【SW】姫「私を弟子にしなさいな!」ジェダイ「ええっ!?」【オリキャラ】 (124)

前作【SW】シス「わらわの弟子にならんか?」ジェダイ「断る!」【オリキャラ】 - SSまとめ速報
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 遠い昔、遥か彼方の銀河系で……



 エピソード3.5 ヤマタイトの姫君


 銀河帝国の時代、ジェダイ・ナイトの生き残りシンノ・カノスは500年前のシス卿ダース・ネーアの復活に立ち会った。
二人はともに反乱同盟軍に加わって帝国軍と戦い、ダークジェダイのジヒス・マーズを倒し、衛星砲台ラグナロクを破壊して勝利を収めた。
しかし依然として物量の不利は覆しがたく、反乱軍艦隊は隠れ家を探して辺境のQC宙域を彷徨うこととなる。

 リゾートのような温暖な気候の惑星クイナワはもっとも有力な候補地であった。
反乱軍は木材搬出用マスドライバー施設の跡地に目をつけ、ここを新たな秘密基地とする。
消耗した装備の修理と補充を進めるとともに、バカンスを楽しみ心と体を癒すシンノたち。
時を同じくして、QC宙域を統治する銀河帝国の傀儡政権「ヤマタイト公国」の王族ミコア姫が座上する宇宙船が惑星クイナワ上空を通過しつつあったのだが……


 蒼い惑星と暗い星空のコントラストが広がる宇宙。
どこか神秘的なその背景の中、ハンマー型のコルヴェットが全速力で逃走を図っていた。
船体に描かれているのはヤマタイト公国の紋章と銀河帝国のエンブレム。
銀河全域に帝国の支配が及んでいる今、迫害される謂れのない所属であった。

 それを追いかけレーザー砲を浴びせているのは、コルヴェットよりもずっと大型の戦闘艦。
全体が曲線で構成された生物的なデザインで、帝国軍のものとは明らかに異質な印象。
その正体はプロヴィデンス級艦――クローン戦争で用いられた分離主義勢力の軍艦である。

 砲撃が命中するたびコルヴェットが纏う光の防御壁は薄れていき、やがて貫かれる。
光弾が立て続けに直撃し、ひときわ大きな爆発が起こると、ヤマタイト艦は目に見えて速度を落とす。
警報音の鳴り響く艦内では、白い装甲服のストームトルーパーや緑の軍服のヤマタイト兵が慌ただしく動き回っていた。


トルーパー1「ハイパードライブに続いて、今のでリアクターがやられたか?とても逃げきれないぞ!」

トルーパー2「だいたい敵は何者なんだ?船からすると分離主義者だが……奴ら、クローン戦争で根絶やしにされたはずじゃ?」

トルーパー3「救援要請が届いたなら、そろそろスター・デストロイヤーが飛んでくるころなんだが」

?「落ちつけ、下っ端ども。見苦しいじゃねえか」


 狼狽する兵士たちの前に姿を現したのは、黒いボディアーマーと兜のようなヘルメットに身を固めた男だ。
腰にはぶら下げた鈍色のライトセーバーがアーマーに触れてカチャリと鳴った。


トルーパー1「じ、尋問官サーティーンス・ブラザー殿……しかし敵の勢力は圧倒的であり……」

サーティーン「圧倒的、ね……ハ、たしかにそうだ。こんなコルヴェット、敵がその気ならとっくに撃沈されてるぜ……しかし奴らはそうはしない。なんでだかわかるか、ああ?」

トルーパー2「……まさか、こちらに乗り込むのが狙い……?」

ヤマタイト兵「きっとミコア姫をさらうつもりに違いない!」

サーティーン「ああそうだ。だったらこっちにも戦いようはあるじゃねえか。白兵戦で援軍の到着まで持ちこたえればいいんだよ」


 プロヴィデンス級艦がコルヴェットに横合いから接近し、トラクター・ビームで引き寄せにかかった。
満身創痍のヤマタイト艦に逃れるすべはなく、二隻はほどなくして接舷状態となる。
すかさずプロヴィデンス級艦がドッキング用通路を伸ばし、コルヴェットの入口ドアと乱暴に接続した。

 ストームトルーパーとヤマタイト兵たちは入口を狙える位置につき、各々ドアにブラスターを向ける。
敵の襲来を待つ表情は固く、不気味な静寂の中で自分の鼓動の音がひどく大きく聞こえる。

 やにわドアの端のあたりから火花が走り、兵士たちは肩をびくりと震わせた。
火花は扉の外周をゆっくりと移動し、ぐるりと一周してから消える。
ほんの一瞬の静寂の後、溶断した扉を蹴り倒して「敵」が姿を現した。


ヤマタイト兵「――なんてことだ、『ブリキ野郎』だ!」


 年配のヤマタイト兵が叫んだ。


b1ドロイド1『突入!』バシュッバシュッ

b1ドロイド2『ヤッチマエー!』バシュッバシュッ


 突入してきたのはまさしく分離主義勢力の尖兵バトルドロイドだった。
青と白に塗り分けられたボディは真新しく、肩に描かれた独立星系連合のエンブレムも鮮やかだ。


ヤマタイト兵「なぜ、まだ動いている……!?」バシュッバシュッ

b1ドロイド1『ウアー!』ガシャン

トルーパー1「ウオオーッ!」バシュッバシュッ

b1ドロイド2『ギャアー!』ガシャン


 兵士たちの緊張と裏腹に、最初の二体はあっけなく撃破された。
トルーパーたちの中には、ヘルメットの中で拍子抜けした表情を浮かべている者もいる。


トルーパー1「……やったのか?」

トルーパー2「なんだ、てんで弱いじゃないか」

ヤマタイト兵「油断するな、次が来る……!」ジャキッ


 そんな中、ヤマタイト兵はただ一人警戒を強める。


b1ドロイド3『行クゾー!』バシュッバシュッ

b1ドロイド4『進メー!』バシュッバシュッ

b1ドロイド5『撃テー!』バシュッバシュッ

b1ドロイド6『バンザーイ!』バシュッバシュッ


 その懸念は的中し、扉の向こうからさらなるバトルドロイドが出現した。
射撃は相変わらず下手だが、撃つ数が二倍になれば命中弾も二倍だった。


トルーパー1「ぐわあっ!」バタッ

トルーパー2「きょ、兄弟ーッ!」

ヤマタイト兵「おのれ!」バシュッバシュッ

トルーパー3「くそーっ!」バシュッバシュッ

b1ドロイド3『ニャアー!』ガシャン

b1ドロイド4『ウワー!』ガシャン


 帝国側の必死の反撃がさらに二体のバトルドロイドを破壊したが、いまだ二体が残る。


b1ドロイド5『マダマダー!』バシュッバシュッ

b1ドロイド6『オラオラー!』バシュッバシュッ

b2ドロイド1『――!』バシュッバシュッ

b2ドロイド2『――!』バシュッバシュッ


 さらに上位機種であるb2スーパー・バトルドロイドまでが姿を現した。
b1と同じく青と白に塗装された機体で、あきらかに戦後製造された新品である。
しかし戦法は変わらず、ずんぐりしたボディの分厚い装甲で敵弾を跳ね返しつつ、ひたすら内蔵ブラスターを連射する。


トルーパー2「うぐうっ!」バタッ

ヤマタイト兵「ぐわっ……」バタッ

トルーパー3「うわっ、うわあ……うわあーっ!」バッ タタタ…


 最後のトルーパーが恐怖にかられて逃げ出し、入口の防御は崩壊した。
ドロイドたちが入口周辺を機械的にクリアリングしたころ、帽子のような識別塗装を持つコマンダー・ドロイドが合流した。
そしてそれに伴い、彼らの「指揮官」もコルヴェットに乗り込んでくる。


コマンダードロイド『首尾ハ?』

b1ドロイド3『入口周辺ハ完全ニ制圧シマシタ。敵ハ艦後部、居住区画ヘ後退シタモヨウ』

コマンダードロイド『ゴ苦労……すたーばる将軍、敵艦ヘノ突入ニ成功シマシタ』

スターバル「見ればわかる!」

マグナガード1『……』

マグナガード2『……』


 「スターバル将軍」はマスクを被り、ケープに身を包んだカリーシュの男であった。
二体のマグナガードを従える姿はかつての分離主義勢力の英雄を想起させるが、ケープの陰の体は生身で、サイボーグではなかった。


スターバル「艦全体を制圧するのだ、速やかに!トルーパーどもは皆殺しだ!」

コマンダードロイド『ラジャ、ラジャ』


 そうして話す間にも、彼の背後ではドッキング用通路から次々とバトルドロイドが乗り込んでくる。
スターバル将軍は自らブラスターを握り、部隊の先陣を切って艦内を進んだ。


 混乱はコルヴェットの後部、居住区格にも及んでいた。
兵士たちが前部へ向かういっぽう、技術者やアストロメク・ドロイドは船の修理のためにあちこち走り回る。


神官「ミコア姫、お早く!他の者に先に脱出ポッドを使われてしまうかもしれませんぞ!」


 その喧噪の中を、ヤマタイトの儀礼服を着た男がせかせかと歩いていく。
彼は気が気でない様子で、後ろからついてくる少女を何度もせかしていた。


ミコア「コイネー、あなたちょっと落ち着きなさいな。彼らにわたくしが殺せるものですか」


 豪胆なのか無知なのか、その少女――ミコア・ロト・ヤマタイトは、敵襲に少しも動じた様子が無かった。
気品ある緑色の装束と金色の髪飾りは気品に満ちていたが、顔立ちや所作には年相応の強気な活発さがあった。


神官「どうしてあなたはそう呑気なのです、ミコア姫!殺す気がないところで、流れ弾に当たるかもしれないではありませんか!」

ミコア「当たりやしません。私にはフォースの加護があります」ツーン

神官「そんなものあてになりませぬ、今度ばかりは私のお諫めだけでは済みませんぞ!さあお早く!」

ミコア「はあ……」


 ミコア姫は溜め息を吐いて神官を追う。
その胸元では、鎖で首から下げた三角錐型のホロクロンが揺れていた。


b1ドロイド『喰ラエー!』バシュバシュ

ヤマタイト兵「ぐわあっ……」バタッ

トルーパー「野郎!」バシュバシュ

b2ドロイド『――!?』ボンッ ガシャン


 その頃戦場は艦中部、2フロアを貫く大ホールに移っていた。
帝国・ヤマタイト軍は階段の上に陣取り、登ってくるドロイドを次々にブラスターで叩き落していく。
しかしドロイド側の応射も激しく、何より数で劣る帝国側は徐々に圧倒されつつあった。
のしのしと前に進み出たスターバルもテラスの上目掛けめちゃくちゃにブラスターを撃ちまくる。


スターバル「ウハ、ウワハハハ!今度は貴様らを助けてくれる正義のヒーローは居ないぞ!ウワハハハーッ!」バシュバシュ


「おっとォ、それはどうかな?」


スターバル「ヌウ!?」


 スターバル将軍は銃声の中から聞こえた挑発的な声を追い、階段の上のテラスを睨んだ。
黒いボディーアーマーとヘルメットに身を固めた男が姿を現し、手すりを飛び越えて、不敵にもドロイド部隊の只中に着地した。


サーティーン「――やあ、諸君」


スターバル「殺せ!」

b1ドロイド『いえす、さー!』ジャキッ

b2ドロイド『――!』ジャキッ

マグナガード1『……!』ガシャッ


 スターバルの号令のもと、ドロイドたちはサーティーンに照準を定める。
しかし尋問官は引き金が引かれるよりも早く集中を高め、周囲にフォースを放った。


サーティーン「ハアッ!」ドウンッ

b1ドロイド『ウアー!』ポーンッ

b2ドロイド『――!?』ポーンッ

マグナガード1『……!?』ポーンッ


 サーティーンの周囲のドロイドたちが弾かれたように吹き飛んだ。
まとめて壁にぶつかった拍子に華奢な手足が絡み合い、もがくだけの金属塊となって壁際に転がった。


 サーティーンは続けてライトセーバーを取り出した。
赤い刃が抜き放たれ、上階の兵士たちは歓声を上げる。


サーティーン「ジェダイは居ないが、尋問官はいるってことだなあ」ブウンッ

スターバル「ヌウ……ドロイドども、下がれ!」


 スターバルは残りのドロイドを下がらせ、ブラスターも収めた。


スターバル「尋問官!私が直々に相手をしてやろう。誇り高き独立星系連合の一員である、このバランタスカ・シブ・スターバルがな!」


 二振りのライトセーバー。
右手に青い刃、左手に緑色の刃を閃かせ、サーティーンに相対する。


サーティーン「誇り高き?ホコリ塗れの間違いじゃねえのか。現実の見えてねえ、懐古主義のコスプレイヤーめ」

スターバル「フン、その武器――お前も元はジェダイだろうに、現実が見えれば帝国の犬になり下がるのか?日和見主義の軟弱者め」

サーティーン「黙れ!てめえなぞに何がわかる……その拾い物の武器でどこまで戦えるか、試してやろうじゃねえかッ!」シュザッ ブウンッ

スターバル「ウワハハハ、やってみろ!」バチッ ブウンッ

 
 こうして二人の剣戟が始まった。
待機を命じられたドロイドはもちろん、テラス上の帝国側兵士たちも息を呑んでその勝負の行方を見守る。
その勝敗にこの戦いの趨勢がゆだねられていることは明らかだった。


サーティーン「フンッ!」ブウンッ

スターバル「ヌオオッ!」バチッ ブウンッ

サーティーン「フンッ!ハアッ!」バチッ ブウンッ

スターバル「オオッ!ダアーッ!」バチッ ブンブウンッ

サーティーン「甘い!」バチバチッ

スターバル「ヌウッ!?」フラッ

サーティーン「おらよっ!」ドウンッ

スターバル「グオッ!?」ポーンッ ドンッ


 サーティーンが隙を見てフォース・プッシュを放つ。
スターバルはホールの入口扉にまで吹き飛ばされ、かろうじて踏みとどまった。


サーティーン「セーバーは一人前だ、褒めてやるよ。だがフォースの扱いでボロが出たなあ?引導を渡してやる!」シュザッ ブウンッ

スターバル「ヌウッ……マグナガード!」バチッ

マグナガード2『……!』ブンッ

サーティーン「ぐああっ!?」バチバチッ

スターバル「ウオオッ!」ブウンッ


 バチュンッ!


 勝負が決したのは一瞬であった。
マグナガードがサーティーンの背中にエレクトロ・スタッフの一撃を浴びせ、感電せしめる。
尋問官が晒したごく僅かな隙に、スターバルがライトセーバーを振り抜く。
その一瞬の後、尋問官の首は切り離されて床にゴロリと転がった。


スターバル「――ワハ、ウワハハハ!これは決闘ではない、戦争だ!バカめ……またライトセーバーのコレクションが増えたわ!」


 スターバルはそれを蹴とばし、死体の手からライトセーバーをもぎ取る。


トルーパー「じ、尋問官殿!」

ヤマタイト兵「……もうおしまいだ……」スック

トルーパー「おい、どこへ行く!?」


 若いヤマタイト兵の一人が絶望の表情で立ち上がった。
ブラスターを捨て、ドロイドとスターバル将軍に向かって両手を上げてみせた。

  
ヤマタイト兵「俺は降伏するぞ!お前らの敵は帝国軍なんだろう、俺はヤマタイティアンだ。巻き添えは御免だ!」


スターバル「ドロイドども!攻撃を再開しろ!」

b1ドロイド『狙エ!』ジャキッ

b2ドロイド『――!』ジャキッ


 スターバル将軍はその申し出をまるっきり無視した。
ドロイドたちが真っ先に狙うのは言わずもがな、武器も持たずに突っ立っているヤマタイト兵だ。


ヤマタイト兵「お、おい待て、よせ!知っていることはなんでも話す!」

コマンダードロイド『ト申シテオリマスガ』

スターバル「知るか。早くやれ」


 バシュバシュバシュッ!バシュバシュバシュバシュバシュ!


ヤマタイト兵「ぐふ」ドシャッ

b1ドロイド『サアー次!』ジャキッ

b2ドロイド『――』ジャキッ

トルーパー「ひいいーっ!」

 
 狙いはテラス上のストームトルーパーたちに移った。
冷酷な射撃がホールからトルーパーたちを駆逐し、艦後部へと追い詰めていく。


スターバル「コマンダー!私は『インドミタブル』へ戻る。残りの掃討は任せたぞ」

コマンダードロイド『喜ンデ』


 スターバル将軍はドロイドに後事を任せ、ホールを出た。
そしてドッキング通路を渡りプロヴィデンス級艦――「インドミタブル」へ戻る。


 そのころ、神官とミコア姫は脱出ポッドのもとへ辿り着いていた。
しかし銃声に混じってトルーパーたちの悲鳴、絶叫が聞こえ、二人の焦燥は一層増す。


神官「よかった、脱出ポッドはすべて残っております!さあ姫、お早く!」

ミコア「え、ええ――」

b1ドロイド『ン?誰ダ、ソコニイルノハ?』ヌッ

ミコア「!ドロイドが!」

神官「うおおっ!」ジャキッ バシュバシュ

b1ドロイド『ウアー!』ガシャンッ

神官「私は敵を食い止めます、姫は脱出を!」グイッ


 神官はブラスターを構え、後ろ手にミコア姫を脱出ポッドに押し込んだ。
その間にも新たなバトル・ドロイドが廊下の奥から姿を現す。


b2ドロイド『――!』バシュバシュバシュ

神官「うぐう!」バスッ

ミコア「コ、コイネー……!」

神官「あ、あなたがヤマタイトの最後の末裔。どうか我々の殉じる伝統を、受け継いでください!」ポチッ


 射出ボタンが押され、ミコア姫の乗った脱出ポッドは宇宙空間へ解き放たれる。
ミコア姫は窓のほうへ身を乗り出してコルヴェットを見た。
射出口を塞いだエネルギー・シールド越しに、神官がスーパー・バトルドロイドの射撃を受けて崩れ落ちる姿が見えた。

 ――彼女を乗せた脱出ポッドはオートパイロット・モードのまま、眼下の惑星クイナワへ降下していく……


スターバル「ネブカドネザル艦長!状況は!?」

ネブカドネザル『スターバル将軍。先ホドこるヴぇっとヲ完全ニ制圧シタト連絡ガアリマシタ』


 ドロイドたちが黙々とコンソールに向かって作業に取り組む、薄暗く無機質な艦橋。
その中央で指揮を執る「ネブカドネザル」もまたドロイド――高度な指揮官タイプである「スーパー戦術ドロイド」だった。


スターバル「結構!ミコア姫は捕捉したか?」

ネブカドネザル『イイエ。シカシ脱出ぽっどノ一ツガ射出サレタノヲきゃっちシマシタ、オソラクソレニ乗ッテイタモノカト』

スターバル「脱出したか。普通なら追跡するところだが、そろそろ帝国軍の救援艦隊も迫っているだろうしな……」

ネブカドネザル『コノ宙域ニ留マッタ場合、捕捉サレル確率83%……アト、モウ一ツ。ていてぃす卿カラほろねっと通信ガ』

スターバル「何だと!?テイティス卿から!?なぜそれを先に言わん!?」ギョッ

ネブカドネザル『状況ハ、ト尋ネラレマシタノデ』

スターバル「グウウ、とにかくすぐに応答しろ!ここに繋ぐんだ、早くしろ!」


 ネブカドネザルがコンソールを操作すると、戦略テーブル上に「テイティス卿」の3D映像が立ち上がった。
黒いローブを着た背の高い男で、その表情はフードの陰となっていた。
スターバル将軍は跪き、恭しく話を切り出す。


スターバル「お待たせしましたテイティス卿……我々は先ほどヤマタイトのコルヴェットを捕捉、制圧しました」

テイティス『ミコア姫はどうした?』

スターバル「脱出ポッドに乗って逃亡しました。おそらく至近の惑星クイナワに逃れたものかと……しかし我々はこれ以上クイナワ上空に留まることは難しく……」

テイティス『そうか。ではお前たちは戻ってよい』


 スターバルはごくあっさりとした返答に驚いて顔を上げた。


テイティス『あとは私がやる。我がマスターもそれをお望みだ』


 テイティスのフードの陰が少し見える――顔をすっぽりと覆う金属質な仮面と、その奥から覗く四つの目。
青白い3Ⅾ映像では判らないが、実際の彼の目はシス特有の黄色の瞳を持っていた。


スターバル「……はっ、では引き揚げの準備に取り掛かりますので、失礼致します」

テイティス『事態は全て我々の想定内で推移している。お前たちの行動で台無しにせぬよう心せよ』


 通信が切断され、ダース・テイティスの姿は消える。
スターバルは立ち上がりケープを払うと、艦橋を歩いて、ビューポートから眼下の景色を睨んだ。


スターバル「……ケッ!シスめ、威張りくさって……」


 眼下に広がる惑星クイナワは蒼い海が広がり、その中に緑豊かな島々が散らばる南国の星。
そして今は反乱同盟軍の潜伏先でもある――テイティスに命じられてそれを突き止めたのはスターバルたちだった。


 ――数日後、惑星クイナワ。
太陽を頂くターコイズの空とネイビーの海との隙間、水平線にモクモクした雲が少し。
海原の中に点在する島々は豊かな緑に覆われ、湿っぽく温かい風が吹き抜けて、シイヨークと呼ばれる四枚羽根の海鳥が飛んでいく。


リズマ「……」ブオン


 その浜辺で、リズマ・ショーニンがライトセーバーを構えていた。
ごくラフで涼しげな服を着て、長い髪を高いところでまとめている。
彼女は緑色の刃を振りかざし、眼前に浮かぶ「ボール型のもの」を注視する。


ドロイド「――」シューッ シューッ

リズマ「……」スス…


 ボール型のドロイドはガス漏れのような音とともに、空中を滑るように動く。
そのたびリズマは「第三の構え」の姿勢のまま、ドロイドのほうへ油断なく向き直る。


ドロイド「――」シューッ シューッ

リズマ「……」スス…


ドロイド「――」シューッ ピタッ

リズマ「!」


 ピュン! ピュン! ピュン!


