男「え、俺が糖尿病!?」 (25)

男「……」グビグビ

男「うめぇ~!」プハッ

友「最近お前、やたら水飲むなぁ」

男「ああ、なんか水が飲みたくて仕方ないんだ。俺の体に水ブームきてるわ」

友「……」

友「お前もしかして、糖尿病なんじゃね?」

男「え、俺が糖尿病!?」

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男「なんで!? 水飲んでるだけでなんで糖尿病!? ジュースじゃないよ!?」

友「いや、よく水を飲む、つまりすぐ喉が渇くのは糖尿病の症状だってテレビでやってたから」

男「いやいやいや、俺が水飲むのは喉渇いてるわけじゃなく、水がうまいからだよ!?」

男「それに、健康診断でもどこか悪いっていわれたことないし! 頭以外は!」

友「悪い悪い、マジになるなって! 冗談だよ、冗談!」

友「こないだテレビで糖尿病特集やってたから、つい……」

男「……」

男(俺ってもしかして……糖尿病!?)

男(ぶっちゃけ糖尿病ってよく知らないんだよな……スマホで軽く調べてみるか)ポチポチ…

『糖尿病は完治しない……』

男「え」

『足を切断……』

男「ええ……!?」

『失明……』

男「えええええ……!?」

男(なに!? なんなのこの病気!?)

男(名前からすると、おしっこが甘くなる的な膀胱系の病を想像してたけど、全然違うじゃん!)

男(俺はそんな病気になっちまったのか!)

男(健康だけが取り柄だと思ってたのに……健康ですらなかったのか、俺は!)

男(いや、待て、落ち着け……まだなったと決まったわけじゃない)

男(糖尿病の症状を調べるんだ!)

男「こんな症状が出たら要注意、か……」

『よく喉が渇き、水を飲むようになった』

男(これはあいつに指摘されたやつか……たしかによく水飲んでるよな)

『体がだるいことが多い』

男(だるいこと……よくある! ありすぎる!)

『尿が泡立つようになった』

男(尿……ちょうど出そうだし、出してみるか)

男「……」ジョボボボ…

ブクブク…

男(泡立った……)

男「ハ、ハハハ……マジかよ」

男(き、決まりだ……決まってしまった)

男(俺は……糖尿病だ……ッ!)

男(だけどなんで!? なんで俺が!?)

男(俺そこまで悪い食生活してない気がするんだけど、ラーメンとか焼き肉とか食わないし)

男(あ、でも、外食なんか行くとついでにケーキ食ったりするし……)

男(たまに深夜にがっつりご飯食べちゃうことあるし……)

男(ネカフェでメロンソーダ三杯も飲んだこともあったっけ……)

男「うわぁ~……」

男「『糖尿病に俺はなる!』っていってるようなもんじゃん……」

男「もしもし……」

友『んー? どしたー?』

男「お前のいうとおり、どうやら俺は糖尿病だったらしい」

友『え!?』

友『そうか……病院で診断してもらったのか?』

男「いや、俺の診断だ」

友『へ!?』

友『自己診断かよ! なら、まだ分かんねえじゃん!』

男「いや……分かるんだ。俺は絶対糖尿病なんだ」

友『……』

友『お前の家族って、糖尿病の人いるの?』

男「さあ、いなかったと思うけど」

友『だったら大丈夫だと思うぜ~』

友『オレも詳しくはないけど、糖尿病って生活習慣だけじゃなく遺伝要素もでかいらしいから』

男「……」

男(遺伝、か……とりあえずお袋に電話かけてみるか)

男「あのー……」

母『なに?』

男「ウチの家系って糖尿病の人っている?」

母『いないわよ。お父さんの家系にもいなかったと思うけど』

男「そっか……」

男(いや、安心できない!)

男「あのさ、だったらご先祖様はどうかな?」

母『え?』

男「江戸時代のご先祖様が糖尿病だったり……」

母『ハァ?』

男「ちょっと調べてくんない? できれば平安時代くらいまで!」

母『そんなの分かるわけないでしょ! ったく、あんたはバカなんだから!』

男「……怒って切られちゃった。なんて冷たい親だ」

男(一応、家族に糖尿病はいないみたいだが……安心はできない)

男(遠いご先祖からの遺伝だったり、あるいは俺が突然変異の可能性もあるしな)

男(俺もついに糖尿病デビューかぁ……)

男(いつか手足を切ったり、目が見えなくなったりするのか……)

男(まさか、こんなことになるとはなぁ……)

――

――――

男「……」チューチュー…

仲間A「お前、なんで豆乳なんか飲んでんだ?」

男「いや……体にいいから……」

仲間A「んなもん飲んでないで、牛丼でも食いに行こうぜ!」

男(牛丼!?)

仲間B「いや、パンなんかいいんじゃないか? うまいパン屋ができたんだ」

男(パン!?)

仲間女「あたし甘いもの食べた~い! パフェとかパンケーキとか~」

男(甘いもの!?)

男(ふざけんな! 全部糖質じゃねえか!)

男「誰が行くか!」

男「お前ら、俺を失明させる気かっ!!!」スタスタ…



仲間A「なんだあいつ……!?」

仲間B「失明……!? あいつ、目が悪くなったのか?」

仲間女「変なの~」



友「……」

友「おい」

男「……ん?」

友「お前、ずいぶん痩せたなぁ」

男「ああ、ここんとこずっとご飯やパンを一切抜いてるからな……」ギュルル…

友「そんなことやってたら、お前、糖尿病の前に別のなにかで死ぬぞ」

男「……」

友「病院行った方がいいって」

男「だ、だけど、今はまだシュレーディンガーの糖尿病状態だけど、もし糖尿病だったら……!」

友「なにいってんだお前は」

友「もし糖尿病だったとしても、薬を飲んだり、きちんと生活改善すれば大丈夫らしいし」

友「どこかのブログじゃ、糖尿病になったから生活を見直して、かえって健康になった」

友「なんて話もあったぞ」

男「……分かった、病院行くよ」

――

――――



友「……」

男「……」スタスタ

友「お、どうだった?」

男「糖尿病じゃなかった……!」

友「そ、そうか。よかったな!」



医者『糖尿病? ん~、いたって正常値ですな』

男『ホントですか!? 騙してませんよね!?』

医者『あなたなんかを騙すほど私は暇じゃありませんよ』

男『だけど、おしっこに泡があったんですよ! バブル光線ですよ!?』

医者『健康な人のおしっこも、泡立つことはありますよ』

医者『それより、あなたのその致命的な頭の悪さをどうにかした方がいいでしょう』

男『よ、よかった……!』



男「だってさ」

友(よかったのか、それ……)

男「晴れて糖尿病疑惑は晴れたわけだし、好きなもんガンガン食うぞ~!」

友「え」

男「……ってなると思っただろ? 残念でした!」

男「ったく、甘いんだよお前は!」

友「……心配して損した気分だよ」

友(まあ、元々オレの発言でこうなっちゃった部分あるから、あんまり強くいえんけど)

男「……」チューチュー…

友「また豆乳か? とりあえず健康だったんだから、他のもん飲めばいいのに」

男「いや、今回の件ですっかり豆乳にハマっちゃってさ。俺の体に豆乳ブームきてるわ」

友「……」

友「お前、糖尿病じゃなかったけど、豆乳病になりそうだな」

男「なにそれ!?」





<終わり>

この物語はフィクションであり、糖尿病を茶化す意図はありません
が、自分は糖尿病かも…と怯える下りはやや実話入ってます

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