男「そこは重要事項だ!!」天使「い、今、確かめます!」 (264)


女「それじゃまた学校でね、男くん…天使ちゃん、焼きそばごちそうさま」

友「天使のことは誰にも話さないよ、言ったところで信じないだろうけど」

男「お前らのことは信用してる、ありがとな」

天使「ありがとうございます…友さん、女さん」

ガチャ…パタン

男「……さてと」

男「これからの事は後で話し合うとして、まずは…シャワー浴びるか」

男「シャワーの間はキッチンのお湯が使えなくなるから、洗い物は後回しにして寝室の掃除でもしてくれ」

天使「はっ、はい!」

男「そんなに張り切らんでもいい…でも修行の一環か、これも」

天使「なんて幸運なんだろう」男「俺もすごく幸運な人間だと思うよ」
天使「なんて幸運なんだろう」男「俺もすごく幸運な人間だと思うよ」 - SSまとめ速報
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の続きです


男「お前も俺の後にシャワー浴びろよ、二人とも昨夜のまま…その…いろんな体液の」

男「考えたらその状態で友と女と話し合って飯食ってたんだよな、今更ながら羞恥心が…///」

天使「……?」

天使「…ああ、地上生物は外皮の付着物や自分の老廃物を自浄できないから、洗わなくてはならないのですね!?」ピコーン

男「」

男「今は詳しく尋ねないが…とりあえず天使は風呂に入らなくても清潔を保てるんだな?」

天使「はい、僕ももっと修業を積めば男さんのことも一瞬で清潔にできるのですが、まだまだ未熟で…」

男「とにかく掃除頼むわ、じゃあまた後でな」


~ユニットバス~

男「…ふう、あいつらの前で言い切っちまったし…同居人かあ」

男「人間の目に見えなくなることもできるし、俺だけに見えるようにもできる、必要に応じ結界も張れる」

男「そのまんまなら目立つが、あの能力があれば大丈夫だろ」

男「あと、入浴も必要ないならその分の光熱費も不要と」

男「…焼きそば食った時に天使のやつ、自分には人間の言うところの食事は必要ない、って話してたから食費も不要」

男「それでもって修行の一環で家事は引き受けてくれる…か」

男「なんか逆に申し訳ない気になるなあ」

男「その上、俺の性欲処理も」

男「…………」

男「さっきは勢いでつい口にしちまったが、あのガチムチに…本当に欲情できるの俺?」


男「精神は子供天使のままだし、よく見りゃ顔に面影もあって外見に嫌悪感はもう湧かないけど、かと言って…」

男「…考えてどうにかなるもんじゃないな」

男「逆にあいつ性欲ないのか?」

男「あいつが一方的にムラムラ来て俺を押し倒したら…どう考えても勝てない」

男「いやいや待て落ち着け仮にも天使だ、人間を不幸にする行為はアウト、悪事は認められんって言ってたじゃないか」

男「…ほんと、可憐な美女天使になってくれていたら自分の貞操の心配なんて考えもしなかった」

男「女天使…になってたらなってたで、欲望に任せセックスした結果」

男「もしも、子供ができちゃったら?人間と同じ避妊方法が通用するのか?」

男「今となっては獲らぬ狸の皮算用だけど、ほんと俺って見切り発車してから考えるタイプだよなあ…」ハァ


天使「……ふう、これで片付いたことになるのかな?」

天使「うーん、ベッド周辺に人間の目には見えない雑菌やカビの胞子が少し存在しているね…」

天使「近辺一帯の大気中に含まれる標準的な量よりやや高濃度」

天使「あとそれらを助長する過剰な湿気も籠っている…男さんの健康にはよくない状況だなあ」

天使「僕の力ではまだ浄化できないから、別の方法を考えないと」

黒い影「カサコソ」

天使「!?」ドキッ

天使「なんだ…昆虫の一種かあ…以前読んだ本に少しだけ出て来たな、確か…ゴ…」

天使「ゴキブリ…だっけ、近くで少し観察してみよう」

天使「本の印象ではひたすら地を這うだけの平べったい生き物だと…」マジマジ

ゴキブリ「ブ…ン」

天使「」


男「…なんだ今の悲鳴は」

男「と言っても天使しかいないが、おーい、どうした?」ドカドカ

天使の羽根「ヒラヒラ」

男「何やってんだ、翼出すほど何かに驚いたのか?おい、寝室だろ?」

子供天使「…お、男さん…」ヘタリ

男「」

男「おおおお、お前、どうした!?」

天使「ゴ、ゴキブリって飛ぶんですね…知らなかった、びっくりしました…しかもこっちに向かってバサバサと…」

男「ゴ、ゴキより自分に驚けよ!?お前…昨日の姿に戻ってるぞ!?」

天使「え…ええっ!?ほ、本当だ、服のサイズまで戻って…!!」

男「ふたなり、いや両性具有に戻ってるのか!?そこは重要事項だ!!」

天使「い、今、確かめます!」モゾモゾ


天使「…も、戻っちゃっています…昨日までの僕の姿に…」

天使「なんで…試練は無事終えたはずなのに、その証しの指輪も光ったのに…」ガックリ

男「落ち着け、こんな時は思いつく限りの方法を試してみよう」

天使「は、はい」

男「ふむ、まずは昨日の試練をもう一度やってみるのは?」

天使「え」

男「交尾を、セックスを!一回で効果がなければ効果が出るまで!!」

天使「えええええええ!?」

男「あ、先に音が漏れない結界張って?」

……


男「つい昨夜のことなのに懐かしい感じがする…このすべすべもちもち肌」ナデナデ

天使「あ…胸に手が…」

男「両乳首つまんじゃえ」キュッ

天使「あう」ピクン

男「今度は吸っちゃうぞ」チュウ

天使「や、あっ…」

男「さ、脚を開いてっと」グイ

天使「あ…」ハァハァ

男「男天使のご立派なアレ見た後だと、なんて可愛いのか子供ちんこ…」

天使「お、大人の僕のあれ、男さんのと…大きさ、変わりませんよ…」

男「俺の勃起時とお前の平常時の比較だろ?」

男「俺のちんこは勃起状態のしか見てないだろお前」ペロ

天使「んんっ…」


男「もう膣がこんなに濡れてる、舌をすぼめて中も舐めてやるよ」クチュ

天使「や、だめ…っ…」ゾクッ

クチュクチュ…ペロォ…

天使「はあ…男さん…あ、ああん…あん…」ハァッハァッ

クチュッ、プチュ…クチュヌチュ

男(いくらでも愛液が溢れてくる…そろそろいいか、俺のちんこも我慢の限界)

天使「あふ、あふぅ…」ハァ…ハァ…

男「…天使、お前…ちんこ、どこ行った?」

天使「……は?」

天使「え…何これ、僕の視界に見慣れないもの…が…?」

おっぱい「たゆん…」

男「おま、いや、あんた、だ、誰…?」


男「推定20歳前後、すらりとした美脚、くびれたウエスト、形の良いたわわなおっぱいの」

男「天使と同じ髪と瞳の色に天使と同じほんのり甘く爽やかな体臭の美女はだ…れ…」

男「…要するに天使本人じゃね?」

女天使「あ、髪が肩より長く伸びて…それとこれって、僕の…胸…なんだ…」たゆん

男「声も違う、声変わり前のボーイソプラノじゃなく明らかに女の声」

天使「僕ほんとにどうしちゃったんだろう…こんなの聞いたことない…」

男「なあ、天使の完全な女性体って、人間とのセックスでも妊娠する?」

天使「は?…いいえ、人間と天使の生殖行為では子供はできません、どちらがどちらの性別でも」

天使「そもそも天使は地上生物と同様の生殖行為で子孫を作る生き物ではないので」

男「よし、それなら話は決まった」

男「さあ心おきなくセックスしよう!!」

天使「えええええええ!?」

……


男「おっぱい、ふっくらおっぱい、且つ弾力もあって揉み甲斐も申し分なし…たまらん…」モミモミモミモミ

天使「んう、ああ…女性体の乳房とは、そんなに人間の男性を魅了するもの…なのですか…?」ハァハァ

男「天使だって『大人』になれば男女があるんだろ?」モミ…モミ…

天使「男女はありますが…あくまでも見た目や能力としての違いで…」ハァ…

天使「さっきも言ったように、天使同士の生殖行為で…子孫は増やせませんから」…ハァ

天使「正確には、生殖行為で子孫を残す必要がない、と言った方が…」ハァハァ

男「必要ないのに性的な快感は持てるんだよなあ、乳首もこんなに敏感で」キュウッ

天使「んっ…!で、でも、男さんに触れられないと、こんな気分には…なりません…」ハァハァ

男「完全に受動的なんだな」クチュ

天使「あっ!?」ビクン

男「下はもうヌルヌルグチョグチョだわ」クチュクチュニュルニュル


天使「だめ、ああ、そんなに触っちゃ…」ハァハァ

男「手探りで…くぱぁ、っと…うわ、愛液すげー」トロォ

天使「んっ、やあん…」ハァハァ

男「女性器のパーツが完備してるなら、このへんに…」ヌチュ…

フニッ

天使「ふああっ!?」ピクッ

男「これがかの有名な、クリトリス…」コリコリ

天使「いやあぁぁぁぁっ!!」ビクビクッ

男「あ」

天使「んん…んうう~~~…ふううう…あ…」ガクガク

男「イっちゃったか…」ツプ

天使「ひっ…(男さんの指が…)」フルフル

男「膣が収縮して指に吸い付いて来る、はは、ほんとスケベな体」ヌポッ

天使「もう…やだ…」ハァ…ハァ…


男「でも翼出なかったな」

天使「そ、その癖矯正しろと言ったの、男さん…ですよ…」ハァ…

ズブッ

天使「いっ、ひ、ああ!?」

男「うん、ま、気長に直せばいいさ」ズッズッ…パン…パン

天使「あ、はあ、んっ…す、すごく固い…男さんの…あっ」

男「痛い?」パン…パン

天使「い、いいえ…痛くはな…ああんっ」

天使(痛くないけど、僕の中ですごく…なんだろ、これ…)

男「ん…子供天使より、内部の引っ掛かりが、多いかも…」パンパンパンパン


天使「あん、はあっ、ああ…男さ…あっ、ああ!」

男「キツさだけならふたなり天使が上かもしれないけど、こっちは…ヒダの絡みつく感じがより増して…」パンパンパンパン

男「なあ天使…むちゃくちゃいやらしいわ、今のお前の中…っ」グチョゴリュゴリュ

天使「あ!?や、お、奥、抉るように動かしちゃ…っ!」ゾクッ

男「くぅ…もう、駄目…出るっ…!」ビュクン!!

男「う、くぅおおおっ!!」ドビュルルルル

天使「んふぅあああああああああああああっ!!」ガクガクッ

天使の翼「ばさああああああ」

天使「ふぁ…あ、あふ、ひぃん…あああん…」ビクンビクン

男「はあ…天使の中、まだ動いてる…気持ちいい…」

天使「や…やぁ…男さ…ん…はああ…」グッタリ

男「…天界の催淫剤も使ってないし、連続イキは疲れたか?」

男「俺もあの精力剤なしだと、ちょっと疲れる…」ニュルル…ジュポ

天使「あふっ…」ハァハァ


天使「あ…そ、そろそろ晩御飯の準備…しないと…」

男「まだいいからちょっと休め、俺も休みたい」

天使「で、でも…このベッド、湿気(と細菌とカビの胞子)が…」

男「そんなもん…シーツと敷きパッドはコインランドリーで洗って、布団はファ〇リーズして乾燥機…かければ…」ズル

天使「まだ僕の知らない便利な物があるんですね…」

男「…ぐー…」

天使「眠ってしまいました…僕の乳房に顔をうずめて…」

男「う…うんむむ…」

天使「窒息しそう…ちょっとどかしますね?」ヨッコラショ

男「…うぐ…ぐー…ぐー」

天使「…本当に、どうして幼年体になったり女性体になったり…」

天使「あれ?」

指輪「ポワァ」

天使「かすかに光ってる、でも試練を達成した証しとは違う色だ」


天使「…指輪から小さな声が…天使学校の先生の声…」

天使「人間には聞こえない音量だから男さんを起こすことはなさそう」

天使「ふむふむ…試練をクリアした天使達には、先生達から祝福の品が贈られるのか…」

天使「僕には、天界の大図書館の全蔵書を凝縮した本…だって、すごくない?」

天使「見た目は薄いたった一冊だけれど、その時に知りたいことと付随する事柄だけが文字として現れる…か」

天使「あ、もしかしたら僕のこの現象も調べられるかな?」

天使「…あ」

本「」

天使「こつぜんと僕の胸の上に本が出現した…白い表紙に銀で模様が箔押しされているけど、タイトルは書かれていない」

本「ゆらゆら」

天使「…胸のふくらみの上だからね」ヒョイ

天使「僕はなぜ…試練を乗り越えたはずなのに姿が…」パラ


天使「ふむふむ…」

天使「…修行に入ったばかりの天使は肉体的には不安定で、ちょっとしたきっかけで、実年齢相応の両性具有の肉体に戻ったり、性別が変わったりする…のか」

天使「一時的な現象で、不規則に起きるが、個人差はあれど数年以内には落ち着く…」

天使「一時的ならよかった、試練失格とかじゃないんだ」ホッ

天使「…幼年体に戻ったきっかけは自分で考えるかしかないな…ゴキブリの飛行に驚いたせい…かな?」

天使「女性体になったのはどのタイミングだっけ」



 男「もう膣がこんなに濡れてる、舌をすぼめて中も舐めてやるよ」 クチュクチュ…ペロォ…



天使「…男さんの直前の行動と、関係あるのだろうか…?」

天使「……」

天使「もっともっと勉強して、地上生活にも慣れて、簡単に動揺しないようにしなければ」

天使「でも今は眠い…少しだけ、眠ろう…」コテン

……


男「ふああ…いつの間にか眠っちまった。腹も減った…適当にあるもん食っとくか」

男「さてと、たわわなおっぱいの俺のスイートハニーは…と」

男天使「お目覚めですね、男さん」ニコ

男「…なんで…ガチムチ天使に戻ってんの?」ヘナヘナ

天使「あれは一時的な現象だったようです、ほらこの本に」パラ

男「…ちょっとしたきっかけ…不安定…コントロール不可の現象か…」

天使「あと、変わるのは一瞬、試練達成直後の姿に戻るには睡眠を挟むのが必須、とも書いていますね」

男「ひらめいた!お前、次に女体化したらもう一生眠るな」

天使「」

男「じょ、冗談だって!そんな顔すんな」ワハハ

男は「えーと…俺は改めてシャワー浴びてくるけど」

男「キッチンは水は問題なく使えるから、お前はチャーハン作れ。具はまかせる」

天使「はいっ!!」

男「ところで、食事は必要ないって言ってたけど…天使が人間の食い物食ったらどうなるんだ?」


天使「え?…うーん、栄養にはなりませんよ、人間と一見同じ内臓は揃っていますけど…」

天使「食物が胃袋に入っても胃酸はないので消化は行われず、代わりに水蒸気と、窒素と酸素の化合物の気体へと完全に分解されます」

天使「できあがった水蒸気と気体は皮膚から蒸散されて、終わりです」

男「まさか、何を食っても同じ反応が起きるのか?」

天使「ええ、食品の種類は関係ありません…更に言うなら皮膚の付着物などを浄化する時も同じ結果になりますが」

男「……」

男「おかしくね??食材に水素と酸素と窒素しか入ってないわけないだろ??」

天使「天使という生き物にはそれが当たり前なのですが…地上の生物とはまるで違うのでしょうけど…」

男「とんでもねー錬金術だなおい」

男「…ってことは、お前の体には尿道も肛門もあるにも関わらず…いわゆる排泄には使用されないのな?」

天使「ええ、胃袋で完結してしまうので」

男「天使ちゃんガチでおトイレ行かない子?」


男「…わかった、前置きは長くなったが、要するに食ってもお前の体に薬にもならんが毒にもならない、と」

男「で、味覚はあるのか?」

天使「え?は、はい、味覚は何かと必要になる機能なので…でなきゃ料理も作れませんし…」

男「よし、それじゃ今夜から俺と一緒に飯を食え」

天使「は?ですから僕に食事は…」

男「あのな、お前が作った飯を俺一人で食うのは心情的に…」

男「なんと言うか、一つ屋根の下で暮らすってのはどんな関係であろうと…つまり…」ゴニョゴニョ

天使「?」

男「あーもー、人間の食事ってのはただの栄養摂取じゃねーんだ!!」

男「共に食卓を囲み語り合う、これも人類の文化だから勉強しろ、修行だと思って一緒に食え!!」

天使「はっはい、わかりました、男さんが望むなら…!?」

……


~天界の天使学校~

金髪の女天使「うふふ、あの男さんって本当にスケベねー♪」(爆乳)

金髪「男性体のあの子を抱くのはまだ抵抗ありそうだけど…」

金髪「ま、女体化モードのあの子も想像以上に可愛いとわかったし、これはこれで楽しみが…」ムフフ

茶髪の女天使「…こら」(並乳)

金髪「あ」

茶髪「退勤時間まで仕事さぼって地上の覗き見してたのね!?」プンスカ

金髪「いーじゃん、ちゃんと『本』届ける仕事は果たしたんだから!!」

茶髪「金ちゃんがあの子への集中講義まじめにやっていたら、別の贈り物になっていたのよ」

金髪「あたしの講義なんかよりあの本の方がずっと役に立つって、結果オーライ」ヘラヘラ

茶髪「も少し反省しなさい!!」

黒髪の女天使「……」(貧乳)

金髪「あっ黒ちゃん、助けてー鬼婆がいじめるー」棒

茶髪「ちょ、鬼婆って同期でしょうが!?」

黒髪「……」クスクス

金髪「…いつも仲が良くていいわね、ってさ」

茶髪「黒ちゃんも暢気なんだから…」ハァ

……

ここで区切り。続きもこのスレでそのうち


続き楽しみ


~夕食後~

男「ごちそーさま、美味かったぞ」ゲフ

天使「光栄です!」

天使「この味と具は次に作る時のため覚えておきます、同じ食事をするとこういう利点もあるのですね」

男「具か、冷凍庫に放り込んでた開封済みのハムなんて自分でも忘れてたわ」

天使「そう言えば…卵がもう残り少なくなっていましたよ?」カチャカチャ

男「お、それじゃ明日ちょっくら出掛けてくるか」

天使「どこか他所に鶏小屋を所有しているんですね?教えてくだされば僕が行きます」

男「」

男「お前な…買い物…と言うか お金 って理解してる?」

天使「お金?人間社会を動かすという大いなる力…のことですか?」

男「間違いじゃないけど…とにかく卵に限らんが、あらゆる物はお金を払って手に入れる」

天使「では男さんも大いなる力を操る一人なのですか!?」

男「…ええと…どこからどう説明すりゃ…」


~数十分後~

天使「…なるほど、社会生活を送るすべての消費者なる人々の営みで成り立つ力…なのですね?」フムフム

男「…もうそれでいいよ…」

天使「…待ってください、すると僕が男さんの家で暮らせば、余分なお金を使わせてしまう…のでは?」

男「そうだけど、お前は気にし…」

天使「うわあああああどうしよう!!僕の存在が男さんを貧困と言う名の不幸にしてしまうううう!!」パニック

男「ちょ、声でかい」シー

男「お前に一緒に飯を食わせたがったのは俺だし、そのうえ付き合い程度で少ししか食わなかったろ?」

男「むしろ俺が忘れていた食材まで無駄なく使ってくれるし」

男「入浴せずとも誰より清潔にできるから水道光熱費もかからない」

男「何よりお前は今後の家事と情事を一手に…しかもそのクオリティの高さ…」ゴニョゴニョ

男「第三者から見れば、どう考えても俺がお前に報酬を払う立場なんだぞ?」

天使「報酬…そうだ、その手がありました」

男「え?」

天使「男さん、折り入って頼みがあります」

男「どうした改まって」


天使「いずれお金で返します、出世払いで」

男「経済活動の仕組みも知らんのに出世払いって単語は知ってんのね」

天使「僕に…今の僕に着衣可能な人間の服を買ってください!」

男「服ぅ?」

天使「はい、姿を隠さずに外出したいのです」

男「なんでまた」

天使「報酬と言う言葉を聞いて、思い付きました」

天使「僕が外に出て『労働』でお金をもらえば、少しずつでも男さんにお返しできると」

男「働きに出るための服なのか!?」

男「…確かに、お前が働く云々は置いといても、だ」

男「宗教画の天使そのものの、ベタな衣装では外出もできんか…」

男「体形が合えば俺の服すぐに貸してやれるのに…ヒョロガリですまん」

天使「男さんのせいじゃありません、こんな…男さんの言う、がちむち?になった僕が悪いんです…」ショボン

男「まあまあ、お互い自分の体型をディスるのは不毛な行為だ、やめやめ」


男(…言われてみれば家に来て1日半ほどになるが)

男(こいつ家事とセックスしかしてねーよな…)

男(このままうちにいる限り、それ以外の何かが出来るような気はさっぱりしないし)

男「…そうだな、それも社会勉強…修行の一環か」

男「よし…とりあえず明日、大学の帰りに買ってやる」

天使「ほ、ほんとですか!?」

男「しかし着る本人抜きで服を買うのは…そうだ」

男「お前も姿を消して…帰る時刻に合わせて、俺だけに見えるようになって来いよ」

天使「えっ」

男「後で学校の場所教えてやる。飛べるから来るのは簡単だろ?」

天使「で、でも…」

男「大丈夫、人前では姿を消したままでも問題ない」

男「衣料店には試着室があってな、その中なら誰にも見られず気兼ねなく服を合わせられるぞ」

天使「…すばらしい、男さん頭いい!」

天使「うわあ…すごい体験だなあ…男さんと一緒に、生まれて初めて買い物…!!」パァァ


男「嬉しそうに…無邪気な奴」フッ

男(これが女体化天使だったら俺もウキウキデート気分なのに)

男「食器洗い終わったら、地図で大学の場所教えてやるよ」

天使「はい!!洗い物済ませてしまいますね…」

天使「…あれ?」

天使「…キッチンに、ネギを炒めた臭いがまだこもっていますね」

男「少しだけな」

天使「窓を開けて換気しましょう」

ガラガラッ!

男「おい、網戸ごと開けちまって…って」

天使の羽根「ヒラヒラ…」

子供天使「はぅぅ…び、びっくり…しました…」ペタン

男「…またか。今度は何だ?」

子供天使「そ、それが…開けたと同時にすごく大きな蜘蛛が…糸でぶらーんと、いきなり目の前に…」

男「どれ…うへ、確かにでかいジョロウグモだな。こいつら色も派手だし初見なら驚くわ」


男「外で巣を張る種類だから、網戸にしときゃ入って来ねーよ」カラカラ…ペシ

天使「取り乱してすみません…」シュン

男「あんなんでびびってたらお前…アシダカグモ知ってるか?」

天使「い、いいえ」フルフル

男「色こそ地味だが更にでかくて足も太くて、巣は張らず人家の中を走り回り…あのゴキブリを食うんだぞ?」

天使「  」

男「フリーズしてやんの」

男「ゴキ食ってくれるから人間にはありがたい存在なんだ…それに…」

男「これからお前が家の隅々まできれいに掃除してくれれば、まもなくゴキはいなくなる」

男「アシダカグモはさすらいのハンター、獲物のいない家には入って来ないから安心しろ」

天使「そ、それなら一安心です」ホー

男「そんなビビリで働くなんてできるのか?地上の世界は多様な生物でいっぱいなんだぞ?」

天使「は、はい、精進します!!」


男「ところで…俺、明日は午後からの講義しかなくてさ…だから寝坊するのも悪くない…よな?」

天使「……あぅ」

天使「し、したいんですよね…準備します…」

天使「…はい、結界張りました」

天使「…はい、脱ぎました」

男「そんな淡々と」

男「なあ天使、ひとつ聞きたい」

男「エッチの最中はあんなにアヘアへよがるお前が、自分から『したい』とは思わないのか?」

天使「あへあへ…って」

天使「昼間も言いましたけど…男さんに実際に体に触られないと…その、そういう気分…には…」

男「人間と違うのはわかるが、本当かなあ」


男「試しに…自分でちょっと乳首いじってみ?」

天使「はい?」

男「俺がいじってやる時みたいに、指先でつまんでくりくりと、やってみ?」

天使「…男さんが望むなら…」キュ

天使「こう…ですか?」クリクリ

男「…どう?気分乗って来た?」

天使「…特に変化はありません…ちょっとくすぐったいですが、それだけ…」クリクリ

男「確かに真顔だし、頬が紅潮する様子もなし」

天使の天使「ぷらん」

男「…ショタちんこも無反応」

男「今度はちんこ擦ってみてくれる?」

天使「え、こ、これをですか?」

男「そう、軽く手で握ってシュッシュッっとね」


天使「は、はあ…こう…かな?」シュッ…

天使「……」シュッ…シュッ…

天使「…いつまで続けたらいいですか?」シュッシュッ…

男「…息も弾まないし、ふにゃちんも変わらないか」

男「じゃあ次は…膣いじりいってみよう」

天使「ええ…」

男「M字開脚して、俺に見せながらしてくれよ、ほら、こんな感じ」エムジ

天使「えっと…しゃがみ込んで、脚開いて…なんか変なの…」

男「ふにゃちんで隠れてよく見えないか…持ち上げて片手で押さえてて…そうそう」

男「もう片手の指で入り口をいじくって、濡れたら奥まで挿入してごらん」


天使「こ…こう…ですか?」コス…コス…

天使「…指先で擦っていますけど…何も変わりませんよ?」コスコス

男(う…感じてる様子は相変わらず皆無…でも絵面は非常にいやらしい…)ゴクリ

天使「…なんか乾いたままですし、これ以上触ったら痛くなりそう…」コスコス…

天使「この状態で指を入れるのは、ちょっと抵抗あります…」

男「うんそうだな、もういい、やめてストップストップ」

天使「もういいんですね?よかった…」ホ

男「俺が我慢できなくなった!!」ヌギッ!!

天使「男さんが一気にズボンを下げた!!」

男「パンツもだ、ああもう寝室に行く時間も惜しい!」ギンギン

天使「あ、男さんの…(立ってる…固そう…)」

男「濡れぬなら濡らしてみせようクンニリングス」ガバッ

天使「!?や、いきなり…っ!!」コテン

寝る


ペロペロペロ…クチュ

天使「…っや、やあ…自分で触っても、何でもなかったのに…あ、あふっ」

チュッ…チュパチュパ

天使「だ、だめ…奥がむずむずして…ああっ…」

ぬるっ

男「お…これ俺の唾液じゃないよな、天使?」

天使「い、言ったでしょ…男さんにされたら…すぐに、僕っ…」ハァ…ハァ…

男「アナルまでひくついちゃって…ふむ」

クチュ

天使「あ、お尻っ…!?」ピクッ

ペチョ…クチュクチュ

天使「だ、駄目です、そんなとこまで…舐め…や、やめ…」モジモジ

男(排泄しないんだったらエッチにしか使わない穴だよな、天使には)

クチュ…グリグリ

天使「うっ…舌先が中まで…入って来そう…」ハァ…ハァ


男(上から愛液めっちゃ溢れてくる)

天使(やだ、すごく濡れてる…男さん絶対気付いてる…)ハァハァ

男(俺の唾液と我慢汁も合わせたらローションいらないかも)

男「天使…こっち、いいよな?」

天使「え…こ、こっち…って…?」ハッ…ハッ…

男「入るよ…?」グニ

天使「い、いやっ!?」

ズボォッ

天使「あっあ!!」

男「こっちはこっちで捨てがたい感触」

ズブ…ズブ…ズリュ…

天使「う、や、やだぁ…お尻で、こんな…っ、あああ」

男「感じてるだろ?すっかり勃起して…上の穴もビチョビチョ」ズッコズッコ

天使「ん…だ、だから、や、なの…僕、こんなの…おかしいっ…」


男「おかしくない、お前のここは…ここも、性器…だから…っ」ズコズコ

天使「せ、せーき…?…男さ…っ…あ、ふ…あぁんっ…」

男「ほらその蕩けそうな顔…気持ちいんだろ?」ズコズコパンパン

天使「あっ、あ…お、お腹の中…まるで、全部っ…あん」

男「ん?お腹の中全部…何?」パンパン

天使「や、ああ、男さんの…あ…お、おっき…の…」

天使「男さ…の、固くて、おっきいので…いっぱいになっちゃうっ…あああ!」

男「巨根(今は違うけど)天使から大きいと言われるとは、光栄だな…くぅっ」パンパン

天使「ぅあ、やん、やぁ…も、もう、何が何だかわからないぃ…ああ、あん、はあぁっ!!」

男「ふは…もう出る…イク…っ!!」

天使「いや、いっちゃう、ああいくぅ…!!」

翼「ばっさあああ」

……


男「はー…はー…アナルセックスも良いものだ…」ゼーゼー

天使「あっうう…はあ…はあ…」グッタリ

男「…あれ、天使…?」

おっぱい「たゆん…」

女天使「また…女性体に、なってる…」

男「イった直後はチビのままだったし…本当わかんねーな」フワ

天使「あ」

男「すぐ抱かせろとは言わんが、少し髪の毛触らせろ」サラ

天使「え、ええ…ど、どうぞ…」

男「お前チビとガチムチの時はけっこう癖毛なのに、今は軽いウェーブ程度だな」フワフワサラサラ

男「短髪と長髪の違い?」サララ…

天使(変なの…性的な行為じゃないのに、妙に恥ずかしい…///)ドキドキ

男「きれーだよな…色はいつもと同じ鶏のヒヨコ色だけど…なんつーの、絹糸?みたい」フワ

天使「…自分ではよくわかりません」

男「そっか、前に女体化した時は自分でじっくり見る暇なかったっけ」


男「髪だけじゃなく全部きれいだぞ、よし、写真撮って見せちゃる」ガバ

男「…っくしゅんっ!」

天使「大丈夫ですか、網戸のままだから外気が入って」

男「これで音だけは漏れないとか、天界の力すげー」ガラガラピシャン

天使「僕は多少の温度変化には左右されませんが、男さんは何か着た方がいいですよ…風邪ひいちゃいます」

男「俺もそんなにヤワじゃねえ…おっと施錠も忘れない」カチャリ

天使(あれ…これって男さんの…平常時という状態?)

