魔王「魔王の座を狙う輩を捻り潰す日々」 (29)

側近「魔王様、今日も不届き者が来ております」

魔王「良い。通せ、捻り潰す」

側近「はっ、しかし今日はなかなか手強い能力を持っている者かと」

魔王「ほう? どんな能力だというのだ」

側近「はっ、それが>>2の能力を持っていると聞いております」


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おならで空が飛べる

側近「それが、おならで空が飛べる能力を持っているとか」

魔王「なんだそれは。 曲芸の類か?」

側近「いえ、れっきとした魔物です。 なかなか腕の立つ者であると」

魔王「まぁよい。 通せ」

おなら魔物「ご機嫌よう、魔王様」

魔王「挨拶など良い。 どこからでもかかって


魔王が気だるそうに喋り終わる間もなく、魔物は放屁する
否、それはもはや放屁ではなく爆発

一瞬のうちに爆発的な加速をした魔物は、既に魔王の目の前にいた

器用に屁をこきながら尻を反転させ、魔王の顔面ゼロ距離での最大出力での爆発屁

強烈な音と臭気に、距離を置いていた側近は隠そうともせずに端正な顔を歪めた


魔物「はは、あっけねえな」


黄土色の煙が晴れてくると、あたりの床は焼け焦げ、爆心地を中心にクレーターが形成されていた
その威力をもつ屁を顔面ゼロ距離で食らったのだ、魔物はいくら魔王といえど勝利を確信していた

