ダイヤ「全く、善子さんったら今日も――」ルビィ「ふふ」 (17)

ダイヤ「……何を笑っていますの? なにも面白いことは言っていないでしょう?」

ルビィ「ふふ、だってお姉ちゃんまた善子ちゃんの話してるから」クスクス

ダイヤ「また?」

ルビィ「最近のお姉ちゃんって口を開くとすぐ善子さん善子さんって言ってるよ?」

ダイヤ「わたくしそんなに善子さんのことを話題にあげています?」

ルビィ「うん、耳にタコができちゃうくらい」アハハ

ダイヤ「なっ……!」

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――
翌日 練習前

ダイヤ(確かに思い返してみるとわたくしは善子さんのことばかり話していたかもしれません)

ダイヤ(ルビィとの共通の話題なんていくらでもあるのに)

ダイヤ(なぜあんな堕天使のことばかり――)チラッ

善子「ん?」

ダイヤ(め、目が合ってしまいましたわ……!)フイッ

ダイヤ(って、なんで目をそらす必要がありますの?)

ダイヤ(何もやましいことはないのだから普通に――)

善子「ダイヤ、何か用?」ヒョコッ

ダイヤ「ぴぎゃあ!?」ビクッ

善子「ひゃあ!?」ビクッ

ダイヤ「きゅ、急に現れないでくださる!?」

善子「急に、って。ダイヤがこっちを見てたからヨハネに何か用なのかと思ってきたんじゃない」

ダイヤ「……別に善子さんを見ていたわけではありませんわ」

善子「えー、ほんと――あっ!」

ダイヤ「なんですの?」

善子「ヨハネの美貌に見とれてたのね!」

善子「あの頭の硬いダイヤまで虜にしてしまうとはなんて罪深い堕天使なのかしら……!」

ダイヤ「………」

善子「……。なにかツッコミとかないの?」キョトン

ダイヤ「え? あぁ、そんなわけないでしょう?」

善子「調子狂うわね……」

善子「なんか今日のダイヤおかしいし、もしかして熱でもあるんじゃないの?」ピトッ

ダイヤ「っ!」

善子「んー、ちょっと熱いかも」

ダイヤ「善子さんの手が冷たいんですのよ」

善子「えー、別にヨハネの手は冷たくないと思うけど」

善子「ほら、ダイヤも同じようなものじゃない」ギュッ

ダイヤ「なっ……!」

善子「っていうかダイヤの方が手冷たいくらいだし」

善子「まあ、ダイヤだったら納得」

ダイヤ「なんですの? わたくしは冷血だとでも?」

善子「んーん、逆。手が冷たい人って心が暖かいっていうじゃない?」

善子「ダイヤってほら、人のために厳しくできる人でしょ?」

善子「相手のことを考えてしっかり正してくれる人」

善子「だから正直ヨハネもそれに甘えちゃうところがあるっていうか――」

ダイヤ「……」カアアアアアアア

善子「な、何よその反応?」

ダイヤ「い、いえ。善子さんは意外とわたくしのことをよく見ていてくれているのだなと思いまして」

善子「べ、別にダイヤだけじゃないわよ!」カアアアアアアア

善子「まあ、ダイヤには感謝してるけど」ゴニョゴニョ

善子「いつもみんなをまとめてくれてありがと……」ゴニョゴニョ

ダイヤ「っ!」ボンッ

善子「ほ、ほら! 練習行くわよ、みんな待ってるだろうし!」

――
夜 ダイヤの部屋

ダイヤ(……善子さんってふざけているように見えて意外と周りが見えているんですのよね)

ダイヤ(というかそもそもポテンシャルが高いというか)

ダイヤ「って、なんでまた善子さんのことばっかり――」

ダイヤ(わたくしは一体善子さんをどうしたいんですの?)

ダイヤ(わたくしにとっての善子さんは――)

ダイヤ(学校の後輩で、Aqoursの仲間で、妹と同級生で――)

善子『堕天使ヨハネにかかれば造作もないわ』

ダイヤ(痛々しい発言が多い、自称堕天使)

善子『あ、ごめんなさい。今のところもう一回確認したいんだけど』

ダイヤ(しかし、一生懸命で、真面目で)

善子『ねえ、ダイヤ。あなたも映画好きなんだって? 今度一緒に見に行かない?』

ダイヤ(後輩なのに馴れ馴れしくて)

善子『ダイヤ』

ダイヤ(あなたがわたくしを呼ぶ声が頭から離れない)

ダイヤ(あなたの手の温もりが、まだ残っている)

ダイヤ(あなたの香りが――)

ダイヤ(わたくしは、善子さんのことが――)

ダイヤ「好き、なんですのね」

ダイヤ(後輩のくせにわたくしを呼び捨てにする彼女が――)

ダイヤ(痛々しいくせに真面目な彼女が――)

ダイヤ(黒に憧れる、真っ白な彼女が――)

ダイヤ(愛おしい)

ダイヤ「ふふ、黒澤家の跡取りともあろうものが女性に恋をしてしまうなんて」

ダイヤ「常に正しいことを心がけてきたわたくしですが、例外もありますのね」

ダイヤ(……自覚をしてしまうと彼女への想いが強くなるばかりで)

ダイヤ(ふと、彼女との思い出が蘇ってくる)

善子『はあ? ヨハネがダイヤのこと苦手だと思ってた?』

善子『なんで苦手になるのよ、ダイヤはヨハネのためを思って叱ってくれてるんでしょ?』

善子『ダイヤのことは信頼してるし、どちらかといえば――』

善子『す、好きよ?』

ダイヤ(彼女は不器用なわたくしを理解してくれて、受け入れてくれる)

ダイヤ(善子さんだけがそうではないと分かってる)

ダイヤ(けれど、きっとわたくしと善子さんは似ているんだと思う)

ダイヤ(少し不器用なところとか、根の部分が似ていると感じることがよくある)

ダイヤ(だからこそ、わたくしは善子さんに惹かれた)

ダイヤ(そして、善子さんはわたくしを信頼してくれて、慕ってくれている)

ダイヤ(それがどうしようもなく嬉しい)

ダイヤ(けど、それだけ)

ダイヤ(きっと善子さんはわたくしのことを仲間として、先輩として慕ってくれているだけ)

ダイヤ(だって、わたくしが彼女に抱いている感情の方が異常なのだから)

ダイヤ「……」

ダイヤ(頭の中は善子さんだらけになってきて)

ダイヤ(けれど、想いが届くはずもない)

ダイヤ(もちろんこんな気持ちを誰にも言えるはずもなく)

ダイヤ(内に秘めておくしかないこの感情)

ダイヤ(気付かなければよかったとさえ思う)

ダイヤ(けれど、この苦しさが心地よくもある)

ダイヤ(これが人を好きになるということ――)

ダイヤ(恋が始まった)

おわり

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