【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―6― (465)

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・東部『王都へと続く街道』―

 ザッザッザッザッ

マークス「よもや、ここまで何の襲撃もないとは……」

レオン「小さな襲撃くらいあるものだと思っていたんだけど、思った以上に白夜軍の戦線は下がり始めているのかもしれないね」

マークス「やはり、王都の守備を万全に喫するつもりなのかもしれん。いずれにしても、行軍は先遣隊の索敵が済んでいるここまでだな」

レオン「そうだね。もう直に日も沈むし、行軍はここまでにして野営の準備に取り掛かろう」

マークス「うむ、カムイ、アクア。全軍に野営の準備に取り掛かるよう指示を出してほしい」

アクア「分かったわ。カムイ、行きましょう」

カムイ「はい、アクアさん。それじゃ行ってきますね、マークス兄さん、レオンさん」

マークス「ああ、よろしく頼む」

 タタタタタタッ

アクア「この調子でいけば、もうすぐ白夜王都の姿を見ることが出来るはずよ」

カムイ「はい、行軍も思ったよりスムーズに進んでいるみたいですから、予定よりは早く到着できそうですね」

アクア「ええ、ここまで白夜軍を見たという報告が無いのは引っかかるところだけど、今はそのおかげで進めているのだから」

カムイ「……やはり王都で私たちを待ち構えるつもりなんでしょうか」

アクア「状況を見る限りそうでしょうね。どちらにしても、王都での戦闘は避けられないとなると、望まない戦いも覚悟しておかないといけないわ」

カムイ「望まない戦いですか……」

アクア「……大丈夫、あなたならそんなものに負けたりしないわ。ここまでずっと戦ってきたことが、何よりの証拠よ。私が保証するわ」

カムイ「はい、ありがとうございます。アクアさん」

カムイ(望まない戦い……。私はそれが起きないことを心から願っています。もう、願うことしかできないとわかっているから……。でも、そうして願っているのは心のどこかで――)

(もう避けられないものなのだと知っているからなのかもしれません……)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1521469400

 このスレは、『カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?』の続きとなっています。

 最初の1スレ:カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」
 カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」 - SSまとめ速報
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 所々にエロ番外のある2スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2―
 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―2― - SSまとめ速報
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 アクアが暗夜兄妹と和解した3スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―3―
 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―3― - SSまとめ速報
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 タクミとの戦いが終わりを迎えた4スレ:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―4―
 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―4― - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1466084140/)

 スサノオ長城攻略戦が終わりを迎えた5スレ目:【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―5―
 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―5― - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1483807375/)

 個人妄想全開の暗夜ルートになっています。
 オリジナルで生きていたキャラクターが死んでしまったり、死んでしまったキャラクターが生き残ったりという状況が起きます。
 ご了承のほどお願いします。

 主人公のタイプは
 体   【02】大きい
 髪型  【05】ロング・セクシーの中間
 髪飾り 【04】ブラックリボン
 髪色  【21】黒
 顔   【04】優しい
 顔の特徴【04】横キズ
 口調  【私~です】

 長所短所には個人的趣味を入れ込んでいます。 

 長所  心想い【心を好きになる(誰とでも結婚できる)】
 短所  盲目 【目が見えない(ただそれだけ)】

 ※時々、番外編を挟むことがあります。
 番外の場合は『◇◆◇◆◇』を付けています。

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)

 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]

【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514~515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822]

【消滅した組み合わせ】
・ラズワルド×リリス
 C[1スレ目・490~491] B[1スレ目・892~893]
・ゼロ×リリス
 C[1スレ目・835~837]

仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]

【消滅した組み合わせ】
・ピエリ×リリス
 C[1スレ目・609~614] B[1スレ目・894~897] A[2スレ目・97~99]

◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王城クラーケンシュタイン『訓練場』―

マークス「リンカ」

リンカ「なんだ、マークス。また手合わせしたいのか?」

マークス「ああ、お前との剣戟は力強くてとても面白い。今まで相手にしたことのないタイプの戦士と言える」

リンカ「そうか。ふん、暗夜の王子が白夜の辺境部族の人間にそこまで言うなんてな」

マークス「戦場では身分など関係は無い。どんな名将であろうとも優れた力や技の前に倒れ伏すのは自然なことだ」

リンカ「そういうものか?」

マークス「そういうものだ。だからこそ、私はリンカの戦い方に興味を持った。あんなに敵陣へと突出しているというのに、戦い生還している様は驚嘆に値するものであったからな」

リンカ「そうか。で、そんなあたしと打ち合いをして何かわかったか?」

マークス「ああ、まだ確実とは言えるものではないがな。リンカ、お前はとても勇猛だ。それでいて攻撃の一撃一撃がとても重い」

リンカ「ふん、相手を一撃でのすのは戦闘の基本だからな。どんな相手でも最初の一撃さえ決められれば、どうということは無い」

マークス「ああ、そこがお前の強さの秘訣だと私は思っている。どんな敵だろうとお前は果敢に立ち向かう、その一撃で敵を倒してやるという気迫がお前の持つ刃からは感じられた。同時に、戦いでお前は生き残ろうともしている。私との剣の打ち合い、お前は最初の一撃以降は距離を取るために受けに回るだろう」

リンカ「相手の剣戟次第だ。マークスの剣戟の合間にあたしの攻撃は入らない。なら、仕切り直してもう一撃繰り出すのが一番いいからな」

マークス「そう言った状況判断をできることもお前の強さの一つだ。思った以上にお前の戦い方は豪快でありながら理に適っているのだと私は思った」

リンカ「……」

マークス「それが私の思い至ったお前の強さだ。どうだろうか、私なりにお前を観察して考えた答えなのだが……」

リンカ「さあ、どうだろね。それが答えかどうかに関しては何も言わないことにするよ」

マークス「むぅ、まだリンカの持つ強さの秘訣には届かないという事か」

リンカ「いや、届くとか届かないとかじゃないさ。あたしの強さはあたしの物で、マークスの強さはマークスの物さ。あたしの戦法を知ったところで、王子であるマークスがそれを行うわけにはいかないだろ?」

マークス「……それもそうだな。私が突然最前線に飛び出してしまえば、隊列が大いに乱れることだろう」

リンカ「だからあたしの戦い方をマークスが知る必要はないんだ。だけど、その分あたしはあたしの戦い方で役に立つつもりだよ」

マークス「なるほどな。しかし、結局教えてくれるわけではないという事か」

リンカ「勝手にそう思っててくれ。前から言ってるが、あたしが教える事なんて何もないんだからさ」

マークス「ふっ」

リンカ「ふふっ」

マークス「ではいくぞ、リンカ!」ダッ

リンカ「来い、マークス!」ダッ

【マークス×リンカの支援がAになりました】

◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・エリーゼの屋敷『エリーゼの部屋』―

カザハナ「エリーゼ王女」

エリーゼ「あ、カザハナだ! どうしたの、あたしのところに来るなんて」

カザハナ「えへへ、今日はエリーゼにいいもの持ってきたんだよ」

エリーゼ「いいもの?」

カザハナ「じゃじゃーん!」

エリーゼ「わー、すごい! これって花で作ったティアラだよね! あれ、でもこの花って……」

カザハナ「うん、エリーゼっていうんだよね。サクラ様の名前を聞いて花のことを言ってたから、エリーゼ王女と同じ名前の花があるんじゃないかなって思って調べて作ったんだ」

エリーゼ「そうなんだ……。だけど、桜と比べてちっちゃかったでしょ?」

カザハナ「うん。だけどとっても可憐でエリーゼ王女にぴったりな花だって思ったよ」

エリーゼ「え……」

カザハナ「エリーゼ王女は名前と同じこの花の事が嫌いなのかもしれないけど、その勿体ないって思うんだ。こんなに可憐で白くて綺麗なのに勿体ないよ。どうして、エリーゼ王女がこの花を嫌ってるのか、あたしわからないもん」

エリーゼ「えっと、別に嫌いってわけじゃないよ」

カザハナ「え?」

エリーゼ「その……、エリーゼって小さい花だから幼いイメージが強くて……。あたし本当はカミラおねえちゃんとかカムイおねえちゃんみたいな大人の女の人になりたいって思ってるの。だから、大きくて綺麗な名前の花に憧れみたいなのを持ってるんだ」

カザハナ「エリーゼ王女……」

エリーゼ「だから、別にそのお花の事が嫌いなわけじゃないの。ごめんね、変な勘違いさせちゃったみたいで……」

カザハナ「そっか、ならよかった。えへへ、あたしって結構早とちりしちゃうから。でも、だったらこのティアラを付けて少し大人の女になっちゃおう! あたしが作ったんだから、これを付けるだけでぐーんと大人っぽく見えるはずだよ」

エリーゼ「それじゃ、カザハナ。そのティアラあたしにつけてほしい」

カザハナ「いいわよ。それじゃ、失礼するわね」」

エリーゼ「よ、よろしくお願いします」

カザハナ「よし、これでいいかな?」

エリーゼ「え、えっと、どうかな?」

カザハナ「うん、とっても可愛いよ、エリーゼ王女」

エリーゼ「もう……、そこは大人っぽいっていってほしかったよー」

カザハナ「あ、ごめん……。つい、思ったことが口から出ちゃって……。えっと、とってもきれいだよ」

エリーゼ「ふふっ、ありがとうカザハナ」

カザハナ「どういたしまして、エリーゼ王女」

【カザハナとエリーゼの支援がAになりました】

今日はスレ立てと支援だけで

 リンカとマークスは斬り合いをしているうちに絆が生まれる気がする。
 
 カザハナとエリーゼは、花を通じての絆があるかなって思った。それとエリーゼ誕生日おめでとう。プレゼントは素朴なカチーフやで

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・王都へと続く街道『野営地・カムイの天幕』―

カムイ「今は何処くらいなんでしょうか?」

アクア「白夜王都まであと二日ほどというところね。こう大人数でなければ、一日もあればたどり着けるとは思うけど……」

カムイ「そうなんですね。でも、このような形で白夜王都に戻ることになるとは思ってもいませんでした」

アクア「そうね。あの日、強行派の人々に囚われて暗夜に送られた時、もう戻れないと覚悟していたのに、それが覆るなんて思ってもいなかったから」

カムイ「すみません、アクアさん。本当なら戦争が終わった白夜にもどってこられるはずだったのに、こんな形で白夜に戻ることになってしまって」

アクア「カムイが謝る事じゃないわ。それにそうやって弱気な考えをする癖は直しなさい。始まる前から気持ちで負けているなんて、話にもならないでしょう?」

カムイ「アクアさんには何でも御見通しなんですね」

アクア「何でもじゃないわ。感じたことをただ口にしているだけだもの、だけどそれをカムイがそうだと感じたなら、少しは見通せているということかもしれないわね」

カムイ「運命共同体だからですか?」

アクア「一蓮托生だからかもしれないわ」

カムイ「……」

アクア「……」

カムイ&アクア『ふふっ』

アクア「私は自分の天幕に戻ることにするわ、風邪を引かないようにね」

カムイ「はい、アクアさんも。白夜も今は寒い時期のようですから、十分に暖かくしてください」

アクア「ええ、それじゃね」バサッ

カムイ「……アクアさんには御見通しでしたか」

カムイ(気負けをしているのはわかっています。それがとてもよくないことだということも、少しでも前向きになろうとしてはいるのですが……)

???『お前の希望が絶望に変わって、王都で待っていることだろう』

カムイ(奴の言葉が頭から離れない。ヒノカさんを助けるためにしたことも、奴は簡単に絡め取っていった。私の願いを踏みにじるように……)

カムイ「……だめです。こんな風に考えたら奴の言いなりになっているようなものじゃないですか。あんなものを信じる必要なんてどこにもありません」

カムイ(少しだけ、体を動かせば、こんな気持ちも晴れるかもしれませんね)

カムイ「……きっと晴れますよね」チャキッ
 
 バサッ

 タタタタタッ

???「あれ……カムイ様?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―暗夜軍野営地『離れの草原』―

カムイ「はぁ! せやっ! たああっ!」ブンッ チャキッ バシュン

カムイ「はぁはぁ……。はぁはぁ……」

カムイ(何なんでしょうか、このモヤモヤした思考は……それを考えないようにしているのに。どうして、こんなにも奴の言葉が頭を巡るんですか……)

カムイ「もうすこし、続ければ――」

???「そんなんじゃ、いくらやってもやっても意味ないわ」

カムイ「え……?」クルッ

 ザッザッ

ルーナ「力みすぎてて、しかも我武者羅に振り回してるだけ。そんなの稽古にだってならないわよ」

カムイ「え、ルーナさん、どうしたんですか?」

ルーナ「どうしたんですか、じゃないわ。ちょっとあんたに用事があって天幕に向かったら、どこかに行っちゃうし。誰も護衛付けてなかったから、少し心配になって後を追ってきたってわけ」

カムイ「そうだったんですか。でも大丈夫ですよ、ここ周辺に敵はいませんから」

ルーナ「大丈夫になんて見えないって言ってるの! 気づいてないかもしれないけど、あんたかなりひどい顔になってるんだから」

カムイ「……そんな顔をしていますか?」

ルーナ「してる、見てて心配になるくらいにはね……」

カムイ「……そうですか」チャキンッ

カムイ「心配をかけてしまったみたいですね。すみません、ルーナさん」

ルーナ「まったく、あたしだけじゃなくてカミラ様だって見たら放っておかなかったわよ。あんな亡霊みたいな顔で剣なんて振るってたらさ」

カムイ「……亡霊みたい、でしたか?」

ルーナ「まぁね。っというわけでまずはその生気の抜けた顔を叩き直してあげるわ」

カムイ「叩き直す、ですか?」

ルーナ「ふふ、どうやって直すか知りたい? 知りたいでしょ?」

カムイ「いえ、別にルーナさんの手を煩わせるわけにはいきませんから」

ルーナ「そこは食いつきなさいよ。言い出したあたしが空しくなるじゃないの」

カムイ「ごめんなさい。えっと、何をしてくれるんですか?」

ルーナ「はぁ、最初からそう言ってくれたらよかったのに。まぁいいわ、ちょっとあたしの天幕まで来なさい」

カムイ「えっと、天幕でないといけないんですか?」

ルーナ「当たり前でしょ。だってこれから温まりに行くんだから」

カムイ「え?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 コポコポコポ……

ルーナ「はい、カムイ様」

カムイ「なるほど、紅茶ですか。これは確かに体が温まりますね」

ルーナ「思ったより白夜王都の周辺が寒かったから」

カムイ「そうなんですね。はぁ、カップがとても暖かいですね。それじゃ、いただきますね」ズズッ

ルーナ「え、っと、どう?」

カムイ「んっ、おいしいです。ふふ、体の芯から温まるっていうのはこういう事をいうんですね」

ルーナ「ふふん、あたしが勝った茶葉だから効き目がいいのは当然ね」

カムイ「ありがとうございます、ルーナさん。そう言えば、私に用事があるという話でしたけど……」

ルーナ「あ、そ、それね。えっと、わ、忘れたわ」

カムイ「え、忘れたって……」

ルーナ「い、いいでしょ。本当に忘れちゃったんだから! ほら、一人で長椅子占拠してないで、ちょっと詰めなさいよ」

カムイ「急かさないでください、今開けますから……。これでいいですか」

ルーナ「う、うん。それじゃ……」ギシッ

 ピトッ

カムイ「? ルーナさん」

ルーナ「か、勘違いしないでよ。天幕の中で紅茶も飲んでるけど、まだカムイ様が寒そうにしてるって思ったから、身を寄せてるだけなんだから。へ、へんなこと考えるんじゃないわよ」

カムイ「は、はい」

カムイ「……ルーナさん」

ルーナ「な、なによ」

カムイ「ありがとうございます」

ルーナ「べ、別にお礼を言われるようなことじゃないし、それに紅茶はあたしが準備してただけだし…」

カムイ「そうだったんですか、すみません。ルーナさんが楽しむ分を一杯分頂いてしまって」

ルーナ「いや、元々カムイ様を誘って飲む予定だったから、結果的には……あ」

カムイ「もしかして、先の予定というのは?」

ルーナ「……そうよ、そういうことよ! な、何か文句ある!?」

カムイ「いきなり怒らないでください。文句なんてあるわけないじゃないですか」

ルーナ「そ、そう……。なら、何も言わずに飲んで温まればいいのよ」ズズッ

カムイ「……はい」ズズッ

 カチャンッ

ルーナ「で、何を考えてたわけ?」

カムイ「何をというのは?」

ルーナ「ここは誤魔化すところじゃないと思うんだけど」

カムイ「すみません……」

ルーナ「まったく、それで、何があったの?」

カムイ「……奴の言葉が頭から離れないんです。そうなるかはわかるわけもないのに、それを心のどこかで恐れつつも、避けられないものだと思っている自分がいて……。白夜王都に近づいているからかもしれませんね。どんどん、色濃く私の中に刻まれていくかのように……」

ルーナ「……」

カムイ「アクアさんに言われました。戦いが始まる前から気負けしていては話にもならないって。その通りなのはわかっているんです。でも、漠然とした不安が心にはあって、それを拭えたらと思って剣を振っていたんです」

ルーナ「……そんな漠然とした不安なんて誰でも持ってるものよ。カムイ様だけが悩んでる事じゃないわ」

カムイ「でも、私がそれでは皆さんに迷惑が――」

ルーナ「はぁ、馬鹿ね。そういう風に悩んでるカムイ様だから、あたしたちは付いて行ってるの」

カムイ「え?」

ルーナ「どんなにすごい奴がいてもそこに人間味が無かったら、本当の意味で信頼されたりしない。あんたには純粋な強さもあるけど、それ以上に人間味があるるのよ。そういう、不安に思ったり悩んだりっていう人間らしさがね」

カムイ「……ルーナさんにもそういった不安や悩みはあるんですか?」

ルーナ「一番のあたしにそんなもの……あるに決まってるでしょ。これでも母さんとのことで色々悩んだりもしてきたし、今だって……」スッ

 ギュッ

ルーナ「悩んでるカムイ様にどんな言葉を掛けるべきなのかとか、これを言ったら嫌われるかもしれないとか。そういう不安で今にも押し潰されそうなんだから……」

カムイ「ルーナさん」

ルーナ「あたしもアクア様みたいに、カムイ様が考えてることを少しでもわかるようになれば……、こんな不安を抱えなくても良くなるのかな……」

カムイ「………」

ルーナ「……カムイ様?」

カムイ「……ふふっ」

ルーナ「?」

カムイ「ふふっ、うふふっ」

ルーナ「ちょ、何!? なんで笑うわけ? ここ笑うところじゃないんだけど!?」

カムイ「いいえ、ごめんなさい。もしかして、アクアさんに対してルーナさんがヤキモチを妬いているのかもしれないって思ってしまったら、なんだかおかしくなってしまって」

ルーナ「べ、別に妬いてないし! ああもう、なんで最後の最後でこうなっちゃうわけ!? 信じられないんだけど!」

カムイ「え、えっと、ルーナさん?」

ルーナ「はぁ、まぁいいわ。……それよりもさ」

カムイ「?」

ルーナ「その、どう、落ち着いた?」

カムイ「……はい。ルーナさんのおかげで、今は大丈夫になりました」

ルーナ「そっか、よかった。これで何も変わってないって言われたら、さすがにへこむわよ」

カムイ「思ったよりも効果はありましたよ、ルーナさん」

ルーナ「なによその言い方。まさか、あたしのサービスがこれだけだと思ってるんじゃないでしょうね?」

カムイ「え、まだあるんですか?」

ルーナ「ふ、ふん、見てなさいよ。今とっておきのサービスをしてあげるんだから!」パッ パッ

カムイ(なにやら膝上を手で払っているようですが。いったい何をするつもりなんでしょうか……)

ルーナ「よ、よし。か、カムイ様」

カムイ「はい、何でしょう?」

ルーナ「ここ、ここに頭を乗せなさい」

カムイ「……?」

ルーナ「……」

カムイ「えっと、ルーナさん?」

ルーナ「……は、早く乗せなさいよ。あ、あたしが膝枕をしてあげるって言ってるんだから」

カムイ「え、ええ……。それじゃ失礼して……」ポフッ

ルーナ「なんで頭を内側にしてんのよ!? 普通逆でしょ逆!」

カムイ「私はこれでも構いません。ルーナさんをとても強く感じられますから、むしろこの方が――」

ルーナ「感じないでよ! あああもう、それは禁止、さっさと反転しなさい!///////」

カムイ「サービスはどうしたんですか? って、痛い、叩かないでください」

ルーナ「うるさいうるさーい///////」ポカポカッ

カムイ「これでいいですか?」

ルーナ「そう、これでいいの。次に同じことしたらただじゃ済まさないから//////」

カムイ「はい、肝に銘じておきます。はぁ、このサービスすごくいいです。それにルーナさんの膝上、とっても暖かくて柔らかいです」サワサワッ

ルーナ「ちょ、手で膝を触らないでよ。くすぐったいでしょ//////」

カムイ「枕の感触って確かめたくなるものじゃないですか。それが膝枕だったらなおさらのことです」

ルーナ「そうやって開き直るのはどうかと思うけど。まぁいいわ。とりあえず、このままでいなさいよ」スッ

 ナデナデ

カムイ「んっ……はぁ……」

ルーナ「……えっと、気持ちいい?」

カムイ「はい……。ん、ふああああっ。ごめんなさい、はしたなかったですね」

ルーナ「大きな欠伸ね、もしかしたら素振りの疲れが出てきたのかも。疲れてるなら、このまま少し休んでもいいけど?」

カムイ「でも、今寝たら朝になってしまうかもしれませんよ? そうなったらルーナさんが寝られないかもしれません」

ルーナ「大丈夫、あたしの心配なんていいから。今はカムイ様のことが最優先よ。それに、今のあたしに出来ることはこれくらいなんだから」

カムイ「……なら、お言葉に甘えてもいいですか?」

ルーナ「さっきからそう言ってるでしょ。つべこべ言わずに、ゆっくり眠りなさい」

カムイ「はい、ルーナさん。少し休ませてもらいますね……」

カムイ「………」

カムイ「……すぅ……すぅ……」

ルーナ「すぐ寝ちゃった。まったく、悩みなんて抱えてないみたいに眠っちゃってさ……」

 ギュウッ

ルーナ「カムイ様。あたしのこともいっぱい頼っていいんだからね。アクア様みたいに的確ってわけじゃないけど、少しくらいなら力にだってなれるし」

「こうやって、一緒にいることだってできるんだから……」

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)

 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]

【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512]
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514~515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822]

仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]

今日はここまで

 ルーナが思ったより乙女チックになっている気がした……

 前スレの最後にあったレオン抜けの指摘、確認して頭を抱えました。今度は気を付けていこうと思います。

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◆◇◆◇◆◇
○カムイと話をする人物(支援A以外)

 ジョーカー
 フェリシア
 マークス
 ピエリ
 ゼロ
 ベルカ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 モズメ
 リンカ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>25

◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>26>>27

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)

 次に続きます。

◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・ブノワ×フローラ
・エリーゼ×ハロルド
・レオン×エルフィ
・アシュラ×サクラ
・ギュンター×ニュクス

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
・ラズワルド×シャーロッテ
・ブノワ×エルフィ

 この中から一つ>>28

(会話しているキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
 
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ
・ジョーカー×ハロルド
・ルーナ×カザハナ

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ

 この中から一つ>>29

 このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。

フェリシア
はわはわしてもいいのか!?

シャーロッテ

サクラ

・ブノワ×フローラ

ルーナ×カザハナ

◆◇◆◇◆◇
―星界・食堂―

サクラ「あれ、こんな時間に食堂の明かりがついています。誰かが消し忘れたんでしょうか?」

シャーロッテ「あれぇ、サクラ様じゃないですか。こんな時間にどうしたんですか?」

サクラ「あ、シャーロッテさん。いえ、明かりがついていてもうこんな時間なので誰かが火を消し忘れてしまったのかと思ってしまって、すみません作業の邪魔をしてしまって」

シャーロッテ「別に気にしてなんてないから。あー、でも来てくれて丁度よかったかもしれない」

サクラ「?」

シャーロッテ「実は今新しいメニューに取り掛かっててね」

サクラ「そうなんですか。シャーロッテさんの作るお弁当って見た目もいいですし、なによりおいしいって皆さん言ってます」

シャーロッテ「当たり前よ。愛敬と胃袋のダブルコンボで好印象を与えないといけないんだから」

サクラ「シャーロッテさんは本当にすごいです。私と話している時とまるで別人に思えますから」

シャーロッテ「うーん、褒められてるのかわからないけど、ありがと」

サクラ「それで、丁度よかったっていうのはどういう事でしょうか?」

シャーロッテ「ああ、それはこれの事なんだけど」

サクラ「わー、おいしそうなケーキですね。シャーロッテさんが作ったんですか?」

シャーロッテ「ええ、私に掛かればこんなの朝飯前だけど、まだ何かが足りない気がしてね」

サクラ「そうでしょうか? きちんとクリームも濡れていますし、果物の飾りつけも綺麗ですけど、味は……」

シャーロッテ「流石に見て分からないから食べてみて」

サクラ「え、いいんですか?」

シャーロッテ「もちろん、丁度よかったっていうのはそう言う意味、ねぇサクラ様、この新しいデザートなんだけど手伝ってくれない?」

サクラ「て、手伝いですか?」

シャーロッテ「そう、サクラ様には試作品を食べてもらって評価を出してほしいの。何が足りないのか、ちょっとわからなくて手詰まりになっててさ」

サクラ「私なんかで大丈夫でしょうか。その甘いものは好きですけど……」

シャーロッテ「好きなら問題ないって。で、受けてくれる?」

サクラ「わ、わかりました。その、出来る限り頑張ってみます!」

シャーロッテ「それじゃ、早速これをお願いね」

サクラ「は、はい。あむっ、ん~♪」

【シャーロッテとサクラの支援がCになりました】

◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・北の城塞―

ブノワ「フローラ、少しいいか…?」

フローラ「あれ、ブノワさん。もしかして遊びにいらしたんですか?」

ブノワ「いや、遊びに来たわけじゃない…。少し渡したいものがあった…」

フローラ「カムイ様にでしょうか?」

ブノワ「いや、フローラにだ…。これを…」

フローラ「……これはお守り? 見た所、手製のようですが。もしかしてブノワさんが作られたんですか?」

ブノワ「ああ……」

フローラ「ふふ、見た目に似合わず器用なことをされるんですね。とても効果がありそうです。ありがとうございます、ブノワさん」

ブノワ「フローラは……」

フローラ「?」

ブノワ「それほど薄情な人間じゃないと思う…。こうやって、俺が持ってきたお守りをちゃんと受け取ってくれる…。なによりも、こうやってお礼も言ってくれた…」

フローラ「……ふふっ、ブノワさんは単純な方なんですね」

ブノワ「そうかもしれない…。でも、俺がフローラを優しい人と思っていることは間違いないことだと思っている…」

フローラ「……こんなに面と向かって言われたのは初めてのことかもしれませんね。ふふっ、優しいという意味ではブノワさんの方がお優しいでしょう。私の言葉に目くじらを立てることもありませんでしたし」

ブノワ「馴れているからな…」

フローラ「熊を脅すことがですか?」

ブノワ「それは誤解だ…」

フローラ「冗談です。でも、こうしてお礼を言われて贈り物を頂けるのは、素直にうれしいことですね」

ブノワ「お前が喜んでくれるなら、俺は嬉しい…///」

フローラ「ふふ、少し赤くなって可愛らしい方ですね、ブノワさんは」

ブノワ「う……。それじゃ、渡すものは渡した…もう戻ることにする…」

フローラ「いいえ、そうはいきません。贈り物だけを受け取るだけでは、私が納得しません。まぁ、ブノワさんが本当に帰りたいのでしたら止めはしませんけど。もしかして、これから他に予定があるのですか?」

ブノワ「特に用事は無い…」

フローラ「でしたら、この前の約束通りおいしい紅茶を振舞わせてください。お守りを頂いた私からのお礼です」

ブノワ「ああ…。ふっ、互いに礼に礼をしてばかりだな…」

フローラ「そうですね。でも、こういった交流も悪くないと思いますよ」

ブノワ「そうだな…」

フローラ「ふふっ」

ブノワ「ふっ」

【ブノワとフローラの支援がAになりました】

◆◇◆◇◆◇
―白夜・イズモ公国『宿場』―

カザハナ「はぁ、結局、ルーナ浴衣着てくれなかった」

ルーナ「言ったでしょ、あたしの浴衣姿は安くないって。それに、なにか催し物考えて来なさいって言ったでしょ。何もないのに着る気はないわよ」

カザハナ「それはそうだけどさ。ほら、今そういう事行うのって、ちょっと違う気がして」

ルーナ「まぁ、それもそうよね。なんだかんだ戦争中なわけだし……。気が抜けてるって皆から怒られそう」

カザハナ「うん、だからさ。この戦争が終わって色々と落ち着いたら、一緒にお祭りに行かない?」

ルーナ「お祭り?」

カザハナ「うん、やっぱり浴衣って言ったらお祭りだもん。白夜でもね、季節によって行われてたからさ。きっと、落ち着いたら再開するはずだし…」

ルーナ「そう……。いつ再開するかはわからないのよね」

カザハナ「まぁね。でも、いつかはきっと再開するから、その時になったら一緒にお祭りに行こうよ。お祭りなら浴衣、浴衣と言えばお祭りなんだからね」

ルーナ「……そうね。楽しみにしてるわ。だけど、あたしの横を一緒に歩くんなら、そこら辺に叩き売りされてるような浴衣じゃ許さないから。カザハナにとっての一番の奴着てきなさいよ。それが最終条件なんだから」

カザハナ「うっ、そう来たか…。あたし、あんまり浴衣とか持ってないんだけど」

ルーナ「はぁ、なにそれ。あたしの拝んでおきながら、その返答は許されないわよ」

カザハナ「わ、わかったよ。その約束の日までにルーナが驚いちゃうような、すっごい浴衣を準備してみせる」

ルーナ「ふん、言ったわね。まぁ、驚かないで終わっちゃう気もするけど。あんまり期待しないで待っててあげるわ」

カザハナ「そこは期待して待っててよ」

ルーナ「分かったわよ。期待しておいてあげる。もっとも、あたしが一番なのは変わらないけどね」

カザハナ「ふーんだ。それが勘違いだってこと、思い知らせてあげるからね」

ルーナ「ふふっ」

カザハナ「えへへ」

【ルーナとカザハナの支援がAになりました】

今日は支援だけで

 サクラの夜食タイムが捗っていく。

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国東部・王都へと続く街道『野営地・カムイの天幕』―

カムイ「ん……。ううっ……」ガサゴソッ

カムイ「もう朝のようですね。昨日、ルーナさんの天幕で少し眠ってしまったというのに、存外眠りに着くのは早かった気がしますね」

カムイ(……ルーナさんに慰めてもらったおかげかもしれません。迷うことは人として何の間違いもないですか……)

カムイ「はぁ、参りましたね。こんなに皆さんにおんぶにだっこされているだけでは、示しがつきませんよね」ガタッ

カムイ(とりあえず、状況を確認しましょうか。まだ外が騒がしくないところを見ると、まだ時間はあるみたいですし……)

 タッタッタッ
 バサッ

フェリシア「カムイ様―、お目覚めですかー?」

カムイ「わっ!?」

フェリシア「はわわわ! あ、きゃー」ドタンッ
 
 バサァッ

カムイ「ご、ごめんなさいフェリシアさん。入ってくるのに気づかなくて」

フェリシア「い、いいえ。私の方こそ、カムイ様が外に出られるのに気づけませんでした。ごめんなさい」

カムイ「怪我などはしていませんか?」

フェリシア「はい、大丈夫です……、あ、ああー!!!」

カムイ「え、どうしたんですか?」

フェリシア「うう、カムイ様の着替えが地面に落ちてしまいました……」

フェリシア「うう、せっかく準備したのに……、ごめんなさいカムイ様」

カムイ「いいんですよ。ふふっ、なんだかフェリシアさんがこうして何か失敗しているところを見るのは、何だか久しぶりな気がします。なんだか城塞に戻ったような気持になります」

フェリシア「カムイ様、その言い方は酷いですよぉ。事実かもしれませんけど……」

カムイ「ふふっ、冗談ですよ。その服を改めて洗う必要はありません。このまま袖は通せますから」

フェリシア「え、でも……」

カムイ「フェリシアさんが私に準備してくれただけでもうれしいですし、今回の件は私にも落ち度がありましたから、フェリシアさんだけの責任ということはありませんよ。ですから、フェリシアさんに問題はありません」

フェリシア「わかりました。はぁ、カムイ様に気を使ってもらって、私はやっぱり駄目メイドです」

カムイ「そんなことありませんよ。フェリシアさんはちゃんとメイドとして、仕事をこなせていますよ」

フェリシア「ほ、本当ですか?」

カムイ「ええ。こうやって私に服を届けに朝早く来てくれていますし、それだけでも十分、私の役に立てています」

フェリシア「えへへ。そう言ってもらえると、とっても嬉しいです」

カムイ「ふふっ。フェリシアさんが城塞に来た当初に比べれば主らしくなったと思いますけど、まだまだ十分とは言えない状態ですから」

フェリシア「そんなことありませんよぉ。カムイ様は、もう立派な私のご主人様ですよぉ」

カムイ「だといいんですが……」

フェリシア「カムイ様?」

カムイ「私はここに来てようやく動き始めたばかりの人間です。今までは無関心にただ生きてきただけで、自分にも無関心で命のやり取りをする意味も、日々を過ごす意味も理解していなかった。何にも意味を見出すつもりなんてなかったんだと思います」

フェリシア「でもでも、カムイ様は皆さんのために一生懸命頑張ってます。私、ちゃんと見てるんですから!」

カムイ「フェリシアさん?」

フェリシア「ここに来てようやくなんてうのは嘘です。だって、最初に私が触れたカムイ様は私よりも小さくて、私よりも怯えてて震えていたんですから」

カムイ「あの頃は自分がなにをすればいいのか、どうすればいいのかわからなかったからで……」

フェリシア「でも、段々と私とお話しできるようになって、姉さんとも話ができるようになっていきました。それって成長してるって思うんです。どんなに些細な事でも、それがカムイ様の力になっているなら、それは成長しているんだって私は思います」

カムイ「成長ですか……」

フェリシア「はい、その成長に私も少しだけ力添えできたらなって、いつも思っているんです。あの日、カムイ様の手を握ってあげた時みたいに、カムイ様を支える力になれたらって……」

カムイ「フェリシアさん……」

フェリシア「でも、今日はカムイ様の気配に気づけませんでしたし、服は落としてしまいましたから、全然役に立ててませんよね……。全然支えられてないですよね……」

カムイ「うーん、それだけじゃありませんよ」

フェリシア「えええーーー!? まだ何かありましたか?」

カムイ「はい、こうやって私の話を聞いてくれたこと。そして、私を元気付けてくれたことを忘れていますよ」

フェリシア「……え?」

カムイ「ふふっ。フェリシアさんは私のことを一生懸命支えてくれています。だから、そんなに自分の事を卑下に扱わないでください。私は、いつも元気でこうやって支えてくれるあなたの事を頼りにしているんですから」

フェリシア「カムイ様……ありがとうございます」

カムイ「お礼を言うのはこちらの方ですよ。朝からこんな話に付き合わせてしまったんですから」

フェリシア「いいえ、カムイ様のお役に立ててうれしかったです。また、何かお話しがあったら私にしてくださいね。いっぱい力になりますから!」

カムイ「ふふっ」

フェリエシア「えへへ」

カムイ「そう言えば、他の皆さんは?」

フェリシア「まだ、多くの方は休まれてます。マークス様とレオン様は偵察から戻って来たゼロさんの報告を受けてます。もう、終わった頃だと思います」

カムイ「そうですか。私はそちらに向かいますので」

フェリシア「はい、わかりました。寝具は私が片づけますから、気にしないでいってらっしゃいませ、カムイ様」

カムイ「ありがとうございます、フェリシアさん」タタタタッ

 バサッ バサッ

フェリシア「……私の事を頼りにしてるって、カムイ様に言われてしまいました……」

 ソワソワ

フェリシア「はわわっ。とっても嬉しくて、なんだかとってもいっぱい動ける気がしてきました!」

 フンスッ

フェリシア「今日の私は一味違いますよ~。まずはカムイ様がお休みになられてたこの寝具を片付けちゃいますよ~」

 ガサゴソ ガサゴソッ

フェリシア「……んー」ギューーーッ

フェリシア(えへへ、カムイ様。まだまだ、私頑張りますからね)

フェリシア「よーし、これをもって……」

 ツルッ

フェリシア「あ、きゃああああああー!」ドンガラガッシャンッ!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―『野営地・作戦会議天幕』―

ゼロ「以上です」

レオン「それは本当なのかい、ゼロ?」

ゼロ「はい、先に王都周辺までたどり着いた部隊の情報ではありますが。このような話を聞き間違えるわけはないかと」

レオン「奴ら正気なのか。連中はそれがどういう意味かも分かっていないっていうのか?」

マークス「レオン、落ち着け。それで王都周辺の様子はどうなのだ?」

ゼロ「はい、特にこれといった戦線が作り上げられる様子は無いようで。おそらく、王都内部での決戦を目論んでいるのかと……。多くの民が王都に向かっていることから、何かしらの策を講じているのは間違いないと思われます」

マークス「そうか、わかった。幾ばくか休息を取れ、この先も長い行軍が続くだろう。それに、お前たちには動いてもらう必要があるからな」

ゼロ「分かりました。失礼します」シュッ

マークス「しかし、厄介なことになった。よもや、敵が本当にこのような決断をするとは……」

レオン「そうだね。正直、僕もこれは予想してなかったよ。だって、こんなの内部分裂の要因にしかならないじゃないか」

マークス「ともかくだ、この件を早くカムイに伝えなければ……」

 タタタタタッ

 バサッ バサンッ

カムイ「あ、マークス兄さん。レオンさんおはようございます。ゼロさんから報告を受けているという話でしたが、もう終わってしまったんでしょうか?」

レオン「カムイ姉さん……」

マークス「カムイ……」

カムイ「……あまりいい話では無かったようですね」

マークス「ああ、想定していた中でも最悪の部類に入るかもしれない」

カムイ「最悪ですか?」

レオン「うん、少しだけだけど、いい事もある。だけど……」

カムイ「……覚悟はできています。話してもらえますか?」

マークス「そうだな。お前にはすぐに伝えなくてはいけないと思っていたことだ」

レオン「そうだね。カムイ姉さんには伝えなくちゃいけないことだろうからさ」

カムイ「はい、それで何が分かったんですか?」

マークス「それは……」

カムイ「マークス兄さん?」

マークス「……ヒノカ王女は生きていると思われる」

カムイ「本当ですか!?」

レオン「どうにかしてスサノオ長城から王都まで逃げ延びたみたいだ。ゼロが持ち帰った報告を聞く限り、その可能性が高い」

カムイ「よかった、ヒノカさんは生きているんですね……。ちゃんと、生きて王都にたどり着けたんですね……」

カムイ(ヒノカさんは生きている可能性が高い、そうゼロさんの報告から……)

カムイ「……」

カムイ(……報告から?)

カムイ「レオンさん……今、ゼロさんからの報告を聞く限りといっていましたけど、それは一体どういう意味なんですか?」

レオン「……そのままの意味だよ。王都に到達した偵察隊はヒノカ王女の姿は見ていない」

マークス「さすがに内部に入り込むことはできない。ただ、ヒノカ王女が生きていること推測できる情報を手に入れた。それがゼロの報告した内容になる」

カムイ(どういうことですか。姿が見えないのに生きている可能性が分かる情報、確実性がある情報、そんなものは……)

カムイ「……まさか」

マークス「そういうことだ、カムイ」

レオン「正直、何かの間違いだと思いたいけど。この内容を聞き間違えるなんて正直思えない。おそらくだけど……」

カムイ「……ゼロさんからの報告された内容は、一体何だったんですか?」

マークス「……ゼロから報告があったのは、白夜周辺の敵陣地に関する情報、そして移動する民の情報、そして……数日以内に行われる予定のある人物の処刑に関する情報だ……。」

カムイ(……こんなに言われても、どこかで否定したい私がいる。でも、それを否定したところで今から聞かされる話が変わることは無いと、どこかで理解している私もいた)

レオン「カムイ姉さん……」

カムイ(わかっています。レオンさんだって信じたくないでしょう、マークス兄さんだって同じはずです。だから、私がその現実から目を逸らすわけにはいきません。だって、それが私の戦う現実なんですから)

カムイ「マークス兄さん、レオンさん。ヒノカさんなんですよね……」

「その……処刑される事になっている人が……」

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB+→B++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)

 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514~515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822]

仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]←NEW

今日はここまで

 絶望がカムイの願いを崩していく……

 エコーズの資料集発売されたけど、ifの資料集はいつ出るのか……
 
 この先の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◆◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
・レオン×エルフィ
・アシュラ×サクラ
・ギュンター×ニュクス

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
・ラズワルド×シャーロッテ
・ブノワ×エルフィ

 この中から一つ>>46

(会話しているキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
 
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・シャーロッテ×カミラ
・ジョーカー×ハロルド

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ルーナ×フローラ
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ
・シャーロッテ×サクラ

 この中から一つ>>47

 このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。

レオンエルフィ

おつ
ルーナ×フローラ

◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・食堂―

エルフィ「もきゅもきゅ……」

レオン「相変わらずすごい量を食べるんだね」

エルフィ「ん、レオン様。はい、訓練の後はお腹がペコペコなので。やっぱり訓練の後に食べるご飯はとっても美味しいです」

レオン「ははっ、料理番もエルフィの豪快な食べっぷりはすごいって言っていたからね」

エルフィ「だって、すごくおいしいから……////」

レオン「? 珍しいね、エルフィがワインを飲むなんてさ」

エルフィ「ワイン?」

レオン「それのこと……。ん、よく見るとワインじゃないのか。ごめん、赤いからワインだと思った。それはなんだい?」

エルフィ「ああ、これはトマトです」

レオン「と、トマト? 作ったスープを冷やしたのかい?」

エルフィ「いいえ、ただトマトを引き絞って果汁を出しただけの物です」

レオン「豪快な使い方をするね……」

エルフィ「はい、暖かいスープもいいのですが、今日みたいにハフハフしている料理にはこの方がいいと思って」

レオン「なるほどね。ところでそれって美味しいのかい? 正直果肉もないからおいしいのかどうかわからないんだけど……」

エルフィ「はい、おいしいですよ。よかったら少し飲んでみますか?」

レオン「いいのかい?」

エルフィ「はい、まだこのポットに入ってますので」

レオン「それじゃ、いっぱいだけ……ごくごく。驚くくらいすっきりしてるね」

エルフィ「わたしが力いっぱい搾りあげました。汁の一滴も出ないくらいに」

レオン「元のトマトは干からびてそうだね」

エルフィ「残ったものには塩を振って、少し焼いて食べました。そっちもおいしかったです」

レオン「そうなのか。それにしても思った以上においしいくて驚いたよ……。最初教えたのは僕だったけど、この発想は無かった。エルフィはすごいな」

エルフィ「いいえ、レオン様にトマトを紹介されたから出来たものですから。こんなにおいしいものと巡り合わせてくれてありがとうございます、レオン様」

レオン「そう言ってもらえてうれしいよ。ありがとうエルフィ、その……僕にもこれを作ってくれるかな?」

エルフィ「はい、任せてください、レオン様」

レオン「ありがとう、よろしく頼むよ、エルフィ」

【レオンとエルフィの支援がAになりました】

◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『地下市場』―

ルーナ「なによ、フローラの奴。たしかに、あたしが我武者羅に物を買ったせいかもしれないけど……」

フローラ「ルーナさん、自覚があるのでしたら直したほうがいいと思いますよ。無駄なものを買うことはあまりいい趣向とは思えませんので」

ルーナ「って、フローラ!?」

フローラ「ごきげんよう、ルーナさん。先日の買い物の品々は食卓に並んでいるんでしょうか?」

ルーナ「うっ、開口一番に言ってくれるじゃないの」

フローラ「ふふっ、あれほどの量ですから、本当に使用しているのか気になってしまいます。職業病みたいなものですよ」

ルーナ「なによなによ。あたしが買ったものなんだから、どう扱おうが勝手でしょ」

フローラ「そうですね」

ルーナ「なら気にしないでよ」

フローラ「ですが、先日私がいなければご自宅へ物を持って帰れなかったのも事実でしょう? すこしお手を貸しただけではありますが、そうして送り届けたものがどう扱われているのか、気になるのも仕方ないことです。ルーナさんも手伝った結果がどういうものになったのか、気になる事は気になるでしょう?」

ルーナ「そ、それはそうかもしれないけど……」

フローラ「まぁ、大方浪費癖で買っているようですし、部屋の隅に置かれているのかもしれませんけど」

ルーナ「う、うるさいわね!」

フローラ「むしろ、部屋に置き場があるのかも怪しいところですね。ちゃんと整理整頓はしていますか?」

ルーナ「し、してるわよ」

フローラ「本当ですか?」

ルーナ「……うっ、もういっぱいいっぱいです」

フローラ「思った通りです。まったく、要らないものは捨てるか売るかした方がいいと思いますよ」

ルーナ「い、いつか使う日が来るかもしれないし。お皿だって、いきなり数百枚が一斉に割れることがあるかもしれないし、あたしはそれを予感してるの」

フローラ「はぁ、浪費癖に収集癖。困難な癖を二つお持ちなんですね」

ルーナ「ふんだ、フローラだっていつかお皿をいっぱい買っておけばよかった……、みたいに思う日が来るんだから」

フローラ「多分ありませんよ。それに必要最低限のスペアは確保してますのでご安心ください。あ、ここ特売みたいですね」

ルーナ「え、本当。これってすごくお得ね! おじさん、これちょうだい!」

フローラ「ルーナさん、今は置き場が無いんですよね?」

ルーナ「作ればいいだけでしょ。この特売は今しかやってないんだから、この機を逃すわけにはいかないでしょ!? あ、それもちょうだい!」

フローラ「買ってから考えるを地で行く人なんですね。ふふ、困った人です」

ルーナ「わ、笑わないでよ、もうっ……」

フローラ「ふふふっ」

『ルーナとフローラの支援がBになりました』

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・王都へと続く街道『野営地・作戦天幕』―

サクラ「それは……本当なんですか、レオンさん」

レオン「ゼロからの情報だからね。どうしてこんなことを選択したのか、理解できないけど、現状ヒノカ王女は生きていて、先に起きたスサノオ長城での敗戦を理由に処刑されることになっているらしい」

マークス「恐らくは敗戦以外の理由もついて回るだろう。ヒノカ王女にここまで起きたすべての責任を押し付ける算段かもしれん。テンジン砦でリョウマ王子が提案していた和解の会合も、ヒノカ王女の指示であった言い出しかねない、そしてそれを煽って罠に嵌めたのが我々だという話になれば……」

カミラ「多くの人々がその発言に扇動されてしまえば、私たち暗夜に対しての全面的な戦闘は避けられないわ。言葉巧みに周辺の集落の人間を王都に集めているみたい」

エリーゼ「戦えない人たちに戦わせるってことだよね……。あの、マカラスの時みたいに」

アクア「ええ、私たち暗夜が白夜の人間すべてを虐殺しているという嘘で人々が狂気に駆られてしまえば、そうなってしまうわ」

カムイ「出来る事ならそれが浸透するよりも先に、王都にたどり着くことが出来ればいいのですが」

マークス「少数先鋭で向かえば可能だろう。しかし、わずかな数で挑むことは難しい。向こうはこちらの挑発に乗ることなく、王都での籠城戦に備えるはずだ。少数先鋭で忍び込むにしても、囮となる正面戦闘無しに攻略は不可能だろう」

レオン「もう少し行軍の速度を上げてみるけど、早くなっても半日程度だね。その間にヒノカ王女の処刑が始まってしまう可能性もある。こればっかりは向こうの動きが無いことを祈るしかない」

カムイ「歯痒いですね、ヒノカさんの処刑が行われないことを祈るしかないなんて……」

サクラ「王都に集まった民の方々も戦うつもりでいるんですよね……。出来れば戦いたくないとこちらが思っていたとしても……」

レオン「おそらくはね。僕たちに殺されるくらいなら……戦って死ぬことを選ぶ可能性は十分にある。もっとも、少なくない人々は戦いたくないと思ってくれているのかもしれないけど、おそらくは少数だから抑え込まれる。おそらく、もう白夜王都の準備は着々と進んでいるはずだ」

カミラ「現状では戦うしかないと、覚悟を決めるしかないわ」

カムイ「認めたくありませんが、それを前提に戦いに向かうしかないでしょう」

アクア「厳しい戦いになるわね。誰にとっても……」

マークス「ああ……」

カムイ「……ここで待っていても仕方ありません。王都へと急ぎましょう、可能性がわずかにでもあるなら急ぐ価値はあります」

マークス「ああ、よし、これより行軍を再開する!」

カムイ(……ですが、王都へはまだ最低でも一日は掛かる。正直、間に合うとは思えません。多くの方々が、自身を守るために戦うことを選んでしまうはず。それを批判する権利は私にあるわけもありませんから……)タタタタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・王都『中央広場』―

白夜の民「それに応じるつもりはない」

白夜兵「貴様ら、今何と言った!?」

白夜の民「言っただろう。わしらは応じるつもりはない、戦争するならあんたたちだけでやってくれと言っているんだ」

白夜兵「貴様らはスサノオ長城での一件を耳にしていないのか!? 多くの同胞が戦ったが、暗夜軍によって虐殺されたんだぞ?」

白夜兵「そうだ、やつらは無抵抗な兵も手に掛けた獣、いや化物だ。そんな者たちを相手に対抗しないで貴様らは死を待つというのか!?」

白夜兵「すでに兵を向かわせて戦線を作り上げている。お前たちが加われば――」

白夜の民「ここまでの道中で、お前さんのような兵士とすれ違ってなどおらん。唯一わしらの村の前に来たのは『暗夜の悪魔が迫っている、王都へ避難せよ』と伝えに来た使いだけだ。お前さんの言う、その兵というのはその使いの事か?」

白夜兵「っ!」

白夜兵「貴様、我々を愚弄する気か!? お前たちも国賊であるヒノカ王女と同じように処刑されたいのか!?」

白夜の民「ならば処刑するか?」

白夜兵「なっ!?」

白夜の民「いいとも、処刑するがいい。安心せい、ここにおるのは各村の代表ばかり、ここでわしらを殺したら待っている者たちには城の中に招いているとでも伝えておけ。どうせ、この戦いに身を投じるように話されることくらいわかっていた。まぁ、わしらも命惜しさに王都まで来たのは事実だ。暗夜に蹂躙されるかもしれない可能性を考えれば、こうして逃げてくることしかできなかった」

白夜兵「では、なおさら戦わなければ生き残れは――」

白夜の民「だがな、もうわしらは疲れた。戦う事にも、それに怯える事にも。あの日、言われるがまま暗夜に手を貸した裏切り者として多くの者を死地に追いやった。そんなわしらに生きる資格があるのか、あんたらは胸を張って堂々と資格があると言えるのかね?」

白夜兵「だ、黙れ! いいか、暗夜軍はいずれここにやってくる。それまでに各々の民に武器を持たせ、心構えを付けさせよ。我々が負けるわけにはいかないことを忘れるな!」タッタッタッ

白夜の民「……我々か、白夜とは口にせんのだな……」

白夜の民「おい、これからどうすればいいんだ?」

白夜の民「なに、もうなるようにしかならんさ。暗夜からやって来た連中が化物なのかどうかはさておき、今のわしらにはあまり意味のない事だよ。もう、王都正面の門は閉ざされておる。よもや出ていくにも出ていけん」

白夜の民「くっ、ここで死んでいくしかないっていうのか? 王都の備蓄だって、やって来た俺たちを養うにはとてもじゃないが足りないだろう。このままじゃ……」

白夜の民「……悲観しても仕方あるまい。今はそれぞれの場所に戻って、今の話を掻い摘んで話しておくとしよう。戦う意思がある者にはそれを尊重させる以外に手は無い。白夜はこれで終わりだろう……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―シラサギ城『廊下』―

白夜兵「以上が報告になります」

上級武将B「わかりました。ユキムラ様には私たちから報告しておきますので、下がってください」

白夜兵「はっ!」

 タタタタタッ

上級武将B「ふむ、あまり感触は良くないということですか」

上級武将A「ど、どうなっているんだ? 多くの民は暗夜を恐れてここに集まったというのに、なぜ命を賭して戦うと決断せん!? このような数が戦力にならないのなら、ただただ物資を減らすだけではないか!?」

上級武将B「安心しなさい、どうせ戦う時が来れば死にたくないと武器を取りますよ。それにヒノカ王女の処刑の件、おそらく向こうの敵にも知れ渡っている事でしょうから、血相を変えてやってくることです。その姿を見れば生き残る事など不可能だと知り、武器を手に取ってくれる。それにあのカムイ王女と共にいる暗夜軍も、彼らとの戦闘は覚悟しているでしょうからね。彼らは乾燥した枯れ葉のような物、小さな火の粉であっという間に燃え広がることでしょう」

上級武将A「誰かが一人殺されれば、蜂の巣をつついたように皆攻撃に転じると?」

上級武将B「まぁそれが理想的です。もっとも、攻撃を避けるための盾くらいにはなってくれるはずですから、それで手打ちとしましょう」

上級武将A「それくらいの役に立ってもらわなくては困る。しかし、ヒノカ王女処刑の件がこれほど急速に広まるとはな」

上級武将B「ええ、思ったよりも鬱憤の溜まっている方々が多いようで。王族に仕える方々も減ってきている以上、不安に押しつぶされそうになればこうなります。おそらく、ユキムラ様も分かっていたことでしょうが」

上級武将A「ああ、しかし王族に仕えていた者たちに何かしら動きがあると思ったが、素直で落ち着いてやがる。思ったより忠儀などなかったのかもしれねえ」

上級武将B「まぁ、そんなものだということです。状況を見て旗色を変えるのは恥ずべき行為じゃありませんから」

上級武将A「しかし、あれをあのまま殺してしまうのはもったいないとは思わないか?」

上級武将B「おやおや、資源の有効活用をしたいと?」

上級武将A「どうせ殺すなら手の届かなかったものに手を触れたって罰は当たらないだろ? あれでも王女なんだ、それなりに愉しませてくれるはずだ。最後まで戦う俺たちに細やかな褒美があってもいいだろ?」

上級武将B「まったく、あなたは。まぁ、許されるなら触れておくのも悪くないでしょうねぇ。さぁ、ユキムラ様に報告に行きましょうか。残っている集落の人間は王都に到達したこと諸々を」タッタッタッ

 ………

 シュタッ

サイゾウ「……っ」ギリッ

サイゾウ「……ゲス共め、このような所でもお構いなしにそのような話をできるとはな」

サイゾウ(ここ数日の間に、多くの民がやってきたのはそう言う事だったか。しかし、思ったより戦意が上がっているわけではないようだ。いや、むしろ人数が増えるにつれてそれは明らかに下がっている。それもそうか、もうここにいる兵の数などたかが知れている。たとえ都が守られているとしても、テンジン砦にスサノオ長城を続いて落として来た敵が相手となれば、安心も何もあったものではないか……)

サイゾウ「……皮肉なものだ。多くの人々を死地に追いやり生き残った者たちが、今一番の地獄を見ているというのはな」

 カタンッ カタンッ

サイゾウ「む?」

カゲロウ「サイゾウ、ここにいたか」

サイゾウ「カゲロウか。無理して出てくることは無い、部屋で休んでいろ」

カゲロウ「部屋にいても息が詰まるばかりだ。それに今は何をしていても、心が安らぐこともない。すまないな、こういったことは私も手伝うべきことだというのに、もう走ることも叶わない。リョウマ様の臣下だというのに面目も何もあったものではない」

サイゾウ「いいや、リョウマ様はお前が生きて戻っただけでも十分に満足していた。俺たちは報われている、主からこんなにも身を案じてもらえているのだからな」

カゲロウ「そうだな。リョウマ様にはあのような窮屈な場所にいてもらいたくはないが、下手に事を動かすことはもうできなくなった。ヒノカ王女の暗殺の件は、思いのほか多くの者を慎重にさせてしまった……」

サイゾウ「カゲロウ、お前は今の状況をどう思う?」

カゲロウ「都全体に広がっている不安は収まる気配が無い。それに、あと数日もすれば王都での生活は立ち行かなくなるだろう。食料などの物資を考えると、王都へと逃げてきた民すべてを繋げるものではない、かといって食料の配給を制限し続ければいずれ反乱がおきる。……いや、暴動といったほうがいいかもしれないな」

サイゾウ「奴らもそれを気にしていた、ユキムラはこのことを理解していると思うか?」

カゲロウ「理解しているからこそ、リョウマ様の返答を待っていたんだろう。今回の一件はユキムラが始めたことではない様だ」

サイゾウ「やはりそうか……。ユキムラはヒノカ様を処刑するつもりはなかった。おそらく、リョウマ様がカムイ様を討つと言われるまで待つつもりだった。ここでヒノカ様の処刑を宣言したところで、士気が上がるわけもないからな」

カゲロウ「一部の者たちは違うようだ。それも恥知らずな魂胆を胸に秘めている。ヒノカ様の周囲に多くの者を当たらせた、正直ミタマだけでは心細い」

サイゾウ「ミタマか……。結局、ヒノカ様の臣下は戻ってこなかった。セツナとアサマはおそらくもう死んでいるだろう」

カゲロウ「どうにか王都にたどり着いた兵は見えない敵に襲われたと、そして死体を攫って行くとも言っていたらしい」

サイゾウ「死体を攫って何をする気なのかはわからないが、おそらく多くの骸が見つからないのはそれが原因だろう。アサマとセツナの仏が見つかっていないからと生きていると考えることはできない」

カゲロウ「その不気味な話を聞いて、兵はこの王都に閉じこもっている。もう籠城以外の戦いを彼らは望まないだろう。もう敵の侵攻を止めることは出来なくなった……」

サイゾウ「恐らく、多くの民がこの戦いに駆り出されるだろう。多くが意味もなく死ぬことになる、そんな戦いにな」

カゲロウ「カムイ様はそんな戦いを望まれていると思うか?」

サイゾウ「……本来なら敵の事など気にはしない。それが非戦闘員であるかは二の次だ、敵がこちらを殺すつもりなら、手を抜くことなどありはしないだろう」

カゲロウ「……」

サイゾウ「だが、あの王女は少し変わっている。それはカゲロウも分かっていることだろう? 俺は復讐を優先したのに対して、あいつはお前を助け出すことを優先した。そして、あの王女と共に戦う者たちはその願いに報いるために協力する。あの王女はその最悪を覚悟しつつも、多くを助けようとするのかもしれん」

カゲロウ「カムイ様はそういうお方だからな。しかし、今リョウマ様の次に最も信用できるのが、多くが裏切り者とするカムイ様というのは不甲斐ないな」

サイゾウ「裏切り者に変わりはない。あいつは白夜を裏切り暗夜に属したことは、変わらない事実だ。だが、その通りかもしれん。ここは、誰かを信頼するには狭すぎる」

カゲロウ「……ああ」

サイゾウ「……ところで、リョウマ様は」

カゲロウ「ヒノカ様の処刑の報より、しばらく一人にしてくれと……」

サイゾウ「そうか……。俺はミタマとヒノカ様の様子を見てくる。カゲロウはどうする?」

カゲロウ「私も一緒に行こう、今は少しでも信頼できる者たちの傍にいたい」

サイゾウ「そうか……。肩をかそう、掴まれ」

カゲロウ「すまない…」

サイゾウ「気にするな」テトテトッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―シラサギ城『ヒノカの寝室』―

ヒノカ「……すぅ……すぅ」

ミタマ「もう、夕方……毎日毎日鬱屈になりそうな話ばかりで気が滅入ってしまいますわ」

ミタマ(ヒノカ様が処刑されるという話。まだ本人の耳には入っていないと思いますが、それも時間の問題でしょう。いずれは、何処からかその話が……)