天使(…こんなに大きさ変わるんだ…)

男「あったあったスマホ…さー、ポーズ取れ天使」

天使「ポ、ポーズ?」

男「座ったままでいい、ほら、乳首を腕でさりげに隠して、股間を手でなにげに隠す…そうそう」

男「そうだ、翼出してみろよ」

天使「え?えーと…?家具や壁にぶつからないように…と」

ファサ…

男「うむ、フォトジェニック」

パシャリパシャリ


男「…ほら見ろ、きれいだろ?」

天使「…これが…僕…」

男「背景が安アパートのキッチンでなきゃ芸術写真で通用するくらいだ」

天使「僕…こっちの姿に固定化していたかもしれないんですね…」

天使(でも、その時は男さんに出会えていただろうか…)

男「…ぶふぇっくしゅん!!」

天使「や、やっぱりここ寒いですよ…本当に風邪ひきます!」

男「そうだな…」ズビ

男「もう時間も遅いし寝室行こうか…食器洗うの明日でいいぞ」

天使「男さんはもう休んでください、僕は洗い物してから居間のソファででも」

男「いやいや、そうじゃなくてさ」

男「…場所を変えたら、気分も変えて…改めて…いいよな?」ニヤリ

天使「…はい、そんな気はしていました…」フー

天使「あ、地図は明日でいいから見せてくださいね?」

男「へいへい」

……


~翌日・大学~

友「へえー、一緒に服を買いに」

男「試着室以外では姿を消してもらうから、あの宗教画みたいな恰好は見られないで済む」

女「体格と容姿で充分目立つ上に、キトン着てたらねえ」

男「キトンて言うのかあれ」

友「で、どこ行くんだ?あの体格ならサイズ探すの大変だろ」

男「俺の財布で買えて、サイズも充実ならユ〇クロが無難かと…アパートの近所にもあるし」

女「近所…ユ〇クロでもなんでもいいけど、まず男くんが行くことのない、なるべく遠くの店舗にしなさいよ?」

男「なんで?俺が下着よく買う店だけど」

友「なるほど…悪いことは言わん、近所はやめとけ」

男「…?」

……


~夕方~

天使「男さん」バッサ

男「おお、わかってはいても翼全開で空飛んで来られたらちょっとビックリするわ」

天使「建物のない上空を飛ぶとなると、全開にしないと浮かぶことすらできないので…」フワリ

女「天使ちゃんいるの?」

天使「あ、女さん…と友さん」

友「今は男にしか見えないようになってるのか」

天使「せっかくなのでお二人にも姿を…」

天使「…こんにちは。またお会いできて嬉しいです」ニコ

女「こんにちは天使ちゃん、わー翼ほんとに綺麗~♪」

友「これで全開…とは言えこの翼でこの体格を持ち上げ自由自在に飛べるのは物理的に…うーん」

男「天使だぞ?物理法則だの化学法則だの超越した存在なんだぞ?」

友「わかってるよ、本物に出会えたことに比べたら一つ一つの現象なんて小さいもんだ」

女「服買ってもらえるの、よかったねえ」

天使「男さんは優しいですから」エヘヘ

友「お、バスが来たか…じゃあまた明日な男、天使もまたな」


女「またね天使ちゃん、服着たとこ今度見せてねー」

男「またな」

天使「またお会いしましょう」

男「俺らも行くか…あいつらとは逆方向のバスに乗る」

天使「では僕は追いかけて飛んで行きます」

男「わかった…4つ目のバス停で降りて乗り換え、更に7つ目で降りるから見失うなよ」

……

天使「…けっこう遠くまで来ましたね」ストン

男「うむ、友と女のアドバイスに従って、市内で一番うちから遠い支店だ」

天使「…この建物の中に人間の服がいっぱいあるんですねえ」ワクワク

男「とりあえずいくつか見繕ってやるから、気に入ったやつ試着してみろ」

天使「男さんが選んでくださるなら…!!」


店員A「ねえ…あのお客、さっきから独り言ブツブツって…」ヒソヒソ

店員B「てゆーか、誰もいない空間に話しかけてない?しかもあの体形で3XLとか4XLばかり見てる…」ヒソヒソ

男「なんか視線が突き刺さるが」

男「試着室は空いてるな、一度これで合わせてみるか?」

天使「はい!ああ、楽しみだなあ…」

天使「…それは下着ですか?僕は表皮に汗をかいても瞬時に分解できるので」

男「これはマナーの問題でな」

男「巨根とマッチョ尻の割れ目がくっきり浮き出た状態で町は歩けねーよ」

天使「あ、ああ…下着を履いていないことがわかった時点で道義的な問題が生じるのですね?」

男「わかりゃいい…でもお前、エッチの最中は汗から涙からその他もろもろ、流しっぱなしじゃね?」

天使「」

天使「え、えーと…行為中は、法力が殆ど使えなくなってしまうんですよ…」

天使「あ、あと、僕の体液…は、体から完全に離れた場合、数十秒後にはただの純水になる仕組みなので…」

男「言われてみればシーツに染み作るほど(お前は)濡れるのに、痕跡は多少湿っぽくなるだけで済んでたかも」

天使「そ、それから…僕の体液と混ざった混合物も…その、同様に…」


男「ああ、俺の精液もお前の愛液が混じれば水になるのか」

男「試練の時も昨夜も、直後はぐっちょぐちょで凄かったからなー」

天使「試着して来ますっ!」プイ

男「まあまあ、俺も入らんと駄目だろ」シャッ

店員A「例のお客、結局大きいサイズだけ持って試着室入っちゃった」ヒソヒソ

店員B「どうせ着るまでもなくブッカブカなのにね」ヒソヒソ

……

男「これくださいな、っと」

店員A「お、お客様、サイズはお間違いありませんか…?」

男「ああ、丁度よかったっすよ」

店員A「そ、そうですか…失礼しました」

店員B「とっとと会計済ませちゃお、関わらない方がいいタイプよきっと」ヒソヒソ

男「なんか視線が冷たいが」

……


~男のアパート~

天使「ありがとう男さん、嬉しいな、僕の服…本当にありがとう男さん!!」

男「何度も言わんでいい」

男(でも悪い気はしない)

男「しかし、なんか店員の態度悪かったなー、いつも行く近所の店とは大違い」

天使「あの女性達でしたら、男さんの方を見て何やら内緒話していましたよ…男さんには聞こえない音量で」

男「え、俺を見て?なんつってた?」

天使「えーと、誰もいない所に話しかけているとか、どう見ても合わないサイズを選んでいるとか」

天使「…関わらない方がいいタイプとか…」

男「…そうか、あいつらが遠くの店に行けって、こういう事か…」

天使「僕と一緒に行動してくれたせいで、ごめんなさい…」ショボン

男「気にすんな、あの店舗はたぶん二度と行かんしそれでなんの不便もない」

男「持つべきは友人だ…友と女に感謝だな」

天使「本当に良い方達ですよね…さあ、これで明日から仕事を探しに行くぞー!」

男「その話だけどさ、天使」

つづく。


男「身元不明の人間が働かせてくださいと飛び込んで、雇ってくれる雇用主は、現代のこの国にはいない」

天使「え」

男「いないと言うより、真っ当な生活している人間には縁がない…が近いかな」

男「天使の修行とやらは大雑把みたいだが、さすがにその国での違法行為はわかりやすいアウトだろ?」

天使「違法行為…」

男「簡単に言うと、身分を明かせないそいつの働きぶりがどうであれ」

男「雇ったこと自体が問題視されて、雇用主に多大な迷惑がかかる(可能性もある)」

男「雇用主が罰せられその家族は路頭に迷う(かもしれない)結末を、お前は決して望まないだろ?」

天使「…働くということを甘く考えていました…」

天使「修行を終えた先輩達の中には、人間社会で就労経験のある天使(ひと)もいると…聞いたので…」

男「ま、昔はうるさく言われなかったらしいし、今でもそれが通用する国だってあるからな」

天使「どうしたらいいんだろう…このままでは男さんが不幸になってしまうのに…」ズーン

天使「しかし無理矢理働かせてもらっても、また多くの人を不幸にしてしまう…」ズズーン


男「おいおいそう暗くなるな、そんなに身を縮こませて…」

男「…本当に縮んでないか?」

子供天使「…あれ…?」

男「落ち込み過ぎてもこうなるのか」

天使「そうみたいですね…なんでこんな不安定な体に…」シュン

男「…でもな、お前がうちの家計を助けてくれる方法がないわけじゃない」

天使「はい?」

男「実は俺は大学に入ってから最近まで、2本のアルバイトをしていたのだが」

男「先月、そのうち1つのラーメン屋が残念ながら廃業してしまい…今は1本だけ」

天使「そ、そんな大変な状況の中で僕を」

男「まあまあまあ、最低限の仕送りと今の一本だけで当分暮らせる見通しもある」

男「だからそこまで焦って次を探してもいないのも事実」

男「しかしお前のおかげで道が開けるかもしれない」

天使「…どういうことです?」


男「お前が俺の新しいバイト…仕事を陰ながら手伝ってくれることで、俺の収入が増える」

男「あくまで雇われているのは住民票も堂々と提示できる俺だから誰にも迷惑をかけない…どうだ?」

天使「そ、そんな方法もあったんですね…!!」

男「悪い話じゃないだろ?具体的なプランはまた後で説明しよう、今日明日始められるわけでもないからな」

天使「嬉しいなあ…男さんのお役に立ちながらお金を増やせるなんて…」

男(沈んだ気分が高揚したからって戻るわけでもないんだな…)

男「よし、安心したところで今日はもう休もう」

男「でもって、しよう」キリッ

天使「…うにぇ?」

男「さ、さ、寝室へ寝室へ」グイグイ

天使「ちょ、押さないで…」


男「卵を買ったディスカウントストアで見かけて一緒に買った…」

男「これはなんだと思う?」チャキ

天使「さ、さあ…男さんのカバンについてる小さなランプに似ていますが…ガラスの窓がない…」

男「確かに一見ペンライトにも似てる、電池を入れるのも同じだが」

男「これはミニマッサージャー(防水)と言ってな、スイッチを入れると」カチ

ヴ…ヴウウウウウン…

天使「へえ、振動するんですね」

天使「で、何に使うんです?」

男「疲れた場所に当てて血行を促進する健康グッズだ、例えばこうして肩に当て」ヴウウン

天使「あ、人間の肩凝りというものですね?」

男「そう、それが表の使い方」カチ

男「でもって裏の使い方は…」

ピト

天使「冷たっ…!?ぼ、僕、胸なんて凝って(?)いませんよ!?」


カチ

天使「ひ、ひああああああ!?」ビクン

ヴウウウウン…カチ…ヴウウウウウウウン

天使「やっ…な、何これ…くすぐったい、くすぐったいのに…っ、や、いやああああ」

男「うん、予想以上のいい反応」クルクル

天使「や、やだぁ…乳首の周りで動かすの、だめぇ…あああああ」

男「はいストップ」カチ

天使「あっあ…はあ…はあ…」

男「こんどは反対の乳首」カチ

天使「ふぅえあああああああああ!!」ゾワゾワッ

ヴウウウウウン…カチ…ヴウウウウウウウン

天使「あああ…だめ、だめ…き、機械でこんななっちゃうなんて…僕ぜったい…変っ…あああああああ」

ヴヴウウウウウウウウウウウンンン


天使「やっあ、熱いっ…少し、痛…っ」

男「あ、ローション塗ってやりゃよかったな…スイッチオフ」カチ

天使「ふ…ふうっ…」カクン

男「…で、今までこの形態での愛撫は敢えて避けて来た部位がある」

天使「……?」ハァ…ハァ…

男「考えたらクリと同じだからな」

カチ

天使「!!!!」ビクビクッ

ヴウウウウウウン…

男「ちっちゃいちんこがフル勃起」

天使「はう、う、いやっ…だめ、だめ…!」ビクゥン

ヴヴヴウウウウウウ

男「どう?女体化時(のクリトリス)と同じくらい感じる?」

天使「やだ、や…だめ…ビリビリするの、ビリビリ来りゅぅ…あああっうああ!」ガクガク

つるんっ

男「おっと、滑った…っと…」

女天使「ああ…あ、ふ…あふ…はああ…」プルプル


男「…このタイミングでなったか…これでもまだイってないよな?」カチ

天使「はあ…はあ…や…また、僕…」

男「既に性器全体ヌレヌレ」クチュ

天使「うっ…」

男「スイッチオン」カチ

ヴウウウウウウウウウウ

天使「いひゃああああ!!!!」ガクン

男「イっていいよ、クリにこれは我慢できないだろ?」

ヴウウウウウンン…カチ…ヴヴウウウウウウウウウウウウン

天使「やあん、やら…ああ、ビリビリって…ビリビリすりゅから、いやああああ」ビクッビクッ

男「脚に力入って、腰が浮いてるぞ?」

たゆん…たゆんたゆん…

男「おっぱいも揺れてら」


ヴウウウウウウウンン…カチ…ヴウウウウウウウウンンン

天使「らめ、や、も、これいじょ…っ…」ガクガクガクガク

翼「ばさあっ」

男「イく前から翼出しちゃって」コネコネ

天使「!!動かしちゃ、いやああああいくうううううう!!」

ぷしっ

男「え?」

ヴウウウウウ…ぷしゃあああああ…

天使「…ひみゃああ…あ、や、な、何、これっ…」ガタガタガタ

ヴウウウ…ぷしゃ…ちょろ…ちょろろろ…

天使「ふ、あ……・」ドサ…

男「天使…オシッコもしたことない人生なのに、潮吹いちゃった…か…」カチ

天使「や、やだ…こんなとこ、から、水…みたいなの、出て来る、なんてっ…」ピク…ピク…

男「人間はむしろそっち(尿道)から液体出す機会の方が多いけどね」クチュ

くぱっ

天使「あっ…開かないで…っ」


男「…クリトリスめっちゃ赤く充血してる、痛くないか?」

天使「あ…い、痛くはないですが…なんだか、まだ、痺れているような…」ハァ…ハァ…

ペロッ

天使「んひっ…」ピクン

ペチョ…クチュ…ペロペロ…

天使「あ…あふぅ…んん…んううっ…ああ…」

男(嫌がってはいないか)

ペロ…クチュクチュ…

天使(…さっきの機械の方が、刺激は強かったけど…)

天使(やっぱり…男さんの舌とか指で、優しくされる方が…安心するかな…)

天使「ふぅぅ…ああ、ん、んん…あああん…」

男「その艶っぽい声質でそんな喘ぎ方されたら、俺も…」モゾモゾ

天使(うわ…大きくなって、反り返って…)

男「…いいよな?」

天使「…は、はい…」

ぬちゅっ

天使「あああああ」


男「とんでもなくヌルヌル…無理もないか」ズッチュ…パン…パン

天使「ううん、あふ…ん、あああ…ふぅあ…」

たゆん…たゆん…

男「揺れるおっぱい…ピンクの乳首も立っちゃって」

天使「や、触らないで…まだ少し、痛い…」

男「大丈夫、こっちに集中してやるから、めいっぱい…中イキしろ…っ」パンパンパチュンパチュンパチュン

天使「あああ…!男さ…っ、はああっ、ああんあん!!」

男(すげ、中が熱い…ねっちょねちょに絡みついて来る…)

男「くぅっ天使…いいよ、すっごくいい…っ、やべぇ…」パッチュパチュパチュ

天使(男さんの大きくて固いの…中を擦り上げて、奥を突いて…)

天使「ふああぁ、男さ…ん、ああ、深…い、深いとこ、来てるぅ…っ、あっあん!!」

男「ううもうイク、出る…天使ぃっ…!!」

天使「ああ男さんっ…いく、いっちゃうああああああああ!!」

翼「ふわっさあああああ」

びゅるるるるる…びゅびゅー…





男「おい、天使…天使?」ピタピタペチペチ


天使「ん…あれ?…男さ…ん?」

男「気が付いたか…お前いま、失神しかかってたぞ?」

天使「え…失神…」

天使「なんだかよくわかりませんが…そ、そーだったのですね…」

男「はー驚いた…よかったあ…」ホッ

天使「ごめんなさい…でも」

天使「心配してくれたのはありがたいですが、顔じゃなくて乳房を叩くのはどうかと…」たゆん

男(あぶねーあぶねー…意識完全に無くしてたら、ガチムチに戻ってたかもしれん)

男(余韻タイムくらいはこのままでいて欲しいよなあ)ポフ

天使「あ、また胸の上に突っ伏して…窒息しちゃいますよ」

男「いいのいいの、おっぱい窒息は男のロマン…」スリスリ

天使「もう…そのまま眠らないでくださいね…」クス

疲れた。読んでくれる皆さんありがとう


~天界の天使学校~

金髪「…うっひゃひゃ~♪男さん、ほんっと変態で絶倫で、あたしピュアな乙女だから困っちゃう~♪」ジタバタ

金髪「しっかし人間てのはエッチへの探求が貪欲なのね~」

?「…こら」

金髪「手動では不可能な刺激を肉体に与えてみたい…そんな発想どこの誰が最初に思い付いたのやら」

?「おい」

金髪「だけど…毎晩連続で内容もエスカレートし続けると…あの子の体がちょっと心配かなあ」

?「おいっ!!」

金髪「まいっか、天使がそう簡単にダメージを受けるわけ」

?「返事をせんか金髪天使!!」

金髪「って、え、茶ちゃんじゃないの!?」クルッ

中年男天使「…全く、業務もほったらかしで…わたしもいつまでも庇ってやれんぞ?」

金髪「…あちゃー、教頭先生…」

教頭「通り掛ったのがわたしでよかったな、校長だったら今頃」

金髪「…ひえええ、あたしあのでかいオバサン苦手…チクらないでくださいねぇぇん教頭!?」ウルウル

教頭「つくづく…お前はいくつになっても…」フゥ

教頭「それと…陰口のつもりでオバサン呼ばわりしているのかもしれんが」

教頭「我々下級天使と違って生きてこられた歳月も寿命も桁違いなのだぞ、上級天使は」


金髪「わかってますぅ、あたしなんかに年寄り扱いされたとてショック受けるどころか鼻で笑うだけでしょ」

教頭「だが今回ばかりは…『あの子』を覗きm…いや監視していたのなら話は早い」

金髪「は?」

教頭「例の奴が…また地上世界各地で、修業中の天使の前に現れ始めたらしい」

金髪「あいつが!?相変わらず気まぐれねぇ…数年間話を聞かないと思ったら急に集中的に出没してみたり」

教頭「今のところ、ごく軽い嫌がらせ程度で実害の報告はないが」

教頭「…知っているだろう、人間とことさら親密になって純粋に信じている天使ほど、奴は…」

金髪「!」

教頭「あの子は勉強熱心で心優しいが、精神的に同期の子らと比べてやや幼い」

教頭「試練の内容を聞いた時は目眩を覚えたが…せめて治安のいい土地でよかったと思ったものだ」

教頭「それだけに、置かれた環境に安心しているところを狙われるかも…」

金髪「っちょ、やめてくださいよ、考えたくもない」ブルブル

教頭「監視を強化すべきかもしれん、いや、すべきだ」

金髪「教頭先生、そんな大事な話をあたしに…」

教頭「勿論あの2人や他の教師達にも既に伝えてある」

金髪「」

教頭「皆で『通常業務に支障の出ないよう』に『交代で』監視するのだ、もちろん夜ばかりではなく、な!」

金髪「…きょ、教師なら当然ですわよ…おほほほ…」

……


天使「…おはようございます男さん」

男「ふあぁ…おはようガチムチ…どうした枕元に正座して」

天使「最初に確認すべきでしたが…現在、恋愛対象として交際中のお相手はいらっしゃいませんよね?」

男「は?」

男「…い、いねーよ!!恋人がいればお前を住まわせようとか思わん!!」

天使「では…過去には当時の交際相手と…性行為に及んだ経験はありますか?」

男「」

男「ねーーよ!!20年間、彼女いない歴イコール年齢の童貞だ、悪かったな!!」

天使「やはり、清い身体だったのですね…」

男「何?何!?なんなの今朝の天使!?」

天使「男さんはこの20年間、自らを厳しく律し、純潔を守って生活していたのに…」

男「た、頼む、それ以上はやめて…お願い…」

天使「出会ったばかりの僕を助けたいばかりに…その固い貞節を破ってしまった…!!」

男「」

天使「…神様が世界をどうにかされた時、補佐役として大天使様達をお創りになりました」

男「はい?」


天使「やがて世界に生命あるものが溢れ、忙しくなった大天使様達の更に補佐役として上級天使様達が誕生されました」

天使「やがて『ヒト』が、人間が誕生し、人間に寄り添う存在として僕ら…下級天使が生まれるようになったのです」

男「サラッと流したが、神様が世界をどうにかしたってなんだよ、どうにかしたって」

天使「僕ら下級天使が世界の始まりを口に出す時はそう表現するよう教えを受けているので」

天使「とにかく人間あっての下級天使ですから」

天使「より人間に近い存在として作られています…人間よりも長いですが上級天使様より遥かに短い寿命」

天使「地上生物より多少頑丈ですがケガや病気で死ぬこともある肉体、働きは少し違いますが人間のそれを模した臓腑」

天使「…人間を理解し共感するのに必要な、人間に近い感情…人間に近い皮膚感覚」

男「…性的快感も皮膚感覚の一種と言えるよな」

天使「そして様々な人間に対応できる各自の個性」

天使「ここからが問題なんです」

男「え?」

天使「ぼ、僕は…どうやら…天使としては相当な好色…淫靡で淫蕩で淫乱で多淫…の傾向があるようです、たぶん」

男「平均的天使は知らんけど、俺は好色歓迎よ?」


天使「そこです!!きっかけはあの試練とは言え」

天使「その後もこんな僕に惑わされ、男さんまでもが好色で淫靡で淫蕩で淫乱で多淫な人間になってしまった!!」

男「」

男「いやいや、そこはむしろ逆…俺モテなかったけどスケベだったし…」

男「本棚には出してないがえげつない成年コミックと官能小説、PCにはぎっしりエロ画像と動画も所持…」

男「今はたぶん童貞童卒業祝いの勢いで調子に乗ってセックス祭り開催中…」

男「どう考えても悪いのは俺だ」

天使「身持ちの固い青年だった男さんの人生を…」

男「聞いてる?」

天使「…昨夜なんて、機械で…された時は…へとへとに疲れて、なのに胸の中はザワザワ落ち着かなくて…変な部位から…水まで…出して…」

男「あ…あれは本当に…すまんかった!つい好奇心で」

天使「なのに…すぐ後に男さんが…優しく…な、な、舐めてくれると…」

天使「へとへとで重かった体がフワフワ軽くなって…よくわからないザワザワも落ち着いて…」

天使「…男さんと一つにつながって、体の深い部分で…い、いっちゃった後には…すっかり気持ちが軽くなって」

天使「暖かく安らげる場所にいるような気がして…一瞬でしたが、自覚ないまますぅっと眠っちゃったんです…」

男「…」


男「そ、そう、なんか…なんか知らんが、むっちゃ照れるな…///」カァァ

天使「これって、僕が好色だから、ですよね?」

男「へ?」

天使「機械の激しい刺激による…ににに、肉体的快楽で疲労困憊した直後でありながら」

天使「男さんの生身の接触による肉体的快楽をあっさり受け入れる」

天使「それは、多淫のなせる業ですよね…」

男「…」

男(『違う』と言ってやりたいが)

男(こいつをそんな状況にしている俺の言葉で、どう納得させてやれるか…今の俺にはわからない)

男「…うん、俺もな、毎晩毎晩お前にセックスさせている状況は、きっとよくないだろうと…思ってはいたんだ」

男「ろくに休ませないで、お前の健康もちょっと心配になってきたし」

男「同居は始まったばかりで先は長い、ここらで休息を入れるのも悪くない」

男「お前の体がどの形態であろうとも、しばらくの間は俺のことは気にせずゆっくり眠るといい」

男「実年齢は思春期、寝る前に布団の中で一人あれこれ考えるのも成長過程に必要だ」


天使「…僕、まだここにいて、いいんですか…?」

男「おいおい、そこまで思い詰めていたのか」

男「お前がどう考えるかはわからんけど、俺は天使に出会ってから、エッチは置いといても良いことばかりだよ」

天使「男さん…僕なんかを気遣ってくれて…」グス

天使「なんていい人なんだろう、ありがとう…ありがとうございます…!!」ポロポロポロ

男「天使…」

……

~同日午後・大学~

友「よう」

男「友、女は?」

友「今日は午前だけ出て帰ったよ」

男「そうか…丁度いい、ちょっと相談が…男同士の話をしたい」

友「どうした?」

……

エロなくてごめんね

悩むビッチはいいから続けて


友「……つまり、男が…」

友「天使が両性具有に戻ったり女体化したりする度…その…行為に及んだ…ために問題が起きている、と」

男「うん」

男「試練を除外しても、ノーマル3回アナル1回いずれも中出し、手動と電動で各1回ずつイくまでクリ責め」

友「…天使に出会ったのは何曜日?」

男「月曜日」

友「今日は?」

男「同じ週の木曜日」

友「…お前、元気いっぱいだな…」ハァ

男「だって…ふたなり天使はどうしようもなく可愛いし美女天使は俺のタイプ過ぎるし…」

男「やっと童貞から抜け出せた俺の心情もわかるだろ?お前と女だってお互い初めてで」

友「…俺ら、お互いそっちはめっちゃ淡白なんだ…」

友「…月イチであらかじめ日を決め、一晩1回と取り決めを交わしている…///」

男「」


男「月イチって…確か恋仲になって4か月経ってない」

友「お前より早く童貞は失ったが、回数とバリエーションはすでに負けている」

男「よ…よく我慢してんな…いつでもできる相手が目の前にいるのに…」

友「男の問題はそれ」

男「え?」

友「あいつは頑健な体質と割れた腹筋の持ち主だが、それでも俺は心から大事にしてやりたいと思っている」

友「は…初めての夜を過ごしてからはその思いがより強く…嫌がることはしたくないし、の…望まぬ妊娠はさせたくない」

友「男と天使は恋人同士じゃないかもしれないし増して相手は人ならざる存在だが」

友「…でも、決してお前の性奴隷なんかじゃないだろ?」

男「性奴隷…だと!?」

友「あ、すまん…言い過ぎた、謝る」

男「それどころか…」

男「…家事機能付きダッチワイフくらいの認識だったかも…しれない…」


友「最低」

男「うう…その通り…俺は人間の屑さ…神様は本当にいるらしいから、どうか罰を与えてくれ…」ズズズーン

友「…嘘だよ、お前がそこまでひどい奴じゃないのはわかってる」

友「そう自分を卑下するな、今のお前はいやらしさが優しさを凌駕しているだけだ…と思いたい」

男「いやらし…否定しないよ…」

友「しばらくエッチを我慢するつもりなら、他は今まで通り接してやればいいんじゃないか?」

友「天使だって変に気を遣われるよりいいと思うな」

男「…エッチ以外は今まで通り、か」

友「それにしても少し唐突だよな」

友「なぜいきなり今朝になって、天使は自分のせいで男が駄目になった、とか言い出したんだろ」

男「それは積もり積もった俺に対するあれこれが」

友「お前の話聞く限りそんな感じも受けないけど…何かきっかけがあったんじゃないか?」

友「今まで通り接する一方で、じっくり天使の話を聞いてやることも必要かも、な?」

男「きっかけ…」

……

~某国…少し昔の話~

若い女性「…あーあ、大事な話って呼び出されたら別れ話とか…ふざけんじゃないわよ」ブツブツ

若い女性「今日はこのまま帰って寝て忘れちゃお…」

若い女性「…って、忘れられるわけないか…」ドヨーン

黒髪の子供「……」

若い女性「…ん?こんな夜更けに一人で、どうしたの?」

黒髪の子供「…あ、あの…ええっと…」モジモジ

若い女性「…変わった服ね…そんな薄着一枚で、寒くないの?」

黒髪の子供「あ…さ、寒さは、平気…なんです…」

若い女性「…きれいな声…とりあえず、うち来なさい?こんなとこウロウロしてたら怖い人に攫われちゃうよ?」

黒髪の子供「……」コクン

……

黒髪の子供「…ここに、お一人で、住んで…?」

若い女性「そ、両親が遺してくれた家だからねー」

若い女性「前髪邪魔ね、顔がわからないし目も悪くなっちゃう…ほら、このヘアピンで留めなさい」

黒髪の子供「……?」

若い女性「ああもう…やったげるから、じっとしてて…」ゴソゴソ

若い女性「…あなたすっごく可愛いのね!よく言われるでしょ?」

黒髪の子供「…あの、実は…ボク…」


若い女性「ん?女の子かと思ってたけど…男の子かな?」

黒髪の子供「ど、どっちでもありません、今は…そ、それに、実は、人間では…ないのです」

若い女性「は?何言って…」

翼「バサッ…」

若い女性「」

……

若い女性「なるほど、一人前の天使になるための試練…ね、しかもあなたに残された時間はわずか」

若い女性「…でもって、その試練が…男女問わず人間と1回…交尾を…ってさぁ」アタマイタイ

黒髪の子供天使「…人間と天使では、どちらの性別でも子供はできませんから…」

若い女性「いや、だから安心とか、そーゆーんじゃ…」

若い女性「…私達人間が信じている神様や天使とは、なんか違うみたいだけど…」

黒髪の子供天使「……」モジモジ

若い女性「…また記憶を消して赤ん坊天使からやり直しても、あなたの内気は治るような気がしないなあ」

若い女性「わかった、協力したげる!おねーさんにまかせなさい!!」

黒髪の子供天使「え」

若い女性「今さら、生娘でもないし貞淑を誓った婚約者も『もう』いないからね」

若い女性「こんなことで人助けならぬ天使助けができるなら…」

若い女性(ちょっぴりヤケクソなのは否定しないけど)


若い女性「シャワー浴びて来るから、待ってて?あなたは浴びなくても大丈夫なんでしょ?」

黒髪の子供天使「は…はい…」

……

若い女性「…さてと…あら、ほんとに『ついてる』」

若い女性(ちっちゃくて元気ないのが)

黒髪の子供天使「は、恥ずかしい…です…」

若い女性「リラックスして、気を楽にしないと」

黒髪の子供天使「…あ、思い出した…こ、これを飲むようにって…天界から…」カチャカチャ

若い女性「何これ…精力剤ぃ?」

黒髪の子供天使「の、飲みます…」グビ

若い女性「あ」

黒髪の子供天使「…や、やぁ…!?な、なにこれ、ムクムク、って…」

若い女性「…大きさはあまり変わらないけど、一気に持ち上っちゃって…天界の精力剤すごいのねぇ」

黒髪の子供天使「はうぅ、胸がドキドキする…それに、これ、熱くなって…脈打ってる…こわい…」ハァ…ハァ…

若い女性(勃起しちゃったのも、生まれて初めてなんだ)

若い女性「…怖くないわ、大丈夫…これなら試練もうまくできそう」

黒髪の子供天使「ほ…ほんとですか…」ハァ…ハァ…

……

本編しばらくエロないので間に過去編でお茶濁す


~男のアパート~

ピンポーン

女「男くん、いるー?」

女「…いないか。天使ちゃん来てから真面目に学校行くようになったなあ」

ガチャ

天使「女さん!こんにちは」ニコ

天使(背中の大きな荷物はなんだろう)

女「天使ちゃんこんちは!男くんは大学?」

天使「ええそうです、よろしければ上がってください、お茶いれますよ」

女「私は嬉しいけど、いいの?」

天使「友さんと女さんだけは自分が留守中でももてなせ、って男さんから言いつけられています」

女「男くんのやつ亭主ぶっちゃって…そういうことならお邪魔します♪」

女「あ、これ昨日うちの祖父から大量に届いたからおすそ分け」ドッサ

女「友くんと女友達に配ってもまだまだあるんだわ」ヤレヤレ

天使「ありがとうございます…なんですかこれ?」

女「祖父が栽培した長芋。すりおろしても千切りにしても過熱してもおいしいよ」


天使「あっでもお金が…物を手に入れるためにはお金が」

女「いいの、おすそ分けって言ったでしょ…ああ、そんな言葉知らないわね、説明するね」

(説明中)

天使「…嬉しいです!レシピを調べて男さんに食べてもらいます!!」

女「いい笑顔ねー、こっちも嬉しくなっちゃう」フフッ

天使「…女さんになら話せるかな」

女「ん?いいよ、なんでも話して?」

天使「女さん、友さんと恋人同士のお付き合いをしているんですよね?」

女「」

女「ちょっと、いきなり何を言い出すの、このおませさん!!///」ボボッ

女「あ、ごめんね、天使としては立派な一人前だったっけ…その通り、友くんは私の…恋人だよ?」

女「…ああこっぱずかしい///」

天使「僕なんかまだまだ何も知らない未熟者です…」

天使「それで、あの…女さんは…へ…変な所から…水…が出たりすることは、ありますか?」

女「へ?水?」

天使「詳しくお話ししますと…」

(説明中)


女「        」ヒュルルー

天使「お、女さん!?全身真っ白でカサカサになっちゃいましたよ!?」

女「はっ…気をしっかり持て私…」

女「そ、そうなの…体が両性具有の子供に戻ったり、大人の女性になったり…と、不安定なのね…」

天使「はい、今後も数年間は続くかもしれません…」

女(天使ちゃんは真面目に悩んでいる、真面目に答えてあげなくちゃ…)

女「えーっと、その『水』の話ね、私も詳しくは知らないけど」

女「人によってすごく差があるらしくて、出るから、出ないから、多いから少ないから…と言っても」

女「その状態だけを見て、何をもって異常とか正常とかは簡単に言い切れないみたい」

女「人間と天使は違うのかもしれない、でも、あまり気にしない方がいいのは同じだと思うよ?きっと」

女(美容室で読んだ女性誌の受け売り)

天使「そう、なんですか…少し安心しました」ホ

女「…あと…天使ちゃんのせいで、男くんが…エッチな人になったって?」

天使「はい、真面目に貞節を守っていた人なのに」

女「わはははははははは」

女「ないわー、あいつ実体験の機会がなかっただけで、興味大ありだったもの!!」


女「しかしなんでまた急にそんな心配を?」

天使「実は…今朝、僕は早く目が覚めてしまったのですが、珍しく体が気怠くて…」

天使「少しの間だけと思って、男さんの眠っている寝台の横でボーッとしていたんです」

女(命のかかった試練の緊張から、連夜にわたって…だもの、気怠くもなるわ…)

天使「…すると、男さんの本棚から一冊の本が落ちているのが目に留まり」

天使「ページの少ない、絵物語のようでしたが…」

天使「タイトルに『天使』という言葉があったから興味を引かれまして…この本です」

女「」ブハッ

女(これはいわゆる薄い本!タイトル『淫らな天使と乱されたぼく』、表紙にはR18マーク!)

