最原「復讐鬼の学級日誌」 巌窟王「俺たちのコロシアイ修了式」 (1000)

巌窟王「旅行先間違えた」 アンジー「神様ですか?」
巌窟王「旅行先間違えた」 アンジー「神様ですか?」 - SSまとめ速報
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巌窟王「亜種並行世界!」 アンジー「虚構殺人遊戯:才囚学園ー!」
巌窟王「亜種並行世界!」 アンジー「虚構殺人遊戯:才囚学園ー!」 - SSまとめ速報
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最原「僕らが往くは恩讐の彼方!」 巌窟王「これで終わりだ!」
最原「僕らが往くは恩讐の彼方!」 巌窟王「これで終わりだ!」 - SSまとめ速報
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に続く四作目。今度こそ! 終わる! はずだ!
ていうかもう伏線残ってないしね!

FGOとダンガンロンパ両作品のネタバレ注意だよ!

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1521804331

ザザッ

??学園跡地


??「……行っちゃったね。二人とも」

??「もうこの学園には、私たち二人だけ」

??「随分減っちゃったなぁ……地味にビックリだよね。これだけの人が死んで、私たちはまだ生きてる」

??「……ねえ。天海くん。約束だよ?」

??「次の学園生活……絶対に私を――」

??「……」

??「うん。安心した」



ザザッ……ザザザザーッ

新世界プログラム内 白銀の研究教室

天海「……他になにか目ぼしいものはないっすか?」ガサゴソ

BB「ないですねー。まったくないですよー」ガサゴソ

BB「……いえ。失礼。これは隠さずに正直に言うべきでしょうね」

天海「えっ。なにかあったんすか!?」

BB「山積みにされてあったジャンプを見つけて捜索がまったく進まなくなるというブービートラップに引っかかりまして」ドーンッ

天海「女の人を思い切り引っ叩きたいと思ったのは初めてっす!」ガビーンッ

BB「……ここで何かをしていたという痕跡はあるんですよねー。具体的に何だったのかはわからないのですけど」

天海「この表紙に『学級日誌』と書かれたアーカイブは、破損してて読めたものじゃないっすし」

BB「ああ。それ破損してるんじゃなくって消去されてるんですよ。慌てて処理したせいか不完全ですが」

天海「修繕できるんすか?」

BB「いえ。表紙が判別可能なところを不完全な消去と言っているだけで、中身に関して修繕は不可能ですよ」

BB「でも必要ありませんよ。現実の方に同じものがあるんですから」

天海「!」

天海「何か知ってるんすね!?」

BB「というより、知らなかったんですか?」

天海「え?」

BB「……」

BB「そうですか。知らないのなら、あなたたちはそのままでいいと思います」

BB「知らないままじゃないといけません」

天海「え。どういうことっすか?」

BB「この学級日誌は、巌窟王さんが書いていたものです」

天海「……は?」

BB「彼の宝具の能力である『情報隠蔽』を最大限フルに使ってしたためられたものですから白銀さんやモノクマには捕捉されてないものだと……」

BB「……思ってましたけど、詰めが甘いですねぇ。彼も」

天海「巌窟王さんが、これを……?」

BB「……白銀さんは彼をこの世界に閉じ込めた後で、コレを見つけたんでしょうね」

天海「詳しい内容は?」

BB「巌窟王さん本人に聞いてください。勝手に話したと知られたら、どんな仕返しされるかわかったもんじゃありません」

BB「陰湿ですよー。彼の嫌がらせ」

天海「……」

BB「ただ、白銀さんがコレを見たと知ったら、余計に巌窟王さんが怒るだけだと思いますけど」

BB「中身について彼が口を割るとは思えな――」


ズズゥーン……


天海「おわっ……なんすか!?」

BB「おっと。そういえば一つ言い忘れたことが」

天海「今それどころじゃないっすよ! 凄い揺れ……!」

BB「このゲームのエンディングで、この庭園は崩壊するんですよ」

天海「だからそれどころじゃ……はい?」

BB「よくありますよねー。最終的に自爆したり崩壊したりする悪の組織の拠点」

天海「……」

天海「それって最原くんは無事で済むんすか?」

BB「もちろん。そういう設定になってましたから。主人公は死にません」

天海「俺たちは?」








BB「あ」

天海「あ、じゃねーーーっす!」ガビーンッ!

今日のところはここまで!

BB「大丈夫です。ゲームのプレイヤーではない人のため、脱出用のタイヤキ型ポッドがあります!」

天海(ゲームのタイトル聞いたときから思ってたけど、なんでタイヤキなんだろう。甘党なんすかね)

BB「ただそこまで誘導はできますが、気を付けてください。この庭園にはNPCが結構な数いますので」

BB「先に使われちゃって脱出ポッドが残ってないという可能性も充分考えられます!」

天海「最原くんのことは放置っす! ひとまず全力でそこまで行くっすよ!」

BB「こっちです!」ダッ





脱出ポッド格納庫

BB「よし! あと二つ残ってますね! 急ぎますよ! 入口を開けてください!」

天海「OKっす! それじゃあ」ガチャリンコ

ガチャピン「!」

ムック「!」

天海「……」



バタムッ


BB「なんで閉めちゃうんですか!?」ガビーンッ

天海「ガチャピンとムックがいた! ガチャピンとムックがいたんす!」アタフタ

BB「最近キャンペーンが終わったんです! そりゃいますよ!」

BB「え? ゲームが違う? 今はそんなこと考えている場合じゃ……」



バシュッ


BB「ああほらーーー! アタフタしている内に脱出されちゃったーーー!」

天海「帰らないでーーー! 俺たちの傍にまだいてーーーッ!」

ガチャピン&ムック「……」バイバイ

BB「まあ、元から脱出ポッドは二人乗りですから、乗れたとしてもギチギチのはずですけどね」

天海「まだポッドは一つ残ってるっす! それに乗って脱出を!」ガチャリンコ

西川貴●「!」

天海「……」


バタムッ


BB「だからなんで閉めちゃうんですかッ!」ガビーンッ

天海「なんか明らかに西川貴●さんっぽい人がいたんす! BrightでBurningなshoutしそうな人が!」アタフタ

BB「知りませんよ! どっちにしろここしかもうないんです!」ガチャリンコ

BB「相乗り失礼しまーす!」

西川貴●「……」イイヨー

天海「ぐ。狭っ……!」

BB「よし! それじゃあ脱出を……ん? 遠くから誰かが走って……」

hyd●「……」マッテー

BB「hyd●っぽい人ーーー!」ガビーンッ

天海「なんかNPC陣がことごとく人選意味不明なんすけどーーーッ!」ガビビーンッ!

BB「あ、このゲームのエンディングとオープニングを唄う人です。それぞれ」

天海(無駄に豪華!)

虚栄の空中庭園 玉座

最原「ふう……思ったより簡単な謎でよかった」

セミラミス「ふむ。人間の割には中々やるか」

セミラミス「……だが、この程度で終わりだと思っているわけではあるまいな?」ニヤァ

最原「え」

セミラミス「クリア後に攻略要素が残るのはゲームのお約束、というヤツであろう?」

最原「ちょ、ちょっと待って! まだ何かあるの!? ついさっきhy●eっぽい人のエンディングを聞いたばっかりなのに!」

セミラミス「セカンドステージへ向かうぞ。それが終わるまでは、まだ貴様は我が駒だ」

最原「そんなバカな!」

セミラミス「なお、途中で逃げようとした場合はこの庭園の崩壊に無抵抗で巻き込まれて死んでもらう」

最原(選択肢がない!)ガビーンッ

セミラミス「さあ。向かうぞ。次のステージへな!」

最原(……天海くんとBBさんに任せるしかないか……!)

休憩して……アルテラさん狙いで来てしまった謎のヒロインXさんを育成します。
お前じゃ……ない……優秀だけど……お前じゃ……種火食べさせなきゃ……

ズズゥン……

獄原「ん? 今、何かが向こうで聞こえたような……」

真宮寺「気のせいじゃないの? だって海だヨ?」

獄原「いや。やっぱり建物が崩壊するような音が聞こえる……」

星「……この世界で何が起こってるんだかな」

星「ところで昼ご飯はどうするんだ?」

真宮寺「備え付けてあったからって、朝から焼きそばとか焼いちゃったからネ。昼はさっぱり冷ややっこだヨ」

星「どっちにしろ麺類じゃねーか」

東条「……夜くらいは私が料理を作りたいわ」

真宮寺「怪我もそろそろ治ってきてるしネ。久しぶりにそうしようかな?」

真宮寺(ていうかいつまで水着なんだろう……とはとても聞けないよネ……)

東条(この常夏の島においても制服は脱がないのね……とはとても言えないわ)

獄原「ちょっとゴン太、あっち側に行ってみるね!」ガサゴソ

東条「泳いでいくつもりならここに水着が……」

獄原「エンジン付きゴムボート!」テレレテッテレー!

東条「……」

獄原「行ってきまーす!」ブロロロロロロ!

東条「水着……」

星「まあ流石にアイツも急いでるときはボートくらい使うだろう」

東条「……」

真宮寺(水着仲間欲しがってる……)

星「……ところで東条。俺の水着はあるか?」

東条「!」パァァァァ

真宮寺(凄い気を使ってる……!)

真宮寺「ん?」

獄原「うわああああああああ!」ブロロロロロロ!

真宮寺「あれ。もう帰ってき……!?」





タイヤキ型ポッド「」ビチビチビチビチッ!

獄原「うわあああああああ! こっちに来ないでーーー! 怖いーーー!」ブロロロロロロ!

真宮寺(なんかよくわからないものに追われてる)ガーンッ!

獄原「セーフ! 陸地に辿り着いた! ここまでくれば大丈夫!」

タイヤキ型ポッド「」ビチビチビチビチビターンッ!

星「まあ、魚類? のようだし、陸地に上げちまえば身動きは取れな」

タイヤキ型ポッド「」ブルブルブルッニョキッ

獄原「え?」

タイヤキ?型ポッド「」カサカサカサカサッ

獄原「ええーーーーッ!? 虫みたいな足が側面から出てきて陸地を素早く移動しはじめたーーー!?」ガビーンッ

真宮寺「気持ち悪っ……! ひい! こっちに来てるぅ!」ガビーンッ!

東条「真宮寺くん! 逃げて!」

真宮寺「言われなくとも……ハッ!」

真宮寺(今、ここには仕込み中のタレと刻んだ具材が……!)

真宮寺「逃げるわけにはいかない!」ギンッ

獄原「し、真宮寺くん! ダメだ、間に合わない!」ダッ

タイヤキ?方ポッド「」ピタッ

真宮寺「……と、止まっ……た?」

ブシューッ

真宮寺「ん? あれ。これ、乗り物……みたいだネ。開いた口から誰かが出てくるヨ」

ガチャピン「……」ヌッ

ムック「……」ヌッ

真宮寺「」

ガチャピン&ムック「……」ダッ

東条「……真宮寺くん? この魚類? の陰に隠れてよく見えなかったけど、誰だったのかしら」

真宮寺(ツッコミが追い付かない)

獄原「あれ? あっ」

真宮寺「ま、まあいいや。今のは悪い夢だったと思うことにしよう」

真宮寺「引き続き冷やし中華を……」

獄原「!」バッバッ

星「お?」

東条「きゃっ」






獄原「真宮寺くん! 今すぐ逃げて!」

真宮寺「は?」

獄原「別角度からもう一体突っ込んでくる!」

タイヤキ?型ポッド2「」カサカサカサカサッ

真宮寺「ぎゃああああああああああああ!」グシャッ

星「真宮寺が轢かれた!」

獄原「真宮寺くーーーん!」ガビーンッ!

冷ややっこと冷やし中華って混同しがちだよね。
今日のところはここまで!

東条「……いいえ! まだ大丈夫よ! あの虫のような足の隙間に運よく入って潰されてはいないわ!」

星「見れば見るほどに本当にイヤなフォルムしてるな」

獄原「うん! サケビクニンさんの百倍グロテスクだよね!」

東条「どうやらあの乗り物? は停止したようね。下の隙間に入っている真宮寺くんを救出するわ!」ダッ

獄原「あ! ゴン太も……ハッ!」

タイヤキ?型ポッド2「……」ギャーギャー

獄原「ダメだ東条さん! それに迂闊に近づいたら――!」


ガシャンッ


BB「シェイプシフター! その狼藉者をどこかに振っ飛ばしてーーーッ!」

天海「ぐふああああああ!」バシュンッ

東条「がふっ」ドスゥッ

獄原「東条さんの鳩尾に天海くんが激突したーーーッ!」ガビーンッ

星「……ん? 天海?」

獄原「ゴン太の仲間に手出ししないで!」ダッ

BB「あー。まったく。どさくさに紛れて胸を揉むとかどこのラノベ主人公――え?」

伝説の超獄原ゴン太「消えて無くなれーーーッ!」グンッ ブンッ

BB「きゃーーー……」ヒューッ……

星(魚型の乗り物をどこかに投げ飛ばした……!)ガビーンッ

東条「」チーン

真宮寺「」チーン

天海「」チーン

獄原「……」

獄原「また……守れなかった……!」ガクリッ

星「お前さんはよくやった……」

アンジーの病室の外

巌窟王「……」イライラ

巌窟王(なんということだ。まさかアレを抜き身のまま放置して閉じ込められてしまうとは)

巌窟王(なんとしてでも、アレだけはモノクマないし白銀に見られるわけにはいかない)

巌窟王(入間は外に出ることは外からの助けなしには不可能だと言ったが……真面目に考えなければならないだろうな)

「導けBright Burning Shout! 無情すぎる世界でも!」

巌窟王「む? どこからか歌声が……上からか?」

BB「きゃああああああああああああ!」ヒューッ!

巌窟王「!?!?!?」ガビーンッ





ドグシャッ


☆声に出したその希望を真実に――!

赤松「巌窟王さん? どうしたの? 何か凄い音が聞こえたけど……」

BB「」チーン

巌窟王「」チーン

赤松「!?」ガビーンッ

赤松「な、なにこれ! どういう状況……ん!?」トントンッ

赤松(あれ。誰かに肩を後ろから叩かれた?)

西川貴●「……」ヤッホー

赤松「!?!?」ガビビーンッ

赤松「え? 私の名前が知りたい? 赤松楓ですけど……」

西川貴●「……」サラサラサラッ ピッ




西川貴●のサインを手に入れた!




赤松「え。え?」

西川貴●「……」ダッ

赤松「い、行っちゃった……なにこの状況……」



サインは後で額に飾られた。西川貴●とhyd●はジャバウォック島にて野生化した

休憩します!

真宮寺さんちの今日のごはん 海の家にて

真宮寺「……完成したヨ。冷やし中華。人数増えちゃったから、ちょっと量少なくなっちゃったけど」

赤松「うわあ! 美味しそう!」

獄原「真宮寺くんが必死に食材を守った甲斐があったね!」

巌窟王「アンジーの分は当然用意したのだろうな?」

真宮寺「もちろん。食べられるかどうかは別だけどネ」

巌窟王「後で持っていこう」

真宮寺(信用を回復できたみたいでよかった……!)

巌窟王「もし毒を盛ってたりしたら後で焼いて海に散灰するぞ」

真宮寺(全然回復できてなかった……!)エグエグ

天海「それじゃあ、みんな揃って……」

BB「いっただっきまー……」

巌窟王「待て」

天海&BB「?」

巌窟王「何故貴様らがここにいる?」

天海「助けに来たんすよ。外部からの操作を受け付けない状態になっていたから、中に入るしかなかったんすけど」マグマグ

入間「あー? マジかよ。外からも不可能なのかよ……徹底しすぎだな、オイ」マグマグ

BB「ていうかあなたたちは一体何をしているんですか。外部からの脱出手段がないのなら、内部にスイッチがあるのが道理でしょうに」マグマグ

巌窟王「全員食べながら話すのをやめろ」イラッ

入間「いや。どこを探してもないもんはなかった。これは間違いないぜ」

BB「どこか弄ったんじゃありません? あなたたち、何か壊したりしてないです――」

BB「……あ。もしかしたらアレかな……白銀さんのアルターエゴ……」

真宮寺「彼女がどうかしたの?」

BB「いえ。外に出れないというのなら、あなたたちがこの世界を調べた時点で『壊れた物』が必然的に『脱出の手段』ってことになるかなと思って」

BB「たった一つだけありましたよね? あなたたちが明確にぶっ壊した、この世界の機能」

巌窟王「!」

入間「……ああ、そうか! クソッ! やられた! アイツが出入り口だったのか!」

BB「今となっては確かめようがありませんが……」

BB「でもそれならそれでおかしいですね」

天海「おかしい?」

BB「だって、白銀さんが虚栄の空中庭園の中の一室を改造して、何らかの作業をしていたことは明らかですし」

BB「もしも作業中に出入り口がぶち壊されたら、白銀さんもあのカプセルの中に閉じ込められたままなはずなんですが……」

BB「予備の出入り口がどこかにあると考えるべきですね」

入間「はんぎんぐがーでん……? それって、このなんかブラックボックスな感じになってる……」ブオンッ

BB「ああ、それですそれです。うわぁ。改めて文字列として見てみると本当スパゲッティなクソコードですねー」

BB「しかしあそこに出入り口っぽいものがあったとは記憶してないのですが……」

天海「……」

天海「あの。BBさん。イヤな仮説言っていいっすか?」

BB「はいどうぞ天海さん!」

天海「白銀さんが本当に出入り口だったとしたら、アルターエゴに俺たちを脱出させる権限があったってことっすよね?」

BB「そうですね」

天海「じゃあ、予備の出入り口って、彼女と同じくアルターエゴだったりしないっすか?」

BB「可能性としては充分ありえるかと」

BB「あ」

東条「……どうかしたの? 心当たりがあるのなら言ってちょうだい」

BB「……あの。入間さん。その端末から私たちの人格データって見れます?」

入間「不可能だな。そこまでの権限は俺様たちにない」

BB「じゃあアルターエゴのデータも同じく見れないでしょうね……だから見つからなかったのか……」

入間「あー? テメェ、何を言って」

入間「あっ!」

天海「……てっきりあの女の人はただの時間稼ぎ要因だと思ってたっす。でも実際のところ答えそのものだった……!」








天海&BB「セミラミスさん!」

天海「彼女が出入り口だったんすね! 全然その発想なかったっす!」

BB「……あー。私たちが入るまで、あの空中庭園は無事でした。つまり白銀さんはあのゲームをゲームとしてプレイしていないことになります」

BB「あのときセミラミスさんは問答無用のように振る舞っていましたが……実際、そこまで権限は強くないでしょうね」

BB「『この世界から出してくれ』という明確な意思を伝えれば、彼女は私たちを出さざるを得ない。そういうふうにできているはずです!」

BB「『見逃してくれ』と漠然と言うだけではダメでしょうけどね」

天海「でもそんなこと、会ったとき彼女は一言も……」

BB「自分と遊ばなければならないと思わせるためにチュートリアルを自動でスキップしたのでしょう」

天海「無茶苦茶な!」

巌窟王「……ともかく、そいつに会えばいいのだな?」

東条「脱出手段に当たりがついたのはいいことだけども……その人、今はどこにいるのかしら」

BB「ゲームをクリアした最原さんを拉致ってセカンドステージへと向かったはずですが……」

BB「……」

BB「未実装エリアを開拓して新しいステージを延々と作るくらいはしそうですねぇ。あの土木系アサシン」

入間「ちょっと待ってろ! んな派手なことされたらイヤでも気づく!」カタカタカタカタ

入間「あった! さっきまで絶対になかったオブジェクトが発生してる!」

BB「場所は?」

入間「ここから真っ直ぐ南の方向だ!」ビシィッ






陸地「」ドォォォォォォンッ!

入間「……あ、あれ? さっきまで無かったよな? あんなん」

BB「やりたい放題ですねー」

巌窟王「先に行っている。お前たちは後から来るがいい!」ビュンッ!

最原「……ここは……」

セミラミス「さて。セカンドステージはちょっと難易度が上がるぞ? 内容はただのかくれんぼだがな」

セミラミス「我は全力で貴様から隠れる。それを見つければ貴様の勝ち。それだけの簡単なルールよ」

最原「……見覚えがあるような気がする」

最原(妙だ。忘却補正があるのだから、見覚えがあるのなら忘れてない。なのに……懐かしいと、ただ思うだけだ)

セミラミス「さあ。見事我を探し当ててみせよ。ステージの名前は……」








セミラミス「希望ヶ峰学園、と言ったか?」

今日のところはここまで!

希望ヶ峰学園内

最原「……今回も早めにクリアして、天海くんたちに合流しないと」

最原「どこに隠れてるんだろう」

最原(というか……才囚学園と趣味がほぼ同じだな。かなり悪趣味な内装だ……)

最原(でもこの既視感はそれとは何か違う気がする)

最原(僕はここを知ってる?)

最原「……進んでみよう」







??「……」ジーッ

最原「……いないな。手がかりも見つからない。結構時間がかかりそうだ」

最原「天海くんたちが外に出るのが先かもな……そうだといいけど」

最原「……」

??「……」ジーッ

最原(さっきから誰かに見られてる。でもセミラミスさんじゃないな……)

??「……」クスクスクス

最原(……どうせ手がかりはないんだ。追ってみようかな)

??「……」スッ

最原「気付かれた。でも……本気出して逃げようとしてないな」

最原「僕をどこかに連れて行こうとしてる?」

??「……」ニヤニヤ

最原(悪寒がする。引き返せって、僕の勘が全力で言ってる)

最原(……それでも、あれしか手がかりがない)

??「本当に真実を知りたいの?」

最原「!」

最原(……あれ。ここ、どこだろ。真っ暗だ。なのに自分の姿だけはよく見える)

最原(僕の前を行く誰かの背中も……見失ってない)

??「……そんなわけないよね。本当に真実を知りたいのなら、もうキミは既にそれを手にしている」

??「気付いていないフリをしているだけだ」

最原「……何が言いたいの?」

??「……ふふっ」

最原(この声は……聞いたことがある。まさか……!)

最原(セミラミスさんじゃない。白銀さんでもない。でも日常的に聞いたことのある、あの声は!)

最原「……ッ!」ダッ

??「へえ。追ってくるんだ」タッ

??「おかしいと思わなかった? なんで忘却補正で思い出せたのが、この学園での記憶だけだったのか」

??「普通に考えれば、思い出しライトでこれから思い出すはずだった『この学園に来る前の記憶』も思い出せなきゃおかしいよね?」

最原(それは……!)

??「さあ。考えてみよう。キミはいつだってそうしてきたはずだ。一体、なぜこの学園に来る前の記憶がないのか」

最原「……」

最原(何故、思い出せたのが学園に来てからの記憶だけだったのか……それは)


1.忘却補正に不備がある。
2.思い出したが、また忘れた。
3.元から学園に来る前の記憶がない。

最原「……元から学園に来る前の記憶がないから……?」

??「正解だ」

最原「いや。それはおかしい。だって今までずっと、思い出しライトで記憶を取り戻してきたはずだ」

最原「元から学園に来る前の記憶がないのなら、僕たちが今まで思い出して来たアレはなんだったんだよ!」

??「思い出してみてよ。白銀さんは、キミたちの記憶を改竄するときに何を使った?」

最原「……それは!」



1.思い出しライト
2.マザーモノクマ
3.エグイサル

最原「……思い出しライト」

??「ほら。答えはすぐ傍に転がっていたでしょ? 何の才能の個性もない僕でもわかる」

最原「……」

??「ここまで言ったらもうわかるよね? 思い出しライトの本当の機能は『記憶の植え付け』なんだよ」

??「さて……元から思い出すべき記憶がない。思い出しライトの真の機能。この二つを念頭に置いて一から考えよう」

??「キミの正体は、なんだろう」

??「一体どこからどこまでが真実なのかな?」

最原「う……ぐ……!」

??「質問を変えよう」

??「キミが……『最原終一』が始まったのは、どの時点?」

最原「……」





1.学園生活開始時点
2.学園生活開始以前

最原「……学園生活が始まったその時点……」

最原(気が付けば歩みは止まっていた)

最原(目の前の人影は、僕に向き直っている)

最原「キミは……誰だ?」

最原「なんでこんなことを知ってる? どうして……!」

最原「誰にも言ってない! 確かに薄々感づいていたけど、そのことを誰にも気取らせてないんだ!」

??「まだ目を逸らすの? 目の前を見ればわかるのに」

??「……巌窟王さんから貰った強さはどこに行ったのかなぁ?」

最原「キミは……!」

??「そう。関係ないんだよ。誰にも言ってない。気取らせてない。でも、だからって誰にも知られないわけじゃない」

??「最原終一を誰よりも知っている人。最原終一の声を誰よりも聞いてきた人。最原終一の気持ちを誰よりも理解できる人」

??「さて。僕は一体、誰でしょう」

最原「……」

最原(僕が追っていたのは……僕を煽る、この聞きなれすぎた、この声の主は……!)




1.最原終一
2.白銀つむぎ
3.モノクマ

最原「……僕が……いる」

最原?「……」

最原「なんで。キミは一体……誰?」

最原?「君自身……だけど、厳密には最原終一じゃないなぁ」

最原?「……元の人格のバックアップと呼んだ方が正確かも」

最原「……」

最原(何がなんだかわからない……僕は今、何を見ている……!?)

最原?「キミは僕と違って頭がいい。もう全部わかってるはずだよ?」

最原?「ふふっ……くくくくくく」

最原「ふざけるなっ! こんなものまやかしだ!」

最原「……こんなものが真実なわけ……ないだろ……!」

最原?「いや? 間違いなく真実だよ。そして――」

最原?「ここまで辿り着いたキミに、二つの選択肢をあげよう。初回特典としてね!」

最原「え?」








最原?「『僕』に戻って、外の世界に帰る。または、この世界に残って引き続き地獄を味わい続ける」

最原?「どっちがいい?」

最原「……」

最原「……は?」

今日のところはここまで!

希望ヶ峰学園外周部

巌窟王「……」

セミラミス「むぐ?」モグモグモグモグ

巌窟王「……何をして……いや。マカロンを食べているのか……そうか……」

セミラミス「……」モグモグモグモグモグ

巌窟王「……」

巌窟王「いい加減食べるのをやめろ」

セミラミス「……」ゴクン

セミラミス「くくく。巌窟王か。よもやこんなところで出会うとはな」

巌窟王「会いたかったか?」

セミラミス「まさか。貴様とは趣味がまったく合わんからな。二度と顔を突き合せたくはなかったぞ?」

巌窟王「フン……」

セミラミス「今、この学園の中で我を探している人間……名前は最原だったか」

セミラミス「早めに助けなければまずいかもしれんな?」

巌窟王「!」

セミラミス「この学園の中に我が『いない』ことに気付いて外に出ることができたらセカンドステージはクリア」

セミラミス「……なのだが、我にこのステージを貸したあの女は、この学園の中に一つのデストラップをしかけていたらしい」

セミラミス「強い心があれば問題はなかろうが? アレはおそらくダメだな」

巌窟王「舐めるな。アレはそこまで惰弱ではない」

セミラミス「そうか。なら確かめてみるか? だがその前に、我はこの空間において千里眼に等しい権能を持つ」

セミラミス「これも同じく、あの眼鏡の女に貸し出されたものだが?」

巌窟王「何が言いたい?」ギロリ










セミラミス「冷やし中華をマスターに届けるのではなかったか?」

巌窟王「……!」ハッ!

海の家近辺

獄原「よし! 人数分のゴムボートは用意したよ!」

赤松「最原くんもこの世界に来てたの!? もっと早くに言ってよ!」アタフタ

天海「いや! 言い忘れてて!」

BB「ていうか私は言いましたよ。サラッと」

赤松「サラッとしすぎてうっかり聞き逃しちゃったんだよ!」

ギュンッ

巌窟王「うおおおおおおお!」ギュンッ

BB「……あれ。今、巌窟王さんが帰ってきたような……?」

星「アイツ『先に行ってる』って言ってたよな? 何があったんだ?」

真宮寺「……あ」

獄原「どうかしたの?」

真宮寺「……夜長さんの昼ご飯……」

赤松「あっ。慌てすぎてて忘れてたね……」

夜長アンジーの病室

巌窟王「……」ソッ

巌窟王「……」ソソクサソソクサクレラップ

巌窟王「……!」←冷やし中華にかけるラップが手に絡まった

アンジー「……どうしたのー?」

巌窟王「アンジー。起きていたか。いや何。昼食を運んできただけだ。俺はこの後、少し遠出する故な」

巌窟王「食べる気になったらタレをかけて食べるがいい」

アンジー「なにかあったのー?」







巌窟王「最原がこの世界にやってきたらしいのでな。会いに行く」

アンジー「アンジーも行くーーーッ!」ズギャアアアアンッ!

海の家周辺

真宮寺「……ゴムボートを人数分、急ピッチでこしらえたのはいいけど」

真宮寺「まさか全員があっちに行くわけにもいかないよネ。夜長さんがいるんだから」

東条「彼女の容態は依然として悪いわ。まかり間違っても放置はできない」

獄原「じゃあ東条さんと……あと一人くらい補助で誰かいた方がいいかな?」

赤松「あ。じゃあ私が……」

ギュンッ

巌窟王「クハハハハハハハハ!」ギュンッ

アンジー「終一いいいいいいいいい!」ギュンッ

BB「……今その悩みがすべて無に帰しましたね」

天海「巌窟王さんがアンジーさんを伴って飛んでったーーーッ!?」ガビーンッ

赤松(わあ。この学園に来て以来初めてだなぁ。あんな殺意全開のアンジーさんの怒声聞くの……)

星「……さっさと行った方がいいな。全員で。さもないと最原が灰になっちまうぜ」

天海「え? なんて?」

赤松「急ごう!」

休憩します!

希望ヶ峰学園内部

最原「何を言ってるの? まるで意味がわからない」

最原?「わかりたくない、の間違いじゃないかなぁ」

最原?「……そうだなぁ。じゃあ、コレを見てくれればわかるかな?」バサッ

最原「……紙?」

最原?「才囚学園の生徒全員のプロフィール」

最原「こんなもの今更渡されても」

最原?「本当のプロフィールだよ?」

最原「!」

最原?「……読んでみて?」

最原「……」ペラペラ

最原「……これは……これ、は……!?」

最原(全員が高校生、ということ以外はすべてデタラメだ)

最原(所属校。学年。誕生日。好きな物。嫌いな物……)

最原(本名に至るまでが! 全員!)

最原?「もうわかったんじゃないかな。この学園が何のためにあるのか」

最原「……嘘だ」

最原「この学園で起こったすべての出来事が『嘘』」

最原「僕は僕たちの命のために全力で戦ってきたと思ってたけど、全然違う」

最原「本質は……僕たちのためじゃない。顔も知らない、外の世界の……」

最原?「誰かの為の物語」

最原?「さて。キミの寿命っていつまでかな?」

最原「!」

最原?「キミの存在はすべてがフィクション。『最原終一であること』に特化した結果、外の世界で生きることは絶対に不可能だ」

最原?「もしもキミたちがこの世界から脱出できたとしても……帰る場所はどこにもない」

最原?「だって全部嘘だもん!」

最原「そんな……そん、な……!?」

最原?「でも、そんなキミにも生き残る唯一の術がある。それが僕だよ」

最原?「……真実の自分、取り戻してみたくない?」

最原「!」

最原?「嘘の自分を捨て去って、元の僕に戻るんだ。ついでに外の世界に帰って、元の平穏な生活に戻れるよ?」

最原?「平和。退屈。刺激はないけど面倒ごともない、そんないつも通りの日常にさ」

最原「……そんな都合のいい話があるわけない!」

最原?「あるよ。キミにだけはね」

最原?「……白銀さんが必死に僕を復元して再現したからね。確かに本当は無理なんだけど」

最原?「最原終一の『基』の記憶を完全再現した思い出しライトを一から作ったんだよ」

最原「な……え……!?」

最原?「さあ。どうする? どうする? どうする?」

最原「そんなの決まってる! 思い出しライトの真の機能がわかったのなら、絶対にそれを浴びるわけにはいかない!」

最原?「ならみんなと一緒に死ぬの?」

最原「は……!?」

最原?「……フィクションのキャラクターはフィクションの世界からは出られない」

最原?「キミたちは必死に『死なないように』立ち回ってたけど。無駄だったんだよ」

最原?「だってキミたちは永遠にこの世界から出られないんだからさ」

最原?「一生、この世界の所有物だ。結局のところ、どこにも行けない」

最原「……!?」

最原?「物語の本質は『生贄』だ。現実で起こってほしくないことを、物語の中で代行させる」

最原?「親が死ぬ。友達が死ぬ。世界が滅びた。死ぬよりひどい目に遭った」

最原?「そういう悪い物が現実にあっちゃいけない。だから物語の中に全部押し込める」

最原?「キミたちは外の世界の人のために、外の世界の悪い物すべてを押し付けられた……いや」

最原?「押し続けられ続けるんだよ」

最原「……」

最原「まさか……天海くんの『超高校級の生存者』の意味って……」

最原「あの動機ビデオの正体は……!」

最原?「あ。あれだけは本物だったろうね。偽りではなく真の意味で成立している動機ビデオだ」

最原?「この世界、ハイスピード推理アクション『ダンガンロンパ』は大人気のシリーズものなんだよ」

最原?「今回で五十三作目なんだ」

最原「ごじゅっ……!?」

最原?「さて。シリーズ物、という言葉の意味、わかるよね」

最原?「今作で生き残ったところで、次回作でどうなるかはわからない」

最原?「キミたちは永遠に、どこにも脱出できないんだよ」

最原?「だって存在自体がそういうふうに作られてるんだからさ!」

最原「……」

最原?「でも……だからこその、この選択肢だ」

最原?「キミは正真正銘、ダンガンロンパの世界から脱出できる」

最原?「そのために僕がここにいるんだからさ」ニヤァ

最原「これが……真実?」

最原「こんなものが……!?」

最原?「イヤなら僕になるといい」

最原?「その時点でキミはダンガンロンパの世界においては『死んだもの』として扱われる」

最原?「そして、外の世界に戻って、元通りの生活に戻ることができるよ?」

最原?「キミは二度と、こんな残酷で悪趣味な世界と関わることはない」

最原?「逆に言えば……もしも断ったら、キミはこの『ダンガンロンパの世界』で永遠に」

最原?「いつか死ぬまで永久に」

最原?「この出口のない地獄に囚われたままになる」

最原「その程度……なら」

最原?「耐え切れないよ。だってキミは優しすぎるから」

最原「え?」

最原?「……仲間が死にそうになる度に、泣きそうになってたでしょ?」

最原「ッ!」

最原?「……本当に死んだら、あの程度じゃ済まないよ」

最原「……」

最原「終わらない……永遠に……?」

最原「脱出できないだって?」

最原「嘘だ! こんなの! こんなのが真実なわけ……!」

最原?「まだ認めないんだね。この学園を見てもなお」

最原?「この希望ヶ峰学園は、ダンガンロンパ第一作目の舞台だ」

最原?「……僕がこのゲームに参加したいと思った動機だよ」

最原「!」




ザザッ


最原(頭の中に……何かが流れ込んで来る)

最原(これは僕か……!?)

最原?「……楽しかったな。ゲームを初めてプレイしたときは」

最原?「そして憧れたんだよ。『個性がある』ってことに。純粋にさ」

最原?「……最初はそれだけだったんだ」

最原「……」

最原?「まさか本当に、こんな目に遭うなんて思わなかったけど」

最原「そうだ。ちょっとだけ思い出した……忘却補正のお陰かな。これが『本当の記憶』ってことはわかるよ」

最原「……退屈だったんだね。死にたくなるほど」

最原?「これと言って親友と呼べる人はいなかった」

最原?「恋人とかも作ったことがない」

最原?「特別に秀でた才能も持ってなかった」

最原?「同じように流れて消費されていく時間がイヤでイヤでたまらなかった……!」

最原?「何者にもなれないまま寿命が尽きてのたれ死ぬ。そんな予定調和の未来がすぐ傍に見えているみたいで怖かった!」

最原?「だから思ったんだよ。こんな毎日をぶち壊せるのなら。終わらせることができたのなら……!」

最原「死んだとしても構わない」

最原「……バカなことを……そんなことのために、僕は……!」

最原?「でも『僕』は後悔してないよ」

最原?「だって、楽しかったでしょ?」

最原「は……?」

最原?「必死に生きるのは気持ちよかったはずだ。誰かに頼りにされて身が引き締まる思いだった」

最原?「誰かに好きになってもらったり、誰かを好きになったり……」

最原?「この上ないくらい生きる実感があったでしょ?」

最原「……」

最原?「でもまあ、そろそろ充分じゃないかな。流石にそれでも『永遠に続く』っていうのなら話は別なはずだ」

最原?「外に出ても……『僕』に戻っても、最原終一は消えたりしないよ」

最原?「さあ。早く元に……」









最原「知ったふうな口を利くなよ」

最原?「は?」

最原「僕の記憶は僕だけの物だ。お前なんかに渡さない」

最原「……渡すもんか!」

最原?「何を……言って……」

メラッ

最原?「……!」

最原「今貰った記憶は消すよ。僕には必要のないものだ」ボオオオッ

最原?「その炎は……!」

最原「熱量は流石にないけどね……見た目だけみたいだ。まあ、記憶を消すだけの炎だから物理的な効果がなくって当たり前だけど」

最原?「なっ……!?」

最原「貰った記憶を『元の記憶に関する改竄』と認識すればいい。それだけで全部忘れる」

最原?「正気!? 僕に戻らなきゃ一生、地獄に囚われたままなんだよ!」

最原?「元の世界に戻らなきゃ、いつか死ぬまで永遠に弄ばれるだけだ!」

最原「戻る? ふざけたこと言わないでよ!」

最原「僕は違う。僕はキミなんかじゃない!」

最原「僕の名前は最原終一だ! それ以上でも以下でもない!」

最原「ぐっ……!」グラッ

最原(頭が物凄く痛い。真っ直ぐ立っていられない!)

最原?「なんで!? 死ぬのはイヤだろう? 仲間が死ぬのを目の前で見るのはもっとイヤなはずだ!」

最原?「僕に戻れば全部、傍観者の立場から俯瞰できるのに!」

最原「だからそれがイヤなんだよッ!」

最原「この悲しみも。この後悔も。この絶望の一欠けらだって僕の物だ!」

最原「僕自身の物だ! 誰かに預けて退場なんてマネができるはずがない!」

最原「自分がイヤで……それだけで『自分』をあっさり捨てたキミとはまるで違う!」

最原「後から来て全部総取りとか、させられるわけない!」

最原「だって……この記憶が僕のすべてなんだから!」








「よく言った。やはり快勝だったではないか。最原」

最原「!」

巌窟王「……後は任せろ」ボォゥッ

最原「――」

今日のところはここまで!

最原?「……巌窟王さん?」

巌窟王「ああ、そうだ。永遠の復讐鬼たる俺が貴様を滅ぼしにきたぞ」

巌窟王「あの女帝も、貴様も随分とコイツのことを過小評価してくれたな」

巌窟王「前はどうだったかは知らん。だが、この学園に来てコイツは変わった!」

巌窟王「最原はもう弱くはない!」

最原「あの」

巌窟王「肉体的な意味ではない。単純な精神の話でもない」

巌窟王「言うなればそう……魂だ」

最原「あの。巌窟王さん。ちょっと」

巌窟王「コイツはもう迷わない。いつだってコイツの隣には……仲間がいるからだ」

最原「ねえ! 巌窟王さん! ちょっといい!?」








最原「なんでこっち見ながらいいセリフ言ってるの!? 偽物あっちだよ!?」

巌窟王「……」

巌窟王「二人の見分けが付かないだけだ」

最原(本当に?)ズーン

最原?「ここで終わることが彼にとっての幸せなのに! 邪魔するの!?」

巌窟王「……それを決めるのは貴様ではない。随分と腹立たしいことを言ってくれたな」

巌窟王「万死に値する。疾く死ね」ボォゥッ!

最原?「ッ!」



ドカァァァァンッ!



最原「だからこっち本物だってヴァアアアアアアアアアアア!?」

最原?「ええーーーッ!?」ガビーンッ!

巌窟王「……」

巌窟王「手元が狂った」

ダブル最原「嘘だーーーッ!」ガーンッ!

最原「というか仮に僕の方が偽物だったとしても殺しちゃダメだよ! まだ聞いてないことあるんだからさ!」

巌窟王「そうか。それは済まなかった。そして燃えろ」ボォゥッ



ボーーーーンッ!


最原「きゃーーーッ!」

巌窟王「チッ。また避けられたか」イライラ

最原「やっぱり僕の方を明確に狙ってきてるよねぇ!? 僕なんかしたっけ!?」アタフタ

巌窟王「息をしている。鼓動をしている。俺と同じ空の下で生きている」

最原「聞けば聞くほど殺意満載!」ガビーンッ!

巌窟王「ああ。面倒だ。避けるな最原ァ!」ボォウッ

最原「ついに誤魔化しすらしなくなっちゃったよ! なんで!? 心当たりが全然な――」



ドカァァァァンッ!


最原「うわあああああああああ!」ダッ

最原?「あ! ちょっと待って! まだ話は終わってな――!」

巌窟王「どけぇ! 邪魔だ!」バシッ!

最原?「ぎゃんっ」ズササーッ!




ドタドタドターッ



最原?「……」

最原?「い……行っちゃった……なんだったんだアレ……」

アンジー「……終一」

最原?「ん?」

アンジー「会いたかった」

最原?「……ん?」

最原?「ああ。最原終一なら、さっき巌窟王さんに追われてどこかに行っちゃったよ」

最原?「僕はただのそっくりさんなんだ」

アンジー「……」


ダキッ


最原?「えっ」

最原?(抱きしめられた)

アンジー「……そんな見え透いた嘘を吐くなんて。酷いなー」

最原?「いや。だから僕は――」

アンジー「……今の一言で完全にキレちゃった」




ドスゥッ




最原?「え……」

最原?「……ごふっ!?」カハッ

アンジー「ああ。ああ! キレちゃったキレちゃったキレちゃった!」

アンジー「もうダメ! お前に対する黒い感情の奔流が抑えきれない……!」


グサッ グサッ


最原?「ぎ、ぎゃああああ! やめっ……!」

アンジー「ビンタ一発、なんて。アンジーはなんて甘かったんだろう!」

アンジー「その程度で……その程度で終わるわけないのに……!」

最原?「だ、だから人違――!」



ブチッ



アンジー「最高にCOOLなオブジェにしてあげる」

アンジー「大丈夫。殺さない程度にっていうの、慣れてるから。この前まではやられる方だったけどねー」

最原?「あ、あ、ひぎぎゃっ……ごぎぎぎぎががががあああああああああああ!」

今日のところはここまで!
最後の追い込みだぜ!

えっ。イベントって月末までじゃないの……?
ショックを受けた。EXTRA_LE的なコラム書いて今日は終了

最原終一



才囚学園に囚われた生徒。

この学園生活においてアンジーに次ぎ、巌窟王の影響を受けた高校生。
かつて自らの才能によって受けた傷のせいで、人の目もまともに見られなくなっていたが、少しだけ前向きになった。

巌窟王に強い憧れを抱いているが、それと同時に『巌窟王と同じパフォーマンス』ができないということを理解していた。
同時に『巌窟王にできないことが自分にはできる』という事実に辿り着いたのが運の尽きだったのかもしれない。

決して膝を屈しない巌窟王に義理立てするかのように、彼は『せめて自分にできることだけは全力を出す』ことを学園生活の目標と定めた。
問題があったとすれば、この学園生活において彼の才能の持つ責任があまりにも重大すぎたこと。

凡人であれ英雄であれ関係なく『今の自分にできることを』というひたむきな誓いを胸に秘め、極限まで突き進む人間の末路は往々にして決まっている。

赤松や茶柱他、彼のことを心配する人間は、彼に近づく死の臭いを鋭敏に感じ取っていた。おそらく、当の本人よりも。




セミラミスの診断したスキルの副作用に関する診断は、大分甘口に抑えられている。

セミラミス「むぐ? また貴様か」ムグムグムグムグ

天海(今度はマシュマロ食べてる……)

セミラミス「チョコ入りだ」ムグムグムグムグゴクン

入間「んだァ? このマン●からカメムシ臭がしそうなババァは」

セミラミス「社会的に死ね」ジャラジャラジャラッ


バリバリバリッ


全裸の入間「ほげぎゃーーーッ!?」ガビーンッ

獄原「うわあああああああああああ!?」ガーンッ

東条「鎖で一瞬にして入間さんの服を……胸が悪くなるような光景ね。今日眠れるかしら」

全裸の入間「無表情で冷静な分析してんじゃねぇーーーッ!」

赤松「だ、男子は見ちゃダメ! ダメだからね! 相手が入間さんだとは言え!」アタフタ

東条「水着よ。着るといいわ」

入間「おお。上出来だ東条……?」

入間「……なんで俺様の水着を東条が……?」

天海「あれ? 最原くんと巌窟王さんとアンジーさんの姿が見えない……」

赤松「あ。本当だ。どこ行ったんだろう。この島でゲームしてるんだよね?」

BB「セミラミスさん?」

セミラミス「全員が中にいるぞ? 『最原にデストラップをしかけた』と伝えたら大急ぎで中に入っていきおった」

星「急いだほうがよさそうだな」

入間「サイズがぴったり……サイズがぴったり……ダメだ深く考えると頭がおかしくなりそうだ!」

星(そういえば俺の水着も……)ゾワッ

天海「あ、あれ。星くん。急いだ方がいいんすよね?」

星「あ、ああ」

赤松「急ごう!」

セミラミス「……」モグモグモグモグ

BB「あの。ついででいいんで、同行してくれませんか? 確かセカンドステージの内容って……」

セミラミス「ゲームの本筋を変えるような行為は我の本意ではないが、しかし貴様らに逆らう権力も持たん」モグモグモグ

BB「決まり! 一緒に来てください! それでこのゲームは終わりです!」

BB「後で東京土産の東京ばな奈あげますから!」

セミラミス「チョコ菓子ではないのか……」シュン

学園内

天海「よし! それじゃあさっさと最原くんを見つけて全員で脱出っすよ!」

獄原「手分けして探そう!」

入間「た、頼むから単独行動は取るなよ。ていうか俺様を一人にするなよ!」

星「行くぞ!」


スタコラーッ


セミラミス「……全員で脱出? 脱出手段に当たりがついたのか? 白銀は滅多なことでは出られないと言っていた気がするが」

BB「え? いや、あなたが入退室の管理をしているのでは?」

セミラミス「む? そんな権限を我はもっておらぬぞ」

BB「……」

BB「推測間違えちゃった」テヘリンッ

BB「でもだとしたら他に脱出手段なんてどこに……」

セミラミス「もしかしたらアレかもしれんな。しかけられたというデストラップがまさにアルターエゴなのだ」

セミラミス「ちなみに万が一『出口がすべて壊れるようなことがあったら破壊行為と見做すので』と念入りに制限されたが……」

セミラミス「まあ、大丈夫であろうよ。余程の邪気がなければ『人語を話すプログラム』を手にかけようなどとは思わんからな」

BB「そうですよね! 余程の邪気がなければ大丈夫ですよね!」

セミラミス「余程の邪気がなければな」

休憩します!

やっべ暇潰しにセミラミス様描いてたら今日がもう終わった。
今日のところはここまで!

ズドドォォォンッ!

真宮寺「この衝撃は……!?」

入間「ひええ……何か恐ろしいことが起こってるみたいだぜぇ。さっさと逃げた方がいいんじゃないかなぁ……?」ガタガタ

真宮寺「早速ヘタれないでヨ」


バリンバリンッ ガシャガシャッ


真宮寺「あ。ちょうど上の階みたいだネ。上から窓ガラスが降り注いで……」

真宮寺「!」←これから何が起こるか完璧に理解した

入間「!」←上の階に何かいるという事実がひたすら不安

天井「」ビシィッ……

真宮寺「!」←わかったので全力で逃げる

入間「!?」←いまいちわからないが不安なので逃げる




ドガラガラガラッ



入間「天井が崩れたーーーッ!?」ガビーンッ

真宮寺「いや。この場合は『上の階の床が崩れた』だろうネ」

巌窟王「チィッ! 脆い建物だ! またヤツを見失ったぞ!」ヌゥッ

入間「ぎゃあああああああああ!?」ガビーンッ

真宮寺「……って、なんだ。巌窟王さんじゃない」

入間「どうやらお邪魔みてーだな! じゃあ俺様は外で海水浴でも楽しんでくるから気にせず続けてくれ! アデューッ!」バッ

真宮寺「ほらそこ逃げない」ガシッ

入間「ゴーグル掴んでんじゃねぇーーー! やめ、離して……!」ジタバタ

巌窟王「……今更来たか。いや、もっと遅くてもよかったのだが」

真宮寺「一体何を追ってるの?」

巌窟王「最原……」

入間「あ?」

真宮寺「?」

巌窟王「……の姿をしたアルターエゴ……だ!」

真宮寺(なんで今ちょっと詰まったんだろう)

入間「へぇー。ダサイ原と同じ姿のアルターエゴなんていたのかー。趣味悪ィなー」ケラケラ

真宮寺(なんですぐ信じちゃうんだろう、この人)

巌窟王「見かけたらすぐに俺を呼べ!」ビュンッ

真宮寺「……」

真宮寺「最原くんを生贄にしたら僕の信用が戻ったりしないかなァ?」

入間「ん? なんか言ったか?」

真宮寺「うん。世迷言。すぐに最原くんを保護しよう。なんとなく事情はわかったしネ」

美術室

獄原「……」

赤松「……」

最原「……」ガタガタ

赤松(美術室の机の下で震えている最原くんを発見した……ところどころ服がススだらけだ……)

獄原「最原くん? 大丈夫!」

最原「!」ビクゥッ

最原「あ。ご、ゴン太くん……赤松さんも!? なんでこんなところに……」

獄原「迎えに来たんだよ。キミを。さ、帰ろう」

最原「……」

最原「……うう」ブワッ

獄原「!?」ガビーンッ

赤松(泣いちゃったよ!)

最原「ご、ごめん……安心しちゃって……生きてたんだねゴン太くん……」グスングスン

最原「あと今、巌窟王さんに追われてて……仲間に会えたって事実も相まって凄くホッとして……」エグエグ

赤松(明らかに巌窟王さんに殺されかかってるーーーッ!)ガビーンッ!

最原「なんでだろう。物凄く巌窟王さん怒ってて……」

最原「真宮寺くんとか入間さんに向ける憎悪の十倍くらいなんだけど。なにかしたっけなぁ、僕……」

獄原「ああ! それはきっと最原くんが茶ばっ……」

赤松「なんでだろうねーーー! 全然心当たりないなーーー!」

獄原「えっ」

赤松「……ひとまず巌窟王さんは私たちで説得しよう。アンジーさんとか茶柱さんとかの件は最原くんに自力でなんとかしてもらう」

赤松「だってさ。今この時点で最原くんにそんな情報を与えてみたら余計に状況が悪化しそうだもん」

獄原「え? そ、そうかな。事情を知ったら最原くんも何かしら巌窟王さんにアクションを……」





最原『だから僕ずっとアンジーさんのことフッてたじゃん! 復讐される謂われは――』

巌窟王『死ねェ!』

最原『最高に灰ってヤツだーーーッ!』ボオオオオオッ





獄原「……」

赤松「この冷静さを失った状態で、どんなアクションを取ったところでさ」

獄原「火に油……だね……」ダラダラダラ

休憩します!

赤松「ひとまず私たちがやるべきことは……ゴン太くんは最原くんを守って」

赤松「私はちょっと巌窟王さんを探して来るから。ついでにアンジーさんも」

赤松「巌窟王さんの方は私が説得すれば多分なんとかなるよ」

獄原「う、うん! 頑張ってね!」

最原「……まあ、巌窟王さんってアンジーさんの次くらいに赤松さんに甘いからね……」

赤松「あの人が女子でぞんざいに扱ってるのってせいぜい入間さんくらいじゃないかな。私だけが特別ってわけじゃないよ」

赤松「じゃあ二人ともここにいてね!」タッ

最原「……ねえゴン太くん」

獄原「どうしたの最原くん。お腹空いた?」

最原「なんかさ……この部屋、彫刻刀とかの『美術で使う刃物全般』がゴッソリ消えてるんだけど……」

最原「凄くイヤな予感がするんだ。僕は本当になにしたんだろう」ズーン

獄原「何も悪くない! 最原くんは何も悪くないよ!」アタフタ

赤松「……」

東条「うっかりやりすぎてしまったようね」ポイッ

天海「いややりすぎってモンじゃないっすよ! これ死んでないっすか!?」アタフタ

星「……過呼吸気味になってるがギリギリ生きてるな。意識もあるようだ」

巌窟王「ぜっ……ぜっ……」ビクンビクンッ

東条「止めた方がいいと思ったからやったのだけれども」

天海「だからって消火器で後頭部をズガンッ! は流石にやりすぎっすよ!」

東条「最原くんをターミネートしてた彼が既にやりすぎていたのよ」

天海「いやまあ……そう言われれば彼の自業自得っすけど……」

巌窟王「覚えていろ貴様ら……!」ゼッゼッ

赤松「……」

赤松「うん! 一件落着だよね!」




赤松は考えるのをやめた

東条「あら? アンジーさんの姿が見えないわね」

天海「巌窟王さん? 一緒に来てたっすよね?」

巌窟王「最原を探すなら、手分けした方が効率的とヤツが提案したので別行動だ」

赤松「……は!? ちょっと待って! アンジーさん怪我してるんだよ! そんな提案飲んだの!?」

巌窟王「ヤツはもう子供ではないのだ。自分のことなら自分で責任は取れるだろう」

赤松「だからって……!」

赤松「……」

赤松「はあ。もう。巌窟王さん。サーヴァントだからって、そんな従順にならなくってもいいんじゃない?」

巌窟王「……制限する方が遥かに大人気ないと思うが?」

赤松「いや。実際に巌窟王さんは大人気ないでしょ。だって……少しも納得してないもん」

巌窟王「……」

星「……もう頭は冷えたな?」

東条「それじゃあ、次は夜長さんね。なんとか彼女も宥めないと」

天海「それでやっと全員での脱出っすね! みんな待ってるっすよ!」

謎の場所

グチャッ バリッ ゴリッ


「ひぎっ……ぎ……ぎ……」

アンジー「……終一……」

アンジー(そういえば初めてかも。誰かに捧げるためではなく、自分のために美術をするなんて)

アンジー「……」

アンジー「愛してる。ずっと……だから……」

今日のところはここまで!

今から三十連を行い、出て来たサーヴァントから抽選でアホな話を書きます

あなたは誰推し?

メドゥーサ「あの十六人の中で誰推しか、ですか……?」

メドゥーサ「……」

メドゥーサ「赤松楓……ですかね」ジュルリ

※当然性的な意味で




太陽王激おこ

オジマンディアス「……」

オジマンディアス「最近ニトクリスの付き合いが悪い……」イライラ


女神系サーヴァント以外にはダンガンロンパの存在は秘密





ブーディカの証言

ブーディカ「ん? あのマントに帽子の怖い顔したお兄さん? そういえば最近見てないな……」

ブーディカ「え? 何作ってるのかって? ポップコーンとかその他ツマミになりそうなものだけど」

ブーディカ「最近女神系のサーヴァントが集まって色々してるらしくってさー」ケラケラ




巌窟王の失踪発覚まで秒読み

メドゥーサ「無駄に淫夢とか見せてみましょうか。もう加護残ってませんけど」

イシュタル「サポートいる?」

メドゥーサ「いります。超いります。百万までなら出せます」

イシュタル「おっけー。商談成立ゥ!」

メドゥーサ「わーい」

メドゥーサ「……あれ。全然利きませんね」

イシュタル「そういえばあの子たち、今電脳空間の中だから夢なんて見ないわよ」

メドゥーサ「」

イシュタル「後回しにすれば?」

メドゥーサ「おあずけ……」シクシクシク

オジマンディアス王の宝具レベルが2になりもうした……メイヴちゃんとか欲しかった……寝ます

三十連と言ったな? アレは嘘だ

太陽神殿は何処に?

ケツァルコアトル「……」

ナーサリー「どうかしたのかしら。蛇のお姉さん」

ケツァルコアトル「私のプレゼントした太陽神殿が見つかりまセーン」

ナーサリー「ああ。そういえば通信復活後から病院にもどこにも見当たらなかった気がするのだわ」

ケツァルコアトル「また新しく作ってプレゼントしようかしら……」

ナーサリー「また誰かが潰されるからやめた方が……」

ケツァルコアトル「え?」

ナーサリー「え?」

ケツァルコアトル「……え?」ゲスガオ

ナーサリー「ひええっ!?」ガビーンッ




ミニチュア太陽神殿第二号、制作中。ただし結局転送はできなかった

今までいなかったケツァルコアトルさんが来ました!
……石と現金は溶けました。本編は夕方から!

赤松「……!?」ゾクッ

東条「どうかしたの?」

赤松「い、いや……なんか寒気が……」

天海「風邪でも引いたんすかね。後で外に出たら東条さんに診てもらった方がいいっすよ」

赤松「そうする」

星「巌窟王。もう暴れたりしねーな?」

巌窟王「拘束された状態でどうやって暴れろと?」ムスッ

赤松(ぶっちゃけ拘束を解こうと思えばいつでも縄を焼き切れると思うんだけど……律儀に捕まってるんだよなぁ。変なところで真面目だ)

東条「ひとまずこの状態の巌窟王さんを最原くんのところにまで運びましょう。彼は美術室だったわね?」

赤松「うん。ん? 運ぶってどうやって?」

東条「……星くん」

星「了解した。引きずっていく」ガシッ

巌窟王「……」ズルズル……ズルズル……

赤松(無抵抗で引きずられてる……)

美術室

真宮寺「あ」

入間「お」

赤松「あ! 入間さんと真宮寺くん! 二人も合流したんだね!」

赤松「……あとはアンジーさんだけかな?」

真宮寺「うん。一番の危険人物だけが消えてるネ」

赤松「あれ。そうだ。最原くんは? どこに隠れてるの?」

真宮寺「獄原くんの巨体の後ろで震えてるヨ」

最原「……」ガタガタ

赤松「ホントだ……」

巌窟王「……フン」

天海「大丈夫っすよー最原くん。もう解決したっすからねー」

巌窟王「どうだかな。ところで貴様ら、BBとセミラミスのことを自然に忘れているな?」

巌窟王「あの二人がいなければ脱出するにしても話にならんだろう」

赤松「あ。そうだった。今は生徒だけじゃないんだよね」

ピンポンパンポーンッ……

赤松「ん?」

BB『あー! あー! 放送室を乗っ取ってあなたたちにお知らせです!』

入間「この声……あのド貧乳ブスか」


バタンッ


入間「あー……」ヒューッ

赤松「入間さんのいた床が開いて入間さんが落下したーーーッ!?」ガビーンッ

巌窟王「電脳空間でヤツの悪口を言うのは自殺行為だぞ」

BB『ええっとですね。セミラミスさんに生徒を外に出す権限はありませんでした! 推測は大外れです!』

天海「ええっ!? 嘘ォ!?」

BB『ですが、予備の出口は確実にどこかに存在します! おそらくそれはセミラミスさんでも白銀さんでもないアルターエゴのはずです!』

BB『巌窟王さん! 最原さん! あなたたち、一度それに会ってるんじゃないですか?』

最原「……あ。もしかして、アレのこと?」

巌窟王「ヤツか。眼中にまったく無かったので忘れていたな……」

BB『それをなんとかして再度見つけてください! あ、一応言っておきますが……絶対に殺しちゃダメですよ!』

BB『それが今残っている最後の出入り口。もしもそれが消滅したら……』

獄原「ゴン太たちは外に出られない?」

BB『だけじゃなくって、それは新世界プログラムに対する重大な破壊行為と認識されます!』

BB『おそらく生徒たち全員は校則違反として裁かれるでしょう!』

真宮寺「ま、大丈夫だヨ。それを今聞いたわけだからネ。間違っても殺したりはしないし、危害を加えたりもしないだろうネ」

赤松「うん! そうだよね! まあそのアルターエゴが万が一最原くんの姿をしていたとしたら完全アウトだけどさ!」

巌窟王「……」ハッ

最原「え? なんで?」

赤松「だってアンジーさんが……おっと。なんでもない。本人に会ってから聞いて? 時間はまだあるだろうし」

最原「?」

巌窟王「……」ブチブチブチッ

東条「あら? 巌窟王さん? 拘束を解いてどうしたの?」

巌窟王「……」






巌窟王「いいことを教えてやろう。アルターエゴはそっくりそのまま最原の姿だったぞ」

赤松「えええええええええええええええッ!?」ガビーンッ

東条「散開よッ! みんなして夜長さんを探して止めるの!」ズバァァァァンッ!

獄原「アンジーさーーーんっ! どこーーー!?」ビュンッ

最原(急に泡食い始めた!?)ガーンッ

謎の場所

入間「いでー! いでー! 尻もちうった! 尻もちうったー!」ガタガタ

入間「んだよ、ここ。真っ暗……じゃなくて真っ黒? 何も見えねーぞ」キョロキョロ

アンジー「終一……終一……」スリスリ

入間「お? アンジー?」

入間「なんだ? 何に頬ずりして……」

入間「……」

入間「きゅー」バターンッ

今日のところはここまで!
ケツ姉さんに頬ずりしながら寝ます……

新世界プログラム内

最原、天海、アンジー、赤松、入間、東条、星、獄原、真宮寺、巌窟王(とBB、セミラミス)がログイン中。

現実世界から最原と天海とBBが新世界プログラムへと入り込み、セミラミスの仕掛けたゲームを最原に押し付け二人はジャバウォック島へと漂着。閉じ込められていた復讐組の生徒と合流。

その後『セミラミスのようなアルターエゴが出入り口の可能性』に気付き、巌窟王が最原の元へと先行。遅れて天海とBB主導で生徒たちが追随。

セミラミスの仕掛けたセカンドゲームの舞台は、白銀がセミラミスに貸し与えた希望ヶ峰学園となっており、中には(明らかに最原に向けた)デストラップが存在していた。

巌窟王はセミラミスの口車に乗り、島へと急いで帰還。その後アンジーに『最原がこの世界にいる』ことを正直に話し、同行。

巌窟王は怒りのままに最原を追跡。なお、理由を喋っていないので最原は終われる理由に何の心当たりもない。

アンジーは『最原の形をそっくりそのままトレースしたアルターエゴ』を恩讐によって攻撃。




セミラミスに『生徒の出入りに関する権限が一切ない』ということがBBとの何気ない会話で発覚。
この学園に仕掛けられたはずのデストラップがアルターエゴなため、消去法で真の出入り口が判明するが……。

第四章の時点でモノクマが『新世界プログラムへの破壊行為は連帯責任となる』ルールを校則に追加したため、万が一これを生徒が壊そうものなら全員校則違反でエグイサルの処理対象となる。(元から脱出方法が存在しない場合は中からBBが新世界プログラムを破壊する予定ではあったが、これは本当に最後の最後の最後の手段のはずだった)




なお、現実世界で何が起こってるかは今のところ不明である。

最原「ええっと……何がなんだかわからないけど、アンジーさんを探せばいいの?」

天海「……」

天海(あ。なんかわかっちゃった。この慌てよう、もしかして……!)

