【ガルパン】みほ「僕の名は西住小次郎。」 (837)



・みほが主人公のガルパンSSです。

・基本的にシリアス路線で行きたいと思います。

・長編の予定です。

・今回が初投稿です。至らない点を多々あると思いますが、何卒よろしくお願いします。

・更新はあまり早くはないです。




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『お前のせいだ!!』


『あんたのせいで、十連覇逃しちゃったじゃない!!』


『私の経歴に箔がつく筈だったのに・・・・・・あんたのせいで台無しよ』


『人助けして善いことをしたつもり? 笑わせないでよ、この偽善者!!』


『この戦犯めっ!!』


『あんたなんか、死んじゃえばいいのに』



























『―― 死んじゃえばいいのに ――』





「ああああああああああああッ!!」

部屋の中に少女の悲鳴が響き渡る。
自らの叫び声で目を覚ましたその者は、跳ね上がるように勢いよく起き上がった。

「ハァ・・・・・ハァ・・・・・。」

呼吸が荒く、目もどこか焦点が合っていない。
周りを見渡すと、そこは自分の部屋だった。ここはとあるマンションの一室。
次第に脳が覚醒していくにしたがって、目の焦点が合っていき、呼吸も整っていった。

「・・・・・・・また、この夢か・・・。」

直後に襲い掛かる凄まじい疲労感。睡眠をとったのに、まるで疲れが取れたような気がしない。
体が鉛のように重く感じられる。


それでも何とか立ち上がることは出来た。
寝汗で衣服が濡れて肌に貼り付いており、その不快な感触に顔をしかめる。
汗を洗い流すために、覚束ない足取りで浴室へと向かった。



「いやな汗だ。気持ち悪い・・・。」


そう呟いた、少女の名は西住みほ。いや、正確には西住みほ"だった"者と言うべきだろうか。


みほは脱衣所に入ると服を脱ぎ、浴室に入ると、すぐにシャワーコックを捻った。すると、勢いよく水が噴き出す。
流れ出たのはお湯ではなかった。
頭から冷水をかぶるのことになるのだが、今の彼女にはそのようなことは気にもならない。
ただ見に纏わり付く不快なものが洗い落とされていく感覚が心地良かった。
冷水が肌の上を流れ落ちる。




「ふぅ・・・。」

数分後、浴室を出た彼女は脱衣所でタオルを手に取り、体を拭く。


その時、ふと鏡に映った自分の姿が目に入る。

「・・・・・・・・・。」

そこに映っていたのは、ふくよか丸みを帯びたラインをもつ、紛れも無い女性の体だった。
彼女はそんな自分の姿を、まるで忌まわしい物でも見るかのような目で見つめていた。

「くっ・・・・!!」

堪らずに目を背ける。


すると、みほは近くに置いてあったサラシを手に取り、胸に巻き付けた。
そして力を入れて思いっきり強く締め上げる。

巻き終わると、次は学校の制服を取り出した。
それは男子用の制服だった。手際よく着ていく。

そして、再び鏡の前に立つ。
すると、先程までの少女の姿は一変し、少年の姿がそこに映っていた。

「これでよし。」



更衣を終えると、みほはすぐさま、鞄の中から書類を取り出し、目を通した。
それは転校に際して、学校に提出する書類だった。

そして、書類の氏名の欄には【西住小次郎】と記載されていた。

「西住小次郎。・・・・・それが今の僕の名前・・・。」



とりあえず、今日はここまでです。
こんな感じで、ぼちぼちやっていきます。

とうとう来たか。貴官の活躍に期待する

ミス
>>3

× ふくよか丸みを帯びた

○ ふくよかな丸みを帯びた

今日の分を投下します。


ちなみに、みほの容姿に関しては、一部に若干の変更があります。
ご了承ください。







みほがこの地に引っ越してきてから数日が経った。

ここは県立大洗学園。
学園艦という巨大水上都市の中にある、男女共学の学校である。
この学校は昔は女子校だったのだが、最近になって共学化されたため、全体的にはそれほど多くはないが、男子生徒も多数在籍している。

そして、みほは今、2年A組の教室にいる。
ショートカットの黒髪を持つ彼女は、ただ一人で佇んでいた。

髪を黒く染めており、胸をサラシで潰し、男子制服を身に纏ったみほ。
彼女は今、とある理由から男装し、自分の本当の性別を秘匿している。実際、周囲の人間もみほのことを男と認識していた。
そして名前も、「西住みほ」という本名でなく、「西住小次郎」という偽名を名乗っている。


一人で席に佇む、みほ。
周囲の生徒たちを見渡すと、友達同士で雑談していたり、一緒に弁当を食べていたりと、皆が楽しげに過ごしていた。
みほがこの学校に転校してきてから一週間近く経っているのだが、彼女は未だ友達を作ることが出来ずにいる。

「・・・・・・・。」

そんな状況に寂しさを感じつつも、みほは一人で昼食をとるために食堂へ行こうと席を立とうとする。
その時だった。


「へい、そこのカ~レシ♪ 一緒にお昼でもどう?」

「え!?」

突如、後ろから声をかけられた。
声の聞こえてきた方へ振り向くと、そこには二人の女子が立っていた。


ガタッ!!

みほは驚き、思わず跳び上がるかのように、勢いよく席から立ち上がった。

「ほら、沙織さん・・・西住さんが驚いていらっしゃるじゃないですか。」

「あ、そだね。いきなりごめんね・・・西住君。」

「あの・・・改めまして西住さん、もしよろしかったら、お昼一緒にどうですか?」

「えぇっ!! 僕とですか!?」

突然のことで、驚きを隠せない。
そんなみほに対して二人は笑顔で頷いた。













みほは二人と一緒に食堂に来ていた。

「えへへ、ナンパしちゃった♪」

「私達、一度西住さんをお話ししてみたかったんです。」

「え! そうなんですか?」

みほは若干戸惑いながらも二人との会話の受け答えをする。

「だって西住君って男の子なのに、なんか可愛いんだもん。」

「か、可愛いだなんて、そんな・・・。/////」

みほは思わず顔を少し赤くした。

「あ、そうだ。改めて自己紹介するね。私は武部沙織。」

「私は五十鈴華です。よろしくお願いします。」

「はい。僕は西住小次郎です。こちらこそ、よろしくお願いします。」

みほが恭しく答えた。
すると、沙織が何かを思いついたように口を開く。

「あ、そうだ。それじゃあ、小次郎君のことをコウちゃんって呼んでもいい?なんかその方が打ち解けた感じがしていいじゃん。」

その言葉に、みほは口元を綻ばせた。

「いいなあ・・・。まるで友達みたい。」

「何言ってるの?コウちゃん。私たちはもう既に友達でしょ。」

「そうですよ、小次郎さん。私たちはもう友達なんですから、あまり遠慮することはありませんよ。」

「華さん・・・・。」


その時、みほは自分の心の中に、なにか温かいものがこみ上げてくるのを感じた。
たった一人でこの大洗に引っ越してきてからというもの、心細く、寂しい毎日を送っていたみほ。
だから、こうして気兼ねなく話が出来る友達というものは、彼女にとっては非常にありがたいものである。
それが、向こうから友達になろうと声を掛けてきてくれたのだから、尚更嬉しかった。


「沙織さん、華さん・・・・・・・ありがとう。」


それは心からの感謝の言葉であった。





一方、その頃・・・・・。

「それは一種の情報操作なのでは?」

「大丈夫、大丈夫。」

「わかりました。では早速取り掛かります。」

生徒会室にて、三人の者がなにやら話し合っていた。

「あ、そうだ・・・・会長。」

「何?」

「この前、学生名簿の一覧を見ていたら、面白いものを見つけましたよ。」

「面白いもの?」

「はい。最近うちに転校してきた男子生徒なんですが・・・。これをご覧ください。」


彼女が取り出したのは一枚の書類。そこには【西住小次郎】と記載されている。

「ふ~ん・・・。西住ねぇ・・・・。」

「おそらく、あの西住流の者ですよ。 ですので、是が非でも彼には戦車道を履修してもらいましょう。強力な戦力になるかもしれません。」

「なるほど・・・・・たしかに面白いことになりそうだね。」

ニヤリと笑みを浮かべる生徒会長。
彼女の企みの矛先が、今まさに向けられようとしていたということを、みほ達は知る由もなかった。








本日はここまでです。
次回の更新は、出来るだけ早く投下できるようにしたいと思います。

沙織さん、正体知ったらあっち側に行ってしまいそうだなww

乙 お姉ちゃんの反応が見てみたいww

女装か!

これは八九式乗るフラグやで



>>13
女装はないです。性別に関してみんな原作通りです。


>>14
西住みほの名前のモデルになったあの人の繋がりですね。分かります。
ただ、ここでみほが名乗っている偽名の「西住小次郎」は、史実のあの人とは全く関係ありません。
と言うか、この偽名は適当に決めました(笑)。



今日の分を投下します。









昼食の後もみほは、華と沙織の三人で談笑をしていた。
日常の何気ない出来事に関する話題や、沙織のモテモテ体験談(近所のおじさんによく挨拶されるだけのことを大袈裟に言ってるだけ)等の、実に他愛の無い話題ばかり。
特に何の変哲もなかった。

だが、それでもみほにとって、それはとても楽しい一時だった。
つい昨日までは、このように親しく話が出来る友達などいなかったのに、今はこうして友達と共に談笑に興じることが出来る。
それは誰もが、ごく普通のことだと感じるようなことではあるが、それでもみほにとっては非常に充実した時間だった。
願わくば、このような楽しい日々がいつまでも続いて欲しいとさえ思うほどに・・・。




その時だった。

ガラ、と扉が開く音がした。
すると、多くの者が入口の方を見る中、三人の女子生徒が教室の中に入ってきた。

それは生徒会役員の者達だった。
教室内がざわつく。

「誰だろう? あの人たち・・・。」

みほは怪訝そうな表情を浮かべる。
みほには彼女達が生徒会の者だということは知らなかったが、それでも周囲の人々の反応から、彼女たちがただの生徒ではないということは、なんとなく分かった。

「コウちゃん、知らないの? あの人達は生徒会の人だよ。」

沙織が答えた。そして彼女が更に続ける。

「左にいる片眼鏡をかけた、目つきが少しキツめの人が広報の河嶋桃先輩。右の方にいる温厚そうな人は副会長の小山柚子先輩。
 そして真ん中にいる小柄な人が生徒会長の角谷杏先輩だよ。」

「それにしても、生徒会が一体何の用なんでしょうか?」

華も訝しげに首を傾げた。


彼女たちは教室内を見渡している。
誰かを探しているようだった。

その時、会長の杏とみほの目が合った。

「やあ、西住く~ん。」

彼女は陽気に声をあげると、手を振りながら、こちらの方に歩いてきた。

「え!? あ、あの・・・僕に何か?」

「西住小次郎。少々、話がある。」

河嶋桃が少し威圧的な物言いで迫ってきた。
その時にみほには嫌な予感がした。






三人に教室から連れ出されたみほは、廊下に来ていた。

「あの・・・話とは何でしょうか?」

みほは恐る恐る聞いてみる。

「必修選択科目の授業のことなんだけどさ・・・・」

杏が口を開いた時、みほは妙な胸騒ぎを覚えた。
何か良からぬことが起こるような、そんな嫌な予感がしたのだった。











「戦車道をとってね。」

「・・・・・・ッ!!!!」


杏からその言葉を聞かされた瞬間、心臓が大きく跳ね上がった。
背筋が凍りつくような感覚に襲われる。



戦車道・・・それは、みほにとって忌避すべきものだった。それこそ思い出すだけでも戦慄に襲われる程に。


そもそもみほがこの学校に転校してきたのも、戦車道を避けるためだったのだが・・・・。


「待ってください! この学校には戦車道の授業はなかった筈・・・。」

「今年から復活することになったんだ。だからお前にもやってもらう。」

桃がキッパリと言い放つ。

「僕は戦車道がなかったから、この学校に転校してきたんですよ。」

「そうなの? いや~、これはもはや運命だね。君は戦車道をやる運命にあるんだよ♪」

みほが必死で抗議するが、杏にはおちゃらけた態度で流されてしまう。

「そもそも必修選択科目って自由に選べるんじゃ・・「とにかく、そういう事だからよろしく。じゃあね。」

みほの言葉を遮るようにして、話を打ち切られてしまった。
自分達だけ、言いたいことを一方的に言った杏は、桃と柚子を引き連れ、そのまま立ち去って行った。


(そんな・・・・・・。)

あまりにも一方的で強引な話に、みほは茫然自失になった。
立ち去って行く生徒会三役の背中を、ただ黙って見ていることしかできなかった。




とりあえず、今日の投下はここまでです。
次回の投下は木曜までに出来たらいいなぁ(願望)。

戦車道って女の子しか出来なんじゃないの?

>>19そこは微妙に世界観が違うんじゃないかと
おつおつ
バレた時の皆の反応が楽しみだな

大変申し訳ありません。
木曜には投下したいと言いながら、まだ時間がかかりそうです。

明日には、本当に投下します。

>>3 今更になって誤字を見つけてしまったので訂正します。


×見に纏わり付く

○身に纏わり付く




その後、みほは放心状態に陥っていた。
授業中も完全に上の空。講義の内容など、ほとんど頭の中に入ってはいない。
目もどこか虚ろだった。

「西住君・・・・西住君?・・」

教師がみほのことを呼ぶが、無反応である。
まるで抜け殻のようだった。



「小次郎さん。」

「・・・え・・・・?」

隣の席にいた華が声を掛けて、ようやく反応した。

「どうしたの? 西住君。どこか具合が悪いのだったら保健室へ行きなさい。」

「・・・・・はい。」

先生に言われて席を立ったみほは、そのまま教室を出ていった。
その足取りは重く、どこかフラついている。

「・・・・・・・。」

「・・・・・・・。」

そんなみほの後姿に尋常ならざるものを感じ取った、沙織と華は顔を見合わせた。










その後、保健室にたどり着いたみほはベッドで横になった。

(何で・・・・どうして、こんなことに・・・。)

思い出されるのは、先程、生徒会の者達と交わされた会話。一方的に押し付けられた戦車道履修要求。
みほは頭を抱えたくなる衝動に駆られた。

(もう二度と、戦車道には関わらない筈だったのに・・・・。なのにどうして・・・・。そもそも生徒会の人達は、一体何を考えているの?)

疑念や不信感、憤りや慨嘆など、様々な思念が頭の中でグルグルと回り、気が滅入ってしまう。

(駄目だ。考え込むほど、どんどん憂鬱になっていくだけ。 今はとりあえず、一旦落ち着こう。)

体の力を抜き、ゆっくりと目を閉じた。



その時だった。


「コウちゃん、起きてる?」

カーテンの向こう側から声が聞こえてきた。

(この声は沙織さん・・・。)

みほはすぐに起き上がると、カーテンを開いた。
そこには沙織と華の二人がいた。

「二人とも、授業は?」

「仮病使って抜け出してきちゃった。何かコウちゃんのことが心配だったから。」

「私も小次郎さんのことが気掛かりでした。何やら顔色が悪いようでしたので・・・・。」

「すいません・・・。 ご心配お掛けしました。」

申し訳なさそうに言うみほに対して、二人はあることを切り出す。
それは生徒会との間で何があったのか、ということだった。
みほの様子がおかしくなったのは、生徒会の者達が接触してきた直後のこと。
だから、生徒会長とみほとの間で何かトラブルがあったのではないかと、二人はそう考えていた。


「ねえ、コウちゃん。生徒会長に一体何を言われたの?」

「もし良かったら、私たちに話してくれませんか?」

「うん・・。」



そして、みほは二人に打ち明けることにした。生徒会から戦車道の履修を迫られたことを。
一人で頭を抱えて悩むよりも誰かに話した方が、少しは気が楽になるかもしれないと思った。



「今年度から戦車道が復活するから・・・必修選択科目で戦車道を選択するようにって、生徒会の人達から言われて・・・。」

「戦車道とは、伝統武芸の?」

「でも、それとコウちゃんに何の関係があるの?」

「実は、僕の家は代々戦車乗りの家系で・・・西住流という戦車道の流派の家元なんだ。」

「まぁ・・・。」

「へぇ・・・。 コウちゃんの家って凄い名家だったんだね。」

華と沙織が感心したように言う。
しかし、みほの表情は曇ったままだった。


「正直、戦車道には決して良い思い出が無くて・・・・・・僕がこの学校に転校して来たのも、戦車を避けるためなんだ。」

その時、彼女の脳裏に思い浮かんだのは、自分が黒森峰にいた頃・・・・・彼女がまだ " 西住みほ " として生きていた頃のことだった。

彼女が戦車道をやめるきっかけになった "あの出来事 " が鮮明に思い出される。
俯いたみほの表情が更に曇っていった。

「そっか。・・・・そんなに嫌だったら、無理にやることはないよ。キッパリ断っちゃえば?」

「え・・・!?」

沙織の言葉に、みほは顔を上げた。

「生徒会に、断りになるのだったら、私たちも付き添いますよ。」

華も、そう言って勇気づけてくれた。
心細い心境だったみほにとって、この言葉は何よりもありがたい励ましである。


「・・・・・ありがとう。」

やはり、持つべきものは友達だな・・・と、しみじみとそう思ったみほだった。






 ~~♪ ~~~♪


その時、突然に保健室のスピーカーから、音が響き渡った。

『全校生徒に告ぐ。全員ただちに体育館に集合せよ。繰り返す。全校生徒はただちに体育館に集合せよ。 以上・・・。』

突如、流された校内放送だった。

「体育館に集合だって。 一体なんだろう?」

沙織が怪訝そうに言った。

「さぁ・・・。とにかく行った方が良さそうですね。 ・・・小次郎さんはどうします? もし、まだ気分が悪いのでしたら、ここにいた方が・・・。」

「いいえ、それなら、もう大丈夫です。僕も行きますよ。」

みほは、そう言いながら立ち上がった。
その時、みほは心のどこかで嫌な予感がしながらも、二人と一緒に体育館へ向かうことにした。




今回はここまでです。




今、みほは沙織と華と共に体育館に来ている。
校内放送によって招集がかけられ、今全校生徒が体育館に集合していた。

前方のステージ上には大型スクリーンが設置されている。おそらく今回の集会で使われるものだろう。


「これから一体何が・・・?」

突然、このような所に集められたことに、そこはかとなく不安を感じたみほは二人に尋ねた。

「さぁ・・・?」

「まあ、うちの生徒会がやることですから。」

沙織は首を傾げながら言った。華も詳しいことは分からないようだが、それでも特に気にする様子もなかった。

「みんな慣れっこなんだね・・・・。」

如何にここの生徒会が今まで破天荒なことをしてきたか、ということを察したみほが呆れ気味に呟いた。


その時、生徒会の三人がステージ上に現れた。
そのうちの一人の河嶋桃が声を上げた。

「静かに。 それでは、これより必修選択科目のオリエンテーションを開始する。」

すると、体育館の照明が落とされる。
プロジェクターから投射された映像がスクリーンに映し出された。



【 戦車道入門 】



スクリーン上にでかでかと映し出されたタイトル。
それを見た瞬間、みほは今回の趣旨を理解した。

(そういうことか。)

要するに今回の集会は、戦車道の勧誘のための催しだということだ。


『 戦車道・・・・それは伝統的な文化であり、世界中で紳士や淑女の嗜みとして受け継がれてきた武芸です。』

戦車の映像を背景に、ナレーションが流された。

『 ――― 礼節のある、淑やかで慎ましく、凛々しい婦女子や・・・逞しく屈強な男児を育成することを目指した武芸でもあります。』


(まあ、本当は戦車道と言えば基本は女子がやるものなんだけど・・・それを言っちゃうと、男子が来なくなっちゃうからね。
 人は多いに越したことは無いから・・・ここは男子も勧誘しておくためにも、このことは伏せておくべきだよね。)

角谷杏は一人ほくそ笑む。
副会長の柚子から、一種の情報操作なのではないかと指摘されたのはこの事だったのだ。


『 ――― 戦車道を学ぶ事は、人としての道を究める事でもあります。・・・鉄のように熱く強く、大砲のように情熱的。
 ・・・・戦車道を学べば、必ずや、良き母、良き父になれることでしょう。』

多く者達が興味津々に、食い入る様に画面を見つめていた。
その中には、目を輝かせた、癖毛の女の子もいる。

しかし、そんな中でもみほは、浮かない表情をしていた。


『健康的で優しく逞しい貴方は、多くの人々から好意を持って、受け入れられる筈です。・・・さあ、皆さんも是非、戦車道を学び、心身ともに健やかになりましょう。』


上映が終了し、体育館の照明が灯る。
未だ、みほは俯いたままでいた。

(早く終わらないかな・・・・。)


すると、会長の杏が前に出てきて言った。

「うちの学校でも、今年度から戦車道を復活させることになったんだ。選択をした者には色々な特典を与えちゃうよ。ねえ副会長。」

「はい。成績優秀者には、食堂の食券100枚贈呈の他、遅刻見逃し200日分・・・更に通常授業の三倍の単位を与えます。」

それを聞いた皆が驚き、場がどよめいた。

「というわけで、みんな是非とも戦車道を選んでね。よろしく♪」

こうしてオリエンテーションは終了した。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「決めた。私、戦車道をやろうと思う。」

「え!?」

沙織の予想外な一言に、みほは思わず声を上げた。

「私も戦車道をやろうと思います。戦車道・・・素晴らしいじゃないですか。私、華道よりアクティブな事をやりたいって、ずっと思ってたんです。」

続けて華も言った。

「ねぇ、コウちゃんも一緒にやろうよ、戦車道。コウちゃんが一緒なら、きっと私達ぶっちぎりでトップだよ。」

「私からもお願いします。小次郎さん・・・色々とご指導下さい。」

華が恭しく頭を下げて言った。

「え!? ・・・あの・・・えっと・・・・。」

予想外の事態に、みほは狼狽した。まさか沙織と華が戦車道に興味を持つとは思ってもみなかったからだ。

元々、戦車道をやるつもりなど全く無かったのだが、かといって即座に断ることもできなかった。

「・・・・・・少し、考えさせて下さい。」

その時のみほは、そう言うのが精一杯だった。



 ・

 ・

 ・



その後、自宅に帰って来たみほは、一人で思い悩んでいた。
勿論、戦車道をやるか否かという事だった。


―― ねぇ、コウちゃんも一緒にやろうよ ――

―― 私からもお願いします。小次郎さん・・・ ――


沙織と華から言われた言葉を思い出す。
誘ってくれた事は正直に嬉しかったし、友達からの頼みを無下にしたくはない。
だから、出来る事ならば一緒に戦車道をやってあげたいという思いはある。

しかし、それでもみほが戦車道を忌避する思いは強かった。

それは過去の出来事・・・黒森峰時代に起きた、"ある事件"が起因している。
それは彼女がまだ女として生きていた頃に起きた出来事だった。






―― 戦犯めっ!! ――


―― アンタのせいよ!! ――


―― この偽善者!! ――



それはみほが女を捨てる原因になった事件・・・。
今でも鮮明に思い出せる、あの情景・・・。
それは決して拭いきれないトラウマだった。

思い出した途端に体が震え出す。
両手で自らの体を強く抱きしめるが、震えは止まらなかった。

今回の投下はここまでです。
今回さり気無く、秋山さんが登場してました。

申し訳ありません。トリップの変更宣言を出し忘れてました。

>>21 で間違ってトリップの中身を晒してしまったため、 >>22 以降ではトリップを変更いたします。
ご了承ください。

マダカナー

更新が遅くなってしまって申し訳ありません。
もうすぐ、次の話出来そうです。

今夜の一時くらいには投下いたします。





あの後、みほは一晩中、悩み続けた。
友の期待に答えたいという思いと、戦車道を忌避する思いが、心の中で葛藤し続けた。


 ・

 ・

 ・


そして翌日。
みほは教室の中で、沙織と華の前にいた。彼女の手にあったのは一枚の紙。

それは必修選択科目の履修申告用紙だった。そして、彼女の用紙は、戦車道の欄ではなく弓道の欄に○がつけられていた。

「ごめん。 せっかく二人が誘ってくれたのに・・・・。」

申し訳なさそうに俯いたみほは、弱々しく言った。
これはみほが苦悩の末に出した結論。
彼女はどうしても戦車道を選ぶ事は出来なかった。

「僕は・・・・・・・やっぱり、戦車道だけは・・・。」

絞り出すように、か細い声で言うのが精一杯だった。
友の期待に応えられなく、非常の心苦しい心境。



「そっか、分かったよ。コウちゃんがやりたくないんだったら、しょうがないね。」

「それじゃあ、私達も・・・。」

すると華と沙織は自分たちの履修申告用紙を取り出す。
そして、戦車道の欄についていた○の上から訂正印をつけた。

そして、沙織は言った。

「私達も戦車道をやめて、弓道にするよ。」

「え!? ちょっと待って!!」

みほは慌てて止めた。

「そんな、無理しなくても! 二人は自分のやりたいものをやればいいよ!! 僕なんかのために、そんな・・・。」

「いいの。どうせだったらコウちゃんと同じやつがいいじゃん。一緒の方が楽しいし。そうだよね、華。」

「ええ。私も小次郎さんと一緒の方がいいです。」

「いや、でも・・・・」

みほは躊躇い気味に口籠った。
しかし、沙織達は引かなかった。

「気にしないで。私達と一緒にやろうよ。もし生徒会の人達が文句を言ってきても、ハッキリと断っちゃえばいいもん。」

「そうです。もし生徒会が何か言ってきたら、毅然とお断りになればいいのです。もし必要であれば私達が小次郎さんに、お力添えしますよ。」

華も沙織と同意見である。





その時だった。

突如、校内放送用のスピーカーが鳴り響いた。

『2年A組、西住小次郎。至急、生徒会室まで来るように。・・・繰り返す。2年A組、西住小次郎。至急、生徒会室まで来るように。以上。』

それは生徒会からの端的な呼び出しであった。

「早速、何か来たね、生徒会・・・。コウちゃんに釘でも刺しに来たのかしら?」

沙織は即座に、生徒会の意図を読み取った。

「どうしよう・・・。」

みほは若干狼狽え気味である。

「大丈夫ですよ、小次郎さん。私達も一緒に行きますから。」

「華さん・・・・・。」

華がみほの肩にそっと手を置き、みほを励ました。

嫌な予感がしながらも、みほは沙織と華と一緒に、三人で生徒会室へ向かう事となった



 ・

 ・

 ・

 ・

 ・



「来たか。」

みほ達が生徒会室にやって来て、最初に口を開いたのは河嶋桃だった。

「西住。必修選択科目のことなんだが勿論、戦車道を選んでくれたんだろうな。」

「そ、それは・・・・」

高圧的な態度で迫ってくる桃。対するみほは俯いた状態で言い淀んでいる。

しかし、そんな中で華と沙織が先に口を開いた。

「小次郎さんは戦車道をやりませんよ。」

「そうよ。コウちゃんは私達と一緒に弓道をやるの。」

「何だと!」

二人はみほを庇うかのように一歩前に出て、毅然と言い放った。

しかし・・・

「駄目だ。この学校で戦車道経験者は他にはいないんだ。お前には戦車道をやってもらうぞ。」

「勝手なこと言わないでよ! 本人がやりたくないって言ってるのよ!!」

思わず、沙織が食って掛かった。

しかし、桃はそれを意にも介さない。

「悪いが、そちらの都合を考慮してやることは出来ない。我が校は今年、どうしても戦車道を復活させなければならない。
 そのためにも、そいつには戦車道を履修してもらわなくてはならないんだ。出来ないとは言わせない。お前は西住流の人間なのだろう?」

「それこそ、そちらの勝手な都合というものです!! そもそも小次郎さんが何をやるかは彼の自由です。強要する方がどうかしてますよ!!」

あまりにも一方的な物言いに対して、普段は温厚な性格の華も憤慨せずにはいられなかった。

両者共に一歩も引かない口論が続く。



「・・・・・・。」

そんな状況下で、みほは俯いたまま、佇んでいた。

(華さんも沙織さんも・・本当は戦車道をやりたいのに・・・それなのに僕なんかのために・・・・・)

華と沙織が自分の事を懸命に庇ってくれている・・・・しかし、そのせいで、二人は本来やりたかった戦車道が出来ずにいる。
そんな考えがみほの中にはあった。その事に対する後ろめたさもあった。

だから、ここは二人のためにも、自分が戦車道を選ぶべきではないのか・・・・そのような考えが芽生え始めてきた。


その時だった。






―― あんたのせいで、十連覇を逃しちゃったのよ!! ――


―― あんたなんか、死んじゃえばいいのに・・・ ――





「・・・・・・ッ!!!!」

突如、みほの脳裏に響き渡った、呪詛のような言葉。
それは、かつて黒森峰で言われた言葉だった。
当時みほの心を深く抉った言葉・・・それが突然に思い出された。それにより、忌まわしき過去の記憶がフラッシュバックする。
大きなショックで眩暈を起こし、体がふらつきそうになったのを、周囲の人間に悟られないように必死で堪えた。

(やっぱり駄目だ。 僕は、・・・・・・・・戦車道が怖い。)

一度芽生えたかけた勇気も、恐怖によって再び折れてしまった。

とりあえず、今日の投下はここまでです。

乙。トラウマは辛いよ

家族や前の学校の連中に男装してるのバレたら恥ずかしそうだ…

またしても遅くなってすいません。
明日の夜には投下いたします。

>>41
待ってる

乙です


これより今日の分を投下します。

     パンツァーフォー
それでは、投下開始!!





みほが心の中で葛藤をしているその間も、生徒会と沙織達との口論は続いていた。
何が何でも、みほに戦車道をやらせようとする生徒会と、それに頑なに反対する沙織達との間で、話は未だに平行線状態のままである。



その時、会長の杏がおもむろに口を開いた。

「そんなこと言っちゃっていいのかな。」

杏はニヤリと口元を歪め、笑みを浮かべる。
いかにも悪巧みをしていそうな、そんな表情だった。

「そんなこと言ってると、あんたらこの学校に居られなくしちゃうよ。」

「なっ・・・・!!!」

彼女の口から出てきたのは露骨な恫喝であった。その言葉には、みほが真っ先に反応した。

(そんな・・・・・・・僕が戦車道を選ばないばかりに・・・。このままでは二人が・・・)

みほは焦燥と危機感に駆られた。
たしかに、いくらこの学校の生徒会が強い権限を持っているからといって、正当な理由も無しに独断で生徒を退学処分にするなんてことは出来ない筈。
しかし、強制的には無理であっても、自主退学に追い込む手段なら幾らでもある。
陰湿な虐めや嫌がらせ等・・・そのような手を使ってくることは十分あり得る。

勿論、杏がみほ達を脅すために、ハッタリで言っているだけという可能性もある。
しかし、もし万が一、彼女が本気だったら、自分だけでなく華達にまで危害が及んでしまう。

危害が加えられるのが自分一人だけならば、まだ耐えられる。
しかし、自分を庇ったせいで、沙織達までもが平穏な学園生活を奪われてしまう。
そう思うと、胸が張り裂けそうになった。

(華さん、沙織さん・・・もうやめて。これ以上、僕を庇ったりなんかしたら二人までもが・・・・・・。そんな事になったら僕は・・・)


しかし、そんなみほの思いを他所に、華と沙織は怯む事無く、食い下がる。

「脅すなんて卑怯です。」

「そうよ! そんな脅迫なんてしたって無駄なんだから!」

それに対して、広報の桃も負けじと言い返す。

「これは脅しじゃない。言っておくが会長は本気だぞ。」

「そうよ。悪い事は言わないから、大人しく従った方が身のためだよ。ね、悪いようにはしないから。」

副会長の柚子までもが、やんわりと脅しをかけてきた。



だが、それでも沙織達は一歩たりとも引かなかった。
露骨な恫喝に屈することなく、毅然とした態度を崩さず、みほを庇う。
自らの身の危険も顧みずに・・・。

(お願い、もうやめて。)

このままでは、みほが想像した最悪の事態になりかねない。

(酷い目に遭うのなら、それは自分一人でいい。だから二人とも、もうやめて・・・。)

みほはただ、最悪の事態にならない事を祈るばかりだった。






「解せないな。」

その時、沙織達と言い争いをしていた桃が、訝しげに言った。

「お前らは何故そうまでして、そいつを庇おうとするんだ?」

それは彼女だけでなく、みほも疑問に思っていたことだった。
何故沙織達は、そうまでして自分なんかを庇ってくれるのだろうか。どうして、そこまでして・・・。
そのような疑問は、みほも抱いていたものだった。


「そんなの決まってるじゃないですか。」

それに対して、沙織は迷い無く言い放った。










「友達だからですよ。」











「・・・・ッ!!!!」

その瞬間、みほは目を見開いた。

そして、更に沙織は言う。

「コウちゃんは私達の友達なのよ。見捨てる事なんて出来るわけないじゃないですか!!

「理由なんて、それで充分です。」

華も続けざまに言った。

友達だから・・・ただ、それだけの理由で沙織達は自分のことを庇ってくれている。
その事実がみほの心に衝撃を与えた。

(沙織さん、華さん・・・・あなた達は僕の事をそんなにも・・・。)

先程、彼女言った言葉がみほの心の中に沁みた。
自らの身の危険も顧みずに、友達として、みほの事を沙織達は懸命に庇ってくれている。
そう思うと、感極まって目頭が熱くなった。

そして気が付いたら、みほの瞳から涙が溢れていた。
零れ落ちた一筋の涙が頬を伝って流れ落ちる。


「えっ!! 小次郎さん!?」

「ちょっ、コウちゃん!! どうしたの!?」

華と沙織が、みほの涙に気づき、驚愕する。
突然の事で、生徒会の者達もギョッとした表情で固まっていた。

その場にいた誰もが、みほの胸中を量りかねていた。




そして、そんな彼女達を他所に、みほは思い悩んでいた。
自分はこのまま二人の善意に、ただ甘えていていいのだろうか?と・・・。

(二人は僕のために、ここまでしてくれているのに・・・それなのに僕は・・・・・)

ただ成り行きを見守る以外の事が何もできない自分が無性に情けなく思えた。

(このままでいいのか? 二人の善意に甘えて・・・・二人に守られるだけで・・・・本当にそれでいいのか?)

みほは自らの心に自問した。

(いや・・・・いい筈が無い。)




その時、彼女の心の中である決意が芽生えた。

(そうだ。今、僕が絶対にしなければならない事がある。それは彼女達に報いる事だ。)

みほは決心した。

(沙織さんと華さんは、僕のために立ち上がってくれた。ならば僕も彼女達のために恩返しをしなければならない。その方法はただ一つ。
 僕は戦車道を・・・・・・)

みほは決断を下そうとしていた。






その時。


―― 『戦犯!!』 ――

―― 『偽善者!!』 ――

―― 『死ね!!』 ――


みほの脳裏に再びフラッシュバックが起こった。

それは過去の忌まわしい記憶。
強烈な悪意と共に浴びせられる罵声。鮮明に思い出されたトラウマによって、また恐怖がぶり返す。






しかし・・・




(そんなもの、関係ないっ!!)


みほは心の中で恐怖を振り切った。
仲間を想う心が、恐怖心を上回ったのである。


すると、みほは腕で涙を拭い、前を見据えた。

その時の彼女の目は、恐怖に怯える者の目ではなかった。
覚悟を決めた者がする、強い意志の宿る目だった。
彼女は完全に、覚悟を決めたのだった。

「やります!! ・・・ぼくは戦車道をやります!!」

力強く宣言した。


今日はここまでです。
遅くなってしまって、本当にすいませんでした。

乙、続き待ってたぞ!



お待たせしました。遅筆ですいません。

それでは、これより今日の分を投下いたします。



こうして、みほの下した決断によって事態は収拾したのであった。
みほ達が戦車道を履修するという事で、とりあえずは丸く収まった。

生徒会の者達と激しく言い争っていた沙織達も、みほ本人が戦車道をやってもいいと言ったため、そのまま引き下がる事となった。






「これで、とりあえずは何とかなりましたね。」

みほ達が退室した後に、河嶋桃は言った。

「多少強引ではありましたが、仕方ありませんね。この学校で戦車道経験者なんていませんから。
 西住家の人間である彼には是が非でも戦車道を履修してもらはないと・・・・とてもじゃないが、次の全国大会で勝てない。
 もしそうなったら、我が校は・・・・。」

小山柚子が、どこか後ろめたさがあるような口振りで言う。

「正直私もあまり気が進まなかったけど・・・。でも西住君には悪いけど、今の私達は手段を選んではいられない。」

会長の杏も口を開いた。
その話し方はいつものような、おちゃらけた軽口なんかではなく、どこか憂いを帯びたような口調だった。

「全ては学園存続のために・・・・。」

重々しい雰囲気を纏いながら、杏は呟いた。




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その後、学校を出て帰路についたみほ達。


その帰り道にて・・・・。

「ねえ、コウちゃん。本当に良かったの?」

沙織がみほに、心配そうに尋ねた。

「私たちは元々は戦車道やりたかったから別にいいんだけど・・・コウちゃんは本当にこれで良かったの?
 戦車道・・・・コウちゃんは泣くほど嫌だったんじゃないの?」

沙織の脳裏にあったのは、あの時に涙を流したみほの姿だった。

「無理してない?」

「いいえ。違うんです。」

すると、みほはそんな沙織達の心配を払拭するかのように笑みを浮かべた。

「ただ、嬉しかったんです。二人が僕なんかのために庇ってくれて・・・・僕の事を友達って言ってくれて・・・・。それがとても嬉しかったんです。
 それに、沙織さん達と一緒なら、戦車道をやるのも悪くはないって、そう思ったんです。」

それは本心からの言葉。
その言葉によって沙織達は一安心した。

「そう・・・。ならいいんだけど。」

華も同じく、みほの言葉でひとまずは安心できた。

「では改めて・・・これからもよろしくお願いいたしますね、小次郎さん。」

「はい。」





実はその時、沙織と華は秘かに、涙を流した時のみほの姿を思い出していた。

(というか、男の人が泣く所なんて初めて見た。あの時のコウちゃん、ちょっと可愛かったかも・・・ ///// )ドキドキ

(あの時の小次郎さん、思わず抱きしめてあげたくなるような、そんなオーラが・・・・。何だかとても可愛かったような・・・ ////// )ドキドキ


みほの涙は、彼女達ので母性本能を刺激し、庇護欲をそそるものだった。
勿論、みほはそのような事は知る由もなかったのだが・・・・。



そして、そんな彼女達を他所に、みほは物思いにふける。

(私は、本当に良い友達と出会う事が出来た。彼女たちが僕に勇気を与えたくれたから、戦車道から逃げた僕も、これからもう一度戦車道と向き合う決意が出来た。
 沙織さんと華さんに出会わなければ、僕はきっと今でも逃げたままだった・・・。)

すると、みほはすっと目を細めた。

(お姉ちゃん・・・・・・・僕は素敵な友達と出会いました。)









―― みほは自分自身の戦車道を見つけなさい。西住流とは違った自分だけの戦車道を・・・・ ――





それは、かつて実の姉から送られた言葉。

(あの時の僕はそれが出来ないまま戦車道から逃げてしまったけど・・・もしかしたら、ここでならそれが出来るかもしれない。
 自分の戦車道を、彼女達と一緒に見つけられるかもしれない。)



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そして翌日。

戦車格納庫の前に生徒達が集まっていた。彼女達は戦車道の履修希望者達である。
その人数はみほ達も含めて18人程だった。


その様子を見た河嶋桃は、やや落胆気味に言った。

「会長・・・私達を含めて、全員で21人です。思ったより集まりませんでした。この前のオリエンテーションの時に流したプロモーションビデオで男子生徒の勧誘も狙っていたのですが・・・・
 結局、西住小次郎以外の男子は一人も来なかったようですし。どうしましょうか、会長。」

「まあ、嘆いてもしょうがないよ、かーしま。この人数で何とかやっていくしかないね。」

その時、一人の生徒が挙手して、杏に尋ねてきた。その者は特徴的な癖毛を持つ生徒だった。

「あの・・・使用する戦車は何ですか?ティーガーですか?それとも・・・・」

「えーと・・・何だっけ? なんちゃら号戦車とか言ったっけ? まあ、とりあえず実物を見せた方が早いな。」

そう言うと、杏は格納庫の扉に開けた。


すると、そこにはたった一両の戦車が置いてある。
埃を被り、いたる所が錆び付いている。明らかに、まともに整備されずに長年放置されていた物だった。
悪く言ってしまえば、スクラップにしか見えないオンボロ。
中には、そういう物に独特の趣を感じる人もいるかもしれない。

しかし、その場にいた大多数の人はそうではなかった。


「何これ?」

「ありえない・・・。」


口々に落胆の声を呟く者達。


しかし、そんな中でもみほは違っていた。それを見た瞬間にみほは目を見開いた。

(これは・・・!!)



「とりあえず、今格納庫にある戦車はこれだけなんだよね。こいつの名前は何て言ったっけ?え~と、たしか・・・・・」

「Panzerkampfwagen Ⅳ。」

「え!?」

杏がうろ覚えだった戦車の名前を思い出そうとしている時、みほが呟いた。
それは流暢なドイツ語発音の言葉だった。

「えっと・・・パ、パン・・・な、何だって?」

「パンツァーカンプフヴァーゲンフィーア。Ⅳ号戦車ですよ。」

そう言うと、みほは車体に近寄っていき、そっと撫でるように手を触れた。

(Ⅳ号戦車か・・・懐かしいな。)

みほはこの戦車に思い入れがあった。

すると、彼女は車体の各部をざっと見渡して、状態を確認する。

「保存状態はかなり悪いけど・・・装甲や転輪はかろうじて大丈夫そう。これならいける。」







こうしてみほは戦車道という道を再び歩むことになった。




激動の波乱が今、幕を開ける・・・。



今日の投下はここまでです。

次回、忠犬登場!!
ご期待下さい。

来てたか、乙

こんばんは。
これより投下を開始します。




「では、これより戦車道の授業を開始する。」

河嶋桃が宣言する。

第一回目の授業内容は、”戦車探し”であった。

「今、我々の手元にある戦車はこの一両だけだ。しかし、この学園は昔、戦車道が盛んだった。
 当時、使われていた戦車がまだ、この学園内のどこかに残っている筈。だからそれを探し出すんだ。最低でもあと4両を・・・・。
 それでは、これより捜索を開始する。」

こうして彼女達は戦車探しをする事となった。
どこにあるか、手掛かりも一切無い状態での捜索。しかも、この人数で隅々まで探すには、学園の敷地はあまりにも広大だった。
まさに前途多難である。






「一体・・・・・どこ探せばいいのよぉぉぉぉぉーーーーーー!!」

沙織の叫び声が虚しく辺りに響き渡った。

今、沙織達は駐車場に来ている。
華は思わず苦笑いしながら、沙織に言った。

「さすがに駐車場には置いてないと思いますが・・・。」

「だって一応は車じゃない。・・・・・仕方ないから、とりあえず裏の林の辺りでも探してみよう。 木を隠すのは林の中って言うし。」

「それを言うなら、森の中ですよ。」

沙織の言葉に対して冷静にツッコミを入れる華。
そんな二人のやり取りを微笑ましく思いながら、みほは二人の後について行った。

(ん?)

その時、みほは背後から何者かの気配を感じた。
その場で後ろに振り返るとそこには一人の、特徴的な癖毛をした女子がいる。

その者はこちらに声を掛けたそうに様子を窺っているが、中々踏み込めずにいるようだ。

そこで、みほは自分の方から声を掛けることにした。


「あの・・・・。」

「は、はい!!」

みほが声を掛けたら、びっくりしたのか、声が裏返っている。
それでも構わずに、みほは彼女を戦車探しに誘うことにした。

「よかったら、僕たちと一緒に行きませんか?」

「え、いいんですか!?」

すると、先程までの緊張した面持ちは一変して、嬉しそうな表情になった。

「えっと・・私、普通二科の2年3組、秋山優花里といいます。不束者ですが、よろしくお願いします。」

その様子を見ていた沙織達も、自分たちも名乗ろうと、自己紹介をした。

「初めまして。私は武部沙織ね。」

「私は五十鈴花と申します。よろしくお願いします。」



沙織と華に続いて、みほも名乗った。

「僕の名は西住小次郎です。」


その時、みほがその名を言った途端、優花里は顔色を変える。

「西住って、もしかしてあの西住流ですか!?」

優花里は突如、目を輝かせながら、くいついてきた。


「あの戦車道の家元、西住家の者なんですか!?」

「ええ。まぁ・・・。」

「凄い! 西住流の人にお会いできるなんて、光栄です!!」

物凄い勢いでみほに迫る優花里。その勢いにみほはかなり押され気味だった。
そんな興奮気味な優花里に、かなり困惑しながらも、沙織はとりあえず彼女を宥めようとする。

「優花里さん、とりあえず落ち着いて。 よく分かんないけど西住流ってそんなに凄いの?」

「それは勿論! 西住流とは非常に長い歴史を持つ、由緒正しき流派です。
 戦車道の流派は数多く存在しますが、その中でもトップクラスに君臨する、まさに名門中の名門。それが西住流なんです!!」

優花里のまくし立てるような言葉に沙織達は驚愕した。
沙織達は以前、みほの実家が戦車道の家元であることは聞かされていたが、まさかそれほどまでに凄いものだとは思わなかった。


そして、優花里は尚も興奮覚めやらぬ様子である。

「西住家の方にこうしてお会いできるなんて感激です!!」

「・・・・・・。」


彼女の目からは、強い憧憬の念が窺える。
その事からも分かるが、優花里は戦車道のファンで、西住流に憧れを抱いているのだろう。
それだけに、西住家の名を持つみほに相当強い期待を寄せている事が分かる。
だからこそ、その期待を裏切るようで申し訳ないと思いつつも、みほは彼女にある事を告げなければならなかった。

確かに、みほは西住家の人間ではあるが 、"西住流" の人間ではない。
その事を優花里に告げなければならなかった。

「落ち着いてください、優花里さん。 確かに僕は西住家の者ですが、正確に言うと "西住流" の人間ではありません。」

「え? どういう事ですか?」


すると、みほは表情を曇らせた。


「僕は西住流からは破門されているんです。」



その瞬間に場の空気が変わった。


それまで嬉々とした様子だった優花里は一変。
触れてはいけない所に触れてしまった、と思った優花里は慌ててみほに謝った。

「す、すいません、小次郎さん!! そうとは知らずに、無神経な事を・・・!!」

突如告げられた事実に優花里は狼狽した。

勿論、優花里にはみほの詳しい事情は何も知らない。
何故破門にされたのかも、その破門に至るまでの経緯も、当然何も知らない。
しかし彼女の過去に、重大な何かがあったことは確かである。
当然、その時に嫌な思いだってした筈だし、思い出したくないこともある筈。それは今のみほの曇った表情を見れば分かる。

その事を察した優花里は、ただひたすら平謝りするしかなかった。

「本当にすいませんでした!」

「いえ、いいんです。気にしないでください。」

するとみほは曇った表情から一転して、笑いながら言う。この状況で、彼女達に気を使わせないようにと思って言ったのだった。
しかし、それでも優花里は申し訳なさそうにしている。
そのせいで、何とも言えない気まずい雰囲気がその場を支配していた。


そんな中でみほは口を開いた。

「それはそうと・・・優花里さんは西住流には詳しいようですが、どこかでご覧になったことがあるのですか?」



「はい・・それは勿論。元々戦車道の名門という事で非常に興味があったのですが・・私が西住流に惚れ込んだきっかけは去年の事でした。
 あれは去年の戦車道全国大会の決勝戦の事です。

 あの決勝戦での西住 " みほ "さんの勇姿を見てからというもの、私は彼女のファンになりました。あの時の彼女は本当に格好良かった。」


「・・・・・ッ!!!」

それを聞いた瞬間、みほ(小次郎)は目を見開いた。
まさかこのような所で、自分の本当の名前が、出てくるとは思わなかったため、動揺せずにはいられなかった。


しかし、優花里はその事に気づかずにいる。

「あっ、そう言えば・・・小次郎さんはみほさんとはどのような間柄ですか? やっぱり兄妹ですか?」

「に、西住みほは・・・・・・・僕の姉です。」

「小次郎さんが弟だったんですか。なるほど。確かに姉弟だけあって、みほさんによく似ています。
 そう言えば、みほさんは今、どちらへ?」

「みほ姉さんは、今は海外に留学しています。」


勿論、みほ(小次郎)が言ったこの言葉は、全て嘘である。
西住みほが海外で留学しているというのは真っ赤な嘘。

本当は優花里の言った西住みほは、今彼女の目の前にいる。
似ていると思うのも当然の事。

小次郎という偽名を名乗っている、彼女こそ " 西住みほ "である。
無論、みほに弟などはいない。

この大洗に来るにあたって、名前を変えて、男装するだけでなく、髪型も髪色も変えた。
黒森峰にいた頃は、栗色だった髪も黒く染めてある。
昔は背中にまで掛かる程に伸ばしていた、ストレートのロングヘアも、今では短くカットされていた。


それらは全て、自分の本当の素性を隠すため。



自らの存在を、偽りによって塗りつぶし、覆い隠しながら生きていく。
それがみほの選んだ生き方。

否・・・選ばざるを得なかった。


友達を騙す事に少なからず罪悪感もあり、胸が痛むが、それでもやめる事は出来ない。


と言うわけで、今回の投稿はここまでです。


黒森峰時代のみほの髪型に関しては、ここでは改変されています。


(過去)
栗色のロング。

(現在)
黒色のショート。


こんな感じです。ちょっと分かりにくかったかな?

乙です

乙。黒のショートってことは、まほの髪型か。

>>65
少し違います。
どちらかと言うと、原作のみほの髪型で、色を黒く(漆黒に)したような感じです。

乙。
その感じだと相当女の子っぽい髪型だな


>>67
若干女の子寄りな、中性的な見た目をした男の子という感じです。
だいたいそんな感じをイメージしていただければ良いかと思われます。


あと、投下の方は今晩中にする予定です。


>>68
すいません、間違えました。訂正します。


× 若干女の子寄りな、中性的な見た目をした男の子という感じです。

○ 若干女の子寄りな、中性的な見た目をした男の子のような姿をした人という感じです。


遅くなりましたが、これより投下を開始します。



こうしてみほ達は、優花里も加えた4人で戦車探しをする事になった。

「じゃあ、行こうか、みんな。」

先程の気まずい空気を振り払うかのように、みほが元気よく言った。
地図を手に持ち、先頭に立って森の中を探索していく。

その時、華が何かに気づき、みほを呼び止めた。

「待ってください、小次郎さん。あちらの方から何やら鉄と油の臭いが微かに・・・。」

「臭い?」

華は森の奥の方を指差しながら言った。

「はい。私、華道をやってる関係から、嗅覚が少し敏感なんです。あちらの方から植物の香りに混ざって、明らかに異質な臭いがします。」

「本当に!?」

みほは驚いた。
まさか、臭いで戦車を探し出す人がいるなんて思いもしなかった。
もし彼女の言っていることが本当なら、相当嗅覚が鋭いという事になる。
にわかには信じられないが、それでも他にアテもないので、とりあえず、彼女の指差した方向に向かうことにした。






しばらく歩いて行くと、鉄の塊のような物が見えて来た。
そのには一両の戦車が鎮座していた。

「あっ、あれは! もしかして、38(t)戦車!?」

真っ先に反応したのは優花里だった。

「本当にあった・・・。」

みほは呟いた。
正直、みほも半信半疑だっただけに、本当に見つかったことに驚きを隠せない。


そして、優花里はその戦車に近づくと、手を触れ、興奮気味に言った。

「これはチェコスロバキアの38(t)戦車です! 間違いありません!!」

すると、優花里は手を触れていた車体に、頬擦りをし始めた。
その姿は例えるなら、愛犬家が子犬を愛でるかのような、そんな様だった。
その事からも、彼女が相当の戦車好きである事が窺える。

「大戦初期ではドイツ軍の主力戦車の一つとして、電撃戦を支えた、非常に優秀な戦車です。
 軽快な走りで走破性が極めて高く、故障しにくくて信頼性が高い。まさに傑作戦車でした。
 あっ、ちなみに(t)というのはチェコスロバキアという意味であって、決して重さの単位ではないんですよ。」

かなり饒舌に、戦車の知識を披露する優花里。
その熱く語る様は、まるで水を得た魚のように生き生きとしている。

目を輝かせながら夢中で、マニアックな知識を語る優花里に圧倒され、一同は茫然としていた。


そんな優花里に対して沙織は恐る恐る言ってみた。

「優花里さん・・・・なんか、めっちゃ生き生きしてる・・・。」

「あっ・・・・・・・・。」

その言葉で優花里は我に返る。


「すいません。つい・・・・。」

先程までとは打って変わり、急にしおらしくなった。

「私一人で盛り上がっちゃって、勝手にべらべらと・・・・・・」

ついさっきまでハイテンションは見る影も無い。
初めて会った時の、一番最初の時のような、おどおどした態度に戻ってしまっている。

「本当にすいませんでした。」

「あ、いや・・・別に、いいよ。気にしないで。こっちも、ちょっと驚いてただけだから。」

何か、気を悪くしたのかと思った沙織は、慌ててフォローを入れようとするが、優花里は気落ちしたままだった。

「そうですよね。こんなオタクなんて気持ち悪いですよね。」

「いやいや・・・誰もそんな事は言ってないんだけど・・・・。ねえ、華。」

「そうですよ、優花里さん。私達、そんな事は思ってませんから。」

華も沙織と一緒になってフォローしようとするが、それでも優花里は俯いたままで、その表情はどんどん暗くなっていく。





実は、優花里がこのような態度をとるのには理由があった。
それは彼女の過去に原因がある。

彼女は俗に言う、軍事オタクというやつである。
それも戦車に関して、かなりの深い知識を持った、上級者と言っていい程のマニアだ。
しかも、一度戦車の話で熱くなってしまうと、凄まじい勢いで語り出し、止まらなくなってしまう癖がある。

優花里はかつて、この趣味が原因で、親しい友達を作ることが出来なかった。
彼女と話題が合う人や、彼女の話についていける人が周りにいなかったからだ。

だが、それだけならまだよかった。
それだけなら優花里もここまで卑屈になる事はなかったかもしれない。


しかし、そんなある日の事。
優花里は偶然にも立ち聞きしてしまった。




―― 秋山さんって、何か気持ち悪いよね。いつも、いつも戦車の話ばっかり・・・ ――




それはクラスメート達の自分に対する陰口。それを偶然、立ち聞きしてしまった時の、彼女が受けたショックは極めて大きかった。





そんな過去のせいで優花里はそれ以来、引っ込み思案になってしまい、卑屈になってしまった。
趣味である戦車の話題も、極力人前では話さないように心掛けてきた。
しかし本物の戦車を前にした時、我慢できずに、つい素の自分を全面的に出してしまった。
その事を激しく後悔する。


(絶対に今ので、気持ち悪いって思われる。 せっかくお近づきになれたというのに、また嫌われてしまう。友達がいなかった、あの頃に逆戻りしてしまう・・・。)


悲観的な思考が彼女の頭の中を埋め尽くす。



そんな時だった。


「優花里さんって、とても博識なんだね。」

「え・・・!?」

凛とした声が優花里にかけられた。
その声は西住みほのものだった。

「西住殿・・・・・? あなたは平気なのですか?」

「平気って? 何が?」

「私の事が、気持ち悪くないのですか?」

恐る恐る、尋ねる優花里。


しかし、そんな優花里に対してみほがかけた言葉は、優花里にとってあまりにも予想外なものだった。

「そんな事はないですよ。 むしろ凄いと思います。 だって、それだけの知識を身に付けるって、決して簡単な事じゃない筈。相当、勉強したのでしょう?」

「いえ、そんな事は・・・。 知識とはいっても、何の役にも立たないただの豆知識だし・・・・。
 それに私はただ自分の好きな事をやっていただけで・・・そんな褒めて頂けるようなことは何も、ありません。」

「自分の好きな事を全力でやりきれるというのは、とても素敵な事だと思いますよ。」

「・・・・ッ!!!」



みほは、まっすぐな目を向けながら優花里に言った。

みほから告げられた言葉・・・・それが決して、ただのお世辞などではない事は、彼女の瞳を見れば分かる。
決して、気を使って、慰めるために言っているのではなく、ただ彼女は純粋に自分の事を認めてくれている。

その事が優花里にとっては何よりも嬉しい。
こんなことは今までに一度もなかっただけに、嬉しくてたまらない。

「に・・西住殿・・・・」

優花里は歓喜のあまり、体が震えた。



「西住殿おおおぉぉぉ!!!」


ついに感極まって、気づいたら優花里はみほに抱きついていた。
それに対して、みほは決して嫌がるようなそぶりを見せない。
ただ、拒む事無く受け入れた。

「よしよし・・・。」

優しい手つき、そっと頭を撫でるみほ。
その心地良さに、優花里は表情を綻ばせた。


(西住殿。私・・・あなたの事が好きです。)

自分の心の中で、秘かに想いを告げる、秋山優花里であった。


今日はここまでです。
というわけで今回は忠犬攻略編でした。(笑)


ちなみに、どうでもいい話かもしれませんが、私はマニアとオタクの違いがよく分かりません。

来てたかー乙

ゆかりんは戦車道始めるわけだし、これで大洗が勝ったらひそひそ言われなくなると信じたい


これより本日の分を投下します。



第一回目の戦車道授業として始まった、戦車探しは思いのほか順調に進んだ。

みほ達以外の班も、敷地内を探索していき、次々と戦車を発見していった。
その結果、新しく4両の車両が加わる事となる。

みほ達が見つけた38(t)戦車以外にも、Ⅲ号突撃砲F型、八九式中戦車、M3中戦車リーなどが発見され、これらに、格納庫にあったⅣ号戦車を加えると計5両の戦車になる。
この5両が、これから彼女達のお供となる装備である。


「全部で5両か。いやぁ~・・・ぶっちゃけ、何の当ても無しに、行き当たりばったりだったけど、探せば意外と見つかるもんだね~。ね、かーしま。」

「会長・・・ぶっちゃけ過ぎですよ。いくら本当の事とは言え・・・。」

「・・・・・・・・。」

そんな角谷杏と河嶋桃の会話に、柚子はただ黙って苦笑いする。



そして、そんな彼女達を他所に、みほは目の前に並んだ戦車を眺め、思案をめぐらせていた。

(どれも保存状態が悪すぎる。これは修理に相当な手間が掛かりそう。)

どの戦車も長年の間、野ざらしで放置されていただけに、保存状態が極めて劣悪で、車体のいたる所が錆付き放題、痛み放題であった。
当然、このままでは使いものにならないので、修復作業が必要になる。


(まず、錆とりをしないと・・・。あと、水抜きもして、それから古い塗装を全部剥がして、新しく塗り替えて・・・。)


そして、そんな風に思案にふけるみほを、その傍らから優花里は見守っていた。

(その真剣なまなざしで思考をめぐらす西住殿のお姿・・・・格好いいであります ///////// )

うっとりとした表情で、みほを眺める優花里。
その姿はまるで、飼い主に寄り添う忠犬を連想させられるような、そんな姿だった。



そして、そんな忠犬・・・もとい、優花里の姿を見ていた沙織と華は言った。

「ねぇ、華・・・今、一瞬だけゆかりんに、犬の尻尾が見えたような気がするんだけど・・・。」

「奇遇ですね。私もです。」

そんな微笑ましい光景を眺めながら、二人は思った。
この子は完全に小次郎に惚れていると・・・・。



 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・


修理作業の手始めという事で、まずは車体の洗浄をする事になった。
そして今、5つの班に分かれて、各車両の洗車を行っている最中である。


そんな中、沙織は散水用のホースを手に持ちながら、何やら良からぬ笑みを浮かべていた。

「うふふ。」

その笑みは、間違いなく悪戯心によるものである。
そして、沙織が手に持ったホースの照準は、Ⅳ号戦車の車体の上にいる華に向けられている。

「そーれっ!」

沙織が声を上げると同時に、ホースの口から勢い良く水が噴き出す。


「キャッ!!」

華は突然の放水攻撃を浴び、思わず驚きの声を上げた。

「もう、冷たいじゃないですか!」

「あははは。ごめんごめん。」

なんら悪びれる様子もなく、笑う沙織。
華はそんな彼女に呆れながら言った。

「本当にもう、沙織さんったら・・・・・・・・・えっ!??」

その時だった。

「どうしたの? 華・・・・・・・・・えっ!??」



華と沙織が突然に固まった。


「二人とも、どうしたんですか?・・・・・・・・・えっ!??」

二人の様子を不審に思って声をかけた優花里も、あるものを見て固まった。


その時、三人の視線の先にあったもの、それは・・・


「コウちゃん!!!」

「小次郎さん!!」

「に、西住殿!!!」


それは全身が水で濡れたみほの姿であった。

「・・・・・・涼しい。」

みほは呟いた。

あの時、沙織は気づいていなかったが、華が車体の上にいる時、みほは転輪の状態をチェックするために下の方で作業をしていた。
つまり、ちょうど華が立っていた場所の足元辺りの所にみほがいた。
そのため華に向かって放水された時に、巻き添えを喰らう。
その結果みほは、もろに頭から水をかぶってしまっていた。

滴り落ちる水滴・・水に濡れた髪・・そして前髪をかき分けるしぐさ。
そのどれもが妙に色っぽい。
水滴が光を反射し、それがまた妖美な雰囲気を醸し出している。


沙織、華、優花里は思わず、見惚れてしまった。

(やだもー //// 水も滴るいい男じゃん//////)

(小次郎さん・・・とっても色っぽい //////)

(西住殿・・・////// )



しかし、そんな中、みほは自分に注がれる熱い視線には全く気づかずにいた。

(ジャージ着てて良かった。体操着だけだと、下着(サラシ)が透けてしまうとこだった。)

そんな事を考えていたのだった。


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そんなこんなで、洗車の作業は一通り完了。
その頃には、日も落ちかけて、夕方になっていた。

「あとの修理は自動車部の人達にやらせよう。今日の授業はこれまで。以上で解散とする。」

河嶋桃の一声で解散する一同。
戦車道授業の初日はこうして終了したのだった。




そして、皆が帰路につく中、みほは学校に残っていた。

「今日はちょっと寄って行く所があるから・・・・みんなは先に帰ってて。」

そう言って、沙織達と別れてた後、みほは一人でである場所に向かっていた。





その向かった先は・・・・・


「ここか・・・・。」


そこは、とある部室棟だった。

みほが足を運んだ部室・・そこには自動車部と書かれている。


今回はここまでです。
ちょっと短かめですが・・・・。

それにしても、自動車部って本当に何者なんでしょう?原作でも 謎に包まれてますよね。

まぁ女の子ばかりのところに男と称してみほが入ればこんな風にはなるかw
大洗は自動車強豪なんだろうね

着々と百合ハーレムを無自覚に形成してるなw

続きマダー?

