池袋晶葉「逆導の幸」 (18)


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~事務所~


橘ありす「ミスディレクション・・・ですか?」

池袋晶葉「そう、ミスディレクションだ」

鷺沢文香「人の視線や思考を誤った方向に誘導する技法ですね」

晶葉「やはり文香は知っていたか」

文香「はい、ミステリー小説の叙述トリックに用いられることもありますので」

ありす「具体的にはどんな技法なんでしょうか?」

晶葉「そうだな・・・私が知っているものなら手品が挙げられる」

晶葉「例えば、トランプマジックを演じるとき、マジシャンが観客に向かって『このカードの数字を覚えておいてくれ』とカードをかざす場面があるだろう?」

ありす「はい、テレビで見たことがあります」

晶葉「その時、ありすはどこを見る?」

ありす「それはもちろんカードを見て数字を覚えますが・・・」

晶葉「だろうな。『見ろ』と言われたから『見る』。ついそうしてしまう」

 



晶葉「このタイプの手品は、そういった心理を利用してカードに視線を集め」

晶葉「その隙にカードを持っているのとは反対の手でこっそりすり替えなどのタネを仕込むものがあるのだ」

晶葉「本命の行動を隠すために別の所に注目させてカモフラージュする」

ありす「それがミスディレクションですか」

晶葉「うむ・・・そうそう、マジシャンのアシスタントが派手な衣装を着て踊ったりするのは、見栄えをよくするためだけでなく」

晶葉「そちらに視線を集めてマジシャンがタネを仕込む隙を作るためでもあるらしい」

文香「手品とはそんなことまで計算されていたのですか・・・知りませんでした」

ありす「文香さんの言った叙述トリックの場合はどんな例があるんですか?」

文香「はい、そうですね・・・小説で例えるなら・・・」

文香「私とプロデューサーさんが、『博士』と呼ばれている人物についての話をしていたとしまょう」

文香「次の場面で、晶葉さんが登場します」

文香「白衣に眼鏡、知的な言動、傍らには彼女が作ったロボット・・・如何にも科学者然とした立ち居振舞いをすれば・・・」

晶葉「読者はまず『博士』とは私のことを指していると考えるだろうな」

 



文香「ですが、『博士』はあくまで肩書きですので、作中で博士=晶葉さんであると明言されていない場合は他の人物を指す可能性も残されています」

ありす「その可能性を悟らせないよう文章を工夫したり先入観を利用して博士=晶葉さんと思い込ませるのがミスディレクション・・・というわけですね」

晶葉「ふむ、上手くやれば私が事件の犯人だと思わせておいて実は全く違う人物が・・・というどんでん返しができるな」

ありす「まさに小説ならではのトリックですね!」

文香「はい。このような小説は、読んでいても騙されていることにすら気付きませんので」

文香「真相が明かされた時の衝撃は凄まじいものがあります」

ありす「とても興味が湧きました。文香さん、よければオススメの小説を教えてもらえませんか?」

文香「はい、喜んで」

晶葉「私も頼む・・・いや、やはり止めておこう」

ありす「どうしてですか?」

晶葉「今そのような小説を読んでしまうと、叙述トリックがあることを前提に警戒してしまうだろう?」

晶葉「出来れば先入観のない状態で読んだほうが驚きや感動が大きいのではないかと思ってな」

ありす「あ・・・たしかにそうですね・・・」

文香「ではこの話を忘れた頃を見計らって、さりげなくお薦めしまょうか?」

晶葉「ああ、そうしてもらえるとありがたいな」

ありす「私もそれでお願いします」

 



ありす「ところで、どうして突然ミスディレクションの話を?」

晶葉「うむ、それを使ってちょっとしたゲームをしようという提案だ」


晶葉「さて、我々は今、助手が差し入れてくれたマカロンを食べているわけだが」

ありす「ええ、駅前のお店で売っている1日200個限定の高級マカロン・・・凄く美味しいです」

文香「とても人気だそうですが・・・よく手に入りましたね」

晶葉「後で助手に礼を言っておかねばな」

晶葉「ともあれ、これは10個入りなので三人で分けると一つ余るだろう」

晶葉「最後の一つを誰が食べるのか?」

晶葉「ジャンケンで決めてもいいのだが、それでは面白くないと思ってね」

ありす「そこでミスディレクションを使ったゲームで決めよう・・・ということですか」

文香「どのようなルールなのでしょうか?」

晶葉「まあ難しく考えなくていい、まずは実演して見せよう」



晶葉「あれは何だ!!?」バッ!