 コンコンッ

ミタマ「誰ですか?」

サイゾウ『サイゾウだ、カゲロウと共に部屋の前にいる。ミタマ、今は大丈夫か?』

ミタマ「サイゾウ様にカゲロウ様? 少々お待ちください」テトテトッ

 スーッ

ミタマ「どうかなさいましたか? まさか――」

サイゾウ「いいや、悪い知らせは特にない。安心しておけ」

ミタマ「はぁ、そうでしたか。安心いたしましたわ。では、どういった要件で?」

カゲロウ「ああ、少しだけヒノカ様のお顔を拝見しに来た、リョウマ様にも報告しなくてはいけないからな」

ミタマ「そういうことでしたか。どうぞ、特に用意できるものもありませんが」

サイゾウ「特に問題は無い、失礼するぞ」テトテトッ

ヒノカ「……すぅ……すぅ」

カゲロウ「思いのほか、安定しているのだな」

ミタマ「はい、先ほど薬を与えました。こうして薬が効いている間はいいのですが、薬が切れると悪夢に苛まれてとても辛そうにされます」

サイゾウ「体の傷は癒えても、心の傷まではどうにもならないか……」

ミタマ「残念ですけど、その通りですわ。それに薬の処方にも限界があります、過剰な投与による副作用もありますから、ずっと安心させ続けることはできませんわ」

カゲロウ「そこはヒノカ様の精神力を信じるしかない。私たちにはそれを見守り支える以外に手は無いからな」

ミタマ「はい……」

サイゾウ「出来るなら、穏便にことが終わることを望みたいが、楽観的に考えることもできないだろう。周囲の警備に力は注いでいるが、ミタマも気を抜かぬよう事に当たれ」

ミタマ「もちろんそのつもりです。でないと、夢の中でアサマさんにいつもの顔でチクチクと責め立てられてしまいますし、なによりカムイ様が報われませんわ」

ミタマ「あの方は自軍を犠牲にしてまでヒノカ様を助け出そうとしてくれた。敵同士なのですからそんな考えは捨ててしまえばいいのに、多くの人々を助けるために剣を振るっていましたわ。それが実を結んだのでしょう、一度は壊れてしまったはずのアサマ様にセツナ様、そしてヒノカ様を崩壊の淵で止めてくださいました」

サイゾウ「……そうか」

ミタマ「本当なら、ヒノカ様はまだアサマ様やセツナ様と共にここにいたはずなのに。わたくしが不甲斐ないばかりに」

カゲロウ「ミタマ……」

ミタマ「……すみません、湿っぽい話をしてしまいましたわ。ともかく、カムイ様が再びヒノカ様にお会いするまで、命を賭けてお守りするつもりです。この命は少なくとも、そのためにあるべきだと今は思いますから」

サイゾウ「ふっ、リョウマ様にヒノカ様を任されただけはあるようだな。あの不真面目な僧と同じ場所の出だと聞いてはいたが……」

ミタマ「おほめに預かり光栄です。でも、わたくしもそれほどまじめではありませんわ。安眠が ほしいだけなの 本当は」

サイゾウ「なるほど、思ったよりアサマの周辺にいる僧は一癖二癖ある者ばかりだったようだな。人は見かけによらんといういい例だ」

ミタマ「理解してもらえて嬉しいですわ。でも、今はヒノカ様がゆっくり眠れるよう見守ることが使命……。いいえ、わたくしがそうしたいと純粋に思ったことだからかもしれません」

サイゾウ「そうしたいと思った……か。俺たちのように任務に従事するものにはあまり縁のない結論かもしれんな」

カゲロウ「縁はあるだろう。とくにサイゾウ、お前は熱くなると自身のするべきことを優先する性質だったはずだ」

サイゾウ「むぅ……」

カゲロウ「ふふっ、ミタマよ、引き続きヒノカ様の傍にいてやってくれ。こちらも時間があるときは顔を出すつもりだ」

ミタマ「お気になさらず、その時が来るまではヒノカ様の傍を離れるつもりはありませんので、ご安心くださいな」

サイゾウ「よろしく頼む。カゲロウ、行こう」

カゲロウ「ああ……」

 スーッ スーッ パタンッ

ミタマ「……都には多くの民が溢れていて、物資の底が見えてきてる。このまま、カムイ様たちが現れなければ、もっと凄惨なことが起きてしまうのかもしれませんわ」

ミタマ(それに、ずっとヒノカ様は待っているんですから)

ミタマ「……ヒノカ様、カムイ様が来るまでゆっくりお休みください。必ず、あの方は来てくれます。きっと、来てくれますわ」ナデナデ

ヒノカ「ん、……すぅ……すぅ……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―シラサギ城『地下牢』―

リョウマ「……もう、出来ることはないのかもしれない……」

リョウマ(処刑か、これはユキムラの考えではないだろう。あいつはここでヒノカを処刑したところで意味がないことをわかっている。スサノオ長城での戦いで、ヒノカが戦死したのならその死には意味が生まれたはずだ。だが、今になって敗戦の責任で言い争う必要などどこにもない。敵は向かってきている、それを考えればこうして内輪で言い争っている暇などありはしない)

リョウマ(……どこで歯車が狂ったのか。いや、そんな過ぎたことを考えても仕方ない。もう、起きてしまった出来事の原因はすべてが終わってからでないと、教訓にすることさえできないのだから)

リョウマ「ふっ、教訓か。俺は何一つとして、成し得ることがなかったというのに、教訓も何もあったものではないな」

リョウマ(……もう、この戦いの終わりは見えている。もうすべての民を生かしつづけられるほどの物資は王都にはない。ただ、数を増やすためだけに送られてきた彼らに、戦闘を強いたところで意味などありはしない。ユキムラはそれをわかっている)

リョウマ「……」

リョウマ(だからこそ、俺にカムイを討つという選択をさせたかったはずだ)

リョウマ(カムイを討つ。それがヒノカを救える唯一の方法で、ユキムラが望む答えだろう。結局、この選択で流れる妹の血はカムイの血でしかない……。ヒノカが死んだところで意味などないし、逆に生きている事にこそ今は意味がある。それを理解しているからこそ、ユキムラは俺の答えを待ち続けたのかもしれない……)

リョウマ(だが、それを待つことはなくなった……。すべての選択は否定され、終わりまで狂い続けて落ちていく以外の道は消え去った…)

リョウマ「……俺はどうすることが最善だったんだろうか」

リョウマ(もう、その問い掛けに答えてくれる者はいない。そして――)

(もう、先を示してくれるものも見えなくなってしまった……)

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)

 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514~515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822]

仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50]←NEW

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]

今日はここまで

 暗夜編のリョウマは、多分ずっとカムイが離反したときから止まってしまっているんだと思う。

 エコーズの資料集買った、イラストがふんだんに散りばめられた買いの逸品。後半ページには支援会話も載ってるとかいう、資料集として優秀過ぎた。

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◆◇◆◇◆◇
○カムイと話をする人物(支援A以外)

 ジョーカー
 フェリシア
 マークス
 ピエリ
 ゼロ
 ベルカ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 モズメ
 リンカ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>70

◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>71>>72

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)

 次に続きます。

◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
・アシュラ×サクラ
・ギュンター×ニュクス

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
・ラズワルド×シャーロッテ
・ブノワ×エルフィ

 この中から一つ>>73

(会話しているキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
 
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・ジョーカー×ハロルド
・ルーナ×フローラ

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ
・シャーロッテ×サクラ

 この中から一つ>>74

(会話しているキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)

 このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。

モズメさんで

ピエリ

レオン

ブノワ×エルフィ

ルーナフローラ

◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王城クラーケンシュタイン『レオンの執務室』―

ピエリ「ぶーっ、なんでピエリだけお呼び出しなの? 納得いかないのよ」

レオン「今日の戦闘で君は命令を無視して敵陣に突撃したからだよ。ピエリ、軍隊は規律で動くものだ。そういう個人的な行動が、多くの兵を危険にするかもしれないことくらい、わかっていると思うけど……」

ピエリ「ピエリよくわからないの。でも、敵がいたら、えいってやって殺せばいいってことだけはわかるのよ。それに、レオン様はピエリのご主人様じゃないの、ピエリのご主人様はマークス様なのよ」

レオン「はぁ、ああ言えばこう言う、子供そのものだね、君は……」

ピエリ「むー、ピエリ子供じゃないの。軍のみんな、ピエリを見てすごく大人って言ってくれるの」

レオン「ピエリ、君の戦いはどこか危うい。その危うさは君だけの危うさじゃないんだ」

ピエリ「うー、マークス様、敵をいっぱい殺したらいっぱい頭をナデナデしてくれるの。今日もいっぱい敵を殺したのに、なんでレオン様は褒めてくれないの?」

レオン「戦果は戦果、行動は行動。それぞれを総合的に見て僕は評価するつもりだよ。甘やかされて育ってきた君には認められないような方法かもしれないけどさ?」

ピエリ「むー、ピエリ、レオン様嫌いなの! 見てると、えいってしたくなるの……」

レオン「……無駄に度胸だけはあるね。いや、大きくなっただけの子供なんだから、分別が付いてないだけかもしれないけど。それは守れないと違う意味で命を落としかねないよ?」

ピエリ「ピエリ、レオン様の事なんて知らないの! べーっなの! うえぇぇぇぇん!」タタタタッ

 ガチャ バタンッ

レオン「……はぁ」

【レオンとピエリの支援がCになりました】

◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『郊外の森』―

エルフィ「ここにはいないみたいね…」

ブノワ「ああ、思った以上に怯えてしまっていたようだ。この近くには村がある、そこに迷い込んでしまっては、勘違いした者たちに殺されてしまうかもしれない…」

エルフィ「そうね…。もう少しくまなく探して……」

村人「うわーーー、熊だ。熊が出たぞ!」

エルフィ「今のは!」

ブノワ「まずい、あの熊かもしれん…」

エルフィ「ええ、行きましょう」

村人たち「弓だ弓を準備しろ、こっちにはまだ気づいていないみたいだ! 今のうちに仕留めよう」

ブノワ「まずい、もう弓を準備している…。やめろ、やめてくれ! その熊はただ迷い込んで来ただけなんだ!」

エルフィ「ここからじゃ聞こえない…、なら」ダッダッダッ!

ブノワ「エルフィ、一体何を――」

エルフィ「はあああああっ」ダッダッダッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

村人「そ、そうでしたか。あの熊は迷い込んで来ただけだったのですね……」

ブノワ「すまん、俺が責任を取って元の山へと帰すから、狩らないでくれるか…」

村人「は、はい。それにしても、あちらの方は大丈夫ですか。その、私たちの矢を……」

エルフィ「大丈夫、それに私が飛び出して身代わりになっただけだもの。村人にも熊にも被害が無くて良かったわ」

ブノワ「エルフィ……」

エルフィ「さぁ、熊がまたどこかに行ってしまう前に行ってあげて。さすがに矢の雨からあの子を守れても、話をすることは出来ないもの」

ブノワ「ああ、わかった。エルフィ、ありがとう…」

エルフィ「ふふっ…」

【ブノワとエルフィの支援がBになりました】

◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王都ウィンダム『地下市場』―

ルーナ「……」

フローラ「ルーナさん、こんにちは」

ルーナ「納得いかないわ。なんであたしが買い物に出かける日に限って、あんたと会うことになるわけ? これじゃ、楽しくお買い物ができないじゃない!」

フローラ「神様が、あなたに正しい買い物を教えようとしているのかもしれませんね」

ルーナ「納得いかないわ。あたしのライフスタイルにどんな形であってもケチ付けるなんて」

フローラ「ケチなんて付けませんよ。少しばかり、私はあなたの事を羨ましく思います。こうやって自由に買い物をして帰ってきていいというのは、とても素晴らしいことだと思いますから」

ルーナ「なら、あたしの買い物に口出さないでほしいんだけど。友人なら、そう言うところに快く同意しなさいよね」

フローラ「え、友人?」

ルーナ「何不思議な顔してんの。こんなに顔合わせて話もしてて、一緒にショッピングを楽しんでるんだから友人で間違いないでしょ?」

フローラ「……」

ルーナ「な、なによ。もしかしてそう思ってたのあたしだけ?」

フローラ「いえ、その全くそんなことを思ったことが無かったので……」

ルーナ「ちょっと薄情過ぎない!? こんなに会って話もしてるのにさ!」

フローラ「ふふ、でもそうですね。たしかにそうかもしれません。なにせ、今日城塞を出る際にルーナさんがまた変な買い物をしようとしていたら止めてあげないといけない、そんなことを考えていましたから」

ルーナ「ふ、ふん。そんなこと言われてもうれしくないんだからね!」

フローラ「いえいえ、その大荷物を手伝わされる可能性を考えたら、事前に処置を取るべきだという話ですよ」

ルーナ「そこは、心配だからとか言ってくれてもいいでしょ!? 本当に融通の利かない奴よね、あんたって」

フローラ「そういうあなたは頑固な人ですよね?」

ルーナ「むー」

フローラ「……ふふっ」

ルーナ「……まあいいわ。それで今日は何を買いに来たわけ?」

フローラ「そうですね。豆などの穀物類を少々……。備蓄が少なくなってきましたので」

ルーナ「穀物類ね、ならあっちのお店が今日セールで安売りしてるらしいから行きましょう」

フローラ「そうなんですか、それは助かります。そう言えばこの前歩いていたら今週化粧水の割引を行うと予告していたお店がありました」

ルーナ「ナイスな情報よ。今日もいっぱい買い物して帰ることになりそうね!」

フローラ「お持ち帰りは手伝いませんよ?」

ルーナ「そこは少しくらい、手伝ってあげるっていうポーズ位取ってくれたっていいと思うんだけど?」

フローラ「お断りです。でも、気が向いたらしてあげますね?」

ルーナ「そ、気が向いたら頼むわ。って、もう人だかりができてる!? フローラ、急がないと!」タタタタッ

ルーナ「あ、ちょっと、それはあたしのよ! 笑ってないで、少しは手伝いなさいよ!」

フローラ「ふふふっ、わかりました。まったく、本当に困った人ですね、ルーナさんは」タタタタッ

【ルーナとフローラの支援がAになりました】

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・白夜王都が見える丘―

ゼロ「……あれが白夜の王都の外周か……」

暗夜偵察兵「やはり王都周囲だけあって警備は厳重です。内側へはそう簡単に入り込めないでしょう」

ゼロ「当たり前だな。もう少し詳しく探りを入れたいが、ヒノカ王女の一件もある。下手に動いてあちらを刺激しない方がいいだろう」

暗夜偵察兵「当面は様子見ということですね。ゼロ様はいかがしますか?」

ゼロ「俺は一度戻ってレオン様に報告する。お前たちは王都の様子を観察しろ、なに予想通りなら敵が大規模な行動に出ることは無いだろうからな」

暗夜偵察兵「はい、わかりました。このまま監視を続けます」ザッ

ゼロ(……おそらく、こちらの動きには気づいているはず。それにしては全く動きもないとはね)

ゼロ(よほどの自信があるのか、それとも縮こまっているだけなのか……。それとも王族の処刑の件が、思いのほか有利に働いているとでもいうのかねぇ……)

ゼロ「……考えても埒が明かないな。さっさとレオン様に報告に戻るとするか……」タタタタタ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・カムイ軍野営地『カムイの天幕』―

カムイ「どうにか行軍速度を上げて、早ければ明日の夕方ほどで白夜王都に到達ですか……」

カムイ(夜刀神……。あなたが私の元に現れたあの場所。そしてお母様が私をかばって死んでしまった場所に、今から戦いに向かうことになるんですね……)

カムイ「もしかしたら、あそこが出発点になる選択もあったのかもしれません。白夜と共に歩む道を決めていたのなら……、白夜の方々と手を組んで戦っていたのかもしれません……」

カムイ(ですが、今さらそれを思ったところで意味などありません。ヒノカさんが処刑される可能性がある今、そんな考えに逃げることは許されませんから)

カムイ「リョウマさん、ヒノカさん……。きっとお二人を――」

 クゥ~

カムイ「……どんな時でもお腹は鳴るものですか。はぁ、これでは格好がつきませんね」

カムイ(時間はそれなりですし、そろそろ食事が出来上がっている暗いでしょうか…)

カムイ「ちょっと、様子を見に行きますか……」ガサッ

 タタタタッ

暗夜兵「おーし、順番に並べ、おそらくこうして落ち着いて飯が食えるのは今だけだ。各自、ちゃんと味わって食えよ。それと、明日の分の携帯食の配布も行うから、各自自分の分をちゃんと受け取るように」

暗夜兵「落ち着いてか…。結局行軍も早まってあまり落ち着いていたとは思えないんだが……」

暗夜兵「細かいことは気にするな。次の戦い、あまりいい物にはなりそうにないからな。今のうちに心の余裕と準備だけはしておけってことだよ」

暗夜兵「はいはい……。ずずずっ…はぁ、なんだろう、どこか懐かしい感じのするスープだな……。こう、ホッとするっていうか、家が恋しくなるっていうか……」

暗夜兵「わかる。なんていうか、暗夜の料理じゃないんだけどよ。こう田舎の友人を思い出すっていうか……ぐすっ」

暗夜兵「おいおい、泣くなよ。ホームシックか?」

暗夜兵「飯がうまいから泣いてるだけだ!」

カムイ(家が恋しくなるようなものが今日の夕食なんですね。いったい、誰が今日の食事の指示をしたんでしょうか……)

モズメ「あ、カムイ様、どないしたん?」

カムイ「あ、モズメさん。皆さんがおいしそうに食事されているので、今日の料理長は誰なのか少し気になったんです。みなさん、口々になんだか懐かしい味だっと言っていますから」

モズメ「え、そうなん? 暗夜でもこんな料理が振舞われるもんなんか?」

カムイ「どうしてモズメさんが驚いているんです?」

モズメ「だって、今日の夕食、あたいが作ったものやから……。正直、田舎臭いーとか、雑な味とか言われると思ってたんよ」

カムイ「前にモズメさんの料理を食べましたけど、とてもおいしかったですよ」

モズメ「そ、そうなん?」

カムイ「はい、毎日食べたいくらいでした。モズメさんの愛情がいっぱい入っていたんだと思います」

モズメ「カムイ様、恥ずかしくなること言わんといて……顔が熱くなってまうよ////」

カムイ「ふふっ、手で触れただけでもわかるくらい赤くなっているんですね」ピトッ

モズメ「ひゃっ、おさわりはあかんで!」

カムイ「ふふ、ごめんなさい」

モズメ「それより、カムイ様はもう食べたん? 容器とか持ってるように見えへんけど」

カムイ「えっと……」

 クゥ~

カムイ「あ……」

モズメ「そのお腹の返事、まだ食べてないんやね」

カムイ「はい……。その恥ずかしいところを見られてしまいました」

モズメ「えへへ、お腹が空いてるのは元気な証拠や。ちょっと待っててや、カムイ様の準備してくるから」

カムイ「ありがとうございます、モズメさん」

暗夜兵配給係「はい、こちらがカムイ様の分です。モズメ様の分もどうぞ」

モズメ「ありがとな。少しだけ任せてもええ?」

暗夜兵配給係「はい、モズメ様。食事の追加などはほぼ完了していますし、明日の携帯食の準備も整っていますから、あとは私たちにお任せください」

モズメ「おおきに助かるわ。それじゃ、少しだけ頼むで」

暗夜兵配給係「いえいえ、カムイ様とゆっくりしていてください、到着してから仕込みと調理でゆっくり休めていないと思いますから」

モズメ「え、ええの?」

暗夜兵配給係「はい」

モズメ「それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうわ」ダッ

 テトテトテトッ

モズメ「カムイ様、お待たせ。これ、カムイ様の分や」

カムイ「ありがとうございます、いい香りですね。モズメさんの愛情が感じられます」

モズメ「二度目は通用せんよ」

カムイ「そうですか、残念です。もっと可愛く慌てるモズメさんを見たかったんですけど」

モズメ「カムイ様は意地悪な人や。それじゃ、いただきます」

カムイ「はい、いただきます」

カムイ「ん、これはクマの肉ですね」

モズメ「うん、良さそうなのが結構おったから、それに明日の事も考えたら力付けとかんと、途中で倒れてまう。元気の源ってやっぱりおいしい食事やって思うんよ」

カムイ「モズメさんらしい考え方ですね。ふふ、でも残念です。モズメさんの特別な手料理を振舞ってもらえるのは私だけだと思っていたので」

モズメ「あたしの料理は何も特別じゃあらへん。作り方も村で教わっただけのものやもん」

カムイ「私には特別美味しく感じられますよ」

モズメ「えへへ、ありがとーな。カムイ様にもみんなにもおいしいって言ってもらえてあたいとっても嬉しいんよ」

カムイ「実際とてもおいしいですから、当然の評価ですよ。なんていうか、食べていると力が湧いて来るって言いますか、そんな感じがするんです」

モズメ「そう思って作ってるんよ。料理は愛情って昔教わってから、作ってるときはこんな料理になったらええなって思うようにしてるんよ」

カムイ「思いながら作る、ですか……」

モズメ「うん、料理は食べてもらう相手の事を考えて作るのが一番なんよ。どんなに簡単でもどんなに難しくても、食べてくれる人が喜んでくれることが一番大事なことやから」

カムイ「……一番大事なことですか。なるほど、モズメさんの料理の美味しさの秘密というわけですね」

モズメ「えへへ、でもあたいはカムイ様においしいって言ってもらえるのが一番うれしいんよ」

カムイ「え?」

モズメ「だって、カムイ様は色々と考えないといけない立場やから、さっきまで何かで悩んでたかもしれへん。あたいにはそれを聞いて助言が出来るわけないのはわかってる。だから、こうやって何かを食べてるときくらい、笑顔でいてほしいって思ってるんよ」

カムイ「……ふふっ、そんなことを言われて笑顔にならない人はいませんよ。ありがとうございます、モズメさん」ナデナデ

モズメ「んっ、もう、おさわりは駄目やって言っとるのに……はふぅ」

カムイ「ふふっ。ごちそうさまでした」

モズメ「もう食べ終わってしまったん?」

カムイ「はい、とってもおいしかったので、どんどん箸が進んでしまいました。やっぱり、モズメさんの料理は愛情たっぷりですね」

モズメ「おおきに、今度はカムイ様だけに料理を作ってあげるから、楽しみにしててほしいんよ」

カムイ「はい、楽しみにしています」

モズメ「よーし、明日の準備がんばらへんと!」

カムイ「はい、よろしくお願いします」

今日はここまで

 ルーナとフローラってこんな感じの交友関係を築きそうな気がするのよね……

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「……ふぅ、モズメさんの料理、とてもおいしかったです。明日の携帯食も頂きましたから、これで明日の準備も済みました」

カムイ(しかし、やはりと言いますから食料の量はそれほどありません。持久戦でこちらに勝ち目はないのは明白、相手の籠城を崩せなければ私たちは撤退を余儀なくされます)

カムイ(撤退してもテンジン砦からの増援を待ってから再度攻撃を仕掛ければ、私たちが負ける事はありません。ですが、その頃には白夜がどうなっているのかわからない、あの姿の見えない敵たちが何かを起こすかもしれない……。そうなってしまったら……)

 コンコンッ

カムイ「ん? だれですか?」

アクア「カムイ、私よ。少しいいかしら?」

カムイ「アクアさん、どうかしましたか?」

アクア「少し話したいことがあっ……、今は平気?」

カムイ「はい、大丈夫です。どうぞ、入ってください」

アクア「ええ、おじゃまするわ。もう、携帯食は受け取ったのね」

カムイ「はい、丁度さっき夕食を頂いたので、その帰りに。モズメさんや多くの方々が作ってくれたみたいです」

アクア「ええ。明日の戦いの途中で退くことは許されないから、できる限り準備してくれたみたい。多くの兵の戦う一押しになってくれるといいのだけど」

カムイ「はい……負けられません。ここで退いてしまったら、白夜王国がどうなってしまうのかわかりませんから」

アクア「……おそらくだけど、ここで撤退することになってしまったら、おそらくだけど白夜は崩壊してしまうわ」

カムイ「崩壊ですか」

アクア「多くの人は今の白夜の状況を見て、すでに崩壊していると思うかもしれない。でも、まだ秩序のすべてが崩壊しているわけじゃないわ。今はギリギリのところでそれを免れてる。だけど、それさえも壊れて国の面影が無くなってしまったら手遅れになる」

カムイ「……崩壊こそが国の消滅とアクアさんは考えているんですね」

アクア「ええ、少なくとも私はそう思っているの。そう理解するに足るものを、私は見てきたから……」

カムイ「アクアさん?」

アクア「ごめんなさい、今話すことじゃなかったわ」

カムイ「いいえ、私からこの話を振ったんですから、アクアさんが謝らないでください」

アクア「そう、わかったわ。だけど、カムイがそう言ったことを考えるのを私はおかしいとは思わない。あなたは、そういう人だから」

カムイ「アクアさん……。ははっ、なんだか不思議です。そういうことを自分で考えるとモヤモヤするのに、アクアさんにそう言ってもらえたら、なんだかポカポカしているといいますか……。すみません、なんだか恥ずかしいことを……ん?」

アクア「……」

カムイ「あの、アクアさん?」

アクア「あ、えっと、そう、そんな不思議なことがあるのね/////」

カムイ「? アクアさんどうしたんですか。なんだか言葉がぎこちないですよ?」

アクア「な、何でもないわ」

カムイ「?」

アクア「それよりもカムイ、あなたは今回のヒノカの処刑の話をどう考えているの?」

カムイ「……改めて考えると、少しだけ不思議に思っているところです。私がもしもユキムラさんの立場だとしたら、こうして敗戦が続き、王都まで押し込まれている状況でそんなことをしている場合ではないと思います」

アクア「色々と考えて落とし込めば、この処刑が意味を持ってくるかもしれない。けれど、敗戦の理由として王族を処刑しても敵の進軍は止まらないと多くの人々は思うでしょうし、するべきことを行わないことで民衆の不満が爆発すれば防戦どころではなくなる可能性もある。そこまでしてヒノカの処刑を公に公表する理由、それがわからないのよ」

カムイ「そうですね、ユキムラさんに今ヒノカさんを処刑する理由があるようには思えないんです。王都での混乱を終息させる狙いがあるのかもしれないとは思ったのですが、ならもっと違う事を行うべきでしょう」

アクア「それにヒノカを今処刑したところで、民衆の不満が全て私たちに向くとは思えない。最悪の場合、自国に対しても何も思うこともないかもしれない。だからヒノカが処刑されるっていうことは、相対的に見ても何の意味を持たない行為になっているの。唯一、意味があるとするなら……」

カムイ「私たちに対して……、ということですね」

アクア「ええ。ヒノカの存在が私たちにとって意味があるとユキムラは理解している。単純にこれもあなたを苦しませるという目的の延長だと考えれば……」

カムイ「少なからず納得がいくということですか」

アクア「無理矢理ではあるけど、という話よ。むしろ、この報そのものが罠である可能性もあるわ」

カムイ「……この報は罠かもしれないということですか?」

アクア「ユキムラはあなたの命を奪うことに執着しているようだから、あなたがヒノカの危機を聞いてやってこないわけがないと考えれば……」

カムイ「見事にその策に嵌っているということですね」

アクア「もしくは、本当に白夜で何かが起きているのかも知れない」

カムイ「?」

アクア「ユキムラが率いている強行派にも何かしらの歪が生じている、そう考えることもできるという事よ」

カムイ「歪ですか……」

アクア「飽くまでも推測よ。ユキムラの統率力がどれだけの物かはわからないけど、実際ここまでの連戦はすべて白夜の敗退で終わっている。そんな今の状況に不満を持つ者が現れて、この騒動を起こしているのかもしれない」

カムイ「内部で分裂が起きている可能性があるということですね」

アクア「実際は今も内部分裂しているようなもの、王族派と強行派という二つの勢力が存在しているのだから…。今は強行派がほぼ主権を握っているのでしょうけど、その強行派も一枚岩でないのなら、この処刑の話の浮き上がりに納得が出来る」

カムイ「なるほど……。ですが、ヒノカさんの処刑の話を上げているのです。その方々と手を取り合えるとは思えません」

アクア「でしょうね。唯一手を取り合えるかもしれない王族を支持する人々は、処刑の件で下手に動けない状況に追い込まれているのかもしれない」

カムイ「彼らと私たちにとって、ヒノカさんは人質として成立するということですね」

アクア「ええ、私たちの進軍が始まって、王都の外周に回されるのはおそらく無理矢理武装させられた民と王族を支持する者たちが大部分を占めるはず」

カムイ「出来れば戦いたくはありません。あのスサノオ長城から王都まで逃げ延びた方々もいるはずですから」

アクア「その中にも私たちと剣を交えたくない人はいるかもしれない。でも、状況が状況なら彼らを恨むことは出来ないわ。私たちが敵であることに変わりはないもの」

カムイ「……そうですね。結局、私たちが侵略者であることに変わりはありません。どんな理由があったにせよ、私は白夜を攻撃したことを忘れずに生きていくつもりですから」

アクア「あなたは強いのね……」

カムイ「いいえ、皆さんに支えられているからですよ。それがどんなに非情で受け入れたくないことだとしても、私の背を支えてくれる皆さんがいるから、私はまだ戦うことができる。皆さんのおかげなんですよ」

アクア「だとしても、あなたが強いことに変わりはないわ。あなたが示してくれたことが私たちをここまで導いてきた。あなたの事をみんなが支えたいと思ったのは、そういうあなたを見てきたからよ。あなたが紡ぐ道を一緒に歩むことを誇りに思っているはず」

カムイ「誇りですか。そんな風に思ったことはありませんでした。私の戦いにそんな言葉は似合いませんし、誇れるようなものではありません」

アクア「いいえ、私は誇りに思うわ。あなたの戦いは、自分のためよりも誰かのためだもの……。私にはあなたの戦いが理想を追いかけているように見えているわ。報われることじゃない、ただ理想のためにあなたは戦っている、そんな気がするの」

カムイ(理想……。それは私が最初に描いたことだったかもしれない。自分というものを自覚して、でも確かにそれはあった。私は今、唯一の理想に手を伸ばそうとしているのかもしれません。この戦いの中で、唯一手が届きそうなその理想に……)

カムイ「……私の手は、それに届くのでしょうか……」

アクア「カムイ?」

カムイ「……なんでもありません。それよりも、そろそろ偵察が戻る時刻かもしれませんから、様子を見に行きましょう」

アクア「ええ、そこまでは私がエスコートしてあげるわ」

カムイ「大丈夫ですよ、ちゃんとわかりますから」

アクア「いいから、ここは私に任せておいて。それじゃ、行きましょう」ギュッ

カムイ「はい、わかりました。よろしくお願いしますね、アクアさん」

アクア「ええ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・カムイ軍野営地『作戦会議天幕』―

ゼロ「以上が現在の状況です」

レオン「わかった。ゼロは少しだけ休んでいてくれ、追って指示を出す」

ゼロ「わかりました、レオン様。それでは、失礼いたします」タタタタッ

レオン「ようやくっていうところだね」

マークス「ああ、偵察隊の話を聞く限り、やはり帝都内部へ入り込むのは至難の業だろう。流石に暗夜王都で使用したカタパルトもココには存在しない」

レオン「うん、スサノオ長城の戦いでドラゴンの数も減っているから、囲いの一つを越えたところで、どうにかなるとは思えない」

マークス「うーむ」

 タタタタタッ

レオン「?」

カムイ「失礼します、レオンさん、マークス兄さん、今よろしいですか?」

マークス「カムイか。丁度いいところに来た、入れ」

カムイ「はい、失礼しますね」

アクア「失礼するわ。さっきゼロとすれ違ったのだけど、もしかして報告が入ったの?」

レオン「ああ、偵察から戻って来たところでね。今の白夜王都の状況を教えてもらったところなんだ」

カムイ「それで丁度いいところにということだったんですね」

マークス「しかし、やはり王都だ。暗夜の王都襲撃戦とは違い、敵もこちらの動きには気づいているだろう。正直、難しいところだ」

カムイ「それほどですか……」

レオン「王都全体の城壁の一箇所を崩そうにも、こちらの兵力を一箇所に集中して崩せるのはほんの一瞬だけ、すぐに建て直される可能性が高い。色々と方法は考えているけど、強行突破してのリョウマ王子とヒノカ王女救出はかなり厳しい。強行突破が成功したとしても、シラサギ城に辿り着いた時には僕たちはボロボロで、すぐ包囲されておしまいだね」

カムイ「かなり厳しい戦いということですね。敵も防戦の準備を整えているのですから、城壁を抜けたところでシラサギ城に行くまでも幾度となく邪魔をされるでしょうし……」

マークス「うむ、この城壁を楽に超えることが出来ればいいのだが。さすがにそのような方法、ありはしないか」

カミラ「さすがに上を飛んでいくのもあまり現実的じゃないみたいだし、中々に悩み所ね」

レオン「あ、カミラ姉さん。ドラゴンの世話はもう終わったの?」

カミラ「ええ、みんな今はぐっすり眠ってる。だけど、スサノオ長城の時みたいな無理はさせられないのが現状ね。ここまで物資を運ぶの使ってきたから、長く戦い続けるのは難しいわ」

カムイ「八方塞がりとまではいきませんが、こちらの不利は覆すことが出来そうにないということですね……」

マークス「ああ、いくつかの作戦計画をレオンに練ってもらったが、現状の戦力でここを抜けるとなるとほぼ余剰戦力のすべてを使いかねん」

カミラ「なにか隠し通路の一つでもある気はするけど……」

カムイ「もしかして、暗夜の国境砦付近からシュヴァリエ公国内にまで伸びていたあの地下道のようなものですか?」

カミラ「ええ、私はあると思うのだけど。マークスお兄様はどう?」

マークス「そうだな、恐らく城からの要人を脱出させるためにある可能性高い。しかし、どこにあるのかわからなくては使う事も出来ない。もう時間が無いから、丹念に探すこともできないだろう」

カムイ「ですよね……。流石にうまくはいきませんか……」

アクア「隠し通路……」

アクア「……」

アクア「あ…」

カムイ「アクアさん、どうかしましたか?」

アクア「ねぇレオン。白夜王都周辺の地図を見せてもらえる? 出来れば王都周辺を写したものを」

レオン「ああ、いいよ。縮小したものだけどいいかな?」

アクア「ありがとう……」ジーッ

マークス「アクア、何を探しているのだ?」

カムイ「アクアさん?」

 スッ

アクア「……ここね」

カミラ「……森の中みたいだけど」

マークス「ああ、城壁から少し離れた場所のようだが、ここがどうかしたのか?」

アクア「確かここだったはずよ」

レオン「何がだい?」

アクア「私が白夜に連れてこられた時、私は王都正門を通ってシラサギ城に入っていないの。ぽっかりと空いた黒い洞窟のような場所に入って、気づいたら城内にいた」

レオン「まさか、それって……」

カムイ「アクアさん、もしかしてここに?」

アクア「ええ、私の記憶が確かなら、ここにあったはず――」

「シラサギ城に通じている……、隠された道が……」

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB+→B++
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)

 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[5スレ目・77]←NEW

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514~515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]
・レオン×ピエリ
 C[5スレ目・76]←NEW

仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[5スレ目・78]←NEW

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]

○仲間ジョブ決定一覧●
―対の存在―
・アクア(歌姫)

―城塞の人々―
・ジョーカー(パラディン)
・ギュンター(グレートナイト)
・フェリシア(ストラテジスト)
・フローラ(ジェネラル)

―暗夜第一王子マークス―
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)

―暗夜第二王子レオン―
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)

―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)

―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)

―白夜第二王女サクラ―
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)

―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)
・リンカ(聖黒馬武者)
・モズメ(弓聖)

今日はここまで

 こういう場面で有益なことを思い出すのはヒロインの特権。
 FEHようやくピエリがLv40になりました。あとはずっしりとリリスの実装を待つばかり……

 次回かその次ほどで、カムイと共に戦いに出る仲間を決めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。
◆◇◆◇◆◇
○支援イベントのキャラクターを決めたいと思います。

 アクア
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 レオン
 ゼロ
 オーディン
 カミラ
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 サクラ
 カザハナ
 ツバキ
 スズカゼ
 アシュラ
 フランネル

 >>102>>103

(すでにイベントが発生しているキャラクター同士が選ばれた場合はイベントが進行、支援状況がAになっている組み合わせの場合は次レスのキャラクターとの支援になります)

 次に進みます。

◇◆◇◆◇
○進行する異性間支援の状況

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
・アシュラ×サクラ
・ギュンター×ニュクス
・ブノワ×エルフィ

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
・モズメ×ハロルド
・ルーナ×ハロルド
・カザハナ×ツバキ
・ツバキ×モズメ
・ラズワルド×シャーロッテ
・レオン×ピエリ

 この中から一つ>>104

(会話しているキャラクターの組み合わせと被ってしまった場合は、その一つ下のになります)
 
◇◆◇◆◇
○進行する同性間支援

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
・ベルカ×ニュクス
・ジョーカー×ハロルド

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
・ピエリ×リンカ
・ピエリ×フェリシア
・フローラ×エリーゼ
・エルフィ×ピエリ
・スズカゼ×オーディン
・サクラ×エルフィ
・ハロルド×ツバキ
・アシュラ×ジョーカー
・マークス×ギュンター
・ラズワルド×ブノワ
・シャーロッテ×サクラ

 この中から一つ>>105

 このような形ですみませんがよろしくお願いいたします。

乙です
カミラ

アクア

・レオン×ピエリ

サクラエルフィ

◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・北の城塞―

アクア「♪~♪~」

カミラ「相変わらずいい歌声ね」

アクア「カミラ、盗み聞きなんて感心しないわ」

カミラ「ごめんなさい、声を掛けるのも悪いと思ったから、最後まで黙っていたの。ふふっ、本当にアクアは歌うのが大好きなのね」

アクア「そうね……。物心ついた頃にお母様がよく歌ってくれたの。色々な歌を教えてもらったわ。悲しい時に元気になれる歌、落ち着ける歌……他にも色々とね」

カミラ「歌はアクアにとって、お母様との思い出そのものなのね。とっても素敵だわ」

アクア「ありがとう、そう言ってもらえてとてもうれしいわ。だけど一つだけ、お母様に教えてって頼んだ歌があるの」

カミラ「そうなの?」

アクア「ええ、だけどどうして教えてもらおうって思ったのかは思い出せないのよね。何か、きっかけがあったとは思うのだけど」

カミラ「ふふっ、小さかったアクアを動かした理由、少し気になるわ」

アクア「あまり面白いことではないと思うわ。その、悲しい気分を和らげるそんな歌を教えてって、お母様にねだっていたから……。暗夜にいた頃はあまりいい事もなかったもの……」

カミラ「大丈夫、それ以上は言わなくてもいいわ。嫌な昔のことを無理に思い出すことは無いもの」

アクア「ありがとう、カミラ」

カミラ「ふふっ」

【アクアとカミラの支援がCになりました】

◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王城クラーケンシュタイン『レオンの執務室』―

ピエリ「……むーっ」

レオン「目に見えて不満な顔をしてるね」

ピエリ「当たり前なの。またピエリだけ呼び出しなの、おかしいのよ!」

レオン「おかしくないよ。君はまた命令違反をしたからね。この前の反省を全く生かせてなかったのだから、呼び出されるのも分かると思うけど?」

ピエリ「むー、ピエリちゃんと結果を出してるの」

レオン「はぁ、結果と仮定は別物だってこの前言ったよ。まったく、学習能力もないんじゃ何を叱ればいいのかわからなくなるよ」

ピエリ「別に叱らなければいいの。ピエリはピエリで戦って結果を出すの。ピエリ強いから負けたりしないのよ」

レオン「強いから負けないっていうのは大きな誤解だよ。どんなに強いものでも状況によっては負けるのが戦いだ。それに、今回の戦いピエリの突撃に感化された兵が数名命を落としてる。次は君がそうなるかもしれない」

ピエリ「死んじゃったのは弱かったからいけないの。ピエリはそんな事になったりしないのよ」

レオン「はぁ、本当にああ言えばこう言うね……。まったく、君は本当に困った兵士だよ。扱いも一筋縄じゃ行かない。こうなったら実力行使しかないかな」

ピエリ「実力行使?」

レオン「ピエリ、次の出撃は僕の部隊と一緒に動いてもらうよ」

ピエリ「嫌なの!」

レオン「これは決定だから、そういうわがままを受け付ける気はないよ」

ピエリ「むー! レオン様は本当に意地悪なの! ピエリ命令になんて従わないの! べーっなの!」

レオン「なら、君の出撃をしばらく見送ることにするよ。流石に命令違反を繰り返す兵を戦場に出すわけにはいかないからね」

ピエリ「……うっ、うー、嫌だけど我慢してあげるの」

レオン「協力的で助かるよ。それと僕の部隊にいる間は命令を守るように。はい、返事は?」

ピエリ「むーっ、わかったの……」

【レオンとピエリの支援がBになりました】

◆◇◆◇◆◇
―白夜王国・イズモ公国『茶菓子屋』―

エルフィ「これがお饅頭……」

サクラ「はい。わぁ、久しぶりです。このモチモチとした触感……」

エルフィ「見た目からはわからなかったけど、この甘い匂いがアンコというの?」

サクラ「そうですよ。エルフィさんはあんこは初めてですよね?」

エルフィ「ええ、白夜のデザートは今まで食べたこともなかったから」

サクラ「ならまずはこしあんがいいかもしれません。初めての方でも抵抗なく食べられると思います。はい、どうぞ」

エルフィ「中身は真っ黒ね…。だけど、とても甘い香りがするわ」

サクラ「それじゃ、いただきましょう。いただきます!」

エルフィ「いただきます」

サクラ「あむ、んーっ////」パクッ

エルフィ「ん、これは……」パクッ

サクラ「ど、どうですか?」

エルフィ「とってもおいしい。口の中に広がるアンコの甘味をお饅頭の生地が解してくれるから、しつこくなくなって食べやすいわ」

サクラ「ふふっ、気に入ってもらえて何よりです」

エルフィ「これならいくらでも食べられそうね。ありがとう、サクラ様」

サクラ「はい、私もエルフィさんに喜んでもらえてとっても嬉しいです。んー、もう一つだけ……」

エルフィ「サクラ様、ほっぺにアンコが付いてます」

サクラ「え、ほ、ほんとうですか////」

エルフィ「動かないでください、今取ります…。はい、取れました」スッ フキフキ

サクラ「あ、ありがとうございます。あ、エルフィさん」

エルフィ「なに?」

 スッ フキフキ

サクラ「えへへ、エルフィさんのほっぺにも付いてました。これでお相子ですね」

エルフィ「みたいね」

サクラ「はい、ふふっ」

エルフィ「うふふっ」

【サクラとエルフィの支援がBになりました】

今日は支援だけで

◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城・地下『牢獄』―

 ピチャン ピチャン
  ピチャンッ ピチャン

 ポタタッ
  ポタタッ

 ピチャン……

 ズズッ
  ズズズッ

 ピチャンッ

   ドサリッ

 ポタタッ……
 
 ………

 ピチャン……
  ピチャン……

 ピチャン……

リョウマ「……ん」ガバッ

リョウマ「ん……俺はなにを」

 キョロキョロ

リョウマ(頭がくらくらする、それになんだか体も重い。意識に靄が掛かっている、ひどく眠った後のような感覚だ)

リョウマ「……眠ってしまっていたのか。こんなにも切羽詰まっているというのに、暢気なものだな」

リョウマ(俺自身が嫌になるほどに、俺は何も出来はしなかった……。今、こうして牢獄でのたうち回る事しかできない、役に立たない男だ…)

リョウマ「……誰かいるか?」ガシャンッ

 ――――

リョウマ「見張る価値もないという事か。ふっ、それもそうか、俺がどんな決定を下そうとも、もう意味などなくなってしまったのだからな」

 ドスンッ

 ビチャッ

リョウマ(水か? 眠っている間に桶を転ばせてしまったか? いや、どうでもいい事か。どうせこのまま、無様に待ち続けることになるだけだ。処刑されることもなく、そして戦いに参加することもなく、いずれやってくるだろう終わりの時までここにいるしかない……)

リョウマ「……このまま無様に――」

『それを貴様は望んでいないだろう?』

リョウマ「!?」

リョウマ「誰だ! 隠れていないで、姿を見せろ!」

 ………

リョウマ「……疲れているのか。こんな蚊帳の外にいるだけだというのに……」

リョウマ(しかし、今の声は何だ。頭の中に直接入り込んでくるような、ううっ、一体何が起きている)

リョウマ「くっ、頭が揺れる。くそっ、一体なんなんだ。……む?」

 カッカッカッ……

リョウマ「誰だ?」

サイゾウ「リョウマ様、私です」

リョウマ「サイゾウか、一体どうした?」

サイゾウ「? いえ、リョウマ様が時間になったらここへ来るようにと」

リョウマ「俺が?」

サイゾウ「はい」

リョウマ「……そうか、すまなかった。たしか、そうだったな」

サイゾウ「もしお疲れならば、お休みください」

リョウマ「いや、そうは言っていられない状況になっているんだろう。サイゾウ、ヒノカの処刑の件はどうなっている?」

サイゾウ「え、リョウマ様?」

リョウマ「どうした、サイゾウ? 何かおかしなことを聞いたか?」

サイゾウ「………いえ、何でもありません。私の勘違いのはず……」

リョウマ「?」

サイゾウ「現在の状況を見る限り、ヒノカ様の処刑は先送りになるでしょう。偵察部隊が暗夜の軍勢を確認したのが数時間前、それに伴って王都全体が戦闘の準備に取り掛かっているので、今は処刑を行っている暇はないかと」

リョウマ「……そうか、その暗夜の軍勢。カムイたちの物だと思うか?

サイゾウ「スサノオ長城から帰還した者たちの話を聞いた強襲してきたもう一軍の可能性もあります。ですが、私はカムイ様の率いる軍勢だと考えています」

リョウマ「……そうか。次にサイゾウ、お前はこのまま白夜が持つと思うか?」

サイゾウ「……リョウマ様」

リョウマ「頼む、お前の率直な意見を俺に伝えてほしい」

サイゾウ「……おそらくですが、向こうにこれと言った手立てが無く、真正面からぶつかるのであればこちらがここを凌ぐことは出来るでしょう。ただ、以後王都を維持することは不可能だと私は考えます。そうなれば、もう一度敵が攻勢に出る前に終わりが来る、そう考えています」

リョウマ「……わかった。すまなかったな、サイゾウ。あまりは話したくないことだったはずなのに話してくれて、ありがとう」

サイゾウ「いいえ、それがリョウマ様の望み。それに応えるだけです」

リョウマ「ああ……」

リョウマ「……それで王都防衛の部隊構成はどうなっている?」

サイゾウ「ユキムラ様の指示の元、正門と城下町近辺に近衛を中心とした部隊を展開し、武装市民もそこに加わって敵の攻撃を防ぎきると。ですが、ユキムラを支持する者たちはこの城の守りを固めているため、正門周辺に展開するのは私たちの部隊となるでしょう」

リョウマ「……サイゾウは市民を守りながら戦闘を行えると思うか?」

サイゾウ「戦闘が始まれば向こうも容赦は出来ないはず。武装市民がどういった動きを取るのかわからない以上、それを守りながら戦えば防御戦線の維持は極めて難しいかと。ただシラサギ城の陥落にまで敵が至れるとは思えません。ですが、その先があるようには……」

リョウマ「……そうか」

サイゾウ「リョウマ様……」

リョウマ「これが、俺の辿ることになる道だという事か。俺のような人間に守れるものは……自分くらいなのかもしれん」

サイゾウ「そんなことは……」

リョウマ「……」

リョウマ「……民も守れず、そして采配を取ることも叶わない。俺にはどうすることもできないということを見せつけられる。あれだけの時間があったというのに、俺がしたことはこの結果を白夜にもたらすことだけだった。途中で、それを変えることが出来た可能性もあっただろう。それを俺は選ぶことが出来なかった……」

サイゾウ「リョウマ様……」

リョウマ「……」

サイゾウ「……」

リョウマ(……結局、俺に出来ることなど何もない。俺には何も助けられはしなかった、あいつならどうしただろうか。あいつならこのような立場であっても、己を信じて動くことが出来なのだろうか。俺のように選ぶことのできない、こんな人間とは違って……)

『自分を無力にさせる存在が憎いだろう?』

リョウマ「!」

サイゾウ「リョウマ様?」

リョウマ「……」

『自分では到底実現出来ない、そんなことを行うあの小娘が憎いのだろう?』

リョウマ(……黙れ)

『あの小娘に負けるような軟な力ではないはずだ、そう思っているだろう。白夜の王子……』

リョウマ(貴様は誰だ……。なぜ、俺にそんなことを語り掛ける!)

『なに隠さなくてもいい。お前のその心の底にあるもの、我には御見通しだ。成し遂げたかっただろう、そして振舞いたかっただろう。お前が求めてやまない、大きな背の者のように、この白夜を導いて行けるとその身で証明したかっただろう?』

リョウマ(俺は何も隠していない……)

『隠していないか、なら証明すればよかったのにそれが出来なかった。望めばよかったことを行えず、お前はそれが美徳であるかのように振舞った。なんとも哀れなものだ。欲していればこんなことにならなかったかもしれないというのにな?』

リョウマ(何が言いたい……)

『何が言いたい? 我が語るつもりはない、お前はそれを欲していた。そうだろう、お前が零した最後の願いはとても力強いものだ。だから手を貸してやった』

リョウマ(手を貸しただと……)

『お前ならこの国を救えるだけの力がある。どんな形を取ろうとも、お前にとって唯一、唯一の障害は一つしかありえないのだからな』

リョウマ(……俺は)

『このまま、何もせずに死んでいくのならそれでいい、だが今一度でも――』

『その手にそれを欲するのであれば、動かないわけにはいかないだろう?』

リョウマ(……)

『さぁ……白夜の王子よ。その身でもう一度すべきことがあるのなら、答えは一つだけだ……』

リョウマ「……」

リョウマ「……ああ、確かにその通りだ」

サイゾウ「リョウマ様?」

リョウマ「……サイゾウ、頼みがある」

サイゾウ「はい、何でしょうか」

リョウマ「至急、ユキムラに話があると伝えてほしい。話があると」

サイゾウ「わかりました、リョウマ様。伝えてまいります」サッ

リョウマ「……」

リョウマ「カムイ、お前は俺の取った選択をどう思うだろうか。いや、わかり切っている事だな、考えるまでもない…」

リョウマ(だが、俺にはもうそれしかないのなら、それを信じて進むしかないということだ。それが誰にも理解されない独りよがりの戦いだとしても……)

リョウマ「一度逃げ出して、どういうわけかここにいるのは、事を成す為ではないのだろうな……」

リョウマ(俺にまだ地獄で苦しみ続けろ。そう言いたいんだろう……それが俺だけの地獄ではないことをわかっているというのにな)

リョウマ「……カムイ」

 ポタタッ

リョウマ「俺にはもう、この道以外になにもかも無くなってしまった…」

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・王都へと至る街道―

マークス「……そろそろ夕刻になるが、どうにか間に合ったようだな」

レオン「うん、残念だけど向こうの準備は整っているみたいだね」

サクラ「……リョウマ兄様、ヒノカ姉様……」

エリーゼ「サクラ、大丈夫だよ。きっと二人とも助け出せるはずだから!」

サクラ「エリーゼさん、はい!」

カミラ「ええ、きっと助け出しましょう? ね、カムイ」

カムイ「もちろんです、そのためにここに来たのですから」

カムイ(ここまでようやくたどり着いたんです。リョウマさんとヒノカさん、二人を助け出してみせます。たとえ、それがとても難しいことだとしても、諦めるわけにはいきません)

アクア「カムイ」

カムイ「アクアさん?」

アクア「大丈夫、きっと大丈夫よ……」

カムイ「はい、ありがとうございます。」

マークス「よし、大部分はこのまま正門へとゆっくりと迫れ、敵陣へ攻撃を行い引き付け状況を維持せよ。その間にわれわれで隠し通路を通り、白夜王都への侵入を試みる。侵入の確保が済み次第、後続部隊も移動を開始せよ」

レオン「ここが正念場になる。みんな、気を引き締めていくんだ!」

カムイ軍兵士『おおおーーーーっ!!!!』

マークス「行くぞ、長きに渡る白夜と暗夜の戦いに今日で終止符を打つのだ!!!」

カムイ軍兵士『うおおおおおーーーーっ!!!!』

マークス「前進せよ!」チャキンッ 
 ヒヒーンッ パカラパカラツ

 ドドドドドドドッ

カムイ(……私も行きましょう。奴が、絶望が待っていると言い切ったあの場所へ――)

 チャキッ

(その絶望を否定するために……)

○カムイの支援現在状況●

―対の存在―
アクアA
(カムイからの信頼を得て、その心の内を知りたい)

―城塞の人々―
ギュンターA
(恋愛小説の朗読を頼まれています) 
フェリシアB++
(カムイに従者として頼りにされたい)
フローラA
(すこしは他人に甘えてもいいんじゃないかと言われています)
ジョーカーC+
(イベントは起きていません)
リリス(消滅)
(主君を守り通した)

―暗夜第一王子マークス―
ラズワルドA
(あなたを守るといわれています)
マークスB++
(何か兄らしいことをしたいと考えています)
ピエリB
(弱点を見つけると息巻いています)

―暗夜第二王子レオン―
オーディンA
(二人で何かの名前を考えることになってます)
ゼロB+
(互いに興味を持てるように頑張っています)
レオンA
(カムイに甘えてほしいと言われて、いろいろと考えています)

―暗夜第一王女カミラ―
ルーナA
(目を失ったことに関する話をしています)
カミラA
(白夜の大きい人に関して話が上がっています)
ベルカB++
(生きてきた世界の壁について話をしています)

―暗夜第二王女エリーゼ―
エリーゼA
(昔、初めて出会った時のことについて話しています)
ハロルドB+
(ハロルドと一緒にいるのは楽しい)
エルフィB++
(一緒に訓練をしました)

―白夜第二王女サクラ―
サクラA
(カムイと二人きりの時間が欲しいと考えています)
カザハナA
(素ぶりを一緒にする約束をしています)
ツバキB
(イベントは起きていません)

―カムイに力を貸すもの―
シャーロッテA
(返り討ちにあっています)
フランネルB+
(宝物を見せることになっています)
サイラスB+
(もっと頼って欲しいと思っています)
ニュクスB++
(許されることとはどういうことなのかを考えています)
スズカゼB
(おさわりの虜になったようです)
モズメB++
(時々料理を食べさせてもらう約束をしています)
リンカB+
(過去の雪辱を晴らそうとしています)
ブノワC+
(イベントは起きていません)
アシュラB
(暗夜での生活について話をしています)

 仲間間支援の状況-1-

●異性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・レオン×カザハナ
 C[本篇の流れ] B[3スレ目・300] A[3スレ目・339]
・ジョーカー×フローラ
 C[1スレ目・713~715] B[1スレ目・928~929] A[2スレ目・286]
・レオン×サクラ
 C[1スレ目・511~513] B[2スレ目・297~299] A[3スレ目・797]
・ラズワルド×ルーナ
 C[1スレ目・710~712] B[2スレ目・477] A[4スレ目・177]
・アクア×オーディン
 C[3スレ目・337] B[3スレ目・376] A[4スレ目・353]
・ルーナ×オーディン
 C[4スレ目・352] B[4スレ目・411] A[4スレ目・460]
・ラズワルド×エリーゼ
 C[1スレ目・602~606] B[3スレ目・253] A[4スレ目・812]
・ベルカ×スズカゼ
 C[3スレ目・252] B[3スレ目・315] A[5スレ目・57]
・オーディン×ニュクス
 C[1スレ目・839~840] B[3スレ目・284] A[5スレ目・362]
・サクラ×ラズワルド
 C[5スレ目・303] B[5スレ目・337] A[5スレ目・361]
・アクア×ゼロ
 C[1スレ目・866~867] B[4スレ目・438] A[5スレ目・456]
・ラズワルド×ピエリ
 C[5スレ目・823] B[5スレ目・862] A[5スレ目・890]
・マークス×リンカ
 C[5スレ目・888] B[5スレ目・920] A[6スレ目・6]
・ブノワ×フローラ
 C[2スレ目・283] B[2スレ目・512] A[6スレ目・31]
・レオン×エルフィ
 C[3スレ目・251] B[4スレ目・437] A[6スレ目・49]

【支援Bの組み合わせ】
・エリーゼ×ハロルド
 C[2スレ目・511] B[2スレ目・540]
・アシュラ×サクラ
 C[3スレ目・773] B[5スレ目・106]
・ギュンター×ニュクス
 C[3スレ目・246] B[5スレ目・480]
・ブノワ×エルフィ
 C[5スレ目・822] B[6スレ目・77]
・レオン×ピエリ
 C[6スレ目・76] B[6スレ目・107]←NEW

【支援Cの組み合わせ】
・サイラス×エルフィ
 C[1スレ目・377~380]
・モズメ×ハロルド
 C[1スレ目・514~515]
・ルーナ×ハロルド
 C[3スレ目・375]
・カザハナ×ツバキ
 C[3スレ目・772]
・ツバキ×モズメ
 C[5スレ目・15]
・ラズワルド×シャーロッテ
 C[5スレ目・479]

 仲間間支援の状況-2-

●同性間支援の状況
【支援Aの組み合わせ】
・リンカ×アクア
 C[1スレ目・888~889] B[2スレ目・285] A[3スレ目・254]
・ピエリ×カミラ
 C[1スレ目・752~753] B[2スレ目・478] A[2スレ目・513]
・フェリシア×ルーナ
 C[1スレ目・864~865] B[1スレ目・890~891] A[1スレ目・930~931]
・フローラ×エルフィ
 C[1スレ目・471~472] B[3スレ目・338] A[3スレ目・377]
・レオン×ツバキ
 C[1スレ目・492~493] B[1スレ目・870] A[3スレ目・798]
・ベルカ×エリーゼ
 C[2スレ目・284] B[3スレ目・301] A[4スレ目・354]
・ピエリ×ルーナ
 C[3スレ目・249] B[4スレ目・317] A[4スレ目・412]
・アクア×ルーナ
 C[3スレ目・283] B[4スレ目・461] A[4スレ目・813]
・カミラ×サクラ
 C[4スレ目・175] B[5スレ目・58] A[5スレ目・107]
・ギュンター×サイラス
 C[1スレ目・926~927] B[3スレ目・316] A[5スレ目・363]
・シャーロッテ×カミラ
 C[2スレ目・476] B[4スレ目・439] A[5スレ目・436]
・ラズワルド×オーディン
 C[4スレ目・459] B[5スレ目・338] A[5スレ目・457]
・フェリシア×エルフィ
 C[1スレ目・367~368] B[2スレ目・541] A[5スレ目・481]
・サクラ×ニュクス
 C[5スレ目・860] B[5スレ目・889] A[5スレ目・919]
・エリーゼ×カザハナ
 C[5スレ目・14] B[5スレ目・921] A[6スレ目・7]
・ルーナ×カザハナ
 C[4スレ目・780] B[5スレ目・861] A[6スレ目・32]
・ルーナ×フローラ
 C[4スレ目・781]  B[6スレ目・50] A[6スレ目・78]

【支援Bの組み合わせ】
・シャーロッテ×モズメ
 C[3スレ目・248] B[3スレ目・285]
・ベルカ×ニュクス
 C[4スレ目・176] B[4スレ目・410]
・ジョーカー×ハロルド
 C[1スレ目・426~429] B[5スレ目・336]
・サクラ×エルフィ
 C[3スレ目・774] B[6スレ目・108]←NEW

【支援Cの組み合わせ】
・エルフィ×モズメ
 C[1スレ目・423~425]
・ピエリ×リンカ
 C[3スレ目・247]
・ピエリ×フェリシア
 C[3スレ目・250]
・フローラ×エリーゼ
 C[4スレ目・178]
・エルフィ×ピエリ
 C[3スレ目・771]
・スズカゼ×オーディン
 C[4スレ目・318]
・ハロルド×ツバキ
 C[5スレ目・56]
・アシュラ×ジョーカー
 C[5スレ目・105]
・マークス×ギュンター
 C[5スレ目・302]
・ラズワルド×ブノワ
 C[5スレ目・435]
・シャーロッテ×サクラ
 C[6スレ目・30]
・カミラ×アクア
 C[6スレ目・106]←NEW

今日はここまで

 次回から戦闘に入ります。
 リョウマステージ、初週時、襖越しにモズメ先生に倒してもらったのはいい思い出。

 次の展開を安価で決めたいと思います。参加していただけると幸いです。

◆◇◆◇◆◇
 カムイと共に戦うメンバー
―出撃確定メンバー―
 ・スズカゼ
 ・サクラ
 ・カミラ
 ・アクア
 ・レオン
◆◇◆◇◆◇

―選択可能メンバー―
 ジョーカー
 ギュンター
 フェリシア
 フローラ
 マークス
 ラズワルド
 ピエリ
 ゼロ
 オーディン
 ベルカ
 ルーナ
 エリーゼ
 ハロルド
 エルフィ
 サイラス
 ニュクス
 ブノワ
 シャーロッテ
 モズメ
 リンカ
 カザハナ
 ツバキ
 アシュラ
 フランネル

(それぞれのクラスは>>99を参照)

◆◇◆◇◆◇
・レオン、サクラと共に行動するメンバー

>>123 >>124

◆◇◆◇◆◇
・カミラと共に行動するメンバー

>>125 >>126 >>127

◆◇◆◇◆◇
・スズカゼと共に行動するメンバー

>>128 >129 >>130

 キャラクターが重なった場合は、安価が一つ下にずれる感じです。
 このような形で済みませんが、よろしくお願いいたします。
 

カザハナ

シャーロッテ

ルーナちゃん!