みほが歴女なのかと思ったら…


大変お待たせしました。
やっと、投下できます。


>>83
>>84
みぽりんは本編でもモテモテだったからね。
それが男装したら百合ハーレムになるのも無理はない。(笑)


>>86
小次郎の名前に関しては、ちょっとミスリードだったかな?


   


 
それでは、これより

パンツァーフォー
投下開始





日が落ち、辺りがすっかり暗くなった頃。
学園内を歩いている者達がいた。

オレンジ色の作業着を身に纏う女性達。
彼女達は自動車部の整備士達である。
それもただの整備士ではない。自動車部の中でも腕利きのメカニック達だった。




「生徒会直々にうちに依頼しにくるから何かと思ったけど、まさか戦車の修理とはね・・・。しかも今日中に直せだなんて・・・。」

そのように呟いた、彼女の名はナカジマ。
茶色がかった黒髪のショートボブが特徴。
自動車部の中でもリーダー的存在であり、その腕前は随一と言われている。



「戦車の修理なんて初めてやるけど、何とかなるっしょ。自動車であることに違いはないし・・・。」

彼女の名はスズキ。
小麦色の肌がと、癖のある茶髪が特徴。
彼女もオレンジ色のツナギを着ており、自動車部の一員である事が分かる。



「正直、私はワクワクしてるよ。一体どんなメカがくるのか、今から楽しみだよ。」

彼女の名はホシノ。
黒い髪と褐色の肌、目尻が少しつりあがっている瞳が特徴。
仕事道具であるレンチを既にその手に握っている事から、意気込みの程が窺える。



「私も楽しみだね。今から腕が鳴るよ。」

彼女の名はツチヤ。
鳶色の短髪と、彼女達の中では比較的色白な肌が特徴。
彼女もまた、仕事に対して強い意気込みを持って臨もうとしている事が、その様子から分かる。




彼女達は戦車の格納庫がある方へと向かっている。

そんな中、ツチヤが言った。

「あ、そう言えば戦車で思い出したけど・・・数時間前に戦車道部の者が一人、うちに来てたよ。ちょうどナカジマ達がいなかった時だったんだけど。」

ナカジマが訝しみながら聞いた。

「戦車道部の人が? 一体何をしに?」

「それが、工具一式を貸してほしいって言ってさ。だから、うちで余ってるやつを貸しといたよ。
 それでさ、その人が結構なイケメンの男の子でさ。」



その時、ツチヤの言ったイケメンという言葉に、スズキがくいついてきた。

「何!? イケメンだって!! どんな男!?」

「見た目は中性的な感じの美少年だね。
 格好いいんだけど、同時に可愛さも兼ね備えている。所謂かっこかわいいってやつ。
 それでもって、笑顔がまた最高でさ・・・思わず見惚れちゃったよ。」

「いいなぁ・・・それは私も見てみたかったなぁ。」



そんな会話をしているスズキとツチヤに呆れながらも、ナカジマ達は格納庫へと向かっていった。


「あれ?」

その時、ナカジマが異変に気付いた。

「明かりがついている。こんな時間に・・・。」


彼女達の視線の先にあったのは、戦車格納庫の中にうっすらと灯った明りだった。

このような夜遅い時間帯には、よほどの事がない限り、学校内に残っている生徒はほとんどいない。
自動車部の彼女達のような例外を除き、ほぼ全ての生徒は帰宅している筈である。

しかし格納庫内では照明が灯っており、何やら物音がする。

「誰かいるのかな?」

ナカジマは不審に思いながらも、扉に手をかける。

軋み音を上げながら、重い扉が開かれた。


すると、そこにいたのは・・・・





「う~ん・・・ドライブシャフトは損傷はそれほど酷くはなかったけど、やっぱり問題はトランスミッションか。」

そこにあったのは、工具を片手に持ちながら思考を巡らす、みほの後姿だった。
彼女はナカジマ達にまだ気づいていない。


「あ、あの・・・・・・。」

「はい!?」

ナカジマが後ろから声をかけて、そこで初めてみほは彼女達に気づき、振り返った。





「「「・・・・・・・・ッ!!!!」」」



その瞬間、ナカジマ達は思わず息を呑んだ。

彼女達が見た、みほの姿・・・それはまさに容姿端麗という言葉がピッタリ当てはまるものだった。
整った精悍な容貌、それでいて、どこかあどけなさの残った顔立ち。そして気品を感じさせるその風格。
紛れも無い美少年である。

ナカジマ達は思わず見惚れてしまっていた。



((( び・・・美少年だ!!! )))



「あの・・・・何か?」

「はっ、はい!!」

みほに声をかけられ、ようやくナカジマは我に返った。

みほに見惚れてしまうあまり、十数秒間以上の間、完全に呆けてしまっていたのだった。




その時、ツチヤが言った。

「あれ!? 君は確か、この前うちに工具を借りに来た人だよね。」

ツチヤの事に気づいたみほも同じく声を上げる。

「あっ! あなたは自動車部の・・・・。とうことは、あなた達は自動車部の方ですか?」




そこでナカジマは驚きの声を上げる。

「え!? てことは・・・もしかして、彼が例の・・・?」


先程、彼女達の話題に上がっていた、戦車道部の男子の事を思い出される。
ツチヤが言った、イケメンの男の子・・・それが目の前の人物の事だと悟った。



すると、みほはナカジマ達の前に進み出ると、作業用皮手袋を手から外し、右手を差し出しながら言った。

「初めまして。・・・戦車道部の、西住小次郎です。 よろしくお願いします。」

みほは爽やかな微笑みを浮かべながら言った。
その笑顔は、ナカジマ達の目には眩いほどに輝いて見えた。
キラキラなんて効果音がついてもおかしくないほどである。


「・・・・・・//////////」

みほの笑顔に当てられ、赤面する自動車部の面々。


「こ、こちらこそ・・よ、よろしくお願いします/////////」

ナカジマは頬を真っ赤に染めながらも、差し出されたみほの右手を握り、握手をしたのだった。


今日の投下はここまでです。


今日の投下はここまでです。

乙でーす

乙です
西住殿が天然ジゴロになってる…

真実に気づいたら、どう反応するんだろうな?

そして、エリカやまほの反応も

お姉ちゃん、これを知ったらどうするんですかねwww

もしも、この精悍なみほが、プラウダ戦のように軍神立ちしたら、多くの女性達が堕ちるんじゃないのか?

そういや、みほが男子として参加しているなら、他校も男子が参加しているのか?

まほ「小次郎。私と結婚しよう」
みほ「えっ?」

こんな展開キボン

おい、姉自重しろww

まだかなー?

投下が遅れてしまって、申し訳ありません。
明後日までには投下いたします。

待ってます!

マダー?


遅くなってしまって、申し訳ありません。
大分かかってしまいましたが、もうすぐ出来そうです。1時までには投下いたします。

その前に、まずはレス返しをします。




>>94
ここのみほは大体こんな感じです。


>>95
>>96
この辺りの事は、ネタバレになっちゃうから詳しいことは言えませんが、今後の展開における重要なポイントです。


>>97
そりゃあ、もう墜ちまくりですね。大洗の撃墜王なんて異名がつくかもwwww


>>98
一応、参加しようと思えばできるけど・・・・この世界では基本的に、戦車道は女性がやるものって独特の価値観があるから・・・・。


>>99
まほェ・・・・



これより投下を開始します。

キター!!待ち続けた甲斐があった!




こうしてナカジマ達は、みほと一緒に共同作業で、戦車の修理を行う事となった。



(それにしても・・・・。)

ナカジマは納庫内に並べられた5両の戦車を見た。

事前に聞かされた話では、どの戦車も長年の間、野ざらしで放置されていたため、いたる所が酷く痛んでボロボロの状態であると聞いている。
だから、それらの修理は、相当な難事である筈。

しかし、その中でもⅣ号戦車とⅢ号突撃砲の2両が、すでにみほの手によって修理が完了していると聞かされていた。


1両の修理だけでも相当な時間がかかる筈なのに・・・それをみほはたった一人で、自動車部のナカジマ達が来るまでの間に2両も片づけてしまったという事だ。

(こんなボロボロの車両をたった一人で2両も、しかもこれほどの短時間で修理してしまうなんて・・・。)


みほが言うには、戦車道に関する技能は、整備も含めて全て一通り、実家で叩き込まれているらしい。

ナカジマはただ驚嘆するばかりだった。


そして、ナカジマ達の驚きは、その後も続くのであった。



それは自動車部の面々が戦車相手に苦戦を強いられている時の事だった。

いくら彼女達が自動車修理の専門家とは言っても、彼女達が普段扱っている物とは、勝手が違いすぎる。
戦車は通常の自動車とは違って、その機構が非常に特殊なものになっている。
だから、慣れない戦車の特殊な構造を前に、彼女達は困惑していた。
戦車の整備用の図面や資料を見ながらも、悪戦苦闘するナカジマ達。

しかし、そんな状況を一変させたのが、みほである。


工具をその手に持ち、38(t)戦車を相手に苦戦しているナカジマ。

「う~ん・・・・。」

そんな彼女の傍に寄ったみほは、そっと彼女に助言をする。

「この戦車だったら、先にこの部分からやった方がいいですよ。」

「えっ!?」

すると、みほは目の前の複雑に入り組んだ機械の指差しながら、詳細に説明した。
そこでナカジマは言われた通りにしてみる。


「えっと・・・ここをこうして・・・・あっ、本当だ!!」

それまで難航していた作業が、みほに言われた通りにやってみたら上手くいった。

あれほど手こずっていた事が、みほの助言を受けた途端に捗り出す。


みほはかつて西住家にいた頃に、戦車道に関する、ありとあらゆる知識を教え込まれているため、戦車の基本的な構造には非常に詳しい。
だから、その知識を生かして、ナカジマ達に、適切なアドバイスする事が可能だった。
どこを、どうすればいいのか、という事を的確に判断し、自動車部の者達にそれを教えていくみほ。
そのおかげで、なかなか進まなかった修理作業も、ここで一気にペースを上げて進んでいった。

その後も、みほの助言を受けながら、ナカジマ達の作業はスムーズに進行していった。

そして、みほ自身も工具を手に取って、修復作業をやっていく。
その手際の良さは非常に優れており、その技量にはナカジマだけでなく、みほの様子を興味津々に見ていたツチヤ達も非常に驚き、感心していた。



「凄いね。あれほどの技量を持った者なんて、自動車部の中でも、そんなにはいないよ。」

みほの腕前には、ホシノも舌を巻く。


「戦車道をやらせておくのが勿体ないくらいの逸材だよ。是非とも、うちの自動車部に欲しいね。しかもイケメンだし・・・。」

「そうだよね。後で、うちの部に勧誘でもしてみようかな。 イケメンだし・・・。」

「いや、イケメンは関係ないでしょ。 確かに格好いいけどさ・・・。」

ツチヤとスズキの呟いた言葉に、ホシノは思わずツッコミいれた。イケメンという部分だけは否定してないけど・・・。


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こうして、全車の修理は無事に完了したのであった。
彼女達は、正直徹夜仕事を覚悟していたのだが、みほのおかげで予定よりも大幅に捗ったため、その日のうちに全車の修理を終える事が出来た。



「お疲れ様。 小次郎君のおかげで今日中に片づける事が出来たよ。ありがとね。」

ナカジマは、みほに労いの言葉をかける。


「良かったら、これ、どうぞ。」

すると、ナカジマは手に持っていたコーヒーの入ったマグカップをみほに手渡した。
それは自動車部で、嗜好品としてよく飲まれているコーヒーであり、ナカジマ自身も気に入っているものである。
今日一日の労をねぎらうために、みほに飲んでもらおうと淹れてきたコーヒーだった。

「ありがとう。・・・・いただきます。」

みほは貰ったコーヒーのカップに唇を付けると、黒茶色の液体を一口程飲み込んだ。


「うっ・・・!!」

途端にみほが顔を顰めた。


「えっ!? どうしたの!!?」

突然の事でナカジマは慌てた。

(まさか、私がコーヒーの淹れ方を間違えた?)

ナカジマがそんなことを考えていると、みほが渋そうな顔をしながら言った。

「苦い・・・・。すいません、砂糖とミルクありませんか?」

「え? ・・・・・あれ? もしかしてブラックはダメ?」

みほから返ってきたのは意外な言葉だった。
ナカジマが淹れてきたコーヒーは、無糖のブラックだが、どうもそれが口に合わなかったようだ。



「砂糖とミルクならここにあるよ。」

ここでスズキがすかさず砂糖とミルクを持ってきた。

「ありがとう。」

みほはそれを受け取ると、すぐさまカップの中にミルクをたっぷりと入れ、角砂糖一つ程、コーヒーの中に落とし、スプーンでかき混ぜた。
そして、一口飲み込む。

「うん。大分飲みやすくなった。」

先程まで渋そうだった表情がかなり和らいだ。


ナカジマ達は、かなり意外に思った。

(小次郎君のような人だったら、コーヒーはブラックの方がいいと思ったんだけど・・・・意外だね。)

彼女の中では、男だったらコーヒーはブラックの方を好むという、ある種の先入観があった。
格好いい男の子に対しては、特にそうである。

だから、みほには無糖でブラックのコーヒーを渡した。その方がいいと思ったから。
しかし、実際は違っていた。
コーヒーにあれほどミルクをたっぷり入れて、それを美味しそうに飲む姿なんて、当初は想像もつかなかった事だった。


そこで、ホシノが聞いてみた。

「小次郎君ってさ・・・もしかして甘い物好きなの?」

「うん。甘い物は結構好きですよ。」

「そうか。じゃあ、これなんてどう?」

すると、ホシノは一つの箱を持ってきた。
彼女が箱の蓋を開けると、そこには色とりどりのお菓子が入っていた。

「これは!?」

みほは目を見開いた。
ホシノが持ってきたカラフルなお菓子・・・それはマカロンである。

「ちょうど、うちの部にあったお菓子だよ。よかったら、どうぞ。」

「いいんですか!? では遠慮なく、いただきます。」

みほは目を輝かせている。
彼女にとって甘いお菓子は好物であり、その中でもマカロンは大好物である。

みほはマカロンを一つ摘み上げ、口に入れた。


「美味しい・・・・これ凄く美味しいです。」

みほは満面の笑みを浮かべて、言った。
それは、まるで無垢な子供のような笑顔である。

ホシノは、みほの愛くるしい笑顔を見て、ドキッとしながらも言った。

「そう・・・・それは良かった。気に入ってもらえて何よりだよ。//////」




ここで、ナカジマは思った。
というより、その場にいた全員が思ったことなのだが・・・それまで凛々しい姿を見せていたみほが、時折見せる可愛らしい姿には、ギャップを感じさせられる。


(小次郎君って格好良いだけでなく、結構可愛い所もあるんだね・・・・///////)

美味しそうにマカロンを食べるみほの姿を見ながら、しみじみとそう思ったナカジマであった。



(((小次郎君ったら・・・可愛いなぁ、もう・・・/////// )))

そして、そんなみほの愛くるしい姿を眺めながら頬を緩ませる、自動車部の者達であった。

今回はここまでです。
次回は水曜日までには投下しようと思います。
遅れる可能性大だけど・・・。

乙ー 続きを待っています

みほの戦車知識は凄いな

ドイツ戦車以外の戦車構造や修理が解るとか自動車部に劣らず、チートやな

アメリカ戦車はインチ・ヤードとセンチ単位とは別と聞いたことありますしな

さらに、リベット止めか溶接と構造も違いますしな

ガルパンの公式アンソロージ漫画にでた、自動車部による整備道は面白かったと思う

男装西住殿とか想像しただけで萌え禿げるわ

男装バレはどのタイミングなのか楽しみだ
一番あり得そうなのは、サンダース戦後に

おケイ「? アナタ、女の子じゃないの!」
みほ「!?」
大洗メンバー『!?』

みたいなのかなぁ?


皆さん、こんばんは。
投下の目処が立ちましたので報告します。今夜一時くらいまでには投下いたします。

その前に、まずレス返しをしますね。


>>113
これが西住流です。


>>114
それも西住流なら無問題。西住流マジパネェ。


>>115
まあ、たしかに変な直感力を持っていそうな感じはするけど、おケイさん・・・・。

これより投下を開始します。



その後も、ナカジマ達はコーヒーとお菓子を食べながら、みほとの談笑を楽しんでいった。

先程、みほが見せた、意外な可愛い一面を目の当たりにした彼女達は、みほへの興味が尽きない。
話せば話すほど、益々みほに対する興味が湧いてくる。


すると、そこでスズキがある話題を切り出した。

「そう言えば、気になっていたんだけど・・・・・・小次郎君はどうして、この大洗に転校してきたの?」

それは皆が気になっていた事だった。

あれほどの高い技量を持っていながら何故、この県立大洗学園にやって来たのか、誰もが疑問に思っていた。
この学校はかなり昔に戦車道を廃止している。生徒会が今年になって突然復活させたのだが、もしそれが無かったら、今でも戦車道の授業なんて無かった筈。
あのような卓越した戦車道のスキルを持った者が、戦車道が無かった学校にわざわざ転校してくるというのは、どうしても解せなかった。


すると、みほがその疑問に答えた。

「僕は・・・・元々は戦車道から離れるために、そのつもりで転校して来たんです。」

「「「「えっ?」」」」

それは彼女達にとって、予想だにしない答えである。
そして、みほは続けて言った。

「実家が代々続く戦車道の家系だったから、僕自身も戦車道をやることを義務付けられてきました。
 一応は自分なりに、何とかやってたんだけど・・ある日、大きな失敗をしてしまって・・・・・・それからは戦車が嫌になってしまったんです。
 それで戦車道から逃げるために、ここに来たんです。だから本当は戦車道をやるつもりはありませんでした。
 生徒会の人達から、戦車道の履修を迫られるまでは・・・・・・。」


すると、みほはあの日の出来事を想起した。

「正直、戸惑いました。
 僕も最初は嫌だったんです。でも断ろうとしたら、生徒会の人達に脅されて・・・・。
 でも、そこで沙織さんと華さんが僕の事を庇ってくれたんです。僕なんかのために・・・。」


今でもはっきりと思い出せる。
自らの危険も顧みずに、自分の事を庇ってくれた友の姿を・・・・・。


「それがとても嬉しくて・・・・。
 だから思ったんです。こんな素敵な仲間達と一緒なら、戦車道をやるのも悪くはないって・・。
 そして何よりも、戦車道をやりたがっていた彼女達のために、僕に何か出来ることは無いかって・・・・そうう思いました。」


その時、みほはふと思った。

(それに、今にして思えば、僕自身もまだ心のどこかに未練があったのかもしれない。)

かつて実の姉から言われた、ある言葉を思い出す。




―― みほは自分自身の戦車道を見つけなさい。西住流とは違った自分だけの戦車道を・・・・ ――




(でも、それを果たせないまま、僕は全てを捨てて逃げ出してしまった。
 だけど彼女達のおかげで、僕はもう一度、戦車道と向き合う事が出来る。
 あの人達と一緒なら、もしかしたら見つけ出す事が出来るかもしれない。自分の戦車道を・・・・。)


今一度、仲間達への想いを馳せる、みほであった。







「「「「・・・・・・・・・。」」」」

そして、そんなみほの話を聞いていたホシノ達は感じとった。
みほの、仲間に対する強い思いを。

それは彼女の、どこか愁いを帯びた表情からも察することは出来る。


それ故に、みほを応援してあげたい・・・みほの支えになってあげたい・・・そう思わずにはいられなかった。



そこで、ナカジマは言った。

「小次郎君。 もし助けが必要な事があったら、いつでもうちに声をかけてよ。 私達が力になるよ。」

それは力強く、頼もしい言葉だった。


「そうだよ。私達に遠慮なく相談してね。」

「協力は惜しまないよ。」

「私達、自動車部がサポートする。」

スズキ、ホシノ、ツチヤも口々に言った。


そんな頼もしい言葉に、みほは胸を打たれる。

「みんな・・・・・・ありがとう。」


みほは思った。
また素敵な仲間が増えたと・・・。

心の底から、そう思ったのであった。






その後、みほと別れたナカジマ達は、自動車部の部室へ戻った。

そして彼女達の手には、修理に用いた、戦車の資料や図面のコピーが握られている。



そこでナカジマが言った。

「さっそくだけど、小次郎君から教わった事をおさらいする。 各自、資料を頭の中に徹底的に叩き込んでおいて。
 いつでも、私達で修理できるようにしておくよ!!」

「「「おぉーー!!!」」」

ホシノ達も気合を入れて、作業に取り掛かる。


もう、すでに夜中だったが、自動車部の面々はそのような事は気にもせずに作業に没頭していった。


これを機に、更に技術を向上させた大洗学園自動車部が、後に戦車道と並んで、その名を轟かせる事になるのは、また別のお話である。

今回はここまでです。

乙ー

ここから、自動車部の覚醒が始まるのか

まほ「西住流に逃げるという道は無い。こうなったら、ここで結婚するしかないな」

みほ「受けたち・・・・え?」

「「「「「ちょっと、待ったーーー!!!!」」」」


ふと思いついてしまった。


>>123

まほさん・・とりあえず落ち着きましょう。ね。


それでは、これより今日の分を投下します。



その日、みほの朝は非常に慌ただしく始まったのであった。


「もうこんな時間! 急がないと!」

みほは手早く更衣を済ませると、慌てて家から飛び出して行った。
勿論、慌てていても戸締りは忘れない。

何故、このように慌てているかというと、それは寝坊してしまったからである。

昨日、夜遅くまで学校に残って仕事をしていたため、家に帰った時には、もうすでに真夜中であった。
普段の就寝時刻から大幅に遅れて寝たため、朝にすぐ起きられず、その結果寝過ごしてしまったのである。


「このままじゃ遅刻しちゃう!」

慌てて家を出てきたみほは、学校に向かって全力で走っていった。







「ん?」

その時、前方に人影を発見する。
大洗学園の制服を着ているから、学校の生徒だろう。

しかし、何やら様子がおかしい。

非常の覚束ない足取りをしている。
右へ左へとフラフラして、まるで酔っぱらいの千鳥足だ。
今にも倒れてしまいそうな、危なっかしい歩き方であった。

「あ、あの・・・大丈夫ですか?」

みほはその人物に駆け寄り、言った。
すると返ってきたのは、辛そうな声。

「うぅ・・・・辛い。」

「どうかしましたか!?」

「朝が辛い。」

「えっ??」

というか、辛そうというより、どちらかというと眠そうである。


すると、彼女はその場にへたり込んでしまった。

「辛い・・・いっそ、このまま全てを投げ捨ててしまいたい。あぁ・・・それが出来たら、どんなにいいか・・。」

「何の話です?」

「だが、行かねば・・・。」

みほが心配そうに様子を窺う中、なんとか立ち上がり、再び歩き出そうとする。
だが、まだフラフラしており、いつ倒れてもおかしくないように見えた。

みほは見るに見かねて、手を差し伸べる事にした。

「あの・・肩を貸しましょうか?」

彼女の傍にそっと寄り添うと、肩を貸して体を支えた。

「すまない。」

そう言うと、彼女はそのままみほの肩にもたれかかった。




「そう言えば・・・自己紹介が・・・・まだだったな。 私は冷泉麻子だ。・・・・・よろしく。」

彼女はまだ眠そうにしながらも、途切れ途切れに名乗った。
それを聞いて、みほもすぐに名乗りを返そうとする。


その時だった。


「あっ!!!」

突如、みほの肩に掛かる荷重が増大した。そのまま、麻子の体がずり落ちそうになる。
何事かと思って、麻子の方に目をやった。

「冷泉さん!?」

「 Z Z Z Z z z z z・・・・ 。」

よく見ると、彼女の瞼が落ちていた。
みほにもたれかかったまま目を閉じ、寝息を立てている。
どうやら完全に寝てしまったようだ。

「麻子さん、起きてください。」

「んぅ、ムニャ・・・・Z Z Z z z。」

声をかけるが、目を覚ます気配が全く無い。

仕方なく、そのまま行こうとするが、ほぼ全体重で寄り掛かられたため、麻子の体がずり落ちてしまわないようにするのが精一杯だった。
これでは中々上手く前に進めない。

「このままでは遅刻する。」

焦る、みほ。
この体勢のままでは、速く動けない。


「仕方ない。」

そこで、みほは体勢を変えることにした。
麻子の背中に腕を回す。

「よいしょ。」

そのまま両腕で麻子の体を抱きかかえて、持ち上げた。

「よし。これで動きやすくなった。」

体勢を変える事によって大分動きやすくなったみほは、そのまま麻子を抱えて、学校に向う。


こうして麻子は眠ったまま、みほの腕に抱えられ、学校まで運ばれることになった。


(ん・・・・何だろう? ・・・とても暖かい。・・・心が落ちつく。)

その時、麻子はみほの腕の中で心地良い温もりを感じていた。
まるで、ゆりかごの中にいるかのような、そんな快い感覚をぼんやりと感じる。

その心地良さは、麻子を更に深い眠りへ誘うのであった。



 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


麻子は今、みほの腕の中で眠っているわけだが・・・・・
皆様はご存じだろうか?

このような状態を俗に何と言うか。


それは所謂、お姫様抱っこというものである。

その時の二人の姿は非常に絵になっている。
みほは男装していることもあって、その姿はまるで王子のようだった。
そして麻子はさしずめ、眠り姫といったところだろうか。






そんな状態で学校に行ったため、遅刻の取り締まりのために、正門前で見張りをしていた風紀委員の人が仰天した。

「なっ!! あ、あなた達、なななな何してるの!!? //////」

彼女の名は、園みどり子(通称:そど子)。
彼女はみほ達の姿を見た瞬間、びっくりしすぎて、激しく吃る。

「あ、おはようございます。」

「おはよう・・・・・って、そうじゃなくて!! 何をしているのかって聞いてるのよ!!!」

「それが・・登校中に麻子さんと会って、一緒に行こうとしたら麻子さんが途中で寝てしまって・・・。
 このままだと遅刻すると思ったので、担いで連れてきました。」

「そ、そうなの・・・?」

そど子は目の前の状況について、思考を巡らす。

(この人は冷泉さんと、どういう関係なの? もしかして彼氏?)

そんな考えが頭の中でぐるぐる回るが、とりあえず今は後回しにして、みほの腕の中で安らかな寝息を立てている、麻子を起こす事にした。

「コラッ! いつまで寝てるの! 起きなさい!!」


すると、麻子はその声に反応して、うっすらと目を開けた。

「ん・・・・そど子・・。」

「お姫様抱っこされて、寝ながら登校とは、いいご身分ね。 そんなに彼の腕の中は寝心地が良かったのかしら?」

「え・・・?」

麻子は寝ぼけ眼のまま、見渡した。


徐々に脳が覚醒していく麻子。
目の前にみほの顔があり、そして自分の体がみほの腕で抱きかかえられている事に気づく。

「えっ!?」

ここにきてようやく、自分の状態を把握した。
お姫様抱っこをされている自分の状態を。

「なっ !!!!??////////////」

一気に眠気が吹き飛んだ。
麻子の顔がみるみる真っ赤になっていく。

「これは一体どういう事だ。何で私が男の人に %£☆шД∠ !!!!??」

もはや言葉にならない。
目が覚めたら、いきなり不可解な状況になっていたため、パニックに陥っていた。

そこで、そど子が麻子を宥める。

「落ち着きなさい! なに寝ぼけているの。」

「お、おい、そど子! これは一体?」

「あなた登校中に眠りこけたそうじゃない。彼がここまで運んできてくれたのよ。」

そど子に言われて、思い出した。
登校中にみほに肩を貸してもらった事を。
途中で記憶が途切れているのも、眠ってしまったからであり、そのためみほがここまで運んできてくれたという事を、ようやく理解できた。

「そ、そうか。それはすまなかった。///////」

何とか落ち着くことが出来た。
顔はまだ赤いが・・・。

「とりあえず、降ろして。//////」

「はい。」

改めて今の自分の状態を思うと恥ずかしくなったため、麻子は目を伏せながら頼んだ。
すると、みほは麻子の体をゆっくりと降ろした。
その動作はとても丁寧であり、紳士的な優しさが感じられる。

「その・・・ありがとう。ここまで運んでくれて・・・。」

「いえいえ。礼には及びませんよ。それでは、僕はこれで・・・。」

みほはそう言って、立ち去ろうとする。


すると、麻子が呼び止めた。

「待って。まだ君の名前を聞いてなかった。」

「僕ですか・・・。僕の名は西住小次郎です。」

そう言うと、みほは校舎に向かって歩いて行った。


「今日遅刻したら連続遅刻記録を245日に更新してしまうところだったのよ。
 彼のおかげで遅刻せずに済んだんだから、彼にはちゃんと感謝しなさい。」

そど子が隣で言うが、その時の麻子の耳には全く入っていない。


「西住小次郎か・・・・・。」


麻子はその名を反芻した。
そして去っていくみほの、その背中をただ見つめ続けていた。

今日の分はここまでです。

着々とハーレムが形成されていく

乙ー

何という天然ジゴロww
次に堕ちる人は誰かなww

よく持てたな、みほは。意識不明な人を担ぎ上げるのは大変だと思うぞ。
まあ、戦場で緊急時などがありますから、そういう訓練はしていたと思うのですね

そして、そど子は、よく不純異性交遊は禁止よ!と言わなかったなww

そりゃあ西住流だからな
11話の跳躍力も鍛練の賜

そういや、そど子に反応しないのは動揺している証拠だな

丸山「・・・・・・(プクーっ)」←頬を膨らましている

>>136
つんっ
ブッ

まほ「小次郎、あけましておめでとう。早速だが、教会に行こう。参拝(結婚)しに」
みほ「違うような気がするのはなぜだろう・・・・・?」

マダー?

生存報告。

毎度のことながら、遅くなってしまって申し訳ありません。
来週の水曜日までには投下します。

待ってます!!

すいません。
思いのほか手間取ってしまったせいで、投下は深夜になりそうです。

待ってるよー

マダー?


皆様、すいませんでした。(土下座)


水曜までに投下するとか言っておいて、それが出来ず・・・・深夜には投下すると言っておきながら、それすらも出来ず。
今後はこのような事が無いように、気を付けます。
本当に、すいませんでした。


それでは、まず最初にレス返しです。






>>133
>>134
そう、それこそが西住流なのです。


>>135
そりゃもう、びっくりビックリ仰天ですよwwww


>>136
あれ? 丸山さん、怒ってらっしゃる?


>>138
まほさん自重してくれwwww




今日も戦車道授業が始まろうとしていた。

既に格納庫前には戦車道メンバーの一同が集合していた。
今日は何をやるのかと、誰もが思っていたその時、河嶋桃が言った。

「これより本日の戦車道授業を開始する。さっそくだが、今日は実戦形式の訓練だ。戦闘の大まかな流れを、やりながら覚えてもらう。
 各戦車には備え付けの取扱説明書があるから、まず最初に熟読しておけ。」

そう言うと、桃は各員に地図を手渡していった。
それぞれの地図には印がつけられている。

「その指定の場所まで移動し、全車が所定に位置に着いたら戦闘開始だ。ルールは簡単だ。自分以外の全ての戦車を戦闘不能にすればいい。
 それでは、これから各チームで、まずポジションを決めよう。砲手、操縦手、装填手、通信手、車長など・・・誰がどの役割を担当するかを決めてくれ。」







こうして、みほ達はまず最初にポジションを決める事から始めた。

「いきなりポジション決めろとか言われても・・・なんとか長とか、なんちゃら手とか、もう訳分かんないよ。」

沙織が頭を抱えながらに呟いた。
戦車に詳しい人ならまだしも、何も知らない人がいきなり「車長」やら「装填手」やら、そのような単語を並べられたら、こうなるのも無理はない。


そこで、みほが各ポジションについて説明をする事にした。

「車長っていうのは乗組員全体の指揮を執る人の事だよ。そして砲手というのは文字通り、大砲を撃つ人。
 操縦手は運転担当で、装填手は砲弾の大砲の中に入れる作業を担当する人、通信手は無線通信を担当する人の事を指します。」

それを聞いて沙織も得心がいった。

「なるほど。流石はコウちゃん、分かりやすい。」

全員が理解出来た所で、改めてポジション決めの話し合いをした。


その結果、各チームの搭乗割は以下のようになった。


Aチーム
Ⅳ号戦車

・西住みほ:装填手兼通信手

・武部 沙織:車長

・五十鈴 華:操縦手

・秋山 優花里:砲手



Bチーム
38(t)戦車

・角谷 杏:車長兼通信手

・小山 柚子:操縦手

・河嶋 桃:砲手兼装填手



Cチーム
八九式中戦車

・磯辺 典子:車長兼装填手

・近藤 妙子:通信手兼機銃手

・河西 忍:操縦手

・佐々木 あけび:砲手



Dチーム
III号突撃砲

・カエサル:装填手

・エルヴィン:車長兼通信手

・左衛門佐:砲手

・おりょう:操縦手



Eチーム
M3中戦車リー

・澤 梓:車長

・山郷 あゆみ:砲手

・丸山 紗希:装填手

・阪口 桂利奈:操縦手

・宇津木 優季:通信手

・大野 あや:副砲手



「ここで大活躍すれば、バレー部は復活する、廃部を告知された、あの日の屈辱を忘れるな!」

元気よく掛け声を発したのはCチームの、磯辺 典子。

このチームは元バレー部員達で構成されている。
キャプテンの磯辺 典子の他にも、近藤 妙子、佐々木 あけび、河西 忍がおり、全員がバレーボールのユニフォームを身に纏っていた。

彼女達の悲願はバレー部の復活である。

「バレー部復活のために、やるぞー!! ファイトォーッ!!」

「「「おぉーー!!」」」

彼女達は円陣を組み、気合を入れている。
その様子から、強い気迫と意気込みが感じられた。







「初陣だー!!」

Dチームでは、左衛門佐が威勢の良い掛け声を発していた。

このチームは全員が歴史好きの、所謂歴女である。
それは彼女達の服装からも窺い知れる。また、どの時代に詳しいかも推測できるような恰好をしていた。

ローマ史に詳しいカエサル(本名:鈴木 貴子)、第二次大戦時代に詳しいエルヴィン(本名:松本 里子)、戦国時代に詳しい左衛門佐(本名:杉山 清美)、
幕末史に詳しいおりょう(本名:野上 武子)など、個性豊かなメンバー達である。


「ここは車懸かりの陣で行くぜよ。」

土佐弁で意気込む、おりょう。

「いや、ここはパンツァーカイルで。」

エルヴィンも続けて言った。


「いや、一両しかないが・・・・。」

カエサルが冷静にツッコミを入れる。






一方、Eチームでは全員が取扱説明書と格闘していた。


「う~ん・・・。」

「この説明書、難しいよ。」

澤梓と山郷あゆみは頭を抱えた。

「分かり難いよ。」

「今まで聞いた事も無いような単語がいっぱいある・・・。」

宇津木優季と大野あやも、難解な説明書を相手に苦戦している。

「うぅ・・・・。」

阪口桂利奈に至っては頭から煙が出そうな有様だった。


「・・・・・・・・・。」

そんな彼女達を他所に、丸山紗希だけは明後日の方向を向いて、無言でぼんやりとしている。

彼女はいつもこんな調子なのか・・・梓達も彼女に何も言わなかった。





その時、会長の杏が桃に言った。

「かーしま、DチームとEチームへの根回しは任せる。Cチームの方には私から言っておくから・・。」

「分かりました。では、さっそく手配します。」

そう言うと、桃はカエサル達のいる方へと歩いて行った。

それを見届けた杏は、Cチームのいる方へ行き、キャプテンの典子に声をかけた。

「ちょっと、いいかな? 今日の訓練の事なんだけどさ・・・。」


 ・

 ・

 ・

 ・


「かーしま、どうだった?」

「はい。根回しは完了しました。両チームともに了承してます。あとは手筈通りに・・。」

「そう。Aチームには気づかれてないよね?」

「はい。問題ありません。」

そんな会話をしている二人を訝しんだ柚子は杏に尋ねた。

「会長、根回しって何のことです?」

「そういや、小山には言ってなかったね。
 今回の演習は自分以外の全てチームを撃破する対戦方式・・・・と見せかけてB、C、D、Eチームで手を組んで、西住君のAチームを叩くよ。」

「え!?」

サラッと、とんでもない事を言ってのけた杏に対して柚子は驚愕の声を上げた。

「何故そのような事を!?」

「ちょっと荒っぽいやり方だけど、早急に確かめておかなきゃならない・・・西住君の実力の程を。そのための、演習なんだよね。
 彼の実力次第で、今後の私達の方針も変わってくるからさ。
 だから全チームで西住君のチームを囲む。その圧倒的不利な状況で、それを切り抜ける事が出来るだけの実力を持っているか・・・そこを確認しておきたい。」



そのようなやり取りが行われている事など、みほ達Aチームには知る由もなかった。




みほ達はⅣ号戦車に乗り込み、それぞれのポジションの席についた。


「暑苦しいうえに狭い。」

沙織が顔を顰めながら呟いた。
だが、それも無理はない話である。初めて戦車に乗った人が一番最初に感じる事・・それは、その狭さ。
戦車の車内というのは必要最小限のスペースしかなく、意外と狭苦しい。

そして、そんな沙織とは対照的に、優花里はとても楽しそうにしている。

「フフフ。いよいよ戦車を動かす時が・・・。」

優花里は逸る気持ちを抑えられず、ワクワクしている様子だった。



「小次郎さん。これって、どうやって動かすんです?」

操縦席に座った華がみほに聞いた。

「まず、そこのスイッチを押して下さい。」

華は言われた通りにスイッチを押した。
するとイグニッションを入り、エンジンが始動した。
ブロロロロ、と低い音が響き渡る。

その時だった。


「ヒヤッホォォォウ!最高だぜぇぇぇぇ!!」

「「「!!!!!」」」

突如、優花里が興奮極まって叫んだ。
あまりにも突然の事に、周囲にいた者達はびっくりして、優花里の方を見る。

「優花里さん・・・?」

「ゆかりん・・・戦車が絡むと妙にハイテンションになるね。というかキャラが変わってない? パンツァーハイ?」

華と沙織が困惑気味に言った。
すると、その瞬間に優花里は我に返った。

「はっ!! す、すいません。」

待ちに待った、戦車を動かす瞬間がやってきた事により、興奮しすぎて、つい癖が出てしまった。


(あぁ・・・また、やってしまった。 興奮のあまり、あんな大声で叫ぶなんて、とんだ醜態。今度ばかりは絶対にドン引きされたに違いありません。)

先程とは打って変わって、急にしょんぼりしてしまう優花里。


しかし・・・・

「優花里さん、本当に戦車が大好きなんだね。」

優花里の予想とは裏腹に、みほはニコッとしながら言った。

「今の優花里さん、とっても生き生きしているよ。」

決して、引いたような様子は全く無い。
それどころか優花里の事を微笑ましく見守ってくれている。

「西住殿・・・・。」

38(t)戦車を見つけた時もそうだったが、みほは優花里がどんなに素を曝け出しても、決して引いたり、嫌悪したりはしない。
むしろ、有りのままに全てを受け入れてくれる。

みほの包容力に、優花里は強い感銘を受けた。


すると優花里は意を決して、みほの手を握って、言った。

「西住殿・・・私、あなたに一生ついて行きます!!」

「・・・ありがとう、優花里さん。」

みほは微笑みながら返した。

これを機に、優花里はますます、みほの事が好きになったのであった。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


一方、その頃、戦車道演習場に近づく一人の少女の姿があった。

その少女は、冷泉麻子。
今朝、みほと一緒に登校した少女だった。

麻子は、立ち入り禁止の看板に目もくれずに歩いている。

「ここなら誰にも邪魔されずに寝れそうだな。」


そう呟くと、麻子は演習場の奥の方へと歩いて行った。

今回はここまでです。

次回の投下は、来週中にできたらいいなあ・・・。(願望)

乙、今週中に投下しよう(提案)

乙!



原作のウサギさんチームが会長チームを狙わなかったのは、あらかじめ根回しした結果か

蝶亜美がいないのは男バレと西住バレを防ぐ為でしょうな


今回の天然ジゴロはゆかりんにしか発動しないのか……
てっきり、この演習で一網打尽にするのかと思ってたわ……

色々と吹っ切れたせいか、みほの精神メンタルが本編よりもすごく高いな
こうも、能力万能だと、みほを追い出した黒森峰では、後悔しているんじゃないか?
みほに任した仕事が一挙に全員に降りかかって、首が回らなくなるとか

乙です

ここの西住殿の黒森峰時代はどんなんだったんだろうか
西住流としては異端だけど、隊長補佐或いは臨時指揮官しては有能で、それを腐れ縁のエリカが突っ込み入れつつ援護しているのが安易に想像出来た。

待て、逆に考えるんだ

黒森峰時代のは、姉やOB、母がいるせいでみほの能力はそれほど目立たなかったが
制約がなくなったことで、一気に覚醒したと考えるんだ!

乙~
みぽりんがこの調子でハーレム築いてったら周りの友達関係がギスギスしそうだなw
みぽりんは無自覚にフラグ立てるから皆の好意には気づかなそうだし

まだか

今日の深夜あたりの投下できそうです。
毎回、毎回、更新が遅れてすいません。

楽しみ


ヒヤッホォォォウ!レス返しだぜぇぇぇぇ!!」



>>154
え? 今年中?(乱視)


>>156
それもあるけど、もっとぶっちゃけた理由として、あの人原作じゃ何もしてない、というのがあります。
操縦のやり方も教えてくれない指導教官って一体?


>>157
一網打尽になるのはもう少し後です。


>>158
ここのみほは、基本的に原作のみほよりも、かなりハイスペックです。


>>159 >>160
黒森峰でのみほについては、いずれ過去編でやっていきます。


>>161
そこは、まぁ・・・みぽりんなら上手く収めてくれますよ・・・・・・・・・多分。





というわけで、これより今日の分を投下します。




気を取り直して、訓練を続行する事となった。

まずは戦車を発進させ、格納庫の外に出なければならない。
エンジンはすでに起動しているので、まずはクラッチ操作とギアチェンジからである。

「右にあるのがギアチェンジのためのシフトレバーです。まずはクラッチを踏んで、ギアを1速に入れます。」

「分かりました。」

みほは、操縦手の華に丁寧な説明をした。

華は予め取扱説明書を読んでいたのだが、その説明書は難解で、いまいち分かり難かった。
そのため、こうしてみほが懇切丁寧に助言しながら、運転している。

華の操縦は非常にたどたどしいものだったが、何とか戦車を発進させ、格納庫の外に出ることが出来た。


「右の操縦桿を手前に引いて右折します。逆に左折したいときは、左の操縦桿を引きます。」

「はい。」

その後も、華はみほの指示通りに操作し、覚束ない足取りながらも、目的地に向かって進んで行った。


 ・

 ・

 ・

 ・


そして数十分後。

「華さん、ここで停まって下さい。」

みほが地図を見て、位置確認をしながら言った。
どうやら目的地に到着したらしい。

「やっと着いたぁ・・・・。座席は堅いし、凄く揺れるから、座ってたらお尻が痛くなってきちゃった。」

沙織が顔を顰めて言った。
戦車というのは決して乗り心地が良い物ではないので、誰でも慣れない最初のうちはこうなるものである。






「Aチーム、応答せよ。」


その時、無線を通して河嶋桃の声が聞こえてきた。
すぐに、みほが無線機を手に取り、返答する。

「こちらAチーム。配置につきました。」

「よし。全チームが所定の位置についた。これより戦闘を開始する。」

桃から演習の開始が宣言される。






「で、これからどうする? これって車長の私が決めていいんだよね! いいんだよね、決めても!」

「ええ。まぁ・・・・・。」

沙織が身を乗り出しながら、みほに聞いてきた。

沙織も車長席に座っていることによって、若干テンションが上がっている。
もしかしたら特等席に座っているみたいな、そんな気分になっているかもしれない。


「武部殿・・とりあえず、試しに一発撃っちゃいます?」

優花里も完全にノリノリである。

「いいね。じゃあ景気づけに一発、撃っちゃおうよ。」

「あらあら・・それは、なんともアクティブですね。」

「いや、そんな闇雲に撃っても・・・。」

沙織だけでなく、華までも一緒になって、まるで花火を打ち上げるかのようなノリだった。
さすがにこれは、みほが止めたが・・・。



そんな和気藹藹としたムードに、みほは内心少しだけ戸惑っていた。
演習中にこのような和やかな雰囲気になることなど、昔では考えられないことだった。

今でも思い出せる、あの厳しく過酷だった黒森峰時代。そして今のこの大洗での戦車道。
それらを比べると、あまりにもギャップが大きく、そして新鮮だった。

(なんだか新鮮な気分。 みんなも楽しそうだし、こういうのも悪くないかな。)

みほは思わず笑みをこぼした。




しかし、その雰囲気は次の瞬間に一変することになる。




突如、車内に激震が走った。
凄まじい爆音が響き、衝撃で車内が大きく揺さぶられる。


「きゃあああっ!!! 何!!??」

沙織は思わず悲鳴を上げた。あまりにも突然の事で、何が起きたのか、全く分かっていない。
そして沙織だけでなく、他の者達も状況を認識できておらず、動くことが出来ずにいた。


しかし、みほだけは違っていた。

(今のは着弾音! 右側の方から聞こえてきた。)

みほは瞬時に状況を理解し、ハッチを開けて身を乗り出し、周囲を見渡す。


車体のすぐそばの地面には何かに抉られて出来たような穴がある。それが砲弾によって出来た弾痕であることは、すぐに分かった。

そして顔を前に向けると、そこには一両の戦車が鎮座していた。しかも、完全に砲口がこちらに向けている。

「沙織さん! 敵、八九式中戦車! 三時方向!!」

みほのその言葉を聞かされ、一同はようやく状況を理解した。


「やばいよ!! 逃げよう!!!」

「はい!!」

沙織が思わず叫び声を上げ、すかさず華がアクセルを踏み、全速で急発進する。

そのおかげで、八九式の砲口から撃ち出された第二射をかろうじて回避する事が出来た。
しかし、八九式が後ろから迫ってくる。


追いすがる八九式を何とか振り切ろうとして激走するⅣ号戦車。
そんな中、沙織がキューポラから恐る恐る顔を出して前を見た、その時だった。

「今度は前から来てる!!」

沙織の視界に飛び込んできたのは、前方から75mmの砲口を向けながらこちらに迫ってくるⅢ号突撃砲だった。

「どうしよう・・・このままじゃ挟まれる!!」

沙織が慌てふためきながら言った。
しかし、そんな状況でもみほは至って冷静。

「華さん、右の方へ行ってください。」

決して取り乱すことなく、操縦手の華に指示を出す。

みほ達の前方・・・ちょうどⅣ号戦車とⅢ突の間に位置する場所に、道が二つに分かれる分岐点がある。
そこで、みほ達は右の道へ逃れて、挟撃を避けようとにした。

華は指示通りに操縦桿を動かし、道を右折。
何とか、挟み撃ちにされることは回避された。

それでも背後から猛追撃を受ける状況に変わりはない。
しかもⅢ突が八九式に加勢。2両で追いかけられるという・・先程よりもさらに悪化した状態に陥ってしまう。


だが、それでもみほは何ら動揺することはなかった。

「どういうわけか、CチームとDチームは手を組んでいるようですね。」

敵の砲口が轟音を響かせる中、平静のまま、後方にいる2両の敵戦車の動きを観察し、その上で二つの敵チームが協同していることも即座に看破した。

このことからも、みほの能力の一端が窺える。



そして、みほ達のⅣ号戦車は、尚も背後から猛追してくる三突と八九式の追跡を振り切ろうと全速力で道をひた走る。
散発的に飛んでくる砲弾が近距離に着弾し、砂煙を巻き上げる中、トップスピードで駆け抜けていった。



「ん?」

その時、ハッチから身を乗り出していたみほが何かに気づく。
それは前方の草むらの中。そこに何かがあった。

「あれは・・・・・・・・あっ!!」

よく目をこらして見ることによって、それが何なのかがわかった。
それは人である。
前方の草むらの中で寝転がっている女の子がいた。

このままでは轢いてしまう。

「危ない!!」

みほは即座に、急制動の指示を出した。
しかし、咄嗟に華がブレーキを踏むが、スピードがつき過ぎてしまっているため、すぐには止まれない。

「くっ・・・間に合わない!」

そう判断したみほは、ハッチから出て、砲塔の上に上った。

「コウちゃん! 一体何をするの!?」

沙織が聞く間もなく、みほは動いた。
前へ踏み込み、そのまま思いっきり足場を蹴って、前方の空中へと高く跳び上がる。

「「「!!!」」」

それを見た沙織達は驚いて目を見開く。

前に大きく跳躍して、走行中の戦車から飛び出したみほは、そのまま草むらで横になっていた女の子の傍に着地した。
すると、その人を素早く抱きかかえる。
そして再び跳躍して、すぐ後ろまで迫っていたⅣ号戦車に飛び移り、綺麗に着地した。





沙織は、この一連の動きに驚愕した。

目の前でみほが見せた跳躍力。
そして人を一人抱きかかえたまま走行中の戦車に飛び乗るという離れ業。しかもその抱きかかえ方が、お姫様抱っこであるというオマケつき。


「西住殿・・・・。」

(ゆかりん・・心なしか、羨ましそうな目してる。 まあ、気持ちはよく分かるけど・・・。)

みほに抱きかかえられている女の子のことを羨ましそうに見る優花里。
そして、沙織もまた、みほにお姫様抱っこされているその女の子に、羨望の眼差しを向けずにはいられなかった。




その時、沙織は気づいた。
その女の子、よく見てみると見知った顔だった。

「あれ!? 麻子じゃない!」

「え!?」

みほも言われて気づいた。
咄嗟のことで、相手の顔もよく見ずに助けたから気づかなかったが、よく見るとその女の子は、みほが今朝に知り合った冷泉麻子であった。

「沙織さん、麻子さんとは知り合いですか?」

「うん。麻子は私の幼馴染なの。・・・・・それにしても・・・」

「Z Z Z z z z z ・・・・。」


すると沙織は、スヤスヤと寝息を立てている麻子を見ながら、溜息まじりに言った。

「麻子ったら、また授業サボって、こんな所で昼寝してたのね。」

「Z Z z z ・・・・・・う~ん・・・。」



その時の麻子はまさに夢心地だった。

(あぁ・・・なんだか、とても暖かい。心がやすらぐ。)


みほの腕の中で心地良い暖かさ感じる麻子。

しかし、すぐさま違和感を覚えた。

(・・・・あれ? 前にもこんな事があったような気が・・・)

そこで麻子は閉じられていた瞼をゆっくり開いた。
夢うつつな状態で目を開くと、最初に見えたのは、みほの顔であった。

「あっ・・麻子さん、目を覚ましましたか。」







「・・・・・・・・・・・・・・え!? ・・・・なっ!!!!」




一瞬フリーズした直後、みほにお姫様抱っこされている自分の状態を把握し、一気に目が覚めた。
今朝とほぼ全く同じ状況である。

「これは一体どういう状況だ!!? ていうか、またお前かД¢☆¶ш▽α ///////////」

顔を真っ赤にしながら叫んだ麻子。
途中からは、もはや言葉になっていない。



(普段はクールな麻子が、こんなにパニくるなんて・・・なんか凄い新鮮。)

沙織はそんなことを思いながらも、取り乱している麻子を宥めることにした。

「落ち着いて。 麻子、こんな所で昼寝なんてしてたせいで、危うく轢かれるところだったのよ。」

沙織が、動揺していた麻子を静めつつ、状況を説明した。
危うく轢かれそうになっていたことや、危ない所をみほが助けたことなど。


そのおかげで、麻子は状況を把握し、とりあえず落ち着きを取り戻すことが出来た。
それでも顔はまだ少し赤かったが・・・。

「そうか・・・・すまなかった。 小次郎には "また"助けられたな。//////」



麻子が言った、 "また"という部分に引っ掛かりを覚えた沙織と優花里。

("また"って何!? 前にもコウちゃんにお姫様抱っこされたことがあるってこと!? やだもー!!)

(一度ならず二度も、西住殿にお姫様抱っこを!!? 何てことを・・・・・・・羨ましすぎる!!)

