藤原少女の事件簿 料理合宿殺人事件 (53)

諸注意
・このssは某名探偵の孫が主役の作品を、アイマスのキャラでパロったものになります。
・アイドル達が出演するドラマという設定ですが、名前は基本的にアイドルの名前そのままです。
 口調や性格が違っていても、ドラマの演技ということでお許しください。
・越境要素アリです。主人公はデレマスの「はじめちゃん」にお願いしましたが、ヒロイン枠は見た目重視でミリオンのアイドルにしました。
 その他765AS、sideM、シャニマスのアイドルが出演する場合もあります。
・パロディ元の雰囲気を重視したため、シリアス気味です。アイドルが死んだり、アイドルが犯罪を犯します。
 また、場合によってはグロ展開もあります。ご注意ください。
・基本的にはパロディ元の話を再現していくことになりますが、このssのみオリジナルの事件です。
・一応元ネタはss速報vipの方で>>1が書いたオムニバスssの一つになります。
 そのためそちらを読んだことがある方には犯人やトリックが丸わかりになると思いますが、初見の方も想定し、ネタバレはご遠慮ください。
 推理や感想のコメントは大歓迎です。


では投下します。

はじめちゃんがR18な事態に陥ることはありますか?

登場人物

藤原肇
 本作の主人公。名探偵の孫であり高いIQを持つ。

田中琴葉
 本作のヒロイン。肇の幼馴染。


川島瑞樹
 肇たちが通う高校の料理部顧問。

如月千早
中野有香
水本ゆかり
 肇たちが通う高校の料理部員。


三船美優
 実城高校料理部顧問。

五十嵐響子
緒方智絵里
佐久間まゆ
三村かな子
佐竹美奈子
 実城高校料理部員。

最場真守
 1年前まで実城高校料理部員だった生徒。すでに故人。

赤種美能
 80年ほど前にいたといわれる美食家兼料理人

藤原少女の事件簿 料理合宿殺人事件


教室の中で、2人の女子生徒たちが話している。

「ま、まさかこんなことになるなんて……」

「私だって、ここまでなるなんて思ってませんでした」

「わたしたちがあんなことしなきゃ、良かったのかな……。あの人の自信をなくさせるために、わざとお薬を飲んで腹痛になる、なんて……」

「ちょ、ちょっと、その話はもうしないって約束だったじゃないですかぁ」

「で、でも…わたしはここまでするつもりなんて…」

「でもじゃありません。私が持ちかけた時も、協力してくれるって言いましたよねぇ?」

「ご、ごめんなさい…。だけど、いくらお料理の腕がすごくて嫉妬しちゃったからって、お薬を使うのはやりすぎだったかなぁって」

「人聞きの悪いこと言わないでください。私たちは自分で薬を飲んだだけ。あの人は自分で勝手に亡くなっただけ。そこに直接の関係はないんですから」

教室の外から、この話を立ち聴きしている人物がいたが、彼女たちがそれに気づくことはなかった。

やがて、その人物は音を立てぬようにその場を立ち去った。

復讐の炎をその心に宿しながら……。

1.

琴葉「肇ちゃん、家庭科の川島先生が呼んでるよ」

肇「え?わかりました」

藤原肇は教室のドアのところで待っている川島瑞樹の元に向かう。
田中琴葉も自然と肇の後についていく。

肇「川島先生…お話ってなんでしょうか?」

瑞樹「実は、藤原さんと田中さんに折り入ってお願いがあるの。私が受け持ってる料理部が、今度の連休に他校の料理部と合同合宿をするのだけれど、それに同行してくれないかしら?うちの料理部の一員として」

琴葉「私は構いませんけど…。何か事情でもあるんですか?」

瑞樹「それが、その合宿で1人ずつ料理を作っていって、食べ比べをすることになってるのよ。勝負ってほどでもないんだけれど、向こうの学校には5人で行きますって言っちゃったあとで、部員の子が家の用事と体調不良で合宿を欠席することが決まってね、2人ほど足りなかったのよ」

肇「でも、なんで私たちなんですか?」

欠員を埋めるだけならば、わざわざ肇と琴葉を指名する必要はない。

そう肇が瑞樹に尋ねると、瑞樹は肇だけに聞こえるように小声で言った。

瑞樹「藤原さん、家庭科の成績があまり良くないでしょう?このままだと貴女、家庭科が赤点よ?この合宿について来てくれたら、成績をオマケしてあげるから」

この学校では家庭科、技術科、美術などの選択科目があるのだが、肇は幼馴染の琴葉と同じ家庭科を選んでいた。
その結果、あまり料理が得意ではない肇は家庭科で赤点ギリギリの成績を収めてしまっている。

肇「わ、わかりました、川島先生。私もその合宿に参加させていただきます」

瑞樹「それじゃあよろしくね」

と言って、瑞樹は職員室へ戻っていった。

琴葉「肇ちゃん、川島先生に何を言われてたの?」

肇「こ、琴葉には関係のないことですよ…」

琴葉「ま、おおかた家庭科の成績をオマケしてあげるとか、その辺でしょう?肇ちゃん、無理して私と一緒の科目取ってたものね」

琴葉には全てバレている肇であった。

AM8:50

合宿の当日、肇たちはあらかじめ指定された通り、学校の正門前まで来ていた。

瑞樹「おはようございます。藤原さん。田中さん」

肇・琴葉「おはようございます」

瑞樹「早速だけど、料理部のメンバーを紹介するわね。まずは部長の中野さん」

有香「中野有香です。3年で、料理部の部長をしています!あたしはもうすぐ引退ですけど、今年度の料理部最後の合宿になるということで参加しています。じゃあ次はゆかりちゃん、どうぞ」

ゆかり「水本ゆかりといいます。よろしくお願いしますね。では、次は如月先輩」

その次に指名されたのは、肇と琴葉もよく知っていた人物だった。

肇「千早ちゃん…あなたも料理部だったんですね」

千早「ええ。一応自己紹介しておくわ。如月千早です。合宿でもよろしくね。肇、琴葉」

如月千早は肇や琴葉とは小学生の頃からの付き合いで、現在もクラスメイトである。

瑞樹「じゃあ、藤原さんと田中さんのほうからも自己紹介よろしくね」

肇「はい。藤原肇、2年です。その…料理は不得手なのでよろしくお願いします」

琴葉「田中琴葉、同じく2年です。私は基本的な料理ならできるので、肇ちゃんのフォローも含めて頑張ります」

肇「も、もう琴葉……」

琴葉のその言葉で、一同に笑いがこぼれた。

瑞樹「さて、お喋りはこれくらいにして、みんな車に乗ってちょうだい!そろそろ出発するわよ」

瑞樹に促され、料理部のメンバー及び肇と琴葉が順番に荷物を積み、車に乗り込んでいく。

瑞樹はこの日のために6人乗りのミニバンを借りており、全員分の荷物に加え、調理器具などの荷物も積み込まれていった。

AM:10:30

肇「そういえば、千早ちゃんはなぜ料理部に入ったんですか?」

車での移動中、肇は千早にそのような質問をした。
なお、車内での座席は、運転席にはもちろん瑞樹、助手席は有香、2列目左からゆかりと千早、3列目左から肇と琴葉という配置になっている。

千早「意外かしら?」

肇「意外…というほどではありませんけど、今まで料理部の話を聞いたことがなかったので…」

千早「料理部に入った理由は、そうね…。ほら、私一人暮らしをしてるじゃない?」

琴葉「ええ。それは話したことがあったわね」

千早は、家庭の事情で高校に入ると同時にマンションの部屋を借りて一人暮らしをしている。

千早「それで、自炊も頑張っているのだけれど、やっぱり上手くいかないこともあるから、料理部に入って腕を磨いていこうと思ったの」

肇「なるほど…」

瑞樹「如月さんは結構すごいんだから。最初はほとんど素人だったけど、飲み込みが早いからみるみるうちに成長していったのよ」

千早「そ、それは言いすぎです、先生」

ゆかり「でも、如月先輩のお料理、私は好きですよ。とても優しい味がします」

有香「はい。あたしも好きです!如月さんの料理。あたしよりも綺麗にできますし、次期の部長に推薦したいくらいです!」

千早「水本さんと中野先輩まで…。そ、そうだ、川島先生、今回一緒に合宿をする学校はどういうところなんでしたっけ?肇や琴葉には伝えました?」

このままでは自分の料理が褒められ続け、いざ肇や琴葉に披露する時のハードルが上がりきってしまうことを察した千早は、話題を逸らすために瑞樹に尋ねた。
もちろん千早たち料理部のメンバーには、あらかじめ伝えられていたことではあったが。

