ダイヤ「男装したら善子さんに惚れられましたわ……」 (30)

善子「えへへー」

ルビィ「善子ちゃん、どうしたの?」

花丸「携帯の画面をじーっと見つめてるずら」

ルビィ「ぴぎっ!? 男の人と善子ちゃんのツーショット!?」

花丸「もしかしてその、お付き合いしてるとか!?」

善子「お付き合いしてるとかじゃないんだけどー、えへへ」ニヤニヤ

ダイヤ(ま、まずいですわ……。何を隠そうあの写真の殿方は、わたくし……!)

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ルビィ「えっと、その人のお名前は……?」

善子「黒川大也さんっていうの」

花丸「ダイヤさん?」チラッ

ダイヤ「っ!」ビクッ

善子「黒澤ダイヤじゃなくて黒川大也!」

ルビィ「……あれ?」ジーッ

ダイヤ(っ! さすがにルビィには気付かれますわよね……?)

ルビィ「あ、あのお姉ちゃん……?」トテトテ

ダイヤ「ちょっとこっちに!」

善子「? どうしたのかしら?」

――

ルビィ「あの男の人、お姉ちゃんだよね?」

ダイヤ「えぇ、まあ」

ルビィ「……お姉ちゃん、男装してまで善子ちゃんとお付き合いしたかったの?」

ダイヤ「あれには深い事情がありますのよ!」

ルビィ「深い事情?」

ダイヤ「あれは1ヶ月ほど前のことでしたわ」

ルビィ「1ヶ月前……」

――

ダイヤ(わたくし黒澤ダイヤには他の人には言えない秘密の趣味があります)

ダイヤ(黒澤家長女としての責任、生徒会長としての責任、そんな重圧に耐え切れなくなって)

ダイヤ(Aqoursとしての活動、ルビィの姉としての生活、それが不満というわけではないけれど――)

ダイヤ(違う自分になりたい、ふとそう思ったときわたくしはこの趣味に目覚めましたわ)

ダイヤ(男装して町を歩く、それがわたくしのストレス解消であり、楽しみになっていました)

ダイヤ(我ながら男装は完璧で、見知った人でもじっと見られない限り分からないでしょう)

ダイヤ(こうして男性として歩いていると、景色もまた違って見えますわ……!)

ダイヤ(誰もわたくしがわたくしであることに気付かない、なんて気分がいいんでしょう)

ダイヤ(男装していればラーメン屋さんにだって1人でいけますわ!)ワクワク

「ぐえっ」ドンッ

ダイヤ(……なんだか聞きおぼえのある声ですわね)チラッ

善子「どこ見て歩いてるのよ! って電柱じゃない!」

ダイヤ(めんどくさいのがいますわね……。関わるのも恥ずかしいですしここは無視……)

ダイヤ(……いや、ここで本当にばれないのか試しに話しかけてみるのも)ドキドキ

善子「もう、最悪……」

ダイヤ「大丈夫ですか?」

善子「え?」キョロキョロ

善子「よ、ヨハネにはなしかけてる?」

ダイヤ「電柱に思い切りぶつかっていたようだったので」

善子「っ! ま、まあ平気よ」サッサッ

ダイヤ(髪を整えてますわね)

善子「心配してくれてありがとう」

ダイヤ(どうやらわたくしが黒澤ダイヤだということには気付いていない様子! やりましたわ!)

ダイヤ「大丈夫そうでよかった。ではわたk、僕はこれで」

善子「あっ、待って!」

ダイヤ「何か?」

善子「えっと、名前! 教えて!」

ダイヤ「名前? どうして?」

善子「そ、その。心配してくれたの嬉しかったし!」

善子「あとでお礼したいから、その連絡先とかも教えてほしいなーって」

ダイヤ「お礼なんてされることしていませんよ?」

善子「よは、私はお礼したいの!」

ダイヤ「僕は黒――」ハッ

ダイヤ(ふ、普通に黒澤ダイヤと言いそうになりましたわ……!)