そんな思考が脳内を埋め尽くした。


「ここは危ないので車内に入りましょう。」

みほのこの一言で思考を中断させられた。
とりあえず今は戦闘中なので、この件は一旦後回しにするが、この演習が終わったら麻子を尋問しよう・・・そう思った沙織と優花里であった。






「ん? これは・・・・?」

一方、麻子はそんな沙織達を他所に、近くに置いてあった、ある物を手に取った。
それは、このⅣ号戦車の取扱説明書である。

「・・・・・・。」

そのマニュアルを手に取ると、一人で黙々と読み進めていく。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


その後も激しい追撃戦は続いた。


みほ達のⅣ号戦車が全速力で逃げるように、八九式とⅢ突もまた全速力で追いかけている。
八九式もⅢ突も、Ⅳ号戦車に後ろから砲弾を叩き込もうとするが、全速走行しながらの砲撃だから、中々当たらず、速力も均衡してたので、距離は中々縮まない。
ある種の膠着状態になったのだが、それも長くは続かない筈。
このまま打開策も無しに逃げ回っているだけでは、ジリ貧でしかない。


誰もがそう思っていた、その時だった。



「「「「 ・・・ッ!!!! 」」」」


ガッ、という衝突音と共に、車体が急停車。
そのせいで内部の乗員は皆、大きくつんのめって、そのまま体が前に投げ出されそうになったが、かろうじて耐える事が出来た。

その時、Ⅳ号戦車は路傍の樹木に引っかかった状態で停車していた。
どうやら、これに車体が衝突してしまったらしい。

ただでさえ、戦車の運転席からの視界というのは非常に狭いのに、それほどの道幅が無い場所を慌てながら全速力で逃げていたのだから、道端の木に車体をぶつかってしまうのも
無理はない。


操縦手の華がすぐに体勢を立て直そうとしたが、その瞬間に再び衝撃がみほ達を襲った。

「「きゃあああっ!!!」」

車内から悲鳴が上がる。


それは八九式が放った一発の砲弾が、Ⅳ号戦車の車体側面部を叩いた衝撃である。

幸い撃破判定装置は作動してないが、今のはかなりの揺さぶりとなっていた。



「皆さん、大丈夫ですか?」

みほはすぐに被害状況の確認を行った。

「うん。・・・・私は大丈夫。」

「こちらも異常無しです。」

「私も大丈夫だ。」

沙織と優花里と麻子はすぐに返事をした。
しかし、一人だけ返事をしていないことにすぐ気付く。


「華さん?」

異常を察知したみほは、すぐさま運転席の方を見る。
すると、そこにあったのは、運転席でぐったりとしている華の姿だった。

「華さん!? 華さんっ!!」

声をかけるが反応が無い。
みほが確認したところ、完全に意識を失ってしまっている。




先程の被弾時の衝撃で、華は失神してしまったようだ。


操縦手の失神によってⅣ号戦車は行動不能に陥ってしまった。

とりあえず気絶している華を運転席から降ろし、空いている座席に移す。


このまま立ち往生していたら、射撃の的になってしまう。
代わりの操縦手をすぐに用意しなければいけないわけだが、このメンバーの中で戦車操縦の経験者は、みほ以外にはいない。
つまり彼女以外に、この窮地を脱することが出来るものは皆無である。


「こうなったら、仕方がない。」

そう言うと、みほは意を決して運転席に座った。
少なからず躊躇もあったが、それ以上に、自分しかいないという事実が彼女を後押しした。


座席に座ると、目を瞑り、大きく息を吸い込み、そして吐き出す。
深呼吸をすることによって、気持ちを落ち着け、集中力を高めるためだ。

すると目を見開き操縦桿を握った。
この時、彼女の中で何らかのスイッチが入ったのか、その目つきが変わっていた。

その瞳には鋭い眼光が宿っている。
それは、まさに戦う者の眼であった。










一方その頃、Cチームの面々は嬉々としていた。

「やったー。当たったよ!」

砲手のあけびは、初の命中弾に大喜びしている。


「当たったけど有効弾ではなさそう。」

「ならば連続アタックよ!! 相手が動きを止めている今こそがチャンス!!」

妙子は冷静な物言いで、それとは対照的に忍は威勢良く言い放つ。

「根性だ!! 根性で撃ち抜け!!!」

そして典子はさらに輪を掛けたように、意気盛んである。


しかし、そんな彼女達を制止するかのように、無線機から音声が聞こえてきた。

「八九式の主砲の火力では心許ない。ここは我々に任せてくれ。」

その声は、Dチームの車長であるエルヴィンのものである。


「む・・・・。 分かった。任せよう。」

そう言うと、典子は操縦手の忍に指示を出した。
道を空けるように、車体を道の端に寄せ、後続のⅢ号突撃砲の射界を確保する。


「Ⅲ突の火力なら確実に仕留められる。左衛門佐、よく狙え。」

「御意!」

左衛門佐は照準器を覗き込み、砲身の向きを微調整しながら、引き金に指をかける。
そしてレティクル(照準線)の中心に目標を捉え、指に力を入れて引き金を引こうとした。


しかし、ここで予想外の事態が発生する。
木にぶつかったまま停止していたⅣ号戦車が急に動き出したのだった。


「何!?」

左衛門佐は、この急激な動きに驚き、咄嗟に引き金を引く。
しかし、その直前にⅣ号戦車が急速に後進したため、発射された砲弾は目標には当たらず。ただ虚しく地面に穴を穿つだけとなった。


急速後進によって敵弾を回避したⅣ号戦車は、一度止まると、素早く旋回して再度加速した。

「逃げるぞ。追え!!」

「承知!」

すかさずエルヴィンが操縦手のおりょうに指示を出し、追撃体勢に移る。
そして八九式も後に続いた。






こうして再び追撃戦となったのだが、さっきまで行われていた追撃戦とは明らかに様相が違う。

先程とは打って変わって、Ⅳ号戦車は俊敏な機動を見せていた。

スピードを落とさずに全力疾走。それでいて尚且つ、鋭く左右に蛇行し、敵の照準を撹乱。
これまでとは、まるで見違えるような動きだった。

そのせいでCチームもDチームも、敵に狙いを上手く定める事が出来ずにいる。
それまでは、何とか当てる事は出来そう、といった状態だったが、ここにきて全くかすることも出来なくなったのだ。



「急に動きが変わった。ドライバーを交代したのか?」

状況の急激な変化に戸惑いながら、エルヴィンは呟いた。


「どうする? 何かAチームに、いい様にあしらわれているような気がするのだが・・・。」

カエサルが若干焦りながら聞いてきた。


「大丈夫だ。我々が有利であることに変わりはない。それに・・・・」

そう言うと、エルヴィンは手元に置いてあった地図を広げた。

「この先には橋がある。さほど幅の無い、狭い橋だ。 その橋を渡るとなれば、その前に一時停車する筈。
 だから、そこを狙い撃つ。」



そして、しばらく走り続けていると、例の橋が見えてきた。

「よし。ここでいいだろう。止めてくれ。」

エルヴィンはⅢ突を停車させた。そこは橋の手前でみほ達を狙い撃ちにできる位置である。

より確実に目標に命中させるために、停止射撃を行うようだ。同じく八九式も動きを止め、射撃体勢をとった。


間もなく、みほ達は橋に差し掛かろうとしていた。

「射撃用意!」

エルヴィンの号令と共に照準を定める。Ⅳ号戦車が動きを止めたその瞬間に仕留める腹積もりだった。


しかし、その狙いは大きく外れることになる。



「えっ!!?」

エルヴィンは驚き、目を見張った。

橋の手前で一時停止すると思われていたみほ達は停車せず、減速もしなかった。
それどころか、逆に加速し、橋を渡り始める。

「何っ!!!!」

あまりにも予期せぬことだったため、照準を修正する間もありはしなかった。

そしてⅣ号戦車は減速することなく、そのまま橋をノンストップで渡りきった。





「凄いよ、コウちゃん!! あんな狭い橋をあのスピードで走破するなんて!!」

「流石です、西住殿!!」

沙織と優花里が興奮気味に言った。
2両の敵戦車に追い回される状況を打開し、追手を橋の向こう側に置き去りにして撒く事が出来た。
そのことによる安堵と、みほの技量に対する驚嘆。この二つの気持ちで二人の心は満ちた状態である。

しかし、当のみほはこの状況に全く安堵などしていない。

「まだ安心するのは早いですよ。」

何故なら、この時のみほは誰よりも早く、新たな敵の出現を察知したからだ。


彼女の目線の先には、新たに出現した敵車輌。
それはBチームの38(t)戦車である。しかも、そのすぐ後ろにはM3中戦車、リーが控えている。

橋を渡った途端にみほ達の目の前に姿を現した。
砲身をこちらに向け、今にも発砲しそうだ。

しかし、その砲口が火を噴くよりも先に、みほは次の一手を打った。

右の操縦桿を引き、走りながら方向転換。
そのまま道から外れ、林の中に突っ込んでいった。

それを見た誰もが驚いたことだろう。

大木が所狭しと大量に生い茂る、森林の中の不整地。このような所を走破するのは、それだけでも大変なことである。
そんな場所を高速で通行しようとすれば、確実に木にぶつかるし、逆にぶつからないように走行しようとしたら、相当に速度を落とし、ゆっくり走る必要がある。

しかし、みほは違った。
木々にぶつかること無く、その隙間を縫うようにして、すり抜けて行く。
かなりのスピードでスムーズに駆け抜けていった。
まるで自分の手足であるかのように、戦車を自在に操り障害物を突破して行く。

すぐに38(t)戦車も、その後を追う。遅れて橋を渡ってきた八九式中戦車もⅢ号突撃砲も林の中に突入した。
だが、しかし立ち塞がる大木に阻まれてしまい、中々上手く前へ進めず、みほ達との間で、どんどん距離を離されていく。


そして、遂にⅣ号戦車を完全に見失ってしまった。

今日はここまでです。

次回、みほが獲物を屠るイエーガーになります。

乙!
みぽりんマジハイスペック

まさに軍神……

更新です!
麻子「今覚えた」
→「さっき覚えた」
ですねあわかります。
この辺がどう話につながるのか楽しみです!

蝶野亜美は、原作じゃ殆どしてないけど、小説版じゃメールの質問をきちんと返してくれたぞ。
まあ、影が薄いのは変わりは無いがね

そして、すげえドラテクだなww
運転席って確か、防弾ガラスなどを設置する関係で見えづらかったはず
そんな席なのに、誰よりも早く見つかるとかww

西住流ぱねえです

みほは操縦を麻子に任せて
砲手をやるのですね

分かります

みほ「Ⅳ号戦車、これより目標を駆逐する!」

みほの目は外の様子は勿論、後ろにもみえてんのか?



ヒヤッホォォォウ!復活だぜぇぇぇぇ!!

というわけで、さっそくレス返しします。





>>180
マジで!? 知らんかった。
そうか。あの人もちゃんと教官の仕事やってたんだ。



>>182
タンクマイスターですね、分かります。



>>183
超能力者じゃないので、さすがにそれは無理です。
ただ狭い視界から得られた僅かな情報だけで、周囲の状況を判断しています。


それでは、今日の分を投下します。


林立する大木を、その巧みな操縦技量でひたすら躱し、駆け抜けること数分。


みほは、一旦停車させると、ハッチから身を乗り出して、周囲を見渡す。

「周辺に敵影無し。 どうやら振り切ったようですね。」


今度こそ完全に敵を撒く事が出来たようだ。

ふぅ・・と安堵の溜息をこぼす。
とりあえずは一安心と言った所だった。



まずは、失神している華の容態の確認をしなければならない。


「う~ん・・・・・もう食べられません・・・・。」

華が何やら変な寝言を言っている。
見た所、外傷も無さそうだった。

「う~ん・・・・・・・・・・・・はっ!!」

その時、華が目を覚ました。

「大丈夫ですか?」

「あっ、はい。 すいません。ご心配おかけして・・・・。」

「気にしないで。 幸い、怪我は無さそうだけど、念のため休んでいてください。」



容態の確認を終えると、ここで改めて状況を整理する。

先程の戦いで分かったことは、自分達以外のチームが裏で手を組んでいる、ということである。

(CチームとDチームは確実に協同している筈。それにB、Eチームもおそらく秘かにに通じているかもしれない。)

みほの読みは完全に的中していた。
つまり、これは実質的に1対4の戦いである。

みほは、その事を踏まえた上で、反撃の算段を立てようとしていた。
地図を眺めながら、思考を巡らす。

(開けた広い場所で戦うと戦力差がもろに出る。
 だから迎え撃つなら、この森林地帯でやるしかないんだけど・・・・視界が悪いこの森の中だと射撃の難度が格段に高くなる。)

林立する木々に視射界を阻まれるこのフィールドで、敵を射抜くのは経験者でも容易ではない。

(仮に僕が砲手をやるにしても・・それだと今度は、操縦の方が・・・・。)

操縦の方も同様に困難を伴う。
密生している大木が障害物となり、機動が阻害されてしまう。そんな中で車体をスムーズに動かすのは、熟練の操縦手でも難しい。

だが、ここにいるのはみほ以外、全員が未経験者である。
砲手にせよ、操縦手にせよ、任せるのはハッキリ言って心許無い。


(射撃と機動、この二つを完璧にこなせなければ、この1対4という戦力差は覆せない。さて、どうしたものか・・・・・。)


戦況を打開するために、なんとか作戦を立てようと、みほが思案している、その時だった。






パタン........





本を閉じる音がした。

音のした方を見ると、そこには麻子が、閉じた本を手にして佇んでいた。
彼女が手に持っていたのは、この戦車の操縦マニュアル。

そして一息つくと、麻子は言った。

「覚えた。」

「え?」


みほは目を丸くした。

そして麻子は、その一言だけを言うと、そのまま運転席に座る。

「あ、あの・・・麻子さん?」

「操縦手が必要だろ? 私がやってやる。
 操縦マニュアルなら今、読破した。操作方法は完全に頭の中に叩き込んである。」

「いや・・・でも、説明書読んだだけで、そんな、いきなりは・・・」

「まあ、見ててくれ。」

そう言うと、麻子はシフトレバーを操作して、ギアを入れた。

「いくぞ。」


すると静止状態だったⅣ号戦車が突如動き出した。
それはとても滑らかな走り出しである。




「!!!」

驚くみほ。

そして、麻子はそのままⅣ号戦車を走らせる。

まず、その場で右や左に旋回してみせた。
次に、コーナリングしながら木々を避けつつ、スムーズに前進。
木に車体をぶつけることなく、軽やかに走った。

すると、今度はUターンをした。
それは非常に滑らかなターンである。

そして、Uターンをした後、そのまま走り続けて、元の場所に戻って停車した。

「どうかな? 小次郎ほどではないが、十分に操縦は出来ていると思うが?」


この一連の動作をいきなり事も無げにやってのけた麻子に対して、みほは驚きを隠せなかった。

「麻子さん・・・もしかして以前に戦車道をやったことが、あるのですか?」

麻子が見せた操縦は、とても初心者のそれとは思えない程の物だった。

「いや。戦車の運転は今回が初めてだが・・・・・。 ただ説明書を一通り読んで、なんとなく操縦しただけだ。」

麻子は、さも当然のことのように言ってのけるのだが、説明書を読んだだけで、いきなり戦車の操縦をマスターするなどという事は、普通は無理である。
それを、いとも簡単にやってのける麻子の、その才能には、みほも舌を巻いた。


「麻子、やるじゃん! さすがは学年主席!!」

沙織も思わず、感嘆の声を上げた。



「それに・・・小次郎には借りがあるしな。 この程度のことで良ければ力になるよ。
 操縦は私に任せてくれ。」


それはとても頼もしい言葉だった。
みほは、その申し出を受けることにする。

「分かりました。お願いします。」


みほ程ではないが、麻子も十分な操縦技量があることが分かり、それによって反撃の算段も立てやすくなった。
彼女に操縦を任せれば、みほは砲撃と指揮の方に専念できる。

すると、みほはさっそく動いた。

まず、砲手席に座っていた優花里に声をかけた。

「優花里さん、席を替わって下さい。」

「了解です。」





その時、優花里はみほの目つきが、普段のものと変わっていることに気づいた。


(西住殿・・・・・!)

優花里が見た、みほの瞳・・・・それは強い眼光を宿す、力強さを感じさせる瞳であった。
まるで狩人を彷彿とさせる、そんな眼差しである。

(コウちゃん・・・・!)

(小次郎さん・・・・・・!)

沙織と華も、みほの変化に気づく。
普段の穏やかで温和な雰囲気は一変しており、まるで百戦錬磨の猛者を思わせる、そんなオーラを纏っていた。

(いつものコウちゃんとは何かが違う!)

(これが、戦う時の西住殿の姿!)

(小次郎さん・・・なんて力強い眼差し。)

その変化に皆は正直戸惑ったが、それ以上に頼もしいと感じさせられた。

1対4という圧倒的に不利な状況に何ら変わりはない。
しかし何故か負ける気が全くしなくなった。





「優花里さん。装填手の役をお願いできます?」

「はい!お任せください!」


優花里の憧れの人であるみほが、今度は射撃の腕前を見せてくれるということで、優花里はワクワクしていた。

「AP(徹甲弾)装填。」

「了解!」

彼女は嬉々として指示に従った。



 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


その頃のB、C、D、Eチームは、みほ達を探して、森の中を進行していた。
木々を避けながらの進撃だが、上手く避けれずに車体を木にぶつけたり、先行し過ぎた車両が遅れている車両を待ったりと、かなりたどたどしく、遅々とした進撃である。


「ええい!! 敵はまだ見つからないのか!!」

憤りの声を上げたのは河嶋桃であった。

みほ達を見失い、森の中で索敵を開始してから大分時間が立っているが、未だAチームは見つかってはいない。
だから彼女はかなり苛立ってした。


「落ち着け、かーしま。 イライラしたってしょうがないじゃん。」

「いや、しかし・・・・」

「まあ、気長に行こうよ。」

苛立ちを隠せないでいた桃を、杏が宥めていた、その時だった。




「いたぞ!!」


突如、無線機越しに叫び声が聞こえてきた。
叫んだのは、Cチームの典子である。

典子は無線を通じて全車に告げた。


「こちらCチーム。Ⅳ号戦車を発見! ただちに攻撃します。」

それを聞いた桃は、待ってましたと言わんばかりに、照準器を覗き込んだ。

「やっと見つかったか! 待ちかねたぞ!!」


みほ達のⅣ号戦車の姿を見つけた彼女達はすぐさま攻撃態勢を取る。
同時にみほ達も敵影を捕捉し、即座に後退し始めた。


再び砲声が鳴り響く。





「撃て!! アタックだ!!」

Cチームの八九式はみほ達を追跡しながら、典子の怒号と共に、Ⅳ号戦車に狙いを定めて撃とうとする。
しかし立ち塞がる木々に視射界を遮られ、思うように照準が出来ずにいた。

「キャプテン! 木が邪魔で狙いが定まりません。」

「根性だ!! 根性で狙い撃て!!」

砲手のあけびが叫ぶが、典子がそれ以上の大声で檄を飛ばす。
しかし気合を入れた所で、この視界の悪さは如何ともし難い。

それは他のチームも同様である。



「追え!! 絶対逃がすな!!!」

河嶋桃の怒号と共に、みほ達を全力で追跡するB、C、D、Eチーム。
しかし障害物のせいで思うように進めなかった。


「ああっ!! またぶつけちゃった!!」

M3中戦車リーの操縦手、桂利奈はまた車体を木にぶつけてしまう。

「桂利奈ちゃん、急いで! もたついてたら、先輩達に置いてかれちゃう!!」

車長の梓が慌てて言った。

彼女の言うように、実際Eチームは他の先行する車両から遅れをとり、大分距離を引き離されていた。


引き離されていたのは彼女達だけではないが・・・。

各チーム共に、障害物に機動を阻害されているせいで、各車輌間の距離が離れてしまっている。
木々を避けながら高速で後退するⅣ号戦車を、全力で追いかけるのに夢中になるあまり、足並みをそろえることを忘れてしまっている彼女達はバラバラに進撃していた。
これでは各個撃破の的になりかねない。

もっとも・・それこそが、みほの狙いだった。










「麻子さん、そのまま、まっすぐ後ろへ・・・。」

「分かった。」

みほは、砲塔側面のハッチから身を乗り出し、後方や周囲の状況を確認しながら、操縦手の麻子に的確な指示を出していく。
運転席からでは後ろが見えないため、代わりにみほが後方の様子を見ながら、操縦手に指示を出さなければならない。
そして麻子も、みほの指示を瞬時に解して、よくついてきている。


「ここで止まって下さい。」

接敵場所から大分後退した所で、停車させた。すると、みほはすぐさま射撃態勢をとる。

(まずは、最も先行している八九式から叩く。)

照準器のスコープを覗き込み、大きく息を吸って、呼吸を整えた。
極限まで神経を研ぎ澄まされていく。そのまま引き金の指をかけ、敵を待ち構えた。

これだけ遮蔽物が林立していると、射線が通る範囲は非常に限られている。
だから敵が木の間から姿を現し、その射界に入り込むのは、ほんの一瞬である。
その一瞬を逃さないように全神経を集中させた。


(来た。)

その時、八九式中戦車の車体の端の部分が、遮蔽物の間の視界に入りこんだのを、みほの目は即座に捉えた。
そして、そのまま車体の大部分が、照準器の中に映りこむ。

その間、僅か約1秒。その一瞬の間に、みほは狙いを定めた。

そして、トリガーを引く。
空気が激しく震え、轟音が鳴り響いた。
砲口から発砲炎と共に弾丸が撃ち出され、同時に砲尾から薬莢が吐き出される。
その砲弾は木々の間隙を縫うかのように、間をすり抜けながら、真っ直ぐ飛翔。
そして八九式の車体正面を撃ち抜いた。

着弾した直後に、撃破判定装置が作動し、白旗が上がる。

「命中・・・八九式、撃破。」

みほの放った一撃は見事に敵を撃破した。


みほが淡々と敵撃破の宣言をした、この時、沙織達は呆然としていた。
発砲時に発生した激しい空気振動が彼女達の体を揺すり、肌をビリビリと痺れさせた。
それは彼女達にとって、今まで感じたことのなかった衝撃であり、初めての体験である。

「す、凄い・・・!」

「ジンジンします!!」

沙織と優花里は目を見開いたまま、固まっている。


「なんだか・・・・・気持ちいい・・・。」

華は肌が痺れるような感覚に、えも言われぬ快感を感じていた。


「・・・・・・・・!」

麻子は無言だったが、彼女もまた何とも言い表せないような感覚を味わっていた。



「優花里さん・・次弾、装填。」

「は、はいっ!」

みほの一言で、優花里は我に返った。
すぐさま弾薬ラックに手を伸ばす。
一発の徹甲弾を取り出し、砲尾に乗せて、拳で砲弾を薬室の中に押し込む。
閉鎖機を起こして準備完了。

「装填完了。」

みほは照準器を覗き込み、第二の攻撃目標を探す。
すると今度は、38(t)戦車を発見した。








「見つけた!」

ほぼ同時に、38(t)戦車の砲手、河嶋桃が言った。

探していた敵を、ようやく見つけ出し、今、射程内に捉えている。
そのため、河嶋桃は笑みを浮かべていた。

「フフフフ・・・・ここでお前らを仕留め・・」

しかし、彼女は最後まで言えなかった。
何故なら、彼女が言い切るよりも前に、Ⅳ号戦車が撃った砲弾が38(t)戦車叩きつけられ、衝撃が襲ったからだ。
車体の上に白旗が上がった。

「な、何っ!!?」

桃は驚愕した。

互いに相手の姿を発見したのは同時だった。にもかかわらず、相手に先手を取られたのだ。
河嶋桃が狙いを定めてトリガーを引く暇すらなく、圧倒的な早撃ちで撃破された。







「命中・・・38(t)、撃破。」

続けざまに2両もの敵を仕留めたみほだったが、そのことに一喜一憂することなかった。
何の感慨も無く、ただ淡白に、敵撃破の宣言をする。
そのことからも、彼女が相当に場慣れしていることは間違いなかった。


みほはすぐに次の敵を探した。


「前方より敵、M3中戦車。」

次の攻撃目標を発見したみほ。
すると、みほは操縦手の麻子に指示を出す。

「麻子さん、 右旋回して、そのまま敵の左側面に回り込んでください。」










「どうしよう・・・先輩達やられちゃってる。」

M3の車長、澤梓は呟いた。

B、Cチームから大きく遅れていた彼女達Eチーム。
立ち塞がる木々に苦戦しながらも、やっと追いつけたと思ったら、既に先行していた2両は撃破された後だった。
しかも視界不良のせいで、敵がどこにいるのかが分からない。

「どこに、いるんだろう?」

梓は、恐る恐る、キューポラから周囲を見渡した。



「あっ、いた!!!」

その時、梓は、森の中を疾走するⅣ号戦車の姿を発見した。
ちょうど迂回機動を行っている最中である。



梓は慌てて指示を出す。

砲手の山郷あゆみに指示を出すが、その時のⅣ号戦車の位置は、M3中戦車の主砲の死角になる位置だった。
これでは撃てない。

勿論、これはみほの計算通りのことであった。
M3中戦車は、その構造上の特性により、主砲の射角が限られている。そのため左側面に大きな死角があった。
みほが迂回機動をさせたのは、その死角である左側面を突くためであった。

「あゆみちゃん、早く撃っちゃって!!」

「この大砲、これ以上左には向かないよ!!」

「桂利奈ちゃん、車体の旋回急いで!!」

「あいぃぃー!!」

相手は砲口を自分達の方に向けているのに、主砲の死角に入り込まれたことによって反撃ができず、梓は慌てて操縦手の桂利奈に旋回させようとするも、もたついてしまっている。
被弾の衝撃が、彼女達を襲ったのはその直後のことだった。


結局、Eチームは応戦する間も無く、側面を撃ち抜かれ撃破された。





その様子を、エルヴィンは遠くから双眼鏡で眺めていた。

「先行していた3両の戦車が全滅した・・・・・!」

全く予想だにしていなかった展開に、彼女も驚愕している。


そして、このままではいけない、何か策は無いかと、思考を巡らせていた。

「そうだ! あの背の高い茂みを利用して回り込もう。」

エルヴィンは閃いた。
彼女が目にしたのは、前方の、草木が生い茂っている場所である。

エルヴィンがが考えた策とは、Ⅲ突の車高の低さを生かして、背の高い茂みに身を隠しながら迂回接近することであった。

「それだ!! それなら敵の側面を突くことが出来るぜよ。」

「うむ。名案だ。」

「そうと決まれば、善は急げだ。」

おりょうやカエサル、左衛門佐も賛同する。

さっそく彼女達は動き出した。












「M3、撃破。 残るはあと1両。」

3両目の敵戦車を仕留め、最後の敵を探していた、その時だった。

「ん?」

照準器のスコープを見ていたみほは、ある物に気づいた。


(あの茂み・・・草が不自然に揺れている。)

そして、みほはすぐに気づいた。

(あの茂みの向こう側に、敵戦車が隠れている。)

この瞬間に、みほは相手の策を看破した。
敵が草木に身を隠しながら回り込もうとしていることを即座に見抜く。

みほはその足で、砲塔旋回ペダルを踏み、素早く砲塔を回す。

遮蔽物に隠れたⅢ突の、その姿を直接目で見ることは出来ないが、草木の揺れ方から、見えない相手の位置を推定した。


「ここだ!」

迷わずにトリガーを引いた。姿の見えない敵に向けられた砲口が火を噴く。




撃ち出された砲弾は、草木の壁を突き破り、その向こう側にいたⅢ号突撃砲の車体側面を、狂いなく射抜いた。




「何っ!!!?」

エルヴィンは突然の出来事に、驚愕する。

「そんな・・・我々の姿は見えなかった筈!!」


Ⅲ突の車体の上に白旗が上がった。








みほは、その白旗を視認して、言った。

「命中。Ⅲ号突撃砲、撃破。 ・・・・・敵、全車両の撃滅を確認。作戦終了。」

敵の全滅を確認した後に、みほは緊張を解くように一息つくと、座席の背もたれに背中を預けた。

「ふぅ・・・・。久しぶりだったから上手くいくかどうか分からなかったけど、何とかなった。」

先程までの鋭い眼光は消え、普段の温厚な眼差しに戻っていた。



Bチーム 38(t)戦車、Cチーム 八九式中戦車、Dチーム Ⅲ号突撃砲、Eチーム M3中戦車リー、いずれも戦闘不能。
よって、みほ達Aチームの完勝である。


今回はここまでです。
みほが獲物を屠る∠( ゚д゚)/イエェェガァァァ!、になった瞬間でした。

待ってた、乙

乙!
みぽりんマジイェーガー!

そして安定のももちゃん……

ぜ、全滅?先行した3機の戦車が全滅?3分もたたずにか?
た、たった戦車1機に3機も?ば、化け物か……

“1対4”って出る度に、“何が1対4なんでしょうね?ゲヘヘ”とゲスな考えが過ぎってしまった
いや、頭では状況を理解していたんですけどね

待ってましたー!!

いやーみぽりんは凄いけど、一々、停車しての射撃だから、華さんほどではないということが分かるな(華は行間射撃ができる)

ただ、状況を察して、自分が有利なポジションを突く辺りはさすがだと思います

そして、沙織はほとんど命令してないww
みほが車長兼砲手になっとるww

>>201
中でも外でも1対4ですな

桃ちゃんが先に撃っておけば、ノーカン癖が分かって
訓練やアドバイスできたのになー

惜しいことをしたもんだ

>>201 >>203
つまり、どういうことだってばよ?

すいません。ネタがよく分かりません。


>>205
戦車戦でも4対1で
戦車内でも1(みほ)対4(沙織、麻子、華、秋山殿)って意味じゃ?


>>199
「桃ちゃんって言うな!!」


>>200
「ええい!! 西住流は化け物か!?」


>>202
長い間、実戦から離れていたため、そのブランクによるものです。
もっとも、みほは元々は車長だったから、自分自身で砲手をやるのは本当に久しぶりなんです。
まあ、華は最終的にはゴルゴみたいになっちゃうから、砲手としての才能と言う一点に関しては、華の方が上かもしれませんが・・・。

沙織に関しては、突然の修羅場であわあわしてる間に、みほが全部片づけて、気づいたら終わってたみたいな感じです。


>>204
まあ、桃ちゃんが射撃下手なのは、すぐにでも分かることなんで・・・。


>>206
ああ、なるほど。そういうことですか。把握しました。
たしかに、Aチーム内でも、1対4でした。wwwwww


これより今日の分を投下します。



「よいしょ。」

戦闘終了を確認したみほは、ハッチを開けて、車外に出た。
そこで改めて、周囲を見渡し、白旗の上がった敵車両をその目で視認する。





「私達・・・・勝ったの?」

「・・・・・その・・ようですね。」

沙織と華は茫然としながら言った。

終わってみれば、あっという間の出来事だった。
先程までは、あれほど追い詰められた状況だったのに、気づいたら逆転しての完全勝利である。
だから、いまいち実感が乏しかった。
しかし、それは紛れもない事実である。



「西住殿おぉぉーー!!」

優花里が感極まって、みほに抱きついた。

「凄いですよ、西住殿!! 凄すぎます!!」

憧れの西住の、その手腕を傍で見る事が出来た上に、勝利の瞬間を間近で見る事が出来た。
そのため、優花里はこれ以上ない程に感激している。

「優花里さん、苦しい。」

歓喜のあまり、力一杯みほを抱きしめ過ぎたため、みほが少しだけ苦しげに言った。

「はっ!!! す、すいません!!! 殿方相手にとんだ粗相を!!」

みほの声で、優花里は我に返り、頭を下げた。



「本当にすいませんでした。」

「いえ、いいんです。 そんなに気にしないでください。」

そこで、みほは改めて周囲を見渡した。

撃破され、白旗が上がった車輌が、自分たちの勝利を如実に物語っている。

「いきなり4両全てが敵に回ったときは、どうなることかと思いましたが、何とかなりましたね。」

「はい。これも全ては西住殿のおかげですよ。」

「いや・・・それはどうでしょう。 僕としては・・・今回、勝てたのは、麻子さんのおかげだと思います。」

「え、私か!?」

突然、自分のことを言われて、麻子は驚いた。

「そうだろうか? 勝てたのは、小次郎の腕のおかげだろ。 私なんて別にそんな大したことはしてないが。」

「そんなことは無いですよ。
 麻子さんは僕の指示を完璧に理解し、適切な操縦をしてくれました。あの操縦技量があったからこそ、常に最適な射撃ポジションで取ることが出来たんです。
 あれがなかったら、あの不利な状況を切り抜けることは出来なかった筈。
 勝つことが出来たのは、ひとえに麻子さんのおかげですよ。」


すると、みほはニッコリと笑顔を浮かべながら言った。

「麻子さん・・・ありがとう。」

その微笑みを目の当たりにした瞬間、麻子はドキッとして、顔を赤くした。
心拍が跳ね上がったのが、自分自身でもわかる。

「べ、別に・・・礼には及ばないよ。///////」

麻子は消え入りそうな小さな声で言った。
彼女の頬は赤く染まったままである。


その時、頬を朱色に染めていたのは、麻子だけではなかった。
沙織や華や優花里・・・その場にいた全員が、みほの優美な笑顔を目の当たりにし、思わず顔を赤くしている。
その、優雅な微笑みに、彼女達は思わず見惚れてしまっていた。







その頃、Dチームのエルヴィン達は茫然と立ち尽くしていた。
1対4と、圧倒的に有利な状態であったのにもかかわらず、終わってみればワンサイドゲームで、自分達の完敗である。


今回の演習において、Aチームのみほには、皆ずっと驚かされっぱなしであった。

障害物だらけフィールドを物ともせずに、自在に駆け抜けた、その操縦技量。
視界が悪い状況下での、針の穴を通すが如き、精密な射撃。
敵に対して、常に適切なポジションを取り続けた、その判断力。
そのどれを取っても見事としか言いようがない。

その鮮やかな手並みには、エルヴィン達はただひたすら驚かされ、そして魅了された。


おりょうは呟いた。

「凄い・・・・名将だ! こんな所に名将おったぜよ!!」


カエサルも驚嘆の声を上げる。

「まるで、ハンニバルの再来だ!」

続けて、左衛門佐も言った。

「いや・・・あれはきっと、名将、上杉謙信の生まれ変わりに違いない!」

彼女達は歴女らしく、思い思いに歴史上の人物を連想し、みほのことをその英雄になぞらえて称賛した。

それはエルヴィンも同様である。

「いや・・・あれはかつて、ドイツ軍で戦車兵のエースとして名を馳せた、ミハエル・ヴィットマンの再来だよ。」

「「「それだっ!!!」」」

エルヴィンの口から、一番しっくりくる人物の名が出てきたことによって、三人が一斉に声を上げた。



そして、みほの腕前に魅せられていたのは、エルヴィン達だけではなかった。
Cチームのバレー部の面々もまた、みほの力を目の当たりにし、その技量に魅了されている。

キャプテンの典子も舌を巻いた。

「なんてテクニックだ。」



妙子や忍、あけびも感嘆の声を漏らす。

「私達、4両もいたのに、あっという間に・・・。」

「正確無比なアタック・・・そして、軽快なフットワーク・・・・。」

「凄い・・・・あんなプレイヤーに、私もなってみたい。」

惚れ惚れしているような口ぶりである。




そしてEチームの一年生達も同様に、西住の勇姿に心を奪われていた。


「西住先輩・・・・///////」

車長の梓もどこか、ウットリしたような表情で呟いている。


「凄い!」

「西住先輩マジハンパない!!」

「やばいよ! 西住先輩、超カッコいい!!」

「先輩・・・凄すぎる・・・・!」

山郷あゆみや阪口桂利奈、宇津木優季や大野あやが、かなり興奮気味に言っていた。


「・・・・・・・。」

丸山紗希も、言葉を発することこそなかったが、それでも無言でみほの姿を眺める、その瞳には憧憬の色がはっきりと映っている。



この場にいたほぼ全員が、みほに魅せられ、そして惹かれていた。
それだけ、みほの活躍が、彼女達の脳裏に、鮮烈な印象として刻み付けられたということである。
たった一回の戦いだけで、みほは見事なまでに皆の心を掴むことが出来たのだった。







そんな中、秘かにほくそ笑む者達がいた。

「やはり西住小次郎に戦車道を履修させたのは正解でしたね、会長。」

桃が不敵に笑いながら言った。

杏も同様である。


「ひとまずは作戦成功ってとこかな。 今回、予想以上の収穫があったし・・・。」

杏の思惑通り、今回の演習で、西住みほの実力の程を測る事が出来た。
そして、それは彼女達の予想を遥に上回る程の物である。

「これなら本当に出来るかもしれないね。・・・・・・全国大会制覇。」





杏達が秘かに、このような壮大な事を考えていたことなど、みほ達は知る由も無かった。



今回はここまでです。
次からはもう少し更新を早くできたらなぁ・・・・・。

乙です
まぁゆっくりでも進めてけばいぃんじゃないですかね?
そしてらぶらぶ作戦のエリみほ可愛い

乙ですー
気長に待ってますぜ

この一年生チームなら、練習試合は逃げることはなさそうだな。
小次郎(みほ)先輩に嫌われたくないから

戦車を落としたと思ったらもっとたくさん落としていたのか……
これが西済流……

西住流を学べば俺もモテモテに…

ここから始まる、みほのジゴロ伝説ww


>>218
ただし、イケメンに限る

おりょう「ムリダナ(・x・)」

エリカ「こ・・・小次郎、わ・・私と一緒に、せ、戦車道の試合をみ、み、見に行かない?(真っ赤)」

みほ「うん、いいよ」



な感じとか

みほ達が演習でやっていた森の近くの山の上で

まほ(ジーッ)●REC


今日の投下は深夜になります。
その前にまずはレス返しから。


>>214
エリみほ可愛いよエリみほ。


>>216
そうだね。督戦隊を用意する必要も、戦車のハッチを溶接する必要もないね。(白目)


>>217
「にしずみ」じゃなくて「にしすみ」って打って変換するといいですよ。


>>218 >>220
それは、まぁ・・・うん・・・。


>>219
そして伝説へ・・・


>>221
エリカ可愛いよエリカ。


>>222
親馬鹿ならぬ、姉馬鹿wwww


これから今日の分を投下します。



「今回はここまでとする。 それでは解散。」

「「「「お疲れ様でした。」」」」


こうして今日の戦車道授業も無事終了し、挨拶と共に解散となった。
生徒達はそれぞれ帰路につく。


「それじゃあ、私たちも帰ろうか。」

沙織達がみほに声をかけ、一緒に下校しようとする。


しかし・・・


「ごめん。 これから自動車部の人達と一緒に、車両メンテナンスしないといけないから、今日は居残りです。」


その時、自動車部のナカジマが、声をかけてきた。

「小次郎くーん。 車両の回収、完了したよーー。」

「あ、はーい。 今、行きます。」


ナカジマの声がした方へ振り向きながら返事をすると、みほは沙織達の方へ向き直って言った。

「今日は遅くなりそうだから、皆は先に帰っててください。」

「そう・・・・。」

沙織は残念そうに言った。


すると、みほはナカジマ達のいる格納庫の方へと走って行った。




みほが行くと、そこにはナカジマ達がもう既に準備を終え、いつでも作業に着手できる状態で待っていた。

「はい、これ。」

ツチヤがみほに、作業着を手渡した。

「ありがとう。」

そう言うと、みほは作業着を手にしたまま、更衣室へと向かった。



そして、しばらくすると、みほが戻ってきた。

ナカジマ達と同じ、オレンジ色のツナギを着ている。
そのみほの姿も中々、様になっていた。

「それでは皆さん、よろしくお願い致します。」

「いえいえ・・・こちらこそ、今日もご指導お願いします。」

ナカジマも礼儀正しく言った。









こうして、みほとナカジマ達は、一緒に車両修理を始めた。


「ホシノ・・そこのやつ、取って。」

「はいよ。」

ホシノはすぐそこにあった工具をツチヤに手渡した。


「スズキ・・Ⅲ突に使うやつってこれだったよね?」

「そう、それそれ。」

ナカジマとスズキが図面と工具を手に取りながら、作業手順を確認している。





その後、作業は滞りなく進んでいった。

みほ自身も工具を手に持って、作業をやりながらナカジマ達の動きを横目で観察していたが、彼女達は非常に手際良く、作業を進めている。
ナカジマもスズキもホシノもツチヤも、皆、以前みほに教わった事をしっかり物にしていた。
前回は、慣れない戦車相手に四苦八苦していたのだが、今は見違えるほどスムーズに作業をこなしている。

「小次郎君。転輪の交換なんだけど、こんな感じでどうかな?」

「いや・・このM3の転輪だったら、こっちからの方が・・。」

「なるほど・・・了解。」

まだ、経験者のみほが指導しないといけない所は多々あるが、元々彼女達は戦車に関しては門外漢であったから、それは致し方がないことである。
それでも、前回と比べれば、格段に技量が向上している。

みほから教わった事を、どんどん知識として吸収していく、その呑み込みの速さには、みほも驚いている。

(さすがは自動車部の皆さん・・・。)


ナカジマ達は自動車部の中でも随一の腕利きメカニックと言われているが、それは決して伊達じゃないという事が分かる。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

作業も順調に進んでいき、日が傾いてきた頃には、全車の修理が完了した。
格納庫内には修理済みの戦車が整然と並んでいる。
自動車部の人達の手際の良さと、みほの助力もあって、当初の予想よりも早く終わった。



「さてと・・・・。」

最後に、後片付けと施設の戸締りをするために、みほが行こうとした、その時だった。

「お疲れ様です、西住殿。」

「あれ? 優花里さん?」

そこにいたのは優花里だった。
そして、その場にいたのは彼女だけでない。

「コウちゃん、お疲れ。」

「仕事は終わったようですね、小次郎さん。」

「待ちくたびれたぞ。」

沙織と華、麻子もそこにいた。



みほは嬉しそうに言った。

「皆さん、待っていてくれたんですか。」

「まあね。ちょっと買い出しに行ってたの。夕食の食材を・・・。」

そう言うと、沙織は、その手にあった買い物袋を見せた。

「これから、コウちゃんの家でご飯会やらない? コウちゃん、夕食はまだなんでしょ。」


すると、その話を聞いていたナカジマがやって来た。

「なんか楽しそうじゃん。 小次郎君・・行ってくれば。 ここの後片付けは私達がやっとくからさ。」

「え・・・いんですか?」

「うん。」

「わかりました。では、あとはお願いします。」


そう言うと、みほは手早く帰り支度を整えた。



帰り支度を済ませたみほは沙織たちの所へ向かった。

「お待たせしました。」



沙織は嬉しそうにして言った。

「それじゃ行こうか。」

そう言った沙織に、華や優花里、麻子も後に続く。


すると、みほは、沙織が手に持っていた買い物袋に手を伸ばした。

「その荷物、僕が持ちますよ。」

「え?」

そのまま、みほは沙織が持っていた荷物を手に取った。

「まってる間、ずっと持ってたんですよね。重かったでしょう。」

「え!? ちょっと、コウちゃん!? そんな・・・いいよ。コウちゃんこそ、疲れてるでしょう?」

みほは沙織のことを気遣って、自ら率先して荷物を持った。

沙織は慌てて止めようとする。
夕食5人前分の食材の入った買い物袋は、それなりの重さになっていた。
それを仕事を終えたばかりで疲れているであろう、みほに持たせるというのは、気が引ける。

しかし沙織のそんな心配を他所に、みほニコッと笑いながら、一言だけ言った。

「気にしないで。」


そう言うと、そのまま荷物を担いで歩き出した。

「さあ、行きましょう、皆さん。」




(やだもー! コウちゃんたら超男前じゃん。/////)

(小次郎さん・・・なんて紳士的なんでしょう。/////)

(西住殿・・・・男前で本当に格好良いです。/////)

(こいつ、やるな。//////)

みほの、その紳士的な振る舞いに、沙織達4人は改めて、みほに対して好意を寄せるのであった。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


こうして、みほの自宅へ向かった一同は今、とあるマンションの前に来ていた。

「ここが西住殿の・・・。」

「中々良い所に建っているな。」

優花里と麻子は建物を見上げながら言った。
二人とも、みほがどんな所に住んでいるのか、興味津々だったため、このようにじっくりと眺めていたのである。




「皆さん、こっちです。」

みほの案内により5人はエレベーターで上の階へ上って行く。


そして、ある一室の前まで歩いて行くと、そこで止まった。
すると、みほは鞄の中から玄関の鍵を取り出そうとする。

(ここがコウちゃんの住んでいる部屋か。 男の人の部屋の中に入るのって初めてだから、なんだかドキドキする。)

(殿方の住んでいる部屋がどのような所なのか、正直凄く気になります。)


沙織と華も、そして優花里と麻子も逸る気持ちでいっぱいだった。



ガチャ


今、みほが扉の鍵を開錠した。

「それでは、どうぞ。」

そして、玄関の扉が開かれ、4人は中に招かれた。


今日はここまでです。

前のみほは全部捨てたとして、何も無い殺風景な部屋だったなんてありそうだな

優花里達には黒森峰から逃げた話をするとか

アポなしで入って大丈夫だなんて女を連れ込む気満々だな!


所で今の西住殿の下着って男物なのかな?
女性物だったら「西住殿に女装趣味が!?」ってなりそう

みほをオレンジ服を着ててみた・・・・・やべえ、凄く似合う。違和感が全くない

久々にこのスレを見つけられた幸せ

ここの西住殿の私服が全く想像出来ない
やっぱり男物のジャケットとか着てるのだろうか?


>>232
ソンナコトナイヨー・・・・いや、マジで。
部屋を見られて困るほど、散らかってはいないという事で・・・。


>>233
その辺りの事は想像にお任せします。


>>234
確かにwww


>>235
もちろんメンズファッションです。


それではこれより投下します。



ここはみほが住んでいるマンションの一室である。


「どうぞ。」

「「「「お邪魔します。」」」」

みほに招かれ4人は部屋の中に入って行った。
一体どのような部屋なのだろうか、ワクワクしながら中に入った4人。




すると、彼女達は目を見張った。


彼女達の目に飛び込んできた、部屋の中の景色は、彼女達にとって予想外なものだったからだ。


((((あれ? 何か思ってたのと違う。))))


彼女達が見たもの・・・それはとても殺風景な部屋であった。

非常に整然としているが、見た所、生活に必要最低限な物しか置いてないように見える。
あまりにも飾り気が無さすぎる・・それが部屋を見た彼女達の第一印象であった。
想像していたものとは大分違っている。

そのため、彼女達はしばらくの間、面食らった状態でいた。







しかし、このまま人の部屋をジロジロ見ていても失礼なので、その事は一旦置いておくことにした。


「そうだ。夕飯の仕度を始めよう。」

沙織が言った。
いつまでも呆けていても仕方がないということで、とりあえず夕食の準備を始めることにした。

「コウちゃん、台所借りるね。」

そう言うと、沙織は買い物袋から手早く材料を取り出した。

「華はジャガイモの皮を剥いて。その間、私はこっちの準備してるから。」

「あ、はい。」

「ゆかりんはご飯の用意をお願い。」

「了解であります。」

てきぱきと手際良く準備を進めていく沙織。


「お腹空いた。」

そして寝転がる麻子。

「ちょっと、麻子! 手伝ってよ!」

沙織がすかさずツッコミを入れる。








こうして沙織が中心となって料理を作っていき、そして今、夕食が完成した。

ご飯や味噌汁、刺身や肉じゃがなどの料理がテーブルの上に並んでいる。
どれも美味しそうだが、その中でも一際美味しそうなのは、メインの肉じゃがであった。

5人は手を合わせる。

「「「「「いただきます。」」」」」

そう言うと、さっそく皆で料理に箸をつけた。


「う~ん、美味しい~。 これ凄く美味しいですよ。」

優花里は、沙織が作った肉じゃがを、美味しそうに食べる。

「本当だ。美味いな。」

「ええ。とても美味しいです。」

麻子や華も同様に、舌鼓を打った。

「えへへ・・・そうでしょ。」

沙織の作った肉じゃがはとても好評だった。
彼女にとって自信作だったらしく、そのためとても嬉しそうにしている。

「フフフフ・・・・こう見えても、花嫁修業は万全なのよ。 いつ、お嫁に貰われてもいいように、家事全般何でもござれよ。
 特に料理には抜かりないわ。 この肉じゃがなんて私の中では一番の自信作なんだから。
 皆も覚えといて損はないよ。男を落とすには、肉じゃがが一番だって。」

「嫁に貰ってくれそうな相手なんて、いるのか?」

「ちょっと、麻子! それ、どういう意味よ!!」

得意気になって語っていた沙織に、麻子は冷ややかなツッコミをいれる。


「というか世の男子って本当に皆、肉じゃがが好きなんですかね?」

「都市伝説の類なのでは?」

優花里と華も、沙織の言ったことに懐疑的だった。

「そんな事ないよ。 この情報は確かだよ。 男は肉じゃがを作ってくれる女が好きだって。間違いないよ。」

「どうかな? この手の恋愛関連の事に関しては、沙織のいう情報は全くと言っていい程、当てにならない。」

「なにをー!」

麻子の言うことに、ムキになる沙織。

そこで、沙織は言った。

「だったらコウちゃんに聞いてみようよ。」

そう言い、沙織はみほの方を見た。優花里たちも同じく、みほの方を向く。


その時だった。

「「「「・・・・・!!!!」」」」

沙織達が見たもの・・・・・それは・・・


「・・・・。」モッチモッチ

じゃがいもを美味しそうに口に頬張る、みほの姿だった。


((((・・・・・・・・。))))

4人は思わず、その姿をまじまじと見つめた。


すると、みほはもう一つのじゃがいもを箸で掴み、口の中に入れる。

「・・・・。」モッチモッチ

((((・・・・・・・・。))))


「・・・・。」モッチモッチ




その時、彼女達は思った。

(((( か、可愛い //////// ))))


口の中で芋を咀嚼しながら、美味しそうに頬を膨らませるその姿は、まるで小動物のような愛くるしさを感じさせる。

(西住殿・・・なんと愛くるしいお姿・・・//////// )

(やだもー、何この可愛い生き物 //////// )

(小次郎さん・・・・なんだかとても、抱きしめてあげたくなるような愛らしさ・・・//////// )

(小次郎・・・格好良いだけでなく、可愛さも兼ね備えていようとは・・・//////// )


しばらくの間、見惚れていた彼女達だったが、最初に我に返った沙織が口を開いた。

「コウちゃん・・肉じゃが、どう?」

「はい。とっても美味しいです。」

「そう・・・それは良かった。 コウちゃんは肉じゃが、好きだった?」

沙織は先ほど聞こうとしていた事を改めてみほに聞いてみた。


「はい。肉じゃがは好きですよ。 特にこの肉じゃがは、今まで食べてきた中でも一番、美味しいです。」

「そ、そう・・・ありがとう//////」

面と向かって褒められ、沙織は思わず赤面した。


すると、みほは味噌汁を一口飲んだ。

「この味噌汁も美味しい。 沙織さんって、料理得意なんですね。」

「まあね。 いつでもお嫁に行けるように、準備は万全なのよ。」

「なるほど、それで・・・。 確かに、沙織さんって、優しいし、親しみやすいし・・・その上料理も得意なんて素敵です。」

「コウちゃん・・・・・・////////」

沙織はどんどん顔が熱くなっていった。



そして次の瞬間、みほの放った一言に沙織は衝撃を受ける事になる。


「沙織さんなら、きっと良いお嫁さんになれると思いますよ。」

「「「「・・・・・・・ッ!!!!!!!!」」」」

その一言に、沙織だけでなく、優花里や華や麻子も衝撃を受け、固まった。

「なっ・・・・・!!! //////」

沙織はみるみる頬を紅潮させていく。







―― 良いお嫁さんになれると思いますよ ――






みほが純粋な笑みを浮かべながら言ったその言葉が、何度も沙織の脳内でリフレインする。

「や・・・・・ //////」

沙織の一気に顔が真っ赤になった。
そして、彼女は口を開く。


「やだもー!! //////」

沙織は、そう言うのが精いっぱいであった。


そして、それを見ていた3人も内心穏やかではなかった。

(こ、これが肉じゃが効果なのか!!? 沙織の言った情報だから、はっきり言って全く当てにはしてなかったが・・・まさか本当にあったとは・・・!!)

(西住殿おおぉぉぉ!!! 肉じゃがですか!?肉じゃがが良いんですか!!? だったら私も母から教わって作れるようになってみせますよ、肉じゃが!!)

(私も今度、肉じゃがの作り方を習おうかしら。)

そんな考えが、麻子、優花里、華の頭の中で渦巻いていた。


しかし、そんな混乱気味の思考も、次の瞬間には吹き飛ぶ事となる。




パクッ



みほが再び、肉じゃがを口の中に入れた。


「・・・・・。」モッチモッチ

(((( 可愛いー!!! //////// ))))



と、まぁ・・・こんな感じで、みほの小動物的な可愛い一面を、間近で見て堪能した4人であった。


今回はここまで。
もち住殿のもぐもぐ作戦と、沙織の嫁スキルの回でした。

乙でした
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org5011907.jpg
可愛い(確信)


サボって寝るふりをしながら、床からも西住殿の匂いを堪能しようとする冷泉殿クンカー策士可愛い(違

ベッドの下を探らんでよかったなww

>>245
ベッドの下

まほ(ドキドキ)←みほのパンツを手に持っている

問題は生理用品の隠し場所だ

変態紳士の皆さん自重しろwww
でも実際、ふとした瞬間にボロがでる事もあるし、結構気を張ってるんだろうな

みほはボロボロ泣きながら肉じゃが食べていたのか?と思ったが、そうでは無かったか

弐尉マルコの新巻がでたぽいけど

エリみほがよかった!

まだー?

全くこんな女たらしのみほは良くないな
しょうがないからこのわた…西住まほさんが引き取るべきだな

いやいや、エリカで

生存報告。
遅くなってしまって、すいません。
近いうちに投下いたします。

やったー

待ってるぞ

ところで、みほのハーレムメンバーにエリカなどの他の学校メンバーも入りますか?

つい最近見始めたのに、もう続きが待ち遠しくなってるwwwwww
待ってます。

みほ×桃になる可能性があるのか

まだか!?

>>259
楽しみなのはわかるがsageしろや

生存報告はよ

同じく、待ってるぞ!

生存報告が遅れてしまいました。

やっと投下の目処が立ちました。今夜12時ごろに投下します。

待ってたよー


レス返しです。


>>243
確かに。(断言)
左下の画像のやつが所謂もちずみどのです。
今はもう見れなくなってるけど・・・。



>>244
もし本当にそんな策士だったら、何か嫌だなwww



>>245 >>246
まほさん何やってんすかwww



>>247 >>248
見られてヤバいものは全て、しっかり隠してあるのでガサ入れでもされない限りは大丈夫です。
それだけ、プライベート空間ある自室でも、常に気を張ってるというわけです。



>>249
所謂おふくろの味ってやつですね分かります。
沙織さん、マジお母さん。



>>250
やっぱエリみほはいいよね。
と言うかぶっちゃけ、みほは誰とでもよく合う。



>>252
まほさん自重してwwww



>>253
確かにそれも捨てがたい。



>>256 >>258
それはこれからのお楽しみということで・・・。
あんまネタバレするのもアレなんで・・・。




それではこれより投下を開始します。




あの後、みほ達5人は戦車の各ポジションについての話し合いをしたのだった。


最も重要なポジションである車長を誰にするかという事から話し合ったのだが、これは真っ先にみほの名が挙げられた。
みほは前回の演習で、その冷静さと、卓越した判断能力をいかんなく発揮している。
だから5人の中で最も適任であるとして、沙織達、チームの皆から車長の役を頼まれ、そのため、みほは引き受ける事にした。

その他にも、砲手は華、装填手は優花里、操縦手は麻子、通信手は沙織がそれぞれ担当することになった。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


そして再びやってきた、戦車道授業の日。


この日、みほは自動車部の人達と話があるから遅れて来るという事で、優花里達4人で先に格納庫の方に行く事になった。

そして、そこで優花里達は不思議な光景を目の当たりにする事になる。




「こ、これは一体・・・!?」

優花里は驚愕の表情で固まっていた。
その光景を前に、ただ絶句している。


そして華と沙織は、優花里とは対照的な反応をしている。

「あらあら。これは何とも個性的で、可愛らしいですね。」

「いいなぁ・・・私達もやれば良かった。」




優花里達が見ていたのは、並ベられた戦車達の、その劇的な変わり様であった。
4両の車輌が、まったくの別物と言ってもいい程に、見た目が変わってしまっている。


まず、Bチームの38(t)戦車は、なんと車体全体を派手に金色で塗られていた。
その光沢が眩しいほどに輝いて、非常に目立っている。

「いいねぇ。ゴージャスな感じがして・・・。」

杏が満足気に言う。



Cチームの八九式は比較的原形を留めていたが、車体と砲塔部に白いペンキで『バレー部復活!!』とデカデカと書かれていた。

「これで活躍すれば、宣伝になって部員も集まる筈だ。」

典子が嬉々として言った。



DチームのⅢ号突撃砲の見た目も劇的に変わっている。

車体前面や側面部は赤色、上面や後部は黄色で塗装されていた。砲身は純白の色で塗られ、その基部は浅葱色のダンダラ模様が描かれている。
更に、六文銭が描かれた赤い旗や、誠一文字が刻まれた浅葱色の旗が車体上部に取り付けられていた。

歴史マニアである彼女達が、その趣向を存分に叩き込んだ・・そんな感じの一品である。


「ふむ。格好良いぜよ。」

「これぞまさに支配者の風格である。」

おりょうとカエサルも、ご満悦といった感じで、眺めている。



EチームのM3は、ピンク一色のカラーリングに変えられていた。

「可愛い~♪ やっぱピンクだよね。」

梓もとても嬉しそうだ。


と、まあ・・このような感じで4両の戦車が、それぞれの人達の趣向によって、何とも個性的でバラエティ豊かな姿に変えられていた。

はっきり言って、パッと見ると、戦車とは思えない、摩訶不思議な見た目である。
かなり目立つし、迷彩もへったくれもあったものではない。


だから優花里は思わず、嘆いた。

「ああっ!! 38(t)戦車が・・・八九式が・・・Ⅲ突が・・・M3が・・・何か別の物に!! こんなのあんまりですよ!!」

戦車大好きな優花里には、その変わり様はかなりショックだった。


「うちのⅣ号戦車も色を塗り替えて、可愛くデコレートしちゃおう。」

そんな沙織の言葉に、優花里はゾッした。

「お願いだから、やめてください!!」



彼女は頭を抱えていた。

「こんなの・・・・西住殿が見たら何て言うか・・・・。下手したら怒られますよ。」


優花里がそんな懸念を抱いていた、その時だった。




「すいません。遅くなりま・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」

「あっ! 西住殿!」

その時、遅れてやって来たみほが到着した。



「・・・・え????」

そしてみほは、変なデコレートをされた珍妙な戦車を見た瞬間、固まった。




「・・・・・・・・・・・・・。」(゚д゚ )ポカーン


ただ絶句し、茫然と立ち尽くしていた。

信じられないといった感じの表情をしている。






沈黙の時間が流れていく。



「に、西住殿・・・・。」

そんな状況の中、優花里が恐る恐る、みほに声をかけた。

(西住殿・・・・・・。怒ってますよね。これ絶対怒ってますよね。)




すると・・・・・




「プッ・・・・・・アハハハハハハ。」

「えっ!? 西住殿?」

みほが笑い出した。
突然の事に、優花里もそうだが、沙織達も面食らう。


(西住殿・・・怒っていない?)

