【ゆるキャン△】恵那「でも、一回だけ一緒に行ってみない?」 (42)

・ゆるキャン△SS

・アニメ本編の斉藤さんサイド

・地の文有り

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「えっ、キャンプ?」
「うん、やってみようかと思って」

リンがキャンプを始めたのは中一の時だ。
お爺さんにキャンプ道具一式を譲って貰ったからやってみる、と。

リンからお爺さんは変わった人だって聞いていたけど、孫娘に一人用のキャンプ道具をプレゼントするって確かに変わった人だと思う。

「なんか面白そうだなって」

・・・喜ぶ孫娘の方も変わってるけどね。

それ以来冬場になると、休みの度に一人でキャンプに出かけている。
私のイメージだと、キャンプといえばバーベキューとかキャンプファイヤーとか、夏に皆で楽しむものなんだけど、リンもリンのお爺さんも一人でのキャンプしかやらないらしい。

「結構いるよ、ソロキャンプしてる人」

少なくとも女子中高生ではいないんじゃないかなぁ。

キャンプ中に一人で何をしているのか聞くと、本を読んだりラジオを聴いたりしているんだとか。
わざわざ外でやることでもない、と思ったけれど、多分リンは一人っきりになりに行ってるんだと思う。一人の時間をゆっくり楽しむ為に。

「一緒に行ってもいい?」と聞いてみた事は無い。
私がキャンプ道具を持ってないってのも有るけど、もし一緒に行ってもなんとなく間がもたないんじゃないかと思う。

私には、一人でキャンプ場に行ってやりたい事って特に無い。リンとは気が合うし、話も合うけど、一緒に居たいからっていう理由でリンについていっても、一人になりたいリンの邪魔になるんじゃないかなって。

でも、いつかリンと一緒に、私のイメージするようなわいわい楽しむようなキャンプに行けたらいいなぁって、そう思っていた。

――――――

――――

――

「お、折れちゃったよぅ」
「さすが980円テントや・・・」
「えぇっ、どうすりゃいいんだこれ!?」

大垣さんが変なサークルを立ち上げたって噂は聞いていたけど、中庭でテントを立てる部活って何なんだろう?

「折れちゃったの?」
「お、斉藤」
「あれ、斉藤さん」

図書室でリンをいじって遊んでいたら、テントを立ててる最中に棒が折れるのが見えた。
リンが修理の仕方を知ってたけど、助けに行ってあげなよ、と言ったら物凄~く嫌そうな顔をされた。相変わらず人付き合いが悪いなぁ。

「まぁまぁここは私に任せて」
「直せんのか?」

しょうがないから私が代わりに修理しに来た。
まぁリンには図書委員の仕事があるしねぇ。

落とし物箱から拾ってきた筒を使って、リンに言われた通りに棒を繋いでテープで巻いてみる。筒の太さが合うか心配だったけど、ちょうどぴったりだった。

「すごいっ、直ったよ!」

なんか見覚えの無い子が居る。今日転校生が来たって聞いたけど、この子がそうなのかな?

どうにか無事にテント(980円)が立った。
大垣さん達のサークルは野外活動サークルっていう名前で、キャンプとかをやるのが目的の部活らしい(まだキャンプしたこと無いみたいだけど)。

「斉藤さんありがとうなぁ。助かったわ~」
「どういたしまして」
「でもあんな事よぉ知っとったね~。テント持っとるの?」

そう犬山さんに聞かれてふと思い付いた。キャンプ好き同士接点を作ってしまえ、と。

「あ、ちがうちがう、あそこの子に聞いたのよ」
「あぁーーーーっ!!」

図書室のリンを指差したら、突然転校生ちゃん(仮)が大声をあげた。え、知り合い?

「おぉ、しまりんじゃん」
「しまりん!?」
「ゆるキャラみたいな呼び方やめ~や」

名前は知らないのかな?どういう知り合いなんだろう。

「志摩は名字、名前はリンだよ」
「リンちゃん・・・」

呟いた、と思ったら突然転校生ちゃん(仮)がダッシュした。図書室に向かって。

「同じ学校だったんだねぇ!この間はありがとヴッ」

・・・そのままの勢いて窓ガラスに激突。鳥かな?

