北上「我々は猫である」 (489)



北上「我輩は猫である」
北上「我輩は猫である」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1500349791/)
の続き。
ここから読み始めた方への配慮は多分出来ていないのでこちらも読んでくれると嬉しいです。
凄く嬉しいです。

随分と長くなったしまだまだ長くなりそうですが絶対に書ききってやるので何卒


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1521225718

54匹目:招き猫






験担ぎ。おまじない。儀式。神頼み。願掛け。

良い結果を出そうと、あるいは悪い結果を避けようと人々は様々な方法で何かにすがる。肖る。

例えば私達の艦娘に関わるものでも千人針とか幸運艦の一部を御守りにするとか、オスの三毛猫を乗せるとか。

効果の程はともかくそういった気持ちは分からなくもない。

猫といえば、招き猫なんかもそうだ。

北上「えいっ」

招き猫は右手を挙げていると金を、左手を挙げていると客を呼ぶという。

この手、というか前足は己の獲物を捕らえるものであって別に金なんかを呼ぶものではないと声を大にして言いたいところである。

第一猫に小判などとバカにしておいて困った時は金を呼ぶと奉る辺人間は本当に都合がいい。

なんて心で悪態をつきながら差し出されたスマホの画面中央を右手人差し指で触れ、そのまま下に下げる。

するとボールが画面の上に飛んでいき代わりに金の卵が転がってきた。

阿武隈「…」ドキドキ

北上「お、なんか虹色だ」

阿武隈「ホントですか!?」パシッ

恐ろしく早い手際でスマホをひったくられた。阿武隈のだしいいんだけど。

北上「どうだった?」

阿武隈「…被りました」orz

北上「あっそう」

阿武隈「うぅ…なんで来ないのぉぉ…」

北上「そんなもんでしょ」

宝くじで一等狙うよりはマシ程度のものだろう、多分。

阿武隈「北上さん!もっかい!もう1回お願い!」

北上「えー無理だって。というか無理だったじゃん」

阿武隈「星5は出たからきっといけます!いって!」

北上「んな無茶な」

阿武隈「今日の北上さんならいけます!」

北上「そういえば今日の占い2位だったっけ」

阿武隈「いけます!」

ガチャ。

もちろんガチャガチャの事ではなくいわゆるソシャゲというやつである。

金だけが貯まっていきやすい艦娘にソシャゲが大人気であるというのは以前にも言った気がするけど、

その金がもっとも注ぎ込まれているのがガチャというやつだ。

北上「はぁ…」

その後足の指までつかって5回ほどガチャを引かされた。

結果阿武隈が灰になって部屋(しかも球磨型の部屋)で倒れたので放置してきた。

北上「出るわきゃない」

ガチャにも旬がある。

基本的に四季とバレンタインやクリスマスなどのイベントに沿っているらしい。

今の時期だと秋の何かなのかな。

響「あ、いたよ。皆」

北上「ん?」

曲がり角から出てきた響が私を指して言った。

皆とは?