優花里の心配とは裏腹に、みほは決して怒ってなどいなかった。
それどころか、目の前の出来事が面白くて仕方がないといった様子である。


「アハハ。 まさか戦車をこんな風に魔改造しちゃうなんて・・・・斬新で面白いです。
 こんなの昔では到底考えられなかった事だけど、こういうのも楽しくていいですよね。」

すると、みほは満面の笑顔で言った。


「戦車道が楽しいなんて思ったのは、初めてかも。」


みほがこの大洗にやって来て、戦車道を再びやり始めてから、友達の皆と一緒に体験した事は、彼女にとって何もかもが新鮮なものだった。

今までに経験したことが無い斬新な事の数々。
この大洗に来るまでやっていた戦車道とは異なる、全く新しいもの。

それに触れた当初、当然みほは面食らったが、その半面、新しいものに対して非常にワクワクしていた。


今までに無かった、新たなる戦車道。
それは、まだまだ始まったばかりなのである。


今回はここまでです。

まほ「歩いた道が戦車道になるのよ。みほ、貴女の道を見つけなさい」

仮に沙織の助言を入れて、塗装したら、どんなⅣ号戦車になったことやらww


そろそろダージリンさん達がハーレム加n………練習試合か

えーい、ダージリンはいい!エリカを出せ!エリカを!(テム風)

紅茶と一緒に婚姻届を渡しちゃうダージリン様とか期待していいんですかね?

いやいや、コメット巡航戦車と婚約届で

ノンナ様をみぽりんがお姉様と呼ぶまで我々の戦いは続く!!!

ノンナとみほの絡みって少ないよなー
みほとカチューシャならあるけど


>>272
まほが珍しくまともだwww


>>273
恐ろしく珍妙な代物になり、優花里がますます頭を抱えることにwwwww


>>274
グロリアーナ戦は多分次々回くらいになります。


>>275
エリカの登場はまだ先です。


>>276 >>277
本当にそういう事をやりそうで困るwww
恋愛で手段を選ばない英国淑女(日本人だけど)。




その後、始まった本日の戦車道授業。


「一列横隊!!」

河嶋桃の号令とともに動き回る5両の戦車。
今回は主に、隊列走行などの連携プレーの練習だった。

「次、一列縦隊!! おい、そこっ! もたつくなっ!!」

桃がメガホン片手に、怒号を飛ばす。

派手に塗装されたⅢ号突撃砲が、戦国武将みたいな旗を翻しながら駆け抜ける。
その他にも、光り輝く金色の38t戦車や、ピンク一色に染められたM3中戦車が並んで走り回ってるその光景は何とも珍妙だった。
一見すると、何の集団なのかよくわからない状態である。

とは言え、訓練自体は問題なく順調に進んでいった。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「本日の訓練はここまで。皆ご苦労であった。」

今日の訓練も無事に終了。
最後に桃が締めの一言を言っている。

いつもだったら、このまま解散となるとこだが、今回は違った。


「さて・・・急ではあるのだが、今度の日曜日に練習試合をやる事になった。」

「「「「えっ!?」」」」

唐突に告げられた事に、皆は驚いた。
そして桃の言葉はさらに続く。


「相手は聖グロリアーナ女学院だ。」

その言葉に優花里は驚愕した。

「グロリアーナって強豪校じゃないですか!!?」

優花里が驚くのも無理はない。
彼女が言ったように、聖グロリアーナ女学院とは、戦車道の名門校である。
過去に全国制覇を成し遂げたこともあり、最近でも全国大会で準優勝している。

そのような強豪校が、去年まで戦車道が廃止されていた大洗との練習試合を引き受けてくれたという事が不思議でならない。
普通だったら申し込んだ所で断られてもおかしくない筈だった。

「よく断られませんでしたね。」

「それがさぁ・・・正直、ダメ元で申し込んだら、意外とあっさりOKしてくれたんだよね。
 もしかしたらグロリアーナって、格の違いとか、そういう物にはあまりこだわらない校風なのかもね。」

優花里が口にした疑問に、杏が答えた。

杏の言ったように、グロリアーナへの練習試合の申し込みは予想外にあっさりと快諾されていた。


「というわけで、各チームの車長は、この後に作戦会議があるから残ってくれ。 以上、解散。」

桃の締めの言葉と共に、車長達を残して解散となった。


 ・

 ・

 ・

 ・


そして、会議室に集められた生徒会メンバーと車長一同。
今、彼女達は河嶋桃から作戦概要の説明を受けている。

「いいか。相手のグロリアーナは、防御力と連携力を生かした浸透強襲戦術を得意としている。
 奴らの戦車は特徴は、とにかく堅い事だ。主力のマチルダⅡに対して、こちらの砲は100m以内でないと一切通用しないと思え。
 そこでだ・・・我々は地の利を生かした待ち伏せ攻撃を駆使する。」

桃がホワイトボードに書き込まれた作戦概略図を指した。

台上の陣地に横隊陣形で配置される戦車。
そして、その陣地の前にある一本の細長い回廊。

桃が指したのは、丘の陣地の前の、赤い○印で囲われた部分。
そこは待ち伏せ攻撃をする側の火力が集中する地点・・所謂キルゾーンというものである。

「まず、一両が囮となり、敵を引き付ける。そして、このキルゾーンに敵を誘い込み高低差を生かして一気に叩く!!!」

バンッ、と桃がホワイトボードに手を力強く叩き付けて力説した。

「地の利を最大限に生かして戦力差を覆す。それが本作戦の概要だ。」


確かに、これなら低い位置にいる相手に対して、有利な高台に陣取って対峙出来る。
それに、こちら側は横隊陣形で正面に最大限火力を発揮出来るのに対して、敵側は細い一本道を通るせいで左右への展開が大きく制限されるから、縦隊陣形で行かざるを得ない。
そうなれば、敵部隊の先頭部に集中砲火を浴びせる事が出来るし、上手くいけば前から順々に1両ずつ仕留めて各個撃破という形に持っていくことも可能である。


「これでいける筈だ。この策を持ってすれば、あのグロリアーナにだって勝てる!!」

桃にとって、この作戦はこれ以上ない必勝の策だった。
この作戦で行けば負ける筈がないと、彼女は絶対的自信を持っている。
だからこそ、自信満々で力説した。

そして、そんな桃の言葉により皆が、これでいけると、自信を持ったのである。

しかし、それは言い変えれば楽観である。
そして、その場にいた誰もが楽観し、自分達が勝つ所を想像していた。


ただ一人を除いて。



その場にいた者達の中で、みほだけが、何やら難しい顔をしていた。

彼女は今、手元に置いてあった地形図をじっと見ている。
この時、みほは頭の中で戦闘の経過をシミュレートをしていた。

この作戦でいった場合、どうなるか・・・どのような事態が発生し得るか。
あらゆる要素を考慮しつつ、頭の中で駒を動かしながら、戦闘がどのように推移するかを計算していた。

すると、みほの思考はある一つの可能性に辿り着く。

(これは・・・・ちょっと、まずいかな。)

シミュレートしてみた所、非常に芳しくない戦闘結果が、頭の中で出てしまった。
しかし、それを言ってしまってもいいのかどうか、みほは迷っていた。

(でも、これ言っちゃってもいいのかな・・・。)

あれだけ桃が自信満々に作戦プランを掲げているのに、そこで批判的な事を言うのも気が引ける。
どうしようか、と思いを巡らせていた。






「ん・・・どうかしたの? 西住君。」

その時、杏がみほに声をかけてきた。

「え!?」

そこでみほは気づく。自分の考えが、表情に出てしまっていた事に。


「何か難しい顔してたじゃん。」

杏が更に聞いてきた。

「どうした西住? まさか私の立てた作戦に何か文句でも?」

そして桃も不満そうに言う。


「あ、いや・・・。」

みほは言葉を詰まらせた。

「言いたいことがあったら、どんどん言っちゃって。」

そこで、杏がみほに返答を促す。


(隠しておいても、良い事は無いし、言っちゃおう。)

みほは意を決して、口を開いた。
極力、相手の機嫌を損ねないように配慮しつつ・・・。


「待ち伏せ攻撃主体の作戦というのは、僕も賛成です。
 ただ・・・・今の僕達チームの練度、射撃精度を考慮すると、このキルゾーンで敵を仕留められない可能性は高いと思います。」

すると、みほは地形図を指しながら言った。

「この地形と布陣だと・・・キルゾーンを突破されれば、逆包囲を受けて、両翼から挟み撃ちにされてしまう危険が・・・・。」


みほの指摘した事に、周囲の者達も頷く。

「あぁ。なるほど。」

「たしかに・・・。」



みほは、先輩の気を悪くしないように、気を遣って言ったつもりだった。
だがしかし、みほの言ったこの言葉は、桃の逆鱗に触れてしまう。

「黙れっ! 私の立てた作戦にケチをつけるか!!」

桃は激怒して怒鳴った。

「ひっ!!」

突然に怒鳴りつけられたため、みほは肩を震わせた。

「すいません・・・。」

みほは萎縮してしまい、そのまま俯いた。




「落ち着きなよ、河嶋。 まぁ・・・・確かに、西住君の言う事にも一理ある。」

ここで、杏が桃を宥めつつ、みほの発言を支持した。


そして杏はさらに続けて言った。

「それに・・・そういうのをしっかり指摘できるというのも、大切な事だしね。
 どうだろう? ここは一つ、我が校の隊長を西住君に任せるというのは・・・。」

「えっ!?」

杏の口から出てきた予想外の言葉に、みほは驚いた。


「西住君なら任せられると思うんだよね。というわけで西住君よろしく。・・・・皆もいいよね。」

杏は突然、みほを大洗の隊長に任命してきた。
そして、周囲の者達にも同意を求める。

すると、すぐさまに皆が賛同してきた。


「私も西住先輩が良いと思います。」

梓は真っ先に賛成した。
前回の戦いにおける、みほの活躍が、強烈な印象として、梓の脳裏にハッキリと残っている。

「ふむ。 たしかに、ヴィットマン・・・もとい、小次郎君が一番の適任だな。」

カエサルも同様である。




しかし、これに賛同しない者が一人いた。

「お待ちください、会長。」

ここで、桃が声を上げた。

「私は反対です! 我が校の隊長は角谷会長がやるべきですよ。 常に、この母校の事を考えてきた会長こそが・・・!」

桃が、みほの隊長就任に対して、異議を唱える。


だが、これはみほにとっては少しありがたい事だった。
というのも実は、この時のみほには、隊長という責任重大な役目をやることに対して、少なからずプレッシャーを感じ、躊躇していた。
しかし、これだけ周囲の人間から乞われてしまえば、断るに断れない。

だから、河嶋桃が反対の声を上げてくれたのは、正直、ありがたかった。


「河嶋・・・そう言ってくれるのは嬉しいんだけどさ・・・・西住君の実力は前回の演習で証明されているわけだし。この中では一番適任でしょ。」

「いや、しかし会長・・・・・前回証明されたのは、あくまでも戦闘技術だけであって、部隊指揮や作戦立案といった戦略レベルのスキルとはまた別物です。」

「ふ~ん・・・。つまり隊長としての適正に関しては、まだまだ未知数。そういう事なんだね。」

「はい。 少なくとも私は、彼が会長以上にその役にふさわしいとは思えません。」


すると、ここで杏が何かを思いついた。

「だったら、いい方法があるよ。」


そう言うと、杏子はあるものを取り出し、卓上に置いた。

「西住君。 今から河嶋と、将棋で勝負してもらう。」

「・・・・・はい???」


杏が持ち出したもの・・・それは将棋盤だった。
あまりにも唐突に、そのような事を言われ、みほは思わずフリーズしてしまった。

そして杏は続けざまに言った。

「隊長をやるのに必要な能力ってのは、戦況を瞬時に把握する状況判断能力や、相手の思考を予測して先読みする能力。
 それらの能力を手っ取り早く試すお手軽な方法・・・それがこの将棋ってわけ。駒を動かすという意味では、戦車道の指揮を同じだからね。
 これから西住君には河嶋と対局してもらって、その上で彼に隊長を任せてもいいかどうかを判断する。
 それなら文句は無いよね、河嶋。」

「はい。そういう事でしたら・・・。」

桃はそれに納得したようだった。



しかし、みほは、あまりにも急な展開に、話についていけない状態である。

「あ、あの・・・・」

そもそも、みほは隊長をやるとは一言も言ってないのだが・・・・

「さあさあ、ここに座って。」

「えっ! ちょっと・・・」

杏に強引に押し切られてしまう。そのまま、みほは杏に背を押されながら卓についた。
そして反対側に桃が座る。



みほと桃の二人が将棋盤を挟んで対峙した。


(どうしてこうなった?)

みほはそう思わずにはいられなかった。
あまりにも唐突に始まった、河嶋桃との将棋対決。

そして、そんなみほの思いを余所に、場は盛り上がってきた。

「何だか面白そうだ。」

「ふむ。小次郎君が今度は盤上の頭脳戦でその腕を見せてくれるのか。これは中々の見ものだな。」

典子やカエサルが面白そうに言う。

「西住先輩、がんばってください。」

梓はみほを応援してくれていた。




(さて・・・どうしたものか。)

ここにきて、みほはとりあえず、成り行きに逆らう事を諦め、勝負を受けることにした。
その上でどうするかを考える。
下手に桃の機嫌を損ねる事を、みほは躊躇った。

(でも、だからと言って、手抜きをするのは失礼だし・・・。)


すると、桃がみほに声をかけてきた。

「いいか、西住・・・全力で来いよ。」

「わかりました。」(桃先輩もああ言ってることだし・・・ここは全力で。)



すると、みほは精神集中のために、目を瞑って深呼吸をした。
大きく息を吸い込み、そしてゆっくり吐き出す。

前回の戦いの時にもやった事で、これはみほが集中力を高めたい時に行う手法である。
つまり、彼女は今、本気モードになったという事である。

そして周囲の者達も、すぐにその変化に気づいた。
みほの穏やかで柔らかかった目つきが、突如として鋭い眼光を宿らせる。
その身に纏う雰囲気が大きく変わり、今のみほの雰囲気はまるで兵(つわもの)のそれである。

皆一様に息を呑んだ。




「・・・・・!!!」

桃は、みほが纏う、そのオーラに気圧されそうになった。

(だが、負けるものか! これでも将棋は結構得意なんだ。)

桃は負けじと相手を睨みつける。




「それじゃ・・・・・・始め。」

杏の掛け声とともに、対局が始まった。


 ・

 ・

 ・

 ・

 パチッ・・・


「王手。」

「・・・・・・・。」

そして、勝負がついた。
みほの打った手によって詰みとなり終了。
終始、みほが桃を圧倒する展開で推移し、結果はみほの圧勝であった。

圧倒的大敗で、桃はぐうの音も出なかった。

「そんな馬鹿な・・・。」

桃は打ちひしがれている。




ここで杏が思い付いたかのように言った。

「あっ、そうだ。 そう言えば河嶋って、将棋よりもチェスの方が得意だったっけ?」

「・・・・・・・あっ!!」

桃はパッと顔を上げ、すかさず言った。

「そ、そうです! チェスだったら絶対に負けません!!」


このまま、やられたまま引き下がるというのは、桃のプライドが許さなかった。


「わかった。というわけで西住君・・・悪いんだけど、もう一戦、付き合ってもらえるかな?」

杏は種目を変更した上での再戦を、みほに持ちかけてきた。

「それは別にかまわないのですが・・・・・僕はチェスはやったことがありません。 だからチェスのルールブックをいただけませんか?」

「いいよ。 まぁ、たしかにチェスと将棋は似ているけど、細かい部分では違う所も多いんだよね。」



(もらった! さすがに初心者には絶対に負けん。 次は確実に勝てる。)

桃は内心ほくそ笑んでいた。



みほはルールブックを片手に、今度はチェスで桃と対局することになった。


 ・

 ・

 ・

 ・

「チェックメイト。」

「・・・・・・・。」


みほの打った手で、終了。結果は、またしても、みほの圧勝である。
みほはルールブックを読みながら、相手を圧倒し続けていた。

桃は愕然とした。



しかし、それでも桃は引き下がらなかった。

「そうだ! 私、どちらかと言ったら、オセロの方が得意だったんだ。 だから今度はオセロで再戦を!」

もはや当初の主旨も完全に忘れ、桃はただ意地になっていた。

「いいですよ。」

再び種目を変更した上での再戦を持ちかけられたみほは、すぐに了承した。

 ・

 ・

 ・

 ・


「終了です。」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

もはや桃は絶句するしかなかった。

盤上は白い石で埋め尽くされていた。勿論、みほが白で、桃が黒である。

結果は 64-0 でみほの完勝であった。


その見事な勝利に、見ていた者達も感嘆した。

「凄い・・・・凄いですよ、西住先輩!」

梓も興奮気味だった。



一方、桃は真っ白に染まったオセロ盤を前に、ガックリと肩を落とす。

「うぅぅ・・・・。」

そして次第に涙目になっていく。


それを見たみほは慌てた。まるで自分が泣かしたかのようだったからだ。
そこで、とりあえずフォローを入れようとする。

「あ、あの・・・・河嶋先輩の考えた作戦は素晴らしいものだと思いますよ。」

「グス・・・・・・・本当?」

「ええ。本当ですよ。」

みほは彼女にハンカチを手渡す。
桃はそのハンカチで涙を拭いながら言った。

「じゃあ今度の、グロリアーナとの試合は、私の作戦で?」

「はい。勿論です。 ですから泣き止んでください。」

とりあえず桃を泣き止ます事が出来た。

(ていうか桃先輩って、意外とよく泣く人だったりするのかな?)

普段の桃からは想像できなかったその姿に、みほは困惑気味である。



こうして、唐突に始まった、ボードゲーム対決は幕を閉じた。



「さて・・・これで西住君の、隊長としての資質は十分にあると見たわけなんだが・・・。」

(あ! そうだった。そういえば、そういう話だった。)

杏の言ったその言葉で、みほは思い出す。
目の前の対戦に気を取られるあまり、忘れていたのだが、この対戦結果如何で、みほが隊長に任命されるか否かが懸っていたのだった。

杏はこのまま、みほに隊長を任せようとしていたのだが、まだみほは自分が隊長の役をやる事に躊躇していた。

「あ、 あの・・・・・・・。」

「ん、どうしたの? 西住君・・・。浮かない顔してるけど、もしかして隊長やりたくないの?」

「それは・・・・。」

みほは言葉に詰まった。
たしかに、隊長をやるという事には、まだ躊躇いがある。しかし、これだけ杏が自分に期待をかけてくれているのに、断るというのも気が引ける。


そんなみほの気持ちを察したのかどうかはわからないが・・・・・

「じゃあ、隊長の件は一旦保留にしといて・・・・次のグロリアーナ戦では臨時で指揮官をやってよ。」

杏は、みほの隊長任命の件を一時保留にしてくれた。

「はい。わかりました。」

「ただし・・・・私はあくまでも、西住君に隊長をやってもらおうと思っている。だから、ちゃんと考えといてよね。」



こうして、会議は終了したのであった。


今回はここまでです。

桃ちゃんは、まだ陥落せずか

まあ、じっくりとりょう・・・もとい攻略だな

梓の意識は原作よりもいい方向に向かってるかな?

桃ちゃんが頭使う勝負で勝てるわけがないじゃないか!

みほが凄いというより、桃ちゃんがぽんこ・・・いや、何でもない

それと、桃ちゃんにちゃんと先輩意識持っているのは珍しいですね
ほかのssでは先輩意識してませんし

だって桃ちゃんぶっちゃけ邪魔…うわ何をするやめろ

桃「グスグス・・・・・じゃあ今度の試合は、私の作戦で?」
みほ「その作戦でいいから泣き止んでください。」
桃(作戦通り。男は女の波がに弱いというのは本当だったんだな)

>>296

×波がに
○涙に

訓練を指導してるのはみほやないんだ

後、桃ちゃんのトリガーハッピーはいつ気づくのかな?

てか、河嶋先輩から桃先輩になってるな
みほの呼び方が

ところで、三突の車長はカエサルではなく、エルヴィンじゃなかったですか?

>>148にもエルヴィンが車長とちゃんと書いてますし

というか、なんで本編だとカエサルが出たんやろな?


皆さん、こんばんは。
まずはレス返しからです。


>>292
料理って・・・まるで、いたぶるみたいなwwww


>>293 >>294
たしかに桃ちゃんは頭脳戦が苦手だけど、それ以上にみほが頭脳戦の達人だったんです。相手の思考を先読みする力とか・・・。
だから他の者がやっても、みほが圧勝できます。


>>295
まあ、たしかに桃ちゃんは、邪m・・・・・おや?こんな夜遅くにいったい誰だろう?


>>296
いや、桃ちゃんはそんな計算高くないっすよwww
あれはガチ泣きです。


>>298
次の試合の時にすぐにでも。


>>300
たしかに>>282では車長一同と書きましたが、Ⅲ突のDチームだけ例外です。
原作ではカエサルが出席してたので、その通りにしました。

たしかに、原作でのこの部分はいまだに謎ですよね。






それでは、これより投下を開始します。



一悶着はあったものの、とりあえず、その場は丸く収まり、作戦会議は無事終了。




そして、やってきた聖グロリアーナ女学院との試合当日。


この日、大洗学園艦は港町に入港した。
その港町の名は大洗。

ここが“地上”の大洗である。


埠頭に上陸した彼女達は、そのまま試合会場へ向かった。


その移動中、みほは考え込んでいた。
それは、あの時に杏から言われた、あの言葉についてである。



 ―― 私はあくまでも、西住君に隊長をやってもらおうと思っている。だから、ちゃんと考えといてよね。 ――



(チームを引っぱっていく、隊長・・・・・僕なんかに務まるのだろうか。 僕なんかに・・・・・・。)


そのように思い悩んでいたみほ。

すると、沙織を声をかけてきた。

「コウちゃん。そろそろ試合会場に着くよ。」

沙織の一言で、みほは思考を一旦中断した。

(仕方ない。とりあえず、今は試合の方に集中しよう。)





みほ達、大洗チームは一足先に試合会場に集合した。
5両の戦車が横一列に並んで待機している。

すると、そこに聖グロリアーナ女学院の戦車がやって来た。
遠方より、チャーチルと、マチルダⅡの姿が視認できる。

そして彼女達の前まで来ると停車し、隊長と思われる人物が戦車から降りて来た。


「初めまして。 聖グロリアーナ女学院、戦車道チーム隊長・・・ダージリンです。」

赤い制服を身に纏った彼女は、ダージリンと名乗った。
彼女がグロリアーナの隊長である。

それに対して大洗側は、代表の角谷杏と副官の河嶋桃が出迎えた。

「いらっしゃ~い。」

「本日は、急な申し込みにもかかわらず、試合を受けていただき、感謝する。」


「構いませんことよ。それにしても・・・・・・」

すると、ダージリンは大洗チームの車輌を見渡して、言った。

「随分と個性的なチームなんですね。」

その時の彼女の表情は半笑いだった。

それも無理のないことである。
ピンク一色に塗られたM3中戦車に、金色に輝く38(t)、戦国武将のような旗を立てた赤いⅢ突、デカデカと『バレー部復活』と白いペンキで書かれた八九式。
一見すると、何の集団かよく分からないような状態であった。


しかし、半笑いだったダージリンはすぐに表情を引き締めなおして、言った。

「私達は、どんな相手でも全力で戦いますわ。 騎士道精神に則って、お互いベストを尽くしましょう。」


そう言うと、ダージリンは杏達に会釈して自分の戦車の方に戻ろうとした。


「あら?」

その時、ダージリンはある事に気づいた。


(男の子・・・・?)

大洗のチームの中で、一人だけ男子制服を着用している、黒髪の人物・・・・・“西住小次郎”の姿を、ダージリンは見据えた。

(戦車道チームに参加している男子というのも、中々珍しいわね。)

ダージリンは物珍しいそうな目で、みほの事を見た。

(これは興味深い。)

そう心の中で呟くと、そのまま戦車の方に戻っていった。





「どうでしたか? 大洗の人達は・・・・。」

戻ってきたダージリンに声をかけたのは、彼女の後輩であるオレンジペコだった。
彼女は、ダージリンと共にチャーチルの搭乗員であり、装填手を務めている1年生である。


「我が校に試合を申し込んでくるから、どれ程の者達かと思ってましたが、かなりゆるい連中でしたね。」

そう言ったのは、アッサム。
3年生で、チャーチルの砲手を担当している。


「あれでは、素人のお遊び集団そのもの。 この戦いはハッキリ言って、“羊の群れ”を狩るようなものです。」

アッサムが大洗戦車道チームに対して下した評価は、かなり辛口だった。

「そうね。」

そしてダージリンも概ね同意見である。


彼女達の大洗への評価は、かなり低いものだった。
だが、それも無理はない。

実際、大洗チームの彼女達は皆経験が浅く、チーム全体の練度は、お世辞にも高いとは言えなかった。
そんなチームを、アッサムは羊の群れのようなものと言ったが、それもあながち間違ってはいない。





しかし、この時のダージリン達には一つだけ大きな誤算があった。



たしかに、アッサムが言った通り、彼女達は“羊の群れ”にすぎないかもしれない。

だが、その“羊の群れ”の中に一匹だけ“狼”が紛れ込んでいるという事に、ダージリン達はまだ気づいていなかった。


今回はここまでです。
ちょっと短かった。

次回、試合開始です。

男は狼なの~よ~気を付けなさ~い~



>“羊の群れ”の中に一匹だけ“狼”が紛れ込んでいる
最早、狙って言葉を選んでいるとしか思えないので敢えて……

天然ジゴロの西住殿の前では、大抵の女の子は羊なんじゃないですかねゲヘヘヘ

確かに人狼がいるな

田尻さん達も自分達が羊であることは誤算だったろうよ

これで負けると羊は羊でもスケープゴートになっちまうから、何とかして勝ってほしいもんだ

ダージリン「貴方だって・・・人間じゃないかしらああああーーー!?」

まほ「みほは・・・人間の皮を被った狼さ」



>>306 >>307
狼って、そういう意味で言ったわけでは・・・・たしかに、いろんな女の子を落としまくってるけど・・・。


>>308 >>311 >>312
うちのみほは、プロテクトギアとか絶対着けませんよ。


>>309
油断していると、狼の牙でやられます。(決して、いやらしい意味ではないですよ。)


>>310
あああんあん~♪あああんあん~♪




では、これより投下します。




大洗学園と聖グロリアーナ女学院、両チーム共にスタート地点で待機していた。

双方ともに、すでに準備完了。
後は、試合開始の瞬間を待つだけである。



「それでは、始めっ!!」

審判が合図を出し、試合が始まった。



「これより、所定の位置まで進出します。 全車、パンツァーフォー。」

みほの合図とともに、すぐさま大洗チームの戦車が動き出した。
いよいよ作戦開始である。





みほが無線で告げた。

「これよりAチームが前進して偵察、及び敵の誘引を行います。各チームは打ち合わせ通り、例の峠にて待機してください。」

各チームに通達すると、そのままみほ達Aチームは皆と別れて単独で前進し、偵察行動に入った。


 ・

 ・

 ・

 ・


「ここで停めて。」

麻子にそう言って停車させたみほは、そのまま素早く戦車から飛び降りた。

「ここから僕が斥候として行くので、ここで待っていて。」

そう言うと、みほは単身で斥候に出ようとする。
すると、優花里も戦車から降りてきた。

「西住殿。私もお供します。」

優花里は背中にバックパックを装備していた。その中には偵察用の道具が入っているのだろう。

「分かりました。ついて来て下さい。」

「了解です。」


すると、みほは走りだし、優花里もそれに追随した。





しばらく走って行くと、高台の上に出た。
開けた視界で、見渡しが良い場所である。

みほはその場で地に伏せると、双眼鏡を構えた。
そして、優花里もみほのすぐ隣で伏せると、バックパックから望遠鏡を取り出して、観測態勢に入る。






「来た。」

その時、みほが静かに声を上げる。


遠方よりグロリアーナチームの姿が見えてきた。
チャーチルを先頭にした楔形陣形で進軍している。

「マチルダⅡ4両、チャーチル1両、前進中。」

「えっと、距離は・・・。」

優花里はすぐさま目標との距離を測定しようとした。

しかし・・・


「距離1020メートル。」

「えっ!?」

優花里が測るよりも先に、みほが距離の数値を告げた。

(本当に?)

ここで優花里は改めて目標との距離を測定した。
そしてら優花里は驚愕する。

(合ってる!!)

測ってみたら、目標との距離は本当に1020メートルだった。

「西住殿・・・・・その双眼鏡、測距用のレティクルはついてませんよね。 分かるんですか?」

この時、みほが使用していた双眼鏡は、優花里の持っているような、測定用の目盛り線が刻まれた特殊なタイプではなく、普通の双眼鏡だった。
にもかかわらず、みほは距離を正確に言い当てている。
その事に、優花里は驚きを隠せなかった。


そんな彼女の問いに対してみほは・・・

「目標のシルエットのサイズから計算すれば、おおよそは分かります。 距離を測る訓練なら、昔からやってきたので、慣れてますから。」

さも当然のように言ってのけた。

なんとみほは、双眼鏡の
目測だけで距離を言い当てたのだ。
サラッと言ったが、それは決して容易な事ではない。少なくとも一朝一夕で身に付くような技術などではない。


その事から、優花里は改めてみほの凄さというものを実感した。


そして、優花里は言った。

「西住殿。こちらの主砲では敵の正面装甲は貫けませんが・・・。」






すると、みほはハッキリと断言した。














「そこは戦術と腕かな。」



かなり短いけど、今回はここまでです。

次回は桃ちゃんが、祖国の裏切者になりかけたり、トリガーハッピーになったり、明後日の方に撃ったりと、桃ちゃん大活躍です。

スターリン「河嶋桃君、シベリアで木を数えるか、紛争地で地雷撤去とどちらが良いか選びたまえ」

おい! ポンコツのことを桃ちゃんっていうのやめろよ!!
小次郎はあの待ち伏せ作戦にどういう反応するのかな……

イケメンだな
このみぽりんには是非桃ちゃんを屈服させてほしい

桃ちゃん is not PONKOTU
But, PONKOTU is 桃ちゃん

乙です。

ふと前々回だかで歴女チームの代表で戦車長のエルウィンではなくカエサルが来たかで、
多分、戦車長とグループのリーダーが一致していないとか?
あんこうチームだって戦車長はみほだけど、グループとしてのリーダーは沙織ですからね。
(しかも最初期は編成が戦車長=グループリーダーで、とちゅうで適正に合わせてメンバーの配置買えているし)
だから、あのときだけ戦車長がグループリーダーのカエサルだったとかいう可能性もあるわけで。

ふとそんな事思った。

まだかなまだかな

>>272
沙織「それ、あたしの名言ー!」

頼むsageてくれ
>>1が来たと思って期待してたんだ(´・ω・`)

マダー?

生存報告。

投稿までには、もう少し時間がかかりそうです。
桃ちゃんが大活躍(?)するシーンまではすでに書き上がったんだけど、グロリアーナ戦の終盤シーンを
書くのに苦戦中です。

戦闘描写って難しいっす。(泣)

マッテルヨー!!

戦闘シーンはガルパンSSの鬼門だな

のんびり待ってるでー

sageろよ

まほ「私とみほの新婚旅行はまだか?」

もうすぐ二ヶ月、そろそろ生存報告を

渋での返信ではもう少し待ってとかあったよ

いつまでも待ってます

だだだだいじょばだ
まままだあわわあわてるてるじかんじゃなう

前回の>>1の書き込みから二ヶ月になるし、そろそろここに生存報告が来る頃だろう

とりあえず小次郎くん誕生日おめでとう

生存報告。
遅くなってしまって、本当にすいません。
投稿は明日辺りになりそうです。

ですので、その前に先にレス返しをしておきます。





>>318
もしプラウダだったら、そんな事になってたかも・・・。



>>319 >>321
桃ちゃんはポンコツなんかじゃないよ。
ただ、射撃が下手だったり、すぐに激昂したり泣きべそかいたりするほどメンタルが弱いだけで、決してポンコツなんかじゃないよ。



>>320
屈服って・・・・・何かエロい響きが・・・。



>>322
「「「それだ!!」」」



>>332
まほ! ステイ!

待ってます!!

エリカが顔を赤くしながら

「こ・・・小次郎。一日遅れだけど誕生日おめでとう」

つ手編みのマフラー

マダー?

sageろよks

さて、一週間過ぎたな。マダー?


すいません。
明日辺りに投稿するとか言っておきながら、一週間以上経ってしまいました。

このまま長引くのもいけないので、とりあえず出来てる分だけでも投稿します。




まずはレス返しから。




>>341
きっとエリカは不器用だから、寸法を間違えて、物凄く長いマフラーを作ってしまうに違いない。

そんでもって、失敗で落ち込んでいるエリカに、みほはそっと寄り添うと二人で一緒にマフラーを首に巻き、
「こうするとちょうどいい長さになるよ。それに、二人で一緒に温まることが出来るね。」と、微笑みながら言って、その至近距離の笑顔にやられてエリカは顔を真っ赤する。
そして、そんな二人の姿をまほは(額に青筋浮かべながら)見守る。

みたいな感じの妄想が出来ました。







大変お待たせしました。
それでは、これより投下を開始します。



みほ達はⅣ号戦車の所まで走って戻ると、素早く乗り込んだ。

「ここから西方に1キロ移動した所で待ち伏せします。」

すぐさま、操縦手の麻子に指示を出し、移動を開始した。






そして移動後、見通しの良い場所で停車し、射撃態勢に入る。

「装填完了。」

優花里が素早く徹甲弾を装填した。


「えっと・・・チャーチルの全長は7メートルで・・・約7シュトリヒ、だから距離はだいたい1000メートル。」

華が照準器越しに狙いを定めていく。
まだ慣れていないため、たどたどしくはあったが、正確に距離を測定した。

「撃てっ!!」

みほの合図とともに、華がトリガーを引いた。
発砲音が響き、撃ち出された砲弾が飛翔する。

そして着弾。


「すいません。外してしまいました。」

華が申し訳なさそうに言う。

発射された砲弾は敵戦車ではなく、近くの地面に着弾し、激しく土煙を上げていた。
残念ながら、初弾命中ならず。


「構いません。撃破が目的ではないので。」

みほが言った通り、この攻撃は敵の撃破ではなく、敵の誘引を目的としたものである。
敵をこちらに引き付ける事さえ出来れば、それで目標達成と言える。

みほは双眼鏡越しの敵の動きを確認。
すると、敵戦車がこちらの方に向かって来ていた。
とりあえず、作戦の第一段階は成功である。

みほは、すぐさま操縦手に指示を出し、後退させた。
これから目的地である例の峠まで、敵を誘引しなければならない。




(それにしても・・・。)

この時、みほは先ほどの事を思い出していた。

(あの時、攻撃目標との距離は1000メートル。しかも移動目標。 それを、いきなり至近弾とは・・・。)

先ほど華が行った射撃。
砲弾は敵戦車に当たりこそしなかったものの、至近距離に着弾していた。
命中弾ではなかったとはいえ、かなり惜しいとこをいっている。

まだ彼女達は、本格的な訓練を始めてから、まだそれほど期間が経っていない。ほとんど初心者に等しい。
にもかかわらず、この射距離で、第一射でいきなり至近弾をたたき出したという事に、みほは驚いていた。

(これは華さんの才能・・・・。 鍛え上げれば、射撃の名手になれるかもしれない。)

みほは、華の秘められたその才覚の片鱗を、たしかに感じ取っていた。






一方、その頃


「仕掛けてきましたね。」

「お相手して差し上げましょう。」

突然の攻撃に、オレンジペコもダージリンは全く動揺することなく、それどころか紅茶を片手に、余裕の表情を浮かべながら言った。

「追うわよ。全車追撃。」

ダージリンの指示とともに、即座に全車が追撃を開始した。
5両とも陣形を乱すことなく、素早く方向転換する。その事からも、彼女達の練度の高さが窺い知れる。

「まずは、お手並み拝見といったところかしら・・・。」

そう言うと、ダージリンは余裕の笑みを浮かべたまま、ティーカップを傾け、紅茶を一口飲みこんだ。







グロリアーナの戦車5両と、1両のⅣ号戦車が荒野を疾走していった。


「逃がさないわよ。」

アッサムが照準器を覗き込みながら言った。
そして、獲物へ狙いを定めてトリガーを引く。


次の瞬間、チャーチルの砲口が火を噴いた。
同時にマチルダも次々と発砲。


しかしⅣ号戦車は、飛んでくる砲弾を、その巧みな機動で回避していった。
左右に鋭く蛇行することによって、相手に狙いを絞らせないでいる。

「中々やるわね。」

巧みな回避機動の前に、アッサムも上手く狙いを定めることが出来ずにいた。


「思っていたより、やるようね。 速度を上げるわよ。」

ダージリンはすぐさま全車に命令を下した。
速度を上げて、一気に距離を詰めることによって、命中弾を出そうという狙いである。






「ん?」

その時、ダージリンはあることに気づいた。


それは、敵のⅣ号戦車の砲塔上・・・・コマンダーキューポラから身を乗り出している人影。
次々と弾が飛んでくる砲撃戦の最中に、勇猛にも、車外に体を出し、その身を晒す、みほの姿。


「あれは、あの時の男の子。」

ダージリンはチャーチルのキューポラの視察口から、その異様な光景を見て、思わず息を呑んだ。


「・・・・・・!!!」

そして、それはアッサムも同様である。
照準器のスコープ越しに、みほの姿を見ていた。
砲弾が降りそそぐ状況の中で身を乗り出し、表情一つ変えることなく、相手の動きを見極めようと、こちらを注視している、みほのその姿にただならぬものを感じていた。


 ・

 ・

 ・

「敵は全車両で、しっかりこちらに喰いついてきてます。あとはこのままキルゾーンにまで誘い込めば・・・。」

みほは、次々と砲弾が飛来する中、全く臆することもなく、キューポラから身を乗り出し、敵の動きをその目しっかりと見ていた。



「コウちゃん!!」

その時、沙織がみほに声をかけた。
それは、みほの身を案じてのものである。

「コウちゃん! そんな所にいたら危ないよ!!」

「大丈夫ですよ。そんな滅多に当たるものではないので。 それに、この方が相手の動きや周囲の様子が、よく見えるから。」

「でも、もしコウちゃんに万が一の事があったら・・・!」

「沙織さん・・・・。」


みほは嬉しそうに言う。

自分の事を心配してくれる仲間がいる・・・・ただそれだけのことが、みほにとっては何よりも嬉しかった。



「心配してくれて、ありがとう、沙織さん。・・・・・それじゃあ、お言葉に甘えて・・・。」

そう言うと、みほは少しだけ身を屈めた。








すると、みほは無線で連絡を入れた。

「こちらAチーム。敵を引き付けつつ、待機地点へ、あと3分程で到着します。」

待ち伏せ攻撃のために、峠の上で待機していたB、C、D、Eチームは、みほからの連絡を受け、すぐに戦闘態勢に入った。

「そろそろ敵が来るぞ。全員戦車に乗り込め!!」

桃の掛け声とともに、各自、戦車に乗り込んでいく。
そして射撃態勢で、敵がやってくるのを待った。




「あと600メートルで、敵車輌射程内です。」

みほが率いるAチームは、ここまで敵をしっかり引き付けて来た。
敵をキルゾーンまで誘引するという、作戦の第2段階は成功。
みほ達はその役目をしっかりと果たしたのである。


そして、皆が待っている峠が遠方に見えてきた。
間もなく、味方チームと合流出来る。



しかしその時、思わぬ事態が発生した。



「撃てえぇぇ!!!」

河嶋桃が叫び声とともに突如発砲。
そして、それにつられて他の者達も発砲してしまう。


「味方を撃ってどうするのよ!!」

沙織が思わず叫ぶ。

幸い、発射された弾は全て外れたが、危うく同士討ちになるところだった。


「あっ、間違えた! すまん。」

桃は言った。

彼女は戦車の影が見えた瞬間、それが敵か味方かをよくたしかめもせずに、反射的に撃ってしまったのだ。


「やだもー!!」

沙織がこのように叫ぶのも無理はなかった。
いきなり味方から撃たれたのでは、堪ったものではない。


初陣の試合で、いきなりこのようなトラブルに見舞われた、大洗学園戦車道チーム。
まさに前途多難である。





予期せぬハプニングが起きたが、みほ達Aチームは何とか無事に本隊と合流することが出来た。
高台上の陣地で待機していた仲間達に加わり、皆と一緒に敵を待ち構える。


すると、そこにグロリアーナの戦車が縦隊陣形でやって来た。
そして、そのまま勢い良く、キルゾーンへ突入する。


その瞬間に、桃が叫んだ。

「撃てええええ!!!」

桃の号令とともに、一斉に発砲。
轟音が鳴り響き、着弾した砲弾は、衝撃で激しく土砂を巻き上げて、土煙を上げる。



しかし、ダージリン達は怯まなかった。
縦隊陣形のまま速度を落とさず、砲火を掻い潜りながら突き進んだ。



「撃てー!! 撃ちまくれー!!!」

桃が無線機越しに叫びながら、自分自身も一心不乱に撃ちまくるが、中々当たらない。
そうこうしている間に敵はどんどん前進していく。

そして、瞬く間にキルゾーンを突破されてしまった。


「1番車と2番車は右翼側から回り込みなさい。」

ダージリンの指示の下、グロリアーナは二手に分かれて進攻した。
2両を右側の方へ行かせ、残った3両は陣地の左側面へ回り込もうとする。
これは両翼からの包囲を狙った機動である。




(まずい。)

みほは思った。
彼女は、敵戦車の動きから即座に相手の狙いを見抜く。

(このままでは、包囲される。)

これは作戦会議の時にも、みほが懸念した状況である。


しかし分かったところで、大洗チームの、練度に因る射撃精度の低さは、この場でどうこう出来るものではない。
みんなが懸命に当てようと撃つが、中々当たらなかった。




「撃て撃て!! 動く物は全て撃てええぇぇ!!!」

そして、そんな状況下でも、桃はひたすら叫びながら撃ち続けるばかりであった。
ただただ、無我夢中に引き金を引き続けるのみである。

「撃てえええええぇぇぇぇぇ!!!」

砲撃戦が始まってから、桃はずっとこんな調子だった。

これは所謂トリガーハッピーというものである。
撃ち合いの最中に、熱くなるあまりに視野が極端に狭くなってしまうというもの。
今の桃はまさにそんな状態でだった。

今の彼女には、周囲の状況が全く見えていない。


そして、そんな彼女の、無線越しの叫び声を聞きながら、みほは思った。

(桃先輩って、トリガーハッピーの気があったんだ・・・・。これは今後の課題だね。)

一瞬、そんな事を考えたみほは、すぐに頭を切り替えた。

(いや・・・そんな事よりも今は、この状況を何とかしないと・・・・・。)


改めて、みほは周囲を見渡しながら、状況を確認した。


二手に分かれて来た敵は、砲撃をものともせず、砲火を掻い潜りながら迅速に進撃して来ている。
グロリアーナの攻勢の前に、大洗チームは追い込まれていった。




そして、遂には陣地の両翼部への、敵の進出を許してしまう。
2両の戦車が左翼側、3両の戦車が右翼側に、それぞれ陣取り、完全に挟み撃ちの形になってしまった。


「フフフ・・・・。」

この時、ダージリンは勝利を確信し、不敵に笑った。

「全車、攻撃開始。」

ダージリンの下令とともに、グロリアーナチームは一斉に攻撃を開始する。
激しい轟音をまき散らしながら、5両の戦車の砲口が一斉に火を噴いた。


(くっ・・・・!! 一番恐れていた事態に・・・!!)

結局戦況は、当初にみほが危惧していた通りの最悪の展開になってしまった。
両翼からの挟み撃ちである。

敵は砲撃をしながら、じりじりと迫って来る。
それに対し、大洗チームも負けじと応射するのだが、効果的な反撃はできず。

敵の砲撃による激しい爆音と衝撃で揺さぶられ、更に眼前に敵影がどんどん迫ってくる事によって強いプレッシャーを受ける。
それらの相乗効果によって、大洗チームは混乱状態に陥ってしまったのだった。


「無事な車両は、とことん撃てっ!!」

桃は相変わらずトリガーハッピー状態で、状況判断が出来ていないが、彼女以外の物は、自分達が追い詰められている事を感じ取っていた。



「ぐっ!! 凄いアタックだ!」

Cチームの磯部典子は、衝撃で揺さぶられながら、呻くような声を漏らした。


「このままでは、押し潰される。」

エルヴィンも苦しげに言った。
彼女もまた、自分達が劣勢に追い込まれている事を感じ取っている。



(このままでは全滅する。)

みほは考えた。
形勢は圧倒的に不利であり、このまま手を拱いていては、やられるのは時間の問題であると判断する。


「隊長! 私達、どうすれば・・・。」

Cチームの典子が、指揮官であるみほの指示を求めてきた。


「隊長・・・ご指示を!!」

エルヴィンも助けを求めるように、みほの指示を仰いだ。




「・・・・・・・・・・・。」

その時、みほは冷静に思考を巡らせていた。
皆が混乱している中で、みほだけは落ち着いていたのだった。
冷静にその頭脳をフル稼働させ、この窮地を切り抜けるための打開策を、考え出そうとしていたのである。





そして、すぐに閃いた。


(野戦ではこちらが圧倒的に不利。だから市街地での乱戦に持ち込むしかない。)

みほが考え出した策・・・・それは陣地からの撤退と、市街地までの後退であった。
そうする事によって、市街地での接近戦に持ち込むというのが狙いである。

それを思いついた後の、みほの行動は早かった。
次の瞬間には、市街地までの退却経路を頭の中で割り出した。


「麻子さん。これより市街地まで退却します。私達がその先導役です。
 敵の追撃を受けながらの、かなり厳しい撤退戦になりますが・・・出来ますか?」

この作戦を実行するためにも、まずはこの陣地から僚車と共に脱出する必要がある。
敵の追撃を躱しながら、僚車を誘導し、市街地までの道程の荒野を走破しなければならない。

古来より、撤退は進攻よりも難しいと言われているが、勿論この場合も例外ではない。
当然、敵前での撤退には極めて大きな困難を伴う。

しかし、みほ問いに対して、麻子は自信を持って、言い切った。

「任せろ。 どこにだって行ってやる。」

麻子の操縦の腕前は、みほもよく知っているので、安心して任せることが出来る。




すると、みほは再びキューポラから身を乗り出し、周りを見渡した。
撤退命令を下す前に、改めて周囲の状況を確認するためである。


そして、作戦を実行に移そうとした、その時だった。


「ん?」

みほは、ある異変に気付いた。

(Eチームの様子がおかしい。)

ここで、みほはEチームの異常を察知した。

この時のM3中戦車は、迫ってくる敵に対して反撃をするわけでなく、回避機動をとるわけでもなく、ただその場でじっとしていた。
他の車輌は皆、混乱しながらも敵に応戦しているのだが、Eチームはただ沈黙していたのである。
中で何かが起きていることは確かだが、外から見ただけでは内部の状態を窺い知ることはできない。


(まさか・・・!!)

この時、みほは気付いた。


そこで通信手の沙織に指示を出す。

「沙織さん。Eチームの状況確認を。」

「わかった。」

そう言うと、沙織は無線機で、回線を繋いだ。

「Eチーム、聞こえますか? 応答してください、Eチーム。」

沙織が無線で呼びかけたが返答が無かった。

「コウちゃん。 Eチームから応答がないよ。」


沙織のこの言葉を聞いた時、みほは確信した。

「やっぱり・・・・・。」

「どういうこと?」

状況がよく呑み込めていない沙織が、首を傾げた。



「彼女達は今、パニックを起こしてしまっている。」

「えっ!!」

まるで、実際にその目で見たかのように断言するみほの言葉に、沙織は驚いた。
ただ通信に応答がなかった・・・たったそれだけで、外からでは見えないM3中戦車の内部状況を瞬時に推測したのだ。


「応答がないのは、パニックに陥った通信手が無線機を投げ出してしまっているからでしょう。
 反撃も回避もしないのは操縦手や砲手がまともに動けなくなっているからです。
 あの様子だと、おそらく車長も、車内の統率ができなくなっている可能性が高い。」

その推測は、みほの戦車道の経験から導き出されるものであった。
戦い慣れしていない新人が、戦闘中にパニックを起こして、ちゃんと動けなくなるという事が、たまにある。
実際、みほもかつてそういう人を見たことがある。
だからこそ、Eチームの挙動を見ただけでも、経験則でわかった。

直撃こそしていないものの、次々と叩き込まれる砲撃。
その衝撃や爆音で揺さぶられる恐怖というものは相当なものである。
いくら装甲で守られているとはいえ、慣れていない者が、いきなりそのようなものに曝されれば、パニックを起こすというのは十分にあり得ることであった。


「やばいじゃん! どうするの!?」

沙織が慌てて聞いてきたが、そんな彼女とは対照的にみほは落ち着いていた。
問われるまでもなく、みほの決断はとうに決まっていたのである。


「これよりEチームの救援に向かいます。」

そう言うとみほは素早く、指示を出した。

「麻子さん。車体をM3の隣に横付けして下さい。」

「ああ。わかった。」

みほの指示を受けた麻子は、車体を旋回させると、そのままアクセルを踏み込んだ。


砲声が鳴り止まぬ中、みほ達はEチームを助けるために、走ったのだった。


今回はここまでです。
散々待たせておいた割には短いですけど・・・・。

乙です

Eチームはまだ逃げ出して無いか
桃ちゃんも落ち着きなよ

桃ちゃんは謝れるだけに本編よりもマシやな

それよりも、桃ちゃんの凄いところは、「撃て!撃てーーー!!」と叫びながら
自分で砲弾を装填して、自分で打っている所です

叫びながらですよ?

流石に軍神立ちはやらなかったか

ここからの撤退戦に期待

ギリッとする、まほの後ろに赤星がニマニマとみている

弐尉マルコ先生の新刊でたな
この話では、忍と丸山が良かったな

丸山に会ったのが忍ではなく、小次郎(みほ)だったらどうなってたんやろ?

みほがエリカの誕生日を祝うネタを考えてみたが
エリカの誕生日が設定されてなかった件

続きまだー?

今週の笑う神様は、大洗の水族館「アクアワールド」に行ってたみたい
そこは、飼育している鮫の種類が日本一多い水族館だとか

みほも誰かと一緒に行っていそうやな

今さらだが353でみほの台詞が私になってるのは仕様?

そういえば、小次郎君(みほ)は、僕呼びでしたね

まあ、試合マジモードかうっかり抜けきれなかった女性の癖
というか、バレフラグを残す感じでしょうな

投下から一月

生存報告を願います



>>367 >>368
すいません。それはただのミスです。
言われるまで気付かなかった。以後気を付けます。
というわけで、修正します。


×「麻子さん。これより市街地まで退却します。私達がその先導役です。

○「麻子さん。これより市街地まで退却します。僕達がその先導役です。

生存報告乙です

今日はクリスマス
みほも誰かとクリスマスデートしてたりするんやろな
 
エリカとか

河嶋「小次郎、私と一緒にクリスマスディナー食べにいかないか?私がおごるぞ」

エリカ「小次郎、新年明けましておめでとう」
みほ「うん、おめでとう。あ、それと良かったら僕と一緒に初詣いきませんか?」


今さらになって誤字を見つけました。


>>353

×桃は相変わらずトリガーハッピー状態で、状況判断が出来ていないが、彼女以外の物は、

○桃は相変わらずトリガーハッピー状態で、状況判断が出来ていないが、彼女以外の者は、



投下は今日の深夜1時くらいにします。

了解



>>359
一年生チームのこれからにご期待ください。
そして、桃ちゃんが落ち着きが無いのは仕様です。



>>360
桃ちゃん、装填手としては結構優秀なんですよね。ただ、砲手としては・・・・・・。



>>361
軍神立ちは、言うなれば切り札の必殺技みたいなものだから、どこで出すかが悩み所です。



>>362
345の妄想ネタの事ですね。ただ私は、赤星もギリッとすると思いますが・・・。



>>363
みほがおやつにきんつばを食べようとしたその時、ふと隣を見ると、すぐ傍に丸山がいて、じっとこっちを見ている。
全く気配が無く、突然に現れたので、みほはビックリ。
そして、よく見ると、丸山がとても物欲しそうな目をしている事に気づいたみほは、持っていたきんつばを彼女に与えてみる。
すると、丸山はとっても美味しそうに食べる。
この事がきっかけでみほと丸山は仲良くなり、それまで無表情な事が多かった丸山は、次第に笑顔が増えていく。

多分こんな感じになると思う。



>>364
エリカのことだから、きっと内心大喜びしながらも意地を張って、照れ隠しするに違いない。



>>366
みほは皆で一緒に行きたがると思う。
そして、アザラシを見て、何故か沙織を連想してしまう一同。



>>372
顔を真っ赤にしながらデートに誘うエリカの姿が目に浮かぶ。



>>373
桃ちゃんここでナンパする~?



>>374
二人で神社のおみくじを引くんだろうけど、なんとなく、エリカは凶を引きそうな気がする。





それでは、これより今年最初の投下を開始します。
それではパンツァーフォー!!

