男「『これっくらいの~』の歌の弁当ってまずそうだよな」弁当屋の娘「失礼ね!」 (28)

男「今日はあったかいなぁ~」

友人「こういう日は外でメシ食いたいな。そこらで弁当買って、公園でメシ食わないか?」

男「いいな、それ!」

友人「桜がもう散っちゃってるのが残念だけどな」

男「これっくらーいの、おべんと箱にっ♪」

友人「ん? なんだっけ、それ?」

男「弁当の歌だよ。子供の頃に歌ったろ?」

友人「ああ~、懐かしい! たしか幼稚園の時に習った覚えがある!」

友人「おにぎりおにぎりちょいと詰ーめてっ♪ ……だろ?」

男「そうそう!」

男「だけどさ、この歌の弁当ってまずそうだよな」

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男「まず、出てくるのがおにぎりだけど……多分具とか何も入ってない塩むすびだろうし」

友人「あ~……具は欲しいな。オレはおかかが好き」

男「俺は昆布がいいかな」

男「次は、きざーみしょうがにごま塩ふって♪」

男「二番手に生姜だけど、生姜なんてこのところ食った記憶ねえもん」

友人「オレも……豚の生姜焼きならあるけど」

男「で、ここからオカズがどんどん出てくるんだけど、このラインナップがまたすごい」

男「人参さん♪ さくらんぼさん♪ シイタケさん♪ ゴボウさん♪ 穴のあいたレンコンさん♪」

男「……どうよ?」

友人「うーん……地味だな」

男「人参はとりあえずいいとして、さくらんぼはデザートならもうちょい華のあるやつ欲しいし」

友人「オレとしてはパイナップルがいいな。缶詰のやつ」

男「んで、シイタケ、ゴボウ、レンコンの超絶地味トリオよ」

男「健康にはよさそうだけど、色合い想像するだけで地味だろ」

友人「全部、茶色系って感じだな」

友人「しかもオレ、シイタケ嫌いなんだよなぁ~。あの匂いとグニュグニュ感が無理、絶対無理」

男「弁当箱開けて、こいつらが目に飛び込んできたら、絶対テンション下がるよなぁ」

友人「一つぐらい肉系が欲しいよな……せめて魚」

男「んで、ラスト」

男「すじーの通ったふーきっ♪」

友人「……ふき、ねえ」

男「正直、子供の頃なんて“ふきって何?”って感じだったし」

友人「その辺のスーパーでもほとんど見たことないしなぁ、ふきなんて」

男「まとめると、具のない塩むすび、生姜にごま塩ぶっかけたやつ」

男「人参に、デザートのさくらんぼ。シイタケ・ゴボウ・レンコンの地味トリオ」

男「そして、こいつらに輪をかけて目立たないふき……」

男「絶対まずいだろ、こんな弁当!」

友人「古い歌っぽいからなぁ。現代人の味覚には合わないだろうな」

男「こんな弁当、金払うどころか金もらったって食いたくないね」



弁当娘「失礼ね!!!」

おにぎりを握りだよ

男「うわっ!?」

友人「だ……誰?」

弁当娘「あたしは近くの弁当屋で働いてる女よ! 今は道端で売り歩いてたの!」

男「そ、そうなんだ……。で……俺たちの何が失礼なわけ?」

弁当娘「あんたたち、『おべんとうばこのうた』をバカにしてたでしょ」

男「正式名称そんな名前なんだ……あの歌」

友人「バカにしてたといっても、弁当そのものをバカにしたわけじゃないぞ」

友人「あくまで、あの歌に登場する弁当を……」

弁当娘「それが問題なのよ!」

弁当娘「あの歌に出てくるお弁当はね、うちの店で売ってるお弁当がモデルなんだから!」

二人「な、なんだってー!?」

弁当娘「うちは歴史ある弁当屋でね。あの歌に出てくるお弁当は、うちの看板商品の一つなの」

弁当娘「つまり、あのお弁当をバカにするってことは、うちの店をバカにするのと同じことなのよ!」

男「あ、いや……ええっと……」

友人「どうすんだよ~、お前があんな歌思い出すから……」ボソッ

男「んなこといったって、まさかこんなことになるとは思わないだろ……」ボソッ

友人「もうとっとと謝っちまおうぜ」ボソッ

男「いや、謝らない!」

友人「え!?」

男「おい! いっとくけど、あの歌の弁当がまずそうだってのは紛れもない本音だ!」

男「今時、あんな地味な弁当好き好んで食う奴がいるかよ!」

男「せめて、玉子焼きやソーセージくらい入れてから出直せっての!」

弁当娘「……いったわね」

友人(あ~あ……)