ありす「?」チラッ

文香「?」チラッ

晶葉「・・・」サッ

 



ありす「晶葉さん、一体なにが・・・あ!マカロンがない!」

晶葉「と、いう風にだな、他の人の視線を逸らした隙にマカロンを奪取した者の勝ちだ」

ありす「ミスディレクションと言うには少々強引な気もしますが、面白そうですね」

ありす「受けて立ちます!」

文香「・・・あの、来るとわかっていて引っ掛かるものなのでしょうか?」

晶葉「そこを如何にして突破するかが腕の見せ所、だな」

文香「わかりました、私も挑戦してみます」



晶葉「・・・」

ありす「・・・」

文香「・・・」

ありす(・・・まずは軽く試してみましょうか)



ありす「大変です晶葉さん!後ろのウサちゃんロボが煙を吹いてます!!」



晶葉(早速仕掛けて来たか!)

晶葉(だがそんなあからさまな手には乗らないぞ!)

 



文香(晶葉さんを振り向かせるには少々弱いですね・・・ここは助け船を)

文香「は、早くお水を!いえ、機械ですからお水はまずいでしょうか!?消火器!?」

文香「晶葉さん、ど、ど、どうすれば・・・」オロオロ

晶葉(何っ!?文香まで!これは演技か否か!?)

ありす(文香さん、フォローありがとうございます!)

晶葉(二人が打ち合わせをした様子はない・・・でも、ここは・・・)

晶葉(私の腕と二人の絆を信じる!)



晶葉「フッ・・・ハッタリだな?」

ありす「・・・」

文香「・・・」

ありす「引っ掛かりませんでしたか」

晶葉「まあな」

ありす「なぜでしょう?私はともかく、文香さんの演技は完璧だったと思うのですが」

晶葉「ウサちゃんロボは昨日メンテナンスしたばかりなので故障の可能性は低い」

 



晶葉「それと、文香の演技はたしかに完璧だった・・・だからこそ疑った」

晶葉「君たち二人の信頼は篤い。この程度の連携なら事前の打ち合わせやアイコンタクトなしでもやってのけるだろう」

晶葉「そう思ったからだ」

文香「そこまで読まれるとは思いませんでした・・・」

ありす「いえ、気にしないでください。私の仕掛けが甘かったんです」



晶葉「・・・」

ありす「・・・」

文香「・・・」

晶葉(さて、言い出しっぺの私が黙っているわけにもいかない。そろそろ仕掛けるか)



晶葉「・・・」チラッ

ありす「・・・?」

文香「・・・?」

晶葉「・・・」チラッ チラッ

ありす(・・・視線が泳いでいますね)

文香(先程から私とありすちゃんの後ろを気にしているようですが・・・)

晶葉「そんなところでコソコソと何をしているんだ?というか、いつの間に入ってきた?」

ありす(私たちに向けた言葉ではない?)

文香(私たちの後ろに誰か居るように見せかけようとしているのでしょうか?)

 



ありす(ですが晶葉さんの問いに対する答えがない、ということはハッタリの可能性が大・・・)

晶葉「ありすと文香のお山を狙っているのなら止めておけ」



ありす・文香(お山!!?)



晶葉「このあいだウサちゃんロボの防衛システムで痛い目を見たばかりだろう?またお仕置きされたいのか?」

文香(お山を狙う・・・このワードから連想されるのは棟方愛海さん以外に考えられませんね)

ありす(愛海さんの女性の胸に対する過剰なまでの情熱を考慮すると、私たちに気付かれずに部屋に侵入するくらいは軽くやってのけそうですね)

ありす(気配を悟られないよう息を潜めているなら、返事がない理由にもなります)

ありす「晶葉さん、後ろに愛海さんがいるんですか?」

晶葉「ああ、気を付けるんだ。愛海の生態は敢えて語るまでもないだろう?」

文香(武道の達人であれば背後の気配を察せるそうですが・・・私ではわかりませんね・・・)

ありす(果たして、これは本当なのか否か・・・どこで見極めるべきでしょう?)