すいません。
ここにきて、ミスが出てきてしまいました。

修正しますので、もうしばらくお待ち下さい。




Eチームの一年生達は恐慌状態に見舞われていたのだった。

戦闘が始まった途端に襲い掛かってきた、耳をつんざくような爆音や衝撃。
激震で揺さぶられる事による恐怖は凄まじいものであり、彼女達はあっという間にパニック状態に陥ってしまう。


「きゃああああ!!」

「いやあああああああ!!!」

あゆみ、あやが悲鳴を上げる。


「怖いよぅ・・・・。」

優季は通信機を投げ出し、体を縮こまらせながらガタガタと震え上がっていた。


「うぅ・・・・もういやぁ・・・・。」

桂利奈は泣きながら、蹲っている。


このように、車内はまさに収拾不能な混乱状態である。
このような状態ではまともな応戦など出来る筈もなかった。


「み、皆・・・落ち着いて!!」

車長の梓が必死で皆を宥めようとするが、どうにもならない。
それだけ彼女達の恐怖や混乱は極限に達していた。
これでは敵前逃亡が発生してもおかしくない状態である。




そして、そうこうしているうちにグロリアーナの戦車が目前にまで迫って来る。

梓がキューポラの視察口から外を見ると、迫りくる戦車の中の一両が、こちらに砲身を向け、今まさに発砲しようとしているのが見えた。
彼女は戦慄する。

「ひぃっ!!」


威圧感を放つ敵戦車の砲口を見た瞬間、梓は恐ろしさのあまり体が竦み上がる。



もはや、彼女達には何も出来ず、このまま為す術なく撃破されてしまうかに思われた。





しかし、その時・・・・・・






「撃てっ!!」



突如、一発の榴弾が飛来し、敵戦車の前方で炸裂。
敵の視界を遮るように、爆炎を上げた。


「えっ!!?」

梓は一瞬、何が起きたのか分からなかった。
しかし、彼女が目を白黒させている間に、一両の戦車が走ってきて、自分達と敵との間に割って入る。

その車輌はAチームのはⅣ号戦車だった。




そして、その車上から身を乗り出し、姿を見せていたのは・・・・・・




「隊長!!」

梓は思わす叫んだ。

そう・・・彼女達のピンチに、颯爽と現れたのは、隊長の西住みほである。

その後姿を見た時に、梓はすぐに理解した。
みほが助けに来てくれたという事を。





「スモーク散布。」

みほがそう言うと、Ⅳ号戦車に装備されていたスモークディスチャージャーから発煙弾が一斉に射出され、空中で炸裂した。
次々と白煙を大量に撒き散らしていき、煙幕を展開していく。

突然に視界を遮られた敵チームは、その進攻を一旦止めた。
その隙に、みほは態勢の立て直しを図る。

操縦手の麻子に指示を出して、Ⅳ号戦車をM3中戦車リーの隣に移動させた。
キューポラから身を乗り出しながら、呼びかける。


「Eチームの皆さん、大丈夫ですか?」

「・・・・・・・・・・・あっ、そうだ! 優季ちゃん、無線!!」

目の前で繰り広げられた急な展開に、思わず呆然としてしまっていた梓は、呼びかけられて、ハッとした。
そしてこの時、通信手が無線機を投げ出していたことに、梓は気づく。
すぐさま、通信手の優季に指示を出した。


混乱のあまり、思わず無線機を投げ出してしまっていた優季も、この時になって我に返る。
そして彼女は慌てて通信回線を繋ぎ直した。


「こ、こちらEチーム。」

梓が応答すると、無線機越しにみほの声が聞こえてきた。

「みんな無事ですか?」

「はい。大丈夫です。」



無事を確認したみほは、続けざまに指示を出した。

「今のうちに、後ろに下がりましょう。  大丈夫・・・・・落ち着いて、僕達の後に付いて来て下さい。」

それは宥めるような優しい声色である。
その、みほの声のおかげで梓達は落ち着きを取り戻す事が出来た。

「了解です。」

そう言うと、梓は操縦手に指示を出した。


「桂利奈ちゃん、先輩達について行って。」

「うん。」

梓の指示通りに、操縦手の桂利奈がM3を走らせ、Ⅳ号戦車に随伴させる。


その時の彼女達には、先ほどまでのような狼狽などはどこにも無かった。
さっきまでの混乱がまるで嘘のように、各員が冷静に行動できている。

これはひとえに、みほの行動によるところが大きかった。

みほ達がEチームを庇うように、敵との間に割って入った時、その時に梓達が見た、みほの背中・・・それはとても頼もしさを感じさせるような後姿だった。
恐怖に怯えていた彼女達にとって、それは非常に心強いものであり、強い安心感をもたらした。
だから彼女達は冷静さを取り戻す事が出来たのである。

そのおかげでEチームを救援し、脱落を防ぐ事に成功した。


未だ窮地である事に変わりはないが、何にせよ、これでいよいよ撤退を開始することが出来る。


梓達がちゃんと後から付いて来ている事を確認したみほは、全チームに連絡した。

「Aチームより各車へ。これより陣地を放棄・・・撤退します。」


「了解!」

「心得た!」

以前から助けを求めるかのように隊長の指示を仰いでいた典子とエルヴィンは、待ってましたと言わんばかりに即答した。


「何ぃ! 許さんぞ!! 敵前逃亡は士道不覚g「桃ちゃ~ん、ちょっと黙ってようか。」

「ムグッ!」

「ここは西住君に任せようよ。」 

ここにきても未だトリガーハッピー状態で、状況が全く見えていない桃が異論を差し挟もうとしたが、機転を利かせた杏が彼女の口を手で塞いで強制的に黙らせた。



「市街地まで退却します。Aチームが先導しますので、全車両は後について来てください。」

みほの指示とともに、撤退が開始された。
先導役であるAチームに、続々と追随していく大洗チーム。


その時の各車の動きに、大きな乱れは見られなかった。
それは彼女達が混乱状態から立ち直った証拠である。
Eチームの1年生達が、みほのおかげで落ち着きを取り戻したのと同様に、他のチームもまた、みほの指示の下で、士気を回復した。

みほは、総崩れになりかけていた態勢を、見事に立て直す事に成功したのだった。





こうして、戦局は次の段階へ移行した。
全速力で撤退しようとする大洗チームと、それを追うグロリアーナチームとの追撃戦である。



みほは後続の車輌を見渡し、ちゃんと付いて来れているかを確認した。
敵の追撃を振り切りつつ、仲間達が逸れずに付いて来れるように速度を調整し、それで尚且つ進行ルートを操縦手の麻子に指示しなければならない。
それは決して簡単な作業ではないのだが、みほは非常に手馴れており、チーム全体を上手く統制出来ていた。


敵も猛烈な攻撃を仕掛けてきているが、それを何とか躱しつつ、一同は全力で荒野を疾走して行く。

そして遂には敵を振り切ったのだった。


 ・

 ・

 ・

 ・


「街が見えてきた。」

みほが呟く。


今、彼女達は市街地のすぐ近くにまで来ていた。
斯くして、彼女達は一人の脱落者も出さずに、無事に目的地に辿り着いたのである。

早速、大洗チームは市街地に突入。
待ち伏せ攻撃の準備に入った。







「B、Eチームはそのまま突き当りまで直進。Dチームは路地裏に入って下さい。」

みほは市街地の地図を見ながら、各チームに指示を出し、入念に布陣させていく。


「ん?」

ここで、みほはある物に気づく。
それは彼女の前方に見えてきた、ある建物である。
どうやら、それは機械式の地下駐車場のようだった。


「そうだ。」

それを見た時、みほは閃いた。

「この駐車場、利用できそう。」

乙です



このように、みほは策を練り、念入りに戦車を配置していき、待ち伏せの態勢を整えていった。







一方、その頃のダージリン達は・・・・


乙  

杏が桃ちゃんの口を防ぐ時のセリフは

かーしまの方がよかったかも

>>386
ゆずが口塞いだのかと思って流してたわ


「敵は街に逃げ込んだようです。」

「そのようね。 ・・・全車、市街に突入。 敵を狩り出しにいくわよ。」

オレンジペコに相槌を打つと、ダージリンは市街地への突入を命じた。


(予想外の抵抗を見せてきたけど、それもここまでよ。)

丘の上で交戦した時点で、一気に全車両を仕留められると思ったダージリン達だったが、結果的に取り逃がした事は誤算であった。
しかし、それでも自分達が圧倒的優勢であることに変わりはない。
実際、グロリアーナ側は一両の損害も出てはいないのだから。

先ほどの撤退だって、彼女達の目には、ただ逃げるので精一杯だったようにしか見えなかった。



「例の、あの男子の事は気がかりですが・・・・結局の所、彼女達は“羊の群れ”にすぎないようですね。」

アッサムが言ったことに対して、ダージリンも大方同感であった。


この時のダージリン達の脳裏にあったのは西住みほの事である。

砲撃戦の最中に、勇猛にもキューポラから身を乗り出し、その身を晒したみほ。
その姿はとても印象深く、大洗チームの中で明らかに異彩を放つ存在であった。


(しかし、彼がいかに優れた戦車乗りであったとしても、それでもチーム全体で見れば、ただの“羊の群れ”。私達の敵ではありませんわ。)

ダージリン達の大洗に対する評価は変わらず、西住みほの事を考慮しても、アッサムが例えたように、“羊の群れ”程度でしかないという認識である。
だから少々予想外な事が起きても、そこは変わらなかった。






ダージリン達は知らなかった。
その西住みほが、“羊の群れ”の中に紛れ込んだ一匹の“狼”であるということを・・・。

ダージリン達も、そこまでは見抜けなかった。
だから、この先に巧妙な罠が張られている事など、彼女達は知る由もなく、そのまま“狼の狩り場”足を踏み入れてしまうのである。




“狼”が牙を剥く瞬間が迫っていた。






今回はここまでです。

何か羊という単語が妙に多くなってしまったような気が・・・・。
まあ、今年は羊年だけど。

アンコウチームとエリカでジンギスカンしようぜ!

乙です

丸山はぼーっとしていた

まほ「みほのアンコウ踊りはまだか!?」←カメラスタンバイ済み

小次郎のあんこうスーツは股間がもっこりしてるのかな

>>395
わざわざカップを入れるのか

双頭ディ…なんか外からキャタの音が聞こえてきたわ

「スモーク散布」

スモークがばらまかれて、煙が晴れてみれば


「やあ(*・ω・)ノ(クポーン)」
ヒルドルブがマシンガン構えていた

>>398
スレチ

戦車乗りエースである、オットー・カリウスさんが亡くなったそうです

>>400
確認してきた
昨日か…

生存報告を

マダー?

>>403
上げんなカス

そろそろ、スレが落ちそうなんで生存報告だけでもお願いします。

生存報告。
まだ、時間がかかりそうです。

報告乙

把握

最初から読みました。
すごく面白いので、続きお願いします!!

二ヶ月経過前にそろそろ生存報告だけでもお願いします

生存報告。
来週末までには何とか投下したいんですが・・・。

待ってます!!

待ってる

これは期待ぜよ

マダカナー


  バン   はよ
バン (∩`・ω・) バン はよ
  / ミつ/ ̄ ̄ ̄/
  ̄ ̄\/___/

期待


大変長らくお待たせしました。ていうか待たせすぎ!!
本当にすいませんでした。(土下座)



まずはレス返しを先にして、投下は明日(正確には今日)の夜9時頃にします。




>>391
食われるじゃないですか!やだー



>>393
丸山は基本どんな状況でもボーっとしてます。ある意味、物凄く肝が据わっています。



>>394
まほェ・・・
そろそろ自重しないと、しほさんからお叱りを受けますよ。



>>395 >>396 >>397
憲兵さん!こっちです!!


>>398
どう考えても、戦車道レギュレーション違反です本当にありがとうございました。


待ってる

やったぜ

生きてたか、良かった

しほさんならみほのアンコウ踊りにTV局呼んでたよ

ガルパン完全新作映画化記念で>>1も復活したか、いいことだ


これより投下を開始します。



市街地に突入したダージリン達は、手分けして敵を狩り出すことにした。
まずは散開して、索敵しつつ前進し、見つけ次第撃滅していくやり方である。



この時のダージリン達は、知らなかった。
敵が罠を張り巡らせ、手薬煉引いて待ち構えている事など・・・。







グロリアーナチームの3番車であるマチルダが、一両で街路を進んでいく。

「一体、どこに隠れている?」



その時、彼女達は路地に潜む敵の存在に気づかないままに前進してしまった。
そして敵の前にその無防備な側面を晒してしまう。



そして・・・


「ファイエルッ!!」

「何っ!?」

エルヴィンの叫びと共に、Ⅲ突の砲口が火を噴く。
至近距離から撃ち出された砲弾が、マチルダの側面装甲を穿った。

すると、撃破判定装置が作動し、白旗が上がる。

Ⅲ号突撃砲の長砲身75ミリ砲が、その威力をいかんなく発揮したのだった。



「こちら、Dチーム。敵一両撃破!」

エルヴィンは嬉々として、戦果報告をした。


「西住隊長の読み通りだったな。まさにドンピシャだ。」

カエサルが言ったように、この場所での待ち伏せ攻撃をするように指示したのは、みほである。
みほは、敵がどのルートで進行してくるかをあらかじめ推測し、待ち伏せの場所を、カエサル達に指示していた。

そして、その読みは見事に的中したのである。


敵は、みほが予想した通りの進行経路でやって来て、そして罠にかかったのだった。






そしてその頃、別の場所でもまた、一両のマチルダが罠にかかろうとしていた。



それは街路を走行していたマチルダが、駐車場の前を通りかかった時であった。

突如、駐車場のブザーが鳴る。

「ん?」

その音に気づいた彼女が、駐車場の方に目を向けると、車庫の扉のでランプが点灯していた。
彼女は即座に、その中に敵戦車がいると判断する。


「こんな所に隠れていたか。」

彼女達はすぐさま、マチルダを扉の前に移動させた。


「フッ・・・・馬鹿め。」

扉が開いた瞬間に、中にいる敵に一撃を叩き込むべく、砲口を向ける。



しかし・・・




「え?」

彼女は目を見張った。
扉が開いた車庫の中は、もぬけのからだったからだ。


「あれ? いない?」

ここで獲物を仕留められると思っていた彼女達は肩透かしをくらったようだった。
そして、この時点ではまだ、自分達が罠にかかってしまったという事に気づいていない。

そんな彼女達の背後で昇降機が地面の中から、せり上がって来た。
そして、その中から出てきたのは、Cチームの八九式中戦車。


そう、これが罠である。

八九式戦車が昇降機の中に身を潜めて、敵が背を向けた所に、奇襲攻撃をかける作戦。
空の車庫のブザーが鳴り響くように仕向け、それを囮にして敵を引き付け、背後を取る。
相手が囮に気を取られている隙に、背面装甲に零距離射撃を叩き込むという策である。


「はっ!! まずい、後ろだ!」

ここにきて、ようやく彼女達も背後にいる八九式に気付いた。

しかし、すでに遅い。
その時にはすでに、八九式戦車が発砲する寸前だった。




「いくよっ!」

「「「そーれっ!!」」」

典子の掛け声と共に、発砲。放たれた砲弾が敵戦車に炸裂した。
敵車輌から爆炎が上がる。


「Bクイック大成功!」

典子達が歓声を上げる。
この時、彼女達は炎上するマチルダを見て、作戦の成功を確信した。


しかし・・・・



「あれ!?」

火が鎮まると、そこにあったのは、こちらに砲塔を向けているマチルダの姿だった。


「生きてる!?」


典子達はさっきの攻撃で敵を撃破したとばかり思っていたが、彼女達の撃った砲弾はマチルダの外装燃料タンクを破壊しただけだった。
戦車本体は破壊できておらず、戦闘能力は健在である。
完全に仕留め損ねてしまったのだ。




目の前にはマチルダの、威圧感を放つ砲口。
まるで、お返しと言わんばかりに、こちらに向いている。


眼前に突き付けられた砲口が、今まさに火を噴こうとしていた。



ところが、その直後。
マチルダが発砲するよりも先に、突如、飛来した砲弾がマチルダの側面装甲に着弾した。


再び爆炎が上がる。
今度は外装タンクではなく、戦車本体を確かに射抜いていた。
撃破判定装置が作動し、白旗が上がる。
今度こそは撃破成功だった。



そして、そこにあったのは、砲身から硝煙を漂わせるⅣ号戦車と、キューポラに佇む、西住みほの姿であった。
仕留めたのは、みほ達Aチームである。


「敵、マチルダ1両撃破。 これで2両倒して、残りはあと3両。」

見事に敵を倒しても、みほは一喜一憂する事無く、ただ淡々と告げた。


そう・・・みほは最初から、この事態を見越していたのだった。

駐車場を上手く利用しての、八九式による奇襲攻撃。
そして第一撃で撃破出来ない事すら、みほは端から計算に入れていた。
その上で、みほ達Aチームは身を隠しておき、Cチームが攻撃を仕掛けた後、敵がCチームの方に気を取られている間に出て行って、仕留め損ねた敵にAチームが止めを刺す。

まさに抜かり無い、2段構えでの作戦である。



こうして、みほの策が見事に嵌り、大洗チームはグロリアーナチームの車輌を一挙に2両撃破。
5対3と優勢に立った。









「隊長! 1番車と3番車がやられました!!」

「なっ!!?」

そして、その頃のダージリン達は、全く予期していなかった事態に、度肝を貫かれる。

オレンジペコの報告に、ダージリンは驚愕し、思わず紅茶のカップを落としてしまう程に狼狽した。


ここにきて彼女達は大洗チームに対する認識を改めた。

たとえ個々の技量で大きく劣っていても、指揮官の手腕次第では、実力以上の力を発揮できる事もある。
状況からして、大洗チームが優秀な指揮官に統率されている事は明白だった。



(おそらく敵の指揮官は、例のあの男の子。 どうやら私達の想像以上に、やり手のようね。)

ダージリンはすぐさま無線機を取ると、全車に告げた。

「態勢を立て直すわ。全車はただちにポイントαに集合。」


ここにきて、ダージリン達は改めて気を引き締め直した。

(こんな牙を隠し持っていたなんて・・・・。 “羊狩り”の筈が、まさか、ここにきて“狼狩り”になるとは・・・。)


この時のダージリンは、まさに“狼”と対峙するような気分だった。
油断大敵。
少しでも油断して、隙を見せれば、たちまち喰われる。

この先、どんな罠を仕掛けられているか分からない。
故に、ここからはもう毛ほども油断してはいけない・・・そう自らに言い聞かせるのであった。

今回はここまでです。


一応細かいこと言うとファイエルではなくフォイヤーだな

乙です

『マチルダ戦闘不能』


「……桃ちゃんまだ直らないの?」 
「桃ちゃんって言うな!」

『マチルダ戦闘不能』


「……桃ちゃんまだ直らないの?」 
「桃ちゃんって言うな!」

みほが淡々と作戦をとっているところに皆が惚れそうな予感

弐尉マルコの新刊でたが、VDネタで
まほのみほ愛伝説がまた刻まれたで

>>431
まほ「小次郎の歴史が、また1ページ」

狼とよばれた小次郎

嘘つきは一つだけという

人狼と呼ばれたみほ

投下の目処が立ったので報告いたします。
明日、7/11、午後10時頃に投下いたします。レス返しもその時に・・・。

ちなみに、今回で聖グロリアーナ戦に決着がつきます。

報告乙

やったぜ
そして西住殿はあんこう踊りをすることになるのか

すいません。予定よりちょっと遅くなります。


夜12時ごろに変更させてください。

重ね重ね申し訳ありません。

今日中に投下する予定だったのが、思うように作業が進まず、完成させる事ができませんでした。
ですのでまことに勝手ながら、投下を延期させてください。

月曜の午前1時までには完成させます。

ぉk
あまり気負わないでくださいね

こんな言葉を知ってる?





夏の暑い日に汗を沢山かいた後のビールはうまい
焦らされる方が楽しみが増すのよ。

こんな習慣知ってる?


戦車道の試合で負けた学校・チームは、一日中アンコウ踊りされることを

このことを知っているか?


妹のパンツを顔に被ると最高になれるということを!     byまほ

楽しみなssではあるんだけど、この投稿スピード。終わりは何年掛かるんや…想像すると怖い。

保守


遅れてすいません。
やっぱ見切り発車ってだめですね。

まずはレス返しからです。



>>422
ちょ、おまwww


>>435
そりゃあ、もう頼もしい限りでしょうからね。


>>438
>>439
まさに狼の如し。油断すればたちまち食われます。



>>445
>>446
そのようにフォローしていただけると、本当に助かります。



>>447
それはごく一部だけの特殊例ですwww



>>448
知っているか?
そんな事をすると、捕まるという事を・・・。



前回までのあらすじ



羊「メェ~」

ダージリン「あら、可愛い子羊さん。」


羊「」バリバリ

ダージリン「!!」




狼「ガルルルル!!」

ダージリン「あら、やだ! 羊の皮を被った狼だったのね!!」



以上、前回までのあらすじでした。(適当)




では、ここから本編です。




聖グロリアーナ女学院と県立大洗学園の試合は、いよいよ佳境に突入した。

序盤では圧倒的劣勢に立たされていた大洗が、巧妙な奇策でまさかの先制。
マチルダ2両を撃破し、5対3と一気に優勢になった。

予想だにしなかった番狂わせの予感に、会場は大いに盛り上がっている。
大洗学園戦車道復活の報を聞いて、会場に詰めかけた地元の観客達は沸き立ち、そして同時に、大洗チームの者達も大いに士気を高めていた。


そんな中、みほは思案する。

(優勢に立ったとは言え、まだ気は抜けない。)



その時、みほ達の下に通信が入った。


「隊長、こちらDチーム。敵、マチルダ1両を発見した。すぐ近くの交差点で停まっている。」

それはDチームのエルヴィンからだった。
エルヴィンが言うには、Ⅲ突が隠れている場所の、すぐ近くにある交差点でマチルダ1両が停車している、との事だった。


「敵はこちらに気付いていないようだ。こっち側に背を向けている。今、路地から出て攻撃すれば背後を突ける筈。 隊長・・・・許可を。」

「分かりました。くれぐれも慎重に。」

「了解。」

そう言うと、エルヴィン達の乗るⅢ号突撃砲は隠れていた路地から表の街路へと出る。
操縦手のおりょうが車体を旋回させ、砲手の左衛門佐が照準を合わせ、マチルダの背へ、その砲を向けた。

「これで撃破スコア2両目だ。」

そう言うと、左衛門佐は獲物を仕留めるべく、トリガーに指をかけた。




しかし、その引き金を引くより前に、突如として激しい衝撃が彼女達を襲う。

「うわっ!! 何だ!?」

エルヴィンが驚き、叫んだ。

撃破判定装置が作動し、白旗が上がる。


突然の出来事で、彼女達も一瞬、何が起きたか分からなかったが、直後に彼女達はすぐに理解する。
エルヴィンがキューポラの視察口越しに後ろの方を見ると、そこにはいつの間に現れたのか、もう1両のマチルダが砲口から硝煙を漂わせながら鎮座していた。

「しまった!! これは罠か。」

エルヴィン達はすぐに気付く。
交差点の所で停まっていた敵戦車は、身を潜めている自分達を引きずり出すための囮であった。
その囮に喰らいつこうとした所を、隠れていたもう1両のマチルダが出て行って仕留める、という連携プレイである。

「くっ・・・・・隊長。こちらDチーム、戦闘不能。」

エルヴィンはすぐさま、その旨をみほに報告した。



(敵の攻め方が変わった。)

みほは即座に、敵の一連の動きを分析した。

(グロリアーナチームはこれまで、格下のチームが相手という事で、少なからず油断してたのかもしれない。でも、おそらくその認識は、もう改めたのでしょう。
 その上で、本気で僕達を粉砕しにきている。)


みほは素早く、そして的確に状況を分析した。


「とりあえず、ここから移動しましょう。 麻子さん・・ここから街路を通ってポイントB3への移動を。」

「了解。」

操縦手の麻子にそう言ったみほは、そのまま無線機で各チームへ指示を出した。

「Aチームより各車へ。ここからは作戦を変更します。」


みほの指示の下、各チームは素早く移動を開始した。

(相手が攻め方を変えてきた以上、こちら側の作戦も柔軟に変更しなくては・・・。)

そう考えたみほは、ここで陣形を大きく変更する事にしたのであった。




しかし、ここでアクシデントが起こる。


Ⅳ号戦車が曲がり角に差し掛かった時、みほの視界にある物が飛び込んできた。
緑色の無骨な形状をした物体である。

「あっ!!」

そこで、みほが見た物・・・それは歩兵戦車チャーチルMk.Ⅶだった。
突然の遭遇である。


「見つけましたわ!!」

ダージリンも思わず、大声で言った。
相手側にとっても不意の遭遇だったようだ。



「まずい、見つかった!!」

そう言うと、みほは即座に操縦手の麻子に命令を出した。

「全速前進ッ!!!」


すぐさまⅣ号戦車は急加速した。
ダージリン達はすかさず、これを追跡した。

「逃がさないわ。」

ダージリンは追撃命令を出すと同時に、無線機で僚車を呼び寄せた。

「2番車と4番車は至急、こちらに合流!! ここで、敵のⅣ号を仕留めるわよ。」


ダージリン達にとってⅣ号戦車は最優先攻撃目標であった。
何故なら、彼女達はみほが大洗チームの指揮官だという事をちゃんと認識していたからだ。

彼女達は、2両もの僚車を屠ったみほのその手腕に大きな脅威を感じていた。
敵に優秀な指揮官がいれば、それを優先して叩くのがセオリーである。
だからこの好機を逃すなと言わんばかりに、全車両での追撃をかけてきたのであった。




こうして突如、戦車によるカーチェイスが始まる。

全速度走行で追跡しながら攻撃してくるダージリン達。
そして、それを何とか躱しつつ、砲塔を後ろに向け応射しながら全力で振り切ろうと疾走するみほ達。

しかも、しばらくするとグロリアーナチームのマチルダ2両が途中からダージリン達と合流。
3両の戦車で追われる事になった。


「何とかここで振り切らないと・・・・・ん?」

その時、みほは前方にある物を見つけた。


「しまった!」

そこにあったのは、道路を塞ぐフェンスと「工事中」と書かれた看板であった。
水道管工事かなにかの途中だったのか、地面が大きく掘り下げられ陥没している。

これでは通行は出来ない。
地図には載ってない、思わぬ落とし穴であった。

その場で停車し、すぐにUターンしたが、もう遅かった。
後からやって来たダージリン達に追いつかれてしまった。


「くっ・・・・。」

みほの目の前で、立ち塞がるように3両の敵戦車が停まり、こちらに砲口を向けてきた。
今にも火を噴きそうである。

退路を断たれ、完全に袋の鼠であった。



「フフ・・・勝負あったわね。」

すると、チャーチルのキューポラから、ダージリンが出てきて言った。
追い詰めて、勝利を確信したためか、すぐには撃たず、余裕の笑みを浮かべながら、みほ達に向って言う。

「こんな格言を知ってるかしら? イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばない、と・・・。」



しかしこの時、ダージリンの言葉はみほの耳には一切入っていなかった。

(敵の第一射さえ、なんとか凌ぐ事が出来れば、ここから脱出できるのだが・・・・。)

みほはこの絶体絶命ともいえる状況でも、冷静にその頭脳をフル回転させ、この窮地からの打開策を模索していたのである。




すると、ここで思わぬ事態が発生した。

ダージリン達が今まさにトリガーを引こうというその時・・・



「参上ー!」

それは角谷杏の声だった。

「助けに来たぞ!」

河嶋桃の声も聞こえる。

その声と共に突如、脇道から金色に輝く車輌が現れた。
それはBチームの38(t)戦車である。

杏達達は突如、路地裏から飛び出して来ると、ダージリン達とみほ達との間に割って入った。
そして素早くチャーチルに接近し、その砲口を突き付ける。


「発射アァッ!!!」

すかさず砲手の桃が、気合のこもった叫びと共に引き金を引き、発砲。

撃ち出された砲弾が敵を射抜く・・・・・






射抜くことはなかった。

「あ・・・・・・。」

桃は思わず言った。


「「「・・・・・・・???」」」

そして、その場にいた皆が唖然とした。
なんと、この距離で撃ったのにもかかわらず、外してしまったのだ。
至近距離からの接射であったのに、何をどう間違えたのか、外してしまう。
まさかのミスショットであった。


「桃ちゃん、ここで外す?」

柚子も呆然としたように言った。

そして、そんな彼女達には敵の、3つの砲口が向けられている。



次の瞬間、グロリアーナチーム戦車が一斉に砲撃。
たちまち38(t)戦車は大破し、戦闘不能になる。


「やーらーれーたー。」

杏がどこか気が抜けたような叫びをあげた。

そして、白旗が上がる。



しかし、次の瞬間にみほは動いた。

(これはチャンス!!)

みほは即座に次の一手を繰り出す。

「前進! 一撃離脱で、路地裏へ左折!!」



一見すると、Bチームはただ無駄にやられただけに見えた。
しかし、この時のBチームの行動は結果的にチャンスを作り出すことに成功している。
何故なら、Bチームは図らずも、相手のミスを誘発する事が出来たからだ。

この時、グロリアーナチームはみほ達の目の前で、突然現れた38(t)戦車へ向かって一斉に発砲してしまっていた。
そうする事によって、次弾装填までの間、一切攻撃が出来ない時間ができてしまう。

それは僅かな時間だが、その僅かな反撃チャンスをみほは見逃さなかった。



麻子は、みほの指示を即座に理解して、Ⅳ号戦車を急発進させ、正面にいるマチルダに迅速に接近。
すかさず華が引き金を引いて発砲。至近距離から発射された砲弾はマチルダの砲塔の付け根の部分に着弾する。


マチルダの車上に白旗が上がった。
これで3両目撃破である。敵チームの残りはあと2両。


そして間を置かずに、再発進。
左側の路地裏へと素早く逃げ込んだ。


「しまった!!」

ダージリンが気づいた時にはもう遅かった。
次弾装填が完了した時には、もうⅣ号戦車は脱出した後であった。


辛くも窮地を脱したみほ達。
ダージリン達は気を取り直し、再び追撃戦に移った。








とりあえず、ダージリン達を振り切ったみほ達だったが、このままではすぐにまた追い付いて来るだろう。

すると、みほ達の所に1両の戦車が走ってきた。

「隊長ー!!」

その声は、Cチームの磯辺典子の声であった。八九式中戦車のキューポラから身を乗り出し、みほ達の方へ手を振っている。

ダージリン達がすぐそこまで追って来ている筈だから、一息ついている暇などない。
みほはすぐさま次の手を打つ事にした。


「そこの丁字路で待ち伏せしましょう。」

そう言うと、みほは各員に指示を出した。

「Aチームはこっちの壁沿いに張り付きます。Cチームはその反対側の壁へ・・・。」


丁字路交差点の左右の壁沿いに、Ⅳ号戦車と八九式戦車がそれぞれ伏せた。



するとそこへ、みほ達を追ってやって来たマチルダとチャーチルが走ってくる。

「来た。攻撃用意。」

敵が交差点に差しかかろうとした時、みほは無線機越しで静かに言った。
砲手の華とあけびが、それぞれトリガーに指をかける。


「撃て!!」

みほの命令で、華はトリガーを引き、Ⅳ号戦車の主砲が火を噴いた。
撃ち出された砲弾はマチルダの側面を射抜く。

すぐさま車上に白旗が上がった。
撃破成功である。



すると、今度はチャーチルが典子達の前に現れた。

「撃てえっ!!」

「はい!!」

典子の号令と共に、あけびは引き金を引いた。
八九式の主砲から砲弾が撃ち出され、チャーチルの側面に着弾。

「弾かれた!」

典子は思わず叫んだ。

至近距離からの零距離射撃だったが、チャーチルの厚い装甲に弾かれてしまい有効弾にならず、撃破失敗だった。



チャーチルの砲塔が旋回し、八九式の方へ砲口が向けられた。
ここまでⅣ号戦車を最優先で叩こうとしていたダージリン達は、ここで一旦その矛先を変えてきたのである。
まず先に邪魔な八九式を仕留め、その後にじっくりとⅣ号を倒していく算段なのだろう。


「回避だ! 根性で避けろ!!」

典子が言った。

即座に八九式中戦車は回避機動をとった。
蛇行しながら迅速に後退する。




しかし、そんな八九式戦車を、チャーチルの砲火が捉えた。

「当たってしまったか・・・。」

典子が悔しそうに呟いた。


装甲の薄い八九式中戦車はひとたまりもなく、たちまち大破し戦闘不能となる。




Cチームの脱落によって、みほ達Aチームは、チャーチルと1対1で対峙する事になった。

間髪入れず、チャーチルの主砲がみほ達の方へ向けられる。


「回避!」

すぐにみほは回避機動をとる。


麻子の巧みな操縦もあって、敵の攻撃は当たらなかった。

直後にみほ達が反撃する。チャーチルめがけて発砲。

しかし、その攻撃はチャーチル装甲で弾かれてしまう。
間を置かず、敵の次の攻撃が来る前に、Ⅳ号戦車は素早く後退した。


「やはり主面装甲は貫けないか。」

みほは、改めてチャーチルの堅固な防御力を目の当たりにした。

Ⅳ号戦車の主砲では、チャーチルの正面装甲には全く通用しない。
何とか側面を突かない限りは、倒すことは出来ないだろう。

勿論、その事は敵も分かっている。
だから車体を旋回させ、常に相手に正面を向け続け、決して側面を晒そうとはしなかった。




ここで、みほは勝負に打って出た。

「ここで一気に仕掛けます。
 優花里さん・・HE(榴弾)装填。次、AP(徹甲弾)装填用意。」

「了解です!」

優花里は即座に榴弾を装填。続けて徹甲弾を取り出した。


みほの考えた戦法は以下の通り。
まず、敵戦車の前方至近距離で榴弾を炸裂させ、それを目くらましとする。
次に爆炎に紛れて、一気に敵めがけて突進。
そして素早く敵の側面に回り込み、至近距離から徹甲弾を叩き込む、というものだった。


みほはさっそく、その戦術を実行に移すべく各員に手早く指示を出していった。

「麻子さんは、合図をしたら一気に相手の左側面へ回り込んでください。」

「分かった。」

「華さんは合図と同時に砲塔を右へ向けてください。停止と同時に攻撃です。」

「はい。」

「優花里さん・・・次弾装填は迅速に。 出来ますね。」

「お任せください、西住殿。」




すると、そこにダージリン達がやって来た。
華は照準器のスコープ越しに、こちらに向かって走って来る敵戦車に狙いを定める。

その矢先、華が第一射を発砲。
発射された榴弾が敵の目の前の地面に着弾し、炸裂。爆炎を巻き上げた。

次に、麻子がアクセルを踏み込み、全速力で突撃。
一気に敵との間合いを詰めていく。


「今だ!」

そして、みほの合図で急旋回。
敵の側面に回り込もうとする。






しかし、その時にアッサムが素早く反応した。

「させるか!」

さすが熟練というべきか・・・・アッサムは、爆炎で視界が遮られる中、Ⅳ号戦車の影を目の端で捉えていたのである。
彼女が咄嗟にペダルを踏んで、迅速に砲塔を旋回させ、敵影を追う。

Ⅳ号戦車の主砲が敵戦車の側面装甲を捉えるのと、チャーチルの主砲がⅣ号戦車を捉えるのは、ほぼ同時だった。


次の瞬間、華とアッサムがトリガーを引き、2つの砲口が火を噴く。
轟音が鳴り響き、爆炎が上がった。
辺りが黒煙で覆われ、2両の戦車が覆い隠される。




そして、煙が晴れると、そこには一本の白旗があった。


「惜しかったわね。」

ダージリンは笑みを浮かべながら言った。


その白旗は、Ⅳ号戦車の車上に立っていたのである。
やられたのは、みほ達の方であった。


敵戦車の側面に回り込むことが出来たまでは良かったのだが、Ⅳ号戦車の砲撃は敵の装甲を貫くことは出来ず。
そして、ほぼ同時に発射されたチャーチルの主砲弾で射抜かれ、Ⅳ号戦車は大破してしまった。

みほ達の渾身の一撃は、あと一歩及ばず・・・遂にみほ達Aチームが脱落してしまう。


この時、ダージリン達は自分達の勝利を確信した。

初心者ばかりの新設チームにあって唯一の熟練者であった、みほを脱落させることが出来たのだ。
彼女達にとって一番厄介だった敵を倒した以上、あとに残るのは新米だけである。
あとは、その初心者を狩り出すだけだから容易い・・・ダージリン達はそう思った。




すると、ダージリンはふとⅣ号戦車の方を見た。

「ん?」

そこにあったのは、キューポラから身を乗り出した、みほの姿。
ダージリンは、そのみほの表情を見て、違和感を感じた。
何故なら、その顔には安堵の色が浮かんでいたからだ。
それはまるで、全て上手くいった、と言わんばかりの表情である。
やられた後に浮かべる表情にしては、明らかに何かがおかしい。




その直後であった。

突如、凄まじい轟音と衝撃が彼女達を襲う。


「なっ!!?」

ダージリンは驚愕する。

すぐさま判定装置が作動し、チャーチルに白旗が上がった。


「一体何が!?」

ダージリンは慌てて周囲を見渡す。

「あっ!!」

そこで彼女は見た。

二つの砲口から硝煙を燻らせる、M3中戦車を・・・。
Ⅳ号戦車に気を取られている間に、いつの間にか背後を取られていたのだ。

口径75ミリの主砲と37ミリの副砲を、装甲の薄い車体背面部に撃ち込まれたとあっては、ひとたまりもない。
当然、それは有効打となり、白旗が上がったのであった。


「そうか・・・・。これは罠だったのね・・・・。」

この時になって、ダージリンは悟った。
みほの表情・・・その真意に・・・。


失敗したと思われていた、みほ達の最後の攻撃・・・・それが実は失敗ではなく、この為の布石だったのだ。

あの時、みほ達はチャーチルに必死で応戦しながら、同時にある場所へ敵戦車を誘き寄せていた。
それはEチーム、梓達のM3中戦車が隠れ潜む場所である。


梓達がチャーチルの背後を突けるように、交戦しながら、その地点まで上手く誘導していったのだった。

更に言えば、ダージリン達が、大洗Aチームを最優先攻撃目標にしていた事を、みほは逆手に取って利用したのだ。
みほ達がダージリン達との遭遇戦になった際、敵が全車両で追撃をかけてきた。
それを見た時、みほはすぐに敵の狙いを看破する。

そして彼女達が、Ⅳ号戦車への攻撃に集中するあまり、その分、他の車輌に対する警戒が疎かになっていた事も、みほは見透かしていた。
それは、Eチームがノーマークで動き回れるという事を意味する。

その時点で、みほはこのシナリオを思い浮かべていたのだった。
敵が全力で自分を狙ってくるのなら、自分自身を囮にしてしまえば、確実に敵を釣れる。

Eチームを待ち伏せ攻撃に適した場所へ移動させ、自らを囮にして、その場所へ敵を誘い込んだ。
そして、その場所に敵が差しかかった所で、みほ達は渾身の一撃を敵に浴びる。
その攻撃で敵の足が止まった所で、隠れていたM3中戦車が背後からの攻撃で、ダージリン達のチャーチルを仕留めたのであった。

以上が事の顛末である。




みほ達のⅣ号戦車を倒した時には、ダージリンは勝利を確信したのだが、その直後に思い知らされた。
自分達が相手の策に嵌まってしまっていたという事を・・・・。

ここまで完璧にやられたら逆に清々しく感じられる。


「完敗ね・・・。」

ダージリンは一言呟いた。
この時に彼女の心境は、まさに感服である。

そして、それはダージリンだけではなく、グロリアーナチーム一同が同様であった。

「やられたわ・・・。」

「まさか彼らがここまでやるとは・・・。」

アッサムとオレンジペコも、舌を巻く思いであった。





こうして大洗学園と聖グロリアーナ女学院との試合は幕を閉じた。
結果は大洗学園の勝利である。








「やりましたよ、西住殿!! あのグロリアーナに勝つなんて!!」

「凄いよ、コウちゃん! 私達勝っちゃったよ!」

優花里や沙織が興奮気味に言う。


「やりましたね。小次郎さんのおかげです。」

「うむ。これは小次郎の作戦勝ちだな。」

華や麻子も、みほに称賛の言葉をかける。



「「「先輩ー!!」」」

そこに、Eチームの1年生達が、みほの所へ駆け寄ってきた。
彼女達も非常に興奮している。


「先輩! 私達やりましたよ!」

みほの傍へ駆け寄った梓が嬉々として言った。

隊長のみほから直々に、大役を任された1年生チーム。
そして見事に決めた彼女達は大いに喜んでいた。


「梓さん・・・よくやってくれました。」

「えへへ。」

憧れの隊長から誉められた梓は、その表情が緩ませずにはいられなかった。


「あー! 梓ちゃんずるい。」

「私も! 誉めて、誉めて!」

「じゃあ私も!」

「わ、私もがんばりました。」

あゆみ、桂利奈、あや、優季も、みほに誉めてもらいたくて、口々に言った。

「・・・・・・。」

沙希は何も言わなかったが、物欲しげな表情をしてみほの方を見ている。






その後、B、C、Dチームの面々も戻って来て、みほ達に合流した。

彼女達は互いの健闘を称えあったりして、盛り上がっている。






すると・・・・


「あなたが大洗の隊長ね。」

そこへ、ダージリンがやって来た。


彼女はアッサムとオレンジペコを引き連れて、みほの所へやって来た。

「あなたは・・・・。」

「初めまして。改めて・・・・私はグロリアーナの隊長、ダージリンよ。
 そしてこちらはチームメイトのアッサムとオレンジペコ。」

「初めまして。」

「お初にお目にかかります。以後お見知りおきを・・・。」

ダージリンに続いて、アッサムとオレンジペコも、礼儀正しく名乗った。



そしてダージリンは改めて、みほに問いかけた。

「あなた、お名前は?」

ダージリンから問われ、みほは答えた。

「西住小次郎です。」

「西住・・・? もしかして、あの西住家の? ・・・お姉さんとはずいぶん違った戦い方をするのね。」


すると、ダージリンは言った。

「素晴らしいチームね。 今日はとても楽しかったわ。」


それは、みほ達の事を認め、称える言葉である。
その言葉と共に、ダージリンはそっと右手を差し出し、握手を求めた。


「こちらこそ・・・今日は、ありがとうございました。」

みほも同じく右手を出し、応じる。
二人の間で握手が交わされた。


「あなた達とは、いつかまた戦ってみたいものですわ。」

ダージリンはそう言い残すと、アッサム達を引き連れ、去っていった。


そんな彼女達の背中を、ただ黙って見送るみほ達であった。



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 ・


その後、後片付けが始まる。
戦車道チームに同行していた自動車部のナカジマ達が、レッカー車での車輌回収作業を始めていた。


みほも手伝おうとしたのだが・・・


「いいよ。回収作業は私達自動車部でやっておくから・・・。
 それに小次郎君は地上の大洗に来たのは今回が初めてなんでしょ。こっちの方は私達に任せておいて、大洗の街を楽しんでおいでよ。」

 と言われたため、以前から大洗の街に興味があったみほは、そのお言葉に甘えて、Aチームのメンバー達と一緒に、街の散策へ繰り出すことにした。



「それじゃあ行こうか。 コウちゃん、この街に来るのは初めてだったよね。案内するよ。」

「ここの近くに戦車道ショップってありましたよね。」

「私、この辺の美味しい、お食事処、知ってますよ。」

沙織、優花里、華はノリノリだった。


すると、そんな皆をよそに、麻子は一人でどこかに行こうとする。

「私はここで・・・。」

「あれ? 麻子、どこ行くの?」

「おばあの所に顔出さないと殺される。」

「あぁ・・・・。麻子のお婆ちゃん、めっちゃ怖いもんね。」

どうやら麻子は一人、祖母に会いに行くようだ。
沙織がなんだか納得したように呟いた。


 ・

 ・

 ・

 ・

こうして、麻子と別れたみほ達一行は、楽しく談笑しながら街中を散策していった。


すると・・・


「あ・・・・。」

そこで沙織があるものに気付いた。

それは街中を走る一台の人力車。
沙織は、その人力車を牽引している男に注目した。

「あら、いい男じゃん。(コウちゃん程じゃないけど・・・。)」

そんな事を思いながら、その男を眺めていた沙織。
すると、彼がこちらの方へ振り向いた。

「あっ! 目が合っちゃった!」

その男は沙織達の方へ向くと、微笑み、こちらへ歩いてくる。

「こっち来た。 やだ、どうしよう。/////」



その時、華が口を開いた。

「新三郎。」

「え、何! 華の知り合い!?」

驚く沙織。
そんな彼女をよそに、彼は華の前まで来て、言った。

「お嬢。お久しぶりです。 お元気そうで何より・・・。」

そう言う男を、沙織は興味津々そうに見つめている。

そこで華が沙織達に言った。

「紹介します。 うちに奉公に来てくれている、新三郎よ。」

「初めまして。新三郎です。 お嬢がいつもお世話になっております。」

新三郎と名乗った男は、沙織達に挨拶した。



その時、人力車に乗っていた人が降りてきた。

その者は着物を身に纏った女性である。

「元気そうね。」

「お母様。」

その人は華の母、五十鈴百合だった。
和服がとても似合う女性である。


「そちらの方達は?」

百合は華に尋ねる。

「こちらは私のクラスメートです。」

「「初めまして。」」

みほと沙織が挨拶をする。
続けて優花里も名乗った。

「私はクラスが違うけど、五十鈴殿とは戦車道で一緒に・・・」




その時だった。
優花里の口から戦車道という言葉が出てきた時・・・・


「戦車道・・・?」

途端に百合の表情が険しくなった。


「それは一体どういう事?」

「それは・・・」

百合の問いかけに対し、華は言葉に詰まっている。

そこにいたみほ達は、急に場の雲行きが怪しくなってきた事を感じ取っていた。


すると百合は華の手を取って、においを嗅いだ。

「これは鉄と油の臭い! あなた、まさか戦車道を!?」

百合はその鋭い嗅覚で、華の手についていた微かな臭いを嗅ぎ取った。
途端にみるみる彼女の表情が青ざめていく。


「そんな・・・花を活けるための繊細な手で、戦車なんかに触れるなんて・・・・・・・・はぅっ・・・」

「お母様っ!!」

華は慌てた。
よほどショックだったのか・・・次の瞬間に、百合は気絶してしまった。


崩れ落ちる百合。
そのまま倒れそうになる。




「危ない!」

その時、みほが素早く動いた。
倒れ込む百合を咄嗟に受け止める。
地面に激突する寸前の所で百合の体を抱き留めた。


「奥様!!」

突然の事で、新三郎も狼狽していた。
沙織達も同様である。


そんな中、みほは冷静だった。
みほ百合を抱き留めたまま、容態の確認を行う。

「大丈夫。気を失っているだけです。」

幸い、大事には至らず。
その事を確認したみほは、百合を人力車の中に横たえると、すぐに指示を出した。


「新三郎さん・・家はこの近くにありますか?」

「え!? あ、はい・・・。」

「至急、搬送を。」

「は、はい!!」

狼狽していた新三郎も、みほの指示の下、迅速に動きだした。



こうして、突然のトラブルに見舞われた一同は、五十鈴家の邸宅へ向かったのであった。


今回はここまで。
試合にもようやく決着がつき、結末は大洗学園の勝利でした。

だから、あんこう踊りもありません。
ですので、みほ達のあんこう踊りを期待して、ずっとスタンバッていた方達・・・申し訳ありません。
というか、いくら胸をサラシでつぶしていても、あんな体のラインをはっきり浮かび上がらせるようなスーツなんて来たら絶対バレるわけで・・・・


次回はもう少し早く投稿できれば、と思うのですが・・・出来るかな?
出来る限りのことはやってみますが・・・。

乙です

乙!



まほ「小次郎は狼なのよ、気をつけなさい~!」
まほ「私の弟だから、諦めなさい~!!」
まほ「可愛い顔していても 心の中は 
オオカミが牙をむく そういうものよ」
また「この弟は大丈夫だなんて、うっかり信じたら、ダメダメダメ、駄目駄目よ!」
まほ「SOS!SOS!ほらほら呼んでいるわ、今日もまた誰か乙女のピンチ~!」

>アンコウ踊りはしません

まほ「ガッデム!!」ぐしゃ!←怒りのあまり手に持っていたカメラを破壊する音

乙です
今日はパンツの日だけど小次郎のパンツはダイジョブだろうか

立て乙でございます

これがウサギさんチームが重戦車キラーに開眼するきっかけになったという・・・・

みほ「だいじょうぶですか?」

ガシッ

みほ「!?」
百合「・・・ねえ。熟女に興味ない?」


こんなフラグを想像しましたww

榴弾使うなら、まず履帯を切らないと(WOT脳)

>>478
履帯重いんだぞー!!

三突よろしく待つ

まほ「泥棒猫の描写はまだか!?」

http://i.imgur.com/vnzAgH0.jpg

生存報告。

もう少し時間がかかりそうです。
出来れば今月中には投下したいんですが・・・。

待ってる

報告乙

待つのは嫌いじゃない

エリカ「みほ……どこにいったのよ?」

待ってる

>>487
エミ「みほならドイツで私の横で寝てるわ」

劇場版は最高だったぜい!!
ヒャッホゥ!!

更新してくださいなんでもしますから

まってます

今夜あたりに投下します。

やったぜ

お待ちしています

今夜中には投稿できそうなんだけど、真夜中の3時くらいになりそう。

すいません。
昨夜中に投稿すると言っておきながら、もう少し時間がかかりそうです。

待ってます


大変お待たせいたしました。
まずはレス返しをします。


>>472
まほさん、いきなりどうしたんすかwww


>>473
ちょっ、おちつけ!!


>>474
たしかにそれも心配だが、私としては、使用済みサラシの方が心配だ。汗とか吸ってるし・・・。


>>476
まさにキラーラビットwww


>>477
華「絶許」 みたいな感じになってしまうwww


>>479
がんばれ(他人事)


>>481
昼ドラの姑か!?


>>487>>489
エリカ「よろしい、ならば戦争だ(血涙)」


>>491
ん?今なんでもするって言った?



それでは、これより今日の分を投下します。

まほ「小次郎の勇姿を再確認していれば時間なんて忘れられる」





華の母、五十鈴百合が突然に意識を失って、倒れてしまうというトラブルに見舞われたみほ達。
みほの冷静な指示の下、百合は五十鈴家邸宅に搬送された。


そして百合は今、寝室で寝かされ安静にしている。
みほ達は華と共に応接間で座っていた。


そこで優花里が申し訳無さそうに言う。

「すいません、五十鈴殿・・・。 私が戦車道の事を口にしてしまったばかりに・・・。」

「いいえ。元はと言えば、私が戦車道の事を、ちゃんとお母様に話していなかったのが原因です。」

そう言うと、華は話し始めた。

「お母様は戦車道というものを非常に嫌ってました。
 偏見と言いますか・・・・戦車道は野蛮なものだと言って、忌避していたんです。」

華が言うには・・百合は戦車道というものを、野蛮なものと決めつけ、忌み嫌っていたらしい。
華が戦車道をやっているという事を知った際に、ショックで卒倒してしまった事からも、どれ程嫌っていたかが窺える。
あの時の、彼女のあの動揺ぶりは相当なものであった。


「それでも、私はどうしても戦車道がやりたかった。
 戦車道をやる事によって、今までの自分には無かった、何か大きな物を得ることが出来るような気がしたんです。
 でもお母様には、その事を言いだせなくて・・・。」

華は、今回の事の顛末について、みほ達に説明したのだった。

華が抱えている事情。
母の百合から猛反対される事が分かりきっていたから、華は彼女には内緒に戦車道をやっていたのだった。



すると、みほが言った。

「それで、これからどうするんです? 戦車道の事は・・・。」

それは、戦車道をこれからも続けていけるのか、それともやめるのか、という問いである。
それは沙織と優花里も気にしていた事だった。


このままでは華が戦車道をやめる事になってしまうかもしれない・・・
もう二度と一緒に戦車道が出来なくなってしまうかもしれない・・・

その事を彼女達は心配していた。


そんな彼女達に、華は答えた。

「戦車道をやめるつもりはありません。これからも皆と一緒に、戦車道を続けていきます。」

その華の言葉に、みほも沙織達も、とりあえず安心した。



しかし・ ・ ・ ・



「ただ・・・・お母様はその事を許さない筈です。・・・もうこの家にはいられなくなるでしょう。」

その時、みほは見た。華の表情を。

「それじゃあ・・・・!」

「はい。 お母様からは勘当されてしまうかもしれませんが、それでも私の意思は変わりません。」

その時、みほは華の表情から、悲壮な決意を感じ取った。
華はこの家にいられなくなる事を覚悟の上で、戦車道を続けていく事を選んだのであると・・・そのようにみほは悟った。



すると、応接間の襖が開いた。

「お嬢。奥様が目を覚ましました。」

そこにいたのは新三郎である。
彼は非常に深刻そうな顔をしていた。

「お嬢に大事なお話があるそうです。」

しかし、華は言った。

「私はもう戻りません。」

「お嬢!」

「お母様には悪いけど・・・」


だが、新三郎は引かなかった。

「お嬢・・・・差出がましい事を言うようですが、お嬢のお気持ちはちゃんと奥様にお伝えすべきじゃないでしょうか。」


すると、それを聞いていたみほが口を開いた。

「僕もそう思います。」

みほも新三郎同様に、このまま華が母と別れる事を良しとはしなかった。
それは華の事を、本気で案じてのものである。

このまま何も告げずに別れてしまったら、絶対後で後悔する・・・みほはそう思っていた。
大切な仲間である華には、そんな事にはなって欲しくはなかったのである。

更にみほは言う。

「華さんが真剣な想いで戦車道をやっているのなら、その想いをちゃんと伝えれば、もしかしたら分かってもらえるかもしれません。」

「小次郎さん・・・。」

その時、華はみほの目を見た。
それは自分の事を本気で心配してくれている・・そんな目である。

そこで華は決断した。

「わかりました。・・・・・私、お母様の所へ行ってきます。」

そう言うと華は立ち上がったのであった。


 ・

 ・

 ・

 ・

そして華は今、母のいる寝室の中にいた。
そして、みほ、沙織、優花里の3人は寝室の前におり、中の様子を窺っていた。
3人とも華の事が心配で居ても立ってもいられなくなったのである。

「華、大丈夫かな?」

「とりあえず、ここは偵察を・・。」

沙織が襖の隙間から中を覗き、優花里は襖に耳を当て、中の音を聞こうとしている。


すると、中から声が聞こえてきた。

「どうしてなの? 何で戦車道なんかを・・・。あなたには華道があるじゃない。
 それとも、まさか華道が嫌になったの?」

「いいえ、そんな事は・・・。」

「じゃあ、なんで? 何か不満でも?」

百合は華に問いかける。
彼女にとっては、自分の娘が戦車道を始めた事は、非常に理解しがたい事であったからだ。

すると、華は答えた

「そうじゃないんです。
 ただ・・・私、昔から、どんなに花を活けても、いつも何かが足りない・・・何かが欠けているような、そんな気がしてならなかったんです。
 だから・・・・・。」

それは華が戦車道をやっている理由である。

自分の華道に足りないものは何なのか・・・戦車道を通して、その答えを見つけ出すことが出来るかもしれない。
戦車道を学ぶ事によってで、自分の華道が新たな境地にたどり着けるかもしれない。
華はその一心で、戦車道を選んだのである。

しかし百合にはどうしても理解できなかった。
だから百合は、何とかして戦車道をやめさせようと、華を説得しようとする。

「いいえ。そんな事は無いわ。あなたの活ける花は可憐で清楚。まさに五十鈴流そのものよ。」

しかし、華は譲らなかった。

「それでも・・・・・それでも私はもっと力強い花を活けたいんです!」

華は強く言い切る。
それは百合にとって、娘の初めての反抗であった。


百合はその事にショックを受ける。

「そんな・・・・・・。 素直なあなたは一体どこに行ってしまったの? これも戦車道のせいなの?」

彼女は嘆くように言った。

「戦車道なんて・・・・不格好で野蛮で古臭いだけじゃない。 戦車なんて全部鉄屑になってしまえばいいんだわ!」







「鉄屑・・・だと・・・。」

「まあまあ、落ち着いてゆかりん。」

その時、戦車が大好きな優花里が額に青筋を浮かべながら呟き、沙織がそれを宥めた。






とにかく、華と百合は互いに一歩も譲らずにいた。
戦車道なんか野蛮な物だと主張し、華に戦車道を辞めさせようとする百合。



それに対し、華は・・・・

「それでも、私は戦車道はやめません。」

強く言い切った。

二人の意見は決して相容れる事がのなかった。
お互いに決して引かない。




そんな中、みほ達はただ事の成り行きを見守る事しかできなかった。

今、親子の間には思わしくない空気ができている。その事をみほは感じ取っていた。


(まさか・・・・。)

この時のみほは嫌な予感が脳裏をよぎっていた。

(いや、さすがにそんな事は・・・・。)

みほはすぐにその考えを振り払った。
しかし、この予感は奇しくも的中してしまう。




百合は華を睨むようにしながら言い放った。

「わかりました。 それじゃあ、もう二度とうちの敷居は跨がないでちょうだい。」

「「「!!!」」」

その場にいた誰もが驚愕する。
それは突然、華に言い渡された勘当宣告である。


新三郎が即座に止めようとするが・・・

「奥様っ!! いくら何でもそれは・・・」

「新三郎はお黙りっ!!」

「・・・っ!!」

百合に一喝されてしまい、何も言えなくなってしまった。





それを聞いていたみほ愕然とした。

(そんな・・・・)


あまりにも突然の出来事に驚き、ショックを受けていた。

(こんな事があっていいのだろうか。 華さんはただ戦車道をやりたかっただけなのに・・・・・それなのに、こんな事って・・・)

大切な仲間である華がこんな目に遭わされているという事に対して強い憤りを感じたのである。

同時にみほは、百合が何故あんな事を言いだしたのかを考えた。

(きっと百合さんは冷静さを失っている。だから、あんな事を言ってしまったんだろう。
 そんなの駄目だ! そんな形で親子が別れるだなんて・・・・そんなの絶対に後悔する。)






すると、みほは唐突に、ある事を思い出す。
それは、かつてみほが生徒会から、戦車道を履修するように迫られ、脅された時の事だった。

その時に彼女を生徒会の者達から庇ったのは他ならぬ、華達である。
かつて華は、みほの事を友達だと言い、我が身をかえりみずに庇ってくれた。
みほはその事には今でも感謝しており、大きな恩を感じている。

みほは今一度その事を思い出した。


華は大切な友達であり、掛け替えのない仲間。
その華が、母からの勘当宣告を受けるという、人生の岐路に立たされている。
なのに自分は、ただ黙って見ているだけでいいのだろうか? という思いが湧き上がってきた。

みほは必死で考える。
自分に何かできる事は無いか。何とかこの場を収める方法は無いか。

たしかに、これは家庭の問題と言ってしまえばそれまでかもしれない。
他人がとやかく口出ししていい問題じゃないかもしれない。

(それでも!!)

それでもみほは、黙って見過ごす事など出来なかった。





気付いたら、みほは動いていた。

「お待ちください!!」

大きな声で言うと、襖を勢いよく開けた。

「ちょっ、コウちゃん!?」

「西住殿!?」

隣に居た沙織と優花里が驚く、みほは構わずに部屋の中へ入って行き、華と百合がいる方へと歩いて行く。


それに対して百合は怪訝そうな顔をしながら言う。

「何ですか、あなたは・・・」

この時、百合はみほが自分に文句を言いに来たのだろうと、思った。
しかし、それは違っていた。

「部外者は口出ししないで・・・」

口出しするなと、言いかけた時、彼女は絶句した。


この時、百合が見たもの・・・それは自分に対して、平伏して深々と頭を下げていた、みほの姿。
それは所謂、土下座であった。

「えっ!?」

全く予想だにしなかったみほの行動に、百合は思わず目を白黒させる。

「なっ! 小次郎さん!!?」

華も驚く。

そして、そんな彼女をよそに、みほは土下座しながら言った。

「お願いです。どうか華さんを見捨てないでください。」

みほは百合に懇願した。

「ちょっと、何なの突然!!」

突然の事に、百合は混乱気味だった。


しかし、それでもみほは構わずに言う。


「華さんは、ただ・・・成長した自分の姿を、あなたに見てもらいたいだけなんですよ!」

みほのその発言は、華の真意を汲み取ったものであった。

あの時に華が言った言葉・・・


 ―― 戦車道をやる事によって、今までの自分には無かった、何か大きな物を得ることが出来るような気がしたんです。 ――


その言葉の真意を、みほははしっかりと汲み取っていたのであった。



みほの発言に、百合はハッとする。
それまで百合は、華が戦車道をやったのは、単に自分に対する反抗なのだとばかりに思っていた。
しかし、それは違うと、悟る。


更にみほは続けて言った。

「このまま別れてしまったら、絶対に後悔しか残らない筈です。
 お願いです。どうか、冷静に。」

この時に百合は自分が冷静さを失っていた事に気付く。

よくよく考えてみれば、自分は戦車道の事をよく知らない。
本当は、戦車道ってそんなに悪いものではないのではないか。なのに偏見だけで蔑視してしまっていたんじゃないのか・・・そう思えてきた。

そして何よりも目の前で、自分に土下座している、みほの姿・・・
そうまでして、必死で自分を説得しようとするみほの姿からは、華の事を本気で思いやる心が伝わってくる。


その、みほの熱意に百合は心を打たれ、同時に己を恥じた。

(友人の彼はこんなにも華の事を思ってくれているのに・・・それに引き替え、私ときたら、自分の考えを押し付けるばかり。)



百合は先ほどまでの自分を反省した。


「ごめんなさい。 私も少し、冷静さを欠いていたわ。」

百合はそう言うと、改めて華と向き合った。

「華。」

「お母様・・・。」

「それでも私は戦車道を認める事は、少なくとも今は出来ません。だから・・・」

そして、百合は華の目を見ながら言った。

「だから、その戦車道を通して、私を納得させられる作品を作り上げる事・・・・それが出来たなら、その時は戦車道を続けていくことを認めましょう。
 これが最大限の譲歩よ。」

「お母様!」

その時、華はパァっと表情を明るくさせた。
説得が成功したのである。



すると、みほが再び深々と頭を下げながら言う。

「ありがとうございます。」

まるで自分の事のように、みほは喜んだ。
かつて自分を助けてくれた恩人である華。そんな彼女に恩返しする事が出来たのなら、みほにとって、こんな嬉しい事はなかった。



こうして華と百合は、みほの懸命な説得によって、ケンカ別れにならずに済んだのである。
この時、華はみほに心の底から感謝したのであった。



 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


突然のトラブルも、みほのおかげで無事に事態は収まり、華はみほ達と一緒に帰路に付こうとした。


その時である。


「華・・・ちょっといいかしら?」

百合は華を呼び止めた。

「何でしょう、お母様。」

「別の事で、ちょっと話があるわ。」

百合に呼ばれ、華はみほ達に「先に行っててください」とだけ言うと、再び母の元へ行き、二人きりになる。






「彼・・・・たしか西住小次郎君だったかしら。」

「ええ。私の友達です。」

「そう。良い友達を持ったわね。」

「はい。」

華は改めて、みほの事を思う。
自分の為に、頭を下げてまで、百合を説得してくれた事に、華は改めて心から感謝した。




すると百合が言った。

「それで小次郎君の事なんだけど・・・・彼、本当にただの友達なの?」

「・・・と、言いますと?」

質問の意図が分からず、華は聞き返す。

すると、百合は小指を立てながら言った。

「本当はあなたの・・・・“これ”なんじゃないの?」

「・・・・・・・?」

華は最初、首を傾げた。

「え!?」

しかし少し間を置いて、百合の言った言葉と、立てられた小指の意味を察した。
華の顔が瞬く間に真っ赤に染まっていく。

「なっ!? ちょ、お母様!! 別に彼とはそんなんじゃ・・・///////」

「あら、そうなの? 私はてっきり彼は華の“これ”なんだとばかり思ったのに。 遂に娘にも春が来たって・・・。」

「いや、違うんですよ。本当に彼とはそんなんじゃなくて・・・そりゃあ、そういう関係になれたらいいなとは思ったことはありますけど・・・/////」

「え? 何ですって?」

「な、何でもありません! ///」


ますます顔を赤くする華をよそに、百合はみほの事について今一度考えてみた。

華の為に全力を挙げて自分を説得しようとした、その熱意。人の為に頭を下げる事も厭わないその姿勢。

百合は“西住小次郎”に理想の男性像を見出していたのである。





「とにかく、彼のような男にだったら安心して娘を任せられるわ。彼は是非とも、我が五十鈴家に婿として招きたいわね。」

「なっ!!」

百合のその言葉に、華は絶句した。

そして、同時に想像する。
もし本当にそうなったらどうなのか、と。

(小次郎さんが、お婿に・・・・。)

華は頭の中で妄想した。
そしてイメージとして思い描く。“五十鈴小次郎”の姿を・・・。

(悪くはないかも・・・・というか、むしろ最高!!)