暁「ほんと!?」ヒョコ
雷「見つけた!」ヒョコ
電「なのです」ヒョコ

北上「うおっ!」

ろっくの ぐんだんが あらわれた 。

さんにんは ガチャをひいてほしそうに こちらをみている 。

きたかみは どうする

たたかう
>にげる

北上「南無三!」ダッ

雷「あっ!」
暁「逃げた!」
電「逃がすな!」

響「了解だよ」サッ
北上「げっ」

しかし まわりこまれた 。

まあ別にはっきりと引きたくない理由があるわけでもないからいいのだけれどね。

それぞれのスマホで10連を数回引かされた。

ちなみに結果として暁が当たりを引いて電雷はダメだった。

響は既に自力で目当てのものは出したらしい。

電「その運よこすのです!」コチョコチョ

暁「アハハハダメェそこはダメアハハハ」

雷「ほらほら!これでもかー」コチョコチョ


北上「あれ大丈夫なの?」

響「死にはしないさ」

相変わらず怖いことを言う。

やれやれだ。

このまま鎮守府を彷徨いていたら何回引かされるか分かったもんじゃない。

ここは提督室に避難しておこう。

北上「北上さまが入りますよー」ガチャ

提督「おー北上。丁度いいところに」

北上「…」

扉を開けかけたところで動きを止める。

北上「提督」

提督「ん」

北上「そのスマホは」

提督「ちょうど良かった。お前にこれ「リセット」おい!」

バタン

ここもか…

北上「とまあ散々な目にあってね」

明石「散々って、別に気にすることでもないんじゃない?」ニコニコ

なんやかんやで1番安全な気がする、工廠。

北上「そう言われたらそうなんだけどさ。でもやっぱ引く度によく分からないけど一喜一憂されるのはなんかね」

明石「北上はソシャゲ、もといスマホに全く関心がないものね」ニヨニヨ

北上「…明石」

明石「ん?」ニヤニヤ

北上「引けたの?」

明石「ピックアップは私を見捨てなかった」ニンマリ

素敵なオリジナル笑顔だった。

北上「よくもまあそこまで熱心になれるものだよねえ。あーいや別に否定するつもりはないんだ。それでもやっぱりお金のかかることだから率直に言うとドン引きというか、ね」

明石「それ課金してる人には基本的にクリティカルな発言だからね」

北上「払う金額と対価は人それぞれの価値観とはいえ数十分に数十万が消えるってどうなのよ」

明石「モノの価値は希少性であがるし、その点で言えば私は納得してるわよ。博打性があるのは否定しないけど」

北上「納得してるなら、まあそうか」

明石「真面目な理由をつけるなら、そうねー。私達が兵器だからとか?」

北上「というと?」

明石「練度や装備があるとはいえ生まれつき私達は性能に限界がある。どんなに努力してもね。だからこそこうして金を払って私ツエーみたいな事が出来るのは魅力的なの、かも?」

