海賊「海は危ないから、やっぱり山賊になろう!」 (27)

ザザーン…

海賊「見ろ、この大海原を!」

海賊「この水平線の彼方に、お宝が! 敵船が! 冒険が! 俺たちを待っている!」

手下「おうっす!」

悪女「フフッ、ワクワクしてきたね」

孤児「楽しみだなぁ」

海賊「俺たちゃ血のつながりこそねえが、その絆は鉄より固い!」

海賊「野郎ども、出航だぁぁぁ!」

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海賊「オッ、オエェ~……!」

手下「大丈夫っすか!?」

海賊「もう吐くものもねえよ……」

悪女「それどころか、食い物もなくなっちゃったよ……」

孤児「また大波が来たよぉぉぉぉぉ!」

海賊「ま、まずい! 逃げろぉぉぉぉぉっ! オ、オエ~ッ!」

ザバァァァァァン…

ザザーン…

海賊「ハァ、ハァ、ハァ……死ぬかと思った」

手下「こうして生きて帰ってこれただけで奇跡っすよ……」

悪女「まったくだね……海は広いな大きいな、だよ」

孤児「ぼく、怖かったよ~」

海賊「……よし決めた!」

海賊「海は危ないから、やっぱり山賊になろう!」

山賊「さぁ、みんな山に登るぞ!」

山賊「山の頂上に陣取って、登ってきた奴らの荷物を奪ってやるんだ!」



熊「ガァァァァッ!」

手下「うわぁっ、熊っす! 熊が出たっすぅぅぅぅぅ!」



悪女「山道で足をひねっちゃった……」

孤児「お姉ちゃん、大丈夫!?」



山賊「うおっ、こんなところに崖が!? 落ちるぅぅぅぅぅ!」ゴロゴロ…

山賊「い、いててて……」

手下「大丈夫っすか?」

悪女「あの高さから落ちて、よくその程度で済んだよ……」

孤児「おじさん、運が強いね!」

山賊「みんな、ありがとう……」

山賊「だが、山も危ないということがよく分かった……場所を変えよう」

悪女「今度はどこにするんだい?」

山賊「森だ……俺たちは森賊になるんだ!」

森賊「森なら、高いところもないし、安全だろう……」ガサガサ…

ボトッ

森賊「ん? こ、これは……ハチの巣!?」

森賊「みんな逃げろぉぉぉぉぉ!」

ブ~~~~~~ン……

森賊「うわぁぁぁぁぁっ!」

手下「ひいいいいいっす!」

悪女「きゃぁぁぁぁぁ!」

孤児「助けてぇぇぇぇぇ!」

森賊「あだだだ……メッチャ刺された……」

手下「小便かけるっすか?」

森賊「いらん!」

森賊「だけど、悪女のならいいかも……」

悪女「バカなこというんじゃないよ!」バシッ

森賊「おぶっ!」

森賊「森も危ない……もっと見晴らしのいいとこに行こう!」

孤児「見晴らしのいいとこって?」

森賊「砂漠なんかいいんじゃないか? 俺たちは砂賊になる!」

砂賊「見ろ、この見渡す限りの砂、砂、砂!」

砂賊「これなら獲物になる旅人を絶対見逃さないし、猛獣の類にも出くわさないだろ!」

手下「砂漠の砂ってサラサラで、さわってると気持ちいいっすね~」

悪女「砂風呂でお肌キレイにしちゃおっと!」

孤児「砂遊び楽しい~!」

砂賊「おいおい、俺たちは観光で来たんじゃないぞ~!」

砂賊「どれ、砂の城でも作るか……」

砂賊「ハァ、ハァ、ハァ……喉渇いた……」

手下「水……水……飲ませて……」

悪女「あっ、あそこにオアシスが見えるよ!」

孤児「落ち着いて! あれはただの蜃気楼だよ!」

砂賊「やっべえ……正直砂漠なめてたわ」

砂賊「人間って水がないとダメだわ……だけど海はもう懲り懲りだし……」

砂賊「次は川だ! 川賊になろう!」

ザザザザザ…

川賊「穏やかな流れの川だ……これならなにも危なくないだろ」

手下「バーベキューにはもってこいの川っすね!」

悪女「店でお肉買ってきたよ」

孤児「いただきまーす!」

ジュゥゥゥ… ジュゥゥゥ…

川賊「肉うんめえええええ!」ハグハグ

