【SW】姫「私を弟子にしなさいな!」ジェダイ「ええっ!?」【オリキャラ】 (75) 【現行スレ】

前作【SW】シス「わらわの弟子にならんか?」ジェダイ「断る!」【オリキャラ】 - SSまとめ速報
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 遠い昔、遥か彼方の銀河系で……



 エピソード3.5 ヤマタイトの姫君


 銀河帝国の時代、ジェダイ・ナイトの生き残りシンノ・カノスは500年前のシス卿ダース・ネーアの復活に立ち会った。
二人はともに反乱同盟軍に加わって帝国軍と戦い、ダークジェダイのジヒス・マーズを倒し、衛星砲台ラグナロクを破壊して勝利を収めた。
しかし依然として物量の不利は覆しがたく、反乱軍艦隊は隠れ家を探して辺境のQC宙域を彷徨うこととなる。

 リゾートのような温暖な気候の惑星クイナワはもっとも有力な候補地であった。
反乱軍は木材搬出用マスドライバー施設の跡地に目をつけ、ここを新たな秘密基地とする。
消耗した装備の修理と補充を進めるとともに、バカンスを楽しみ心と体を癒すシンノたち。
時を同じくして、QC宙域を統治する銀河帝国の傀儡政権「ヤマタイト公国」の王族ミコア姫が座上する宇宙船が惑星クイナワ上空を通過しつつあったのだが……


 蒼い惑星と暗い星空のコントラストが広がる宇宙。
どこか神秘的なその背景の中、ハンマー型のコルヴェットが全速力で逃走を図っていた。
船体に描かれているのはヤマタイト公国の紋章と銀河帝国のエンブレム。
銀河全域に帝国の支配が及んでいる今、迫害される謂れのない所属であった。

 それを追いかけレーザー砲を浴びせているのは、コルヴェットよりもずっと大型の戦闘艦。
全体が曲線で構成された生物的なデザインで、帝国軍のものとは明らかに異質な印象。
その正体はプロヴィデンス級艦――クローン戦争で用いられた分離主義勢力の軍艦である。

 砲撃が命中するたびコルヴェットが纏う光の防御壁は薄れていき、やがて貫かれる。
光弾が立て続けに直撃し、ひときわ大きな爆発が起こると、ヤマタイト艦は目に見えて速度を落とす。
警報音の鳴り響く艦内では、白い装甲服のストームトルーパーや緑の軍服のヤマタイト兵が慌ただしく動き回っていた。


トルーパー1「ハイパードライブに続いて、今のでリアクターがやられたか?とても逃げきれないぞ!」

トルーパー2「だいたい敵は何者なんだ?船からすると分離主義者だが……奴ら、クローン戦争で根絶やしにされたはずじゃ?」

トルーパー3「救援要請が届いたなら、そろそろスター・デストロイヤーが飛んでくるころなんだが」

?「落ちつけ、下っ端ども。見苦しいじゃねえか」


 狼狽する兵士たちの前に姿を現したのは、黒いボディアーマーと兜のようなヘルメットに身を固めた男だ。
腰にはぶら下げた鈍色のライトセーバーがアーマーに触れてカチャリと鳴った。


トルーパー1「じ、尋問官サーティーンス・ブラザー殿……しかし敵の勢力は圧倒的であり……」

サーティーン「圧倒的、ね……ハ、たしかにそうだ。こんなコルヴェット、敵がその気ならとっくに撃沈されてるぜ……しかし奴らはそうはしない。なんでだかわかるか、ああ?」

トルーパー2「……まさか、こちらに乗り込むのが狙い……?」

ヤマタイト兵「きっとミコア姫をさらうつもりに違いない!」

サーティーン「ああそうだ。だったらこっちにも戦いようはあるじゃねえか。白兵戦で援軍の到着まで持ちこたえればいいんだよ」


 プロヴィデンス級艦がコルヴェットに横合いから接近し、トラクター・ビームで引き寄せにかかった。
満身創痍のヤマタイト艦に逃れるすべはなく、二隻はほどなくして接舷状態となる。
すかさずプロヴィデンス級艦がドッキング用通路を伸ばし、コルヴェットの入口ドアと乱暴に接続した。

 ストームトルーパーとヤマタイト兵たちは入口を狙える位置につき、各々ドアにブラスターを向ける。
敵の襲来を待つ表情は固く、不気味な静寂の中で自分の鼓動の音がひどく大きく聞こえる。

 やにわドアの端のあたりから火花が走り、兵士たちは肩をびくりと震わせた。
火花は扉の外周をゆっくりと移動し、ぐるりと一周してから消える。
ほんの一瞬の静寂の後、溶断した扉を蹴り倒して「敵」が姿を現した。


ヤマタイト兵「――なんてことだ、『ブリキ野郎』だ!」


 年配のヤマタイト兵が叫んだ。


b1ドロイド1『突入!』バシュッバシュッ

b1ドロイド2『ヤッチマエー!』バシュッバシュッ


 突入してきたのはまさしく分離主義勢力の尖兵バトルドロイドだった。
青と白に塗り分けられたボディは真新しく、肩に描かれた独立星系連合のエンブレムも鮮やかだ。


ヤマタイト兵「なぜ、まだ動いている……!?」バシュッバシュッ

b1ドロイド1『ウアー!』ガシャン

トルーパー1「ウオオーッ!」バシュッバシュッ

b1ドロイド2『ギャアー!』ガシャン


 兵士たちの緊張と裏腹に、最初の二体はあっけなく撃破された。
トルーパーたちの中には、ヘルメットの中で拍子抜けした表情を浮かべている者もいる。


トルーパー1「……やったのか?」

トルーパー2「なんだ、てんで弱いじゃないか」

ヤマタイト兵「油断するな、次が来る……!」ジャキッ


 そんな中、ヤマタイト兵はただ一人警戒を強める。


b1ドロイド3『行クゾー!』バシュッバシュッ

b1ドロイド4『進メー!』バシュッバシュッ

b1ドロイド5『撃テー!』バシュッバシュッ

b1ドロイド6『バンザーイ!』バシュッバシュッ


 その懸念は的中し、扉の向こうからさらなるバトルドロイドが出現した。
射撃は相変わらず下手だが、撃つ数が二倍になれば命中弾も二倍だった。


トルーパー1「ぐわあっ!」バタッ

トルーパー2「きょ、兄弟ーッ!」

ヤマタイト兵「おのれ!」バシュッバシュッ

トルーパー3「くそーっ!」バシュッバシュッ

b1ドロイド3『ニャアー!』ガシャン

b1ドロイド4『ウワー!』ガシャン


 帝国側の必死の反撃がさらに二体のバトルドロイドを破壊したが、いまだ二体が残る。


b1ドロイド5『マダマダー!』バシュッバシュッ

b1ドロイド6『オラオラー!』バシュッバシュッ

b2ドロイド1『――!』バシュッバシュッ

b2ドロイド2『――!』バシュッバシュッ


 さらに上位機種であるb2スーパー・バトルドロイドまでが姿を現した。
b1と同じく青と白に塗装された機体で、あきらかに戦後製造された新品である。
しかし戦法は変わらず、ずんぐりしたボディの分厚い装甲で敵弾を跳ね返しつつ、ひたすら内蔵ブラスターを連射する。


トルーパー2「うぐうっ!」バタッ

ヤマタイト兵「ぐわっ……」バタッ

トルーパー3「うわっ、うわあ……うわあーっ!」バッ タタタ…


 最後のトルーパーが恐怖にかられて逃げ出し、入口の防御は崩壊した。
ドロイドたちが入口周辺を機械的にクリアリングしたころ、帽子のような識別塗装を持つコマンダー・ドロイドが合流した。
そしてそれに伴い、彼らの「指揮官」もコルヴェットに乗り込んでくる。


コマンダードロイド『首尾ハ?』

b1ドロイド3『入口周辺ハ完全ニ制圧シマシタ。敵ハ艦後部、居住区画ヘ後退シタモヨウ』

コマンダードロイド『ゴ苦労……すたーばる将軍、敵艦ヘノ突入ニ成功シマシタ』

スターバル「見ればわかる!」

マグナガード1『……』

マグナガード2『……』


 「スターバル将軍」はマスクを被り、ケープに身を包んだカリーシュの男であった。
二体のマグナガードを従える姿はかつての分離主義勢力の英雄を想起させるが、ケープの陰の体は生身で、サイボーグではなかった。


スターバル「艦全体を制圧するのだ、速やかに!トルーパーどもは皆殺しだ!」

コマンダードロイド『ラジャ、ラジャ』


 そうして話す間にも、彼の背後ではドッキング用通路から次々とバトルドロイドが乗り込んでくる。
スターバル将軍は自らブラスターを握り、部隊の先陣を切って艦内を進んだ。


 混乱はコルヴェットの後部、居住区格にも及んでいた。
兵士たちが前部へ向かういっぽう、技術者やアストロメク・ドロイドは船の修理のためにあちこち走り回る。


神官「ミコア姫、お早く!他の者に先に脱出ポッドを使われてしまうかもしれませんぞ!」


 その喧噪の中を、ヤマタイトの儀礼服を着た男がせかせかと歩いていく。
彼は気が気でない様子で、後ろからついてくる少女を何度もせかしていた。


ミコア「コイネー、あなたちょっと落ち着きなさいな。彼らにわたくしが殺せるものですか」


 豪胆なのか無知なのか、その少女――ミコア・ロト・ヤマタイトは、敵襲に少しも動じた様子が無かった。
気品ある緑色の装束と金色の髪飾りは気品に満ちていたが、顔立ちや所作には年相応の強気な活発さがあった。


神官「どうしてあなたはそう呑気なのです、ミコア姫!殺す気がないところで、流れ弾に当たるかもしれないではありませんか!」

ミコア「当たりやしません。私にはフォースの加護があります」ツーン

神官「そんなものあてになりませぬ、今度ばかりは私のお諫めだけでは済みませんぞ!さあお早く!」

ミコア「はあ……」


 ミコア姫は溜め息を吐いて神官を追う。
その胸元では、鎖で首から下げた三角錐型のホロクロンが揺れていた。


b1ドロイド『喰ラエー!』バシュバシュ

ヤマタイト兵「ぐわあっ……」バタッ

トルーパー「野郎!」バシュバシュ

b2ドロイド『――!?』ボンッ ガシャン


 その頃戦場は艦中部、2フロアを貫く大ホールに移っていた。
帝国・ヤマタイト軍は階段の上に陣取り、登ってくるドロイドを次々にブラスターで叩き落していく。
しかしドロイド側の応射も激しく、何より数で劣る帝国側は徐々に圧倒されつつあった。
のしのしと前に進み出たスターバルもテラスの上目掛けめちゃくちゃにブラスターを撃ちまくる。


スターバル「ウハ、ウワハハハ!今度は貴様らを助けてくれる正義のヒーローは居ないぞ!ウワハハハーッ!」バシュバシュ


「おっとォ、それはどうかな?」


スターバル「ヌウ!?」


 スターバル将軍は銃声の中から聞こえた挑発的な声を追い、階段の上のテラスを睨んだ。
黒いボディーアーマーとヘルメットに身を固めた男が姿を現し、手すりを飛び越えて、不敵にもドロイド部隊の只中に着地した。