瑞樹「そういえば、貴方たちには言っていたけれど、藤原さんと田中さんにはまだ言っていなかったわね。私たちが今回、一緒に合宿させていただく学校は、あの実城(じつじょう)高校よ!」

肇「えっと…?有名な学校なんですか?」

琴葉「肇ちゃん知らないの?実城高校の料理部って言えば一昨年の高校生料理コンテストで優勝した有名なところなのよ?」

肇「そうだったんですね…」

有香「でも、よくそのような高校と合同合宿をさせてもらえましたね」

瑞樹「ああ、それはね、大学のころから付き合いのある子が、今その実城高校料理部の顧問をやってるらしいのよ。この前、その子と久しぶりに会って食事をしてたら、お互いに高校の料理部の顧問をしていることがわかって、今度合同合宿をしましょうっていうことになったのよ。まさか向こうがあの実城高校だとは思わなかったけれど」

ゆかり「不思議な縁もあるものなんですね」

PM12:15

その後も車内は賑やかな会話で盛り上がり、気がつけば、車は山道を走っていた。

瑞樹「さあ、そろそろ目的地よ」

肇たちが前を見ると、そこにはいかにも合宿所というような建物が建っていた。
しかし、その規模は12人ほどが泊まるには大きく、地味なホテルと言われれば通ってしまいそうな大きさであった。

瑞樹「さて、着いたわ。ここが、私たちが合宿をする『実城セミナーハウス』よ」

瑞樹はそう言うと同時に車を停めた。
隣には、先に来ていた実城高校のものであろう大型のバンも停まっていた。

琴葉「『実城』っていうことは…」

瑞樹「ええ、ここは実城高校の持ち物らしいわね。私も彼女からは『自分の高校のセミナーハウスを使う』としか聞いていなかったから、ここまで大きいとは思わなかったけれど」

肇たちはそれぞれ自分の荷物と、調理器具一式を手分けして降ろし、玄関の側まで運んだ。

瑞樹「ごめんください。不動高校の料理部です!」

瑞樹が挨拶をすると中から女性の声が聞こえた。

美優「あ、お待ちしてました。不動高校の皆さんですね。私は実城高校で料理部の顧問をしています、三船美優といいます。よろしくお願いしますね」

肇たち不動高校の生徒は、「よろしくお願いします!」と返した。

美優「では、これから顔合わせをしますので、まずは、お部屋に荷物を置いてきてください。30分後、顔合わせ会を始めますので、食堂にお集まりください」

有香「顔合わせ会、ですか?」

美優「ええ。ささやかですが、私たちの料理部が腕によりをかけて皆さんにおもてなしをいたします。あ、こちらが部屋の鍵と合宿のしおりです。皆さんは3階の部屋を使ってください。部屋割りはしおりの中に書いてありますから」

そう言って、美優は有香に5本の鍵と5冊のしおりを渡した。

肇「5本…ということは、私たち全員に個室があてがわれている、ということですか?」

美優「ええ。ここは一般の方々に貸し出すこともあるので部屋数が豊富なんです…。私たち教師2人は1階、実城高校のメンバーは2階、そして不動高校の皆さんは3階になります」

有香「な、なるほど」

およそ合宿とは思えない待遇にやや困惑気味の肇たち。

瑞樹「はい、じゃあ聞いた通り、みんなは荷物を部屋に置いたら食堂に集合ね」

瑞樹はそう指示を出し、自分も美優から部屋の鍵を受け取ると1階の部屋に向かっていった。

有香「で、では私たちも3階に行きましょう」

有香に続いて肇たちも3階へ向かった。

有香「では鍵を1本ずつどうぞ」

有香が、しおりに描かれた部屋割りに従って鍵としおりを配付していく。

301号室から順番に、有香、ゆかり、肇、琴葉、千早という部屋順になった。

https://i.imgur.com/5gstHfx.jpg


有香「では、各々身支度を整えたら食堂に向かいましょう!」

そして肇は自分の303号室に入った。
部屋の中は普通のホテルの1人部屋とさして変わらず、入ってすぐ左側がクローゼット、右側はトイレとバス、部屋の奥左側に化粧台、右側にはベッドがある。
部屋の突き当たりには窓があるが、転落防止のためにはめ殺しになっているらしい。

https://i.imgur.com/LhAeD1m.jpg

準備を終えた肇は、部屋を出て隣の琴葉の部屋をノックした。

肇「琴葉、準備はできてますか?」

琴葉「肇ちゃん?ちょっと待ってて」

しばらく待っていると、部屋の扉が開いた。

琴葉「お待たせ。じゃあ行こっか」

PM13:00

肇たちが食堂に着いたころには、実城高校のメンバーはもちろん、不動高校のメンバーもほとんど揃っていた。
ここの食堂は、普段実城高校の合宿所として使われているためか、学校の家庭科室のようにもなっており、奥には厨房ではなく「調理室」と書かれている。

有香「すみません、お待たせしました!」

肇と琴葉の少し後から、有香とゆかりが一緒に食堂に入ってきた。
これでお互いの高校のメンバー全員が揃ったことになる。

美優「では、今回の実城高校と不動高校の合同合宿のメンバー全員が揃ったということで、まずはお互いに自己紹介でもしましょうか。まずはうちの高校から…。実城高校の料理部顧問をしています、三船美優です。よろしくお願いしますね…。じゃあこっちから、順番に…」