北上「もっともらしいね。もっともらしいだけだけど」

北上「ところで夕張は?」

明石「さっき奥の倉庫に入ってったわよ」

北上「何故に」

明石「儀式だって」

北上「あー、あぁ…」

察した。

北上「ところで夕張は?」

明石「さっき奥の倉庫に入ってったわよ」

北上「何故に」

明石「儀式だって」

北上「あー、あぁ…」

察した。

夕張「マイマーリン…」チーン

北上「Oh…」

明石「わー綺麗」

ウィトルウィウス的人体図を知っているだろうか。

名前は知らなくてもダ・ヴィンチ関連の絵で見た事がある人は多いだろうと思う。

円の中に両手足が異なる位置で二人の男性が重ねられていてそれが円と四角に内接している、というものだ。

意味は私も知らないけれど。

まあ、なんというかそれが、倉庫の床に表現されていた。

夕張の体で。

北上「このもう一人分の腕と足なに?」

明石「マネキンよ。艤装とか試着させるやつの」

北上「あーね」

夕張「もうダメぽ」グッタリ

明石「ほらほら起きて起きて」ツンツン

仰向けで目を閉じている夕張をスパナでつつく明石。

なにやらもう片方の手でスマホを弄っている。

夕張「どうして現実は辛く厳しいの…」

明石「目覚めよ。さすれば与えられん」

夕張「ハッ!」パチッ

明石「それ」

明石が夕張の目の前にスマホ画面を差し出す。




夕張「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」ゴロゴロゴロ

両手で顔を覆い物凄い勢いで転がり出した。

北上「何見せたの…」

明石「私にあって夕張に無いものよ」

北上「鬼か」

画面には白いローブと黒い杖を持った青年が写っていた。

明石の顔に愉悦って書いてある。

夕張はしばらく転がり続けた。

夕張「皆にガチャを引いてって言われる?」

北上「うん。何故か私ばかり」

明石「別に運がいいってわけでもないのよね」

北上「特にそんなに出来事はないと思うけど」

明石「なんでかしらね」

夕張「そりゃあやっぱ特別だからでしょ」

北上「特別?」

夕張「何回引いても同じ結果しか出ないから何か特別な方法を試す事で違う結果を出したいと思うわけよ」

明石「凄い説得力」

北上「でも私が特別って?」

夕張「スマホを持っていないこと」

夕張「北上は特に意識してないだろうけど、今どきスマホを持ち歩かないって結構異端よ異端。だからこそ物欲センサーをすり抜けるのでは!と思わずにはいられないのよ」

北上「なるほど。凄く納得させられた」

明石「それはそうと基本的には連絡用なんだから持ち歩きなさいよ」

北上「何かを身につけるって割とストレスなんだよね」

夕張「慣れよ慣れ。そのうちパンツと同じくらい身につけて当然になるわ」

北上「つまりたまに身につけないということか」

夕張「ノーパンの事は過去に置いてきてほしい」

明石「というか気づけば心臓と同じくらい身につけるのが必然になるわよ」

北上「無ければ死ぬというのか」

夕張「死ぬでしょ」

明石「死ぬわね」

北上「日本の戦線が崩壊寸前になっている…」

夕張「それにほら、私達仕事でもガチャやってるし」

明石「開発建造改修。どれもリアルラック」

北上「アレってなんでランダムなの」

夕張「結局は妖精さん次第だから」

明石「妖精さん曰く、(・ヮ・)あいまいないめーじゆえ、だそうで」

北上「それ違う妖精さんだよね」

夕張「髪の色的に明石が私ちゃんか」

明石「私が妖精人間か~。夕張は?」

夕張「んー、助手?」

明石「アロハシャツ買おっか」

北上「それはいいから」

明石「まあそんなわけで改修や建造が上手くいかなくても私達のせいにしないで欲しい」

夕張「むしろどうにか成功率をあげようと日々努力しているのに一向に報われない私達を労って欲しい」

北上「ガチャも出ないしね」

明石「日頃の行いなんて結局運には関係ないのよね」

夕張「死にたい…」

北上「むしろ日頃の行いが悪いから?」

明石「それだと私が出てるのがおかしいじゃない?」

北上「そんな堂々と自分は日頃の行いが悪いと宣言されても」

夕張「死にたい」

明石「不運と踊っちまったのね」

夕張「提督も改修や建造でこんなに顔になる時がある」

明石「FXで有り金全部溶かす人の顔」

北上「リアルだからねそっちは。余計に辛いでしょ」

明石「北上が来る前とかも中々悲しい顔してたわよね」

北上「私?なんで」

夕張「大井ちゃんと二人で来ねー来ねーって嘆いてた」

明石「球磨型も丁度揃うところだったしね」

夕張「今日こそは!って二人で変な儀式してダメだったらワーキャー喧嘩して」

明石「仲良いよねぇ」

北上「前からあんな感じなんだね」

夕張「そうそうそう」

明石「ところで北上ってスマホ何処に置いてるの?」

北上「部屋、だと思うけどどうだろう。最後に見たのがいつかも覚えてないや」

夕張「連絡とかどうしてるの…それ」

北上「大体大井っち経由。もしくは直接呼び出し」

明石「携帯しよう携帯を」

北上「携帯ねぇ」