「顔面から行ったな」
「すごい音したで」

「ねぇ、あの子って例の転校生だよね?」
「せやで、各務原なでしこちゃんや」
「長っげー名前だろ?」

やっぱりそうだった。転校早々サークルに入ったんだとか。

「てか、しまりんもよく修理の仕方知ってたな」
「リンキャンプ好きだから。中学の頃から一人キャンプやってるよ」
「へぇ~そうなんや、なんか意外やわ~」

だよねぇ。いっつも本を読んでて思いっきりインドア派っぽいもんねぇ。

「この間も本栖湖で一人キャンプしたって・・・」
「あーー」
「あーー」
「?」

納得がいった様子の二人に聞いてみたら、なんでも各務原ちゃんが本栖湖で行き倒れてるところを、謎のキャンプ少女に助けられてキャンプに興味を持ったのだとか。
行き倒れたって・・・何があったんだろう。

二人の様子を見ると、テンション高めの各務原ちゃんに対して、いつも通り低めなリン。

「リンちゃん!私たちと一緒に野外活動サークルやろ・・・・・・うっ・・・」

誘われて露骨に嫌そうな顔をするリンに、ここから見てても分かる位落ち込んでる各務原ちゃん。そんなに嫌がんなくっても・・・

「各務原ぁー、テント片付けるぞー」

大垣さんが声をかける。フォローしてくれたのかな?

「えぇっ、もう片付けるの?」
「立てといてもしょーがないだろ。それとも泊まってくか?」
「夜の学校で一泊はいややなぁ」
「おいっ、ポール折るなよ」
「どの口が言うんや」

色々言い合いながらテントを片付け始めた。
こんな風にわいわいやる方が楽しそうな気がするんだけどなぁ。

「じゃあ私戻るね」
「うん、えっと、斉藤さんありがとねぇ」
「あ、そうだ、せっかくだから連絡先教えてよ」
「うん、いいよっ」
「そういやあたしらもまだ聞いて無かったな」
「せやな、みんなで交換しよか」

大垣さん達とも連絡先を交換して図書室まで戻る。

「ただいまー」
「うい」

いつもの定位置に収まっているリン。

「知り合いだったんだ、なでしこちゃん」
「あぁ、いや、まぁ、何て言うか・・・」

リンの話によると、引っ越し当日に富士山を見る為、自転車で本栖湖までやって来たなでしこちゃん。
疲れて寝ていたらすっかり暗くなって、スマホも家に忘れて来て困っていたところをリンが助けてあげたのだとか。

「私のスマホでお姉さんに電話して迎えに来てもらったんだよ。お礼に何故かキウイをもらった」

何故にキウイ?

そんな話をしながらも、テントを片付けてるなでしこちゃんの様子をうかがってるリン。さっき露骨に嫌な顔をしたのを気にしてるみたい。

せっかく知り合ったんだから、仲良くすればいいのにねぇ。

――――――

――――

――

週末、相変わらず一人キャンプに出掛けてるリン。富士山の目の前の、麓キャンプ場って所でキャンプをしてるとか。こんな寒い日に。

(寒波来てるんだ、リンもこんな日に一人でがんばるなぁ)

夏にはやらないのに、何でわざわざ寒くなってからキャンプするのか。リンの『キャンプ』はつくづく私のイメージとは違うみたい。今度聞いてみようかな。

あれからなでしこちゃんとは、廊下などで会ったときに少し話をしたりしてる。

野クル(『やくる』じゃなくて、『のくる』と言うそうだ)でも初キャンプに向けて準備を始めたらしい。必要な物がまだまだ足りないとかで、初キャンプは少し先になるんだって、残念そうに話していた。
なんというか、キャンプがしたくてウズウズしているという感じ。散歩に行きたい犬みたい。

そうだ、なでしこちゃんにも教えてあげよう。

[リン今日ここでキャンプしてるみたいだよー}

なでしこちゃんに、キャンプ場のURL付きでメッセージを送ってみる。

{わぁ~!すごい所だねぇ、ちょっと行ってみるね!(≧∇≦)ノ]

えっ、行くの?

[行くの?今から?}
{うん、ちょうどお姉ちゃんが富士宮に行くって言ってたから、乗せてってもらうつもり]

即決かー、すごいなぁ。引っ越し当日に富士山を見に行ったり、かなり行動力のある子だと思う。

{あっ、でも私リンちゃんの番号とか知らないや( ´・ω・`)]

そうなんだ・・・。
なんでも自分の番号はリンに教えたけど、リンの連絡先は聞いてないんだとか。この間の再会もあんな感じだったし、聞けてないよねぇ。

[いいんじゃない?サプライズで}
{えっ、大丈夫かなぁ・・・]

