美玲「最強銀河ッ!」 レイ「シンデレラ・ゼロ!」 (194)


【会場・楽屋】


輝子「……そ、それでな…、幸子ちゃんが、ふぎゃー……って驚く度に、エノキクンもゆらゆらするんだ…」

乃々「それ、本当なんですか…?」

輝子「ああ……きっと、エノキクンも映画を楽しんでいるんだな……。『コワイヨー!』…って」

乃々「輝子ちゃんの腕が動くから、鉢植えも一緒に揺れているだけなんじゃ…」

輝子「そ、そんなことない……と思う……ョ…」

乃々「では、輝子ちゃんはびっくりしたりしないんですか…?」

輝子「……それは、まぁ……する。…うん」

乃々「ならきっと、そうですよ…。えのきが勝手に動くなんてありえないんですけど…」

輝子「で、でも、ほんとなんだぞ……っ? キノコ、ウソツカナイ……フヒヒ」

乃々「輝子ちゃんは人間じゃなかったんですか…」

美玲「……」




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輝子「……そうだ。信じられないなら……見せてあげるから、乃々ちゃんも、今度おいでよ…」

乃々「えっ」

輝子「小梅ちゃんセレクション、映画鑑賞会……イン、私の部屋…」

乃々「ヒエッ…。…もも、も、もりくぼ、ホラーはむりくぼなので、そういうのはちょっと…」

輝子「大丈夫だ……私も最初は怖かったけど、すぐ慣れて、キモチヨク楽しめるようになるから…」

乃々「あまりにもあんまりな誘い方なんですけどぉ…」

輝子「フ、フフ……私の部屋に、またトモダチが…。か、歓迎するぞ…!」

乃々「う、うぅぅ~~……無下に断れないぃ…」

美玲「……ハァ」

輝子「美玲ちゃんも、どうだ…?」

美玲「オマエらなぁ…」


輝子「み、美玲ちゃん…?」

乃々「…?」

美玲「なんて言うか……よくそんなにノンキしてられるな…」

輝子「あぅ……駄目だったかな…」

美玲「いや、ダメとかじゃないケド…。もっとこう、緊張感とかないのかよ……これからLIVEなんだぞッ?!」

輝子「そうは言っても……わ、私、本番前でもいつもこんな感じだし…」

美玲「肝が据わってるよな…」

乃々「大丈夫です……LIVE前だろうとなかろうと、もりくぼはいつでも『帰りたい』の一心で平常運転ですから…」

美玲「ネガティブな方向にポジティブだなッ?!」

乃々「『嫌なことから目を逸らせ』がもりくぼのルール第1条なので…」

輝子「1番目が、それなのか……流石だ…」

美玲「物理的に目を逸らすな! 視線を戻せッ! こっち見ろ!」

乃々「戻って良いんですか…? はい、戻ります…。もりくぼは帰らせていただきます…」

美玲「だっ、駄目だぞ帰っちゃ! そういう意味じゃなーいッ!」


輝子「…美玲ちゃんは、緊張してるのか…?」

美玲「なぁっ!?」

輝子「なんだか……美玲ちゃんが、1番そわそわしてるような気が…」

美玲「べっ、別に、緊張なんかしてないッ! ムシャブルイってやつだ!」

乃々「…」

輝子「……そうか。なら……本番前くらい、いつも通りに過ごしてて、良いんじゃないかな……フヒ」

乃々「平常心が1番なんですけど…」

美玲「…。まぁ……確かに、それはそうだけど…ッ」

輝子「……肩の力、抜いていこう? 美玲ちゃん」

美玲「そんなこと言ったってさぁ! だって今日は、ただのLIVEじゃないんだぞ!? 分かってるのかッ?」

輝子「あ、あぁ……それも分かってる、ぞ…?」

乃々「合同LIVE、ですよね」

美玲「そう! 今日はウチらインディヴィジュアルズと、あの"マジカルスター咲"との対バン式LIVEなんだからなッ!」


輝子「マジカルスター、咲さん……か」

乃々「大手も大手、宇宙レベルのS級アイドル…」

美玲「イベントのチケットは即日完売、会場は常に満員ッ!」

乃々「先月も、全宇宙同時配信の特別LIVE、大盛況みたいでした…」

輝子「きょ、今日のステージも、各階層のLV会場とかで同時中継されるらしい、ぞ…」

乃々「……帰りたい」

美玲「CDは軒並みミリオンヒット、新しくCMに出た商品は店から消え、今や宇宙経済すら動かすアイドル! おまけにバトルもむちゃくちゃ強いッ!!」

輝子「そんな大人気アイドルと、合同でLIVEだなんて…」

美玲「なッ! この企画決めたウチの事務所、今回ばかりはマジにスゲーぞッ!」


乃々「うぅぅ……荷が重すぎるんですけど…」

美玲「弱気になるなノノ! 咲とLIVEできるくらい、ウチらも名前が知れてきたってことじゃないかッ!」

乃々「でもぉ…」

輝子「そう、だな…。他の階層のことはよく知らないけど……私たちの曲も良い調子で売れてるって、親友も、言ってた…フフ」

美玲「だろッ、だろッ!? ウチらの事務所で、インディヴィジュアルズが宇宙デビュー1番乗りなんだッ!」

乃々「あまり目立ちすぎると、どんどんお仕事が…」

美玲「でっっっかい宇宙嵐、今度はウチらが起こしてやるんだよ!」

輝子「この間みたいな、宇宙が壊れそうになるのは……勘弁、だけどな……フヒ…」

美玲「そのくらいの意気込みで、ってことだってば! 燃えるだろッ?! なッ!」

乃々「…」

美玲「……なッ!?」

乃々「………うぅ」

美玲「燃えろよそこはッ!!」

輝子「乃々ちゃんも、いつも通りだな…」


美玲「今日のセトリには、LIVEバトルのコーナーもあるッ! この日の為に、ウチは1週間前からデッキを練ってきた!」

輝子「おぉ……やる気だね、美玲ちゃん」

美玲「当ったり前だろ! LIVEでもバトルでも、今日はウチらインディヴィジュアルズの強さを、全宇宙に見せつけてやるチャンスなんだからな!」

乃々「も、もりくぼは、デッキを持っていないので…」

美玲「…ノノ、前から言ってるけどさ、言ってくれればカード貸すぞ?」

乃々「むむっ、む、むりです……もりくぼにバトルとか……絶対むーりぃ…」

美玲「全く…」

輝子「そ、それじゃあ……今日のバトルは、美玲ちゃんに任せようかな…」

美玲「何言ってるんだ、ショーコも勝つんだよッ!」

輝子「でも……私も、バトスピそんなに、自信ないから…」

美玲「そう言って、ウチといっつも良い勝負してるだろ」

輝子「そ、そうだったかな…」

美玲「そうだよッ!」


美玲「…よぉし。ショーコ、デッキ出せ!」

輝子「え」

美玲「前哨戦するぞッ」

輝子「い、今か…?」

美玲「はーやーくー! ウチ、滾っちゃってしょうがないんだッ」

輝子「わ、わかったよ……あれ」

美玲「ん? なんだ、いつまでカバンごそごそしてるんだよ」

輝子「あ、あれ、おかしいな……えーっと…」



輝子「……あー」

美玲「ど、どうしたッ?!」

輝子「デッキ、事務所に忘れてきちゃった…」

美玲「……」

乃々「え、えぇー…。きのこは連れてきてるのに…?」



―――

――




【前置き】


最強銀河 究極ゼロ×シンデレラガールズ のつもりです

究極ゼロは本編後を想定してるつもり。世界観はだいぶバトスピ側に寄ってるかも

双方知らないと分かりにくい部分があるかもしれませんが、合わせてご容赦ください


∀nswer発売おめでとうございます、という前置きもしておきます


――


【一番星号】


ライラ「……騎士ペンタンでアタック! 効果でBPをプラス2000!」

リクト「それでもBPはこっちの方が上だよ? ソーディアス・アーサーでブロック!」

ライラ「甘い! フラッシュタイミング、《エンジェルストライク》! アーサーのBPを5000マイナス!」

リクト「そ、そのカードは!」

ライラ「ふふーん、エリス様からもらっちゃった♪ やっちゃえ、あたしの騎士ペンタン!」

               
《騎士ペンタン》          《騎士の覇王ソーディアス・アーサー》
 LV2          VS   LV1
 BP7000 ↑Up!       BP5000 ↓Down!



リクト「やられちゃった…」

ライラ「せっかく出したのに、残念だったわね! 私はこれでターンエンド!」



レイ「…お、やってるなぁ2人とも」

リクト「あっ! レイ!」

ライラ「ということは…」

リクト「地球に着いたんだね?」

レイ「ああ、到着だ。っと、どれどれ…? なるほど、エンジェルストライクか」

ライラ「良いでしょー♪」

リクト「お姉ちゃんばっかりズルい! レイ、僕もマジックカードほしいよぅ!」

ライラ「あ、こらリクト!」

レイ「んー……なら、これとかどうだ?」

リクト「わぁ、《ネオ・フレイムテンペスト》! いいの!?」

レイ「良いぜ? ただし、このバトルに勝てたらな!」

リクト「うん! よぉし、絶対負けないよお姉ちゃん! スタートステップ!」

ライラ「全くもう。…ふふっ」

リクト「で、でも……この手札で、どうしよう…」



ライラ「…ねえレイ」

レイ「んー?」

ライラ「ムゲンとソルトは?」

レイ「あいつらならもうとっくに行ったよ…」

ライラ「そっか」

レイ「たまたま第1階層近くにいたからって、わざわざ会場まで連れてくることになるなんてなぁ…」ハァ

ライラ「銀河テレビ局のライブ中継だってあるのにね」

レイ「『こんなに近くでマジカルのライブがあるってのに、現地入りできなかったら、オレは死んでも死にきれない!』…とか何とか言いやがって」

ライラ「アイドルのおっかけも大変よねぇ」

レイ「一番星号はタクシーじゃねえんだぞ、全く!」

ライラ「あはは…」

リクト「…よし、これだ! まずはバーストセット!」




レイ「…でもまぁ、地球はライラたちの母星でもあるしな。寄ること自体は別に構わねえんだ」

ライラ「え?」

レイ「地球に帰ってきたのも久しぶりだろ? たまには故郷の空気吸って、のんびりしてくのも悪くねえ」

ライラ「レイ…」

レイ「あいつらが楽しんでる間に俺たちは、2人の爺さんに挨拶でもしに行こうぜ」

ライラ「うんっ! ありがとう、レイ!」


リクト「ネクサス、《要塞都市ナウマンシティー》を配置!」

ライラ「げっ」

レイ「おっ」

リクト「その効果で《獅機龍神ストライクヴルム・レオ》を、レベル2でノーコスト召喚だぁっ」

ライラ「うっひー、出たぁ…」

レイ「ネクサス戦術とは、やるじゃねえかリクト!」

リクト「へへーん、どうだ!」

ライラ「んー…。私、あのカードちょっと苦手なのよね…」

リクト「レオの【重装甲】は、ペンタンたち黄色の効果を受け付けないからね! このバトルもらったよ!」

ライラ「むぅぅ~~っ!」


レイ「はははっ! 随分激しい姉弟バトルになってきたじゃねえか!」

ライラ「笑ってないで、助けてよレイ~!」

レイ「そうはいかねえ。勝利の星は、自分の手で掴み取るもんだぜ?」

リクト「そうだよお姉ちゃん!」

ライラ「急に強気になるな!」

リクト「待っててねレイ、お姉ちゃんなんかさくーっと倒してみせるから!」

ライラ「こ、こンの~~……言わせておけば生意気な…」

レイ「さてと。終わるまで俺は、スターダストコーラでも…」




beep! beep! beep!




レイ「んぁ、なんだぁ?」

ライラ「急にブザーが…」

リクト「これ、SOS信号じゃない?!」

レイ「SOSゥ? こっちも、随分ご無沙汰じゃねえか」

ライラ「確かに……ギルドが新しくなってから、事件らしい事件もめっきりだったわよね」

リクト「近くの星からかな?」

レイ「…いや、これは……地球だな」

ライラ「地球? ここから?」

レイ「しかも、すっげー近くだ。さっきまで船を停めてたところじゃねえか!」




pi!



「…ぁ。映った、ぞ…」

「も、もしもし……誰かぁ…」

レイ「こちら一番星号、SOS信号を確認。どうした?」

ライラ「ん、んん~…?」

リクト「どうしたの? お姉ちゃん」

ライラ「この2人、どこかで見たことあるような…」

「た、助けてほしいんですけど…」

「会場が襲われて……み、美玲ちゃんが、連れ去られて…」

リクト「ひ、人さらい?!」

ライラ「会場って、もしかして…」

レイ「ああ。さっきムゲンたちを降ろした、ライブ会場からだな」

「そ、そうなんだ…。控え室に、いきなりやって来て…」

ライラ「控え室…」

「美玲さんが眠らされて…。あ、あっという間に船で飛んでいってしまって…」



リクト「もしかして、宇宙山賊の仕業…?」

レイ「かもな…」

ライラ「この辺はまだまだ田舎で、ギルドの目が届いてない奴らも多いから…」

レイ「だが、この船なら追いつける。どっち行ったか分かるか?」

「それが、分からないんだ……本当に、あっという間で…」

「何もできなかったんですけど…」

リクト「そっか…」

ライラ「とりあえず、現場に向かった方がいいかもね」

レイ「だな。よし、じゃあまずそっちに行くから、待っててくれ!」

「わ、わかった…」

「よろしくお願いします…」



pi!


レイ「そういう訳だ、ライラ、リクト!」

リクト「うん! バトルはお預けだね、お姉ちゃん」

ライラ「……今の2人、つい最近どこかで…」

リクト「お姉ちゃん?」

ライラ「…ぁ、ううん! そうね、緊急事態だもん」

レイ「会場なら、ムゲンやソルトとも合流できるかもしれねえな」

ライラ「確かに!」

レイ「1度Uターンするぜ、しっかり掴まってろよ!」

リクト「この感じ、なんかちょっと久しぶりかも!」

ライラ「そうねっ! ライラのルール第32条、『困ったときは、お助け1番』!」

レイ「っしゃあ! 一番星号、発進だ!!」



――



――


乃々「美玲さん…」

輝子「だ、大丈夫だよ、乃々ちゃん…。今、SOS信号も出したじゃないか…」

乃々「でもぉ…」

輝子「船で宇宙を飛び回ってる奴らは……地球の、ましてや日本の警察じゃ、どうにもできないだろ…? だから…」

乃々「うぅ~……むーりぃ~…」



バァン!