女「て、天使ちゃん…こ、この本はね…」

天使「内容のあらましはこうです」

女「聞いてよ」

~あらすじ~
 「ぼく」は独り暮らしの真面目な童貞大学生。周囲は異性交遊に明け暮れているけれど、
 将来を誓える人が現れるまで男女とも貞操を厳守するのがスジだと思う。
 ある雨の日、ぼくは翼の生えた美しい少女を拾いアパートに連れ帰ってしまう。
 彼女は本物の天使だったが色々あって天使にあるまじき性に奔放な彼女にぼくも溺れて行くのだった。
 破滅の序曲かもしれないけどもうどうでもいいや。おしまい。

天使「読了後は震える手で本棚に戻しました…場所も時代も不明ですが、恐ろしい記録物語です…」ガクブル

女「記録って…この漫画は…作り話、娯楽作品なの、フィクションなのよ…」

(説明中)


天使「じゃあ現実にあった話ではないんですね?天使のせいで破滅した青年は実在しないんですね!?」

女「…たぶんね」

女「それに天使ちゃん、自分のことを淫らとか言ってるけど」

女「…うーん…行為自体を好ましく思うかどうかは、これもまた人それぞれだから」

女「だけど天使ちゃん、男くん以外のひとと行為に及ぶことは想像できる?求められたら応じちゃう?」

天使「えっ」

女「男くん以外の誰かと、同じことできる?」

天使「で、できません!考えられません、無理です!僕は、男さんとしか…!!」

女「それなら何も問題ない…天使ちゃんは淫乱なんかじゃない、ただ男くんとある意味では相性がいいだけ」

女(充分問題な気もするけど今は考えない)

女「でも…あんまり男くんが強引だったり、嫌がる姿までを楽しんでいたら、毅然とした態度を取っていいからね?」

天使「男さんと僕は…相性がいい…」

女「ま、私からも男くんに、もう少し…もっと…天使ちゃんを大事にするよう言っておくから」

女(あとエロ同人誌を目に触れる場所に出してたのは説教だ説教!!)

女「男くんの出方を様子見しつつ、日常は普段通りに過ごしてみたら?」

天使「普段通り…ええ、それがいいでしょうね…ありがとうございます…相談してよかったです」

女「へへ、お役に立てたならよかった」


女「お茶ご馳走様…私はこれから大学に急いで戻るわ」

天使「何かご用事ですか?」

女「うん、まあ、そんなとこ」

女(一刻も早く男くんに説教してやんないとね!!)

~同じ頃、アパートの男宅の玄関前~

友「…やっぱり俺が同席するのはなあ…」

男「ここまで来ながら…天使と二人きりで気まずくなった時のためだ、な!?」

友「お前をフォローしてやるつもりはないぞ?」

男「いてくれるだけでいい、入った入った」

ガチャ

天使「あ、帰って来た」

女「男くんっ!?ちょっとそこに正座しろ!!!!」

友「女」

女「え」

男「」

……


~少し昔の話~

黒髪の子供天使「あ…う、うっかりしていました、これ…使ってください」ハァ…ハァ…

若い女性「え?処女喪失時の痛みを消す薬…(催淫成分入り)…」

若い女性「今更喪失もないし、催淫成分とか…やめとくわ…あと、こっちは…潤滑剤?」

若い女性「こっちは使わせてもらうわ、ちょっと失礼…」

にゅる

黒髪の子供天使「ふにゃっ…!?」ビクッ

若い女性「これで…ええと、おちんちん…をヌルヌルさせるの…少し我慢して」ニュルニュル

黒髪の子供天使「お…おちん…ちん…?」ハァッハァッ

若い女性「あなたの、これのこと…人間の俗語でそう呼ぶの」ニュルニュル

黒髪の子供天使「ボクのこれ…おちんち…や、やあん…ひゃあ…」ピクンピクン

若い女性「…こんなもんかしら」スッ

若い女性「さてと…どんな姿勢がいいかな?この子は超初心者だし」

黒髪の子供天使「ふひゅ…ふひゅ…」プルプル

若い女性「…仰向けで震えて動けそうにない…そうね」

若い女性「ちょっと大胆だけど…よいしょっと」ギシ


黒髪の子供天使「え…女の人が、上になるんですか…?本で見た絵と、違う…」

若い女性「人間の交尾…はね、いろんな体位…姿勢があるの」

若い女性「私が動いた方が上手くできると思うわ」グッ

黒髪の子供天使「あ…っ!?」

ずぷ

若い女性「んっ…」

黒髪の子供天使「…な、なんだか、手とも違う…あったかい物が、触れ…ああっ」

若い女性「…なんとかなりそう」フゥ

若い女性「動くね?」ギッシ

黒髪の子供天使「や、やああぅ…」

ズッ…ズッ…

黒髪の子供天使「んんっ…あったかい、柔らかいっ…」ハァ…ハァ

若い女性(私も少し濡れてきたかな、擦ったらすぐ濡れる体質なのよね)ズッズッ…パン…パン

黒髪の子供天使「ああっ…何これ…お、おちんちんが、もっと大きくなっちゃう…」ハァハァ

若い女性「大きさ変わった様子もないけど…意識が集中しちゃうのか」パン…パン

黒髪の子供天使「う…なんだか、頭の中も熱いっ…ボク、変になってるぅ…」ハァハァ

若い女性「変じゃないわ、緊張しないで、リラックスしてて…」パンパンパチュパチュ

……


~男のアパート、夜~

友「…さて、俺と女はそろそろ帰るけど…念を押しておく」

友「いいか、結局は勘違いと思い込みだったとは言え」

友「天使が疲れているのは間違いないんだ、もっと気遣ってやれよ?」

女「反省が見られなければ、何度でも説教に訪れるからね?」

男「ああ、俺ももう懲り懲りだ…足も痺れてまだ立てんわ」ジンジン

天使「僕が架空の物語に惑わされる無知で幼稚な未熟者なばかりに…」

女「天使ちゃんには地上にあるものは全て『初めて』だもの、仕方ないって」

友「男も平日のバイトが復活したら、また忙しくなるからな」

女「あら、もう決まったの?」

男「ほぼ決まったようなもん…今度の土曜日に面談予定だ」

天使「男さんの新しいアルバイト…」


男「やっとあいつら帰った、あとやっと立てるようになった…ん、それは…女から?」

天使「え、ええ…女さんのおじい様の栽培した長芋だそうで、ご存じだったのですか?」

男「大学で友と、女と仲のいい女子達がみんな所持していたからな…鞄からはみ出させて」

男「…明日、礼を言っとく」

男「で、朝飯は炊き立てご飯にとろろ汁がいい、頼む」

天使「はい!…晩御飯はどうします?」

男「今から真面目に作るのも時間がかかる、残りご飯の茶漬けでいいや」

天使「ではお湯を沸かしますね!」

男「…」

男「本当に嬉しそうに俺の頼みを聞いて、張り切って家事してくれるんだよな…」

男「俺なんかにゃ勿体ない…かも」


男「このソファ、こうやって伸ばせばベッドになるんだわ…お前今夜からここで寝ろ」

天使「僕は板の間の上で一向に」

男「それは俺が許さん」

男「寝具はこれ使え、友が2~3回泊まって使ったがクリーニング済みだ」

天使「は、はい…」

天使「お客様用の寝具も、僕が男さんのお手伝いできるようになったら、そのお金で新しく買わないと」

男「親戚の布団屋から押し付けられた訳アリ品がまだ押し入れにあるんだ、気にするな」

男「それじゃ、俺は寝室に…おやすみ…ゆっくり休めよ」

天使「は、はい…おやすみなさい」

パタン

天使「…幼天使園でも、天使学校でも、他の子たちと身を寄せ合って眠ってたなあ」

天使「地上に降りて男さんと出会うまでの間以来だ、一人で寝るのは」

天使「…炊飯器のタイマーはセットした、朝食の食材は確認済み…」フワァ

天使「…男さんのために、もっといっぱい頑張ろう…」

……


~少し昔の話~

黒髪の子供天使「あ、ああっ…おねえさんの中…すごく、ぬるぬるしてきた?…だ、大丈夫ですかっ…あふっ」

若い女性「大丈夫、私の心配はいいから…」パチュパチュ

黒髪の子供天使「ふ…ふえぇっ…こ、このままじゃ…ボク、はじけそう…怖いっ…」

若い女性(…上下だけじゃなく、少し前後に動いてみるかな…)

若い女性「ふうっ…」ヌチュル

黒髪の子供天使「ひんっ!?」ビクンッ

黒髪の子供天使「…こ、怖いのに…おかしいの、おねえさんに、やめて欲しくない…の…あん、ああん…」ハァハァ

若い女性「怖かったら、手を繋ごうか?ほら…」

黒髪の子供天使「…う、うう…おねえさ…っ」キュッ

若い女性「私にまかせて、信用してね…」パチュパチュ

黒髪の子供天使「ん、ふぅっ…や、はじけちゃう、おちんちんはじけちゃううう…!!」ガクガク

若い女性「いいの、それでいいの…」ヌチュッ

若い女性(つながったまま、そっと…覆いかぶされるかな…)


黒髪の子供天使「うぇぇん…あ、ああ、も、もうらめ、ボクなんだか、も…だめ、なっちゃうっ…」

若い女性「私にしがみついていいのよ?」

黒髪の子供天使「はあっ、あ、あっあ…お、おねえさんっ…」ギュウ

若い女性「怖くない…大丈夫」

黒髪の子供天使「あ、なんか駆け上っ…はぅああああああっ…!?」ガクン

びくっ…ビクビク…

若い女性「…ふふ、かわいいおちんちんが、私の中でピクピクしてる…」

黒髪の子供天使「…はあ…はあ…ふぅ…はあ…」プルプル

若い女性「頑張ったね…いい子…」ナデナデ

若い女性「落ち着くまで、こうして抱きしめてるからね?」ギュウ

黒髪の子供天使「はあはあ…あふぅ…」スリスリ

黒髪の子供天使(…おねえさんの体、あったかい…)

若い女性「あ、見て…あなたの指輪が光ってる、試練達成の印でしょ?」

黒髪の子供天使「あっ…はあ…はあ…ほ、ほんと…だ…はあ…」

若い女性「ふふ、私には先にわかってたけど…」クス


若い女性「…そうだ、あなたのこと、なんて呼んだらいいかしら?」

黒髪の子供天使「…んんっ…はあ…」

若い女性「あ、無理に今しゃべらなくていいのよ?」

黒髪の子供天使「…せ、先生達からは黒髪天使…友達からは…黒と呼ばれて…います…」

若い女性「きれいな黒髪だものね」

黒髪の子供天使「あ」

若い女性「どしたの」

黒髪の子供天使「…いつの間にか、おちんちん…はずれちゃった…」

若い女性「ああ…あなたを抱き寄せた時に少し動いたからね…残念?」

黒髪の子供天使「い、いいえ…その…ボク…」

黒髪の子供天使「…こ、交尾より…こうして胸に抱きしめられている方が…えっと…落ち着く…かも」

若い女性「そう、それじゃこのまま朝まで眠っちゃおうか…疲れたでしょう?」

黒髪の子供天使「い、いいんですか?」

若い女性「よくない理由なんかないわよ…朝になったら立派な天使ね、楽しみにしてる…」

黒髪の子供天使「おねえさん…」





若い女性「ふあぁ…あれ…?黒…黒髪天使?」キョロキョロ


黒髪天使「…おはようございます」

翼「フワサァ…」

若い女性「…すごい、本当に大人になってる…!」ガバッ

黒髪天使「えへへ…ま、まだ体だけです…心はまだ、昨夜と変わりません…」

黒髪天使「おねえさんのおかげです、ありがとう…」

若い女性「あ、私ったら名乗ってなかったわ…ごめんごめん」

若い女性「私はピアニスト…町の酒場でだけどね、ピアノ弾いてるの」

黒髪天使「ピアニストさん」

ピアニスト「子供の声もきれいだったけど、今のあなたの声はもっと素敵…私の理想って感じ」

ピアニスト「…でも、背も伸びて、大人っぽく女性らしくなったけど…」

ピアニスト「胸だけ…子供天使のままね…私に似ちゃったのかな…ごめんね?」

黒髪天使「む…ね?」ツルペタ

ピアニスト「…客観的に見たら、私より更にちっちゃいなあ…」

黒髪天使「??」キョトン


ピアニスト「あ、いや、あはは…気にしてないならいいけど…」

ピアニスト「ねえ黒、あなた、しばらくの間だけでも…この家に住まない?私と一緒に」

黒髪天使「え」

ピアニスト「両親が亡くなって…小さな家だけど、私ひとりには広すぎてね」

黒髪天使「ボ…ボクにはありがたいことですが…ピアニストさんは」

ピアニスト「よし決まり、あんたはここに住む!」

ピアニスト「それに…私、今ね、曲を作ってるの」

ピアニスト「完成はまだまだ先だけど、あなたみたいな美声の持ち主に歌って欲しいなあ、って…」

黒髪天使「うた…?」

ピア二スト「これから色々教えてあげる、とにかくよろしくね、黒」ニコ

黒髪天使「…は、はい、よろしくお願いします…ピアニストさん…」ニコ…

…………


~土曜日~

天使「おはようございます!顔洗ってきたら朝食にしましょう」ジュワー

男「おはよ…おお、卵焼きに小松菜の胡麻和えか」

天使「長芋は…今朝は目先を変えて、半月切りにしてお味噌汁に」

男「ほう…まだいっぱいあるからな、献立の工夫は大切だ」ザー

男(…あれから、水曜の夜を最後に一回もチビ化も女体化もしていない)ジャバジャバ

男(天界の本を読ませてもらったが、性別のぶれる現象は頻繁であってもせいぜい数日置きだとか)ゴシゴシ

男(あんなに毎日変化するほうが異常だった…それもそうだよな)カチャカチャ

男・天使「「いただきます」」

男「…天使、今日は一緒に出掛けるぞ、姿を見せること前提で」

天使「え、それじゃ男さんの買ってくれた服と靴を履いて出掛けるんですね!」キラキラ

男「四文字熟語Tシャツとストレッチジーンズとディスカウントストアの1000円のスニーカーでな」

男「候補の中からあのTシャツ選んだのはお前だから後で文句言うなよ?」

天使「は、はい??」

天使(かっこいいと思うんですけど)

男「飯食ったら軽く打ち合わせをするからな」


~そば処・雪中庵「○月○日オープン!アルバイト募集中」~

天使「…来週新しく開店するお店ですか」

男「シー、お前は打合せ通りにな、あとサングラスかけろ」

天使「は、はい」スチャ

ガラガラ

男「こんにちはー、先日電話した男ですが」

店長「おお、男くん!!」

男「いやー店長、ラーメン屋やめるって決まった時はびっくりしたけど…今度もなかなかいい店ですね」

妻「あの時は急に解雇になってごめんね男くん…応募してくれて嬉しいわ」

店長「実は俺、そば屋が夢だったのさ!!」

妻「今度こそ長続きすると信じているわあなた…軌道に乗るまで在宅ワークで支えるからね」

男「相変わらず健気な奥様」

男「それで、こいつが電話で話した…おい!」

天使(台本通りに台本通りに…)

天使「へ…ヘローエブリバディ!!ワタシ、ニホンゴアンマリワカリマセーン!!」ヌッ

店長・妻「「」」

男(固まるよなあ、いくら話は聞いててもダサTに100均グラサンのやたらデカい金髪白人が目の前に現れたら)


男「一見怪しいけど電話で話した通りすごく良い奴なんです」

店長「わ、わかってるよ…男くんの大事な友達なら信用できるさ」

男「で、俺が接客と厨房で毎週月・隔週金で入るから」

男「こいつには厨房のみで毎週水・俺以外の隔週金でお願いします」

天使(えっ?)

店長「大丈夫、で、シフト表には月・水・金で男くん」

店長「彼は時々『遊びに来ている』日本そばに興味のある好奇心旺盛な外国人」

店長「バイト代も男くんだけに2人分で、あとは男くんがよしなにしてくれる…で、いいね?」

天使(えっえっ)

天使「…あうあう」クイクイ

男「ん、襟首引っ張るなよ、どうした?…ごめん店長、ちょっと…」

ガラガラ

天使「なんで…身元の証明できない人を雇うのは違法じゃなかったんですか!?」

男「声でかいって…なあに言ったろ、お前はたまに見かけるが遊びに来ただけ、書類上は俺が週3」

男「厨房では店長と奥さん以外とは顔を合わせないから、その目立つ外見でも大丈夫」

男「心配だったら、こっそり店長夫婦以外不可視モードになっとけ」

男「道具や丼洗い、野菜洗い、お湯沸かし、力仕事と掃除…お前なら楽勝だろ?」


男「日本語ほとんどできないって設定だから、黙ってりゃ会話でボロが出ることもない、安心しろ」

天使「でも、でも…店長さんご夫婦にご迷惑が…」

男「店長は『なあにバレやしない』ってさ」

天使「  」

男「実は店長…何度も商売変えては新しく店を立ち上げるから、正直信用なくてあまりバイトも集まらない」ヒソヒソ

男「お前が入ってくれたら困る人間より助かる人間の方が多いんだ、頼む、な?」

天使「…では男さんは、なぜわざわざ…このお店を…」

男「うん、あの店長には…個人的な恩があってな…」

天使「ご恩が」

男「大学生になり、独り暮らしを始めて間もない頃に…」

男「あの通りちょっと困った性格だが…恩返しを少しでもしたいんだ…」シンミリ

天使「…わかりました、でしたら僕も…男さんと男さんの恩人のために…!」

男「嬉しいよ、でも今の話は内緒な?」

男(恩があるのは嘘じゃないけど…人情絡みのワードにやはり弱かったか、うむ)

……


~そんなある日…大学~

友「バイトはどんな感じだ?」

男「おかげさまで順調…意外と客も入って、天使も頑張ってる」

友「何かとギリギリだけど、関係者みんな納得ずくなら…まあ、いいか…な」

女「天使ちゃんがまたひとつ大人の世界を知ってしまったのね…」

男「真面目なお前らに反対されなくてよかったよ」

女「ところであれから天使ちゃん…二週間過ぎたよね、ずっと変化していないの?」

男「うん、だけど…外に出るようになって、一時期みたいにコロコロ変化してたら大変なことになるからな」

友「ってことは…お前も」

男「…まあ、うん…なんか忙しくなったらそんなに…エッチの事も考えなくなるし」

友「ドスケベのお前が…」

男「それより…土日のコンビニのバイト、今回入ってないんだ…どっちかうち来ね?」

友「あ、週末は義兄が帰って来るから、実家に呼び出されてる」

男「お姉さんの旦那か」

女「会社の事情で単身赴任が打ち切りになって、急だったけど戻って来れるんだって」

男「へえ、よかったな…姪ちゃんも喜ぶだろ」

……


~夜~

天使「友さんのお姉さんの旦那さん…ですか」

男「友の実家はそう遠くないが、両親とお姉さん(美人)とその娘の…5歳の姪ちゃん(可愛い)の同居」

男「義兄さんは3年前、戻ってくる前提の単身赴任に出てるけど」

男「なんにせよ友は住む部屋がないから大学近くに部屋借りてるのさ」

天使「親とか兄弟姉妹って天使にはないですからねえ…『家族』っていいなあ」

男「そう言えば、お前ら生殖行動で子孫を残さないって…」

天使「ええ、僕ら下級天使はだいたい400年くらい生きますけど、人数はある程度一定で…」

天使「人類の総数に合わせておおよそ何割と決まっているので、寿命や病気や事故で誰かが亡くなれば」

天使「数を埋め合わせるだけの赤ん坊の天使が…神様から送り出されます」

男「…一人ひとり、赤ん坊を神様が作ってくれるのか?」

天使「僕らはそう聞いています」

天使「多くは、試練に失敗した天使の魂を回収する時のように、亡くなった天使の魂を再び使うそうです」


天使「記憶も身に付いた能力も体の特徴も、何もかも消去して、まっさらな赤ん坊に」

天使「それだけでは人数が足りない場合のみ、新しく生み出されるそうで」

天使「そういう1回目の『魂』は、人間の嗅覚では」

天使「地上の花や果実や香草、またはそれらを合わせたような芳香が…うっすらするそうですよ」

男「…天使達にはわからないのか?」

天使「何故か人間だけ…地上の嗅覚の鋭い動物も感じません…しかも一部のひとしか感応しないそうです」

男「そうか…もしかしたらお前は1回目なのか?」

天使「ええ、そう聞いています」

男「お前、初めて会った時からいい香りするもん…ほんと微かだけど」

男(完全無欠の新品天使をぐっちょんぐっちょんにしたのがこの俺か…)

天使「男さん、僕の匂いを知っているんですね…なんだか嬉しいなあ」

天使「僕の先生にも、1回目という天使がいます」

天使「地上で修業中に出会った人が、一緒に暮らして間もなく、匂いに気付いてくれたそうですよ」

男「へー、俺らみたいなもんだな…」

男(でも『関係』は違うだろうなあ…)

男「……」


男「…なんか、非常にさりげなく…小さくなってないか?」

子供天使「え」

天使「…先生達の事や天界の生活を思い出したせいかなあ…」

天使「…1人で寝るのもちょっと寂しかったから、つい懐かしく」ボソ

男「独り寝が寂しいって!?」

天使「え、あ…はい、天界ではずっと…同い年の子供天使は先生達に世話されながら、集団で…」

男「そっちの意味か…」ガッカリ

天使「……」

天使「僕が架空の物語に惑わされた時、友さんと女さんの前で僕に無理をさせないって約束をしてくれましたよね?」

天使「あれから男さん、充分僕のことを思いやってくれましたよ」

天使「それから男さん言ってじゃないですか、時々は捌け口にさせろ、って」

天使「もう二週間です…充分『時々』だと思いますよ?」

男「天使…いいの…?」

天使「…えへへ、ほら、静かでしょう?結界張りました」

男「天使ぃ!!」グワッ

天使「うひゃ…な、なんですか僕を抱え上げて」

男「これがお姫様だっこだ!!さあ、俺の寝所へ参ろうぞ!!」


~寝室~

男「せっかくなので、いつもとちょっと違う体位で」ヨイショ

天使「え?僕が上に?」

男「実は対面騎乗位やってみたかったんだよね」

天使「…僕の体の下に男さんが…なんか不思議、男さんはいつもこんな視点だったのですね」

男「天使は基本的にマグロ、いきなり動けと言っても無理だよな」

天使「ま、マグロ…??」

男「まず準備を…よし、半勃ちの俺のちんこを…お前の股間に押し付けて」

天使「は、はい…手で支えて、と…」

ムニュ

男「おっほ」

天使「…うわ、いきなり、カチカチになっちゃいましたよ」

男「手で支えていいから、擦り付けて?」

天使「こ、こうかな…んっ…」ズリ

ズリ…ズリ…クチュ…


天使「…っあ、自分の手だけだと、なんともないのに…」ピクン

天使(男さんの…だと思うと…)

男「…滑りが良くなって来た、続けて」

天使「んっ…んっ…」クチュ…ヌリュ…

男「あっという間に濡れちゃって」

男「天使、そのまま俺のを…お前の中に入れてよ」

天使「…え、ええ…どうやって…?」ハァ…ハァ

男「腰を浮かせて、もっと…そうそう、そして、俺のちんこの真上で…くぱぁして、くぱぁ」

天使「くぱぁ…?確か…こう、でしたっけ…」モゾモゾ

くぱぁ…

男「そう…いい位置だ、そのままゆっくり腰を落として」

天使「は、はいっ…」ハァ…ハァ…

クチュ

天使(あ、先っぽが)ビクッ

…にゅる…ずぶぶ…

天使「あああ…入るぅ…」


グチュン

天使「や…あ、一気に…奥まで…っ」ガクガク

男「くふぅ…半月ぶりの感触、きもちぃ…そのまま、動いて…」

天使「は、はい…動きます…」

ずりゅ…ぬち…

天使「んっ…ああ…じょ、上手にできています…か…?」ハァハァ

男「…ああ、上手だ」

男「俺も…腰、浮いちまう…っ」グイ

ずぶん…ゴリュッ

天使「あ、ああ…また奥にっ…!!」ブルブル

おっぱい「たゆん…」

男「あ…」

女天使「あふ…っ、男さん…」ハァハァ

男「挿入中に変化するとはなあ」

男「尻と太腿に弾力がある分、チビ形態より動きやすいと思うぞ?」

天使「が…頑張ります…」ハァハァ

こんな天使うちにもきてくれないかな


天使「あふ…う、あふ…ああ、あんっ…」グッチュズブグッチュズブ

男「ん…調子がつかめて来たかな…いい感じ…うっ」

おっぱい「たゆんっ…たゆんっ…」

男「…絶景…」

天使「はあぁ…あふ…男さ…あふっ…」グッチュズブグッチュズブ

男「天使、お前の中、とろっとろ…なあ…少し、前屈みになれる…?」

天使「はふ…え…こ…こう…ですか?」ヌリュ

こりゅ…

天使「…あっ、あ!?」ビクビクッ

男「クリ擦れて、気持ちいいだろ…?」

ガシッ

天使「ひゃ、お尻、掴んじゃやあ…!!」

男「ほら…この状態で尻を揉みしだかれたら…クリも膣も、捏ね回されて…っ」グニ…グニュ

天使「や、やだ、ああ!や、それ…らめ、ぃやなのぉ…!!」ビクゥ

きゅううう…ぐぷちゅっ

男「うお、膣が纏わりついて、うねって…すげ…」


男「…すげ、う、おおっ…!!」

どびゅっびゅるびゅるるる…びゅくびゅくっ

天使「熱いぃ…っ、や、やら、また、あ、あれ来ひゃう…!!」ブルブルッ

ぷしゃっ

天使「ひぃん…い、い、いっちゃういやあああああ…」ガクガクガク

翼「ばささっ…」

ぷしゃ、ぷしゃああ…

天使「う…うう…男さんの上で…あふ…あの変な水を…うう…」プルプル

ちょろろ…ぽた…ぽた…

男「…やっぱ俺、溜まってた…すっげ濃いの…いっぱい出た…」ゼーゼー

天使「はぅ…あふ…ご…ごめ、なさい…男さん…ず、ずぶぬれ…」ハァハァ…

男「…いや、むしろ吹かせるつもりで、挿入しつつのクリ同時責めを…すまん…」

天使「ふ…吹かせるつもり…も、目的だった…?」ハァ…ハァ…

男「はいそうです」テヘヘ

天使「…ば、ばか…男さんの…ばかぁ…」グシュ…ポロポロ

男「あああ、泣くな泣くな…悪かったって」オロオロ

男(…つーか、まだ結合したままなんだが…どうしよう…)

