木下ひなた「優しさ、かぁ...」 (17)

とある一日。


ひなた達事務所のアイドルは皆、寮で生活をしている。


ひなた「今日も平和だねぇ」


少し静かな部屋でまったりお茶を飲むひなた。


亜美「たっだいま~!!」


ドタバタと帰ってくる亜美、真美、環。


環「急げ急げ~!!」


亜美「真美~早く早く~」


真美「あ~ん待ってよ亜美~」


ひなた「おかえり~。そんなに急いで、なにかあったのかい?」


亜美「あ、ひなぴー、ただいま!!」


真美「今日はなんと『劇場版!帰ってきたヤキニクマン!!ホルモン星人Jr.の逆襲』がTV初放映なんだよ~」


ひなた「へぇ~、なんだかよく分からないけど、楽しみだったんだねぇ」


真美「ひなぴーも一緒見ようよ!おもしろいよ~!」


ひなた「そこまで言うなら見ようかねぇ」


環「あ、始まるぞ!!」


目からキラキラが溢れる環。



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数分後




亜美「ホルモン星人は元々、故郷が爆発して地球に流れ着いてきたんだよ」


真美「向こうが実力行使で来たからヤキニクマンが返り討ちにしたんだけど、今度は息子が復習に来たって訳」


ひなた「敵さんも、いろんな事情があるんだねぇ...」




数十分後




亜美「よっ!待ってましたヤキニクマン!!」


ひなた「ヤキニクマン、強そうだわぁ...」


真美「でしょでしょ~!!正統派ヒーローってかんじだよね~」


環「くふふ、環も将来あんな風になりたいなぁ!」


ひなた「環ちゃんならなれるよぉ!!」


するとそこへ茜。


茜「お?みんなして何見てんの~?」


亜美「しっ!茜ちん、今良いとこなの!!」


茜「おっと茜ちゃんハブられた!?」


ひなた「ヤキニクマンの映画をみんなで見てるべさ」


茜「ふ~ん?映画かぁ、茜ちゃんも暇だしみよっかな~!!」



さらに数分後




環「いけ~!!ヤキニクマン!!そこでチョー早いパ~ンチ!!」


真美「そこだぁ!!ホリゾンタルカルビ!!サーキュラーレバーだああ!!」


亜美「かっくいー!!!」


茜「あ、茜ちゃん超展開について行けてないよ!?なんでトングを持ったらパワーアップするの?
ていうかあれ完全にバ●タン星人だよね!?」


亜美「お約束って奴なのサ...」


真美「やぼなこといっちゃいけねぇよ...」


茜「えぇ~...」


茜の目がハテナになっている。


ひなた「...」


神妙な顔でひなたはTVを見つめている。


環「ひなた、どうしたんだ?」


ひなた「こんなに一方的だとなんだか敵さんが気の毒だねぇ...」


皆はひなたの言葉の意味がいまいち理解できない。


真美「敵が気の毒...?」


ひなた「うん、だって、ホルモン星人にも事情があったんだよぉ?痛そうだし、もう一回話し合いもできないもんかなぁ…」


茜「うーん、確かに?」


真美「でもでも、ヤキニクマンが暴れているホルモン星人Jrを倒さないと地球にめっちゃ被害が出るんだよ?」


亜美「そうそう!ヤキニクマンだって、平和のため、みんなのために戦っているんだよ、仕方ないよ。」


ひなた「みんなのため、かぁ...そういうもんなのかねぇ...」


腑に落ちない、といった顔のひなた。




環「うーん...環、難しくてよくわかんないぞ...」


ひなた「あわわ、ごめんねぇ環ちゃん」


茜「謝ることないよ、ひなたちゃん」


ふっ、とほほえんで茜は続ける。


茜「ヤキニクマンの強さも、ひなたちゃんのやさしさも、どっちも大事なモノだと茜ちゃんは思うなっ」


ひなた「茜さん...」


亜美「茜ちん、どったの、急にまじめなこと言い出して」


真美「熱でもあるんじゃない?」


茜「ちょちょちょーい!最近二人扱いひどくない?茜ちゃん、これでも一応お姉さんなんだけどな~?」


環「茜、ちょっと静かにして~、聞こえないぞ~」


茜「ぎにゃー、環ちゃんまで!?」


皆がわいわいとはしゃぐ中、茜の言葉をひとり反芻するひなた。


ひなた「どっちも大事...かぁ...」


ヤキニクマン「みんなの平和と食のため、これからも悪を討つ!!」


EDが流れはじめる。