夕張「えーっと、あホントだ。部屋にあるぽ」

明石「てことは一応充電は生きてるのね」

夕張「ほぼ新品未使用のバッテリーだものね」

北上「ちょ、なんでわかんのさ」

夕明「「GPSで」」

そんなさも当たり前のように部屋単位で位置特定できることを暴露されても…

夕張「というか図書室で使ってないの?」

明石「あ~そういえば図書カードアプリ入れたんだっけ」

北上「管理者権限って事で適当に持ち出してる」

夕張「これは酷い」

明石「さんはい」

夕明「「これは酷い」」

北上「何も二回言わなくても」

夕張「大事な事なので」

北上「まーほら、スマホがないってのも悪い事ばかりじゃないしさ」

夕張「ほほう」

明石「例えば?」

北上「例えば、例えば…社会問題ともなっているスマホ依存やSMSによる人間関係問題などに悩まされずにすむじゃないか」

夕張「私達社会とは無関係だし」

明石「問題とともに上司からの連絡まで絶ってどうするのよ」

北上「…スマホからは実は有害な電波が」

夕張「どんなに有害でも敵の砲撃よりはマシでしょ」

北上「くそうこれだから理系は」

提督「おーいたいた」

夕張「ありゃ提督?どーしたんですか」

提督「北上を探してたんだよ」

北上「私?なんでさ」

提督「お前が連絡手段を持ってないからだ」

明石「ほーらやっぱり持ってた方がいいじゃない」

北上「うー、ごめんなさい」

提督「別にいいさ。そう悪い事ばかりでもないしな」

夕張「例えば?」

提督「た、例えば?例えばー、例えば君が傷ついて」

明石「挫けそうになった時は」

北上「必ず僕がそばいて」

夕張「その姿を撮ってSNSに上げていいねを稼ぐよ」

提督「これは酷い」

北上「やはりスマホは悪い文化だ」

明石「いやそれはおかしい」

提督「さて行くか」

北上「いずこへ~」

提督「提督室。大井もいるぞ」

北上「お、じゃあ行くか」

提督「いなかったら来ない気だったのかおい」

夕張「で、例えばなんなのよ提督」

提督「ほーら行くぞー北上ー」

北上「はいはーい」

夕張「あちょっと!無視しないでよぉ」

提督。これも華麗にスルー。

提督「そういや北上。さっきなんで急に部屋出てったんだ?」

北上「ガチャはもうお腹いっぱいだったから…」

提督「ガチャ?」

北上「ありゃ、違うの?」

提督「俺はただ北上用に腕時計型のスマホとかどうかなと聞こうとしててな」

北上「あー」

早とちりだったか。これは悪い事をした。

北上「大きさじゃなくて常に持ち歩くってのがなんかねぇ」

提督「そこは正直我慢してほしいんだがな」

北上「善処します」

提督「しないやつだこれ」

北上「てへ」

提督「てへじゃねえ」

そう言って苦笑する提督は私の歩幅に合わせて少しゆっくりと横を歩く。

提督室までのそう長くない時間だが、まあ、スマホがないというのも、悪くない。

北上「ところで大井っちはなんで部屋に?」

提督「北上と連絡が取れないんだけど何処にいるか知らね?って連絡したら部屋に来た」

北上「ほほう」

なるほどなるほどそれが例えばの内容だったわけか。

大井っちも私を理由に提督に会いに行くとは相変わらずだねえ。

提督「なにニヤニヤしてんだ?」

北上「いやぁ、今日の占いが良かっただけだよ。2位だよ2位」

提督「ん?北上もおひつじ座?」

北上「ありゃ、提督も?」

提督「俺は先祖代々おひつじ座よ」

北上「なにそれ」

提督「いや代々は冗談だけどな。両親ともにおひつじ座だったんだ」

北上「わお。そりゃ大したカップルだ」

提督「だからどうって話だけどな」

北上「私はここに来たのが春だったからね。テキトーにおひつじ座って事にした」

提督「そんなもんか」

北上「そんなもんそんなもん」

北上「やほー大井っち」ガチャ

大井「もう、どこ行ってたんですか」

提督「ただいま~」

吹雪「おかえりなさ~い」

提督「お邪魔しましたー」
吹雪「待てい」グワシッ


北上「今度はなにやったの?」

大井「装備の開発に資源注ぎ込んだらしいですよ」

北上「あー…」

さっき夕張達が言ってたのはそれが原因か。という事は結果は…


提督「いけると思ったんだよ!占いがそう言ってたんだよ!」

吹雪「なら消費した資源と実際にできたものを一言一句間違えずに読み上げてください」

提督「スミマセンデシタ」

大井「どう思います?」

北上「どうとは?」

大井「あそこでワーキャー言い合ってる二人ですよ」

北上「んーそだねぇ」


提督「確率は偏るんだ!こういう日もあるさ!」

吹雪「それでしばらく開発控えるならいいですけどどうせ日を置いたらまた大量に注ぎ込むじゃないですか」

提督「何を根拠に」

吹雪「過去の事実」


北上「ガチャは悪い文化」

大井「おあとがよろしいようで」

北上「よろしいのかなあ」

大井「あ、北上さんもお茶飲みます?」

北上「飲む~」

用法用量を正しく守ろう。

ご指摘ありがとうございます。完全に失念してました。

徹子の部屋?
徹子の部屋…
徹子の部屋!(納得)

