ダイヤ「善子さん、大事な話があるのです」 (24)


ダイヤ「善子さん」

善子「なに? というかヨハネよ」

ダイヤ「なぜあなただけが今日、こうやって残されているかわかりますか?」

善子「くくくっ、そうね。とうとう私のリトルデーモンになる決心がついた、というところかしら?」

ダイヤ「よくわかりましたわね。そのとおりです」

善子「へっ!? そうなのっ!?」

ダイヤ「当然、冗談ですわ」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1527437237


善子「こ、このヨハネを愚弄するなんていい度胸ねっ!」

ダイヤ「あらあら、堕天使なのに純粋なのですわね? 今に始まった話ではないですが」クスクス

善子「むぅーっ! 帰るわよっ!?」

ダイヤ「そうはいきません。今日は大事な話があるのです」

ダイヤ「私たちのこれからにとって、とても大事な話が」

善子「・・・えっ?」

ダイヤ「・・・」ジー

善子(な、なんなのよ、この雰囲気・・・。まるで告白でもされるみたいな・・・。な、ないわよね? ダイヤさんが私のことそんな風に思ってるとか・・・。でも私たちのこれからって言ってたし・・・ダイヤさんと、私の将来ってこと?)

ダイヤ「善子さん・・・」

善子「~っ!」ドキ


ダイヤ「あなた、スクールアイドルの自覚はありますの?」

善子「・・・へっ?」

ダイヤ「・・・? どうかしましたか?」

善子「な、なんでもないっ・・・です」

善子(こ、告白じゃなかった・・・。って、期待なんてしてなかったけどっ!)

ダイヤ「聞こえていていませんでしたか? ならもう一度言いますね」

善子(それより・・・)

ダイヤ「あなたにはスクールアイドルとしての自覚はあるのか、と聞いているんです」

善子(やばい! ガチ説教でしょこれ!!)


善子「な、なにっ、なによっ!? ヨハネがなにをしたっていうのよっ!」

ダイヤ「なるほど。それでは善子さんは・・・」

ダイヤ「自覚が全くない、と?」ギロリ

善子(ひぃいいいいっ! やばいやばいやばいっ!!)

善子「え、えっと・・・それは・・・っ!」

善子(い、一体なんのこと? 最近は練習中にマント羽織ったりしてふざけてない。成績は全く問題ないはず。てことはルビィ? ルビィ関連なのっ!?)

ダイヤ「・・・わからないのですか」

善子「・・・」コクコク

ダイヤ「はあ・・・。もう良いです。私が言いたいのは・・・」



ダイヤ「あなたのみかん嫌いについてです!!」



善子「・・・はいっ!?」


ダイヤ「『はいっ!?』じゃありませんわ!」

善子「いや、みかんは確かに嫌いだけど・・・。それがどうしたのよ?」

ダイヤ「まぁああああっ!? ここまで言っても、まだ事の本質を理解していないのですかっ!?」ズイ

善子「近い近いっ! 顔近いからぁっ!」カァァッ

ダイヤ「問題も問題! 大問題ですっ!!」

善子「な、なにがよぉ・・・っ」

ダイヤ「これはAqoursの存在意義、そのものに関わる問題なのですわっ!」

善子「そんなに重要なのっ!?」

ダイヤ「そんなに重要なのです!!」


ダイヤ「善子さん、私たちAqoursはなんのために活動しているのです?」

善子「それは浦の星の・・・」

ダイヤ「そのとおり。残念ながら廃校は阻止できませんでしたが、Aqoursはこの学校のために、内浦のために、沼津のために活動していたはずですわ」

善子「それはまあ・・・」

ダイヤ「なのにっ!!」バンッ!!

善子「ひぅっ!?」ビクッ!?

