アライちゃんのいる日常5 (662)

前スレ

アライちゃんのいる日常
アライちゃんのいる日常 - SSまとめ速報
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アライちゃんのいる日常2
アライちゃんのいる日常2 - SSまとめ速報
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アライちゃんのいる日常3
アライちゃんのいる日常3 - SSまとめ速報
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アライちゃんのいる日常4
アライちゃんのいる日常4 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1526334448/)


【このお話は?】
不思議な生き物『アライさん』やその幼獣『アライちゃん』を主役とし、
それらの生き方を観察するお話です。

野良アライちゃん達を、人々は害獣として駆除します(例外あり)。

ペットアライちゃん達を、人々は愛玩動物として可愛がります(例外あり)。

しかしそんな人間のことなどお構い無く…
アライちゃん達は皆、今日という日を必死に生き延びようとします。

天はアライちゃんにも、人にも味方をしません。
生存競争に勝つのに必要なのは神頼みではありません。
自らの実力で、必死に勝利へ手を伸ばすこと、それだけです。

必ずその努力が報われるとは限りませんが…。

【注意】
このお話は、時にアライちゃんが残虐に殺されたり、絶望の中で悲惨な死を迎える…所謂『アラ虐表現』が存在します。

しかしながら、本作は『アラ虐SS』ではありません。

つまり、人々がアライちゃんを一方的に優位な立場でサンドバッグにするお話ではありません。

登場するアライちゃんの確実な死は一切保証されませんし、人々の確実な勝利も保証されません。

逆も然りです。
登場するアライちゃんの不自然な幸運続きは有り得ず、
人々への不自然な不運続きもまたありません。

どちら側もサンドバッグにはなり得ず、どちら側も常勝無敗にはなり得ない…

そんな公正な日常を生きる人々の物語です。

~登場人物~

・アライちゃん達(♀)
本作の主役。
必死に生きる姿は美しいが、生にしがみつこうともがきながら絶望の中死んでいく姿もまたそれ以上に美しい。

・バイト(♀)
アライちゃんが大好きな女子高生。
愛でるのも大好き。虐めるのも大好き。
殺すのも大好き。食べるのも大好き。


・肉料理屋店主(♂)
肉料理屋の店主。筋肉モリモリのマッチョマン。
バイトと一緒にアライさん料理をたまに食べている。


・アラキレス(アライちゃん)
バイトのペット。
飼い主に愛され、よく躾られている。
アラキレスもまた飼い主が大好きなようだ。


・男児兄(♂)
男子小学生。活発でやんちゃ。

・男児弟(♂)
男子小学生。大人しくて慎重。

・男児母(♀)
アライさん駆除業者。
普段はおっとりしているが、極めて戦闘能力が高い。

・黒パーカーの少女(♀)
神出鬼没の少女。
DQN。

・工場男(♂)
うだつの上がらない男。アラ虐にハマっている。

・狂人卍(♂)
仮面をつけているアラ虐動画投稿者。
アラ虐コミュニティ『ジェノサアライド』の元締め的存在らしい。



新スレが立ったから、前スレはまとめられても問題ないのかな?



野良アライちゃん3「ぴいぃーーー!ひとしゃん!たしゅけてぇええーーーっ!」シッポブンブン

植木鉢の前に大量に仕掛けられたアライホイホイ…
粘着テープの罠。

そのうち1つだけに、野良アライちゃんが一匹くっついている。

花好きおばさん「あああああああ!!クソ!!!あたしのチューリップがぁ!」

花好きおばさんは、荒らされ、ほじくり返されたチューリップの植木鉢の前で激昂している。

チューリップは球根をほじくり返され、食われていた。

…以前も、ダリアの球根を野良アライちゃんに食われたことがあった。

その対策として、アライホイホイを仕掛けたのだが…

野良アライちゃん3「うゆうぅ~~!ひとしゃん!とってくれたらあらいしゃんのせなかなでなでしていいぞぉ!ほっぺなめなめちてやゆぞぉ!」ヒグッグスッ

罠にかかったのは、大泣きして涙と鼻水を垂らしている野良アライちゃん3…一匹のみ。

おそらく、他にも何匹か来たのであろう。

だが、罠にかかった野良アライちゃん3の様子を見て、アライホイホイを罠だと学習し、植木鉢を荒らして帰っていったようだ。

花好きおばさん「ハァー…ハァー…くそ…」ピポパ

花好きおばさんは、最近このあたりにできた『野良アライ回収センター』へ電話をかけた。

間もなく、軽トラに乗った回収業者が来た。

荷台には大きな箱が積まれており、中からはアライちゃんと思われるくそやかましい声が絶えず響き、助けを求める叫び声、泣き声がいくつも重なっている。

アライ回収業者「どうも…野良アライちゃん一匹ですね。50円で引き取ります」ガシィ

野良アライちゃん3「ひとしゃん!とってぇ!とってぇ!うゆぅ、うみゅみゅぅぅ~~~っ!」ジタバタシッポブンブン

野良アライちゃん3は、アライホイホイにくっついたまま、懸命に身をよじっているが…

アライ回収業者「ほいっと」ポイッ

野良アライちゃん3「ぴいぃい!」ヒュー

野良アライちゃん3は、箱の上から投入された。

大きな箱『だぢでえええええ!せまいのやなのりゃああああっ!おうぢがえゆうぅう!おながしゅいだあああ!』ガタガタ

花好きおばさん「ども」スッ

花好きおばさんは、50円玉をひとつ受け取った。

アライ回収業者「ご利用ありがとうございました」

軽トラ「」ブゥーン…

アライ回収業。
最近、この近くの大学で始まった産学官連携のベンチャー企業だ。

アライちゃんは害獣でありながら、その肉体は有用な資源として注目を浴びている。

ペットフードに加工すれば、ペットの様々な健康促進作用がもたらされ、

ドライフリーズして畑に撒けば、大変いい肥料になるのである。

花好きおばさん「あーーーもう!どうしたらあのアライどもを殲滅できるんだい!」

古道具屋おばさん「花さん、大変ですねぇ…」

花好きおばさん「全くだよ…。でも、花を植えるのはやめたくない…」

古道具屋おばさん「…そうだ、うちの息子が今帰ってきてるから、ちょっと相談してみようかねえ」

花好きおばさん「ん…。何だっけ、くず鉄業者の?」

古道具屋おばさん「そう、廃品回収やってる息子がね、アライちゃん捕る罠作るの上手なんだよ~。ちょっと何かいいのないか、聞いてみるとするよ」

花好きおばさん「どうも~、お願いしますね~」

古道具屋おばさんは、自宅へ帰っていった。



~古道具屋の家、長男の部屋~

廃品男「…」ジジジ…

広い部屋の中で、一人の青年がくず鉄いじりをしていた。

何やら、壊れた電化製品のパーツをいじっているようだ。

冷蔵庫のラジエーターを箱に仕掛け、木造の巣箱のようなものに繋ぎ合わせようとしている。

古道具屋おばさん「ユーちゃん、ちょっといいかい?」ガラッ

廃品男「どうした?母さん」

古道具屋おばさん「お隣の家のお花が、アライちゃんに荒らされて大変なんだよ~。なんかいい罠ないかな?」

廃品男「…どんなのがいい?安上がりだけど手入れがやや面倒なやつと、高いけど生け捕りにできるやつ」

古道具屋おばさん「安い方がいいねぇ」

廃品男「…分かった。なんとかしてみよう」ピポパ

廃棄男「もしもし…課長、オレです。バケツとか、安いスクラップをいくつか持っていっていいですか?」

廃棄男「…ありがとうございます。では、持ってったものは休み明けにリスト提出します」ピッ

廃品男は家を出ると、軽トラに乗り、職場へ向かった。

やがて、廃品男はいくつかのスクラップを持ってきた。

穴は空いてないが、持ち手が外れた金属バケツ。

ラムネの瓶。

錆びかかった金属製の細長い棒。

錆びた金属製の網など…。

廃棄男「よし、作るか」サッ

廃棄男は、ラムネの瓶の底へ穴を空け、細長い金属棒を貫通させた。

そして金属棒の両端を、バケツの持ち手があった部分に空いている穴へ通した。

さらに、匂いの強いサラミに接着剤をつけ、ラムネ瓶の外側の真ん中あたりへ貼りつけた。

最後に、金属棒の両端へ登れるように、網を梯子として垂直に取り付けた。

廃品男「よし…できた。母さん、お隣さんのとこへ行こう」スッ

古道具屋おばさん「おお、じゃあ行こうかね」スタスタ

廃品男は、出来上がった物体と、墨汁ボトル、サラダ油を持ち、車に乗った。

~花好きおばさんの家の前~

廃品男「このバケツへ水を溜めて、墨汁を混ぜて黒い色をつけ…最後にサラダ油を垂らします。これで完成です」

廃品男が持ってきたのは、明らかにみっともないガラクタだ。

市販のアライホイホイよりもずっと見映えが悪い。

花好きおばさん「…こ、これでアライちゃんが捕れるのかい?ありがとう…お代は?」

廃品男「お代は、きちんと害獣を駆除した後に頂きます」

花好きおばさん「そ、そうかい…どうも…」

花好きおばさんは、サラミがくっついたラムネの瓶が金属棒を軸としてクルクル回る、このぶきっちょなガラクタバケツを、球根を植えた植木鉢の前に仕掛けた。


…なぜこんなハイペースで球根を植えてしまうのか。

きっと、1日でも早く開花するのを見たいからだろう。

続く

>>6
大丈夫ですよ

wikiにまとめて頂く際は、登場した害獣がほぼ殲滅されるアラ虐回の見出しに、なんかのマークをつけておいて貰えると助かります

『ストーリーはおいといて、きちんと駆除完遂するアラ虐だけ読みたい』という読者の方が、そこだけピックアップして読めるようにしておきたいです

これだ

https://www.youtube.com/watch?v=6SIlYiiCGLI

>>19
Yes、元ネタはそれです

やがて夜が来て、アライちゃんの活動時間が始まった。


花好きおばさんの植木鉢には…


野良アライちゃん4「きょーもおやしゃいたべゆのりゃー!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん5「あたらちーおやしゃい、たくさんはえゆからここはたべほーだいなのりゃ!≧∀≦」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん4&5「「ごっはん!ごっはん!」」ヨチヨチヨチヨチ

…ヨチラー害獣共が近寄ってきた。
味をしめたのだろう。

野良アライちゃん4「ん?…くんくん…!」クンクン

野良アライちゃん5「なんかいーにおいしゅゆのりゃあ!こっちなのりゃ!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん4&5「「のりゃ!のりゃ!」」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん達は、バケツのサラミの匂いにつられて近寄ってきた。

https://i.imgur.com/n1VlHQ7.png

野良アライちゃん4「ごちそーのよかんしゅゆのりゃあ!」ヨチヨチ

野良アライちゃん5「わっちぇ!わっちぇ!」ヨジヨジ

野良アライちゃん達は、バケツに取り付けられた金網を登り始める。

野良アライちゃん4「わっちぇ!わっちぇ!ごっはん!ごっはん!」ヨジヨジヨジヨジ

野良アライちゃん5「おっいちーごっはん!のりゃっ!のりゃっ!」ヨジヨジヨジヨジ

やがて野良アライちゃん達は、バケツの縁まで登った。

https://i.imgur.com/Y1vzXvu.png

野良アライちゃん達は、瓶についたサラミを発見した。

野良アライちゃん4「んおー!あそこなのりゃあ!」ヨジヨジ

野良アライちゃん5「よーし!いっぱいたべゆのりゃあ~!」ヨジヨジ

野良アライちゃん4「これはわなじゃないのりゃ?」ピタッ

流石は秋まで生き残ったアライちゃん。
一応の警戒心はあるようだ。

野良アライちゃん5「べとべとしないのりゃ!だからへーきなのりゃ!」ガシャガシャ

野良アライちゃん4「のりゃっ!のりゃっ!」シッポフリフリ

だが、今まで自分達が見て経験してきた罠に、こんなものはない。

それ故に、このバケツは罠でないと判断したようだ。

アライちゃんは、いくら年々賢くなっているとはいえ…
所詮は幼獣である。

自分が予想していない罠…
人間がどんな罠を仕掛けているかを、全ての個体が前もって想像できるわけではない。

https://i.imgur.com/ZLdS0hZ.png

野良アライちゃん4「いーにおいなのりゃああ!たべゆのりゃああ!」ヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん5「ごーはんっ!ごっはん!なのりゃー!≧∀≦」ヨチヨチ

野良アライちゃん達は、瓶の真ん中にあるサラミへ向かって猪突猛進した。

だが。

二匹分の重さが乗った瓶は…

ぐるんと、横に回った。

https://i.imgur.com/0HJughj.png

野良アライちゃん4「ぴぃ!?」ズルゥ

野良アライちゃん5「のりゃあ!?」ズルゥ

全く予想していなかった瓶の回転によって、野良アライちゃん達はバケツへまっ逆さまに落下した。

野良アライちゃん4「ぶへぇ!」バッチャアアン

野良アライちゃん5「ひびゅ!」バッチャアアン

墨汁が混ざった、黒い水へダイビングした二匹。

野良アライちゃん4&5「「ごぼごぼごぼごぼごぼごぼ!」」ブグブグ

水かさは、二匹が頑張ってバケツの底へ直立しても、頭が出ない深さであった。

野良アライちゃん4「ぶはぁ!ぶぐぶぐ!ごぼごぼ!」バチャバチャ

野良アライちゃん5「ごぼぼ!げぼぉ!だれが!だぢゅげでぇ!」バチャバチャ

https://i.imgur.com/YdDMOhV.png

二匹の幼獣は、必死に水面に顔を出し、息継ぎをしている。

アライさんは、泳ぎが上手な生き物だ。

頭が異様にデカい幼獣でさえ、そこそこ泳げる。

だが、だからといって、朝から晩までずっと泳ぎ続けられる無尽蔵のスタミナなど無い。

第一、この頭のデカさだ。
水面に顔を出そうとするだけでもかなりのスタミナを消費する。

野良アライちゃん4「ぎぎなのりゃあああ!ありゃいしゃんのぎぎなのりゃああああ!」ペタペタ

野良アライちゃん5「のぼれないいぃい!ちゅゆちゅゆちててのぼれないのりゃあああああ!」ペタペタ

野良アライちゃん達は、バケツの壁を登ろうとして、必死に壁を手でペタペタしている。

だが、こんなアルミの壁を登れる生き物など、掌に吸盤がついた生き物…
カエル等々でなくては無理だろう。

野良アライちゃん4「ぐゆぢ、いいいういいい!ぶぎゅぅううううう!」ゴボゴボゴボゴボ

野良アライちゃん5「の゛ぉ゛ぁ゛あ゛あ゛ーーーーん゛っ!!の゛ぁ゛あ゛ーぁ゛あ゛ん゛っ!!」バチャバチャバチャバチャ

二匹はそろそろスタミナが尽きかけてきたようだ。

野良アライちゃん4「ご…ぼ…だぢゅげ…でぇ…!おが…しゃ…」ブクブク

野良アライちゃん4は沈みかけている。
もう足をばたつかせる体力もないのだろう。

野良アライちゃん5「う…うゆううぅう!たあー!」バッ

その時、突然野良アライちゃん5は、姉の上に飛びかかった。

野良アライちゃん4「ごぼぉお!」バッチャアアン

野良アライちゃん5「ごぼぉ!ぶはぁ!じぎだぐないいぃい!ごぼ!だれがだぢゅげ!ぶはぁ!」バシャバシャ

野良アライちゃん4「ブクブクブクブ…」バシャバシャ

なんと野良アライちゃん5は、姉の上に乗ることで、水面から顔を出そうとしている。

野良アライちゃん4「…」ブクブクピクピク

野良アライちゃん5「おねーしゃんぼーとなのりゃあ!ごぼ!?おねーしゃ!しずむなぁああ!げほぉ!たて!たてええええおねーしゃあああ!」バシャバシャ

だが、肺から空気を絞り出してしまった姉は、水の底へどんどん沈んでいく。

野良アライちゃん4「おばえ…の…ぜい…で…!ぶぐ…おばえが…ありゃ…しゃ…を…さ…そっだ…ぜい…で…」ブクブク

野良アライちゃん4「」ビグビグッビグッググッ

野良アライちゃん4は、激しく痙攣を始めた。

野良アライちゃん5「ぐぶぶ…ぶぐごぼぼ…」ブクブク

野良アライちゃん4「」ブクブク…

野良アライちゃん4は、とうとう痙攣すらしなくなった。

野良アライちゃん5「ご…ぼ…だぢゅ…っぶぐぐぐ…ごぼ…」ゴボゴボ

いくら姉にしがみつこうととも、共に沈んでいくのみであった。

野良アライちゃん5「がば…び…ぼ…」ブクブク

必死に今まで生き延びてきた、小さな命。

こんな小さな体であっても、天に与えられた命が確かに宿っているのである。

果たして、生き延びたいという野良アライちゃん5の意思は…
このまま功を為すことなく、消えてしまうのであろうか。

この憐れな命に、天は味方をしてくれないのであろうか。

https://i.imgur.com/6xkx5kN.png



野良アライちゃん4「」プカー

野良アライちゃん5「」プカー

真っ黒な墨汁水の上へ、真っ黒に染まった物体がふたつ浮かび上がった。

…神は弱き者へ手など差し伸べない。

無情にも、当たり前のことが当たり前に起こるだけであった。

力無く幼稚で愚かな二匹の害獣は、為す統べなく完全に呼吸も心拍も停止した。

その後、もう二匹の害獣がやってきた。

野良アライちゃん6「くんくん…!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん7「いーにおいしゅゆのりゃ!」ヨジヨジヨジヨジ

野良アライちゃん6「わっちぇ!わっちぇ!」ヨジヨジヨジヨジ

バケツの縁まで登った二匹。

野良アライちゃん7「よいしょ…んー?したになにかあゆのりゃ」

野良アライちゃん6「うゆ?なんなのりゃ?」キョロッ

野良アライちゃん6&7は、バケツの水面を見た。

黒く染まった物体1「」プカー

黒く染まった物体2「」プカー

…先客の姿である。

野良アライちゃん6「うゆ~…よくわかんないのりゃ!それよりごはんなのりゃ!」ヨチヨチ

野良アライちゃん7「なのりゃー!ごっはん♪ごっはん♪」ヨチヨチ

…だが、二匹は浮いている物体が、同族の死骸だと気付かなかった。

理由は二つ。

ひとつ目は、二つの死骸が墨汁で黒く染まっていたため、同族であることどころか、生き物だとさえ認識できなかったこと。

そしてもう一つの理由は、同族のにおいがしなかったためである。

これは、垂らされたサラダ油の効果だ。

野良アライちゃん達の体の獣くさい匂いは、水の中へ溶け込んでいたが…

水面から空気中には放出されなかった。

何故なら、水面に浮かぶサラダ油の油膜によって、匂い成分が吸着されたためである。

野良アライちゃん6「び!」バッチャアアン

野良アライちゃん7「ぴゃぶ!」バッチャアアン

野良アライちゃん6&7「「ごぼぼ!ごぼごぼぼ…!」」バシャバシャバチャバチャ

…アライホイホイと違って、先客の死骸が認識できないが故に。

続く二匹も水へ落下し、やがて黒く染まってぷかぷか浮かんだ。

…翌朝…

花好きおばさん「どれどれ?罠のほうは…」

花好きおばさんは、バケツを覗き込んだ。

中には…

黒く染まった物体1「」プカー
黒く染まった物体2「」プカー
黒く染まった物体3「」プカー
黒く染まった物体4「」プカー
黒く染まった物体5「」プカー

花好きおばさん「ひいいぃぃ!気持ち悪い!」ビクゥ


…五匹もの害獣が、仲良くぷかぷかと浮かんでいた。

古道具屋おばさん「おお、やったみたいだね」

廃品男「5匹か」スタスタ

花好きおばさん「おお、ありがとう…!アライホイホイが全然効かなかったのに、こんなに捕れたよ!」

花好きおばさん「これは、二晩とかもっと長く仕掛けていれば、もっとたくさん捕れるのかい?」

廃品男「ダメです。一晩使ったら、すぐに死骸を捨てて水を交換してください」

花好きおばさん「だめなの?」

廃品男「…この油膜では、獣くさい匂いはシャットアウトできても、強い死臭は防げません」

廃品男「強すぎる死臭は、アライちゃんを警戒させますし、何より片付けるのが大変になります。ハエもたかります」

花好きおばさん「そ、それは…やだね…。でも、これがあればもう大丈夫だね!」

廃品男「だが、墨汁バケツトラップは完全ではない。いくつか抜け目がある」

花好きおばさん「そうなの?」

廃品男「まず、体の大きいアライしゃんには通用しません」

廃品男「そして、4~5匹ぐらいの群れでやって来られたら、溺れる声でさすがに警戒されます」

廃品男「今回は、2~3匹ぐらいが2回に分けて来たから、無事でしたね」

花好きおばさん「そんなにたくさんこなけりゃいいけど…。ああそうだ、罠のお代はいくらだい?」

廃品男「300円です」

花好きおばさん「や、安いねえ!」

廃品男「ほとんどスクラップですからね。一番高かったパーツはキャラメルです」

花好きおばさん「壊れた物も、案外役立つもんだね…」


その後花好きおばさんは、アライ回収業者へ死骸を持っていってもらった。

死んだアライちゃんは、一匹10円ほどであった。

>>46訂正

×キャラメル
◯サラミ

そして古道具屋親子は家に帰った。

古道具屋おばさん「よかったねー!ユーちゃんの罠がまた役に立って!」

廃品男「ああ。動画で観たネズミ捕りトラップを、アライちゃん用にアレンジしたんだ。安上がりにしては交換があるな」

古道具屋おばさん「…」

廃品男「どうした?母さん」

古道具屋おばさん「…ユーちゃん、お休みの日はよく部屋に籠って、罠を作って…。いろんな人に売ってるみたいだね」

廃品男「趣味なんだ。機械や電子の弘産はな」

古道具屋おばさん「ユーちゃんがやってることは、いろんな人の役にたってて立派だと思うよ。でもね…」

古道具屋おばさん「…生き物殺すの、そんなに楽しいかい?」

廃品男「…」

古道具屋おばさん「別にアライちゃんを可哀想だっていってるわけじゃないよ。蚊もゴキブリも殺してるし、アライちゃんだって似たようなもんだし」

古道具屋おばさん「でもね…。生き物を殺すのって、普通の人はもっと、負い目を感じるもんだよ」

廃品男「…ああ。分かってる」

古道具屋おばさん「ユーちゃん、昔から機械いじりや工作大好きだったけど…。こんなに生き物を殺す道具たくさん作ってはいなかった」

古道具屋おばさん「私はね、ユーちゃん。あなたがどれだけ立派なことしてるとしても…。生き物を喜んで殺してるように見えるユーちゃんが、怖いよ」

廃品男「…」

廃品男「オレのやっていることは…確かに、歪んだ動機があるかもしれない」

廃品男「母さんの言うとおり、生き物を殺すのに夢中になるのは、正常じゃないかもしれない。たとえ相手が害獣であろうとも」

廃品男「だが、これがオレだ」

古道具屋おばさん「…!」

廃品男「残酷な動機があろうとも、正常じゃなかろうと…。オレは胸を張って、そんなオレ自身を肯定できる」

廃品男「オレは模範的な人間になどなれない。大多数の人が好む人間になどなれない。短所のない人間になどなれない」

廃品男「人は皆、自分だけの個性…長所と短所を持っている」

廃品男「だったらオレは、自分の長所を活かして、胸を張って生きていきたい」

古道具屋おばさん「…そうか。ユーちゃんがそういうなら、あたしは構わないよ。…さて、今日は作るものがあるんだろ?」

廃品男「ああ」

廃品男「改造した冷蔵庫の罠…。それを一つ、仕上げて送るつもりだ。工場男さんっていう人にな」

古道具屋おばさん「…頑張るんだよ」


もはや隠すまでもないだろう。

この男こそが、ジェノサアライドの革命児…

ゴミパンドラの箱をたった一人で作り、全国のアラ虐愛好家へ届けている男。
『トラップパウンダー』である。

ゴミパンドラの箱の価格は2万円。
それは、廃品を再利用して作っているからこそ、この値段に収まっているのである。

…アライちゃんは、人間のサンドバッグとして天に作り出されたわけではない。

弱くたって、れっきとした命。
運が良く、賢く育てば、人間の攻撃から生き延びて成長し続けることができるだろう。

だが、だからといって…
神様が、アライちゃん達をサンドバッグにならないよう、外敵から保護してくれるはずなど無い。

アライちゃんを殺すことに極めて長けた、駆除のエキスパート達に命を狙われては、生半可な運と実力では生き延びることなど敵わない。

アライちゃん自身が、好むと好まざるとに関わらず…

覆すことの敵わぬ圧倒的な実力差の前には、為す統べなくサンドバッグとなり一方的にぶちのめされるだけである。

続く



アラキレス「あ、ゆ、こー!あ、ゆ、こー♪あらーきれしゅげーんきぃー♪」ヨチヨチシッポフリフリ

アラキレス「あーゆくーのーだいーしゅきぃー♪どぉーんどぉーんゆーこーぉー♪」ヨチヨチシッポフリフリ

アラキレス「しゃっかみっちぃー♪とーんねゆぅー♪くぅーしゃーあっぱーやー♪≧∀≦」ヨチヨチシッポフリフリ

アラキレス「いっぽんばーちにー♪でこーぼこーじゃーいーみーちー♪」ヨチヨチシッポフリフリ

アラキレス「くーものーしゅくーぐぅってぇー♪くーだり、み、ちぃー♪なのりゃー!≧∀≦」ヨチヨチシッポフリフリ

私は、アラキレスの首輪に繋がれたリードを持ち、アラキレスと一緒に散歩している。

アラキレス「かいぬししゃーん!あらきれしゅ、おうたちゃーんとうたえたのりゃー!ほめてー!ほめてなのりゃー!≧∀≦」シッポフリフリフリフリフリフリ

私は、アラキレスの頭を撫でる。

アラキレス「のりゃー!かいぬししゃーんしゅきしゅきなのりゃあ!せかいでいーーーっっちばんだいしゅきなのりゃあー♪≧∀≦」スリスリ

私のペットアライちゃん…アラキレス。
アラキレスは、他のアライちゃんとは、明らかに異なる点がある。

何だか分かるだろうか?

そう。

私のアラキレスは…

世界で一番、可愛いのである。

…誰がなんと言おうとも、それだけは譲れない。

私とアラキレスは、公園の広場についた。

ちょっと歩くの休憩しようか。

アラキレス「なのりゃー!≧∀≦」シッポフリフリ

私は、アラキレスの首輪のリードを放した…。
そのとき。

アラキレス「わーい!≧∀≦」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

なんと、アラキレスは私に背を向け、広場の真ん中へ勝手にヨチヨチ歩いていくではないか。

脱走だろうか?

アラキレス「かいぬししゃーん!こっちおいでなのりゃー!おにごっこなのりゃあー!≧∀≦」ヨチヨチヨチヨチ

…なるほど。
アラキレスは、お外で私と遊びたがっているのか。

無理もない。
アラキレスにとって、私との散歩は貴重な時間。

外を歩きまわれる、数少ない時間なのである。

それに加え、アラキレスは最初に飼った時よりずいぶん大きくなった。

育ち盛りの食べ盛り。
日頃ケージの中でなまった体を、動かしたくてしょうがないのであろう。

アラキレス「かいぬししゃーん!あらきれしゅをちゅかまえゆのりゃー!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

アラキレスはヨチヨチと走り回っている。

よし、捕まえるか…
だが、全力疾走してしまっては、すぐにこのおいかけっこは終わってしまうだろう。

私は、全力を出さずに、適度なスピードでアラキレスを追いかけ回した。

…そのとき。

突如、空中から素早い何かが、アラキレスに向かって飛んできた。

アラキレス「う゛ゆぅ!?」




鷲「キュエェーッ!」ガシィィ

アラキレス「ぴいぃぃっ!?」グイイ



私は、とっさにアラキレスのリードを握った。

リードはすぐにピンと張られた。

鷲「キュロロロォ!」バサバサバサバサバサバサ

アラキレス「ぐ、ぐゆじぃいい!が、がい、ぬじじゃ!ぴ、ぎぃいい!」グググ


…なんてこと!
鷲がアラキレスを捕まえ、飛び去ろうとしているではないか!

とっさにリードを掴み、綱引きをする私。

アラキレスを離して!
その子は食べ物じゃない!

私はパニックになり、無我夢中でアラキレスの首輪に繋がるリードを引っ張った。

鷲「クエエエエ」バサバサバサバサバサバサバサバサバサバサ

だが、鷲も負けじとアラキレスの背中を鷲掴みし、アラキレスを引っ張る。

アラキレス「ぐびゅぎゅぎゅびゅぎゅ!びゅぎぃいいいいいいい!おご、ごぉぉぇえええ!」グググメキメキ

あああ!アラキレスの首が絞まっている…!
どうしよう、どうしよう…!

私は少しでもアラキレスの首への負担を和らげるために、鷲が飛んでいこうとしている方へ走った。

アラキレス「ぎ…ひいぃ!ぴぎぃいいい!がい…ぬじ…じゃ…!だ…ぢゅげ…でえええ…!じ…に…だぎゅ…ないぃい…!ぴぎゅぅるるるるうぅぅ!」メキメキ

離して!お願い!
早くアラキレスを離して!

私は鷲を追って必死に走り回る。

このままでは、鷲が諦めるより先に…
アラキレスが絞殺されてしまう…!

ふざけるな…

ふざけるな。

お前なんかにやるものか。

アラキレスの命は私のものだ!

そして、それを奪う権利も!私だけにある!

アラキレスを殺していいのは私だけだ!
横取りされてたまるか!害鳥がぁ!

私は、鷲と戦うことに決めた。

何か、鷲に向かって投げられるものはないか?

辺りを必死に見回した。



野良アライちゃん「うゆ~?なんのあそびなのりゃ?ひとしゃん?いっしょにあそんでなのりゃ」ヨチヨチ

…広場で暴れる私の様子を見て、遊んでいるものだと思ったのか。

野良ヨチラーがヨチヨチと這い寄ってきた。

可愛いねアライちゃん。
おやつあげるからこっちおいで。

野良アライちゃん「おやつなのりゃ?たべゆのりゃ~!≧∀≦」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃんが、尻尾を振りながら私の足下へ近寄ってきた。

私は、野良アライちゃんの尻尾を握りしめ、持ち上げた。

野良アライちゃん「ぴ…ぎぃいいいい!いぢゃい、いぢゃいのりゃあ!ひとしゃ、ありゃいしゃんのふわふわちっぽつかむのやめてぇ!。≧Д≦。」ピギィイイイイ

そして私は、その尻尾を握ったまま、野良アライちゃんをブンブンと振り回して回転させた。

野良アライちゃん「ふぅうぎゅうぅぅぶぐぎゅぅうう!?はなぢでいっぢゃあああいいいいい!」ブンブンピイイイィィイ

野良アライちゃん「はなぢでええええ!ごあいいいい!はあああなああぢでええええっ!」ブンブンブンブン

私はハンマー投げの要領で、尻尾からぱっと手を放し、野良アライちゃんを空へ放り投げた。

野良アライちゃん「ふみゅぅううううううう!」ヒューーーンッ

野良アライちゃんは、空中へ…
鷲のほうへ向かって、高々と飛んでいく。

鷲「…!」パッ

アラキレス「び…ぎ…」ヒュー…

鷲はアラキレスを離した。

鷲「キュロロロォ」ガシィィ

野良アライちゃん「びぎぃ!?」ガシィィ

そして、野良アライちゃんを掴んだ。

鷲「キュララァ」バッサバッサ

野良アライちゃん「ぴぃいいいい!とりしゃ、やべ、は、はなぢで!やな!やなあああああ!」ブランブラン

…鷲は野良アライちゃんを掴んで飛んでいき、視界からすぐに消えた。

アラキレス「ぐ…げ…」ヒュゥウウウ

アラキレス!
私は、自分のお腹をクッションにして、アラキレスを受け止めた。

アラキレス「ふぎゅぅっ!」ボフン

痛いぃ!