劇場版では、亜美と真美の念願が叶い、2人歌唱バージョン『おはよう!!朝ご飯 REM@STER-A』が使われている。

これには亜美も真美もご満悦の様子。


環「ヤキニクマーン!!ありがと~!!」


環の目の輝きは最高潮に達し、興奮冷めやらぬ様子である。


ひなた「おもしろかったねぇ」


茜「まあ、茜ちゃんも暇つぶしくらいにはなったかな!」


そう言うと、茜はフラフラとどこかへ去って行こうとする。


と、そこに現れる律子。


律子「ほーら、あんたたち、楽しんだ後は宿題よ!!明日もはやいんだからさっさと済ませなさい!」


亜美達「はーい...」

律子「あと、茜は私に隠していることがあるんじゃないかしら...?」


刺すような視線が茜に向けられる。


茜「げっ、律子さん!?な、何のことかな~?」


律子「とぼけても無駄よ、あんた、内緒で茜ちゃん人形を北東エリアでご当地化させてたらしいわね...?」


茜「えええええええっと、それは全部プロちゃんのしわざなんだよ!うん!」


律子「残念ね、情報源はプロデューサーさんなの。こってりしぼってあげるわね」


茜「販売中止だけはあああ!販売中止だけは勘弁をぉぉぉ!」


真美「楽して助かる命がないのはどこも一緒だね...」


ずるずると闇に引き込まれている茜を見つめながら、亜美は寂しそうに呟いた。


環「亜美、真美、ひなた、このさんすうの問題教えて?もう頭が爆発しそうだぞ...」


亜美「亜美に質問するな...」


真美「真美にも質問するな...」


環「わかんないだけでしょ~?クールに決めたってバレバレだぞ」


ひなた「あはは...あたしでよければ教えるよぉ」


環「やっぱりひなたはやさしいぞ~!くふふ!ありがと!」




次の日




ずっと眠っていられたら この悲しみを忘れ カチッ


亜美「あらーむ…うるさい…」


真美「う~…あみ…いまなんじ?」


亜美「…7じ20ぷん…」

ガバッ

真美「うおおおおおおおお寝坊した!!」


亜美「ヤベーヨ!!急げ急げ!!」


環「行ってきまーす!!!」


真美「ちょ、たまきち!?起きてたの!?おこしてよ...ってはっや」


亜美「たまきちアクセルモード」


ひなた「おはよ~ふたりとも」


亜美「おはよっ!!ひなぴーも茜ちんもおこし...って、大丈夫?茜ちん」


茜「うん...」


力なくうなずく茜は目の焦点があっていない。


真美「日差しを浴びたミミズみたいにげっそり灰化してますな~」


「昨日は3時間こってり説教したから、流石に効いてるみたいね。それよりあんた達、さっさとご飯食べなさい」


真美「おお~!ごはんできてる!」


テーブルにはご飯、納豆、味噌汁、のり、たまごなどがきれいに並んでいる。


亜美「美味しそうなにおいだよ~じゅるるん」


ひなた「今日は早起きしたからあたしがつくったんだよ~」


亜美「さっすがひなぴー気が利くね!良いお嫁さんになるよ!」


ひなた「えへへ...ほんとうかい?」


ほっぺたを真っ赤にして照れるひなた。




律子「ほーら、亜美も真美も、まだ何も準備できていないなら急ぎなさい」


真美「そ、そうだった、うおおおおおおおおおおお」


二人はご飯をかきこみはじめるが、寝起きでなかなか喉を通らない。


亜美「さすがに今度ばかりは限界だぜ...」


真美「限界を超えた時、初めて見えてくるものもある」


亜美「真美! 亜美を一人にしないでくれ!」


真美「亜美、お前は一人じゃない」


亜美真美「「最後まで諦めず不可能を可能にする それが亜美と真美だ!」」


律子「そーーーーーいう茶番をしているから時間がなくなるんでしょうがあああ!!」


亜美「ターイムアーップ…」


朝から明るい食事ができて、ひなたはちょっぴり幸せな気持ちになった。


ひなた「...あ、そろそろ行かないと。茜さん、行こ?」


茜「うん...」


パンを咥えたまま虚空を見つめている。


ひなた「行ってきまーす!!!」


茜「いってきまふ...」




ひなたのクラス




男子A「おい、昨日のヤキニクマン見たか?」


男子B「おう、見た見た。久々に見ると懐かしいし結構面白かったよな~」


ひなた(あ、ヤキニクマンの話してる...よおし)