あんな感じ、だったせいか、少し不安そうななでしこちゃん。

[大丈夫だと思うよー、私に聞いたから来てみたって言っとけば?}
{うん、あのね、本栖湖で会ったときにカレーめん分けて貰ったんだぁ]
{だから今度はそのお礼にごはん作りに行こうかと思って・・・]

おぉ、なでしこちゃんの恩返しだ。

[何作るの?}
{今日寒いしお鍋とか。冷蔵庫の中見てみないと分かんないけど]
[寒い外でお鍋かぁ、いいねぇ}
{だよねぇ~っ(≧∀≦) ]
{用意して行ってみるねっ!教えてくれてありがとう(*>ν<*)ノ]
[どういたしまして。がんばってねぇ( ´エ`)ノシ}

リンびっくりするだろうなぁ。まさか押し掛け女房がやって来るとは思うまい。

これでリンとなでしこちゃんが仲良くなれればいいけど・・・

――――――

――――

――

休み明け、放課後に図書室に行くとリンがスマホを見ながらニヤニヤしている。
声をかけると誤魔化そうとしてきた。う~ん、怪しい。

どうやらなでしこちゃんの恩返しは上手くいったようだ。

「お前の差し金だろ」

寒いなか、二人でお鍋(担々餃子鍋だって、美味しそう!)を食べつつ色々話をしてきたらしい。
なでしこちゃんもお姉さんと車中泊をして、キャンプ場と富士山を満喫していたとか。
両目にしゃけおにぎりをのせて寝ているなでしこちゃんの写真を見せてくれた。うん、これはニヤけるわ。

なんでわざわざ冬にキャンプするのかも聞いてみた。

「虫がいない・・・汗かかない・・・他のキャンパーが居なくて静か・・・焚き火と温泉が気持ちいい・・・景色が遠くまでキレイに見える・・・・・・汁物がうまい、って所かな」

最後のはなでしこメシの事だよね。

冬は冬でメリットもあるんだねぇ、特に虫がいないってのは大事。
景色がいいとか、温泉とか、外でのお鍋とか、なかなかそそられるけど・・・でも寒いしなぁ。

「じゃ、あと半年は無理だな」

今度はどこに行くのか聞いたら思いっきり警戒された。

「もうなでしこちゃんに言わんからーっ」
「長野行ってみようかと思ってる。今週バイトだから来週ね」

今度は長野でソロキャンプかぁ。ほっといたら一人でどこまで行くんだろうこの子は・・・

なでしこちゃんとのキャンプがどうだったか、感想を聞こうかと思ったけど・・・やめた。
リンの事だから素直には答えなさそう。「いや、別に・・・」とか言いそうだ。

さっきのニヤニヤを見る限り満更でもないみたいだけどねぇ。

――――――

――――

――

長野キャンプから帰ってきたリンにおみやげをもらった。
高ボッチとか言う変な名前の山でボッチキャンプをしてきたと。・・・そのギャグが言いたくて行ったわけじゃないよね?

なんでも、楽しみにしていた温泉が潰れていたんだとか。

「帰りに諏訪の温泉に寄ってきたけどね」

結構有名な温泉で、1メートル位の深いお風呂なんだとか。
リン小さいから結構ギリギリなんじゃないかな。

「流石にそこまでは・・・でも実際かなり深かった」

なでしこちゃん達の野クルも、同じ日に笛吹公園の方でキャンプしてきたらしい。あそこも有名な温泉あるよねぇ。
いいなぁ温泉キャンプ。

リンはなでしこちゃんにもおみやげを買ってきていた。・・・なんか随分私のより豪華じゃない?

「この間、鍋ご馳走になったし」

なんだかお返し合戦になってきたなぁ。でもなでしこちゃん喜ぶと思うよ。







・・・で、放課後。いまだにおみやげ渡せてない、と。

「・・・意外と会うタイミング無くて」

バレンタインでチョコ渡せない乙女か!
会いに行けば良いのに。メタル賽銭箱組み立ててる場合じゃないでしょ。

「部室に行ったらまだいるんじゃない?」
「あそこは何かノリが苦手で」

うん、知ってる。

「斉藤行って渡して来て」

いやいやいや、せっかく長野行って買ってきたんでしょ?

「リンが渡してあげなよ、そっちの方が喜ぶと思うけどな」
「・・・今年中には渡す」

どんだけ目標低いのよ。
時間を置けば置くほど渡しにくくなりそうだけどねぇ。

早くおみやげ渡しなよー、と言って図書室を後にする。

仲良くはなったみたいだけど、なんかまだ微妙に距離感が・・・
なでしこちゃんのグイグイ来る感じに、リンがついていけてないのかな。

玄関を出て外を歩きながら、ふと図書室の方を見るとリンとなでしこちゃんが話していた。おやおや。
どうやらなでしこちゃんの方から来たみたいだ。

無事おみやげも渡せたみたい。
早速食べてるけど、図書室で飲食して良いの?