かな子「私からですね。三村かな子です。えっと…今回の実城高校のメンバーの中ではまとめ役になる…のかな?よ、よろしくお願いします!」

まゆ「佐久間まゆです…。皆さんと合宿できる日を楽しみにしてました。よろしくお願いします」

響子「五十嵐響子です。お料理は得意なので、任せてください!よろしくお願いします」

智絵里「お、緒方智絵里、です。その…よ、よろしくお願い、しますっ」

美奈子「佐竹美奈子です!中華料理なら任せてください!よろしくお願いします!」

実城高校全員の挨拶が終わると、不動高校の全員が拍手をした。

瑞樹「じゃあ次はうちの高校の番ね。不動高校料理部顧問の川島瑞樹です。よろしくお願いします。じゃあ私たちも順番に」

有香「はい。不動高校料理部でしゅしょ…ではなく、部長をしています、中野有香です。よろしくお願いします!」

ゆかり「水本ゆかりです。私も合宿を楽しみにしていました。よろしくお願いします」

千早「如月千早です。自分の料理の腕を磨くために料理部に入っています。よろしくお願いします」

肇「藤原肇です。その…料理は得意ではないので、ご迷惑をかけるかも知れませんが…よろしくお願いします」

琴葉「田中琴葉です。今回は、肇ちゃんのサポートを中心に頑張ります。よろしくお願いします」

琴葉の一言により、今朝と同じく一同に笑いがこぼれた。
笑いとともに実城高校のメンバーも拍手をする。

美優「さて、自己紹介はこれくらいにして、まずはお昼にしましょうか。せっかく作った料理が冷めないうちに…」

美優がそういうと、実城高校のメンバーが食堂の隣の調理室へ入っていき、次々と大皿を持ってきた。

琴葉「あ、私たちも手伝いますよ」

美優「いえ…これはあなたたちへの歓迎会でもあるので、ぜひ座っててください」

琴葉「そうですか。じゃあお言葉に甘えさせていただきます」

次は美奈子とかな子が2人で寸胴鍋を運んできた。
匂いから察すると中身はカレーのようだ。

美奈子「ありきたりですけど、初日のお昼のメインはカレーです。おかわりも用意してありますから、たくさん食べてくださいね」

そしてその後ろからは他の3人が、それぞれ炊飯器を1つずつ抱えて持ってきた。

響子「ご飯もいっぱいありますからね」

肇たちが見ている中、着々とカレーが盛り付けられ全員に配られた。

美優「ではみなさん、いただきます」

「「「「いただきます!」」」」

美優の号令で、全員が一斉に食べ始めた。
お互いの学校関係なく楽しげな会話も混じり、特に不動高校のメンバーは、料理の腕前を褒める声も多かった。

肇「そういえば…実城高校は一昨年の高校生料理コンテストで優勝したと聞きましたけど、料理部にはとても力を入れているんですね」

美優「ええ…。私は去年赴任してきたばかりなので、私の力ではないんですけれど。それでもここにいるメンバーはみなさん優秀な子ばかりですよ」

琴葉「去年、といえば、去年は料理コンテストに出場されなかったんですか?」

「……っ!」

琴葉のその何気ない一言で、実城高校のメンバーが一斉に黙った。

琴葉「あっ、えっともしかして私何か言っちゃいましたか…?」

美優「いえ、その…大丈夫ですよ。去年はちょっとトラブルがあって出場しなかっただけだと聞いてますから…」

まゆ「そうですねぇ。あれはただのトラブル…。ちょっとした『事故』だったんですから……」

かな子「ま、まゆちゃん!」

まゆの発言をかな子が叱責したことにより、その場はさらに静まり返ってしまった。

瑞樹「あー…。そうだわ!せっかくこれだけの料理を用意してくれたんだもの。片付けはうちのメンバーでやりましょうか」

琴葉「は、はい」

琴葉を始め、不動高校のメンバーはそれに了承した。

結局、妙な雰囲気の中、顔合わせ会は終了した。

PM2:00

調理室で瑞樹を含む不動高校のメンバーが手分けをして、皿洗いなどの片付けをしている。

琴葉「私のせい、かな……」

肇「えっ?」

琴葉「ほら、昼食のとき、ちょっと空気悪くなっちゃったじゃない?あの時、私がもっと気を使ってれば良かったのかな、って」

肇「そんなこと…ありませんよ。私たちは去年のことを知らなかったんですから、誰も琴葉を責めたりしませんよ」

琴葉「うん…。そうだね、肇ちゃん」


PM3:00

その後、美優と瑞樹により今後のスケジュールが発表された。

合宿は3泊4日行われ、初日の夕食から3日目の夕食までの昼食と夕食計5回の時に、お互いの高校から1人を選出して料理を一品ずつ披露する。
それぞれの食事後、感想を交換し合いレポートなどに纏める、ということになった。

各日の朝食は交代で数名が行い、夕食時もさすがに二品では足りないため、サラダなどの副菜や場合によっては主食のご飯などの用意も、選出された人以外が交代で行うことに決まった。

美優「最後に、料理を作る順番ですが…これは各学校ごとに話し合って決めてください。それと同時に、朝食と夕食の手伝いをする順番も決めて、この用紙に書いて提出するように」

瑞樹「今日は話し合いが終わったら夕食までは自由時間よ。ただし、夕食を作るメンバーは17時にこの食堂に集合してちょうだい。同じように、朝食を手伝うメンバーは6時に、昼食を作るメンバーは11時に集合ね」

美優「それ以外の人たちは、それぞれ7時半、12時半、18時半に集合です。質問はありますか?」

有香「あの、自由時間は外へ行ってもいいですか?」

瑞樹「近くなら構わないけれど、あまり遠くへは行かないようにすることね」

美優「あ、特に合宿所の裏は林になってますし、車で来た山道もこの時期は霧が発生しやすくて危ないので、気をつけてくださいね」

有香「わかりました!」

美優「では、他に質問もないようなので、用紙が書けたら自由時間にします」

その後、それぞれの学校ごとに話し合い、料理を作るメンバーが決まった。

不動高校
1日目夜 田中琴葉
手伝い 如月千早

2日目朝
手伝い 水本ゆかり

2日目昼 藤原肇
手伝い 田中琴葉

2日目夜 如月千早
手伝い 中野有香

3日目朝
手伝い 田中琴葉

3日目昼 水本ゆかり
手伝い 如月千早

3日目夜 中野有香
手伝い 藤原肇

4日目朝
手伝い 水本ゆかり

4日目昼
手伝い 藤原肇、中野有香


実城高校
1日目夜 佐竹美奈子
手伝い 五十嵐響子

2日目朝
手伝い 緒方智絵里

2日目昼 佐久間まゆ
手伝い 佐竹美奈子

2日目夜 五十嵐響子
手伝い 三村かな子

3日目朝
手伝い 佐久間まゆ

3日目昼 緒方智絵里
手伝い 佐竹美奈子

3日目夜 三村かな子
手伝い 五十嵐響子

4日目朝
手伝い 三村かな子

4日目昼
手伝い 緒方智絵里、佐久間まゆ


という予定で行なっていくことになった。


瑞樹「2グループとも提出したわね。それじゃあ、合宿中はこの順番で料理の披露と手伝いをしてもらうことになるわ」

美優「ご飯を作る際には私と川島先生がしっかりサポートしますから、安心してくださいね」

瑞樹「では、これから夕食の時間まで自由時間にします!」

PM4:00

各々が自分の部屋や友達の部屋に行って休んだり、あるいは合宿所の中を見て回っている中、肇と琴葉はロビー横の談話スペースにいた。

肇「なんだか、妙な雰囲気でしたね……」

琴葉「やっぱり私のせい…?」

肇「いえ…お昼ご飯の時の出来事は関係なく、実城高校のメンバーの間には何かを感じるんです。それに、この合宿所にも…」

琴葉「そういえば、この建物…ホテルとも合宿所とも言えないような作りをしてるわね」

美奈子「ふっふっふっ…それについては私から話しましょうか?」

肇と琴葉が話していると、そこへ佐竹美奈子が話しかけてきた。

琴葉「あなたは、確か佐竹さん?」

美奈子「はい!佐竹美奈子です!美奈子でいいですよ!」

肇「それで…美奈子さんは何か知っているんですか?」

美奈子「はい!私、今年の初めに実城高校に転入してきたんですけど、私も料理部のメンバーには『何か』を感じてたんですよ!そうしたら、合宿所の場所に聞き覚えがあるじゃないですか!」

琴葉「えっと…この場所って何か有名だったりするんですか?」

美奈子「実は私、こう見えてウワサとかを調べるのが好きで、このお屋敷についても調べたことがあるんです!」

肇「お屋敷…?ここはお屋敷だったんですか?」

美奈子「ええ!約80年ほど前、美食家であり凄腕の料理人とも言われていた『赤種(あかたね) 美能(みの)』という人がいまして、とても注目されていたそうです。ところがある時を境に、山奥に屋敷を建ててそこに引きこもるようになってしまったそうです」

琴葉「もしかして、そのお屋敷がここ…?」

美奈子「ええ。それで、さっき三船先生も言ってましたけど、この山は道が複雑で、濃霧も発生しやすいんですよね。それは昔も同じで、この辺りに登山に来た人がよく道に迷っていたそうです。それで、ここからがウワサ話なんですけど…」

美奈子はそこから声を低めて続けた。

美奈子「ある日、このお屋敷に2人の遭難者がたどり着きました。赤種氏は2人を快く迎えてくれ、丁重におもてなしをしていました。赤種氏は霧が晴れて安全になるまで屋敷で過ごすように言いましたが、なぜかなかなか帰してくれそうにありません。さすがに不審に思った遭難者の1人が、赤種氏と話をしてくると言って部屋から出て行きましたが、いつまで経ってもその人は戻ってきません…」

美奈子「もう1人が相方を探しに屋敷を歩いていると、食堂に赤種氏がいました。赤種氏に事情を聞こうと食堂に入った彼が見たものは!切り刻まれた相方の身体と、『何かの肉』を美味しそうに頬張る赤種氏の姿だったそうです…」

琴葉「ひっ……」

肇「うっ……」

美奈子「それを見たもう1人の遭難者は急いで屋敷から逃げ、なんとか山道を降りて町まで帰ってきたそうです。そしていつしか赤種氏は『死の料理人』と呼ばれ恐れられるようになったそうです……」