レイ「無理じゃなぁーーいッ!!!」

乃々「ひゃ?!?」

輝子「フヒィ!!?」


リクト「ど、どうも~…」

ライラ「お邪魔しまーす。…ちょっとレイ! わざわざドア蹴り飛ばすことないでしょ!」

レイ「おう、ワリーワリー! さっきのSOS、お前らだな?」

輝子「…ぁ、はい……そうです、けど…」

レイ「俺は一番星のレイ! 話を聞かせてくれ!」

輝子「フヒ…」

乃々「は、早すぎませんか…?」

レイ「へへっ、1番に駆けつけてやったぜ!」

リクト「一番星号のスピードは、宇宙一だからねっ!」

レイ「そういうこと!」

乃々「はぁ…?」

ライラ「たまたま近くにいただけなんだけどね。……って、あなたたち!」

輝子「?」


ライラ「やっぱり! ショーコちゃんと、ノノちゃんでしょ?! "インディヴィジュアルズ"の!」

乃々「え…?」

輝子「そ、そう……だけど」

レイ「いんでぃ?」

リクト「知ってるの? お姉ちゃん」

ライラ「え゛っ…、レイはともかく、リクトも知らないの?!」

レイ「ともかくとは何だ、ともかくとは」

リクト「わ、わかんない…」

ライラ「我らが地球出身、最近超活躍中の人気アイドルユニットよ!?」


ライラ「先月の宇宙オリコンランキング、第2階層シングル部門第3位! 第3階層では5位! 発売からずっと上位をキープしてる!」

リクト「へえ…、そんなに…」

レイ「おー」

輝子「そ、そんなにだったのか…」ヒソ

乃々「具体的な数字は初耳なんですけど…」ヒソヒソ

輝子「他の階層の話、あんまり知らないからな…」ヒソソ

ライラ「尖った個性とカッコよさを前面に押し出した、鮮烈なあのデビューライブ! あれ以来、『次にバズるのはこの3人だ!』ってウワサで、宇宙中持ちきりなんだから!」

レイ「ほぉー」

乃々「な、なんだか熱弁されてませんか…?」ヒッソリ

輝子「照れるな……フヒ…」ヒソヒソ

乃々「恥ずかしくなってきました……穴があったら入りたいんですけど…」

ライラ「あっ、名前まだだった! 私、ライラっていいます! ライラ・エイプリル! インディヴィのファンなんです!!」

輝子「あ、うん……ドモ…」

リクト「僕はリクト! 弟のリクトだよっ」

乃々「あぅあぅ…」


ライラ「今日だって、マジカルと一緒に合同ライブなんだよ?! ムゲンも言ってたでしょ!」

レイ「そうだっけ?」

リクト「言ってた、かも…。聞いてなかったよ…」

ライラ「聞いてあげなさいよ…」

リクト「マジカルのことは知ってるけど……僕、そもそもアイドルはあんまり詳しくないし…」

ライラ「ミーハーなんだから」

レイ「《インビジブルクローク》なら知ってるぜ、俺」

リクト「そ、それはもう禁止カードだよぅ!」

レイ「ああ。昔は世話になったもんだ…」

ライラ「あ、あんたたちねぇ…」



輝子「あ、あの…」

乃々「そろそろ、本題に…」


レイ「っとと。すまねえ、そうだったな」

ライラ「ね、ねえ……もしかして、攫われたのって、今ここにいない…」

輝子「うん…」

乃々「美玲ちゃんが…」

ライラ「やっぱりー!?」ガーン

リクト「ミレイ?」

レイ「俺か?」

ライラ「ちっがーーう! ミレイ、早坂美玲ちゃん! インディヴィジュアルズのセンター!」

リクト「あ、そっか! さっき3人いるって言ってた内の、もう1人だね?」

ライラ「そう!」

輝子「美玲ちゃん…」


レイ「どんな奴らだったんだ?」

輝子「や……奴ら、というか…」

乃々「連れてったのは、1人だったんですけど…」

リクト「えぇっ! 1人で?!」

輝子「きょ、今日……夕方の開演で、私たちのLIVEがあるのは、知ってるんだよな…?」

ライラ「うん」

乃々「朝に会場入りしてから昼のリハーサルまで、控え室で待機していたんです。そしたら…」



――
―――

美玲「まっっっ……たくッ!! デッキ忘れてくるとか、どういうことだよ!」

輝子「す、すまん……今朝、ちょっとバタバタしてて…」

美玲「前哨戦どころか、これじゃ本番だってバトルできないじゃないか…ッ」

乃々「きのこは忘れない辺りは、流石ですね…」

輝子「原木ない…」

美玲「は?」

乃々「えっ」

輝子「…ぁ。今のは、"面目ない"と"原木"をかけたキノコジョーク、です……フヒ…」

美玲「……」

乃々「…イマイチ、ですかね」

輝子「あぅ……ダメか…」


美玲「ノノは元々デッキ持ってないし、ショーコは忘れ物。戦えるのはウチだけ…」

乃々「い、今からデッキを組むとか…」

美玲「そんなに予備のカードなんて持ってきてない…」

乃々「では、市販のスターターを買ってくる、とかは」

美玲「出来合いの構築済みデッキでバトルなんて、観客にすぐバレちゃうぞッ」

乃々「なら、今からプロデューサーさんに、取ってきてもらうのは…」

美玲「そんなパシリみたいなことさせられるかよッ!!」

乃々「ひっ……も、もりくぼ、そんなつもりじゃ…」

美玲「…悪い、少し声でかかった」

輝子「でも確かに、プロデューサーに申し訳ないよ……私が悪いのに…」



美玲「…しょーがないッ。LIVEバトルの時は、ウチが1人で戦う!」

乃々「美玲さん…」

美玲「予定では、2人で順番にバトルすることになってた筈だけど……スタッフに伝えて、バトルのコーナーを1回分減らしてもらおう」

輝子「…」

美玲「ウチが1人で頑張る! なんだったら、ウチが2連戦でもしてやるさッ!」

輝子「ご、ごめんな、ほんとに…」

美玲「ショーコの責任は、ユニット全員の責任だ! 何とかなる!」

乃々「お、応援だけは精一杯しますので…」

美玲「おうッ! 任せとけって」



美玲「……ハァ」

輝子「…」

乃々(ちょっと、きまずいんですけど…)




ズズン…


乃々「ひっ…」

美玲「…お?」

輝子「今……何か音しなかったか…?」

美玲「したよな。爆発音? みたいな」

乃々「せ、設営でステージが動いてるんですよ……きっと…」

輝子「…なら、良いけど」

美玲「……いいや、」




ドーンっ!


輝子「また…っ!」

美玲「やっぱり、何か変だぞッ!」

乃々「ひぃ…。な、なんなんですか…」




ガチャリ…


「出演者のみなさん!」

輝子「す、スタッフさん…?」

「早く逃げてください! 会場内で、爆発物が見つかりました!」

美玲「はぁ!?」

「爆破テロかもしれません、早くここから避難を!」

輝子「フヒャ……そんな、なんで急に…」

乃々「あわわわ…」

美玲「…ッ! と、とにかく逃げるんだ! ほらノノ、こっちッ!」

乃々「は、はひぃぃ…」

「………」



美玲「おいショーコ! きのこなんか持ってくな?! 逃げ遅れるぞッ!」

輝子「いや……ダメだ……トモダチは、置いて行けない……!」

美玲「こんな時に何言ってんだぁ!」

「……こいつが咲だな」ボソ

美玲「え? 今、なんか言ったか?」

「……っ」グイ

美玲「ッ!? お、オイ、どこ引っ張ってんだ、やめ…ッ、モゴ?!」

輝子「…え ちょ、何してるんだ、スタッフさん…?」

乃々「美玲さん…?!」

「…」タタタ



ズガン!



輝子「おわ、また爆発…」

乃々「み、美玲ちゃんっ、美玲ちゃん!」

輝子「だ、ダメだよ乃々ちゃん、追いつけないし、危ない…っ」

乃々「でも、美玲ちゃんが…」

輝子「そんな……スタッフさんが、どうして…」

乃々「美玲ちゃぁぁん………」



―――
――



輝子「…」

レイ「なるほどな…」

リクト「ひどい…!」

ライラ「会場スタッフに変装して攫ったのね!」

乃々「もりくぼ、わけがわかりません……どうして、美玲、ちゃん、が…」グス

リクト「…ハンカチ、使って?」

乃々「ありがとう……ござ、ぃ……ふえぇっ…」

輝子「わ、私が悪いんだ……私がもたもたしてたから…」

ライラ「…そうやって、自分を責めちゃ駄目だよ」

輝子「だって…」

ライラ「悪いのは、みんなそいつなんだから!」


レイ「おそらく、計画的な犯行だったんだろうな」

リクト「うん。会場にたくさんの爆弾なんて、すぐには用意できないよ」

レイ「それに、1人で設置できる数にだって限りがある。きっと色々根回しした上での、複数人での仕業だ」

ライラ「攫った奴の特徴は?」

輝子「……咄嗟のことで、全然覚えてないんだ…」

リクト「船の形とか、色とか」

輝子「…すまん」

ライラ「そっか…」

レイ「……うーーむ」

リクト「せめて、どっちの方向に行ったのかだけでも分かれば…」



「場所なら、分かるよ?」


リクト「その声は…!」

咲「みんな、久しぶりっ」

ライラ「マジカル!」

レイ「よう、久しぶりだな」

咲「ゼロ様っ!! …じゃないのか、今は。ムゲンさんと、ソルトさんは?」

レイ「ああ、あいつらなら今……」



輝子「ま、マジカルスター、咲……さん…」

乃々「ぐすっ……な、なんでここに…?」

輝子「LIVE会場だからな…。居ても、おかしくはない、けど……フヒ」

乃々「みなさん、お知り合いだったんですね…」

輝子・乃々((…ぜろさま?))



咲「…なんて、こんなお話してる場合じゃないよね」



咲「ノノさん、ショーコさん、初めまして。怪我はない?」

輝子「ふひゃ……ア、ハイ。大丈夫…」

乃々「咲さんも、無事で何よりです…」

咲「私も大丈夫! せっかくの合同ライブなのに、こんなことになるなんて…」

ライラ「まぁまぁ、怪我がなくて良かったよ!」

咲「でも、ミレイさんが…」

リクト「攫われたの、知ってるの!?」

咲「うん。さっき私の事務所の元に、こんなメールが届いたみたいなの」ピラ

ライラ「マジカルの?」


  マジカルスター咲は預かった

  返してほしければ、5000億マニーを用意して、下の口座に振り込め

  ・連鎖銀行 異合支店 口座番号5-3-14000

  ・口座人名義 ガルゴル


  もしくは、直接手渡しに来ること      以上



輝子「『マジカルスター咲は預かった』…。……フヒ?」

リクト「で、でも、マジカルはここに」

レイ「なるほどな…」

咲「うん。どうやらこの犯人は、元々私が狙いだったみたい」

ライラ「ええーっ!?」

咲「ライブ会場を襲撃、騒ぎに乗じて誘拐。そして身代金を要求…」

リクト「でも犯人が連れて行ったのはマジカルじゃなくって…」

ライラ「ミレイちゃん!」

レイ「確かに、辻褄は合う」

咲「恐らく、間違えちゃったんだね。咄嗟の手際で、向こうも人違いまでは気付けなかったのかも」

乃々「い、言われてみれば、美玲ちゃんと似ているような……似てないような…」

ライラ「ええー、そう? 全然違うくない? 眼帯もあるし」

輝子「ツメとか、色合い、かな…。私服とか、髪形の雰囲気……うん、言われれば、まぁ…」



ライラ「……それにしても、アホなメールよね」

リクト「うん。口座番号なんか書いたら、すぐ特定されちゃうよ」

ライラ「ていうか、名前ももう分かっちゃったし。お金引き出してやろうかしら…」

リクト「手渡しに来いって言いながら、肝心の場所は書かれてないね」

ライラ「アホだわ。間違いなく、アホ!」



レイ「場所が分かるってのは、こういうことか」

咲「うん。メールからの逆探知で、送信した宇宙船は絞り込める。けど…」

レイ「ああ、爆弾使うような奴らだ。人違いってバレたら、最悪の場合、命が危ないかもしれねえ」

乃々「そ、そんな…」

輝子「…」


咲「ごめんなさい、2人共」

乃々「…」

咲「私のせいで、ミレイさんを危険な目に合わせてしまいました」

輝子「そんな……咲さんのせいじゃ、」

咲「ライブが無ければ、こんなことにはならなかったのに…」

乃々「…っ」

咲「本当の狙いは私。だったら、今すぐにでも犯人と交渉して…」

輝子「……い、いや…。それは、違う、ぞ」

咲「え?」

輝子「誰のせい、とか。誰が悪い、なんて…。…私も、色々思っちゃうけど。…でも、LIVEがなかったら、なんて言うのは、1番ダメだよ…!」

レイ「!」


輝子「美玲ちゃん……今日のLIVE、すごく楽しみにしてたと、思う…」

乃々「…はい。私たちの中で1番、気合が入ってました」

輝子「緊張も、多分すごくしてたみたいだけど。…でも、宇宙一有名なアイドルの、あの咲さんと一緒にLIVEができる楽しみは、それ以上だったハズなんだ…」

咲「ショーコさん…」

乃々「『3人で宇宙に嵐を起こす、ウチらの強さを銀河中に見せつけてやるんだ』 …って、よく言ってました…」

咲「…ノノさん」

輝子「わ、私たち、よく美玲ちゃんに引っ張ってもらうことが多くて…。レッスンとか、大変だったし…」

乃々「実際、引っ張り出してもらったこともあります……物理的に…」

輝子「でも……そうやってハッパかけられて、ユニットで頑張ろうって今日までやってこれたのも、咲さんとのLIVEがあって、目標があったから、だと、思うんだ…」

輝子「だ、だから、その……ら、LIVEがなければよかったなんて、お願いだから、言わないで、くれ…」

乃々「美玲ちゃんが聞いたら、悲しむと思うんですけど…」

咲「…そっか」



咲「……うん、そうだね。私もまだまだだなぁ」

輝子「…ぁ、いや、違うんだ……あの、お説教とか、そういうつもりじゃなくって…」

咲「大丈夫。分かってるよ」

輝子「…ぁう」

乃々「というか……こんなに悠々と喋っている場合でもありませんよね…。もりくぼ、ちょっぴり反省します…」

レイ「…ああ、そうだな」


乃々「ひぅっ……すみませ…、」

ライラ「ちょっと、レイ?」

レイ「マジダチなんだろ?」

乃々「…へ?」

レイ「お前らの、1番の」

輝子「ま、まじ?」

リクト「友達とか、仲間、みたいな意味だと思って」コソッ

乃々「あ、なるほど…?」

輝子「…お、おぅ。そうだな、まじだち…」

レイ「なら! お喋りはこれくらいにして、さっさと取り返さなくっちゃな!」

乃々「……っ、」

ライラ「レイ!」


レイ「マジカル、船のデータは分かるんだよな?」

咲「うん。宇宙GPSで、大体の座標も特定できるよ」

レイ「一番星号に今すぐ送ってくれ! 発進するぞ、リクト! ライラ!」

リクト「うん!」

ライラ「まっかせて!」

輝子「お、お願いして、良いのか…?」

レイ「なーに言ってんだ、SOS出したのはお前らじゃねえか」

乃々「そう、ですけど…」

リクト「レイなら大丈夫!」

レイ「ああ。だから待ってな、必ず連れて帰る!」

輝子「……フヒ」



beep! beep! beep!


レイ「…ったく、なんだよまた救難信号か? 今手一杯なんだっつーの」

リクト「ち、違うよレイ! これ…」

ライラ「ソルトからの、無線通話だ!」



pi!


