小関麗奈「高度8000m」 (27)

・どっちからよんでもだいじょーぶ


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退屈、退屈。物心ついた頃から、そう思ってた。

周りの子どもバカに見えてしょうがない。一緒に遊べない。
周りの大人がまどろっこしく見えてつまらない。教わることなんてない。

親はいう。ほかの子と仲良くしなさい。年長者のいうことは聞きなさい。

そんなのは真っ平御免だった。

アタシはひとよりずっと高いところまで飛べる。
みんなに合わせていたら、人生の浪費。宝の持ち腐れもいいとこ。

長いものなんて知ったこっちゃないわ。

巻かれて、巻かれて身動きがとれなくなったらどうするの?
アタシの人生の責任はアタシしかとれないのに、どうして他のヤツの言いなりにならないといけないのよ?

そんな調子で生きてたから友達もいないし、教師からも嫌われた。
足を引っ張るような人間は、こっちから願い下げだけど。

親ともうまくいってない。ママはアタシに何も言わないし、パパは口うるさかった。

誰に食わせてもらってると思ってるんだー。ハッ! 今思い出しても腹立つ。
カネで女を飼い慣らそうなんて、男のやることじゃないわ。

アタシは山形の家を飛び出して、ひとりで東京に飛び出した。
今の自分にでも出来る仕事。13の女の子にできること。

パッと思いついたのがアイドルだった。
346プロダクションあたりなら、アタシより年下のアイドルだっている。
アタシがなれない道理はない。

でも今振り返って見ると、アタシの計画は穴だらけだった。

東京の街にとってアタシの財布は小さすぎた。アタシも小さかった。
1人で泊まるなんてできないし、夜遅くまで表をウロつくわけにもいかない。

アタシは警察の目をかいくぐり、一日一食で1週間を過ごした。
気分はさながら犯罪者。悪の手先。

その間もいくつかのプロダクションに行ったけど、門前払い。
保護者もいなくて、小汚い子どもだったかもしれないけど、お茶かご飯くらい出してくれてもよかったのに。

7日目にはもうほとんど眠れてなかったし、お腹もペコペコで、髪もボサボサだった。
ランドリー代がもったいなくて、服も洗ってなかった。ついでに身体も。

モウロウとする頭でたどり着いたのが、346プロダクションが主催してたオーディションの会場。
でもその時の格好じゃ合格しようがなくて、会場の周りをグルグルしたり、他の子を脱落させるためのトラップを作ろうとしたり。

そんなことをしてるうちに空腹の限界で、アタシはついに倒れた。

最高にみじめな気分だった。本当のバカは自分だと心底思った。

子どもらしく子どもを満喫することもできなくて。
大人に守ってもらいながら、ゆっくり大人になることにも耐えられなくて。

このまま死にたいとさえ考えた。

涙がアスファルトに落ちる直前、なんか、ほけー、っとした女がアタシに声をかけた。
顔を上げると、その女のジャケットには、「346プロダクション」と大きくプリントされてた。

藁にもすがる思いで、その人に誠心誠意を込めてお願いした。

アタシをアイドルにしろ。

その女が、今のプロデューサー。
今のアタシは東京の女子寮にひとりで住んで、東京のガッコウに通ってる。

ちなみに両親は、アタシがアイドルになることに反対しなかった。社会の荒波にもまれればちょっとは大人しくなるとか、そう思ってるかもしれない。

けど実際。
アタシはそんな荒波の届かない、誰の声も届かないステージにいる。

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冷静に分析して、アタシにはアイドルとして決定的なものが欠けてた。

