俺「アライさんパーク?」 (364)

友人「アライさんパーク、って知ってるか?」

俺「アライさんパーク?」

モンスターを狩るゲームに夢中になっている俺に、友人がそう尋ねてきた。

俺「アライさん、ねぇ... 名前ぐらい、か、なっ!」

アライさん。

アライグマが人型になった存在で、フレンズと呼ばれていること。
そして、人型になっても、元の獣と同じように振舞っていること。

これくらいしか知らない。

友人「ニュース見ねぇのかよ。」

俺「あんまり。」

報酬画面から切り替わったタイミングで、俺は友人の顔を見た。

俺「で、それがどうしたんだ?」

友人も雑誌から目を離し、こちらを見た。

友人「今度の休み、一緒に行かないか?」

意外だった。
友人が提案してくることは滅多に無いからだ。

俺「急にどうした?」

友人「たまには外に出て、遊ぼうぜ。」

確かに、俺は仕事以外に関しては出不精だ。
部屋に籠って、ゲームや漫画で時間を潰しているだけ。

俺「いいぜ。」

友人「よし、決まりだな。」

友人と来週の予定を決めて、友人は帰っていった。

俺は、布団に体を預けると、先ほどのことを振り返った。

俺自身、外に遊びに行くことを了承するなんて意外だな、って思った。
だけど、それには理由がある。
友人の目が今まで見たことのない色をしていたから。

俺が人のことを心配するなんて、な。

アラ虐を書きますが、アライさんパークにたどり着くまで、描写はないつもりです。
ご了承ください。

そして、あっという間に1週間が過ぎた。

それまでの間、仕事の合間とかに「アライさんパーク」なるものを検索してみたが、何も引っかからなかった。
ついでに、アライさんについても調べてみた。

どういう原理かは知らないが、突然動物が人の姿になったらしい。
その中でも、害獣と言われているアライグマは酷い、とのこと。
見た目が人に変わっただけで、やっていることは動物の時と変わらないみたい。
まぁ、駆除したくても人殺しみたいになっちゃうから、抵抗あるみたいだな。

そんで、他の害獣はっていうと、特に目ぼしい記事が見当たらなかった。
要は、よく分からん、ってとこ。

友人「よぅ、おまたせ。」

最寄り駅で待っていた俺の前に、ワゴンに乗った友人が現れた。

俺「デカすぎだろ...」

友人「とりあえず、助手席に乗れよ。」

俺は助手席に座った。

バタン

俺「なぁ、他に誰か来るのか?」

友人「いぃや、俺とお前の二人だけだぜ。」

そういうと友人は、車を発進させた。

俺「二人だけなのに、なんでワゴン?」

友人「アライさんパークに行く前に積むものがあってな。」

俺「アライさんパークって、キャンプ場か何かなのか?」

友人「着いてのお楽しみ、ってね。」

俺「あと、時間早すぎない?」

そう、集合時間は朝の5時だった。

友人「積むものが多いからね。」

それから、俺たちの会話は途切れてしまった。

別に、会話が途切れてもこいつとの空気感、っていうのが心地よかった。
久しぶりに感じる人の温もりがそこにはあったような気がする。

つーか、どんどん山に入っていくんだが、大丈夫か?

友人「とうちゃーく、っと。」

俺「山だな。」

友人「とりあえず、降りろよ。」

俺「おぅ。」

バタン

久しぶりに山に来た。
小さいときに遊んで以来かもしれないな。

友人「しばらく、山を登るぞ。」

俺「こんなところに、アライさんパークがあるのか?」

友人「違うって。」

友人が何やら、色々と支度をしているみたいだった。

友人「ワゴンに積むものがあるって言っただろ?」

そういえば、そんなことを言っていた気がする。

俺「で、俺は何か手伝えばいいのか?」

友人「物分かりがよくて助かるぜ。」

友人は、俺に籠を渡してきた。

俺「背負えばいいのか?」

友人「あぁ、頼む。」

俺「栗でも拾うのか?」

しかし、今の季節は初夏。
栗にしては早すぎる。

友人「違うものを拾うのさ。」

そういうと、何かを挟む道具を渡してきた。

友人「火バサミも渡しとくよ。」

これ、そんな名前なんだ。

俺「こんなところに、何があるんだか。」

友人「何か聞こえてくるだろ?」

俺「何って?」

とりあえず、耳を澄ませてみる。

『...のだ!』
『...のりゃ!』

俺「女の声だな?」

友人「何だと思う?」

俺「今流行りの山ガールか?」

友人「そんなことは知ってんのな。」

俺「アニメでちょっとな。」

俺たちが声のする方に近づいていった。
そして、それがだんだん明らかになっていく。

???「あ、人が来たのだ!」
???「ひとしゃん、おかーしゃんをたしゅけてほちいのりゃ!」

そこには、籠罠に手足を曲げて収まっている女の子。
そして、籠の外には、その女の子を手のひらサイズにしたくらいの、小さい女の子がいた。

違和感としてあるのは、彼女達の頭に動物の耳、そして、尻尾があることだった。

友人「これが、巷で噂のアライさん。」

衝撃的だった。
噂程度でしか知らなかったとはいえ、ここまで人とそっくりなのか。

俺「これ、どうすんだ?」

友人「このまま、ワゴンに積むんだよ。」

俺「マジかよ...」

俺は、固まったままそこから動けなかった。

でも、友人は違った。

友人「アライさん、他に家族はいないの?」

屈んだ友人は、優しくアライさんに話しかけていた。

アライさん「ヒトには教えないのだ!」

友人「教えてくれたら、おいしいものを上げるよ。」

友人は、腰のポーチからお菓子を取り出して、アライさんに分け与えていた。
アライさんはそれを素早く奪い取ると、それを食べ始めたのだった。

アライさん「おいしいのだ!」クチャクチャ

汚い。
まるでマナーのなってない、小学生みたいだな、ってその時思ってしまった。

友人「おいしかった?」

アライさん「おいしかったのだ!」

友人「じゃあ、家族のこと、教えてくれる?」

アライさん「ここから大きい樹が見えるのだ?」

ここからでもはっきり分かる。
この山の長というべき樹なのだろう。

アライさん「あそこでチビが5匹待っているのだ!」

友人「アライさんはこの中で休んでいて。運んであげる。」

アライさん「これはラクチンなのだ!」

重そうな籠を軽々と持ち上げる友人の姿に唖然となった。
そんなに力があったなんて。

アライちゃん1「うゆ? あらいしゃんはどうしゅりゅのりゃ?」キョトン

友人「アライちゃんも運んであげるよ。」

友人は俺から火バサミを奪い取ると、それでアライちゃんを捕まえた。
そして、それを俺の背負い籠に丁寧に入れた。

友人「アライちゃんはここで我慢してね。」

アライちゃん1「わかったのりゃ!」キャッキャッ

こうして、俺たちはアライさんの案内で場所を移動した。

俺の感想は、何も言えない、そんな感じだった。
本来は、雄大な存在で圧倒されるであろう大樹が、所々腐りかけて悪臭を放っていたのだ。

俺は思わず吐きそうになってしまった。

アライさん「フハハハハ! いい匂いなのだ!」

俺は、正気を疑った。

これが、いい匂い?
この樹をこんな風にしたのは、こいつらなのか?
どうして?

俺の思いを悟ったのか、友人は顔を横に振ると、アライさんに話しかけた。

友人「アライさん、家族を呼んでくれるかい?」

アライさん「チビ達! 出てくるのだ!」

「「「「「のりゃー!」」」」」

樹の根元から、5匹のアライちゃんが這い出てきた。
正直、気持ち悪かった。

アライちゃん2「おしょかったのりゃ!」プンプン
アライちゃん3「このひとたちはなんなのりゃ?」キョトン
アライちゃん4「おなかしゅいたのりゃ!」ビエーン
アライちゃん5「もうねむいのりゃ...」フワー
アライちゃん6「のりゃ!」シッポフリフリ

友人「これで全部かい?」

アライさん「そうなのだ。これがアライさん自慢のチビ達なのだ!」

友人「そうなんだね。」

そういうと、友人は素早く、俺の背負い籠にアライちゃんたちを入れていった。

アライさん「チビー!」

友人「一旦、ワゴンに戻るぞ。」

俺「お、おぅ...」

アライさん「おい、嘘を付いたのか!?」

ガン

友人が持っている籠を地面に落とした。

友人「うるせぇぞ。殺されたくなかったら、黙ってろ。」

アライさん「ひぃ!」ブルブル

その時の友人の顔は、俺から見ても怖かった。
いつも温厚なあいつの怒りを見たのは、この時が初めてかもしれない。

友人とワゴンに戻ってきた。

友人は、アライちゃんを手早く1つの籠罠に詰めていった。
これでワゴンの荷台に籠罠が2つある状態だ。
まぁ、2列目も席を倒しているので、ほぼ荷台のようなものだけど。

聞いた話では、アライさんの力では籠罠は破壊することが出来ないらしい。

アライさん一家が何かを言っているようだったが、友人は力強くトランクをしめた。

バンッ

友人「さて、もう1回行くぞ。」

俺「すまん、あと何回くらい続けるんだ?」

友人「罠のポイントを全部回収するまで、かな。」

俺は、ここに来たことを後悔した。

俺「まだ、あんな光景を見なきゃいけないのか...」

すると、友人が振り向いた。

友人「あんなのマシな方だぞ。」

俺は絶句した。
あれがマシな方、ってなんだよ。

友人「これを使わない限りな。」

友人の指さすもの。
それは、猟銃だった。

俺「お、お前は、人を、撃つ、のか...」

喉が渇いていた。
声が枯れてうまく出ないなりに、音にした。

友人「あいつらは、人の皮をかぶった獣だ。」

友人「この世から排除しなきゃいけないんだよ。」

いつの間にか、友人と住む世界が違っていたことに気付いてしまった瞬間だった。

全ての罠を確認して戻ってきたころには、ワゴンの荷台は大変なことになっていた。

臨時エンカウントも含めると、アライさんが7匹、アライしゃんが16匹、アライちゃんが49匹。

アライちゃんとは、産まれたばかりのアライさんのことらしい。
で、アライさんとアライちゃんの中間ぐらいの成長を、アライしゃんと呼ぶらしい。

俺「これを運ぶのか?」

友人「あぁ。」

バンッ

俺「臭くないか?」

友人「ファブってるし、大丈夫でしょ。」

俺「それだけ?」

友人「運転席側との間に仕切りがあるから、匂いは来ないぜ。」

俺「そうだといいな。」

バタン

友人「声はうっすらと聞こえるけどな。」

今日は、衝撃的なことが多すぎる。
頭がパンクしそうだ。

友人「さて、当初の目的に行きますか。」

俺「どこだっけ?」

友人「アライさんパークだよ。」

俺は、もしかしたらこの時点で分かっていたのかもしれない。
でも、拒絶したかった。

そして、友人がどうしてこうなってしまったのか、知りたくなってしまった。

これ荷台に乗るのか…?
車すっげー重そう

>>14
荷重計算してませんでした。
そこは、気にしない方向で、お願いします。

俺たちは、高速道路を走っていた。
行き先はおそらく、アライさんパークなのだろう。

後ろから時折驚きの声が聞こえたが、無視することにした。

俺「なぁ、聞いてもいいか?」

友人「何だ?」

俺「どうして、猟師になったんだ?」

友人「...やっぱ、聞いてくるよな。」

俺「言いたくないなら、別にいいけど。」

友人「いや、お前には聞いてほしい。」

俺は、友人の言葉を待った。
長い沈黙の後、友人が口を開いた。

友人「アライさんのせいで、実家が無くなった。」

俺は、理解が出来なかった。
必死に意味を考えているところに、友人が続けた。

友人「実家が荒らされてさ、両親と祖父母が殺されたんだ。」

衝撃的だった。
そんな素振りを一度も見せたことが無かっただけに、驚きを隠せなかった。

俺「いつ...なん、だ?」

友人「3年前だよ。ほら、夏に遊ぼうって言って、俺がブッチした時。」

そんなことは知らなかった。
こいつは人気者だから、色んな所から声を掛けられて、時間を過ごしていたのかと思っていた。

いつも週末は遊んでいたから、長期の休みぐらいは特に気にしていなかった。

友人「お前はさ、こまめに連絡してこないだろ?」

確かに、俺は他人との交流が極端に無い。
他人に関心が無いのかもしれない。

友人「あん時は、それで助かったよ。気持ちの整理も出来てさ。」

俺「そういえば、弟と妹がいる、って言ってなかったか?」

友人「弟は短大に通ってて一人暮らし、妹は友人の家でお泊り会。」

俺「無事だった、のか?」

友人は小さく頷いた。

友人「実家を襲ったと思われるアライさんは、猟友会に殺処分されたって聞いた。」

友人「でも、俺の心は納まらなかったんだ。」

友人のハンドルを握る力が強くなるのを感じた。

友人「だから、俺は猟師の資格を取って、アライさんを狩りつくすことを決めたんだ。」

俺「免許は?」

友人「2年前に取ったよ。」

俺「復讐、なのか?」

友人は小さく頷いた。

俺「アライさんを狩りつくしたら、どうするつもりだ?」

友人「まだ、分からねぇよ。」

俺「そっか。」

やっぱり、友人とは住む世界が違うんだな、と改めて実感した。

とりあえず、今日はここまで

>>14
アライさんを40kg、アライしゃんを20kg、アライちゃんを1kgとした場合、話の匹数だと649kgになる。
ハイエースなら、いけそう。

高速道路を降りると、また山に向かって走り出す。
カーナビには何も表示されていない。

俺「なぁ、本当にこっちで合ってんのか?」

友人「合ってるよ。」

俺は何度も、前の道とカーナビを見直していた。

友人「アライさんパークは、秘密のエリアなんだ。」

俺「そういえば、サイトも無かったな。」

友人「そりゃ、そうさ。」

しばらく走っていると、看板が見えた。
看板には、左が駐車場、右が関係者入り口と示されていた。

普通なら、「ようこそ、○○へ」みたいな案内の看板が出ていてもおかしくない。
でも、ここはそういったものが何もなかった。

友人は分かれ道を迷うことなく、右へ曲がった。

俺「おい、そっちは関係者入り口だぞ。」

友人「大丈夫だって。」

さらに、森の中を走っていく。
周りは木々しか見当たらない。

俺「本当に、隠されているんだな。」

友人「アラ信に見つかると厄介だからな。」

俺「アラ信?」

俺の疑問に友人はため息をついた。

友人「お前、本当に外のことは無関心だな。」

俺「すまん。」

友人「アライさんのことに限らず、少しは外のことも興味持てよ。」

俺「考えとくよ。」

俺は窓にもたれ掛かり、外を見ながら到着するのを待つことにした。

しばらくすると、料金所ゲートのような物が現れた。

警備員「はい、止まって。」

警備員の指示に従って、友人は車を止めた。

警備員「通行証、見せて。」

ゴソゴソ

友人「これで。」

友人は警備員に何かを見せていた。

警備員「はい、行っていいよ。」

友人「お疲れ様。」

警備員に一言かけて、友人は車を発進させた。

俺「さっきの何だったんだ?」

友人「関所みたいなもんだよ。」

俺「そんなのあるんだな。」

友人「アラ信対策も兼ねてね。」

俺には、アラ信が何なのか、イマイチ理解できなかった。

さらに進むと、建物が見えてきた。

俺「あれは?」

友人「集積所みたいなもんかな。」

目の前で、人が車を誘導していた。
すると、友人は窓を開けた。

友人「何番に止めればいいですかー?」

誘導員「2番にお願いしまーす。」

友人「了解でーす。」

友人は窓を閉じると、2番と書かれたエリアにバックで停めた。

友人「ちょっと話があるから、ここで待ってて。」

俺「おぅ。」

バタン

俺は車内に取り残された。

すると、トランクの開く音がした。
透明の仕切り越しに後ろを見ると、罠籠が回収されて集積所の中に入っていくのが見えた。
そして、誰かとやり取りする友人の姿も見えた。

しばらくすると、友人が戻ってきた。

友人「おまたせ。」

俺「ここで、アライさんを引き取ってもらっていたのか?」

友人「そうだよ。」

俺「アライさんパークって、アライさんの引き取り所のことだったのか?」

友人「まさか。」

友人は来た道とは反対の、奥へと車を進めた。

俺「まだあるのか?」

友人「今のは導入部分だよ。」

物語なら、ここからが本編、といったところなのか?

しばらくすると、駐車場があった。
友人はそこに車を停めると、降りるように促してきた。
それに従い、俺は車を降りた。

友人「着いたぜ。」

俺「何だ、ここは...」

動物園などで見られる、チケット売り場とゲートが見える。
しかし、看板は見当たらない。
これでは、ここが何なのか分からない。

友人「行くぞ。」

俺「あぁ。」

俺は意を決して、進んでいった。

まず、チケット売り場にやってきた。

係員「いらっしゃいませ。」

友人「これなんですけど。」

友人が何かを見せている。
おそらく、警備員にも見せていたものだろう。

ピッ

係員は、それにバーコードリーダーをかざして、何かを読み取ったみたいだ。

係員「えーっと、今回はすごいですね。」

カタカタ

係員「今回は、こちらになります。」

係員から、入場用のチケットが渡されたかと思ったが、違った。
そこにあるのは現金だった。

友人「どうも。」

係員「そちらの方は?」

友人「俺の連れです。」

係員「同伴は1人まで大丈夫ですので...、はい、あちらからどうぞ。」

やり取りが終わったのか、こちらに戻ってきた。

友人「ほら、バイト代。」

友人は、俺に1万円札2枚を渡してきた。

俺「何もしてねぇだろ。」

友人「積み荷の手伝いしてくれただろ。」

俺は、一応受け取ることにした。
断ったら、あとが面倒だと思ったからだ。

俺「...ありがと。」

友人「よしっ、早速入ろうぜ。」

俺たちが中に入ろうとした時だった。

係員「お客様。」

係員が呼び止めてきた。

友人「どうしました?」

係員「お連れ様にこれを。」

係員が渡してきたのは、腕章と園内マップだった。

係員「園内ではこの腕章を見える位置につけていてください。」

俺「分かりました。」

俺は、早速腕章を身に着けた。

係員「お連れ様もいるので問題ないかと思いますが、こちらが園内マップになります。」

俺「どうも。」

俺は、園内マップをその場で見ようとした。
すると、友人が俺の腕を掴んだ。

友人「それは、園内でしか見ちゃいけないんだよ。」

そのまま連れていかれる形で、園内に入ることになった。

俺「ちょっ、待てって。」

係員「ごゆっくりお楽しみください。」

係員に向かって会釈し、俺たちは中へと入っていった。

ある程度進んだところに、椅子があった。

友人「とりあえず、ここで座ってゆっくり見ろよ。」

俺「ってて...」

友人の引っ張る力があまりに強かったため、腕を擦りながら腰を下ろした。

俺「さて、何があるんだ?」

俺はマップを見て、簡単に見回してみた。
そこでようやく、アライさんパークの意味を理解した。

『アライさんパークへようこそ。』

『ここでは、色んな方法でアライさんの駆除を体験できます。』

『【スポーツエリア】、【ゲーセンエリア】、【レーシングエリア】、【ショーエリア】、【

バン

俺は思わず、園内マップを閉じた。
乱暴な閉じ方をしたため、園内マップがクシャクシャになってしまった。

そんなことはどうでもいい。

俺は、息苦しくなっていくのを感じた。
何がどうなってる?

頭が考えることを拒否しているかように、視界が回る感覚に襲われた。

俺「うっ!」

突然の吐き気。

友人「大丈夫か!?」

俺「ト、トイレは...」

友人「あっちだ!」

連れて行こうとする友人の手を俺は押しのけた。

俺「大、丈夫、だから...」

フラフラになりながらトイレの個室に入り、盛大に吐いてしまった。

俺「オゥエッ!」

ここでようやく気付いたんだ。
ヤバい領域に、俺は踏み込んでいるんだ、ということに。

とりあえず、ここまで。

園内は、次回更新で書きます。

俺はだいぶ落ち着いてきた頃に、個室から出た。
蛇口で顔を洗い、口を濯ぐ。

ペッ

トイレから出ると、友人が心配そうに待っていた。

友人「大丈夫か?」

俺「まだ、気分が整ってないや。」

俺は友人の隣に腰かけた。
そして、俺たちはしばらく沈黙した。

その空気を打破したのは、俺からだった。

俺「お前はさ、俺に何かを見せたくてここに連れてきたんだろ?」

友人は、顔を上げて俺の方を見た。
そして、小さく頷いた。

俺「俺が無知だったから、あんまりスムーズに行かなかったみたいだけどな。」

友人「ここまで社会に興味が無いとは思ってなかったよ。」

俺たちは軽く笑いあった。
ようやく、本来の調子が取り戻せたような気がした。

友人「今日は、とりあえず帰るか?」

俺「いや、腹は括った。」

俺は友人を見た。
真剣な表情のつもりだ。

俺「お前が見せたかったものを見せてくれ。」

友人「園内マップを軽く見ただろ?」

俺は軽く頷いた。

友人「ここまで来てなんだけど、お前は狂気の世界を見る勇気はあるか?」

俺「自ら、狂気の世界、って言っちゃうんだな。」

友人「まぁ、間違ってないし。」

俺は、友人にこう告げた。

俺「案内してくれ。」

俺の体は震えていた。
自分でも結構強がっている方だと思う。

友人「分かったよ。」

友人もその姿を汲み取ってくれたのか、案内してくれるようだ。

俺は、友人の案内で狂気の世界へと入っていった。

俺たちの現在地から近いエリアは、【ゲーセンエリア】だった。

俺「この建物か?」

見た目は、古びたゲーセン、といったところだ。

友人「そのまんまだけど、ゲーセンの感覚でアライさんを駆除するアトラクションが集まった場所だ。」

俺「料金って、どうなってるんだ?」

友人「料金?」

俺「ほら、プレイ料、ってやつ。」

友人「それなら、入場料に含まれてるよ。」

俺「俺、払ってないんだが。」

友人「関係者は、アライさんを連れてくるのが料金代わりだから。」

俺「そうだったんだ。」

友人「あと、ここは保健所まがいもしてるから、捕まえた数に応じて報酬もゲットできる、ってわけ。」

俺「関係者は、捕獲の苦労の代わりに顔パス、ってわけか。」

友人「そういうこと。」

俺たちは、建物の中へと入っていった。

建物の中は、混沌としていた。

『やめるのだー!』
『助けるのだー!』
『痛いのだ―!』
『おかーしゃーん!』

アライさんの叫び声が常に響き渡っていた。
正直、気味が悪かった。

友人「これ、付けてろよ。」

友人から、無線機と耳栓を渡された。
片耳に無線機のイヤホンを、片耳に耳栓をする。

友人『こうすれば、アライさんの叫び声を軽減できるから。』

俺『なるほど、ね。』

建物の中にある設備は、どこのゲーセンにもありそうなものばかりだった。
アライさんが絡んでいることを除けば。

とりあえず、ここまで。

各アトラクションは、後日公開します。
2,3個小分けにして更新する予定です。

乙です
アラ虐Wikiの載ってるアライスポーツセンターを思い出した

>>44
そこから、インスピレーションされたのはあります。
なので、すでに公開されているネタと被る可能性があります。

それだけ、ご了承ください。

<アライバスケ>

俺『バスケットのゴールがある。』

友人『みたことあるだろ?』

俺『やったことないけどな。』

俺は設備を見回した。

俺『どこに駆除要素があるんだ?』

友人『じゃ、俺が試しに見せてやるよ。』

友人がフリースローゲームの前に立ち、会員証をかざした。

ピッ

どうやら、かざすエリアが作られており、それで管理しているようだ。

『ヨウコソ、タノシンデイッテネ』

無機質な音声が流れる。

ウィーン

何かが動いているようだ。

そのとき、俺は気づいた。
ゴールの真下に、四角い穴が空いていることに。

ガシャン

そこに現れる形で、アライちゃんがセットされた。
両手両足は、固定されているようだ。

アライちゃん1「あらいしゃんをかいほうするのりゃ!」ガタガタ

『ゲームスタート』

ガシャン

ゲートが解放されて、ボールが転がってくる。
友人は一つ一つ丁寧に、ゴールへ納めていく。

ポイ ポイ ポイ

ガコン ガコン ガコン

ゴン ゴン ゴン

アライちゃん「いた! やめ! ぴぎぃ!」

バスケットゴールに収まったボールが落下する。
そのとき、アライちゃんに当たることでダメージを与え、結果として駆除に繋がるようだ。

このとき、アライちゃんの叫び声が聞こえる。
耳栓をしていても聞こえるとは、不快だ。

何よりも、人の姿をしたアライちゃんが痛めつけられる姿が受け入れられなかった。

そして、ボールが当たるたび、どんどん弱弱しくなっていく。

アライちゃん「あ、あらい、しゃんが、かわいしょう、なのりゃ...」ピクピク

そして、制限時間がどんどん少なくなっていく。

ピーッ

『ゲームシュウリョウ』

結果は...