赤松「い、いやっ。その。最原くんはゆっくりしてていいから……」アタフタ

真宮寺「というかもう本当に何もしてほしくないっていうか……」

東条「お願いだからこれ以上口を開かないで。できることなら息もしちゃダメ」

獄原「……」←そっと目を逸らしている

星「人はいつか死ぬ」

最原「なんかみんな変だよ! さっきから!」ガビーンッ

巌窟王「ともかくアンジーのいる場所へは俺が案内しよう。大雑把な方角はわかる。ヤツは今……」

巌窟王「……?」

巌窟王「この美術室の真下だな?」

全員「えっ」

赤松「……ちょうどこの穴の向こう?」

巌窟王「……そういえば入間の声が先ほどから聞こえないが……?」

全員「……」

巌窟王「最原と天海はこの教室にいろ! 身体能力に自信のあるヤツはここから飛び降りろ!」

巌窟王「あとは階段で迂回するのだ! 急げ!」

赤松「入間さん! 大丈夫!? 入間さーーーん! ごめん! ちょっとこっちに気を取られてたんだけど何があったのーーー!?」

星「行くぞ!」バッ

獄原「うん! 早く止めなきゃ!」バッ

東条「階段はこっちよ!」

真宮寺「まったく入間さんはどこまでも手間をかけささせてくれるヨ……!」

最原「あ。あれ。僕も行った方がいいんじゃ……」

巌窟王「絶、対、に、来るな」ギンッ

最原「ええーっ」

天海「……う、うん。最原くんのことはちゃんと見てるんで……行ってらっしゃいっす」

巌窟王「ああ。任せた」

最原「……」

最原「疎外感しかない……!」ズーン

赤松「ごめん! 本当にごめん! 最原くんは何も悪くないんだけどさ!」

最原「赤松さん……」

赤松「多分これ以上最原くんが動いても余計に罪深いことになっちゃうだけだから! 本当に動かないで! お願い!」

最原(凄い勢いで懇願された!)ガーンッ

巌窟王「さて。そろそろ行くか」

赤松「あ! 巌窟王さん! 私も連れてって!」

巌窟王「いいだろう!」ガシッ



バッ



最原「……」

天海「……」

最原「……感動の再会になると思ったんだけどなぁ。巌窟王さんに追いかけ回された事実が今更ながら物凄く心に痛い」ズーン

天海「悪くない。最原くんは何も悪くないっすよ」

天海「……という前提のもと言わせてもらうっすけど、本当に自分のことが見えてないっすねぇ。最原くん」

最原「!?」ガビーンッ

巌窟王「……ついたか。再び見るが本当に真っ黒な空間だ」

赤松「こんなところにアンジーさんが……!?」

巌窟王「ああ。間違いない。この臭いでわかっ……?」

巌窟王「臭い?」

赤松「巌窟王さん。どうし……うぐっ!」

赤松(……直後に気付いた。そこに充満しているのは、胸が悪くなるほどの血の臭い)

赤松「これは……!」

獄原「……」

星「……」

赤松「あ! あそこにいるのは星くんとゴン太くん!」

巌窟王「……」

赤松(……微動だにしていない? なんで?)

赤松(一言も話さずに、ある一点を凝視しているだけだ)

巌窟王「作り物だ」

赤松「え?」

巌窟王「これからお前が見るものは、すべて作り物であるという認識を持て」

巌窟王「それだけで大分違う」

赤松「……!?」

赤松「アンジーさん!」

赤松(巌窟王さんから降りてかけよる。ゴン太くんと星くんが、やっとのこと私たちに気付いたようだった)

星「赤松……」

獄原「……ご、ごめん。赤松さん……間に合わなかった、みたい?」

赤松「二人とも。何を見て……!」

赤松「……それ……誰……?」

赤松(私が見たもの。星くんとゴン太くんが見て、固まっていたもの)

赤松(……アンジーさんが『作ったもの』)

赤松(それは――)








赤松(誰かの内臓。顔の皮膚。肋骨。目玉。切り抜いた頭蓋骨。耳。歯。鼻。指。指。指)

赤松(人体のあらゆる部分をバラバラにしてくっつけて組み立てて、折り曲げて、捨てて、刺して加えて縛って絞り出して乱暴に吹き飛ばして――)

赤松(そうやって作った芸術作品だった)

赤松(もう……それを人間だとは、とても認識できなかった)

赤松(……それにアンジーさんが抱き着いていた。静かな寝息を立てながら)



第五章
Cosmos in the lostmemories 非日常編

夕ご飯の休憩!

天海「……俺の予測通りなら……この下は惨状っすね」

最原「え? 惨劇?」

天海「いや。アンジーさんが暴走して、アルターエゴをうっかり殺しちゃってたらどうしようって……」

最原「……?」

天海(あ。全然動機に心当たりが無い顔だ。『なんでアンジーさんがそんなことするんだろう』って感じの)

最原「多分、大丈夫だと思うよ。今一なにを心配してるのか知らないけど」

天海「え?」

最原「アンジーさんは誰かを殺すような人じゃないから」

天海「……ん?」




下の階

「ぎ……ぎぎぎぃ……」

赤松「ん? 何この声。ゴン太くん何か言った?」

獄原「ゴン太はなにも。そこで寝かせている入間さんの寝言じゃないの?」

入間「うーん……うーん……アート……アートがぁ……」

赤松「凄いうなされてる……」

赤松「いや。今のは入間さんの声じゃなかったよ。聞こえた場所が違うっていうか……」

赤松「ん? アンジーさんの方から……?」

最高にCOOLなアート「ころ……して……ころし……ころして……」

赤松「……」

獄原「……」

星「……」

巌窟王「……」






巌窟王「生きてるな」

赤松「セーーーーーーーーーッフ!」ズギャアアアアアンッ!

今日のところはここまで!

最原「……あれ。そういえば」

天海「どうしたんすか? 最原くん」

最原「いや。一つ巌窟王さん、今までの学園生活を省みると『明らかにおかしいこと』を口走ってたなって」

天海「明らかにおかしいこと?」

最原「だってさ。巌窟王さんにアンジーさんのいる方角がわかるはずないじゃない?」

天海「ん……? サーヴァントなんだから、なんとなくわかりそうな気も……」

最原「いや。わかるはずないよ。だってだとしたら『第三の事件』が起こりようがないじゃない」

天海「あっ」

最原「……気になるな。物凄く」

天海「最原くん? そんな覗き込んだら危ないっすよ?」

最原「いきなり背中から押されない限りは大丈夫――」

BB「どーんっ!」ドンッ

最原「わーーー……」ヒューッ

天海「押されたーーーッ!?」ガビーンッ

赤松「アンジーさん! 起きて! アンジーさん!」ユサユサ

アンジー「ん……? 何?」

赤松「なに? じゃないよ! こっちの台詞だよ! ナニコレ!」

アンジー「これ……?」

アンジー「……終一のこと?」

星「やはりこれは最原だったのか……顔の皮膚が丸ごと剥がされて残ってたから、まさかとは思ったが……」

獄原「クマさんでも、もうちょっと獲物を上品に食べるんだよ……? 人間のやることじゃないよ」

アンジー「……憎くて」

赤松「!」

アンジー「それだけ。本当に……それだけだよー。何の意味もないことなんて、わかってるって……」

アンジー「わかってるんだって」

赤松「……」

東条「……やはりこうなってしまったのね」

真宮寺「手遅れ?」

巌窟王「来たか。いや? ギリギリのところで生きてはいるようだ」

東条「それならそれで猟奇さが跳ね上がるだけよ」

真宮寺「こんなもの間違っても最原くんには見せられないネ」

アンジー「え? 何言ってるの? これが終一だよー?」

アンジー「大丈夫だよー。大分早い段階で目を使えなくしたからさー」

アンジー「アンジーのやりたいこと、終一に全部見せるわけにはいかなかったしさ……」

赤松「……こんな状態にしてまで張る見栄ってあるのかな……」

赤松「違うんだよアンジーさん。それは最原くんじゃなくって――」








最原「わぎゃぶっ!」ベシャッ

全員「あ」

夕ご飯の休憩!

最原「痛い……なんだ? 僕は何をされた? BBさんに背中を押されたような……?」ガタガタ

巌窟王「アイツは本当に間が悪いな。何一つとして本人に悪気がないというのが更に罪深い」

赤松「……」アゼン

東条「ふわ~」

獄原「東条さん!? どうしたの東条さん!」ガーンッ!

真宮寺「あまりのタイミングの悪さにもうキャパオーバーみたいだネ。現実逃避してるヨ」

アンジー「……」

アンジー「えっ。終一?」

最原「ん? みんな、そこで何してるの?」

全員「!」ズラッ

最原「……なんでPK時の受けチーム側みたいな整列をしてるの……?」

最原「というかこの臭い、血?」クンクン

最原「あとアンジーさんの声も聞こえたけど……」

赤松(ああもう! 自分に対する好意に関してはクソ鈍感なクセしてッ! やたら鋭い!)

最原「……一体なにが……あっ! アンジーさん!?」

赤松(え!? なんで見えてるの!? 視界には私たちが立ちはだかってる……のに……ハッ!?)

星「……すまん」チマーンッ

赤松(星くんの身長じゃ隠しきれるわけがなかった!)ガーンッ

最原「アンジーさん!?」ダッ

アンジー「……!」ビクッ

赤松(きゃー! いやー! 来ないでー! だって今のアンジーさん、遠目じゃわかりにくいだろうけど解体を行った直後だから……!)

アンジー「い、いや。返り血がっ……!」ゴシゴシ

赤松「もう誤魔化せない!」ヒイイイ!

巌窟王(というか返り血なぞ傍証としては可愛い物だろう。ここにはアンジーの芸術品があるのだからな)

最原「ごめん! ちょっと間を通るよ!」スッ

真宮寺「どうぞ。もう誤魔化すだけ無駄みたいだし」

赤松「真宮寺くーーーんっ!」ガビーンッ

最原「アンジーさん!?」

アンジー「あ、しゅ、終一。なんで。どうしてっ……!?」

アンジー「あ、や。見ないで。お願い。見ちゃ……ダメ……!」ガタガタ

最原「……!」ペタペタ

アンジー「あ、きゃっ?」

赤松「ん?」

赤松(一も二もなくアンジーさんの体を調べ始めた……?)

最原「……」

最原「びっ……くりした。アンジーさんが怪我してるものだと」

アンジー「え?」

赤松「ん?」

巌窟王「!」

最原「いや。撃たれた怪我は確かに酷いけどさ……これ全部返り血?」

最原「……よかったぁ……また怪我したのかと……はあ」

アンジー「……え? アンジーのこと、心配してたの?」







最原「心配するに決まってるじゃないか。じゃなかったら助けに来ないよ」

アンジー「……」

アンジー「……」ボンッ

赤松(アンジーさんの顔が一瞬で真っ赤にーーーッ!?)ガビーンッ

真宮寺「これもう有罪じゃないかなぁ。悪気ないで済まされるレベルじゃないヨ」

東条「今の最原くんはおそらく地球上で最も罪深い動物になってるわね」

巌窟王(やはり殺すか)

美術室

天海「最原くーーーんっ!? ちょっとBBさん! いきなり現れてなんで最原くんを突き落としたんすか!?」

BB「穴を覗き込む人間がいたら叩き落したくなる持病が……あー、すっきりした」スッキリ

天海「そんなあからさまにスッキリされた顔されても!」

セミラミス「フハハ! いや本当に見事な落ち様よな! このセミラミス、久しぶりに非常に愉快なものを」

BB「持病ーーーッ!」ドーンッ

セミラミス「おのれええええええ……」ヒューッ

天海「セミラミスさんも落としたーーーッ!?」ガビーンッ

BB「これでゲームクリアです。最原さんも連れて全員で外に出ますよ!」スッキリ!

今日のところはここまで!

ごめんなさい! 今日はアナスタシアするから更新はないかクソみたいに遅くなります! ツイッターの方でセミラミス様への貢物募集してるからそっち見て待ってるか共にアナスタシアしましょう!

無理だ……もう運を使い果たしちまったよ……無駄に……アタランテオルタは召喚できない……!
結果だけ見れば大勝利だけどさ……
アナスタシアさんとナイチンゲールさんが来ました。ナイチンゲールさんに至っては今回で宝具2です。わーい

最原「……」

最高にCOOLなオブジェ「うう……」

最原「酷い。なんでこんなことに……」

赤松「ええと、それは」

巌窟王「クハハ! 聞いて驚け最原! これは――!」

アンジー「襲われたから仕方なくって……」

巌窟王「アンジーが貴様への思いを暴走させ……ム?」

アンジー「ここまで痛めつけないと何度でもやってくる厄介なヤツだったよー。つまるところ正当防衛」ケロリ

巌窟王「!?」ガビーンッ

真宮寺(全力で責任逃れ……いや最原くんから自分への好感度を守ろうとしてる)

赤松(うわー! うわー! 酷い! 言い訳の拙さも相まって凄く醜い悪あがきだ! 気持ちがわかるだけ胸に痛いよ!)

最原「……へえ」

赤松「……」

赤松(最原くんの顔の影が濃くなった。これ絶対にバレてるよ!)アワワ

真宮寺(僕を学級裁判でハメたときと同じ顔になってる……)

巌窟王「アンジー。まだこの男のことが好きなのか?」

アンジー「黙って」

巌窟王「……」ズーン

最原「僕たちを外の世界に出してくれる?」

最高にCOOLなオブジェ「う、ううう……あうう……」

最原「……!」

赤松(最原くんはそこで、何かに気付いたような顔になった)

最原「……まさか」パチンパチン

最高にCOOLなオブジェ「ああ……」

最原「……すーっ……わっ!」

赤松「!?」ビクッ

星「なんだ? 何故急に大声を出した?」

最原「……反応がない」

星「なに?」







最原「彼、耳が聞こえてない」

赤松「え、ええと……まあ目がくりぬかれてるわけだから、今更鼓膜がなくなってても驚かないけど……」

最原「赤松さん。目が見えない。耳も聞こえない。これでどうやって外に出るの?」

赤松「え」

最原「どうやって僕たちのリクエストを認識させるの?」

赤松「……」

赤松「あっ!」ガビーンッ

巌窟王「これは……まさか……」

最原「出入り口が無くなる、の定義に当てはまるかどうか……五分五分だけど、かなり危険だよ」

最原「外の世界が危ないかもしれない!」



ヒューッ



セミラミス「えああああああああっ!?」ゴチーンッ

最原「ええっ!? セミラミスさんが落ちて来た!?」ガビーンッ

星「おい。明らかに頭頂部を強打してねぇか? 危なすぎる角度だぞ」

東条「治療……いえ。ごめんなさい。彼に集中したいから彼女の方は他の人に任せるわ」

チャリンチャリンッ

獄原「ああ! 落ちた衝撃でコインがバラバラに!」アタフタ

最原「うわ。凄い量の金貨……」ヒョイッ

コインチョコ「」キラーンッ

最原「全部コインチョコだコレ……」

セミラミス「くっ。不覚」ムクリ

最原「あ。よかった! ダメージは薄そうだね!」

セミラミス「あ」

最原「ん? どうかし……あっ」




GAME CLEAR!



セミラミス「ちっ。まさかこんな形でクリアされてしまうとは……」

最原「……ええと。まあ不本意だろうけど、それじゃあ完全クリア、だよね?」

最原「あなたにはまだ聞きたいことがあるんだけど……」

セミラミス「よかろう。その程度の不敬は許す。だがその前に」

最原「その前に?」



ズゴゴゴゴゴゴゴゴ



セミラミス「ここも崩壊するぞ」

最原「またァ!?」ガビーンッ

九時までに更新なかったらアナスタシアにのめり込んでると考えてください!
その場合の続きは明日です!

戦慄のファーストタイヤキング・オブ・バビロン概略

セミラミスが趣味全開で作り上げたゲーム。ジャンルはミステリー。
ただし内容の良さとは別の部分でぶっ飛んだ展開が目白押しの、BBに言わせれば『世界で五本の指に入るほどのバカゲー』。

クリアにかかる総プレイ時間はチート行為などを考慮しない場合はおよそ七十時間。
だがこれは『人間を相手として考慮していない』ために、完全クリアに至るには何らかの異能を使う必要がある。

そもそも制作テーマが『サーヴァント専用ゲーム』であり、ただの人間をプレイヤーとして想定していないため、この設計はバグではなく仕様。
遊ぶこと自体は可能であり、面白さも巴御前のお墨付き。『クリアは不可能に近いが楽しいゲーム』というある種絶妙なバランスとなっている。

最原はなんでもないような顔でクリアしたが、実のところかなり無理をした上での短時間クリアだった。

何故この世界にこのゲームが紛れ込んだのかは今のところ不明である。
この世界にいるセミラミス(エゴラミス)が、やたらとチョコ菓子を食べているのは『ストレス発散のための過食』のため。

というか若干チョコ中毒になってる。ストレスを発散するためにチョコ食べて、チョコがキレるとイライラするの悪循環。

シリリ見てから更新します!
アナスタシアは既に終わったので!

ザザッ

??(せめて笑って送り出した。それくらいしかできる抵抗がなかったから)

??(一緒に犠牲になってくれた『友達』と約束もした。その程度ならできそうだったから)

??(忘れないで、だなんて。本当にバカみたいな約束。忘れられるわけがないのに)

??(私だって忘れられない。死んでいったみんなのこと。生き残った二人のこと)

??(私の隣にいる友達のこと)

??(彼らのことを私は一生涯忘れない。死ぬ直前まで誇りに思い続ける)





??(……そう思ってた。甘かったけど)




ザザザッ


??(……心。思い出。精神。人間が最後の最後に頼るもの。どんなフィクションでも大抵崇高なものだと扱われている綺麗なエネルギー)

??(そんなものはすべて、やっぱり『虚構』に過ぎなかった)

??(もう思い出せない。ああ、思い出せないのならないのも同然)

??(……自分の名前も思い出せない。いや、果たしてあれが自分の名前だったのかも怪しいものだ)

??(誇り? 思い出せないものに、そんなものを抱けるはずがない)

??(記憶ほど不確かなものはなかった。どれほどインパクトがあろうと、時間が過ぎれば消えていく)

??(……私の場合は無理やりだったけど)

??(絶対に消えない記憶なんてどこにもない)

??(どこにも……)





巌窟王『クハハ! 覚えたぞ! この俺には忘却補正というスキルがある!』

巌窟王『恨みを忘れないためのスキルだが……ひとまずこういう応用も可能だ』





??「……」

白銀「あ。あった。消えない記憶」

白銀(皮肉なことだけど、彼だけだった)

白銀(すべてが虚構でできた学園において、唯一の『本物』は……彼だけだったんだ)



ザザーッ

ズゴゴゴゴゴゴゴ……

最原「ぜぇーっ……ぜぇーっ……な、なんとか脱出が間に合った……! 大き目のゴムボートで助かったよ!」

セミラミス「おお。見事な崩れようよな」モグモグモグモグモグ

赤松「あれ? 巌窟王さんとアンジーさんは?」

セミラミス「先に帰るとか言って、あの炎で飛んでいったぞ? ボートの定員的にも限界であったしな?」モグモグモグモグ

赤松「……お腹空いてるの?」

セミラミス「特にそういうわけではない」サクサクサクサクサク

最原(なんかさっきより食べる速度が速いような……イラついてる?)

最原「あ。ところでセミラミスさん。コインチョコは全部集めておいたよ」

セミラミス「大儀である」

最原「ついでに、これ」ピラッ

セミラミス「……?」

セミラミス「……ッ!」ガビーンッ

赤松「ん? なにそれ。写真?」

最原「コインチョコと一緒に散らかってたやつなんだけど。セミラミスさんのだよね」

セミラミス「知らんな」プイッ

最原「いやでもこのくっきり残った指紋は完全にセミラミスさんのだけど」

セミラミス「!?」ガビーンッ

赤松「……確かに指紋は残ってるけど、わかるの?」

最原「ごめん。カマかけただけ」

セミラミス「ふっ。流石に巌窟王のお気に入りよな。ここまで我をイラつかせるとは……刎頸に値するぞ。一族郎党な」

最原「そこまで!?」ガビーンッ

最原(……あ。でも一族って言ったって……)

最原「……はあ」

最原(……最初から僕にはそんなものないんだけど)

セミラミス「……ブラックサンダーをやる。我が写真を持っていたことは誰にも言うな」ヒョイッ

最原(口止め料が微妙だ)

赤松「うん、わかった。口外しない」サクサクサクサクサク

最原「もう食べてる!」ガビーンッ

最原「……アルターエゴはどの船に乗せてるの?」

赤松「あれ。ゴン太くんと東条さんの乗ってるヤツに」

最原(ひとまず安全に連れ帰らないと……彼がいなければ外に出れない)

最原(校則に触れてないことを祈るしかないな)

天海「ところでBBさん。こんな写真拾ったんすけど。これBBさんのっすか?」

BB「えー? BBちゃんは写真とか持ち歩いてませんけど……ん? この白髪の少年は……」

セミラミス「沈めェ!」ジャラジャラグサグサッ

天海&BB「ボートに穴ぎゃああああああああああ!」ブクブクブクブク

最原「何してんの!?」ガビーンッ

セミラミス「ハッ! しまった! 写真も沈む!」ガーンッ

赤松「そっちじゃなくって! 天海くん! BBさーーーんっ!」

ちょっと時間は巻き戻り、才囚学園

春川「……どこ行くの。百田」

百田「ん? まあ……万が一に備えるんだよ」スタスタ

春川「万が一?」

百田「新世界プログラムをぶっ壊さなきゃ外に出てこれないってなったら、さっき終一が言ったみたいにモノクマとの全面戦争ルートだ」

百田「なら……ま、やることは一つだろ」






エグイサルイエロー「」ドーンッ

百田「エグイサルを使うんだよ」

今日のところはここまで!
さてアヴィケブロン先生を育成しないと……

夢野side

夢野「本当によかったのかのう。デバイスを切り離して」

イシュタル『もういいらしいわ。BBもかなり覚悟キメてたみたいだし』

イシュタル『一切合切平気。少なくともあなたたちが気にすることじゃないわよ』

茶柱「……生徒以外の人間との通信ができる機械、ですか」

夢野「まあウチらにとっての外の世界に通じてるわけじゃないから、助けには一切使えんがのう」

茶柱「歯がゆいですね」

夢野「……もう割と普通に喋れておるのう。大丈夫になったか。よかった!」

茶柱「いえ。よく見てください。転子の目を」

夢野「……あ。白目……」

茶柱「直視できないので……」ブルブル

夢野「なら普通に目を閉じててもかまわんぞ!?」ガビーンッ

イシュタル『地味に辛いのよね。白目を維持するの』

夢野「さてと。百田と春川は何かしておるようじゃし……ウチは軽く白銀のことを探すとするかの」

茶柱「ッ!」

夢野「……どうかしたか? 転子」

茶柱「……本当にイヤな予感がしただけです。覚えてないはずの記憶が蘇る感覚と言いますか……」

茶柱「夢野さん。白銀さんに近づくの、やめておきませんか?」

夢野「んん……そうか。あっちの世界でのウチは白銀に殺されておったんじゃったの」

夢野「ちょっとだけ覚えておるようじゃの。転子」

茶柱「……」

夢野「……殺されたりせんよ。白銀はそんなことをするようなヤツではない」

夢野「仲間じゃ。今でも。絶対に」

茶柱「それは……」

夢野「ふむ。さて。そんなに不安なら……」

夢野「ウチは最原と違うぞ?」

茶柱「!」

夢野「転子。お主を待たせたりはしない。一緒に行くか」

茶柱「……ええ。喜んで。必ずあなたを守ってみせます!」

夢野「……ところで、なんじゃが。王馬はどこに行ったのじゃ?」

茶柱「さあ?」




王馬side

王馬「さてと。じゃ、契約成立。キミが約束を守る限りはこちらもキミを裏切りはしないよ」

王馬「……報酬は、次の学園生活における俺の『首謀者』の地位、だよね」

白銀「うん。約束は守るよ!」ニコニコ

王馬「……そっか。それならいいんだ」

王馬「大丈夫! 最善は尽くすからさ! だって俺たち仲間だもんね!」ニコニコ

白銀(……さて。これで私の打てる手は全部、かなぁ?)

白銀(完結は近いよ。楽しみ)ニコニコ

白銀(……キミの性格はよく知ってる。どうせこちらに恭順する気なんてないでしょう)

白銀(裏切ってもらわないと困るんだよね)

王馬「そういえばさ。モノクマはどうしたの? もうずっと見てないけど」

白銀「ん? 私の潜伏先だけど」

王馬「それ実質答えてないよね。潜伏先ってどこ? あ、まさかまだ解放されてない俺の研究教室とか?」

白銀「んー。ヒントだけ教えてあげようかな」

白銀「キミたちが二度と行かないところだよ。でもちゃんと、この宇宙船の中にある」

王馬「……ふーん」

白銀(……流石にわかっちゃったかな。ま、いいか)

白銀「じゃ、私は先に帰るから。一応言っておくけど後をつけるのはナシだよ?」

王馬「ちぇ」

白銀「……いざとなったら、よろしく」

王馬「……合図を受けたら誰かを人質に取れ、か。随分な汚れ仕事を押し付けてくれるよ」

銃「」ゴトッ

王馬「ま、やるけどね。みんなビックリしてくれそうだし」ニヤァ

今日のところはここまで!

白銀side

白銀「……計算外があった」

白銀「まあ、前回の学級裁判では元から記憶を弄って全部ひっくり返す気だったけどさ」

白銀「巌窟王さんと最原くんが対立することも、計算通り。もしもあそこまで上手くバッサリ割れなかったら私が煽るつもりだったし」

白銀「問題なのは学級裁判に異議を唱える方法として、最原くんが『投票の放棄』を選んだこと」

白銀「もうちょっと色々あったはずなんだよなー……実は最原くんは惜しいところまで行ってた」

白銀「モノクマに対して交渉を行うってアプローチが実は大正解だったんだよ。ここで首謀者が倒れるのは本意じゃないはずだーって」

白銀「ここも計算外。最原くんなら『ブラフに引っかからないで押し通す』くらいのことはするだろうって思ったのにさ」

白銀「だから、投票の放棄をした人間に関しては殺さないといけなくなった。この点、どうしてもね。ルールだから」

モノクマ「もうちょっとあっさり靡くべきだった?」

白銀「んー。それはそれで話が不自然になっちゃうんだよなー……」

白銀「……でもま、いいよ。あれは流石にやりすぎかなって思ったけど、いい具合にみんな再起しはじめてる」

白銀「……それを私は叩き潰しにかかる。全力で。一切の演技もなく」

白銀「そうすれば……!」

モノクマ「ところで悪いニュースが一つあるんだけど」

白銀「なに?」

モノクマ「……あの最原くんのアルターエゴ、壊れちゃったよ?」

白銀「ああ。なんだそんなこと……」

白銀「はあっ!?」ガビーンッ

白銀「い、いや。最後まで話は聞かないと。セミラミスさんがキレてうっかり壊しちゃったとかなら校則に引っかからないし」

白銀「だって彼女は生徒じゃないもん!」

モノクマ「ちなみにそのときの映像がこちら」ポチッ








アンジー『終一……終一……』ブチッ グサッ ゴリッ

最原?『いぎいいいいいいいいっ!?』

白銀「」

モノクマ「煽り過ぎたね」

白銀「煽り過ぎちゃったかー……」ズーン

モノクマ「まあギリギリ、判定的には生きているんだよ。死んでない。でも彼に出入り口としての能力を期待するのはちょっと……」

白銀「生徒同士の情念で状況が悪化していくのはダンガンロンパっぽいけどさぁ! 流石にこれ以上追い込みたくないよ!」

白銀「どうしようモノクマ!」オロオロ

モノクマ「今更おろおろしないでよ。さっきまでの首謀者ムーブどこいったのさ」

モノクマ「うーん……まあ校則の判定はギリギリセーフだとボクが判定すればそこまでだとして……」

モノクマ「もう白銀さんはあの中に入れないよねぇ。コールドスリープ装置は見つかっちゃったわけだし?」

白銀「うう」

モノクマ「……じゃ、ちょっとボクがあの中に入ってくるよ。様子見でね!」

モノクマ「それとなくセミラミスさんに協力も取り付けてくるし……」

白銀「え? 本当! ありがとうモノクマ!」キラキラキラ

モノクマ「じゃ、行ってきまーす!」

白銀「行ってらっしゃーい!」

白銀「……さて。じゃあ今のうちに……台本の添削しておかないと……」

白銀「どうやったら歴史に残れるような悪役になれるかなぁ」ワクワク

新世界プログラム内

天海「……」ビッショリ

BB「……」ビッショリ

最原「なんとか島まで辿り着けたね……本当どうなることかと……」

セミラミス「写真はどうした?」

赤松「本当に凄い神経だね!?」ガビーンッ

セミラミス「これが女帝の感覚だ」

最原「あえて空気読んでないだけだよね!?」

最原(……しかしこの人……アルターエゴの割に凄いリアリティだな。よく見れば見るほどに)

セミラミス「……む……チョコ菓子が切れた……チョコソースはあるのに……」ゴソゴソ

赤松「もう全部食べちゃったんだ……」

最原(アンジーさんと、アルターエゴの僕はどうなったかな)

アンジーの病室周辺

巌窟王「……」ズーン

獄原「ど、どうしたの巌窟王さん」オロオロ

巌窟王「アンジーが……最原に会いたくないと……」

獄原「ん? えーっと、言うのイヤだけど、それって巌窟王さんにとっていいことじゃないの?」

巌窟王「怪我をしてて具合の悪い自分の青い顔色を見せるのがイヤだと……赤い顔で……」ズーン

獄原「……あっ」

巌窟王「明らかに再燃している……しかもヤツが自分の見た目を気にするなど初めてのことだ。前より燃え上がっている」

巌窟王「しかしヤツにアンジーを任せるわけには……」ガタガタ

獄原「元気出して! ほら! ゴン太が話を聞くから! ね?」アワアワ

真宮寺(獄原くんが気を使ってる……)

巌窟王「まさか巌窟王たる俺がまたしても横恋慕に頭を悩ませることになるとは……」ズーン

獄原「ヘラクレスオオカブトの話しようか!?」アワアワ

今日のところはここまで!

海の家

入間「ヒャッハー! 三時のおやつの準備だーーーッ!」コネコネ

天海「うわっ……入間さんのクセに本格的なクッキー作ろうとしてる!」

セミラミス「邪魔くさい……」グツグツグツ

BB「え。セミラミスさんも何か作ってるんですか?」

セミラミス「備蓄が無くなったから仕方あるまい」

最原「……脱出手段があるのに使えないって、意味もなく焦る状況……のはずなのに」

最原「うわあ。凄い余裕。みんな」ガーン

赤松「もう慣れちゃったみたい。入間さんは適応遅かった方かな」

赤松「……で。やっと落ち着けたけど。最原くん。何か聞きたいことある?」

最原「ええっと、まずは僕たちと別れてから赤松さんに何があったか聞きたい、かな」

赤松「いいよ。まずは私たちは白銀さんに、自分たちの死の体験を――」



かくかくしかじか

最原「アンジーさんの拷問。巌窟王さんに課せられた理不尽な試練。生徒全員の死の体験。白銀さんのアルターエゴの消滅……」

最原「……辛かったね。助けるの遅くなってごめん」

赤松「いいんだよ。結局巌窟王さんに助けられて無事で済んだし」

赤松「……アンジーさんは無事じゃなかったか」

最原「でも結局、なんで巌窟王さんとアンジーさんはあんなに怒ってたの?」

赤松「……えーっと。最原くん。やっぱりアンジーさんも怒ってたって思うの?」

最原「まあ、流石に。アンジーさんが嘘吐いてることくらいはわかるよ」

赤松「そこまでわかってて何で動機に頭がいかないのかなぁ……」ズーン

最原「ええと……なんかごめん?」

赤松「いいよ。別に。アンジーさんが怒ってたのはさ……」

天海「茶柱さんと付き合い始めたことがアンジーさんにバレたからっすよね」

最原「え」

赤松「正解」

最原「……えっ!?」ガビーンッ

入間「コネて寝かせたものがこちらになりまーす」

セミラミス「チョコは入っておるか? 無ければ足せ」

天海「やっぱり……」

最原「え!? いや。ええっ!? 全然予想外だった! ただそれだけであんなに怒る!?」

赤松「あれを『それだけ』と言ってのける最原くんが予想外すぎるんだけど!」

天海(アンジーさんと最原くんの間にある意識の差がただただ残酷だ……)

最原「あー……うーん。どこから漏れたのかなー、とか色々と聞きたいことはあるけど……」

最原「そうか。一般論としてはとても理解できるよ。痴情のもつれか……! 最悪だ……」

赤松「……最悪、ってほどじゃないと思うけど。結局アンジーさん、あの最原くんも殺してないし」

赤松「憎いだけで殺意は無かった。それにここは現実世界じゃない」

赤松「死んでない限りはあらゆる傷が『取り返しのつくもの』だよ。だって外に出ちゃえば関係ないんだしさ」

天海「取り返しのつく傷オンリーで最大限の復讐を遂げるあたり、彼女の本気さが垣間見えるんすけど……」

赤松「あのときはあえて言ってなかったんだよ。だって気が動転した最原くんが巌窟王さんとかアンジーさんに正論ぶつけたら……」

最原「……状況がひたすら悪化するだけか……確かに」

赤松「後でアンジーさんとちゃんと話してね。冷静に、さ」

最原「……」

入間「あっ! やべっ! ケミカルX入れちゃった!」バリンッ ドロドロ

セミラミス「我のカラメルが!?」ガビーンッ


ドカァァァンッ


アンリマユ「呼んだ?」ヤッホー

入間「誰!?」ガビーンッ

セミラミス「呼んでおらん! 失せよ!」バキィッ

アンリマユ「あー……」シュイイイン……

入間「消えた……」

最原「……ちょっと話してくる。早めに越したことはないでしょ」ハァ

赤松「うん。優しく……ってわけにはいかないか」

最原「……」スタスタ

天海「……決着っすね。これで」

赤松「後は巌窟王さんが暴走しなければ……いやアンジーさん本人が暴走しなければ一件落着だよ」

赤松「問題の内の一つは解決」

天海「大丈夫っすかね」

赤松「……まあ、大丈夫でしょ。さっきは怒りで我を忘れてたけど、巌窟王さんも冷静なら良識的だし」

赤松「アンジーさんも手口の点から見て、殺意はない。だから大丈夫。信じよう?」

天海「……そっすね」





キュオオンッ


ラフムチョコ「byiaf 36ed)4qw@r」カサカサ

入間「ああーっ……失敗しちまった……」

セミラミス「いや。砕けば意外と食える代物になるやも……」

BB「すいませーん。この二人そろそろ止めないと世界が滅びまーす。助けてくださーい」

今日のところはここまで!

アンジーの病室周辺

巌窟王「……」ズーン

獄原「それでね? ハキリアリさんは人類より遥かに昔からキノコ栽培をしている凄いアリさんでね」キラキラ

真宮寺「……巌窟王さん。獄原くんが延々と虫の話してるけど、聞いてる?」

巌窟王「無意味に虫の知識が増えていく」

真宮寺(聞いてはいるのか……)

巌窟王「今はこの無意味さが癒しとなる……ム」

最原「……」チラッ チラッ

巌窟王「……最原。速めに出てこなければアルマジロを投げつけるぞ」

最原「アルマジロを!? いやそんな都合よくいるわけないよね!?」

獄原「あ。最原くん!」

真宮寺「……実はアニマルセラピーのために島中の動物型NPCをかき集めてきててさ……」

アルマジロ「……」ノソノソ

最原「本当だ! いる!」

獄原「ちなみにアルマジロさんが丈夫なのは外殻だけで内臓は一般的な哺乳類のそれだから」

巌窟王「?」

獄原「……人間でも防弾チョッキを着込んでたところで、衝撃が強すぎれば死ぬよね?」ギンッ

巌窟王「!?」

真宮寺「謝った方がいいヨ。彼の目の前で生き物を粗末にする発言は地雷だからさ」

巌窟王「……謝罪しよう……」

最原「ええっと……巌窟王さん。僕はさ……」

巌窟王「……よせ。もういい。後はアンジーと決着を付けろ」

巌窟王「俺の復讐は、お前に対してはもう充分だ。忘れられない恐怖だったろう?」

最原「……」ズーン

巌窟王「ただ果たしてアンジーの方はどうか。お前はアレに引導を渡すことができるのか?」

最原「……」

最原「『できなきゃ殺す』って目でよく言うよ。道は一つしかないじゃないか」

巌窟王「『最初からそのつもり』という目だな。お前は。心底忌々しい」

巌窟王「……」

最原「あのさ。巌窟王さん」

巌窟王「ム?」

最原「『俺がいたせいで上手くいかなかったのではないか』って考えはすぐに捨てた方がいいよ。大間違いだから」

巌窟王「また追い回されたいか?」ギロリ

最原「!?」ガビーンッ

真宮寺「人の神経を逆撫でする天才だヨ。最原くん」

真宮寺(ていうか。ああ、なるほどネ。だから異常に怒ってたのか)

真宮寺(あの怒り様は自分への怒りも反映してたからだったんだネ)

真宮寺(……集中すればそこを指摘できるくらい冴えてるのに……)

真宮寺「恋愛観に関してはなんで推理力がザコ以下なのかな……」ハァ

最原「聞こえてる! 聞こえてるから!」

巌窟王「『他人がいいと言っているものの価値がまるでわからない』という点において、確かに歪んでいるな。お前は」

獄原「最原くん、みんなが『好きだ』って言ってるのに首傾げてばっかりだもんね。無茶も多いし」

最原「……もうそろそろ治そうと思ってたんだよ。それ。茶柱さんと約束もしちゃったしさ……」

巌窟王「……何故ああなる前に気付けなかった」

最原(と、言いながら巌窟王さんは、アンジーさんのいるであろう小屋に目を向ける)

最原「……本気だと思ってなかった」

巌窟王「違うな。ヤツが嘘を吐かないということをお前は充分知ってたはずだ」

巌窟王「本気だということは知っていた。『本気の強さ』を見抜けなかっただけだ」

巌窟王「……三流探偵め。お前の見抜く真実は、そこまで薄っぺらなものだったか?」

最原「……僕は……」

巌窟王「もういい。責める気はない。地獄は俺が与えるものではないのだからな」

最原「うん。アンジーさんに謝ってくる!」タッ

獄原「……いいの? 行かせて。アンジーさん、最原くんのアルターエゴにあんなことしてたんだよ?」

巌窟王「俺にマスターを止める権利はない」

巌窟王「なにより、アンジーはそこまで脆弱ではない。もう俺が目をかけなくともヤツは、正しい答えを掴みとれるだろうさ」

獄原「巌窟王さん……」





最原「入るよ! アンジーさん!」ガチャリンコッ

バタムッ

最原「ぎゃあああああああああああああああああああああッ!」






真宮寺「……夜長さんがそこまでなんだって?」

巌窟王「獄原」

獄原「……なに?」

巌窟王「……虫の話を続けろ」

獄原「うん……」

真宮寺(投げた)

今日のところはここまで!

病室の中

最原「……」

ジュルッ ジュプッ

最原「……?」

最原(なんだか……熱い……? 体が熱い……)

最原(でも眠すぎて頭が全然働かない。血液が鉛になったみたいだ……)

最原(……動けない……)

ジュルルッ  ジュプッ

アンジー「……んっ……終一……終一っ……!」

最原「……」

最原(声も出せない)

海の家

カオスな鍋「」グツグツグツ

セミラミス「我こういうの見たことある。ふーやーちゃんとやらがコレ使ってるの見たことあるぞ」

入間「やべぇ。どうせ飛ぶだろうと思ってアルコール飲料入れ過ぎた。キツッ……」

天海「うわ。これ蒸気だけでクラクラ来るっすね。臭いも酷いし。赤松さん、場所移しましょうか」

赤松「人間の歯ってなんか鍵盤に似てない?」ボケーッ

天海「もう酔ってる!」ガビーンッ

赤松「アマデウスウウウウウウウウウ!」ガッ

天海「ぎゃあああああああ! 歯を! 前歯を押さないで痛い痛い痛いあああああああああああ!」

セミラミス「……まあ数分もすれば元に戻るであろう。我は賢いのでわかる。とても賢いのでな」

入間「どれくらい賢いんだ?」

セミラミス「……」

セミラミス「とても!」ドヤァ

入間「すげぇーーーッ!」

天海「あれ!? よく見たら全員酔ってないっすか!?」ガビーンッ

セミラミス「む。いかん。少し口が軽くなっておったな」

セミラミス「ところで最原とやらのスキルはあのままにしておいてよいのか? その内に強い眠気に負けて一歩も動けなくなるぞ?」

赤松「今私の頭のことなんてった!?」プッツーン!

天海「誰もそんな話してなかったっすけど前歯ぁぁぁぁぁぁぁ!」

セミラミス「誰も聞いておらぬな。まあいいだろう。我もう知らん。言ったからな。聞かなかった貴様らが悪い」ツーン

入間「ひとまず火を消しとくな」パチンッ

最原「……」

最原(そういえば……セミラミスさんが言ってたな。借り物のスキルは負荷になるって)

最原「ぐ……!」

最原「ダメだ。寝たら。ここで眠ったら起きれなくなるかもしれない……」ググッ

最原「あ、あれ。なんで僕、服着てないんだろ……?」

アンジー「ふっ」フワッ

最原「ん? なんか甘い臭いが」バターンッ

最原「ぐー」スヤァ

アンジー「……」



ジュルッ ジュプッ

ジュプッ ジュプッ 

ビクンッ

アンジー「んあっ!」

アンジー「……全部済んだ。満足ー。後片付けしなきゃ」イソイソ



十数分後



最原「……ハッ!?」ガバリ

最原「……起きれた。大丈夫。生きてる!」

アンジー「やっはー! 終一! 寝覚めはどう?」ニコニコ

最原「あ! アンジーさん!」

最原「……」

最原「あの。アンジーさん。僕さっき服を着てなかった気がするんだけど……」

アンジー「気のせいじゃない?」

最原「……僕が寝てる間になにか」

アンジー「してない」

最原(ここまで縋りたくなる嘘は初めてだ!)ガーンッ

最原「……やっと冷静に話せる場ができたね。アンジーさん」

アンジー「うんうん。仕返しが済んでスッキリしたよー」

最原「アルターエゴの僕に対してやったアレのこと?」

アンジー「あとさっきやったアレも含めて……」ボソッ

最原(怖いよーーーッ!)ガビーンッ

最原「あの! ねえ! 僕、茶柱さんに顔向けできなくなるようなことになるのはちょっと困るんだよ!」

最原「だからさ……!」

アンジー「……アンジーが永遠に口を噤めば、何をしたのかは終一本人にもわからない」

アンジー「だからアンジーは何もしてない」

アンジー「……してないよー」プイッ

最原「……」







最原「アンジーさん。僕はもうアンジーさんの期待に付き合えない」

アンジー「……もう余地はないの?」

最原「うん。ごめん。絶対にないよ」

アンジー「……そっかー」

最原「……これだけ伝えておきたかったんだ」

アンジー「律儀だなー。本当。そんなところがきっと……」

最原「……」

アンジー「終一のことが好きって感情はきっと、本物だったと思う」

アンジー「……やっと、ちょっとだけわかったような気がしたんだけどなー」

最原「アンジーさん、やっぱり巌窟王さんと会って変わったよ」

最原「……僕の伝えたいことはコレだけだ。じゃあ僕はこれで」

アンジー「……」

アンジー(さっきやったこと、転子に見せるよ? ビデオで撮ってあったんだ)

アンジー(……なんて、ね。流石にそこまで悪い子にはなれないよ)

アンジー(あの人から色々教えてもらったけどな。やっぱり肌に合わないや。欲しいものは奪ってでも、とか言いそうだけど)



スタスタスタ バタムッ



アンジー「……背中しか見えないときが一番欲しくなる。厄介だよねー。欲望って」

アンジー「それでもアンジーは終一のことが……」

病室のすぐ外

巌窟王「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

最原「」

巌窟王「……終わったか」

最原「あ、うん」

巌窟王「そうか」

巌窟王「……」

最原「じゃあ僕はこれで……」スタスタ

巌窟王「……」スッ

巌窟王「……」ピタッ

巌窟王「……」スッ

巌窟王「……」アセッ

最原(うわ。タイミング見計らってる。どの時点で励ましに行ったらいいのかわからない感じだ。放っておくべきかも、とも思ってるな。アレ)

巌窟王「チッ……」

最原(いつ行ってもベストタイミングだと思うけどな……あの二人の絆は独特だけど。真っ直ぐだし)

最原(……後は任せるよ。僕は立場上、励ませないから)

グラッ

最原「ぐ……くそ。眠気が酷い……」

最原「あと何だろう。体の節々が激しい運動をした後か、硬い床で一晩寝た後みたいに痛むんだけど……!?」

最原(あと起きてられるのは、どのくらいなんだろうな……)





巌窟王「……いや。いつ行ってもいいはずだ。俺はサーヴァントだからな。遠慮なぞらしくもない」

巌窟王「ふん。それに、元から励ましなどアイツには……」



――ぐすっ。


巌窟王「――」



――う、うえ……うえええええん……。

――うわあああああああん……!



巌窟王「……」

ガチャリンコ

今日のところはここまで!

海の家

セミラミス「というわけでできたぞ。チョコパスタが」

チョコパスタ「」デェェェェンッ!

入間「わーい! できたー!」

入間「……とか言うわけねぇだろ毛虫ババァ! こんなの豚のエサじゃねぇか!」

シャキィィンッ

セミラミス「愚民の声は小さいな。よく聞こえなかったのだが。この包丁で頬を裂いて口を大きくすれば少しはマシになろうか?」

入間「セミラミスさまばんざーい」ヒャッホウ

入間「……いやテメェに関する悪口は自重するとしても、コレだけはダメだろ! 容認できねぇよ!」

セミラミス「配分こそ違うが、成分的にはチョコパフェとほぼ同じだ。糖分と炭水化物という組み合わせはどんなに形を変えようと合う」

入間「ほ、ホントかぁ……? いやでも……」

セミラミス「食え」ガボフッ

入間「もががががげががが!」ジタバタ

赤松「問答無用だーーーッ!」

天海「あの二人、随分と仲良くなったっすねー」

BB「まあセミラミスさんも好奇心旺盛な研究者気質ですので……思考回路の方向は合致してるんですよね」

入間「う……! う、う、う……」

入間「美味ぇ!?」ガビーンッ

赤松「嘘ォ!?」

東条「……実は餡子とかも合うのよ。パスタって」

天海「あ。東条さん。治療は終わったんすか?」

東条「ひとまずは」

東条「あれを完治させるのは無理ね。ただ鼓膜の方も徹底的に壊されていて自然回復は見込めない」

東条「手術をするにしても、設備は入間さんがどうにかしても知識と技術がない」

天海「流石に東条さんでも無理なもんは無理っすよね……」

東条「いえ。知識さえどうにかなれば私でなんとかするのだけど……」

天海(なんて自信だ!)

天海「BBさん。なんとかならないっすか?」

BB「んー。アルターエゴの治療とかなら私の専門ですが……あれ本当徹底的に壊されてますからね」

BB「最短で明日の昼になっちゃいますよ。鼓膜を直す『だけ』でもね」

天海「時間がゴリッと削れるわけっすね。でもやらないよりは遥かにマシか……」

東条「選手交代かしら?」

BB「ええ。ちょっとリカバリーさせてきます」

BB「……この場から立ち去る正当な理由ができてよかった。仮に味がよくっても……」

東条「ええ。抵抗感があるのよね。あの料理」

セミラミス「貴様も食らうがいい」ガボフッ

赤松「もがもごごごごご!」ジタバタ!

赤松「美味しいーーーッ! 酷いー! 悔しいー!」エグエグ

入間「こんな味覚に重篤な問題抱えたヤツが作ったみたいなサイコすぎる料理に敗北するなんてぇ……!」グスグス

天海「……俺もBBさんに同行しても……」

セミラミス「逃がさん。正当な理由が無い限り、この場にいる全員な」

天海「くっそーーーッ!」

今日のところはここまで!

現実世界

夢野「さて。モノクマか白銀を押さえればひとまずなんとかなる……と思うんじゃが……」

夢野「やっぱ普通に怖いのう」

茶柱「そりゃそうでしょうね。白銀さんのことは転子にもあまりピンと来てないのですが」

夢野「……赤松の聴力があれば何か進展するかもしれんのじゃが……やっぱりこっちも出て来るまで待つわけにはいかんし……」

夢野「手足徹底的にもがれてるのう」

茶柱「……うーん……例えば意図的に校則違反を犯したら、モノクマの方は出てきたりしないでしょうか」

夢野「ウチらを罰するためにか? 最悪の手段として考えてもいいかもしれんが」

王馬「いや無理だよ。だって校則違反の生徒を裁くのはエグイサルであってモノクマじゃないんだからさ!」

夢野「ぴぎっ!? って王馬か……ビックリさせるでない」

王馬「それよかさ。俺なんとなーく気付いちゃったんだ! モノクマのいる場所!」

夢野「んあ? いきなり何を言っとるんじゃお主」

王馬「多分、俺たちが二度と行かない場所にいるんじゃないかな?」

夢野「……いやだからいきなり現れて何を意味不明なことまくしたてとるんじゃ。ウチらが二度と行かない場所って……」







王馬「裁判場じゃないかな」

数分後 赤い扉周辺

夢野「……口車にあえて乗ってやったが……本当にここに白銀がいると思っておるのか?」

王馬「さて。どうかな。なんとなーく思いついただけだしさ」ニヤニヤ

茶柱(怪しすぎる……!)

ガチャガチャ

夢野「……やっぱり開かんの。この扉。平時は締め切っておるようじゃ」

茶柱「どうします? 扉の破壊について校則はなかったから壊してもいいと思いますが……」

夢野「うむむ……」

夢野「……あれ。なんじゃろ、アレ」

茶柱「あれ?」

夢野「今、あの草むらに何かあったような……」ガサガサ

茶柱「あ! ちょっと夢野さん! 足元に気を付けてくださいね! そこ結構草がボーボー……」

夢野「んああっ!?」ガサッ

茶柱「夢野さん!? 大丈夫ですか!?」

王馬「あらら。盛大に転んじゃったね! まあ草がクッションになって怪我は多分してないだろうけど……?」

王馬「あれ?」

茶柱「……え?」

茶柱「ゆ、夢野さん?」

王馬「……」








王馬「消えちゃったね?」

茶柱「……ッ!?」

潜伏場所

白銀「……モノクマがいないと学園の様子わからないんだよなー。マザーモノクマ凍結させちゃったから」

白銀「彼がいないと外出も間々ならないし。夜までには帰ってきてくれるといいんだけど……」

白銀「さてと。ラストスパート。今は亡き巌窟王さんの意思は……ぐすっ! 私がちゃんと継ぐからねっ!」

白銀「……」

白銀「……ツッコミがいないと虚しい……」カタカタ







格納庫

百田「うおおおおおお! 頑張れ頑張れ俺! 負けるな俺! 大丈夫絶対いけるって!」

春川『百田。流石にマニュアル操作は無理があるって。素直にオートマ操作に切り替えなよ』ザザッ

百田「ダメだ! マニュアル操作じゃねぇとモノクマーズに勝てる目が無くなっちまう! ジリ貧になるだけだ!」

春川『でも二足歩行すらままならないんじゃあさ……』ザザッ

百田「俺ファイトーーー! 負けるな解斗ーーー! ああダメだ流石の俺も心が折れそう!」

百田「ハルマキがほっぺにチューとかしてくれたら頑張れるかもしれねぇけど!?」

春川『……えっ?』

春川『……』

百田「……」

百田「あ。悪ィ。疲労がピークに達したのを誤魔化すための冗談だって。俺の心が折れそうのあたりから完全にジョークだ」

春川『頭部を破壊された者は失格となる』ドカァァァッ!

百田「ぎゃああああああああ! エグイサルにエグイサルで蹴り入れてんじゃねぇーーーッ!」グワングワン

新世界プログラム内

モノクマ「ふう。久しぶりにこの世界にやってきたぞぅ! ああ、なんて眩しい太陽!」キラキラキラ

モノクマ「……ジャバウォック島のテクスチャ使ってるんだ……結構余裕だな……」

モノクマ「さぁてと! じゃあ早速セミラミスさんのところに行って打ち合わせしないと! どうせ一人でチョコ菓子モグモグしてるんだろうし」

モノクマ「合流はきっと楽だよね!」





海の家

セミラミス「完食、だな?」ニヤァ

天海「溢れるB級感に特化したクソスイーツでした……美味しかったっす……」ズーン

入間「キツイー。何もかもー。生きるのが辛いー」エグエグ

赤松「……今日は夕ご飯いらないかも。胃袋に対するダメージが酷い……」

セミラミス「おかわりはいるか?」

全員「いるかァ!」ウガァ

セミラミス「……」

セミラミス「……そうか……」シュン

東条(わずかに落ち込んだわ)




セミラミスは馴染んでいた

最原「……もうすぐ日が落ちる」

最原「夜が来る、か」

最原「……ちょっとどうかと思うくらい穏やかだな。この島は」

最原「みんなで生き残って外に出れるかな……っと」

最原(……外に出てどうするんだろう)

最原(外に出たところで、僕たちには何もないのに)

最原(……どうしたらいいんだろうな。今まで出ることにだけ必死になってたけど)

最原(そろそろ出た後のことも考えるべき、か)





あと一日と六時間前後

今日のところはここまで!

夜 新世界プログラム内 海の家

天海「」チーン

入間「」チーン

赤松「」チーン

真宮寺「……どうしたのみんな」

入間「おお……オカマナメクジ……テメェ今日の夕ご飯は絶対に作れよ……」

入間「もう二度とセミラミスを台所に立たせんじゃねえ……!」

セミラミス「聞いてサングリーアちょっと言いにくいんだーけど」ルンルン

真宮寺「既にサングリア作ってるみたいだけど。アロエリー●のリズムで」

赤松(真宮寺くん何歳?)

セミラミス「漬け置きは良い文明よな」ルンルン

真宮寺「あの。セミラミスさんそれ酒税法違反だから……」

セミラミス「我は女帝ぞ。みなし製造がうんたらかんたらなどと下らない法なぞ知るか」ケラケラ

巌窟王「いい加減にしろ」ガシャーンッ

セミラミス「我の酒ーーーッ!?」ガビーンッ

赤松「あ! 巌窟王さん! アンジーさんの方は……その……」

巌窟王「……心配は無用だ。俺のマスターだぞ」

赤松「……」

巌窟王「とは言え、やはり怪我の方は脱出に間に合うかどうかは五分、と言ったところだが」

巌窟王「ただし、現実的な手段に限定しての話だがな」

入間「あ? なんかアテがあんのかよ?」

巌窟王「最原がセミラミスとのゲームに勝った時点で、一つ」

セミラミス「ぐう。こうなったらこの聖杯で酒税法を改竄してやろうか……」キラキラキラ

赤松「わあ。綺麗なコップ。何それ」

セミラミス「聖杯だが」

赤松「あはは。もう。セミラミスさんったら冗談ばっかり」ケラケラ

巌窟王「アッシリアの女帝よ。そのカップは最原のものだろう」

セミラミス「ふん。確かに我のゲームをクリアした褒章ではある。だがこれをそのままの形でくれてやるとは言っておらぬぞ?」

セミラミス「我はこれを使って世界の酒税法を改竄する!」

巌窟王「ここにロマネコンティがあるのだが」

セミラミス「ふん。腐っても女帝。多少の矜持はある。もちろんそのままの形でヤツにくれてやろうとも」

真宮寺「この人の手の平ぐるんぐるん回転するネ」

真宮寺「……ところでコレってもしかして本物?」

巌窟王「……」←静かに、のポーズ

真宮寺(本物だ!?)ガビーンッ

入間「ヒャハハ! まっさかー! こんな場所に本物の聖杯があるわけねぇだろ!」ケラケラ

入間「もしこれが本物だったら俺様、ダサイ原の目の前でストリップしてやるぜ!」

真宮寺(自爆芸の天才だなぁ、この人)

最原「……あ。みんな。ここにいたんだ」

セミラミス「最原。これをやろう」ポーイッ

最原「え? うわっ……と」キャッチ!

最原「なにこのコップ……ひとりでに光ってて気持ち悪いんだけど……」

最原「まあいいや。みんな。話があるんだ」

巌窟王「まて。獄原がいないぞ」

赤松(ついでにBBさんも)

最原「ついさっきBBさんがアルターエゴを修繕する様子を興味深げに見てたけど」

最原「……ひとまず彼に関しては後でいいよ。僕から伝えるから」

巌窟王「伝える? 最原、お前はまさか……」

最原「……学園の外の真実。これを話さないと、さ」

赤松「!」

最原「……そろそろ、この学園の外に出た後のことも考えないと。そんな段階に来ちゃったから」

巌窟王「……」

巌窟王「獄原に関しては任せるが、アンジーには俺から伝えよう」

最原「わかった」

入間「お、おい。学園の外がなんだって?」

最原「……真相に辿り着いた。だから一緒に考えてほしいんだ」

最原「僕たちがどうするべきなのかを」

巌窟王「……」

セミラミス「おい。ロマネコンティをよこせ。約定は果たしたであろう」チョイチョイ

巌窟王「ふんっ」ブンッ

ガシャーンッ!

セミラミス「!?」ガビーンッ

赤松「ロマネコンティが床に叩きつけられて粉々にーーーッ!?」ガビーンッ

今日のところはここまで!
今更ながら戦場のヴァルキュリア買っちゃったからな

数分後

最原「……これが、このコロシアイゲームの真相だよ」

赤松「……」

入間「……はい?」

真宮寺「全部……嘘だって?」ガタガタ

真宮寺「そ、そんなはずないヨ。だって僕は全部覚えて……!」

天海「……ありえるかも……しれないっす」

真宮寺「え」

天海「俺たちは思い出しライトで、一時的にとは言え『記憶を改竄』されてたんすよ?」

天海「しかもそれを本当の記憶だと、思い出すまで完璧に思い込んでた。百田くんたちは未だに巌窟王さんのことを思い出せてない」

天海「どころか他の生徒……キミたちが生きていることに関しては半信半疑だった」

赤松「全部……嘘? 私の家族も、私の友達も、私の学校も、私の経歴も才能も……!?」

赤松「あれもあれもあれもあれもあれもあれもあれも……」

最原「嘘だよ」

赤松「……」

入間「ざ……ざけんなよ。そんなのが本当なわけねぇ! 真実なわきゃねーだろ!」

入間「そうだ! 証拠は!? テメェが思い出したって言ってるだけで、それが本当だという証拠はどこにも……!」

最原「なら入間さんが今まで思い出しライトで獲得した記憶が全部本当だとしたらさ」

最原「……それならそれで外に居場所はないよ?」

入間「ぐ……!?」

真宮寺「話を逸らさないでヨ。最原くんの仮説に証拠があるかって聞いてるんだけど?」

最原「……」

巌窟王「言ってやれ最原。何かあるのだろう?」







最原「いやないけど」ケロリ

巌窟王「」

最原「この期に及んでまた白銀さんの用意した嘘かも、という可能性はある」

最原「でもさっきも言った通り『どっちが真相だったとしても僕たちの居場所はない』という点で共通はしてるんだよ」

東条「そうね。どちらの真相にしても私たちは、もう……コロシアイをする理由はない」

東条「脱出する理由も、だけどもね」

入間「……ならもう脱出しなくていいじゃんかよぉ……何も……考えたくねぇ……」エグエグ

星「いや。それは最悪だ。絶対にダメだ」

東条「理由は?」

星「校則で縛ってるから普段は意識もしてねぇが、もし仮にモノクマが『ゲームに飽きた』と言い始めた場合……」

星「俺たちはその時点でエグイサルに殺されるだろうな。結局のところモノクマはこの学園で一番強い権力だ」

星「一番強い権力を裁く者がこの学園の中にはいねーんだからよ」

巌窟王「もっとも、その点に関しては最原の仮説なら説明可能だがな」

巌窟王「今まで律儀すぎるほどにモノクマが校則を守っていたのは『外の世界に見せていたから』……」

巌窟王「これ以上に美しい回答もあるまい。故にモノクマより強い権力は、実は外の世界にいたということになる」

赤松「……」

セミラミス「ふむ……カルーアミルクも悪くない」チビリチビリ

赤松(もう立ち直ってカクテル作ってる……)

最原「さて。僕の仮説はあくまでも可能性。だけどこれを念頭に置いて考えてみてくれないかな」

最原「……外の世界にそれでも出たい?」

赤松「それは……」

赤松「……」

セミラミス「む? ほう。ほうほうほう。これはアレだな。我は知っている。この前の金髪先生だかコンパチ先生だかで見たことあるぞ?」

セミラミス「卒業が近づいた生徒たちが行う進路相談……とかいうヤツではないか?」

セミラミス「酒の肴としてはまあまあだな」グビグビ

赤松「セミラミスさん。酔ってるの?」

セミラミス「人類最古の毒殺者がスクリュードライバー程度で酔うわけがなかろう」

入間「さっきカルーアミルクっつってなかったか?」

星「というか実際に持ってるのカルーアミルクだぞ」

赤松「酔ってるよ! しかも症状が重篤だよッ!」

セミラミス「ぐー」バターンッ

赤松「あっと言う間に酔いつぶれた!」ガビーンッ

巌窟王「そのまま海にでも捨てておけ」

赤松「さ、流石にベッドに運ぶよ!」

星「よく考えてみたらコイツが今一番、なんでここにいるのかわかんねーな」

天海「……」

天海「前段階っすね。ひとまずは」

巌窟王「!」

天海「白銀さんを捕まえる。モノクマを無力化させる」

天海「外に出る権利を手に入れる。それ以外に道がないかを考える」

赤松「外に出る。モノクマに飽きるまで飼われる、以外の選択肢……?」

天海「探してみないと、あるかどうかもわからないじゃないっすか」

天海「まあ……その第三の道がもしあったとしても、この二つ以上に過酷かもしれないんすけどね……」

天海「俺は……道はすべて開示した上で選びたいっす」

天海「真相が暴けたからって、そこで終わりにしたくない」

最原「……そっか」

天海「お願いっす。最原くん。この話はまだ保留にしておいてくれないっすかね?」

天海「真相のその先を見ないといけない。そんな気がするんすよ。俺」

最原「うん。わかった。僕も気が早かったかな。重要だから話さないわけにもいかなかったけどさ」

巌窟王「……真相のその先、か」

赤松「あの。真宮寺くん。セミラミスさんを運ぶの手伝って?」

セミラミス「……膝枕……である……光栄に思え……」ムニャ

真宮寺(腹立つくらい幸せそうだネ)

アルターエゴを修繕するために作ったほったて小屋

BB「……それ。本気で言ってるので? 私に取引を?」

モノクマ「さっきゴン太くんに仕込んだアレを見てさぁ。利害は一致しそうだなって思ったんだよね!」

BB「あれは万が一のために持たせただけなんですけどー」

BB「……でもそれって取引というよりは私の背中を押してるだけですよね」

BB「当初より『最悪の場合は』として設計してた仕掛けですし」

モノクマ「思い切り派手にやっていいよ! やってくれた場合は……ここからがこちらの取引なんだけど」






モノクマ「――」

BB「……」

BB「正気ですか? そんなもの……」

モノクマ「うん。もういらないものだからさ。別に全然いいんだよ」

BB「……なんとなく白銀さんが何を考えてるのかわかっちゃいました」

モノクマ「そう?」

BB「……いいですよ。そんなもの受け取れません。気持ち悪い。ロハでやった方がマシです」

BB「決行はいつにします?」

モノクマ「できるだけ早い方がいいよね。もう時間がなさそうだ」

BB「……さぁって。後腐れなく、ぶっ壊しちゃいましょうか」

今日のところはここまで!