お腹の中身、内臓を打ち付けられる激痛が走る。

アラキレス「ひ…ぎ…」ピクピク

アラキレスは落下のダメージを受けずに済んだようだ。

私はお腹の激痛に悶え苦しみ、悲鳴をあげながら広場をごろごろと転がり回った。

そして、地面の上に胃液をぶちまけた。

血が混じっていなかったのが幸いだ。

私がうつ伏せに突っ伏していると…

アラキレス「かい…ぬし…しゃ…」ゼェハァ

アラキレスが、私に話しかけてきた。

よかった…死んじゃったかと思ってた。

私は、まるでアライちゃんのような無様な四足歩行をして、アラキレスにずるずると這い寄った。

アラキレス「ごめ…ごめんなしゃい…なのりゃ…!あらきれしゅが、かいぬししゃんから、はなれたせいで…!」ブルブルウルウル

アラキレスは涙を流し、泣いていた。
首を手で押さえている。きっと痛いのだろう。

アラキレス「ごめんな…しゃいぃ…!かいぬし…しゃん…!しなないで…しなないでえぇっ…!」ヒグッグスッ

私は、なにも言わずアラキレスを抱き締めた。

アラキレス「がいぬししゃんっ…!ありがとぉ…だぢゅげでぐれで…ありがとぉぉっ…!」スリスリ

アラキレス。
助かって…よかった。

しかし、アラキレスの身代わりに放り投げた野良アライちゃん。

あれが来てくれて、本当に運が良かった。

もしあの子が来なかったら、アラキレスは今頃、首が締まり窒息死していた。

野良アライちゃんも、役に立つときがあるんだな…。

私は、お腹の痛みが和らぐのを待ってから…
首を辛そうに擦るアラキレスをしっかりと抱き抱えながら家に帰った。

さて。

家に帰った私は、アラキレスの気持ちがまだ落ち着かないうちに…

しっかりと、教育を施すことにした。

アラキレス「ひ、ひいぃい…!」ブルブルガクブル

私はアラキレスを膝の上に乗せ、タブレットPCで色々な動物のことを検索し、その写真をアラキレスへ見せた。

…これがさっき、アラキレスを捕まえた大きな肉食の鳥。『鷲』だよ。

アラキレス「ぴっ…ぴいぃいいいいいいいいいいいいい!!!」ガクブル

アラキレスは先程の体験を思い出して恐怖している。

この『鷲』に、アラキレスみたいな小動物が捕まったらもう逃げられない。

この鋭いクチバシでお腹をつつかれ、内臓を引きずり出されて、生きたまま食べられるんだ。

アラキレス「やなあああああ!やなああああああああああっ!たべられゆのやああなあああああああっ!のぁああああああーーーんっ!のぉおおおおぁああああーーーんっ!」ビエエエエン

怖い生き物はこれだけじゃないよ。

こっちの写真はね…『熊』っていうの。

アラキレス「く、くま?」ブルブル

そう、熊。
こいつは森の中に住んでる、凄く強くて大きな肉食獣。

アラキレスみたいなちっちゃい子はもちろん…
アラキレスがどんなに大きくなって大人になっても、だこいつに会ったら絶対に食べられちゃうよ。

アラキレス「う、うゆぅ!?」ビクゥ

この熊はね、大人のアライさんが大好物なんだよ。

アライさんを見つけると、大喜びで襲いかかって。

鋭い爪と牙でバラバラに引き裂いて!頭から…がぶり!脳みそをすすり食う!!

アラキレス「ぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!やなあああああああああ!くまこわいいぃいいいいいーーっ!こあああああいいいいいいーーーーっ!」

ふふふ。
怖がるアラキレスの顔…とってもいい表情だ。

もっと見たくなるね。
私はアラキレスへ、森でヒグマがアライさんを襲って貪り食っている動画を見せた。

アラキレス「ひぃ、ひぃいいいいいいいいい!やなのりゃあああ!かい、かいぬししゃあああんっ!くま、くまこわいいいぃい!びえええええええんっ!」ビエエエエン

まだまだ怖い生き物はいるよ。
こっちはティラノサウルス。

アラキレス「てぃ、てぃら!?なんなのりゃ!?もうやなのりゃあ!」ブルブル

これは体の大きさが10メートルもある、すごく大きいトカゲ。

こいつに襲われたら、人間だって食べられちゃう。

アラキレス「ひ…ひとも!?」

こんな風にね。
私は、恐竜が人間を襲って食べる映画のワンシーンを見せた。

アラキレス「ぴ…ぴいいいいぃぃぃぃ!?こんなにおっきいのりゃあ!?びえ…ぴぃいいっ!やなああ!こあいいいーーっ!こああああいいーーーっ!」ビエエエエン

でも、こいつは人がたくさんいる所には出てこないから心配しないで。

アラキレス「う、うゆぅぅ…!?」グスグス

そう、アラキレスが私に守られている限りは、来ないよ。

もしアラキレスが大人になった後、私のところから自由になろうとして、お家を出ていったら…

アラキレスも、さっきの人みたいに、こいつにぱくり。丸かじりだ。

アラキレス「や…やなのりゃ…!がいぬししゃ…!あらきれしゅ…ずっといっしょに…いたいのりゃあ…!」ブルブル

ふふ、いい子だ。

アラキレス。
よく聞いて。

アラキレス「う…うゆ!」

アラキレスはそのうち、大人になる。
大人になったペットアライちゃん達は、みんな『立派』になろうとして…
『独り立ち』しようとする。

そう。
ケージの中にいるのが嫌になって、お家の外へ出たくなる。

自分は何でもできると思い込む。
自分は一番強いと思い込む。

だけど、その大半が、さっきの熊やティラノサウルスに食べられる。

これは、アラキレスよりずっと先に生まれた、たくさんのアライちゃん達の末路だ(嘘だけど)。

よく覚えておいて。いいかな?

アラキレス「は、はいなのりゃあ…」ブルブル

もしも、アラキレスが、お外で暮らしたくなったら、きちんと私に言って。

熊や恐竜に食べられると知っていても、それでもお外で暮らしたくなったら、必ず私に言って。
怒らないから。

…わかった。

アラキレス「わかったのりゃ…。でも、あらきれしゅは…おそとになんて、ひとりででないのりゃ…!」

アラキレス「さっき、わしにたべられそうになったとき…!ほんとに…ほんとに!こわぐってええぇ!」ヒグッグスッ

アラキレス「かいぬししゃんいながったら、あらきれしゅ、たべられでだのりゃあああっ!」グスグス

アラキレス「もうやなのりゃああ!おとなになっても、かいぬししゃんといっしょにいゆのりゃあ!くまもてらのしゃうゆしゅもたべられだぐないのりゃあああっ!」ビエエエエン

よしよし。
いい子だ。
その気持ち、決して忘れちゃあ駄目だよ。

私はアラキレスを抱き締め、優しく撫でた。

それからしばらくの間…

アラキレスは、散歩に行くことすら怖がるようになった。

ケージの中で、一生懸命、石膏粘土で動物のお人形やアクセサリーを作るのに没頭しているようだ。



どうやら、しっかりと…

『教育』の成果が出たようだ。

いつまでも、一緒にいようね…アラキレス。

続く

~東大学 アライ生物学研究室~

研究員1「近年、アライグマによる被害が全国で急増しているみたいです」

研究室教授「アライグマ?アライちゃんじゃなくてか」

研究員2「アライちゃんもそうですが…。動物のアライグマです。分布がどんどん増えているらしいですよ」

研究室教授「へぇ~…。捨てられたペットアライグマ達が繁殖したんだっけか」

研究員1「今も捨てられてるペットアライグマはいるんでしょうかね?」

研究員2「いや、アライグマは楽園システムができてから、捨てる人はいなくなったそうだ」

研究員1「楽園システム…ペットアライちゃんみたいな?」

研究員2「そうだ。飼えなくなったアライグマは、楽園で引き取って世話するんだって」

研究員2「どっちかというと、ペットアライグマの楽園システムが先に出来てから、ペットアライちゃんにも同じようなシステムを導入したそうだ」

研究員1「へえ…。ほんとにあるんですか?面積が足りないような…」

研究員2「あるんだよ。…それ以上聞くな」

研究員1「す、すみません」ペコリ

研究員1「ええっと…それで。非常に興味深いデータがあるんです」

研究室教授「何かな」

研究員1「全国で捕獲されたアライグマの、雌雄割合が算出されたのですが…。奇妙なことに…」

研究員1「雌が1に対して、雄が…5です」

研究室教授「…!?」

研究員1「オスのアライグマは、メスの5倍多く捕獲されているんです。それも、全国的にその傾向があります」

研究室教授「…たしかアライグマの性比バランスは、ほぼ1:1だったと思うんだが…?性比が偏るように遺伝子が変異したとか?」

研究員2「捕獲したアライグマを、人工的に繁殖した場合、出生した子供の性比はそうなります」

研究室教授「つ…つまり…性比の偏りは、遺伝子が変異したことによるものではない?」

研究員1「…おそらく自然環境の中でも、出生した赤ちゃんアライグマの性比は1:1ですが、何らかの後天的理由で、メスが減らされている…と想定されます」

研究員1「こちらが、発見されたアライグマの個体数増加グラフです。右肩上がりにどんどん増えています」

研究室教授「あり得ん…!メスが1に対して、オスが5…!?こんな比率で、こんなペースで増殖できるはずがない!」

研究員1「しかし、すべて事実に基づいたデータです」

研究室教授「どうしてこんな性比の偏りが…?」

研究員2「何者かが、人為的にメスの赤ちゃんを間引きしている…とか?」

研究室教授「そんな者が全国に満遍なくいるとは思えんがな」

研究員2「むうぅ…?」

研究室教授「…アライグマと交尾したアライさんが、オスのアライグマを産んでいる…とか?」

研究員1「今のところ、アライさんがアライグマを産んだというケースは全国で一切ありません」

研究室教授「…もしかしたら、アライさんは自然環境の中ではアライグマを産むようになる…?」

研究員2「科学的性質が未解明なアライさんだ…そういう可能性もあるかもしれませんね」

研究室教授「…不明な点だらけだな…」

研究員1「そうですね…。まあ、こういうデータもあったよ、ということです」

研究員2「本日も実験、始めますか。今日はアライちゃんの迷路知能テストでしたね」

研究員教授「ああ、そうだな…。貴重な実験用捕獲野良アライちゃんだ、無駄遣いしないように実験しよう」

続く



野良アライちゃん3「うゆうぅ…!だれかたしゅけてえぇ…!」ブルブル

野良アライちゃん3は、アライホイホイの粘着シートにくっついたまま、トラックで運ばれていた。

野良アライちゃん3「なんで…なんでこんなことになったのりゃあ…」ブルブル

不安に押し潰されそうになる野良アライちゃん3。

野良アライちゃん3は、今に至るまでの経緯を思い出していた…。



野良アライちゃん3は、森の中で4姉妹の三女として産まれた。

母アライさん「ふはは、チビ達。木の実がとれたのだ」

姉妹アライちゃん1「たべたいのりゃ!」
姉妹アライちゃん2「ごはん~」
野良アライちゃん3「すごいのりゃ~!」シッポフリフリ
姉妹アライちゃん4「あむあむちたいのりゃ~!」シッポフリフリ

母アライさん「まあまあ待つのだ。この木の実は、獣道へ置いておくのだ」スッ

野良アライちゃん3「はやくたべたいのりゃ!」

母アライさん「いいかチビ達。木の穴に隠れて、静かにしてるのだ。うんしょ、うんしょ…」ヨジヨジ

母親は、角が尖った岩を持ち、木の上に登った。

姉妹アライちゃん1「なにしゅゆのりゃ?きのみたべないのりゃ?」シッポフリフリ

母アライさん「…今から、アライさんが喋っていいって言うまで。一言でも声を出した奴は、お尻ペンペンなのだ」

木の上から、母アライさんの苛ついた声が聞こえてきた。

アライちゃん達「…」ゴクリ

野良アライちゃん3たち姉妹は、木の穴に隠れてじっと待った。

何が起きるのだろうか…。

しばらく木の穴の中で待っていると…

猪「…」ノソリノソリ

野良アライちゃん3「…!?」
姉妹アライちゃん達「「…!!」」

母アライさんが置いた木の実に、大きな獣が近付いてきた。

猪「…」ムシャムシャ

猪は、木の実を食べ始めた。

野良アライちゃん3(うゆ…!おかーしゃんがあつめたきのみ、たべられちゃうのりゃ!)

すると…

姉妹アライちゃん1「ふぅーーーっ!!きゅるるるぅっ!それおかーしゃんのだぞぉ!とゆなああっ!」ヨジヨジ

なんと姉妹アライちゃん1が木の穴から這い出て、猪を威嚇した。

猪「!?」ビクゥ

姉妹アライちゃん1「おかーしゃんがとってくれたきのみ!ありゃいしゃんがまもゆのりゃあっ!わっちぇ!わっちぇ!」ヨジヨジ

母親の言いつけを守らず、穴から這い出て木から降りていく姉妹アライちゃん1。

猪「…」ボリボリ

猪は、気にせず木の実を食べ続けている。

母アライさん「っ…!」バッ

そのとき、尖った岩を持った母アライさんが、木の上から勢いよく猪の上にとびかかってきた。

猪「!?」ヒュバッ

姉妹アライちゃん1の威嚇で木の方を警戒していた猪は、母アライさんの襲撃を避けた。

母アライさん「く…!くそっなのだぁ!」ズガァ

母アライさんが振りかざした尖った岩は、地面をどんと叩いてめり込む。

猪「フ、フギィィッ!」ドタッドタッドタッドタッ

猪は、獣道の向こうへ勢いよく逃げていった。

姉妹アライちゃん1「やったのりゃー!おかーしゃんのだいじなきのみ、まもったのりゃあ!≧∀≦」ヨチヨチシッポフリフリ

母アライさん「…」

姉妹アライちゃん1は、まるで木の実を守ったのは自分だと言わんばかりに、母親の足下へ這いヨチった。

姉妹アライちゃん1「みたかーおかーしゃん!ありゃいしゃん、あのけものをおっぱらったのりゃー!たべものまもったのりゃ!」ヨチヨチヨチヨチ

姉妹アライちゃん1「うゆ~!ほめて!ほめて!おかーしゃん!ありゃいしゃんのことうんとほめてぇ!ごほーびにきのみいーっぱいちょーだいなのりゃ!≧∀≦」スリスリ

姉妹アライちゃん1は、母親の足にすり寄っている。

続きはあとで

姉妹アライちゃん1「ほめてー!なでてー!のりゃっ!のりゃっ!」コスリコスリ

母アライさん「…」スッ

母アライさんは、木の枝を拾うと…

母アライさん「全然偉くないのだ!バカチビ!」ブンッ

ベチィッ

https://i.imgur.com/ihb3Ufo.jpg

姉妹アライちゃん1「ぴぎぃっ!」

なんと、姉妹アライちゃん1の頭を叩いた。

母アライさん「褒めるとこなんて一つもないのだ!お前はアライさんの言いつけを破ったのだ!」

姉妹アライちゃん1「う…ゆぅっ…!」ウルウル

姉妹アライちゃん1の目には、次第に涙が溜まっていき…

https://i.imgur.com/k0tcBfY.jpg

姉妹アライちゃん1「びえええええーーーんっ!ありゃいしゃん、おかーしゃんのきのみまもったのにいいいぃいいいいいーーーっ!!いーことちたのにいいぃいーーーっ!のぁああああーーんっ!のぁああああーーんっ!」ビエエエエエンシッポブンブン

姉妹アライちゃん1は、大声で泣きじゃくった。

痛がる程度で済むあたり、母アライさんは相当手加減したのだろう。

母アライさん「いいかチビ!アライさんは、お前に声を出すなって言ったのだ!覚えてるか!?」ガシィ ヒョイッ

姉妹アライちゃん1「びええーーんっ!のあああーーんっ!おもいだちたぁ!おもいだちたのりゃあ!」ビエエエン

母アライさん「あの言いつけはまだ続いてるのだ!アライさんはまだお前たちに、喋っていいなんて一言も言ってないのだ!」

母アライさん「あと5つ数えるまでに、泣き止まなかったら!もっと痛いお仕置きするのだ!」フゥーッ

姉妹アライちゃん1「やああなああああああ!おちおぎやなあああああああああああ!」ビエエエン

母アライさん「泣き止んだらお仕置きはしないのだ!いくのだ!ごーーー…よーーーん…さーーん…」

母アライさんは、カウトダウンを始めた。

当然だが、母アライさんは算数など習っていない。

しかしながら、自然に日本語を覚えるように、簡単な足し算と引き算ぐらいならできるようだ。

姉妹アライちゃん1「ぴぃいいぅーーーっ!いぢゃあいいい!あだまいぢゃああいいいぃーーーっ!」ビエエエン

母アライさん「にーー…いーーーち……」

姉妹アライちゃん1「ぴいいいいぃいいいいいーーーーっ!やなやなやなやなやなやなああああーーーーっ!おぢおぎやなあああーーーっ!」ピギイイイィイシッポブンブン

姉妹アライちゃん1は、お仕置きが嫌なら泣き止めばいいというのに、相変わらずピーピー泣きわめいている。

母アライさん「ゼロ…なのだ!」ガシィ

https://i.imgur.com/pt9M4KJ.png

母アライさんは、姉妹アライちゃん1の尻尾を持ち上げ…

母アライさん「泣き止むまで、そこで反省してるのだ!」グルグル

草の弦を使い、木の枝へグルグル巻きにして縛り上げてしまった。

https://i.imgur.com/K24KvOb.png

姉妹アライちゃん1「ぴいいぃいーーーーっ!おろちてえええーーーーっ!」ピギイイィイジタバタジタバタ

姉妹アライちゃん1は、必死に暴れている。

母アライさん「泣き止んで大人しくなったら下ろしてやるのだ!」

姉妹アライちゃん1「やなやなやなやなやなやなああああーーーーっ!」ジタバタ

10分後…

姉妹アライちゃん1「う゛…ゆ゛…」ビクッビクッ

逆さ吊りにされていたせいで頭に血が上り、意識が混濁してきた姉妹アライちゃん1は、さすがに静かになった。

母アライさん「よし、そろそろ解放してやるのだ」グルグル

母アライさんは、姉妹アライちゃん1の尻尾を解放し、木の枝からおろした。
そして、そっと草の上に横たわらせた。

姉妹アライちゃん1「う゛…ぎゅ…゛う゛びゅぅ゛うぅ…」グッタリ

そんな姉妹アライちゃん1の姿を…

野良アライちゃん3&姉妹アライちゃん達「「…」」ブルブル

3匹の姉妹は、木の穴の中で震えながら、声を殺して見ていた。

母アライさん「チビ達!もう喋ってもいいのだ!」

野良アライちゃん3「っ…」ブルブル

一体なぜ母親がこんなに怒っているのか、幼い野良アライちゃん3には理解できなかった。

やがて、姉妹アライちゃん1は意識を取り戻した。

母アライさん「チビ達。アライさんは今、木の実を使ってあの獣を誘きだして、捕まえようとしていたのだ」

姉妹アライちゃん1「つかまえゆ…?」

母アライさん「そうすれば、木の実よりもっとたくさん、美味しいお肉が食べられたのだ」

野良アライちゃん3「おにく!?」
姉妹アライちゃん2「おにくなんなのりゃ?」シッポフリフリ
姉妹アライちゃん4「きのみともむししゃんともざにがにともちがうのりゃ?」コスリコスリ

母アライさん「せっかくお前達に、美味しい美味しいお肉を食べさせてやれるところだったのに…!バカチビ!お前がアライさんの言いつけを破ったから、捕まえられなかったのだ!」

姉妹アライちゃん1「うゆぅう…!」

母アライさん「チビ達!美味しい食べ物が食べられなかったのは、一番上のバカチビのせいなのだ!」

姉妹アライちゃん1「!?」

この言い方はまずい。

姉妹アライちゃん2「おねーしゃんのせーで!」
野良アライちゃん3「おねーしゃんがゆーこときかなかったからなのりゃあ!」フゥーーッ
姉妹アライちゃん4「ばかちび!ばかちびぃ!」

姉妹アライちゃん1「ぴいぃいーーーっ!ごめんなしゃいなのりゃあーーっ!」ビエエエン

母アライさん「全く…。また罠を仕掛ける場所を変えなきゃいけないのだ…」ハァ…

その後…

母アライさん「だああ!」バッ

猪2「ブギイィイ!」ドグシャア

姉妹アライちゃん達「おおー…!」

母アライさんは別の猪を、尖った岩を凶器にした木の上からの奇襲で倒した。

母アライさん「のだっ!のだっ!」ドガッドガッ

猪2「ぶ…ぎゅ…」ビクッビクッ

猪は、強靭な体と硬い頭蓋骨を持った動物だ。

攻撃力も、防御力も高い。

成体のアライさんといえど、体当たりをくらえば、鋭い牙で貫かれて吹っ飛ばされてしまう。

木の上から小石を投げ当てた程度では、その肉体はびくともしないであろう。

猪2「」グッタリ

しかし、木の上から飛びかかってきたアライさんが、体重を乗せて角の尖った岩でその頭を殴ったのである。

これで脳震盪を起こすなという方が無理である。

母アライさん「いててて…。手が痛いのだ…」コスリコスリ

もっとも、それだけの威力で猪の硬い頭をぶったたいたのだから、
岩を持っていたアライさんの方も反動を受けるのは仕方がない。

母アライさん「さあチビ達!お肉を食べるのだ!」

姉妹アライちゃん達「「「「のりゃーっ!」」」」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

猪に群がるアライちゃん達。

姉妹アライちゃん達「「「「はぐっあぐっ!あぐあぐっ!」」」」ガジガジ

その未発達な顎と、まだ何本か乳歯が残ったままの歯では、猪の分厚い毛皮を食い破るのは相当苦労するようだ。

母アライさん「はぐがぶぅ!」ガブゥバリバリ

鋭い牙と爪を持ち、顎の力が充分に鍛えられた母アライさんでさえ、楽ではないようだ。

母アライさん「こうなったら…これを使うのだ」スッ

母アライさんが取り出したのは、ステンレス製のハサミである。

恐らくまだアライしゃんだった頃に、インターンシップ中に人里で手に入れたものだろう。

民家の小屋に侵入して盗んだのであろうか…。

ハサミは余程使い込んだのか、ところどころ傷がついている。

母アライさん「いくつか似たようなのを持ってたけど…だいたい茶色になってダメになったのだ。でも、これだけはずっと使えるのだ!」

野良アライちゃん3「それなんなのりゃ?」シッポフリフリ

母アライさん「こうするのだー!ふははー!」ジョキジョキ

猪の毛皮を、ハサミで切り裂いていく。

姉妹アライちゃん達「「「おおー!しゅごいのりゃあ!」」」

姉妹アライちゃん1「あむあむあむあむあむあむっ!(≧'u(≦ )」クッチャクッチャ
姉妹アライちゃん2「あむあむあむあむあむあむっ!(≧'u(≦ )」クッチャクッチャ
野良アライちゃん3「あむあむあむあむあむあむっ!(≧'u(≦ )」クッチャクッチャ
姉妹アライちゃん4「あむあむあむあむあむあむっ!(≧'u(≦ )」クッチャクッチャ

姉妹アライちゃん達「「おーいちーびりゃああーーーっ!≧∀≦」」ムシャムシャモグモグ

母アライさん「ふははー!チビ達。アライさん達は、猪と違って足が速くないのだ。だからおいかけっこしても勝てないのだ」ムシャムシャ

母アライさん「だから、一生懸命知恵を振り絞ってです罠を仕掛けるのだ!それがアライさん達の武器なのだ!」モグモグ

野良アライちゃん3(おかーしゃん…かっこいいのりゃあ…!はやくありゃいしゃんも、おかーしゃんみたいにつよくなりたいのりゃ…!)

姉妹アライちゃん4「おかーしゃんはさいきょーなのりゃあ!≧∀≦」シッポフリフリ

流石に一晩で猪の肉を 全部食うのは無理のようだ。

一家は木の根元へ猪の肉を置いておき、翌日食べることにした。

…翌日の夕方…

野良アライちゃん3「…ん、みゅ…」パチッ

野良アライちゃん3は、木の穴の中で目を覚ました。

野良アライちゃん3「うんちしゅゆのりゃ…」ヨジヨジ

木の穴の中のアライちゃん達は、鳥の雛のように、巣穴から尻を出して排便する。

野良アライちゃん3は、穴の外へ排便するため、外を見た。

すると…

熊「ハグッハグッ」ムシャムシャ

猪の死骸「」バリボリ

野良アライちゃん3「!?」

なんと、せっかく狩った猪が、黒くて大きな獣に食われていた。

野良アライちゃん3「お、おかーしゃ…」キョロキョロ

木の枝に乗っているであろう母親へ、このことを伝えようとしたが…

母アライさん「っ…チビ、静かにしてるのだ…」

…母アライさんは、食糧を奪う熊を、じっと見つめていた。

野良アライちゃん3「おかーしゃ…!いのしししゃんじびえが…!おにくが…!」

母アライさん「今盗み食いしてるあの獣は、熊っていうのだ。人間の次に強いのだ。あいつがいなくなるまで待つのだ…」

野良アライちゃん3「う、うゆ…」コクリ

野良アライちゃん3は、大便を我慢している。
そこへ…

姉妹アライちゃん1「うゆ!?なんかでっかいけものが、ありゃいしゃんたちのごはんぬしゅみぐいちてゆのりゃあ!」ヒョコッ

母アライさん「!」

…以前猪狩りの邪魔をした長女が、木の穴から顔を出した。

姉妹アライちゃん1「おいっ!おまえっ!それありゃいしゃんのおかーしゃんのたべものだぞぉ!」ヨジヨジ

姉妹アライちゃん1は、木の表面に捕まりながら、ちょっと降りた。

母アライさん「バカ!チビ、巣穴に戻るのだ!」

姉妹アライちゃん1「ふうぅううううーーーっ!きゅるるるるるうぅーーーっ!おかーしゃんはなぁ!さいきょーなんだぞぉ!せかいでいーーーっちばんちゅよいんだぞぉ!」ヨジヨジ

姉妹アライちゃん1は、木の表面をまた少し降りた。

姉妹アライちゃん1「おかーしゃん!あのけものもぶっこよちておにくにしゅゆのりゃー!≧∀≦」シッポフリフリ

姉妹アライちゃん1は、熊の前足が届かないであろう位置から熊を挑発した。

母アライさん「チビ!いいから早く戻るのだぁ!」アセアセ

姉妹アライちゃん1「やーいやーい!うんこぶーりぶりー!≧∀≦」ブリブリ

姉妹アライちゃん1は、熊の目の前で排便した。

熊「…」

母アライさん「いい加減にするのだガイジ!」ガシィ グイイッ

姉妹アライちゃん1「うゆうぅ!?」グイイッ

母アライさんは、姉妹アライちゃん1の首根っこを掴んで上へ引っ張り上げた。

その瞬間。

熊「フバアアアウウウゥウーーーーッ!」ズガァ

木の表面「」ズバシャアッ

つい今の瞬間まで姉妹アライちゃん1がいた位置に、熊の爪がふりかざされら。

姉妹アライちゃん1「ぴぃっ!?」ズガァ

姉妹アライちゃん1の尻尾の先端が、縦に引き裂かれた。

姉妹アライちゃん1「いっ…」ズキズキ

届かないと思っていた…はずなのに。

熊は両足で立った上に、その場で跳び跳ね、手を振りかざした。

その爪は、母親が一瞬掴み上げるのが遅かったら、姉妹アライちゃん1の腹を引き裂き内臓をズタボロに引き裂いていたであろう。

姉妹アライちゃん1「いっ…ぢゃあああああああああいいいいいいーーーっ!ありゃいしゃああんのかーーいいかーーいいちっぽいぢゃいいぢゃあいいなのりゃあああーーっ!」ピギイイィイジタバタジタバタ

母アライさん「黙ってるのだ!」ポイッ

母アライさんは、尻尾から血を流す姉妹アライちゃん1を、巣穴へ投げ込んだ。

野良アライちゃん3「ひ…ひいぃ…」ブリブリジョボボボボ

野良アライちゃん3は、恐怖のあまり巣穴の中で失禁・脱糞した。

姉妹アライちゃん2「…!ぴいいいぃぃっ!くっちゃいのりゃあああっ!」
姉妹アライちゃん4「きちゃないのりゃあああーーっ!」



やがて、熊は去っていった。

姉妹アライちゃん1「ひぐっ…ぐしゅっ…しっぽいぢゃあいぃっ…」コスリコスリ

母アライさん「いいかチビ。アライさんは、世界最強なんかじゃないのだ。お前達もみんな、世界最強になんてなれないのだ」

野良アライちゃん3「うゆ…!?」ビクゥ

意外なことを聞いた。
猪を簡単に倒す自分の母は、最強だと思っていたのに。

母アライさん「アライさんも、昔は自分が最強だと思ってた恥ずかしい時期があったのだ…でも!そういうのは卒業したのだ!」

母アライさん「というか、アライさんは多分…猪よりも弱いのだ」

姉妹アライちゃん2「うゆぅ?」

母アライさん「弱いから、頭を使わないと、自分より強い敵に勝てないのだ。これはお前達もみんな同じなのだ!肝に銘じておくのだ!」

野良アライちゃん3「は…はいなのりゃあ…!」

母アライさん「アライさんのお姉さんや妹達は、ほとんどみんな死んでしまったのだ」

母アライさん「アライさんが生き残ったのは…運が良かったからなのだ。ひょっとしたら、お姉さんの代わりに死んでいたのはアライさんだったかもしれないのだ」

野良アライちゃん3の母親は、死亡率80~90%ともいわれる、超難関のインターンシップを生き抜いた個体。

身に付けてきたサバイバル知識も、それなりの蓄積はあるのだろう。

母アライさんは、その後も猪や鹿を狩り続けた。

何の罪もない野生動物を…己と子の糧とするために、殺し続けたのであった。

野良アライちゃん3「なんでこんなにいっぱい、けものいゆのりゃ?」

母アライさん「この獣道から下に降りると、人の畑があるのだ。鹿や猪は、そこを狙っているのだ」

姉妹アライちゃん1「はたけなんなのりゃ?」

母アライさん「畑は…」





畑アライさん「人間が、食べ物を作っている場所なのだ」




姉妹アライちゃん1「たべものつくゆ!?」

姉妹アライちゃん2「しゅごいのりゃあ!」

野良アライちゃん3「ありゃいしゃんもたべていいのりゃ?」

母アライさん「…畑の食べ物をとると、人間は怒って殺しにくるのだ。森の安全な食べ物とは違うのだ」

姉妹アライちゃん4「こ、こあいのりゃ!うゆ…。ありゃいしゃんは、ずっともりでくらしたいのりゃ…」

母アライさん「ダメなのだ」

姉妹アライちゃん4「なんでなのりゃ?」

母アライさん「なんでって…」





母アライさん「森の安全な食べ物は、大人のアライさんだけが食べていいのだ」

姉妹アライちゃん達「「!?」」

母アライさん「お前達はインターンシップの間、森に帰ってきちゃダメなのだ。子供のうちは、森じゃなく人の畑から食べ物をとるのだ」

姉妹アライちゃん1「な、なにいってゆのりゃ!それじゃころされちゃうのりゃ!」アセアセ

母アライさん「甘えるななのだ!」

姉妹アライちゃん達「「!?」」ビクゥ

母アライさん「…アライさんだって!ちっちゃい頃!ずっとずっと森に帰りたかったのだ!!!」

母アライさん「おっかない人間の畑からなんて、食べ物とりたくなかったのだ!野菜は森の食べ物より美味しいけど!命の方が大事なのだ!」

母アライさん「アライさんの妹も、畑で人に殺されたのだ!逃げ遅れて!大きな道具でグシャグシャにされたのだ!」

母アライさん「でも!森の食べ物は、数が限られてるのだ!チビ共が好き放題食いまくったら森の食べ物はあっという間に無くなるのだ!」

母アライさん「だから!大人だけが森で安全に食事していいのだ!チビ達は危ないとこで勉強しながら食事する!それが決まりなのだ!」

母アライさん「アライさんも!アライさんのお母さんも!ずっとずっとずーーっとそうしてきたのだ!だからお前達もそうするのだ!」

姉妹アライちゃん達「「」」ガクガクブルブル

野良アライちゃん3と姉妹は、いつになく激昂する母親の姿に恐怖を抱いていた。

姉妹アライちゃん1「…にんげんって、そんなにつよいのりゃ?」

母アライさん「…人間は、最強の生き物なのだ」

野良アライちゃん3「…」

この母親が最強とまで言う人間という生き物。
一体どんなに大きくて、鋭い爪と牙を持った動物なのか…

野良アライちゃん3は、一度見てみたかった。

…ある日の昼間。

野良アライちゃん3「うーん、きょうもうんちしゅゆのりゃ…」ゴソゴソ

野良アライちゃん3は、排便しようとして木の穴から尻を出した。

すると…

老人「…ケンタ、森はどうだい…?」ヨボヨボ

児童「わーい!木がいっぱい生えてる!クワガタみーっけ!」トタトタ

野良アライちゃん3「…?」

弱そうな生き物が2体、木の下を歩いていた。

野良アライちゃん3「おかーしゃ、あれなんなの…」クルッ

野良アライちゃん3は、木の枝の上の母親に聞こうとするが…

母アライさん「っ…!」ブルブル

母アライさんは、木の高いところへ登り、葉の陰になるように必死で隠れていた。

その顔には、熊が来たときすら見せなかった、絶望的な恐怖の表情が浮かび、とめどなく脂汗が流れていた。

姉妹アライちゃん4匹は起きて、老人と児童が通りすぎるのを観察していた。

やがて、二人が去っていた後…

母アライさん「…あれが、人間なのだ」

姉妹アライちゃん1「にんげん?」
姉妹アライちゃん2「よわっちそーなのりゃあ!」
野良アライちゃん3「ぜったいおかーしゃんのほーがつよいのりゃ!」
姉妹アライちゃん4「いしおとせばぶっこよちぇゆのりゃあ!」

母アライさん「…人間は、誰か一人が死んだら、それを仲間がすぐに知ることができるらしいのだ…」

母アライさん「そして、その回りに住んでるアライさんを、一匹残らず皆殺しにする…らしいのだ!」

姉妹アライちゃん1「らしいって…みたことないのりゃ?」

母アライさん「もしその光景をアライさんが見ていたとしたら…とっくにもう死んでるのだ」

姉妹アライちゃん達「ヒイイィイイイ」ガクガクブルブル

母アライさん「そして、お母さんから聞いた話だと…。人間の赤ちゃんは、いつも親に監視されているらしいのだ」

母アライさん「だから、もしもお前達が、人間の赤ちゃんや年寄りを殺して食おうとしたら…」

母アライさん「食べる前に捕まって、死ぬよりも恐ろしい拷問をされるそうなのだ。全身の皮を剥がされ、目玉をくり抜かれ…!もう殺してと泣いても許してくれないのだ!」

野良アライちゃん3「は、はたけは!?はたけのおやしゃいは!?」

母アライさん「畑の野菜は、まだ監視がユルいらしいのだ。…とにかく、人間を自分から襲って殺しちゃダメなのだ!」

姉妹アライちゃん達「「わ、わかったのりゃ………」」

母アライさん「その代わり、中には優しい人間もいるのだ。可愛く甘えたら、ナデナデしてくれたり、ごはんくれるいい人間もいるのだ」

姉妹アライちゃん達「「いいにんげん!?」」

野生動物に餌付けするのが、『いい人間』かどうかは微妙なところだが…

きっとアライさんにとって都合が『いい』人間ということだろう。

そうして姉妹アライちゃん達は、母親から多くのことを学んだ。

そして、乳歯がすっかり生え揃った頃…

姉妹達は、人里へ降りた。
インターンシップの開始である。

だが、インターンシップは地獄であった。

野良猫「にゃー」トテトテ

野良猫が、道路を歩いている。

姉妹アライちゃん1「おかーしゃんみたく、かっこよく…わなで、けものをぶっこよちゅのりゃ…!」プルプル

姉妹アライちゃん1は、コンクリートの塀の上に登り、小石を持って猫の上に来た。

姉妹アライちゃん1「たあー!」パッ

姉妹アライちゃん1は、小石を野良猫の頭へ落とした。

野良猫「にゃっ!」ビシィ

頭の真ん中へクリーンヒット。

姉妹アライちゃん1「やったのりゃあ!ありゃいしゃんもおかーしゃんみたくさいきょーになれたのりゃあ!≧∀≦」

姉妹アライちゃん達「「おぉー………」」ゴソッ

野良アライちゃん3と姉妹は、草陰に隠れてその様子を見ていた。

野良猫「…フゥー…!」ギロリ

姉妹アライちゃん1「うゆ?しなないのりゃ」キョトン

だが、所詮生後2ヶ月程度のヨチラーの体力。
木や塀を登るのは得意でも、大した大きさの小石は持てない。

小さな姉妹アライちゃん1の手に収まる、さらに小さな小石など、野良猫の頭に大したダメージをあたえなかった。

それどころか。

野良猫「フビャアアアッ!」ガバァ

姉妹アライちゃん1「≦∀≧」!?