エリーゼで

マークス

ツバキ

モズメ

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・王都正門―

カムイ軍兵士「マークス様、王族の方々を引き連れた突入隊は予定地点に到着したそうです」

カムイ軍正門攻撃部隊長「よし、ジェネラル隊前へ。前列敵の呪術部隊の動きに注意しつつ、このまま敵の攻撃を受け止めることに徹しつつ、間合いを徐々に詰めてほしい」

カムイ軍ジェネラル「了解した。これより横列陣を組み前進! ここが正念場、敵の注意をこちらに向けさせろ!」

カムイ軍兵士たち『はい!』

 ザッ ザッ ザッ

白夜兵「敵、前進を開始しました」

白夜兵「よし、全員弓を引け!!!」

 チャキキキッ‼‼

白夜兵「放て!!!」

 パシュシュシュッ!!

カムイ軍ジェネラル「攻撃か来るぞ!! 最前列は盾を正面に構え、後列は掲げよ!」

  ヒュンヒュンッ
 カンッ キィン!
  ピキンッ! コンッ!

カムイ軍ジェネラル「ぐっ、さすがに生易しい攻撃ではないか。後続は少なからずの隙間を作り、消耗した兵と入れ替わり休息を取るように努めよ!」

 ヒュンッ ヒュンッ

カムイ軍正門攻撃部隊長「……敵がこちらに向かってくる気配は無し、当然と言えば当然か。よし、後続の飛竜部隊にはいつでも飛び立てるように準備をするように伝えよ」

カムイ軍兵士「はい!」

カムイ軍正門(やはり正門の防御は厚いか。ココを抜けるのは至難の業となれば、例の隠し通路の存在に賭けるしかない。頼みますよ、マークス様)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・王都郊外の森『アクアが地図で示した場所周辺』―

 パカラパカラッ
  ヒヒーンッ

マークス「どうやら、この辺りのようだな」

レオン「みたいだね……」

シャーロッテ「えぇ、何かありますかぁ? 私には何も見えませんけど」

カザハナ「あたしも。何か目印があるように見えないし、どうしてそう思うわけ?」

レオン「竜脈の気配がするんだ。これは僕たちみたいな竜の血を継ぐ人間にしかわからないことだから、カザハナ達にはわからないのは仕方のないことだよ」

カザハナ「そ、そう」

スズカゼ「なるほど、王族の皆さんは竜脈の気配を察知しているということですね」

アシュラ「へぇ、そんなものがあるなんてな。ってことは目星は付いたってことでいいのか?」

マークス「ああ、こっちのようだ。エリーゼは私の後ろに、ルーナはカミラの護衛を頼む」

ルーナ「わかったわ。カミラ様、あたしの後ろにいてよね。何が来ても必ず守ってあげるから」

カミラ「ええ、頼りにしているわ。それにしても、こんなに竜脈の気配がしてるなんて……。かなり強いもののようだけど」

エリーゼ「もしかして、これが秘密の道の仕掛けなのかな?」

カミラ「そうかもしれないわ。それにしても特に隠すつもりもないみたいね」

ルーナ「なら、見つけ出してカミラ様が発動させればそれで終わりってことでしょ。白夜の連中、そんなことも分かってないの?」

カミラ「もしくは、見張る必要性が無い仕掛けが施されてるか…ね」

ルーナ「見張る必要性のない仕掛けって言われても、いまいちピンと来ないわ」

 ザッザッザッ

カムイ「……ここが中心のようですね。ここがその竜脈でしょうか?」

マークス「うむ、その様だ。しかし……」スッ

 ………

マークス「ふむ……」

レオン「マークス兄さん、どうだい?」

マークス「やはりか、私の呼びかけに応じる気配はない。おそらく、この竜脈を動かせる者は決まっているのだろう」

カムイ「決まっている?」

マークス「ああ。おそらく白夜に紫のある者、ここにいる中でそれに当てはまるのは二人だけだろう」

レオン「サクラ王女とカムイ姉さんってことだね」

カムイ「え、私とサクラさんですか?」

サクラ「私もですか?」

レオン「ああ、物は試しだ。サクラ王女、ここにある竜脈に触れてみてくれないかな?」

サクラ「は、はい、わかりました。えっと、し、しつれいします」スッ

 ……シュオンッ

サクラ「あ……」

マークス「どうやら正解のようだ。まぁ当然の事か、われわれ暗夜の王族に動かせてしまっては意味もない、これは王族が生きていて初めて役に立つものだという事だろう」

レオン「守るべき主がいなければ、これを使う意味もないからね。多分、最悪の場合を考えて作られていたものだろうけど、それが僕たちにとっての助けになるなんてね」

 シュオオオン……シュオオン……

サクラ「……ふぅ」

カムイ「サクラさん、大丈夫ですか?」

サクラ「は、はい。大丈夫です。でも、この竜脈にはとても大きな力が蓄えられているみたいです」

カムイ「え? あ、確かにすごい力です……。とても隠し通路を作り出すようなものとは思えません」

サクラ「……おそらく地形そのものに何かしらの変化が起きるかもしれません。その、ひっそりと入り込むというわけにはいかないと思います」

レオン「なるほどね……」

カムイ「だとしても、この機を逃すわけにはいきません。これは私たちにとって最後のチャンスなんですから」

カムイ(こうして道は確かにあった。それだけでも私たちには十分な結果です。これ以上を望む時間はもうありません)

カムイ「……」スッ

アクア「カムイ」

カムイ「アクアさん?」

アクア「ここでその竜脈を起動すれば、きっと敵に感づかれる。それは、リョウマとヒノカを危険に晒すことになるわ。それでも……」

カムイ「恐らくは気づかれると思います。でも、こうして私たちが攻めている時点でそれは変わりません。なら、今できる最善手を打つ以外の道はありませんよ」

アクア「……」

カムイ「それに戦う事よりも重要なのは、リョウマさんとヒノカさんを見つけて保護することです。それで王族を慕ってくれている方々が武器を下ろしてくれれば、それだけでも私たちの勝ちです。それに、私たちが王都内部に突入すれば一時的ではありますが敵は混乱するはず、その隙を突いて王城の中に入り込めれば勝機はあります。だから、これ以外の道は無いと私は考えています」

アクア「そう、ごめんなさい、今さらなことを聞いて。行きましょう、時間はもう限られているから」

カムイ「はい。……サクラさんもいいですか?」

サクラ「はい。リョウマ兄様とヒノカ姉様を助け出しましょう、カムイ姉様!」スッ

カムイ「もちろん、そのつもりです」スッ

 シュオンッ

カムイ「サクラさん、行きますよ!」

サクラ「は、はい!」ギュウッ

 シュインッ シュオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!!!!!

 ゴゴゴゴゴゴゴゴッ

 
 バキンッ ドゴンッ 
  ドドドドドドドドッ!‼‼‼


レオン「地形が盛り上がっていく!?」

カミラ「こんなの初めて見るわ。だけど内側から逃げ出すにしても、こ大きく変化が起きてるから感づかれる以前の問題ね。何かしてますって手を振ってるようなものよ」

マークス「ああ、それにこの音、とても誤魔化せるものではないな。カムイ、道が開けたと同時にわれわれは先行する。向うの出口を制圧し、お前を待っているぞ!」

カムイ「はい、よろしくお願いします」

 ドゴンッ!!!!

マークス「いくぞ、私に続け!!!」

 ヒヒーンッ
  パカラパカラッ!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・奥の広間』―

 ゴゴゴゴゴゴゴッ

上級武将A「な、なんだ!? いったい何が起きている!」

上級武将B「こんな時に、地震?」

ユキムラ「地震ではありませんね。おそらく、城から外へと出るための道を誰かが動かしたのでしょう」

上級武将A「外へと出るための道? なんだそれは!」

上級武将B「そんなものをどうして隠していたのですか?」

ユキムラ「その理由は簡単に考えられるはずですよ。どこに暗夜の裏切り者がいるかもわからない中で、多くの者がこれを知ることの危険性はわかっていると思いますが?」

上級武将A「なら、誰がその道を動かしている! ユキムラ様、まさかこの期に及んで白夜を裏――」

ユキムラ「……」スッ

 ガチャンッ
  カタカタッ チャキッ
 ガコンッ チャキッ 

からくり人形「」キュインッ キュイイインッ

からくり人形「」カチャッ ギギギッ

上級武将A「!」

上級武将B「!」

ユキムラ「それから先を言っても構いませんよ。とても痛いことになってしまうかもしれませんが?」

上級武将A「なっ、何の真似だ」

上級武将B「ユキムラ様、こんな時に仲間同士で争う意味などありませんよ」

ユキムラ「ええ、そのあなた方が先の件と同じように変な事を言わなければ、こんなことをするつもりはありません。このようなことで戦力を失うわけにはいきませんので」スゥ

 ガコンッ 
  カタカタカタッ

ユキムラ「これで満足ですか?」

上級武将A「っ、一度武器を向けておいて何が満足だ! ちっ、俺は奥に下がらせてもらう。こんなところにいて、背中から撃たれては堪ったものではない!」タッタッタッ

上級武将B「……私も失礼させていただきます。あなたでしたら、ここを死守するのもたやすいことでしょうし、戦力は温存しなくてはいけませんからね」

ユキムラ「おやおや、色を変える準備ですか?」

上級武将B「ふん…」タッタッタッ

ユキムラ「……」

 スッ
  タッタッタッ……

 スーッ

ユキムラ「それでどうしますか? このまま何もせずに待つというわけではないでしょう?」

???「……いずれここに来るはずだ。それをお前も分かっているだろう?」

ユキムラ「ええ、だから私はあなたの要求を受け入れたのですから……。あなたの言う通りに事は進めますよ」

???「……ああ」チャキッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『出現した通路内部』―

 タタタタタッ

アクア「かなり長い道ね。いったいどこまで伸びているのかしら」

カミラ「それに竜がこうして進めるくらい大きいから、本当に大勢での脱出も考えて作られているみたい。これほどの人数を移動させるとなると、かなり広い場所に出ると思うわ。ルーナ後続は大丈夫?」

ルーナ「今のところは何も起きてないみたい。正門の陽動部隊に使いを出したから、最小限の部隊だけを残して本隊は合流する手はずになってるし、出る所によっては内側から敵の戦線を崩せそうね」

カムイ「はい。わっと……」

アクア「カムイ、大丈夫?」

カムイ「はい、なんとか。皆さんの気配だけを頼りに進んでいますが、少し足元がおぼつかない感じです」

 パシッ

カムイ「?」

アクア「こ、これなら大丈夫でしょう」ギュウッ

カムイ「はい、ありがとうございます。アクアさん」

アクア「気にしないで……」

カミラ「どうやら出口みたいね。ルーナ先行して頂戴」

ルーナ「分かったわ! へへん、あたしが一番乗りよ!」タタタタタッ

カムイ「すでにマークス兄さんたちが先行しているので一番ではないと思うんですけど」

アクア「いいじゃない。次の突入組の中では一番ではあるし、ルーナの調子が上がるように何も言わないのがベストよ」

ルーナ「聞こえてるわよ、アクア様」

 タタタタタッ ザッ

ルーナ「……敵はいないみたい、大丈夫よ!」

カミラ「それじゃ、行きましょう」

 タタタタタタッ

アクア「これは桜?」

レオン「……結構大きな場所みたいだ。カザハナ、ここがどこかわかるかい?」

カザハナ「う、うんわかるけど、、まさかこんな場所に外に出るための道が隠されてたわけ? 全然気づかなかったんだけど」

サクラ「はい、ここはシラサギ城の西庭ですね…」

スズカゼ「ここからの脱出となると、早期に要人を脱出させる手筈を整えていたということでしょう。もっとも、今の白夜の内政を思うにこれを使うには至らないのでしょうが」

カムイ「それで、マークス兄さんは……」

マークス「カムイ、こっちだ!」

カムイ「あ、はい。それで状況はどうなっているんですか?」

マークス「うむ、先行した騎兵隊が城の正門を抑えに向かっている。王都へと入るための橋は上がっている以上、正門を抑えてしまえば、王都から白夜兵が来るのを幾分か抑えることは出来るはずだ」

レオン「敵は僕たちが正門を落としにくると考えていたわけだから、当然と言えば当然ってところかな」

カザハナ「でも、王都で戦ってる兵が撤退してきた場合はどうするつもりだったのかな。あの跳ね橋、下ろすのに結構時間掛かったと思うんだけど」

レオン「敗走した兵を城内に受け入れるつもりはなかったのかもしれない。王都全体の人口が現在どれだけいるかはわからないけど、それらを城内にいれることは出来ないし、あのユキムラがそれを選ぶとは思えない。奴の目的は間接的に白夜の勝利であって、本質は個人的なことになるだろうから、無駄な戦力を救うという考えはしないはずだ」

カザハナ「そんな……」

マークス「だかこれはわれわれにとって有利に働く、王都で戦っている者たちが王族派だとするならば、城の中にいるヒノカ王女、リョウマ王子を助け出すことで一気に形勢を変えられるかもしれん。当初の予定通り部隊を分割し、さらにそれを細分化し事に当たろう。敵の態勢が整っていない今、一気に攻勢に出る!」

カムイ「はい。私たちは王の間へと向かいます。ここで決着を付けましょう」

マークス「よし、後続部隊の護衛を少数残し、これよりシラサギ城内部へに向かう!」

カムイ軍兵士たち『おおーっ!』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―白夜王国・シラサギ城『内部、剣の間に至る回廊』―

カムイ「……静かですね」

アクア「ええ、シラサギ城に入ってから少し経つけど、散発的に戦闘があるだけで大攻勢を仕掛けてくる気配はないわ」

カムイ「どういうことでしょうか……」

マークス「わからない。だが、これも何かの策かもしれん、気を抜くな」

カムイ「はい、サクラさん剣の間にはあとどれくらいで?」

サクラ「えっと、ここの渡り廊下の先です」

カムイ「わかりました。敵の奇襲があるかもしれません、皆さん気を付けてください」

 カタンッ カタンッ カタンッ

  タタッ タタッ タタッ

カザハナ「ここを歩くのは久しぶりだけど、まさかこんな形で通ることになるなんて思ってもなかったなぁ」

レオン「そうだね。僕もカザハナやツバキ、それにサクラ王女と一緒に歩くことになるとは思ってなかったよ」

ツバキ「たしかにねー。最初の頃じゃ考えられなかったかな」

サクラ「はい……。だけど、すごく静かですね……」

レオン「不気味なくらいに静かだ、注意しておいた方がいい。シャーロッテはサクラ王女の護衛を頼む」

シャーロッテ「はーい、まかせてくださぁい。そういうわけだからサクラ王女、私の陰に隠れてなさいよ」

サクラ「は、はい、よろしくお願いします」

シャーロッテ(それにしても、本当に何も仕掛けてくる気配が無いわね……)

カミラ「……妙ね」

マークス「カミラ、どうかしたか?」

カミラ「いえ、この渡り廊下の構造なら、外から金鵄武者が攻撃して来てもおかしくない構造なのに……」

エリーゼ「この前の戦いでいっぱい死んじゃったってことなのかな……」

マークス「かもしれんが、あれですべてが失われたわけではないだろう。しかし、カミラの言う通り妙だな。前方に何かしらの陣が敷かれている形跡もない……」

アクア「何かあるとは思うけど、何をしようとしているのかはわからないわね」

カムイ「……スズカゼさん、アシュラさん少しいいでしょうか?」

スズカゼ「はっ、何でしょうかカムイ様」

アシュラ「なんだ、カムイ様?」

カムイ「あの窓があるようでしたら外の様子を確認してもらえますか。敵の強襲があるかもしれませんので」

スズカゼ「わかりました」サッ

アシュラ「わかったぜ」サッ

カムイ(ここを渡り切れば剣の間、そして王の間に至れる。ここは守らなくてはいけない場所なのに、あまりにも手薄になっている。あと少しで渡り切るところまで来ているというのに敵に動きが無い、どういうことですか?)

スズカゼ「……」

アシュラ「……」

モズメ「アシュラさん、なに見てるん?」

アシュラ「ん、敵の強襲があったら大変だから、今確認してるところだ」

モズメ「そうなんか。でもここに来るのって少し不便や思う。渡り廊下がなかったら、下から登らないといけない構造になってるから、この廊下が無くなったら、下から回り込まないといけない形やもん。正直不便やって思うんよ」

スズカゼ「そうですね。ですが、敵の進撃が二つの方角からだけならば対処はしやすいものです。攻める側からしても、このような屋内での戦闘では数を活かすことも出来ませんから、少ない人数で対等に渡り合うこともできるでしょう」

アシュラ「そうだな、どんなに敵の数が多くても、100人相手にするのと10人ずつ相手にするのじゃ話が違ってくるし、敵の分断だってその気になれば……。ん!?」

カムイ「アシュラさん、何か見えましたか?」

アシュラ「いま、金鵄が一羽視界を通った。いや、四羽だな。しかし、妙だな」

カムイ「妙とは?」

アシュラ「あいつら武器は持ってなかった。代わりに一人、あれは陰陽師か? ともかく呪術に通じてそうな奴を乗せてるだけだったが……」

マークス「どちらにせよ敵には感づかれているようだ。全員、中央に寄れ。敵が挟撃に移るかもしれん」

カムイ「……」

カムイ(このタイミングで挟撃を仕掛けてくるということは、正面からも敵がやって来るということですか。なら、この廊下の中央に陣を組んで待つのが得策……。いえ、待ってください、さきほどモズメさんは何と言っていましたか?)

モズメ『この廊下が無くなったら、下から回り込まないといけない形やもん』

カムイ(………まさか!)

カムイ「マークス兄さん!今すぐこの渡り廊下を抜けましょう!」

マークス「カムイ?」

カムイ「これは敵の罠です。後続の方は後退、渡り廊下から離れてください! 早く!!!」

カムイ軍兵士「わ、わかりました。全員、退くんだ!」

 ダダダダッ
  タタタタタッ!

カムイ(先ほど金鵄武者が見えてから少しだけ時間が経っています。すでにそれが仕掛けられているとしたら、あとは――)

スズカゼ「敵、金鵄武者、離れていきます」

カムイ「くっ、はやくこの廊下を抜けて奥へ! おそらく、もう準備を整えているはずです!」

 シュオオンッ

レオン「これは、呪術の紋様!?」

 バシュウウッ!
 ボッボッ ボボボボボボッ!

サクラ「廊下全体に火が!?」

カムイ「くっ、早く、先へ!」

 タタタタッ

 シュオンッ キュイインッ

カムイ(間に合ってください!)

アクア「カムイ!」

カムイ「はあああっ」ダッ

 ヒュオンッ

  ドゴンッ バキィンッ
   ドガーンッ ボゴンッ!

 グググググッ グラッ

  ガラガラガラガラッ
    ドスンッ ズシンッ!

  ドゴォォンッ‼‼

カムイ「………くっ……」

 パラパラッ カタンッ コロンッ

カムイ「はぁ…はぁ…。み、皆さん無事ですか!」

マークス「なんとかな。状況を報告しろ、後続の被害はどうなっている!」

カムイ軍兵士『こちらは無事です。カムイ様の号令が無ければどうなっていたことか。感謝いたします!』

カムイ「よかった。そちらの被害がなくて何よりです」

カムイ軍兵士『はい。今、飛竜部隊を……! 地上より、敵金鵄部隊接近!』

 バサバサッ

 チャキッ パシュンッ
  パシュンッ!

  ヒュンヒュンッ!

マークス「くっ、このままここにいるのはまずい。お前たちは別のルートを探しだし合流せよ!」

カムイ軍兵士『わ、わかりました!』タタタタッ

カムイ「私たちも早く金鵄武者の攻撃が届かない場所まで――」

 タタタタッ

カムイ(この気配、敵!? しまった、この騒ぎに紛れて接近を許していたというのですか!)チャキッ

???「」サッ

カムイ「くっ」

アクア「カムイ!」

???「すまないが、ついてきてもらうぞ」ガシッ

カムイ「しまっ――」

???「今だ、やれ」

???「ああ……」

 カランコロンッ
  バシュッ

カムイ「うっ……」クタッ

???「いくぞ」サッ

???「ああ」サッ
 カランコロンッ

アクア「カムイ、待ちなさい!」ダッ

カミラ「アクア! ルーナ、アクアを追って、一人にしてはいけないわ」

ルーナ「わかったわ、アクア様!」タタタタッ

マークス「われわれも追うぞ!」

 タタタタッ

???「……」

 ピシャッ!

アクア「くっ! 開かない。なら、はああっ!」

 ブンブンッ
  キィンカキィン

ルーナ「アクア様、一人で行ったら危ないでしょ!? で、カムイ様は?」

アクア「この奥に連れていかれて……。壊そうとしているんだけど、びくともしないわ」

ルーナ「そんなわけないでしょ、あたしがやるわ! てやああっ!!!」ブンッ

 ガキィン

ルーナ「……な、なによこれ、すっごい手が痺れるんだけど」ヒリヒリ

マークス「二人とも大丈夫か?」

アクア「マークス、カムイがこの奥に……マークス向こう!!」

マークス「むっ?」

 ザザッ

白夜弓聖「……」

白夜剣聖「……」

白夜上忍「……」

白夜兵法者「……」

マークス「くっ、囲まれたか」

レオン「敵の手にまんまと乗せられた。くそっ……」

サクラ「…そんな」

カミラ「……」

アクア「……カムイ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―シラサギ城『剣の間・中央』―

 ピチャンッ

カムイ「うっ、ううっ……ここは、私は一体……」

???「目覚めたか。まぁ、一瞬だけ眩暈を起こすくらいのものだから心配はしていなかったがな」

カムイ「その声、サイゾウさん?」

サイゾウ「よく覚えているとはな。もう、長い時間顔を合わせてすらいなかったはずだというのに」

???「カムイ様にとって音は生命線ということだろう。光を失っているのならば、この音に対する記憶力が良いことは不思議な事ではないさ」

カムイ「カゲロウさん?」

カゲロウ「ああ、こうして声を掛けるのは久しぶりの事になる、カムイ様。手荒な真似をしてすまなかった」

カムイ「……なぜ私を殺さなかったんですか? あの状態なら、私を殺すことはたやすかったはずです」

サイゾウ「たしかにあの瞬間、お前の首を掻っ切る事も出来た。だが、主はそれを望んでいない。だからこうしてここに連れてきたということだ」

カムイ「主?」

???「連れてきてくれたようだな。サイゾウ、カゲロウ」

カムイ「……あ、あなたは」

サイゾウ「……はっ」

カゲロウ「ご命令の通りに、リョウマ様」

リョウマ「ああ、ご苦労だった……」

カムイ「リョウマさん……」

リョウマ「あの国境での戦い以来だな、カムイ。いや――」

「暗夜王国のカムイ王女、そういうべきだったな……」

今日はここまで

 今日はリョウマ兄貴の誕生日、みんなでエビフライを食べよう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・入り口周辺』―

白夜兵たち「……」

マークス「……」チャキッ

レオン「……」シュオンッ

カミラ「さぁて、どちらから飛びかかってくるのかしらね?」

ルーナ「カミラ様はちょっと下がってて。さぁ誰から来るの、勿体ぶってないでさっさと来なさい!」チャキッ

白夜兵「……」スッ

 タタタタッ

ルーナ「え? ちょ、何処に行くつもりよ! ここまで来て逃げ出すなんてどういうつもりなわけ!?」

カミラ「ルーナ、待ちなさい。相手の動き、逃げたというわけじゃないわ。この先で私たちを待ち構えているはず」

マークス「ここから先に進むつもりが無ければ、攻撃をしないということか……。囲まれた以上、すぐに攻勢をかけてくると思ったが……」

レオン「カムイ姉さんを確保する事だけが目的だったっていうことかもしれない。くそっ、敵の攻撃に気取られなければ、守れたはずなのに」

カミラ「今さらそれを言っても仕方ないわ。だけどカムイを攫われたのに、黙っていられる私たちだと思っているのかしらね?」

レオン「このまま黙ってみてるつもりはないよ。カムイ姉さんを助け出すんだ」

サクラ「はい。だけど、どうしてカムイ姉様を攫う必要があったんでしょうか……。あの瞬間に私たちを一網打尽にすることは出来たはずなのに……」

レオン「ユキムラがそうさせたに決まっているよ。僕たちをこうして足止めするのも狙いの一つだろうね」

カザハナ「っていうことは、ゆっくり進軍ってわけにもいかないよね……」

シャーロッテ「一気に畳み込まないといけないってわけか。しかしあいつら。陰に隠れてから姿を見せないし、まったく男らしく出てきなさいっての」

レオン「地の利は敵にある以上、こちらが不利なのはわかっているけど、いくしかないね」

スズカゼ「レオン様、ここは私が先行いたしましょう。ここの構造には覚えがありますので」

レオン「わかった。おそらくだけど、奴らが侵入を許すのはこの先の角までだ、そこを越えたら攻撃に打って出てくるはずだ……。出来れば同時に攻めるべきだとは思うけど……」

マークス「ならば、左への進軍は私たちの役目ということだな」

レオン「え、マークス兄さん?」

マークス「なに、片方に戦力を集中したところで挟み撃ちにされてしまっては、こちらから打つ手は無くなってしまう。ならば、こちらをわれわれが抑えに回るのは必然だ」

レオン「だけど、敵は大勢いるはずだ」

マークス「ふっ、私の剣の腕を甘く見てもらっては困る。それにカミラとエリーゼも一緒だ。それだけでも十分な戦力だろう?」

ルーナ「ちょっと、マークス様。あたしも入れてよ!」

マークス「そういうわけだ。だから心配することは無い」

レオン「……わかった、そっちは任せるよ。マークス兄さん」

マークス「ああ。よし、カミラ、エリーゼも準備はいいか?」

エリーゼ「うん、怪我をしたら言ってね。すぐに治しちゃうから!」

カミラ「ええ、お願い。ルーナ、私と一緒に先頭に立ってくれる?」

ルーナ「問題ないわ、カミラ様。早く敵の仕掛けを解いて、カムイ様と合流しないとね」

マークス「よし、こちらの準備は整っている。準備が整ったのならば合図を頼む」

レオン「分かった。スズカゼ、準備はいいかい?」

スズカゼ「私は出来ていますよ。アシュラさん、右から援護をお願いできますか?」

アシュラ「ああ、任せてくれ。といっても相手の庭だ、うまくいかねえかもしれねえ」

ツバキ「最初から弱気なのは感心しないよ?」

アシュラ「ふん、悪かったな」

モズメ「大丈夫、そこはあたいが何とかするで。それより早く、カムイ様を助け出さんと……」

スズカゼ「はい、モズメさんの言う通りです。事は一刻を争う事態ですから、慎重に大胆に進行していきましょう。お待たせしましたレオンさん、いつでも行けますよ」

レオン「うん……。アクアはどうする?」

アクア「私は……ここで様子を伺う。渡り廊下は完全に崩落して、敵も入って来ることはできないみたいだから……。それに、この扉の仕掛けが止まった時に、すぐに駆け込めるもの」

カミラ「わかったわ、カムイの事をよろしくおねがいね?」

アクア「……ええ、任せて。みんな気を付けて」

レオン「ああ。それじゃ、行くよ!」ダッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―『剣の間・中央』―

 タタタタタタッ
  キィン ガキィン!

カムイ「この音は……」

リョウマ「お前の仲間たちが進軍を開始したということだろう。まぁ、こうしてお前を捕まえここに捕らえているのだから当然と言えば当然か」

カムイ「リョウマさん、私たちはあなたと戦うために来たわけじゃないんです。私は、あなたを助けに――」タッ

リョウマ「……」チャキッ ヒュンッ

カムイ「!」

リョウマ「それ以上近づくのであれば、すぐにでもお前を切り伏せに掛かるぞ」

カムイ「リョウマさん、何のつもりですか……」

リョウマ「敵が近づいてきているのであれば、剣を取るのは当然だろう。それとも、お前は敵である相手に無防備であり続けるのか?」

カムイ「何を言っているんですか、私たちはリョウマさん、そしてヒノカさんを助けにここまで来たんです! きっと、ヒノカさんも他の皆さんが見つけ出しているはずです」

カムイ(そうです、きっと城に入り込んだ方々がヒノカさんを見つけ出しているはず)

カムイ「ユキムラさんにヒノカさんを人質に取られているんですよね。なら、それに屈しては――」

リョウマ「ヒノカか、ヒノカなら王の間でミタマが守っている。お前の仲間が助け出しているということはないだろう。ここに至る道はすべて潰させてもらった、到着するのに時間は多くかかるだろう」

カムイ「止めてください。私たちと戦うためにこの場を用意したようなことを言わないでください。嘘だと言ってください、おねがいですから……」

リョウマ「……」

カムイ「リョウマさん……」

リョウマ「サイゾウ、カゲロウ。命令を与える」

サイゾウ「はい、リョウマ様」

カゲロウ「ご命令を」

リョウマ「それぞれの持ち場に赴き、任を果たせ。これが、最後の命令だ」

カムイ「カゲロウさん、サイゾウさん。私たちが戦う必要はもうないんです。私はあなたたちと手を取り合いたくて、ここまで来たんです。だから、だから――」

サイゾウ「……」

カゲロウ「……」

カムイ(だから、そんな命令に従わないで――)

サイゾウ「……わかりました、リョウマ様」

カゲロウ「……全力で任務を全うさせていただきます、リョウマ様」

リョウマ「……よし、行け」

サイゾウ&カゲロウ『御意』シュタッ!

リョウマ「……」

カムイ「なんで……、なんでですか……」

リョウマ「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・右の部屋』―

サイゾウ「状況はどうなっている」シュタッ

上忍「お、サイゾウ様。少し前に敵の進軍が始まりましたよ」

サイゾウ「わかっている。だからこそ、戻って来た。相手は我慢できない性質のようだな?」

上忍「ええ、こっちが退いてすぐに仕掛けてきました。まぁ、前衛はユキムラ様を慕っている者たちに任せていますが……。やはり、力量の差は隠せませんね。雑草みたいに狩られてますよ」

サイゾウ「ふっ、ここにいれば安全だと高を括っていた者たちだ。早々に敵の餌食になってもらった方がいい、強固な陣にあいつらは必要ない。もっとも、ここまで奴らが上がってくるのも速かったことを見るに、王都の城壁防衛に加えなかったのは良い方角に働いたか……」

上忍「ええ、しかしあれですね。忠儀も何もないものが一番の鉄火場に送り込まれることになるとはねぇ?」

サイゾウ「ここにいる者のは全員が忠儀を尽くせない馬鹿ものばかり、そうだろう?」

上忍「ははっ、そうでした。しかし、サイゾウ様ともあろうお方が馬鹿者というのは聊か不思議な気持ちでございます」

サイゾウ「……俺は馬鹿者だ。どこまでもその通りに動き、そして最後には最も望まれていなかったことを行った。忠儀も何もあったものではない」

上忍「そんなことはありません。それにサイゾウ様が馬鹿者でしたら、我々は馬鹿にもなれない屑者になってしまいます故、少しばかり私たちにも馬鹿者をおすそ分けいただきたい」

サイゾウ「そんなものを御裾分けされてうれしがるな」

上忍「いやいや、うれしいものですよ。この行為に意味があるのかないのかという無粋な問いかけが来れば、最高の意味があると私は答えましょう」

サイゾウ「……そうか」

 ドゴォンッ!

上忍「いやはや、やはり城でのさばっているだけの者たちでは、彼らが来るのも時間の問題ですね」

サイゾウ「そのようだ。すまないが、ここは俺に任された最後の陣だ。小さな場所ではあるが、ここには俺が託された最後の使命がある」

上忍「ええ、わかっていますよ。ではサイゾウ様、これにて失礼します。二人はちゃんとサイゾウ様に恥じないように努めるんだぞ」

婆娑羅「任せろ。どんな敵が来ても怯むことなく戦って見せるさ。あの怯え腰の上級武将のような恥ずかしい戦いはしないさ」

陰陽師「少し黙っていてくださいまし、今最後の式神を折り終える所ですから。よし、これで完成です。ささっ、サイゾウ様の事は私たちに任せて、あなたはあなたの任に向かいなさい」

上忍「ああ、そうさせてもらうよ。サイゾウ様」

サイゾウ「なんだ?」

上忍「出来る限り時間をおつくりします。もしも、その時が先に来ましたら――」

サイゾウ「わかっている、その時は覚悟を決めよう……」

上忍「はい、それでは」シュタッ

サイゾウ「……」

サイゾウ(……すまない)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・右の通路』―

 キィン キィン!

スズカゼ「そこです!」カランコロンッ バシュシュ

 ズシャッ ビシャアアッ

白夜兵「ぐあああっ……」ドサッ

白夜兵「ひ、怯むな! 敵の数はわずか、押し切ってしまえばこちらのも――」

モズメ「悪いけど、討たせてもらうで!」チャキッ キリリッ パシュンッ!

 ヒューーッ ドスッ

白夜兵「――のぉ……」ドタンッ

白夜兵「くそ、何だよこれ。ここまで敵は来ないって話だったじゃないか! なんでこんなことになってんだよ!」

白夜兵「我らの長は何をやっているんだ! このままでは!!!」

アシュラ「なんなんだこれは? 相手するだけ無駄ってくらいに混乱してるじゃねえか」

ツバキ「おそらくだけど、僕たちがここに来るのを見越してたのは、最初に包囲してきた奴らだけみたいで、今相手してるのはそれも考えてなかった腑抜けみたいだねー。でも、そろそろ通路の中ほどまで来たから変わる気がするよ」チャキッ

レオン「……みたいだね」

カザハナ「……うん、空気が変わった。ここからが本番ってことね」

シャーロッテ「どこから来るかわからないわね……」

 ……ギシッ

上忍「そこだ!」チャキッ

サクラ「シャーロッテさん!」

シャーロッテ「!!!」チャキッ

 ヒュンヒュン
  キィンキィン!

シャーロッテ「ふーっ、ありがとう、サクラ様。それにしても中々の挨拶じゃねえの……。こんなにか弱い女に向かって攻撃するなんて」

上忍「ふむ、か弱いと呼ぶには少々重たい獲物を持っているみたいだが」

シャーロッテ「これでもか弱いんだよ!」

上忍「まぁ、か弱くてもか弱くなくてもいい、ここから先に行かせるつもりはないからな!」スタッ

 バタンッ!

兵法者「せやあああっ!」ダッ チャキッ

レオン「隠し扉から出てくるのはいいけど、もう少し距離を狭めないと!」スッ 

レオン(この距離、ボクの攻撃の方が――)

 ギィ 

レオン「!」サッ

弓聖「……くらえっ!」チャキッ ギリリッ パシュッ

 タンッ

レオン「くっ、中々やる……」

兵法者「へっ、その背中、もらった!」ダッ

レオン「!」

カザハナ「そうはさせないよ! せいの、それ!」シュッシュッ!

 ザクザクッ

兵法者「ぐっ……。このぉ!!!」ジャキッ

サクラ「ごめんなさい!」パシュッ 

 ドスッ!

兵法者「うっ、は、はぁ、もう少し戦っていられるかと思ったが。すまない、俺はここま……」ドサッ

上忍「ちっ、まだまだ退くわけにはいかん!敵を抑え込むぞ!」タッ

弓聖「援護する! 次の者も進め!」パシュッ

剣聖「はあああっ!」タタタッ

 チャキッ ブンッ

モズメ「っ、あと一歩遅かったら危なかったわ。少し下がるで!」タッ

アシュラ「ちっ、中々の手練れだな。どうする?」

スズカゼ「思った以上にあの弓がこちらの動きを妨害して来ますね」

ツバキ「なら、ここは俺が囮になるから、その間に弓を無力化してくれるかなー? あと、できればあの忍は誰かに頼みたいんだけど……」

アシュラ「へっ、それは俺がやるさ。レオン様、こちらから仕掛ける、援護を頼むぜ」

レオン「わかった。ブリュンヒルデ!」シュオンッ!

上忍「はっ、そんな攻撃が当るか!っと」チャキッ

 キィン!

アシュラ「やるねぇ。フウマの奴らに爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいだ」

上忍「それは褒め言葉として受け取っておこう!」ダッ ゲシッ

アシュラ「うおっと、そっちには行かせねえぜ」チャキッ シュシュシュッ!

上忍「はああっ」チャキ シュシュシュッ

 キキキィンッ! ゴトゴトゴトンッ

剣聖「その背中、貰った!」

ツバキ「そうはいかないよー。そこだね!」チャキッ バシュッ

 ビチャアッ

剣聖「ふん、そんな傷で倒れると思ったか!?」ブ゙ンッ

 サッ スタタッ チャキッ シュッ!

ツバキ「すごい剣さばきだけど、俺だけが相手じゃないってこと忘れてるよー?」

剣聖「くっ!」キィンッ

レオン「もらった! ブリュンヒルデ!」シュオオオオッ

上忍「そうはいかんぞ」サッ

 キキキィン!

剣聖「くっ、すまん、助かった」

上忍「気にするな。まだまだ時間は稼がないといけないからな」チャキッ

レオン「……悪いけど、そんな時間稼ぎはさせるつもりはないよ」

上忍「へっ、上等!」ダッ!

 キィン カキィン!

上忍(……ああ、やっぱり勝てねえな。わかってはいたが……。時間稼ぎくらい出来ればと思っていたが、こんなの稼ぎにもならねえか……)

 キィン ブシャッ!

剣聖「がっ、うううっ、……」ガクッ ドサリッ……

弓聖「くっ、早く援護を――」

モズメ「そこや!」パシュッ

 ドスッ! ポタタッ

弓聖「ぐっ、まだ――!!!」

スズカゼ「すみませんが、討たせていただきます」

弓聖「しまっ――」

 カラコロンッ バシュッ!!!

 ドスリッ

弓聖「――!!!!!」 ゴトンッ ドサリッ

アシュラ「最後だ! 畳みかけるぞ」

レオン「ああ」

上忍「……」

上忍(……勝てないとはわかっていた。sかし、わかっていても、ここは踏ん張らないといけないってのによ……)

 キィン ガシッ ドゴンッ

上忍「がっ――」ポタタッ

レオン「ブリュンヒルデ!」シュオンッ

 グラッ シュオオオオオンッ!

上忍「……ははっ、情けない」

上忍(サイゾウ様……。申し訳ありません)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・中央』―

カムイ「リョウマさん、サイゾウさんとカゲロウさんたちに戦いを止めるように言ってください! 私たちは――」

リョウマ「……いつまでそうやっているつもりだ、暗夜の王女よ。どんなに叫んだところで、指揮官である俺が倒れなければ戦いは終わらない」

カムイ「なにを言っているんですか……」

リョウマ「もしも、お前が戦いの早期決着を望むなら、するべきことは簡単だ。俺は今この白夜の全権を託されている。俺がお前たちを討つのは当然のことだ。ユキムラの望みと俺の行動に関係は無い」チャキンッ

カムイ「リョウマさん……」

リョウマ「……剣を抜け、暗夜の王女よ。それがおまえの望む、多くの者の手を取る最善の方法だと、わかっているだろう?」

カムイ「ま、待ってください。なんで剣を取らなくてはいけないんですか。私はリョウマさんと戦うために、ここに来たわけでは――」

リョウマ「……その道にどんな意味があるか、俺はそれを知るつもりはない。それがどれほど理想に溢れていたとしても、俺はその旗を靡かせる一陣の風になる事はない。俺には俺の旗がある以上、俺は俺の旗に身を委ねるまでだ」

カムイ「リョウマさん……」

リョウマ「さぁ、決着を付けよう。この長きに渡る長い戦いに、終わりを迎えるために……」チャキッ

 バチンッ シュオンッ

「白夜王国第一王子、リョウマ。いざ、参る!」ダッ

今日はここまで

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・左区画』―

 キィンキィン

白夜兵「せやああっ!」ダッ

マークス「甘い!」チャキッ

 カキィン キンッ!

白夜兵「ぐっ!」

マークス「カミラ!」

カミラ「ええ、任せて。はあっ!」シュオオンッ

 ドゴンッ

白夜兵「っ!!!」

ルーナ「悪いけど、押し通らせてもらうわよ。はあああっ!」ダッ
 
 ドゴンッ

白夜兵「ぐあああっ」ドササッ

ルーナ「へへん、ざっとこんなもの――」

 カタカタッ チャキッ

カラクリ人形「……」

ルーナ「!」

 パシュッ
  ザシュンッ

ルーナ「っ! やってくれるじゃないの!」

マークス「ルーナ、相手の挑発に乗るな! エリーゼ、ルーナの手当てを頼む。右のは私が処理する、カミラ左を頼めるか」

カミラ「わかったわ」バサッ

カミラ「私の可愛いルーナに傷をつけてくれたこと公開させてあげるわ」ドゴンッ ガシイッ

カラクリ人形「ギギギッ」チャキッ

カミラ「そのまま捻り潰しなさい!」

 グオオオオオンッ バギンッ!!!
  ゴトンゴトンッ

カラクリ人形「……」カタカタカタッ
  チャキンッ ジャキンッ

カミラ「あらあら、ここから先はカラクリ屋敷みたいね」

マークス「他にも何かしらの仕掛けを隠しているかもしれん。警戒を怠るな」

ルーナ「っ……」

エリーゼ「ルーナさん、動かないでね、えーい!」シャランッ

 ホワンッ

エリーゼ「はい、これでもう大丈夫だよ」

ルーナ「ふー、エリーゼ様、恩に着るわ。それにしても最初にいた敵は思ったよりも歯応え無かったけど、どうして?」

マークス「ああ、手練れというわけではなかった。しかし、ここからの空気、間違いなく腕に自信のある者がいる」

カミラ「ええ、それにこのガラクタの動きも良くなってる。甘く見ていると、痛い目を見ることになるわ……」

からくり人形「……」

 カタカタッ
  チャキッ ギュイインッ

ルーナ「うえぇ……。ただでさえ不気味なのに、頭の中からあんなの出すとかセンスないわ」

エリーゼ「いっぱい集まって来てる。お兄ちゃん、これからどうするの?」

マークス「決まっている、向かってくるものはすべて薙ぎ払い、カムイを助け出すだけのことだ。おそらく、このカラクリを操っている者がいる。それを倒すことが出来れば……」

カミラ「……そうね。だけど……」

 カタカタッ
  チャキッ チャキッ

カミラ「……」

カミラ(向こうから仕掛けてくる気配が無いわね。あんなに数を出しているなら、畳みかけてきてもいいのに。どういうつもりかしら?)

マークス「カミラ? どうかしたか?」

カミラ「……なんでもないわ。」

カミラ(威嚇のつもりかもしれないけど、それに乗っていられるほど私たちに余裕はないのよ)

カミラ「行きましょう、マークスお兄様。カムイが待っているわ」

マークス「ああ、奴らの戦列を崩す。ルーナ、同時に仕掛けられるか?」
 
ルーナ「あたしを誰だと思ってるわけ。そんな簡単なこと出来ないわけないでしょ?」

マークス「ふっ、ではその腕、確かめさせてもらうとしよう……。行くぞ!」ダッ

ルーナ「そう来なくっちゃ! 右は任せて!」ダッ

マークス「うむ! せやああああっ」ダッ

 キュイインッ カタカタッ
  カチャッ キリリッ 

カミラ「エリーゼ、弓の人形を狙いに行きましょう。二人がいっぱい動けるように」

エリーゼ「うん、わかったよ。お姉ちゃんに合わせるね! よーし!」シュオンッ

カミラ「それじゃ、お仕置きの時間よ」

エリーゼ「おしおきしちゃうよー!」

 シュオオオオッ
  ドゴン ドゴゴンッ!!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―剣の間・左区画『奥の座敷』―

 プツンッ 
  プツツンッ

白夜絡繰師「あちゃ~、一気に数を減らされちゃいましたね。あとどれくらい残ってるかな?」

白夜槍聖「今さら数えでも意味などない、それ次の人形を動かし始めることに専念しろ。敵の進軍、やはり思った以上と見える」

白夜絡繰師「はいはい、わかってますよ。まったく、これでも真面目にやってるつもりなんですけどね……。流石に数を見せつけて動きを止める相手じゃなかったか」

???「そうだろうな、カムイ様が私たちの手中にある以上、止まることなどありはしないさ」

白夜絡繰師「はぁ、時間稼ぎの効果は無し……。うまく動かせてたと思うんだけどな。そういえばカゲロウ様、絡繰獅子の調子はどうですか?」

カゲロウ「ああ、良好だ。すまない、私のためにここまでのことをさせてしまった」

白夜絡繰師「何言ってるんですか。あんな大怪我で帰ってきたのに、すぐに任務に戻るなんて言って、あんなこと聞かされたら手を貸さずにいられませんよ!」

白夜槍聖「私もです。それにわれわれのような一介の兵が、リョウマ様の枕下を守っておられるあなたと共に戦える、これほど光栄なことはありません」

カゲロウ「……私はそんな立派な人間ではない。もうこれを駆使しなければ自由に動くこともままならん。そして、その調整すらまともにできない。私の我侭にお前たちを付き合わせているだけだ」

白夜絡繰師「いいえ、私たちが好きで選んだことですし、サイゾウ様と共に戦ってる連中も命のことなんて考えてないはず」

白夜槍聖「その意見には私も賛成だ。この身はいついかなる時も、リョウマ様のためにと決めていたものですので」

カゲロウ「……いや、今からでも遅くはない。私だけを置いてお前たちは身を隠すといい。攻撃する意思が無ければ、あの者たちは命を奪ったりはしない。お前たちだって、リョウマ様から命令を受けていたはずだ……」

白夜絡繰師「いや、忘れてしまいましたね。カゲロウ様の足の調整ばかりしていましたので」

白夜槍聖「それに、我らが主はまだ倒れてはいない。倒れていないというのに武器を収めるなど、侍の名折れというものです」

白夜絡繰師「あんた、槍術師だから侍じゃないんじゃない?」

白夜槍聖「心の持ち方に獲物の形など関係ないということだ」

白夜絡繰師「はいはい、心の中に太刀を持ってるってことね。まぁいいや、そういうわけだからカゲロウ様、どこかに隠れて待ってるなんて、私たちにはできません」

カゲロウ「これは私とサイゾウが選んだこと、お前たちが共に歩む必要は……」

白夜絡繰師「はいはい、もうここまで来てそういうこと言わないでください。結局、ここにいるのはリョウマ様の考えに異議を申し立てたくて仕方なかった人だけなんですから。私もそいつも、そしてカゲロウ様も同じ穴の貉ということです」

白夜槍聖「お前、カゲロウ様になんてことを……。まぁ、確かにそうかもしれないな。あんなことを言っていたが私はすでにリョウマ様からの任を放棄してここにいるのです。まさか、カゲロウ様もその一員とは思ってもいませんでしたが」

カゲロウ「お前たち……」

白夜絡繰師「そういうわけですから、ここからは言いっこなしです。カゲロウ様の足は最高の状態に仕立て上げますので、期待しててくださいよ。主のために死力を持って事に当たる、それが私たちの任なんですから」カチャカチャ

カゲロウ「……」

 ドゴンッ‼‼‼‼

白夜槍聖「……もう近くまで来ているな。おい、準備は出来ているのか?」

白夜絡繰師「バッチリね。はい、カゲロウ様、こちらの絡繰獅子にお乗りください」

カゲロウ「ああ……。ふっ、良い動きをするな。きちんと私の指先通りに動いてくれる。しかし、揺れがすごいな」カランコロンッ

白夜絡繰師「いい仕事するでしょ。あ、それと胸はちゃんときつく縛っておいた方がいいですよ、カゲロウ様のそれじゃ、もう揺れてゆれて大変なことに……」

白夜槍聖「馬鹿なことを言っている暇はない。お前の準備を済ませろ」

白夜絡繰師「はいはい。やれやれ、真面目な男は駄目だね本当に、よっこしょっと……」

 カランコロン ピンッ
  ガシャンッ カタカタカタッ

白夜絡繰師「カゲロウ様、残ってる絡繰人形は私の任せてください。敵に多くの隙を与えてみせます。それでその隙を突いて攻撃をお願いいたします」

白夜槍聖「私が先陣を、そう簡単にやられるつもりは在りませんので、ご安心ください」

白夜絡繰師「頼むよー。一気に切り込んでポックリ逝ったりしたら承知しないからね」

白夜槍聖「任せておけ。カゲロウ様は、よろしいですか?」

カゲロウ「ああ、先陣を任せよう……」

 ガシャンッ
  ゴトンッ
   カランカランッ

カゲロウ「……」

白夜槍聖「……」チャキッ

白夜絡繰師「……」カランコロンッ

 タタタタタッ!

カゲロウ「カゲロウ、参る」ダッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―シラサギ城・剣の間『右区画・奥の廊下』―

スズカゼ「はあっ!」カランコロンッ バシュシュ

白夜兵「ぐっ……、くそっ、まだまだ!!!!」ジャキッ

 ヒュンッ ドスリッ

白夜兵「がっ――……ううっ」ドサリッ

モズメ「許してな……。倒さへんと、あたいらがやられてまうから……」

アシュラ「ん……攻撃が止んだみたいだぞ?」

モズメ「そうみたいや、敵がこっちに来る気配が無くなったみたいやけど……」

ツバキ「だけど、まだ全員倒したってわけじゃ無さそうだね。レオン様はサクラ様の援護をお願い」

レオン「ああ、シャーロッテとカザハナは後方に注意して、まだ残っている敵が来るかもしれないから」

シャーロッテ「わかりましたー」

カザハナ「うん、わかったよ」

ツバキ「……あの部屋の先にも通路があるけど、ここに入るのは初めてだから何がどうなってるのかわからないなー」

サクラ「はい、いつも移動には中央の道を使っているので、こちらの構造がどうなっているのかわかりません」

スズカゼ「ご安心ください、私は覚えがありますので。この先には一つ部屋があって、そこに中央の間に続く場所を閉じる仕掛けが一つ設置されていると聞いたことがあります」

レオン「……つまり、姉さんが連れ去られた先に行くためには、あの部屋にあるそれをどうにかしないといけないってことだね?」

スズカゼ「はい……」

アシュラ「ならさっさと部屋を制圧するぜ。この細い廊下がどうにもきな臭いけどよ……」

スズカゼ「私たちが先行します。レオン様たちは後に続いてください」

レオン「わかった。こっちも警戒しつつ進むことにする。サクラ王女を中心にして敵の攻撃に注意して」

スズカゼ「……」

スズカゼ(おそらくあの部屋で待ち構えているのは……)

 タタタタッ

スズカゼ「……」カランコロンッ

ツバキ「……気配はないね」

アシュラ「いや、これは気配を殺してるんだよ。こんなに露骨に気配を消してたら、ここにいるって思わせてるようなもんさ」

モズメ「んー、よーわからへん」

スズカゼ「いいえ、わかるものですよ。特に感じ慣れている気配というのは、手に取るようにわかるものです」

ツバキ「どういう――」

 シュパッ
  キィン!

モズメ「えっ、何処から飛んできたん!?」チャキッ

スズカゼ「こちらから入り込んでいるんですから、見える位置に隠れてはいないでしょう。もっとも、この距離なら隠れる必要もないという事でしょう。そうですね、兄さん」

???「……」

 シュタッ

サイゾウ「気づかれていたか。一撃で楽にしてやろうと思っていたが……」

スズカゼ「……兄さんがここにいるということは、カムイ様を捕らえる様に指示を出した方というのは……」

サイゾウ「答えるつもりはない。そして、後続と合流させるつもりもな」チャキッ

  パシュシュッ

 ガンッ!
コンッ!
 グググッ

モズメ「な、なんなん!? なんか天井から変な落としとる!」

アシュラ「なんだ、白夜の王城ってはこんなにもろいものなのか?」

スズカゼ「仕込みを済ませていたんでしょうね。このままでは下敷きにされます、この通路を抜けます」

サイゾウ「させるか!」チャキッ シュパパッ

ツバキ「それはこっちの台詞だよ!」ザンッ
 
 キィン!

サイゾウ「ちっ!」チャキッ

スズカゼ「そうはいきません、はあっ」カランコロンッ! バシュシュ!

 ズビシャ

サイゾウ「ぐっ!」ダッ

モズメ「敵が、下がるで!」

スズカゼ「追撃よりも先にここを抜けるんです。下敷きになってしまったらそれまでですから」

ツバキ「なら、さっさといかせてもらうよー」

アシュラ「先に行くぜ」

モズメ「スズカゼさんも早く!」

スズカゼ「はい」

 タタタタッ

 ドゴンッ グシャアアッ!

 パラッ カタンッ ゴトンッ……

スズカゼ「っ、皆さん怪我は?」

モズメ「何ともないで……」

アシュラ「こっちも問題なしだ。危うくひき肉になるところだったな」

ツバキ「縁起の悪いことは言わないでほしいんだけどなー。あ、俺も問題ないよー」

スズカゼ「はい、皆さん無事で何よりです。しかし、ここまでしてくるとは思いませんでしたね。まだまだ、考えが甘かったと言わざるを得ません。ん?」

レオン『スズカゼ、無事か!? 無事なら返事をしてくれ!』

スズカゼ「レオン様。はい、こちらは全員無事です。心配をかけてしまったようで申し訳ありません。どうやら、敵の罠にまんまと掛かってしまったようです」

レオン『いや、無事なだけでも十分だよ。僕たちは迂回路を探してみる。こちらが行くまで待てってくれ』

スズカゼ「レオン様、ありがとうございます。ですが、敵の方は待つつもりは内容ですので、このまま戦闘に移ります」チャキッ

白夜陰陽師「……敵の分断に成功したみたいですね、サイゾウ様」シュオンッ

白夜婆娑羅「……相手は四人、こちらの数では不利か」チャキッ

サイゾウ「いや、そういうわけではない」シュオンッ

 シュタッ

サイゾウ『……』

白夜婆娑羅「なるほど、その手がありましたか。これで数は補えそうです」

白夜陰陽師「ええ、出口は在りませんし、あの絡繰獅子を動かすにはここは少々狭いはず、こちらに幾分か有利に働くはずです」

サイゾウ「ああ。それ以外になにかあるか?」

白夜婆娑羅「……その一つだけご報告が」

サイゾウ「なんだ?」

白夜婆娑羅「実は――」

サイゾウ「……!」

白夜婆娑羅「……」

サイゾウ「……そうか、わかった」

サイゾウ「……」

白夜陰陽師「サイゾウ様……」

サイゾウ「全員、武器を構えろ。これが俺たちの最後の戦いとなる。死力を尽くし、任を果たす時が来た」

白夜陰陽師&婆娑羅『はっ!』チャキンッ シュオンッ

サイゾウ「来い、ススカゼ。白夜を裏切ったお前の命を奪い、そしてこのサイゾウの名を終わりにさせてもらう」

スズカゼ「兄さん、私はサイゾウを継ぐつもりは在りません。そして、ここで倒れるつもりもありません。まだ、カムイ様の戦いを支えなくてはなりませんので。ですから――」

「あなたをここで討たせてもらいます」

今日はここまで

 スズカゼとサイゾウにこういったやり取りがあってもよかったなぁって

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―シラサギ城・剣の間『中央広間』―

リョウマ「はぁ、ふんっ!!!」チャキ ブンブン

カムイ「くっ……。リョウマさんどうして!?」キィン

リョウマ「何度も同じ問いかけをするのだな。これ以上待とうとも、俺の答えは変わらん。手を抜いている暇はないぞ、カムイ!」ダッ

カムイ(くっ、動きがはやい。この剣戟、まともに受ければ押し負ける。なら――!)

カムイ「はああっ!」ダッ

 ガキィン!!!!

リョウマ「踏み込んで来たか、良い判断だ」

カムイ「……あなたは本当にリョウマさんなんですか」

リョウマ「なに?」

カムイ「どうして、このような真似をするんです。ユキムラさんがしようとしている事、その意味を解っているはずなのに。なんでそれに従うような道を選んでしまうんですか!」

リョウマ「……選べる道が無かっただけの事だ。俺はお前と違って、どこまでも往生際の悪い人間だっただけのこと……」

カムイ「そんなことはありません! だって、あなたはあの国境で戦いで私を連れて行かなかったじゃないですか」

リョウマ「あれはお前に力が無いと捨てただけのことだ。あの時のお前を白夜に連れ戻したところで意味がない、そう判断した故の事だ。迷いを多く持つ守られる剣を持ち帰ったところで、枷が増えるだけのこと。それがあの時、下した判断だ」

カムイ「……」

リョウマ「そして、お前は白夜にやって来た。一回りも二回りも強くなって戻って来た。その身に叶えるべき願い、いや理想を持って……。だが、その理想は俺の持つ旗ではない」ダッ

カムイ「っ」チャキッ

 キィンッ キィンッ
  ガキィン! ギギギッ

カムイ「なら、あなたの持つ旗は一体何なんですか! こうして、戦うことでしか得ることのできないものだなんて、私は思いたくありません!」

リョウマ「ああ、そうだな。そうであればどれほどよかったことか、もうこの戦争に意味が無くなっていることは知っている。争うよりも重要なことがあることも分かっているつもりだ。だが、こうして出来上がってしまった汚泥は、戦い以外で解消することは出来ん。そのために俺は、まだ戦わなくてはいけない!」ドゴンッ

カムイ「がっ!!!」ズササーッ

カムイ(どうして、どうして戦う以外の道がないのですか。もう、私たちが戦うべき相手は奴だけであるべきなのに!!!)

カムイ「っ!」シュタッ

カムイ「はぁ……はぁ……」チャキッ

リョウマ「……」

カムイ「わかりました。リョウマさんがその気なら、私は全力でその目を覚ませるだけです。こんな戦いに意味がないと、あなたが気づくまで全力でお相手します」

リョウマ「……ようやく、向き合ってくれたようだな。それでいい、お前はお前の理想のためにすべきことを行えばいい。俺のように……遅くなってから繕う必要などない」

カムイ「え?」

リョウマ「はあああっ!!!」ダッ

カムイ「っ!」キィン

カムイ(今の言葉、どういう意味ですか。くっ、だめだ集中しないと。私がここでリョウマさんを止めないと、戦いが――)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―シラサギ城・剣の間『左区画・最奥』―

カラクリ人形『ギギッ』

エリーゼ「マークスおにいちゃん、敵が右、ううん、左からも来る!」

マークス「ああ、それと正面からもだ!」

 タタタタッ

白夜槍聖「はあああああっ」クルクルクル チャキッ

マークス「正面から向かってくるとはな。こちらから仕掛けさせてもらう、ジークフリード!」チャキッ シュオンッ

白夜槍聖「!」ダッ

 バシュンッ

白夜槍聖「っ、はっ!」タッタッ トンッ

マークス(壁を蹴って一気に接近するだと!?)

マークス「くっ」チャキッ

白夜槍聖「はああああああっ」グググッ ブンッ!!!!

 ガキィン!

マークス「っ、中々にやる!」

白夜槍聖「このまま押し切らせてもらうぞ!」ダッ

カミラ「残念だけど、あなたを行かせるつもりは――!?」バササッ

からくり人形『ギギッ ガリッ』
 パシュンッ
  パシュンッ!

カミラ「はああっ!」キィン カキィン

カミラ「危なかったわ。それにしても、この人形たちは邪魔ね」

ルーナ「たしかに、この人形どうにかしないと…」

マークス「カミラ、ルーナはこの人形を操っている者を頼めるか。私はこの者を相手する、先ほどまでの者たちとは腕が違う」

白夜槍聖「……はああっ!」ダッ

マークス「はあああっ!」チャキッ

 キィンキィンッ!

エリーゼ「マークスおにいちゃん! あっ」

からくり人形『カタカタカタッ カチャッ ギュイイインッ!!!』ダッ

エリーゼ「させないよ、ギンヌンガガプ!!」シュオンッ
 
 シュオンッ ドゴオオオンッ!!!
  ガシャンッ バラバラッ……

マークス「エリーゼ、助かった」

エリーゼ「サポートは任せて! カミラおねえちゃん、おにいちゃんのことはあたしが守るから」

カミラ「それじゃ、マークスお兄様のことお願いね、エリーゼ。行くわよ、ルーナ!」

ルーナ「ええ!」タッ

ルーナ「さてと、早速出てきた」

 カタカタッ

からくり人形『カチャッ』

カミラ「ルーナ、先頭の人形を私が蹴散らすから、同時に間合いを詰めて、もう一体をお願い」

ルーナ「任せて、カミラ様!」

カミラ「それじゃ行くわよ!」バササッ

からくり人形『ギギッ チャキ――』

カミラ「遅いわよ。はあああっ」チャキッ グググッ

 ドゴンッ!!! 
  バキィッ!