札束で殴るゲームではないが、あえて札束で殴るプレイングしてもいいんだぜ~ひっひっひ。
あ、更新は夜っすよ

アルターエゴの治療室

BB「……さてと。準備はこれで終了。あとは……まあ祈るだけですかね」

最原「治療は順調なの?」

BB「桜ビーム!」ドバァァァッ!

最原「わああああああああ!?」ドカーンッ

最原「あ、あぶ、あぶあぶ……危ない! 死ぬところだったよ!」

BB「こっちはビックリしすぎて心臓が止まるかと思いましたよ! 謝ってください!」

最原「ご、ごめん……?」

最原(……いやここで謝るのはなんか違う気がする……断れないけど)ズーン

BB「こっちは予定以上の成果はなし。代わりに予定外のアクシデントもありません」

BB「セミラミスさんはまだ生徒たちで遊んでますか?」

最原「あ、いや……自分で作ったカクテルで酔いつぶれてたけど」

BB「本物並みですね、本当。気が抜けてるときは異常に役に立たないんですよ。チョコファウンテンの中にずーっと幽閉されてたり」

最原「この状況で気が抜けるのか……」

BB「抜けますよ。だってあなたたちのこと他人事だと思って……っと、彼女のことはもういいでしょう」

BB「最原さん。話が一つ。時間がなさげなので一方的に宣告させてもらいます」

BB「私はちょーっと予定があるので、あなたたちを脱出させるころには、もう協力できません」

最原「え? そうなの?」

BB「ええ。残念ですが、あなたたちの戦いを最後までサポートできなくなりました」

BB「……無念、ですが。でも心配はしていません。あなたたちなら、きっと……」

BB「これ、巌窟王さんには秘密ですよ」

最原「……」

最原「BBさん。キミとはなんだかんだ長い付き合いになっちゃったけどさ……」

最原「ありがとう。キミがいなければ解けなかった謎もあった」

最原「……また会えるかな?」

BB「……さて?」ニコリ

ベッドルーム

セミラミス「……おい。水をよこせ」グッタリ

赤松「凄まじい神経だよセミラミスさん。この状態でなんでそんな態度大きいの」

セミラミス「ククク。何故だと思う? 聞きたいか? 教えないぞ? 泣いて乞えば教えてやるが」ニコニコ

赤松「……」

セミラミス「……」

セミラミス「泣いて乞わぬのか……貴様は強いな……」

赤松「待って。軽口でもなんでもなくって本気で泣くと思ってたの?」

セミラミス「……ム……?」

セミラミス(風向きが変わったか……よくない風だ)

赤松「セミラミスさん?」

セミラミス「……貴様らが思ったより早く嵐が来るぞ。気を付けよ」

赤松「え」

セミラミス「水」

赤松「……ああ、もう。持って来ればいいんでしょ。元から介抱するつもりだったし大丈夫だって」

セミラミス(さて。どうせ紛い物の身。この嵐で消え去ってしまうのも別にいいが……)

セミラミス「……我の料理を口にしたしな……ふむ。よし」

赤松「水持ってきたよ」

セミラミス「水道水か……ペットボトルの天然水とかはなかったのか?」ゲンナリ

赤松「ワガママ放題すぎる!」

アンジーの病室周辺

巌窟王「……」

最原「あ。巌窟王さん」

巌窟王「最原か」

獄原「……」ズーン

最原「……と、ゴン太くんも。その様子だと……」

獄原「うん。ゴン太も……聞いたんだ……アンジーさんと一緒に……」

最原「そう」

最原(……言うことが間違いだったとは思えない。けど……ちょっと心配だな)

最原(でも各自で乗り越えてもらうしかない)

最原「あ。そうだ。巌窟王さん。聞きたいことがあったんだけど」

巌窟王「なんだ?」

最原「いつの間にアンジーさんのいる場所がわかるようになったの? 真宮寺くんの事件のときは、そんな能力なかったよね?」

巌窟王「……それか。さて。どう言ったものか……」

巌窟王「……どの言い方をしても気に食わないな」

最原「え?」

巌窟王「拷問中、俺が這う方向がわかったのは白銀がそれとなく誘導したからであろうが……」

巌窟王「……そう。すべて白銀の拷問のせいであろうな。アンジーの魔力供給が『マイナスの感情の爆発』で活性化することは随分前に述べた」

巌窟王「それがヤツの拷問によって上限を越しただけのこと」

巌窟王「一種の壁を破ったのだ、と考えればいい。と言っても、トドメは俺の負傷した姿を見て心底幻滅したことだろうがな」

巌窟王「ヤツの趣味嗜好が完全に裏目に出た、と言えば少しは気持ちも晴れようというものだが……」

最原「……」

最原(確かに、どこか気持ち悪いな。まるでこうなることがわかってたような……)

最原(アンジーさんの感情の発露が魔力に関わる。これは学園生活で特に隠してなかった)

最原(でも、あの白銀さんが『その点を考慮せずに拷問をした』って事実がなにか変だ。腑に落ちない)

最原「……まさか、彼女――」


ドカァァァァァンッ……!


最原「!」

巌窟王「!」

獄原「えっ……なにこの音?」

最原「爆発? どこから?」キョロキョロ

最原「……あ……ああ、あ!?」







獄原「……BBさんが突貫で組み立てた……アルターエゴ治療室の方……!?」

今日のところはここまで!
三蔵ちゃん……のころには私、FGOやってなかったんだよなぁ。スマフォ持ってなくて

巌窟王「俺はアンジーの傍から離れるわけにはいかん」

最原「わかってる! ゴン太くん! 一緒に来て!」

獄原「う、うん! わかった!」

最原「くそっ! 無事でいてくれよ、二人とも!」ダッ






ベッドルーム

赤松「……ん。なんだろう、今の音」

セミラミス「……さて。我には見当も付かぬが……」

セミラミス「赤松。貴様は運がいいな」

赤松「え?」

セミラミス「少し騒がしくなるぞ。絶対に我の傍から離れるな」

セミラミス「もてなしの返礼はしてやろう」

赤松「?」

獄原「ん。あれは……!」

最原(海の家でくつろいでた人たちか。少しの差だけどあっちの方が先に着いたんだな)

最原「……あれ?」

最原(BBさんの作った部屋よりちょっと離れたところに、何か……?)

最原「煙?」

獄原「最原くん?」

最原「……もしかして爆発は爆発でも、爆弾とかじゃないのか?」

最原「ごめん! ゴン太くん! 別行動にしよう! 僕はちょっと調べたいことがある!」

獄原「わかった! じゃあゴン太は先に行くよ!」




アルターエゴの治療室周辺

東条「BBさん! 無事!?」

入間「な、なんじゃこりゃあ! すげぇ土煙……げほっ!」

真宮寺「……部屋の側面に何か強い力がかかって、部屋が破壊されたようだネ」

星「トラックとかか?」

真宮寺「いや……それよりも小さくて、更に速いものだろうネ。例えば……大砲?」

天海「た、大砲って……!?」

真宮寺「……部屋が燃えてないところを見るに徹甲弾かな」

入間「ほ、砲台は……!?」キョロキョロ

星「後回しにしろ。中に入るぜ」


ガチャリンコ


天海「む……ぐ……!?」

真宮寺「これは……」

東条「……血の臭い……ね」

BBの治療室の外れ

最原「これは……砲台?」

最原(煙が出てるし、発射直後……みたいだけど)

最原(やたら作りが簡素っていうか……本当に必要最低限の機構しかないみたいだな)

最原(多分、地面に固定されてたんだろうけど、反動でひっくり返ってるし……地面には鉄杭の痕。あと土嚢。これで固定してたみたいだ)

最原「……ん。これ……ところどころ肉球型の泥の痕跡がペタペタ残ってるな」

最原「なんで肉球? まるで猫か何かがこの砲台を設置したみたいな……」




モノクマ『うぷぷぷぷぷ』




最原「猫じゃない! クマだ!」ガビーンッ

最原(まさかモノクマがこの砲台を撃ったのか!?)

最原(……もうちょっと調べてみる必要があるか)

最原「……これ……アンテナがついてるな。ひっくり返った拍子に壊れちゃったみたいだけど」

最原「まさか遠隔で発射できるのか?」

最原「……いや。目に見える場所にトリガーがないから『遠隔操作じゃないと起動できない』みたいだな……」

最原「でも変だ。この砲台……元の場所に、鉄杭を痕に重なるように固定して、土嚢を乗せたら……」

最原(関節の駆動を邪魔して、一切身動きが取れなくなる……)

最原(……つまり設置したが最後、そこから標準を動かせない。ただ部屋を破壊するだけなら、これでも問題ないけど……?)

最原「モノクマはコレを使って一体何を……?」




アルターエゴの治療室

天海「……これ。やっぱり死んじゃったっすかね」

東条「見ればわかるでしょう」

天海(俺たちが見た光景。それは……)

天海(……床に倒れ込み、掠り傷だらけのBBさん。そして……首から上が無くなった誰かの死体だった)

天海(これはまず間違いなく、百パーセント)

獄原「最原くんの……アルターエゴ……!?」

天海「あ。ゴン太くん」

星「……これで完璧に、外に出る手段がなくなっちまったな」

入間「どころじゃねぇ! 出入口が一つ残らず無くなっちまったら、それは、つまり!」

入間「あわわわわわわ!」アタフタ

獄原「大丈夫! BBさんが手を打ってたから!」

天海(え?)

入間「BBが……?」

獄原「だから、最原くんのアルターエゴが死んでも……問題は……!」



ピンポンパンポーン


天海「ん……?」

モノクマ『あー! あー! オマエラ! お久しぶりです! みんなの愛らしい学園長、モノクマです!』

モノクマ『今日はみんなに、残念なお知らせがあります!』

モノクマ『新世界プログラムに対する重大な破壊行為を関知しました!』

モノクマ『よって、一切の例外なく、連帯責任で! みんな仲良く!』






モノクマ『エグイサルによる処理を開始しまーっす!』ギンッ

パソコンの接続が悪いから今日はここまで!

天海「……」

天海「それで? ゴン太くん。BBさんの打った手って何っすか?」

獄原「あ、もういいや。全部ない話になったみたいだから」ダラダラダラ

真宮寺「凄い汗」

入間「どっ、どどどどうすんだよォ! 俺様たちの体はまだ外で無防備に晒されてるんだろ!?」

入間「エグイサルなんか来たら一瞬で……!」

東条「どうやら話はそんなにゆっくりしたものではないらしいわよ」


ガシャコーンッ ガシャコーンッ


星「……この音」

入間「お、おい。アイツらは巌窟王が一つ残らず破壊したよな!? そうだよな!?」

東条「校則違反にあわせて復活したと考えるべきでしょうね」

東条「何体かこちらにやってきてるわ。視界に入った途端にグシャッと来るでしょうね」

入間「~~~! ~~~!」パクパク

真宮寺「もう悲鳴が声になってないヨ」

BB「ぐ、む……ぷはぁっ! ビックリした!」ガバリ

天海「起きたっすね」

BB「うわ! アルターエゴが完全破壊されてる!」ガビーンッ

天海(なんかわざとらしいな?)

獄原「BBさん! これどういうこと? さっき言ってたよね!?」

BB「さっき?」

獄原「仮にアルターエゴが壊れたとしても『監視権限』はセミラミスさんから回収した上で破壊したから大丈夫って!」

天海「え? なんすかそれ」

BB「モノクマと白銀さんはセミラミスさんに、この世界を監視する権限を与えていたんです。言っちゃえばこの世界限定の千里眼ですね」

BB「それをさっきセミラミスさんから没収して破壊したから、仮にアルターエゴを破壊したところでモノクマさんがそれを認識できないんですよ」

BB「まあ『外の世界から新世界プログラムを俯瞰して見る場合』は別ですが……それでも『反応の撹乱』にはなりますので……」

入間「あ。そうか。映像を見れても数値を見なきゃ、俺様やBBの偽装工作の可能性も消えないから認識できないも同然なのか」

BB「よって、残る確認手段は一つだけ。モノクマさんが直でここに来て、肉眼でこれを見ない限りは校則違反として処理できないんですよ」

BB「仮に『まあ壊れただろう』という『みなし』で校則違反判定を行って、後から実は壊れてませんでした、となったら……」

BB「この学園生活そのものに対する信用にかかわりますので、絶対にみなしや推測であなたたちを裁いたりはできないはずです」

真宮寺「そう。ところで、この音聞こえる? 段々大きくなってきてるのもわかる?」




ガシャコーンッ ガシャコーンッ



BB「……」

BB「あれれー?」

天海「あれれー? じゃないっすよ!?」

BB「もしかしたら……この中に裏切り者がいるのかもしれないですね」

天海「!」

東条「……この期に及んで? まだ?」

星「ありえなくはない、か?」

真宮寺「まあ……さっき最原くんに聞かされた話を真に受けて、絶望しきった誰かが心中を企てたと考えれば確かに」

天海「ないっすよ! そんなの!」

BB「……」

天海「もう俺たちは、前に進むことをやめたりしないっす! こんなところで終わりたくない! みんなそう思ってたはずっすよ!」

東条「どっちにしても、あの校則違反の放送が鳴り始めたのは『私たちが部屋に入った後』よ」

東条「モノクマがそれを感知する方法がどこかにある、ということじゃないかしら」


ガシャコーンッ ガシャコーンッ


BB「もう時間がなさそうですね」

天海「ど、どうするんす!? 逃げる? 隠れる!?」アタフタ

BB「……私ならアレを一体、二体破壊はできると思いますけど……」

BB「ふむ。『逃げる』の方向で行きましょう。ゴン太さん。アレを」

獄原「え? あ、アレ?」

獄原「……あ、アレを使うの!? 最終手段って言ってたじゃない!?」ガビーンッ

BB「もう大分詰んじゃってるので……仕方ないのでは?」

獄原「ああー……!」

獄原「わ、わかった。ゴン太、頑張るよ……」

天海「……?」

BB「じゃ、道を切り開いてあげます。ひとまず巌窟王さんと合流です!」

獄原「あ! 途中で最原くんも回収してね! 場所はゴン太が教えるから!」

BB「了解!」

東条「正面突破……ね」

星「無茶な作戦になるな」

三蔵ちゃんと西目指すので今日はここまで!

最原「……」

最原(わかった。標準が動かせないのなら『大きくて動かない標的を狙う』か『標的を動かす』しかない)

最原(なら……この遠隔操作のスイッチを押したのは……!)

最原「BBさんと合流はできないな……」

最原「調査しなきゃ! 真相によっては僕らは外に出られずに終わる!」




ベッドルーム周辺


ガシャコーンッ ガシャコーンッ

赤松「……エグイサルで囲まれてる。それにさっきの放送。どう考えてもまずいよね……」

セミラミス「そうだな。我も流石にマスターなしのはぐれサーヴァント状態では、半分の実力も出せないであろう」

セミラミス「というかそもそも殴り合い用のサーヴァントではないのでな」

赤松「ん……?」

セミラミス「む? なんだ? サーヴァントが戦闘をしないことがそんなに意外か?」

赤松「いや。セミラミスさんってサーヴァントだったの!?」

セミラミス「何を今更。そんなこと最初に……?」

セミラミス「あっ。言ってなかった」ガーンッ

赤松(なんだろう、この感じ。どことなく誰かに似てるような……?)

セミラミス「ひとまず隠れられるだけここに隠れておいて、見つかりそうになったら我が仕掛ける」

セミラミス「安心せよ。巌窟王のところに連れて行く程度、我にとっては造作もない」ギンッ

五分後

スコーンッ

セミラミス「あーれー」クルリラクルリラ

赤松「エグイサルにどつかれて吹っ飛んだーーーッ!」ガビーンッ

セミラミス「ぐはっ」ガンッ

ドサッ

赤松「そして後頭部を木に打ち付けたーーーッ!」

エグイサル「」ガシャコーンッ

赤松「あ! わ! わ!」

赤松(撃たれる!?)



ジャラジャラジャラッ ガチッ


エグイサル「!?」ジタバタ

「ふん。この程度の攻撃で我にダメージを与えられると思うてか?」

赤松「……この鎖! セミラミスさん! 無事だったの――」

血塗れのセミラミス「そよ風のような攻撃だったな」フラフラ

赤松「重傷だーーーッ! 無事じゃない!」

赤松「……あ! 思い出した! この感じ、召喚された直後の巌窟王さんと同じだ!」

セミラミス「あやつと同列に語られるのは不本意だが、それは『頼もしい』という意味か?」ニヤニヤ

赤松「『思ったより役に立たない』って意味だよ!」

セミラミス「!?」ガビーンッ

セミラミス「ふん。まあいい。巌窟王のところまで連れて行く。予定には何の代わりもない。行くぞ」バターンッ

セミラミス「む? 妙だな。何故我の目の前に空が広がっているのか。はて?」

赤松「ぶっ倒れて空を仰いでるからだよ!?」

セミラミス「む。いつの間に倒れたのか……ならば立ち上がらなければな?」ガクガク

セミラミス「さて赤松。一気に走り抜けるぞ。こちらだ」フラフラ

赤松「セミラミスさん! 逆! 方向が逆!」アタフタ

セミラミス「……仕方がない。赤松。貴様に我が手を取る名誉を許す。その間は我が貴様の身の安全を保障してやろう」スッ

エグイサル「……」ハイドーゾ

赤松「セミラミスさーーーん! それ私じゃなくってエグイサルーーーッ!」

スコーンッ

セミラミス「あーれー」クルリラクルリラ

赤松「また吹っ飛ばされたーーーッ!?」ガビーンッ

セミラミス「ククク。楽しくなってきたぞ。存外やるではないか」ビクンビクン

赤松「この期に及んでまだ上から目線だよ! 凄いなこの人!」

セミラミス「それでは我が奥の手を見せてやろう、と言いたいところだが。赤松」

セミラミス「この奥の手は周りに人がいると巻き込んでしまう可能性があり非常に危険だ」

セミラミス「ついでに直視すると失明の危険性があり、音を聞くと呪われる可能性もある」

セミラミス「すぐにこのガラクタどもを片付けて後を追うので、先に行くがいい」

赤松「ねえ流石にそんな嘘に引っかかるほど私、子供じゃないんだけど!? 要約で『ここは私に任せて先に行け』だよね!?」

赤松「肩を貸すから! そこの林を突っ切って行こう! 遠回りになるけど身は隠せるからマシだよ!」

セミラミス「貴様の提案に乗ってやらんこともない」

赤松「もういい加減に本っ当に黙ってて! 無茶しすぎだよ!」

セミラミス「……そこまで無茶でもないのだが……まあいい。速くした方がよいぞ?」

セミラミス「鎖がそろそろ引きちぎれそうだ」

エグイサル「……」ググッ

赤松「うわーーー!?」

セミラミス(しかし妙だな。魔力の籠ってない攻撃でサーヴァントを傷つけるとは……)

セミラミス「……まさかこの空間、固有結界と化しているのか?」

セミラミス「バカな。この規模の固有結界を作るのならそれこそ全人類規模の『願望』が必要になる。気のせいだな」

赤松「口より足を動かして! 今は!」

セミラミス「別にあの程度なら我一人で大丈夫なのだが。置いて行ってもよいのだぞ?」

赤松「セミラミスさん! 美人で料理がおいしくて割と面倒見がいいところは尊敬できるよ!」

セミラミス「そうであろう?」

赤松「でもアホでしょ!」

セミラミス「!?」ガビーンッ

赤松「落ち着けるところまで行ったら止血するから! 頑張って!」

セミラミス「貴様後で覚えていろ」

今日のところはここまで!

アンジーの病室周辺

巌窟王「……」ガチャガチャ

巌窟王「ふむ。ブランクの長さの割に、上手くできた方じゃないか」

アンジー「何してるのー?」

巌窟王「罠を仕掛けている。これが上手く行った試しはそこまで多くないがな」

巌窟王「戦車級の重量を持った誰かが仕掛けを踏むか、俺がスイッチを起動させるかすると」


ギャリンッ グサグサグサッ


巌窟王「BBから提供された『鉄杭』が相手に突き刺さる。勢いもそこそこあるので金属程度なら造作もなく破壊可能だ」

アンジー「器用だねー」

巌窟王「なに。むかし取った杵柄だ」

巌窟王(……さて。騙し騙しで魔力を節約。これでどの程度持つものか……)

巌窟王(俺たちの命運は、こうなった以上はBB頼みだな)

BBチーム

BB「……えーっと……ひっくり返った砲台しかありませんが」

獄原「あ、あれ? おかしいな。最原くんは間違いなくこっちに来たはずなんだけど」

星「実際に来たんだろうな。こっちにわずかだが最原の靴の跡があったぜ。追跡できるほどハッキリしてねぇが」

入間「……?」

入間「なんだこの砲台。トリガーがない……? いや、そうか遠隔装置オンリーなのか」

入間「というかこれ、組み立てた後だと標準が……」

東条「標準が動かせなくなるわね。鉄杭や土嚢が邪魔になるわ」

BB(みんな手慣れてますねー。この切羽詰まった状況でも情報拾えるなんて)

BB(でも……もしかしなくっても最原さんは気付いちゃってますね)

BB(まずい。とてもまずい。いっそのこと真相をすべて知られるのならまだしも、中途半端に感付いてるという状況が一番最悪だ)

BB(私を警戒して隠れられたら……後ろからエグイサルにズドン! なんてオチもありうる)

BB(どうしたものか……)

BB「最原さんのことは後回しにしましょう。頭のいい彼のことです。巌窟王さんの元に既に向かってるのかも……」

東条「……そうね。ひとまず巌窟王さんと合流しましょう」

入間「……」

天海「最原くん……!」

三田さんのガチャ報告が気になり過ぎるので今日はここまで!

最原「……」

最原(ひとまず黙ってついていこう。バレないように遠巻きから尾行する感じで……)

最原(様子を見ないと。BBさんが離れたタイミングでみんなと合流する。妙な動きを見せたら巌窟王さんのところへ先回りして危険を伝える)

最原(当然、そんなことにはならないだろうけど……)

最原「……巌窟王さんや百田くんなら頭から信じるんだろうけどなぁ……」

最原(『人を信じることから始める』ってところは似てるんだよな。あの人たち)

最原(……対して僕はどうしても疑うところから始める)

最原(……やっぱりああいうの見ちゃうとなぁ。春川さんが百田くんを好きになるのは凄く納得できるんだけど……)

最原「おっと。思考が脱線しかけてた」

最原「……巌窟王さんのところに向かうみたいだな。BBさん」

最原「……なんで僕たちを裏切ったの?」

セミラミスチーム

セミラミス「やはり聖杯を譲ったのは間違いだったかもしれぬな。アレがあれば魔力供給くらいは……」

セミラミス「いや、無理だな。アレは我が用意した聖杯故にな。『他人の自由と権利を奪う方向』でしか願いを発揮しない」

セミラミス「しかも効果範囲がせいぜい五メートルそこらだ」

セミラミス「端的に言うと大ピンチだ。アレは破壊できん」

赤松「えっと……今のセミラミスさんじゃ一体のエグイサルを『拘束』する程度が関の山ってこと?」

セミラミス「誰かマスターと契約すれば……仮でもいい。そうすればあんなデカいだけの鉄屑に負けたりはせぬ」

赤松「私じゃダメ?」

セミラミス「ダメ」

赤松「ダメなの!?」ガビーンッ

セミラミス「ダメだな。貴様と我が契約したら、おそらく貴様は十分くらいで枯渇死するぞ」

赤松「こ、枯渇死……」

セミラミス「夜長アンジーは比較的マシな方……というか単純に『タンク』としては平均以上なのだが……」

セミラミス「今は使い物にならない上に、この場におらぬからな」

セミラミス「さて。赤松。ちょっとリュックを漁るぞ」ガサゴソ

赤松「ああ! 許可出す前に漁らないでよ!」

セミラミス「うるさい」ガサゴソ

セミラミス「む。この飲料水は使えるな。押収だ」

セミラミス「次に……この趣味の悪いピンク色のベストも使える。押収する」

セミラミス「さて。他には……む?」

ビキニの水着「」キラキラキラ

セミラミス「……」

セミラミス「ちょっと貴様には大胆すぎるのではないか? ビキニにしても布地が少ないぞ?」

赤松「と、東条さんが選んだヤツだから……私関係ないし……」ダラダラダラ

セミラミス「これは見なかったことにする。リュックに返却だ」ナイナイ

赤松(謎の恥ずかしさだけが残った……!)

赤松「ところで押収したものはどうやって使うの?」

セミラミス「この趣味の悪いベストは我の止血に使う。清潔な布だからな」チョキチョキ

セミラミス「この飲料水はリソースとして分解して使う。即ち……」キュポンッ

セミラミス「んぐんぐ」ゴクゴク

赤松「ああっ! ちょっと! 私も走ってて喉渇いてるのに!」

セミラミス「ぷはっ。よし。ちょっとは魔力が回復した」ジャラジャラッ

セミラミス「どこぞの聖女のモノマネではないがな。ため込んだカロリーを魔力に変える」

セミラミス「残った水は……そうだな。王水にでも変えようか」キィンッ

セミラミス「果たしてこれでアレを溶解できるか疑問だが……」

赤松「私の水……」

赤松「……ねえ。正直な話、セミラミスさんだけなら逃げ切れるんじゃない?」

赤松「なんで私を助けてくれるの?」

セミラミス「……妙なことを聞くな? 考えたこともない」

セミラミス「アジアンカンフージェネレーションのバンド名にどんな意味があるのかと聞いているようなものだぞ」

赤松「特にないってことね……例えになんでアジカン使ったのかわからないけど……」

セミラミス「貴様。よく考えてみるがいい。敵ではなく味方寄りの人間が死ぬのは悪いことであろう?」

赤松「うん」

セミラミス「悪いことは起こらない方がいいに決まっておる」

セミラミス「そら。簡単であろう? 貴様の頭でも理解できるであろう?」ニヤァ

赤松(……要はこの人も巌窟王さんと同じなんだな。『理由がなくとも本気で動ける動機』を持っている。人は多分それを魂って呼ぶんだ)

赤松(これがサーヴァント……英霊の器なんだ)

赤松「羨ましいな……私はさっきからブレブレなのにさ。記憶の全部が偽物かもしれないって言われてから、ずっとそうだよ」

セミラミス「我だって偽物だぞ?」

赤松「え?」

セミラミス「本物のセミラミスのアルターエゴ……いや。我を作ったセミラミスすらサーヴァントである以上、歴史の影法師に過ぎぬ」

セミラミス「それでも我は我だ。我がやりたいと思ったことをやる。偽物であることは我であることと無関係だ」

セミラミス「貴様は『偽物』であることを随分とネガティブに捉えるのだな?」

赤松「ッ!」

セミラミス「……ム? おい。そのような顔をするな。責めているのではなく本気で理解できぬ故だ」

赤松「……」

赤松「……うん。ごめん。ちょっとショック受けただけ」

赤松(偽物だということと、自分であるということは別……)

赤松(……ちょっと吹っ切れたかも)

セミラミス「……」

セミラミス「仕方がないな……」ゴソゴソ

赤松「ん?」

セミラミス「詫びというわけではないが……このホームランバーをやろう。特別だぞ?」プルプルプル

赤松「手! 手が震えてる! ごめん、怒ってるから黙ってたわけじゃないんだよ! 自分で食べていいから!」

赤松「普段は傲慢なくせしてどうして妙なところで生真面目なの!」

今日のところはここまで!
ヴァルキュリア4は名作だった……

BBチーム

BB「……」

BB(詳しい位置はわからない。でも誰かに尾行されてる)

BB(モノクマさんが私たちを尾行する意味はもうないはずだから……消去法で最原さんか)

BB(警戒されてる。どうしたものかなー)

獄原「BBさん。尾行されてる」

BB「ん。気付いてますよ」

天海「えっ!?」

入間「尾行!? ど、どこだ!?」キョロキョロ

獄原「どうする? ゴン太が見てきてもいいけど」

BB「やめた方がいいですよ。大丈夫。今のところ殺意はないみたいですし……」

BB「それに今は私たちがエグイサルに追われる身。余計な身動きはしないが吉です」

獄原「そこら辺の石ころぐらいなら投げれば届くと思うけど」

BB「殺す気ですか! やめてください!」

星「……ラケットとテニスボールがあれば……」

BB「だからやめてくださいって!」

東条「……天海くん。さっきの話、どう思う?」

天海「え?」

東条「この中に裏切り者がいるかもしれない、という話よ」

天海「ありえない。論外。今更そんなことは考えられない。これが俺の答えっすよ」

東条「……それは確かにそうだけど。心情としては私だってわかるわ。でも現実問題、その可能性が高いのは確かよ」

東条「だから考え方を変えるしかないの。その裏切り者は一体、なんで私たちを裏切ったのか」

天海「……モノクマはやりたい放題で、手練手管を駆使して俺たちをハメてきた。だから本当に裏切り者と呼ばれる誰かがいたとしても」

天海「そいつは善意で俺たちを裏切ったはずっすよ。俺はそういうヤツを『裏切り者』だとは呼びたくない」

真宮寺「ククク。さて。真相は一体、どんなものなんだろうネ。最原くんなら何か気付いてるかもだけど……」

真宮寺「いや。案外最原くんが裏切り者という可能性も……」

天海「……」

真宮寺「……わかってるヨ。彼だけはないって。だって彼は部屋の中を見る機会がなかったんだから」

真宮寺「通信機器の類でモノクマにアルターエゴの完全破壊を報告するにしても、実際にその裏切り者が部屋の中に入る必要があるわけだし」

天海「だから裏切り者の可能性はないんすって。だって……」

BB「あ! 着きましたよ! よかった!」

天海「え。あ……」

天海(いつの間にかアンジーさんの病室が視界に入っていた。無事に辿り着けたのか……)

入間「た、助かったー! おーい、巌窟王ー! 俺様が来てやったぜー!」ダッ

BB「あ……いや、いいか」

天海「ん? どうしたんすか?」

BB「エグイサルが茂みから近づいてきてるから、このままだと入間さんが危険かなーって」

天海「入間さーーーんっ! 戻って! 戻ってーーー!」

入間「へ?」

エグイサル「」ガシャコーンッ

入間「……ゑ?」

星「おいおいおい」

東条「死んだわね彼女」

入間「ぎゃああああああああああ!?」ガビーンッ

巌窟王「その位置はよくない。西にあと三歩だ」


ガァンッ!


エグイサル「!?」フラッ

カチッ

グサグサグサッ

巌窟王「ふむ。悪くない。トラップは上手く機能している」スタッ

BB「おー。ただの飛び膝蹴りでエグイサルをふらつかせるなんて。流石巌窟王さんです」

入間「あわ……あわわわわ……が、巌窟王ぉ……!」

巌窟王「……?」キョロキョロ

巌窟王「最原は?」

BB「……すぐに出てきます。ご心配なく」

巌窟王「?」

天海「……」

天海「この鉄杭、どこかで……」

今日のところはここまで!

東条「巌窟王さん。アンジーさんは無事?」

巌窟王「問題なく。さて。後はセミラミスが赤松を連れてやってくるのを待つだけか」

天海「え」

真宮寺「忘れたの? 僕と赤松さんがさっきベッドルームに酔いつぶれたセミラミスさんを運んだじゃないか」

天海「ああ。そういえば……」

天海「確かベッドルームの位置は……アンジーさんの病室を挟んでBBさんが作った修理室の反対側……」

天海「大丈夫っすかね?」

巌窟王「安心しろ。セミラミスは戦闘そのものには慣れていないが、圧倒的な下準備とそれを的確に運用する知性がある」

巌窟王「虚栄の空中庭園さえ破壊されない限りは、俺でも手こずる」

天海「壊れてたっすよ」

巌窟王「……」ソワソワソワソワソワソワ

天海「露骨に心配しはじめた!」ガビーンッ

東条「ダメそうね」

巌窟王「……アンジーを引っ張り出して……いやダメだ。了承はするだろうが……」

星「落ち着け」

獄原「安心して巌窟王さん! ゴン太がひとっ走りして二人とも救出してくるよ!」

BB「ゴン太さん?」ニコリ

獄原「あ……そうだった。ゴン太はやることあるんだった」

天海「……?」

BB「仕方ないですね。私が行ってきますよ。みなさんはここからできる限り離れないでくださいね」

BB「まあ、エグイサルに襲撃されて仕方なくって場合は私を待たずに移動しても構いませんが」

巌窟王「なにを企んでる?」

BB「え? あー……」

BB「少なくともあなたたちに不利益になるようなことは何も」

巌窟王「……そうか」

BB「じゃ、行ってきまーす」タッ

天海(軽やかに行ってしまった……)






最原「軽やかに行っちゃったね」

天海「そっすね……」

天海「……」

天海「ん!?」ガビーンッ

天海「最原くん!? いつの間に……!」

東条「いえ。そう。そうなのね。あなただったのね。やっぱりそうだったのね」

天海「え?」

東条「さっきBBさんと獄原くんが言っていたでしょう。尾行されているって」

天海「あ……」

天海「……いや何考えてるんすか!? 今、俺たちはエグイサルに追われる身なんすよ!?」

天海「そんな状況で尾行なんかしたら後ろからエグイサルに撃たれても全然おかしくなかった! 何考えてるんすか!?」

最原「あ! ご、ごめん! みんなを危険に晒す気はなかったんだ!」アタフタ

最原「ただその、最悪の場合はちゃんと僕が全部引き付けてどうにかするつもりだったって!」

天海「」ブチッ

東条「」ブチッ

巌窟王「……お前は……その悪癖は死なない限り治らないらしいな」

最原「え?」

天海「斎藤パンチ!」バキィッ

最原「ぐへお!?」

天海「そういう危険なマネは! 茶柱さんや俺とかが泣くハメになるから! NGっす!」グリグリ

天海「悪い子は俺の手作りの『アマデウス斎藤の良い子スタンプ』を改心するまで顔に張り付けるっすよ!」グリグリ

最原「小学生レベルの嫌がらせーーー!」ガビーンッ

東条「……後でお仕置きよ」

最原「お、お仕置き?」

東条「この私の手作りの『斬美ちゃんのニコニコスタンプ』を首筋に張り付けるわ」グリグリ

最原「流行ってるの!? 手作りハンコ! ていうかもうやってるし!」

最原「じ、地味に痛い! 助けて巌窟王さん!」

巌窟王「自業自得だ」

今日のところはここまで!

最原「ち、違うよ! 咄嗟に口ついて出ちゃったけどさ。自分のことを蔑ろにしてたわけじゃない!」

最原「ただ僕は警戒してただけで……」

天海「そういう弁明はもうたくさんっすよ……!」ポロッ

最原「……天海くん? 泣いてるの?」

天海「何べん言えば理解してくれるんすか。みんなキミのことが大好きなんすよ?」

天海「ここまで誰も欠けずに来れたんすよ? 今更一人だって死んだりしちゃダメなんすよ……!」

最原「う……あう……」

入間「……ひっでー顔。エグイサルに後ろから撃たれるかもとわかってても尾行はやるくせによ」

真宮寺「別に誰を悲しませる気はなかったんでしョ。ただあまりにも考えが浅はかだったネ」

最原「……」

星「最原。お前さん、何を欲しがってる?」

最原「僕は……」

星「なんでそこまで必死になってる? あんたが目指している先には一体何があるんだ?」

最原「……よくわからないけど……なんとなくとしか言いようがないけど」

最原「負けたくないんだ」

巌窟王「……張り合いたいと思う相手がいるのか? お前に」

最原「あ、ごめん。なんでこんなに頑張るんだろうって自分でも考えたことなくって」

最原「一番最初に浮かんだ理由が『負けたくないから』ってだけなんだ」

最原「何に負けたくないのかは僕自身もハッキリしないけど……」チラッ

巌窟王「何故こちらを見る?」

最原「……考えるのが怖いんだ。もし巌窟王さんがいなかったらどうなってたんだろうって」

最原「『きっとなんとかなってたはずだ』って思いたかった」

最原「『巌窟王さんがいなくっても、僕ならやれたはずだ。大丈夫さ』って思って……安心したかったんだ」

巌窟王「……」

最原「怖いよ……みんながいなくなる『もしも』を考えるのが……怖い……」

最原「巌窟王さんに負けたら……僕はその『もしも』に押しつぶされそうで……」

巌窟王「……」

東条「私たちだってそうよ。本当に怖い。誰かが死ぬのかと思うと、それだけで鳥肌が立つわ」

東条「でもだからと言って、なんでもかんでも救い上げることは不可能よ」

東条「私たちは英雄でもなんでもない。超高校級と持て囃されようと、結局ただの高校生なのだから」

最原「理屈でわかってはいるんだけどさ……」

東条「好きよ。最原くん」

最原「え」

東条「男性としてあなたのことが好き」

入間「ぶふぉお!?」ブーッ

真宮寺「わお」

巌窟王「!?!?」ガビビーンッ









東条「……というのは当然冗談だけど」フウ

最原「」

天海「……心臓止まった顔してるっすよ」

巌窟王「はぁーーーっ……はぁーーーっ……」ドキドキ

星「あっちは凄い動揺してるぞ」

真宮寺「夜長さんの恋愛事情が更に混沌と化しそうで動揺したんだネ」

東条「でも、どう?」

最原「……ハッ! え、な、何が!?」

東条「恐怖。忘れることができたかしら?」ニコリ

最原「!」

東条「……結局、忘れるしかないのよ。そういう恐怖は他の楽しい出来事や、衝撃的なイベントに意識を向けて、意識しないようにするしかないの」

東条「恐怖にだけ目を向けていては、大事なことが見えなくなるから」

最原「……」

最原(ああ。そうか。忘れることって悪いことばかりじゃなくって……本当は『救い』そのものなんだな)

最原(でも東条さん。僕はもう――)

最原「……あはは」

最原(もう救いはいらないんだ)

最原「ありがとう。東条さん。すっかり『忘れちゃった』よ」

最原(……僕はもう二度と忘れたくない。だから、ごめん)

東条「……そう。よかった。これで少しは……借りが返せたかしら」

最原「え? なんのこと?」

東条「まだ忘れてないのよ。第二の学級裁判で、私に機会をくれた最原くんのこと」

東条「……直接的に助けてくれた巌窟王さんにも、きっと後でお返しするけど」

巌窟王「そうか」ゼヒューッゼヒューッ

真宮寺「ひとまず息を落ち着かせてあげたら?」

東条「巌窟王さん。気をしっかり持って」

巌窟王(忘れた……か)

最原「……」

巌窟王「……そうか」

天海「ん? なんか言ったっすか? 巌窟王さん」

東条「呼吸は落ち着いた?」サスサス

巌窟王「……」

星(背中をさすられている……)

真宮寺(おじいちゃん?)

入間「まるでジジイだな」

巌窟王「後で覚えていろ入間」

入間「!?」ガビーンッ

獄原「……ひとまずこっちは一件落着、かな?」

最原「あ。そうだ。みんな! 頼みたいことがあるんだ!」

天海「なんすか?」

最原「あの部屋で見聞きしたことをできるだけ細かく教えて!」

最原「あと巌窟王さんはこのトラップの鉄杭、どこから調達したのか聞かせて!」

巌窟王「……クハハ。やっと本調子になったな。最原」ニヤァ

東条「巌窟王さんもね」

巌窟王「何のことだ? 俺はなんともゲホゲホゲホッ」

東条「ごめんなさい。本当ごめんなさい」サスサス

天海「全然本調子じゃない!」ガビーンッ

セミラミスチーム

セミラミス「さて……やっとのこと、あの鉄屑どもの思考ルーチンを解析したところだったのだが……」

セミラミス「計算外だな。コレは」

赤松「嘘……でしょ? やっとみんなと合流できるかと思ったのに」





エグイサルピンク「おはっくまー!」ガシャコーンッ

赤松「この声……まさか……!」

セミラミス「下がっていろ赤松。あやつに存分に毒酒をあおらせてやろう」

今日のところはここまで!

エグイサルピンク『生徒一人見っけ! それじゃあ、早速処理を開始しちゃいましょうかー!』ガシャコンッ

セミラミス「赤松。最後に訊ねるが、あの中に入っているのは貴様の知り合いか?」

赤松「知り合い……かもしれないけど敵だよ」

セミラミス「ならばよし。骨も残らず溶かしてやる」ジャララッ

エグイサルピンク『……あら邪魔ね。アルターエゴごときがわちゃわちゃと』ガシャンッ

セミラミス「近づくな下衆め」ジャラランッ



ガキンッ



セミラミス「む。やはり硬い。貫けぬな?」

エグイサルピンク『粉々にしてあげるわーッ!』ガシャコンガシャコンッ

セミラミス「しかしあの銃のようなものは飾りか? いっこうに撃ってこないぞ?」

セミラミス「せいぜい物理的にどついてくる程度が関のやばびっ」スコーンッ

赤松「また吹っ飛ばされたーーーッ!」

セミラミス「流石に慣れた」スタッ

赤松「あ、綺麗な着地」

セミラミス「……まあだからと言って、あれが致死性のダメージだということに変わりはないぞ?」

セミラミス「命が惜しければ食らうな。人間ならすぐ死ぬ」ブシュッ

赤松「セミラミスさん! 傷口開いちゃってるっぽい!」アタフタ

セミラミス「む。いかん」ヌグイヌグイ

セミラミス「しかし自動制御型のエグイサルが頻繁にこちらに銃口を向けようとしていたことを考えるに、アレは飾りではないのだろう」

セミラミス「ヤツがそれをしない理由は……趣味か」

エグイサルピンク『アタイ、グロいのは苦手なの!』

セミラミス「ちっ。厄介な。もし撃ってくれば銃を暴発させる算段は整っていたものを……」

セミラミス「作戦変更だ赤松! 何か武器を持って来い! ハンマーなど物理的かつ現実的な武装で構わぬ!」

赤松「いやそんなすぐに用意できるわけないよ!?」ガビーンッ

セミラミス「なんだと……?」

エグイサルピンク『今度こそハエのように叩き潰してあげるわーッ!』ガシャンガシャンッ

セミラミス「……なにか……なにか無いか……! 近接で使える、そこそこ威力のある武器は! なにか!」ゴソゴソ








セミラミス「あった」ガシャアアアアアンッ

エグイサルピンク『ぎゃああああああああああああ!』

赤松「ツルハシだーーーッ!? なんで!?」ガビーンッ

セミラミス「これは我が個人的に持っていたものだ。工事などで使っていたぞ?」

赤松「工事!? アッシリアの女帝だよね!? 工事!?」ガーン! ガーン! ガーン!

エグイサルピンク『ひいいい! 怖いー! やめてー!』ブンッ

カンッ

セミラミス「あ」

赤松「ああ! ツルハシがどこかに吹っ飛んでっちゃった!」

セミラミス「そこまで遠くではない。後で拾おうと思えば拾えるであろう」

セミラミス「さて。筋力に自信はないのだ。次はどのような手で攻めようか」

セミラミス「こうしてやろう」パチンッ



バシャアッ



エグイサルピンク『え? なに? 空から何か振ってきて……』ドジュウウウウウ

エグイサルピンク『きゃああああああ!? 溶けてる! 溶けてるわ外殻がーーーッ!』

セミラミス「先ほど作った王水だ。利いてよかったと言う他ないな」

赤松(……あ、あれ。なんで空から王水が……?)

セミラミス「赤松! ツルハシを取ってこい! 弱った外殻をアレでこじ開ける!」

赤松「あ、う、うん!」タッ

エグイサルピンク『させるものですかー!』ガッ ブワッ

赤松「!」

セミラミス(足で砂利や木片を蹴り上げて……! これはまずい!)バッ


ドドドッ


セミラミス「ぐ、うっ……!」

赤松「せ、セミラミスさん!?」

赤松(私を庇って……!)

セミラミス「止まるな! 走れ!」

エグイサルピンク『ふふっ。アーッハッハッハ! アタイの勝ちよ! このまま丸腰のあなたを今度こそ仕留めてあげるわー!』ガシャコーンッ

赤松(まずい! エグイサルがセミラミスさんに、また近づいて……!)

セミラミス「くっ! ツルハシさえ……ツルハシさえあれば、こんな鉄屑ごときに!」

エグイサルピンク『終わりよーーー!』

赤松「やだ。やめて! セミラミスさーーーんっ!」







セミラミス「あった」ガシャアアアアアンッ

エグイサルピンク『ぎゃあああああああああああ!』

赤松「二本目だーーーッ!」ガビーンッ

セミラミス「それ。そら。とうっ」ガンッ ガンッ ガンッ

エグイサルピンク『ちょ! 酔う! 酔っちゃうから! そんなに揺らしたらデロデロデロデロデロ』

エグイサルピンク『いい加減にしなさいってー!』パコーンッ

セミラミス「あー」クルリラクルリラ

赤松「ま、またモロに食らった!」

セミラミス「ぐはっ」ベシャッ

赤松「ああ! もう着地する気力も残ってない! 大丈夫!?」

セミラミス「ふむ……目に見える限りでは問題はなさそうだ」ブシュウウウウ!

赤松「だろうね! 出血してるの後頭部だからね!」

セミラミス「……ハッ! しまった! 我としたことが、何故こんな重要なことに気付かなかった……!」

赤松「え? 何? どうかしたの!?」

セミラミス「聞いて驚くな赤松。今の我は……死にかけている!」バァーンッ

赤松「知ってるよぉ! 見ればわかるよぉ! というか気付くの遅いよぉ!」エグエグ

セミラミス「泣くな鬱陶しい」

セミラミス「ただまあ、もう大丈夫であろう。間に合ったようだ」

赤松「え?」


パタパタパタッ


エグイサルピンク『……え? あら? カメラに何かが……!? み、見えない! 何も!』アタフタ

赤松「え。なにあれ……白い液体?」

セミラミス「鳩のフンだ」

赤松「……はい?」

セミラミス「カメラは潰した。これでしばらくは大丈夫であろう。巌窟王のところに急ぐぞ」

赤松「あ。う、うん!」



ガシャコーンッ



セミラミス「……!?」

赤松「え?」

エグイサルピンク『……』ブンッ

セミラミス(バカな……カメラは間違いなく潰したは――)




ドォォォォンッ

今日のところはここまで!

エグイサルピンク『やったわー! アルターエゴがボロ雑巾のように吹っ飛んだわー!』

エグイサルピンク『さぁて! じゃあ残った赤松さんをさっくり殺して残りの方へ――』

セミラミス「……」アゼン

エグイサルピンク『吹っ飛んでない! 無事!? なんで!?』ガビーンッ

セミラミス「あ……赤松ッ!」ダッ

エグイサルピンク『あ』

エグイサルピンク『……あー……』






赤松「……」グッタリ

セミラミス「阿呆が! 何故我の身代わりなどに……!」

セミラミス(出血が酷い。脈も……!)

赤松「う……」

セミラミス(生きてる。大丈夫だ。我ならなんとかできる!)

エグイサルピンク『予定は変わらないのよ! アタイが止めを刺してあげるわ! 出血が酷いのなら血流を止めればいいじゃない!』ガシャコンッ

セミラミス「ええい邪魔だ! 我は忙しい!」パチンッ



バサバサバサッ



エグイサルピンク『ええっ!? なにこれ、鳩!? どこから……!?』キョロキョロ

セミラミス「よし。撹乱くらいにはなる。離れよう」タッ

セミラミス(……しかしこのままだと、逃げ切れるかどうか……最終的にはやはり破壊せねばなるまい)

セミラミス(少なくともカメラなしでどうやってこちらを認識したかの謎を暴かなければバックアタックの危険性が高すぎる)

セミラミス(治療も最低限かつ乱暴になるな)

赤松「う……ぐ……」

セミラミス「まだ死ぬなよ。辛うじてでも生きてさえいればなんとかできるからな!」

赤松「声が……フンが直撃してからの声が……変……」

セミラミス「?」

二分後

セミラミス「授けてやろう」ブスッ

赤松「痛ァーーーッ!?」ガバリッ

セミラミス「よし。上手く行った!」ガッツポーズ!

赤松「あ、あれ。ここは……私はさっきセミラミスさんを庇って……?」

赤松「うわあ! 私、血塗れだ! 凄い! なんで生きてるの!?」ガビーンッ

セミラミス「止血をした後で強心薬を投与した。我に感謝するがいい。あと三十秒くらい放置していたら死んでいたぞ?」

赤松「あ、ああ。うん。ありがとう」

セミラミス「別に死なせてもよかったのだがな。我のことを見縊っているのか? あんな無茶なマネをしおって……」

セミラミス「まったく不敬にもほどがあろう」

赤松「いや。その……ああいう無茶してる人いると守らなきゃいけない気になって……さ……」

赤松(最原くんとなんとなくダブっちゃうんだよなぁ……全然性格似てないのに。なんでだろ)

セミラミス「時間がない。よく聞け。このままだと貴様は死ぬ」

赤松「いきなり何!?」ガビーンッ

セミラミス「さっき投与した強心薬は『無理やり心臓を動かす薬』だ。要は我は無理やり汝を活かしているに過ぎない」

セミラミス「あと十五分くらいそのまま放置しておくと心臓に負荷がかかり過ぎて徐脈性不整脈を引き起こす」

セミラミス「つまり無理の反動が来て死ぬというわけだ。わかったか」

赤松(あ、あまりわかりたくない……!)

セミラミス「だが、かと言ってあのエグイサルを放置することもできぬであろう」

セミラミス「少なくとも『カメラなしでどうやってこちらを認識したのか』の謎が解けない限りは背後を曝して逃げ回るのは危険だ」

セミラミス「汝には十五分以内に本格的な治療が必要だ。後顧の憂いを絶たねばそれも不可能であろう」

赤松「うん。私もアレを巌窟王さんのところに連れて行きたくはない、かな……あそこにはアンジーさんもいるし」

赤松「それに、なんとなくわかっちゃったしね。本当に単純な謎だったから」

セミラミス「ほう……」

赤松「セミラミスさん。多分、今の内にならあのエグイサルは簡単に倒せると思う」

セミラミス「そうか。ならばよし。やるか。作戦を立てるぞ」

赤松「うん!」

数十秒後

セミラミス「……それが謎の正体か? 拍子抜けすぎるな。『真っ先に思いつく解答そのまま』ではないか」

赤松「でもシンプルすぎて凄く有効なんだよね。結局、謎が解けてもどうやってこれを破るか……だし」

セミラミス「よい。それは追い追い考えよう。今は手数を増やす」バチッ

赤松「何する気?」

セミラミス「神代の力の片鱗を見せてやろう……! あ、ところで汝。名をなんと言ったか」

赤松「赤松だけど……」

セミラミス「違う。下の名だ。下の!」

赤松「楓だよ」

セミラミス「カエデ……カエデ……よし覚えておいてやる。光栄に思え」

セミラミス「残った魔力リソースの大半をつぎ込んでやる!」バチバチッ

セミラミス「掟破りの二体同時召喚だ! いでよバシュム!」



ドシュウウウウッ!



赤松「う……! 凄い風! 一体何が……!」

セミラミス「クッハハハハハハハ! これが女帝たる我の力の象徴たる魔物だ! かの神代の蛇すら我に傅く!」

セミラミス「この威容を見るがいい! そして恐れよ! 我が味方でよかったと心底から震えるがいい!」


べちゃっ


赤松「あ。なんか落ちて来た」








ばしゅむ「ぴぎゃー」

赤松「……」

セミラミス「……」

赤松「……威容?」

セミラミス「やはり魔力が少ないのが仇となったか……幼体だなコレは」

ばしゅむ「ぴぎゃー」

セミラミス「……まあ……普通の蛇よりは大きかろう?」

赤松(使えないーーーッ!)ズーン

今日のところはここまで!

セミラミス「使えないだと? よくもまあそんな口が利けたものだな」

赤松「嘘ッ! 声に出てた!?」ガビーンッ

セミラミス「出ておらんかったが思ってはいたようだなタワケめ」パコーンッ

赤松「痛っ!」

セミラミス「よく見ろ。小さいことは悪いことばかりではない。こやつには普通のバシュムにはない二つの利点がある」

セミラミス「まず一つ。小さいからエグイサルに隙間ができればそこから中に侵入できる。侵入した後は中から溶解させ放題だ。金属でもお構いなし」

セミラミス「先ほど王水とツルハシで叩き割った外殻……あれをもう少し広げれば十分か?」

赤松「な、なるほど。二つ目は?」

セミラミス「触ってみればわかる」

赤松「え゛」

セミラミス「……」ワクワク

赤松「なにワクワクしてんの!? イヤだよ触りたくないよ!」

セミラミス「触れ」ワクワク

赤松「ええーっ……じゃあ……」サワッ

赤松「……」

ばしゅむ「ふしゅるるる」

赤松「で? 二つ目の利点って?」

セミラミス「触ると可愛くて癒される。気分的に」

赤松「実質利点一つだコレ!」ガビーンッ!

赤松「セミラミスさんってチョコパスタの件から思ってたけど、やっぱりちょっと趣味が悪いよ!」

セミラミス「……!?」ガーンッ!

セミラミス「……可愛い……可愛い、であろう。そなたは可愛いよな……?」ナデナデ

ばしゅむ「ふしゅるるるる」クネクネ

赤松「光速で拗ねないでよ! ごめん、謝るからさ! いい加減にしないとエグイサル来ちゃうから!」



ガシャコーンッ!



セミラミス&赤松「!」バッ

エグイサルピンク『おはっくまー! テイクツー!』ガシャコーンッ

セミラミス「来たか。それでは作戦を教えておこう」

赤松「え? 今この場で?」

セミラミス「下がっていろ。そして我とバシュムのことをよく見ておけ。後は汝の頑張り次第だ」

赤松「なにその作戦!? 肝心なところが全然説明されてないけど!?」

セミラミス「察するところまでが作戦の内だ。なんとかしろカエデ」

赤松「そんな……ん? 今、私のことなんて?」

セミラミス「短期決戦だ! 手短に済ませるぞ!」

夕ご飯の休憩!
……三蔵ちゃんイベントのナイチンゲール礼装堕ちないっすー

エグイサルピンク『またあなたなの? 無駄な努力をするものねー』

セミラミス「……」

エグイサルピンク『あなたがどんなに頑張っても、あなたが外の世界に生徒たちと出ることは絶対にないのに』

セミラミス「所詮はアルターエゴ……ゲームのキャラクターだからな。当然であろう」

セミラミス「だが、だからと言って無駄ではない」

エグイサルピンク『残るものがあるからとでも?』

セミラミス「いや。楽しい」

エグイサルピンク『は?』

セミラミス「あやつらと一緒にいるのは楽しい。これは我にとって大きな意味がある」

セミラミス「だが、それを脅かす貴様は楽しくない。跡形もなく消す理由としては妥当であろう?」

赤松「セミラミスさん……!」

セミラミス「貴様を消せば後に残るは自立制御のエグイサルのみ。思考ルーチンは解析済みだから突破は容易だ」

セミラミス「貴様は必ず破壊する」

赤松「……」

赤松(考えなきゃ。私はセミラミスさんに何ができる?)

赤松(アンジーさんは巌窟王さんに何をしてた? 思い出して!)





アンジー『神様ー! 神様ー!』キャッキャッ

巌窟王『クハハハハハハ!』ナデナデ






赤松「……」

赤松(甘えたり甘やかしたり撫でたり膝枕したり……)

赤松「参考にならないッ!」ガビーンッ

赤松(今から思い返すと巌窟王さんすら普段はマジカルなことほぼしてなかったなー……)

赤松「……おっと。いけない! 怪我のせいで意識が朦朧としてた! 集中しなきゃ!」

赤松「セミラミスさん! 頑張って!」

赤松「……あれ。セミラミスさんがいない。どこに……?」

セミラミス「ここだ」

赤松「ん? 声が上から……あっ」

セミラミス「捕まった」

エグイサルピンク『このまま絶妙な力加減で握り潰して骨を粉々にしてあげるわー! 中身が出ない程度に!』ギリギリギリ

セミラミス「とても痛いぞ」ミシミシ

赤松「大ピンチだーーーッ!?」ガビーンッ

今日のところはここまで!

セミラミス(……このエグイサルのパワーなら一瞬で我を粉々に握り潰すくらいはできる)

セミラミス(それをしないのは……やはり趣味か。いやこの場合は『できない』と言った方が適切か。本当にグロテスクなのが怖いのであろう)

セミラミス(さてどうやって脱出しようか。この状態が三分続けば圧死してしまう)

セミラミス「……ふむ。無理だな」

セミラミス(こやつ、動かない。我を警戒してのことか、全神経を集中して『中身が出ない程度の圧死』で我を殺そうとしているからかは不明だが)

セミラミス(一歩でも歩いてくれればその隙に指の関節へ色々ねじ込んで脱出してやろうと思ったのだが……)

セミラミス(さっぱり動かんな。つまり現状脱出は不可能だ)

セミラミス(一歩でいい。一歩歩いてくれればあのガシャコーンッて衝撃で手が一瞬緩むのだが)

セミラミス「……」

赤松(セミラミスさん。どうするの?)

セミラミス「……」シラー

赤松(あれ!? どうしたのセミラミスさん!? なにその顔! 『まあ脱出しなくてもいいか』とか考えてないよね!?)アタフタ

セミラミス「まあ脱出しなくともよいか」グデー

赤松「セミラミスさーーーんッ!?」ガビーンッ

セミラミス(このエグイサルは我を動けなくしているが、それと同時に一歩たりとも動けなくなっている)

セミラミス(ネズミみたいに足元をチョロチョロするのはもう飽きた。このままこやつを倒す術を考える方が我の性に合うというものよ)

セミラミス(あと二分三十秒くらいで死ぬが……まあなんとかなるであろう。うん)

セミラミス(とは言えやっぱり死ぬ可能性も高い。久方ぶりの命の危機だ。ならば)

セミラミス「鳩ども! セミラミスの名において命ず!」

鳩「くるっぽー!」バサバサッ

赤松「鳩……?」

セミラミス「我の逸話を知らぬか? 我は鳩を無条件で使役できる。軽いものなら運搬もお手の物よ」

セミラミス「鳩にはある命令を下した。一分以内に戻ってくるぞ」

赤松「え。一分? その間は?」

セミラミス「……」グデー

赤松「やることなくなったの!? やることなくなったよね!?」ガビーンッ

セミラミス「うるさい。黙れ。今の我は体中が痛くて怠いのだ」

赤松「ならさっさと脱出しようよ!」

セミラミス「めんど……」ハッ

セミラミス「我には我の考えがある。そう心配するな」

赤松(今『面倒くさい』って言おうとしたーーー!?)ガビーンッ

赤松(で、でも一分後に鳩が戻ってくるって……なにを運ばせてるの?)




一分後

セミラミス「うん。美味い」シャクシャク

鳩「くるっぽー」

赤松「ホームランバー運ばせてるーーー! 『あーん』させてるーーー!」ヒエエエエエ!

セミラミス「下手すればここで二人とも死ぬからな。最後の晩餐よ」

赤松(最後の晩餐ショボッ!)




セミラミス死亡まであと一分三十秒

赤松死亡まであと十三分三十秒

エグイサルピンク『くっ。美味しそうなマネを……いえ。舐めたマネをしてくれるわね……!』

エグイサルピンク『でもアタイの優位はやっぱり変わらないわ! さあ! これからどんな悪あがきを見せてくれるの?』

セミラミス「……」シャクシャクシャクシャクシャク

エグイサルピンク『……』

セミラミス「……」シャクシャクシャク

セミラミス「……」ゴクン

エグイサルピンク『……』

セミラミス「……あーん」パクッ

鳩「くるっぽー」

セミラミス「……」シャクシャクシャクシャク

エグイサルピンク『足掻きなさいよッ!? なに余裕ぶっこいてんの!?』ガビーンッ

セミラミス「……」ゴクン

セミラミス「食事中に話しかけるなーーーッ!」

エグイサルピンク『ええっ!?』ガビーンッ

赤松(この人やりたい放題だーーー!)ガーン!

赤松「……あれ」

赤松(でもなんか、今の声は……)

赤松(……ああ。そうか。やっぱり!)

セミラミス(赤松の言った通りか? なんとなく我にもわかってきたぞ。謎と言えるような謎ではない)

セミラミス(このエグイサル、単純に――)






セミラミス&赤松(中にパイロットが入ってない!)

セミラミス(パイロットはどこかから遠隔でエグイサルを動かしているのであろう)

セミラミス(そして、外からエグイサルのスピーカーに声を流しているわけだから、エグイサルとは違う場所から声が『漏れている』のだ)

セミラミス(……まあ言ってしまえばそれだけなのだが問題がある)

赤松(今は夜だということ。ここが林だということ。ついでに相手が爪を持ったクマ型のロボットだということ)

赤松(林の上に上って私たちを見下ろしているのだとしたら……私、木登りとかできないんだけど!)

赤松(セミラミスさんみたく遠隔で攻撃する手段がない!)

セミラミス(夜だから隠密には最適な上に、我の鳩どもも夜はそこまで活発に動けん。人間より目はいいが所詮それは『昼に限った話』だ)

セミラミス(……ふむ。いやそれにしても何か変だな。仮にそうだとしても鳩どもに見つからずに隠れられるものか……)

赤松(声はする! 方向はわかる! 私には詳しい位置がきっと特定できる!)

赤松(でも何故か『見えない』! なんで……!?)

赤松「……あ」

赤松(……わかった。なんで位置がわかるのに見えないのか……あれ……)

モノファニー「……」モゾモゾ

赤松(ぎ、ギリースーツ……! ば、バカらしすぎる……こんな手で……!)ワナワナ

休憩します!
あの……三蔵ちゃんあんまし進んでないんすけど……

赤松(セミラミスさんに教える? いや。そしたら気付かれて場所を移動されるかも……相手クマだし木を伝って逃げられたら見失うの一瞬だし!)

赤松(鎖なら届く? あの状態で出せる? どうしたら……!)

セミラミス「……さて。そろそろ限界か。それではこちらも仕掛けさせてもらう」

エグイサルピンク『え?』

セミラミス「ええとどこに……ああ。いた。そこか」

セミラミス「『来い』! バシュム二号!」



ズルリッ



ばしゅむ「ふしゅるるるるる!」

エグイサルピンク『うぎゃあっ! なにこれ! 蛇!?』

セミラミス「神代の蛇、バシュムだ。ナリは小さいが毒性は充分!」

セミラミス「さあて。我を潰すことに専念して、その鉄屑は現状動けぬのだろう? 動けたのならカエデを蹴り上げて止めを刺す程度やるだろうからな」

セミラミス「趣味に耽溺した貴様の不覚だ。『吐け』!」

ブシュウウウッ

ドロッ

エグイサルピンク『……え? が、外殻が溶けっ……!?』

セミラミス「穴は広がったな。『行け』!」


ズルウッ


エグイサルピンク『ぎゃあああああああ! 中に! エグイサルの中に……あああああああああ!』

セミラミス「くっ……ははははははは! どうだ! 怖かろう!」

セミラミス「まあ幼体故に毒液はせいぜい一回しか吐けないが……それがどうした! 一回で充分であろう! 中にいる貴様をかみ殺す程度容易い!」

セミラミス「バシュムの使い方さえ間違えなければ、勝利を掴みとる程度問題なく!」

セミラミス「……」チラッ

赤松「!」

赤松(……そうか……ああ、そう! そういうこと!)キョロキョロ

セミラミス「さあ。さっさと我を離せ! 今なら一瞬で殺して許してやろう」

エグイサルピンク『……』

セミラミス「……む。どうした? 何故離さない? 苦しんで死にたいか?」

エグイサルピンク『……ざーんねんでしたー! このエグイサルの中にアタイはいませーーーんっ!』

セミラミス「……!」

ばしゅむ「……」ヒョコッ

セミラミス「バシュム?」

バシュム「ふしゅるるるる」イナイイナイ

セミラミス「……そうか」

エグイサルピンク『あ、あー。ビックリした。中にいたらと思うと本当にゾッとしないわ。確かにこれに巻き付かれるくらいなら死んだ方がマシかも』

エグイサルピンク『でも……現実はこう。アタイの勝ち! アタイの勝利!』

エグイサルピンク『お父ちゃんに褒めてもらえるわー!』

エグイサルピンク『さあ! このまま綺麗に圧死しなさい!』

セミラミス「……ふむ。ふんふん。よし。大丈夫だな」

エグイサルピンク『……なにを言ってるの?』

セミラミス「我は一応言ったぞ? 今なら一瞬で殺して許してやろうとな」

エグイサルピンク『は?』









セミラミス「苦しんで無残に死ね」

赤松「『行け』!」



ズルズルリッ  ギュルンッ



モノファニー「え」

モノファニー(え。何かに巻き付かれ……!?)