アライちゃん「...」シーン

顔の原型は留めておらず、血まみれの体がそこにはあった。

俺『こういうことか...』

人が死ぬ。

厳密には、《人》ではないのだが、人の形をしたものが目の前で死ぬのは衝撃的だった。
体の震えが止まらない。

友人『こういうことだ。』

ゲームを終えた友人が近づいてきた。

友人『アライさんを詳しく知らないお前にとっては、人が殺されているのを見るのと同じかもな。』

俺は、返答が出来ず、立ち尽くすだけだった。

友人『まだ設備はあるけど、見てみるか?』

友人が俺の肩に手を乗せた。

俺は、友人の方をを見て小さく頷いた。
ここで出てしまったら、ここに来た意味がない。

友人『よし、次に行くか。』

友人『ちなみに、アライさんを痛めつける行為を「アラ虐」っていうんだ。』

俺『「アラ虐」?』

友人『そう。アライさんを虐げる、の略かな?』

俺『その反対が、「アラ信」ってわけか?』

友人『そう。アライさんを信仰する、の略だったかな?』

俺『何で疑問形なんだよ。』

友人『そこまで、把握する必要ないかな、って。』

俺『適当だな。』

俺たちは、移動中にそんな会話をしていた。

他のゲームは、後日書きます。

>>43 での発言撤回します。

1個ずつ、あげるようにします。
最低、1週間に1アトラクションを目標にします。

<アライパンチ>

俺『何だ、これ?』

縦長の画面とグローブしかない設備があった。

友人『パンチングマシン、って知ってるか?』

嫌な予感がした。
大体の予想が出来てしまったのだ。

俺『アライさんがいないぞ。』

念のため、友人に確認してみる。

友人『まぁ、そこで見てろよ。』

俺『あぁ。』

ピッ

友人は会員証をかざすと、設備の床からサンドバックがせり出してきた。

ウィーン

そこには、十字架に張りつけられたように、アライちゃんが固定されていた。
予想通りだった。

俺『アライちゃんにしては大きいな。』

友人『これ、アライしゃんだぞ。』

区別がイマイチ分からない俺にとっては、同じに見えてしまう。

アライしゃん1「さっさとアライしゃんをかいほうするのら!」ガタガタ

サンドバッグに固定されたアライしゃんは、抜け出そうとしているのか、ひたすら暴れていた。

『フハハハハ! ヒトナンテ、イチコロナノダ!』

無機質な音声とともに、後ろの画面にアライさんが映し出された。

アライしゃん1「そうなのら!」

アライしゃん1「いまのは、られなのら?」キョロキョロ

アライしゃんは声の主が分からずに、辺りを見回していた。
それによって、一時的に暴れるのを止めてしまった。

『ラウンド、ワン! ファイ!』

そして、ゲームが始まった。

ドガン

アライしゃん1「ぎゃびぃ!」

画面の音声に合わせる形で、友人は勢いよくストレートを決めた。
しかも、アライしゃんの顔面にクリーンヒットしていた。

『グワー、ヤラレタノダ!』

機械音声が流れた。
画面上のアライさんは倒されていた。

俺は、起き上がってこないサンドバッグの方を見てみた。

アライしゃん1「...」シーン

一発KOだった。
目や鼻、口といった顔中から、血が流れ出ていた。
もし暴れ続けていれば、致命傷は免れたのかもしれない。

ウィーン

サンドバッグが倒れたまま床下に下がっていった。
すると、新しいサンドバッグがせり出してきた。

俺『何回やるんだよ。』

友人『全3ラウンドだよ。』

アライしゃん2「うー! はずれないのら!」ガタガタ

サンドバッグに固定されたアライしゃんは、先ほどのアライしゃんと同じように、暴れていた。

『フハハハハ! カタキウチナノダ!』

無機質な音声とともに、後ろの画面に新しいアライさんが映し出された。

アライしゃん2「られかいるのら?」キョロキョロ

今度のアライしゃんも声の主を探すように、辺りを見回していた。
そして、暴れるのを止めてしまった。

『ラウンド、ツー! ファイ!』

ドガン

アライしゃん2「ぼぎゅっ!」

画面の音声に合わせる形で、友人は勢いよくストレートを決めた。
だが、アライしゃんの顔面からすこしそれてしまったようだった。

友人『失敗したなぁ。』

『マダ、ヤラレテナイノダ!』

機械音声とともに、サンドバッグが起き上がってくる。

アライしゃん2「は、はすへえ、おしい、おあ...」ピクピク

顎を砕かれたのか、上手く喋れないアライしゃん。
見るに堪えられない光景だった。

俺は恐る恐る聞いてみた。

俺『チャンスは何回あるんだ?』

友人『各ラウンドで、1回までだな。』

俺『なら、このラウンドはこれがラストか。』

『レディー! ファイ!』

ドガン

今度は顔の上部を狙ったようだ。

『グワー、ヤラレタノダ!』

機械音声が流れ、画面上のアライさんは倒されていた。

おそらく、サンドバッグに張り付いていたアライしゃんは死んだのだろう。

大体のゲーム内容は理解した。

仕組みは分からないが、後ろの画面のアライさんとサンドバッグのアライしゃんが連動しているようだ。
そして、アライしゃんが死ぬと、画面のアライさんを倒したことになる。

俺『こういうことだろ。』

友人『大体そんなとこ。』

ウィーン

サンドバッグの交換が始まった。
これが最後のラウンドだ。

アライさん1「このー! アライさんを離すのだ!」ジタバタ

最後のサンドバッグは、先ほどよりも一回り大きい。
そして、アライしゃんではなく、アライさんが固定されているようだ。

『フハハハハ! ココガキサマノ、ハカバトナルノダ!』

無機質な音声とともに、後ろの画面に新しいアライさんが映し出された。
こちらも、今までのアライさんより一回り大きい。

アライさん1「うるさいのだ! このっ! 外れないのだ!」ジタバタ

今までの個体と違い、ひたすら暴れているため、頭が安定していない。
これでは、頭を狙うのは難しいだろう。

『ファイナル、ラウンド! ファイ!』

ドガン

アライさん1「いっ!」

今度のストレートは頭を狙っていなかった。
鳩尾を狙ったのだ。

『マダ、ヤラレテナイノダ!』

機械音声とともに、サンドバッグが起き上がってくる。
アライさんは呼吸困難になっているようで、項垂れていた。

俺『暴れるのが治まったから、頭が狙いやすいな。』

『レディー! ファイ!』

友人『アライさん、大丈夫か?』

友人はアライさんに声を掛けていた。
それに反応するように、アライさんは顔を上げた。

ドガン

友人は顔にめがけてストレートを決めていた。

『グワー、ヤラレタノダ!』

サンドバッグも起き上がってこない。
おそらく、この個体も死んだのだろう。

確認したい気持ちもあったが、やはり見てられない気持ちが勝っていた。

『ゲーム、シュウリョウ!』

画面に、クリアという文字が表示されていた。
どうやら、ゲームは終わったようだ。

俺『最後のあれ、何だったんだ?』

グローブを外す友人に、声を掛けた理由を聞いてみた。

友人『あーやって、声かけて顔をあげさせないと狙いづらいからな。』

俺『手慣れてるなぁ。』

友人『何回もやればコツは掴めるさ。』

こんなものの何が楽しいのか、さっぱり理解が出来なかった。

今回はここまでです。

乙です!
読者としては沢山読みたいですが、作者さんの無理のないように…
応援してます!

>>64
単純に、書くネタはたくさんあります。
大雑把に方向性も考えてあります。

詳細に落とし込むことが出来てないだけです。

というより、大量のアライさんが出てくるので、言い回しが被らないように考えるのがツライ。

<アライ叩き>

俺『モグラ叩き?』

3×3の計9か所に穴が空いた設備があった。
だが、穴には仕切りがあり、中を見ることが出来ない。

しかし、アライさんが見当たらない。
そういうことなんだろう、と理解した。

俺『ここから出てくるのがアライさんなのか?』

友人『厳密には、アライしゃんなんだけどな。』

設備の隣に、ハンマーが提げてあった。
ハンマーの先端を触ってみると、革で覆われていて柔らかかった。
おそらく、中に綿か何かが入っているのだろう。

俺『トンカチじゃないんだな。』

友人『そんなんでやったら、的を外した時に設備が痛むだろ?』

俺『俺は、心が痛んでるよ。』

友人『今回も見てるか?』

俺は頷いた。

友人が設備の前に立ち、会員証をかざした。

『ヨウコソ、タノシンデイッテネ』

また、無機質な音声が流れた。

友人はハンマーを手に取り、構えていた。

『モウスコシ、マッテテネ』

準備中の機械音声が流れる。

俺『待って、って何を?』

友人『裏で、スタッフが仕込んでるんだよ。』

俺『全部壁際にあるのって、そういう理由なのか?』

友人『いつ来るか分からない設備に放置してて、衰弱してるアライさんを倒しても、爽快感が無いだろ?』

友人の感性が理解できなかった。

爽快感?
アライさんに何を求めているんだ?

友人『会員証をかざしてるのは、裏のスタッフに客が来たことを知らせるためなんだよ。』

スタッフは、ある意味地獄の仕事をしているわけか。

『ジュンビ、カンリョウシマシタ』

友人『よしっ、いっちょ叩き潰しますか。』

また、頭を潰されるところを見るのか。
少し憂鬱になるな。

『ゲームスタート』

機械音声とともに、穴の仕切りが取り除かれた。

アライしゃんA1「ようやく、えられたのら!」プハー
アライしゃんA2「ここは、おこなのら?」キョロキョロ
アライしゃんA3「アライしゃんをかいほうするのら!」ジタバタ
アライしゃんA4「あれか、たすけるのら!」ジタバタ
アライしゃんA5「おかーしゃーん!」ビエーン
アライしゃんA6「アライしゃんは、なにもわるいことなんてしてないのら!」ジタバタ
アライしゃんA7「え、えられないのら!」ピョンピョン
アライしゃんA8「おなかすいたのら!」ビエーン
アライしゃんA9「アライさんはかしこいのら!」ニッコリ

異様な光景だった。
穴からアライしゃんの頭だけが出ていた。

俺『これぐらいなら、出てこれそうなんだけど。』

俺は、疑問に思ったことを口にした。
すると、友人の手が止まった。

友人『手と体を固定するように紐で巻き付けてあるんだって。』

俺『だったら、ジャンプすれば出てこれそうな気がするけど。』

友人『底と足を、紐で固定してるみたいだぞ。』

そういうと、友人はアライしゃんを見回し、腕を振り上げた。

友人『そこだ!』

ボスッ

アライしゃんA8「じびぃ!」ゴキッ

何かが折れる鈍い音だった。
それを見て、ヤバいと思ったのだろう。

他のアライしゃんが穴に隠れようとした。

友人『逃がすか!』

ボスッ

アライしゃんA5「おがっ!」ゴキッ

また、鈍い音がした。

気付いた時には、7つの穴にアライしゃんが引っ込んでしまった。
そして、舌を出し、情けなく死んでいるアライしゃんが2匹いた。

アライしゃんA5「...」シーン
アライしゃんA8「...」シーン

ズルッ

あ、重力に負けて穴に入っていった。

さて、残りの処分はどうするのか?
プログラムで動くモグラ叩きとは違い、出ないという意思であれば、叩くことが出来ない。

俺『それを蹴って脅かすとか?』

友人『いや、自分のものじゃないからマズいでしょ。』

台バンがダメってなると、どうするんだ?

アライしゃんA1「...」ジーッ

1匹、頭を出してるな。

ボスッ

あ、カラぶった。

アライしゃんA1『のらららら! まぬけなのら!』ケラケラ

これがキッカケとなったのか、他のアライしゃんも真似をしだす。
それに食らいついていく友人。

完全に、アライしゃんに弄ばれてるじゃねぇか。

でも、その間に1匹は仕留めてるんだよなぁ。

アライしゃんA3「え...」ピクピク

こいつも重力に負けて、穴に入っていった。
そのうち、死ぬんだろう。

残りは、6匹。

友人『残りの奴ら、疲れてるみたいだな。』

俺『そうなのか?』

友人『ハアハア、言ってるぞ。』

すると友人は、ハンマーを元の位置に戻すと、設備から下がった。

俺『どうした? まだ終わってないぞ?』

友人『これから始まるんだよ。』

俺は理解が出来なかった。

『アナカラ、デテコナイネ』

キュイィン

何か、金属音がする。
しかも、穴の中が騒がしいような...

友人『心しておけよ。』

俺『何がだよ。』

俺の問いかけに、友人は無言で設備の方を指さした。

『カットノジカンダヨ』

ギャウィギュウィギャウィギュウィ

何かを切る鈍い音と、アライしゃんの叫び声が聞こえてきた。

アライしゃんA1『ぎぃにゃー!』
アライしゃんA2『やべげー!』
アライしゃんA4『たしゅげ!』
アライしゃんA6『ぴぃぎゅる!』
アライしゃんA7『のびゃー!』
アライしゃんA9『おが!』

しかも、9つの穴から血飛沫のようなものが噴出している。

俺の理解が追い付いていなかった。

友人『一定時間、全てのアライしゃんが出てこないと、あぁやって強制終了になるのさ。』

俺『あれ、どうなってるんだ...?』

友人は俺の顔を見た後、設備の方を見た。

友人『筒の半分くらいの高さに丸ノコがセットされていてな。』

その言葉で、大体理解した。

俺『すまん。続きは聞きたくない。』

友人『悪い。配慮が足りなかったな。』

そんなやり取りをしていると、機械音声が流れてきた。

『ゲームシュウリョウ』

そして、穴の仕切りが締められた。

『マタ、アソンデネ』

ちなみに、仕切りが締まるまでの間、呻き声が聞こえていた。
おそらく、穴の中のアライしゃんが辛うじて生きていたのだろう。

気持ちが悪かった。

俺『こんな悪趣味なゲーム、考える奴の気が知れないな。』

友人『おい、顔色がヤバいぞ。』

このゲームは、かなりダメージがデカかった。
だけど、俺は首を振った。

俺『次に行こうぜ。』

友人『出なくていいか?』

俺『次は、軽めで頼む。』

友人『分かったよ。』

俺たちは次の設備へと向かった。

今回は、以上です。

現在書こうとしている、残りのゲームセンターネタは以下の通りです。

UFOキャッチャー
エアホッケー
ピンボール

他にゲームセンターにありそうなもので、アラ虐出来そうなものってありますか?
ヒントください。

競馬ゲームでアライちゃんがゴールするまでに色々な罠が仕掛けてあるとか
メダルゲームでアライちゃんを箱に閉じ込めて、当たりを出すと上からメダルが
降ってきて圧死するとかですかね

操り人形形式でストリートファイター(早く終わらせるために拳にスパイクを付けて)

ヨチダービー(メダルゲーの競馬形式?)。シュレッダーに追いかけられる。勝っても負けても殺処分

レース系のゲーム。ランニングマシンの上をヨチらせる。左右の誘導は電気ショック

アライさんを轢くのを競うレースゲームとか?
ゲーム内でアライさんを轢く事に裏で処分とか

>>80
アラスコのシロウ先生がアライさんの脳に電子回路を取り付けて、
ゲームのコントローラーで操作が出来た実験をやってたな
アライさんを操作して対戦格闘ゲーム(リアルけもフレふぁいと!)とか面白そう

電撃イライラ棒ならぬ電撃ヨチヨチ棒

手足が縛られているアライさんをボールにして投げて、ボーリングのピンにくっついているアライちゃん達とアライしゃん達に当てて穴に落とすアライボーリング。
当たったアライさん達、もしくは外れたボールのアライさんはこのまま落ちた後大きなシュレッダーに巻き込まれて殺処分される。当たってない、もしくは当たっても耐えたアライちゃんとアライしゃんは強制的に落として大きなシュレッダーに巻き込まれて殺処分される。
全員落としたらストライク、残っても2投目で全て落としたらスペアを取る。死んだアライさん達は代わりのボールとピンを用意される。
ついでに言うと蹴っ飛ばしてもOK。

ポップンミュージックみたいな大きいボタンを叩くタイプの音ゲーとか?
当然ボタンは筐体から頭だけ出したアライちゃんで

シューティングゲームとか面白そうだけど実弾で遊ぶのは法的に難しいだろうなぁ

エアガンで一定数ヒットしたアライさんは爆発する仕組みにするとか
あるいは毒液のペイント弾で当てて遊ぶ感じとかどうかな

壊しやすい障害物を用意して、隠れたアライちゃんを探したりするのも楽しそうだ

古いゲーセンによくあるパンチ力を測定する奴のハンマーバージョンはどうだろう?

ハンマーで地面を叩いたら、鉄の塊?の代わりにギロチンの刃のようなものが飛び上がる
そして10センチ単位でアライちゃん達が固定されていて、瓦割りよろしくぶった切られる
てっぺんには妊婦アライさんが括りつけられていて、股から切り裂かられて胎児のアライちゃんと血肉や臓物をぶちまける
クリアしたらファンファーレが鳴って終了

ちゃんならともかくさんやしゃんをすぐに殴り殺せるのは凄いな

>>89
グローブの先に硬いものを仕込んでおけば、大丈夫じゃないですかね?

皆さん、様々な意見を出していただき、ありがとうございます。

出していただいた案の中には、他のエリアで使おうと思っていたネタがありました。
また、自分の想像の中で、機材コストなどを考えて、書き起こせそうなものがあれば、自分の案の後に書かせていただきます。

あと、パーク内の説明を一通りする予定なので、
「この内容、半日で回りきるのは無理だろ」
という突っ込みはご遠慮ください。

それ以外で、設定上、疑問に思うことがあれば、意見をください。

<アライキャッチャー>

歩いていると、UFOキャッチャーが見えてきた。

俺『中身、大丈夫なのか?』

俺は友人に思わず尋ねた。

友人『大丈夫なんだけど、これ、ハードル高めだぞ。』

俺『どういう意味で?』

友人『色んな意味で。』

とりあえず、俺はUFOキャッチャーの中身を再度確認した。

中にいたのは、アライちゃんだった。
別のUFOキャッチャーには、アライしゃんがいるものまである。

俺『なぁ、アライちゃんたちが景品って大丈夫なのか?』

友人『あれ、景品ってわけじゃないぞ?』

俺『どこに駆除要素があるんだよ。』

友人『その駆除要素がハードル高めなんだよ。』

俺『さっきのモグラ叩きと、どっちがヤバい?』

友人『見慣れないお前なら、断然こっちがヤバいだろうな。』

ふと俺は気づいた。
普通のUFOキャッチャーは、四隅に支柱があって、横から見ようとするときに、邪魔だな、って思うような形をしている。
でも、これは穴があるところの支柱が無く、ガラス張りで見やすくなっていた。

そして、よく見たら景品の取り口が無い。

俺は穴の底が気になり、覗き込んでみた。

俺『何だ、あれは?』

シュレッダーでよく見かける複数の刃が付いたローラーが2つあり、回っていた。
そして、その辺りだけガラスが黒ずんでいた。

俺は思わず、後ずさった。

友人『ヤバいっていった意味、理解したか?』

俺は声が出ず、頷くだけだった。

友人『そういえば、アライちゃんたちを見て、何か気付かないか?』

友人に言われ、アライちゃんやアライしゃんを見てみた。

1匹を除いて、すべての奴らが穴の対角の隅で体を寄せ合って、怯えていたのだ。
そこに混ざらない1匹は、自由に歩き回っていた。

俺『なんかおかしいな。』

俺は何となくおかしい、と感じたが、理由までは分からなかった。

友人『知りたいか?』

俺『任せた。』

俺は結末が予想出来ていたから、見たい気分ではなかった。
でも、これ以上のヤバいものはこの先にないだろうと踏んで、見ることを選んだ。

友人『狙いは、あのはぐれだな。』

友人はアライちゃんが入った設備の前に立ち、会員証をかざした。

『ヨウコソ、タノシンデイッテネ』

またもや、無機質な音声が流れた。

この設備は、ジョイントスティックでアームの位置を決めて、降ろしたい場所でボタンを押す、という操作のようだ。

俺『時間制限は?』

友人『無いよ。』

俺『何でなんだ?』

友人『こいつらが動き回るから、時間制限を付けちゃうと捕まえれないこともあるからね。』

友人はアームを巧みに動かして、狙いを定めた。
宣言通り、はぐれの1匹にアームを定めていた。

はぐれアライちゃん「のりゃりゃ...」コスリコスリ

はぐれアライちゃんはアームに気付いていないのか、尻尾の手入れをしていた。
あと、そいつはこちらに背を向けていたため、こちらの存在に気付いていないようだ。

狙いが決まったのか、友人はボタンを押した。

ウィーン

クレーンが降りてきて、地面に付かない程度の高さで止まり、アライちゃんを囲んだ。

はぐれアライちゃん「のりゃ!?」ビクッ

はぐれアライちゃん「なんなのりゃ!?」キョロキョロ

アームが閉じてゆく。

はぐれアライちゃん「に、にげるのりゃ!」

だが、時すでに遅し。
3本のアームがアライちゃんを捕らえていた。

はぐれアライちゃん「のびゃぁーーーーーっ!!」ジタバタ

アライちゃんの体に、アームがめり込んでいる。

俺『え、アーム、あ、どうなってんだ!?』

俺は動揺が隠せなかった。

友人『アームの先端が針みたいに尖っていて、体を突き刺すことで捕らえやすくしてるんだよ。』

アームが食い込んだアライちゃんが持ち上げられていった。

はぐれアライちゃん「いた、いたいのりゃ!!」ジタバタ

俺『簡単に持ち上がったな。』

友人『アームの強さは最強に設定してあるみたいだからな。』

一般的なゲームセンターの場合、景品を取られたくないから、アームを弱くすることはあるみたいだ。
でも、これは捕まえることがメインになっているため、必然的にアームが強くなる、ってとこかな?

はぐれアライちゃん「られか、たしゅけるのりゃーっ!」ジタバタ

そうしている間に、落下ポイントまで来てしまった。

そして、アームが開いていった。

はぐれアライちゃん「この、はなす、の、りゃーーーーー!」

ヒュー

穴に落下したアライちゃんはそのまま、足がローラーに巻き込まれていった。

はぐれアライちゃん「じびぃ! あんよが、いた、たすけ、のりゃーーーーーん!!」ジタバタ

いくら暴れても、足が巻き込まれた事実は変わらない。
そして、ゆっくりと体が下がっていく。
そのたびに、血が撒き散らされていた。

やはり、処分法はアライちゃんたちをローラーで切り刻む、というもの。
そして、ガラスに付いていた黒ずんだものは、飛び散った血、というわけだ。

はぐれアライちゃん「あぎ... こしまで、アライしゃんは、あきらめ、ぎにゃーーーーー!」ジタバタ

俺はもう見ていられなかった。

顔を背けて、アライしゃんが入れられた隣のUFOキャッチャーの前に移動した。

友人『やっぱダメか。』

俺『当たり前だろ...』

すると、友人もこちらへやってきた。

俺『見なくていいのか?』

友人『これは、何度も見てるからな。』

面白さが、まったく理解できない。

友人『ま、駆除が終わったら、数合わせで補充されるのさ。』

しばらくすると、設備の後ろの壁からアライちゃんが1匹投入された。

追加アライちゃん「うゆ? ここはりょこなのりゃ?」キョトン

自分の置かれた状況が分かっていないみたいだった。
そして、前からいるアライちゃんは、身を寄せ合って怯えていた。

追加アライちゃん「りょうして、みんなはプルプルしてるのりゃ?」キョトン

追加アライちゃん「アライしゃんとあそぶのりゃ!」ピカピカ

しかし、前からいるアライちゃんは、耳を貸す様子もなく、ただ身を寄せ合うだけであった。

追加アライちゃん「つまんないのりゃ!」プンプン

一連の様子を見て、何となく理解できた。

俺『はぐれの奴は新参者で、状況を理解していないわけなんだな。』

友人『そんでもって、身を寄せ合ってる奴らは、穴から聞こえる悲鳴を聞いているから、本能的にあの穴は危ない、って理解してるわけ。』

何となく、構図は理解できた。

友人『アライしゃんの方をやってみるか?』

俺『悪い、無理だわ。』

友人『そっか。じゃ、俺のテクニックをみせてやるか。』

友人はアライしゃんが入った設備の前に立ち、会員証をかざした。

『ヨウコソ、タノシンデイッテネ』

どうやら、開始時にはこの無機質な音声が流れるのが決まりになっているようだ。

友人はスティックをうまく動かし、はぐれアライしゃんを狙うと思いきや、奥の集団にアームを移動させていた。

アライしゃんB1「ぴぃ!」ビクッ
アライしゃんB2「こっちにきちゃ、らめなのら!」ヨチヨチ
アライしゃんB3「おかーしゃーん!」ヨチヨチ
アライしゃんB4「まら、いきたいのら!」ヨチヨチ
アライしゃんB5「のらららら...」ブルブル
アライしゃんB6「あれにつかまったら、マズいのら!」ヨチヨチ
アライしゃんB7「さっさと、どくのら!」ゲシッ
アライしゃんB8「いたいのらー!」ビエーン
アライしゃんB9「はやくにげるのら!」ヨチヨチ

それに気づいたアライしゃんが、一斉に蜘蛛の子を散らすように移動した。
だが、アライしゃんは恐怖でうまく立てないのか、ヨチヨチ歩きで移動していた。

友人は、アライしゃんが移動する方へアームを巧みに操り、精神的な追い込みをしているようだった。

そのうち、はぐれアライしゃんは皆がアームと戯れていると勘違いしたのか、喜びながらそれに混ざっていた。

はぐれアライしゃん「ようやく、みんなとあそべるのら!」キャッキャッ

アライしゃんB1「そんなこといってるばあいじゃないのら!」シャーッ
アライしゃんB6「こわいのらー!」ヨチヨチ

しばらく、追いかけっこを続けていると、体力が切れたのか、床に座り込んでしまうアライしゃんが続出した。
友人はその隙を逃さず、ボタンを押した。

ウィーン

クレーンが降りる先には、3匹のアライしゃんがいた。

アライしゃんB1「も、うごけないのら...」ハァハァ
アライしゃんB5「つかれたのら...」ハァハァ
アライしゃんB7「げんかいなのら...」ハァハァ

クレーンが完全に降りて、それぞれのアライしゃんの前にアームが現れた。

アライしゃんB1「えっ!?」ビクッ
アライしゃんB5「に、にげるのら!」
アライしゃんB7「ききなのら!」

だが、疲れ切ったアライしゃんたちの動きは鈍く、アームが体に刺さってしまった。

アライしゃんB1「ぎびゃーーーーー!!」ジタバタ
アライしゃんB5「のびゃーーーーー!!」ジタバタ
アライしゃんB7「きゅるるるるるぅ!!」ジタバタ

そして、そのまま持ち上げていく。
まさかの3匹同時確保をやってのけたのだ。

俺『アームの荷重制限、大丈夫か?』

友人『成獣のアライさん1匹くらいなら問題ない、って聞いたことあったな?』

アライしゃん3匹とアライさん1匹のつり合いが全く分からない。
大丈夫か?