56匹目:猫とサンマ





秋刀魚。

秋に捕れる美味しいお魚。

魚特有の初見殺し的読み方。

なんだよ秋の刀の魚って。

意味を聞けばなるほどと思わなくもないけど、それを並べてサンマとは読まんでしょと。

ところでこのサンマ、かどうかは定かではないけど、意外な所で使われていたりする。

球磨「行くよ」

多摩「来いにゃ…」


球多「「三!式!弾!」」

掛け声とともに出されたのはチョキとグー。

球磨姉の勝ちだ。

カウントは球磨姉が3で多摩姉が2。つまり

球磨「勝ったぁぁぁあ!!!」

多摩「ニャ…にゃぁぁ」orz

木曾「はい球磨姉の勝ち」

大井「では多摩姉さんお願いします」

多摩「ニャァァ…」

北上「頑張って~」

サンマ。

及びごーま。

じゃんけんの一種である。

ジャンケンポンのリズムでさーんーま、ごーおーまと掛け声を出しながらじゃんけんをするものだ。

では一体何がじゃんけんと違うのかというとサンマは3点先取。ごーまは5点先取の勝負なのだ。

3マ、と5マ。雑だ。だけどわかりやすい。

どちらかが規定の回数勝つまでじゃんけんをする単純なルール。

1回きりのじゃんけんより心理戦の趣が強く読み合いのレベルが高いのが特徴。

基本的には流れを掴んだものが勝つ。

ちなみに地方によってルールや掛け声に差異がある。

発祥がどこなのかはさっぱり謎だ。

その鎮守府バージョン。

それが三式弾。

ちなみに5回ならごーや。

10回勝負の徹甲弾もあるがあまり好まれない。

多摩「トイレ掃除ってもしかしてやらなくてもいいんじゃないかにゃ」

木曾「残念ながら点検対象だ」

大井「多摩姉さんがサボった場合私達全員の責任なんですからね」

球磨「ふははははは!負けを認めてさっさと行くクマァ!」

ちなみに今回はトイレ掃除をかけた勝負だ。

秋に向けた、鎮守府衣替え兼大掃除の日である。

北上「あれ?一個足りない」

カーテンを付け替えていたのだがあの引っ掛ける部分が1つ足りない。

木曾「一個ズレたんじゃないか?」

北上「ズレた…あーホントだ。うひー付け直しだよぉ」

木曾「テキトーにやるからだろ」

北上「キソー代わって~」

木曾「断る」

北上「ちぇー」ガタッ

台にしている椅子を体の反動で右にスライドさせる。

なんだかサーフィンでもしている気分だ。

大井「あ!北上さん危ないです!ちゃんと降りてください!」

北上「だいじょーぶだいじょーぶ」ガタ

大井「わかりましたともかく一度ストップです。私が支えるのでそれに合わせて移動してください」

北上「はいはい」

相変わらず過保護な。

木曾「おい姉ドアの掃除はいいのか?」

大井「もう終わったわ」

木曾「はやっ!」

北上「よっし終わり」

木曾「いかにも秋って感じのカーテンだな」

北上「でもわざわざカーテンまで変えなくても」

木曾「一応外気を遮断するために分厚いものになってるしビジュアルだけが目的じゃないんだよ」

北上「あーなるほど」

大井「夏は海風が心地よいですけれど、冬は中々堪える寒さになりますからね」

北上「うひー…怖い怖い。しっかり閉じましりとこう」

大井「さてお次は机の掃除ですかね」

球磨「みんな~濡れ雑巾持ってきたクマ~」

北上「よーし机掃除開始~」

「「「お~」」」

北上「と言ってもさほど掃除することもないなあ」

自分の机を濡れ雑巾で磨きながら思った事を口に出してみる。

木曾「上姉は所有物少ないもんな」

北上「お気に入りの本と筆記用具に少しの紙と、あ!スマホここに入れてたのか」

大井「携帯してくださいよ」ヤレヤレ

北上「たは~善処しま~す」

球磨「そういう木曾もそんなに物はないクマ」

木曾「まあこんなもんだろ。球磨姉だってそうだろ」

