男(俺はハードボイルド……)(20)

男(………最近は軟派なヤツが多い……世の中はそれを良しとしている……しかし)

男(……それは違う。男はハードボイルドであるべきだ。今までも……そして、これからも……)

男(俺はこの世の中の腐った価値観と戦う……一人でも……自分の中の男を貫こうと思う……)

妻「ちょっとあなた!休みの日にずっとソファーでテレビばっかり!どうでもいいけど、掃除するのに邪魔なの!少し外に行っててくれない?」

男「…………うん」

男(男が外に出るときはバイクの鍵とヘルメット。それと胸ポケットにタバコを一箱…………それだけで良い)

男(男は身軽に限る、余計なモノなんかいらない。……必要なのは己自信と、相棒のバイク。それだけで良いのだ)

男(女じゃないんだ。カバンにたくさん入れる必要もないし、そんなのもは邪魔なだけ。……それを俺は知っている)

妻「ついでに買ってきて欲しいものあるの!帰りに買ってきて!」買い物メモ

男「……うん、分かった」

ブロロ……ブロロ……

男(……今日は久しぶりに山にでも行こう。隣の県だが俺と相棒には問題ないことだ)

男(男がバイクに乗って何処かにいくときは何も宛にしてはいけない。……スマートフォンのナビなどいらない、それこそ地図も不要だ)

男(なんとなく太陽の光を宛に走り、青看板を見るだけで行きたい所におのずとたどり着ける。……それが男ってもんだ)

男(それに……予め調べて何処かに行くなんて女、子どものやること)

男(時には迷うこともあるだろう、それも楽しみの一つだ)

男(知らない場所。思いがけない所に得てして最高の場所とは有るもの。……それを楽しまないでどうする)

男(決められたレールに乗らず、進む先は自分の意思だけ。決断力が男には必要なのだ……)


~ ~ ~

『自分の町方面へ』

男「…………あれ?」

男(…………男の旅に、高速道路を使うなんてもってのほかだ。あんなの選択肢がない電車と一緒じゃないか)

男(早く何処かに行くことが全てではない。…………時には下道を回り道しながら、楽しみむのが良いのだ)

男(分からないかもしれない。……分からなくてもいい。それでも時間に縛られない生き方があるんだ)

男(納期、期限、みんな時間に縛られてる。時間を上手く使ってこそ人間楽しめるのさ)


~ ~ 一時間 ~ ~

ブロロ……ブロロ……
『自分の県』


男「………………」


『インターチェンジ』


男「…………ふっ」

ブロロ……ブロロ……

男(バイクは良い。……車より何より風を感じられるからだ)

男(みんな車で80km出すことに何とも思わないだろう)

男(……バイクは違う。80kmの風と匂いを、景色を一身に体に受けて進む)

男(こんなにも80kmとは速いものだったのか、こんなにも匂いが変わるものなのかと。身体が、五感が走っていることによろこびを感じている)

男(手にはバイクからの心地好い振動が伝わる。……足元にはエンジンからの熱が。コイツの思いが伝わる)

男(ファッションでクルマに乗っている若者には分からない。この感覚を私は噛み締めて、アクセルを必死に握るのだ…………)


~ ~ ~

『さーびすえりあ』


男「…………」グッタリ

男(山を走るのが好きだ)

男(木々の薫りはいよいよ俺を、非現実に導く)

男(コンクリートに囲まれるのに慣れてしまっている日本人は、可哀想でしょうがない)

男(建築会社が作るのに都合の良い、あんな建物を有り難がる。自分の中の価値観ではなく植え付けられたガチガチなのだ)

男(森を、山を見てみろ。誰が作ったら訳でもなくあんなに雄大で、複雑で…………)

男(…………無作為の中、粗雑に見える中に真の美しさがあるのだ)

男(美しい緑を……川を……せせらぎを)

男(今、楽しめている事に。……口元の緩みを抑えきれない。俺は今、最高に解放されているのだ…………)


~ ~ ~

男「…………うそーん」


『この先土砂崩れの為、通行止め』

「お席は禁煙、喫煙どうされますか」

男「喫煙で」


男(……煙草が敬遠されているこの世の中は間違っている)

