エレン「ミカサ、回転斬り教えてくれ」(36)


ミカサ「?」

エレン「?、じゃねぇよ。回転斬りだよ回転斬り」

ミカサ「回転斬り?」

エレン「まだとぼけるか、お前が対巨人訓練の時たまにやってるの知ってるんだぞ」

ミカサ(対巨人訓練……)

ミカサ(はっ!まさかミカサイクロンのこと!?)

エレン「あれどうやってやるのか教えてくれ。同期であれをできるのはお前しかいないんだ」




ミカサ「…」


ミカサ「エレンが私に好意を寄せてくれているのはうれしい」

エレン「いや別に寄せてないが」

ミカサ「けれどあれはおそらく体を完全に支配できる私にしかできない技」

ミカサ「本当にごめんなさい。出来れば手取り足取り教えたかった…」ズーン

エレン「そんな…」ガーン

ミカサ(はぁ…私にみっちり教わることができなくて悲しんでいる)

エレン「ミカサの回転斬りがあれば巨人を倒すときに役立つと思ったんだけど」

ミカサ「ええ。あれは目標を深くえぐることができる」

エレン「だよなぁ……まぁいいや、まだ未熟なところを直すことに専念するから」


キース「これより立体機動での対巨人訓練を始める!」


エレン「お、訓練が始まるみたいだ、また後でな」

ミカサ「待ってエレン」

エレン「なんだ?」

ミカサ「みっちり教えることはできないけど助言することならできる」

エレン「おおそうか!どうすればいいんだ!?」


ミカサ「まず回転するとき、当然ワイヤーは片方だけを使う」

エレン「片方な」

ミカサ「そして巻き取りと同時に体を捻って回転させる。回転斬りに関しての大まかなことはこれだけ」

エレン「そ、それだけかよ」

ミカサ「だけどタイミングが非常に重要。巻き取りとアンカーを外すタイミングをずらさないと大変なことになる」

エレン「たとえばどんなだ?」


ミカサ「アンカーを外さずに巻き取るとワイヤーがぐるぐる巻きに」

エレン「かっこわるいな」

ミカサ「アンカーを外すタイミングが早いと落下する」

エレン「巻き取らないとな」

ミカサ「そう。勢いよく巻き取ってからアンカーを外すこと」

エレン「よし、難しそうだけど続けて練習すればできそうだ」

ミカサ「アンカーを刺す方だけどエレンは右利きだから右回転が慣れやすいと思う。そのためには左のアンカーを射出して」

エレン「右利きだから右側じゃないのか?」

ミカサ「そうじゃない。もし私がエレンの左腕を勢いよく引っ張ったらどうなる?」


エレン「うーん、そうだな…」

エレン「腕がちぎれる!か?」



エレン「…」

ミカサ「…」

ミカサ「前のめりになると同時に体は右を向くでしょ?」

エレン「ああ、そうか!その時に体を捻れば遠心力で回転するな」

ミカサ「そういうこと。加えて体を回転させるときにガスを吹かすと回転量が上がる」

エレン「なるほどな。よし、一通りわかった。そんなに言うほど難しそうじゃないけどな」

ミカサ「エレン、あなたは毎回左のアンカーだけを刺すつもり?絶対にそうじゃないはず」


エレン「右も…か」

ミカサ「そう。左ばかり頼っていると立体機動も斬撃もワンパターンになり緊急時にも対応が効かなくなってしまう」

ミカサ「そのためには右のアンカーを射出して左回転することもできるようにならなければいけない」

ミカサ「斬撃は両手でするものだけど回転しているとなるとやはり利き腕から繰り出した方がブレずに安定する」

エレン「そうか、じゃあ両利きにならないといけないのか…」

ミカサ「私は体を支配できているから関係ないけどエレンがやるにはおそらく時間がかかる」

エレン「そんなもん、訓練の量でカバーしてやるよ!」

ミカサ「あなたはさっき自分で言っていたはず、まだ未熟なところがあると」

ミカサ「基本を抑えないで応用に走っては早死にする」


エレン「わ、わかってるよ…チクショウ、なんでもできるからって言いたい放題だな」

ミカサ「あなたはそこまで強くなる必要はない。なぜなら私が守るから」

ミカサ「だから今のは頭の片隅程度にしまっておいて」

エレン「なんだよ、助言するとか言いやがって…」

ミカサ「説明しているうちに気が変わったの。あなたにはまだやらなければならないことが残っているから」

エレン「わかったよ。訓練成績が上位で安定してきたら練習してみることにするか」

ミカサ「くれぐれも怪我はしないで」



キース「イェーガー!アッカーマン!いつまでまま事をしているつもりだ!さっさと行け!」

エレン「教官がお怒りだ、早く行こうぜ」

ミカサ「ええ」


―数か月後―


エレン「成績も上位が安定してきたな。別に憲兵団はいるわけじゃないから関係ねぇけど、実力が目に見えるからいいな」

ミカサ「私から見ても特に粗末な点は見られない。エレンは十分頑張った」

エレン「だけどまだ卒業まで何か月かあるからな、『あれ』の練習をしておきたい」

ミカサ「あれ?」



エレン「エレンアタックに決まってるだろ!」


ミカサ「エ、エレンアタック?」

エレン「前からお前がやってた回転斬りのことだよ、ただ回転斬りだとダサいだろ」

エレン「練習する前から密かに名前考えてたんだ」ニコニコ


ミカサ「そ、そう…」

ミカサ(ひどいネーミングセンス)


