【ラブライブ】海未「水星」 (19)

鬱、胸糞、グロ描写注意

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ふと塩の香りがした。

海岸で穂乃果と二人で走る。
スクールアイドルをやり始めた頃なんて穂乃果は私よりはるかに体力なんてなかったのに今ではほんの少しだけ追い抜かれてしまっている。

穂乃果は少し先で私を待ってくれていて、笑顔で手を振ったりなんかしてる。
まるで太陽のように。

ようやく、穂乃果の元へたどり着く。

穂乃果「海未ちゃん休憩する?明日、真姫ちゃんの別荘で合宿だからあまり練習のしすぎもよくないかも!」

海未「いいえ、まだです!」

穂乃果「えぇ・・・もう休憩しようよ~」

海未「次は希の神社まで競争です!」

穂乃果「競争になってる・・・」

海未「次は負けませんから!」

穂乃果「もぉ~」

海未「行きますよ!よーいどん!」

私たちは走り出す。
いつまでも、いつまでもこうやって二人で一緒になんでもスタートできて二人でゴール出来る。

穂乃果、あなたと楽しい人生を過ごしていくんだろうなって・・・。

プロローグ END

1話 出会い

私の名前は高坂穂乃佳。

元、スクールアイドルをやっていてしかもリーダー。

大学を卒業してしばらくお家の手伝いをしていたんだけど、お母さんからそろそろ独り立ちしなさいって言われて、就職活動をしていたんだけど・・・。

面接の日に寝坊しちゃって、でも走ればギリギリ間に合う時間で、メイクもせずに家を飛び出して途中で車に轢かれて記憶喪失になってしまった。

だから、今話した事は全く覚えていないし。
これから聞く事も何も分からない。

だからと言ってそんなにショックでもない。

私が聞かされる私と言う人間はとても明るくておかしくて。
時にはお腹を抱えて膝をついて笑ってしまう話もあった。

時には馬鹿だなぁと思う話もあるけど、私は私と言う人間が好きになっていく。

それに、こうやって公園で聞いた話を思い出して一人で思い出し笑いする時間も好きだ。

お医者さんが言うにはこうやって聞いた思い出話を落ち着ける場所で再び回想するのも記憶修復に役立つらしい。

スマホを取り出し時間を見る。
もう12時になる。

そろそろ、来る時間だ。

公園の入り口を見ると、海未さんが手を振った後こっちに向かって歩き出していた。

海未「こんにちは。穂乃果」

ふんわりと塩の香りがする。
最初は香水かな?そう思ってたけど違うらしく。
お家が海の側にあるから塩の香りがするのかもって言ってた。

穂乃果「はい、こんにちは!海未さん!」

海未「もう、敬語はやめてくださいって言ってるじゃないですか」

穂乃果「海未さんだって敬語じゃないですかー」

海未「私はいいんです。私は・・・」

穂乃果「えぇー。あ、それよりも今日はどんな話をしてくれますか?」

海未「そうですね。ではバレンタインの話でもしましょうか」

回想 バレンタイン

前日、私はみんなのチョコレートを作っていました。

練習や部活に忙しくてそんなに凝ったものは作れなかったんですが、穂乃果のだけハートマークにしたんです。

別に深い意味はなかったんですよ。

たまたまハート型になってしまったんです。

当日、みんなでチョコレートを交換しあって私は貰ったチョコを眺めていました。

みんな私のよりすごいなって思いながら・・・。

そしたらですよ?