空気が読めない。
礼儀知らず。
小生意気。
それから、ダンスの才能。

運動神経は悪くなかった。でもダンスの動きは、体育の授業とはワケが違う。

動作ひとつひとつの名前は覚えられる。
だけど、身体がついてこない。

ひとつの動きをモノにするのに、何週間もかかる。
トレーナーには注意されるし、それで余計に緊張して、またミスが増えるし。

しかもアタシは大人しく怒られるわけじゃなく、不貞腐れてレッスンルームから出ていったり、レッスン自体をサボったりした。

結局トレーナー達の間をたらい回しにされて、4人目でまともなやつが担当になった。

「私はトレーナーの中のトレーナー。トレーニングを極めし女だ。

 師匠〈マスター〉と呼んでくれて構わないぞ」

「中二病キャラなんて今時アイドルでもやらないわよ」

その女をアタシはマストレと呼んでる。
マストレは、アイドルが出来て当然のことじゃなくて、アタシが出来るようになることを教えてくれた。

教わって数ヶ月で、並のアイドルくらいにはなれたと思う。

だけど、それと仕事がうまくいくかどうかは別問題だった。
学校にいたときみたいに、アタシはすぐに他の子や大人の顔を潰してしまう。

パンチじゃなくて口で。

こんなに頭が良いのに、周りを立てることができない。
ギョーカイジンに嫌われて、すぐに仕事がなくなった。

仕事でいい思いしたことがないけど、何もしてないとアタシはおかしくなりそうだった。

アイドルを目指して上京。ステキな響き。
でも実際は、アタシはアイドル以外になり損ねただけ。

親のいうことを素直に聞く娘。
人当たりがよくてカワイイクラスメイト。
勤勉で授業の邪魔をしない生徒。
誰かのともだち。

アイドルを辞めたら、何が残る?

そんなアタシにスポットライトを浴びせかけたのが、LIVEバトルだった。
“アイドル達に適度な緊張感を与え、更なる高みへ導く”、だったっけ。

意義はよくわからないけど。
他にできる仕事もないアタシは、一も二もなくバトルに参加した。

5連敗。
アタシはファンや観客の顔色をうかがうことも出来なかった。
いい歳して年少アイドル追っかけてる人間の考えなんて分からない。
ああいうヒトは、中学生の女の子が通常には出会わない。怪人みたいに見える。

他の、頭お花畑で鈍感なアイドル達にアタシは負ける。
アタシは猫かぶるようなガラでもないし、可愛げがなかった。

それで6戦目のとき。
先攻の相手はダンスも歌も、アタシよりずっと上手だった。

後攻のアタシはメチャクチャに緊張して、はじめからミスを連発した。
ステップはおぼつかない。歌詞は間違える。顔色もたぶん悪かったと思う。

会場がどんどん冷たく、沈んでいくような気がした。
痛いくらいの無音だった。音楽はまともに頭に入ってこない。観客の声援もない。

その沈黙が、アタシの鼓膜を震わせた。

「……うるさい」

そんなことを言ったような気がする。
その後から、アタシはパフォーマンスを本当にメチャクチャにしてしまった。

冷めた観客を罵倒した。
無関心な大人たちを攻撃した。
何もわかってないアイドルのファンを詰った。

そしたら、勝てた。ヤツらの考えることはよくわからない。所詮他人だもの。
LIVEバトルを続けるうちに評判、もとい悪い噂が広がって、いつの間にか「世界征服を目指す悪のアイドル」という肩書きを手に入れた。

世界征服って……特撮の悪の組織じゃあるまいし。

仕事はどんどんLIVEに偏っていった。仕方ないわ。それ以外出来ることないし。
でも、心は晴れなかった。

チケットを買うヤツや自称ファンは、小関麗奈のものじゃないから。

ヤツらにとってアタシは、大声を出して場を盛り上げてくれるスピーカー。
一歩会場の外に出れば、すぐに記憶から消えてなくなっちゃう。

愚民どもはすぐに忘れる。自分の気持ちや、自分のしでかしたこと。
自分の人生にすら飽きっぽくて、いろんなことに手をつけては、片っ端から捨てていく。

会場で配られたアタシの応援グッズだって、出口のゴミ箱に捨てる。
でもアタシは、そいつらのおかげでアイドルとして生きながらえている。

LIVEが成功すると、はじめアタシを叩いていたギョーカイジンたちが手のひらを返した。

馬鹿馬鹿しい。世界征服なんて。
たしかにアタシには、LIVE会場を支配する特別な魔法がある。

でもそれは時限付き。会場が爆発するみたいに盛り上がっても、ヤツらの頭にアタシの存在は欠片も残らない。
主従関係が存在するとしたら、アタシはまちがいなく「従」のほう。まさに悪の手先。