野良猫は姉妹アライちゃん1の居場所を見つけ、コンクリート塀の上へ登ってきた。

野良猫「フニャウゥ!」ガブゥ ブンッ

姉妹アライちゃん1「ぴいぃいっ!」ヒューンッ ドサッ

姉妹アライちゃん1は、塀から投げおとされた。

姉妹アライちゃん1「うゆうぅ…!いぢゃい、いぢゃいのりゃあ…!」シッポブンブン

熊に引き裂かれた跡がすっかり完治した尻尾を振りながら、姉妹アライちゃん1は落下の痛みに悶絶した。

野良猫「ガァブ!」ガブゥ

姉妹アライちゃん1「ふぐぎゅぅ!?」

野良猫は、姉妹アライちゃん1の首に噛みつき、絞め始めた。

姉の命の危機。
妹たちは…

姉妹アライちゃん2「おねーしゃんをはなちぇ~!」ガサッ ヨチヨチヨチヨチ
野良アライちゃん3「はなしゅのりゃあ!ふぅーーっ!」ガサッ ヨチヨチヨチヨチ
姉妹アライちゃん4「はなしゃないとびっこよしゅぞぉ!きゅるるぅ!」ガサッ ヨチヨチヨチヨチ

姉妹アライちゃん2~4「「「ふぅーーっ!」」」ヨチヨチヨチヨチ

妹達は、姉を助けに来た。

姉妹アライちゃん1「いも…と…だぢゅ…げで…」ビクビク

野良猫「フゥーッ」グググ

姉妹の情や絆?というのも多少はあるが…

これまでのインターンシップ生活から、いかに仲間との助け合いが重要か、身に染みて覚えていたからだ。

まあ、助け合いをしなくても、共に行動していれば、こういうふうに身代わりになってくれることもある。

『残機』を無駄に減らすと、自分の生存率も下がる。
そのため妹達は、怖いけど仕方なく姉を助けに来た。

これだけの数がいれば勝てるだろうと見込んでの助太刀だ。

だが。

野良猫「フニャウウウゥ!」バリバリ

姉妹アライちゃん2~4「「ぴぎいいぃいい!」」

野良猫は、姉妹アライちゃん2~4を引っ掻き、ぶん投げ、体当たりし、ぶちのめした。

ヨチラー3匹よりも、成体の猫の方が単純に強かった。

姉妹アライちゃん2~4「「に…にげゆのりゃああ~っ!」」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

一目散に逃げていく姉妹アライちゃん2~4。

姉妹アライちゃん1「だ…ぢゅ…げ…」ブクブク

野良猫「がぶぶぢぃ!」ガブシュゥ

姉妹アライちゃん1「」ボギグシャア ガクッ

姉妹アライちゃん1は、喉笛を噛み砕かれて死亡した。

…公園の木陰

姉妹アライちゃん2「ひぐっ…ぐしゅっ…」シクシク

野良アライちゃん3「だいしゅきなおねーしゃんが…しんじゃったのりゃあっ…!たべられたのりゃあっ…!」グスングスン

姉妹アライちゃん4「うええええん…!ぴええええーーんっ…!ぴいぃーっ…!」シクシク

姉妹アライちゃん2~4は、姉を見捨てて生き延びた。

『残機』が1減ったのである。

姉妹アライちゃん2「でも…おねーしゃんのおかげでわかったのりゃ。あのけものはつよいって…!」

野良アライちゃん3「ありがとうなのりゃ…おねーしゃん…」

姉妹アライちゃん4「おねーしゃんは、ありゃいしゃんのむねのなかでいきちゅぢゅけゆのりゃ…!」シクシク

長女の死は、サバイバル知識へと姿を変え、生き延びた妹達へ受け継がれる。

こいつらの母親である母アライにも、このように…
『残機』である姉妹たちの犠牲からサバイバルの知識を得たおかげで、成体まで成長し、森へ帰還できたのである。

…1ヶ月後、深夜の住宅街…

姉妹アライちゃん2「きょーもごはんさがすのりゃー!」ヨチヨチヨチヨチ
野良アライちゃん3「なのりゃー!」ヨチヨチヨチヨチ
姉妹アライちゃん4「なのりゃー!」ヨチヨチヨチヨチ

姉妹たちが、食べ物を探していると…

姉妹アライちゃん2「んん!こっちからいーにおいしゅゆのりゃあ!」ヨチヨチヨチヨチ

姉妹アライちゃん3~4「「なのりゃあー!」」ヨチヨチヨチヨチ

姉妹たちは、そのいいにおいがする方へ這い寄った。

そこには…

https://i.imgur.com/TE4Qkw7.jpg

いい匂いがする箱が、たくさんあった。

野良アライちゃん3「うゆ~!たべゆのりゃあ~!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん3は、箱へ突撃する。

野良アライちゃん3「なのりゃー!」スポッ

箱へ頭を突っ込むと…

粘着シート「」ベタアアッ

野良アライちゃん3「うゆうぅ!?と…とれ…ないぃ…!?」ビクゥ

姉妹アライちゃん2&4「「!?」」

野良アライちゃん3「とれないいいい!うゆうううう!とれないのりゃああああああっ!」グイグイシッポブンブン

なんと野良アライちゃん3は、箱にくっつき、出られなくなってしまった。

野良アライちゃん3「とってえー!たしゅけてえーっ!」ジタバタ

姉妹アライちゃん2&4「「いまたしゅけゆのりゃ!わっちぇ!わっちぇ!」」グイグイ

尻尾を引っ張る姉妹達。

野良アライちゃん3「いぢゃあいいい!とれないいいい!」ピギイイイィイ

…だが、一向にとれる気配はない。

野良アライちゃん3「たしゅけてえ!はやくたしゅけてえ!」シッポブンブン

姉妹アライちゃん2「…わ…」

姉妹アライちゃん4「わな…なのりゃ…!」

野良アライちゃん3「!!!」

罠…
そう聞いて、野良アライちゃん3は、自分の母親が木の実を餌にして、鹿や猪、小さな猿などを狩っていたことを思い出した。

野良アライちゃん3「ぴ…ぴぃ…」ガクガクブルブル

…自分が今捕まっている『これ』は…

母親がやった『あれ』と、同じものだ。

野良アライちゃん3「…ぴいいいぃいいlーっっ!やなやなやなやなああああーーーっ!たべられたくないいいいいいいいいーーーーっ!」ピギイイイィイシッポブンブン

野良アライちゃん3は、大声で泣き出した。

野良アライちゃん3「たしゅけてえええええええーーっ!おねーしゃ!いもーと!たしゅけてえええええええーーっ!」ビエエエンシッポブンブン

野良アライちゃん3は、とにかく泣きわめいた。

姉妹アライちゃん2「ここまでなのりゃ、いもーと…おまえはきっと、ひとしゃんにたべられゆのりゃ…!」

姉妹アライちゃん4「でも、おまえのことはわすれないのりゃ…!」

野良アライちゃん3「ぴぃ!?な、なにいって…!」


姉妹アライちゃん2&4「「おまえのぶんまでいきゆのりゃああーーーーっ!」」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ


野良アライちゃん3「…」ポツーン

姉妹は去っていた。

野良アライちゃん3「や…やなああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーっ!やああああああーーーなあああああーーーーーっ!」ビエエエンシッポブンブン

野良アライちゃん3「だぢゅげでえええええええええーーーーっ!」ピイイイイイイイイイイ

野良猫に襲われ、自分たちが見捨てた長女も、こんな気分だったのであろうか。

野良アライちゃん3は、なんだかんだで自分は生き延びれると思っていた。

姉妹達が犠牲になっても、自分は特別に生き延びれると思っていた。

だが、その幻想は、ほんの一瞬で崩れ去った。

野良アライちゃん3「しにだぐないいいいいいいいいいいいいいいっ!たべられだぐないいいいいいっ!のおおおおーーーーぁああああーーーーんっ!」ビエエエン

…今回、『残機』となって減ったのは…
自分だったのだ。

姉妹が生き延びるための『知恵』となって消えるのは、自分だったのである。

野良アライちゃん3「なんでありゃいしゃんがこんなめにあわなくちゃいけないのりゃあああーーーーーーーーーーっ!」ビエエエン

続く

哺乳類の幼獣と成獣の間には、どれだけの知能の差があるだろうか。

はっきり言って、その差は段違いに大きい。

生きてきて学習した情報や知識の差もあるが、
何よりも脳組織の成長度合いが違う。

小さな小さな幼獣の未発達な頭では、独り立ちして生きていくことはほぼ不可能だ。

体も貧弱で、知能も未熟な幼獣は、親に育てて貰わなくては厳しい自然の中を生きていけないのである。

野良アライちゃん3「おねえええしゃああああああーーんっ!おがあああああああしゃあああああああああーーーんっ!ぴぃぎゅるるるるるるぅーーっ!」ビエエエエエン

野良アライちゃん3「のおおぉおおおおおおおぁああああああーーーーーーーーんっ!!!の゛お゛お゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛ーーん゛っ!!!」ピギイイィシッポブンブン

アライちゃんとて同じ。
アライちゃんは、まだまだ生育途中の初期段階の赤ちゃんなのである。

アライさんという動物(?)になりかけの段階、昆虫でいうとこの幼虫にあたる。

だがアライちゃんの体は本来、昆虫の幼虫と違って生後すぐに独りで生きていけるようにはできていない。

その貧弱すぎる肉体。

その未成熟な知能。

独り立ちするのはあまりにも無謀すぎる。

野良アライちゃん3「かえりだいいぃいいいいーーーーっ!!!おうぢがえりだいいぃいいーーーーっ!」ピギイイィシッポブンブン

親からインターンシップに駆り出される、アライちゃんという幼獣は…

はっきり言って、本来親無しでは生きていけないほど弱々しい生き物なのである…。
先天的に高い知能を持った一部の天才個体を除いて。

ただの平凡な才能しか持っていなかった野良アライちゃん3など、こうなって当然なのである。

そこへ…

野良アライちゃん5「こっちからいーにおいしゅゆのりゃ!」ヨチヨチ

野良アライちゃん6「なのりゃー!」ヨチヨチ

2匹の野良アライちゃんがやってきた。

野良アライちゃん3「!!ぴ、ぴいぃいいいい!そこのおまえたちぃ!ありゃいしゃんをたしゅけてえええ!」ジタバタシッポブンブン

アライホイホイにくっついたまま、野良アライちゃん3は尻尾をブンブンばたつかせた。

野良アライちゃん5「うゆ!?これ…わななのりゃあ!?」ビクゥ

野良アライちゃん6「くんくん…うゆぅ、こんなわなが…。おぼえたのりゃ!」ピトピト

野良アライちゃん5&6は、他にもアライホイホイがあることのを見つけた。

あれこれいじくり回し、アライホイホイを学習したようだ。

野良アライちゃん3「いーからはやくたしゅけてえええーーーっ!」ジタバタ

野良アライちゃん5「どーしゅゆのりゃ…?」シッポフリフリ

野良アライちゃん6「うゆぅ…。しんだいもーとのかわりにできゆかもしれないのりゃ!たしゅけゆのりゃあ!」ガシィ

野良アライちゃん5「おい、おまえ!たしゅけたら、ありゃいしゃんたちのけらいになゆかー!?ふぅーっ!」フゥーーッ

野良アライちゃん6「めしつかいになゆかぁー!?ふぅーっ!」フシャアア

野良アライちゃん5&6は、尻尾を立てて体を大きく見せ、野良アライちゃん3を威嚇した。

野良アライちゃん3「なゆ!なゆからたしゅけてええ!」ジタバタ

野良アライちゃん5「ふははー!じゃーたしゅけてやゆのりゃ!」ガサガサ

野良アライちゃん6「こんなんはむれでわけあうのりゃ!」ガサガサ

野良アライちゃん5&6「「わっちぇ!わっちぇ!」」グイグイ

野良アライちゃん5&6は、3を家来にするため助け始めた。

野良アライちゃん達の中には、独りで生きていくにはあまりに弱々しいが…

少数の群れで集団行動をとることで、効率よく餌を獲得できることに気付く個体もいる。

こういう個体は、死んだ姉妹の代わり…『残機』を増やすために、
血縁関係のない他のアライちゃんを従えようとすることがある。

厳しい生存競争を生き残れるのは、こういった発想やアイデアで貧弱な肉体をカバーできる狡猾な個体のみである。

野良アライちゃん達の最大の武器…

それは、木登りの上手さや、器用な手よりも…

『言語能力』であると言う有識者もいる。

野良アライちゃん達は、互いに言語による意思疎通や情報伝達が可能である。

他の野性動物とは一線を画した高度なコミュニケーションを行える。

そして、コミュニケーション能力を有効に活用するには…
『群れる』ことが必要不可欠だ。

単独では穴ひとつ掘るのさえ苦労する野良アライちゃんだが
二匹、三匹集まれば、できることの幅はうんと増える。
その上、『仲間の死からの学習』をする回数も増える。

野良アライちゃん5&6は、野良アライちゃん3のためを思って助けようとしているわけではない。

自分たちのためである。

野良アライちゃん5&6「「わっちぇ!わっちぇ!」」グイグイ

野良アライちゃん3「ありがとうなのりゃあ…!ぐしゅっ、ひぐっ…!がんばってなのりゃ!」シッポフリフリ

だが、動機はどうであろうと。
仲間を救おうとしていることに違いはない。

野良アライちゃん5&6「「とれないのりゃー!」」ゼェハァ

野良アライちゃん3「のりゃ!?」

しかしながら。
野良アライちゃんが群れることなど、アライホイホイのメーカーも想定済み。

たかがヨチラー二匹がガンバるだけで逃げられてしまうようなお粗末な罠など、販売できるわけがない。

アライちゃん防除グッズの中では売れ筋製品のアライホイホイは、こんな貧弱なヨチラー共がちょっと頭をひねってどうこうした程度で
害獣をとり逃がすようなヘマはしない。

野良アライちゃん5「たしゅけゆのはむりなのりゃ…」

野良アライちゃん3「ぴいぃーーっ!?あきらめゆなぁ!ありゃいしゃんのききなのりゃあ!」シッポブンブン

野良アライちゃん6「ぜぇはぁ…どーしゅゆのりゃこいつ?おにくにしゅゆのりゃ?」シッポフリフリ

野良アライちゃん3「ぴいいぃぃっ!?」ビクゥ

野良アライちゃん3「ふ、ふうぅーっ!くゆなぁ!ぶっこよすぞぉっ!きゅるるぅ!」フゥーーッ

野良アライちゃん3は、野良アライちゃん5&6を威嚇する。

野良アライちゃん5「やめとくのりゃ、あぶないのりゃ…。それより、あっちになんかあゆのりゃ」クンクン

野良アライちゃん6「なんなのりゃ?」

野良アライちゃん5「こっちなのりゃ!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん6「なのりゃー!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん5&6は、野良アライちゃん3を放っておき、民家の前にある…

…チューリップの植木鉢に向かった。

野良アライちゃん5「ここほゆのりゃ!」ザックザック

野良アライちゃん6「わっちぇ!わっちぇ!」ザックザック

チューリップの植木鉢の土を掘ると、球根が露出した。

野良アライちゃん5&6「「おやしゃいなのりゃー!≧∀≦」」シッポフリフリフリフリフリフリ

野良アライちゃん3「お、おやしゃいぃ!?ありゃいしゃんにもくわせゆのりゃあ!…ふんぐぅー!とれないぃ!」ジタバタジタバタ

野良アライちゃん3は、アライホイホイでもがいている。

野良アライちゃん5「あむあむあむあむあむあむあむあむっ!」カリコリカリコリカリコリカリコリ

野良アライちゃん6「あむあむあむあむあむあむあむあむっ!」カリコリカリコリカリコリカリコリ

野良アライちゃん5&6「「げぇーぷ!おいちかったのりゃあ!」」

野良アライちゃん5&6は、植木鉢のすべてのチューリップの球根を食いつくしてしまった。

野良アライちゃん3「う、うぅ~!たしゅけろぉ!ありゃいしゃんをたしゅけろぉーーーっ!けらいになゆからぁーっ!≧Д≦#」モゾモゾ

野良アライちゃん5&6「「むりなもんはむりなのりゃー!」」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん3「ぴいぃーーっ!いがないでぇーーっ!。≧Д≦。」

野良アライちゃん3「のぁああああああああーーーーんっ!のおおおぉおーーーーぁああああーーーんっ!」ビエエエエエン

野良アライちゃん3は、そのまま朝まで『鳴き』続けた。

そして、夜が明けるまでに、もう1組の野良アライちゃん姉妹がやってきて…

アライホイホイの罠を学習し、去っていった。

…翌朝…

野良アライちゃん3「ぴいぃーーー!ひとしゃん!たしゅけてぇええーーーっ!」シッポブンブン

植木鉢の前に大量に仕掛けられたアライホイホイ…
粘着テープの罠。

そのうち1つだけに、野良アライちゃん3がくっついている。

ガラッと音がして、民家のドアが開いた。

花好きおばさん「あああああああ!!クソ!!!あたしのチューリップがぁ!」

中から出てきた人間は、荒らされ、ほじくり返されたチューリップの植木鉢の前で激昂している。

チューリップは野良アライちゃん5&6が球根をほじくり返し、食ったのである。

この人間は、植木鉢を守るためにアライホイホイを仕掛けようだが…

野良アライちゃん3「うゆうぅ~~!ひとしゃん!とってくれたらあらいしゃんのせなかなでなでしていいぞぉ!ほっぺなめなめちてやゆぞぉ!」ヒグッグスッ

罠にかかったのは、大泣きして涙と鼻水を垂らしている野良アライちゃん3…一匹のみ。

他にも何匹か野良アライちゃんは来た。

だが、罠にかかった野良アライちゃん3の様子を見て、アライホイホイを罠だと学習し、植木鉢を荒らして帰っていった。

花好きおばさん「ハァー…ハァー…くそ…」ピポパ

花好きおばさんは、電話をかけはじめた。

野良アライちゃん3「うぅ、ぅうっ…!」ガクガクブルブル

この人間は自分をどうする気だろうか?
やはり、捕まえて食べるつもりなのだろうか…。

そのうち、軽トラに乗った人間が来た。

荷台には大きな箱が積まれており、アライちゃんの泣き声がたくさん聞こえてくる。

アライ回収業者「どうも…野良アライちゃん一匹ですね。50円で引き取ります」ガシィ

野良アライちゃん3「ひとしゃん!とってぇ!とってぇ!うゆぅ、うみゅみゅぅぅ~~~っ!」ジタバタシッポブンブン

野良アライちゃん3は、アライホイホイにくっついたまま、懸命に身をよじった。

アライ回収業者「では」ガシッ

野良アライちゃん3「う、うゆぅ!?」ビクゥ

アライ回収業者「ほいっと」ポイッ

野良アライちゃん3「ぴいぃい!」ヒュー

野良アライちゃん3は、軽トラへ積まれた箱の中へ投入された。

野良アライちゃん3「だぢでえええええ!せまいのやなのりゃああああっ!おうぢがえゆうぅう!おながしゅいだあああ!」モゾモゾ

アライ回収業者「ご利用ありがとうございました」

軽トラ「」ブゥーン…

野良アライちゃん3を乗せた軽トラは走り出した。

花好きおばさん「あーーーもう!どうしたらあのアライどもを殲滅できるんだい!」

古道具屋おばさん「花さん、大変ですねぇ…」

花好きおばさん「全くだよ…。でも、花を植えるのはやめたくない…」

古道具屋おばさん「…そうだ、うちの息子が今帰ってきてるから、ちょっと相談してみようかねえ」

花好きおばさん「ん…。何だっけ、くず鉄業者の?」



野良アライちゃん3「うゆうぅ…!だれかたしゅけてえぇ…!」ブルブル

野良アライちゃん3は、アライホイホイの粘着シートにくっついたまま、トラックで運ばれていた。

これまでの自分の人生を思いだしながら…。

野良アライちゃん3「だれか…だれかぁ…!うぅ…!」ヒグッグスッ

自分はこれからどこへ連れていかれるのか…。

いくら想像しても、悪い未来しか思い浮かばなかった。

野良アライちゃん3の心は、少しずつ絶望に支配され始めた。

野良アライちゃん3「…」キョロキョロ

野良アライちゃん3は、箱の中のまわりの様子をうかがう。

死骸アライちゃん「」

野良アライちゃん6「あぐあぐ!もぐもぐ!」ムシャムシャ

自分とともに捕まった他の野良アライちゃんが、死骸を貪っている。

野良アライちゃん3「あ、ありゃいしゃんもたべたいのりゃ…んんー!とれないぃ!」ググググモゾモゾ

だが、粘着シートがそれを阻んだ。

…やがて、軽トラは止まった。

野良アライちゃん3や、他たくさんの野良アライちゃんを乗せた箱は、どこかへ運ばれていく…。

つづく

野良アライちゃん3「うゆぅ…うゆぅうぅっ…おかーしゃんっ…」グスグス

たくさんのアライちゃん達(大部分は死骸)と箱に閉じ込められている野良アライちゃん3は、母親と過ごした日々を思い出していた。

野良アライちゃん3「おがーしゃん…たしゅけてぇ…!おうぢ…がえりだいぃっ…」シクシク

野良アライちゃん3は、母親から無理矢理インターンシップへ向かわされた。

拒否すると物凄い剣幕で怒られ体罰を受けるため、インターンシップに行かざるを得なかった。

しかし。

野良アライちゃん3「おうぢ…がえりだいいぃいっ…!」シクシク

本当は、インターンシップなど行きたくなかった。

本当は、もっともっと大好きな母親に甘えたかった。

毎晩毎晩、強烈なホームシックにかられていた。

許されるならすぐにでも、母親のもとへ戻りたかった。


そう思うのも無理はない。

野良アライちゃん3は、言葉こそ喋れても、赤ちゃんなのである。

母親が恋しくならない赤ちゃんなどいない。

その肉体や、知能は、明らかに。
誰の助けも借りず自立することなど、不可能なほど幼いのである。

膝をついたヨチヨチ歩き(人間でいうとこのハイハイ)は、野良猫から逃げ切れないほど遅く、ネズミを捕まえられないほど遅い。

アライちゃんの肉体は、とにかく…
とにかく貧弱この上ない。
鋭い爪と牙以外、武器などないのである。

野良アライちゃん3「ぐしゅぅっ…うゆぅ、う…」ウトウト

野良アライちゃん3はそのうち眠くなってきた。

アライちゃんは、昼でも夜でも起きて活動できるが、それでも1日10時間ほど眠る必要がある。

野良アライちゃん3は普段、昼寝て夜起きる生活をしていた。

昼は寝る時間なのだ。

野良アライちゃん3「おかー…しゃ…。しゅぴぃー…しゅぴぃー…」zzz

野良アライちゃん3は、すやすやと眠ってしまった。



野良アライちゃん3「うーん…うゆぅ…」モゾモゾ

野良アライちゃん3は目を覚ました。

野良アライちゃん3「のりゃ!?ここどこなのりゃ!?」キョロキョロ

野良アライちゃん3が目覚めたのは、床も壁も天井も真っ白な迷路の中だった。

野良アライちゃん3「おなかすいたのりゃ…」グーギュルルル

そのとき…
遠くから、食べ物のにおいが漂ってきた。

野良アライちゃん3「うゆ!?くんくん…なんかいーにおいしゅゆのりゃあ!くんくん!」ヨチヨチ

野良アライちゃん3「すすむのりゃー!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

https://i.imgur.com/PBhXxdb.gif

野良アライちゃん3は、白い壁の迷路を、においのする方へ向かってひたすら進んだ。

だが…

野良アライちゃん3の前に、文字通り壁が立ち塞がった。

野良アライちゃん3「うゆ!いきどまりなのりゃ!?」ピタッ

これ以上は進めない。

野良アライちゃん3「こっちからいーにおいしゅゆのにぃ!のりゃっ!のりゃっ!」ピョンピョン

野良アライちゃん3は、壁にくっついてピョンピョン跳ねる。

野良アライちゃん3「ここのぼゆのりゃー!…うゆぅ、つゆつゆしゅべゆぅ!」ピョンピョン

野良アライちゃん3は壁を登ろうとしているが、掴まるところがないようだ。

野良アライちゃん3「ほかのとこいくのりゃ」ヨチヨチ

野良アライちゃん3は、においのする方へ向かって迷路をウロウロしているが…

野良アライちゃん3「うゆぅぅ~~~!どっちいったらいーのりゃあーーっ!」ピイイィイ

一向ににおいの元へは辿り着けない。

野良アライちゃん3「ふうぅー!うぅー!」ウロウロヨチヨチ

野良アライちゃん3は、においへ近付こうとして、同じ道を行ったり来たりしている。

野良アライちゃん3「うー!どこからいけゆのりゃあーー!」ピイイイィイ

野良アライちゃん3は、どれだけにおいの元へ近付こうとしても近づけないので、苛立ってきているようだ。

野良アライちゃん3「うゆ!うゆ!」ドカドカ

やがて、壁に体当たりをし始めた。

野良アライちゃん3「うゆうぅ~~っ!こわれろぉーー!こわれろぉーーっ!のーりゃっ!のーりゃっ!」グイグイググググ

野良アライちゃん3は、壁を全力で押しているが、びくともしない。

野良アライちゃん3「うゆぅ…」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん3は壁から距離をとり…

野良アライちゃん3「たあ~!」ヨチヨチヨチヨチ

助走をつけ、全速力でヨチヨチ突進した。

野良アライちゃん3「ぴぃ!」ゴチン

そして壁に思い切り頭突きをした。

野良アライちゃん3「う゛っ…ふみゅうぅうぅ~~ん…うみゅぅ…」ガクッ

そして、頭突きの衝撃で気絶した。

野良アライちゃん3「う…うゆぅ…」ムクッ

やがて目を覚まし体を起こした。

野良アライちゃん3「おなかしゅいたのりゃ…」グーギュルルル…

野良アライちゃん3「おーーーなーーーがーーーしゅいだああーーーーっ!!のどがわいだああーーーっ!」ジタバタジタバタ

野良アライちゃん3「ごはんごはんごはんごはんごはんごはんーーーーっ!おみじゅおみじゅおみじゅおみじゅおみじゅおみじゅぅーーーーっ!!」ピギイイジタバタジタバタ

野良アライちゃん3は独りぼっちでギャーギャーと癇癪を起こした。

野良アライちゃん3「うぅ…」スッ

やがて、尻尾を上げると…

野良アライちゃん3「うぅーっ!」ブリブリ

迷路の真ん中で脱糞した。

野良アライちゃん3「おちっこもしゅゆのりゃ!はぁ~…」チョロロロロ

そして排尿した。

野良アライちゃん3「うぅーくしゃいのりゃあ!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん3は、自分の排泄物から離れた。

野良アライちゃん3「たべものさがすのりゃ…」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん3は、がむしゃらに迷路を進んだ。

10分前に来た道を、再び歩いたりしている。

野良アライちゃん3「うぅ…もうやなのりゃ…!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん3は、迷路を進むのに疲れてきた。

野良アライちゃん3「ここからでたいのりゃ…ごはんたべたいのりゃ…」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん3「どーしゅればいーのりゃーーっ!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん3「うゆ!?なんかあゆのりゃ!」ヨチヨチヨチヨチ