北上「というか大井っちが多い」

球磨「大井が多い…」ボソッ

大井「…球磨姉さん?」ニッコリ

球磨「なんでもない」キリッ

北上「手伝うよ大井っち」

大井「そんな悪いですよ」

北上「いーじゃんいーじゃん。素直に甘えたまえよ」

大井「じゃあここの棚の物を1回全部下ろして貰っていいですか」

北上「あいよ」

木曾「よし、俺も手伝うよ」

球磨「球磨も手伝うクマ!」

大井「球磨姉さんは多摩姉さんの机を磨いといてください」

球磨「なぁ!怒ってた、やっぱり怒ってたクマ!?」

大井「怒ってません」

球磨「怒ってるクマ!」

大井「怒ってません」

木曾「この雑誌とかはどうする?」

大井「そうねえ。後で捨てるものと分けるからそこに詰んでおいて」

木曾「あいよ。お、これいいな」

大井「手伝うなら読んでないで手を動かしなさい」

木曾「う、サーセン」

北上「わーこれ美味しそう」

大井「!それはですね!ハロウィンのお菓子特集のやつで!」

木曾「おい手を動かすんじゃないのかよ」

大井「北上さんはいいんです」

木曾「開き直りすぎだろ!」

球磨「キソー」

木曾「なんだい」

球磨「これなんだと思う?」

木曾「猫のー、猫の…猫の?置物?」

球磨「でもなんか触るとふにふにしてる」

木曾「多摩姉のか?」

球磨「そう。ホコリかぶってるけどなんか下手に触るのが怖い」

木曾「ライト、とかか」

北上「なになに?うわ…なに?」

球磨「それがわからんから苦労してる」

大井「ここだけ何か硬くないですか?」

球磨「ホントだ。スイッチみたい」

木曾「押しみるか」

北上「どうぞどうぞ」

球磨「爆発しそうでいやだ」

木曾「いや爆発はしないだろ…」

球磨「じゃあ木曾が押せ」

木曾「え……やだ」

球磨「やっぱり怖がってるじゃないか!」

北上「姉ちゃんここはクマを付けて愛らしく」

球磨「木曾に押して欲しいクマァ」
木曾「やだ」
球磨「キサマぁ!」

大井「えい」ポチ


置物「ニャア(低音」

「「「「……」」」」

球磨「多摩はよくわからん物ばかり持ってるクマ」

木曾「あんなもの一体どこから手に入れたんだか。あ球磨姉、引き出しの一番下には手をつけるなよ」

球磨「わかってるクマ」

北上「…一番下?」

球磨「そう、ここだけは開けるなと念を推していた。多摩らしくもない真剣な顔で」

北上「へえ」

ダメだと言ってはいたのか。罪悪感と背徳感が今になって押し寄せてきた…

木曾「日記が入ってるだけだったけどな」

北上「え」

球磨「恥ずかしがり屋な妹クマ」

北上「え」

大井「あ、日記なら私もつけてますよ。北上さん見ます?」

北上「え゛」

まだ 最終海域が 終わって いない

ロリ金剛と同士でっかいのはタシュケられたので…

球磨「見るなとか言われて見ない方がおかしいクマ」

北上「それはおかしいでしょ」

木曾「別にじっくりは見てないさ。流石にそこまでするのは悪いからな」

北上「いや悪いでしょ既に」

大井「ポエムでも書いてるのかと思いましたけどただの日記なら特に言うこともないですね」

当然のようにみんな見ていた…まあここで私がいくら言っても盗人猛々しいというだけの話なのだが。

球磨「せっかくだし北上も見ておくクマ?」

北上「遠慮しとくよ…逆に見る気がなくなった」

木曾「衣替えと掃除はこんくらいかな」

皆日記を見ていながら何も反応がないということは最初の方は見ていないのか。

大井「あら、衣替えなのに衣を変えてなかったわね」

パッと見て日記だと分かったらその時点で読むのを止めた、という感じか。

球磨「衣?服の事かクマ」

まあ下手に目撃者が多いよりはいいか。騒ぎにしたくはないし。