……

ここまで…また後日


~翌朝・大学~

女「男くん、おはよ…今日はお昼一緒に食べよ、天使ちゃんの愛妻弁当見せてね!」

男「見せるのはいいけどやらんぞ、いつも俺の隙をついてつまみ食いしやがって…ところで、友は?」

女「実家から急に呼び出しがあって、それで休むって…」

男「え、でも義兄さんが帰宅するのって今夜遅くだろ?」

女「義兄さんの件じゃないみたい、でも友くんも詳しい事情は聞かされないままで…とにかく来いって」

……

男「友から、あれから連絡あった?」

女「ううん…連絡来ないって事は、大したことじゃないか、重大な事態か、どっちか両極端な気がする…」

男「きっと前者だろう。リア充を絵に描いたようなあいつの家に何事か起こりようがない」

女「…うん…とりあえず、お昼にしよう」

……

男「ったく、あいつやっぱり見るだけじゃ終わらなかった!」カラカラカラカラ

男 「安い肉でも美味しく作れるミルフィーユカツ2切れも掻っ攫うとか、悪魔か」ゴシゴシゴシゴシ

男「しかし、格闘技やってる奴は素早さが違うのかね…俺も何か始めるかな…」ピッ

男 「ガチムチ天使と比べると、わが身の貧相さが情けなくなるんだよな、時々…」ガボジャーザーズゴゴ…

ガチムチ天使「男さん!!」


男「あばばばばばば!?!?!?…て、天使!?おま、ここトイレの個室、俺の排便シーン見てたのか!?」

天使「たった今来たところです…落ち着いて、まずはパンツとズボン上げてくれないと目のやり場が」

男「パンツの中身は見慣れてるくせに…で、どうした、巨大ゴキブリでも出たか」モゾモゾ

天使「ごめんなさい、お弁当にお箸入れるの忘れました!!」スッ

男「…あ、あのな…学食で割り箸もらって、何よりもう食い終わったよ…」

天使「え」

男「お前にとっては急を要したんだろうが、そもそも衛生的に考えてトイレで渡すとか言語道断」ガチャ

天使「そうでしたか…」シュン

男「ま、せっかくだから女に会ってけ」

天使「あ…手は忘れず洗ってくださいね」

……

女「天使ちゃん!!…ミルフィーユカツ、ごちそうさま!!」

天使「え?なぜ女さんが…あれ、友さんはお休みですか?」

女のスマホ「~♪~♪」

女「友くんだ…もしもし!?…今こっちに向かっているって、私達にも玄関まで出て来て欲しいって…」

男「よし、行こうぜ…天使もこの際だ、来てくれ」

天使「は、はい?」


友「すまん2人とも…ああ天使までいるのか、丁度良かった」

男「丁度良かった?」

女「何があったの?」

友「姪が…朝から行方不明なんだ」

男・女「「!!」」

天使「友さんの…確か、お姉さんの娘さん?」

友「幼稚園バスに乗る所までは姉貴が見送り、下車する所も運転手が見ているし、幼稚園の玄関でも複数の教師や園児が姪に会っている」

友「なのに、教室に入る時には『いなかった』」

女「どういうこと…」

友「職員が校舎内と周辺を探したが見つからず、すぐ姉貴にも連絡が来て、父も出勤を取りやめ二人で幼稚園に向かった」

友「そして、園長と話をして警察を呼ぼうとなったが…まさにかけようとした園長室の電話にかかってきた…」

友「『警察に通報したら子供の命はない』この一言だけ」

男「誘拐か!?」


友「母から俺に連絡が来たのはその直後、自宅に戻って来た二人に話を聞いた」

男「幼稚園のセキュリティが甘過ぎるって話だろうが」

友「俺も最初はそう思ったさ…しかし…有り得ないって姉貴も親父も言うんだ」

友「何より決定的なのは、今日は教師の手で園の一日の様子がビデオ撮影されていた」

友「近々引っ越して行く子に渡す、記念品のDVD用の元になる映像で…姉貴達も見せてもらった」

友「画面の端にかろうじてだったが、確かに姪が、ホールで仲良しの子と話をしているのが映っていた」

友「たまたま、相手の子がよそ見をして、姪から目を離し、カメラ以外は誰も姪を見ていない一瞬ができた」

友「…まさにその一瞬、姪の姿は…そこから消えた」

男「…な…」

友「数秒後に録音されていた撮影者の『あれ、姪ちゃんは?』という声を最後に撮影は中断された」

友「姪と話をしていた子も、驚いた顔で周囲を見回していた…だから、幼稚園が嘘をついているのは有り得ない」

女「消えるのはもっと有り得ないでしょ!?」

友「ああ、有り得ない」

友「だから俺は思った、これは幼稚園や警察や家族…人間がどうにかできる事態じゃないと」

男「…天使なら何かわかるかと考えて…だから俺に会うために大学に来たのか?」

友「はっきりそう考えたわけじゃない、だが…他にどうすれば…誰に相談すればよかったんだ…」


女「…」

男「…天使」

天使「…お話だけで、その時に何が起きたかは僕はわかりません」

天使「しかし友さんの記憶を読んで姪御さんの情報を得れば、彼女の居場所が特定できるかもしれません」

友「本当か!?」

男「記憶なんて読めるか!?」

天使「使える条件は限られています、僕に力を貸して欲しい人間が、そのことを強く望んだ場合しかできません」

友「望んでいるよ、お前しか頼れないんだ!!」

天使「では友さん、ちょっと…頭に…触れさせてください…姪御さんのことを強く思い出して」

友「わ、わかった」

天使「…」ソッ…

男「天使…?」

天使「静かに…生まれて初めて使う力なので、集中しないと…」

天使「…この女の子ですね…100%とは言い切れませんが…かなり狭い範囲で居場所が特定できました」

友「ど、どこなんだ!?」

天使「奇妙なのは、一番信号が強く発せられているはずの場だけ、ぽっかり穴が開いたように見えないのですが」

天使「僕が未熟なだけかと思います、それでも、半径30…いえ、10m以内には相当な自信を持てます」


女「そこはどこなの、天使ちゃん!?」

天使「確か、このあたりは上空から眺めた記憶が…」

天使「△△駅裏…人の出入りのない廃墟…青い屋根…他は赤く錆びていますが、そこだけトタンの青色がかなり残っています」

男「かなり近所じゃないか…グー〇ルマップ…青い屋根…廃工場だ、これか!?」

天使「ええ、そこです、間違いありません」

友「姪の他に誰かいるのか?」

天使「それがわからないので…ごめんなさい…僕ならとりあえず気付かれずに近付けます」

友「…頼む、天使…俺も一緒に」

天使「僕の力では自分ひとりしか瞬間移動できません…友さんを抱えて飛ぶならできますが、瞬間移動より遅くなります」

友「それならすまないが、先にお前だけでも行ってくれ、一刻も早く…俺も後を追う」

男「俺達も、だ…俺達も大急ぎで駆けつける、だから早く!」

天使「わかりました!」シュッ

男「…はええな…よし、行くぞ友!行くぞ戦闘要員!!」

女「それ私かよ」

友「本当にすまない、みんな…」


~廃工場内部~

天使「…この建物、異様に空気が重い…直接内部へ瞬間移動することもできなかった」

天使「それに、建物の外ではあんなに子供の存在を強く感じたのに、入った途端…身体の五感だけしか働かなくなった…何故だろう?」

幼女「…だあれ…?」クスン

天使「!姪ちゃん!?」

幼女「…だれ?姪のこと、しってるの?」

天使「…確かに姪ちゃんですね?…僕は、友さんのお友達です、あなたを探しに来ました…」

姪「友おにいちゃんの…!?」

天使「…しっ、静かに…そう、お利口さん、いい子ですね」

天使「さあ早くここを出ましょう、友さんも女さんも、男さんも心配していますよ…もちろん、ご両親も」

天使「さあ、立てますか?僕の手を取って」

姪「…おにいちゃん、てんしさまみたい…」

天使(今日は天界の服だものな…友さんの記憶ではミッション系の幼稚園だったし)

天使(…やっぱり瞬間移動の力はここでは使えないようだ)

天使(緊急事態だから翼を見られても構わないけど、おかしいな…翼を出すことも出来ない…抱きかかえて歩いて出るしかない)

天使「とにかくここを早く出ましょう、ほら、あそこの扉から」

姪「…こわい」キュッ

天使「大丈夫、命に代えても守りますよ」


男「ここだな。天使は…まだ中か、くそ、俺のスマホ持たせるべきだったか」

女「きっと天使ちゃんなら大丈夫…それより…ここに警察を呼ぶべき?」

友「…犯人に知れたらまずい…天使を信じよう…」

?「あなた達、ちょっと」

3人「「「!?」」」

?「くだくだ説明している時間はないわ、百聞は一見に如かず!」

男「…な、翼のある女達…こいつら、別の天使!?」

金髪「あの子を受け入れたあんた達なら驚いている時間は無駄!あたし達は修業中の天使の偉大な恩師!!」

茶髪「些細な事態では修業中の天使には我々も干渉できませんが、今回ばかりは緊急事態なのです、どうか協力願います」

黒髪「…」

金髪「だから説明はいいから!男さん!この剣を持って中に突入して!女さんはこの杖!友さんはこの鎖!」ジャラ

男「剣以外は鉄筋と自転車のチェーンだが」

金髪「人数に合わせて現地調達したの!全部あたしらの法力を注入しているから大丈夫!」

茶髪「説明している時間はありませんが、私達がこの中で戦う事は出来ないのです」


茶髪「しかし貴方達3人の安全は保証しますから、どうか…天使を助けてください」

女「天使ちゃんを…どういうことよ!」

茶髪「中にいるのは恐るべき天使の敵です。私達でも直接対峙は困難、ましてや修業を始めたばかりのあの子ではどれだけ危険な相手になるか」

友「…そんな、中には小さな子供が、俺の姪がいるんだ」

金髪「子供なら大丈夫、あいつら人間に『直接』手は出せないから!早く!あんた(男)の天使がどうなってもいいの!?」

男「…!!」ダダッ

女「男くん!?」

友「男!」

金髪「…行ったか」

茶髪「金ちゃんの強い押しが役に立ったわ…」

黒髪「…」

茶髪「私達はここに控えていましょう…願わくば、無事に出て来れますように…」


~3人が到着する少し前~

天使「足が動かない…いったい、この人物は…?」

?「ごく微弱な下級天使の波動をこのガキから感じたので攫ってみたが…見事にかかったな」

天使「あなたは…何者…」

姪「お、おにいちゃん…」ギュウウ

天使「こ、この子には手を出さないで…すぐ外に出してあげてください…」

?「なあに、俺は人間の肉体には直接危害を加えることはできないから、安心しな」

?「ただ…ここでこれから起こることを見届けてもらうだけさ」

天使「!?」

?「しまい込んだままじゃ窮屈だろ?『羽根を伸ばさせて』やるよ」指パチン

ばささっ

天使「翼が勝手に…!」

姪「!!」

?「嬢ちゃん、さっき『天使みたい』と言ったが、みたいどころか『本物』さ」

?「ただし…教わったような、なんでもできる万能な存在じゃないんだ…この下っ端天使は、な」

姪「…ほんものの…てんしさま…」


?「嬢ちゃんはちょっとどいてもらおうか」ヒョイ

姪「やだあっ…!」ジタバタ

天使「や、やめろ!!…う、手も足も動かせない…!!」

?「何もしねーって…ほれ、ここに座ってな…ただ、見ててもらうだけさ」ポテッ

?「ちょうど壁を背にしているな、防御のつもりだろうが…こっちも作業が楽になるね」

?「…さてと…天使の翼…ここが骨だから…肉がついているのはこのへん、ふむ…」ツツ

天使「さ、触るな…」ゾワワ

天使(翼を指でなぞられているだけなのに、すごく不快だ…気持ち悪い…)

?「見な、こっちはここで拾った金槌、こっちは駅の裏で拾った犬釘…古いから、ちょっと磨いて尖らせてあるが」

天使「な、何を」

?「まずは右ね」

ガンッ

天使「…!!」

姪「きゃあああ!!」

?「血は噴き出たが声は出ねえか…せっかくだ、もう少ししっかり打ち込んでやろう」

ガンッガンガン

天使「あああああ」


?「見た目そっくりな鳥の翼とはまるで構造が違ってて…無理な姿勢や不自然な形でも痛みを感じない造りになっているので、簡単に負傷しないとか」

?「そうやって傷が付きにくい代わりに、傷付いた時はとんでもない激痛らしいな、お前らの翼は」

天使「…や…やめ…やめ、て…」

?「どうだ、釘の味は?右の翼を穿てば左も差しだせ、ってね」

ガン…ガン…ガン

天使「あ、あがぁ…」

姪「…」ガクリ

?「ガキはもう早や気絶しちまったか…まあいい、充分ショッキングな光景を目に焼き付けただろ」

?「天使の血か」ヌチャ

天使(なんだ…僕の血を自分の両手に塗り広げて…眺めてる)

?「…へえ、修行期間に入ったばかりの、ほんのガキ天使か」

天使「!?」

?「…くくく、傑作だ…神の試練とやらは『相変わらず』いい加減だなぁ、おい」

天使「き、記憶を…血液から、記憶を読んで…!?」

?「…は、はは…ははははは!しかもガキのくせに…とんでもねえ天使だな!!」

天使「…!!」ゾワゾワッ

?「試練だけなら仕方ないと言い訳できるが、その後も人間のチンポで涎垂らしてよがってるド淫乱じゃねーか」

天使「う…あ、ああ…」ガクガク


?「こんないやらしい子には、お仕置きだ」指パチン

ググ…ッ

天使(羽根が勝手に閉じて、身体が持ち上がる…!)

?「足が浮いたな、無駄にでかい図体を翼で…この骨で釘にかかる体重を支えられるかな?」

ミシミシ…パキッ…

天使「ぐ」

?「左側の骨が折れたか、意外と軽い音だね」

ズル…ブチブチブチィ

天使「ひい…」

?「身体がずり落ちて、釘から骨に沿って肉が裂けてちまった…どれ、左右のバランスを取って、右は俺の手で」

ベキベキ

天使「あああああああ」

?「おっと、力加減間違えて2箇所折っちまった…ついでだ、こっちの肉も少し裂いてやろう」

ギリ…ミチミチ…

天使「…ひぎぃ…」

?「これでも気絶しないか、しぶといな…未熟な精神に比べて肉体が頑丈過ぎるようだな」

天使「…な…ぜ…あな…た、は…」


?「おい坊や、まだ俺が人間だと思うか?ただの人間に天使が傷付けられるか?」

天使「…」

?「認めたくないんだろ、目の前の現実を…地上に降りるまで、天界でぬくぬく大切に育てられた天使の小僧…」

天使「…い、いや…やだ、怖…い、怖い…」ガタガタガタガタ

?「…お前は…どうしたら女の姿になるのかね」

天使「!!」

?「最終的には翼も手足ももぎ取る予定だったが、『あれ』を見たら少し惜しくなった」

?「1回でもお前のオマンコ味見させてくれたら、解放してやるよ」

天使「…こ、子供は…先に子供を…」ガタガタ

?「この状況で強がるか…どっちにせよ人間のガキに何も用はない、そのうち誰かが見つけてくれるさ」

?「それよりお前を女にする方法だ…もう少し血に触れて、記憶の細かい所を読むか…」

?「傷口を広げて…噴き出たばかりの新鮮な血を」

グジュ…ブチブチ…メリッ

天使「…」ガクリ

?「ようやく気絶したな」

ガチャ…ドバターン!!

男「天使いいいいいいい!!!!」

気が付けばガチムチのリョナになってた。ごめんね
今度こそまた後日

乙 
このまま二度と飛べないみたいなことにならないのを祈る


?「人間だと!?気配に気づかなかっ…加護の力…天界がもう動いたか、ちっ」

友「姪!!」

女「姪ちゃ…天使ちゃんっ!?」

男「え」

天使「…」

女「…翼がズタズタ、血まみれ…ひどい…」

男「…うわあああああああああああああああ!!!!!!!」

?「ん…こいつ、天使の記憶で見た…」

男「貴様あああああ!あいつに何をしやがったあああああああ!!」

?「ああ、面倒だな!人間には手を出せん」

ブンッ!

?「ちっ、天界の剣を出鱈目に振り回しやがって」ヒョイ

?「ここは退くか…その前に、仕上げ…っと」指パチンパチン

天使「」ビクン!

天使「…」ガク…

?「呪いをぶっかけてやった…普通の傷じゃ、他の天使がすぐ治療できちまうからな」

?「おい人間の小僧…俺はお前らの言う『悪魔』だ」


男「悪…なっ!?」

自称悪魔「もっと知りたきゃ外で待ってる腰抜けどもに聞け、じゃあな」

スッ…

男「き、消えた…!?」

釘「ボロリ」

天使「」グラ…

女「天使ちゃん…!」ガッシリ

女「…お、重っ…」ズッシリ

友「…姪…怪我はないようだが…」

女「友くん、早く姪ちゃんを外へ…男くん…こっち手伝っ、手伝え!」ズル

男「はっ…て、天使っ…!」ダッ

女「外に運ぼう…天使ちゃんの先生達が待ってる」


~廃工場の外~

茶髪「建物を覆っていた瘴気が消えた…でも、この近付いてくる瘴気は?」

黒髪「…!」

金髪「ちょ、あの子…!」

女「ふうはあ…に、逃がしちゃった、あの怪しい男…っ」

茶髪「すぐに追い払えただけでも充分です…子供さんは無事ですね?」

友「あ、ああ…気を失っているが、怪我はなさそうだ…」

金髪「うわーー、何これ…全ての傷に『呪い』をたっぷり擦り込まれているじゃない!」

男「え…?呪い?」

金髪「天使専用の呪いだから、あんた達人間は何も感じないの…黒ちゃん、手当を!」

黒髪「…」コク

茶髪「待って、ここでは無理…まずは全員どこかに瞬間移動しないと」

金髪「どこかって一か所しかないでしょ、あたしがいつも覗k…見守ってた男さんの部屋!!」

……

~男のアパート~

金髪「どう、黒ちゃん…?」

黒髪「…」


金髪「…うん、傷口の応急処置は済んだって…翼は収納して…体内で修復が済むまで出さないように」

金髪「このあと必ず熱が出るけど、傷の毒素を浄化して肉や骨を繋ぐ際の作用だから、放置するしかないからね」

子供天使「…」グッタリ

女「え…天使ちゃんが小さく…子供の姿?」

金髪「この体の方が少しでも早く回復するのよ、省エネとかエコモードとでも言えばいいのかしら」

女(…この状況で不謹慎だけど、可愛い…いつもの姿もマッチョ可愛いけど)

男「なあ、あいつ悪魔と名乗っていたが…あんた達は知ってるのか?」

金髪「…説明は茶ちゃんの役目だけど、奴の狙いは修行中の天使、そして昔、あたしらと関わった相手」

金髪「基本的には『遊びで』嫌がらせを仕掛けて来る奴だけど、今回は…数十年ぶりの大きな被害…だね…」

男「…くそ…なんで…こいつなんだよ…」

黒髪「……」

茶髪「大丈夫、女の子はどこも無傷」

茶髪「でも…天使が傷めつけられる場面を見て、それが強い恐怖として残っている」

友「ど、どうにかならないのか?」

茶髪「記憶を消去しましょう、強い恐怖の記憶を」

友「頼む、頼みます…」


茶髪「攫われた時の記憶も、友達と話していたらいつの間にか廃工場にいた、という内容だった」

茶髪「そこから先を丸ごと消せば、恐ろしい記憶と共に誘拐犯の顔も忘れるけど…それでもいいかしら」

友「警察がどうにかできる相手じゃないんだろ?それなら、それでいい…」

茶髪「…終わり…明朝まで目を覚まさないようにしてあるから、このままお母さんの所へ」

友「ありがとう…天使は…、…っ!?」

友「…男、これが…お前の言う子供の姿の天使なのか」

男「…ああ」

女「友くんは姪ちゃんを連れてすぐ帰った方がいい」

友「…そうするよ…男…天使、すまない…」

金髪「巻き込まれたのは女の子の方みたいだけど」

友「そうであっても天使は姪を助けに向かってくれた、頼んだのは俺だ」

女「ご家族にはどう説明するの?」

友「廃工場で倒れている所を見つけた、と話すよ」

友「無理あるかもしれないけど、連れ込む所を見た目撃者がいたと…お前達も現場にいなかった事にしてほしい」

男「わかった」

友「…男…ごめん、助けに来た天使の事も姪は忘れてしまうが…辛い記憶は思い出させたくない」


男「天使も姪ちゃんが苦しむことは望まないよ」

女「こっちは…まかせて?大丈夫…天使ちゃんには男くんがいる」

友「ああ…女、頼んだ」

ガチャ…パタン

茶髪「2人とも、そっちはどう?」

金髪「ひどいの、骨が三か所も折れて肉が二か所大きく裂けて…ああ、ぞーっとする!」ブルブル

茶髪「…よく助けが来るまで頑張ったわね…遅れてごめんね…」ナデナデ

男「俺達はよくわからないけど、天使の翼が傷つくのはそんなに重大なのか?」

金髪「人間だったら…即死じゃないけど致命傷になりかねない部位の内臓損傷みたいなもん」

男「た…助かるのか…?」

金髪「今はどっちとも断言できないよ」

男「…っ」ギリッ

金髪「しかも刷り込まれた呪いが陰湿な性質(たち)でね」

金髪「傷の治りを遅らせながら体力を削るの、本人の回復力との追い掛けっこだね」

女「あの悪魔とやら…許せない」

茶髪「呪いを可能な限り吸い取るしかないわ…私達3人で分割すれば、かなり軽減できるはず」

黒髪「…」コク

つづくし


金髪「マジ!?人間は何も感じないけど、あたしら近付いただけで動悸息切れ眩暈を起こすほどの呪いよ!?」

茶髪「だから分け合うんでしょう!?この子はもっと苦しむのよ!!」

金髪「はいは~い…ま、可愛い教え子のため、腹括るわ」

男「…なんかよくわからんが、それだったら…俺が全部背負っても」

茶髪「だめです、天使専門の呪いですもの…男さん達は離れていてください」

男「う、わかった…」

女「天使ちゃんを囲んで、3人の天使さんが輝いて」

茶髪「…終わったわ」

男「何か変わったようには見えないけど」

金髪「人間にはわからないってば…あー、すっごい肩が重い、頭痛あい…」

茶髪「これでも、私達が天界に帰れる余力だけは残したのよ」

茶髪「男さん、本来ならこの子にかかった呪い全てを取り除きたかったけれど、私達も下級天使…呪いを分かち合うだけで精一杯」

茶髪「どうにか命に別状ない呪いの量にはなりましたが、この地上では回復するまで時間がかかります」

女「貴女達は大丈夫なの?」

金髪「あたし等は天界で体を洗い清めて、一昼夜も休めばすぐによくなるからね…うー吐きそ…」

男「じゃあこいつも天界に連れて帰ってくれ、その方が早く治るんだろ?」

茶髪「無理です、修業中は何があっても天界には戻れない、本人になんの責もなくても」

金髪「って言うか、修業中に天界に戻っちゃったらもう二度と地上に降りれなくなるの…あんたにも会えなくなる」


男「…!」

茶髪「大丈夫、必ず回復しますから」

女「あいつ、また天使ちゃんを狙ったりは…」

金髪「過去の行動パターンだと、天界の天使が動けばしばらく鳴りを潜めて隠れちゃうの…小心者の卑怯者よ」

茶髪「念のため、私達と入れ替わりで他の天使が警備に訪れるよう、急いで手配します…」

金髪「あ、お家にお邪魔までしないから気遣い無用よ、あたしらよりは場慣れた天使が周辺パトロールしてくれるの」

茶髪「私達3人はまだ年齢も二桁の若輩者ですから…力不足を痛感します」

男(99歳まで二桁だが…いくつなんだよこのねーちゃん達)

茶髪「私達の誰か…も、明後日にはまたここへ来ます、あの『悪魔』についての話もその時に改めて」

黒髪「…」キュ

男「影の薄いお姉さん、何?…俺の手を握ったりして」

茶髪「あの子をよろしく頼みます、って」

男「言われなくても…だから必要以上に心配すんな」

黒髪「…」ニコッ

男「…あんた?」

金髪「さあ、3人手をつないで、っと…天界に帰るわよ、男さん達、またね…うええもう吐くうううう」

女「…行っちゃった」

男(なんだろ、あの黒髪の天使…前にどこかで会った…ような…?)

……


~日本上空~

金髪「あー、バカね、バカバカ、黒ちゃんのバカ!」

黒髪「…」

茶髪「ちょ、金ちゃん」

金髪「呪いを、あたしや茶ちゃんより余分に吸い取ったんでしょ!?3人の中で一番体力ないくせに!!」

金髪「わかってる、あの子のためでもあるけど、男さんが悲しむのが嫌だったんだ!」

金髪「あんたの大切な女(ひと)の生まれ変わりの男さんが!!」

茶髪「金ちゃん…」

金髪「…思い出させればよかったのに…バカなんだから」

黒髪「…」

茶髪「男さんには、あの子と、今の人生を大切にしてほしい、って」

茶髪「だいたい、前世の記憶を勝手に呼び覚ますことは私達にはできないし、許されないわ」

金髪「…そうだけどさあ…」

黒髪「…」

茶髪「…今が幸せだから、もういいって?いい友達が二人もいて、一緒にいてくれるから…?」

茶髪「…だってさ、金ちゃん」

黒髪「…」ニコ

金髪「…ほんっとに、バカ…」

……

またもエロなしごめんなさい。次回は来週(ぐらい)


黒髪めちゃくちゃいい子だな


男「…そうだ、バイト先の店長に連絡しとかないと…今日はこいつが行くはずだったんだ」

女「…」

男「天使がこんなんなのによく冷静でいられるとか…思うか…?」

女「ううん、天使ちゃんが元気になったらまた働く大事な職場でしょ、保護者として当然だと思うよ」

男「保護者…か」

男「こんな俺にその資格があるとも思えないけど、ありがとな、女」

天使「…うーん…」

男「!!」

女「天使ちゃ…」

女(おっと…ここは気を利かせて、私は席を外すか…)ソロリ

男「気が付いたのか、天使…」

天使「…あれ…?」

天使「…ここ…どこ…」

男「俺ん家だよ、天使…」

天使「男さ…あ…あの子は…姪ちゃん、は…?」


男「ああ、驚いて気絶していただけだ…どこもケガしていないし、助け出されてすぐに友が連れ帰った」

男「今頃は家族みんなと一緒にいるだろうさ」

天使「…無事に帰れたんですね…よかった…本当によかった…」

男「お前が守ってくれたおかげだ、ありがとう」

天使「…僕は…うう…」

男「…苦しそうだな…でも、お前の先生と言う3人の天使が、お前にかかった呪いを軽くしてくれたんだよ」

天使「せ…先生達が…」

男「今日はもう天界に戻ったけど、また来てくれるってさ」

天使「…あれは…あの男…あ…悪魔…は…?」

男「あいつお前にも名乗ったのか」

天使「…いいえ、でも…いくら僕が未熟者の天使でも、ただの人間に…『あんなこと』は不可能なんです…」

天使「天使同士か、悪魔か…そのどちらかの力を借りた人間か、でないと」

天使「天使を拘束して、翼を…へし折って、引き裂いて…なんて真似は…」

男「それは思い出すな」

天使「あの悪魔は、あの子の…姪ちゃんの目の前で、それを…」

天使「あの子は骨が折れる音を聞き、傷から流れる血を見ている、悪意による暴力が行われるのを見ている」


男「天使」

天使「僕は姪ちゃんを守れてなんかいない…悪魔に出会う前、守るって約束したのに…僕は…」

男「お前の先生が姪ちゃんの恐ろしい記憶を消してくれたから、それは心配いらない」

天使「僕は…悪魔に何もできなかった…終始、やられっぱなしで…」

男「もう喋るな、考えるな、休め…」

天使「…あの悪魔は…僕の血液から…僕の記憶を読んだ…」

天使「どんな試練を受け…そのあと地上でどう過ごしているか、まで…そして」

男「…」

天使「…どうすれば、僕が女の姿になるのか、って…」ガタガタ

男「…!」

天使「女性体の僕の記憶を見て…翼と手足をもぎ取るのは惜しい、その代わりに…僕を…と…」ガタガタ

男「俺がそんなことさせない!」ガバ

男(…うわ、あっちぃ…ひどい熱だなこりゃ…)

天使「…男さん…怖い…怖いよぉ…」ブルブル

男「大丈夫、俺がついてる…お前を守ってやるから」ギュ

天使「男さ…ん…」カクン

男「…眠った、というか気を失ったか…くそ、あの野郎…」


女「天使ちゃん、どう?」

男「あれ、お前いつの間にいなくなってたんだ?」

男「ひどい熱でさ、また意識なくしちまった…放っておくしかないってケバいねーちゃんが言ってたけど」

男「普段ならこいつ汗も自力で処理できるんだが、弱っているせいかそれもできないらしい、汗びっしょりで」

女「…可哀相に…悪魔だろうと何だろうと、あいつに今度会ったら人中に正拳突き叩き込んでやる!」

男「すまん、女…友の彼女なのにこっちに残ってもらって」

女「あまり立ち入ってもねえ…私も男くんも現場にいないことになってるわけだし

女「天使や悪魔が絡むなら、警察だって何も見つけられないだろうし」

男「姪ちゃん…怖い思いしただろうな」

女「友くんにメールで様子を聞いたら、きれいに記憶は消えていたって」

女「姪ちゃん自身も何が何だかわからない状態で戸惑ってはいても、落ち着いているみたい」

女「義兄さんも、急遽だけど一本早い飛行機が取れてもう家に着いてるって」

男「そうか、まずは安心だ」ホッ

女「念のため明日まで入院させるけど、友姉さんが付き添うし、軽い検査と様子見だけだから心配ないって」

女「友くんは先生天使さんの診立てで無傷なのを信用してるけれど」

女「まさかご家族にそれを説明するわけにもいかないからね、友姉さんご夫婦と友くんのご両親の判断で」

男「…色々隠すべき事実が多くて、却って面倒な事態にならないかな?」

女「詳しい話は直接したいって」


女「でね、男くんが許してくれるなら、ここへ来ていいか…ってさ」

男「許すも何も…巻き込まれたのは姪ちゃんだろ、悪いのはあの悪魔の野郎なんだから」

男「姪ちゃんと天使を守るためにも可能な限り協力し合おうぜ、って伝えてくれ」

女「ありがと…今夜の男くん、今迄で一番頼もしく見えるなあ」

男「…一人じゃ何もできねーよ、できてねえよ、俺なんて…」

~一時間後~

女「…ごちそうさま…私まで天使ちゃんの手料理をご相伴にあずかれるとは」カチャカチャ

男「俺公認は確かに初めてか、いつも俺の弁当から盗み食いしやがって」

男「でも作り置きのおかずも何日も取って置けないからな、お前が食ってくれるなら天使も喜ぶだろ」カチャカチャ

女「あ、食器洗うね…筑前煮、絶品だったわー…私も天使ちゃん嫁に欲しい…」

男「やらんぞ」

ピンポーン

男「誰だ!?」

友「俺だ…友だよ」

男「お前…実家にいなくていいのか?」ガチャ

友「『話せることは』全て家族に話したからな…女から聞いてるだろ?」

男「ああ、今夜は姪ちゃん入院するって?」

友「心配いらない、何より姪自身は元気だから」


友「それから義兄も姉貴も俺の両親も、警察沙汰にはしないと決めたんだ」

友「幼稚園の園長にも…無事を伝えて、園の責任も問わない代わりに、この件はそっとしておいて欲しい、と」

女「結局、姪ちゃんに関しては『何事もなかった』だものね」

友「それに、いくら真の狙いは姪ではなかったとは言え、あの悪魔とやらがうろついている限りは…」

男「…不安だよな」

友「だから、ここに天界の天使達が来るなら、俺も繋がりを持っていた方がいいかと思ったんだ」

友「…お前が協力し合おうと言ってくれて、嬉しかった…」

男「」

男「よ、よせやい照れるわい!!///」

友「…天使はどうしてる?」

女「…」

男「…俺は傍にいてやることしかできない、そういう状態だ…ほら」

天使「…」昏々

友「天使…ごめんな」

友「普段は忘れがちだが、俺達よりずっと子供なのに…それがどれほど残酷な事をされたかと思うと」

男「だからもういいって…こいつだってお前の事恨んでない…少しだけ目を覚ました時、姪ちゃんの心配してたぞ」

友「お前も天使も、本当にいい奴だな…」

……


あれ…誰だろう…赤い髪の子供天使…

歳は僕とあまり変わらなく見えるけど、天使学校の同期にも近い学年にも、見覚えがない…?

…この天使がいるのは地上のどこかの国、何かの建物の中…人間の宗教の教会かな?

翼を引っ込めて、神父さんに一番近い席に座っている、ああ、人間達もこの子の姿が見えるのか

みんな普通に人間の子供だと思っているようだ

…人々の服装からすると、現代より古い時代らしいな

隅っこに他の人達と離れて、ぽつんと席についている若い女性…高価そうなドレスを着て、仕草もどことなく優雅で

だけど…なんだか…ひどく寂しそう…?

赤髪の天使が近付いて、何かを語りかけている…

女の人が微笑んだ…優しい笑顔、きっと心の優しい人だ…天使も微笑み返している

あ、天使の指輪が光った…試練をクリアしたのか、明日の朝には大人天使になるんだね

…赤髪の天使の記憶が言葉になって、僕に聞こえて来た

『自分の試練は、 この国で10人の人間を笑顔にさせること 』

彼女が10人目だったのか…神父さんが挨拶をしている、みんなそれを聞いて席を立ち、帰り始めた

最後の一人になったあの女性も、ようやく帰り支度を始めた…やっぱり穏やかだけど寂しそうな表情をしている…

赤髪の天使は彼女から目を離せないみたい

気になるよね、あんなにきれいで優しそうな人があんな表情をしていたら…


…少し日にちが経ったらしい、赤い髪の青年…天使だ、大人天使になったあの子だ

試練の内容からすると、関わった人達はたまたま男の人が多かったんだろう

天使がいるのは街の中…やっぱり街並みも道行く人々も現代とは違うなあ、100年くらい昔だろうか?