肇「ここには…そんな曰くがあったんですね……」

美奈子「ええ。その数年後、赤種氏は突如姿を消し、このお屋敷は空き家になって持ち主を転々としていたそうで、10年ほど前に実城高校が買い取って合宿所に改装したそうです」

琴葉「それで、建物の作りがなんだかお屋敷っぽいんですね」

美奈子「まあ正直に言っちゃうと、ほとんどウワサ話なんですけど、でもここが以前お屋敷だったのは本当みたいですよ」

肇「でも、そのような曰くがあるところで合宿なんて…どうりで実城高校のみなさんの雰囲気が妙なわけです」

美奈子「実はですね、それにはもうひとつ理由がありまして…」

智絵里「さ、佐竹さん!」

美奈子が何かを言いかけたが、それを遮るようにして、緒方智絵里が美奈子を呼んだ。

美奈子「智絵里ちゃん、どうしたの?」

智絵里「あの、これからみんなでミーティングをするから、佐竹さんも呼んできて、って言われて…」

美奈子「うん、わかった!ごめんね、2人とも!話の続きはまた今度!」

琴葉「え、ええ。ありがとう美奈子さん」

そして、美奈子と智絵里は去っていった。

琴葉「もう、美奈子さん、何も夕食前にあんな話をしなくてもいいのに…」

肇「……」

琴葉「肇ちゃん?どうかした?」

肇「いえ…美奈子さんの話の続きが気になっていて…。やっぱり、実城高校メンバーの妙な雰囲気には何かしらの事情があるのか、と……」

肇の疑問が晴れることはなかったが、夕食の準備の時間が近づいていたため、琴葉は調理室へ行き、肇は1人部屋に戻ることになった。

PM6:25

肇「いい匂いがしますね」

食堂についた肇の第一声はそれだった。

瑞樹「あ、藤原さん、もう少しでできるから席に着いて待っててね。お水はセルフだから各自、ウォーターサーバーから取ってちょうだい」

肇「もしかして、私が最後ですか?」

瑞樹「そうなるわね。ふふっ、みんな夕食が待ちきれなかったみたいよ?」

肇が席を見ると、確かに今料理を作ったり準備をしている人以外は、全員が揃っていた。

琴葉「できた!」

美奈子「私もできましたよ!」

今日の夕食を披露する2人の料理ができたようだ。

響子「じゃあ私は他のお料理を並べていきますね」

千早「食後のデザートも用意してますから、楽しみにしていてください」

料理を作っていたメンバーが調理室から出てくる。
4人ともエプロンをつけていて、腕まくりまでして気合いが入っているようだった。

瑞樹「じゃあ、2人は料理を持ってきて配膳してちょうだい」

美優「私たちも手伝いますよ」

瑞樹「まずは田中さん、お願い」

琴葉「私の作った料理はこれです!」

そう言って琴葉が持ってきた料理は、お椀に入った味噌汁のようなものだった。

まゆ「これは…お味噌汁ですか?」

琴葉「はい。しじみ汁です」

ゆかり「しじみ…ですか」

琴葉か作った料理は、あまりにも地味なものだった。
しかし、琴葉がしじみ汁を作った理由は後で判明することになる。

美優「じゃあ、次は佐竹さん、お願いします」

美奈子「わっほーい!私が作ったのはこれです!」

そう言って美奈子が持ってきたのは、とても美味しそうなピーマンと牛肉の細切り炒め、いわゆるチンジャオロースであった……のだが。

かな子「とても美味しそう……ですけど」

智絵里「その…これは…」

有香「量、多すぎませんか?」

そう、あまりにも量が多いのだ。
昼食の時に、大皿料理に使っていたお皿いっぱいに盛られたチンジャオロースであるが、それが1人一皿ある。
どう見ても女子高生の1人分にしては量が多い。

美奈子「えっ?そうですか?本当は満漢全席にしたかったんですけど、先生に一品じゃないとダメって言われたので、絞ったんですけど…」

まゆ「いつも言ってるじゃないですか。美奈子さんの作るお料理はいつも量が多いんですよ」

美奈子「でも、美味しい料理はたくさん食べれたほうが幸せじゃないですか!」

かな子「あ、あの2人とも、ちょっと落ち着いて…」

瑞樹「はい!佐竹さんも佐久間さんも少し落ち着いてね?佐竹さん、私たちの分はまだ盛り付けてないわよね?」

美奈子「は、はい…」

瑞樹「じゃあ、食べきれないと思った量は先にこっちのお皿に分けてね。先生たちはそっちを食べるから。お鍋に残っている方は、冷蔵庫に入れて明日のお昼にでも食べましょう。佐竹さん、それでいいわね?」

美奈子「はい……」

こうして、生徒の分のチンジャオロースはちゃんと1人分になり、瑞樹と美優の分はやや多い量になった。

他にはご飯とひじきの煮物が配膳され、食後のデザートにフルーツ杏仁豆腐があると言われた。

瑞樹「じゃあ、改めて…いただきます!」

「「「「いただきます!」」」」

PM7:00

美優「その、助かりました、瑞樹先生」

瑞樹「本当はあなたの仕事なのよ?美優ちゃん」

美優「そうですね…。私もちゃんとしないと…」

食事中に、ふと肇が気づいた。

肇「もしかして、琴葉はこれを見越してしじみ汁に?」

琴葉「ええ。なんの料理を作ろうか迷っていたら、隣で美奈子さんがものすごい量の料理を作ってることがわかって、私はこれくらいにした方がいいかなって」

肇「そうだったんですね…。この味噌汁からはそういう琴葉の思いが伝わったきます…」

琴葉「も、もう…肇ちゃん。そんな恥ずかしいこと言わないで…」

最初は少しゴタゴタがあったものの、全員が無事完食した。
瑞樹と美優の教師2人は、少々食べすぎたようだが、甘いものは別腹と、食後のデザートはしっかりと食べていた。

瑞樹「ふぅ……では、この後それぞれの学校ごとに集まって、料理の感想と、改善点をまとめるように」

美優「明日の朝食後、お互いにまとめたものを発表して、意見を交換してもらいます」

瑞樹「まとめたら、それぞれの先生のところに9時半までに提出してちょうだい。提出できたら自由時間だけれど、遅くても11時には就寝するように。わかったわね?」

「「「「はい」」」」

美優「それでは、ごちそうさまでした」

「「「「ごちそうさまでした」」」」

PM8:00

肇たち不動高校のメンバーは、3階にある千早の部屋から階段を挟んで向こう側の空き部屋に集まっていた。
306号室から奥は個室ではなく2,3人用の大部屋となっており、瑞樹からその部屋を使ってもいいと言われていた。
見取り図を見る限り、2階も似た作りになっているようだ。

千早「それで…味噌汁はやっぱり出汁をもう少し工夫した方が……」

ゆかり「そういえば、食後の杏仁豆腐、美味しかったですよ」

千早「えっ?ええ、ありがとう。私はほとんど盛り付けただけだけれど…」

有香「そういえば、普通のお味噌汁ではなくしじみ汁にした理由はあるんですか?」

琴葉「えっと、それは私が好きだから……」

肇「……」

夕食の料理について意見が交わされる中、ここでも肇は1人考えていた。

琴葉「ねぇ、肇ちゃんはどう思う?」

肇「えっ?ええ、私もいいと思いますよ」

琴葉「もう…そうじゃなくて、私のしじみ汁の改善点を挙げるなら、って話よ」

肇「あ、えっと…私は琴葉の味噌汁は飲み慣れてますから特には……」

ゆかり「えっと…お二人はそういう関係なんですか?」

琴葉「た、ただの幼なじみってだけよ!」

有香「では、こんな感じでいいでしょうか?みんなで提出しにいきましょう!」

その後、肇たちは瑞樹にまとめたレポートを提出し、それぞれの部屋に戻った。


PM10:00

部屋に戻った肇は入浴後、寝巻きに着替え、ベッドに横になりながら考えていた。

肇(しかし…あの実城高校の妙な雰囲気はなんなのでしょう…?)

