リヴァイ「花見だと?」(42)

進撃SSです。

ミカサ「お花見に行きたい」の続編です。
事前にあちらの方をお読み頂ければ幸いです。

よろしければご笑覧ください。

*(旧調査兵団本部、食堂)

ハンジ「こんばんは~、今日もやってきたよ~」

ペトラ「あ、ハンジさん、こんばんは」

リヴァイ「何の用だ」

ハンジ「何の用って…、何か用でもあった?」

リヴァイ「何が言いたい」

ハンジ「なんだよう」

リヴァイ「…黙れ」

ペトラ「今日もご機嫌ですね」

ハンジ「うん、今日はね、お願いがあって来たんだ」

エルド(また妙な実験か…?)

グンタ(厄介なことにならなきゃいいが…)

オルオ(そうか、「黙れ」の前に一拍タメがいるんだな…勉強になるぜ)

エレン「ハンジさん、もしかして、俺に関わることですか?」

ハンジ「やあ、エレン。元気そうだね。うん、いいことだ」

ハンジ「でもね、今日は巨人化に関することではないんだ」

エレン(ほっ)

ハンジ「今日はね、リヴァイ班全員にお願いがあるんだよね」

リヴァイ「…急用を思い出した。早急に片付けねば」ガタッ

エルド「兵長、俺も手伝います」ガタッ

グンタ「俺もです!!」ガタッ

ペトラ「私も兵長のお力になりたいです!!」ガタッ

オルオ(乗り遅れた!!)

オルオ「エレン、今日は約束通り壁外調査の何たるかを教えてやる」ガタッ

エレン「え?そんな約束しましたっけ…?」

オルオ「…黙れ。さっさと支度をしろ、グズ野郎」

エレン「は、はあ…」

ハンジ「ん~、まずは扉を閉めてっと」ガチャッ

六人「…」ガタッ ←座り直した&諦めた

ハンジ「明日の休日なんだけど」

ハンジ「花見に行かない?」

リヴァイ班「…?」

ハンジ「訓練兵が立体機動の訓練をしている山の奥」

ハンジ「あそこに大きな桜の木が生えているんだ」

エレン「あっ、ハンジさん、ご存じなんですか?」

ハンジ「あ~、エレン、君は知ってるよね、当然」

ハンジ「去年の今頃、君たちはあそこに行ったんだよね」

ハンジ「新兵のアルミン…って言ったかな。彼から聞いたんだけど」

ハンジ「桜っていう綺麗な花を咲かせる木があって」

ハンジ「そこでのんびり桜を見てのんびり過ごす」

ハンジ「これが花見っていうものらしいけど」

ハンジ「それはもう、最高に滾る一日だったって聞いたよ」

エレン「はは、まぁ、なかなか楽しかったですね」

ハンジ「ああ…やっぱり。行きたそうな顔をしていると思った」

ハンジ「そんなに行きたかったのか…しょうがない」

ハンジ「行かないといけないね」

ハンジ「リヴァイ班全員で」

リヴァイ「おい…、勝手に予定を決めるな」

リヴァイ「そんな娯楽にうつつを抜かすほど暇じゃない」

ハンジ「リヴァイ…、今、娯楽って言った?」

リヴァイ「…それがどうした」

ハンジ「認識不足だね」

リヴァイ「何だと?」

エレン(あれ…?前にもこんな展開になった気が…)