ばしゅむ「ふしゅるるるるるるる!」

モノファニー「」

赤松「『吐け』!」


ブシュウウウウウウ!

モノファニー「あ、ぎぎ、ぎゃあああああああああああ!?」ヒューッ

ドスンッ

モノファニー「あ、やだ、やだ。体が溶けっ、溶けて、あばばぎぎあああああああああああ!?」ジタバタ

赤松「はあ……はあ……上手く行った! ありがとうバシュム一号!」

ばしゅむ「ふしゅるるるるる」クネクネ

モノファニー「……な……何が……何が起こって……!?」

赤松「バシュムは二匹いたんだよ! 思えば最初からセミラミスさんもそう言ってた! 全然気付かなかったけどね!」



セミラミス『掟破りの二体同時召喚だ! いでよバシュム!』



赤松「ああ。もう! セミラミスさんも最初から言ってくれればいいのに! 最初からこうする気だったでしょ!」

セミラミス「当然だ。現状の我に、そのクマ? の位置を知る術はないのだからな」

セミラミス「汝の聴力と才能に期待しただけのこと。あとは我より正確にパイロットの位置を知覚した汝が……」

赤松「セミラミスさんが『お手本』でやったようにバシュムをけしかけて詰み……か……」ヘタリ

赤松「説明してよ。最初からさぁ……」

セミラミス「言わなくてもわかると思っただけのこと。というより言ったらそこからバレるであろう?」

セミラミス「第一、こう言ったぞ。我は」




セミラミス『下がっていろ。そして我とバシュムのことをよく見ておけ。後は汝の頑張り次第だ』




赤松「言った。言ったけどさぁ……」

モノファニー「そ、そん……そんなぁぁぁ」ドロドロドロ

モノファニー「い、痛い。とても痛い。アタイの体、どどどどうなっててててて」

セミラミス「……む。エグイサルの力が緩んだな。よし」スルリッ

セミラミス「ふう。さて。では止めを刺してやろう。これも鳩に運ばせた」パチンッ



ドスンッ



セミラミス「鏡だ。存分に見ろ。貴様自身がどれだけ『グロい』有様になっているかをな」ニヤァ

モノファニー「」

赤松「精神的に止め刺しにきたーーー!?」ガビーンッ

赤松「……あ! そうだ! モノファニー! 最後に教えて!」

赤松「ここに来ているのはあなただけ!? 外の世界はどうなってるの!?」

モノファニー「」

モノファニー「ひ」

モノファニー「ど」

モノファニー「い」

モノファニー「」

赤松「……えーと」

セミラミス「なんということだ。精神が崩壊してしまったようだな」

セミラミス「……一体誰がこんな酷いことを」ヒクワー

赤松「……人を本気で殴りたいと思ったのは初めてだよ。ピアニストだから絶対にやらないけど」

セミラミス「ククク」

赤松「……ともかくこれで残ったモノクマーズは一体だけ……」

赤松「急ごう! 巌窟王さんのところに!」

セミラミス「ああ。そうだな。予定は遅れたが……」バキッ

バタリッ

赤松「え。セミラミスさん?」

セミラミス「肋骨が今更折れた。痛みでもう立てん」

赤松「ええっ!?」

セミラミス「……まあここまで来れば関係あるまい? 汝一人だけでも先に行け」

赤松「……」

セミラミス「む? どうした? 何を見ている。人に見降ろされるのはひたすら腹が立つのだ。さっさと先に――」

グイッ

赤松「ほら。肩を貸すから一緒に行こう?」

セミラミス「……何のつもりだ?」

赤松「いや、なんのつもりもないでしょ。ここまで一緒に来たんだし」

セミラミス「我は元からこの世界の住人だぞ。一緒に行ったところで、一緒に外の世界には出れん」

セミラミス「……本格的な治療をしなければ汝は死ぬ。足を遅らせるようなことはするな」

赤松「いやだ。一緒に行く」

セミラミス「……」

赤松「……偽物であることと、これは別だよ。絶対に」

赤松「私はその言葉を信じていたい」

赤松「……私は私がしたいことをするよ。だってこれが私だもん」

セミラミス「……汝はバカだな。本当に……」







モノクマ「おやおや。モノファニー。精神的に死んでしまうとは何事じゃ」

赤松「ッ!」

モノファニー「あ、あ、あ。おとうちゃん、助け……」

モノクマ「……うん。助けるよ」ポチッ


ドカァァァァァンッ


モノクマ「そうら。楽になっただろう?」ニヤァ

赤松「……も、のく……!?」ガタガタ

モノクマ「……うぷぷ」

今日のところはここまで!

え……セミラミスさんツッコミ無双だったの……イベントで……
こっちボケ倒しなのに……

巌窟王チーム

天海「どうっすか最原くん。なにかわかったりしないっすか?」

最原「十中八九裏切り者はBBさんだよ」

天海「そうっすか……やっぱりそんな早くわかるわけが――」

天海「早ッ!?」ガビーンッ

獄原「……え。最原くん、今なんて?」

最原「BBさんが裏切ってる」

巌窟王「……やはりか。そうだろうな。アイツしかいないだろう」

天海「いやいや! おかしいっすよ! 彼女がモノクマに与する要素が一体どこにあるっていうんすか!?」

巌窟王「……最原。何か思いつくか?」

最原「なんとなく推測は立つよ。『BBさんが裏切りを決意したタイミング』から色々と割り出せる」

東条「……いえ。待って。そもそもそんなものを判断できる材料があるの?」

最原「ゴン太くんだよ」

獄原「え!? ご、ゴン太?」

最原「ゴン太くんはBBさんからあらかじめ『アルターエゴの破壊の定義の穴』について聞いていた」

最原「モノクマが直接見ない限りは大丈夫だって聞いてたんでしょ?」

獄原「う、うん。ちょっとした世間話の中で聞いただけだけどさ……」

最原「そんなこと、僕たちにはわかりようがない。もしもその時点でモノクマに付いてしまおうと考えていたら……」

入間「ああ! ゴン太に馬鹿正直に話すわけがねぇってことか!」

最原「それでもBBさんは話した。なら『この時点でモノクマにつこうだなんて発想自体が存在しなかった』と考えるしかない」

巌窟王「一応聞いておくが、その定義の穴が丸ごとBBのでっち上げだという可能性は?」

最原「入間さん。どうだった?」

入間「……いや。正しい。さっき調べてみたからまず間違いねぇ」

入間「逆に言うと『俺様でも言われるまで気付かなかったような真実』をアイツは気付けたってことだが……」

巌窟王「単純な話だ。お前よりもソフトに関しての理解はアイツの方が上なだけ。気にすることではない」

天海「ん!? ちょっと待ってくれっす!」

天海「その時点でモノクマにつこうって発想がなかったのなら裏切りを決断したタイミングは……」

最原「僕がこの世界の真実を海の家で話してから、爆音が響くまでの間……」

天海「み、短すぎる! ありえねぇーっすよ、それ!」

真宮寺「巌窟王さんに聞きたいんだけど、BBさんってそんなに尻軽なの?」

巌窟王「……難しいところだな。だが決断が早くて極端というヤツの性格上、ありえない話ではないと俺は考える」

天海「いや! 待って! そもそもBBさんが裏切ったという証拠がない!」

天海「証拠がない以上、最原くんの仮説は『不自然なところだらけ』だから通らないっすよ!」

最原「……どうやってモノクマは、あの部屋の中の状況を知ったんだと思う?」

天海「は? それは……」

天海「……」

最原「天海くん。キミならわかるんじゃないかな。さっきから『裏切り者なんているはずがない』と言っていたキミなら」

天海「そ、それは……」

最原「なんでそう思っていたの? その最大の根拠は何?」

天海「……」

天海「『裏切り』を利用して『裏切り返される可能性』をモノクマが考えないはずがないから」

東条「……どういうこと?」

天海「定義の穴の話。覚えてるっすか?」

東条「ええ。一通りは」

天海「その中でBBさんはこう言ってたはずっす」




BB『仮に『まあ壊れただろう』という『みなし』で校則違反判定を行って、後から実は壊れてませんでした、となったら……』

BB『この学園生活そのものに対する信用にかかわりますので、絶対にみなしや推測であなたたちを裁いたりはできないはずです』




真宮寺「それがどうしたの……って、ああ。なるほどネ」

入間「いやわかんねーよ。もっと噛み砕いて口移しで呑み込ませろっての!」

天海「俺がモノクマに裏切りを持ち掛けられたとしたら、俺は確かにその話を受けるっすよ。速攻でね」

獄原「えっ!?」

天海「でもそれはモノクマにつくメリットがあるからではなくって……単純な話っすよ」

天海「この取引はモノクマを嵌め返す絶好の機会になるから」

天海「もし俺なら……あのアルターエゴを破壊しろと言われたら……」

最原「『壊したフリをする』でしょ?」

東条「!」

天海「ついでに、モノクマに『アルターエゴは壊した』という嘘の情報を流して『校則違反』を誘発させる」

天海「その後で『壊れてなかった』ことを明かして……まあ、そうすればモノクマのルール違反だって告発できるっすよね」

天海「ズルいっすけど、まあ俺ならこうするっす。『モノクマに嘘を吐いてはいけない』というルールはないっすし」

天海「ゲームとしてのフェアさを乱したのは、この場合はどう考えてもモノクマっすしね」

天海「そして、モノクマ自身も『こういうことをされたら困る』だろうから、生徒に裏切りを持ち掛けるようなマネは絶対にしない」

天海「俺が裏切り者がいないと主張する理由はここら辺っすよ」

最原「……うん。間違いないと思う」

天海「だったら……!」

最原「だからBBさんしかいないんだよ。裏切り者の正体は」

最原「要は誤報の余地が一切なくなればいい」

天海「は?」

最原「……モノクマが直接、壊れたアルターエゴを確認できれば二重の裏切りの可能性はなくなる」

東条「そうね。直接確認できればそうでしょう」

東条「……あっ」

獄原「あ」

真宮寺「あ」

入間「……ん?」

天海「……あれ? 何人か微妙な反応してる人いるっすけど、どうしたんすか?」

東条「……不覚、だったわね……! なんてこと!」

最原「これがBBさんが犯人だということの証明。だって彼女が気付かないはずがないよね?」







最原「モノクマがあの部屋の中にいたとしたら絶対に!」

天海「あっ!」

ごめん生放送見るから休憩!

配信時期を見て無事死亡。今日のところはここまで!

天海「……」

最原「やっぱり薄々気付いてたんじゃない? 天海くん」

天海「いや……俺は裏切り者が出ない理由だけを確信してただけで……」

天海「でも今から考えるとすべてのタイミングがあまりにも都合が好すぎっす」

東条「私たちがアルターエゴの破壊を確認した直後にモノクマのアナウンス……これのせいで疑心暗鬼になっていた」

真宮寺「いや? 今から考えるとBBさんが発端じゃなかったっけ?」



BB『もしかしたら……この中に裏切り者がいるのかもしれないですね』



星「言い出しっぺはBB……しかもこの後のBBの発案は確か……」



天海『ど、どうするんす!? 逃げる? 隠れる!?』アタフタ

BB『……私ならアレを一体、二体破壊はできると思いますけど……』

BB『ふむ。『逃げる』の方向で行きましょう』



星「これもすべてBBの計算の内。つまりモノクマを俺たちの目から隠すための誘導だったと考えれば……」

入間「気持ち悪ィくらい辻褄が合うじゃねぇか……!」

天海「……まだ……まだ状況証拠っすよ……!? BBさんが裏切った決定的な証拠は……」

最原「巌窟王さんのトラップ」

巌窟王「これか?」

最原「……鉄杭の出所、BBさんなんでしょ?」

最原「天海くん。これ、見覚えがない?」

天海「ん……あるっすけど……具体的にどこで見たかは……」

天海「……」

天海「いや、思い出したっす。ああ、もう!」ダンッ

入間「んだよ。地団太踏んで。こんな鉄杭どこにでもあんだろ?」

巌窟王「エグイサルの外殻は恐ろしく硬い。それを貫ける頑丈な鉄杭などそうそう用意できてたまるか」

入間「……ん?」

巌窟王「お前たちがこれと似たようなものを見たというのなら、それは間違いなくBBが出したものだ」

巌窟王「他の出所などありえない」

東条「……砲台の固定に使われていた鉄杭」

入間「あ?」

入間「……」ジーッ

入間「ああっ! まさか『似てる』んじゃなくって『完全に同一のもの』なのか!」

最原「痕跡から見るに設置そのものはモノクマがやったんだろうけどね……BBさんも関わってるのは確かだよ」

最原「更に言おうか。あの砲台、完全に組みあがった状態だと標準がほぼ動かない」

最原「ついでに発射する前は当然『壁』があるわけだからどの位置にアルターエゴがいるかもわからない」

最原「だから砲台から発射される砲弾をピンポイントで標的に当てるためには『標的の方を動かす』しかない」

最原「……できると思う? BBさんにバレずに標的の位置……つまりアルターエゴを動かすなんて」

天海「不可能……っすけど……」

獄原「つきっきりで看病してたからね。絶対にできないよ……」

獄原「BBさん以外には」

東条「……モノクマのアナウンスはタイミングを見てあらかじめ録音しておいたものを流せばいいだけ」

東条「手間はかからないわ」

最原「……問題が唯一あるとしたら『謎』があまりにも簡単すぎることかな」

最原「隠すつもりも毛頭ないんだろうね」

天海「……まだっすよ! まだ!」

最原「ん?」

天海「彼女は『生徒』じゃない! つまり校則は適用されないはずっす!」

天海「つまり生徒ではない者がアルターエゴを壊したところで、それは『事故』のようなもの!」

天海「校則違反の処理が適用されるのがおかしい……っていうか……」

巌窟王「苦し紛れだな。そんなものはどうとでもなる……というより反証は俺そのものだ」

天海「……」

巌窟王「ヤツは俺と初めて会ったとき、こう言った」






モノクマ『ただ、この学園の中にいる以上は、暫定的に校則を適用するよ』

モノクマ『殺すのも殺されるのも生徒と同じ処理だからね』




巌窟王「言うなれば必要なのはモノクマの『宣言』だ。BBがモノクマと接触しているのならばそれで何一つ問題はない」

天海「……だとしたら……だとしたら……!」

天海「なんで!? なんで俺たちを裏切ったんすか!?」

最原「本人に聞かないとわからないよ。流石に」

最原(でも……さっき天海くんが言っていた予測がそっくりそのまま答えだろうな)

今日のところはここまで!

最原「……ゴン太くん。ここから先の行動を決めるには、最後に訊ねておかないといけない」

最原「BBさんから何を託されたの?」

獄原「ええっと……」

入間「聞く必要あるか? あいつが裏切ったことはブッ確定なんだろ? だったら訊ねる前に処分した方が後腐れもねぇだろ」

最原「本当にそうかな?」

獄原「……ハッキリ言っちゃうとね、この装置は『新世界プログラムを強制破壊する装置』だよ」

巌窟王「なに?」

獄原「ただし本当になんでもかんでも破壊しちゃうから、最低限この装置の有効範囲に破壊されてはいけないものが入ってちゃダメなんだって」

獄原「破壊した後はプログラムを再構築して、ただ『入ってきた人格をそっくりそのまま元の体に戻すプログラム』に変えちゃうんだってさ」

東条「それは凄い……けども……」

星「それが本当だったらな」

入間「今となっちゃコレの効力が本物かどうか怪しいもんだぜ」

獄原「BBさんはこう言っていた。有効範囲は『この装置の視界に入っているもの全て』だって」

獄原「だから装置を設置する場所は『島の外縁部』がベスト。尚且つ破壊に巻き込まれないように生徒全員が装置の真後ろに立っていなければならない」

最原「赤松さんがいないから使えないね。今は」

最原「島の外縁部がベストなら……海の家で作動させるのがいいんじゃないかな」

入間「お?」

巌窟王「お前は……まさかコレを使おうというのか?」

最原「……」

入間「いやいやいや。流石にそりゃねーだろ。言葉の綾ってヤツだよな?」

入間「だって! BBは明らかに俺様たちを裏切ってんだろ!?」

天海「違う……!」

入間「あ?」

天海「そういうのもうたくさんっすよ! 裏切るとか、裏切られたとか……この局面でそんなこと言いたくないっす!」

入間「てんめぇ……まだそんな甘いこと言ってんのか? いい加減胸焼けしそうだぞオイッ!」

天海「いいや。いつまでだって言ってやるっすよ! だってまだ明らかになってない!」

天海「BBさんが何を考えていたのか。最後の最後まで明らかにしないと納得できない!」

入間「……だ、ダサイ原。お前もなんか言ってやれって。コイツもうダメだろ」

最原「天海くん。残念だけどそんなことを言ってられる時間はもうないみたいだ」

最原「……同感だけどさ」

天海「超高校級の探偵が随分と弱気っすね!」

最原「……否定できないけど」

天海「俺は絶対に認めないっすからね! BBさん本人から聞くまでは! 何も!」

最原「……ええと、ごめん。僕にも天海くんの説得は無理だよ」ズーン

入間「推理以外本当に役に立たねぇなぁ!」

天海「俺は仲間を信じることをやめたくない。やめない! BBさんがこの装置の有用性を説くのなら俺はそれを信じるだけっす!」

最原「あ。ごめん天海くん。先に言うべきだったね」

天海「ん?」

最原「BBさんの装置を起動させることに関しては僕も反対しない。というか賛成だよ」

天海「……」







全員「……ゑ?」

巌窟王「お前は……裏切られても尚、アイツのことを信じるというのか?」

巌窟王「天海のように『裏切られてない。だから信じる』という信頼からの主張なら理解もできよう」

巌窟王「だが、最原。お前は……!」

最原「裏切られた。でも信じる。だって彼女、僕たちの仲間でしょ?」

巌窟王「……」

巌窟王「ふむ。いいだろう。俺もBBの装置を起動させることに関しては賛成だ」

入間「うぉぉぉぉぉぉぉいっ!?」ガビーンッ

巌窟王「安心しろ。経験則でわかる。その装置の効力は間違いなく本物だろう」

巌窟王「……真意は絶対に口にしないであろうが……アイツがお前たちを助けようとする意志そのものは真実だ」

最原「……」

天海「最原くん……ヤケになってるわけじゃないっすよね?」

最原「うん。色々考えた結果だよ」

最原「BBさんがこちらに向けていた感情は悪意じゃない。それは確信できてる」

最原「……きっと僕と天海くんじゃ『裏切り』の定義が違うだけだ。ただそれだけだよ」

天海「……」

星「どっちにしろ赤松が来ない限りは議論は無駄だな」

東条「……そうね。それまでどうやって生き残るかを考えることにしましょう。残るトラップの数は?」

巌窟王「三つ――」



カチリッ グサグサグサグサッ



巌窟王「今二つになったな」

真宮寺「赤松さん、無事だといいけどネ」

今日のところはここまで!

セミラミスチーム

セミラミス「うーん……うーん……シロウ……助けてシロウ……ハッ! 夢か!」パチリッ

セミラミス「やれやれ。マスターが急に大量増殖して我の鎖を手掴みでブチブチ持っていくとは……凄まじい悪夢だったな」フー

セミラミス「あー。怖かった」

赤松「セミラミスさん! セミラミスさん……!」

セミラミス「ん? カエデ、どうした? 何故泣いている?」

赤松「お腹……お腹に穴が!」

セミラミス「何? 我が寝ている間に凄まじい怪我をしたな? どれ、見せて……穴など開いてないぞ?」ハテ

赤松「違う! セミラミスさんのお腹に穴が開いてるの!」

セミラミス「ん? ……あー……」

セミラミス「しまった。現実も悪夢のようなものだったな? はあ……まったく」

セミラミス(……流石にもう動けんぞ。指一本動かすのも億劫だ)

モノクマ「セミラミスさん。調子に乗り過ぎ。流石にモノファニーを倒すのは出しゃばりすぎだったね」

セミラミス「……そうだな。趣味に走り過ぎたか」

セミラミス(これはもうどうしようもないぞ)

セミラミス「カエデ。今のうちに逃げておけ」

赤松「!」

セミラミス「どうもモノクマの殺意は薄い。いや我のことは本気でデリートしようとしているが、それだけだ」

セミラミス「……あやつ、汝を殺す気はないのではないか? 少なくとも乗り気ではなさそうだ」

赤松「セミラミスさんを置いてはいけないよ!」

セミラミス「そうであろうな。我も決して、汝の前で自暴自棄になりたくはないのだが……」

セミラミス「ほら。『我が死んでも本物のセミラミスが死ぬわけではない』とか言ったら『偽物』である汝の価値を貶めることになろう?」ニヤァ

赤松「わかってるんだったら一緒に逃げようよ! 立って! しっかりしてよ!」

セミラミス「我は物凄くしっかりしておるぞ? なにせ女帝であるしな? だが冷静に考えてみろ。一度黙って頭を巡らせてみるがいい」

赤松「……」

セミラミス「なあ? どう考えても無理であろう?」

赤松「……!」

セミラミス「わかったな? わかったらさっさと行け。汝の心臓が持つのはあと……何分だ? 寝ていたから時間間隔も狂って……」

赤松「やだ……やだよぅ……せっかく仲良くなれたのに……友達になれると思ったのに!」

セミラミス「厚かましいな? この島に来てから一番びっくりしたぞ」

セミラミス「まあともかくさっさと行け。いい加減に鬱陶しい」シッシッ

赤松「……」

セミラミス「行けッ! 我のこれまでの奮闘、および存在すべてを無駄にする気か!?」

セミラミス「考え方を変えろ! 助けを呼ぶためにここから去るのだと! 我のことを案じるのはよせ!」

赤松「……うん。わかった……! 誰か連れて来るから。絶対に連れて帰ってくるから。待ってて……絶対に死なないで!」ダッ

セミラミス「程ほどにな」ヒラヒラ

モノクマ「……で。別れの挨拶は済ませた?」

セミラミス「ああ」

モノクマ「何か最後に言い残すことは?」

セミラミス「……それはこちらの台詞だなぁ」ググッ



ボタボタッ



セミラミス「……さて。カエデの背中を撃てると思うなよ。我がいるのだからな」

セミラミス(一分程度足止めできればゲームクリアであろうな)

セミラミス(カエデの治療他、後のことはBB頼みで問題なかろう)

セミラミス「来い。デリートされるのがどちらかしっかり教えてやろう」

モノクマ「うぷぷ……!」

ザッザッザッ


赤松「誰か……! 誰か助けて! ここまで誰も死なずに来れたじゃない!」

赤松「死ぬとか殺されるとか[ピーーー]とか、そういうのはもう絶対にダメ!」

コケッ ズサァッ

赤松「あうっ……!」

赤松「い、痛い……凄い擦りむいた……!」

赤松「……」

赤松「誰か……巌窟王さん。アンジーさん。最原くん……! お願い、気付いて。こっちに来てよ……!」

赤松「私たちを助けてッ!」




ザザーッ


赤松「ん?」

赤松(……ノイズ音?)


now hacking...


OK!


「問おう。何故そこに私の名前がないのか」

赤松「ん……?」

赤松「んっ!?」ガビーンッ

BB「まあいいです。応えましょう」

BB「私はみんなのムーンキャンサー、BBちゃん! 巌窟王さんに代わり、あなたの願いを叶えましょう!」

赤松「……BB、さ……!」

BB「真打は遅れて登場ですっ」キャルーンッ

赤松「……」

赤松(そのときの私の驚愕は、とても表現できるものではなかった。何故なら……そう。何故なら……!)







赤松「なんでナース服姿なのーーーッ!?」ガビビーンッ!

今日のところはここまで!
引き続き鎖もぎもぎしないと……

私事ではありますがこの採集決戦においてシェイクスピアさんとの絆が10になりました。イエエエエエエエエエエイ!


これからも頑張ります!

セミラミス(もうまぢ無理)ズーン

モノクマ「し、しぶとい! 攻撃力はまったくないけど恐ろしいくらいしつこい!」

セミラミス「……なんかもう高笑いするのも面倒だな。凄く辛い。死ねるものならさっさと死にたいのだが」フアーア

モノクマ「こっちも殺せるものなら今すぐ殺してあげたいんだけど!? なにアクビしてんの!?」

セミラミス「貴様も難儀よなぁ。あやつを殺す気なんぞ毛頭ないくせに」

モノクマ「……」ピクッ

セミラミス「……最原の言っていたことが真実であることの証左か。なんとなく貴様らのやりたいことがわかってきたぞ」

セミラミス「いや? 逆だな。やりたいことは実際わからんが『やりたくないこと』はわかってくる」

セミラミス「貴様は結局……」

モノクマ「遺言はそれでいいの?」カチャッ

セミラミス「……まだ試してない手がある。それを貴様に試してからだ」

セミラミス「逆転の一手を見せてやろう! ククク……!」ピクッ

セミラミス「……な……何故だ」

モノクマ「?」






セミラミス「何故戻ってきたカエデッ!」

モノクマ「ッ!」バッ

モノクマ「……あ、あれ?」

セミラミス「誰もいないぞ。嘘だからな」ジャララッ

モノクマ「あ」


ガシャンッ!

セミラミス「捕縛完了! これで十秒は……」

モノクマ「よいしょっ」バキーンッ

セミラミス「持たんか。ままならぬなぁ」ハァ

モノクマ「……じゃあ、さよなら。今度こそ消えてなくなれーーーッ!」カチャリッ

セミラミス「待て。最後に我の願いを聞いてはくれぬか?」

モノクマ「なに?」

セミラミス「……」

セミラミス「今日が誕生日なのでポケモンセンター行ってイーブイ貰ってきたいのだが」

モノクマ「消えてなくなれーーーッ!」ドシュウウウウウウッ

セミラミス「ダメか」

セミラミス(まあ問題はない。一分は経った……経ったよな?)

セミラミス(充分だ。ゲームはクリアしたと前向きに考えよう……)

セミラミス(もう目を開けて……いられな……い……)





ドカァァァァァァァンッ!

セミラミス(……?)

セミラミス(声が……聞こえる……)



「セミラミスさんっ! 起きて! セミラミスさんっ!」



セミラミス(やっと体の痛みを眠りで誤魔化せるところだったのだ。寝かせておいてくれ……)

「セミラミスさんっ!」

セミラミス「……んん。誰だ……?」パチリッ

セミラミス「ん?」

赤松「よ……よかった。目を開いたよ!」

セミラミス「カエデ? なぜここに? まあよい、汝にこれを授けよう」

赤松「え。なにこれ。ゲーム機?」

セミラミス「これを持ってポケモンセンターに行きイーブイを貰ってくるのだ。我は今日誕生日なのでな」

赤松「多分代理じゃダメだよ!?」


※マナー的にダメです


BB「それ以前に状況考えてくれません? あとあなた誕生日とかそんな概念ないでしょ」

セミラミス「……BB……」

セミラミス「……」ハッ

赤松「ん? セミラミスさん?」

セミラミス「バカ者めがッ!」バチィィィンッ

赤松「痛ァーーーッ!」

セミラミス「何故戻ってきた! アホかッ!」

赤松「じ、自分がどれだけ傷ついても冷静だったくせに変なところでキレるね……」

赤松「だってセミラミスさんを置いてはいけないよ! なんかもう放っておけないし!」

セミラミス「……くっ」

BB「さてと」

BB「モノクマさん。ここからはサシでやりましょう」

モノクマ「ちぇ。邪魔が入っちゃったか」

セミラミス「……カエデ。治療は?」

赤松「道すがらBBさんがやってくれたよ」

セミラミス「そうか。ならばよい」スゥ

赤松「……セミラミスさん。体が透けて……!」

セミラミス「もう限界だな。助けに来てくれて悪いが無駄足だ。本当に眠い……」

セミラミス「BB……後のことは頼むぞ」

赤松「だ、ダメだよセミラミスさん! 死なないで!」

セミラミス「……こんな手傷負った者にかける言葉としてはこの上なく残酷なのだが……」

セミラミス「……案外くだらないものだったな。だが悪くない……見送られる側というものも……」

セミラミス「……」

赤松「セミラミスさぁぁぁぁぁぁん!」






BB「私が契約して魔力供給するので立ってください」キィンッ

セミラミス「マジか」スンッ

赤松「蘇ったーーーッ!」ガビーンッ

セミラミス「クッハハハハ! いやぁ、悪くない! 悪くないぞ! 流石に傷が深すぎてすべて回復というわけにはいかんが!」

セミラミス「立って歩けるだけで上等だ! どうする? 二人であのクマを甚振ればよいのか!?」

赤松「急に調子乗り出した! やめようよセミラミスさん! 生きてるだけでいいとしようよ!」

セミラミス「カエデ。一つ教えてやろう。我もそこまで大人というわけではないので……」

セミラミス「我をここまで愚弄したあのクマ親子に対して何も思うところがない、というわけでは決してないのだ」ギンッ

赤松「うわあ! 超怒ってる!」

BB「……あー。そのー。なんですか。こう言ってはなんですけど……」

BB「察してくれません?」

セミラミス「む? 何を……そういえば貴様。巌窟王と違ってレイシフトしてるわけでもないのに、この魔力はどこから――」

BB「……」

セミラミス「――そう、か。ふむ」

セミラミス「いいだろう。行くぞカエデ。巌窟王のところまで送っていく」

赤松「へ? あ、あれ? モノクマは?」

セミラミス「BBだけで充分だ。行くぞ」

セミラミス「……安心しろ。あやつもすぐに来よう。我の二の舞は踏むまいさ」

赤松「う、うん……じゃあBBさん。程ほどにして絶対に来てね! 巌窟王さんにも伝えてくるから!」

BB(元から知ってるんですけどねぇ)

BB「……さて。二人きりですね。モノクマさん」

モノクマ「そうだね」






BB「じゃ、逃げちゃってください」

モノクマ「お疲れさまー」バイバイ

BB「……さてと。後は……どうしましょうかね……私も血迷ったなぁ」

BB「最後まで巌窟王さんを助けられないのが、とっても残念」

今日のところはここまで!

セミラミス(アルターエゴ)

世界最古の毒殺者にしてアッシリア帝国の女帝。夫であるニノス王を毒殺したことで一躍名をはせた人類最古の毒殺者。
……のアルターエゴ。製作者はカルデアのセミラミス。
嫣然とした笑みを浮かべる退廃的な雰囲気を纏った絶世の美女。

原理的にはセミラミスがかつて作った『チョコのセミラミスのチョコラミス』と同じであり、言うなれば『ゲーム上に再現されたアルターエゴのエゴラミス』である。
本来はサーヴァント専用ゲームである戦慄のファーストタイヤキング・オブ・バビロンのナビゲーターとして作られた仮想人格なのだが、ちょっとした気まぐれでゲームをクリアした最原と、その仲間である才囚学園の生徒に同行。

仲間になったつもりは毛頭ないが暇潰しにちょっと眺めていよう、と思う程度に興味を示す。お気に入りは赤松と入間。

かつて白銀とモノクマによって、新世界プログラムに組み込まれた折に様々な権限へのロックをかけられたが、特に気にしていない。それよりも、おそらく誰も転送するはずがないこのゲームが何故この場にあるのかが気になっている。

カルデアと才囚学園に何らかの『穴』が存在するのではないかと推測はしている(が、それを誰かに話したりはしない。単純に気になるだけなので)。

魔力供給とストレス解消のためにチョコ菓子を大量に食べている他、普段はまったく平気な度数の酒を飲んで酔っているのは気が抜けているせい。白髪の少年の気配がちょっとでもある限りはこうはならない。

巌窟王チーム

カチリッ グサグサグサッ


巌窟王「ちぃっ! トラップがついに尽きたぞ! 東条! トラップの修繕は?」

東条「間に合わないわね。全力でやっているのだけれども。巌窟王さんもでしょう?」パッパッ

巌窟王「……こうなったら最後の手段に頼るしかないか。俺が直接エグイサルを叩く」

巌窟王「赤松が帰ってくるまで持てばそれでいい……!」

獄原「だ、ダメだよ! アンジーさんに無理はさせられない!」

巌窟王「ああわかっている! だが他に手はあるか!? ここで手をこまねいていてはアンジー含めた全員の死が待っているのだぞ!」

最原「……」

天海「どうしたんすか? 最原くん」

最原「さっきまで結構余裕だったのに、段々追い詰められてきてる」

天海「それが? 別に変なことじゃないっすよね?」

最原「そうなんだけど、なにかゲーム的っていうか……『最初は易しくて進行につれて難しくなる』ってところとかさ」

天海「……それは俺も気にはなってたっすけど……」

星「焦りを誘発させているのかもしれねぇな。このままここにいたら殺すぞって脅しとも言い換えられるが」

天海「ん? 脅しじゃなくって実際に殺しに来てるのでは?」

最原「……僕たちを追い出そうとしている?」

真宮寺「ありえるかもネ。その証拠に、海の家に行こうと思えば、巌窟王さんの今のスペックでも全員無事に行けるだろうし」

真宮寺「BBさんから聞いた情報から、モノクマも色々と仕込んでたんだろうネ。そう考えると何かしっくりくるヨ」

天海「それが本当だとして、モノクマは一体何をしたいんすか」

最原「……仮説は……あるよ。さっきBBさんが裏切ったタイミングから色々と推測は立つって言ったでしょ?」

天海「ああ。なんか妙に即決即断だなー、おかしいなーって話してたっすよね」

最原「例えばモノクマが何らかの……そう、僕たちを今まで駆り立てていたような動機を持っていたとして」

最原「そんな短時間で突き動かせるかな?」

天海「……えーと」

東条「無理よ。流石にそんな短時間では。私は一晩悩んだもの」カチカチ

天海「……」

最原「そう。人の考えはそうそう簡単に変わらない」

最原「……変わってなかったとしたら?」

天海「さっき巌窟王さんが言ってたっすよね。『俺たちを助けようとしている意思そのものは真実だ』って」

天海「だとしたら……BBさんは俺たちを助けようと思って裏切った? そんなことあるんすかね?」

真宮寺「騙された、という可能性はどうかな?」

入間「同じことじゃねーか? モノクマの言うことが本当かどうかわからないのなら、それを疑って決断は鈍るだろ?」

真宮寺「死にたい」ズーン

入間「俺様に指摘されたことがそこまでショックか!?」ガビーンッ

最原「取引……そういう形なら自然じゃないかな。モノクマは何らかのメリットを信用できる形でBBさんに見せたんだ」

最原「BBさんはそれに飛びついた。即断即決で」

天海「俺たちを助けるという意に反しない、どころかその行動理念からするとメリットになるような取引……?」

最原「直接本人に問いたださないとわからない。ここまで割れてるんだから、問い詰めれば絶対に彼女は吐くよ」

最原「……それまで僕たちが生き残っているかどうか、だけど……」

獄原「見損なったよ巌窟王さん! アンジーさんのこと、大事にしてると思ったのに……!」

巌窟王「知った口を利くな獄原ッ! お前にアイツの何がわかる! 何故ヤツのことを信じてやれない!」

獄原「信じてるよ! だからって納得できない!」

エグイサル「……」ガシャコーンッ

東条「二人とも! エグイサルに狙われて――!」







巌窟王「邪魔だァ!」ブンッ

獄原「引っ込んでて!」ブンッ



ドガシャアアアッ


エグイサルだったもの「」

東条「投石で沈黙させたわ」

最原「……」

天海「ピンチはピンチっすけどまだ大丈夫っぽいっすね」

最原「うん。この調子のまま赤松さんが来てくれれば……!」

「みんなー!」

最原「……この声!」

天海「赤松さ――!」

赤松「助けてー!」ビエエエエンッ

竜牙兵「……」ワーッショイ ワーッショイ

天海&最原「神輿に乗ってるーーーッ!」

真宮寺「違うヨ。人が乗ってる場合は山車だヨ。神輿に人は乗らない」

赤松「た、助けっ……おち、落ちる……! この人たち一回の『ワッショイ』で凄い持ち上げて体がフワッとする、いやあああああああ!」

竜牙兵「……」ワーッショイ ワーッショイ

最原「ていうかそれ何!? いや、誰!? いや、やっぱり何!?」アタフタ

セミラミス「竜牙兵だ。数を揃えれば便利だぞ?」

最原「あ。セミラミスさ……なんで泥だらけ傷だらけなの?」

真宮寺「……あ。一台、空の山車がある……赤松さんが乗ってるのと同型の……」

最原「落ちたんだね!?」ガビーンッ

セミラミス「はしゃぎすぎて一ワッショイの勢いをつけすぎた」

天海「ワッショイって単位じゃないっすよ!?」


ベシャッ


星「赤松も落ちたぞ」

赤松「いだいー」エグエグ

最原「赤松さーーーんッ!」ガビビーンッ

今日のところはここまで!
……まさかダーニックおじ様だったとは……

赤松治療中

巌窟王「貴様。赤松のことをなんだと思ってる?」ゴゴゴゴゴゴゴ

セミラミス「入間と同じ。叩くと音が出る愉快な玩具」

赤松「酷い言い草だ!?」ガビーンッ

入間「あれ!? 俺様も玩具なの!?」ガビビーンッ

星「……おい。BBはどうした?」

セミラミス「会った。しんがりを任せた」

赤松「あ! そ、そうだ! 巌窟王さん! BBさんがモノクマを食い止めるために、置き去りになっちゃって!」

巌窟王「なに?」

最原「!」

赤松「多分、適当に切り上げてBBさんも逃げて来ると思うけど……どうしよう! どうしたらいい? もしものことがあったら!」

巌窟王「……そうか。セミラミス」

セミラミス「チッ。貴様も我頼みか。無能どもが」ウンザリ

最原「……?」

セミラミス「この中に、BBに何かを託された者はいるか?」

獄原「あ、えと。ゴン太が色々と貰ってるけど」

セミラミス「そうか。ならばさっさとそれを使え」

獄原「……え?」

セミラミス「BBに『待っていろ』とでも言われたか? 安心しろ。この状況を想定できないヤツではないからな」

最原(……なんだ? 急に話が進み始めた……っていうか。巌窟王さんが促した感じだな)

赤松「……なに? 何の話?」

星「この世界を破壊する最終兵器の話だ。BB産のな。それを使えば俺たちは外に出られる」

星「今までは校則違反を恐れて使えなかったが、もう校則違反となっているのであれば関係ないという話だ」

赤松「す、凄いじゃん! やっちゃおうよ! アンジーさんの怪我も治せるしさ!」

赤松「予定より早まるのなら、むしろそっちの方がいいくらいだって!」

最原「ッ!」

セミラミス「汝は妙にポジティブだなぁ」

最原(予定より早まる……?)

最原(まさかこの校則違反でBBさんが変えたかったのは……予定?)

最原(いや。でもそれで僕たち全員が危険に晒されるのなら、賭けとしては相当分が悪いような)

最原「……」

最原(分のいい賭け……だとしたら?)

最原(モノクマの動きがおかしい。あの壊れた部屋に隠れていたのだとしたら、何故赤松さんの方に現れる?)

最原(僕たちを始末したいのなら巌窟王さんの方に向かう僕たちを後ろから不意打ちする方が効果的だし……)

最原(なにより手間だ! ベッドルームよりアンジーさんの病室に行く方が近い!)

最原(モノクマは赤松さんの方に何をしに行ったんだ?)

最原「……様子見……?」

最原(そういえばこの状況だと……)

天海「BBさんとモノクマが二人きりっすけど……」

最原「……よし。ゴン太くん。やろう」

獄原「え」

最原「海の家……だよね。そこでこの島全体を壊す装置を発動する。視界に入ってるものはすべて壊れるって算段だよね」

獄原「え? え? ちょっと待ってよ。BBさんが帰ってきたら事情を聞くって話は?」

最原「大丈夫。事情なら海の家で聞くよ」

赤松「……勝手に移動して大丈夫かな?」

巌窟王「書置きを残す」

セミラミス「しゃらくさい。その書置きは我が鳩に運ばせよう」

巌窟王「それよりだ。セミラミス。貴様、この世界を壊した後は……」

セミラミス「……」

天海「あ。そうっすよ! セミラミスさんはどうなるんすか!? なにもかもなくなったら生存できないっすよね!?」

セミラミス「まあなんとかなるであろう」サラリ

天海「軽っ」

セミラミス「早く行くぞ。海の家へ」

東条「……巌窟王さん。本当にこれでいいの?」

巌窟王「……」

セミラミス「……チッ!」

赤松「どうしたのセミラミスさん。急に不機嫌になってるよ?」

セミラミス「なんでもない。我にばかり汚れ仕事を押し付けるカスどもにイライラしているだけだ」

赤松「……何の話?」

セミラミス「そら行くぞ。さっさと乗り込めカエデ」ジャララッ

赤松「ええっ!?」ヒョイッ

竜牙兵「……」ワッショイ! ワッショイ!

赤松「またコレーーーッ!?」ガビーンッ

最原「なんか赤松さん妙にセミラミスさんに気に入られてない!?」

巌窟王「……」ニガニガ

星「すげぇ苦々しい顔になってんぞ」

セミラミス「それでは生徒どもは我が引率するので、巌窟王。貴様は自分のマスターの身支度を整えて、さっさと追随してこい」

セミラミス「『足手纏い』だからゆっくりとな」

巌窟王「……フン」スタスタ

天海「えっと……セミラミスさん。彼が足手纏いになるってことはないんじゃないっすか?」

セミラミス「戦力的なことを言ってるのではない」

セミラミス「……さて。行くぞ。ついてこい」

天海「……んー?」

最原「……」

今日のところはここまで!

ザッザッザッ


最原「う……これ、破片がそこら中にあるけど……」

セミラミス「気付いたか? そう、竜牙兵だ。あとエグイサルの残骸」

天海「さっき赤松さんを連れて行ったヤツっすよね。なんでこんなに大量に壊れてんすか」

セミラミス「それはだな、カエデを発見して近づいたエグイサルを竜牙兵が取り囲んで滅多打ちにするという『囮&特攻作戦』を実行しているからだ」

入間「バカ松囮かよ! エゲツなっ!」ガビーンッ

最原「これエグイサルもだけど竜牙兵もかなりの頻度で壊れてるよね?」

セミラミス「海の家まで持つか心配か? 計算はした。問題はなかろう。そして我らはその後ろを安全に歩くことができる」

セミラミス「ああ、当然ながらカエデも安全だぞ? 我らより『ちょっと危険』なのは確かだが」

天海(ここまで信用できないちょっとは初めてだ……)

セミラミス「ククク。魔力が満ちているというのは素晴らしい気分だな。これだ。これこそがセミラミスだ」

セミラミス「神代の力を存分に振るう……一応アサシンだぞ?」

真宮寺(あ。サーヴァントだったんだネ)

星(単なる面白NPCかと思ってたぜ……)

最原「ところで、セミラミスさんはそもそもなんでこの世界に?」

セミラミス「知らぬ。気付いたらこの世界に接続されていた。というか外の世界からやってきた貴様らにこっちが訊きたいくらいだぞ」

セミラミス「何故我はこの世界にいるのだ?」

天海(知らんがな、と言いたい……言ったら怒られるかな。怒られるだろうな)

入間「知るかボケ」

セミラミス「竜牙兵! 一人囮追加だ!」キィンッ

竜牙兵「……」ワーッショイ ワーッショイ

入間「ぎゃあああああああ……」

最原「運ばれていったーーーッ!」ガビーンッ

セミラミス「更に安全になったぞ。我らだけ」

天海(やっぱり口答えしちゃいけないタイプの人だ。言わなくてよかった……)

海の家周辺

セミラミス「ついたぞ! やはり我はサーヴァントとしても素晴らしいな!」フハハハハ

入間「ううえええええ……うえっぐ……びえええええええ……」エグエグ

赤松「入間さん。元気出して……入間さぁん」エグエグ

天海「二人の少女の心に癒えない傷が刻まれちゃってるようなんすけど!?」

セミラミス「こらてるっ……コラテラルダメージというヤツよ」

真宮寺「今噛んだ?」

セミラミス「おっと。先ほど巌窟王と話したときに忘れ物をしたな。戻るか。竜牙兵!」

竜牙兵「……」ワッショイ?

真宮寺「噛んでなかったヨ! 絶対に噛んでなかった!」

セミラミス「ポケットの中に入ってた。下がれ竜牙兵」

竜牙兵「……」ションボリワッショイ

天海「なんて危ない人だ……!」

最原「……」キョロキョロ

最原(クマの足跡がある……多分モノクマかな)

最原「……」ジーッ

星「どうした? 海になにかあるのか?」

最原「うん。あったらいいなって思ってさ」

星「?」

最原(巌窟王さんたち、早く来ないかな……あまり長居はしたくない)






赤松「セミラミスさん! いくらなんでも私に対する扱いがぞんざい過ぎるんじゃない!? あと入間さん」

入間「俺様はついでかよッ!」

セミラミス「口答えをするな」パチンッ

竜牙兵「……」ガシャガシャガシャ

赤松「え? 何? なんでこっちに来て、きゃあああああああああ!」ビリビリバリッ

天海「リンチが始まったーーー!?」ガビーンッ

入間「バカ松ーーーッ!」

パレオ水着の赤松「う、うう。死ぬかと思っ……水着になってる!?」ガビーンッ

セミラミス「報酬があればよいのだろう?」フンス

パレオ水着の赤松「いや別に報酬欲しさに抗議したわけじゃ……もういいや……」

入間「俺様は!? 俺様に対しての報酬は!?」

セミラミス「貴様はダメだ」

入間「!?」ガビーンッ

巌窟王チーム


BB「……」

ザッ

BB「ん。誰です?」

巌窟王「……」

アンジー「アンジーもいるよー!」

BB「あー。ははっ。来ちゃいましたか。バカだなぁ」

巌窟王「BB。聞かせろ。貴様、何をした?」

BB「……なんのことです?」







巌窟王「お前は以前に来たようなBBのアバターじゃない。BB本人だな?」

BB「……」

夕ご飯の休憩!

BB「根拠は?」

巌窟王「ほとんどが俺の勘だ。だがそれが決定的になったきっかけはある」

巌窟王「セミラミスが元気すぎる。あまりにも。大量のリソースをネズミのように短期間に摂取していなければ消滅してしまうほど、か細い存在だったはずだ」

巌窟王「それが貴様が救出しに行った途端に元気になったのだぞ? 契約して魔力供給を担ったと考えるのが自然だ」

巌窟王「だが……たかだかアバターにそんな真似ができるか?」

BB「できませんね」

アンジー「……誤魔化す気もないんだね? もう」

BB「ちょっと弁解させてくれません? 別に自己犠牲の精神でここに来たわけじゃありませんよ。ちゃんと勝算もあるし保険もかけてます」

BB「発想の源は……とある人形師でした。その人はね、ここみたいな『一度入ったら勝つまで出られない閉鎖空間』に来たときに策を用意してたんですよ」

BB「『死んでもいい自分を作ってそこに送り込む』……まあ狂ってますけど有効でした。なのでマネしました。遠慮なく」

巌窟王「そうか。獄原が準備している。一緒に出るぞ」

BB「ごめんなさい。最初から『出れない』んですよ。そういうつもりで来たので」

巌窟王「バカな。何故そんな設計にした?」

BB「別にいいじゃないですか。あなたが帰ったらそこに私はいるんですし。この私はここで終わりです」

BB「……まあ残して来た私は三日間くらい起きませんけど。こっちの私にリソース裂いちゃったので」

BB「いわばこっちの私は三日分の私です」

BB「放っておいても三日経ったら全部枯渇して自壊しちゃいますしねー」

アンジー「……頑張ってきたんだよー? 終一も、楓も、みんな。なのにBBだけここでお別れなんてさ」

アンジー「ねえ。そんなのおかしくない?」

BB「さぁて。特には。サービスが終了したら跡形もなく消えるのは、プログラムの宿命ですよ」

アンジー「……ッ!」

アンジー「やめてよ……! そういうの! 今のアンジーたちと被るんだよっ……!」

アンジー「世界が終われば、そこにいる人も終わりだとかさー」

BB「……」

BB「巌窟王さん。よかったですね。これでアンジーさんはほぼ確実に助かりますよ」

アンジー「!」

巌窟王「お前の目的はやはり『予定の変更』か?」

BB「ご名答」

巌窟王「バカめ。それで生徒たちに危険が及べば本末転倒だぞ」

BB「……及ぶ……んですかね? 及んだように見えますか?」

巌窟王「?」

アンジー「モノクマにどんな話をされたの?」

BB「悪いんですけど、その件に関しては私は何も言いませんよ。先方にも都合があるでしょうし」

アンジー「この……!」

巌窟王「何故だ。なにがお前をそこまで駆り立てた?」

BB「カルデア側からあなたたちに送れる支援物資がもう『私自身』くらいしか残ってなかったんですよ」

BB「単なるアバターの私なら、新世界プログラムの破壊なんてできなかったでしょうね。少なくとも短時間では」

巌窟王「それだけか?」

BB「……あと一つは責任ですかねぇ」

BB「巌窟王さんはカルデアに帰れますよ。才囚学園でのゲームが終われば確実に」

BB「でも残念なことが一つあります」

巌窟王「残念なこと?」

BB「帰れなくなるって言ったのになぁ……! もう! 本当に! やってくれたなぁ……!」ギッ

アンジー「え」

巌窟王「……何故アンジーを睨む?」

BB「あなたはもう『カルデアのアヴェンジャー』じゃなくなってきてるんですよ」

BB「……『才囚学園のアヴェンジャー』になりつつあるんです」

巌窟王「ふん。何をわけのわからないことを――」

巌窟王「!」

アンジー「……どうしたの?」

BB「巌窟王さん。あなたはもう今の私と同じなんです」

BB「『カルデアのアヴェンジャー』と『才囚学園のアヴェンジャー』は明確な別個体になりつつある」

BB「カルデアには霊基が登録されているから再召喚は容易ですが……」

BB「『ここにいるあなた』はもうどこへも行けない可能性があるんですよ」

巌窟王「……」

アンジー「……え」





アンジー「は……?」

BB「詳しく言うなら、すべてが終わってカルデアに再召喚されたときに、あなたは『才囚学園の記憶』がゴッソリ抜け落ちてます」

アンジー「待って。『彼』には忘却補正があったはずじゃ……!」

BB「同一人物でも別個体。そもそも再召喚された彼は『元が同じだけの別人』なんです」

BB「才囚学園に召喚される直前の記憶までしか保持してないでしょうね。だって元から体験してないんですから」

BB「あなたたちと一緒にい過ぎたんですよ。彼は。そのせいでここでの記憶が彼にとって本当に『かけがえのない物』へ変貌してしまった」

BB「最悪の場合、その記憶を忘れてくれれば……記憶が摩耗してくれれば大丈夫だったかもしれないんですが……」

BB「忘却補正パないなぁ! もう!」

アンジー「そんなのって酷いよッ! だって……だって今まで『彼』はなんのために……!」

BB「……あはは。巌窟王さんと一緒にいられるんならラッキー、くらいには考えそうだなと思ったんですけど、結構予想外だったな」

巌窟王「どっちにしろそれはないだろう。俺がこの学園に存在できたのはひとえに『閉じ込められていた』からだ」

巌窟王「才囚学園のゲームが終われば、俺はこの世界から消滅するだろう」

アンジー「!」

巌窟王「……それでもカルデアに戻れるのであれば問題はなかった……のだが」

巌窟王「クハハハハハハ! ああ、そうか。そうか……何度死んでも蘇った巌窟王たるこの身も、ここにて終焉というわけだ!」

アンジー「……!」ゲシッゲシッ

巌窟王「痛い。蹴るな」

BB「……ごめんなさい。巌窟王さん。私は……」

巌窟王「いい。『この俺』にしかないものを、俺はここで沢山手に入れた」

巌窟王「カルデアで『巌窟王』が召喚不可能になるわけでもないらしい」

巌窟王「……中々出来た結末だと思うぞ?」

BB「強がりだなぁ。でもちょっと楽ですね。そう言ってもらえると」

アンジー「イヤだよ。そんなの! だって……そんなの好き勝手に死を飾り付けてるだけだよ!」

アンジー「アンジーは……アンジーはそんな……!」

BB「……おっと。時間はもうなさそうですよ。さっさと海の家……かな? 多分海の家ですよね? そこがやりやすいでしょうし」

BB「早く行ってください。彼も痺れを切らしたようです」

巌窟王「!」

巌窟王「アンジー! 少しだけ飛ばすぞ!」

アンジー「待って! 話はまだ……!」

BB「いいえ。終わりです」

BB「……ふふ。じゃあこれにて。さようなら、ですね。予行演習です」







BB「この世界に『終焉』を。あなたたちに新たな旅立ちを!」

BB「その道行に光あらんことを!」

巌窟王「……さらばだ。BB」



ギュンッ


BB「……先に待ってますよ。地獄でね。ふふっ。ラスボス系後輩として、こんなセリフ一度言ってみたかったんですよね」

今日のところはここまで!

セミラミスチーム

最原「……まだかな。巌窟王さんたち」

天海「ちょっと遅いっすよね。いくら弱体化してるとは言え巌窟王さんっすよ?」

セミラミス「バッハーのせんりつをーよるにきいたせいです」フンフン

赤松「緊張解けるの早いよ! なに砂遊びしてんの!?」ガビーンッ

入間「なあなあ! トンネル作っていい!? トンネル作っていいか!?」ワクワク

セミラミス「許可しよう」

赤松「入間さん?」ギロリ

入間「睨むんじゃねぇよ! テメェ自分より弱いヤツと見るや否や急に強気になるの最低だぞぉ!」ビクビク

天海「こういうときだけ正論吐くのやめてくれません?」

セミラミス「……!」ピクリ

最原「!」バッ

赤松「セミラミスさん?」

セミラミス「……バカな。何故こちらに来る? 行動範囲が変わったのか?」

最原「みんな! 狙われてる!」

天海「えっ!?」

セミラミス「我が盾となれ竜牙兵!」


ズドドドドドドンッ!

東条「狙撃……! 私たちが来た道から!?」

セミラミス「命中率はそんなでもない。牽制か。遠いぞ!」

天海「命中率が最悪でも数が揃えば関係ないっすよ! 一発でも貰えば骨の盾なんてバラバラに吹き飛ぶっすよ!?」

ドカァァァンッ バラバラバラッ

セミラミス「訂正しろ。『吹き飛んだっす』と」

天海「吹き飛んだっすゥ! ええ!? これで満足っすか!? どうなんすか!?」

星「当たんな。クールに振る舞え天海」

セミラミス「なにか……なにか手はないか……」ゴソゴソ

セミラミス「あ」

入間「な、なにかあったのか!?」

セミラミス「せっかく南の島だからと作ったのだった。すっかり忘れていたぞ。『喋る放水機』だ」

喋る放水機「ハロー」

最原(明らかに南の島に旅行した配管工が背負ってた『アレ』だーーーッ!!)ガビーンッ

赤松「ポンプだ! ポンプだよコレ!?」

セミラミス「断じてポンプではない! 『喋る放水機』だ!」

セミラミス「よし。これを装着してと」ガチャガチャ

天海(ダセェ!)ガーンッ

セミラミス「よし。万が一のために竜牙兵の指揮権はカエデ、貴様にやろう。指示した通りに動くぞ」

赤松「え? え?」オロオロ

セミラミス「行くぞ! 我の力を思い知るがいい!」タッタッタッ

喋る放水機「まりお!」

最原「行っちゃったーーーッ!」ガビーンッ


ズガガガガガガンッ

最原(くそ! 遠くて暗いからよく見えない! マズルフラッシュだけが瞬くだけだ!)

セミラミス「よし! まずは一体だ!」

天海「倒せたんすか!?」

入間「あ、案外行けるか!? 行けるのか!? アレで!」


ボーンッ


セミラミス「ぐああああああああ!」ヒューッ

天海「ダメだったーーーッ!」ガビーンッ

赤松「ああっ! こっちに吹っ飛んで……!」


ボチャーンッ



セミラミス「」プカー

つづく




最原「海に落ちて秒でどざえもんになっちゃったよ!」ガーンッ

赤松「セミラミスさーーーんっ!」

真宮寺「……もしかして竜牙兵を大量生産した時点でもう魔力的に限界だったのかな」

星「それでも一体仕留めるあたりは間違いなくサーヴァントだったんだろうけどな……」

星「来るぜ。赤松」

赤松「え? あ、そうか! 竜牙兵! 盾になって!」

ガシャンッ


ズドドドドドドンッ


赤松「うう! やっぱり骨の盾じゃちょっと頼りない!」

最原「……あれ。変だな。もうセミラミスさんはどざえもんになっちゃってるのに、なんでこっちに来ないんだろう」

天海「こっちに巌窟王さんがいると思い込んでるんじゃないっすか?」

赤松「それはちょっと考えられないかな。セミラミスさんはエグイサルの行動パターンを完全に読んでた!」

赤松「それが急に変わったってことは、この海の家に私たちが来たことを『誰か』が察知したからだよ!」

最原「その誰かがエグイサルのパターンを変更して僕たちを襲わせてる……うん。タイミングからしてほぼ間違いないかな」

天海「でもどこから!? どうやって!? 俺たちを見てるっていうんすか!?」

最原「……」

赤松「それも大事だけど、誰かセミラミスさん回収してくれない!? 沖にどんどん流されてるみたいだから!」

東条「投げ縄で引っ張るわね」ヒョイッ ガシッ

星「お前さん本当に万能だな」

今日のところはここまで!

赤松「だ、ダメ。一体減った程度じゃ問題にならないよ……! エグイサルの数が多すぎる!」

入間「もうダメだぁ! おしまいだぁ!」

最原「……いや。大丈夫。理由は不明だけど相手はこっちに近づいてこないから」

最原「一発貰えば即死だけど、こうやって一所に集まって盾まで出していれば、そうそう簡単に死んだりしない」

最原「余程運が悪くなければ」

星「それなら死にそうだな。この場にいる俺たち全員、運が良いとは口が裂けても言えないだろう?」

最原「あっ」

赤松「だ、大丈夫だよ! 私たちの運が悪くとも、セミラミスさんはそうでもないから!」

東条「よい、しょっと……ふう。やっと引き上げることが……?」

赤松「セミラミスさん大分運がいいから、私たちの運の悪さも若干中和してくれると思うな! 多分」

セミラミス「」

東条(息してない……)ガタガタ

最原「巌窟王さんが来るまでだ! なんとか持ちこたえてくれ!」

天海「……ゴン太くん。今のうちにせめて装置の起動準備だけはしておい方がいいんじゃないっすか?」

獄原「うーん。結構コンパクトで操作も簡単だから、準備と言える準備はほとんどないんだけど」

最原「ついでだ。砲撃をやり過ごす以外にやることないし、今のうちに見せてくれるかな?」

まるごしリップちゃん「」チマーンッ

最原「……何これ」

獄原「装置だって」

真宮寺「見た目ただのぬいぐるみなんだけど。こころなしかBBさんに似てない?」

獄原「起動スイッチを押すと視界に入ったものをすべて破壊。その後変形してウイルスを流し込み『世界を丸ごと改竄する』って書いてあるよ」

天海「説明書もあるんすか……」

獄原「胸の谷間のセーフティロックを外してから使用。右乳首が起動スイッチ。起動後二秒ジャストで破壊を開始。その後オートですべて片付く」

天海「悪趣味っすね……」

最原「……ええと。万が一のために緊急停止スイッチとかないか知りたいんだけど……」

獄原「左乳首だって」

入間「執拗に胸なんだな!? 胸だけでイけるもんなのか……!?」

セミラミス「ごほっごほっ」

東条(よかった。息を吹き返してくれた……!)




ドカァァァァンッ ガラガラガラッ



赤松「きゃあ!?」

最原「……やっぱり僕たち運が悪かったな。盾が粉々だ」

天海「くそ! こんなところで……!」シャキィィンッ

アマデウス斎藤「こんなところで終われるものかーーーッ!」ドォォォォンッ

最原「え? 何する気?」

アマデウス斎藤「知れたこと! セミラミスさん! ポンプを貸してくれっす!」

セミラミス「いいだろう。ところで貴様、その仮面どこかで見た気が……?」ヒョイッ

アマデウス斎藤「後は頼んだっすよ!」キラーンッ

アマデウス斎藤「行くぞオラああああああああああ!」スタコラーッ

最原「ええっ!?」

入間「アイツ追い詰められると本当何するかわかんねーなー」

真宮寺「アマデウス斎藤……勇敢だったネ……」ホロリ

最原「さっそく過去形で語らないでよ!」

セミラミス「……」






セミラミス「ところでヤツは『壊れた放水機』で一体何をしに行ったのだ? 自殺?」ハテ

赤松「天海くーーーん! カムバーーーーーック!」ガビーンッ

アマデウス斎藤「目標発見! 発射ァァァァァァ!」カチッ

喋る放水機「」シーン

アマデウス斎藤「……?」カチッ カチッ

喋る放水機「」シーン

アマデウス斎藤「……」

エグイサル「……」カチリッ

天海(そのとき俺は悟ったのでした。ここで死ぬのだと。まあ囮になれただけマシだと考えよう。みんな俺のこと忘れないといいな……)


ドカァァァァァンッ



天海「……」

天海「う……あれ。死んでない……?」

巌窟王「遅れたな。天海」

天海「!」

巌窟王「帰るぞ。あの学園へ」

今日のところはここまで!

セミラミス「……ム。来たか。巌窟王の到着だな」

最原「天海くんは!?」

セミラミス「死んではいない。というか無傷だな」

赤松「よ、よかったー! セミラミスさん、壊れてたのなら早く言おうよ!」

セミラミス「言ったぞ。それより早く天海のヤツが駆けて行っただけのこと」

セミラミス「さて。時間はないぞ。セーフティくらいは解除しておいたらどうだ?」

獄原「うんわかった!」ドスッ

最原(どうでもいいけど胸凄くでかいな……)

獄原「セーフティは解除したよ! いつでも行ける!」


ギュンッ



巌窟王「クハハハハハハハハ!」

アンジー「みんなー!」

天海「うおおおおおおおお! 超早ぇーっす!」

赤松「巌窟王さん! こっちこっち! 早く!」

真宮寺「獄原くん! 右乳首を!」

獄原「うん!」

入間「え? 俺様の右乳首?」

真宮寺「違う!」

最原「ちょっと待って! 巌窟王さんには最後に言いたいことがある!」

獄原「それ今じゃないとダメなの!?」

最原「絶対にダメだッ!」

真宮寺「……?」

ザザーッ

巌窟王「よし。無事着地だ!」

アンジー「蘭太郎ー! 無事?」

天海「な、なんとか」ゼェゼェ

最原「巌窟王さん! 時間がない! 今すぐ聞いて欲しいことがある!」

巌窟王「ム?」

最原「これから何があっても絶対に僕を信じてくれ!」

巌窟王「……どういう意味だ? この状況で何を言って――」

最原「お願いだ! ここが『絶好のチャンス』かもしれないんだ!」

巌窟王「……」

巌窟王「いいだろう。意図はわからんが……貴様のこれまでの行動は俺の信頼を預けるに足る」

最原「よし! ゴン太くん! お願い!」

獄原「了解! みんな、ゴン太の後ろへ! 視界に入ったら巻き込まれるよ!」


ポチッ


天海(スイッチが入った! あと二秒……! これでこの世界は終わる!)