リズマ「ふんっ!」ピシッ ピシッ ピシッ


 何度か動いた後、ドロイドが訓練用ビームを三連射した。
リズマは光の刃を閃かせ、そのことごとくをドロイドめがけ跳ね返す。


ドロイド「」バチッ ボトッ

シンノ「……よし、やめ!」


 リズマの後ろからシンノ・カノスが姿を現し、撃墜された訓練ドロイドを拾い上げた。
彼も気候相応の服装で、肌は僅かに日焼けしつつあった。


リズマ「ふうー……どうでしょうか、マスター?」

シンノ「うん、だいぶサマになってきたな……あとは反復練習と、実戦経験次第だろう。『第三の構え』の授業は終わりだな」

リズマ「……!はい、ありがとうございます!」


 リズマはぺこりと頭を下げる。
彼女がシンノのパダワンとなってからしばらく経っていたが、彼はいまだに「マスター」と呼ばれることにこそばゆい感覚を覚えていた。


リズマ「では、さっそく自分で練習をしたいのですが……ドロイドを貸していただいても?」

シンノ「それはいいが……少し休憩してからのほうがいいんじゃないか?喉とか、乾かいてないか」

リズマ「平気です!……たぶん」


 シンノは苦笑しつつ、訓練ドロイドを投げ渡す。
リズマは礼を言って、すぐにそれを再び空中へ放った。
訓練を続けるパダワンを残し、シンノは近くに突き立てたパラソルの下、砂浜に敷いたシートに腰を下ろす。


ネーア「モグモグ、一区切りついたようじゃの」


 そこには先客がいた――復活した500年前のシスの暗黒卿、ダース・ネーアである。
その肩書はきわめて凶悪だが、今の彼女は多少フォースが使えるだけの少女に過ぎなかった。
ローブを黒いTシャツに着替えてシートの上に座り、この暑さの中チョコレート・バーをかじって口の周りをベトベトにしている。


シンノ「口汚ねえな」ゴシゴシ

ネーア「んむむ……それで、リズマの素質はどうなんじゃ、マスター・カノス?」

シンノ「彼女は優秀だよ、俺なんかにはもったいないくらいに」

ネーア「なるほど。では妾の弟子にしようかのう」

シンノ「笑えないぞ」ジロリ

ネーア「カカカ、そうじゃった。弟子になるのはそなたじゃったな」

シンノ「言ってろ……」ハア


ユスカ「シーンノっ!」


 そのとき、ユスカ・ショーニンがパラソルの陰を覗き込んだ。
顔立ちはリズマに瓜二つだが、髪は活発な性格そのままに短く、パンツタイプの水着を着ている。
彼女はジェダイではないが、リズマの双子の姉であった。


シンノ「おっ、ユスカ。よくここがわかったな?ジェダイの秘密の訓練場へようこそ」

ユスカ「訓練場ね、そのわりにマスター・ジェダイ様はこんなところで涼んでいらっしゃるけど?」ニヤニヤ

シンノ「マスターは偉いんだよ……いや、リズマにも休むようにいったんだが、本人がな」

ユスカ「へえ……見上げたもんだね」


 ユスカはそう言って、波打ち際でライトセーバーを振るう妹を見やる。
シンノにはその口ぶりがどことなく他人行儀に思われた。


シンノ「なんか他人事みたいだな、妹だろ?」

ユスカ「いやあ、妹って言っても、リズマは生まれてすぐジェダイ騎士団に行っちゃったから……会ったのって戦後なんだよね」

シンノ「ああ、そうか……」


 珍しい話では無かろう――シンノも自分の出自に思いをはせた。
アウターリムの生まれだとは聞いているが、どの惑星なのかも、両親の顔や名前も知らなかった。
間もなくリズマがユスカを見つけ、少し驚いたような顔をしたあと、訓練ドロイドを捕まえてパラソルのほうへ駆け寄る。


リズマ「はあはあ、姉さん、来てたんですね!」

ユスカ「ああ、うん。張り切ってるじゃん」

ネーア「ほれ、水ぞよ」スッ

リズマ「あっ、ありがとうネーアちゃん……ゴクゴク」

シンノ「このぶんじゃすぐに俺より強くなるかもな……さて、どうするユスカ?お前もライトセーバーを使ってみるか」

ユスカ「えっ、いいの!?」

シンノ「いいとも。リズマの姉ならセンスあるぞ、きっと?」

ユスカ「ああ、そういうこと……じゃなかった!」ハッ

シンノ「何だ?」

ユスカ「シカーグ将軍があんたとリズマを呼んでるの。ジェダイ向けの仕事があるんだって」


 その頃惑星クイナワのちょうど裏側、都市リシュー上空の衛星軌道。
帝国軍のスター・デストロイヤーが漂流していたヤマタイト艦を収容し、艦内へ大勢のストームトルーパーが乗り込みつつあった。
その先頭に立つマンダロリアン・アーマー姿の男が、バトル・ドロイドの残骸を踏みしめて苦々しい顔をした。


タクージン「……フン、もう二度と見るこたないと思っていたぜ……忌々しいブリキ野郎が!」


 タクージン・シカーグ――QC宙域帝国軍の総督である。


ナイン「総督」


 そしてその背後から黒い装甲服姿の男が姿を現す。
背中にはナックルガードじみたリング状のパーツが付いた特殊なライトセーバーを携行していた。
尋問官の一人、ナインス・ブラザーである。


ナイン「護衛に就いていたサーティーンの死体を見つけました」

タクージン「うむ、やはり殺されていたか。このぶんではミコア姫も――うおっ!」


 振り返ったタクージンは飛び上がらんばかりに驚いた。
ナインは平然とサーティーンの生首を抱えていたのだ。


タクージン「なんで持ってくるんだ、捨ててこいそんなもの!」

ナイン「しかし、この切り口に気になる点がありまして」

タクージン「気になる点だと?」

ナイン「はい。この首のところの切り口が、このように焼き切れています」クルッ

タクージン「ああー、いちいち見せなくていい!結論だけ言え!」

ナイン「はい。その他壁に残されていた痕跡も同様ですが、バイブロ・ブレードではこうはなりません。間違いなくライトセーバーの切り口です」ポイッ ドサッ


タクージン「ライトセーバーだと!?……ジェダイの仕業だというのか!?」

ナイン「いえ、クローン戦争を戦ったジェダイならばバトル・ドロイドを目の敵にしているはず。それを引き連れてくるというのは腑に落ちません」

タクージン「ふん、元ジェダイのお前が言うならそうなのかもしれんが……生き残るためならドロイドでもなんでも使うんじゃないかね?」

ナイン「それほど追い詰められているならこんな、帝国軍に喧嘩を売るような真似はしないでしょう。少なくともライトセーバーを使っていたずらに帝国軍の注意を引くことはしないはずです」

タクージン「では下手人は誰だというんだ?」

ナイン「ごく少数ですが、ジェダイでなくともライトセーバーを使う者はいます。総督と同じマンダロリアンか、あるいは……ドゥークー伯爵、グリーヴァス将軍に連なる使い手」

タクージン「分離主義者か?……ふむ、QC宙域には未だに大規模な残党が潜んでいるというからな。ありうることだ」

サギ「ちょっとお待ちくださいィ……」


 そのとき、もう一人、ひょろ長い体形の男が姿を現した。
帝国保安局のエージェント・サギである。


タクージン「サギか。何だ」

サギ「分離主義者がどうだか知りませんが、反乱軍にはジェダイが居るといいますゥ……ハクカの一件で勢いづいた反乱軍の仕業だと考えるのが自然ではありませんかァ?」

ナイン「その可能性が十分にあるのも事実です。私も朧げではありますが、フォースを通して何かしらの気配を感じております」

タクージン「ふむ……とすれば、奴らは今までヤマタイトは攻撃しなかったが、ここを通った途端攻撃したということは……この近辺に反乱軍がいるに違いない」

サギ「すぐにこの星系全体に検問を配置しましょォ……」

ナイン「……ところでミコア姫のことは」

タクージン「知るか、反乱軍に連れ去られて行方不明とでも報告しておけ。ハクカの借りもある、とにかく反乱軍を探し出すのが先決だ!」

ナイン「……はい、総督」


 ――数日後。


ユスカ「私一番乗り!」スタッ

ネーア「じゃあ妾二番乗り!」スタッ

シンノ「子どもか!」スタッ


 一行がWウィングから飛び降りる。
到着したのは惑星クイナワで二番目の規模を誇る都市、リシューである。
相変わらずの雲一つない青空、強い陽射しに目を細めつつ仰ぎ見る中心街には、いくつも派手な楼閣が建っていた。


職員「じゃあ、ハイ、ランディングパッド使用料200、駐機場使用料200、合わせて400ね」

シンノ「停めるだけで400かよ、よそ者だからって足元見やがって」チャリンッ

職員「あいやー、手厳しいね。でもちゃんと払ってくれるお客さん好きよ」

シンノ「道案内のチップと口止め料込みだよ。ザイン・ザ・ハットの城はどっちだ?」

職員「ザイン様のお城?あそこはスネに傷のある奴らの溜まり場ね。さてはお客さんもその口ね?」ニヤニヤ


 職員はにやにやしながら地図を走り書きして寄越した。
シンノはそれを受け取ると、苦笑しながら仲間のもとに戻る。


シンノ「俺、そんな悪人顔か?」

ユスカ「けっこうずる賢い顔はしてるかもね?」ニヤニヤ

ネーア「ジェダイには向いてないぞよ」ニヤニヤ

シンノ「うるせえ。行くぞ……R3、船は任せたからな」


 シンノはWウィングの天井から顔を出している赤いアストロメク・ドロイドに呼びかける。


R3-C3『プウウー』


 R3は少し不安げな電子音声で答えた。


 惑星クイナワの原住民クイナワンは、殻から引き出したサザエを人型にしたような異様なエイリアンであった。
大通りではその人型サザエと他のエイリアンが入り混じって行き交い、あるいは道沿いの店で買い食いに励んでいる。


シンノ「ほらよ、まずは腹ごしらえだ」スッ

ユスカ「ありがとっ!」パシッ

ネーア「せっかくじゃから土地のものも食っておかんとな……モグモグ、なるほどうまいわい!」


 三人もベンチに腰掛け、タレを塗ったブロック状の魚肉の串焼きを各々胃袋の中に収める。


ユスカ「ところでこれ何の肉だって?」

シンノ「シャッティーっていう魚だ。あの屋根についてるのがそうらしい」


 シンノは近くの店の屋根の上に付けられた、尾を振り上げた魚の装飾を指差した。


ユスカ「へー、尻尾とかカワイイかも」

シンノ「まああれはだいぶデフォルメされてるみたいだけどな……」

ユスカ「こんな美味しい魚がいつでも食べられるなんて、クイナワンがちょっとうらやましいかも……モグモグ」

シンノ「じゃあサザエ人間に嫁入りするか」

ユスカ「それはヤダ」

シンノ「ハハハ、だろうな……モグモグ……」


 シンノは串焼きを齧りつつ、今回リシューに赴くこととなった切っ掛けを思い出す……


 シカーグ将軍に呼び出されたシンノとリズマは、マスドライバー施設跡の反乱軍基地に戻った。
将軍がいる司令部は、管理棟と呼ばれていたらしい建物の中にある。


シンノ『ジェダイ向けの仕事と言っていたが、やっぱり荒事なんだろうな』スタスタ

リズマ『大勢で動けばすぐに帝国軍に察知されかねないのが現状ですから……荒事でなくとも、私たちが動かなければならない機会は案外多いかも』スタスタ


 二人が司令部の目の前まで来た時、その扉が乱暴に開け放たれた。


バヤット『フンッ……!』バタンッ スタスタ


 姿を現したのは魚顔のエイリアン「モン・カラマリ」の若き反乱軍将校、サマ・バヤットであった。
彼は憤懣やるかたないといった様子で、きょとんとしたシンノとリズマの横をのしのし歩いていった。


シンノ『……ありゃ、我らがQC反乱軍のナンバー2殿じゃないか。あんなに肩いからせてるのはどういうわけだ』

リズマ『……将軍と何かあったのでしょうか?』

シカーグ『いやはや、お恥ずかしいところを』


 後を追って現れたのは、まさしくテダッフ・シカーグ将軍だ。
マンダロリアン・アーマーをアロハシャツに着替えた陽気な姿で、ばつの悪そうに苦笑いを浮かべている。


シンノ『まあ察しはつくがね……彼のことだ、また前のめりな作戦を提案してきたんじゃないか。例の、衛星軌道上の謎のヤマタイト艦襲撃絡みで』

シカーグ『まさしくその通りだ。例の襲撃で帝国軍の目がこちらに向いていると思い、どこか適当な帝国軍基地を攻撃してそれを逸らそうと言うんだ』

シンノ『今下手に動けばこの場所も露見しかねないんだがな。だったら資材置き場に山積みになってるチュクチャク木材の捌き方でも考えていればいいのに』

シカーグ『まったくだ。ところで、お前たちを呼んだ仕事というのもその戦闘絡みでな。入ってくれ』


 シンノとリズマは司令部に入った。
長年打ち捨てられていたために壁や天井には得体の知れない染みができ、窓も汚れているために部屋は薄暗い。
その中に青白い電子光を放つ設備がぎっしりと並んでおり、一種異様な雰囲気である。


 シカーグは戦略テーブルのコンソールを操作する。
やがて卓上に青白い3D映像で、惑星クイナワの丸い全体像が浮かびあがった。


シカーグ『我々が今いるのはここ、例の戦闘はちょうど星の裏側……都市〈リシュー〉上空で起こった。ちなみに首都〈ハナン・シティ〉はその中間、このあたりだ』


 シカーグの手振りとともに3D映像は拡大・縮小し、地図上にいくつか地名が表示される。


シカーグ『……そしてここから先はレーダー室から出していない情報だが』


 将軍は少し声を潜め、ポケットからメモリーディスクを取り出して戦略テーブルにスロットインした。
地図上、リシュー上空の戦闘があった宙域に小さな光点が点滅した。


シカーグ『例の戦闘があった宙域、戦闘の前後に、ここから地上に降下する物体をキャッチした』

シンノ『降下というと……脱出ポッドか』

シカーグ『そのようだ。襲撃を受けたヤマタイト艦から射出されたとみるのが自然だろう……ポッドはリシュー近辺に不時着したらしい』

シンノ『……なるほど。仕事と言うのは、その脱出者を確保しろと?』

シカーグ『まあそうだが、まずは身元の確認だ。ハードな手に出るかどうかは状況次第だ……ドンパチは無くて済むならそれに越したことはない』

シンノ『まったく同感だな』

リズマ『……あの、言っては何ですが……ジェダイでなくてはいけない事情が何か、あるのですか?』

シカーグ『ああ、もちろんだ……とびきり面倒な事情だ。落人はリシューにいるんだろうが、この町は犯罪王ザイン・ザ・ハットの根城なんだ』

シンノ『ハット?あのハット・ファミリーか?』


 シンノは思わず聞き返した。
ジャバ・ザ・ハットを筆頭とするハット一族は、銀河系有数の規模を誇るマフィアの支配者だ。


シカーグ『そうだ。ザインはファミリー内部の権力争いに敗れてこんなところに流れ着いたらしいが、それでもクイナワンどもよりずっと金を持ってるし、ずっとずる賢い』

シカーグ『こいつがあからさまに訳ありの落人を見逃すはずはないだろう。金になると踏んで身柄を抑えているはずだ……救出するには少し骨が折れる。かといって兵隊を大勢出すわけにはいかん、帝国に嗅ぎ付けられる』

シンノ『それでジェダイが出なきゃならんわけか……それにしても、たかがポッド一つのためにここまでするのはどういうわけだ?』

シカーグ『……これはあくまで裏付けのない、不確実な情報だが……例のヤマタイト艦に、ミコア姫が座上していたという情報があるんだ』

リズマ『ミコア姫!?ミコア姫っていえば……ヤマタイト王国の、トップじゃありませんか!』

シンノ『なるほど、身柄を確保できれば外交カードにすらなりうる……』

シカーグ『しかしあくまで可能性の話だ……そんな話のために二人揃ってここを空けられるのも心細い。どちらか一人だけに頼みたいんだが』


 シンノとリズマは互いを見かわしたが、すぐにシンノが手を挙げた。


シンノ『……では俺が行こう。リズマはちょうど宿題もあるしな』

リズマ『!……はい!〈第三の型〉、練習しておきますっ!』

シカーグ『よろしい。じゃあシンノには、明日にでもリシューに向かってもらうことになるが……メカニックか何か、必要な人員はいるか?言ってくれれば随行するように命令書を出すぞ』

シンノ『ん?そうだな……手数はあるにこしたことはないが、あまり大勢で行っても仕方ないしな……じゃあ……』


 物語はリシューの街角のベンチに戻る。


シンノ(俺とR3-C3、フォース・レーダー役のネーアと、最低限の手数兼いざというときのドンパチ要員のユスカ……で充分……この三人と一体で充分。じっくり下見して、コッソリやれば荒事にはなるまい)モグモグ

ユスカ「あー、おいしかった……でもちょっと脂っこいかも。魚肉なのに」

ネーア「ほんと、なんでこんな脂乗っ取るんじゃろうな。養殖かのう」

シンノ「まあそれだけ力出るだろう」パンパンッ

ユスカ「というと、早速ブラスターの出番かしら?」ジャキッ

シンノ「は、早まるな……まずはザインの城に潜り込んで、脱出ポッドの乗員がいるかどうか確かめることだ。幸い犯罪者の溜まり場らしいからな、そう苦労はするまい」


 シンノは行くぞ、と声をかけて立ち上がった。
地図に従い進む彼を、ユスカとネーアが追いかける。
……ネーアが振り返り、あたりを見回す。


ネーア(……ううむ、この気配……気のせいかのう?)