と、そんな心配をよそに、アームは穴の上までやってきた。

アライしゃんB1「おちたくないのらぁ!」ジタバタ
アライしゃんB5「いたいのらぁ!」ジタバタ
アライしゃんB7「きゅるるるるるぅ!!」ジタバタ

そして、アームが開き、3匹は穴の中へ落ちていった。

ヒュー

しかし、穴の底は大渋滞。
ローラーに巻き込まれないように、お互いが他のアライしゃんを足元に追いやろうと必死だった。

アライしゃんB1「アライしゃんのために、あしばになるのら!」ゲシゲシ
アライしゃんB7「さっさとろくのら!」ゲシゲシ
アライしゃんB5「やめ、あ、しっぽが、いた!」ジタバタ

どうやら、1匹が仰向けになって、2匹の足場にされてしまったようだ。

アライしゃんB5「しっぽが、いたいのだーーーーー!!」ジタバタ
アライしゃんB1「のぼるのをじゃましちゃダメなのら!」ボコボコ
アライしゃんB7「そっちこそ、じゃまするな、なのら!」ボコボコ

足場にされたアライしゃんは少しずつローラーに切り刻まれているようだ。
そして、その上では、助かりたい一心からか、醜い殴り合いが繰り広げられていた。

アライしゃんB5「せなかが、ぎゃびぃーーーーー!!」ジタバタ
アライしゃんB5「た、すけて、ほしい、のらーーーーー!!」ジタバタ
アライしゃんB1「アライしゃんにゆずるのら!」ボコボコ
アライしゃんB7「そっちこそ、アライしゃんにゆずるのら!」ボコボコ

すでに足元のアライしゃんが見えていないのか、我先に助かろうと争いを続けるアライしゃんたち。
そして、上のアライしゃんが体勢を崩し、足元の頭を踏んづけてしまった。

アライしゃんB5「あ、あたまが、ぎゃれれれれれ!!」ジタバタビクンビクン
アライしゃんB1「こいつ、あばれちゃらめなのら!」ジタバタ
アライしゃんB7「バランスがたもてないのら!」ジタバタ

さて、台の上の様子はというと、今まで逃げ回っていたアライしゃんたちは再び、対角の隅で寄り添って震えていた。
はぐれアライしゃんは、様子が分からずきょとんとしていた。

はぐれアライしゃん「うゆ、うるさいのら。」キョトン

はぐれアライしゃんは穴に近づき、中を覗き込んでいた。

そこには、血塗れになって動かなくなっているアライしゃんが1匹、その上で死を待つ2匹の姿があった。

アライしゃんB1「あ、そこのやつ! あらいしゃんをたすけるのら!」ジタバタ
アライしゃんB7「はやくたすけるのら!」ジタバタ
アライしゃんB5「...!!」ジタバタビクンビクン

はぐれアライしゃん「ひいぃ!!」ビクッ

はぐれアライしゃんは、穴の中がヤバいことをようやく理解したようだった。

アライしゃんB1「はやくする、あ、しっぽが、いたーーーーー!!」ジタバタ
アライしゃんB7「あらいしゃんの、ききなのら! ぴゅぎぃーーーーー!!」ジタバタ

絶えず聞こえる悲鳴に、はぐれアライしゃんは漏らしているようだった。

はぐれアライしゃん「に、にげるのら!」

はぐれアライしゃんは寄り添っている集団に駆け寄り、そのまま同じように震えてしまった。

外からの助けが見込めなくなり、巻き込まれつつある2匹はそれでも諦めていない様子だった。

アライしゃんB1「ぎにゃーーーーー!! たじゅげるのらーーーーー!!」ジタバタ
アライしゃんB7「きゅるるるるる!! まだじにだぐないのらーーーーー!!」ジタバタ

先に死んでいったアライしゃんの死に際の印象が強かったためか、残りの処分まで見ていられなかった。

俺『悪い。トイレ、どこだ?』

友人『あそこにあるぞ。』

友人が指差す先に、トイレがあった。

俺『ちょっと吐いてくる。』

友人『いってら。』

俺は駆け込むように、トイレに入っていった。

今回はここまで。

>>101
前の方でも書いてますが、拒絶反応を起こしながらも自ら飛び込んでいますから、自業自得ですね。

>>102
名前、忘れてました。

<アライピンボール>

しばらく歩いていると、懐かしいものを見つけた。

俺『あれって、ピンボールか?』

友人『よく気付いたな。』

俺は思わず、近寄っていった。

小さい頃に家族で旅行へ出掛けたとき、旅館のゲームコーナーにピンボールの機械が置いてあることがあった。
よくそれで遊んでいたことを思い出した。

俺『懐かしいなぁ。』

友人『遊んでみるか?』

俺はそこで頷こうとしたが、すぐに思い止まった。

ボールが見当たらない。
そして、ピンの間隔が若干広い。

俺『ボールが無いんだが、まさかボールって。』

俺は友人に確認するように、そちらを見た。

友人『それなら、アライちゃんを使うぞ。』

俺『そりゃ、そうだよな。こんな所だもんな。』

俺のテンションは急に下がってしまった。

友人『で、遊んでみるか?』

俺『やめとくよ。』

友人『俺はやるよ。 さて、久しぶりにやろうかな。』

そういうと、友人が会員証をかざした。

すると、シューターの横のレーンから、アライちゃんが2匹流れてきた。
大きさは、手のひらサイズといった感じで、腕と体が紐で固定されていた。
そして、1匹ずつ木枠の中に入っていた。

アライちゃんA1「ぴぃーーーーー!!」ジタバタ
アライちゃんA2「うごけないのりゃ!!」ジタバタ

俺『これをシューターにセットして打ち出す、というわけか。』

友人『そういうこと。』

友人がレーン側にある取っ手を押し込んだ。
すると、レーン側にあった木枠がシューターに移動した。
そして、木枠を取り外し、レーンの下にある返却口に投入した。

俺『装填がスムーズだな。』

友人『今の形になったのも、色々要望を出し続けた結果だからな。』

俺は、努力の無駄遣いだな、と思ってしまった。

アライちゃんA1「からりゃのへんなやつがとれないのりゃ!」ジタバタ

シューターにセットされたアライちゃんは、どうにか抜け出そうと必死に足掻いていた。

友人『そもそも、天板が強化プラスチックで覆われてるから、脱出不可能なんだよな。』

友人はそう言いながら、シューターのレバーを引っ張った。

アライちゃんA1「ちめんがひくくなったのら。」キョトン

友人『まずは、全力で放ってみるか。』

友人はレバーを放した。

パン

アライちゃんA1「のりゃーーーーー!!」

勢いよくアライちゃんが飛び出していった。
そして、ガイドに沿ってアライちゃんが台に侵入した。

アライちゃんA1「なんな、あっ、いた、なに、れ、の!」

アライちゃんは、ピンやバンパーなどにぶつかりながら落ちてきた。
落ちてくるときに奇妙な発声をしていたが、気にしないようにした。

そして、アライちゃんはフリッパーの辺りまでやってきた。

アライちゃんA1「あ、あながあいてるのりゃ!」

友人『そい。』

アライちゃんA1「げぶっ!!」

友人は落ちてくるアライちゃんをフリッパーでうまく弾き返していた。

アライちゃんA1「たしゅ、げっ、おが、ば!!」

アライちゃんは色んなところにぶつかる度に叫び続けていた。

アライちゃんA2「こ、こわいのりゃ...」ブルブル

ボールにされているアライちゃんの叫び声や周りから聞こえてくるアライさん達の悲鳴を聞いて、待機中のアライちゃんは震え上がっていた。

アライちゃんA1「も、ゆりゅ、じ、げ、ば」

ボールにされているアライちゃんは、いろんな所に体を打ち付けた影響か、体が血まみれになっていた。

俺『これ、いつまで続けるんだ?』

友人『フリッパーの間をすり抜けるか、台のホールに入れるか、だな。』

台をよく見ると、アライちゃんが入りそうな穴が何箇所かあった。

俺『あの穴に入れると何かあるのか?』

友人『入れた場所によって、ボールが追加される仕組みだよ。』

俺『入るのか?』

友人『それが難しいんだよねぇ。』

友人とそんな話をしていると、急にアライちゃんの動きが止まった。

アライちゃんA1「じぃーーーーー!!」ジタバタ

よく見ると、アライちゃんの尻尾に太めの針が刺さっていた。
どうやら、床から出てきたようだ。

友人『一定時間経つと、こういった仕掛けが動き出すんだよね。』

台を見ると、今まで無かった針が、床から上下運動していたり、壁から飛び出ていた。

俺『えぐいな...』

アライちゃんA1「あ、アビャイじゃんの、じっぽが、いじゃいのびゃ!!」ジタバタ

アライちゃんがしばらく暴れていると、針が床に戻っていった。
そして、アライちゃんは再び転がり落ちてきたのだった。

友人『あ、ヤベ。』

スカッ

アライちゃんA1「のびゃーーーーー!!」ヒュー

友人は気を抜いていたのか、フリッパーの動作が遅れてしまい、アライちゃんは隙間から落ちてしまった。

友人『失敗したなぁ...』

友人は残念そうに、アライちゃんが落ちていった穴を眺めていた。

友人『ラス1かぁ。』

そして、先程と同じように、手際よくシューターにアライちゃんをセットしていた。

アライちゃんA2「りゃ、りゃれか、アライしゃんをたしゅけるのりゃ...」ブルブルシッポフリフリ

自分の番となったアライちゃんは助かりたい一心からか、震えながら尻尾を振り始めた。
しかし、尻尾の動きはとても弱弱しかった。

友人『これ見ると、イラッと来るんだよねぇ。』

俺『何だか、犬っぽいな。』

友人『一緒にしちゃダメだぞ。犬が可哀想だ。』

友人は、容赦なくレバーを引いて、手を放した。

パン

アライちゃんA2「のりゃーーーーー!!」

先ほどと同じように、勢いよくアライちゃんが飛び出し、ガイドに沿ってアライちゃんが台に侵入した。

アライちゃんA2「たしゅ、のっ、ぴぃ、おっ、ぎ!」

このアライちゃんも、ピンやバンパーなどにぶつかりながら落ちてきた。
だが、俺はこの時、あることに気付いた。

俺『体の紐が解けてる。』

そう、アライちゃんの手が自由になっていたのだ。

アライちゃんは、所々で手を使い、障害を避けようと必死に足掻いていた。
ほとんど無意味ではあったが。

友人『こうなると、面白いんだよ。』

俺には、友人の発言の意味が分からなかった。

しばらく続けていると、アライちゃんの動きが止まった。
よく見ると、ピンにしがみ付いて、落ちないように必死になっていた。

アライちゃんA2「も、もう、いじゃいのあ、いやなのりゃ...」プルプル

友人『最終的には死んじまうのに、こう無駄に足掻く姿は面白いんだよ。』

俺『歪んでるな...』

友人『俺をこうしたのは、こいつらだぜ。』

復讐。
こいつは、ここに来る前にそう話していた。

アライさんの存在が、こうも歪めてしまうとは闇が深いな、と思ってしまった。
まぁ、別の意味で、俺の闇も深いんだが。

そう思いながら、俺はアライちゃんを確認した。

アライちゃんA2「も、ちゅかれ、でも、いじゃい、のあ...」プルプル

疲れていそうではあるが、まだ粘っている。

アライちゃんA2「げぇーーーーー!!」

すると突然、アライちゃんは奇妙な悲鳴を発した。
どうして、と思ったが、すぐに原因が分かった。

背中から、針が突き出ていたのだ。

つまり、アライちゃんがいた場所は仕掛けの真上で、お腹を針で突き刺されてしまったのだ。

アライちゃんA2「きゅるるるるるる!!」ジタバタ

アライちゃんはお腹と床の間に手を入れて、必死に抜こうと暴れていた。
しかし、弱ったアライちゃんでは針から抜け出すことが出来なかった。

しばらくすると、仕掛けの針は下がり、アライちゃんが落ちてきた。

アライちゃんA2「おが...」

俺はアライちゃんがどう落ちてくるか確認するため、落下経路を先回りして見ていた。
すると、その先には回転する丸鋸があった。

そのまま、アライちゃんは丸鋸に突っ込んでいき、縦に真っ二つにされてしまった。
そして、真下の「ゴミ箱」と書かれた穴に入っていった。

友人『何だ、ハズレかぁ。』

突然のことで頭が追い付いておらず、俺はただ立ち尽くすだけだった。

友人が何かを言っているようだが、全く頭に入ってこない。
俺は血だらけになった丸鋸をずっと見つめていた。

友人『おいって。』

友人が俺の肩に手をかけていた。

友人『大丈夫か?』

俺『あ、あぁ、あまりにも衝撃的過ぎて、フリーズしちまった。』

友人『ちょっと休んでから移動しようぜ。』

俺達は友人の案内で、休憩スペースで休むことにした。

<休憩スペース>

俺はテーブルに突っ伏していた。

友人『ほらよ。』

俺『ひゃあ!』

友人は俺の頬に冷たい缶コーヒーを当ててきた。
それに思わず、奇声を上げてしまった。

友人『初めて聞いたわ。 お前の奇声。』

俺『...うっせぇ。』

俺たちは、缶コーヒーを飲み、一息ついた。

友人『どうだ、ここは。』

友人が感想を求めてきた。

俺『刺激が強すぎて、ヤバい。』

友人『このエリアはまだいい方じゃないか?』

俺『他のエリアはもっとヤバいのか?』

俺は友人の方を見て、尋ねた。

友人『まぁ、そりゃな。』

俺『あ、そ。』

俺たちはしばらく休んだのち、再びエリア内を散策するのだった。

今回はここまで

ピンボールで、球2つって少なかったですかね?

<アライホッケー>

建物内を散策していると、エアホッケーの台があった。

俺『エアホッケーか。』

友人『強制2人プレイだな。』

今までは1人プレイのものばかりだったため、友人に任せていた。
しかし、2人プレイともなると話は別だ。

とうとう俺もやらないといけない時が来てしまったのか。
俺は、体が重くなる感覚に襲われた。

俺『いつかやらないといけない時が来るとは思っていたけど、これだとはな。』

友人『どうする?』

俺は、覚悟を決めて頷いた。

友人『なら、説明するぞ。』

友人『普通のエアホッケーと違う点は、パックがアライちゃんであることだな。』

俺『外壁も違うんだが。』

そう、外壁に当たる部分は、坂になっていて、坂には落下防止の壁が付けられていた。
そして、お互いの陣営の間に仕切りは無かった。

俺『これだと、横打ちができないな』

友人『横打ち?』

友人がこちらを見て、尋ねてきた。

俺『あぁ、横側に回りこんで打ち込むやり方。』

友人『あれって、そんな名前なのか?』

俺『いや、俺が勝手にそう言っているだけ。』

友人『何だそりゃ。』

友人は呆れる様にそう言った。
そんな友人を見て、俺は疑問を口にした。

俺『つか、何で坂なんだろうな?』

友人『外壁にすると、跳ね返らないからな。』

友人の回答に、俺は納得してしまった。

友人『マレットについてだけど、普通のやつと違うんだ。』

俺『マレット?』

友人『パックを打つ時に使うだろ?』

俺『あれってそういう名前なのか。』

今日は俺の知らないことがたくさん判明する日だな。

友人『あれな。』

友人が指差す先にあったのは、板に取っ手の付いた謎の装置だった。

友人『バウンドホッケーって知ってるか?』

俺『何それ?』

友人『バラエティやニュース含め、そういうの見ないんだっけ?』

俺『すまん。』

どうやら、何かのバラエティ番組にバウンドホッケーというものがあるのだろう。
それに使われているものと似ていると言いたいのかも知れない。

友人『とりあえず、どんな感じか試してみるといいよ。』

お互いに陣地へ移動した。

俺はパックを弾くために使う、装置を触ってみた。
仮に、マレット板と名前を付けておこう。

レバーが遠くに感じる。

友人『腕を伸ばすだけじゃなくって、腹這いになる感じで掴んでみな。』

俺は友人から言われた通りの体勢になってみた。
先程よりか、楽になった。

友人『この状態で、来たパックを打ち返すんだよ。』

そういいながら、マレット板を左右に操っていた。

友人『パックを打ち返すときは、これを前に出せばいいし、角度も変えられるから、覚えときな。』

友人の説明に従って、一通り動かしてみた。

友人『よし、そろそろやるか。』

俺『分かった。』

そう言いながら、自分の手が震えていることに気付いた。
やっぱり、怖いんだな。

友人が会員証をかざした。

『ヨウコソ、タノシンデイッテネ』

あの無機質な音声が流れたとおもったら、坂の上から謎の液体が流れてきた。

俺『何だこれ?』

友人『ローションだよ。』

俺『なぜに?』

友人『滑りをよくするためにな。』

アライちゃんをパックとして使うため、摩擦を減らすための手段なのだろう。

ガシャン

アライちゃんB1「のりゃーーーーー!」

しばらく待っていると、横の坂からアライちゃんが放出され、友人のほうへ転がっていった。

友人『そい。』

バン

アライちゃんB1「げぶっ!!」

友人がマレット板で打ち返す。
アライちゃんが真っ直ぐこちらに向かってくる。

アライちゃんB1「と、とまりゃない、のりゃ!!」

俺はこの瞬間が長く感じた。
たったの数秒のことではあるが、俺には何時間もの長さに感じた。

アライちゃんがかなりの距離まで近づいたとき、俺は腕を伸ばした。

バン

アライちゃんB1「じびっ!!」

はっきりと、アライちゃんがぶつかった感触が伝わってきた。

この時、アライちゃんの悲鳴を聞き、とうとう俺も踏み込んでしまった、という思いを抱いた。
後悔や罪悪感、様々な感情が俺の中で渦巻いていた。

バン バン バン バン

アライちゃんB1「も、とめえ、」

何度も打ち合いをしていると、多少ぎこちなかった動きがスムーズになっている気がした。
おそらく、感覚が麻痺し始めているのかもしれない。

バン

すると、友人は急に坂のほうへアライちゃんを打ち放った。

アライちゃんB1「ほじい、のりゃ、」

息絶え絶えなアライちゃんは、坂の特性で弧を描きながらこちらに向かってきた。

軌道が読みづらい。
マレット板を小刻みに動かし、微調整をした。

俺『ここか?』

バン

アライちゃんB1「あぶっ!!」

俺は、何とか打ち返すことに成功した。

友人『あれを打ち返すとはな。』

俺『たまたまだよ。』

こうして、お互いにパックを沈めることが出来ないまま、時間が過ぎていった。

ガシャン

アライちゃんB2「のりゃーーーーー!」

すると、追加のパックが出てきた。
しかも、俺の方に転がってくる。

俺『まだパックが残ってるのに、追加が来た?』

友人『そういう仕様だよ。』

俺は慌てて追加のアライちゃんを弾き返した。

アライちゃんB2「はじゅ!!」

始めからいるアライちゃんと合わせて乱戦状態になった。

バン バン バン バン

アライちゃんB1「あ、げ、」

アライちゃんB1「じっ、ぴゃ、ぼ、」

バン バン バン バン

友人『しぶといな。』

俺『どっちの意味で?』

友人『ゲームが終わらない、って意味だよ。』

バン

アライちゃんB1「げっ!」

アライちゃんB1「きゅ!」

すると、お互いに弾き返したアライちゃんが舞台上でぶつかり、軌道が急に変わった。

俺『おっと。』

俺はそれについていけず、自陣の穴に落としてしまった。

アライちゃんB1「おぢりゅーーーーー!」

友人『あ、スカしちまった。』

どうやら、友人の方も落としてしまったようだ。

友人『終わりか。』

俺たちは、自分のエリアを離れて合流した。

俺『エアホッケーと比べると少ないな。』

友人『ま、あっちと比べると長引きやすいからな。』

俺『だから、満足する、と?』

友人『あとは是正処置として、急に追加パックが入ってくる、ってのもあるからかな。』

俺『なるほどね。』

友人『まだやりたかったか?』

俺『思い出させるな。』

急に、手にアライちゃんの感触が蘇ってきて、後悔や罪悪感など、負の感情が押し寄せてきた。

俺『気分のいいもんじゃねぇな。』

俺は震える自分の手を見つめ、そう答えた。

友人『そっか。』

俺たちは、再び建物内を散策し始めた。

今回は、ここまで

乙。あの後、アライちゃん達は前の話のように丸ノコギリで両断されたのでしょうか?


俺も気になった、穴に落ちたコバエはどう殺処分されたんだろう?

>>130 >>131

それについては、いつか公開します。
今は、俺視点でエリア紹介をしていくため、それが終わったらになると思います。

<アライ引き>

俺はゲームセンターに似合わない物を見つけてしまった。

俺『なぁ、ここってお祭り会場だっけ?』

友人『あぁ、あれか。』

お祭りでよく見かける、紐を引っ張って景品を吊り上げる屋台のゲームが、そこに置いてあった。

俺『小さい頃に、祭りに行ったらやってたなぁ。』

友人『千本引き、ここではあんまり人気無いんだよな。』

あれって、そういう名前だったのか。

友人『見てみる?』

俺は頷き、中を覗いてみた。

俺『中は暗いな。』

友人『これ、始めるときに明かりがつくんだよ。』

うっすらとだが、中にはアライちゃんが5匹、穴から頭だけを出している状態であることが分かった。
頭の辺りから紐が見えたので、よく見てみると首にそれらが掛けられていた。
すると、アライちゃんがこちらに気付いた。

アライちゃんC1「ここから、りゃすのりゃ!!」ジタバタ
アライちゃんC2「おかーしゃーん!!」ジタバタ
アライちゃんC3「ぴぃ!! みつかったのりゃ!!」ビクッ
アライちゃんC4「も、もう、おわりなのりゃ...」ブルブル
アライちゃんC5「のりゃ!! のりゃ!!」ジタバタ

アライちゃんの反応が怖くなり、中の観察はそこで切り上げた。
ふと、装置の手前を見てみると、10本の紐が飛び出ていた。

俺『紐が多くないか?』

友人『全部引くわけじゃないからな。』

俺『そうなのか。』

友人『チャンスは5回。』

俺『5回全部空ぶることもあれば、5回全部吊り上げることもある、ってわけね。』

俺は、ふと浮かんだ疑問を口にした。

俺『あれ、抜け出したりしないのか?』

俺はアライちゃんを指差し、友人に尋ねた。

友人『あぁ、あれは体と手をバンドで固定されてるから、出てこないぞ。』

俺『ふぅーん。』

俺は離れた位置から、中の様子を伺った。

アライちゃんC1「はやく、りゃすのりゃ!!」ジタバタ
アライちゃんC2「りょーして、たしゅけにきてくれないのりゃ!!」ジタバタ
アライちゃんC3「も、もう、おちまいなのりゃ...」ブルブル
アライちゃんC4「ちにたくないのりゃ...」ブルブル
アライちゃんC5「のりゃ!! のりゃ!!」ジタバタ

アライちゃんが思い思いのことを口にしていた。

友人『やってみるか?』

俺はその問い掛けに頷いた。
頷いたのはいいが、内心はすべて外れてほしい、という思いで一杯だった。

友人『無理だと思ったら、すぐに変われよ。』

友人はそう言うと、設備の前に立ち、会員証をかざした。

ピッ

『ヨウコソ、タノシンデイッテネ』

無機質な音声とともに、装置内が明るくなった。

アライちゃんC1「いったい、りゃれなのりゃ?」キョロキョロ
アライちゃんC2「あかりゅくなったのりゃ!」ビクッ
アライちゃんC3「いきたいのりゃ...」ブルブル
アライちゃんC4「あがっちゃ、だめなのりゃ...」ブルブル
アライちゃんC5「のりゃ!! のりゃ!!」ジタバタ

『イッポンメヲ、エランデネ』

機械音声のガイドが流れた。

友人『1本目が重要だからな。』

俺は慎重に紐を選び、1本目を引いてみた。

俺『感触が重いな。』

中を見てみたが、アライちゃんに変化は無かった。

友人『もっと引っ張ってみないと、分からないぞ。』

友人のアドバイス通りに引っ張り続けてみたが、やはり反応は無かった。

アライちゃんC1「なにやってるのりゃ?」キョトン
アライちゃんC2「そこのひとしゃん、たしゅけてほちいのりゃ!」ジタバタ
アライちゃんC3「もう、やめりゅのりゃ...」ブルブル
アライちゃんC4「りゃめなのりゃ...」ブルブル
アライちゃんC5「のりゃ!! のりゃりゃ!!」ジタバタ

しばらくすると、紐に青のマークが見えた。

友人『これは外れだな。』

俺『そうなのか?』

友人『紐にこういうマークが見えたら、外れなんだよ。』

俺『掃除機みたいだな。』

友人『今の時代はコードレスが多いから、そのネタ、分からないやつもいるかもな。』

友人は俺から紐を奪い取ると、横にあった縛り口に紐を結び始めた。

俺『それは?』

友人『一応、選んだ紐をそのままにしておくためのものかな?』

友人は手慣れた様子で、紐を結んだ。

友人『そのまんまだと、紐が中に戻っちゃうからな。』

俺『ハズレが何だか重かったんだけど、それと関係あるのか?』

友人『外れには、アライちゃんと同じくらいの重りがついているからだよ。』

つまり、引っ張っていても中の反応が分からなければ、どちらか分からないというわけか。
これで、当たる確率が上がってしまった。

『ニホンメヲ、エランデネ』

俺は何も考えずに、2本目を選んで引っ張った。
今度も感触が重かった。

すると、中から反応があった。

アライちゃんC2「きゅ、きゅびが、きゅりゅちい、のりゃ!」ジタバタ

アライちゃんC1「りょうしたのりゃ!?」ビクッ
アライちゃんC3「はじまったのりゃ...」ブルブル
アライちゃんC4「たしゅけてほちいのりゃーーーーー!!」ビエーン
アライちゃんC5「のりゃりゃ!! のりゃりゃ!!」フゥー

少しずつ紐を引っ張っていく。
左から2番目のアライちゃんが少しずつ上に上がっていく。

アライちゃんC2「も、やめ、ほち、こっ!」ジタバタ

アライちゃんC1「おりてくるのりゃ!」
アライちゃんC3「のりゃ...」ブルブル
アライちゃんC4「のりゃーーーーーん!!」ビエーン
アライちゃんC5「のりゃりゃ!! のりゃりゃ!!」フゥー

アライちゃんは手が使えないため、体を必死に動かして逃れようとしていた。

そして、紐を引っ張り続けていると、先ほどと同じように紐から赤のマークが見えた。
俺は紐を持ったままの状態で固まってしまった。

友人『それを貸せ!』

友人はそれを奪い取ると、縛り口に紐を結んだ。

アライちゃんC2「お...」ピクピク

アライちゃんC1「へんじをすりゅのりゃ!」アセアセ
アライちゃんC3「のりゃ...」ブルブル
アライちゃんC4「のりゃーーーーーん!!」ビエーン
アライちゃんC5「のりゃ!! のりゃりゃ!!」ジタバタ

俺は自分の手を見た。
アライちゃんが暴れていた感触がこの手に残っている気がした。

『サンボンメヲ、エランデネ』

俺はすぐに紐を引っ張ることが出来なかった。

友人『手を見つめて、どうかしたか?』

友人が心配してか、話しかけてきた。

俺『アライちゃんの、感触が...、暴れてる感触が、ここに残ってるんだ...。』

俺の手は震えていた。

友人『おかしいな。そういうのが伝わらないような設計になってる、って聞いたことあったんだけどな。』

俺『すまん。続きは無理だ。』

俺は震える手を見つめながら、ギブアップを宣言した。

友人『まぁ、慣れてないとそんなもんだよな。』

友人はそういうと、紐に手を伸ばした。

友人『残りは俺がやってやるよ。』

そして、俺よりも速いスピードで引っ張り出した。

アライちゃんC4「のべ!!」グン

アライちゃんC1「あぁ、あいつもあがっていくのりゃ!」ビクッ
アライちゃんC3「のりゃ...」ブルブル
アライちゃんC5「のりゃ!! のりゃりゃ!!」ジタバタ

そして、紐を手際よく引き出すと、縛り口に紐を結んだ。

友人『こんなもんか。』

アライちゃんC2「...」シーン
アライちゃんC4「...」シーン

アライちゃんC1「りょうしたのりゃ!」
アライちゃんC3「のりゃ...」ブルブル
アライちゃんC5「のりゃりゃ!! のりゃりゃ!!」フゥー

俺が引き当てたアライちゃんは涎を垂らし、すでに反応は無かった。
そして、友人が引き当てたアライちゃんは口から血を流していた。
下を見ると、赤い破片が落ちていた。

おそらく、急に引き上げられたせいで、舌を噛み切ってしまったのだろう。

俺『お前、容赦ないな。』

友人『こういう運ゲーは好きじゃないから、早く終わらせたいんだよ。』

『ヨンホンメヲ、エランデネ』

友人『さて、どうしようかね。』

友人は紐を見つめ、どうしようか悩んでいるようだった。

いや、違う。
友人は、紐を選ぶ「振り」をしながら、アライちゃんの方をチラチラと確認しているように見える。
俺は、アライちゃんの方を見た。

アライちゃんC2「...」シーン
アライちゃんC4「...」シーン

アライちゃんC1「あれをひっぱられたら、あいつらみたいになっちゃうのりゃ!」ブルブル
アライちゃんC3「のりゃーーーーーん!!」ビエーン
アライちゃんC5「のりゃりゃ、のりゃりゃ、のりゃのりゃ!!」ブルブル