ハンジ「リヴァイに聞くけど、兵士に必要な要素って何?」

リヴァイ「…命令を忠実に果たす実行力、強敵に怖じない勇猛心、如何なる事態にも動じない平常心だ」

ハンジ「うん、流石だね」

オルオ「ふっ、さすがは俺の尊敬する兵長だ。簡潔にして明瞭、まさに」

ペトラ「あんたとは格が違うよね」

オルオ「」

ハンジ「リヴァイが挙げた三点、いずれも兵士には不可欠の要素だ」

ハンジ「翻って、兵士エレンの現状を考えてみよう」

エレン「お、俺ですか…?」

ハンジ「トロスト区攻防戦についての報告書、それから、訓練兵時代の評価書によると」

ハンジ「命令を忠実に果たす実行力については概ね合格だ」

ハンジ「強敵に怖じない勇猛心、これは満点に近い」

ハンジ「ただ…、平常心については若干の疑問符がつく」

エレン「…そうかも知れません」

ハンジ「うん、エレンも分かっているみたいだね」

ハンジ「エレンの勇猛心、要するに巨人に立ち向かおうとする旺盛な闘争心は」

ハンジ「時として暴走を招きかねない」

エレン「…はい」

ハンジ「その暴走が今度の壁外調査で出てしまったら、どうだろう」

ハンジ「しかもエレンは巨人化という力を有している」

ハンジ「そんなエレンが暴走したら…」

エレン「…」

ハンジ「エレン、これは客観的な分析だ。責めているわけじゃない」

エレン「…はい」

ハンジ「リヴァイ、この点についてはどう思う?」

リヴァイ「俺の前で暴走出来ればたいしたもんだがな」

ハンジ「そりゃそうだね。しかし、リスクは可能な限り減らすべきだ。違う?」

リヴァイ「…何か名案があるのか?」

ハンジ「あるよ。花見だね」

リヴァイ「何…?」

ハンジ「エレンはこの短期間でめまぐるしい環境の変化に晒されている」

ハンジ「その結果、エレンの心身には多大な負担がかかっているに違いない」

ハンジ「それが暴走に繋がる可能性は否定出来ない」

ハンジ「花見をすることで、多少なりともそれを和らげる」

ハンジ「すなわち」

ハンジ「花見とはまさに今後の調査兵団の行く末を決める大切な催しだ」

ハンジ「どう?」

リヴァイ「随分都合のいい話だな」

リヴァイ「結局のところ花見は娯楽じゃねえか」

ハンジ「うん、そうなんだけどね」

エレン(すごい、俺なら丸め込まれてた…!!)

ハンジ「いいじゃん、行こうよ~」

リヴァイ「諦めろ」

ハンジ「ケチ」

リヴァイ「帰れ」

ハンジ「刈り上げ」

リヴァイ「…」

ハンジ「目つき悪い」

リヴァイ「…」

ハンジ「加齢臭」

リヴァイ「…」ガタッ

リヴァイ「蹴られたいのか」

ハンジ「気にしてたの?まさか本当に加齢臭?」

リヴァイ「…帰れ」

ペトラ「あの、兵長…」

リヴァイ「何だ?」

ペトラ「私、花見に行ってもいいんじゃないかって思うんですけど…」

ペトラ「壁外調査の前って、私達もぴりぴりしがちですし」

ペトラ「少しだけ、リラックスの時間を取ってもいいんじゃないかなって」

オルオ「ふっお前はまだ甘いな。分かるか?その甘さこそ俺の域に達しない最大の」

ペトラ「うるさい」

オルオ「」

リヴァイ「…お前ら、行きたいのか?」

エルド「俺は少し興味があります。壁外調査前に少し羽を伸ばしておきたいですし」

グンタ「俺も同意見です。もちろん次の日からの訓練に支障をきたさない程度にですが」

オルオ「俺は兵長の意見に従いますよ」

リヴァイ「チッ…、勝手にしろ」

ハンジ「よし、決定」

ペトラ「それじゃ、私、お弁当作りますね」

ハンジ「そう?助かるよ。私も手伝うからね」

エルド「ペトラの」

グンタ「手作り弁当」

オルオ「俺のもの」

エルド・グンタ「ふざけんな!!」

エレン(あ、調査兵団ではそう言うんだ)

リヴァイ(馬鹿野郎ばかりだな)

リヴァイ「ペトラ、馬鹿が弁当におかしな薬を入れない様に見張ってろ」

ハンジ「まっさか~、そんなことしないよ~」

六人「…」

ハンジ「あれ?…あれ?」

*(翌日、山奥の桜の木)