やがて、真っ白い床の上に何かがあるのを見つけた。

野良アライちゃん3「くしゃいのりゃ!だれかのうんちか!?だれかいゆのかー!?」ヨチヨチヨチヨチ

見なくてもニオイで分かった。
あれは大便だ。
ともあれ、近付いてみた。誰か別のアライちゃんがいるのかもしれない。

野良アライちゃん3「くんくん…ふんふん…」クンクン

大便のにおいをかいだ。

野良アライちゃん3「…」




野良アライちゃん3「…これ、ありゃいしゃんのにおいなのりゃああーーーーっ!」


そう。
これは先ほど、野良アライちゃん3が排泄した糞尿であった。

迷路の中をぐるぐるヨチり回った挙げ句、また同じ場所へ戻ってきたのである。

野良アライちゃん3「がんばったのにぃぃいいーーーーーっ!ありゃいしゃんおててもあんよもへとへとになゆまでがんばってあゆいたのにぃーーーっ!」ビエエエエエン

全て振り出しに戻った…。

野良アライちゃん3は、ただただ泣いた。

野良アライちゃん3「の
お゛ぉ゛ぉ゛ぁ゛あ゛あ゛ーーーーあ゛ん゛っ!」ビエエエエエン

野良アライちゃん3「おーーーーなーーーーーーがああああああーーしゅーーーいーーーだあああああああああああああーーーーーーっ!!!!」

野良アライちゃん3「もーーーーやなあああーーーっ!やああーーーーなあああああーーーーーっ!ここやなああああーーーっ!」ビエエエエエン

野良アライちゃん3はひたすら泣きじゃくった。

お腹が鳴る度に、遠くからする食べ物のにおいが鼻腔をそそる。

野良アライちゃん3「たべものおおおおおおおおおっ!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん3は、においが漂ってきた方へ向かってひたすら進もうとするが…

野良アライちゃん3「ぜぇ…ひぃ…ちゅかれたあああっ…」グッタリ

この迷路で目を覚ましてから3時間が経過していた。

精神力も、体力も、とっくにボロボロだ。

https://i.imgur.com/67K6SqG.png

野良アライちゃん3は、ただただ泣いた。

その姿はまさに幼子そのもの。

母親に助けをねだる赤ちゃんそのものであった。

この大きさのアライちゃん本来の…
年相応の…
ありのままの姿であった。

続きはあとで

野良アライちゃん3「う…ぐ、ぎゅ…ふむぎゅぅっ…」ヨチヨチ

野良アライちゃん3は、進もうとするが…

野良アライちゃん3「もうつかれたのりゃあ…」グデー

…そのまま止まってしまった。

乳離れこそしていても、所詮は赤ちゃん。
3時間もヨチヨチ這い回っては体力も尽きる。

そもそもアライちゃんは、その不自然で異常な大きさの頭のせいで、ヨチヨチすること自体がなかなか大変なのである。

加えて、ずっと飲まず食わずだ。

野良アライちゃん3「お…み…じゅう…」ゼェハァ

這い回る元気すら、もう無さそうだ。

野良アライちゃん3「ふぅー…ふぅー…」ウルウル

野良アライちゃん3は、ここに来るまでのことを思い出した。

アライホイホイにくっつき、姉妹に見捨てられ…

人間によって箱へ閉じ込められた。

そして目が覚めたら、ここにいた。

野良アライちゃん3「…うゆ…べとべとがもうないのりゃ…!」パチクリ

迷路を3時間もウロチョロして、ようやく粘着シートの罠から脱出していることに気付いたようだ。

野良アライちゃん3「おねーしゃん、いもーと…!ありゃいしゃんはここなのりゃあ、だしつできたのりゃあ!」ピーピー

野良アライちゃん3「おねーしゃ…!いもーと…!たしゅけてぇ…!」グスグス

野良アライちゃん3「おなか…しゅい…た…!のどかわいた…!」

野良アライちゃん3「お…み…じゅ…」ヨチヨチ

野良アライちゃん3は、先ほど排泄した糞尿へ近付いた。

野良アライちゃん3「ぺちゃぺちゃ…」ペチャペチャ

そして、凄く嫌そうな顔をして自分の尿を舐めた。

野良アライちゃん3「まじゅい…まじゅいぃ…!」ウルウル ペチャペチャ

あまりの不味さに泣きそうになる野良アライちゃん3。

だが、これ以外に水分補給できるものはない。

野良アライちゃん3「う、ゆぅ…」ヨチヨチ ゴロン

野良アライちゃん3は、排泄物から少し 遠ざかって…

野良アライちゃん3「しゅぴぃー…しゅぴぃー…」zzz

…すやすやと眠り始めた。

それから1時間、野良アライちゃん3は昼寝をした。

野良アライちゃん3「う…ゆ…」ムクリ

そして目を覚まし、体を起こすと…

野良アライちゃん3「お…み…じゅ…」フラフラ ヨチヨチ

迷路の中を再びさまよいヨチった。

野良アライちゃん3「…」フラフラ ヨチヨチ

まるで亡霊のように静かに黙りながら、ひたすら右手側へ進んでいる。

野良アライちゃん3「…」ヨチヨチ

野良アライちゃん3は、もう何も考えていなさそうだ。

どちらに餌がありそうか、どうすれば脱出できるかなど考えていなさそうである。

ただひたすら、この道を進む。

それしか考えていないといった様子である。

野良アライちゃん3「…」ピタッ

野良アライちゃん3は、なにかを見つけた。

水ボトル「」ゴロン

それは、水が入ったペットボトルであった。

野良アライちゃん3「ふぅーーーっ!うぅーーーっ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん3は、ペットボトルへ襲いかかった。

野良アライちゃん3「はぐがぶぅ!ふぅううーっ!きゅるるるるぅうっ!はぐぅ!」ガブガブバリバリ

野良アライちゃん3は、ペットボトルに噛みついたり、引っ掻いたりしている。

野良アライちゃん3「のりゃっ!のりゃっ!」ベチベチ

ペットボトルに体当たりをしている。

だが、ペットボトルは壊れなかった。

野良アライちゃん3「ふぐぎゅるるるるぅ!ふぎゅうぅう!ふしゃあああっ!」ガジガジ

どんなに噛んでも、ペットボトルに穴は空かない。

野良アライちゃん3「うぅーーっ!ふぎゃうぅーーっ!ぶぎゃるるるうぅうっ!」バシバシ

何度ひっぱたいても、ペットボトルは壊れない。

野良アライちゃん3「うぅ!がう!ぎゃうぅっ!ばうぅっ!」ガァンガァンガァン

野良アライちゃん3は、ペットボトルへ頭突きを繰り返した。

野良アライちゃん3「ぜぇ…はぁ…」ゼェハァ

息が上がり、疲れてきたようだ。

野良アライちゃん3「う…ぅううぅっ…」ポロポロ

野良アライちゃん3は涙を流した。

野良アライちゃん3「うぅうぅっ…ぺろぺろ…」ペチャペチャ

野良アライちゃん3は、水入りのボトルを舐めた。

無論、そんなことをしても喉が潤うはずがない。

野良アライちゃん3「ふぎゃう…きゅるるるぅ…」ヘナヘナ ペタリ

とうとう野良アライちゃん3は、その場にうつぶせに突っ伏してしまった。

野良アライちゃん3「…ぴいぃい…ぴぃいいいいっ…!」チュパチュパ

野良アライちゃん3は、ペットボトルの蓋を、哺乳瓶のようにしゃぶっている。

哺乳瓶と違って、水は出てこないが…。

野良アライちゃん3「おかあしゃ…おか、しゃ…」ペチャペチャ

野良アライちゃん3は、ひたすらボトルをしゃぶっている。

野良アライちゃん3「んぱっ…きゅるるるるぅ…きゅるるるぅ…」

とうとう、ボトルをしゃぶるのを止めた。

野良アライちゃん3「…」

野良アライちゃん3は、うつらうつらと目を閉じ始めている。

野良アライちゃん3「…」グッタリ

野良アライちゃん3は、動かなくなった。



研究員1「…」ガパッ

研究員1が、迷路の天井(蓋)を外した。

迷路の壁の高さは1メートル程、床から天井までは1.4メートルである。

研究員1「…」ガシィ

野良アライちゃん3「…」ブラーン

研究員1が、野良アライちゃん3の首のファーを握って、迷路から出した。

研究員1「実験終了」ピッ

研究員1はなにかのタイマーを止めた。

研究員2「ケージ持ってきました」ガラガラ

研究員2は、一般的なペットアライちゃん用ケージを台車に乗せて持ってきた。

ケージの中にはプールや、生きたコオロギ(活き餌)、クルミの実やイガ栗などが入っている。

研究員1「よいしょ」ポイッ

野良アライちゃん3「…」バシャッ

野良アライちゃん3は、ケージの中の小さなビニールプールに投入された。

野良アライちゃん3「…!」ブクブクブクブク

しばらくビニールプールの中で動かずにいたが…

野良アライちゃん3「ぷはぁっ!きゅるるるるぅ!ぴきゅるるるるるぅぅっ!」バシャバシャ

目を覚ましたのか、ばしゃばしゃと暴れだした。

野良アライちゃん3「ぜは、がはっ!ぺちゃぺちゃぺちゃぺちゃ!」ゴクゴクゴクゴク

そして、ビニールプールの水を凄い勢いで飲み始めた。

野良アライちゃん3「ぜぇ、はぁっ!んごぐっ!ごぐごぐごぐごぐっ!」ゴクゴクゴクゴクゴクゴク

ビニールプールの水かさはどんどん減っていく。

研究員1は、すぐにケージの蓋を閉め、白い布で覆った。

野良アライちゃん3「ぷっはああああ!!」ゼェハァ

野良アライちゃん3「うぅ~~!ごはん!ふぅううーーっ!」キョロキョロ

野良アライちゃん3は、ケージの外の研究員に気付いていないのだろうか…

ケージの中で食べ物を探し始めた。

コオロギ達「「…」」ピョンピョン

野良アライちゃん3「こーよぎ!こーよぎなのりゃあ!たあ~!」ヨチヨチヨチヨチ

さすがにのろまな野良アライちゃん3でも、虫ぐらいなら捕まえることができる。

野良アライちゃん3「はぐはぐ!あぐっあぐっ!ぐっちゃぐっちゃっ!」グチャグチャ

そして、捕まえたコオロギを物凄い勢いで食い始めた。

野良アライちゃん3「はぐはぐはぐっ!うゆぅ!のりゃ!のりゃっ!あむっ!」パクムシャパクムシャ

野良アライちゃん3は、獲物を食べることしか考えていないようだ。

だが、コオロギはすぐに無くなった。

野良アライちゃん3「うぅーー!ふぅーーーっ!」ヨチヨチヨチヨチ

次は、イガ栗や、クルミの方へ向かったが…

野良アライちゃん3「ぴぃ!?」チクッ

栗の針のせいで、栗を食うことはできず。

野良アライちゃん3「あぐあぐあぐ!」カリカリ

硬いクルミの殻を噛み砕くこともできなかった。

野良アライちゃん3「ふぅーーーっ!ふぅーーーっ!きゅるるるぅうーーっ!」ヨチヨチヨチヨチ

そして、ケージの中を這い回った。

野良アライちゃん3「ぜぇ、はぁ…」グーギュルルル

野良アライちゃん3は、ひとしきり暴れた後…

野良アライちゃん3「…」グッタリ

暴れ疲れたのだろうか、そのまま横になった。

野良アライちゃん3「…うゆぅ…むにゃむにゃ…。しゅぴぃー…しゅぴぃー…」スヤスヤ

そして、そのまま眠ってしまった。

研究員1「…今回のアライちゃんも、迷路を効率的に探索することはできなかったな」

研究員2「ああ。しばらく前に来た道を、後で同じように辿ったりしている。どうやら、アライちゃんはこういう道を覚えるのは苦手なようだ」

研究員1「それに、ほとんど食べ物のにおいのする方向へ一直線に進んでいた。本当は、一旦遠ざかる遠回りの道が正解なんだけどな…」

研究員1「その『一旦遠ざかる』というのが、野良アライちゃんにはできなかったようだ」

研究員2「…少しずつ、データが集まってきたな」

研究員1「ああ。迷路の中の糞尿を除去したら、この野良アライちゃんは別の研究室へ売ろう…」ガラガラ

研究員達は、迷路を清掃し始めた。

やがて、研究室の入り口に、作業着の女性が来た。
荷台を持っている。

作業着の女性「ちわーす。アライちゃん引き取りにきました」

研究員1「お、アライ飼育室の方か。はい、検体はこのケージの中です」ガシャ

研究員1は、女性が持っている荷台へ、白い布で覆ったケージを乗せた。

作業着の女性「はい、ではお預かりします。研究室の口座には1200円を振り込んでおきますね」ガラガラ

作業着の女性は、野良アライちゃん3が入ったケージを運び、廊下を進んでいった…。

研究員1「いまだに実験用の野良アライちゃんは不足してるな…」

研究員2「ああ。大学のアライ飼育室から買値は1500円だが、生かしたまま売れば1200円で売れる」

研究員2「アライちゃんを殺さずにできる実験なら、実質300円でできるわけだな」

東(あずま)大学…。

アライさんの生態や肉体に関する研究室がたくさん存在している。

アライ回収業も、この大学から出たベンチャー企業である。

研究員2「しかし、アライ回収業始めたはいいものの…まともに実験に使える野良アライちゃんは集まりが悪いようだな」

研究員1「無理もないですよ。生きたアライちゃんでも、たかが100円程度しか買い取らないですし。利用者が少ないんです、このサービス」

研究員2「やっぱりか…。実際はもっとたくさん、住人達は野良アライちゃんを捕まえているんだろうけど。自分で殺して燃えるゴミに出したり、あるいは追っ払うだけで済ます人も多いようです」

研究員1「もっと効率的に野良アライちゃんを集めたいところだな…」

研究室教授「どうだ、論文は書けそうか?」

研究員1「あ、はい!『アライちゃんの迷路探索実験による知能水準の考察』書けそうです!」

研究室教授「どれどれ、これがレポートか…」パラリ

-概要-

アライちゃんは、幼獣としては異常に高い知能をもつ。

その高いサバイバル能力や学習能力で、罠や動植物について学習していく。

しかしながら、アライちゃんは幼獣、つまり脳は発育途上にある。

一般の動物の成体を超えるほどの知能を持っているかは不明である。

そこで今回の実験では、迷路探索実験を行い、成体ドブネズミとアライちゃんの対照実験を行った。

その結果、アライちゃんの迷路探索能力は、成体ドブネズミより大きく劣ることが確認された。

このことから、発育途中のアライちゃんの知能は、サバイバルに最低限必要な能力のみが優先して発達しており、それ以外は遅い段階で発達していくものと推察される。

研究室教授「…よろしい。次の学会は大丈夫そうだな」パラッ

論文を読み終えた研究室教授は、まあまあ満足といった表情をしている。

研究員1&2「「ありがとうございます!」」ペコリ

~アライ飼育室~

野良アライちゃん3「うぅー…せまいのりゃ…」

野良アライちゃん3は、ケージの中に閉じ込められている。

野良アライちゃん3「はやくここからでたいのりゃ…でも、ごはんはもらえゆし…」ゴロン

野良アライちゃん3「うぅ…」

野良アライちゃん3は退屈そうにしている。

奇妙な運命であった。

アライホイホイに引っ掛かり、姉妹が罠を学習するための『残機』となって消耗され、消えるはずだった野良アライちゃん3。

そんな野良アライちゃん3が、人に保護され、実験動物として生き長らえているのである。

野良アライちゃん3「おねーしゃんたちは…どうしてゆんだろ…またあそびたいのりゃあ…」ゴロン

そういえば、野良アライちゃん3を見捨てて生き延びた姉妹アライちゃん2&4は、今頃どこで何をしているのであろうか?





https://i.imgur.com/6xkx5kN.png



…こうなっていた。

続く

~アルパカ牧場~

アルパカ「メェ~」モシャモシャ

ここはアルパカ牧場。

毛がもさもさ生えたアルパカが、牧草を食べていた。

そこへ…

野良アライちゃん「のりゃ!のりゃっ!≧∀≦」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃんが近寄ってきた。

アルパカ「?」

野良アライちゃん「あゆぱか~!あゆぱかしゃんなのりゃ~!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃんは、アルパカの足元へ這いよってきた。
何をするつもりなのであろうか?

野良アライちゃん「のりゃ!のりゃっ!」ヨジヨジヨジヨジ

アルパカ「…」

野良アライちゃんは、アルパカの前足をよじ登った。

そして…

野良アライちゃん「ふわっふわなのりゃ~!」モフッ

毛刈り前のアルパカの、もふもふの毛にダイブした。

野良アライちゃん「ふははははー!あゆぱかしゃんのふわっふわおけけ、もっふもふできもちい~のりゃあ~!≧∀≦」モフモフモフモフ

野良アライちゃんは、アルパカの毛をモフっている。

野良アライちゃん「あゆぱかしゃ~ん♪しゅきしゅきなのりゃ~♪もっふもふ♪もっふもふ♪」モフモフモフモフ

野良アライちゃん「ふっわふっわもっふもっふあっゆぱっかしゃん♪しゅっきしゅっきだいしゅきあっゆぱっかしゃん♪か~いいか~いいあっゆぱっかしゃん♪」モフモフモフモフスリスリスリスリ

野良アライちゃん「なのりゃー!≧∀≦」モフモフモフモフ

野良アライちゃんは、アルパカを思う存分モフっている。

野良アライちゃん「あゆぱかしゃんのおけけ、ありゃいしゃんにちょーだいなのりゃあ!おうちでもふもふしたいのりゃ~!≧∀≦」ガシィ

野良アライちゃんは、アルパカの毛を掴んだ。

越冬のために巣材にしたがっているのだろうか。

野良アライちゃん「わっちぇ!わっちぇ!」グイグイ

そして、アルパカの毛を引っ張った。

アルパカ「…」イラッ

アルパカ「メェ!」ブルブルッ

アルパカは怒ったのか、体を震わせた。

野良アライちゃん「うゆ!?…ぴぃ!」ボテッ

野良アライちゃんは、牧草の上に振り落とされた。

野良アライちゃん「うゆぅ…いちゃいのりゃあ!」スリスリ

牧草の上で仰向けにじたばたしているの野良アライちゃん。

アルパカ「ペッ!」ビチャ

野良アライちゃん「ぴぎぃ!?」ベチャァ

その顔面に、アルパカは唾を吐きかけた。

野良アライちゃん「ぴ…ぴっ…」ウルウル

アルパカの唾はものすごく臭い。

唾というより、大部分は胃液である。

それを全身に浴びた野良アライちゃんは…

野良アライちゃん「…びええええええええーーーーんっ!!くちゃいぃーーっ!くちゃいのりゃああーーーっ!」ビエエエエエン

あまりの臭さに泣いた。

野良アライちゃん「う゛ゆ゛ぅ!くしゃいいぃ!とれないぃい!」ゴロゴロ

野良アライちゃんは、牧草の上で転がって、体にべっとりついた唾をとろうとしているが…

野良アライちゃん「のぁああーーーーんっ!のおおぉーーーぁあああーーーんっ!」ビエエエエエン

粘液は簡単にはとれないようだ。

アルパカ「ペッ!」ビチャ

野良アライちゃん「ぴぎいぃい!」ベチャァ

とどめの追い唾。
2発もの唾を浴びた野良アライちゃんは、もうベットベトだ。

野良アライちゃん「くちゃいのやなああああーーっ!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん「かえゆぅーーーっ!おうぢがえゆぅーーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん「のぉおおーーぁああああーーんっ!のぁああーーーんっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃんは、柵の外へ逃げていき、牧場から離れていった。

よほど臭かったのだろう。
その泣き声は、しばらくの間遠くから聞こえ続けた。

~翌日、アルパカ牧場~

野良アライちゃん「のりゃっ!のりゃっ!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃんは、懲りずにアルパカ牧場へ向かっていた。

野良アライちゃん「うゆぅ…。あゆぱかしゃんは、おけけをもらおーとちからおこったのりゃ…はんせーしたのりゃ…」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん「だからきょーはもふもふだけしゅゆのりゃ~♪≧∀≦」ヨチヨチヨチヨチ

やがて、野良アライちゃんは、アルパカの姿を見つけた。

野良アライちゃん「あ、あゆぱかしゃんなのりゃー!≧∀≦」ヨチヨチヨチヨチ

アルパカに近寄ると…

https://i.imgur.com/FWzhiJV.jpg

野良アライちゃん「う゛ゆ゛ぅ!?」ビクゥ

なんと、昨日のアルパカの毛が刈り取られているではないか。

野良アライちゃん「な、なんでなのりゃ!?」キョロキョロ

他のアルパカ達を見ても…

https://i.imgur.com/mrNz3K9.jpg

アルパカ達「…」モシャモシャ

野良アライちゃん「…う…うゆぅう~~っ!おけけがないのりゃあーーーっ!」


昨日アライちゃんがモフった以外のアルパカ達は、初夏に毛を刈り取ったばかりであり、秋初めである今の時期はまだ毛が生えていない。

昨日アライちゃんがモフったアルパカは、諸事情で一昨日まで他所へ行っており、まだ毛を刈り取っていなかった。

そして今日、アライちゃんが来る前に毛を刈り取ったのであった。

野良アライちゃん「これじゃもふもふできないのりゃあ~~っ!のぉーーぁあああーーんっ!のぉぁああーーーんっ!。≧Д≦。」ビエエエエエン

アルパカ「…」イラッ

野良アライちゃん「ぴぃ!?もーくしゃいのぺっぺちないでえ~っ!。≧Д≦。」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃんは、泣く泣く巣へと戻っていった…。

続く



~森の中の湖~

湖の岸で、三匹のアライちゃんが手をバシャバシャしている。

大アライちゃん1「ふははー!」バシャバシャ

大アライちゃん2「おしゃかなさんとゆのだぁ~!たあ~!」バシャバシャ

小魚「」ピチピチ

大アライちゃん3「やったのだ~!ざにがにとれたのだぁ!」バシャア

ザリガニ1「」ワキワキ

大アライちゃん1「あらいしゃんもざにがにとれたのだ~!」バシャア

ザリガニ2「」ワキワキ

大アライちゃん2「ふはは~!それじゃー、しまいなかよくごはんたべゆのだぁ!≧∀≦」シッポフリフリ

大アライちゃん1~3「「「いただきますなのだ~!はぐがぶぅ!」」」ガブゥ

アライちゃん達は、湖から獲った魚やザリガニを一斉に食べる。

大アライちゃん1「あむあむあむあむあむあむあむあむ!!(≧'u(≦ )」クッチャクッチャ

大アライちゃん2「おいちーのだぁ!おしゃかなしゃんおいちーだ~!」クッチャクッチャ

大アライちゃん3「くっちゃくっちゃくっちゃくっちゃ!あぐあぐあぐ!(≧'u(≦ )」クッチャクッチャ

大アライちゃん1~3「「「おいち~のだぁ!≧∀≦」」」シッポフリフリ

このアライちゃん達は、体長が30センチ程ある。

もうすぐ二本足で立てるようになり、アライしゃんへ成長するだろう。

大アライちゃん1「げぇぷ!うぅ~!まだまだおなかへゆのだぁ!」

大アライちゃん2「もっともっとたくしゃんとゆのだぁ!」バシャバシャ

大アライちゃん3「いーっぱいごはんたべておーきくなゆのだぁ!」バシャバシャ

アライちゃん達は、再び湖から餌を探し始めた。

アライちゃん達はこの時期から、急速に食欲が増していき、一日中食べ物を探し続けるようになる。

アライさんという生き物(?)の成長速度は異常だ。

産まれてから半年かかって体長30センチ程へ成長し…

そこから1年半かかって、体長130~140センチまで一気に成長するのである。

それだけ異常なスピードで成長するのだから、体をつくるための栄養もたくさん必要になる。

大アライちゃん1「あむあむあむあむあむっ!」クッチャクッチャ

そのため、胃がパンパンになるまで餌を詰め込み、胃が空いたら再び餌を詰め込むというヘビーローテーションの食事を繰り返すのである。

大アライちゃん2「はぐはぐはぐはぐはぐはぐはぐはぐ!」クッチャクッチャ

大アライちゃん1「げぇ~ぷ!おなかい~っぱいになったのだぁ~!」オナカパンパン

大アライちゃん2「まちなかにいたころには、こんなにいっぱいおいちーものたべれなかったのだぁ!」オナカパンパン

大アライちゃん3「もりにきてせーかいだったのだ♪もうひとざとはこりごりなのだ!しまいなかよく、ここでずっとくらしてうーんとおーきくなゆのだぁ!」オナカパンパン

大アライちゃん1~3「「「なのだ~!」」」オナカパンパン

アライちゃん達は、とても幸せそうだ。

大アライちゃん1「うぅ~、いっぱいたべたらうんちしたくなってきたのだ」シッポフリフリ

大アライちゃん2「はいせつすゆのだ!」シッポフリフリ

大アライちゃん3「うぅーっ!」ブリブリ

大アライちゃん1~3「「「うぅ~っ!」」」ブリブリブリブリ

大便「」モワァン

アライちゃん達はその場で排泄した。

アライさんは多くの四足歩行動物たちと同じく、排便時に肛門から腸の一部が裏返って外へ出る。

そのため排便後に尻を拭かなくても、肛門が汚れない体の仕組みになっているのである。

大アライちゃん1「すっごいいっぱいでたのだぁ~!≧∀≦」シッポフリフリ

大アライちゃん2「うげーくっさいのだぁ~!あはは、ざにがにのからまじってゆのだ!≧∀≦」ゲラゲラ

大アライちゃん3「おえ~すんげ~くっさいにおいなのだ!こんだけくさいためふんなら、あらいしゃんたちのつよさをあぴーゆできゆのだぁ!≧∀≦」シッポフリフリ

大アライちゃん1「ふぅ…」ノンビリ

大アライちゃん2「ひとざとにいたころは、こんなにのんびりできなかったのだ…」ノンビリ

大アライちゃん3「そうなのだ。ねこにいちばんしたのいもーとたべられたり…わゆいひとしゃんにいじめられたり…」

大アライちゃん1「いっつもおなかぺこぺこで、たべゆののもなくって…しんどかったのだ…」

大アライちゃん2「あんなとこでくらせなんてゆーおかーしゃんはがいじなのだ!ひとざとなんかでくらせゆわけないのだ!なにがいんたーちっぴなのだ!」

大アライちゃん3「もりにきてからは、たべものいーっぱいで、ひとしゃんもいないのだ!とってもくらしやすいのだ!」シッポフリフリ

大アライちゃん1~3「「「しあわせなのだ~…」」」 ウットリ

アライちゃん達は、湖の獲物を食べまくってパンパンに膨らんだお腹を上にして、ごろんと寝転んでいる。

アライちゃん達は、まだ体も知能も未発達なうちに、母親によって強制的に人里へ連れてこられる。

だが、別に四六時中監視されているわけではない。

自分たちの力では、もう人里で暮らしてはいけないと見切りをつけたら…

人のいない森の中へ逃げ隠れ、そこで自然の恵みを食べて生きること、それ自体は可能なのである。

その選択をするのも無理もない。
母親の言い付けなんかよりも、自分の命の方が大事だと考えるのは。

インターンシップを生き抜けるアライちゃんは20~10%といわれている。

それも、運に恵まれるだけではなく、先天的に知能が高い天才児ぐらいしか生き残れない。

天才じゃない凡才のアライちゃん達は、こうして森へ逃げ延びることがある。

いわゆる『インターンシップの落第』という行為だ。

もしも、すべての凡才アライちゃんが、こうして人里から森へ際限なく逃げ隠れたら…

アライちゃんの生存率は大きく向上し、瞬く間にアライさんの個体数は増加し…自然を破壊していくことだろう。

大アライちゃん1~3「「「のりゃあ…のりゃあ…」」」zzz

大アライちゃん達は、ごろんと仰向けに転がって昼寝を始めた。

人里へいたころは、睡眠をとることさえ一苦労。

睡眠中に猫や駆除業者に捕まって殺されるのではないかと、怯えながら寝ていた。

しかし、森の中にそんな脅威は(このアライちゃん達の知る限りは)いない。

このように無防備に、リラックスして寝ていても、野良猫や駆除業者に殺されることなどない。

続きは後で

大アライちゃん1~3「「「のりゃあ…のりゃあ…―∀―」」」スピースピー

???「ふん!」ドガァ

大アライちゃん3「びぎいぃいいーーーーーっ!?」

突然、大アライちゃん3は何者かに棒状の物体で頭を殴られた。

大アライちゃん1「≦∀≧」!?

大アライちゃん2「≦∀≧」!?

大アライちゃん3「びぎいいぃいいーーーーっ!!いぢゃいぃいいーーーっ!いっぢゃあいのだあああーーーーっ!」シッポブンブン

https://i.imgur.com/k0tcBfY.jpg

大アライちゃん1「だ、だれなのりゃあ!」フゥーッ

大アライちゃん1は、末女を叩いた者の方を見た。

そこにいたのは…

野良アライさん「どこのどいつか知らないが、なんでここにいるのだ、チビ共!インターンシップで人里にいないとダメなのだ!」

そこにいたのは、なんと成体のアライさんであった。

その口ぶりからすると、大アライちゃん1~3との血縁関係はないようだ。

野良アライさん「落第した出来損ないが!アライさんの餌場を荒らすななのだぁーっ!」ブンッ

野良アライさんは、大きな動物の骨を振りかざし、大アライちゃん3の頭を再び強打した。

大アライちゃん3「ふぎゅ!」ベヂゴォッ

大アライちゃん2「いもーとぉっ!」

大アライちゃん3「」ビグッビググッジタバタジタバタタッビググンビビグン

大アライちゃん3は、頭から血を流しゴキガイジムーブしている。

大アライちゃん2「な…な…!」ブルブル

大アライちゃん2「おまえええーーーっ!なんであらいしゃんのだいじなだいじな!なかよしいもーとぶっこよちたのだあああっ!!」フゥーーッ

大アライちゃん1「いもーとはたいせちゅなかぞくだったのだああーーーっ!」フゥーーッ

野良アライさん「なんだお前…自分のお母さんから教わってないのか?インターンシップのルールを…」

大アライちゃん2&3「「…う、ぅっ…」」ブルブル

知っていた。
聞いていた。
母親に教わっていた。

インターンシップを落第して、森へ逃げたアライちゃん達は…

野良アライさん「出来損ないだから!処刑するのだあーーっ!」ダッ

野良アライさんは、大きな骨を持って大アライちゃん1&2へ襲いかかった。

大アライちゃん1&2「「ぴいいいぃいいーーーーーっ!にげゆのだあああーーーーーーっ!」」ヨチヨチヨチヨチ

大アライちゃん達は必死で逃げる。

野良アライさん「遅いのだぁーーっ!」ザザザザザザザ

大アライちゃん1&2「「ぴいいいぃいいーーーーーっ!?こないでえぇーーーーっ!!」」ヨチヨチヨチヨチ

だが、両者のスピードには差がありすぎた。

通常の野良アライさんが全速力で走るスピードは、奇妙な表現をするが…

『成体アライグマの全速力より速い』。

膝をついてヨチヨチするアライちゃん達との距離は、どんどん縮まっていく。

大アライちゃん1「ひぃ、ひいぃ!こっちににげゆのだ!」ヨチヨチヨチヨチ

大アライちゃん達は、草の生い茂る急な坂道を上ろうとしている。

だが…

大アライちゃん1&2「「わっちぇ!わっちぇ!」」ヨジ…ヨジ…

坂道を上る大アライちゃん達のスピードは、平地より明らかに遅い。

後ろ足をひっきり無しに動かしているが、膝と脛は草でつるつる滑っている。

大アライちゃん1「ぴいぃ!なんでなのだぁ!ちっちゃいころはもっとすいすいのぼれたのにぃー!」ヨジヨジ

大アライちゃん2「うぅーー!」ヨジヨジ

アライちゃんは、膝と脛をついてヨチヨチ四足歩行で移動する。

この状態で、滑りやすい草の生い茂る坂道を上ろうとするとどうなるか?