残されたアライちゃんは、上に吊るされて死んでいるアライちゃんとこちらの様子を交互に見ながら、怯えた様子だった。

俺『お、おい、お前!?』

俺は、思わず友人の肩に手をかけた。

友人『このゲームの本番は、ここからなんだよ。』

友人はこちらが何を聞きたいのか分かっているのか、どこか楽しそうだった。

友人『このゲームの真意は、アライちゃんを吊り上げていって、残されたアライちゃんたちに恐怖を植え付ける、ってことなんだよ。』

俺『恐怖を?』

友人『そう、いつ死ぬか分からない恐怖の中、怯え続けてその時をただただ待つ、ってわけ。』

俺『これ考えた奴、エグ過ぎだろ...』

俺は、思わず自分の頭を押さえた。

友人『開始時のことを覚えているか?』

友人の問いかけに、俺は頭を横に振った。

友人『ほら、始めから威勢のいい奴と、怯えてた奴がいただろ?』

そう言われると、そのようなことがあったような気がする。
俺は首を縦に振った。

友人『つまり、怯えてた奴は前からいて、このゲームのことを理解していたのさ。』

そこで、俺はようやく気付いた。

俺『それで、威勢のいい奴はセッティングされたばかりだから、状況が掴めていなかった、と。』

友人『そういうこと。』

友人はそう言うと、引っ張り出す紐を選び取った。

友人『こいつを引っ張るぞ!』

友人は、アライちゃんに聞こえるような声で宣言をした。

アライちゃんC1「まつのりゃ!」ブルブル
アライちゃんC3「のりゃーーーーーん!!」ビエーン
アライちゃんC5「のりゃ、のりゃ!!」ブルブル

友人『さぁて、どうなるのかね!?』

友人は、アライちゃんの声を無視して、紐を引っ張り出した。

しかし、これはハズレだったようだ。
紐から青のマークが見えた。

友人『ちぇっ、ハズレか。』

友人は縛り口に紐を結び、元の位置に立った。

『ゴホンメヲ、エランデネ』

友人『さぁ、最後の時だ。』

アライちゃんC1「のりゃーーーーーん!!」ビエーン
アライちゃんC3「のりゃーーーーーん!!」ビエーン
アライちゃんC5「のりゃーーーーーん!!」ビエーン

残されたアライちゃんは、ただ泣き叫ぶだけだった。

そんなアライちゃんを見ながら、友人は紐を選んだ。

友人『イッツ、ショータイム!』

アライちゃんC1「のりゃーーーーーーーーーーん!!!!」ビエーン
アライちゃんC3「のりゃーーーーーーーーーーん!!!!」ビエーン
アライちゃんC5「のりゃーーーーーーーーーーん!!!!」ビエーン

無駄に友人のテンションが高い。
そして、アライちゃんの泣き声も大きくなった気がする。

俺は、その空気についていけず、ただそれを眺めているだけだった。

友人が紐を引っ張り出した。
すると、中の様子が慌ただしくなった。

アライちゃんC1「なん、あら、しゃ!」ジタバタ

アライちゃんC3「たすかったのりゃ?」キョトン
アライちゃんC5「のりゃ!?」ビクッ

友人『最後は当たりか。』

友人は紐を最後まで引っ張り出し、縛り口に結んだ。

アライちゃんC1「は、しゅ...」ピクピク

アライちゃんC3「また、いきのこったのりゃ...」プルプル
アライちゃんC5「のりゃーーーーーん!!」ビエーン

『サイゴマデアソンデクレテ、アリガトウ』

機械音声がゲーム終了を告げていた。

友人『まぁ、こんな感じ。』

俺『後味が悪いゲームだな。』

俺たちが装置から離れると、どこから出てきたのか、カーテンが装置の周りを覆った。
よく見ると、俺が気付いていなかっただけで、カーテンレールが始めからあったようだ。

俺『あれは何だ?』

友人『係員が次の仕込みをしているんだよ。』

俺『他の奴みたいに自動化は出来ないのか?』

友人『よく分からんが、難しいみたいだぞ。』

俺『効率が良くないな。』

友人『それが人気のない原因だったりするんだよな。』

俺たちはそんな会話をしながら、次のゲームを探して場所を移った。

今回はここまで。

次回は、提案していただいたゲームの中から、2つをこのエリアに加えようと思います。

ある程度、私のアレンジが入るため、希望通りにならない可能性があります。
ご了承ください。

<アライドラム>

俺『そういえばさ。』

友人『ん?』

俺『ここって、【ゲーセンエリア】だったよな?』

友人『そうだけど?』

俺は気になっていた疑問を口にした。

俺『さすがに、音ゲーって無いんだな。』

友人『あるぞ。』

俺『ないわ、って、あるんかい!?』

友人『うぉ!?』

俺はガラにもなく、ツッコミを入れてしまった。

俺『あ、すまん。』

友人『い、いや、珍しいな...』

友人は、俺の反応に驚いていた様子だった。

友人『まぁ、いいや。』

友人は気を取り直すと、とある方向を指差した。

友人『あれだよ。』

友人が指差す方を見てみた。

アライパンチの時のような縦長の画面の前に、5つの筒があった。
3つの筒が手前にあり、2つの筒が奥にあった。

奥の筒に関しては、手前の筒より高さがあった。
手前の筒も3つのうち、真ん中が他よりも大きい気がする。
あと、足元を見るとペダルもある。

俺『あれって何だ?』

友人『アライドラムだよ。』

俺『洗濯機?』

友人『音ゲーだ、って言ってんのに、何で家電製品が出てくんだよ。』

俺『楽器の方は馴染みが無いからな。』

友人『大半の奴は馴染みが無いだろうよ。』

俺たちはそんな他愛もない会話をしながら、そちらの方へ歩いて行った。

俺『ペダルってどう使うんだ?』

友人『まぁ、見てろ、って。』

友人は席に座ると、ペダルを踏んだ。
すると、それに連動するように、筒の手前にあった叩く部分が、筒を叩くように可動した。
どうやら、筒は叩く部分に合わせて穴が空いていた。

よく見ると、ペダルの真下にボタンのようなものがあり、それが押されると叩く部分が反応して叩く仕組みになっているみたいだ。

俺『また面倒な仕組みだな。』

俺はこの機構を見て、疑問に思ったことを口にした。

俺『何で、ペダルの叩く部分を、筒の下を通す形で設計しなかったんだ?』

友人『これな、筒の下からアライさんがセットされる仕組みなんだよ。』

つまり、アライさんの頭をドラムのように叩く、ってことか。

友人『お前が言った仕組みだと、スムーズな装填が出来ないだろ?』

確かに、終わったら係員が来て取り換えをしなければいけない手間がありそうだな。

俺『技術の無駄遣い...』

友人『そんなこと言うなって。』

そして、俺は新しい疑問が浮かんだ。

俺『つか、どうやって叩かれたかの判定をするんだ?』

音ゲーの場合、リズム通りに叩けているか判断する必要がある。
アライさんがドラムになる場合、スティックに判定があるのか?

友人『それはな、アライさんの足元に判定があるんだよ。』

俺『まさか、アライさんを叩いた衝撃でその判定をどうにかするのか?』

友人『衝撃ではないけど、まぁ、近いかな?』

俺は、どういうことなのか、と首をかしげた。

友人『アライさんの土台が押し込み式になっていて、それがある程度押し込まれると判定される仕組みなんだ。』

友人は広げた左手を床に見立てているのか、右手の人差し指でそれを押すような動作をしていた。

俺『だけど、アライさんが飛び跳ねたりしたらどうするんだ?』

友人『それも考えて、アライさんの足は土台と固定されてるよ。』

俺『手は?』

友人『他のゲームと同じで、バンドで体と固定されてるよ。』

ゲームを楽しんでもらうための前準備はしっかりしてるわけか。

友人『まぁ、アライさんを通じて土台を押し込まないといけないから、結構強めに叩かないと判定してくれないんだよ。』

何だか、アライさんの末路が目に見えた。

俺『グロいな。』

友人『その反面、反応が面白いんだけどな。』

友人『まぁ、見てろ、って。』

友人はそういうと、会員証をかざした。

ピッ

『ヨウコソ、タノシンデイッテネ』

いつも通りの無機質な音声が流れた。

ウィーン

すると、筒の下からアライさんたちがせり出してきた。
どうやら、この床下にアライさんの補充場所があるみたいだな。

アライさんD1「このっ、解放するのだ!」クネクネ
アライちゃんD1「ほりょけないのりゃ!」クネクネ
アライちゃんD2「りゃれか、たしゅけるのりゃ!」クネクネ
アライちゃんD3「からりゃがいたいのりゃ!」クネクネ
アライちゃんD4「のりゃーーーーーーん!!」ビエーン

アライさんたちが筒に収まった。

手前の大きい筒にはアライさんが入って、他の小さいのにはアライちゃんが入る仕組みか。
でも、アライさんたちは統一して同じ方向を見ていない。
アライさんは画面の方を、手前のアライちゃんはアライさんの方を、奥のアライちゃんはプレイヤーの方を見ている。

アライさんD1「チ、チビ達!?」キョロキョロ
アライちゃんD1「おかーしゃん!?」ビクッ
アライちゃんD2「おかーしゃん、たしゅけてほちいのりゃ!」クネクネ
アライちゃんD3「はやくするのりゃ!」クネクネ
アライちゃんD4「のりゃーーーーーーん!!」ビエーン

どうやら、あのアライさんたちは一家のようだな。

アライさんD1「手が自由に動かないのだ!」クネクネ
アライちゃんD1「はやくするのりゃ!」クネクネ
アライちゃんD2「アライしゃんのききなのりゃ!」クネクネ
アライちゃんD3「あしもうごかないのりゃ!」クネクネ
アライちゃんD4「のりゃーーーーーーん!!」ビエーン

『キョクヲエランデネ』

俺『ちなみに、何曲やるんだ?』

友人『アライさんの耐久上、1回だな。』

アライさんD1「そこに誰かいるのだ!?」キョロキョロ
アライちゃんD1「あ、よこにひとしゃんがいるのりゃ!」クネクネ
アライちゃんD2「おい、アライしゃんをたすけるのりゃ!」クネクネ
アライちゃんD3「ひとしゃんがもってるながいのはなんなのりゃ?」キョトン
アライちゃんD4「のりゃーーーーーーん!!」ビエーン

アライさんは背中を向けているから、こちらの様子が分からないみたいだな。
で、手前のアライちゃんは顔を横に向けて、必死に助けるように命令している。

友人『手前のアライちゃんを叩くことで選択、ペダルを踏むことで決定、って扱いだな。』

友人はそう言うと、アライちゃんの頭をスティックで叩き始めた。

アライちゃんD1「あっ、ぐっ、えっ、ぴっ、」ビクンビクン

アライさんD1「チビ! しっかりするのだ!」クネクネ
アライちゃんD2「おねーちゃん、だいじょうぶなのりゃ!?」クネクネ
アライちゃんD3「ひとしゃん、もうやめるのりゃ!」ブルブル
アライちゃんD4「のりゃーーーーーーん!!」ビエーン

友人『あ、行き過ぎた。』

アライちゃんD2「のっ、べっ、」ビクンビクン

アライさんD1「あぁ、こっちのチビも、しっかりするのだ!」クネクネ
アライちゃんD3「こわいのりゃ!」ブルブル
アライちゃんD4「のりゃーーーーーーん!!」ビエーン

友人『よし、これだな。』

友人は曲が決まったのか、ペダルに足を乗せて踏み込んだ。

ズン

アライさんD1「ぐえっ!」ゴホッ

アライちゃんD1「あ...」ピクピク
アライちゃんD2「の...」ピクピク
アライちゃんD3「おかーしゃん!?」ビクッ
アライちゃんD4「のりゃーーーーーーん!!」ビエーン

筒に穴が空いていたのは、ペダルを踏んだ時にアライさんのお腹を叩くためのようだな。
接地面が小さいから、衝撃がヤバそうだけど。

『ナンイドヲエランデネ』

初期設定は「ふつう」なのか。
左に「かんたん」、右に「むずかしい」「おに」があるな。

友人は、アライちゃんの頭をスティックで叩いた。

アライちゃんD2「ほっ、えっ!」ビクンビクン

アライさんD1「お腹が痛いのだ!」クネクネ
アライちゃんD1「お、か...」ピクピク
アライちゃんD3「もうやめるのりゃ!」ブルブル
アライちゃんD4「のりゃーーーーーーん!!」ビエーン

友人は「おに」で演奏するみたいだな。

ズン

アライさんD1「ぐえっ!」ゴホッ

アライちゃんD1「しゃ...」ピクピク
アライちゃんD2「も...」ピクピク
アライちゃんD3「もういやなのりゃ!」ブルブル
アライちゃんD4「のりゃーーーーーーん!!」ビエーン

俺『この時点で、だいぶエグいな...』

友人『こっからだよ。』

『レッツ、プレイ』

曲が始まった。

友人は、落ちてくるマークに合わせて、アライさん一家を叩き始めた。

アライさんD1「いっ、かっ、ぐぇっ、ごっ、だっ、」ビクンビクン
アライちゃんD1「しゃっ、んっ、ぴっ、げっ、はっ、」ビクンビクン
アライちゃんD2「あっ、ぐっ、えっ、ぴっ、ほっ、」ビクンビクン
アライちゃんD3「ひっ、やっ、おっ、げっ、ばっ、」ビクンビクン
アライちゃんD4「のっ、りゃっ、りゃっ、りゃっ、りゃっ、」ビクンビクン

さすがは「おに」だな。
叩く数が多い。

でも、友人はそれをノーミスでこなしていく。

アライさんD1「こっ、にっ、ぐぇっ、げぇっ、はっ、」ビクンビクン
アライちゃんD1「たっ、しゅっ、のっ、ぴっ、しゃっ、」ビクンビクン
アライちゃんD2「おっ、えっ、のっ、いっ、けっ、」ビクンビクン
アライちゃんD3「りっ、りゃっ、けっ、もっ、やっ、」ビクンビクン
アライちゃんD4「のっ、りゃっ、りゃっ、りゃっ、りゃっ、」ビクンビクン

確かこいつ、高校時代に「軽音部」に入ってドラムを担当していた、って言ってたっけな。

しかも、運動神経も悪くない、って話だし。
小、中と「バスケ部」って話だったよな?
今でも、休日は朝にランニングを欠かさずにしてるみたいだし。

頭もいい方で、高校の模試は全国50位以内に入ってた、って聞いたことがある。
たしか、国語は全国1位を取ったことがある、っていうのも人伝で聞いたぞ。

で、顔もイケメンだろ?

文武両道、才色兼備、ってまさにこいつのことだな。
しかも、こんだけの才能を自慢しないのがスゲェよな。
人が噂程度に話してたのを確認したら、その時に認めてたっけ。

あいつ曰く、自慢することでもないから黙ってた、だったし。
すげぇわ。

でも、何で彼女がいないんだろうな。
不思議だわ。

友人『っし、と。』

あ、友人のことを考えてたら、曲が終わってた。

『セイセキハッピョウ』

画面に、スコアが映し出される。
結果は、ノーミスだった。

友人『いやぁ、腕は鈍ってないみたいだな。』

俺『すげぇな。』

俺は視界の端に入り込んできたアライさん一家が気になり、そっちを見てみた。

俺『うっ!』

想像以上だった。

アライさんD1「の...」ピクピク
アライちゃんD1「...」シーン
アライちゃんD2「...」シーン
アライちゃんD3「...」シーン
アライちゃんD4「...」シーン

アライさんは辛うじて意識があるものの、全員頭が割れて脳髄が飛び出していた。
しかも、目や鼻、口からは血を流していた。

吐きそうになったが、辛うじて踏みとどまった。

俺『これは、キツイな...』

友人『まぁ、初めての奴にはキツいかもな。』

友人はスティックを台に戻すと、俺の背中をさすった。

俺『ここに、いる奴らは、猟奇、的な、奴ら、ばかりな、のか?』

俺は途切れ途切れになりながらも、友人に尋ねてみた。

友人『そうじゃなきゃ、こんなところに来ないだろうな。』

俺『そっか...』

俺の気分が回復するまで、しばらく休むことにした。

今回はここまで

>>85 のアイディアをドラムに変えて、書きました。
直接触るのは抵抗があったので...


宝石娘は時限とかVIPとか課金圧モリモリでヤバそうですね
お花に戻ります

>>153
???

<アライハンマー>

俺の気分が回復するのを待ったのち、俺たちは移動を再開していた。

俺『あれはかなりヤバかったな。』

友人『まぁ、初めてだし、仕方ないわな。』

俺の中には、まだアライさんを「ヒト」として見ている感覚があるのかもしれない。
そのためか、まだ受け付けられなかった。

俺『流石にあれ以上のグロはねぇよな。』

友人『えぇっと...、んー、あるな。』

俺『マジか...』

友人『えぇーっと、あ! あれだ。』

友人が指差す先には、まだ見たことのないものがあった。
俺たちは、そこを目指して歩き出した。

友人『そうそう、これこれ。』

辿り着いた先には、ハンマーが用意されていた。
そして、「PUSH」と書かれた円柱のものがある。

俺『このハンマーで、ここを叩くのか?』

友人『正解。』

俺『こんなの見たことないな。』

俺は、周りを見渡してみた。

叩く場所の奥には、筒が横方向に10本立てられていた。
厳密にいえば、四角柱かな?

筒の裏に回り込んでみると、丸鋸が用意されているのが分かった。
ただ、安全のためか、そこまで立ち入ることが出来ないようになっていた。

丸鋸の半径は、筒の直径と同じくらいになっているみたいだ。

俺『で、これ何?』

友人『ハンマーゲームだよ。 知らない?』

俺は首を横に振った。

友人『ハンマーで叩いた力によって、丸鋸が筒を切断する仕組み。』

俺『てことは、この筒にはアライさんがセットされるってわけか...』

友人『そういうこと。』

友人はそう言うと、設備の前に立った。

俺『やるんだ...』

友人『百聞は一見に如かず、ってね。』

俺『はいはい。』

ピッ

『ヨウコソ、タノシンデイッテネ』

何だろう?
この機械音を聞くと、苛立つようになってきたぞ。

それが何でなのかは分からないけど。

ウィーン

筒の中からアライさんが出てくるかのように、セットされた。
どうやら、これもセッティングの部屋が下にあるようだ。

アライさんE1「は、離すのだ!」クネクネ
アライさんE2「チビに会わせるのだ!」クネクネ
アライさんE3「手が動かせないのだ!」クネクネ
アライさんE4「アライさんの危機なのだ!」クネクネ
アライさんE5「どうしてこんな目に合わなければいけないのだ!」クネクネ
アライさんE6「アライさんを元の場所に返すのだ!」クネクネ
アライさんE7「アライさんを閉じ込めるなんて、酷いのだ!」クネクネ
アライさんE8「誰か、アライさんを助けるのだ!」クネクネ
アライさんE9「チビーーー!!」クネクネ
アライさんE10「ア、アライさんがたくさんいるのだ!」ビクッ

出てきたアライさんは丸鋸がある方向、プレイヤーから見て左側、を見ていた。

俺『何だか、体をクネらせてるんだが。』

友人『あぁ、これな、足を固定されえてるから、こんな動きになるんだよ。』

俺『そういえば、アライドラムの時もそうだったか。』

『チャレンジカイシダヨ』

俺『そう言えば、これは何回やるんだよ。』

友人『1回だな。』

俺は少ないな、と思ってしまったのと同時に、そう考えてしまった嫌悪感にも襲われた。

アライさんE1「そこに誰かいるのだ!?」クネクネ
アライさんE2「ここからじゃ見えないのだ!」クネクネ
アライさんE3「どうにもならないのだ!」クネクネ
アライさんE4「お前たち、うるさいのだ!」クネクネ
アライさんE5「手が動けば、どうにかなるのだ!」クネクネ
アライさんE6「横にヒトがいるのだ!」クネクネ
アライさんE7「おい、そこのヒト! アライさんを助けるのだ!」クネクネ
アライさんE8「早くするのだ!」クネクネ
アライさんE9「チビ達に会わせるのだ!!」クネクネ
アライさんE10「誰でもいいから、助けるのだ!」クネクネ

アライさんたちはこちらに気付いたようで、思い思いに言葉を発していた。

友人『それじゃあ、行くぞ。』

友人はそれを無視して、ハンマーを担ぎ上げた。

友人『おっりゃ!』

ブゥン

ガン

友人が振り下ろしたハンマーが「PUSH」と書かれた円柱にヒットした。

プン プン プン プン プン プン プン プン

それに反応するようにアライさんの入った筒の上部が光った。
全部で8か所光っている。

アライさんE1「何か、光っているのだ!」ビクッ
アライさんE2「何が起きたのだ!?」ビクッ
アライさんE3「これは、アライさんを称える光に違いないのだ!」ピカピカガイジガオ
アライさんE4「称える、ってどういう意味なのだ!?」キョトン
アライさんE5「そんなことどうでもいいのだ!」クネクネ
アライさんE6「どうして、ヒトは助けてくれないのだ!?」クネクネ
アライさんE7「早く、アライさんを助けるのだ!」クネクネ
アライさんE8「何で光ってるのだ!?」ビクッ
アライさんE9「ここは光ってないのだ!」クネクネ
アライさんE10「何が起きているのだ!?」クネクネ

キュイィィィン

やがて、丸鋸が回り始めた。

俺『あぁ、またグロいことが始まるのか...』

友人『嫌なら、後ろを向いてろよ。』

俺『いや、それは無理だな。』

なぜなら、後ろにはアライキャッチャーが見えるからだ。
しかも誰かがプレイ中のようだ。

あっちも十分見ていられない代物だ。

どっちがマシとか、考えたくない。

アライさんE1「ぎゃあああぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」ビクンビクン

俺が考え事をしている間に、切断が始まっているようだった。

アライさんE2「何が、ぎゃあああぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」ビクンビクン
アライさんE3「いきなり叫んで、どえぇぇぇえぇぇえぇぇぇ!!!」ビクンビクン
アライさんE4「アライさんの質問に答え、ぎゅるるるるるるるるぅぅるるぅぅう!!!」ビクンビクン
アライさんE5「お前たち、さっきからうるさ、あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」ビクンビクン
アライさんE6「おい、早くアライさんをたすけるの、だあああぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!!!」ビクンビクン
アライさんE7「何なのだ!? 前のアライさんたちが叫んでこわ、ぎいいいぃぃいぃぃぃいぃぃいぃ!!!」ビクンビクン
アライさんE8「何が起きているのだ!? 分からないのだ! もうここ、があああぁぁぁぁぁぁぁぁっぁっぁぁぁ!!!」ビクンビクン
アライさんE9「いきなり叫んでどうしたのだ!?」ビクッ
アライさんE10「どうしたのだ!? 何が起きているのだ!?」ビクッ

光っていた場所までのアライさんが全て切断されたようだ。

筒をよく見ると、足元が見えるようになっていた。
切断されていないアライさんの足元を見ると、友人の言う通り、足が固定されているのが分かった。

一方、切断されたアライさんの方を見てみると、足元が真っ赤に染まり、どういう状況なのかが分からなかった。
だが、所々に真っ赤に染まった手のようなものが落ちている。
そう言うことなんだな、と深く考えないように努めた。

アライさんE1「ぎゃあああぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」ビクンビクン
アライさんE2「はあああぁあぁぁぁぁぁぁ!!!」ビクンビクン
アライさんE3「いぃぃぃぃたいぃぃぃぃぃぃぃいぃぃ!!!」ビクンビクン
アライさんE4「ぎゅるるるるるるるるぅぅるるぅぅう!!!」ビクンビクン
アライさんE5「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!!」ビクンビクン
アライさんE6「だあああぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!!!」ビクンビクン
アライさんE7「ひいいいぃぃいぃぃぃいぃぃいぃ!!!」ビクンビクン
アライさんE8「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁっぁっぁぁぁ!!!」ビクンビクン
アライさんE9「もう、許してほしいのだ!」ビエーン
アライさんE10「何でもするから、アライさんを助けてほしいのだ!」ビエーン

切断されたアライさんは、激しい断末魔を発し、痛みに苦しんでいるようだった。
そして、残されたアライさんはその状況に恐怖し、命乞いをしていた。

『アソンデクレテアリガトウ』

ウィーン

あの機械音と共に、アライさんたちは下がっていった。
下がっていくときも、あの叫び声を発していたのが強烈だった。

『バイバイ、マタネ』

俺『そういえば、何で1回だけだったんだ?』

俺は疑問に思ったことを聞いてみた。

友人『あれな、メンテが大変らしくて、プレイ回数1回に下げたんだと。』

俺『そうなんだ。』

俺から聞いておきながら、素っ気ない返事をしてしまった。

友人『で、どうだったよ?』

俺『俺、今日は眠れないかもしれない。』

友人『どうして?』

俺『あの断末魔が衝撃的過ぎた。』

俺のテンションは、最低値に達していた。

友人『一旦、ここから出るか。』

俺『案内は終わりか?』

友人『このエリアのアトラクションは一通り見せたからな。』

俺『そうなんだ。』

俺たちは外に出ることにした。

外に出てきた俺たちは、無線機と耳栓を外した。

俺「外に出てくると、中の声は聞こえないんだな。」

友人「まぁ、防音になってるからな。」

俺は、今まで疑問に思っていたことを聞いてみることにした。

俺「お前、ここのことについて詳しすぎじゃね?」

友人は少し考えたのち、こう話した。

友人「アライさんの引き渡し時に、色々と話を聞いたりしてたからかな。」

俺「あ、そ。」

友人「少し休んだら、別のエリアに移動するか。」

俺「だったら、軽めのものがいいな。」

友人「オッケー。」

俺たちは休憩所に向かうことにした。

今回はここまで。

今回のは、>>88 の案を改良して書き上げました。

提案していただいた、他のものについて少し触れておきます。

>>79
競馬ゲームは、似たようなものを他のエリアで使う予定だったため、カットしました。
メダルゲームは仕組みが色々と大変そうだったので、カットしました。

>>80 >>82
格闘ゲームは、コストとか仕組みが大変そうだったため、カットしました。

>>81
このアイディアは別のエリアで使用させていただこうと思います。

>>83
これもコスト面や係員の負担のことを考えて、カットしました。

>>84 >>87
これらは、当初の案から別のエリアで使用する予定だったため、カットしました。

これにて、【ゲーセンエリア】の紹介は終了です。

今回書いたゲームの中で、どれをやってみたいと思いましたか?

<今回のゲーム一覧>
アライバスケ
アライ叩き
アライキャッチャー
アライホッケー
アライパンチ
アライピンボール
アライハンマー
アライドラム
アライ引き

あと、次のエリア紹介はどこがいいですか?

スポーツエリア
レーシングエリア
ショーエリア
ふれあい広場
フードコート

時間を設けて、意見の多かったエリアから紹介しようと思います。

GWに入る前ぐらいまでをアンケート期間にしようと思いますが、長いですか?

