ゲーム会社社長「ゲームってよく“2が最高傑作”っていわれるじゃん?」 (32)

社長「なぁ、専務」

専務「はい」

社長「ゲームってよく“2が最高傑作”っていわれるじゃん?」

専務「たしかに、そういわれるシリーズは多いですね」

社長「なんでだと思う?」

専務「そうですねえ……」

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専務「ゲームの1、つまり一番最初のものを出す時は、手探り状態で出すわけです」

専務「なので、どうしても荒削りだったり、予期せぬ不満点・反省点が出てくることが多い」

社長「それはそうだな」

専務「当然、作る側としては、2を出す時は『1の問題点を全て改善しよう!』となります」

専務「つまり、2は“続編が出るほど売れた1をより洗練したもの”になるわけです」

社長「ふむ、それはたしかに面白くならないわけがないな!」

社長「だが、ここで疑問が生じる」

社長「それだったら、シリーズが進めば進むほど面白くなるのではないか?」

専務「ところが、そうはならないのです」

専務「作る側もクリエイターですから、売れたらやはり欲や冒険心が出ます」

専務「そこで、完成度の高い2に新たな要素を付け加えて……」

専務「『なんだこれ』『余計な要素つけやがって』といわれてしまうのです」

社長「1、2と順調に進歩させたものを台無しにしてしまうわけだな」

専務「はい、そして3でつまずき、4でも挽回できず……とシリーズごとなくなってしまうわけです」

社長「ならば、余計なことはせず、3は完成度の高い2をそのまま引き継げばよいのでは?」

専務「残念ながら、ユーザーもそう単純ではありません」

専務「新作の骨組みが2とほとんど同じであれば、やはり進歩がないと不満は出てきますし」

専務「不満が出なかったとしても、そのうち必ずマンネリ化します」

専務「やがて、飽きられてシリーズ消滅……となってしまうわけです」

社長「なるほど、受けたことをずっと繰り返してもダメ、というわけか」

社長「専務、ありがとう!」

社長「おかげで、なぜ2は最高傑作と言われがちなのかよく分かった!」

専務「お役に立てて嬉しいです」

社長「……つまりだ」

社長「ゲームを作る時は、常に2を作れば、常に最高傑作が生まれるわけだな!」

専務「はい!?」

専務「社長、あんた何いってんの!? 私の話聞いてました!? 論理が飛躍どころかぶっ飛んでますぜ!」

社長「フフフ、こんなひらめきはこの会社を立ち上げた時以来だ……」

専務「もしもーし!」

社長「よし、全てのゲーム部門に命令を下さねばならん」

社長「『ゲームを作る時は常に2を作れ』と!」

社長「ゆくぞ、専務!」

専務「もうどうにでもなれ!」

<レースゲーム部門>

社長「というわけだ。今作ってるゲームは2にするのだ」

社員A「といわれても……ゲームはもうほぼ完成してしまって、今から変更は……」

専務(そりゃそうだ)

社長「なにぃ? なんというタイトルだ?」

社員A「高速道路でレースをする≪ハイウェイファイト≫です」

社長「だったらタイトルを≪ハイウェイファイト2≫にしろ!」

社員A「は、はいっ!」

専務(えええ……)

社長「続編っぽくするため副題も付けよう。≪ハイウェイファイト2 ~高速の死闘再び~≫にしよう」

専務(なにが“再び”なんだよ……)

<RPG部門>

社長「今はどんなRPGを作ってるんだ?」

社員B「原点回帰して、“魔王を倒すオーソドックスなRPG”を作っています」

社長「そうか……だったら、魔王は前作でもう倒したことにしろ」

社員B「へ!? 前作なんてありませんけど……」

社長「今作のラスボスはそうだな……前作で仲間だったけど闇堕ちした戦士、にするのだ!」

社長「この衝撃的展開、これは売れるぞ!」

専務(なんの思い入れもない奴が闇堕ちしても、なんの衝撃もないだろう……)

<アドベンチャー部門>

社長「探偵が事件を解決するゲームか……」

社長「だったら、2だし、探偵の助手を主人公にしたスピンオフ展開にするのだ!」

専務(初めて出す作品で、スピンオフってのもなんかおかしい気がする)



<シューティング部門>

社長「惑星を駆け回る≪スペースシューター≫というゲームを作っているのなら」

社長「銀河系を駆け巡る≪スペースシューター2≫に作りなおせ!」

専務(1から2でずいぶんスケールでかくなったな……)



<アクションゲーム部門>

社長「主人公の≪ピョンピョイン≫は前作ではジャンプしかできなかったが」

社長「今作では色んなアクションをこなせるようになったことにしろ!」

専務(ことにしろ、ってなんやねん)

≪ハイウェイファイト2 ~高速の死闘再び~≫

≪勇者の冒険譚2 ~闇に堕ちた仲間~≫

≪名探偵ディテク2 ~助手ジョッシュの大活躍!~≫

≪スペースシューター2≫

≪ピョンピョイン2≫

≪血みどろ格闘リング2≫

≪スーパーガラクタ大戦2≫

……

……



社長「ふふふ、これでよし! 見ろ、この豪華なラインナップ!」

社長「売れに売れまくるに違いない! なんたって2は最高傑作の証なのだから!」

専務(ちなみにこれらのゲーム、どれも“1”にあたる作品は存在しません)

ところが――

社長「え、どれもこれも全然売れてない……?」

専務「はい……」

社長「なぜだ!? だってどれも“2”だぞ!? 最高傑作だぞ!?」

専務「最高傑作だからといって、最高に売れるとは限りません」

専務「おそらく、『2ってことは前作があるはず。前作やってないから買うのやめよう』と」

専務「ユーザーが判断してしまったものと思われます」

社長「な、なんてことだ……! そんなことになるなんて、予想もしなかった……!」

専務(私もあんたがここまでアホだとは予想もしなかった……)

専務「あと、大変申し上げにくいのですが……」

社長「ん?」

専務「株主たち、メッチャ怒ってます」



「売れないゲーム連発しやがって!」

「ふざけんなーっ!」

「このワンマン社長が、辞めちまえーっ!」



社長「うわぁぁぁぁぁん! ごめんなさぁぁぁぁぁい!」

……

……





元社長「ふ、ふふふ……この新聞記事……」

元社長「ほら見ろ! やっぱり“2”は最高傑作になるのだ! 最高傑作の証なのだ!」

元社長「私のやったことは、決して間違いではなかったのだぁぁぁ!!!」

『専務だった二代目社長が、急速に会社を立て直し、今期は最高益を達成……』



元社長「よくやったぞ、“二代目”!」

元社長「あれ……おかしいな。嬉しいはずなのに、なぜか涙が……」ホロリ










― 完 ―

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