アタシは勝ち続けた。10連勝くらいしたとき、気づいた。

ここはひどく寒い。眩しい。あんまりにも高すぎて……。
アタシの姿を見るひともなくて、アタシのためにさえずる小鳥もいない。

アタシは今時小学生もやらないようなイタズラで、バトルまでの間をつないでる。
そうでもしないと。
そうでもしないと。

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その女は自宅でLIVEバトルの映像を見ていた。
映っているのは南条光。98連勝という驚異的な記録を達成し、もうすぐ100に届く。

このままでは間違いなく、小関麗奈とぶつかる。

「レイナサマぁ……」

南条光は、ルックス・ダンス・ボーカル全てにおいて高い水準にある。
疑う余地がない天才。
世間的には「ヒーローなアイドル」として有名だが、その名に恥じない活躍を見せている。

ヒーロー。映像を見ている女にとって、小関麗奈はヒーローだ。

就活がうまくいかなかった。女には、社会で生きていくための資質が欠けていた。
あまりに人が好すぎた。
他人を蹴落としてでも、なにかを成し遂げたいという強い意志がなかった。

卒業間際になって、346プロダクションの臨時スカウトに採用が決まった。
だが、優しすぎる者にスカウトはできなかった。

スカウトの負の側面は、他人の青春に土足で踏み込んで、人生を捻じ曲げてしまうこと。
そして一切責任はとらない。ものの分別がつかない、年端もいかない少女を「自己責任」の一言で簡単に切り捨てる。

彼女には、そんな残酷なことはできなかった。
すぐに無能の烙印を押され、簡単な事務作業や雑用を押し付けられるようになった。

あの日。
あの日は、オーディション会場の外で誘導をまかされていた。

会場にやってくる少女たちをドキドキしながら案内して、会場を去る少女たちには涙を添えた。

オーディションが終わる、午後3時ころ。
彼女は会場の周囲をぐるぐる回ってゴミ拾いをしていた。

こういう誰の迷惑にもならない作業に、彼女は心から安らぎを覚えた。
やはり自分には芸能関係は向いていないのだと思った。

仕事はもう辞めよう。
実家に帰り花嫁修業でもして、だれか理解のあるひとと結婚しよう。

そんな風に考えていたとき、薄汚れた格好の少女が倒れているのを見つけた。

オーディションで玉砕したのかな。
彼女がそう思って近づくと、その少女は顔を上げた。

洋服と同じように顔をすこし汚れていた。

だが、その瞳は強靭な意志を湛えていた……と女は思う。

「アタシをアイドルにしろ」

そう言われたとき、自分の生きる道が決まったと思った。
少女は「小関麗奈」と名乗った。


女は麗奈に食事を与え、風呂に入れてやり、かいがしく世話をした。
まるで赤ん坊を産んだ母親のようだった。

かろうじて生きていたスカウトマンの肩書きで、麗奈をプロダクションに招いた。

だが麗奈は傍若無人かつ極めて自己中心的で、才能は認めれていたが、プロデューサー達に敬遠された。

そこで女に白羽の矢が立てられた。
ひろってきたなら責任を持って飼いなさい。

だが、彼女にアイドルのプロデュースのやり方はわからなかった。
自分のプロデュースにすら失敗したのだから、他人にどうこう言いたくなかった。
なので、自分からは何もしなかった。

麗奈の言葉に耳を傾け、麗奈のしたいようにやらせた。
営業をするのは麗奈が仕事をほしがった時だけ。それ以外は、本当に何もしなかった。
サボっていたのではない。アイドルの意志を尊重していたのだ。