肇(何も……起こらなければ…いいん…です、けど……)

強烈な眠気に襲われた肇は、薄れゆく意識の中、そのようなことを思っていた。

─────────────


AM7:00

翌朝、目を覚ました肇は妙なだるさを感じていた。

元々、目覚めは良くない肇だったが、いつも以上に目覚めが悪かった。

なんとか身体を起こし、洗面所で顔を見て洗って着替える。

ちょうどそのタイミングで、部屋のドアがノックされた。

琴葉「肇ちゃん、起きてる?そろそろ朝食の時間よ?」

肇「起きてますよ、琴葉。今行きます」

肇は部屋を出て、鍵を閉めると琴葉と共に食堂へ向かった。


AM7:20

少し早めに食堂に着いた肇と琴葉だったが、食堂や調理室では、今朝の朝食を作るメンバーが慌ただしく準備をしていた。

琴葉「おはようございます」
肇「おはようございます」

瑞樹「あ、藤原さんと田中さん、もし手が空いていたら、お箸やお皿を並べるの手伝ってくれないかしら?」

琴葉「ええ、いいですよ」

肇「何かあったんですか?」

あまりにも慌ただしく準備をしている瑞樹たちを見て、肇が尋ねた。

瑞樹「それが、今日の朝食を作るメンバー全員が揃いも揃って寝坊しちゃってね。私も昨日は疲れてたのか倒れるように寝ちゃって、アラームもかけ忘れちゃったのよ」

琴葉「先生もだったんですか?私も昨日はお風呂入ったらすぐ寝ちゃって…」

肇「2人とも…ですか?」

自分を含め、多くの人が昨夜謎の眠気に襲われていたことを知った肇は疑念を抱いた。

その後、他のメンバーも着々と集まっていた時、美優が慌てて食堂に入ってきた。

美優「た、大変です!」

瑞樹「どうしたの?確か車に荷物を取りに行くって言ってたけど…」

美優「それが、私たちの車が誰かにいたずらをされたみたいで…」

瑞樹「何ですって?ちょっと、こっちはお願いね!」

肇「私も見てきます!」

瑞樹は琴葉と、朝食の準備をしているメンバーにそう告げると美優と共に外に停めてある車を見に向かった。

美優「これです!」

美優が示した先にあったのは、タイヤがズタズタになっている車だった。

瑞樹「2台とも4つのタイヤがまとめてズタズタね…。とにかく、合宿所の電話でJAFを呼んでみるわ」

美優「お願いします…」

そう言って瑞樹は合宿所に戻っていった。

肇「これは…斧か鉈のようなもので傷つけられていますね」

美優「わかるんですか?」

肇「ええ。切り口を見ればなんとなくは…。三船先生、この合宿所内に斧や鉈はありますか?」

美優「確か、この合宿所は料理部以外にもいろんな部活が使うので、外の倉庫にそういった道具が入ってると聞きましたけど…取ってきましょうか?」

肇「あの建物ですよね?」

美優「ええ。今鍵を開けますね」

そう言って、美優はダイヤル錠の番号を合わせ、鍵を開けた。

そして倉庫の扉を横に引いた。

美優「っ!きゃぁぁぁぁ!!!」

肇「っ!?」

肇たちが倉庫内で見たモノ。
それは血に染まった倉庫の床。
それにバラバラになった肉片。
そしてその真ん中にポツンと置かれた、佐久間まゆの頭だった。

本日はここまでになります。

次回は近日更新予定です。

>>2
主人公補正はありますが、本家のはじめちゃんくらいまではひどい目に逢うかもしれません。

大変お待たせしていてすみません。
ただ今より続きを投下します。

2.


AM7:40

美優「佐久間、さん…」

肇「とにかく、警察に電話を!」

美優「わ、わかりました!」

美優は合宿所の中へ急いで戻っていった。

肇「…?これは?」

肇が佐久間まゆの頭の側に、1枚の紙が落ちているのを見つけた。

肇「ハンバーグのレシピ…?」

血で汚れているが、どうやらレシピ本のハンバーグのページを切り取ったもののようだ。

さらには、その行程の内「タマネギをみじん切りにする」という部分にしっかりと赤い線が入っていた。

肇「これは…どういうことなのでしょう?」

AM7:45

肇が合宿所の中に戻ると、フロントの場所で瑞樹と美優が何かを話していた。

肇「どうしたんですか?」

瑞樹「それが、電話が繋がらないのよ!私がJAFに連絡しようとしたときにはもう…。モジュラーケーブルが抜き取られてるみたいで…」

肇「本当ですか!?それじゃあ携帯電話は…」

美優「ここは山奥ですから電波が…」

肇「それじゃあどうすれば…」

琴葉「何かあったんですか?」

騒ぎが聞こえたらしく、琴葉を始めとした生徒たちが食堂から出てきた。

肇「それは…今からみなさんにお話します。まずは食堂にいきましょう」

一行は食堂へ戻り、各々の席についた。
もちろん佐久間まゆの席だけは空いている。

かな子「あの…まゆちゃんがまだ来てないんですけど、もしかして体調不良とかですか?」

美優「それが……」

肇「…佐久間さんは亡くなりました」

「「「えっ!?」」」

肇の発言に、その場にいた全員が驚きの声を上げた。

響子「本当、なんですか?」

美優「ええ…私も見ましたから……。外にある倉庫の中に、佐久間さんの遺体があるのを…」

美奈子「倉庫の中って…?」

肇「佐久間さんは何者かに殺されたんだと思います」

有香「殺された!?」

千早「それって、この中にその犯人がいるっていうこと?」

肇「いいえ、それはまだわかりません。犯人が外部から侵入した不審者なのか、それとも、この中にいる誰かなのか」

智絵里「で、でも、もし本当にまゆちゃんが殺されちゃったんだとしたら、は、早く警察の人とか呼ばないと……」

瑞樹「それが、無理なのよ。合宿所の電話のケーブルが、予備も含めて盗まれてるみたいで。ここは山奥だから携帯電話の電波もダメ」

ゆかり「では、車で麓まで下りるというのは?」

瑞樹「それもダメ、ね。今朝みゆ、三船先生が車に忘れ物を取りに行ったら、タイヤがパンクさせられていたそうよ。ご丁寧に2台とも」

琴葉「そんな……」

有香「そ、それでは、少々危険ですが歩いて山を下るというのはどうでしょう?」

美優「無理ですよ」

昨日までの美優からは想像もできない冷たい声に、一同は押し黙ってしまった。

有香「そ、それは、どういうことでしょうか?三船先生……」

美優「昨日も言いましたけど、この辺りは霧が濃くて徒歩では危険なんです。それに山道も複雑ですし、ひとつ道を間違えれば断崖絶壁の上に辿り着いてしまいますよ」

千早「そんな……」

美優「もう、私たちに逃げ場なんてないんです。助けも呼べず、私たちは…」

瑞樹「美優ちゃん!!」

ぶつぶつと不安を煽っていた美優を、瑞樹が叱責した。

美優「…すみません。体調が優れないので部屋で休ませてください……」

と言って、美優は食堂から出ていってしまった。

肇「とにかく、これからは出来るだけ1人で行動しないこと、部屋の鍵はしっかり施錠することを心がけたほうが良いと思います」

響子「あの…なんで藤原さんが仕切ってるんですか?」

肇「あ、いえ、私はそういうつもりは…」

肇が退こうとしたその時、琴葉が立ち上がって言った。

琴葉「この肇ちゃんは、あの有名な名探偵『藤原雄助』の孫で、これまでにいくつもの事件を解決してきたんです!」

琴葉の発言に、肇本人や琴葉、千早以外のほぼ全員が「信じられない」といった表情をしている。

瑞樹「藤原さん、それは本当なの?」

肇「え、ええ。はい……」

響子「そういうことなら…藤原さん、突っかかってごめんなさい」

肇「いえ、私は気にしていませんから…」

瑞樹「とにかく、藤原さんの言う通りだわ。あと料理の披露会は中止ね。改めて言うけれど、部屋にはしっかり鍵をかけること、1人では出来るだけ行動しないことを心がけてちょうだい」