一先ず、4/25(水) 23:59 までアンケートを受け付けます。
それを元に次の話を書きます。

よろしくお願いします。

次回のエリアは、【ふれあい広場】でいきます。

【スポーツエリア】って意見が無くて、意外でした。

休憩所でリフレッシュした俺たちは、新たなエリアに移動していた。

俺「今度はどのエリアに行くんだ?」

友人「次は【ふれあい広場】かな?」

俺「なぁ、あれと触れ合うって正気か?」

友人「ま、行けば分かるさ。」

俺は一抹の不安を抱えながら、【ふれあい広場】へ向かった。

俺「意外に人がいる...」

まだ【ふれあい広場】の入り口にもかかわらず、結構な人が集まっていた。
俺はさすがに、人の多さに驚いた。

友人「そんなに驚くことか?」

俺「そりゃ、そうだろ。」

俺はパンフレットを開き、ある場所を指さした。

俺「『ここでは、色んな方法でアライさんの駆除を体験できます。』って書いておきながら、触れ合う、って矛盾してないか?」

友人「まぁ、落ち着けって。」

俺「あ、あぁ、スマン...」

友人「大丈夫か?」

俺「いや、まぁ...、ある程度は。」

友人はこちらの顔色を窺いつつ、口を開いた。

友人「確かに、俺みたいに『アライさんは完全悪』って思ってる『アラ虐派』の奴がいるのは事実だ。」

友人「でもな、『アラ虐派』でもなければ、『アラ信派』でもない奴がいるのも事実なんだよ。」

俺「それって、どんな派閥なんだ?」

友人「それは、」

???「『調和派』だね。」

突然、後ろから声がかけられた。
俺は思わず後ろを振り返った。

そこには見知らぬ男性が立っていた。
歳は俺たちよりも上なのは分かるが、30代半ばといったところか。

???「久しぶりだな、タク坊。」

友人「カズにぃ、久しぶり。」

どうやら、友人の顔見知りのようだ。
突然の展開に俺はついていけなかった。

カズ「タク坊、この子は誰なんだ?」

友人「あぁ、こいつは俺の友人の、シキです。」

俺「どうも...」

俺は軽く会釈をした。

カズ「おぉ、きみがシキ君か。 タク坊からはそれとなく、話は聞いていてね。」

俺「は、はぁ...」

俺は戸惑いながらも、何とか会話を続けようとした。

カズ「にしても、何でそんな話をしていたんだ?」

友人「シキはニュースとか全然見ないんで、アライさんの知識もほとんど無いんですよ。」

友人は大げさに、手を広げたようなポーズで呆れて見せた。

俺「まぁ、アライさんに限らず、世間的な事を知らないんですけどね。」

友人「完全にインドアなんで、ゲームや漫画といった系だけは強いんですけど。」

簡単にではあるが、俺の情報をカズさんに伝えた。

カズ「そうなんだね。」

カズさんは深くまでは追及してこなかった。

カズ「なら、さっきの続きは私から説明させてもらってもいいかな?」

友人「大丈夫ですよ。」

友人から承諾をもらったカズさんは、俺に対して話をしてきた。

カズ「『調和派』というのはね、理解しあえるアライさんだけを保護して、それ以外のアライさんは排除しよう、といった考えを持つ人たちのことさ。」

俺「それって、何か意味がありますか?」

カズ「まぁ、『アラ虐派』と『アラ信派』の対立は根深いものだから、それの妥協案として『協調派』が生まれたんだと思ってるよ。」

友人「【ふれあい広場】ってのは、その『協調派』の考えを取り入れた試験運用の場、ってわけ。」

俺「なるほど、ねぇ。」

白と黒をはっきりさせよう、とはしない考え方なわけか。

カズ「アライさんのことをよく知らない、とのことだけど、現状でいいんだ。」

カズ「君はアライさんのことをどうするべきか、みたいなことを考えていたりする?」

カズさんは俺に質問をしてきた。

俺「いえ、まだ何とも...、うん、言えないですかね。 全然分かってないんで。」

カズ「そっか...」

そういうカズさんの言葉は、寂しさに似た何かしらの感情があった。
俺にはそれがよく分からなかった。

友人「そういえば、カズにぃはどうしてここにいるの?」

カズ「あぁ、それはアライさんを大量に捕獲したもんだから、処分がてら、ってところかな。」

友人「こういうところ好きじゃないのにね。」

カズ「やっぱり、ハンターの資格持ちとしては、自らの手で処分することに意義があるとは思ってるよ。」

カズ「ただ、資金的なことを考えると、時々はこっちを利用してしまうかな?」

俺は、そこで疑問に思ったことを口にした。

俺「持ってく場所によって、もらえるお金が違うんですか?」

カズ「そうなんだよ。 ここだと生きたアライさんが貴重だから高値で引き取ってくれるんだよ。」

友人「ハンターを続けるには、色々と金がかかるもんさ。」

俺「そうなんだ。」

カズ「あ、ごめん。」

カズさんは腕時計を見ながら、そう言葉にした。

カズ「そろそろ戻らないと、カミさんが怒り出すかも。」

友人「でしたら、また話を聞かせてください。」

カズ「いいよ。 それじゃ、またね。」

カズさんはそういうと、手を振りながらその場から立ち去った。
友人はそれを手を振り返して見送り、俺はただ眺めているだけだった。

カズさんの姿が見えなくなった頃、友人は口を開いた。

友人「どうだった?」

俺「何だか、優しそうな人ではあったな。」

友人の質問に、俺は答えた。
そして、カズさんと出会ってから気になっていたことを尋ね返した。

俺「つか、あの人との関係は何なんだ?」

友人「カズにぃは、俺の仇をとってくれた人だよ。」

俺は友人の返事に言葉を失った。

俺「...すまん。」

それが、俺が返せる最大の言葉だった。

友人「気にすんな。」

友人は、微笑みながらそう返してきた。

友人「あの人に弟子入りする形で、俺もハンターになったんだよ。」

俺「弟子入り?」

友人「そう、俺が無理やり頼み込んで、教えてくれてるのさ。」

俺「そうだったんだな。」

友人「ま、この話はまた今度してやるさ。」

友人「さ、行こうぜ。」

俺たちは、目の前にある施設に入っていった。

とりあえず、今回はここまで。

次回は【ふれあい広場】の内部を書いていこうと思います。

<アライちゃんのふれあいコーナー>

俺「ここが入り口か。」

友人「ここは意外に人気コーナーなんだよ。」

俺「そうなんだ。」

俺は辺りを見回した。

俺「あれ?」

俺は入り口横に立て看板があるのを見つけた。
そして、何が書いてあるか確認するため、そこへ近づいていった。


ふれあいコーナーにおける注意事項

一.当コーナーは、火気厳禁です。
一.当コーナーは、危険物の持ち込みは禁止です。
一.当コーナーに入っていただく前に金属探知機があります。該当品を身に着けている場合は、事前に入り口横のロッカーに預けてください。
一.当コーナーでは、暴力行為は禁止です。そのような行為を楽しみたい方は別エリアへの移動をお願いします。
一.指定された食べ物以外は与えないで下さい。
一.他のお客様のご迷惑となる行為はお止め下さい。
一.係員の指示には、必ず従って下さい。
一.その他、マナーの向上にご協力下さい。

以上のことをお守りいただきますよう、ご協力をお願いします。


俺が注意事項を読んでいると、後ろから声がかかった。

友人「要するに、他人に迷惑かけんなよ、ってことさ。」

俺「まぁ、普通のことが書いてあるだけだな。」

友人「ちなみに、財布とかもアウトだから。」

俺は簡単にセルフチェックを実施した。
ズボンのポケットに財布が入っている以外は特には無い...

俺「そういえば、ベルトは?」

友人「係員がボディチェックして、問題なければベルトはOKだな。」

俺は、面倒だな、と思ってしまった。

友人「とりあえず、飛行機の搭乗ゲートの感覚でいいよ。」

俺「まず、飛行機に乗ったことがないよ。」

友人「意外だな。」

俺「誰もが乗ったことあるわけじゃないんだから。」

友人「国内線は? 北海道とか。」

俺「俺の人生で行ったことがある日本の最北端は、栃木だよ。」

友人「それはスマンかったな。」

一先ず、俺たちはロッカーに荷物を預けて、ゲートを通った。
案の定、ベルトが反応したため、ボディチェックを念入りに受けた後、中に入っていった。

内部については、今書いてます。

今日中に上げれないかも...
ご了承ください。

前回の続きを書いていきます。
なので、タイトルは省略します。

 のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!!
 のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!!
 のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!!
 のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!!
 のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!!
 のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!!
 のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!!

 ヨチヨチヨチコスリコスリヨチヨチヨチヨチクッチャクッチャヨチヨチコスリコスリヨチヨチヨチヨチヨチヨチシッポフリフリフリフリフリフリヨチヨチヨチヨチコスリコスリコスリコスリコスリコスリコスリコスリヨチヨチ
 ヨチヨチヨチクッチャクッチャヨチヨチコスリコスリコスリコスリコスリコスリヨチヨチクッチャクッチャヨチヨチヨチシッポフリフリフリフリフリフリヨチヨチヨチヨチコスリコスリコスリコスリコスリコスリヨチヨチヨチ
 ヨチヨチシッポフリフリフリフリフリフリヨチヨチヨチコスリコスリコスリコスリコスリコスリコスリコスリクッチャクッチャヨチヨチヨチクッチャクッチャヨチヨチヨチヨチコスリコスリコスリコスリヨチヨチヨチヨチヨチ

頭がおかしくなりそうだった。

ふれあいコーナーの広さとしては、学校の体育館ほどであった。
その中に、アライちゃんが50匹以上はいるような気がする。
とりあえず、蠢いていて気持ち悪かった。

俺「気が狂いそう...」

友人「俺もだ。」

俺「なら、何故来たんだよ。」

友人「いや、お前は痛めつける系が苦手そうだったから、ここなら大丈夫かと思って。」

俺「お前は俺をどうしたいんだ?」

友人「まぁ、お前がアライさんにどんな感情を抱いているのか、っていうのを知りたい、っていうのが発端だけど。」

友人も悪気があって連れてきているわけではないことは分かっていた。
そもそも、この中を案内してくれ、って言ったのは自分なんだし。
要は、自業自得、ってやつだな。

とは言え、この空間は異常で耐えられそうにない。

女性客1「キャー!! カワイイー!!」パシャパシャ
女性客2「こっちを見てー!!」パシャパシャ

アライちゃんF12「のりゃりゃりゃりゃ! アライしゃんをかわいくしゃつえいしゅるのりゃ!!」
アライちゃんF25「アライしゃんのほうが、かわいいにきまってるのりゃ!!」

とある客は、アライちゃんをカメラ撮影をしていた。
つか、スマホの持ち込みはいいのか?

男性客1「おぉー! ご飯を食べたぞ。」

アライちゃんF33「おいちいのりゃ! もっとよこちゅのりゃ!」クッチャクッチャ
アライちゃんF14「アライしゃんも、もっとたえたいのりゃ!」クッチャクッチャ

とある客は、アライちゃんを餌付けしていた。
どうやら、ふれあいコーナーの隅に無料のエサが置いてあるようだ。
1ヵ所だけじゃないみたいだな。

高さは、アライちゃんが飛びかかっても届かないように設定されているようだ。

女性客3「この子、賢いわね。」パンパン
男性客2「お、これはすごいな。」パンパン

アライちゃんF35「アライしゃんのしっぽのりゃんす、すごいのりゃ?」シッポフリフリ
アライちゃんF49「このちっぽのりゃんしゅれ、ひとしゃんをメロメロにしゅるのりゃ!」シッポフリフリ

とある客は手を叩き、それに合わせてアライちゃんが尻尾を振っていた。
どうやら、ダンスのつもりらしい。

いろんな場所で、いろんな客が、いろんなアライちゃんと戯れていた。

俺「触れ合い方は千差万別、ってことだな。」

友人「注意事項にも書いてあったように、暴力行為は禁止されているからな。」

俺「もし、それをやった場合は?」

友人「業務妨害罪で逮捕されるな。」

俺「ここって、秘密の場所じゃなかったのか?」

友人「噂だと、裏で色々と繋がっているみたいだぞ。」

 のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!!
 のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!!
 のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!!
 のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!!
 のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!!
 のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!!
 のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!! のりゃーーーーーん!!

 ヨチヨチコスリコスリコスリコスリコスリコスリコスリコスリヨチヨチヨチヨチヨチコスリコスリヨチヨチヨチヨチクッチャクッチャヨチヨチコスリコスリヨチヨチヨチヨチヨチヨチシッポフリフリフリフリフリフリヨチヨチ
 ヨチヨチコスリコスリコスリコスリコスリコスリヨチヨチヨチヨチヨチヨチクッチャクッチャヨチヨチコスリコスリコスリコスリコスリコスリヨチヨチクッチャクッチャヨチヨチヨチシッポフリフリフリフリフリフリヨチヨチ
 ヨチヨチコスリコスリコスリコスリヨチヨチヨチヨチヨチヨチヨチシッポフリフリフリフリフリフリヨチヨチヨチコスリコスリコスリコスリコスリコスリコスリコスリクッチャクッチャヨチヨチヨチクッチャクッチャヨチヨチ

幸い、ここがうるさいこともあって、友人との話は他の人には聞かれていないようだった。

俺「...意外に怖い場所なんだな。」

友人「ルールさえ守っていれば、問題ないさ。」

その時だった。
ズボンを引っ張られる感覚があった。

俺「何だ?」

俺は足元を見た。

アライちゃんF59「うゆ? ひとしゃん、どうしたのりゃ?」キョトン

足元にアライちゃんがいた。
大量に見れば蠢いて気持ち悪かったが、1匹だけならそうでもない印象を受けた。

よく見ると、額に「59」と書かれていた。

俺「この額のは何だ?」

俺はしゃがんで、アライちゃんの額を触った。

友人「これな、識別番号のようなものさ。」

俺がしゃがんだのを見て、友人もしゃがんで説明をしてくれた。

俺「これ、書いたものじゃないな。」

アライちゃんF59「くしゅぐったいのりゃ!!」ケラケラ

友人「まぁ、焼き印だからな。」

俺「マジか。」

そこで俺は気付いたことがあった。
俺の手を払いのけようとしているアライちゃんの手を見たところ、親指以外の指が無かった。

俺「指が無いな。」

アライちゃんF59「これ、わるいひとしゃんにとられちゃったのりゃ...」ウルウル

友人「客に危害を加えないようにするための処置ってやつさ。」

友人が説明してくれる中、疑問に思ったことがあった。

俺「そういえば、お前ってこの場所って大丈夫なのか?」

そう、『アライさんは完全悪』といった人間だ。
このコーナーは相当堪えているに違いない。

友人「まぁ、確かにイライラしてるよ。 でも、別エリアで憂さ晴らしが出来る、って考えたら、多少の我慢はできるさ。」

友人はアライちゃんをじっと見つめながら、そう言った。

アライちゃんF59「ひとしゃん、イライラしてるのりゃ?」

アライちゃんF59「だったら、アライしゃんのしっぽのリャンスをみて、げんきをりゃすのりゃ!」キャッキャッ

そう言うと、アライちゃんは向きを変えてこちらに尻尾を向けた。

アライちゃんF59「のりゃ♪ のりゃ♪ のりゃ♪ のりゃ♪ のりゃ♪ のりゃりゃ♪」シッポフリフリ

その様子を見て、俺はメトロノームしか出てこなかった。
いや、向きが逆か。

俺「ここって、これだけなのか?」

友人「いや、ここはとっておきがあるのさ。」

友人は不敵な笑みを浮かべたが、俺には意味が分からなかった。

その時だった。

男性客3「いってーーーーー!!」

突然、男の叫び声が聞こえてきた。

アライちゃんF55「アライしゃんは、ヒトなんかとなれあわないのりゃ!! はやく、おててをかえすのりゃ!!」フゥー

どうやら、アライちゃんに噛みつかれたようだ。

ピーーーーーーーーーーッ

突然、会場内に鳴り響く笛の音。

『ミナサン チュウオウニ オアツマリ クダサイ』

あの機械音声が響き渡った。

『アライチャンヲ チカクノ コンベアニ ノセテ クダサイ』

気付くと、中央に透明な何かに覆われた、部屋のようなものが現れていた。
そして、周りで触れ合っていた客が一斉にベルトコンベアにアライちゃんたちを乗せていた。
向かう先は、中央の部屋の前のようだ。

つか、どこからコンベアや部屋が出てきたんだよ。
原理が分からないぞ。

アライちゃんF59「のりゃ!? なにがおきるのりゃ!?」ブルブル

突然のことに、アライちゃんは驚いていた。

友人「すぐに分かるよ。 いってらっしゃい。」

友人はアライちゃんをつまみ上げると、素早くコンベアに乗せた。

アライちゃんF59「のりゃーーーーー!?」

アライちゃんは叫び声と共に、運ばれていった。

友人「じゃ、俺たちも行くか。」

俺は友人に言われるがままに、中央部へと向かった。

一旦ここまで。
続きは、少々お待ちを...

>>203

そこに辿り着くと、部屋の周りを囲うようにアライちゃんが並んでいた。
しかも、中央の部屋を見るように頭を固定されている。

アライちゃんF1「もうみたくないのりゃ!!」ジタバタ
アライちゃんF20「いやぁーーーーー!!」ジタバタ
アライちゃんF59「こわいのりゃーーーーーー!!」ビエーン
アライちゃんF38「なんなのりゃ?」キョトン
アライちゃんF31「な、なにがはじまるのりゃ?」ビクビク
アライちゃんF12「これいじょう、ひどいことをしないでほしいのりゃ!!」ジタバタ
アライちゃんF6「たすかりたいのりゃ...」ビクビク
アライちゃんF47「のりゃーーーーーん!!」ビエーン
アライちゃんF42「アライしゃんをはなすのりゃ!!」ジタバタ
アライちゃんF14「うるさいのしゃ!! しずかにするのりゃ!!」フゥー

泣き叫ぶものもいれば、怒りに狂うものがいたり、表情は様々だった。

俺たちは、ちょうど見やすい位置が空いていたので、そこで見ることにした。

すると、中央の部屋の上にスポットライトが集中した。

???「レディーーース、エーーーンドゥ、ジェントルメーーーン!!」

そこには、スーツを身に纏った男がいた。
スーツはラメが入っているのか、キラキラして鬱陶しかった。

???「さぁさぁさぁ!! エックスがお送りする、特別ショーのお時間です!!」

自らをエックスと名乗る男は、この場で「特別ショー」を行うようだ。

俺「なんでここで?」

友人「まぁ、見てれば分かるよ。」

友人に言われるまま、中央の部屋を見た。

エックス「今回協力してくれるのは、全部で3匹だーーー!!」

ウオォーーーーーーーーーー

エックスがそう言うと、周りから歓声が上がった。

アライちゃんたちの一部分は、何が起こっているか分からない様子であった。

エックス「まずは、ナンバーーー、フィフティーーー、フゥァーーーイブ!!」

エックスがそう言うと、並べられたアライちゃんの後ろから人がやってきた。
着ているポロシャツには、ASPの文字があった。
「(A)アライ (S)さん (P)パーク」ってことか?
つまり、係員、ってことか?

そんなことに気を取られてるうちに、額に「55」と焼き印の押されたアライちゃんは縛り上げられていた。

アライちゃんF55「なんなのりゃ!! はなすのりゃ!!」ジタバタ

エックス「次に、ナンバーーー、エーーーイトゥッ!!」

アライちゃんF8「ぴぃぃぃぃーーーーー!!」ジタバタ

このアライちゃんも他の係員の手によって縛り上げられた。

エックス「最後は、ナンバーーー、トゥウェンティーーー、トゥーーー!!」

アライちゃんF22「ア、アライしゃんはなにもわるいことしてないのりゃ!!」ジタバタ

最後に読み上げられたアライちゃんも縛り上げられてしまった。
そして縛り上げられたアライちゃんたちは、滑車を使ってエックスの近くまで連れていかれた。

エックス「さぁ、これからこのアライちゃん達には、私のショーに協力してもらいましょう!」

そう言ったエックスだったが、突然周りを見渡し始めた。

エックス「そうそう、忘れていましたね。 さらに協力してくれるものをお呼びしよう!」

パチン

わざとらしい演技の後、エックスが指を鳴らすと中央の部屋の下から何かがせり出してきた。

 グオォー...

あのタテガミは...間違いない。
百獣の王と呼ばれている、ライオンだ。

エックス「ここにアライちゃんを投入します!」

 ゴアァー!!

エックスの声と共に、ライオンが吠えた。

エックス「果たして、アライちゃんたちは無事に生きて帰ることが出来るのでしょうか!?」

ウオォーーーーーーーーーー

エックスの進行にまた歓声が上がった。

俺「つか、そんなことできるのか?」

友人「見てりゃ分かる、って。」

俺が友人に尋ねている間も、進行は続いていた。

エックス「それでは、投入する前にここに呼ばれたアライちゃんたちを紹介しよう!!」

エックス「まずは、こいつだーーー!!」

エックスは吊り上げられた内の1匹のロープを掴んだ。

アライちゃんF55「はなせーーー!! はなすのりゃーーー!!」ジタバタ

エックス「こいつは今しがた、客の手を噛んだ大、悪、人、だーーー!!」

そう言うと、エックスはロープから手を離し、別のアライちゃんのロープを掴んだ。

アライちゃんF8「のりゃーーーーー!! のりゃーーーーーん!!」ジタバタ

エックス「こいつは、ここに来てから客と遊ぼうとせずに、会場の隅で丸くなっていたチキン野郎だーーー!!」

俺「野郎、って雄じゃないだろ。」

俺は思わず、気になったことを口にした。

友人「まぁ、そこは雰囲気っていうか?」

エックスの進行は続く。
エックスは先ほど同様、ロープから手を離して最後のアライちゃんのロープを掴んだ。

エックス「最後にこいつの紹介だ!!

エックス「こいつは、餌のある台の付近から動かなかった怠け者だーーー!!」

アライちゃんF22「おろすのりゃーーーーー!! おーーーーーろーーーーーせーーーーー!!」ジタバタ

エックスの紹介が一通り終わると、エックスは手を広げた。

エックス「さぁ、ゲームを始めよう!!」

エックスを乗せた足場が下がり、アライちゃんも一緒に下がっていった。

エックス「この中央の台にアライちゃんを乗せます!!」

エックスに気を取られていたため気づかなかったが、部屋の中央に円形のステージがあった。
円形のステージは、4本の柱によって支えられているようだった。

エックス「10分間だぁ!! この台の上で待つことが出来れば、君たちは元の生活に戻ることが出来るぞーーー!!」

エックスはそう言いながら、アライちゃんをロープから解放して、台の上に乗せていった。

アライちゃんF55「なんで、こんなことをしないといけないのりゃ!!」フゥー
アライちゃんF8「のりゃーーーーーん!!」ビエーン
アライちゃんF22「のりゃりゃりゃりゃ... たいへんなことになったのりゃ...」ビクビク

エックス「それでは、ゲームスタート!!」

アライちゃんからの苦情を無視して、エックスはゲームを始めた。

ビーーーーーーーーーーッ

台の上に放置されたアライちゃんが3匹と、台の下にライオンが1匹。
台の上は観客から見ることが出来ない高さのため、俺たち、観客はカメラ越しに様子を見ていた。

アライちゃんF55「なんで、こんなことをしないといけないのりゃ!!」フゥー
アライちゃんF8「のりゃーーーーーん!!」ビエーン
アライちゃんF22「のりゃりゃりゃりゃ... たいへんなことになったのりゃ...」ビクビク

3匹は台の上から一歩も動いていなかった。

俺「これ、台から動かなければ終わりじゃないかな?」

友人「それで済むんだったら、このショーの意味が無いわな。」

俺「意味?」

友人「間引きだよ。 あと、見せつけだな。」

俺「なんだそりゃ?」

その時だった。

 ゴゥ

ライオンが軽く唸り声をあげた。

アライちゃんF8「のりゃーーーーーん!!」ビエーン
アライちゃんF55「したのやつが、うるさいのりゃ!!」フゥー
アライちゃんF22「うるさいとおもうなら、たおしにいけばいいのりゃ...」ビクビク
アライちゃんF55「おまえがたおしにいけばいいのりゃ!!」フゥー
アライちゃんF22「ア、アライしゃんは、べつにうるさいとおもって、な、ない、のりゃ...」ビクビク
アライちゃんF8「のりゃーーーーーん!!」ビエーン

言い寄るアライちゃんと言い寄られるアライちゃん、そして、会話に入っていかないアライちゃんの構図が出来上がっていた。

アライちゃんF22「じぶんからいかないのは、こわいからなのりゃ...?」ビクビク
アライちゃんF55「べつにこわがってないのりゃ!! いいがかりはやめるのりゃ!!」フゥー
アライちゃんF22「だ、だ、だったら、だったら!! アライしゃんをつかわずに、じぶんでいけばいいのりゃ!!」フゥー

言い寄られていた方が、とうとうキレたようだ。

アライちゃんF22「そうやって、イケイケいうのはこわがってるしょうこなのりゃ!! このよわむしが!!」フゥー
アライちゃんF55「ア、アライしゃんはよわむしじゃないのりゃ!! むてきなのりゃ!!」フゥー

とうとう、睨み合って一触即発の状況だな。

アライちゃんF22「もうがまんのげんかいなのりゃ!!」フゥー
アライちゃんF55「かえりうちにしてやるのりゃ!!」フゥー

ヨチヨチヨチヨチ

ポカポカポカポカ

俺「あぁ、殴り合いに発展したか。」

友人「といっても、威力は知れてるんだけどな。」

アライちゃんF22「のりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!」
アライちゃんF55「のりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