レイ「もしも……

『レェェーーーイィィィーーーー!!!』キーーーーン



乃々「ふゃッ…」

レイ「っだぁうるっせえ!」

『レーイー! 聞こえてるか?! おーい!!』キーーン

レイ「聞こえてンだよボリューム落とせ!!」

『オット、ソーリー! 音下ゲヨオーット!』

『おうレイ! …あん? なんだなんだ、なんか増えてないか?』


輝子「あ……あの、赤いドラゴンくんは…?」

リクト「ムゲンだよ! レイの相棒! モニターを映してるのは、ソルトっていう調理ロボット!」

ライラ「今ちょっと別行動してて……って、なんか、画面の背景ヤバくない? ジェットコースターみたいなんだけど」

レイ「お前ら、どこにいるんだ?」

『そう、そうなんだよ! 大変なんだ聞いてくれ!』


ムゲン『今空飛んでんだ! ソルトのジェットモードでな!』

リクト「空!?」

ソルト『飛ンデマス、飛ンデマス!』

輝子「じぇっと…?」

乃々「……お料理ロボ、なんですよね…?」

ライラ「あはは……ま、色々と機能あるのよね」



ムゲン『オレたちさっきまで、マジカルのライブ入場列で並んでたんだ! でも、急に会場が爆発してさぁ!』

輝子「さ、さっきの爆発だ…」

ムゲン『なんかざわざわ騒ぎだすわ、変な船は飛んでくるわで、ヤバい感じになったわけ』

ムゲン『そしたらさ! 変な奴が、マジカルたんを抱えて船に乗り込んでくの見たんだよ!」

乃々「美玲ちゃん…っ」

リクト「遠目だと、やっぱり似てるんだ…」


ムゲン『よくわかんねーけど、これって誘拐だろ?! ゆ・う・か・い!!』

ソルト『コレ誘拐ッテ言ウノカイ? 全ク、ソルトハ不愉快デース!』

ライラ「ま、待ってよ、それで飛んでるって、まさか…っ」

ムゲン『そう! 慌てて船を追っかけてるんだ!!』

リクト・ライラ「「やっぱり!」」

ムゲン『マジカルのピンチとなれば、このオレが駆け付けてやらなきゃな♪』

ソルト『……デモ、スピードガ足リナクテ、ソルト息切レ気味ナノデス…』

ムゲン『そういうことなんだ、頼むよレイ! 一番星号で来てくれないか?!』

レイ「…ッ!」


レイ「でかしたぜ、ムゲン! ソルト!! やっぱお前ら、最高だっ!」

ムゲン『…はぇ? 何だ急に』

レイ「今から俺もそっちに向かう! それまでに、なんとか船に追いついてくれ!」

ソルト『追イツク?! オウ! ソレまじデ言ッテマスカー!??』

レイ「細けえことは省くが、今捕まってるのはマジカルじゃない! 別人だ!」

ムゲン『ええぇーっ!!』

ソルト『ウッソー!?』

リクト「似てる子が攫われちゃったんだよ!」

ライラ「……そんなに似てるかなぁ」

ムゲン『…お、おい! マジカルは!? オレのマジカルたんは無事なんだろうなっ?!』


咲「はーい! 無事ですっ」

ソルト『ソ、ソノ声ハッ?!』

ムゲン『っきゃーーっ!☆! マジカルたーーん!♪!?』

咲「ソルトさんムゲンさん、久しぶり。私は大丈夫だよ!」

ムゲン『そっかそっかぁ! 良かったよぉ、マジカルたん…!!』

ソルト『オーマイゴーッド! 映像ヲ映シテルノデ、ソルトニハ姿ガ見エマセーン?!』

咲「心配かけてごめんね…」

ムゲン『そんなこと気にしなくて良いっすよぉーー♪ いやー良かった良かった!』

ソルト『ヒト安心デスネ!』


ムゲン『……マジカルが無事なら、帰ろっかな』

レイ「おいコラァ!!」

ムゲン『だってよぉ……なあ?』

ソルト『安心シタラ、出力パワーダウンデース…』

ムゲン『ほら』

レイ「助けてやらなきゃいけない奴が、その船に乗ってる! マジダチを待ってる奴らがいるんだよ!」

輝子「…あぅ」

乃々「……」

ムゲン『ほーん…?』

ソルト『ホホウ…』

レイ「今はお前らだけが頼りなんだ! 頼むソルト!」

リクト「ムゲン!」


咲「お願いソルトさん!」

ムゲン『えっ』

ソルト『ファッツ?!』

咲「その子は私のマジダチ、大切な人でもあるの…!」

輝子「さ、咲さん…」

咲「ミレイさんを、助けてあげて!」

ソルト『フ、フォ…』

ムゲン『ちょっ…』



ソルト『フオオオオオーーーー!!!』


ソルト『マジカルたんニソウ言ワレタラ、元気100倍・システム全快! フルパワーノ、タフネスリカバリーデース!!』グオッ

咲「きゃー♪ ソルトさんすごーい!」

ムゲン『な、なあマジカルたん! オレには!? オレにはそういうのなんかないの?!』

咲「がんばってね! ソルトさん!」

ソルト『ソルト、行ッキマーーース!!!』ゴオオ

ムゲン『オーレーにぃーはぁぁぁ……、』



ぷっ


レイ「……よし!」

ライラ「なんとかなりそうね!」

レイ「あいつらなら、きっと大丈夫だ!」

リクト「宇宙GPS、表示できたよ、レイ!」

レイ「ああ! それを辿って、追いかける!」

咲「私は一度事務所に戻って、宇宙警察に報告をしてくるね」

ライラ「よろしく!」

レイ「さぁ行くぜ…」



乃々「あの…っ!」

レイ「…っとぉ?」


輝子「の、乃々ちゃん…?」

乃々「も、もり……もりくぼ…」

レイ「?」

乃々「もりくぼも…! つ、連れ……、連れてって、ほしいんですけど…!」

リクト「えぇ?!」

ライラ「あ、危ないわよ!?」

乃々「分かってます…! 私、バトルもできないし、さっきも何もできなくて……美玲ちゃんに、また引っ張ってもらって…」

リクト「そ、それはしかたないよ…」

乃々「さっきだけじゃないです…。いつも美玲ちゃんには、助けてもらってばかり…」

乃々「だっ、だから…っ、今度は私が、美玲ちゃんを助けたいんです…!」

レイ「…お前」


輝子「…なら、私も行く…っ」

乃々「輝子ちゃん…」

輝子「いつも、引っ張ってもらってるからな……フヒ」

輝子「デッキも無いし、全然、力にはなれないかもしれないけど……私も、美玲ちゃんを、助けに行きたい…!」

リクト「…うんっ」

ライラ「どうするの、レイ…?」

レイ「良いんだな?」

乃々「…っ」コクコク

輝子「頼む……連れてってくれ…!」

レイ「…最初は気弱なヤツらかと思ったのに。さっきから見てりゃ、なかなかどうして、根性ありそうじゃねえか」


レイ「おっしゃ! みんなまとめて、乗りやがれ!」

乃々「…はいっ」

リクト「行こう!」

輝子「あ、ありがとう…!」

ライラ「しっかり掴まってないと、振り落とされちゃうよ♪」

レイ「エンジン全開! 一番星号、全速前進だぁーーッ!!」



―――

――




ちょっと休憩

ここまでAパートということで


ムゲンはどこかな?


オレはここだぜ! いぇいっ


という訳で後半


――


「…はっはっは! よくやったぞ、お前たち」

「はっ」

「誘拐計画、まさかこんなに上手くいくとはなぁ。がはは」

「いよっ、大統領!」

「おう! 銀河大監獄から脱獄して数年…。宇宙警察やギルドから逃げながら今日までなんとか生き延びてきたが、今こそ再び、俺様の名前を銀河に轟かせる時!」

「その足掛かりとして、まずマジカルには不足コストになってもらう!」

「あいつの身代金で大金持ちになってギルドを潰し、ゆくゆくは宇宙を俺様の物とするのだ!」

「そう! 俺様は天下無双のバトラー、爆裂のガルゴル! この宇宙に戻ってきたぜー! わっはっはーっ!」

「ヒューヒューっ」


ガルゴル「おい、金はまだ振り込まれないのかっ!」

「まだみたいですね…」

ガルゴル「爆弾3つの製作費に加えて、地球への滞在費でもう金がカツカツだというのに、全く…」

ガルゴル「まあいい。どうせ明日には大金持ちだ! ぐわっはっは」



「…ガルゴル様!」


ガルゴル「なんだ、人が気分よく笑ってる時に」

「後方から猛スピードで、こちらに向かってくる飛行物体を確認!」

ガルゴル「なにぃ? 振込じゃなく、手渡しに来たか! ははは」

「いえ……普通に考えたら、追いかけてきた宇宙警察ではないかと」

ガルゴル「ふぬぅ、随分対応が早かったな…。よし、お前ら様子を見て来い!」

「えぇ…」

ガルゴル「金なら、そのまま俺様の船まで通せ! 持ち逃げなんかするなよ? もし追手だった場合は…」

「しかし、この船に1人になってしまいますが…」

ガルゴル「俺様を誰だと思ってやがる? ギルドもビビる、爆裂のガルゴル様だぞ!」


「ビビるって、それ昔の話じゃん…」ヒソ

「ていうか前のギルドだって別にビビってなかったし」ヒソヒソ

「そもそも覚えてるやつなんているのか、この人のこと…」ボソ

「何年前のアニメだと思ってるんだよ」ボソボソ

ガルゴル「良いからとっとと行けぇい!」

「「「へーい」」」

ガルゴル「ったく…」



――




――



ムゲン「……行ったか?」

ソルト「行キマシタ…」

ムゲン「よっしゃ侵入だっ」

ソルト「オウ! 侵入、潜入、船ニ参入デース」

ムゲン「さて、どこに捕まってるんだぁ? おーい! マジカルに似たやつー!」

ソルト「アワワ、ムゲン! 見ツカッチャイマスヨ?!」

ムゲン「大丈夫だって! さっき飛んでったんだから、人なんか残っちゃいねーよっ。 おーいっ!!」


ソルト「…ムゲン、張リ切ッテマス」

ムゲン「マジカルの頼みだからな! さっさと助けて、今度こそオレが褒めてもらうんだっ」

ソルト「反面、ソルトハオ疲レ。サッキノフライトデ、目ノ前モ暗イト…」

ムゲン「くふふ。ここまで運んでくれてごくろーさん! 後はオレ1人でやるからよ!」

ソルト「マ、待ッテムゲン! バトルニナッタラ、ドウスルツモリデスカ?」

ムゲン「あん?」

ソルト「イザトナッタラ、ソルトガ戦イマス! ダカラ、一緒ニ…」

ムゲン「おいおい、オレは銀河最強のアルティメット・ムゲン様だぜ? 悪党なんか、けちょんけちょんのぷっぷっぷーだ!」ぷっ

ソルト「デモ…」

ムゲン「まぁ良いから良いから。ここはオレに任せて、ソルトはちょっと休んでろよ! 良いなッ!」ぴゅーん

ソルト「ムゲーン!」


ソルト「相変ワラズ、口ガ悪イノデース…」

ソルト「デハアリガタク、ソルトハシバシ休憩…。オヤスミ、タコスミ、次ニ焼クノハ、イカスミピッツァ…」


ソルト「…オヤ?」

ソルト「ナナ・ナントッ!コンナ場所デ、 コンセントノ差込口発見デース!」

ソルト「早速、充電サセテモライマース! アリガタヤー、アナスタシヤー」


――



【一番星号】


輝子「は、はやいな…」

乃々「町が、あっという間に見えなく…」

レイ「言ったろ? 一番星号は、宇宙一速いって!」

輝子「フヒ……こんなエネルギー、どこから…?」

ライラ「このスピード差なら、追いつけそうね!」

リクト「でもレイ、このルートだと…」

レイ「ああ、大気圏を出ちまう。一旦離れて、別の星に降りるつもりなのかもしれねえ」

ライラ「もし第2階層に逃げられたら…」

レイ「別階層は、こっちのGPSの範囲外だ。見失っちまうかもな…」

乃々「そんな…」

レイ「そうなる前に、追いついてみせる!」

ライラ「ムゲンとソルトも、うまくやってくれると良いんだけど…」


レイ「…ん?」



blink!