ドバババババ…

川賊「うおあぁぁぁっ! 川が雨で増水だぁぁぁ!」

手下「俺のバーベキューセットが……!」

悪女「バカ、諦めな!」

ドバババババ…

孤児「危うく四人とも流されるとこだったね……」

川賊「川は危ない!」

川賊「こうなったら、道路に陣取る道賊になるぞ!」

道賊「道路なら絶対安全だろ!」

手下「そりゃそうっすよ!」

悪女「平らだし、見通しもいいし、猛獣はいないし、人通りも多いからね」

孤児「ここでみんなで待ち伏せして、やってくる旅人を襲えばいいんだね!」

道賊「その通り! 旅人が来たら、道を塞いで、金品を巻き上げるんだ!」

ドドドドド…

道賊「来たぞ!」

御者「どけどけどけぇぇぇぇぇっ!」

馬「ヒヒィィィィィン!」

ドドドドドドドドドド…

道賊「うわぁぁぁぁぁっ!」

御者「ひき殺されてーのか、バカヤローッ!」

ドドドドド…



道賊「あぶねえ……なんつう運転してやがる」

手下「あんなの止められないっすよ!」

道賊「道も危ないってことか……。こうなったら町に行こう!」

町賊「さぁ~て、町にやってきたぞ、野郎ども」

手下「平和ボケした町民どもがウジャウジャいるっすね!」

悪女「あたしら町賊の恐ろしさを思い知らせてやろうじゃないか!」

孤児「いよっしゃーっ!」

町賊「野郎ども、出陣じゃああああああ!」

チンピラ「よそ者が調子こいてんじゃねえよ」スタスタ

ゴロツキ「とっとと町から消えろ!」ペッ



町賊「あ、あうぅぅ……」ボロッ…

手下「こういうでかい町には、やっぱり先客アウトローがいるんすねえ……」

悪女「それで町の治安を守る役割を担ってたりするからね……必要悪ってやつさ」

孤児「これじゃ町賊なんてとてもできないよぉ……」

町賊「こうなったら村に行こう! 小さな村ならきっと――」

村長「怪しい奴らめ、出ていけーっ!」

村人「石を投げてやれっ!」

村娘「村八分にしてやるわ!」



ヒューン… ヒューン… ヒューン…

ゴッ ガツッ ゴンッ



村賊「あだだだっ! やめてっ、やめてくれ! 投石の威力はシャレにならないっ!」

家賊「とうとう家に引きこもるしかできなくなった……」

手下「俺たち、これからどうすりゃいいんすか……」

悪女「もう行くところがないねえ……」

孤児「おなか、すいた……」グゥゥゥ…

家賊「……」

家賊「こうなったら……」

家賊「四人で真面目に働こう!」

家賊「自分たちで畑を作ったり、村の農作業を手伝ったりしてさ!」

家賊「そうすればきっと、村の人たちも俺たちを受け入れてくれるさ!」

手下「やれやれ、それしかないっすね!」

悪女「やってやろうじゃないか!」

孤児「さんせー!」

家賊「よーし……今日から俺はもう賊はやめる! 元賊だ!」

村長「おぬしらが来てから、よく働いてくれて、村の収穫量が増えて助かっとるよ」

村人「世界中で賊をやっていた体験談も面白いしな!」

村娘「もっとお話を聞かせて下さい!」

元賊「いや~……あんな失敗談の数々を、面白がって頂いて光栄です」

元賊「それじゃ、また!」

元賊「ただいま~!」

手下「お帰りっす!」

悪女「晩ご飯できてるよ」

元賊「お、ありがとう」

孤児「今日も村のみんなと楽しく遊んだよ!」

元賊「そうか、そうか」

元賊「しかし、なんだな……これまで色んなことがあったけど、俺は今、とても幸せだよ!」

元賊「お前たちという仲間に出会えて、一緒にいられて、本当によかった!」

元賊「いや、俺たち四人は今や仲間以上の絆で結ばれている!」

手下「親分……」

悪女「あんた……」

孤児「おじさん……」

元賊「俺たちは……家族だ!!!」







~ END ~

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