サーティーン「――やあ、諸君」


スターバル「殺せ!」

b1ドロイド『いえす、さー!』ジャキッ

b2ドロイド『――!』ジャキッ

マグナガード1『……!』ガシャッ


 スターバルの号令のもと、ドロイドたちはサーティーンに照準を定める。
しかし尋問官は引き金が引かれるよりも早く集中を高め、周囲にフォースを放った。


サーティーン「ハアッ!」ドウンッ

b1ドロイド『ウアー!』ポーンッ

b2ドロイド『――!?』ポーンッ

マグナガード1『……!?』ポーンッ


 サーティーンの周囲のドロイドたちが弾かれたように吹き飛んだ。
まとめて壁にぶつかった拍子に華奢な手足が絡み合い、もがくだけの金属塊となって壁際に転がった。


 サーティーンは続けてライトセーバーを取り出した。
赤い刃が抜き放たれ、上階の兵士たちは歓声を上げる。


サーティーン「ジェダイは居ないが、尋問官はいるってことだなあ」ブウンッ

スターバル「ヌウ……ドロイドども、下がれ!」


 スターバルは残りのドロイドを下がらせ、ブラスターも収めた。


スターバル「尋問官!私が直々に相手をしてやろう。誇り高き独立星系連合の一員である、このバランタスカ・シブ・スターバルがな!」


 二振りのライトセーバー。
右手に青い刃、左手に緑色の刃を閃かせ、サーティーンに相対する。


サーティーン「誇り高き?ホコリ塗れの間違いじゃねえのか。現実の見えてねえ、懐古主義のコスプレイヤーめ」

スターバル「フン、その武器――お前も元はジェダイだろうに、現実が見えれば帝国の犬になり下がるのか?日和見主義の軟弱者め」

サーティーン「黙れ!てめえなぞに何がわかる……その拾い物の武器でどこまで戦えるか、試してやろうじゃねえかッ!」シュザッ ブウンッ

スターバル「ウワハハハ、やってみろ!」バチッ ブウンッ

 
 こうして二人の剣戟が始まった。
待機を命じられたドロイドはもちろん、テラス上の帝国側兵士たちも息を呑んでその勝負の行方を見守る。
その勝敗にこの戦いの趨勢がゆだねられていることは明らかだった。


サーティーン「フンッ!」ブウンッ

スターバル「ヌオオッ!」バチッ ブウンッ

サーティーン「フンッ!ハアッ!」バチッ ブウンッ

スターバル「オオッ!ダアーッ!」バチッ ブンブウンッ

サーティーン「甘い!」バチバチッ

スターバル「ヌウッ!?」フラッ

サーティーン「おらよっ!」ドウンッ

スターバル「グオッ!?」ポーンッ ドンッ


 サーティーンが隙を見てフォース・プッシュを放つ。
スターバルはホールの入口扉にまで吹き飛ばされ、かろうじて踏みとどまった。


サーティーン「セーバーは一人前だ、褒めてやるよ。だがフォースの扱いでボロが出たなあ?引導を渡してやる!」シュザッ ブウンッ

スターバル「ヌウッ……マグナガード!」バチッ

マグナガード2『……!』ブンッ

サーティーン「ぐああっ!?」バチバチッ

スターバル「ウオオッ!」ブウンッ


 バチュンッ!


 勝負が決したのは一瞬であった。
マグナガードがサーティーンの背中にエレクトロ・スタッフの一撃を浴びせ、感電せしめる。
尋問官が晒したごく僅かな隙に、スターバルがライトセーバーを振り抜く。
その一瞬の後、尋問官の首は切り離されて床にゴロリと転がった。


スターバル「――ワハ、ウワハハハ!これは決闘ではない、戦争だ!バカめ……またライトセーバーのコレクションが増えたわ!」


 スターバルはそれを蹴とばし、死体の手からライトセーバーをもぎ取る。


トルーパー「じ、尋問官殿!」

ヤマタイト兵「……もうおしまいだ……」スック

トルーパー「おい、どこへ行く!?」


 若いヤマタイト兵の一人が絶望の表情で立ち上がった。
ブラスターを捨て、ドロイドとスターバル将軍に向かって両手を上げてみせた。

  
ヤマタイト兵「俺は降伏するぞ!お前らの敵は帝国軍なんだろう、俺はヤマタイティアンだ。巻き添えは御免だ!」


スターバル「ドロイドども!攻撃を再開しろ!」

b1ドロイド『狙エ!』ジャキッ

b2ドロイド『――!』ジャキッ


 スターバル将軍はその申し出をまるっきり無視した。
ドロイドたちが真っ先に狙うのは言わずもがな、武器も持たずに突っ立っているヤマタイト兵だ。


ヤマタイト兵「お、おい待て、よせ!知っていることはなんでも話す!」

コマンダードロイド『ト申シテオリマスガ』

スターバル「知るか。早くやれ」


 バシュバシュバシュッ!バシュバシュバシュバシュバシュ!


ヤマタイト兵「ぐふ」ドシャッ

b1ドロイド『サアー次!』ジャキッ

b2ドロイド『――』ジャキッ

トルーパー「ひいいーっ!」

 
 狙いはテラス上のストームトルーパーたちに移った。
冷酷な射撃がホールからトルーパーたちを駆逐し、艦後部へと追い詰めていく。


スターバル「コマンダー!私は『インドミタブル』へ戻る。残りの掃討は任せたぞ」

コマンダードロイド『喜ンデ』


 スターバル将軍はドロイドに後事を任せ、ホールを出た。
そしてドッキング通路を渡りプロヴィデンス級艦――「インドミタブル」へ戻る。


 そのころ、神官とミコア姫は脱出ポッドのもとへ辿り着いていた。
しかし銃声に混じってトルーパーたちの悲鳴、絶叫が聞こえ、二人の焦燥は一層増す。


神官「よかった、脱出ポッドはすべて残っております!さあ姫、お早く!」

ミコア「え、ええ――」

b1ドロイド『ン?誰ダ、ソコニイルノハ?』ヌッ

ミコア「!ドロイドが!」

神官「うおおっ!」ジャキッ バシュバシュ

b1ドロイド『ウアー!』ガシャンッ

神官「私は敵を食い止めます、姫は脱出を!」グイッ


 神官はブラスターを構え、後ろ手にミコア姫を脱出ポッドに押し込んだ。
その間にも新たなバトル・ドロイドが廊下の奥から姿を現す。


b2ドロイド『――!』バシュバシュバシュ

神官「うぐう!」バスッ

ミコア「コ、コイネー……!」

神官「あ、あなたがヤマタイトの最後の末裔。どうか我々の殉じる伝統を、受け継いでください!」ポチッ


 射出ボタンが押され、ミコア姫の乗った脱出ポッドは宇宙空間へ解き放たれる。
ミコア姫は窓のほうへ身を乗り出してコルヴェットを見た。
射出口を塞いだエネルギー・シールド越しに、神官がスーパー・バトルドロイドの射撃を受けて崩れ落ちる姿が見えた。

 ――彼女を乗せた脱出ポッドはオートパイロット・モードのまま、眼下の惑星クイナワへ降下していく……


スターバル「ネブカドネザル艦長!状況は!?」

ネブカドネザル『スターバル将軍。先ホドこるヴぇっとヲ完全ニ制圧シタト連絡ガアリマシタ』


 ドロイドたちが黙々とコンソールに向かって作業に取り組む、薄暗く無機質な艦橋。
その中央で指揮を執る「ネブカドネザル」もまたドロイド――高度な指揮官タイプである「スーパー戦術ドロイド」だった。


スターバル「結構!ミコア姫は捕捉したか?」

ネブカドネザル『イイエ。シカシ脱出ぽっどノ一ツガ射出サレタノヲきゃっちシマシタ、オソラクソレニ乗ッテイタモノカト』

スターバル「脱出したか。普通なら追跡するところだが、そろそろ帝国軍の救援艦隊も迫っているだろうしな……」

ネブカドネザル『コノ宙域ニ留マッタ場合、捕捉サレル確率83%……アト、モウ一ツ。ていてぃす卿カラほろねっと通信ガ』

スターバル「何だと!?テイティス卿から!?なぜそれを先に言わん!?」ギョッ

ネブカドネザル『状況ハ、ト尋ネラレマシタノデ』

スターバル「グウウ、とにかくすぐに応答しろ!ここに繋ぐんだ、早くしろ!」


 ネブカドネザルがコンソールを操作すると、戦略テーブル上に「テイティス卿」の3D映像が立ち上がった。
黒いローブを着た背の高い男で、その表情はフードの陰となっていた。
スターバル将軍は跪き、恭しく話を切り出す。


スターバル「お待たせしましたテイティス卿……我々は先ほどヤマタイトのコルヴェットを捕捉、制圧しました」

テイティス『ミコア姫はどうした?』

スターバル「脱出ポッドに乗って逃亡しました。おそらく至近の惑星クイナワに逃れたものかと……しかし我々はこれ以上クイナワ上空に留まることは難しく……」

テイティス『そうか。ではお前たちは戻ってよい』


 スターバルはごくあっさりとした返答に驚いて顔を上げた。


テイティス『あとは私がやる。我がマスターもそれをお望みだ』


 テイティスのフードの陰が少し見える――顔をすっぽりと覆う金属質な仮面と、その奥から覗く四つの目。
青白い3Ⅾ映像では判らないが、実際の彼の目はシス特有の黄色の瞳を持っていた。


スターバル「……はっ、では引き揚げの準備に取り掛かりますので、失礼致します」

テイティス『事態は全て我々の想定内で推移している。お前たちの行動で台無しにせぬよう心せよ』


 通信が切断され、ダース・テイティスの姿は消える。
スターバルは立ち上がりケープを払うと、艦橋を歩いて、ビューポートから眼下の景色を睨んだ。


スターバル「……ケッ!シスめ、威張りくさって……」


 眼下に広がる惑星クイナワは蒼い海が広がり、その中に緑豊かな島々が散らばる南国の星。
そして今は反乱同盟軍の潜伏先でもある――テイティスに命じられてそれを突き止めたのはスターバルたちだった。


 ――数日後、惑星クイナワ。
太陽を頂くターコイズの空とネイビーの海との隙間、水平線にモクモクした雲が少し。
海原の中に点在する島々は豊かな緑に覆われ、湿っぽく温かい風が吹き抜けて、シイヨークと呼ばれる四枚羽根の海鳥が飛んでいく。


リズマ「……」ブオン


 その浜辺で、リズマ・ショーニンがライトセーバーを構えていた。
ごくラフで涼しげな服を着て、長い髪を高いところでまとめている。
彼女は緑色の刃を振りかざし、眼前に浮かぶ「ボール型のもの」を注視する。


ドロイド「――」シューッ シューッ

リズマ「……」スス…


 ボール型のドロイドはガス漏れのような音とともに、空中を滑るように動く。
そのたびリズマは「第三の構え」の姿勢のまま、ドロイドのほうへ油断なく向き直る。


ドロイド「――」シューッ シューッ

リズマ「……」スス…


ドロイド「――」シューッ ピタッ

リズマ「!」


 ピュン! ピュン! ピュン!