エレン「着きましたよ、あれがそうです」

ハンジ「へえ、こりゃ凄いね…」

ペトラ「思ってた以上に咲いてるんですね…綺麗」

オルオ「フッ、悪くない…」

エレン「去年と同じぐらい咲いてますね、良かった」

・・・・・・・・・・

ハンジ「さて、これがお待ちかね」

ハンジ「ペトラの手作り弁当だよ」

ペトラ「兵長、どうぞ」

リヴァイ「ん。悪いな」

ペトラ「ハンジさんにだいぶ助けてもらいました」

ハンジ「味付けはペトラだよ。私は下ごしらえしただけ」

リヴァイ「…(もぐもぐ)」

オルオ「ふっ、まあまあってところだな。及第点をやろう」

ペトラ「評価してくれってお願いした覚えは無いんだけど」

エレン「おいしいですよ、とても」

ペトラ「そう?」

リヴァイ「…(もぐもぐ)」

エルド「そうだな、いつもよりうまいと思うぞ」

グンタ「だいぶ手間がかかったんじゃないか、これ?」

ハンジ「よかったね~ペトラ。朝早くから頑張ってたもんね」

リヴァイ「…(もぐもぐ)」

ペトラ「はい。…あの、兵長、どうですか?」

リヴァイ「なかなかの味だ」

ペトラ「よかった」

ハンジ「…リヴァイ、もっと、こう、なんかないの?」

リヴァイ「あん?」

ハンジ「ほら、俺の好みの味だとか。お前の弁当は最高だとか」

リヴァイ「…。堪能した。機会があればまた作ってくれ」

ペトラ「あ、ありがとうございます!!」///

ハンジ「まぁ、リヴァイにしては頑張ったほうか」

リヴァイ「お前は俺に何を期待してんだ…」

ハンジ「べっつにいい。あ、忘れてた」ゴソゴソ

ハンジ「じゃん。エルヴィンから差し入れだよ」

エルド「おお…、一目で分かる高級ワイン」

ハンジ「それからこれはリヴァイと私からのおごり」

グンタ「こっちも相当に値の張るワインじゃないですか」

五人「ありがとうございます!!」

ハンジ「折角の花見だからね。さ、呑もう」

・・・・・・・・・・

エルド「旨い酒にきれいな花。いいもんだな」

ペトラ「ほんと。日頃の訓練が嘘みたい」

オルオ「歴戦の兵士だからこそ味わえる休息だ。おい、エレン」

エレン「はい、何ですか?」

オルオ「お前はまだひよっこだからな。勘違いすんなよ?」

エレン「分かってますよ…」

ペトラ「無駄に威圧しないの。また舌噛むよ」

グンタ「なあ、エレン。去年はどんな花見だったんだ?」

ペトラ「あ、私も興味ある」

エレン「どんなって、その…」

エレン「同期の…八人で行ったんですけど」

エレン「途中で射留めた鳥や兎を焼いて食べたり」

エレン「酒を呑んだりして」

リヴァイ「おい、エレン」

エレン「は、はい」

リヴァイ「お前、訓練兵の分際で酒を呑んだのか」

エレン「あ、…いえ、少しだけなんですが…。すみません」

エレン(しかも盗んだ酒だからな…)

ハンジ「いいじゃん、もう時効だよ」

ハンジ「それから、どんなことしたの?」

エレン「そうですね…、後はざっくばらんに話しましたね。…あ」

ハンジ「何?」

エレン「ミカサが、あの、同期の一人なんですが」

ハンジ「ああ、知ってるよ。審議所で怖い顔してたね」

リヴァイ「…ああ、あいつか。俺を睨んでやがったな」

エレン「あ、いや、その…。すみません、今度言い聞かせておきます」

ハンジ「ふふ、そりゃエレンがあれだけ蹴られたらねぇ…」

リヴァイ「うるせえ。お前も蹴って欲しいのか」

ハンジ「おお怖い。…それで、ミカサがどうしたの?」

エレン「珍しい詩を披露しまして。あ…」

エレン(これ、恥ずかしい話じゃないか!!)///

ペトラ「詩?どんなの?覚えているなら聞かせて」

エレン「はあ、その…、世の中に…」

エルド「世の中に?それから…、何だ?」

エレン「世の中に絶えて桜の無かりせば春の心はのどけからまし」

グンタ「ほう、響きが独特だな。どんな意味だ?」

エレン「えっと、世の中から桜が無くなれば、春を過ごす私の心はのどかなのに」

エレン「確か、こんな感じの意味でした」

オルオ「ふっ、ひねくれた詩だな」

オルオ「のどかな心に憧れて桜を否定する。風流心の無い朴念仁の詩だ」

エレン「いえ、そうじゃないんです」

オルオ「何?」

グンタ「俺もそういう意味に取ったが…。違うのか?」

エレン(はは、何だか懐かしいな)