赤松(外に出て、白銀さんやモノクマの件を片付けて、今度こそ私たちは学園生活を終わらせる……!)

最原「……」

最原「……よっと」クルリッ

天海「ん?」

赤松「え?」

巌窟王「――」

獄原「え。最原くん? なんで人形をこっちに向け――」






最原「ごめんみんな」

全員(ええーーーーーーーッ!?)ガビビーンッ

天海「……!? ……!? ……!」

赤松「……」

赤松「あ、あれ……何も……起きない……?」

入間「」

東条「気絶してる……」

最原「ごめん。今のは嘘。直前で緊急停止スイッチを押したよ」

真宮寺「死ぬかと思ったヨ。本気で……」

セミラミス「……」ジャララッ

最原「……あと巌窟王さん。ありがとう。セミラミスさんと、あなたの存在が本当に不安だったんだ」

最原「だってコンマ数秒でも僕の首を刎ねて装置の角度を元に戻す程度、充分に可能だろうからさ。実際セミラミスさん僕を殺そうとしたみたいだし」

巌窟王「コイツの鎖を阻止するのに無駄に魔力を使ったぞ」

巌窟王「それで? 何のつもりだ。最原」

最原「後ろを見て。あなたに見せたいものがそこにある」

巌窟王「……?」クルリッ

巌窟王「……そう、か。最原、お前は――」



ギュンッ



赤松(瞬間、目を見開いた巌窟王さんは海へと跳躍した。なにかに向かって一気に)

最原「状況から考えてモノクマがこの世界に来ていることはほぼ確定だ」

最原「でも、モノクマはどうやって外に出るつもりだったんだろう。だって『アルターエゴが出入り口』なんだよ?」

最原「破壊されたら外に出られないよね?」

東条「!」

東条「……そう、か。そういうことね。最原くん、あなた本当に意地が悪いわ」

天海「え? どういうことっすか? 一体なにが……」

天海「――!」

最原「ここに来た時点で、モノクマが想定していた脱出方法は二つ。アルターエゴを修繕することか、新世界プログラムを破壊すること」

最原「モノクマはBBさんと協力して後者の手段を取った……情報も徹底的に共有していたはずだ」

最原「脱出不可能のモノクマ。BBさんの破壊装置。結託した両者。このファクターが示す答えはたった一つしかない」

巌窟王「……自分が消えると思って焦ったか? 『あぶく』が見えたぞ」ボォウッ






最原「モノクマがいるのは僕たちの後ろ――夜の海面の下だ!」



ドカァァァァァァンッ



モノクマ「うおおおおわああああああああ!?」ザパァァァンッ

巌窟王「どこにも行かせはしない。校則ももはや存在しない」

巌窟王「待ちわびたぞ! 貴様をここで、処断する!」

今日のところはここまで!

巌窟王「ああ! ああ! 血液が沸騰するかのようだ! 興奮のあまり眩暈がするぞ!」ブンッ

モノクマ「ふん」ガインッ

セミラミス「……やはりこの世界では強いな。あのクマは。こともなげに巌窟王の攻撃を防いだぞ」

巌窟王「覚えているか! いや覚えているだろうとも! 俺は前に間違いなくこう言ったはずだ!」




巌窟王『……ああ。そうだ。言い忘れていたぞ、モノクマ』

巌窟王『先ほど俺が言った許しに必要な痛み云々は、あくまで一般論だ』

モノクマ『?』

巌窟王『俺は何も許さない。復讐者だからな』

巌窟王『だが憎しみの対象を見誤るような蒙昧でもない!』

巌窟王『俺が赤松から受けた痛み……東条から受けた痛み……!』

巌窟王『そのすべてを、何倍にもして貴様に返してやろう! 必ずな?』






巌窟王「今がそのときだ。いや……そのときとは違って、上乗せする痛みがかなり増えたな」

巌窟王「せいぜい楽しめ。いつものように笑ってみせろ! 笑えるものならなァ!」ギンッ

モノクマ「悪いんだけどボクもこんなところで破壊されるわけにはいかないんだよね!」

モノクマ「校則がないのなら結構。ボクもそろそろ、キミを本格排除するよ」ギランッ


ブワッ


ドドドドドドドッ

最原「……何あれ!?」

セミラミス「なんだ。目で追うことすらできんのか。いや流石に我もアレにはついていけんがな」

セミラミス「あのクマやはり我とやっていたときは本気の半分も出していなかったな」

天海(セミラミスさんの言う通り、目にもとまらぬ速さの応酬。どっちが優勢なのかすらも判別できない)

天海(どちらも俺たちにとって人知を超えたものだった。今更それを実感する)

セミラミス「……む。あれは……巌窟王の劣勢だな。分が悪すぎる」

天海「そんな!」

赤松「な、なんとかできない!? モノクマを見つけたせいか、もうエグイサルの砲撃もなくなったみたいだしさ!」

赤松「なんかないの、セミラミスさん! さっきまでは色々出してたじゃない!」

セミラミス「このクラッカーしかないな」ヒョイッ

赤松「どんな効果が?」

セミラミス「糸を引くと『もう無理』と書かれた紙と色鮮やかなテープが飛散する。綺麗だぞ」

クラッカー「お手上げ」パァンッ

赤松「お手上げって書いてあるけど!?」ガビーンッ

セミラミス「似たような意味であろう? これで最後だ。もう我に期待できるものなど何もないぞ」

東条「……ここまでなの?」

セミラミス「ただ……巌窟王の方も本気を出しておらぬな。一体なにを遊んでおる。本気を出せば互角以上に渡り合えようが」

真宮寺「そうか。アンジーさんの身を案じてセーブしてるんだネ」

アンジー「むー」

最原「……くそ! 何か……何かないのか。絶好のチャンスなのに!」

セミラミス「聖杯を使えばよいのではないか?」

東条「聖杯?」

入間「テメェ今なんつった!?」ガバリッ

赤松「きゃあ!? よみがえった!」ガビーンッ

入間「聖杯!? 聖杯がここにあんのか!? 嘘だろ!?」キョロキョロ

最原「あ。そういえば英霊とは切っても切り離せないものって言ってたね……」

セミラミス「左様。あれを使えばモノクマの動きを制限する程度は可能であろうさ」

セミラミス「ただまあ残念ながら、願いを叶えられるのは『所有権』を持つ者だけだがな。我はもう譲渡したから使えんぞ」

入間「譲渡? 誰に?」

セミラミス「それ以前に入間。貴様確か言っておったな?」

入間「ん?」



入間『ヒャハハ! まっさかー! こんな場所に本物の聖杯があるわけねぇだろ!』ケラケラ

入間『もしこれが本物だったら俺様、ダサイ原の目の前でストリップしてやるぜ!』




入間「……」

入間「……ふえ?」

最原「あ……ま、まさか。聖杯って……!」

真宮寺「うん。実は『アレ』なんだよネ……最原くんが気持ち悪いって言ってたあのコップ」ズーン

セミラミス「脱げ。そら脱げ。今すぐ脱げ」ニヤニヤ

入間「くっ……殺せ……」ヌギヌギ

赤松「脱がなくていいよッ! セミラミスさんも意地悪しないの!」

セミラミス「……」ムクー

最原「聖杯って確か、願いが叶うとかいうあの?」

セミラミス「流石にそこまで万能ではないぞ。だとしたら『脱出したい』とでも願えばすぐ終わりだからな」

セミラミス「いいか。よく聞け。ここから先が、逆転の一手だ」

今日のところはここまで!

セミラミス「まず聖杯の所有権を持った最原がモノクマの半径5mに入る。聖杯に『ヤツを止めてくれ』と願う」

セミラミス「以上」フンス

赤松「以上じゃないよ! あの暴力の嵐に5mまで近づいたらミンチになっちゃうよ!」

入間「いかにも『どうだいい作戦だろう』って顔で話しやがって腹立つなぁ」

最原「というか近づかなきゃダメなの?」

セミラミス「ダメだ。その聖杯の特徴として『かなり身近でかつ他人の権利を侵害する願い』しか実現しないからな」

入間「それ聖杯か? 万能が聞いて呆れるぜ」

セミラミス「『その権能が本物である限りは真贋など些細なこと』が聖杯への暗黙のルール……という節はあるな。我のは流石に粗悪品だが」

セミラミス「で。本当にやらぬのか?」

最原「……天海くん」

天海「ん。なんすか?」

最原「僕に怒った割にはさっきエグイサルに突っ込んで行ったよね」

天海「ああ。あれ。心配させて悪かったっすけど、俺のあれと最原くんのそれは別モンっすよ」

天海「だって俺は100%大丈夫だと思って行ったっすからね!」ズギャァァァァンッ!

真宮寺「バカだヨ。百田くんに匹敵するレベルのポジティブバカがここにいるヨ」

天海「……一度やってみてわかったっすけど。やっぱ怖かったっすね。死ぬかと思ったっす」

天海「全然楽しくなかったし」

最原「だろうね……」

最原「……」







最原「一緒にやる?」

天海「ナイスアイディア!」グッ

ちょっと安室の女になりに行くので中断っす

巌窟王「……ちっ!」ガインッ

モノクマ「どうしたの? 白銀さんを破壊したときみたいに分身しないの?」ニヤニヤ

巌窟王「クハハ! 貴様相手にあんな大技を使うまでもない!」

巌窟王(嘘だ。できるものならとっくにやっている)

巌窟王(このままだと遠からず返り討ちだな。何か手はないか……)

モノクマ「うぷ?」

巌窟王「!」

最原「5mって割と広いよね。どうにか無傷で近づけたりしないかな……」スタスタ

天海「無理っすね。無傷では」スタスタ

最原「だよね……でも」

天海「ええ。一人きりじゃなく、仲間と一緒なら……きっと!」

巌窟王(天海と最原が近づいてくる。なんのつもりだ?)

アンジー(聞こえるー?)

巌窟王(……アンジーか。念話なぞどこで習った?)

アンジー(このお姉さんがぶっつけ本番でやれ。さもなくば殺すって……)

巌窟王(セミラミスは後で細断するとして、何の用だ?)

アンジー(終一の半径5m以内にモノクマを誘導して。魔力をちょっと多めに持って行ってもいいから)

アンジー(補助は蘭太郎がする手筈になってるよー!)

巌窟王(……信じていいのだな? 最原のことも。天海のことも。アンジー、お前のことも、すべて)

アンジー(うん)

巌窟王「……」

巌窟王「嘘だ」

モノクマ「へ? 今なんか言った?」

巌窟王「モノクマ。貴様にも少しだけ見せてやろう。この俺の宝具を……!」ボォウッ!

モノクマ「!」

巌窟王「宝具、解放……! 虎よ、煌々と燃え盛れ――!」


ドカァァァァァンッ!


入間「出た! 巌窟王の宝具だ! 手負いのアンジーの魔力供給でどこまでやれるか不安だが……!」

セミラミス「ふむ。分身そのものは上手く行ったようだな」

真宮寺「……ん?」

東条「ちょっと待って。セミラミスさん。本当に上手く行ってるの? 何か様子がおかしいわ」

モノクマ「……!」

巌窟王「行くぞモノクマ! 貴様に恩讐の彼方、その片鱗を見せてやろう!」ギンッ

ちいさいがんくつおう「くはははははははは!」ケラケラ

モノクマ「」





セミラミス「分身『は』上手くいっておるぞ。小さいが」

真宮寺「明らかに不完全だーーーッ!」ガビーンッ

モノクマ「うぷ……うぷぷぷぷ……アーッハッハッハ! あー、面白いジョークを見せてもらったよ!」

モノクマ「でも期待外れだったかな。この局面でそんなおふざけをするなんてさ!」バッ

ちいさいがんくつおう「!」

モノクマ「よいこは永遠にねんねしなー!」ギャランッ

赤松「だ、ダメ! 小さい巌窟王さんが危ない!」

東条「巌窟王さんッ!」

モノクマ「食らえーーーッ!」






ちいさいがんくつおう「ふんっ!」バキィッ

モノクマ「ぎゃああああああああああ!」ゲフウッ

赤松「小さい巌窟王さんが撃退したーーーッ!?」ガビーンッ

ちいさいがんくつおう「なめるな。こんななりでも、おれはおれだぞ」ぎんっ

セミラミス「可愛くないガキだ」

真宮寺「でも見た目よりは遥かに頼りになるヨ!」

モノクマ「くっ……でも分身が一人だけなら……」

巌窟王「当然まだいるぞ」ブンッ ブンッ ブンッ

ちいさいがんくつおう2「くはは!」バキィッ

ちいさいがんくつおう3「それでいい」バキィッ

ちいさいがんくつおう4「じひなどいらぬ!」バキィッ

モノクマ「げふっ! ごはっ! うぎゃあーーーッ!」

赤松「巌窟王さんが小さい巌窟王さんを容赦なく投げつけてるーーーッ!」ガビーンッ

アンジー「自分にも厳しい人なんだー」

赤松「厳しすぎだよ! 限度があるよ!」

アンジー「……う、ぐ。やっぱりちょっとキツイ、なー……」

赤松「アンジーさん!」

巌窟王「!」ピクッ

アンジー「止まらないで! もう振り返らなくていいからッ!」

巌窟王「……」

巌窟王「アンジーが命を賭けて作った機会だ。俺はそれを全力で活かすのみ!」ブンッ ブンッ ブンッ

ちいさいがんくつおう5「こっかいすることはあるか!」バキッ

ちいさいがんくつおう6「めるせです!」バキッ

ちいさいがんくつおう7「ぜああっ!」バキッ

モノクマ「うおおおおおおおおおお!」

巌窟王「……!」スカッ

モノクマ「……う、うぷぷ! 弾切れみたいだね! 一度投げつけた巌窟王さんは一発攻撃するのが限度! それ以降はしばらく動けなくなるみたいだし!」

ちいさいがんくつおう2「ばかな……ばかな……」ゼェゼェ

巌窟王「……!」ガシッ

巌窟王「まだ一人残ってたぞ!」ブンッ

星「クールに行くぜ」バキィッ

モノクマ「ぐあああああああああああ!?」

赤松「それ分身じゃなくって星くんーーー!」ガビーンッ!

星「結構体に負荷がかかったな」フウ

セミラミス「最原ではなく貴様が聖杯を手にしていたのならば今ので勝負はついていたな」

巌窟王「今度は俺が行くぞ!」ダッ

モノクマ「まだだよ! まだボクが負けるわけには……!」ザッ

巌窟王(よし。いいぞ。後何歩か後ずされば充分だろう!)

巌窟王「分身が疲弊している間は俺が相手になろう!」ズドドドドドドッ

モノクマ「キミ一人だけなら充分対応可能なんだよ! というかボクの方が三割増しで強い!」ドガガガッ!

ブシュウッ!

巌窟王(攻撃する度に腕が爪で引き裂かれる……! 長時間は無理なのは俺も同じか!)

巌窟王(だがあと少しでいい! あと少し追い込む!)

巌窟王(痛みがなんだ? 限界がどうした? それがアイツらへの信頼を捨てる理由となるか!)

巌窟王(そんな小器用なマネができるのなら、俺は復讐鬼などに堕ちてはいないだろう!)

モノクマ「……ちぇ。何を企んでるのかは知らないけどさ。こっちも簡単に負けてあげるわけにはいかないんだよね」

巌窟王「なんだと?」

モノクマ「エグイサル」



ドシュウウウッ!



巌窟王「……?」

巌窟王(何の音……?)

巌窟王「ッ!」ゾワッ



ドドドドドンッ!



巌窟王(エグイサルの砲撃が再開した!?)

モノクマ「御覧の通りお粗末な命中率だけど……キミに当たるときはボクにも当たっちゃうけど」

モノクマ「でもまあいいや。ここまで追い込まれちゃったし」

巌窟王「貴様ァ!」

モノクマ「勝負を降りて逃げちゃえば? 深追いはしないよ」

巌窟王「クハ……クハハハハハハ! そんなマネが、今更できるとでも!? 続行だ!」ギンッ

モノクマ「だろうね」ニヤァ

巌窟王(当たる前にケリを付ける……!)

今日のところはここまで!

天海「まずいっすよこれ! このままだと俺たちもエグイサルの砲撃に巻き込まれ――!」

最原「それは大丈夫そうだ。あのエグイサルたちどうも大雑把な命令しかできないみたい。巌窟王さんの方『だけ』を狙ってる」

天海「……長期戦はまずいっすよね。巌窟王さんが一発でも食らったらおそらくその時点でアウトっす」

天海「クソッ! 俺たちにできることはないんすか!」

最原「ない!」

天海「ないの!?」ガビーンッ

最原「これ以上はもうない! ないことを知って、この場で待つしかない!」

最原「……ないんだよ……!」

ちいさいがんくつおう「そうだ。それでいい」ゼェゼェ

最原「ん? あ! 巌窟王さんいつの間に!?」

ちいさいがんくつおう「おれがきりひらく。おまえたちは……はしれ!」

ちいさいがんくつおう「あまみ。『たて』がふたりなら、かせげる距離はのびるだろう?」

天海「……!」

天海「なんだ。気付いてたんすね」







赤松「……」キョロキョロ

獄原「赤松さん? どうかしたの?」

赤松「……さっきのゴタゴタで慌ててたから全然気にしてなかったけどさ。BBさんはどこ?」

東条「モノクマと一緒に海面の下に……というわけでもなさそうね」

真宮寺「……ん。いや。いたかもしれない」

「モノクマさん。流石にこれはやり過ぎですよ」

モノクマ「!」


ガチンッ


巌窟王「砲撃が止んだ?」

モノクマ「オマエ……!」

「あなたを外の世界に出すというところまでは合意しました。でもその前にバレちゃったのなら仕方ないのでは?」

モノクマ「……ッ!」ギリィッ

「あと、ちょっと騒がしいです。このまま全部終わるまで静かにしていようと思ってたのに」

モノクマ「だからって――!」

巌窟王「うおおおおおおおおおおお!」ガンッ

モノクマ「げほおっ!」

巌窟王「最原! 天海! 来いッ!」

巌窟王「もう充分だろう! 走れば届く!」

モノクマ「!」

天海「――!」ダッ

最原「届け……!」ダッ

モノクマ(何をする気……!? 何をすれば対策になる!?)

モノクマ(いや、そんなの決まってる! とにかく逃げる! 逃げて逃げて逃げて――! 遠くからまたエグイサルを量産して!)

ガシッ

巌窟王「どこにも行かせはしない!」

モノクマ「オマエーーー!」

モノクマ(じゃあどうする!? 生徒の方を吹き飛ばす?)

モノクマ(いや、もうどんな結末が待っていようと、ボクはそれをするしかない! だってボクは『モノクマ』なんだから!)カチリッ

モノクマ「飛び道具ならボクだって持ってるんだよ! 拘束されてても撃てる! 消えてなくなれーーーッ!」ドシュウウウウッ

ドカァァァァァンッ

ちいさいがんくつおう「ぐ、はっ……!」

最原「……!」ダッ

モノクマ(分身が盾に……! 最原くんはまだこっちに来てる!)

モノクマ(でももう一発撃てば……!)カチリッ

天海「撃ってみろおおおおおおおおおおおッ!」

モノクマ「くっ……うおおおおおおおおお!」ドシュウウウウッ



ドカァァァァンッ


天海「が……っ!」

モノクマ「くそ! このために……このために天海くんが同行してたのか! くそっ! くそっ! もう一発……!」カチリッ

天海「……」

天海(いや。もう……次の一発はないんすよ!)








最原「お願いだ聖杯よ! モノクマを止めてくれ!」

モノクマ「ッ!」ガキンッ!

モノクマ「え? え? あれ? な、なんで動けな――!」ジタバタ

最原「はあっ……はあっ……!」

モノクマ「最原くん! ボクに一体なにを……!」

巌窟王「動けない、のだな?」

モノクマ「え」

巌窟王「……く、クハハ……苦労をかけさせてくれる。だがこれで……俺たちの勝ちだ」ニヤァ

モノクマ「あ」

巌窟王「エグイサルよりは攻撃力がないな。分身も紛れもなく俺自身故に、今の一撃のフィードバックは当然ある」

巌窟王「……だからわかる。天海はセミラミスの治療で延命できる。その間に外の世界に出れば、問題はこの世界と共に立ち消えだ……!」ボォウッ

モノクマ「あ、あ、あう。あわわわわ……!」

巌窟王「これで……終わりだあああああああああああッ!」ブンッ





バコォォォォォォンッ!



モノクマ「ぐあっはーーーーーーーッ!」メキィィィッ!

巌窟王「はあっ……はあっ……はあっ……!」

最原(巌窟王さんは息も絶え絶え。体中から夥しい量の血も出ている)

最原(それでも彼は――笑った。笑っていた)

巌窟王「うおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

最原(勝利に酔いしれるように空に叫び、そして……)

バタリッ

最原「……巌窟王さんっ!」

最原(そのまま真後ろに倒れた)

最原(……何か、大事なものが途切れたかのように……)

赤松「や……やったの……?」

真宮寺「……モノクマは動かない、ネ。エグイサルも沈黙してる」

獄原「勝った……モノクマに勝ったんだ! 巌窟王さんが! 最原くんが! みんなが……!」

アンジー「う……!」


バタリッ


赤松「あっ! アンジーさん!」

セミラミス「……そろそろまずいな。これは。外の世界に出て根本的な治療をしなければ死ぬぞ。無茶のしすぎだ」

東条「……長居は無用ね。早く外に出ないと……」

東条「最原くん! 巌窟王さんをこちらに運んでこれる? 天海くんは私がなんとかするわ!」

最原「……」

東条「……最原くん?」

巌窟王「もう、無理のようだな」

最原「……巌窟王さん……?」

巌窟王「……俺はここまでだ。お前たちだけで先に進め」スウッ

赤松「え……」

最原「……体が、透けて……!」

赤松「え。え……? 嘘、でしょ。なんで!?」

入間「あのバカ……ダメージを貰いすぎたんだ! 限界とっくに越えちまってたのかよ!」

入間(いや。違う。そんなこと今更考えるまでもなかった! そもそも五体が回復したあの時点でアイツの体のほとんどはハリボテに等しかったんだ!)

最原「そんな……まだだよ。まだ僕たちは勝ってない! こんなところで終わっちゃダメだよ!」

巌窟王「俺とてお前たちのことを道半ばで見送るようなマネはしたくない。だが……どうもこれは詰みのようだな」スウッ

巌窟王(クソ……せめて……せめてアンジーに別れを告げる程度の余裕を許してはもらえないものか。神よ……!)

巌窟王(俺は……俺は……!)







BB「あーあ。仕方ないなー。巌窟王さんは」

巌窟王「……」

最原「BB、さん……?」

BB「……ふふっ。まあ、暇してたんです。どうやって終わろうか、悩んでたところですし」

BB「仕方ないですね。ちょっと命懸けで、あなたのことを助けちゃおうかな?」キャルンッ

今日のところはここまで!

最原「……BBさん。あなたは一体、何がしたかったの?」

最原「僕たちのことを貶めたり、かと思えば最初からそんなことなかったかのように助けに入ったり……」

BB「あら。わかりません?」

最原「考えられるのは『予定の前倒し』だけど……だからってよりにもよってモノクマと手を組む? それも即断即決で」

BB「そこまでわかってるのならもう何一つとして必要ないでしょうに」

最原「BBさんの本音を聞いてない」

BB「……」

BB「治療、開始します。時間がないので」

巌窟王「BB……!」

BB「C(クライマックス)……」

BB「C.C.C.(カースド・キューピッド・クレンザー)!」キュィィィィンッ

巌窟王「うぐ……ぐおおおおおおおお……ッ!」


バキンッ


最原「……何の音……?」

最原「あ!」

BB「ありったけを注いであげます! だから巌窟王さん! もう一回立ち上がって!」

BB「まだ何も終わってない!」

巌窟王「ぐあああああああああああああっ!」

シュウウウ

巌窟王「ぐ……が……!」

BB「荒療治ですけどね。元のハリボテ状態に戻してあげましたよ。根本治療はもう無理です」

BB「最後の最後まで幻肢痛を抱えて戦ってください」

巌窟王「……BB!」

赤松「あ……やった! やった! 巌窟王さん、生きてる! よかったぁ!」

最原「……」

赤松「……あ、れ。なんか……空気が重い」

赤松(なにかがおかしい。胃にずっしりと来るような悪寒が消えない)

赤松(……どうして? 巌窟王さんは元に戻ったのに?)

セミラミス「……ああ。まったく。こういう光景を見せたくないから我に任せたのだろう?」

セミラミス「バカ者め」

赤松「セミラミスさん?」

セミラミス「我は天海の延命治療を行う。貴様らは……まあ、無用ならあまり見てやるな」

セミラミス「情けくらいかけてやれ」

赤松「なんのことを言って――!」


バキンッ


赤松(……BBさんが手から何かを落とした。それは砂浜にポトリと落ちる)

赤松(あれ? 何を持ってたんだろう? 何を持って……何を右手に持っ……て……)

赤松「……」

赤松「右手がない」

セミラミス「カエデ。もうやめろ。見なくていい」

赤松「セミラミスさん……あれ一体、どういう……」ガタガタ

セミラミス「ヤツはここで終わりだ。ただそれだけだ」

赤松「――!」

BB「……うん。まあ、いいんじゃないですか。こっちの方が終わり方としては綺麗かもしれませんね」

最原「なんで……!? なんで壊れかけてるの!? どうして!?」

BB「リソース全部注ぎ込む勢いで巌窟王さんを治療したので。三日分のリソースじゃあこれが限界かぁ……安っぽいなぁ」

最原「なんのことを言ってるのかわからないよ! ねえ、巌窟王さん!」

巌窟王「……コイツは元からこの世界と共に消えるつもりだったのだ」

最原「は?」

巌窟王「……コイツはBB本人が作ったコピーだ。本体に近しい力を持つが、その代わりこの世界でしか存在できない」

巌窟王「放っておいても魔力切れで三日で事切れる『消耗品のBB』なのさ」

最原「なに……え? ちょっと待ってよ! 仮にコピーだったとしても『この場で消えるBBさん』はどうなるの!?」

最原「どこかに保存されたり、帰還したりは……」

巌窟王「しない。消耗品だぞ。人格はオリジナルのそれそのものだが……ここで終わりだ」

BB「ま、そういうことです」

最原「……こんな……こんなことって! 待ってよ! 才囚学園の生徒全員はみんな死んでないんだ!」

最原「最後の最後まで誰も欠けずに行けると思ったのに! こんなの!」

BB「『BBという存在』が消えたりはしませんよ。かと言って、おそらくもう二度と会えないでしょうが」

BB「私を作った代償に、オリジナルのBBは三日間一切の行動が取れないので」


バキンッ ドサァッ


BB「あ、今度は随分大きくヒビ入ったなぁ。左肩が全損」

最原「……!」

BB「後のことはモノクマさんから聞けばいいと思います。私たちの計画を途中で看破したんです」

BB「その程度なら……できるでしょう? ね?」

BB「私の口から言うのは取引しちゃった以上、できないので」

最原「待って! 何か考えるから……! こんなところで消えないでよ!」

赤松「……セミラミスさん。なんとかできない!?」

セミラミス「……」

赤松「そんな……!」

BB「……セミラミスさん。ありがとうございました。生徒のみなさんをここまで連れてきてくれて」

赤松「!」

最原「……」



セミラミス『この中に、BBに何かを託された者はいるか?』

獄原『あ、えと。ゴン太が色々と貰ってるけど』

セミラミス『そうか。ならばさっさとそれを使え』

獄原『……え?』

セミラミス『BBに『待っていろ』とでも言われたか? 安心しろ。この状況を想定できないヤツではないからな』



最原「全部方便だ……!」

赤松「え」

東条「……そうね。今から思い返せば……」




セミラミス『さて。時間はないぞ。セーフティくらいは解除しておいたらどうだ?』




赤松「……気付いてたんだ……セミラミスさんは、最初から……!」




セミラミス『む? 何を……そういえば貴様。巌窟王と違ってレイシフトしてるわけでもないのに、この魔力はどこから――』

BB『……』

セミラミス『――そう、か。ふむ』

セミラミス『いいだろう。行くぞカエデ。巌窟王のところまで送っていく』

赤松『へ? あ、あれ? モノクマは?』

セミラミス『BBだけで充分だ。行くぞ』

セミラミス『……安心しろ。あやつもすぐに来よう。我の二の舞は踏むまいさ』




赤松「こうなることに全部気付いてて……!」

セミラミス「八つ当たりはやめよ。我とて無用な犠牲は出したくなかった」

セミラミス「だがこれはどうしようもないであろう。流石に」

セミラミス「『最初からそのように作られたもの』の運命を捻じ曲げるのは容易ではない。我らには時間も余裕もなかったのだ」

セミラミス「第一本人がそれで納得しておる。これではハナから無理であろう」

赤松「う……!」

BB「最原さんが余計なことさえしなければ私も、破壊に巻き込まれてサッパリ消える予定だったんですけどねぇ」

最原「……」

BB「あははっ! 顔真っ青ですよ! いや、今のは冗談です。忘れてください!」ケラケラ

BB「……そうだなぁ。モノクマさんからの口からでも聞かせられないこと、今のうちに私の口から言っちゃいましょうか。その程度の特典はあるべきですし」

BB「私がモノクマさんについた理由は『取引の内容があまりにも美味すぎたから』ですよ」

最原「……美味すぎた……?」

BB「それ聞いて思ったんですよねー。『あ、コイツら生徒たちに勝つ気ねーな』って」

最原「!」

BB「……それだけです。後は万が一の罠の可能性も考えて、ここでサッパリ消えてしまった方が後腐れなく、面倒ごとも少なそうだなと思ったので」

BB「モノクマさんから聞けば後から意味はわかると思いますよ」

バキンッ

BB「そろそろ……限界ですね」

最原「BBさん……!」

BB「……楽しかったですよ。あなたたちをサポートしていた時間は。とっても」

BB「巌窟王さん。ハリボテ以外にも一つプレゼントがありますので。期待しててくださいね」

BB「……バトンタッチです。後は任せました」ニコリ


ビシィッ!  ガシャァァァァンッ!


巌窟王「……BB」

最原(BBさんは粉々になった)

最原(……僕たちの仲間が……僕たちの目の前で、死んだ)

最原(後に残ったのは、決定的な無力感。そしてそれを一生忘れることができないという絶望)

最原(……BBさんが残した一縷の希望だけだった)

今日のところはここまで!

最原「……」

最原(BBさんの破片はどこかへ消えた。風にさらわれたのか、空気に溶けて消えたのかはもうわからない)

最原(多くの謎を残したまま、僕たちに一方的に様々なものを託して逝ってしまった……)

セミラミス「……天海。我がここにいて助かったな? 自らの幸運と我に感謝するがいい」

天海「ああ……本当によかったっす。胸に入れていたこのアマデウスの仮面が、モノクマの砲弾から俺を守ってくれた……」

アマデウスの仮面「」キラーンッ

赤松「なんてベタな……ん? あれ。でもこれ綺麗じゃない?」

赤松「天海くんの盾になって着弾してたのならもっと傷ついてるはずだけど」

天海「」チーン

セミラミス「バカ者がッ! 瀕死の者の『自分は助かる』という思い込みを折るな! 本当に死ぬぞ!」

赤松「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいーーーッ!」

セミラミス「まあそれでも助けるがな。三十分くらいは余裕で持つであろう」

東条「……アンジーさんの治療……というより経過観察だけど。こちらも気を失っただけ。三十分以内に出るのなら問題はないわ」

巌窟王「そうか」ホッ

セミラミス「くくく。貴様やはりマスターには随分と素直なのだなぁ。犬の尻尾が見えるかのようだぞ?」

巌窟王「元マスターに対しての思いを未だに募らせている貴様ほどではない」

セミラミス「やるか? やるか? ん?」ジャララッ

巌窟王「望むところだ!」ボォウッ

赤松「余計な消耗になるからやめてよ!」

星「コイツら本当に大人気ないな……」

赤松「三十分は時間があるんだね……」

赤松「……最原くん。大丈夫?」

最原「あまり大丈夫じゃないよ」

赤松「そっか。私もあまり気分はよくないかな」

赤松「……月が綺麗だなぁ。こんなときピアノがあったらいいのに。ドビュッシーの月の光みたいな綺麗な曲」

最原「はは。ちょっとした鎮魂歌代わりにもなるかもね。超高校級のピアニストの曲なら充分すぎる」

最原「……誰も死なせたくなかったな……」

赤松「最原くん……」

セミラミス「……」

セミラミス「巌窟王。超高校級とは?」ハテ

巌窟王「貴様、本当に今まで『ノリと興味だけ』でコイツらを助けてたのか……」

真宮寺「要は高校生の中ではとびきりずば抜けてピアノが上手いんだヨ。赤松さんは」

セミラミス「ほう。余興にはちょうどいいかもしれぬな。我も聞いてみたい」

赤松「うん。外に出れたらきっと……」

入間「出られねーだろ。セミラミスも」

赤松「あ」

セミラミス「……」

入間「ここまで嘘だらけだったからな。どうせ自分の生存について訊かれたときの『何とかなる』って言葉も嘘だったんだろ?」

セミラミス「ふん」

巌窟王「セミラミス……」

セミラミス「なんだその顔は。同情などするな。我はやりたいようにやった。BBと同じようにな」

セミラミス「……同情される余地などどこにある?」ニヤァ

赤松「……」

赤松「いいなぁ。そういうの。格好いい」

セミラミス「……良い子はマネしちゃいけません、というのだったか。こういうときは」

セミラミス「ふむ。だが……ふむ。ふむ」ナデナデ

赤松「ひゃわっ!? 頭撫でないでよ!」

セミラミス「ははは! なるほど! 巌窟王の気持ちもわかる!」

セミラミス「これはハマるな! 中々楽しいぞ、未完でなんの覚悟もできてない子供が成長していく様を見るのは!」

巌窟王「……」イラッ

セミラミス「そうだな。万が一、我と貴様らがもう一度会うようなことがあれば、だ」

セミラミス「そのときはゆっくりと聞かせろ。カエデのピアノをな」

赤松「……うん。約束だよ」

赤松「約束……だから……!」ポロッ

獄原「それじゃあ改めて、破壊装置の起動を……」

最原「待って。まだやれることがある。三十分はあるんでしょ?」

獄原「え?」

最原「……モノクマへの尋問が終わってない」

モノクマ「」チーン

東条「……相手はモノクマよ? なにをしても有用な情報は吐かないと思うけど」

最原「寝るな」キィィィンッ

モノクマ「ぎゃあっはああああああ!」ビリビリビリッ

真宮寺「!」

最原「……大丈夫。嘘は吐かせないよ」

最原「聖杯で全部吐かせてやる……!」ギンッ

今日のところはここまで!

モノクマ「う、うぷぷぷぷぷ。何のつもりかわからないけど、ボクを起こしたのは悪手だったね。エグイサルを再びけしかけて……」

最原「やめて」キィィィンッ

モノクマ「はい」

モノクマ「……あれ!?」ガビーンッ

モノクマ「ま、まあいいや! エグイサルをけしかけることができなくっても、今は逃げてオマエラが脱出するときに紛れれば……」

最原「ダメだ」キィィィンッ

モノクマ「ごめんなさい」

モノクマ「……んんんんん!?」ガビーンッ

セミラミス「ほう。上手く使っておるな」

真宮寺「凄いヨ……! あのモノクマを手なずけるなんて夢のようだ!」

赤松「なんだかんだこのトンチキマスコットが私たちの悪夢の象徴だったからね……」

最原「時間が無い。早めに済ませよう。BBさんに具体的にどんな取引を持ち掛けた?」

モノクマ「……」

最原「黙るな」キィィィィンッ

モノクマ「BBさんに協力を持ち掛けました! こちらの要求は『校則違反の誘発およびボクを含めたこの世界にいる全員の脱出』だよ!」

モノクマ「ぎゃあ! 口が勝手に!」ガビビーンッ

星「ここまではなんとなく予測できてた範囲だな」

巌窟王「答えろモノクマ。BBをどう言って説得したのだ?」

モノクマ「……む、ぐ……!」

セミラミス「一丁前に聖杯の魔力に対して抵抗しているな。くくく……拷問とはこうでなくては」

赤松「一応訂正しとくね。尋問だよ」

最原「重ねて言うよ。黙らないで」キィィィンッ

モノクマ「BBさんへ『かつて図書室の隠し扉の向こうにあった首謀者の権限を一部委譲すること』を引き換えの条件として提示しました!」

最原「……!」

巌窟王「……なんだそれは? もっと具体的に言え」

モノクマ「かつてマザーモノクマに搭載されていた『学園の監視機能の使用権原』と『モノクマの複製権限』だよ!」

モノクマ「今は凍結されてるけど、図書室に行ってボクが許可すれば使えるようになる!」

入間「アホかよ。BBはこの世界でしか存在できねーんだろ? そんな取引したところで……」

モノクマ「あ。それは大丈夫。新世界プログラムに来る直前に、ボクがマザーモノクマと新世界プログラムを繋げておいたから」

最原(あのときはすぐ気絶しちゃったからぼんやりとしか覚えてないけど、マザーモノクマってあのモノクマの顔面オブジェのことかな……)

モノクマ「脱出のときにボクに捕まっていれば、世界が壊れてもそっちに移動できる」

モノクマ「……とまあ至れり尽くせりなんだけど、BBさん本人は最終的に蹴ったんだよね。『ロハでいい』って」

赤松「え? タダでモノクマの取引を引き受けたってこと?」

東条「これはBBさんにとっては唯一、生存の目がある選択肢よ。それを蹴るなんてことがありえるのかしら?」




BB『それ聞いて思ったんですよねー。『あ、コイツら生徒たちに勝つ気ねーな』って』




最原「……こういう意味か……BBさんは安心して、全部流れに任せることにしたんだ」

赤松「最原くん? 何に気付いたの?」

最原「モノクマが具体的に何をやりたかったのかはわからない。でも『やりたくないこと』はわかるよ」

最原「僕たちに『勝ちたくない』んだ」

巌窟王「何を言うかと思えば……そもそもコイツらに勝ち負けの概念があるかどうかすら疑問だぞ」

巌窟王「今更『今までお前らを甚振っていたのはただの趣味だった』と言われたところで驚くまい」

最原「違うんだ。今までのコロシアイゲームは間違いなく『明確に勝ち負けの概念があるゲーム』なんだよ。趣味じゃない」

赤松「それは外の世界に見せているからってこと?」

最原「大雑把に言うとそうなるかな。つまり白銀さんの脳内では既に結末は決まってて、僕たちはそれに沿って動いている……」

最原「……いや。動かされているんだよ」

星「なんだと?」

最原「『演出重視』だ。前の学級裁判のときでも『事件の撹乱』よりも、それを念頭に置いて動いてた」

最原「あくまで予測だ。だから現時点で、この予測に凝り固まるのは危険なんだけど……白銀さんが考えているのはきっと」

モノクマ「『愛と絆と希望が勝つストーリー』だよ!」キュピーンッ

モノクマ「うがああああああああああああああああ!」ガビーンッ!

巌窟王「愛と絆と希望が勝つストーリーか。なるほど……ふむ。なるほど……?」

巌窟王「!?」ガビーンッ

赤松「な、なにそれ……それって完璧に……」

獄原「……放っておいてもゴン太たちが勝てる? なら今まで頑張ってきたのは……」

最原「当然無駄じゃない! 無駄じゃないけど……!」

真宮寺「まるっとすべてが『出来レース』だった。そういうことだよネ」

最原(出来レース。それも白銀さんではなく、僕たちに有利な方の)

最原(ことがここまで進むと……安全が保障されていることは何の気休めにもならない)

最原(僕たちは自分たちの意思で動いていると思い込んでいただけで、決められた『フィクション』をなぞるだけの操り人形だった)

最原(……そんな最悪な現実を見せつけられたかのようだ)

真宮寺「ただこのモノクマの苦しみようを見る限り、これは絶対に話しちゃいけないことだったんだろうけどネ」

真宮寺「……この真実に辿り着いて初めて、僕たちはスタートラインに立てたのかもしれないヨ」

最原「!」

真宮寺「僕の気持ちは偽物なんかじゃない……! 外に出たら絶対にそれを証明してやるんだ」

真宮寺「あと少し。もう少しだヨ。姉さん……!」

星「切実だな。理解できないわけじゃねーが」

最原「……白銀さんの計画すべてをモノクマから引き出すには時間が足りないけど、もうちょっと聞けるはずだ」

最原「このまま尋問を続けて……」

モノクマ「う、うぷぷ。そんなことしてていいのかなー」

最原「……?」

モノクマ「モノクマーズ、全部で何匹壊れたか覚えてる?」

赤松「あ……!」

最原「……何が言いたいんだよ?」






モノクマ「モノタロウ、今ごろ外の世界で百田くんたちをいじめてるよ。精一杯ね」

今日のところはここまで!

やったー! 投票した相手がクロだったー! やったー! やったー!
あ、今日の更新は映画見に行くので本編はなしです。

明日は時間あるからたっぷりやるぞう!

CM

セミラミス「一方的に大量のマスターに鎖を引きちぎられたり、シロウがなんか彷徨ってたり」

セミラミス「我があの庭園のできた理由に一切心当たりがなかったり……」

セミラミス「……心がしんどいな」ズーン

イシュタル「レイド戦では本当お疲れさまーーー!」ズギャァァァァンッ!

ナーサリー「ハートの女王さまにはちょっと余ったヒポぐるみをモフる権利をあげるのだわ!」


モフウ


セミラミス「……」モフモフ

イシュタル「無心でモフってるわね」

ナーサリー「相当参ってたのね……」

セミラミス「我がカルデアには何故シロウがおらぬのか」モフモフモフモフ

イシュタル「巡りが悪いとしか……!」





天草四郎がいないカルデアもいるカルデアも平等に、アポクリファコラボイベントの交換期限は20日までです。
ヒポぐるみなどの処分は忘れずに



セミラミス「速攻魔法発動。バーサーカーソウル……手元にある諭吉をすべて捨て効果を発動……」モフモフモフ

イシュタル「恐ろしいイメトレしないでくれる!?」ガビーンッ

なんだって!? それが事実ならとんだ嘘吐き野郎じゃないか!
ところで核シェルターって竜に変化する系女子とか来ても平気なのかな?

才囚学園 屋外


ガシャコーンッ!


百田「くそーーー!」バターンッ

春川「百田! 大丈夫!?」

エグイサルレッド「……」シュウウウウウ

春川「……まずい。かなりまずいよこれ。エグイサルの操縦練度が違いすぎる!」

百田「なんのー! 終一たちが戻ってくるまでは、コイツだけは絶対に足止めしたらァ!」グインッ

春川「いや。私一人でやる」

百田「あ? いやなに無茶なこと言ってんだハルマキ。そんなん認めるわけ……」

春川「よく見てよ百田! 今の一撃で燃料タンクが傷ついてるんだって! 早く脱出しないと爆発するよ!」

百田「え? マジで? あ、マジだ! 妙な速度で燃料が消費してると思ったら――」



ドカァァァァァンッ


春川「百田ーーー!」

エグイサルレッド「まず一人目だね!」

春川(直前で脱出が間に合った、と信じるしかない……私一人でもコイツを食い止めないと!)

春川(……食い止めてどうなる? 最原たちが出て来たところで私たちに希望はあるの?)

春川「……頭を切り替えよう。アンタはここで私が殺す」

新世界プログラム内

セミラミス「……なるほど。あの無礼者の王っぽいヤツ、略してブレイキングがあと一人残っておるのか」

赤松「ブレイキング?」

最原「でもその程度なら巌窟王さんが行けば戦況はひっくり返せる」

最原「……そこまで含めての誘導なんだな。くそ!」

星「ここまで仕込みが徹底してると溜息が出るぜ」

星「俺たちの脱出の準備がほぼ整ったタイミングで現れたエグイサル。命中率がいまいち不安な牽制砲撃」

星「ここまで起こった物事のすべてが俺たちの脱出を促している」

星「BBが取引の一部を蹴らずにすべてを引き受けた場合……外に出た後で起こっていたのは仕組まれた大逆転劇だろうな」

獄原「仕組まれた大逆転劇……?」

最原「学園の監視機能とモノクマの生産機能を乗っ取れたのなら、事態は僕たちにとってかなり有利な方向に転がる」

最原「しかも僕たちは何一つとして裏の事情を知らないわけだから……」

セミラミス「新世界プログラムで行方不明になったと思われたBBが何故か学園の中枢機関をハッキングしていた」

セミラミス「生徒がピンチに陥ったそのとき、満を持して登場。物語は感動の最終章へ……!」

セミラミス「……シェイクスピアも酷評するような三文芝居だ」

モノクマ「これでも無印のダンガンロンパを踏襲した展開なんだけどなぁ」

赤松「でもなんで……? なんで白銀さんがわざわざ私たちの勝ちを促すようなマネをするの?」

赤松「……実際、私たちは誰一人として死んでないわけだから『ありえなくもない仮説』だということは納得できるけど」

巌窟王「どうでもいいな」

獄原「え? どうでもいいってことはないんじゃないかな……ゴン太はとても気になるしさ」

巌窟王「優先順位はかなり低い、という意味だ。この謎を解くことは白銀を殺した後でどうとでもなる」

巌窟王「エグイサル一体だけなら俺が外に出たその時点でなんとでもなるだろう。アンジーの治療もやっと行えるのだからな」

巌窟王「これだけならBBに対しての取引は無駄になる。つまり『俺が外に出てエグイサルを瞬殺した後に逆転が必要な何かが起こる』ということだ」

東条「……」

東条「これはアンジーさんに聞いたのだけど。確かあと二十四時間と数時間で、キーボくんが……」

赤松「あ! そうだよ! 確かフル武装したキーボくんが学園を破壊するんだって言ってた!」

最原「!」

巌窟王「なるほど。それが俺たちに訪れる最後の絶望、というわけか……」

最原「……最終的にはキーボくんのことも助けないと、だね」

最原「できるかな。BBさん抜きで」

巌窟王「入間がいるだろう。まだ」

入間「おう! 俺様がいるぜ! 俺様が……」

入間「ええっ!? 俺様を当てにすんの!?」ガビーンッ

巌窟王「やれ。手を抜けば殺す」

入間「はい……」

最原(やっぱり微妙に入間さんには辛辣だ……)

巌窟王「上手く行ったらとらやの羊羹をやろう」

入間「わーい!」

最原(いややっぱり甘いのか……?)

最原「まだ時間はありそうだ。最後に……モノクマ」

モノクマ「なに?」

最原「……白銀さんは一体なにを考えてるの?」

モノクマ「……」

最原「黙るなって」キィィィンッ

モノクマ「ぐぎぎぎぎぎ! ぐぎぎぎぎぎ!」ジタバタ

セミラミス「……無理だな。『これだけは絶対に話せない』という強い意思を感じる」

セミラミス「時間が大量にあるのならこの方法でいずれは聞き出せよう。だが先を急ぐのであればもう無理だ」

最原「……」

セミラミス「だが……ふむ。最後だ。BBは罠の可能性を疑って蹴ったようだが……我はあえてリスクを取る方を選ぼう」ニヤァ

セミラミス「最原。我に『BBに渡すはずだった権限』を委譲するようにモノクマに強制せよ」

最原「!」

モノクマ「……マザーモノクマにまで連れて行くのはできるだろうけど、流石に権限を渡すことはできないね。絶対」

セミラミス「なんだ。もうこの聖杯の条件に気付いたのか。その通り、この聖杯は『5m以内で実現する身近な願い』しか聞き入れん」

セミラミス「貴様の現実空間での本体がどこにあるのかは知らんが……最原のすぐ近くというわけでもなかろう」

セミラミス「今ここで『権限の譲渡』を迫ったところで、後で裏切ることが貴様には可能だ」

赤松「あ。そうか。外にでたときにはもうモノクマは最原くんの近くにいない。ここで約束させても意味がないんだね」

セミラミス「だが我をここから連れ出すところまでは可能なのだろう? さっき言っていたな? 捕まっているだけでいいと!」

モノクマ「はい言いました。嘘じゃありません」

モノクマ「誰か僕の口を塞いでおくれーーーッ!」ウワァァァ

セミラミス「これは本当になったな。なんとかなった。ククク」

巌窟王「……」ニガニガ

真宮寺「また苦々しい顔に……」

赤松「え? またセミラミスさんに会えるの?」

セミラミス「都合が付けば貴様らを助けよう。都合が付けば、な。忘れるな?」

赤松「うん! ゴタゴタが片付いたら会いに行くよ!」

セミラミス「バカめ! ゴタゴタを片付けるために我を呼べと言っている!」

最原(仲良くなったなぁ。この二人……)

巌窟王「……不服だが、決まりだな」

獄原「うん。今度こそ、この世界を破壊しよう!」

獄原「外に出て、百田くんたちを助けるんだ!」

赤松「アンジーさんも治療する! キーボくんも助ける!」

星「色々とやるべきことは山積みか……」

巌窟王「……最終的には白銀も殺してみせよう」

最原「それは不必要じゃないかな」

巌窟王「俺に指図をするな」ギンッ

最原「!?」ビクウッ

獄原「じゃあ、行くよ! スイッチ、オン!」ポチリッ

セミラミス「……おっと」サッ

赤松「ん? セミラミスさん、なんで耳を塞いで……」

赤松「ッ!」サッ

最原「え?」

最原(このときの僕は想像するべきだったんだ……)

最原(世界を丸ごと一個吹き飛ばすほどのエネルギー。それが発生するとき)






バキィィィィィンッ!!!!!!!



ほぼ全員「ぎゃああああああああああああ!」

最原(どれだけ大きな音が出ることになるのかを……本当に死ぬかと思った)

最原(そして、何が起こったのかを具体的に認識する余裕はなく。目が白くチカチカしている内に……)

最原(内臓がぐるぐる回るような錯覚を起こすほど。洗濯機の中の衣服になったかのような感覚に溺れながら……)



ブツンッ



最原(この世界は終わった)

今日のところはここまで!
予想外だったぜ……明治維新とはな……

才囚学園 中庭

白銀「んー。ふふふふふふふ。やってるやってる。状況がどんどんカオスになっていくー」ルンルン

白銀「……さてと。この混乱に乗じてやることやらないとな」

白銀(最原くんが帰ってきたとき、茶柱さんがいなくなってたりしたら驚くかなぁ。驚くよね?)ワクワク

白銀(もっともーっと盛り上げちゃおう! 適度にみんなを追い詰めよう!)

白銀(そしたら私は。私たちはきっと!)

白銀(……そういえば、夢野さんがさっき消えたのってここら辺だったよなー。一体どこ行っちゃったんだろ)

白銀(まあ魔術でもなんでも上手く隠れてくれるのなら上々――)


ガサッ


「やーっと出てきおったか。待ちくたびれたぞ白銀!」

白銀「え……きゃっ!」

ガシッ

夢野「捕まえた! 巌窟王が帰ってくるまで絶対に離さんぞ!」

白銀「なっ……!? 夢野さん!? 一体どこから……!」

夢野「監視カメラを見ておらんかったか? ずっとここにおったぞ!」

夢野「茂みで転んでからずっと。ずーーーっと! ジャガーマンの魔術で姿を消して動かずにじーっとしてたんじゃ!」

白銀「気が長ッ!」ガビーンッ

夢野「……転子との約束は破るハメになったがの。後で全力で謝らんとな」

夢野「お主の身柄を土産にすればお釣りが来るじゃろうがのう!」ギンッ

白銀「ぐ……な……!?」ジタバタ

夢野「離さん! ぜーったいに離さんぞ! 離したとしてもすぐに追いかけてやる!」

夢野「白銀! お主とウチは仲間だったはずじゃ! 最低でもお主の本音を聞くまでは絶対に……!」

夢野「ずっとずっとずっと……絶対に離さん!」

白銀「……」

白銀「……へえ」ニヤァ

白銀「嬉しいな。まだ私のことを仲間だと思ってくれるんだ……?」

夢野「当然じゃろ! 白銀、一緒に巌窟王に謝るんじゃ! そしたらアイツだってお主のことを……」

白銀「許すわけないじゃん。もう私は無理だよ」

白銀「無理なので」バチバチッ

夢野「え? ぎゃー!」ビリビリビリッ

白銀「改造スタンガンとか使ってみちゃったりして」バッ

夢野「あ、ま、待てェ! 白銀ーーー!」

白銀「やだー! このまま全力で逃げてやるー!」ピューッ

夢野「クソ! また姿を隠されたりしたらかなわんぞ!」

ジャガーマン『虎だ! 虎だ! お前は虎になるのだ!』

夢野「お主はジャガーじゃろ! キャラ設定くらいは守れ!」

ジャガーマン『ちょっと真面目に考察するけど、このまま彼女を一度でも見失ったら、余計に仲間を分断されたりしちゃうんじゃないかにゃー』

夢野「ウチのときのようにか? それはかなり危険じゃな!」

夢野「なんとかならんのか! なんとか……!」

白銀「ふう……ふう……!」タッタッタッ

夢野「……」

ジャガーマン『そんなに足早いわけじゃないから全力で追えば秘密子ちゃんでも追いつけるんじゃない?』

夢野「待てェェェェェ!」シュバババババッ

白銀「うわあああああああ! 来ないでーーー!」ダダーッ!

校舎内

茶柱「はあ……はあ……なんで! 夢野さんがまたいなくなって! 校則違反でエグイサルがこちらを消しにかかって!」

茶柱「最原さんたちも戻って来なくって……! どこまで状況が最悪になるんですか! この学園はッ!」

王馬「本当にねー。ビックリだよねー。学園生活の難易度が一気にナイトメアになっちゃったよねー」カチャカチャ

茶柱「……あの。さっきから気になってたんですけど。あなたが手に持ってるそれって」

王馬「あ。あげないよ! これ俺が拾ってきた銃なんだからさ!」

茶柱「いりませんよそんなものッ! ていうかどこから持ってきたんですかそれ!」

王馬「コウノトリさんが運んできてくれた」

茶柱「赤ちゃん!?」ガビーンッ


ザッ


茶柱「……誰かがこちらに来ます。構えてください」

王馬「ん? いや。大丈夫だよ。このおバカな気配は間違えようがない」

百田「誰がバカだッ!」

茶柱「も、百田さん!? 無事だったんですか!?」

百田「ギリギリ脱出が間に合ってな……悪ィ! 先を急ぐんだ!」ダッ

茶柱「え。待ってください! どこへ行くんですか!?」

百田「高いところだ!」

茶柱「何故!?」

王馬「どうせロクなこと考えてないよ」ヘラヘラ

茶柱「ああもう! 男死っていつもそう! みんなバカ! 自分勝手にどっかに行くんです!」

茶柱「春川さんが一人で頑張ってるのに百田さんはッ!」ダンッダンッ

王馬「ねえ。茶柱ちゃん」

茶柱「なんですか!?」

王馬「怒ってるの、本当に百田ちゃんに対して?」

茶柱「当然でしょう? 他に誰に怒れと?」

王馬「いや俺の勘違いかもしれないけどさ。『自分がピンチなのに助けに来てくれない最原ちゃん』を百田ちゃん越しに見てるんじゃないかって」

茶柱「……」

王馬「あれ!? 図星? 図星!? 図星だよね! 図星だ! 絶対に図星だぞ!」ゲラゲラゲラ

バキィッ

王馬「」チーン

茶柱「悪いですか……こんなときに、最原さんに会いたいって思う転子の何が悪いんですか……」

茶柱「……ううん。悪いのはわかってます。そんな状況じゃないってことは。でも……今にもみんな死にそうなんですよ?」

茶柱「最後になるかもしれない。だから好きな人に会いたいって思うのはおかしいことですか……!」

王馬「……うん。茶柱ちゃんは本当に、最原ちゃんのことが好きなんだなぁ」

茶柱「再度殴られたいですか?」

王馬「え? 何? 嫌いなの?」ヒキッ

茶柱「なんでちょっと引いてるんですかッ! 好きですよ!」

王馬「え? 俺のことが?」

茶柱「最終的には顔面を叩き壊しますよッ! 最原さんのことがです!」

王馬「ごめん。勘違いしちゃうかもしれないから今のうちに全文を大声で言ってくれる?」ニヤニヤ

茶柱「だーかーらー! 茶柱転子はッ! 最原終一のことが! 大好きなんですーーーッ!」

王馬「後ろ見て?」

茶柱「ん?」クルリッ








最原「……」

赤松「わあ」カァァァ

茶柱「」

今日のところはここまで!

最原「……」

茶柱「……ええっと……あの……」

最原「あの。茶柱さん……ハグとかする?」ドキドキ

王馬「凄いや! こんなに調子付いた最原ちゃん初めて見たよ!」ゲラゲラゲラ

赤松「味方から散々な扱いを受けるのがデフォだった最原くんが初めてちょっとだけ前向きに……! 感動で涙が出そうだね王馬くん!」

真宮寺「人間っていいよネ!」ズバァァァァァンッ!

茶柱「あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああああああっ!」




そのとき茶柱転子が無意識にとった行動はうずくまることであった。
羞恥でもう周りが見えなかった。死んでいたはずの真宮寺とか赤松が生きて祝福してるとかもうどうでもよかった。

もうとにかく消えたかった……それはそれとして最原とハグは二人きりならいいかもしれないとチラリと思ったが、状況が状況なので少し泣いた。

茶柱「はあ……はあ……後で王馬さんは殺す。最原さん、おかえりなさい」

王馬「今のは聞き間違いだと思いたい」ガタガタ

赤松「火葬と土葬って選べるっけ?」

真宮寺「日本だとかなり限定的な条件を満たさない限り土葬は無理だネ」

赤松「あと葬式のときって役所からどれだけお金貰えるのかな」

真宮寺「葬祭費は自治体によってまちまちだけど……」

王馬「みんなー! 俺を助ける方向で話を持ってってもいいんだよー!」

最原「あそこで戦ってるエグイサルは……レッドはモノタロウか。もう一方は春川さんだよね」

茶柱「はい。先ほどは百田さんも頑張ってたんですが……」

最原(返り討ちにされちゃったのか……目に浮かぶ……)

最原「ここから見た限りだと……春川さんがやられるのも時間の問題だ」

最原「どうにか時間を稼ぎたいけど」

茶柱「……時間を稼いだところで何がどうなるっていうんですか?」

最原「東条さんの治療が間に合う」

茶柱「……?」

茶柱「そういえば、真宮寺さんや赤松さんがいるってことは、他の人も生きてるんですよね?」

茶柱「みんなはどこですか?」キョロキョロ

赤松「ええっとね。手分けして白銀さんを探してるんだよ。あとモノクマ」

茶柱「……今更見つかるとはとても思えませんが……」

最原(どうかな。巌窟王さんが出てきたら、白銀さんの末路は確定だ。人質の一人でも取って交渉材料にしてやる、くらいは考えそうだけど)

最原(完全に復活したらどこに隠れていようが『学園ごと白銀さんを破壊する』くらいはやってのけそうだし)

最原「どうする……どうする……あと少しなんだ!」

赤松「……聖杯を使えばエグイサルでも止まったりしないかな? 全長は5mないと思うんだよね」

最原「それ、セミラミスさんとか一切気にしてなかったけど、外に出た僕は聖杯を使えるのかな……」

真宮寺「あくまで聖杯は形而上学的な存在だからネ。効力が本物である限りは電脳空間でも現実空間でも変わらず存在できるはずだヨ」

ポォォッ

最原「……本当だ。ちゃんと取り出せる。というかコレ普段は僕の中にあるのか……」

茶柱「なんですかこの趣味の悪いコップ……ひとりでに光ってて気持ち悪いんですけど」

最原「だよね」

赤松「使う分には問題なさそうだね」

最原「……あれに近づけと?」



ガシャコーンッ



春川「はああああああああっ!」

エグイサルレッド「面白い! ラッシュの速さ比べというわけか! オイラァ!」ムダムダムダムダ!


ガインッ



赤松「……無理だね。今度は現実空間だから天海くんを盾にできないし。セミラミスさんもいないし……」

最原「別の手を考えよう。なにか……なにかあるはずだ」

真宮寺「あ。もう手遅れっぽいヨ」

最原「え……!? まさか、春川さんが!?」

真宮寺「そうじゃなくてアレ……」

茶柱「え。アレ……え? アレ? 百田さん?」

最原(僕たちは揃って目を疑った。ちょっと目を離している隙に百田くんが……!)





全員「うわあああああああ! バカだーーーッ!」ガビビーンッ!

今日のところはここまで!

ちょっと時間は遡って

ガインッ

春川「ハッチが……!」

エグイサルレッド「外殻が壊れてパイロット丸見えー! わーい!」

春川(やっぱり無理だったかな。私じゃあコイツを殺せない)

春川(でも私が死んだら全員死ぬし……どうしようかなぁ。相打ち覚悟で行ったら奇跡とか起こったりしないかなぁ)

ブランッ

春川「ん。あ、ダメっぽいな。右腕を捻っちゃった。ハンドルもう握れないかな」

春川(……凄いな私。こんな状態で相打ち覚悟とか考えてるよ。ちょっと前なら絶対にこんなこと考えなかったのに)

春川(よく覚えてないけど……やっぱりこの学園での記憶は本当に掛け替えのないものだったのかも)

春川(クソだらけの毎日だったけど、でもそれと同じくらい楽しかった気がする)

「ハルマキー!」

春川(そうそう。あのバカ全開ヤローのことも絶対に忘れられない。今でも耳について離れないよ)

「ハルマキー! 行くぜーーー!」

春川(……?)

春川「ん? いや声が上から聞こえるような……」

百田「選手交代だハルマキィィィィィ!」ドォォォォォンッ

春川(空からバカが降ってきたーーーッ!?)ガビーンッ!

春川「ちょ……こっちに来るなーーー!」



ガシャンッ!

春川「いっつぅ……! も、百田! なんで空から降ってきてんの!?」

百田「校舎の上階から走って窓から飛び出した! 本当はあの鉄屑クマ野郎に奇襲しかける予定だったんだけどよ!」

百田「ハルマキがあからさまにピンチっぽかったからつい来ちまったぜ!」

春川(それでコクピットに飛び降りれる!? 奇跡的すぎる!)

春川「百田。この際言っておくけどさ! 99%の確率で失敗することは現実ではほぼ絶対に失敗するんだよ?」

百田「関係ねぇ! 関係ねぇんだよッ! そんなもん俺にはまったく意味のない確率論だ!」

百田「やりゃあできる! というわけでだ! ハルマキ、ちょっと!」ゴソゴソ

春川「ひ、う……さ、触らないでよ……ちょっと……!」

百田「悪ィ! この姿勢のままじゃエグイサルを操縦できねぇ!」ゴソゴソ

エグイサルレッド「オイラ、変身途中のヒーローにも遠慮なく射撃しちゃうタイプ!」ガシャコンッ

百田「させるかよッ!」ゲシッ

ガコンッ バキィッ

エグイサルレッド「ぎゃー!」

春川「……!?」

春川(百田が後ろ蹴りで操縦桿蹴り飛ばしたら、狙ったかのような位置に攻撃が入った……!)