ルーナ「これで終わりだと思わないでよね!」タッ

からくり人形『ギギッ カパッ ギュイイイイインッ!!!』

ルーナ「へへん、もうどんな仕掛けかわかってるから。そんなの怖くもなんともないんだから、それにね――」チャキッ

ルーナ「あんまり可愛くないから、目障りなのよ!」

 ザシュッ バギンッ!

ルーナ「よし、おしま――」

白夜絡繰師「それっ!」パシュッ

カミラ「ルーナ!」バッ 

 キィン!


ルーナ「か、カミラ様」

カミラ「気を抜いては駄目よ。ここからが本番なんだから」

ルーナ「ご、ごめんなさい。それで、今狙ってきたのは――」

白夜絡繰師「ちっ」カランコロン カランコロンッ

ルーナ「あ、逃げる。カミラ様、早く後を追わないと……。カミラ様?」ダッ

カミラ「…ルーナ、今逃げていったのを任せられるかしら? どうやら、私が相手をしないといけない人がいるみたい」

ルーナ「……わかったわ。すぐに倒して戻って来ちゃうと思うけど」

カミラ「ふふっ、そうね。期待してるわ」

ルーナ「その、負けるなんて思ってないけど。その…」

カミラ「大丈夫、私は負けたりしないわ。絶対にね」チャキッ

ルーナ「カミラ様……」

カミラ「早くいきなさい、向こうが痺れを切らしてしまう前に」

ルーナ「ええ」タタタタッ

カミラ「……ふふっ。ごめんなさい、待たせちゃったかしら?」

カゲロウ「いや、そういうわけでもない。むしろ、気づいていたのなら、今の者と一緒に攻めてきても問題はなかったはずだ」

カミラ「生憎だけど、すぐに戦える相手じゃないわ。あなたはカムイの恩人だもの、こうやって臨戦態勢で向かい合っていなかったら、とても良かったのだけど」

カゲロウ「そうだな。カミラ様にはイズモ公国で色々と世話になった……」

カミラ「 いいのよ。前は前、今は今でしかないわ」

カゲロウ「そうか、恩に着る」

 カランコロンッ

カミラ「それが、今の貴方の足かしら?」

カゲロウ「ああ、これが無ければ満足に戦うことが出来ない。もう、私の足は走ることは出来ない。あの、フウマでの拷問の後遺症だ。もう、忍として主君に仕えることは叶わないが、戦う事ならばこれがあれば事足りる」

カミラ「……そう、少しだけ嫌な予感はしていたつもりよ。狙ったように行われた分断、そしてカムイだけが攫われた現状……。タイミング次第では私たちを殺せたのにそうしなかったのは、これがユキムラの仕業ではないからね?」

カゲロウ「そこまで答える義理は無い。すまない、カミラ様がカムイ様にとって大切な家族であろうとも、手加減をすることは無い。ここで殺し合うことは、あの日助けられた日から決まっていた事だとすれば……私は助けられるべきではなかったのかもしれない」

カミラ「カムイを苦しめるつもり?」

カゲロウ「ああ、そのつもりだ。残念だが、私はカムイ様の臣下ではない。命を救われたとしても私が仕え、そして命を賭すお方はこの世に一人だけだ」

カミラ「熱いわね、あなた……。もしも一緒に戦う道があったのなら、もっとあなたを知ることが出来たのかもしれないわね」チャキッ

カゲロウ「……」スッ

 チャキンッ

カミラ「……行きなさい!」バサバサッ

カゲロウ「……はあああっ!」チャキンッ

カミラ「!!!!」バササッ!

 ガキィン キィン!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ルーナ「よっ、はっ!」

 パシュンッ
  カキィン キィンッ

白夜絡繰師「中々やるね。まさか、一人で追ってくるなんてさ。いや、敵ながらあっぱれだね」

ルーナ「その減らず口、すぐに聞けなくしてあげるわ!」ダッ

白夜絡繰師「それはどうかなっと!」スッ

 ガシャコンッ

カラクリ人形『ガガッ パカッ ギュイイインッ!』

ルーナ「次から次へと!」チャキッ ブンッ

 ガシュッ
  バキンッ

絡繰師「すごいね。だけど、そう簡単にやられるわけにはいかないんだよ」スッ カチャッ

 パシュッ

 ギュイイインッ

ルーナ「ちっ!」キィン サッ

ルーナ(どうやら、人形はこいつが動かしてるみたいね。こいつを倒せれば人形の動きが止まるかも……)

ルーナ「でも……」チラッ

 
 カタタタッ 
  カタタタタッ


ルーナ「はぁ、この量を相手するわけ? 勘弁してほしいわ……」

白夜絡繰師「相手にしたくないなら諦めていいよ。一撃で仕留めてあげるからさ」

ルーナ「ふん、生憎だけど簡単に諦めるような人生送ってないのよ!」ダッ

白夜絡繰師「そう、ならさっさと倒れちゃって」シュシュッ
 
 パシュシュッ!
  ドススッ

ルーナ(あの変な絡繰の乗り物、再攻撃に時間が掛かる。なら、その隙に!)

からくり人形『ギギッ カチャッ』

ルーナ「遅い!」ドゴンッ

 ガシャンッ

ルーナ「はあああっ!」チャキ ブシャアッ

 ガギンッ
  カランカランッ……

白夜絡繰師「ちっ、中々やるよね。本当にさ!」カシャコンッ

 パシュッ!
  ズシャッ

ルーナ「っ!」ポタタッ

白夜絡繰師「くそっ、浅い!」

ルーナ(喰らったけど、まだいける!)タタタッ

ルーナ「一気に終わらせてあげる!」ダッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

マークス「はあっ!」チャキッ ブンブンッ!

キィンッ サッ

白夜槍聖「うおおおおっ!」グルッ ブンッ

 ガキィンッ!

マークス「くっ!」

白夜槍聖「そこだ、もらった!」

マークス「そうはさせん!」ドゴンッ

白夜槍聖「ぐおっ!」ズササーッ

マークス「そこだ――!!!」サッ

カラクリ人形『チャキッ キリリッ』

 カコンッ

マークス「はっ」サッ ズザザーッ

マークス「くっ、中々に厄介だ。あの人形たち、まだまだ出てくるというのか……」

エリーゼ「はぁはぁ……。これじゃキリが無いよ! えーいっ」シュオンッ

 ドゴンッ!
  ガシャンッ!‼‼

マークス(まずい、エリーゼの体力は限界が近い。幾度となくチャンスはものにしているというのに、こちらの決定打を悉く人形に邪魔されてしまう。このまま人形の動きが止まるのを待つのは難しい。ならば――)チャキッ

マークス「エリーゼ、私の後ろへ」

エリーゼ「え、マークスおにいちゃん? あたし、まだ戦えるよ!」

マークス「わかっている。だからこそ、下がれと言ったのだ」

エリーゼ「え?」

マークス「こちらから仕掛ける。エリーゼ、私の言う通りに動けるか?」

エリーゼ「う、うん。やってみるよ」

マークス「よし」チャキッ

白夜槍聖「……」

マークス(……相手はこちらに攻勢を仕掛ける戦術、ならばその一点にこちらも応えよう)

「次の一撃で決めさせてもらうぞ、白夜の兵士よ」チャキッ

今日はここまで

 

やっぱりギンヌンガブブは違和感あったようで、申し訳ないです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・左区画最奥』―

 パシュシュッ
  カシュンッ!

ルーナ「はああっ」キィンキィン!

白夜絡繰師「へぇ、さすがに一人で乗り込んでくることはあるよ、こんなに撃ってるのに当たってないとかさ!」

ルーナ「はっ、そんな攻撃にあたしが当たると思ってるわけ!? もっとちゃんと狙わないと当らないわよ!」

白夜絡繰師「これでも元々は忍の出だからね。それなりに自信はあるつもりだよ!」パシュッ

 ザシュッ!

ルーナ「っ! まだまだぁ!!」ダッ

白夜絡繰師(ちっ、思ったよりやる。この短時間で人形を全部壊されるなんて思ってもいなかった)

白夜絡繰師「やってらんないね。多体一に持ち込んだと思ったのに、この様だよ」

ルーナ「あたしが相手なのに、あんなへなちょこ出して勝てると思ったのが運の尽き、ご愁傷さまね」

白夜絡繰師「言ってくれる!」パシュシュッ!

白夜絡繰師(……くそっ、思ったより追い詰められてるよ、これ。満足に絡繰を動かす空間もなくなって来た)

白夜絡繰師「っ!」パシュッ

ルーナ「……」タタタッ ズザザッ

 カランッ……

白夜絡繰師(ダメだ、弓じゃもう対処できない。ここは暗器であいつの動きを牽制、動きを鈍らせたところを突くしかない)カチャコンッ

ルーナ「……」ダッ

白夜絡繰師(武装の変更に気づかれたけど、関係ない。流石にこれは外さないよ!)カランコロンッ

 バシュシュッ! 
  ザシュシュッ

ルーナ「あぐっ!」ヨロッ

白夜絡繰師(よし、今のは深く刺さった! これですぐには動けないはず、すぐに追撃を――)

 ポタタッ

ルーナ「うううう、この程度の傷で立ち止まれないのよ!」

 ダンッ

ルーナ「あたしは、あたしはまだ、ここで負けるわけにはいかないんだから!!!!」ググッ
 
 チャキンッ

ルーナ「はあああああああぁぁぁ!!!!」ダッ

白夜絡繰師(なっ、踏ん張りやがった!? 間に合え!!!!)カランコ……

ルーナ「はあああああっ‼‼‼‼‼」ダッ ググッ

 ドスンッ!‼‼

ルーナ「……」

白夜絡繰師「……」

 カランコロンッ カララッ
  ガゴンッ カタンカタタンッ……

白夜絡繰師「……ははっ、再装填の鍛錬……、ちゃんとしておくんだった……」ポタタタッ

 チャキンッ コトンッ

ルーナ「はぁ……はぁ……。即座にもう一発当てておいて何言ってるわけ……。まぁ、運よく、急所は逸れたけど」ピチャンッ

白夜絡繰師「ちぇ……もう一手で、こっちの勝ちだったのに……ごふっ、うまくいかないねぇ」ビチャッ

白夜絡繰師(これで終わりか……。もう、体中が寒くてたまらない、やっぱり剣って刺さるとすごい痛い。もう楽になってもいっか――ん?)

 クン……
  クンッ……

白夜絡繰師(仕掛け糸が揺れてる。え、人形の仕掛け設定を変えろってこと? あの槍男、ここでそれを言うのかよ)

白夜絡繰師「……へへ」

白夜絡繰師(……そうか、そっちも最後に仕掛ける気なのか。もうこっちは死に体だってのに、まあいいよ。最後くらい、手添えしてやる……)スッ

 ピンッ……

白夜絡繰師「……はぁー、ふぅー」

 ピチャンッ……ピチャンッ……

白夜絡繰師(……リョウマ様。先に休みます……ね)

 ピチャンッ……
  ドサリッ

白夜絡繰師「」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

マークス「……」チャキッ

エリーゼ「……」ギュッ

白夜槍聖「この一撃で決めるつもりか……」

白夜槍聖(あの魔法を使う娘を下げたとなると、こちらの攻撃に合わせて何かを仕掛けてくるつもりか。数ではさすがにこちらが優位であるが、この人形ではあの魔法を耐え切れん)

白夜槍聖(しかし、この一手に限って言えば、奴の懐に入り込むことは難しくない。全身全霊の一撃に賭けるとしよう……)

 ダンッ ガシッ

白夜槍聖「いいだろう。この一撃を持って、勝負とさせてもらう」チャキッ

白夜槍聖(人形を一気に嗾け、一撃で終わらせてくれる。幾らあの娘の魔法が強力であろうとも、この数を一気に片づけることは出来ないはず。たとえ、双方の犠牲に意味がなくともだ……)

白夜槍聖(そうだ、我らはそれだけを求めてここに集ったに過ぎない。たとえ、それが主の願いから背くことであろうとも。ここで戦う事こそが、我らの悲願!)

白夜槍聖「……行けぇぇぇ!!!!」ダッ

 ドドドドッ

白夜槍聖(敵が狙いは、恐らくこちらの攻撃を受け切ってからの再攻撃、ならばそれをさせずに押し潰してくれる!)

マークス「エリーゼ、準備は出来ているか?」

エリーゼ「うん、マークスおにいちゃん。いつでも行けるよ!」

マークス「よし……合図とともに仕掛ける」

白夜槍聖(仕掛けることが出来ると思っているとはな、このまま包囲して終わりにしてくれる! 奴に最後の合図を送ろう)

 パチンッ
  ……
 クン……

白夜槍聖(合図が帰って来た。仕掛けるぞ!)

白夜槍聖「敵を囲め!」

絡繰人形「カタタタタッ!」

白夜槍聖(一点集中ならばともかく、この広がりではすべてを受け切ることは出来まい! いくら、剣の腕に自信があろうとも、この数の包囲に迫られれば。それで終わりだ。その隙を突かせてもらう!)

白夜槍聖「これで終わりだ、暗夜の王子!」チャキッ

マークス「……」

白夜槍聖(この勝負、もらった!!!)






マークス「……ふむ、上出来だ」チャキンッ

マークス「ここで包囲されればこちらは完封される。もっとも、私が待ちに徹しているならばの話だ」ダッ

白夜槍聖「!?」

マークス「エリーゼ、行くぞ!」

エリーゼ「わかったよ!」

 ダダダダッ

白夜槍聖「前進だと!?」

マークス「エリーゼ、奴への進路を塞いでいる人形をやれ!」

エリーゼ「うん! 行くよ、ライナロック!」シュオンッ

 ドゴンッ‼‼‼
  ガシャンッ
   ガラガララッ……

白夜槍聖「包囲に穴が、くっ」チャキッ

白夜槍聖(こちらが人形を包囲に使うと予想していたという事か!?)

マークス「はあああっ!」ダッ

白夜槍聖(いや、元々多体一と勘違いしていたこちらに問題があるだけの事、それがただ一対一になっただけではないか!)

白夜槍聖「来い!」ダッ

 ガキィン キィン

マークス「はあっ、せいっ!」

白夜槍聖「っ、そこだ!」バシュッ

白夜槍聖(……何たる様だ。こちらは奴よりも有利なもので挑んでいるというのに、致命傷を与えるにも至らない。……まったく、ユキムラの下にいた奴らがもう少しだけでも腕のある物であればよかったと思う日が来るとは)

白夜槍聖「はああっ」ダッ

マークス「……」チャキッ

白夜槍聖(……この一撃は届かない。わかっているというのに、挑んでしまうな。いや、それは当たり前か、こんなにも主君のために戦うことが心地よくては――)

白夜槍聖「くらええええ!!!!」ダッ

白夜槍聖(止まれるものでない……)

マークス「はああっ!」ブンッ

 ザシュリッ……

 ポタタタッ ポタタタッ

白夜槍聖「がっ! ううっ……」ドサッ

白夜槍聖(ああ、視界が霞む。あまりにも静かだが……人形たちは……)

絡繰人形「――」

白夜槍聖(……そうか。あいつもやられたのか。まったく、揃いも揃って成すことは叶わなかったとはな……。だが、それでもいいか、ここはとても心地がいい、ずっとずっと戦う理由に苦悩しでいたのが嘘のように…)

白夜槍聖「……はは、最高の夢見心地だ……。最後の相手が貴殿であったことに感謝する……」ポタタタッ

マークス「……見事であった、白夜の兵士よ」

白夜槍聖「……あぁ……」

白夜槍聖(そうだな、休もう。もう武器を持つには体が重い、ゆっくり休んだとしても、罰は当たらないだろう……)

 ドサリッ……

白夜槍聖「」

マークス「……」カチャンッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  カランコロンッ バシュシュッ!

カミラ「はあああっ!」キィンキィン

カゲロウ「……」カラコロンッ

カゲロウ(……二人の気配が途絶えたか…)

 ダッ バシュシュッ

カミラ「っ! そこ!」シュオンッ
 
 ドゴンッ!

カゲロウ(たとえあの二人がここで生きていようとも、白夜に勝機は無い。それをリョウマ様は承知していた。一丸とまではいかないまでも、民が共に白夜のために尽くそうとしていた日々は戻ってこないことを認める様に……)

 キィンッ ガキィン!

カゲロウ(だとしても、何度でも夢に見る。帰らなかった友のいる時間、暖かい明かりが花のように並ぶ王都の光景。それがリョウマ様の求めているものかはわからぬが、少なくともそれに近いものであればいいと、切に願う)

 ダダッ ドゴンッ
  バキィンッ!

カゲロウ(カムイ様と初めて出会った時、共に歩める道があるかもしれないと思った。カムイ様が元は白夜の王族だからというわけではない。あの方には人を導く力がある、そう思った。しかし、結果はこれだ。命を救われても尚、私は私の主の命に従うことしかできない。たとえ、今の状況が一度受けた任を放棄して、新たに得た任だとしても……)

 バサバサッ
  ブンッ
   ズビシャッ!

カゲロウ(リョウマ様がどうしてカムイ様と戦う道を選んだのか、それは私にはわからない。だが、それでもリョウマ様は戦うことを選んだ……。なら私も共に戦いたいと思うのは……間違っているのか?)

 ポタタッ 
  ポタタタタッ

カゲロウ「はぁ……はぁ……ぐっ……」

カミラ「……降伏しなさい。あなたを殺したくはないの。リョウマ王子もどうにかして助け出してみせるから……」

カゲロウ「……優しいのだな」

カミラ「あなたを敵にしたくないのよ。カムイだってあなたが生きることを望むはず…、まだリョウマ王子が生き残れる可能性が少しでもあるなら、それに賭けてみない?」

カゲロウ「……どんな状況であろうとも任務を遂行する時も、わずかな希望に賭ける場面は幾度となくある。敵に捕らえられ、地獄のような責め苦に苛まれても、生きている限りは可能性がある…そう考えてあの日、お前たちに助けられるまでの日々を耐えてきた」

カミラ「ええ、あなたが生きていたことをカムイは喜んでいたわ。あなたを助けられたって」

カゲロウ「……生きることが次に繋がるのなら、私は命の灯を絶やさぬよう薪を足し続けよう。わずかな細木でも火が続くのなら、それに越したことは無い。だが……」

 チャキンッ

カゲロウ「今ここにいたればそれは違う。私の最後の命令はここを死守すること。命を長らえ耐える事ではない。ここを守る事だけが、最後に与えられた私の責務だ」

カミラ「……そう、あなたは兵士なのね。とても立派な」チャキッ

カゲロウ「……ああ、そうあるべきだと尽力してきた。カミラ王女のような方に認めてもらえるのなら、この人生の歩みは間違っていなかった」

カゲロウ(……ああ、間違っていなかった。ただ、歩む道が少しばかり整っていなかっただけだ。リョウマ様が示された道は、もっと整っていたというのにな)

カゲロウ(だが、あの命令を私は受け入れられなかった……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『王の間』―
~暗夜軍・侵攻前日夜~

カゲロウ「……リョウマ様、そのご命令は一体?」

サイゾウ「……」

リョウマ「これはお前たちにしか任せられないことだ」

カゲロウ「……」

リョウマ「この戦いで長きに渡った白夜と暗夜の戦いは終わる。どんな結果になろうとも、これで戦いは終わると俺は信じている。だからこそ、今俺が全権を握っているのだからな」

サイゾウ「……」

リョウマ「サイゾウ、カゲロウ、お前たちには王都正門の守備に回ってもらう。そこに集うのは周囲の村から王都に退避してきた者たちばかりだ。ユキムラは盾に使うつもりでいる以上、暗夜軍に正門を突破されればどれほどの被害が出るかわからない。わかるだろう、この戦いが終わった後、必要となるのは民だ。俺たちのような者たちではない」

カゲロウ「……リョウマ様は、リョウマ様は白夜に必要なお方です」

リョウマ「……買い被りすぎだ、カゲロウ。俺はそんな立派な人間ではない……。最後の最後、燃えて残った塵のような姿で戦いっているだけに過ぎない。俺には、何かを成す機会は失われているのだからな……」

カゲロウ「……そんなことはありません!」

リョウマ「カゲロウ……」

カゲロウ「リョウマ様、私にはこの任に意味を見出すことが出来ない。私には民の命より、あなたを守る任を全うしたい、そう考えている」

リョウマ「……それは俺の任を受け入れるつもりはないという事か?」

カゲロウ「……はい」

リョウマ「……」

サイゾウ「リョウマ様。私も此度の任に従うつもりはありません」

リョウマ「サイゾウ?」

カゲロウ「サイゾウ……」

サイゾウ「……ご不満なら、私を臣下から外してもらっても構いません。その時は勝手に戦わせてもらうだけです。そうだろ、カゲロウ?」

カゲロウ「サイゾウ……。サイゾウと同じく私もそのつもりです、リョウマ様」

リョウマ「……もう少しお前たちは賢いものだとばかり思っていた。ここに来てそのようなことを口にするとはな……」

カゲロウ「それこそリョウマ様の過大評価。私にとってあなたと共に戦えることこそが――」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 キィン! カキィン!

カゲロウ(そう、それが命令を拒んで私が選んだ荒れた道。だけど、後悔はない)

カゲロウ(ああ、そうだ――。これが私の望んだ終わりだ――)

カゲロウ(だから、ここで死ぬことこそが……)

 ズビシャ……

カゲロウ(本望なのだろう……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・剣の間『右区画・最奥』―

カミラ「………」

カゲロウ「……っ……」スルッ
  
 ドサリッ

カミラ「……カゲロウ」

カゲロウ「はは……、もう立てぬか……。まさか、この部屋が最後の地になるとは思ってもいなかった……。ごふっ」ビチャッ

カミラ「すぐに治療をするわ」

カゲロウ「心遣いはうれしいが、もう間に合わない。それくらいのことわかっているつもりだ……」

カミラ「大丈夫、すぐに止血をすれば――」

カゲロウ「……すまぬ、このような言い方で伝わるわけもなかったな。……もう何もしないでくれ」

カミラ「え?」

カゲロウ「……私にも最後に守りたい誇りがある……。だから、何もしないでくれ……。このまま終わらせてほしい……」

カミラ「……」

カミラ「……」

カミラ「…」スッ

カゲロウ「ありがとう。どんなに独りよがりな誇りだとしても、私はこれ以上の事を望んで生きていたくはない。そもそも、生きるつもりだったのなら私はここにいない……。私は死ぬために……ここで戦うことを選んだだけのことだ…」

カミラ「……不器用なのね、あなた。もっと違う道もあるとは思わないの?」

カゲロウ「生憎、それほど器用に立ち回れる自信はなかった……。この一瞬だけでも、私はリョウマ様のために戦う自分でありたかった……ごほっ、ゴホゴホッ……」

カゲロウ(ああ、視界が霞む。見慣れた天井がぼやけていく……)

 ポタタタタッ
  
カゲロウ「……」

カミラ「……カゲロウ」

カゲロウ「……」

カゲロウ(リョウマ様、サイゾウ……。ここまで共に闘えて幸せだった……)

カゲロウ(叶うならば、もう一度……二人と共に……あの、美しく暖かい白夜の姿を……)

カゲロウ「こふっ……」

カゲロウ(この目で……)

カゲロウ「」トスッ

カミラ「……」

 タタタタタッ

カミラ「?」

エリーゼ「カミラおねえちゃん! 大丈夫!?」

カミラ「エリーゼ……。っ、気づいていなかったけど思ったより攻撃を貰っていたみたいね……」フラッ

エリーゼ「今手当をするね、そっちの人は……」

カミラ「……」

エリーゼ「……この人、フウマ公国で助けた人だよね。どうして、戦わなくちゃいけなかったの…」

カミラ「わからないわ。いいえ、わかっていいものじゃないの。それがどんなに認められないものだとしても、私たちにそれを止める権限は無いわ。鋼よりも強い意思は、そう簡単に砕くことが出来ないようにね」

エリーゼ「そんなのわからないよ……」

カミラ「……そうね。だけど……結果は同じだったのかもしれないわ」

カミラ(カゲロウを助けたところで、きっと自害していた。どんなにこちらが望んでもカゲロウは、こちらの旗を仰ぐつもりはなかった。選んだのは主のために戦ったという誇り……。それがカゲロウにとっての生きる意味……)

カミラ「……悔しいけどそれが現実なのね」

エリーゼ「カミラおねえちゃん……」

カミラ「エリーゼはルーナを見つけてちょうだい。多分負傷していると思うから、治療が終わり次第ここに連れてきてちょうだい」

エリーゼ「う、うん! わかったよ」タタタタッ

カミラ「……」

カミラ(カゲロウたちは生還を考えていなかった以上、右の区画でレオン達を待ち受けている敵もまた同じように、命のある限り戦うつもりでしょうね……。それをこちらがどんなに望んでいなくても……)

カミラ「カムイ……。ここはあなたの望みに一番近くて――」

「一番遠い場所なのかもしれない……」

今日はここまでで

 望むものが近くにある時、それはもっとも遠い場所に存在している。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・剣の間『右区画・最奥』―

タタタッ

白夜陰陽師「牛神、行きなさい!」シュオンッ カララララッ

モズメ「っ! させへんよ!」パシュッ

 キィン!

白夜陰陽師「生憎ですが、その様な攻撃で止められるほど、弱い式神ではありませんよ。さぁ、さぁ、そのまま押し潰されてしまいなさい!」カラランッ カララランッ
 
 ズオオオッ

モズメ「んっ、はっ、よっと!」サッサッ

白夜陰陽師(やる、あの閉所でそんな動きをする。だけど、なら動きの速いコイツなら!)

白夜陰陽師「鳥神!」カララランッ
 
 シュオンッ シュオオンッ
  バサバササッ 

白夜陰陽師「いけっ!!!」バッ

 ヒュオンッ ヒュオンッ

モズメ「!」パシュシュッ!

 ザシュンザシュンッ
  ヒュオンッ
   バチィンッ!

モズメ「っ!!!!」ポタタタッ グラッ

白夜陰陽師「これで――!」

 タタタタッ

ツバキ「そうはいかないよー。それっ!!!」スパッ!

白夜陰陽師「くっ――!!!」

白夜婆娑羅「間に合え!」ダッ

 ズビシャ……

白夜婆娑羅「ぐっ! うおおおおおっ。虎神!!!!」カラランッ

 シュオンッ
  グオオオオオオンッ ダッダッ バシュシュッ

白夜陰陽師「……助けに来なくてもよかったのですが」

白夜婆娑羅「くっ、助けられておいてそれか。お前が動かなくなると、少々辛いからしたことだ」

白夜陰陽師「そう、でも次からは大丈夫ですよ。しかし、式神の使い方がなっていませんね。彼ら、いとも簡単に避けていきましたよ」

白夜婆娑羅「辛辣だな……」

ツバキ「ふぅ、何とかなったね。モズメのほうは大丈夫?」

モズメ「おかげさまでなんとか、ありがとうツバキさん」

ツバキ「気にしないでいいよー。で、この二人は僕たちでどうにかしないといけないわけだけど……」

モズメ「わかってる。でも、攻撃の頻度が多いんよ、ただでさえ変なのぎょうさん出しおるし」

白夜陰陽師「ふふん、これで陰陽道を進んでおりますからね……。それであなた、怪我は?」

白夜婆娑羅「なに、たいしたことは無い。それよりも、このまま睨み合っていても埒が明かん。あの軽い奴を引き付ける、その隙にあの弓兵をやれ」

白夜陰陽師「ええ、一気に決めさせてもらうとしましょう」カランカランッ

白夜陰陽師(機会は一度だけ、この攻撃を通せればこちらの勝ちですよ。暗夜の方々?)

ツバキ「どうやら攻めてくるみたいだね。どう動いて来るのかはわからないけど、ここを受け切らないと結構きついって思うよ」

モズメ「でもやるしかないんやろ。なら、そうするだけや」チャキッ キリリッ

白夜婆娑羅(……敵に時間を与える必要もない、今すぐ仕掛けるぞ!)ダッ

白夜陰陽師(どうぞ、こっちも準備は出来ているわ)カラランッ

 シュルシュルッ

白夜婆娑羅「……!」チャキッ

 ダッ!!!

モズメ「これでっ!」パシュッ

 キィン‼‼‼

白夜婆娑羅「うおおおおっ!!!!」ググッ
 
ツバキ「そうはさせないよ!」チャキッ クルクルクルッ ザンッ

 ズビシャ!

白夜婆娑羅「ぐぬっ、うらああっ!」ブンッ ブンッ

ツバキ「っ、くっ」サッサッ

白夜陰陽師「射線が通りましたね。それでは弓兵さん、ごきげんよう」カラララランッ

 シュルルルルッ
  シャアアアアアッ!

モズメ「へ、蛇!?」チャキッ

 シャアアアッ
  バチュンッ!!!

モズメ「きゃあああっ!!!」

白夜陰陽師「それで終わりではありませんよ!」スッ

 シュルルルルッ
  バチュンッ!!!

モズメ「――」フラッ

白夜陰陽師(これであの弓兵はおしまいね。あとはもう一人を始末すれば――)クルッ

 ダンッ バシュッ
 ズビシャッ!!!!

白夜陰陽師「え……」ポタタッ ポタタタッ

白夜陰陽師(え、なぜ、私の腹から矢が生えて……)

白夜陰陽師「ごふっ……な、なにが起きて……」

モズメ「はぁ……はぁ……」チャキッ

白夜陰陽師「ふふっ、しぶとい方ですこと…」

モズメ「カムイ様のために、死ぬわけにはいかないんや!」チャキッ

パシュンッ!!!!

 ズビシャッ!!!

白夜陰陽師「がふっ……」ポタタッ

白夜婆娑羅「!!! 今、援護に――」

白夜陰陽師「そっちはそっちの相手をしていなさい! ううっ」ポタタタッ

白夜陰陽師(ぐっ、蛇神の呪いが……。今ので仕留められなかったのがこれほど効いて来るなんて……。今の間までは力の半分も出ない……くっ、痛みで意識が……)

白夜陰陽師「はああっ……ああっ、ううっ……」

白夜陰陽師(あと、あと一撃加えることが出来れば!!!!)

モズメ「……捉えたで」

モズメ「……」チャキッ

白夜陰陽師「っ、兎神!」カララランッ 

 タタッ タタッ
 
白夜陰陽師(くうっ、優位を築いたというのに、一気にここまで追いつめられることになるとは……。申し分ない戦いが出来たと思っていたが、準備に掛けた時間にしてはこうもあっさりと。終わってしまうとは……)

モズメ「――」パシュッ

白夜陰陽師「………」

 トスンッ……

白夜陰陽師「……」ポタタタッ

白夜陰陽師(ああ、体が重い。呪いの所為か……いえ、こんなにもろに攻撃を受けておきながら呪術の所為などと言えるわけがないというのに、まったく私もつくづく愚か者だこと……)

白夜陰陽師「……やはり、痛いものは痛いものですね……。っ――」

白夜陰陽師(すみません、リョウマ様――)

白夜陰陽師「」

モズメ「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

白夜婆娑羅「はああっ!」ブンッブンッ

ツバキ「……残念だけど、後方は潰させてもらったよ」

白夜婆娑羅「そうか、それならば尚更止まるわけにはいかん! 奴の犠牲を無駄には出来んからな」ダッ

ツバキ「……もう勝負は付いていると思うけどね」

白夜婆娑羅「……だとしても貴様も未だ主を持つ臣下、ならばここで剣を収めて敵に下る道を選ぶと思っているのか?」

ツバキ「……そうだね。だけど、サクラ様を利用しようとしていたユキムラみたいなのが、君の主とは思えないけど?」

白夜婆娑羅「……ふっ、ユキムラの信念などどうでもいい事だ。なにせ、奴の持つ刃は錆びて使い物になりはしない。我々の信念こそが、白夜がもつ唯一の武器だ」

ツバキ「……だったらその武器を置いてくれないかな? 俺たちは戦うべきじゃない、俺たちが戦うべき相手はユキムラ達のはずだ」

白夜婆娑羅「……」

白夜婆娑羅(戦うべきではないか。ああ、そうだろう。ここはユキムラとその腰巾着ばかりが最後まで籠城を決め込むことになっていた場所。それに本来ならばリョウマ様から与えられた任があった、それを我々は蹴ってここにある。リョウマ様の御心を蔑ろにしてここにいるのだ。そう、最後だけでもいい、動けずに過ごした日々の中、もう一度リョウマ様のために戦いたいと願うことを誰が止められる?)

白夜婆娑羅「変わらん。我らの敵は主の認めた敵のみ……。それは今、お前たち裏切り者であるカムイ王女の軍勢だけだ」チャキッ

ツバキ「……わかった。なら、こっちも容赦はしないよ」チャキッ

白夜婆娑羅「……」

白夜婆娑羅(……この戦いに意味があるのか。その問い掛けを多くの兵が口にしていた。だが、この戦いに意味を見出すのは我々の役目ではない……。リョウマ様がこの選択をなさったのなら、それにはちゃんとした意味がある。だからこそ、我々は共にありたいと願ったのだ。たとえそれが、こちらが思うだけの幻想だったとしても、そこに誇りと忠誠を感じられるのであれば……)

白夜婆娑羅「……」チャキッ

白夜婆娑羅(この戦いに意味はあったのだと胸を張れる。それだけでよい……)

白夜婆娑羅「……それだけでよいのだ」

ツバキ「……」

白夜婆娑羅(サイゾウ様に付いてきたわけではない、やってきたカムイ王女の軍勢に復讐するためでもない。私はただ、リョウマ様と共に闘う。敵は誰でも良かったのだろう)

白夜婆娑羅「はあああああっ」

ツバキ「……」チャキンッ

 タッ
  シュパッ

白夜婆娑羅「……っ。ぐっ! はああっ!」ブンッ

 サッ シュパッッ
  ズビシャッ!

白夜婆娑羅「っあ……。まだ、まだ、まだ戦える!」ダッ

ツバキ「……それが君の戦う意味っていうことだね。俺はあんまり好きじゃないかな」

白夜婆娑羅「貴様の好みなど知ったことか!」

ツバキ「そうだね。うん、俺の事は気にしなくてもいいよ。昔の俺みたいに、そうやって主君を苦しめる道を選ぶことは悪い事じゃないと思うからさ」

白夜婆娑羅「くっ!」ブンッ

 カキィンッ

ツバキ「!」ダッ

 ザシュリッ

白夜婆娑羅「がっ……」

ツバキ「そう、命を賭けることはそれだけでも、価値があるように思えるからね……。それが自分の望みのための行為だったら尚更ね?」ブシャッ

白夜婆娑羅「……はは、はははっ……。御見通しだということか……」

ツバキ「御見通しじゃないよ。だって俺には君が望む理由のすべてが分かるわけじゃないからねー」

白夜婆娑羅「ふっ、白夜一の天才と言われたお前でも……わからぬということがあるとはな……」

ツバキ「白夜にいたままなら、わかったつもりになれたかもしれないけどねー。暗夜で過ごして色々な方角に考えた方がいい、そう思えるようになれたってことかなー」

白夜婆娑羅「ふっ、この裏切り者が……」ドサリッ

白夜婆娑羅(贅沢な奴だ。しかし、そうかもしれん。なにせ――)

白夜婆娑羅(もう白夜で成長できるものなど、恨みくらいしかなかったからな……)

白夜婆娑羅「」

ツバキ「裏切り者ね……。だとしても、俺は白夜を救いたいって思ってるよ。サクラ様がもう一度、ここを故郷だって言ってくれる日が来ることを信じているんだからさ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

キィン カキィン!

スズカゼ「はっ!」カラコロッ パシュシュッ!

 キキキンッ
  カランカランッ……

サイゾウ「その程度の腕で俺を討つとは、思い上がるなよ、スズカゼ」

スズカゼ「思い上がっているのは百も承知しています。ですが、それを承知で私は兄さんに挑ませていただきます」

サイゾウ「……ならば、その気概が張りぼてではないことを俺に見せてみろ!」ダッ

 キィン

スズカゼ「っ!」

サイゾウ(思い上がるな、か。それは俺が向けられるべき言葉だろう。多くの人間が俺とカゲロウの案に賛同し、ここに至った。リョウマ様から与えられた任を捨てでも、ここで戦うことを選んだ。だが、結局それを選ばせたのは俺自身だ。カゲロウが進言した時、俺はそれに乗り、そして多くの者たちを扇動する結果になったのだからな……)

サイゾウ「……」

サイゾウ(だから、カゲロウが死んだと知った時、驚きながらも、すでにその予感はしていた。今ここで耳にするのはそういった絶望的な事なのだと。そうだ、どこにも希望などありはしないとわかっていたはずだ……)

サイゾウ「はあああっ!!!」

スズカゼ「くっ……」サッ

サイゾウ『……』シュタッ タタタッ チャキンッ

スズカゼ「分身が、このままでは――」

サイゾウ『……』チャキッ

サイゾウ(終わりだ、スズカゼ!)

 ブンッ
  ガキィンッ!‼‼‼

サイゾウ「むっ!」

アシュラ「生憎だが、そう簡単に仲間をやらせるわけにはいかないんでね。おらああっ!」ドンッ

サイゾウ『……』シュタッ シュタタッ

スズカゼ「アシュラさん、ありがとうございます」

アシュラ「なに、気にするなよ。それで、ここからどうするんだ?」

スズカゼ「分身体の方をお願いできますか、私は本体に攻撃を仕掛けていくので」

アシュラ「ああ、わかった。そういうわけだ、俺が相手してやるよ」チャキッ

アシュラ「本当なら、白夜の王族を守る臣下を切りたくはねえんだがな……」

サイゾウ「そう思っているのならば、俺の剣の錆びとなれ」ダッ

アシュラ「そうはいかねえよ。まだまだ、守らないといけない奴がいるからな」チャキッ

 ガキィン! キィン カキィン!

サイゾウ「……それはあの裏切り者のことか?」

アシュラ「ああ。あれは強そうに見えるが、そう強くねえ奴だ。でもよ、何かを信じることに関しては鋼みたいに固い。少なくとも、俺たちは白夜を滅ぼすためにここに来たわけじゃねえ、カムイ様が信じる道を支えるためだ。お前たちと戦うことになるなんて思ってもいなかったくらいだ」

サイゾウ(……そうか、それは――)

サイゾウ「つくづく、噛みあわない理想にしがみ付いていると見える」

スズカゼ「兄さん、今からでも遅くはありません。武器をお納めください、そして――」

サイゾウ「ユキムラを始末するまで何もせずに待てと言いたいのだろう」

スズカゼ「はい。もう、今、ここには兄さん以外に残っている方はいません……。もう、勝負はついています」

サイゾウ「……」

サイゾウ(勝負はついている? 何を今更、そんなものリョウマ様が幽閉されてしまった時についていた。白夜の誇りは汚泥にも等しい概念へとなり下がり、あるのは私怨と恐れ、憎悪と欲望だけ、悪行に手を染めた者共が落ちる地獄の方がまだマシだろう)

サイゾウ「……」ギリッ

サイゾウ(正しくあろうとすればあろうとするほどに、その心を奪っていく。白夜、読んで字の如く清らかであったことの方が幻だと思えてくる。そんな場所でありながらも、あの方は、正しくあろうとした。それが、たとえ臆病と罵られるようなことであったとしても――)

サイゾウ「勝負はまだついてなどいない。ここで俺がお前たちを倒せばことは変わる。あの裏切り者がリョウマ様に敵うわけがない……。そうに決まっている」

スズカゼ「兄さん……」

サイゾウ「俺は主君を信じ、そして任務を全うするだけ……」

サイゾウ(そう、たとえそれが、リョウマ様が望まぬ形で下したものだとしても……。俺はその任にすべてを賭ける以外に道は無い!!!!)

サイゾウ「はああ!!!」チャキッ シュパッ

 キィン!

アシュラ「っ、中々激しい攻撃だ。だが、いつまでも同じ手が続かねえよ!」ダッ

サイゾウ(距離を取ってこちらに攻撃をするつもりか、なら分身を――)

サイゾウ『……』シュタッ タタタタッ チャキッ

スズカゼ「……」

サイゾウ「もらったぞ、スズカゼ!」

スズカゼ「それはこちらの台詞ですよ。兄さん!」ダッ

サイゾウ「!!!」

スズカゼ「アシュラさん!」

アシュラ「そう来ると思ってたぜ。本命はそっちだ!」チャキッ シュパパッ

 ザシュシュッ!

サイゾウ『……』ザザッ

サイゾウ「ぐおおっ……」ポタタタッ

サイゾウ(ぐっ、くそ……。まだだ、まだ倒れるわけには――)チャキッ

スズカゼ「兄さん、これで決めさせてもらいます」チャキッ

サイゾウ「ちっ、ここでやられると思うな!!!!」チャキッ ダッ

サイゾウ『……』チャキッ

アシュラ「……よそ見は良くないぜ、白夜の忍びさんよ」チャキッ

サイゾウ「!!!!」

アシュラ「これで終わりだ……」シュパッ

 ザシュリッ

サイゾウ『……』ブシャアアアッ

サイゾウ「がっ……」ブシャアアッ!!!!

サイゾウ(ぐっ、分身がモロに攻撃を受けた! くそっ、体が……)

スズカゼ「はああっ!」パシュッ!

サイゾウ「……」

サイゾウ(……頭に血が上りやすいとよく言われてはいたが、まさかこのような大事な局面でそうなってしまうとはな……)

サイゾウ「……ふっ」ポタタタッ

サイゾウ(立て直すべき場面だった。片割れがすでにあのコウガの忍びに捉えられていたというのに、向かってきたスズカゼを……。実の弟を殺しに向かってしまうとはな……)

サイゾウ(本当に……私もあなたのように――)

サイゾウ「最後の最後まで、変われないということか……」

 ズビシャアアアッ!!!!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―シラサギ城『剣の間』―
 ~カムイ軍侵攻の前日~

サイゾウ「……」

リョウマ「……いいだろう。お前たちへの任は他のものへと託すこととする」

サイゾウ「はい……」

リョウマ「……ふっ、その様な顔をするな。あれだけの大見得を切っておきながら、浮かぬ顔をされては先ほどの話をぶり返すことになるぞ?」

サイゾウ「そんな顔をしているつもりはありません。ですが、リョウマ様が我々の考えを受け入れてくれたことに驚いているだけで……」

リョウマ「なに、お前たちに勝手に動かれては困るだけのことだ。俺たちにとっての敵は、いつも一つだ。俺は、その敵を多く地獄に落とすことになるだろう。俺はその多くに手を掛けることは無いが、その多くの命が失われる原因はすべて俺にある。そして、それが俺のするべき最後の政になる」

サイゾウ「……政はこの後に行えばいい事です。リョウマ様、あなたは――」

リョウマ「……サイゾウ、俺は失われた機会を与えられたにすぎない。そして、その機会を手にしてようやく動いただけだ。俺にはもう、人々を導く資格や権利などありはしないのだからな」

サイゾウ「では、なぜ今になって動くことを決めたのですか……」

リョウマ「……」

サイゾウ「リョウマ様、あなたは幾度も我々の進言を袖にしてきました。白夜を腐らせているあのユキムラ達を討つ機会を与えることは無く、あのカムイ王女と戦う事も選ばれなかった。なのに、なぜ今になってことを起こされたのですか」

リョウマ「……サイゾウ、それをお前に教えることは無い。この先、何があろうともお前にそれを伝えることは無いだろう」

サイゾウ「……」

リョウマ「それが、俺の答えだ」

サイゾウ「……それがリョウマ様の答えなのでしたら、もう何も言うことはありません。あとはリョウマ様の望むままに……」

リョウマ「ああ。サイゾウよ、俺が死ぬ最後の一時まで、俺のために戦ってくれるか?」

サイゾウ「御意……」

サイゾウ(結局、俺は最後の最後でリョウマ様の中へ入り込むことが出来なかった。それを知ったところで何になるかわからない。だが、リョウマ様がそれを伝えなかったということは……)

サイゾウ(その理由が、俺にとって猛毒だと判断されたからなのだろう……)

サイゾウ(だからこそ、俺は……。最後にあの信頼する瞳に誓って……最後の一時、それが訪れるまで……戦うことを……)

 ドサリッ……
  カランカランッ……

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・右区画最奥』―

スズカゼ「……」

アシュラ「……」

サイゾウ「……ごふっ……」ポタタ ポタタタッ

スズカゼ「終わりです、兄さん」

サイゾウ「ぐっ……」ポタタタタタッ

 ピチャンッ ピチャンッ……

サイゾウ「はぁ……はぁ……はぁ……。ふっ、ああ、そうか。俺は負けたのだな」

スズカゼ「ええ、私一人ではあなたに勝つことは出来なかったでしょう。動かないでください、今手当を――」

サイゾウ「……今近づけば俺は、お前らもろとも自爆してやる。施しを加えるつもりなら、容赦はしないぞ……」

スズカゼ「……兄さんもカムイ様を苦しめるつもりですか」

サイゾウ「ああ、そうだ。あの娘はすべての元凶だ……。白夜が崩れ、今のようになったその元凶だろう?」

アシュラ「だが、あんたの復讐が成就したのはお嬢ちゃんが加勢したおかげだ。それにあんたの相棒も……」

サイゾウ「ふっ……。そうだな。フウマでカゲロウを助けてくれたのもあいつだったな。それがこのような終わりを迎えるとも知らずに……ふっ、ままならないものだ」

スズカゼ「……まさか、向こうの区画で待っている人というのは!!!」

サイゾウ「ごふっ……あいつも任を果たした。いや、ここを死に場所と決め、集まった者たちはもう俺以外に残っていない。ここは夢を見るにはちょうどいい死地だったな」ポタタタッ

スズカゼ「……なぜですか、カムイ様は兄さんたちと戦うためにここに来たわけではないというのに。どうして、その様な選択を――」

サイゾウ「そうだな、確かに遅すぎたのだろう。俺でさえ、その疑問を口にしたほどに、この戦いは起きるには遅すぎた……」

スズカゼ「え……」

サイゾウ「だが、それでも……。リョウマ様が道を示されたのなら、それを支えたいと願うことに間違いはないだろう。リョウマ様と共に命を賭けて戦う事こそが、俺にとっての幸せだった……」

スズカゼ「兄さん……」

サイゾウ「ふっ、サイゾウも僅か五代目で歴史に幕を下ろすことになるか。いや、代など飾りに過ぎん、俺は最後のサイゾウとして王族に仕えることが出来た。あのように素晴らしい方のために……命を尽くすことで来たことを誇りに思う……」

スズカゼ「兄さん、私はサイゾウの名を――」

サイゾウ「わかっている」

スズカゼ「え?」

サイゾウ「わかっている。お前がサイゾウの名を継ぐとは思っていない、むしろそれでいい。もう、この名は残すべきではない。多くの兵をこの死地に迎えることとなったこの名前に、この先の歴史を歩む権利はないだろう……。一人の忍びの名として、風化していくのが相応だ」

スズカゼ「……そんな終わり方を兄さんは望んでいるというのですか!?」

サイゾウ「ああ……」

スズカゼ「……」

サイゾウ「俺はもう、十分に満たされたからな。復讐を終え、そして主に仕えた。最後には己の欲を優先し、それを堪能した。忍びの身には余りあるほどの幸福を俺は得た。その反動が、お前たちにとって耐えがたい苦痛だとしても、俺はこの生を誇りに思う……」

スズカゼ「……兄さん」

サイゾウ「すぅ――、はぁ―――」

サイゾウ(リョウマ様……。俺はずっとあなたに仕えることが出来たことを誇りに思っております。たとえ、それが誰もが笑う夢物語だとしても……)

サイゾウ「あなたが築く白夜を……」

サイゾウ(信じております……)

サイゾウ「」

アシュラ「……逝っちまったみたいだな。どうした、スズカゼ?」

スズカゼ「……やはりですか」ガサゴソ

アシュラ「ん?」

スズカゼ「……兄さん、あなたは何処までも私の思うようにはさせてくれないのですね……」

アシュラ「……そうか。まんまと脅しを信じた俺たちの負けってことかよ」

スズカゼ「ええ、本当に……。兄さんには敵いませんね」

アシュラ「それでどうする?」

スズカゼ「……モズメさんとツバキさんと合流して、どうにかここを出ましょう。おそらく、奥への道はもう開かれているはずです」

アシュラ「ああ、わかったぜ」タタタッ

スズカゼ「……」

サイゾウ「」

スズカゼ「お別れです、兄さん。私もあなたと同じように主に尽くす道を選ばせていただきます……」タタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―シラサギ城・剣の間『右区画・中央』―

レオン「どうだい、どこかに迂回路はあった?」

カザハナ「だめ、そんなの見当たらない」

サクラ「はい、あまり通路が作れるような構造には思えません、ここが唯一奥に続いていた道なのかもしれません。でも、この有様じゃ……ん?」

シャーロッテ「……んー?」

サクラ「シャーロッテさん?」

シャーロッテ「サクラ様、ちょっと下がってて」

サクラ「は、はい」

シャーロッテ「……」スッ

 ゴンゴン
  ゴンゴンッ

  コンコンッ

シャーロッテ「ここね。おらよっ!」ブンッ

 ドゴンッ!!!
  ガタンボロンッ!

シャーロッテ「よっし!」

サクラ「ええっ!?」

レオン「シャーロッテ、一体何をしたんだ?」

シャーロッテ「なんだかここだけ壁の感じが違う気がして、もしかしたらって思ったんです。隠し通路ですね」

レオン「なるほどね、ありがとう、シャーロッテ」

シャーロッテ「とんでもないですぅ。それじゃ先行しますね」

レオン「まって、カザハナも一緒に行ってくれるかい?」

カザハナ「まかせてよ。あたしが先に行くから、シャーロッテは一歩下がった距離を保って」タタタタッ

シャーロッテ「ふふん、もしかしてレオン様にいいところ見せたいってこと?」

カザハナ「そういうんじゃないから!」タタタタッ

シャーロッテ「はいはい……で、どう、回り込めそう?」タタタッ

カザハナ「……だめ、こっちからは回り込める場所が見当たらない。奥に行けば違う通路があるのかもしれないけど……」

シャーロッテ「むかつく構造ね。まぁ、相手も私たち全員の相手をしたくないからこうしたんだとは思うけど……」

シャーロッテ(それにしても静かね。もう敵はいないってこと?)

レオン「その様子だと、スズカゼ達と合流は出来ないみたいだね」

カザハナ「あ、レオン王子。うん、こっちからは回り込めないみたい、廊下は奥に続いてるから、もしかしたらそっちに道が……。ん?」

レオン「どうしたんだい?」

カザハナ「……奥の壁、今ゆっくりと開いたように見えて……。気の所為かな?」

レオン「……いや、気の所為じゃないよ。あの壁、精巧に作られてはいるけどさっきと同じ隠し扉みたいだ。だけど、意図的に開いたようにも見えたね……」

サクラ「罠でしょうか」

レオン「そうかもしれない。だけど、ここの構造からみて、あそこはこの剣の間の一番奥に当るはず。もしかしたら、あそこにカムイ姉さんが!」タタタタッ

サクラ「あ、レオンさん!」

カザハナ「ちょっと、一人で行かないでよ! シャーロッテ追うわよ!」

シャーロッテ「はいはい。サクラ様は私とカザハナの陰に隠れるように付いて来なさいよ」

サクラ「は、はい!」

 ドゴンッ 
  バタンタタ

レオン「姉さん!」

 …………

レオン「誰もいないのか?」ギシッ

???「誰もいないですか、それほどまでに私の姿は見えにくいですか? 暗夜の第二王子」スッ

レオン「!」

絡繰人形『……』ガチャコンッ キリリッ

レオン「ブリュンヒルデ!」シュオンッ

 パシュッ!
  ズオオオッ
   カンッ!

レオン「……手洗い歓迎だね」

???「お気に召しませんでしたか? しかし、こうも短時間にここに辿り着かれる方がいるとは思ってもいませんでしたよ」ニコッ

レオン「……そうかい」

 タタタタッ

シャーロッテ「ちょっと、いくらカムイ様が心配だからって、一人で行くなっての!」

カザハナ「レオン王子、大丈夫。――あ、あんた……」チャキッ

???「おやおや、こんなに揃っているとは思いませんでしたよ。サクラ様、あなたまでご一緒とは……」

サクラ「……ユキムラさん」

ユキムラ「お待ちしていましたよ。あなた方もいるとは思いませんでしたがね」

レオン「……ユキムラ、もう逃げられないよ」

ユキムラ「まぁ、いずれこうなることはわかっていました。出来れば、もう少し時間をいただけるかと思っていましたが。この様子では双方、討ち死にしたという事でしょうね……」

サクラ「ユキムラさん、今すぐ武器を捨ててください。もう終わりにしましょう。これ以上、暗夜と白夜、双方が犠牲を出す必要はないんです」チャキッ

ユキムラ「ははっ、あなたならそういうと思っていました。その在り方、出来ればミコト様の守るこの白夜で輝いてほしいものでした。ですが、あの裏切り者と培ってきたその輝きは不必要なもの、ここでその灯には消えていただかなくてはなりません」

レオン「どんなことがあろうとも、降伏はしないということだね。もう、お前たちの敗北は目に見えているのに、まだ犠牲を増やすつもりなのか!?」

ユキムラ「わかっています。もうここまで来て私たちの敗北は確定していることも……。ですが、もう私にとって勝つか負けるかは関係ありません。あの裏切り者にはこの先、終わりの無い苦しみだけが待っていますから」

レオン「……カムイ姉さんに何をするつもりだ!」

ユキムラ「答える義理は在りません。もちろん知る必要もありません、ですが――」カランコロンッ

ユキムラ「私はどちらに転んだとしても、その結末を見たいと考えています。出来れば、あの王女が苦しむ姿を見てから死にたいものですので……」

サクラ「ユキムラさん……。そんなあなたの願いを叶えさせるわけにはいきません」

ユキムラ「では、簡単な事、あなた方をここで殺させていただきます。大丈夫、安心してください、ことが終われば私も――」スッ

「あなた方の待つ彼岸に向かわせていただきますので……」スッ

今日はここまで

 サクラとレオン、二人にとって倒すべき相手との戦いが始まる。


 今日はアンナの誕生日、誕生日おめでとう!
 
 そして、今週のニンダイで新作の情報がくることを祈ろう。

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・最奥』―

ユキムラ「………」カランコロンッ

絡繰人形『………』チャキンッ

絡繰人形『……』カチャッ

レオン「……そうかい、ここまでした事の責任を取ることもなく、お前はここから去るつもりなのか」

ユキムラ「ええ、すべての事が済みしだい、私もあなた方の待つ地獄へと行くつもりです。ああ、ご心配なく、少なくとも数日の内にはお会いすることになるでしょうから。裏切り者がどのような末路を迎えたのか、きちんと伝えさせていただきます」

レオン「……あんたが白夜のために戦っているわけじゃないってことが、ようやくわかったよ。少しでも白夜のためにことを成しているのかもしれない、そう考えた僕が愚かだった」

ユキムラ「おやおや、まさか暗夜の王子からそのように思われていたとは、この身に余るほどの光栄ですね。もっとも、あなたのように奪われたことのない人間に思われたくはありませんよ」

レオン「お前の動機を信念と呼びたくもないし、その考えを僕は理解するつもりもない。お前のような奴に姉さんの道のりを否定させはしないよ」

ユキムラ「なるほど、奪い続ける側らしい意見です。ミコト様の命を奪い、国土を蹂躙しておきながら、立場に立てなければわからないと宣うその傲慢さ。ミコト様も無念でならなかったでしょう」

サクラ「いいえ、お母様がこんなことを選ばれるはずありません。お母様は、誰よりも平和を願っていたはずです!」

ユキムラ「ははっ、これは痛いところを突かれましたね。しかし、その点はサクラ様の言う通りでしょう」

シャーロッテ「てめぇ、やけに素直だな……」

ユキムラ「わかっているつもりですよ。ミコト様がこのような殺戮を望まれるのか……。いいえ、望まれないでしょう。なにせ、ミコト様は裏切り者が帰って来た事を暗夜と白夜が繋がるための一歩と考えられていましたので」

レオン「暗夜と白夜が繋がるため?」

ユキムラ「ええ、ミコト様は両国の平和を望まれていました。戦いではなく、互いに歩み寄るきっかけを重ねていくことで、いつか共に手を取り合える日が来る、その言葉を思い出す度に、私の行いはさながら水に浮いた油膜ほどに醜いものだと思えてきます」

カザハナ「ミコト様がそう思っていたのをわかってて、なんでこんなことをするの? あんたが、あんたが何もしなければ、スズメたちだって、白夜に戻ってたはずなのに。もう、戦争も終わってたはずなのに!」

ユキムラ「スズメ? ああ、テンジン砦で犬死した者たちでしたか。まったく、一度ならず二度までも暗夜に手を貸すとは、己の立場が分かっていない方々でした。白夜ではないどこかで、勝手に死んでもらえればよかったのですが……」

サクラ「スズメさんたちは、ユキムラさんの事を信じていました。なのに――

ユキムラ「ふっ、ふははははははっ」

サクラ「!」

レオン「……何がおかしい?」

ユキムラ「いやいや、サクラ様があまりにも愚かなことをおっしゃられるので、堪えられませんでした。信じていたと言われましてこっちは気にしたことさえないというのに、まったく一方的な信頼程滑稽なものはありませんね?」

レオン「ユキムラ、お前は――」

カザハナ「――さない」

レオン「え?」

カザハナ「絶対に許さない、あんただけは!!! 今すぐ殺してやる!」ダッ

サクラ「カザハナさん!!!」

ユキムラ「あなたは堪え性の無いお転婆娘のままですね。もう少し空気を読んでくださらないと……」ピンッ

絡繰人形『……』ガシャコンッ! バシュッ!

カザハナ「っ!」キィン ダッ

ユキムラ「ほう……中々」

カザハナ(その首、吹っ飛ばしてやる!)

カザハナ「はあああああっ!」チャキッ

ユキムラ「……ふっ」ニヤッ

 ドゴンッ!

カザハナ(え、奥の扉が開いて――)

 パシュッンッ!

カザハナ(矢!?)

カザハナ「っ!」キィン

 ズザザザーッ

レオン「シャーロッテ!」

シャーロッテ「ちっ!」ダッ

 ダダダダダダッ

カザハナ「な、なにが起きて……!」タッ

白夜兵「しねえええええ!!!」ダッ ブンッ

 ガキィン!

カザハナ「あうっ」ドサッ

白夜兵「へへっ、その命貰った!!!!」チャキッ グッ!

カザハナ「しまっ――」

 ブンッ
  キィン!!!!

白夜兵「なぬっ!?」

カザハナ「え……?」

シャーロッテ「そんな不細工な面で、女の子に手出して調子に乗りやがって。舐めてんじゃねえぞ!」ドゴン!

白夜兵「ぐぎゃっ!!!」

 ズザザザーッ  ビチャアッ

カザハナ「シャーロッテ……」

シャーロッテ「まったく、相手の安い挑発に乗ってんじゃねえよ。ここで落ち着かないでどうすんの?」

カザハナ「……で、でも、あいつは――」

シャーロッテ「感情的になって勝てるんだったら、あのユキムラっていう屑がとっくにこの戦争の勝者よ。でも、現実を見てみな。そういうわけでもない、でしょ?」

カザハナ「……ごめん。シャーロッテ」

シャーロッテ「よしよし。で、どうしますレオン様?」

レオン「そうだね、思ったより敵は多いみたいだ……」

 ゾロゾロゾロ
  シャキンッ
   チャキッ

白夜兵「……へへっ。さすがはユキムラ様です。ここで敵を待ち構えていれば、確かにどうにかできそうです」

ユキムラ「ええ、今ここにいるのが敵のほぼ中枢、彼らを亡き者にすれば、それでこの戦争は終わりとなるでしょう……」

レオン「そうだね、確かにここでこの戦争を終わるだろうね。もっとも――」

 ショオンッ

レオン「お前たちが踏むのは勝利の大地じゃなくて、敗北の大地に他ならない。残念だけど、ここまでのことを許せるほど、僕は――」

 ゴオオオオオオッ……

レオン「甘くないからね」

白夜兵「へっ、デカい口叩けるのも今の内だ。わずか四人で何ができるってんだよ?」

レオン「そうかい? まさかだと思うけど僕たちにも援軍がいること、忘れているわけじゃないよね?」

白夜兵「へっ、その援軍がここまで来れるって思ってるのか? もういい、さっさとこのいけすかねえ王子を殺して、あとはそこの女たちで適当に楽しもうじゃねえか!」

レオン「品性も何もあったもんじゃないね。だから、こういう事にも気づけないんだろうけどさ?」

白夜兵「てめえ、何をごちゃごちゃ言って――」

 タタタタッ

白夜兵「!?」

???「今だ! エリーゼ、やれ!」

???「うん、いっくよー! それ、ラグナロック!!!!」シュオンッ

 ドゴンッ‼‼‼‼

白夜兵「ひゃぐっ!!!!」ブチャアッ! ドサリッ

白夜兵「な、なんだ。いったい何が起き――」

???「まさか、これほどまでに腑抜けた者たちが敵とは。さきほど戦った者たちとは比べる価値もない雑兵揃いという事か」

ユキムラ「おやおや、少しばかり遅れてくれてもいいとは思いすが。せっかちなのですね、暗夜の蛮族というのは……」

???「生憎だが、そう時間にルーズではいられない性分だ。特に――」

 タッタッタッ

マークス「未だ、無駄な流血を望むような者たちにはな」チャキッ

白夜兵「あ、暗夜の第一王子!?」

マークス「どうした、その手に持った刃は飾りではあるまい。もっとも、お前らのような志もない者に持たれたところで、正当な真価など発揮できようもないだろうがな」

白夜兵「て、てめえええ!!!」ダッ

マークス「はあっ!!!」チャキッ ズシャアアアッ

白夜兵「がふっ……あがっ、ううぎええ」ジタバタ ドサリッ

白夜兵「」

白夜兵「ちっ、なら同時に襲い掛かれば!!!」ダダッ

マークス「ふん、エリーゼ、カミラ。任せたぞ」

エリーゼ「うん、わかったよ、マークスおにいちゃん!」

カミラ「ええ、悪い子たちにはキツイお仕置きをしてあげないとね?」

白夜兵「なに!?」

白夜兵「怯むな! このまま、奴らの懐に入ってしまえば――」

エリーゼ「そんなことさせないよ!!! いっけー!!!」シュオンッ ドゴオオオンッ

白夜兵「ぎゃひっ……」ドサッ

白夜兵「ぐっ、だが、この距離なら避けられまい、もらったぞ!」タタタタッ スッ

 ザシュリッ

白夜兵「……へ? なんで、倒れ、あし、が切れ――」ゴポッ ドサリッ

カミラ「マークスお兄様はあなたが触れていい人じゃないのよ? わかったかしら」ニコッ

白夜兵「ひ、怯むな! 敵とて人間、この数ならいけるはずだ! かかれ!!!」

 ドドドドッ

マークス「哀れな者たちだ。いいだろう、その命、われわれが直々に刈り取ってくれよう……」チャキッ

 シュオンッ

マークス「ジークフリード!」シュオオンッ

 バシュンッ!!!