リズマ「ふんっ!」ピシッ ピシッ ピシッ


 何度か動いた後、ドロイドが訓練用ビームを三連射した。
リズマは光の刃を閃かせ、そのことごとくをドロイドめがけ跳ね返す。


ドロイド「」バチッ ボトッ

シンノ「……よし、やめ!」


 リズマの後ろからシンノ・カノスが姿を現し、撃墜された訓練ドロイドを拾い上げた。
彼も気候相応の服装で、肌は僅かに日焼けしつつあった。


リズマ「ふうー……どうでしょうか、マスター?」

シンノ「うん、だいぶサマになってきたな……あとは反復練習と、実戦経験次第だろう。『第三の構え』の授業は終わりだな」

リズマ「……!はい、ありがとうございます!」


 リズマはぺこりと頭を下げる。
彼女がシンノのパダワンとなってからしばらく経っていたが、彼はいまだに「マスター」と呼ばれることにこそばゆい感覚を覚えていた。


リズマ「では、さっそく自分で練習をしたいのですが……ドロイドを貸していただいても?」

シンノ「それはいいが……少し休憩してからのほうがいいんじゃないか?喉とか、乾かいてないか」

リズマ「平気です!……たぶん」


 シンノは苦笑しつつ、訓練ドロイドを投げ渡す。
リズマは礼を言って、すぐにそれを再び空中へ放った。
訓練を続けるパダワンを残し、シンノは近くに突き立てたパラソルの下、砂浜に敷いたシートに腰を下ろす。


ネーア「モグモグ、一区切りついたようじゃの」


 そこには先客がいた――復活した500年前のシスの暗黒卿、ダース・ネーアである。
その肩書はきわめて凶悪だが、今の彼女は多少フォースが使えるだけの少女に過ぎなかった。
ローブを黒いTシャツに着替えてシートの上に座り、この暑さの中チョコレート・バーをかじって口の周りをベトベトにしている。


シンノ「口汚ねえな」ゴシゴシ

ネーア「んむむ……それで、リズマの素質はどうなんじゃ、マスター・カノス?」

シンノ「彼女は優秀だよ、俺なんかにはもったいないくらいに」

ネーア「なるほど。では妾の弟子にしようかのう」

シンノ「笑えないぞ」ジロリ

ネーア「カカカ、そうじゃった。弟子になるのはそなたじゃったな」

シンノ「言ってろ……」ハア


ユスカ「シーンノっ!」


 そのとき、ユスカ・ショーニンがパラソルの陰を覗き込んだ。
顔立ちはリズマに瓜二つだが、髪は活発な性格そのままに短く、パンツタイプの水着を着ている。
彼女はジェダイではないが、リズマの双子の姉であった。


シンノ「おっ、ユスカ。よくここがわかったな?ジェダイの秘密の訓練場へようこそ」

ユスカ「訓練場ね、そのわりにマスター・ジェダイ様はこんなところで涼んでいらっしゃるけど?」ニヤニヤ

シンノ「マスターは偉いんだよ……いや、リズマにも休むようにいったんだが、本人がな」

ユスカ「へえ……見上げたもんだね」


 ユスカはそう言って、波打ち際でライトセーバーを振るう妹を見やる。
シンノにはその口ぶりがどことなく他人行儀に思われた。


シンノ「なんか他人事みたいだな、妹だろ?」

ユスカ「いやあ、妹って言っても、リズマは生まれてすぐジェダイ騎士団に行っちゃったから……会ったのって戦後なんだよね」

シンノ「ああ、そうか……」


 珍しい話では無かろう――シンノも自分の出自に思いをはせた。
アウターリムの生まれだとは聞いているが、どの惑星なのかも、両親の顔や名前も知らなかった。
間もなくリズマがユスカを見つけ、少し驚いたような顔をしたあと、訓練ドロイドを捕まえてパラソルのほうへ駆け寄る。


リズマ「はあはあ、姉さん、来てたんですね!」

ユスカ「ああ、うん。張り切ってるじゃん」

ネーア「ほれ、水ぞよ」スッ

リズマ「あっ、ありがとうネーアちゃん……ゴクゴク」

シンノ「このぶんじゃすぐに俺より強くなるかもな……さて、どうするユスカ?お前もライトセーバーを使ってみるか」

ユスカ「えっ、いいの!?」

シンノ「いいとも。リズマの姉ならセンスあるぞ、きっと?」

ユスカ「ああ、そういうこと……じゃなかった!」ハッ

シンノ「何だ?」

ユスカ「シカーグ将軍があんたとリズマを呼んでるの。ジェダイ向けの仕事があるんだって」


 その頃惑星クイナワのちょうど裏側、都市リシュー上空の衛星軌道。
帝国軍のスター・デストロイヤーが漂流していたヤマタイト艦を収容し、艦内へ大勢のストームトルーパーが乗り込みつつあった。
その先頭に立つマンダロリアン・アーマー姿の男が、バトル・ドロイドの残骸を踏みしめて苦々しい顔をした。


タクージン「……フン、もう二度と見るこたないと思っていたぜ……忌々しいブリキ野郎が!」


 タクージン・シカーグ――QC宙域帝国軍の総督である。


ナイン「総督」


 そしてその背後から黒い装甲服姿の男が姿を現す。
背中にはナックルガードじみたリング状のパーツが付いた特殊なライトセーバーを携行していた。
尋問官の一人、ナインス・ブラザーである。


ナイン「護衛に就いていたサーティーンの死体を見つけました」

タクージン「うむ、やはり殺されていたか。このぶんではミコア姫も――うおっ!」


 振り返ったタクージンは飛び上がらんばかりに驚いた。
ナインは平然とサーティーンの生首を抱えていたのだ。


タクージン「なんで持ってくるんだ、捨ててこいそんなもの!」

ナイン「しかし、この切り口に気になる点がありまして」

タクージン「気になる点だと?」

ナイン「はい。この首のところの切り口が、このように焼き切れています」クルッ

タクージン「ああー、いちいち見せなくていい!結論だけ言え!」

ナイン「はい。その他壁に残されていた痕跡も同様ですが、バイブロ・ブレードではこうはなりません。間違いなくライトセーバーの切り口です」ポイッ ドサッ


タクージン「ライトセーバーだと!?……ジェダイの仕業だというのか!?」

ナイン「いえ、クローン戦争を戦ったジェダイならばバトル・ドロイドを目の敵にしているはず。それを引き連れてくるというのは腑に落ちません」

タクージン「ふん、元ジェダイのお前が言うならそうなのかもしれんが……生き残るためならドロイドでもなんでも使うんじゃないかね?」

ナイン「それほど追い詰められているならこんな、帝国軍に喧嘩を売るような真似はしないでしょう。少なくともライトセーバーを使っていたずらに帝国軍の注意を引くことはしないはずです」

タクージン「では下手人は誰だというんだ?」

ナイン「ごく少数ですが、ジェダイでなくともライトセーバーを使う者はいます。総督と同じマンダロリアンか、あるいは……ドゥークー伯爵、グリーヴァス将軍に連なる使い手」

タクージン「分離主義者か?……ふむ、QC宙域には未だに大規模な残党が潜んでいるというからな。ありうることだ」

サギ「ちょっとお待ちくださいィ……」


 そのとき、もう一人、ひょろ長い体形の男が姿を現した。
帝国保安局のエージェント・サギである。


タクージン「サギか。何だ」

サギ「分離主義者がどうだか知りませんが、反乱軍にはジェダイが居るといいますゥ……ハクカの一件で勢いづいた反乱軍の仕業だと考えるのが自然ではありませんかァ?」

ナイン「その可能性が十分にあるのも事実です。私も朧げではありますが、フォースを通して何かしらの気配を感じております」

タクージン「ふむ……とすれば、奴らは今までヤマタイトは攻撃しなかったが、ここを通った途端攻撃したということは……この近辺に反乱軍がいるに違いない」

サギ「すぐにこの星系全体に検問を配置しましょォ……」

ナイン「……ところでミコア姫のことは」

タクージン「知るか、反乱軍に連れ去られて行方不明とでも報告しておけ。ハクカの借りもある、とにかく反乱軍を探し出すのが先決だ!」

ナイン「……はい、総督」


 ――数日後。


ユスカ「私一番乗り!」スタッ

ネーア「じゃあ妾二番乗り!」スタッ

シンノ「子どもか!」スタッ


 一行がWウィングから飛び降りる。
到着したのは惑星クイナワで二番目の規模を誇る都市、リシューである。
相変わらずの雲一つない青空、強い陽射しに目を細めつつ仰ぎ見る中心街には、いくつも派手な楼閣が建っていた。


職員「じゃあ、ハイ、ランディングパッド使用料200、駐機場使用料200、合わせて400ね」

シンノ「停めるだけで400かよ、よそ者だからって足元見やがって」チャリンッ

職員「あいやー、手厳しいね。でもちゃんと払ってくれるお客さん好きよ」

シンノ「道案内のチップと口止め料込みだよ。ザイン・ザ・ハットの城はどっちだ?」

職員「ザイン様のお城?あそこはスネに傷のある奴らの溜まり場ね。さてはお客さんもその口ね?」ニヤニヤ


 職員はにやにやしながら地図を走り書きして寄越した。
シンノはそれを受け取ると、苦笑しながら仲間のもとに戻る。


シンノ「俺、そんな悪人顔か?」

ユスカ「けっこうずる賢い顔はしてるかもね?」ニヤニヤ

ネーア「ジェダイには向いてないぞよ」ニヤニヤ

シンノ「うるせえ。行くぞ……R3、船は任せたからな」


 シンノはWウィングの天井から顔を出している赤いアストロメク・ドロイドに呼びかける。


R3-C3『プウウー』


 R3は少し不安げな電子音声で答えた。


 惑星クイナワの原住民クイナワンは、殻から引き出したサザエを人型にしたような異様なエイリアンであった。
大通りではその人型サザエと他のエイリアンが入り混じって行き交い、あるいは道沿いの店で買い食いに励んでいる。


シンノ「ほらよ、まずは腹ごしらえだ」スッ

ユスカ「ありがとっ!」パシッ

ネーア「せっかくじゃから土地のものも食っておかんとな……モグモグ、なるほどうまいわい!」


 三人もベンチに腰掛け、タレを塗ったブロック状の魚肉の串焼きを各々胃袋の中に収める。


ユスカ「ところでこれ何の肉だって?」

シンノ「シャッティーっていう魚だ。あの屋根についてるのがそうらしい」


 シンノは近くの店の屋根の上に付けられた、尾を振り上げた魚の装飾を指差した。


ユスカ「へー、尻尾とかカワイイかも」

シンノ「まああれはだいぶデフォルメされてるみたいだけどな……」

ユスカ「こんな美味しい魚がいつでも食べられるなんて、クイナワンがちょっとうらやましいかも……モグモグ」

シンノ「じゃあサザエ人間に嫁入りするか」

ユスカ「それはヤダ」

シンノ「ハハハ、だろうな……モグモグ……」


 シンノは串焼きを齧りつつ、今回リシューに赴くこととなった切っ掛けを思い出す……


 シカーグ将軍に呼び出されたシンノとリズマは、マスドライバー施設跡の反乱軍基地に戻った。
将軍がいる司令部は、管理棟と呼ばれていたらしい建物の中にある。


シンノ『ジェダイ向けの仕事と言っていたが、やっぱり荒事なんだろうな』スタスタ

リズマ『大勢で動けばすぐに帝国軍に察知されかねないのが現状ですから……荒事でなくとも、私たちが動かなければならない機会は案外多いかも』スタスタ


 二人が司令部の目の前まで来た時、その扉が乱暴に開け放たれた。


バヤット『フンッ……!』バタンッ スタスタ


 姿を現したのは魚顔のエイリアン「モン・カラマリ」の若き反乱軍将校、サマ・バヤットであった。
彼は憤懣やるかたないといった様子で、きょとんとしたシンノとリズマの横をのしのし歩いていった。


