【艦これ】機械油に沈む宝物 (31)

※地の文あり

不慣れですが宜しくお願いします

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明石「...張...夕張ちゃん!聞こえてる?」

夕張「おおう!びっくりしたぁ~」

声に気づき、手元の艤装から目を離し顔を上げると明石さんが目の前にいた。
彼女は工具を手元で回しながら、私同様の機械油まみれの作業着をもう片方の手でつまみ上げている。

明石「さっきからずーっと声掛けてるのに反応しないんだもん。人の事言えないけど熱中しすぎ」

夕張「ごめん。ほんっと気づかなかった。で、用件は?」

明石「そろそろドック空きそうだし、一緒におフロ行かない?汗もかいて気持ち悪いんだよね」

明石に言われて気づいたが、私も長丁場の作業で全身汗まみれだった。
それに機械油の臭いがこびり付いちゃってるかも。
ドックが空いているうちにシャワーを浴びさせてもらわなくては。

夕張「わかったー。でもこの艤装の調整だけ...」

明石「はいはいそれは明日に回しましょうねー。というか今日の依頼分、終わらせたでしょ」

夕張「あああぁぁぁ...」

明石に首根っこを引っつかまれて、体を無理やり立たされる。
名残惜しくも、私は工廠を後にした。

明石「それにしても、普通の共用のおフロで洗えたら楽なのになー」

夕張「さすがに皆が嫌がるでしょ。工廠で落としきれなかった油もあるし」

明石「そうだけどさ」

整備時に使用する機械油はお世辞にも良い臭いとはいえないし、手の皺に入り込んでしまったりする。

実際、今の私の手は煤けたみたいに真っ黒だ。あまり他人に触りたいとは思わない。

なので私と明石さんは整備が終わって体を洗う時はドックで洗う事にしている。

ドックへつながる廊下を歩いていると、向かい側から提督が来るのが見えた。

提督もこちらに気づいた様で、手を振りながらこちらに歩いてくる

明石「やっば!提督だ...」

夕張「どうしたの?明石さん」

明石「どうしたのって、今私たち油まみれだよ!?」

そうだった!

このままでは提督にひどい臭いをお見舞いする事になってしまう!

私だって一応艦娘である前に女なのだ。異性に対しては一応気配りをする。

ましてや相手が提督ならばなお更である。

この危機的な状況を打開する為には...

明石さんの背後に隠れる事にした。

明石「ちょ、夕張ちゃん!?」

こうして一人の乙女を犠牲に、私の女としての尊厳は守られるのであった...。

夕張「明石さん...あなたの事、私忘れないから...!!」

明石「いや、勝手に殺さないで。いい話風にしてもだめだから」

そんな茶番を明石さんと繰り広げていると、提督が目の前までやってきてしまった。

提督「どうした、明石と...夕張、何してるんだ?俺に用事があるならここで聞くが」

明石「ちょっと汗をかいたのでドックでシャワーを浴びようかと」

夕張「かと」


提督「そうか。いつも二人には艤装周りでお世話になっているからな、ゆっくりしてきてくれ...と言いたい所なんだが」

提督「今ドックの空きが一つしかないんだ。悪いな」

明石「ええ!?いつもはこの時間帯空いてるじゃないですか」

提督「新人を連れた哨戒任務で少しな」

夕張「どうしよっか、いったん工廠に戻る?」

明石「仕方ないねー、戻りま...ん?」

夕張「明石さん?」

明石「夕張ちゃん、ちょっとだけ待っててくれる?」


私にそういうと明石は提督を連れて向こうの曲がり角へと消えてしまった。

なにやら話をしているみたいだけど...少し気になる。

明石「ていと...誘...チャンス...」

提督「さすがに急....」

明石「いつま...はや...指...」

やっぱりここからじゃ話が断片的にしか聞こえてこない。

何の話してるのかな。

しばらくすると二人は帰ってきた。


明石「ごめんごめん、遅くなっちゃった。妙なところで提督が渋るから...」

夕張「?」

明石「そんなことよりも夕張ちゃん、シャワー浴びれるみたいだよ!」

夕張「でもドックは一つしか空いてないんじゃ」

明石「実はもう一つ、使える所があるんだよねー。ですよね、提督?」

そう言いながら明石は提督のわき腹をひじで小突く。
なにやら提督は気まずそうな顔をしているけど...。

提督「なあ夕張、お前が良かったらなんだが...」

提督「俺の家の風呂、使っていかないか?」


夕張「いいんですか、提督。お風呂を使わせてもらっても」

提督の家へ歩くすがら、私は本当に提督の家へお邪魔してもいいのか心配になって聞いてみた。

すると提督は二つ返事で「構わない」とだけ答えると歩みを進める。

提督「去年の暮れに家に大きめの風呂を造ったんだ、自分へのご褒美も兼ねてね。
だけど職業柄あまり家に帰れなくて、週末に家へ寝に来るような物だ。せっかく風呂を作ったのに、これじゃもったいないだろ?」