帰り道、リンからメールが来た。

{なでしこと焼肉キャンプすることになった]

あのメタル賽銭箱早速使うのか。
リンもなでしこちゃんも先週キャンプ行ったばかりなのによくやるなぁ。

・・・そうか、なでしこちゃんと二人で行くんだ。
リンも一人キャンプにこだわらなくなったのかな。それともなでしこちゃんだからか・・・

リンがキャンプを始めた時に、もし私が「一緒に行って良い?」と聞いていたらどうなっていただろう。

寒そうだとか、リンは一人が良いんだろうとか、やらない理由を考えて、何となく気を使ったつもりで避けてきた。

でもこれじゃあ、何となく面倒そうだって理由でなでしこちゃんを避けてたリンと変わんないよね・・・

リンに、なでしこちゃんと仲良くすればいいのにとか言いながら、自分はこんなんじゃダメだ。

なでしこちゃんみたいにすぐに行動に移せればいいけど、やっぱり寒いから、道具が無いからって考えてしまう。

思いきって私もキャンプしてみるべきなのかなぁ・・・

――――――

――――

――

テスト前だというのに理科室で実験をしている人がいると思ったら、大垣さん達だった。

「二人で何の実験してるの?」
「あ、斉藤さん」
「お、斉藤」ジュッ

「ギャアァァーーーッ!!」

えっ、ちょっ、大丈夫?


二人がやっていたのは鉄フライパンの慣らしと木皿のニス剥がしだった。ますますテスト前にやることでも無いと思うけど・・・

「スキレットで焼いた肉って超旨いんだぜ。肉、食うかい?」

誰のマネ?
というか、そういうセリフは肉焼きながら言って欲しいなぁ。

成り行きで私も手伝う事に。油を慣らしたフライパンでミカンの皮(どこから持ってきたのか・・・)を炒めてからお湯を沸して、もう一回油を塗って完成だとか。

「こっちも出来たぞ」

木皿の方も、オリーブオイルを塗って出来上がり。おぉ、結構雰囲気あるねぇ。

ヴーッヴーッ

「ん?、なでしこからだ」
「クリスマスキャンプしませんかやて」
「ナイス提案だな」

クリスマスにもキャンプ・・・ほんとにキャンプ好きだなぁ。

「私はクリスマス彼氏と過ごすからムリやなー」
「彼氏いたのか貴様ーっ!!」
「嘘やで~」

おぉ、ちょっと信じちゃった。

「いつもは家族とクリスマスやけど、みんなでキャンプすんのもええかもなー」
「家族いたのか貴様ーーーっ!!!」
「なんじゃわれーーーっ!!!」

なんだこのやり取り(笑)。ネタ合わせとかしてないよね?

「斉藤さんもクリスマスキャンプどう?」

えっ、私?

「デイキャンプにすれば寝袋とかも要らんし、一緒にやらん?」

思わぬ所でキャンプに誘われた。
確かに気になっていたし、楽しそうだと思うけど・・・
クリスマスにキャンプ、思いっきり冬なんだけど。かなり寒そうだよね。

「決めるのテスト終わってからでもいい?」
「うん、ええよー」

二人と別れて下校する。なんだか見透かされたようなタイミングでキャンプに誘われてしまった。

どうしようかと考えながら、思ったのはリンの居る麓キャンプ場に行く、と決めたなでしこちゃんの事だ。

道具も無い、リンとも仲良くなれた訳でも無いのに、すぐに行くって決めて、車中泊でもキャンプをして(付き合ったお姉さんも偉いと思うけど)、なんだか行動せずに迷っている私とは違うなぁ、と思う。

そういえばリンも、道具を貰ったのがきっかけとはいえ、いきなり冬のソロキャンプ始めたわけだし。

寒そうなら対策をすれば良い、楽しめるか心配なら楽しめる準備をしていけば良い、まずはやるって決めて行動しないとだよね。

私も行くって言ったら、リンも一緒に来るだろうか・・・

うん、決めた、キャンプ行こう!



