三船美優「七夕の夜」 (13)

アイドルマスターシンデレラガールズの三船美優さんのSSです
地の文あり

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今日は七夕の夜。仕事を終え、帰ってきたばかりの事務所で、私はただなんとなく外を眺めていました。

「お疲れ様です、美優さん。すっかり遅くなっちゃいましたね」

そうしていた私に、プロデューサーさんが声をかけてくれました。
 いつも私のことを気にかけてくれる、優しい人。
 
「お疲れ様です。プロデューサーさん。」
 
 私も、そう返事をしたのでした。

「そういや今日は七夕祭りがあったんでしたね、良かったら、一緒に見に行ってみませんか?」

お祭りはもう終わってるでしょうけど、と付け加えたプロデューサーさんでしたが、私にとってお祭りが終わったあとかどうかは、もう些細な問題です。
プロデューサーさんと一緒に過ごせる時間を、私が断るはずもありません。

「…!はい…一緒に行きたいです…!」

こうして、私とプロデューサーさんは出かけたのでした。

「お祭り、やっぱりもうすっかり終わっちゃってますね…」

「ふふ、いいんですよ。こうしてプロデューサーさんと一緒に歩けるだけで、私は楽しいです…」

 プロデューサーさんと他愛のない話をしながら二人並んで歩いていく。そんな時間が、とても心地よく感じられました。
 時間は…夜の10時くらいでしょうか。

「美優さん!空を見てください!天の川がとても綺麗ですよ!」

 そう言われて空を見上げると、プロデューサーさんの言うとおり、満天の星空が広がっていました。
 七夕。天の川を渡って織姫と彦星が再開する日…か。

「―さん?美優さん!」

「美優さん、どうかしたんですか?」

え?あれ?ずっと考え込んでしまってたみたいです。プロデューサーさんは、私の顔を覗き込み、心配そうに見ています。

「大丈夫ですか?なんか落ち込んでるというか…凄く難しい顔をしてたような…」

ダメですね私。せっかくプロデューサーさんと二人で歩いてるのに、綺麗な星を見上げてそんな顔をしちゃってたなんて。

「良かったら、聞かせてもらえませんか?」

話すべきでしょうか。私が考えていたことは、今この場で話すには…ムード台無し、ロマンチックの欠片のないようなことだったのです。
でも、優しく、寂しそうに微笑むプロデューサーさんの顔を見て、私は口を開いたのでした。

「私…七夕の話、あんまり好きじゃないんです…」

「大好きな人と離れ離れになって…1年にたったの1回しか会えないなんて…そんなの悲しすぎます…」

「なるほど、そうだったんですね」

「良かった…もしかしたら俺、なんか美優さんの機嫌を損ねるような変なこと言っちゃったのかと思いました」

そういって笑うプロデューサーさん。
ああ、やっぱりダメだ私。そんなことを思わせてしまって…

「美優さんは、やっぱり優しい人ですね」

「俺はその考え、好きですよ。俺も、もしそんな人が出来たのなら、ずっと一緒にいたいって、そう思いますから」

 胸が高鳴ります。さっきまでダメな自分に落ち込んでいたのはどこへやら。
嬉しい。プロデューサーさんも、同じことを考えてくれた。

「プロデューサーさん…」
 
私の大好きな人。26年経ってようやく出会えた運命の人。
もしそんな人とそういう関係になれたのなら、やっぱり私だったら、1日だって離れるなんて考えられません。
大好きな人とはいつでも一緒にいたい、そう思いますから…

「もうすっかり明かりも落ちて暗いですから、足元には気を付けてくださいね」

プロデューサーさんの言うとおり、なにかにつまづいたりしないようにしなきゃ…

「きゃっ!」

って言ってるそばから!

「美優さん!」


だきっ


あれ?痛くない…?
そうか、受け止めてくれたんだ…

「美優さん、大丈夫ですか?」

「はい…プロデューサーさんが…助けてくれたので…」

自然と顔が熱くなります。プロデューサーさんが助けてくれた。それだけでとても嬉しかったですが、それ以上に…
プロデューサーさんが…こんなに近くに…

「美優さんが無事でよかったですよ」

そんなことを考えているうちに、プロデューサーさんは受け止めた私の体をゆっくりと離してしまいました。

もう少しこのままで良かったのに…
プロデューサーさんの優しさを独り占めしたい、私だけに向けてほしい…
そんな想いが溢れてきて…

「その…暗いですね…」

暗いって言うのはさっきプロデューサーさんも言ってましたけど…
 
「こんなに暗かったら…はぐれちゃったり…また何かにつまづいちゃうかもしれません…」

「だから…その…手を…」


ぎゅっ


「あ…」

言い終わる前に、プロデューサーさんは私の手を握ってくれました。私を包み込むような、遠慮がちに優しく握られた手。

「行きましょうか、美優さん」

「…はい////」

プロデューサーさんの手、暖かい…
その暖かさを、手のひら全体で感じられるよう、私もそっとプロデューサーさんの手を握り返すのでした。

しばらく2人で手を繋いで歩き、やがてお祭りがやっていたであろう広場までやってきました。
そこには七夕らしく、短冊が結ばれた笹の葉が置かれていました。

「せっかくだから、何か書いていきますか」

「はい…」

私とプロデューサーさんは、それぞれ短冊にお願いを書き込み、笹の葉に結んだのでした。

「プロデューサーさんは、短冊にどんなお願いごとを書いたんですか?」

「そりゃもちろん“全員トップアイドルにする!”ですよ」

「プロデューサーさんらしいですね…」

「そういう美優さんはどんなお願いをしたんですか?」

「ふふ、内緒ですよ…」

「えーずるいですよー」

いつまでもこの時間が続いたらいいのに。そう思いながら、事務所へ戻るのでした。
歩く速度を落とし、ゆっくり、ゆっくりと歩いて。もちろん、手はしっかりと繋がって。
 


プロデューサーさんとの大切な思い出がまた一つ。
できればこれからも貴方との思い出を…

「あ!流れ星!美優さん!見えましたか!?」

「え?どこですか?」

残念。私が空を見上げた時には、もう消えちゃったみたいです。

「今度は見逃しません…!」

今度はちゃんと空も見ていよう。そして流れ星が見えたら流れ星にも祈るんです。
短冊に書いた願いと同じ願いを。



―――プロデューサーさんと永遠に一緒にいられますように。
                     


☆おしまい☆

七夕反省会にしようか迷ったのですが、美優さん単体の話はしばらく書いてなかったので、こうなりました。
次回は反省会シリーズを予定しています。
反省会シリーズの美優さんはかなりはっちゃけてますので、そうじゃないSSの時にはできるだけ原作の性格に近づけるよう意識しています
ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。

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