…だとすると、今の試練の制度が始まって間もない時代か

人間からは姿を見えないようにして、街を飛び回っている

でも鳥や動物は見えずとも気配を感じるんだよね、不思議そうに天使のいる辺りを目で追っている…

あ、教会にいた女の人だ…裕福そうな男性と歩いている

…年頃は離れてるけど父親という感じはしない、肩なんて抱いてニヤニヤしてる…見てて良い気分はしない

赤髪の天使も悲しそうな顔で見ている…

…二人はどこかの家の中に入って行った、天使も諦めてどこかへ飛び去った…

あ、また赤髪の天使の記憶が言葉として、僕に…

『彼女が幸福ならばどんな暮らしでも構わない、でも、ぼくにはとても今のあの人が幸せそうには見えない』
『どうすれば、教会で見せてくれたような笑顔を再び見せてくれるんだろう』

あんなふうに笑える人には幸せでいてほしいんだね、わかるよ…

…僕だって、男さんには幸せでいてほしいもの

そのために自分に何ができるかって、一生懸命考えるよね

きっとそれが、人間に寄り添う下級天使の…僕らの地上での修行…じゃないかな…

……


~翌朝~

友「…おはよ…男」

男「…おう…」

女「男くんは一睡もできなかったみたいね、無理もないけど…」

男「それでも横になれただけでもよかったよ…すまんな、お前らに看病を替わってもらったりまでさせて」

女「あんたがぶっ倒れて困るのは天使ちゃんだぞ」

友「全く目を覚ます様子もないけど…本当に放っておくしかできないのか?」

男「うん、またあいつの先生とやらが来たら、もっかい話を聞いてみる…それから…とりあえず今日は学校休む」

友「おいおいしっかりしろ、今日は土曜日だぞ?」

男「あ」

女「ひと眠りした方がよくない?天使ちゃんは私らで看てるから」

男「…ごめん…少し休ませてもらうわ」

……

男「ぐごー」

友「しっかし本当に…子供だったんだな…もっと大人びた雰囲気だろうと勝手に思っていたよ」

女「見た目はああだったけど、言動はいつもピュアッピュアだったじゃない」

女「…とは言え13歳ってうちの中一の弟と同い年だし、私もここまで小柄で子供子供しているとは思わなかったわ」

友「人間とは色々と違うのはわかるが、この歳で大変な出来事に遭遇し過ぎだ…」

天使「…」

……


赤髪の天使が修行期間に入って2年ほど経った…

当時は素性のわからない人を雇うのは問題なかったみたいだ、いろんな仕事をこなしてお金を稼いでいる

だけど人間に紛れて生活するための必要最低限のお金しか使わないから

時々、田舎町のとある孤児院に匿名で寄付をしているようだ

あの女の人は時々あの裕福そうな壮年の男性と一緒にいたけど、最近は街でも教会でも姿を見ない…

赤髪の天使が買い物をしている…食料品かな、それを持って…どこへ行くんだろう?

…ここは…この街で、暮らし向きの裕福ではない人々が住む一角みたいだ…天使は集合住宅へ向かっていく…

屋根裏部屋かな、小さな窓しかない、薄暗い狭い部屋…ベッドの上に誰かいる…

…あの女性だ、痩せ衰えて…病気なのか、ああ…肺を患っているのか…だから外に出て来なくなったんだ

学校で習った、この時代ではまだまだ不治の病だと

天使はこの人に食べ物を届けに来たんだね、それにしても…お金持ちらしい男性は何をしているんだろう?

もっと良い部屋に住まわせたり、お医者に診せたり…お金があればできるじゃないか

…あ、赤髪の天使の記憶が…

 『あの富豪は彼女を住まわせていた部屋の家賃の支払いをやめ、自分が贈った宝石まで引き上げてしまった』
 『残った貯えで暮らすには、安アパートの、更に一番安い部屋に移り住むしかなかった…』

見捨てたんだ、以前はちやほやしておきながら、病気になったからと見捨てたんだ

 赤髪の天使「昨日もまた、あなたの育った孤児院に、あなたの代わりにぼくの稼ぎを寄付して来ました」

そういう事情か、元々は彼女が寄付をしていた孤児院だったんだ

 赤髪「あなたを孤児院から引き取った家があの家でなければ、もっと違う人生もあっただろうに」

 赤髪「あなたの養父母は地位と金を見返りに富豪へ差し出すため、美しく賢い孤児の少女を引き取った」

 赤髪「あなたの美貌はあなたが自由に恋をするためではなく、富豪の気に入るように養母が磨かせたもの」

 赤髪「あなたの教養はあなたが人生を切り開くためではなく、富豪の気に入るように養父が身に付けさせたもの」

 赤髪「夫婦は肺病のあなたの代わりにまた新しい娘を富豪に差し出し、あなたはもはや誰からも顧みられない」

…なんてひどい…

 女性「それでも…あの人達は私を必要として選んでくださったのです…数年の間とはいえ」

 女性「何より、孤児院にいたままではあなたと出会うこともなかったでしょう…私は誰も恨んではいません」

穏やかだけど何もかも諦めたかのような微笑…赤髪の天使が見たかった笑顔はこうではなかったはず…

 赤髪「元気になったら、あなたのことを誰も知らない土地で、ぼくと一緒に静かに暮らしましょう」

 赤髪「ぼくだけは、ずっと…いつまでもあなたの伴侶として、傍らにいます…」

 女性「本当にあなたは優しいのね…私もあなたのお嫁さんになれる夢を…信じてしまいそうだわ…」

 赤髪「夢で終わらせません、ぼくは必ず…」

赤髪の天使、きみは…この人を…

…そして…きみは『誰』?…何が僕にこの夢を見させるんだろう…

……

ガラガラ…

中年男天使「…おはようございます、窓から失礼いたします」ヌッ

友・女「「」」

教頭「驚かせて申し訳ありません…わたしは天使学校の教頭…あなた達が会った3人の教官の上司にあたります」

友「…あ、あなたも…天使…なんです…ね…?」

女(どう見ても…いい歳して似合わない天使のコスプレした一般人の冴えないおじさんにしか)

教頭「あの子た…いや彼女たちは吸い取った呪いの影響で今日はまだ静養中なので、わたしが代わりに来ました」

女「彼女たち、大丈夫なの?」

教頭「明日には回復するでしょう、お気遣いありがとうございます」

教頭「この度はこちらの事情に巻き込んで申し訳ありません、特に…友さん、でしたっけ、あなたのご家族まで」

友「なぜ、姪だったのか…あなたにわかるのなら、教えてもらえませんか」

教頭「…過去の行動パターンからの推測になりますが」

教頭「この修行中の天使と面識ある人間の親族という僅かな繋がりで、姪御さんは誘拐されてしまいました」

教頭「奴の狙いは効果的に天使をおびき出し、人質を弱みとして天使を苦しめること」

教頭「その上、純真な人間に一人でも多く神や天使への不信感を植え付けられるなら、尚のこと好都合」

教頭「そのために、天使の繋がりの中から最も無垢でかよわく保護の必要な、幼いお子さんをを選んだのです」

友「くそ…本当に卑怯者だな…」


教頭「しかし、天使も悪魔も、我々や奴のような下級の存在は人間を直接傷つけたり命を奪ったりはできないのです」

女「どういうこと…下級とか言っても、人間より色んな能力が使えるんでしょ?」

教頭「…下級の天使も悪魔も、人類が誕生してから生み出された、それぞれ天界と魔界の『新しい』存在です」

教頭「『基本的に』下級天使は人と関わり護り教え導く存在、下級悪魔は人と関わり混乱させ堕落させる存在」

教頭「人間より歴史の古い上級の存在と違って、どちらも人間が滅びれば存在意義を失う生き物なのです」

友「天使ばかりか悪魔までも、人間あってこその…なのか」

教頭「ええ、ですから生み出される際に、人間に様々な影響を与えることはできるが、直接肉体を害する能力…」

教頭「つまり、人間の数を減らす能力は、不要とされたのです」

男「そんなオプション機能みたいな」

友「男、起きたのか」

男「自分ちで知らない奴の声が聞こえてきたらなあ」

教頭「男さんですね…あなたのおかげで、我々の生徒が一人、試練を通過できました…ありがとうございます」

男「いや…その…試練の内容わかってて言ってんだろ?礼はいらんつーかやめてくれ」

男「しかし…そんな理由で心とか色々汚れた俺みたいのじゃなく、純真な姪ちゃんが攫われたのか…」

男「あの野郎ますます許せねえ!」

教頭「しかしもう姪御さんが狙われることはないでしょう」

教頭「過去にも奴が人間を利用した事件はありましたが、警戒が厳しくなれば同じ方法は取らないはず」

教頭「現在、地上の各地で修業中の天使へ警戒発令が出て、監視役の天使も天界から派遣されています」


教頭「特に、この天使および繋がりのある人々の周辺は、重点的に監視されているのでご安心ください」

友「あなた達を信用するしかないみたいだな」

男「なあ、早いとこあの悪魔を探し出してとっ捕まえた方が早くないか?」

教頭「…それが、あなた達の前から姿を消した時から、奴の存在が地上から掻き消えてしまったので…」

教頭「悪魔探索のエキスパートの天使達も捜索中ですが、引っ掛かるのは別の悪魔ばかり」

教頭「我々の神と魔界の長の取り決めで、さほど害のない悪魔まで片っ端から捕獲するわけにも行きませんからね」

女「あなた達にも色々事情があるんでしょうけど…害のない悪魔って何…」

教頭「人間の世界が目まぐるしく変化する昨今、露骨な天使いじめや人間への誘惑は『流行らない』とか言って」

教頭「正体を隠して人間社会に入り込み、間接的に人間に影響を与えている下級悪魔は増加の傾向にあります」

教頭「稀に人間の技術や文化の進歩にも繋がるケースもあり、全て悪として取り締まるのは難しいんですよ」

男「天界も魔界もなんだかなあ…って思うけど…ま、あんたに言ってもしょうがない、それより」

男「うちの天使の恩師なら…残りの呪いを少しでも吸い取ってやってくれないか?」

男「あんたの体に影響ない量でいいから、頼む…ほら、近くに来てくれ」

天使「…」

教頭「…可哀相に、修行を始めたばかりだと言うのに」

教頭「できるものなら助けてあげたいのですが…残念ながら、呪いの吸引は一度しかできないのです」

男「え」

教頭「放置しても一定時間が経てば呪いは血流に乗ってしまいますが、呪いを残存する形で吸い取れば処置直後に同じ現象が起きます」


教頭「こうなると血流を止めなければ他者は呪いを吸い取れなくなるし」

教頭「血流が止まれば本人の自浄作用も傷の修復も止まる、すると呪いは細胞の死骸を糧に力を増すのです」

教頭「これでは吸引する意味がありません」

男「…そうか…やっぱりこれ以上は手の施しようがないのか…」

教頭「力になれず申し訳ありません…しかし、この子は少しずつですが確実に回復に向かっています」

教頭「迅速に各自の限界まで呪いを吸引した昨日の3人と、この子を心から心配してくれるあなた達のおかげです」

男「前半はともかく後半は俺達に気を遣ってくれてんだろ?」

男「今回の件では人間なんて無力じゃないか」

教頭「いいえ、文字通りの意味です」

教頭「成長期の天使には、他者の愛情だけが地上生物で言うところの『栄養』ですから」

男「…!」

男「知らなかったよ…」

教頭「天使がそれを愛情だと感じ取ることができさえすれば、どのような行為でも間違いではありません」

教頭「男さんの場合も…ほどほどでさえあれば…」

男「」

男「知ってんの!?試練だけじゃなく、俺が天使に何してるかあんたら知ってんの!?」

教頭「修行中の行動は査定の対象のため、『大まかには』天界に把握されています」


教頭「概要さえつかめれば済むので、具体的な細かい部分まではいちいち監視していられませんけどね」

教頭「…趣味として細部まで観察している教官もいますがそれは置いといて」ゴニョゴニョ

教頭「とにかく、何か奴に動きがあればすぐお知らせしますから、あまり神経質にならないように」バッサ

友「もう行くの」

教頭「はい、わたしは悪魔の状況と我々の動きを伝える役目で伺いましたから…」

教頭「明日からは時折あの3人の誰かがこの子の様子を見に来る予定です、それでは…」バサバサ

女「窓から飛んでっちゃった」

友「とりあえず…姪については何もかも安心とまで行かなくても、心配がかなり減ったのはわかった」

友「あとは天使さえ元気になればいいな」

男「……」

男「何もかもお見通しだったとは…」ハァァ

女「今更そこを悩んでも…あの教頭先生の言う通り、いたわりつつほどほどであれば…許容範囲…なんでしょ」

友「何事もほどほどは大切…」

男「…信じてもらえんだろうが、血まみれの天使を見てから俺はずっと賢者モードだ」

男「助かるんだったら、元気になるなら、もうガチムチのままでもいい…とさえ思わんでもないかもしれない」

女「そこは言い切ってよ」

……


僕を心配する男さん達、そして、懐かしい天使学校の先生の声

早く目を覚まさなくちゃ、もう大丈夫だって皆さんに言わなくちゃならないのに、目を開けられない…



またあの屋根裏部屋…あれから季節が変わった、冬が近づいているんだ

 女性「…私のような助かる見込みのない者にいつまでも関わっていないで」

 女性「これ以上あなたの『修行』の邪魔はできませんわ」

 赤髪「邪魔だなんて、あなたを見捨てるのはそれこそぼくらの神は許さない」

 赤髪「…弱気にならないで、あなたはこうして生きている、ぼくがあなたの命の灯を守ってみせる」ギュ

彼女に正体を明かしたのか…

 女性「私は何もない空っぽの女です、虚しくつまらない人間です」

 女性「見てくれだけが私の価値だったと言うのなら、今はそれさえも失ってしまった」

 赤髪「あなたは育った孤児院への恩を忘れず、顔も知らない孤児達を案じ健やかな成長を願う優しい人です」

 赤髪「それを空っぽだなんて…それに…あなたは今でも美しい」

 女性「…私の伴侶と…言ってくれましたわね…」

 女性「では…たった今、私を…あなたの花嫁にしてくださいますか?」

 女性「夫婦の契りを交わし…抱いてくださいますか…?」

 赤髪「…!」


『彼女は不安なんだ、悟ったつもりでも拭いきれない死への恐怖に苛まれている、不安がそうさせているんだ』

 女性「ふふ…やはり、はしたない淫らな女だと、さすがにあなたも軽蔑したでしょう?」

 赤髪「いいえ…あなたが必要としてくれるなら…ぼくはその全てに応えましょう」

赤髪「それが人間あってこその天使という生き物なのです…遠慮なく、ぼくを求めてください…」

女性「赤髪…!」

赤髪「泣かないで…」

『これで、ひと時でも彼女が病を死を忘れられるのならば』

…どうしよう…礼儀として見ちゃいけないのは当然だけど…自分の意志ではやめられないみたいだし…

ごめんなさい、僕、見てしまいます…

 女性「…こんな痩せ衰えた私の体を見ても、あなたは…」

 赤髪「他ならぬあなたに求められ、あなたに触れられれば、ぼくはそれに応じることができます」

『つまりは、求められなければ応じられない、それがぼく達の肉体』
『汚れることを許されない肉体』
『人間に形だけ似せ、隅々まで創造者の意図が行き渡った…言わばよく出来た人形』

女性「ああ…富豪様の慰み者として生きていた頃は…んっ…知らなかった…」

女性「心から愛おしいひとと結ばれるのは、こんなに…こんなにも…ああっ…赤髪、私っ…」

『まるで死に至る病に侵されているとは思えないほど…この瑞々しさ、情熱、どこに秘めていたのだろう』
『それともこれさえも、燃え尽きる前の一瞬の輝きなのか』


 『彼女は不安なんだ、悟ったつもりでも拭いきれない死への恐怖に苛まれている、不安がそうさせているんだ』

 女性「ふふ…やはり、はしたない淫らな女だと、さすがにあなたも軽蔑したでしょう?」

 赤髪「いいえ…あなたが必要としてくれるなら…ぼくはその全てに応えましょう」

 赤髪「それが人間あってこその天使という生き物なのです…遠慮なく、ぼくを求めてください…」

 女性「赤髪…!」

 赤髪「泣かないで…」

 『これで、ひと時でも彼女が病を死を忘れられるのならば』

…どうしよう…礼儀として見ちゃいけないのは当然だけど…自分の意志ではやめられないみたいだし…

ごめんなさい、僕、見てしまいます…

 女性「…こんな痩せ衰えた私の体を見ても、あなたは…」

 赤髪「他ならぬあなたに求められ、あなたに触れられれば、ぼくはそれに応じることができます」

 『つまりは、求められなければ応じられない、それがぼく達の肉体』
 『汚れることを許されない肉体』
 『人間に形だけ似せ、隅々まで創造者の意図が行き渡った…言わばよく出来た人形』

 女性「ああ…富豪様の慰み者として生きていた頃は…んっ…知らなかった…」

 女性「心から愛おしいひとと結ばれるのは、こんなに…こんなにも…ああっ…赤髪、私っ…」

 『まるで死に至る病に侵されているとは思えないほど…この瑞々しさ、情熱、どこに秘めていたのだろう』
 『それともこれさえも、燃え尽きる前の一瞬の輝きなのか』

 赤髪「…ほら、あなたの生命は輝いている…言った通りでしょう…だから、ぼくの伴侶として、これからも…」

 女性「…私、生きているのですね…あなたがそれを、私に教えてくれる…あ、はあぁ…っ」

 『よく出来た人形は、人間との交わりに快楽を覚え、絶頂まで達する』
 『女天使であれば濡れて相手を受け入れ、孕みもしない偽の子宮は精液を吸い上げさえする』

 女性「赤髪、私…もう、これ以上は…あ、あああ!」

 赤髪「いいんです、このまま…ぼくも、もう…あなたに…あなたの中にっ…」

 『男天使であれば、勃起した性器で相手を突き上げ、粘度だけ似せた偽の精液を胎内に注ぎこむ』
 『…いずれの性別であっても、天使の体液と人間の体液が触れ合えば、ただの清浄な水に変わってしまう』
 『まるで、最初から何事もなかったかのように』

 女性「はぁっ、んん…お願い…お願い、です…もう少し、このまま…抱きしめていて…ああ…」

 赤髪「…勿論です…あなたの気の済むまで、ぼくの腕の中に、いてください…」

 『あなたはぼくを感じ、ぼくはあなたを感じ、ひとつになって上り詰めた瞬間は確かにあったのに』
 『ぼくはあなたを汚すことはできない、あなたにぼくは汚されない』
 『虚しくてつまらない生き物なのは…天使であるこのぼくだ…』



天使とは、虚しくて、つまらない生き物…

そう考えたらそうなのかもしれない、だけど…

だけど…

……

>>154はなかったことに。おやすみなさい。

おつです
こんな面白いSSを見逃していたとは…続きも楽しみにしております

…筋肉青年状態とエッチする時はいつか来るのだろうか…


天使「…あ…」パチ

男「天使っ!?」

天使「…男さん…女さんと、友さんも…」

友「天使、姪はもう心配いらないよ…ありがとう」

天使「友さん…僕は…」

友「いい、いいから…それより早く元気になってくれ、な?」ニコ

天使「…ふえっ…」グシュ

女「おでこの冷却シート替えるね?」ペリ

男「どんな気分だ?少しは楽になったか」ナデ

天使「…夢」

男「ん?」

天使「夢を、ずっと…見ていました…」

女「どんな夢なの?」ペタ

天使「…それが…今は内容まで思い出せないのですが…何だか…」

天使「…悲しい、夢だったような…」

男「なら思い出さなくていいんじゃね?そのまま忘れちゃえ」

男「元気になってもまだ気になるなら、よほど暇な時に思い出せばいいだろ?今はやめとけ」ナデナデ

天使「男さん…」

天使(髪を撫でる男さんの手…やっぱり少し恥ずかしいけど…落ち着くなあ…)


天使「そうですね…今は、考えるの…やめます…」コトン

天使「…すー…」

女「眠っちゃった」

男「まだけっこう高熱だからな…天使の体温、どう計ればいいんだろ?」

友「平熱は知ってるのか?」

男「人間とだいたい同じだと思う、俺の皮膚感覚だと」

友「」

友「…そ、そう…だよね…お前は知ってるよね」

男「うーん、体温計どこに差せば…犬や猫なら肛門だが…」

友・女「「やめとけ」」

友「自分と同じでいいだろ、同じ体型なんだし」

女「天使ちゃんおとなしく眠ってるだけだし、脇に挟んであんたが腕を押さえておけばいいでしょが」

男「それもそうか…静かに眠ってるだけだからこそ、少し試してみたくもあった…」

女「てめぇどこが賢者モードだゴラァ」

友「気持ちはわかるがおちつけ女、病人の前」

友「しかし…天使は確かに回復しつつあるようだし、男も…この分なら心労でぶっ倒れそうにもないな」

女「本当だよ!もう金輪際、男くん単独の心配はしてやらん」

友「と言うわけで、一旦俺らは帰ろうと思う…また明日来るよ」

女「え」


友「大丈夫、教頭さんの話、聞いてたろ?今の天使にはさすがの男も変なことできないだろ、な?」

女「ま、まあ…確かに…」

男「本当にお前達には助けられた、ありがとう」

男「あともう少し助けてもらうとは思うけど…今日のところは家で休んでくれ」

友「ああ、また明日な男…ほら、行くぞ女」

女「ちょ、ちょっと待って」バタバタ

女「天使ちゃん、また来るからね…!」

ガチャ…パタン

男「…」

男「女が怒るのも仕方ない」ハァ

男「姪ちゃんのことも、天使の容態も、昨日に比べたらずっと安心要素が増えて」

男「緊張感が少し緩むと同時に『天使が元気になったらエッチしてえ』という気持ちがムクムクと…」

男「確かにどこが賢者モードか」

天使「…すー…すー…」

男「…でもな、どっちも本心なんだよ」

男「お前が元気になるなら何もいらんって気持ちも、またお前とエッチしたい気持ちも」

男「なんなんだろうなあ、これって」

男「お前は俺の、俺はお前の、なんなんだろうなあ…」

……


~天界…天使学校の教官の宿舎~

茶髪「金ちゃん、気分は?」

金髪「あー、だいぶ良くなったわ…あんたこそどう?」

茶髪「私もよ、明日には地上に降りられると思う」

金髪「…で…黒ちゃんは…」

黒髪「…」グッタリ

茶髪「吸引した呪いを抜く処置の最中に倒れちゃってね、それから眠りっぱなし」

金髪「やっぱり、ひ弱なくせに大量に吸い取るから…この部屋に寝かせておくだけでいいの?」

茶髪「処置は済んだから、私達より1~2日遅れで回復するって」

金髪「それならいいけど…男さんの所には教頭先生が行ってくれたみたいだね」

茶髪「ええ、警備が強化された件も含め、こちらの状況も伝えてくれるはず」

金髪「全く…『黒ちゃんの時』に上が今くらい動いてくれたら、こんな事態にもならなかったのに!」

茶髪「仕方ないわ、あの時もあの悪魔はすぐに姿を消してしまったんだもの」

金髪「あれから30年だよ、その年月かけて探索を続けていたら、とっくに見つかっていたよ…」

黒髪「…」昏々

黒髪(…ピアニストさん…)

……


~黒髪天使の夢…~

黒髪「お茶入りました…ピアニストさん」カチャ

ピアニスト「ああ、ありがと…ごめんね、新聞記事に没頭してて気づかなかったわ」ガサ

黒髪「気になる記事、ありました?」

ピアニスト「えへへ…もう未練なんかないはずなのにね」バサ

『資産家令嬢、音楽学校の元同級生と結婚…将来は資産家の後継者に?』

黒髪「この方は…?」

ピアニスト「私と令嬢と、結婚相手の男性…3人とも同じ音楽学校の同期でね」

ピアニスト「で…私と、この彼は当時の恋人同士で…卒業と同時に婚約もした仲なの」

黒髪「え」

ピアニスト「私と彼は音楽を仕事にしたくて音楽学校に進んだけど、彼女は…お嬢様のたしなみ…だったのかな」

ピアニスト「それは別に構わないけど、彼女は少女の頃に親が決めた婚約者に不満があったらしく」

ピアニスト「…その上、私の彼を気に入っちゃったみたい」

ピアニスト「ま、色々あって、結果的に略奪…略奪婚されちゃいました…こんなところ」

黒髪「略奪…つまり」

黒髪「大勢の手下を引き連れて襲い掛かり、ピアニストさんを武力で脅して、彼さんを拉致して奪い取った…?」

ピアニスト「いやいやいや…略奪というのは例えで…うーん、なんと言ったらいいやら…」

黒髪「え、ち、違うのですか…?」


ピアニスト「…」クス

ピアニスト「あっはは…なんかね、もう本当に、本当にどうでもいいわ…」

ピアニスト「私にはあなたがいる、当初の予定とは少し違ったけど、ピアノを弾いて生活できている」

ピアニスト「それから、もうひとつ」

黒髪「?」

ピアニスト「私の曲をあなたが歌った、あの録音テープ…送り付けた先のレコード会社の社長さんが乗り気でね」

ピアニスト「すごく小さい会社で、枚数も少ないけど、レコードにして売り出してくれるって…」

ピアニスト「今日、その手紙が来たのよ」

黒髪「ほ…本当ですか!?」

ピアニスト「ええ、これもあなたのおかげ…感謝のハグしちゃうぞ」ギュ

黒髪「いいえ、ピアニストさんがいっぱい頑張ったからです…!」ギュ

ピアニスト「…やっぱり黒はいい匂いがする…微かだけど、お爺ちゃんの田舎のオレンジ畑の、花の香りそっくり…」

ピアニスト「私、最初に出会った日は鼻風邪ひいてて気付かなかったけど…これがあなたの香りなのね…」

黒髪「…天使は自分ではこの匂いがわからないんです…ピアニストさんが知ってくれて、嬉しい」

ピアニスト「ふふ、あなたは本当に私の幸運の天使…これからも一緒にいてね」

黒髪「はい、ピアニストさんの望む限り…!」

……


黒髪「…」パチ

茶髪「黒ちゃん!」

金髪「あ、あたしの声、うるさかった?」

黒髪「…」モゾ

茶髪「まだ起き上がっちゃ駄目」

金髪「…ん?夢を見ていたって?…あのひとの…ピアニストさんの夢?」

茶髪「…呪いを受けた影響か、それとも、当時の記憶を思い起こされたせいかもね…」

茶髪「あなたの美しい声を壊した、あの時と同じ悪魔に…!」

金髪「っちょ、そんな怖い顔しなくてもいいじゃん茶ちゃん」

金髪「とても懐かしい、幸せな、いい夢だったって…」

黒髪「…」

茶髪「…やっぱりあの子が心配?」

茶髪「大丈夫、教頭先生が様子を見に行ってくださってるの、あと私か金ちゃん、どちらかが明日会いに行くわ」

金髪「黒ちゃんがあれだけ呪い吸引してくれたもの、きっとすぐ元気になるよ」

金髪「…あと、あの時は渋ってごめんね?」

黒髪「……」

茶髪「金ちゃんが駄々こねるのは子供の頃からだし、文句言いながらやることはやるから、気にしてない、って」

金髪「意外とハッキリ言う時は言うのよね、黒ちゃんて…」

……

読んでくれる皆さんありがとうございます
「現在の」黒髪天使の声はめっちゃ小さくて人間には聞き取れません

おつです!

おつ


…赤髪の天使だ

あれから外の風景はますます寒々として、女の人は日々衰弱しつつある

彼女を診たお医者達は、首を横に振るばかり…

赤髪天使の記憶によると、正体を明かした時から一緒に屋根裏部屋に住んでいるらしい

赤髪の働いたお金で住処を移ることも検討したけれど、実現しなかった

貧民街以外の、もっと小奇麗な借家の家主達は皆、重い肺病患者の入居を拒んだそうだ…

 『彼女は病気の悪化にも関わらず、ほぼ数日おきにぼくを求めた』
 『苦痛と迫る死を忘れるため…いや、むしろ、自分がまだ生きていることを実感したいがため』
 『ぼくに、自分が生きている証を刻み付けたいがため』
 『…ぼくも彼女の余命を縮めるとわかっていながら…彼女を拒みはしなかった』

 女性「はあっ…その腕で、もっときつく抱き締めて…そして、もっと…もっと私の深くへ来て…ああん…」

 赤髪「…んうっ…、ほら…これ以上はないほど、深く繋がっていますよ…わかりますね?」

 女性「あああ…嬉しい…私の奥深く、あなただけが届いてる、触れているの…!」

僕たち下級天使には、いくら年齢や経験を重ねても、人間の病気を治すまではできない

もちろん、寿命を延ばすなんてあり得ない

生まれつき『癒し』の素質に秀でた者は、修行から数年で他者を癒す能力を習得もできるけれど

せいぜい一時的に肉体の苦痛を和らげ、眠りが必要ならば一晩よく眠れるようにする程度

 『自分の能力を磨いて駆使することも、人間界に存在するあらゆる方法を試すことも許されているけれど』
 『それを 超えようとすること は許されない』

…僕たちにできることは限られている、もどかしいよね、赤髪…こんなにも、きみは彼女を助けたいのに…


…また数日が経った…

昼間だけど、彼女はぐっすり眠っている…お医者に眠り薬を処方してもらったのか

赤髪、どこかに出かけるの?あれ、それは…

 赤髪「相手が相手だ…一応、持って行くか」

天界の剣…そう言えば学校で教わった

僕らが受ける、地上での試練から修行に入る制度、開始した初期のうちは天使学校も試行錯誤で

護身用に、というより護符のような意味合いで、地上に降りる天使達に天界の剣を持たせていたとか

でも、ある事件が起きて、剣を持たせるのをやめた代わりに監視を強化した…これは授業ではなく上級生から聞いた

剣を自分以外には見えないようにして、背中に背負い…そんなもの持って、どこへ行くんだろう…

…彼女を部屋に残して…



町はずれの森…人の気配はない…降り立った赤髪は、誰かを待っているようだ

誰かが歩いて来る…でも…あれは、人間じゃない…

…!!

あれは…あいつだ…廃工場で出会った悪魔だ…!!

駄目だよ赤髪、そいつに近付いちゃ駄目…逃げて、修行に入って2~3年のきみでは剣があっても敵わない!!

