FGOとウルトラマンジードとのクロス
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リク「ハァッ!」
ベリアル「ムゥン!」
その日、宇宙の命運を賭けた一つの戦いが、地球で繰り広げられていた。
悪に染まったウルトラ戦士――ウルトラマンベリアル。数多の敗北を越え、幾度も復活を遂げ、あらゆる世界にその脅威を知らしめたこのウルトラマンは、本来の出身地であるM78星雲の存在しないこの宇宙においても、脅威であり続けた。
――クライシス・インパクト。その昔、ベリアルは超兵器『超時空破壊爆弾』をもって、地球を起点に宇宙を破壊しようとした。そして、ウルトラ戦士達の健闘空しく、超時空破壊爆弾は無情にも作動。
だが、その崩壊は防がれた。伝説の超人、ウルトラマンキングがその身を宇宙そのものと一体化するによって。
しかし、キングがその身を呈して宇宙の修復に当たっている間も、ベリアルは密かに活動を続けていた。自らに忠誠を誓うストルム星人――伏井出ケイを、自らの駒として暗躍させながら。
光の国から、一つで戦局をひっくり返す事が出来るとされる『ウルトラカプセル』と、その起動装置とも言うべきアイテム、『ライザー』の奪取。
そのウルトラカプセルを元にした、怪獣カプセルの作成。
そして――ベリアル復活の為の礎となる、ウルトラマンになり得る生命体模造品の創造。
全て、上手くいっていたはずだった。宿敵であるウルトラマンゼロも、かつて自分を苦しめたウルティメイトイージスを封じられ弱体化した。
途中、伏井出ケイの狂信から来る独断専行や、息子――ウルトラマンジードこと朝倉リクの成長が、緻密に練られた計画にアクシデントをもたらした。だがベリアルはそれすらも挽回し、遂にはケイの持つ位相反転器官『ストルム器官』を我が物とし、更にエンペラー星人とダークルギエルのカプセルを使用する事で、最凶最悪の形態――ウルトラマンベリアル アトロシアスへと強化復活した。
ウルトラマンとも、ベリアル融合獣とも異なる究極生物となったベリアルは、ウルトラマンゼロの最強形態であるゼロビヨンドと戦い、これを打ち負かした。もはや用済みとなったケイの余・計・な・手・助・け・もあったが。
自分に何事かを為そうとしたストルム星の宇宙船も叩き落とし、ベリアルは勝利を確信した。
直後、ジードが乱入するも、これも一蹴。勝利を確信したベリアルだったが……ゼロの決死の行動が、彼の運命を変える事となった。
宇宙と一体化した事で、宇宙中に拡散したウルトラマンキングのエネルギー――カレラン分子をストルム器官によって反転吸収していたベリアルだったが、AIBが開発した分解酵素ガスの入ったミサイルを撃ち込まれた事で弱体化。
そのゼロは倒したものの、今度はM78星雲から飛んできたウルトラの父ウルトラマンケンの妨害。
それによって時間を稼がれ、ウルトラマンジードと再戦する羽目になってしまう。
――自らの遺伝子を持つとはいっても、所詮は模造品。たった19年しか生きておらず、その過程でキングの力の欠片を得ていたとしても、自分には遠く及ばない。そのはずだった。
だが、実際にはどうか。
確かに、弱体化してもなお、ベリアルはジードを圧倒していた。ジードの最初の形態プリミティブと同種の技を使い、自分の方が格上だと、恐怖を刻み込もうとした。
だがジードは、ベリアルの息子たる朝倉リクは、ケンが認めた若きウルトラマンは、決して諦めなかった。
その諦めない心が、思いもよらぬ奇跡を起こす。
キングの幻影がジードの背後に現れたかと思うと、ジードと並ぶように光が集まり――それぞれがジードの別形態となって現出した。
始まりの姿プリミティブ。堅牢なる炎の姿ソリッドバーニング。鋭きを以て打ち破る姿アクロスマッシャー。崇高なる戦士の姿マグニフィセント。運命を変える王の姿ロイヤルメガマスター。
どれ一つとしてジードリクの本当の姿では無い。だがしかし、どれも確かにジードリクであった。
これまでの戦いで築き上げてきたもの、培ってきたもの、そして自らの想いを胸に、五人のジード息子はベリアル父に立ち向かう。
その末にジードはベリアルを元の形態へと戻し、つい先程自らの光線レッキングバーストと、AIBの捜査官ゼナが操る時空破壊神ゼガンの光線の衝突によって生み出された時空の裂け目に、ベリアルを連れ込む事に成功し、そして今に至る。