シンノ「ネーア、どうした?」

ネーア「あ、いや……何でもない。今行くぞよ」


 城内のホールは様々な種族のエイリアンたちでごった返していた。
マフィアや運び屋、殺し屋、賞金稼ぎと、いずれも後ろめたい生業に従事している者たちばかりだ。
聞こえるのはあらゆる言語の話し声、笑い声、そして太鼓にリードされた陽気な音楽。


クイナワン楽士「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハーイーヤ!」ドンドコドンドコ


 その人混みの中を、ある男がバーカウンターを目指して進んでいた。
爬虫類じみた肌と、顔から突き出たトゲを持つエイリアンの海賊、ホンドー・オナカーである。


ホンドー「はい、はい、はいと!悪いね!どいてくれ!――マスター、ジャワ・カクテル一つ!ロックでな!」

バーテン「アイアイ」

ホンドー(フー、仕事がねえかと来たはいいが、どいつもこいつも食えねえ奴ばっかりで商売がやりにくいったらねえぜ――ん?)


 カウンターに腰かけたホンドーは、隣に座っている客に目をやった。
青い肌、鼻の無い顔、赤い目、印象的な頬の呼吸用チューブにトレードマークの帽子……


ホンドー「ベイン!あんたキャド・ベインじゃないのかい!?」

ベイン「……チッ、デケエ声で……」

ホンドー「大声にもなるさ、あんた、ベインといったらジャンゴ以来の大物賞金稼ぎじゃあないか!」

ホンドー「共和国に逮捕されたと聞いたが、なるほどムショで収まってるほど小さい男じゃなかったってえわけだ。おっと、申し遅れたな、俺は――」

ベイン「ホンドーだろ。知ってるぜ……とびきり胡散臭い海賊だってな。失せろ」

ホンドー「胡散臭いたあ穏やかじゃないな、俺はたしかに海賊だが、同時にビジネスマンでもある。これはもしもの話だが、あんたのネームバリューと俺の人脈が合わされば――」

ベイン「相手を選びな、ウィークウェイの旦那」


 ベインはホールの端、大きく開いたテラスのほうを指差す。
そこはコロシアムじみたすり鉢状観覧席の一角となっている。
すり鉢の底は海から水が引き込まれ、観覧席から飛び込み台じみた板が突き出していた。


ベイン「コナかける相手を間違うと真っ逆さまだぜ」


 ザイン・ザ・ハットとの商売を誤魔化そうとした密売人がそこから突き落とされ、人食い魚の餌となるのはよくあることだった。


クイナワン楽士「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハーイーヤ!」ドンドコドンドコ


 演奏は続き、酒宴も続く。
やがてシンノ一行もホールに姿を現す。
入口でクイナワンの門番が身分証明を求めたが、シンノが手をフッと振ると道を開けたのだった。


シンノ「こんな腐った場所はハクカの酒場以来だな……あまり長居すると俺の脳味噌まで腐りそうだ」

ユスカ「同感、さっさと済ませなきゃね」

ネーア「……」キョロキョロ

シンノ「さて、VIPはどこか、と……」

ネーア「シンノよ」

シンノ「ん?何だネーア」

ネーア「悪いが、ちょっと別行動を取らせてもらうぞよ」

シンノ「?ああ……」


 ネーアはしきりにあたりを見回しながら人込みに消えた。
ローブを着込んでいるので小柄なエイリアンだと思われているらしく、注目する者は居ないようだ。


ユスカ「何だって?」

シンノ「さあ……フォースを感じる力はあいつのほうが上なんでな、何か感じたのかもしれん。とにかく俺たちは本題に……」


 そのとき、テラスの外から高らかに鐘を打ち鳴らす音が響き渡った。
シンノとユスカが怪訝に思う一方で、ホールの人々は何かを期待するような顔で三々五々テラスに移る。


運び屋「いよいよ処刑タイムだな!」ドヤドヤ

マフィア「俺なんてこれが楽しみで来たんだぜ」ドヤドヤ

ユスカ「シ、シンノ、処刑タイムって……?」

シンノ「わからん……とりあえず出てみるか」


 二人はそれに続いてテラスに出て、眩しい日の光に目を細めつつ、他の観客の視線を追った。
飛び込み台が突き出したあたりの観覧席が舞台のように広く整えられている。
音楽は何かを待つかのように止んでいて、今、日陰からその舞台へと大きな影がゆっくり進み出る。
鎌首をもたげたナメクジのような巨体である。


シンノ「ザイン・ザ・ハットか……!?」


 ザインの背後に、鎖と首輪で拘束された少女の姿がある。
事前の情報とフォースの直感がシンノにその少女の正体を悟らせた。


シンノ「あれが……」

ミコア「……」

シンノ「ミコア姫か……!」

ユスカ「あの女の子が!?」ヒソヒソ

シンノ「あ、ああ、間違いない……しかししばらく様子を見ないことには……」


ザイン「・・・・・・!・・・・・・!」


 ザインが唸るようなハット語で何やら喋った。
すかさず後ろから通訳ドロイドが進み出て、電子の声を張り上げる。


通訳ドロイド『偉大なるザイン様は〈親愛なる悪人の皆様、今日も来ていただけて嬉しい〉と仰っています』


 テラスの観客がどっと湧く。


ザイン「・・・・・・。・・・・・・!」

通訳ドロイド『〈皆様の商談も佳境の頃だと思うが、お待ちかねの方もいらっしゃるので、今日のメイン・イベントに移らせていただく〉』


 ザインが手で合図すると、クイナワンの傭兵たちが手錠と腰縄で拘束された男を連行してきた。
そのコレリア人の男はイシュメール。
もと、スパイスの密売人であった。


イシュメール「……へ、へへ……参ったね、こんな注目を浴びたのは生まれて初めてだ。緊張しちまう」

クイナワン「うるせえ!」バキッ

イシュメール「ぐわっ!」


 クイナワンたちは手に手に棒を持ってイシュメールを取り囲み、彼を舞台の隅の飛び込み台へ追いやり始めた。
ザインはニタニタ笑いながら手を叩いて合図し、音楽を再開させる。


クイナワン楽士「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハーイーヤ!」ドンドコドンドコ

シンノ「突き落とすつもりなのか……?」ヒソヒソ

ユスカ「突き落とすったって、さすがに死ぬほど高くなくない……?」ヒソヒソ


 そのとき、コロシアムの底の水面で大きな水音が鳴った。
テラスに集う荒くれ者たちはにやつきながらそちらを見下ろす。
シンノとユスカも戸惑いつつそれに従った。

 その入り江状のプールに、いつのまにか大きな魚影がいくつも現れていた。
今また一匹、興奮した魚が水面から飛び跳ねる。
2,3メートルはあろうかという大きさの、恐竜じみた凶悪な肉食魚である。


海賊「シャッティーどももご馳走が待ち切れないみてえだな!」

シンノ「あれがシャッティー……!?」

ユスカ「え、ちょ、人食い魚ってこと……?私あれ食べ……オエエエエー……!」ゲー


イシュメール「ちょ、まじかよオイ、死ぬのはまだ諦めがつくがさすがにあれに食われるってのは……」

クイナワン「うるせえ!早く飛べ!」ガスガス

マフィア「グダグダ言ってねえで飛べー!沖まで泳げれば逃げられるかもしんねえぞー!」

海賊「飛ーべ!飛ーべ!」


 イシュメールはいよいよ追い詰められ、太鼓の音とともにテラスの悪人たちのテンションは最高潮に達していた。


「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハーイーヤ!」ドンドコドンドコ

「飛ーべ!飛ーべ!飛ーべ!飛ーべ!飛ーべ!」

「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハーイーヤ!」ドンドコドンドコ

「飛ーべ!飛ーべ!飛ーべ!飛ーべ!飛ーべ!」


シンノ「こ、この人でなしどもが……!」ワナワナ

ユスカ「……シンノ?気持ちはわかるけど、ガマンだからね?……どうせあの男もこいつらと同類だろうし」

シンノ「……ユスカ」

ユスカ「はい?」

シンノ「俺は反乱軍の兵士である前に、ジェダイだ!」ピョーンッ


 シンノはそう言い切って、イシュメールたちのいる舞台めがけてフォース・ジャンプで跳躍した。


海賊「!?おい、なんだあいつは!」

マフィア「サプライズ演出か!?」

ユスカ「ちょっとシンノ!?……ああもう!」ダッ


シンノ「はあっ!」タッ ギギギ ピョーンッ


 シンノは飛び込み台に着地し、板をしならせて再度跳躍。
アクロバチックに舞台の上に降り立った。


シンノ「ふっ!」スタッ

ザイン「!」

翻訳ドロイド『?』

ミコア「!」

イシュメール「!?」

クイナワン「!?何だてめえは!?」ザワッ


 シンノはイシュメールをかばうように立ち、青いライトセーバーを抜き放った。
陽の光が降り注ぐ南国の星に、滅んだはずのジェダイの騎士が姿を現した。


シンノ「俺はジェダイ・ナイトのシンノ・カノス。そこの客人を迎えに来た」ビシッ


 シンノは高らかに名乗りを上げ、囚われのミコア姫を指差した。
ミコアはきょとんとした表情だった。


ミコア「……ジェダイが、私を?」


ザイン「・・・・・・!」パチパチパチ


 ザインが手を叩きながら何事か喚いた。


翻訳ドロイド『偉大なるザイン様は〈ジェダイの騎士よ、会えて嬉しい。思いがけないゲストが来たものだ〉と仰っています』

シンノ「ふん、ジェダイ様は『そこのミコア姫とこの囚人をもらっていくぞ』と仰ってるぞ」

イシュメール「お、おい、俺は囚人なんかじゃない!これはその、VIP待遇を受けてただけで……」

ザイン「・・・・・・」ゲラゲラゲラ


 ザインは自分では喋らないがベーシック(銀河共通語)を理解しているらしく、心底嘲るように笑った。
ついで後ろの日陰のほうへ、おざなりなハンドサインを寄越す。


ザイン「・・・・・・!」

翻訳ドロイド『〈ではこちらも全力で阻止しよう。そうでなくては面白い見世物にならない〉』


 それに応えて、日陰からザインの用心棒が姿を現す。
緑色のマンダロリアン・アーマー、ジェットパック、重ブラスター・ピストルの武者姿。


ボバ・フェット「お望みのままに」


 そしてもう一人――こちらは女性である。
高いところでまとめた黒い長髪をきらめかせ、直垂めいた勇ましい民族衣装に身を固める。
斬馬刀じみた長大なエレクトロ・カタナは鞘走る前から殺意を漲らせていた。


クネー「……ジェダイか。会うのは二人目だ。一人目は私が殺したがね」

シンノ「その類のホラはハクカの酒場で聞き飽きたね」

イシュメール「ん?……『クネー』!?お前、クネーじゃないか!」

シンノ「知っているのか?」

クネー「……誰だ?随分馴れ馴れしいな。私は貴様など知らん」

イシュメール「な、何言ってんだ!俺たち七、八年は一緒に仕事してたじゃねえか!」

クネー「ジャバ・ザ・ハットに喧嘩を売っておいて私をタトゥイーンに置き去りにしたジャワにも劣るクソ野郎なら知っているが。名前は何だったかな」

イシュメール「あ、いや、あれはその、たまたまお前の分のチケットが手に入らなくて、知らせる時間もなくて……」

シンノ「お前なんてことを……」


 シンノは守っているはずのコレリア人に軽蔑の視線を向ける。
クネーはフンと鼻を鳴らした。


クネー「そいつに助ける価値など無いぞ、今からでもシャッティーの餌にしてしまえ」

イシュメール「や、やめてくれ!見捨てないでくれ、ジェダイ様!この通りだ!」ペコペコ

シンノ「……思うところがないではないが、俺はジェダイだ。調停者だ。殺生沙汰は止めさせてもらおうか」

クネー「……そうか。後悔するなよ」


ボバ「クネー、無駄話はいつまで続くんだ」イライラ

クネー「焦れるなジュニア。今終わった」シャキンッ


 女武者は冷徹に言い切って、エレクトロ・カタナを抜き放つ。
緩やかな曲線を描く刃に青い電光が走る。


クネー「次は手短に済ませよう」チャキッ バチバチバチ

シンノ「同感だね」ブオンッ


 シンノの闖入で止んでいた音楽が、ザインの指図でふたたび再開する。


クイナワン楽士「――ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!ハーイーヤ!」ドンドコドンドコ

ミコア「……シンノ……」


 その陰でミコア姫が心配げにジェダイを見つめていた。


ホンドー「こりゃ驚いたぜ。ありゃもしかしてエズラの知り合いだったりするかなあ?」

ベイン「……クソ、ライトセーバーを見てるとクラクラしてくるぜ……ケノービめ……」


「……」


 ジェダイの闖入に騒然とするコロシアム状空間を、人気のない外周通路の窓から眺める人影があった。
全身を覆う黒いローブ、フードの陰から覗く銀色の仮面。
四つの黄色の瞳は舞台上のジェダイと、その向こうを見ている。


ネーア「――一体なにをコソコソしておる?」

「……!」クルッ


 怪人物――ダース・テイティスは、声のほうへ向き直る。
窓から差し込む強い陽射しの向こう、いっそう濃い陰の中に、融け込むような黒装束を纏った少女が立っている。


テイティス「……」

ネーア(……帝国の手の者ならもっと堂々と乗りこんでくるはず。この様子では、違うようじゃな……しかし……)

ネーア「……そなた、すごい『臭い』ぞよ。隠そうとしても隠しきれておれん」

ネーア「帝国のダークジェダイなんかよりずっとひどい……どす黒いドブの臭いじゃ」

テイティス「……」

テイティス「……臭うな、貴様も……そんななりで、一丁前に……」


 テイティスは唸るような妙な声で――そもそも目の数からして人間ではない――答え、右手を確かめるようにスナップする。


ネーア(……間違いない。出自はわからんが、こいつも妾と同じ……正統のシス!)


ネーア「……何が目的……といっても、シスの行動原理なぞ知れておるな」

ネーア「何を壊しに来た……何を殺しに来た?ザイン・ザ・ハットか?ミコア姫か?それとも……あのジェダイ?」

テイティス「……ジェダイとしての彼は、いずれは。しかし今はまだ」


 その右手をゆっくりと持ち上げ、差し伸べて――


テイティス「その時ではない!」ゴウッ!


 その掌から青白い炎を放射した!


ネーア「!?この技は!?」バチバチバチッ!


 ネーアもフォース・ライトニングで応戦する。
取り戻されつつある彼女のダークサイドの力が稲妻となって放たれ、青白い炎と激突し、スパークした。
ネーアの目が一瞬眩み、その瞬間、テイティスはローブをはためかせて走り去る。


ネーア「!待っ……!」

ユスカ「ハアハアハア、あれ、ネーア!?」ガチャッ


ネーア「ユスカ?何じゃ、何かあったのか!?」

ユスカ「何かあったも何も、あのバカが……シンノが、ザインの傭兵に真っ向から喧嘩しかけてくれちゃって!」

ネーア「うわあ、あのバカ!」

クイナワン傭兵「おい待て、何してる!ここは関係者以外立ち入り禁止――」ガチャッ

ユスカ「るっさい!」ジャキッ バシュバシュバシュ!

クイナワン傭兵「ぐふっ」ドシャアッ

ユスカ「とにかくネーア、一緒に来て!お姫様の居場所はわかったの、こうなったら一刻も早くオサラバするに限る!」ジャキッ

ネーア「まったく、この面子の潜入はつくづく長続きしないのう……」ヤレヤレ


 ユスカはシンノのいるステージのほうへ走り出し、ネーアもそれに続く。


ユスカ「――もしもし、R3?緊急事態発生よ!すぐに船をザインの城にまわして!」タタタ

ネーア(何をしとるんじゃあのバカ弟子は……まあ、そんなところもあいつらしいか)タタタ

ネーア(しかし、さっきのシスもシンノを何かしら気にかけているようじゃったが……一体、あいつの正体は……)タタタ



 一方、ステージ上――


ボバ「喰らえ……!」ボウッ!

シンノ「うおおっ!」サッ ゴロゴロ


 シンノはボバ・フェットの火炎放射を転がって避けるが、その先にクネーがエレクトロ・カタナを振りかぶって迫る!


クネー「フンッ!」ブウンッ!

シンノ「危ねえな!」サッ タッ

クネー「危なくしてるんだ……!」ブウンッ!ブウンッ!

シンノ「いらんことを!」ブウンッ!

クネー「チッ!」バチッ サッ


 熟練のジェダイは攻勢を跳ね返すが、賞金稼ぎもまた抜け目なく対応。
さらには反撃に転じる。


クネー「ジュニア!」

ボバ「言われずとも!」ビュンッ!

シンノ「ッ!?これは!」グルグルッ!


 ボバが放ったウィップコードがシンノの両脚に絡みつき回避を封じた!


ボバ「ジェダイ……あの世で俺の父に詫び続けろ!」ジャキッ

シンノ「無理な相談だ……!」グッ

クネー「あっ!?」グイッ


 シンノがフォースでクネーを引き寄せ、捕まえて盾にする!


ボバ「!?何をしている、クネー!」

シンノ「こんなもの……!」ブツンッ


 さらにその隙にライトセーバーでコードを切断し――


クネー「放せ、ジェダイ野郎!」ジタバタ

シンノ「お望みのままに!」ドカッ!

クネー「うおっ!」ビューンッ

ボバ「ぐおっ!」ドガッ


 フォース・キックでクネーをボバめがけ蹴り飛ばした。
二人は激突して転倒、下敷きになったボバのジェットパックから火花が散る。


クネー「おのれ……」スック

ボバ「ぬうっ……」スック

シンノ「さあ、どうする。まだやるか?」ブウンッ

ザイン「・・・・・・!」ダンッ!


 ザイン・ザ・ハットが苛立たし気に玉座の肘置きを叩き、ぞんざいな手振りでクイナワンの傭兵を集結させる。


クイナワン傭兵A「……」ジャキッ

クイナワン傭兵B「……」ジャキッ

クイナワン傭兵C「……」ジャキッ

クイナワン傭兵D「……」ジャキッ

クイナワン傭兵E「……」ジャキッ

シンノ「……寄ってたかって……」

イシュメール「やっぱりこうなるか……どうするジェダイさん、白旗でも上げてみるかい?」

ザイン「・・・・・・。・・・・・・」

翻訳ドロイド『〈不愉快だ。実に無駄な茶番であった〉』

ザイン「・・・・・――!?」ググッ

翻訳ドロイド『〈だが決闘の結果がどうであろうとこの城から逃れることは〉……?』チラッ


ミコア「私の客人にこれ以上の無礼は許しません!」グググ

ザイン「・・・・・・!?・・・・・・!?」ジタバタ

シンノ「!?」

イシュメール「何ィ!?」


 何たることか、ミコア姫が自らを戒めていた鎖を使ってザインの首を絞めにかかっている!