 ワーッ ウアアアアッ

カザハナ「す、すごい……」

サクラ「カミラさんもエリーゼさんも凄いです……」

シャーロッテ「やーん、マークス様とってもカッコイイですよぉ。さてと、形勢逆転とまではいかないけど、今がチャンスよ、レオン様」

レオン「ああ、マークス兄さんたちがあいつらを挑発してくれたおかげで、僕たちは戦うべき相手と戦える。ユキムラ、お前の野望に僕たちが止めを刺してやる」

ユキムラ「……ええ、いいでしょう。無論、そう簡単に止めを刺せると思ってはいませんよね?」

サクラ「……関係ありません。ここで、あなたが生む悪意の連鎖、それを終わらせていただきます」チャキッ

カザハナ「……」シュタッ チャキンッ

シャーロッテ「……」カチャッ

レオン「……」パラパラパラッ……シュオンッ

ユキムラ「………ふっ」

 カランコロンッ……カチャコン……

  チャキンッ……

ユキムラ「殺してしまいなさい」

白夜兵たち『おらあああっ!!!!』ダッ

レオン「ブリュンヒルデ!」シュオオオオンッ

 ドンッ バシュシュッ!!!

白夜兵「ぎゃっ」ビチャアアッ

白夜兵「ちっ、何だよ! この木は――」

 シュオンッ

白夜兵「き、消え――」

  ダッ

カザハナ「一応、もともと同胞の好だからね。一撃であの世に送ってあげるわ」ザシュッ

 ブシャアアアッ

白夜兵「かっ、あぐっ、はっ――ッ」ドサッ

白夜兵「怯むな!いけっ、いけえええ!」ダダッ

サクラ「あなた達だけは、許すわけにはいきません!」

白夜兵「おやおや、サクラ王女様ともあろう片が我々を、同胞を打てるなどと――」

サクラ「いいえ、打たせていただきます」タンッ!

 ドスリッ

白夜兵「がっ――この、小娘がぁぁぁぁ!!!」ダッ

サクラ「!」

白夜兵「うおらああああっ!」チャキッ ブンッ

 ガシッ

白夜兵「!?」

シャーロッテ「私が相手をしてやるよ、おらっ!」グルンッ ドスンッ!

白夜兵「がっ、てめえ、なにしや――」

シャーロッテ「黙りな」ドゴンッ

 ボギッ!

白夜兵「」

サクラ「ありがとうございます、シャーロッテさん。レオンさん、行きましょう」

レオン「ああ、このまま一気にユキムラを倒す。一気に行くぞ!」タタタタッ

ユキムラ「………」

レオン(こいつを倒せば、恐らくこの戦いは終わる。ユキムラが全ての実権を握っているのなら、カムイ姉さんにとっての悪夢はここで終わる)

レオン(きっと、これで―――)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―シラサギ城『剣の間・中央区画』―

 キィン!
  カキィン!
 
リョウマ「ふんっ!」ブンッ

カムイ「くっ、はあああっ」ブンッ

 キィン 
ジジジジッ
 ジジジジッジッ

カムイ(きっと、そうです。なにか、何か事情があるはず……。その事情さえ、どうにかすることが出来れば、こうして戦う必要も――)

リョウマ「真剣勝負の最中に考え事とは、舐められたものだ!」ドンッ

カムイ「っ!」

リョウマ「はああっ!!!」ドゴンッ

カムイ「うあああっ」ドササッ

カムイ「ううっ……っ!」サッ

リョウマ「!」ブンッ

 ガキィンッ!

リョウマ「……」チャキッ

カムイ「はぁ……はぁ……」チャキッ

リョウマ「もう、息が上がっている。そろそろ覚悟を決めた方がいい。俺を救おうなどと思い上がりを捨て、命を取りに来い」

カムイ「……っ。私は、リョウマさんに正気に戻ってもらいたいだけです。私は、あなたを……あなたたちを救うため、ここまで来たんです。諦めるわけにはいきません……」

リョウマ「……俺たちを救うか。どこまでもお前の理想は気高いのだな。このように白夜を荒廃させた俺とは比べ物にならないほどに」

カムイ「……清らかなわけありません。私は、多くの人々を手に掛けてきました。多くの願いも踏みにじってきたつもりです。そこに善悪があろうとなかろうとも。私は、私はその理想だけを追い求めてきた。だからこそ、諦められるわけがないじゃないですか……」

リョウマ「……諦められるわけがない、か。それがどんなに難しく、どんなに過酷な道であろうともか?」

カムイ「何度も崩れ落ちそうになりました。だけど、その度に支えてくれた方々がいます。共に歩んでくれた方々がいます。その人たちと一緒だったからこそ、私はようやくあなたに辿り着けたんです。あなた達に手が届くこの場所まで……」

カムイ(だから、私はその理想を手放すわけにはいかないんです。たとえ、リョウマさん。あなたがそれを拒んでも――)

カムイ「あなたを大切に思っている人の元へ連れて帰るまでは、絶対に諦めません」

リョウマ「……カムイ。そうか、そうだろう。だからこそ、俺は、俺が選んだことに意味がなかったと、思い知らされるのだろうな……」

カムイ「リョウマさん?」

リョウマ「……」

 バタンッ!

リョウマ「む?」

アクア「カムイ!」

カムイ「アクアさん!? どうしてここに……」

アクア「ええ、突然扉が開く様になったの。ようやく合流できたわね……」

カムイ「扉が開くようになった、ですか?」

アクア「ええ、恐らくだけど奥に向かったみんなが仕掛けを解除したんだと思う。おそらく最奥まで侵攻したはずだから、きっともう少しで合流できるはずよ」

カムイ「そうですか…」

カムイ(ここにアクアさんが入って来れたということは……。おそらくカゲロウさん、サイゾウさんのお二人は……)

リョウマ「……」

アクア「リョウマ、もう終わりにしましょう。あなたが何のために戦っているのかはわからない。でも、もうこれ以上白夜と暗夜で争う必要はないのよ」

リョウマ「……いいや、まだ戦う必要がある。俺は、まだ剣を取り続けなくてはならない」

アクア「どうして、一体何を貴方は求めているの? こんなことをしても、もう何の意味も――」

リョウマ「アクア、忠告だ。手を出さなければ、こちらからお前に手を出すつもりはない。しかし、何かおかしな真似をしてみろ。俺は容赦なくお前を切り伏せる」

アクア「リョウマ!」

カムイ「アクアさん、ここは私に任せてください。大丈夫です、リョウマさんは必ず……」

アクア「……え?」

カムイ「アクアさん?」

アクア「……リョウマ?」

リョウマ「……」

アクア「……」タッ タッ

カムイ「アクアさん、ダメです! こちらに来ては――」

アクア「……て?」

カムイ「え?」

アクア「どうして……。どうしてなの、リョウマ?」

リョウマ「……そうか」チャキンッ

アクア「……どうして、こんなことになっているの?」

リョウマ「その動揺を見る限り、お前にはすべてが筒抜けになっているらしい…」チャキンッ

アクア「質問に答えて、リョウマ! どうして、どうしてなの?」

リョウマ「……」

アクア「どうして、カムイを苦しめるようなことを選んでしまったの?」

リョウマ「……」

アクア「あなたは……あなたはカムイにとって数少ない希望だったというのに!!」

リョウマ「……」

カムイ「アクアさん、一体何を言って――」

リョウマ「ふっ、俺が希望か……」

 ポタタッ

リョウマ「そんなわけはないだろう。ただの燃えカスのような男に煌めくような光が灯るはずもない……。俺は炎の熱気に振り回されるだけの存在だ。意味などありはしない」

カムイ「リョウマさん?」

リョウマ「……なにも意味などなかった。だからこそ、俺には――」

「もう、それ以外の道が残っていなかった。それだけの事だ……」

 ポタッ ポタタタタタッ

今日はここまで

 あと二回で、白夜と暗夜の戦争は終わります。
  
 新作FEのPVに出てた偶像崇拝の化身みたいなの、プレイヤー側でも使えたらうれしいな。主にマスコットとして軍の主力に加えたい。

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国王都・シラサギ城『剣の間・最奥』―

レオン「ブリュンヒルデ!」シュオンッ

ユキムラ「させません!」ピンッ

絡繰人形『……』カシャコンッ ダッ!

 キュイインッ!

レオン「くっ……」サッ

サクラ「レオンさん、これでどうですか!」チャキッ パシュンッ!

 ズビシャッ!
  カランカランッ……

白夜兵「今だ、一気に距離を詰めろ! 構うことは無い、全員殺してしまえ!」

レオン「それは僕たちの台詞だよ。はああっ」シュオンッ

 ゴゴゴゴッ

白夜兵「っ! 全員、止まれ!」

レオン「ブリュンヒルデ!」ゴゴゴッ

 バシュンッ 
  グチャッ 

白夜兵「がはっ……」ドサッ

 シュオンッ……

白夜兵「よし、次が来る前に距離を――」

サクラ「そうはさせません!」パシュシュッ

 ズビシャ!

白夜兵「ぐああっ」ドサリッ

ユキムラ「ふむ、……中々思うようにはさせていただけませんね……。では、これでどうですか?」スチャッ

絡繰人形『……』チャキッ カタタタッ クイッ

サクラ「カザハナさん、右をお願いします!」

カザハナ「任せてサクラ! それっ!」シュパッ

サクラ「えいっ!」タンッ!

 ガシャンッ
  ガタタンッ!

絡繰人形『』バギンッ! ガタンガタンッ!

絡繰人形『ギギッ……ギギギッ』チャキッ

カザハナ(やばっ、浅かった!?)

 ヒュンッ

カザハナ「!」グッ

レオン「そうはさせないよ。いけっ!」シュオンッ

 ゴオオッ キィン!

レオン「今だ、シャーロッテ!」

シャーロッテ「あいよ! おらああっ」ダッ ブンッ

 ドガシャンッ!!!!
  カタンカタンッ……

カザハナ「あ、ありがとう」

レオン「お礼は後でいい、それよりも次を迎え撃つ! カザハナ、サポートしてくれ

カザハナ「うん。任せて、レオン王子!」

白夜兵「うおらああっ!」タタタッ

カザハナ「せいっ」チャキッ シュパッ

レオン「はああっ」シュオンッ

 ドゴンッ!

白夜兵「ぐぎゃっ」ドサリッ

サクラ「シャーロッテさん、左から来ます!」

シャーロッテ「わかったよ、それじゃ牽制お願いね」

サクラ「はい、そこ!」パシュッ

 ヒュンッ!

白夜兵「なっ、攻撃!?」ズザザーッ

シャーロッテ「止まってくれてありがとうございますぅ。おらよっ!」ブンッ

 ドゴンッ
 ドサッ ドササッ

シャーロッテ「よし、道が出来たぜ」

レオン「ああ、行かせてもらうよ。行こう、サクラ王女」タタタッ

サクラ「はい、レオンさん!」タタタタッ

白夜兵「この、この裏切り者どもが!!!」ダッ

カザハナ「行かせないよ」タタタッ シュタッ

 チャキッ ザンッ
 ブシャアアアッ

白夜兵「かっ、はっ……うごっ」フラッ ドサリッ

カザハナ「はぁ、はぁ……」

シャーロッテ「カザハナちょっと頑張りすぎ、少し息を整えてなさい」

カザハナ「で、でも、まだ敵はいるんでしょ。レオン王子とサクラの下に行かせるわけには――」

シャーロッテ「たしかにそれなりにいるけど、小心者の集まりみたいだからね?」

カザハナ「え?」

シャーロッテ「敵の増援、ピタリと止んだみたい。まぁ、こんな風に大量に倒されてたら躊躇したくなる気持ちもわからないでもないけど?」

カザハナ「……なら、今は――」

シャーロッテ「いろいろと引っ掻きまわしてくれたユキムラっていう奴に護衛はいないなら、ここで決めてもらわないと」

シャーロッテ(だけど、なんでこのタイミングで攻めてこないわけ? マークス様とかの方に戦力が集中してるって言っても、こっちはユキムラを捉えてるってのによぉ)

シャーロッテ「なんか気に入らねえな」

 タタタタッ

レオン(敵の増援が止まった? いや、体勢を立て直しているだけかもしれない。だけどそれはこっちにとって好都合だ。なにせ、もうチャックメイトの段取りは出来上がっているからね)

 カタタタタッ

絡繰人形『……』ガチャコンッ ギュイイィィンッ!

 パシュッ ガシャコンッ!

サクラ「レオンさんには近づけさせません!」

レオン「サクラ王女、ありがとう。……そして、ようやくだね。ユキムラ」シュオンッ

ユキムラ「……おやおや、もうこちらは兵力不足ですか。もう少し、奥に兵はいたと思いますが。まぁいい、横槍が入らなければ私があなたを殺すために迫っていたのでしょうが、逆の立場になってしまいましたね」

レオン「これも予想していたことだろう?」

ユキムラ「そうですね。ええ、この短時間でこれほどの数の犠牲を出すことになるとは、兵法の教科書を逆さに読んで来たと思われても仕方がありません」

レオン「ああ、お前の望んできた結果が今ここにあるすべてだよ。スズメたちを裏切り、そして何より姉さんの希望を折ろうしてきたお前には当然の評価だ」

ユキムラ「ははっ、そうですね。この結果を甘んじて受けなければいけませんか。ですが、まだその清算を受け入れるわけにはいきません。私は、死に絶えるまで――」カチャコンッ

レオン「!」サッ

バシュンッ!!!
   ドゴンッ!!!!

ユキムラ「あの裏切り者が苦しむことに助力を惜しまないつもりですから」

サクラ「ユキムラさん、あなたはどこまで心を無くされてしまったのですか」

ユキムラ「心を無くされた? 違いますよ、これは私が望んだことでしかありません。この心はですねサクラ様、私がそうしたいと願ったことによって生まれたことに他ならない。あなたのように強い人間ではない、私にそれを求めるのは酷というものです」

サクラ「私は強くなんて――」

ユキムラ「いいえ、あなたは強い。とても強いお方だ、弱い者はここに来れるはずもないのです。私はあなた方を駒として扱った、王族でも何でもありません。ただ、あの裏切り者にとって苦渋となりえる決断と終わりが訪れる様に動いてくれる良質な駒として、私はあなた達の命を顧みる事無くことに当りました。それが、結果的に奴を苦しめることになるなら何でもよかったのですからね?」

レオン「サクラ王女たちを人質に取っていることは公表していたのに、それを無視して侵攻作戦を行ったのも画策の一つだったということだね……。」

ユキムラ「ええ。ですが、サクラ王女が生きているという保証自体は在りませんでしたからね。あの頃に決起した方々には、暗夜への報復心が強かった。そういうものは、抑え付ければ抑え付ける程に膨れ上がるというものです。私自身、憎しみというのは人を変えることができるもののだと実感していましたから」

レオン「……」

サクラ「ヒノカ姉様にタクミ兄様も、その中に巻き込んだというんですか……」

ユキムラ「あのお二人が動いたのは、あなたの無謀な行動故ですよ。ですが、お二人の協力であの出兵が行われたのは事実です。そして、私たちリョウマ様の側近と呼ばれる者たちが幽閉されたことで、事は簡単に進んだ。ただ、それだけの事なんですよ。誠に簡単なことでした」

レオン「……わかったよ。もう、お前に聞くべきことは何もない。お前の口から発せられる言葉を姉さんに聞かせるわけにはいかないからね」シュオンッ

サクラ「……ユキムラさん」チャキッ

レオン「この先にお前が望んでいる終わりはない。それを否定してあげるよ!」

ユキムラ「……そうですか、では否定してみせてください。できるものならですが!」 パシュンッ

 キキンッ

ユキムラ「!」カランンコロンッ

 ダッ タッ

サクラ「当って!」パシュッ

ユキムラ「甘いですよ、サクラ様」クイッ カチャコン

 パシュッ!
  ガキィン!

サクラ(撃ち落とすなんて……でも!)チャキッ パシュッ!

ユキムラ「っ! はああっ」カランコロンッ 
 
 パシュシュッ!


レオン「サクラ王女、僕の影に隠れて、はああっ!」シュオオンッ

 シュオオオッ! 
  キィンキィン!

ユキムラ「ははっ、まるでサクラ様を守る護衛のようですね」

レオン「そのつもりだよ」

ユキムラ「?」

レオン「サクラ王女達を白夜まで送り届けるのが僕の使命の一つだからね……。それまでは、命を賭けて守り抜く、あんたに希望を奪わせはしない」

ユキムラ「なら、あなたを殺してその希望を抱けない様にして差しあげますよ!」ダッ

 カランコロンッ!

レオン(ちっ、再詠唱、間に合うか!?)シュオンッ

ユキムラ(こちらの方が早い、ならばここで!!!!)

 カタンッ

ユキムラ「もらいましたよ!」カチャコンッ

レオン「っ!」グッ

ユキムラ(とった!)グッ

 ズビシャ!

ユキムラ「ぐっ……。くそっ」ポタタッ

サクラ「させません、絶対に!」カチャッ パシュンッ

ユキムラ「ちっ」サッ

レオン「すまない、サクラ王女。助かったよ」

サクラ「間に合って良かったです、お怪我はありませんか?」

レオン「ああ、このまま一気に押し切る!」

サクラ「はい!」ダッ

ユキムラ「くっ、ううっ、ああっ……。ははっ、まさかサクラ様に致命傷を与えられることになるとは……」

レオン「……」シュオンッ

ユキムラ「ですが、まだ、まだです。まだ、勝負は終わってなど――」グッ

サクラ「ユキムラさん!」チャキッ

 ググッ

ユキムラ「っ!」クイッ ガチャコンッ

 パシュッ!

サクラ「当てます!」パシュッ

 キィンッ!!!!
  コトンッ

ユキムラ「しま――」

レオン「これで終わりだ、ブリュンヒルデ!」シュオオオオオンッ!!!!

ユキムラ「!!!!!」

 ドゴンッ ガギィンッ!!!!
  ガシャンッ! ゴロンゴロンゴンッ………

ユキムラ「がっ、ぐああああっ……」ドサッ ドササッ……

ユキムラ(うう、ミコト……様……)

◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『王の間』―

~ユキムラの記憶・戦争開始前~

ミコト「……これで、ようやく動き出せるかもしれません」

ユキムラ「はい、カムイ様もこうして戻られました。まだ少なからず疑念を抱いている者もおりますが、何れそれも終息していくことでしょう。まずは、カムイ様が戻られたことを、多くの民に知ってもらうのがいいでしょう。長きに渡り、カムイ様を奪還されることがミコト様の悲願であったのですから」

オロチ「そうじゃな。うぷぷ、ミコト様がこのように楽しそうにしておるのを見るのは久しぶりの事じゃからな。しかし、よもや記憶を失っておるとはのう。無理に記憶を呼び戻すこともできるんじゃが……」

ミコト「いいのですよ、オロチ。ゆっくりとカムイが思い出すのを待ちましょう。私はあの子がここに戻ってきてくれただけでもうれしいのです。もう、叶わないかもしれない夢と諦めていましたから」

―そう、それがミコト様の夢。カムイ様がこの白夜で自分の傍にいるということがミコト様の夢だった。スメラギ様が暗殺され、共にいたカムイ様が囚われたという知らせを受けた時、ミコト様がどれほど悲しんでいたのかを考えれば、この結果は満点と言わなくとも妥協点には達していたものでした―

ユキムラ「これで暗夜に対しての恐れはなくなったと言ってもいいでしょう。カムイ様の存在を公にすることで、人々の士気はきっと高まります」

オロチ「そうじゃな。盛大とは言わないまでも、小さな催しは行うのがいい。祝いの場所には良い知らせが来ると皆思う物じゃからな。今まで暗夜に好き勝手されておったが、ここからはそうはいかないということを見せつけてやりたいのう」

ミコト「……私は暗夜と戦争をしたいわけではありません。それに、カムイがこうして戻ってきてくれたことは、戦う以外の希望を見出すため。暗夜に住む人々と交渉することが、何よりも大事になってくるはずです」

ユキムラ「ミコト様……。これまで暗夜がしてきたことに目を瞑れとおっしゃるのですか? 結界によって大規模な派兵を暗夜は行えていませんが、ノスフェラトゥによる被害は日に日に大きくなるばかりでしょう」

ミコト「ええ。でも、今現れているノスフェラトゥは暗夜の方角から来ているに過ぎないものです。すべてを暗夜の策謀と考えるわけにはいきません」

オロチ「しかし、民はそれを理解してくれはせんぞ?」

ミコト「ええ、わかっています。それにカムイがいなくなったことで、暗夜の王国で共に過ごして来た方々に動きがあるのは間違いありません」

ユキムラ「ですが、あの瞳の傷を見る限り大切にされていたとは……」

ミコト「あの傷はとても古い傷でした。この頃のものではありません。それに、もしも暗夜がカムイに不当な扱いを強いていたのなら、あんなに元気な姿ではいられなかったはず。私は、暗夜にもカムイの事を大切に思ってくれる方々がいるのだと信じています」

ユキムラ「……ミコト様はとてもお優しい方です。それに、とてもお強い人だと私は思っていますよ」

―実際、ミコト様はとてもお強い人だ。スメラギ様が亡くなり、カムイ様を奪われても投げ出されることは無く。こうしてずっと耐えてこられたのですから。それが実を結んだことに、私は内心とてもうれしく思っていました―

ミコト「いいえ、強くはありません。ユキムラにオロチ、そしてユウギリ。いいえこの白夜に住むすべての人に支えられているからこそ、私はこうして待つことが出来たのです。この長い間を生きてこれたのだと……」

ユキムラ「ミコト様……」

ミコト「私はカムイを愛しく思っている暗夜の方々がやって来るのだと考えています。純粋にあの子を助け出したい、そう願う人々がやって来ると」

ユキムラ「暗夜の者たちがカムイ様をどう思われていようとも、暗夜へカムイ様を手渡すわけには参りません。彼らがしたことを、忘れることなど出来るわけもありません」

ミコト「それでいいのです。私も忘れるつもりは在りません。暗夜がしたことは、白夜に大きな悲しみをもたらしました。ですが、人はその悲しみや憎しみに折り合いを付け、新たに歩むことができるはずです。許さなくてはいけないわけではありません、すべての出来事を知っても尚、歩み寄れる余地があるのであれば、私たちはその義務を背負わなくてはいけない、それが知恵を持つことなのですよ」

オロチ「ふむ、ミコト様は時々おかしな話をされるからのう。うぷぷ、じゃが、そういうところはわらわがミコト様を好む理由じゃがな?」

ユキムラ「まったく、オロチはミコト様の話を理解されていない様に思えますね」

オロチ「ふむ、これでもそれなりに理解しているつもりじゃ。それがとても難しいことだということもじゃ。憎しみはとても強い呪いじゃ。だというのに作り出すのはとても簡単なまじないじゃ。誰かの幸せを願う祈祷など、その何十倍にも難しいというのにのう」

―今思えば、オロチの言っている事は何も間違いではありませんでしたね。私はミコト様の言葉を理解していなかった。そして、憎しみを生み出し続けることはとても簡単なのだということも知らなかったのだから―


ミコト「だからこそ、私たちは憎しみではない道を目指さなくてはいけません。そして、それを紡ぐためにカムイは今帰ってきてくれたのかもしれません」

ユキムラ「カムイ様が、ですか?」

ミコト「ええ、もしもその時が来たのなら、白夜の伝承の通りにあの子の下に夜刀神が現れることでしょう。それをあの子が望まなくとも……」

ユキムラ「ミコト様?」

ミコト「オロチ、ユキムラ。一つだけ話さなければならないことがあります」

オロチ「む、なんじゃ?」

ユキムラ「何でしょうか、ミコト様?」

ミコト「……おそらくですが、私は近いうちにこの世を去らなければならないかもしれません」

ユキムラ「!?」

オロチ「ミコト様、すこし笑えない冗談じゃぞ」

ミコト「いいえ。予感がするのです…。私は近いうちに命を落とすことになります、今まで静観していた者の手によるものか、それとも私が示すべき理のためか。どちらにしても、もう、時間はそう長くないでしょう」

ユキムラ「静観していた者? やはり暗夜王ガロンのことですか?」

ミコト「暗夜王ガロン……いえ、もっと恐ろしい悪魔のなせる業です。おそらく、私はそれに……」

オロチ「ふん、この白夜の地でそのようなことが出来るとは思えんのう。じゃが、そんな話を聞かされて黙っているほど、わらわは落ちぶれてはおらんぞ?」

ミコト「ありがとう、オロチ。でも、それを避けたとしても私は私の理のために命を賭けるつもりです。それがどんな形であったとしても変わりません。そして、その結果として私が死んでしまったとしても、憎しみに心を蝕まれないでいてほしいの」

――その話を聞いた私とオロチは憤慨していたかもしれません。暗夜王ガロンではない何者か、いや、だとしても敵は暗夜以外にありえない以上、憎しみは増えていくに決まっているでしょう。だから、私は弱者だった。そんな私にミコト様はおまじないをしてくれた。ただ手を添えて円を描くだけのものだった――

ミコト「オロチ、ユキムラ。私が命を落としたことであなたたちが憎しみに駆られることが無いようにおまじないを掛けました。出来ればユウギリにも施してあげたいのだけど……」

オロチ「ふむ、ユウギリは今遠征に出ておるからのう。うぷぷ、ユウギリには後でこういうことがあったと伝えておかねば」

ユキムラ「ミコト様……」

ミコト「ユキムラ。カムイの事をお願いね。あの子はきっと夜刀神に選ばれる、それがどんなに辛い運命を背負うことになるとしても、その結果としてあの子がどんな道を選ぶことになったとしても……。ユキムラ、あなたは」

ミコト「カムイを信じて支えてあげて。それが、私があなたに託したい約束です」

――そして、あなたは……予言の通りに命を落し、私は………。その約束を果たすことは無かった――

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・最奥』―

ユキムラ「……がっ、ううっ」フラフラッ

ユキムラ(絡繰は……。もうダメですね、ここまでバラバラになっては、もう戦闘も何もあったものではありませんか。それに……)

レオン「これで終わりだよ、ユキムラ」

サクラ「ユキムラさん」

ユキムラ「……そのよう……ですね。ごふっ」ビチャアアッ

サクラ「ユキムラさん、もう降伏してください」

ユキムラ「ははっ、本当にサクラ様……。あなたはミコト様と同じように強い方なのですね……。まだ、私を救おうなどと考えていらっしゃるとは……ううっ」

レオン「ユキムラ。今すぐ全兵士に戦闘を停止するように伝えろ。もう、戦いは終わりだ」

ユキムラ「それは無理ですよ」

レオン「この期に及んでまだ、戦いを続けるつもりだっていうのか?」

ユキムラ「いいえ、そうではありませんよ……。どうやら……、私にふさわしい報いが訪れるようですからね……」

レオン「え?」

サクラ「……?」

サクラ(奥の扉、さっきまで閉まっていたピッチリしまってたはずなのに、隙間が――)

 ギギギッ

サクラ「レオンさん、奥から狙われています!」

レオン「ちっ!」サッ

ユキムラ「……」

 ダンッ!!! ズビシャアアアアッ!!!!!

 ポタッ ポタタタタッ
  
  ギイイイイッ バタンッ!

レオン「……」

サクラ「レオンさん、お怪我は!?」

レオン「いや、大丈夫だ。でも確かに矢が放たれて……」

ユキムラ「……これがこの状況を作り上げた、あなた方の答えということですか……」ドサッ

レオン「ユキムラ!?」

サクラ「! ユキムラさんの背中に矢が!? 今すぐに止血を!」

ユキムラ「無駄です……。毒が塗られているようですから……。おそらく、延命処置の意味は無いでしょう……。ははっ、最後に裏切られるとは、これもミコト様との約束を反故にした報いという事でしょうか」

レオン「……ミコト女王との約束?」

ユキムラ「私は信じることができなかったのですよ。ぐっ、ミコト様、いいえ実の母を殺されたというのに、暗夜の側に着くという選択をしたカムイ様を守る、信じることなどできるわけもありませんでした。私は弱い人間だ、あの日、カムイ様が暗夜を選ばれた時……。湧水のように心の底から憎しみが溢れた……」

ユキムラ「許せなかった。あれほどにカムイ様を思っていたミコト様の命、それを軽視するような選択。それに意味がある可能性など私の中には芽生えることはありません。私の心という台地は憎しみという水で満ち、他の考えが育つことを許しはしませんでした。そして、私は……カムイ様の希望の敵になる事を望んだのです。守るのではなく破壊することが、私が狂わずにいられる唯一の方法でした……。その結果がこれなのですから、なにも得られなかったも同然ですね……」

レオン「……一つだけ聞いて良いかな? 今回のヒノカ王女の処刑の件……。あんたが流したわけじゃないだろう?」

ユキムラ「……なぜそう思うのですか?」

レオン「あんたは姉さんを恨んでいる。だけど、今この状況でヒノカ王女の処刑を選ぶメリットは何処にもない。国そのものが戦いに辟易している中でそれを選ぶとは思えなかった。今、あんたを裏切った奴らがヒノカ王女処刑の噂を流した首謀者なんだろ?」

ユキムラ「……ははっ、そうでしょうね。彼らにも思い至ったことがあるのでしょう、もっとも、どちらに転んでもおいしいことではないと、彼らは気づいていないようですが……ごほごほっ」

レオン「そうかい。だけど、姉さんを苦しませるつもりなら処刑の件をお前が流したとも思える。それについては?」

ユキムラ「そうですね、たしかにヒノカ様を殺せば確かにカムイ様は苦しまれるでしょう。ですが、それはしなくてもいいことでした。もう、ヒノカ様が死ぬことで白夜の士気は高まることもありませんし、何よりもヒノカ様はすでに壊れてしまわれているのですから……」

サクラ「ヒノカ姉様が、壊れてしまったってどういうことですか……」

ユキムラ「そのままの通りですよ、もうヒノカ様にするべきことなど何もないのです。言ったでしょう、もうカムイ様にとっての苦しみだけがここにあると。そして、今戦っているお方の存在も、カムイ様にとっては……拷問に等しいものですからね」

レオン「そうかい、もうはなすことはない。ユキムラ、お前の復讐はもう終わった、止めを刺すつもりはない。そのまま、静かに息絶えるといい」

ユキムラ「ええ、ははっ、ごふっ……。そうさせていただきます……」

ユキムラ(ああ、視界が霞む。だというのに体中の痛みが引かない……。ミコト様と顔を合わせることは無いでしょう、私が落ちるのは地獄の更に底でしょうからね)

ユキムラ(ミコト様、あなたがあの日に死ななかったら、そう時々思う時がありました。もしも、あなたが理によって命を絶っていたのなら、私は……)

ユキムラ(私はカムイ様を信じ、守るために戦うことが出来たのでしょうか? あなたの娘と共に、暗夜と手を取り合うために……。歩むことが…)

ユキムラ「ごふっ……」ビチャ……

ユキムラ「ミコト……様……」

ユキムラ「」

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・最奥』―

レオン「……これで、もう白夜と暗夜が争う必要は無くなった。ユキムラの願いもこれでおわった」

サクラ「はい。でも、ユキムラさんを射った人たちは……」

レオン「おそらく、首謀者であるユキムラを討ち取ったという形で、僕たちにすり寄ってくるつもりなんだろうけどね……」

サクラ「ユキムラさんも利用されてしまったということですか……」

レオン「ユキムラはそうなる事も考えていただろうからね。とりあえず、このことは後にしよう。まずは戦闘の終結を告げるのが先だよ」

サクラ「はい」

 タタタタタッ

カザハナ「レオン王子、サクラ!」

レオン「カザハナ」

カザハナ「……遂にやったんだね」

レオン「ああ。でも、まだ戦いは終わってない。早く姉さんに戦いが終わったことを伝えないと」

 タタタタッ

マークス「レオン。うまく事を運んだようだな」

レオン「マークス兄さん……。ユキムラは倒れて奥にくすぶってる連中は攻撃に来る様子もない。おそらくだけど、もうこの争いは終わった」

マークス「わかった。カムイはこの中か?」

レオン「多分ね。早く開いて戦いを終わらせよう、多分だけど今カムイ姉さんと戦っているのは……」

マークス「恐らくリョウマ王子だ。大方ヒノカ王女を人質にとられ、止むを得ずカムイと交戦しているのだろう。われわれがユキムラを倒した以上、それに従う必要はないと理解してくれるはずだ」

サクラ「はい!」

レオン「よし、開けるよ」

レオン(姉さん、もう大丈夫だ……。ユキムラは倒れた、敵の戦意が崩壊した今、もう戦う必要は無くなったんだ!)

 バンッ

レオン「姉さん! もう戦いは――え?」

 ビチャッ ビチャッ
  ポタタ ポタタタッ

サクラ「レオンさん、カムイ姉様とリョウマ兄様……は……。え……」

 ポタタタッ
  ポタタタタタタッ

「リ、リョウマ……兄様?」

今日はここまで

 あの白夜の襲撃でミコトが生き残っても、何れ暗夜と白夜が集った平原で、双方の協力を促すためにハイドラの正体を告げて泡になって消えるというのもあるのかなって思った。

 6月25日でFEif3周年になりましたが、リリスの誕生日は未だにわかっていません。なぜや。

 次回で暗夜と白夜の戦争、それが終わりとなります。

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・中央』―

カムイ「この道しかなかったとはどういう意味なのですか、リョウマさん」

リョウマ「そのままの意味だ。こうしてお前たちに牙を剝き剣を交えることが、唯一俺に選ぶことのできた道だ」

カムイ「まだ選べる道はあります。今、ここで戦いを終わらせることだってできるはずです」

リョウマ「……それこそがもう過ぎ去った道だ。今回の戦いは俺が仕掛けたこと、もうやり直すことはない」

カムイ「そんなことは――」

リョウマ「お前には見えていないからそう言えるだけだ。俺の言葉に異を唱えたいのなら、まずアクアに聞くといい。お前に見えなくとも、アクアには見えているはずだ。やり直す機会など無いということがな」

アクア「……」

カムイ「……アクアさん、教えてください。あなたにリョウマさんはどう映っているのですか? 私にそれが見えないという意味、それは一体何なのですか?」

アクア「……」

カムイ「アクアさん…」

アクア「私は、カムイの希望がここにある……そう思っていた。この戦いから多くの人を助け出したいというあなたの希望。そして、その中にリョウマやヒノカが含まれるという願いも……」

カムイ「……」

アクア「だけど、その願いは叶わない。少なくともリョウマを助けるというあなたの願いは……」

カムイ「ど、どういう意味ですか」

アクア「……リョウマから、奴の気配が色濃くにじみ出ている。タクミの時とは比べ物にならないほどのとても強いものが……」

カムイ「え……」

リュウマ「……」

カムイ「で、ですが操られているのなら、それを解くことが出来れば、リョウマさんを助け出せるはずです」

アクア「そうね、確かにリョウマの意思は残っている。完全に支配されているわけではないと思う」

カムイ「でしたら――」

アクア「だとしても、リョウマを助けることにならないのよ」

カムイ「なぜです!? タクミさんの時のように助け――」

アクア「それはタクミが生きていたからできたこと。体の自由を奪われるのと、奴の力を借りて体を動かしているのでは話が違う」

カムイ「え?」

アクア「リョウマは自由を奪われているわけじゃない、奴の力を借りて体を動かしている。それが今目の前にいるリョウマの状態よ……」

カムイ「……」

 ドクンッ

カムイ(その言葉はなんですか)

 ドクンッ ドクンッ

カムイ(まるで……リョウマさんが生きていないような、その言い方は――)

 ドクンッ ドクンッ

カムイ(嘘ですよね? そんな、そんなことがあって――)

リョウマ「……信じられないと言った顔をしているな、カムイ」

カムイ「あ、当たり前です。そんなことを突然言われて、信じられるわけがないじゃないですか」

リョウマ「そうだな。なにせ、俺でさえここに立っていることを信じられないほどだ。だが、俺はもう死人同然の存在として、今ここにいるに過ぎない。そんな者にやり直す機会があるわけないだろう?」

カムイ「嘘です! そんな冗談を――」

リョウマ「俺はこのような場面で冗談を言うつもりはない。だから言わせてもらおう」

リョウマ「お前に俺の命を救うことは出来ない、それをお前が認めたくなくともな……」

カムイ「……」

カムイ「どうして……」

リョウマ「……」

カムイ「どうしてこんなことになっているのですか。私は、あなたを助けたかったのに……」

リョウマ「……」

カムイ「どうしてなのですか、リョウマさん……」

リョウマ「……お前の願いを待てるほど、俺は強い人間ではなかった。それだけの事だ……」

カムイ「え……」

リョウマ「この戦争がはじまり、お前が暗夜へと消え、サクラと臣下の行方も分からなくなった時、俺にはすべきことが溢れていた。白夜を思い、家族を思い、そして民を思い、それらに対してすべきことを選ぶのが俺の使命だった。だが俺は、選ぶべき多くの物を捨て去ってしまった」

カムイ「どうして、そんなことを言うのですか。リョウマさんは白夜を守るために尽力して暗夜の革命が成った時、私たちとの和平交渉のために頑張ってくれていたじゃないですか!」

リョウマ「だが、それも失敗に終わった。なぜだかわかるか?」

カムイ「それは、ユキムラさん達がそれを察知していたからで……」

リョウマ「……俺にはそうは思えない。ユキムラ達に区切りを付けさせていることが出来れば、この争いは回避されたはずだ。だというのに俺は、俺だけの力でことを成そうと試みてしまった。そこを強行派に付け込まれた、これは俺のしでかした失態でしかない」

カムイ「だとしても、――」

リョウマ「……俺はな、カムイ。白夜の皆が自然と元の優しき人々に戻っていくことを信じていた。それが俺の中にある唯一の正義だった……」

アクア「リョウマ……」

リョウマ「愚かな話だろう。俺は最後には必ず白夜の民が目を覚ますことを信じていた。そして、俺は民が望んだことを形にしていった。最初の暗夜侵攻も、それが元の白夜に戻る指針になるならと行っただけに過ぎない。そして、俺は守るべき民をその時切り捨てた。それがそもそもの間違いだった」

リョウマ「状況はどんどん悪くなっていく。人々は委縮した、戦況の悪化を多くの民は薄々感じていた。しかし、それを口にすることを恐れた……。もしかしたら次は自分が先に送られた人々と同じように死地に送られるかもしれない。そう多くの民が思ってしまった時、無数の道筋は束ねられ、一つここに至る道だけが残る。俺は民衆の心に不安だけを植え付ける選択をした無能に過ぎなかった」

カムイ「ですが、それはその時の白夜を思って仕方なくしたことだったはずです……」

リョウマ「仕方のないことではなかった。そもそも、同胞に敵を作り出す行為に意味などない。俺は白夜を守るべき責務を怠った。怠り、そして恐怖だけを植え付けてしまった。送られた者たちの多くは暗夜と軽い繋がりがあったに過ぎない、そして当時の戦場で暗夜兵の手当てをした者たちもいた。それは俺が信じた正義、優しき人々そのものだった。それを俺は守ることが出来なかった」

カムイ「……だとしても、まだ選ぶことは出来たはずです」

リョウマ「言っただろう、俺は人々が戻っていくこと、かつての優しき心の人々に戻っていくことを己の正義としたと……。一度、その人々を切り捨てたこと、その一件でユキムラ達の目が覚めることを願った。いつか夢は覚める、この悪夢も終わりを迎えるとそう、信じていた。だが、俺は夢を見ていたわけじゃない。これが現実だというのにそれから目を逸らしていた。そして、シュヴァリエ公国の反乱の頃、ようやく目が覚めた。そして、俺の信じる正義は俺のための正義になり果てた……。誰にも理解されない、俺だけの正義になった」

アクア「なら、どうして一度カムイを白夜に連れ帰ろうとしていたの? あなたの正義とカムイの正義は違う物よ。あなたは、どうしてカムイを……」

リョウマ「……それが俺の中にある正義を、もしかしたら形に出来る可能性を秘めたものだったからだ」

カムイ「え?」

リョウマ「俺はお前に力を貸してほしかった。この暗雲の漂う白夜の中であっても、お前なら乗り越えられるはずだと、そんなことを考えてしまった。もう、俺には白夜を動かせるほどの力は無くなっていた。どんなに新しい道を模索しようとも、俺の中の正義がそれを拒む。だから、俺の中の正義を踏まえつつも、白夜を守っていける方法を考えた。俺はな、お前に白夜で共に戦ってもらいたかった。この白夜をもう一度優しい国にするために……」

カムイ「リョウマさん」

リョウマ「だが、あの時のお前は揺れていた。それが酷く頼りないものに見えて、俺はお前と共に白夜に戻ることを止めた。俺は守るためにお前を白夜に戻したかったわけではない、白夜のために共に戦うことを望んでいたからこそ、揺れない心を持つお前を欲した。それが俺の中にある最後の分かれ道だったのかもしれない。その後はもう語る必要もない、俺は形だけの王族となり果てて、多くの将兵を動かす為の駒として扱われた。そして、その中でも俺は正義に固執し続けた。この覚めることのない現実が夢であるように願いながらな……、だが、最後の最後で俺の夢は突然覚めることになった」

アクア「……ヒノカをユキムラが暗殺しようとしていたことを、あなたは知ったのね」

リョウマ「ああ……」

リョウマ「ユキムラの憎悪はカムイだけに向けられていた。暗夜ではなく、カムイを苦しめるための行為だった。だからこそ、ヒノカを守るようにミタマたちを差し向けた。ただ、ヒノカを守るために俺は多くの兵を犠牲にする選択をした。それが俺の中の正義をことごとく崩した、そして残ったのはこの抜け殻だ……」

カムイ「リョウマさん……」

リョウマ「俺は、すべてがどうでも良くなってしまった。俺が守れるものなど何もない、いや今さら何を守る。ここまでの惨状を醸し出しておきながら……。だが、一つだけ守れるかもしれないものがあった。スサノオ長城での敗退の責任をユキムラ達が要求していたこと、さらにヒノカの処刑の話があがった時、俺はそれを最後の仕事とし――」

 ビチャッ……ポタタタッ

リョウマ「牢で命を絶った。その感覚は今でも覚えている。思ったよりも痛かったな……」

 ジワッ……ポタタタッ

カムイ(リョウマさんの腹部が裂けて!? それになんですかこの気配は? ドロドロとした気配が部屋に染み込んでいくみたいに広がって……)

アクア「リョウマ……」ズササッ

リョウマ「ううっ……」グチャンッ ビチャンッ……

カムイ(これが、これがリョウマさんだというんですか……。この、気配を形作れないような存在が――)

カムイ「!」チャキッ

リョウマ「これが逃げ出そうとした男の末路だ、カムイ。自分の不甲斐なさ、自分の弱さに押しつぶされ、そして自分の正義の正しさを生きたまま証明することをあきらめた男のな」

 ビイチャッ……

カムイ「リョウマさん……」

リョウマ「カムイ。こんな姿になった俺だとしても、お前は救おうと思うか? このような怪物を、死に損ないを、そしてすべてから逃げ出した男を……。お前は救おうというのか?」

カムイ「……」

リョウマ「……」

アクア「……カムイ」

カムイ「……」

カムイ「……リョウマさん、あなたの言っている事、そしてその見た目を思えば言っている事は間違いないでしょう……」

リョウマ「……ようやくわかったか。なら――」

カムイ「ですが、あなたを助けることを諦めるつもりはありません」

リョウマ「なに?」

カムイ「……」

リョウマ「お前はまだ、俺を救おうと考えているのか?」

カムイ「はい、もちろん、そのつもりです」

リョウマ「……なぜだ

カムイ「私はそのために、ここまで戦ってきたんですから……。私はあなたを助けるために剣を振るいます」

カムイ(それがもう叶わない願いだとしても……。私には――)

カムイ「それ以外の選択肢はありません! 私はあなたを救ってみせます!」ダッ

リョウマ「カムイ!!!」ビチャアッ チャキッ

カムイ「はあああっ!!!」ブンッ

リョウマ「やああっ!」ブンッ

 ガキィンッ
   キィンッ!

アクア「……」ギュッ

アクア(今、歌の力を使えば……リョウマに送られている奴の力を抑え込むことが出来る。私に体を蝕む呪いが来ることになるけど、それだけでこの戦いは終わらせることが出来る。もう、リョウマは救われない……、それはもうわかり切っている事……)

アクア(だけど――)

カムイ「はああっ」タタタッ

 カキィンッ キィンッ!

アクア(私はあなたのその希望を支える。たとえ、それが叶わないことだとしても、私はあなたの希望を支えていく。だって私の歌はあなたの希望を砕くための物じゃないから!)

リョウマ「うおおおっ!!!」ブンッ

カムイ「くっ!」ドンッ ドササーッ

リョウマ「終わりだ!」ベチャンッ ググッ ブンッ

カムイ「!」

アクア「はあああっ!!!」チャキッ ダッ

 キィンッ!!!

リョウマ「アクア……」

アクア「私もカムイと同じよ。あなたを救ってみせる」

リョウマ「わかっているはずだ。俺は――」

アクア「ええ、だとしても救えるものはあるはずよ」キィン!

リョウマ「っ!」 ブンッ

アクア「!」サッ

カムイ「アクアさん」

アクア「カムイ、行きましょう。リョウマを……助けるんでしょう?」

カムイ「はい!」ダッ

カムイ(そう、それが私の戦ってきた道です。今まで幾度となく、選んできたことは私にとって誰かを救う事だった。だから――)

「もう迷ったりしません!」ダッ

今日はここまでで

 すみません、纏まり切らなかったです。
 あともう一回でこの章が終わります。アクアの歌はカムイの希望を支える歌であってほしい

 本当ならここで指針選択肢だったのですが、選択肢の内3つが理想を目指すものになり全5回の過半数を越えたので、このお話は理想を信じるルートとして終わりまで向かうことになりました。よろしくお願いいたします。

 ちなみにここでの指針選択は、リョウマを倒すために剣を取る or リョウマを救うために剣を取るという感じでした。

◆◇◆◇◆◇

 以下、行われた指針選択の問いと選ばれたもの

〇3スレ目【675】
 十七章 フウマ公国戦
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 1.サイゾウと共にコタロウの撃破を優先する (現実)

 2.生きていると思われるカゲロウの救出を優先する(理想)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  選択結果-2-

〇4スレ目【219】
 第十九章 暗夜王国王城クラーケンシュタイン ガンズ戦
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 1.偽りであろうとも理想を掲げる (理想)

 2.偽りであろうとも目的を掲げる (現実)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 選択結果-1-

〇4スレ目【667】
 第二十一章 イズモ公国での決断
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 1.妖狐の山を通り、制圧された風の村へと向かう(理想)

 2.増援が到着するまでの間、イズモの防衛に努める (現実)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 選択結果-1-

 理想3 現実0

 このような形になりましたので、よろしくお願いいたします。

◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・中央』―

 キィン!
  カキィン!

リョウマ「うおおおっ!」チャキッ ブンブンッ

 ガキィン ギギギギッ

カムイ「っ、はあああっ!!!」ドンッ ブンッ

 ガキィン!

カムイ「リョウマさん、もう終わりにしてください。もう、戦うことは――」

リョウマ「黙れ!」ドゴンッ!

カムイ「!」サッ

アクア「カムイ!」タタタタッ ガシッ

カムイ「アクアさん、ありがとうございます」

アクア「気にしないで、あなたの戦いを支えるのが私の役目だもの」

カムイ「はい!」

リョウマ「いつまでその思い上がりを続けるつもりだ……。俺を救うなどという、その思い上がりを……」

カムイ「思い上がりだとしても、一歩たりとも退くつもりはありません。あなたがそれを否定しても私は歩みを止めません」

 ザッ チャキンッ

カムイ「あなたを救うために剣を取ると、そう決めたのですから!」ダッ

 キィンッ!

リョウマ(そうか、お前はどんな状況であろうとも、決して諦めることは無いのか……。それが夢物語、いやそれ以下の戯言にもならないと理解してなお、お前はそのために戦い続ける……)

リョウマ(それが俺とお前の中にある圧倒的な違い、強さの差なのかもしれん……)

リョウマ(カムイはとても強い人間なのだろう。こうしてここまでくる間、お前は多くの選択を前に、逃げる事無くやって来た。それがどれほどの苦悩なのか、想像することは難しくない……。カムイは選ぶという地獄と向き合ってここまで来た……)

リョウマ(それに比べて俺はどうだ?)

 カキィン!

リョウマ(俺はその地獄を前にして何が出来た? 何を選べた?)

 キィン!

リョウマ(俺は選べたのか? カムイのように壁を前にしてするべきことを選べたのか?)

リョウマ(選べたと、俺は言えないからこそ……。俺の正義は俺にとっての拠所になったのかもしれない。何でもいい、それが終わらない夢だと信じてきただけだ。そして、覚めた夢から逃げるように命を絶っただけに過ぎない……)

リョウマ(そんな俺が救われる? そんなことがあっていいわけがない!)

リョウマ(そうだ、俺に……)

リョウマ(救われる価値などありはしない!)

リョウマ「はあああっ!!!!」ダッ

カムイ「!」サッ

 ドゴンッ!
  ドゴゴンッ!

リョウマ「カムイ!!!」

カムイ「っ!チャキッ

 キィン!キキィンッ!
  ジャキンッ!

リョウマ「はあああっ!」

カムイ「っ!」

リョウマ「俺は救われるべきではないと、どうしてわからない!?」

 ブンッ ガキィンッ!

カムイ「……」

リョウマ「この現実から目を逸らしているのか? わかるだろう、俺がどのような選択をしてお前を苦しめたのか、分からないわけではあるまい。俺はお前の理想を、そして希望を潰した。そんな相手を救うなどと……」

カムイ「……関係ありません。私の希望や理想が潰えてしまったとしても、それがリョウマさんを救いたいという私の願い砕くものになるわけではないんです」

リョウマ「カムイ……」

カムイ「……」

リョウマ(……お前はこれほどに成長していたのか。あの、シュヴァリエでの戦いで何も持っていなかったお前が、こうして姿を見るだけでも分かるほどに……感嘆な意思を持つようになったのか……)

リョウマ「……本当に、お前は強くなったのだな」

カムイ「はい。少なくとも、あの頃よりはマシになったというだけです」

リョウマ「大きくは出ないのか。いや、それもお前らしさということか……」

リョウマ(お前は……その点だけは変わらずにいる。それがお前の強さなのかもしれない。その熱い心があったからこそ俺は、お前を求めたのかもしれない……。その強さを……)

リョウマ「ならば見せて見るがいい。俺を救うというその剣で、お前は何を見出すのか、今ここで俺に!」チャキッ ジリッ

リョウマ(よもや、幾度も連撃を仕掛けられる状況ではない。この一撃で決着をつける……)

カムイ「……ええ、望むところです」チャキッ

リョウマ「……」

カムイ「……」

 ダッ!

リョウマ「……」

カムイ「……」

 タタタタタッ
  タタタタタッ

リョウマ「……」

カムイ「……」

 チャキン
  シュキンッ!

リョウマ「はああああああっ!!!!」ググッ

カムイ「やああああああっ!!!!」ジャキッ

 ザシュシュッ!!!!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆

 ポタッ ポタタタタッ

リョウマ「……」

カムイ「……っ」ガクッ

アクア「カムイ!」タタタタッ

カムイ「アクアさん……」

アクア「大丈夫、傷はそれほど深くないみたいね」

カムイ「はい……。それよりも、リョウマさんは……」

アクア「……ええ、あなたの狙い通りに決まったわ。もう、リョウマは戦うことが出来ないはずよ」

カムイ「そうですか……」

リョウマ「……っ」ボトリッ カランカランッ……

カムイ「腕を一つ落とさせていただきました。もう、戦える状態ではないでしょう」

リョウマ「……」

カムイ「……私の勝ちですね。リョウマさん」

リョウマ「……」

リョウマ「……ふっ」

カムイ「?」

リョウマ「……ふははっ……」

カムイ「え?」

リョウマ「ふふっ、ふはっ、ふはははははっ! これで勝ったか……。なんとも浅はかな考えだ、カムイ!」ビチャッ チャキンッ

 ガシッ

カムイ(落とした腕が生えた!? いや、これは――)

リョウマ「はあああっ!」チャキッ ブンッ

カムイ「!」ダッ

 ガキィンッ ドゴンッ!

カムイ「がっ!!!」ドサッ ズサササーーー

アクア「カムイ!」

???「何が信じる、だ。結果的にお前の理想を狂わされたことから逃げるための口実を並べているだけだというのにな。正直に言ってしまえばいい、この男に裏切られたのだと……」

アクア「あなた、リョウマじゃない。まさか――」

カムイ「異形神……」チャキッ

???「そういうことになる。死にかけた操り人形など、もうこの世にはいはしない。残念だがお前はこの男を救えなかったということだ……。結局、人間のあたたかな感情などほとんど仮初の物。人を恨み憎み、そして嫉妬する。黒き感情こそが本流というだけの事だ」

カムイ「黙ってください。そしてリョウマさんの体から出て行ってください。その体は、あなたのような方が居座っていいものではありません!」

???「ははっ、何を言うかと思えば……。最後まで愚かな正義に固執した男に価値などないだろうに。この男も救われる必要はないと思っていた。そう、お前はこいつをさっさと殺しておくべきだった。そうすれば、こうして我に殺されることもなかったのだからな」

カムイ「はああああっ!」チャキッ

???「ふんっ!」ブンッ

ガキィン!

カムイ「うああっ!」ドサッ ドササッ!

アクア「カムイ! もう、リョウマではないというのなら――」シュオンッ

???「小娘、そう易々と力を使わせると思ったか!」チャキッ ダッ

アクア「!」

カムイ「っ! はあああっ!」ダッ

 ガキィン!

アクア「カムイ!」

カムイ「アクアさん、早く下がってください……」

???「往生際が悪いことだ。お前の理想はもう崩れ去ったというのに、未だにその剣を助けるために使うか?」

カムイ「黙れ!」

???「ふん、結局お前はこの男を救うことなどできはしなかった。それもそうだ、命が無いものに救いなどありはしない。それを認められないからこそお前は、助かりもしない命を救おうと必死になっていただけだろう? この男は最後まで信じ、そして裏切られた。だからこそ、その復讐を願って命を繋いだ。お前の考えるような、誠実な理由などではない。この男はな、多くの人間を道連れにして死ぬことを選んだだけだ……」

カムイ「信じません、あなたの言葉など」

???「信じなくてもいい。今から死にゆくお前には関係のないことだ!」ブンッ

カムイ「っ!!!」キィンッ

 ガキィンッ!

???「さぁ、恨むがいい、そして絶望しろ。お前の希望も理想も砕け、何も救えない己の弱さを恨みながら、ここでその役目を終えるがいい!!!」ダッ

 キィンキィンッ!

???「うおらあああっ!」ドゴンッ

カムイ「きゃああっ!」ドサッ ドサササーッ

アクア「カムイ!」

カムイ「っ……はぁ、はぁ。っ……」ポタタタッ

???「さぁ、どうだ? 己の無力さ、そして信じることの無意味さを知った気分は……」

カムイ「ええ、そうですね……。私はとんでもないほどに無力です。こうやって、あなたにすべてを奪われてしまっているのですから」

 チャキッ

カムイ「ですが、私は信じることを無意味だと思うつもりはありません。それを認めることは、絶対にありえません。私はリョウマさんを、そして私の道を信じます。だからこそ、私は――」

カムイ「折れるわけにはいかないんです!」グッ

???「そうか、何処までも愚かな娘よ。信じる事がどれほど無意味な事なのかを認められぬとは……。それを今思い知らせてやろう」グオンッ

 ブンッ

カムイ「!」チャキッ

 ドゴンッ

カムイ「っ!」

???「これで終わりとしよう……」チャキッ

アクア「カムイ!!!!」

カムイ(間に合わない――)

???「死ねぇ!」グッ

 ズビシャアアアッ!!!!

  ポタタ ポタタタッ

カムイ「……」

???「あぁ?」ポタタタッ

アクア「え……」

???「ぐっ、な、なんだ。なぜ、剣がこの体に刺さっている。……一体、何がどうなっているのだ……」グッ

カムイ「一体何が……」

「カムイ」

カムイ「え?」

「カムイ、後は俺に任せろ」

カムイ「その声は……リョウマさん!?」

???「なっ、貴様……。馬鹿な、なぜに意識を――」

 チャキッ
 ズシャッ!!! ブシャッ!!!

???「ぐっ、ぐあああっ。死に損ないが、機会を与えた我に……。我に歯向かうつもりか!?」

「お前に魂まで売ったつもりはない。俺は、俺の正義のためにお前を利用した、それだけの事だ!」

 ビチャッ ビチャッ
  ポタタ ポタタタッ

???「ぎゃっ、ぐっ、貴様、貴様!!!! なぜだ、なぜ恨まぬ。お前にとってあの娘は……目障りな存在でしかないはずだ。お前に苦悩を植え付けただけの存在のはずだ!」

「苦悩は俺が生み出したもの、俺の弱さが生み出したに過ぎない……。この弱さは俺にとっての正義だ……。そしてそれを手放すつもりはない」

???「この、死に損ないがあああああっ」ブンッ

「カムイ!」

カムイ「!」チャキッ

アクア「あぶない!」ダッ チャキッ

 キィン
  カキィンッ

カムイ「アクアさん」

アクア「早く、離れるのよ!」

 タタタタッ

???「逃がすかっ!!!!」ダッ

 チャキッ

???「!」

「これで終わりだ……」

 ザシュッ ググッ ズシャアアアッ

???「がああああああっ!!!!!!」ビュオオオッ!

 ビチャアアアッ!