男(体に悪い、健康を害する?心の底から思う、お前らはバカかと)

男(健康に気付いながら、添加物入りの食べ物を食べ。糖度を考えずに清涼飲料水を。髪にはどんな成分かも分からない整髪料を…………健康が聞いて呆れる)

男(気付かないのだ。みんな、騙されていることを。利権とか権力とかがそうさせている事に)

男(だいたい医療系の論文なんて5年で180度かわることもある。卵が1日一個しか良くないとされていたのが、1日一個以上でも大丈夫だとか)

男(そんな健康と言う名の宗教に、自分で名にも調べず、考えずに信仰しているだけなのだ)煙草取り出し


男「…………ん?」

手紙『月のタバコ代が一万を超えました。約束でしたので、制約をもうけます。また、タバコは健康に悪いので徐々にやめましょう。……妻より』

『ps,口寂しいと思ってココアシガレットと取り替えて置きました。』

男「……………………」

男(……男に休憩はタバ――……ココアシガレット一本だけで良い。それが終わったら余計な事をせず、無駄にしゃべったりせず直ぐに愛車に股がるべきだ)

男(良く見るのだ。道の駅,SAでバイクの周りに群がり、下品な笑いをする阿保どもを)

男(あんなもの公園で子どもを放置しながら、井戸端会議をしている主婦共となにも変わらない)

男(真に目を向けるべきは自分の子供だろう?自分の愛車だろう?)

男(自分の愛すべきモノをただの見せ物にして。愛すべきモノから目を離し、喋るのは結局自分の事)

男(バイクは自分の分身であるけど、自分の欲を表現するものではない。アクセサリーと混同しているのだ)

「いやー、面白い話聞かせてもらったよ!日本一周頑張ってね!」



男「……!」ピクッ

「はーい!おじ様達も気を付けてねー!」
「……ほら、時間かかった」
「良いじゃない、お陰でキャンプ場分かったんだから」
「全く。……そしたら行くよ」



男「君たち!ちょっと!……ちょっとだけ待って貰える!話を少ししたいんだ!!」

男「すまないね、ヘルメット交換してもらって」

女性「良いですよー!兄のヘルメットで少し臭いかもですけど、こうしてインカムで話出来るでしょう?」


男(道の駅の駐車場。サイドカーで旅をしている男女に会った。……驚いた事に日本一周をしているとか)

男(見た所、二十代だろうか?兄妹で旅を。転々と日本を巡っているらしい)


女性「おじ様、こっちの方面へ向かうのだった?大丈夫?」

男「あぁ、平気だよ。……それより旅を始めてどのくらいになるんだい?」

女性「そうねー?どのくらいかしら?兄?…………そんなになる?――おじ様ー!もう二ヶ月になるって!」


男(――二ヶ月。そんなにもバイクに乗っているのか、そんなにも旅をしているのか。…………最近の若者は軟派なものばかりだと思っていたが、改めねばならない。……彼らはとても素晴らしい)


女性「でもね。最初旅してると時は良かったけど、最近は暑い日が多くって…………バイクは走ってる時は良いけど、止まったら地獄ですよねー」
胸元パタパタ

男「…………そして彼女は可憐である」

青年「――そうですねー。。旅してて大変と言うか、常に気を付けることは行き先のガソリンスタンドですかねー。山間部はグーグルマップに記載が有っても潰れてたり。……不定期で休業してる所とかも多いですから」

男「わかるよー!分かる!……ウンウン
そうなんだよ!!」

女性「おじ様って楽しい人ね!凄い親しみ安いというか」

男(……はっ!いかん、俺はハードボイルド。こんな風に喋ったら男ではない!)

男「…………そうかな?……でも、分かるさ。バイクは自由だけどガソリンと言う制約の上で自由なだけだからな」

男「…………たまに居るんだ。バイクに乗って居るだけで、自分が何処までも行けると。バイクという相棒にガソリンと言う情熱を入れてこそ、バイク乗りは自由なんだよな」

女性「……なんかおじ様、凄い旅慣れしてる?ベテランって感じする」

男「ふっ……ただのバイク乗りさ」

男(俺はハードボイルド。…………少し渋
いぐらいがちょうどいいのだ)



ブロロ…………ブ……ブ…………プスンッ!