そう。

膝と脛は接地面積が大きいため、草の上でズルズル滑る。

そのため、坂道でヨチヨチすると、坂の下へズルズルとずり落ちていくのである。

幸い、体重の軽い小さなアライちゃんのうちは、坂道でも問題なくヨチヨチできる。

だが、アライしゃんに近い大きさまで育った大アライちゃん達は、ロッククライマーのように苦戦している。

大アライちゃん1&2「「わっちぇ!わっちぇ!」」ヨジヨジ

それでも、スイスイ木登りできる身体能力をもつ大アライちゃん達は、腕力を駆使して強引に坂道を上っていく。

まるでボルダリングか、ロッククライミングのように。

野良アライさん「遅いのだ!」スタスタ

大アライちゃん1&2「「ぴいいぃい!?」」ビクゥ

だが、二足歩行のアライさんは、難なく大アライちゃんに追い付いた。

というより…

アライさんは、この大きさのアライちゃんが坂道を上りづらいことを知っており、わざと斜面へ追い込んだようだ。

野良アライさん「ふん!」ボゴォ

大アライちゃん2「びぎぃっ!」グシャ

野良アライさんは、骨棍棒で大アライちゃん2の後頭部を全力で殴打した。

大アライちゃん2「びっぎぃいいい~…!」ゴロンゴロンゴロゴロゴロゴロ…

大アライちゃん2は、坂道をごろごろ転がり落ちていく。

野良アライさん「お前で最後なのだ…!」

大アライちゃん1「ひぃ…!た、たしゅけて…!」ブルブル

野良アライさん「ズルした奴は許さないのだ!お前みたいなオツムの足りない出来損ないが森でウジャウジャ殖えると、アライさんの食べ物が無くなるのだ…!」ザッザッ

大アライちゃん1「も…もっ…」ブルブル

野良アライさん「きちんとインターンシップを生き残った奴となら、ご近所付き合いしてやるが…お前みたいな甘ったれのガイジは駆除してやるのだ!」スッ

野良アライさんは、骨棍棒を掲げた。



大アライちゃん「もどゆぅーーーーっ!!いんたーちっぷもどゆからあーーーーっ!こよちゃないでなのだあーーーっ!!」



野良アライさん「…戻る?」ピタッ

たとえ今この状況で、インターンシップに戻るなどと発言したところで、
野良アライさんに大アライちゃん1を見逃す義務などない。

続きは後で

野良アライさん「…面白いこと言う奴なのだ」

大アライちゃん1「うっ…うゆぅっ…ぐしゅっ…りっぱに、いきゆから、こよさないでぇっ…」シクシク

野良アライさん「だったらお前、今転がっていった妹を、首を絞めて殺してみるのだ!」スッ

大アライちゃん1「うゆぅ!?」ビクゥ

野良アライさんは、坂の下でジタバタしている大アライちゃん2を指差した。

大アライちゃん2「ぴぃ…ぎぃ…!いっぢゃあああああいいいいぃっ!いぢゃあああああーーいいいいいいいっ!」ジタバタジタバタタ

大アライちゃん1「や…やなのだ…いもーとは、なかよしなのだ…いっしょじゃないと、いきてけないのだ…」ブルブル

大アライちゃん1の言うことは過言ではない。

これまでこの姉妹は、協力し合うことで何度も窮地を脱してきた。

一匹では死んでいたような場面でも、姉妹で助け合うことで生き延びてこれたのである。

そのかけがえのない姉妹を失い、一人でインターンシップに戻ることが、どれだけ無謀なことか…。

大アライちゃん1「だいじないもーと…こよちたくないのだぁ…!」シクシク

野良アライさん「従わないならいいのだ。ここで仲良く死ねばいいのだ!」スッ

野良アライさんは、再び骨棍棒を掲げる。


大アライちゃん1「わかったのだあああ!いもーとぶっこよちゅからゆるぢでえええっ!」シッポブンブン

野良アライさん「物分かりのいい奴なのだ」ピタッ

野良アライさんは、骨棍棒を大アライちゃん1の頭へ寸止めした。

野良アライさん「ほれ、ならとっとと仕留めてくるのだ!」ゲシィ

大アライちゃん1「ぴぎぃ!」ゴロンゴロン

野良アライさんに蹴られた大アライちゃん1は、坂道をごろごろ転がっていく。

大アライちゃん1「い、いもーと…」

大アライちゃん2「い…ぢゃい…いぢゃああいいぃ…!」ブルブル

大アライちゃん2は重篤なようだ。

大アライちゃん1「…う…」プルプルウルウル

野良アライさん「さっさとするのだ。アライさんがそっちに行くまでにやらなきゃ処刑なのだ」ザッザッ

大アライちゃん2「たしゅけ…て…おね、しゃ…」プルプル

大アライちゃん1「う…う…」



大アライちゃん1「ふしゃああああっ!」ガブゥ

大アライちゃん2「ふぎゅっ…!?」

大アライちゃん1は、妹の喉元に噛みついた。

大アライちゃん1「ふぎゅううううっ!うぎゅうう~~っ!」フゥフゥグググ

大アライちゃん2「おご…げ…!おね、しゃ…やべ…!」ジタバタ

大アライちゃん1「うぅ~っ!ふぐっ、うぅ~っ!」シクシクグググ

大アライちゃん1は、泣きながら妹の喉に噛みついていた。

まだ右も左も分からぬ幼い頃に、一緒に人里へ放り込まれて…

何度も何度も寝食を共にした、かけがえのない姉妹。

毎晩毎晩、母親に会いたい、森に戻りたいというホームシックにかられ、その度に励まし合ってきた姉妹。

時には、少ない食糧を誰が食べるか等で、喧嘩になったこともたくさんある。

何度も喧嘩して、仲直りして、何度も助け合って…
また喧嘩して、また仲直りして…。

そうして今まで生きてきた。

そうやって苦難を乗り越えてきた、かけがえのない姉妹に対して…

愛しさを感じない動物など、いるものであろうか。

大アライちゃん1「ふぅーっ!ふぐぐーーっ!」グググ

大アライちゃん2「ひ…ぎゅ…」ブクブク

大アライちゃん1は、涙と鼻水を流しながら、愛する妹の首を噛んで絞める。

妹の抵抗が次第に次第に弱くなっていくのを感じ、その命が自分のせいで失われつつあるのを感じている。

野良アライさん「どれ、こいつのとどめを刺しておく、かっ!」ブンッ

大アライちゃん3「」ドグシャ

野良アライさん「ふんっ!ふんっ!」ブンッ ブンッ

大アライちゃん3「」グシャッ ドグシャ

野良アライさんは、最初に殴り倒した大アライちゃん3にきっちりとどめを刺した。

大アライちゃん1「ううぅ、ぅううう!」グググ

大アライちゃん2「あ…ぎゅ…」ガクゥ

大アライちゃん2「」

大アライちゃん2はグッタリした。

大アライちゃん1「はぁ、はぁっ…」パッ

大アライちゃん1は、妹は喉から口を離した。

大アライちゃん2「…ぴいぃいいいぃいぃぃぃいい~~~~~っ!」ムクゥ ヨチヨチヨチヨチ

なんと大アライちゃん2は、起き上がって逃げ出した。

大アライちゃん1「…!」ハァハァ

大アライちゃん1は、妹が死んでいなかったことをホッとするが、しかしそれでは自分が野良アライさんに殺されてしまうことにも気づいた。

大アライちゃん2「ぴぃ!ぴぃ!ぴいぃいいいぃいぃぃぃいい~~~~~っ!!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

大アライちゃん2は首を絞められ続けたせいで意識が朦朧としているのか、体をガクガク揺らしながら、へとへとと逃げる。

大アライちゃん1「い…いもー…と…!うぅ~っ!」ヨチヨチヨチヨチ

大アライちゃん1は、愛する妹にとどめを刺すために追いかける。

大アライちゃん2「ぴぃ!ふみゅ!ふみゅぅううんっ!ふきゅぴきぃい~~~っ!」ヨチヨチガクガクヨチヨチガクガク

妹と姉の距離はすぐに縮まっていく。

大アライちゃん1「たあ~!」バッ

大アライちゃん2「ふぎゅ!」ビターン

大アライちゃん1「…!」アーン

大アライちゃん2「ふぎゅぅうううう!ぴぎゅうぅうううう!きゅうるるうるるるるるぅう~っ!」ジタバタバリバリ

大アライちゃん2は、先ほど首を噛み絞められ続けたせいで、意識が混濁しているようだが、それでも必死の抵抗をしてくる。

大アライちゃん1「…」

大アライちゃん1は、かつてこの妹と何度も喧嘩をし、取っ組み合いをしてきたことを思い出した。

大アライちゃん2は喧嘩が強く、何度も負かされたことを思い出した。

大アライちゃん2「ぴぎぅ!ぴぎゅ!ぴぎゅるるるぅ!」ブンッブンッ

だが…
後頭部に大ダメージを負い、酸欠で意識が混濁した大アライちゃん2の抵抗は、かつて取っ組み合いの喧嘩をしたときとは比べ物にならないほど弱々しかった。

大アライちゃん1「…う…ぅううう!」チラッ

大アライちゃん1は、後ろを振り返った。

野良アライさん「むしゃむしゃ…」ツカツカ

大アライちゃん3「」グチャグチャ

野良アライさんは、大アライちゃん3を持って肉を食い千切りながら近づいてくる。

大アライちゃん1「…はぁぐがぶぅっ!」ガブゥ

大アライちゃん2「びっ…」ビグゥ

大アライちゃん1は覚悟を決して、再び妹の喉に噛みついた。

大アライちゃん2「ピギー!ピギー!」ジタバタジタバタ

大アライちゃん1「っ…」グググ

大アライちゃん2「ピギー…ピギー…」ビグッビグッ

大アライちゃん2「」ガクッ

大アライちゃん1「…っ」メキメキメキメキ

大アライちゃん1は、妹が抵抗しなくなってからも、しばらく喉を噛み絞め続けた。

野良アライさん「もういいのだ。どいてるのだ」ゲシィ

大アライちゃん1「ぴぃ!」ゴロン

野良アライさんは、大アライちゃん1を蹴って横に転がした。

野良アライさん「ふんっ!」ブンッ

大アライちゃん2「」ドグシャ

野良アライさんは骨棍棒で大アライちゃん2の頭をぶん殴った。

大アライちゃん1「あ…ぁあ…」

野良アライさん「だぁ!たぁ!」ブンッブンッ

大アライちゃん2「」メシャボギィ

大アライちゃん1は、目の前で自分の妹が、頭を叩き潰されていくのを見届けた。

大アライちゃん1「…っ…」ブルブル

野良アライさん「さて…片付いたのだ。じゃ、さっさと人里へ戻るのだ」

大アライちゃん1「は、はいなのだ…」ヨチヨチ

野良アライさん「…」スタスタ

野良アライさんは、大アライちゃん1へついていく。

野良アライさん「人里まで見送ってやるのだ」スタスタ

大アライちゃん1「う、うゆうぅ…」ヨチヨチヨチヨチ

二匹は人里への道を進んでいく。

途中で、水溜まりを見つけた。

野良アライさん「水なのだ!ごくごく…」ゴクゴク

大アライちゃん1「ぺちゃぺちゃ…」ペチャペチャ

野良アライさん「ふぅ。さて行くのだ」スタスタ

大アライちゃん1「きゅるるる…」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

日が暮れた頃、二匹は人里が見えるあたりまで来た。

野良アライさん「ここで夜を待つのだ」スクッ

大アライちゃん1「ぜぇ、はぁ…お、おなかしゅいたのだ…」グーギュルル

野良アライさん「もぐもぐ…」ムシャムシャ

野良アライさんは、大アライちゃん3の脚を一本おやつ代わりに持ってきていたようだ。

それをフライドチキンのように貪っている。

大アライちゃん1「…」グーギュルル

大アライちゃん1は、野良アライさんを上目遣いで見ている。

野良アライさん「お前も食いたいのか?」

大アライちゃん1「のだっ、のだっ!」ピョンピョン

野良アライさん「ダメなのだ。これはアライさんの食べ物なのだ。その辺で虫でも捕まえてろなのだ」

大アライちゃん1「うぅ~…」ガサガサ

ミミズ「」ウネウネ

大アライちゃん1は、土を掘ってミミズを捕まえた。

大アライちゃん1「もぐもぐ…」ムシャムシャ

大アライちゃん1「っ…!」モグモグ ウルウル

今まで、食事をするときはいつも姉妹がそばにいた。

姉妹で協力して食べ物を獲得し…

おいちーおいちーと喜びを分かち合ったり、食べ物を取り合って喧嘩したり…。

だが、その姉妹はもういない…。

大アライちゃん1「うっ…ひぐっ…ぐしゅっ…」クチャクチャ

大アライちゃん1は、泣きながらミミズを頬張った。

野良アライさん「どれ、そろそろ人がいなくなったのだ。ほれ、さっさと向こう行くのだ。しっしっ」

大アライちゃん1「の、のだぁ…」ヨチヨチ

野良アライさん「もうチビのうちに戻ってくるんじゃないぞぉ」

大アライちゃん1「なのだぁ…」ヨチヨチ

心細さが滲み出る、脅えたような足取りで、大アライちゃん1はヨチヨチと人里へ向かう。

野良アライさん「もし無事に生き残って、大人になって森に帰って来れたら、チビに言い聞かせるといいのだ。『アライさんは一度落第したけど、挫折を乗り越えて、インターンシップを成し遂げたのだ』って」

大アライちゃん1「のだ、のだあぁ…」ヨチヨチヨチヨチ…

大アライちゃんは、人里へ戻っていった。

野良アライさん「どれ、アライさんも見つからないうちに森へ戻るのだ」ガサガサ

野良アライさんも、森へ戻っていった。

大アライちゃん1「…」ヨチヨチヨチヨチ

久々に戻ってきた人里…。

大アライちゃん1「う…ぅう…」ヨチヨチヨチヨチ

だが、大アライちゃん1は…

もう人里では生きていけないと判断したからこそ、湖へ逃げてきたのである。

姉妹三匹で協力しても、その体たらくだ。

自分一匹で、前よりたくましく生きていけるはずもない…。

大アライちゃん1は、そう考えていた。

大アライちゃん1「うゆ…うゆぅううっ!」グスッ

大アライちゃん1「のぉおおーーーぁああああーーーんっ!のぁああーーんっ!のぁあああーーんっ!」ビエエエエン

大アライちゃん1は、押し潰されそうな不安に涙を流した。

大アライちゃん1「う、ぅ…」ガシィ

大アライちゃん1は、並木に掴まった。

大アライちゃん1「うぅ、はぁ…ぜぇ、はぁ…!」グググ

そして、ゆっくりと、二本足で立ち上がっていく。

大アライちゃん1「ふぅ、ふぅ…!」ゼェハァ

大アライちゃん1は、並木に掴まりながら、膝を伸ばし二本足で立った。

大アライちゃん1「はぁ、はぁ…」ノソリノソリ

そして、並木に掴まりつつ、二本の足を交互に前に出し、二足歩行の練習を始めた。

大アライちゃん1「あらいしゃんは…ぜったい…ぜったい…!いきのびゆのだ~!」ハァハァヨロヨロ…


姉妹の協力があって尚、人里では生きていけなかった大アライちゃん1。

その幼獣が、姉妹さえ失った。

しかし、姉妹と共に過ごした日々は消えない。

湖でたくさんの獲物を捕まえてすくすく育ち、大きくしたその肉体だけが、大アライちゃん1の武器だ。

果たして、大アライちゃん1はやはり生きていくことはできないのか…

はたまや、生き延びることができるのか…

それは大アライちゃん1にしか分からない。

~湖~

野良アライさん「ふぅ…」ガサガサ

野良アライさんは、湖に戻ってきた。

大アライちゃん2「」

大アライちゃん3「」

野良アライさん「どれ…たくさん肉が手に入ったのだ」ガシィ

野良アライさん「冬籠もりのために、しっかり食べておかなきゃなのだ…」

野良アライさん「はぐはぐ、もぐもぐ…」ムシャムシャバリバリ

野良アライさんは、殺した二匹の大アライちゃんの死骸を貪り始めた。

そこには何ら躊躇はないようだ。

インターンシップを生き抜けるアライちゃんは20~10%といわれている。

天才じゃない凡才のアライちゃん達は、森へ逃げ延び、『落第』をすることがある。

もしも、すべての凡才アライちゃんが、こうして人里から森へ際限なく逃げ隠れたら…

アライちゃんの生存率は大きく向上し、瞬く間にアライさんの個体数は増加し…自然を破壊していくことだろう。

だが、そんなことは、森に暮らす成体アライさん達が許さない。

成体アライさん達は、幼少期の未発達な知能で地獄のインターンシップを生き抜き、成体まで育ったツワモノ揃い。

それ故に、能力のない落ちこぼれ共が自分の餌場を荒らし、限りある自然の恵みを減らすことを許さない。

加えて、自分が乗り越えた苦難の日々を踏みにじり、ズルをして生き延びようとする卑怯者を許さない。

凄まじい繁殖力をもつアライちゃん達は、その成体達によっても間引きされているのである。

続く

~パン屋の前~

アライしゃん1「とったのだ~!とんずらするのだー!」トテトテ

アライしゃん2「ふははー!あむあむ!おいちーのだ!はぐはぐ!」トテトテムシャムシャ

パン屋店主「クォラァァ!うちのパン盗るんじゃねえええ!」ドタドタ

大きなパンを抱えた2匹のアライしゃんが逃げており、その後を店主が追いかけている。

走るスピードそのものは、店主の方が速いようだ。


アライしゃん1「たかいとこににげるのだ!はむ!」ガブゥ

アライしゃん2「よっしゃーなのだ!がぶぅ!」ハグッ

2匹のアライしゃん達は、口にパンを咥え…

アライしゃん1&2「「うっしゅ!うっしゅ!うっしゅ!」」ヨジヨジヨジヨジ

高い塀をスイスイとよじ登っていった。

パン屋店主「げえぇ!」アセアセ

アライしゃん1&2「「さいならなのだー♪」」トテトテトテトテ…

パン屋店主「クッソォオァ!逃げられた…!」ゼェハァ

パン屋店主は、泣く泣く店へ戻った。



~パン屋~

パン屋店主「くっそぉお…」ションボリ

塾メガネ「お父さん…また…」ションボリ

パン屋店主と、その息子の小学生の息子はしょんぼりしているようだ。



~その頃、公園~

野良アライちゃん4「うゆ~!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん5「のりゃっ!のりゃっ!」ヨチヨチヨチヨチ

公園おばさん「あら~アライちゃん!新しい子ね~!可愛いわね~」

女児1&2「「かわい~!」」ナデナデ

野良アライちゃん4&5「「ふみゅぅぅ~♪」」スリスリ

例のおばさんが、餌の入った袋を持っている。

野良アライちゃん4「おともだちからきーたのりゃ!ここに、ごはんくれゆやさしくてびじんなおんなのひとがいゆって!」シッポフリフリ

野良アライちゃん5「やさしくてびじんなおんなのひとがいゆって!」シッポフリフリ

公園おばさん「まあ美人!やだもぉ^~いっぱいご飯あげちゃう!」パッパッ

公園おばさんは、キャットフードを撒いた。

野良アライちゃん4「あむあむあむあむ!くっちゃくっちゃ!おいちーのりゃあ!」ムシャムシャ

野良アライちゃん5「やっぱりやさしくてびじんないーひとしゃんなのりゃあ~♪あむあむ!はぐはぐ!」クッチャクッチャ

女児1「おばさん優しいね!そうだ、はい!私もポッキーあげるー!」スッ

女児2「トッポあげるー!」スッ

野良アライちゃん4&5「「かりかりこりこりかりかりこりこり!」」ムシャムシャ

女児1&2「「か~わいいぃ~♪」」

公園おばさん「生き物には優しくしないとね~♪」

どうやら悪い大人である公園おばさんは、女児達の悪い見本になっているようだ。

~翌日、学校~

女児1「でさぁ、公園に超かわい~アライちゃんがいるの!頭なでると尻尾振って喜ぶのがかわいくってー!」

女児2「ありがとーってお礼言ってくるの!ほんとかわいくってー!」

女児3&4「「ええー!いい子なんだねー!」」キャッキャ

ペットアライちゃんは女性に人気のペットだが、飼えない家庭も多い。
賃貸暮らしであったり、親がアライちゃん嫌いであったり…理由は諸々だ。

そんな中、小中学生の女子を中心に、野良アライちゃんへの餌付けがブームになっているようだ。

野良アライちゃんは、ペットアライちゃんと容姿が同じである。

加えて、野良アライちゃんの中には、人に甘えることで餌を貰い生きている個体もいる。

ペットを飼えないがアライちゃんを可愛がりたい女児達と、ニーズが合致したようだ。

女児5「でも、せんこーにばれたらまずいんじゃ?」

女児1「ばれなきゃいいの!それに、動物に優しくしてるから良いことなんだよ!公園に来る大人の人もそう言ってたし」

女児2~5「だよね~!」

と、そこへ。

ガンソテツヤ「へえ~、優しいんだね」スタスタ

女児1「あ!ガンソテツヤくん!」

彼はクラスでも頼りにされているガンソテツヤ。

このクラスには、『テツヤ』という名前の男子生徒が2名いる。

クラスメートは当初、『テツヤ』君と『オカルテツヤ』君として呼び分けをしていた。

だが、『テツヤ』と呼んだときに、ついついオカルテツヤ君が反応してしまうことがあった。

反応するなというのも酷だろう。
そこである男児が、テツヤ君を『元祖テツヤ』と呼び始めた。

それが面白がられ、やがて『元祖』の部分まで含めてアダ名になったのである。

ガンソテツヤ「どんな子なの?」

女児2「見て見て~!ほら、可愛いでしょー!!」スッ

女児2は野良アライちゃん4&5の写真を見せた。

ガンソテツヤ「へえ~、人懐っこいんだねえ」

女児1&2「「でしょー!」」

ガンソテツヤ「毎日同じ時間に餌やりに来てるの?」

女児1「毎日じゃないけど…お昼過ぎくらいかなぁ」

ガンソテツヤ「なるほど。先生にばれないようにね」スタスタ

女児2「うん!」

~土曜日、公園~

野良アライちゃん4「そろそろひとしゃんがくゆころなのりゃ!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん5「うゆ~!ひとしゃんのごはんいつもおいちくってたのちみなのりゃ~!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん4&5「「ごっはん♪ごっはん♪おいちーごっはん♪」」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん姉妹は、いつも公園おばさんが餌付けに来るあたりへ来た。

すると…

ガキ大将「…お、ほんとに来た!きめー!」

ガンソテツヤ「待ち伏せ成功だね」

いつもとは違う子供が、既に来ていた。

野良アライちゃん4「うゆ?いつもとちがうひとしゃんなのりゃ」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん5「ひとしゃんごはんくれゆのか?」

ガキ大将「ああ、くれてやるぜ」

野良アライちゃん4&5「わーい!≧∀≦」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん姉妹は、ガキ大将のところへ這いヨチった。

ガキ大将「さ、こっち来な」スッ

ガキ大将は、ポケットから結束バンドを取り出した。

野良アライちゃん4「うゆ?それごはんなのりゃ?」キョトン

野良アライちゃん5「みたことないごはんなのりゃ!」シッポフリフリ

https://i.imgur.com/U5RJeIt.jpg

野良アライちゃん姉妹は興味津々のようだ。

ガキ大将「よいしょ」ガシィ

野良アライちゃん4「ぴいぃ!?」

ガキ大将「もっとも、くれてやるのは…」グイグイ

https://i.imgur.com/viPZqrU.jpg

なんとガキ大将は、野良アライちゃん4の腕を結束バンドで縛った。

野良アライちゃん5「ぴいぃ!?お、おねーしゃになにしゅゆのりゃあ!」ビクゥ

ガキ大将「あの世への餞別だけどなああ!」グイグイ

ガキ大将は、なんと捕まえた野良アライちゃん4の肛門に…

https://i.imgur.com/C2YkDGb.jpg

…爆竹をねじこんだ。

ガキ大将「オラオラオラオラオラオラぁあああ!」グリグリブチブチ

野良アライちゃん4「ピッギィイイイイイ!!!いぢゃああああああああああああああいいいいいいーーーっ!!いっぢゃあああいい!」ジタバタ

肛門の径は明らかに爆竹より狭く、裂けて出血している。

野良アライちゃん5「ひ…ひっ…!!」ガクブル

ガキ大将「こんなもんでいいか!よっと!」シュボッ

そして爆竹にライターで火をつけた。
親の私物であろうか。

ガキ大将「よーいしょ」ポイッ

野良アライちゃん4「の゛り゛ゃっ」ポテッ

ガキ大将は、野良アライちゃん4を地面に落とした。

https://i.imgur.com/BHhResI.jpg

野良アライちゃん4「とってぇ!とってえええ!おちりのいぢゃいのもぉ!おててのわっかもいりゃないのりゃああっ!」シッポブンブン

野良アライちゃん5「あ、ありゃいしゃんはそれいらないのりゃああーーーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

https://i.imgur.com/Yzw3Ogy.jpg

野良アライちゃん5は、姉を見捨てて逃げ出した。

ガンソテツヤ「あれはいいの?」

ガキ大将「ん?…ああ、大丈夫そうだぜ」チラッ

野良アライちゃん4「ふんーーーっ!!ふんーーーっ!!」グググ

https://i.imgur.com/2zIU3z6.jpg

野良アライちゃん4は、肛門に捩じ込まれた爆竹を必死にひり出そうとしている。

果たして、野良アライちゃん4は無事に爆竹を排出できるのであろうか?

https://i.imgur.com/2Xu5znF.jpg


https://i.imgur.com/y5XjYFW.jpg


…どうやら、ダメだったようだ。

ガキ大将「あはははははははは!何回やってもおもしれーや!」ゲラゲラ

ガンソテツヤ「好きだね~」

野良アライちゃん5「ぴぃ!ぴいいぃぃ~~!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

妹は、猛ヨチヨチで必死に逃げていく。

??「…」スタスタ

そこへ、誰か別の人間が近付いてきた。

野良アライちゃん5「ぴぃ!ひ、ひとしゃん!あっちにわゆいやちゅがいゆのりゃ!おねーしゃんをどーぶちゅぎゃくたいちてぶっこよちたのりゃあ!」

野良アライちゃん5「あいつやっつけてええ!」シッポフリフリ

??「…」スチャッ

その人物は、野良アライちゃん5の顔へ何かの道具を向けた。

https://i.imgur.com/JxHYU2o.jpg

…毎度お馴染み、ホームセンターで誰でも買える便利な護身道具、アライボウである。

野良アライちゃん5「うゆ?それなんなのりゃ!?それであのがいじをぶっこよちてくれゆのりゃあ!?」シッポフリフリ

男児兄「死ねこらぁ!」バシュゥッ

野良アライちゃん5「ごびゅっ!」ドズウゥッ

野良アライちゃん5の顔面へアライボウの矢が深々と突き刺さり、腰のあたりから矢の先端が突き出た。

野良アライちゃん5「」ビグッビグッビグググッジタバタビグググッ

野良アライちゃん5は大量に出血しながら、やがて痙攣を止めた。

男児兄「お待たせー」スタスタ

男児弟「うぅ、勝手に父さんと母さんのアライボウ持ってきて良かったのかな…」スタスタ

オカルテツヤ「ふへへへ…レッツパーリーの時間だゾ…」スタスタ

3人の男児が、ガキ大将&ガンソテツヤ君のと合流した。

ガキ大将「ガンソテツヤが言ってた通りだったな。クラスの女どもが餌付けしてたガイジューはここにいたのか」

男児兄「二匹ともブッ殺せてよかった」

野良アライちゃん4&5「「」」グチャ

ガキ大将「よし、本題だ。…さて、みんな集まったな!アライボウは持ってるか?」スッ

男児兄&オカルテツヤ「「「イエーイ」」」ガチャッ

男児弟「い、いえーい…」スッ

ガンソテツヤ君以外の4人の男児達は、バッグからアライボウを取り出した。

どうやらガンソテツヤ君だけは、アライボウを持たない役割らしい。

ガキ大将「今日呼んだのは他でもない!塾メガネの家のパン屋さんが、近頃アライしゃんに泥棒されてて困ってるそうだ!」

ガキ大将「そこで、俺達の手でクソガイジューを仕留めるんだ!どこかにいるパン屋泥棒のアライしゃんを探しだして、俺達の手でブッ殺そうぜ!モンスター退治だ!」

男児兄「いえーーーい!」

オカルテツヤ「魔物退治だ…!」

男児弟「っ…」ドキドキバクバク

ガンソテツヤ「塾メガネ君のお父さんの仇討ちだ!」

ガキ大将「よし、行くぞ!」

男児兄&ガンソテツヤ&オカルテツヤ「「おおー!」」

男児弟「おー…」

果たして男児達は、無事ににっくきパン泥棒を仕留めることができるのか?

続く

アラ日の「ランチャーズのブログ」を「アライちゃんと遊ぼう!!」で使用させていただいてもよろしいですか?

>>393
どんな感じで使うんでしょうか?