夕張「尚更ですよ!私、作業の後だから油まみれですよ?」

提督「別にいいさ。それに」

夕張「それに?」

提督「誰かさんに自慢したかったんだよ。新しい風呂。だからいい機会だと思ってね」

夕張「...提督って意外と子供っぽいところありますよね」

提督「でも夕張にも分かるだろ?この気持ち」

夕張「まあ、分かりますけど」


そうこう話している内に提督の家まできてしまった。

鎮守府の離れに提督の家があることは知っていたけど、まさかこんな形でお邪魔する事になるなんて。

提督「ちょっと待ってて。用意してくる」

私にそう言い残すと、提督は家の奥へと上がっていってしまった。

玄関に一人取り残された私は改めて提督の家に上がる事を再認識すると共に、少しだけ期待している事に気づく。

胸に手を当てて、少しだけ深呼吸。


夕張「はぁー」

どうせならもっとお洒落をして来たかったなぁ...。

私、夕張は提督に好意を寄せている。

私がここの鎮守府に着任したのは、今からちょうど3年前、なんでもデイリーの最低値の建造で建造したらしい。

その頃はまだ戦力も乏しく、着任したときには提督が大騒ぎして、秘書官の叢雲さんに窘められていた事を
今でもよく覚えている。

あの時はほんとに少数の艦娘しか居なかったからもっと気軽に提督と話していたのだけれど、
今となってはすっかり大御所の鎮守府の提督が様になっちゃったな。

それから練度が最大になってからと言う物、もっぱら私の戦場は海上から工廠へと変わった。

いろんな物を弄くれるのは楽しいけれど、提督と話す時間が前より減ってしまったのは残念だった。

最近になって提督は少し工廠に顔を出すようになったけど、なかなか前のようには話すことができず、もどかしさだけが私に募っていた。

でもさっきは少しだけ、前みたいに話せたかな...?