「……はぁ、はぁ……ううっ」グラッ

 ドサリッ

カムイ「リョウマさん!」タタタタッ

 グッ ビチャッ……

リョウマ「……はぁはぁ、ああ、カムイか?」

カムイ「はい。リョウマさん……、すみません、あなたを救うと言ったのに、私は――」

リョウマ「いいんだ。これが俺の正義の……求めた形だっただけのことだ……。ごふっ」ビチャアアッ

カムイ「リョウマさん……」ポタタッ

リョウマ「ふっ、こんな身でありながらも、まだ人間のようにいられるか……。む?」

 テト、テト……

サクラ「リョウマ……兄様?」

リョウマ「その声……サクラなのか?」

サクラ「はい、リョウマ兄様。ようやく、戻って来れました……」

リョウマ「そうか。戻ってきてくれたんだな……。すまない、出来ればお前の姿を見たかったが、このありさまで――」

サクラ「リョウマ兄様!」ギュウッ

リョウマ「サクラ……」

サクラ「ううっ、どうしてですか……。どうして……」

リョウマ「……すまない、サクラ」

サクラ「いや、言わないでください。そんな……もうお別れになってしまうようなこと、言わないでください。リョウマ兄様……」

リョウマ「……ふっ、お前はまだ泣き虫なままなのか」ナデナデ

サクラ「ううっ、だって、だってもう一度、家族で一緒にいられるって、それを私は信じて……、信じて……きたんです。それなのに、こんなのって……」

リョウマ「……サクラ」

 タッ…タッ

レオン「リョウマ王子……。ようやく、あなたに会うことが出来ました」

リョウマ「……お前は?」

レオン「僕はレオン。暗夜王国第二王子だよ」

リョウマ「……そうか、お前がサクラを支えてくれた王子だったのか。テンジン砦でのこと、許してくれとは言わない。俺に覚悟と割り切る力があれば、起きることのなかったことだった…」

レオン「……もういいさ。起きたことの謝罪を貰っても、この状況が覆るわけでもないからね」

リョウマ「そうか……。サクラを支えてくれてありがとう。お前の支えが無ければ、サクラは戻って来れはしなかっただろう……」

レオン「いや、サクラ王女がいなかったら僕もここにはいなかったかもしれない。それくらい、サクラ王女は僕たちに協力してくれた。だから、僕は彼女たちを白夜に連れていくことを決めたんだ。そして、それもようやく終わったみたいだね」

リョウマ「そうだな。そちらから来たということはユキムラも倒れたという事だろう?」

レオン「ああ、あいつは――」

リョウマ「わかっている…。ユキムラもそうなることを考えていた。あいつは、そうなることをずっと予想していた。あいつは覚悟していた……。俺とは違う、非道を行う覚悟を持っていた……」

レオン「……だとしても、あいつのしたことを許すつもりはない。絶対にね……」

リョウマ「ああ。この先、どんな未来があろうとも、俺たちは戦争を泥沼化させた悪として残り続ける……。いや、そうでなくてはいけない……。それが俺にとっての最後の希望、正義を実現できるかもしれない可能性だった……」

サクラ「そんな……」

リョウマ「……この作戦もすべて俺が立案した。外壁防御に民間人を混ぜたのは、そのまま兵に守らせるためだ。そして強行的な者たちを城に配置する。俺は今ここにある、狂ってしまった白夜を捨て去るためにそう配置した……。俺もその中の一人であるとするために、ここにいることを選んだんだ」

カムイ「リョウマさん……」

リョウマ「だが、サイゾウやカゲロウには見抜かれていたのだろうな。こぞって俺の最初の命令には従えない、そして俺と共に闘う道をあいつらは望んだ。民の護衛ではなく、俺と戦う道をな。最後の最後で、俺は幾人かを地獄に連れて行ってしまったんだ……」

カムイ「……サイゾウさん、カゲロウさん」

リョウマ「本当は、彼らにこの先の未来を見てもらいたかった。再興していく白夜の姿、俺の正義が意味を持っていたのかどうかを見てほしかった……。でも、それは果たされなかった。それもそうだろう、俺の最初に出した命令には生きた意思が無かったのだから……」

サクラ「生きた意思……」

リョウマ「そう、生きた意思のある選択にこそ意味があるのだと……。カムイを見てようやく思い知らされた……」

リョウマ「思想や理想は生きているからこそ通じるものだ。俺は生きながらに死んでいた、俺の正義は俺だけのものになった、息吹を持ちながら俺は死に体のまま、ゆっくりと正義が崩れるのを待ち、そして崩れた途端に死へと逃げ。そして最後の最後で、俺はようやく正義を体現することを選べた……。あいつを追い出すことで、俺はようやく生きた正義を手にしたのかもしれない……」

カムイ「……いいえ、リョウマさんは最初からずっと、あなたの正義を信じていたはずです。だからこそ、私はあなたを救いたかった。なのに、私は……」

リョウマ「いいや、お前は俺を救った。アクアの言っていた言葉の通りにな」

アクア「え?」

リョウマ「アクア、お前は言った何か救えるものがあると……。そんなものあるわけがないと思っていた。命が尽きればすべてが無くなる。死者である俺が救われるわけがない、なにせ救えるものなどありはしないのだから……。だが、俺は確かに救われた……。カムイ、お前が俺を信じてくれた。どんな姿になっても、お前は俺を……」

カムイ「リョウマさん……。私だけじゃありません、あなたと一緒に戦うことを望んだ人々は、きっと……あなたの事を信じていました。あなたの正義は、きっとあなただけのものではなかったはずです……」

リョウマ「……そうか、そうだったのなら、俺は幸せ者だ。感謝してもしきれないほどにな……」

リョウマ「はああああっ」ググッ ビチャアアッ

カムイ「リョウマさん、一体何を!?」

サクラ「リョウマ兄様! 駄目です、今、剣を抜いたりしては!」

リョウマ「ふっ、もうこの体に生きるも死ぬもない。もう、俺のすべきことは終わりを迎えた。もう、この体もやがて朽ちていくだろう。その前にサクラ、これを……」スッ

 チャキンッ

サクラ「これは雷神刀!? 私が受け取るわけにはいきません、これは代々白夜の王が継ぐものです――」

リョウマ「サクラ、これはもう王としての証にはならない。これをお前に託すのは一つ頼みたいことがあるからだ……」

サクラ「頼みですか……」

リョウマ「ああ。……サクラ、この白夜の未来を、世界の生末を見届けてほしい」

サクラ「!!!!!」

リョウマ「この白夜の道、そして暗夜と共に歩んでいく平和な世の生末を、俺の相棒と共に見届けてほしい」

サクラ「リョウマ……兄様……」

リョウマ「……」

サクラ「……」

 カチャッ

リョウマ「ありがとう、サクラ」

サクラ「……私にそれが務まるかはわかりません。未来がどうなるのかはわからないものだから……」

リョウマ「……」

サクラ「だけど、ちゃんと見つめ続けます。リョウマ兄様の分も、スズメさん達の分も、この先の白夜を、ちゃんと……ちゃんと……見届けてみせます」ポタタタッ

リョウマ「ありがとう……。最後にお前と話が出来て良かった……」ナデナデ

サクラ「はい、リョウマ兄様……」

リョウマ「カムイ……」

カムイ「なんですか、リョウマさん」

リョウマ「ヒノカを頼む……。奴が俺を見限った以上、次に向かうとすれば恐らくヒノカだろう」

カムイ「まさか、ヒノカさんはすでに……」

リョウマ「大丈夫だ、ヒノカは死んでいない。ただ、スサノオ長城から戻って以後、何かに憑りつかれているかのように魘されている。おそらく、奴の手は回っていたのだろう。俺の体に供給されていた奴の力の流れ、それがどんどん奥へと向かっている……。もう、俺には止めることもできない」

カムイ「……」

リョウマ「カムイ、俺は何もできなかった男だ。そんな男がこんな時になって、何を言うかと思うかもしれない。だが、俺はお前に託したい。こんな俺でも、信じてくれたお前に……」

カムイ「……」

リョウマ「ヒノカを救ってくれ……。こんな思いをするのは俺だけでいい。だから頼む……ヒノカを救い出してほしい……」

カムイ「……」

リョウマ「……カムイ」

カムイ「そんな心配そうな顔をしないでください。必ず、救って見せます。だから、安心してください」

リョウマ「……そうか」

リョウマ「ありがとう……カムイ……」ゴポポッ

カムイ「リョウマさん!」

リョウマ「後は……頼む……」

 グチャッァ……
  ドロドロッ……
   ビチャアアアッ……

カムイ「……リョウマ……さん」

サクラ「リョウマ、兄様……。ううっ、どうして、どうして……」

レオン「サクラ王女……」

カムイ「……」

アクア「カムイ……」

カムイ「……大丈夫です」

カムイ(ここで涙を流すわけにはいきません。だってリョウマさんは私を信じてくれたんです、だからここで立ち止まるわけにはいきません)

アクア「……気を付けて、奴の気配が奥へと集中している。おそらくだけど……」

カムイ「奴はまだあきらめていないようですね……。皆さん、警戒を怠らない様にして――」

 ガタンガタンッ!

サクラ「! 奥の扉が……」

レオン「サクラ王女、僕の後ろに!」

ガタンガタンッ!
 ビチャアッ
  ポタタタタッ

アクア「あれは、水?」

 メキキッ メキキキッ

レオン「扉が崩壊しそうになってる!」

カムイ「全員、物影に隠れてください!」

 メキキッ
  ガギンッ
   ゴドンッ!!!!

  ザアアアアアッ!

サクラ「す、すごい水の量です…。いったい何が……」

レオン「わからない。だけど、何かがあったのは間違いない」

カムイ「行きましょう皆さん、私に続いてください!」ダッ

カムイ(待っていてください、ヒノカさん! 必ず助け出しますから!)

 タタタタッ

◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・シラサギ城『謁見の間』―

 ズズッ ズズズッ

 グシャッ ブチンッ ボタタタタッ

 ゴトンゴトンッ……

白夜兵「ひっ、ち、近寄るな!近寄るなぁ!」

???「……」ガシッ

白夜兵「がっ、はひっ、や、やめ――」

 グシュリッ
  ゴリゴリッ

白夜兵「がっ、ひっ、ぐへぇう」プシュッ プツツッ……

 ブンッ
  バサンッ
   ググッ ズモモッ

???「これで、いいんだ」バサバサッ

 ピチャンッ

???「……」チャキッ ググッ

???「……」シャランッ

???「……」カラランッ

???「……」チャキッ

 ピチャンッ……

???「これでみんな戻ってくる」シュオンッ

 ピチャンッ

???「そう、これで」「これで……全部、元通り。そうだよね――」

『みんな?』

二十四章 終わり

 今日はここまで

 次回より、二十五章に入る予定です。

 すみません、二十五章に入る前に前回の戦闘に参加したキャラクター同士の支援安価を行いたいと思います。
 参加していただけると幸いです。

◆◇◆◇◆◇
 一組目
・レオン
・サクラ
・カザハナ
・シャーロッテ

 >>308>>309
(サクラ×レオン、レオン×カザハナは支援Aのため、対象外になります)

◆◇◆◇◆◇
 二組目
・カミラ
・エリーゼ
・マークス
・ルーナ

 >>310>>311

◆◇◆◇◆◇
 三組目
・スズカゼ
・ツバキ
・モズメ
・アシュラ

 >>312>>313

 このような形ですが、よろしくお願いいたします。

カザハナ

シャーロッテ

カミラ

エリーゼ

ツバキ

モズメ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◇◆◇◆◇
―白夜王国・星界『広場』―

カザハナ「ああ、お腹空いた。ちょっと調子に乗って訓練しすぎたかも……」ヨタヨタ

シャーロッテ「ん、カザハナ? なにフラフラしてるわけ?」

カザハナ「あ、シャーロッテ。何でもいいからご飯になるものちょうだい……。もう、お腹ペコペコで」

シャーロッテ「はぁ? なに調子のいいこと言ってるわけ? あんたにやる弁当なんて一斤もないわよ」

カザハナ「でも、そんなにいっぱいお弁当持ってるじゃん。一つくらいくれても……」

シャーロッテ「これは全部、目星をつけた男に配る予定の奴なんだよ。あんたにあげる弁当は無いってこと、わかったらさっさと退きなさい」

カザハナ「むー」

シャーロッテ「……」

カザハナ「うー」

シャーロッテ「……はぁ、わかったわよ。小さいのでいい?」

カザハナ「え、くれるの!?」

シャーロッテ「仕方なくよ。ここであんたに渡さないで変な噂が流れたら、またその埋め合わせをしなくちゃいけなくなるし、その労力に比べたらここで弁当一つ渡したほうがマシよ」

カザハナ「そ、そんな言い方しなくてもいいじゃん。でもありがとう、えへへ、本当にお腹ペコペコだったから助かったよ」

シャーロッテ「丁寧に味わって食べなさいよね」

カザハナ「うん、ありがとう、シャーロッテ。また――」

シャーロッテ「今度は絶対にあげないわよ」

カザハナ「えー」

『シャーロッテとカザハナの支援がCになりました』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◇◆◇◆◇
―暗夜王国・王城クラーケンシュタイン『庭園』―

エリーゼ「ふんふーん♪ ふーん♪」

エリーゼ「……うーん、なんか違う。えっと、ふふふーん♪ ふふーん♪」

エリーゼ「やっぱり違う……」

カミラ「あら、どうしたのエリーゼ」

エリーゼ「あ、カミラおねえちゃん。ううん、何でもないよ!」

カミラ「そう? さっきまで鼻歌を歌いながら、これでもない、あれでもないって悩んでいたみたいだけど?」

エリーゼ「え、あ、ううん、あたし鼻歌なんて歌ってないよ?」

カミラ「あらそう?」

エリーゼ「う、うん、そうだよ。えっとね、さっきまでお城はやっぱり大きいなって思ってただけで、なんか違うとか思ってないよ!」

カミラ「ふふっ、それじゃおねえちゃんの勘違いだったみたいね。でも、何か困ったことがあったら話してちょうだい。力になってあげたいわ」

エリーゼ「う、うん。あ、あたし、ちょっとお部屋に忘れ物しちゃった、それじゃねカミラおねえちゃん!」タタタタタッ

カミラ「あ、エリーゼ。いったいどうしたのかしら?」

カミラ(あのエリーゼが隠し事なんて気になるわ……。少し探ってみましょう……)

『カミラとエリーゼの支援がCになりました』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◇◆◇◆◇
―白夜王国・カムイ軍の野営地―

モズメ「……はぁ」

ツバキ「この頃は溜息ばかりついてるみたいだねー」

モズメ「あ、ツバキさん。あはは、そうなんよ」

ツバキ「この前から時々そうなってるみたいだけど、もしかして故郷の事?」

モズメ「うーん、そうやね。思ったよりも引き摺っとるみたいで、ようやく落ち着けたんかなって思ってたけど、結局思ってただけやったんやな」

ツバキ「そっか。俺にはそう言う感覚はわからないけど、落ち着くまでは思い返してた方がいいのかもしれないよ」

モズメ「……ツバキさん、あんまり実家の事を思い出したししないって言ってたけど、寂しくなったりしないん?」

ツバキ「それはないかなー。なんたって俺は完璧だからねー」

モズメ「そうなんか?」

ツバキ「そうそう。それに何か思い出せって言われても稽古とかそう言う事ばっかりだからさ。モズメみたいに何か風景とかを思い出したりできないんだよね。なんていうか、俺は確かにそこで育ってきたはずなんだけど、思い出は全部知識として持っているみたいな感じかな?」

モズメ「ツバキさんの言う事、難しすぎてわからへんよ」

ツバキ「あはは、ごめんごめん」

モズメ「でも……。なんだか少し寂しいって思うわ」

ツバキ「寂しい?」

モズメ「うん、この前話した時、少しだけツバキさん暗い顔してたんよ」

ツバキ「え、そんな顔してたかな?」

モズメ「……なぁ、ツバキさん。今度、よかったらご馳走させてくれへんかな?」

ツバキ「え、別にかまわないけど、唐突にどうしたの?」

モズメ「気にしないでええよ。うん、そうと決まれば献立考えへんと!」

ツバキ「?」

『ツバキとモズメの支援がBになりました』

今日は支援だけ

 シャーロッテって、理由と色々を付けるけど根は度が付くほどに優しいよね……

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『剣の間・謁見の間へと続く道』―

マークス「先ほどの濁流といい、一体何が起きているのだ。それにこの広場の惨状……」

カミラ「ええ、明らかに戦闘の痕跡があるわね。音は何も聞こえなかったけど、かなり激しい戦闘だったみたい」

マークス「ああ。しかし、敵の姿や遺体が無いところを見る限り、これは……」

 タタタタタッ

カムイ「カミラ姉さん、マークス兄さん!」

アクア「二人とも無事みたいね」

カミラ「カムイ、それにアクア」

マークス「そちらも無事だったようだな」

カムイ「はい。奥から水が溢れてきたと聞いて……。お二人は先行していたんですね」

マークス「ああ。今のところ敵の姿は無いから大丈夫だ。それで、リョウマ王子は?」

カムイ「リョウマさんは……戦死されました」

マークス「……そうか。話すべきことはあるが、まずはこの状況をどうにかしよう。この奥に何が待っているのか予想が出来ん。かなり大規模な戦闘が行われた痕跡があるが、遺体も敵の姿も見えない。おそらく奴らの手によるものだろう」

カムイ「……この先にはヒノカさんがいるとリョウマさんは言っていました。そして、奴がヒノカさんの下へと向かったとも……」

カミラ「となると、ほぼ決まりということになるわね……」

アクア「ええ、このまま奴をのさばらせておくわけにはいかないわ。リョウマのおかげで、奴の力は薄まっている。今なら何とかなるかもしれない」

マークス「ならば、ここで立ち止まっている時間は無い。そうだろう、カムイ」

カムイ「はい、まずは私たちだけでも先に向いましょう。後続が崩落した渡り廊下に即席の架橋を設置しているそうなので、他の皆さんも直に追いつくと思います」

マークス「わかった。周囲に警戒しつつ前進しよう」

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ピチャンッ ピチャンッ

カミラ「ここら一帯も水浸しみたいね……」

カムイ「ここ周辺も水に浸かっていたという事でしょうか?」

マークス「いや、この水自体は床を流れてきただけのようだ。床以外にここ周辺で濡れている個所は少ない。恐らく邪魔が入らぬように、あの扉の周辺だけを封じ込めたのだろう。奴は水を操る力にも長けているという事か……」

カムイ「どういった物かはわかりませんが、その可能性も考慮したほうが良さそうですね。ですが、それなら私たちがここに入ってきた時点で一網打尽に出来るはずですけど……」

アクア「リョウマの件もあったからかもしれないけど、奴の反応はそれほど強くないわ」

カムイ「そうなのですか?」

アクア「ええ、この先から少しだけ感じるわ。けど、さっきのような強大なものじゃないの」

カミラ「そう、それでこの先には何があるの?」

アクア「白夜の玉座のある謁見の間があるわ」

マークス「謁見の間か、このような形で白夜の玉座へと向かうことになるとは思ってもいなかった……」

カミラ「でも歩み方が違っていたのなら、私たちは白夜を本当の意味で侵略してここに来ていたのかもしれないわ」

マークス「ああ、父上が奴に操られていることを知らなければ、われわれは白夜と戦いここを目指すことになったのかもしれん」

カムイ「……」

カムイ(もしもあの日、私が玉座に座っていれば、ここまでの事は起きなかったのでしょうか? お母様は玉座には座った者の真の姿を見せる力があると言っていました。それが本当だとするなら――)

カム(皆と手を取り合うという道も会ったのかもしれない……)

カムイ「……いいえ、それは私が願っていい物ではありません……」

カムイ(私はリョウマさんの命を救うことができなかったのですから……)

アクア「カムイ、大丈夫?」

カムイ「あ、はい。すみません、少しだけ気が散っていたようです……」

アクア「……カムイ、あなたはあなたのすべきことをした。それだけなのよ」

カムイ「アクアさん?」

アクア「あなたはあなたに出来ることをした。だから、リョウマはあなたが進む道を推してくれたの。だから、それで気を病まないで」

カムイ「……ありがとうございます。アクアさんにそう言ったことを何度も言わせてしまうのは、私の悪い癖ですね」

アクア「……そうね、あなたの悪い癖だから、こうやって指摘してあげたくなるの。まだ、私が支えてあげないといけないって気持ちになるから」

カムイ「……そうですね。まだ、一人で歩んでいけるわけではありませんから。まだまだ肩を貸してほしいです」

アクア「ええ、言ってくれればいつでも貸してあげるわ」

マークス「ふっ」

カムイ「? なんですか、マークス兄さん」

マークス「いや、お前たちがそうして互いを支え合っているのを見ているとな」

カミラ「そうね、おねえちゃんちょっと妬けちゃうわ」

アクア「?」

カムイ「?」

マークス「気にすることは無いこちらの話だ……。しかし、ここまで生存者も死体も見当たらないとは……」

カミラ「ここにさっきまで誰かがいた痕跡はあるのに、姿も形もないっていうのはとても不気味ね。早いところ生存者を見つけることが出来れば、何が起きたのかを聞きだせるのだけど……」

 ピチャンッ

カムイ「! 待ってください、この先の角に何かがいます」

マークス「!」チャキッ

カミラ「敵かしら?」

 ――ううっ……

アクア「これはうめき声みたい」

カムイ「もしかしたら生存者かもしれません。行ってみましょう」タタタタタッ

???「はぁ……、はぁ……ぐっ!」ズキッ

 タタタタタッ

カムイ「大丈夫ですか!? しっかりしてください」グッ

???「……はぁ、……はぁ……」

カムイ「よかった、まだ辛うじて意識はあるみたいですね。すぐに手当てをしますから、もう少しの間、待っていてください」

???「カ、カ……ムイ、様?」

カムイ「その声、まさか、ミタマさんですか!?」

ミタマ「は、い……。おひさしぶりですわ、カムイ様……。こんな姿で申し訳ありません……」

カムイ「動いてはいけません。こんなに怪我をされているのに……」

ミタマ「こんな怪我では、まだ死ねません。ううっ、わたくしには、ヒノカ様を守る…義務が……ありますの……ううっ」

カムイ「ミタマさん……」

 タタタタタッ

アクア「カムイ、生存者みたいね」

カムイ「はい、すぐに誰か治療のできる方を連れてきてください。このままでは……」

カミラ「それじゃ、私が呼んでくるわ。マークスお兄様はカムイ達と一緒にいてあげて」

マークス「ああ、任せておけ」

 タタタタタッ

ミタマ「ふふっ、地獄に仏とはこのことですわね……。まさか、カムイ様が現れるとは思ってもいませんでしたわ」

カムイ「一体何があったのですか? 他の方々は?」

ミタマ「わたくしと一緒にヒノカ様をお守りしていた人々は皆やられてしまいましたの。まったく、こうして生きているのが不思議ですわ」

カムイ「そんな……奴らはもうここにまで来ていたというのですか?」

ミタマ「やつ…ら?」

カムイ「はい。あのスサノオ長城で攻撃を仕掛けてきた見えない者たちのことです。これは彼らの仕業ですよね?」

ミタマ「ああ、あの者たちですか。そうだったら、どれだけよかったのでしょう…」

カムイ「え?」

ミタマ「わたくしたちが戦った相手は、彼らではありませんわ」

カムイ「ですが、敵はどこにもいなかったはずです。だってここには――」

ミタマ「ええ、白夜の者以外いませんでした……。となると、答えは簡単に導き出せるものですわ」

マークス「まさか、味方同士で争ったというのか?」

ミタマ「そういうことですわね。それに味方同士で争うことは別に不思議な事ではありませんわ。暗夜で旧体制と新体制が争ったように、ここでも同じようなことが最後の最後で起きただけの事です」

カムイ「そんな……どうしてこんなことに?」

ミタマ「……わたくしたちが思っているよりも彼らは腐っていて、それを許せなかっただけの事です。わたくしたちの最後の使命がそのようなことに利用されることが我慢ならなかったのですわ。でも、許せなかったと言っておきながら、負けてしまっては元も子もありませんわね」

カムイ「……それはヒノカさんの事、ですよね?」

ミタマ「どうしてそれを?」

カムイ「リョウマさんから聞きました。ミタマさんがヒノカさんを守ってくれていると……」

ミタマ「リョウマ様……。ごめんなさい、わたくしはその使命を守れませんでした。結局、彼らにわたくしたちは――」

カムイ「ミタマさんたちがヒノカさんを守るために戦ったことは変わらない事実です。そして、それを穢すことは絶対に出来ません」

ミタマ「だけど、結果は……」

カムイ「大丈夫、私がきっとヒノカさんを助け出します。ミタマさんたちの使命を、こんな形で終わらせたりはしません。リョウマさんのためにも……、あなた達の意思を奪わせることはありませんよ」

ミタマ「……ありがとうございます、カムイ様。わたくしたちの尻拭いをお願いできますか」

カムイ「いいえ、これは尻拭いじゃないですよ」

ミタマ「え?」

カムイ「私のすべきことを私が進んで行う、ただそれだけの事です。そして、ミタマさんにそれを信じてほしいと頼んでいるだけなのですから」

ミタマ「……面白いことを言いますわね。なら、わたくしはそれを信じる以外になにもありませんわ、カムイ様」ギュッ

カムイ「……ミタマさん」

ミタマ「ヒノカ様をお願いしますわ」

カムイ「はい」

 タタタタッ

エリーゼ「カムイおねえちゃんごめんね、遅くなっちゃって」

カムイ「いいえ、こちらの方です、おねがいします」

エリーゼ「分かったよ! サクラも手伝って。それっ!」シャラランッ

サクラ「はい、エリーゼさん! えいっ!」カラランッ

 シュオンッ

ミタマ「……ありがとうございます。その、少しだけ眠らせていただいてもいいですか?」

カムイ「はい、後は任せてください」

ミタマ「ありがとうございますわ………。すぅ……すぅ……」

エリーゼ「うん、これで大丈夫だと思うよ。どうにか頑張って起きてたんだね、すぐに眠っちゃった」

サクラ「体の傷はどうにかできました、あとは安静にしていれば大丈夫だと思います」

カムイ「ありがとうございます、エリーゼさん、サクラさん」

サクラ「いいえ、当然のことをしただけです。それにしても、ここで一体何があったのでしょうか……」

カムイ「ミタマさんの話では、どうやらここで白夜同士での争いがあったそうです」

サクラ「そうなると、ユキムラさんの命を奪った一矢を放った方々と、ミタマさん達との間で何かあったということですよね。それじゃ、やっぱり彼らの狙いは……」

レオン「恐らくだけど、こちらに取り入るための準備っていう事だろうね。そしてユキムラを倒してヒノカ王女を救出したっていう形で、僕たちの前に現れるのが奴らの狙い。そう考えるのが妥当かな……」

サクラ「レオンさん……。それじゃこの惨状は……」

カムイ「ミタマさんは言っていました、彼らを許せなかったと。おそらく、いきなり戦闘が始まったわけではないとは思います。多分、何かしら話はあったのだと思います」

レオン「何かしらの交渉があったのかもね。もっとも、それが交渉と言えるものかも分からないけど。ともかく、この先にその強行派の生き残りがいるのは間違いない、それと逃げ出したあいつも待っているはずだ」

カムイ「ええ。この奥にいるんですね」

カムイ「……」

カムイ(ミタマさんには信じてといいましたが、もしもこの先にリョウマさんと同じような結末が待っていたらと思うと、体が動かなくなりそうです)

カムイ(もしも、そんな最悪の事態が広がっていたら……私は――)

 ギュッ

カムイ「?」

アクア「大丈夫、きっとヒノカは無事よ。だから行きましょう、あなたの信じる道に」

カムイ「……はい」

 グッ

カムイ(……ここが白夜との戦いの最終地点、そこに何が待っていたとしても私は――)

カムイ「逃げたりしません……」

 ググッ
  ゴゴゴゴゴッ
 ガコンッ!

カミラ「開いたわね、それじゃ中に――」

『ぎゃああああああああっ!!!!!!!!!』

エリーゼ「!?」

レオン「!」

マークス「この悲鳴、只事ではないぞ!」

アクア「奥から聞こえているわ!」

カムイ「行きましょう!」タタタタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『謁見の間・玉座へと続く階段』―

 ピチャンピチャンッ

???「……」カララランッ シュオンッ

 ガシガシッ! グググッ

白夜兵「がっ、あぎっ、ぐげええっ、がらだ、が、ちぎれ――」

 ブチンッ! ビチャアアッ!

白夜上級武将A「な、何なんだ!何なんだよお前らは!!!」

 タタタッ

???「……」チャキッ

白夜上級武将A「ちか、近づくんじゃねえ! おらっ、おらああっ!」ブンブンッ

 ササッ

???「……」チャキッ ブンッ

 ブシャアアッ

白夜上級武将A「が、俺の、俺の腕があああ! ぐっ、いでええええ!」ドサッ

???「……」カッ カッ 

ガシッ ググッ

白夜上級武将A「がっ、うげえええっ。で、でめえ、やめろ、やべどおおお」ブンブンッ

 ザシュザシュッ

白夜上級武将A「あぐ、なんで、しなな――」

???「……」ドスッ

白夜上級武将A「――っ!!!」ゴフッ

ブチャアアッ!!!!!

白夜上級武将A「―――」ドサッ ドササッ

???「……」クスクス

???「……」チャキッ

白夜上級武将B「なんですか、一体何なんですか、あなたたちは!」チャキッ パシュシュッ

???「……」サッ ササッ

 チャキッ パシュシュッ

 ドススッ

白夜兵「ぎゃああああっ!!!!」ドサッ

???「……」タッタッ チャキッ

白夜兵「ひいいっ! ゆ、許してくれ。おれ、俺たちはただ、ただこいつらに!」

???「……」

白夜兵「そ、そうだ俺は悪くない。俺は俺は――」

 ブンッ

白夜兵「はひっ、な、おれ、おれ―ゴポゴポッ」プツツ

???「……」ガッ ザシュンッ

ブシャアアアアッ ドサリッ

白夜上級武将B「一体何が気に入らないというのですか。我々はユキムラに使われた被害者だっただけだというのに。なぜ、こんな――」

???「……」パシュ

 ドスリッ

白夜上級武将B「がっ、あああっ、目が、めがあああっ!熱い、ううあっ、あついいいい!!!」ドサッ バシャンバシャンッ

???「……」スッ

 ドスリッ

白夜上級武将B「ぐっ、あああ、うで、腕が、うでがあああ!」

???「……」ザシュザシュッ

白夜上級武将B「ひぎいいいいっ、やめ、やめで、やめてぐれ、わたしが、悪かった、だから、だから、殺さないで――」

 ピチャンッ

???「……」

白夜上級武将B「!」

 バサバサッ
  ドスンッ

ヒノカ「……」

白夜上級武将B「あ、あああ、ヒ、ヒノカ様」

ヒノカ「……」

白夜上級武将B「す、すべて、すべて、すべて私が悪かった。もう二度と、こんな真似はしません。だから、だから、いのち、命だけは助け――」

 ザシュッ

白夜上級武将B「て……」

???「……」ザシュシュッ ビチャッ

白夜上級武将B「」

ヒノカ「……」

???「……」スタッ

???「……」スタッ

 ズルズルッ ポチャンッ

 ドプンッ……
  ドプンドプンッ……

ヒノカ「……ははっ、ははははっ」

 タタタタタッ

カムイ「ヒノカさん!」

ヒノカ「ん、カムイ。ああ、ようやく来てくれたんだな。待っていたよ」

カムイ「ヒノカさん、この惨状は一体なんなんですか?」

カムイ(気配だけでもわかります。ここで、先ほどまで多くの人々が殺されていたということが)

ヒノカ「ああ、これは私がやったことだ。彼らが私の大切な人たちを奪おうとしたから、それをただ守っただけのことだよ」

カムイ「大切な人たち?」

カムイ(ヒノカさんの他に誰かがいるということですか? でも、ミタマさんの話ではすでに他の方々は死んでしまったと。では、一体誰が……)

 ピチャン
  ピチャン

カムイ(この気配は!)

 シュオンッ
  シュオンッ

???「……」チャキッ

???「……」スタッ

カムイ「ヒノカさん、背後に敵が!」

ヒノカ「敵? 何を言っているんだ、カムイ。ここにはもう敵なんていないぞ?」

カムイ「何を言っているのですか、あなたの後ろに!」

ヒノカ「ああ、オロチとユウギリの事か?」

カムイ「え……」

ヒノカ「大丈夫だ、オロチもユウギリも私の事を守ろうとしているだけのことだ」

アクア「……ヒノカ、あなた何を言って」

カムイ「ヒノカさん、オロチさんとユウギリさんはすでに亡くなっているはずです。死体が見つかっていなからと言っても、あのシュヴァリエ公国での戦いから月日が経っているんですよ!?」

ヒノカ「なにを慌てているんだ? オロチもユウギリもここにいるならそれでいいじゃないか」

カムイ「ヒノカさん……それでいいっていったい何を――」

ヒノカ「カムイ、ここはようやく元に戻りつつあるんだ……。だから、何も慌てることは無いんだ」

「私が奪われたものが、今ここにあるんだから……」フフッ

今日はここまで

 こういう倒したり、死亡した敵側武将が眷属として現れるみたいなの。透魔編以外でも欲しかったな

~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『謁見の間』―

カムイ「奪われたものが元に戻るとは、どういう意味ですかヒノカさん」

ヒノカ「そのままの意味だよ、カムイ。ほら、ユウギリとオロチがこうして戻ってきているじゃないか?」

カムイ「意味が分かりません。それに、あなたが言っているオロチさんにユウギリさんというのは……」

ヒノカ「そうか、お前は目が見えないのだから確認のしようもないことだったな。だが、アクアにはちゃんと見えているだろう?」

アクア「……ヒノカ」

カムイ「アクアさん、本当にあれはユウギリさんとオロチさんですか?」

アクア「……ええ。確かにあれはユウギリとオロチよ。確かにそこに存在しているわ。でも――」

オロチ「」

ユウギリ「」

アクア「あれは、オロチとユウギリの形をしているだけ、本当の二人じゃないわ」

ヒノカ「アクア、何を言っているんだ? オロチもユウギリもここにいるじゃないか。こうして戻ってきてくれたんだ……。ちゃんと、生きてここにいる……。もう、どこにも行ったりしない……」

カムイ「……ヒノカさん」

 タタタタタッ

サクラ「カムイ姉様!」

レオン「カムイ姉さん!」

カムイ「レオンさん、サクラさん……」

ヒノカ「……」

サクラ「ミタマさんを安全な場所へお連れしました、もう大丈夫なはずです。ここに手当てが必要な方は……」

ヒノカ「……」

サクラ「ヒノカ姉様!?」

ヒノカ「サクラか、久しぶりだな」

サクラ「ヒノカ姉様……無事だったんですね」タッ

カミラ「サクラ王女、それ以上近づいては駄目よ」

サクラ「カミラさん? え……」

オロチ「」ヒタヒタ

サクラ「ヒノカ姉様、そ、そこにいるのは誰なんですか……」

ヒノカ「ああ、オロチだよ。お前も会ったことはあると思うが?」

サクラ「オロチ……さん?」

オロチ「」

サクラ「ひっ!」

カミラ「サクラ王女、見てはいけないわ」

サクラ「な、何が起きているんですか。あ、あの姿、まるで死んでいるみたいじゃないですか……」

カミラ「……」

レオン「カムイ姉さん、ヒノカ王女はミタマ達を破った強行派に囚われているんじゃ……」

カムイ「私もそう思っていました。ですが、ここにいたのはヒノカさんと奴らだけです」

レオン「ということは、強行派はもうすでに始末された後ってわけだね」

マークス「しかし、このような事態をどうして受け入れていられる? まさか、ヒノカ王女も奴に操られているのか?」

アクア「確かに奴の力は感じる。けど、これは操られているのと少し違うみたい……」

カムイ「どういうことですか、アクアさん」

アクア「……ヒノカは自分の意思で奴の力を利用しているわ。リョウマやタクミの時とはまるで違うのよ」

カムイ「ヒノカさんが自分の意思で、このようなことをしているというんですか!?」

アクア「ええ、そしてヒノカがそうしている以上、奴がここにいる意味もなくなったということよ」

カムイ「それじゃ、奴は……」

アクア「もうここにはいないわ。私たちとヒノカを鉢合わせるのが狙いだったみたいね」

カムイ「……ヒノカさん。私たちは――」

ヒノカ「ああ、わかってる。戦うつもりはないのだろう。私もお前たちやカムイと戦うつもりは毛頭ないさ」

カミラ「……敵対の意思はないということ?」

ヒノカ「ああ。だから安心してほしい、お前たちは私の敵ではないからな」

レオン「敵じゃない?」

ヒノカ「そうだ。カムイ、お前は私の敵ではないんだろう?」

カムイ「……そのつもりです。私はあなたを助けに来たのですから」

ヒノカ「ふふっ、そうか。でも、もうその必要はない。ここまで色々と苦労を掛けてしまったようだ……」

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「カムイ、お前も戦いに疲れただろう? ずっと、戦ってきたお前の苦労はわかっているつもりだ。私の事もそうだが、様々なことにお前は手を伸ばして来た。それもここまでにしないか?」タッ タッ

カムイ「え?」

ヒノカ「私が代わりにお前のすべきことをしてやる。お前を救いたいんだ、カムイ」

カムイ「私を救う?」

ヒノカ「ふふっ、こうしてすべてが元に戻った。失ったと思ったものが全て戻ってきたんだ。だが、私の戦いはお前を助けることから始まっていた。そして、お前は白夜にやってきてくれたが、戦いに縛られている。その戦いからお前を助け出さないことには、私の使命は終わらないと思ったというわけだ」

カムイ「戦いから助け出すって……」

ヒノカ「ふふっ。カムイ、後は私に任せてくれればいい。残った敵はすべて殺してしまえばいいのだろう?」

カムイ「!」

ヒノカ「敵がいるのなら、それを排除するのは当然のことだ。戻ってきたみんなもきっと賛成してくれるさ」

カムイ「みんな?」

ヒノカ「ああ」

 ピチャンッ シュオンッ
  ピチャンッ シュオンッ

アサマ「」

セツナ「」

サクラ「アサマさんにセツナさん……。そんな、王都まで逃げ切れたと思っていたのに……」

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「ふふっ」

カムイ(ヒノカさんはすべてを殺すと言った。確かに外敵を全て倒せば安全は確保されるでしょう。でも、それは――)

カムイ「そんなのは間違っています……。それでは奴と何も変わりません!」

ヒノカ「どうしてだ? 守るためにはそれくらいしないといけない。私はもう二度と失いたくはないし、みんなにあのような思いをしてもらいたくはない。そして、カムイお前にも同じ苦悩を背負わせたくはないんだ」

アクア「それが、ここにいた強行派の人々を殺した理由なのね」

ヒノカ「ああ、私の臣下を見ていきなり攻撃してきた、まだ生き残りがいたのか!とな。愚かな奴らだ、命乞いまでして自分が仕組んだことだと言っていた者もいたか。ははっ、何の事かはわからなかった。だが、私の仲間を殺そうとした以上、死んで当然の連中だったよ」

サクラ「ヒノカ姉様、止めてください。そんな、そんな笑顔止めてください……。こんなの、こんなことって……」

ヒノカ「ふふっ、あのような者たちに対しても優しくいられるのはサクラだけだ。私にはそんな感傷も何もありはしなかったからな」

サクラ「違います。私は、私は……」

カムイ「ヒノカさん、あなたは……」

ヒノカ「ここにしかみんなは戻って来れない。私はみんなと一緒にずっといたいだけだよ。そして、カムイ。お前の夢を私が叶えてやるんだ。それで、もうすべて終わりにしよう。もう、この戦争は終わりを迎えるんだ」

アクア「ヒノカ!」

ヒノカ「動かないでくれ、アクア」チャキッ

アクア「!」

ヒノカ「話ならすべてが終わってから聞くよ。アクアもここまでの戦いで疲れただろう? ゆっくりと休んでくれればそれでいい。幾日か眠っていれば、もう戦争は終わっている。私たちの勝利で終わりだ。もう白夜も暗夜も関係ない、私たちだけが残ればそれでいいんだ」

アクア「ヒノカ……」

アクア「……」

アクア(私の歌でヒノカの力を抑え込めれば、どうにかこの状況を止められるかもしれない。ヒノカは抵抗してくるだろうけど、これしか今は……)

アクア「……」

アクア(だけど、今のヒノカの精神は力を失った現実に耐えられるの? だって、今のこの状況は、ヒノカが作り上げた最後の、最後の希望と言っていい)

アクア(失ってしまった人たちが目の前にいるという、その希望……。たとえ偽りであっても、ヒノカはそれを求めた。ヒノカはカムイに助けられてしまったから……)

アクア(ヒノカは自分だけが助かってしまったことを悔やんでいる。報われてしまったことを悔やんでいる。本当に助けたかった人たちや、自分よりも報われるべき人たちを失ってしまったことを……)

アクア(それを奴は利用した。夢だと諦めていたことだったはずの失ってしまった者が戻るという非現実な力で、ヒノカは希望を作り上げてしまった。ヒノカの守りたかったみんなが報われる……いいえ、助かる世界を今ここに作ってしまった……)

アクア(そんな世界を、ヒノカの夢を、私は壊すことが出来るの?)

アクア「……」

アクア(私は……)

アクア「……っ」

ヒノカ「……ありがとう、アクア」

 タッタッタッ

カムイ「ヒノカさん」

ヒノカ「カムイ、お前もここで待っていてくれ。私はきっと、お前のするべきことを終えてここに戻って来る。その時は、みんなと一緒の時を過ごそう」

カムイ「……」

アクア「カムイ……」

ヒノカ「それでは行くとしようか……。みんな、もう一度一緒に戦ってくれるか?」

 ピチャン シュオンッ
  ピチャンッ シュオオンッ

ヒノカ「ふふっ、行こう」

 ダッダッダッダッ

ヒノカ「……?」

タッ

カムイ「……ヒノカさん」

ヒノカ「何だ、カムイ?」

カムイ「ヒノカさん、私も多くの人を失いました。ミコトさんにリリスさん、クリムゾンさんにスズメさん、そして先ほどリョウマさんを……。他にも多くの人たちが私の行いによって死んでいったんです」

ヒノカ「……」

カムイ「本当はみんなに生きていてほしかった。私が暗夜に付いたことで今の状況があるのなら、オロチさんやユウギリさん、そしてアサマさんもセツナさんも私が殺してしまった人たちなのだと思います。これは私の罪でしょう」

ヒノカ「大丈夫さ、お前が気負うことは無い。今すぐにでも私が連れ戻してきてやる。そうすればお前がその罪に悩まされ、苦しめられることもなくなるだろう? さぁ、カムイが望むのは誰なんだ? リリスか、スズメか? それともリョウマ兄様か?」

カムイ「……ヒノカさん」

ヒノカ「さぁ言ってくれ、お前の望む、戻ってきてもらいたい人の名を……」

カムイ「……」

ヒノカ「カム――」

カムイ「残念ですが、私はその願いを叶えてもらおうとは思っていませんよ、ヒノカさん」

ヒノカ「カムイ?」

カムイ「……」

ヒノカ「カムイ、わかるだろう? 戻ってきてくれることが、どれほどうれしいことなのか。失ってしまったと苦しまなくて済む、失った悲しみを忘れることが出来るのに……」

カムイ「私は誰の回帰も望みません。ここまでに失ってしまった人、そして命を奪ってしまった人のこと、そのすべてを忘れるような選択をするつもりはありません。私はそれを覚えて生きていくつもりです」

ヒノカ「なぜだ、私はお前の悲しみを無くしてやろうと言っているのに……どうして、それを……」

カムイ「……その悲しみが無くなる事は、その人の事を忘れてしまうことだと私は思っています。どんなことがあっても、私はその悲しみを忘れるわけにはいかないんです」

ヒノカ「そ、そんなものに何の意味がある!!! ずっと、思い出して苦しみ続けるだけの、そんな記憶に!!!!」

カムイ「ヒノカさん、あなたにもあったはずなんです。だから、あなたはみんなが戻ってくることを望んだ。でも、それは叶っていいことではないんです!」

ヒノカ「……」

カムイ「どんなに悲しい出来事だとしても、それを忘れ去ってしまったらすべてが無くなってしまう。その人の事を愛しく思ったヒノカさんの心も、そしてあなたを守るために戦った人たちの信念も……」

ヒノカ「……ちがう、無くなったりなんてしない。ここに、ちゃんといるんだ。みんな、ここに……」

カムイ「ヒノカさん、人は死んでしまったら戻ってきたりしない。その周りにいる方々が、かつてあなたを支えてくれた臣下や友人であっていいはずないんです!」

ヒノカ「やめろ!!!! やめろおおおお!!!!」チャキッ

カムイ「……」

ヒノカ「私から……また奪おうというのなら……。カムイ――」

「たとえお前が相手であろうとも、容赦はしない……」

今日はここまで

 更新遅めですみません。

ヒノカ「……」チャキッ

カムイ「……」

サクラ「やめてください、ヒノカ姉様!」ダッ

オロチ「」スッ

ユウギリ「」チャキッ

レオン「サクラ王女、動いちゃだめだ!」

サクラ「ですが、このままじゃ、カムイ姉様が!」

レオン「……今は待つしかない。ここで僕たちが動けば、もう戦いが始まってしまう。だから、今は見守るしかない」

サクラ「う、ううっ……」

カムイ「……ヒノカさん」

ヒノカ「どうしてだ、なぜ奪おうとする。ここにいるのは私が戻したものだ、私が守るべきものなんだ。それを否定する者を許すつもりはない。たとえカムイ、お前であったとしても……。この者たちに危害を加えることを許しはしない」チャキッ

カムイ「目を覚ましてくださいヒノカさん。あなただって本当はわかっているはずです!」

ヒノカ「黙れ!!! 黙れ黙れ!!! カムイ、お前に何が分かる。多くの者を守ることのできたお前に!」

カムイ「……」

ヒノカ「お前は守った、そして支えられてここにいる! 誰かが倒れても、お前を支えてくれる仲間は他にもいるだろう。そんなお前に私の苦しみが分かるわけがない!」

カムイ「……そうですね。私にはこんなにも支えてくれる方々がいます。ヒノカさんの言っている事は多分間違っていないでしょう」

ヒノカ「なら、わかったようなことを――」

カムイ「ですが、失った人の代わりなど誰もいません。ここにはリリスさんもリョウマさんもクリムゾンさんもいない。そして、その人の代わりになる人など居はしないんです、ヒノカさん」

ヒノカ「!」

カムイ「ヒノカさんの大切にしたかった人たちに代わりなんているわけがありません。だからこそ、あなたは戻ってくることを願っていたはずです。あなたは知っているんです。死んでしまったら戻ってこないことを……」

ヒノカ「……」

カムイ「今の光景は、その人たちの思いに蓋をしてまで受け入れるべきものではないはずです…。ヒノカさん」

ヒノカ「カムイ……」

 ドクンッ

ヒノカ「……」

カムイ「ヒノカさん!?」ダッ

アサマ「」チャキッ

セツナ「」……シュタッ

カムイ「!」

ヒノカ「アサマ……セツナ……」

アサマ「」

セツナ「」

ヒノカ「私は……お前たちを……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇
―白夜王国・スサノオ長城北部『森林地帯』―
~スサノオ長城攻略戦後~

 ヒュオオオオオオオオンッ!

ミタマ「この合図、最後尾が戦闘に入ったということですか」

ミタマ隊天馬武者「どうやら敵の狙いはこちらのようですね。もしや、これが暗夜の狙いだったのでは?」

ミタマ「難しいことを考えている時間はありません。今はヒノカ様をゆっくり休ませることのできる場所へお連れすることを考えないといけませんわ」

アサマ「ええ、その通りです。まったく、あのまま停戦となれば屋根のある場所でゆっくりと出来たというのに。まったく、無粋な方々ばかりで困ったものです」

ミタマ「アサマ様も相当無粋な方だと思います。私たちは最前列、負傷者もヒノカ様とセツナ様だけ。この森林地帯を抜けられれば、何とかなるかもしれません」

セツナ「ん……。ごめんなさい…。あたし、今足手まといみたいだから…」

アサマ「そうですね。今の貴方では、正直役に立つとは思えませんので」

セツナ「ん、でも大丈夫。安心できる場所になったら、ヒノカ様の面倒は見るから…」

アサマ「まったく、ヒノカ様もそうですがあなたもあなたですよセツナさん。そのような傷で看病が出来る程、医療の世界は甘くありませんから、戻っても大人しく眠っているようにしてください。面倒が増えるのは勘弁していただきたいので」

セツナ「ケチ……」

アサマ「はっはっは。それより、ヒノカ様の容態はどうですか?」

ミタマ「今は落ち着いています。憑き物が落ちたように穏やかで、本当はこのように眠られる方なのですね」

アサマ「できれば、どうにかしてその眠りを妨げないようにしたいところですが……」

ミタマ「ええ、仕方ありませんわ。大部分の兵力を削ぐことになりますけど、今はこれしかありません。わたくしたちの兵力、その大部分を陽動と迎撃に向かわせます。この大所帯ではいずれ追いつかれますわ」

アサマ「囮になるつもりですか?」

ミタマ「はい、わたくしたちの任務はヒノカ様を王都に送り届けること。犠牲は覚悟の上です。大平原には少なくとも駐留部隊がいますから、そこまで辿り着ければ大丈夫なはず……」

アサマ「そうですか。では、そのお言葉に甘えさせていただきましょう。私もヒノカ様には生きて王都へ戻っていただきたいので」

セツナ「うん……」

ミタマ「呆れましたわ。少しはわたくしたちを心配してくれてもいいと思いましたのに」

アサマ「はっはっは。心配はしていますよ。ですが、私たちにとって大切なのはヒノカ様に生きていてもらうことです。ようやく厄払いも済んだ、あとはゆっくりと取り戻していただきたいのですよ」

ミタマ「……アサマ様にそのような言葉を口にさせるとは、ヒノカ様はと手も凄いお方だと改めて思います。あの万年何もしていない、何かのために動くなんて面倒だ、人は死ぬときは死にますと、そんな血も涙もないアサマ様と同じ人だとは思えませんわ」

アサマ「ほうほう、あなたが私の事をどう見ていたのかよくわかってきましたよ。しかし、そうですね。血も涙もないと思って生きてきましたが、私にも人並みには思うべき部分があったという事なのかもしれません。これも、ヒノカ様と出会った賜物でしょう」

ミタマ「まったく、アサマ様はもう少し素直になってもいいと思います。ひねくれた 恩師見つめて 溜息よ。中々に味わい深い詩が出来てしまいました」

アサマ「おやおや、私を恩師と思っているという意味にも聞こえますね」

ミタマ「はぁ、不覚ですわね」

ミタマ「ではアサマ様、わたくしたちは別行動をさせていただきます。少ない護衛にはなってしまいますが……」

アサマ「覚悟はしていますよ。まぁ、先ほどのような大所帯で動き回るよりは、見つかる可能性も少ないでしょうから、どっちもどっちと言ったところです。ミタマ達も気を付ける様に、王都に戻ればこの戦争は終わったも同然ですからね」

ミタマ「はい。みなさん、ご武運。行きましょう」

ミタマ隊聖天馬武者「はっ!」

 バサバサバサッ
  タタタタタッ

アサマ「……それでは私たちも動くとしましょう。このまままっすぐ進めば、早くとも明日には森林地帯を抜けることが出来るはずです」

白夜兵「はい、前方の道の確保を最優先にして、一気に森林地帯を抜ける。アサマ様、この先の湿地帯を迂回するべきでしょうか?」

アサマ「湿地帯ですか……」

白夜兵「はい、かなりの広範囲にわたってでしょう。大雨の影響もあって動き辛くなる可能性もありますので、回り道をするというのもあります。ですが、かなりの遠回りをすることになるでしょう」

アサマ「湿地帯を抜けるのなら、まず先行隊が抜け、安全を確保してからヒノカ様を天馬隊の誰かに背負ってもらい、後方隊が最後に後を追うという形で抜けていくと言ったところですかね。とりあえず、湿地帯まで辿り着いてから考えましょう。ミタマたちが敵の迎撃と分散を行ってくれているのであれば、猶予はそれなりにあるはずです」

白夜兵「わかりました。まずは湿地帯を目指します」

アサマ「ええ、よろしくお願いしますね。セツナさん、寒くはないですか」

セツナ「平気…。アサマがいっぱい治療してくれたから、問題ないわ…」

アサマ「当たり前です。流石にあなたが死んでしまったら、ヒノカ様がとても悲しまれますからね」

セツナ「それはアサマもだよ」

アサマ「はっはっは。だとすれば臣下冥利に尽きますね」

セツナ「ふふっ…」

ヒノカ「……んんっ」

アサマ「おやおや、ようやくお目覚めですかヒノカ様。ああ無理に動かない様にしてください、あなたはまだ本調子というわけではないのですから」

ヒノカ「アサマ……。私は一体……」

セツナ「ふふっ、ヒノカ様。寝ぼけてるみたい…」

ヒノカ「セツナ……。その傷は……」

セツナ「ん、さっきやられちゃった。でも、大丈夫、結構動ける……。いつっ」

アサマ「ヒノカ様が目覚めたのを喜ぶのはいいですが。そうやっていらぬことをしないでください。治療の手間が増えるのはいただけませんからね」

セツナ「はーい」

ヒノカ「……」

アサマ「どうしました、ヒノカ様?」

ヒノカ「そうか、私は……カムイに負けたのだったな」

セツナ「ヒノカ様……」

ヒノカ「わかっている。ここでこうして、立つことも出来ずに運ばれているのは負けたという証明だ。……私は、多くの兵に死ねと命令していたんだろう。ここまでの戦いで、私は……」

アサマ「それを自覚できたのであれば、もう一度やり直せるでしょう。また、不器用で危なっかしいあなたを見ることになりそうで、苦労も増えそうですが」

ヒノカ「……その必要はない、私は不器用で危ない存在だ。もう、失いたくないと思っていたのに、多くの兵を失ったことにようやく気が付いた。私の願いはカムイを取り戻すこと、それ以外に目もくれなかった結果が、これでは……やり直すことも許されはしないだろう。王都に戻り次第、私はこの敗戦の責任を……」

アサマ「取る必要はありませんよ。あなたが死んでしまっては私たちのここまでの戦いの意味が分からなくなりますからね」

ヒノカ「え?」

アサマ「はぁ、面と向かって言うのは聊か恥ずかしいものですが、私は白夜と暗夜の戦いに興味などありません。ただ、ヒノカ様が戦っているからご一緒しているに過ぎないのですよ」

ヒノカ「そう……なのか?」

アサマ「ええ、そもそも暗夜に国をなどという物で動くほど、私は愛国者ではありませんし、今の白夜で国のために戦おうなどという御仁はそうそういません。すでに旧暗夜と新生暗夜などという分裂が向こうで起こり、よもや両国の戦争という形を成してはいないでしょう。つまり私は、あなたをお守りするためだけに戦場に立っているということです」

ヒノカ「……アサマが?」

アサマ「はっはっは。驚かれているようですね」

セツナ「びっくりした…」

アサマ「セツナさん、あなたまで言いますか」

セツナ「えへへ、それじゃアサマも私と同じで、ヒノカ様が大好きなんだね…」

アサマ「大好きかはさておいて、嫌いな相手のために戦えるほど私は出来た僧ではありませんよ。もっとも、私の力ではヒノカ様の目を覚ますには至りませんでしたが。まったく、カムイ様というのはがむしゃらにしているようで、よくここまでの事を成せるものです」

セツナ「そうだね…。でも、私たちはヒノカ様のために戦うだけだからそれ以外の事なんてできない…」

ヒノカ「そんなことは無い!」

アサマ「ヒノカ様?」

ヒノカ「お前たちがいてくれたから、私はまだ生きていられたんだ。お前たちが支えてくれたから、私はまだ……。お前たちもいなくなっていたら、私はとっくに……」

アサマ「それは買い被りという物です。ヒノカ様にはヒノカ様の戦う理由がありました、それがどれほど重要なのかは私にはわかりませんが、少なくともそれが泣ければあなたは命を落していたでしょう」

ヒノカ「……だが私の願いは。結局私だけの願いだった」

アサマ「はっはっは。当たり前です、願いは誰かを思いながらも結局は自分の満足のためにある物…。私がヒノカ様を支えたいという願いは、転じて私の満足のための行動ですから」

ヒノカ「アサマ……」

セツナ「私も同じ…。ヒノカ様、何時も辛そうだったから。ヒノカ様の敵を倒すって決めたのは、それがヒノカ様のためになるって思ったからだけど、実際私がヒノカ様に褒めてもらいたかったからだから…」

ヒノカ「セツナ…」

アサマ「そういうことです。ですからヒノカ様が気にされることは何もありません。いいえ、そうですね。行ったことに関してはあなたの中で決着をつけるしかありませんが、私たちの事に関してはあなたが気に病むようなことではないのですよ」

ヒノカ「……すまない、アサマ。私はまだ……」

アサマ「迷いがあるのでしたら、しばらくはそのままでもいいのです。修行と同じ、迷いが生じている間こそが修行というもの。ヒノカ様には時間が必要というだけの事です」

セツナ「そうそう、王都に戻ったらまた一緒に眠りましょう、ヒノカ様。私、いっぱい抱きしめてあげるから…」

アサマ「おやおや、夜の予定をここで作るとは、セツナさんは思ったよりも元気なのですね」

セツナ「怪我とそれは別だから…。アサマも交じる?」

アサマ「はっはっは、遠慮しておきます」

 ガヤガヤ

ヒノカ「……セツナ、アサマ」

セツナ「なに、ヒノカ様?」

アサマ「何でしょうか、ヒノカ様」

ヒノカ「お前たちは……これからも私と……」

ヒノカ「……」

ヒノカ(……違う、それは私が願うべきことじゃない。私が叶えるべきことだ。私にはお前たちが必要だ。だけど、それをお前たちに任せ続けることは出来ないし、そんな虫のいい話は無い)

ヒノカ「これからは私がお前たちを守る。お前たちが私を支えてくれた以上に、お前たちの事を守らせてほしい。それが私の、今ある唯一の願いなんだ」

ヒノカ(そうだ、私は守る。守るしかない。そう、ここにいる者たちを守る事こそが……。今の私の使命だ)

セツナ「えへへ、ヒノカ様にまた守ってもらえるんだね…」

アサマ「まぁ、病み上がりの方に守ると言われましても、聊か説得力はありませんね」

ヒノカ「ぐっ、それは確かにそうかもしれないが……」

アサマ「はっはっは」

セツナ「ふふっ…」

ヒノカ「……はは」

ヒノカ(私はもう一度、やり直せるのかもしれない。もう一度、お前たちを守るために剣を振るうことが出来るのかもしれない。また、お前たちと一緒に……)

白夜兵「アサマ様、湿地帯に差し掛かりました。いかがします?」

アサマ「そうですね。未だに敵はこちらを見つけられていないようですから、ここは一気に横断して敵との距離を稼ぐとしましょうか」

白夜兵「はっ、先行が向い側へ付く頃合いを見て、ヒノカ様とセツナ様を天馬で向いの森林地帯へ向かわせます」

アサマ「はい。ヒノカ様、それでよろしいですね」

ヒノカ「アサマは一緒に来てくれないのか……」

アサマ「後で合流いたしますよ。なに、少しばかりの時間、傍にいないだけの事です。セツナさん、ヒノカ様をよろしく頼みますよ」

セツナ「うん、わかった…」

ヒノカ「……アサマ、私は――」

白夜兵「先行隊が湿地帯の中腹に差し掛かかりました。敵の姿は無しとの報告です」

アサマ「おやおや、これは案外すんなりと行けるかもしれませんね、ヒノカ様」

ヒノカ「そうかもしれないな。お前の軽口を聞いていると、今だけはなんだか安心できる」

アサマ「はっはっは」

白夜兵「アサマ様、セツナ様の輸送準備整いました。あとはヒノカ様だけです」

アサマ「わかりました。ヒノカ様と先行の方々が到達しましたら、こちらも湿地帯を渡り始めます。それと――」

白夜兵「しかしそれは……」

アサマ「無いとは言い切れないことです。その時はくれぐれもよろしくお願いいたしますよ」

白夜兵「……わかりました」

ヒノカ「アサマ、何の話をしているんだ?」

アサマ「帰路の途中で天馬が疲れ果ててしまった時の話です。その際には、背負っていかなくてはいけません。その打ち合わせみたいなものですよ。それよりも、ヒノカ様の準備を済ませましょう。まずはお二人を送らないことには次に行動が移せませんので」

ヒノカ「そうだな。すまない、すぐに取り掛かってくれるか」

白夜兵「はっ。では失礼いたします。よし、固定は完了した。いつでも行けるぞ!」

ヒノカ「アサマ……向こうで待っているぞ」

アサマ「ええ、わかっていますよ。では先に行って下さい」

白夜兵「はっ、よしいくぞ!」

 バサバサッ

ヒノカ「……」

ヒノカ(湿地帯、あの日、オロチとユウギリを失った時もこのような場所だった。私には二人を助ける力は無く、そして二人は私のために命を賭けてくれた……そんなことはもうたくさんだし、アサマとセツナにそのようなことをしてもらいたくはない)

ヒノカ(もう、戦いは終わったんだ。だから、後は何も心配することなんてない。アサマと合流して……。そのまま王都に向かえばいいだけだ)

 ドクンッ
  ドクンッ……

ヒノカ(なのに、どうして私の不安は消えない。私は、私は……)

 ピチャン……

ヒノカ「!」

白夜兵「ヒノカ様、どうかしましたか?」

ヒノカ「い、今の音は……」

白夜兵「音……ですか?」

 ピチャン
  ピチャン……

ヒノカ(ただ水が落ちただけの音なのに、なぜこんなにも心を掻き乱す。この音は何だ、この音は……)

ピチャン
 ピチャンッ……

ヒノカ(この音は――)

 ヒュオオオオオオオンッ‼‼‼‼

ヒノカ「い、今の音はなんだ?」

白夜兵「こ、後方からです!」

ヒノカ「後方……から?」

 ドクンドクンッ

ヒノカ(なんで、後方から聞こえたんだ? それに今の鏑矢の音、あの音の合図は……)

 ドクンドクンッ

白夜兵「……ヒノカ様」

ヒノカ(やめろ、それ以上は言わないでくれ。それは、それは私の、私の願いを砕いてしまうものだ。だから言わないでくれ……)

白夜兵「後方の部隊が戦闘状態に……」

ヒノカ「……そんな、嘘だろう。こんなこと、こんなことが起きていいわけがない……」

ヒノカ(だって、さっき約束をしたばかりじゃないか。それなのにどうして、こんなことが起きるんだ)

ヒノカ「そうだ、間違えて合図を上げてしまっただけなんだろう? お願いだ、間違いだったと、もう一度矢を上げてくれ……」

白夜兵「……」

ヒノカ「お願いだ。間違えだったと、間違えだったと合図してくれ……」

「ううっ、頼む合図をあげてくれ、アサマ……」

今日はここまで

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

白夜天馬武者「くっ、一気に湿地帯を越えます。しっかり掴まっていてください!」

 バサバサッ

ヒノカ「まて、待ってくれ。あそこにはアサマが、アサマがまだいるんだ!」

白夜天馬武者「わかっています。分かっていますが、戻ることは出来ません」

ヒノカ「何を言っているんだ。今すぐに引き返せ、アサマは――」

白夜天馬兵「もしも敵が現れた場合、私たちを置いて先を急ぐ様にと、アサマ様から命令を受けています」

ヒノカ「え……」

白夜天馬武者「ですから戻ることは出来ません。私たちの使命はあなたを無事に王都へ送り届ける事、それはアサマ様も同じはずです」

ヒノカ「…アサマも?」

白夜天馬武者「……申し訳ありません、ヒノカ様!」

 バサバサッ

ヒノカ「駄目だ! 待て、待ってくれ!」

 キィン カキィンッ!