シンノ『……ありゃ、我らがQC反乱軍のナンバー2殿じゃないか。あんなに肩いからせてるのはどういうわけだ』

リズマ『……将軍と何かあったのでしょうか?』

シカーグ『いやはや、お恥ずかしいところを』


 後を追って現れたのは、まさしくテダッフ・シカーグ将軍だ。
マンダロリアン・アーマーをアロハシャツに着替えた陽気な姿で、ばつの悪そうに苦笑いを浮かべている。


シンノ『まあ察しはつくがね……彼のことだ、また前のめりな作戦を提案してきたんじゃないか。例の、衛星軌道上の謎のヤマタイト艦襲撃絡みで』

シカーグ『まさしくその通りだ。例の襲撃で帝国軍の目がこちらに向いていると思い、どこか適当な帝国軍基地を攻撃してそれを逸らそうと言うんだ』

シンノ『今下手に動けばこの場所も露見しかねないんだがな。だったら資材置き場に山積みになってるチュクチャク木材の捌き方でも考えていればいいのに』

シカーグ『まったくだ。ところで、お前たちを呼んだ仕事というのもその戦闘絡みでな。入ってくれ』


 シンノとリズマは司令部に入った。
長年打ち捨てられていたために壁や天井には得体の知れない染みができ、窓も汚れているために部屋は薄暗い。
その中に青白い電子光を放つ設備がぎっしりと並んでおり、一種異様な雰囲気である。


 シカーグは戦略テーブルのコンソールを操作する。
やがて卓上に青白い3D映像で、惑星クイナワの丸い全体像が浮かびあがった。


シカーグ『我々が今いるのはここ、例の戦闘はちょうど星の裏側……都市〈リシュー〉上空で起こった。ちなみに首都〈ハナン・シティ〉はその中間、このあたりだ』


 シカーグの手振りとともに3D映像は拡大・縮小し、地図上にいくつか地名が表示される。


シカーグ『……そしてここから先はレーダー室から出していない情報だが』


 将軍は少し声を潜め、ポケットからメモリーディスクを取り出して戦略テーブルにスロットインした。
地図上、リシュー上空の戦闘があった宙域に小さな光点が点滅した。


シカーグ『例の戦闘があった宙域、戦闘の前後に、ここから地上に降下する物体をキャッチした』

シンノ『降下というと……脱出ポッドか』

シカーグ『そのようだ。襲撃を受けたヤマタイト艦から射出されたとみるのが自然だろう……ポッドはリシュー近辺に不時着したらしい』

シンノ『……なるほど。仕事と言うのは、その脱出者を確保しろと?』

シカーグ『まあそうだが、まずは身元の確認だ。ハードな手に出るかどうかは状況次第だ……ドンパチは無くて済むならそれに越したことはない』

シンノ『まったく同感だな』

リズマ『……あの、言っては何ですが……ジェダイでなくてはいけない事情が何か、あるのですか?』

シカーグ『ああ、もちろんだ……とびきり面倒な事情だ。落人はリシューにいるんだろうが、この町は犯罪王ザイン・ザ・ハットの根城なんだ』

シンノ『ハット?あのハット・ファミリーか?』


 シンノは思わず聞き返した。
ジャバ・ザ・ハットを筆頭とするハット一族は、銀河系有数の規模を誇るマフィアの支配者だ。


シカーグ『そうだ。ザインはファミリー内部の権力争いに敗れてこんなところに流れ着いたらしいが、それでもクイナワンどもよりずっと金を持ってるし、ずっとずる賢い』

シカーグ『こいつがあからさまに訳ありの落人を見逃すはずはないだろう。金になると踏んで身柄を抑えているはずだ……救出するには少し骨が折れる。かといって兵隊を大勢出すわけにはいかん、帝国に嗅ぎ付けられる』

シンノ『それでジェダイが出なきゃならんわけか……それにしても、たかがポッド一つのためにここまでするのはどういうわけだ?』

シカーグ『……これはあくまで裏付けのない、不確実な情報だが……例のヤマタイト艦に、ミコア姫が座上していたという情報があるんだ』

リズマ『ミコア姫!?ミコア姫っていえば……ヤマタイト王国の、トップじゃありませんか!』

シンノ『なるほど、身柄を確保できれば外交カードにすらなりうる……』

シカーグ『しかしあくまで可能性の話だ……そんな話のために二人揃ってここを空けられるのも心細い。どちらか一人だけに頼みたいんだが』


 シンノとリズマは互いを見かわしたが、すぐにシンノが手を挙げた。


シンノ『……では俺が行こう。リズマはちょうど宿題もあるしな』

リズマ『!……はい!〈第三の型〉、練習しておきますっ!』

シカーグ『よろしい。じゃあシンノには、明日にでもリシューに向かってもらうことになるが……メカニックか何か、必要な人員はいるか?言ってくれれば随行するように命令書を出すぞ』

シンノ『ん?そうだな……手数はあるにこしたことはないが、あまり大勢で行っても仕方ないしな……じゃあ……』


 物語はリシューの街角のベンチに戻る。


シンノ(俺とR3-C3、フォース・レーダー役のネーアと、最低限の手数兼いざというときのドンパチ要員のユスカ……で充分……この三人と一体で充分。じっくり下見して、コッソリやれば荒事にはなるまい)モグモグ

ユスカ「あー、おいしかった……でもちょっと脂っこいかも。魚肉なのに」

ネーア「ほんと、なんでこんな脂乗っ取るんじゃろうな。養殖かのう」

シンノ「まあそれだけ力出るだろう」パンパンッ

ユスカ「というと、早速ブラスターの出番かしら?」ジャキッ

シンノ「は、早まるな……まずはザインの城に潜り込んで、脱出ポッドの乗員がいるかどうか確かめることだ。幸い犯罪者の溜まり場らしいからな、そう苦労はするまい」


 シンノは行くぞ、と声をかけて立ち上がった。
地図に従い進む彼を、ユスカとネーアが追いかける。
……ネーアが振り返り、あたりを見回す。


ネーア(……ううむ、この気配……気のせいかのう?)

シンノ「ネーア、どうした?」

ネーア「あ、いや……何でもない。今行くぞよ」


 城内のホールは様々な種族のエイリアンたちでごった返していた。
マフィアや運び屋、殺し屋、賞金稼ぎと、いずれも後ろめたい生業に従事している者たちばかりだ。
聞こえるのはあらゆる言語の話し声、笑い声、そして太鼓にリードされた陽気な音楽。


クイナワン楽士「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハーイーヤ!」ドンドコドンドコ


 その人混みの中を、ある男がバーカウンターを目指して進んでいた。
爬虫類じみた肌と、顔から突き出たトゲを持つエイリアンの海賊、ホンドー・オナカーである。


ホンドー「はい、はい、はいと!悪いね!どいてくれ!――マスター、ジャワ・カクテル一つ!ロックでな!」

バーテン「アイアイ」

ホンドー(フー、仕事がねえかと来たはいいが、どいつもこいつも食えねえ奴ばっかりで商売がやりにくいったらねえぜ――ん?)


 カウンターに腰かけたホンドーは、隣に座っている客に目をやった。
青い肌、鼻の無い顔、赤い目、印象的な頬の呼吸用チューブにトレードマークの帽子……


ホンドー「ベイン!あんたキャド・ベインじゃないのかい!?」

ベイン「……チッ、デケエ声で……」

ホンドー「大声にもなるさ、あんた、ベインといったらジャンゴ以来の大物賞金稼ぎじゃあないか!」

ホンドー「共和国に逮捕されたと聞いたが、なるほどムショで収まってるほど小さい男じゃなかったってえわけだ。おっと、申し遅れたな、俺は――」

ベイン「ホンドーだろ。知ってるぜ……とびきり胡散臭い海賊だってな。失せろ」

ホンドー「胡散臭いたあ穏やかじゃないな、俺はたしかに海賊だが、同時にビジネスマンでもある。これはもしもの話だが、あんたのネームバリューと俺の人脈が合わされば――」

ベイン「相手を選びな、ウィークウェイの旦那」


 ベインはホールの端、大きく開いたテラスのほうを指差す。
そこはコロシアムじみたすり鉢状観覧席の一角となっている。
すり鉢の底は海から水が引き込まれ、観覧席から飛び込み台じみた板が突き出していた。


ベイン「コナかける相手を間違うと真っ逆さまだぜ」


 ザイン・ザ・ハットとの商売を誤魔化そうとした密売人がそこから突き落とされ、人食い魚の餌となるのはよくあることだった。


クイナワン楽士「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハーイーヤ!」ドンドコドンドコ


 演奏は続き、酒宴も続く。
やがてシンノ一行もホールに姿を現す。
入口でクイナワンの門番が身分証明を求めたが、シンノが手をフッと振ると道を開けたのだった。


シンノ「こんな腐った場所はハクカの酒場以来だな……あまり長居すると俺の脳味噌まで腐りそうだ」

ユスカ「同感、さっさと済ませなきゃね」

ネーア「……」キョロキョロ

シンノ「さて、VIPはどこか、と……」

ネーア「シンノよ」

シンノ「ん?何だネーア」

ネーア「悪いが、ちょっと別行動を取らせてもらうぞよ」

シンノ「?ああ……」


 ネーアはしきりにあたりを見回しながら人込みに消えた。
ローブを着込んでいるので小柄なエイリアンだと思われているらしく、注目する者は居ないようだ。


ユスカ「何だって?」

シンノ「さあ……フォースを感じる力はあいつのほうが上なんでな、何か感じたのかもしれん。とにかく俺たちは本題に……」


 そのとき、テラスの外から高らかに鐘を打ち鳴らす音が響き渡った。
シンノとユスカが怪訝に思う一方で、ホールの人々は何かを期待するような顔で三々五々テラスに移る。


運び屋「いよいよ処刑タイムだな!」ドヤドヤ

マフィア「俺なんてこれが楽しみで来たんだぜ」ドヤドヤ

ユスカ「シ、シンノ、処刑タイムって……?」

シンノ「わからん……とりあえず出てみるか」


 二人はそれに続いてテラスに出て、眩しい日の光に目を細めつつ、他の観客の視線を追った。
飛び込み台が突き出したあたりの観覧席が舞台のように広く整えられている。
音楽は何かを待つかのように止んでいて、今、日陰からその舞台へと大きな影がゆっくり進み出る。
鎌首をもたげたナメクジのような巨体である。


シンノ「ザイン・ザ・ハットか……!?」


 ザインの背後に、鎖と首輪で拘束された少女の姿がある。
事前の情報とフォースの直感がシンノにその少女の正体を悟らせた。


シンノ「あれが……」

ミコア「……」

シンノ「ミコア姫か……!」

ユスカ「あの女の子が!?」ヒソヒソ

シンノ「あ、ああ、間違いない……しかししばらく様子を見ないことには……」


ザイン「・・・・・・!・・・・・・!」


 ザインが唸るようなハット語で何やら喋った。
すかさず後ろから通訳ドロイドが進み出て、電子の声を張り上げる。


通訳ドロイド『偉大なるザイン様は〈親愛なる悪人の皆様、今日も来ていただけて嬉しい〉と仰っています』


 テラスの観客がどっと湧く。


ザイン「・・・・・・。・・・・・・!」

通訳ドロイド『〈皆様の商談も佳境の頃だと思うが、お待ちかねの方もいらっしゃるので、今日のメイン・イベントに移らせていただく〉』


 ザインが手で合図すると、クイナワンの傭兵たちが手錠と腰縄で拘束された男を連行してきた。
そのコレリア人の男はイシュメール。
もと、スパイスの密売人であった。


イシュメール「……へ、へへ……参ったね、こんな注目を浴びたのは生まれて初めてだ。緊張しちまう」

クイナワン「うるせえ!」バキッ

イシュメール「ぐわっ!」


 クイナワンたちは手に手に棒を持ってイシュメールを取り囲み、彼を舞台の隅の飛び込み台へ追いやり始めた。
ザインはニタニタ笑いながら手を叩いて合図し、音楽を再開させる。