アラジビ料理のレシピを見るとかでしょうか
なら大丈夫ですよ

OKです
楽しみに読ませていただきます

ガンソテツヤは、アライボウの代わりに、大きな袋を持っている。

先程仕留めた2匹のアライちゃんを、ビニール手袋で掴み、袋へ入れた。

男児達は、鞄にアライボウを潜ませ、公園や路地裏、墓場など、様々なところでアライしゃんを探した。

すると、路地裏に…

野良アライちゃん6「なのりゃ~」ヨチヨチ

アライちゃんがいた。

男児兄「お、害獣発見!」ジャキィ

男児兄は、それに向かってアライボウを放った。

矢「」ヒューン ガンッ

矢はアライちゃんの背後のレンガの壁に当たった。

野良アライちゃん6「ぴぃ!?」ビクゥ

男児兄「あ~くそ、外れた!」

男児達は、射撃の訓練などしていない。

ただのクロスボ…否、アライボウでは、距離が5メートルも離れていたら、当てる方が難しい。

野良アライちゃん6「こ、こあいのりゃああああ~~っ!ぴいいぃぃ!」ヨジヨジヨジヨジヨジヨジ

野良アライちゃん6は、レンガの壁を這い登っていく。

ガキ大将「逃がすかよ!」ジャキッ

オカルテツヤ「ここで死ぬんだゾお前は」ジャキッ

男児弟「うぅ…僕もやるの…?」ジャキッ

だが、アライボウを持った三人の男児が、次々と野良アライちゃん6に狙いを定めた。

野良アライちゃん6「うぅ~もーしゅこしでかべのむこーなのりゃあ!わっちぇ!わっちぇ!」ヨジヨジヨジヨジ

ガキ大将「死ねぇ!」ビシュ

オカルテツヤ「処刑!」バシュ

男児弟「えい!」ドシュゥ

三本の矢が次々と野良アライちゃん6に向かって飛んでいく。

矢「」グサブシャアア

野良アライちゃん6「びぎゃあああああああああっ!」ブシュウゥウ

オカルテツヤ「おお、やった!」ガッツポーズ

オカルテツヤが放った矢が、野良アライちゃん6の腰を貫き、下腹まで貫通した。

野良アライちゃん6「びぎっ!」ヒュー ボトッ

野良アライちゃん6は、壁を登りきる寸での所で、アスファルトへ落下した。

野良アライちゃん6「びぃぃい!ぎっぴぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!!いいいいぢゃああああああいいいいいいいいいいいいいい!!ぼしゅだぢゅげでええええっ!」ピギイイジタバタ

野良アライちゃん6は、腹と背中から血をどくどく流しながら絶叫し暴れている。

オカルテツヤ「とどめを刺してやるゾ…!」ヌッ ジャキィ

オカルテツヤは、野良アライちゃん6の右の脇の下へ、斜めにアライボウを突きつけた。

オカルテツヤ「ガキ大将、左からやって」

ガキ大将「お、おう!」ジャキィ

ガキ大将は、野良アライちゃん6の左の脇の下へ、斜めにアライボウを突きつけた。

野良アライちゃん6「びぎゅぅううううう!!ひどいいい!ひどいのりゃあああ!ありゃいしゃんがおまえらになにちたってゆーのりゃああ!なんにもぢでないだろおぉ!うぅううう!いぢゃああああいいい!」ポロポロ

野良アライちゃん6はわんわんと泣いている。

オカルテツヤ「いっせーのでいくゾ」

ガキ大将「おう!」

野良アライちゃん6「やべでえええええええ!びぃいいいい!いぢゃいのもーやなああああああああ!おがあああしゃあああああんんっ!おがあああああああしゃああああああああーーーーーーーーーーんっ!やなああああああーーーー!やなああああああ!」ピギイィイイイイイイシッポブンブンブンブンブンブンジタバタジタバタジタバタビエエエエエエン

オカルテツヤ&ガキ大将「「いっ、せー…」」

オカルテツヤ&ガキ大将「「のっ!」」ガチッ バシュッ

二人は同時に、野良アライちゃん6の脇の下へ至近距離からアライボウを放った。

野良アライちゃん6「がびゅっ!」ドズグシャアアア

脇の下へ射たれた2本の矢は、胸の中でクロスして、鎖骨のあたりから突き出た。

野良アライちゃん6「」ブシュウゥウ ビグッ ビグッ

オカルテツヤ「これがアライ磔刑だゾ」

男児兄「おおおおーー!すげえーー!」

オカルテツヤ「ふふん」ガッツポーズ

小~中学生の男子には、希にこのように、自らの残酷性をまわりにアピールする子がいる。

彼は、自分の残酷さを強さとして周囲にひけらかし、凄い奴だと一目置かれたがっているのである。

『自分はこんなに残酷で強いんだぞ、凄いだろう。もっと僕を尊敬しろ』という考えだ。

もっとも、こんなイタい勘違いアピールは、高校に入る前に大抵の人がやめてしまうので、そんなに問題はない…はずだ。

男児兄「いや~しかし、なかなか当たらないな。アライボウなんて今日初めて射ったし」

ガキ大将「ああ。普段は親父が物置にしまってるけど、俺もなかなか触る機会ないんだよな~」

オカルテツヤ「ボクも、アライボウ触ると母さんに怒られるし…楽しいゾ」

ガンソテツヤ「いや~爽快だねえ。ほいっと」ヒョイ

ガンソテツヤは、トングで野良アライちゃん6の死骸を拾い、袋へ投入した。

男児弟「あ…ぼ、僕、お使い頼まれてたんだった。ごめん、先に帰るね」スタスタ

一同「ああ。おつかれ~」

男児弟は、一足先に帰ったようだ。

男児兄「弟が抜けた分、俺が2倍仕留めるぜ!」

男児一同は、雑木林へと進んだ。

雑木林を練り歩くが…

男児兄「なかなかアライしゃん見つからないな~」スタスタ

ガキ大将「どこにいるんだ?」スタスタ

オカルテツヤ「塾メガネのパン屋のうらみ…晴らさでおくべきか…」スタスタ

ガンソテツヤ「ん!あそこ…」スッ

一同は、雑木林の一本の木を見る。

すると…

野良アライちゃん7「たっまご♪たっまご♪」ヨジヨジ

野良アライちゃん8「おっいちーたっがも♪」ヨジヨジ

野良アライちゃん9「とーりしゃんのたっまご♪」ヨジヨジ

野良アライちゃんが3匹、木を登っていた。

鳥の巣に向かっているようだ。

秋に鳥の卵などあるわけがないが、雛か何かを狙っているのだろう。

男児兄「いくぜー!」ジャキィ

ガキ大将「ぶっ殺す!」ジャキィ

2人は、アライちゃんに向かってアライボウを向けた。

その時…



野良猫「ウニャアアアア!」バッ

木の反対側から、野良アライちゃん達へ向かって突然野良猫が飛びかかった。

野良アライちゃん7~8「「「!?」」」

男児兄「あっ」バシュ

ガキ大将「あ」バシュ

あまりに突然のことだった。


それは、二人が木に向かって矢を放つのと同時のタイミングだった。





矢×2「」ドズゥ ドズゥ

木「」グサグサ

野良猫「フギャ!?」ビクゥ

野良アライちゃん7~9「ぴぃ!?」

放たれた矢は、2本とも木に突き刺さった。

猫にも野良アライちゃんにも当たらなかった。

野良猫「フ、フギャアアア!」ザザザ

野良アライちゃん7~9「にげゆのりゃああ~!」ヨジヨジヨジヨジヨジ

放たれた矢を見て、猫とアライちゃん達は逃走した。

ガキ大将「あ…あっぶねえ…」アセダラダラ

男児兄「野良猫に当たるとこだった…」アセダラダラ

野良アライちゃん達は、木の裏側に隠れたようだ。

オカルテツヤ「反対側に回り込むゾ!」タタッ

オカルテツヤは、野良アライちゃん達を射つため、木の反対側に回り込んだ。


キノコ採りおじさん「こらァアアーーー!!何しとるお前らぁああ!」

一同「「!?」」ビクゥ

突然、背中にキノコ入りの籠を背負ったおじさんが現れ、怒鳴ってきた。

キノコ採りおじさん「アライボウなんぞ持ちおって!危うくわしに刺さるとこじゃったぞ!回りもよく見んでバンバン射ちおってからに!」ガミガミ

一同「…」

四人の男児は、説教を食らっている。

キノコ採りおじさん「親にアライボウなんか使うなって言われておらんのか!それでイタズラして毎年あちこちで怪我人や死傷者が出とるってテレビや新聞で言われとるじゃろうが!見とらんのか!近頃じゃ強盗にも悪用されとるんじゃぞ!」ガミガミガミガミガミガミ

一同(説教なげえ…)

キノコ採りおじさん「聞いとるのかわしの話を!」

ガキ大将「あいあいきーてますぅ」ポリポリ

一同は、一刻も早くおじさんが説教を終えることを待っている。

キノコ採りおじさん「だいたい何がアライボウじゃこんなもんただのクロスボウじゃろが!こんな危ないもんホームセンターで売っとる世の中は間違っとる!誰でも買えるなんておかしいわ!」ガミガミガミガミ

一同(それ俺らのせいじゃないだろ…)

キノコ採りおじさん「わしらの若い頃なんてアライボウなんぞ要らんかったぞ!」ガミガミガミガミ

一同(その頃アライさんいなかっただろ…)

キノコ採りおじさん「ったく、わかったか!今お前らが射った矢が猫やわしに刺さらんかったのはただの幸運じゃ!二度も三度もやったら絶対怪我人出るぞ!これに懲りたらもうアライボウなんぞ使うんじゃないぞ!分かったか!」

一同「あ~い」

キノコ採りおじさん「ったく今頃の若いもんは…」ノソリノソリ

キノコ採りおじさんは去っていった。

一同「…」



男児兄「はぁ~…やっと終わったよ」ハァー

ガキ大将「説教なげ~…くそうぜ~…。なんだあの上から目線。偉そうに…」ハァー

オカルテツヤ「喋ってる最中にアライボウ向けてやろうかと思ったゾ」ハァー

ガンソテツヤ「行こ行こ。あんなの無視無視。邪魔者はいなくなった」ザッザッザッ

一同は、雑木林から移動し、野良アライ狩りを続けるようだ。

~お寺の敷地内~

野良アライちゃん10「うゆぅ~かきたべゆのりゃ!」ヨジヨジ

ガキ大将「しねえ!」バシュ

野良アライちゃん10「ぶぎゅぅ!」ブシャアアア

ガキ大将「やったぜぇー!」

野良アライちゃん10「がびゅ…ぶ…」ドチャッ ドクドク

お坊さん「こら!!境内で殺生をするな!!!!なんだそんな危ないもの持って!」

ガキ大将「やべ、見つかった!行くぞ!」タタッ

ガンソテツヤ「お邪魔しましたー」ヒョイガサガサスタタター

男児兄「何だよ、害獣駆除してやったのに~!わけわかんねー坊さんだな!」スタコラサッサ

オカルテツヤ「アーメン」スタコラサッサ

お坊さん「…死骸片付けるのはいいけど…地面の血を拭いていけー!」

一同は、重たくなった袋を引きずり、鞄にアライボウを隠し持って夕暮れ時の街を練り歩く。

男児兄「ふぅ~疲れた~。もう夕方かぁ」スタスタ

ガンソテツヤ「袋が重い…」ズルズル

オカルテツヤ「そろそろ帰らなきゃ。でも、目当てのアライさんが見つかってないゾ…」スタスタ

ガキ大将「あーでも楽しかったな!立派に人の役に立ってる感じがするよ!またやろうぜ!」スタスタ

男児兄「ああ!」

男児弟「…」スタスタ

男児兄「お?さっき抜けた弟じゃん。お使い終わったのか?」

男児弟「…ごめん」

男児兄「え?何が…」






男児母親「みんなこんばんは~^^#」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

一同「」

そこにいたのは、男児母親だった。

大きなキャリーケースを引いている。

男児兄「あ、ああ、母ちゃん…。今晩のごはん何?」アセダラダラ

男児母親「お父さんがねー。しまっておいたアライボウが無いって騒いでるけどー、知らない?」

男児兄「…さ、さあ?ところでそのキャリーケース何?」アセダラダラ

男児母親「見てみる~?」ガチャ

キャリーケースの中には。二つの大きな袋が入っていた。

袋はどちらも、何かが入っている。
まるで、そう…

丁度、アライしゃんが1匹ずつ収まっていそうなサイズだ。

男児母親「仕事で駆除したの~♪」

ガキ大将「へえ~!凄いですねー!じゃあ俺帰りますんで!じゃ…」

男児母親「みんな何して遊んでたのかな~?」

一同「」アセダラダラ

男児母親「ガンソテツヤくん、いつも息子達がお世話になってるね~♪その大きな袋は何に使ってるのかな~?」

ガンソテツヤ「サンタクロースごっこですよ」

男児母親「ふぅーん♪中のプレゼント見てみたいなぁ~♪」

ガンソテツヤ「子供の夢が詰まってるからダメです。抜けて出ていっちゃいますよ」

男児母親「7匹か。ずいぶんドンパチやったのねえ」

ガンソテツヤ「!?」

男児母親は、驚くべきことに、中が見えないはずの袋に詰まった死骸の数を、正確に言い当てた。

男児母親「街の人達から聞いたよ~?アライボウ持ってあちこちでドンパチやってる子供達がいるって」

一同「」アセダラダラ

男児母親「…学校で言われてるよねえ、アライボウ使っちゃダメだって」

一同「」

男児兄「…そそ、そんなの持ってないし」アセダラダラ

男児母親「じゃあみんな、鞄の中身み~せ~て~♪…何も無いなら潔白を証明できるよね~♪」

オカルテツヤ「そ、それは…ぷ…プライバシーの侵害だゾ!」アセアセ

男児母親「あら~♪難しい言葉知ってるのねえ、お勉強頑張ってるのね~♪」

ガキ大将「そ…そうだそうだ!見せる義務ねーし!」アセアセ

ガンソテツヤ「個人情報漏洩はダメでーす!」アセアセ









男児母親「 立 場 分 か っ て 言 っ て ん の ? 」

一同「ごめんなさい(土下座)」


アライ攻略パーティは、魔王の一喝で解散した。

~翌日~

教師「反省しなさい!!!」ガミガミ

一同「すいませんでした」ペコリ

教師「もう行きなさい。次は気を付けなさい」

一同「は~い」ガラッ

一同「…」


ガキ大将「はぁ~…説教長かった~」

男児兄「派手に動きすぎたのかな…」

ガンソテツヤ「次はばれないように、アライボウ無しでやろう」

オカルテツヤ「反省だゾ…」

女児1「ちょっと!!!!公園にアライちゃん来なくなったんだけど!!」ツカツカツカツカ

オカルテツヤ「…!!」

女児2「あなた達が殺したんでしょ!最低最悪ゴミクズ!!!」ツカツカツカツカツカツカ

ガキ大将「ば、ばれてる!」

女児3「ガンソテツヤ君のこと信じてたのに!!可愛いアライちゃん殺すなんて!!信じらんない!!」ガミガミガミガミ

ガンソテツヤ「うっ…」

女児4「あんたたちもアライボウ刺されて死んじゃえ!!」

男児兄「うぬぬ……」




教師「野良アライちゃんに餌付けするな!!!」

女児1~4「ごめんなさい」

つづく

この世には、飼い主の危険となるペットが存在する。

大型犬。
躾の仕方を間違えれば、飼い主に噛みつき大ケガを負わせる凶暴性をもつこともあるという。

飼い犬に噛まれ死亡した飼い主もいるほどだ。


ニシキヘビ。
その牙には毒こそないが、鋭さは洒落にならない。
視力が悪く、餌と間違えて手を噛まれたら、出血は免れないだろう。

巻き付く力も強く、首を絞められたら死ぬ可能性すらある。



ワニガメ。
強い顎の力をもっており、指を食いちぎられた飼い主もいるという。


タランチュラ。
牙の毒は人の皮膚に炎症を起こす。


では、そんな危険なペットを販売しているペットショップは…

ペットから、飼い主を傷つける可能性を奪わないのだろうか?


大型犬やタランチュラやワニガメ、ニシキヘビから、牙を引っこ抜いてしまえば、飼い主を傷つける危険性は大きく減るだろう。

だが、それらのペットは危険性を取り除かれないまま売られている。

一体何故だろうか?

ペットの販売者が、危険性を奪わない大きな理由は3つ。


1つ目は、牙を引っこ抜くには費用がかかるからだ。

通常のペットの価格に、牙を引っこ抜いて生えないようにするための施術費が上乗せされることになる。

高額になれば、それだけ消費者の手が伸びにくくなり、売れ行きにも影響するのだろう。


2つ目は、危険性があること、それ自体がペットの魅力となることもあるからだ。

毒蜘蛛「だからこそ」飼う。

指を食いちぎる強さがある「からこそ」飼う。

そういった購入者も存在する。


だが、これら2つより、もっと大きな理由がある。

最も根本的な理由。

それは、ペットに噛まれようとも、それは飼い主の自己責任である、ということ。


噛まれるのが怖いなら、そもそも大型犬やニシキヘビなど飼わなければいい。

それでも飼いたいならば、噛まれたときのことは自己責任。

ペット販売者には責任追及をしない。


ペットの飼い主になりたくば、そのリスクを負う覚悟が必要ということだ。

そして、それはペットアライちゃんも同じ。

個人でアライちゃんを飼育するならば、脛から下を切除する『ヨチライフ手術』を行うことが法律で義務付けられている。

法人で産業用に飼育するなら、それに加えて、牙と爪を抜き、避妊手術をし、ICチップを埋め込む『アライドール手術』という選択肢もある。


しかしながら…

ヨチライフ手術を施されていようとも、凶暴化したペットアライさんは、飼い主を噛んだり引っ掻いたり首を絞めたりして攻撃することができる。


アライドール手術を施されていようとも、従業員や客を棒や刃物で殴り、刺すことができる。


そう。
ペットアライちゃんからは、『飼い主を傷付ける危険性』そのものは取り払われていない。

誤解されがちだが、ヨチライフ手術やアライドール手術は、『飼い主を危険から守る』ために義務付けられているわけではないのである。

では、これらの手術は何のためにあるのか…?