穂乃果が急に大きな声を出しました

穂乃果「あぁー!海未ちゃんのだけハートマークだ!」

恥ずかしかったですよすごくね。

他のみんなのチョコは丸かったり星型だったり、もちろんハートマークもありましたが私みたいに一人だけではなく、みんなにハートマークのチョコを作っていたのです。

私が顔を真っ赤にしてみんなを見ると、みんながみんなやけにニヤついていたんです。

穂乃果「海未ちゃんったら大胆だなぁ~」

海未「ち、違います!たまたまなんです!」

穂乃果「本当に~?あ、はいこれ。私のはたまたまじゃないよ」

穂乃果から渡されたのは私と同じハート型のチョコ。

たまたまじゃないならなんだったのか、夜あまり眠れませんでした。

回想 END

穂乃果「そ、そんなことが・・・」

海未「はい、もう本当に顔から火が出そうでしたよ」

穂乃果「でも本当にたまたまじゃないなら・・・なんなんでしょうね?」

海未「思い出したら教えて下さい」

穂乃果「思い出せるかなぁ」

海未「出せますよきっと」

穂乃果「あ、海未さんの方は本当にたまたまなんですか?」

海未「えぇ、私の方はたまたまです。深い意味なんてないですよ」

そう言って海未さんはベンチから立ち上がる。

海未「それじゃあ私はそろそろ・・・」

穂乃果「あ、はい!今日もありがとうございました」

海未「はい、じゃあ・・・また」

海未さんと会うといつも思うことがある。

なんでいつもそんなに悲しそうなのか。
なんでいつも寂しそうに笑うのか・・・。

初めて出会った時もそうだった。

回想 初めまして

しばらく雲ひとつ無く、時間の流れを感じない空を見ながらあれこれ思い出そうとしていた。

だけど何も思い出せず、考えることもめんどくさくなってしまい。
いつのまにか夢を見ていた。

どんな夢かは忘れてしまったけど、一つだけ覚えていることがある。
私を呼ぶ声。

穂乃果、穂乃果。
頭の中で誰かの声がこだまして、瞼を開けると見えたのはさっきまで見ていた青い空じゃなく。

園田海未さんだった。

海未「・・・穂乃果?」

穂乃果「は、はい。あ、あの私を知っているんですか?私、記憶喪失なんです。だからすみません。あなたの名前が・・・」

海未「・・・そうですか。私の名前は園田海未です」

そう言って海未さんは悲しそうに笑った。

回想 END

海未さんに何があったかは私は知らない。

もしかすると、私と海未さんの間に何かあったのかもしれない。

何も思い出せない私はあの表情の理由が知りたくて、だけど聞くこともできなくて。

この公園でお医者さんが言っていた聞いた話を回想する治療法を実践することしかできない。

私は何が思い出せない?

私が思い出して海未さんの悩みを二人で共有出来たら・・・。

海未さんは本当に心の底から笑うことができるのだろうか?

1話 END


2話 約束

朝食と歯磨きを終えた私は2階の自室へ戻り、二度寝でもしようかと考え、ベッドに横になる。

今日もまた同じような1日を過ごしそうだと感じた午前9時。

記憶が戻るまでしばらくは安静にしていなさいとお母さんと妹に言われたけど、もうかれこれ2ヶ月以上は経つ。

最初はそれを聞いてダラダラと毎日を過ごす事が出来ると喜んだ。
どうやら、私は怠け者でそれだけは記憶から消えなかったらしい。

しかしいざ、2ヶ月なにもせず過ごすと毎日が暇で暇で仕方がない。
起きて食べて寝るの繰り返しだ。

怠け者何だけどジッともしていられない。
渇いた笑いが出る。
きっと私は過去に色々な人に迷惑をかけていたんだろうなぁ・・・と申し訳なく思い。
このまま寝たらダメな気がすると危機感を感じ。
寝るのをやめて部屋の掃除でも始めようかと体を起こした。