…そうか、この夢は…僕の血流に乗った『呪い』が見せているんだ

呪いは悪魔が自分の血から作ると聞いた、血に残る記憶…きっと悪魔が赤髪に目を付け、密かに見張ってた記憶…

……


~翌日、男のアパート~

男「友と女は午後から来てくれると連絡があった」

男「姪ちゃんは昨日のうちにどこも異常なしで退院できたらしい、本当に良かった」

男「あれからまた天使は目を覚まさない、姿も省エネモードの子供天使のまま」

男「熱は初日よりは下がってるんだろうけど、38度台後半をキープしたまま」

男「もちろん脇で計ったからな?」

男「…すべすべでプニプニ柔らかい脇だった…気持ち良さそうな…」

男「…天使が半泣きで訴える、『…くすぐったい、くすぐったいよぉ、男さん…!』」

男「俺は、『へっへっへ、これが脇コキだ、ほれほれぇ!』って…」

男「……」

男「…俺って、いよいよもって最低だ…」ガックリ

金髪「はろー、男さん♪」フリフリ

男「」

金髪「んー、なんとか回復に向かってるみたいね…眠りが深いのは気になるけど、ま、寝る子は育つ」ボヨン

男「ちょちょちょ、ケバい先生、天使の枕元にしれっと陣取ってんじゃねえ、瞬間移動か!?」

金髪「しー、声でかい…恩師が生徒を見舞って何が悪いのさ」


金髪「それにケバいとか失礼な…あたしのこの正に黄金色に輝く髪、天界でも屈指の美しさよ?」ファサ…

男「同じ金髪でもうちの天使とはえらい違いだな、あんたのはキンキラキン…」

金髪「地上の光だと派手さが目立っちゃうかもねー」ボヨン

金髪「でね、この子の鶏のヒヨコみたいな色は生まれたての天使に多いんだけどね」

金髪「地上に降りる歳でも、大人天使になっても濃い色にならず保っているのはけっこうレアなのよね」ボヨン

男「…」

金髪「何、胸が気になる~?」ボヨヨン

男「お、一昨日会った時は、そんなんじゃなかったと思うけど…」

金髪「あの時は念のため、3人とも服の下に鎧つけてたの…地上であれは重かったわあ」ボヨン

男「うちの天使も結構ボリュームあるけど、あんたまで行くと、ちょっと…下品…」

金髪「あっはっは、男さんマジ失礼~単に好みの問題だってば」

男「…今日はあんた1人なのか?黒髪のおねーさんとか…」

金髪「…」

金髪「何よ、男さんやっぱりあーゆー清楚なタイプがいいの~?」ボンヨヨヨン

男「そ、そりゃ好みで言ったら…じゃなくて、あんたホントに何しに来たんだ!?」


銀髪の女性?「黒髪天使はまだ寝込んでいる、茶髪天使は看病で残った」シュバッ

男「」

金髪「げ」

銀髪の女天使「初めまして、男さんとやら…私は天使学校の校長、この度はあれこれ面倒かけている」

男「また瞬間移動か…昨日のおっちゃんの更に上司か」

男(このひと女…だよな?でもガチムチ天使と同じくらい身長あるし、服装も今まで会った天使達と違う、それに…)

男(…頭の上に、光る輪っかがある…そう言えば、うちの天使や他の先生達、輪っかあったっけ…?)

校長「上級天使を見るのは初めてだろう…頭の輪が気になるか?下級天使達にもあるんだぞ?」

校長「通常、地上光の下では波長が人間の可視域の外にあるだけだ」

男「そ、そうなの?でもこの通り、頭の上には何もないんだけど」スカスカ

校長「当然だ、『光』そのもの、物質ではないからな」

金髪「…なぜ…校長先生が…」

校長「今回はお前たちのような若い教官の単独行動は危険だが、あの2人は来られない」

校長「何より、素行に何かと問題のあるお前だ、ここらで私が直々に指導しなおしてやらんとな!!」

金髪「うへえぇぇ…」

男「あんた教師らしくないと思ってたらやっぱり問題教師なのか」


校長「私はあの話を男さんにする、お前はこの子を看てろ」

金髪「言われなくったって…」ブツブツ

校長「そういう態度がいかんのだ!」

金髪「はいいいい!!」ビビッ

男(おっかねー…)

校長「さてと…教頭から色々聞いていると思うので、今日は進捗状況をお伝えしよう」

校長「例の悪魔の行方だが…なかなか見つからない理由が少し、わかったよ」

男「ほ、本当に!?あいつが捕まらないと心から安心できないんだ…早く見つけてくれ」

校長「そう急くな」

校長「地上で活動する下級悪魔は天使の修行のように期間が限定されているでもなく、魔界の監視も基本的に放任だが」

校長「奴は100年ほど前、魔界の宝物庫から魔術書を大量に盗み出し地上へ逃げた」

男「魔術書」

校長「書と言っても見た目は巻き物だな」

校長「1つにつき1回しか使えないが、魔族であれば自身の本来の能力を超えた魔法でも、読み上げるだけで使用できる」

男「…やばくないっすか?」


校長「ずさんな管理下に置いていたくらいだから、殺傷能力や物理的破壊力は殆ど無いものばかりだと言う」

校長「ただ厄介なのは…どの魔法も下級天使の力では全く無効化することができないらしくてな」

校長「正直、我々上級天使でも自分の不得意分野であれば困難だ」

校長「おそらく…隠蔽や逃走の効果がある巻き物を使うことで、天使の捜索から逃れて来たのだろう」

男「要するに、歯が立たないという残念なお知らせなんですね?」

校長「結論を急ぐな…重要なのは、この情報を魔界からもらえた点なのだ」

校長「魔界は奴を100年放置していたが、度重なる過去の事件と今回の件でようやっと腰を上げてくれ…」

校長「捕獲しだい魔界への強制送還と、今後50年間は地上世界に出さない謹慎処分を約束してくれた」

男「…そいつの寿命は?」

校長「比較的若い悪魔らしい、下級天使程度の寿命だが、少なくとも残り200年はあるとか」

男「処罰甘いよ、どんな人道国家だよ魔界…」

校長「もちろん謹慎中は厳格な更生プログラムに従わせるとのことだ」

男「なんだかなあ…」


金髪「ヒヨコちゃん…へへ、あんたをこのあだ名で呼ぶのも久しぶり」

天使「…」

金髪「って聞こえないか…これだけ熱があるなら、傷の痛みもまだあるよね…」

金髪「よーし、あたしの得意な、痛みを緩和する癒しを与えちゃおう」

金髪「ベッドに腰かけて、ヒヨコちゃんを抱えて…」ヨイショ

金髪「あたしの癒し、おっぱい枕~♪」ボヨヨン

天使「…」ポッフン

金髪「茶ちゃんの手かざし、黒ちゃんのソフトハグに比べたら、ちょっと周囲の状況を見極めないとできないけど」

金髪「…あんたがちっちゃい時、ひときわ泣き虫だったあんたを3人で代わる代わる抱っこしてあやしたっけ」

金髪「寝顔は変わらないわー、ほんとあんたは同学年のどの子より幼くて…」

天使「…すやすや…」

金髪「それが今では…試練がきっかけとは言え、男さんの求めに応じ夜の生活を…」

金髪「こんな小さい体と幼い顔でねえ…それにあの女性体」

金髪「この子が女性に固定化したら確かにあんなんだったろうけど、あれがきっと男さんの好みピッタリなのよ」

金髪「理想が服着て現れて裸になった日には、そりゃあ『人間』だもの、発情せずにはいられないわあ」

天使「…ん…むにゃ…」


…赤髪天使と悪魔が話をしている…?

 赤髪「…本当に、彼女を助ける方法を知っているんだろうな」

 悪魔「ああ、俺が持っている魔術書の中に、使えそうな物があるんだよ」

 悪魔「…しかし…いいのかい、悪魔と取引をしたと知られたら、ただで済まねえんじゃないのかい、坊や?」

 赤髪「…天界の監視は定時に行われるだけなんだ、その合い間に手早く済ませたい」

当時は今のような、ほぼ常時監視ではなかったんだっけ…

 赤髪「外国で新しく作られた良い薬を手に入れたと…彼女にも周囲にもそう説明する」

 赤髪「とにかく…とにかく彼女を救いたいんだ」

無理だよ…この現場を見られなくても、天界をごまかし通すなんて…そんなこともわからない?

 悪魔「で、見返りは…約束を忘れるなよ?」

 赤髪「ぼくの寿命を300年だったな…でも前に言った通り、彼女の病気が治ったのを見届けてからだ」

 悪魔「わかってるって、寿命の移動も巻き物を使えば一瞬だ…へへ…気前のいい坊やだねえ」

 赤髪「…肺病が治っても、人間の寿命を考えたら…ぼくの寿命も100歳まであれば充分さ」

そもそも…この悪魔の話は本当なの?信用できるの?嘘だよ、こいつはきっときみを…

何もかも、少し考えればわかることじゃないか!



…赤髪…もうそんな判断もできなくなっているの、彼女のために、形振り構っていられなくなったの…?

 悪魔「あったあった、この巻き物だ…」ガサ


目を覚まして、赤髪…話に乗っては駄目だ…

 悪魔「天使の体液を万能の治療薬にする魔法…お前さんにはピッタリじゃねえか?」

 赤髪「ど、どういう効果なんだ?」

 悪魔「元々、多かれ少なかれ癒しの力を持つ天使の体液を薬にするのさ、そんなに無理な話じゃねえだろ」

 悪魔「坊やの体液であれば、なんでもいい…あのお嬢さんの体に、どんな方法でもいいからぶち込んでやりな」

 悪魔「…お手軽な方法だと…そうだな、精液を腹の奥深くに流し込んでやっても効くんだぜぇ?」

 赤髪「…!」

 悪魔「『恋人同士』なら一番自然だよな…新薬とやらは膨らし粉でも飲ませとけ、どうだ?」

この顔…ぼくを女にして『味見』したいと言った顔と同じ…天使を、おもちゃにしている時の顔だ…

 赤髪「わ、わかった…頼む、やってくれ」

駄目だ、赤髪、駄目だ…!!

 『もし嘘であれば…天界の剣で斬り捨ててやる…!!』

 悪魔「よし、契約成立…後戻りはできねえ」

悪魔が呪文を読み上げ始めた…ああ、嘘に決まっているのに…

…なんだ、景色が歪んで…?

 赤髪「き、貴様、これは…何をした!?」

 悪魔「ケケケケ…おもしれえ、天使のガキってのは本当にからかい甲斐ある生き物だぜ!!」

 悪魔「最初から、万能薬を作る巻き物も寿命を吸い取る巻き物も持ってねえよ!」

 赤髪「だ、騙したな!?殺してやる!!」シャッ


剣を抜いた…!

 悪魔「バーカ、そんなこた想定してらあ…この魔術書はな…!」

 悪魔「てめえを一週間後に飛ばす呪文なんだよ!あばよ!!」

赤髪…!!





 赤髪「…あ…ここは、さっきと同じ、森の中…?」

サク…

 赤髪「…ゆ…雪…?辺りは雪が積もって…周囲の木々も完全に葉が落ちて…」

 赤髪「あいつは、いない…一週間…後…?」

 赤髪「…!!」ハッ

 赤髪「戻らなくちゃ…帰らなきゃ…!!」バサッ

…こんなこと、あの悪魔にとっては単なるいたずらに過ぎないんだろう…

でも…あんなに弱っていた彼女は…あんなに赤髪だけを支えにしていた彼女は…?

 赤髪「町の中も雪が降り積もって…本当に日にちが経ってしまったんだ…」

 中年女「…赤髪さん!!どこに行ってたんだい!?」

 『アパートの住人で唯一、彼女とぼくを心配して声を掛けてくれる人だ…』

 中年女「こんな何日も…あんたの、あんたの奥さんは…!!」
 


そうだよ、女の人はどうなった?

 赤髪「…!!」ザッ

 中年女「奥さんはもうあの部屋に…このアパートにいないよ…」

 赤髪「ど、どうして、どこへ行ったんです!?」

 中年女「6日前…あんたが帰って来ないと、アパートの住人達に聞いて回って…」

 中年女「その足で警察に行き、事故に遭った赤い髪の青年はいないかと…あの体で…」

 中年女「部屋に戻って、それからずっとあんたか警察からの連絡を待ちながら、泣いて過ごして」

 中年女「それでも居ても立ってもいられなかったんだろう、4日前の夜…あたしが目を離した隙に」

 中年女「…あんたを探しに外に出て行っちまった…」
 
 赤髪「そ、それで…彼女は今、どこに…」

 中年女「…あの晩、初雪が降っただろう?翌朝、そこの路地で…半分、雪に埋もれて…3日前だよ…」

…あ…ああ…

 『嘘だ、嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ…』

 赤髪「ああああああああうわああああああああああああああわあああああああああああああああああ」

なんて…なんてこと…

今の赤髪には…アパートの住人の声も届かない…周囲の音は聞こえない、周囲の風景は見えない…



誰かが、来る…天使、だ…

……


男「解決までの時間は早まったと…信用していいんですね?」

校長「うむ、ただ心配事は…派遣してもらった魔界の追手は、少しばかり手緩い奴らで…」

男「…追われている奴が一番凶悪なんじゃないの?」

校長「おお、鋭いな…奴は魔界でも異常人格との噂があってな」

校長「基本的に天使への悪質ないたずらを好む変質者であり、時として今回のような残酷な暴力も振るう」

校長「まるで天使を憎んでいるかのような…」

校長「魔界でも奴の逸話は、ちょっとしたサスペンスとして、脚色されてエンターテインメントにもなっている」

男「なんなの魔界なんなの!?」

校長「最近の魔界世論調査では、天界とは本気で和平条約を結ぶべきとの層が、初めて過半数に達したとか」

男「もういいよ…神様も随分いい加減だと思ってたが、この分じゃ魔界の長とやらもかなり適当な奴らしいな…」

校長「神と魔界の長に関わる直接的な話は、人間には詳しく話せないのだ、すまない」

男「なんでもいいけどしっかり頼むよ…俺たちゃお祈りくらいしか出来ないんだから」

校長「信じてくれるだけでもありがたい、全力を尽くす」

金髪「…男さ~ん…」

男「どうした?天使に何かあったか!?」

金髪「あたしね、あの子を…幼年期に天使学校でやってたみたいに、胸に抱いて語りかけていただけなのに…」

女天使「…すー…すー…」

男「…は?」

今宵はここまでです

おつ
赤髪はどうなるかな


校長「…何をした?」

金髪「だから…胸に抱いて語りかけていただけ…ちっちゃい頃の話とか…」

金髪「立派なイケメン天使になって、頑張ったねとか…あと……」

校長「『あと』?」

金髪「…お…男さんとの夜の生活も頑張ってるね…とか…」

男「おい」

校長「天使の『癒し』は多少の催眠効果を持つが、お前は特にその力が強い、わかっていただろう?」

校長「まして…まだ精神も発達段階の成長途上の子、しかも意識はなく暗示にかかりやすい」

校長「その状態でのお前の卑猥な妄想は、この子に対して性的な行為と同じ影響を与えたのだぞ!」

校長「いわば精神的ワイセツ行為だ、天使学校の教師としてあるまじきにも程がある!!」

金髪「ごめんなさいいいいいいいいい」

男「え…」

校長「…男さん、試練を終えて間もない天使が幼年体に戻ったり、性別が逆転する現象は決して珍しくないが」

校長「その原因はさまざま、個人差がある…この子の場合、監視記録の分析から考えられるのは」

校長「幼年体になる理由は『安心できる状況があっての』精神の動揺によるもの」

校長「更に、幼年体になってから性的な刺激を与えられることで、女性体に変化する…と思われる」

男「せいてきなしげき」

校長「心当たりはおありだろう?」


男「…大あり…というかその…自分でもなんとなくそうかなとは思っていました…が…」

男「天使学校って、教師達って、そんなところまでデータ分析しなきゃならないの…」

校長「稀に人間とのトラブルの原因にもなるからな、対策を講じるためにも必要なのだ」

校長「あなたとこの子は幸い円満なようだが」

男「…もういいっす、天界は何もかもお見通し、今更取り繕う気も起りません…」

校長「気に病むな、教頭も言ってたと思うが、形はどうあれあなたがこの子を愛してくれるのは我々にも喜ばしい」

男「愛して」

校長「ところで…男さん、この家にバケツはあるかな?」

男「は?…バケツ…これでいいですか?」

校長「小さいな、もっと…10リットルくらいの容量のものが2つあれば良いが」

男「ないっすよ、一人暮らしの狭いアパートの掃除ならこんなんで充分です」

校長「…金髪天使に水を入れたバケツを両手に持たせ、しばらく立たせておこうと思ったのだが…反省を促すため」

金髪「おしおきですかあ!?」

男「昭和の小学生…ってか、の○太くんか!?」

校長「…では、石板はあるか?畳半畳を平行に三等分した大きさと厚みで、3~4枚…あと、そうだな、角材数本」

校長「金髪天使を角材の上に正座させ、腿の上に石を積んで行くのだ」

金髪「」

男「どっちもねーよ、江戸時代の拷問かよ!!」


金髪「…ううう、ただの正座のみとは言え、あたしこんな姿勢慣れてない…ううう」

校長「それだけで済ませてやっているのだ、男さんに感謝しろよ」

男「…子供の姿が省エネモードなら、多少ボリュームのあるこの姿は、怪我に悪影響ないんすか?」

校長「まあ、成人女性化したということは、それだけ肉体も回復してきたという意味だ」

校長「しかし傷が完治して体力も戻るまでは、あの青年形態には戻らんだろう」

女天使「…すや…すや…」

校長「熱や痛みはあっても寝顔は穏やかだろう?容態が悪化した様子もない」

男「…」

男「…さっき『安心できる状況があっての』精神の動揺とか言いましたよね、子供に戻る原因は」

校長「ああ、必ず近くに男さんがいる時でなければ、この子は決して変化しないようだ」

校長「男さんから離れて、何が起こるかわからない人間社会での就労中、そして」

校長「精神的にも大きなダメージを受けた悪魔の襲撃時に、変化しなかったのが何よりの証拠だ」

校長「前者の場合は程よい、後者の場合は異常なまでの、共に緊張状態にあった」

校長「逆に、気の緩みと言ってしまえばそれまでだが、男さんと二人きりでいる時は安心しきっているのだろう」

男「俺と二人きりの時は、安心…」

天使「すー…すー…」

……


赤髪に近付いて来る天使は2人…あ…天使学校の校長先生と、教頭先生だ

校長先生の顔は全く変わらないけど…教頭先生はちょっと若いなあ…100年前なら250歳くらいか

教頭先生の服装は今と少し違って一般教官の恰好をしている、当時はまだ「教頭先生」じゃなかったんだ

校長先生は…あれ…いかつい防具を身に付けて、腰には剣まで…すごい威圧感

確かこの装備は…

 教官(のちの教頭)「…赤髪天使よ」

 赤髪「…?」

 『あれ…外に…アパートの前にいたはず…いつの間にか屋根裏部屋に…彼らの力で瞬間移動したのか』

 赤髪「…先生、それと…あなたは…その装備…そのマントの色、天界治安部隊長…」

 隊長(のちの校長)「その通りだ、初めまして…赤髪天使」

 赤髪「あなた達が来たということは、やはりバレているんですね…」

 赤髪「修行中に失格とみなされた場合は天界へ強制送還、二度と地上に降りて人間と接することは許されない」

 赤髪「さらに、故意に重罪を犯した場合は記憶を消し、別人の天使として魂を再生」

 赤髪「…魂まで完全に『汚れ』天使の資格なしとされれば、魂ごと消滅させられる」

 赤髪「ぼくは結果はともかく悪魔と契約を結んだ、魂の再生か、消滅か」
 


そんな…赤髪は騙されたのに、彼女を助けたい一心、それだけ…

 教官「…君は確かに悪魔と契約を結んだが、その動機と君の年齢を考慮し、処分は強制送還に決まった」

 隊長「再生が妥当とされたところを、この教官が上に懇願してくれた結果だ、感謝するが良い」

 赤髪「強制送還…」

ああやっぱり、教頭先生は昔から優しい先生なんだ…

 『天界に戻り、地上に降りることはなくても、下級天使の仕事は人間と人間の生きる地上を見守ること』
 『彼女の魂が誰かに生まれ変わったとしても、それは既に別人』
 『23年間の生涯で、何かを成して世に名を遺したわけでもない』
 『彼女には血を分けた子孫ばかりか実の親兄弟さえいない』
 『幼い彼女を慈しみ育てた孤児院でも、彼女は院を巣立った大勢いる孤児のひとりに過ぎない』
 『既に彼女の存在を最初からなかったかのように振る舞う養父母とあの富豪は言うに及ばず』
 『高級娼婦という職業の彼女を、世の多くの人々は存在を視界に入れようともしない』
 『これから400歳になるまで、ぼくは彼女を忘れていくだけの地上を見守るのか…』

 教官「…住む人がいなくなれば、この部屋をいずれ人間は片付けてしまうだろう」

 教官「身寄りのない女性だったのだろう?取っておきたい遺品があれば、君が所有して構わないと思う」

 隊長「ああ、その程度の時間は待ってやろう」

 隊長「多くは持てないぞ、厳選しろよ?」

 隊長「遺品か…人間の風習の中でも、特に奇妙なもののひとつだ」

 『奇妙…そうだよな、人が死んでしまった後、遺された、ただのモノなんかになんの意味があるのか』
 『…と、天使なら思うだろう』
 『無生物も不変ではない、人間にとって耐久性ある物質でも下級天使の寿命の間に風化してしまう物もある』
 『ましてや、長い時を生き、これからも長い時を生きる上級天使にとっては…』


確かに、ちょっと校長先生…いや当時は隊長さんのこの言葉は、冷たい印象はあるけれど…

 隊長「君を陥れた悪魔については、他の地上にいる天使達にも注意喚起する」

 隊長「より悪質な行為を増長させれば、更に強硬手段も検討するが…」

 赤髪「…」

 『今回のあいつの行為は、それほど悪質でもないわけか、天界にとっては』
 『結果として人間一人を苦しませ悲しませたあげく死期を早めた、それは取るに足らないと言うのか』

 隊長「結果は残念だったが、こうなった以上、君も天界に戻り易くなったのではないか?」

 隊長「地上に心残りはもうないのだからな」

 赤髪「…!!」

 『彼女の早すぎる死を、あまりに儚い一生を、侮辱された』
 『ぼくは少なくともその時、そうとしか思えなかった、思い込んでいた』

 赤髪「あんたには…あんた達には、取るに足らないガラクタなんだろ?寿命数十年の生涯も、400年の生涯も」

 隊長「ん?何を言って」

 教官「!!」

 シャッ

駄目だ、赤髪!!

……


男「…こいつは、こんな俺を信頼して、自分の全てを預けてくれているのか…」

校長「あなたは、心も開いてくれない相手でも、体を開かせるのは一向にかまわない人間なのか?」

男「う、え!?かかかかっ、カラダを開かせ、って!?」

校長「この子に対し、愛も情もなく、ただ肉欲を満たしたいだけならば、こちらもちょっと考えなければならん」

校長「…しかしその心配は無用だ、それは誰よりこの子自身がわかっている…男さんよりもな」

男「……俺もあけすけに言わせてもらいますけど、いいんですか、この天使と俺は、今後もセックスし続けても」

校長「性行為そのものを理由には、決して修行失格にはならんよ」

男「…俺の寿命が尽きるまでこいつが一緒にいたとして、天使にはその後300年以上の人生…天使生がある」

男「俺との暮らしなんてこいつの一生には短い間だし…あんたに至っては一瞬のようなものだろ?」

男「それに天使の自浄作用」

男「俺がこいつの体を精液まみれにしてやっても、少し経てば勝手にこいつの体はキレイになっちまう」

男「俺との行為なんて短期間セクハラに遭ったようなものだから、こいつの経歴に傷はつかない」

男「取るに足らないからマイナス査定にならないんでしょ、俺の影響なんか」

校長「なんだ、あなたはこの子は失格だと言って欲しいのか?我々にこの子を罰してほしいのか?」

男「そ、そうじゃないです、そうじゃないけど…」

校長「わからんな…うむ、本当に人間とはややこしい生き物だ、次にややこしいのは下級天使だが」

男「ややこしいって…神様が作ったんでしょ、地上の生物」

校長「ああ人間社会に伝わる創世神話か、それはちょっと違うぞ?」


男「へ」

校長「私に言わせれば、どの宗教の創世神話も、現時点での科学の学説も」

校長「どこかしら正しい部分もあるが、全てが事実と一致する話はないのだ」

金髪「…校長…人間にはその話、もっとぼかして話さないとならないのでは…」オロオロ

校長「ん?私だって相手を選んで話をしているのだぞ」

校長「この星に限って言えば、何もなかった星を、まず神は水が溜まりやすくした」

男「この星に限ってってなんなんだよ」

校長「宇宙全体…いや太陽系にまで話を広げると、さすがに男さん相手にも『語れない』のでな」

校長「で…いい感じに水が溜まったところで、頃合いを見て神は生命の素を創って水に放り込み」

校長「『どんなふうに育つか予想もつかない』生命が生きやすいよう少しだけ周囲を整えてやった」

校長「やがてあらゆる生き物達が名もなき生命から生まれ、育ち、広がり、滅び、栄え」

校長「ついにあなた達、現生人類が生まれた」

校長「いずれ知的生物が生まれるのは神と大天使達も以前から予測はしていたし」

校長「いわゆる化石人類達が猿と袂を分かった時点で作られた、新参者の我々上級天使も」

校長「ついにここまできたかと感慨深かった」

男(…いくつなんだよこのひと)

校長「で、現生人類だが…年月が経つにつれ、実に扱い辛く、神も思いもよらぬ行動を取る生き物になって行った」

校長「興味深いが…さすがに神も、従来のように好きなように育てとは言えない状況が現れた」


男「好きなように育てと言えないって…どんな状況」

校長「うーん、そこはっきり言うと人間社会が恐慌状態になりかねんのだ」

男「あんたが話し始めたんだろ」

校長「ここは、真のオーバーテクノロジーの痕跡はまだ人類に発見されていないだけ、とでも言っておくか」

男「」

校長「とにかく、それからようやく人間に似せた下級天使が創られた、というわけさ」

男「…じゃあなんであんたまで現生人類そっくりなんだよ、人間は神の似姿ってやつじゃないの?」

校長「私の…上級天使の今の姿は仮の姿だ、下級天使に見た目を合わせてある」

男「は」

校長「神と大天使は滅多に人前に現れないので、元々の姿で普段から過ごしておられる」

校長「あ、元の姿はちょっと勘弁してくれよ、何万年もこの姿でいるから今更戻るのもおっくうでな」

男「…いや…いいです、想像したくもないです…」

校長「…さっきのあなたの言葉な、人間も下級天使も短い一生だから、我々から見れば取るに足らないと…」

校長「少し前…人間には昔か、状況は違うが、ほぼ同じことを言われたよ」

校長「まだ若い、あなたよりも少し若い、修行中の下級天使にな」

男「…?」

校長「私の、あまりに不用意で、思い遣りのない言葉が原因だった…」

……


剣を向けては駄目だ、赤髪!!

 隊長「ちっ、油断した…!」

 ザシュッ

 隊長「…!?」

 赤髪「先生!!」

教頭先生!?

 教官「…」ドサ…

 隊長「な、なぜ私を庇った、鎧も着ていない君が!!」

 教官「…駄目…です…下級天使が…上級天使を、傷付けては…」ゴフ

 赤髪「…あんたもか、先生」

 赤髪「あんたも、天界の上下関係が、天界の規律が、何より大切なのか」

何を言ってるんだ、赤髪!?

 隊長「出血がひどい…くそ、やはり二人だけで来たのは間違いだったか…私には、治癒の術は使えん…」

上級天使様達は僕らより遥かに人数が少なく、持って生まれた能力から完全な分業制だと聞いた…

 隊長「そうだ、赤髪天使!止血くらいはできるだろう、教官の応急処置をしてくれ」

 隊長「そしたら君の罪状が軽くなるよう私からも取り成してやる…どうだ?」

 隊長「…死なせるわけにはいかんのだ…」ボソ


校長先生…

 赤髪「…」

 赤髪「自分の後始末は自分でつける、もうあなた達と話すことはない」バサ

 隊長「逃げても無駄だ、すぐに追手が!!」

 赤髪「教官を助けたければ早く助けを呼ぶか、天界に戻ってください」シュン…

瞬間移動…どこへ行くんだ、赤髪…



教頭先生は今もお元気だから…ここでは命を落とさなかった…

下級天使が上級天使を傷付ければ、いや、敵意を持って武器を向けただけでも重罪

校長先生…隊長さんは油断していたとは言え、防具もつけていた、何より戦闘のプロだろう

先生は…隊長さんじゃなく『赤髪を』庇ったんだ…

…赤髪の記憶…きみはどこへ…

あちこちめちゃくちゃに飛んで…あ…あの森に…

 悪魔「…よう、俺を探してんだろ?」ニヤニヤ

 赤髪「貴様だけは…貴様だけは、殺してやる」

 赤髪「天界の対応は生温い…貴様がのうのう生き永らえていると思いながらでは、残りの一生を過ごせない」

 赤髪「貴様を斬り捨てたら、すぐに天界の追手に捕らえられてもいい、消滅の罰を受けても構わない」

 『むしろ、魂も何もかも消えてしまえるのなら、ありがたいくらいだ…』


赤髪…激しい憎しみと殺意、失望…天界、いや、世界への失望で、きみの心は満たされている…

 悪魔「ケケ、やっぱりお前は天使のくせに激しい気性を内に秘めてると思ったんだよ、面白いよなあ」

 悪魔「お前ら下級天使は、人間や悪魔とも違って、髪の色を見りゃだいたい性格がわかるんだ」

 悪魔「地味な髪色の奴は真面目で、理性が強いか稀に極端な内気か、ま、面白味はないわな」

 悪魔「成長しても鶏の雛みたいな薄黄色の髪は、見たまんま幼稚で間抜けな甘ったれ」

え、僕の髪色?

 悪魔「派手な金色か燃えるような赤毛は感情が激しく、長所は情熱的とでも言うのか」

 悪魔「短所はまるで人間のように、何かのきっかけで理性のタガが外れる」

 悪魔「お前は特別荒っぽい天使のようだ、下級のくせに上級に剣を向けるとは!!ひゃはははは!!」

 赤髪「もう黙れ!!」

 ブンッ

 悪魔「おおっと危ねえ…意外とすばしっこいな」

 悪魔「どうだ、天使に捕らえられても処刑しかないなら、魔界に来ねえか?」

 悪魔「俺も出来心で宝物を盗み出してちょっと帰りづらいが、天使が手土産なら堂々と帰れる」

 悪魔「天界と違って魔界は優しいから、堕天使はいつでも大歓迎だぜ!!」

 赤髪「…くっ…」チャキ…


剣を下ろした、まさか、赤髪…!?

 悪魔「…ほー、話を聞く気になったか…素直ないい子だな」

 悪魔「どうだ、悪魔になったら…お前を排除しようとしている天使どもに仕返しもできるぜ」

 赤髪「…詳しく話せ」

 悪魔「へへへ、そう来なくちゃ…仲よくしようなあ」

悪魔が歩み寄る…赤髪…

剣は…自分以外から見えなくしているが、まだ…利き手に持ったまま…

 悪魔「…このガキ…!?」ハッ

 ズシュッ!

 悪魔「く…そ…その身のこなし、天性のものだなあ…」ゲブッ

 悪魔「…ほんと…下っ端天使にしとくには、惜しいぜ…」ズル…

 赤髪「…やった…か…?」

いや、まだ…魔導書…!?

