妻「今日の晩ご飯なにがいい?」夫「何でもいいよ」妻「何でもっていったわね?」 (22)





妻「今日の晩ご飯なにがいい?」

夫「何でもいいよ」

妻(いつもこれなんだから……)

妻「何でもっていったわね?」

夫「ああ、いったとも」

妻「本当に?」

夫「本当だとも」

妻「分かったわ……!」

妻(その言葉、後悔させてあげる!)


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夫「ただいま~!」

夫「今日の晩ご飯は?」

妻「これよ」

妻「はい、カップメン!」

夫「……!」

妻(ふふふ、さぁどうするの!?)


ズゾゾゾッ ズゾゾゾゾッ…

夫「うまい!」

夫「たまにはカップメンってのもいいもんだな! どうもありがとう!」

妻「……!」

妻(まさか文句ひとつ言わないなんて……)

妻(まあ、この人は元々ラーメン好きだったし……次こそ“何でも”を後悔させてやるわ!)


夫「ただいま~!」

夫「今日の晩ご飯は?」

妻「鮭よ」

夫「晩酌ってわけかい?」

妻「いいえ、鮭を……丸ごと一匹! もちろん生よ!」

夫「……!」

妻(さすがに面食らってるわね……勝った!)


バクバク… ムシャムシャ…

夫「おぉ~、いけるいける!」

妻「……!」

妻「鮭をそのまま食べるなんて……なんなの、この人!? もしかしてクマ!?」

妻「だったら次は――」


夫「ただいま~!」

夫「今日の晩ご飯は?」

妻「これよ」

妻「ムカデとイモリとヤモリとゴキブリのカルテット炒めよ!」

夫「……!」

妻(このスーパーゲテモノグルメ……食えるもんなら食ってみな!)


モグモグ… ムシャムシャ…

夫「少しクセがあるけど……クセになる味だ!」

妻「……!」

妻(あっさり食べるなんて、悪食にも程があるわよ!)

妻(それならもう、食べ物を出すことにはこだわらないわ!)


夫「ただいま~!」

夫「今日の晩ご飯は?」

妻「これよ」

妻「生ゴミの盛り合わせ」

夫「……!」

妻(さすがにこれは無理でしょ……ていうか無理であって欲しい!)


モシャモシャ… モシャモシャ…

夫「酸味、甘味、苦味、塩味、旨味……」

夫「ゴミだけに、五つの味が楽しめるよ!」

妻「楽しめちゃうの!?」

妻(なんかちょっと私まで生ゴミ食べたくなっちゃうじゃない……いかんいかん)

妻(ええい、こうなったらとことん勝負してやるわ! たとえこの人の命を奪うことになっても!)


妻「へいお待ち! トリカブトのサラダ!」

夫「……!」

妻「これは無理でしょ?」

夫「いや、食べるよ」モグモグ

妻「ちょっ」

夫「うん! 毒がピリリと効いて、なかなかの味に仕上がってる!」モグモグ


妻「だったら、産業廃棄物定食!」

妻「ダイオキシンや水銀を始めとした、危ない化学物質がてんこ盛りよ!」

夫「いただきます」ムシャムシャ

妻「躊躇なくいったァ!」

夫「化学物質が体内で暴れ回って、いい感じだよ」ムシャムシャ

夫「便として出す時は、浄化しとくから安心してね」

妻「エコい!」


妻「貯金をはたいて、宝石を大量に購入してきたわ……」キラキラ…

妻「それをそのまま出す!」

妻「物理的にも、経済的にも、これは食べられないでしょ!?」

夫「噛みごたえがあっておいしいよ」バリボリバリボリ

妻「今月赤字決定だわ、ヒャッホウ!」


妻「こうなったら最後にして究極の料理……」

夫「お、なんだい?」

妻「空気よ!」

夫「おお、空気料理なんて初めて食べるよ」

夫「いつも吸ってる空気も、こうして料理として出されるとまた格別だね」モグモグ

妻「いったいなにを咀嚼してるのよぉぉぉぉぉ!!!」


夫「ごちそうさま」ペロリ

妻「ハァ、ハァ、ハァ……」

妻「まいったわ……」

妻「あなたは本当に何でも食べられるのね……」

夫「まぁね」

妻(完敗……ね)

妻(明日からはまた、ちゃんとした料理を出してあげようっと)


夫「ただいま~!」

夫「今日の晩ご飯は?」

妻「これよ」

妻「今日はナンにしてみたの! カレーと一緒に食べるとおいしいわよ!」

夫「……!」


夫「ひいいぃぃぃぃぃっ!!!」

妻「!?」ギョッ

夫「ごめん、ごめんよ! ナンだけは……ナンだけは苦手なんだ! 絶対に食えないんだ!」

夫「口に入れたとたん吐いてしまうほど大嫌いなんだ!」

夫「何でもいいっていったのに、ごめん許してくれぇぇぇぇぇ!!!」

妻「なんで!?」





おわり

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