シンノ(何てアグレッシブな姫だ!……ん?)

クイナワン傭兵A「このクソガキ!」ジャキッ

クイナワン傭兵B「やめろ、ザイン様に当たる!」グイッ

クイナワン傭兵C「それ以前に姫だぞ、VIPだぞ!何考えてるんだ!」アワアワ

クイナワン傭兵D「この状況でVIPも何もあるか!」ワタワタ

クイナワン傭兵E「とにかく引き剥がせ!」グイグイ

ミコア「ええい、離しなさい無礼者!」グイグイ

ザイン「・・・・・・」キュー

シンノ「今なら……!」グググ…


 傭兵たちの意識が逸れた隙に、シンノは自分のフォースを力を最大限高める。
そしてそれを両手から一気に解放する!


シンノ「ハアッ!」ドウンッ!

クイナワン傭兵A~D「ウワーッ!」ポロポロ


 チャージ・フォースプッシュはステージ上のサザエ人間たちを一気に叩き落した!


クイナワン傭兵E「!?貴様ッ!」クルッ ジャキッ

ユスカ「シンノ!危ない!」バシュバシュッ

クイナワン傭兵E「ぐはっ」ドシャッ

シンノ「!ユスカ!」

ユスカ「まったく、結局ブラスター沙汰じゃない……」

ネーア「シンノ!囲まれる前に姫を連れて脱出を――おっ!」


 そのとき、ステージ上に大きな影が差す。
見上げれば、ステージめがけゆっくりと垂直降下するWウィングが縄梯子を垂らしてくる。


ネーア「R3じゃな!」パシッ

ユスカ「愚痴ばっかりだけど仕事はするね、アイツ!」パシッ

シンノ「さあさ、姫もこちらへ!」パシッ

ミコア「ええ、感謝しますよジェダイ!」パシッ

イシュメール「ジェダイ万歳!」パシッ


 一行は一息にザインの城からの脱出を図る。
しかしそのときステージの隅から、ボバ・フェットが背中のロケットランチャーの狙いをWウィングに定めていた!


ボバ「逃さんぞ!」バシュッ!


 ロケット弾はWウィングのエンジンの一つを過たず貫き、爆発!
エンジンから黒煙が噴き出し、機体がグラグラ揺れる!


ユスカ「うわっ、やった!」

ネーア「R3!早く上昇せんかーッ!」

シンノ「あんの賞金稼ぎめが!」ドウンッ!

ボバ「ウワアーッ!?」ポーンッ


 報復とばかりに放ったフォース・プッシュがボバをステージから突き落とす。
故障したジェットパックは虚しくガスを噴くばかりで、賞金稼ぎはそのまま人食い魚のプールに転落!


シャッティー「グアアアーッ!」バシャバシャ

ボバ「ウワッ、ウワアアアーッ!助けてくれー!」バシャバシャ


 ――その光景を尻目に、Wウィングは煙を吹きつつも上昇。
反乱軍の戦士たちとゲストはザインの城から逃げ延びる……


 その後。


クイナワン傭兵「ザイン様!絞められた首は大丈夫ですか」

ザイン「・・・・・・。・・・・・・!」

翻訳ドロイド『偉大なるザイン様は〈まだ痛みよるわ、奴らは絶対に逃がしてはならん。追手を差し向け、一人残らず殺せ〉と仰っています』

クイナワン傭兵「しょ、承知しました!」タタタ

ザイン「・・・・・・……」ズルズル

翻訳ドロイド『……』



 ザインはなおも憤懣やるかたないといった表情で城の中に姿を消す。
翻訳ドロイドはそれを無感動に見送った後、ステージのすぐ下の観覧席、プールに向かって屈みこんでいる女用心棒に目をやった。


クネー「っしょ……っしょ……」グイグイ


 見れば、プールに垂らしたワイヤーを手繰っているようである。
その先に掴まっているのは――


ボバ「は、早く上げてくれクネー!し、下でシャッティーが!シャッティーが!」ジタバタ

シャッティー「グアウウウ」バシャバシャ

ボバ「ウアアアー!クネェー!」ジタバタ

クネー「哀れっぽい声を出すな……よっ、と……掴まれ!」

ボバ「ウオオ!」ガシッ

クネー「ふんっ!」グイッ

ボバ「フハアッ!……ハアーッ、ハアーッ、ハアーッ、悪い、クネー……」ズベッ


 ずぶぬれの賞金稼ぎが観覧席に引っ張り上げられる。
ボバ・フェットはなんとか立ち上がり、忌々し気にプールを見下ろす。


ボバ「あ、あ、あ、あのクソ魚どもが、自分の土俵で粋がりやがって……ジェットパックさえ壊れていなければ……」ブツブツ

クネー「災難だったな……元はと言えば、イシュメールの奴をザインに突き出すだけのはずが……」

ボバ「まったくだ!賞金首を捕まえるだけの契約だったものを、ゴネられてボディーガードの真似をさせられ、ジェダイと戦わされ、挙句の果てあんな化け物に食われかけるとは……もう二度とザインの仕事は請け負わん!」

クネー「フン……私もクイナワには飽きてきたところだ……このうえジェダイと追いかけっこなんざ御免だね」

ボバ「よし、じゃあ早速俺がザインに話をつけてこよう。機嫌が悪いようだが知るか。このやたらギラギラした太陽もクソシャッティーももうウンザリだ!代金はキッチリいただいてハクカのカジノで一勝負といくぞ!」


 ボバが階段を上り、ステージを通ってザインの居室へと向かう。
クネーは彼を釣り上げたワイヤーを片付け、脇に置いていた長いエレクトロ・カタナを取り上げ……
ふと、影が差す。
クネーは自分を見下ろして立つ人影をジロリと見やった。


テイティス「……」

クネー「……あんたは?」

テイティス「……」

テイティス「仕事を頼みたい」


 ――謎のシス卿と賞金稼ぎの接触。
そこでどんな会話がなされたのか、今はまだ定かではない。

 密談を終えて二人が別れたしばらく後、ザインの翻訳ドロイドが人気のない外周通路に姿を現した。
機械的にあたりを見回して人目がないことを確認すると、手首に仕込まれた秘密のホロネット通信機を起動する。
腕時計めいた仕込みデバイスから、小さな3Ⅾ映像が立ち上がる――


スターバル『――ザザッ、潜入ドロイドOO-7!』


 ノイズ混じりながら、それは紛れもなくカリーシュの分離主義勢力残党指導者、スターバル将軍である!


スターバル『動いたのか――ザリザリッ――況が!』

翻訳ドロイド『はい。ダース・テイティスと賞金稼ぎクネーの接触を確認。指向性高感度マイクロフォンにて会話を録音しました。これよりデータを送信します』


 そう言ってドロイドは自分の中の音声データを秘匿回線にてスターバル将軍に送信する。
指向性高感度マイクロフォンなど本来プロトコル・ドロイドには組み込まれない装備であり――
もはやこの翻訳ドロイドが分離主義勢力の送り込んだスパイ・ドロイドであることに疑いはない。


スターバル『ガガッ――認した!よくやった潜入ドロイドOO-7、この――ザザッ――値千金だ!』

翻訳ドロイド『他にジェダイも確認しましたが、すでに逃亡しました』

スターバル『ジェダイ?捨ておけ!そこに反乱軍が隠れていることはすでに――ザザーッ――重要なのは、これによってシスを出し抜くこと……!』

翻訳ドロイド『これから私はどう行動しましょうか』

スターバル『ふむ……テイティス自身もフットワークが軽――ガリガリッ――わざわざ用心棒を雇うということはだ。自分ではできない何かしらの役割を――ザザーッ』

スターバル『あからさまに重要だ!奴らの計画の要だ!OO-7、貴様はそのザインの――ザリザリッ――を中断し、その賞金稼ぎを追跡せよ!くれぐれもバレないように、だ……!』

翻訳ドロイド『承知しました』

スターバル『では通信を――ザザッ――ガリガリーッ――ブツン!』


 翻訳ドロイドは通信機のスイッチを切ると、早足でザインの城のエントランスへ向かう。
ザインとの契約を打ち切り城を去るであろうクネーを待ち伏せ、後をつけるために……


 ――翌日、惑星クイナワ首都ハナン・シティ。
中心街から一本裏手に入った道に面するジャンクショップの中に、いつもの面々の姿があった。


ネーア「……高いのう」ヒソヒソ

シンノ「高いな」ヒソヒソ


 ショーウインドーにへばりつくネーアと、それを上から覗き込むシンノ。
中に収められているのは一抱えもある鉄塊――Wウィングのエンジンである。
貼り付けられた値札の数字の桁数はなかなか信じがたいものだ。


ネーア「……」チラッ

シンノ「……」チラッ

店主「……」バサ


 店主はアイソリアン(シュモクザメに似た種族)で、首のあたりに自動翻訳機を付けている。
番台じみた席の上、すました顔で新聞を読んでいた。


ネーア「……」ツンツン

シンノ「!……」チラッ

店主「……」ムスーッ

シンノ「……」フルフル

ネーア「……」ゲシゲシ

シンノ「チッ……あ、あのー……」

店主『はい』サッ

シンノ「……これ、もうちょっと安かったら買うのにな、なんて……」

店主『はあ。でも純正品ですから』

シンノ「ですよね……さ、さあネーアちゃん、外の売り場を見に行こうか!」グイグイ

ネーア「そ、そう押すでない……」


 ある程度品質の高い商品が置かれている店内と一転して、屋外売り場には鉄屑同然の機械類が山積みになっている。
その中を薄汚れた作業着姿のローディアン(口が長く突き出た種族)が物色して回っていた。


客(フーム……やっぱりこのあたりのジャンクヤードは、高値で転売できそうなものはあらかた掘りつくされてしまっているか……)ハア

客(――それにしても……)チラ


 ローディアンの男は鉄屑の山を一つ挟んだ向こう、あれこれ話しながら売り場を見て回る三人の男女をひそかに見やる。


客(あいつら、見ない顔だな……)

イシュメール「これもエンジンじゃないのか?」

ユスカ「それはポッドレーサーのやつ。Wウィングとは規格が違うから代用にもならない」ガチャガチャ


 話しかけるイシュメールはスカーフで顔を隠し、帽子をかぶって変装している。
胡散臭い商売で生き延びてきただけあって慣れたものだった。


イシュメール「ヘエー、よくわかるな……」

ユスカ「工具揃えれば繋げないことはないけど、こう野ざらしになってたヤツじゃ無理だね……もとが純正品とかならともかく」ガチャガチャ

イシュメール「なるほど、なるほど……」フムフム

ユスカ「……何?何かわかったの?」

イシュメール「いや、機械に強い女の子ってのもアリだなって思って」

ユスカ「は?」ジロッ

イシュメール「ナンデモナイ」

ミコア「ユスカとやら!これはなんでしょう?この瓶の中の水……ややくすんではいますが、宝石のような――」


 そう言ってガラスシリンダー状の機械部品を取り上げるのはミコア姫である。
その出で立ちはヤマタイト王族装束から、ザイン好みの奴隷衣装を経て、ハナンシティの服屋で買ったラフなシャツとハーフパンツに変わっている。


ユスカ「え?……わ、わあ!捨てて捨てて!それ中身が有毒だってんでリコールになったヤツだよ!」

ミコア「え?は、はい……」ポイッ

ミコア「――それにしても、ゴミ山のようでも一つ一つ見ていくとなかなか面白いものがあるものね!もっと何かないかしら!」ガチャガチャ

ユスカ「も、もう何も触んないでよー!」


 やがて店内売り場からさらに二人、連れらしき男と少女が現れる。


シンノ「自分で言えよ自分で!」バシッ

ネーア「いって!……で、でもどうするのじゃ?替えのエンジンが見つからないことには基地に帰れんのじゃろう?」ヒソヒソ

シンノ「ああ……Wウィング自体も、いつまでも郊外に隠しておけないしな」ヒソヒソ

ネーア「前から思ってたんじゃが、シカーグ将軍に助けを呼ぶわけにはいかんのか?」ヒソヒソ

シンノ「通信を傍受されるかもしれないし、万が一反乱軍本隊とザイン軍の戦争にでもなったらまず間違いなく帝国に露見するからな……何より」ヒソヒソ

ネーア「何より?」ヒソヒソ

シンノ「自分のケツを自分で拭けないなんてカッコ悪いだろ」ヒソヒソ

ネーア「……そなた、けっこう呑気じゃな」ヒソヒソ

ユスカ「あっ!シンノ、ネーア!こっちこっち!」


 入口のあたりで話していた二人をユスカが見つけ、呼び寄せる。
シンノたちは小走りで三人に合流した。


シンノ「どうだ、首尾は?」

ユスカ「全然ダメ。TIEファイターの動力伝達チューブとかならいくらでも転がってるんだけど……エンジン丸々一個となるとね」ハア

シンノ「そうか……だが聞いて驚け。こっちはほぼ理想的な状態のWウィングエンジンを見つけた」

ユスカ「本当!?」

シンノ「しかもメーカー純正品だ」

ユスカ「最高じゃない!」

シンノ「だろ?……でも高すぎてとても手が出ない」

ユスカ「最初に!それを言いなさいよっ!」バッシイッ!

シンノ「いって!」


客(Wウィング?)


 たまたまその会話が耳に入ると、ローディアンの男ははっとした。
安酒場で人づてに聞いた、ザインが高額の賞金を懸ける人物の情報を思い出す。


客(たしかその賞金首はジェダイ崩れで、Wウィングに乗っていて……一味の構成は……)チラチラ


 善後策について話し合う五人を、ローディアンは屑鉄の山の陰から盗み見る。


客(間違いない……!あいつらだ!あいつらの情報をザインに売れば……!)


 男は思わぬ大儲けのチャンスに内心昂揚しつつも、ごくさりげなくその場を離れた。
建物の陰に入るとすぐに走り出し、屋外売り場から直接駐車場へとまろび出るように駆けていく。


ユスカ「……?」


 その足音を聞きつけたのか、あるいは視線を感じていたのか。
ユスカが一人、そちらのほうを振り返る。


客「ハアーッ!ハアーッ!ハアーッ!」


 ローディアンの男は激しく興奮しつつ、自分のスピーダーに飛び乗った。
カーステレオめいて組み込まれた旧式のコムリンク通信機を起動し、震える手でダイヤルを捻り、周波数をザインへの通報ポートに合わせる。


客(賞金、賞金、賞金だ……!食い物も、酒も、女も、いくらでも買える……)カチカチ

客(いや、違う!商売だ!商売を始めよう!死んだおやじがやっていたローディア・ヌードルショップを復活させるんだ。こんなゴミ漁りの仕事なんて辞めて――!?)


 運転席の窓をノックされ、男はぎょっとしてそちらを振り返る。


ユスカ「――ちょっとあんた」

客「――!」


 バレた!?
ローディアンの男の脳内がスパークし、ほとんど反射的にダッシュボードを開けてブラスター・ピストルを取り出す!


ユスカ「あっバカ……!」

客「ウワアアアーッ!」ジャキッ

ユスカ「く……」バシュバシュバシュッ!


 次の瞬間、ローディアンの男の体が助手席側へ吹き飛び、倒れ込んで動かなくなった。
ユスカが窓の下、男の死角からドア越しにブラスターを発射したのだ。


ユスカ「……最悪」


 男のただならぬ様子を見て取ったユスカは、ノックする前から――「相手が銃を抜く前から」、密かにブラスターを構えていた。
ブラスター・ガスがぷんと臭い、ユスカは顔をしかめる。


シンノ「ユスカ!なんの騒ぎだ!?」タタタ

ネーア「ザインの手の者か?」タタタ


 銃声に気づいた四人が後を追ってくる。


ユスカ「ああ、皆……こいつ、たぶんザインに通報しようとしてたみたい……」

シンノ「ザインに!?」

イシュメール「へっ、『迷子情報』はもう行き渡ってるみたいだなあ?」

ミコア「マイゴジョーホー?」

ネーア「ジェダイどもを皆殺しにするか、ザインの城に引っ立てて行きゃお小遣いがもらえるってとこじゃろ」フン

シンノ「とすると、あの店主も……」

イシュメール「あのアイソリアンもグルなら、今頃押っ取り刀で駆け付けたザイン軍団になぶり殺しにされてる頃だ。あいつはシロだな」

ユスカ「……で、このローディアン……話そうとしたんだけど、撃ってきそうだったから……その……」

シンノ「……そうか」ポンッ


 シンノは複雑な表情をしつつも、労わるようにユスカの肩を叩く。


シンノ「……ご苦労さん」

ユスカ「……うん」


 しかし一方で、イシュメールがドアの弾痕を覗き込みながら無神経なことを言う。


イシュメール「ヒャー、これ、ドアぶち抜いて撃ったのか?ユスカちゃん、やるなあ……」

ユスカ「ッ!」ガシッ


 ユスカは向き直ってその胸倉を掴み上げた。


イシュメール「お、おいっ!?」

ユスカ「……あんたねえ……!」ワナワナ

イシュメール「なんだよ、手際を褒めただけだろ!?」

ユスカ「――」プチッ


 平手打ちなどという生易しいものではなく、捻りこみを加えた理想的な右ストレートがイシュメールの左頬を捉えた。


ミコア「きゃあっ!」

ネーア「……シンノ、何か言わんのか?調停者なんじゃろ」

シンノ「あーあー何も見てない」ワーワー

ネーア(イシュメールの自業自得とはいえ……ジェダイマスターが見たらブチ切れるじゃろこんなの。あっ、ジェダイはキレんか)


 イシュメールは運転席のドアに背中を打ち付け、呆然とした後、すぐに怒りの表情を覗かせる。


イシュメール「なっ……こ、こんのクソアマ――!」

ユスカ「……」


 しかし彼が殴り返すようなことはなかった。
相対するユスカの目が潤んでいるのを見るや、イシュメールはばつが悪そうな顔をした。


イシュメール「……アー、その……悪かったよ」ボリボリ


 そして頭を掻きながら謝罪さえした。
ユスカは黙ってそれに背を向けて、小さな声で言う。


ユスカ「……あんただけが間違ってるなんて言わないけど。私、もうあんたと一緒には居たくない」

ユスカ「ここで別れようよ。リスクの分散とかにも、なるでしょ」

イシュメール「い、いや待て待て!なぜそうなる、それは困る」


 イシュメールはすぐに元気を取り戻して主張を始めた。


イシュメール「俺なんてブラスターも持ってないし――あっ、このローディアン野郎の銃もらっとこ」ヒョイッ

イシュメール「――ブラスターこそ持ってるが、ひ弱な商人に過ぎないんだぜ?ジェダイ様に見捨てられたらすぐに殺されちまう!」


シンノ「……まあ、それはどうでもいいが」

イシュメール「どうでもいい!?今どうでもいいって言った!?」

シンノ「ユスカ、よく考えてくれ。こいつがザインに捕まったらどうすると思う?まず間違いなくWウィングの在処から何から全部ゲロるぞ」

イシュメール「ああ、それはあるな」シレッ

シンノ「……嘘でも否定しろよ……」シラー

ネーア(ここでこやつを殺しちまうのが最適解だと思うのは妾がシスだからじゃろうか)

ユスカ「でも……」

イシュメール「しかし、だ」


 イシュメールは芝居がかった仕草で指をぴんと立てて笑う。


イシュメール「なに、エンジンが買えないって?――俺が用意してやるぜ、その金を!」

シンノ「……あてがあるのかよ?」シラー

イシュメール「ああ。俺は星系を股にかけるビジネスマンだ。人脈に関しちゃQC宙域で敵う奴はいない……」

ユスカ「……なんか胡散臭いんだけど」ムスー

ネーア「自分から人脈とか人望とかを誇る人間にろくなやつはいないぞよ」ヘッ

イシュメール「黙らっしゃい!それとも他にアイディアがあるってのかい?」

ユスカ「ヘタな賭けに突っ込んで自滅するよか、他の方法をゆっくり考えた方がマシでしょ」

イシュメール「ザインの手はもう町中に伸びてる、ゆっくり考えられる場所なんて無いぜ!?ジェダイさんもそう思うだろ!?」クルッ

シンノ「……」シラー

イシュメール「ジェダイさん?」

シンノ「……言っちゃなんだが、自分が切り捨てられそうになった途端ずいぶん元気になったな」シラー

イシュメール「ジェダイさん!?」


ミコア「……おほん。言っておきますが、今更彼を切り捨てるなんて許しませんよ」


 煮え切らない会話を凛とした声が遮った。
ミコア姫はラフな恰好でもなお、王族らしい毅然とした態度を保っていた。


シンノ「ミコア姫……だが、こいつの言うことはあまり信用ならんしな……」

ミコア「はじめに彼を助けたのはあなたでしょう。ジェダイなら最後まで守り抜いてみせなさい、責任をもって」

シンノ「……」

イシュメール「……改めてそう言われるとなんか居心地が悪いが……」ブツブツ

シンノ「……そうだな。まあ、この星から出るまでくらいは面倒を見よう」

ユスカ「シンノ!?」

シンノ「ユスカ、お前の気持ちもわかるが、他に金のあてがないのも事実なんだ。なんとかわかってくれ」

ユスカ「……う、うん……」

イシュメール「やったぜ!そういうことだから、仲良くしてくれユスカちゃん!」ポンポン

ユスカ「触んな」バッシイッ!

