【モバマス】あの日の私に、ありがとうを (18)

※菜々さんSSです



変わらないですねぇ……ここも。

こうやってプロデューサーさんと二人で来るのは初めてのライブの前以来ですね。覚えてます?
……あっ、即答ですか……いえいえ、勿論嬉しいんです!ただ、ちょっとだけ照れ臭くて……

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あの時はみっともないところお見せしちゃって本当にすいませんでした……あんな大声で泣いちゃうなんてお恥ずかしい……えっ、今も涙目だ?

もう、ダメですよプロデューサーさん、そういうこと言ったら!
こういう時は見て見ぬ振りをするのが正解なんです。

よっこらしょ、っと……うーん、暗いですね、やっぱり。
懐かしいなぁ……
あの頃は奥の方のお客さんの顔が見にくくて、ウサミンアイをフル稼働させてました。
折角来てくださったんですから、一人も見逃したくなくて……お客さん自体少なかったので、なんとかなったんですけどね。


あの頃からナナは、ちゃんと前に進めているでしょうか。
……それも即答、ですか。
プロデューサーさんには敵わないですねぇ。
今でもナナは涙脆いままです。まだしょっちゅうボロも出しますし、体力だって他の子ほど続きません。もしかしたら、変わってないのかも、なんて。

それでも最近、気付いたんです。
どうしてあの時、ナナは諦めなかったのか。諦められなかったのか。諦めずにいられたのか。

デビューしてからもずっとずっと、ただ必死で、せっかく掴みとれた夢が覚めてしまうんじゃないかって不安で、がむしゃらに頑張っていたんです。
よく、プロデューサーさんにも相談させてもらいましたね……

随分と、遠くまで歩いてきました。ようやく、ゆっくりと昔のナナとお話することができるようになったんです。

あの頃の努力は、ぜんぶ今日この日のために……なんて言ってしまえるなら簡単なんですけど、でも……でも、そんなにきれいな理由じゃなかったんです、きっと。

ナナは……私は、諦められなかったから、諦められなくなったんです。

アイドルになって、ちっちゃなころに見たアニメみたいに、みんなに元気をあげられるようになりたい。それが、ずっと夢だったんです。そのためだけに、ずっと生きていたんです。

でも現実は、そんなに都合のいいものじゃなくて。若い子たちはどんどん先へ進んでいくし、同僚の子たちも結婚して引退していくしで……
正直なところ、もう無理なんじゃないかって、何度も何度も思いました。


でも、私にはできなかった。

アイドルになるっていう夢を諦める勇気が私には無かったんです。
逃げ出してしまうには、その夢は私一人で背負いきれる重さではなくなってしまっていて。
それでも、ひとり、またひとりと去っていくたびに、「菜々ちゃんは頑張ってね」って、夢を私に託していったんです。
みんなのぶんも、私が叶えてあげなくちゃって、そう思って、このステージでずっと、歌っていたんです。

夢を忘れてしまった訳ではありませんでした。
ただ……時が経つほどに、立ち上がって顔を上げることも、辛くなっていきました。
耐えきれなくなって、でも下ろしてしまうこともできなくて、動けないまま押しつぶされてしまいそうになった、その時だったんです。

プロデューサーさん。
貴方が私を助けてくれたのは。


貴方が私を見つけてくれていなければ、もしかしたら私はもう……いえ、そんなこと考えてもどうしようもないですよね。

プロデューサーさんは、私と一緒に、二人で私の夢を背負ってくれました。かぐや姫もびっくりするくらいの無理難題を並べても、プロデューサーさんは私のために、一生懸命叶えてくれました。
本当に……プロデューサーさんにはどれだけ感謝しても、しきれません。

今にして思えば……あの頃の夢の重さは、決して無意味なものじゃなかったんです。
逃げられなかったから、私は逃げ出さずにすみました。歯をくいしばって、涙で枕を濡らす日があっても、このステージに留まり続けられたのは、アイドルになるんだって、思い続けていたからなんですよね。

だから今、昔の私に声をかけられるなら、大丈夫だよって、ありがとうって、伝えてあげたいです。
だって、そのおかげで、私はプロデューサーさんに会えたんですから。

ああもう、ダメですね、やっぱり涙脆くって。

もう、全然、前、見えてないです。


よかった……

よかったよぉ…………

きょうまで……アイドルつづけてきて……ほんとうに、ほんとうに…………!


ナナが、いちばんだって。
たっくさんのひとが、おめでとうって、いってくれて。
ファンのみなさんも、わらってて、でもないてて。
とってもあかるくて、はしっこまで、みんなのかおが、みえるんです。

ナナがいままでやってきたこと、ぜんぶ、ぜんぶ、むだなんかじゃなかった……!



……ごめんなさい、プロデューサーさん、でも、いま、だけは……


……………


…………


………

ありがとう、ございました。
……もう、大丈夫です。

でも、最後に一つだけ、ワガママを言ってもいいですか?
靴を、履かせてほしいんです。
プロデューサーさんの手で、そのガラスの靴を。

……似合い、ますか?
ありがとうございます……!

……いえ、ここでよかったんです。
キレイなお城の舞踏会じゃあないですけど、ここが、このライブハウスが、私の……ウサミンにとっての、大切な大切な、シンデレラ城なんです。

……さぁ、行きましょうか、プロデューサーさん!明日からはもっと忙しくなりますよ!
ウサミン伝説はまだまだこれから!
プロデューサーさんと二人なら、月にだって、ウサミン星にだってひとっ飛びなんですから!


夢の向こうへー!メルヘーン・チェーンジ!
キャハッ☆







……あ"っ"、腰が……っ!

以上となります。
菜々さん、本当に、本当に、おめでとう。


過去作

琥珀色のモラトリアム
【モバマス】琥珀色のモラトリアム - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1517584518/)

シンデレラが嫌いだったしゅーこちゃんのお話
【モバマス】シンデレラが嫌いだったしゅーこちゃんのお話 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1513004760/)

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