乃々「ひゃっ…! デッキケースが、光って…」

レイ「な、なんだぁ? ターゲットされたぞ?」

ライラ「どこから?!」

リクト「レ、レイ! 前から、何かが近付いてるよ?」

輝子「レーダーに、点が3つ…」

ライラ「別の宇宙船かしら。でも、3つも?」

レイ「そうか…。小型の飛空船だなこりゃ」

乃々「犯人でしょうか…」

レイ「ああ。こっちが追いかけてるのに気付いて、時間稼ぎってところか…」


レイ「はっ、おもしれえじゃねえか!」

乃々「どうするんですか…?」

レイ「ここは銀河バトスピ法が支配する、宇宙という名の大海原だぜ? 売られた喧嘩は、買うまでだ!」

輝子「でも、3機もいるぞ…。か、勝てるのか…?」

ライラ「だーいじょうぶっ♪」

リクト「たった3人なら、レイがこてんぱんにやっつけてくれるよ!」

レイ「まかせとけ! 勝って、ボスへの道を開けてもらう! ムゲンっ!」


しーん…。



レイ「…あ、そっか」

リクト「レイ……ムゲンは今…」

レイ「いっけね、つい癖で」

乃々「…?」

ライラ「わかるわ…。私も癖で、ついスタートステップ飛ばしちゃったりするもん…」

リクト「ぼ、僕もたまに…」

レイ「じゃあ改めて! お前らの悪事、白き正義が撃ち抜くぜ!!」

輝子「白…っ」

レイ「ゲートオープン! 界放!!」



――




――


ムゲン「…おーい、どこだー?」

ムゲン「意外と広いんだなぁ。迷っちまいそうだぜ……おん?」

美玲「……」

ムゲン「見つけた!」

ムゲン「はっはーん、こいつだな? マジカルに似てるってのは!」


ムゲン「……言う程似てるか? 髪とツメくらいじゃんか……まぁ良いケド」


ムゲン「おい、起きろ!」ペチ

美玲「…」

ムゲン「起きろっての、偽マジカル!」ペチペチ

美玲「……んぅ、」

ムゲン「かぁーっ、寝付きの良いこった! こうなったら…」


ムゲン「…おりゃ、起きろ!」


ぷーっ


もくもく…



美玲「ふにゃぁあ?! なんだなん……っげほ、げほ…!? なんだこれ、げっほごほ……うぇ」

ムゲン「ふぃー。目覚めの一発は、やっぱこれに限るぜ!」

美玲「げほ……な、何なんだ、一体…」


美玲「…あえ? ウチ、縛られて……なんで? ここは…?」

ムゲン「やっと起きたか、この寝ぼすけコピペマジカル!」

美玲「うわ…!? なんだよ、誰だオマエッ、こっち来んな!」

ムゲン「こんな固いベッドで寝てたら、若いのに腰やっちゃうぜ?」

美玲「そんな、どっかのウサミン星人みたいなこと…」

ムゲン「おっ? なんだお前、ウサミン星のこと知ってるのか、良い趣味してるじゃねえか!」

美玲「…は?」

ムゲン「前に寄り道したことあるぜ? 惑星ウサミン。名物は温泉とか団子とか……いやぁ、なかなかの観光星だった…」ホワンホワン

美玲「え? …えっ?」

ムゲン「ナナちゃんって女将さんがかわいくってなぁ…。あれはいつの話だったか。…忘れちった、てへ」


ムゲン「まあいいや、そんな話はどうでも良いんだ」ポイッ

美玲「……いやいやちょっと待て! 今、ウチにとってはどうでも良くないワードがッ」

ムゲン「黙らっしゃい!」ペチーン

美玲「ふぎゃっ」

ムゲン「このオレがせっかく助けにきてやったってのに、ぐーすかお寝んねとはいい度胸じゃねーの、おうおう?」

美玲「助けに…?」


美玲「……あッ、そうだ! ウチ、あの時眠らされて…」

ムゲン「お前、船で連れ去られたんだぜ?」

美玲「そうだったのか…。それで、ロープ…」

ムゲン「たまたま見かけて、わざわざ追いかけてきてやったんだ。オレに感謝しろよな♪」

美玲「あ、ありがと…?」


美玲「…ていうか、オマエは誰なんだよ」

ムゲン「オレはムゲンってんだ。よろしくな、マジカルの2番煎じ!」

美玲「に、2番煎じぃ!?」

ムゲン「だってよぉ。遠目で見たら、お前マジカルにそっくりだったぜ」

美玲「似てない! 人をパクリみたいに言うなッ」

ムゲン「その通り! マジカル一筋のオレに言わせりゃ、まだまだだな! 近くだとぜんっぜん似てない、マジカルたんの方が、お前より100倍かわいい!」

美玲「いちいちムカつくヤツだなオマエ…ッ」

ムゲン「まぁ? その眼帯外して、ちょちょーっと毛先いじれば、少しはマジカルたんに近付けるかもな、偽マジカル!」

美玲「さっきから聞いてれば…ッ! ウチは偽マジカルなんかじゃない!」

ムゲン「へえー? じゃあなんだってんだよ」

美玲「早坂美玲っていう、ちゃんとした名前があるんだウチにはッ」

ムゲン「はいはいミレイさんね、みれ……い…、」

美玲「それに、眼帯は外さない! これは、ウチのトレードマークなんだからな!」

ムゲン「……美玲?」


ムゲン「…驚いた」

美玲「やいッ! 聞いてるのか、このちびトカゲ! くっそぉ、縛られてさえなければ…ッ」ジタバタ

ムゲン「そうか……お前、インディヴィのミレイだな? 今日、マジカルとライブやる筈だった!」

美玲「んぇ、あ、おぅ…。そうだけど」

ムゲン「会場の中にいたのも、控え室に居たとかそんなんだろ? 出演する側だから!」

美玲「そ、そうだよッ、それがどうかしたか!」

ムゲン「なるほど、納得! それでマジカルたんが…」

美玲「??」

ムゲン「よーし分かったぜマジカル! キミのライブにかけるその願い、このムゲン様が手伝うよ…!」


美玲「…あ、あのさ…」

ムゲン「ん? なんだよ今良いとこなのに」

美玲「勝手に納得されても…。ウチ、ただでさえ状況が掴めてないんだ、分かるように教えてくれよ…」

ムゲン「しゃあねえなぁ……じゃあよ、その縄ほどきながら、オレが説明してやる!」

美玲「…一体、何がどうなってるんだ…ッ」


――



白銀「……白銀の第8ターン。《ウィングソルジャー》、もう1体出撃! バグ・レシアを撃ち墜とせ!」

「しまった…」

白銀「エネルギー充填、出力レベル5にアップ! 往くぞ、アルティメット・オーディーン!! 殲滅せよ!」

「あ、アルティメット使いがいるなんて、聞いてない…!」

白銀「【Uトリガー】! ロック・オン!」

「ひぎっ…」

白銀「宣言せよ。コストは?」

「よ、4…、フォレストオーラ…」

白銀「ヒット…!」バシュ

「ブ、ブロックできない…。ライフだっ」


<ライフ 3→2>




リクト「相手のライフ、残り2! いっけえ、ゼロー!」

乃々「白のカード…」

輝子「し、しかも、アルティメット…。レベル5なんて、初めて見た…!」

ライラ「ふふっ。ゼロはとーっても強いから、安心して見ててね♪」

乃々「心なしか、さっきまでと雰囲気違うんですけど…?!」

輝子「それに、ぜろ…? あの人、名前はレイって言わなかったか…?」



白銀「全軍、戦闘態勢! 飛べ! ウィングソルジャー!」

「ぶ、ブロック…!」

白銀「さらにウィングソルジャー、続け!」

「ライフで受ける…」

白銀「これで終わりだ! ディフェンザード、最後のライフを破壊せよ!」

「うわぁ…っ!」


<2→1→0>



Win!


白銀「白く輝け一番星! 轟け、勝利の凱歌!!」


リクト「やった!」

輝子「か、勝った…っ」

白銀「任務完了…」

「つ、次は俺が相手だ…!」

白銀「フ、いくらでもかかって来るが良い。我が軍が、全て薙ぎ払ってくれよう!」



――




美玲「……おい」

ムゲン「ふぎぎぎ…!」

美玲「大丈夫かよオマエ…」

ムゲン「ほどけねえ! つぁぁああ!!」

美玲「あんま無理すんなよ?」

ムゲン「ふんぬぉぉおおあああ!!」ぷ

美玲「おいィ!!? 今なんか音したぞッ!?」

ムゲン「気のせいだ! 気合入れてんだよ、話しかけるな!」

美玲「ちゃんと蓋しろバカ! バカちび!」

ムゲン「うるせえええぇ……ッ」グググ


美玲「大体さ、大人の男が結んだロープを、お前みたいなちびすけにほどけるワケないんだよ」

ムゲン「はー、はーっ……それも、そうかもな……はーっ…」

美玲「ドラゴンなんだろ? ツメとかないのか?」

ムゲン「ある!」

美玲「ならそれで、」

ムゲン「でも今朝切った」

美玲「はぁッ?!」

ムゲン「ライブ後のマジカルたんと、握手できるかもしれないだろ!? 手に怪我でもさせたら大変だ!」

美玲「ら、LIVE会場に夢見すぎだろ…」

ムゲン「うるせー! アイドルに夢見て何が悪いんだーッ」ウガー


美玲「…なあ」

ムゲン「なんだよっ?!」

美玲「とりあえずさ、もういいよ。お疲れ」

ムゲン「よくねえ!」

美玲「レイってヤツが、今向かってくれてるんだろ?」

ムゲン「ああ! お前のためにな!」

美玲「だったら、ソイツが来た時にほどいてもらうよ…」

ムゲン「そんなことしたら、オレが助けたことにならねーじゃんかッ」

美玲「いや、もう十分だって…」

ムゲン「やだやだ! ちゃんと助けたってお前の口から言ってもらって、マジカルたんに認めてもらうんだぃ!」

美玲「わがままだな…」


美玲「……ンなこと言ったら、さっきのことも全部喋っちゃうぞ?」

ムゲン「…へ?」

美玲「良いのか? オマエのお尻からのアタック、2回も喰らったって咲に言っちゃっても」

ムゲン「……あ、ああ…」

美玲「にひひ。とびっきりの喰らって、ウチのライフも尽きちゃうかと思った。…って、言っちゃおーッと」

ムゲン「や、やめ……それは、そんな……、」



咲『ムゲンさん、女の子にそんなことするなんて! サイッテー!! サイッテー! サイッテー! サイッテー…(エコー)


ムゲン「それだけはやめてぇー!!」

美玲「あっははは♪」

ムゲン「お願い頼む、それだけはっ」

美玲「だったら、ウチの言うこともちょっとは聞いてもらおうかッ♪」

ムゲン「…ちぇ、わかったよ」

美玲「ありがとなッ、少し休めよ」

ムゲン「そうする…。はぁー、休憩だ……ちょっと腹貸してくれ…」

美玲「おい、返事する前に勝手に乗るな!」

ムゲン「良いだろ減るもんじゃねえし。仰向けになってるお前が悪い」

美玲「縛られてて、他にどうしろって言うんだよッ…」

美玲「……ハァ」


ムゲン「…なんだよ辛気くせえ、やっぱりほどいてやろうか?」

美玲「いや、もう良いって…。ていうか、オマエにだけはくさいとか絶対言われたくないぞ…」

ムゲン「んだとォ?!」ぷ

美玲「だから漏れてるんだよッ! 休んでる時ぐらい栓しとけ、アホドラゴン!!」

ムゲン「あ、あほどらごん…っ!? 聞き捨てならねえな! バカは良いけどアホは許せねえ!」

美玲「どっちも同じだッ! このアホッ!」

ムゲン「やるかぁ!?」

美玲「やりたきゃとっくにやってるよッ!」

ムゲン「へんっ! 縛られてても、それだけ騒げりゃ問題ないみたいだな!」

美玲「余計なお世話だよッ、ベーッ!」

ムゲン「……」

美玲「……ぷふっ」

ムゲン「…くふふ」



あははは……っ


ムゲン「はーおっかし…。お前、ほんとに捕まってる自覚あるのか?」

美玲「そっちこそ! 助けに来たーとか言って、全然役に立たないじゃんか」

ムゲン「良いんだよ! 今にレイが来てくれて、縄なんかちゃちゃーっとほどいてくれっから!」

美玲「……なぁなぁ」

ムゲン「んー?」

美玲「さっきからそのレイってヤツだけどさッ」

ムゲン「おう」

美玲「どんなヤツなんだ?」

ムゲン「どんなって…、えーっと」

美玲「やっぱり、ドラゴン? どんな色してるんだ?」

ムゲン「……は」

美玲「こっちに向かってて、助けてくれるってことはさ! オマエより、デカくて強いドラゴンが飛んでくるのか? なあ!」


ムゲン「…ふはっ、はははっ!」

美玲「な、なんだよ…」

ムゲン「ドラゴン! レイがドラゴンだって! こりゃ傑作だ! あっははは!!」

美玲「……え。違うの?」

ムゲン「ひー、ひーっ…。……違うぜ、レイは人間。飛んでっていうのは、船で来るってことだよ」

美玲「そ、そっか、そうなのか…」

ムゲン「レイがドラゴン…。くふふっ! これでしばらく、笑いのタネは尽きねえな♪」

美玲「う、うるさいなッ! そんなに笑わなくても良いだろ、知らなかったんだからッ!」

ムゲン「そうだな……しししっ」

美玲「うぅぅ~~ッ」


ムゲン「あー笑った笑った!」

美玲「ふんッ」

ムゲン「でもよぉ、レイが強いってとこだけは、正解だぜ?」

美玲「…ふーん?」

ムゲン「あいつの強さは、宇宙で1番! 誰にも負けねえ!」

美玲「そ、そんなにか」

ムゲン「宇宙にいる、どんなドラゴンよりも強いぞ! なんたって、宇宙一だからな」

美玲「…さ、流石にそれは言い過ぎじゃないのか?」

ムゲン「そんなことない! このオレが付いてるんだから、言い過ぎなんてことはない!」

美玲「オマエが?」

ムゲン「おうよ! オレだってつえーんだ! 宇宙一のドラゴン……人呼んで、アルティメット・ムゲン様だ!」


美玲「……」

ムゲン「あっ! 信じらんねーって顔してやがる! 本当なんだぞ?!」

美玲「…縄もほどけない、オマエが?」

ムゲン「うっ…。それは、アレだよ。タイミングが悪かったっつーか」

美玲「お尻からぷっぷかぷっぷか漏らしてるような、オマエがか?」

ムゲン「あれだって手加減してやったんだぞ? マジの本気、見せてやろうか」

美玲「いや、いい! 止めろ! 別の機会にしてくれッ」

ムゲン「オレが本気になれば、ケツから炎だって出せるんだかんな!」

美玲「それはフツーにすごいなッ!? なんかこう、穴とか大丈夫なのか?!」


美玲「……いや、火なら口から出せよ!! そっちのがフツーだろッ??!」


ムゲン「…お前、ツッコミ気質だなぁ」

美玲「放っとけ!」

ムゲン「良い反応してるぜ!」

美玲「嬉しくない…」

ムゲン「まぁとにかく、オレもレイも超強いってこと! 分かったか?」

美玲「わ、分かったよ…」

ムゲン「へへーん、参ったかっ」

美玲「…羨ましいな」

ムゲン「……あん?」

――



紫電「……それでは、冥界よりお出まし頂きましょう! アロケインの【スピリットソウル】も使い、召喚! 《アルティメット・ベルゼビート》!!」

「ま、またアルティメット…!」

紫電「参りましょう、ベルゼビート。【Uトリガー】ロック・オンでございます」

「ダーク・カリブー、コストは2!」

紫電「【クリティカルヒット】…!」パシュ

「あっ…」

紫電「さあ、墓場よりお目覚めでございます。《ダークヴルム・ノヴァ・レムナント》!!」



リクト「紫のトラッシュ戦術だ! 大型スピリットを、ノーコスト召喚!」

乃々「さ、さっきと色が違うんですけど…」

輝子「性格も衣装も、また変わった…。あんなだったか…?」



紫電「さらにクリティカル・ヒットの効果発揮。貴方のナインテイル・ダークのコア、全てトラッシュへ送らせて頂きます」

「ブ、ブロッカーが…! しかたない、ライフで……くぅっ」


<ライフ 3→2>


紫電「ベルゼビートの追加効果。其方で疲労しているダーク・ウラヌスも、破壊させて頂きましょう」

「あ、あぁ…」

紫電「では、レムナント。ダブルシンボルで、トドメをお願いします」

「ダブル……ライフで受けるぅぅ…」


<2→0>



Win!


紫電「フフ……ではまた。素敵な地獄で、お会いしましょう…!」


ライラ「やったぁ! ライフ2個削って、一気に勝利!」

「く、くそぉ…」

「てめえ、余裕ぶって紅茶なんか飲みやがって!」

紫電「あっという間に、あと1人。まだ、やりますか?」

「当前だ! こっちだって、金がかかってんだよ!」

紫電「…やれやれ、仕方がありませんね」


紫電「貴方で最後です。ギッタギッタのボコボコに、叩きのめしてさしあげましょう♪」ニコ

リクト「うわぁ、出た…」

ライラ「ドSのゼロ…」

乃々「か、かっこいい……かも」

輝子「…えっ」



――




ムゲン「……ふんふん。いわゆる温度差ってやつ?」

美玲「…うん。まあ、そんなトコ」

ムゲン「嫌だったら、さっさと辞めちまえば良いじゃねーか」

美玲「いや…、ウチは別に、温度差があることが嫌なワケじゃないんだ」

ムゲン「ほーん」

美玲「人それぞれなのは当然だし。2人だって、やる時はしっかりキメるから。そういうの、"コセイ"っていうんだろ?」

ムゲン「良く言えばなー」

美玲「良く言えばって……オマエなぁ」

ムゲン「"ホーコーセーの違い"って言葉も、この宇宙にはあるらしいぜ?」

美玲「んぐっ…」

ムゲン「そんで? 続けろよ」


美玲「……ショーコは、すごいヤツだ。普段は大人しすぎるくらいの癖に、歌は上手いし、ステージ観てても横で歌ってても、今にも叫びたくてしょうがないってのが、ビリビリ伝わる。どんどん周りを巻き込んでく」

美玲「ノノもすごいよ。ちょっとだけビビりだけど、だからこそ自分のことも周りのこともよく見えてる。自分の限界の引き出し方も、ノノ自身がちゃんと分かってる。あれは、ウチには真似できないや」