善子「黒?」

ダイヤ「く、黒川大也! 大きい也でダイヤ!」

善子「くろかわだいや……?」

ダイヤ(わたくしながらほぼそのままな名前……)

善子「ふーん、なんか知り合いに似てる名前」

善子「でも素敵な名前ね、大也さん!」

ダイヤ(セーフですわ……)

ダイヤ「君は? ヨハネとか言っていたけど」

善子「あっ! ごめんなさい、まだ名乗ってなくて。私は津島善子!」

ダイヤ「ヨハネっていうのは?」

善子「なんでもないの! 忘れて!」

ダイヤ(……変ですわね、普段の善子さんなら『善子じゃなくてヨハネ!』って感じなのに)

善子「大也さんはLINEとかやってるの?」

ダイヤ「あ、ううん。やってないけど」

ダイヤ(LINEは元々善子さんのを知っていますし、教えたりしたら正体がばれますわ)

善子「じゃあ、メールアドレス!」

ダイヤ「いや、だからお礼なんて」

善子「これ、ヨハネのアドレスだから。連絡してよね」ギュッ

善子「それじゃあ!」

ダイヤ「……なんだかまずいことになったような」

――

ダイヤ「ということがあって」

ルビィ「それで、お姉ちゃんは連絡したの?」

ダイヤ「えっと、まあ……」

ルビィ「なんで? 連絡しなきゃそこで終わってたのに」

ダイヤ「……身近な人に気付かれないのが嬉しくて」

ダイヤ「もう一回、もう一回と回数を重ねてしまい……」

ルビィ「それで善子ちゃんと付き合ってるの?」

ダイヤ「付き合っていませんわ! ただ、その――」

ルビィ「その?」

ダイヤ「善子さんがわたくし、というか黒川大也のことを慕っているようでして」

ルビィ「……それ最初に連絡先渡された時点でわかるよね?」

ダイヤ「……」

ルビィ「お姉ちゃんはどうなの?」

ダイヤ「どうとは?」

ルビィ「善子ちゃんのこと、好きなの?」

ダイヤ「なっ……!?」

ルビィ「善子ちゃんに好きって言われたら、どうするの?」

ダイヤ「わたくしは――」

ダイヤ「……」

ルビィ「きちんと考えておかないとダメだよ?」

ダイヤ「……そうですわね」

ダイヤ「わたくしは善子さんのことを――」

――

善子「……」ソワソワ

ダイヤ「お、お待たせ、善子さん」

善子「あっ♡ 大也♡」

善子「もう、善子さんじゃなくて善子でいいって言ってるでしょ?」

ダイヤ「でもやっぱりそれは恥ずかしいと言うか」

善子「もう、大也ってば恥ずかしがりやなんだから」ツンッ

ダイヤ(なんだか大也として善子さんに会うとキャラが違うというか……)

善子「さ、いきましょ♡」

ダイヤ(やはり女性の顔をしていますのよね……)ハァ

善子「今日はどこ行く?」ギュッ

ダイヤ(し、自然と腕に抱きつかれて――)

ダイヤ「え、えっと、善子さんは行きたいところとかある?」

善子「んー、大也とならどこでもいいかな♡」ギューッ

ダイヤ(胸を押し付けて――善子さん、異性に対してこんなに積極的なんですのね……)

善子「でも、行くところがないなら――」

善子「今日ね、うちに誰もいないの♡」

ダイヤ「っ!?」ドキッ

――

ダイヤ(なし崩しに善子さんの家に来てしまいましたわ!)

ダイヤ(善子さんがあんなに積極的だなんて――)

善子「……」ガチャリ

ダイヤ「っ!」

善子「大也、ごめんね。強引に家に呼んじゃって」

ダイヤ(鍵を閉めてじりじりと近付いてくる……!?)

善子「私ね、大也に言いたいことがあって」

ダイヤ(ま、まずいですわ。これは俗に言う愛の告白では……?)ドキドキ

善子「……。玄関で話すのもなんだし私の部屋にいきましょ」グイッ

ダイヤ「あっ、ちょ、ちょっと」

――

善子「それでね、続きなんだけど」

善子「私、あなたのこと好きなの。初めて会ったときから」

善子「もしかしてなんとなく気付いてた?」

ダイヤ(なんとなくどころではありませんけど)

善子「でも、家に来てくれたっていうのはそういうことよね?」

善子「あっ♡ 大也緊張してる? ふふ、大也のえっち♡」

ダイヤ「そ、そういうわけでは――」

善子「えいっ」グイッ

ダイヤ「きゃっ!?」ドサッ

ダイヤ(よ、善子さんに引っ張られて善子さんに覆いかぶさるような形に――)ドキドキ

善子「……きて、大也♡」

ダイヤ(わ、わたくしはどうすれば――)

ダイヤ(ここまできてしまったらわたくしは黒澤ダイヤだとカミングアウトするしか)

ダイヤ(しかし、ここでカミングアウトしてしまうとここまでした善子さんの気持ちを傷つけることになりかねない)