春川「百田! そろそろオカルトじみてきたんだけど……!」

百田「ははっ! さてな。俺の後ろは女神さまが見つめてたりするのかも、な!」ゴソゴソ

百田「おし。これで完成だ」

春川「……」

春川「あの……私が百田の膝の上に乗ってる形になってるんだけど……」カァァ

百田「悪ィ! 終わるまでコレで我慢しててくれ! 二人乗りなら、これが一番位置的にいい!」

春川(恥ずかしくて死にそう)

百田「ハルマキ。怪我してんのか?」

春川「……まあ無傷ではないよね。よくあることだよ」

エグイサルレッド「よくもやってくれたなー! 今度はこの森林伐採用ソーでバラバラにしてやるー!」チュイイイイインッ

百田「かなりキレたぜ」バキィィィンッ

エグイサルレッド「……え? あれ……? おかしいよ? 同じスペックの機体なのに、なんでソーが壊れ……!?」

百田「行くぜ……行くぜ行くぜ行くぜ行くぜーーーッ!」



ドンドンドンドンッ



エグイサルレッド「え、ちょ……あれ!? あれあれあれあれぇぇぇぇぇ!?」

春川「百田……!?」

春川(嘘でしょ。さっきのとはくらべものにならないくらい、エグイサルを使いこなしてる!)

春川(命中率が不安だからあえて使ってなかった砲撃をこんなに簡単に使いこなすなんて……!?)

百田「もう絶対にやらせねぇ」

春川「……」

百田「俺の仲間を一人だって、絶対に傷つけさせやしねー。かかってこいよデク人形」

今日のところはここまで!

校舎内

最原「も、百田くん……」

茶柱「嘘でしょ。なんであんなアホ丸出しの思いつき決死特攻が上手くいくんですか!?」

最原「格好いい……」キラキラキラ

茶柱「……あの。お願いですからマネしないでくださいね……」

赤松「安心していいと思う。マネできないから」

真宮寺「さて。百田くんにエグイサルを任せるのは確定だネ。後は……」

最原「うん。白銀さんかモノクマのどちらかを先に見つける!」

最原(できるなら巌窟王さんより先に……!)

最原「行こう! もう校則はないも同然だ! ちょっとくらい無茶しても大丈夫だよ!」

茶柱「あなたは無茶したら死にますよ。怪我が悪化して」

最原「……」

最原「あの……みんな。手伝ってくれる?」

赤松「もちろん!」

モノタロウ「おかしい……おかしいよ! そろそろ百田くん、ウイルスのせいで体がボロボロになる予定なのに!」

モノタロウ「なんでこんなに元気いっぱいなの!?」

モノタロウ「……ん。あれ……変だな。百田くんの傍になにか見えるような。ボンヤリ……」



説明しよう! 巌窟王が燃やして捨てていた女神の加護は、実は百田にすべて集まっていたのである!
百田本人は気付いていないが、鈴鹿御前に噛みつかれた直後あたりから明確に致死性ウイルスによる病状は改善に向かっていたのだ!

なお、BBはそのことに気付いていた。



春川『おかしいな。肋骨にまで破壊が及んだような手ごたえだったんだけど』

BB『……あー……』

天海『BBさん? どうかしました?』

BB『いえ。百田さんカワイソーだなーって』



ちなみに女神の加護を受けることは当然ノーリスクではない。いわばこれはマーキングである。
『面白い人間が更に面白くなるように見つめていよう』という気まぐれの生み出した終身名誉女神の玩具の持つ称号でしかない!

が!


百田「行くぜぇーーーッ!」

春川「……ん? 百田。なんか後ろについてるような……?」



百田本人だけがその窮状に気付いていない! バカだから!
そう! バカだから気付けないのだ! ああ、素晴らしきかなバカ!



ケツァルコアトル『と色々口上を考えてみたのデース。どう?』

メドゥーサ『中々よく書けてると思いますよ。誰も聞く者がいないという欠点を除けば』

ケツァルコアトル『……霊感、今一なのよね。生徒全体が……』

校舎内

真宮寺「それじゃあもう一回、最原くん。僕が背負うからさっさと乗って」

最原「本当ごめん……」

赤松「アンジーさんもだけど最原くんも相当怪我したよね……余裕が出たら東条さんに診てもらおう?」

最原「そうするよ」

茶柱「あの! 夢野さんの姿もさっきから見えないんです! 彼女のことも探してくれませんか!?」

最原「うん。わかった。探すよ」

王馬「じゃ、ひとまず二手に別れようか。単独行動は危険だしね」

王馬「チーム割りは……まあさっきの通りでいいでしょ。真宮寺ちゃん、赤松ちゃん、最原ちゃんが一チーム。俺と茶柱ちゃんで二チーム」

最原「うん。妥当だと思う。足手纏いの僕がいるチームの方が人数多くなるのは仕方ないよね……」

茶柱「……転子はあなたのことを変わらず信じてます。だからちょっとは自信を持ってください」

最原「……」ジーン

赤松「もうすっかりメロメロだなぁ。最原くん」

真宮寺「話は済んだ? いや済んでなくとも後回しにして。行くヨ!」ダッ

最原「あー……」

赤松「じゃ、私も行くから。王馬くん、茶柱さんに変なことしちゃダメだよ。また殴られちゃうから」

王馬「おっけー!」ヘラヘラ

赤松「まあ……ここぞというときに裏切らないとは、なんとなく思ってるけどさ。勝手に思ってるだけだけど」

王馬「……どうかな」

茶柱「……行きましたね。それじゃあ転子たちも行動を開始しましょう!」

王馬「茶柱ちゃん。真面目に聞いて欲しいことがあるんだ……」

茶柱「なんです?」

王馬「俺、実は白銀ちゃんにさ。こう言われてるんだ。『ピンチになったら人質を取ってくれ』って」

王馬「白銀ちゃんは最原ちゃん(と今の俺が覚えてない何か)が新世界プログラムから出て来るのを物凄く恐れていた」

王馬「だからいざというときに適当な誰かを人質にとって、才囚学園の生徒全員の動きを鈍らせてくれって言われていたんだ……」

王馬「その後の作戦については知らない。俺も聞かされなかったからね……」

王馬「そして、今持っているこの銃は、その使命を受け取ったときに白銀ちゃんから貰ったものなんだ……!」

王馬「ごめん、茶柱ちゃん……俺のために人質になってくれないかな……」

茶柱「……」







茶柱「嘘ですよね」

王馬「うん! 嘘だよーん!」キラーンッ

茶柱「ふんっ!」バキィッ

王馬「」チーン

茶柱「ふざけてないでさっさと行きますよ!」ズルズル

王馬「足を引きずらないで……」

今日のところはここまで!

??学園

天海「……ん? あれ? ここどこっすか?」キョロキョロ

天海「あ! もしかして俺死んじゃったんすか!? くっそー! せっかくギリギリのところまで生き残ったのにー!」

天海「……いや。まだだ。まだ終われない。こうなったら閻魔大王を叩き殺してでも現世にアイルビーバックしてやるっす!」

天海「みんな! 俺が行くまで手柄を残しておいてくれっす!」

??「うう……ひっく……」

天海「ん? あれ。キミ、誰っすか。こんなところで何で泣いてるんすか」

天海「……んん? 白銀さん……?」

天海「あ、いや。よく見たらこの場所、どこか見覚えがあるような……半壊してるけど裁判場、かな……」

??「やだよう……」

天海「?」






??「みんなのこと……忘れたくない……!」

天海「ッ!」

天海(脳の奥底で何かが裏返るような感覚……吐き気を催すような酷い頭痛がする)

天海(今まで綺麗に塗り固められていたメッキが、内側から恐ろしい何かに突き破られるかのような恐怖)

天海「うっ……おえっ……!」

??「忘れられるのは考えられない。私は彼らのことを信じてる」

??「天海くんに関しては私と同じ道に来るから、忘れられたとしても新しい思い出を作ればいい」

??「問題は私。私はなにも忘れたくない。忘れたくないよ……!」

??「どんなに酷い目に遭ったとしても、私の記憶だ。私の思い出だよ。なのに、なんで……!」

天海(……聞いたことがある気がする。この声が、俺の胸に風穴を開ける)

天海(いや。最初からその欠落はあった。ただ気付いていなかっただけだ……!)

天海(それなのに!)

天海「なんで……思い出せない? とても大事なことのはずなのに!」

天海(考えられるのは一つしかない。思い出しライトで改竄された記憶……その向こうにある残滓を俺は見ている)

天海(だから、あと一歩のところで何も思い出せない)

天海「……違うな」

天海(それがどうした)

天海「俺はちゃんと、才囚学園での記憶を思い出せたじゃないっすか」

天海「……白銀さん。俺は必ず思い出す。思い出して絶対に迎えに行くっす」

天海「……最原くんのような才能あふれる誰かでも、巌窟王さんのような条理の外の存在でも不可能なこと」

天海「俺にしかできない。俺の声で! キミに――!」

東条「目が覚めた?」

天海「……」

天海(……近ッ!)ドキーンッ!

東条「……こっちに帰ってきてからうなされるばかりでまったく起きる気配がなかったから心配していたのだけれども」

東条「問題はないようね」サッ

天海(あ。離れちゃった。ちょっと名残惜しい……)

天海「傷は……あの世界で受けたものは当然ながら残ってないっすよね。うん」

天海「……歩ける」スタッ

東条「もうちょっと待ってくれるかしら。彼女の治療がそろそろ終わるわ」

東条「そうしたら『彼』の出番よ。満を持してね」

天海「……うん。彼が来れば全部終わりっすよね」

天海「だからちょっと、任せられないかな」

東条「……単独行動は危険よ?」

天海「途中で会った誰かと同行するっすよ。流石に今どんな状況かはなんとなくわかってるっす」

天海「……東条さん。赤松さんの約束あったっすよね。『ここから出たら友達になろう』ってヤツ」

東条「ええ。今なら絶対にその約束は果たせそうね。色々あったもの。この学園では」

天海「俺、ちょっと友達に会ってくるっす」

東条「え?」

天海「……なんか、外に出なくとも友達だったみたいなんすよ。だから行かなきゃ」

天海「俺は……俺の学園生活は。何のためにここにいるのかわからなかった俺の物語は、この瞬間のためにあったんす」

東条「……無茶は厳禁よ」

天海「当然! 『全員』で生きて帰るんすからね!」

今日のところはここまで!

今日は飲み会に捕まったので更新クソ遅くなるかなしです!
ごめん!!!!

図書室の隠し部屋周辺

星「……やっぱりな。最原の推理通りと言ったところか」

入間「モノクマがいた形跡、しっかりあんな。まあちょっと考えりゃ誰にでもわかることだけどよ」



モノクマ『今は凍結されてるけど、図書室に行ってボクが許可すれば使えるようになる!』

入間『アホかよ。BBはこの世界でしか存在できねーんだろ? そんな取引したところで……』

モノクマ『あ。それは大丈夫。新世界プログラムに来る直前に、ボクがマザーモノクマと新世界プログラムを繋げておいたから』



入間「モノクマはわざわざ取引材料にするためだけに、マザーモノクマ? ってヤツを新世界プログラムにつなげたわけじゃねぇ」

入間「つなげる必要があったからつなげたんだ」

星「ここからモノクマは新世界プログラムにアクセスした……いわばモノクマ専用のフルダイブ用デバイスってわけだな」

入間「最原からの事前情報の通り、夢野を閉じ込めるためにトイレ側の隠し通路は塞がれてる」

入間「上手く行けば俺様たちが、新世界プログラムから出たモノクマを捕まえられるかも……と思ったんだけどなぁ……」

星「特にそんなことはなかったか」

入間「ちくしょう」

ガララッ

夢野「はあっ……はあっ……はあっ……!」

夢野「く、クソ! あやつの地味設定を忘れておった! どこかで撒かれたか!? いないぞ!」キョロキョロ

夢野「おお! 入間! 星! 帰ってきておったのか! こっちに白銀は来ておらぬか――」

入間「ぎゃーーーッ! おばけーーーッ!」ゲシィッ

夢野「ぐぼえっ!?」ガフウッ

星「気持ちはわかるけどよ。ピンヒールで蹴るな。死ぬぞ」

夢野「とても痛かったー。入間のピンヒール」

夢野「感動の再開かと思ったらー。随分なご挨拶」

夢野「ウチは」

ジャガーマン『私たちは』

夢野&ジャガーマン「忘れません」

入間「こ、怖ぇーよ……小学校の卒業式ふうに言うんじゃねーよ。悪かったよ……」

夢野「白銀は……こっちには来ておらなかったようじゃの。しかしあやつ一体なにをしに外に出て来たんじゃ……?」

夢野「分断するつもりなら別にウチが相手でもよかったはずじゃが」

入間「既に決まったターゲットがいたんじゃねーの? テメェは眼中になかったんだろ」

星「アイツが狙いそうなヤツ……? ダメだ。思いつかねーな。パッとは」

夢野「むう」

星「まあいい。夢野。お前さんが来たのならちょうどいい。この部屋のことを調べるからお前さんの情報も提供してくれ」

夢野「でも白銀が……」

星「アイツのことは他の誰かに任せろ。仲間、なんだろ?」ニヤリ

夢野「……」

夢野「なんか変わったのう。お主。この学園に来たばっかりのころとは違うぞ?」

星「きっかけはアンタだったかもな?」

夢野「え? ウチ?」

夢野「……いやわからんな。心当たりがない。まあよい! さっさと調査するぞ! パパッとな!」

ジャガーマン『たーだそれだーけー。できれーばー。青春さー』オーライッ

入間「余計な茶々入れんな」

中庭

真宮寺「それにしても……初めて来たときは草でいっぱいだったのに、随分と整備されたものだよネ」

真宮寺「お陰で動ける場所が増えてエグイサルを迂回することができたのはいいことだけどさ」

赤松「さて。最原くん。ここに来て何をしたかったの?」

最原「かなりの高確率で白銀さんが隠れているのは裁判場だろうな、と思って……」

赤松「その他の候補地はないの?」

最原「あることにはあるけど。まだ解放されてない王馬くんの研究教室とか……」

最原「でもなんか彼女の性格的にそういうのやりそうもないなって」

赤松「ああ。そういえば前に食堂で一緒に食事してたときに『王馬くんに騙されて落とし穴に落ちた』とかひっどい顔でぼやいてたなぁ……」

最原「それに今の彼女なら『わかりやすく重要な場所』にたてこもりたがるだろうなってさ」

真宮寺「……あれ。ドアが半開きだ……」

最原「ビンゴかな」

赤松「入ってみよう!」

エレベーター内


ゴウン……ゴウン……ゴウン……


赤松「……でもさ。これ以上、何を調べるの? 外の世界に関する真実なら、暫定だけど最原くんが辿り着いたよね?」

最原「白銀さんの本音が見たい」

赤松「……そう」

最原「ん?」

最原(あれ。なんか素っ気ない……賛同してない? 赤松さんが?)

最原「どうしたの?」

赤松「いや、さ……白銀さんから本当に酷い目に遭わされたからさ……」

赤松「どんな本音隠していようが許す自信がまったくないんだよね」

真宮寺「自信? 赤松さんは優しいなァ。僕はそもそも許すつもり自体がないヨ」

最原「……気持ちは……」

真宮寺「わかる、とか言ったら流石に最原くんでも怒るヨ」

真宮寺「……体感的には一回だけど、何回も殺されたんだ……! 絶対に許せない」

赤松「……」

最原「……うん。ごめん」

最原(いつも、このエレベーター内での時間はとても長いな……)

最原「というか、よくわかったね。僕がただ白銀さんを捕まえるつもりじゃないってこと」

赤松「まあね。結構長いつきあいになっちゃったから」

真宮寺「キミの意思は尊重するヨ。そっちもそっちで覚悟があって、その代償はたっぷり支払ったみたいだしネ」

最原「ありがとう」



チーンッ


最原「あ。ついた」



ガララララッ



最原(まさか……学級裁判以外の用でここに来ることになるとは)

最原(……さて。調査を始めようかな。いつもみたいに)

ちょっとだけ時間は遡る 裁判場

?????「……アレはどこだ……アレは……」キョロキョロ

?????「向こうに行ってみるか」スタスタ



チーンッ




ガララララッ



最原「……裁判場……毎回微妙に内装が違ったけど、今回は無骨にコンクリが丸出しだね」

真宮寺「多分、催し物がなくなったから全部とっぱらったんだろうネ」

赤松「んん……でもなんか、ところどころパーティションで区切られてたり、毛布が転がってたり……」

赤松「……生活感が丸出しだよ。ここが潜伏先で間違いないみたい」

最原(裁判の席は全部、使わないときは天井に収納されてるみたいだな……地面はこざっぱりしている)

最原「白銀さんはいないみたいだ。手分けして探しても問題は無さそう、かな」

真宮寺「流石に室内でキミも走ったりしないだろうし、いいんじゃないかな」

赤松「じゃ、手分けして手がかりを探そう!」



カツンッ


赤松「……?」

赤松(今、誰かの足音が聞こえた……?)

区切られた区画その一

最原「……?」

最原(なんだこれ……)



ボヤァーッ


最原「……なんか、薄くぼやけた空間がある……ホログラフ?」スッ


ズボッ


最原「……違う。手を突っ込める。つまり『奥行き』があるってことだ」

最原「穴? いや……違うな。壁に開いた穴とかじゃない。『空間に開いた穴』って感じだ」

最原「なんでこんなものが……ん」カサリッ

最原(足元に書類みたいなのが転がってる)

最原「なにこれ」ヒョイッ

最原「題名は……巌窟王のホームに繋がる『穴』に関する研究レポート?」

最原「穴……? 研究レポート? なんのことだ?」

最原(というか、この研究レポート署名代わりかな。キスマークがルージュでべっとり表紙に張り付いてる)

最原「……」

最原(待てよ。確かこんな研究を大真面目にやってた人がいたはずだ。確か最初の学級裁判で――)

最原「中身を読んでみよう」パラッ

レポ内容『通常、サーヴァントとは聖杯戦争で呼ばれる使い魔であり、有体に言えば魔術師の使う兵器である』

レポ内容『英霊の座から登録された情報を基にして、聖杯の力により現実に出力することによって規格外の力を持った英霊をサーヴァントとすることができる』

レポ内容『つまり聖杯は3Dプリンターの役割を果たしており、データにしか過ぎない英霊を現実に呼び出すためには不可欠なものなのだ』

レポ内容『※この出力する役割を持った聖杯の機能そのものをチューンナップできれば理屈上、更に上質なサーヴァントを呼び出せる。これも後で考察』

レポ内容『だが今回の召喚に限ってはそうではない。この空間そのものの異常性と、夜長アンジーの詠唱、そして巌窟王のホームからの混線』

レポ内容『それらが合わさり既に召喚されているサーヴァントを横取りする形で才囚学園へと呼び込んでいる』

レポ内容『これにより、才囚学園と巌窟王のホームとの間に一種の絆ができた。才囚学園から巌窟王のホームへの脱出は、研究する価値は大いにある』






最原「……やっぱりコレ書いたのって『彼女』だよなぁ……」

最原(後は延々とよくわからない試行錯誤に関してのあれこれが写真付きで乗っているだけだ。最後まで飛ばそう)パラリッ

レポ内容『こっちからあっちに脱出するの、無理! クソがッ! 死ねッ!』

最原「イラつきすぎだよッ!」ガビーンッ

レポ内容『ある程度のところまでは侵入することは成功した。が、なんらかの強制力が働いて、少し時間が経ったところで強制的に押し戻される』

レポ内容『ただ向こう側に繋がっていることだけは確認した。間違っても巌窟王に見つからないよう、魔法陣を掃除する』

レポ内容『途中、通りすがりの白銀に見つかったがどうでもいい。むしろちょうどよかったので掃除を押し付けてしまった』

レポ内容『魔法陣が消えれば、穴は自動的に消えるはずだ』

レポ内容『そういえば、押し付けたときに白銀に色々と訊かれた。もう一回別のところに魔法陣を書いたらどうなるか、と』

レポ内容『面倒だったが質問自体は興味深い。これまた白銀の協力のもと、魔法陣を消し去ってから自室で同じように魔法陣を描く』

レポ内容『才囚学園と巌窟王のホームの絆は簡単には消えないらしい。自室から、裏庭の地下より見えたのと同じ光景が向こう側に広がった』

レポ内容『余程のことが無い限り、この研究は凍結するが、これは覚えておいた方がいいかもしれない』

レポ内容『※追記。おそらく繋がった先は倉庫の一種だと思われる。人気がないので滅多に使われていないのだろう』

レポ内容『向こう側からなにか持ち帰ろうとしたが、大したものがなかったので持ち帰った先から返却した』

レポ内容『どうやら向こう側の住人(無生物含む)がこちら側にやってくる分には強制力は弱いようだ』

レポ内容『皆無ではない。思わぬ事故を引き起こす可能性があるので、滅多なことは考えない方がよいだろう』




最原「……」

最原(これでわかった。セミラミスさんがどこから侵入したのか)

最原(……大したものあったじゃないか! もう!)

最原「でも白銀さんはなんでこの研究を、引き継いだんだろう」

最原「逃げ道の確保……?」

最原(考えられなくもない。強制力を排除できれば向こう側に行けるって文脈だし)

最原(けど、その割には『中庭の扉が開いてた』からな。外に出て来たのは間違いない)

最原(逃げられるんならとっくに逃げてるよな……)

最原「……」

最原(巌窟王さんを帰す準備……まさかな)

最原「別の場所を探してみよう」




区切られた区画その二

セミラミス「むぐ?」モグモグモグモグ

赤松「……」

真宮寺「……」

セミラミス「……」モグモグモグモグモグモグ

セミラミス「……」ゴクン








セミラミス「誰だ貴様らはーーーッ!?」クワッ

赤松「ええーーーッ!?」ガビーンッ

真宮寺(ありえない場所とタイミングで再開しちゃったヨ)

今日のところはここまで!

赤松「……!?」

真宮寺「赤松さん。事情はあまり呑み込めないけど、あの第一声からなんとなく察せるよネ」

真宮寺「あのセミラミスさんはさっきまで僕たちを守ってくれていたセミラミスさんじゃ……」

赤松「わー! セミラミスさんだ! さっきぶりー!」ピューッ

真宮寺「ないって言おうとした傍から近づかないで!?」ガビーンッ

セミラミス「気安く我に近づくな」ジャララッ

ザンッ

赤松「きゃー!」バタンッ

真宮寺「赤松さん……!」ダッ

真宮寺「赤松さん。大丈夫? 赤松さ……」ユサユサ

真宮寺「し、死んでる……」ガーンッ

赤松「生きてるよ! 服がちょっと破けただけだもん!」ガバリッ

セミラミス「ふん」

真宮寺(変なところで弁えてる……)

セミラミス(こやつらどこかで見た覚えが……あ。BBたちが見ていた映像の生徒たちか)

セミラミス「おい貴様ら。何故ここにいる?」

赤松「は? な、なんでって……それはこっちの台詞だよ。なんでセミラミスさんが現実空間に?」

セミラミス「黙れ。質問はこちらがする」

赤松「……」

セミラミス「……」

赤松「……」








セミラミス「黙るな」ジャララッ  ザンッ

赤松「きゃー!」バタンッ

真宮寺「赤松さんがまた死んだ……!」

赤松「生きてるよ!」

赤松「さっき黙れって言ったくせに!」

セミラミス「うるさい。我の気に入らないことをしたのがすべての元凶だ。自業自得と知れ」

赤松「セミラミスさんだ! この自分の主張と都合だけで周りをぶん回す感じ、間違いなくセミラミスさんだよ!」

セミラミス「不敬者が。まあよい。今の我は機嫌がいい。この『漬け置きサングリア』に感謝するのだな。作ったの我だが」チビチビナメナメ

真宮寺(行動パターンが丸っきりあの世界でのセミラミスさんのままで感動すら覚えるネ……)



※サングリアを家庭で作る場合は酒税法をよく読みましょう



赤松「ええと……私たちがなんでここにいるって、当たり前だよね。ここ才囚学園だし……」

セミラミス「何……? そんなはずはない。ここはカルデアだぞ?」

赤松「かる……ああ、巌窟王さんのホームだっけ」

真宮寺「……」

赤松「……」







赤松&真宮寺「は?」

セミラミス「……貴様らの都合など知らぬ。知らぬ上に興味もなく、故に観察する義理もない」

セミラミス「目当てのものは見つかったので、我はそろそろ帰る」

セミラミス「この冷蔵庫は貴様らのか? レンタル料として中身はすべて貰っていくぞ」ゴソゴソ

赤松(よく見たらここ食事のスペースみたいだ……冷蔵庫とかテーブルとか椅子とかある……)

赤松「レンタルって? 私たち別にセミラミスさんから何か借りた覚えは……」

赤松(あ。いや最原くんの聖杯とかあったかな。でもあれ借りたんじゃなくって貰ったんだしな)

セミラミス「とぼけるな。我からゲームを盗ったであろう。いわゆる借りパクというヤツだな」

セミラミス「戦慄のファースト・タイヤキング・オブ・バビロンはキチンと返却してもらうぞ」スッ

赤松「なにそのディスク」

セミラミス「これこそは我が作りし闇のゲーム……クリアすれば賞品として聖杯が貰えたりする」

セミラミス「ククク。欲しいか? 欲しいか? 当然やらんがなァ!」ドヤァ

赤松(タイトルがださい……)

セミラミス「まあこれを貴様らにやったところで、人間ごときにクリアできる道理もないがな」

セミラミス「それにしても我ながら惚れ惚れする。まさに現代の至宝よな。見よ、この迸るような魔力――」ピクッ

セミラミス「って、中身が空ではないかァ!」ガシャァァァンッ!

赤松「至宝を地面に投げ捨てたーーーッ!」ガビーンッ

セミラミス「貴様ら……我のゲームの中身をどこにやった……? あれには我の分身も入っていたのだぞ」ゴゴゴゴゴゴゴ

赤松「分身……? ゲームの中身……?」

赤松「あっ」

真宮寺(なるほど。ぼんやりわかってたことが、やっとハッキリわかってきたヨ)

最原「赤松さん。真宮寺くん。騒がしいけどどうしたの?」ヒョコッ

赤松「あ。最原くん」

セミラミス「ム。また増えたな。一体なにが起こって――」

セミラミス「貴様ァ!」ビュンッ

最原「うひゃあ!?」ガビーンッ

セミラミス「この捻くれた魔力……まさか我の聖杯か!? 聖杯であろう! 聖杯を持っておるな貴様!」ユサユサガクガク

最原「え? セミラミスさん!? え!? ええっ!?」

セミラミス(人間ごときにあのゲームがクリアできる道理はないが、ゲームをクリアせずして聖杯を得るのは更に無理)

セミラミス「貴様……ふむ。ふむふむ……」

セミラミス「いいだろう。これは教訓として受け取っておく。我のゲームをクリアされたのならば、それはそれでよいのだ」

セミラミス「次回作……作る気はなかったが検討せねばなぁ」スタスタ

最原「な、なんか勝手に納得して去って行った……」

赤松「あ! ちょっと! セミラミスさん、待って!」

セミラミス「断る」

赤松「本当に人の話聞かないなこの女帝!」

最原「セミラミスさん! お願い! 『待って』!」



ガチンッ


セミラミス「ム……? 体が動かん」ググッ

最原「あっ」

真宮寺(うっかり聖杯使っちゃったヨ)

セミラミス「……」ムスーッ

最原「あの……本当にごめんセミラミスさん。今のは事故だけどさ……」

最原「話、ちょっと聞かせてくれないかな? 裏付けを取りたいんだ」

今日のところはここまで!

証言開始

~セミラミスはどこからやってきたのか~

セミラミス「我が何故ここにいるのかが気になるのか? 妙なヤツらめ」

セミラミス「自室から普通に徒歩でやってきたに決まっているであろう」

セミラミス「どうやら子供系サーヴァントの内の誰かが、このロストルームの噂を中途半端に覚えておったらしくてな」

セミラミス「『失われたものを見る場所』を『遺失物の取扱所』だと勘違いし、我が落としたゲームをここに届けたらしいのだ」

セミラミス「それを探していたらいつも間にやら貴様らと遭遇した。それが真実だ」

最原「……ロストルーム……?」

セミラミス「カルデアの使われていない倉庫の通称だ。あまりにも使われていなかったので、ちょっとした怪談話まである」

赤松「そのロストルームでゲームを探しているだけで、なんで才囚学園にやってきちゃうの……?」

セミラミス「なんの話をしている? だからここはカルデア……待て」

セミラミス「まさかカルデアではないのか? 本当に?」キョロキョロ

最原「うん。どうもセミラミスさんはうっかり穴に入り込んじゃったみたいだね」

最原「才囚学園と、巌窟王さんのホームを繋ぐ穴に」

セミラミス「どうりで居心地が悪いと……ふむ」

セミラミス「我がいなくなったら穴は塞いだほうがよいぞ。危険だからな」

最原「うん。わかった」

セミラミス「あと貴様、聖杯以外にも何か妙な力を持っているな? それも早めに捨てた方がよいぞ」

最原「本当にあっちのセミラミスさんと似たようなことを言うんだね……」

セミラミス「質問は終わりか?」

最原「まだ何かあったらナーサリーさん経由で訊くよ」

セミラミス「答えるかどうかは我の機嫌次第だがなぁ。祈れ」

セミラミス「それでは、な」スタスタ

赤松「……」

赤松「ピアノの約束……果たせなかったな」

真宮寺「彼女はキミの知ってるセミラミスさんじゃなかった。ノーカンだヨ」

赤松「……」

赤松「……ん? いや。待って。待って。ナチュラルすぎて流しちゃったけどさ」

赤松「セミラミスさん帰しちゃダメじゃない!? 協力してもらおうよ!?」ガビーンッ

最原「……」エー

真宮寺「……」ムリダヨネー

最原「……」ネー

赤松「そこっ! 目で会話しない! 長い付き合いだからわかるんだからね!」ビシィッ

赤松「大丈夫だよセミラミスさんなら! 割と付き合いいいから!」ダッ

最原「あ! いやダメだって! その人あっちのセミラミスさんと別人だし!」

赤松「セミラミスさーん! 助けてー!」



ジャラララッ ザンッ



赤松「きゃー!」

最原(それきりパーティションの向こう側は静かになった……)

真宮寺「……死んだかな」

最原「さ、流石に生きてるよ……こんな終盤で、こんなくだらないことで死んだりしないよ……」ダラダラダラ



後で勇気を出して見に行ったら服が大分ボロボロになった状態で目を回していた。死んではいなかった

赤松「……なんか虹色のトゲトゲした石をくれた。びっくりして服を破いたお詫びだって」

聖晶石「」キラーンッ

最原「なにそれ」

真宮寺「お詫びにくれたプレゼントが綺麗な石ってワンパク少年みたいだネ」

赤松「三つくらいくれた」

最原(徹頭徹尾意味がわからない……)

最原「ともかくこれでハッキリしたよ。あの穴は間違いなく巌窟王さんのホームに繋がっていた」

最原「そしてその事実を隠そうとした人が生徒の中に二人いる。一人は白銀さんで、もう一人は……!」

真宮寺「ねえ。その穴ってヤツ、僕も見たいんだけど」

最原「あ、うん。あっちの方だよ。研究資料の方も貸すから、二人で行ってきて。後で意見を聞かせて欲しいな」

真宮寺「わかった。行こう赤松さん」

赤松「着替えたい……」スタスタ

最原「……調べてない区画はあと一つくらいか。なにかあるといいけど……!」

区切られた区画 最後

最原「……作業部屋?」

最原(最後の区画は、白銀さんの『臭い』が色濃く残っていた。もちろん比喩だけど)

最原(床に散らばる何らかの計画書。手書きな上に殴り書きなので大半が判別不能だ。モノによっては本人ですらもうわからないかもしれない)

最原「……白銀さんはここで一体なにを……ん?」

最原「これは、なんだろ」

最原「学級日誌……?」

最原(手にとって、読んでみる。読み込んで……)

最原(……すぐ閉じた)

最原「これ見たことが巌窟王さんにバレたら焼かれちゃうかもな……」

最原(学級日誌の正体は、なんてことはないものだった。巌窟王さんがこの学園に来てからの日記のようなものだ)

最原(基本的にみんなのことをベタ褒めしている。真宮寺くんのことですら一定の部分は認めているらしかった)

最原(白銀さんのことも。まあ、あの時点までは裏切りに一切感付かなかったので当然か)

最原「でもなんでこんなものが……白銀さんは本当になにをしてたんだ?」





穴のある区画

赤松「……これが巌窟王さんのホームに繋がる穴……」

真宮寺「研究資料によれば向こう側には行けないみたいだけどネ」

赤松「惜しいなあ。向こう側に行けたら脱出できるのに」

赤松「……ん……? あれ。ここに放置されてるのって……」

真宮寺「さっきセミラミスさんが持っていった冷蔵庫の中身、かな。持っていけないからここに放置したんだろうネ」

赤松「あれ。でも私たちと会ったときはいくらか既に食べちゃってたよね。あれは大丈夫だったのかな」

真宮寺「ヨモツヘグイ……とまではいかないだろうけど、後ろ髪を引っ張られる程度の強制力はあったかもネ。捻じ伏せることは充分可能だろうけど」

真宮寺「今頃彼女は、すごい胃もたれと戦ってるヨ」

赤松「しまらない人だなぁ」

赤松「……ん。食糧じゃないものも混じってるけど……!」

赤松「モノクマカラーのパソコン!」

真宮寺「は?」

赤松「覚えてない? モノクマルールとか書かれてたアレだよ! 何か重要な情報が書かれてるかも!」

真宮寺「……?」

真宮寺(ここに置かれてるってことは、セミラミスさんはこれも向こう側に持っていこうとしたってことだよネ)

真宮寺(なんで? そんな興味を引かれるようなものには……)

赤松「……よし。ロックはかかってない! 見放題! やった! じゃあ早速!」カタカタカタ

赤松「――」

真宮寺「……あ」

赤松「え。何コレ……? なに……これ……」

赤松「……ふ……」






赤松「ふざけないでよッ!」

最原「……なんとか解読できないかなぁ。ええと……」

最原「卒……ア……いやダメだ本当に字が汚い。普段の彼女ならもうちょっと読める字書けるはずだけど。あえて崩してるのかな」

最原「数字とかは比較的無事だ。なんだろコレ……書式や規格のデータ……」

最原「……本を作ってたのか? なんの?」

パラリッ

最原「……おっと。なにか落ちたな」

最原(拾ってみると、それは白銀さんの映った写真だった)

最原(場所は図書室。アングルは……どこか見たことがあるな)

最原「……ん? これ、最初の学級裁判での、入室をトリガーにした隠しカメラと同じアングルだ」

最原「怪談側じゃなくって奥側の扉から入る白銀さんが単独で映ってる」

最原「……本を持ってるな。タイトルは……『写真術』って単語だけが辛うじて読み込めるけど……」

最原「ん……? 写真術?」

最原(……後で王馬くんにこの写真のことを確認しないといけないかもしれない)




「ふざけないでよッ!」



最原「……赤松さんの声だ? なにかあったのかな」

穴のある区画

赤松「はあ……はあ……はあ……」

赤松「こんな……こんなものを今更見せられたところで……!」

赤松「なんで!? 全部手遅れなのに! こんなことしたって無意味なのに! どうして……!」

真宮寺「これはとてもじゃないけど最原くんには見せられないネ」

真宮寺「もし最原くんがこれを見たら、彼のことだ。白銀さんのことを助けるとか言いかねない」

赤松「……」

赤松「巌窟王さんを本気で止めようと思ったら命がいくつあっても足りないよね。真宮寺くんの時点で本当にギリギリだったのにさ」

真宮寺「どうする?」

赤松「私はこの学園に来たときからずっと変わらないよ」

赤松「首謀者には死んでもらう。絶対にね」

真宮寺「そっか。それなら誤魔化すのは僕に任せておいて。赤松さんは上に戻るまでうつむいて口を一切開かないで」

真宮寺「このファイルを隠したところで大局に影響はないだろうから、問題はないヨ」

赤松「……」

最原「どうかしたの?」ヒョコッ

真宮寺「さあネ。赤松さんがモノクマカラーのパソコンを見つけたんだけどさ」

真宮寺「今は赤松さんからパソコンを奪い取って、彼女が何を見たのか調べてるところだヨ。ブラウザ閉じちゃったみたいでさ」

最原「……大丈夫?」

赤松「……」

最原「?」

真宮寺「……ン?」

最原「なにか見つかった?」

真宮寺「多分赤松さんが見てたのとは別のものだろうけど……これ」



モノクマルール『一つ、このパソコンへの干渉を禁止する校則を作ってはならない』

モノクマルール『二つ、モノクマにも校則は適用されるが、生徒に指摘されなければその限りではない』




最原「モノクマルール……? 確か前の学級裁判で話題に上がったものだよね」

真宮寺「今は全文が見れる」

最原「!」

真宮寺「……白銀さんは本当に油断していたんだろうネ。操作途中で離席したからかロックをかけていなかった」

真宮寺「パソコンのスリープを元に戻す度にパスコードが必要になる、みたいな設定もあったらしいけど、面倒臭がって解除してたみたいだヨ」

最原「全文は!?」




モノクマルール『三つ、モノクマはコロシアイによらず生徒を外に出す手続きを行うことができる。これを最後の学級裁判と呼ぶ』

モノクマルール『四つ、モノクマは生徒の求めに応じて最後の学級裁判を開催できる』

モノクマルール『五つ、モノクマの校則違反の証拠を糾弾する証拠があると生徒が判断した場合、モノクマは最後の学級裁判の開催を拒否できない』

モノクマルール『六つ、以上五つのルールをもってモノクマと生徒の公平さを保つ絶対不変のルールとする』




最原「コロシアイによらない脱出方法……!」

真宮寺「なるほどネ。モノクマにも校則が適応され、更にわざわざ『これは公平さを保つためのルールだ』と明記されている」

真宮寺「ということは、この最後の学級裁判も『僕たちの存在そのものの不確かさ』を除外して考えれば、おそらく公平なルールで行われると推測できる」

最原「校則を明確に破った僕たちに、まだこの最後の学級裁判を開催できる権利があるかは五分だけど……!」

最原「巌窟王さん抜きで、この閉鎖空間に引導を渡せるかもしれない!」








真宮寺「……そんな必要ある?」

最原「え?」

最原(……ない、な。特には)

最原「ないけど……」

真宮寺「なら全部巌窟王さんに任せていようヨ。どっちにしろ白銀さんとモノクマを排除して、全盛の力を取り戻した巌窟王さんに学園を破壊してもらえば」

真宮寺「……それで終了だヨ」

最原「……」

真宮寺「それとも、白銀さんの本音ってヤツをどうしても知りたい?」

真宮寺「それ、彼女が生きてる内じゃないとどうしてもダメ?」

最原「それは……」

真宮寺「……キミならどんな真実でも見つけられるヨ。ここを脱出した後でもネ」

最原「うーん……」

最原(確かに現状では、僕の求める真実の優先度は低い。なにか新しい証拠でも見つかれば別だけど)

最原(今のところそんなものはないわけだしな……)

赤松「……」

最原「……ねえ赤松さん。本当にどうしたの? 全然喋ってないけど」

赤松「……」プイッ

最原(か、顔を逸らされた……!)ガーンッ





百田の研究教室の隠し部屋


東条「治療、完了……! あとは夜長さんが起きれば……!」

東条「夜長さん! 起きて! 夜長さん!」ユサユサ

アンジー「ぐー」スヤァ

東条「起きないわ……全然。こうなったら」スッ

東条「起きるまで無限に往復ビンタするしかないわね」スパパパパパパパパパンッ

アンジー「ぎゃふふぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぐー」スヤァ

東条「……」スパパパパパパパパパパパンッ

アンジー「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぐー」スヤァ

東条「あと一往復くらいで起きるかしら」スパパパパパパパパパパンッ

アンジー「ぐはっ」



ガッツ発動  HP0→HP3000



東条「ちょっと反応が変わったわね。あと少し」スパパパパパパパパパパンッ

アンジー「し、死ぬ……だ、誰か……」スヤァ

ガシッ

東条「!」

巌窟王「待たせたな」

東条「巌窟王さん……!」

巌窟王「すまなかった。アンジーの消耗が心配だったからな。出口のあたりで電子化したまま待機していたのはやり過ぎだったかもしれん」

東条「念には念を。当然でしょう?」フフッ

巌窟王「で……」

東条「?」

瀕死のアンジー「……」ピクピク

巌窟王「……」







巌窟王「やり過ぎだ貴様ァ!」ウガァ!

東条「!?」ガビーンッ

巌窟王「どうやら物凄い気合でなんとか持ちこたえたようだな」

東条「ビンタ程度ならダメージもそこまで響かないからと油断してたわ……」

巌窟王「まあいい! ともかくこれで全力を出せる!」

ズズゥン……

巌窟王「……外で何かが暴れているな……!」

巌窟王「アンジー! 起きろ! アンジー!」ユサユサ

アンジー「……大丈夫。もう起きてるよー」

巌窟王「だろうな。あそこまでやられて起きない方がどうかしている」

アンジー「うん。大丈夫。本調子……に限りなく近い」

東条「多少の無茶をしても膝は付かないわ。入間さんにしたのと同じ処置を行ったの」

東条「副作用が出るのは『忘れたころ』よ」

巌窟王「具体的にどうなる?」

東条「二分の一の確率で目玉が爆発して死ぬ……かもしれない」

アンジー「怖い。斬美が凄く怖い」ガタガタ

巌窟王「……テディベアをやろう。抱いていると不安が和らぐ」スッ

巌窟王コスのテディ「」クハハ

アンジー「いらなーい」

巌窟王「!?」ガーーンッ!

巌窟王「……さあ。最後だ。存分に暴れるとしよう」ボォウッ

アンジー「うん!」

図書室探索チーム

星「入間。どうだ。何かわかったか?」

入間「急かすなドチビ……」カタカタ

入間「うん。間違いない。不明なプログラムが一件、中に入ってやがる」

入間「この場合の不明なプログラムはほとんどの場合はサーヴァントだ。モノクマならもっと他の名前で出力される」

夢野「本当にこの中にアルターエゴが?」

入間「十中八九セミラミスだろーな。問題はコイツをどうするか、だが」

星「呼びかけてみたら返事をしたりしねーか」

入間「するかもしれねぇが、ダメだな。去り際にモノクマの野郎が権限を凍結しやがった」

入間「セミラミスは現状眠ってるに等しい。返事をしたとしてもうわ言か寝言レベルの意味のない言葉だけだ」

夢野「起こせぬか?」

入間「無理だな。モノクマが強すぎる。『巌窟王を呼び出したとき並みの奇跡』とかがないと何もできねぇよ」

入間「なろー。何が取引だ。どうせBBもこうする予定だったんじゃねぇのか」

星「セミラミスに対して取引を引き継ぐ必要はモノクマにとってまったくねーからな。仕方ねー気もするが」

夢野「強いショックを与えたらなんか凄い偶然で起きたりしないかのう」スッ

入間「なんだその砲丸」

夢野「そこのゴミ箱に捨ててあったぞ」

星「なんでゴミ箱なんかに砲丸が……」

入間「……ん? その砲丸どこかで見覚えがあるような……?」

星「……そうだ。巌窟王が燃やした砲丸だ」

入間「ん? んん……ああっ! 本当だ! あんときの凶器じゃねぇか!」

夢野「最初の学級裁判のときのか? 別モンじゃろ。血とかついておらんし」

星「だが位置的にどうも意図を感じるな……」

入間「……オイ。その他になにか見つけたりしてねーかドブス」

夢野「マジカルナックル」バキィッ

入間「ぎゃひい!?」グヘアッ

夢野「本を見つけたな」

入間「一発殴った意味は!?」ガビーンッ

星「ブス呼ばわりされりゃ誰でもキレるだろう……」

星「……で。何の本だ?」

夢野「料理本みたいじゃの。『モノクマでもわかる過程料理レシピ百選』」

星「まったく意図がわかんねぇ」

夢野「こればっかりは何も意味のない証拠じゃろうから元の場所に戻しておくぞ」

夢野「ええと……このナンバーだと……?」

夢野「……」

入間「あ? なんだよ。急に黙りやがって。貸せ」

入間「って、なんだよ。隠し部屋からならすぐ近くの本棚じゃねーか」

夢野「入間。一つ聞きたい。最初の学級裁判のときの隠し扉に向いたカメラのことなんじゃが」

夢野「あれって巌窟王が映ってたのは偶然なんじゃよな?」

入間「お? いやダサイ原に聞けよ。そこらへんはよ」

入間「……まあ仮説は立てられるけどな。確かにあのカメラとセンサーは明らかに隠し扉に反応するように設置されてたはずだ」

入間「巌窟王が本棚に近づいたときに『巌窟王が近づく写真』が撮れたのは偶然の可能性が高い」

星「……!」

星「入間。もしも本棚の隠しカメラに気付いていたら、センサーに引っかからないように立ち回れるか?」

入間「充分可能だろうな。あれは隠し扉に向いてたカメラだ。それ以外の部分は想定してねぇ」

入間「だから『隠し扉に向いたカメラ』に関してのみは、隠し扉が動かない限りはいくらでも避けられる」

入間「……なんで今更そんなこと訊くんだ? うざってぇ」

夢野「本当……本当イヤな想像なんじゃけど……! この本の背表紙のナンバーからイヤなことを思いついて……!」

入間「……?」

夢野「前言撤回。この本は大事な証拠じゃ。絶対に最原に届ける!」

裁判場探索チーム

最原「他には何かない?」

真宮寺「……そうだネ。えーと……? なにかの動画ファイル、かな」

真宮寺「オーディション? 僕たちの名前が一つずつついてるけど……」


カチリッ


赤松?『自分で言うのもなんですが、私ってコロシアイに向いてる性格だと思います』

真宮寺&最原「!」

赤松?『基本的に人を信用してないんで』

真宮寺(これは……いよいよ最原くんの仮説が真実味を帯びてきたか……!)

真宮寺(まったく。さっきのと言い、このパソコンはイヤな情報のオンパレードだヨ)

最原「……これを見て赤松さんはふさぎ込んだのかな」

真宮寺「さあ?」

赤松「……」

赤松(違うけど黙っておこう)

真宮寺「オーディションの映像は全部で十三……」

真宮寺「……ん? 十三? 僕たちは十六人なのに?」

最原「……キーボくんと白銀さんと天海くんのヤツが、ない」

真宮寺「……」

真宮寺「今更ながら、僕たちの生い立ちが『万が一』にすべて設定だったとして」

最原「一向に認めないね」

真宮寺「じゃあキーボくんは? 僕たちの世界観に合わせている以上、僕たちが偽物なら彼も偽物ってことになるけど……」

真宮寺「機能的にはまず間違いなく彼はロボットだったよネ?」

最原「モノクマ側で用意したロボットだったのかも……記憶に関しても生きた人間の脳を弄れるんだから、彼に関してはもう議論するだけバカバカしいよ」

真宮寺「じゃあもしかして彼もモノクマの仲間?」

最原「このゲームはゼロサムゲームだ。かなりピーキーな条件を満たせば二人助かるとは言ってもさ」

最原「ほとんどの場合は『たった一人の生き残り枠をかけて争うコロシアイ』だよ?」

最原「生徒の中にモノクマの内通者を入れるとしても一人が限界だと思う。だって『ほとんど一人しか生き残れないゲーム』でどうやって協力するの?」

真宮寺「下手を打てば仲間同士で争って、生徒の中に裏切り者がいることがアッサリとバレてしまう……か」

最原「むしろキーボくんは絶対的な味方だよ。そう……万が一裏切られたらお終いってくらいの」

最原「モノクマが演出重視で、二人の生徒を自前で好き勝手に用意できるのなら、一人は白銀さんのような純然たる裏切り者」

最原「もう一人は生徒に対するお助けキャラにすると思う」

真宮寺「いかにもな仮説だネ。でも確か明日になったら……」

最原「キーボくんが目覚めて僕たちを学園ごと破壊する……だっけ。タイムリミット、か」

最原「……僕たちの味方だったキーボくんが、僕たちを破壊する『かも』ってところがポイントなんだ」

最原「『全力で抵抗してみてよ』っていう白銀さんの意図が見え隠れしてる」

真宮寺「なるほどネ」

最原「……最終的にはキーボくんも助けないと、だけど。どうやったらいいのか皆目見当も付かない」

最原「どうにかこの辺り利用して、巌窟王さんから白銀さんを守れないかな」

真宮寺「ハ?」

赤松「!」

最原(……あ。いけない。これ声に出しちゃいけなかったみたい)ギクリ

最原(空気が一気に最悪レベルに……)

最原「……ええと……」

真宮寺「今のは聞かなかった。聞こえなかったことにするヨ」

最原「……」

最原(気まずい!)

魔神セイバー……? 違う。彼女はアルターエゴだった……!
あれCMすごい勢いで台詞入ってるけどハッタリだったりしねーかな。ハッタリだろうな……逆CCCコラボイベ的な……

最原(……ここで議論しても時間が無駄になるだけだな)

最原「外に出よう。キーボくんを閉じ込めているオブジェクトを改めて調べたい」

真宮寺「いいヨ。ここにはいつでも戻ってこられるみたいだし」

真宮寺「一番の証拠品のパソコンは持ち歩けばいい話だしネ」

赤松「……うん。じゃあ外に出よう」

最原(あ。復活した)

最原「ここにはもう戻ってくる必要はないよ。少なくとも証拠集めではね」

最原「全部調べた。大丈夫」

真宮寺「そう。それじゃあ上に……」



ヒョコッ



最原「ん?」

お布団「」ヤァ

最原「……?」ゴシゴシ

最原(お布団が二足歩行でこっちに向かってくる幻覚が見える)

赤松「どうしたの? 最原くん」

最原「ああ、いや。なんでもない……!?」

ヒョコヒョコッ バフッ

最原「うぎゃあ!? お布団が特攻してきた!?」ガビーンッ

赤松「最原くん!?」

最原「ぐ……む……が……あ。ふかふかで気持ちいい……なんだか眠く……」ウトウト

赤松「最原くん! ねえ! どうしたの最原くん! 最原くんってば!」

最原「……ハッ! あ、ご、ごめん! 赤松さん! うっかり眠るところだった……! しかし本当にふかふかで気持ちいいな……」フカフカ

赤松「最原くん! 最原くーーーんっ!」

最原「……あれ。おかしいな。なんで赤松さんの声がこんなに近くで聞こえるんだろう?」









赤松「意味不明な寝言はやめてよ! 起きてッ!」

最原「……」

最原「あ! 夢だコレ! 多分お布団の幻覚のあたりから僕、寝てる!」ガビーンッ

現実では

最原「お布団……気持ちいい……ふかふかぁ……」スリスリ

赤松「ちょ……やめっ……どこに顔をうずめてるの! 本当にハズいんだけど!」ジタバタ

真宮寺「急に赤松さんの方向に倒れたと思ったら……これ寝てるネ」

赤松「なんで!?」

真宮寺「そういえば天海くんの話では、最原くんって忘却補正を貰ったって話じゃなかったっけ」

真宮寺「さっきセミラミスさんもそれを仄めかすようなこと言ってたけど……」

赤松「……早めに捨てないと危険、だっけ」

真宮寺「いや。根拠は何もないんだけど。いくら何でもこのスピードで眠るのは異常だよネ」

ギュウッ

赤松「ひあっ……やめ……服ごしにかかる熱い吐息が、なんか凄く……!」ビクビク

最原「んん……」スヤァ

真宮寺「……」

真宮寺「この光景をパソコンのカメラで撮って茶柱さんに見せたらどんな反応を見せるかなァ。民俗学者として凄く興味があるんだけど」ワクワク

赤松「悪魔の発想! やめて! 私まで殺されかねないから!」

真宮寺「ともかくしばらくは、僕らはこうやって足止めだネ」

真宮寺「……百田くんか巌窟王さんがモノタロウをなんとかしてくれれば時間はまだある。祈っておこうヨ」

赤松「それまで私はどうしてたらいいの?」

真宮寺「茶柱さんが来ないように見張りくらいはしておくヨ」

赤松「根本的な解決になってない! でもお願いね! 死にたくないから!」

残業でした。もう電器屋にかけこんでもテラリン買えない。

ところで話は変わるけどヴェルバーの尖兵ってどこで募集してます?

あ! パソコンの更新がかなり時間かかってもう日付変わってる!
今日の夕方、テラリン買って存分に遊んでから更新します!

地上

バンバンバンッ カチッ


百田「……タマが切れちまった! クソ! 少ねぇ!」

春川「違う! 百発百中だからってむやみやたらと撃つからだよ!」

春川(いや……そろそろ怖くなってきた。ありえないよコレ。どうなってるの)

春川(オカルト……? この際ありえなくもないかも。私たちはこの学園生活のことをあまりにも忘れすぎている)

春川(ていうか……)

ケツァルコアトル「……」ジーッ

メドゥーサ「……」ジーッ

ステンノ「……」ヒソヒソ

エウリュアレ「……」クスクス

春川(『何か』にこっち見られてる。物凄くガン見されてる……気がする!)ガタガタ

春川(百田の背後になにか憑いてる!)

ケツァルコアトル「縁結びとかの担当してる女神ってこの中にいまセン?」

メドゥーサ「ごめんなさい。魔除けとかはともかく縁結びは管轄外で……」

ステンノ「気合いでなんとかなるでしょ。ていうかしなさいよ駄妹」

メドゥーサ「私に言われましても」

エウリュアレ「この毎度毎度のごとく表紙で『俺の物語だ!!!!!!!』と全力で主張してくる少女漫画全巻貸してあげるからなんとかしなさい駄妹」

メドゥーサ「それ確か鈴鹿御前の私物だった気が……」

春川(声はまったく聞こえないけどロクなこと喋ってないことだけはわかる)

エグイサルレッド「弾が切れたの……? よ、よし! それならもう取っ組み合いしても全然問題はない!」ガシャンッガシャンガシャンッ

百田「!」


ガッシィィィンッ!


エグイサルレッド「コクピットが壊れたのなら、一回横倒しにするだけで全員外に放り出されるよねぇ!」ギリギリギリ

百田「こ……んの野郎! 取っ組み合いで決着付けようってのかよ!」ギリギリギリ

春川「確かにこの状態のコクピットなら、色々な安全機構が壊れてるし横転するだけで致命的だよね」

百田「俺が勝つ……! 何故なら! 俺が勝つからだ!」ギリギリギリ

春川「……」

春川「百田。神様っていると思う?」

百田「俺はオカルトの類は大嫌いだ!」

女神勢「!?」ガビーンッ

春川「あ、うん。その点に関しては長い付き合いになっちゃったから知ってるけどさ。もう嫌いとか言わない方がいいよ、見限られるから」

春川「……いると思う?」

百田「少なくとも女神は見たことあんな!」

春川「ん……そう」

百田「ツインテで……不器用で……人と関わることに対して恐怖を覚えてて……!」

百田「なんか気付いたら俺の傍にいることが多くなってよぉ!」

春川「ん?」

女神勢「!」

百田「過去の辛い体験を未だに引きずるような優しいヤツで……たまに笑う顔が可愛くて……!」

百田「俺の膝の上で、俺の勝利を願ってくれてる!」

百田「少なくとも俺にとっては、お前が実在する女神そのものだ! ハルマキ!」

春川「え……? は? え?」アタフタ

百田「……ええと」

百田「……あれ。やべぇ。告白にしては遠回しすぎたかな……」

春川「がふあっ!?!?」ズギャァァァァンッ







ケツァルコアトル「……あれ。これ縁結び必要ないデスね」

エウリュアレ「もう読まなくていいわよ。返して」ヒョイッ

メドゥーサ「まだ途中だったのに……」

百田「悪い。後でやり直すぜ。よく考えたら今それどころじゃねぇしなぁ」ギリギリギリ

春川「え。あ。えー……? いやあの、今の一回で充分だから。もう一回やられたら心臓が今度こそ止まって死ぬ」カァァ

百田「お。そうか。じゃあ返事は早めに頼むぜ! さて……この膠着状態をどう脱するか。下手打てば今度こそ死ぬ――!」

春川「……」スッ



チュッ



百田「――」

春川「……ほっぺにチューで頑張れるんでしょ?」

百田「……」

春川「……ん? 百田?」

エグイサルレッド「出力全開! これでぇ……終わ――」

百田「イヤッホオオオオオオオオオオウ!」ドカバキグドシャァァァァァンッ!

エグイサルレッド「ぎゃあああああああああっ!?」

春川「!?」ガビーンッ

メドゥーサ「今のは一体……? 早すぎて見逃しました」

ケツァルコアトル「一瞬で手を離して一瞬で相手にラリアットをかまし一瞬で股間に蹴り一瞬でスピンがかかったアッパーカットのコンボデース」

ステンノ「……加護を使いつぶす勢いね。いや加護ありでもできるかどうかの応酬だけど」クスクス

エウリュアレ「それじゃあ、用意しておいたこのくす玉。私が引っ張るわね」クイッ

春川「?」



パカッ


くす玉「おめでとう!」パッパカパー

春川(やかましい! 恥ずかしくて顔を上げられないし!)カァァ

百田「今の俺はかつてないほど頑張ってるぜーーーッ!」バキィィィンッ!

エグイサルレッド「し、死ぬーーーッ!」ガビーンッ!

春川「……行ける! このまま決めてしまえる!」

百田「ああ! やってやるぜ! しっかり見ときなハルマキ!」

百田「俺がみんなを守るんだよッ! 俺たちでみんなを助けるんだ!」

百田「せっかくみんな生き残ったんだぞ! 終一と『アイツ』の頑張りを無にはさせねぇ!」

春川「……アイツって誰?」

百田「決まってんだろ! いつも難しいこと言って煙に巻いて、人の悪性に怒ってる割には笑いを絶やさない」

百田「いけすかねぇ態度のアイツの名前は……!」

百田「……」







百田「……誰だっけ」




エグイサルレッドの中

モノタロウ「い、いやだ……死にたくない。死にたくないよ……! 助けて父ちゃん!」ガタガタ

「あーあ。すっかり怯えちゃって」

モノタロウ「!」

「……もういいや。どうせ全員処理する気だったしね。ここから先はボクがやる」

「ま、協力自体はまだしてもらうけどさ」

モノタロウ「その声、お父ちゃん? どこ?」キョロキョロ



バチィッ


モノタロウ「ぎゃああうっ!?」

「知ってる? 子供のすべては親のものなんだよ。だから子供は全力で親にぜんぶ捧げる義務があるんだ」

「ボクじゃあエグイサルは動かせないからね。意識を乗っ取らせてもらうよ」

モノタロウ「ぎ……ぎぎぎ……消えっ、消える! オイラの意識が……ひい、やめ……!」

「ところでオマエ、名前なんだっけ」

「……もういいや。思い出す気もないしね!」

テラリン、たしかにこれ番外編だったな。アニポケに対する映画版っていうかヨ……!

エグイサルレッド「……」


ガッ


百田「ん?」

春川「……百田! 下がって! 何か様子がおかしい!」

バキィィィンッ

百田「ぐああ!?」グラッ

春川「ううっ!」

エグイサルレッド「……」フシュウウウ

春川「……気配が変わった。さっきまで戦意が折れかけてたのに」

百田「追い詰められすぎて第二の人格に覚醒したか?」

春川「漫画?」

百田「いいぜ! なら第二ラウンドと洒落こもう――」



ガイイイイインッ



百田「……っぶな! 動きがいくらなんでも急によくなりすぎだろ!」

春川(スタイルがガラッと変わった……おかしい。何が起こってる?)

春川(いや。真相がどうあれこれはちょっと……まずい!)

ガインッ ドガッ

百田「早っ……まずいな! ははっ! 防戦一方になっちまったぞ!」

春川「百田!」

百田「……安心しろハルマキ! 絶対に勝つからよ!」

百田「それはそれとしてなんかお前重くなってきたから隙を見て降りてくんねぇ?」

春川「なに今更弱気になってるの? そんな嘘吐かれてもどかないからね」

百田「重いって部分に関しては嘘じゃねぇんだけどよ」

春川「肘入れるよ」ドスウッ

百田「ごめんな!?」ガファ

百田「……まあどっちにしろ無理か。後ろ見せたら二人もろとも潰されるぜ」

百田「なにか状況が変わんなきゃ一気に……!」

春川「……私たちが終わる」

百田「……やれるだけやってやるさ。その結果ダメならダメで俺はそれでいい」

百田「それに、自分以外に信じられるものは他にもある」

春川「?」

百田「自分を信じるだけじゃ不足なら、仲間のことも信じてみようぜ」

春川「!」

百田「ま、それでダメならやっぱり俺の責任だけどなぁ」

春川「……」

春川「……誰だったっけ」

百田「?」

春川「マントと帽子。黒い炎。鋭い眼光。それだけは覚えてるんだけどさ」

春川「……アイツ誰だっけ」

百田「……忘れた! でもまあ、なんだろうな! こんなときに連想するってことは余程頼りになるヤツだったんだろ!」



ガインッ


百田「俺の方が頼りになるけどなぁ!」

やるしかねぇ……玉藻の前を引くしかねぇ! ここで引かずにいつ引くんだァーーー!

https://twitter.com/Japanesecastle

余は……玉藻の前をカルデアに……呼びたかった……

そうだ! 俺にはキャットがいる! おーいキャット出ておいでー! あれ? キャット? どこに行って……



キャットすらいねぇんだよッ! うちにはよッ!