ムゲン「…」

美玲「でもウチだって負けてないッ! ツメとかファッションだけじゃない…! 歌とか衣装とか、ステージもバトルも、全部!」

美玲「戦うための武器、ようやく全部手に入れたんだ! 好きなこととか、自分らしさとか、そういう主張は、絶ッ対にやめたりしない! やめるもんかッ」

美玲「ウチら3人が揃えば無敵なんだ、どんなヤツにも絶対負けないッ!」



美玲「…って、ウチは思ってるんだけど」

ムゲン「そいつらは思ってない?」

美玲「どーだろ…。分かんないや…」


ムゲン「おいおい…」

美玲「だってアイツら、そういう主張全然しないんだモン…」

ムゲン「…ま、そうだよな。してりゃこんなことで悩まないよな」

美玲「今日のLIVEだって、なんかウチだけ盛り上がってたっていうか? ウチは気合入れようとしてんのに、2人はいつも通りな感じだったっていうか」

ムゲン「いつも通りなのは良いことじゃねーか」

美玲「だ、だって! 咲とのLIVEだぞ? 全宇宙に向けて歌えるんだぞッ? 気合も入るだろッ」

ムゲン「そういうのよくわかんねー。オレ、アイドルじゃないし」

美玲「……闘争心、みたいなのがさ。あの2人からイマイチ見えてこないんだよ」

美玲「LIVEもバトルも、どっちも」

ムゲン「そいつらにとっちゃ特別なことでもなかった、ってことなんじゃねーの?」


ムゲン「…おいコラ待てよ、マジカルとのライブが特別じゃないってどういうことだ? あァン!?」

美玲「じ、自分で言ってキレんなよ、めんどくさいなッ…」

ムゲン「へんっ、オレなんかにぐちぐちいじけてるお前もなー」

美玲「……だよな」

ムゲン「ちょ、おいおい冗談だよ、間に受けんなって」

美玲「3人なら最強だって、ウチは思ってる。…でも、2人は、そうじゃないかもしれない」

美玲「そしたらウチも、もしかしたらそうじゃないのかもって過っちゃうんだ」


美玲「だって……ウチ、1人だけじゃちっぽけで弱いヤツだから。自信なんか、あったもんじゃない」

美玲「だからさ。レイってヤツがこの場にいないのに、『オレたちは強いッ!』…って自信満々に言えるオマエが、ちょっと羨ましくって」

ムゲン「なるほどなぁ」

美玲「ウチ、間違ってるのかなぁ…」


ムゲン「…オレはその2人を知らないから、あんまバシっと言ってやれねーけどよぉ」

美玲「え?」

ムゲン「直接聞いた方が早いんじゃねーの?」

美玲「それは…」

ムゲン「"インディヴィズアルズ"っていうチームを強いと思うか、それとも違うのか。直接2人にさ」


ムゲン「オレが思うに、お前は多分間違ってねーよ。っていうか、こういうのに合ってるも間違ってるもねえ」

美玲「そ、そうなのか?」

ムゲン「ああ。自分が強いって心から言える自信なんてのは、後から付いてくるもんだぜ? オレらみたいになっ」

美玲「え…。オマエらは、最初から強かったんじゃないのか?」

ムゲン「そりゃーオレは昔っから強かったさ! 同級生の軟弱なドラゴンたちよりも、ずーーーっとな!」

美玲「同級生いたのかよ…」

ムゲン「…でも同じくらい強いヤツが、宇宙にはいっぱいいた。オレより強かったヤツも」

美玲「…」

ムゲン「そういうのに会う度、何度も負けたり、鼻折られたりしたもんだ」

美玲「そうだったのか…」

ムゲン「でな? 負ける度に思うんだ! 次は負けねー、アイツよりもっと強く!…ってよ!」


ムゲン「オレはレイと出会って、一緒に何度も戦った。色んなヤツと戦って、勝って負けてを繰り返した。喧嘩もたっくさんしたんだぜ?」

美玲「ケンカ…」

ムゲン「でもだからこそ、その度に一緒に強くなれたんだ。オレたちは、本当に強くなった! 宇宙で1番だ!」

美玲「……もし、もしまた負けたら、その時は?」

ムゲン「同じことだよ。今度会う時までにもっと強くなる、それだけ」

美玲「そ、そっか」

ムゲン「今つえーって自信をもって言えるのは、そういうこった! 気付いたら、こんなところまで来ちまった」


ムゲン「結局のところ、『強い』とか『宇宙一』なんて言葉、言ったモン勝ちの、勝ったモン勝ちなんだよな」

美玲「…」

ムゲン「大海を知らずとか、威勢が良いだなんてよく言われたモンだけどさ。当ったり前じゃん! だって宇宙は、こんなに広いんだぜ?」

美玲「……ウチはまだ、宇宙を知らない」

ムゲン「知らなくたって良いじゃねえか! ハッタリだって思い込みだって、何だって構わねえよ!」

ムゲン「でもそれがハッタリじゃなくなる時が、いつか来る。オレたちで言えば、それが今!」


美玲「…強いんだな、本当に」

ムゲン「ヘヘッ、だろぉ? オレらに比べたら、お前らはまだまだってことよ!」

美玲「なれるかな? オマエたちみたいに」

ムゲン「だーかーらー、それを聞くのはオレじゃねーだろ?」

美玲「…そっか」

ムゲン「少なくともお前は、強さだけじゃなく、3人の弱いとこまでちゃんと分かってる。それって結構、大事なことだと思うぜ?」

美玲「なんで?」

ムゲン「負けなくして勝ちはなし。弱さを認めて、強くなれる。誰かが言ってた!」

美玲「そっか…。そっかッ」

ムゲン「だからよ。お前らは、きっとまだまだ強くなれる。オレが保証する!」

ムゲン「以上、ムゲン先生のバトスピ……じゃなくて、最強講座だ! 分かったか?」

美玲「うんッ」


ムゲン「へへ、ちったぁ良い顔になったじゃねえか」

美玲「そうかな…? ならきっと、オマエのおかげだよッ! ありがとなッ」

ムゲン「おうよっ」

美玲「ウチ……ウチら、やらなきゃいけないこと、まだいっぱいあるッ」

ムゲン「そうだな!」

美玲「じゃあさ、こんなところでのんびりしてらんない! よな!」

ムゲン「っしゃあ! 休憩終わりだぜっ」



ムゲン「…あぁそうだ、最後に1つ忠告!」

美玲「?」

ムゲン「しし。お前ら、喧嘩なんてしたことあるか? レイの野郎、喧嘩もバカみてーにつえーんだよなっ」

美玲「や、そういうパンチとかのは、ちょっと…」

ムゲン「やめとけやめとけ。あんなの、ただ痛いだけで何も解決しねーから」

美玲「はぁ」

ムゲン「別に喧嘩しろだなんて言わねーけど。でも、何かを確かめなくちゃいけない時は、いつか来るかもしれねーぜ?」

美玲「…うん」

ムゲン「いざとなったら、取っ組み合いなんかじゃなく、バトスピで決着付けると良い!」

美玲「おうッ」

ムゲン「ま、お前みたいなガキには、喧嘩になってもへなちょこパンチしか打てねえだろうけどな! はっはは!」

美玲「……言ったなぁ?」

ムゲン「おう、言ったぜ?」

美玲「こンの……チビのくせにッ」


美玲「ひっかいてやるッ」グッ

ムゲン「はんっ! 手足使えない奴が、なーにイキってんだか」

美玲「そ、そうだな…。じゃあ、噛み付くッ! がーッ」ガブ

ムゲン「うおっと危ねっ!」ヒョイ

美玲「逃げるな!」

ムゲン「そう簡単にやられてたまるか!」

美玲「オマエだけ飛んで卑怯だぞッ! 降りてこい! さっさとほどいて、フェアにしろ!」ジタバタ

ムゲン「ほどくのはさっき目一杯やったろうが! オレには無理だってば…」

美玲「全く、こんなヤツのどこが強いんだか…」


ムゲン「…待てよ? 噛み付く?」

美玲「なんだよ?」

ムゲン「……くひひ」ニヤ

美玲「…あ」



――



「……フルアタックが通れば、お前の負けだ! 行け、ミーアバット!」

疾風「そう簡単に、風は止まないさ!」

「なに?」

疾風「ここでフラッシュタイミング! ぶわっと神速、《ヴァルト・イエーガー》!」

「ふん、神速召喚でブロッカーを出したか」

疾風「効果でコアをもらう!」

「だがブロックしても無駄だ! ミーアバットがやられても、【不死】のスピリットがトラッシュから蘇る…!」

疾風「そのアタックは、ライフで受けるぜぇ!」

「なっ…、ブロックしない、だと」


<ライフ 3→2>


疾風「…っと! はは、なかなか良い風じゃあないか…」

「舐めやがって…」

疾風「舐めてなんかいないさ。 俺のバトルは、いつでもヒュバっと全力だっ!」

「その効果音言うのやめろ! ターン終了だ!」



輝子「白に、紫、今度は緑…」

乃々「も、もしかして、レイさんって…」

リクト「うん! レイは、6色のカード全部使えるんだ!」

乃々「はぇぇ…」

ライラ「使うデッキによって、人格がバラバラなのよね…」

輝子「だから、名前を呼び分けてたのか…」

ライラ「そういうこと♪ 今は疾風のゼロ!」

乃々(バトル中に性格が変わる……なんだか、輝子さんみたいなんですけど…)

リクト「6つのデッキを使いこなす、銀河最強のアルティメット使い! それがゼロ!」

輝子「す、すごいバトラーが助けに来てくれた、ってことなのかな…」

ライラ「実力は折り紙つきなんだから!」



疾風「このフィールドに、俺が嵐を巻き起こすッ! 疾風のターン!」


疾風「王者の威厳! 大地の息吹! 緑の風で命を育め!! 召喚! ≪アルティメット・キングタウロス≫!! びゅぅぉぉおおお!!」

「な、なんて強風だ…っ!」

疾風「アタックだ!【Uトリガー】、ロック・オン!」

「…コスト3、闇騎士マリス!」

疾風「【クリティカルヒット】ぉ!」ビシ

「うおっ」

疾風「スピリットを2体、選びな! まとめてヒュオっと疲労させるぜ!」

「くそぅ……俺の場には、グラシャハウンドとジャイナガン…! 破壊されなきゃ、【不死】が発揮できねえのに…!」

疾風「さらにクリティカル・ヒットの効果! ライフを1個もらう!」

「いってえ!?」


<2→1>


「疲労してちゃブロックもできねえよ…! フラッシュ、≪ポイズンシュート≫! お前のアルティメットを…」

疾風「残念! そんなそよ風、アルティメットは受け付けないのさ!」

「な…、くっ、くそっ…、ライフだ…っ!」

疾風「楽しいバトルだったぜ?」

「…なんだと?」

疾風「だが、俺の風の方がゴキゲンだったみたいだ! 今度やる時は、もっと綺麗な追い風に乗って来るんだなっ」

「お、おまえーーっ!!」

疾風「ゴゴっと吹き荒れろ、キングタウロス!」


<1→0>



Win!


疾風「順風、満帆! 追い風だぁッ!」



――




――


ガルゴル「…ええい遅い! なぜ戻ってこないっ」

ガルゴル「まさか金を持ち逃げしたわけじゃないだろうな…」

ガルゴル「うーむ、やることが無い。人質の様子でも見てくるか」

ガルゴル「しかし、さっきから妙に静かだな…。それでいて、時々声が聞こえてくるような…」

ガルゴル「船にネズミでもいるのか?」


――


美玲「お……おいッ、早くしろ、まだかよ…ッ」

ムゲン「まふぁふぁっへば…」ガジ

美玲「早くしてくれよぉ…!」

ムゲン「へかふな…!」ガジガジ

美玲「歯で噛み切るのはナイスアイディアだけど! 何も、足の方からやらなくたって…ッ!」

ムゲン「あーもう! 注文の多い奴だな!」

美玲「っにゃーーッ??! こっち見るなぁッ!!」ゲシ!

ムゲン「あいだぁーっ?!」

美玲「このバカッ!! ヘンタイ!!」

ムゲン「っでで……この…っ」


ムゲン「なにすんだ!」

美玲「うるさいッ! うるさいッ!! ウチはスカートなんだぞッ!!?」

ムゲン「お前のパンツなんか興味ねーんだよばーか! マジカルのパンツでも履いてから出直してこい!」

美玲「履くわけないだろバカ! アホ! このスケベドラゴン!」

ムゲン「ア、アホだけじゃなくすけべだとぉ…」ワナワナ

美玲「なんで足からなんだ! こっち先にやってくれよ、そしたら足は自分でほどくからッ!」

ムゲン「バッカヤロー、いざという時に動けねーだろ! 足が先だ!」

美玲「そう言って、ウチのスカートの中覗きたいだけなんだろッ!! えっち!!」

ムゲン「らから、ひょーみへえっへいっへるあろー!!」ガジガジガジ

美玲「もう嫌だぁ…!」


ガルゴル「…おい! 騒がしいと思ったら、何してやがる!」

美玲「ッ! ヤ、ヤバい、見つかった…」

ガルゴル「そこのチビドラゴン! 一体、どこから入った!?」

ムゲン「うるへー、おひえへやんへーよ!」ガジガジガジガジ

ガルゴル「見張りはどうしたんだ! なぜ1人もいない?」

美玲「は、はやく、早く…ッ」

ガルゴル「そうか、全員で追手に向かったのか! あの役立たずどもめ、全く!」

ムゲン「あ、あとひょっと…」ガジガジガジガジガ

ガルゴル「お前に逃げられたら、身代金が振り込まれないだろう! 大人しくしてろ!」

美玲「早くぅ……ッ!!」


ムゲン「…切れたっ!」ハラリ

美玲「! おりゃっ」ゲシ

ガルゴル「いでえ!?」

美玲「に、逃げろッ!」

ムゲン「ひとまず、退散っ!」ぷっ

ガルゴル「脛が…! ま、待て…」


――




美玲「……ハッ、はあっ…!」

ムゲン「ナイスキック! やればできるんだなっ」

美玲「ああ、そうかよッ! はぁ、はぁ…っ!」

ムゲン「へへん、足から切って正解だったろ?」

美玲「…かもなッ! ふんッ」

ムゲン「素直じゃねーの…」

美玲「と、とにかく……隠れなきゃ…」

ムゲン「無駄に広いからな。隠れる場所には困らないぜ」

美玲「見つからないところは…」



ガルゴル「待てー!」

美玲「ひっ…」

ムゲン「来やがった…! おい、もっと早く走れねーのか?!」

美玲「ムチャ言うな! 縛られてんだよウチは…!」

ムゲン「こうなったら、オレが!」

美玲「あ、おいッ、オマエ!」

ムゲン「あちょー! ムゲン・キーック!」

ガルゴル「ふんっ」ぺち

ムゲン「あやー…」

美玲「弱ッ!」

ムゲン「うぅー…、体重が足りなかったか…。朝からピザも食ってないし…」


ガルゴル「追い詰めたぞ…」

美玲「そ、そんな、壁…!」

ガルゴル「散々逃げやがって…! 大人しくしろ!」

美玲「や、ヤダッ…」

ガルゴル「やだじゃない! こっちに来るんだ!」

美玲「誰か…ッ!!」



がくんっ




ガルゴル「むおーっ」ゴロゴロ

美玲「うぁっ、なんだ…」

ガルゴル「船のスピードが落ちた、だと?」

ムゲン「な、なんだか分かんねーけど、ラッキー…!」

ガルゴル「燃料だけは大量に積んでいるはず! なぜだ!」


~その頃~


ソルト「フゥー、充電完了デース!」

ソルト「タクサン飛ンダノデ、ソノ分大量ニエネルギーヲ使ッテシマイシタ…」

ソルト「ソルト復活、早速ムゲンニ合流スルノデス!」

ソルト「ムゲンドコー? ココー? ソコー? ソーコースル内、視界ハリョーコー、声ハエコー!」

ソルト「オーイ、ムゲーン…」


――




美玲「チャンスだ…!」

ガルゴル「逃がすか……くっ、船が揺れる…」

ムゲン「ここはオレが食い止める! 早く逃げろ!」

美玲「オマエさっきも役立たなかったろッ! オマエも一緒に来るんだよ!」

ムゲン「さっきのオレとは一味違うぜ? オレの必殺、ムゲン・パンチ…!」

美玲「ダメだッ!」ガバ

ムゲン「ぐえっ」



…pi!