はじめはうまくいかなかったが、LIVEバトルに参加してから麗奈は化けた。
麗奈はおおよそアイドルに必要な才能のほとんどが平均並みであったが、LIVE会場を掌握する能力に長けていた。

1、肺活量。
ヒトの肺活量は平均で3000-4000mLほどであるが、麗奈は体力測定で10000前後という、トップスイマー並みの数値を叩き出した。
息が続き、筋肉のほうが動作についてくれば継戦時間が伸びる。歌いながら踊り、その間にファンと微笑ましく会話することもできる。

2、トークスキル。
麗奈のパフォーマンスは頻繁にスピーチや会話を挟み、観客やファンと交流する。
そうすることによって、彼女の存在感は、少なくともLIVE中は、見ている者の中で大きくなる。

3、構成力。
状況に即した対話を行うためには、台本があってはならない。
麗奈はその場で必要なワードを瞬時に計算し、パフォーマンスの間に割り込ませる。
そして、アドリブにより歪んだ進行も即座に修正し、ステージを壊さずに聴衆を満足させる。

南条光が天才ヒーローなら、小関麗奈はのパフォーマンスの怪物だ。
そして、ヒーローは怪物を倒すかもしれない。

女は、近頃麗奈がひどく悩んでいることを知っている。
その理由はわからないが、南条光に敗北することで苦悩は深まってしまうかもしれない。

女も悩んだ。
しかし、状況を打開するような能力を持ち合わせていない。
そのような力があったら、今頃こんな場所にはいないのだ。

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次の対戦相手は……あの南条光だ」

マストレからそう言われたとき、アタシの背筋に電流が走った。
いつかはぶつかると思っていたけど、こんなにすぐ。

「南条のことは知っているな?」

「知らないバカがいるなら会ってみたいわね」

南条光。99連勝中の、バケモノ級のアイドル。
光のパフォーマンスは映像で見たことがある。嫉妬でおかしくなりそうだった。

光はアタシと1つしか差がないのに、アタシが持っていないものを全部持ってる。
ダンスの才能、社交性、ギョーカイジンに気に入られる方法、ファンの、心からの声援。

叶うことなら絶対に戦いたくなかった。

「怖いか?」

「ぜーんぜん」

嘘。怖い。怖くてたまらない。

「今の光になら、麗奈は勝てるよ」

マストレがそう言った。耳を疑った。

アタシが? あのバケモノを相手に?

「私の妹が言っていたんだが、光にはヒーローとして欠けているものがあるらしい。  

 ヒーローでない者に、私の育てた怪物は絶対に勝てない」

「怪物って…アタシが悪役みたいに言うわね」

ヤツに欠けているもの。アタシの頭で考えても、わからない。
その欠けたピースは、アタシが持っているものなのかしら?

「それじゃあ、勝利を確実にするために今日もレッスンだ。

 まあ、麗奈は私が構成したパフォーマンスをいつもぶち壊しにするんだが」

「だってつまんないんだもん。

 マストレはトレーニングのプロで、プロのアイドルってわけじゃないし」

「貴様、師匠に向かってなんという口を……よーし今日はランニングからだ。

 まず西に100km」

「東京から追い出す気? 

 アタシは光から逃げないわよ」

 悔しいけどマストレのおかげで、ほんのちょびっとだけ自信がわいてきた。

 それにひょっとしたら。

 ひょっとしたら光は、アタシのいる場所まで来てくれるかもしれない。
 ヒーローみたいに空に舞い上がって。

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生の南条光が目の前にいる。思ったよりもずっと小さい。
アタシより年上だけど、上背はこっちの方がある。