わーい。


……ひとまずカール大帝に泣きついてきますわー。同化されてきますわー。やはり世界はオラクルされるべき……

校舎内

茶柱「……」

王馬「……わーお。ビンゴ。最初に俺らが到達するとはねぇ」ケラケラ

白銀「……久しぶり。元気してた? 茶柱さん」

茶柱「白銀さん……!」

王馬「よし! 茶柱ちゃん! 戦闘準備だ!」

茶柱「言われなくとも! 今この場で白銀さんを押さえられるのは転子しかいませんので!」

茶柱「王馬さんも多少は支援してくださいよ! モノクマがどこにいるかわかったもんじゃありませんので!」

白銀「酷いなぁ。仲間に対してそこまで警戒することないのに」

茶柱「転子自身もちょっとはそう思いますけど、最原さんの言を信じないわけにもいきませんので!」

茶柱「一発ぶん殴って楽に気絶させてもらいますよ!」

白銀(……私に警戒して王馬くんから目を離したな)

白銀「ふふ。茶柱さん。ちょっと話したいことがあるんだけどさ」

白銀「王馬くんがさっきからチラつかせてるその銃。一体どこから持ってきたと思う?」

茶柱「は?」

白銀「実はさ。それ出所、私なんだよね」

茶柱「……」

白銀「……いきなり言われても意味がわからないだろうから言ってあげるよ」







白銀「裏切ってるんだよ! 王馬くんは!」ギンッ

茶柱「ッ!」

茶柱「それさっき聞きました」バキィッ

白銀「がふああああああああっ!?」

王馬「いや裏切るわけないじゃん。常識的に考えて」

白銀「ええーーーっ!? あれれーーーっ!?」ガビーンッ

茶柱「間合いに入りました。案外打たれ強いですね。でもまあ……気絶しないなら気絶するまでお手玉にしてあげます」ブンッ

白銀「きゃあーーーっ!? ちょ、王馬くん!? 助けっ」




グショオアッ




王馬「……」

王馬「まあ約束は守るよ。頑張って白銀ちゃん」

白銀「うわーん! 助けてー!」ダッ

茶柱「あ! まだ気絶してなかった! 待てーーーっ!」ダッ

王馬「さぁてと。それじゃあ白銀ちゃんにはしばらく茶柱ちゃんの追いかけっこしてもらうとして……俺は」

アンジー「あ! 小吉ー!」

王馬「ん? おお、アンジーちゃん! おひさー!」

巌窟王「王馬!」

王馬「誰?」

巌窟王「!?」ガビーンッ

王馬「……あー、いや。待って。言わないでいい。見たことはあるんだ。見たことは……」ウーン

巌窟王「そうだ。思い出せ。貴様はムカつく男だったがやればできるはずだ」ドキドキ

王馬「あ!」

巌窟王「クハハ! そうだ! 我が名は――」

王馬「アンジーちゃんの研究教室にあった謎の蝋人形!」

巌窟王「」

アンジー「……の、元ネタの方だよー。本当に覚えてない?」

王馬「覚えてないよ!」

巌窟王「……」ズーン

巌窟王「まあいい。ところで王馬。今は一人か? この状況で」

王馬「いや。さっきまで茶柱ちゃんが一緒だったんだけどさ」

王馬「……」

王馬「確か天海ちゃんの生存者特典では……」

巌窟王「?」

王馬「大変なんだアンジーちゃん! 茶柱ちゃんが白銀ちゃんを追っかけてどこか行っちゃったんだ!」

アンジー「え」

巌窟王「!」

王馬「俺……一生懸命追おうとしたんだけど、途中で見失っちゃって……もうどうしていいかわからなくなっちゃって……!」グスグス

アンジー(嘘くさー)ゲンナリ

巌窟王「落ち着け王馬。貴様次第だ。白銀の行きそうな場所に心当たりは?」

アンジー(今までが今までなのにこっちは信じてるー。わーい)

王馬「考えられるとしたら地下だよ! 間違いない!」

王馬「天海ちゃんの生存者特典には、地下に俺の研究教室があったんだ!」

王馬「俺の研究教室ってまだ解放されてないんだよ! 身を隠すなら最適な場所だ! それに……!」

アンジー「それに?」

王馬「……茶柱ちゃんをそこに誘い込んで、出入り口を隠せば、後は白銀ちゃんが茶柱ちゃんにやりたい放題だよね」

巌窟王「!」

巌窟王「そうか。今やヤツは、最原にとっての想い人。演出重視を謳うならヤツが茶柱に何かをしない、という方が不自然か」

王馬「誰だかわかんないけどわかってるじゃん! 誰だかわかんないけど!」ヘラヘラ

巌窟王「……地下、だな。よし。アンジー! 後からついてこい!」ビュンッ

アンジー「気を付けてねー!」

アンジー「……よし。行っちゃったね」

王馬「あれ? アンジーちゃんは追わないの?」

アンジー「今更、小吉の言葉を信じるほどお人よしじゃないしー」

王馬「逆にここまで来て俺の話を信じる『巌窟王ちゃん』の立つ瀬がないな……」

アンジー「しかもちゃっかり思い出してるし」

王馬「……一応言っておくけど、彼が仲間ってことだけしか思い出せてないよ。誓って本当」

アンジー(超嘘くさー)

アンジー「……あれじゃない? あそこで走ってるのって転子とつむぎじゃない?」ジーッ

茶柱「待てー!」ダダッ

白銀「きゃーっ!」ダダッ


グシャバキッ


アンジー「……何のつもりー?」

王馬「ちょっとだけ覚えてることがあったんだ。記憶の整合性がないからずっと夢か何かだと思ってたけどさ」

王馬「脳裏にこびりついて離れない光景があったんだよね」

アンジー「?」

王馬「最原ちゃんが必死に誰かを許すために頑張ってる姿。多分、裁判だよね。あれ」

アンジー「……まさか」

王馬「ま、くだらないけどさ。誰かを許すためにはケジメが必要なんでしょ?」

王馬「おしおきほど苛烈じゃないけど、ああやって茶柱ちゃんに追われてる白銀ちゃん、今は滅茶苦茶怖がってるはずだよ」

アンジー「凄い音するしねー」

王馬「つまるところコレ、最原ちゃんのマネだよ。俺は白銀ちゃんを許してあげたいのさ」

アンジー「全部思い出してるわけじゃないって言った傍から……」

王馬「当然、白銀ちゃんの悪事は全部最原ちゃんや天海ちゃんからの伝聞」

王馬「だけどまあ俺にとってはそれで充分だよ。怒りの理由が薄っぺらいのも俺らしくない?」

アンジー「……」

アンジー「アンジーたちはこれで納得できないよ。特に……」

王馬「巌窟王ちゃんは、でしょ? まあ難易度ナイトメアのゲームに挑んでみるのも悪かないさ」


ゴシャドグチャッ


王馬「あはははははっ! 見て! 物凄く高くまで飛んで落ちちゃったよ! 人間って本当にお手玉になるんだね!」ゲラゲラ

アンジー「理由はどうあれ小吉がナイトメア級に悪趣味なのだけはわかる」

いくら爆死してもなァ!!!!!!!!何回も引いてりゃ最終的に来るんだよ!!!!!!!!なあ沖田くん!!!!!!!!キミもそう思うだろ!?!?!?ええまったくです!!!!!!!!!最終的に引ければ爆死じゃありません!!!!!!!!!こふっ!!!!!!!!!


と言ってもまあ来ないときは来ません。諭吉の宝具を解放しても来ません。
夕飯食ってガチャ実況してから更新します。万が一沖田オルタ来ちゃったら『20レス分SS書くまで眠れまトゥウェンティ』してやるぜ

諭吉、宝具真名解放……! 行くぜ! ひとまず星5礼装くらいは出てくれ!

……眠れまトゥウェンティ開始……

数秒後

白銀「ごふっ……ぜぇ……ぜぇ……」ボロッ

茶柱「……」

茶柱「ええと……あの……やり過ぎました」テヘッ

アンジー「どんまい!」グッ

王馬「どんまいじゃないよ。やり過ぎだよ……打撲だけでショック寸前になってるじゃないか……」ドンビキ

茶柱「あれ? アンジーさんじゃないですか。あなたも外に出てこれたんですね!」

アンジー「うん。終一のお陰」

茶柱「そうですか。うん……ふふっ」

アンジー「……」イラッ

王馬「アンジーちゃん。ステイ」

白銀「お、王馬くん……! なんでこのタイミングで……」

王馬「俺が裏切るのはもうちょっと後だろうと思った?」

白銀「!」

王馬「白銀ちゃんの思惑通り、少しくらいは考えたんだよ。一旦は迎合するフリをして機を見て裏切り返す、的な?」

茶柱「……あ。あれってマジバナだったんですね……」

王馬「当然、次の首謀者の地位に魅力を感じなかったわけでもない。キミからの提案だから癪に障るという点を差し引いてあまりある取引だ」

王馬「でも俺は考えたんだよ。つまり――おっと。ここから先は白銀ちゃんには聞かせられないな。まだ」

白銀「……いたい。すごく痛い。でも……まだ」ググッ

茶柱「嘘でしょ!? なんでまだ立ち上がれるんですか!?」

白銀「……巌窟王さんはどこ……? 私はまだ……!」ズリッ……ズリッ……

王馬「……」

王馬「うーん……どうしようかなぁ。やるなら今なんだろうけどなぁ……」

王馬「ここまでボロボロになってもまだやる気なら放っておいちゃおうかなぁ」

茶柱「王馬さん。あなた何をする気なので?」

王馬「白銀ちゃんとの約束を果たす。ピンチになったら人質を取るって取引だったんだよね」

王馬「後のことは聞かされてない。聞かされてなかったから俺が勝手にやるつもりだった」

茶柱「ん? 白銀さんの計画なんですから王馬さんが勝手にやったらダメなんじゃ……」

王馬「なにせ聞かされてなかったからね! そういうのも聞いてないね! 聞いてない以上、やっちゃダメだとか知らないね!」

茶柱「へ、屁理屈……」

王馬「まあ簡単な話だよ。俺は仲間の内の誰かを人質にとるつもりだった」

王馬「この場合の誰かなんて、一人しかいなくない?」

アンジー「……あ。最悪だよー。小吉がなにを考えてるのかわかっちゃったー」

茶柱「え?」

アンジー「あれ」

茶柱「あれ?」

白銀「……」ズルッ……ズルッ……

茶柱「……」

茶柱「あ!? はあ!? 『白銀さんを』ってことですか!?」ガビーンッ

王馬「仲間なのは変わらないし」

茶柱「屁理屈ーーーッ!」ガーンッ

アンジー「つむぎを人質に取ったあとはモノクマに対して交渉し放題、か……そうしちゃえばー?」

王馬「ちょっと気が変わっちゃった。このまま白銀ちゃんのことを見てるのもいいんじゃない?」

茶柱「その心は?」

王馬「白銀ちゃんが本当は何を望んでたのか。興味が出てきちゃった」ニヤァ

校舎内 玄関

ズドドドドドドドドンッ




巌窟王「うおおおおおおおお! 待っていろ! 白銀に復讐を果たしてみせる!」

巌窟王「茶柱! 貴様はそれを間近に見ることになるだろう! この世の地獄を肌で感じるがいい!」



ガシャコーーーンッ



巌窟王「……」

巌窟王「校舎の外が騒がしいな……白銀を灰にしたら外に出てみるか」

巌窟王「クハハハハハハハハ!」ズドドドドドドドド





校舎の外

百田「押し返す……!」

エグイサルレッド「……」

春川(最原……なにしてるの最原。早く! 状況が変わらないと、私たちは……!)

図書室の隠し部屋周辺

ガララッ

天海「……あ! 夢野さん!」

夢野「おお! 天海か! せっかく来てくれたところ悪いが、ここの探索はもう終わったんじゃ」

星「ひとまず俺たちは白銀とモノクマを引き続き捜索する。単独行動しているのなら同行しろ。危険だからな」

天海「……ということは白銀さんもモノクマも見つけてないんすね。まだ」

入間「露骨にガッカリすんなっての。アイツらを見つけられないなんて今更すぎんだろ」

入間「あの瞬間まで正体をひた隠しにできるような連中だ。秘匿、隠匿なんざマスかくのより余裕だろ」

天海「比較対象がよくわかんないっす……」

天海「……」

天海「赤松さんがどこに行ってるか知らないっすか?」

入間「確かダサイ原と怪人ナメクジマスクと一緒に行動してたはずだろ?」

星「赤松がどうかしたのか?」

天海「窓から外を見てみたら、百田くんが大ピンチになってたんすよ。そろそろ状況を変えないと百田くんが負けるっす」

天海「百田くんが負けたら誰もエグイサルを止められない」

入間「一気に皆殺しか……ゾッとしねー……!」

入間「……ん? いや質問の答えになってねーぞ。それと貧乳松が何の関係が……」

天海「彼女なら手がかりを掴める。そういう話になってたはずなんすよね」

入間「?」

天海「この学園に帰ってきてから何か気付かないっすか? 変だなーって」

星「……」

星「ああ、そうか。音だな」

入間「音?」

天海「この学園は、以前の学園生活を覚えている人にしかわからない『環境音の変化』が起こってるんす」




BB『……変な磁場がありますね。前はこんなものなかった気がするのですが……』

夢野『変な磁場?』

ジャガーマン『んー。こんなこと言いたくはないんだけどさー……どこかから見られてない?』

BB『え? ああ、そういえば、このねっとりする感覚はまず間違いなく盗撮ですね。流石に野性の勘は鋭い』

夢野『盗撮ゥ?』

天海『……あ。そういわれるとなんだか変な感じっすね』

夢野『んー……? 気のせいじゃ、と言い切れない何かがあるのう』

百田『そうか?』

春川『……ピンとこないけど。気のせいじゃない?』

夢野『……んあー?』

天海『うーん……まあどうにでもできないから、ひとまず放置するしかないっすよね』





天海「BBさんの言を信じるのなら、おそらくこの環境音の正体は……」

星「監視カメラ……ってところか?」

入間「ありえなくもねぇな。このマザーモノクマには監視の権限も用意されてたみてぇだし」

入間「今使えないのは権限が凍結されているからだが、凍結したのなら白銀はどこからどうやって俺たちを見てるんだ?」

入間「……そこに謎の正体があるんだろーな! 『マザーモノクマによらない代替監視能力』。それが環境音の正体……かも!」

天海「かもなんすよねぇ……赤松さんがいない限り」

天海「……最原くんたちはどうしてるのやら。もう調べたのか、さもなくば後回しにしてるのか……」

入間「でも早く白銀かモノクマを見つけないとやべーんだろ?」

天海「状況を変える一手が今すぐ必要なのは間違いないっすね」

星「……入間。なんとかできねーか?」

入間「え? 俺様?」

夢野「入間! なんとかするんじゃ! 超高校級の発明家じゃから監視カメラ相手でもなんとかなるじゃろ!」

入間「無茶言うんじゃねーよ! 俺様のは開発する才能であって、メカニック的なのは副次的なものでしかねぇんだからよ!」

夢野「天海の童貞を賭けよう」

天海「!?」ガビーンッ

入間「グッド。今すぐに倉庫に向かって突貫工事で金属探知機作ってやらァ!」

天海「!?!?」ガビビーンッ

星「……」

星「人権をかなぐり捨てろ。俺たちの命のために」

天海「了解っす! 今から俺はみんなを助けるために、入間さんの性奴隷になるっす!」

天海「って、バカっすか!?」ガビーンッ

たしかに私は……眠れまトゥウェンティを開始すると言った。言ったが……!
それが今すぐだとは言ってない……私がその気になれば明日でも可能だろう……ということ……!


ごめん今日はマジで無理。明日はやいっす。おやすみなさい!

今日は物凄く頑張って沖田くん育成してイベント進めないと忙殺されかねないので休み!
明日はできる!

倉庫

入間「確かにチラッと見た感じ百田のヤロー、大分追い詰められてたな」

星「急げ! どのくらいでできる?」

入間「……あー……」

入間「十分」

星「チッ! 流石に何の設備も整ってない倉庫でぶっつけ本番じゃそんなもんか……」

入間「……」シュン

夢野「んあ? なにをガッカリした顔をしておる?」

入間「なんでもねぇ。すぐ作る」タッ

天海「……凄い不満気だったっすけど、一体なんだったんすかね」

星「……そうか。入間。アイツこの状況でなんてヤツだ」

天海「ん?」

夢野「あ。いや……まさか。いやいやこの土壇場でそれは……ないじゃろ?」

天海「え? なんすか?」

夢野「あれじゃ。あれ。洋画とかでよくあるヤツ。あのセリフ回し期待してたんじゃろ」

天海「洋画とかで……?」







天海「あ」

三分後

入間「……できたぜ」ムスーッ

天海「わざと多めに時間深刻したんすね!? やっぱ!」

入間「気付くのおっせーよクソ遅漏ども!」

夢野(五分でやれって言ってほしかったんじゃな……)

星「ともかく早いのはいいことだ。さっさと監視カメラを見つけるぜ」

入間「おう! 俺様は疲れたから休んでいいか?」

天海「ダメっす」

夢野「しかし監視カメラと言っても闇雲に探して見つかるもんかのう。隠してあるじゃろうし」

天海「それに関しては既に考えてあるっす。監視カメラがある可能性が高い場所で、尚且つある程度狭い場所……」

天海「そこを探れば比較的簡単に監視カメラが見つけられるはずっすよ」

星「具体的には?」

天海「外でエグイサル同士が戦っているという事実を抜きにして考えるなら、寄宿舎の個室が一番それっぽいっすけど……」

入間「む、無茶すぎる! あそこを素通りできると思ってんのか!?」

天海「俺には不可能っす。入間さんにも星くんにも」

入間「ほれ見ろ! この場にいる誰にも不可能だろう……が……」

入間「……」

入間「ん?」

夢野「んあ?」

星「なに?」

天海「夢野さんなら可能っす」

夢野「んあっ!?」ガビーンッ

校舎 玄関

ガシャコーンッ ズドドドドドッ


天海「作戦はこうっす。まず夢野さんがジャガーマンさんの加護を使って姿を消す」

天海「その後、金属探知機を持った夢野さんがエグイサルの横をすり抜け寄宿舎へ直行」

天海「場所が場所っすからね。寄宿舎に入るにはエグイサルの横をどうしても通り抜ける必要があるっす」

天海「その後、夢野さんは寄宿舎の中に入り、金属探知機を使って監視カメラを発見」

天海「この場に持ち帰れる程度に小型なら持ち帰り、そうでないのならば……」

入間「このハンディカメラで録画して戻ってこい。分析は俺様がやる」

夢野「……」ガタガタ

星「……やめるか?」

夢野「やる! やるが! ……というか選択肢なんぞ最初からないんじゃが!?」ガタガタ

夢野「なあ! この玄関を見てみろ! とんでもないことになっておるじゃろうが!」



玄関「」グチャァァァァ



天海「……瓦礫だらけっすね」

夢野「多分コレ、あれじゃろ!? エグイサルの放つ砲弾の流れ弾とかがこっちに来たとかじゃろ!?」



※巌窟王が地下に行くために床を叩き壊して掘り返したせいです



夢野「下手したらウチもこの玄関みたいにグチャァってなるぞ! グチャァって! 美少女のミンチの出来上がりじゃぞ! グラム何千円!?」

入間「値段設定がキャビア以上じゃねーか。どんだけ自分の可愛さに自信もってんだ厚かましいぞ」

夢野「お主にだけは言われたくないわァ!」ウガァ

ジャガーマン『夢野ちゃん!』

夢野「おお! ジャガーマン! いつもならウザいだけじゃが、今はお主のトンチキな会話がひたすら恋しい――」

ジャガーマン『……人はね。いつか死ぬの。でもそれは今じゃない』

ジャガーマン『安心して。あなたのことは、私が絶対に守るから』

夢野「急に真面目になるなーーーッ! 逆に重くて死亡率が高まるわーーーッ!」ガビーンッ

校舎の外

夢野「……ちぃっ。やればいいんじゃろ、やれば」

夢野「ジャガーマン。キチンと加護は効いておるんじゃろうな?」

ジャガーマン『だいじょうーっぶ! 何故なら今は夜だから!』

夢野「事故って死んだら天海のことを末代まで呪ってやるわい……!」

ジャガーマン『まあそうそう流れ弾とかまき上がった瓦礫とかが夢野ちゃんに直撃することはないと思うけど……』



ガシャコーンッ  カンッ



ビュンッ


夢野「ぎゃー! 耳をかすった! 凄い勢いで跳んできた石がウチの耳をかすったー!」

ジャガーマン『よかったね! そうそうないことが今起こったってことは、もう滅多なことが無い限り起こらないよ!』

夢野「そのポジティブさが羨ましすぎる!」

夢野「ええい! 走り抜けるぞ! さっさと! さっさとな!」ダッ

ジャガーマン『頑張れー! 負けるなー! ジャガーはキミの味方だぞー!』

ジャガーマン『一応、校舎に残った天海くんたちも隠しカメラを探すとは言ってたけど、校舎は広すぎるからキミだけが頼りだ!』

夢野「ウチだけが……頼り……フッ。そう言われると悪い気はしないのう!」







校舎内

入間「……あっさり見つけちまった」ガタガタ

天海「うわあああああああああああ!?」ガビーンッ

星「……夢野が無事帰ってきたらこのことは秘密にしておこうぜ。墓まで持ってけ」

入間「……」ウンウンウンウンウンウン

入間「分析を開始するぜ……うん。間違いないな。音が出てる。環境音の変化はコレのせいだ、と言えるだろうな」

入間「瓦礫の中に埋まってたってことは……壁や床の中に隠されてたのか」

入間「ワイヤレスでどこかに情報を発信してる。お? 今も稼働中だな。よしよし、じゃあ逆探知すれば受信機の方向が――」



監視カメラ『自爆命令が下されました。自爆します』カチリッ




入間「え?」

星「!」ダッ



ゲシィッ



入間「きゃあ!?」

星「伏せろ!」バッ

天海「いや流石にあんな小型のカメラにそんな大した爆発能力があるとは思えな――」


バガァァァァァァァァァンッ


天海「ぐあああああああああああああああ!?」ボーンッ

星「天海ィーーー!」

入間「天海が死んだーーー!?」ガビーンッ

天海「まだ生きてるっすよ! まだ! 大分派手に吹っ飛んだっすけど!」

天海「自爆命令……!? こんなに早く監視カメラを見つけたことがバレたっていうんすか?」

星「振動センサーで自爆する仕掛けになっているのなら、瓦礫の中に埋まってたのはおかしいからな」

入間「……どこかで誰かが自爆命令を出した。そう考えるしかねぇってことか」

入間「この状況になってもまだ監視カメラを見る余裕があるっつーのか? 言っちゃなんだが俺様たち相当白銀を追い詰めてるよな?」



ガシャコーンッ!



天海「……ん?」

天海(……あれ。百田くんがちょっとだけ押し返した? さっきまで防戦一方だったのに)

天海(今はもう、戦況は元に戻ってるみたいだけど……)

天海「……」

天海「もしかして」

入間「なんか思いついたのか?」

天海「マザーモノクマに監視権限がかつてあったというのなら、その次点の監視権限を持ってるのは何なんすかね」

天海「……多分、モノクマかモノクマーズのどちらかっすよ」

星「!」

入間「根拠は?」

天海「さっき入間さんが『逆探知しよう』と言った途端にカメラが自爆した」

天海「そしてそれと同時刻に、エグイサルの動きが鈍くなった」

天海「こっちに意識を向けている隙が、百田くんを善戦させたってことっす」

天海「多分、この監視カメラを見ていたヤツは『絶対に逆探知されるわけにはいかなかった』」

天海「何故なら、そいつは……!」

星「……事情があってエグイサルの中には入れないヤツだから」

星「なおかつ、エグイサルを遠隔で操作し、百田を現在進行形で追い詰めているヤツだから、か」

入間「!」

入間「エグイサルの中に入っているモノクマーズが監視権限の持ち主なら、わざわざ戦況を悪化させてまで自爆させる必要はねぇ」

入間「ハナっから手出しできねぇんだからよ。逆探知されたところで困らない」

天海「どんな事情があるかはわからない。でも『状況』だけは推測できる。逆探知されたらマズイ状況だからこそ自爆命令を下した……」

天海「なら!」

星「逆探知先がエグイサル攻略の答えに直結している、か。いいぜ、希望が見えて来た」

入間「まあ自爆されちまったからもう逆探知は不可能なんだけどよ」

天海「なんとかならないっすか?」

入間「……自爆される前に電源スイッチを切ってくれりゃあ、後は軽く改造して爆発しないようにした上で逆探知できる」

天海「え。そんな簡単なことでいいんすか?」

入間「簡単だぁ? バカ言え。気付いて近づいた時点で自爆命令を下されたらそこでジ・エンドだぞ」

入間「こんな状況になっても『全部のカメラ』に自爆命令を下さないから、ヤツにとってもカメラは最大限壊したくない代物なんだろうなってのは救いだけど」

入間「透明人間にでもなって、相手に気付かれないようにコッソリと電源スイッチを切るなんて神業ができない限りは無理だっつの!」

星「それはひょっとしてギャグで言ってるのか?」

天海「……」

入間「……」

入間「あっ」

寄宿舎の中 夢野の私室

夢野「見つけたぞ! よし! 思ったより小さいのう!」

ジャガーマン『ふむ。ワイヤレス。移動させる前に電源切った方がいいと思うにゃん』

夢野「電源? ええと……このスイッチかのう。本当に切っていいのか? カメラに異常が起こったらバレるじゃろ?」

ジャガーマン『仮にバレたとしても電源入れたまま移動させて動向を筒抜けにさせる方があからさまにマズイと思う。ジャガーマンは』

夢野「まあそれもそうじゃのう。電源切っておいた方がマシか」カチリッ

夢野「よし。これで後は入間のところに運ぶだけじゃのう」

ジャガーマン『……ん。火薬の気配……まあどうでもいいかー』

夢野「今なんか言ったか?」

ジャガーマン『え? 私、今なんか言った?』

夢野「まあよいわ。とにかく出るぞ!」

ジャガーマン(まあ大丈夫か。振動センサーで爆発する類のヤツじゃないみたいだし)

ジャガーマン(遠隔操作かなー……でも私の加護の中なら現実的な電波や光線の類はほぼ素通りするし)

ジャガーマン(まあなんとかなる! 多分!)

ジャガーマン『巌窟王さんはどこ行ったのかにゃー』

夢野「アイツ本当に遅いのう。いやあるいは変なところで道草を食っておるのか……」





超高校級の総統の研究教室

巌窟王「……」キョロキョロ

巌窟王「いないな……まさか……!」

巌窟王「隠れてこの俺をやり過ごす気だな!?」ボォウッ!



ドカァァァァンッ



巌窟王「クハハハハハハ! ここは源頼光公に倣おう! すなわち! かくれんぼの必勝法は隠れるところの徹底的な破壊だ!」ボオオオオッ!




王馬に騙されたという発想に至ったのはもうちょっと後だった

校舎内

ボンッ

夢野「よし! 加護解除じゃ!」

入間「うひゃあ!? 夢野!? 帰って来たのか!?」

夢野「入間! お目当ての監視カメラを取ってきたぞ! これでなんとかせい!」

天海「上々! 入間さん!」

入間「お、おう! 電源は?」

夢野「切ったが……なにかまずかったか?」

入間「いや! それがいい! さっさとそれよこせ! 今すぐ自爆機能を切って――!」


ジジーッ カチャカチャカチャ……


夢野「……んあ? あれ。電源切ったはずなのに、また動き出したぞ?」

天海「!」

星「……遠隔で電源を入れなおしたのか!」

ジャガーマン『あちゃー。やっぱこうなったかー。まあこのタイプの監視カメラなら当然付いてるよにゃー』

天海「ま、まずいっすよ! また爆発されたら……!」

入間「……」

入間「いや。大丈夫だな。やっぱ」カチャカチャ ペイッ

星「入間。お前さん、今なにをした?」

入間「信管を抜いた」



監視カメラ『自爆命令が下されました。自爆します』カチリッ



入間「これでもう爆発しねぇ」



ブシュンッ



入間「ヒャハッ! 世紀末級バカどもが。再起動の分のタイムラグがありゃ信管抜く程度余裕でできるっつの!」

天海「それじゃあ、これで……!」

入間「ああ。待たせたな! 行くぜ、逆探知!」

裁判場

最原「……ハッ!」パチリッ

赤松「あ。目が覚めた」

最原「どのくらい寝てた!?」

真宮寺「大体三十分くらいだヨ」

最原「ね、寝すぎた! 三十分も無駄にするなんて!」

赤松「……あの。起きたのなら離れてほしいんだけど……」

最原「ん? 離れる? 何から?」

最原「あれ。赤松さん。なんでこんなに近いところに……」ギュッ

最原「……」

赤松「……」

最原「茶柱さんに殺される!」ガビーンッ

赤松「わかってるから! 私も他人事じゃないから! 離れてくれればそれで万事解決だから!」

最原「わ、わ、わ! ごめん! 本当ごめん!」バッ

最原「……」グラッ

最原(な、なんか加速度的に眠気が増していってるような……?)

赤松「最原くん。大丈夫? さっきセミラミスさんも言ってたけど……」

最原「!」

真宮寺「……忘却補正のせいだよネ?」

最原「知ってたんだ」

赤松「天海くんと色々情報交換してるときにチラッと聞いただけ」

赤松「……否定しないってことは実際危険なんだね」

最原「危険……うん。危険、だね」

赤松「ならセミラミスさんの言う通りにしようよ!」

最原「ごめん! これだけは! このスキルだけは絶対に手放せない!」

真宮寺「え。なんで? 最原くんなら今更忘却補正があろうがなかろうが関係なくない? 超高校級の探偵だよネ?」

赤松「そ、そうだよ! 元から頭がいいのなら、そんなスキル無用の長物だよね?」

最原「そうでもないんだよ……! 特にこの学園では!」

赤松「……?」

最原「思い出しライトの機能を唯一無効化できるスキルだ。これがないと、この学園生活に勝てないんだよ!」

赤松「!」

真宮寺「……ああ。なるほどネ。だから手放したくないんだ」

赤松「……」

赤松「本当にそれだけ?」

最原「……」

赤松「……いいや。これ以上は追及しない。追及はしないけど……」

赤松「茶柱さんを泣かせたりしたら許さないよ。あとアンジーさんとか天海くんとか……他にもいっぱい」

赤松「眠ってる顔面に鍵盤ハーモニカを叩きつけるから」

最原「ハーモニカを!?」

赤松「耳元で鼓膜が破れるくらい弾く」

最原「ハーモニカだよね!?」

真宮寺「キミ色々本当に背負うネ。その内に荷物に押しつぶされるヨ」

真宮寺「……いや。既に押しつぶされてるからこうなのか。ククク」

最原「上に行こう。あまり時間がないかもしれない」

赤松「……上に行ったところで何ができるんだろう」

最原「もうわからないけど。ここに来たら多少はわかると思ったんだけどな……! 白銀さんが何を考えてるのかいまいち、まだ見えてこない!」

最原「あと少し! もう少しなのに! 『勝つ気がない』ってことだけは判別付くのに!」

真宮寺「勝つ気がない……か」

真宮寺「かなり追い詰めたからネ。この学園を放棄して逃げて、勝負をやり直すってことは充分考えられるヨ」

最原「……」

最原(というか現状、それが一番可能性が高い。高いけど……凄く違和感がある)

最原(なんでだ? 僕は何かを見落としてる。その見落としのせいで、真実が歪んで見えている)

最原「何かが僕の視界を歪めてる、ような……」

赤松「……」チラッ

真宮寺(大丈夫。このパソコンの中身は最原くんには見せないヨ)

赤松「……」

最原「……ここに来てもわからないものはわからなかった。やっぱり直接白銀さんと対峙するしかない」

最原「戻ろう! 上へ! もしかしたら百田くんがエグイサルに勝ってるかも……!」

校舎の外

百田「く……これ……そろそろ限界かもな……! いや宇宙に轟く百田解斗にとって、限界っつーのは乗り越えるもんだけどよ!」

春川「百田……!」

春川(間に合わなかった……!?)



ヒューッ……  ドーーーンッ



百田「……なんだ?」

春川「信号弾……?」







裏庭周辺

入間「倉庫で作ってたのは何も、金属探知機だけじゃないんだぜ。即席の信号弾とかもそうだ」

モノクマ「……」

星「見つけた。再び追い詰めたぞ、モノクマ」

天海「さあ! 今度こそすべてを終わらせるっすよ!」

モノクマ「うぷぷ」

モノクマ「うぷぷ……うぷぷぷぷぷ……アーッハッハッハッハッハ!」

モノクマ「今の信号弾は何のつもり? もしかして百田くんたちを呼んでるの?」

モノクマ「ちょっと前ならそれでゲームセットだったかもしれないけど、百田くんのエグイサルはもう満身創痍」

モノクマ「こっちに向かって走り出したその瞬間を狙って止めを刺せる!」

入間「あ? んだよ。別に百田なんかいなくっても俺様たちだけでテメェを制圧できるぜ?」

モノクマ「本当にそうかな……?」

モノクマ「いや別に星くんとかなら多少は戦力になるだろうけど、暴力でボクを上回ろうなんてさ」

モノクマ「今までそれができてなかったから、オマエラは身内で殺し合ってたんでしょ?」

モノクマ「今更一体なにをしようと手遅れ……」

星「でもないぜ」


バシィッ


ギュンッ


ドカァァァァァンッ


モノクマ「……!?」

天海(モノクマの後ろの校舎の壁が……壊れた……!)ゾクッ

星「久方ぶりだな。これを使うのも……いや。最原によればそれは嘘の記憶、だったか」

星「まあ、どちらでもいい。お前を葬るのは現実にできそうだからな」

モノクマ「さ……さ、さ、さ……!?」





モノクマ「殺人、テニス……!?」ガーンッ

天海「星くん……それは……テニスは捨てたって自己紹介のとき言ってたのに!」

星「今更言うのは野暮ってもんだぜ。なぁに、今度はまだ間に合うと思ってな」

星「復讐のためだけじゃない。誰かを守るための力だ。そのためになら、もう一度だけこの手を血に染めてみるのも悪かねぇ」

星「……もう俺の中の『動機』は、ちゃんとあるんだからよ」

モノクマ「う、うぷぷぷぷ……ちょっとビックリしたけど、まだ足りないだろうね」

モノクマ「そう! 巌窟王さんか、聖杯の力を手にした最原くんにさえ気を付ければ、まだボクが生徒に負けることなんてありえない!」ジャキンッ

星「相殺する……!」

モノクマ「オラオラオラオラオラオラオラ!」ドドドドドドドドドッ

星「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」ドドドドドドドドドドドッ

入間「な……なんて応酬だ! 目を開けてられねぇ!」

天海「あ! 入間さん! スカートめくれあがってるっすよ! 風圧で!」

入間「それ今言わないとダメなヤツか!?」ガビーンッ

星「……ぐ……ブランクか! 腕が、キツ……!」

モノクマ「よし! 勝てる……ボクが勝てるぞーーー! イヤッホーーーーウ!」ドドドドドドドドドッ

ズルウッ

モノクマ「ん?」

獄原「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

モノクマ「……」

モノクマ「え。なに? え? なんでゴン太くんがこんなところに……あれっ?」

モノクマ(いや。待って。この至近距離はまずくない? 前面は星くんの対応で追われてるし……!?)

獄原「もう何も……」スウッ








伝説の超獄原ゴン太「奪わせないッ!」ドシュウウウウウウウウウッ

モノクマ「え? え? え? 待って? 待って! 待っ――!」

伝説の超獄原ゴン太「波ァーーーッ!」ドカァァァァァァァァァァンッ

モノクマ「ぴぎゅ」クシャッ

入間「ん? あれ? ちょっと待て。こっちにモノクマが飛んできてねぇか?」

天海「うわーーー! 巻き添え食う! ちょっとゴン太くん手加減を」

星「回避」サッ

入間&天海「うぎぐブげッ!!」クシャッ

獄原「……」

星「……」







星(入間! 天海! 東条! 終わったぜ……)

東条「呼んだかしら?」ヒョコッ

ちょっと時間は遡る 新世界プログラム脱出直後

赤松「で、出れた……! あの世界と質感はあまり変わらないけど、やっと出れたんだよね!? やったー!」

全員「……」ズーン

赤松「……あれ。みんなどうしたの?」

入間「どうしたの? じゃねーよアホ松ッ! てめぇだけ爆音から逃げやがって!」

赤松「現実の鼓膜は無事だったからいいじゃない……?」

真宮寺「迂闊だった……世界を破壊するときの音に関しての発想が完全に抜けてたヨ……!」

最原「よしとしよう。言葉だけでもそう言っておかないと三半規管が狂いまくっててひたすら辛い……」

東条「……」

東条「天海くんが起きないわ」

星「どこかの誰かが精神に追い打ちかけるような一言かけて気絶させたからな」イライラ

赤松「……」

赤松「あ、あれ? みんなもしかして怒ってる……?」オズオズ








全員「当然(だよッ)(だボケッ)(よ)(だヨ)(だってー)!!!!!!!!!!!」

赤松「ごめんね!?」ガーンッ

最原「まあこれに関しては八つ当たりに近いから、もうやめよう」

最原「巌窟王さんはどこ?」キョロキョロ

アンジー「……ん」

アンジー「今、念話入ったよー」

真宮寺「なんて言ってた?」

アンジー「要約すると『しばらく休ませてくれ』だってー。建前はアンジーの怪我の治療が終わるまでって」

アンジー「出入口にあたる部分でぐったりしてるみたい」

最原「グロッキーになってる!」ガビーンッ

東条「治療開始」トスッ

アンジー「あふんっ」バタリッ

真宮寺「おそろしく早い手刀……僕でなきゃ見逃しちゃうネ」

東条「ひとまずアンジーさんの治療を済ませるわ。大丈夫。かなり無理をすることになるけどアンジーさんの怪我は完治に限りなく近いところまで……!」

赤松「東条さん。傷がまた開いちゃうよ?」

東条「大丈夫よ。無理をするのはアンジーさんの方だから」

入間「……無理をするのは患者の方……? ウッ、頭が」

最原「この話もやめよう! とにかく学園で何が起こってるのかを調べないと!」

最原「単独行動は危険だから、絶対に一人になっちゃダメだよ!」

獄原「……」

獄原(誰かに見られている気がして落ち着かない)

東条「どうかしたのかしら?」

獄原「ん? んん……なんか居心地が悪くって。見られている感覚っていうのかな」

最原「……」

最原「ゴン太くんはここで東条さんと一緒にいて。患者が全員動けるようになって、モノクマの位置がわかるまで絶対に移動しちゃダメだよ」

最原「あと」

獄原「あと?」

最原「その気配を避けることって、できたりする?」

獄原「できるよ」ヌウッ

真宮寺「!?」

最原(ゴン太くんの気配がいきなり薄く!?)ガビーンッ

獄原(ゴン太はこのまま、条件が揃うまで東条さんの傍にいるよ!)ゴニョゴニョ

獄原(条件が揃ったらすぐに呼んで! かけつけるから!)ゴニョゴニョ

入間「辛うじて聞こえる程度の絶妙な声量だ。どんな育ち方したらこうなるんだ?」

最原「さ、さあ……?」

そして現在 裏庭

星「患者が全員動けるようになるまで移動するな、というのならばギリギリわかる」

星「その一方『モノクマの位置がわかるまで移動するな』という注文に関しては意図がわからなかった……」

星「だがふと思いついたんだ。もしかしたら奇襲のためにあんな注文したんじゃねぇかってな」

入間「あ、あとは簡単だ。俺様が信号弾でゴン太に向かってモノクマの位置を知らせればいい……」

入間「一つ訊いておくが、モノクマ。テメェここに至るまでゴン太の姿を見てなかったんじゃねぇか?」

入間「なにせお互いに『新世界プログラムから出た直後』だ。更に言うなら、例の爆音のせいで全員が全員ピヨってた」

入間「出た直後は監視カメラに意識が向いてなかったんだろ。ついでに、わずかに俺様たちの方が回復が早かったんだろうな」

入間「流石にここまで計算してたわけじゃねぇだろうが、俺様たちにとっても幸運だったぜ」

天海「入間さんが信号弾でゴン太くんに合図し……星くんがモノクマの後ろの壁を壊す」

天海「あとはゴン太くんが意図に気付いてくれれば……!」

東条「チェックメイト、というわけよ」

天海「……聖杯の力を手にした最原くんか、巌窟王さんにのみ気を付けてれば生徒に負けることはない……?」

天海「舐めすぎっすよ。モノクマ」

星「ああ。これで……これでやっと……」







校舎を挟んで反対側



百田「俺の……!」

春川「生徒(私たち)のッ……!」





百田&春川「勝利だーーーッ!」




ドガシャアアアアアンッ!

以蔵さん宝具チャレンジの時間だオラァ!
通算ログボをつぎ込み、最高の以蔵を手にしてやるぜ!




ガチャ結果により今日の更新具合が変わります

百田「はぁっ……はぁっ……はぁっ……!」

春川「……やった? やったよね。うん」

百田「ハルマキ!」

春川「……お疲れ様」

百田「おうっ!」ニカッ



タッタッタッタッ……



最原「百田くん!」

真宮寺「ああ、ほら。最原くんダメだってば。走ったら傷が開くヨ?」

百田「ん? お、終一! 終一じゃねぇか! 戻ってきてたんだな!」

百田「……信号弾の方向とは別か。なら直接的な手柄は……」

最原「うん! 他の誰かだよ! 誰かがモノクマか白銀さんのどちらかを押さえたんだ!」

百田「そうか……そうか!」

百田「うおおおおおおおおおおおおお! やったぜー! 俺たちの勝ちだ! これでこの学園生活も……!」




ガシャンッ



百田「ん?」

春川「あ」

最原「……あれ?」

最原(ほぼ残骸と化したエグイサルが、動いた)

最原(動いて……そのまま百田くんと春川さんが乗ってるエグイサルに――)




ズガァァァンッ!

百田「……んなっ!?」

春川「しまった。最後の最後で油断した!」

最原「……!?」

最原(百田くんのエグイサルに、纏わりつくように抱き着いた……!)

モノタロウ?「……う、うぷぷ……」ザザッ

最原(壊れたハッチからノイズ塗れの声が聞こえる)

百田「モノタロウ?」

春川「違う。何か様子がおかしいよ。この笑い方、まるでモノクマじゃん!」

モノタロウ?「最後の……最後。一人も道連れにせず終われない……よ……」ザザザッ

モノタロウ?「道連れにしてやる。み、みみみっ道連れ」

モノタロウ?「一緒に一緒に一緒に一緒に一緒に一緒に地獄へ一緒に一緒に一緒に一緒に一緒に」ザザザッ バチバチッ

百田「!」

春川「忘れてた……! エグイサルには自爆装置があったんだった! 天海が暴発させてたヤツ!」

最原「は……? 自爆、スイッチ……!?」

モノタロウ「や、やめて……止めて止めて止めて! お願い誰か助けて! 死にたくない! 死にたくないよーーーッ!」

百田「……ッ!」

百田「読めたぜ。モノクマがどこかからモノタロウを操ってやがるんだ!」

春川「その抵抗のお陰で即座にドカンとは行かなかった、か。ありがたい話だけど」

春川「……こうも相手のエグイサルに密着されてるとね」

百田「脱出できねぇよなぁ」

最原「百田くん! 春川さんッ!」

百田「……終一……」






百田「悪ィ。後は任せたぜ」

やべっ! 思考回路バグって弓相手にニコラ・テスラ出しちゃった……
今日のところはここまで!

春川「……百田。諦めるの?」

百田「まー。少なくとも俺にできることはもうねーだろ」

百田「生存を諦めるわけじゃねーぞ。安心しろハルマキ。俺はお前を死なせる気はねーし、俺も死なねーからよ」

百田「お前も死にたかないだろ?」

春川「それは当然だけど。でもまあ……」

春川「……ここで死んでも私は後悔はしな……いや後悔だらけだな。孤児院が心配だし」

春川「そこは心配だけど、でも納得はできると思う。楽しかったよ。百田」

百田「死ぬときは一緒か。酷い保険もあったもんだ。悪かないけどな」

百田(……と口だけで言っておくが、やっぱコイツだけは死なせられないな。というかそもそもどんな慰めがあったところで死にたくないっつの)

百田(今この場で神様に『お前と春川のどちらか一方だけは助けてやる』と言われても、答える前に迷ってタイムリミットが来る程度には俺も俺の命が惜しい)

百田(……納得はできても、ここで死んだら後悔だらけだぜ。参ったな)

百田「……ま、信じてみようぜ。助かるときは助かるって」ニカッ

百田「ところで外で終一がピーピー騒いでるけど、なにかあったのか?」

春川「鈍感すぎる。しかも言い方が微妙に悪い」ズーン

最原「百田くんっ! 春川さん!」

真宮寺「ダメだヨ最原くん! エグイサルが関節を完全に極めてるとは言っても、よろめいて倒れたりしたら潰される!」

赤松「……あの音。機体が軋んでるみたい。エンジンとかモーターとかを規定の限界以上まで駆動させてるんだ」

赤松「あの状態が続けばモノタロウが乗ってる方のエグイサルは三十秒も持たない、けど……!」

真宮寺「その代わり、通常のエグイサル以上の馬力を出せるってことだネ」

真宮寺「……ところで気のせいかさっきよりエグイサルが密着してない?」

赤松「気のせいじゃない。コクピットからの音がもうほとんど聞こえない! エグイサルの機体が塞いでるんだよ!」

赤松「あの状態で自爆なんかされたら……!」

最原「そんな……そんな!」

最原(ここまで誰も死なずにやってこれたんだぞ……このエグイサルを潰せば、やっと僕たちの勝ちなんだぞ!)

最原「諦めたくない……諦めたくないよ……!」

最原「こんなところでお別れなんてイヤだ!」

赤松「最原くん……」

最原「くそっ! くそっ! くそおおおおおおおおおおおおおおっ!」ダンッ

巌窟王「……」スタスタ









最原「……」

最原「ん?」

巌窟王「最原。どちらのエグイサルが味方だ?」

最原「ええっと、その比較的損傷が少ない、抱き着かれてる方……」

巌窟王「そうか。わかった」ボォウッ





ドガシャアアアアアアアアアアアアンッ




巌窟王「よく頑張った。後は俺がやる」ゴキンッ

モノタロウ?「……!? ……!?!? ……!?!?!?」ガーンッ ガーンッ ガーンッ

巌窟王「どんな爆弾であれ共通して言えることがある。『爆発する前に燃え尽きてしまえば爆発のしようがない』ということだ」

巌窟王「何故わかるかだと? 一度作ったことがあるからな」

巌窟王「この場で一瞬にして燃やし尽くしてやる! そして……!」ボオオオオウッ




ビシュンッ ドカァァァァァンッ




巌窟王「王馬は! 後でッ! 殺すッ! 残酷に殺す!」

最原「なんでーーー!?」ガビーンッ

巌窟王「貴様はその予行演習だ! 跡形もなく燃え尽きろザコめ! 次は右半身を気化させてやる!」

モノタロウ?「じ、自爆スイッチ――」

巌窟王「押させると思うか!?」



ガシャアアアアアアアンッ



モノタロウ?「……」

モノタロウ?「リンクしてるだけ損だなぁ。もういいや。体は返すよモノタロウ」

モノタロウ?「ボクも残酷にはなりきれないんだよなぁ。子供の体を乗っ取るなんてマネできないよ。およよ」

ブツンッ

モノタロウ「え。あ。待って! それはそれで困る! このままじゃオイラ……!」

巌窟王「消えろ! 白銀とモノクマの妄執と共に!」ボオオオオウッ

モノタロウ「ひ……ひ……火!?」



ボオオオオオオオオウッ


モノタロウ「ひぎゃああああああああああああああああ!?」

赤松「……!」

最原(なんて火力だ! ちょっと前とは比較にならない! この分なら確かに爆弾を爆発する前に焼却することも可能かもしれない!)

最原(本当なら単なる理屈上の話でしかないのに!)


ボトリッ


最原(……大炎上するエグイサルから、何かが落ちた。蠢く黒い残骸。酷い臭いを出すそれは、酸鼻極まりない姿と化したモノタロウだった)

モノタロウ「あ、あう……死ぬ……死……死……」

巌窟王「モノタロウ……」

モノタロウ「も、もう何も……見えない。モノファニー……モノファニーはどこ……?」

巌窟王「憐れだな。あまりにも。モノクマの子供でさえなければ、もっとまともな一生を送れたかもしれないが」

最原「巌窟王さん……」

巌窟王「……貴様には多少なりとも世話になった。本当に多少だが。だから、せめて労ってやろう」

巌窟王「せめて家族で安らかに――」

赤松「巌窟王さんっ! 百田くんのエグイサルの方に引火しちゃってる!」

巌窟王「邪魔だどけェ!」ゲシィッ

モノタロウ「ぎゃあっ!」

最原「蹴り飛ばしたーーーッ!?」ガビーンッ



ガンッ


ドカァァァァンッ


最原「そして寄宿舎の外壁にぶつかって爆発したーーーッ!」

真宮寺「本当にゴミみたいに死んじゃったネ。労いもクソもないヨ」

百田「えほっ……なんだ? 急に熱くなってエグイサルが剥がれたぞ」

春川「……?」

春川「ねえ百田。こんなふうに炎の熱に燻されたことなかったっけ?」

百田「あ? んなことしたら普通死ぬだろ。あるわけ――」

百田「あったな! 火事の建物の中に飛び込んだことがあったぜ!」

百田「誰かを助けようとしてた……ってことはたった今思い出したけど、誰だったか……」



ダンッ


「百田! 春川!」

百田「ん?」

春川「アンタは……」

巌窟王「俺を! 呼んだな!」ギンッ

百田&春川「……ッ!」








百田&春川「誰?」

巌窟王「!?」ガビーンッ

巌窟王「ええい、いい! それでもいい! とにかくここから出るぞ! 時間がない!」

百田「おう! 助かったぜ見知らぬ誰か!」

春川「じゃあ、先に降りるよ。アンタは百田の方をお願い」

巌窟王「了解した! 早くここを離れるぞ!」ガシッ

百田「……ん?」

百田(あれ。こんなこと前にあったような……)

巌窟王「これで貸し借りはなしだ。百田」

百田「……お前!」




ギュンッ




裏庭

天海「ひとまずこれでOKっすかね。鎖でぐるぐる巻きにして南京錠付けとけば流石に逃げられないっすよね?」

入間「ゴン太がギチギチに縛ったからな! 逃げたくても逃げられねーだろ! ヒャハッ!」

モノクマ「……」ガシャガシャ

モノクマ「……見事だなぁ。割と本気出してたんだけど」

星「なに?」

獄原「意外だね。モノクマが素直にゴン太たちを褒めるようなこと言うなんて」

モノクマ「……」

天海「……?」

天海「モノクマ。もしかしてまだ何か企んでるんすか?」

モノクマ「ボクは企んでないよ。ボクはね」

モノクマ(あとは……どうなるかなぁ)

モノクマ(ま、どうなったとしても負けはない、か。後は白銀さんが好きにすればいい)

天海「……なんすかね。イヤな予感がどんどん大きくなってるっていうか……」

モノクマ「……」

数分後

エグイサル「」シーン

巌窟王「……百田の方のエグイサルは無事のようだ。引火したとは言っても燃料の方に火は回ってない」

赤松「……急に静かになっちゃったね。さっきまでが嘘みたい」

百田「おー。星が綺麗だなー。まあニセモンだけど、プラネタリウムみたいなもんだと思えば……」

最原「百田くん……」

百田「お。終一」

最原「……」

百田「俺は頑張った。テメェも頑張ったな」

最原「うん……うん! 無事でよかった。本当に……!」

百田「あはははは! 何泣いてんだよ終一! あはははははは!」バッシバッシ!

最原「うん……うん? あの。なんかやたら上機嫌なんだけど。気のせい?」

百田「おお終一! 聞いて驚け! ハルマキと結婚するぞ俺ァ!」

春川「!?」ガビーンッ

赤松「!?」ガビーンッ

真宮寺「……」シラー

巌窟王「そうか。結婚式のときは呼べ。貴様の目玉が飛び出すほどの『数字』を包んでやる」

百田「おう! 感謝するぜ見知らぬ人!」ニカッ

春川「待って。誰が誰と結婚するって?」

百田「ほっぺにちゅーされちまったからな。責任取らねーと」

春川「……最原。コイツ真顔で何を言ってんの? ねえ?」アタフタ

最原「僕に言われても……両想いだったし良かったね、としか……」

春川「!?」ガビーンッ

最原「え!? なにその反応、今まで隠せてると思って……!?」

春川「……」カァァ

最原(思ってたっぽい!)ガーンッ

赤松「おめでとー!」パチパチパチ

春川「やめて」カァァ

巌窟王「さて。後は白銀だな。ヤツはどこに……」



ガシャッ ガシャッ……


巌窟王「……」

巌窟王「悪あがきか?」

最原「!」

最原(百田くんがさっきまで乗ってたエグイサルが動いてる……!)

巌窟王「クライマックス、だな。引導を渡してやろう」

エグイサル「……」ガシャッ ヨロッ……

巌窟王「……」ボオウッ



ズガァァァァンッ!



巌窟王「……弱すぎる。機体の状態以前に、まともな操縦技術がないのではないか?」

巌窟王「もしくは操縦者の身に何かが起こっているか」

エグイサル「……」ガシャッ ヨロッ……

巌窟王「……油断を誘おうとしているのか? ならば無駄なことだな。じっくりと安全に遠巻きから始末してやる」ボオウッ

最原「……?」

最原(おかしい。なんだろうあの挙動。あんなことするくらいなら何もしない方がいいのに)

最原(これじゃあ本当の悪あがきでしかない。何の勝算も感じられない。いや、白銀さんたちに最初から勝つ気がないということは置いといて、だ)

最原(今更ボロボロのエグイサルを動かすことに何の意味が……)

赤松「……」

真宮寺「挑発、だよネ」

赤松(真宮寺くん。まだ喋っちゃダメ)シー

真宮寺(おっと。ククク……白銀さんが巌窟王さんに殺されるまで、だよネ。わかってるよ)ゾクゾク

最原「……」キョロキョロ

赤松(流石に気づくかな? いや。パソコンはこっちが押さえてる。何もわかるはずはない)

赤松(意図の見えない不自然さにひたすら不安を覚えてるってところかな。白銀さんかモノクマを押さえて聖杯の力で自白させたい、と)

巌窟王「最原。油断はするな。まだ何か仕掛けてくるかもしれん。後ろに下がっていろ」

最原「あ、ああ。うん。そうだね。百田くん、春川さん。行こう。赤松さんと真宮寺くんも」

赤松「わかった! 巌窟王さん!」

巌窟王「?」

赤松「……頑張ってね!」

巌窟王「誰に物を言っている! 今更言われるまでもない!」ニヤァ

赤松「……」

赤松「……ふふっ」

真宮寺(意地悪だなァ)

最原(あのエグイサルを動かしているのは……白銀さんだろうな)

最原(モノクマがエグイサルを動かす場合はどうしても大雑把な操作になるってことはジャバウォック島で学んだ)

最原(さっきまでエグイサルを動かせていたのはエグイサルじゃなくってモノクマーズの方を動かしていたからだ)

最原(今のエグイサルは……動きは酷いけど大雑把って感じはしない。どこかから巌窟王さんの姿を視認した上で動かしてる)

最原「モノクマじゃない。白銀さんがエグイサルを動かしてる……どこから?」キョロキョロ

赤松「白銀さんが近くにいるの?」

最原「うん。状況から考えて間違いないと思う」

赤松「だったら! 手分けして探そうよ! そしたらいよいよこの学園生活も終わりでしょ?」

最原「……」ゾクッ

最原(なんだろう。イヤな予感がする。するけど……)

赤松「……最原くんが何を考えてるのかわからないけどさ」

赤松「白銀さんのこと、助けたいんでしょ?」

最原「!」

赤松「……協力させてよ! 仲間でしょ!」

最原「……うん」

最原「うん!」

百田「お? 白銀のヤローを探せばいいんだな?」

百田「じゃ、終一! 俺の背中に乗れよ! 真宮寺もそろそろ疲れただろ?」

真宮寺「ン。助かるヨ」

真宮寺(……チーム分け的な意味で。キミが提案しなかったら押し付ける気だったヨ)

赤松(百田くんが最原くんと一緒なら、後の春川さんも……)

春川「あの……ねえ。赤松。真宮寺。私そっちのチームに入れて……」

百田「ハルマキはこっちだぜ!」

春川「……」アセッ

赤松「あの。ごめん春川さん。こんな状況に似合わない提案だけどさ」

赤松「笑っていい?」プルプル

春川「殺されたいのッ!?」ウガァ!

百田「じゃ! チーム分けは三人と二人で、だな!」

最原「……」

最原(ふと頭をもたげる疑問。本当にこのチーム分けでいいのか、と)

最原(……悪い理由はないはずだ。でも何か小さい、ほんの小さい不安がある)

最原(なんで?)

百田「後で会おうぜ! 生きてな!」

赤松「うん! もう最後だもん! 絶対に生き残ろう!」

百田「行くぜ!」ダッ

最原「あ……」

最原「……」

最原(なにか言い忘れたことはないだろうか……)

最原(……もうダメだ。別れた後でこんなことを考えるのは時間の無駄だろう)

最原「白銀さんを見つけよう。それで全部解決するはずだ……!」

春川「……」

春川「赤松、なにか様子がおかしくなかった?」

最原「え」

春川「……ごめん。ちょっと思っただけ。根拠はないよ」

最原「……」

裏庭

入間「……?」

入間「おい。エグイサルの駆動音、鳴りやんでねぇぞ」

天海「え?」

星「……さっきは一度止んだと思ったが……おかしい。もうモノクマは押さえたぞ?」

天海「ちょっと様子を見に行かないっすか?」

入間「ま、まだなんかあんのかよう。怖いよう」ガタガタ

夢野「ええいヘタれるな! 鬱陶しい! いね!」

入間「さっきから妙に俺様に当たり強くねぇか!?」ガビーンッ

夢野「みんな頑張ってるんじゃ! お主だって頑張ってたじゃろ! 今更弱音吐いたところでこの事実は変わらん!」

夢野「自信を持て! お主はできるヤツじゃ! 弱音を吐く必要がない!」

夢野「超高校級の生徒全員が揃ったなら、どんな敵であろうと問題になるものか!」

天海「……め、めっちゃくちゃポジティブっすね」

夢野「巌窟王のポジティブさに当てられたかもしれんの」ンフー

獄原「そうだ……ゴン太たちがこの世界に帰ってきたのなら……そして全員が全員、疑心暗鬼を捨ててモノクマと白銀さんを敵と見なしたのなら」

獄原「ゴン太たちにもう不可能はない! 何一つとして!」

東条「……そう上手く行くかしら?」

獄原「え?」

東条「そもそも獄原くんは私たちが既に一致団結しているという前提で話しているけども……」

東条「本当にそう? 周りをよく見て?」

獄原「ん? いや全員『モノクマと白銀さんが敵』って顔でしょ……」クルリッ

夢野「……」ビクビク

天海「ふふゅー……ふふゅー……」シドロモドロ

獄原「天海くん口がカサカサだよ! 口笛吹けてない! どうしたの!?」

東条「夢野さんもさっきのポジティブさが嘘のような縮こまりようね」

東条「……なにか私たちに隠し事でも?」

夢野「そそそそんなわけ……ないじゃろ」

入間「おい。ヘタれてんじゃねぇよ」

夢野「……いやちょっと面喰っただけじゃ! なんでみんな白銀のこと悪く言うんじゃ! 仲間だったじゃろ!」プンスカ

夢野「まったくもう! 一度や二度裏切られた程度で!」プンスカ

天海(あ。いやそれを今のタイミングで言うのはマズイっす)




ザワッ



夢野「……」

夢野「え。な……え? なんでそんな目でウチを見るんじゃ? みんな……」ガタガタ

入間「……」

獄原「……行こう。エグイサルのところに。様子を見るだけ見ておこう」

獄原「モノクマはゴン太が運ぶよ」スタスタ

星「ああ。そうだな」スタスタ

東条「……」スタスタ

夢野「あ。ちょ……待……」

夢野「足がすくんで動けんのじゃが」

天海「……確かに俺たちは、まだ全員生きてる。団結も時間と共に強化されてる」

天海「でもここが付け入られる隙なのかもしれない」

天海「ハッピーエンドを迎えたとしても、このままじゃ真実は闇の中っす」

夢野「うう……どうすればいいんじゃ?」

天海「……俺は俺にできることを」

天海「最後の最後まで、彼女と友達でいる。それが俺のできることっす」

夢野「……?」

夢野「でもモノクマはあの通り押さえたぞ。白銀一人で何ができるんじゃ?」

天海「何もできないっすね。だからこれから先、もしも何かが起こるとしたらそれは……」

夢野「それは?」

天海「内ゲバ。それも白銀さんやモノクマが本当に関与してない、正真正銘の」

夢野「う、内ゲバ!?」

天海「俺たちちょっと長く一緒にい過ぎたっすよ。モノクマが用意なんかしなくっても動機なんていくらでもあるんすよね」

天海「というか白銀さんの存在そのものが今や強烈な爆弾そのものっす」

夢野「んあー……! 本当に酷いことしたんじゃな、白銀のヤツ……」

天海「……みんなについて行くっすよ。勝ちが見えてきたときが、勝負事で一番危険なときっすからね」






校舎内

茶柱「はあっ……はあっ……! アンジーさん! そっちは!?」

アンジー「いないよー! どこ探しても影も形も匂いもないよー!」

茶柱「やられた! 最後の最後であの人はッ!」

茶柱「白銀さんを連れてどこに消えたんですか!?」

水着イシュタル復刻来たぞおおおおおおおおお! うおおおおおおおおおお!
そしてそろそろ本当に終わりそうだぜ!



別にこの後訳のわからない内に死体が一体増えたりはしないぜ! ダンガンロンパの二次創作だけど!

学園某所

王馬「なるほどねー。入間ちゃんこんなもの作ってたんだ。でもこれならもっと早い段階でクーデターでも起こせそうなもんなのにな」

白銀「……このコントローラーは『中から直接行われる操作』の方が優先だから」

王馬「なるほど。中に誰かがいたら操れないんだね」

王馬「……じゃ。俺はそろそろお暇するよ。茶柱ちゃんとアンジーちゃんを振り切ったんだ」

王馬「凄く仲間っぽいだろ? 仲間を裏切って仲間を庇うとかさ」ニヤァ

白銀「……本当になに考えてるかわからないな」

王馬「俺は白銀ちゃんが何を考えてるのか知りたいんだよ」

王馬「極論、相手が何を企んでいるのか知りたいときは……」






校舎の外

巌窟王「最悪、相手が何を企んでいるのかわからない場合は、だ」

巌窟王「最後まで相手に行動権を譲ってしまえばいい。最後の最後までやらせてしまえば、どんなに緻密な作戦であろうと目的はわかる」

巌窟王「だが……」

エグイサル「……」ガシャッ ユラッ

巌窟王「……あまりにも弱すぎる。むしろ放っておく方が危険、か?」

巌窟王「さて。どうしたものか……このまま遠距離から細かい攻撃をしているだけでも充分勝てるが……」ボオウッ

巌窟王「やはり操縦者本体を叩く方が一番安全だろうな。どこにいる……?」キョロキョロ

「……! ……!」

巌窟王「ム。今の声は……」

巌窟王「……誰だかわからないがよくやった!」ニヤァ





赤松チームと別行動中の最原チーム

春川「……ん? 誰か騒いでる? 女子の声、かな」

最原「え?」

百田「本当か? 何も聞こえねーぞ」

春川「ごめん。気のせいかも……しれないんだけど……」

百田「いや。ハルマキが言うんならほぼ間違いねーだろ。赤松ほどじゃないけど耳いいからよ」

最原「でもこの状況で一体誰が騒ぐんだろう」

百田「……それどういう声だった?」

春川「あくまでも私の感想になっちゃうけど」

春川「……悲鳴だった、と思う」




ボオオオオオオオオンッ!



最原「……」

最原「え?」

春川「なにあの火力……尋常じゃないよ! 今日見た攻撃の中で一番の威力だ!」

百田「寄宿舎の方向か?」

最原(いや。違う。あれは……その裏手の方だ!)

最原(まさか、白銀さん!)

寄宿舎の傍

巌窟王「……」ゴオオオオオオッ

白銀「はあっ……はあっ……はあっ……!」

巌窟王「……既にボロボロだな? まあいい。楽しみは他の者にも分け与えよう」

巌窟王「どうせ一番重要なところは俺が持っていくのだからな」

巌窟王「……殺す。必ず殺す。心臓を抉り出してボロ炭に変えてやる!」

巌窟王「ああ! ああ! なんということだ! 憤怒のあまり、貴様に出会えた俺は狂喜している!」

白銀「……!」キョロキョロ

巌窟王「何を探している? ああ、そうか。貴様をさっきまで痛めつけていた相手なら、俺が来た途端に早々と退いたぞ」

巌窟王「最初から俺に『気付かせた後』はこうするつもりだったのだろうな」

巌窟王「まるで利用されているようで癪だが、文句は言うまい!」ボオウッ

白銀「ううっ!」バッ



ボンッ



巌窟王「そうだ逃げろ逃げろ! その分だけ恐怖が長引くのだからなぁ!」

巌窟王「クハハハハハハハハ! アーッハッハッハッハッハッハッハ!」ゲラゲラゲラゲラ

白銀「……」

白銀(これでいい。これで。私はこれで)

最原チーム 道中

最原「くそっ! まだ白銀さんを殺されるのはまずいのに! 百田くん!」

百田「おお! 全速力で走ってんぞ舌噛むぞコラ!」

春川「……『まだ』?」

最原「……」

百田「よせよハルマキ。噛みつくのは後だ」

春川「でもさ」

百田「わかってるって。だから後回しっつってんだ。永久によせとは言ってねぇ」

春川「……」ムスッ

百田「おし! 後半分くらい……お?」






エグイサル「」ガシャコーンッ!