弁当娘「だったら食べてちょうだい」

男「何を?」

弁当娘「今ここに、ちょうど二つモデルになったお弁当があるから食べてちょうだい!」

男「ハァ? なんで食わなきゃならないんだよ、そんな地味弁」

友人「そうだよ……オレたちはもっとがっつりとした弁当食べたいし……」

弁当娘「バカにしておいて、謝りもせず、食べもしないなんて卑怯よ! この卑怯者! 卑怯コンビ!」

男「ど、怒鳴るなよ……! 通行人がこっち見てるじゃんか」

友人「おいやばいぞ……」

弁当娘「さぁ、どうするの!」

男「分かったよ! 食うよ、食えばいいんだろ!」

弁当娘「さ、食べて!」

男「……いただきます」

友人「……いただきます」

男(ちくしょう、せっかくの春の陽気の中、こんな地味弁食べるはめになるなんて……)

友人(だから謝っておけばよかったのに……バカ)

男(まぁいいや、とっとと食い終わっちゃおう)パカッ

友人(きっと見るからにまずそうな見た目なんだろうなぁ)パカッ

二人「!!!」

男「こ、これは……!」

男「すごい……地味な色合いの食材が並んでるはずなのに、とてもキレイだ!」

友人「だが、決して華美というわけじゃない……あくまで素朴な美しさだ」

友人「この素朴さ、日本古来の水彩画のような風情さえ漂ってる……」

男「料理は見ることも食べること、とはよくいったもんだな……」

友人「ああ……箸をつけずとも心が満足感で満たされていく……」

男「だが……箸をつけずにはいられない!」

友人「オレの中の食欲が、弁当を食えと轟き叫ぶゥ!」

男「よし、俺はおにぎりからいく!」サッ

友人「ならオレは人参だ!」サッ

男「……」モグッ

男「……」モグッモグッ…

男「うめえ……」

男「柔らかく握られたお米と塩が調和して、メチャクチャうめえ……!」

男「これは具なんかいらんわ!」

男「おかか? 昆布? ツナ? 梅干し? シャケ? そんなもんいらん! 何もいらん!」

男「このおにぎりは、これで完成してるんだ!」

友人「……うわっ」

友人「この人参、甘い! しかも、なんというホクホク感!」

友人「人参はよく食うけど、こんなに味わって食べたことなんてなかった……」

友人「だけど、味わわずにはいられない!」

友人「人参って、人参って……なんて素晴らしい野菜なんだ!」

友人「この人参特有の赤さに相応しい、優しさと甘さが体じゅうに広がっていくぅ……」

男「シイタケいってみるか」パクッ

男「……」モニュモニュ

男「うまい! この歯ごたえ、この弾力! やばい、シイタケやばい!」

友人「……」

男「おい、お前も食ってみろよ!」

友人「オレはいいよ……シイタケ苦手だし」

男「いいから!」

友人「じゃあ、一つだけ……」モグッ

友人「はうぁっ……!」

友人「あの苦手な匂いや、妙な噛みごたえが全くない……」

友人「シイタケって、こんなにうまかったのか……!」ジーン…

男「続いて、レンコンとゴボウいくぜ!」シャキシャキ

男「くぅ~、このシャキシャキ感! たまんねえな!」

男「レンコンとゴボウに含まれる食物繊維が、音を立ててるって感じがするぅ!」

男「明日は快便間違いなしだな!」



友人「刻み生姜をいただこうか……」モグッ

友人「おぉ~……生姜のピリリとした舌触りに、ごま塩の味が乗ってたまらん!」

友人「生姜は体を温めるっていうけど、本当に温まってきたぁ~」

友人「春だ……オレの体に春がやってきたんだ……」ポカポカ…

男「じゃあ、いくか」

友人「ああ」コクッ

男「さっき散々バカにしたふきを……」

友人「いただきます」

モグッ…

男「ん~……!」