ガルゴル「お? 今度は船の無線システムが」

ムゲン「…ぐるじい」

美玲「もう良い! オマエ、またやられちゃうッ…!」

ムゲン「これからが良いとこだったのに……ぎゅぅ」

ガルゴル「だ、誰だ誰だ、勝手に無線なんか繋ぎやがって!」



「俺だぁーーーー!!!」



ライラ『追いついた!』

レイ『やいやいやいッ! 見たか、追いついてやったぜ!!』

ガルゴル「ま、まさかさっきの追手か…? あれだけ人をやって、なぜまだ生きている?!」

レイ『全員ブッ倒した! 文句あっか!』

ガルゴル「なにぃ!?」

リクト『あれだけって、3人だけだったけど…』

ライラ『あれで全員だったのかしら。しょぼいメンバーね』

レイ『おいお前!」

ガルゴル「あぁん?」

レイ『ミレイってやつぁどこにいる!』

ガルゴル「みれい? はん、誰のことだ? 俺様が攫ったのはマジカル…」


美玲「お、おーいッ」

ガルゴル「…あ?」



美玲「ここだ! ウチはここ!」

ライラ「ミレイちゃん!」

レイ『お前がミレイ! 大丈夫か?』

美玲「うん…」

ガルゴル「どういうことだ…」

美玲「た、助けにきてくれたのかッ?」

レイ『ああ、無事なら何よりだぜ! ムゲンとソルト、あいつらは?』

美玲「そる…? 誰だそれ? ムゲンっ、アイツなら…」


ムゲン「お、オレはここだぜぇ…」

レイ『ムゲン!? やられたのかっ?!』

美玲「う、動いちゃダメだ! 傷口が…ッ」

ムゲン「半分はお前のせいだけどな…」

レイ『…そうか。お前、ムゲンを守って!』

ムゲン「そう見えるか…? 良い目してるんだなレイ…」

レイ『相棒が世話になったみてえだな! 恩に着る!』

美玲「あ、うん…。ど、どうってことないぞ…」

ムゲン「オレの話も聞いてくれよ…」がくっ

レイ『今そっち行くから、ちょっと待ってろよ?』

美玲「来るって…、ど、どうやって?」

レイ『《ターゲット》!!』



blink!



ガルゴル「むっ」

美玲「デッキが…!」

レイ『お前、覚悟はできてんだろうな…ッ?』

ガルゴル「ふんっ、覚悟もなしに天下無双でいられるか!」

レイ『俺は一番星のレイ! 宇宙バトスピ法に乗っ取って、お前に正式にバトルを申し込む! 俺が勝ったら、そこにいるミレイを返してもらおうか!!』

美玲「…ッ」

ガルゴル「ターゲットされたならしかたねえ。なら、俺様が勝ったら、俺様の望むこと何でもしてもらおうか」

レイ「構わねえぜ!」

ガルゴル「手始めに、有り金もカードも、全部置いていくってのはどうだ?」

レイ『成立! 俺のマジダチにも手をかけやがって、絶対に許さねえからな!』

ガルゴル「返り討ちにしてやるわ! がーっはっはっは!」





――




…ヴンッ



美玲「フィールドに、転送された…」



輝子「み、美玲ちゃん…!」

乃々「美玲ちゃん! 良かった…!」



美玲「なッ? オマエら、どうして…!」


リクト「助けに行きたいって、2人が言ったんだ!」

ライラ「あなたのためにね♪」

輝子「お、オイ……縛られてるぞ…。大丈夫か…?」


美玲「あぁ、これくらい大丈夫…。それより2人とも、なんでこんなところにいるんだ! 危ないだろッ」


乃々「な、なんでって…」

輝子「当たり前だろ…っ。わ、私たち、仲間じゃないか…っ!」

乃々「黙って待ってるなんて、できなかったんですけどぉ…」


美玲「オマエら……ウチのために…ッ」


ムゲン「……なんだなんだ? お前んとこの2人、聞いてたよりよっぽど行動力あるじゃんか」

美玲「…うんッ…!」

ムゲン「お? なーに泣いてんだぁ、うりうり」

美玲「泣い゛でない……ッ!」

ムゲン「ほんっと、素直じゃねーの」

美玲「うる゛ざい゛…ッ! ひぐ…っ」

ムゲン「……ちぇ。泣いてるとこ見ちまったら、マジカルよりかわいくないだなんて言えなくなっちまうじゃねーか…」

美玲「…? 今なんて…」

ムゲン「なんでもねーよ! そいじゃ、ちょっくら行ってくらぁ!」ぱたぱた

美玲「あ、おい! ……グス、どこ行くんだよ!?」


レイ「ムゲン!」

ムゲン「おせーんだよ、レイ!」げし

レイ「すまねえ、これでもトップスピードで来たんだ。…ソルトは?」

ムゲン「あいつなら休憩中! どっかで居眠りこいてるだろーよ!」

レイ「そうか…。なら、後で起こしに行かなきゃな」

ムゲン「ふんっ! もう少し遅かったら、オレだけでアイツ助けちまうとこだったぜ」

レイ「そうかい、そいつは良かった……な!」グリ

ムゲン「あいててて!!」

レイ「あんまムチャすんな? このままじゃ、お前ちっこいんだからよ」

ムゲン「へーへー」



美玲「飛んでっちゃった…。そうか、こっち来るって、こういう意味か…。確かに、バトルフィールドでなら…!」


レイ「ミレイ!」

美玲「は、はいッ!」

レイ「何度でも言うぜ! 相棒が世話になったな!」

美玲「いや、ウチこそ…」

ムゲン「オレが世話したんですよーだ」

レイ「すぐに自由にしてやるから、もうちょっとだけそこで待っててくれ!」

美玲「…うんッ」

美玲「アイツが、レイ…」


ガルゴル「話は済んだか?」

レイ「ああ、待たせたな」

ガルゴル「ふん! マジカルだと思ってみれば、人違いだったとなは。使えねえ部下共だぜ」

レイ「ボスに似たんじゃないのか? お前も相当マヌケそうだぜ」

ガルゴル「ほざけ! 一番星とか言ったな? お前が誰かなんか知らねえが、俺様はいずれ宇宙の天下を獲る男。冥土の土産に、俺様の名前を教えてやろう」

ムゲン「あーはいはい、そういうの良いから」

レイ「早くお前をぶっ飛ばしたくて、うずうずしてんだこっちは!」

ガルゴル「うるさい名乗らせろ! どいつもこいつも嘗めやがって…」


ガルゴル「いいか! ギルドもビビる天下無双のカードバトラー! それが俺様、爆裂のガルゴル様だぁ! うわーはっはっは!」


レイ「天下無双だぁ? バトルも無しに爆弾なんかで実力行使、みみっちい人攫いが聞いて呆れるぜ」

ガルゴル「はっ、どうせ全て俺様の物となるのだ! どう奪おうが俺様の勝手よ!」

レイ「お前みたいなバトラーの風上にも置けない野郎は、例えギルドが許してもこの俺が許さねえ!」

ムゲン「やっちゃうか、レイ?」ぷ

レイ「ああ! ムゲンっ!!」

ムゲン「ほいきた!!」



ぽんっ!




美玲「ッ!? アイツ…!」


輝子「えっ…。あれ、あのドラゴンくん…」

乃々「カードになっちゃったんですけど…?」

輝子「ど、どういうことだ…?」

リクト「すぐに分かるよ!」

ライラ「負けるな、レイ―!!」



レイ「さあいくぜッ! この怒り、真っ赤な炎に変えて焼き尽くす!!」

レイ「ゲートオープンッ!! 界放ッ!!!」



――




――



ライラ「……ここまでお互い、アタックはなし」

輝子「スピリットは……に、2体ずつ…。互角…」

リクト「でもあいつ、ネクサスの効果でコアを増やしてる。異合デッキの必勝パターンだよ…」

ライラ「きっと、大型の召喚に備えてるのね」

輝子「あ、赤になったレイさんも、やっぱりアルティメット待ちなのか…?」

ライラ「うん、多分…」

リクト「赤も青も、スピリットの破壊が得意な色。どっちが先に動くんだろう…」

乃々「…な、なるほど」←よくわかってない


灼熱「灼熱の第5ターン! 《アイゼンドラゴン》召喚、アタックだ!」

ライラ「っ! ゼロが動いた!」

灼熱「バトル時効果発揮! お前のミゴーを破壊するぜ!」

ガルゴル「ちっ…」

リクト「1体倒したよ!」

ガルゴル「ならばそのアタック、ライフで受ける!」


<ライフ 5→4>


乃々「やった…!」

輝子「1つ、削った…っ」

灼熱「っらあ! ターンエンドだ!」


ガルゴル「爆裂のターン!」

ガルゴル「ふん。ライフを1つ奪った程度で、何をよろこんでやがる」

灼熱「ああ、あと4つだなぁ?」

ガルゴル「ほざけ! ≪戦竜エルギニアス≫を召喚、これで準備は整った!」


ガルゴル「5コストを支払い、召喚! 深海の支配者、≪異海神ディスト・ルクシオン≫!!」

輝子「! で、でかいのが、きた…!」

ガルゴル「こいつが俺様のキースピリットよ! さあいけ!」

美玲「BPは……9000!」

ガルゴル「アタック時効果発揮! こいつは、相手のコスト5以下のスピリットを1体破壊できるのだ!」

灼熱「ンだとぉ…」

ガルゴル「エッジ・ウルフ、破壊!」

乃々「あぁ……ブロッカーが…」

ガルゴル「ぐふふ、さっきのお返しだ」



≪異海神ディスト・ルクシオン≫ 8(4)青/異合
〈1〉Lv1 6000 〈2〉Lv2 9000 〈5〉Lv3 14000  青シンボル×2

Lv1・Lv2・Lv3『このスピリットのアタック時』
コスト5以下の相手のスピリット1体を破壊する。
【連鎖《赤/紫》】
(自分の赤/紫シンボルがあるとき、下の同じ色の効果を続けて発揮する)
赤:【強化】を持つ相手のスピリット1体を破壊する。
紫:疲労状態の相手の合体スピリット1体を破壊する。

Lv2・Lv3
相手のブレイヴ/ブレイヴカードすべての合体条件をコスト7以上にする。


ガルゴル「さらにさらに! こいつはダブルシンボル持ち!」

輝子「フヒャ?! あいつも、だぶる…っ」

ガルゴル「このアタック、どう受ける?」

美玲「ファイザードのBPじゃ、どうやったって勝てない…!」

灼熱「オラ来いやッ! ライフ持っていきな!」


〈ライフ 5→3〉


灼熱「ぐぁ…っ」

ガルゴル「がはは、どうだ! 痛いか? 苦しいか?」

灼熱「…あぁ、いてぇな」

ガルゴル「ふふん、そうだろうそうだろう」

灼熱「たまらねえ、この胸にクるダメージ! 生きてるって気がするぜェ…ッ!」

ガルゴル「あぁ?」

灼熱「これだからバトスピはやめられねえんだ!! オラオラ、次はどうする!?」

ガルゴル「な、なんだぁこいつ? 色が変わったかと思ったら、妙に暑苦しくなりやがって…」

美玲「…だ、大丈夫か、アイツ」



ガルゴル「と、とにかく!ミノタ・コルスも続けてアタックだ!」

リクト「2体目が来る!」

ガルゴル「効果でワンドロー! そぉら残りライフ2だ!」

灼熱「…フラッシュタイミング!」

ガルゴル「むっ」

灼熱「マジック、≪フレイムスパーク≫! ミノタ・コルスを破壊するぜ!」

美玲「連続アタックを防いだッ」

灼熱「もう1つの効果で、破壊されたエッジ・ウルフを手札に戻す!」

ガルゴル「…ちっ、まあ良い。ターン終了だ」



≪フレイムスパーク≫ 5(3)赤 マジック

○フラッシュ
BP合計5000まで相手のスピリットを好きなだけ破壊する。
この効果でスピリットを破壊したとき、自分のトラッシュにあるスピリットカード1枚を手札に戻す。


灼熱「灼熱のターン! ≪エッジ・ウルフ≫! もっかい来い!」

灼熱「ここでバーストをセット!」

乃々「ばーすと…?」

リクト「場に1枚だけ伏せられる、カウンターカードだよ!」

輝子「何を、仕込んだんだ…?」


灼熱「アイゼンドラゴン! もう一度ぶちかませぇ!」

灼熱「バトル時効果! 次はエルギニアスだ!」

美玲「また破壊!」

ガルゴル「それがどうした! ライフをくれてやる! …むおっ」



<4→3>


美玲「ライフが並んだぞッ!」

灼熱「これでターン終了だ! オラかかってこいやぁ!!」

ガルゴル「ふん。威勢の良さは立派だが、所詮は1点止まりよ」


ガルゴル「爆裂の第8ターン、ドロー!」

ガルゴル「まずは≪ダーク・スクアーロ≫を召喚。そして…、」

ガルゴル「バーストにビビッてアタックできないとでも思ったか? 甘い!」


ガルゴル「俺様は手札より、ネクサス≪海魔巣食う海域≫をレベル2で配置!」

リクト「あ、あのカードはっ」

ガルゴル「こいつの効果で、お前は赤のバーストを発動できなくなるのだ!」

乃々「そんな…」



≪海魔巣食う海域≫ 5(青2/赤1) 青/赤
〈0〉Lv1 〈1〉Lv2

Lv1・Lv2『自分のアタックステップ』
【連鎖】を持つ自分のスピリットがアタックしたとき、そのスピリットのLvを1つ上のものとして扱う。

Lv2『お互いのアタックステップ』
相手は赤/緑/白のバーストを発動できない。


ガルゴル「お前のデッキは赤、つまり伏せてるバーストも赤! カード1枚無駄にしたなぁ?」

灼熱「ヘッ、なかなかテクいことしてくれるじゃねえか!」

ガルゴル「その余裕な顔、すぐに歪ませてやる! やれ、ディスト・ルクシオン!」

輝子「また、ダブルシンボルだ…っ」

ガルゴル「そしてアタック時効果、再びエッジ・ウルフを破壊!」

灼熱「くっ、すまねえ…!」

ガルゴル「さあ、今度はBP14000! ダブルシンボルを喰らえっ!」

灼熱「…ッ!!」

美玲「ヤバい…! レイッ!」


灼熱「【バースト】オープンッ!」

ガルゴル「なにぃ!?」

灼熱「マジック、≪シンフォニックバースト≫! スピリットの破壊により発動だッ!」

美玲「おぉっ、黄色ッ!」

ライラ「エリス様からもらったカード!」

ガルゴル「ば、馬鹿な……黄色だと…」

灼熱「残念だったな! だが、何が起こるか分からねえのがバトスピってもんよ!」

灼熱「力を借りるぜ、明けの明星の! この効果により、破壊されたエッジ・ウルフを再び手札に戻す! 戻ってこい、マジダチ!」



≪シンフォニックバースト≫ 3(2)黄 マジック

【バースト:相手による自分のスピリット破壊後】
このバースト発動時に破壊された、自分のトラッシュにあるコスト5以下のスピリットカード1枚を手札に戻す。
その後コストを支払うことで、このカードのフラッシュ効果を発揮する。