だけど、圧倒される。
どこか達観したみたいに、光はうっすらとほほえんでる。ヨユーって感じがする。

アタシは悔しくて、ステージの上で光に言った。

「アンタさあ」

大丈夫。声はいつもどおりに出てる。

「99連勝でアタシとぶつかるなんて、ほんっとにツいてないわね!」

ツいてないのはこっちの方。だけど精一杯虚勢を張っていないと、アタシはすぐにでも空中分解してしまう。

「アンタのおかげで、アタシの名前はアイドル界中に響き渡るわ!
 “あの”南条光を倒したアイドルだってさ!!」

我ながら、良い啖呵。
光はまだ笑ってる。

先行後攻。アタシはいつもの癖で、わざと後出しをしてしまった。

たしかに後攻になると、相手がやらなかったパフォーマンスで観客やファンに評価してもらえる。

だけど今回の相手は、“あの”南条光。
コイツのパフォーマンスを見せられた後で、自分のパフォーマンスをする自信がない。

でも、ジャンケンの結果は覆せない。チクショウ。

光のステージが始まる。
今日も絶好調。そんな、なめらかで美しい動き。

あの才能が、1ピクトグラムでもアタシにあればよかったのに。

歓声が上がる。光を讃える声。光だけに向けられる、光のためのコール。
急に、光のダンスが激しくなる。ギアの数がアタシとは段違い。

構成としてはちょっと強引だけど、観客はよろこんでる。

アタシは隣にいるプロデューサーに耳打ちした。

「負けるかも」

プロデューサーはびっくりした顔でアタシを見た。
こんな弱気なことを、コイツに言ったのは初めて。

なんでだろう。わかんないけど、心がすこし軽くなった。
プレッシャーでばかになってしまったのかも。

光がステージから降りるのと入れ違いに、アタシは舞台に上がる。
そして、叫んだ。

「愚民どもぉっ!
 しょっぱいパフォーマンスの時間は終わりよ!!」

音がよく通る……空気が澄んでる。

光が振り返る。アタシのテンションが、加速度的に上がっていく。

そう、そういう顔が見たかったのよ。こどもみたいに驚いちゃって。

「はじめなさぁいっ!!」

音楽が始まる。ダンスじゃ光には逆立ちしても勝てない。
だから、アタシはアタシにできることをするしかない。

「愚民どもぉっ!! もっと盛り上げなさいっ!!」

自分が埋められない差は、愚民どもに埋めてもらう。
当然。アタシは帝王よ、肉体労働なんてガラじゃない。

「そこ!! スマホ越しにアタシを見てんじゃないわよ!!!」

スマホなんかじゃ、アタシを家に連れて帰れないわ。
せいぜい小さい頭に焼き付けることね。

アタシからの罵倒に、ブーイングが上がる。

「ブーイングするなぁぁぁっ!!」

アーッハッハッハ!! もうヤケクソね!
でも気分がいい。どうしてかしら………。

気づいたら、音楽が止まってた。

「アンタ達まあまあね! 次からはもっと頑張りなさい!!」

そんな捨て台詞を吐いてステージから降りる。
勝っても負けても、どちらでもいい気になって、自分の席にどっかりと腰を下ろした。

プロデューサーが、すぐにオデコの汗を拭いてくれる。

「どうよ」

「いつもより眩しいです!」

なんか引っかかる言い方。でも今日だけ許してあげる。

しばらくして。

光と一緒にステージに上がる。
観客からのブーイングも上がる。


「黙りなさい!!!」

会場が静かになる。

フン、採点はもう終わってんだから、こっちのやりたい放題よ。

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3日後、アタシはマストレに言った。

「ダンスを教えて」

「いままで何を教わってるつもりだったんだ?」

「鈍いわね。一から教えてってことよ」

アタシは、パフォーマンスの地力を上げなきゃいけない。
そうじゃないと、もう2度目はない。

「言われたとおりにやった試しがないじゃないか」

マストレはあきれて肩をすくめた。
でも、顔は笑ってる。

「麗奈、アイドルは楽しいか」

「まあまあね!!」

逃げ切ってやる。あのヒーローから。

南条光 小関麗奈「地上0km」へつづく

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