一方その頃のみほはというと・・・

「華さん、遅いな。」

そんな事態になっているとはつゆ知らず、ただ華の帰りを待っているのであった。


今回はここまでです。

どうも最近スランプ気味です。
制作意欲はあるのだけど、どういうわけか中々筆が進まない。

せめて2週間に1回以上のペースに出来ればなぁ・・・。



あと、劇場版が遂に公開となりましたね。
映画館が近くにないけど。
金もないけど。

乙です
てっきり華さんは勘当されたらみほの部屋に転がり込むかと思ってましたw
劇場版は凄く良かったですよ
もう映画自体も面白いし新キャラも良い性格してました

乙です

五十鈴家の天井裏にて

まほ「私のみほを狙うブラックリスト追加・・・・っと」

私の可愛いいm…みほに手を出すのはやめるべきだ

どうして二次創作だとおねえちゃんシスコンこじらせた変態になってしまうん?

これ、真実(男装)を知ったらどうなるんやろw
今からでも遅くない。手術を

ペパロニ「へい、そこの彼氏。ウチの美味しいパスタ食べない?」
みほ「えっ?」

百合「小次郎君、親子丼いかが?」

ふと思ったけど、みほのユニフォーム姿は
長袖を伸ばしたままじゃなくて磯辺のように
袖をまくった姿の方が似合うよな

エリカ「もきゅ・・・・もきゅ・・・・はあっ。大好きなハンバーグなのに美味しくない
    みほが作ったハンバーグが一番美味しかったわ。
    本当にどこいったのよ?みほ・・・・・・」

みほ
「戦車が足りない・・・・優秀な人も欲しい・・・・」

報告いたします。
次回投下分の原稿が99%出来上がりました。明日の(正確には今日の)夜までには完成させて、投下します。

やったぜ



>>511
流石にそれはまずいっすね。
同じ屋根の下で暮らしてたら絶対にばれるし、そうじゃなくとも表向きは男と女なわけで・・・。


>>513 >>514
まほさんは黒森峰に帰ってどうぞ。


>>515
たぶん、バルクホルンのせい。


>>516
まほ「絶対阻止!!」



>>517
みほ「いただきます。」パク モッチモッチ モッチモッチ

ペパロニ「・・・・//////」キュン



>>518
みほ「親子丼? たしかにあれって美味しいですよね。」←意味を分かってない



>>520
元気出せエリカ。みほの七五三の時の写真をあげるから。







では、これより本編です。




五十鈴家での騒動が無事に解決した、その後の事である。
みほ達は先に家の表に出て、華を待っていた。


すると、そこへやって来た新三郎がみほに声をかけてきた。

「あ、あの・・・。」

「はい? どうしました?新三郎さん。」

「西住さん・・・この度は本当にありがとうございました。」

新三郎は深く頭を下げながら言った。

「西住さんのおかげで、お嬢と奥様が最悪の形で別れずにすみました。」

「いえ・・僕なんて別にそんな大した事はしてませんよ。」

「いいえ。そんな事はありませんよ。全て西住さんのおかげです。改めてお礼を言わせてください。・・・・・・それで・・・」


すると、新三郎は心なしか小声になる。

「それで、西住さん・・・話は変わるんですが」

「はい? 何でしょう?」

「ここだけの話なんですが・・・・西住さんとお嬢とは一体どのようなご関係なんですか?」

「え? 華さんとの関係ですか?」

「ええ。」


それは新三郎が、みほを見た時からずっと気になっていた事だった。

新三郎から見れば、華の学友として紹介された者達の中にいた唯一の男。
そして、先ほどの騒動に際に、身を挺して華を庇った、みほの行動の事を考えると、ただの男友達とは思えなかった。


(もしかして、西住さんはお嬢の恋人なのでは?)

そんな疑問を抱いた新三郎。
だから彼はみほに問いかけた。二人はどのような関係なのかと・・・。



その問いに対して、みほは答えた。


「華さんは、僕にとって“大切な人”です。」


みほにとっては、華は恩人である。
ただの“友達”という一言で片づけられるものではなかった。
だからみほは華の事を“大切な人”と言った。





しかし・・・・



(そうか。やはり、そうだったのか。 “大切な人”か・・・・・遂にお嬢にも春が来たんだ。)

この時、二人の間で微妙にすれ違いが発生していた。

みほは華の事を、仲間という意味で“大切な人”と言った。
しかし、新三郎はみほの言葉を、恋人という意味での“大切な人”と解釈。
つまり二人は互いに相手の言葉の意図を誤解していたのだった。


そうとも知らずに、新三郎は心の底から歓喜した。
五十鈴家に仕える者として、こんなにめでたく、こんなに嬉しい事は他にない。

「西住さん!!」

「はい。」

「お嬢を・・・・お嬢を、よろしくお願いします!!」

その新三郎の言葉に対し、みほは言った。

「はい。お任せください。」

勿論、それは仲間として・・という意味であるが、新三郎はその事に気づかず、お互いにすれ違ったままである。



新三郎は誤解に気づかないまま、遂には感極まって嬉し涙を流した。


(お嬢・・・どうか末永くお幸せに。)



そんな新三郎の真意など知る由も無いみほ。

すると、みほはポケットからハンカチを取り出した。

「あの・・・新三郎さん。」

「グス・・・はい?」

「良かったら、これをどうぞ。」

そう言うと、みほはハンカチを差し出した。
理由はどうあれ、目の前で涙を流す彼の姿を見たみほは、放っておけなかったのである。

「ありがとうございます。」

新三郎はそのハンカチを受け取ると、涙を拭った。

(ん? このハンカチ・・・・・)

心なしか、そのハンカチは良い匂いがするような気がする。
その時、彼はふとみほの方を見た。

新三郎と目があったみほ。
すると、みほはそっと微笑んだ。


「・・・・!!」

その笑顔を間近で見た新三郎は、思わず目を見張り、息を呑んだ。


(西住さん・・・・・よく見ると凄い美形だ!)

それまでは、あまり意識していなかったが、改めてみほの顔を見た彼は思った。
こうして見ると、非常に美形であると。

整った顔立ちをした中性的な容姿。
精悍で凛々しく、それでいて尚且つ、どこか少女のような愛らしさをも感じさせる、その容貌や仕草。
新三郎の目には、みほの姿はまさに美少年として映っていた。


そしてその時、新三郎は自分がみほに見惚れ、ドキドキしてしまっている事に気付く。

(ハッ!!)

新三郎はそんな自分に驚愕した。
そして咄嗟にみほから視線を逸らす。

(そんな馬鹿な!! 今、俺、西住さんの笑顔にときめいていた!? いや、ありえん!!
 そりゃ、たしかに西住さんはよく見ると結構可愛いけど、れっきとした男の子なんだぞ!! 可愛いけど・・・・/////
 て、イカン!何考えてるんだ、俺! 落ち着け・・・落ち着くんだ、俺。
 相手は男の子なんだ。絶対にありえない。 そうだ、気のせいだ。きっとただの気のせいなんだ。そうに違いない。)


若干、思考がパニック気味になっていた新三郎は心の中で自分自身に言い聞かせる。
そして、今一度みほの方を見た。


「・・・・?」

その時のみほは、突然に目を背けた新三郎を見て、不思議そうに小首をかしげていた。
まるで小動物のような、その可愛らしい仕草を見た新三郎は、更に心臓が高鳴り、頬が赤く染まる。


(気のせいじゃなかったあああぁぁぁ!!!
 う、嘘だ! よりによって男の子・・・しかもあろうことか、お嬢の恋人!! そんな相手に俺は・・・・うああぁぁぁぁ!!!)


みほの本当の性別など知る由もない新三郎は、脳内大混乱に陥った。

(いくらなんでも、それはまず過ぎる。
 仮にお嬢の恋人である事を抜きにしても、西住さんは現役高校生・・・・対して俺なんて、おっさんじゃないか!
 下手すれば、親子ほどの歳の差だぞ!! というか、それ以前の問題だ!!!
 まあ、たしかに西住さんは可愛くて、パッと見、まるで女の子みたいな、愛らしさを感じさせるけど・・・・
 どんなに可愛くてもれっきとした男の子なんであって・・・俺自身も男♂なんであって・・・・それは禁断なんであって・・・。)


何やらさっきから思考が混乱している上に堂々巡りしている。
そんな新三郎にみほが声をかけた。

「あの・・・新三郎さん?」

「は、はひぃっ!!! ////」

思考に没頭してしまっていた新三郎は、声をかけられた途端に激しく動揺し、声が裏返ってしまった。


「大丈夫ですか?」

「だだだだ大丈夫でふ!! ////」

しかも、思いっきり噛んだ。


この時の新三郎は明らかに挙動不審であった。
そして、そんな新三郎に対し、みほは心配そうに、顔を覗き込む。

「どうしました? どこか具合でも悪いのですか?」

「・・・・ッ!!! /////」

みほからすれば、新三郎の様子が急におかしくなったので、何か体調に異変があったのかと思い、心配になったのである。
実際には、ただみほの容姿にドキドキしているだけだった。
だが、そのような事など知らないみほは、彼の事を心配し、顔を覗き込んだ。


(うわぁ・・・西住さん、近い!近いよ!! //////)

しかし、そのせいで新三郎はみほの顔をより間近で見る事になり、高鳴っていた心臓がより激しく鼓動し、顔もみるみる真っ赤になっていった。


「ななな何でもないです!」

すると、狼狽える新三郎に、みほは更に近づいていった。

「本当ですか? 何か顔色も悪いように見えますが・・・。」

「ほ、本当に大丈夫です!」

後ずさる男に、迫る美少年。
傍から見ると、絵的にかなりヤバイ状態である。



そして、そんな二人から少し離れた所にいた優花里と沙織は、赤面しながらも、その様子をまじまじと見つめていた。

(新三郎殿・・・・・あんなに頬を赤くして・・・。西住殿に一目惚れしてしまったんですね。西住殿の魅力が遂に同性までもを虜に・・・。 //////)

(これって禁断の恋じゃん! やだもー!! これが俗に言う、BLってやつ? 初めて見た。 /////
 でも。コウちゃんは全く他意は無さそうだけど・・・。)


そして、華と百合もその様子を離れた所から見ていた。

「新三郎・・・・・。」

「小次郎×新三郎。これはこれでアリね。 //////」

「えっ!!?」



  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・


その後、みほ達は五十鈴邸を後にし、学園艦の停泊している港へと帰還する。
その頃にはもう日も沈んでいた。



「遅かったな。」

そこには、用事を済ませて、先に戻っていた麻子が立っていた。

そんな麻子と合流したみほ達は、そのまま学園艦へと乗艦する。


「出港予定時刻ギリギリよ。」

「悪いな、そど子。」

「誰がそど子よ! 私には園みどり子っていう名前があるのよ!!」

「あーはいはい。わかったよ、そど子。」

「コラッ!!」

風紀委員のそど子と麻子が言い合いを他所に、みほ達は素早く乗り込んでいった。





こうして学園艦はみほ達を乗せて出港・・地上の大洗の街を後にし、再び大海原へと漕ぎ出していったのであった。


すると、麻子が沙織に尋ねる。

「随分と遅れてきたが、何かあったのか?」

「それは・・・・色々とあったのよ。色々とね。 /////」

「・・・・・?」

その時の沙織は、みほと新三郎の、例の事を思い出し、再び顔を赤くした。

(本当に何があったんだ?)

その沙織の意味深な表情を見た麻子は、怪訝そうな顔をした。




すると、そこに生徒会の杏達がやって来た。

「みんなー。今日は本当にお疲れ様。」

杏は皆に労いの言葉をかける、次にみほに向かって言った。

「西住君・・今回の勝ちはひとえに君のおかげだよ。
 これからは作戦も、西住君に任せようと思うんだけど、いいよね。」

「えっ!!」

杏の隣にいた桃が、思わず声を上げた。
しかし、今回の試合で作戦の崩壊をカバーしてくれたのは、間違いなくみほである。
だから、さすがの桃も文句は言えなかった。

「まあ、会長がそう仰るなら・・・。」

そう言って、桃は渋々従った。


「あとさ・・・グロリアーナから、西住君宛に荷物が届いたんだけど・・・これ。」

すると、杏は一つの小包をみほに手渡した。


「グロリアーナから? 一体なんだろう?」

そう言ってみほは小包を開封した。
開けてみると、そこに入っていたのは、紅茶の茶葉とティーセット。あと、手紙が入っていた。

みほは、その手紙を開いて読んでみた。



『今日の試合は非常に面白かったわ。
 久しぶりに楽しい試合ができて、私はとても満足よ。
 あなたとは、またいつか戦いたいわ。
 もし機会があったら、私達ともう一度試合をしましょう。

 グロリアーナ隊長、ダージリンより。』


手紙には、そのように書かれていた。


「聖グロリアーナ女学院は好敵手と認めた相手にのみ、敬意を表して紅茶を送る習慣があるそうです。
 これは凄い事ですよ、西住殿! あの名門のグロリアーナから認められたという事です!!」

優花里が興奮気味に言った。




「ん?」

その時、みほはある事に気付いた。

「あれ? よく見たら文に続きがある。」

よく見てみると、手紙の文章の最後の方に続きがあった。
みほは改めて目を通してみた。



『追伸。
 もしよろしかったら今度一緒にお食事でも、いかがかしら?
 綺麗な夜景を見ながら食事ができる、いいカフェがあるわ。
 そこには、とっても美味しい紅茶やケーキがあるの。
 そこで、あなたと一緒に紅茶を飲む時を楽しみに待ってるわよ。』


手紙の最後の方には、そう書かれていた。




その時、その場にいた誰もが察した。
この人も、小次郎(みほ)惚れ込んだクチか、と。

試合直後に名前を聞きだし、その後で贈り物に手紙を添えて、アプローチをかける。
その上で食事に誘うという、まさに積極攻勢。
恋愛と戦争では手段を選ばないと言われる英国淑女(本当は日本人だけど)の大胆な強襲作戦(?)である。


そのダージリンの意図を察した、優花里、沙織、華、麻子は思った。

(西住殿が、遂に他校の人までも魅了してしまった。)

(この人もコウちゃんを狙ってるの? やだもー!)

(私も、この人くらい積極的な方が良いのかしら? /////)

(コイツ・・・中々やるな。)





そんな中、当人のみほはと言うと・・・・




(ダージリンさん、良い人だな。 これが所謂、戦いの中で芽生えた友情ってものなのかな。)


みほだけは分かっていないようだった・・・・・。


何にせよ、こうして色んな意味で、グロリアーナが新たなライバルとして、大洗の前に突如立ち塞がったのであった。










一方・・・その頃、五十鈴邸では・・・・。



「俺は、どうしたらいいんだ。」

新三郎が一人悶々としていた。

みほに対して、突然に芽生えてしまった感情。


「お嬢の恋人にそのような感情を抱くことなど・・・。」

いけない事だと思いながらも、拭い切れない恋心。






―― 新三郎さん・・・・ ――





今でも思いだせる、あの笑顔。
あの愛らしさ。



「俺は一体どうしたらいいんだああぁぁ!! 俺はノンケの筈なのにいいぃぃぃ!!!」


一人苦悩する新三郎。


勿論、みほはこの事など知る由もなかったのであった。


短いけど、今回はここまでです。

おつおつ

乙でーす

まほ「核榴弾装填。目標はみほを狙う不埒な男だ」

乙です
まほ「ことしのくりすますぷれぜんとはみほがほしいです」~さんたさんへ~
まほ「よしこれで完璧だな」


さぁ、新三郎さんこれでも読んで元気出しな(ゲス顔)⊃男の娘本

>>537
しほ「みほちゃんはおかあさんとすごしたいみたいなのでごめんなさい」
これでみほを実家に呼べば独り占め…!

乙です

続き楽しみ

乙でございます

そろそろ抽選会か
まほとエリカの出番だな

>>520>>521
まほ「おね・・・・サンタさんに任せろ」

翌日

みほ「・・・・部屋から出て見ればマンションの入り口にパンターF型とその中に縛られたエリカさんがいた件」

今日はクリスマス

ということで壁殴り代行ならぬ、戦車砲撃(車長まほ)を募集してます
カップルに天誅を下したい方は一回1000円です

>>545
熊本のN邸へ一発
変態に天誅を

しほ「新年あけましておめでとう。では姫初めしましょう。小次郎」

ダージリン「こんな格言知ってる?好きな人がいるなら
意中の相手を酔わせて一緒の布団に入るのよ」

イッチより皆さんへ、お知らせが二つあります。


次回よりトリップを変更する事にしました。
新しいトリップは『◆ONcqaoKTHc』です。あらかじめご了承ください。


そして次回の投下の目処が立ちました。
投下は今夜の夜11時くらいになります。レス返しもその時に一緒にやります。

まほ「全裸待機だ」

エリカ「姫始めですね待機します」



明けましておめでとうございます。
新年第1回目のレス返しです。



>>536
オーバーキル過ぎるwww


>>537
サンタ「いや、俺に言われても・・・。」


>>538
新三郎「いや・・・何か違うな。
    確かにこれも可愛いけど、小次郎君を見た時の、あの心を射抜かれるような感覚がない・・・・って、何やってんだ俺はあああ!!!!」


>>539
サンタ「いや、あんた何やってんの!?」


>>543
残念ながらエリカの出番はまだ先です。ただ、まほは・・・。


>>544
サンタ「とりあえず、俺の名を騙るのは勘弁してくれないか。」


>>545
1000円って、ちょっと高くない?(参加しないとは言ってない)


>>546
ギクッ!!  そ、そうだよね。そういうのは良くないよね。ほ、本当にけしからん(目逸らし)


>>547
みほ「え? 書初め?」(聞き間違い)


>>548
憲兵さん、こっちです!




それでは、これより本編を投下します。





その日、みほは生徒会から呼び出しを受けていた。

「一体なんだろう?」

そう言いながら、みほは生徒会室へ向かった。






「やあ、西住君。待ってたよ。」

みほが生徒会室に行くと、そこには杏がいた。


「それで、会長・・・お話とは?」

すると、杏は言った。

「以前から頼んどいておいた、隊長の件なんだけどさ。」

「・・・あっ!」

その言葉で、みほは思い出した。

以前にみほは杏から、大洗チームの隊長をやってもらいたいと依頼されたことがあった。
その時、みほはその場で返答をせずに保留してもらったのである。
グロリアーナ戦の時にみほがやっていたのは、あくまでも臨時の指揮官であって、まだ正式には隊長になったわけではなかった。
しかし白熱のグロリアーナ戦や、その後に起きた騒動など色々あって、そのせいですっかり忘れてしまっていたのだ。



「それでさ・・引き受けてくれる気になったかな?」

「そ、それは・・・・・・・。」

みほは言葉に詰まった。


みほは、その問いに返答することが出来なかった。
彼女の中には未だ躊躇いがあったのだ。

自分なんかに隊長が務まるのか、という懸念。
そして、失敗してしまうのではないか・・・皆を失望させてしまうのではないか、という不安な思い。

つまり、みほは自信が無いのである。
グロリアーナ戦であれだけの成功を収めても、それでもみほは自分に自信が持てずにいた。


「すいません。・・・もう少し時間をください。」

みほは、そう言うのが精一杯だった。
結局みほはその場で引き受けることは出来ず、また保留してもらった。


   ・

   ・

   ・

   ・


その後、みほは一人で考え込んでいた。

(僕なんかに隊長が務まるのだろうか。 かつて、全てを投げ出して、黒森峰から逃げてきた、僕なんかに・・・・。)

そのようなネガティブな思考が頭の中で渦巻いていた。

いっその事断ってしまいたいとも思ったが、その反面、これだけ自分に期待してくれている人がいるのに、その思いを無下にする事は出来ない、とも思った。
そんな考えが葛藤し、答えを出せないまま、ただ時間が過ぎていく。



(誰かに相談した方がいいかな?)

このまま一人で考えてても、埒が明かない。そう思ったみほは、誰かに相談する事を考えた。
そして、その相談相手を誰にしようか、と考える。


すると、ある人物の事が頭の中に思い浮かんだ。
それは、みほが最も厚い信頼を寄せている人である。

(相談するなら、あの人しかいない。)

そう考えたみほは携帯電話を取り出す。
そして、その人物のメールアドレスへと一通のメールを送信した。

縋るような思いでメールを送ったみほは、そのまま携帯電話を閉じる。


   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・


そして、翌日。
その日は休日であり、戦車道の訓練も休みである。


みほは自宅の前に立っていた。


「そろそろかな?」

みほは腕時計を見ながら呟く。
その日、みほはある人物と待ち合わせをしていたのだった。
そして、もうすぐその約束の時間になる頃である。






すると、そこへ一台のタクシーがやって来た。
そのタクシーは、みほがいる所の近くの場所で停まる。


その者は運転手に運賃を手渡すと、その車から降りた。
そして、みほの方を向くと、微笑みながら言う。

「久しぶりだな。みほ。」


その者の姿を見た途端、みほの表情はパァと明るくなる。
それは、とてもうれしそうな表情であった。
そして、みほは笑顔を浮かべながら、その者に駆け寄る。



「お姉ちゃん。」



そう・・・みほの前に現れたその者は、西住まほであった。

みほの実の姉であり、西住家の長女。
そして名門、黒森峰女学園の現隊長である西住まほ、その人であった。


実は、昨日みほがメールを送った相手は西住まほだったのだ。

それは時を遡る事、15時間ほど前の事である。











「では、本日の訓練は以上だ。解散。」

その日、まほは戦車道の訓練を終えて、帰ろうとしていたところであった。

彼女はロッカールームへ行くと、鞄の中から携帯電話を取り出した。
戦車道の訓練中は携帯電話は持ち込めない。

まほは携帯を手に取ると、メール着信がある事に気付く。


「ん?誰だろう?」

まほは新着メール欄を開く。
すると、そこには差出人みほと表示された一通のメールがあった。


「みほ!!」

まほは目を見開いた。
彼女は間を置かず、即座にそのメールを開封する。

すると、そこには以下のようなメッセージがあった。



『突然このようなメールを送ってしまって申し訳ないのですが、折り入って相談したい事があります。
 今度の休日に会えませんか?』


メールの本文には、そのように書かれていた。
みほからの突然のメールであったが、まほは迷わずに、すぐさま返信した。




『わかった。
 明日の8時までにそちらに向かう。待っていてくれ。』



まほはそのように簡潔に返信すると、すぐに出立の準備に取り掛かった。

手早く着替えると、すぐさま空港に問い合わせて、航空券を手配する。



「みほ・・・・何かあったのか?
 まあ何にせよ、みほが私の助けを必要としているのなら、私はどこへだって駆けつける。」

そう言うと、まほは黒森峰学園艦の空港へ行き、大洗学園艦行きの便に搭乗したのであった。







こうして、まほは急遽、大洗学園艦へと来訪したのである。


大洗の空港に到着すると、彼女はタクシーに乗り継ぎ、みほの元へと向かった。


   ・

   ・

   ・

   ・

   ・


「どうぞ。あがって。」

「ああ。」

みほに招かれ、まほは部屋の中へと入っていった。
そこは生活に必要なもの以外は何も置いてないような、やや殺風景な部屋だった。

まほは、そんな部屋を見渡しながら言った。

「みほ。こっちでの暮らしは、どうだい?」

「うん、それなら大丈夫。ここでの生活にも大分慣れてきたし・・・それに友達もできたよ。」

「そうか。 正直、心配だったんだが、それを聞いてとりあえず一安心だな。」


まほは、みほの一人暮らしの事に関して、何かと心配していたのだ。
しかし、みほの話を聞いて、とりあえずは安堵した。






「それでな、みほ・・・・・・。」

「ん? 何?お姉ちゃん。」

すると、まほは非常に言いにくそうにしながらも、ある話を切り出した。


「男装の事なんだが・・・・」

「・・・・ッ!!!」

その時、みほの表情が曇った。


まほは言いづらそうにしながらも続けて言う。

「みほ・・・・いつまでも、このままってわけにはいかない。 いつかは必ず本当の自分に戻らなければならないんだ。」

「うん。分かってる。 分かってはいるんだけど・・・・でも・・・」

みほは口籠もった。


まほの言うとおり、いつまでもこのままでいる事など不可能である。
遅かれ早かれ、いずれは本当の自分である“西住みほ”に戻らなければならない。
みほ本人もその事はちゃんと分かっている。


しかし、それでも己を偽り、“西住小次郎”として生きる事をやめられずにいた。

それは過去の忌まわしい記憶に起因するものである。
みほは、そのトラウマから自身の心を守るために、“西住小次郎”という本来の自分のとは別の存在に成り切っている。
そうする事によって、辛うじて精神の平衡を保っているのだ。

みほが今日までに日常生活を送って来れたのは“西住小次郎”があってこそである。
故に、そこに依存しまい、止めるに止められなくなってしまっているというのが、みほの現状であった。


「いつかは本当の自分に戻る。・・・・でも、今はまだ・・・」

「そうか。」

「ごめんなさい。」

「いや、いいんだ。 焦らずにゆっくりいこう。」

みほの曇った表情を見て、まほは咄嗟にこの話題を打ち切った。

まほとしても出来れば、このような話はしたくはなかった。嫌な事も思い出させてしまうから。
しかし、それでもしなければいけないのは、まほとしても辛いところである。










「そう言えば、私に相談したい事があると言っていたが・・・・」

ここで、まほが本題を切り出した。


「うん。その事なんだけど・・・・お姉ちゃん・・・」


すると、みほは言った。






「僕・・・・また戦車道をやる事になったんだ。」

「え!!」

まほは驚いた。
まさか、みほの口からそのような言葉が出てくるとは思ってもみなかった。


「ごめんなさい。本当はもっと早く言うべきだったんだけど、中々言いだせなくて・・・」

「いや、そんな事は別にいいんだ。 それよりも、みほ・・・本当に戦車道を?」


まほは俄かには信じられなかった。
何故なら、黒森峰であの事件があって以来、みほはすっと戦車道を忌避していたからだ。
下手をすれば、もう二度と戦車道に関わらないのではないか、とすら思っていたほどだった。
それが突然の心境の変化である。


「何かあったのか?」

まほは問いかけた。


すると、みほは事の経緯を詳しくまほに説明した。
生徒会から戦車道の履修を迫られた事や脅された事・・・そして友達が自分を庇ってくれた事を。
仲間達との出会いや、再び戦車道をやる事になった経緯などを詳しく説明したのであった。


   ・

   ・

   ・

   ・

   ・


「そうか。 良い仲間と出会う事が出来たんだな。」

まほは嬉しそうに言った。

この時のまほの心の中にあったのは、安心と喜びであった。

みほが大洗でも上手くやっていけてる事・・・そして何よりも友人に恵まれている事・・・その事に対する安心。
そして、みほが再び戦車道を志してくれた事に対する喜びの感情・・・それが今のまほの心中を占めるものであった。


みほが戦車道をやめようとした時、まほは彼女の意思を尊重して、止めなかった。
でも本当は、出来る事ならみほに戦車道を続けて欲しかったというのが、まほの本心である。

だから、みほから再び戦車道をやると言われた時、まほは嬉しかった。


「本当にごめんなさい。勝手な事ばかりしてしまって。」

「いや、謝る事はないさ。 むしろ私は嬉しいよ。
 たとえどこに行っても、みほには私と同じように、戦車道をやっていてもらいたかったから。」

まほは本当に嬉しそうに言った。




「それで・・・・今回相談したい事というのも、その戦車道に関わる事か?」

「うん。」

ここで本題に入った。


「会長から、チームの隊長をやってくれないか、って頼まれてるんだけど・・・。」

「いいじゃないか。 何か問題でも?」

「正直、自信が無い。 僕なんかに務まるかどうか・・・。」


すると、まほは意外そうな顔をした。

「何を言う? 部隊指揮だったら黒森峰の頃にも何度もやった事があるし、ちゃんとこなしていたじゃないか。」

「いや、違う。
 僕が黒森峰でやったのは、あくまでも副隊長。 隊長であるお姉ちゃんのサポート役をやってたにすぎない。
 僕自身が隊長をやった事なんて今まで一度もなかった。」

すると、みほは言った。

「ねえ、お姉ちゃん。
 戦車道の隊長というのはただの指揮官じゃなくて、チームを引っぱっていく存在なんだよね。お姉ちゃんのみたいに。
 正直、僕なんかがチームを牽引していく所なんて想像もつかない。
 いくら公式戦が無いといっても、もし僕が隊長をやって失敗してしまったら皆を失望させてしまう。
 僕はそれが怖くて・・・。」


「・・・・・・・。」


みほは自らの心境・・・その不安な気持ちを姉に打ち明けた。
隊長という肩書きを背負うという事・・・みほはその事に、不安な気持ちで一杯だったのだ。

杏の頼みを断れず、まほに相談したが、いっその事、止めてもらいたかった。

みほは隊長に向いていない・・・やめた方がいい・・・と。

そうハッキリと言われれば、踏ん切りがつく。
そんな思いでみほは姉に相談したのだった。






「なるほど。みほの言いたい事はよく分かったよ。」

すると、それまでみほの話を黙って聞いていたまほが口を開いた。

「だったら私が断言しよう。
 みほには隊長としての素質だって十分にある。みほなら必ず出来る筈だ。」

「・・・・!!」


みほは驚いたが、まほは構わず続けた。


「私はずっとみほの事を見てきた。
 みほの才能も・・・そして努力も。今まで、みほの事を誰よりもしっかり見てきた私が言うんだから間違いない。
 みほだったら、チームの隊長としての務めをしっかり果たす事が出来る筈だ。
 もっと自分に自信を持て。」

「お姉ちゃん・・・・。」


まほのその言葉は、みほにとって、とても心強いものである。


すると、まほはそっとみほの肩に手を置いて言った。


「それにな・・・私も見てみたいんだよ。隊長として活躍するみほの姿をな。」

「本当に・・・・・・・本当に僕なんかで大丈夫なのかな?」

「ああ。私が保証してやる。 だから、思い切ってやってみろ。」


みほの胸中に渦巻いていた不安な気持ちが、まほの言葉によって一気に霧散する。
みほが誰よりも信頼している実の姉・・・そのまほの言葉は非常に大きかったのだ。



「ありがとう、お姉ちゃん。 おかげで決心がついたよ。」

あれだけ強かった躊躇いや不安な気持ちが、まほの励ましによって消えた。
そして、自分に期待をかけてくれる者に応えよう、という思いが湧き上がってくる。


「僕・・・隊長をやるよ。」

みほは決意したのであった。


   ・

   ・

   ・

   ・


「やっぱり、お姉ちゃんに相談して良かった。」

まほの助言のおかげで問題が解決し、みほは胸のつかえが取れるような思いだった。
だから、この時のみほの表情はとても明るく、それを見ているまほも何だか嬉しくなる。


「そうだ。お姉ちゃん、お茶飲む?」

「ああ。じゃあ、一杯いただこうかな。」

すると、みほは台所へ行き、お茶を汲もうとした。
しかし、そこで茶葉が無くなっている事に気付く。


「あっ! お茶が切らしてた。 ちょっと買ってくるね。」

「みほ、私も行こうか?」

「いいよ。僕が買ってくるから、お姉ちゃんはくつろいでて。」

そう言うと、みほは出かけて行った。






みほが外出し、部屋にいるのは、まほ一人だけになった。


「・・・・・。」

その場でじっとしていたまほだったが、しばらくするとスッと立ち上がった。
そして、そのまま部屋に置かれていたベッドの方へ歩いて行く。


そして言った。


「こ、これがみほの使っているベッドか。//////」

何やら顔が少し赤くなっている。
そして、手で触って感触を確かめた。


「ベ、別にそういうアレじゃないんからな。//////
 みほがちゃんとしたベッドを使っているかを確かめるだけであって、決して、そんないやらしいアレなんかじゃないんだからな。//////」

一体誰に対して言い訳しているのだろうか、まほは一人でぶつぶつと呟いた。


「ほら・・睡眠環境って、健康のためにはとても重要じゃないか。
 そのためにも、ちゃんと安眠できるような良質なベッドや枕を使っているのかどうかを確認しなければならない。」


そう言うと、まほはベッドに腰掛けた。

「だから、ほんのちょっとだけ・・・//////」

そして、まほはそのまま横になった。


「ふむ。これは中々いい。」




ここまで来たら、もはや今更言うまでもないが、まほは所謂シスコンというやつである。
妹であるみほの事が大好きで、目の中に入れても痛くない、というくらいに溺愛していた。
みほの事が可愛くて愛おしくて堪らない、そんな感じの人なのだった。


(みほの匂いがする。///////)

みほの前ではクールに振る舞ってきたまほ。
しかし内心は、今すぐにでも力いっぱいにみほを抱きしめてクンカクンカしたり、prprしたいと、ずっと思っていた。

当然、その事はみほには悟られてはいない。
だからこそ、みほは姉の事を心から尊敬し、憧れ、理想の姉としての人物像を、まほに見出している。

そのみほの抱いているイメージを壊すわけにはいかないと、まほ必死で己の欲望を抑え、良き姉であり続けた。

でも、やっぱり本当はクンカクンカしたり、prprしたい。
だからこうして、果たされない欲求の憂さを晴らすために、みほの見ていない所でこっそりと、このような事をしているのである。
みほのベッドに、その体を横たえて、枕に頬ずりをしたりする。





そんな状態がしばらく続いた後、まほは次第に眠くなってきた。


(あれ? 何だか眠くなってきた。)

ベッドの質が良かったせいか、まほは心地良い睡魔に襲われ、徐々に瞼が重くなってきた。


(いかん。このままでは寝てしまう。 あぁ・・・でも、もうちょっとだけ・・・・・・Z Z Z z z z。)

そして、瞼が完全に閉じられる。









「ただいま。」

そこへ、みほが帰って来た。


「あれ? お姉ちゃん?」

みほが部屋に入ると、そこにはベッドの上ですやすやと寝息を立てるまほの姿があった。


「Z Z Z z z z ・・・。」

「お姉ちゃん・・・疲れてたのかな。」

そう言ったみほは、まほを起こす事無く、そのままそっと布団をかけてあげた。


   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・


「Z Z Z z z z z ・・・・ん?」

まほは目を覚ました。

(ハッ、いかん! いつの間にか眠ってしまっていた。)

まほは慌てて起きようとした。
しかし、その時にある事に気付く。


(あれ? いつの間にか掛布団が・・・。)

いつの間にか掛布団が自分の体を覆っていた。



(ん? ・・・・あれ!? 誰だ!!?)

そして、その布団の中に自分以外にも誰かがいる事に気付く。
寝起きの頭が急激に覚醒していった。


まほはすぐに布団を捲り、自分の隣にいる者を確かめる。

「んぅ・・・・お姉ちゃん・・・Z Z z z。」

「!!!!!!!!」

そして一気に眠気も完全に吹き飛ぶ。
まほの隣で、みほが寄り添うように眠っていたのだ。


(何ここ!! 天国!?)


「ん・・・・あ、お姉ちゃん。」

すると、みほが目を覚ました。

「すまない。起こしてしまったか。」

まほはさっきまで緩んでいた表情を一瞬で引き締めた。


「えへへ。こうして一緒に寝るのも本当に久しぶりだよね。」

「ああ。そうだな。昔はよく、こうして一緒に寝たものだな。」

まほは表面上は冷静にしていたが、内面は大変な事になっていた。

(うわあああああ!! みほおおおおお!!!  天使だ!! 天使が私の隣に寄り添っているよ!!!)

この時のまほは、まさに脳内大混乱である。



「こうすると温かいね。」

そう言ったみほが、まほに抱きつくように、更に体を密着させた。


(はぅっ!!////)

無邪気に甘えてくるみほに、まほはえも言われぬ多幸感を感じる。


(うおおおおおおおおおおおおおおお!!! みほおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!! ///////)






その後、妙に肌がツヤツヤした状態で戻って来たまほの姿が、黒森峰の生徒に目撃されたされたとか・・・。



   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・


そして、後日。
みほは学校で再び生徒会室へ行った。


「やあ、西住君。 先日の例の件なんだけどさ・・・どう? 受けてくれる?」

杏の問いに、みほはハッキリと答えた。

「はい。謹んでお受けします。」

みほが大洗の隊長に、正式に就任した瞬間であった。


今回はここまで。
うちのまほはこんな感じの人です。

あと、トリップの事なんですが・・・やっぱり変更は無しで、今まで通りでいく事にしました。

やっぱり変態お姉ちゃんじゃんwwwwwwwwwwww


まほ義姉さん、あんたとは良い酒が呑めそうだ。

乙です

みぽりんの俺つえーやりたいのはすごく伝わってくるし別にいいとは思うんだけど
そのせいでガルパンの良さが台無しになってるのがもったいないなぁ
これじゃあそこらの量産型ハーレムラノベとなんも変わらん

二人が寝た天井裏にて

しほ●REC

過去に何があったんだが?
解離性同一性障害になりかけとるし

エリカも突撃していいのよ?

悩んでる新三郎が1番ノーマルという

まほ「私が認めん!!」

更新なし?

堅物軍人「姉なら当然だ」

マダー?

いつ男装バレするんだろ

工事することはあるのかね?

生存報告。
現在の進捗状況は50%です。

報告乙です

キタ━(゚∀゚)━!
待ってるよ

まってる

1月23日は逸見エリカの日だったそうです

まだかな?

小次郎くんのオヤツは当分チョコだろうなあ

まほ「昨日はバレンタイン。既にみほへの愛を込めた荷物が届いてるだろう」

みほ「……マンションから出ようと思ったらチョコでコーティングしたティーガーと
その中にリボンで縛られたエリカさんや赤星さん達がいた件」

知っているかしら?
欧州ではバレンタインに男性が女性に花束を贈るのよ。


おかしいわね、もう1日経っているのに。

まだかな

生存報告。
現在の進捗状況は60%です。

全然進んでない・・・。(泣)
一体どうなってる? バグか?

のんびりがんばれ

ずっと待ってる

急ぐ必要はないんじゃないかなポロロン

こんな言葉を知っている?

ワイン同様、熟成に時間を要する人間関係もある

良いものほどゆっくり作り上げるべきはないかしら?

公安9課課長、荒巻大輔の言葉ですね

まだか?マダナノ?

きっとホワイトデーのお返しが大変なんだよ…

(ノ゜ー゜)ノ

(ノ゜ー゜)ノ

これ大洗と西住は性別偽って公式に出たら参加選手の名簿で西住は男と表記されるから公文書偽造とかになるんやない?
つか良く性別偽って転校できたな

追いついた。
姉妹仲が良好かと思ったらまぽりん化しているとは…

http://i1.wp.com/img.grotty-monday.com/wp-content/uploads/gotokill003.jpg

グロ注意

(ノ゜ー゜)ノ

もうすぐ2ヶ月…

大変お待たせしました。
やっと投下準備が完了したのでお知らせします。
明日の深夜12時くらいに投下します。

こんな言葉を知っている?

ヒーローは遅れて現れる
それがメキシコ式

こんな格言知ってるか?

私は劇場版40回見て、投稿を待ってたぞ!!(by駄姉)

まってる



それでは3ヶ月ぶりのレス返しを・・・・。



>>566
変態という名の淑女です。


>>567
まほ「誰が義姉さんか!!」


>>570
しほェ・・・・・


>>571
詳しい話は言えませんが、その辺の話はかなり重い話になります。


>>572
エリカ「しょ、しょうがないわねぇ・・・・/////」


>>573
新三郎・・・・・哀れ。


>>574
いい加減、妹離れしようぜ、まほさん。


>>576
出たな!? 元祖!!


>>578
工事はありません。というかそんな事しようとしたら絶対にまほが阻止する。


>>585
手作りチョコの山ができてそうwwww


>>586
みほ「流行っているのかな?」


>>587
田尻さんも自重してwww


>>599
まあ、その辺の事はネタバレになるから詳しくは言えませんが、色々と手を回したんですよ。


>>600
うちのまほはこんな感じです。
シスコン拗らせてます。





ではこれより本編を投下します。




みほが大洗戦車道チームの隊長に正式に就任したという事はすぐさま知れ渡る。

その事に多くの者は喜んだ。
以前から、みほに隊長をやってもらいたいと思う者は大勢いたのだ。

グロリアーナ戦でみほが見せた、その卓抜した指揮能力。
そして常に冷静さを崩さず、時には仲間を勇気づける、その凛々しく頼もしい姿。
そんなみほが自分達の上に立つ事を多くの者達が望んでいたのだった。


「遂に西住殿が隊長に。 これから楽しみですね。」

優花里は本当に嬉しそうにしていた。


「まあ、妥当なところだろう。小次郎以外でそれが務まる奴は他にはいない筈。」

麻子もこの事に納得している様子である。


「コウちゃんが隊長かぁ・・・何か凄くいいね。」

「ええ。とっても素敵ですね。」

沙織と華も喜んでいた。





「いよいよ、小次郎君が我らの隊長に。」

エルヴィンも、みほが隊長になる事を歓迎している様子である。

そして、エルヴィンは思考を巡らせた。

「もし隊長の指揮下で、大活躍をする事ができれば・・・・・。」

そう言って、エルヴィンは想像する。








『貴官の活躍を称え、ここに鉄十字章を授与する。 貴官には、これからも期待しているよ。』



「・・・・みたいな感じになるかもしれない。////」

妄想の中で、何故かドイツ軍服を身に纏ったみほから勲章を授けられたエルヴィンは、少し頬を赤くした。


「我々も心してかからねばな。・・・・・・西住隊長・・・////」

「西住隊長の下で手柄を上げるぞ。そ、そうすれば・・・/////」

「敵将を討ち取り、その首級を西住隊長に捧げるぜよ。 そうすれば、きっと・・・////」

そして、カエサル、左衛門佐、おりょうも、それぞれ想像して頬を赤くしながらも、意気込んでいる。





「私達も頑張らなきゃ! 頑張って西住隊長に褒めてもらうんだ。/////」

「「「「「おおー!!////」」」」」

梓も頬を朱色に染めながらの意気込み、同様に頬を染めていた、あゆみ、桂利奈、優季、あやが頷き、同じく意気込んだ。

「・・・・・・。////」

そして紗希は相変わらず一言も喋らなかったが、頬を赤くしながら黙って頷いていた。




「わ、私達も、頑張るぞー!! 小次r・・・じゃなくて、バレー部復活のために!! ////」

「「「「おおー!!////」」」

元バレー部の典子達も同じ様に張り切っていたのである。






すると、そこへみほがやって来た。

「すいません。遅くなりました。」

その時のみほは、何やら大量の紙の束を両手で抱えていた。

「よいしょ。」

重そうに紙の束を抱えていたみほは、適当な場所を見つけると、そこに置いた。


「西住、何だそれは?」

近くで見ていた桃が尋ねた。
すると、みほは答える。

「これですか? これは、これから使う書類です。」

そう言うと、みほは紙の束の中からいくつかの書類を取り出す。

「まず、これは人員育成計画書です。今後のチーム訓練の基本方針や、トレーニングメニュー等をまとめた上げてあります。」


そう言ったみほは、続けて別の書類を取り出し、それを生徒会長の杏に手渡した。

「あと、これは各種部品や燃料、弾薬等の調達費用の予算見積書になります。」

「ありがとうね、西住君。私達、戦車の事にはあまり詳しくないから、こういうのがあると助かるよ。」


そして更にみほは続けて言った。

「そして、これは座学用のテキストです。人数分用意しときました。今日の訓練はこれを使った座学中心でいきます。」

みほが取り出したのは冊子状にまとめられた教材であった。

それを見た桃は驚いた。

「 西住・・・これ全部、お前一人で作ったのか?」

「はい。一冊分作って、あとは人数分コピーしたんですけど・・・。」

その座学用のテキストは、みほの手作りの物であった。
戦車道をやる上で必要な心構えや、注意しなければいけない事、そして戦車戦術等がイラスト付きで非常に分かりやすく書かれている。

それを見た者達は皆、驚き、そして感心した。
同時に、これだけの物を短時間で作り上げたみほの、その並々ならぬ意気込みを皆が感じ取っていた。


そして、そのみほの様子を見て、ある者がほくそ笑んだ。
それは生徒会長の角谷杏。みほを戦車道に引き込んだ張本人である。

(西住君、最初は乗り気じゃなかったようだけど、今は張り切って、隊長をやってくれてるみたいだね。 よかった。)

杏は思惑通りに事が運んだことに、まずは一安心していた。

(うちのような新設の弱小チームが勝つためには、西住君の隊長としての力がどうしても必要だからね。
 だから嫌々やってるようじゃ駄目。
 隊長として全力でチームを引っぱってくれないと・・・・じゃないと“全国大会優勝”なんてそれこそ夢のまた夢。)


杏は秘かに全国高校戦車道大会の制覇という壮大な目標を立て、その目標目指して邁進していたのだった。

みほはその事を未だ一切知らされてはいないのだが・・・・。



何はともあれ、みほの隊長としての活動が遂に始動。
みほの指導の下、大洗戦車道チームの本格的な訓練がここからスタートしたのであった。










みほが隊長に就任しての初日。
この日の訓練は座学中心のものとなった。


教室に集まった一同。
皆は各自席に付き、みほから配られたテキストに目を通す。

「それでは、テキストの6ページを開いてください。」

そして、みほは教室の前のに立ち、黒板を使いながら、解説をしていった。

「操縦手の心得についてです。
 操縦手というのは、ただ車輌を走らせればいいというものではないのです。
 砲手がより目標を狙いやすくするするには、どのように走行すれば良いのか・・・操縦手は常にその事を考えながら操縦桿を握らなければなりません。
 戦車の射撃において、操縦手と砲手との連携は非常に重要なのです。 砲手の照準のアシストを行うのも操縦手の役目であると考えてください。
 特に砲塔がないⅢ突や、M3のような特殊な戦車の場合は、その事が特に重要になってきます。
 主砲の可動域が狭いので、まず操縦手が車体の向きを調整し、その限られた射界に敵を捉えなければなりません。」
 
操縦手に必要な事について解説していく、みほ。

「操縦手は常に砲手の目線に立って考え、操縦桿を握る・・・・それが優秀な操縦手になるためには必要なのです。」

みほは丁寧に分かりやすく説明していった。


こうしていると、まるで学校の優しい先生みたいである。
というよりも下手な教師よりも教えるのが上手いかもしれない。

みほは非常に丁寧に解説をしながら座学を進めていった。


「ふむふむ、なるほど。この場合はこうした方がいいのか。」

「ああ・・・・あれってそういう事だったのか。」

聞いていた者達は口々に言った。
今まで適当でやってしまっていた事や、セオリーを知っていてもその意味までは知らずにやっていた事などは、多々あった。
しかし、それがみほの座学を受ける事によって、理解を深める事ができたのである。

これによって、実戦における各員の動きは大きく改善されることが期待できる。


「では次は、テキスト12ページを開いてください。」

このような感じで、みほは座学を進めていくのであった。


   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・


そして、また別の日・・・・

「今日は戦車を使っての訓練です。 この前の座学でやった事も踏まえて、実際に戦車を動かしていきましょう。
 それでは乗車開始。」

「「「はい。」」」

みほの掛け声とともに、各員が戦車に乗り込んでいく。


「今日は、前日に配布したトレーニングメニューの、1番でいきます。
 ここからA地点まで移動。その後は、そこに設置されている的を使って射撃訓練を行ないます。
 それでは、これより各車行動開始。」

みほがそう言うと、各チームの車両が動き出した。
この日の訓練がスタートする。







そして訓練中、みほは各車の動きをしっかり観察した。

「Eチーム。コーナリングの時に少し外側に膨らみ過ぎています。曲がる前にもう少し減速を。」

「はい。」

拙い動きがあれば、すぐに無線で指示を出し、アドバイスをしていくみほ。



そして射撃訓練中にも各車の動きを観察する事を忘れない。


「Cチーム。撃つ直前は極力車体を揺らさないように。」

「はい。」

「Bチーム。落ち着いてよく狙ってください。 レティクルを使って、もっと正確に距離を測って。」

「わ、分かってる。え~と、この距離は・・・・。」

みほは、広い視野で訓練全体を見渡し、改善すべき点を見つけては、即座に指示をしていく。







そして訓練が一通り終わる後、最後にみほが、観察によって分かった事を全チームの各員一人一人に言って回った。

「左衛門佐さん。停止後の射撃の際に、早過ぎるタイミングで引き金を引いてしまう傾向があります。
 今後は射撃前に一呼吸置いてから撃つようにしてみましょう。
 それだけでも、命中率の向上が期待できます。」

「御意。」

みほは、各員の癖や傾向を的確に見抜いていき、それに合ったアドバイスをして回る。
そのアドバイスはとても分かりやすく、丁寧なものであった。


   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・


みほが隊長に就任してから、大洗戦車道チームは彼女の指導の下で訓練を積み重ねていった。
そんなある日の事である。


「何か・・・最近、私達上達してない?」

山郷あゆみは言った。

「あゆみちゃんも? 私もそう思ってたところなんだ。
 西住隊長のおかげかな?」

阪口桂利奈がすぐさま同意する。

そして、彼女達達だけでなく、他の皆も同じように感じていた。
みほは教えるのがとても上手かったらしく、彼女の指導の下で皆はどんどん上達していったのである。
本人がその上達を自覚できるほどに・・・。

みほの指導は確実に成果を挙げ始めていた。





そして、みほの指導によって腕を上げた者達の中でも、五十鈴華は特に成長が著しい者である。


この日も、大洗チームは機動や射撃の訓練をやっていたのだが、この時に華が、その上達した腕前を見せた。

照準器を覗き込んだ華は、遠方に設置されていた的を確認する。

(小次郎さんの教え通りに・・・。)

みほにアドバイスされた事を意識しながら、狙いをつけ、引き金を引いた。

すると、発射された砲弾が、第一射で的の、ど真ん中を射抜いた。
見事な初弾命中である。


「一発で当てましたね、華さん。お見事です。」

命中を確認したみほが言った。

「ありがとうございます。」

華も大喜びであった。



(やはり思った通り。華さんには砲手の才能があったんだね。)

みほはグロリアーナとの練習試合の時、華の砲撃をその目で見ていた。
その時に、彼女の才能を見抜いていたのだ。
そして、この日までその才能を徹底的に研くように意識し、華に指導をしてきたのである。
そのおかげで、花の射撃の才能が見事に開花しつつあった。

これも隊長としての、みほの成果のうちの一つである。
みほは指導者として、その力をいかんなく発揮していたのだった。





そして、そんなみほが、今日も思考を巡らせていた。

(桃先輩の射撃の腕が、どうにもおぼつかないなぁ。)

みほが考えていたのは、Bチームの砲手である河嶋桃の、射撃能力の事であった。

桃の腕前には大きな問題がある。
それは致命的に命中率が低すぎるという事であった。

とにかく当たらない。
当たっているところを誰も見た事が無い。
その射撃精度の悪さは、前回のグロリアーナ戦でもモロに出てしまっている。

(桃先輩、砲手には向いていないのかな? どちらかと言ったら装填手の方が向いてそうな気がする。)

そしてみほは、更に考える。

(そういえば、杏会長って結構肝が据わっているよね。 ああいう性格の人の方が砲手には向いているかな?)


すると、みほは閃いた。

(そうだ。 会長と桃先輩で、ポジションを交代させれば、それでBチームの戦力は大きく強化されるかもしれない。)

そう思ったみほは、さっそく杏と桃に、ポジション交代を進言した。


   ・

   ・

   ・

   ・


「試しに、二人のポジションを交代してみるというのはどうでしょう?」

「面白そうだね。ちょっとやってみようよ。」

「まあ、会長がそう仰るのなら・・・・。」


みほの進言によってポジションを交換してみた杏と桃。



すると、効果てき面だった。

みほが予想した通り、杏の砲手としての資質はかなり優秀だった。
正確に目標を射抜いていき、高い命中率を記録。

そして桃も、みほが見込んだ通りで、装填手の方が適していたらしい。
次々と素早く砲弾を装填していく彼女の腕によって、主砲の速射性が大きく向上。

砲手としての杏の力と、装填手としての桃の力。
みほの考えは完璧に的中し、この二つの力が発揮されるようになった結果、Bチームの攻撃力は大幅に強化されたのである。


これもまた、みほが挙げた成果の内の一つなのであった。


今回はここまで。
西住先生の戦車道教室でした。
みほにドイツ軍服を着せると、絶対格好良いと思う、今日この頃・・・。

ちなみにBチームはこれから、ポンコツ桃ちゃんに代わって、会長が撃って撃って撃ちまくります。

乙です

乙です

西住殿のイラスト付きテキストはどこで買えますか?

ポンコツ桃ちゃんと会長のポジションをすぐにチェンジするとか流石すぎるww

本編よりチームの統制も練度も上がってるから、全国大会が楽しみだ!

これは偽物
http://www.asyura.us/bigdata/up1/source/38552.jpg

リボンの武者やラブラブ作戦面白いわー

>>616 訂正

×そのおかげで、花の射撃の才能が見事に開花しつつあった。

〇そのおかげで、華の射撃の才能が見事に開花しつつあった。

続きが楽しみです

http://i.imgur.com/fpCmbdp.jpg
拾ったやつだけどゆかりはいざって時男耐性なさそうだよねいやまあこのスレの西住殿女性なんだけど
あとらぶらぶ作戦の嘘予告で男女逆転ガルパンもあったよね…

>>628
なにこのイケメン!!
詳細キボンヌ。

投下準備が出来ました。
6月3日の夜8時から、投下開始します。

>>628
それにしても、凄いイケメンですな。

待っていましたわ。ところで>>628には優雅で紅茶が似合う女子高生のものは無いのかしら?

このスレも立ってもうすぐ三年か
完結まで頑張れ、読んでる

投下時刻を少し変更します。
投下開始は10時からにします。

待っとるよー



さっそくですがレス返しをします。



>>622
全国書店で絶賛発売中(嘘)



>>623
桃ちゃん装填手としては優秀なんですよね。
原作では何で砲手をやってたんでしょう?