 



晶葉「待て愛海、最後の警告だ。止めておけ」

ありす「・・・」ゴクリ

文香「・・・」ゴクリ





晶葉「来たぞ!!!」

文香「!?」ガタッ!

ウサちゃんロボ「・・・」

ありす「ハッタリです!」



晶葉「・・・」

ありす「・・・」

文香「・・・」

晶葉「見破られたか・・・」

文香「・・・ふぅ・・・」ストン

晶葉「やるじゃないか。なぜバレたのかな?」

ありす「ウサちゃんロボが動かなかったからです」

ありす「晶葉さんはこう言いましたよね?」

ありす「ウサちゃんロボの防衛システムで愛海さんを痛い目にあわせた、と」

ありす「ウサちゃんロボは高性能なロボットです。晶葉さんがターゲットではないとはいえ、愛海さんが行動を起こしたのに無反応ということは有り得ない」

ありす「だからハッタリだと思いました」

晶葉「なるほど、冷静かつ的確な判断だ」

晶葉「語るに落ちた、というやつか。詰めが甘かったようだな」

 



晶葉「・・・」

ありす「・・・」

文香「・・・」

文香(次は私から仕掛けてみましょうか)

文香(二人の警戒心はかなり高まっていますから・・・単純に『あっちに注目しろ』という手法はもう通じないでしょう)

文香(何とか意表を突かなければなりませんね)


文香「そう言えば、今日は天気が良いですね」

ありす「そうですね」

晶葉「うむ、そうだな」

文香「窓から差し込む日差しが清々しくて、気持ちが良いです」

晶葉(世間話からさりげなく窓に視線を向けさせるつもりか?)

ありす(文香さんはどんな手で攻めるつもりなんでしょうか?)

文香「先日読んだ小説に、今日のような朗らかな日に草原へ出掛けるシーンがあったのですが」

文香「その文章がとても素敵だったので、少し引用してみますね」

晶葉(一体、どういう意図があるんだ?)

ありす(もしかして、いつもの文学談義でしょうか?)

文香「穏やかな日差しが・・・」

ありす(・・・いえ、これは油断させるための前フリかも)

晶葉(やはり意図は読めないが、警戒は怠らないでおこう)

文香「小鳥のさえずりと小川のせせらぎ・・・」

ありす(それにしても、やっぱり文香さんの声は綺麗ですね・・・聞き惚れてしまいます)

晶葉(優しい語り口だ・・・心が落ち着くな・・・)

文香「まるでお母さんの子守唄のような安らぎが・・・」

ありす(あ・・・なんだか・・・眠くなって・・・)

晶葉(天気の良さも相まってか、眠気が・・・)


ありす「・・・・・・」トローン

晶葉「・・・・・・」トローン

文香(今なら・・・)ソロー

 



晶葉「・・・・・・ハッ!?そ、そうはいかないぞ文香!」

ありす「あっ!あ、危うく寝てしまうところでした!」

文香「引っ掛かりませんでしたか。もう少しだったのですが・・」

ありす「まさか眠気を誘う戦略に出るとは思いませんでした・・・」

晶葉「ああ、視線を逸らすどころか視界そのものを奪いにくるとは予想外だったな」



晶葉(次はどんな手で行こうか・・・)

ありす(どう攻めるべきでしょうか・・・)

文香(何か良い方法は・・・)


ガチャ!


三村かな子「おはようございます!」

晶葉「ああ、おはよう、かな子」

ありす「おはようございます」

文香「おはようございます、かな子さん」

かな子「今日はとってもいい天気ですね。つい張り切ってお菓子たくさん作っちゃいました!」

晶葉「フフッ、それはいつものことではないのかな?」

かな子「あははっ、たしかに・・・あぁ!それはもしかして!」

 