ここに、ひとつの実験の映像資料がある。

こちらをご覧いただこう。



山へ続く道路。

そこへ、一台のトラックが停まっていた。

研究員「よし、下ろすぞ」ガシャン

トラックから、5個の檻が下ろされた。

檻の中には、脛から下が切除されたアライさん達が入っている。

アライさん達の膝には、ローラースケート用の膝当てパッドが装着されている。

検体アライさん1「うぅ~!やっとお外なのだぁ!」

検体アライさん2「自由になれるのだ~!」シッポブンブン

検体アライさん3「早くこの檻から出すのだ~!」ガシャガシャ

検体アライさん4「うぅ~、でも寂しいのだ…。最後にナデナデして欲しいのだ…」コスリコスリ

検体アライさん5「交尾しまくりたいのだ~!」

研究員「よし、行け」ガシャン

研究員は、檻を開けた。

検体アライさん達「「自由なのだ~~!」」シャカシャカシャカシャカシャカシャカ

検体アライさん達は、一斉に森へ向かって四足歩行で移動した。

膝のパッドがアスファルトに当たる音が、せわしなく響く。

検体アライさん達は、森へ入り、あたりを探検した。

検体アライさん1「ぜぇはぁ…」ゼェハァ

検体アライさん2「疲れたのだ…」ゼェハァ

検体アライさん達は疲れていた。

なんというか、アライさんの身体能力には不可解な点が多い。

例えば、野良アライさんの走力。

奇妙な例えをするが、十分に成長した野良アライさんの足は、『成体アライグマよりも速い』。

木登りのスピードもまた、『成体アライグマよりも速い』。

しかし、成体アライさんの骨格と筋量・体重では、アライグマよりも速く走ったり木を登ることは物理的に不可能なはずだ。

にも関わらず、その『物理的に不可能な所業』を、さも当たり前のようにやってのける。

一体なぜそんなパワーが出るのか…科学的にはまだ解明されていない。

検体アライさん3「ぜぇはぁ…水飲みたいのだ…」ゼェハァ

しかし、ここにいる四足歩行のアライさん達は、明らかにアライグマよりも遅い。

というか、普通に歩く人間より遅い。

どうやら、足首無しの四足歩行で歩くのは得意ではないようだ。

例の不思議なパワーは、発揮されていないらしい。

検体アライさん4「食べ物はどこにあるのだー?」ガサガサ

検体アライさん5「見つからないのだー!」ガサガサ

検体アライさん1~5「「「わっせ!わっせ!」」」シャカシャカシャカシャカ

バッタ「」ピョンピョン

検体アライさん1「虫なのだ!たあ~!」シャカシャカシャカシャカ

検体アライさん2「とったのだあ!むしゃむしゃ!」モグモグ

検体アライさん3「ずるいのだ~!アライさんも食べたかったのだぁ!」

検体アライさん2「…」ゴクン



検体アライさん2「…ぜんぜん足りないのだ~!」

成体アライさんの体には、虫をついばんだ程度では栄養が足りないようだ。

検体アライさん達は、森の斜面を、下へ、下へと下っていった。

楽な方へ進んでいるのである。

検体アライさん1「うぅ!坂道の上の方に、木の実があるのだ!」

検体アライさん2「上るのだ~!」シャカシャカ

一同は、草が生い茂る急斜面を上ろうとしたが…

検体アライさん3「うぅ~!膝が滑って上れないのだ~!」ズルズル

検体アライさん4「ずり落ちるのだあ~!」ズルズル

…検体アライさん達は、急斜面を上れないようだ。


そう。
幼い頃のヨチライフ手術により、膝立ちしかできなくなっているアライさん達は、急斜面を上ることが不可能なのである。

一同は、餌を見つけると、自分が食いたいと主張し争いあった。

やがて…

検体アライさん1「アライさんが見つけた虫や木の実をお前らにとられるのはもうこりごりなのだ!」

検体アライさん2「それはこっちのセリフなのだ!」

検体アライさん達は、ばらばらに別れて暮らすようになった。

しかし…

最初の夜が来る頃には、皆もう音を上げていた。

検体アライさん1「うぅ…お腹減ったのだ…」グーギュルルー

検体アライさん1「こんなはずじゃなかったのだ…。森の中には、もっとたくさん美味しい食べ物があって、自由に遊んでた暮らしていけると思ってたのだ…」

検体アライさん1「でも、食べ物がぜんぜん手に入らないのだ…。水もまずいし、お肉も虫やナメクジぐらいしか捕まえられないのだ…」

検体アライさん1「ぜんぜん遊ぶ余裕ないのだ…。ご飯探し回るので精一杯なのだぁ…!」

検体アライさん1「こんな…こんなはずじゃなかったのだあああああ!!!」シクシク

検体アライさん1「でも、星空を眺めながら眠るのは、気持ちがいいのだ…」ゴロン

検体アライさん1は、草や葉っぱをかき集めたベッドに寝転んだ。

検体アライさん1「あ!痛いのだぁ!虫に噛まれたのだ~!」

検体アライさん1「うぅ…ふかふかのベッドに比べて寝心地が悪すぎるのだ…」

そう思うのも無理はない。

野生のアライさんは本来、木の上で眠るのである。

検体アライさん1「うぅ…でも木なんて登れないのだ…」

検体アライさん1「このまま眠るのだ…」スヤスヤ

検体アライさん1「…退屈なのだ!星空を眺めるのは飽きたのだ~!」ムクリ

だが、星空の天井にはもう飽きたようだ。

検体アライさん1「絵本読みたいのだ!テレビ見たいのだ!テトリスやりたいのだああ!」ジタバタ

検体アライさん1「うぅ~自由になったのに!なんにも自由じゃないのだああ!」

検体アライさん1「うぅ…」ウトウト

検体アライさん1「…すぴー…すぴー…」スヤスヤ

だが疲れが溜まっていたせいか、やがてぐっすりと眠った。

…2日後…

検体アライさん1「たべ…もの……」ゲッソリ

検体アライさん1は痩せていた。

そこら中を探し回っても、十分な食べ物が見つからないのである。

アライグマ♂「キュルルルル」ガサガサ

検体アライさん1「!!あ、アライグマなのだ!可愛いのだあ!こっちきて交尾するのだ!」シッポブンブン

雄のアライグマが現れた。
野良アライさんがこの日本に出現して以来、野生化したアライグマのうち、なぜか雄だけがどんどん増えているという。

アライグマ♂「キュルルルル」パコパコ

検体アライさん1「ああ~気持ちいいのだああ!」

…3日目…

検体アライさん1「…もう…森の中でなんて…暮らせないのだぁ…」ヘトヘト

検体アライさん1は、森の中の生活のあまりの過酷さに心が折れたのか…

最初にトラックで来た車道へ戻ってきた。

すると…

検体アライさん2轢死体「」グチャ

検体アライさん1「ひぃ!?し、死んでるのだぁ…!」ビクゥ

先に森から脱出していたと思わしき、検体アライさん2が、車にひかれて死んでいた。

検体アライさん1「も…も…」


検体アライさん1「もうギブアップするのだああああああ!!」

検体アライさん1「おうち帰るのだあああああああ!迎えに来てなのだあああああ!!」シクシク

泣けど喚けど、トラックは来なかった。

検体アライさん1「う、うぅ…」ノソリノソリ

検体アライさん1は、アライさん2の死骸に近寄り…

検体アライさん1「はぐっ、がぶっ、もぐもぐ…」ムシャムシャ

その屍肉を漁った。

肉を食って栄養補給した検体アライさん1だったが…

…5日目…

検体アライさん1「ご…はん…」フラフラ

…ガリガリに痩せ細り、もう見るも無惨な姿となっていた

検体アライさん1「たべ…も…の…」フラフラ

検体アライさん1「うぎゅうぅう」ドサァ

道路の真ん中で、ついに検体アライさん1はうつ伏せに寝転んだ。

自動車「うわっあぶねえなあ」ブーン

自動車が一台、検体アライさん1を避けて通っていった。

自動車「愛車が血で汚れるとこだったぜ」ブーン

検体アライさん1「だれ…が…」

検体アライさん1「みず…ごは……ん……」

検体アライさん1は、脱水症状で動けなくなり…

検体アライさん1「」

…そのまま二度とその場から自力で移動することなく、衰弱死した。

中には、人の畑に辿り着く検体もいた。

検体アライさん3「美味しいのだ!美味しいのだあああ!」ムシャムシャ

検体アライさん3は、野良ではない。

故に『成体になったら人の畑に手を出すな』という、インターンシップのルールを知らない。

だから、堂々と畑に侵入し、野菜を貪る。

尚、この畑持ち主には実験協力の合意を得ており、謝礼金には食われた作物の損失額の倍額を加算して払うことを説明済みである。

検体アライさん3「ん?こっちから、もっといい匂いがするのだあ!」ノソリノソリ

畑のそばの大きな籠の中に、揚げパンが入っているのを見つけた。

検体アライさん3「食べるのだ~!」シャカシャカシャカシャカ

検体アライさん3は、何の疑問も持たず籠に飛び込んだ。

検体アライさん3「はぐがぶぅ!」ガブゥ

そして、揚げパンにかぶりつき…

籠罠「」ガッシャアアン

…籠罠に捕らえられた。

検体アライさん3「のだぁ!?なんなのだああああこれはあああ!のだっ!のだっ!」ガシャンガシャン

野良アライちゃん達と違って、姉妹が罠に捕らえられる所など見たことがない。

野生のネズミですら多少は罠を警戒するが、人間との暮らしに慣れた検体アライさん3には、警戒心など有りはしなかった。

保健所職員「はいはーい回収しますねー」ガラガラ

検体アライさん3「おお、助けに来てくれたのか!これで元の暮らしに戻れるのだ~」ホッ




そんな訳がない。



検体アライさん3「息が苦しいのだああああああああああ!」ドッタンバッタン

検体アライさん3「ぶ…ぐ……」

検体アライさん3「」ビグッビグッ

検体アライさん3は、炭酸ガス室で殺処分された。

無論、これも保健所と連携した実験の一過程である。

安全に殺処分できるかを試すということの。

中には、人間に食べ物をねだるアライさんもいた。

検体アライさん4「うぅ~…お願いなのだ、人さん…。アライさんをペットにしてほしいのだ…」グーギュルルー

JK「キモーイ」スタスタ

検体アライさん4「うぅー!食べ物よこせー!」ガバッ

JK「寄んなきめーんだよ!」ドガァ

検体アライさん4「いだいのだああ!」ドサァ

検体アライさん4「うっ…うっ…なんでぇ…。チビの頃は、研究員のみんな、アライさんに優しくしてくれた、のにぃ…」ブルブル

検体アライさん4「研究員…さん…。自由なんかいらない…のだ…たすて…て…なの…だ…」ブルブル

検体アライさん4「」ガクゥ

検体アライさん4も、やがて力尽きた。

脛から下が無く、サバイバル知識もない検体アライさん達。

もはや、生き抜くための武器は何も無いのであろうか。

いや…たった1つ、最後に残った唯一の武器がある。




アラしこ民「あーーーーーーーーーーーーーーめちゃシコ!!!」パコパコ

検体アライさん5「のだっ!のだっ!あー気持ちいいのだああ!」アヘアヘ


…『容姿』である。


成体アライさんの姿は、耳と尻尾を無視すれば、人間の女子中学生とさほど変わらない。


故に、ちょっと倫理崩壊気味の男性に、よくしてもらうチャンスがある。

アラしこ民「ふぅ…気持ち良かったよ。はい、ご飯だよ」ドサドサ

検体アライさん5「美味しいのだあ!美味しいのだあ!」ムシャムシャ

検体アライさん5は、男の手作りとみられるおにぎりをたくさん食べた。

検体アライさん5「ふぅ~大満足なのだ。人間、アライさんをお前のペットにしてほしいのだ!」

アラしこ民「ああ^~するする!こっちおいで」スタスタ

男は、検体アライさん5を車に乗せた。

アラしこ民「さあ、俺の家においで…」ブーン

検体アライさん5「やっと新しい飼い主さんが見つかったのだ…もう自然の中はこりごりなのだ…」

一人と一匹は、男のアパートへ入っていった…。



研究員「…」スタスタ

…そのアパートへ、研究員が近付いてきた。

ピンポーン

アラしこ民「はい」ガチャ

研究員「あの、すいません…。そのアライさん、実験中で森で観察してるので…返してください」

アラしこ民「ぜーーーーーーーーーーったいヤダね!!!!!こんな可愛い子、お前に渡すもんか!!!!」

研究員「はぁ…じゃあこうしましょう。そのアライさんのお世話と観察日誌を、研究記録として報告して頂けませんか?謝礼金出しますんで」

アラしこ民「謝礼金!?いーよ!」


その後、アラしこ民はうまく検体アライさん5を飼育し続けることができたようだ。


自然の恐ろしさを嫌というほど味わったせいだろう。

ワガママを言ったり、自由になりたいと駄々をこねたりは、していないとの報告であった。

凶暴化した成体ペットアライさんを、一度自然の中に放すことで、己の無力さを死ぬほど味わわせる。

それは、ペットアライさんのいい教育になるのかもしれない。

その後も、何度も同様の実験が繰り返された。

その結果…


ヨチライフ手術を施された検体アライさんは、一匹として、自然の中で自力で2週間以上生きることはできなかった。

このことから、1つの結論が導き出された。

すなわち…


『ヨチライフ手術を施せば、たとえ脱走したとしても、高額な開腹手術無しに避妊ができる』と。


つまりヨチライフ手術は、脱走した個体が繁殖するのを防止することを目的とした施術なのである。

そして、その効果は幾度もの実験により、十分信頼できるものと結論付けられたのであった。


…これが、ヨチライフ手術義務化の際に行われた検証実験である。

尚、アライドール手術については、このように森へ放す実験は行っていない。


なぜならアライドール手術を行ったアライさんは、二本足で立てるから。


爪がないせいで木登りは下手だが、それでも十分に野良として生きていける身体能力は残っているだろう。
実験をするまでもない。

故にアライドール手術をしたペットアライちゃんは、個人ではなく法人でしか飼育できない。


脱走したペットアライさんが出した被害を、事業主が負担するには、法人の財力が要るからだ。

アライちゃんの開腹避妊手術ができる獣医はまだまだ少ない。

そのため、一度の施術には犬や猫の避妊手術の2倍…3万円が必要となる。

それに加えて、牙と爪を生えないようにする手術は1万円。

アライちゃんが生まれて間もないうちに施術をするなら、費用合計は4万円。


つまり、アライドール手術をしたペットアライちゃんは、嫌が応にも最低価格が4万円スタートになってしまうのである。


だが、それでもアライドール手術済みアライちゃんを購入し、事業へ利用する法人は多い。

大盛況のアライカフェ等は、1匹のアライちゃんで、購入費用のウン十倍ウン百倍の利益を叩き出すという噂もある…。

無論、個人で飼育するとしたら、最低4万円スタートのアライドールアライちゃんは高過ぎる。

脱走したときのリスクも大きい。

故に、個人飼育用として、安上がりなヨチライフ手術が存在するのである。


尚、アライちゃんの飼育については、手術の他にも『アライ縄張り法』という法律がある。

ペットアライちゃんがアライしゃん以降にまで育った場合、必ずケージに入れるか、鍵付き首輪で家の敷地内に繋いで育てなくてはならない、という法律だ。


家の中で放し飼いにしていると、窓やドアの鍵を勝手に開けて脱走する危険性があるため、それを防止することが目的だ。

いつぞやの『クリーナ』という個体のように、家の中で放し飼いにするのは、れっきとした違法行為なのである。


いずれ、アライ縄張り法について詳しく説明する機会があるかもしれない。

さて…
前置きが長くなったが。


そろそろ、あの話の続きを語るときが来たようだ。

皆さんは覚えているだろうか。
3スレ目の666-739あたりで登場した、ペットアライちゃん1の話。

アライちゃん工場で産まれ、離乳食を食べ、言葉を覚え…

『自分は飼い主を喜ばせるために作られた道具である』と、繰り返し洗脳教育をされた個体を。

アライ飼い主が飼った、最初の一匹となった個体を。

どうやら、あのアライちゃんの『その後』を語るときがきたようだ。

続きはまた、次回綴るとしよう。

つづく



~飼い主男の家~

アライちゃん1「なのりゃ~!」シッポフリフリ

飼い主男「おーよしよし」ナデナデ

工場での教育を終え、ペットショップで無事に飼い主に購入されたアライちゃん1。

どうやら、優しい飼い主のもとに飼われたようだ。

飼い主男「ほら、ドッグフードだぞ」サッ

アライちゃん1「いただきましゅなのりゃ~!あむあむあむ!」モグモグ

ペット工場で食わせられていた不味い餌よりもずっと美味しかった。

アライちゃん1「ぷはー!ごちそーさまなのりゃ~!かいぬししゃんしゅきしゅきなのりゃあ~!≧∀≦」スリスリ

アライちゃん1は、飼い主に媚びた。

飼い主男「よーしよし、可愛いなあ。よし、お前に名前をつけよう」

アライちゃん1「のりゃ?」

飼い主男「そうだな、じゃあ…。お前の名前は、『アラ助』にしよう」

アライちゃん1「あらしゅけ!あらしゅけなのりゃ~!」シッポフリフリ

アラ助は、散歩に連れていってもらった。

アラ助「う、うゆうぅ…」ヨチヨチヨチヨチ

首輪とリードをつけられて散歩するアラ助は、初めて外界に出たばかりだ。

周りには知らないものがたくさんある。

自動車「ブーン」ブゥーン

アラ助「ぴぃ!?いまのなんなのりゃ!?」ビクゥ

飼い主男「あれは車だよ。俺も持ってる。乗り物だ」

アラ助「うぅ、こわいのりゃ…」プルプル

ハムスター程度の大きさの手乗りサイズであるアラ助には、車は恐ろしい凶器に見えていた。

柴犬「ワンワン!」

おばさん「あっ、こら!吠えちゃだめ!」

アラ助「ぴぃいいいいいっ!こあいのりゃあああ!たべられゆぅううう!」ビクゥ

おばさん「どうもすみませんうちの子が怖がらせてしまって」ペコペコ

飼い主男「いえいえ、まだ赤ちゃんですから。何でも怖がるんですよ。ほら、アラ助、いくぞ」

アラ助「こあい…こあいいい…!」シクシク

飼い主男「仕方ないな。よっと」ヒョイ

飼い主男は、アラ助を抱っこした。
…というより、手に乗せた。

飼い主男「これで安心だろ」スタスタ

アラ助「うゆうぅ~♪かいぬししゃんのおてて、おちつくのりゃ~♪」

外は怖いものばかりだが、きっと飼い主はどんな危険からも自分を守ってくれるはずだ。

アラ助「かいぬししゃ~ん、ずっとずーっといっしょにいるのりゃ♪」スリスリ

飼い主男「ああ」ナデナデ

この先何があろうとも、優しくて頼もしい飼い主の傍を離れまい。
アラ助は、そう固く心に決めた。

飼い主男はいつもの散歩コースから戻り、家についた。

アラ助「かいぬししゃん、おさんぽにつれてってくれてありがとーなのりゃ!」シッポフリフリ

アラ助は、工場で教わった通り、きちんと飼い主にお礼を言った。

自分は飼い主を喜ばせ、癒し、楽しませ、可愛がられるためだけに生きることを許される、一匹では生きていけない弱い弱い生き物。

その一方で、人間である飼い主はこの世で一番偉くて凄い生き物。

下等生物でありペットのアライちゃんよりもはるかに強くて偉大な格上の生き物。

そんな飼い主が、自分のために貴重な時間を割いて散歩に連れていってくれることは、大変有り難い。

飼い主の優しさに感謝しなさい。

…きっちりと教え込まれた通り、アラ助は心の底から飼い主男に感謝した。

飼い主男「お前はいい子だなぁ」ナデナデ

アラ助「のりゃ~♪」スリスリ

アラ助は一日目が終わる頃には、飼い主のことが大好きになっていた。

これからも、うんと褒められて、可愛がられよう。

…アラ助は、これから楽しい日々が続くのだとわくわくしていた。

飼い主男「さて、ケージにお入り」スッ

アラ助「おお~!ここがありゃいしゃんのおうちなのかあ!」シッポフリフリ

ケージの中には、ハムスター用の回し車や、ボール、的当ての的、ふかふかのベッドがあった。

穴の空いた丸太のようなデザインのベッドだ。

アラ助はまるで遊園地に来たかのようにわくわくしていた。

アラ助「わーい!わーい!ありゃいしゃんのべっど♪ふわふわべっど♪もふもふもーふっ♪≧∀≦」モフンモフン

アラ助は、ベッドの穴へ潜り込んだ。

アラ助「ふわふわなのりゃ~!」ヒョコッ

そして、穴から顔を出した。

飼い主男「おやすみ。明日から仕事だ。いい子にしてお留守番してるんだぞ」ナデナデ

アラ助「はいなのりゃ~!おやすみなさいなのりゃ~!」

飼い主は電気を消し、寝室へ去っていった。

アラ助「すぅ…すぅ…」スヤスヤ

~翌朝~

アラ助「すぴ~…すぴ~…。ん、むにゃ…」ムクリ

午前11時頃に、アラ助は目を覚ました。

アライさんは人間に生活リズムを合わせることができるが、基本的に夜行性の生き物。

朝は苦手なようだ。

目覚まし時計「ジリリリリリ!」

アラ助「ぴぃ!?」ビクゥ

ケージの中の目覚まし時計が鳴った。

アラ助「なんなのりゃこれ!うゆしゃいのりゃあ!たあ~!」ポチッ

目覚まし時計「ジリ…」ピタッ

飼い主男「やあ、おはよう」スタスタ

アラ助「かいぬししゃん?このうゆしゃいのなんなのりゃ?」シッポフリフリ

>>488訂正

【誤】
アラ助「すぴ~…すぴ~…。ん、むにゃ…」ムクリ

午前11時頃に、アラ助は目を覚ました。



【正】
アラ助「すぴ~…すぴ~…」スヤスヤ

午前7時。アラ助はベッドですやすやと寝ている。

飼い主男「それは起きる時間を教えてくれる時計だよ。ちゃんと早起きして、偉い偉い」ナデナデ

アラ助「うゆうぅ~♪」スリスリ

頑張って早起きをすれば、いっぱい撫でて貰える。

飼い主に褒めてもらい、愛情を注いで貰える。

これからもきちんと早起きして、いっぱい褒めてもらおう…。

アラ助はそう学習した。

飼い主男「さ、ごはんだぞ」パラパラ

飼い主はケージの中の器へドッグフードを盛り、水差しの水を替えた。

アラ助「ふおぉ~いっぱいなのりゃ!いただきますなのりゃ~!」

アラ助「あむあむあむあむあむあむっ!あむあむあむあむあむあむっ!」ポリポリ

アラ助は、工場で厳しく躾された通りに、口を閉じて食べた。

飼い主男「さて、夕方になったら散歩に連れていってやるからな。仕事に行ってる間、おとなしくしてるんだぞ」スタスタ

アラ助「いってらっしゃいなのりゃ~!≧∀≦」シッポフリフリ

本当は、大好きな飼い主に、仕事になど行ってほしくない。

ずっと自分と一緒にいてほしい。

だが、工場では飼い主へワガママを言うと、嫌われて殺処分されることを何度も繰り返し教わった。

可愛らしくおねだりするのはいいが、断られたらゴネてはならず、素直に従わなくてはならない。

幼い時期のアライちゃんはとても従順である。

本心を圧し殺して、アラ助は飼い主を見送った。

言葉を喋れるようになってからのアライちゃんの学習能力は、驚くほど高い。

さすがに一度で覚えることは難しいが、繰り返し反復して教えることで、様々なことをしっかり覚える。

野良アライちゃんを見ればそれは一目瞭然だ。

『インターンシップ』という、親から言伝てで教わるルールを、大人になってもきちんと暗記している。
(無論、たまに間違えて覚えたり、中途半端に忘れる個体もいるが…)

工場で繰り返し教わった、ペットとしての教育は、しっかりとアラ助の身に付いていた。

アラ助「う、ゆ…ねむく、なったのりゃ…」ウトウト

アラ助「すぴ~…すぴ~…」zzz

目覚まし時計で朝早く起こされたアラ助。

飼い主が仕事に行って暇なので、ベッドに潜って二度寝を始めた。

アラ助「しゅぴぃ~…しゅぴぃ~…」zzz

アラ助「ふおぉお…」チョロチョロ

なんとアラ助は、寝ながらおねしょをしてしまった。

アラ助「うゆぅ!?」ビクッ ムクリ チョロチョロ…

尿意の感覚で目覚めたアラ助。

アラ助「あ…あ…」ビッショビショ

トイレ以外の場所で粗相をしたことに気付いたアラ助。

アラ助「っ…」ガクガクブルブル

これがばれたら、飼い主にどんなひどい目に遭わされるだろうか。

殺処分されてしまうのだろうか。
犬の餌にされるのだろうか。

アラ助「ひ…ひいいぃぃいっ…」ガクガクブルブル

アラ助は、己の末路を想像し、ひどく恐怖した。

アラ助「ど…どうすればいいのりゃ…」ガクガクブルブル

アラ助は、工場での経験を思い出した。

工場にいたころも、何度かおねしょをしてしまったことがある。

その度に、飼育員にきつく叱られ、罰として食事を減らされた。

自分から報告し、ごめんなさいと謝れば、あまり減らされなかったが…

誤魔化そうとして隠し、漏らしてないと嘘をついたときは、全て見破られ、その日の食事はすべて没収された。

アラ助「っ…」ガクガクブルブル

何度も繰り返し教わった。

間違いは誰にでもあることだ。

だが、保身のためにそれを隠蔽したり、改善せずに怠けたり、間違いを認めずに周りのせいにする者は…

脳に欠陥のある『出来損ない』であり、生きている価値が無い殺処分されるべき存在だと、そう教わった。

間違いを素直に認めて、飼い主に自分から謝り、繰り返さないように改善する…。

それができる個体だけが、最低限生きていく価値のある『並の、マトモな』ペットであると。

アラ助「ぴぃ…ぴいいぃい…!」ブルブル

見せしめに目の前で殺された『出来損ない』の姿が脳裏に浮かぶ。

自分はああなりたくない…。

アラ助「しにだぐない…しにだぐないいい…!ひぐっ…ぐしゅっ…!」シクシク

アラ助「のぁああああーーーんっ!のおおぉぉーーーぁああああーーーんっ!」ビエエエエン

ただのおねしょ一回だが、アラ助は死の恐怖に震えていた。

アラ助「っ…」キョロキョロ

謝ったからといって、飼い主は自分を許してくれるだろうか。

このケージを脱け出し、飼い主のもとから逃げ出せば、殺されずに、罰を受けずに済むだろうか?

アラ助「うぅ…ぅううぅ…」ガクガクブルブル

いや、野垂れ死ぬだけだろう。
自分は弱い弱い生き物なのだから。

もはや、アラ助に選択肢はなかった。

…夜…

アラ助「ごめんなさいなのりゃ…かいぬししゃんっ…もうしないから…いーこにしゅゆからぁっ…ころさないでぇっ…」ブルブル

飼い主男「…」

アラ助は震えながら、飼い主男に謝った。

飼い主男「…」

アラ助「ひぐっ…ぐしゅっ…」ブルブルプルプル

どう返答すべきなのか…飼い主男は迷った。

目の前のペットは、明らかに自分を恐れている。

涙を流し、絶望的な表情で、震えている。

そして、きちんと謝り、もうしないと宣言している。

飼い主男「…」

ペットアライちゃんと人間の子供は、思考にどんな違いがあるのだろうか。

自分のペットを、どこまで動物扱いしてよいのだろうか。

人間との扱いの線引きはどこにあるのだろうか。

厳しく罰を与えるべきなのだろうか。

優しく許してあげるべきなのだろうか。

…アラ助は、飼い主男の子供ではない。

というか、人間ですらない。

あくまでもペット。
そう、愛玩動物なのである。

初めて飼育するペットアライちゃんに、『可愛がる』以外の場面でどう接するべきなのか…?

飼い主男は、頭を悩ませた。

つづく

人が人に、自分の言うことを聞かせるには、どうすればよいだろうか。

そのアプローチ方法は、大きく分けて4つに集約される。

1つ目は、規則と罰、そして恐怖によって行動を支配するというものだ。

法律や、独裁政権の圧政、暴力団の上下関係がこれに当てはまる。

命令に従わなければ罰を与え、財産を没収したり、拘束したり、体罰を与えたり、社会的な将来性を絶たれたり…
場合によっては、殺したりする。

この方法には、非常に低コストで命令に従わせられるという利点がある。

だが、革命や反乱によって上下関係が崩れた時、復讐としてこれまで味わわせてきた以上の苦しみを味わわされることになるであろう。

2つ目は、報酬の対価として労働させるというもの。

企業が労働者を働かせるのがこのパターンだ。

この方法には、指示者と被命令者が良好な関係を築き、互いに助け合えるという利点がある。

さらに、恐怖による支配と違って労働者には余裕と自由があるため、成果向上のために自ら率先して工夫をする可能性も期待できる。

しかしながら、労働者へ与える報酬を用意しなくてはならない。

更に、その報酬は、労働者が納得するものでなくては、この働かせ方はできないのである。

人間であれば、金銭を渡せば間違いないだろうが…

農家で余った柿が報酬だよ、などと言っても、従う者はいないだろう。

3つ目は、カリスマによって従わせるというもの。

強烈な魅力で虜にし、応援したくなる気持ちで掻き立てることで、無償で手を借りようというものだ。

クラウドファンディングであったり、あるいは街頭やネット上で呼び掛けて有志を募り、共に活動する…などの例があるだろう。

だが、これを狙ってうまくいくことなど稀である。

人々に夢を与えるセンスと信頼、人柄が揃っていなくては、実現は難しいだろう。

そして最後に、4つめ…
「良心に委ねる」というものだ。

これはボランティア参加者の募集であったり、ゴミのポイ捨て防止の啓蒙活動であったり…

基本的に、実利を伴わない活動に依るものである。

向上心や自尊心が高く、自ら良くあろうと心掛ける者ならば、賛同し動いてくれることもあるだろう。

だが、それは理想論だ。

実際には、ゴミやタバコの吸殻、空き缶をポイ捨てする者などザラである。

自発的に良くあろうとする意識がない者などこの世にはいくらでもいる。

そして彼らは、決して少数派などではない。

…そんな者達を、『良心に委ねる』つもりで意のままに従わせようとしても、動くはずがないのである。

これら4つが、人が人に対して、自分の言うことを聞かせるための四大アプローチだ。

そしてこれは、そのまま人ならざるもの…

動物や、アライちゃんに対しても通用する。

どうにかしてアライちゃんへ言うことを聞かせたいならば、この四つのうちいずれのアプローチをとるか、明確にしなくてはならない。

…いや…
実際は三択だ。

何故なら『良心に委ねる』ことで従う可能性は、とうてい期待できやしないからだ。

それは一体何故か?


その答えは…

『アライさんが本質的にワルモノだから』
『アライさんは人間でなく害獣だから』

…と決めつけるのは、いささか短絡的であり、早計だ。

ある命題が正しいかを検証するには、その待遇をとればよい。

つまり、『アライさんは人間でなく害獣だから良心が無く、良識を守らない』という命題の待遇は、すなわち『害獣でない人間ならば良心があり、良識を守る』となる。

この待遇となる命題は、果たして正しいと言えるだろうか?

アライさんでなく人間ならば、その良心に委ねることで、必ず良識を守った行動をとるのだろうか?

アラ助「かいぬししゃんっ…もーおねしょしないから…しないからああっ…!こよしゃないでええっ…!」ブルブルウルウル

飼い主男「………」

おねしょをしたことを、素直に謝り、反省を誓うアラ助。

その態度は立派なものだ。
きちんと工場で教わった通りの心がけをしているのだろう。

表面的には、その態度は明らかに善良な振る舞いといえる。

少なくとも、野良アライちゃんならば絶対に見せない態度といえる。

では…

アラ助は、そんな善良な態度を、『何故』とっているのであろうか?

己の良心に従っているからであろうか。

工場は、先程の四つのアプローチのうち…
どの方法を選択し、アラ助に言うことを聞かせているのだろうか…。

つづく

人間は成長する過程でいろんなアプローチはあるけど結局は、たいてい「大人」になる。
現実社会との折り合いをつけていく。

アラ助が従順なのは基本「1」なのかな。

社会性は野良アライちゃんを見ても結局育っていなさそうだから。
ペットアライちゃんも結局は教えられ、罰を与えられるから従うだけで、
実際の他者との衝突で罪悪感を得ているわけではなさそうだから。


アライさんが成長とともに傲岸不遜になっていく(アニメの「アライさん」になる)のは、
社会性が育たなくて「2」に当てはまらず、成獣になっていくことで「3」が自分をカリスマとして自己崇拝し始め、
体が大きくなっていくとともに「1」を克服して「けもの」になってしまうからなのか。

さげ忘れたのだ・・・・。
作者さんごめんなさいなのだ

飼い主男「…」

飼い主男は、職場ではそれなりの役職の男である。

彼は感情的にならず、冷静であった。

飼い主男「なんでおねしょしちゃったんだ?」

アラ助「ぴぃ!?」

飼い主男「もうやらないと言っても、原因が分からないと対策もできないだろう。…どうしておねしょしちゃったんだ?」

アラ助「ご、ごめんなさいなのりゃあ…!うゆぅ…なんでって…わかんないのりゃあ…」プルプル

飼い主男「…」

そりゃそうだ。
自分がなぜおねしょしたか、どうすれば対策できるか。

アライちゃんでなくとも、人間の幼児ですらそれを自力で考えるのは難しいだろう。

アラ助「ありゃいしゃんがわゆかったのりゃあ…」

飼い主男「…」

『自分が悪かった』と認め、謝る行為。

一見すると、誠実で立派な振る舞いのようにも見える。

だが飼い主男にとっては、そこで終わってしまうのは逆に不誠実な行為に思えていた。

謝った後の、繰り返さないための行動こそが最も肝心だと、飼い主男は考えるの。

『自分が悪い』と言い、自分を責めて己の人格否定へと話をすり替えるのは、それこそ不誠実であると。

反省とは、己の過ちを責めて戒めるために行うのではない。
己の過ちを認め、改善し、二度と繰り返さないように知恵をつけるために行うのだと。

アラ助「かいぬししゃん…ありゃしゅけ、どーすればいいのりゃあ…?もーおねしょしたくないのりゃあ…!」シッポフリフリ

飼い主男「…」

だが、我が子ならともかく、子犬や子猫等のペットにそこまでしっかりと反省させる飼い主などいるまい。

そして、アラ助は紛れもなくペットである。
それ以上でも以下でもない。

飼い主男「…次からは気を付けるんだぞ」

アラ助「はいなのりゃー!」シッポフリフリ

…結局、飼い主男は、曖昧にしたまま叱るのを終えた。

その日の夕方、飼い主男はアラ助を散歩に連れていった。


~公園~

アラ助「なのりゃー!」ヨチヨチヨチヨチ

飼い主男「運動は大事だぞ」スタスタ

リードを引いて、アラ助と一緒に散歩する飼い主。

すると、そこへ…

おじさん「おや、こんばんは」スタスタ

子アライグマ「キュルルルル」ヨチヨチヨチヨチ

飼い主男「ああ、どうも」ペコリ

アラ助「…!」ピタリ

ペットの子アライグマを連れて散歩しているおじさんがいた。

…アライグマ。

今、日本でもそれなりに人気のあるペットだ。

大分前に、「あらいぐまブツカル」というアニメの大ブームにより、アメリカから輸入されてきたペット。

幼少期はよくなつくが、成体になるとひどく狂暴になり、飼えなくなって自然へ逃がす飼い主が多発した。

政府は、アライグマのペットとしての飼育を禁止することも考えたが…

ペット業者たちの間で構築された『アライグマの楽園システム』のおかげで、幼少期の人懐っこい頃だけ飼育することが可能になった。

また、アライグマの楽園システムによる選別で、ほんの少しずるペットアライグマは品種改良が進み、最初に日本へ来た時よりも大人しくなりつつあるという。

…そう。
アライさんの楽園システムは、『アライグマの楽園システム』を流用したものである。

アラ助「なのりゃー!≧∀≦」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

アライグマ♀「キュルルルル」スリスリ

このアライグマは雌のようだ。

アラ助と頬擦りしたり、毛繕いをし合ったりしている。

飼い主男「ほら、もう行くぞ」クイクイ

アラ助「うゆぅ!もっとあそびた…」ピクッ

アラ助は我が儘を言おうとしたが、途中で青い顔をした。

アラ助「…ぴぃ!ごめんなさいなのりゃあ!わがままいわないのりゃああ!。≧д≦。」 プルプル

飼い主男「よしよし、いい子だ。行くぞ。では、また…」スタスタ

おじさん「どうもでーす」スタスタ

子アライグマ♀「キュルルルル!キュルルルル!」ズルズル

アラ助「…」ヨチヨチチラッヨチヨチチラッヨチヨチチラッ

アラ助は、ちらちらと後ろを振り返りながら進む。

…どうやら、飼い主男以外の遊び相手との別れを惜しんでいるようだ…。

つづく



~ある休日~

絹男「なあ飼い主男、うちの蚕小屋に害獣が住み着いてるみたいなんだ…。いい業者知らねえか?」

飼い主男「害獣…やっぱりアライちゃんか」

絹男「そーなんだよ!あークソ!」

飼い主男「うーん…ネットで探してみたか?」

絹男「ああ…でも高いんだな、ああいう業者に頼むと」

飼い主男「ケチってても仕方ないだろ…」

絹男「うー…!…とにかく見に来てくれよ!」

飼い主男「ふむ…そうだ。うちのペット連れてっていいか?何かの役に立つかも」

絹男「ああいいぞ、害にならないならな…」

飼い主男は一旦家に戻ると、アラ助を車に乗せて、絹男の蚕小屋へ向かった。

~蚕小屋~

アラ助「おおー!はじめてかいだにおいなのりゃー!ここなんなのりゃ?」シッポフリフリ

飼い主男「ここは蚕小屋。虫を育ててるんだ」

アラ助「むししゃん?」シッポフリフリ

絹男「うわ、見ろよ!糞が落ちてやがる!どこだ…?やっぱ住み着いてんだ…」

アラ助「なのりゃー」ヨチヨチ

アラ助は、蚕小屋の柱を登ろうとするが…

アラ助「う~」コスリコスリ

ヨチライフ手術済みのペットアライちゃんであるアラ助に、木登りはできない。

飼い主男「見るか?よっと」ヒョイ

アラ助「おおー!」

アラ助の目の前には…


蚕たち「むしゃむしゃ…」ウゾウゾ


…大量の蚕が、桑の葉を貪っているのが見えた。

アラ助「むしいーっぱいいゆのりゃあ!」

アラ助は興味津々なようだ。

アラ助「かいぬししゃん!あのむしどーしゅゆのりゃ?たべゆのか?」シッポフリフリ

絹男「チッ(舌打ち)」

飼い主男「違う違う。食べ物じゃない。こいつらは成長すると、繭を張って蛹になるんだ」

アラ助「さなぎ…」

散歩中に、芋虫や蛹を見たことがあるアラ助。

アラ助「これちょーちょになゆのりゃ!?きれーにぱたぱたとぶのりゃ~!≧∀≦」シッポフリフリ

飼い主男「…」



絹男「…いいや、飛べねえよ。こいつらは」

アラ助「うゆ?なんでなのりゃ?」クビカシゲ

絹男「見ろ、これが繭だ。この繭を取って、糸にするんだ」スッ

繭「」

絹男は、窓際で天日干しにされ乾燥させられている蚕の繭をいくつか見せた。

どうやら今は、蚕の終齢幼虫が繭になりはじめる時期らしい。

アラ助「おおー!きれーなのりゃ!これをぶちやぶっておとなのちょーちょでてくゆのりゃ!」シッポフリフリ

アラ助は繭から蚕の幼虫達へと視線を移した。

アラ助「あれはあかちゃんなのりゃ!あらしゅけとおんなじなのりゃ~!いっぱいごはんたべておーきくなって、りっぱなおとなになゆのりゃー!≧∀≦」ワクワク

絹男「いやいや。こいつらが立派な大人になったら…繭が破れちまうだろ」

アラ助「うゆぅ」コクコク

絹男「そうしたら糸は取れない。せっかく今まで育ててきたのが水の泡だ。だから…」



絹男「…殺すんだよ、こんな風に」パッ

繭たち「」ボチャンボチャンボチャン

繭は、お湯を張ったタライに落とされた。

アラ助「ぴっ…!?」ビクゥ

蚕に自己投影していたアラ助は、突然の出来事にビビった。

繭「」プカプカ

これらの繭は、10日目あたりに冷凍され、その後乾燥させられていたものである。

つまり、お湯に沈められる前からとっくに死んでいた。

アラ助「うゆうぅ!?なんで!?なんでこよちたのりゃあ!?おとなになゆとこだったのにぃい!?」

アラ助は、自分の姿を重ねていた蚕が目の前で殺された(ように見えた)ためか、ひどく狼狽えている。

アライさんは、人間に比べて共感能力が低い生き物である。

だがそれでも、幼い頃は育ての親に可愛がってもらうために、それなりに顔色を伺う力はある。

すなわち、幼い頃は、成体よりも共感能力が強いといえる。

絹男「さっき言っただろ。こいつらは大人になっちまったらもう価値がなくなるんだ。そうなる前に…価値があるうちに殺すんだ。糸をとるために」

アラ助「で、でも、でも!そのいもむしは!おとなになゆためにごはんくっておーきくなったのりゃ!そのまゆも、うぅ、おとなになりたいからつくったんじゃないのりゃ…?」コスリコスリ

飼い主男「…アライちゃんもいろいろ考えるんだな…意外だ」

絹男「…そうかもな。こいつらは、大人になりたいのかもな」

アラ助「な、なら…!」

絹男「さっきから何度も言ってるが…だからといって、こいつらが大人になりたいからといって…大人になられると、困るんだ」ホグシホグシ

絹男は、繭をほぐして絹糸をとっている。

ほどけた繭から、ミイラのようになった蛹がぼろりとこぼれ、お湯にぷかぷかと浮いた。

絹男「確かにこいつらが葉っぱを食い、繭を作るのは、大人になるためだろう」

絹男「俺たちは、それを利用する。こいつらが大人になろうとするために作る『副産物』である繭…。それだけが欲しい。その『副産物』をとるためだけに、こいつらを育てている」

アラ助「う、うゆうぅ…わかんないのりゃあ…」ピヨピヨ

アラ助はそろそろ話についてこれなくなっている。

しょせんは幼獣、赤ちゃんの頭である。
あまり難しい話をされるとついてこれないようだ。

飼い主男「…絹男、あんまりそういう話は…」

絹男「おっと、まずいか?」

飼い主男「…もし蚕たちが自分が育てられている理由を知ったら、みんな一目散に逃げていくかもな」

絹男「はは、違いないな。自分が殺されると分かっていたら、こんなとこいられないだろ」

飼い主男「だが、こいつらにそんなことは気付けはしない。餌を与えられ、大事に育てられているのは、立派な大人に育てて貰うためだと信じて疑わない」

絹男「虫にそんなこと考える頭はねえだろうけど…まあ、そういうことだな。だからこそ、逃げ出さずに小屋の中で大人しくしているわけだ」

絹男「…もっとも、逃げようにも逃げられないだろうけどな。きちんと囲って、脱走防止はしてるから…。ま、逃げないだろうけど」

アラ助「うゆぅ…かいぬししゃん…」ヨチヨチ ギューッ

アラ助はなんだか怖くなり、飼い主男の足にしがみついた。

飼い主男「おーよしよし」ヒョイッ

飼い主男は、ハムスターよりちょっと大きい程度のサイズであるアラ助を拾い、優しく胸に抱いた。

アラ助「な~のりゃ~♪かいぬししゃん、しゅきしゅきなのりゃあ~♪」スリスリ

飼い主男「おーよしよし。可愛いなぁ」ナデナデ

アラ助は、大好きな飼い主にたくさん甘えた。

どんなに不安でも、どんなに怖いことがあっても。

飼い主は自分を守ってくれる。

己が非力で、一人では生きられない、脆弱な存在だと自覚しているアラ助。

自分を育ててくれている飼い主男が、本当に本当に大好きなようだ。

もっと飼い主に愛されたい。

もっと飼い主に可愛がられたい。

だからアラ助は、芸を覚えたり、飼い主の機嫌を取って、気を引く。

飼い主に好かれるために。

いや…



…自分が、生きていくために。

飼い主男「えーと、で…」

絹男「ああそうだ。アラ助…だっけ?お前鼻いいんだろ。これと同じニオイ、どっかからしてこないか?」スッ

絹男は、床に落ちている糞を指差した。

飼い主男「どうだ?」スッ

飼い主男は、アラ助を床に置いた。

アラ助「ん?くんくん…」クンクン

アラ助は、大便のにおいを嗅いでいる。

アラ助「うぅ~…?こっち、なのりゃ…?」ヨチヨチヨチヨチ

アラ助は、小屋から出ようとしている。

絹男「んん…?」ノソリノソリ

飼い主男「…」ソソクサ

二人は、足音を立てないようにしてアラ助のうしろをついていく。

アラ助「のりゃ!のりゃ!」ヨチヨチヨチヨチ

アラ助は、小屋の裏…納屋の方へ向かって這っている。

やがて、納屋の壁のとこで急に止まった。

アラ助「きゅるるるる!おともだちなのりゃ?」コスリコスリ

アラ助は、小屋の壁に向かって喋りかけた。

すると…

野良アライちゃん「うぅ?だれなのりゃ?はぐはぐ…」モゾモゾ

…壁の下の地面に空いた穴から、蚕の幼虫を咀嚼しているアライちゃんが、ぬっと顔を出した。

つづく

アラ助「のりゃー!ありゃしゅけとおんなじかおなのりゃ!」シッポフリフリ

野良アライちゃん「うぅ~、かわったにおいなのりゃ」クンクン

野良アライちゃんは、巣穴から這い出てきた。

アラ助「いっしょにあそぶのりゃー!≧∀≦」シッポフリフリ

野良アライちゃん「うぅ?あそぶのか?あそぶのりゃー!くちゃくちゃ、ごっくん!」ゴクン

野良アライちゃんは、食ってる途中の蚕の幼虫を飲み込んだ。

アライちゃんは、野良もペットも遊ぶことが大好きである。

なぜなら、子供は遊ぶものだ…
…というアレではなく。

遊びとは、高度な知能を有する生き物にとって、知能の発達に必要不可欠な行為といわれている。

好奇心を充足させ、探求心を満足させ、新たな運動行動を身に付けたいという欲求。

それは即ち、『学習』を本能的に行うための習性といえよう。

野良アライちゃん「みんなー!でてくゆのりゃあ!おねーしゃん!いもーとぉー!」シッポフリフリ

野良アライちゃんは、穴の中へ向かって叫んだ。

野良アライちゃん2~4「なのりゃー!」モゾモゾモゾモゾモゾモゾ

穴から、3匹のアライちゃんがぞろぞろと這い出てきた。

…飼い主男と絹男の二人はその様子を、遠くからこっそり見ている。

絹男「な…!くそ、地面にいたのか…!天井裏や木の穴ばっか探してて、盲点だった…!」ヒソヒソ

飼い主男「…」

絹男は、アライちゃんが人間より耳のいい生き物であることを知っている。

自分が潜んでいることに気づかれまいと、小声でひそひそと呟いている。

…怒っているようだが、己を冷静に保っているようだ。

絹男「ぞろぞろぞろぞろと…!よくもうちの蚕たちを…!全員皆殺しに…」ヒソヒソ

飼い主男「…なあ」

絹男「なんだよ?」

飼い主男「…駆除するのはもう少しだけ、待ってくれないか?」ヒソヒソ

絹男「あ?なんで…」ヒソヒソ

飼い主男「…もちろん、あの野良どもがアラ助を虐めようとしたり、あの場から去ろうとしたら、すぐに駆除すればいい」

飼い主男「だけど…」

絹男「…」


野良アライちゃん「おにごっこしゅゆのりゃー!おまえおになー!」ヨチヨチヨチヨチ

アラ助「まてー!まつのりゃー!≧∀≦」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん2~4「ここまでおいでなのりゃー!」ヨチヨチヨチヨチ



飼い主男「…あんなに楽しそうなアラ助の顔は、初めて見たよ…」

絹男「…」

飼い主男「…あいつは、仕事から帰って来た俺に、甘えて、じゃれついて、癒してくれる。どんなに職場の愚痴を吐いても、俺を全面肯定してくれる」

絹男「…話を理解してないからとりあえず頷いて媚を売ってるだけじゃねえか?」

飼い主男「『だとしても』。だとしても…。…いや、『だからこそ』か。…そんな風に、俺を何でも肯定してくれる者なんて、親も前の彼女にもいなかった」

絹男「…」

飼い主男「…俺は救われているんだ、あのペットに」

絹男「…」

飼い主男「だから、今だけは。アラ助への恩返しとして…。遊ばせてやることを許してはくれないか」

絹男「…」



飼い主男は、アラキレスの飼い主であるバイトのようなサディストではない。

ペ虐動画を投稿し続ける狂人卍のような、動物(?)虐待愛好者でもない。

この日本に生きるごく当たり前の感性を持った男性だ。

そんな彼には、たとえ相手が害獣であっても…。

自分のペットが楽しそうに一緒に遊んでいる『お友達』を、この場で即殺処分するという非情な判断はできなかった。

絹男「…ちょっと道具持ってくる。見張っててくれ」スタスタ

飼い主男「…ありがとう」

飼い主男は、野良アライちゃんを見張った。

いや…

ペットのアラ助を見守った。

もしも虐められるようなことがあったら、即座に駆け付けるつもりだ。



野良アライちゃん2「おまえあしおそいのりゃ!おにごっこよわいのりゃー」シッポフリフリ

野良アライちゃん3「おしゅもーもよわいのりゃ」シッポフリフリ

アラ助「うぅ~、だったら、しっぽのてにすしゅゆのりゃ!たあ~!」ペチッ コロコロ

アラ助は地面に転がっている松ぼっくりを尻尾で弾いた。

野良アライちゃん2「たあ~!たのちーのりゃあ!」ペチッ コロコロ

野良アライちゃん4「おぉ~!こんなおもちよいあそびはじめてなのりゃ!おかーしゃんもしらなかったのりゃ!」ペチッ コロコロ

野良アライちゃん3「いーおともだちができてうれしーのりゃあ!たあ~!」ペチッ コロコロ

アラ助&野良アライちゃん2~4「「たのちーのりゃあ~!≧∀≦」」



飼い主男「…」

アラ助の屈託のない笑顔。

それを見た飼い主は、やはり普段アラ助を退屈させてしまっているのだということを、嫌でも実感できてしまった。

野良アライちゃん3「おぉ~!このあそび、きのこしまいもよんでやゆのりゃあ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん3は、倉庫の壁の方へ向かった。

アラ助「きのこしまい?」

野良アライちゃん「しらないのか?このへんには、あらいしゃんたちのほかにも、もーひとりしまいがすんでゆのりゃ。それがきのこしまいなのりゃ!」

野良アライちゃん3「おーい、きのこしま…うゆ!?」ヨチヨチヨチヨチ

茸取りアライちゃん1「きゅるるる!おまえたち、さっきからおもしろそーなあそびしてゆのりゃ!」モゾモゾ
ヨチヨチヨチヨチ

倉庫の壁の下の地面に空いた巣穴から、アライちゃんがぴょこっと顔を出した。

どうやら先ほどから、アラ助たちの様子を伺っていたようだ。

茸取りアライちゃん2「ありゃいしゃんたちもまぜてなのりゃ~!」ガサガサッ ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん「うゆ!きのこしまいきたのりゃー!」

茸取りアライちゃん1「いもむししまい、それありゃいしゃんたちにもやらせゆのりゃあ!」シッポフリフリ

茸取りアライちゃん2「あっそび♪あっそび♪たのちーあそび♪」ヨチヨチシッポフリフリ

アラ助「すごいのりゃ、おともだちいーっぱいなのりゃあ!よーし、じゃあちっぽのさっかーやゆのりゃ!ずっとやってみたかったのりゃ!」

野良アライちゃん達「なにー!?もっとたのちーあそびあゆのかあ!?」キラキラ

野良アライちゃん達はキラキラと目を輝かせている。

1匹のペットと6匹の野良は、わいわいと無邪気に、楽しそうに遊んでいる。

絹男「…もうすぐ40分だ。もういいだろ。…ほら、パンくずだ」スッ

飼い主男「…ああ」ガシィ

絹男は、右手に持っているパンくずの入った袋を、飼い主男へ手渡した。

その左手には、なにかの道具を持っていた。

絹男「大丈夫か?虐められたり、共食いされたりしなかったか?野良アライちゃん達って共食いするんだろ」

飼い主男「…大丈夫だったよ」

絹男「…今日は助かった。いつかまたアラ助連れてきてくれ」

飼い主男「ああ」スタスタ

飼い主男は、パンくずを持って、アライちゃん達の方へ向かった。

野良アライちゃん「ぴぃ!?ひとしゃんなのりゃ!」ビクゥ

茸取りアライちゃん1「に、にげゆのりゃあ!」ビクゥ

野良アライちゃん達は、飼い主男が来たのに気づいた。
警戒し、逃げようとしている。

アラ助「うゆ、かいぬししゃん!だいじょーぶなのりゃ、かいぬししゃんはやさしくていだいなんだぞぉ!」ヨチヨチ

アラ助「かいぬししゃーん!のりゃっ!のりゃっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

アラ助は嬉しそうに飼い主男のほうへ這い寄ってくる。

つづく

乙乙
寂しさ対策でアライちゃんなら多頭飼いでも躾次第でいけそう

>>573 ヨチライフ手術は忘れずにね?