 悪魔「たまたま盗み出した中にあった、こいつ…」ゴホッ

 悪魔「じゅ、術者が瀕死でなけりゃ使えねえ呪文…まさか本当に使う羽目になるとはな…!」

 赤髪「!!」

 悪魔「最後の手段、『融合』の術…!!」

……


男「…その天使は、あんたとおっちゃn…教頭さんの前から姿を消して、どうなったんです?」

校長「私はまず教頭…当時の教官を助けることを最優先にして、彼を連れ天界へ戻った」

校長「赤髪天使への追手はすぐに地上へ向けられた、しかし…」

男「…見失ったんですね?」

校長「つくづく無能だって顔をしないでくれ」

校長「白い翼のある男と、怪しい風体の男が争っていたのを目撃した人間がいたとも聞く」

校長「…自分を騙し恋人を間接的に殺した悪魔を倒すため、奴に向かっていったのかもしれん」

校長「そして…返り討ちに遭い、殺されたか…」

校長「通常、天使は地上で死ねば、痕跡も残さず消滅してしまうのだ」

男「…恋人の仇、か」

金髪(正座)「…かわいそう、でもロマンチック、愛に生きて愛に殉じたのね…」シクシク

校長「泣くなら黙って泣け」

校長「…後でわかったことだが、赤髪天使は天使学校時代、教官を心から信頼し敬愛していたらしい」

校長「私が不用意な言葉を発さず、教官に説得を任せていれば、赤髪天使を天界に無事送還できただろう」

校長「彼に剣を抜かせたのは私だ」

校長「あの頃の私は、下級天使や人間の感情の機微など、理解しようともしていなかった」

校長「彼らを力で捻じ伏せられる力を持つ治安部隊長の職務に、そんなものの理解は不要だと思っていたのだ」

校長「…治安を乱すものは、いつだって感情なのにな」


男「で…どうして治安部隊長から校長先生に?」

校長「あのことで、私は自分の過ちを痛感した…そして思った」

校長「真の意味で天界を、天使を守るには、感情を心を学ばなくてはならない、と」

校長「この教官に、彼の同僚に、彼等に育てられる子供天使達に、そして…人間達に、学ばねばならない、と」

校長「数年後、天使学校の校長と教頭が高齢のため揃って引退することになった」

校長「教頭には当時の教官の中から最年長の…彼が選ばれるのはわかっていた」

校長「校長は外部から招へいすることになっていたが、私はそれに手を挙げた」

校長「…いつまでかは確約できないが、当分は自分も成長しながら、校長の職務を果たさせていただくつもりだ」

男「…数百万年生きて、まだ伸びしろがあるんだ…」

校長「どんな生き物も、自分で成長するつもりがある限りは成長できるさ」

校長「…は言うものの、まだまだあなた達も下級天使達も、理解不能な行動が多くてなあ…」

校長「時と場合と相手により、有無を言わせない躾も必要だと思うので臨機応変にやって行こうと思う」

校長「なあ金髪天使?」

金髪「ひゃいいいい…」

ピンポーン

男「あ」

友の声「男ー、約束の時間には少し早いけど、昼飯差し入れついでに来たぞー」

女の声「天使ちゃん、大丈夫ー?」


友「…」

女「……」

女天使「すー…すー…」

男「…牛丼美味いなあ」モシャモシャ

友「…男から相談を受けた時、男の推測では子供天使が女性化するきっかけは…」

女「天使ちゃんが悩んでいた件、子供から女性になるタイミングって、いつも…」

友・女「「最っ低…」」

男「だから…今回は俺じゃねえって」

金髪「あたしですー、何もかもあたしが悪いんですー」シクシク

校長「その通り、彼女は教師としてあるまじき行為の罰を受けている最中なのだ」

友「」

女「…こちら様は?」

男「上級天使様、この金髪さんとか、昨日の教頭さんの上司、天使学校の校長先生」

校長「友さんか…この度は、我々の監視が至らず」

友「も、もういいですよ、天使にも、昨日の教頭先生にもさんざんお詫びしていただきましたから」

校長「そうか、度を越したお詫びは却って不快とも聞く、やめておくか」

女(…めっちゃ長身、金属みたいな銀の髪、それに頭に…まさに天使の輪っか…)

校長「お二人がお見えになったばかりで失礼だが、我々はこのへんでおいとましようか、金髪天使」


金髪「や、やった、やっと正座から解放され…」

足「ぐにょ」

金髪「…るっ!?」ドテン

男「天使も足、痺れるんだなあ」

金髪「やだあああああ、何これえええええ」ジンジンジンジン

校長「見苦しい…立って歩けないなら飛ばんか、なんのための翼か」

金髪「うぇい…」バッサ…

校長「それではいずれまた、男さん達…明日はおそらく茶髪天使と黒髪天使が来るはずだ」

校長「…男さん、あの世界創生に関わる話は、他言無用とは言わんが、相手を選びほどほどに、な?」ヒソヒソ

男「わ、わかった…」

女「…また窓から出て行った」

男「来た時は瞬間移動のくせに」

女「しかし…男くんが手を出していないのは信じるとして」

女「…なんちゅう美しさと可憐さ…見事に全部半端なく可愛いのね天使ちゃんの三形態って、ねえ友くん」

友「そ、そうだな…」

男「何緊張してんだよ友」

女「いやーこれは責められない、男ならドキドキするわ」

……


融合の術…悪魔の術

戦闘で瀕死になった術者が、最も近くにいる他者の魂や肉体と融合し、相手が狼狽えている間に

相手をまるごと術者の意識の支配下に置いてしまう、浅ましい術…

赤髪天使は、取り込まれて、消えてしまったの…?



 『自分の実力以上の呪文を使えると言っても、所詮は下級悪魔』
 『奴にとっては、完全に使いこなすには少しばかり高度な魔術書だったようだ』
 『…気が付けばぼくは、あの悪魔の体で地面に仰向けに倒れ、悪魔の目で空を見上げていた』
 『赤髪天使の肉体はどこにもなかった、痕跡さえも』
 『逃げよう』
 『天界の追手が赤髪を探しに来る…この姿とは言え、連中に ぼく を見抜かれない保証はない』
 『へえ、おかしいな…追手に捕まっても良かったんじゃなかったか?』
 『違う、悪魔はまだ 死んでいない 』
 『そうだろ悪魔、ぼくに問いかけているお前は、生きているんだろ?』
 『くくく、これはこれで楽しいかもしれんが…天使の坊や、お前はどこまでこの状況に耐えられるのかねえ』
 『狂っちまうよ、お前は、耐えられず狂っちまうよ…遠くない未来さ、断言する』
 『うるさい、黙れ、黙れ…!!』
 『ぼくの天界の剣は、なぜか消えずに、いつの間にか悪魔が背に担いでいた』
 『もちろん俺の外套の内ポケットには、ぎっしりと魔導書が』
 『これらがあれば、追手をかわせる』
 『なあ坊や、生きて生き延びて、天使どもに復讐しようぜえ?』
 『月日が経つにつれわかったが、ぼくは悪魔の気配と天使の気配を切り替えることができるらしい』
 『俺が天使にちょっかいをかけ、天界が動けば、ぼくは天使の気配を纏う』
 『こうすれば悪魔の存在は消えてしまう、ほとぼりが冷めるまでこれで凌げる』
 『そう、貴重な魔導書は節約しなくちゃ』
 『なあ…俺のは結果はどうあれただの悪戯だが、お前はどう考えても天使を憎んでいるよなあ』
 『時には人間まで利用して、修行中の若い天使に、あそこまで残酷な真似ができるんだなあ』
 『ケケケケケ、お前は悪魔以上の悪魔になっちまった、赤髪の堕天使』
 『楽しいな、楽しいなあ!!』

…赤髪…


もうどちらの記憶が言葉になって僕に聞こえてくるのか、わからない

…あれから数十年が経った…また別の国みたいだな

年老いた人間の女の人が、「悪魔」と…

 悪魔「…ええ、私を信じてください、社長夫人」

 社長夫人「本当ね、あなたが力を貸してくれるのね…あの女…ピアニストに復讐できるのね」

 悪魔「そう、10年前に、彼女の愛する者に看取られて病死した彼女にね」

 社長夫人「彼女の愛する…そうよ、養子だかなんだか知らないけど、娘…がいたわね」

 社長夫人「晩年はその娘と二人暮らしだった、とか」

 悪魔「…娘、で通っているが…彼女は、例のあの歌…あの歌手本人、でもあるのですよ」

 社長夫人「!?馬鹿言わないで、レコードが出たのはもう30年以上も前の話じゃないの」

 社長夫人「ピアニストが亡くなった時、娘は二十歳前後だったはず」

 悪魔「あの娘は、実は人間ではないのですよ…」

 『正体は、天使』

 悪魔「…私があなたを、一瞬で若返らせたなら…歌手と私は『人間ではない』と、信じてもらえますか?」

 社長夫人「若返る…私が…?」

 悪魔「しばらく海外にでも…病気療養として身を隠し、そして…財産をつぎ込んで全身整形を受けたのだ、と」

 悪魔「世間の注目を集めたところで、あの歌を作ったのは実は自分だと、ピアニストと歌手に盗まれたのだと」

 悪魔「…これ以上の復讐はないでしょう?」


~天界…天使学校の教官の宿舎~

茶髪「黒ちゃん」

黒髪「…」ハッ

茶髪「うなされていたわよ、どこか痛い?苦しい?」

黒髪「…!!」ギュッ

茶髪「…怖い夢を、見たのね」

黒髪「……」

茶髪「…30年前の…やっぱりね」

茶髪「…悪魔の口車に乗って、若返りまでさせてもらった…社長夫人、ピアニストさんと音楽学校の同期の令嬢」

茶髪「ピアニストさんとあなたの二人の大切な曲を、彼女は…盗作だと、出鱈目を世間に発表した…」

黒髪「…」

茶髪「…あの日に起きたことより、二人の大切な歌を奪われた方が、辛かった…?」

茶髪「…そうね、黒ちゃん…」ナデナデ

茶髪「大丈夫…もうそんな夢は見ないように、私が手を握っているね」

茶髪「明日の朝になれば、あなたもすっかり元気になって…そして」

茶髪「あの子と男さんを二人で励ましに行くのよ」

黒髪「…」コク…


~日本上空~

校長「金髪天使、黒髪天使が声を失った日を、覚えているか?」

金髪「忘れるわけありませんよ!!」

金髪「あの社長夫人=資産家令嬢とやら、ピアニストさんから奪い父親の後釜につけた夫がいつまでも煮え切らず」

金髪「未練たらしくグズグズと、音楽で暮らしていく夢を叶えた元彼女を羨むからと、ピアニストさんを逆恨みした」

金髪「死人に口なし、本人もレコード会社の社長も亡くなってから、金に物を言わせてデマを流すとか!!」

金髪「…さすがに耐え切れず、社長夫人の元を訪れた黒ちゃんを…あの女は…」

金髪「悪魔がどこからか手に入れた…きっと昔、天使から盗んだ天界の剣を…加工した、しかも呪い付きナイフで」

金髪「…二度と歌えないよう、喉を切り裂くなんて…なんでそこまで酷いことができるのよ!?」ガシッ

校長「落ち着け落ち着け…私は社長夫人ではないぞ?」

金髪「…す、すみません」パッ

校長「監視役から連絡を受けた教頭と、先に修行を終えていた茶髪天使とお前が駆け付け、社長夫人を制圧し」

校長「教頭は、修行を終えたばかりのお前達にはこの役をさせられないと、一人で黒髪天使の呪いを吸い取った」

金髪「…実際、当時のあたしと茶ちゃんでは、1/3でも耐えられなかったと思います…」

校長「遅れて私が到着し、修行期間終了の正式な通告を待たずして天界へ戻ることを勧めたが…あの子は」

金髪「…歌をピアニストさんに取り戻すまでは、地上に残るって…頑張ったのよ、あの重傷で…」

金髪「しかも若返りの術が解け、肉体の急激な老化に苦しみもがく社長夫人に…癒しの力を与えて眠らせた」


校長「ああ、どうあっても社長夫人の死は避けられなかったが、安らかに眠るように逝ったな」

金髪「大バカよ…天界に戻って治療すれば、せめて癒しの力を無理に使わなければ、後遺症も残らなかったのに」

金髪「…でも校長先生、なぜその話を今」

校長「我々は、あの30年前の時に、もっと毅然とした態度を取るべきだった」

校長「いや、本来なら…100年前、初めてあの悪魔が、赤髪天使を陥れた時に…」

金髪「それを今さら謝りたいんですか、あー、オトナってずるーい」

校長「…!?お、お前はそんなんだから…お前らもとっくに大人だろ、それに、さっき懲罰を受けたばかりで…!」

校長「…」

校長「…謝らんよ、謝るよりも、今度こそ本気で奴に立ち向かう…お前達と一緒に」

金髪「えっへっへ、それを聞いて安心しました、それでこそ校長先生です」

校長「ふん、子供の頃から変わらず生意気な…懲りない奴だよ、金髪天使お前は」

……

茶髪「黒ちゃん…落ち着いて眠っている…」

黒髪「…」スヤスヤ

茶髪「…あなたはあれから、本当にピアニストさんの歌を取り戻したわね、頑張ったわ…」

……

悪魔が読んでいるのは…新聞記事…?

 【昨年、社長夫人が発表した盗作問題は、根も葉もない中傷だった】

 【間違いなくピアニストが作った曲である、その証拠が次々と…】

 【名誉挽回、往年の隠れた名曲、ファンの喜びの声…CDとして再販の噂も…】

 グシャ

 悪魔「…まあ、少しは長く楽しめた『おもちゃ』だったよ、あの社長夫人は」

 悪魔「黒髪の天使からも、声だけは社長夫人の望み通り奪ってやれた」

黒髪先生、修行中の事故で喉を痛めたとは聞いたけど…悪魔の仕業だったなんて…

そのために人間まで利用して、しかも天界が動けばあっさり見捨てて…ひどすぎる…

 悪魔「…認めない、人間と天使が手を取って何かを産み出し、その人間の死後も、それが世に残るなんて」

 悪魔「彼女と『ぼく』は…何ひとつ…残せなかったのに…」

……!!

「悪魔」じゃ、ない…

これは、赤髪天使の悪意…赤髪天使の復讐…

……

ここまででげす


面白いわあ

おつ


友「ところで…さっきの天界の天使から、何か目新しい話はあったか?」

男「ああ、例の悪魔は奴の出身地(?)の魔界でも評判が悪いらしくてな」

男「魔界から奴の情報を得たり、捕獲に協力してもらえることになったりと、協力が得られたそうだ」

友「本当か、それじゃ解決も時間の問題だな!」

男(…って期待するよね普通は)

男「あまり楽観視もしないでほしい感じだったけどな…」

(説明中)

友「…なんかゆるいなあ、天界も魔界も」

女「でも日単位で物事が進展しているなら、明日はもっと進んでるって事じゃん」

女「天使ちゃんがすっかり元気になる頃には、安心して外出できるようになってるかもよ?」

友「お前は心底楽観的だな」

男「でも、そうなっていたら一番いいな…再びこいつを奴に会わせたくない」

女「わー保護者らしい発言…いや、彼氏らしい?」

男「え、いや、そんなんじゃねーよ…」


男「そんなんじゃ…」

友「…男?」

女「何がそんなんじゃないのよ」

天使「…うーん…うう…」

男「天使!?」

友「…うなされてるのか、でも目を覚ます様子はないな…」

女「しっかり…ねえ、また悪い夢でも見てるんじゃないの?」

男「…ちょっと抱き起こすの手伝ってくれ、女…そっとな」

女「え、よいしょ…こ…こうかな?」

男「すまん」

男「天使、俺はここにいるからな」ガバ

男「大丈夫…守ってやるって言ったろ…」ギュー

友「……///」

男「…なぜ友が赤くなる」

女(なるよ…男くん自覚がないだけでラブラブじゃないの…///)


赤髪と悪魔の意識は一つの体の中で、重なったり離れたり、混じり合ったりしているかのよう…

『もう100年か…お前の魔力は凄まじく成長したな…おっと、法力だったっけか?』
『もうぼくは天使ではない…悪魔以上の悪魔なんだろ、魔力でいい』
『へへ、お前は癒したり治したりする力より、こっちの系統が相性よかったのさ』
『指を鳴らすだけで天使の翼を強制的に出したり引っ込めたりできるなんて…俺にはできない芸当だね』
『有翼の種族に翼は弱点だからな、天使いびりも捗るぜ』
『弱くて若い天使にしか使えない…尤も、地上で修行中の天使しか相手にする気はないけどね』

あれは…赤髪の能力だったのか…

『ふーん、今度の獲物はアレ?…雛鳥みたいな髪の毛だ、ピーピー泣くだろなあ』
『人間を心から信じ切って、人間から可愛がられて、幸せな天使だよ』
『お前のおもちゃには持って来いだな、ケケ、可哀相になあ』
『まあ今回は俺はそそられねーや、30年前みたいなカワイイ女の天使ならともかく…』
『しかしあれは惜しいことした…社長夫人がしくじらなきゃ、あのあと俺が…くくく』
『じゃあ、あいつが美女に化けでもしたら代わってやるよ』
『そろそろ餌を捕らえに行くのか?餌を使ってますます獲物を追い込み苦しめたいんだろ?』
『直接あの天使を捕まえることだってやれなくもねえのに、ホント悪趣味だねえ…』

…僕に目を付けた時の…『餌』とは、姪ちゃん…

悪魔 「…さてと…天使の翼…ここが骨だから…肉がついているのはこのへん、ふむ…」

姪「きゃあああ!!」

悪魔「…くくく、傑作だ…神の試練とやらは『相変わらず』いい加減だなぁ、おい」

悪魔「左側の骨が折れたか、意外と軽い音だね」

悪魔「最終的には翼も手足ももぎ取る予定だったが、『あれ』を見たら少し惜しくなった」

いや…嫌だ、嫌だ…見たくない、聞きたくない…聞かせないで、見せないで…助けて…

男「大丈夫…守ってやるって言ったろ…」


ハッ

天使「…男、さ…ん?」

男「天使…!?」

天使「…男さんだ…男さんがいる…!」ギュッ

男「…やっぱり悪い夢を見てたか…大丈夫、夢は夢だ、怖くない」

男(心臓がバクバクしてる…よほど怖い夢だったんだな…)

天使「…ご、ごめんなさい、もう大丈夫…大丈夫です、大丈夫なのに…」

男「いいんだ、落ち着くまで抱き締めててやるよ」

男「あ、お前らまだ帰るなよ」

天使「…あ」

天使「友さんと女さんも…いてくれたんですね…」

友「あ、ああ…」ドキドキ

女「はー、目を開いたらますます美人さんだわ…」

天使「あれ…僕、子供の姿だったのはなんとなく覚えているけど…?」

天使「…あのー…男さん?」

男「…お前までも俺を疑うのか…」ガッカリ

天使「え…い、いいえ、そうじゃないです…眠ってる間に何があったか、教えて欲しいんです…」

男「だから俺は何もしてねーし…」シクシク


友「そうじゃない、男…色々話さなくちゃならないだろ、大事な話を」

男「あ、そうか」

男「天使、大丈夫か…?もう落ち着いたか、まずは横になれ」

男「いっぺんに話されてもキツいだろ、少しずつゆっくり話すよ」

男「まず…よく聞け、お前を女体化させたのは金髪先生だ」

天使「はい?」

女「最後でいいでしょそれ」

(説明中)

天使「…魔界が協力を…」

男「ここまで来てやっと重い腰を上げたそうだ…天界と魔界のお偉いさんが」

男「もっと早く動いてくれたら、お前も今までの被害者も無事だったのにな」

天使(黒髪天使先生…)

男「記録上の最初の被害者なんて100年も前だってさ」

男「事件以来、その天使は姿を消して未だに生死不明だとか、充分大事件じゃねーか」

天使(…赤髪)

天使(今は、赤髪の記憶の夢をしっかり覚えている、思い出せる)

天使(彼と悪魔が融合したのは、おそらく他の誰にも知られていない…)


女「…大丈夫?あまり考え込まない方がいいよ…」

天使「あ」

天使「だ、大丈夫です…ごめんなさい」

男「いや、俺も一気に余計なことまでしゃべり過ぎたかもしれない…ごめんな、疲れたんだろ」

男「最後にこれだけ、金髪先生の癒し能力は催眠効果が高いらしいな」

男「眠るお前を抱っこしている最中にうっかり女バージョンを妄想したので女体化したそうだ」

男「嘘だと思うなら校長さんに聞いてみろ」

友「お前はこだわり過ぎだっての」

天使「僕、男さんを疑っていませんよ?」

天使「…金髪先生の能力についてはみんな知っていますし」

天使「浄化と、癒しと、相手が望む記憶だけ読む能力」

天使「この3つは下級天使誰もが多かれ少なかれ生まれつき持っています」

天使「修行期間に入ると、能力の成長やその他の能力の発現に、どんどん個人差が出て来るので」

天使「…金髪先生は催眠能力が出始めた頃、なかなかその自覚がなかったので色々大変だったそうです」

男「お前はまだ自分は何が得意なのかわからないのか?」

天使「ええ、子供天使のうちはあまり能力差がないのですが、僕の力もその域を出ていません…」

天使「……」


天使(戦う能力の高い天使もたまに生まれる、赤髪天使はそういうタイプだったんだろうな)

天使(相手の血から直接記憶を読むのは…元々は悪魔の能力かもしれないけど、僕らと『原理』は同じはず)

天使(僕らは必ず『相手の意志』を間に置かないと読めないけど、結局は血から記憶を読んでいる)

天使(相手の意志という『容器』から無理矢理取り出した血を、強引に読むのが彼のやり方なんだ)

天使(…強引に読む力があるから、僕に強引に読ませる力もある…?)

天使(…わからないけど、僕に記憶を読まれたとは気付いていないだろうな…)

女「また難しい顔してる」

天使「…あ」

天使「ご、ごめんなさい」

女「謝ることじゃないでしょ」

男「話はこんなもんにしとこう、お前は安静にしてろ」

男「…というわけで、明日…月曜日だよな?俺は学校休むから」

友「ああ、まだまだ心配だもんな」

天使「だ、駄目です、男さんはしっかり勉学に励んでください!」

男「お前を置いて行けるかバーカ」

天使「で、でも…僕のために…」


~翌朝~

茶髪「…そうだろうと思っていました…今日は朝から夕方まで私達がこの子を看ていますので、ご安心ください」

黒髪「…」コク

天使「先生…」モゾ

茶髪「…起き上がって大丈夫?黒ちゃん、支えてあげて」

男「あんたら、仕事は?」

茶髪「これが業務です、校長命令で派遣されたのです」

茶髪「天使学校の教員は大勢いるので、在学中の子供たちについては何も心配ありません」

茶髪「それに、平常時でも修行に入って間もない卒業生を見守るのも我々の正式な職務ですからね」

男(…このひと、金髪さんとはタイプ正反対ぽいなあ)

男(昨日の校長さんに気に入られていそう)

茶髪「…というわけで、男さんは勉学に励んでください」

男「ありがたいけど…さっき友からのメールで、午前中は休講になったから単位の心配はしなくていいと」

男「ま、せっかくだから午後の講義だけは出させてもらうわ…天使もその方が気が楽になるなら」

茶髪「ええ、ぜひそうしてください、我々もそのために来ましたから…」

男「…」


男(このひと、うちの天使ほどでもないにしろそれなりに胸あるのに、微動だにしない感じ)

チラ

黒髪「?」

男(…このひとは揺れるもんがない)

茶髪「…金髪天使が」

茶髪「男さんは私たちの胸に興味があるようだから、とか話していましたけど」

男「!?」

茶髪「別に多少視線が向くくらいでは怒ったりしませんよ、人間の若い男性の本能ですからね」

茶髪「あと、地上の重力下でも『微動だにしない』のが気になりますか?」

男「っちょ、あんた思考読むのかよ…」アワアワ

茶髪「今まで出会った人間達もだいたいそうでしたから…」

茶髪「私の場合、気の持ちよう、精神力で揺らさないようにしているだけです…胸の揺らぎは精神のぶれです」

茶髪「逆に金髪天使は揺らし放題…問題行動と胸の揺れが比例しているとまで言われているのに改善しようともしない」

天使「精神のぶれ…」たゆん…

茶髪「」

茶髪「あなたはそんなこと気にしないで、体を治すことに専念しなさい…そもそもあなたの女性体は一時的な現象」

茶髪「しかもほぼプライベートな場でしか起こらないから安心していいのよ…ごめんなさいね」

男(…なんかこのひともただの真面目じゃなく、ちょっと変わってるかもなあ)

……

過去の夢のシーンで一文字下げ忘れてた、すみません

おつおつ!


~大学~

友「…茶髪と黒髪の先生が来てくれたから、午後からは学校来るってさ」ピッ

女「それなら安心だね…天使ちゃんも男くんの学校の心配してたもんね」

友「夕方、俺らもちょっと顔出すか…また差し入れがてら」

女「いいけど…実家には行かなくていいの?もう姪ちゃんはすっかり大丈夫なの?」

友「…うん…元気は元気だ…元気ではある」

女「ではあるって何よ」

友「…茶髪の先生が来ているなら…ちょっと聞いてみたいこともあって」

女「確か姪ちゃんの怖い記憶を消してくれた先生だよね?」

女「…まさか、消えたはずの記憶が戻ったとか!?」

友「いや、悪魔のことはきれいさっぱり忘れている、でも」

友「姉貴からの電話でさ…昨日あたりから姪が…天使様に会ったの…とか言い出したって…」

女「ちょ」

女「それって天使ちゃんに会った記憶が戻ってるって意味!?いずれ悪魔のことも思い出さない!?」

友「だから…このまま放っておいて問題ないのか、なんとかしてもう一度記憶を消してもらえないか…」

女「ええいもう…緊急を要する事態じゃないの!とりあえずメールで男くんに伝えて、今から行こう!!」

友「わ、わかったから引っ張るな…お前力持ちだから腕抜ける…」イテテ

……


~男のアパート~

茶髪「…そんな…記憶が戻ることはまず考えられません」

茶髪「しかも本人が執着していた記憶でもなし…どころか、受け入れることを激しく拒否していた記憶です」

男「そんなんわかるのか」

茶髪「消去してよい記憶がどうか見極めなければ、逆に精神に悪影響を及ぼす危険もありますからね」

茶髪「…もう少し詳しくお聞かせ願えませんか、友さん?」

友「…わかった」

友「俺の姉…姪の母親に様子を聞こうと、ゆうべ俺から電話を掛けたんだが…」

……

~電話での会話~

友姉「…ええ、とりあえず幼稚園は明日まで休ませるつもりだけど…あの子自身は元気」

友「そうか、よかった」ホッ

友姉「今朝から、ちょっと変なこと言い出したけど…まさか連れ去り犯の記憶…なわけないわよねー?」

友「…!な、何て言ってたんだ!?」

友姉「なんか…にこにこ楽しそうに話すから絶対違うと思うけど…朝ごはんの時にね、『てんしさまにあったの』って」

友「て ん し」

友姉「『おとーさんよりせがたかくて、ふわふわのひよこさんみたいなかみで、おめめはそらいろで、かっこいいの』って」

友「」

……


男「…長身にヒヨコみたいな髪に空色の目って、うちの天使の特徴まんまじゃねーか…」

女「お姉さんはどう解釈してるの?」

友「普通に夢でしょって、幼稚園には天使の絵があちこちにあるし、それ系の本も置いてるからその影響だろう、って」

男「金髪碧眼のイケメン天使って、男性姿の天使としてはベタなイメージだからな」

茶髪「お姉様は、他には何も?」

友「…天使様は2人いるの、って」

友「『もうひとりは、あかいかみで、でもとおくにいるから、おかおとかはよくみえないの』…と」

女「それ悪魔のことじゃない?あいつ赤毛じゃなかったけどさ」

男「でも、そいつも天使だと言ってたんだろ?やっぱ夢だよ、天使の出て来る絵本でも読んだんだろ」

茶髪「……」ウーム

女「茶髪先生、考え込んじゃった…」

茶髪「…隣の部屋の黒髪天使と少し話をしてきます」

男「うちの天使にはまだ心配かけたくないんだけど」

茶髪「大丈夫…あの子は彼女の癒しでよく眠っていますし、あの子の周辺だけ強力な遮音の結界を張っていますから」

女「何か心当たりがあるのかな」

男「姪ちゃんはもう巻き込みたくないなあ…」

……

進まなくてすみません。暑いので少し休みます

乙です

おつ


~数十分後~

茶髪「…話は終わりました、皆さん、こちらへ…」

黒髪「…」

天使「…すー…すー…」

男「…よく眠ってる」

茶髪「ええ、この子は今、遮音の結界の中…私達の話は全く聞こえていません」

友「で…姪の記憶は、このまま放っておいてもいいのか?それとも…」

茶髪「天界に戻ってから色々と相談する予定ですが…とりあえず現状では様子見で問題ないでしょう」

茶髪「少なくとも、姪御さんに何らかの悪い影響があるとは考えられません」

茶髪「しかし…姪御さんの話にもっと具体性が出て来たり、何かを恐れる素振りを見せたら、すぐ知らせてください」

友「…どうやって??」

茶髪「ああ…失礼しました」

茶髪「姪御さんの周辺も…場所と人々の二重の意味で、男さんの家に次ぐ重点的な監視対象ですから…」

茶髪「友さんが私に助けを求めてくだされば、私もしくは情報を共有した他の天使が駆け付けます」

男「『茶髪さん助けてー』とか叫べばいいの?」

茶髪「これをお持ちください…私の羽根の1枚です」ヒラ

茶髪「これには呼びかけの術がかけられています」

茶髪「屋内でも構いませんので、これを頭上にかざしながら私へ呼びかけてください」

男「なんか間抜けだな」


女「余計なこと言わない」

友「…確かに絵面は少々間抜けだが、それがあなた達を呼び出す方法ならその通りにする…ありがとう」

女「あんたら失礼」

茶髪「こういう反応は慣れていますから平気ですよ」

茶髪「ただ…紛失しないでくださいね、見る人が見れば鳥類の羽根ではないとわかって、騒ぎになりかねません」

男「そうなん?素人目にはさっぱり区別付かないけど」

茶髪「まあ不用になった時点で私が遠隔操作で術を解きますので、その瞬間に跡形もなく焼失しますから」

友「わかった、使わずに済めば一番だけど、大事に持ってるよ」

友「それにしても…こんな軸の太い羽根、引っこ抜くの痛かったんじゃないか?」

茶髪「風切羽根です…これをむしるのは数分間動けなくなる激痛なので、ちょっと無理ですね」

茶髪「しかし我々の翼も時おり換羽します…何かと便利なので、状態の良い羽根は常に数枚ほど持ち歩いています」

男「物理法則とか超越している存在のくせに妙に生身らしい面もあるし、不思議な生き物だよなあ、あんた等…」

茶髪「ふふ…私に言わせれば、人間より不思議な生き物はいませんよ」

茶髪「とにかく、今日の所は皆さん登校されてはどうですか?午後の講義とやらがあるのでしょう?」

男「それもそうだ…今からバスで行けば学食で昼飯食っても午後間に合うよな、どうする?」

友「ああ、姪のことはとりあえず今日明日どうこうって話じゃなさそうだし」

女「そうね…天使ちゃんも先生達がいれば何も心配ないし」

黒髪「…」ニコ

……


茶髪「この窓から停留所が見えるのね、今、3人が乗ったバスが出たとこ」

茶髪「…黒ちゃん、結界はまだ有効?」

黒髪「…」コク

天使「すやすや…」

茶髪「…この子にも彼等にも心配かけたくないけど、現時点ではわからない部分がちょっと多すぎる」

茶髪「まず、教頭先生と校長先生にこの話をして…それから…姪御さんが」

茶髪「誰かの生まれ変わりなのか、誰の生まれ変わりなのか、出生記録管理局で調べないと」

茶髪「…仕方ないとは言え、地上生物の転生とは気まぐれとしか言えない不規則な現象」

茶髪「上級天使様達の間では、天界は人間の転生も管理すべきって議論は大昔にあったらしいけど」

茶髪「結局は、出生後の調査による記録だけを管理する役割に留まった」

茶髪「…世界中で日々生まれる人間の子供達の調査は簡単ではない」

茶髪「生後4~5年のお子さんの調査結果が、もう出ているかどうか…」

黒髪「……」

茶髪「そうね…あなたのように、転生前の人間と親しかった天使であれば、見ただけでわかるのにね…」

……


赤髪天使の記憶の夢はずっと時系列だったから…僕に呪いを送り込んだ時点までで終わったはず

でも…この夢は…誰かの記憶…?