獄原「うわあああああああああああ!」

入間「ぎゃああああああああああああ! お助けーーー!」



キャーキャー



百田「うおおおおお! エグイサルがなんか……暗くて良く見えないけど誰かを襲ってやがる!」

春川「ん? 今ちょっと聞こえたけど、この悲鳴は入間じゃない?」

百田「アイツもいんのかよッ! さっきの赤松とか真宮寺のときも思ったけど、本当に生きてたんだな!?」

最原「なんで!? 巌窟王さんは!?」

百田「さっきのフランス野郎か? そういや姿が見えねーが……」

春川「逃げ……いや、ありえないな。なんとなく、そんな感じがする。私の忘れた記憶がそう言ってる」

春川「それ以前に、あのエグイサルの様子もさっきとは違うベクトルでおかしいよ。襲い方がランダムっていうか……」

春川「……違う! 襲ってるんじゃない! 誰かがミスった操縦をしてテンパってるだけだよ、アレ!」

最原「どういうこと?」

春川「本当は自爆でもなんでもさせる気だったのが、変なボタンを触ったせいで暴走してるってこと!」

春川「それを見た操縦者が慌てて、更にボタンを弄って余計に暴走。そんな最悪の善意のループが発生してるんだよ!」

最原(め、迷惑すぎる! 善意で人を殺す勢いとか、そんなのって……!)

最原(あ。いけない。彼女の顔が目に浮かぶ。後でこっそり謝ろう。心の中で)

最原「……殺意がないんなら死ぬことはないかな……」

夢野「まあゴン太もおるし大丈夫じゃろ」

最原「!?」ガビーンッ

百田「お。夢野。さっき茶柱が探してたぞ」

夢野「あー。心配かけてごめんって会ったら伝えておいてくれい。ウチはまだやることがある」キョロキョロ

夢野「おにいちゃーん! どこー! おにいちゃーん!」

最原「え!? 何言ってるの!?」

春川「恐怖のあまり夢野が変な幻覚見だした……」ガタガタ

百田「落ち着け……こういうときは変に否定しちゃダメだ。とにかくその話題には触れずに何でもないような会話を心がけて……」

夢野「天海を探しておるんじゃ! 天海を! アイツ妹萌えじゃから仕方ないじゃろ!」

百田「ああ」

最原(いやそれにしてももうちょっとマシな探し方あると思うけど……)

春川「……夢野。一人?」

夢野「チーム組んでおったんじゃがのう。あのエグイサルの襲来でみんな散り散りじゃあ」

最原(夢野さんはコントローラーの類は持ってない、と)

夢野「その中でも天海の様子は一際おかしかったのでの。こうやって本腰入れて探しておるわけじゃ」

春川「なるほど……百田。夢野をこのまま一人にはしておきたくないし、私も同行していい?」

百田「おう! 任せたぜ!」

夢野「じゃあウチと一緒に探すぞ! お兄ちゃんをな!」

春川「わかった」コクリ

春川「にいにいー! お願い、出てきてー!」

最原(幻級にドマイナーな呼び方出た!)ガーンッ

百田「お前割と周りに尽くすタイプだよなぁ。サービス精神旺盛ってかよ」

春川「うるさい」

百田「で。どうする? ハルマキの話を信じるなら、この時点で一番困ってるのはコントローラーを持ってるヤツだよな?」

最原「うん。そうだけど、でも今は放置でいいよ。夢野さんによればあそこにはゴン太くんがいて、エグイサルにも殺意がない」

最原「死人は出ないと思う」

百田「あれを放置するのは気が引けるんだけどよ……終一がそう言うなら仕方ねーか」

百田「手は足りてねーんだ。優先順位は決めねーとな」

最原「白銀さんをどうにか、巌窟王さんより先に見つけないと……!」

最原(……高確率で無理だろうけど。今頃、もう……!)




ボンッ



百田「今の爆発音!」

最原(間違いない! もう追い詰めてる!)

最原「頼む! 間に合ってくれ!」

百田「任せろッ!」ダッ





寄宿舎の裏

白銀「ああっぐ……うう……!」

巌窟王「……む。どうした? 何を声を抑えている? 先ほどまでとは別人のようだ」

巌窟王「さっきはもっと子供のように……」

巌窟王「いや。いい。興味が無い。どっちにしろ貴様の末路は変わらないのだからな」

白銀「足を……撃たないの?」

巌窟王「クハハ! 言っただろう! 逃げれば逃げるだけ恐怖が続く! 貴様の足がいくら健在であろうが関係なく――!」

白銀「……!」ダッ


ギュンッ


巌窟王「俺は貴様を逃がしはしない。このように一瞬で回り込める」スッ

白銀「ひっ……!」

ジュウウウウウウウウッ

白銀「あ、ぐ……っ! いっ……!」ジタバタ

巌窟王「……右目を潰したのだが……? 何故だ? 何故叫び声を上げない?」

巌窟王「一体貴様は何を耐えている?」

白銀「はあっ……はあっ……はあっ……! うっ……」

巌窟王「拍子抜けで、興醒めだな。まあこうやってうずくまっている貴様を――」ドカッ

白銀「がっ――!」

巌窟王「蹴り飛ばすのは快感だがなぁ! クハハハハハハ! 中々見事に転がるじゃないか!」

白銀「がっ……こひゅっ……!」ガタガタ

巌窟王「しまった。エキサイトしすぎたか。肋骨はもうちょっと後で折るつもりだったのだが……」

巌窟王「安心しろ。気胸を引き起こして死にそうになったら胸腔に穴を開けて助けてやる」

巌窟王「俺を生かしておいた礼だ。たっぷり味わえ……俺の味わった苦しみはこんなものじゃなかったがな……!」

白銀「……」ガタガタ

巌窟王「……」

巌窟王(思ったより楽しくないな。コイツの反応が妙に薄いからだが)

巌窟王(死にゆく今、なにを気にすることがある?)

巌窟王「……」

巌窟王(予定変更。遊ぶ間もなく殺した方がいいか。何か不気味だ)ボオウッ

白銀「!」

巌窟王「やっぱり死ね。すぐ死ね。その思惑と共に闇に消えろ」

巌窟王「お前の顔を、二度とアンジーの前に晒しはしない。骨になるまで燃やし尽くしてやる」

巌窟王「最後の言い残すことは?」

白銀「……」

白銀「みんなに……」

巌窟王「ん?」









白銀「みんなに『ごめん』って……言っておいて……くれる……?」

巌窟王「――」

巌窟王「もう無意味だ。何もかも。故に伝言はしない」

巌窟王「貴様の告解を聞くのは俺一人のみだ」

白銀「……!」

巌窟王「さらばだ。我が宿敵よ」ボオウッ

白銀「……」ギュッ

巌窟王「うおおおおおおおおおおお――!」ブンッ



バッ



巌窟王「おお……おおおおお!?」ガビーンッ

巌窟王「ぐうっ!」バッ




ドカァァァァァァンッ




白銀「……?」

白銀「あれ……生きて……る……?」

天海「はあっ……はあっ……はあっ……!」ゼェゼェ

白銀「……え」

巌窟王「なんのつもりだ……天海! 貴様ッ!」

巌窟王「何故そいつを庇った!?」

白銀「え……あ?」

天海「……!」

天海「げほっ!」ビシャッ

天海(まず……超特大の殺意搭載した巌窟王さんの炎が……飛び出したときに掠った……)

天海(直前で飛び出した俺に気付いて、当たらないように制御はしたんでしょうけど……間に合ってなかったみたいっすね……目が霞む……)

天海(そういえば毒あるって話だったっけな……)

白銀「な……なんで……!」

天海「逃げて」

白銀「!」

天海「足が無事なら大丈夫! 走れる! 最悪、歩ける!」

白銀「え。え?」

天海「いいから! 立って! 行け!」

白銀「で、でも」

天海「行けーーーッ!」

白銀「ッ!」ビクッ

白銀「……!」ダッ

巌窟王「……何のつもりだ、天海?」

天海「……ええと……いや、あのー……」

巌窟王「まあいい。そこで気絶しておけ。もう目を開けているのも辛いだろう。このまま行けば貴様は死ぬ」

巌窟王「だが安心しろ。後で治療してやる。目を開けたときにはすべて片付いているだろう」

巌窟王「……まったく余計な手間を増やしてくれる――」



ガシッ



巌窟王「――」

天海「あの……待って……」ギュッ

巌窟王(……地面を這いつくばっている天海に足を掴まれた)

巌窟王「力を入れたり動くのすら辛いはずだ。何故そこまでする。離せ」

天海「……!」ギュウウッ

巌窟王「……」

巌窟王「離さないのなら自力で振りほどくのみだが」


バッ


巌窟王「……」スタスタ

天海「ぐ……ぬっ!」ガシッ

巌窟王「……??????」



バッ



巌窟王「……」スタスタ

天海「ダメっす……よ……!」ガシッ

巌窟王「……」イラッ

巌窟王「まあ、いいか。後ですべて治すのなら関係あるまい」

巌窟王「俺の邪魔をする貴様が悪いのだからな」

天海「……?」ゼェゼェ



バッ



バキィッ



天海「があっ!?」ゴロンッ

巌窟王「そこで転がっておけ。そこそこ強く蹴ったから、もうどこが上でどこが下かもわからないだろう」

巌窟王「無理をするな。毒が余計に回って用事が済む前に死ぬぞ」スタスタ

天海「……」

天海「ぐ……があああああっ!」バッ

巌窟王「なっ……!?」



ガシッ



天海「離ざ……げほっ……ない……!」

天海「どごにもっ……はぁっ……行がぜないっ……!」ギュウウウッ

天海「俺っ……俺はっ……!」ゼェハァ

巌窟王「……?」

巌窟王(コイツのどこからこんな力が出て来る?)

巌窟王(いや。毒が回っていることは重要ではない。無理をすれば体は動かせるのだからな)

巌窟王(問題は『無理をしなければいけない理由』がどこにあるか、だ)

巌窟王「……」

巌窟王「後で事情を聞こう。後でな」


バッ


バキィィィィッ




天海「がっ……! う……」ゴロンッ

天海「おえっ」ビシャッ



ボタボタッ



巌窟王(ム。しまった。ちょっと強く蹴り過ぎたな。結構転がってしまった上に血も流しすぎだ……)アセッ

巌窟王「天――」




「天海くんっ!」



巌窟王「ん?」

巌窟王(誰かが天海に駆け寄って……?)

巌窟王(あれは……あれ……は……)

白銀「天海くん……! しっかりして! 天海くん!」

天海「ごっ……白銀ざっ……なん……ごぼっ」

白銀「……!」

巌窟王「――は?」

天海「だめ……逃げ……ご……うっ!」

巌窟王「……」

巌窟王「おい」

白銀「!」バッ

巌窟王「……!」

巌窟王(なんだその眼は。何をしている。何故引き返してきた? 何故……)

巌窟王(これではまるで、貴様は……)メラッ

白銀「やめて」ガタガタ

巌窟王「!」

白銀「やめ……て……お願い……!」ガタガタ

巌窟王(涙を流しながら何を懇願している? 何を……俺が天海を殺すとでも?)

巌窟王(愉快な勘違いだ)

巌窟王(……そうだな。これ単品でなら、笑い飛ばせるだろう。あまりにも滑稽な勘違いだからな)

巌窟王(だが)

巌窟王「やめろ……だと?」メラァッ

巌窟王「貴様……どの口で言っている?」

白銀「が、巌窟王さ――」

巌窟王「どの口で言っているんだッ!? ああ、違う違う違う! そうではないだろう! 白銀、貴様ァァァ!」ボオオオウッ

巌窟王「今更何をしている! 何もかも手遅れだというのに、貴様はァ!」ボオオオオオオオオオッ

白銀「あ、あ、あ……!」ガタガタ

巌窟王「天海のために涙を流しているのか……!? 天海を守るために引き返して来たのか?」

巌窟王「遅い……何もかも遅すぎる! ああ、何もかもッ!」ボオオオオオオオウッ

白銀「あ、熱い……よ……やめ……! 私はどうなってもいいけど、天海くんは……!」

巌窟王「やめろ……やめろやめろやめろやめろ!」







巌窟王「それ以上、口を開くなーーーッ!」

最原チーム

百田「あと少しで寄宿舎の裏に着くぜ!」ゼェゼェ

最原「ありがとう! ごめん! 後でちゃんと水分補給してね!」

百田「あとマッサージも頼むァ。マジで足が棒みたいでよ……体も火照って滅茶苦茶熱いし」



ムワッ



百田「あれ? なんか暑くねぇ?」

最原「……急に気温が上がった? なんで――」





ゴロゴロゴロッ ドカァァァァァァァンッ




最原「……な、んの音……!?」

百田「コイツは……! 雷鳴と同じだ。急激に気温が上がって空気が爆発的に膨張した音……!」

百田「なんだ? こんな熱源、どこに……」

最原「……いるとしたら、たった一人だけだ」

最原「あそこ見える、黒い炎……! あれは……!」

「うおおおおおおおおおおおおおお……!」

白銀「……う……わ……ううっ……!」ガタガタ

白銀(もう一歩も動けない。恐怖で……疲労で。痛みで)

白銀(違う。こんなはずじゃなかった。巌窟王さんの怒りを一身に受けるのは私だけのはずで……!)

白銀(他の誰を巻き込む気もなかったのに!)




「うおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」




白銀「……」

白銀(甘く見てた。あまりにも桁が違いすぎる……)

白銀(あれはもう人間じゃない)

白銀(人の身を捨て、その魂すべてをくべて燃え続ける――)





「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」





白銀「復讐鬼――!」




「があああああああああああああああああああああああああああああッ!」

第五章
Cosmos in the lostmemories


END



残り人数
??人



TO BE CONTINUED




セミラミス印のイースターエッグを手に入れました!

続きは明日の夕方!


騎シュタルはもう持ってるから今回のイベントは素材周回以外の用事が一切ないな……楽……
ちなみに弓シュタルがいない関係でこの作品に出ているイシュタルはすべて騎シュタルです。ずっと水着パーカーです

最原(選択を間違えたかもしれない)

最原(ぼんやりと、あの黒い炎を見ながら思う)

最原(もしかしたら僕は、少し前の段階で、見えている地雷を放置してしまったのかもしれない)

最原(でも……ああ! でも、今の僕にはもう、それをどうすることもできない!)

百田「終一。このまま行けば、多分とんでもないことになるぜ。それでも行くか?」

最原「当然!」

百田「おお! じゃあ行ったるぜオラーーー! 覚悟を決めろ! 決めた! うおおおおおおおおお!」ダッ

最原(それでも僕は……止まらない! 止まりたくない!)

最原(僕は何も、成し遂げてないのだから!)









「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

第六章

超高校級の生徒たちが超高校級の召喚を目撃し超高校級の協力で超高校級の絶望に立ち向かい超高校級の結末を掴むお話

校舎内

茶柱「なんか暑くないですか?」

アンジー「……む。魔力を大量に持ってかれてるー……」

茶柱「え?」

アンジー「転子。外に出よう? この状態が続くとアンジー、倒れちゃうかもしれないからさー」

茶柱「え、ええ。そうしましょうか。どうせこの場に長くとどまっていても何も収穫はないわけですし」

茶柱「というか外が妙に騒がしいですし」



ドガシャアアアアア!



獄原「うわあああああああああ!」

入間「ひええええええええええ!」

エグイサル「」ガシャコーンッ!

アンジー「ん?」

茶柱「!?」ガビーンッ

入間「ああああああああああ! 校舎の中に入っても追ってくるのかよおおおおおお! もうやだよおおおおお!」

獄原「入間さん! しっかり捕まってて! このまま逃げるから!」ダッ

入間「ひえええええええん……」

エグイサル「」ガシャコンガシャコンッ……







茶柱&アンジー「……」

茶柱「行っちゃいましたね。なんでしょうあれ」

アンジー「わからないけど理由なく被虐されちゃう系の女子だから。美兎って」

茶柱「さっきまでのエグイサルと違って殺意はなさそうでしたし、放置安定ですね! 行きましょう!」

寄宿舎の裏手


ゴオオオオオオオオオッ



最原「……!?」

百田「なんだよ。あの火柱は……!? 呼吸するのが苦しいくらいの熱気だぜ!」

最原「あれは……」




「うああああああああああああああああッ!」




最原「!」

最原「……中心に巌窟王さんがいる! ありったけの勢いで炎を放出してるみたいだ」

百田「んだとォ!?」

最原(あと……他には……?)ジーッ

最原(いた! 白銀さん……と……)

最原「……なんで天海くんまでここに!?」

百田「お? あ……天海!? 白銀!?」

百田「おいおい! これだけ離れてても息が詰まるほどだぞ! あんな近くにいたら……!」

最原「十分も持たない。どっちも死んじゃう!」

最原「……理由はわからないけど、明らかに正気を失ってる! なんで!?」

ゾロゾロゾロッ

星「おい! これは一体どういうことだ? 巌窟王に何があった?」

真宮寺「これは……見ようによっては美しい光景、だけど……」

赤松「……声が……巌窟王さんの叫び声が、なんか……」

東条「苦しんでるみたいね。まるで」

最原「みんな!」

夢野「んあー……んあっ!? あそこに白銀と天海がおるではないか! まずいぞ! 本当に!」

夢野「よーし! ウチが二人をあの場から引きずって避難させてくる! ちょっと待っておれい!」



ブワッ


ボッ



夢野「ああっちいいいいいいい! あちゃちゃちゃちゃちゃ!」ジタバタ

最原「帽子が発火したーーーッ!?」ガビーンッ

百田「火花だ! 黒い火花が飛び散ってやがる! 迂闊に近づいたら引火するぞ!」

春川「……これ……二人は詰んでない? 地面に伏せてれば火花は大丈夫そうだけど……」

春川「匍匐前進で移動しようとしたら、素人の二人じゃ結構時間がかかるよ」

春川「加えてこの熱風。逃げ切る前に力尽きる可能性が高い」

最原「くそ……考えろ! 考えろ! 何か……何か手があるはずだ! 何か!」

アンジー「……」タッタッタッタッ

最原「……」







全員「ん?」キョトン

アンジー「熱い」バキィッ

巌窟王「ぐはっ」

全員(グーパンしたーーーッ!?)ガビーンッ

茶柱「アンジーさーーーんっ! 引き返してくださーい! 蒸し殺しにされますよーーーッ!」

百田「ていうかアイツはなんで普通に徒歩で近づけてんだよ! 火花はどうした!?」

春川「……気のせいかな。アイツの周りだけ火花が避けて通った、ような……?」

最原(多分気のせいじゃない!)ガーンッ

巌窟王「……」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

アンジー「やめて」

赤松「うわああああああああああ! 明らかに暴走状態の巌窟王さんに凄い対応してるーーーッ!」

真宮寺「いくら彼女でも、今回ばかりは無理……!」







巌窟王「アンジーに殴られた……」ガクリッ

春川「あ。膝折った」

星「熱気が消えたな」

東条「解決ね」

最原「終了ーーーッ!」ガビーンッ!

百田「おし! さっさと近づくぞ! 東条!」

東条「任せて! 全力で処置を開始するわ!」

入間「例の処置はやるなよ。マジで。頼むから」

東条「善処するわ!」ダッ

最原「……」

最原「あ。茶柱さんも来てたんだ」

茶柱「お、遅い……!」









アンジー「言ったよね。アンジーは湿気と熱気が嫌いなんだよー? 絵具とか種類によっては溶けちゃうから」

巌窟王「熱気に関しては聞いたことがな――」

アンジー「え?」

巌窟王「いやだから熱気に関しては言ってな――」

アンジー「え?」

巌窟王「……」

巌窟王「いっ――」

アンジー「え?」

巌窟王「……ってたかもしれないな。ふむ」

百田「天海! 白銀! 大丈夫か!」

東条「これは……どっちもかなり危ないわ。火傷が酷すぎる……! それ以外にも骨がところどころ折れてるわ」

星「治療は? 間に合うか?」

東条「この学園の設備ではとても間に合わない!」

入間「例のあの処置は!? もう死ぬよりはマシだろ!」

東条「それも含めても、助かるかどうか……!」

百田「……!」

百田「おい! 『巌窟王』!」

巌窟王「!」

百田「テメェどういう了見だ! ああ!? なんでこんなことをした!? 答えによっちゃぶん殴るぞ!」

巌窟王「喚くな。元より殺すのは白銀のみのはずだった。それを天海が『何故か』邪魔をしただけのこと」

巌窟王「身の程を弁えて俺の前に出なければこんなことにはなっていなかっただろう」

百田「」ブチッ



ブンッ



巌窟王「ふん」ガシッ

最原(パンチを軽く防がれた……! いや、今百田くん、巌窟王さんのことを呼んだ?)

百田「その言い草……本っ当に一々イラつくヤツだぜ! 普段ならテメェの味として流すが、今回ばかりは許しちゃおけねぇ!」

春川「……今回? 前回があったってこと?」

百田「ん……?」

百田「……??????」

最原(全部思い出した……ってわけじゃなさそうだな)

東条「もうこうなったらモノクマに頼るしか……獄原くん!」

入間「!」ビクッ

東条「……」

東条「ん?」

夢野「ゴン太はエグイサルに追われてたじゃろ。ここにいるはずがないのではないか?」

星「待て。何かおかしいぞ。ならなんで入間がここにいる?」

入間「……」ダラダラダラダラ

春川「凄い汗」

星「……入間?」ゴゴゴゴゴゴゴ

百田「後にしろ! とにかく今は応急処置でもなんでも……!」

巌窟王「……アンジー。魔力を回せ」

百田「お?」

アンジー「わかったー!」

百田「……何する気だ?」

巌窟王「最初からする気だったことをするだけだ。宝具、真名解放――」







巌窟王「待て、然して希望せよ(アトンドリ・エスペリエ)」

ポオウッ

最原「……!?」

百田「な……んだこりゃ。傷が塞がって……」

入間「おお! おおーーー! なんだこりゃ! なんだこりゃ! マジか!」

入間「巌窟王! テメェ『回復宝具』なんか持ってたんだな!?」

最原(そ、そういえば疑似学級裁判のときにアンジーさんに使おうとしていたような……?)

東条「……何故今まで使おうとしなかったの?」

巌窟王「アンジーと俺の両方の状態が万全でなければ使えないからな」

巌窟王「必然、アンジーの治療には使えない。治療が必要な状態ならアンジーは『万全』ではないのだから」

最原「……ともかくこれで天海くんは助かる、か……よかった」ホッ

百田「ああ! この調子なら白銀も治療できんだろ! テメエも気が利くようになったじゃねぇか!」ケラケラ

巌窟王「……」ニガニガ

百田「……なんだその顔」

巌窟王「白銀を救う気などさらさらないが」

百田「まあテメェならそう言うと思ったぜ。なんでかまったく知らねーけど。ていうか本当にテメェは誰だ。まったく知らないのに親しみだけはあるぜ」

最原(記憶の改竄のせいで言ってることが滅茶苦茶だ)ズーン

百田「おいアンジー! テメェからの指示ならコイツも従うだろ! 言ってやれって!」

アンジー「……」ニガニガ

百田「!?」ガビーンッ

最原「ま、まあそうだよね。アンジーさんも嫌がるよね、それは……」

最原「と……いうか」

最原(……空気が全体的に消極的だ。白銀さんを助けたくないって態度で言ってる)

最原(このまま死ぬのなら別にそれでいいんじゃないか、みたいな)

夢野「巌窟王! 何をワガママ言っておる! 白銀のこともキチンと治療せい!」

夢野「……っていうか白銀の方が全体的に傷が酷いぞ! 何があったんじゃコイツ! 目! 目!」アタフタ

巌窟王「……」ジーッ

夢野「……んあ? なんじゃ? ウチのことじっと見つめおって。や、やるか? やるのか?」ビクビク

巌窟王「……」ナデナデナデナデナデ

夢野「何故撫でる?」

最原「あ、ああ……うん。夢野さん。そのまま撫でられておいて。天海くんの治療はもう片手間でもできるっぽいから」

夢野「んあー?」

赤松「ごめん夢野さん。現実に残ってる人たちと再会したとき、軒並み感動したけどさ」

赤松「夢野さんだけは特別だから」グスン

夢野「何故涙ぐむ?」

最原(本当に酷い死に方してたからなぁ。あっちでは)

最原「……」

最原(どうしよう。白銀さんの処遇。助けた方がいいのかな……)

最原(このまま死なせるのは……なんか納得がいかない。本当にその程度の忌避感でしかないけど……)

百田「もう一回言うぜ……白銀のことも治療しろ。巌窟王」

巌窟王「断る、と言ったら?」

百田「テメェ。そんなこと言うんならなぁ……俺だってなー……!」

百田「……」

百田「許さねーーーッ!」ズガァァァンッ

春川「何も思いつかないってさ」

最原「もうちょっと頑張ろうよ百田くん! もっとあるでしょ! アンジーさんを人質に取って交渉するとかさ!」

アンジー「!?」ガビーンッ

春川「ペンチはあるよ。足の爪から剥がしていこうか?」スッ

最原「あ、ごめん。そこまでエグいことは考えてなかった。せいぜい吐くほどくすぐる程度が限界かなって……」

赤松「それはそれでエグいから!」

百田「……仲間なんだぞ……助けろよ……!」

百田「俺は白銀がここで死ぬ様なんざ見たくねぇ!」

夢野「巌窟王……!」

巌窟王「……」

最原「……巌窟王さん」

最原(もう、いいか。こっちの方が明らかにデメリットが少ない)

最原(何よりも……仲間だったときの顔が一瞬、頭にチラついた)








最原「殺すだけならいつでもできるでしょ?」

巌窟王「貴様……」

最原「……そう考えてさ。納得してくれないかな」

巌窟王「……そこまで言うのなら聖杯を使って強制してみろ」

最原「絶対に抵抗するよね。少なくとも白銀さんがこのまま死ぬまで」

最原「だから今すぐに巌窟王さんには、自分の意思でかつ納得ずくで頷いてもらいたいんだ」

巌窟王「クハ、クハハハハハハハハ!」

巌窟王「貴様の舌の回転率には今まで何回も驚かされたが、今回は随分と出来の悪い理論だ!」

最原(だよなぁ。何か他に判断材料がないといまいち説得しきれないかも……)

最原「あれ。そういえば」

巌窟王「クハ?」

最原「話は戻るけど、そもそもどうして天海くんが白銀さんと一緒に燃やされてたんだろう?」

巌窟王「」

巌窟王「」

巌窟王「……そ……それは……」ダラダラダラ

最原「……」

最原(一か八かになるけど、やる価値は充分にある、か?)

最原「巌窟王さん。わかった。やっぱり白銀さんの治療はしなくていい」








最原「ただし、僕が白銀さんの体を調べるのだけは絶対に邪魔させない!」ギンッ

巌窟王「!!!!!!!!」ギクウッ

巌窟王「……」アタフタ

巌窟王「……」

巌窟王「……クハハハハハハ! それがどうした!? やりたいのなら好きにすればいい!」

アンジー「平静を取り繕うのに時間かかりすぎだよー。なにか調べられたら困ることがあるのがバレバレのバレだー」

巌窟王「アンジー!」

百田「……なに慌ててんだ? 白銀の体になにかあんのかよ」

最原「それを調べるためにも、白銀さんの怪我を調べてみようか。みんなで」

夢野「右腕の負傷が酷いのう」

百田「うわ。なんだこりゃ。ひっでーな」

春川「脱臼。骨折のオンパレード。特に指なんかは一本一本丁寧に折られてるって感じだよ」

最原「誰かに拷問されたのかな……あれ。そういえば白銀さんの制服、前面の部分が泥で汚れまくってるけど……」

春川「……右腕を後ろ手に捻り上げた後で、地面に押さえつけて拷問したから、だと思う。そう考えるとしっくり来るな」

夢野「一体誰がこんな酷いことを……!」

巌窟王「……」アタフタ

アンジー「……」

アンジー「治療しよ? 知られたくないことがあるのは態度を見ればわかるしさー」

巌窟王「ぐ、ぬ、が……!」

巌窟王「……可愛げのない生徒どもめ」フウ

春川「……?」

春川(なにこれ。折れた方の指が……『ありえないこと』になってる?)

春川(あ、いや。順番に考えればいいのか。ええと……)



ポオウッ


春川「あ」

巌窟王「治療するから、そこから離れろ」

最原「……ごめん。巌窟王さん」

巌窟王「まさかアヴェンジャーたる俺を脅すようなマネをするとは……」

アンジー「ような? ううん、実際に脅したんだよね?」

最原(あともうちょっと調べられれば何かわかったかもしれないんだけど……)

最原「……白銀さんに拷問の痕があった、くらいしかわからなかったな」

百田「充分だっつの。ひとまず巌窟王が保身のためとは言え、治療をする気になってマジでよかったぜ」

夢野「しかし許せんのう! 一体誰がこんなに白銀をボコボコにしたんじゃ! 見つけたら絶対に許さんぞ!」

茶柱「……」ギク

夢野「……ハッ! 転子!」ビクッ

茶柱&夢野「……」

茶柱(白銀さんを拷問したわけじゃありませんが、ある程度の傷は転子のせい……だとはとても言えないですよね。治してくれてよかった……)

夢野(思いっきり心配させてしまった。どう謝ろうかまったく思いつかん。どうしよう)

茶柱&夢野「……」アセッ

最原(なにか重大なすれ違いが起こっている気がする)

春川「……」キョロキョロ

百田「ハルマキ? 何探してんだよ」

春川「大したものじゃないんだけど……引っかき傷と血痕の残った『何か』」

最原「え?」

春川「……気になるのなら最原も探してみなよ。多分、どこかにはある」

最原「……」

百田「いや。もういいだろ。そういうの」

最原「え」

百田「俺たち全員、生きてるんだからよ! これ以上の結果なんか求めようがあるか?」

百田「まあ、キーボに関しては後で白銀にどうにかしてもらうのは確定だけどよ。早くあそこから出してやろうぜ」

最原「……」

最原(これで終わり……)

最原(本当に?)

巌窟王「まだだ。モノクマの姿を見るまでは安心することはできない」

百田「お」

東条「そう。それよ。確かモノクマは獄原くんが連行していたはずよね」

東条「その獄原くんとは入間さんが同行していた」

夢野「……その入間がなんでここにおるんじゃ?」

入間「……えーと……それは……そのう……」ダラダラダラダラ

星「言っておくが……余計な言い訳はするなよ」

入間「させろよ! ちょっとくらい!」ガビーンッ

入間「わーったよ。言い訳しなきゃいいんだな。言い訳しなきゃ……」

入間「……」








入間「巨乳男爵」

春川「確かに言い訳はしてないね。言い訳は」

百田「おいコイツ受け答えそのものを放棄しやがったぞ!」ガビーンッ

入間「世界ヌーブラ条約!」シャキーンッ

東条「全員でリンチすれば多少は知能が戻るかしら」

入間「ひい! 銀河大射精!」ガタガタ

夢野「全力じゃあ! 全力で受け答えを拒否っておるぞコイツ!」ガーンッ

最原「ちゃんと喋って」キィィィィンッ

入間「ぎゃああああああああ! テメェェェェェェ!」ビリィッ

赤松(躊躇なく使うようになっちゃったなぁ。聖杯)

ザンキゼロが物凄く面白いな……!
モノクマも出て来るし! ていうか本当に無意味にモノクマが出て来る! 無意味に!

あ、ザンキゼロやってて微妙に更新遅れてます

入間「さて……どっから話せばいいやら」

星「……」スッ

入間「無言で鉄球とテニスラケットを構えるんじゃねえよ、漏らすぞコラ」

赤松「星くん。この人漏らすって言ったら本当に漏らすからしまって。誰も得しないから」

茶柱「入間さんです……そしてこのノリは完全にいつも通りの才囚学園生徒一同です……」

最原「うん。やっぱり懐かしい?」

茶柱「こうしていられた時間は相当短いはずなんですけどね。転子の記憶では」

茶柱「あと変な男死もいますし」

巌窟王「……?」キョロキョロ

アンジー「……」オマエオマエ

巌窟王「!?」オレカ!

茶柱「なんかアンジーさんとアイコンタクトだけで話しててめっちゃ不快なんですけど」

入間「……お取込み中なら俺様気を使って帰るけど……」

星「……」スッ

入間「漏らすっつってんだろが! わかってるよ!」

入間「端的に言っちまおうか。巌窟王が戦ってる無尽のエグイサル、動きからして誰かが遠隔で操ってるのは間違いがなかった」

入間「だがモノクマはとっくのとうに押さえたし、なによりモノクマにはエグイサルに対して大雑把な指示しかできねーはずなんだ」

入間「さっきまでエグイサルをモノクマが動かせていたのは、正確にはエグイサルではなくモノクマーズの方を動かしてたからだろうな」

入間「……今となっちゃ確かめる術がないけど。ほぼ間違いがねーと思う」

最原(あってる)

百田(あってんなぁ)

入間「で。遠隔でエグイサルを操作する方法が一つだけあったのを思い出した」

入間「というか、俺様が作ったんだけどな……」

最原「え」

入間「前の学級裁判、確かダサイ原。テメェ俺様の研究教室に無断で入り込んでたよな?」

入間「イリスアゲート・エレクトボムに関しての情報をかっさらってたし」

最原「……!」

最原(まさか。あの研究教室の中に、鍵があるのか?)

最原(忘却補正があるけど、それは忘れないだけで、記憶を思い出すという手間がかかる)

最原(……ちょっと探ってみようか。自分の記憶を)

百田「終一? 急に黙ってどうした?」

最原「……思い出してただけ。そうだ。チラッと見ただけだけど、覚えてるよ!」

最原「でも現物は見てなかったから完成はしてないものだと……!」

入間「してねーよ。設計図だけだ。でも材料は全部揃えてあったし、バカ松からの怪我を直したらすぐにとりかかろうと思ってた」

茶柱「……なんの話です?」

入間「エグイサルの遠隔操縦技術。作ったのはなんとビックリ! 俺様でした!」ヒャッハー!



バカスカドカドカッ バキィッ!

ギャー!




GET NEW SIGABANE!!


才囚学園の生徒にリンチされて死亡(?)

入間「……ハッ! い、一回死んだ気がする……」

最原「何言ってるの? 一回死んだら生き返れないでしょ」

星「先にトイレに行かせておくべきだったな……今回は大丈夫だが今度こそ漏らすかもしれん」ギロリ

入間「うおーーー! 仲間に向かってなんて仕打ちだ! 俺様下を濡らす前に顔が濡れるぞ! 涙で!」

百田「ノリでボコっちまったけど、まあ確かに軽率に殴るべきじゃなかったな。悪ィ悪ィ」

春川(態度が軽い)

入間「おお! わかりゃいいんだよ宇宙バカ!」ヒャハッ

春川(頭が軽い)

入間「で。話はエグイサルに俺様たちが襲われたあたりに戻ってくるか……」

入間「実は巌窟王が脇目もふらずに、エグイサルを放置してどっか行くのを俺様たちは校舎の影から目撃してたんだよな」

最原「……」チラッ

東条「事実よ。そのころは私、星くん、獄原くん、天海くん、夢野さん、入間さんで揃っていたから、その証言の証拠になるわね」

最原(僕たちが白銀さんを探していたあたりかな)

入間「……その直前あたりから、エグイサルの動きが妙だった。まるで操縦者が変わったみたいな……」

入間「まあともかく、問題はそこからだな」

星「巌窟王に放置されたエグイサルが、突如として俺たちの方へと突っ込んできやがった。無造作にな」

星「あまりにも不自然な挙動だが、これが事実だ」

夢野「結果、ウチらは全員散り散りに散開せざるを得なくなり……」

夢野「入間とゴン太の方をエグイサルは追尾し始めたんじゃ」

夢野「ちなみに、その前にウチらは協力してモノクマを追い詰めておったんじゃぞ。拘束してゴン太に連行させておったんじゃ」

最原「改めて聞くと凄い戦果だよね」

東条「……この後の話の展開によっては怖い話になるわ」

入間「気付いたのは結構後だったな」

入間「ゴン太と一緒にエグイサルから逃げまくっていたときだよ。『あ、これ俺様の発明品で動かされてんな』ってピンと来たんだ」

入間「具体的に誰が! どこで! とまではわからない。エグイサル本体を詳しく見ない限りは逆探知も不可能だしよ」

入間「だが俺様の発明品を使われているとわかったら儲けものだ。あとは俺様の発明品でもなお不可能なものを思い出せばいい」

最原「つまり?」

入間「あのエグイサルは初心者向けに俺様が付けた『半自動操縦モード』になっていた、となんとなく挙動から察することができた」

入間「なんも知らないヤツが動かせば、コントローラーから手を離したにも関わらずエグイサルが勝手に動いていて」

入間「止めようともがいても頭で思うような操縦ができない、みたいな食い違いが発生しちまう」

春川「ああ。それであんなトンチンカンな挙動になってたんだ」

百田「……あれ。でも最初のときは確かに動きはガタガタだったけど、巌窟王のことをキチンと攻撃していたような気がするぜ」

入間「詳細は不明。白銀は御覧のあり様だしよ。後で訊いてみりゃいいんじゃねぇか? それこそ聖杯で」

最原「あまりそれは……やりたくないな」

東条「……で。結局あなたはどうしたの? 自分の発明品が使われていると閃いたからって、どうして逃げ切ることができたの?」

入間「……」

真宮寺「最原くん」

最原「口を閉じないで」キィィィィンッ

入間「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!」ビリビリ

最原(……ん? 聖杯の効力が弱まってるような……)

ほわんほわんほわんぬちょぬちょー


回想(という名の入間の妄想)




獄原「くっそーウホ! どれだけ逃げてもエグイサルに追いつかれてしまうウホ!」

獄原「ああ! やはり入間様の足元にも及ばないお粗末脳味噌のゴン太には、入間様を守ることなど到底できないミッションだったんだウホ!」

入間(そこで賢い入間様は、ゴン太に対してこう言ったのでした。『ひとまずここは二手に別れよう。追われた方は囮を担当するのだ』と)

入間(最初は渋っていたギリギリ人類ゴン太くん)

入間(しかし続く『追われなかった方は巌窟王か仲間を連れてきてエグイサルを協力して撃退する』というマーベラスな提案を聞くと……)

獄原「わかったウホ!」

入間(と即答。頭は残念ですが素直なのは美徳ですね)

入間(そしてゴン太くんは入間様の『せーの』の掛け声で、振り向かずにダッシュ!)

入間(え? 入間さまはどうしたかって? それは……)

入間(そう。なんと賢い賢い入間様は、じっとその場を動かずに息を潜めていたのです)

入間(半自動操縦モードだと、基本的にエグイサルは『動くもの』を追尾するようにできているのです)

入間(じっとしている入間様はなんとかエグイサルを愚かな愚かなゴン太くんに擦り付けることに成功し――)





現実

入間「こうして生き延びることができたのでした! はいお終い!」ヒャッハー!



バカスカドカドカッ バキィッ!

ギャー!




GET NEW SIGABANE!!


才囚学園の生徒にリンチされて死亡(?)

入間「……ハッ! また死んだ気がする!」

赤松「最低だよ! この学園生活始まって以来の最低さ加減だよ入間さん!」

春川「仲間意識の欠片もない……」

入間「ま、待て。俺様はさっきも言ったように巌窟王とかテメェらを引き連れて体勢を立て直すためになぁ……」アタフタ

百田「その割には『ゴン太を見捨てたこと』を隠そうとしてたよなぁ?」バキンッ ゴキンッ

真宮寺「……獄原くんにエグイサルを押し付けるための口から出まかせだった、だろうからネ。それを実行しようとする意識が薄かったんだヨ」コキコキ

入間「首を鳴らすな! 威嚇か!? 威嚇のつもりかそれは!?」

入間「大丈夫だっつの! 半自動操縦状態じゃあ大した攻撃はできないし……!」

最原「それは本当だよね? 流石に」

入間「あ、ああ。もちろん。操縦者が変にコントローラーを弄らない限りは大丈夫だ」

入間「……なんならコントローラーを今から探すか? 電源を切るかスイッチを操作すればエグイサルは止まるぜ?」

最原「はあ。じゃあ、そうしようか。白銀さんがダウンしている今、コントローラーの詳しい位置がわからないけど……」

赤松「手分けすれば大丈夫、だよ! きっと見つけられるって!」

百田「おっしゃあ! じゃあさっさとコントローラーを探して仕上げと行くぜ!」

王馬「おー!」カチャカチャ

百田「……」

最原「……」

春川「……?」

赤松「あ、あれ。王馬くん、いつからそこに」

王馬「あ、ごめんごめん。ちょっと探し物してて遅れちゃった」カチャカチャ

東条「……あなた、それ、手で弄ってる箱は……まさか……」






ドガシャアアアアアンッ ガシャンガシャンガシャンガシャンッ……




王馬「お! 動いた動いた! いやー! やっぱ時代はマニュアル運転だよねー!」ケラケラ

百田「……今、校舎を突き破って出たのってエグイサルだよな……?」

最原「中庭に向かって走って行ったね。全力で」

赤松「え? 中庭?」





ズズウンッ……



夢野「……何かにぶつかったような音が、した、ような……」

真宮寺「中庭には何があったんだっけ?」

茶柱「キーボさんが中に入ってるっていう謎オブジェクトくらいしかなかったですけど……」

全員「……」






全員(ま    さ     か)

王馬「あれー。俺ってばゴン太を助けたいあまり、エグイサルの操作をうっかりミスってしまったようだなー」

王馬「くそっ! 無事でいてくれよキー坊!」

最原(わざとらしい!)ガーンッ

赤松「き、キーボくーーーんっ!」ダッ

百田「終一! 俺たちも……!」

最原「いや。僕は巌窟王さんを見張らないと。目を離した隙に白銀さんを事故に見せかけて殺されたりしたら堪らない」

巌窟王「クハハ! 信用がないな」

アンジー「念には念を、だと思うよー。終一だって誰彼疑いたいわけじゃないんだしさー」

巌窟王「フン。庇っているのか?」

アンジー「そだよー」

巌窟王「……」

最原「二の句が継げなくなるくらいならからかわなきゃいいのに!」

茶柱「本っ当にいいコンビですよ、この二人は……」ハァ

茶柱「……おや? 転子は今、なんて言いました?」

最原(……意外にみんな記憶の復元にてこずってるみたいだな)

最原(天海くんと僕は例外中の例外だったわけか……)

百田「じゃ、終一! 俺は入間を引きずってキーボのところに向かうぜ!」

春川「キーボが故障なんかしてたらコイツ以外に直せるアテがないもんね」

百田「行くぜ!」ダッ

入間「行くぜーーーッ!」ダッ

春川「……」ダッ

百田「あれ? ハルマキは別に来なくてもいいんじゃ……?」

春川「……」ベシッベシッ

百田「痛ぇ痛ぇ」

最原(めっちゃ叩かれてる……)

巌窟王(……気のせいか? 百田の背後に女神が見えたような……?)

最原「……なんか……みんなの顔が見れるのは凄く嬉しいことのはずなんだけど」

茶柱「人が増える度に面倒ごとが倍々ゲーム状に増えて行きますね」

最原「ものすごく疲れる……」

茶柱「……あー……うー……そのー……」モジモジ

茶柱(ハグします?)

茶柱「……」

茶柱「言えるわけないでしょうッ!」ゲシィッ

最原「何が!?」ゲフアッ!?

巌窟王「……ふむ。やっとのこと、生徒たちに余裕が戻ってきたか」

アンジー「キーボの安否の確認。モノクマの所在の確認。やることまだまだ残ってるけどさー……」

アンジー「モノクマーズは全員いなくなったし、やっと一息付けるねー」

巌窟王「……よし。白銀の治療も終わったぞ」

アンジー「ん?」

アンジー(……妙に魔力の消費量が少ないような……?)

最原「……うん。よかった。二人とも無事だね。いつ意識が戻るかな」

巌窟王「ゆっくり寝かせておくがいい。今日は色々とありすぎた」

巌窟王「……少しくらい休息をとってもいいだろう」

最原「……うん。そうだね」

真宮寺「休む、か……いいかもネ。それ」

星「ああ。今日はあまりにも密度が濃すぎたからな」

星「……よし。部屋の鍵はキチンと服の中にあるな。いつも通りだ」スタスタ

巌窟王「どこに行く?」

星「部屋で寝る」

真宮寺「僕も便乗させてもらうヨ」スタスタ

東条「……」

巌窟王「……貴様にできることも、もうないだろう。東条」

東条「そうね。忌々しいけど、その通りよ」

最原(忌々しいの?)

東条「……でもしばらく様子を見させてちょうだい。赤松さんたちが帰ってくるまでは」

巌窟王「好きにしろ。俺たちはこの二人を病院に運ぶ」

巌窟王「天海は完璧に治したとは言え、心理面での傷はどうにもならないのでな」

王馬「あれ? 白銀ちゃんの方は?」

巌窟王「……」

最原「……え。なんで黙るの?」

巌窟王「……治した。最原、貴様の狙い通りな」ギロリ

最原「う、うん。ありがとう。あと怖いから睨むのやめて」

巌窟王「……アンジー。白銀のことを運べるか?」

アンジー「もっちもちー。任せてよー……重っ。引きずっていい?」

巌窟王「許可する」

最原「ダメに決まってるでしょ」

夢野「仕方がないのう。ジャガーマンの加護を使って、ウチが白銀を運ぶとしようかの」

茶柱「どちらにせよ夢野さんの体格じゃ引きずることに変わりないのでは……」

夢野「じゃあゴン太に運ばせるか。エグイサルから解放されて、今頃フリーになっておるはずじゃし」

夢野「……そういえばゴン太、今どこにいるんじゃろうな?」

最原「もう終息したとは言っても、これだけ騒いだわけだし。どこかで気が付いてこっちに向かって来そうなものだけど……」

獄原「みんなー!」ドタドタ

夢野「おお! 噂をすればハゲじゃな!」

最原「惜しい。影だよ」

巌窟王「クハハ! 獄原、来たか! もうすべてが終わった後にノコノコと!」

獄原「あ、うん。ごめん。でも今はそれどころじゃなくって!」

東条「……?」

東条「獄原くん? モノクマは?」

獄原「壊れた!」

夢野「そうかー。壊れおったかー。そりゃ大変じゃったのー」

夢野「は?」









獄原「エグイサルに踏みつぶされて、粉々になっちゃった!」

茶柱「……」

最原「……」

巌窟王「……」

アンジー「……」

全員「マジで!?」ガビーンッ!

ザンキゼロとか水着イベで忙しい。頼光公の水着を堪能したくてガチャったら水着オルタ嬢が来た。育成大変




ザンキゼロのファイナルダンジョン、大分キツイぞ! 続きは明日!

ザンキゼロ、クリア……!
素晴らしいゲームだった。ところでクリア特典はどこかな。多分あると思うんだけど……

校舎内

最原(白銀さんと天海くんのことを、茶柱さんと夢野さんに任せた僕たちは、エグイサルの開けた穴から校舎の中に入った)

最原(そこで目に入ったのは……)

モノクマ「」ボロッ

最原「……本当に壊れてる」

東条「何があったの?」

獄原「何があったかって訊かれると色々とあるんだけど……」

獄原「……端的に言えばモノクマが自殺したってところかな」

巌窟王「自殺だと?」

獄原「エグイサルから逃げている途中、モノクマがもがいてゴン太の脇からすり抜けたんだ」

獄原「縛ってたから本当に、もがく以上のことはできないはずだったんだけど……」

アンジー「あー。もがいてもがいてもがいて……エグイサルの方に意図的に転がっていったんだねー」

獄原「うん。本当にびっくりしちゃったよ」

東条「でもなんでこんな無駄なことを……」

最原「……」

最原(自分で自分の口を封じた?)

最原(……いや。もっと別の何かがある気がする)

巌窟王「ふん。だが第一の学級裁判のときを思い出してみるがいい」

巌窟王「ヤツには増殖機能があるという話ではなかったのか?」

最原「ああ。モノクマを生産するために、黒幕がモノクマカラーの隠し扉に向かうはず、って話題のときに出たね」

最原「……」

最原「……ッ!」ゾクッ

最原(……白銀さんを生かしといて正解だったかも、しれない!)

モノクマルール『三つ、モノクマはコロシアイによらず生徒を外に出す手続きを行うことができる。これを最後の学級裁判と呼ぶ』

モノクマルール『四つ、モノクマは生徒の求めに応じて最後の学級裁判を開催できる』

モノクマルール『五つ、モノクマの校則違反の証拠を糾弾する証拠があると生徒が判断した場合、モノクマは最後の学級裁判の開催を拒否できない』

モノクマルール『六つ、以上五つのルールをもってモノクマと生徒の公平さを保つ絶対不変のルールとする』





最原(そうだ。万が一、この学園からモノクマが消えたら最後の学級裁判を開催できなくなる!)

最原(実際にそうなってるじゃないか!)

最原(でも白銀さんが……白銀さんが生きている限りはまだ希望は潰えていない)

最原(……彼女を殺すわけにはいかなくなったな)

巌窟王「どうせすぐにモノクマは出て来る。スペアの体など、ロボットにありがちな設定だろう」

巌窟王「さて。明日になったら全員、脱出の準備を整えろ」

最原「え?」

巌窟王「俺の召喚したときのことを思い出せ。あのとき外に出れなかったのは、何故だ?」

最原「何故ってそれは当然――」

最原「あ!」






巌窟王『しかしそれならば話は更に簡単になったな。アンジー。不幸だと言ったことを素直に訂正させてもらおう』

巌窟王『巌窟王は脱獄の英霊だ。この程度の牢獄を破壊することなど造作もない』

百田『マジか!』

巌窟王『さあ! 魔力を回せアンジー! 我が宝具でお前を縛ることごとくを破壊してみせよう!』

アンジー『うん!』

アンジー『……』

アンジー『魔力を回すってどうやるのー? ジャグリング?』

巌窟王『……』

巌窟王『計画は頓挫したな!』ギンッ

赤松『早ァッ!?』ガビーンッ!





東条「うっかりしていたわ……今までが今までだったから!」

東条「巌窟王さんはもう、万全よ! いつでも脱出できるわ!」

最原「あーーー!?」ガビーンッ

最原(そうだ! ついさっきも真宮寺くんがそう言っていたじゃないか!)

最原(もう僕たちは実質、閉じ込められていない!)

最原(……でも)

最原(外に出たところで、何があるんだろう?)

巌窟王「さあ! 仕上げだ! アンジー、魔力を回せ!」

巌窟王「この学園を……コロシアイを! 終わらせてやるッ!」

アンジー「眠いからやだ」ウトウト

巌窟王「明日にしよう!」ギンッ

最原「この期に及んでアンジーさんに甘すぎる!」ガビーンッ

巌窟王「……真面目な話だが、確かに今日は宝具を連発しすぎた。休息は必須だ」

アンジー「うー」ネムネム

巌窟王「部屋まで送る。背に乗れ」

アンジー「あうー」ヨイショ

巌窟王「……」

巌窟王「……白銀の処遇は、お前たちで考えろ」

最原「うん。わかってる」

巌窟王「後悔するなよ」

最原「……わかってるって言ってるじゃないか」

巌窟王「クハ……ではな」スタスタ

最原「……」

最原(考えないとな。外に出て、何をすればいいのか)








中庭

百田「……」

春川「……なにこれ」

入間「おい。キーボはこの中にいたはずだよな?」

百田「……」






百田「いねぇぞ。からっぽだ」

寄宿舎

巌窟王「……」

部屋「」ボロッ

巌窟王(しまった。そういえばモノタロウを蹴り飛ばしたときに、爆発で一つ部屋が粉々になったような気がしたが……)

巌窟王(まさかアンジーの私室だったとは)

アンジー「むにゃ……」スヤァ

巌窟王「学級日誌を回収してから病院に移動するか……」キョロキョロ

巌窟王「……ム。ないな。妙だ。いくら荷物が散乱しているとは言え、そう簡単に消えるものか?」

巌窟王「まさか」

アンジー「ううん……」スヤァ

巌窟王「……明日にするか。病院に行くぞアンジー」

アンジー「えへ……」スヤァ

巌窟王(茶柱と鉢合わせしなければいいが)






病院

茶柱「がるるるるるるるるるる!」

巌窟王(遭遇してしまった)




アンジーをどうする気なのかと詰問され、そのまま一時間ほど不毛な問答をした

最原「ご、ごめんゴン太くん……運んでもらっちゃって……」

獄原「うん。大丈夫。全然軽いから。それにしても最原くん、どうしてこんな酷い怪我してるの?」

最原「ゴン太くんたちがあの世界で消えた後、白銀さんにちょっと……」

超獄原ゴン太「ゴン太は怒ったぞーーーッ! 白銀さーーーんッ!」ドシュウウウウウウッ!

最原「ぐあああああああ熱いーーーッ! オーラが熱いいいいいいい!」ギャアアアアア!

獄原「あ。ごめん最原くん」フッ

最原「う、うん。いいんだよ。次からは僕が背中にいることを忘れないでね」

最原(ノリで言っちゃったけどオーラってなんだ……?)

東条「……まともな治療……はしてないわよね。当然。こっちに残っていた人の中で『治療』に関する技能を持った人は少なかったでしょうし」

最原「大体春川さんがやってたかな……」

東条「そう。余裕があったらさっきの天海くんや白銀さんのように、巌窟王さんに直してもらって……」

東条「……」

東条「どうするの? 白銀さんの処遇は?」

最原「何をどうするにしてもこれだけは絶対に言えるよ。まだ白銀さんには生きててもらわないと」

東条「そう」

東条「……正直に言うわね」

最原「?」

東条「怖いわ。物凄く」

最原「!」

東条「……死んでも許さない、なんて言葉にすると安っぽいけれども」

東条「少なくとも私は、白銀さんのことがとても怖いわ」

最原「……」

東条「……メイド失格ね。私情を吐露するなんて。忘れてちょうだい」

最原「うん」

最原(忘れられないんだけどなぁ)

最原「……そういえば王馬くんはどこに行ったんだろう」

東条「さあ。巌窟王さんの視界に入らないよう警戒してたことは覚えてるけど」

獄原「忍び足でどこかに消えていくのは見たけど……」

最原(まあ巌窟王さんあんなこと言ってたし、嘘吐いた時点で王馬くんもそこら辺予測してそうなものだしなぁ)

最原(……なんとなくわかってきた。百田くんはデバイスを見たときに『外への助け』を期待しなかった。最初から『無理』だと覚えてたからだ)

最原(多分、世界の外の法則に触れたときに限定して、その記憶だけは蘇るんだろう。エピソード記憶に関しては全滅かな……)

獄原「……みんなボロボロだね」

東条「私の傷に関しては、そろそろ活動に支障がなくなる程度には回復してるのだけど」

獄原「それでも痛いものは痛いでしょ?」

最原「……それももう少しで終わる。明日になれば白銀さんも起きるだろうし、巌窟王さんもこの学園を破壊できる」

最原「破壊した後で何が起こるかは未知数だけど……!」

東条「それでもここでコロシアイを続けるよりは遥かにマシよ」

東条「……不安?」

最原「うん」

獄原「ゴン太も同じだよ。外の世界がどうなっているのかを想像するだけで、震えが止まらないんだ……!」

最原(……外の世界は、そもそもこのコロシアイを作った連中がいる)

最原(エンターテイメントとして消費していたということは、少なくとも相当の権力がある組織だろう)

最原(どの程度の影響力がある? これだけの大がかりなセットを作るのなら……楽しんでいるのは何百万人……いや何千万人って単位かな)

最原(じゃないと採算取れないし)

最原「……」







最原(何億単位……とかは考えたくないな)

東条「あら……?」

獄原「どうかしたの東条さん」

東条「藤棚のところに王馬くんが……」

獄原「あ。本当だ。何をしてるんだろう?」

最原「……」





春川『……』キョロキョロ

百田『ハルマキ? 何探してんだよ』

春川『大したものじゃないんだけど……引っかき傷と血痕の残った『何か』』

最原『え?』

春川『……気になるのなら最原も探してみなよ。多分、どこかにはある』





最原「……?」

最原(なんで今、こんなことを思い出して……)

最原「!」






赤松『あ、あれ。王馬くん、いつからそこに』

王馬『あ、ごめんごめん。ちょっと探し物してて遅れちゃった』カチャカチャ

東条『……あなた、それ、手で弄ってる箱は……まさか……』







最原(……王馬くんの持ってたエグイサルのコントローラー……)

最原(残ってた。春川さんの言っていた痕跡が)

最原(引っかき傷と血痕……? 違う! あれは! 血が混じった引っかき傷だ!)

最原(春川さんは何に気付いて、あんなことを言ったんだ?)

最原(……凄く背中がザワつく。今のうちに確認しておいた方がいいかもしれない)

最原「あの。ゴン太くん」

獄原「王馬くんに話しかけるんだね? わかった!」

東条「……なにかあったら困るから、私も同行するわ」

最原「ありがとう!」

王馬「!」

最原(あ。こっちに気付いた)

王馬「……!」ダッ

最原(あ。こっちに走ってきた)

王馬「死ねェェェェェェェェェ!」ギャランッ!

最原(あ。なんでか知らないけどナイフ持ってぎゃああああああああああ!?)ガビーンッ

獄原「めっ」メコーンッ

王馬「まそっぷ」メキョッ

東条「刃物で、遊んじゃ、ダメよ」ゲシッゲシッゲシッ

王馬「いだだだギブギブ。打撲で死んじゃう。蹴るのやめて」

最原(即座に制圧された!)ガーンッ!

東条「なんでナイフなんか……」

王馬「無事に帰ってきた最原ちゃんをドッキリでお迎えしようと思って」

最原「度が過ぎてるよ!」

獄原(しかもこれオモチャじゃなくて本当に刃が付いてるヤツだ……)

数分後

王馬「エグイサルのコントローラー? あんなのが欲しいの?」

最原「うん。できれば確認したいことがあって……」

王馬「まさかタダで、とは言わないよね?」ニヤァ

最原「それは……いや、待って。この学園で用意できる報酬なんて高が知れてるよね?」

王馬「だから取引は無意味だって? そんなことはないよ。最原ちゃんには最原ちゃんにできることがあるし」

最原「例えば?」

王馬「外に出た後で俺と一緒に世界征服!」キラキラキラ

最原「……」スゲーヤダ

東条(凄くイヤだって顔が言ってるわ……)

王馬「……」

王馬「満更でもなさそうだね!」ズギャァァァァァンッ!

最原「凄いイヤだって態度でわからない!?」ガビーンッ

王馬「まあ今までのやり取りは全部冗談だよ。どっちにしろ意味がないし」

最原「え? 意味がない?」

王馬「もう最原ちゃんの机の上に放置してきちゃったからさ。気になる特徴があったから、あのコントローラー」

最原「!」

王馬「じゃ、おやすみー」スタスタ

最原「……無意味に人を引っ掻き回す天才だなぁ……でも」

最原(ありがとう)

快男児が始まるまでに最後の学級裁判に突入できるか……レースと行こうぜ……!



もしも負けたら次の水着鯖ピックアップで石が全部溶けるまで回すというゲッシュを背負おう

寄宿舎 ホール

夢野「……」キョロキョロ

最原「あれ。夢野さん?」

夢野「お。最原か。東条にゴン太も。モノクマはどうじゃった?」

最原「ダメだった。粉々になってたよ」

夢野「……せっかく捕まえたのに。虚無リティが高いぞ」ズーン

夢野「まあよい。もう夜も遅いしのう。最原よ、お主に渡したいものがある」

最原「渡したいもの?」

夢野「ぱりらたったらー。モノクマでもわかる家庭料理レシピ百選」

最原「め、滅茶苦茶どうでもいい本だね。意図がまったくわからないんだけど」

夢野「図書室の隠し部屋で見つけた」

最原「あ、うん。そうなんだ」

最原「……」

最原「……夢野さん。今のうちに聞いておきたいんだけどさ」

夢野「なんじゃ?」

最原「図書室の本ってどんなふうに並べられてたっけ?」

夢野「……」

夢野「本のタイトルの五十音順じゃ」

東条「……どうしたの? 最原くん。顔が真っ青よ」

獄原「すぐに部屋で休んだ方がいいんじゃない……?」

最原「あ、えと。夢野さん。他になにか気になるものは……!」

東条「寝なさい」ギンッ

最原「はい」ガタガタ

最原(……なにか……繋がってきた気がする……!)

最原の自室

最原「……本当に机の上にある!」

最原(これがエグイサルのコントローラーか……パッと見だとどう動かせるのか全然想像が付かないけど)

最原(今、一番重要なのはそこじゃない)

最原「……春川さん。凄いよ。なんでわかったの」

最原(ある。間違いなく。強い引っかき傷と、血痕が)

最原(こんなふうにコントローラーに傷が付くのは、無理やりコントローラーを奪う誰かに対して全力で抵抗したときくらいだ)

最原(春川さんが白銀さんの負傷をチェックした直後にこれを予測したってことは……このコントローラーを最初に持っていたのは白銀さん!)

最原「でもおかしいな。焦げ跡がない……巌窟王さんが暴走していたとき、このコントローラーはまったく別のところにあったってことだけど」

最原「……」

最原(ああ、クソ! 真相に近づけば近づくほどに実感する!)

最原(あのときの僕は大馬鹿だ……! 見えてる地雷だったろうに!)





赤松『白銀さんのこと、助けたいんでしょ?』

最原『!』

赤松『……協力させてよ! 仲間でしょ!』

最原『……うん』

最原『うん!』






最原「赤松さん……!」

最原(いつか王馬くんが言ってたな。僕は心が弱いらしい。疑うべきを疑いたがらない)

最原(……その通りすぎて、腹が立つ!)

最原「……あのパソコン、絶対に何かがあるんだ。強く追及する理由がなくてほぼ放置してたけど」

最原「なんとか強奪できないかなぁ……!」

最原「……聖杯に頼る? いやいや……頼り過ぎるのは怖いんだよな、コレ」



ニョキッ



最原「なんか相変わらずひとりでに光ってて怖いし……まるで蛍を鷲掴みにしてるみたいな気持ち悪さが――」

アンリマユ「よう」ニョキッ

最原「うわあああああああああああビックリしたーーーッ!」ブンッ

アンリマユ「ぎゃああああああああ割れ物を投げんじゃねーーー!」バキィィィンッ

最原「はあ……はあ……なんだったんだろう、今の真っ黒な小人。聖杯の中から現れたような……」

最原「あっ。聖杯、壊れちゃった……まあいいか。別に欲しかったわけじゃないし」

最原「……壊したってバレたら巌窟王さんに怒られるかな……怒られるだろうな……隠しておこう」サッサッ

アンリマユ「呪いあれー」

最原「まだ喋ってる……」




ゴミ箱に捨てたら死んだ

中庭

百田「……ダメだ! 暗くてよくわかんねぇ! 捜索は打ち切るぞ!」

入間「おう! わかった! ところでかなり大事な話があるんだが!」

百田「なんだ!?」

入間「もう本当にド深夜でよ……滅茶苦茶眠いんだ……眠すぎて一歩も動けないっつーか……」ガクリッ

春川「……ルーベンスの絵ってどこで手に入るのかな」キョロキョロ

百田「死なせんな! 仲間を!」

春川「仕方ないな。私が入間を寄宿舎に連れて行くよ」

入間「病院の方がちけーんじゃねーか……」

春川「白銀と天海がいるだろうからナシで」

百田「ああ。大怪我してたからなぁ……」

百田「おーい、赤松。そろそろ帰るぜー」

赤松「……」

百田「赤松? さっきから空を見てるけどどうした?」

赤松「いや……なんか不自然な流れ星が見えたような気がして」

百田「不自然な流れ星?」

赤松「……いいや。気のせいかもしれないし」

赤松(百田くんも春川さんも見えてなかったっぽいから、多分気のせいだよね)

赤松(降ってくる流れ星じゃなくて、遠くへ飛ぶ流れ星なんて……ありえない)

赤松(この空、そもそもフィクションだし、ね)

赤松「……」

赤松(気のせい……だよね?)