・・・と、その前にテスト頑張んないとだけどねぇ。

――――――

――――

――

・・・起きたら夜になってた。えぇっと。

朝、リンから私の屍を越えていけキャンプの為に上伊那へ出掛けるという話を聞いてから寝て、昼過ぎに起きて大垣さんに私もクリスマスキャンプ行くよって連絡してからまた寝て・・・今20時過ぎ。
・・・うん寝過ぎ。

テスト休みとはいえ、だらけ過ぎだよなぁ。

まぁテスト頑張ったから、なんというか自分へのご褒美的な?
あと、おふとんが寝心地良すぎるのがいけない。私は悪くない。

そういえばリンは無事キャンプ場に着けただろうか。

[お早うございまーす}
{遅っ!]
[3時頃起きたんだけど布団の包容力に寝落ちしてしまいましたー(* ´ エ ` *)}
{14時間も寝てたのかよ!]

どうやらキャンプ場でまったりしていたようだ。さすがリン、旅慣れてるなぁ。

そうだ、リンにも言っておかないと。

[そういえば今度野クルの子たちとキャンプ行くことにしたよ(* ´ エ ` *)クリスマスキャンプー}
{あ、それ大垣から誘われた。断ったけど]

なでしこちゃんじゃなくて大垣さんに誘われたの?
というか・・・・・・そうか断ったんだ・・・

[えー!なでしこちゃんリンとクリスマスキャンプするの楽しみだって言ってたのに!}
[ウソだけど}
{ウソかい。]

嘘だけど、やっぱりがっかりしてると思うよ。
というか、私もリンとキャンプしたいし。
なでしこちゃん達となら絶対楽しくなると思う(断言)。
ここは私が説得しないとだね。

[でも、一回だけ一緒に行ってみない?リンは一人キャンプの方が好きかもだけど}
[みんなでやるキャンプは違うジャンルの楽しさがあると思うよ?}

ダメ押しでちくわの画像も送ってみる。

[リンちゃん!!ボクといっしょにクリスマスキャンプいこうよ!!}

・・・返事は無い。まぁリン素直じゃないからなぁ。
そう言われたからってすぐにやっぱり行く、とかって言わないよねぇ。
私も返事は保留にしたし。考えてから「行く」って決めてくれたら良いな。

[じゃ私そろそろ寝るよー}
{まだ寝るのかよ、もう布団と結婚してしまえ]
[だめよ私は既にこたつと結婚しているの、そんなコトいけないワ(*/エ\*)}
{斬新な昼ドラやめろ]

こういうのはノリが良いんだけどなー。

――――――

――――

――

休み明け。野クルのみんなとクリスマスキャンプの作戦会議。
結局リンも行くことになって、五人でキャンプ・・・と思ったら、会議中乱入してきた鳥羽先生が、成り行きで野クルの顧問になることに。はい、一名追加です。

なでしこちゃんは、鳥羽先生とは前にリンと焼肉キャンプをしたときに会っていたんだとか。
学校での雰囲気と違ったから今まで気付かなかったらしい。
酔っぱらってたらしいけど、そんなに人が変わるのかな・・・ちょっと想像がつかない。

リンが参加するって事になって、なでしこちゃんも嬉しそう。
私もちくわを連れていく事になった。なかなかにぎやかな感じになりそうだ。

犬山さんに誘われた時、デイキャンプでも良いよって言われたけど、せっかくなので一泊二日で参加する事にした。
だって私だけ途中で帰るってのもねぇ。お父さんがお金を出してくれて、良い寝袋買えたし。