回想 遅刻

海未「穂乃果遅いですね」

待ち合わせ時間になっても来ない。

見渡してみても、穂乃果はどこにも見当たらなく。

私は30分も前から来てるのに・・・。

呆れながら、スマホを取り出して連絡する。

海未「あ、もしもし?穂乃果もう時間過ぎてますよ!」

えへへ。ごめんごめん。
能天気な声が聞こえて少し安堵した。
もしかしたら事故に遭ってるのかもしれないと考えていたからだ。

海未「もぅ。早く来て下さいね」

それだけ言って、電話を切る。

穂乃果「おーい!海未ちゃーん!」

海未「えっ・・・穂乃果?」

手を振って、こっちに歩いて来る人物は間違いなく穂乃果。

たった今、電話を切ったばかりだというのにいくらなんでも早すぎる。

穂乃果「えへへ」

私と向かい合い笑う穂乃果はいつもよりも楽しそうで、さっきまでの怒りも忘れてしまいそうになる。

海未「早すぎないですか?」

穂乃果「ん?待ち合わせの時間は過ぎてるよ?」

あっ・・・。
全く、穂乃果・・・あなたって人は。

海未「見てたんですね。私を」

穂乃果「あ、バレちゃった?あのね。見たかったんだ。海未ちゃんが私を待ってるとこ!」

海未「はぁ・・・そんな事の為に遅刻したんですか」

穂乃果「ううん。遅刻はしてないよ。だってこの場所にはいたんだから!」

海未「私と会う約束をして、時間を過ぎても私と会えなかった。遅刻以外の何物でもないですよ」

諭すように言うと穂乃果はまたニコリと笑った。

穂乃果「いいじゃんいいじゃん。ほら、そろそろ行こうよ!」

海未「遅刻したんですから穂乃果の奢りですからね」

穂乃果「え~っ!あんまりお金ないよ!」

海未「じゃあ今度奢って下さいね」

穂乃果「はーい!」

あ、それからと。穂乃果は付け足すように、30分も前から来てるなんて海未ちゃん凄いねと言った。

あなたを待つ時間が好きなだけだとは言わないでおいた。

回想 END

長い坂道を下り終え。
公園に入る。

いつも座っているベンチに目を向けると、光のない瞳で空を見ている海未さんが座っていた。

珍しいと思った。
いつもは私があの場所に座り、海未さんを待っていたのだけれど、私より海未さんがこの公園にいる何て初めてだ。

穂乃果「海未さん?」

海未「あ、穂乃果ですか。こんにちは」

穂乃果「あ、はい。こんにちは!」

海未さんはベンチの端に座り直し、私はその横に座る。
またふんわりと塩の匂いがする。

穂乃果「海未さんが私よりも先にこの公園にいるだなんて珍しいですね」

先程、思った事をそのまま口にだす。

海未さんは光のない目で私を見て、優しく笑ってくれた。

海未「えぇ、好きなんですよ。誰かを待つ時間が」

穂乃果「なんかわかる気がしします」

海未「特に大切な人を待つ時間は特に好きです。何だかいつもより時間が大切に思えて・・・視認出来るぐらいに時の流れを感じます」

穂乃果「大切な人ですか・・・」

大切な人。
私は記憶喪失だから大切な人を思い出そうとしても思い出せなくて、少し悲しくなる。

ただ一つ、確かな事は海未さんは私にとって大切な存在になって行っている。

海未「考え事ですか?」

穂乃果「いえ、私って記憶喪失なので大切な人を思い出そうとしても思い出せなくて・・・」

海未「そうですか・・・。あなたは昔言いましたよ。私がかけがえがないと、大切な存在だと」

穂乃果「私がそんな恥ずかしい事・・・」

海未「あなたはそんな恥ずかしい事を普通に戸惑いなく言えたんです」

穂乃果「そうなんですか・・・」

海未「またお話しでもしましょう」

穂乃果「あ、ありがとうございます!」

回想 涙

穂乃果「海未ちゃんに問題出していい?」

海未「突然ですね。まぁいいですが」

穂乃果「人ってなんで泣くんでしょーか?」

海未「なんでって・・・悲しいだとか悔しいとか嬉しいとか、一概には言えません」

穂乃果「それじゃあ答えになってないよ~。もし今穂乃果が死んだら泣く?」

海未「それは・・・まぁ」

穂乃果「それはなんで?」

海未「死んだ穂乃果が可哀想で・・・」

穂乃果「ううん。違うんだよ。あのね人って他人の為に涙を流せないらしいよ」

海未「そうなんですか?」

穂乃果「うん、じゃあなんで泣くかって言うとね。自分が悲しいから泣くんだって」

海未「なんかあんまり聞きたくない話ですね」

穂乃果「そうかなぁ?穂乃果はなるほどなーって思ったよ。確かに私は人の為に泣いた事なんて無いもん」

海未「思い返してみれば私も無いかも知れません。でも穂乃果が死んだら私は穂乃果の為に泣きますよ」

穂乃果「じゃあ海未ちゃんは人類で初めて人の為に涙を流した人になるね!」

回想 END

穂乃果「私って結構物知りだったんですねー」

海未「いえそんなに、多分テレビか何かでたまたま見たんだと思います」

バッサリと海未さんから切り捨てられた落胆しながら力無く笑う。

海未「でも、たまにいい事も言いますよ」

穂乃果「本当ですか?」

海未「はい、たまにですが」

穂乃果「たまにかー」

海未「どうです?少しは穂乃果の事分かってきましたか?」

穂乃果「うーん。まだちょっぴりだけ・・・」

海未「今晩、私の家に来ます?」

穂乃果「へぇ!?」

海未「あ、いえ。まだ色々話したい事もあるし、聞きたい事もあるでしょうから・・・ダメですか?」

穂乃果「ダメじゃ無いですけど・・・泊まりですか?」

海未「泊まるのならご飯作りますよ」

穂乃果「あ、泊まらない前提だったんですね。うーん。せっかくだから泊まります!その前に着替えとお母さんに一言だけ言って来ますね!」

回想

真夜中車を走らせる。

車線を切り返し、ラジオから流れる音楽に身を委ねる。

山道に入る。

走っている車は私だけ。

まだ全てが終わったわけじゃない。

不気味な山も全てを隠してくれるこの闇も今はとても頼りになる。

ここなら誰も来ないだろうと、脇道に車を止めた。

トランクを開ける。

スコップ、懐中電灯、タオル、水、ロープ。

回想 END



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