ヒノカ(遠ざかっていく、アサマ達がまだ戦っている音が、まだ生きているという希望が……。どんどん、遠ざかってしまう……)

ヒノカ「行くな……、私から、私から離れていかないでくれ……。おねがいだ……」

 ………

ヒノカ「アサマ、うううっ、うああああ!!!!」

 バサバサッ

白夜兵「む、来たか! ヒノカ様とセツナ様は?」

白夜天馬武者「二人とも無事です」

白夜兵「そうか、それは何よりだ。くっ、敵の足がこれほど速いとは思っていなかった。アサマ様と後続が侵攻を抑えている間に、ヒノカ様とセツナ様は先をお急ぎください」

セツナ「あなた達はどうするの…?」

白夜兵「セツナ様。残念ですが、敵の移動速度は我々の想像をはるかに越える物です。このまま、足止めも無しに進軍してはいずれ奴らに背中を掴まれます。すでに十数名を先行させておりますので、道に迷うことはないでしょう。我々はここで殿を務めさせていただきます」

ヒノカ「な、なにをいっているんだ……?」

白夜兵「ヒノカ様、アサマ様と同じく我々の使命もまた、あなた様の王都への帰還であります。そして、それはただ使命なのではなく、我々の願いでもあるのです」

ヒノカ「……なぜだ、なぜなんだ……。私にはお前たちの命ほどの価値は――」

白夜兵「あります。少なくとも、ここにいる将兵はあなたの命にその価値があると信じているのです。時間はもうありません。運が良ければ、またお会いしましょう。よし、行くんだ!」

白夜天馬武者「はっ。セツナ様、万が一の時がございます。こちらをお持ちください」

セツナ「ん、弓一式……ありがとう…。行こう…ここにいても何もできないから…」

白夜天馬武者「……はい。ご武運を!」バサバサッ

白夜兵「……よし、準備しろ! 敵を誰一人通すな!」

白夜兵たち『はっ!』チャキンッ!

白夜天馬武者「危険ですが、一気に上空を抜けます。敵との距離を一気に放して、先行している者たちと合流しましょう」

セツナ「ん。周囲は私が見る…」

白夜天馬武者「はい、お願いしたします。はあっ!」

 バサバサッ
  ザーーーッ

白夜天馬武者「くっ、こんな雷雨の中を飛ぶことになるとは。もう少し頑張ってくれよ」ナデナデ

 ヒヒーンッ
 バサバサッ

セツナ「……」

ヒノカ「なんで、なんでだ。私は、私は――」

セツナ「ヒノカ様…。ヒノカ様が悪いことなんて何もない…」

ヒノカ「何が悪くない? 私がすべての原因だ、カムイを取り戻すためにしてきたことで、ユウギリやオロチを失い。その上で、この事態を引き寄せた。私が、私が死んでいればよかったんだ。そうだったのなら、アサマや他の者たちが……」

セツナ「ヒノカ様が死んでたら、私もアサマもカムイ様を殺すために戦ってたと思う…」

ヒノカ「え?」

セツナ「ヒノカ様は私にも優しくしてくれた。いっぱい心配してくれるし、罠にかかった私を探しに来てくれたりする…。私、そんなヒノカ様が大好き…」

ヒノカ「セツナ、でも今の私はお前の思う私ではない……」

セツナ「そうだね…。ヒノカ様、とっても辛そうだったから。私、いっぱい心配した…」

ヒノカ「……」

セツナ「でも、中身は変わってないって私は思う…。だから言い直させて…」

ヒノカ「言い直す?」

セツナ「うん、私ヒノカ様が大好き…」

ヒノカ「セツナ……」

セツナ「えへへ…//// あ、先遣隊の人たちがいたよ…」

白夜天馬武者「本当ですか、セツナ様!」

セツナ「うん、あの大きな木の幹にいる。なんだか、変な並び方してるけど…」

ヒノカ「え?」

ヒノカ(変な並び方って、あれか? 木の幹にあれは体を預けているのか? それにあの派手な戦闘服は、なんだ? あの、上が黒く染まっているのは一体なんでなんだ……)

白夜天馬武者「くっ、雨で良く見えない。少しだけ高度を下げれば何とか確認できそうだ」

 ガサッ

セツナ「あぶない!」

白夜天馬武者「ん?」

 ヒュンッ! ズシャッ

白夜天馬武者「へっ。あえ、なんで、右目が見え――」フラッ ドサッ
 ビチャアアアッ ポタタタッ

ヒノカ(いったい何が起きて――)

 ヒュンッ バシュッ!
  ヒヒーーーンッ!

ヒノカ「あ――」フワッ

セツナ「ヒノカ様…!」ダッ

 ガシッ
  ザザッ ザザザザッ ボギャッ……

セツナ「っ!!!!!」

ヒノカ「セ、セツナ。どうして……」

セツナ「ヒノカ様、大丈夫ですか…」ポタタッ ポタタタッ

ヒノカ「私は大丈夫だ、セツナお前は……!!!!!」

ヒノカ(足があらぬ方角に曲がって、あんなに血が……)

セツナ「だ、大丈夫です…」

ヒノカ「だ、大丈夫なものか。い、今すぐ処置を行う。待っててくれ!」ビリリリッ

ヒノカ(だめだ、こんな服の一切れや二切れでは、セツナに応急処置をすることもままならない。くそっ、くそっ!!!!)

セツナ「ヒノカ様、早く逃げてください…。天馬が落ちた場所と、私たちが落ちた場所は少し離れてるみたいだから…。しばらく隠れて、敵をやり過ごしてからなら、逃げ切れるかも…」

ヒノカ「……何を言っているんだ。お前も一緒じゃなければ意味なんてない、私は……お前たちを守りたいのに…」

セツナ「ヒノカ様…」

ヒノカ「どうしてだ……。どうして……」

ヒノカ(どうして、私が守りたいものは離れて行ってしまうんだ)

 ガササッ
  ガササッ

ヒノカ「!」

ヒノカ(見えないのに、そこにいるのが分かる……。何なんだこいつらは…)

???「……」ヒタッ ヒタッ

 パシュッ
 ズシャッ!
  ドサリッ

ヒノカ「!?」

セツナ「ヒノカ様に近づかないで…。動いた奴は容赦しない…」グッ ギリリリッ

???「……」スタッ

 パシュッ ズビシャッ ドサリッ

セツナ「……っ」ポタタタッ

ヒノカ「セツナ。もういい! 私はもう……」

セツナ「やだ…」パシュッ パシュッ!

 ズビシャ ズビシャ……

セツナ「ヒノカ様、早く逃げて…。お願いだから…」

ヒノカ「……セツナ」

ヒノカ(……すまない、セツナ)

 ギュウッ

ヒノカ「私は何も護れないみたいだ……。お前の思いも、アサマや他の者たちが願ったことも……。何もかも守れるわけがなかったんだ……」

セツナ「ヒノカ様…」カランカランッ……

ヒノカ「すまない、セツナ。私はもう失って生きることが出来ない。お前たちを守れないのなら、私が生きている意味などあるわけがないんだ」

セツナ「そんなことない…。ヒノカ様にはカムイ様がいます…。カムイ様はヒノカ様に生きていてほしいと思ってますよ…」

ヒノカ「そうか、そうだといい。でも、わかっていたんだ、私にとって本当に大切なのは、お前たちだった…。ずっと一緒にいてくれるお前たちだったんだ」

セツナ「その、真剣に言われると恥ずかしいです…。ヒノカ様…」

ヒノカ「ふふっ」

 ザッ ザッ ザッ

ヒノカ(ああ、近づいて来る。セツナ、私ではお前を守ることは出来ないけど、お前を一人にさせたりしない。アサマも、ユウギリ、オロチ……。今からお前たちの下に……行くからな)

セツナ「ヒノカ様、ギュッてしてほしいです…」ギュッ

ヒノカ「ああ」ギュッ

セツナ「ヒノカ様…」

 ザッ チャキッ

ヒノカ「何だ、セツナ?」

セツナ「ヒノカ様、私たち、ヒノカ様に仕えることが出来て、とっても――」

 ズビシャッ
  ザシュッ ザシュッ ズシャッ!
 ビシャアアッ!

セツナ「」ポタッ……ポタッ

ヒノカ「……」

セツナ「」ドサリッ ビチャンッ……

ヒノカ「……」

ヒノカ「……え?」

???「……」チャキッ ガシャンッ

ヒノカ「なんで……」

???「……」

ヒノカ「なんで、私は……生きているんだ?」

ヒノカ(どうして、こいつらは……。私じゃなくてセツナだけを殺したんだ?)

ヒノカ「セツナ……。セツナ?」スッ

  ビチャッ グチュリッ……

ヒノカ「ああ、あああああああ!!!!!!!!!!!」

 シュオンッ シュオンッ……
  ドプンッ ドプンッ

ヒノカ「ま、待ってくれ。もっていかないでくれ! セツナ、セツナ!!!」ガシッ

ヒノカ(いやだ、なんで。なんで殺してくれないんだ。私ではなくて、どうして私の守りたいものだけを奪って――)

『それが、お前の絶望だからだ。白夜の王女よ』

ヒノカ「!」

 ガシッ ググッ

ヒノカ「ぐっ……」

???『……くくくっ』

ヒノカ「お、おまえは何者だ……」

???『ああ、お前の仲間を殺したものだ』

ヒノカ「っ、ぎざまああああ!!!! あああっ!」

???『ははっ、いい顔をする。まさに人間というにふさわしい。先ほどまでの達観もただの飾りであったな。あのまま死ねたのなら、どれほどお前は救われたのだろうな?』

ヒノカ「ぐっ、ううっ、うあああああっ!」

ヒノカ(くそっ、くそっ。私に力があれば皆を守れたかもしれない。セツナもアサマも……他の者たちも失わずに……)ポタタッ

???『そうだ、お前に力があったのならば、守ることが出来ただろう。だがお前は弱い、弱く惨めなお前の思いなどに誰も答えはしない。それが、人間なのだからな』

ヒノカ「黙れ、黙れ黙れ!!!!! 殺してやる、お前を必ず殺す、殺してやる!!!!」

???『くはははっ、残念だがお前にそれは出来ない。もう、お前の心は染まり切った…』

ヒノカ「染まり……切った?」

???『ああ、そうだ。正直、ここまで育ってくれるとは思っていなかった。その純真無垢な殺意に悪意こそ、奴に差し向けるいい存在となるだろう……。お前のその願いは奴にとって苦しいものとなるのだろうからな……』

 ピチャンッ
  ピチャンッ

ヒノカ「や、止めろ、やめろ!!!!」

 ピチャンッ

???『さぁ、白夜王国第一王女ヒノカよ――』

 ピチャンッ……

『汝の願い、それに足る力を与えよう……』

今日はここまで。

 ヒノカの願いは、カムイにとって大きな苦しみになる。


 次回、戦闘参加キャラクターの安価を取る予定なので、仲間のジョブ一覧を置いておきます。

◆◇◆◇◆◇
○仲間ジョブ決定一覧●
―対の存在―
・アクア(歌姫)

―城塞の人々―
・ジョーカー(パラディン)
・ギュンター(グレートナイト)
・フェリシア(ストラテジスト)
・フローラ(ジェネラル)

―暗夜第一王子マークス―
・マークス(パラディン)
・ラズワルド(ボウナイト)
・ピエリ(パラディン)

―暗夜第二王子レオン―
・レオン(ストラテジスト)
・オーディン(ダークナイト)
・ゼロ(ボウナイト)

―暗夜第一王女カミラ―
・カミラ(レヴナントナイト)
・ルーナ(ブレイブヒーロー)
・ベルカ(ドラゴンマスター)

―暗夜第二王女エリーゼ―
・エリーゼ(ストラテジスト)
・ハロルド(ブレイブヒーロー)
・エルフィ(グレートナイト)

―白夜第二王女サクラ―
・サクラ(戦巫女)
・カザハナ(メイド)
・ツバキ(バトラー)

―カムイに力を貸すもの―
・ニュクス(ソーサラー)
・アシュラ(上忍)
・フランネル(マーナガルム)
・サイラス(ボウナイト)
・スズカゼ(絡繰師)
・ブノワ(ジェネラル)
・シャーロッテ(バーサーカー)
・リンカ(聖黒馬武者)
・モズメ(弓聖)

 このような形でよろしくお願いいたします。

~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間』―

ヒノカ「……せない」

カムイ「え?」

ヒノカ「奪わせない……」

 フラッ チャキ……

ヒノカ「もう、誰にも奪わせたりしない。そう決めたんだ……。私のためにすべてを賭けてくれた者たちを、私は守っていくと…。私はもうそれ以外を望むつもりはない」

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「そこをどけ、カムイ。私は敵を殺さないといけないんだ。私から奪おうとする者たちをすべて、そうすればもう心配することなく過ごすことが出来る。それが私の望む唯一の……」

カムイ「それが、本当にあなたの望みなのですか……。ヒノカさん。そんなことが、あなたの大切にするべき人たちの思いを守ることに繋がると、本当に思っているのですか……」

ヒノカ「何を……」

カムイ「私は力だけで守ることが出来るとは思えません。ヒノカさん、あなたの行為は最後まであなたのために戦った人たちが望んだことなのですか?」

ヒノカ「セツナ……アサマ……。ぐっ、ああっ。くっ、うああああっ!」

アクア「ヒノカ!」

サクラ「ヒノカ姉様!!!」

ヒノカ「……違う、これは私の望みだ。これが私の望みなんだ! 私にはこれしかない、他に何も残っていないんだ!」

カムイ「ヒノカさん!」ダッ

カムイ(まだ、ヒノカさんは迷っている。なら、どうにかして思い留めることが出来るはずです!)

アサマ「」チャキッ ブンッ

セツナ「」ギリリッ パシュッ

カムイ「やあっ! せいっ!!!!」キィン! ブンッ

 ガキィン!

カムイ「ヒノカさん、奴はあなたを陥れようとしているだけです。そして、その力はあなたの望みを叶えるための物ではありません! その力は――」

オロチ「」カラカラカラッ シュオンッ!

アクア「カムイ、あぶない!」

カムイ「っ!」キィンッ サッ

 ドゴン!

アクア「カムイ、大丈夫!?」

カムイ「はい、アクアさんのおかげで何とか……」

アクア「……ヒノカ」

ヒノカ「ああ、ううっ、黙れ。私は、私は皆を守るだけでいいんだ。消えろ、そんな願いなんていらない。もう、いらない、カムイが戻ってくることも戦争の終結も、何もかもいらない。私は私の守りたかった者たちを守れればいい……」

カムイ「ヒノカさん……」

カムイ(どんなに呼びかけても、ヒノカさんには聞こえているように思えない。もう、ヒノカさんに私の声は届かないというんですか?)

ヒノカ「はぁ……はぁ……ううっ、なのになぜだ……。なぜなんだ?」

ヒノカ「なんでお前を見ると心が揺らいでしまうんだ」

カムイ「……え?」

ヒノカ「ううっ、どうしてだ。お前はなんで私を掻き乱す。私の願いも、私の戦う意思も、なぜこんなにうやむやになる。どうして、入り込んでくる? 私の守りたいものは、お前たちしかいないはずなのに。なんで、なんでなんだ……」

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「なんで、こんなに苦しくなる。私は私の守りたいもののために、戦おうとしているだけなのに、なぜだ。なぜ、こんなにも……苦しいんだ。苦しい、苦しい……」

ヒノカ「……ううっ、うううっ」

 ピチャンッ
  ピチャンッ

 シュオオオオオンッ

カムイ「な、なんですか!?」

カムイ(水溜りから何かが現れたようですが。この気配と大きさ……どうやら武器のようですが?)

 ポタタッ
  ポタタタタッ

レオン「あれは弓?」

サクラ「あの弓は一体なんなんですか?」

アクア「あれは、この世界の物じゃない。おそらく奴が、ヒノカに与えようとしているのよ」

カムイ「奴が? 一体何のためにそれをヒノカさんに……」

ヒノカ「あ、ああ……」フラッ タッ タッ

アクア「わからないわ。でも、あれをヒノカに触れさせては駄目! 取り返しのつかないことになる前に止めないと!」

カムイ「はい! マークス兄さん、レオンさん、援護をお願いします!」

マークス「任せろ、カムイ! レオン、弓兵の足を止めるのだ!」

レオン「わかった! 悪いけど、少しだけ動かないでもらうよ!」シュオンッ ドゴンッ

セツナ「」サッ

マークス「道を開けよ!はあっ!」チャキッ シュオンッ ジャキンッ

アサマ「」キィンッ! サッ!

アクア「カムイ、今よ!」

カムイ「はい! ヒノカさん!!!」ダッ

ヒノカ「あ、ああ……」フラ……フラ……

カムイ(ヒノカさんの気配が弓に近づいている。ですが、この距離なら私の方が先に手が届きます。あの弓から感じる悍ましい気配、それをヒノカさんに触れさせるわけにはいきません!)

 ダッ

カムイ「間に合っ――」

 シュオンッ!

カムイ「え!?」

 バチンッ!!!!

カムイ「くっ!!!」

 スタッ チャキッ!

カムイ(誰かが弓を……。おかしい、ヒノカさんの気配はまだ弓に達していない、それでは一体誰が……)

???『……これは私の物だ、お前の物じゃない……』

カムイ「え?」

カムイ(何ですか、今の声は……。ヒノカさんの気配は、まだ弓に手を触れていないはずなのに。どうして、こんな目の前からヒノカさんの声が聞こえるのですか?)

 シュオンッ……
  シュオオオオッ……

ヒノカ『……』

カムイ「ヒノカさん?」

カムイ(目の前にもヒノカさんの気配に似たものがある。ですが、先ほどまでの気配は弓に達していない。一体どうなって……)

ヒノカ『もう、奪わせない。そう決めたんだ。どんな力を得ても、この気持ちが無くならない様に、だからカムイ……』

 ヒタヒタッ

ヒノカ「それを奪おうとするお前は、私の敵だ……」

カムイ(ヒノカさんの気配が二つ!?)

カミラ「ヒノカ王女が二人?」

エリーゼ「ど、どうなってるの!? 今さっきまで一人しかいなかったはずだよ!?」

マークス「どういうことだ。これもなにかの絡繰りなのか?」

レオン「わからない。だけど、ヒノカ王女が何かを仕掛けたような気配はなかったし。僕にはあの弓から現れた様にしか見えなかった……」

アクア「……ヒノカ」

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「……!」 ガシッ

カムイ「ぐっ!!!!」

ヒノカ「カムイ、奪われた苦しみは何時まで経っても消えはしないんだ。そして、悲しみを覚えていたところで未熟で弱い自分は変われない」

ヒノカ『奪われないためにも私はこの恨みを忘れない、奪われないためにも私には力が必要だ。それがこの力だ、お前のように私から奪いに来る物を殺す力だ……』

カムイ「ヒノカ……さん」

ヒノカ「カムイ、お前も私の守りたい一人だったらよかった。白夜にいることを選び、私の妹として共にいてくれたのなら、お前も私が守ってやれた……」

ヒノカ『こんな終わりにはならなかったはずだ。共に笑って行けたはずだった。残念だよ、暗夜の王女カムイ……』

カムイ「それが、本当にあなたの望みなのですか。ヒノカさん……」

ヒノカ『ああ、そうだ。もう奪われたりしないために、私はその恨みを忘れない。私から奪おうとするものを殺す為ならどんな力でも使う。それが、私の――』

カムイ「私はそうは思いません。そんな黒い思いより、もっと大切なものがあなたにはあるはずです」

ヒノカ「なぜそんなことが分かる? お前に私の何が――」

カムイ「だって、あなたは暗夜に付いた私を……、助け出そうとしてくれました」

ヒノカ「……」

カムイ「それが結果的に刃を交える結果であったとしても、あなたは私のために戦ってくれた……。それはあなたの中にある誰かを思いやる気持ちのはずです。それが……、ヒノカさんのとても大切な思いが黒い感情に塗りつぶされたとは思えません」

ヒノカ「……」

カムイ「私は、まだあなたの中にその思いが残っていると信じています。アサマさんやセツナさん、そしてユウギリさんにオロチさん、多くの方が命を賭けて守ろうとした、あなたの思いが……」

ヒノカ「……そうか。ならそれを信じていればいい。その判断を信じて、ここで逝けばいい……」チャキッ

アクア「ヒノカ、やめて!」

サクラ「このままじゃ、カムイ姉様が……。ダメです、こんなこといけません!」

マークス「カムイ! 待っていろ、今すぐそちらに――くっ!」

アサマ「」チャキッ

マークス「くそっ……」

レオン「くそっ、どうすれば……」

カミラ「上から接近してみるわ。レオン、弓兵を抑えてちょうだい!」バサバサッ

レオン「わかった。!」

セツナ「」チャキッ

レオン「させないよ!」シュオンッ ドゴンッ!

セツナ「」サッ!

カミラ「っ、間に合って!」ビュオンッ

カムイ「ぐっ、うううっ……」

ヒノカ「さよならだ、カムイ。私の苦しみが痛みで知りながら死んでいけ……」

 チャキッ

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「はあああっ!!!!」グッ

アクア「カムイ!!!!!」

カムイ「……」

ヒノカ「……」

 ポタッ ポタタッ

カムイ「……?」

ヒノカ「……カ……ムイ」ポタッ ポタタタッ

カムイ「え?」

ヒノカ「……」ググッ

カムイ「ヒノカさん?」

カミラ「ヒノカ王女の動きが止まった? 今なら!」バッ

カムイ「ヒノカさん、あなたは……」

ヒノカ「カムイ、頼みがある。もう、私にはこの願いは止められない。私の心は染まり切ってしまった。私は私を止められない。だから、私を――」




ヒノカ「私を止めてくれ……」

カムイ「え……」

ヒノカ「……カムイ、お願いだ……。私は、私は……」ポタタッ

カムイ「ヒノカさん……」

ヒノカ「……うぐっ、うああああああっ!!!」バッ

カムイ「!」

カミラ「カムイ! こっちよ!」スッ

カムイ「カミラ姉さん!」ダッ 

 パシッ
  バサバサッ

カミラ「カムイ、大丈夫?」

カムイ「はい、それよりもヒノカさんは……」


ヒノカ「……」

 シュオオオオッ

ヒノカ『……殺す。お前たちも私から奪うだけの存在だ、そんな存在と共になど居られない。私が奪われた分だけ、お前たちから奪ってやる……』

 チャキッ
  バサバサッ クルルーッ

ヒノカ「お前の信じたものを全て、ここで私が砕いてやる……」

 チャキッ
  バサバサッ ヒヒーンッ

 シュオン
  シュオオンッ

アサマ「」

セツナ「」

ユウギリ「」

オロチ「」

白夜兵と思われる者たち『』

ヒノカ「ははっ、あははははっ、あはははははははっ!」ケタケタッ

マークス「もはや、戦いは避けられそうにないぞ。カムイ」

レオン「残念だけど、そうみたいだ。敵の数がどんどん増えてる。逃げ切れるような量じゃないし、逃げたら逃げたで、外で待機している兵士や白夜の民に被害が出かねない」

カミラ「もう、戦うしかないのね。こんなことになるなんて思ってもいなかったのに……」

サクラ「ヒノカ姉様……」

カムイ「……」

カムイ(ヒノカさんはもう帰って来られないのかもしれない。今、最後に私を助けてくれたヒノカさんは止めてくれと言っていました。私に、暴走する自分を止めてほしいと……。それはこの剣でヒノカさんの命を奪う事なのでしょうか? それともそれ以外の方法があるというんですか?)

 チャキッ

カムイ(そんな方法思いつきません。ヒノカさんを助ける方法を私は知らない。だとしても、私は……)






カムイ(私は――)

ヒノカ(私を止めてくれ……)

 ドックン……

カムイ「……もう、決まっているのに何を悩んでいるのでしょうね」

 ドックン……

カムイ(私はあなたを止めます。でも、それはあなたの命を奪うことではありません。あなたの心は今もまだ、そこに生きているはずだから。私は、その黒い思いだけを止めてみせます。私の戦いは戦争を終わらせるためのもの。そして何より、この剣は……)

 チャキ
  シュオオオオッ

カムイ(誰かを守るための剣なのですから)

アクア「カムイ……」

カムイ「ヒノカさんを助け出します。それがここに来た私の戦いですから」

アクア「ええ、ヒノカを助けましょう」

マークス「しかし、具体的にどうやってヒノカ王女を救う? 奴の力が作用しているというのなら、奴を倒す以外に方法は――」

アクア「……一つ、方法が無いわけじゃないわ」

サクラ「ほ、本当ですか?」

カムイ「本当ですか、アクアさん?」

カミラ「まさかだとは思うけど、あなたの不思議な力を使うつもり?」

アクア「いいえ、私が力を使っても、ヒノカの心の闇は晴れないわ。奴は力を与えただけ、それを消し去ったところで、ヒノカの今の思いが変わるわけじゃない。それに、今の心のままに仲間を失ってしまったら、ヒノカは本当に絶望してしまうかもしれない。ヒノカを助けるためには、その思いを打ち消すほどの希望が必要よ」

カミラ「なら、その一つの方法に縋るしかないという事ね」

アクア「だけど、この方法も確実というわけじゃないわ」

カムイ「だとしてもいいです、その唯一の方法を教えてください。少なくとも今のヒノカさんにとってすべてになってしまった闇、それを払える可能性があるのなら……、私はそれに全力で向かっていくだけです」

アクア「そうね、あなたならそういうと思っていたわ」

カムイ「もう迷うわけにはいきませんので。それで、その方法というのは?」

アクア「……白夜の玉座よ」

カムイ「白夜の玉座、ですか?」

マークス「白夜の玉座を何に使うというのだ?」

アクア「あの玉座には座った物を真の姿、そして真の心を取り戻すという言い伝えがある。そして、それは言い伝えでもなく本当のことなのよ」

カムイ「そうだったんですか……」

アクア「ええ、だけど本物のヒノカを玉座に座らせないといけない。あの玉座の力が本物だとしても、チャンスは一度きりしかないはず……」

マークス「しかし、どちらが本当のヒノカ王女なんだ?」

レオン「天馬と金鵄、どちらに乗っているのが本物なのかなんてわかるわけがない。見た目もすべて同じなんだから」

サクラ「は、はい。私にもどちらが本物のヒノカ姉様なのか……」

カムイ「天馬に乗っているヒノカさんが本物のヒノカさんです」

レオン「え?」

サクラ「そうなんですか。カムイ姉様……」

カムイ「はい……」

カムイ(だって、最初からずっと私たちの前にいたあの人の気配だけは、ずっと私が知っている気配だったから。私はあなたをまだ覚えているんです、間違ったりしません。だってあなたは、私の助けたい人だから!)

マークス「ならば、もはややるべきことは決まったということだ。後続も合流する頃だろう」

カムイ「はい、ヒノカさん。あなたの最後の頼み、私が叶えてみせます……」

ヒノカ「カムイ……」チャキッ

ヒノカ『殺してやろう……。ここで、終わりにしようじゃないか……」チャキッ

カムイ「ええ、終わりにしましょう。あなたのその苦しみを……」

 シュキンッ チャキッ!

カムイ「さぁ皆さん、行きましょう。暗夜と白夜の長い戦いに終止符を打ち、そして――」

 チャキッ

「ヒノカさんを助け出すために……」

第二十五章 前半終わり

今日はここまで

 スカディは人の心の闇、誰かの死などを願う心が強いものに力を与える武器なのだと思う。
 分身は、その殺意が具現化したもので、本人に比べて暴力的であり殺戮的でもあるっていう感じで、本編最後のタクミの感謝の言葉はスカディの分身ではなく、生身のタクミの物なのかなっておもった。

 次から戦闘が始まるので、戦闘メンバーを決めたいと思います。
 参加していただけると幸いです。

◆◇◆◇◆◇
 
 仲間のジョブなどは>>363参照でお願いします

・カムイと共に闘うメンバー
>>378
>>379
>>380

・遊撃隊メンバー
>>381
>>382
>>383

・前衛戦闘メンバー
>>384
>>385
>>386

 安価のメンバーが重なった場合は次の方の安価が優先されます。
  このような形ですみませんが、よろしくお願いいたします。



 

レオン

ハロルド

サクラ

カミラ

スズカゼ

ブノワ

カザハナ

ギュンター

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『周辺』―

カムイ軍兵士A「よし、これで大部分は片付いたようだな」

カムイ軍兵士B「はい、敵の多くも降伏しつつあります。ですが、城下町の方はどうなっているのかわからない状態ですので……」

カムイ軍兵士A「ああ、敵捕虜の監視だけを残して、我々は城下町へと向かう。多くの者たちに降伏を促し、戦闘を終わらせなければ」

カムイ軍兵士B「はい……。ですが、降伏にしたがってくれるでしょうか。知らせでは白夜の王子は……」

カムイ軍兵士A「……いや、どんな形であろうとも歓迎されることはない。だとしても、無駄な血が流れるようなことはあってはならない。そのために、我々はここまで戦ってきたのだからな」

カムイ軍兵士B「そうでしたね。これより、部隊の再編成を行います」

カムイ軍兵士A「ああ、よろしく頼む。捕虜とした白夜兵たちは出来る限り一箇所に纏めるよう監視する者に指示を――」

 ピチャンッ

カムイ軍兵士A「む?」

カムイ軍兵士B「雨の音ですか?」

カムイ軍兵士A「……いや、雨など降ってはいない……」

カムイ軍兵士A(なら、この耳に響く水音は――)

 ピチャン……

カムイ軍兵士A「この音……まさか!」チャキッ

 ピチャン……
  ピチャンッ……

カムイ軍兵士B「こ、この音って、スサノオ長城の時に聞いた……」

カムイ軍兵士A「全員武器を取れ! 敵が来るぞ!」

カムイ軍兵士B「は、はい! っ!!!」

 シュオン!
  シュオンッ

謎の兵士「……」チャキッ

カムイ軍兵士A「くっ……、仕方ない応戦せよ。こいつらの好きにはさせるな!」

カムイ軍兵士たち『おーーーっ!!!』ダダダダッ

謎の兵士たち「……」ダダダダッ

 キイン カキィッ
  ズビャッ ドサッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―白夜王国・シラサギ城『王の間・中央通路』―

アクア「まずいことになったわ。奴の力が大きく広がっている」

カムイ「まさか、白夜王都全体に!?」

アクア「今はシラサギ城の周辺だけみたい。だけど、いずれ城下町に奴らが入り込むわ」

レオン「奴らが敵や味方、非戦闘民の区別をするとは思えない」

アクア「おそらく誰彼構わず襲い掛かるでしょうね。彼らはヒノカに従っているように見えているだけで、結局は奴の操り人形、殺す相手を選んだりしない……」

カムイ「そんなことを許すわけにはいきません。一刻も早く、ヒノカさんを助け出さないと」

サクラ「はい、カムイ姉様」

マークス「しかし、どうする。そう易々とヒノカ王女の下に行かせてくれるわけではなさそうだ」

カムイ「ええ、そのようです」

謎の兵士たち「……」チャキッ

カミラ「敵は隠れるつもりはないのね。その方が手っ取り早くて助かるけど」

マークス「だが、敵の規模は膨大、持久戦で勝ち目はないだろう。何かしらの突破口が無くてはな……」

ハロルド「……突破口が無いとなると、やはり真正面から戦うしかありません。だとしても、この戦いに負けるわけにはいきません!」

エリーゼ「うん、絶対に負けられないよ」

サクラ「はい。白夜、そして暗夜のためにも……絶対に負けるわけにはいきません」

レオン「負けられないのはそうだけど、何も手立てがないのは厳しいところだね。カムイ姉さん、何か良いプランはあるのかな?」

カムイ「残念ですが、今は総当たりしてこの戦況を抜ける以外に手が浮かびません。ヒノカさんは奥の玉座付近にいるとするのなら、それはこちらにとって有利に働くはずです」

カザハナ「だけど、やっぱり難しそうだよ。こんな数を相手に真正面からぶつかっても、ヒノカ様までたどり着けるかどうか……」

レオン「だとしても、今できることをやるしかない。これ以上、白夜の被害を大きくするわけにはいかない、ここは君たちが帰るべき場所なんだからさ」

カザハナ「レオン王子……。うん、そうだよね。ここで諦めたら、もう白夜を守れなくなっちゃうもん。あたし、諦めないよ!」

カムイ(みんなの士気はもんだいありません、ですが、この敵の壁を越えるのは至難の業です。各個撃破に専念して前進しようにも……)

 ピチャン……シュオンッ

カムイ(おそらく、延々と敵は増え続ける。そうなってしまったら、いずれ私たちは………)

カムイ「……他に手が無いとはいえ。これ以外に方法が無いというのは悩ましいものですね」

スズカゼ「そうですか、例の通路を使うことも難しいということですね」

カムイ「その声はスズカゼさん?」

スズカゼ「はい、少しばかり遅れてしまい申し訳ありませんでした」

カムイ「いいえ、構いません。それよりも例の通路というのは?」

スズカゼ「ええ、この白夜王都に入るために使った道と同じように、ここにも隠し通路があります。ですが、そのご様子ですとそれも使えないという事態なのですね」

カムイ「いえ、その隠し通路の話は初耳なのですが」

スズカゼ「そうでしたか。てっきり、サクラ様やカザハナさんより、話があったのかと思っていましたが……」

サクラ&カザハナ『あ……』

サクラ「ごめんなさい、私。すっかり忘れてて……」

カザハナ「あたしも……ごめん」

レオン「……ま、まぁ状況が状況だし、仕方ないよ」

カムイ「ええ、レオンさんの言う通り仕方のないことです。でも、これで希望が持てます。スズカゼさん、その通路はどちらに?」

スズカゼ「この廊下の左右それぞれに延びた複数の通路、その奥広場に一つずつ設けてあります」

カムイ「そんなにあるのですか?」

スズカゼ「はい。経路も難しいものではありません、あくまでも王の間から退去するための物ですので……。それでどうしますか?」

カムイ「ここから正面突破を図るよりは可能性があります。その道に賭けてみましょう」

マークス「よし、ならばこちらから仕掛け道を作り上げよう。ピエリとエリーゼは私と共に来い」

ピエリ「わかったの!」

エリーゼ「うん!」

レオン「カザハナはマークス兄さんの指示下に入ってくれるかい? 多分、マークス兄さんたちの負担が一番大きいだろうから、回復のできる補助職が必要になる」

マークス「む、いいのかレオン?」

レオン「ああ、カザハナにならこういったことも任せられるからね」

カザハナ「レオン王子……」

レオン「どうかな?」

カザハナ「ふふっ、いいよ。そっちこそ、サクラのことちゃんと守ってあげてよね。あたしが近くにいないんだから」

レオン「もちろんだ。この戦いが終わって二人がちゃんと白夜に戻れる日まで、僕は命を賭けて守ると決めた。だからカザハナ、君がいない分も僕がサクラ王女を守るよ」

サクラ「レオンさん……」

カザハナ「そう言ってくれるなら安心だね! それじゃ、あたしはマークス王子の指示に従うよ。それでどうすればいいのかな?」

マークス「そうだな。ギュンター」

ギュンター「はい、こちらに」

マークス「お前に右翼を任せる。カザハナはギュンターに同行し、できうる限りサポートせよ」

カザハナ「うん、わかった。よろしくね、ギュンター」

ギュンター「うむ。あとは、マージがいればよいか。ニュクス、同行しろ」

ニュクス「わかったわ。後方から援護に徹するから、安心してちょうだい」

マークス「準備は整ったか。ギュンター先行し、敵の右翼を脅かせ、一息置いてこちらは左翼、通路への侵入経路を確保する」

ギュンター「わかりました。では、行くぞ!」ヒヒーンッ!

カザハナ「よし、一気に行くよ!」ダッ

ニュクス「一気に力を使い切ってどうするのよ。余力は残しなさい」タタタッ

カザハナ「わ、わかってるよ。勢いで言ってみただけで――」

ギュンター「無駄話はそこまでにしておけ!」

カザハナ「ご、ごめんなさい」タタタタッ

マークス「よし、ピエリ準備はいいか?」

ピエリ「準備できてるから、いつでも行けるのよ、マークス様」

マークス「うむ、エリーゼ、並走し先行で攻撃を放ち、同時に私とピエリの後方へ」

エリーゼ「わかったよ、マークスおにいちゃん!」ペラッ シュオンシュオンッ

マークス「よし、行くぞ!」スーッ チャキンッ

 タタタタッ

エリーゼ「よぉし、ライナロック。いっけー!」ヒュオンッ 

ザシュンッ!‼‼‼

マークス「エリーゼ、上出来だ」

エリーゼ「えへへ、あたしはここから援護に回るよ」シュオンッ シュオンッ!

ピエリ「わかったの。えへへ、ピエリが一番乗りなのよ!」ヒヒーンッ パカラパカラッ

マークス「ピエリ、左の敵は任せる、私は右を討つ!」

ピエリ「了解、それじゃ行くの!!!」

マークス「はああああっ!」チャキッ

 キィンカキィンッ

カムイ「始まりましたね、私たちも後を追いましょう!」

アクア「ええ」

 タタタタタタッ

謎の剣聖A「……」ブンッ ブンッ

 キィンカキィンッ

ピエリ「ざんねんでーした。そんな攻撃じゃ、ピエリを殺すことなんてできないの!」

 パカラパカラッ

ピエリ「今度はこっちの番なの!えーいなの!!!」チャキッ ズシャシャシャッ!

謎の剣聖A「……!」バシュッ! ドササッ

謎の剣聖B「……」チャキッ ダッ ザンッ

 キィン!

ピエリ「ダメダメなの! お手本にピエリがあなたをえいって、してあげるの!」チャキッ ザシュシュッ!

謎の剣聖B「……!」ビチャアアッ ドサリッ

ピエリ「えへへ、ピエリの勝ちなの!」

マークス「ピエリ、連携して敵を叩く。付いてこい!」

ピエリ「マークス様、わかったの!」チャキッ

 ズシャシャシャッ!

エリーゼ「マークスおにいちゃんもピエリもすごーい、あたしも頑張らないと! えいっ、それっ!」シュオンッ ドゴゴンッ

カザハナ「はっ、せいっ!」チャキッ シュパッ シュパッ

謎の陰陽師A「……」ズビシャッ スタッ

カザハナ「あんまり効いてないわね。っと!」ササッ

ギュンター「カザハナ、そこを退け」

カザハナ「!」サッ

ギュンター「ぬんっ! はあああっ」シュッ ズドドドッ

謎の陰陽師A「……」ズビシャアアッ!

 ドサリッ

カザハナ「ありがとう、ギュンター」

ギュンター「礼は後にしろ。新手が来るぞ」

謎の兵士たち「……」ダダダダッ

カザハナ「また!? ああもう、これじゃキリが無いよ」

ニュクス「なら……」シュオンッ

カザハナ「ニュクス?」

ニュクス「少しだけ時間をちょうだい、安心して損はさせないわ」

ギュンター「よかろう。準備が出来たのなら合図をしろ。はああっ!」ダッ

カザハナ「なんだかよくわかんないけど、任せたからね!」ダッ

 キィンカキィンッ

カザハナ「ちょっと、ニュクス。まだなの?」

ニュクス「もう少しよ」

ギュンター「カザハナ、目の前の敵に集中しろ!」

カザハナ「わかってるよ! このままじゃ押し込まれちゃう……」

ニュクス(……よし、準備は出来た)

ニュクス「二人とも下がって……」シュオンッ

 グオオオンッ

カザハナ「え、これって魔法陣? こんな数初めて見たんだけど」

ニュクス「つべこべ言ってないで、巻き込まれたくなかったらさっさと魔方陣の外に出なさい!」

カザハナ「わ、ご、ごめん!」サッ

ギュンター「はあっ! よし、ニュクスやれ」タタタッ

ニュクス「ええ、それじゃさようなら」シュオオオッ

 ガッ ガガガッ 

謎の兵士たち「」プスプスッ…… ドサリッ

ギュンター「ふむ、ミョルニルの一斉展開か。中々の無茶をするものだ」

カザハナ「す、すっごい……」

ニュクス「はぁ……はぁ……次が来るみたいだけど、ちょっとだけ休ませてちょうだい」

カザハナ「ニュクス、すっごいよ! こんなに小さいのにすっごい!」

ニュクス「褒めているのか馬鹿にしているのかどちらかにしてちょうだい。でも、これでようやく、道が出来上がりそうね」

ギュンター「うむ、今の攻撃で敵全体の動きに乱れが生じている、ここを逃す手は無い。カザハナ、敵を再度押し込むぞ」

カザハナ「うん!」タタタタタッ

エリーゼ「ギュンター達の方から、すっごい音がしたけどなんだったのかな?」

マークス「大きな攻撃が行われたようだ、敵の動きにも乱れが見える。ここで一気に攻める、この機を逃すな!」

エリーゼ「うん! いっけー、ライトニング!」シュオンッ

 バシュンッ ビシュンッ!

謎の弓使いA「!!!」ドササッ

エリーゼ「正面の弓兵を倒したよ。マークスおにちゃん!」

マークス「よくやった、このまま切り込ませてもらう!はああっ!」シュオンッ ブンッブブンッ!

ピエリ「ピエリも加勢するの! えいっ!やっ!」ズシャシャッ

 ドササッ

謎の兵士「……」タタタッ チャキッ

エリーゼ「マークスおにいちゃんには近づかせないんだから! いっけー!」シュオンッ ドドドッ!

マークス「はあああああっ!」ザシュッ ドスンッ!

 ドサッ ドササッ

謎の兵士たち「……」ジリジリッ

ピエリ「敵が下がり始めてきたの」

マークス「よし、あともう一押しだ」

レオン「すごい、敵が押され始めたみたいだ」

カミラ「ええ、ギュンター達もうまくやってくれているみたいだから、ここがチャンスね。レオン、仕掛けちゃいましょう」

レオン「ああ、一気にあの通路までの道を作り上げる。サクラ王女、僕の傍を離れないように」

サクラ「はい、レオンさん。それでどうするんですか?」

レオン「こちらから仕掛ける。ハロルドは投擲攻撃の準備、攻撃を合わせられるようにしてほしい。サクラ王女も攻撃の準備を」

ハロルド「わかりました、レオン様!」

サクラ「私も準備できました。いつでも大丈夫です」

レオン「よし。兄さん、こちらから攻撃を仕掛けようと思う。合わせられる?」

マークス「よかろう。レオンの合図で攻勢をかける。ピエリ、エリーゼ、準備はいいか?」

ピエリ「いつでも大丈夫なの!」

エリーゼ「こっちも大丈夫だよ!」

マークス「こちらはいつでもいいぞ、レオン!」

レオン「……よし、今だ!いけぇ!!!」シュオンッ シュオオオオンッ ザシュシュシュッ!

ハロルド「いくぞっ!正義アタッーク!」ブンッ ヒュンヒュンッ ザシュシュッ

サクラ「当ってください!」パシュッ ズシャッ!

謎の兵士たち「……」ドサササッ!

エリーゼ「よぉし、この数ならサンダーでいけそう。えいえいっ、えーいっ!」シュオオオオッ

ピエリ「レオン様達の攻撃すごかったの。残っているのはわずかだから各個撃破しちゃうのよ!」チャキッ バシュシュッ

マークス「貴様で最後だ。われわれの前にひれ伏すがいい!」ブンッ ザシュンッ

 ドサッ

レオン「……よし、道が出来た!」

マークス「カムイ、今のうちに進め!」

カムイ「はい!」

カミラ「待ちなさい、私たちが先行するわ。ブノワ、私の竜に乗ってちょうだい」

ブノワ「わかった…。よし、これでいいか…?」

カミラ「ふふっ、上出来よ。それじゃ行ってくるわね、カムイ」ナデナデ

カムイ「気を付けてくださいね。おそらく敵はいるはずです」

カミラ「ええ、注意するわ」

 グオオオッ バサバサッ

スズカゼ「カムイ様は私の後についてきてください」カランコロンッ

カムイ「はい、行きましょう!」タタタタタッ

◇◇◇◇◇◇
―王の間・玉座前―

金鵄ヒノカ『奴らが動き始めたようだ。何をするつもりかは知らないが、誰一人として逃がすつもりはない……。ここで一人残らず始末してやる。カムイをこの世から消し去った暗夜も、カムイの皮を被ったあいつもだ……。大丈夫、殺したら戻ってきてくれる。きっと……私の知るカムイが……』

ユウギリ「……」シュオンッ

オロチ「……」シュオンッ

金鵄ヒノカ『行け、誰一人として生かす必要はない……すべて殺してしまうんだ』

 タタタタタタッ

天馬ヒノカ「……カ…ムイ」

金鵄ヒノカ『大丈夫だ、これで悩まなくて済むようになる。すべて壊し、砕いてしまおう。そうすれば、もうなにも気にすることはなくなる。さぁ、私の願いを叶えよう。みんなといるために……』

天馬ヒノカ「………」

アサマ「……」

セツナ「……」

天馬ヒノカ(私は……)

(……………みんなと……)

今日はここまで

 SS速報が落ちていた間、安価の確認が出来なかったため前衛戦闘チームをマークス、ピエリ、エリーゼの組み合わせで書いていました。
 アクアは話の流れ的に必要だと思い、カムイに同行する形になっています。
 前衛戦闘チーム安価を頂きましたカザハナ、ギュンター、ニュクスも追加した形で書いていきます。
 更新速度は前回と変わらないくらいだと思いますが、よろしくお願いいたします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―王の間・中央通路『左第一通路』―

 バサバサッ

ブノワ「ぐっ、思ったよりも揺れる……」

カミラ「次の角を曲がるから、しっかり掴まっておきなさい。それっ!」

ブノワ「うおおおっ!!!」ガシッ

 バササッ

カミラ「ふふっ、どうにかうまく入り込めたみたいね。もう力まなくても大丈夫よ」

ブノワ「そうか、これ以上負担を掛けたくはなかったからよかった…」

カミラ「負担?」

ブノワ「ああ、飛竜への事だ…。かなり力んで掴まってしまった…」

カミラ「そう。安心して、これまでずっと一緒に戦ってきた子だもの、そんなに軟じゃないわ」

ブノワ「すまない…」

カミラ「あやまらなくていいわ。そろそろ行き止まりみたいね…」

ブノワ「先に俺が出よう…」

カミラ「ええ、おねがいね」

ブノワ「ああ……」スタッ

 ドスンッ
  ガシャンガシャンッ

ブノワ「……!」

ブノワ(この殺気…、気を緩めれば足が止まりそうだ……。奴らは確実に俺たちを殺すつもりだろう…)

ブノワ「……」ジリジリッ

ブノワ(正直、怖い。怖いが……ここで立ち止まるわけにはいかない…)

ブノワ「よし、いくぞ!」チャキッ

 ダッ

謎の弓聖A「……」パシュッ!

ブノワ「!」ガキィン!

謎の上忍A「……」 タタタタタッ ササッ

 ブンッ ブンッ
  キキィン!

ブノワ「敵は二人か、ならば…これでっ!」グッ バシンッ

謎の上忍A「……」グラッ

ブノワ「くらえっ!」ジャキッ シュッ ザシュンッ

 ビチャアアッ! ドササッ

ブノワ(一人倒した…。あともう一人――)

謎の弓聖A「……」チャキッ

ブノワ(くっ、間に合わない…)チャキッ ググッ

 パシュッ バシュンッ!

ブノワ「ぐっ!」グラッ……

ブノワ(この攻撃、魔法の力を帯びているのか!? ぐっ、この重装甲装備でもこのままでは……)

謎の弓聖A「……」チャキッ ググッ

ブノワ「くっ……」

スズカゼ「そうはさせません!」ダッ

謎の弓聖A「……」グッ パシュッ

スズカゼ「はぁっ!」ダッ ブンッ

 ガキィンッ!

ブノワ「スズカゼ!?」

スズカゼ「どうやら間に合ったようですね。弓兵ではカミラ王女にお任せするわけにはいきませんので、はっ!」カランコロンッ!

謎の弓聖A「……」チャキッ パシュッ!

 キィンッ カタンッ

スズカゼ「ふっ、その程度の攻撃では私の相手は務まりませんよ。さぁ、今度はこちらの番です。はあっ!」バシュシュッ!

 ザシュシュッ!

謎の弓聖A「……」グラッ

ブノワ「やったか……?」

スズカゼ「いいえ、少しばかり浅いようです」

カミラ「なら、これでおしまいよ」バサバサッ

謎の弓聖A「……」チャキッ

カミラ「あと少し早ければあなたの勝ちだったけど、残念ね。それじゃ、さようなら」チャキッ

 バサバサッ スッ ザンッ!

謎の弓聖A「……」ドササッ シュオンッ……

ブノワ「……どうにかなったのか?」

スズカゼ「はい。他に何かが潜んでいる気配はないようです。ひとまず安全と言ったところでしょう」

カミラ「ええ、一安心ね」

タタタタタッ

カムイ「カミラ姉さん、大丈夫ですか?」

カミラ「ええ、大丈夫よ。スズカゼとブノワのおかげでね。それよりも、マークスお兄様たちが敵を支えるのにも限度があるわ。早いところ隠し通路を使いましょう。それで、その隠し通路は何処にあるのかしら」

スズカゼ「こちらです、カミラ王女」

カミラ「ここ? 何の変哲もない戸のようだけど?」

レオン(おそらくだけど、ここも一筋縄じゃ行かないとは思う。あの竜脈で開く地下通路とかと同じように、大掛かりな仕掛けが施されているはずだ……。一体、どんな仕掛けで開――)

 スーッ

スズカゼ「よかった。特に問題なく使えるようです」

カミラ「あら、扉を開くだけでいいの?」

ハロルド「む、引き戸の奥なのか。思ったよりもシンプルなのだね」

スズカゼ「はい、もう少し厳重にしたほうがいいという意見もありましたが、何分使用の際は緊急を要しますのですぐに利用できるようにと……」

サクラ「できれば使われない方がいいところですからね……。あれ、レオンさん、どうしたんですか。なにか腑に落ちないって顔をされてますけど……」

レオン「いいんだ、サクラ王女。これは僕だけの問題だ。だから気にしないでくれ……」

サクラ「?」

スズカゼ「それでどうしますか、カムイ様」

カムイ「何事もなく使えるのなら好都合です。このまま先手を打ちましょう」

ブノワ「よし、俺が先に進む…。カミラ様とスズカゼは後に続いてくれ…」

スズカゼ「カミラ王女は私の後に続いてください。ブノワさん、そのまま真っ直ぐに進むだけで大丈夫ですので、よろしくお願いします」

ブノワ「ああ、わかった…。敵の気配は感じない、一気に出口まで向かうとしよう…」ガシャンガシャン

カムイ「なんとかうまくいきそうですね」

カミラ「そうね。それでカムイ、首尾よく相手の裏を描けたあとはどうするのかしら? このまま、ヒノカ王女に戦いを挑むの?」

カムイ「はい。ですが先に行くのは私たちだけで、カミラ姉さんはマークス兄さんたちの援護に向かってください。今、敵のほぼすべてを受け止めてくれているのはマークス兄さんたちで、援護を一番必要としているはずです。マークス兄さんたちを援護しつつ、私たちとの合流を目指してもらえますか?」

カミラ「……なるほどね、わかったわ。ブノワとスズカゼへの指示は任せておいて。だけど、そっちは大丈夫なの?」

カムイ「戦力が心もとないのはわかっています。ですが、奴の力に対抗するためには戦場の中心点を作る以外に手はありません。その中心を作り上げるためにも、マークス兄さんたちとの合流は必要不可欠な事ですから」

カミラ「カムイ……わかった。こっちのことはおねえちゃんに任せて、ちゃんとマークス兄さんたちを連れてきてあげるから」

カムイ「はい、よろしくお願いします」

カムイ(どうにかして戦場の主導権を握らなければなりません。このまま分断された状態で戦いを続けても、勝てる見込みがない以上、私たちの戦いやすい状態を作り上げなくては。それがどれだけ難しいことだとしても――

(活路はそれしかないのですから……)

今日はここまで

◆◆◆◆◆◆
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―シラサギ城『王の間・入り口付近』―

マークス「エリーゼ援護を頼む!」

エリーゼ「わ、わかったよ! えーい!」シュオンッ ドゴオオンッ

 ドササッ

マークス「よし、もう一度敵を押し上げる。ピエリ、行けるか?」

ピエリ「任せてなの。敵をいっぱい八つ裂きにしてやるのよ」

マークス「エリーゼ、次は敵先頭集団に攻撃を頼む。その隙をもう一度突く」

エリーゼ「うん、わかったよ、マークスおにいちゃん。いっけー、フィンブル!」

 シュオンッ バチィンッ!!!!

謎の兵士たち「……」サッ

マークス「よし、今だ! ピエリ、私に続け!」

ピエリ「わかったの。みんなズタズタにしてやるの!!!」チャキッ

 ダダダダダダッ ザシュ ドゴンッ!

マークス(よし、どうにか持ち直した。ギュンターたちもうまくやってくれているといいが……)

謎の兵士「……」タタタタッ チャキッ ブンッ

ギュンター「ふっ、見くびられては困る。はあああっ、でやあああっ!」キィンッ ドゴンッ!

カザハナ「そこね。さっさと倒れなさいよ!」スチャッ シュパパッ
 
 ズシャシャ! ドサッ……

カザハナ「はぁ、はぁ、……もう、いつになったら終わるのよ、これ」

ギュンター「文句はすべてが終わってからだ。カザハナ、左翼を抑えに回る。ニュクスは右翼の足止めを頼む」

ニュクス「わかったわ。右は私に任せておいて」

カザハナ「うん、それじゃ行くよ!」ダッ

ギュンター「ぬんっ、はあああああっ」パカラパカラッ ドゴゴゴッ

謎の兵士たち「……」ササッ

ギュンター「敵が下がった。今だ、カザハナ!」

カザハナ「よっし、それっ、せやっ!!!」シュパッ シュパンッ

 ザシュッ ズシャッ ドサササッ

カザハナ「よし!」

ギュンター「このまま、さらに押し上げる。ニュクス、火力を集中しろ」

ニュクス「ええ、言われなくても分かっているわ。はあああっ」シュオンッ ドゴゴゴゴンッ!

カザハナ「すごっ、一気に吹き飛んじゃった」

ギュンター「一気に攻め上げる、行くぞっ!」ダダダダッ

カザハナ「う、うん!」タタタタッ

マークス「ギュンターもうまくやっているようだ。よし、ピエリ、お前には左翼を任せる! 深追いはせず、各個撃破に努めよ」

ピエリ「はーい、ピエリ行くの!」チャキッ ザシュシュシュッ

謎の兵士「……」ドササッ

謎の兵士「……」タタタッ

ピエリ「えへへ、近づかれる前に攻撃しちゃうの!それっ!」チャキッ ブンッ

 ヒューンッ ザシュッ! ドサッ

ピエリ「大当たりなの!」

謎の兵士「……」タタタッ

エリーゼ「逃がさないんだから、それっ!」シュオンッ…… ドゴンッ!

 ドササッ

エリーゼ「えへへ、あたしの勝ちだね」

マークス「はああっ! ふん、この程度か」ブンッ ズシャリッ!

ピエリ「マークス様もエリーゼ様もかっこいいの! ピエリももっと敵をえいってしてやるの!」チャキッ

 タタタタタッ

ピエリ「そこなの!」チャキッ ブンッ!

???「……」 ガキィン! ダッ

ピエリ「弾かれたの!? なら、こうしてやるの! えいっ!」カランッ チャキッ ブンブンッ

???「……」キィンキィン タッ チャキッ

ピエリ(この敵、他となんか違う……。何なの?)

???「……」スッ

ピエリ「え……」

ユウギリ「……」

ピエリ「あなたの顔、見たことある。シュヴァリエ公国で、ピエリが戦った人なの……」

ピエリ(ピエリのこと足止めして、リリスを助けに行かせなかった奴なの)

 ギュウッ

ピエリ(この人が邪魔しなかったら、リリスを助けに行けたの……。この人の所為で、助けに行けなかったの……。あの時は殺せなかったの、だから――)

ピエリ「……ここで殺してやるの」チャキッ

ユウギリ「……」タタタッ

ピエリ「逃がさないの!」ダッ

エリーゼ「マークスおにいちゃん! ピエリが一人だけ前に出ちゃってる!」

マークス「なに!? ピエリ、戻れ!!!」

ピエリ「……」

マークス(くっ、敵に誘い込まれている。何があったピエリ!?)

マークス「このままでは分断される。エリーゼ、援護を!」

エリーゼ「わ、わかったよ。マークスおにいちゃん! えいっ!」シュオンッ

 ドゴゴンッ!

マークス「よし!」パカラパカラッ

謎の兵士「……」タタタタッ チャキッ!

マークス「くっ! そこを退けぇ!」チャキッ ザシュッ バシュンッ

謎の兵士「……」ドササッ

マークス(このまま敵陣を突破し、ピエリを連れ戻せれば――)

マークス「!!」サッ

???「……」 カラカラカランッ シュオンッ

マークス「新手か!?」チャキンッ

オロチ「……」クスクスッ

マークス「どうあっても行かせぬつもりか……」

エリーゼ「ど、どうしよう。マークスおにいちゃん、足止めされちゃってる」

エリーゼ(ピエリ、マークスおにいちゃんの声が聞こえてなかったみたいだし、すごく怖い顔してた……)

エリーゼ(あの顔、なにかを恨んでるみたいだった。駄目だよそんなの、だってあたしたちが戦ってるのは――)

エリーゼ「……ピエリを助けないと。行くよ!」パカラパカラッ!

ピエリ「やあっ! えぇいっ!!!」ブンッ ブンッ 

ユウギリ「……」サッ ザシュッ

ピエリ「逃がさないの。絶対に殺してやるのよ」ブンッ ズドドドッ

ユウギリ「……」ザシュッ ビシャッ

ピエリ「えへへ、いいの。もっと、もっと傷つけばいいの」ダッ キィンキィン

ユウギリ「……」スッ ブンッ!

 ザシュッ

ピエリ「あうっ、そんな攻撃どうでもいいの。もっともっと血を流すの! 流して死んじゃえばいいのよ!」ザシュシュッ

ピエリ(死んじゃえ、死んじゃえなの。あなたを殺せば、きっとリリスも喜んでくれるの!)

???「ピエリ! 下がるんだ!!!! ピエリ!!!」

ピエリ(誰かの声が聞こえるの。でも関係ないの。今は、この人を殺すから邪魔しないでほしいの。あと少しで、殺せるはずなの)

ユウギリ「……」スタッ

ピエリ「そこなの!えぇぇいっ!」ガシッ ブンッ

 ザシュリッ!!!!