こうやってみんなで準備していて、なんだかワクワクしてきた。
はじめてのアウトドアで不安も有るけれど、みんなとなら楽しいことになるだろうなって思える。

クリスマス、待ち遠しくなってきたなー。

――――――

――――

――

キャンプ当日、14時にキャンプ場集合のはずなのに、みんな待ちきれなくて12時過ぎには来ていたらしい。いやいや、どんだけ楽しみだったのよ。

ちくわと弱肉強食中のなでしこちゃんと、酔って寝ていた鳥羽先生は置いといて、みんなでテントを立てる。あっそうだ、ポール折らないようにしないとだね(笑)。

別の所に立ててたリンのテントを見物していたら、弱肉強食っていたなでしこちゃんとちくわが帰ってきた。何故か後ろに小さい子ども達が付いてきてる。

「じゃ、これでうちらも参加しちゃうか?」

おぉ、フリスビー。

フリスビーを追って走り回るちくわと子ども達・・・となでしこちゃん。なんか犬っぽい。

小さな子ども達と一緒に遊んでいるリンを見て、なんだか物凄く珍しいものを見ている気分になる。
こんな感じではしゃいでるリンって見たこと無いかも。

静かに、一人でいることの方が好きだと思ってたけれど、私の勝手な思い込みだったのかな・・・それともリンも、みんなでのキャンプの楽しさに気付いたのか。

子ども達と別れて、焚き火をすることに。
起きてきた先生も一緒に、みんなでココア(約一名ほぼラム酒)を飲んでまったりする。

「あ、見て、赤富士!」

気が付けば富士山が真っ赤になっていた。

解放感抜群の芝生の上で、みんなでおしゃべりしながら焚き火に当たって景色を眺めて・・・
なんか良いなぁこの感じ。

リンの言っていた通り景色が遠くまで良く見える。
焚き火もあったかくて気持ちいいしね。確かに冬キャンプもいいかも。

晩御飯の支度を始めた犬山さんと大垣さん。私もちくわのごはん用意しないと。
どんどん暗くなってきて、リンがランタンを出してきた。
と、同時にどんどん寒くなってくる。

「みんな、こうするとぬくいですぞ。ふひひひひ」

なでしこちゃんがブランケットを巻いている。
みんなの分も有るとかで、全員怪人ブランケットに。ちくわは先生の膝に収まっている、あったかいのかな?

そうこうしてる内に、晩御飯のすき焼きが出来た。
何故にすき焼き?と思ったけど、こうやってみんなで鍋を囲むのって楽しい。っていうか肉おいしい!さすがA5ランク。

先生が日本酒忘れたって泣いている・・・
この人ほんとに鳥羽先生かな?私が来たときにはすでに酔って寝ていたし、別人の可能性も・・・

リン達が気付かなかったのもわかる気がするなぁ。

そうだ、クリスマスグッズ持って来たんだった。
みんなにサンタ服を配って、テーブルにはミニクリスマスツリー。ちくわにもトナカイ帽子を被せた。うん、クリスマス感出てきた。

「・・・なんか、仕事終えたサンタが打ち上げしてるみてーだな」

・・・確かに。サンタ服で鍋囲んでるし。
サンタというかサンタ服着てケーキ売ってたアルバイトみたい。本物のサンタはこれからが仕事だしねぇ。

「こっからはこいつでお色直しや」

途中でトマトを追加してトマトすき焼きになった。
トマトとすき焼きって変わった組み合わせだと思ったけど・・・あぁ~、これもおいしいねぇ。

すき焼きもトマトすき焼きも美味しかった。良い肉いっぱい食べれて満足・・・と思ったらまだシメがあるらしい。

「シメ食べる人~」
「はいいィッ!!」

すかさず返事するなでしこちゃん。よく食べるなあ。
私一口だけ食べようかな、と思ったら、ガスが切れちゃったみたい。え、替えのガスもないの?

「コンロがもう使えないとゆー事は・・・明日の朝御飯、作れないって事じゃ・・・」

倒れ伏すなでしこちゃん。う~んこれは困ったねぇ。

「ガス、何本あればいいの?」

リンが立ち上がった。あ、そうかリンなら・・・

「近くにコンビニあったはずだから、ちょっと買ってくる」
「リ゛ン゛ぢゃ~んあ゛り゛がどぅぅ」
「泣くなよ」

リンが原付で買い出しに行くことに。
なでしこちゃんがチューブしょうがを頼んでた。明日の朝御飯かな?

「あってしにほんしゅぅー」
「未成年だから買えません」

う~ん、いよいよほんとに鳥羽先生か怪しくなってきたなぁ。学校と完全に別人なんですが。

みんなで買い出しに向かうリンを見送っておしゃべり。

「そういえば、大垣さんがリンを誘ったの?」
「ん?ああ、あん時か」

なんでも、リンが上伊那にキャンプに行ったとき、風邪をひいてたなでしこちゃんと一緒に、お見舞いに行った大垣さんがナビをしたのだとか。

「温泉で昼メシ食べてるっていってからしばらく連絡無いと思ったら、寝過ごしてたんだっけ」
「私らもほっとけや温泉で寝過ごしてまったしなぁ。冬の温泉は気ぃ付けんとあかんで」

暗くなってから起きて、急いでキャンプ場に向かう途中で通行止め(10時間ぶり2回目)をくらっていたときに、大垣さんのアドバイスで抜けられたのだとか。
余裕でキャンプ場に着いてたと思ったら、そんなトラブルがあったとは・・・

「で、まぁなんか流れで誘ってみた。どうせキャンプするなら人数多い方が楽しいだろ?」
「最初断られちゃったよねぇ」
「その後『やっぱ考えとく』って言ってきたんだよ。素直じゃねーよなぁ」

分かる(笑)
もしかして私が説得したから考え直したのかな?
だとしたらちょっと嬉しいな。

そんな話をしていたら、リンが帰ってきた。

「お帰り~」

寒い中わざわざお疲れ様。・・・あれ?