アライちゃん「やめるのりゃ!あらいしゃんのあしとらないでほしいのりゃ!」ジタバタ

???「君に最初から主導権があるとでも思っていたのかい?(○??v??○)

飼い主男「お~よしよし、パン食うか」スッ

飼い主男はパンくずを差し出した。

アラ助「いただきましゅなのりゃあ~!はぐ!はぐ!あむあむあむあむっ!んん~!おいちいのりゃあ~っ!(≧'ω(≦ )」ムシャムシャモグモグ

アラ助はいつも通り口を閉じ、クチャクチャ音を鳴らさずに食べた。

ペットアライちゃん工場の職員が厳しく躾した成果の賜物である。

野良アライちゃん「うぅ…」グーギュルルー

茸取りアライちゃん1「きのこよりおいちそーなのりゃあ…」グーギュルルー

飼い主男「君たちも食べるかい?」スッ

野良アライちゃん2「い…いいのかあ!?」

飼い主男「よいしょ」ポイッ

飼い主男は、パンくずを入れた袋を投げた。

袋は地面に落ちた。

野良アライちゃん達「「「なのりゃああああ~~~~~~っ!!!!≧∀≦」」」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん達は、パンくずの入った袋へ猪突猛進した。

野良アライちゃん「はぐっ!はぐっ!」ムシャムシャモグモグ

野良アライちゃん2「おいちーのりゃあ!いもむしよりおいっちーのりゃああ!」クッチャクッチャ

野良アライちゃん3「あぐあぐ、むふぅ、クチャクチャクチャクチャ」

野良アライちゃん4「あむあむあむあむあむあむっ!あむあむあむあむっ!」ムシャムシャモグモグ

一方の野良アライちゃん達は、パンくずを一心不乱にクチャクチャとむさぼっている。

別に野良アライさんの全てがクチャラーというわけではない。

だが、アライさん自身は他人のクチャラー音を全く気にしないため、この汚い咀嚼音を立てていることが良くないということにすら気付くことができない。

茸取りアライちゃん1「ありゃいしゃんのなのりゃあ!はぐがぶ!」クッチャクッチャ

茸取りアライちゃん2「ありゃいしゃんももっとたべゆのりゃあ!あむあむ!」クッチャクッチャ

飼い主男「…アラ助、帰るぞ」ガシィ ヒョイッ

アラ助「うゆぅ!?」

飼い主男「っ…」タタタタタタタ

飼い主男は走って自家用車のところへ向かう。

アラ助「うゆぅ…!」チラッチラッ

アラ助は、本当はまだまだ野良アライちゃん達と遊びたかった。

だが、わがままを言わないように、徹底的に教育…いや、『調教』…
…否、『洗脳』されている。

アラ助「…またここつれてきてほちーのりゃ」ギューッ

飼い主男「ああ。また連れてくるよ。またお友達を探すといい」スタスタ

飼い主男は、アラ助を助手席へ乗せ、車を走らせて蚕小屋から去っていった。

野良アライちゃん「げぷぅ、たべたのりゃ~」シッポフリフリ

野良アライちゃん2「そろそろおうちかえっておねむしゅゆのりゃ…」クルッ

野良アライちゃん2は、巣穴がある壁の方を向いた。

野良アライちゃん2「ぴぃ!?」ビクゥ

野良アライちゃん3「どーちたのりゃ?」

野良アライちゃん2「あ、ありいしゃんたちの、おうちが…」ユビサシ

アライちゃん達の棲み家である、壁の巣穴は…



https://i.imgur.com/wGOEzcD.jpg


…いつの間にか、コンクリートブロックが置かれて塞がれていた。

つづく

野良アライちゃん1「な…なんで…」

その時。

???「ヴィィイイイイインィイイイインインインィイイイイインヴィイイイイイインッ!!!!」ギュィイイイイイイイ

突如、野良アライちゃん1の近くで機械の高速駆動音が鳴った。

野良アライちゃん1「ぴぃ!?」クルッ

振り返った野良アライちゃん1の目の前にあったのは、高速で回転する円盤だ。


それは…



https://i.imgur.com/IR9CXmr.jpg

絹男「だらぁ!」ヴィイイイン

それは、レインコートを着てバイク用ヘルメットを装着した絹男が持つ草刈機の刃であった。

ヘルメットはこんな↓感じで、目は透明なシールドで保護されている。
https://i.imgur.com/B4r9vAG.jpg

野良アライちゃん1「じびぎゅ!」ブヂャアアアグシャアアッ

野良アライちゃん1は、草刈機で一瞬のうちに首を切断された。

野良アライちゃん1の頭「」ドチャッ ゴロン

野良アライちゃん1の体「」ドサァ ビグンッビグググッジタバタジタバタビビグンビッタンバッタンシッポフリフリフリフリフリフリビビグンジタバタ

首を刎ねられた野良アライちゃん1の体は、小便を漏らしながら手足と尻尾をばたつかせ、魚のように地面を跳ねた。

野良アライちゃん2「≦∀≧」!?
野良アライちゃん3「≦∀≧」!?
野良アライちゃん4「≦∀≧」!?
茸取りアライちゃん1「≦∀≧」!?
茸取りアライちゃん2「≦∀≧」!?

野良アライちゃん達は、何が起こったのか理解できていないようだ。

だが、徐々に顔が青ざめ始め、仲間の死を理解したようだ。

絹男「ッ…!」タタタッ ヴィイイイン

絹男は死体には目もくれず、生きた野良アライちゃん達の方へ駆け寄る。

野良アライちゃん達「「「ぴ…ぴぃいいいい~~~~っ!!!にげゆのりゃああああ~~~っ!!」」」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ


インターンシップを始めて間もない野良アライちゃんの中には、自分は最強であり何でもやっつけられると勘違いする個体もいるらしい。

だが、そんな自信過剰な自惚れ屋は、1ヶ月以内に野良猫やカラスに戦いを挑み、捕食され命を落とす。

そんな無惨な姉妹の姿を見た生き残り達は、日々の厳しい生活の中で、自分達が貧弱極まりない生き物だと嫌でも実感する。

敵から生き残るために必要なのは、闘争でなく逃走なのだと心底理解する。

この野良アライちゃん達も同じだ。

仲間の首を一瞬で切断するような相手に、戦いを挑む者などいなかった。

野良アライちゃん2「やなああああああ!やああなああああああああっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん3「ごああいいいいいいいーーーっ!こっちくゆなああああーーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん4「おがーーしゃああああーーーんっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

茸取りアライちゃん1「ぴいぃいいい~~~っ!ぴぃいいいーーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

茸取りアライちゃん2「きちがいなのりゃああああっ!こっちくゆなああああーーーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

突然現れた敵から生き残るために、小さな命達は必死に逃げた。

尻尾を振り、短い手足をヨチヨチと動かし、四つん這いで必死に逃げた。

野良アライちゃん2「たかいとこにげゆのりゃあああっ!」ヨジヨジヨジヨジヨジヨジ

野良アライちゃん3「きのぼりしゅゆにりゃああ~っ!わっちぇ!わっちぇ!」ヨジヨジヨジヨジヨジヨジ

野良アライちゃん2&3「「わっちぇ!わっちぇ!」」ヨジヨジヨジヨジヨジヨジ…

野良アライちゃん2と3は、木の幹をすいすいと登った。

流石アライちゃん、木登りは大得意だ。
高いところへ逃げ切れば、猫はともかく犬やドブネズミ、素手の人間に殺されることはなくなる。

…時に、アライちゃんはなぜ四足歩行をするのだろうか。

骨格や筋肉が、四足歩行に適しているから…
…ではない。

アライちゃんの骨格や筋肉の付き方は、人間の赤ちゃんと同じ。

つまり、むしろ四足歩行は苦手なのである。

アライちゃんが四足歩行をする理由、それは単純な筋力不足である。

赤ちゃんであるが故に、重くてデカい頭を支えて二本足で立ちバランスをとるだけの筋力がないのである。

だが、これは科学的に矛盾している。

人間と同じ骨格であれば、どう考えても、二足歩行をするより木登りをする方が必要とする筋力は多いはずだ。

だが、二足歩行ができないほど筋力の弱いアライちゃんは、当たり前のようにスイスイと木登りをやってのけるのである。

一体なぜアライちゃんにこんな芸当ができるのか…
研究者達が解明のために頭をひねっているが、全く解明は進まず、頭を抱えるばかりだという。

だがまあ…
そんなことは、今この状況では至極どうでもいい。

絹男「よっと」グイイッ

なぜなら、長い棒の先端についている高速回転する刃は、木登りしているアライちゃんへ容易に届くのだから。

野良アライちゃん2「もーすこしでてっぺ…」ヨジヨジヨジヨジ

刃「ギュゥィイイイイイイイイイインッ」

野良アライちゃん2「びぎゅぅうう!!」ヨジヨジグシャアアブシャブヂャグチャアアア

野良アライちゃん3「≦∀≧」!?

絹男「二匹目…」ベチャベチャ

飛び散った野良アライちゃん2の血と肉片と臓物が、絹男のレインコートにへばりついた。

絹男が、草刈機を持ち出した理由。

それは草刈機が、高いところまで届き…

何より、DPS(ダメージ効率)が凄まじく優れているからである。

バットや刃物でアライちゃんを仕留める場合、それらを1匹へ振りかざし、当てる必要がある。

致命傷にならなかった場合、何度も何度も繰り返し攻撃しなければならない。

その間に、他のアライちゃんに物陰に隠れられたら、多くの取り逃がしをしてしまうことになる。

だが草刈機は、刃をアライちゃんにあてがうだけで即死級のダメージ、致命傷を与えることができる。

脳のつまった頭。
頭と胴をつなげる首。
脊椎の通った背中。
内臓のつまった腹。
一本でも欠けたら移動不可能になる手足。
ヨチヨチ歩きのバランサーとして必要不可欠な尻尾。

草刈機の前では、アライちゃんの身体中すべての部位が急所となるのである。

絹男「よいしょ」ヴィイイイン

野良アライちゃん3「う…うゆ…!」

絹男はそのまま、刃を縦に動かし、野良アライちゃん3も続けて仕留めようとした。

野良アライちゃん3「おまえがしぬのりゃああああ~~っ!たああ~っ!」ピョーン

絹男「むっ!?」

なんと野良アライちゃん3は、木からジャンプして絹男の頭上へと飛びかかった。

野良アライちゃん達はインターンシップの掟により、自分から人間を攻撃することを固く禁じられている。

だが、自衛のためなら攻撃が許される、と教わっている。

中には拡大解釈によって、自分の縄張りに足を踏み入れた人間なら殺してよいと思っている野良アライちゃんもいるらしいが…。

ともかく、野良アライちゃん3は今、逃走よりも闘争を選んだ。

野良アライちゃん3「たああ~~っ!」ガバァ

野良アライちゃん3は果敢にも、絹男の急所である頭へとボディプレスを仕掛けたのである。

絹男「ッ…!」ヴィィイイン

草刈機は、縦に伸び縮みするものではない。

刃の先端以外に攻撃力はないのである。

完全に不意を突かれた絹男は、もはや野良アライちゃん3のダイビングプレスをかわすことは不可能である。

だが…

https://i.imgur.com/B4r9vAG.jpg

ヘルメット「」ガァン

野良アライちゃん3「ごぶうぅぅ!」ビタァーーーンッ

…絹男が被っているフルフェイスタイプの硬いヘルメットに、野良アライちゃん3の柔らかい腹が打ち付けられた。

野良アライちゃん3「ぐぶぇえええ!」ドサァ

絹男の頭の上でゴム毬のようび弾んだ野良アライちゃん3は、そのまま地面にぼとりと落ちた。

野良アライちゃん3「ごほっげほっ!ぴぎゅるるぅ!ぴぎいいいい!おながいぢゃああいいいーーーっ!いっぢゃああああーーいいいーーーっ!おがああああしゃあああーーんっ!」ピギイイイシッポブンブン

不意を突かれたからどうだというのだ。
あらかじめ不意打ちに備えた装備をすればいいだけのことである。

腹を打った野良アライちゃんは、苦しそうに絶叫して地面の上でごろごろと悶絶した。

野良アライちゃん3「のぉぁああーーーんっ!の゛ぉ゛ぁ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛ーーーーーぁ゛あ゛ん゛っ!」ピギイイイ

絹男「3匹目」グシャア

野良アライちゃん3「ぐぶふぅぅーーっ!」グチャボギメシャブヂャア

移動しない野良アライちゃん相手には、もはや間合いをとって草刈機を使う必要さえない。

絹男は70キロの体重を踵に集中させ、野良アライちゃん3の腹を踏み潰した。

野良アライちゃん3の口からは、水鉄砲のように血が吹き出し、絹男のレインコートを赤く染めた。

野良アライちゃん3「ご…びゅ…」ビグッ

絹男「次」タタタタタタタ

瀕死の状態で弱々しく痙攣する野良アライちゃん3に、絹男は興味すら示さず、次の敵へ駆け寄った。

茸取りアライちゃん1「ひぃ、ひぃぃ!ぜったいにげていきのびゆのりゃあ、いもーとぉ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

茸取りアライちゃん2「ぜーはー、ぜーはーっ!おねーしゃ!おねーしゃぁあっ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

必死に逃げる茸取りアライちゃん1&2。
どうやらこの二匹は姉妹のようだ。

きっと以前はもっと姉妹がいたのだろう。

だが、猫に食われたか、罠にでもかかったか、毒物でも食べたか…

減りに減って、かけがえのない血を分けた姉妹の生き残りはこの二匹となったようだ。

茸取りアライちゃん1「ふぅーふぅー!いもーとがんばゆのりゃあああーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

茸取りアライちゃん2「おねーしゃもがんばゆのりゃああーーーっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

先を進む茸取りアライちゃん1と、その2メートル程後ろに続いてヨチる茸取りアライちゃん2は、互いを励ましあっている。

絹男「逃がすか」タタタタタタタ ギュィイイイイイイイ

茸取りアライちゃん1「ぴいいぃ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

茸取りアライちゃん2「は、はやいのりゃああ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

だが、距離はすぐに詰められていく。

茸取りアライちゃん1「ぴぃい!」ヨチヨチヨチポテッ

茸取りアライちゃん2「おねーしゃ!」ヨチヨチヨチヨチ

だが、姉の茸取りアライちゃん1は地面の小石につまづき、転んでしまった。

茸取りアライちゃん1の足首「」ボギィ

茸取りアライちゃん1「ふぎゅうぅ!?」ズキン

転んだせいで、茸取りアライちゃん1の足首は捻挫してしまったようだ。

茸取りアライちゃん1「ひぃ、ひぃ、にげ、れな、いぃ…!」ズキズキ

絹男「ッ…!」タタタタタタタ

絹男との距離はぐんぐん縮まっていく。

もはや自分が草刈機の刃から逃げられないことを悟ったようだ。

茸取りアライちゃん2「おねーしゃ!はやくよちよちしてにげゆのりゃあ!えっほ、えっほ!」ヨチヨチヨチヨチヨチヨチ

姉を追い抜き逃げようとする茸取りアライちゃん2。

だが、そのすれ違い様に…

茸取りアライちゃん1「たあ~!」ガシィイッ

茸取りアライちゃん2「ぴいぃい!?」ビターン

なんと姉は、妹に後ろから飛びかかって捕まえた。

茸取りアライちゃん2「な、なにしゅゆのりゃおねーしゃ!?」ジタバタ

茸取りアライちゃん1「ふぅーっ!ふぅーっ!くゆな!くゆなあああーーっ!」グイグイ

なんと茸取りアライちゃん1は、妹を羽交い締めにして、絹男の方へ向けている。

血を分けた妹を盾にして、刃を防ごうというのである。

茸取りアライちゃん2「はなちて!はんちてえええっ!ふぎゅるるるうる!ぴぎゅるるるるぅっ!はなぜえええええ!」ピギイイイジタバタシッポブンブンシッポブンブン

姉に羽交い締めにされている茸取りアライちゃん2は、脱出しようとして必死にもがき暴れている。

茸取りアライちゃん1「ふぅーふぅー!きたらぶっこよすぞぉお!ふぅーっ!」ガクガクブルブルグイグイ

足首を捻挫し逃げられなくなった茸取りアライちゃん1は、妹を盾にして、ついに草刈機の刃に立ち向かう。

果たして、茸取りアライちゃん1は、無事に刃を防ぐことが…

絹男「だらぁ!」ズガアァア

茸取りアライちゃん2「じびゅぅうう!」ズパァァアアッ
茸取りアライちゃん1「びぎゃあああああっ!」ズブグシャアアアアッ

…なんて言っている間に、姉妹は仲良く上半身と下半身を真っ二つにされた。

刃の回転で吹っ飛んだ上半身は、地面の上で重なりあった。

茸取りアライちゃん1「ッ…」ビグッビグッ

茸取りアライちゃん2「ッ…」パクパク

横隔膜が切断され、喋ることのできない姉妹は、互いを見つめあったままぱくぱくと口を動かしている。

果たして死にゆく二匹の血を分けた姉妹は、相方に何を伝えようとしているのか…

絹男「次で最後だ」タタタッ

…だが絹男は、そんな事にはまるで興味を示さず、最後の一匹を仕留めに向かった。

野良アライちゃん4「おうちににげゆのりゃあああっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん4は、巣穴の前へ到達した。

まあ、巣穴は今…

野良アライちゃん4「う、うゆうぅ!」

https://i.imgur.com/wGOEzcD.jpg

コンクリートブロックで塞がっているのだが。

野良アライちゃん4「これじゃまなのりゃああっ!ふんぬぐぐぐぐう!ふんぐぐぐぐぅ!」グイグイ

野良アライちゃん4は、コンクリートブロックを必死にどかそうとしている。

だが、自分よりはるかにでかくて重いコンクリートブロックをどかす筋力などないようだ。

絹男「…」ザッザッ ヴィィイイン

絹男が近寄ってくる。

野良アライちゃん4「ぴいいぃい!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん4は、必死に壁に沿って逃げたが…

塀「」

野良アライちゃん4「うゆぅ!?」ヨチヨチヨチヨチ ピタッ

建物の壁と高い塀の角へ追い込まれた。

潜り込めそうな隙はなく、塀には登るために掴まれそうな突起もない。

絹男「…」ザッザッ

野良アライちゃん4「…ぴぃ…ぴいぃいい…!しにだぐないぃ…!こないでええぇ…!」ウルウルポロポロガクガクブルブル

…もはや、逃げ場はない。

追い詰められた野良アライちゃん4は、壁の角で震えながら泣いた。

>>599
※訂正


野良アライちゃん4「おうちににげゆのりゃあああっ!」ヨチヨチシッポフリフリヨチヨチシッポフリフリ

野良アライちゃん4は、巣穴の前へ到達した。

まあ、巣穴は今…

野良アライちゃん4「う、うゆうぅ!」

https://i.imgur.com/wGOEzcD.jpg

コンクリートブロックで塞がっているのだが。

野良アライちゃん4「これじゃまなのりゃああっ!ふんぬぐぐぐぐう!ふんぐぐぐぐぅ!」グイグイ

野良アライちゃん4は、コンクリートブロックを必死にどかそうとしている。

だが、自分よりはるかにでかくて重いコンクリートブロックをどかす筋力などないようだ。

野良アライちゃん4「おねーしゃたち!いっしょにこれどかしゅのりゃあ!おねーしゃたちぃ!」キョロキョロ

野良アライちゃん4は、声を張り上げて姉達を呼ぶが…

野良アライちゃん1の頭「」シーン
野良アライちゃん2「」シーン
野良アライちゃん3「」シーン

遠くに横たわっている死骸は何も答えない。

絹男「…」ザッザッ ヴィィイイン

絹男が近寄ってくる。

野良アライちゃん4「ぴいいぃい!」ヨチヨチヨチヨチ

野良アライちゃん4は、必死に壁に沿って逃げたが…

塀「」

野良アライちゃん4「うゆぅ!?」ヨチヨチヨチヨチ ピタッ

建物の壁と高い塀の角へ追い込まれた。

潜り込めそうな隙はなく、塀には登るために掴まれそうな突起もない。

絹男「…」ザッザッ

野良アライちゃん4「…ぴぃ…ぴいぃいい…!しにだぐないぃ…!こないでええぇ…!」ウルウルポロポロガクガクブルブル

…もはや、逃げ場はない。

追い詰められた野良アライちゃん4は、壁の角で震えながら泣いた。

野良アライちゃん4「そ、そーだ、と、とりひき、しゅゆのりゃ、ひとしゃんっ」ゴソゴソ スッ

野良アライちゃん4は、服の中から何かを取り出した。

蚕の幼虫「」ウニウニ

…それは蚕の幼虫であった。

野良アライちゃん4「あ、ありゃいしゃんは、かしこいのりゃ、きのこしまいにゆーこときかせゆために、い、いつも、いっこたべものもってゆのりゃ」ガクガクブルブル

絹男「…」ザッザッザッザッ ヴィィイイン

絹男は足を止めずに向かってくる。

野良アライちゃん4「あ、ありゃいしゃんを、みのがしてくれたら、こ、これ、おまえにやゆぞぉ!」ガクガクブルブル

絹男「…」ザッザッ ギュィイイイイイイイ

野良アライちゃん4「き、きのこしまいも、おねーしゃんたちも!みんなおいちーっていってゆぞぉ!お、おまえもたべてみろぉ!おいちぃぞぉ…!」ガクガクブルブル

野良アライちゃん4「これあげゆ!あげゆからあああ!たべていいからああ!ありゃいしゃんころさないでえええ!ぴいいいいい!ぴぃいいいいーーっ!」ガクガクブルブルチョロチョロ

追い詰められた野良アライちゃん4は、恐怖のあまり失禁した。

絹男「ラストだ」ズガァアッ

野良アライちゃん4「だがらだぢゅげぐびぶぐうぐぐぐぐぐぐぐ!」ドジュバズバグドバガガガガガ

野良アライちゃん4の顔面に、草刈機の刃が叩き込まれた。

野良アライちゃん4の頭「」ズパァアッ

下顎が吹き飛び、野良アライちゃん4の顔は上下に引き裂かれて吹き飛んだ。

だが…

野良アライちゃん4の歯「」ビュンッ

なんと、刃の回転によって勢いのついた一本の牙が、凄まじいスピードで絹男の顔面へ向かって飛んだ。

絹男「ッ…」

このスピードでは、絹男とて反応できない。

牙はまるで復讐の怨念が詰まった弾丸のように、絹男の右目へと真っ直ぐに飛んだ。

だが…


https://i.imgur.com/B4r9vAG.jpg


ヘルメットのシールド「」カキィン

絹男「うぉ!?あぶねえ!」ビクゥ

フルフェイスヘルメットのシールドが、牙をかきんと跳ね返した。

絹男「あぶねえ…。ヘルメットがなけりゃ失明してたな今の…」アセアセ

野良アライちゃんを駆除する上で、最も重要なこと。

それは『安全第一』である。

野良アライちゃんは、農作物への食害を出し、ゴミを荒らし、家屋へ侵入する、紛れもない害獣である。

だが、アライしゃんに成長しても、一匹が食う量は鹿や猪などの大型動物よりはずっと少ない。

加えて野良アライちゃんは、人間を襲って食ったりすることもない。

農作物は、農家にとってはそれこそ生命線ではあるものの、実際に直接命が奪われるわけではない。

そう。
野良アライちゃんは、命を危険に晒して、怪我を負ってまで駆除しなくてはならないほどの危険性はないのである。

その程度の相手を駆除するために怪我を負う必要などない。

十分な安全性が確保できる場合にのみ、怪我を負わない範疇で駆除すればいいのである。

絹男「…全員片付いたか…」ガシィ ヒョイッ

蚕の幼虫「」ワキワキ

絹男は、野良アライちゃん4から奪い返した蚕の幼虫を、優しく手に乗せた。

絹男「…」スタスタ

絹男はフルフェイスヘルメットの奥で心底不愉快そうな表情を浮かべ、蚕小屋へ向かった。

確かに蚕の幼虫達は、成虫になる前に、飼い主である絹男の手によって皆殺される。

だが、だとしても。
絹男は蚕達の飼い主である。

毎日一匹一匹様子を見て、病気になっていないのを確認し、ほっと胸を撫で下ろす。

病死した幼虫がいれば、ごく僅かではあるが胸を痛める。

手塩にかけて育てている蚕達の命を、虫のように軽んじているはずがない。

ましてやその命を奪うことに、楽しさなど雀の涙程も無い。

蚕の繭を殺すという行為は、絹男にとって、『やりたくないが、やらねばならない』行為なのである。

絹男「……片付けるか」スタスタ ガシッヒョイッ ガシッヒョイッ

トングで野良アライちゃん達の死骸をつまみ、ビニール袋へ詰める絹男。

絹男「…気分わりい…」ガシッヒョイッ ガシッヒョイッ

そう、絹男にとっては。
野良アライちゃんの駆除もまた、『やりたくないが、やらねばならない』行為なのである。

ジェノサアライドの狂人卍や、サディストのバイトであれば、野良アライちゃんを殺すことに楽しさを感じることだろう。

だが、そんな感性を持つ者は、この世界ではごくごく少数派である。

大多数の人物は、大きなドブネズミを殺すのに強い抵抗感を抱くのと同様に、野良アライちゃんを殺すことにも強い抵抗感を抱く。

蚊やゴキブリにように殺すべき命ではあっても、それなりに大きく、小人のような外見をして、人の言葉を喋る。

そんな生き物を殺すという行為は、大多数の人にとって、不愉快でありストレスが溜まる、『やりたくない』行為なのである。

絹男「…袋を縛って、と」ギュッギュッ

だが、やりたくないからといって、やらないわけにはいかない。

幸いにして、野良アライちゃん達はまだ人間の赤ちゃんよりも小さいが故に、『人間でない生き物』としてはっきり認識される。

人間でないとはっきり認識した生き物相手なら、不快感を我慢して殺せる人もいるだろう。
この絹男のように。

絹男「…なんでこんなに弱っちくてノロマな生き物が、大繁殖なんてできるんだか…不思議で仕方ねえ」スタスタ

絹男はビニール袋を背負って冷凍庫へ向かう。
燃えるゴミの火まで凍らせておくつもりだ。

絹男「…寄生虫や病原体が効かねえんだっけ?確か……」スタスタ

絹男は、死骸を肉片の一欠片も残さずに回収した。

アライちゃんは病原体が効かないため、腐り始めの肉ならば問題なく食える。

むしろ柔らかくなって食べやすい頃合いのため、腐り始めの死臭なら、『美味しそうな匂い』と感じるのである。

もっとも腐敗が著しく進むと、細菌が毒素を出し始める。
病原体は平気でも毒素を口にすると腹を壊すため、あまり腐りすぎた肉は食えないようだが。

絹男が死骸を片付け終わった後…

木「」ガサガサッ

10メートル程遠くの木のてっぺんで、何かが動いた。

野良アライしゃん「…」ジーッ

それは野良アライしゃんであった。

成長して二足歩行ができるようになり、アライちゃんよりも格段に運動能力と食べる量が増した、悪知恵のはたらく害獣である。

木登りのスピードも速くなり、体長1メートルを越す頃には成体のアライグマと同じか若干遅いくらいの猛スピードで走行できるようになるともいわれる、脅威的な生き物だ。

だが体が大きくなった代償として、アライちゃんほど狭い隙間に潜り込んだり、外敵から隠れることはできなくなっている。

野良アライしゃん「…」ジーッ

野良アライしゃんは、一連の殺戮現場を見ていたようだ。

この野良アライしゃんは、何を考えているのだろうか?

まさか、蚕の幼虫を狙うつもりだろうか。

あるいは、ここは危険だと思い、近付かない方がいいと思っているのだろうか。

野良アライしゃん「…かえるのだ」ザッ ザッ

野良アライしゃんは、木から木へと跳び移り、遠くへ去っていった。

果たしてこの野良アライしゃんが、この後絹男の敷地に入ってくることはあるのか…

…それは、語られない物語となることであろう。



~車内~

飼い主男「…」ブゥーン

アラ助「しゅぴ~…しゅぴ~…」zzz

アラ助は遊び疲れたのか、助手席のシートに寝転がって寝ていた。

飼い主男「…」ブゥーン

飼い主男は、車を走らせて自宅の方へと向かっている。

アラ助「むにゃ…えへへへ…おともだち…あそぶの…たのちーのりゃ…しゅぴ~…」zzz

飼い主男「…」キキッ

飼い主男は自宅のガレージへ車を停め、アラ助を抱いて帰宅した。

つづく

※『殺したくない』っていう言葉の意味について、若干表現に語弊がありました

※近々、その辺作中でもうちょい掘り下げます

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