三船美優「一億円拾いました」 (31)

美優「ので、交番に届けたところ、三か月以内に所持者が名乗り出ない場合……その一億円の所有権が私に移るらしいのです」

P「エイプリルフールは過ぎましたよ」

美優「あう……それが本当なんです」

P「……まあ信じるとして。一億円なんてどこで拾ったんですか?」

美優「近くの丸亀製麺に行った帰りです」

P「じゃあ俺今から丸亀製麺にお昼ご飯食べに行ってくるので失礼します」

美優「あ、『株を守りて兎を待つ』ですね」

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P「……それで、一億円ですか」

美優「そうなんです」

P「ちなみに、交番に渡して何日ですか?」

美優「それが、レッスンなどですっかり失念しており……来週には三か月になってしまうのです」

P「ってことはもうほぼ一億円確定じゃないですか。心が躍りますね」

P「何に使います? 一億円」

美優「そうですね、まだ実感もなく……」

P「まあ確かに。アイドルとはいえ、一億もポンと渡されたことはまだありませんもんね」

美優「ですから、何に使うか迷ってしまって」

P「今のところは何に使おうと考えるんですか?」

美優「ひとまず半分くらいは実家に送ろうと考えています」

P「良いですね。親孝行ですか。でしたら、そのまま家族旅行なんてどうでしょうか。今度のGWが終わったあとなら、少し時間もあります」

美優「旅行は良い案ですね。ですが、それだと数万円で終わってしまいます。5000万はほとんど残ります」

美優「Pさんでしたら、何に使いますか?」

P「都内に土地を買ってマンションを建てます」

美優「現実的ですね……」

P「ここは現実ですからね。そしたら、プロデューサーも辞めちゃうかも」

美優「え」

P「冗談ですよ。でも、昇進を考えなくて良いってのは楽かもしれませんね」

美優「Pさんは絶対に宝くじを買わないでくださいね」

P「言われずとも」

P「全部使わずとも、今あるものを少しだけ高級なモノにしちゃうってのも悪くないかもしれませんね」

美優「と、言いますと?」

P「アロマオイル。趣味でしたよね?」

美優「……まあ、はい。少しばかり嗜んでいますけれど」

P「その器具を少しだけ高いモノにしちゃうとか。無理に一億ぽーんと使わなくてもいいんじゃないでしょうか」

美優「……それも悪くありませんね」

P「美味しいものを食べに行く、というのはどうでしょうか」

美優「良いですね。一億円あれば、丸亀製麺ではなくもう少し高級志向なお店に行けますね」

P「っていうか丸亀製麺行ってたんですね」

美優「ちくわ天が好きです」

P「庶民派トップアイドル……」

P「うどん好きなんですか?」

美優「いえ、安いから好きなだけです」

P「うん、丸亀製麺から離れてもらっていいですか?」

美優「強いて言うなら、まあ普通より少し上くらいですね」

P「じゃあうどん以外に行きましょうよ。中華とか」

美優「中華ですか。好きですよ」

P「俺も麻婆豆腐とか、天津飯とか好きです」

美優「では折角なので、ふかひれスープを食べるというのはどうでしょうか」

P「その調子ですよ美優さん! もっと贅沢してみましょう!」

美優「燕の巣もです!」

P「おお!」

美優「食後のデザートも頼んじゃいます!」

P「食後のデザートが一億貰ってやる贅沢ってのは世知辛すぎません?」

P「じゃあオシャレとかどうでしょう。可愛い服を買いに行ったり……そうだ、綺麗なネックレスとか買うのは」

美優「充分足りていますからね、宝石類は……それに、元からあまり着飾る性格でもありません。不要とまでは言いませんけれど、やりすぎだと思います」

P「オシャレはやりすぎってどういうことなの」

美優「あ、寄付とかしましょうか。一億円」

P「いや流石にそれは無欲すぎですよ。もっと強欲になってもいいんですよ。普通、一億もあれば俺なら最新のゲームとか買っちゃいますね」

美優「……生憎と趣味の薄い人間でして」

P「めっちゃ落ち込みますね。では少し顔をあげましょう。一億円手に入ったら、一緒に美味しいものを食いに行きましょう」

美優「……!」

P「一緒に旅行しましょう」

美優「そ、それって」

P「新しい家を建てましょう」

美優「ど、同棲!?」

P「ご家族と」

美優「……」

田舎人間なので都内の土地価格は全く知らなかったりするんですが、そんなに高いのか都心ってのは……

P「まあ、ベターな意見ですけど、やはり貯金が現実的かと思います」

美優「貯金ですか」

P「はい。美優さんならアイドル卒業までに一生分は稼げると思いますけど、保険を掛けるに越したことはありません」

美優「卒業……」

P「ま、美優さんが40とか50になってもアイドルをやるというのならば話は別です。こちらも全力で支援しますよ」

美優「それは……ありがとうございます」

美優「翌日には落とし主が現れ、私は交番に呼ばれました」

美優「落とし主も大変困っていたそうで、何やらとある事務員に届ける最中にケースごと損失してしまっていたそうなのです」

美優「これは少ないが、お礼だ。貰ってほしい」

美優「そういわれ、10万円も貰ってしまいました」

美優「一億円にはほど遠いお金ですが、大金には変わりありません。10万円あれば、いったい何回丸亀製麺を訪れることが出来るのか」

美優「10万円……」

土地なんていらないから美優さんと結婚したいです

美優「プロデューサーさーん」

P「ん、どうしました?」

美優「一緒にご飯食べに行きましょう」

P「いいですね。けど、あんまり高い場所だと……」

美優「お金のことは安心してください。今日は私が奢ります」

P「随分景気の良いことを言いますね。どこに行くんですか?」

美優「丸亀製麺です!」

P「あー、なるほど……」

おしまい。書きたいこと書いてスッキリしました

初めてのSSでしたが、読んでくださりありがとうございました。
右も左もわかりませんが、また書くかもしれませんので、その時に。
ちなみに一億円拾ったどころか見たこともありません

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