瑞樹がそういうと、ひとまずその場は解散となった。

AM10:40

肇は部屋で1人、考えていた。

なぜ佐久間まゆは殺されなければならなかったのか。
そしてなぜ犯人は、わざわざ佐久間まゆの身体をバラバラにしたのか。

肇「あ、そういえば…」

肇はふと思い出した。
今日の昼は、肇が料理を作る番であると。
披露会は中止となったが、さすがに先生たちだけで全員分の食事を用意するのは大変だろう。
しかも、美優は体調が優れないとも言っていた。
もしかすると、今瑞樹は1人で食事を作っているのではないか。
その考えに至った肇は、ベッドから起き上がると、貴重品を持って部屋を出た。

琴葉「あっ肇ちゃん」

肇が部屋を出ると、隣の部屋からちょうど琴葉も出てきたところだった。

琴葉「やっぱり肇ちゃんも行くんでしょ?食堂に」

肇「ええ。川島先生を手伝おうかと…」

琴葉「本当、変なところは真面目なんだから…。私も手伝うわ。肇ちゃん1人じゃ危なっかしいし」

肇「琴葉……」

こうして、肇と琴葉は2人で食堂へ向かった。

AM10:50

瑞樹「あら、手伝ってくれるの?」

肇「ええ、はい」

琴葉「披露順も、私たちの番でしたし」

2人が食堂の調理室に入ると、既に瑞樹が準備を進めていた。
肇が予想していた通り、瑞樹は1人だった。

2人が手伝いはじめて少したった頃、肇が瑞樹に尋ねた。

肇「あの、三船先生は?」

瑞樹「…しばらく1人にしてくださいって。大丈夫かしら。あの子、その、佐久間さんの遺体を直接見たんでしょう?」

肇「はい…そうですね」

瑞樹「私はまだ見ていないんだけれど、どんな状態だったか聞いてもいいかしら?」

その質問に対し、肇は一瞬悩んだ。
言ってもいいか尋ねるように隣の琴葉に顔を向けた。

琴葉「私なら大丈夫よ。肇ちゃん」

その答えを聞き、肇は口を開いた。

肇「その…ひどい有様でした…。倉庫の中は血まみれで、佐久間さんの身体はバラバラに切断されていました…」

美奈子「バラバラって…まるであのウワサ話じゃないですか!」

琴葉「きゃあ!」

調理室にいきなり美奈子が入ってきたため、その場にいた3人は全員驚いた。

美奈子「あ、すみません。驚かせるつもりはなかったんですけど…」

瑞樹「佐竹さん、どうしてここに来たのかしら?」

美奈子「私、今日のお昼ご飯の当番だったのを思い出したんです。すっかり忘れてて」

琴葉「そういえば、そうでしたね」

瑞樹「じゃあ、佐竹さんも手伝ってちょうだい。料理のほうはもうすぐ終わるから、食器類の準備ね」

美奈子「はい、わかりました!」

肇「そういえば、美奈子さん。昨日、実城高校の皆さんの雰囲気がよくないことについて、何か言いかけてましたけど、あれは何を言おうと?」

美奈子「あー、それですか。実は私もよく知らないんですけど、どうも私が料理部に入る前の去年、この料理部である『事故』があったらしくて…その結果、部員の1人が亡くなってしまったとか…」

肇「その『事故』というのは?」

美奈子「すみません。これ以上は知らないんです。他の部員の皆さん、特にあの4人は口が固くて…」

肇「そうですか。ありがとうございます」

美奈子「いえいえ、私にわかることだったら何でも聞いてください!今度、美味しい炒飯の作り方、教えましょうか?」

肇「あ、あはは……」

瑞樹「あの、2人で話してるところ悪いんだけれど、そのさっきの『ウワサ話』っていうの、私にも教えてくれないかしら?」

美奈子「あ、はい。えっとですね……」

美奈子は、昨日肇たちに話したのと同じ話を瑞樹にも話した。

瑞樹「うっ…。そんな話があったのね…」

美奈子「この事件も、『赤種美能』の呪いだったりするんでしょうか?」

肇「それは…恐らくないと思います」

琴葉「どうしてそう思うの?肇ちゃん」

肇「昨日の夜、寝る直前にとても強い眠気に襲われませんでしたか?」

瑞樹「そういえば…」
美奈子「私も…」

琴葉「みんなもだったの?」

肇「あれは、恐らく料理に睡眠薬が仕込まれていたんでしょう…。犯人が、犯行を邪魔されたさないために…」

美奈子「じゃあ、犯人は昨日料理を作っていた人の中に?」

肇「いえ、そうと決まったわけではありません。睡眠薬が料理に仕込まれていたとも限りません。例えばウォーターサーバーのところにある紙コップに仕込んでおく、という手もあります…」

琴葉「えっ?じゃああの紙コップは使わないほうがいいの?」

瑞樹「心配なら、新品のものに変えておくわよ」

肇「ええ。できれば、1人1人に手渡しで渡してください」

瑞樹「わかったわ」

美奈子「それで、昨日睡眠薬が使われたかもしれないっていうのはわかったんですけど、それが犯人にどう繋がるんですか?」

肇「犯人が睡眠薬を使ったということは、私たちの中に犯人がいるかもしれない、ということです。外部から侵入してきた人に、コップや料理の中に睡眠薬が仕込めるとは思いません…」

瑞樹「確かに、そうよね」

肇「そして、その根拠はもうひとつあります…。それは倉庫の鍵です」

琴葉「倉庫って、佐久間さんの遺体が入ってた?」

肇「そう…。あの倉庫にはダイヤル式の鍵がかかっていましたが、壊されていなかったんです…。つまり、犯人は普通に鍵を開けて中に遺体を入れ、そしてまた鍵を閉めたんです…」

美奈子「な、何のために…?」

肇「そこまではわかりません…。川島先生、倉庫のダイヤルの番号を知っている人は?」

瑞樹「そうね…。まず美優先生はもちろん、私も教えてもらって知っているわ。何かあったときに私があの倉庫を開けられないと困るからって…。あと、実城高校のメンバーは知ってるんじゃないかしら?」

美奈子「はい、私も知ってます。あの倉庫、他の部活でも使う道具とかも入っているらしくて、このセミナーハウスで合宿をやるって決まった時に教えてもらいました」

瑞樹「あ!あと、中野さんと水本さんも知ってるわね」

琴葉「あの2人も?」

瑞樹「ええ。昨日、自由時間にバドミントンをやりたいからって道具を一式貸したんだけれど、ラケットがひとつ破損していてね。美優先生に聞いたら予備が倉庫にあるって言ってたんだけれど、その時私も美優先生も、書類をまとめていて手が話せなくて、仕方なく鍵の番号を教えたのよ」

肇「なるほど…。番号を知らなかったのは私と琴葉と千早だけ、ですか…」

瑞樹「あ、もしかすると、如月さんも知ってるかもしれないわ」

琴葉「えっ?」

瑞樹「私が中野さんと水本さんに番号を教えてる時、2人のそばを如月さんが通りがかったのよ。2人が一緒にやろうって声をかけてたから。大きな声で言ってたわけではないけれど、特に気を使ったわけでもないから、もしかしたら、如月さんにも番号は聞こえていたかも…」

肇「そうなんですか…」

琴葉「じゃあ私と肇ちゃん以外の全員が知ってたってことですね」

瑞樹「さあ!料理もできたことだし、あとは並べましょ。他の子たちもそろそろ来るころじゃないかしら」

美奈子「そうですね!まずはお腹いっぱいにならないと、何事もやる気が出ませんから!」


肇たちが料理を並べていると、不動高校のメンバーが集まってきた。
しかし、美奈子を除く実城高校のメンバーは、時間を過ぎても食堂に現れることはなかった。
もちろん、美優の姿もない。

