プリアラSS『変身したら伊藤誠になった件』(5)

プリアラSS
エリシオが中の人繋がりで伊藤誠に変身し、いちご野高校やキラパティスリーにスパイとして潜入して大騒動を繰り広げる話。

敵組織内部、キラキラルを奪う者たちの巣窟。


エリシオ「トランスガン?」
エリシオは、銀色のデスクにある青いクリアータイプの水鉄砲を見ながら、上司のノワールに言う。
ノワール「ああ、ぱっと見はカモフラージュのため水鉄砲に似せてあるが、これを使えば、お前は男子中学生か高校生の姿になれるはずだ。これを利用して、プリキュアたちのいる中学か高校にスパイとして潜伏してほしい」
エリシオ「……別にそんなことをしなくても。私は空っぽの道化師。正面からぶつかりつつ、精神的な揺さぶりをかけるような戦法が得意だし、好きなのですが」
ノワール「これは上司命令だぞ。それに、キラキラル集めはプリキュアのせいでうまくいっていない。スパイとして潜伏しつつ、奴らのいるキラパティスリーもよく観察し、奴らの弱点を探ってほしいのだ」
エリシオ「……そうですか……」
傍らにいるグレイブとビブリーはやや不満げ。
グレイブ「なんで俺にやらせてくれねえ」
ビブリー「そうよ、なんで根暗なエリシオにやらせるのかしら」
ノワール「グレイブ、お前は荒っぽいし、ビブリー、お前はわがままだろう。ここは口調も丁寧で慎重なエリシオこそがスパイにふさわしいのだ」
エリシオ「評価してくれるのはありがたいのですが、私が普通の人間になったら、ろくなことが起こらない気が……。
まあ、やってみましょう」
エリシオは青いトランスガンを取り、銃口を上に挙げて構える。
エリシオ「……引き金を引けば変身できるのでしょうが、掛け声……入れたほうがいいですかね」
ビブリー「仮面ライダーじゃないんだから」
グレイブ「適当に決めろ」
エリシオ「わかりました…….
私たちは、特殊なエネルギーを奪う存在だから……
『盗宝(とうほう)!!』」
思い付きで変身時の掛け声を決め、エリシオはトランスガンの黄色い引き金を引いた。
上を向いた銃口から黒い霧が出てきて、エリシオの白い長髪と長身痩躯の体を包み込み、彼の姿を分からなくしていく。

ビブリー「しかしねえ。エリシオは男子高校生の姿に化けられるという話だけど、どんな姿になるの?」
ノワール「深層心理に隠された姿に変身が可能だ。おそらく、男子の学生に変身できるのは確実だろう」
グレイブ「大丈夫かねえ」
黒い霧の中心から、バチバチと青白い光が出たかと思うと、急に黒い霧がはじけ飛び、中の人間の姿が現れた。
それは、エリシオの姿ではなかった。
中肉中背で、黒いスーツ、赤いネクタイをしている。黒い短髪に一本アホ毛を垂らした、彫りの深い顔つきの高校生っぽい少年になっていた。

エリシオ「……?」
エリシオは近くの鏡を見てみる。自分の姿がいつもとは全く違っていた。
エリシオ「え!? え!? これ、俺!?」
ビブリーは、ん? となった。エリシオの一人称は『私』で、『俺』ではないはずだ。グレイブは気づいてないようだが。
ノワール「どうやら成功したようだな。その姿だと中学生より高校生のほうが似つかわしいだろう。とりあえず、転入届を偽装するから、いちご野高校に行ってくれ。名前はそんまんまだとまずかろう。どうする?」

エリシオ「それは……」
唐突で思いつかなかったが、とりあえず即断即決で決めた。

エリシオ「『伊藤誠(いとうまこと)』というのはどうだろう、あ、いや、どうでしょう?」

ノワール「悪くはないな。この名前で行こう」
ビブリー「ん? エリシオ、あんた一瞬ため口になってなかった? いつも敬語なのに」
グレイブ「ビブリー、お前鋭いなあ」
エリシオ「とりあえず、この姿で潜伏してみます」

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