ジード――朝倉リクは、ベリアルとぶつかり合う度に、自らに暗い感情が流れ込んでくるのを感じていた。
それと同時に、ベリアルの記憶も一緒に流れ込んでくる。
嫉妬の末に強大な力を求めながらも、その力に耐えきれず、光の国を追放された事。
その心の闇に付け込まれ、レイブラッド星人の力により今の姿になった事。
光の国を襲撃し、かつて焦がれた力であるプラズマスパークを一度は奪った事。
後に何度も激闘を繰り広げる事となる宿敵、ゼロと初めて戦い、そして敗北した事。
激しい心の闇と怨念で幾度となく蘇り、別の宇宙にまで悪意を振りまいた事。
自らを甦った死者として操ろうとした愚か者を、自らの手で始末した事。
ケイを含む部下と共に、クライシス・インパクトを起こした事。
怒りや悲しみ、憎しみといった膨大な負の感情に彩られた過去を垣間見たリクは――父親であるベリアルと繋がった精神世界で、彼を抱きしめた。その目から涙を流しながら。
リク「何度も何度もあなたは生き返り……深い恨みを抱いて……」
奇しくもそれは、かつて初めてベリアルと戦った時と、同じような構図だった。
あの時はベリアルに吸収され、そしてリクの孤独を慰めるように――実際にはジードを完全に取り込む為に――ベリアルがリクを抱きしめた。
あれが本心から来るものだったのか、それは分からない。
だが、例え本心でなかったとしても、そう振舞ってただけだとしても構わない。
あの時のベリアルは、確かに自分の父親だったのだから。
だから――
リク「疲れたよね……もう、終わりにしよう……」
戸惑うベリアルの背中から、異形の宇宙人――恐らくは記憶にあったレイブラッド星人、その怨念――が抜け出していく。
すると、彼の身体から立ち昇っていた禍々しいオーラが消え、その肉体に変化が起こる。……否、変化ではない。ただ元に戻っているだけ。
禍々しい爪が。吊り上がった赤い目が。異常に盛り上がった筋肉が。何より赤と黒の体色が。
レイブラッド星人の怨念が抜け落ちた事で、全てが光の戦士だった頃の彼アーリースタイルへと戻っていく。
しかし、それはあくまでも精神世界だけでの変化。
ベリアル「分かったようなことを言うな!」
時空の裂け目で戦うベリアルは、なおも闇に身をやつしたまま。
だが、その言葉に余裕はない。邪悪の権化だった頃とは打って変わり、今の彼はまるで恐れ、抵抗しているかのようだった。
――恐れている? 誰を?
ベリアルは、その考えを振り払うように、腕を交差させた。左腕は水平に、右腕は垂直に。そして、手の平を忌むべき敵たるジードに向ける。
ベリアル「ヌゥアァッ!」
唸りと共に、手の平から赤いプラズマと共に闇の光――デスシウム光線が放たれる。
それに対抗するように、ジードも瞳を光らせ、腕を交差させる。
リク「レッキングバーストォォォォ!!!」
今の彼を形成する二本のウルトラカプセル――初代ウルトラマンの光と、ベリアルの闇が絡み合い、縦に構えた右手に集まる。そして、ベリアルと同様の赤いプラズマと共に、ベリアルとは対照的な黒混じりの白い光の光線が放たれる。
ぶつかり合う、光と闇の二つの光線。
光線同士の競り合いで火花が飛び、周りの空間が俄に歪む。
互いに譲らぬ攻防。それまでのジードであれば、ベリアルとの純粋な力の差で押し負けていただろう。
だが、今のリクに負ける気はない。今のリクなら、負けはしない。
――この一撃で、終わらせる。
その確固たる意志が、遂にベリアルの光線を押し返す!
ベリアル「ジイィィィィィドォォォォォォ!!!!」
怨嗟の声を上げ、光線が衝突したベリアルの肉体が爆ぜる。
――終わった。
そうリクが確信した瞬間だった。
ベリアル「ま、だ、ダァァァァァ!!!」
リク「ッ、何!?」
爆ぜたベリアルの身体の中から溢れ出る闇が、ベリアルの顔を形作る。
そしてそれは、真っ先にジードの方へと向かって行く。
咄嗟に両腕をクロスさせて防ごうとするジード。だが、ベリアルの残滓はジードを襲う事無く通り過ぎると、時空の裂け目内に出来た空間の歪みへと飛んでいく。
リク「ま、待て!」
揺らぎの中にベリアルが逃げ込もうとするのを、ジそードが追う。
その先にあるのは――
今日はここまで。
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