手は痛くない?」

周子「ううん。ヒリヒリはするけど。プロデューサー、痛いん?」

P「…親指の付け根の皮が剥けた」

周子「力み過ぎっしょ」

P「痛いなぁ」

周子「舐めたげよっか」

P「いらないよ」

周子「ほい。手出して」

P「だから舐めなくても」

周子「舐めないっての。バンソーコーあるからさ。巻き巻きしてげるよ」

P「巻き巻きって言い方。いいな」

周子「母性でも感じる?」

P「かも」

マキマキ...

周子「ほい。完了♪」ペチッ!

P「いってぇな! ありがとう!」

周子「『プーさん』の絆創膏。可愛らしくて似合ってるよ」ニヒヒ

P「周子。いつも絆創膏持ってんの?」

周子「いや。半年くらい前にアタシもバッティングセンター来たんよ。ここと違う場所だけど。美嘉ちゃんと柚ちゃんと3人でね。その時に調子に乗ってパカパカ打ってたら3人して手の皮剥いちゃってさ。バンソーコー買って巻いたのよ。その残りがあったわけさ」

P「へえ」

周子「まだ余ってるから今度またこよーよ」

P「いいよ」

周子「2人きりで来る? みんなで来る?」

P「2人きりで」

周子「えこひいきー♪」ヤ-イ

P「1人くらいひいきする相手がいたっていいでしょうが。人間だもの」

周子「プロデューサーとしてあるまじき発言だな~♪」ニコニコ

(しばらくして)

周子「はー、楽しかったねぇ♪」クテ-ン

P「自分で歩きなさいよ」テクテク

周子「ホームラン打ったんだからおんぶくらいいいじゃないの。てゆーか車までなんだから文句言わないの」

P「目立つんだっつの」テクテク

周子「チキン」

P「週刊誌の記者に見つかったらあることないこと書かれるぞ」

周子「『アイドル・塩見周子。白昼のデート!』みたいな?」

P「そうそう。まずいだろ」

周子「事実じゃないの」

P「そうだけどさ」

周子「『お付き合いされているんですか!』って突撃取材されたらどうしたらいいかな。バレないように『いいえ』って答えたほうがいいかな」

P「否定されたら心が折れそう」

周子「じゃあ肯定した方がいいかな♪」

P「複雑だなぁ。プロデューサーとしては否定してもらいたいんだけど」

周子「煮え切らないねぇ」

P「否定しなくていいよ」

周子「『しなくていい』かね?」

P「否定するな。正直に話せ」

周子「んふふ、その言葉に責任持ちなよ~♪」ペチペチ

P「ほっぺをペチペチするんじゃないよ」

周子「ところで次はどこ行くん?」

P「私服買いたいんだけど、買い物付き合ってくれない?」

周子「いいよ。シューコちゃんのセンスとチョイスに任せておきたまえ」

(夕方・事務所)

P「ただいまー…ってもうちひろさんも帰っちゃったか」

周子「だーれもいないね。ソファにダーイブ~」パタリ

P「ヘソ見えてるぞ」

周子「いやん。んー…歩き疲れたなあ…誰かさんの買い物に付き合って疲れたなぁ…」クッタリ

P「周子様。おみ足をお揉み致しましょうか」シュタ!

周子「苦しゅうない。やりたまえ」

P「はっ!」モミモミ

周子「あー…」

P「…」モミモミ

周子「プロデューサー」

P「は、何用でしょうか」モミモミ

周子「10分200円の足マッサージ機の方が気持ちいいねんけど」

P「ひどいな。こんなにも頑張っているというのに」

周子「努力ってのは大抵報われないものなんだよ」

P「切ないなぁ」

周子「よしよし。でも頑張ったらシューコちゃんが褒めたるから」

P「それで十分すぎるほど報われるよ。…そろそろ帰ろうか。寮まで送るよ」

周子「うん。送ってもらいたいことはもらいたいんだけどさ、歩いて送ってくれない?」

P「いいよ。寮遠くないし」

周子「ありがと。歩きたい気分なんだよねー」

P「歩き疲れた言うてましたやん」

周子「いーの。ほら行こうよ」

P「電気消してくから外で待ってて」

周子「はーい」

(しばらくして)

テクテクテク...

周子「プロデューサー。来月の3連休って予定あるん?」

P「全部仕事が入ってるよ」

周子「ほーん…」

P「再来月、どこか遊びに行こう。代休分消化するから」

周子「どこかってどこさ」

P「好きなとこでいいよ」

周子「じゃあ京都行きたいな」

P「よしきた」

周子「そこは突っ込まんかい。『実家じゃねーか』ってさ♪」

P「再来月。本当に行く?」

周子「うん?」

P「この前。周子、実家に電話してたろ」

周子「…」

周子「盗み聞きしてたん?」

P「する気はなかったけど。近くをたまたま通りかかって」

周子「嫌やわー。サイテー。うら若き乙女の電話を聞くなんてこのドスケベー」

P「風評被害も甚だしい」

周子「そいで? アタシ別に変な話してなかったっしょ?」

P「うん。ただ何となく実家に帰りたいんじゃないかな、って感じたんだけど」

周子「…」

周子「いや別にそんなんちゃうし」

P「そうなんだ」

周子「的外れ、的外れ」

P「心配して損したかなぁ」

周子「いや。ありがとね。その優しさに惚れたりはしないけれども。寂しくなんかないけれども」

P「優しい人間はモテるって聞いたんだけど」

周子「そんな信じてるからモテないんやろ」

P「ひどい」

周子「んふふ」

テクテクテク...

P「…」

周子「…」

P「…」

周子「あのさプロデューサー」

P「うん」

周子「やっぱ。再来月の休み、京都戻るから付き添ってくれへん?」

P「いいよ」

周子「あっさりだね」

P「元々、そのつもりだったし」

周子「ありがと」

P「どういたしまして」

周子「泊まる場所はアタシの部屋でいいよね。布団は一緒♪」

P「いいよ」

周子「…」

周子「い、いや。冗談だから。布団は別だし…」

P「周子って照れ隠しにからかおうとするよな」

周子「うるさいな。あほ」ペチン

P「痛くない」

周子「ふんふんふんっ!」ペチペチペチペチ!

P「痛くないけど、うっとおしいわ!」

テクテクテク…

周子「…と、案外早く着いちったね。送ってくれてどーも」

P「いいえ。また明日な」

周子「うん。プロデューサーさ」

P「何?」

周子「ちゅき」

P「おやすみ」

周子「返事せんかーい♪」

P「はいはい」ギュッ

終わり

以上です。
お読みいただきありがとうございました。

久しぶりに荒ぶることのなかった話。

おつー

乙です


荒ぶらなかった御礼に、柚にいちごパスタを食べさせるSS書いてきますね

> 周子「努力ってのは大抵報われないものなんだよ」

フレデリカ「何人たりと」

志希「わたしの前で」

美嘉「喧嘩しちゃ」

奏「やだやだ」

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