友人「ふき本来の苦みに、甘く味付けがしてあって……たまらんな」

友人「日本風っていう意味と調和って意味で、二つの意味で“和”だ」

男「ああ、このふきは“和”の極みだ……」

男「最後に……取っておいたこのさくらんぼを……」アーン…

友人「よっと」チュパッ

男「……うまい!」

友人「すんげえ! なんて甘さだ! なんてジューシィな果肉だ!」

男「これは……種を口の中で転がすのすら楽しい……」コロコロ…

友人「オレたちは……さくらんぼを甘く見すぎていた!」

あれ?さくらんぼじゃなくて山椒じゃなかったっけ

男「……」

友人「……」

弁当娘「一応聞いておくけど……どうだった?」

男「いや……最高でした、マジで」

友人「見た目からデザートまで、なにからなにまで素晴らしかったよ。シイタケ嫌いも克服できたし」

弁当娘「分かってくれたらいいのよ。じゃあね」クルッ

男「ま、待ってくれ! お代を!」

弁当娘「あたしから食べてっていったんだから、いらないって」

友人「でも……!」

弁当娘「これでお金取ったら、あたしがお父さんから怒られちゃうわよ~!」

男「そうだ! だったら……」

男「せめて、君のお父さんに会わせてくれないか?」

弁当娘「お父さんに?」

友人「こんなおいしい弁当を食べさせてくれたお礼をしたいんだ!」

弁当娘「うーん……別にいいけど」

男「ありがとう!」

弁当娘「お父さんはお店にいるから、ついてきて!」

弁当屋――

父「ハッハッハ! お二人とも、そりゃあ災難だったな!」

父「うちのおてんば娘は、店のことをいわれるとすぐこれだからなぁ!」

父「本当にすまなかったな!」

男「いえ、こちらこそ……すみませんでした」

友人「あんなにおいしい弁当を食べたのははじめてです!」

父「そうかい! そういってもらえると嬉しいよ!」

弁当娘「ふふーん! お父さんのお弁当は世界一なんだから!」

父「コラッ、調子に乗るな!」

弁当娘「ごめんなさーい!」

男「……」キョロキョロ

男(幕の内弁当、唐揚げ弁当、トンカツ弁当、のり弁、季節の野菜弁当……)

男「この店、メニューがすごく豊富ですね!」

友人「がっつり系からヘルシー系まで色んなタイプの弁当がある……あの歌の弁当だけじゃないんですね」

父「そりゃそうさ!」

父「あの弁当にはもちろん自信があるが、あれだけでやってけるほど甘くはないからね」

父「日々、今はどういうメニューが流行ってるのか、ライバル店はどうしてるのか、研究してるよ」

男「すごい……」

友人「今日はもう弁当を食べちゃったけど、今度はちゃんと買いに来ますから!」

父「ありがとよ!」

弁当娘「ありがとね!」

男「あ、そうだ。最後に一つだけ」

男「娘さんはどんな弁当が好きなんですか? やっぱりあの歌の……?」

父「ああ、こいつかい?」

父「こいつはいっつもハンバーグ弁当や焼き肉弁当ばかりだよ」

父「野菜より肉好きだし、弁当はがっつり食うべき、とかいって地味な弁当には見抜きもしねえ」

父「あの歌の弁当なんて食ったこともねえんじゃねえかな」

男「えええ……?」チラッ

友人「あのー……」チラッ

弁当娘「……てへっ」







―おわり―

話を書く前に自分でも歌詞をgoogleやYoutubeで調べましたが
歌詞は何パターンかあるようです…(地域差や年代差?)
今回は自分が習い覚えた歌詞で書かせて頂きました
ご了承をお願い致します


なんと!そうだったのか。

著作権は大丈夫か

もうまとめられてる…

しっかり調べて書いてるんか
数も量産してるのにすごいな

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