瑞樹「…まぁあんなことがあった後だし、仕方がないわね。来てない子にはサンドイッチの残りでも持って行ってあげましょう」

琴葉「あ、私も手伝います。川島先生」

瑞樹「助かるわ。お願いするわね」

PM1:30


食後、部屋に戻った肇は再び考え込んでいた。

肇「そういえば…」

そう呟くと、肇はズボンのポケットの中から、折りたたまれた紙を取り出した。

肇「ハンバーグのレシピ…ですね」

それは、まゆの遺体の上に置かれていた紙、ハンバーグのレシピの1ページであった。

肇「これには、一体何の意味が…?」

まゆがたまたま持っていたものが現場に落ちていただけなのか、もしくは犯人が何らかの意味を込めて残したものなのか、それすら今の肇にはまだわからなかった。

コンコン

肇が考え込んでいると、部屋のドアがノックされた。

琴葉「肇ちゃん、いる?」

肇「琴葉?いますよ」

肇は返事をすると、部屋の鍵を開けてドアを開いた。

肇「何かあったんですか?」

琴葉「さっき、実城高校の3人のところにお昼ご飯を持って行ったんだけど、その時に三村さんから話を聞いて…」

肇「三村さんから?」

琴葉「うん。三村さんたち、食堂を出た後に3人で集まって佐久間さんの遺体を確認しにいったみたいなの。それで3人とも体調を崩しちゃって、お昼は部屋から出てこなかったんだって…」

肇「そんなことがあったんですか……。恐らく、私の言う事が信じられずに、自分たちの目で確認しようとしたんでしょうね……。強く止めておくべきでした……」

琴葉「肇ちゃん……あまり自分を責めないで。もっと、いつもの肇ちゃんらしく、ね」

肇「そう、ですね。今は事件を解決することに集中します」

琴葉「うん。その方がいつもの肇ちゃんらしいわ」

その後、琴葉は自分の部屋に戻り、肇はまた1人で事件のことを考えていた。

PM6:25


その後は何事もなく日が沈み、肇と琴葉は食堂に来ていた。

昼食時に欠席していた実城高校の生徒も揃っていたが、1人だけ、美優だけは夕食時も欠席していた。

肇「川島先生、三船先生は…?」

瑞樹「美優先生はもう少し1人にしてほしいみたい。自分が受け持ってる生徒が殺されてしまって、相当参ってるみたいね」

実城高校の生徒も、元気な様子とは言い難かった。
それは不動高校の生徒たちも察しており、夕食中は全体的に暗い雰囲気となっていた。

肇「そうだ、川島先生」

瑞樹「うん?何かしら?」

肇「あとで、遺体の入っている倉庫の鍵の番号を変えておいてくれませんか…?昼間に、実城高校の皆さんが佐久間さんの遺体を確認しにいって、見てしまったらしく…」

瑞樹「あー、それであの子たち昼食の時に姿を見せなかったのね。わかったわ、あとで変えておくわね」

肇「お願いします…」

PM7:15


夕食を終え、肇が部屋に戻ろうとすると、廊下で声をかける者がいた。

智絵里「あ、あの…藤原さん…」

肇「緒方さん?どうしたんですか?」

智絵里「えっと…その…」

智絵里は何か言いたげだったが、迷っているようにも見えた。

智絵里「や、やっぱり、今はいいです…。あの…後で藤原さんのお部屋に行ってもいいですか?」

肇「ええ、構いませんよ。私の部屋は303号室ですので…」

智絵里「わ、わかりました……」

PM9:00


夜。

肇は自分の部屋で智絵里を待っている、のだが

肇「来ませんね……」

部屋に戻ってから、肇は風呂にも入らずに智絵里が来るのを待っていたのだが、一向に来る気配がない。

肇「そういえば、何時ごろに来るか聞くのを忘れてましたね……」

己の失敗を後悔する肇だったが、携帯の電波が届かず、そもそも智絵里の連絡先を知らない肇は部屋で待っているしかなかった。

しかし、その後消灯時間を過ぎるまで智絵里が現れることはなかった。

──────────

side???


「はぁ…はぁ…はぁ…」

私は、ここまで運んできた「それ」に土や葉っぱを塗れさせていく。

1人目は「みじん切り」

2人目は「こねる」

3人目は「成形」

…そして、4人目は「焼く」

目的の達成までは、もう少し。

私は一通り「それ」に土を塗れさせると、切り取ったハンバーグのレシピを「それ」の上に置いた。

「ふふふ……」

side??? end

──────────

AM5:45


肇「ん…?」


翌朝、いつの間にか寝てしまっていた肇は早めに目覚めた。

肇「…シャワーでも浴びましょうか…」

肇は、眠気を振り払うためにシャワーを浴びて、服も着替えた。


AM6:15


肇が化粧台で髪を乾かしていると、突然部屋のドアがノックされた。


ドン!ドン!ドン!