ではここから本編です。




みほが大洗戦車道チームの隊長になってから数日が過ぎる。
チームの運営は順調に軌道に乗っていったのであった。

みほが策定した人員育成計画に則って、各員は訓練に励んでいく。
みほは、そんな皆の訓練を見守りつつ、気づいた事があれば、その都度アドバイスをしていった。
そんなみほの指導のおかげで、彼女達の技量は着実に向上していったのである。


ある日、チームの者達が話していた。

「何か最近の私達、大分上達してきたよね。」

「だよねー。私も、この前の訓練の時に一発で当てれたよ。」

嬉しそうに言ったのは、一年の梓とあゆみであった。
彼女はここ数日の間に、自分達の腕が上達してきた事を、しっかりと感じ取っていたのである。


そして、このように喜んでいたのは彼女達だけでない。
チームの皆が、訓練によって自分達が着実に上達してきている事を感じる事が出来て、喜んでいた。


そんな彼女達が喜んでいる姿を見たみほもまた、とても嬉しくなった。
自分が皆の役に立つ事が出来ているという事・・・・そして、皆が喜んでいるという事が、みほにとっては何よりも嬉しかったのだ。

その喜びをもっと味あわせてあげたい・・・もっともっと、皆の役に立ちたい・・・・そう思えば、一層に気合が入るのである。

(僕の、隊長としての仕事はまだまだ始まったばかり。これからも、もっと頑張らないと・・・。)

ある日の朝、みほはそのように思いながら、制服に着替える。
Yシャツを身に纏い、ネクタイ締め、上着のブレザーを羽織った。

「今日も張り切って、いってみよう。」

そう言いながら、みほは玄関を出て、学校へ向かった。


   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・


それからというもの、みほは隊長としての職務に、より一層、精力的に取り組んでいった。
訓練指導は勿論の事、各種書類整理や、自動車部との調整、そして車両のメンテナンスなど、その仕事は多岐に渡る。
みほは、それら全ての仕事を完璧にこなしていった。

しかし、それ故にみほは多忙を極めた。
そのせいで最近、やや寝不足気味になってしまっている。
だが本人はその事を苦にしておらず、寸暇を惜しんで精力的に仕事に打ち込んでいった。




そんなある日の事である。


「さてと・・・・それじゃあ今日もやるか。」

その日、みほは訓練終了後に、いつものように仕事を始めようとしていた。
まずは車両整備と、その後に書類作業である。


そしてさっそく、みほは整備に取り掛かろうとしていた、その時であった。

「小次郎君。」

自動車部のナカジマが、みほに声をかけた。

「戦車の整備なんだけどさ・・・・今日は私達に全部任せてくれないかな。」

「え!?」

みほは驚いた。
そして、そんなみほにナカジマは言った。

「ほら・・・小次郎君には、整備以外にも色んな仕事があって忙しいでしょ。
 だから、こっちは私達でやっておくよ。」

「でも・・・・。」

すると、スズキ、ホシノ、ツチヤがみほに言った。

「大丈夫大丈夫。」

「小次郎君から今まで教わってきた事は、もう完璧に覚えたからさ。」

「そうそう。だから、こっちは心配はいらないよ。」

みほも自身も、ナカジマ達の整備士としての腕前は、その目で見てきており、ちゃんと知っている。
だからこそ、みほは安心して彼女達に任せる事が出来た。

「それじゃあ、メンテナンスはお願いします。」

そう言うと、みほはその場を後にした。



(とりあえず、車両整備の方はナカジマさん達に任せておいて、僕は書類の方を・・・。)

みほは書類整理をするために、校舎の方へ向かった。



すると・・・・


「ゆかりん。この書類って、これで良いんだっけ?」

「はい。そんな感じで。」

「えっと、確かこの書類は生徒会の方へ回す物でしたよね。」

そこには、不慣れながらも、書類を仕上げていく、沙織と優花里、華がいた。


「Z Z Z z z z z・・・・。」

「て、ちょっと麻子! 起きなさいよ!!」

ペンを手に握ったまま机の上に突っ伏して寝ていた麻子に、沙織はツッコミを入れる。


その光景に、みほは少し戸惑いながら、沙織に尋ねた。

「あの・・・・皆、何をやっているんですか?」

「あっ、コウちゃん。いや・・・麻子もさっきまでは、珍しくがんばってたんだけど、寝ちゃってさ。」

「いえ、そうじゃなくて・・・。」


すると、華が口を開いた。

「最近、小次郎さん、お疲れのようでしたので・・・だからせめて、私達にも何か手伝える事は無いかって、思ったんです。」

それは、みほの事を気遣う言葉であった。


「何でもかんでもコウちゃんだけに任せっきりにするわけにはいかないじゃん。
 まあ・・・とは言っても、私達がコウちゃんにしてあげられるのは、これくらいしか無いけどね。」

沙織もまた、みほの事を心配していたのだ。
そして、それは勿論、沙織と華の二人だけではなく、ここにいる全員がそうである。

それはみほにとって、とても嬉しい事であり、この時のみほは心が温まるような思いだった。



すると、沙織が部屋の奥の方を指さした。

「それに、私達だけじゃないよ。」

沙織に言われたみほは奥の方へ行く。



そしたら、声が聞こえてきた。




「こっちは、だいたい片付いたよ。」

「桃ちゃん、こっちもお願い。」

「桃ちゃんって言うな!!」

そこには生徒会の杏、柚子、桃がいた。
そして、そこにいたのは彼女達だけではない。


「あー!間違えちゃった! 忍、修正ペン取って。」

「はい、これ。 あっ!私も間違えちゃった!」

「キャプテン、この書類って、どう書くんでしたっけ?」

「根性だ! 根性で書け!!」

バレー部の妙子、忍、あけび、典子達が書類相手に格闘していた。


「エルヴィン、そっちは片付いたか?」

「あと半分くらい。」

「しかし、西住隊長・・・毎日こんな書類を一人で片付けていたのか。」

「うむ。驚嘆に値するぜよ。」

カエサル、エルヴィン、左衛門佐、おりょう達も同様に、書類整理をしていた。


「うぅ・・・目が痛くなってきた。」

「・・・・・・・。」

「相変わらず、紗季は黙々としてるね。」

「やばい。私も目が痛くなってきちゃった。」

「私は頭が痛くなってきちゃったよ。」

「あと一息だから、皆頑張って。」

一年生の、あゆみ、紗希、優季、あや、桂利奈、梓達が書類相手に悪戦苦闘している。



その光景を見たみほは、驚きを隠せなかった。

そして、そんなみほに華が話しかける。

「ここにいる皆さんは私達と同じで、小次郎さんの事を心配してたんです。
 小次郎さんのお手伝いをして、少しでもその負担を減らしてあげたいって、皆そう思ってたんですよ。」


更に、沙織が続けて言った。

「コウちゃん、最近張り切り過ぎて、無理をしちゃってない?
 隊長だからって何でも一人で抱え込んだら駄目よ。 少しくらいは私達を頼ってくれなきゃ。私達はチームなんだから。」

「沙織さん・・・・。」

沙織の諭すような優しい言葉がみほの心に染みる。


「皆・・・・ありがとう。」

「いえいえ、礼には及びませんよ。むしろお礼を言わなきゃいけないのは私達の方です。
 西住殿が隊長として尽力してくれているおかげで、私達が戦車道に邁進できるのです。
 西住殿には本当に感謝しております。」

感極まったみほ。
そんなみほに、優花里が微笑みながら言った。



(本当にありがとう・・・・皆。)

彼女達の優しい心遣いに、みほは感謝の気持ちで心が一杯になる。

(僕は・・・・・・皆に出会えて、本当に良かった。)

みほは、良い仲間達に出会えたという事を、ここで改めて実感した。






ズキッ!!



(・・・・・・ッ!!)


その時、みほは突然、胸の痛みを感じた。
何とか表情には出さず、平静を装っていたので、周りの人達には気づかれてはいない。

みほが感じたその痛みは肉体的な痛みではない。
それは精神的なものであった。

つまりは心の痛みである。



みほは思い出したのだ。
自分が皆に嘘をついているという事を。
仲間である彼女達に嘘をつき、本当の自分を偽って、彼女達と接している。

仲間達を騙しているという事実・・・その事にみほは負い目を感じていた。
彼女達の優しさに触れた事によって、負い目をより強く感じるようになってしまい、それが心の痛みとなって現れたのである。


(そうだ。僕は皆を・・・・あんなにも優しい仲間達を、騙しているんだ。)

罪悪感を感じるみほ。


しかしそれ以上に、みほは恐怖を感じていた。
だから、たとえ信頼できる仲間達でも、本当の事を打ち明ける事は出来なかったのである。

その恐怖とは、本当の事を言ってしまう事によって、仲間達との関係が壊れてしまうのではないか、という恐れである。

彼女達が今まで仲間として接してきたのは、“みほ”ではなく、“小次郎”である。
それは嘘で作り上げられた虚像・・・偽りの人格。

だから、本当の事を言ってしまえば、今まで築き上げられた関係が壊れてしまうのではないか・・・・
下手をすれば皆を騙していた事で、軽蔑されてしまうのではないか・・・・
そういう恐れがみほの中には有ったのだ。


そしてみほが、真実が明るみになる事を恐れている理由はもう一つあった。
それは、過去の記憶から来るトラウマに、自らの心が押し潰されてしまう、という恐怖である。

“小次郎”という偽りの人格は、そのトラウマから自分の心を守るための物。
言うなれば、それは心の殻なのである。
今の彼女が精神の平衡を保っていられるのも、その殻によって心が守られているからだ。
だから、その心の殻が崩れてしまえば、もはや自分がどうなってしまうか分からない。
みほはその事を何よりも恐れていたのである。


(皆・・・ごめんなさい。)


みほは仮面を被り続ける事を、やめられずにいたのであった。


   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・


それから数日が過ぎた、ある日の事。

この日も、みほの指導の下、各員が訓練に精を出していた。
そして、訓練終了後に集合した一同に対して、桃が言った。

「今日の訓練はここまでだ。皆、本日もご苦労であった。
 あと・・・解散前に、今日は会長から重大発表がある。全員心して聞くように。」


桃のその言葉に、ざわつく者達。
すると、杏が皆の前で言い放った。


「我が大洗学園戦車道チームは、全国高校戦車道大会に参戦する事にしたよ。」

「「「えっ!!!」」」


驚愕する一同。
それはあまりにも唐突な事だった。
そして、愕然とする者達を他所に、杏は続けて言い放つ。

「全国の高校から戦車乗り達が集まる大会に、私達が殴り込みをかける。
 勿論、狙うは全国優勝!!」

突然に壮大な事を意気揚々として語った杏に、皆は驚いて目を白黒させた。

そんな中、みほは思わず声をあげた。

「待ってください!そんな急に言われても・・・。 いきなり全国大会なんて、いくら何でも無謀ですよ。」

みほの言う事も尤もである。
しかし、そんなみほの忠告に対して、杏は意にも介さない。

「いいじゃん別に。思い切って挑戦してみても損はないでしょ。何事も挑戦だよ。」

堂々と言ってのける杏。
すると、周りの者達が次第にその言葉に賛同し始めた。

「確かにそうかもしれんな。」

「いいんじゃない?」

「そうだね。何だか面白そうだし。」

「全国大会か・・・・腕が鳴る。」


次第に周囲の者達が盛り上がっていき、気づいたらほぼ全員が乗り気になっていた。


(これは不味い。)

みほは焦った。

もはや、この空気では大会への参加を止める事は出来そうにない。
このまま大洗チームが全国大会に出場してしまうのは、みほにとって非常に不味い事である。
いくら破門されているとは言え、みほはかつては西住流に属していた人間。
かつて家を飛び出した身でありながら、別の所で戦車道チームを率いて公式戦に参加するというのは、許されない事である、とみほは思っていた。

元々みほは、新設したばかりの大洗チームがいきなり公式戦に参加するなんて事は、全く予想していなかったのである。
だから、みほは隊長を引き受けたのだ。
なのに、杏からいきなり全国大会に参戦すると聞かされたのは、まさに寝耳に水である。
かと言って、この空気では、大会参加を止める事は出来そうにない。


(どうしよう。)

みほはどうしていいか分からず、途方に暮れた。


   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・


それから翌日。

あの後、みほは結局どうしていいか分からないままだった。
そこでみほは、あの時と同様に、ある人物に相談する事にした。

そう・・・姉の西住まほである。


あの時と同じで、メールによって連絡を取って、会おうとしたみほ。
すると、ほとんど間を置かずに、すぐにそっちに行くから待ってて、というまほからの返信メールが即座に来た。

こうしてみほは、再びまほを自宅に招く事になったのである。







「ごめんね、お姉ちゃん。何度も来てもらっちゃって。」

「いや、かまわんさ。それで相談したい事とは一体なんだ?」

そこで、みほはさっそく本題に入った。
戦車道全国大会の件について、まほに相談したのだ






「なるほど。」

みほから事の経緯を説明されたまほは頷いた。


「皆が乗り気で止めるに止められなくて。でも家を飛び出した身である僕がそんな勝手な事をするわけにはいかない。
 だから、もうどうしていいか分からなくて・・・。」

西住の名を持つ者として勝手な事は出来ないと思う、みほ。



しかし、そんなみほに対し、まほは意外な言葉を言った。

「別に、そんなに気にする事はないんじゃないか?
 いいじゃないか、好きにやって。」

「えっ!?」

意外な言葉に、みほは驚いた。
そんなみほに、まほは更に言う。

「こう言っては何だが、みほはもう西住流を破門された身。つまり西住流の人間ではない。
 だから西住流に縛られなきゃいけない理由なんて何も無いのだよ。
 故に好きにしていいんだ。自由の身だよ。」

「でも・・・・・。」

「そんな事より、みほはどうしたいんだ?」

その問いに、みほは答えた。

「僕は・・・・・仲間達と一緒に、同じ道を歩みたい。皆が大会に出たいのなら僕も一緒に出たいと思う。許されるのなら。」

「だったら何も遠慮する事は無い。思う存分にやれ。」

「本当にいいの?」

「ああ。 心配するな。お母様には私の方から上手く言っておくよ。」

まほから促されたみほは決心する事が出来た。

「分かった。じゃあ、思い切って挑戦してみるよ。」

「その意気だ、みほ。」



こうしてみほは、大洗チームを率いて全国大会に出場する事になった。

それが一体どのような結末をもたらすのか・・・それは誰にも分からないのである。


今回はここまでです。

乙です

おつおつ
今更だがみぽりんって小次郎の時は声色変えてるかな

しほ「いいわよ」最高級品カメラを用意しつつ


中の人は美ショタもいけるし、そうだろうな。

乙乙
ずっと待ってたぜ!

まほがいいお姉ちゃんすぎる…本当にこれはまほか…?

リトルアーミーのお姉ちゃんに近いかな

騙しているという罪悪感感じているなら、工事しにいこう

次回の投下は明日の夜8時になります。

次回ではいよいよ・・・・というか、やっとエリカが登場です。お待たせしました。

エリカ「ガタッ」

小梅「ガタッ」

E・イッツ・ミー「待ちに待った時が来たわ。多くのガルパンおじさんが無駄死にで無かった事の証の為に、再びエリ小次の理想を掲げる為に、エリみほ成就のために!小次郎よ、私は帰ってきたわよ!」


レス返しです。


>>647
そうです。
今まで記述してなかったけど、みほは男装するにあたって、出来るだけ低めの声を出すようにしています。



>>648
しほさんは親バカかwww



>>651 >>652
みほの前では、少なくとも表面的には良き姉として振る舞ってます。
ただ、中身は・・・・。



>>653
まほが必死で止めるから無理。



>>655 >>657
落ち着けエリカ。



>>656
残念ながら今回は小梅さんは出ません。





ではこっから本編です。




全国高校戦車道大会。
日本各地の戦車乗り達が集い、その実力を競い合う大会である。

本日、その組み合わせ抽選会が行なわれる。
その抽選会の会場には大勢の高校生達が集まっている。
そして、その中にはみほ率いる、大洗学園チームの面々もいた。

万が一の事を考えれば、出来ればみほはこの場には来ない方が良かったのだが、チームの隊長である以上、不参加というわけにもいかない。



ここでみほは先日の、まほとのやり取りの事を思い起こす。






「いいか、みほ。 男装の事、バレないようにするためにも、当日、会場では出来るだけ目立たないように行動するんだ。」

「うん。分かった、お姉ちゃん。」

「私の方からも、小次郎という弟がいると、それとなく周りの者達に言っておこう。
 今のみほは男装に加え、髪型も髪色もあの時とは違うから“みほ”と“小次郎”を同一人物だと見抜く人はおそらく居ないだろう。」

「うん。でもエリカさんと小梅さんが・・・・。」

「あっ、そうか。 エリカと小梅、確かにあの二人は、みほとは親しかったな。」

「どうしよう・・・。あの二人の目は誤魔化せそうにない。」

「分かった。エリカと小梅に関しては、こっちで何とかするよ。当日に、適当な用事をさせて、会場に来れないようにすれば・・・。」





先日にまほから言われた事を思い出すみほ。
だからみほはこの日、出来るだけ目立たないように心がけつつ、会場に足を運んでいた。



そして会場のホールへ移動する大洗の面々。

すると、そこで黒とグレーの制服を身に纏った集団とすれ違った。
それは黒森峰女学園の選手達である。

その時みほは、その集団の先頭を歩くまほと目が合った。

(お姉ちゃん。)

(みほ。くれぐれも気を付けるようにな。)

まほは、そっと目配せをした。


そこでみほは、まほ率いる集団をざっと見渡してみる。
すると、その中にはエリカと小梅の姿が見られなかった。
その事に、みほはとりあえず一安心する。


その時、一人の黒森峰生徒が口を開いた。

「へぇ~。あれが弟の小次郎君か。姉弟だけあって、似ているわ。」

その言葉からも分かるように、彼女達は皆、“小次郎”と“みほ”を別人として認識している。
誰もその事を疑っている様子は見られなかった。
事前にまほが、大洗にいる“小次郎”の事を周囲の者達に言っておいてくれたおかげである。
あと、みほがの髪型と髪色が、黒森峰にいた頃とは違っていたのも、功を奏した。
誰もが、弟だけあって“みほ”に似ているとしか認識しておらず、誰も“みほ”と同一人物だとは、思っていないようだ。


(バレてないよね。)

みほは軽く会釈をしながら、内心ホッとしていた。


   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・


その後、抽選会が始まった。
各校の代表者が次々とくじを引いていく。
大会はノックアウトトーナメント方式であり、そのトーナメント表のどの部分に入るかを、くじ引きで決定していくのである。

そして大洗学園の番が回ってきた。
大洗は勿論、隊長であるみほが代表者として、くじを引くことになっている。
出来れば人目に付くのは避けた方がいいが、こればかりはどうしようもない事である。

壇上に上がったみほは、箱の中からくじを一枚引いた。

「えっと、これは・・・。」

みほが引いたくじには8という数字が書かれていた。


『大洗学園、8番。』

場内アナウンスで告げられた番号。
トーナメント表で8番と書かれた場所に、大洗の名が書き込まれた。
そして、そのトーナメント表で、大洗学園の隣に名があったのは“サンダース大学付属高校”である。

これで1回戦の対戦相手はサンダース大付属に決定した。


その時、場内からワッと歓声が上がる。
声を上げたのは、サンダースの選手達だった。

彼女達は新設の弱小チームと当たる事が出来た、と大喜びだった。

「やりぃ♪」

「ラッキー♪ これで1回戦の勝利は確定したも同然ね。」

「いや~、私達は本当にツイてる。」

サンダースの選手達は口々に言った。

そして、そんな彼女達を横目で見ていた、まほは思う。

(フッ・・・・それは、どうかな?
 もしかしたら、本当はここにいる者達の中で、最もアンラッキーな者達なのかもしれないぞ、お前らは。)

みほ率いる大洗チームと当たった事を楽観視している彼女達を、まほはそのように評する。



こうして、全国高校戦車道大会の組み合わせ抽選会は幕を閉じた。


   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・


抽選会終了後の事である。

「これから、ちょっと会う約束があるので、皆さんは先に帰っててください。」

皆が帰り支度をする中、みほはそのように言って、一人でその場に残った。



そして、しばらくすると、みほの所に一人の人物がやって来た。

「何とか無事に乗り切れたな、みほ。」

「お姉ちゃん。」

そこにやって来たのは、まほだった。


「お姉ちゃんのおかげだよ。ありがとう。」

「いや、礼には及ばないさ。お母様には、私から上手く言っておいたよ。」


すると、みほは申し訳無さそうに言った。

「ごめんね。 私が勝手な事をしたばかりに・・・・。お姉ちゃんにはいつも迷惑かけちゃって・・・。」

「迷惑だなんてとんでもない。もっと私を頼ってくれていいんだ。
 それに前も言ったが、みほは西住流に縛られる事なんてない。好きにやればいいんだよ。」

「お姉ちゃん・・・・・・。」



すると、まほは言った。

「そうだ。この後、時間は空いているか? 久しぶりに・・・」

まほがそこまで言いかけた、その時だった。



「隊長。」

その時、まほは後ろから声をかけられた。
そして二人は声のした方を向いて、目を見開く。


「「!!!」」


そこにいたのは・・・




「エ、エリカ! 何故ここに!?」

まほは驚き、目を見開きながら言う。
そこにいたのは逸見エリカであった。

みほとの接触を避けるために、この会場に来ないように、まほが手を打った筈なのに、そこにはエリカが来ていた。


「申し訳ありません、隊長。どうしても居ても立ってもいられなくて、つい来てしまいました。」

エリカがまほの所に歩み寄ろうとした。



(不味いな。)

(どうしよう・・・。)

まほとみほは焦燥に駆られた。
みほは思わず俯く。


そして、まほの所に来たエリカは、みほの事に気づく。

「あれ?隊長、そちらの方は?」

「あ、ああ・・・。私の弟の小次郎だよ。」

まほは咄嗟に、みほを“小次郎”として、エリカに紹介した。
みほもすぐさま名乗る。

「は、初めまして。西住小次郎です。」

何とか平静を装おうとしているみほ。
その心臓はバクバク鳴りっぱなしである。
このままではバレてしまうのではないか、と内心冷や汗が止まらないような思いだった。



「・・・・・・・・。」

その時、エリカが無言のままジッとみほを見てきた。


(まさかバレた!?)

みほに緊張が走った。



すると・・・



「ああ・・・。あなたが例の、隊長の弟ね。
 初めまして。逸見エリカよ。よろしくね。」

そう言って、エリカは右手を差し出した。

(良かった。バレてない。)

みほは内心ホッと胸を撫で下ろした。
勿論、それは表情には出していない。

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

そう言って、みほはエリカと握手した。
エリカには見抜かれていない・・・そう思ったみほは一先ず安堵する。
先程までの神経を張り詰めたような緊張が解かれた。












「みほ?」

「・・・ッ!!!」

しかし、その直後に突如エリカの口から不意打ちのように発せられた言葉に、みほは思わず目を見開き、ビクッと体を震わせた。


(しまった!!)

突然のエリカの言葉に大きく反応してしまったみほ。
そして、その反応をエリカに見られてしまう。

「やっぱり。あなた、みほだったのね。」

みほの反応を見たエリカは確信した。
目の前の人物は“西住みほ”であると。

「ど、どうして・・・。」

みほは狼狽しながら言った。
それに対して、エリカは答える。

「別に確信があったわけじゃないけど、ただ何となくそんな気がしたから。つまりは勘よ。」

(くっ・・・!)

それを聞いたみほは、咄嗟に反応してしまった自分自身を恨めしく思うが、もはや後の祭りである。




「みほ・・・・。」

エリカは呟く。
それはエリカにとっても全く予期せぬ突然の再会であった。

「みほ、一体どういう事なの? 隊長からは、あなたは海外に留学してて、この日本には不在って聞かされてたけど、どうしてここに?
 それに、何で男装を・・・?」

そこで、エリカは改めてみほの姿を見る。
エリカの記憶の中のみほは、栗色のしなやかな髪を肩の辺りまで伸ばしていた。
しかし今のみほは、その髪を漆黒に染め、バッサリと切って、黒髪のショートカットにしている。
そして男子学生服のブレザーを身に纏っていた。
その変わりように、エリカは戸惑いを隠せない。


「それは・・・・・。」

エリカの問いに、みほは答える事が出来ずに口籠る。
しかしそんなみほを、エリカは更に問い詰めた。

「どうして? ねえ、答えてよ。」

「おい! 止せ、エリカ。」

傍にいたまほが咄嗟に、エリカを止める。

「止むに止まれぬ事情があったのだ。」

「事情って一体何ですか?」

「いや、それは・・・・・。」

まほは答える事が出来ない。


すると、エリカはみほに向き直った。

「みほ・・・私、あなたが突然に姿を消してから、ずっと心配していたのよ。
 隊長に聞いても、みほは海外に留学しているとしか言わず、詳しい事は何も教えてはくれなかったし・・・
 ねえ・・・黒森峰を去る前に、どうして私に一言くらい言ってくれなかったの? 私、本当に心配してたんだから。」

「ごめんなさい。」

みほは俯きながら消え入りそうな声で言う事しか出来なかった。





そして、ここでエリカは更にみほに問いかける。

それが、みほを追い詰める事になるとも知らずに・・・・。


「ねえ、教えて。あの日、一体何があったの?」



エリカのその言葉を聞いた時、みほは背筋が凍り付いたように感じた。





―― 戦犯めっ!! ――


―― アンタのせいよ!! ――


―― この偽善者!! ――





“あの日”の記憶が脳裏に生々しく蘇った。


「あ・・・・ぁぁ・・・。」

みほの顔からみるみる血の気が引いていった。
何かに怯えるような表情をしながら、その顔は真っ青になっていく。

「うぐっ・・・・。」

すると、急に眩暈と強烈な吐き気に襲われたみほ。
思わず口を手で押さえる。
次第に両足に力が入らなくなり、立っていられなくなったみほは、地面に膝を付いた。


「「みほっ!!」」

エリカとまほが慌ててみほに駆け寄る。

「みほ、しっかしして! みほ!!」

「うぅ・・・。」

エリカが必死で声をかける。


そんな中、みほは吐き気は堪えながら、何とか口を開いた。

「何も・・・・・・・・・無かった。」

「え?」

それはエリカに向けられた言葉である。
先程のエリカの問いに対する、答えだった。


「いや・・・何も無かったって・・・。」

そう言ったエリカに対し、みほは精一杯搾り出した声で繰り返した。

「何も・・・・・・・・・何も、無かった。」



もはや、エリカはそれ以上は何も聞く事は出来なかった。

みほの尋常ならざる様子から察するに、過去に何かがあったのは間違い無い。
トラウマになるほどの重大な何かが。

これ以上トラウマを刺激するわけにはいかない・・・
そう思ったエリカはみほの身を案じながら、それ以上は一切追及しなかった。


しかし、この時のエリカの胸中は切ない思いで一杯だった。

(みほ・・・・私には打ち明けてくれないのね。)

エリカはみほの事を親友だと思っている。
そのみほから打ち明けてもらえず、何も相談してもらえなかった事に、エリカは寂しさを感じていた。





そして、そんなエリカの悲しそうな目を見たみほは、申し訳なく思う。
しかし、それでも彼女には絶対に知られたくない事があったのだ。

(ごめんなさい・・・・。)

みほは心の中で、そう呟く事しか出来なかったのである。


   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

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   ・

   ・

   ・

   ・


あの後、どうやって家に帰ったのか、みほはよく覚えてはいなかった。
まほに介抱され、気がついたら家についていたのだ。

まだ気分が優れないので、ベッドで横になるみほ。



その時、みほの携帯電話が着信音を鳴らした。
メールが着信したようだ。

みほは重い体をゆっくり起こすと、携帯電話を手に取って画面を確かめた。


「あっ!!」

みほは目を見開いた。
それはエリカからのメールである。
すぐさま、みほはメールの中身を確認した。



『みほへ。

 さっきは、ごめんなさい。
 あまりにも突然の事で、私自身も混乱してたから、ついあんな言い方をしてしまった。
 でも、厳しい言い方をしてしまったかもしれないけど、私、本当はあなたに久しぶりに会う事が出来て本当に嬉しかったわ。

 突然に姿を消した事や、過去に何があったのか、に関しては今後一切詮索はしない事を約束する。
 もしかしたら無神経な事を言ってしまい、嫌な思いをさせてしまったのかもしれない。
 その事については本当にごめんなさい。
 言いたくないのなら、無理をして言う事はないわ。

 だけど、これだけは言わせてほしい。
 たとえ何があったとしても、私は絶対にあなたの味方よ。
 だからその事だけは忘れないでいてほしい。

 エリカより。』


そのメールを読み終えた時、みほの目からは涙が溢れていた。

「うぅ・・・エリカさん・・・・」

その瞳から溢れた涙が、頬を伝って零れ落ちる。


(エリカさん・・・こんな僕を、まだ仲間として見てくれているんだ。)

そのメールから伝わってくるエリカの思いが、みほの心に染みた。

(エリカさん・・・ありがとう。)

みほは涙を流しながら、その携帯電話を握りしめたのであった。


今回はここまでです。
今回は、途中で暗い感じになっちゃったんで、次回は明るい感じにしたいです。

エリカ(よし!掴みはバッチリ!!後は、じっくりと積み上げてゴールインするだけ!!)

乙です

>>670
台無しだよ!

しほ(最高級カメラを手に)●REC

エリカ(鎧袖一触とはこの事ね)

それ失敗フラグ……

エリみほの時代だぴょー!!

次回の投下は、6月16日の深夜12時になります。

みほが優花里の両親の所へご挨拶(意味深)に伺います。
お楽しみに。

秋山父「私の娘をたぶらかす悪い子はいねーがー?」日本刀研ぎ研ぎ

秋山家でもイケメンパワー炸裂ですね!



皆さんこんばんは。
さっそくレス返しです。



>>670 >>672
本当だよ。


>>673
しほさんは熊本に帰ってどうぞ。


>>674 >>675
どこぞの悪夢みたいになっちゃいそうwww


>>676
エリみほはいいぞ。


>>678
ちょっ、おま!!




というわけで、こっから本編です。





全国高校戦車道大会の組み合わせ抽選会が終わってから、数日が経ったある日の事。
西住みほは悩んでいた。

「う~ん。」

「どうしました? 西住殿。」

「あっ。優花里さん。」

考え事をしていたみほに、優花里が声をかけた。

「今度の大会の事なんだけど・・・・作戦をどうしようかと思って。」

「サンダースとの対戦ですね。」

「うん。・・・ごめんね。1回戦から強豪校に当たっちゃって。」

「いえいえ。西住殿が気に病むことなんてありませんよ。」

「でも、1回戦の投入車両数の上限は10両。これでも僕達の倍の数。これは相当上手く作戦を練らないといけません。
 せめて敵の部隊構成に関する情報が分かれば作戦も立てやすくなるんだけど。
 はぁ・・・・情報が足りない。」

溜息をつきながら、思考を巡らすみほ。

「西住殿・・・・。」

そんなみほの姿を見た優花里は、秘かに決意をした。

(西住殿が困っている。 かくなる上は、この不肖秋山優花里が何としても、お助けせねば。)


  ・

  ・

  ・

  ・

  ・


そして次の日。

戦車道の練習を終えた彼女達であったが、この日、優花里は学校に姿を現さなかった。


「優花里さん、結局練習に来ませんでしたね。」

「何かあったのでしょうか?」

「ゆかりんの携帯電話に通話をかけようとしたけど、出なかったよ。」

「風邪でも引いたのか?」

沙織、みほ、華、麻子が心配そうに言った。

優花里が突然に姿を消し、しかも携帯電話も繋がらない音信不通状態。
そこで、心配したみほ達は優花里の実家を訪問する事にした。







そして、みほ達は優花里の実家に到着する。

「ここが優花里さんの実家か。」

みほは目の前の建物を眺めながら呟いた。
みほ達の目の前には、秋山理髪店と書かれた看板がある。
どうやら優花里の実家は床屋だったらしい。
さっそく、みほ達は店内に入る。

「ごめんください。」

そう言いながら、みほはドアを開け、中に入った。
沙織達も後に続いて入店する。




すると、そこにいたのは二人の者だった。
眼鏡をかけた男性。
そして、もう一人はくせ毛の女性だった。


「いらっしゃいませ。」

男はみほ達に言った。

「あの・・・優花里さんはいますか?」

「え? そう言うあなた達は?」

客だと思っていた相手から出た言葉に、男は怪訝そうな顔をしながら聞き返す。
すると、その問いに沙織が答える。

「私達は優花里さんの友達です。」

「友達?・・・・え!!と、と、友達!!?」

男は驚愕し、激しく動揺した。
しかし、もう一人の女性の方は落ち着いており、男に言った。

「あなた、落ち着いて。」

「い、いや、しかし優花里の友達だぞ!!」

「分かってますよ。」

その女性はそう言うと、みほ達に名乗った。

「初めまして。優花里の母、秋山好子です。 優花里がいつもお世話になっております。」

「お、お世話にな、なっております。 父の秋山淳五郎と申します。」

男も動揺しながらも名乗った。

二人は優花里の両親、好子と淳五郎である。



すると、好子がみほ達に言った。

「優花里なんですが・・・朝早くに家を出たまま、まだ帰って来てないんですよ。
 良かったら、2階に上がってお持ちください。」


そう言われたので、みほ達は2階にある優花里の部屋で待つ事にした。












そして、みほ達が部屋で優花里の帰りを待っていた頃・・・・・


「こ、こ、これは一体、ど、ど、ど、どう言う事だ!?」

優花里の父、秋山淳五郎はこれ以上ないほどに動揺していた。
勿論、その理由はみほ達の事である。

優花里はかつて、友達がいなかった。
戦車オタクである優花里は、その趣味が原因でそれまで親しい友達が出来ないでいたのである。
当然、淳五郎達もその事を知っていたし、非常に心配していた。
だから、優花里がいつの間にか友達を作っていて、しかもその友達が家を訪ねてきたのだから、淳五郎達は大いに驚いたのだ。


しかも、それだけならまだしも・・・


「優花里・・・いつのまにか、男友達を作ってたなんて!!」

淳五郎は、4人の友人の中の小次郎(みほ)の姿を見て、非常に驚愕していた。
今まで友達がいなかった優花里が、いつの間にか友達を作っていたというだけでも驚きなのに、異性と友人になっていたのだから、もう仰天である。


「あの子は本当にただの男友達なのだろうか? ・・・・はっ!! ま、まさか実は優花里の彼氏なんて事は!?」

この時の淳五郎は少し思考が混乱していた。
愛娘にいきなり異性の友達が出来たという事で、動揺のあまり、少々思考が飛躍気味である。



そしてその時、淳五郎は想像した。
仲睦まじく交際している小次郎(みほ)と優花里の姿を。



『優花里・・・愛してるよ。』

『私もです、西住殿。』


※注:あくまでも淳五郎の想像です。




「お父さん、聞いてませんよ、そんな事!!」

ここで、淳五郎の頭の中の思考は更に飛躍していく。





『お義父さん。優花里さんを僕にください。』


『お父さん、お母さん・・・今までお世話になりました。』


※注:あくまでも淳五郎の想像です。




「何て事になったらどうしよう!? うわあああああ!!!」

娘の事を溺愛していた淳五郎は堪らず頭を抱えた。


「あなた、落ち着いて。」

好子がすかさず宥めようとする。

「いや、しかしだな、好子・・・。」

「遅かれ早かれ、いつかは必ず通る道でしょう。
 優花里が自らの意思で選んだ相手なのなら、私達がするべき事はただ一つ。二人で歩んで行くその道を、見守ってあげる事よ。」

「むぅ・・・・。」

冷静に淳五郎を説き伏せる好子。
淳五郎とは違って、彼女は至って冷静であった。

ただ、そんな冷静な好子までもが、二人が交際している事を前提で話を進めているのだが・・・・
その事にツッコミを入れるものは、この場には誰もいないのであった。

そして更に好子は言った。

「それにいいじゃない、あの西住小次郎君って子。中々人が良さそうだし、何よりもイケメンだし・・・//////」

「えっ!!?」

「あんな男の子が義理の息子になってくれるのなら、私は大歓迎よ♪」

「好子・・・・・・・・ああいうのが好きなのかい?」

「あらやだ。もう、妬かないでよ、あなた。
 それに上手くいけば、あの子がこの床屋も継いでくれるかもしれないわ。」










秋山夫妻がそんな会話をしていた事など知る由も無いみほは、沙織たちと一緒に部屋の中で優花里の帰りを待っていた。


その時だった。


「「「「・・・・・ッ!!!」」」」

突然、部屋の窓が開いたのだ。
一同は目を見張った。


「よいしょ。」

そして壁をよじ登って、窓から中に入ってきたのは優花里だった。

「あれ!?西住殿!! それに皆さんまで・・・!!」

優花里は部屋の中にみほ達がいたのを見て、驚く。
もっとも、みほ達はそれ以上に驚いていたが。


「私達は、ゆかりんが学校に来なかったから、心配して来たんだけど・・・。
 ていうか何でそんな所から入ってきたの!? 普通に玄関から帰ってくればいいじゃん!」

沙織がすかさずツッコミを入れる。

「こんな格好をしている所を両親に見られると心配させてしまうので。」

優花里がそう言うと、4人は改めて優花里の恰好を見てみる。

この時の優花里は某コンビニの制服を身に纏い、その背中には大きなバックパックを背負っていた。
みほ達には、優花里が何故このような恰好をしていたのかは、皆目見当も付かない。


すると、優花里が懐からある物を取り出した。

「ちょうど良かったです。是非、西住殿に見て頂きたいものがあるんです。」

それは一つのメモリーカードだった。


彼女はさっそく、部屋のテレビでそのメディアを再生する。




【 実録 突撃!サンダース大付属高校 】


テレビ画面一杯に、大きくタイトルが表示される。
そして、続いて映し出されたのは、どこかの校舎だった。

そこで、優花里の顔が映り込む。

『私は今、サンダース大付属高校に来ています。さっそくですが、これより潜入を開始します。』


どうやら、この映像は優花里がサンダース高校に乗り込んでいって、撮ってきた物のようだった。
まさかの事態に、一同は少し戸惑っている。


すると、次に画面に映ったのは、某コンビニの制服からサンダースの制服に着替えた優花里の姿だった。

『これで、どこから見てもサンダースの生徒です。バレてません。』

サンダースの制服を事前に入手しておき、それで成り済まして潜入したらしい。


「というか最初の方に、そのコンビニの制服を着てたのは何で?」

「それはコンビニの定期便に紛れ込んで、学園艦に乗り込んでいったからです。 いや~、大変でしたよ。」

沙織の問いに答える優花里。
その言葉に一同は、もはや驚きも通り越して感心すらしている。



そして、次にテレビ画面に映ったのは戦車格納庫の映像であった。
そこには大量の車両が所狭しと並んでいる。

『凄いです!シャーマンがズラリ。 あっ、あれはM4A1! あっちには僅か76両しか作られなかったA6があります!』

テレビの中の優花里が興奮気味に解説している。


そして画面は切り替わる。
次に移ったのは大勢の生徒達が、体育館のような場所に集まっている映像だった。


『全体ブリーフィングの時間です。』

すると、壇上に三人の者が登場した。

『事前調査によって得た情報によると、彼女達はサンダースの隊長とその副官達です。
 真ん中にいるのが隊長のケイ殿。右側にいるのが、副官にしてサンダースのナンバー2、ナオミ殿になります。
 そして左にいるのは、同じくナンバー3の副官、アリサ殿です。』


その時、壇上にいたアリサが、部隊編成の発表を行なった。

『では、1回戦出場車両を発表する。 シャーマン76ミリ砲搭載型1両、75ミリ砲搭載型8両、ファイアフライ1両。』

そして、ここで隊長のケイが宣言した。

『それじゃあ、これからフラッグ車を決めるわ。OK?』

『『『イエーイ!!』』』

『ずいぶんとノリが良いんですね。こんな所までアメリカ式です。
 あっ!今フラッグ車が決定したようです。』

その時、ナオミが言った。

『何か質問は?』

そこで、すかさず優花里は、待ってましたと言わんばかりに挙手して質問をする。

『小隊編成はどうしますか?』

すると、ケイが答えた。

『Oh、いい質問ね。今回は完全な2個小隊が組めないから、3両で1個小隊の中隊編成にするわ。』

『フラッグ車のディフェンスは?』

『ナッシング。』

『敵にはⅢ突がいると思うのですが・・・。』

『ノープロブレム。1両でも全滅させられるわ!』

優花里は少しでも有力情報を多く引き出そうと、探りを入れていった。


しかしその時、ナオミが不審そうな顔をする。

『あなた、見かけない顔ね。』

『えっ!?』

『あなた、所属と階級は?』

『え!? あ、あの・・・第6機甲師団所属、オッドボール三等軍曹であります。』

その瞬間、ナオミは叫んだ。

『偽物だー!!』

『ひっ!!』

完全にバレてしまったようだ。
優花里は即座に駆けだし、逃走した。

走っているせいで画面の映像が激しく揺れる。

『待ちなさい!』

『追え!』

『逃がすな!!』

追手の姿は画面外で映ってないが、その叫び声から、相当の数の人間に追われている事が窺える。
そして優花里は全力疾走しながら、カメラに向かって語りかけた。

『以上、秋山優花里がお送りしました。レポートを終了します。』


そこで映像は修了した。




「何という無茶を・・・。」

麻子が、呆れ半分、驚き半分といった様子で呟いた。


「いいの? こんな事して・・・。」

「試合前の偵察行為は承認されています。」

心配そうに言う沙織に、優花里は答えた。
優花里の言う通り、偵察行為自体はルール上問題無い。
とは言っても、ここまで大胆な事をする人も滅多にはいないが・・・。

これもひとえに、みほを慕う想いによってなせる業である。

優花里はメモリカードをみほに手渡しながら言った。

「西住殿。どうか次の作戦に役立ててください。」


すると、みほは微笑みながら、感謝の言葉を言った。

「おかげで作戦が立てやすくなったよ。ありがとう、優花里さん。」

「あわわ・・・西住殿に褒められちゃった/////」

その微笑みを見た優花里は、顔を赤くしながら喜んだ。


  ・

  ・

  ・

  ・


こうして、優花里の無事も確認出来た所で、みほ達は帰路に付こうとしていた。


その時である。

「あの・・・小次郎君。」

「はい。」

優花里の父、淳五郎はみほに声をかけた。


この時の淳五郎は、好子に諭された事もあって、決心していた。

「優花里の事を、どうかよろしくお願いします。」

もし目の前の男が、愛娘の優花里が心から慕い、選んだ男であるならば、二人の行く道を応援してあげよう・・・
淳五郎はそう思っていたのである。

そしてみほは言った。

「はい。お任せください。」


その時のみほはとても真っ直ぐな瞳をしていた。


(真っ直ぐな良い目をした男だ。 彼にだったら本当に優花里を任せても大丈夫かもしれないな。)

淳五郎は秘かに、そう思ったのであった。


  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・


そして、みほ達が帰った後の秋山家では・・・

「ねぇ優花里。あの小次郎君とはどういう関係なの?」

「えっ /////」

「もしかして彼氏? いや~、あんなイケメンな男の子をゲットするなんて、優花里も隅に置けないわねぇ。」

「いや、あの・・・その・・・西住殿とはまだ、そういう関係では・・・・ //////」

「まだって事は、いずれはそういう関係になりたいって事かしら?」

「まあ、いつかはそういう関係になれたらって思う事はあるけど・・・・って何を言わせるんですか!! もう・・・ //////」

好子と優花里がガールズトークに花を咲かせていた。


「私としては、伴侶にするなら、ああいう男にしておいた方がいいと思うわ。 格好良いし、物腰が柔らかいし。
 せっかく、あんな良い男に出会えたんだから、絶対に無駄にしちゃ駄目よ。積極的にアプローチをかけていかなきゃ。」

「い、いや、そんな事を急に言われても・・・ /////」

顔を赤くしながら、モジモジする優花里。






一方その頃。



「くしゅん!! ・・・・風邪かな?」


噂のみほは、クシャミをしていたのであった。


今回はここまで。

現在みほは五十鈴家と秋山家から目を付けられています。娘の婿候補として。

しほ「君は誰と結婚する?」
百合「華と、それとも」
好子「優花里?」
まほ「君は姉と結婚する、小次郎巡るよ純情」

乙華麗
包囲網が着々と…

乙です

○ほ「ここに優花里がサンダース高校の制服に着替える際に全裸になった映像がある。
ネットに流出されたくなければ小次郎に・・・ちっ!ばれたか逃げるぞ!!」

更新まってます

┏┻┓
┃小┃
┃次┃
┃郎┃
┃さ┃
┃ん┃
┃と┃
┃イ┃
┃チ┃
┃ャ┃
┃イ┃
┃チ┃
┃ャ┃
┗━┛

ダージリン「イギリス人は恋愛と戦争では手段を選ばない」

よっしゃ追い付いた、しかしエリカさん良い人だな…

追いついた
面白くて期待

面白くて追い付いてしまった。
しかしここからサンダース、アンツィオ、プラウダ、黒森峰と続く訳か
まあ主のペースで完結目指して頑張ってほしい

生存報告。
現在進捗率40%です。

早く、サンダース戦を始めたいんですが・・・中々上手くいきません。

いえいえ、サンダースなんて数頼みの下品な学校の戦いなんて、ほんのちょっとで構いませんわ。それより主人公と聖グロの隊長との絡みを増やしていただけないかしら?

このスレなんか紅茶臭いな

転校する前の人と友情と愛の絡みも必要でしょ!!
元副隊長と現副隊長とか!

姉弟の禁断の愛もいいぞ

しゅ

とりあえず、パスタを茹でてから小次郎とデートを誘う方法を考える

ここで皆様にお知らせです。

現在、このガルパンSSを投稿している私ですが、突然に全く別作品の二次創作ネタが急遽頭の中に思い浮かんでしまいました。
(ちょっと気分転換にと思って某アニメのDVDを購入したのが運の尽き・・・。)

それ以降、頭の中に次から次へとネタが湧いて来て、収拾がつかない状態に。
ですので気分転換と頭の整理も兼ねて、そっちの方の投稿もやっていきたいと思います。

勿論、このガルパンSSの方もちゃんと続けていきます。
つまり新ネタとガルパンSSの同時進行で制作をしていく形になります。

トリップは同じく、「◆MBDL96yQmCZm」を使いますので、もし見かけたらそちらの方もよろしくお願いします。

丁寧だな
同時期に複数スレで投稿する人なんてよくいるから気にしなくて大丈夫だよ

この前言ってた新ネタの事についてなんですが・・・
何を血迷ったのか、予告編みたいな物を、パスタ食いながら、ノリと勢いだけで作っちゃいました。それをここに投下します。

ガルパンSSと新ネタSSとその予告編の制作という、3つの事を同時に進めていく事から、作戦名は

「3種のチーズピザとビーフストロガノフとフィッシュアンドチップスアンドビネガーとグリューワインとアイスバインと
 フライドチキンステーキwithグレイビーソースとアンコウ干し芋蛤とすき焼きとニュルンベルクとマイスタージンガー作戦」

です!!

学園都市。
科学と超能力の街に、その人はいた。

御坂美琴。
学園都市230万人の頂点に君臨する7人のレベル5のうちの一人。


そんな彼女の前に突如現れた謎の少女。

美琴「ベランダで修道女が天日干しされている・・・。」

インデックス「お腹減ったんだよ。」


その少女は自らを、10万3千冊の魔導書を持つ魔術師と名乗った。

インデックス「悪い魔術師達に追われてるんだよ。」

美琴「魔術師ねぇ・・・。」



この出会いを切欠に、事態は急転する。


ステイル「ステイル・マグヌス、と名乗りたいところだけど、ここはFortis931と言っておこうかな。
     これは所謂・・・・・殺し名。」


神裂「神裂火織と申します。魔法名の方は出来れば名乗りたくないのですが・・・。」


インデックスを狙う魔術師達。

美琴「インデックスは私の仲間。・・・・私は、あいつの味方であり続けるって決めたのよ。」

しかし、美琴はこれに敢然と立ち向かう。




ステイル「炎よ!巨人に苦痛の贈り物を!!」


神裂「このド素人がっ!!」

激突する超能力者と魔術師。
その戦いの果てにあるものは一体何か。










インデックス「じゃあ、私と一緒に地獄の底までついて来てくれる?」










美琴「地獄の底から引っ張り上げる。力づくでも!!」





そこに希望は・・・救いはあるのか。




【とある魔術と超電磁砲】



近日投下開始。

以上です。
実際と異なる場合もありますので、ご了承ください。

これでもう後には引けない。
こうやって自らの退路を断ち切っていくスタイル。

乙です

おつ

インデックスとレールガンは見た事ないんだよなぁ…

禁書SSの全盛期にあるにはあったけど、エタってたな

おつ

ケイ「私の出番はまだなの!?」

明日の夜8時より投下を開始します。

待ってました

恒例のレス返しからです。


>>691 >>692
どちらからも、安心して娘を任せられる男として着目されてます、はい。


>>694
自重しないと、そのうち本当に憲兵呼ばれるよwww


>>696 >>701 >>702
うーん、この自称英国淑女・・・。


>>697
エリカさんはいい人ですよ。
え? 原作のエリカさん? ・・・・・知りませんなぁ(すっとぼけ)


>>703 >>704
決して自重しない奴らwww


>>708
相当念入りに作戦を練らないと難しいと思いますよ。障害多すぎるから・・・。






というわけで、ここから本編です。




大洗学園戦車道チームは、大会に向けて、猛特訓に励んでいた。
みほの指導下で今日まで、ひたすら訓練を繰り返してきたおかげで、チーム全体の練度は最初の頃とは比べ物にならないほど向上している。

そして、かつては遊び感覚で戦車を奇妙にデコレートした彼女達も、今では元に戻して、ちゃんとした戦闘用の塗装へと切り替えていた。


(とりあえず、これで何とか戦えそう。)

チームの状態を確認したみほは、ひとまず安堵する。



そんな中、みほ達の下にある物が届いた。
それは戦車道のユニフォーム・・・パンツァージャケットである。
紺色のカラーリングをしたシンプルなデザインをしたジャケットだった。

各員に支給され、彼女達はさっそくジャケットの袖に腕を通す。


「これで私も立派な戦車乗り♪」

「うむ。悪くないな。」

彼女達は口々に言った。



そんな中、みほもさっそくジャケットを着てみた。
ジャケットの裾に腕を通し、前のボタンを閉める。

すると、そこには凛々しい風貌をした戦車乗りの姿があった。

「流石です、西住殿! 格好良いであります。」

優花里が興奮気味に言う。

彼女の言った通り、その時のみほの姿は、まさに一流の戦車乗りのそれであった。
隊長としても非常に様になっていたのである。


  ・

  ・

  ・

  ・


「さて・・・新しいユニフォームも揃ったところですし・・・」

ユニフォームが全員にいきわたったところで、みほは皆にある提案をした。

「この機に心機一転・・・チーム名を改めようと思います。」

「何だ、西住。チーム名を変えるのか?」

みほの提案に、桃が聞き返した。


「ええ。今までチーム名はアルファベットを使ってました。
 でも、それだとちょっと味気ないと思って、新しいチーム名を考えてきたんですよ。」

その、みほの提案に多くの者達が頷いた。

きっと隊長の事だから、さぞ格好いい名前を考えてくれたに違いない・・・・皆がそう思ていた。
一体どんな名前になるのか、皆がワクワクしながら聞き入っていた。



すると、みほは一枚の表を取り出す。

「ここに新しいチーム名が書いてあります。」

みほが取り出したのは、チーム名変更の一覧表だった。
すぐさま、皆がその表を見た。



そして、その表には以下の通りに書いてあった。




・Aチーム→アンコウチーム

・Bチーム→カメさんチーム

・Cチーム→アヒルさんチーム

・Dチーム→カバさんチーム

・Eチーム→ウサギさんチーム







「「「・・・・・・・・・。」」」

それを見た瞬間、皆が沈黙する。

皆の予想に反して、みほが提案した新しいチーム名は、何ともユルイ名前だった。
一体どんな格好良いチーム名になるのか、と思っていた者達は皆呆気にとられる。

皆が普段から抱いている小次郎(みほ)のイメージと言えば、凛々しくて精悍な男、というイメージだった。
そんなイメージからは、誰もが想像もつかなかった、何ともユルイ感じのネーミングにセンスに一同は唖然とする。


「あ、あれ!? もしかして、この名前は嫌でした?」

皆が沈黙したままだったので、みほは慌てて問う。
そんなみほに対して、皆は咄嗟に答えた。

「い、いや・・・そんな事は無いよ。」

「そ、そうよ。 とても素敵な名前じゃない。」

「中々良いネーミングだと思うよ。」

皆は口々に言う。
彼女達には、みほが一生懸命考えてきたであろう、そのネーミングを真っ向から否定する事は出来なかった。


「そうですか。それは良かったです。」

すると、みほは不安そうな顔から一転して、笑顔になった。



((( 小次郎君、結構可愛い所もあるのね ///// )))

そんな事を思う一同。
普段は凛々しい小次郎(みほ)が見せたユルイ、ネーミングセンス。

そのギャップに心を動かされた者達であった。



  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・


そして、やって来た試合当日。

サンダース対大洗学園の対決。
その試合会場には多くの者達が詰めかけている。


そして、その中にはグロリアーナのダージリン達の姿もあった。

「小次郎さん、今回は一体どんな、面白い試合を見せてくれるのか、とても楽しみね。
 あと、試合が終わったらお茶会にでも誘おうかしら。」

楽しそうに呟くダージリン。

「戦力的には大洗が圧倒的に不利ですからね。如何にしてサンダースの連携を掻き乱す事が出来るかがポイントになります。
 ・・・・・あと、抜け駆けは駄目ですよ、ダージリン。」

まじめに分析しながらも、サラッとダージリンに釘を刺しておくアッサム。

「サンダースの戦力と小次郎さんの策・・・・どちらが上回るか、という戦いになりますね。
 かつて私達を破った小次郎さんの頭脳ならば、今回もきっと、アッと驚くような作戦を繰り出してくるでしょう。
 ・・・・あと、そのお茶会には必ず私も参加させていただきます。」

そして、ちゃっかりと混ざろうとしているオレンジペコ。







一方その頃のみほ達は、試合に向け車両の最終点検を行なっていた。


すると、そこへ二人の者やって来る。

「あれが大洗の戦車か。これは中々に面白いね。」

「・・・・・・・。」

やって来たのはサンダースのナオミとアリサだった。
突然の敵チームからの訪問者に、桃は食ってかかるように、二人を睨みながら言う。

「サンダースか。何をしに来た?」

「いや、親睦のために食事でもどうかと思ってね。」

ナオミは、軽くいなしながら言った。





「・・・・・・・。」

しかしこの時、ナオミの傍にいたアリサは彼女とは対照的に、無言で佇んでいた。


(この中に、例の奴が・・・。 どいつなのよ。一体どいつが・・・)

何故かこの時のアリサは、大洗の面々を睨むかのように見渡していた。


アリサのこの行動は、ある理由によるものだったのである。
それは、先日に起きたある出来事に起因していたのだ。


今から時を遡る事、数日前の事である。


  ・

  ・

  ・

  ・

  ・


それは大会の組み合わせ抽選会が行なわれた日の出来事であった。
その日、アリサは会場である人物を姿を見つける。

「あっ。タカシ・・・・/////」

その人を見た瞬間、アリサは頬を赤く染める。

そこにいたのはサンダース高校の男子生徒、タカシであった。
彼は、アリサの意中の人であり、初恋の人である。

「あら、やだ! どうしよう /////」

その初恋の相手との、突然の遭遇に、アリサは慌てて咄嗟に物影に身を隠した。


声をかけようかどうかを迷いながら、物陰からタカシの様子を窺うアリサ。

するとその時、アリサはある事に気づいた。
タカシの様子が何かおかしい。

(タカシ・・・・?)

アリサは物陰から聞き耳を立てる。
すると、タカシの口から思わぬ言葉が出た。

「うちの学校の戦車道チームが全国大会に出るってんで、ちょいと様子を見ようと思って、軽い気持ちで来たんだが・・・・・
 まさか、こんな所であんなにも可愛い子に出会えるなんてな。」

「・・・・ッ!!!?」

アリサ目を見開く。
そしてタカシは更に言った。

「大洗にいたあの子・・・・一目見た瞬間、全身を電流が駆け抜けた感じがしたぜ。まさに一目惚れだな。
 しかし、見ず知らずの人が、いきなり声をかけるのもなぁ・・・。どうやって、あの子にお近づきになろうかな。」

「なっ!!」

大きなショックを受けるアリサ。

(そんな・・・そんな・・・・・嘘よおおおおおおお!!!)


彼女は声にならない叫びをあげた。



  ・

  ・

  ・

  ・

  ・


と、まあ・・・このような事が先日あったのである。

(うぅ。どこの誰とも分からない奴にタカシを取られた。)

そう思いながら、アリサは大洗の面々を睨んだ。

(一体誰なのよ!タカシの言ってた“大洗のあの子”ってのは! 絶対この中にいる筈。)

そう思い、アリサは大洗の面々を睨む。

そんなアリサを他所に、大洗の者達はサンダースの招待にあずかる事となった。







そして試合前の親睦として、サンダースに招かれた大洗の一同は、驚愕する事になった。
そこにあったのは、立ち並ぶ屋台式トラックの数々。

「凄いですよ、これは! 流石はサンダース!」

優花里が興奮しながら言う。
これだけのものを用意できるサンダースの資金力というものが窺い知る事が出来たのであった。


すると、そこにサンダースの隊長である、ケイがやって来た。
彼女は杏に声をかける。

「ヘイ、アンジー。」

「アンジー? ああ、私の事か。 この度はお招きいただき、どーも。」

いきなりニックネームで呼ばれた事に若干戸惑いながらも、杏はすぐに順応した。

「杏だからアンジーなんですね。」

「馴れ馴れしいな。」

柚子と桃も、ケイの非常にフレンドリーなノリに少し戸惑っていた。

そんな彼女達に、ケイは言った。

「何でも好きな物を食べていってね。オーケー?」

「オーケイ、オーケイ。・・・ケイだけに。」

「アハハハハハ。ナイスジョークよ、アンジー。 ・・・・・・・思わず大笑いしちゃったわ。大洗だけに。」

「「HAHAHAHAHAHAHA」」

ケイの言葉に、杏はジョークで返し、それに対しケイは大笑いしながらも、更にジョークで返す。

この二人は性格的に何か近いものがあるのか、出会っていきなり打ち解けたのであった。




「ん?」

するとその時、ケイは優花里の事に気づいた。

「ヘイ、オッドボール三等軍曹。」

「あっ! やばっ!! 見つかってしまったであります。」

ケイに見つかり、優花里は慌てた。

彼女が慌てるのも無理はない事である。
何せ彼女は先日、サンダースに潜入し、スパイ活動を行なった上に、途中でそれがバレてしまっている。
勿論、それ自体は戦車道のルール上は問題の無い行為。
しかし、だからと言って相手がそれを黙ってお咎め無しで済ませてくれるとは、優花里には思えなかった。
さすがに危害を加えられる事は無いだろうが、怒られる事は確実だと、優花里は思っていたのだ。


「あわわわわ! ど、どうしよう!」

優花里は慌てふためいている間にも、ケイは優花里の方へどんどん向かってくる。


するとその時、優花里の傍にいたみほが動いた。
みほは、優花里を庇うように、前に出る。

「え! 西住殿!?」

突然のみほの行動に驚く優花里。


すると、そんな彼女を他所に、みほはケイの前に出ると、相手に深々と頭を下げた。

「ん?」

ケイも、唐突に動き出したみほに、少々意表を突かれた。
そこで、みほは頭を下げながら言う。

「この度はご迷惑をおかけして、大変申し訳ありませんでした。」

「西住殿!?」

優花里は思わず目を見開いた。


「あなたは?」

ケイは目の前に出てきたみほに問うた。


「隊長の西住小次郎です。
 今回は貴校に多大なご迷惑をおかけした事について、隊長として深くお詫び申し上げます。」

「それって、この前のスパイの事?」

「はい。 あれは僕が優花里さんに命じて、やらせたものだったんです。彼女はその命令に従ったにすぎません。
 だから彼女に非は無いんです。
 全ての責任は僕にあります。」

「そんな・・・西住殿!!」

優花里は戸惑った。

勿論、みほが言った事は嘘であり、実際にはあのスパイ行為は、みほの知らない所で優花里が独断でやった事である。
優花里を庇うために、みほがついた嘘であった。



すると、みほは相手の表情を見た。

(・・・え?)