男「…………ん?………………あ、あれ?」

男「…………すまない。ガス欠だなんて…………」

青年「大丈夫ですよ、僕らはさっき入れたばかりですし。それに今日は早めにキャンプ場に着いて、洗濯とかするって決めてたので」

女性「そうそう!今日はもうどこも行かないから気にしないで良いわよー!…………さてと、今日の宿を作らないと!タープ立てる?」

青年「そうだなー。……タープもたまに使わないといざって時に困るしね。乾燥させるのも兼ねてたてようか?」

男「…………だったらテントやらそう言うのをやらせてくれないか?迷惑かけた分手伝わせてくれ!」

青年「え?いや…………でも…………」

男「俺がテントを立ててる間に、君たちは洗濯とか夕食の準備をすれば良いだろ?そうすれば時間も有効に使える!」

女性「せっかくだからお願いする?私も洗濯は自分でやりたいし。…………おじ様、建て方とか分かる?

男「ふっ……大丈夫さ。こう見えてキャンプは何回かしたことあるしね。見ればだいたい分かるよ。さぁ、やることやっておいで!」

青年「……そしたら、お言葉に甘えます
。――洗濯頼むよ。俺は夕飯の準備する…………あと――――」


男(ハードボイルドな男はアウトドア知識も豊富なのさ。テントはボーイスカウトの時にやったことあるし、いつかやろうと雑誌もたくさん読んだ。…………テントの一つや2つどうってこと無いさ)


~~~

男「………………あれ?…………このロープは何処にペグ打つんだ??…………あ!タープ倒れた!!…………張りが甘かったか!」

男「…………すまない。……本当に失礼した」

青年「大丈夫ですよ。いつも立ててるんで僕らは慣れてますから」

女性「タープって建てるの難しいわよね!私もポールが倒れるの良くやるわ!」

男「……………………」

男(俺はハードボイルド。最近の若者の軟派さに嘆き、憂いていた。…………しかし、この二人の若者は俺が思う若者とは違う。……こんなにもたくましく、こんなにも輝いている若者を俺は知らなかった)

女性「おじ様のお陰で早くいろいろ出来たわよ!日もまだまだ高いし……ちょっとお茶でもしない?外で飲む紅茶とか、コーヒーってとっても美味しいのよ!」



男「…………あぁ。ありがとう。…………すまない」

青年「……どうぞ。我流というか、適当なのでお口に合うか分からないですけど」

男「ありがとう。…………頂くとするよ」

男(…………上手い。…………これはチャイか…………私も一時期はまってたが、店で飲むだけで自分で煎れようのはしなかったな…………)

女性「……どう?美味しい?」

男「あぁ。…………これはチャイだね。アッサムとかを使うのが普通だが、これはレディグレイか」

青年「そうです。本当はアッサムで煎れたいんですけど、旅してると荷物に限りがあって…………」

女性「私がレディグレイ好きなの!……兄は良く、本当はこうするものだとかウンチク言うんだけど、これも美味しいと思うのよね!」

男「…………分かるよ。……本当はこうあるべきとか、こうじゃなきゃいけないなんて無いんだ。…………自分が本当に美味しいと思うこと。自分が本当にしたいことをした方がいい」

男「決まりとか、制約とか決まりなんてあってないようなモノさ。……拘りに縛られてたら、題字なモノを見失うのさ…………」

男(…………そう、俺がハードボイルドに憧れ、拘っていたようにな)

男(ハードボイルドとはこうあるべき。と、自分の中の固定観念に捕らわれて。自分を演じようとしている俺)

男(そんな事は偽物でしょせんフィクション。…………演じきれて無い、ただの三文役者か)

女性「……私、ちょっと楽器弾いてて良い?夕飯までまだまだでしょ?」

青年「…………別に良いけど」

女性「おじ様は?」

男「私の許可なんかいらないよ。私は君たちに勝手に着いて来ただけ。君らは君らはで好きにするのが一番さ…………」