台の上で、アライちゃんが殴り合いの泥仕合を繰り広げているときだった。

 グワァー

ライオンが台に手を掛けた。
その途端、台がゆっくりと倒れ始めた。

アライちゃんF8「のりゃ!?」ビクッ
アライちゃんF22「のりゃ!?」ビクッ
アライちゃんF55「のりゃ!?」ビクッ

そして、完全に崩れてしまった。

俺「あれって、固定されてなかったのか。」

友人「さぁ、ここからだぜ。」

友人が指さす先には、崩れた台から投げ出されたアライちゃんがいた。
そこは、ライオンがすぐに手を出せる高さだった。

俺「そういうことか。」

友人「そう、ライオンのお食事タイムってわけ。」

アライちゃんF8「のりゃーーーーーん!!」ビエーン

ライオンは、泣き叫んでいるアライちゃんの元へと向かった。

アライちゃんF8「のりゃーーーーーん!! のりゃ...、」

アライちゃんはようやく自分の元へ向かってくる影に気が付いた。

アライちゃんF8「のりゃ?」キョトン

プシャ

その瞬間、アライちゃんの上半身はライオンに喰われていた。
そして、ライオンはそのまま口の中でそれを噛み砕いた。

アライちゃんF22「あ、あぁ、あいつのところにきてしまったのりゃ...」ブルブル
アライちゃんF55「なんなのりゃ、あいつは!?」ビクッ

ライオンは残りの2匹に目をくれることなく、残りの体を食べ尽くした。

俺「な、なぁ...、あれ、えーっと、ア、アライちゃんって、あーっと、骨まで、んー、食え、るのか?」

俺はパニック状態になっていた。

友人「確か、幼獣の時はまだ骨が柔らかいから、あぁいった肉食獣は問題なく食べれる、んだと。」

俺「へ、へぇー...。」

俺はそう言うのが精一杯だった。

ライオンは顔を血で染めながら、残ったアライちゃんの方を見た。

アライちゃんF22「のりゃ!! に、にげるのりゃ!!」ヨチヨチ
アライちゃんF55「アライしゃんもにげるのりゃ!!」ヨチヨチ

2匹は別々の方向へ逃げていった。
そして、ライオンは次のターゲットに向かっていった。

アライちゃんF22「のりゃーーーーー!! きちゃダメなのりゃ!!」ヨチヨチ

アライちゃんF55「ア、アライしゃんはたすかったのりゃ!!」ハァハァ

必死に逃げるアライちゃん。

アライちゃんF22「のりゃーーーーー!!」ヨチヨチ

アライちゃんF22「げぶっ!!」ヨチヨチ

しかし、ライオンとの体格差、歩行速度などから、すぐに捕まってしまった。
アライちゃんはライオンに腰を抑えられる形になっていた。

アライちゃんF22「ア、アライしゃんをみのがし、げえぇえぇぇぇぇぇーーーーー!!」ビクンビクン

ライオンはアライちゃんの背中に噛みつき、そのまま噛み千切ったのだった。

アライちゃんF22「ア、アラ、アー...」バタバタビクンビクンバタバタビクンビクンビクンビクン

アライちゃんは目が虚ろになり、口からは涎を垂らしていた。
そして、ライオンはアライちゃんの様子など構うことなく、食べ進めていった。

しばらくすると、そこには血痕だけ残されており、他は何も残されていなかった。

そしてライオンは残りのアライちゃんへ目を移すのだった。

アライちゃんF55「のりゃ!! に、にげるのりゃ!!」ヨチヨチ

アライちゃんが逃げる動作に移ったその時だった。

ビーーーーーーーーーーッ

エックス「ゲーム、しゅーーーーーりょーーーーー!!」

ブザー音と共に、エックスが叫んだ。

その声を聞いたライオンは歩みを止めたのだった。

俺「ライオンを躾けてあるのか。」

友人「そうでないと、ショーが成り立たないからな。」

俺「あのライオン、すげぇな!」

俺たちがそんな会話をしているとき、エックスの進行は続いていた。

エックス「さぁ、10分が経過したぞ!!」

アライちゃんF55「は、はやくアライしゃんをたすけるのりゃ!!」ジタバタ

アライちゃんがエックスに助けを求めていたが、エックスは助けるような素振りを見せなかった。

エックス「あれぇー? アライちゃんは、ルールを聞いてなかったのかなぁ?」

アライちゃんF55「その、じっぷん、ってやつまでいきのこればたすけてくれる、っていったのりゃ!!」ジタバタ

エックス「確かに言ったね。」

アライちゃんF55「うそつきなのりゃ!!」フゥー

エックス「あれぇ? 何か忘れてないかなぁー?」






エックス「私は、『台の上で』10分間耐えたら、って言ったんだけどなぁー。」




確かに、エックスはそう言った。
そして台が崩れたことによって、アライちゃんは投げ出された。

エックス「台の上にいないんだから、アライちゃんは敗者になるんだよねぇ。」

エックスは不敵な笑みを浮かべ、そう言い放った。

投げ出されたとはいえ、土台となっていた所は壊れずに残っている。
つまり、投げ出された後にライオンに喰われないよう、そこへ戻っていれば勝者になっていたのだ。

パチン

エックスが指を鳴らした。
その音に反応して、ライオンがアライちゃんに向かっていった。

アライちゃんF55「そんなの、インチキなのりゃ!! やりなおすのりゃ!!」フゥー

アライちゃんは必死にエックスに向かって抗議をしていた。

エックス「それはいいとして、後ろは大丈夫かい?」

アライちゃんF55「うしろ? うしろになにがあるのりゃ?」クルッ

振り返ったアライちゃんの目の前には、ライオンが迫っていた。

アライちゃんF55「のりゃーーーーー!! ぐぇぁぁぁえぁえぁぇあぇあぇ!!」ビクンビクン

アライちゃんは逃げることもできず、ライオンに噛みつかれた。
そして、ライオンは容赦なくアライちゃんのお腹を噛み千切ったのだった。

アライちゃんF55「やべ、あーーーーー!! やべびゅのあーーーーー」バタバタビクンビクンバタバタビクンビクンビクンビクン

アライちゃんの抵抗も虚しく、ライオンは食べ進めていった。

アライちゃんF55「や...、え...」バタバタビクンビクンバタバタビクンビクンビクンビクン

徐々にアライちゃんの動きは弱くなり、ライオンはそれを完食したのだった。

その様子を目の前で、しかも、目をそらすことさえ許されなかった、残りのアライちゃんたち。

エックス「そこで見ていた、アライちゃんたち!! よーく、聞いてな!!」

エックス「今の不良品みたいに、ヒトと、ちゃんと交流できない愚か者は、この子のエサになってもらうからね!!」

 グワァー

エックスの説明に合わせて、ライオンが吠えた。

俺「ちょっと離れようぜ。」

友人「いいよ。」

ショーが終わったようだったので、俺たちはその場を離れた。

俺「『協調派』の意味が分かったよ。」

俺は、友人にそう言った。

友人「聞かせてみ?」

俺「つまり、人間に媚を売ってる分には助けてやるけど、反抗したり無関心だった奴は殺処分、ってわけだな。」

友人「そう言うこと。」

俺「で、処刑シーンを何度も見せつけて、こうなりたくなければ言うこと聞けよ、って見せつけるわけか。」

そう、友人はショーが始まった時に、これを「見せつけ」と言っていた。

俺「恐怖政治だな。」

友人「多分、処分された奴は入ってきて間もない奴だったんだろうな。」

俺は友人の言葉に疑問を持った。

俺「あれ? 番号が若くなかったか?」

友人「必ずしも通し、ってわけじゃないんだよ。 穴が空いたら、その番号の穴埋めをしなくちゃいけないからな。」

俺「だとしたら、あの中でどれが古参か分からないな。」

友人「んなもん、知らなくていいんだよ。」

俺「もう、出ようぜ。」

友人「分かった。」

俺たちは出口に向かって歩いていた。
その時だった。

アライちゃんF43『アライしゃんをたすけるのりゃ!!』ドンドン

透明なボウルのようなものに閉じ込められているアライちゃんを発見した。

俺「なんだありゃ?」

友人「見てくか?」

俺たちはそのアライちゃんへと向かっていった。

アライちゃんF43『そこのヒト、あらいしゃんをたすけるのりゃ!!』ドンドン

俺「閉じ込められてるのか?」

友人は何かに気付いた様子だった。

友人「あれだよ。」

友人が指さした先には、茶色いものがあった。
つまり、排泄物だ。

俺「うわっ、気持ち悪っ...」

アライちゃんF43『なっ!! きもちわるくないのりゃ!!』ドンドン

アライちゃんは怒った様子で抗議していた。

友人「ここな、アライちゃん専用のルール、ってあるんだよ。」

友人はアライちゃんのことを無視して、話を進めた。

俺「ルールって?」

友人「このエリア内で、決められた場所以外では排泄禁止、ってね。」

俺「トイレみたいのがあるのか?」

友人「そうなんだよ。 で、ペナルティがこれってわけ。」

友人は、アライちゃんを指さした。

アライちゃんF43『いいかげん、たすけるのりゃ!!』ドンドン

友人「ペナルティとして、自分が出したものをキレイにしないといけないんだ。」

友人は尚もアライちゃんを無視して、話を進めた。

俺「キレイに、ってどうするんだよ。」

友人「食べる、それ以外の方法は無いわな。」

俺は軽く想像しただけで吐きそうになった。

友人「それをしなかったら餓死するだけだし、してもただただ臭いだけだから殺処分だな。」

俺「それ、未来無いんだな。」

友人「粗相をした段階で、未来は無いんだよ。」

アライちゃんF43『こらーーーーー!! むしするなーーーーー!!』ドンドン

友人「さて、外に出ようぜ。」

俺「あぁ、分かった。」

こうして、俺たちはふれあいコーナーから出ていった。

友人「しっかり手を洗えよ。」

俺「なら、こんなコーナー作るなよ。」

俺たちは、ふれあいコーナーを出てすぐのところにある手洗い場で、手を消毒した。

アライさんと触れ合って手を洗う、なんて、皮肉だな、と俺は思った。

今回はここまで。

【ふれあい広場】はもう1ヵ所紹介する内容があるので、それが終わったら次のエリアに進みます。

アライさんの数について疑問があるようなので、答えます。

一応、こちらの世界では季節問わず、アライさんが繁殖しているイメージです。
そのため、数が多いです。

基本的に俺視点で話が進みますが、希望があればパークの裏側を書いてもいいと思っています。
ただ書くにしても、この「パーク訪問編」が終わったタイミングにあるため、かなり遅れてしまいますが。

<エサやり体験>

友人「次はここか。」

【ふれあい広場】にある別のコーナーへ俺たちは来ていた。
看板には「エサやり体験」と書かれていた。

俺「どいつにエサをやるんだよ。」

友人「ま、見れば分かるって。」

俺は、謎のエリアに足を踏み入れた。

エリア内は、さながら動物園といった感じだった。
ただ、ライオン、トラ、ワニなどといった、肉食動物しか見当たらない。
動物園でよく見られる、堀を使った展示法が主のようだ。

俺「色んな動物がいるな。」

友人「動物園に行くぐらいなら、ここに来た方が楽しめるからな。」

突如現れた動物園に気を取られてしまったが、俺は友人に疑問を投げかけた。

俺「で、肝心のアライさんがいないんだが。」

友人「そうだなぁ。 どっか良い場所は、っと...、お、あったあった。」

友人は俺の質問には答えずに、案内掲示板のようなものを見ていた。

友人「ワニんところが今からやるみたいだから、そっちに行くぞ。」

俺「やる? 何を?」

友人「行ってからのお楽しみさ。」

結局俺の疑問は解消されないまま、友人の案内でワニの展示場所へ移動した。

俺たちはワニの展示場所へ移動してきた。
そこはかなりの人で賑わっていた。

俺「すげぇ人だな。」

友人「そりゃ、エサやりタイムだからな。 見てみたい人は多いだろうな。」

俺「エサやりタイム?」

俺が友人に疑問を投げかけたとき、カートを引いた人物が2人現れた。
ポロシャツに「ASP」と書かれている。
おそらく、このパークの関係者なのだろう。

係員A1「はい! 今から、エサやりタイムを開始します!」

 ワァーーー!!

観客からの歓声がすごかった。
待ってました、と言わんばかりの反応だ。

係員A1「今回用意したのは、新鮮なアライちゃん10匹でーす!」

 ワァーーー!!

説明していない方の係員がカートを覆っていた布を取り外した。
そこには、透明なケースの中に蠢くアライちゃんが10匹入っていた。

アライちゃんは、壁を叩いたり、泣いていたり、様々な反応をしていた。
しかし、観客の反応がすごくて何を言っているのか聞き取れない。

俺「すげぇ盛り上がりだな。」

友人「そりゃあ、な。」

俺は観客の熱に圧倒されていた。

係員A1「事前の抽選で当選した方は前へ来てください!」

係員の案内で、数名の観客が前に出てきた。

ワニ、エサやり、アライちゃん...

俺「そういうことか...」

俺は何となく察した。

友人「分かったのか?」

俺「アライちゃんをあの中に放り込むんだろ?」

友人「正解。」

係員A1「必ず手袋を着用してくださいね。」

係員が観客に手袋を渡していた。
よく見ると、係員も同じ手袋をしていた。

俺「あの手袋は?」

友人「アライさん専用の手袋だな。」

俺「何だそりゃ?」

友人「どうやって作られているのか分かんないけど、アライさんの爪や牙さえも通さない手袋らしいな。」

俺「お前は持ってんの?」

友人「当然、あれは便利だぞ。」

俺「それ、どこで売ってんの?」

友人「ホームセンターで普通に買えるぞ。」

そんなハイテクな道具があるなんて知らなかった。
でも、それに対して一つ疑問が浮かんだ。

俺「他の動物に対しては、えーっと、頑丈さ、っていうの? それは大丈夫なのか?」

友人「検証動画が上がってるみたいだけど、ダメっぽいな。」

俺「原理が分からんな。」

友人「気にしたら負けだと思ってる。」

俺の疑問はますます深まるばかりだった。

係員A1「餌を放り込むときは、遠くに飛ばし過ぎないようにしてください。」

係員は、手袋を付けている観客に向かって注意事項を話していた。

俺「何で、遠くに飛ばし過ぎちゃいけないんだ?」

友人「遠すぎると、水の上に落ちないからな。」

ワニの展示法として、手前が水、奥が陸地となっている。
また、水辺から観客のいる位置まで危害が加えられない程度の高さがある。

つまり、遠くに投げてしまうと陸地にぶつかってしまう、とのことだった。

友人「陸地にぶつかって痙攣しているのを見に来てるわけじゃないんだよ。」

俺「エサやり、だから、喰われる姿を見に来ている、と。」

友人「そういうこと。」

係員A1「それでは、エサやりタイムを開始します!」

 ワァーーー!!

友人の説明を受けている間に、準備が完了していたようだ。

係員A2「はい、尻尾をしっかり持ってね。」

説明係ではない係員が、ケースからアライちゃんを取り出して、観客に手渡していた。

アライちゃんG1「きゅるるるるる!! このーーーーー!! アライしゃんをはなしゅのりゃ!!」ジタバタ

アライちゃんは逃れようと必死に暴れているが、観客が尻尾をしっかり握っているため、それは叶わない様だ。

アライちゃんG1「アライしゃんの、きゃわいいちっぽをはなしゅのりゃ!!」ジタバタ

係員A2「お客さんの好きなタイミングで投げ込んでください。」

男性客A1「分かりました。」

アライちゃんの訴えを無視して黙々と進められていた。
ワニたちも察知してか、陸地から水の中へと移動していた。

ワニは全部で3匹いるようだ。

男性客A1「どうやって、投げ入れようかな。」

アライちゃんG1「このーーーーー!! ヒトなんて、アライしゃんのちゅめで、ギッタンギッタンにしてやるのりゃ!!」ジタバタ

男性客A1「うるさいから、そのまま落とそうかな。」

パッ

アライちゃんG1「ふぇ? あああああぁぁぁぁぁーーーーー!! おちてるのりゃーーーーー!!」ジタバタ

ドボーン

アライちゃんG1「あ、あちが、とど、か、な、のりゃ!! お、ぼ、おか、おかーしゃーーーーーん!!」ジタバタビエーン

バクッ

壁際を真っ逆さまに落ちたアライちゃんはパニック状態になり、母親に助けを求めながらワニに喰われていった。

俺「無慈悲だな。」

友人「慈悲なんて与える価値もないよ。」

そんな会話をしている間にも、次の人の準備は進められていた。

係員A1「はい、気を付けて持ってくださいね。」

女性客A1「こ、こうかしら?」

アライちゃんG2「アライしゃんのしっぽ、もっちゃダメなのりゃ!!」ジタバタ

女性客A2「もっとしっかり持った方がいいんじゃない?」

アライちゃんG3「ピギィーーーーー!! しっぽがいたいのりゃーーーーー!!」ジタバタ

女性客A1「しっかりと、ってこんな感じ?」ギューッ

アライちゃんG2「ピギィーーーーー!! そんなにちからいれちゃダメなのりゃ!!」ジタバタ

女性客A2「せーの、で投げ入れる?」

女性客A1「いいわよ。」

アライちゃんG2「おろせーーーーー!! おろすのりゃーーーーー!!」ジタバタ

アライちゃんG3「おかーしゃん!! アライちゃんをたすけるのりゃーーーーー!!」ジタバタ

女性客A2「行くわよ。 せーの!」

女性客A1「はい!」

ポーイ

アライちゃんG2「アァァァーーーーー!! とんでるのりゃーーーーー!!」ジタバタ

アライちゃんG3「ピギィーーーーー!! のりゃーーーーー!!」ジタバタ

ドボーン

アライちゃんG2「ぷはっ!! ここはおみずなのりゃ!? あ、あそこにあるけるばしょがあるのりゃ!!」ジタバタ

アライちゃんG3「ぷはっ!! あ、あそこににげるのりゃ!!」ジタバタ

バクッ

アライちゃんG2「ピギィーーーーー!! あんよがいたいのりゃ!!」ジタバタ

アライちゃんG3「!? うしろにへんなのがいるのりゃ!!」ジタバタ

バクッ

女性客に放り投げられたアライちゃん2匹は陸地近くの水辺に落ちたが、運悪くワニが近くにいたため、足を食べられてしまった。
そして、そのまま全身を食べられてしまったのだった。

俺「なかなか強烈だな。」

友人「まだ見てくか?」

俺「いや、止めとくよ。」

俺たちはワニの展示場所を後にして、別の場所へと移動した。

俺たちが出口に向かっていると、ヘビの展示エリアがあった。

部屋が全部で3つあり、各部屋の中にはニシキヘビが1匹づつ展示されていた。
観客とヘビとの間はガラスで遮られている、普通の展示法のようだ。

俺「中々大きいな。」

友人「俺も久しぶりに見たわ。」

すると、ヘビの部屋の上部が開いて、何かが落ちてきた。
よく見ると、アライちゃんだった。
しかも2匹。

他の部屋も同様のようだ。

友人「これも見てこうぜ。」

俺「おぅ。」

俺は、アライちゃんの食べられる可哀そうな姿を見たくない、という気持ちより、ヘビの捕食シーンがどういったものか、という興味の方が勝ってしまっていた。

ガラス越しでアライちゃんの言葉は聞こえないが、落ちてくるときに展示物の木にぶつかった影響で、大した怪我はしていなかった。
ヘビを見て威嚇をしているようだが、危害を加える様子が無いと分かると、木登りをして遊び始めた。

俺「こんなに和んでていいのか?」

友人「こっからじゃね?」

しばらくすると、ヘビはアライちゃんに少しずつ近づいていき、お尻に噛みついたのだった。

噛みつかれたアライちゃんは泣いているようで、ジタバタと暴れていた。
それを見た別のアライちゃんは、助ける様子もなく、逃げ出してしまった。

ヘビは前屈のような恰好になったアライちゃんをそのまま飲み込んでいった。

俺「こんな風に食べるんだな。」

友人「中々見る機会無いし、これはいいかもな。」

ヘビは、もう1匹のアライちゃんに目を付けると少しずつ近づいていった。
アライちゃんは必死に逃げようとするが、ヘビは体を使ってアライちゃんを取り囲んでいた。

俺「ヘビって意外に賢いんだな。」

友人「ヘビに謝れ。」

アライちゃんは諦めたのか、座り込んで泣き出してしまったようだ。
ヘビはそんなアライちゃんを頭から捕食していった。

アライちゃんは逃れようと、ヘビに爪で引っ掻いたりして抵抗しているようだが、それも虚しくそのまま食べられてしまった。

俺「...こうやって、他の動物に食べられる様子を観察するのが、このコーナーなんだな。」

友人「面白かっただろ?」

俺は友人の質問に答えることが出来なかった。

俺たちは出口に向かっていた。

友人「さて、と。 別のエリアに移動しますか。」

俺「そう、だな。」

俺たちは【ふれあい広場】を後にして、次のエリアに向かうことにした。

今回はここまで

とりあえず、次のエリア紹介はどこがいいですか?

スポーツエリア
レーシングエリア
ショーエリア
フードコート

今回も時間を設けて、意見の多かったエリアから紹介しようと思います。

5/11(金)22:59まで、アンケート期間にしようと思います。

回答が4つで、フード2、レーシング1、スポーツ1、と。

フードでいいですかね?

まぁ、多数決的にフードで決まりかな
他のも見てみたいのもあるけど

>>250
全部書きますよ。

友人「そろそろ腹減らないか?」

友人の言葉に、俺は腕時計を見た。
時間は13時になろうとしていた。

俺「そういえばそうだな。」

友人「なら、昼飯にするか。」

俺「いいぜ。」

俺たちは、食事が出来る休憩所へ移動することにした。

次回、フードエリアです

俺「ここは?」

友人「食事処だよ。 まぁ、フードコートって言い方がしっくりくるかな?」

俺「フードコート?」

聞きなれない言葉に。俺は聞き返した。

友人「あれ? ショッピングモールとか行かない?」

俺「買い物は、ネットかコンビニで済ましてるよ。」

友人「そっかぁ。 じゃあ、大学の食堂...とは、んー、違うんだけど...、まぁ、そんなところだと思っておいてくれればいいかな?」

友人はそう言いながら、苦笑いをしていた。

友人「あ、注文の前にメニューを見ておくか。」

俺「は? メニューって、席についてから見るんじゃないのか?」

友人「ここ、食券方式だから。」

俺「あ、そうなんだ。」

食券の前には、食品サンプルが置かれた棚があった。

メニューは、とんかつ、カレーライスなど、一般的なものが並んでいた。

俺「メニューはいたって普通なんだな。」

俺はそう言いながら、どれにしようか悩んでいた。

友人「それは、慣れてない人向けだよ。」

俺「え? 食事に、慣れてる、慣れてない、なんてものはないだろ?」

俺は友人の方を見て、そう言った。

友人「こっち見てみろ。」

友人が指さす先には、写真付きのお手製メニューが掲示してあった。

俺「何だこ、れ...」

俺は息を飲んだ。
友人の言った意味がようやく理解できた。

そこには、アライフライ、アライ揚げ、アライ焼き、などといった、調理済みのアライちゃんが写真付きで掲載されていた。
写真を見る限り、どれもアライちゃんの体をそのまま料理に使っている感じだった。

友人「お前はこれ、食べれる?」

俺「...無理。」

俺は、首を振った。

友人「俺がこれを食べる、って言ったら?」

俺「...無理。」

友人「でしょうね。」

俺たちは、普通のメニューを頼むことにした。
俺はカレーライス、友人はカツ丼。

俺たちは食券を買い終えると、列に並んだ。

友人「俺は頼んでないけど、周りだとさっきの写真みたいなのを頼んでる奴もいるから、それは我慢してくれよ。 な?」

俺「...なぁ、飯食う場所ってここ以外ないのか?」

友人「無いな。」

即答だった。

友人「ここは、飲み物の持ち込みはOKだけど、食べ物の持ち込みは禁止されてるからな。」

俺「不便だな。」

友人「そもそも、ここに来るのはそういうのもひっくるめて楽しみに来てる奴らだからな。」

俺「まぁ、自業自得...、だから仕方ないか。」

俺はため息をつき、ガラス越しに厨房を見た。
いや、見てしまった。


 まな板の上に乗せられたアライちゃんに包丁を突き付けるコックの姿が。


俺は慌ててフロア側に首を振った。
その様子に気付いた友人が厨房の方を見て、何か納得している様子だった。

友人「大丈夫か? なんだったら、俺が食事を受け取ってやるから、席を確保しに行ってくるか?」

俺「そうするよ。」

俺は自分の食券を友人に預けて、席を探しにフロアへ向かった。

俺「さて、窓際は、っと。」

俺は窓際の席を探していた。
中央の席で周りをアライちゃんに囲まれるよりも、少しでも見る機会を減らしたかったからだ。

ちょうど、席取りがされていない場所を見つけたので、そこに腰かけた。
受け取り口からここまでは見やすいはずだ。

俺は窓に目を移し、山を眺めることにした。

俺「こんな自然に来るなんて、何年ぶりだろうな...」

そんな独り言を呟いた時だった。

ふわっ、と横を香ばしい匂いが通っていった。
そして、そちらに目を向けてしまった。

男性客B1「おっまたせー。」
男性客B2「おっせーぞ。」
男性客B3「腹減った。早く食おうぜ。」

そこには男性の集団がいた。
そして、お盆の上には、こんがり焼かれたアライちゃんの姿が3匹...

男性客B1「ほらよ。」
男性客B2「サンキュー。」
男性客B3「ここに来たら、やっぱこれだよな。」

男性客たちは、串に刺さった焼きアライちゃんの腹にかぶりつき、おいしそうに食べ始めたのだった。

男性客B1「んー、やっぱうめぇわ。」
男性客B2「焼いたのは初めてだけど、これはジューシーでうまいな。」
男性客B3「だろ? フライもいいけど、そのまま焼いたのが一番だって。」

その後、腕や足をもぎ取って食べていた。

俺はこの時に悟った。
何事も中途半端に興味を持ってはいけない、のだと。

そして、俺は山へ視線を戻したのだった。

友人「お待たせ。」

そうこうしてるうちに、友人が食事を持って現れた。

友人「どうした?」

俺「どうした、って何が?」

友人「いや、めちゃくちゃ汗かいてるぞ。」

俺は言われてから、自分の顔を触った。
確かに顔が湿っていた。

俺「い、いや、何でも...」

友人「...まぁ、いいや。」

友人は近くに置いてあったペーパーナプキンを何枚か持ってきてくれた。

友人「これで顔を拭けよ。」

俺「ありがとう...」

俺がペーパーナプキンで顔を拭いているうちに、友人がセッティングしてくれた。

友人「さてと、食べるか。」

俺「そうだな。」

俺たちは手を合わせた。

友人「いただきます。」

俺「いただきます。」

俺はカレーを口に運んだ。

俺「ん、うまいな。」

友人「ここで普通のメニュー、初めて食ったけど、中々だな。」

何度かカレー専門店に行ったことがあったけど、それに匹敵するくらいのコクが出ている。
少しサラサラしていて、スープカレーとはちょっと違う印象だ。
辛さも抑えられていて、子供でも食べやすい辛さだと思う。

具材も、肉、ニンジン、玉ねぎ、ジャガイモ、といった、昔実家で見たようなオーソドックスなラインナップだ。
しかし、少し違和感があった。

俺「この肉...、何だ?」

牛、豚、鳥、いずれでも無いことは分かった。
ただ、他の肉を食べたことが無いため、思い当たるものが無かった。

いったい何の肉なんだ?

友人「それ、アライさんの肉だよ。」

俺は思わず固まった。

俺「...は?」

俺はそう返すのが精一杯だった。

友人「ん、それな、普通のメニューに見えて、肉だけはアライさんなんだよ。」

俺の思考は追い付いていなかった。

友人「まぁ、アライちゃんは写真にあったように提供して、アライさんは肉の部分を削いで加工して提供、って感じだな。」

俺「そう...、なんだ。」

その後の味はよく覚えていない。

気付いたら、カレーは無くなっていた。

友人「ふぃー、うまかったな。」

俺「...おぅ。」

俺は徐に、お腹に手を置いた。

何故か、お腹の中でアライちゃんが這っているような感覚に襲われた。
しかも頭の中で、のりゃー、という声まで聞こえるような気がする。

俺「疲れてるのかな?」

友人「なんか言ったか?」

俺「いいや、何でもないよ。」

俺は水を一気に口に含み、飲み込んだ。
少しでも気を紛らわすために。

友人「おいおい、そんな慌てなくてもいいぞ。」

俺「お、おぅ。」

俺たちは少し休憩したのち、返却口に食器を返すと、出口に向かった。

とりあえずここまで

>>230 で書いたように、パークの裏側を書くときに厨房の様子も書こうと思います。
今回は俺視点のため、カットしました。

さて、次のエリアはどこにしましょうか?

スポーツエリア
レーシングエリア
ショーエリア

5/20(日) 18:00まで、受付期間にしようと思います。

この感じだと、次回はショーエリアですかね。
スポーツが少ないのは私としても意外ですけど。

友人「さて、次のエリアに向かうか。」

俺「...次のエリアは、何があるんだ?」

友人「アライさんによる、ショーがやってるんだよ。」

俺「...あれに何か芸をやらすことなんてできるのか?」

友人「ま、見てみればわかるさ。」

俺たちは【ショーエリア】へ向かったのだった。

俺「な...、なんだこれ...」

俺は驚きを隠せなかった。

建物の見た目こそボロかったが、内装はとても綺麗だった。
スタッフの装いも他のエリアと違い、ポロシャツではなくスーツ姿で、私服でいることが恥ずかしくなるほどだ。

しかし、周りの人たちはそんなことも気にしていない様子だった。

友人「中々だろ?」

友人はそう言うと、電光掲示板の前に移動した。
その後を追うように、俺も移動した。

友人「さて、何から見てこうかな。」

友人は電光掲示板を指さしながら、何かを探しているようだった。

友人「お、時間的にちょうどいいのがあるな。」

友人「よし、移動しようぜ。」

俺は何も分からないまま、友人の後についていくことにした。

奥に進むと、まさに映画館といった雰囲気の廊下があった。

俺「な、なぁ...、ショーって何やるんだ? マジックか?」

友人「そう言うのもあるけど、時間が合ってないからなぁ。」

すると、友人はとある扉の前で足を止めた。

友人「えーっと...、うん、ここだな。」

友人が扉に向かうと、扉の横にいた係員が呼び止めた。

係員B1「入門証のご提示をお願いします。」

友人「これで。」

友人が胸ポケットから入門証を取り出し、係員に見せていた。

係員B1「...はい、確認いたしました。 中へお入りください。」

友人「おーい、中に行くぞ。」

俺「お、おぅ。」

俺は何も分からないまま、扉の中に入っていった。

ここまでで。
とりあえず、導入部です。

次回から、内容を上げてきます。

失礼を承知で言わせてもらうけど、閉じ括弧前の句点が気になる。

>>286
変ですか?