〇フラッシュ
このバトルが終了したとき、自分のライフのコアが2個以下なら、アタックステップを終了する。


灼熱「続けてフラッシュ効果も発揮! そのアタック、ライフで受けるぜッ!」


<3→1>


灼熱「…っづぅ! 効くねぇ」

灼熱「だがシンフォニックバーストの効果で、このアタックステップは終了だッ」

ガルゴル「けっ、命拾いしたなぁ…」

美玲「…」ホッ



輝子「も、もうライフが…」

乃々「あうあう…」

ライラ「うん。けっこうやるわね、あいつ」

リクト「残りライフ1…。でも、ゼロはまだ負けてない!」

灼熱「灼熱の第9ターン…!」


灼熱「…くくっ、良いね良いねェ! こうでなくっちゃなあ!」

美玲「お、追い詰められてるのに、笑ってる…ッ?」

ガルゴル「さっきから、頭でもおかしいのかお前」

灼熱「相手の心配なんかしてる場合かオッサン? 俺は今、ギンッギンに燃え滾ってる!!」

灼熱「俺のライフ、残り1! ここからだ…! ここからが、本当の祭りの始まりなんだからよォ!」

灼熱「祭りだ祭りっ! ライフ1祭り! くぁああ、燃えてきたあああァ!!!」


輝子「…あ、赤のレイさんって、こんなにヤバい人だったのか…?」ヒソ

ライラ「ま、まぁ……みんなそれぞれ変わってるけど、赤はストレートにヤバい奴なのよね…」

リクト「でも、実力はピカ1なんだよっ?!」

乃々(輝子さん、あんまりレイさんのこと言えないんですけど……でも、もりくぼは黙っておきます…)



灼熱「まずは≪エッジ・ウルフ≫! もいっちょ頼む!」

灼熱「これで俺の場には、赤のスピリットが3体! 条件達成だオラァ!」

ガルゴル「な、なにが来るっ」

灼熱「大爆発の大嵐! 灼熱祭りの大将、来たぜっ!」

美玲「あれは、星……いや、龍ッ!?」

灼熱「 ≪アルティメット・ジークヴルム・ノヴァ≫!! レベル4で、召喚だぁッ!!」



ライラ「ノヴァ!」

リクト「三龍神アルティメットだよ!」

輝子「で、出た…! これが…」

乃々「赤いレイさんの、切り札…!」


ガルゴル「アルティメット、だ…と……」

灼熱「召喚【Uトリガー】…、ロック・オン!」

ガルゴル「?!」

美玲「召喚時にトリガー!?」

乃々「そんなものもあるんですか…」

ガルゴル「コストは……5! レイジングシー!」

灼熱「ヒットォ!!」バシュッ

美玲「な、何が起きるんだ…?」

灼熱「ギラギラ感じるぜ、アルティメットのエネルギー…ッ! ライフ、全回復だッッ!!!」

ガルゴル「ハァッ!? アリかよそんなの?!」

灼熱「ヒットしたコストの数、最大5まで回復! ライフ回復祭りだぜ!!」

輝子「ライフが、戻った…!」


〈1→5〉



灼熱「アタックだ、ノヴァ! 【Uトリガー】、ロック・オンっ!」

ガルゴル「…コスト4! ゲル・ゴロス!」

灼熱「【クリティカルヒット】ォ!!」ビシュ

灼熱「ヒットしたこの攻撃、強制でブロックしてもらうぜ!」

ガルゴル「ダ、ダーク・スクアーロでブロック…」

灼熱「さらに! クリティカル・ヒットの効果で、てめえのディスト・ルクシオンも破壊ッ!!」

ガルゴル「ゲェーー!!」

ライラ「やったぁ!」

リクト「相手のスピリット、全部倒したよ!」

灼熱「見たか! 三龍神の力ぁ!」


美玲「じょ、常識外れだ、こんなの…ッ」



≪アルティメット・ジークヴルム・ノヴァ≫ 8(4)赤/三龍神・星竜
〈1〉Lv3 15000 〈3〉Lv4 20000 〈5〉Lv5 30000
【召喚条件:自分の赤スピリット3体以上】

【Uトリガー】Lv3・Lv4・Lv5『このアルティメットの召喚時』
Uトリガーがヒットしたとき、トラッシュに置いたカードのコスト1につき、
ボイドからコア1個を自分のライフに置く。(ライフは最大5まで)

【Uトリガー】Lv4・Lv5『このアルティメットのアタック時』
Uトリガーがヒットしたとき、相手は可能ならスピリット/アルティメットでブロックする。
【クリティカルヒット】ヒットしたカードがコスト4以下なら、
さらに、BP12000以下の相手のスピリット1体を破壊する。


ガルゴル「マ、まま、マジック、《サイレントウォール》! フラッシュで発動…」

灼熱「ケッ、アタック終了か」

輝子「ふ、防がれた…」

リクト「でも相手のライフは残り3、スピリットは0!」

ライラ「ゼロはスピリットにアルティメット、ライフも全快! 形勢は完全に、こっちに傾いた!」

乃々「…なるほどっ」←有利なのはなんとなく理解した


ガルゴル「ば、爆裂のターン…。≪戦竜エルギニアス≫と、≪シャッガイ・バグ≫…」

灼熱「オラオラどうした! すっかり下火じゃねえか!」

ガルゴル「アルティメット…っ! く、くそっ、また俺様の前に立ちはだかるか…!」

ライラ「また?」

ガルゴル「前もやられたんだ! あいつのおかげで、俺様は刑務所送り! チクショウ、あの白のアルティメット使いめ!」

リクト「白……もしかして、キリガさん?」

ガルゴル「あいつさえいなければ、今頃俺様は、俺様はァ…!」




灼熱「はんッ! どうせその時も、こすい悪事働いてたんだろうな!」

ガルゴル「…ぎくっ」

灼熱「アルティメット使いだからとか、そんなの関係ねえンだよ…! てめえが負ける理由なんて、1つしかねえ!」

ガルゴル「な、なんだと…」

灼熱「人のマジダチに平気で手をかけるてめえみてえな奴はなぁ、この広い宇宙の中でも最っ低のクズ野郎だ! そんな奴に、俺らが負ける訳ねえッ!」

美玲「…ッ」

灼熱「1回負けてもそれが分かんねえなら、俺が何度でもぶっ飛ばしてやらぁ! 覚悟しやがれッ!!」


灼熱「灼熱のターン! そしてこれが、ラストターンだ!」

ガルゴル「ま、まだ終わらせない! 俺様にはまだ、2体の壁が残っている…!」

灼熱「終わるんだよ…! さっきから手札でメラメラ燃えてる、こいつでの炎でなぁ! 召喚!」

灼熱「真っ赤に滾る熱い奴! 宇宙一の相棒、≪アルティメット・ムゲンドラゴン≫のお出ましだぁッ!!」



ガルゴル「アルティメット2体目かよぉ!!?」


リクト「やったぁ、ムゲン!」

乃々「…ぁ、さっきのドラゴンさん…!」

ライラ「やっちゃえー!」

輝子「あちち……熱が、ここまで…っ」


美玲「す、すげえ…ッ! あいつ、アルティメットだったのか…ッ!」


ムゲン「へへ、ようやくオレの出番だなっ」

灼熱「待たせたなムゲン!」

ムゲン「待ちくたびれたっつーの! さあ勝つぜ、ゼロ!」

灼熱「おうよ!」



灼熱「行こうぜ相棒! 【WUトリガー】、ロック・オン!!」

ガルゴル「ダブルだとぉ?」

灼熱「答えろ! デッキの上から2枚、コストはッ!?」

ガルゴル「す、ストロングドローに、星喰いのヤシガニド…。コスト3と5…」

灼熱「【ダブルヒット】だ!! ッソイヤぁ!!」バシュシュ

ガルゴル「ぐ!」


灼熱「アルティメット・ムゲンドラゴンの効果! アタック時にヒットしたトリガーの数だけ、赤のシンボルを追加できるッ!!」

ガルゴル「なに…」

乃々「ということは…」

美玲「トッ、トリプルシンボル!!?」

リクト「相手のライフは、あと3つ!」

ガルゴル「そ、そんなもん通す訳ないだろう! エルギニアスでブロッ…」

灼熱「そうはいかねえ!!」

ガルゴル「!?」

灼熱「ダブル・ヒットの追加効果、発揮! BP5000以下のお前のスピリット、全て破壊するぜ!!」

ガルゴル「そ、そんな…」

輝子「ブロッカーが、いなくなった…!」

灼熱「てめえのスピリットはゼロ! 手札もゼロ!! 後はライフだけだなァ!!」

ライラ「押し込め、ムゲンー!」



ムゲン「やっちゃうよォ!!」

灼熱「これで終わりだオラァァアッ!!」

ガルゴル「ぐ、ぐぐーーっ」


ガルゴル「ちくしょおおおおォ!!」


<3→0>



Win!!


灼熱「真っ赤に燃えろ一番星!! 俺より強い奴はいねえッ!!」



――




――


美玲「終わった…」

乃々「……美玲ちゃん!」ギュ

美玲「っどわぁ、ノノ!?」

乃々「美玲ちゃん…! よかった…」

美玲「の、ノノ…、あんま抱き付くな、苦しいよ…ッ」

乃々「…ぁ、ご、ごめんなさい」

輝子「フヒ……ライラさんから、はさみ借りてきた、ぞ…」

美玲「ショーコ!」

輝子「待ってて…。今、ほどくから…」


美玲「……2人とも、ゴメン! 心配かけたッ」

乃々「み、美玲ちゃんは、悪くないんですけど…」

輝子「そうだよ…。それに……私たちにも、たまには心配、かけさせてよ…」

美玲「…うん」

乃々「帰りましょう? 3人で…」

美玲「……うんッ」



リクト「良かったね、お姉ちゃん」

ライラ「うんうん、みんな無事でよかった!」

リクト「後は…」


ムゲン「やったな、レイ!」

レイ「おう!」

ムゲン「やいやいやい! 思い知ったか、この人攫い!」

ガルゴル「こ、こうなったら…」

レイ「おっと! そうはいかねえ」

ガルゴル「…?! おい、離せコラ!」

輝子「わ、一番星号から、アームが…」

レイ「もう逃がさねえ。大人しくお縄につくんだな!」

ガルゴル「く、くそぅ……何故だ、さっきからなんで、エンジンの出力がこんなに上がらねえんだ…?」



ファンファン…


ライラ「…あっ、宇宙警察の船! マジカルが呼んでくれたんだ!」

レイ「後はあいつらの仕事だな…」

リクト「観念しろ!」

ガルゴル「チクショウ…」

ムゲン「一件落着、ってな!」ぷ



――



「脱獄犯逮捕へのご協力、感謝するであります」

リクト「はいっ」

ライラ「あいつ、しっかり捕まえといてください!」

「はっ! …それから、そちらの3人。特に、捕まってた眼帯の子だね」

美玲「な、なんだよ…ッ」

「私たち警察の元で、一旦保護という形になります。見たところ怪我もないようだけど……一応病院で検査もしてもらってから、安全に地球にお送りしましょう」

美玲「いや、ウチはいい! 何もされてないし、大丈夫だからッ」

「眠らされて縛られて、その上あんな高所まで連れて行かれたんだ。何かあったら大変でしょう? 念の為、ね」

乃々「あ……そ、そっか」

輝子「そういえばここ、空の上だったな…」

「よろしいですか?」

美玲「……ハイ」


「では、そういうことですので!」

レイ「ああ、3人をよろしく頼む」

美玲「…ま、待ってくれッ」

レイ「?」

美玲「あ、あの……ウチ、えっと…」

レイ「ああ、怪我もなくて何よりだな」

美玲「う、うん」

レイ「そういう訳だ、ちゃんと地球に帰れよ?」

美玲「うん……あの、ありがとッ」

レイ「おうっ」


レイ「ほら、行くぞみんな」

乃々「えっ…もう、行くんですか…?」

ライラ「……あ ちょっと待ってレイ、私サインほしいんだけど…」

リクト「お姉ちゃん! みんな今から病院なんだよ?!」

ライラ「うっ…」

レイ「あいつの船ん中にソルト探しに行くんだ。却下」

ライラ「だよね~…」

ムゲン「諦めな、マジカルのサインならオレが見せてやるからよ!」

ライラ「それとこれとは話が…!」

輝子「ぁ…、行っちゃう…」

美玲「…なあ!」

レイ「なんだぁ? あんまり長ったらしいの、俺苦手なんだけど」

美玲「落ち着いたら後でもう一度、ちゃんとお礼するッ! 必ず!」

ムゲン「ほーん…」

美玲「必ず連絡するから! 来なかったら、そっちからも連絡してくれよッ?! なっ!」

レイ「はいはいっと。それじゃあな」

ライラ「あーん…、せめてツーショットとか…」

リクト「お、お姉ちゃんってば…」



………。




美玲「…行っちゃった」

「さあ、そろそろ」

輝子「…ほら、美玲ちゃん」

美玲「うん…」



―――

――





~1週間後~


美玲「……と言って、あれから1週間」

輝子「連絡、無いな…」

美玲「来るワケないよ…! 連絡先とか、何も教えてないモン…ッ」

輝子「フヒ…。し、仕方ないよ……どたばたしてたし…」

美玲「向こうの船の無線なんて、ウチが分かるハズもない! これじゃお礼したくてもできないじゃんかッ」

美玲「ウチのバカ…! 事務所の名前も教えずに、何やってんだ…ッ」ワナワナ

輝子「ああいう時……ぷ、プロデューサーの名刺って、便利なんだな……フフ」

美玲「ううぅぅ~~ッ……アイツの名刺、投げつけておけば良かった…!」

輝子「そ、そんなことしたら、キレちゃうよ…」

美玲「投げたカードで物が切れるワケないだろッ」

輝子「…ぁ、そっちじゃなくて……まぁ、それもそうか…」


美玲(……1週間前のあの日。結局、というか当然、LIVEは中止)

美玲(世間ではちょっとしたニュース沙汰。第1階層のこんな田舎惑星の地方公演で、マジカルのLIVE会場が爆破されたなんてあっちゃ、そりゃーそうだろう)

美玲(スケジュールが詰まりに詰まった咲との合同LIVEは、そのまま立ち消えになっちゃった。あーあ…)


美玲(でも…。咲が拉致されたらしい、みたいなウワサこそたまに流れても……ウチが連れてかれたってニュースは全く聞かないんだよな)

美玲(きっと色々配慮してくれて、報道は揉み消されたりなんだりしたんだろうケド。おかげで変に気苦労することもなく、いつもの日常に戻ってこれてる)

美玲(実際、ウチはただ眠ってただけで、精密検査だって何も問題ナシ。フツーに地球に返されて、ちょっとだけお休み貰ったくらい。今も、レッスンにミーティングが終わって、事務所でフリータイムの真っ最中)

美玲(…いつも通りに、戻ってきてしまったのだ)

美玲(つまりウチらは…、)



美玲「台風の目……じゃなくて。宇宙嵐の目には、なり損ねちゃったなぁ…」

輝子「…? 今、なにか言ったか、美玲ちゃん…」

美玲「なんでもなーい…」ハァ


乃々「…ええと、これをこうして……ああ違う、コアが足りなくなっちゃう…」

輝子「乃々ちゃん、ゆっくりで良いぞ…?」

乃々「ううぅ、すみません…」

美玲「…紫はコアのやり繰り苦労しそうだモンなぁ」

輝子「手札は、いっぱい増やせるのにね…」

美玲「上級者だと白も混ぜたりするみたいだし。奥が深い色だなーって印象かな、ウチ」

乃々「…や、やっぱり、もりくぼにバトルなんて、1万年早かったんでしょうか…」

美玲「いやいやッ! 1万年なんて待ってたら死んじゃうぞッ?」

輝子「気が長いんだね…。ちなみに、万年茸ってのも、ある……フヒ」

美玲「お、おう」

乃々「もうちょっと……もう少しで、なんとなく分かりそうな気はするんですけど…」


美玲「……なぁなぁ、突然バトスピやる気になるなんて、どういう風の吹き回しなんだ、ノノ?」

乃々「…もりくぼ、今回のことで色々思うことがあって」

乃々「何と言うか……弱い自分のままじゃ、いられないって。そう、思いました」

輝子「…乃々ちゃんも」

乃々「私1人でできることなんて、たかが知れてますけど。…でも、守ってもらうばっかりじゃなくって、いざとなったら美玲ちゃんも輝子ちゃんも守ってあげられるような、強いもりくぼに。いつかはなりたいんです」