イシュメール「いっってっっ!」ガクウッ

ミコア「……はあ、私が何を言っても、この調子では……」ヤレヤレ

ネーア「さあ、そうと決まれば早いところ『金のあて』とやらのところに連れて行ってもらおうぞ」

イシュメール「あ、ああ……じゃあそういうことだからジェダイさん、貸し一つだぜ」

シンノ「貸し!?貸しだと!?命を救われた相手に言うことか!?」

ユスカ「やっぱりこいつここで置いていこうよ」ジャキッ

ネーア「チャカはもうしまわんか!」

イシュメール「それはそれ、これはこれだろ?言ったろ、俺はビジネスマンなんだよ。慈善事業家じゃない。あんたはそうかもしれんが」

シンノ「クソ、もうなんでもいい。幸いスピーダーは手に入れた、早いとこ案内してくれ……」


 同時刻、マスドライバー施設跡の反乱軍秘密基地にはスコールが降り注いでいた。
物資集積場にはシートに覆われたチュクチャク木材の山がいくつも並び、灰色の空の下、生ぬるい雨に濡れている。


C7-BDB『将軍ヨオ。ユスカタチ、ウマクヤッテッカナア』


 旧管理棟に設けられた作戦室。
集積場の景色をぼんやり眺めつつ、銀色の料理人ドロイドC7-BDBがシカーグ将軍に尋ねる。
彼はユスカと兄弟同然の付き合いだった。


シカーグ「ああ、そういえばそろそろ連絡があってもいい頃だが……」


 シカーグは、壁際、平たいクッションをいくつも積み上げた上に胡坐するリズマに目をやった。


リズマ「……」


 彼女は静かに瞑目して瞑想にふけっている。
この蒸し暑さの中、ジェダイ騎士団制式の衣装をきっちり着込みながらも、汗一つかかずにかれこれ五時間もこうしていた。
シカーグはその平静の向こうに彼女のマスターの影を見た。


シカーグ「……シンノが一緒だからな、大丈夫さ」

C7-BDB『……マ、ソウダナ。ユスカダッテ、ソウソウドウコウデキルヨウナオ嬢様デモネエヤ』

バヤット「――そうでもないようです、将軍」ガチャッ


 割り込んできたのはモン・カラマリの青年将校サマ・バヤットである。


シカーグ「ン……?それはどういう意味だ」

バヤット「ただ今入った情報なのですが、ザイン・ザ・ハットがリシューやハナン・シティにシンノさんらしき男の指名手配をかけているようでして」

シカーグ「何だと……!?」

C7-BDB『ナ、ナンデシンノハソンナコトニナッテルノニ連絡ノ一ツモ寄越サナインダ!?』

バヤット「しかしこれだけの騒ぎが起きているということは、その中心にミコア姫がいることは間違いありません……将軍、本隊を派遣し姫の身柄を確保しましょう!」

シカーグ「……」


 バヤットの提案は常に過剰に攻撃なことを知りつつも、ヤマタイト王国の最高権力者を確保するチャンスを前にシカーグ将軍は一瞬逡巡した。
もう一度リズマに目をやる。


リズマ「……」


 瞑想中とはいえ、この衝撃的なニュースは彼女の耳にも入っているはず。
しかし女ジェダイは眉一つ動かさず、何事もなかったかのように座っている。


シカーグ「……いや、シンノたちに任せよう」

バヤット「何故!?」

シカーグ「そんな状況でも連絡がないということは、あえてせずにいるということだ。傍受を恐れてか、本隊を動かさせるのをためらってかはわからんが……少なくとも、シンノたちにはそういうことを気にするだけの余力がある」

バヤット「連絡ができないような怪我をしているのかも……」

シカーグ「あいつはジェダイ・ナイトだぞ。ザインの私兵ども相手にそこまで後れをとることはまずないだろう」

C7-BDB『ソウイヤソウダ。惑星ハクカカラコッチ、アイツガドレダケ鉄火場ヲ潜リ抜ケテキタコトヤラ……』


バヤット「く……し、しかし……」

シカーグ「……それとバヤット。お前はシンノたちの身の安全じゃなく、ミコア姫の身柄を気にしてはいなかったか。そんな姿勢では人は動かんぞ」

シカーグ「常々言っていることだが、正義を守るにはまず、仲間を守らなければならん。遠くの理想ではなく足元の現実を見るんだ。そしてそこからどう歩いていくか考えろ」

バヤット「……は、はっ……」


 シカーグに諭され、バヤットはすごすごと退散する。
……いや、ドアを開けかけたところで一度振り返る。


バヤット「……あの、これ以降もこの件に関する情報収集はしたほうが……?」

シカーグ「ん?ああ、そうだな。お前から情報部に言っておいてくれ」

バヤット「はっ……失礼します」ガチャッ バタン

C7-BDB『……相変ワラズ、ナンカ危ナッカシイヤツダナ?』

シカーグ「……だが気はよく回るだろう。仲間を守ることも、自分が心から大切と思っていなくとも、必要とあらばできる奴だ。だから副司令官に置いている」


 二人はどちらからともなく窓の外に目を向ける。
スコールはいつのまにか上がり、雲間から日の光が差し込み始め、地上の水たまりをきらきらと輝かせていた。


リズマ「……」


 リズマはなおも瞑想にふける。
かすかに聞こえていたC7-BDBの言葉が、彼女にこれまでの戦いの数々を想起させた。

 ヤマタイティア星系惑星ハクカ上空、衛星砲台ラグナロクにおけるジヒス・マーズとの決闘。
同星系惑星ハンカッタ、帝国軍尋問官イレブンス・ブラザーおよびトゥエルブス・シスターとの死闘。
ナグサック星系の惑星デジム、ひそかに進出してきた外宇宙生命体ユージャン・ヴォングとの遭遇。
宙域外縁部暗礁宙域、スノークなる謎のダークサイダーとの邂逅……

 いずれもライトセーバーが必要な事態となったが、いつもシンノと共にあった。
そして戦場をくぐるよりもずっと多く、一つの食卓を囲んで会話を交わした。
今彼女はマスターのことを真に理解し、信頼している。
だから離れても動揺はしない……


シンノ「……」


 ジャンクヤードでの一幕の数日後。
シンノはゴワついたライダースーツに身を包み、フルフェイスヘルメットを被って、強い日差しの下に立っていた。
スタンド一杯の観衆はエンターテインメントの開幕を待ちわびて、シンノと、ほか九人の主役に声援を投げかけている。


シンノ(どうしてこうなった……)


 シンノは熱気と大音響にうんざりしながら、自分の横で浮遊する機械を見やった。
二つの並列エンジンと、それに牽引される格好の操縦席――ポッドレーサー。
単純で乱暴な構造である。
たしかその発祥は、獣が曳く乗り物を無理矢理エンジン駆動に変えたものであったか。


ユスカ「シンノー!頑張って!」


 ユスカがスタンド最前列の関係者席で手を振っている。
横にはつまらなそうな顔をしたネーアや、しきりにあたりを見回すミコア姫もいる。
その近くではイシュメールとサラスタン(大きな目とネズミのような耳を持つ種族)の男が何やら口論していた。


サラスタン「おい、本当に大丈夫なんだろうな!?『フェザリオン』を……いや、それ以前に、俺のマシンをぶっ壊しやがったら承知しねえぞ!」

イシュメール「俺のマシンたって、お前は操縦なんてできねえんだから、どっちにしろ人を雇うにゃ違いねえだろ。その点あいつは腕っこきだ。俺が言うんだから間違いない」

サラスタン「お前の言うことなんか信用できねえ!」

イシュメール「やかましい!あんまグダグダ言ってると『あのこと』バラすぞ?」

サラスタン「ぐっ……!」


実況『さあポッドレース・ハナンカップ3000cc部門、選手紹介に参りましょう!』


 アナウンスとともに観客がいっそう大きな歓声を上げる。


実況『エントリーナンバー1!ハナンカップ絶対王者、我らの英雄〈オルフェ〉と愛機〈フェザリオン〉!』


 観客の視線と声援は白と金のシャープな機体と、その横に立つ男に集中する。


オルフェ「……」ス…

オルフェ「……」ピッ


 騎士じみた鎧を纏ったその男は、黙って指を一本立てた。
観客の期待の声が爆発のように湧き上がるのを聞きつつ、シンノはそちらを見やった。


シンノ(あのサラスタンの男が資金提供の対価に要求したのは、こいつより上の順位を取ること……こいつを倒すこと)

シンノ(その条件だけを考えれば、スタート直後にフォースのイカサマで機体を転覆させてもいい……というか、危険なポッドレースにおいてはそれが一番安全な手段かもしれないわけだが……)

オルフェ「……」ジロッ

シンノ「!……」


実況『エントリーナンバー2!タトゥイーンからの刺客、ガイナワカップの征服者〈セブルバJr〉!』

セブルバJr「ドーモ、ドーモ!……オルフェ!今日こそテメエのそのスカしたメットを剥いでやるぜ!」

オルフェ「……」フイッ

セブルバJr「ケーッ!」

実況『エントリーナンバー3!永遠の3位、安定の3位〈カスタム兄弟〉!』

カスタム兄「失礼なアナウンスだな、弟者」

カスタム弟「まったくだ兄者。好き好んで3位でいるわけではない」


 アナウンスは続き、シンノは自分がエントリーシートに記入した偽名が呼ばれるのも気づいたが、いまだ意識はオルフェと視線の交錯した一瞬にあった。
おそらく、オルフェはデータのない選手を気にしただけであろう。
しかしシンノはその瞬間、思いがけない緊張感を覚えて目をそらした。
兜のバイザー越しに、あるいはフォース越しに、彼のレーサーとしての気概――情熱――否、もはや人生と結びついた確固とした目的意識を見た気がした。


シンノ(絶対王者……か)

実況『さあいよいよレースへ参りましょう!本部門は極短距離障害レース、勝負はトラック2周で決します!』


 アナウンスと地上の係員の案内の下、選手とポッドレーサーはスタートラインへと移動する。
シンノも所定の位置に就くと、エンジンを一通りチェックした後操縦席に身を沈めた。


実況『観客の皆さんの限りない期待とともに!カウント・ダウーン!――3!』

シンノ(だが俺にも戦う理由はある)

実況『2!』

シンノ(なんとも妙な展開になったがオルフェを倒し、エンジンを買ってWウィングを修理し――)

実況『1!』

シンノ(ミコア姫を連れて、基地へ帰る!)

実況『――スタートッ!』


 観客の歓声の奔流とともに、九台のポッドレーサーが決闘を開始した。
一台はスタートダッシュを試みてエンジンが暴走、爆発した――ポッドレースは命の危険と隣り合わせの競技である。


観客A「おい、10番の『ジョン・ドゥ』とかいうのは何者か知ってるか?」

観客B「いいや知らねえな、おおかた新参だろう。スタートはうまくいったみてえだが――」


 レースで優秀な結果を残してきたドライバーには優良なスポンサーがつき、優良な部品を購入して優良な機体を構築することができる。
コーナーを曲がって最初の障害に突入する段階においても、すでにそのスペック差は現れ、早くも集団が二つに分かれつつある。
すなわちオルフェ、セブルバJr、カスタム兄弟の先頭集団と、それ以外の6機の後続集団である。

 最初の障害は「スラローム」――林立する石柱が致死的な相対速度をもってレーサーに立ちふさがる。
先頭集団は危なげなくすり抜けていくが、後続集団先頭の機体が石柱に掠め、スピンして、別の石柱に激突し爆発四散した。
しかし二人の観客が注目するエントリーナンバー10番の選手「ジョン・ドゥ」は巧みなドライビングテクニックで機体を操り、最小限の減速で危険地帯を通過してみせた!


観客A「ヒューッ!見たかよ今のハンドリングを……こいつはやるかもしれねえぜ!」

観客B「しかしよ、オルフェには勝てねえぜ。見ろ!」


 片割れが指さすオーロラビジョンには先頭集団の様子が映されていた。
危険なショートカット・ジャンプ台を素通りしてデッドヒートを続ける三機。
カスタム兄弟がアウトコースから追い抜きを図り、セブルバJrがこれに幅寄せして阻止を図る一方で、白と金の機体フェザリオンは悠然とリードを広げていく。


シンノ(早くも二機脱落とは、思った以上にハードだな……!)


 「ジョン・ドゥ」選手の正体はシンノであった。
レース出場は初めての経験だったが、念入りに調整とテストランを重ねたポッドレーサーは彼の操縦によく追従していた。
スラロームで手間取った後続を引き離し、集団先頭を行くウーキーの機体に追いすがる。


ウーキー「ムオオーン…!」


 ウーキーは苛立った様子でそれを見やると、思い切りハンドルを切った。
クラッシュ攻撃か――否!その先にはショートカット・ジャンプ台!


実況『おおーっと!ここでブラブランダ選手ジャンプ台に挑戦だーっ!』


 実況の煽りとともにウーキーはアクセルを踏み込み、その傾斜に沿って機体を空中へと躍らせる!


実況『飛んだあああー!』

ウーキー「ムオオーン!」カチッ


 続いて機体後方からドラッグシュートが展開!
ショートカット・ジャンプ最大の鬼門である着地に備え機体を減速するが――空気抵抗が過大!


ウーキー「!?」


 空中姿勢が乱れ――もんどりうった機体はコースを飛び越え、観客席に着弾!
エンジンが爆発し、爆風と破片が観客を襲う。
悲鳴と怒号が上がるが、被害の及ばない観客はむしろ興奮して歓声を上げた。


シンノ(ああーっ、やりやがった!――しかし……)


 シンノはそれを後ろから見ていたが、ジャンプ台への誘惑にかられつつあった。


シンノ(このショートカット・ジャンプを決められれば、先頭集団にくらいつける……!)


 その葛藤がコース構築者の狙い通りであることを自覚しつつも、シンノは機体をジャンプ台へと向けた!


実況『ブラブランダ選手脱ら――おおっ!じゅ、10番ジョン・ドゥ選手がジャンプ台にっ!』


 ジェダイの駆るポッドレーサーは危険なジャンプ台に突入し、テイクオフ!
機体は放物線を描いて先頭集団直後の空白地帯に飛んでいくが、その速度は明らかに過大――


シンノ「――今だ!」ドウンッ


 フォース!ポッドレーサーが空中で急制動!
ついで着地し再度加速、先頭集団を追う!


実況『ジョ、ジョン・ドゥ選手ジャンプに成功――ッ!一体なんでしょうかあの動きはッ!?リパルサー・リフトを仕込んでいるのか――ッ!?』


 実況の興奮は観客へ伝播し、あっという間に10番は注目の的となる。
シンノはオーディエンスの狂熱を感じつつ、さらにアクセルを踏み込んだ。


イシュメール「いいぞシンノォー!」ヤンヤヤンヤ

サラスタン「お、おいイシュメール……俺たち友達だよなあ?だからよ、やっぱりこの勝負は……」

イシュメール「うるせえ!黙って見てろ!」

ネーア(シンノめ、こんなバカバカしい見世物にフォースを使いよって……)ケッ

ミコア「ああ、でも、私……ユスカさんは彼のこと、心配ではなくって……?」ハラハラ

ユスカ「私?私は……あのポッドレーサー、私も一緒に整備したし……信用してるよ。シンノはジェダイだし、仲間だから」


 ユスカは思うままに答えていたが、その言葉は自分にとっても腑に落ちた気がした。


ユスカ「きっとお互いに信じ合えるから、どんな危ないことでも、辛いことでもできるんだと思う」

ミコア「信じあえる、仲間……仲間、ね。とてもいい言葉だわ」


 ミコアは目を伏せた。


ミコア「……かつて私のために死んだ者がいたけれど、彼と私は主従ではあっても仲間ではなかった……」

ユスカ「……もう、何黄昏てるのよ、お姫様」


 ユスカは彼女の手を握った。


ユスカ「ブラスター撃つしか能のない私にできたんだから、仲間なんてすぐ作れるよ。友達だって、ボーイフレンドだって、ね!」


シンノ(見えた!先頭集団!)

カスタム弟「!兄者!」

カスタム兄「10番?何者だあいつは」

セブルバJr「ケエーッ!邪魔者が増えやがったか!」

シンノ(カスタム兄弟……セブルバJr……その先……)

オルフェ「……!」

シンノ(オルフェ……!)


 二人の視線が一瞬交錯したかに思われたそのとき、レーサーたちの視界が円形に狭まる。
コースを壁が塞いでいる。
そこに空いた狭いトンネルを通れというのだ!


オルフェ「……」グインッ

セブルバJr「ファック!」グインッ

カスタム兄「チッ」グインッ

シンノ「くそっ!」グルンッ


 四台はそろってトンネルに突入した。
焼けつくような日差しが一瞬遮られ、蒸し暑い空気に包まれる。


シンノ(こう狭くちゃあ追い抜きなんてできない、ただただ差が開くばかりだ……二週目のトンネルまでにオルフェを抜かなければならない!)


 先頭集団がトンネルを通過し、そのままスタートラインを通過する。
ワースト2位の選手がトンネル内で無謀な追い抜きを試み、周囲の二機を巻き込んでクラッシュ。
後続集団は全滅した。


実況『さあレースも後半戦!1位オルフェ、2位セブルバJr、3位カスタム兄弟、4位ジョン・ドゥ!勝負はこの四人のデスマッチに突入だーッ!』


シンノ「せえいッ!」グインッ!


 シンノは機体をほとんど横倒しにして石柱の間をすり抜け、スラローム地帯を減速無しで通過してみせた!


カスタム兄「馬鹿な!」

セブルバJr「何だとーッ!?」

実況『ジョン・ドゥまたもウルトラC!カスタム兄弟とセブルバJrをやすやすと抜き去ったーッ!』

オルフェ「……!」

シンノ(あとはジャンプ台でオルフェを抜いてトンネルまで逃げれば……!優勝は目前だ!)

