遙かなるウサミン星 (12)

総選挙ももうすぐ終わりますね


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 とある村に、一人の男の子が住んでいました。

 ある日、時間も忘れて虫取りに夢中になった男の子は、夜道を歩いていました。
 男の子は歩きながら空を見上げていました。
 昼間に野山を走り回ることも、夜空の綺麗な星や月も、男の子は好きでした。
 だけど、夜遅く出歩いているとお母さんとお父さんに叱られてしまいます。

 早く、帰らなきゃ。

 男の子は一つ頷くと、自分の家に向かって駆け出します。

 その時でした。

 空から不思議な光が降ってきたのは。

 男の子は見ました。
 空から降りてくる、不思議な女の人を。

「……誰……?」

 女の人は、男の子に気付くとニッコリと笑います。
 そして、言いました。


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 男の子は、少年に成長しました。

 あの日の夜に出会ったお姉さんは、今では村の住人です。

「菜々でーす!」

 少年は歌と踊りの練習に励むお姉さんに、大きな拍手を惜しみません。

 菜々お姉さんは、本当にアイドルのようなのですから。

 凄い、と少年は素直に思いました。

 お姉さんは、都会へ出てアイドルになるのが夢なのです。

お姉さんなら絶対にアイドルになれる、と少年は思います。
 
 そして少年は約束します、いつまでも必ず応援すると。

 菜々お姉さんとの約束は必ず守ると。あの日の約束のように。

「一番最初のファンだから、ファンクラブ会員番号一番ですよ」

きれいな色紙と厚紙、そしてリボンをつけた会員証をお姉さんは作ってくれました。

会員番号一番の会員証、それは少年の宝ものです。


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 少年はやがて、青年へと大きくなりました。

 青年もまた、かつてのお姉さんのように、村の子供たちに好かれるようになりました。

 今日も子供たちは、青年の周りに集まってはいろいろなものを見せに来ます。

宝物かい? と青年は尋ねました。

うん、とうなずいた子供たちが手に手に差し出すのは綺麗な色とりどりのビー玉でした。

お兄ちゃんにあげる。
子供たちのプレゼントを、青年はありがとうといいながら受け取ります。

お兄ちゃんは、これから大きな街に行くんだよ。
大きな街の大きな学校で勉強するんだよ。

凄いや!

子供たちは我がことのように大喜びしています。

大きな学校で勉強して、うんと偉い人になるのです。

偉くなったら、菜々お姉ちゃんにも会えるかな?

あの日、青年にお別れを告げて街へと出発した菜々さんは、きっとアイドルになっているはずです。
あんなに素敵だったのですから。

会えるよ! 絶対に。

子供たちの応援に、青年も大きく頷きました。

菜々さんに会おう!


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 街へ出た青年は、大学生として勉学に励みました。
 友だちも出来ました。

「ウサミンに会ったことがある?」

「嘘ですな、小生にはわかります」

「拙者も同意ですぞ」

「………いやお前ら、わかりやすいキモオタムーブやめろ、時々本気にしてドン引きしてる女の子いるぞ、ぶっちゃけサークルの迷惑だ」

「え」

「ふぉかぬぷう」

「だからやめろっての」

「そんなことよりそこの新入生、そのウサミンの話、じっくり聞かせてもらおうじゃないか」

「なに? 同郷?」

「え、お前ウサミン星人だったの」

「え、お前あれ本気にしてるの?」

「え」

「え」

「ウサミンはウサミン星人だろ?」

「え」

「え」


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 卒業した彼は、教職の道を選びました。
 そして、街の学校に新任教師として赴任することになりました。