エレン「はい。えっと、桜はすぐに散る花です。だから」

エレン「咲いたらすぐに見に行かなければいけません。ですから、えっと…」

ペトラ「なるほど、桜が好きで早く見に行きたくて焦ってしまうってわけね」

ペトラ「この詩を詠んだ人は桜が大好きだったのね」

エレン「そ、そうです。その通りです!!」

ハンジ「なかなかいい詩じゃない。ところでさっき赤くなってなかった?」

エレン「い、いえ、気のせいですよ」///

ハンジ「ああ、そう、勘違いだったかな(アルミンから全部聞いてるんだけどね)」

ペトラ「グンタの言った通り、響きが独特だね。何か法則があるみたいだけど」

エレン「あ、はい。後でミカサに聞いたら、五、七、五、七、七の音で詠むそうです」

グンタ「五、七、五、七、七…」

エレン「上の句、えっと、五、七、五だけでも成り立つそうなんですが」

エレン「実は去年の花見の後、訓練兵の間で少し流行ったんです。詩を作るのが」

エレン「大抵、変な詩になったんですけどね」

エルド「ほう。どんな詩だ?」

エレン「一番評判が高かったのが、クリスタっていう女の子の詩で」

エレン「道の端に 紅の花 風に揺れて 足を留める 日の沈む頃」

エレン「秋の夕暮れを詠ってみたそうです。少し字余りですけど、それはそれでいいみたいですね」

ハンジ「何だか光景が思い浮かぶね。それで、一番…変な詩は?」

エレン「…多分、俺の作った詩です」

オルオ「聞いてやろう」

エレン「…笑わないでくださいね」

エレン「桜咲く とにかく巨人を ぶっ殺す」

リヴァイ「…ほう」

エレン「すみません。桜と巨人に何の関係があるんだって皆に大笑いされました…」

リヴァイ「牢屋で聞いた通りだな」

エレン「はい、やっぱり俺は巨人を倒すことが一番で…」

リヴァイ「努力しろ。結果は後からついてくる」

エレン「はい!!」

ペトラ(なんか優しいな、兵長。ちょっと羨ましい)

ハンジ「ねえ、私達も作ってみる?」

エルド「俺達がですか?出来るかどうか…」

ハンジ「いいじゃん、みんな素人なんだし、気楽に気楽に」

ハンジ「どうせなら、桜をテーマにして考えてみようか」

・・・・・・・・・・

全員「…」

ペトラ「なかなか難しいね…」

オルオ「おい、エレン。会話が途絶えただろが」

オルオ「お前の責任だ。何とかしろ」

エレン「そ、そんな。…それじゃ、一応出来たので…」

グンタ「早いな。さあ言ってくれ」

エレン「…はい。今日は花見 みんなでわいわい 楽しいな」

オルオ「ぐふふっ」

エレン「え、変ですか?やっぱり変ですか?」

オルオ「子どもの日記だろうが、それでは」

ペトラ「だったらあんたはどんなの作ったのよ?」

オルオ「ふっ、聞きたいか?」

ペトラ「いいからさっさと」

オルオ「…惚れるなよ?桜の木 初めて見たけど 綺麗だな」

オルオ「…どうだ?」

グンタ「エレンと変わらないだろ」

エルド「何のひねりも無いな」

オルオ「馬鹿め!!風流なんだが!?雅なんだが!?」

ハンジ「はいはい!!私も作った!!」

リヴァイ「ほう、お前にも詩を詠む心があったのか」

ハンジ「調査団の頭脳を舐めちゃいけないね」

リヴァイ(調査団の奇行種だろが)