クイナワン楽士「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハーイーヤ!」ドンドコドンドコ

シンノ「突き落とすつもりなのか……?」ヒソヒソ

ユスカ「突き落とすったって、さすがに死ぬほど高くなくない……?」ヒソヒソ


 そのとき、コロシアムの底の水面で大きな水音が鳴った。
テラスに集う荒くれ者たちはにやつきながらそちらを見下ろす。
シンノとユスカも戸惑いつつそれに従った。

 その入り江状のプールに、いつのまにか大きな魚影がいくつも現れていた。
今また一匹、興奮した魚が水面から飛び跳ねる。
2,3メートルはあろうかという大きさの、恐竜じみた凶悪な肉食魚である。


海賊「シャッティーどももご馳走が待ち切れないみてえだな!」

シンノ「あれがシャッティー……!?」

ユスカ「え、ちょ、人食い魚ってこと……?私あれ食べ……オエエエエー……!」ゲー


イシュメール「ちょ、まじかよオイ、死ぬのはまだ諦めがつくがさすがにあれに食われるってのは……」

クイナワン「うるせえ!早く飛べ!」ガスガス

マフィア「グダグダ言ってねえで飛べー!沖まで泳げれば逃げられるかもしんねえぞー!」

海賊「飛ーべ!飛ーべ!」


 イシュメールはいよいよ追い詰められ、太鼓の音とともにテラスの悪人たちのテンションは最高潮に達していた。


「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハーイーヤ!」ドンドコドンドコ

「飛ーべ!飛ーべ!飛ーべ!飛ーべ!飛ーべ!」

「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハーイーヤ!」ドンドコドンドコ

「飛ーべ!飛ーべ!飛ーべ!飛ーべ!飛ーべ!」


シンノ「こ、この人でなしどもが……!」ワナワナ

ユスカ「……シンノ?気持ちはわかるけど、ガマンだからね?……どうせあの男もこいつらと同類だろうし」

シンノ「……ユスカ」

ユスカ「はい?」

シンノ「俺は反乱軍の兵士である前に、ジェダイだ!」ピョーンッ


 シンノはそう言い切って、イシュメールたちのいる舞台めがけてフォース・ジャンプで跳躍した。


海賊「!?おい、なんだあいつは!」

マフィア「サプライズ演出か!?」

ユスカ「ちょっとシンノ!?……ああもう!」ダッ


シンノ「はあっ!」タッ ギギギ ピョーンッ


 シンノは飛び込み台に着地し、板をしならせて再度跳躍。
アクロバチックに舞台の上に降り立った。


シンノ「ふっ!」スタッ

ザイン「!」

翻訳ドロイド『?』

ミコア「!」

イシュメール「!?」

クイナワン「!?何だてめえは!?」ザワッ


 シンノはイシュメールをかばうように立ち、青いライトセーバーを抜き放った。
陽の光が降り注ぐ南国の星に、滅んだはずのジェダイの騎士が姿を現した。


シンノ「俺はジェダイ・ナイトのシンノ・カノス。そこの客人を迎えに来た」ビシッ


 シンノは高らかに名乗りを上げ、囚われのミコア姫を指差した。
ミコアはきょとんとした表情だった。


ミコア「……ジェダイが、私を?」


ザイン「・・・・・・!」パチパチパチ


 ザインが手を叩きながら何事か喚いた。


翻訳ドロイド『偉大なるザイン様は〈ジェダイの騎士よ、会えて嬉しい。思いがけないゲストが来たものだ〉と仰っています』

シンノ「ふん、ジェダイ様は『そこのミコア姫とこの囚人をもらっていくぞ』と仰ってるぞ」

イシュメール「お、おい、俺は囚人なんかじゃない!これはその、VIP待遇を受けてただけで……」

ザイン「・・・・・・」ゲラゲラゲラ


 ザインは自分では喋らないがベーシック(銀河共通語)を理解しているらしく、心底嘲るように笑った。
ついで後ろの日陰のほうへ、おざなりなハンドサインを寄越す。


ザイン「・・・・・・!」

翻訳ドロイド『〈ではこちらも全力で阻止しよう。そうでなくては面白い見世物にならない〉』


 それに応えて、日陰からザインの用心棒が姿を現す。
緑色のマンダロリアン・アーマー、ジェットパック、重ブラスター・ピストルの武者姿。


ボバ・フェット「お望みのままに」


 そしてもう一人――こちらは女性である。
高いところでまとめた黒い長髪をきらめかせ、直垂めいた勇ましい民族衣装に身を固める。
斬馬刀じみた長大なエレクトロ・カタナは鞘走る前から殺意を漲らせていた。


クネー「……ジェダイか。会うのは二人目だ。一人目は私が殺したがね」

シンノ「その類のホラはハクカの酒場で聞き飽きたね」

イシュメール「ん?……『クネー』!?お前、クネーじゃないか!」

シンノ「知っているのか?」

クネー「……誰だ?随分馴れ馴れしいな。私は貴様など知らん」

イシュメール「な、何言ってんだ!俺たち七、八年は一緒に仕事してたじゃねえか!」

クネー「ジャバ・ザ・ハットに喧嘩を売っておいて私をタトゥイーンに置き去りにしたジャワにも劣るクソ野郎なら知っているが。名前は何だったかな」

イシュメール「あ、いや、あれはその、たまたまお前の分のチケットが手に入らなくて、知らせる時間もなくて……」

シンノ「お前なんてことを……」


 シンノは守っているはずのコレリア人に軽蔑の視線を向ける。
クネーはフンと鼻を鳴らした。


クネー「そいつに助ける価値など無いぞ、今からでもシャッティーの餌にしてしまえ」

イシュメール「や、やめてくれ!見捨てないでくれ、ジェダイ様!この通りだ!」ペコペコ

シンノ「……思うところがないではないが、俺はジェダイだ。調停者だ。殺生沙汰は止めさせてもらおうか」

クネー「……そうか。後悔するなよ」


ボバ「クネー、無駄話はいつまで続くんだ」イライラ

クネー「焦れるなジュニア。今終わった」シャキンッ


 女武者は冷徹に言い切って、エレクトロ・カタナを抜き放つ。
緩やかな曲線を描く刃に青い電光が走る。


クネー「次は手短に済ませよう」チャキッ バチバチバチ

シンノ「同感だね」ブオンッ


 シンノの闖入で止んでいた音楽が、ザインの指図でふたたび再開する。


クイナワン楽士「――ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハーイーヤ!」ドンドコドンドコ

ミコア「……シンノ……」


 その陰でミコア姫が心配げにジェダイを見つめていた。


ホンドー「こりゃ驚いたぜ。ありゃもしかしてエズラの知り合いだったりするかなあ?」

ベイン「……クソ、ライトセーバーを見てるとクラクラしてくるぜ……ケノービめ……」


「……」


 ジェダイの闖入に騒然とするコロシアム状空間を、人気のない外周通路の窓から眺める人影があった。
全身を覆う黒いローブ、フードの陰から覗く銀色の仮面。
四つの黄色の瞳は舞台上のジェダイと、その向こうを見ている。


ネーア「――一体なにをコソコソしておる?」

「……!」クルッ


 怪人物――ダース・テイティスは、声のほうへ向き直る。
窓から差し込む強い陽射しの向こう、いっそう濃い陰の中に、融け込むような黒装束を纏った少女が立っている。


テイティス「……」

ネーア(……帝国の手の者ならもっと堂々と乗りこんでくるはず。この様子では、違うようじゃな……しかし……)

ネーア「……そなた、すごい『臭い』ぞよ。隠そうとしても隠しきれておれん」

ネーア「帝国のダークジェダイなんかよりずっとひどい……どす黒いドブの臭いじゃ」

テイティス「……」

テイティス「……臭うな、貴様も……そんななりで、一丁前に……」


 テイティスは唸るような妙な声で――そもそも目の数からして人間ではない――答え、右手を確かめるようにスナップする。


ネーア(……間違いない。出自はわからんが、こいつも妾と同じ……正統のシス!)


ネーア「……何が目的……といっても、シスの行動原理なぞ知れておるな」

ネーア「何を壊しに来た……何を殺しに来た?ザイン・ザ・ハットか?ミコア姫か?それとも……あのジェダイ?」

テイティス「……ジェダイとしての彼は、いずれは。しかし今はまだ」


 その右手をゆっくりと持ち上げ、差し伸べて――


テイティス「その時ではない!」ゴウッ!


 その掌から青白い炎を放射した!


ネーア「!?この技は!?」バチバチバチッ!


 ネーアもフォース・ライトニングで応戦する。
取り戻されつつある彼女のダークサイドの力が稲妻となって放たれ、青白い炎と激突し、スパークした。
ネーアの目が一瞬眩み、その瞬間、テイティスはローブをはためかせて走り去る。


ネーア「!待っ……!」

ユスカ「ハアハアハア、あれ、ネーア!?」ガチャッ


ネーア「ユスカ?何じゃ、何かあったのか!?」

ユスカ「何かあったも何も、あのバカが……シンノが、ザインの傭兵に真っ向から喧嘩しかけてくれちゃって!」

ネーア「うわあ、あのバカ!」

クイナワン傭兵「おい待て、何してる!ここは関係者以外立ち入り禁止――」ガチャッ

ユスカ「るっさい!」ジャキッ バシュバシュバシュ!

クイナワン傭兵「ぐふっ」ドシャアッ

ユスカ「とにかくネーア、一緒に来て!お姫様の居場所はわかったの、こうなったら一刻も早くオサラバするに限る!」ジャキッ

ネーア「まったく、この面子の潜入はつくづく長続きしないのう……」ヤレヤレ


 ユスカはシンノのいるステージのほうへ走り出し、ネーアもそれに続く。


ユスカ「――もしもし、R3?緊急事態発生よ!すぐに船をザインの城にまわして!」タタタ

ネーア(何をしとるんじゃあのバカ弟子は……まあ、そんなところもあいつらしいか)タタタ

ネーア(しかし、さっきのシスもシンノを何かしら気にかけているようじゃったが……一体、あいつの正体は……)タタタ



 一方、ステージ上――


ボバ「喰らえ……!」ボウッ!

シンノ「うおおっ!」サッ ゴロゴロ


 シンノはボバ・フェットの火炎放射を転がって避けるが、その先にクネーがエレクトロ・カタナを振りかぶって迫る!


クネー「フンッ!」ブウンッ!

シンノ「危ねえな!」サッ タッ

クネー「危なくしてるんだ……!」ブウンッ!ブウンッ!

シンノ「いらんことを!」ブウンッ!

クネー「チッ!」バチッ サッ


 熟練のジェダイは攻勢を跳ね返すが、賞金稼ぎもまた抜け目なく対応。
さらには反撃に転じる。


クネー「ジュニア!」

ボバ「言われずとも!」ビュンッ!

シンノ「ッ!?これは!」グルグルッ!