ザワザワ

友人「結構人がいるな。」

中に入ると、円形の部屋の中央にステージが用意されていた。
大学の大講義室くらいの広さ、いや、それ以上かも。

また、扉から入って右手と左手の観客席の上部に大きめのモニターが設置されていた。
あそこにステージの映像でも流すのかな?

友人「えーっと...、お、あそこが空いてるな。」

友人が空いている席を見つけたようなので、俺はその後についていった。

ドスッ

友人「いい席が空いてたな。」

それは左手の最前列の席だった。

俺「何のショーか分からないのに、最前列とか怖すぎだろ...」

友人「あれ? 何か言ってなかったっけ?」

俺「言ってねーよ...」

俺は呆れるようにそう返した。

すると、観客側が徐々に暗くなった。
そして、ステージ上に一人の男が現れた。

???「皆様、お集まりいただき、誠にありがとうございます。」

???「これより『アライファイト』の始まりです!」

男がそう言うと、派手な音楽が鳴り響いた。
それと同時に、観客から大きな歓声が上がった。

しばらくすると、音楽のボリュームが下がり、歓声も静かになっていった。

???「進行は私、ジョン・レフリーでお送りします!」

俺「いや、ジョンっていう要素どこ? 完全に日本人じゃん。」

友人「そこはツッコんだら負けだよ。」

どうやら、友人もそう思っていたらしい。

俺「まだエックスは顔立ちが外人寄りだったから疑問に思わなかったけど。」

友人「エックスはクォーターらしいぞ。」

俺「何で知ってんの?」

友人「裏情報。」

俺は深くは聞かないことにした。

ジョン「では、今回の参加者にご入場いただきましょう!」

パチン

ジョンが指を鳴らすと、ステージの下から5つの檻がせりあがってきた。
でも、よく見ると、檻の内側に透明な板が仕込まれているみたいだった。

ちなみに、檻の中は騒がしかった。

俺「檻の内側にある透明な板、あれってなんだ?」

友人「あれは強化プラスチックで、隙間からの逃走防止用だな。」

隣に解説役がいるのは疑問解消にはちょうどいい。

ジョン「では、参加者の紹介をしていこう。」

ジョン「エントリーナンバー、ワンッ!」

ジョン「とある山で貴重な野生動物を殺していた、殺人一家です!」

アライさんEN1-1「アライさんをここから出すのだ!」ガシャガシャ

アライちゃんEN1-1「アライしゃんはなにもわりゅいことしてないのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN1-2「ここからだしてほしいのりゃ!」ビエーン
アライちゃんEN1-3「おいちいおにくをはやくよこちゅのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN1-4「ごはんがたべたいのりゃ!」ビエーン

ジョン「次に、エントリーナンバー、ツー!」

ジョン「街中の公園の樹を痛めつけて巣にしていた、環境破壊の一家です!」

アライさんEN2-1「アライさんをお家に返すのだぁ!」ガシャガシャ

アライちゃんEN2-1「きのおうちにかえりたいのりゃ!」ビエーン
アライちゃんEN2-2「あのころはたのしかったのりゃ...」シューン
アライちゃんEN2-3「おねーちゃん、いつかかえれるのりゃ!」シッポフリフリ
アライちゃんEN2-4「そうなのりゃ! あきらめなければかえれるのりゃ!」シッポフリフリ
アライちゃんEN2-5「のりゃー...」スゥー

ジョン「次に、エントリーナンバー、スリー!」

ジョン「とある村の畑を荒らし続けた、泥棒一家です!」

アライさんEN3-1「あのまんまるを早く寄こすのだ!」ガシャガシャ

アライちゃんEN3-1「まんまるがたべたいのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN3-2「はやくよういするのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN3-3「ヒトはむのうなのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN3-4「ごはんをもってくるのりゃ!」フゥー

ジョン「次に、エントリーナンバー、フォー!」

ジョン「空き家に住み着いて悪臭を振り撒き続けた、不法侵入一家です!」

アライさんEN4-1「あれはアライさんが初めに見つけたのだ!」ガシャガシャ

アライしゃんEN4-1「ふほうしんにゅうはいいがかりなのら!」フゥー
アライしゃんEN4-2「アライしゃんいがいにだれもいなかったのら!」フゥー
アライしゃんEN4-3「アライしゃんからおうちをうばったヒトのほうがよっぽどわるいのら!」フゥー
アライしゃんEN4-4「かえすのら!」フゥー
アライしゃんEN4-5「アライさんのおうちをうばったきょあくなのら!」フゥー

ジョン「以上、挑戦者の紹介でした。」

ジョン「現在3連勝中の王者に打ち勝つ者はいるのか!」

アライさんCP1「フハハハハ! 誰が向かってこようとも、アライさんの敵ではないのだ!」ピカピカガイジガオ

アライしゃんCP1「おかーしゃんはつよいのら!」ピカピカガイジガオ
アライしゃんCP2「むてきのおかーしゃんなのら!」ピカピカガイジガオ
アライしゃんCP3「あんなやつら、いっぱつでやっつけちゃうのら!」ピカピカガイジガオ
アライしゃんCP4「おかーしゃんのれんしょーきよくはとまらないのら!」ピカピカガイジガオ
アライしゃんCP5「おかーしゃんがまけるはずないのら!」ピカピカガイジガオ

ジョン「以上、参加者の紹介になります。」

ジョン「では次に、ルールを説明しましょう。」

ジョン「知っている人も知らない人も、よーく聞いていてくださいね。」

ジョンの説明はこうだ。

対戦内容は、有刺鉄線デスマッチ。
制限時間は15分で、相手の息の根が止まるまでやりあう。
制限時間内に決着がつかない場合は、両者敗北扱いになる。
ちなみに、闘うのは親のアライさんで、子供のアライさんは檻の中から応援することになる。

挑戦者がトーナメント方式で戦い、最後の勝者はチャンピョンと闘う。
その戦いの勝者がチャンピョンになる。

つまり、挑戦者は2戦の後にチャンピョン戦をやらなければいけない、というハードなものだ。

俺「有刺鉄線の壁、あれって倒れたりしないのか?」

友人「何回か見てるけど、そんなことないな。」

アライさんのタックルを受けることもあるだろう。
俺はそれに耐えうる設計が気になった。

ジョン「では、早速第1試合を始めましょう!」

今回は、前置きまで。
次回からバトります。

さて、誰がチャンピョンになるでしょうか?

乙です
横から失礼ですが
×チャンピョン
◯チャンピオン
かと

>>300
長年、ずっと間違えて使っていました。
指摘していただき、ありがとうございます。

【予告】

躍動感のある話が書けず、現在手間取っています。

7月上旬には、続きを更新したいと思います。

ここ最近、アラ虐自体の盛り上がりが下降してるから、
中々ネタが浮かばないのも無理ないと思う
それでも、アライさんパークは最後まで書き切って欲しい

>>309
ネタは思いついてますよ。
ただ、アライさんのファイトシーンがうまく書けないだけです。

>>297 の続きから...

ジョン「では、早速第1試合を始めましょう!」

ジョンがそう言うと、2つの檻に突如ガスが充満した。

アライさんEN1-1「ゴホッ! 何の煙なのだ、ゴホッ!」ゴホッゴホッ

アライちゃんEN1-1「やめるのりゃ!」ゴホッゴホッ
アライちゃんEN1-2「なんなのりゃ!」ゴホッゴホッ
アライちゃんEN1-3「ぴぃ! にげる、のりゃ!」ゴホッゴホッ
アライちゃんEN1-4「このけむり、おいしくないのりゃ!」ゴホッゴホッ

アライさんEN2-1「や、やめるのだ!」ゴホッゴホッ

アライちゃんEN2-1「られかたすけるのりゃ!」ゴホッゴホッ
アライちゃんEN2-2「なんなのりゃ!?」ゴホッゴホッ
アライちゃんEN2-3「やめてほしいのりゃ!」ゴホッゴホッ
アライちゃんEN2-4「あきらめないのりゃ!」ゴホッゴホッ
アライちゃんEN2-5「のりゃー...」スゥー

残りの3つの檻にはガスは充満していなかった。

アライさんEN3-1「な、何なのだ!? あの白いのは!?」ビクッ

アライちゃんEN3-1「ふわふわしておいしそうなのりゃ!」シッポフリフリ
アライちゃんEN3-2「なんだかあばれてるのりゃ!」キョトン
アライちゃんEN3-3「はやくたべてみたいのりゃ!」シッポフリフリ
アライちゃんEN3-4「おなかすいたのりゃ!」フゥー

アライさんEN4-1「仕方ないのだ。 いつかここから抜け出してあのお家に帰るのだ。」

アライしゃんEN4-1「いつか、っていつなのら?」キョトン

アライさんEN4-1「分からないのだ。 人は間抜けだから、抜け道があるに違いないのだ!」

アライしゃんEN4-1「さすがなのら!」シッポフリフリ
アライしゃんEN4-2「おかーしゃんは、めいさくし?なのら!」シッポフリフリ
アライしゃんEN4-3「おかーしゃんにまかせておけば、かいけつするのら!」シッポフリフリ
アライしゃんEN4-4「はやくかえりたいのら!」フゥー
アライしゃんEN4-5「ここからぬけだしたら、ひとをギタギタにしてやるのら!」フゥー

アライさんCP1「あれが始まったのだ...」ジーッ

アライしゃんCP1「こんかいもらくしょーなのら!」ピカピカガイジガオ
アライしゃんCP2「むてきのおかーしゃんなのら!」ピカピカガイジガオ
アライしゃんCP3「あいつら、よわそうなのら!」ピカピカガイジガオ
アライしゃんCP4「こんかいもおかーしゃんがかつにきまってるのら!」ピカピカガイジガオ
アライしゃんCP5「おかーしゃんがまけるはずないのら!」ピカピカガイジガオ

残りのアライさん一家は思い思いの言葉を口にしていた。
これはもしかして、今から戦うアライさん一家だけ眠らせているのかな?

しばらくすると、ガスを吸ったアライさん一家は静かになり、寝息を立てているようだった。

檻の外から寝ていることを確認した職員が中に入り、親のアライさんのみを回収して中央のステージに移動された。
もちろん、ガスマスクを付けて、だ。

俺「あのガスって?」

友人「催眠ガスだよ。」

俺「意外と原始的なんだな。」

友人「まぁ、これが一番安全だからかな?」

俺「耐性が付いたらどうするよ?」

俺はチャンピオンのアライさん一家を指さして、そう言った。

友人「パーク側もそれくらい考えてるでしょ。」

俺たちがそんな会話をしているうちに、準備は整ったようだ。

職員が連れ出したアライさん2匹がステージ中央に横たわり、有刺鉄線の扉は外からカギを掛けられた。
流石に、取っ手部分は有刺鉄線では出来ていないみたいだ。

アライちゃんが取り残された檻には外側からカギを掛けなおしているみたいだ。

これでアライちゃんたちは、アライさんの闘いを檻から応援するだけになってしまった。

俺「で、アライさんが目覚めるまで俺たちは待っているのか?」

友人「いいから見てな、って。」

俺は友人に促され、中央ステージを見た。

アライさんEN1-1「すぅー... すぅー...」

アライさんEN2-1「すぅー... すぅー...」

アライさんは気持ちよさそうに寝ている。

アライちゃんEN1-1「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN1-2「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN1-3「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN1-4「しゅぅー... しゅぅー...」

アライちゃんEN2-1「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN2-2「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN2-3「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN2-4「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN2-5「しゅぅー... しゅぅー...」

アライちゃんも気持ちよさそうに寝ている。

俺「実は気持ちよく寝ているアライさんを鑑賞する会だったり?」

友人「しないな。」

俺「よく分からんな。」

周りを見回すと、観客は静かに中央ステージの方を見ていた。
この時、会場には闘い待ちのアライさんの声しか聞こえなかった。

アライさんEN3-1「あいつらは何で寝てるのだ?」キョトン

アライちゃんEN3-1「まぬけのりゃ!」シッポフリフリ
アライちゃんEN3-2「きもちよさそうにねてるのりゃ。」シッポフリフリ
アライちゃんEN3-3「さっきのしろいのを、あらいしゃんにもよこすのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN3-4「はやくよこさないと、ひどいめにあわせるのりゃ!」フゥー

アライさんEN4-1「ここから抜け出そうにも見えない壁があるせいで隙間を抜けれないのだ。」

アライしゃんEN4-1「おかーしゃんとあらいしゃんがいっしょにこうげきすればこわせるのら!」シッポフリフリ
アライしゃんEN4-2「おねーしゃんのゆーとーりなのら!」シッポフリフリ
アライしゃんEN4-3「やってみるのら!」シッポフリフリ
アライしゃんEN4-4「かぞくのきずなをみせつけるのらのら!」シッポフリフリ
アライしゃんEN4-5「がんばるのら!」シッポフリフリ

アライさんCP1「さて、どっちが勝つのだ?」ジーッ

アライしゃんCP1「どっちがかってもかんけいないのら!」ピカピカガイジガオ
アライしゃんCP2「おかーしゃんのあいてにならないのら!」ピカピカガイジガオ
アライしゃんCP3「あいつら、よわそうなのら!」ピカピカガイジガオ
アライしゃんCP4「おかーしゃんにてきなんていないのら!」ピカピカガイジガオ
アライしゃんCP5「てんか?むてきのおかーしゃんなのら!」ピカピカガイジガオ

相変わらず騒がしい。

会場を見回すと、俺は時計があることに気付いた。
時間制限付きであるため、当然ではあるんだが。
しかし、俺はおかしなことに気が付いた。

俺「タイマーが、動いて、る?」

すでに、タイマーは残り13分を切っていた。

俺「え? まだ、起きてないのに動いてるのか?」

友人「ん? 言ってなかったか?」

俺の声に気付いた友人が反応した。

俺「ジョンは何も言ってなかっただろ?」

友人「あれは起きるまでの時間も込みの制限時間なんだよ。」

俺「じゃあ、起きるのが遅かったら引き分けになるんじゃ...」

友人「確かに仕留めきれないわな。」

俺「まさか、引き分け前提のゲームなのか?」

友人「そんなことは無いぞ。起きる速さは個体差があるだけだしな。」

その時、中央ステージに動きがあった。

アライさんEN2-1「ん、んー...」

片方のアライさんが目を擦っている。

アライさんEN2-1「さっきのは何だったのだ?」

先に起きたアライさんは体を起こし、伸びをしながら周りを見た。

アライさんEN2-1「のだ!? チ、チビ達がいないのだ!」

大声を出して周りを見回すアライさん。
当然、その声に反応して寝ていたアライさんがもぞもぞし始めた。

残り時間10分。

アライさんEN2-1「あ! チビ達がいたのだ!」

このアライさん、ルールを忘れているのか?
自分のアライちゃんの方へ走っていった。

アライさんEN2-1「チビー!」

アライさんはそう言いながら、壁に手を掛けた。
しかし、それは有刺鉄線。

アライさんEN2-1「のだーーーーー!!」

どうやら、握りしめてしまったみたいだ。
手から血が滲んでいる。

アライさんEN2-1「痛いのだーーーーー!!」ジタバタ

アライさんが暴れている。
手を放して、後ろに体重移動すればいいのでは?

寝起きだからか、頭が回っていないみたいだな。

そんなことをしていると、もう1匹のアライさんが目を覚ましたようだった。

アライさんEN1-1「うるさいのだ...」

目を擦り、ゆっくりと伸びをするアライさん。
ようやく目が覚めたであろうアライさんは、壁際で喚いているアライさんを見つけた。

アライさんEN1-1「えーっと、確かあいつをやっつければよかったはずなのだ。」

アライさんはゆっくり立ち上がると、静かに移動し始めた。

アライさんEN2-1「チビーーーーー、起きるのだーーーーー!! アライさんを助けるのだーーーーー!!」ジタバタ

そうこうしてるうちに、後から起きたアライさんが近づいてきた。

アライさんEN1-1「今なのだ!」シュッ

アライさんEN2-1「のだ?」キョトン

ザシュッ

アライさんEN2-1「痛いのだーーーーー!!」ジタバタ

後から起きたアライさんは後ろからひたすら引っ掻き攻撃を続けた。

ウォーーーーーー

周りの観客は戦闘が始まった瞬間、歓声が上がった。

その内、アライさんの背中は血だらけになり、肉も見えるような状態になった。

それでも、アライさんは立っていた。

残り時間は7分を切っていた。

俺「そう言えば、ジョンは実況とかしないのか?」

俺は、ふと浮かんだ疑問を口にした。

友人「実況をすると、アライさんがすぐに起きちゃうからな。」

俺はステージをジッと見つめるジョンを見た。

友人「前にそれでクレームがあったみたいだから、進行だけに専念してるみたいだな。」

俺「何それ、不憫。」

そこで俺は新たな疑問が浮かんだ。

俺「だったらさ、これだけ周りがうるさいなら、実況しても問題ないんじゃ?」

友人「実況するとアライさんの声が聞こえないから止めろ、って苦情もあったみたいだな。」

俺「何それ、不憫。」

俺はステージではなくジョンを見てみた。
何となく目が寂しそうに感じた。

俺「何つーか、可哀そうだな。」

友人「アライさんが、か?」

俺「いや、ジョンのことだよ。」

友人「あー、そっちね。」

俺「仕事とはいえ、大変だな。」

俺は生き生きしていたエックスを思い出しながら、ステージを見た。

すると、攻撃していたアライさんが相手のアライさんの頭を掴み、有刺鉄線に押し当て始めた。

アライさんEN1-1「いい加減にくたばるのだ!」

アライさんEN2-1「ひ、ひあいのあ!!」ジタバタ

押し付けられたせいで有刺鉄線が顔に食い込んでいた。
そして、元の原形をとどめていないほどに、顔は血塗れになってしまった。

その時だった。
寝ていたアライちゃんがもぞもぞし始め、起きたのだった。

アライちゃんEN1-1「んー...」ボォー
アライちゃんEN1-2「あれ? おかーしゃんは?」ボォー
アライちゃんEN1-3「まだねむいのりゃ...」ボォー
アライちゃんEN1-4「のりゃー...」ボォー

アライちゃんEN2-1「おかーしゃん?」ボォー
アライちゃんEN2-2「ここはどこなのりゃ?」ボォー
アライちゃんEN2-3「のりゃー...」ボォー
アライちゃんEN2-4「ねむいのりゃ...」ボォー
アライちゃんEN2-5「まだねむいのりゃ...」ボォー

攻撃の手が一瞬緩んだ隙に、アライさんは叫んだ!

アライさんEN2-1「チビーーーーー、アライさんを助けるのだーーーーー!!」ジタバタ

その声を聴いたアライちゃんは一斉に声のする方を見た。

アライさんEN1-1「お前に勝ち目はないのだ!」

アライさんEN2-1「あぁーーーーー!!」ジタバタ

その光景を見て、アライちゃんもようやく状況を理解したようだった。

アライちゃんEN1-1「おかーしゃん、すごいのりゃ!」シッポフリフリ
アライちゃんEN1-2「いけー! ぶっこりょせー!」シッポフリフリ
アライちゃんEN1-3「おかーしゃんはつよいのりゃ!」シッポフリフリ
アライちゃんEN1-4「そこなのりゃ!」シッポフリフリ

アライちゃんEN2-1「おかーしゃん、なのりゃ?」
アライちゃんEN2-2「お、おかーしゃんは、あんなにみにくくないのりゃ!」
アライちゃんEN2-3「おかーしゃん、どこにいったのりゃ!」
アライちゃんEN2-4「アライしゃんたちをたすけてほしいのりゃ!」
アライちゃんEN2-5「おかーしゃん、おかーしゃん!」

攻撃をされているアライさんはすでにボロボロだ。
その姿を今まで見たことが無いため、アライちゃんたちはそれを母親と認識できていないようだった。

アライさんEN2-1「チビ、アライさんはここにいるのだ!!」ジタバタ

アライさんはアライちゃんに一生懸命呼び掛けていた。

アライちゃんEN2-1「おまえなんか、おかーしゃんじゃないのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-2「アライしゃんのおかーしゃんはな、そんななにみにくくないのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-3「こっちにむかってはなしかけてくりゅな!」フゥー
アライちゃんEN2-4「きもちわるいのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-5「おあえはおかーしゃんじゃないのりゃ!」フゥー

しかし、アライちゃんから帰ってきた言葉は辛辣なものだった。
今まで一生懸命育てた子供たちが自分のことを全否定している。

それはアライさんにとっては堪えるものなのではないだろうか?

アライさんEN2-1「ア、アライさんは...」

攻撃を受けていたアライさんはそう口にすると、言葉を発しなくなってしまった。

残り時間、3分。

友人「アライさんは今まで見ていたものが豹変すると、受け付けない習性があるみたいだな。」

俺「なんだそれ。」

俺は唐突に解説を始めた友人を見た。

友人「さっきのアライちゃんたちがいい例だ。」

友人「あそこで顔を攻撃されてなかったら、アライちゃんたちも応援していい勝負になったかもしれないけどな。」

俺「顔がめちゃくちゃになったことで、あれを母親と認識しなくなった、ってことか?」

友人「認識したくても、衝動的に否定から入る、って感じかな?」

俺「変わった習性だな。」

友人「あのアライさんは、子供に否定されたことで抵抗する気力が完全になくなったみたいだな。」

俺「そう、みたいだな。」

俺はステージに目をやった。

アライさんは絶えず攻撃を続けて、子供に否定されたアライさんは涙を流しながらされるがままの状態だった。

とりあえずここまで。
中途半端ですが、申し訳ございません。

結末は次回に持ち越します。

どうやら、別の場所で偽物が湧いているようですが、私とは関係ありません。
ご了承ください。

アライさん虐待SS投稿スレ【けものフレンズ】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1521361858/74/)

酉割れたなら変更した方がいいかも

>>324
そこは、次回の更新時に変更します。

これから続きを更新します。

今後は上記の名前で活動します。

そして、15分が経過した。

ビーーーーーーーーーーッ

ジョン「そこまで!」

ジョンが終了の合図を出した。
しかし、アライさんは攻撃の手を止めていなかった。

ジョン「はい、アライさん、終わりだよ。 ステージの真ん中あたりに戻ってね。」

ジョンは壁越しにアライさんに話しかけた。

アライさんEN1-1「あ!? ん? もう終わったのだ?」

アライさんEN2-1「う...あ...」

圧倒的だった。
子供に見捨てられ、一方的に攻撃されたアライさんは血まみれでされるがままだった。

そのため、攻撃していたアライさんは無傷で闘いを終えたのだ。

アライさんEN1-1「この辺りでいいのだ?」

攻撃していたアライさんは指示通り戻ったが、ズタボロのアライさんはその場から動くことすらなかった。

アライさんEN2-1「チ...ビ...」

目は虚ろで、絶えず涙を流していた。
その目は、自分の子供たちへと向けられていたようだった。

アライちゃんEN2-1「へんなのがまだみてりゅのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-2「きもちわりゅいのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-3「おかーしゃーん、どこにいりゅのりゃ!?」キョロキョロ
アライちゃんEN2-4「はやくあいつをやっつけりゅのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-5「あいつ、こわいのりゃ!」ビエーン

しかしながら、最後の最後まで拒絶されている辺り、可哀そうだな、と思ってしまった。

ジョン「結果発表!」

ワァーーーーー!!

ジョンの一言で会場が沸いていた。

ジョン「結果は明様だが...、勝者は、ナンバーーー、ワンッ!!」

ワァーーーーーーーーーー!!