「どうかしたの?」
「ん、何が?」
「なんか嬉しそうな顔してる」
「いや、別に・・・なんでもない」

・・・なんかあるときの言い訳じゃんそれ。
なんか良いことあったのかな?

リンのおかげでシメのチーズパスタも美味しくいただけた。なでしこちゃんもモリモリ食べてる、よく食べるなぁ。

ごはん後にまったりしていたら、お父さんがちくわを迎えに来た。
一泊させる訳にもいかないからここでお別れだねぇ。
じゃあね、ちくわ、また明日。

キャンプ場の施設に大浴場が有るって事で、交代で入りに行くことに。
大垣さん、犬山さんと一緒にお風呂に向かう。

温泉じゃないけど、キャンプ場でお風呂に入れるってだけで十分贅沢だよね。

「でもやっぱ温泉キャンプもええよなぁ」
「次行くなら温泉付きで考えるか~」

いいなぁ、温泉キャンプ。私も行きたい。

お風呂を出て、リン達と交代。
焚き火に当たりながら、大垣さんと犬山さんの髪をお団子にしてみる。ついでに自分のも。

「その長さでよく出来んな」

まぁ、リンの髪いじって慣れてますから。

「そういえば、前に志摩さんがお城みたいな頭して歩いとったっていう噂聞いたけど」

あ、それ私(笑)

「お前の仕業だったのか。おいっ、今変なことしてないよな?」

してないけど、そう言われるとやりたくなってくるなぁ。

「あーーっ、みんなリンちゃんみたい!」

お風呂からなでしこちゃん達が帰ってきた。

「い~なぁ、い~なぁ」
「なでしこちゃんもしまりん団子やる?」
「やるっ!」
「なんだそのネーミング」

そんなに期待されたら手を抜く訳にもいきませんなぁ。
と、いうわけで完成しました。渾身のサボテンヘアー。

「どお?どおぉ?」

ンフッ、に、似合ってると思うよww

「またみんなで撮ろうっ」

そ、そうだね、記念にねww

「・・・およよ?」

あ、バレた。

焚き火を囲んで、みんなで大垣さんのタブレットで動画を見る。

外で動画を見てるだけなのに、なんだか楽しい。
リンがキャンプ場で本を読んでるって聞いて、家でも出来るじゃんと思ったけど、雰囲気というか空気感というか、こういうのもいいなぁって思える。

みんなでおしゃべりしながら動画を見てる内に、あっという間に時間がたっていた。

「あたしもう寝るわー」

大垣さんが言い出す。というか先生はもう寝てるし。

「あ、私も」
「せやねぇ」

さすがにもう眠くなった。
まだ動画を見るっていうリンとなでしこちゃんを置いて、私は犬山さんのテントで寝る事に。

「楽しかったね」
「せやなぁ」

寝袋に入りながら、今日の事を振り返る。
初めてのキャンプだったけど、広くて気持ちいいキャンプ場で、みんなとわいわいキャンプをして、すっごく楽しかった。

「誘ってもらった時は寒そうだしどうしようかと思ったけど、来て良かった。ありがとね」
「どういたしまして」

テントの外から、リンとなでしこちゃんの話し声が微かに聞こえてくる。

「・・・」
「どうかしたん?」
「えっとね、リンずっと一人キャンプしてて、今日みたいにみんなでキャンプってやったことなかったみたいだから、どうだったのかなって」
「そうなん?でも今日楽しそうやったやん」

だよね。こういうキャンプも良いって思ってくれてれば、いいなぁ。

あぁ、本格的に眠くなって来た。この寝袋あったかいし気持ちいいし。外なのにぐっすり眠れそう。

――――――

――――

――

朝、犬山さんに起こされて目を覚ます。
起こされなかったら昼まで寝てたなぁ。この寝袋すっごく寝心地が良い。

まだ日の出前だけど、リンとなでしこちゃんが朝御飯を作っていた。
ごはん、みそ汁、焼き鮭・・・日本の朝御飯って感じだ。
先生も起きて来たので、みんなでいただく事に。