 ボバが放ったウィップコードがシンノの両脚に絡みつき回避を封じた!


ボバ「ジェダイ……あの世で俺の父に詫び続けろ!」ジャキッ

シンノ「無理な相談だ……!」グッ

クネー「あっ!?」グイッ


 シンノがフォースでクネーを引き寄せ、捕まえて盾にする!


ボバ「!?何をしている、クネー!」

シンノ「こんなもの……!」ブツンッ


 さらにその隙にライトセーバーでコードを切断し――


クネー「放せ、ジェダイ野郎!」ジタバタ

シンノ「お望みのままに!」ドカッ!

クネー「うおっ!」ビューンッ

ボバ「ぐおっ!」ドガッ


 フォース・キックでクネーをボバめがけ蹴り飛ばした。
二人は激突して転倒、下敷きになったボバのジェットパックから火花が散る。


クネー「おのれ……」スック

ボバ「ぬうっ……」スック

シンノ「さあ、どうする。まだやるか?」ブウンッ

ザイン「・・・・・・!」ダンッ!


 ザイン・ザ・ハットが苛立たし気に玉座の肘置きを叩き、ぞんざいな手振りでクイナワンの傭兵を集結させる。


クイナワン傭兵A「……」ジャキッ

クイナワン傭兵B「……」ジャキッ

クイナワン傭兵C「……」ジャキッ

クイナワン傭兵D「……」ジャキッ

クイナワン傭兵E「……」ジャキッ

シンノ「……寄ってたかって……」

イシュメール「やっぱりこうなるか……どうするジェダイさん、白旗でも上げてみるかい?」

ザイン「・・・・・・。・・・・・・」

翻訳ドロイド『〈不愉快だ。実に無駄な茶番であった〉』

ザイン「・・・・・――!?」ググッ

翻訳ドロイド『〈だが決闘の結果がどうであろうとこの城から逃れることは〉……?』チラッ


ミコア「私の客人にこれ以上の無礼は許しません!」グググ

ザイン「・・・・・・!?・・・・・・!?」ジタバタ

シンノ「!?」

イシュメール「何ィ!?」


 何たることか、ミコア姫が自らを戒めていた鎖を使ってザインの首を絞めにかかっている!


シンノ(何てアグレッシブな姫だ!……ん?)

クイナワン傭兵A「このクソガキ!」ジャキッ

クイナワン傭兵B「やめろ、ザイン様に当たる!」グイッ

クイナワン傭兵C「それ以前に姫だぞ、VIPだぞ!何考えてるんだ!」アワアワ

クイナワン傭兵D「この状況でVIPも何もあるか!」ワタワタ

クイナワン傭兵E「とにかく引き剥がせ!」グイグイ

ミコア「ええい、離しなさい無礼者!」グイグイ

ザイン「・・・・・・」キュー

シンノ「今なら……!」グググ…


 傭兵たちの意識が逸れた隙に、シンノは自分のフォースを力を最大限高める。
そしてそれを両手から一気に解放する!


シンノ「ハアッ!」ドウンッ!

クイナワン傭兵A~D「ウワーッ!」ポロポロ


 チャージ・フォースプッシュはステージ上のサザエ人間たちを一気に叩き落した!


クイナワン傭兵E「!?貴様ッ!」クルッ ジャキッ

ユスカ「シンノ!危ない!」バシュバシュッ

クイナワン傭兵E「ぐはっ」ドシャッ

シンノ「!ユスカ!」

ユスカ「まったく、結局ブラスター沙汰じゃない……」

ネーア「シンノ!囲まれる前に姫を連れて脱出を――おっ!」


 そのとき、ステージ上に大きな影が差す。
見上げれば、ステージめがけゆっくりと垂直降下するWウィングが縄梯子を垂らしてくる。


ネーア「R3じゃな!」パシッ

ユスカ「愚痴ばっかりだけど仕事はするね、アイツ!」パシッ

シンノ「さあさ、姫もこちらへ!」パシッ

ミコア「ええ、感謝しますよジェダイ!」パシッ

イシュメール「ジェダイ万歳!」パシッ


 一行は一息にザインの城からの脱出を図る。
しかしそのときステージの隅から、ボバ・フェットが背中のロケットランチャーの狙いをWウィングに定めていた!


ボバ「逃さんぞ!」バシュッ!


 ロケット弾はWウィングのエンジンの一つを過たず貫き、爆発!
エンジンから黒煙が噴き出し、機体がグラグラ揺れる!


ユスカ「うわっ、やった!」

ネーア「R3!早く上昇せんかーッ!」

シンノ「あんの賞金稼ぎめが!」ドウンッ!

ボバ「ウワアーッ!?」ポーンッ


 報復とばかりに放ったフォース・プッシュがボバをステージから突き落とす。
故障したジェットパックは虚しくガスを噴くばかりで、賞金稼ぎはそのまま人食い魚のプールに転落!


シャッティー「グアアアーッ!」バシャバシャ

ボバ「ウワッ、ウワアアアーッ!助けてくれー!」バシャバシャ


 ――その光景を尻目に、Wウィングは煙を吹きつつも上昇。
反乱軍の戦士たちとゲストはザインの城から逃げ延びる……


 その後。


クイナワン傭兵「ザイン様!絞められた首は大丈夫ですか」

ザイン「・・・・・・。・・・・・・!」

翻訳ドロイド『偉大なるザイン様は〈まだ痛みよるわ、奴らは絶対に逃がしてはならん。追手を差し向け、一人残らず殺せ〉と仰っています』

クイナワン傭兵「しょ、承知しました!」タタタ

ザイン「・・・・・・……」ズルズル

翻訳ドロイド『……』



 ザインはなおも憤懣やるかたないといった表情で城の中に姿を消す。
翻訳ドロイドはそれを無感動に見送った後、ステージのすぐ下の観覧席、プールに向かって屈みこんでいる女用心棒に目をやった。


クネー「っしょ……っしょ……」グイグイ


 見れば、プールに垂らしたワイヤーを手繰っているようである。
その先に掴まっているのは――


ボバ「は、早く上げてくれクネー!し、下でシャッティーが!シャッティーが!」ジタバタ

シャッティー「グアウウウ」バシャバシャ

ボバ「ウアアアー!クネェー!」ジタバタ

クネー「哀れっぽい声を出すな……よっ、と……掴まれ!」

ボバ「ウオオ!」ガシッ

クネー「ふんっ!」グイッ

ボバ「フハアッ!……ハアーッ、ハアーッ、ハアーッ、悪い、クネー……」ズベッ


 ずぶぬれの賞金稼ぎが観覧席に引っ張り上げられる。
ボバ・フェットはなんとか立ち上がり、忌々し気にプールを見下ろす。


ボバ「あ、あ、あ、あのクソ魚どもが、自分の土俵で粋がりやがって……ジェットパックさえ壊れていなければ……」ブツブツ

クネー「災難だったな……元はと言えば、イシュメールの奴をザインに突き出すだけのはずが……」

ボバ「まったくだ!賞金首を捕まえるだけの契約だったものを、ゴネられてボディーガードの真似をさせられ、ジェダイと戦わされ、挙句の果てあんな化け物に食われかけるとは……もう二度とザインの仕事は請け負わん!」

クネー「フン……私もクイナワには飽きてきたところだ……このうえジェダイと追いかけっこなんざ御免だね」

ボバ「よし、じゃあ早速俺がザインに話をつけてこよう。機嫌が悪いようだが知るか。このやたらギラギラした太陽もクソシャッティーももうウンザリだ!代金はキッチリいただいてハクカのカジノで一勝負といくぞ!」


 ボバが階段を上り、ステージを通ってザインの居室へと向かう。
クネーは彼を釣り上げたワイヤーを片付け、脇に置いていた長いエレクトロ・カタナを取り上げ……
ふと、影が差す。
クネーは自分を見下ろして立つ人影をジロリと見やった。


テイティス「……」

クネー「……あんたは?」

テイティス「……」

テイティス「仕事を頼みたい」


 ――謎のシス卿と賞金稼ぎの接触。
そこでどんな会話がなされたのか、今はまだ定かではない。

 密談を終えて二人が別れたしばらく後、ザインの翻訳ドロイドが人気のない外周通路に姿を現した。
機械的にあたりを見回して人目がないことを確認すると、手首に仕込まれた秘密のホロネット通信機を起動する。
腕時計めいた仕込みデバイスから、小さな3Ⅾ映像が立ち上がる――


スターバル『――ザザッ、潜入ドロイドOO-7!』


 ノイズ混じりながら、それは紛れもなくカリーシュの分離主義勢力残党指導者、スターバル将軍である!


スターバル『動いたのか――ザリザリッ――況が!』

翻訳ドロイド『はい。ダース・テイティスと賞金稼ぎクネーの接触を確認。指向性高感度マイクロフォンにて会話を録音しました。これよりデータを送信します』


 そう言ってドロイドは自分の中の音声データを秘匿回線にてスターバル将軍に送信する。
指向性高感度マイクロフォンなど本来プロトコル・ドロイドには組み込まれない装備であり――
もはやこの翻訳ドロイドが分離主義勢力の送り込んだスパイ・ドロイドであることに疑いはない。


スターバル『ガガッ――認した!よくやった潜入ドロイドOO-7、この――ザザッ――値千金だ!』

翻訳ドロイド『他にジェダイも確認しましたが、すでに逃亡しました』

スターバル『ジェダイ?捨ておけ!そこに反乱軍が隠れていることはすでに――ザザーッ――重要なのは、これによってシスを出し抜くこと……!』

翻訳ドロイド『これから私はどう行動しましょうか』

スターバル『ふむ……テイティス自身もフットワークが軽――ガリガリッ――わざわざ用心棒を雇うということはだ。自分ではできない何かしらの役割を――ザザーッ』

スターバル『あからさまに重要だ!奴らの計画の要だ!OO-7、貴様はそのザインの――ザリザリッ――を中断し、その賞金稼ぎを追跡せよ!くれぐれもバレないように、だ……!』

翻訳ドロイド『承知しました』

スターバル『では通信を――ザザッ――ガリガリーッ――ブツン!』


 翻訳ドロイドは通信機のスイッチを切ると、早足でザインの城のエントランスへ向かう。
ザインとの契約を打ち切り城を去るであろうクネーを待ち伏せ、後をつけるために……


 ――翌日、惑星クイナワ首都ハナン・シティ。
中心街から一本裏手に入った道に面するジャンクショップの中に、いつもの面々の姿があった。


ネーア「……高いのう」ヒソヒソ

シンノ「高いな」ヒソヒソ


 ショーウインドーにへばりつくネーアと、それを上から覗き込むシンノ。
中に収められているのは一抱えもある鉄塊――Wウィングのエンジンである。
貼り付けられた値札の数字の桁数はなかなか信じがたいものだ。


ネーア「……」チラッ

シンノ「……」チラッ

店主「……」バサ


 店主はアイソリアン(シュモクザメに似た種族)で、首のあたりに自動翻訳機を付けている。
番台じみた席の上、すました顔で新聞を読んでいた。


ネーア「……」ツンツン

シンノ「!……」チラッ

店主「……」ムスーッ

シンノ「……」フルフル

ネーア「……」ゲシゲシ

シンノ「チッ……あ、あのー……」

店主『はい』サッ

シンノ「……これ、もうちょっと安かったら買うのにな、なんて……」

店主『はあ。でも純正品ですから』

シンノ「ですよね……さ、さあネーアちゃん、外の売り場を見に行こうか!」グイグイ

ネーア「そ、そう押すでない……」


 ある程度品質の高い商品が置かれている店内と一転して、屋外売り場には鉄屑同然の機械類が山積みになっている。
その中を薄汚れた作業着姿のローディアン(口が長く突き出た種族)が物色して回っていた。