ユウギリ「……」ビチャリッ……

ピエリ「はぁ……はぁ……。えへへ、あなたのお腹、槍で貫いてあげたの。これからもっと、八つ裂きにしてやるの!」グッ

ピエリ(槍を引き抜いたら、もっと串刺しにしてやるの。あなたがいなければピエリはリリスと一緒にカムイ様を探しに行けて、ここにリリスはまだいてくれたはずなの。そうならなかったのは、あの日あなたがいた所為なの。だから――)

ピエリ「もっと、バラバラにしてあげるの」ニタァ

ユウギリ「……」ガシッ

ピエリ「えへへ、槍を抜こうとしても無駄なの。こんなに深く刺さったら、簡単に抜けたりしな――」

ユウギリ「……」ダッ ズビシャアアアッ

ピエリ「!?」

ピエリ(ピエリに向かってきた? 一体何のつもりなの?)

 ザッ

ピエリ「え?」

謎の兵士たち『……』

ピエリ「!?」

謎の兵士たち『……』

ピエリ「え、嘘……」

ピエリ(敵、いっぱいいる。か、囲まれちゃってるの。に、逃げ場がないの)

ピエリ「う、ううっ……。どうなってるの。ピエリ、なんで追い詰められてるの!?」

ピエリ(は、早く逃げるの。このままじゃ――)

 ガシッ

ピエリ「!」

ユウギリ「……」フフッ

ピエリ「は、離すの! 離してなの!」

ピエリ(このままじゃ、ピエリ殺されちゃう。だめ、こんなところで死ねないの。ピエリ、まだリリスの分までカムイ様をお守りしてないの!)

謎の兵士たち『……』チャキッ

ピエリ(あいつら武器を構えてる。もう攻撃まで時間がないの!)

ピエリ「離れて、すぐに離れるの!」ガシッ ドスッ ドスッ

ピエリ(どうして、どうしてなの? ピエリ、リリスの仇を取りたかっただけなのに。それが間違いだったの? ピエリ、間違えちゃったの?)

ピエリ「いやなの! 離れてなの!!!!」グッ ドゴンッ!!!

 ズビシャアアッ

ユウギリ「……」ドサッ クラッ サッ

 カランカランッ……

ピエリ「あ、ピエリの槍!」パシッ

謎の兵士たち『……』ダッ

ピエリ「あ……」

ピエリ(だめ、これ避けられないの。ピエリ、ズタズタに引き裂かれちゃうの……)

謎の兵士たち『……』ダダダダッ

ピエリ「……ごめんなの」

謎の兵士たち『……』グッ

ピエリ「!!!」

 パカラパカラッ

???「ピエリ、伏せて!!!!」シュオンッ

ピエリ「え?」

ピエリ(エリーゼ様?)

エリーゼ「早く!!!」

ピエリ「!」サッ

エリーゼ「よーし、みんな吹き飛んじゃえ! フィンブル!!!!」シュオオオオンッ

 シュオオオオオッ ドゴォンッ!

謎の兵士たち『……』ドササッ 

ササッ

ユウギリ「……」チャキッ ダッ

ピエリ「あ……」

エリーゼ「ピエリに手は出させないよ! えいっ!」シュオオオンッ バチイィンッ

ユウギリ「……」グラッ ササッ

ピエリ「エリーゼ様……」

エリーゼ「ピエリ、早くこっちに来て!」

ピエリ「う、うん!」パカラパカラッ

謎の兵士「……」チャキッ

エリーゼ「しつこいよ!」シュオンッ バシュンッ

謎の兵士「……」ドゴンッ ドササッ

エリーゼ「マークスおにいちゃん、ピエリを助け出したよ!」

マークス「エリーゼよくやった! ならば、心置きなく行かせてもらうぞ!」シュオンッ バシュッ

???「……」サッ! タタッ タタッ

 カラララ――

ガキィンッ!

???「!」

ギュンター「敵に攻撃を許すな。ニュクス!」

ニュクス「ええ、任せて。カザハナ、周囲から寄って来る悪い虫を抑えなさい」シュオンッ

カザハナ「わかったよ、それっ!」チャキッ シュパパッ

謎の兵士たち「……」サッ

ニュクス「よし、これでもくらいなさい!」ボワアアッ!

???「……」ザシュシュッ! ダッ タタッ

ニュクス「さすがに呪いに長けているだけはあるわね。普通の相手なら、もう死んでいるくらいなのに……」

ニュクス(それにしてもこんな形であなたの顔をもう一度見るとは思っていなかったわ。どういう道を辿ったのかは知らないけれど、もう見ることもない、そう思っていたのにね)

ニュクス「シュヴァリエ公国以来ね、白夜の呪い師」

オロチ「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―シラサギ城・王の間『玉座の間へ至る階段』―

 ガコンッ!

 ズズズッ ズズズズズッ

ブノワ「……よし、敵の姿は無いようだ…」

スズカゼ「はい、今のうちに出るとしましょう」

カミラ「何とかなったわね。カムイ、手筈通りマークスお兄様たちを援護に向かうわ。その間、どうにか持ち堪えてちょうだい」

カムイ「はい、こちらも出来る限りの手は打つつもりです。そちらも気を付けてください」

カミラ「ええ、それじゃ行きましょう?」

ブノワ「敵の多くが入り口に密集しているが、強襲される可能性もありえる。ここは俺が先行しよう…」

スズカゼ「わかりました、支援は私にお任せください」

ブノワ「ああ、頼む……」

 タタタタタッ

レオン「よし、どうにかここまでは順調みたいだね」

サクラ「はい。この先にヒノカ姉様が……」

アクア「奴の力も強くなっているから、おそらくいるはずよ」

カムイ「行きましょう、一気に奇襲を掛けます」

 タタタタタッ

ハロルド「うむ、サクラ王女様、それにレオン様も私の後に続いてください、行くぞ!」

レオン「ああ、行くよサクラ王女」

サクラ「は、はい。レオンさん!」

タタタタタッ

カムイ(……一歩進む度に空気が重たくなっていくのがわかる。これがあのヒノカさんが発しているものだとは思いたくありません。スサノオ長城の時感じたあの穏やかな気配とは比べ物にならないこれが、ヒノカさんの物だなんて……)

 バサバサッ

カムイ「!」

 バサバサッ ドスンッ

金鵄ヒノカ「……」

カムイ「……ヒノカさん」

今日はここまで

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・入り口付近』―

 キィン!
  カキィンッ

マークス「はあああっ!!!!」チャキッ ザシュシュッ

 ドサッ

謎の槍聖A「……」タタタタタッ

マークス「っ、後ろか!」クルッ

謎の槍聖A「……」ダッ ブンッ

マークス「ぐっ。この程度で私に勝てると思うな!」キィンッ  ドゴンッ

謎の槍聖A「……」サッ チャキッ

ギュンター「その隙、取らせてもらうぞ。やああっ!!!」チャキッ ブンッ

 バャシュッ!!!ゴトンゴトンッ ドサリッ

マークス「ギュンター、助かった」

ギュンター「お気になさらず。しばらくはマークス様の援護に回らせていただきます。カザハナとニュクスはまだ持ち堪えられそうなので、心配はいりません」

マークス「すまない、ギュンター。エリーゼ、そっちは大丈夫か!?」

エリーゼ「うん、大丈夫だよ。だけど、ピエリの傷が思ったよりも深くて、簡単な治癒魔法じゃ傷を塞ぎきれないよ……」

ピエリ「ううっ……」ポタタッ

マークス「仕方ない、安全な場所に移動してピエリに治療を頼む。ここは私とギュンターに任せろ」

エリーゼ「わ、わかったよ。ピエリ、もう少しだけ下がるよ。付いてきて!」

ピエリ「う、うん……」

エリーゼ「よし、ここなら大丈夫そう。ピエリ、馬から降りて、すぐに治療してあげるから」スタッ

ピエリ「……っ」スタッ ポタタッ

エリーゼ「大丈夫、痛みなんてすぐなくなっちゃうからね。それっ!」シャランッ

 シュオンッ

エリーゼ(ど、どうかな?)

 ポタタッ

エリーゼ(だめ、完全に傷が塞がってない。あともう一回か二回は必要かな?)

ピエリ「……エリーゼ様」

エリーゼ「ご、ごめんね。ちょっとだけ待ってて、もう一回やれば残ってる傷もちゃんと――」

ピエリ「ううん、これだけで十分なの。ピエリ、すぐに戦わないといけないの。だからもういいのよ」

エリーゼ「え、ピエリ?」

ピエリ「……」フラフラッ テトテトッ

ピエリ(そうなの、こんなところで足を止めてなんていられないの。あいつを、シュヴァリエでピエリの邪魔をしたあいつを、ここで絶対に殺してやるの……。だから、もう動けるならそれだけで……)

ピエリ「……っ」ズキッ ポタタタタッ

エリーゼ「ピエリ!?」

ピエリ「いいの、ピエリは、っ、大丈夫なの。っ!!!」ポタタッ

ピエリ(痛くない、痛くないの。こんな傷、全然痛くないの。死んじゃう痛さじゃないの、だからちゃんと動いてなの。そうじゃないと……。あいつを殺しにいけないの……」テトッ テトッ

ピエリ「こんなの痛くないの。ピエリは……ピエリは……」

ピエリ(あいつを殺さないといけないの。あいつを殺して、リリスの仇を取るの。今度は失敗しないの。失敗しないから、ピエリがあいつを……)

エリーゼ「だ、駄目だよ!」ダッ バッ

ピエリ「エリーゼ様、そこを退くの。もうピエリ、ちゃんと動けるの」

エリーゼ「何言ってるの? ピエリの傷口、まだ全然塞がってないんだよ。こんなのじゃ戦えないよ」

ピエリ「エリーゼ様。ピエリは戦わないといけないの……」

エリーゼ「だめ、今行ったらピエリが死んじゃうよ!」

ピエリ「そんなことないの。ピエリは……あいつを殺して……リリスとの約束を守るの……。だから邪魔しないでなの!」チャキッ

エリーゼ「!!!」

ピエリ「もう大丈夫って、ピエリが言ってるの。だからもう止めないでほしいのよ」

エリーゼ「ピエリ……」

ピエリ「……」

エリーゼ「おかしいよ……」

ピエリ「?」

エリーゼ「……ピエリとリリスがどんな仲だったのかは知らない。でも、こんなのおかしいよ。こんな風に誰かを傷つけるために戦うって……」

ピエリ「何がおかしいの? ピエリ、何もおかしいことなんてしてないの!」

エリーゼ「だって、カムイおねえちゃんは誰かを傷つけるために戦ってるんじゃない。誰かを守るためなのに、ピエリは相手を殺すために戦ってる」

ピエリ「……」

エリーゼ「そんなの駄目だよ。それじゃ、おとうさまのフリをしてるあいつと何も変わらない。何も守れない気がするの……。だから、あたしはピエリのしてることは間違いだって思う」

ピエリ「エリーゼ様に何が分かるの。ピエリは、ピエリは……」

ピエリ(ピエリは……リリスの仇を取って、それで……それで……)

ピエリ「………どうなるの?」

ピエリ(あいつを殺せるの……だけど――)

ピエリ「……それで、なんなの?」

ピエリ(ピエリは、それで何を満足するの? あいつを殺して、ピエリは……何を得るの?)

ピエリ「……」

エリーゼ「ピエリがリリスとした約束は、あの敵を倒すことだったの?」

ピエリ「え?」

エリーゼ「あたしだってリリスの事知ってるよ。ピエリみたいに仲良しだったっていうわけじゃないけど、でもあのリリスがそんなことを言うなんて思えない」

ピエリ「エリーゼ様」

エリーゼ「だって、リリスはカムイおねえちゃんの臣下さんなんだよ。そんなリリスが、ピエリにそんな約束をするなんて思えないよ……。リリスなら、もっと違う事を言うと思うから……」

ピエリ「リリスがとの約束……」

ピエリ(リリスはあの時……。ピエリに……なんて言ってくれたの。あの日、死にそうなリリスはピエリに……)

リリス『ピエリさ……ん。恨まないで』

ピエリ「あ……」

リリス『ピエ……リさんには。そんな理由で……戦ってほしく……ないから。ピエリさんには……恨みで戦ってほしくないんです。私のことで……ピエリさんがピエリさんで無くなってほしくないんです……』

ピエリ「あ、うっ……うううっ……」

エリーゼ「ピエリ……」

ピエリ「ピエリ、また約束……破っちゃったの……。リリスと約束したのに、ピエリ……ピエリ……」ポタタッ

エリーゼ「大丈夫だよ。まだ、こうしてここにいるんだもん。もしもピエリが死んじゃったらリリスは怒ったと思うんだ。でも、ちゃんと生きてるから、きっと許してくれるはずだよ」

ピエリ「エリーゼ様……」

ピエリ「でも、ピエリはリリスのために何もできなかったの」

ピエリ(ピエリは、リリスに何かできたわけじゃなかったの。仇を討てたわけでも、守れたわけでもないの。リリスが死んじゃってから、カムイ様を守るって言っただけで、ピエリはリリスに何も……)

エリーゼ「そんなことないよ、ピエリはリリスとの約束をちゃんと思い出したんでしょ?」

ピエリ「うん……」

エリーゼ「それだけでもいいと思う。あたしたちが死んじゃった人のために出来る事って、そのことを忘れないことだって思うから。ピエリはちゃんとリリスのことを覚えてた。それって、きっとリリスのためになってるはずだもん」

ピエリ「……そうなの? ピエリが覚えてるだけでリリスのためになってるの?」

エリーゼ「うん、だから忘れないためにあたしたちは死んじゃ駄目なの。あたしの知ってるリリスとピエリの知ってるリリスは違う。ピエリの知ってるリリスが、恨みとか憎しみでいなくなっちゃうなんて、そんなの嫌だよ」

ピエリ「……」

エリーゼ「だから、いっしょに戦おう? 憎しみとか恨みとかじゃなくて、もっと大切な思いを守るために戦おう? 死んじゃった人は帰って来ないけど、一緒にいた時間の思い出は生きていればずっと消えないはずだから」

ピエリ「……」

エリーゼ「えっと、それじゃ駄目かな?」

ピエリ「ううん、駄目じゃないの……」ダキッ

エリーゼ「わっ、ちょっとピエリ!?」

ピエリ「エリーゼ様、ごめんなさいなの。ピエリ……、ピエリ……、ううっ」ポタッポタッ

エリーゼ「ピエリ……」

 ギューッ

ピエリ「エリーゼ様?」

エリーゼ「気にしてないよ……。あたしだって友達が死んじゃったら、どうなるかわからないもん。だから、こうやって立ち止まれるピエリはすごく強いって思えるから……」

ピエリ(エリーゼ様、あったかいの……。これならピエリ、頑張れる気がするの。みんなを守るために、いっぱい戦える気がするのよ)

 シュオンッ

エリーゼ「あ、治療の準備が出来たみたい。すぐに治療するね」

ピエリ「うん、お願いするの!」

エリーゼ「えへへ、えーいっ!」シャランッ!

 シュオンッ

エリーゼ「ど、どうかな?」

ピエリ「うん、これでもう大丈夫なの。エリーゼ様、ありがとうなのよ」

エリーゼ「よーし、それじゃマークスおにいちゃんたちの援護に戻ろう。この戦い、絶対に負けられないんだから!」

ピエリ「うん、早くいくの!」タタタッ ダッ ヒヒーンッ パカラパカラッ

エリーゼ「あ、ちょっと、ピエリ、待ってよー」パカラパカラッ

マークス「……む?」

ピエリ「マークス様、お待たせなの!」

マークス「ピエリか。もう傷はいいのか?」

ピエリ「うん、エリーゼ様にいっぱい治してもらっちゃったの。だからもう大丈夫なの!」

マークス「……」

ピエリ「ん、マークス様?」

マークス「その様子ではもう大丈夫のようだな」

ピエリ「……うん、心配掛けてごめんなさいなの、マークス様」

マークス「いい。だが、先ほどの独断専行について、色々と言いたいことがあるから覚悟はしておけ」

ピエリ「ふええっ。わかったの……」

エリーゼ「あはは、ピエリ、マークスおにいちゃんに怒られてる」

マークス「おしゃべりはここまでだ。ピエリ、先ほどまで休んでいた分、動いてもらうぞ。いいな?」

ピエリ「はーい。ピエリの準備はオッケーなのよ」

エリーゼ「後方はあたしに任せて。攻撃も補助もこなしてみせるから」

マークス「よし。ギュンター、カザハナとニュクスに合流するように指示を出してくれ」

ギュンター「わかりました」パカラパカラッ

マークス「ピエリ、ギュンター達と合流後、敵陣の一点に集中攻撃を掛け、これを突破する」

ピエリ「突破するの?」

マークス「ああ。敵の垣根の先を見てみるといい、その答えが見えるはずだ」

ピエリ「垣根の先? ………あっ!」

 ドゴンッ ドゴゴンッ!

カミラ「ようやく敵の尻尾まで来たみたいね。ブノワ、先行して」

ブノワ「あ、ああ。いくぞ、うおおおおおっ!!!!」ドゴンッ

謎の兵士「……」サッ チャキンッ

スズカゼ「そうはいきません、はっ!!!」パシュシュッ

 ズシャシャッ

謎の兵士「……」クラッ

カミラ「そこね、ライナロック!!!」シュオンッ ドゴオンッ!!

スズカゼ「どうやら、マークス王子や他の皆さんも無事なようです。少しばかり押されていると思いましたが、杞憂のようでしたね」

カミラ「ええ、一気に畳みかけてマークスお兄様たちを突破させましょう」



ピエリ「あれ、カミラ様たちなの!」

マークス「ああ、例の隠し通路で裏をとったようだ。となれば、ここで戦闘を維持する必要もない、ここを抜け一気に玉座の前に陣を敷く、それが今すべきことだろう」

ピエリ「わかったの、ここが頑張りどころなの! あ……」

ユウギリ「……」タタタタッ チャキッ

ピエリ「えへへ、もうあなたの挑発には乗らないの。確かにあなたを倒すけど、それはあなたが憎いからじゃないの」チャキッ

「ピエリ、また守りたいものが出来ちゃったの。それを守るために、あなたを倒させてもらうの!」

今日はここまで

 FEHに幼アクアが来るみたいですね。
 
 ところでリリスの実装は何時ですか?

◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・入り口付近』―

オロチ「……」 カラララッ シュオンッ

  バサバサッ ザッ!

ニュクス「っ、はあああっ」シュオオンッ 

 バチィンッ!

謎の鍛冶A「……」ダッ

カザハナ「させないよ。それ、それっ!!!」チャキッ シュパパッ

謎の鍛冶A「……」ドサッ

ニュクス「カザハナ、ありがとう」

カザハナ「気にしないで、それよりも顔見知りとこんな形で戦うなんてね……。正直、ニュクスがオロチの事、知ってるなんて思ってなかった」

ニュクス「色々とあるのよ。だけど、ここでもう一度見ることになるなんて思っていなかったわ」

カザハナ「そうだね。あたしもこんな姿で再会なんてしたくなかったよ……」

オロチ「……」

ニュクス(死んでも主に尽くす、そういう意味に捉えた方が幸せなんでしょうけど……)

ニュクス「そんな素敵なものじゃなさそうね。少なくとも今のあなたを見ている限りでは」

オロチ「……」チャキッ

カザハナ「来るよ!?」

ニュクス「オロチだけに気を取られないで、他にも近づいてくるのがいるわ」シュオンッ

カザハナ「え?」キョロキョロ

謎の鍛冶B「……」タタタタッ

謎の槍聖A「……」チャキッ

カザハナ「うわっ、ほんとだ」

ニュクス「オロチは任せなさい、カザハナは左の奴らんお相手をして」

カザハナ「わかったよ。もう、ギュンター早く戻ってこないかな、そろそろ限界近いのに」

ニュクス「そうね、城塞の時みたいにさっさと来てくれれば助かるのだけど……」

カザハナ「城塞の時? どういうこと?」

ニュクス「……なんでもないわ」ダッ

カザハナ「? まぁいっか、それより今は目の前の敵を倒さないとね。さぁ、あんたたちの相手はあたしだよ!!」シュタッ

謎の鍛冶B「……」グッ タッ

カザハナ(一気に距離を詰めてきたね。なら、こっちも懐に入って!)タッ

謎の鍛冶B「……」ブンッ!

カザハナ(よし、今!)グッ ズサササッ

 スカッ

カザハナ「へへん、滑り込み成功。背中ががら空きだよ!」チャキッ グッ 

 ザシュンッ!!!!

謎の鍛冶B「……」ガタンッ ドサッ

カザハナ「よし、一人倒した。もう一人は――」キョロキョロ

謎の槍聖A「……」ダッ ズドドドッ

カザハナ「っと! あぶなかった」サッ

謎の槍聖A「……」タッ

カザハナ「へへん、同じ手で来るつもりだろうけど、二度目は無いよ。それっ!」パシュッ

 ズシャッ

謎の槍聖A「……」グラッ カランカランッ……

カザハナ「武器が無かったら何もできないでしょ。それじゃ、倒させてもらうよ!」タタタッ

 ザシュ ザシュシュッ!

 ドサリッ

カザハナ「ふぅ……、あたしの勝ちね!」

カザハナ(それにしても、なんだか敵の流れが向こう側に集中してる。これもギュンターが援護に向かった影響なのかな?)

カザハナ「どっちにしても、こっちは片付いたからニュクスと合流して――」

 ドゴンッ!!!

カザハナ「え、ちょ、なに!?」

カザハナ(このすごい音、もしかしてニュクスの方から!?)

カザハナ「ニュクス!!」タタタタッ

 ゴオォォォッ

ニュクス「……」タタタッ

オロチ「……」パシッ カラララッ!

ニュクス「ライナロック!!!」シュオンッ ドゴンッ‼‼‼

オロチ「……」サッ シュオンッ バサバサバサッ

 ヒュンッ!

ニュクス「!」サッ サッ

  ザシュッ!

ニュクス「っ」

ニュクス(大丈夫、ただ掠っただけ。詠唱を終えた直後の隙は突く、ここがチャンスよ!)

ニュクス「吹き飛びなさい、ギンヌンガガプ!!!」

ニュクス(これで終わりよ!)

オロチ「……」サッ

謎の兵士「……」ダッ

 ドゴンッ!!! ドサリッ

ニュクス(他の奴を盾にした!?)

オロチ「……」カララッ シュオンッ

 グオンッ ブルルルッ

ニュクス(呪いの牛はまだ出てきてない。今のうちに妨害すれば、止められるはず!)シュオンッ

謎の鍛冶C「……」タタタタッ ダッ!

ニュクス(敵!?)

ニュクス「っ、ミョルニル!」

謎の鍛冶C「……」ドゴンッ!!!! ドサッ

ニュクス(しまった、すぐに次の詠唱を――)サッ

 ドドドドッ

ニュクス「!!!!!」

ニュクス(だめ、この距離じゃ間に合わない……)

ニュクス「くっ」グッ

 ドゴンッ‼‼‼‼

ニュクス「あああっ!!!」

 ドンッ ドササーーッ

ニュクス「くっ、ううっ……」

ニュクス(大丈夫、まだ動ける……。早くしないと……)

ニュクス「っ……はぁ……はぁ……」ポタタタッ グッ タッ

オロチ「……」チャキッ

謎の兵士「……」チャキッ

ニュクス「また二人。いいわ、纏めて相手をしてあげる、掛かって来なさい……」シュオンッ

オロチ「……」カララッ! シュオン バサバサッ!

謎の兵士「……」ダッ

 パカラパカラッ……

???「やあっ!!!」ブンッ!

 ヒューンッ ガコンッ!

謎の兵士「……」サッ

オロチ「!!」グッ

ニュクス(え、後方から槍? それにこの蹄の音は……)

???「ニュクス、左の兵は私が相手をする。お前は呪い師の相手をしろ」

ニュクス「……言われなくてもそうさせてもらうわ」

ギュンター「任せておけ。いくぞっ、はああっ!」パカラパカラッ

謎の兵士「……」 ダッ ブンッ

 キィンッ!

ギュンター「ふん、その程度でどうにかなると思われているとは、舐められたものだ! はああああっ‼‼‼‼‼」グオンッ!!!! ザシュッ

 ズビシャッ!!!! ドササッ

オロチ「……」スッ バサバサッ

ニュクス「そうはいかないわ」シュオンッ ボワワワワッ!

オロチ「!」サッ

ニュクス「逃がすつもりはないわ。これはさっきのお返しよ、喰らいなさい!」シュオンッ 

 バシュンッ‼‼‼

オロチ「……」ググッ ササッ

ニュクス「……っ、あと少しなのに逃がしたわね」

ギュンター「なに、次に仕留めればよい、それよりも傷は大丈夫か?」

ニュクス「これくらいなんとも……っ!」ポタタッ

ギュンター「大丈夫というわけではなさそうだな……」

ニュクス「そうね。まともに攻撃を受けてしまったから、正直生きているのが不思議なくらいよ」

ギュンター「……そうか、すまなかった。戻って来るのが遅れてしまったようだ」

ニュクス「謝らないでいいわ。それにあなたが戻って来たということは。向こうの戦況も立ち直ったという事でしょう?」

ギュンター「カミラ様が敵を背後から強襲してくれたおかげでな」

ニュクス「そう、カミラ様たちにはもう少し早く来てほしかったわね。それで、これからどうするの?」

ギュンター「まずはカザハナと合流する。それでカザハナは……」

 タタタタッ

ニュクス「噂をすればというやつね」

ギュンター「む、そのようだ」

カザハナ「ニュクス! 大丈夫……って、ギュンター戻ってきてたの?」

ギュンター「丁度いいところに来た、ニュクスの治療を頼む」

カザハナ「治療って……。っ、ニュクス、大丈夫!?」

ニュクス「見ての通りだから、早く治療して頂戴。っ、大丈夫、治れば戦えるくらいの傷よ」

カザハナ「わ、わかった。それっ!」シャランッ!

ニュクス「んっ……。はぁ、少しはマシになったかしら?」

カザハナ「あと何回かやれば大丈夫なはずだから……」

ギュンター「残念だが、今その時間は無い。まずはマークス様と合流する」

カザハナ「え、なんで。まだ完全に治療出来てないんだよ?」

ギュンター「あの敵を前にして悠長に治療していられると思うか?」

カザハナ「え?」チラッ

謎の兵士群「……」ザッザッザッ

オロチ「……」

カザハナ「あー、無理だね。うん、早く移動しよ」

ギュンター「ああ。こちらを潰しに今更動いたようだ。さぁ、ニュクス」スッ

ニュクス「これは何かしら?」

ギュンター「乗れ、お前は私が運ぶ、さっさとしないか」

ニュクス「……もう少し優しい言い方をした方がいいと思うけど?」

ギュンター「お前の好きな小説のような物を出来る程、私は甘くは無いのでな」

ニュクス「そう、まぁいいわ、おねがいするわね」スタッ

カザハナ「え、あたしは徒歩なわけ!?」

ニュクス「ええ、悪いけどそうなるわ」

ギュンター「大丈夫だ、速度は出来る限り抑える。お前は私の後を追ってくれればそれでいい」

カザハナ「はぁ、わかったよ、頑張って走ればいいんでしょ!」

ギュンター「ああ。よし、いくぞ!」ヒヒーンッ

 パカラパカラッ
  タタタタタタッ

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

マークス「む、ギュンター!」

ギュンター「ただいま戻りました、マークス様。こちらは全員無事です」

マークス「そうか、それはよかった。負傷している者は今すぐに治療を済ませよ、敵の陣は側面から迫りつつあるが、それによって正面の厚みは薄まっている今がチャンスだろう。ここで一気に仕掛ける」

ギュンター「わかりました。ニュクス、ここでちゃんと治療をしてもらえ」

ニュクス「ええ、そうさせてもらうわ。っ、まだ痛むわね……」

エリーゼ「わ、ニュクス大丈夫!? すぐに治療してあげるからね、えーいっ!」

ニュクス「ありがとう、エリーゼ王女。ん?」

カザハナ「はぁはぁ、ニュクス……、あたしも……治療、すぐに、するから……」

ニュクス「ありがとう、でももうエリーゼ王女がしてくれたわ。それより、息を整えなさい」

カザハナ「だって、ギュンター、全然速度抑えてくれないんだもん。あたし、こんな全力疾走して……、もう、倒れそうなんだけど……」

ギュンター「倒れている暇はない。もう次が待っているのでな」

カザハナ「次って……何するわけ?」

マークス「よし、全員聞いてくれ。これよりここを突破し、玉座の前までわれわれは移動する。先頭は私とピエリ、中央をエリーゼ、カザハナ、そしてニュクス。ギュンターは最後尾を任せたい。行けるか?」

ギュンター「承知しました、マークス様」

ニュクス「大丈夫なの? 後方をギュンター一人に任せるなんて」

マークス「ああ、カミラたちがすでに動いてくれている。われわれは敵陣を突破し、そのまま正面に陣を築く、カミラ達にはギュンターの援護を頼んでいる。だが、敵陣の中枢での援護は見込めない、そこが正念場だろう」

ギュンター「わかっております。そこは私の腕次第という事でしょう」

マークス「よし。ピエリ、準備は出来ているか?」

ピエリ「うん、ピエリの準備は出来てるの!」

マークス「うむ、各員準備せよ!」シャキンッ!

ピエリ「なの!」シャキンッ!

マークス(ここを突破すれば、カムイの援護にカミラ達を向かわせることができるはずだ。そのためになんとしてでも、この壁越えてみせる!!!)

マークス「よし、進め!!!!」
 
 ドドドドドドドッ!

今日はここまで

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座へと至る道』―

 パカラパカラッ

ピエリ「マークス様、ピエリが仕掛けるの!」

マークス「ああ。道を拓け!」

ピエリ「任せてなの! はっ! それっ!」ブンッ!

 ザシュシュッ

謎の兵士「……」ドササッ

カミラ「うふふっ、どうやら動き出したみたいね。ブノワ、スズカゼ準備はいいかしら?」

スズカゼ「はい。参りましょう」

ブノワ「後続の通過後の敵は俺が引き受ける……」

カミラ「ええ、お願いね。いくわよ、ライナロック!」シュオンッ!

 ズオオッ ドゴォォンッ!‼‼

マークス「よし、カミラ達も動き始めたようだ」

ピエリ「敵さん混乱してるの。どんどん進むチャンスなのよ」

マークス「よし、カザハナとエリーゼも攻撃を開始せよ、この機を逃すな!」

カザハナ「わかったよ。エリーゼ様、準備はいい?」チャキッ

エリーゼ「うん、大丈夫! 敵をギタギタにしてやるんだから! えいっ!」シュオオンッ バチィンッ!

 ドササッ

エリーゼ「先頭が崩れたよ!」

マークス「よし、これより敵陣を突破する。分断されぬよう細心の注意を払え!」

一同『はい!』

マークス「いくぞ!」

カミラ「先頭が見えたわ、ピエリとマークスお兄様みたい」

スズカゼ「どうやらこちらを目指してくれているようです。このまま行けば、もう少しで合流できるでしょう」

カミラ「ええ、でも、合流できるまで手を抜かないようにね」

スズカゼ「わかりました。そこです!」カランコロン バシュシュ!

謎の兵士「……」ドササッ

カミラ「こっちよ、マークスお兄様!」

マークス「カミラか! ピエリ、このまま突っ切る!」

ピエリ「わかったの! みんな邪魔しないでなの!」チャキッ ズドドドドッ

 ザシュ ドサッ

 パカラパカラッ

マークス(よし!!!)

ピエリ「えへへ、ピエリ頑張ったの!」

マークス「よくやったぞ、ピエリ。後方、足を止めずに続け!」

カザハナ「やった、出口だ!」

エリーゼ「どうにか抜けられてよかったよ」

マークス「よし、われわれはこのまま玉座入り口に陣を張る。カミラ、後続のギュンター達の援護を頼む」

カミラ「任せて、お兄様」バサバサッ

スズカゼ「カミラ様、お二人が敵の陣を突破されます。ですが、敵の動きが思いの他、早いようです」

カミラ「そう、それじゃスズカゼは私と一緒にギュンターとニュクスを援護してちょうだい。ブノワは敵の注意を引いてくれると助かるのだけど……」

ブノワ「わかった…。なんとかしよう…」ガシャンガシャンッ

 タタタタタタッ
  パカラパカラッ

ニュクス「やっと、抜けられた……」

ギュンター「だが、まだ終わりではないぞ。マークス様と合流しなくてはならん」

ニュクス「まだ走らせるつもりなのね……。はぁ……はぁ……」

ギュンター「ふっ、鍛錬が足りない証拠だな」

ニュクス「うるさいわね……」

ギュンター「しかし、これでは敵に尾を掴まれるな……。しかたない、ニュクス」

ニュクス「なによ、頑張って走って――」

 ガシッ

ニュクス「へ?」チョコンッ

ギュンター「振り落とされぬようにな。行くぞ!」パカラパカラッ

ニュクス「ギュ、ギュンター? 一人で走れるから、その……下ろしてくれる?」

ギュンター「駄目だ、お前の足では敵に追いつかれるのが目に見えている」

ニュクス「……」

ニュクス「た、確かにそうかもしれない。でも、試してみないことには――」

 タタタタタッ チャキンッ

ギュンター「試す暇などはなかったようだな」

ニュクス「……」

 チャキッ キリリリッ!
  パシュッ パシュンッ!

ギュンター「む、こちらを狙ってきたようだ。しっかりと捉っておけ」

ニュクス「だから……。もういいわ、勝手にしなさい」ガシッ

ギュンター「ああ、そうさせてもらう。はああっ!」ガシッ

 ヒヒーンッ
  パカラパカラッ

ブノワ「す、すごい…」

スズカゼ「荒々しい動きです。私でもあれを正確に捉えることはできません」

カミラ「ふふっ、ギュンターの馬術の腕は中々のものなの。かつてお父様から厚く信頼されていたほどなのよ?」

スズカゼ「なるほど、納得です。では、私たちも援護にむかいましょう」カランコロンッ

カミラ「そうね」チャキッ

ブノワ「……! 敵が数人、俺に気づいたみたいだ……」

カミラ「わかったわ。少しの間、耐えておいて、すぐに戻るわ」バサバサッ

ブノワ「ああ……」

ブノワ(できれば、早めに頼む…)

 ヒュンッ キィンッ
  ゴンッ カキィンッ

ブノワ「こ、怖い……」

ニュクス「思ったよりもしつこい奴らね……」

ギュンター「そうだな……む?」

 バサバサッ

カミラ「ギュンター、待たせてごめんなさい、今から援護するわ」

ギュンター「カミラ様、よろしく頼みますぞ」

カミラ「ええ、それっ!」シュオンッ ドゴンドゴンッ!

謎の兵士「……」サッ! チャキッ ダッ!

スズカゼ「おっと、カミラ王女ばかりに気を配っていては駄目ですよ。はっ!」バシュシュッ!

 ザシュシュッ
  ドササッ

ギュンター「ふぅ、ありがとうございますカミラ様」

カミラ「いいの。ふふっ、ニュクスも大丈夫そうで何よりね。」

ニュクス「ええ、色々とあって正直疲れているけれど、何とか平気よ」

ギュンター「ふっ、疲れたか。まだ終わったわけではないぞ」

ニュクス「わかっているわ、さっさとマークス王子たちと合流しましょう」

ギュンター「うむ、カミラ様」

カミラ「ええ、マークスお兄様の下に向かってちょうだい、私もすぐに向かうわ」

ギュンター「わかりました」

ニュクス「それじゃ、私も降りて――」

ギュンター「降りるのは合流してからだ」

ニュクス「……わかったわよ、それでいいから早く合流しに向かって、ここから私を開放して」

ギュンター「そうするとしよう。はっ!」ヒヒーンッ

 パカラパカラッ

スズカゼ「どうにか全員、無事に突破できたようですね」

カミラ「あとはブノワを連れて戻るだけね」バサバサッ ダッ

スズカゼ「はい、すぐに戻りましょう」

カミラ「ええ」バサバサッ



ブノワ「はあっ! でいいいっ!」チャキッ ブンブンッ!

謎の兵士「……」サッ ササッ チャキッ ブンッ

ブノワ「っ!!!」グッ

 ガキィンッ!

ブノワ「ぐっ、武器は抑えた、これでどうだ…!」

 ガシャンッ ドゴンッ‼‼‼‼
 ドサッ ドササーッ

ブノワ「はぁ……はぁ……ぐっ……」ガシャンガシャンッ チャキッ

謎の兵士たち「……」 ザザッ

ブノワ「こ、この数は難しいか……ん?」

 バサバサッ

カミラ「見つけた。ブノワ、思いっきり掴まりなさい!」

ブノワ「カミラ様、掴まるって、一体何に……?」

カミラ「降りてあなたを乗せている暇はないわ。このまま下降するから、この子の足に掴まりなさい」

ブノワ「だ、大丈夫なのか。俺が捕まった衝撃で落ちたりしないか?」

カミラ「大丈夫よ。言ったはずよ、そんな軟な子たちじゃないって、それを信じて掴まりなさい、ブノワ」

ブノワ「わ、わかった……」

 バサバサッ バササッ

カミラ「いい子ね。チャンスは一度きりよ」

ブノワ「ああ……」

カミラ「……行くわよ」 バサバサッ

 バサバサッ

ブノワ「……」

カミラ「……今よ!」

ブノワ「!!!」ガシャンガシャンッ ダッ!

 ガシッ!

 ギャウウウッ!‼‼
  バサバサバサッ

カミラ「落ち着いて、大丈夫よ。だってあなたは出来る子なんだから」ナデナデ

謎の兵士「……」ダッ

スズカゼ「そうはさせません。はっ!」カランコロンッ バシュシュッ!‼‼

 ザシュンッ ドササッ

カミラ「よし、このまま反転してお兄様たちと合流するわ。背に乗ってるときより動きが激しくなるけど、ちゃんとしがみ付いていなさい」バサササッ

ブノワ「ぐっ、ぬおおおっ!」

スズカゼ「どうやら無事にブノワさんを連れてこられているようですね。私も下がるとしましょう」カランコロンッ

 ギャウウウッ ギャウウウッ!

ブノワ「……俺が重いばかりに、すまない……」

 ギャウウウッ! ギャウウウウッ!

ブノワ「ううっ、本当にすまない……」

エリーゼ「あ、カミラおねえちゃんたちが来るよ!」

マークス「よし、カミラ達が通過したら攻撃を開始しろ。ここが最後の布陣だ、敵を一人たりとも向かわせるな!」

ピエリ「わかったの! ここは絶対死守するのよ」

 バサバサッ

ギュンター「あと少しだ。ニュクス、準備は出来ているのだろうな?」

ニュクス「ええ」

カザハナ「だけど、さっきまであんなに怪我してたじゃん、本当に大丈夫なの?」

ニュクス「私を甘く見ないでちょうだい。もう傷は塞がっているわ」

カザハナ「だって、ギュンターの馬に乗せられてきたし」

ニュクス「あれはギュンターが勝手にやっただけの事、私が頼んじゃわけじゃない。そこを勘違いしないでもらいたいわね」

カザハナ「そっか、まぁいいけど。じゃあ、何とかしてあの敵全員止めなくちゃね。この先にはサクラもレオン王子もいるんだから」チャキッ

ギュンター「カムイ様の下に行かせはせん」

ニュクス「……」シュオンッ

  ドドドドドドドドッ

 バサバサバサッ!‼‼

マークス「今だ!」

エリーゼ「ライナロック!!!!」シュオンッ

ニュクス「ミョルニル!!!」シュオンッ!

 ドゴゴンッ!

マークス「よし、敵の足が止まった。一気に掛かれ!」

ピエリ「わかったの!」

カミラ「マークスお兄様」

マークス「カミラ、このままカムイの援護に向かってくれ、われわれは奴らの相手をする。大丈夫だ、すぐに片づけて合流する。その間、カムイ達を頼んだぞ」チャキッ

カミラ「ええ、任せてちょうだい」バサバサッ

マークス「……さぁ、もはや退路は無い。われわれ暗夜の力、とくと味わえ!」チャキッ

 シュオンッ

マークス「いくぞ!」ダッ

 キィン!
  カキィンッ!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―シラサギ城『王の間・玉座前』―

 ザシュッ

カムイ「……あ」

 ポタッ ポタタタッ……

カムイ「……ヒノカさん……」

ヒノカ「……ふふ」

 ザシュンッ

 ポタタッ ポタタタッ……

ヒノカ「馬鹿な奴だ、お前は」ググッ

 ビチャッ

カムイ「あぐっ……」

ヒノカ「言っただろう、私はお前を殺すと、それなのにお前は本当に愚かな者だ……」

ヒノカ「……望んでもいないのに私を助けようとする。その結果が、こうなのだから……」

 ポタタタッ
  ポタタタタッ

「お前は本当に愚か者だ、カムイ……」

今日はここまで

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆
―白夜王国・シラサギ城『王の間・玉座前』―
~カミラ達と別れた直後~

カムイ「甘く見ているつもりはありませんよ、ヒノカさん」

金鵄ヒノカ「そうか、甘く見ていないか。スサノオ長城の時のように、私に狙いを絞って攻勢に出たというところだろうが。この状況で意味があるとは思えないな」

カムイ「いいえ、意味はあります。こうして、あなたに手が届く場所にいることだけで十分なのですから」

金鵄ヒノカ「手が届く? 届いたところで何ができる? お前に私の苦しみが理解できるわけがない。私はお前の言葉に従いなどしない。言っただろう、お前は私の敵だと」

カムイ「……敵だとしても、私はあなたを助け出します。そのために、こうしてここにいるんです。だって、あなたの思いはまだ死んでいないから」

金鵄ヒノカ「ああ、死んでなどいないし、死ぬものでもない。奪われ続けてきたこの恨みがそう簡単に晴れるとでも? 目の前で多くを奪われ、見捨てなければならなかった。その苦悩がお前にわかるわけがない。白夜の人間でもないお前に……理解できるはずがない。私のカムイは、待っていても帰っては来ないからな」

カムイ「……そうでしょうね。私はあなたが望む者ではないのですから」

アクア「カムイ……」

金鵄ヒノカ「ははっ、あははははっ。そうだろう、そうだろうさ。そう言ってくれるならそれでいい。開き直ってくれる方がこちらの気兼ねなく相手をできるからな」

 ピチャン ピチャンッ……

 シュオオオンッ

謎の兵士たち『……』チャキッ

金鵄ヒノカ「お前を殺して、私のカムイに戻ってきてもらう。偽物のお前に居場所など与える物か……」チャキッ

カムイ「……ヒノカさん」

金鵄ヒノカ「アサマ、セツナ。そっちの腑抜けの傍にいろ」

アサマ「……」サッ

セツナ「……」サッ

天馬ヒノカ「………」

サクラ「カムイ姉様、奥にもう一人のヒノカ姉様がいます」

レオン「恐らくあれが本当のヒノカ王女だろうね。これだけ分かりやすく守ってくれるなら見分ける必要が無くて助かるよ。もっとも――」

ハロルド「その分、防御の壁は厚いようですな。これは、ふむ、どうしたものか……」

 ザザザザッ

謎の兵士たち『……』チャキッ!

アクア「かなりの大所帯と言ったところね」

カムイ「はい。それでも何とかしなくてはいけません。ヒノカさんのためにも……」

アクア「ええ」

金鵄ヒノカ「一人も生かさなくていい、いけ」

謎の兵士たち『……』ダダダダダッ

カムイ「陣形を組みます、分断されない様に細心の注意を払ってください」

アクア「わかったわ」

ハロルド「お任せくださいカムイ様。レオン様、サクラ様は私より後ろへ、大丈夫です、このハロルドにお任せを」

サクラ「はい、でも傷を負ったらすぐに治療しますから、遠慮しないで言ってくださいね」

レオン「向かってくる敵は出来る限り僕らで何とかする、それを抜けてきた奴らの処理は任せたよ」

アクア「ええ、任せておいて。一撃で倒せば何の問題もないでしょう?」チャキッ

サクラ「え、えっと、アクア姉様も下がられた方が……」

アクア「心配いらないわ。それにここまで来たら下がるわけにもいかないでしょう?」

サクラ「で、でも……」

アクア「大丈夫よ、サクラ。相手より先に仕掛けて倒せばいいだけ。心配しないでいいわ」

ハロルド「さすがはアクア様です。しかし、男手としては何とも複雑な心境になってしまうといいますか……」

レオン「そうだね、これが一番いい陣形だとはわかっているんだけどさ……」

アクア「ありがとう、でも今はそんなことを言っている場合じゃないわ。何としても……」

カムイ「はい、ヒノカさんを助け出さなくてはいけませんから……」

カムイ(カミラ姉さんが戻ってくるまで何とか持たせないといけません。でも、もしもチャンスがあるのなら…)チラッ

天馬ヒノカ「……」

カムイ(一気に敵陣を突破して、ヒノカさんを白夜の玉座に座らせることができるかもしれない。その隙がもし生まれたのなら、その時は……)チャキッ

謎の剣聖A「……」タタタタタッ

アクア「あなたの相手は私よ。はっ、せいっ!」ザンザンッ

 ザシュシュッ ドササッ

謎の鍛冶A「……」タタタタッ ダッ

カムイ「そうはいきません。はっ!」ダッ チャキッ ガキィンッ!

 ジジジッ ドゴンッ

謎の鍛冶A「……」ズザザーッ チャキッ

カムイ(武器を投げるつもりですか、なら――)チャキッ

レオン「姉さん、そいつは僕に任せて。ブリュンヒルデ!」シュオオンッ

 ゴオオッ ザシュシュッ! ドサリッ

カムイ「ありがとうございます、レオンさん」

レオン「お礼は後にして、サクラ王女。敵の様子は?」

サクラ「レオンさん、左翼から敵が来ます」

レオン「わかった。サクラ王女、一緒に援護してほしい。僕らが撃ち損ねた奴らは姉さんたちに任せるからね」

カムイ「ええ、わかっています。ハロルドさん、敵が来ますよ」

ハロルド「お任せくださいカムイ様。さぁ、私が相手だ!」ダッ

 タタタタタッ

サクラ「敵来ました!」

レオン「よし、攻撃開始!」シュオンッ 

サクラ「当ってください!」キリリリッ パシュンッ!

 ザシュシュッ ドゴンッ!
 タタタタッ タタタタッ

レオン「ちっ、三人仕留めそこなったか」

カムイ「それだけでも十分です。迎え撃ちますよ、ハロルドさん」

ハロルド「うむ、行くぞ悪党ども!」ダッ

謎の槍聖B「……」チャキッ シュパパッ

ハロルド「ぬおっ!」チャキッ
 
 ガキキィンッ!

ハロルド「ふぅ、どうにかなったか。ではこちらの番だ。喰らえ、正義アタッーク!」ブンッ!

 ドゴンッ! ドササー!

カムイ「こちらも行きますよ。やっ、それっ!」チャキッ ブンブンッ

 キィンキィン!

謎の剣聖C「……」チャキッ シュキンッ

カムイ「おっと、そこです!!!」グッ ダッ

 ザシュシュッ ドサッ

カムイ「あと一人!」

 キィンキィンッ

謎の槍聖A「……」シュッ シュシュッ

 ササッ サササッ

アクア「そこね。さぁ、あなたの声を聞かせてちょうだい」タタタタッ ダッ

アクア「はああああっ!」グルンッ ブンッ

 バシュッ ドササッ!

アクア「ふぅ、こっちも片づけたわ」

カムイ「わかりました。徐々に距離を詰めていきましょう。カミラ姉さんたちが戻って来るまでに、出来る限り前進します」

一同『はい!』


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◇◇◇◇◇◇

金鵄ヒノカ「……さすがにそう簡単に死ぬわけもないか……。まぁ、当然と言えば当然か。そうでないと殺し甲斐が無い」

金鵄ヒノカ(そうだ、カムイの代わりに生きてきたお前が、そんな簡単に死んでいいわけがない……。もっと苦しんで苦しみ抜いてから死んでもらわないと割に合わない。未だに私から奪い続けようとするお前が、奪われることなくて死んでいくなど……)

金鵄ヒノカ「許されるわけがないだろう……」チラッ

天馬ヒノカ「……イ」

金鵄ヒノカ「ああ、そうだ……。その手があったな、あいつはまだそれを信じているのなら……」

金鵄ヒノカ(信じさせてやればいい、私にはもうわかっていることを、あいつは何もわかっていないのだから、それを今ここで分からせてやるのが一番だ……)

天馬カムイ「……」

金鵄ヒノカ「アサマ、セツナ。予定を変更する、私と共に来い。ここで待っていても、もう意味は無いからな……」

アサマ「……」タッ

セツナ「……」タタッ

金鵄ヒノカ「……」

天馬カムイ「……」

金鵄ヒノカ「ふふっ、行くぞ」バサバサッ

金鵄ヒノカ「……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆◆◆◆◆◆

レオン「カムイ姉さん、奥にいたヒノカ王女の護衛がいなくなっているみたいだ」

カムイ「え?」

アクア「どうやら、こちらに向かっているみたい。こちらをこのまま押し潰すつもりかもしれないわね」

レオン「この戦力差ならそれもありかもしれない。だけど、その分後方はがら空きになるだろうから、そこが弱点にもなりえるよ」

ハロルド「なるほど一気に突破し、ヒノカ王女を確保できれば良いということだね」

サクラ「ですが、敵陣を抜けてしまった人を援護することはできません。もしも、敵に包囲されてしまったら」

カムイ「だとしても、私はわずかな可能性に賭けたいんです。ヒノカさんはまだ、完全に飲み込まれていないはずだと……」

カムイ(だから、ヒノカさんは私に止めてくれと言ったのかもしれない……。動かないそのうちに止めを刺してほしいと……)

カムイ(でも、それを私は認めません。あなたの命を奪ってこの戦いを終わらせるなんて答えを、私は認めません……)

カムイ「……」

アクア「カムイ、大丈夫?」

カムイ「大丈夫です、アクアさん」

レオン「それで、どうするんだい、姉さん。この攻勢なら耐えられないわけじゃないから、カミラ姉さんが戻ってくるまで持たせることはできると思うけど」

カムイ「……おそらくそうするのが一番だとは思います。でも、僅かでもチャンスがあるのなら、私はそれに賭けたいとも考えているんです」

アクア「カムイ……」

レオン「まったく、姉さんは本当に無茶ばっかり言うよ」

カムイ「すみません」

レオン「まぁ、カムイ姉さんが無茶をするのは今に始まったことじゃないけどさ。となると、一気に畳みかけて突破するしかないかな。次の敵陣は迎撃するとして、次は敵の動きを待たずこちらから仕掛けるっていう形にもっていくしかないかな。さすがに護衛も無しに一人だけで敵陣最奥に踏み込むのは自殺行為だから、誰か護衛を付けてくれればそれでいいよ」

カムイ「レオンさん、いいんですか?」

レオン「ああ。僕はカムイ姉さんを支えるって決めたんだ、だから気にしないで。それに出来るなら僕だってヒノカ王女を救いたい。長く続いてきた国同士の戦争は終わっている。これ以上の血が流れる必要なんてない」

カムイ「ありがとうございます」

レオン「よし、サクラ王女」

サクラ「はい、レオンさん」チャキッ

レオン「まずはやってくる敵を迎撃する。もう、敵はそこまで来てるみたいだからね」

サクラ「わかりました。左の敵は任せてください」

レオン「わかった、それじゃ僕は右をやる。いくよ!」シュオンッ!

サクラ「はい!」チャキッ パシュシュッ!

 ドススッ
  ドゴンッ ドゴゴンッ!

謎の兵士たち「……」ピタッ

サクラ(敵の動きが止まりました!)

レオン(よし! 敵後続も硬直してるし、側面が丸出しの隊列もある。狙うならあそこだ!)

レオン「姉さん、あそこの敵陣を攻撃する。崩れた隙を突いて一気に抜けるんだ」

カムイ「わかりました。アクアさん、一緒に来てくれますか?」

アクア「ええ、ちゃんとサポートするわ」ダッ

謎の兵士たち「……」ダッダッ

ハロルド「む、動きを止めた奴らが動こうとしているぞ」

レオン「ハロルド、敵の先頭が動き回らない様に邪魔をしてくれ。その間に、僕とサクラ王女で姉さんたちを援護する

ハロルド「ああ、任せたまえ! ほら、この私が相手だ!」ダダッ!

謎の兵士たち「……」チャキッ

ハロルド「はっ、せいやああっ!」ブンブンッ

レオン(よし、ハロルドに敵の興味が集中している。これなら!)

レオン「サクラ王女、準備を!」

サクラ「いつでもだいじょうぶです!」

レオン「よし、敵の戦列に穴をあけるよ。喰らえ、ライナロック!」シュオンッ

サクラ「行きます!!!」チャキッ キリリリリッ バシュンッ!

 ヒュオオオッ ドゴンッ ザシュシュッ!
  ドサササッ

レオン(敵の戦列が抜けた! これなら――)

カムイ「そこ、抜けさせていただきます!」タタタタタッ

アクア「カムイ、左から敵よ!」

カムイ「!」

謎の鍛冶B「……」ブンッ

カムイ「悪いですが、あなたたちに構っている時間はありません。アクアさん、一気に駆け抜けましょう」キィンッ ドゴンッ

アクア「ええ、はあっ!」タッ ブンッ

 ザシュッ ドサリッ

カムイ(このまま――!!)

 パシュシュッ!
  トススッ……

金鵄ヒノカ『カムイ……』チャキッ パシュンッ!

カムイ「あなたに用はありません、こちらの動きにもう少し早く気づけばよかったですね。ここは抜けさせてもらいます!」キィン!

アクア「カムイ、早く!」

金鵄ヒノカ『……』チャキッ キリリリッ

レオン「それはさせない!」シュオンッ バシュン

レオン(当たらなくてもいい、威嚇さえできればそれで十分だ。攻撃意識を逸らせればそれで十分だ)

金鵄ヒノカ「!」バサバサッ サッ

レオン「そう何度もやらせるつもりはないからね。サクラ、姉さんたちは?」

サクラ「はい、姉様たちは敵陣を突破出来たみたいです!」

レオン「よし、このまま継続して攻撃する。敵陣の再構築を妨害するんだ」

サクラ「は、はい! ……あ、あれ?」

レオン「どうしたんだいサクラ王女?」

サクラ「さっきまで崩壊していた敵陣の隙間が……。見当たらないんです」

レオン「え!?」

レオン(そんな馬鹿な。あれほど執拗に魔法で攻撃を続けたんだ。それに先ほどの場所に敵は多くいなかったはず、すぐに構築できるはずが――)

 タッ
  タタッ

謎の兵士たち「……」チャキッ!

ハロルド「む!? これは一体何が起きている!?」

サクラ「敵の戦列が、道を完全に塞いでます。さっきとは比べ物にならないくらいの厚さです……。こんなの崩せません……」

レオン「まさか、嵌められたのか僕たちは……」

金鵄ヒノカ『そういうことだ』バサバサッ ドスンッ

 ザッ ザザッ

アサマ「……」

セツナ「……」

サクラ「アサマさんにセツナさん……それに」

レオン「ヒノカ王女……」

金鵄ヒノカ『ふふっ、まんまと引っかかったのか。あんなにも分かりやすくしていたのだから、少しは警戒すると思っていたのにな。結局、あいつはわずかな希望しか目に無かったという事だろう』バサバサッ ドスンッ

サクラ「ヒノカ姉様……」

金鵄ヒノカ『ふふっ、お前たちの信じるカムイはどうしてこんなにも愚かなことを続けられるのだろうな?』

サクラ「ヒノカ姉様、カムイ姉様はあなたを助けるためにここまで来たんです。それをどうして……」

金鵄ヒノカ『助ける。助けるだと? ならなぜ、あの場所で私たちの手を取ってくれなかった? どうして私を置いて行った? あそこで、カムイが選んでくれたのなら、それだけで十分だったというのにな……』

サクラ「それは……」

金鵄ヒノカ『ふふっ、サクラ、私はお前が羨ましかった。何も考えず、ただ信じるカムイの下に向かったお前がとても羨ましかったよ。私もそうできたら良かったのかとも思った。でも、そんなものは所詮ごまかしだ。もう、知っていたんだ私たちにとっての家族だったカムイはもういない。いるのはただカムイの皮を被っただけの他人で、もう守る価値もないものだということを』

サクラ「そんなことありません。カムイ姉様は私たちの家族じゃないですか。ヒノカ姉様だって、カムイ姉様が帰ってきてくれた時、とてもうれしそうにしていたじゃないですか……」

金鵄ヒノカ『ああ、うれしかったよ。あの日、カムイが戻ってきてくれた日はとてもうれしかった、これですべて元通りになると思った。だけど、それは間違いだった。あいつは私の手を払い続けた。その先もずっと払い続け、今になって手を伸ばして来た。今さら手を取るなら、どうしてもっと早く取ってくれなかった?』

サクラ「ヒノカ姉様……」

金鵄ヒノカ『そして、あいつは私の守るものを否定した。そんな手をどうして取ることができる? 私の守るべきものを奪う相手など、殺す以外にほかないだろう?』

レオン「なら、こんな風に話をしている暇はないと思うけどね。この状況はお前の方が不利だ。なにせ――」

金鵄ヒノカ『もう一人の私のことだろう? 安心していい、お前の懸念に意味などない。むしろそれに気づいた時、お前たちがどれだけ慌てるのか。それが楽しみでしょうが無いよ』

レオン「え?」

金鵄ヒノカ『あいつも理解するさ。私の守るべきものを否定してまで信じた希望は、結局あいつだけの淀んだ幻に過ぎないということを……』

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

カムイ「はぁはぁ……アクアさん、敵の追手は!?」

 タタタタタッ

アクア「大丈夫、いないみたい。レオン達がうまく引きつけてくれているのかもしれない」

カムイ「なら、この機を逃すわけにはいきません」

カムイ(カミラ姉さんたちがもう少しで到着してくれるなら、レオンさん達も大丈夫なはず。後続がこちらに追いつく前に、私はヒノカさんを!)

アクア「……! カムイ、あそこよ!」

カムイ「!」

天馬ヒノカ「………」

カムイ(他の気配は何処にもありません。レオンさん達が耐えきれなくなる前に、ヒノカさんを玉座に座らせることが出来るかもしれない……)

アクア「カムイ、わかっているかもしれないけれど。もしも……」

カムイ「アクアさん、今は悪い方に考えるのをやめましょう。ここまで来たんです、もう、するべきことは一つしかありませんから」

アクア「……そうね、ごめんなさい」

カムイ「いいえ。本当はそういったことを考えた方がいいとは思います。でも……」

カムイ(それを思ってしまったら、私の目指している場所が見えなくなってしまいそうで……)

カムイ「……」

アクア「カムイ……」

天馬ヒノカ「…カ…ムイ、なのか?」

カムイ「ヒノカさん!」

天馬ヒノカ「……ああ、カムイ……」

カムイ「大丈夫です、今行きますからね」

アクア「どうやら意識はあるみたいだから、このまま玉座まで――」

 ピチャンッ ズオオッ!

謎の兵士「……」ダッ!

アクア「カムイ!」ダッ チャキッ

 カキィンッ!

カムイ「アクアさん! っ!」チャキッ

アクア「私の事は気にしないで、早くヒノカを!」

カムイ「ですが……」

アクア「早くして、手遅れになる前に行って!」

カムイ「アクアさん……。わかりました、ここはお願いします」タタタッ

アクア「ええ、任せてちょうだい。はああっ」グッ ドゴンッ

謎の兵士「……」ザザッ ザザザッ

アクア「さぁ、何処からでも来るといいわ」

謎の兵士「……」

アクア「ならこちらから――」

謎の兵士「……」シュオンッ ビチャアアアァ……

アクア「き、消えた?」

アクア(どういうこと? これじゃ私を足止めするのが狙いだったとしか思えない……)

アクア「まさか!!!!」ダッ

カムイ「はぁ……はぁ……」タタタタタッ

 タッ

カムイ「はぁ……はぁ……はぁ……。ヒノカさん……」

天馬ヒノカ「……」

カムイ「あなたを助けに来ました。もう、大丈夫ですよ」スッ

天馬ヒノカ「……カムイ」

カムイ「はい、ここにいます、だから安心してください」

天馬ヒノカ「……カムイ」

カムイ「なんですか、ヒノカさん?」

天馬ヒノカ「ふふっ……」チャキッ

 ザシュンッ
  ポタッ ポタタタタタッ

カムイ「……あ」

 ポタタタタッ

カムイ「……ヒノカさん……」

ヒノカ「……ふふ」

 ザシュンッ

 ポタタッ ポタタタッ……

ヒノカ「馬鹿な奴だ、お前は」ググッ

 ビチャッ

カムイ「あぐっ……」

ヒノカ「言っただろう、私はお前を殺すと、それなのにお前は本当に愚かな者だ……」

ヒノカ「……望んでもいないのに私を助けようとする。その結果が、こうなのだから……」

 ポタタタッ
  ポタタタタッ

ヒノカ「お前は本当に愚か者だ、カムイ……」

カムイ「ヒノカさん、あなたは……ううっ……」

ヒノカ「ふふっ、その顔だ。その顔が見たかったんだ――」

「その希望が潰えていく、惨めで悲惨な顔が…な」

今日はここまで

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