ダイヤ(かといってこのまま行為に及んでしまってもわたくしが黒澤ダイヤであるとばれてしまう……)オロオロ

ダイヤ(わたくしは善子さんのことを――)

善子「……」

善子「ぷっ」クスクス

ダイヤ「え?」

善子「とっくに気付いてるわよ、黒澤ダイヤ」ツンツン

ダイヤ「……へ?」

善子「ここで手を出さないなんて相当のヘタレね」クスクス

ダイヤ「なっ! できるわけないでしょう!?」

善子「ヨハネの予想だと唇を奪った後に『実はわたくし、黒澤ダイヤですの』ってカミングアウトするくらいはすると思ってたんだけど」

善子「想像以上のヘタレだったわ」クスクス

ダイヤ「っ!」カアアアアアアアアアアア

ダイヤ「あなたはわたくしに唇を奪われてもよかったんですの!?」

善子「うん」

ダイヤ「は?」

善子「言ったでしょ? はじめて会ったときから好きだって」

ダイヤ「それは黒川大也のことじゃ――」

善子「男装したダイヤにはじめて会った時からあなたがダイヤだなんて気付いてたわよ」

善子「好きな人の顔を間違えるわけないじゃない」

ダイヤ「……は?」

ダイヤ「ではその時から?」

善子「だから、ヨハネがダイヤを好きになったのはそもそも初めて会った時なの!」

ダイヤ「わたくしとはじめて会った時?」

善子「そ、なんていうか、感覚的にわかったの。あ、この人なんだって」

善子「Aqoursとして一緒に活動して、もっと気持ちは強くなったし」

善子「でも、ダイヤはヨハネのことそういう風に見てないだろうしって悩んでた」

ダイヤ「……」

善子「そんな時、ヨハネの前に黒川大也が現れたの」

善子「男としてヨハネの前に現れたんだからこの際もういっぱいアピールしちゃえって思って」

善子「……結局、ダイヤはヨハネを襲わなかったってことはそういうことよね」ポロポロ

ダイヤ「よ、善子さん」オロオロ

善子「ごめんね、どうなっても泣かないって決めてたのに」グスッ

ダイヤ「……失礼」

善子「へ?」

ダイヤ「んっ♡」チュッ

善子「だい、や……?」

ダイヤ「わたくしも、善子さんのことが好きですわ♡」

善子「うそ……?」

ダイヤ「わたくしがあなたを意識したのはつい最近」

ダイヤ「あなたのように一目ぼれというわけではありませんでしたわ」

ダイヤ「最初は妹に悪影響を与えかねないとまで思っていました」

ダイヤ「しかし、接していくうちに、何度もデートしていくうちに好きになっていった」

ダイヤ「あなたに惹かれていきましたわ」

善子「……でもさっきなにもしなかったじゃない」

ダイヤ「そんなの――」

ダイヤ「明かしたら善子さんが傷つくのではないかと怖くて」

ダイヤ「明かしたらわたくしのことなんてどうとも思わなくなるんじゃないかと怖くて」

ダイヤ「だからわたくしが黒澤ダイヤであるとばれてしまうのが怖かったんです……」

善子「……じゃあしたかったの?」

ダイヤ「そ、それはわたくしたちにははやすぎますわ」カアアアアアアアアア

善子「ふふ、ダイヤらしい♡」

ダイヤ「ほ、本当はキスだって早いくらいですのよ!?」

善子「じゃあなんでしたのよ?」

ダイヤ「……笑いません?」

善子「笑うようなことなの?」

善子「まあ、笑わないわよ、多分」

ダイヤ「……かったんです」ボソボソ

善子「は?」

ダイヤ「泣いている善子さんが愛しくてたまらなかったんです!」カアアアアアアアアア

善子「……ぷっ」

ダイヤ「あっ、笑わないと言ったでしょう!?」

善子「だってダイヤかわいいんだもん」ニヤニヤ

ダイヤ「か、かわいい!? わたくしあなたより年上ですのよ!?」

善子「はいはい、ダイヤちゃんはかわいいでちゅね」ナデナデ

ダイヤ「っ!? バカにしています!?」

善子「んーん」チュッ

ダイヤ「んぅ!?」

善子「怒り顔もかわいかったからキスしちゃった♡」

ダイヤ「ちょ、ちょっと! まだ高校生なんだからもうキスは禁止ですわ!」カアアアアアアアアアア

善子「えー……」

善子「でもまあ、そういう硬度10なところも」

善子「かわいいところも」

善子「かっこいいところも」

善子「男装して町を歩いちゃうちょっぴり変なところも」

善子「だーいすき♡」

おわり

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