男(そうさ、自分の好きな事をするんだ。俺が求めていたハードボイルドは映画やドラマの役柄じゃなくて、彼らのような生き方だったんじゃないか…………)

男(タバコを吸えば、バイクに乗れば、高速道路を使ってはいけない、地図を見ちゃいけない。…………そんな決まりは本当に俺がやりたかったことじゃないんだ)

~♪~♪~♪~

男「良い音色だね。…………知らない楽器だ。アコーディオンのようだけど……」

青年「…………あれは、コンサーティーナって言います。元々アコーディオンの廉価したものだって聞いてます」

男「素朴で、少し物悲しく。…………でも心に染みる良い音だね」

青年「…………僕は旅には邪魔だと思うんですけどね。……荷物になるし、いろいろ迷惑だし…………旅にはあんなもの必要ないと」

男「そんな事ないさ。……旅、音楽、女。……ロマンの塊じゃないか」

男「そう…………旅に決まりなんか無いし、正しいやり方なんかもない。…………有るのは本当に自分がやりたいかどうかだと。…………私は思うよ」

女性「…………兄もこの楽器弾けるのよ。私より上手なの!聞きたくない?」

青年「……やめろよ。…………それに俺は上手くもない」

女性「うそ!絶対私より上手いのに!」

男「ははは、良いよ。…………君がやりたいならやれば良い。やりたくないなら無理にやる必要はない」

男「……楽しかったり、思い出に残るのは本当に自分が心の底からやりたいと思った事だけさ。…………それを見失わないのが難しい事でもあるけどね」

青年「…………」

男「君がやりたくならそれでいい。…………キミが本当にやりたいと思ったとき。キミが本当にやりたい事を私に聞かせて欲しいんだ」

男(…………俺もハードボイルドを。真似でも無い、偽り無い、本当のハードボイルドな生き方を目指さないとな)

女性「…………なんかおじ様って凄いわね。落ち着いているっていうか、大人っていうか」

男「そんな事ないよ。…………俺も、分からない事だらけさ。……自分の大切な事も忘れてる間抜けな人間だよ」

女性「そんな事ないわよ!っていうか、自分をそう言いきれるのも凄いと言うか」

青年「僕もそう思います。……渋いというか」

女性「…………ハードボイルド?映画とかに良く見るヤツ!私はそういう男性素敵だなって思いますし!」

青年「あぁそれそれ。俺もそう思う」

男「!!!」

男(俺が彼らから見たらハードボイルドだと?…………いや、違う。ハードボイルドな男はこんな事で一喜一憂しない…………)

女性「余裕があるわよねー……誰かとは大違い」

青年「俺は発展途上なの。それに人それぞれだろ?」

女性「大人になったらこんな風に成れるかしらねー?」

男「…………はは。そ、そう。俺になる必要なんかないからね!……は、あははッ!!」

青年「――せっかくこうして会ったんだから。一緒に夕方食べませんか?食材も余裕ありますし」

女性「そうよ!ね!おじ様一緒に食べましょうよ!」

男「…………残念だけど、俺も今日は帰らなくては行けないからね。随分とお邪魔してしまったし」

女性「そっかー。遠慮しないで良いのよ?」

男「ははは、ホントに帰らなくては行けないんだ。…………今日はいろいろとありがとう」

青年「いえ、こちらこそ楽しかったです」

男「……長い旅だ、気を付けて。君たちの旅の無事を祈ってるよ!それじゃっ!」

ブロロ…………ブロロ…………


男(俺はハードボイルドに成りたい男。…………もしかしたら成れないかも知れない)

男(それでもいい。…………俺は俺の本当に成りたい人間に、一生かけて目指して行こうと思う)

男(そうさ、本当のハードボイルドに…………)

ブロロ…………ブロロ…………

おしまい



メール『あなた何処にいるの!?連絡ぐらいして!夕飯いらないのね!!』

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