ジョンが結果を読み上げると、さらに会場が沸いていた。

アライさんEN1-1「フハハハハ!! 当然の結果なのだ!!」

アライちゃんEN1-1「おかーしゃんはつよいのりゃ!」ピカピカガイジガオ
アライちゃんEN1-2「さすがなのりゃ!」ピカピカガイジガオ
アライちゃんEN1-3「やったー、なのりゃ!」ピカピカガイジガオ
アライちゃんEN1-4「おかーしゃんはさいきょーなのりゃ!」ピカピカガイジガオ

勝者のアライさん一家は調子に乗った発言をしていた。

俺「そもそも、強いのであればこんな所にいないはずなんだけどなぁ。」

友人「それは言っちゃいけない。」

俺「大体、一方的なんて試合になってないだろ。」

友人「こういうパターンは珍しいんだけどな。」

俺「そうなのか?」

友人「負けたアライさんは自分の子供に意識を取られすぎて周りが見えてなかった。」

友人「それが原因だからなぁ。」

俺「それだけ子供思いだった、ってわけか。」

友人「アライさんが子供思いだとしても、害獣であることに変わりは無いさ。」

俺は改めて、敗者を見た。

アライさんEN2-1「も...」

息も絶え絶えなのだろう。
涙は枯れたのか、もう泣いていなかった。

そして、周りには夥しい量の血液が広がっていた。
あれでは助かることはないだろう。

そんな中、敗者のアライちゃんが猛抗議をしていた。

アライちゃんEN2-1「こんなのおかしいのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-2「おかーしゃんはたたかってないのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-3「おかーしゃんがいれば、あんなやつコテンパンなのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-4「おかーしゃんをはやくつれてくるのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-5「ふこーへーなのりゃ!」フゥー

ジョンがアライちゃんの元へ近づいていった。

ジョン「あのね、君たちのお母さんはあそこにいるよ。 分からないのかな?」

ジョンはアライちゃんに対して、優しい言葉で話しかけた。
そして、ステージを指差したのだった。

ジョンが指差した先には、敗者のアライさんがいた。

アライちゃんEN2-1「うそなのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-2「あんなのおかーしゃんじゃないのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-3「おかーしゃんはあんなにみにくくないのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-4「おねーちゃんのゆうとーりなのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-5「ヒトのゆーことはしんじられないのりゃ!」フゥー

ジョンが諭してもアライちゃんは母親のことを認識できていなかった。

俺「アライちゃんって、自分の母親のこと認識できないのか?」

友人「そんなことは無いぞ。」

俺「じゃあ、あんな風に顔が変わっちゃった場合はどうなんだ?」

俺は敗者のアライさんを指差した。

友人「まぁ、場合によるだろうな。」

俺「場合、ってのは?」

友人「俺の推測だけど、あのアライちゃんはまだ小さい気がする。」

友人「『街の公園の樹を痛めつけて巣にしていた』って言ってたから、たぶん出産のときにそこを巣にしたんじゃないかな?」

俺「で、子育て中に捕まった、と。」

友人「子育て中に捕まるなんてことは普通なんだけどな。」

友人「要は、親子の時間が長かったかどうか、なんだよな。」

俺「あのアライちゃん達は産まれてから親子の時間が短かったから、顔が変わっちゃった親のことを認識できていない、ってこと?」

俺の問いに、友人は頷いた。

友人「たぶんな。」

友人「もう1つ、考えられることがあるんだよな。」

俺「それは?」

友人「アライさんは視覚が弱い分、嗅覚が優れているんだよ。」

友人「アライさんは似たような顔をしているけど微妙に違うみたいで、匂いも違うらしいんだ。」

友人「でも、産まれたばかりだとそういった感覚がまだ備わっていないんだよ。」

俺「つーと、匂いで親のことが分かるはずだけど、まだ小さいから分からない、ってことか?」

友人「他のアライさんもいるから、匂いが混じってさらに分かりにくくなってる、ってこともあるかもな。」

俺「なるほどな。」

俺は友人の講義を聞き終えて、再びジョンを見た。

ジョン「これだけ言っても、理解しないか。」

アライちゃんEN2-1「いいかげんうそはやめるのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-2「はやくおかーしゃんをつれてくるのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-3「アライしゃんたちのおかーしゃんをかえすのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-4「そうなのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-5「はやくするのりゃ!」フゥー

ジョン「まぁ、君たちが否定してもここにはオーディエンスがいるからね。」

ジョン「さて、皆さん! このアライちゃん達が試合内容の講義をしていますが!」

ジョン「この試合に不正は無かったと思う方は、拍手をお願いします!」

ジョンが会場に拍手を求めた。

ジョンの言う通り、確かに不正は無かった。
俺は素直に拍手をした。
周りからも拍手が聞こえた。

パチパチパチパチパチパチパチパチ
パチパチパチパチパチパチパチパチ
パチパチパチパチパチパチパチパチ
パチパチパチパチパチパチパチパチ
パチパチパチパチパチパチパチパチ

ジョン「おーっと、満場一致で不正は無かったということですね!」

アライちゃんEN2-1「うそつきなのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-2「そんなはずないのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-3「アライしゃんはりゃまされないのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-4「ありえないのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-5「うそばっかなのりゃ!」フゥー

観客の意見を聞いてもアライちゃん達は納得していなかった。

これには、ジョンも溜め息しか出ない様子だ。

ジョン「仕方ないですね。」

ジョン「では、試合を控えている他のアライさん一家に話を聞いてみましょうか。」

アライちゃんEN2-1「そんなのきくまでもないのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-2「そうなのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-3「おかーしゃんをかえせぇ!」フゥー
アライちゃんEN2-4「はやくしないとズタズタにしてやるのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-5「いいかげんにするのりゃ!」フゥー

ジョンがどこかに合図を送っていた。
すると、スタッフらしき人物が3人出てきて、それぞれのアライさんにマイクを向けていた。

ジョン「では、順番に話を聞いていきましょう。」

アライさんEN3-1「試合? そんなことよりもお腹がすいたのだ!」フゥー

アライちゃんEN3-1「なにかたべさせるのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN3-2「はやくよういするのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN3-3「おなかがクークーなのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN3-4「さっきのしろいのをたべたいのりゃ!」フゥー

アライさんEN4-1「今、アライさんは忙しいのだ!」キーキー

アライしゃんEN4-1「ここからぬけだすためにいそがしいのら!」キーキー
アライしゃんEN4-2「このいた、かたいのら!」キーキー
アライしゃんEN4-3「つめがいたくなってきたのら!」キーキー
アライしゃんEN4-4「しまいのきずなはこんなことではこわれないのら!」キーキー
アライしゃんEN4-5「もっとこうげきするのら!」キーキー

挑戦者のアライさんは自分のことしか考えていなかったようで、話にならなかった。

俺「つか、4番目のアライさん一家、脱出を企ててるみたいだったけど、いいのか?」

友人「どうせ抜け出せないから、気にするだけ無駄だよ。」

友人の言う通り、ジョンやスタッフも4番目のアライさん一家がやっていることはスルーのようだ。

そして、最後にチャンピオンに話を聞くだけとなった。

ジョン「では、最後にチャンピオンに話を聞いてみましょう。」

アライさんCP1「アライさんは見ていたのだ。あそこで倒れているアライさんは、文句を言っているチビ達のアライさんなのだ。」

アライしゃんCP1「アライしゃんもみていたのら。」
アライしゃんCP2「おかーしゃんのゆーとおりなのら。」
アライしゃんCP3「じぶんのおやがわからないなんて、バカなのら!」キャッキャッ
アライしゃんCP4「じぶんのおやをひていするなんてさいてーなのら。」
アライしゃんCP5「すくいようがないのら。」

どうやら、チャンピオンのアライさん一家は試合をしっかり見ていたようだった。

ジョン「さて、観客とチャンピオンから証言を頂きました!」

アライちゃんEN2-1「ありえないのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-2「むこーなのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-3「あれがおかーしゃんなわけないのりゃ!」フゥー
アライちゃんEN2-4「ふざけてないれ、おかーしゃんをかえせぇ!」フゥー
アライちゃんEN2-5「うそつきなのりゃ!」フゥー

これだけのやり取りをしても納得をしていないアライちゃん達だった。

俺「グダグダだな。」

友人「まぁ、毎回始めはこんな感じだよ。」

俺「そうなのか?」

友人「だって、ルールを理解してるのなんて、チャンピオン以外にいないからな。」

俺「なるほどね。」

毎回こんなやり取りをしているのかと思うと、ジョンは大変だな。
ジョンが自らこの持ち場を希望したのか、ちょっと気になった。

一旦ここまで

ジョン「というわけで、罰ゲーーーーームッ!!」

アライちゃんの言い分を聞き流して、罰ゲームのコールが入った。

ワァーーーーーーーーーー!!

会場は、大いに盛り上がっていた。

ジョン「装置、カモン!」

ウィーーーーーン

敗者のアライちゃんがいる檻の四隅から何かが出てきた。

何かの口みたいだけど、何が出るんだろう?

ジョン「放水!」

バーーーーーッ

ジョンの一言で、檻の中に水が流れ込んだ。

アライちゃんEN2-1「へんなのがながれてきたのりゃ!」ビクン
アライちゃんEN2-2「おい! とめるのりゃ!」バンバン
アライちゃんEN2-3「に、にげるのりゃ!」ヨチヨチ
アライちゃんEN2-4「おかーしゃーん!」ヨチヨチ
アライちゃんEN2-5「たすけるのりゃ!」バンバン

アライちゃんは逃げ惑っていたが、すぐに水に飲み込まれてしまった。
その様子は、会場上部のモニターに映し出されていた。

俺「なぁ、あれって水漏れしないのか?」

友人「あれって、強化プラスチックのことか?」

俺「そう、それ。」

友人「罰ゲームに関しては水責めが通例だし、そこらへんの対策はちゃんと出来てるみたいだぞ。」

友人「なにより、今まで『水漏れした』なんて話は聞いたこと無いしな。」

俺「なるほどねぇ。」

友人「使うからには、流石に検証してるでしょうよ。」

俺「それもそうか。」

モニターに視線を戻すと、放水は止まっていた。

よく見ると、アライちゃんの足が付くか付かないかぐらいの水が注がれていた。

アライちゃんEN2-1「わぷっ! みて、な、たすけ、のりゃ!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-2「いき、でき、のりゃ!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-3「おか、しゃ、たす、け、のりゃ!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-4「がはっ!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-5「しず、のりゃ!」バチャバチャ

アライちゃん達は中央付近に集まっていた。
四隅から水が流れこんで来たからかな?

すると、1匹のアライちゃんが他のアライちゃんの上に乗っかった。

アライちゃんEN2-1「アライしゃんがたすかるために、からだをはるのりゃ!」ガバッ
アライちゃんEN2-4「おね、しゃ、やめ、いき、でき!」バチャバチャ

1匹が乗った途端、他のアライちゃんも真似しだした。

アライちゃんEN2-2「アライしゃんも、まねするのりゃ!」ガバッ
アライちゃんEN2-5「のっちゃ、ダメ、な!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-3「アラ、しゃ、も、のる、のりゃ!」バチャバチャ

どうやら、1匹乗り損ねたようだった。

アライちゃんEN2-1「なんとかたすかったのりゃ!」ハァハァ
アライちゃんEN2-4「おね、しゃ、どく、の、りゃ!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-3「アラ、しゃ、も、のせ、の、りゃ!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-2「おまえまでのったらダメなのりゃ!」ゲシゲシ
アライちゃんEN2-5「ガホッ! も、つか、のりゃ!」バチャバチャ

まるで蜘蛛の糸を再現しているかのような光景だった。
とはいえ、この場にお釈迦様はいないけど。

俺「なぁ、これっていつまで見なきゃならないんだ?」

友人「全員が溺死するまでだな。」

俺「苦痛だな。」

友人「その時間を楽しみにして来てる奴らもいるんだよな。」

俺は周りを見渡した。

ワァーーーーーーーーーー!!

周りからの歓声はすごかった。
早くくたばれだの、もっとやれだの、中々過激だった。

俺「異常な光景だな。」

友人「ほら、プロレスとかボクシングとかの格闘技を見る感覚だよ。」

俺「いや、スポーツ見ないし。」

友人「そういえばそうだったな。」

俺「ったく、何が楽しいんだかな。」

友人「人それぞれ、ってやつだよ。」

そんな会話をしながらも俺はモニターを見ていた。
俺も周りも大概なのかもしれないな。

さて、足場にされたアライちゃんの様子が変わり始めた。
どんどん弱弱しくなって、バタつくことも少なくなってきた。

アライちゃんEN2-4「...」
アライちゃんEN2-1「いもーと、しっかりするのりゃ!」シッポブンブン
アライちゃんEN2-5「...」
アライちゃんEN2-2「このままだと、バチャバチャのなかにはいっちゃうのりゃ!」シッポブンブン
アライちゃんEN2-3「つ、わぷっ! かれ、の、りゃ!」バチャバチャ

足場にされたアライちゃんはもうダメなのかもしれないな。
そう思っていたら、そのアライちゃん達がどんどん沈み始めた。

アライちゃんEN2-1「またバチャバチャのなかにもどるのりゃ!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-2「こうなったら、べつのいもーとをあしばにするのりゃ!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-3「! やめ、の、りゃ!」バチャバチャ

足場にされた2匹のアライちゃんは底に沈み、再び水の中で暴れだしたアライちゃん。
今度は、休むことなく手を動かしている妹を足場にしようとしているようだ。

自分だけ生き残ろうと必死の様子だ。

俺「あのアライちゃん達、『水』というものを知らないのかな?」

友人「たぶん、まだ教えてもらえてないんだろうね。」

俺「まだ?」

友人「アライさんも子供を産む以上、生きていくための術を子供たちに教えるんだよ。」

俺「そこは俺達を変わらないな。」

友人「甚だ迷惑だけどな。」

友人としては実害を被っているのだから、そう思うのは当然かもしれない。

俺「さっき産まれたばかりかも、って推測してたけど、そこが関係してるのか。」

友人「そうだろうね。」

俺「もしかしたら見たことすらなかったり?」

友人「見たことあるなら、流石に知ってるはずだけどな。」

友人「もしかしたら、まだ離乳出来てなかったのかもな。」

俺「なるほどな。」

離乳前で巣から出たことのないアライちゃん、ってことなら納得がいきそうだな。

俺「水のことをバチャバチャって表現してるのは、そう聞こえるからかな?」

友人「教えてもらってないことをどう表現するのか、それはそいつら次第だけどな。」

モニターに目を戻すと、足場にされるアライちゃんを決めるために必死に争っていた。

アライちゃんEN2-1「いも、とは、おね、しゃん、のため、から、はる、のりゃ!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-2「おね、しゃ、は、いも、とのた、から、はる、のりゃ!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-3「さっき、らくし、から、こん、は、アラ、しゃ、の、ばん!」バチャバチャ

生き残ったアライちゃんは、そこに沈んだ妹を蹴っては浮かんで、蹴っては浮かんでを繰り返していた。

俺「そもそも、沈んだ奴らの上に立てば良くないか?」

友人「さっきも言ったけど、離乳前のアライちゃんっぽいから、まだ立つことを知らないんだよ。」

俺「そうなのか?」

友人「あぁ、立つにはまだ体が発達して無さ過ぎる。」

俺「命の危険を感じて覚醒して立てるようになる、とかは?」

友人「ゲームのやり過ぎだ。」

友人「そもそも、浅瀬で溺れたハイハイの赤ちゃんが命の危険を感じて立つような事、あると思うか?」

俺「無い、だろうな。」

友人「まぁ、例えがあれだったけど、筋力的にありえないんだよ。」

俺「なら、泳ぎは?」

友人「そもそも教えてもらえなければ、泳げないだろ。」

俺「まぁ、そうなんだけどさ、浮くぐらいは出来ないのかな?」

友人「それも教えてもらわないと出来ないだろ。」

友人「そういうのが出来ないから、アライちゃんはあんな感じでパニくってるんだろ。」

俺「そっか。」

アライちゃんEN2-2「やったのりゃ!」ハァハァ

アライちゃんの歓喜の声が聞こえたため、モニターに目を戻した。

アライちゃんEN2-2「しまいをうつくしいきずなのりゃ!」ハァハァ
アライちゃんEN2-1「おま、うえか、ろく、のりゃ!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-3「おね、しゃ、ずる、の!」バチャバチャ

どうやら、2匹を足場にして1匹が上に乗るという方法をとったみたいだ。

俺「つか、姉妹を犠牲にしてる時点で『美しい絆』なんて無いだろ。」

友人「あいつ等はあれで美しいつもりなんだよ。」

俺「何だかなぁ。」

とはいえ、あれもすぐに限界が来る。
あのアライちゃんは使える足場をすべて失ったとき、どうするんだろうか?

多分、1匹でギャーギャー言いながらパニくるんだろうな。

そういえば、ジョンがまた静かな気がする。
ジョンの姿を探すと、なにやら回りのスタッフに指示を出していた。
しかも、ステージ中央では勝者であるはずのアライさんが倒れている。

俺「あれ!? あのアライさん勝ったはずなのに倒れてる!」

俺は思わず身を乗り出してしまった。

友人「まぁ、落ち着け。」

俺「お、おぅ。」

友人に宥められ、俺は席に座った。

友人「あれは麻酔銃で眠ってるだけだ。」

俺「そうなのか?」

友人「罰ゲームをモニターに映して観客の気をそっちに集中させてるうちに、次の準備をするんだよ。」

俺「それがあれか?」

俺はステージを指して確認した。

友人「そうだよ。まず、勝者のアライさんを麻酔銃で眠らせて、その子供が入った檻に再度ガスを投入する。」

友人「そんでもって、ステージのアライさんを檻の中に運搬する、ってわけだ。」

俺「じゃあ、その時に敗者のアライさんも運び出すのか?」

友人「ほら、あれ。」

友人が指した先にはブルーシートに包まれた「何か」が運び出されていた。

友人「あれが敗者のアライさんだよ。」

俺「あんな方法で運び出すのか。」

友人「ここはまだ機械化が進んでないから、大体人力なんだよ。」

俺「敗者を運び出したり勝者を眠らせたりで、大変なんだな。」

友人「スタッフの作業のおかげでこのショーが成り立ってるんだよ。」

ジョンを含めたスタッフも大変な思いをしてるんだな。

次の準備のために動き回るスタッフからモニターに目を戻し、再度アライちゃんの悪足掻きを見ることにした。

アライちゃんEN2-2「いもーとがつかえなくなったのりゃ!」シッポブンブン
アライちゃんEN2-1「こい、アラ、しゃ、の、うえ、から、この!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-3「...」

どうやら、何にも捕まることが出来ず、絶えず手を動かしていたアライちゃんは力尽きてしまったようだ。
徐々に体が沈みつつある。

残されたのは2匹。

さて、ここからどうするのか。

アライちゃんEN2-1「いい、かげん、する、のりゃ!」グイ
アライちゃんEN2-2「のりゃ!?」ザブーン

足場にされていたアライちゃんは、上で振られていた尻尾をタイミングよく掴んだ。
そして、前転するような形で上のアライちゃんを巻き込み、水の中へ引きずり込んだ。

アライちゃんEN2-2「な、なに、す、る、のりゃ!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-1「おま、え、わる、のりゃ!」バチャバチャ

元の溺れかけの状態に戻った2匹は、喧嘩をし始めた。

アライちゃんEN2-1「おま、え、こう、して、や、のりゃ!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-2「や、め、のりゃ!」バチャバチャ

足場にされていたアライちゃんは手を動かす勢いで、上に乗っていたアライちゃんに攻撃をし始めた。

アライちゃんEN2-2「この、こっち、こう、して、や、のりゃ!」バチャバチャ
アライちゃんEN2-1「くっ! いも、と、ゆるさ、な、のりゃ!」バチャバチャ

2匹の攻撃が激しさを増していく。
しかし、そんなことをしていれば体力は削られてしまう。

アライちゃんEN2-1「も、らめ、な、のりゃ。」バチャバチャ
アライちゃんEN2-2「アラ、しゃ、も、つか、れ、のりゃ。」バチャバチャ

2匹の周りがうっすらと赤くなりながら、手の動きが弱まってきた。

アライちゃんEN2-1「...」
アライちゃんEN2-2「...」

そして、2匹は動かなくなってしまった。

ジョン「フィニーーーーーッシュ!!」

檻の中が静かになったタイミングで、ジョンが終了の合図を出した。

ステージの周辺を見ると、既に他のスタッフは撤収した後のようだった。

アライさんEN1-1「すぅー... すぅー...」

アライちゃんEN1-1「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN1-2「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN1-3「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN1-4「しゅぅー... しゅぅー...」

しっかりと、勝者のアライさん一家も檻に収められていた。

ジョン「さぁ、1回戦目から苦情が入ってしまいましたが、いつものことですね!」

ジョン「敗者のアライさん一家にはしっかりと罰ゲームを受けてもらいました!」

ジョン「皆さん!! 見て頂いたように、我々は不正をしていません!」

ジョン「公平な勝負を提供する! それが『アライファイト』なのです!!」

ワァーーーーーーーーーー!!

ジョン「さぁ、次の第2試合の準備といきましょう!」

今日はここまで。

第2試合は、8月中にあげます。

スマソ

ジョン「さぁ、次の第2試合の準備といきましょう!」

第1試合と同じように、3番目と4番目のアライさん一家の檻に催眠ガスが投入され、スタッフによる試合の準備が進められていた。

俺はふと、あることが気になった。

俺「なぁ、罰ゲームのアライちゃんはあのままなのか?」

先程、罰ゲームを受けたアライちゃんの檻には水が満たされたままになっていた。
また、沈んだアライちゃん3匹、うつ伏せで浮かんだままのアライちゃん2匹もそのままだった。

友人「そうだな...、あれが片付けられるとしたらチャンピオンが決まって、今回の『アライファイト』が終わった後だろうな。」

俺「すぐに片付ければ良くないか?」

友人「すぐに片付けたら、ちゃんと死んだかどうか分からないだろ?」

俺「どういうことだ?」

友人「仮に、アライちゃん達が死んだフリをしている可能性も否定できないからな。」

俺「いやいや、体力的に無理があるんじゃないか?」

友人「例えばの話だよ。」

友人「さっき罰ゲームを受けたアライちゃん達はともかく、野生で十分に教育されて潜水訓練を受けていたアライちゃんは息止めが長く出来るはずだからな。」

俺「そんなのがいるのか?」

友人「いない、とは言い切れないな。」

友人「野生のアライさんで、川を生活圏にしている場合は魚を捕ったりするときにそういうこともするらしいしな。」

友人「そういう意味だと、あの3番目のアライさん一家は気になるところだな。」

俺「えーっと、確か『とある村の畑を荒らし続けた』とか言ってたっけ?」

友人「そう、その村の近くに川があった場合、そういう訓練もしている可能性があるからな。」

俺「畑に飽き足らず、川も汚染していた、と。」

友人「あくまで可能性の話だけどな。」

俺「なるほどね。」

友人「ま、3番目の一家に関しては実際分からないとして、話を戻すと、あの水入りの檻はしっかりと罰をする意味で最後まで残してるんだよ。」

俺「いろいろと考えられてるんだな。」

そうこうしている内に、次の試合の準備が出来たようだった。

ステージには、眠った状態のアライさんが2匹。

アライさんEN3-1「すぅー... すぅー...」

アライさんEN4-1「すぅー... すぅー...」

そして、それぞれの檻にはアライさんの子供が眠っていた。

アライちゃんEN3-1「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN3-2「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN3-3「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN3-4「しゅぅー... しゅぅー...」

アライしゃんEN4-1「しゅぅー... しゅぅー...」
アライしゃんEN4-2「しゅぅー... しゅぅー...」
アライしゃんEN4-3「しゅぅー... しゅぅー...」
アライしゃんEN4-4「しゅぅー... しゅぅー...」
アライしゃんEN4-5「しゅぅー... しゅぅー...」

こうして、静かに第2試合の幕が上がり、時間のカウントが始まった。

しかし、開始から5分経っても、どちらのアライさんも起きる気配が無い。
しかも、檻の中の子供たちも眠ったままだ。

ちなみに、先程の試合に勝ったアライさんはどうやら目を覚ましたようだ。

アライさんEN1-1「ん、んー! よく寝たのだ。」ノビー

だが、その子供たちはまだ寝ているようだった。

アライちゃんEN1-1「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN1-2「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN1-3「しゅぅー... しゅぅー...」
アライちゃんEN1-4「しゅぅー... しゅぅー...」

俺「まだ起きないな。」

友人「そうだな。」

俺「催眠ガスの投入量ってどうやって決まってるんだ?」

友人「一応、これくらいの大きさにはこれくらいの量を投入すると何分後に起きる、みたいな指標はあるみたいだけどな。」

俺「一応はあるんだ。」

友人「でも、一家単位になると数や大きさによって量が変わってくるのは当然として、細かいところまで計算してるわけにはいかないしな。」

友人「まぁ、研究所とかだったらデータ採りのために正確な量を投入したりするんだろうけど。」

俺「つーことは、指標からざっくりとした量を投入してるのか?」

友人「そうだろうね。」

俺「適当だなぁ。」

こうしている間にも残り時間は減っていく。
タイマーを見ると、残り時間は8分を切っていた。

その時だった。

アライさんEN4-1「ん、ん~...」モゾモゾ

片方のアライさんが起きるような気配を見せていた。

アライさんEN3-1「ん~? 何なのだ...」モゾモゾ

どうやら、もう片方のアライさんも起きそうな兆しがあった。

そして、両者共に目を覚まし、大きく伸びをし、手の甲で顔をこすりながら、目を合わせた。
その姿は、まるで合わせ鏡のようだった。

アライさんEN4-1「ん~、お前は何なのだ?」

アライさんEN3-1「お前こそ何なのだ?」

何だか間抜けな声の掛け合いをしていた2匹のアライさん。
次の瞬間、目を見開いて急に立ち上がったのだった。

アライさんEN3-1「そうだ! お前を倒さないといけないのだ!」

アライさんEN4-1「倒されるのはお前のほうなのだ!」

ようやく現状が理解できたのか、戦闘体勢に入るアライさん。
この時、残り時間は5分になろうとしていた。

友人「ようやくか。」

俺「つーか、起きるの遅くないか?」

友人「確かに遅い。 遅すぎて、周りも盛り上がっちゃいないな。」

確かに、周りから歓声があまり聞こえない。
溜め息や失笑が多く聞こえるくらいだ。

友人「こりゃ、引き分けかな。」

俺「さすがに5分じゃ決着は付かないか?」

友人「武器を持ってるんだったらいけるんだろうけど、無理だろうな。」

俺「仮にさ、決着がつかなかった場合は引き分けになるとして、その場合はどうなるんだ?」

友人「ま、それはお楽しみ、ということでね。」

俺にとっては楽しみもあったものじゃない。
だんだん感覚が麻痺しているとはいえ、目の前で死ぬのはさすがに勘弁だ。

さて、ステージのアライさんはというと、お互いに引っ掻きあっていた。
そして、戦っているアライさんの子供たちはというと、眠ったままだった。

俺「あっちはあっちで、起きないんだな。」

友人「あっち、って?」

俺「檻に残ってる子供たちのことだよ。」

友人「あぁ、それね。」

友人「まぁ、あれに関しては罰ゲームのときにしか注目されないし、今起きなくても問題ないからね。」

俺「眠った状態で罰ゲーム、何てことあるのか?」

友人「それはあるな。」

友人「眠った状態から水を浴びせられて、パニくって溺れ死ぬ感じかな?」

俺「なんか嫌だな、それ。」

友人「見てる分には楽しいけどな。」

俺「さすがに俺はその域には、なれないな。」

残り2分を切ろうとしていたときだった。

アライしゃんEN4-1「うーん...」

片方のアライさん一家の子供たちが起きようとしていた。
脱出を企てようとしていた方だ。

アライしゃんEN4-1「うーん...」
アライしゃんEN4-2「あれぇ?」
アライしゃんEN4-3「アライしゃんたち、ねてたのりゃ?」
アライしゃんEN4-4「よくねたのりゃ...」
アライしゃんEN4-5「しゅぅー... しゅぅー...」

全員は起きなかったようだが、周りをキョロキョロしていた。

アライしゃんEN4-1「おかーさんがいないのら!?」
アライしゃんEN4-2「ろこにいったのら!?」
アライしゃんEN4-3「おかーさんらけ、にげちゃったのら!?」
アライしゃんEN4-4「だとしたら、にげみちがろこかにあるのら!」
アライしゃんEN4-5「しゅぅー... しゅぅー...」

バンバン

檻の強化プラスチックを叩き始めたアライしゃん達。
そして、ステージに面した壁に来たときにアライさんの姿を発見した。

アライしゃんEN4-3「おかーさんがあそこにいたのら!」
アライしゃんEN4-1「ほんとなのら!」
アライしゃんEN4-2「おかーさん、ろーやってそこにいったのら!」
アライしゃんEN4-4「おかーさんらけ、ずるいのら!」
アライしゃんEN4-5「しゅぅー... しゅぅー...」

しかし、肝心のアライさんは子供たちの様子に気付くことも無く、ただ戦い続けていた。

アライさんEN3-1「そこなのだ!」ヒュッ

アライさんEN4-1「ぐっ!」

相手の引っ掻き攻撃を腕で受け止めるアライさん。

アライさんEN3-1「アライさんのターンは終わらないのだ!」

更なる攻撃をするために相手が間合いを詰めて来る。

アライさんEN4-1「隙がありすぎなのだ!」ヒュッ

先程防いだ腕とは逆の腕からカウンターを繰り出すアライさん。

アライさんEN3-1「イタッ!」

相手は思わず、後ろに下がったようだ。

アライさんEN4-1「今なのだ!」

アライさんの攻防が繰り広げられている中、子供たちは必死に声を荒げていた。

アライしゃんEN4-1「おかーさん、アライさんたちをたすけるのら!」バンバン
アライしゃんEN4-2「ろーしてむしするのら!」バンバン
アライしゃんEN4-3「おかーさん、おかーさん!」バンバン
アライしゃんEN4-4「むしするなぁ!」バンバン
アライしゃんEN4-5「しゅぅー... しゅぅー...」

子供たちの声が届いていないのか、戦いに没頭するアライさんだったが、

ビーーーーーーーーーーッ

ジョン「そこまで!」

無常にも終了の合図が鳴り響くのだった。

一旦ここまで

結果はお察しでw
罰ゲームパートは、8月中に上げれるように頑張ります。

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