ハンジ「桜の木 巨人が下に 埋まってる」

ハンジ「どう?うきうきしない…?」

六人「…」

ハンジ「あれ、どうしたの?」

ペトラ「何か、怖いんですけど…」

グンタ「うきうきというか、地中から巨人の手が出てきそうで」

エルド「うん、怖いな、それは」

リヴァイ「その発想はどうにかならんのか」

ハンジ「駄目かなあ…?」

エルド「…こんなのはどうだろう?」

エルド「風立ちぬ 恋と花とを 散らしつつ」

エルド以外「おお…」

エルド「どうだ?」

グンタ「何か…いいな、それ」

オルオ「ふっ八十点をやろう。これからも努力しろ」

ペトラ「恋と花とを散らしつつ…か。失恋の詩かな?」

ハンジ「…実話?」

エルド「い、いや、何かそれっぽく詠んでみただけですよ」

グンタ「…よし、何とか出来た。いいか?」

エレン「聞かせてください」

グンタ「雄叫びを 上げていざ往く 壁の外」

グンタ「桜の詩ではないな。すまん」

ハンジ「壁外調査への意気込みを詠んだわけだね。いいんじゃない?」

エレン「訓練したくなってきました!!」

グンタ「そ、そうか。何か照れるな…」

オルオ「ペトラ、お前はまだ出来ないのか?」

ペトラ「うるさいなぁ、もう出来てるよ」

ペトラ「花の下で ちらり横顔 盗み見る いつもと違う 春の休日」

ハンジ「ん~?誰の横顔~?」

ペトラ「いえ、あの、一般的な女の子の気持ちを詠んだだけで」///

ハンジ「一般的な、女の子の気持ち?」

ハンジ「かわいい詩だね~」

ペトラ「…」///

オルオ「そうか、さっきから視線を感じていたが…」

オルオ「よし、正面から見てもいいぞ。遠慮するな」

ペトラ「…。もうひとつ出来ました」

ペトラ「桜の木 舌噛む馬鹿が 首を吊る」

グンタ「くくっ」

エルド「一本取られたな、オルオ!!あっはっは」

オルオ「」

ハンジ「キツいねぇ、ペトラは」

エレン「ぷふっ」

リヴァイ「…ふっ」

オルオ「おい、エレン!!お前笑っただろ?」

エレン「す、すみません、だけど兵長も…」

リヴァイ「何のことだ?」

エレン「あ、いえ、何でもありません…」

エレン(怖いけど何か楽しいぞ…)

ハンジ「リヴァイ、あんたはどうなの?」

リヴァイ「…」

ハンジ「びしっと手本を見せてやってよ!!」

リヴァイ「む…」

ハンジ「ほら、早く」

リヴァイ「桜の木」

ハンジ「うん、桜の木?」

リヴァイ「桜の木 巨人もろとも 斬り倒す」

リヴァイ以外「…」

リヴァイ「…何だ?駄目だったか?」

エルド「い、いや、兵長そのものだなと…」

グンタ「今、その光景が目に浮かびましたよ…」

リヴァイ「…そうか」

オルオ(なるほど…兵長を詠むというのは一興)