魔王「所詮は曲芸の業よ」

魔物「!?」


立ち込めていた煙の中から魔王の手がすっと伸びる
脚を掴まれかけた魔物は再び屁をこき、あっという間に距離を取り、器用に回転しながら地に降りた


魔物「こりゃぁ、驚いた。 俺のおならを食らって生きてるなんて」

魔王「我は魔を統べる王ぞ。 貴様のような矮小な者の物差しで、我を測るなど」

魔王「おこがましいとは思わないか」


地を蹴った魔王は瞬きすら亀の歩みに見えるほどの速さで肉薄する
その勢いのまま振り抜いた拳は魔物の呆けた顔を捉え、そして跡形もなく爆散した


魔王「屁をこくからなんだと言うのだ?」

魔王「屁をこくより早く足を動かせば良いだけではないか」

側近「次の魔物が来ております」

魔王「今度はなんだ」

側近「はっ、>>7の能力を持っているそうです」

モノマネ

魔王「モノマネ?」

側近「は、なんでも全ての能力をモノマネできるとか」

魔王「それはおもしろいではないか」

魔王「通せ」

ものまね魔物「あんたの能力、もらうぞ」

魔王「ふん。 我は貴様ら挑戦者に必ず一発目を甘んじて受けてやることにしている」

魔王「どこからでもかかってこい」

魔物「かぁっ!!」


にたっと笑った魔物は口を大きく開け、口の中で火の玉を形成する
炎がうねりをあげ、じりじりと熱が魔王の肌をさしていた

はち切れそうなまでに成長した業火球は魔王に放たれ、そしてそれが直撃する瞬間、魔物は次の能力を発動させていた

爆発が起きると同時に風の壁が魔王を包み込む
炎の熱は竜巻の風により逃がされず、まさに業火の牢獄と化した


圧倒的な熱量と暴風は、魔王の拳一振で霧散する

牢獄から抜け出した魔王に大した熱傷がないことを確認した魔物は少したじろいだ


魔物「あの合わせ技をくらって無傷ってのはどういうことですかね」

魔王「貴様がその程度だということだ」

魔物「はっ、なら魔王様のお力を頂くまでよ!!」


魔物が地面を踵で鳴らすと、岩でできた数十の槍が魔王を突き刺さんと走る

腰をすっと落とした王は一本一本を掌で、拳で、指で、裏拳で、肘で打ち、払い、いなし、砕き、無力化していく

上下左右360°、視界外からも迫り来る槍を全て砕いた魔王の横目には、小刀をもつ魔物の姿が映った


魔物「さすがといったところですよ魔王様。 あの千を超える岩の槍を捌いてしまうなんて」

魔物「ですが、これは避けることは出来ません。 なぜならこれは必殺の刃であるから」

魔物「さようなら魔王様」


魔物の手から小刀が零れるように落ちた瞬間、その小刀は魔王の心臓を一突きに刺していた


魔王「ぬ?」


束の間、剣先からの爆発魔法
先の豪火球ではないにしろ、強烈な爆発が魔王の身を中から焼いた

だが魔王は倒れない

心臓を突き刺され、そこで爆発を体内で受けて尚、王は膝をつかない


魔物「これは、参りましたねぇ」

魔王「貴様の能力が我の力以下だったというだけだ」

魔物「いやはや、ここまでして勝てないとは。 魔王様、最後にあなたの能力を聞かせていただきたい」

魔王「聞いてどうする? 貴様が絶望するだけであるぞ」

魔物「冥土の土産話にはなりましょう」

魔王「そうか、我は」

魔王「無能力であるがため、拳一つで全てを打ち砕く。 それが王よ」

魔王「どうせ次もいらのだろう?」

側近「は、次は>>13であります」

目からビーム

目からビーム魔物「さぁ、始めようぜ」

魔王「ところで、びーむとはなんだ」

魔物「あ? そんなのも知らねえのか」

魔物「ま、知る必要はねえよ、魔王さま」


魔物の目があやしく光る
瞬間、まさに光速で光の線が魔王を貫いた


魔王「ぐっ…」

魔物「ははっ、俺っちのビームは光の速さそのもの! あんたがどうやって逃げようが避けられないぜ」

魔王「実に、つまらんな」

魔物「な、なにぃ?」

魔王「避けられないなら、お前が当てられなくすれば良いのだろう?」

魔物「は……?」


魔王は目にも止まらぬ速さで走る 壁を蹴り、地面をえぐり、空中を翔ける
不可視の圧倒的な早さ
それに戸惑う魔物の目を、魔王は指でくり抜いた

魔物「っっあああああああああああああ!!!」


獣のような雄叫びをあげ、地をのたうち回る魔物

魔王は不快そうに顔を歪め、五月蝿い魔物の顔面を足で抑える


魔王「目からビームとやらが出て、それだけか?」

魔物「あああああああ!!」

魔王「ふん。 つまらん」


魔王は足の力を入れ、魔物の頭部を潰し指に刺さっていた眼球を放り投げた

側近「次は>>17

右手がドリル

魔物は右手のドリルと呼ばれる、鉄で出来た回転する円錐型の刃を魔王に突き刺した

ギィィィィィという独特の金属音を響かせ、魔王の顔をえぐる

が、束の間魔王の手がドリルを掴みその高回転を止める


魔物「!?」

魔王「恥を知れ、貴様のような弱者が我の前に立っていいことなどはない」



魔物の体であった肉片は魔王城の外に巻かれ、低俗な魔物の餌となった

側近「次が最後です>>20

服を脱げば脱ぐほど強くなる能力

脱ぐ魔物「私は強いですよ?」

魔物「ほう?」

魔物「私に派手な魔法などの能力はありません」

魔物「ですが、私は今まで数え切れないほどの服を脱いできた」

魔物「その度に私は強くなった!」

魔王「ふん、たしかに貴様は骨がありそうだ!」

魔物、魔王は互いに地面を踏みしめる
弾丸のように跳び、交差する瞬間2人は拳を振るった

互いにそれを捌き、カウンターの一発
それはほんのコンマ数秒、魔王の方が早かった


ピンボールのように魔物の体は吹き飛び、地面に叩きつけられる
肉薄する魔王に魔物は体制を立て直し、吠える


魔物「私は元はただの弱い魔物だった!」

魔物「しかし! 私は嘲られながらも服を脱ぎ、強くなった!!」

魔物「貴方に勝ち、私は自分の強さを証明する!!」

魔物「ウオオォッッ!!」

魔王「口がよく回るなっ!」

超インファイトの拳の連打
目にも止まらぬ早さで繰り出される拳は、数秒の間に千を超える

だが、威力、速さ、重さ。 これらの自力の強さは若干を持って魔王が上回っていた
数千数万を打ち合う中でその差は明らかなものとなっていき、そしてついに魔物の体は再び大きく吹き飛ばされ壁に叩きつけられる


魔物「ぐぁっ!」

魔王「……。」

魔物「さすがは、魔王様です。 あなたの拳は強い」

魔物「だが、あなたのような強い者と出会えて、私は自分の限界という衣を脱げる!」

魔物「私はまだ、強くなれる!!」


服などとうに殴り合いの中で弾けていた
それでも彼は、自分の能力すらを超える強さで魔王の前に立ちはだかる


魔物「ここからだぁ!!」

魔王「おぉうっ!!」


再び始まる拳の嵐
もはやお互いに拳は見えず、ただ殴り合う

ノーガードの殴り合い
殺人の暴力の嵐を受けあっても互いに立っていられるのは、熱く燃える闘志の他ならない


何万回目かの魔物の拳が魔王を捉える
先までとは違い、魔王の体が一瞬揺れた

魔物は腫れ上がり前がよく見えずともその瞬間を見逃さなかった

力を貯めた重い一撃が魔王の腹部に炸裂し、王の体はくの字に折れながら後ろに吹き飛ぶ

強烈な一撃を受けても魔王は膝をつかない
血を吐きながらも真っ直ぐにたち、そしてかつてない最強の挑戦者を見据えた


魔物「……っ」


静かに燃えるような魔王の赤い瞳に光が増した

その目を受けた魔物は言葉を交わさずとも意を汲み取る


二人とも地をかけ、そして互いのリーチが重なる場所で腰を落とす
腕を引き、力を、殺気を込める

お互いの最大の力をもってしての一撃の勝負


限界まで凝縮された一撃がお互いの拳をぶつけあった


空間が歪むほどの威力は、一呼吸を置いて周りの地面を破壊し尽くした

立っていたのは王
拳は砕け、腕はひしゃげながらも立っていた


魔王「我は、魔を統べる王」

魔王「例え誰が来ようとも、我は負けるわけにはいかぬ」

魔王「実に、良い相手だった」


側近「魔王様、お疲れ様で御座います」

魔王「良い。」



相手は頭部だけを残し、息絶えながらも満足そうに笑っていた

魔王も同じように頬を緩める


側近「楽しそうでございますね、魔王様」

魔王「ふっ、この私の座を狙ってこれからも様々な者がけしかけてくるであろう」

魔王「そのような輩を捻り潰す日々。 これほど楽しいものは無い」

終わり

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