オルフェ「フフッ……!」グインッ


 しかしそのとき、シンノの予測を裏切ってオルフェがジャンプ台へ向かう!


シンノ「な!?」

実況『おおーっとジョン・ドゥの成功に目がくらんだか!?オルフェがジャンプ台に挑戦だ!しかしこれはやや無謀――』


 フェザリオンが宙を舞う!
白と金の機体が穢れた大地を離れ飛翔する姿は荘厳ですらあったが、機体はやがて重力に引かれ、地表は殺人的な相対速度で迫る!


オルフェ「フンッ!」グインッ


 だがオルフェは巧みにハンドルを操り、絶妙な加減でスラストリバーサ装置を発動!
機体は地面に衝突して砂煙を上げるが再度浮遊し、白と金の機体は疾走する!


実況『オーマイゴッド!オルフェ選手のフェザリオン、ジャンプに成功!技量だけで危険なジャンプを成功させてみせましたーッ!』

シンノ「ク……クソッ!」グインッ


 シンノも悪態をつきつつジャンプ台に突入、1週目と同じくフォースで着地をこなしオルフェを追う。
その心中はひたすらの焦燥であった。
いくら睨みつけてもフェザリオンは走り続け、リードはいっこうに縮まらない!


シンノ(まずい、この先は追い抜き不能のトンネルがあるきりだ!この機体は所詮借り物、アフターバーナーなんかの尖った加速装置は積んじゃいないってのに……!) 

オルフェ「フッ……」


 そしてその後方では――


セブルバJr「オ、オルフェ……オルフェーッ!待ちやがれえーッ!」グインッ

実況『ジョン・ドゥに続いてセブルバJrが突入!行け!飛べ!レーサーたちよ!』


 セブルバJrがジャンプ台で飛翔!
無骨な機体を空中に躍らせたが、彼の操縦は繊細さを欠き、着地時の姿勢制御が不完全!
機体は思い切り地面にたたきつけられ爆発!
彼のかけていたゴーグルがポンと飛んで観客席に当たり、レンズを粉々に散らした。


実況『あああーっセブルバJrはジャンプに失敗!カスタム兄弟は――』

カスタム弟「やめておこう、兄者」スイー

カスタム兄「そうだな」スイー

実況『と、飛ばない……この慎重さが三位の秘訣……この臆病さが三位の原因!』


 平然と地上ルートを通るカスタム兄弟に観客からブーイングと罵声が浴びせられた。
それを聞いて、焦燥のうちにあったシンノがかろうじて理性を取り戻す。


シンノ(そうだ、俺は……俺はジェダイなんだ。最後まで真剣に戦わなければ……それでこそ、万に一つの――)


 シンノはアクセルを目いっぱいふかしてフェザリオンに食らいついた。
機体の性能差はいかんともしがたく、白金の機体はすでにトンネルに進入しつつあった。


オルフェ「!?」


 しかし途端にその機体はガタつき、一塊の煙を吹いて、後ろから引き戻されたかのように減速する。
ジャンプ着地時にエンジンが破損していたのだ!


シンノ(万に一つのチャンスを、ものにできる!)


 シンノはここぞとばかりに追い抜きをかけた。
狭いトンネル内、下手をすればクラッシュのところ、彼の選んだ道は壁!そして天井!
彼の機体は巧みな操縦技術のもとトンネル壁面を駆け上がり螺旋状にダッシュ、ついにはフェザリオンの前に着地!


実況『ジョ、ジョン・ドゥ、壁に張り付いてオルフェをかわしたーッ!』

シンノ(そしてこのまま!)

実況『そしてそのまま――』


 シンノの機体はゴールラインを通過。
フラッグが打ち振られる!


実況『ッゴーーールッ!謎の新星ジョン・ドゥ、ハナンカップを絶対王者からもぎ取ってみせましたーッ!』


 実況の絶叫とともに観客は完成の渦に包まれ、レース会場そのものが熱狂した。


 同時刻、ハナン・シティ郊外の放牧地に一隻の宇宙船が着陸した。
刀剣じみたシャープな銀色のボディが、南国の日差しを眩しく照り返している。

 好奇心旺盛なクイナワ牛たちが、モウンモウンと鳴きながらそれに近づく。
そのうち一頭は船体の隅に刻まれた文字を見つけて臭いを嗅いだ。
古代ヤマタイト文字で「クラウソラス」とある。
この船の名前だ。

 やがて、何らかの噴出音とともに「クラウソラス」のランプドアが降りた。
クイナワ牛たちは興味深そうに視線を向けたが、たった一人の乗員がそこから姿を現したとたん、怯えて散り散りに逃げ去ってしまった。

 降りてきたのは、黒いローブに銀色の仮面の男。
照りつける太陽を見上げ、四つの黄色い目を不快そうに細める。


テイティス「……」


 そして浮遊するプローブ(探索)・ドロイドが三機、彼に続いて船内から出てきた。
事前に施されたプログラムに従って、空へ――ハナン・シティへと飛んでいく……


サラスタン「ケッ、面白くねえ!」ガチャッ!

運転手「ダイド様?」


 下卑たデザインのリムジンにサラスタンの男が乗り込み、シートに身を沈める。
憤懣やるかたないといった様子で近くの酒瓶を掴んで煽った後、運転手に向かってぼやく。


サラスタン「まさか……まさか勝ちやがるとは……約束は約束だが、よりによってイシュメールのツレにこんな大金を……!」

運転手「例の賭けに負けられたのですか?」

サラスタン「うるっせえ!早く金寄越しやがれ!」


 運転手は今一つ釈然としない顔で、助手席に置いてあった二つのカバンをサラスタンの男に渡した。


サラスタン「それも何かでけえことに使うならともかく、こんなハンマーヘッド野郎の店で戦闘機のエンジンだか何だか買うだけってんだからいよいよやりたくねえが……くそ!」


 やがてサラスタンの男は悪態をつきつつも、しぶしぶリムジンから降りて「賭けの勝者たち」のもとへ向かった。


運転手「……」


 運転手の男はそれを見送った後、ひそかに通信機を取り出す……


 サラスタンの男は憮然とした表情のまま、駐車場からジャンク屋の入口に向かう。
そこにいるのはシンノ、ユスカ、ネーア、イシュメール、ミコア、そしてアイソリアンの店主。
横ではクレーンに吊られたエンジンがスピーダートラックに積み込まれつつあった。


イシュメール「おっダイド、さすがにバックれて逃げ出すほど腐っちゃいなかったようだな」

サラスタン「うるせえ!勝手に持っていきやがれ!」ポイポイッ


 サラスタンの男は二つのカバンを彼らの足元に放り出し、そのまま踵を返してリムジンに戻る。


サラスタン「俺はもう帰るぜ、面白くねえ!呪われろ!地獄に落ちろ!」ズカズカ

ネーア「おお、どっしりしとるのう!重そうじゃのう!」ワクワク

ユスカ「一ついくら入ってんの、これ!?」ワクワク

ミコア「ネーアさん……ユスカさん……」シラー

イシュメール「エンジン代はカバン一つでいいかな。釣りはとっとけ、マスター!」ポイッ

アイソリアン『それはどうも』パシッ

シンノ「おい!勝手なことを!」

イシュメール「いいじゃねえか、天下のジェダイ様がケチケチすんなよ!」

アイソリアン『ジェダイ?』


クイナワン傭兵「「「ジェェェ――ダァァ――イッ!」」」キキキーッ!


 唐突に恨みのこもったシャウトとスピーダーのブレーキ・ターン音が鳴り響く!
一同がぎょっとしてその方向を見やると、そこにはテクニカル・スピーダーに分乗して猛然と迫るザイン軍団の姿!


シンノ「ザイン軍!?バカな、どこでここを!」

クイナワン傭兵A「てめえらのせいで俺たちのギャラがどれだけ!下がったと!思ってんだーッ!」ガチャッ ズドーンッ!


 やたら遠くから景気付けじみて発射されたロケット弾が煙を引いて飛来し、そそくさと逃げ出そうとしていたリムジンに着弾し爆発!
オモチャのように宙を舞う車体!ドアから飛び出して地面に転がったきり動かない二つの焼死体!


ユスカ「ぎゃああ!?あのキチガイサザエども!」

イシュメール「マ、マスター!その釣りでこのトラックも買うぜ!」

アイソリアン『少し足りませんな』

イシュメール「野郎、足元見やがって!もう一つ持ってけ意地汚いハンマーヘッドめ!」ポイッ

アイソリアン『これはどうも。キーです』パシッ ポイッ

イシュメール「よおしっ!皆荷台に乗れ!早く!」パシッ ガチャッバタンッ!

ネーア「やれやれ、あんなレースまでして真っ当に買い物したのに結局ドンパチなんじゃな……」ピョンッ

ユスカ「ブラスター突き付けてかっぱらうのと変わんないじゃない!」ピョンッ

ミコア「い、いけませんよそんなことは!?」ピョンッ

イシュメール「言ってる場合かああ――!」

シンノ「いいぜッ、出せ!」ピョンッ


 間髪入れず運転席のイシュメールが思い切りアクセルを踏み込み、猛然と走り出すスピーダートラック!
それを追うザイン軍のテクニカルスピーダー部隊!カーチェイスの始まりだ!


アイソリアン『……またどうぞ』


 疾走するスピーダートラック、それを追う三台のテクニカルスピーダー!
馬力は互角だが、後者は荷台にヘヴィブラスターを備えている――それが今、火を噴く!


クイナワン傭兵A「死ね――ッ!」ドガガガガガガガガ!

シンノ「せいっ!はあっ!こなくそ!」ブオンブオンチュインチュインチュイン!


 シンノはライトセーバーを扇風機のごとく振り回して飛来する光弾のことごとくを弾き飛ばす。
しかし一発一発の衝撃と発射ペースはブラスターピストルのそれを大きく上回っており、とても反射する余裕はない!


クイナワン傭兵A「フハハア!いつまで続くかな――ッ!?」ドガガガガガガガガ!

シンノ「うおおおお!ユスカッ!」ブオンブオンチュインチュインチュイン!

ユスカ「あたぼうよっ!」ジャキッ バシュバシュバシュ!


 ユスカの銃撃が先頭のテクニカルスピーダーの燃料タンクを撃ち抜く!
スピーダーはたちまち炎に包まれる!


クイナワン傭兵A「うおお!?バカなーっ!」


 先頭車両はスピンし脱落!あやうく回避する後続車両!


ユスカ「やったあ!お次の弾、っと!」カチャカチャ

ネーア「シンノ!今じゃ、お前もブラスターを!」

シンノ「ジェダイが銃なんて使えるか!」

ネーア「はあ!?ハクカじゃ使っとったじゃろそなた!」


クイナワン傭兵B「野郎!もう容赦しねえ!」ジャキン ズドーンッ!


 再度放たれたロケット弾がスピーダートラックをめがけて飛来する!


ユスカ「わあああ!?シ、シンノ――っ!」

シンノ「フンッ……!」ググッ


 しかし荷台上のシンノが手を差しのべるやいなや、ロケット弾はその軌道をゆるやかに曲げる!
フォースの作用はその軌道をさらに曲げて……曲げて……


クイナワン傭兵B「な、何ィ――ッ!?」


 射手のテクニカルスピーダーに着弾した!
二台目のテクニカルも炎上し、後続の三両目を巻き込んでクラッシュ!


ミコア「ミサイルを操るだなんて……!」

ユスカ「さっすがあー!」ハイタッチ

シンノ「ざっとこんなもんよ!」ハイタッチ

ネーア(……シンノはこの二、三年で、思った以上にジェダイとしての自分に自信を持った……持ってしまったようじゃの。とりあえずこの場は凌げたからよいが……)

イシュメール「浮かれるのも結構ですがね、お客様方!このルートがバレた以上Wウィングの隠し場所は簡単にアタリつけられちまうぜ!すぐに次の追っ手が来ちまう!」

ネーア(言うほど凌げとらんようじゃのう)

シンノ「俺がどうにかする!とにかくWウィングに直行してくれ、一秒でも早く離陸するんだ!」


 スピーダートラックはハナン・シティ市街地を脱して郊外を走り抜ける。
近くを浮遊していた一機のプローブ・ドロイドがそれを探知して、不可解な暗号通信を発信した……



 ――十分後、ハナン・シティ郊外の廃墟地帯!


セントリードロイドA『バンザイ!ザインサマ!』グオオッ

シンノ「ええい!」ブオンッ!

セントリードロイドA『ピガガー!』ズバッ ガラガラガシャ

セントリードロイドB『ザインサマ!バンザイ!バンザイ!』グオオッ

シンノ「次から!」ブオンッ!

セントリードロイドB『ピガガー!』ズバッ ガラガラガシャ

セントリードロイドC『バンザイ!バンザイ!ザイン・ザ・ハット!』グオオッ

シンノ「次へと!」ブオンッ!

セントリードロイドC『ピガガー!』ズバッ ガラガラガシャ


 シンノはザイン軍のドロイド部隊を相手取っていた。
その背後のビルの残骸の陰からはWウィングの尾翼が覗いている。
エンジン接続作業中のWウィングを守って戦っているのだ!


ネーア「気味の悪いドロイドどもじゃ!」バシュバシュ!

イシュメール「木偶人形どもが!食らいやがれ!」バシュバシュ!

セントリードロイドD『ザイン!ザ!ハットー!』チュインチュインチュイン!

イシュメール「効かねえ!?」

シンノ「やたら頑丈だなっ!」ブオンッ!

セントリードロイドD『ピガガー!』ズバッ ガラガラガシャ

シンノ「R3!ユスカ!エンジンの接続はまだか!?」

R3-C3『ピポポ ピポポ ポポピーポ』カチャカチャ

ユスカ「ごめん!あと一分だけ!」カチャカチャ

シンノ「くそっ!……ん!?」


セントリードロイドE『ザ!ザ!ザ!ザイン!ザ!ハット!』グオオッ

セントリードロイドF『バンザイ!バンザイ!バンザイ!』グオオッ

セントリードロイドG『ザイン・ザ・ハット!バンザイ!ザイン・ザ・ハット!バンザイ!』グオオッ

セントリードロイドH『バンザイ!イダイナルザイン・ザ・ハット!』グオオッ

セントリードロイドI『イダイナルザイン・ザ・ハットニエイコウアレ!』グオオッ


 五機のセントリードロイドが徒党を組んで襲い来る!


シンノ「うおおおおッ!」ブオンブオンブオン!

セントリードロイドE『ピガガー!』ズバッ ガラガラガシャ

セントリードロイドF『ピガガー!』ズバッ ガラガラガシャ

セントリードロイドG『バ!バ!バ!』ガシッ

セントリードロイドH『バンザイ!』ガシッ

シンノ「しまった!」ググッ

シンノ(こ、こいつら頑丈なだけじゃなく力もやたら強い!)

イシュメール「やべえ!逃げろジェダイ!」バシュバシュ

セントリードロイドI『イダイナルザイン・ザ・ハットノタメニ!』チュインチュイン グオオッ

シンノ「うおっ……うおおおおッ!」ジタバタ


 シンノはクイナワに来て以来最大の危機に直面していた。
しかし次の瞬間!


セントリードロイドI『ピガガー!』ボカーンッ


 ブラスターキャノンの光弾が飛来し、ドロイドを吹き飛ばした!


シンノ「!?――今だ!」ゲシッ

セントリードロイドG『ピガッ!?』ズテッ

シンノ「食らえ!」ブオンッ

セントリードロイドH『ピガガー!』ズバッ ガラガラガシャ

シンノ「フンッ!」ドスッ

セントリードロイドG『ピガッ……』ガクッ

シンノ(ふう……しかしさっきのあれは、Wウィングの後部銃座か?いったい誰が操作を?)チラッ


 Wウィングの機体尾部、後部銃座に目をやるシンノ。
驚くべきことに、そこに座っていたのは荒事に疎いはずのミコア姫だった!


ミコア「当たった……!シンノ!これで私もあなたたちの仲間になれたかしら!」

シンノ「……!ああ、最高だ!」

ユスカ「シンノ!エンジンが付いたわ、私がブラスターで援護するから早く乗って!」タタタ

シンノ「わかった――!?」


 すべてがトントン拍子にいきかけたとき、シンノは駆け寄るユスカの背後から高速で接近する何かを見とめた。
――彼の鋭敏なフォース感覚は、「それ」の冷たく危険な気配を明確に察知していた。


シンノ「伏せろォッ!」

ユスカ「!?」バッ


 地面に伏せたユスカの上を駆け抜ける「何か」――スピーダー・バイクに跨った黒いローブの男。
そのままシンノのほうへ来襲し、スピーダー・バイクから飛び降りて斬りかかった!赤い刃のライトセーバー!


シンノ「うおおっ!貴様は!?」チュインッ バチバチバチ!


 とっさにライトセーバーで受け止めるシンノ!
鍔迫り合いの向こう、ローブのフードの陰に光る銀色の仮面と四つの黄色い瞳!


テイティス「……我が名はダース・テイティス」バチバチバチ

テイティス「正統の、シスの暗黒卿が一人」バチバチバチ

シンノ「――シス、だと……!?」バチバチバチ


 シンノは敵を強引に押し返し、バックステップを踏んで間合いを取る。


ネーア「ややっ!?シンノ、そやつじゃ!そやつが、前に言ったザインの城に居た怪人ぞよ!」

シンノ「何!?こいつが……?」

テイティス「……」ユラリ


 シスを名乗る男はゆらりと両手を広げ、シンノを半身に迎え撃つ構えをとった。


シンノ(……あの構えは?マスター・ウィンドゥが似たような型を使っていたような……)

ネーア「シンノ!そやつの構えは『フォーム7』、『ジュヨー』!ダークサイドの力を引き出す攻撃的な構えじゃ!」

テイティス「……解説、ご苦労……次は、身をもって、知るがいい」ザッ


 テイティスは唸るような妙な声で言い捨て、幽鬼のごとくローブをはためかせて再度斬りかかった!


テイティス「フンッ!」ブオンッ

シンノ「くっ!」チュインッ

テイティス「フンッ!」ブオンッ

シンノ「ふっ!」チュインッ

テイティス「フンッ!ハアッ!」ブオンブオンッ

シンノ「チイッ……!」チュインチュインッ


 その口ぶりはハッタリではなく、熾烈な連続攻撃にシンノは防戦一方に追い込まれる。
攻撃偏重の戦闘は脇が甘くなりがちなものだが、幽鬼の太刀筋は苛烈でありながら緻密で、付け入る隙などまるでない!


ネーア(あやつ、なんという手練れ……攻めだけで言えばジェダイマスター級か?)

ネーア(シンノは防御重視のフォーム3の熟練者ゆえなんとか捌けておるが、リズマであればとっくに三枚おろしにされているところじゃろう……!)

イシュメール「ネーア!先にWウィングに乗れ!」

ネーア「む、わかったぞよ」ピョンッ タタタ


 ジェダイとシスの丁々発止のさなか、シンノを除いた一行の面々はWウィングに乗り込んだ。
操縦席のユスカがイグニッションスイッチを押すと、新しいエンジンは快い駆動音を上げて起動する。


ユスカ「よし、いい子。前よりいいくらいねっ!」グインッ


 ユスカが操縦桿とスロットルレバーを操作すると、Wウィングはぐんと上昇した。
機体は隠れ場所から脱して、加速しつつ緩やかにターンする。


テイティス「フン!ハッ!」ブオンッブオンッ

シンノ「くうっ!」チュインチュインッ

テイティス「ぬうんッ」ゲシッ

シンノ「ぐはっ……!」ガクッ


 シンノがライトセーバーに気をとられた瞬間、鳩尾にテイティスの蹴りが食い込んだ。
シスは思わず片膝をついたシンノにライトセーバーを突きつけ、唸るような声で宣告する。


テイティス「これまでだな、ジェダイ……『ホロクロン』はいただいていくぞ」

シンノ「ホロクロン、だと……?」


 絶体絶命の瞬間、エンジン音が急速に接近した。


イシュメール「あそこだ、低く飛べ!」

ユスカ「わかってる!」グインッ


 ジェダイを救うべく、Wウィングが超低空で突入したのだ!


テイティス「何……!?」

シンノ「今だッ!」ドウンッ


 テイティスがそちらに目を向けた隙に、シンノがフォース・プッシュを放つ!


テイティス「貴様……!」ズザザザザッ

ネーア「シンノ!乗れーい!」

シンノ「はっ!」ピョーンッ


 テイティスを押しのけた後、間髪入れずフォース・ジャンプ!
直情を通り過ぎるWウィングの機体尾部、ネーアが手を振るランプドアに着地!


テイティス「ジェダイ……!」スッ


 テイティスは立ち上がり、飛び去るWウィングへ向け左手を突き出す。
すわ、フォース・ファイアーか?


テイティス「……」


 ……だが、何もしないまま手を下ろした。
シスは遠ざかっていくWウィングの機影を前にただ立ち尽くし、思い出したようにライトセーバーの刃を収めた。


イシュメール「逃げ切ったか……!一体何だってんだ、あいつはよ?」

シンノ「……わからない……しかしジェダイの武芸に精通していた」

ネーア「決まっとるじゃろうが、シスぞよシス!妾以外にも傍流のシスがモゴモゴ」

シンノ「しいーっ……!」グイグイ

ユスカ「まさかとは思うけど、帝国の手先だったり……?」

シンノ「いや、もしそうだったらあいつ一人で襲ってくるはずはない。TIEファイターが二、三ダースはついてくるはず――」


 そのとき、タイミングよく対空レーダーが警報音を鳴らした!


シンノ「TIEファイターか!?」

ユスカ「違う!この反応は……スカイホッパー!」

イシュメール「ザイン軍の戦闘機だ!数は!?」

ユスカ「えっと、二機――うわっ、後ろにもう一機!」

シンノ「急降下で振り切れユスカ!」

ユスカ「了解っ!」グインッ


 泡を食ったように急降下に入るWウィングに、ザイン軍の戦闘機が追いすがる!
反乱軍の精鋭パイロットであるユスカとクイナワ人の傭兵では力量差があるが、ユスカは大型機の操縦に不慣れでありなかなか振り切れない!


ユスカ「ああもう、しつこいなあ!」グインッグインッ

シンノ「ユスカ!操縦を替わ――うおおっ!」


 シンノが急降下する機内を苦労して歩き始めたとき、背後のザイン軍スカイホッパーがめくら撃ちした光弾がリフレクターを掠めた!
機体が振動し、シンノは転倒し頭をシートの肩部分に強打!


シンノ「ぐおおおお!痛ってえ!」ジタバタ

ユスカ「シンノ!?」

イシュメール「集中しろユスカ!」

ユスカ「えっ!?うわあっ!」


 ぴったりと後ろについたスカイホッパーがWウィングに照準を定める――
しかしその刹那、Wウィングの後部銃座が火を噴いた!
スカイホッパーは主翼の一部が弾け飛んで、黒煙を引いて墜落していく……


ミコア「やった!また当たったわ!」

ユスカ「ミコア姫!?――よおし、私だって!」


 しばしの猶予時間を得たユスカは機体の姿勢を立て直し、巧みなローリングで残る二機の背後に回り込む!


ユスカ「いい加減この飛行機にも慣れたんだからっ!」カチッ


 二手に分かれて回避しようとしたザイン軍機だったが、ユスカの的確な射撃は二機を立て続けに撃ち抜いた。
一機はその場で木っ端みじんに吹き飛び、もう一機は羊雲を突き抜けてゆっくりと海面に墜ちていった……


ユスカ「やった!撃墜マークプラス2、っと!」キャッキャ

イシュメール(……こいつ、カタギ相手の殺しはあんだけ嫌がるわりに、兵士が相手だと全然罪悪感無いんだな……)

ネーア「やったな!……ん?何か忘れとるような」

ユスカ「あっそうだ、シンノ!シンノ、大丈夫!?」

シンノ「な、なんとか……スカイホッパーは全部撃ち落としたか、よかったよかった……痛てて」ズキズキ

ユスカ「頭打ったの!?ほんとに大丈夫!?」

シンノ「基地に戻ったら、一応医者に診てもらうとするよ……」

イシュメール「ん?このまま基地に戻るのか?」

シンノ「ああ。今のところ調子はいいが、新しいエンジンに不具合が出たりしたら困るからな……途中でよけりゃ下ろしていくが?」

イシュメール「おいおい勘弁してくれ、ハナン・シティとリシュー以外の田舎町からじゃこの星から出ることだってできねえ!ザイン軍に捕まって殺されるかこの暑さで行き倒れて死ぬかがオチだ!……そ、れ、に!」


 イシュメールはシートに腰かけ、チッチッチと人差し指を動かしてにやりと笑う。


イシュメール「忘れてもらっちゃ困るが、あんたらにはまだ借りを返してもらってないからな」

シンノ「借り?助けたことなら気にしないでくれていいぞ、俺の趣味だ」

イシュメール「かっけえ!って、そうじゃねえ!あんたらから俺への借りだ!ハナンであんたらに金づるを斡旋した分だよ!」

ユスカ「ッはあああ~~~!?あんた、命救ってもらった相手にまだそんなケチな言いがかりつけようっての!?本っっっ当真性のバカね!?」

イシュメール「何とでも言え!だが俺を放り出そうもんならあんたらの情報を帝国軍にタレこむかもな!?」

ネーア「もう駄目じゃこいつ、殺そう」

シンノ「お前は俺に似たような脅迫してきたことあっただろうが」

ネーア「記憶にないぞよ☆」キャルン

ミコア「今更投げ出すなんて許しません!イシュメールさんを下すなら私も下ろしてもらいますよ!」プンスカ

イシュメール「ほら、プリンセスもこう仰ってる」

ミコア「だまらっしゃい!あなたはあなたで大問題です!恩義というものが解せないのですか、この下衆!恥を知りなさい恥を!」プンスカ

イシュメール「うおおい!?ちょ、ちょっと待ってくれ!わかった、俺が言葉足らずだったぜ、話を聞いてくれ!あとユスカちゃんブラスターは駄目だ、やめてくれ!」


 ユスカはホルスターに伸ばしていた手をしぶしぶ操縦桿に戻した。
イシュメールはシートに座りなおしてから、再度交渉に臨む。


イシュメール「な、何も金目のもんをタダで寄越せって言うつもりはねえんだ。ただ、商売の相手になってほしいのさ」

シンノ「商売?」

イシュメール「俺はスパイス商人を名乗ってたが、スパイスはビジネスの選択肢の一つにすぎねえ。取引の材料はどこにでも転がってるってのが俺の信条だ」

イシュメール「これからおたくらの基地に行くらしいが、その基地にゃ何か売れそうなものがあるんじゃないのかね?」

ユスカ「戦闘機を売れとでも?」スッ

イシュメール「だからブラスターはやめろ!必要なもんを売れとは言わねえ、使わねえもんで売れそうなもんがねえかって言ってんだ!」

ユスカ「はあ……あのねえ、この際だから言うけど、私たちは国家予算使い放題の帝国軍とは違うの。生活だって毎日毎日カツカツなんだから」

シンノ「そうだな……売れそうなものなんて何も……」

ネーア「え?あの基地の外に山積みになってる角材とかは売れんのか?」

イシュメール「それだっ!ネーアちゃん!それだよ!」スック


 イシュメールは唐突に立ち上がり、ネーアの肩をばんばん叩いた。


ネーア「何じゃそなた、ウザいな」

イシュメール「クイナワで角材って言ったらチュクチャク木材だろ!?俺はそいつを高値で買ってくれる業者を知ってるぜ!」

ミコア「あの、チュクチャク木材とは……?」

シンノ「半導体か何かの原料になるらしい、特別な木だよ。クイナワにしか生えてないとかなんとか」

シンノ「……しかし、本当か……?」ヒソヒソ

ユスカ「なんか胡散臭くない……?」ヒソヒソ

イシュメール「シャラップ!あんたらが俺のコネで木材を売る、あんたらは金を手に入れ、ついでに俺はその船に乗ってこの星からおさらばする!完璧な計画だろうが!」

シンノ「マージン取るんじゃないだろうな」

イシュメール「当然取る!」

ユスカ「もはや清々しいわねこいつ……」

イシュメール「まあまあ、哀れな俺っちに当座の生活資金を恵むと思って!」

ミコア「手切れ金、かしら」ハア

イシュメール「なんだっていいさ!さあ久々の商いだ、気合入ってきたぜえ~!」

シンノ「言っとくが、まだやると決まったわけじゃない!俺たちの上司、シカーグ将軍の許可が出たらだからな!」

シンノ(……ミコア姫を無事に救出したはいいが、厄介者を招き入れてしまったかもしれん。ままならんものだ……)ハア

イシュメール「がっはっはっはっは!いざ!ビジネース!」


シンノ「――『フォース・ファイアー』?」

ネーア「うむ、ダークサイドの奥義の一つぞよ。例の謎のシス――テイティスが、ザインの城で使ってみせた技じゃ……モグモグ」


 数日後、反乱軍秘密基地。
資材置き場の隅、防水シートのかかったチュクチャク木材の山の上にジェダイとシスが腰かけていた。
敷地の外に茂る木の枝葉の陰が二人を南国の日差しから隔てていて、ネーアは涼しげな顔でチョコレート・バーをかじっている。
相変わらず口の周りはベトベトだ。


シンノ「だから汚ねえって」ゴシゴシ

ネーア「モゴモゴ」

シンノ「……それで?どんな技なんだ、その何とかファイアーってのは」

ネーア「その名の通り、ダークサイドのフォースを炎に変えて放つ技じゃ。『フォース・ライトニング』――わらわがよく使うやつじゃ――と違って、ライトセーバーで防ぐことができん……モグモグ」

シンノ「ライトセーバーが通用しないのか……!?」

ネーア「うむ、いくらセーバーを振りかざそうが二、三秒でローストジェダイにされてジ・エンドじゃろうな……モグモグ」

ネーア「……というと最強の必殺技みたいじゃが、実際はライトニングより無駄が多くて燃費が悪いし、何より扱いが物凄く難しいんじゃ」


 ネーアはチョコレート・バーの最後のひとかけらを口に放り込むと、手のひらを上向けて何やら力みだした。


ネーア「ふうんっ!……ぬううんっ!……駄目じゃ、出んわ。昔はライター代わりくらいにはなったんじゃが」

シンノ「……奴がそんな技を持っていたとは……なぜハナンで俺に使わなかったんだろう?そんなとんでもない隠し玉を出されていたら、それこそ俺は今頃ローストジェダイだ」

ネーア「出し惜しみしたか……いや、わらわには軽々しく使っとるな。手加減されてたとかじゃろうか?」

シンノ「手加減?なぜだ?」

ネーア「知らん、適当に言っただけじゃ……まあ、いかな『ファイアー』といえど常に動き回っていれば当たらんし、物陰に隠れれば凌げる。『ライトニング』のように壁を素通りしたりはせんからのう」

シンノ「『ライトニング』は壁を貫通するのか!?」

ネーア「あー、この前貫通しないようになったんじゃった。大丈夫ぞよ」

シンノ(わけがわからん)

ネーア「……とにかく、もしテイティスとまた戦うことになったら、『ファイアー』に十分注意することじゃ」

ネーア「かといって怯えるな、炎は奴の手からしか出ないのじゃ。尻から出たりはせん。相手の動きをよく見れば十分対応できる技ぞよ」

シンノ「わかった……しかし、奴はどうやってそんな技を習得したんだろう?」

ネーア「……うーむ。とにかく難しい技じゃからホロクロン使って独学で、とはいかんじゃろうな」

シンノ「ホロクロン……」


 シンノの脳裏にテイティスの言葉がフラッシュバックする。
ホロクロンとは、ジェダイやシスが用いる情報記憶装置である。
通常手のひら大のアーティファクトで、フォースを用いることで内部の情報を引き出すことができるのだ。
ジェダイやシスがその中に教習動画を込めるのはよくあることだった。


シンノ「……というと、誰かに教わったってことか?つまり……他のシスに」

ネーア「じゃろうな。しかしとにかく難しい技じゃからな、あれほど火力のある『ファイアー』を教えられるというのはとんでもない使い手じゃろう」

シンノ「あいつのほかにもそんな強者が……!?」

ネーア「もう死んどる可能性もあるがのう」

シンノ「……反乱軍のデータベースで『モール』とかいうダークサイダーの情報を見たことがあるが……奴は皇帝に使い潰されたようなものだったはず。そんな高等技術を持っていたとは思えん」

ネーア「ふうむ……そういえば、二代前の『ダース・グレイヴス』は『ファイアー』が得意じゃった、というのは先代から聞いた覚えがあるな」

シンノ「お前の二代前……お前、五百年眠ってたんだよな?」

ネーア「うむ。その二代前となると、ざっと六百年以上前じゃな」

シンノ「ううん……グレイヴスがマスター・ヨーダ並みに長寿な種族だったならギリギリ、テイティスにバトンタッチできるか……?」

ネーア「グレイヴスはヒューマノイド、人間だったらしいぞよ。だいたい、どんな長寿な種族でも六百年経てばヨボヨボじゃ。新しく弟子をとるなんて無理じゃろ」

シンノ「じゃあ年代が合わないな、グレイヴス黒幕説はないか……」

ミコア「お二方?」


 不意に声がかけられる。
二人が木材の山の上から見下ろすと、ぶかぶかの作業服に身を包んだミコア姫がいた。


ミコア「なんの話をしていらっしゃるんですの?」

シンノ「ああ、例のテイティスとかいう妙な男の正体について推理を……それより、その格好は?」

ミコア「この服は反乱軍の方からお借りしましたわ。木材搬出作業の手伝いを買って出ましたの!」


 ミコアはえへん、と誇らしげに胸を張った。
 

ネーア「へええー、プリンセスが!感心なことじゃの!」

ミコア「特別扱いされるのは嫌なのです。ザインの城から救い出してもらった御恩、一人の仲間として働くことでお返しします!」

シンノ「はは……怪我だけはしないよう気を付けてくださいよ、大切なお体だ」


 シンノの胸にちくりと罪悪感が差す。
反乱軍はなにも正義感だけで動いたわけではなく、彼女を外交カードとして確保した一面もあるのだ。


ミコア「心配ご無用ですわ。シカーグ将軍にも話は通してありますの」

ネーア「ははあ、いかにもあのマンダロリアンが喜びそうな話じゃの」

シンノ「あの人も戦いになれば真っ先にジェットパック背負って飛び出すような行動派だからな……」

ミコア「あら、アグレッシブな方なのね……さあ、そこから降りてくださいな!防水シートをどけますから」

シンノ「はいよ」ピョンッ

ネーア「張り切っとるのう」ピョンッ

イシュメール「積み込み遅いよ!何やってんの!」


 二人が木材の山から下りたとき、資材置き場の対角のあたりから催促の声が聞こえてくる。


ネーア「……あっちも張り切っとるのう」

シンノ「……なんだかなあ……」


 シンノはそちらを不安げに見やる。
そこにはイシュメールが呼び寄せた闇商人の宇宙船が着陸していて、フォークリフトに似た搬出機械が出入りしていた。
その近くではイシュメールがメガホンで反乱軍兵士たちに指示を飛ばしていて、宇宙船の横ではシカーグ将軍とバヤット副官が何やら言い争いをしている。


バヤット「こんな取引は絶対に反対です!どこから帝国軍に情報が洩れるか……今すぐこの胡散臭い商売人どもを拘束しましょう、そうすれば安全は保たれる!」

シカーグ「ええい、そもそもこの基地は恒久的な拠点の候補地を探すまでの仮住まいに過ぎないんだぞ、バヤット」

シカーグ「その候補地はもう二つ三つ見つかっている、もし露見すればすぐにケツをまくる準備だってしてある。問題は新しい基地を設営するための資金が不足していることなんだ」

バヤット「金のために仲間を危険にさらすのですか!?」

シカーグ「考えてもみろ、ハクカを出て以来我々に安息の地はなかった。いかに南国でバカンスをしようと、この流浪の旅が続く限り士気はある程度で頭打ちだ。それが解決するチャンスなんだぞ」

シカーグ「一つ本格的な拠点を構えられればQC星系の同盟軍の活動も一本化され、ベース1の部隊とも連携が図れる。ここはリスクを冒すべきなんだ……」


 以前はバヤットが攻撃を主張し、シカーグがそれを否定していたが、今回は保守・革新が逆転した形らしかった。


 やがて、シンノたちが腰かけていた材木もフォークリフトめいた運搬機械によって宇宙船に運び込まれていく。
ジェダイはそれを見やりつつ、シスを相手に不安を漏らした。


シンノ「……今回ばかりはバヤットにも一理あるな。イシュメールを連れ込んでしまった俺が言うのもなんだが……」

ネーア「だからとっとと殺してしまえばいいというに……」

シンノ「ダークサイドを抑えろ。……しかしどうも、反乱同盟軍内部の政治も絡んでるらしいぞ」

ネーア「内部の?……ふむ、反帝国勢力も一枚岩ではない、ということか」

シンノ「ああ。ソウ・ゲレラやらジッキンデンやら、テロまがいの暗殺と破壊工作をホイホイやるような連中もいる」

シンノ「シカーグ将軍はそういう連中と距離を置いているからな、他の穏健派との兼ね合いの都合上、あまりあくどいことはできんのさ」

ネーア「はあー、面倒くさいのう。その点シスはスマートじゃがな、二人しかおらんから政治なんぞ必要ないぞよ」

シンノ「その二人で殺しあってりゃ世話はない……ん?」


 材木の積み込みが終わったころ、思いがけずイシュメールがシンノのほうへ近づいてきた。


イシュメール「ジェダイ殿!いやあ世話になったな、お暇を言いに来たぜ!」

シンノ「まったくだ、ザインの城で助けてやったばっかりにここまで面倒なことになるとは……」ハア

イシュメール「そう言いなさんなって!あんたらはゴミをはけて金をゲット、俺はマージンと脱出手段をゲット!誰も損なんてしてねえだろ!」

シンノ「これからするかもしれないだろう……とにかく、取引に応じたんだからな。帝国軍にここのことを喋ってくれるなよ、絶対に!」

イシュメール「わかってらあ、それじゃあな!」


 イシュメールはやたら軽い口調でそう応じて、宇宙船のほうへ駆け戻る。
紙幣が詰まっていると思しきジュラルミンケースを船内から持ち出して、シカーグとバヤットの間に割り込みそれを押し付けた。


シンノ「……いくら抜かれているかな」

ネーア「半分残ってりゃいいんじゃが」


 イシュメールと闇商人たちが乗り込むと、宇宙船はすぐに離陸した。
シンノとネーア、シカーグとバヤット、そのほか多くの反乱軍兵士が見上げる中、宇宙船は高度を上げて空の高みに消えていく。


シンノ(イシュメール……いくらかの金と、たっぷりの不安を残していったな……)

シンノ(……そして……ホロクロン、か……)


 惑星ヤマタイティア衛星軌道上、帝国軍要塞「ダン・ザ・フロー」の一室。


マーズ「ぐはっ……!」ドタッ


 ジヒス・マーズは足を払われ転倒した。
ぱっと後転して間合いを取り立ち上がろうとするが、それを見透かしたように赤いライトセーバーが突きつけられ、彼女は思わず動きを止める。


マーズ「……!」

ナイン「……」


 ライトセーバーの主は黒い装甲服の男、帝国尋問官ナインス・ブラザーだ。
ダークジェダイ同士のスパーリングは彼に軍配が上がった。


タクージン「――ワハハ、勝負あったな!」パチパチ

ワイマッグ「そのようですな……いやはやさすがは尋問官殿です」


 傍から見ていたタクージン提督が喜色満面で手を叩く。
その横でセード・ワイマッグがおだてるような口を利いた。


マーズ「まったくお強い……」


 マーズも追従したが、その言葉はまったくの世辞というわけでもなかった。
彼女は全力でこの立ち会いに臨んだが、ナインに一太刀も入れることは叶わなかったのだ。
対してマーズの軍服はあちこちにうっすらと焦げ跡を残している。
ライトセーバーの出力が抑えられていなければ、彼女はすでに細切れにされていただろう。


タクージン「しかしワイマッグ、お前の子飼いもなかなかのもんじゃないか、ええ?」

ワイマッグ「ははは、ラグナロク戦以来私が直々に鍛えなおしましたので」

サギ「失礼しますゥ……提督、興味深い情報が手に入りましたァ」


 そのときトレーニング・ルームに入ってきたのは、帝国保安局のエージェント・サギだ。


タクージン「サギか。興味深い情報だと?」

サギ「はいィ……ヤマタイト王国の諜報機関からなのですがァ……」

タクージン「ヤマタイトの?バカな!帝国の操り人形が、人形師である我々を出し抜くなど……まあいい。どういう情報だ?」

サギ「『惑星クイナワのマスドライバー施設跡地に反乱軍の基地がある』……とォ」

タクージン「……何?」


 マンダロリアンの将軍の目がきらりと光った。


ドロイド「」ピュン!ピュン!ピュン!