オルオ「兵長、この詩を捧げます」

リヴァイ「…言ってみろ」

オルオ「乱れ散る あれは桜か 兵長か」

リヴァイ「俺が…散る?死ぬのか、俺は?」

オルオ「え…?あ、いやいや、そういう意味ではなくて!!」

オルオ「兵長の戦いぶりがまるで花びらの舞い散る様に華麗だという意味でして!!」

ペトラ「兵長が散るだなんて。縁起でもない!!」

エルド「けしからんな」

グンタ「オルオ、それは問題発言じゃないか?」

オルオ「」

ハンジ「あはは。みんなオルオをいじめすぎだよ」

エレン「オルオさんの詩は兵長を讃えた詩ですよね?」

ハンジ「そうだよ。分かってて言ってるんだよ、みんな」

ハンジ「そうだよね、リヴァイ」

リヴァイ「…まぁ、悪い気はしない」

オルオ「あ、ありがとうございます!!」

エレン「あの、兵長の戦いぶりはそんなに凄いんですか?」

オルオ「おい、エレン…。兵長を馬鹿にしてんのか?」

エレン「そ、そんな。人類最強がどんな戦い方をするのかってことですよ」

エレン「訓練兵の間でも度々話題に出ましたから、兵長のことは」

オルオ「まぁ、お前らひよっこでは想像もつかない域であることは確かだ」

ペトラ「初めて兵長の戦っている様子を見た時はびっくりしたなあ」

エルド「俺もだよ。何か別の立体起動装置でも使っているのかって思った」

グンタ「目にも止まらない速さ。一瞬で巨人を仕留めていくんだよな」

エレン「はあ…。確かにそれは想像出来ません…」

エルド「まあ、その内、お前も目の当たりにするだろうさ」

グンタ「特等席でな」

エレン「え…?」

オルオ「お前もリヴァイ班の一員だろうが。今更何を言ってんだ」

エレン「あ…」

ペトラ「そうだよね。楽しみだね、エレン」

エレン「はい、すごく、楽しみです!!」

オルオ「見とれてアンカー刺し損なうなよ。助けないからな、俺は」

ハンジ「…みんな、気付いてる?本人の目の前であんまり誉めちゃうから」

ハンジ「リヴァイの顔がにやけているんだけど」

リヴァイ「…そんなに蹴られたいのか」

ハンジ「あ、また無愛想な顔に戻った」

リヴァイ「…」

リヴァイ「エレン」

エレン「は、はい」

リヴァイ「期待しておけ」

エレン「…!!はい!!」

*(兵長室)

リヴァイ「…」

ハンジ「楽しかったねえ、この前の花見」

リヴァイ「…そうだな」

ハンジ「アルミン。覚えてる?新兵の一人」

リヴァイ「…ああ」

ハンジ「私、頼まれたんだよね。エレンのこと、よろしくお願いしますって」

リヴァイ「…」

ハンジ「なるべくリヴァイ班に馴染むようにって思ってね」

リヴァイ「…」

ハンジ「それで、みんなを花見に誘ったんだけど」

リヴァイ「…」

ハンジ「エレン、すごく嬉しかったみたいだよ。みんなと打ち解けられたって」

リヴァイ「…そうか」

ハンジ「本当に楽しかったよね、…花見」

リヴァイ「…」

ハンジ「…」

リヴァイ「…」

ハンジ「それじゃ、エルヴィンからの連絡」

リヴァイ「…何だ?」

ハンジ「女型の巨人の正体が分かったみたい」

リヴァイ「…!!」

ハンジ「この後、その対応策について食堂で話し合うから」

ハンジ「リヴァイも出席しろって」

リヴァイ「…分かった」

ハンジ「それと」

リヴァイ「…何だ」

ハンジ「打ち合わせの前にエレンを食堂に行かせようかな~なんて」

リヴァイ「…うん?」

ハンジ「誰か、話し相手がいればいいかな~なんて」

リヴァイ「…俺か?」

ハンジ「まぁ、そういうこと」

リヴァイ「…」

ハンジ「…」

リヴァイ「…ああ、分かった」

ハンジ「…」

ハンジ「…それじゃ、私も少しやることが残っているから」

ハンジ「後でね」

リヴァイ「…おう」

リヴァイ「…」

リヴァイ「…」

リヴァイ「…蒸すな」

リヴァイ「…窓を開けるか」

ガタッ

ヒュウウウウウウ

リヴァイ「チッ」

リヴァイ「花びらが散るじゃねえか…」

リヴァイ「…」

     オルオ「兵長、せっかくなので桜の枝を持ってきました」

     ペトラ「もう、安直に木を切ったら駄目じゃない!!」

     オルオ「いや、それはそうだが…すまん」

     ペトラ「まあ、取ってきたのなら仕方ないよね」

     ペトラ「兵長、花瓶に活けてお部屋に飾っておきますね」

     エルド「俺も一本持ってきたらよかったな」

     グンタ「やめとけやめとけ。来年また来たらいいじゃないか」

     エレン「そうですよ、また来ましょうよ!!」

リヴァイ「…」

リヴァイ「…」

リヴァイ「花の散る 鳥の鳴く声 春の風 切なさだけが 募るのは何故」

リヴァイ「…」

リヴァイ「…」

リヴァイ「…なかなかの出来だろ?」

リヴァイ「…」

リヴァイ「どうだ、お前ら…」


…以上です。

SSはこれで4作目になります。

1作目  ミカサ「私は誕生日が嫌い」
2作目  ミカサ「守る」
3作目  ミカサ「お花見に行きたい」

3作目に引き続き今回も季節外れですが、どうかご容赦ください。
(諸事情で今度の桜の季節に投稿するのは難しそうでして…)

お読み頂きありがとうございました。

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