男「課長のカツラがズレてるぞ!」同僚女「どうしましょ……!」 (25)


課長「上からうちの課は個々の能力はともかく、チームとしてまとまりがないと指摘があった!」

課長「みんな、頑張ろう!」



男「はぁ……」

同僚女「私、人と足並み揃えるのって苦手なんですよね」

メガネ「課としての成績は他に劣っていませんし、是正する必要はないと思いますが」

後輩「今時チームワークなんて流行らないですよ~!」



課長「……」


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男「……」カタカタ

男「えーっと、この見積りデータは、と……」

男「ん!?」



課長「……」ズレッ



男(課長のカツラが……ズレてる!)


男「な、なぁ!」

同僚女「なによ?」

男「あれ見てくれよ……」

同僚女「?」



課長「……」ズレッ



同僚女「あっ!」

男「……な?」

同僚女「ど、どうしましょ……!」


同僚女「教えてあげた方がいいんじゃない?」

男「課長のカツラはバレバレだけど、一応“みんな気づいてない”ってことになってるし……」

男「それに、課長って普段は頼りないほどに温厚だけど」

男「ことカツラのことになると、ものすごく怒るらしいんだ」

同僚女「そうなの?」

男「ああ……部長や社長にもブチ切れたことがあるらしい。それはもう恐ろしいそうだ」

男「だから、教えちゃうのは避けたい……」

同僚女「あの人がねえ……」


同僚女「こうなったら、メガネさんに知恵を借りるしかないんじゃない?」

男「! そうか、あいつならいい大学出てるし、きっといいアイディアを出してくれるはず!」

男「おーい!」

メガネ「なんですか?」

男「課長を見てくれ……」

メガネ「課長?」チラッ



課長「……」ズレッ



メガネ「なんという……悲劇!」


同僚女「私は課長に教えてあげようっていったんだけど、男君は反対みたいで……」

メガネ「僕も反対ですね。課長はカツラのことになると、人が変わったように怒るという話です」

男「だろ?」

同僚女「でも、このまま放っておいたら……!」

後輩「皆さん、なにやってんです?」

男「おお、お前も来たか。ちょうどいいや、参加してくれ」

後輩「?」


男「課長を見ろ」

後輩「はい」チラッ



課長「……」ズレッ



後輩「あっちゃ~……」

男「なんでみんなで集まったか分かるだろ?」

後輩「分かりすぎるほどに……」


男「正直いって、俺にはどうすればいいのか分からない」

男「これを解決するには、一人一人の力を合わせなきゃならない」

男「みんな、協力してくれ!」

同僚女「分かったわ!」

メガネ「微力ながら」

後輩「手伝わせて下さい!」


メガネ「ではこういう作戦はどうでしょう?」

男「早いな、もう思いついたのか! さすがメガネ!」

メガネ「課長に知らせられない以上、打つ手は一つしかありません」

同僚女「どんな手?」

メガネ「課長にバレないよう、カツラのズレを戻すんです」

後輩「た、たしかに……それしかないですね!」

男「うん……だけどどうやって?」


メガネ「釣り竿でカツラを直すんです」

男「釣り竿なんてどこにあるんだよ? この辺に釣具屋なんてないぞ」

メガネ「買う必要はありません。定規と糸とクリップで作るんです」

男「なるほど、そこまではいい……だけど、相当な釣りの腕がないと……」

後輩「オレがやります! オレ、これでも釣りが趣味なんです! 週末はよく川や湖に行くんですよ」

同僚女「へぇ~、意外!」

男「なら、釣りの役目はお前に任せよう」

メガネ「あとはどう課長の気をひくかですが……それはお二人に任せていいですか?」

男「ああ、任せてくれ!」

同僚女「必ず課長の気をひいてみせるわ!」


男「ではこれより、作戦を開始する」

男「諸君、健闘を祈る!」




三人「イエッサーッ!!!」


メガネ「定規と糸、それと針のように曲げたクリップをつなげて……」モソモソ…

メガネ「できました! 釣り竿です!」

後輩「結構よく出来てますね! 貸して下さい!」



同僚女「私達はどうする?」

男「まず俺が行く! もしもの時は頼む!」


男「すみません、課長」

課長「なんだね?」ズレッ

男「この書類について、ちょっと分からないところがあるんですけど……」

課長「どれどれ……」ズレッ



後輩(さすが先輩、うまく気をひいてくれてる……)

後輩(よーし、いけっ!)ヒュッ


後輩(なかなかクリップ針がカツラに引っかからない……)ブラーン…

後輩(あとちょっと……)ブラーン…

ガシッ

後輩(かかった! フィッシュ!)



男(いいぞ! よし位置を直せ!)

課長「どうかしたかね?」ズレッ

男「いえいえ、話を続けて下さい!」


後輩(こ、これはなかなか難しい……!)クイッ

後輩(課長、動かないで~……!)クイックイッ



課長「……」ズレレッ

男(ま、まずいぞ! 位置を直すどころか、ズレがひどくなってる!)

男(このままじゃ課長のカツラは……!)

課長「どこを見てるんだね?」ズレレレッ

男「あ、すみませんすみません!」

男(一瞬でいい! 課長の動きを完全に停止させないと!)


同僚女「キャーッ!」ヌギッ

同僚女「あ、やだ……ゴキブリに驚いて、つい服を脱いじゃった……」



課長「うひょっ!」ズレレレッ

課長「……って、何をしてるんだね!」ズレレレッ

男(すげえ! 女の色気で課長をフリーズ! 今だっ、直せッ!)



後輩(はいっ!)グイッ


課長「……」シャキーン



男(おおっ、直った!)

メガネ(やってくれましたね!)

同僚女(上出来よ!)

後輩(どんな大魚を釣った時よりも嬉しい……!)



四人「作戦完了(ミッション・コンプリート)!!!」


課長「……なにが、ミッションコンプリートなんだね?」




四人「……あ」


男「あ、いや、その……」

課長「ふふっ、はじめてチームワークを発揮した気分はどうだい?」

男「えっ……」

同僚女「ってことは課長、もしかして……!?」

課長「ああ、全て気づいてたよ」

メガネ「そうか……そうだったんですか」

後輩「課長はオレたちを一つにするために、わざとカツラを!」

課長「そういうことさ」

課長「私はね、同じ課の仲間でありながら協力し合わない、君たちの“ズレ”を直したかったんだ……」

課長「個人プレイでは、いつか必ず限界が来るからね」


課長「これで、チームで協力することがいかにすごいことか分かったろう?」

男「はいっ! とてもよく分かりました!」

同僚女「私達一人一人じゃ、どうにもできなかった……」

メガネ「みんなで力を合わせたから、課長のカツラを直せたんです!」

後輩「チームワークってこんなにすごいんですね……感動しました!」

課長「うむ、分かってくれて嬉しいよ」ニコッ

課長「今日から我々は生まれ変わるんだ!」

四人「はいっ!!!」


……

…………

課長「てンめええええええええええええええええええ!!!!!」

カツラメーカー社員「ひいいっ……!」

課長「どこが“絶対ズレないカツラ”なんだよォォォォォ!!?」

課長「ズレまくったじゃねえか!!!」

課長「なんとかうまくごまかしたものの、部下の前で盛大にズレて大恥かいたわ!!!」

課長「この落とし前どうつけるつもりなんだ!!! ゴラァァァァァァァァァァ!!!!!」

カツラメーカー社員「も、申し訳ありませんっ!」

課長「謝って済むならカツラなんざいらんのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」






おわり

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