かな子「駅前のお店の1日200個限定のマカロンですか!?」

晶葉「その通りだ」

ありす「さすが詳しいですね」

晶葉「今、これを誰が食べるかを決めるゲームの最中でな」

晶葉「よければ君も参加するか?」

かな子「いいんですか!?」

晶葉「ありすと文香はどうだ?」

文香「もちろん歓迎します」

ありす「問題ありません。勝つのは私ですから」

かな子「自信満々だね、でも負けないよ!」

かな子「あ、その前に私の作ったクッキーを味見してみてくれないかな?今日のは自信作なんだ」

晶葉「いただこうか・・・ふむ、美味いな!」

ありす「・・・これは美味しいですね!」

文香「素晴らしいです。お店で売っているものと遜色ありませんね」

かな子「やった~!頑張って作った甲斐があったよ!じゃあ私もひとつ」

かな子「ん~♪お~いし~い♪」


晶葉(フフッ、かな子は実に美味しそうに食べるな)ホッコリ

ありす(本当にいい笑顔で食べますね)ホッコリ

文香(見ているこちらまで幸せな気分になりますね)ホッコリ

 



かな子「あの~、あんまりジーっと見つめられると恥ずかしいよ~」

晶葉「いや失礼、あまりにも美味しそうに食べるものだから、ついな・・・」

ありす「いい笑顔だったので、私もつい・・・」

文香「ええ、とても幸せそうだったので、私もつい見惚れてしまいました」



晶葉・ありす・文香(つい・・・見惚れて・・・?)

晶葉・ありす・文香『あっ』



晶葉(今の隙なら余裕でマカロンを奪取できたな・・・)

ありす(一瞬マカロンのことを完全に忘れてましたね・・・)

文香(ゲームのこと、すっかり失念していました・・・)



晶葉「さて、どうやら勝者は決まったようだな?」

ありす「はい、これは負けを認めざるをえませんね」

文香「そうですね、私も異存はありません」

かな子「?」

晶葉「おめでとう、かな子。君の勝ちだ」

かな子「えっ!?まだルールも聞いてないのに!?」

ありす「遠慮なさらないでください。今回は完全に私たちの負けです」

文香「笑顔で視線を釘付けにする・・・まさにアイドルならではのミスディレクションでしたね」

かな子「ミス・・・?え~っとよくわからないけど、やったー?」

かな子「で、でも何か悪い気もするし・・・代わりに私のクッキー、好きなだけ食べてください!」ドッサリ

ありす「こ、こんなに作ったんですか!?」

文香「凄い量ですね」



晶葉「あっ・・・」

ありす「?」

文香「?」

かな子「?」


 



晶葉「な、なあ皆、アレを見てくれ」

ありす「晶葉さん、決着は着いたんですからもうミスディレクションは・・・」

晶葉「いや、違うんだ。あることに気付いてしまってな・・・」

ありす「スケジュール管理のホワイトボードがどうか・・・あっ・・・」

文香「あ、明後日の予定のこと・・・ですか・・・?」



『三村かな子の予定 グラビア撮影』ドーン!



かな子「・・・」ダラダラ

晶葉「その・・・かな子、大丈夫なのか?今・・・そんなに食べて・・・」

ありす「よ、余計なお世話かもしれませんが・・・あの・・・お腹まわりとか体重とか・・・」

文香「差し出がましいようですが・・・そのあたりに関して何度かプロデューサーさんに注意を受けていたと記憶していますが・・・」

かな子「え、え~っと・・・」



かな子「美味しいから大丈夫だよ!」



晶葉「・・・」

ありす「・・・」

文香「・・・」

晶葉「マカロンは没収だな」

ありす「不本意ながら賛成です・・・」

文香「心苦しいですがやむを得ない措置かと・・・」

かな子「そ、そんなぁ~~~!!!」



おわり

 



以上。
一番好きなミスディレクションはトライガンのトリップ・オブ・デスです、はい。
ともあれ、池袋晶葉はハッタリ可愛い、三村かな子は食べるの幸せ可愛い。
それだけ伝われば十分だ。

 




これに、しきにゃんと茜にもりくぼを入れていたらさらにカオスだったろうな



過去作宣伝


全部晶葉推しSSに見せかけたぴにゃこら太SSです。嘘です。

池袋晶葉「逆襲の谷」

池袋晶葉「逆説の楽」

鷺沢文香「逆光の園」

池袋晶葉「逆調の星」

池袋晶葉「逆睹の衣」

池袋晶葉「逆賭の衣」

池袋晶葉「逆感の僕」

池袋晶葉「逆月の兎」

池袋晶葉「逆胴の道」

池袋晶葉「逆火の倣」

池袋晶葉「逆悪の華」

池袋晶葉「逆比の山」

 

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