「え」

 そう聞き返すと、生徒は再び尋ねました。

「先生は彼女いるんですか?」

 新米教師が例外なく直面する第一関門というものです。

 どう答えてもからかいの種になってしまうと言うこともよくわかります。
 ですが、答えないとそれはそれで冷たいと言われてしまうのです。

 今はいないなぁ。とはぐらかそうとすると、

「じゃあ、好きな人は?」

 女子生徒というのはいわゆる恋バナが大好きです。
 こうして教師を困らせれば、授業も潰れるのですからなおさらです。

「あー、好きな人ねぇ……」

 狙い通り、まだまだ新米の教師は困ってしまいます。

 そうだ。と新米先生は思いました。
 好きな人ならいます。昔から、大好きな人が。

「ウサミンだな」

「え? ウサミン……って、安部菜々?」
「へー、先生、アイドル好きなんだ」

「テレビぐらい見るさ」

「ウサミンのファンなんだ」

「ああ、デビュー当時からのファンだぞ、これでも」

「え、もしかしてアイドルオタク」

「……ウサミン以外のアイドルは全然知らないよ」

「アイドルじゃなくて、ウサミンが好きなの?」


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 時が過ぎると、新米教師は立派なベテラン教師へとなりました。

「そうだね、アイドルはウサミンしか知らないな」

 授業の脱線も生徒たちには嬉しいことです。
 進学クラスとは違い、どちらかというと行儀作法や礼法を学ぶ生徒たちにとっては、先生の科目はさほど重要ではないのです。
 だからといって、ちゃんと基本だけは教えなければなりません。

 厳しさと優しさ、緩さと真面目さをきちんと調整すれば、生徒たちだって応えてくれると、ベテランならばわかることです。

「やっぱりウサミンはトップアイドルだね」

「菜々さん可愛いもんね」

「ウサミン星、行ってみたいよね」

「ウサミン星ってどこなんだろ」

 ウサミン星……

 先生はふと、窓の外を見ました。

 ウサミン星と聞くと自分の故郷を思い出すのです。
 初めてお姉さんと……初めてウサミンと出会った場所を。

「……しばらく帰ってないなぁ……」

「先生、何か言った?」

「ん、いやいや、さ、続きを始めようか」


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 新米からベテランとなり、そして定年退職を迎えた彼は、嘱託として講師を続けることにしました。

 夏休みに入ると、特別講習を受ける生徒だけが登校しています。
 休み時間まの生徒たちは、それぞれ思いのままに過ごしています。
 本を開く者、音楽プレイヤーを聞く者。いろいろな過ごし方があります。

 生徒たちの会話が聞こえます。

「アイドル? 誰?」

「ウサミン、どんなのか聞かせてよ」

「ウサミン星から来たアイドルだって」

「宇宙人なの?」

「ウサミン星ってどこだよ」

 彼は、窓の外を見上げます。

 遠い空、遠い故郷。
 ずっとずっと、帰っていない故郷。

「遠いな……」


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 時は過ぎ、彼は引退しました。
 小さな家に暮らし、たまに曾孫たちが遊びに来るのです。
 横臥している時間が、日に日に長くなります。

「ねえねえ、ウサミンって知ってる?」

 知っているとも。

 曾孫たちにそう答えたいのですが、上手く喋ることが出来ません。

 ウサミンは、ずっとずっと、アイドルだったんだぞ。

 そう教えたいのですが、上手く喋ることが出来ません。

「さあさあ、ひいお爺ちゃんはお疲れだから、あっちで遊びましょうね」

「はーい」

 曾孫たちを連れた孫たちが居なくなると、また、一人です。

 ……遠いなぁ……

 このところよく思い出すのは、結局帰らなかった故郷のことです。

 とてもとても、遠い故郷。

 ウサミン星よりも、遠いかも知れない故郷。


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「約束、守ってくれたんですね!」

 うん!

 男の子の前には、ウサミンが立っています。

 男の子は、お姉さん……ウサミンとの約束を忘れませんでした。

 ウサミンがどこから来たのかは内緒なのです。

「守ってくれて、ありがとう」

 ウサミンが男の子の手を取ります。

「お礼に今から、ウサミン星にご招待しちゃいます!」

 本当!?

「はい、ウサミンは、いつだって嘘なんてつきませんよ!」

 うん!

「さあ、行きましょう!」

 ウサミンと男の子は、ウサミン星に向けて出発しました。



 以上、お粗末様でした


過去に書いた、ウサミン不思議話


菜々「ウサミン星で逢いましょう」

【モバマスSS】「ロボ、アイドルによろしく」



シンデレラガール総選挙、残り期間あと少し、応援している皆さん頑張りましょう
ボクはきらりPなので、投票券全部きらりに投票しました




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