提督「悪い、待たせた」

提督が玄関の奥から声をかける。気づくと提督はいつの間にか普段着に着替えていた。

いつもは制服を着ているから、ちょっと新鮮かも。

提督「どうしたの夕張。あがって」

夕張「あ、はい」


ぼんやりとしたまま玄関先から上がろうとすると、引き戸の凹凸に足が引っかかってしまった。

夕張「おっとと」

提督「!」

おもわず手を前に伸ばすと提督が握り返してくれる。自然とそのまま、私は提督の胸の中へもたれかかる形になった。

少しの間、静寂が私と提督に生まれる。握り締められた両手を解くのがこんなに難しく感じるなんて。


夕張「...ごめんなさい」

提督「?」

夕張「私、さっきまで偽装を弄くってたので...。提督の手、汚しちゃったかも。それにまだ汗もあんまり引いてないし」

提督の顔に視線を向けると、口を半開きにしながら固まっていた。

やっぱり嫌だったのかな。

思わず顔を背けたくなる。

目の奥からこみ上げるものを我慢しようとすると、急に体が宙に浮いた。


提督「あーもう無理」

夕張「えっ!?」

提督「そんなにしおらしい子だったかね。うちのメロンちゃんは」

気づくと私は提督に抱えられていた。いわゆるお姫様抱っこ状態でだ。

夕張「ちょっ、話し聞いてました!?私今汚れてるって」

提督「いいよ別に。俺も一緒にお風呂入るし」

提督「えええ!?」

そのまま抱えられて、風呂の脱衣室まで連れて行かれた。

>>15 ミス
提督「あーもう無理」

夕張「えっ!?」

提督「そんなにしおらしい子だったかね。うちのメロンちゃんは」

気づくと私は提督に抱えられていた。いわゆるお姫様抱っこ状態でだ。

夕張「ちょっ、話し聞いてました!?私今汚れてるって」

提督「いいよ別に。俺も一緒にお風呂入るし」

夕張「えええ!?」

そのまま抱えられて、風呂の脱衣室まで連れて行かれた。


提督「じゃあ、先に入ってるから。」

夕張「...はい。」

あまりにも急展開で頭が追いついていない。

そんな私にお構いなしに、提督はさっさと服を脱いで奥へいってしまった。

提督「俺が逆上せる前には入ってきてね」

夕張「もー!覗かないでください!」

手元のタオルを扉へ投げつける

ああ...どうしよう。すごい緊張する。

でももうここまで来ちゃったし。

覚悟を決めた私は提督同様に服を脱ぐと、お風呂へとつながる扉を半場ヤケになりながら開けた。


夕張「わあ...。」

そこには旅館にも引けをとらない立派な露天風呂が広がっていた。

提督「いいでしょ。明石と妖精さんに頼み込んだ甲斐があった」

夕張「確かに立派ですね...。」

提督「こっちにおいで」

腰にタオルを巻いた提督が椅子に座って手招きをしている。

夕張「自分で洗いますよ」

提督「いいから」

夕張「...」

屈託のない笑顔で言われると断りづらい。

あまり提督のほうを見ないようにしながら、私は隣の椅子に腰を下ろした。


提督「先に手、洗っちゃおうか」

言われるがままに私は胸元で握り締めていた手を目の前に出す。

手のひらには落としきれなかった機械油の汚れが残っていて、反射的に手を閉じてしまった。

夕張「やっぱり嫌ですよね。黒ずんでて女らしくないし、それに手も荒れちゃってるし」

提督「...嫌いじゃないよ。皆のために頑張ってくれてるんだなって俺は思うけど。」

握り締めた手の上から、手を重ねられる。

提督「もっとみせて」


提督の指が私の手の中に入りこんできて、向かい合わせで恋人つなぎの形になる。

お互い無言で相手の手を確かめ合うように、指に力を入れる。

夕張「ふふっ、提督、こしょばいです」

提督「わ、悪い。つい夢中で」

焦りながら提督は棚に乗っていた容器を手に取る。
これは...クレンジングオイル?

提督「油の汚れは油で浮かすとよく落ちる...らしい」

容器から幾らかのオイルを出すと、ゆっくりと私の手に塗りこむ。

しばらくすると手のひらから黒い汚れが浮き出しはじめ、洗う前とは比べ物にならないほど綺麗になった。


提督「...いつもありがとうな」

夕張「どうしたんですか、急に」

提督「いやその...最近、夕張と全然話せてない気がして」

夕張「こっちのセリフですよ。いつの間にか堅苦しい口調で話すようになるし。今は直ってますけど」

提督「それはうちの鎮守府も大所帯になったし、硬くしたほうが示しがつくかな、と」


夕張「私は今の提督の方がいいです、あと提督が好きです」

提督「う、うん!?」

夕張「提督はどうなんですか?」

提督「俺も好き」

夕張「ええ!?本当ですか!?」

提督「なんで夕張が聞いたのに驚いてるんだよ」

夕張「なんか嬉しくって、つい」

提督「なんだよそれ」

夕張「...なんでしょうかね?」

おかしくなって私たちはひとしきり笑いあって、体を洗いあい、そして湯船に浸かった。


夕張「どうして私の事、好きになったんですか?」

湯船で肩を合わせながら、私はふと疑問になって聞いてみた。

提督「何でか知らないけど、工具を握ってる夕張の横顔がすごい魅力的に見えたんだよな」

夕張「へぇ~、そうなんですかぁ。ふーん」

提督「笑うなよ。夕張はどうなんだ?」

夕張「ナイショです」

提督「な、卑怯だぞ!俺は教えたのに!」

夕張「えへへへ」

もうさっきから口元に力が入らなくて、ニヤニヤしっぱなしだ。
恥ずかしくなった私は、提督の肩に顔をうずめて誤魔化した。
...たぶん誤魔化せてないだろうけど。


夕張「それと」

提督「まだ何か聞きたいのか?」

夕張「どうして提督が女物のクレンジングオイルを持ってたんですか?」

提督「悪いがそれだけは内緒」

夕張「えー!場合によってはギルティですよー!!」

提督「お互い様だろー」

ま、いっか。今はとっても幸せだし。

その事実だけで私の胸は満たされていた。

いつまでもこうやって提督と一緒に居られたら。


ドックにて

明石「へーくち」

大淀「ちょっとー、こっち飛んだんだけど」

明石「わるいねぇ大淀さんや」

大淀「もう...で、どうなの?」

明石「何の話?」

大淀「夕張ちゃんと提督の話。」

明石「いまごろ宜しくやってるんじゃないかなー。」

大淀「ようやくここまで漕ぎ着けたのね。いつまでもカッコカリの指輪を渡さないから上が煩くて敵わなかったわ」

明石「そうだねぇ。でも最近ようやく形になったし、結婚も時間の問題かな」

大淀「...何の話?」

明石「あ、やば。これはオフレコでお願い」

青葉「青葉ですー!今のお話、詳しく聞かせてもらってm」

終了!
悪いな青葉...貴様は話の締めで便利すぎるんだ...。

HTML依頼出してきます。

依頼スレが立てられなかったのでまた明日の朝挑戦してみます...^ω^

現行の依頼スレ見つけました。お騒がせいたしました

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