美玲「ノノ…」

輝子「それで手始めに、バトルもできるように、ってことか…」

乃々「…変でしょうか」

美玲「ううん、そんなことないッ! ウチ、嬉しい!」

乃々「…えへ」



輝子「…私も同じだ、乃々ちゃん」

乃々「?」

輝子「おどおどするだけじゃなくって……大事な時には、自分で行動できるように、私もなりたい…」

輝子「レイさんとドラゴンくん見てたら、尚更…。あんな風に、強い人になりたいって、そう思った……なんて」

美玲「…そっか」

輝子「次に何かあったら…。今度は私が、美玲ちゃんを引っ張るからね……ふひ」

乃々「つ、次なんてないのが1番なんですけど…」

輝子「……ぁ。そ、そっか、確かに…」

美玲「…ふふっ!」

美玲(あの2人みたいに、か…)


輝子「み、美玲ちゃん…?」

美玲「うんッ! その時は、またよろしくな! ショーコ、ノノ!」

乃々「はい…っ」


美玲「……それにしたって、なんでわざわざ紫?」

乃々「…」

輝子「…フヒ」

乃々「……た、たまたま目に付いた色だったから、というか…。天啓があった、というか…」

美玲「なんでそんなに目を逸らすんだ」

乃々「い、いつも通りですけどぉ…」

輝子「乃々ちゃんにも、春が来た……ってところかな……フヒヒ…」ボソ

美玲「春?」

乃々「しょ、輝子ちゃん…っ」

輝子「何でもないぞ……フヒャ♪」

美玲「?? …まぁ別に良いけど。特訓なら、いつでも付き合うからなッ」

乃々「は、はい……お願いします…」



……pipipi! pipipi!



乃々「ぴゃっ」

美玲「お? 電話か?」

輝子「…いや、私じゃない」

乃々「会社の電話でしょうか…」

美玲「どれどれ……あれ、違うや。パソコンから鳴ってるみたいだ」

乃々「プロデューサーさんの…?」

美玲「うん……うん? これ…」

輝子「あんまり、触らない方がいいんじゃ…」

美玲「お、おいッ! これ、モニター付きの無線通信だぞ!」

乃々「! ということは…」

美玲「ああ、もしかしたら、もしかするかも!」



pi!


レイ『…おぉ、繋がった』

ムゲン『いけるもんだなぁ、案外』

美玲「やっぱり! ムゲン!」

輝子「れ、レイさんも…っ」

レイ『よう! お前ら、1週間ぶりだなっ』

乃々「ど、どうもですけど…」

ライラ『はうぁ! インディヴィがちゃんと揃ってるぅー♪』

ソルト『ソロソロ揃ッテル頃ト思ッテタノデース!』

リクト『3人がいる時で良かったね、レイ』

レイ『ああ!』


乃々「ど、どうやって…?」

美玲「そ そうだよ! 連絡先、教えてなかったのに…」

レイ『事務所の名前とか、ライラが調べてくれてな』

ライラ『ぴーすっ!』

輝子「なるほど…」

ムゲン『レイったらよぉ、一番星号のアドレスも教えねーんでやんの。おかげで苦労したぜ!』

レイ『お前もあの場にいたろうが…』

美玲「そ、それは、ウチも同じだし…」

レイ『すぐに連絡できなかったのにも、事情があってな。あれから、大丈夫だったか?』

美玲「うん! 何ともない、ピンピンしてるぞッ」

レイ『そうか! なら良かった』


輝子「事情…?」

レイ『ちょっとした寄り道さ。ついさっきまで、月に行ってて』

美玲「月ぃ!?」

ムゲン『おうよ!』

乃々「ちょっと、で片付けるスケールの話じゃないんですけど…」

ライラ『地球からだと、案外近いんだよ?』

ソルト『月ニ向カッテ、ムムーンット発進ナノダ!』

輝子「な、なんでまた月なんかに…」

リクト『アルティメットクリスタルがあるらしいって噂を聞いたんだ!』

レイ『なら俺が、1番に見つけてやらねえとなっ』


美玲「あるてぃめっと、」

乃々「くりすたる?」

ムゲン『知らねーのか? アルティメットが眠る、世にも珍しいエネルギーの結晶体! 強いエネルギーを秘めた、宇宙の色んなとこに散らばってるだぜ?』

ライラ『こんなところにも、まだ見つかってないアルティメットがいたなんてね』

リクト『やっぱり、宇宙は広いんだね…』

レイ『身の周りの意外なところにも、探せばまだまだ眠ってるのかもしれねえな』

美玲「…ってことはつまり!」

レイ『ああ! アルティメット、手に入れてきたぜ!』

輝子「おぉー…」

乃々「すごい…」

レイ『月で見つけた、白の新しいマジダチ! 楽しみだ…!』

ムゲン『寄り道にしては、ちょーっとばかり時間がかかっちまったけどなっ♪』

リクト『あはは……2、3日くらいね』



レイ『そういう訳で、連絡できずにいたんだ。すまねえ!』

美玲「い、良いよ気にしなくて…」


美玲「それより! 戻って来てるんなら、近くまで来れないのか? あの時のお礼したいんだッ」

輝子「み、みんなにも、紹介したいしな…」

レイ『あー…』

ムゲン『…んー』

乃々「…? なにか、不都合でも…」


リクト『折角なんだけど』

ライラ『また用事がね…』

美玲「え…」

ムゲン『オレたち急用で、今から第3階層まで行かなきゃならねーんだよ』

レイ『急ぎのせいで、地球に寄る時間がなくなっちまった。だから、無線で連絡することにしたのさ』

ソルト『ソルトモ特製ピザ、ゴ馳走シタカッタノデース…』

レイ『本当なら、直接顔を見に行きたかったところなんだけど。マジですまねえ!』

美玲「そう、か。そうだよな…。そっちにも都合、あるんだよな…」

リクト『でもさ、元気な様子を見れただけでも良かったよ!』

ライラ『うん…』

美玲「…そっか」


ムゲン『…なーにシケたツラしてんだよ!』

美玲「でも…」

ムゲン『だいじょーぶだって! 次に会うタイミングが、ちょーっと先に延びただけだろ? なぁレイ』

レイ『ああ! 近くに寄ることがあったら、また会いに来る!』

輝子「来るのか…? また、地球に…」

リクト『僕らの産まれた星だもん! 絶対また来るよ!』

美玲「…またって、いつ?」

レイ『さあなぁ……明日かもしれないし、来年かも」

ムゲン『それよりずーっと先かもしれねーな』

美玲「そんな…」

レイ『でもお互い元気でやってりゃ、いつか必ず会える! 宇宙ってのは、そういう場所なんだ!』

ムゲン『広いようで、案外狭いもんなんだぜ? 安心して待ってろって』

レイ『だから、そんな顔すんな。お前らもアイドルなんだろ?』


美玲「……うんッ! 分かった!」

レイ『ま、なんかあったら、マジカルにでも伝えてもらえば…』

美玲「その必要はないッ」

レイ『おん?』

美玲「咲なんて関係ない! ウチらだってアイドルで、"インディヴィジュアルズ"なんだ! ウチらだけの力で、みんなにちゃんと届けるぞッ!」

ムゲン『…へえ?』

美玲「待ってるだけじゃない! 銀河の果てまで、ウチら3人の歌を響かせてみせるッ!」

乃々「美玲ちゃん…」

美玲「だろッ! ノノ、ショーコ!」

乃々「はいっ」

輝子「…フフ、そうだな…。きっと、できるよ…」

美玲「宇宙の何処にいたって、ウチらの声が聞けるようになってやるから! そっちこそ、それまで待ってろッ! いいな!?」

レイ『……ああ!』


ムゲン『…言うじゃねーの』

美玲「おう、言ったぞ?」

ムゲン『どうやら、答えは見つかったみたいだな?』

美玲「うん! これが、ウチらの答えだッ!」

ムゲン『まぁ? マジカルたんを越えるには、まだまだ時間がかかると思うけど?』

美玲「ふんっ! あの時ウチらに乗り換えておけば良かった、って後悔することになっても知らないからなッ」

ムゲン『へいへい。その時を楽しみにしてるぜ、それなりによ!』

美玲「ヘヘッ♪」


乃々「あ、あの…、レイさん、行く前に…」

レイ『?』

乃々「あの えっと、もりくぼ、バトスピ始めまして…」

リクト『おぉー!』

レイ『そっかそっか! じゃあ今度会ったら、俺とバトルだなっ』

乃々「は、はい…」

ライラ『何色で行くの? 赤? それとも白?』

レイ『青でも黄色でも、なんでも良いさ! 全力で受けて立つ!』

乃々「……で、できれば……紫色が、良いです…」

レイ『紫か! オーケー、紫電に予約入れとくぜ!』

乃々「やった…っ、紫さん…!」


乃々「お揃い……ふへへ…」

輝子「よ、良かったな、乃々ちゃん…」

乃々「手取り足取り、ご指導ご鞭撻…」

輝子「……」

乃々「それでそれで……いつか紫さんに、あんなことやこんなこと言われちゃって……ひゃー…♪」ボソボソ

レイ『なに、なんだって? 聞こえねえ』

輝子「……お手柔らかに、って言ってる、ぞ…」

レイ『ああ、そういうことか!』

乃々「えへへぇ…」ポワワ

輝子(歪んだ、春だな…)


レイ『…そろそろ、行かねえとな!』

乃々「はい……また…っ」

輝子「みんなの分のキノコ、用意しておくね……フヒ」

ソルト『オーウ! ダッタラソルトハ、トッテオキノキノコピザのレシピ、準備シテオキマース!』

輝子「待ってる、ぞ…」

ムゲン『あーばよ!』ぷ

美玲「最後くらい栓しとけッ!」

ムゲン『うるせーやい!』

ライラ『今度はちゃんと、サイン貰いにきます!』

リクト『お姉ちゃん…』

乃々「さ、サイン…。練習、しておかなくちゃ…」

ソルト『サインナラ、ホシイナラ。最後ニハ、サヨウナラ、マタ会ウ日マデ…』

レイ『よっしゃ! 一番星号、出発するぜ! じゃあな!』

美玲「ありがとなッ! 本当に、ありがとーッ!!」



pi!


美玲「…切れちゃったか」

輝子「最後まで……嵐みたいな人たち、だったな…」

乃々「破天荒というか、豪快というか…」

美玲「宇宙でやってくには、あれくらいじゃないとダメなんだろうなっ」

乃々「また、会えると良いですね…」

美玲「会えるさ、いつか、絶対!」

輝子「それまでに…、腕を上げとかないとな、乃々ちゃん」

乃々「そうですね…。でも、今は…」

美玲「おう! 2人とも、これから時間あるかッ?!」

輝子「うん……だ、大丈夫…」

乃々「今日はもうちょっとだけなら、頑張れそうなんですけど…」

美玲「よーし! 自主レッスン、やるぞッ!」


輝子「トレーナーさん、呼んでみるか…?」

美玲「いや、いい! 今は、ウチらだけでやろう! それでその後は、バトルも特訓!」

乃々「また忙しくなりますね…」

輝子「でも、悪くないな……フフ…」

美玲「バトルも、LIVEも! ウチらが、宇宙で最強のアイドルになるッ! 声を届けるって、約束したからなッ」

輝子「あぁ…。3人なら、多分大丈夫、だね…」

乃々「はい、強いもりくぼ……つよくぼに、なります…!」

美玲「うんッ! Sランクがなんだ! 咲なんかより、もっと強くなろう! 3人でッ!」


美玲「うう~! こうなったら、もたもたしてられないッ! レッスン室まで、競争するぞ!」タッ

乃々「あ……か、かけっこじゃ、勝ち目がないんですけどぉ…」

輝子「わわ、私も…。というか、カード仕舞わなきゃ…」




…っ♪


輝子「…ん、あれ…?」


輝子(今、エノキクンが動いたような…)



美玲「おいショーコ! 置いてくぞッ」

輝子「あ、ま、待ってよ、美玲ちゃん…」

輝子(……風、だよな、今のは。うん、きっと…)


乃々「ひぃぃ…。美玲ちゃん、足早いぃ…」

輝子「…ふぁいとだ、乃々ちゃん」

美玲「もっと早く、もっと先に! ウチらなら行けるハズ!」


美玲「指差す場所が、ウチらの未来! 目指すは、アイドル界の一番星だッ!!」




おしまいッ!


お付き合い頂いた方おりましたら、ありがとうございました。

最近見直して思ったのは、やっぱり究極ゼロは面白かったなぁ…というやつ


もっと色んな話題で他の子たちと絡めてあげたかった

周子の一番星とか友紀の一等賞、志希のタバスコ好き、小梅とあの子にビビるレイ、閃光のゼロとLIVEバトル……等々



これにておしまい



☆☆おまけ☆☆



レイ「今週の、一番星コーナー!」

美玲「今日のカードはコイツ! ≪アルティメット・ムゲンドラゴン≫ッ!!」

ムゲン「見せてやる! 必殺の【WUトリガー】、ロック・オン!」

輝子「ふひゃっ」コスト4

乃々「あぅ」コスト3

レイ「【ダブルヒット】! ヒットした数だけ、赤のシンボルを追加できる!」

ムゲン「おりゃぁあ! トリプルシンボルだぜー!」

美玲「ダブル・ヒットで、BP5000以下の相手スピリットも全て破壊ッ! 頼もしいなッ!」

輝子「や、やられた~…」

乃々「帰らせていただきます…」

ムゲン「さらに! オレにはもう1つ、隠された効果がある! それは…!」

美玲・輝子・乃々「「「それは…?!」」」ゴクリ

レイ「……あ。そろそろ時間だぜ、相棒!」

ムゲン「おう! 次に会う時までのお楽しみ、ってことで!」

美玲「えぇーーッ!?」

ムゲン「へへ、じゃあなッ!」


≪アルティメット・ムゲンドラゴン≫ 7(赤3/極1)赤/新生・極竜
〈1〉Lv3 11000 〈3〉Lv4 19000 〈4〉Lv5 27000 〈7〉Lv6 30000
【召喚条件:自分のアルティメット1体以上】

【WUトリガー】LV3・LV4・LV5・LV6『このアルティメットのアタック時』
ヒットしたUトリガー1回につき、このアルティメットに赤のシンボル1つを追加する。
【ダブルヒット】:さらに、Uトリガーが2回ヒットしたら、BP5000以下の相手のスピリットすべてを破壊する。
(WUトリガー:相手デッキの上から2枚をトラッシュに置く。それらのカードのコストが、このアルティメットより低ければヒットとする)

LV4・LV5・LV6【Uエナジー】『自分のアタックステップ』
[アルティメット・ムゲンドラゴン]以外の系統:「新生」/「次代」を持つ自分のアルティメットすべてに、赤のシンボル1つを追加する。



最後に番組風のおまけでした。バトスピはいいぞ。


以上になります

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