客(フーム……やっぱりこのあたりのジャンクヤードは、高値で転売できそうなものはあらかた掘りつくされてしまっているか……)ハア

客(――それにしても……)チラ


 ローディアンの男は鉄屑の山を一つ挟んだ向こう、あれこれ話しながら売り場を見て回る三人の男女をひそかに見やる。


客(あいつら、見ない顔だな……)

イシュメール「これもエンジンじゃないのか?」

ユスカ「それはポッドレーサーのやつ。Wウィングとは規格が違うから代用にもならない」ガチャガチャ


 話しかけるイシュメールはスカーフで顔を隠し、帽子をかぶって変装している。
胡散臭い商売で生き延びてきただけあって慣れたものだった。


イシュメール「ヘエー、よくわかるな……」

ユスカ「工具揃えれば繋げないことはないけど、こう野ざらしになってたヤツじゃ無理だね……もとが純正品とかならともかく」ガチャガチャ

イシュメール「なるほど、なるほど……」フムフム

ユスカ「……何?何かわかったの?」

イシュメール「いや、機械に強い女の子ってのもアリだなって思って」

ユスカ「は?」ジロッ

イシュメール「ナンデモナイ」

ミコア「ユスカとやら!これはなんでしょう?この瓶の中の水……ややくすんではいますが、宝石のような――」


 そう言ってガラスシリンダー状の機械部品を取り上げるのはミコア姫である。
その出で立ちはヤマタイト王族装束から、ザイン好みの奴隷衣装を経て、ハナンシティの服屋で買ったラフなシャツとハーフパンツに変わっている。


ユスカ「え?……わ、わあ!捨てて捨てて!それ中身が有毒だってんでリコールになったヤツだよ!」

ミコア「え?は、はい……」ポイッ

ミコア「――それにしても、ゴミ山のようでも一つ一つ見ていくとなかなか面白いものがあるものね!もっと何かないかしら!」ガチャガチャ

ユスカ「も、もう何も触んないでよー!」


 やがて店内売り場からさらに二人、連れらしき男と少女が現れる。


シンノ「自分で言えよ自分で!」バシッ

ネーア「いって!……で、でもどうするのじゃ?替えのエンジンが見つからないことには基地に帰れんのじゃろう?」ヒソヒソ

シンノ「ああ……Wウィング自体も、いつまでも郊外に隠しておけないしな」ヒソヒソ

ネーア「前から思ってたんじゃが、シカーグ将軍に助けを呼ぶわけにはいかんのか?」ヒソヒソ

シンノ「通信を傍受されるかもしれないし、万が一反乱軍本隊とザイン軍の戦争にでもなったらまず間違いなく帝国に露見するからな……何より」ヒソヒソ

ネーア「何より?」ヒソヒソ

シンノ「自分のケツを自分で拭けないなんてカッコ悪いだろ」ヒソヒソ

ネーア「……そなた、けっこう呑気じゃな」ヒソヒソ

ユスカ「あっ!シンノ、ネーア!こっちこっち!」


 入口のあたりで話していた二人をユスカが見つけ、呼び寄せる。
シンノたちは小走りで三人に合流した。


シンノ「どうだ、首尾は?」

ユスカ「全然ダメ。TIEファイターの動力伝達チューブとかならいくらでも転がってるんだけど……エンジン丸々一個となるとね」ハア

シンノ「そうか……だが聞いて驚け。こっちはほぼ理想的な状態のWウィングエンジンを見つけた」

ユスカ「本当!?」

シンノ「しかもメーカー純正品だ」

ユスカ「最高じゃない!」

シンノ「だろ?……でも高すぎてとても手が出ない」

ユスカ「最初に!それを言いなさいよっ!」バッシイッ!

シンノ「いって!」


客(Wウィング?)


 たまたまその会話が耳に入ると、ローディアンの男ははっとした。
安酒場で人づてに聞いた、ザインが高額の賞金を懸ける人物の情報を思い出す。


客(たしかその賞金首はジェダイ崩れで、Wウィングに乗っていて……一味の構成は……)チラチラ


 善後策について話し合う五人を、ローディアンは屑鉄の山の陰から盗み見る。


客(間違いない……!あいつらだ!あいつらの情報をザインに売れば……!)


 男は思わぬ大儲けのチャンスに内心昂揚しつつも、ごくさりげなくその場を離れた。
建物の陰に入るとすぐに走り出し、屋外売り場から直接駐車場へとまろび出るように駆けていく。


ユスカ「……?」


 その足音を聞きつけたのか、あるいは視線を感じていたのか。
ユスカが一人、そちらのほうを振り返る。


客「ハアーッ!ハアーッ!ハアーッ!」


 ローディアンの男は激しく興奮しつつ、自分のスピーダーに飛び乗った。
カーステレオめいて組み込まれた旧式のコムリンク通信機を起動し、震える手でダイヤルを捻り、周波数をザインへの通報ポートに合わせる。


客(賞金、賞金、賞金だ……!食い物も、酒も、女も、いくらでも買える……)カチカチ

客(いや、違う!商売だ!商売を始めよう!死んだおやじがやっていたローディア・ヌードルショップを復活させるんだ。こんなゴミ漁りの仕事なんて辞めて――!?)


 運転席の窓をノックされ、男はぎょっとしてそちらを振り返る。


ユスカ「――ちょっとあんた」

客「――!」


 バレた!?
ローディアンの男の脳内がスパークし、ほとんど反射的にダッシュボードを開けてブラスター・ピストルを取り出す!


ユスカ「あっバカ……!」

客「ウワアアアーッ!」ジャキッ

ユスカ「く……」バシュバシュバシュッ!


 次の瞬間、ローディアンの男の体が助手席側へ吹き飛び、倒れ込んで動かなくなった。
ユスカが窓の下、男の死角からドア越しにブラスターを発射したのだ。


ユスカ「……最悪」


 男のただならぬ様子を見て取ったユスカは、ノックする前から――「相手が銃を抜く前から」、密かにブラスターを構えていた。
ブラスター・ガスがぷんと臭い、ユスカは顔をしかめる。


シンノ「ユスカ!なんの騒ぎだ!?」タタタ

ネーア「ザインの手の者か?」タタタ


 銃声に気づいた四人が後を追ってくる。


ユスカ「ああ、皆……こいつ、たぶんザインに通報しようとしてたみたい……」

シンノ「ザインに!?」

イシュメール「へっ、『迷子情報』はもう行き渡ってるみたいだなあ?」

ミコア「マイゴジョーホー?」

ネーア「ジェダイどもを皆殺しにするか、ザインの城に引っ立てて行きゃお小遣いがもらえるってとこじゃろ」フン

シンノ「とすると、あの店主も……」

イシュメール「あのアイソリアンもグルなら、今頃押っ取り刀で駆け付けたザイン軍団になぶり殺しにされてる頃だ。あいつはシロだな」

ユスカ「……で、このローディアン……話そうとしたんだけど、撃ってきそうだったから……その……」

シンノ「……そうか」ポンッ


 シンノは複雑な表情をしつつも、労わるようにユスカの肩を叩く。


シンノ「……ご苦労さん」

ユスカ「……うん」


 しかし一方で、イシュメールがドアの弾痕を覗き込みながら無神経なことを言う。


イシュメール「ヒャー、これ、ドアぶち抜いて撃ったのか?ユスカちゃん、やるなあ……」

ユスカ「ッ!」ガシッ


 ユスカは向き直ってその胸倉を掴み上げた。


イシュメール「お、おいっ!?」

ユスカ「……あんたねえ……!」ワナワナ

イシュメール「なんだよ、手際を褒めただけだろ!?」

ユスカ「――」プチッ


 平手打ちなどという生易しいものではなく、捻りこみを加えた理想的な右ストレートがイシュメールの左頬を捉えた。


ミコア「きゃあっ!」

ネーア「……シンノ、何か言わんのか?調停者なんじゃろ」

シンノ「あーあー何も見てない」ワーワー

ネーア(イシュメールの自業自得とはいえ……ジェダイマスターが見たらブチ切れるじゃろこんなの。あっ、ジェダイはキレんか)


 イシュメールは運転席のドアに背中を打ち付け、呆然とした後、すぐに怒りの表情を覗かせる。


イシュメール「なっ……こ、こんのクソアマ――!」

ユスカ「……」


 しかし彼が殴り返すようなことはなかった。
相対するユスカの目が潤んでいるのを見るや、イシュメールはばつが悪そうな顔をした。


イシュメール「……アー、その……悪かったよ」ボリボリ


 そして頭を掻きながら謝罪さえした。
ユスカは黙ってそれに背を向けて、小さな声で言う。


ユスカ「……あんただけが間違ってるなんて言わないけど。私、もうあんたと一緒には居たくない」

ユスカ「ここで別れようよ。リスクの分散とかにも、なるでしょ」

イシュメール「い、いや待て待て!なぜそうなる、それは困る」


 イシュメールはすぐに元気を取り戻して主張を始めた。


イシュメール「俺なんてブラスターも持ってないし――あっ、このローディアン野郎の銃もらっとこ」ヒョイッ

イシュメール「――ブラスターこそ持ってるが、ひ弱な商人に過ぎないんだぜ?ジェダイ様に見捨てられたらすぐに殺されちまう!」


シンノ「……まあ、それはどうでもいいが」

イシュメール「どうでもいい!?今どうでもいいって言った!?」

シンノ「ユスカ、よく考えてくれ。こいつがザインに捕まったらどうすると思う?まず間違いなくWウィングの在処から何から全部ゲロるぞ」

イシュメール「ああ、それはあるな」シレッ

シンノ「……嘘でも否定しろよ……」シラー

ネーア(ここでこやつを殺しちまうのが最適解だと思うのは妾がシスだからじゃろうか)

ユスカ「でも……」

イシュメール「しかし、だ」


 イシュメールは芝居がかった仕草で指をぴんと立てて笑う。


イシュメール「なに、エンジンが買えないって?――俺が用意してやるぜ、その金を!」

シンノ「……あてがあるのかよ?」シラー

イシュメール「ああ。俺は星系を股にかけるビジネスマンだ。人脈に関しちゃQC宙域で敵う奴はいない……」

ユスカ「……なんか胡散臭いんだけど」ムスー

ネーア「自分から人脈とか人望とかを誇る人間にろくなやつはいないぞよ」ヘッ

イシュメール「黙らっしゃい!それとも他にアイディアがあるってのかい?」

ユスカ「ヘタな賭けに突っ込んで自滅するよか、他の方法をゆっくり考えた方がマシでしょ」

イシュメール「ザインの手はもう町中に伸びてる、ゆっくり考えられる場所なんて無いぜ!?ジェダイさんもそう思うだろ!?」クルッ

シンノ「……」シラー

イシュメール「ジェダイさん?」

シンノ「……言っちゃなんだが、自分が切り捨てられそうになった途端ずいぶん元気になったな」シラー

イシュメール「ジェダイさん!?」


ミコア「……おほん。言っておきますが、今更彼を切り捨てるなんて許しませんよ」


 煮え切らない会話を凛とした声が遮った。
ミコア姫はラフな恰好でもなお、王族らしい毅然とした態度を保っていた。


シンノ「ミコア姫……だが、こいつの言うことはあまり信用ならんしな……」

ミコア「はじめに彼を助けたのはあなたでしょう。ジェダイなら最後まで守り抜いてみせなさい、責任をもって」

シンノ「……」

イシュメール「……改めてそう言われるとなんか居心地が悪いが……」ブツブツ

シンノ「……そうだな。まあ、この星から出るまでくらいは面倒を見よう」

ユスカ「シンノ!?」

シンノ「ユスカ、お前の気持ちもわかるが、他に金のあてがないのも事実なんだ。なんとかわかってくれ」

ユスカ「……う、うん……」

イシュメール「やったぜ!そういうことだから、仲良くしてくれユスカちゃん!」ポンポン

ユスカ「触んな」バッシイッ!