ダイヤ「なぜ善子さんはみかんが嫌いなのですかっ!? それはみかんが特産品の沼津に対する当てつけなのですかっ!?」

善子「そこぉっ!?」

ダイヤ「そこしかないでしょうっ!?」


ダイヤ「これがどれ程の背任行為かわからないのですかっ!? 善子さんは大阪に住んでいるのにたこ焼きが嫌いな人を見たことがありますか!?」

ダイヤ「沖縄に住んでいるのにソーキそばが嫌いな人を見たことがありますか!?」

ダイヤ「北海道に住んでいるのに白い恋人が嫌いな人を見たことがありますか!?」

善子「例えが全然ピンと来ないわよっ! 嫌いな人だってわりといそうじゃないの! 白い恋人に至ってはお土産だし! 仕方ないでしょ、嫌いなものは嫌いなのっ!」

ダイヤ「仕方ないですまないから言っているんです! というかなぜそれをわざわざプロフィールに書きますか! 黙っていればわからないものを!!」

善子「黒い所が見え隠れしちゃってるけど!?」


ダイヤ「良いですか。イメージというのは非常に重要なのです。特に私たちのような地元密着型スクールアイドルにとっては」

ダイヤ「今まで地元で有名な飲食店でのアルバイト、名物料理の紹介、水族館でのライブなど様々な手を尽くしてAqoursは地元愛をアピールしてきました」

ダイヤ「そんな中で善子さんもいつかは自分を見つめ直し、プロフィールを変更してくれるものだと、私は考えていました。善子さんを信じていたんです! なのにっ! なのにっ!!」

善子「だ、ダイヤさんっ・・・?」

ダイヤ「善子さんは私のそんな純情な想いを弄び、嘲笑ったのですよっ!?」バンッ!

善子「そこだけ聞いたら誤解されそうなセリフ叫ぶのやめなさいよっ!!」


善子「そこまで言うなら私にだって言いたいことがあるわ!」

ダイヤ「・・・良い度胸ですわね。なんですか?」

善子「ダイヤさんはヨハネが沼津の特産品のみかんを嫌いなのが問題って言ってるのよね?」

ダイヤ「そのとおりです」

善子「なら曜さんはどうなのよっ!?」ビシッ

ダイヤ「曜さん、ですか?」

善子「曜さんだってお刺身が嫌いじゃない! 海の幸は沼津名物でしょ? 苦手でいいの!?」

ダイヤ「・・・!」

善子「ふふん」




ダイヤ「いや、それでも善子さんに問題があることに変わりはありませんわよ?」

善子「ですよねー」


ダイヤ「それに曜さんはあくまで生魚がダメなだけでしょう? 善子さんとは話が違いますわ!」

善子「ぐぅ・・・」

ダイヤ「あと日本は島国なのです。海がない県の方が少ないのですから、海の幸なんてありきたりなものは印象が薄いでしょう?」

善子「それ、網元の娘が絶対に言っちゃいけないヤツよねっ!?」

ダイヤ「事実を言っているのです。まあ仮に曜さんがアジを名指しで嫌いなんて書いていたなら、黒澤家の娘として『話し合い』をする必要もあったかもしれませんが」ウフフ

善子「ひぃっ・・・」ガクガク


ダイヤ「さて、話を戻しましょうか。Aqoursの一員であるあなたがみかんを嫌いであるという事実は、もう看過できないのです」

善子「じゃあどうしろって言うのよ!」

ダイヤ「克服してもらいます」

善子「えっ・・・」

ダイヤ「今ここでみかんを克服してもらうと言っているんです! このとおりみかんの準備はバッチリですわ!」ドンッ!