??「藤原さん!起きてください!」

激しいノックと切羽詰まったような声に、肇はすぐにドアを開けた。

肇「五十嵐さん?」

響子「あっ、藤原さん!」

肇「どうかしたんですか?」

響子「それが、大変なんです!えっと、食堂に犯人からのメッセージで!みんなで手分けして探していて!」

相当に慌てているのか、響子が言っていることはめちゃくちゃで、肇にはほとんど伝わってこなかった。

肇「お、落ち着いてください、五十嵐さん!」

響子「と、とにかく、食堂に行ってください!私は他の人を起こしてきます!」

肇「わ、わかりました!」

響子はそう言うと、千早の部屋に向かっていった。

肇は響子の言葉通り急いで一階の食堂に向かおうと階段を降りていった。

肇が二階まで降りた時、そこで誰かとぶつかりそうになった。

琴葉「きゃっ!」

肇「あ、琴葉!」

琴葉「肇ちゃん!」

肇「何があったんですか?」

琴葉「大変なの!食堂のホワイトボードに犯人からのメッセージで『次の調理場はこの屋敷のどこか』って!」

肇「本当ですか!?」

琴葉「うん!私と五十嵐さんでみんなを起こしてたんだけど、緒方さんが起きて来ないの!」

肇「えっ!?」

琴葉「とりあえず他の人は起こしたけど、緒方さんの部屋に入るには先生が持ってる鍵が…」

肇「は、早く行きましょう!川島先生はどこに?」

琴葉「多分一階で三船先生と他の部屋を見てると思う」

肇「なら一階に行きます!」

琴葉「私も行くわ!」

肇と琴葉は瑞樹を探すため、一階に降りていった。

AM6:20


一階に行くと、肇たちはすぐに瑞樹を発見した。

肇「川島先生!」

瑞樹「藤原さん!」

肇「今、琴葉と五十嵐さんから聞きました!先生も食堂に行ったんですか?」

瑞樹「ええ!だから今美優ちゃんと手分けして一階の部屋を探しているんだけれど」

琴葉「大変なんです!緒方さんがノックをしても起きて来なくて」

瑞樹「なんですって!?わかったわ。こっちは美優ちゃんに任せて二階に行きましょう!」

肇「お願いします!」


AM6:25


肇たちは再び二階に戻ってくると、肇たちに駆け寄ってくる者がいた。

かな子「あ!川島先生!智絵里ちゃんが!智絵里ちゃんがいないんです!」

瑞樹「わかってるわ、三村さん。今部屋の鍵を開けるわ」

かな子「はい!」

肇たちは、智絵里の部屋の前まで来た。

瑞樹「念のため、あなたたちはここにいて」

と、少し離れたところに肇たちを待機させる瑞樹。

瑞樹「緒方さーん、いるー?いるなら返事をしてちょうだーい!」

と言いながら部屋のドアをノックする瑞樹。

瑞樹「開けるわよー!」

一言かけてから、部屋のドアノブに鍵を差し込み鍵を開ける。

瑞樹「緒方さん!…えっ?」

部屋の中に入った瑞樹は、驚いたように声をあげた。

肇「どうしたんですか?」

それにつられて肇たちも中に入る。

瑞樹「緒方さんがいないわ!」

かな子「ええっ?」

琴葉「バスルームにもいないわ!」

肇「どこに行ったんでしょう」

瑞樹「とりあえず一階に戻りましょう。美優ちゃんとも相談しないと」

AM6:35


部屋を出た肇たちはそのまま一階へと向かった。

瑞樹「美優ちゃん!見つかった?」

美優「いいえ、誰も…」

瑞樹「困ったわね…」

美優「そちらは何かあったんですか?」

瑞樹「ええ。緒方さんがどこにもいないわ」

美優「そんな…!」

瑞樹「一階には誰もいなかったのよね?」

美優「はい…。食堂や調理室まで見てみましたけど、誰も…」

瑞樹「となると、あとは三階かしら?」

響子「先生!」

肇たちが一階のエントランス付近で集まっていると、響子が合流した。

美優「五十嵐さん」

響子「見つかりました?」

瑞樹「ダメね。一階も二階も探したけれど緒方さんは見つからないわ」

響子「智絵里ちゃんが?」

かな子「そうなの。智絵里ちゃんがどこにもいなくて…あとはもう三階くらいしか…」

響子「でも、三階でも見つかってないみたいですし…」

その時、階段から降りてくる人物がいた。

千早「なんの騒ぎかしら?五十嵐さんに起こされたのだけど」

琴葉「千早!」

響子「あ、如月さん、無理矢理起こしてごめんなさい!今、みんなで緒方さんを探してて…」

響子たちが千早に事情を説明している間、肇と瑞樹、美優の3人は智絵里の居場所について話し合っていた。

瑞樹「三階でもないとなるとあとは…」

その時、館内見取り図を見ていた肇が気づいた。

肇「三船先生!地下は!?ここに階段があります!地下があるんでしょう!?」

美優「そ、そういえば、他の部活で地下のホールを使うことがあるって…」

瑞樹「間違いないわ!行きましょう!」

肇「千早、琴葉、二階と三階にいる人を呼んできてくれませんか?私たちは地下に行きます!」

千早「わかったわ!」

琴葉「じゃあ、私は三階を見てくるわ!」

肇「任せました!」

AM6:45


肇たちは、一階の非常口側の突き当たりにある階段から地下に向かった。

そして、ホールの入り口と思われる扉の前に着いた。

肇「…開けます」

肇の言葉に、その場にいた全員が息を呑む。

キィィィという小さな音を立てて、扉が開かれた。

肇「…っ!緒方、さん…」

肇たちが見たものは、ホールの真ん中に横たえられた緒方智絵里の身体だった。

すぐさま肇が駆け寄り、脈を確認する、が

肇「ダメ、ですね。すでに亡くなっています」

響子「そんな…智絵里ちゃんまで…」

かな子「あ!あれを見てください!」

かな子の言葉とともに指差した右側の壁を全員が向いた。

美優「これって…」

その壁際にはホワイトボードが置かれていたが、そこには「メッセージ」が書かれていた。


"ワレハ シノ リョウリニン
ツギノ チョウリバハ ハヤシ"


瑞樹「これ、私たちが朝見たものとそっくりだわ!確かあの時も"シノ リョウリニン"って…」

響子「じゃ、じゃあこれは犯人のメッセージ…?」

肇「っ!次は林ですか…!」

肇が、降りてきた階段に向かって引き返した時、ちょうど琴葉たちが降りてきた。

琴葉「肇ちゃん!連れてきたわ!」

美奈子「智絵里ちゃんは!?」

肇「すでに亡くなっていました…それに犯人からのメッセージで"次は林だ"と」

千早「林って、合宿所の裏手にあるやつかしら」

有香「大変です!ゆかりちゃんがいません!」

瑞樹「なんですって!?」

肇「つまり彼女は林に…」

美奈子「探しに行きましょう!まだ間に合うかも!」

肇を先頭に、全員が階段を引き返し、非常口から外に出て林に向かった。

有香「ゆかりちゃーん!」

瑞樹「水本さーん!」

琴葉「は、肇ちゃん!あれ!」

琴葉が何かを発見し、肇を呼んだ。

肇「琴葉!…こ、これは…!」

琴葉の声で全員がそこに集まった。
その中には悲鳴を上げる者もいた。

肇たちが発見したもの。

それは山のように盛られた土の中に、顔を除いて埋められている水本ゆかりだった。

肇(私の前で、また2人も殺されてしまいました…)

肇が、拳をぎゅっと強く握る。

琴葉「肇ちゃん…?」

肇「この事件は、必ず私が解き明かしてみせます…!名探偵と言われた…おじいちゃんの名にかけて!!」

今回はここまでです。

次回の更新は、今回よりは時間が空かないように努めます。

必ず最後まで書き上げますので、どうかお付き合いの程、よろしくお願い致します。

>>40 訂正

AM5:45


肇「ん…?」


翌朝、いつの間にか寝てしまっていた肇は早めに目覚めた。

肇「…シャワーでも浴びましょうか…」

肇は、眠気を振り払うためにシャワーを浴びて、服も着替えた。


AM6:15


肇が化粧台で髪を乾かしていると、突然部屋のドアがノックされた。


ドン!ドン!ドン!


??「藤原さん!起きてください!」

激しいノックと切羽詰まったような声に、肇はすぐにドアを開けた。

肇「五十嵐さん?」

響子「あっ、藤原さん!」

肇「どうかしたんですか?」

響子「それが、大変なんです!えっと、食堂に犯人からのメッセージで!みんなで手分けして探していて!」

相当に慌てているのか、響子が言っていることはめちゃくちゃで、肇にはほとんど伝わってこなかった。

肇「お、落ち着いてください、五十嵐さん!」

響子「と、とにかく、食堂に行ってください!私は他の人を起こしてきます!」

肇「わ、わかりました!」

響子はそう言うと、有香の部屋に向かっていった。

肇は響子の言葉通り急いで一階の食堂に向かおうと階段を降りていった。

肇が二階まで降りた時、そこで誰かとぶつかりそうになった。

琴葉「きゃっ!」

肇「あ、琴葉!」

琴葉「肇ちゃん!」

肇「何があったんですか?」

琴葉「大変なの!食堂のホワイトボードに犯人からのメッセージで『次の調理場はこの屋敷のどこか』って!」

肇「本当ですか!?」

琴葉「うん!私と五十嵐さんでみんなを起こしてたんだけど、緒方さんが起きて来ないの!」

肇「えっ!?」

琴葉「とりあえず他の人は起こしたけど、緒方さんの部屋に入るには先生が持ってる鍵が…」

肇「は、早く行きましょう!川島先生はどこに?」

琴葉「多分一階で三船先生と他の部屋を見てると思う」

肇「なら一階に行きます!」

琴葉「私も行くわ!」

肇と琴葉は瑞樹を探すため、一階に降りていった。

>>41 訂正

AM6:20


一階に行くと、肇たちはすぐに瑞樹を発見した。

肇「川島先生!」

瑞樹「藤原さん!」

肇「今、琴葉と五十嵐さんから聞きました!先生も食堂に行ったんですか?」

瑞樹「ええ!だから今美優ちゃんと手分けして一階の部屋を探しているんだけれど」

琴葉「大変なんです!緒方さんがノックをしても起きて来なくて」

瑞樹「なんですって!?わかったわ。こっちは美優ちゃんに任せて二階に行きましょう!」

肇「お願いします!」


AM6:25


肇たちは再び二階に戻ってくると、肇たちに駆け寄ってくる者がいた。

かな子「あ!川島先生!智絵里ちゃんが!智絵里ちゃんがいないんです!」

瑞樹「わかってるわ、三村さん。今部屋の鍵を開けるわ」

かな子「はい!」

肇たちは、智絵里の部屋の前まで来た。

瑞樹「念のため、あなたたちはここにいて」

と、少し離れたところに肇たちを待機させる瑞樹。

瑞樹「緒方さーん、いるー?いるなら返事をしてちょうだーい!」

と言いながら部屋のドアをノックする瑞樹。

瑞樹「開けるわよー!」

一言かけてから、部屋のドアノブに鍵を差し込み鍵を開ける。

瑞樹「緒方さん!…えっ?」

部屋の中に入った瑞樹は、驚いたように声をあげた。

肇「どうしたんですか?」

それにつられて肇たちも中に入る。

瑞樹「緒方さんがいないわ!」

琴葉「ええっ?」

かな子「バスルームにもいません!」

肇「どこに行ったんでしょう」

瑞樹「とりあえず一階に戻りましょう。美優ちゃんとも相談しないと」

本日の更新は保守ついでに訂正のみです
続きは近日中に投下します。

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