ひなた「私もヤキニクマン見たべさ!かっこよかったしおもしろかった~」


一瞬場が静まる。


男子A「お、女のくせにヤキニクマンとか見てんのかよ」


男子B「だ、だっせー」


男子達は笑い出した。


ひなた「え...」


男子「アイドルなんだからもっと女らしいのみろよ」


ひなた「...」



女子C「ちょっとアンタ達、言い過ぎよ!!ひなたをいじめないで!!」


男子A「な、なんだよ、いじめてねーよ」


女子C「ひなた、気にしなくて良いわよ。あいつら、あなたのことが好きでちょっかい出したいだけなのよ。

許してやってちょうだい」


男子B「なななななななんあーに適当なこと言ってんだぶっ飛ばすぞ!!」


女子C「あら?じゃあ、この前ひなたの写真集を見て可愛いっていっていたのはなんだったのかしら?あと...」


男子A「すみませんでしたああああああああ!これ以上は言わないでええええ」


女子C「だってさ、どうする?ひなた」


ひなた「うん、ちょっぴし落ち込んだけど、あやまってくれるならいいよぉ。

それに、やっぱり面白いモノは面白いから、もっとお話ししたいなぁ...」


男子A「え?!!ま、まあ、ひな、ひなたがドーーーしてもって言うなら、してやってもいいぜ?」


女子C「どうしてあんた達が偉そうなのよ、やっぱりあのこと言っちゃおうかしら」


男子B「やめてええええええ!!ひなた、ごめんな!!ヤキニクマンの話一緒にしよう!」


それなら僕も混ぜてよ!
あたしもひなたちゃんと話したーい

あたしもー


クラスメイトが集まり、ひなたを中心に話の輪ができあがる。


ひなた「ありがとねぇ、Cちゃん」


女子C「気にしなくて良いわ。あいつらも含めて、みんな優しいひなたのことが好きなのよ。

もちろんあたしもね」


ひなた「優しいあたしが…」




事務所




真美「も~亜美が間違いだらけで宿題再提出じゃん~」


亜美「真美だっていっぱい間違ってたでしょ~」


真美「JAROの正式名称なんてわかんないYO!」


亜美「おじいちゃんのゲートボール大会だとおもったYO!」


律子「そもそも、あんた達が遊んでて時間がなかったからでしょ!!まったく...」


ほんとにこの子達は、と言わんばかりのため息がこぼれる。


茜「茜ちゃんはヨユーのヨッちゃんだったけどね~」


バビッとピースを決めながら鼻高々である。


亜美「茜ちん、立ち直り早いね...」


環「環もひなたのおかげでばっちりだったぞ!えっへん!」


真美「いや、なんでたまきちが誇らしげなのさ…」


P「あはは、やっぱりこいつらがいると事務所も明るくなるなぁ」


律子「そうですね、若干元気が有り余りすぎている気もしますけど」


律子もようやく頬が緩む。



ふと、Pがソファに目をやると、ひなたが物思いにふけっているようだった。


P「ひなた、どうした、ぼーっとして…」


ひなた「...あえっ!?呼んだかい?」


P「あ、ああ...どうしたんだ、学校でなんかあったのか?」


ひなた「えっとね...」


ひなたはPに、今日の学校の出来事を話した


P「そんなことが...」


ひなた「うん、でね、みーんな、あたしのことを優しい、っていってくれるんだ。

気にしたこともなかったけど、どうなんだい?プロデューサー。」


ひなたは、言葉を選ぶようにゆっくりと問いかけ、不安げな目でPを見つめている。




少し考えた後、Pは柔らかな表情でひなたに答えた。


P「そうだな、確かにひなたは優しい。優しいから、みんなひなたのそばにいたくなるんだ。

学校の友達も、事務所の仲間も、社長も、そして、俺もだ。

そして俺は、ひなたの優しさこそがアイドルとしての魅力になると思っている。

だからひなた、自分の優しさに誇りを持っていいぞ。そして、その優しさを失わないでくれ。」


プロデューサーの言葉を受けて、ひなたの表情は晴れやかになった。


ひなた「プロデューサー...わかったよ。この優しさで、ファンのみんなを温かい気持ちにしてみせるべさ!!」


P「そのイキだ、ひなた。よし、レッスンまでは時間あるし、ひなたも茜たちに混ざって元気に遊んでこい!!」


ひなた「うん!!」


うなずくと、ひなたは笑顔でみんなの輪に入っていった。


律子「ひなたの優しさには、私たち仲間のアイドルとしても元気をもらえるんですよ」


P「ああ、俺もひなたの笑顔を見るたびに頑張ろうって思える。あいつは本当に優しい。

その優しさが人を引きつけているのか、ひなたの周りにはいつも輪ができている。

ただ、だからこそ、嫌なことは他人に見せないよう心の奥にしまってしまいがちだ。

だから、これからはひなたの居心地の良い場所を俺や大人達で作ってあげることも必要かな」


律子「そうですね。私も、今までの分、ひなたに元気を返せたら良いなって思ってます!」


今日もひなたの周りには、笑顔が溢れている。



優しさから始まるアイドル、それが木下ひなた。


終わりです。
ひなたの優しさを伝えようと稚拙な文ではありますが書いてみました。

ひなたらしい良い話だった、乙です

>>1
木下ひなた(14) Vo/An
http://i.imgur.com/PiGjz7i.jpg
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双海亜美(13) Vi/An
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双海真美(13) Vi/An
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大神環(12) Da/An
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>>2
野々原茜(16) Da/An
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>>5
秋月律子(19) Vi/Fa
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