イシュメール「いっってっっ!」ガクウッ

ミコア「……はあ、私が何を言っても、この調子では……」ヤレヤレ

ネーア「さあ、そうと決まれば早いところ『金のあて』とやらのところに連れて行ってもらおうぞ」

イシュメール「あ、ああ……じゃあそういうことだからジェダイさん、貸し一つだぜ」

シンノ「貸し!?貸しだと!?命を救われた相手に言うことか!?」

ユスカ「やっぱりこいつここで置いていこうよ」ジャキッ

ネーア「チャカはもうしまわんか!」

イシュメール「それはそれ、これはこれだろ?言ったろ、俺はビジネスマンなんだよ。慈善事業家じゃない。あんたはそうかもしれんが」

シンノ「クソ、もうなんでもいい。幸いスピーダーは手に入れた、早いとこ案内してくれ……」


 同時刻、マスドライバー施設跡の反乱軍秘密基地にはスコールが降り注いでいた。
物資集積場にはシートに覆われたチュクチャク木材の山がいくつも並び、灰色の空の下、生ぬるい雨に濡れている。


C7-BDB『将軍ヨオ。ユスカタチ、ウマクヤッテッカナア』


 旧管理棟に設けられた作戦室。
集積場の景色をぼんやり眺めつつ、銀色の料理人ドロイドC7-BDBがシカーグ将軍に尋ねる。
彼はユスカと兄弟同然の付き合いだった。


シカーグ「ああ、そういえばそろそろ連絡があってもいい頃だが……」


 シカーグは、壁際、平たいクッションをいくつも積み上げた上に胡坐するリズマに目をやった。


リズマ「……」


 彼女は静かに瞑目して瞑想にふけっている。
この蒸し暑さの中、ジェダイ騎士団制式の衣装をきっちり着込みながらも、汗一つかかずにかれこれ五時間もこうしていた。
シカーグはその平静の向こうに彼女のマスターの影を見た。


シカーグ「……シンノが一緒だからな、大丈夫さ」

C7-BDB『……マ、ソウダナ。ユスカダッテ、ソウソウドウコウデキルヨウナオ嬢様デモネエヤ』

バヤット「――そうでもないようです、将軍」ガチャッ


 割り込んできたのはモン・カラマリの青年将校サマ・バヤットである。


シカーグ「ン……?それはどういう意味だ」

バヤット「ただ今入った情報なのですが、ザイン・ザ・ハットがリシューやハナン・シティにシンノさんらしき男の指名手配をかけているようでして」

シカーグ「何だと……!?」

C7-BDB『ナ、ナンデシンノハソンナコトニナッテルノニ連絡ノ一ツモ寄越サナインダ!?』

バヤット「しかしこれだけの騒ぎが起きているということは、その中心にミコア姫がいることは間違いありません……将軍、本隊を派遣し姫の身柄を確保しましょう!」

シカーグ「……」


 バヤットの提案は常に過剰に攻撃なことを知りつつも、ヤマタイト王国の最高権力者を確保するチャンスを前にシカーグ将軍は一瞬逡巡した。
もう一度リズマに目をやる。


リズマ「……」


 瞑想中とはいえ、この衝撃的なニュースは彼女の耳にも入っているはず。
しかし女ジェダイは眉一つ動かさず、何事もなかったかのように座っている。


シカーグ「……いや、シンノたちに任せよう」

バヤット「何故!?」

シカーグ「そんな状況でも連絡がないということは、あえてせずにいるということだ。傍受を恐れてか、本隊を動かさせるのをためらってかはわからんが……少なくとも、シンノたちにはそういうことを気にするだけの余力がある」

バヤット「連絡ができないような怪我をしているのかも……」

シカーグ「あいつはジェダイ・ナイトだぞ。ザインの私兵ども相手にそこまで後れをとることはまずないだろう」

C7-BDB『ソウイヤソウダ。惑星ハクカカラコッチ、アイツガドレダケ鉄火場ヲ潜リ抜ケテキタコトヤラ……』


バヤット「く……し、しかし……」

シカーグ「……それとバヤット。お前はシンノたちの身の安全じゃなく、ミコア姫の身柄を気にしてはいなかったか。そんな姿勢では人は動かんぞ」

シカーグ「常々言っていることだが、正義を守るにはまず、仲間を守らなければならん。遠くの理想ではなく足元の現実を見るんだ。そしてそこからどう歩いていくか考えろ」

バヤット「……は、はっ……」


 シカーグに諭され、バヤットはすごすごと退散する。
……いや、ドアを開けかけたところで一度振り返る。


バヤット「……あの、これ以降もこの件に関する情報収集はしたほうが……?」

シカーグ「ん?ああ、そうだな。お前から情報部に言っておいてくれ」

バヤット「はっ……失礼します」ガチャッ バタン

C7-BDB『……相変ワラズ、ナンカ危ナッカシイヤツダナ?』

シカーグ「……だが気はよく回るだろう。仲間を守ることも、自分が心から大切と思っていなくとも、必要とあらばできる奴だ。だから副司令官に置いている」


 二人はどちらからともなく窓の外に目を向ける。
スコールはいつのまにか上がり、雲間から日の光が差し込み始め、地上の水たまりをきらきらと輝かせていた。


リズマ「……」


 リズマはなおも瞑想にふける。
かすかに聞こえていたC7-BDBの言葉が、彼女にこれまでの戦いの数々を想起させた。

 ヤマタイティア星系惑星ハクカ上空、衛星砲台ラグナロクにおけるジヒス・マーズとの決闘。
同星系惑星ハンカッタ、帝国軍尋問官イレブンス・ブラザーおよびトゥエルブス・シスターとの死闘。
ナグサック星系の惑星デジム、ひそかに進出してきた外宇宙生命体ユージャン・ヴォングとの遭遇。
宙域外縁部暗礁宙域、スノークなる謎のダークサイダーとの邂逅……

 いずれもライトセーバーが必要な事態となったが、いつもシンノと共にあった。
そして戦場をくぐるよりもずっと多く、一つの食卓を囲んで会話を交わした。
今彼女はマスターのことを真に理解し、信頼している。
だから離れても動揺はしない……


シンノ「……」


 ジャンクヤードでの一幕の数日後。
シンノはゴワついたライダースーツに身を包み、フルフェイスヘルメットを被って、強い日差しの下に立っていた。
スタンド一杯の観衆はエンターテインメントの開幕を待ちわびて、シンノと、ほか九人の主役に声援を投げかけている。


シンノ(どうしてこうなった……)


 シンノは熱気と大音響にうんざりしながら、自分の横で浮遊する機械を見やった。
二つの並列エンジンと、それに牽引される格好の操縦席――ポッドレーサー。
単純で乱暴な構造である。
たしかその発祥は、獣が曳く乗り物を無理矢理エンジン駆動に変えたものであったか。


ユスカ「シンノー!頑張って!」


 ユスカがスタンド最前列の関係者席で手を振っている。
横にはつまらなそうな顔をしたネーアや、しきりにあたりを見回すミコア姫もいる。
その近くではイシュメールとサラスタン(大きな目とネズミのような耳を持つ種族)の男が何やら口論していた。


サラスタン「おい、本当に大丈夫なんだろうな!?『フェザリオン』を……いや、それ以前に、俺のマシンをぶっ壊しやがったら承知しねえぞ!」

イシュメール「俺のマシンたって、お前は操縦なんてできねえんだから、どっちにしろ人を雇うにゃ違いねえだろ。その点あいつは腕っこきだ。俺が言うんだから間違いない」

サラスタン「お前の言うことなんか信用できねえ!」

イシュメール「やかましい!あんまグダグダ言ってると『あのこと』バラすぞ?」

サラスタン「ぐっ……!」


実況『さあポッドレース・ハナンカップ3000cc部門、選手紹介に参りましょう!』


 アナウンスとともに観客がいっそう大きな歓声を上げる。


実況『エントリーナンバー1!ハナンカップ絶対王者、我らの英雄〈オルフェ〉と愛機〈フェザリオン〉!』


 観客の視線と声援は白と金のシャープな機体と、その横に立つ男に集中する。


オルフェ「……」ス…

オルフェ「……」ピッ


 騎士じみた鎧を纏ったその男は、黙って指を一本立てた。
観客の期待の声が爆発のように湧き上がるのを聞きつつ、シンノはそちらを見やった。


シンノ(あのサラスタンの男が資金提供の対価に要求したのは、こいつより上の順位を取ること……こいつを倒すこと)

シンノ(その条件だけを考えれば、スタート直後にフォースのイカサマで機体を転覆させてもいい……というか、危険なポッドレースにおいてはそれが一番安全な手段かもしれないわけだが……)

オルフェ「……」ジロッ

シンノ「!……」


実況『エントリーナンバー2!タトゥイーンからの刺客、ガイナワカップの征服者〈セブルバJr〉!』

セブルバJr「ドーモ、ドーモ!……オルフェ!今日こそテメエのそのスカしたメットを剥いでやるぜ!」

オルフェ「……」フイッ

セブルバJr「ケーッ!」

実況『エントリーナンバー3!永遠の3位、安定の3位〈カスタム兄弟〉!』

カスタム兄「失礼なアナウンスだな、弟者」

カスタム弟「まったくだ兄者。好き好んで3位でいるわけではない」


 アナウンスは続き、シンノは自分がエントリーシートに記入した偽名が呼ばれるのも気づいたが、いまだ意識はオルフェと視線の交錯した一瞬にあった。
おそらく、オルフェはデータのない選手を気にしただけであろう。
しかしシンノはその瞬間、思いがけない緊張感を覚えて目をそらした。
兜のバイザー越しに、あるいはフォース越しに、彼のレーサーとしての気概――情熱――否、もはや人生と結びついた確固とした目的意識を見た気がした。


シンノ(絶対王者……か)

実況『さあいよいよレースへ参りましょう!本部門は極短距離障害レース、勝負はトラック2周で決します!』


 アナウンスと地上の係員の案内の下、選手とポッドレーサーはスタートラインへと移動する。
シンノも所定の位置に就くと、エンジンを一通りチェックした後操縦席に身を沈めた。


実況『観客の皆さんの限りない期待とともに!カウント・ダウーン!――3!』

シンノ(だが俺にも戦う理由はある)

実況『2!』

シンノ(なんとも妙な展開になったがオルフェを倒し、エンジンを買ってWウィングを修理し――)

実況『1!』

シンノ(ミコア姫を連れて、基地へ帰る!)

実況『――スタートッ!』


 観客の歓声の奔流とともに、九台のポッドレーサーが決闘を開始した。
一台はスタートダッシュを試みてエンジンが暴走、爆発した――ポッドレースは命の危険と隣り合わせの競技である。

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