…ああ、これは黒髪先生の記憶だ…

黒髪先生が僕を膝枕して…歌を歌ってくれているから…

今の先生の声はあまりにも微かで、人間には聞き取れない歌声だけど…優しい歌

そして、記憶の中の先生の声は本当にきれいで…素敵な歌声だなあ…

きっと、かつての先生のこの声も、癒しの能力を帯びていたのかもしれない

…黒髪先生の大切な人、ピアニストさんが作って、先生が歌って、世の中に送り出した歌

僕、この歌、目が覚めても覚えていられるかな…?

先生がピアニストさんと過ごした地上での日々は、本当に幸福だった…僕にはよくわかる…

…赤髪…

赤髪にも、あの女の人と過ごした日々の中で、幸福だった時はあっただろう…

だからこそ、それを失ったことが悲しくて、辛くて…

…だからこそ、憎む…の…?

きみはこれからも…人間と心を通わせる天使を…天使と心を通わせる人間を…?

……


~夕方~

男「ただいま」

茶髪「おかえりなさい男さん」

黒髪「…」ニコ

天使「男さん」

男「おう、目が覚めたか…なんか今朝と比べても、ずいぶん顔色よくなったなあ」

茶髪「思った以上に翼の傷の回復が早いようです…まだ『出せる』状態ではありませんが」

男「黒髪さん、ずっとこいつを膝に抱いててくれたのか?きっとそのお陰だな」

男「あんたの癒し能力は、なんか邪念とか余分なもの入ってない気がして…信用できそうだもん」

黒髪「……」

茶髪「男さんの看病が一番の治療薬です、と言っています」

茶髪「私達の能力は言わば不快な症状への対処療法のみですからね」

男「それでも間接的にでも回復は早まるだろ…ありがとう」

天使「男さん、黒髪先生はずっと眠っている僕に歌を歌ってくれていたんですよ」

黒髪「…!」

茶髪「…」

天使「…でも、目ざめたら忘れちゃいました…覚えていたら自分でも歌ってみたかったのに」


黒髪「……」

天使「…また今度…僕が元気になったら…?そうですね、早く治さないと、いつまでも先生達にも…」

男「なあ、前から思ってたけど、黒髪さんて天使同士でテレパシーでも使ってんの?」

茶髪「彼女も発声はしています、ただ、人間の可聴領域に達していないだけで…」

茶髪「我々にも、近くにいれば辛うじて聞き取れる範疇です」

茶髪「昔は私達のように話せていましたが…地上での修業中に、喉を負傷して…」

男「あ…悪ぃ、ごめん…」

黒髪「……」

茶髪「気にしていません、こちらこそ不便おかけしてごめんなさい…って」

男「いやいや、謝ることねーよ…あんた律儀だな、いいひとなのはわかるが…気恥ずかしくなるわ…」ボリボリ

黒髪「……」

茶髪「そろそろ帰りましょう…?そうね、この子の回復も順調だし、学校へ戻って今日あったことの引継ぎもしないと」

男「もう帰るの…あ、でも、長時間こいつと一緒にいてくれたもんな」

天使「今日一日、ありがとうございました…頑張って早くケガ治します」

黒髪「……」ナデナデ

茶髪「頑張らなくていから元気になることだけ考えてね」

茶髪「男さん、明日は教頭と金髪天使が来る予定です、よろしくお願いします」

男「上司とセットでないと来れないのか、金髪さん」

……


~日本上空~

黒髪「……」

茶髪「…明日から、地上での担当地域を変えてもらう…?」

黒髪「……」

茶髪「自分と接触することで、男さんが前世を思い出すかもしれないから…って?」

茶髪「…あの子とも、男さんと一緒にいる限り、会わないつもりなの?」

茶髪「人間が自然に前世を思い出すのは『仕方ない』のよ、何がきっかけになるかなんて誰にもわからないもの」

黒髪「……」

茶髪「あの歌を歌ったのも失敗だった、って…そんな」

茶髪「他意があって歌ったのではないのでしょう、それくらいわかるわ」

茶髪「…でも黒ちゃんが切ない思いをするなら、しばらく距離を置くのもありかもね…」

黒髪「……」

茶髪「うん、それもわかってる…今の男さんとあの子を見ているのが辛いわけじゃないのよね」

茶髪「それにしても、私達が張った遮音の結界は癒しの力は通すけど、音声は通さないのに」

茶髪「あの子の耳に歌が届いていたなんて」

黒髪「……」

茶髪「それがあの子の能力かもしれない…か…」

……


~男のアパート~

天使「午前中に女さんと友さんがお見えになっていましたね、僕はそのあと夕方まで眠ってしまいましたが…」

天使「お二人にも毎日来ていただいて、申し訳ないです…」

男「気にすんなって…そうだな、お前が元気になったら美味い料理でも作って振る舞ってやったらいいかもな」

男「女なんて大喜びすると思うぞ」

天使「それはいい考えですね」ニコ

男「…」

男(姪ちゃんの件で来たことは黙っておこう)

天使「…男さん」

男「うん?どうした?」

天使「僕が昨日まで見ていた、夢について…ですが…」

男「なんだよ、余計なことは考えるなって」

天使「…僕、『悪魔』の過去を、夢で見ていたんです…」

男「!?」

天使「夢は夢、普通はそうかもしれません、ですが…」

天使「友さんの記憶を読んだ時のこと、覚えていますか?」

男「あ、ああ…」


天使「相手の血液の流れから記憶を読みますが、通常の天使の力では、相手が知って欲しい情報しか読めません」

天使「音の入った映像記録のように鮮明に伝わるので、口頭で説明してもらうよりずっと正確ではあります」

天使「…悪魔は、僕の血から、知られたくない記憶までも強引に読み取りました」

男「天使」

天使「大丈夫です…つまり、記憶を読むために血液を使うのはどちらも同じです」

天使「悪魔が僕にかけた呪いは、悪魔の血液から作られると聞きます」

天使「僕が夢と言う形で見たのは、悪魔の血液に残っていた彼の記憶…そうとしか思えません」

男「悪魔の記憶か…天使をいたぶって喜んでいるような奴の記憶なんて、碌なもんじゃねーよな」

天使「…でも、それはあの悪魔の記憶であると同時に、悪魔の記憶ではなかった…」

男「どういうことだ?」

天使「あの悪魔の体の中に、元の悪魔と、悪魔から被害を受けた天使のひとり、ふたつの魂が混在している…」

男「なっ…!?」

天使「僕が見たのは、その天使のほうの記憶です…」

……


男「…なんてこった、きのう校長さんから聞いた話とも一致する…」

男「校長さんの冷淡な言葉にその赤い髪の天使がキレて…教頭さんが斬り付けられて大怪我したって話」

男「校長さんは事件を後悔して、治安部隊長から転職したって、な」

天使「校長先生…」

男「それ以来、その天使が行方不明だとも」

天使「やっぱり、彼等が融合したのは他の誰も知らないんですね…」

男「本当だとしたら大変な話じゃないか?今日来た先生達には話していないのか?」

天使「は、はい…伝えるべきかどうか今日1日ずっと迷っていましたし…」

天使「…黒髪先生は僕の前に『悪魔』に重傷を負わされた天使でもあったので、より慎重になってしまいました」

男「まさか、声を出せなくなったのは」

天使「夢で見るまで、僕もそれが悪魔の…他者の悪意による怪我だとは知りませんでした」

天使「…直接ではありませんが、悪魔が利用した人間の手で、悪魔の用意した呪い付きの武器を使って…」

天使「刺客として使われたその人間は、悪魔に見捨てられ…直後に亡くなりました」

男「くそ…何もかもひでえ話だ」

男「…でもな、正直…一連の話を俺だけが知っても何か役に立てそうな気はしないぞ?」

天使「…ごめんなさい」


天使「それでも…悩んだ末、男さんに最初に話すべきだと思ったのです…僕の大切な人ですから」

男「」

男「お、おま、何を、何を言ってくれちゃってるの!?///」ボボボ

天使「なぜ赤く?」キョトン

男「ってお前、何の気なしだったのかその言葉…しかし…うーむ…」

男「そうだ…明日は金髪さんと一緒に教頭さんが来るそうだ」

男「赤い髪の天使と関わったひとに相談するのがいいと思うけど、どうだろうか?」

天使「教頭先生が」

男「しかし…赤い髪の天使…ね…」

  友「『もうひとりは、あかいかみで、でもとおくにいるから、おかおとかはよくみえないの』…と」

男「…!?」

男(姪ちゃんには見えたのか?悪魔の中にいる、赤い髪の天使が…!!)

天使「ど、どうかしたのですか?」

男「ああもう、なんてこったな話だらけだよ…まさしくオーマイゴッドだよ」

男「天使…今のお前にはしんどい内容かもしれんが、聞いてくれ…実は今日、友が来た本当の理由は…」

天使「…!?」

……

ここまでです。早くエロシーン書きてえ

おつです
エロシーンも期待してまっせ


~天使学校、校長室~

教頭「…姪御さんが、そのような話を…」

校長「0歳児に比べると格段に下がるが、それでも成人よりは幼児の天使に対する感受性は強い、しかし…」

校長「教頭、出生記録管理局に連絡を取ってくれ…無事に閲覧許可が出たら、お前達3人で管理局へ」

金髪「あたしも一緒に行っていいんですか?」

校長「…出生した国ごとや誕生日順、あるいはイニシャル順にファイリングされていればまだ良いのだが…」

校長「例えば『西暦2013年に生まれた人間』という大雑把な分類しかされていないのだ、あそこの記録ファイルは」

校長「しかも安易な情報漏洩を防ぐとか何とかで、法力で検索できないよう閲覧室に特殊な結界が張られている」

校長「手動でページを繰り肉眼で探すしかない、だから1人でも人数は多い方がいい」

茶髪「」

黒髪「…」

金髪「3人でも明日の朝までかけても終わりませんよお…たぶん」

校長「うむ、だから明日は男さんの家には私と教頭とで向かう」

金髪「えー、そんな…自分だけずーるーいー!!楽しみにしてたのにーー!!」ジタバタ

校長「またお前は…それでも教師か!!」

教頭「校長、閲覧許可がもらえましたよ」

茶髪・黒髪・金髪「「「……」」」

校長「頑張れよ」

……


~男のアパート~

天使「姪ちゃんが…僕のことを忘れていない上に、赤髪天使の存在を感じ取っている…?」

男「かもしれない、だけどな」

天使「…どうしよう…このことで、また姪ちゃんを巻き込んでしまったら…」

男「茶髪先生はおそらく姪ちゃんに悪影響はないと言ってたし、天界で相談するとも言ってた」

男「校長さんや教頭さんも、赤い髪と言うキーワードにピンと来たら何か対策立ててくれるだろうさ」

男「大丈夫…」

天使「……」

男「天使…すまなかった、お前ひとりに姪ちゃんを守らせて、悪魔に立ち向かわせて…」

天使「え」

男「記憶を消したからって、姪ちゃんは確かに恐ろしい思いをしたんだ…それをお前だけに背負わせてしまった」

天使「でも、でも…あの時は一刻も早く助けに行かなくてはならなかった…」

天使「僕が一人で先行して廃工場に乗り込む、あの時は他に選択肢がありませんでした、だから」

男「ああ、姪ちゃんの誘拐もお前が怪我をしたのも、すでに起きてしまった事実だよ…なかったことにはできない」

男「でもこれからは…何かが起きても姪ちゃんを守るのはお前ひとりじゃない」

男「俺も、友も、女も、お前の先生達もいるんだぞ?」

天使「男さん」


男「もう、姪ちゃんに恐ろしい思いはさせない、お前にもあんな傷は負わせない…絶対だ」ギュッ

天使「あ…」

天使(男さんの腕、男さんの胸…服越しに伝わる男さんの鼓動…)

天使(すごく、あたたかい…)ギュウ…

男「天使…」

…ぷに…

男(…この感触は…おっぱい…女体化天使とお互い正面向いてがっつりハグしているから当然だけど…)

男(微かだが甘く爽やかな天使の体臭…禁欲中?の俺には嗅いだだけで勃起しそうな芳香…)

男(た、耐えろ俺…かなり元気になったとは言え)

男(天使はまだ死にかけたほどの傷が治りきっていないんだ…我慢我慢、おあずけ、ハウス)

男「…だから、明日のためにもう寝ろ天使」スッ

男「ほら横になれ、布団ちゃんとかけて、と…眠るまでここにいてやるから、安心しな?」

天使「は、はい…」

天使(しがみついたりして、迷惑だったかな…)

男(天使が眠ったら、こっそりトイレで抜いてこよう…)

……

男の抜きシーンは省略

来てたか乙


~翌朝…男のアパート~

校長「おはよう、男さん」

男「…ども」

教頭「だいぶ元気になって来たようだね、よかった」

天使「教頭先生…」ニコ

男「今日は金髪さんが来るんじゃなかった?」

校長「彼女はちょっと急ぎの業務で手が離せなくなってな」

男「…そっすか」

男(またなんかやらかして、謹慎でもくらってんだろ…金髪さんのことだから…)

~天界…出生記録管理局(閲覧室)~

金髪「…とか、今ごろ絶対に思ってるわよ男さんは!!」

茶髪「まあまあ…確証がない話は無駄に不安にさせるから男さん達にはまだ話せないのよ」

茶髪「それより真面目に見てるの?そっちのテーブルに山と積み上げた分がまだ残っているのよ…」ハァ

黒髪「……」黙々

~男のアパート~

男「でもあんた達2人が来たなら話が早いかな…」

天使「…」

……


校長「融合の術…だと…」

教頭「悪魔の中に赤髪天使…あの子の魂が混在している…そんな…」

男「単なる夢、という可能性は?」

校長「可能性がないわけではない…ただ…」

教頭「…気配を切り替えられるのなら、悪魔が見つからない理由も腑に落ちます…」

校長「我々は『悪魔』だけを捜していたのだ、それ故に天使の気配を纏った者が捜査網にかかるはずもない」

校長「…加えて…この子の能力…」

天使「?」

校長「一昨日、君に近付いた時に違和感を覚えた…在学中の君とは何かが違うと」

校長「何人も試練を終えた生徒達を知っているが、単に試練を超えて大人天使になっただけの違いとは別物だ」

校長「昨日は茶髪天使と黒髪天使から、それを感じ取ったと思われる報告を受けた」

校長「そして今日、確信したよ…今の君は『読み取りの能力』に秀でている」

天使「読み取りの…」

男「…能力って、なんすか?」

教頭「この子が友さんの記憶を読んだのは、男さんも目の前で見ているのでしょう?」

男「うん」

教頭「基本的な能力とは言え、この子の年齢ではまだまだ力は弱く」


教頭「友さんに姪御さんを助けたい強い想いがあり、救出に力を貸したいこの子が集中し、ようやく読み取れました」

教頭「ですが、それから数日の間にこの子の力は明らかに成長しています」

男「記憶を読み取る能力が…成長?」

校長「『記憶だけ』ではない、厳密に言えば、他者が外へ発信するものを読み取る能力全般が強くなっている」

校長「ことばとして発されるもの…独り言だろうと歌であろうと詩吟であろうと」

校長「更にことばに出さなくとも他者へ伝えたい想い…例え発した本人が無自覚であっても」

天使「他者へ伝えたい想い…」

校長「ただ、そのへんを歩いている人間からも読み取れるわけではなく」

校長「この子の体に直接触れ、そしてこの子自身が睡眠状態である、この2つの条件がそろって初めて発揮される」

校長「昨日は君の安静を保つため、あの2人は君の周辺だけ強力な遮音の結界を張っていた」

教頭「にも関わらず、黒髪天使の歌は眠っている君に聞こえていた…そうだろう?」

天使「では…あれは僕の『耳』で聞いたのではないのですね…」

教頭「そう、身体機能としての聴力を使えない状態で、読み取りの能力が発揮されたのだ」

男「そんな何日かで…能力が成長するって、よくあるの?」

校長「この子には潜在的に備わっていた力だったのだろう、年齢や経験とともに徐々に成長するのが本来だが」

校長「今回は外的要因によって強制的に覚醒させられた」

天使「外的要因…」


教頭「君はもう推測できているだろう?」

天使「…あの『悪魔』の血が呪いとして僕の中に入って来たから…記憶を強引に読む能力を持つ悪魔の…」

校長「そう、あの悪魔に限らず血の呪いを受けた天使は過去にもいたが、全員が君のようになったわけではない」

校長「君の元々持っていた能力、あの『悪魔』個人の能力、もしかしてその他の要因も合わさったのかもしれん」

天使「……」ギュ

男(天使…唇を噛みしめて…)

校長「…悪魔の能力を部分的にでも引き継いでしまった、そう思うか…?」

校長「案ずるな、悪魔の能力そのものは呪いと共に完全に浄化される…君らの浄化能力は半端ではないぞ?」

校長「君の能力が引っぱり出され成長したきっかけに過ぎないのだ」

校長「…まあ、それでも…気分の良いものではないだろうが…」

天使「…ごめんなさい、大丈夫です…」

天使「僕の能力と、悪魔であり赤髪天使でもある『彼』の能力、でも…本当にそれだけでしょうか」

天使「校長先生の仰る、もしかしたらの他の要因…」

天使「僕が彼の記憶を覗き見た本当の意味は…そこにあるのかもしれません…」

教頭「……」

男「…なあ、校長さんと教頭さん…悪魔は魔界へ送り返すのはわかったが、赤髪天使は…どうする?」

教頭「赤髪…」

男「あんた、赤髪天使に殺されかけたよな?」


教頭「…あのことは、わたしが迂闊だったためです」

教頭「手当に一刻を争う傷など負わなければ、悪魔の所に向かわせたりせず彼を天界に連れ帰れたはずです」

校長「あれは…失敗したのは私のほうだ」

天使「教頭先生は…今も、彼を…救いたいのですか…?」

教頭「君…」

天使「僕は…彼が怖い、恐ろしい…昔、人間を利用して黒髪先生にしたことも許せない…ですが、それでも」

天使「彼が救われるのと、これから誰も傷つけられなくなるのが一緒であれば」

天使「それが一番いい道だと思います…」

男「…」

教頭「わたしは…あれから…」

教頭「…天界に戻り傷が癒えるまでさほど日はかからなくとも、すぐには地上への再訪は叶いませんでした」

校長「治安部隊の事情聴取だの過失として処理するための手続きだの…忙しかったからな」

教頭「あなたも一緒になって動いてくれたおかげで、1週間はかかるところを3日で済みましたが」

教頭「地上へ降りる許可が出るとすぐ、わたしは人間に変装してあの貧民街に向かいました」

男(翼引っ込めて違和感ない服を着るだけだよな、変装)

教頭「赤髪と女性が住んでいた部屋は既にアパートの家主が片付けてしまっていましたが…」

教頭「幸い、女性の遺品を預っている人がいて…わたしが赤髪の関係者と名乗ると…どうか彼に、と」

教頭「…我々を…わたしを憎んでいてもいい、それでもわたしは、あの子に…彼女の遺品を受け取ってほしい…」


男「あんた立派だな」

天使(赤髪、きみは見捨てられていないよ…)

校長「まだ融合していると決まったわけではない、本人と対峙してみなくては…しかし」

校長「私も同じだ…救えるものなら…私が追い込んだ彼を救えるのなら」

校長「可能であれば悪魔と分離して、天界で罪を償わせ、赤髪として立ち直らせたい」

校長「可能であれば、な」

男「あんたも、責任を感じているんだな」

男「…俺は、人間だから…そんなに優しい生き物じゃないと思う」

男「誘拐した姪ちゃんでこいつをおびき出し、嬲って楽しんだ…それだけで少なくとも半殺しにしたいほど憎い」

男「悪魔じゃなく赤髪天使のほうの意志でそれをやったのなら、余計に許せない」

天使「…」

男「だけど、魔界には魔界の、天界には天界のルールがある…俺にはどう罰してくれとか言う資格もない」

男「ただ、もう二度と奴を危険な存在のまま逃がさないで欲しいんだ」

男「こいつや姪ちゃん、俺や友たちが、奴の件では一切心配なく過ごせるようにしてくれ」

男「俺からの勝手なお願いは、それだけだ」

天使「男さん…」

校長「約束する、必ず…二度と彼に罪を犯させない」

……


~同日、夕方~

男「ただいま…」

教頭「男さんおかえりなさい」

天使「おかえりなさい」

男「起きてたのか」

校長「おかえり男さん…この子はさっき目を覚ましたところだ」

校長「皮膚の自浄作用も回復しているようだな、まだ他の法力は使えないが」

教頭「明日あたり、茶髪天使に翼の回復具合を診てもらおうね」

天使「翼を…」

男「…」

教頭「大丈夫、まだ外には出せないから、体の中に納まっている状態で診てくれるよ」

校長「彼女は心身の医療系の能力に長けているから心配いらんよ、男さん」

校長「では我々はおいとましようか…またな男さん」

教頭「またね、天使」

天使「はい、ありがとうございました」

男「留守番ありがとな…今日は瞬間移動か」

男「なあ天使、翼はまだ痛むのか?」

天使「い、いいえ、もう痛みは…でも…」


天使「…本当に元通りに治るのかなって、それが…少し…」

男「あのケガじゃ不安なのも無理ないけど、順調に回復してるってみんな言ってるだろ」

男「それに、教頭さんに聞いたがお前らにとって」

男「地上生物の栄養に当たる物はその…なんだ、他者からのあi…思い遣りとか心配とか、そんなんだってな?」

男「先生達も女も友も俺も、めっちゃ心配して元気になれって思ってんだぜ」

男「それで効き目がないわけねーよ」

天使「そ、そうでした…そうですよね…ごめんなさい」

天使「僕にはこんなに心配してくれるひとがいる…天界にも、地上にも」

天使「僕には皆さんがいてくれる…」

天使「でも赤髪は誰にも助けてもらえなかった…今も、先生達が責任を感じていることさえ知らないで」

男「…だからあの2人が、今度こそそいつを救いたいって言ったんだろ?」

男「教頭さんは見かけによらず漢気あるし、校長さんも見た目ほど冷酷じゃないらしいし」

男「お前も重要な情報提供という仕事を果たしたんだ、後は…あのひと達にまかせておこうぜ?」

天使「…はい」

男「ところで、皮膚の自浄作用は戻って来たらしいな」

天使「無意識なのでよくわかりませんが、そうみたいですね…自分の意志で使用する法力はまだ無理だけど」

天使「…体を拭いてもらって助かりました、でももう大丈夫です」

男「あ、うん…とにかくよかった、お前も汗で気持ち悪い想いしなくて済むよな」


男(…俺の賢者モードもそろそろ限界だったから丁度良かったかも)

男(そう、耐えに耐えた…お湯で絞ったタオル越しに触れる天使のおっぱい…)

男(………………やばい)

男「お、俺!シャワー、シャワー浴びてくるわ!」ドドド

天使「は、はい?」

~数分後~

腰にタオル巻いただけの男「なあ…天使」

天使「シャワー早いですね…どうしたのですか?」

男「きれいに、きれいに洗って来たんだ…ほんのりボディソープの香りしかしないはずなんだ」

天使「は、はあ…それで…?」

男「しゃぶってくれ」

天使「…はい?」

男「お前の身体に(たぶん)負担はかけない、お前は着衣のままでいい、しゃぶってくれ!!」

タオル「ばさっ」

天使「」

男「どうだ…ギンギンのゴッチゴチだろ…?これを、フェラチオで鎮めて欲しい…お願い…します…」


天使「ふぇら…ちお…??」

天界の本「パラパラ…」

男「ちょ、そんなん載ってるのかよ」

天使「…なるほど、口を使って男性器を…という人間の性行為のバリエーションのひとつ…」

男「載ってるのか…」

天使「あ、そう言えば男さんも時どき僕のことを…舐めたり…吸ったりしています…よね?」

男「…そ、そうだ…女性器の場合はクンニリングスと言う…のは、おいといて」

男「俺がお前にしてるのと同じことを俺のちんこにして欲しいんだ、そうしてくれないと…」

男「俺はお前の身体が完全に治らないうちに性的な意味で襲い掛かってしまうかもしれない」

天使「そ、そうなんですか?」

男「ええいもうなんでもいいから…この状態は辛いのです、ちんこ舐めてしゃぶってくださいお願いです!!」

天使「は、はい、男さんの望みであれば、そうしなければ男さんが辛いなら」

天使「僕、男さんの『ちんこ』舐めます…!」キリッ

男「」

へにょ

天使「…え!?なんだか萎んで?ぼ、僕、男さんの気分を害してしまいましたか!?」オロオロ


男「い、いやその…これは極めて個人的な嗜好の問題に過ぎないけど…」

男「…『ちんこ』はやめて、お前の口から聞きたくないの…」

天使「で、でも男さんは自分でそう言って…」

男「俺はいい、でもお前は駄目なんだってば!」

天使「お、大きい声出さないでください…僕まだ結界張れないんです」アタフタ

男「どうせ呼んでくれるなら…そうだな…もっと可愛く…『おちんちん』と呼んで欲しい、お前には」

天使「ど、どちらも男性器の俗称ですよね?どのような違いが…」

男「だから俺個人の嗜好だってば…いいから、おちんちんって呼んでくれ」

天使「わ…わかりました…それでは」

天使「僕、男さんのおちんちん舐めます…」

男「」

むくっ

天使「あ」

男「実にいい感じだ、天使…さあ、頼む…!」

天使「は…はい…個人の嗜好ってすごい…ええと…?」

男「まずは軽く、亀頭に唇を…あ、手は軽く添える程度で、きつく握らない」

天使「こ…こうですか…?んっ…」

ちゅ…

男「ほぅおっ…!」ゾクゾク


男「思った以上…こ、今度は、鈴口…先端を舌先でちろちろっと…」

天使「こ、こうかな…」チロチロ…

男「は、はわわわわ、待って待って、これらめぇ!」ビクン

天使「え、駄目?」

男「いや、その…えーっと、理性が残っているうちに伝えておく…さ、最後まで…射精するまでお願いしたい」ハァハァ

男「歯は立てない、優しくお願い…あとお前が苦しいだろうから、口に含む時は奥まで飲み込まんでいい」

男「それからイキそうになったら言うから、顔面にまともに浴びないように注意」

天使「なぜですか?」

男「目に入ったら超痛いらしい…それ知ってからエロゲやAVでも顔射…顔面射精シーンは苦手で…これも個人の嗜好」

天使「気を付けます…では最後はどのようにするのが正解ですか?」

男「うーん…口で受け止めてくれたら嬉しいけど、それは今のお前にはちょっとしんどそうだし」

男「そうだな、手で包んでくれたらいいか…ほら、ティッシュも使っていいから」

天使「は、はい、善処します」

男「あとは一任する…リクエストがあればそのつど言うから」

天使「一任された…責任重大…」

天使(自分が男さんにされた時を思い出して、同じようにしたらいいのかな…形状は違うけど)

天使「では…改めて、おちんちんを…失礼します…」


ちゅ…くちゅ…ぺろぺろ…

男「お、おうお…しょ、初心者にしては、上手じゃないの…」ハァハァ

天使(男さんの真似…ですけどね…)

男「こ、今度は、亀頭の段差になってるとこ、舌でなぞるように……おうっ、いい…」ピクン

天使(男さん『いい』って言ってくれる…)

ぺちょ…れろれろ…くちゅる…

天使(僕が寝込んでから、男さん何日も我慢してたんだもの…今の僕でもお役に立てるの、嬉しい)

…ちゅう…

男「ふお」ゾワ

天使(この先っぽ…ここから、男さんの精液が…)

ちゅるちゅる…ちゅっ

男「はひゅ…さ、先っぽ吸われてりゅ…あああ」ビクンビクン

男「あ、イキそう…イく、だ、だいじょぶ?イっちゃうよ俺っ…!」ブルブル

天使(口で受け止めたら…嬉しいんですよね…?)

男「んくうぅぅイっくうう!!」ガクン

天使「んっ…!」


どぴゅ…びゅるびゅる…どくどく…

男「く、う…すげー出、る…?」

天使「…」

男「ちょ、お前、口で…!?ひ、引き抜いてやるから口開けろ」

にゅぽんっ

天使「んん…っ」キュ

男「口閉じるな、吐き出せって…そんなばっちいもの、キモいだろ!?」アワワ

天使「はっひいはんへ、ほんや(ばっちいなんて、そんな)」

天使(これも男さんの血肉だけから作られた男さんの一部です)

男「く、口なら嬉しいとは言ったけど…そのあと吐き出されても失礼とか決して思わないぞ、いいから出せ、な?」

天使「…」

天使(飲み込もうと思ったのに、意外と…粘度とか味とか厳しいかも…でも…)

男「今日は特に濃いし、絶対臭いし、伝聞でしか知らんけどめっちゃ不味いから出せってば」

天使「…はええふ(だめです)」ブンブン

男「涙目で拒否しないで…」

天使(だって、いつもなら僕の体で受け止めているのに…)

…ちゃぽん


男「…水音?」

天使「」

…ごくん

天使「…はー…」ゼーハー

男「飲んじゃっ…あ、そうか、さっきの水音…」

男「天使の自浄作用…口の中でただの水になったんだ…?」

天使「そ…そのようです…」ポテッ

男「ちょ、倒れ込まないでえええ」

天使「ご…ごめんなさい…ちょっとだけ疲れちゃった、みたいです…」

男「ああああ俺のバカばか馬鹿!!天使に負担かけちゃったじゃないかあああ」エーン

天使「ひ、一晩眠れば大丈夫ですよお…」

天使「…僕のほうこそ、お役に立てなくて…申し訳ありません」

男「いいんだ、お前のフェラチオはすっごく上手かった、めっちゃ気持ちよかったから!」

男「その証拠に、しばらく賢者モードでいられそうだ…」

天使「…じゃあ我慢して辛いの、治まりました…?」

男「ああ、お前のおかげで…ありがとう」ナデナデ

天使「よかったです」ニコ


男「天使…」

天使「…すー…」コトン

男「眠っちまった」

男「…熱は出てないか…とりあえず」

天使「…すー…すー…」

男「ほんとに…すまなかった…でも、嬉しいよ天使…」

男「…監視か…怒られるかなあ、これは」ハァ

……

~翌早朝~

男「…」

子供天使「……」

男「こ、これは…女体化からの子供化って、初めての現象…」

天使「…僕にもわかりません」ボーゼン

男「つまり省エネモード…昨夜のあれでお前の身体に悪影響が…!?」

天使「で、でも、別に体調が悪化した気もしないのですが…?」

金髪「ありゃー…何がどうしてこうなった」

茶髪「……男さん」

男「」

……

ここまでです。

乙!

初フェラきた!
目に入るとクソ痛いって聞いてからそれが気になっちゃうのめっちゃワカル

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