善子「む、むりむりむりむり! 絶対無理ぃっ!!」

ダイヤ「なぜですっ!? なぜそんなにみかんを拒むのですか!」


ダイヤ「はっ!?」

ダイヤ「もしや、この『みかん』というのは、果物のみかんではなく千歌さんを暗喩する単語なのですか?」

善子「はあああああっ!?」

ダイヤ「・・・千歌さんと、実は上手くやれていないのですか?」

善子「その哀れむみたいな目やめなさいっ! 千歌さんとは普通に仲良くやってるわよ!!」

ダイヤ「本当に? 善子さんがそう思い込んでいるだけではなく?」

善子「ち、違うわよっ!」

ダイヤ「絶対にそうだと証明できますか?」

善子「もうやめて。本当に泣きそう」


善子「私が嫌いなのは正真正銘果物のみかんなのっ! 千歌さんじゃないっ!」

ダイヤ「それなら、みかんのどこがそんなに苦手なのです?」

善子「全部よ全部っ! みかんはあらゆる手段でヨハネを陥れようとしてくる悪魔の食べ物なのよっ!」

ダイヤ「・・・いや、悪魔の食べ物なら堕天使である善子さんは大好きな食べ物という事になるのでは?」

善子「こんな時だけ堕天使設定持ち出さないでよっ! って、設定じゃないっ! 悪魔と堕天使では全然違うのっ!!」

ダイヤ「はぁ、はいはい。ではそのあらゆる手段とやらを説明いただけますか?」

善子「って、流さないでよっ! ダイヤさんがふってきたんでしょっ!?」


ダイヤ「アレルギーがあるなどでしたら、さすがに強制はできませんが・・・」

善子「アレルギーはないわ。というか口に入れる以前の問題なの」

ダイヤ「というと?」

善子「まず皮を剥くときよ! その憎らしいオレンジの悪魔は私の邪眼を封じるべく禍々しい液体を放って攻撃を仕掛けてくるのよっ!」

ダイヤ「・・・はい?」

善子「それだけじゃないわ! 必死の覚悟で皮を剥くことができても私が選ぶみかんはなぜか不味いの! 熟しすぎてたり、酸っぱすぎたりしてとても食べられたものじゃないのよっ!」

ダイヤ「・・・」

善子「10個中で1個くらい、まだ食べられる味のみかんに当たっても、飲み込もうとした瞬間に気管に間違って果汁が入っちゃうこともあるわ! 本当につらいんだから! 咳が止まらないのよっ!? 本当に死ぬかと思うのよっ!?」

ダイヤ「善子さん、前世でみかんに恨まれるようなことでも?」

善子「知らないわよっ!!」


ダイヤ「しかし、そういうことであれば解決策はありますわね」

善子「解決策なんてないわよ! これは私の・・・ヨハネの体質の問題なの! 相性が絶対的に悪すぎるのっ!!」

ダイヤ「ですから、善子さんがしなければ良いだけの話でしょう?」

善子「・・・はい?」

ダイヤ「少しお待ちを」ゴソゴソ

善子「え? え?」

ダイヤ「・・・はい。剥いて差し上げましたわよ? これで汁が飛んだりしないでしょう」

善子「えっと・・・あ、ありがとう・・・」

ダイヤ「はい」ニコ


善子「あ。でもまだダメっ!」

ダイヤ「まだなにか?」

善子「味が・・・」

ダイヤ「私が選んだみかんなのですから、味に問題は無いと思いますが」

善子「私が手に取った瞬間に不味くなるかも・・・」

ダイヤ「どんな被害妄想ですか・・・」

善子「た、だってぇっ・・・」

ダイヤ「・・・まったく、本当に手がかかりますわね。わかりました。私に考えがあります」


ダイヤ「はむ。・・・ん、ちゃんと美味しいですわ。さあ善子さん、口を開けてください」

善子「えっ!? その・・・っ」

善子(それ、ダイヤさんが半分齧ったやつなんだけど!?)

ダイヤ「多少はしたないですが仕方ないでしょう? ちゃんと味見をしないと信用しない上に、あなたが触りたくないと言うんですから」

善子「えええっ!? いや、でも・・・っ」

善子(これって・・・っ、間接・・・!) ドキドキ

ダイヤ「でも、じゃありませんっ! はやく口を開けなさい!」

善子(も、もうどうしろって言うのよーっ!?)


ダイヤ「・・・怖がらなくても大丈夫です」ニコ

善子「えっ・・・?」

ダイヤ「味は私が保証しますわ。あ、ただし落ち着いて飲み込んでくださいね? 私は善子さんにはみかんを美味しく食べていただきたいのですから」

善子(・・・はあ、本当にこの人は)

善子「んっ・・・」カプッモグモグ

ダイヤ「ふふ、どうですか?」

善子「・・・美味しいわよ」

ダイヤ「それは良かった」ニコ

善子「・・・っ」ドキ

善子(味なんて・・・わかるわけないでしょ、ばか)


~~~
~~


【数日後】

ダイヤ「善子さんっ!」

善子「ひぅっ!? な、なによ大声でっ!」

ダイヤ「どういうことですの! これは!」ズイッ

善子「・・・!」

ダイヤ「プロフィール! なぜ更新されていないのですっ!? みかんを美味しいと言っていたのは嘘だったのですか!?」

善子「別に嘘じゃないわよ?」

ダイヤ「それではなぜっ!?」

善子「そんな急には変われないわよ。ずっと嫌いだったんだから」

ダイヤ「許しませんっ! 認められませんわっ!」

善子「ふふ。だから・・・」




善子「今日もお願いして良い? ダイヤさん」




【終わり】

お読みいただきありがとうございました。
依頼出してきます。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom