王子様と事務所で【シャニマスSS】 (15)

※プロデューサーはユニットごとにいるという設定で書いてます。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1526541056

(283プロ事務所)

咲耶「………」ペラッ

P「………はい。それでは当日よろしくお願いします、失礼します。よし、決まった。」

咲耶「仕事の電話かい?」

P「ああ。週末アンティーカ全員でラジオのゲスト出演だ。」

咲耶「了解。しかし、アイドルというのは本当にラジオのお仕事が多いね。ここに入って何のレッスンもせずいきなりラジオに出演させられた時は驚いたよ。」

P「アイドルというか、ウチの方針だよ。ラジオって、意外とメンタルが鍛えられるだろ?アイドルは1にメンタル2にメンタルってのが社長の自論だからな。」

咲耶「なるほど、オーディションで手厳しい事を言われる場合も多いしね。メンタルがタフでないと乗り切れないだろうな。」

P「そういう事だ、頼んだぞ。ところで。」

咲耶「ん?」

P「オフだってのにわざわざ事務所に来て、ファッション誌ずっと読んでるだけでいいのか?せっかくアンティーカ全員をオフにしたんだ、皆で遊びにでも行けば良かったのに。」

咲耶「あいにく、結華は大学のレポート締め切りが近いとやらで、摩美々も学校の課題が似たような状況らしい。恋鐘は遊びに来た地元の友だちの東京案内をするそうだし、霧子は久しぶりに病院のお手伝いに行きたいとの事でね。私は全員にフラれてしまったというわけさ。」


P「なんか、かえって悪かったかな。」

咲耶「気にしなくていいよ、ユニットだからって常に一緒にいる必要もない。皆にはそれぞれプライベートがあるという事さ。」

P「そうか。けど、それなら咲耶だって同じだろう。オフに何かやっておきたい事とか、済ませておく用事とかはないのか?」

咲耶「今の所特にないかな。学校の課題は済ませてあるし。」

P「なら、ファンサービスについて考えたりファンレターの返事を書いたりとか。」

咲耶「もちろんそうしようとは思っていたけど、いまいち気分が乗らなくてね。いい加減な気持ちのまま暇つぶし感覚で返事を書くのは失礼だろう?」

P「咲耶から返事を貰えれば、何だって喜ぶと思うけどな。」

咲耶「私がそんな適当な気持ちで書いたと知ったら、受け取った相手はどう思う?そう考えたらとてもおろそかには出来ないね。」

P「すまん。咲耶のファンに対する気持ちを軽く見てたな。」

咲耶「ふふっ、どうもありがとう。さて、そろそろお昼にしようか。アナタはどうする?」

P「そうだな………ん、ちょっと待って。もしもし?おう、事務所だよ。どうした…何?本当か。分かった、すぐ向かうよ。そっちも気をつけてな。」

咲耶「どうかしたのかい?」

P「アルストロメリアPからだ。千雪の午前中の撮影にちょっとトラブルがあって、次の現場への移動が予定より遅れるんだと。」

咲耶「たしか、アルストロメリアは夕方からユニットでトークショーなんだろう。大丈夫だろうか。」

P「直行すれば間に合うそうだが、大崎姉妹を迎えに行くのはとても無理らしい。代わりを頼まれたからちょっと出てくる。」

咲耶「わかった。何か、私に出来ることはあるかな?」

P「そうだな。1時になったらそこでお昼寝してる事務員を起こして仕事に戻らせてやってくれ。あと、電話やインターホンには出るなよ。」

咲耶「はづきさんは本当によく寝ているね。仕事中なのにいいのかい。」

P「昼休み時間だからな。この人何やかんや仕事出来るし、社長も容認してるから。」

咲耶「なるほどね。書類作成が遅くなって、しょっちゅう残業しているどこかの誰かさんとは違うということか。」

P「悪かったな。」

咲耶「はは、ごめんごめん。アナタが私達の為に頑張ってくれてる事は分かってるよ、いつもありがとう。」

P(こういう事サラッと言えるのが咲耶だよな。)



P「よし行くか。どうする咲耶、もし帰るならついでに家の近くまで送るけど。」

咲耶「私はもう少しここにいるよ。こんなによく寝てるはづきさんを予定より早く起こすのも悪いしね。」

P「そうか。じゃ、お疲れ様。」

咲耶「ああ、行ってらっしゃい。」



(数時間後)
P「戻りました……あれ。」

咲耶「おかえり。ずいぶん時間がかかったんだね。」

P「まだいたのか、もう四時過ぎだぞ。」

咲耶「今日はすることが無いって言っただろう。アナタこそ連絡も無しにこ遅くまで何をやっていたのかな?」

P「アルストロメリアのイベントに付き添ってたんだよ。他のユニットがどんな風に仕事してるかなんて、あんまり見る機会無いからな。今日はすぐ終わるデスクワークだけだったし。」

咲耶「なるほどね。それで担当アイドルを放ったらかして、別のアイドルを追いかけ回していたというわけか。」

P「いやだって、咲耶がまだいるだなんて思わなかったし…」

はづき「まあまあ。プロデューサーさん、珈琲でもどうです?」

咲耶「ああ、それなら私が淹れてくるよ。ちょうど飲みたかったしね。」

はづき「それじゃお願いします……ふふ。咲耶ちゃん拗ねてるんですよ、プロデューサーさんが現場見てくるって私に連絡してきた時、自分には何も言ってこないって不満げでしたから。」

P「まさか、そういうやつじゃないでしょう。」

はづき「王子様なんて言ってても彼女も女の子なんです。大切にしてあげなきゃダメですよ?」

P「いや、おろそかにしてるつもりはないですが。」

咲耶「お待たせ。はづきさんは砂糖とミルクをひとつずつ、プロデューサーはブラックでよかったかな?」

はづき「はい、ありがとうございます…ね?こういう細かな気配りが出来る子なんですから。」

P「いただくよ…それは知ってますけど。」

咲耶「何の話だい?」


(また数時間後)
P「…よし、終わった。ん?それは、ファンレターか。」

咲耶「はづきさんが帰る前に渡してくれたんだよ。持って帰って読まないとね。」

P「相変わらずすごい量だな。」

咲耶「それだけ私に期待して、応援してくれるんだ。嬉しい限りだよ、最近は女性だけじゃなく男性からのファンレターも増えたしね。」

P「いいことじゃないか。最近のライブのアンケートでも、男性ファンからの咲耶の人気は高くなってるしな。」

咲耶「実はその事でちょっと相談したいんだけど、いいかな?」

P「なんだ?」

咲耶「自惚れかもしれないけれど、私は女性のファンに何をしてあげれば喜んでくれるか、どう対応すれば良いのかをある程度分かっていると思う。けど、男性ファンに対してどう接すればいいか、よく分からないんだ。これまで男性とはほとんど接点が無かったからね。」

P「そうなのか?」

咲耶「ああ。学校は女子校だし、モデル事務所でも周囲のスタッフは女性ばかりだったからね。男性はいたけど、挨拶や事務的な会話ぐらいしか交わさなかったよ。まともにきちんと会話するような男性は、アナタが初めてなんだ。」

P「それにしては、初対面の俺をやけに簡単に信用してくれたんだな。」

咲耶「たしかに。そう考えると不思議な気もするね。あなたに何か、特別な物を感じたのかもしれない。」

P「そいつは光栄だ。」

咲耶「どういたしまして。それはさておき、そんな理由だから男性ファンにどう答えていけば良いのかよく分からないんだよ。何か、いい案はないかな。」

P「男性ファンが増えてるのは確かだけど、だからって新しい事をやるというのはどうかな。これまで通りのやり方が好きだってファンも多いだろうし。」

咲耶「そうかもしれないね。けど、同じ事の繰り返しでは単なる作業になってしまう恐れだってあるだろう。新しくやれる事はないかと考えるだけでも、無駄にはならないと思うんだ。」

P「うーん、それも一理あるな。」

咲耶「たとえば、水着グラビアをやるなんていうのはどうだろう。」

P「急に何言うんだ?」

咲耶「水着グラビアはアイドルの王道なんだろう。男性ファンは喜んでくれるんじゃないかな。」

P「たしかにそういう面はあるし、咲耶のそんな姿を見たいと思ってる男性ファンは多いだろうけど。そう思ってない女性ファンも多いんじゃないか。」

咲耶「あ、そうか。これまで応援してくれた女の子達をないがしろにするのはよくないね。」

P「これまでやってきた事で、男性ファンが増えているんだ。つまり、もう咲耶は男性ファンを充分楽しませてあげられてるって事だろ。」

咲耶「それもそうか。私は少し、焦りすぎていたのかもしれないね。」

P「ファンの為に何かしたいって思うのは良いことだし、咲耶らしいけどな。」

咲耶「それが私にとっては楽しい事だからね……ところで。」

P「ん?」

咲耶「さっき、私の水着姿を見たい男性ファンは多いって言っただろう?」

P「ああ、どうしてもそういうのはな。」


咲耶「アナタはどうなのかな、やっぱり見たいと思ってくれているのかい。」

P「何言い出すんだよ!?」


咲耶「プロデューサーはアイドルの一番身近なファンだと言ったのはアナタだろう。男性ファンが私の水着姿を見たいと思っているんなら、アナタも同じ気持ちという事になるじゃないか。」

P「……答えにくいことを聞くなよ。」



咲耶「あはは。すまない、私が悪かったよ。さて、そろそろ帰ろうかな。」

P「送ろうか?」

咲耶「社用車だろう。私を送っていってまた車返しに事務所まで戻るんじゃアナタに悪いよ、電車で帰る。」

P「遠慮しなくてもいいぞ、今日放ったらかしにしたお詫びって事で。」

咲耶「大丈夫さ、気にしなくていいよ。また明日からしっかりプロデュースしてくれれば、それがお詫びって事で。」

P「そうか。じゃ、気をつけてな。」

咲耶「お疲れ様。あ、それと。」

P「なんだ?」


咲耶「水着姿を見たくなったら言ってくれ。アナタが喜んでくれるなら、いつでも見せるからね。なんなら、それ以外でも構わないよ?」


P「なっ!?」

咲耶「ふふっ。それじゃあね。」

P「なんなんだよ、一体………」


(駅)
咲耶「ふう。我ながら、ちょっと大胆過ぎたかな。さて次の電車は……あれ。」

霧子「あ、咲耶さん。お疲れ様です。」

咲耶「霧子じゃないか、お疲れ様。病院の手伝いは終わったのかい?」

霧子「はい。それで、ちょっと事務所に顔を出そうかなって。」

咲耶「今日はもう誰もいないよ、プロデューサーもそろそろ帰るみたいだったし。」

霧子「そうなんですね。じゃ、このまま帰ろうかな。」

咲耶「なら、家の近くまで送ってくよ。」

霧子「ありがとうございます……あの、咲耶さん?」

咲耶「なんだい?」

霧子「何かあったんですか、顔が真っ赤ですけど……」

咲耶「え?…な、何でもない、平気だよ。」

霧子「何でもないわけないですよ、そんなに真っ赤になって。もしかしたら熱中症とかそういうのじゃ。」

咲耶「い、いやこれはその。ちょっと、柄にもない発言をしたせいというか…」

霧子「え?」

咲耶「と、とにかく。本当に何でもないんだよ、大丈夫さ。」

霧子「なら、いいんですけど……無理はしないで下さいね?」

咲耶「ああ、分かってるよ……無理というか、大胆な事は言ったけどね。」

霧子「?」

終わりです。

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