リズマ「ふっ!ふっ!ふんっ!」ピシピシ!ピシッ!

ドロイド「」ピュン!ピュン!ピュン!

リズマ「ふんっ!はっ!はあっ!」ピシ!ピシピシッ!


 いつも変わらない南国の日差しの下、リズマはトレーニング・ドロイドを相手にライトセーバーを振るう。
その剣さばきはシンノの教練とここ数日の自主練習により、以前のそれより格段に洗練されたものとなっている。


ドロイド「」ピュン!

リズマ「これで最後!」ピシンッ!

ドロイド「!」バチッ ボトリ


 反射した訓練用レーザーがドロイドを撃ち落とし、トレーニングは終了する。
リズマはドロイドを拾い上げ、パラソルの下に座っているマスターのほうへ向き直った。


リズマ「どうでしょうか、マスター……?」

シンノ「……うん、仕上がったな」


 シンノはそう言って感慨深そうに頷き、立ち上がった。
服の裾を払い、咳ばらいを一つして、しかつめらしい顔で告げる。


シンノ「……リズマ・ショーニン」

シンノ「お前を正式に、ジェダイ・ナイトに任ずる」

リズマ「……!」


シンノ「……フフ、ハハハ」


 告げてから少し気恥しくなり、誤魔化すように笑って。


シンノ「マスターじゃなく一介のナイト……それも俺のような不甲斐ない奴から認められても嬉しくないかもしれないが、ほかに認めてやる奴もいないだろうしな。とりあえずの一区切りってとこだ」

リズマ「いえ、そんな……そんなこと!嬉しいです、とっても嬉しいです!マスター!」ギュッ


 リズマは喜びのあまりシンノに抱きついた。


シンノ「お、おい……!」

リズマ「ありがとうございます、マスター……!」ギューッ

シンノ「わかった!わかったから離れろ!」

リズマ「あっ……!も、申し訳ありません……」パッ


 リズマはようやく我に返ってシンノを離し、照れくさそうに顔を赤らめる。


シンノ「ざ、残酷なようだが、ジェダイは喜びの感情も制御しなければならないんだ……」

リズマ「……面目ないです……」


 シンノは彼女をたしなめたが、彼自身の胸の鼓動もかなり早まっていた。
幼い頃からジェダイ騎士団で禁欲生活を送ってきた彼にとっては、リズマの体の感触一つでさえ強すぎる刺激なのだ。


リズマ「……ああ!やっとナイトになれたのにこんなことでは……!もう少しドロイドを使わせていただきます!」

シンノ「う、うん。あまり根を詰めすぎるなよ……」


 リズマがドロイド・トレーニングを再開するいっぽう、シンノはその場を後にする。
パラソルの下を通り過ぎ、高い空を飛ぶ四枚羽根の海鳥シイヨークを見上げつつ、古い防波堤に飛び乗って南国の風に身をさらした。


シンノ「……」

ネーア「おいシンノ」


 パラソルの下から這い出したシスが、下からじろりと睨む。


ネーア「今のラブコメを見せるために妾をクイナワくんだりまで連れてきたのか?」

シンノ「んなわけあるか!今のあれは……ちょっとしたトラブルだ」

ネーア「やっぱりラブコメぞよ。ていうかまたジェダイナイト増えとるし!もうジェダイはいいじゃろ、何百年天下とってたんじゃ!」

シンノ「シスにだけは言われたくない。今のお前らの天下は一秒でも早く終わらせてやるからな!」

ネーア「そーんなこと言っちゃってェー。そなたもシスになればその股座でビンビンになってるブツを解き放てるというに――」

シンノ「ビンビンなもんか、俺はジェダイだぞ!……ん?」


 シンノがシス・ジョークをはねつけたとき、遠くに臨む反乱軍基地に見慣れない宇宙船が着陸しているのが彼の目に入った。
チュクチャク木材を買いつけたものとは違うが、同じような闇商人の船だろう。
シンノはその積み荷に見当がついた。


シンノ「ターボレーザー・ジャマーが届いたみたいだな」

ネーア「ターボ……何じゃって?」ヒョコ

シンノ「ターボレーザー・ジャマー、特別な加工がされた大量の金属片だ。宇宙にばらまいて敵のレーザー砲を散らす防御兵器らしい」

シンノ「シカーグ将軍がこないだの臨時収入の一部を使って闇マーケットから買いつけたんだとよ」

ネーア「すごいもんが手に入るもんじゃのう。帝国軍の横流し品か何かじゃろうか?」

シンノ「いや、主に出回ってるのは分離主義者が作ったもんらしいな。戦時中か、戦後残党が作ったもんかはわからないが」

ネーア「残党?……ああ、そういえば、QC星系はブンリシュギシャとやらの残党が多いとは聞くのう」

シンノ「ああ、それもジャマーみたいな高度な兵器を作れる連中がうじゃうじゃいる。そういう物騒なところだからこそ、俺たちも隠れていられるんだろうが……」

シンノ「じゃあ俺は、ちょいとジャマーの実物を見に行ってくるかな」ピョンッ

ネーア「ふーん……妾はパスぞよ」


 つまらなそうな顔でパラソルの下に戻るネーアを置いて、シンノは海岸の道を歩いて反乱軍基地に向かう。


シンノ「……ん?」


 しかしその途中で彼は足を止めた。
海岸に座って、一人で海を眺めている人影。
作業着姿のミコア姫だ。


シンノ「ミコア姫!」

ミコア「!ああ、シンノですか」

シンノ「その恰好からすると、今日も何かお手伝いをしてらっしゃったので?」

ミコア「ええ、今は少し休憩しているところで」ニコリ

シンノ「そうでしたか。隣、失礼しますよ」


 気品のいい笑顔を浮かべるミコア姫。
シンノはその横に座ると、気になっていたことを尋ねることにした。


シンノ「……ミコア姫。『ホロクロン』をご存知ですか?」

ミコア「!……ホロクロン……」


 ミコア姫はそれを聞くと、胸元を探った。


ミコア「こういうもののこと、でしょうか」スッ


 そこから取り出したのは、緑色のガラスめいた物質で造られた三角錐型のアーティファクト。
まぎれもなくホロクロンだった。


シンノ「やはりあなたがお持ちでしたか……」

ミコア「やはり、とは?」

シンノ「……ハナンを出発する直前に襲ってきた謎のライトセーバー使い、覚えておいでですか?」

ミコア「……ええ。黒いローブに、銀の仮面の……」

シンノ「あやつが自分の目的は『ホロクロン』であると漏らしていたのです。しかし私や仲間は持っていませんし、イシュメールも持っていそうにありませんでしたので……」

ミコア「……黙っていたことは謝ります」

シンノ「いえ、そういうわけではありませんが……」

ミコア「これのことはザインにも隠し通しました……しかしこの際です、お話ししましょう」


 ミコアはホロクロンを握ったまま、遠く、海の向こうを見やった。


ミコア「このホロクロンには、ヤマタイトの秘密が詰まっているのです。ヤマタイト王族の、フォース感応者としての技術が」

シンノ「……フォース感応者としての……!?それはジェダイの――」

ミコア「ジェダイと、シスの技です」

ミコア「そしてヤマタイトの始祖は、そのシスの暗黒卿が一人――ダース・グレイヴス」

シンノ「な……」

ミコア「……当然、このホロクロンに記録された技術は暗黒面のもの」

ミコア「死者の意識を大いなるフォースから呼び戻し、蘇らせる技さえ収められていると伝わっています……かの襲撃者は、それを狙っていたのかと」

ミコア「もっとも、王族のフォースの適性は代を重ねるごとに衰え……もはや今の私には、これを使いこなす力はありませんが」


 シンノは絶句した。
ヤマタイトの起源。ホロクロンに収められた禁断の技。
そして再び彼の前に現れた、ダース・グレイヴスの名前。


 ――その衝撃も冷めやらぬうちに。


ミコア「――!」パッ

シンノ「――!?」パッ


 二人は同時に上を見上げた。
雲のない晴れた空のかなたに、クサビ形の物体が八つ、唐突に出現した。
シンノの脳裏にかつて惑星キイで見た景色が浮かび、重なった。


シンノ「――スター・デストロイヤー……帝国軍だ!」


 それも八隻となれば、インペリアル級四隻からなる第一艦隊と、ヴェネター級四隻からなる第二艦隊の全力出動だ。
なぜ奴らがここに来る?どこからここの情報が漏れたのか?
シンノに推測しうる情報源は一つしかなかった。


シンノ(……イシュ、メール……イシュメール!ここを、帝国に喋ったのか!)


 ジェダイとしての自制心が怒りに塗りつぶされ、胸の中で激情が燃え上がる。


シンノ(おのれ……!あいつなど、あいつなど助けなければ……)

シンノ(あいつを、ザインの城で、殺しておけば!)

ミコア「シンノ!基地に戻りますよ!」

シンノ「ッ……わかっています!」


 二人は海岸の道を走り、にわかに騒がしくなった基地の中へと駆け戻る……


 クイナワ上空に展開する艦隊のうちの一隻、インペリアル級スター・デストロイヤー「インフェルノ」。
この艦は銀河帝国QC方面軍第一艦隊の旗艦であり、タクージン・シカーグ総督が座上している今、その艦橋はQC帝国軍の最高司令部に等しい。


航海科士官「ハイパードライブ冷却完了。エネルギー系統、戦闘態勢へ移行」

砲科士官「ターボレーザー、ミサイルランチャー、全砲門準備よし。リフレクターシステムオールグリーン」

タクージン「ぬっふっふっふっふ、よしよし……戦闘準備完了、今やこの艦隊は抜身のカタナ同然。使いどころさえ間違えなければ、一撃で奴らの首を切り落とす……」


 艦橋前面の大窓からクイナワを見下ろすタクージン総督。
彼は赤いマンダロリアン・アーマー姿で、同じ鎧の近衛兵を四人従えていた。
その横には尋問官ナインス・ブラザーもいる。


タクージン「さて、衛星軌道上からの砲撃でやつらを巣穴ごと消毒してやりたいところだが……」

ナイン「……しかし総督、QC反乱軍の首領は……」

タクージン「おうとも。テダッフ・シカーグ――最高に愛おしく最高に憎たらしい、我が弟よ」

電子科士官「敵拠点上空にリフレクターの展開を確認!」

タクージン「おやおや、言わんことじゃないな。手際のいいことだ」

ナイン「……この規模での奇襲を想定し、事前に対応を定めていた……」

タクージン「やはりそう簡単にはいかんか、弟よ……面白くなってきた!マンダロリアンの血がうずくわ!」


 タクージン総督は興奮を露わにしつつも的確に指示を飛ばす。


タクージン「第二艦隊を大気圏内に降下させ、エージェント・サギ指揮下のウォーカー部隊を発進させろ。地上戦でリフレクター発生源を破壊するんだ!……ホイゼル艦隊司令!」

ホイゼル「はっ!」

タクージン「我々とナインス・ブラザーは『ゾディアック』で出る。指揮は任せたぞ!」

ホイゼル「お任せください!」


 タクージン総督はT字スリットのヘルメットを被り、近衛兵とナインス・ブラザーを引き連れて艦橋を出た。
帝国の高官である彼自身が前線に出るつもりなのだ!


タクージン(シカーグ……我々の因縁は戦場でしか解決されない。我々はマンダロリアンなのだから!)


 マンダロリアンたちとダーク・ジェダイを乗せたエレベーターは格納庫へ向け降下していく。
タクージン総督は血沸き肉躍る戦いへの期待に胸を高鳴らせ、自らの氏族に伝わる武器を取り出し、握りしめた。
――黄金の光刃がその先端から迸った。


シンノ「シカーグ将軍!」ガチャッ

リズマ「将軍!状況は!?」


 シンノとリズマはあわただしく司令部に駆け込み、帝国軍の襲来に騒然とする面々の中に指揮官の姿を探した。


シカーグ「シンノ!リズマ!」


 幸いシカーグ将軍のほうから彼らを見つけ、戦略テーブルから彼のほうへ向き直った。
青いマンダロリアン・アーマーを着込んだ物々しい姿だ。


シンノ「申し訳ありません、きっとイシュメールがここのことを……!」

バヤット「まったくだ!何がジェダイだ、厄介ごとを持ち込んで挙句この事態とは!どう責任を取るつもりなんだ!?」

シカーグ「やめろ!許した私も同罪だ。だがそれを非難するより先にやることがあるだろうが!」


 罵声を浴びせるバヤットをシカーグが制する。


シカーグ「バヤット、貴様は事前の手はず通りに艦隊の発進準備を進めろ。二十分以内にはテイクオフだ!」

バヤット「チッ……了解!」ダダッ ガチャッ バタン!

シンノ「将軍、我々は!?戦闘機で出たほうがいいか!?」

シカーグ「いや、すでにリフレクターが展開している。上空からの砲撃や敵機の侵入は考えなくていい!」

シカーグ「シンノ、リズマ!お前たちは第三小隊を率いて、南側の浅瀬を渡ってきているウォーカーどもをなんとか食い止めてくれ!」

シンノ「了解!行くぞリズマ!」

リズマ「はいマスター!」


 二人は最小限の指示を受け取り司令部から駆け出した。


リズマ「しかしマスター、敵は巨大なウォーカーです!どう対抗すればいいのでしょうか!?」タタタ

シンノ「俺にだってわからん!しかしあるものでどうにかするしかない!」タタタ

リズマ「あるもの……あるもの……南側の海岸にあるものといえば、サーフスピーダーでしょうか?」タタタ

シンノ「サーフスピーダー?あんなもの何の役に……いや、あれもフルスロットルなら弾幕を潜り抜けてウォーカーの足元に接近できるかもしれない!接近したら、あとは――」タタタ


サギ「ひゃははァ!奴らのねぐらが見えてきたぞォ!」


 エージェント・サギはATAT(全地形用装甲歩行兵器)の操縦席からマスドライバー施設跡を目視して叫ぶ。
クイナワに降下した第二艦隊から出撃したATAT部隊は、浅瀬をザブザブと渡りながら反乱軍秘密基地に迫りつつあった。


サギ「進め進めェ!早く上陸して奴らを踏みつぶせェ!――ン?何だあれはァ!?」


 サギは操縦士の肩越しに身を乗り出し、外を注視した。
こちらをめがけ海面を滑走してくるビークルが四台、いや五台!


操縦士「サーフスピーダーです!」

副操縦士「サーフスピーダー!?あんなもので突っ込んできてどうしようっていうんだ、奴らトチ狂ったのか!?」

サギ「悪あがきだァ!とっととぶち殺せェ!」

操縦士「イエッサー!」カチッ


 サギの乗る機体がサーフスピーダーに砲撃を開始し、続いてほかの機体も砲門を開く。
サーフスピーダー部隊は右に左に蛇行してそれをかわすが、今、一台がかわしきれずに光弾の直撃を受けて爆散した。


サギ「よっしゃァ!」

操縦士「し、しかし……思ったより動きやがる!」


 だが残る四台がそれぞれ一機のATATの足元へ飛び込んだ。


操縦士「いかん、俺たちの下にも!」

副操縦士「ヘッ!だがよお、近づいたからって何ができるもんでもねえだろ」

サギ「そうだァ。出てきたらすぐ撃てるように準備を――」


 続けざま爆音が響き、猛烈な振動が操縦席に伝わる!


副操縦士「うおおっ!?」

サギ「な、なんだァ!?何しやがったァ!?」

操縦士「み、右前足に重篤なダメージ!バランサーパフォーマンス急激に低下!」


 ATATはつまずいたようにバランスを崩し、鉄の巨体はゆっくりと傾いていく。
操縦席の窓からはサーフスピーダーが逃げていくのが見えていたが、三人にはそれを気にする余裕はない。


サギ「早く回復しろォ!」

操縦士「無理です!奴ら、あんな小さなサーフスピーダーでどうやってこれほどの火力を!?」

副操縦士「エージェント・サギ!早く席へ!シートベルトを――」


 エージェント・サギの乗るATATはそのまま海面へ倒れ込んで、巨大な水しぶきと波を立てて水の下に沈んだ。
他のサーフスピーダーたちも攻撃に成功し、計三機のATATが転倒、一機が擱座した。


シンノ「やったぜっ!」

リズマ「やりましたねマスター!」


 シンノとリズマは沈みゆくサギのATATを尻目に、サーフスピーダー上で大いに喜んだ。


シンノ「非武装のサーフスピーダーも、時代遅れの対潜兵器も、使いようで役に立つもんだ!」


 シンノは荷台に積んであるドラム缶状の「対潜兵器」に目をやった。
なんの推進力も持たない旧式の爆雷だ。
彼らはATATに肉薄して足元にこれを投下し、その脚部や海底を破壊して転倒に追い込んだのだ。


シンノ「よし、あとはこれを何度か繰り返して奴らを片っ端から海の底に――!」

リズマ「!マスター!」


 空を高速で横切る影。
シンノとリズマはフォースを通して悪寒を覚えつつ、それを見上げる。

 ――見たことのない形の航空機。
エイを思わせる鋭角的な形状のそれがたった一機で、反乱軍基地めがけまっすぐに飛んでいく。


シンノ「……バカな……バカな!航空機はリフレクターを通過できないはず!あいつ、どうやってその内側に入った!?」

リズマ「帝国軍の……新兵器!?」

シンノ「基地に戻るぞ!第三小隊、ここは任せた!」

無線機『ガガッ、お任せください!』


 果敢にATATに立ち向かうサーフスピーダー部隊を残して、シンノとリズマは基地に引き返す。
蒸し暑い南国の風は、焦る彼らの肌を冷やしてはくれなかった。


シンノ(クソッ、もとはといえば俺の失態……取り返しのつかないことを起こしてたまるか!)

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