エレン「前に比べて技術も上がったし、できるかもしれない」

ミカサ「じゃあ今日の訓練で試してみて」

エレン「ああ!」ウキウキ

ミカサ(すごい楽しそう)




こうしてエレンはひたすら『エレンアタック』の練習を重ねた


―訓練兵団解散式―

上官「心臓を捧げよ!」

一同「はっ!」


エレン(ようやくここまで辿り着いた…)

エレン(長くつらい道のりだったな…だけど今度は俺たちが巨人を食い尽くす番だ)

エレン(ちょうど必殺技も習得できたことだしな、もう人類は巨人なんかに負けることはない…俺がいれば)


エレン(くそ、早く巨人と戦いたい!)

エレン『決める!エレンアタック!!』ズバズバ

アルミン『す、すごいやエレン!あんなにいた巨人を一瞬で…!』

サシャ『かっこいいです!!』

ライナー『くそ、エレンが強すぎるせいで俺はもう兄貴なんて呼ばれる筋合いはないな』

ジャン『ごめんなエレン。今まで死に急ぎ野郎呼ばわりしちまって』

ベルトルト『エレンが眩しすぎて僕の影が…!』

コニー『その技俺にも教えてくれ!』

アニ『見直したよ、あんたのこと』

ミカサ『やはりあなたが一番』


エレン「」ニヤニヤ

アルミン「エレン?いつまで敬礼してるの?」

エレン「へ?」

アルミン「いや、解散式はもう終わったからさ」

エレン「あ、あああつ、つい感極まってな、はは」

アルミン「しっかりしてくれよ」


―壁上固定砲整備―

エレン「」ソオーッ

巨人「」ワラワラ

エレン(おお、いるいる。これから俺に駆逐されることも知らずに呑気な顔しやがって…)ニヤニヤ

ミーナ「どうしてそんなに笑ってるの?」

エレン「え?いや、早く巨人と戦いたいなと思ってよ」

ミーナ「相変わらずだねエレンは」

エレン「ああ、うずうずしてるぜ」

エレン(今なら超大型巨人だろうと鎧の巨人だろうなんだって倒せるぜ)




ピカァ  ズ――――――ン


超大型巨人「」

エレン「」

ミーナ「」

コニー「」

サシャ「」

トーマス「」

サムエル「」



ドシュウウウウ!!


エレン「うわぁ!熱ッ!な、何が――――――」

エレン「くっ!みんな!立体機動に移れ!」


コニー「ふう!危ねぇとこだったぜ…」

エレン「おい!サムエル!」

ミーナ「サシャ!?」

サシャ「えいっ!」ドシュ

サシャ「サムエル!動いちゃダメですよ!」


エレン「あ、危なかった……」




ビキビキ  ズドォォォォオオオン!


コニー「そんな…壁が…」


エレン(か、壁が壊された…!巨人が入ってく…はっ!)

エレン(…)

エレン(いや、弱気になるな、思い出せ!必死に練習した日々を…!)

ミカサ『全然なってない』

ミカサ『どうしてできないの?』

ミカサ『なんかダサい』

ミカサ『もっとこう体を捻って』グキッ

ミカサ『その程度で巨人に勝てると本気で思ってるの?』ジー


エレン「…」

エレン「クッ…」


エレン(入ってこれるならこい…俺が塩味のエレンアタックで一匹残らず駆逐してやる!)

エレン「だがその前に超大型巨人だ」

エレン「よし、サシャ!サムエルを任せた!」

エレン「固定砲整備4班!戦闘用意!!目標目の前、超大型巨人!!」ドシュ!

エレン「これはチャンスだ!絶対逃がすな!!」ギュゥウウウン


エレン(壁を壊せるのはこいつだけ!!こいつさえ仕留めれば…!)

エレン「!」

エレン(アンカーが刺さってるのは左…!)

エレン「…」








エレン「」ニヤッ


エレン「」バッ!

超大型巨人「!」

エレン(壁を越えた、ここで勢いよく巻き取って…)シュルルルル

エレン(アンカーを外す…)カラン

エレン(体を右側に捻る…)グイッ

エレン(そして同時にガスを吹かすっ!)ドシュゥウウ


エレン「」クルクルクルクルクル

エレン「」すたっ!

エレン「」フッ



エレン(決まった…)

エレン(回転して登場、なんという完璧すぎる演出…)ニヤニヤ

エレン(さしずめエレンアタックのウォーミングアップって言ったところか)

超大型巨人「…」




エレン「……よう、五年ぶりだな…!」




そして彼は数時間後、巨人に喰われる


あの登場シーンかっこいいよね


前作:エレン「ほら、クリスタのアドレス聞いてきてやったぞ」

オルオ「兵長のあれなんて技名なんだろ?」

ペトラ「どうしたのオルオ」

オルオ「兵長の回転しながらの斬撃のネーミングが気になってな」

ペトラ「兵長があんたみたいに馬鹿な事考えるわけないじゃない」

リヴァイ「…リヴァイアタックだ」

オルオ、ペトラ「」

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