ゆうべリンに頼んでたチューブしょうがで、すき焼きの残りのお肉を大和煮にしてある。
これめっちゃ美味しいんですけど。
ごはんも玄米ごはんだったり、おみそ汁も納豆汁だったり手が込んでる。
いいなぁなでしこちゃん、嫁に欲しいなぁ。

「あっ日が出てくるよ」

富士山の裾野から朝日が昇ってきた。
辺りが一気に明るくなって、朝露が光ってきれい。というかめっちゃまぶしい。

朝日を見たのってかなり久しぶりな気がする。
こういうのもキャンプの醍醐味なのかな。

みんなでテントを片付けて、芝生で寝ころんだり写真を撮ったりしている内に、解散する時間になってしまった。

なんだか名残惜しいな。

私はなでしこちゃんのお姉さんの車に乗せてもらう事に。
リンの言っていたキウイのお姉さんか、確かに美人だ。

車の中で、なでしこちゃんはお姉さんにキャンプでの出来事を話している。仲の良い姉妹だなぁ。

一人原付で帰るリンが少しずつ離れていって、カーブを曲がってからは見えなくなってしまった。
本人は平気なのかも知れないけど、少し寂しくなる。寒そうだし。

あんな風に長野まで行ったりしてたんだよなぁ、冬キャンプやるために。
やっぱり変わってるなぁ。でも、リンにとってそういうのこそがキャンプだったんだよね。

――――――

――――

――

家に帰ると、ちくわが飛び出して来た。
半日ぶりなのに随分甘えてくる。よしよし、可愛い奴め。
満足するまで遊んでやろう。

ヴーッヴーッ

ん?リンからだ。

{家付いたー]

おや珍しい、いつもはどこか出掛けても家帰ったなんて連絡してこないのに。

[お疲れ( ´エ`)ノ 寒くなかった?}
{カイロあったし余裕]

まぁ、長野行くよりはね。

[キャンプ楽しかったよね}
{だな]
[芝生のキャンプ場って気持ちいいんだねぇ}
{ちくわとも遊べたし]
[ちくわ私が帰った途端に飛び付いてきた。すっごい外行きたそう}
{フリスビーとか、小さな子達とも遊べて楽しかったんじゃない?]

[近くにあんだけ広くて、子ども付きの所があればなー}
{子ども付きはさすがにムリあるだろ]
[外で飲むココア美味しかった}
{あの一杯がたまらん]
[なんか先生みたいになってるけど}
{先生一杯どころじゃなかったけどな]
[すき焼きに合うお酒忘れて来たって泣いてたよね(笑)}
{私買いに行かされるとこだったし]
[すき焼き美味しかったよねぇ}
{初めて食べたけどトマトすき焼きも]
[あれもびっくりした。トマトとすき焼き合うんだね}
{しかもシメまで上手いっていう]
[チーズパスタ!一口だけしか食べれなかったけど最高だった}
{私も一口しか入らんかった。というかほとんどなでしこが食ってたな]
[なでしこちゃんよく食べるよねぇ}
{それな。まぁ作るのも上手いけど]
[朝御飯良かったよね。ヨメに欲しい}
{ヨメて。]
[焚き火に当たりながら動画を見るだけで結構楽しかった}
{焚き火は良いよな、なんか落ち着くし]
[初キャンプだけどすごく楽しかったよ}
{そうか、よかった]


{あのさ]

{誘ってくれてありがとう]



リンから突然お礼を言われて、思わず固まってしまう。
なんだかずいぶん素直な感じ。普段はあんなに素直じゃないのに。

[誘ったの大垣さんじゃなかったっけ?}
{いや、まぁ、そうなんだけど]

すっごく照れくさそうなリンの顔が目に浮かぶ。

[またみんなで行けたらいいねぇ(* ´ エ ` )/}
{だな]

ちくわが不思議そうな顔でこっちを見ている。
おっと、顔がニヤけていた。

「ん~?なんでもないよぉー」

ワシャワシャと頭を撫でてやる。

リンがみんなのキャンプに来てくれたこと。
楽しんでくれていたこと。
お礼を言ってくれたこと。

もしかして、このために今連絡してきたのかな?

私が誘ったことで、リンの楽しみを広げられたんだったら、それは嬉しいなぁ。

――end――

以上になります。

・・・長っ!

アニメ準拠になってるので(しゃけおにぎりは原作ネタですが)アニメ見直しつつ読んでいただければ・・・

今までゆるキャン△SS結構書いてきたんですが、地の文有りで書くの初めてだったのでめっちゃ苦戦しました。
会話形式だとボケとツッコミで進行できるのだが・・・

文章書くのって大変やなぁ

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