その時、ケイはキョトンとした表情で、みほを見ていた。


そして・・・・



「アハハハハハ。」

「「・・・!?」」

突然、ケイは笑い出した。
予想外のリアクションに、みほ達は思わず呆気に取られた。

そしてケイは続けざまに言った。

「そんな事、別に気にする事は無かったのに。ずいぶんと律儀なのね、小次郎君。」

「え!? でも迷惑じゃなかったんですか?」

「迷惑だなんて、とんでもない。 それにあのチェイスは、私も結構楽しかったし。」

どうやらケイは、スパイの事を気にしてなかったようだ。
そして、ケイはみほの肩に手を置き、気さくに言った。

「良かったら、今度遊びにおいでよ。その時はちゃんと歓迎するからさ。勿論、オッドボール三等軍曹もね。」

それだけ言い残すと、ケイは手を振りながら去って行った。






「ふぅ・・・・・。 良かった、寛大な人で。」

みほはホッと一息ついた。


すると、優花里が申し訳なさそうにしながら、みほに言った。

「あの・・・西住殿。」

「ん? どうしたの?優花里さん。」

「すいませんでした。私のせいで・・・。」

「別に謝る事なんてないよ。 サンダースの人も、こうして許してくれた事だし・・・。」

「しかし、私のせいで西住殿が頭を下げる羽目に・・・。」

「気にしないで。別に、僕が勝手にやった事だから・・・。
 それに優花里さんが頑張ってくれたおかげで、重要な情報を得る事が出来、作戦を立てる事が出来た。
 ・・・・・ありがとう、優花里さん。」

みほはそれだけ言うと、戦車の方へ歩いて行った。

「西住殿・・・・・・。」

そして、その後姿を見送る優花里。
その時、優花里の目にはその背中はとても大きく見えた。

ここで優花里は改めて決意した。

(西住殿・・・・私、一生ついて行く所存であります。)







一方その頃・・・


(あれが大洗の隊長か。)

ケイは、みほの事について考えていた。
あの時のケイは、みほの言った言葉が優花里を庇うための嘘だという事は、直感で何となく察していたのである。

(西住小次郎君か・・・。中々男らしいじゃない。 これは今から戦うのが楽しみだわ。)

そう思い、ケイは笑みを浮かべた。


  ・

  ・

  ・

  ・

  ・


所変わって、サンダースのアリサ。
彼女は今、試合前の準備を終えて、試合開始時刻までの時間潰しとして会場内を歩いていたのだが、そこで彼女はあるものを見つける。

「あっ! タカシ!!」

それは試合観戦に来ていたタカシの姿であった。

(も、もしかして私の応援に来てくれたの? あら、やだ、どうしよう ///// )

頬を赤くしながら狼狽するアリサ。


しかし、その直後にタカシの口から出た言葉で、アリサはショックを受ける事になる。



「あぁ・・・やっぱり、大洗のあの子は可愛いなぁ。 あれ以来、あの子の事を忘れられずに、つい来てしまった。
 せっかく来た事だし、今日こそはあの子とお近づきになりたいな。」

(タカシイイイイ!!! 私を応援に来てくれたんじゃないの!? そんなにあの子がいいの!?)

アリサは心の中で悲鳴を上げる。

(そもそも“大洗のあの子”って一体誰なのよ!! あの中にいるのね!!)

アリサは思わず歯ぎしりをしながら、タカシを見つめる。
そして、そんな彼女の事に気づかずタカシは呟く。

「やべえな。 こうして遠くからあの子を見てるだけで、柄にもなく緊張しちまうぜ。」

そして、この時にアリサをふと気づく。
タカシの視線がある人物に向けられていた事に・・・。

(ま、まさか・・・あいつが!!)

アリサはタカシの視線の先を見た。
そして、その目線の先にいたのは・・・


「いよいよ公式戦ね。これで活躍したら、一気にモテモテになっちゃうかも。やだもー。」

武部沙織であった。



(あいつか!! あの女が・・・・・・。 よくもタカシを!!)


アリサは激しい嫉妬に燃え上がる。
遠目に沙織を睨みつけ、心の中で宣戦布告した。


(今に見てなさいよ、武部沙織。 この試合であんたを徹底的に叩き潰してあげるわ。)




そして、その頃の沙織は・・・

「あれ!? 何か急に寒気が!」

沙織は謎の寒気によって思わず身震いしたのであった。



今回はここまで。
みぽりんのネーミングセンスって、女の子だと可愛いけど、これが男だとかなりヤバイと思います。
まあ、この場合はギャップ萌えって事で、逆にプラス要因ですけど・・・。

そして今回は、優花里の忠犬化がさらに進行しました。

そしてタカシを巡るアリサの愛憎劇が・・・(笑)

沙織か。よかったなー、長年モテモテになりたいと言ってたからに本望だろう(棒)
アリサは西住派に堕ちなよ~

乙です

エリカ「試合が始まりましたね」
まほ「ああ」●REC
しほ「ええっ」パシャパシャ

ミカ「風の気まぐれに流されてたら、大洗に転校することになってた」

そこに、ローズヒップがトースターと紅茶咥えたまま、小次郎に衝突した

そしてそれを捕まえるまほであった。

エリカ「大洗にきたワニ」

生存報告。
現在進捗率50%です。

初めてこのスレの存在を知ったんだが、嘘だろ?3年も書き続けてるのか?1スレも消化せずに?
仙人かよ

数年単位で楽しめるスレはそうそうないな

我が家のバトラーがこんな言葉を言っていたわ。老いすら楽しむのが英国人なのだと。
続きを待つのも1つの楽しみじゃなくて?

両手で紅茶飲んでそう(偏見)

最終章が待ち遠しい、今回は全国でやるだろうな

生存報告。

現在進捗率70%です。

待っているワニ

逸見エリカの誕生日は3月6日だったわに

報告だわに。
投下準備がほぼ出来たわに。

次の土曜日の11時くらい辺りに投下するわに。

期待わに

>>756
間違えたわに。
11時じゃなくて、23時だったわに。

全然 大丈夫わに

私の小次郎さんの活躍が漸く見れる事に比べればたかだか12時間のズレなんて、大した事では無いわ。そうじゃなくって?

田尻さん、乙!

ヒャッホォウ!! レス返しだぜ!!


>>739
やだもー



>>741
オレンジペコ「何ですか?あの人たちは・・・。」

アッサム「放っておきなさい。」

ダージリン「そうよ。そんな事より、早く小次郎さん映らないかしら。」



>>742
ミッコ「変な事言ってないで、さっさと帰るよ。」

ミカ「すいません。うちの者がご迷惑をおかけしました。」



>>743>>744

ガシッ!!(アイアンクロー)

まほ「おい。今、みほに何しようとした?」

メリメリ

ローズヒップ「ぎゃあああああ!! ギブギブ!!!」



>>745
それは誤植だわに。



>>754
待たせたわに。



>>755
そうだったわに。







ここからは本編です。
それでは、パンツァーフォー!!




車両の最終確認点検を終えた大洗の一同。
後は試合開始時刻が来るのを待つだけとなった。

開始時刻までは、まだだいぶ時間に余裕がある。


そんな中、みほの携帯電話が鳴った。

「ん? メールだ。」

メールが着信していたようだ。
みほはメール差出人を確認した。

「あっ、お姉ちゃんからだ。」

そのメールはまほからの物である。
みほはすぐにメールの内容を見てみた。



『みほへ。
 急で悪いんだが、みほにどうしても会いたいという人が来ている。
 今から会場の裏手にまで来てくれないか?』


メールを読み終えたみほは、携帯電話を懐にしまう。

「会いたい人って、一体誰だろう?」

みほは疑問に思いながらも、試合会場の裏手の方へ向かって歩き出した。










みほが会場の裏に行くと、そこにはまほとエリカの二人がいた。

「お姉ちゃん・・・エリカさん。」

二人の姿を見つけたみほは、彼女達の所へ駆け寄った。

「来たわね、みほ。」

「すまないな。急に呼び出してしまって。」

エリカとまほは言った。


「別に構わないよ。それで・・・会いたい人っていうのは誰なんですか?」

そのみほの問いに、エリカが答えた。

「それは、あなたもよく知っている人物なんだけど・・・・」




その時、みほの後ろから声をかける者がいた。


「みほさん!!」

「えっ・・・!?」

その声はみほにとって聞き覚えのある声であった。
みほは声のした方へ振り向く。

そして、みほは驚き、目を見開く。
そこにあったのは、みほがとてもよく見知った顔だった。

今でもハッキリと思い出せる、彼女との思い出。
その思い出の中にあった、懐かしい顔。
それが、そこにはあったのである。



みほは彼女の名を口にする





「赤星さん!!」


みほの目の前にいた彼女の名は、赤星小梅。
黒森峰時代のみほのチームメイトである。

そして1年前の全国大会決勝戦中に起きた水難事故。
その時の水没車両からみほが助け出したのが彼女・・・赤星小梅なのである。


彼女はエリカと同様に、みほとは非常に親しい間柄で、親友と言っていいほどの人だった。
それだけに、みほは赤星と遭遇する事を避けていた。
かつてのみほとは髪型も髪色も違うし男装もしているが、もし会えばエリカの時みたいに見破られてしまうからだ。

そうなれば彼女から色々と聞かれてしまう。

何故、海外留学と偽って姿を消したのか。
何故、男装して別人になりすましているのか。


そして、過去に黒森峰が何があったのか。

そう・・・それは、みほにとって絶対に知られたくないものだった。



(どうしよう・・・・・・・。)

みほは困惑し、立ち尽くす。
目の前のにいる友に、何かを言わなければならないが、言葉が見つからなかった。




その時、みほの後ろから声をかける者がいた。


「みほさん!!」

「えっ・・・!?」

その声はみほにとって聞き覚えのある声であった。
みほは声のした方へ振り向く。

そして、みほは驚き、目を見開く。
そこにあったのは、みほがとてもよく見知った顔だった。

今でもハッキリと思い出せる、彼女との思い出。
その思い出の中にあった、懐かしい顔。
それが、そこにはあったのである。



みほは彼女の名を口にする





「赤星さん!!」


みほの目の前にいた彼女の名は、赤星小梅。
黒森峰時代のみほのチームメイトである。

そして1年前の全国大会決勝戦中に起きた水難事故。
その時の水没車両からみほが助け出したのが彼女・・・赤星小梅なのである。


彼女はエリカと同様に、みほとは非常に親しい間柄で、親友と言っていいほどの人だった。
それだけに、みほは赤星と遭遇する事を避けていた。
かつてのみほとは髪型も髪色も違うし男装もしているが、もし会えばエリカの時みたいに見破られてしまうからだ。

そうなれば彼女から色々と聞かれてしまう。

何故、海外留学と偽って姿を消したのか。
何故、男装して別人になりすましているのか。


そして、過去に黒森峰が何があったのか。

そう・・・それは、みほにとって絶対に知られたくないものだった。



(どうしよう・・・・・・・。)

みほは困惑し、立ち尽くす。
目の前のにいる友に、何かを言わなければならないが、言葉が見つからなかった。


すると赤星はみほから少し離れ、そして彼女の目を真っ直ぐ見ながら言う。

「小次郎さん。 試合、頑張ってくださいね。 私、応援してます。」

「赤星さん・・・・。」


そしてまほとエリカも、みほに言った。

「私も応援しているよ、みほ。 思う存分にやるといい。」

「みほ。 あなたの力・・・サンダースの連中に見せつけてやりなさい。」



まほとエリカだけでなく、赤星も応援してくれている。
そう思うと、みほはとても嬉しい気持ちになった。


「ありがとう。」

みほは笑顔で言ったのであった。


  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・


嘗ての親友、赤星と喜びの再会が出来たのも束の間、みほは試合会場に戻らなければならなかった。


「お姉ちゃん、エリカさん・・・ありがとう。 赤星さんと会わせてくれて。」

そう言うと、みほは試合会場へ向かって行った。
親友と再会させてくれた事に、みほはとても感謝していたのである。



((・・・・・・・・・。))

そんなみほの後姿を見送った、まほとエリカだったが、実はその時の彼女達の心中は少し複雑だった。


(本当は会わせるつもりは無かったんだけどなぁ・・・。)

(まさか赤星に嗅ぎつけられるなんて・・・・。
 どうしても会いたいって言って聞かないもんだから、連れて来ちゃったけど・・・。)

二人は心の中で呟いた。

実は本当の所、まほもエリカも当初は赤星にみほの事を教えるつもりは無かったのである。
みほの秘密を守るためにも、その事を知っている人間は少ない方がいい。
だから赤星にもみほの事は出来れば隠しておくつもりだった。


すると赤星はみほから少し離れ、そして彼女の目を真っ直ぐ見ながら言う。

「小次郎さん。 試合、頑張ってくださいね。 私、応援してます。」

「赤星さん・・・・。」


そしてまほとエリカも、みほに言った。

「私も応援しているよ、みほ。 思う存分にやるといい。」

「みほ。 あなたの力・・・サンダースの連中に見せつけてやりなさい。」



まほとエリカだけでなく、赤星も応援してくれている。
そう思うと、みほはとても嬉しい気持ちになった。


「ありがとう。」

みほは笑顔で言ったのであった。


  ・

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  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・


嘗ての親友、赤星と喜びの再会が出来たのも束の間、みほは試合会場に戻らなければならなかった。


「お姉ちゃん、エリカさん・・・ありがとう。 赤星さんと会わせてくれて。」

そう言うと、みほは試合会場へ向かって行った。
親友と再会させてくれた事に、みほはとても感謝していたのである。



((・・・・・・・・・。))

そんなみほの後姿を見送った、まほとエリカだったが、実はその時の彼女達の心中は少し複雑だった。


(本当は会わせるつもりは無かったんだけどなぁ・・・。)

(まさか赤星に嗅ぎつけられるなんて・・・・。
 どうしても会いたいって言って聞かないもんだから、連れて来ちゃったけど・・・。)

二人は心の中で呟いた。

実は本当の所、まほもエリカも当初は赤星にみほの事を教えるつもりは無かったのである。
みほの秘密を守るためにも、その事を知っている人間は少ない方がいい。
だから赤星にもみほの事は出来れば隠しておくつもりだった。


「匂いって・・・あんたは犬か!!」

エリカは思わず叫んだ。
一体どんな嗅覚だよ! と言いたい気分だったのである。

そして更に赤星は言う。

「これは、みほさんの匂い。間違いない。 みほさんに会ってきたんですね、エリカさん!」

そう言いながら、赤星はエリカに迫った。

「いや・・・・それは・・・・」

「会ってきたんですね!」

睨みながら言ってきた赤星の、その迫力にエリカは押され気味だった。
そしてまほも、表情には出さないが内心オロオロしている状態である。

まさか赤星にいきなりこんな事を言われるとは、エリカもまほも思ってもみなかったことであった。
赤星は文字通り、みほの事を嗅ぎつけたのである。


すると赤星は素早くまほの方へ向いた。

「隊長!!」

「な、何だ!?」

「私もみほさんに会わせてください、隊長。」

「いや、待て。 落ち着くんだ、赤星。」

「私もみほさんに会わせてください!!」

力強く言い切る赤星。
その有無を言わせぬ迫力に、まほですら押されてしまっていたのだった。


そして結局、そのまま押し切られ、後日にみほに会わせるという事で、何とかまほはこの場は収める事が出来た。


  ・

  ・

  ・

  ・


そんな事があって、そして今に至る。
恐るべし、赤星。



「みほさん・・・・・・。」

とても嬉しそうな表情でみほを見送る赤星。

そして、そんな赤星の後姿を見ていたエリカとまほだったが、二人はこの時の赤星に犬の耳と尻尾が付いているように幻視していた。
嬉しそうに尻尾をブンブン振っているように・・・。







一方、その頃・・・・


「ハッ・・・・!! 何か嫌な予感がするであります!!」

優花里は呟いたのだった。


今回はここまで。
初代忠犬の赤星小梅、登場の回でした。

ちなみに二代目忠犬は勿論、秋山優花里の事です。



(U^ω^)<みほさーん

(U^ω^)<にしずみどのー

生きとったかワレ
6部作まで何年かかるかな(ニッコリ

乙です

まほ「あれが彼女の本当の姿だ。赤星はワニの皮を被ったエリカではない。人の皮を忠犬なのさ。」

直下「(トースター咥えながら)ふう、間に合ったー」

>>768
の前、抜けてる?

>>774

ぎゃあああああああ!!! 思いっきり抜け落ちてるううう!!!!

何で気づかなかったのか・・・。
しかも他にも抜け落ちてる所があって、もう話が滅茶苦茶に・・・。

というわけで、今回の分を最初からやり直します。

では、ここから再投下スタートです。




車両の最終確認点検を終えた大洗の一同。
後は試合開始時刻が来るのを待つだけとなった。

開始時刻までは、まだだいぶ時間に余裕がある。


そんな中、みほの携帯電話が鳴った。

「ん? メールだ。」

メールが着信していたようだ。
みほはメール差出人を確認した。

「あっ、お姉ちゃんからだ。」

そのメールはまほからの物である。
みほはすぐにメールの内容を見てみた。



『みほへ。
 急で悪いんだが、みほにどうしても会いたいという人が来ている。
 今から会場の裏手にまで来てくれないか?』


メールを読み終えたみほは、携帯電話を懐にしまう。

「会いたい人って、一体誰だろう?」

みほは疑問に思いながらも、試合会場の裏手の方へ向かって歩き出した。










みほが会場の裏に行くと、そこにはまほとエリカの二人がいた。

「お姉ちゃん・・・エリカさん。」

二人の姿を見つけたみほは、彼女達の所へ駆け寄った。

「来たわね、みほ。」

「すまないな。急に呼び出してしまって。」

エリカとまほは言った。


「別に構わないよ。それで・・・会いたい人っていうのは誰なんですか?」

そのみほの問いに、エリカが答えた。

「それは、あなたもよく知っている人物なんだけど・・・・」




その時、みほの後ろから声をかける者がいた。


「みほさん!!」

「えっ・・・!?」

その声はみほにとって聞き覚えのある声であった。
みほは声のした方へ振り向く。

そして、みほは驚き、目を見開く。
そこにあったのは、みほがとてもよく見知った顔だった。

今でもハッキリと思い出せる、彼女との思い出。
その思い出の中にあった、懐かしい顔。
それが、そこにはあったのである。



みほは彼女の名を口にする





「赤星さん!!」


みほの目の前にいた彼女の名は、赤星小梅。
黒森峰時代のみほのチームメイトである。

そして1年前の全国大会決勝戦中に起きた水難事故。
その時の水没車両からみほが助け出したのが彼女・・・赤星小梅なのである。


彼女はエリカと同様に、みほとは非常に親しい間柄で、親友と言っていいほどの人だった。
それだけに、みほは赤星と遭遇する事を避けていた。
かつてのみほとは髪型も髪色も違うし男装もしているが、もし会えばエリカの時みたいに見破られてしまうからだ。

そうなれば彼女から色々と聞かれてしまう。

何故、海外留学と偽って姿を消したのか。
何故、男装して別人になりすましているのか。


そして、過去に黒森峰が何があったのか。

そう・・・それは、みほにとって絶対に知られたくないものだった。



(どうしよう・・・・・・・。)

みほは困惑し、立ち尽くす。
目の前のにいる友に、何かを言わなければならないが、言葉が見つからなかった。



しかし・・・・・





「えっ?」

気がついたら、みほは赤星にそっと抱きしめられていた。
そして赤星は言った。

「みほさん・・・・会いたかった。」

その声は喜びに満ちたものだった。
更に彼女は言う。

「みほさんが突然黒森峰からいなくなって、正直心配してたんです。
 でも、良かった・・・・・・・戦車道をやめてなかったんですね。」

その時の彼女は涙声になっていた。
再会を喜び、嬉しさのあまり涙ぐんでいるようだった。

そしてこの時の赤星には、みほの男装の事や、過去の事などについて、聞こうとする様子は無かった。
みほも、その事は絶対に問い質されると思っていただけに、その態度には少々戸惑う。


「あの・・・赤星さん。 聞かないんですか? 僕の事を・・・。」

みほは思わず、赤星に問いかけた。

すると赤星は言った。

「何か事情があった事は分かります。
 でも、いいんですよ。みなまで言わなくとも・・・。
 私はただ、こうしてみほさんと再会する事が出来ただけで十分ですから。」


その言葉が如実に物語っていた。

どうやら赤星もかつてのエリカと同様に、みほに何か深い事情があると察し、何も聞かないでいてくれるらしい。
その上で彼女は、みほとの再会を心から喜んでいたのであった。


その配慮がみほにとってはありがたかった。

お陰でみほは一安心する事が出来る。
そして友との再会を純粋に喜ぶ事が出来るのであった。



「赤星さん・・・・心配させてしまって、ごめんなさい。」

「いえ、いいんですよ。 みほさん・・・・いや、“小次郎”さん。」

そして赤星は、“小次郎”として生きている今のみほの秘密を守ってくれるようだった。


すると赤星はみほから少し離れ、そして彼女の目を真っ直ぐ見ながら言う。

「小次郎さん。 試合、頑張ってくださいね。 私、応援してます。」

「赤星さん・・・・。」


そしてまほとエリカも、みほに言った。

「私も応援しているよ、みほ。 思う存分にやるといい。」

「みほ。 あなたの力・・・サンダースの連中に見せつけてやりなさい。」



まほとエリカだけでなく、赤星も応援してくれている。
そう思うと、みほはとても嬉しい気持ちになった。


「ありがとう。」

みほは笑顔で言ったのであった。


  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・


嘗ての親友、赤星と喜びの再会が出来たのも束の間、みほは試合会場に戻らなければならなかった。


「お姉ちゃん、エリカさん・・・ありがとう。 赤星さんと会わせてくれて。」

そう言うと、みほは試合会場へ向かって行った。
親友と再会させてくれた事に、みほはとても感謝していたのである。



((・・・・・・・・・。))

そんなみほの後姿を見送った、まほとエリカだったが、実はその時の彼女達の心中は少し複雑だった。


(本当は会わせるつもりは無かったんだけどなぁ・・・。)

(まさか赤星に嗅ぎつけられるなんて・・・・。
 どうしても会いたいって言って聞かないもんだから、連れて来ちゃったけど・・・。)

二人は心の中で呟いた。

実は本当の所、まほもエリカも当初は赤星にみほの事を教えるつもりは無かったのである。
みほの秘密を守るためにも、その事を知っている人間は少ない方がいい。
だから赤星にもみほの事は出来れば隠しておくつもりだった。


しかし今から数日前、二人に予期せぬ事態が起こったのであった。


  ・

  ・

  ・

  ・


それはエリカがみほと再会したあの日・・・大会組み合わせ抽選会が行なわれた、あの日の事だった。

その日、まほとエリカの二人は黒森峰女学園に帰ってきたのだが、そこに赤星がやって来る。

「お疲れ様です、隊長。」

「赤星か。例の用事は片付けておいてくれたか?」

「はい、勿論です。
 本来だったら私とエリカさんでやる筈だったものを、エリカさんが私に押し付けて、一人だけ抽選会場に行っちゃいましたけど。」

赤星がどこか恨めしそうな目線をエリカに向けながら言った。

「うっ・・・! し、仕方ないでしょ!!」

「もう・・・エリカさんったら・・・・」

そう言って、赤星はエリカに近づいた。


その時だった。



「んっ!」

赤星は何かに気づく。


すると彼女はエリカの肩をガシッと掴んだ。

「なっ!!」

突然の事にエリカは驚く。
そして、彼女が動揺している間に赤星は鼻を近づけた。

「クンクン・・・」

「ちょっと、何やってんのよ!!」

突如の赤星の謎の行動に、エリカは戸惑いながらも抗議した。
しかし、そんなエリカを他所に、赤星は言った。


「クンクン・・・ハッ!  みほさんの匂いがする!!」

「「!!!?」」

その言葉に、まほもエリカも驚愕し、目を見開く。


「匂いって・・・あんたは犬か!!」

エリカは思わず叫んだ。
一体どんな嗅覚だよ! と言いたい気分だったのである。

そして更に赤星は言う。

「これは、みほさんの匂い。間違いない。 みほさんに会ってきたんですね、エリカさん!」

そう言いながら、赤星はエリカに迫った。

「いや・・・・それは・・・・」

「会ってきたんですね!」

睨みながら言ってきた赤星の、その迫力にエリカは押され気味だった。
そしてまほも、表情には出さないが内心オロオロしている状態である。

まさか赤星にいきなりこんな事を言われるとは、エリカもまほも思ってもみなかったことであった。
赤星は文字通り、みほの事を嗅ぎつけたのである。


すると赤星は素早くまほの方へ向いた。

「隊長!!」

「な、何だ!?」

「私もみほさんに会わせてください、隊長。」

「いや、待て。 落ち着くんだ、赤星。」

「私もみほさんに会わせてください!!」

力強く言い切る赤星。
その有無を言わせぬ迫力に、まほですら押されてしまっていたのだった。


そして結局、そのまま押し切られ、後日にみほに会わせるという事で、何とかまほはこの場は収める事が出来た。


  ・

  ・

  ・

  ・


そんな事があって、そして今に至る。
恐るべし、赤星。



「みほさん・・・・・・。」

とても嬉しそうな表情でみほを見送る赤星。

そして、そんな赤星の後姿を見ていたエリカとまほだったが、二人はこの時の赤星に犬の耳と尻尾が付いているように幻視していた。
嬉しそうに尻尾をブンブン振っているように・・・。







一方、その頃・・・・


「ハッ・・・・!! 何か嫌な予感がするであります!!」

優花里は呟いたのだった。


以上です。

すいませんでした。話が飛び飛びになっちゃってました。

乙だわに

乙です

乙ですわに

クリスマスだわに
小次郎のマンション前にたくさんの戦車があるワニ

愛里寿「明けましておめでとう。小次郎お兄ちゃん一緒にボコ寺に行こう」

島田千代「こんばんは。そして、あけましておめでとう。小次郎ちゃん
新年の練習に疲れたでしょう?さあ、私と一緒にお風呂に入りましょうか」

投下準備が出来たわに。
1月15日の23時くらいに投下するわに。

ダージリン「ペコ?いきなりで申し訳無いけど、今夜のN○Kの海外ドラマの録画をお願い出来るかしら?私の小次郎さんの活躍を見守る事に集中したいの。」

皆さんこんばんは。
今年最初の投下です。

早速ですが、レス返ししていきます。



>>770
が、がんばります(白目)。



>>772
優花里「あなただって人間じゃないですか!!」



>>773
途中でパンを咥えたローズヒップと衝突。



>>787
各校から一両ずつ送られてきそうwww



>>788
みほ「行きましょう。」ワクワク



>>789
しほ「待てやコラ!!」



>>791
ブレない英国淑女(日本人)。








それではここから本編です。




サンダースと大洗の両チームが車両が開始地点にて待機していた。
試合開始時刻まで、あと1分。


「いよいよだな。みほ・・・。」

「そうですね。
 みほにとって、これは実質的なデビュー戦。 果たしてどう出るか・・・。」

「みほさん、頑張って。」

まほ、エリカ、赤星が様子を見守っている



「始まるわ。」

「楽しみですね。」

「小次郎さん・・・。」

ダージリン、アッサム、オレンジペコ・・・彼女達も、応援席からみほの事を見守っている。





そんな中、みほはⅣ号戦車の車長席で、目を瞑り、静かに佇んでいた。
これはみほが試合前にいつもやっている事であり、集中力を高めるために行なう、ある種の儀式のようなもの。

みほは目を瞑ったまま深呼吸する。
大きく息を吸って、そしてゆっくり吐く。
そして一拍置いてから、閉じていた目をゆっくり開いた。

すると先ほどまでの、穏やかなで柔らかかった目つきが一変。
鋭い眼光が宿った目へと変わっていた。
これは、スイッチが入って戦闘モードになった証である。




そして・・・・


『試合開始!』


審判の合図と共に開戦の狼煙が上がった。

「これより作戦を開始します。 全車、パンツァーフォー!」

みほの号令の下、大洗チーム全車は作戦行動を開始した。








対するサンダースチームも動き出す。

「行くわよ。全車 Go ahead!!」

ケイ隊長の溌溂とした声が響き渡り、M4シャーマンが一斉に動き出す。



そしてその時、サンダースチームの副隊長であるアリサは、車内で不気味な笑みを浮かべていた。

「フフフフ・・・・・・大洗の沙織め。今に見てなさい。 私のタカシを奪った、その借りは何倍にもして返してやるんだから。」

アリサは何やらブツブツと恨み節を呟いている。


「奪うも何も、アリサさん・・・そのタカシって人には、告白すら出来ていないじゃないですか。
 失恋以前の問題ですよ、それ。」

同乗者から鋭いツッコミが入った。


「うるさいわね!! 告白はこれからするつもりだったのよ!!」

アリサは逆切れ気味に叫びながら、更に言った。

「とにかく、あの沙織って女のいるあのチームは完膚なきまでに叩き潰してあげるわ。
 これを使って、あの女に目に物見せてやる。フフフフフ・・・・。」

そう言うと、アリサは傍に置いてあった大型の機材に手を伸ばす。
どうやら彼女は、車内に何やら特殊な機材を持ち込んでいるらしい。

「本当はあんな弱小校相手に使うつもりは無かったんだけど・・・・・・あなたがいけないのよ・・・・武部沙織。」


  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・


試合開始より数分後、大洗チームは森林地帯に入って行った。


「では、ウサギさんチームは右側・・・アヒルさんチームは左側の偵察をお願いします。
 僕達アンコウチームとカバさんチームは、カメさんチームの護衛につきます。」

みほの指示の下、八九式とM3が先行する。


「あのネーミング・・・もうちょっと何とかならなかったのだろうか?」

「いいじゃん。可愛くて。」

やや緊張感に欠けるネーミングに不満を漏らす桃に、それを宥める杏。




そんな中、偵察に出ていたウサギチームのM3が停車する。

車長の梓がキューポラから顔を出し、周囲を見渡す。

「あっ! あれは・・・。」

そして双眼鏡を使って、遠方を見渡すと、前方の開けた場所に動く影を見つけた。

「こちらB085S地点。敵戦車3両を発見しました。」

速やかに報告する梓。

「これより誘き寄せます。」


そのまま攻撃態勢に入った。




しかし、その時・・・・・



「きゃああ!! 何!?」

突如、衝撃で車体が揺さぶられ、梓は思わず叫んだ。

何が起きたのか確認を取ろうとした所、車体の至近距離の場所に砲弾が着弾した痕跡があった。
どうやら突然に別方向からの砲撃を受けたようだ。

梓が音のした方を見ると、側面方向より3両の敵戦車が視認できた。
そして、前方にいた3両の敵戦車も、タイミングを合わせて一気に攻撃してくる。


「こ、こちらウサギチーム! 敵戦車6両に包囲されかけています!!」

序盤でいきなり迎えたピンチ。。
その時の梓の声はとても切羽詰まった感じだった。


しかし・・・


「了解。 南西より援軍を送ります。」

無線越しに聞こえてくるみほの声。


(先輩が助けに来てくれる。)

そう思うと、梓の心の中にあった焦りが無くなり、冷静になる事が出来た。
どこか力強さを感じさせる、その頼もしい声によって、梓は安心感を得る事が出来たのである。

(そうだ。私は車長なんだ。 私がしっかりしなきゃ・・・。)

梓はすぐに乗員達に指示を出した。

「このまま敵の攻撃を躱しつつ先輩達と合流しよう。
 桂利奈ちゃん、全速力で飛ばして。」






一方、みほ達のⅣ号戦車は八九式中戦車を連れて、梓達の救援に向かっていた。
しかし、その途上で予期せぬ事態に遭遇する。

突如、複数の砲弾が飛来してきたのだ。

即座に、みほがその目で敵影を確認する。
すると、援軍に向かっていたみほ達の側面を突くように、3両の戦車が攻撃してきていた。

「こっちにも敵戦車3両!」


すると優花里が、これまでに確認された敵戦車の数をカウントする。

「北東から6両。南南西から3両。
 凄い! フラッグ車以外の全車両をこの森に投入してきています!」

大胆な攻勢である。
その事実に皆が驚き、敵の手腕に感心していたのだが、みほは少し違っていた。

「・・・・・・・。」

驚いた事は確かだが、みほはそこに何か大きな違和感を感じていたのである。

(しかし今はその事よりも、ウサギさんチームの救援の方が先決。)


みほは、その違和感の事は一旦置いといて、まずこの状況から脱却する事だけを考えるようにした。




「ウサギさんチーム。 こちらと合流したら南東方向に転進してください。」


無線機のマイクを通して指示を出すみほ。



しかし、実はこの時、みほの声に対し、聞き耳を立てていた者がいた。


「奴らの動きは全て手に取るようにわかるわ。」

それはサンダースのアリサである。
彼女が車内に持ち込んだ機材・・・それは無線傍受機だったのだ。
無線通信の電波を傍受し、会話内容を盗聴するという物だった。

みほの出した指示を、盗み聞きしたアリサは、即座にその退路を断つべく、ケイに進言する。

「隊長。南南西に2両回してください。」

「OK。」

ケイは言われた通りに、2両の戦車を迂回させた。




そんな中、みほ率いるアンコウチームとアヒルチームはウサギチームと合流。
あらかじめ指定された方角へ転進し、敵包囲下からの脱出を図った。


しかし、そんな彼女達の前に、先回りしていた2両の戦車が立ちふさがる。


「隊長。敵がこっちに来ました。このまま挟み込みます。」

迂回部隊よりケイに連絡が入る。


「ドンピシャ! 今日のアリサの勘、冴えてるわね!」

ケイは驚嘆した。

実は無線傍受はアリサの独断行動であり、ケイはその事を知らされていない。
だからケイは、アリサの進言を、ただの勘による物だと思っていた。
まさか無線傍受の専用機材を持ち込んで敵チームの通信を盗聴しているなんて事は、夢にも思わなかったのである。






こうして、アリサの策略によって完全に包囲されてしまったみほ達。
このままではアンコウ、ウサギ、アヒルチームが敵に包囲殲滅されてしまう。


しかしこの状況下でも、みほの顔に焦りの色は無かった。

「これより正面の敵に突進、敵車両と交差しつつ強行突破します。アヒルさん、ウサギさんチームはアンコウについて来て。」

みほは即座に強行突破を決断し、梓と典子に指示を出す。
冷静でいて、迷い無き即断であった。


みほの指示の下、操縦手の麻子がアクセルを踏み込む。



「了解!」

「リベロ並みのフットワークを見せてやります!」

梓と典子も、加速したⅣ号戦車の後からついて行く。




そしてⅣ号戦車が全速力で突進し、2両のM4シャーマンの間をすり抜けるように突破。
すれ違う際に車体が接触し激しく火花を散らす。

しかし、みほはその火花に動じる事もなく、後方を確認した。
すると、後続のアヒルチームもウサギチームも敵を躱し、しっかりとみほ達について来ていた。


その直後、サンダースは追撃態勢を取った。

しかし圧倒的に有利な筈だった状況下での、大洗の予想外な奮戦によって対応が遅れ、その隙にみほ達はサンダースを振り切る事に成功した。





「ドンマイ。深追いはNGよ。」

ケイも、ここで無理に追うのは得策ではないと判断し、追撃中止命令を出す。



「チッ・・・・。」

アリサは思わず舌打ちする。
確実にここで3両を仕留められると思っていたのだが、取り逃がしてしまった。

退路を塞いだ時、大洗チームの3両はそこで一旦足を止めるだろうと思っていたのである。
もしそうなれば、その隙に一気に畳みかける事が出来ただろう。
しかし実際、相手は一瞬も怯む事無く突進してきたのだ。
そのせいで包囲部隊は意表を突かれ、突破を許してしまったのである。

この勇猛果敢な大洗チーム行動には、アリサも感心する。

「思ったより良い動きをするわね。」


  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・


一方、サンダースを振り切った、みほ達。

実はこの時、みほは危機的状況下で指揮を執りながらも、チームメイト達の動きを分析して評価するという事を同時にやっていたのである。

そしてみほは思った。
彼女達は確実に成長してきていると。


あの時、彼女達は突然の窮地にもパニックを起こさなかった。
以前の彼女達だったら確実に取り乱していたであろうピンチにも、落ち着いて行動する事が出来ていたのである。
その事から、みほは彼女達の成長をしっかりと感じる事が出来たのだ。

チームメイト達が成長した事を、とても嬉しく思うみほ。



しばらく進んだ所で、敵の追撃が無い事を確認したみほ達は、そこで停車した。


するとみほは口を開いた。


「梓さん・・・・典子さん・・・。」

「「・・・・・?」」

「よくついて来てくれました。ナイスファイト。」

微笑みながら、みほは言った。

すると、その笑顔を向けられた梓と典子は、思わず頬を赤らめる。

「はい・・・・ /////」

「恐縮です・・・・ /////」

そして二人は思った。

(やったー。隊長に褒めてもらえた。 これから、もっと頑張ろう。)

(根性だ。根性で、もっと精進せねば。)

みほに褒めてもらえた事の喜び・・・それを糧に、更なる努力をしていく事を密かに誓う梓と典子であった。







(さてと・・・・・。)

ここで、みほは頭を切り替えて状況の分析を行う。

(さっきは完璧にこちらの動きが敵に読まれていた。不自然なまでに。)

敵の動きが出来すぎていた事に、みほは違和感を感じていたのだった。

(まるで、自分の出した指示をどこからか盗み聞きしていたかのような・・・)

そこまで考えた所で、みほはハッとする。

(ん!? 盗み聞き? ・・・・・・あっ!)

すると、みほはキューポラから身を乗り出し、上空を見上げた。
そして、よく目を凝らして、上空の一点を見つめる。

「あれは・・・・・・やっぱり・・・。」

みほの目線の先にあった物、それはバルーンの取り付けられた謎の機械。
それが高空に浮かんでいた。

みほはその物体の正体を即座に見抜いた。
それは無線傍受機の受信アンテナである。



「小次郎さん、どうしました?」

怪訝そうな顔をした華が聞いてくる。
そこで、みほは細心の注意を払いながら言った。

「沙織さん、無線機を一旦切ってください。」

「え? うん。分かった。」

「皆、落ち着いて聞いてください。 上空に無線傍受機が打ち上げられています。
 今までこちらの通信は全て筒抜けだったんです。」

「「「「・・・・・・ッ!!!」」」」

突然告げられた事に、驚愕する一同。


  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・


「確かに、ルールブックには無線傍受禁止とは書いていませんね。
 これは完全にルールの抜け穴を突かれた形になってます。」

優花里は戦車道ルールブックに目を通しながら言った。


「そんなの有り!? いくらお金があるからって・・・。 もう抗議しようよ!」

「そんな事より、あんな物は撃ち落とすべきです。」

「いや、仰角が足りないだろ。」

沙織、華、麻子が口々に言った。
そして、そんな中でみほはある事を思いつく。


「無線傍受を阻止する必要はありません。好きにやらせておきましょう。」

「「「「え・・・・・・!?」」」」

意外な一言に驚く4人。
そして、みほは更に言った

「発想を変えましょう。敵の策を阻止するんじゃなくて、逆に利用するんです。」



この時のみほは、無線傍受機の向こう側にいる相手の事を見据えていた。


「この不利な戦況を覆すためにも、彼女達にはちょっと協力してもらいましょう。」



そして、みほは次の一手を打ったのだった。



今回はここまで。



こんな格言を知っているかしら?
イカサマに頼って戦う者は必ずそのイカサマで自分の首を絞める事になる。それが勝負の常道。
某勝負師の言葉よ。


というわけで次回、アリサには思いっきり自分の首を締めあげてもらいましょうか。グヘヘヘ(下衆顔)。

乙です

憲兵さん、コイツ(1)です

ダージリン「あなたは悪い人だったわ。だからケイさんに報告いたしましたわ」
アリサ「計ったな!!ダージリン!!」

梓はともかく磯部も落ち掛けてんなー
それと梓は自分で考えて行動してますねー

>>802
(1)ってなんぞ?

かっこいい1さんの略では無いかと推測する

>>375
この間違い探し、キツイや…

ふとタイトルで気になって一気に読んでしまった、面白いが……こんどは待つ身になってしまうのか……先は長いな。

時に原作もアニメも知らんのだが面白いな。

島田千代「小次郎ちゃん。チョコをどーぞ(媚薬入り)」

エリカ「みほ!あなたの好きなマカロン作ってきたから食べなさいよ!」

生存報告。
現在進捗率70%です。

出来れば今月中に、アリサが自分で自分の首を絞める所を皆様にお見せしたいのですが・・・(下衆顔)

ダージリン「小次郎さん、どうぞ受け取ってください」チョコと紅茶のセット

投下準備が出来ました。
明日の夜11時30分くらいに投下します。

ダージリン「もしもし。アッサム明日の戦車道の試合の番組予約しときなさい」

まほ「アリサよ、念仏は唱え終わったか?大洗は貴様を許さない。大洗は貴様を逃さない。さぁ立てて貰おうじゃないか。戦車に手向ける白い旗を。」



こんばんは。
さっそくですが、レス返しをしていきます。





>>803
アリサ「サンダース高校に栄光あれー!!」



>>804
これも西住殿の調教・・・もとい、訓練の賜物です。



>>808
可能な限り迅速に投下するように心がけます(震え声)



>>809
しほ「みほがお世話になったわね。お礼にこれを上げるわ」

 つ(濃縮ハバネロエキス入り超激辛チョコ)



>>810 >>812
みほ「ありがとう、エリカさん。」(面々の笑み)

ダージリン・エリカ「・・・・・・・ ////////」(顔真っ赤)








それでは、ここから本編です。




サンダースの無線傍受の事は、観客席にいたまほ達もすぐに気付いた。

「サンダースめ。 くだらない小細工を・・・。」

「どうしよう・・・このままでは、みほさんが・・・。」

エリカは忌々しそうな声を出し、赤星は狼狽していた。


しかし、そんな二人とは対照的にまほは全く動揺していない。

「二人とも落ち着け。
 大丈夫。みほの事だ。 おそらく無線傍受の事はもう気付いているだろう。」

まほは、みほの実力を高く評価しているが故に、みほがこのままやられてしまうとは思ってもおらず、むしろ安心して見ていたのだった。

更にまほは言う。

「これ以上の傍受を阻止するための何らか手は、たぶん既に打ってあるだろう。
 いや・・・・もしかしたら、ただ阻止するだけでなく、逆に利用するかもしれないな。」


まほの言ったその推測は当たっている。
この時、みほは相手の策を逆手に取り、カウンターを仕掛けようとしていたのであった。





そして、そのような事は露ほども考えていなかったアリサ。
無線傍受で聞き耳を立てる。

すると、音声聞こえてきた。


『全車、0985地点の道路を南進し、ジャンクションまで移動してください。
 敵は北上してくる筈だから、通過した所を左右から狙って。』

それは、みほが無線を通して出した指示である。


「待ち伏せを狙っているのね。 そうはさせないわ。」

その指示を盗聴したアリサはすぐさまケイに進言した。

「敵はジャンクションの両脇に伏せています。 左右から包囲をかけましょう。」

「OK。 でもアリサ・・・何でそんな事まで分かるの?」

「女の勘ですよ。」

「あら、そう。 それは頼もしいわね。」

そう言うと、ケイはアリサのその言葉を疑う事もなく、進言通りに部隊を動かした。

主力を率いてジャンクションへと向かう。
その両脇に伏せているであろう敵を、包囲するために。



しかし、この時の大洗チームが実際に取った行動は、無線通信の内容とは違ったものだった。
ジャンクションの脇にある茂みに、八九式中戦車1両だけを配置。他の戦車はそこにはなかった。
そして、その八九式は車体後部にワイヤーで大きな丸太が結び付けられてあったのである。

この時、Ⅳ号戦車は見通しの良い、後方の高台に布陣し、みほはそこからジャンクションの周辺を見渡していた。


しばらくすると、ジャンクションに迫るサンダースの一団が見えてくる。
その様子を双眼鏡で見ていたみほは無線で指示を出した。

『囲まれた! 全車後退!!』


すると八九式が走り出した。
その際に車体に繋がれていた丸太が引きずられ、地面が擦られる事によって、土煙が立つ。
八九式中戦車に繋がれた丸太は、実はこのための物だったのだ。


そしてその土煙を、サンダースの者達が遠方より視認。

「前方のジャンクションより、敵戦車のものと思われる土煙を視認しました。
 アリサさんの言ってた通り、敵の一団がこの先で伏せていた模様。
 煙の大きさから推測するに、数は複数・・・おそらく敵は戦力の大半をここに投入していたものと思われます。」


その報告を聞いたアリサは、再び進言する。

「どうやら敵は、こちらが包囲しようとしているのに気づき逃げ出したようですね。
 隊長、このまま追撃してください。上手くいけば敵の戦力をここで一気に削れます。」

無線傍受によって敵指揮官の指示を盗聴していたアリサは、そこに敵主力がいると即座に判断した。


その時、アリサの下に新たな情報が入ってくる。

『38tは、そのままC1024R地点に隠れていてください。』

それはみほが無線で出した指示であるり、大洗チームのフラッグ車である38t戦車の所在を示すものだった。

「38t・・・・敵のフラッグ車。単独で潜伏していたのね。 もらったわ!!」

これでアリサは勝利を確信した。

「チャーリー、デルタ、エコーはC1024R地点に急行。 目標を発見次第攻撃。」

アリサすぐさま指示を出し、追撃を行っていた部隊の一部である3両の戦車を、敵フラッグ車へと向かわせた。

「これで決まりね。」

後は吉報を待つだけだと、アリサは思った。



お礼すら言われない田尻さんェ…


そしてアリサに指示された車両は指定の場所へ到着。
獲物を探し求めて周囲を見渡す隊員達。


「ん?」

その時、一人がある物に気付く。
それは少し離れた位置にある茂み・・・その中に一つの黒い点があった。
彼女はそれを、目を凝らしてよく見てみる。


「あっ!!」

その時、彼女はその黒い点の正体に気付く。
それは砲口だった。
Ⅲ号突撃砲の75ミリ口径の砲口が自分達に向けられていたのである。

「ジーザス!!!」

気付いた時にはもう後の祭りであった。
回避行動を取る間も無く、その砲口が火を噴いた。


「てぇっ!!」

エルヴィンの号令と共にⅢ突が発砲。

しかも、それだけでない。
この時、Ⅲ突だけでなく、Ⅳ号戦車とM3中戦車が、敵を囲むように配置されていた。


「撃て!!」

「発射!!」

みほと梓の号令で、Ⅲ突に続いてⅣ号戦車のとM3中戦車が一斉に発砲。
その砲弾が敵を射抜いていった。

一瞬の内にM4シャーマン2両が戦闘不能になる。


「撤退だ、撤退!!」

残った1両が慌てて退却しようとする。
しかし、それを逃がすまいと、M3が攻撃を仕掛けた。

主砲装填中の隙を補うようにして、大野あやが副砲のトリガーを引き、発砲した。
すると、砲弾が敵戦車の側面下部に着弾する。

「うわあっ!! 履帯が!!」

被弾によって履帯を切断され、動きを封じられたM4シャーマン。
そして、その隙にM3の主砲が叩き込まれた。



「うぅ・・・・やられた。」

これによって止めを刺され、その車両は戦闘不能になる。







「こちらデルタ。戦闘不能。」

瞬く間に3両の戦車が撃破され、その報はすぐさまサンダースの本隊に伝わった。

「何っ!!?」

「Why!!?」

ナオミやケイが思わず驚愕の声を上げた。

戦力に劣っている筈の弱小校にまさかの先制を許してしまったのだ。
それも一気に3両も脱落である。

しかも、ジャンクションで包囲しようとしていた大洗の部隊も結局は取り逃がしてしまった。
後退する敵の一団を追跡し撃滅するつもりだったのに、最終的には敵部隊は捕捉出来ずに終わる。

それもその筈。
何故なら、最初からそこには大洗の部隊などはいなかったのだから。
実際、あの場にいたのは八九式戦車1両のみだったのだ。
丸太を引きずり、派手に土煙を上げる事によって、あたかも相当な数の戦車がいるかのように見せかけたのである。
しかも、途中からその丸太を切り離している。

サンダースは最初から、そこにいない物を追いかけていたのだった。



そして、ここまで大洗チームの取ってきた行動なのだが・・・みほが無線を通して出した指示の内容と、実際の行動が大きく食い違っているのには
理由がある。


「ここで一旦集合しましょう。 沙織さん、お願いします。」

「任せて。」

みほの指示を受けた沙織。その手には携帯電話が握られていた。
そして沙織の指が凄まじいスピードで動き、ボタンを押していく。
目にも留まらぬ速さで文字を打っていったのだった。

「送信っと。」

あっという間に、打ち終えた沙織はすかさず送信ボタンを押す。


「それにしても沙織さん・・・メール打つのが凄く速いんですね。」

「えへへ・・・まあね。 メール打つのは得意だから。」

みほが沙織のその腕前に感心する。

「頼りになります。 これからもお願いしますね。」

「も、勿論! 任せてよ、コウちゃん /////」

みほに面と向かって褒められた沙織は、思わず頬を少し赤くした。


沙織がやっていたのは携帯電話のメールである。

彼女達は無線通信機ではなく、携帯のメールで連絡を取っていたのだ。
つまり無線通信はわざと相手に盗聴させた、ダミーである。


無線傍受機を通して、偽情報を相手に流して誘導するというのがみほの考えた策だったのだ。

つまりこうである。
まず、みほは無線で、ジャンクションの左右に伏せて敵を待ち受けるように指示を出したが、実際には携帯メールで、八九式1両だけにジャンクションへ向かうように指示を出した。
Ⅲ号突撃砲とM3中戦車は先に待ち伏せ地点へ向かわせておく。

そして機を見計らって、無線機を通して、あたかも自分達が敵に囲まれそうになったかのように演技しつつ、八九式を走らせ丸太を牽引。
その演技もあって、そこに大洗の一団がいるかのように敵に誤認させ、それによって敵主力を引き付けた。

その後、フラッグ車に関する偽の位置情報を無線で流した。
これよって、八九式で引き付けていた敵主力部隊のうちの一部を分散させ、あらかじめ構成しておいたキルゾーンへ誘き寄せようとしたのである。
実際、敵は思惑通りに、戦力の一部を引き抜き、みほが罠を張った場所へと向かわせた。

後はⅣ号戦車を合流させた3両の戦車で、待ち伏せ地点へまんまと誘導された敵にクロスファイアを叩き込む。


以上がみほの考えた策であった。




この作戦が功を奏し、大洗とサンダースの戦力比が5両対10両だった所を、5両対7両にする事が出来た。
戦力的にはまだまだ不利ではあるが、それでも大分楽になった事は間違いない。


ただ、この策はアリサの無線傍受が無かったら成り立たない作戦であった。
敵部隊の誘導も、戦力の一部を分散させ、待ち伏せ攻撃地点へ誘き寄せたのも、全てアリサが盗聴していたからこそ成功したのである。
無線傍受で得た情報が、意図的に流された偽情報であるという事に気付かないアリサが、みほ達が望む方へ部隊を動かしてしまった。



―― この不利な戦況を覆すためにも、彼女達にはちょっと協力してもらいましょう ――



みほの言ったこの言葉の通り、アリサが無自覚の内に大洗チームに協力してしまったのである。
まさに自分で自分の首を絞めるかの如き行為。





その様子を観客席から見ていたダージリン達は、みほの手並みに大いに感心していた。

「流石は小次郎さん。
 このまま敵のいいようにやられる事は無いとは思っていましたが、まさかここまでやるとは・・・・。」

ダージリンは紅茶カップを片手に、食い入るように試合を見ていた。

「やるわね。 完全に相手の策を逆手に取ったわ。」

「凄い・・・・見事にサンダースを手玉に取りましたね。」

アッサムとオレンジペコも驚嘆していた。






一方、別の所から見ていたエリカと赤星もまた、みほの手腕に感嘆の声を上げていた。

「やるじゃない。 完璧に敵の裏をかいたわね。」

「凄いですよ!  あの状態から一気に3両も仕留めるなんて!」


ただ、そんな中でもまほは特に驚いた様子も無かった。

「まぁ・・・みほなら、これくらいはやってくれるだろうと思っていたさ。」

そしてまほは、みほの取った行動の意図を分析していく。

「みほが仕掛けたあの策・・・・おそらく、あれはただ敵戦力を削るをためだけものではないな。

 別の目的もあるのだろう。」


「別の目的? 何です?それは・・・。」

エリカが尋ねる。

すると、まほは言った。

「敵がどれくらい無線傍受に頼り切っているか・・・それを推し測るためにやったのだろう。」



まほのその分析は、的を射ていた。

実際みほは、敵が盗聴による情報にどれだけ頼り切っているかを試すために罠を張ったのだ。



そして、みほは確信した。

(これでハッキリと分かった。敵は盗聴によって得た情報に、完全に依存し切っている。)

みほはすぐさま次の作戦を頭の中で組み立てる。

(僕達が無線傍受を逆手に取っている事・・・この事に敵が気づいてしまう前に、さっそく次の一手を打つ。)

すると、みほは次の指示を出した。

「沙織さん、アヒルさんチームに連絡を。」


  ・

  ・

  ・

  ・

  ・

  ・


そして、自分が踊らされているという事に、まだ気づいていないアリサ。
引き続き、大洗チームの無線指示を盗み聞きしようとして、聞き耳を立てていた。

「いい気になるなよ。 次こそは仕留めてやるわ。」


すると、みほの声が聞こえてきた。

『全車、128高地に集合してください。
 敵にファイアフライがある限り、正面から撃ち合ったら勝ち目はありません。
 危険ではありますが、高地に陣取って、上からファイアフライを叩きます。』


「捨て身の作戦に出たわね。 でも丘の上に上がったら良い的になるだけよ。」

アリサは無線のマイクを取ると、ケイに言った。

「隊長・・・128高地に向かってください。敵の全車両がそこに集まります。」

「ちょっと待って、アリサ。 何でそんな事まで分かっちゃうの?」

「私の情報は確実なのです、隊長。」

「そう・・・。まあ、いいわ。
 全車 Go ahead!!」










そして数分後。
ケイ率いるサンダースの一団は目標地点の到着した。

しかし・・・・


「何も無いよおおーー!!」

ケイの叫び声が虚しくこだまする。
そこには敵戦車は1両たりともいなかった。


その報せに、アリサは狼狽する。

「えっ!! そんな筈はっ!!」

一気に試合を決めようとしてフラッグ車以外の全戦力を投入したのに、完全に空振りである。

「一体どうなってるの?」

アリサの呟きに答えられる者はそこにはいなかった。








一方その頃・・・・みほ達は無線を通して欺瞞を仕掛けると同時に、敵フラッグ車の潜伏場所の特定を急いでいた。

「敵フラッグ車が潜伏している可能性が高いのは、この場所と、あとここ。
 そして、この場所にはすでにアヒルさんチームを偵察に行かせてあるから、あとはこっちの方を・・・。」

みほは地図を見ながら、推測していた。


その時、沙織の携帯電話が鳴った。

「コウちゃん。アヒルさんチームからメールが来たよ。」

それは偵察のために別行動をしていた、アヒルチームからのメールの着信である。
そのメールにはこう記されていた。


『敵フラッグ車を捕捉。』




今まさに試合が大きく動こうとしていた。


今回はここまでです。

フラッグ車の偽の位置情報で誘き寄せた敵を攻撃するシーンなんですが、原作だと1両取り逃がす所を、ここでは全部きっちり仕留めました。

ここでもみほの施した訓練の成果がでています。

>>819
すいません。それ間違いです。
というわけで修正します。


>>816
みほ「ありがとう、エリカさん、ダージリンさん。」(面々の笑み)

ダージリン・エリカ「・・・・・・・ ////////」(顔真っ赤)

乙です

アリサ「そこにいるはずなんです!本当なんです!信じてください!!」

反省会(軍法会議)

乙です。
この手の策を使う人は完全に覆されて窮地に立たされない限りは自分の優位を疑わないからなぁ、最初に上手く行ってたのが余計にか。

みほ「今日はエリカさんの誕生日だね。お誕生日おめでとう!」

まだ?

はよ

生存報告。

現在進捗率60%です。
もうしばしお待ちください。

お待ちしております。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年12月19日 (土) 14:07:29   ID: ck8vXvtZ

面白いです

2 :  SS好きの774さん   2016年01月15日 (金) 10:10:39   ID: xjHXssIL

まほさんwwx

3 :  SS好きの774さん   2016年06月18日 (土) 05:39:54   ID: N0SLfxKY

つまんねえんだカス
ポケモンタグ消せやタヒね

4 :  SS好きの774さん   2016年06月21日 (火) 16:02:47   ID: aprdWuxS

↑お前がタヒね

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