木曾「でも俺達服なんてほとんどないぞ」

球磨「北上なんて特にそうクマ」

北上「へ、私?何が」

大井「服ですよ服」

北上「あぁね。水着も結局借りちゃったものね」

木曾「上姉はその制服と下着だけだもんな」

球磨「球磨達も水着と夏用冬用の服とで、多分10着もないクマね」

大井「私はかなり多いですけど、それでもやはり女性としては少ないほうですね」

北上「大井っちはともかく他は服とか着る機会あるの?」

木曾「ぶっちゃけないな」

球磨「皆で出かけた時に買っただけクマ」

北上「みんな?」

木曾「一度球磨型4人で外に買い物に出かけたことがあってさ」

大井「そうですよ!せっかく5人全員揃ったんですしまた行きましょうよ」

外に遊びに、か。そりゃ悪くない。

球磨「予定が合うか、だ」

木曾「そこだよなあ。提督にはおい姉が頼めばなんとかなるだろうけど」

大井「吹雪が許してくれるといいのだけれど」

北上「あーそこかあ」

割と暇な時間の多い艦娘だが1日暇かと言われるとそうでもない。

まだまだ練度上げ中の私や大井っちは演習やらがあるし、貴重な雷巡の木曾も出番は多い。

練度の高い多摩姉も遠征や出撃などの引率役として意外と忙しい。

木曾「そこへいくと1番暇なのは球磨姉さんだよな」

球磨「クマッ!?」

大井「微妙に出番がないですものね」

球磨「クマァッ!?」

球磨「意外と傷つきやすい球磨ちゃんってよく言われるクマ…」グスン

多摩「ただいまに…どういう状況だにゃ」

木曾「また球磨型皆で外に遊びに行かないかって話してたんだ」

多摩「とてもそうは見えないにゃ」

大井「球磨姉さんはそっとしておいてあげてください」

多摩「お、おうにゃ」

北上「おーよしよし、いいこいいこ」ナデナデ

球磨「クマァ」

川内「球磨型のしょくーん」

多摩「にゃ?」

球磨「川内、どうした?」

川内「相変わらずクマがつかないね。じゃなくて、てーとくが物置小屋に応援求むってさ」

球磨「何かあったのか、クマ?」

川内「予想以上に物置に物があったらしいよ。だから各部屋から1人ずつ人柱を立てるようにって」

木曾「人柱ってお前な…」

人柱は川や海を沈めるためにも用いられたという。私達には少し笑えない話とも言える。

川内「あーちなみに川内型の犠牲者は私ね」トホホ

川内「そいじゃね~」


多摩「だってにゃ」

球磨「さてどうするクマ」

大井「それはもう決まってますよ」

木曾「だな」

北上「やっちゃいましょうかねえ」

多摩「ところで多摩はさっき負けているので今回h「出さなきゃ負けクマ」聞けに゛ゃあ゛!」

北上「5?」

木曾「3で」

球磨「3」

北上「よし」

多摩「よくないにゃ」
北上「出さなきゃまけよ」

「「「「三 式 弾!」」」」




ちなみに、数分の死闘の後普通に木曾が負けた。

駆け抜けた(乙)

甲にしてたらと思うと…
E1でフル改修にした卵焼きが得意な嫁が大暴れしてくれたので満足です
エンディングの存在は、後で知りました…

58匹目:寝る子



猫とは、ねるこ、が語源だとかそうじゃないとか。




北上「…にゃ」

徐々に意識が覚醒していく。

陽炎のように揺れながら思考の奥へと消えていく夢の世界を必死に追いかけようとするが、ある一言が私をいっぺんに現実世界に引っ張り出す。

大井「朝ですよ、北上さん」

北上「…はよ」

大井「はい。おはようございます」

観念して目を開ける。

私の枕元に座り優しくほほ笑みかける大井っちは、紛れもない現実だ。

大井っちは私を起こしてくれる。

無論頼んだわけではない。自主的にだ。

最も私もその優しさにガッツリ甘えているわけで、実際大井っちがいなかったら寝坊の北上と言う不名誉な称号を貰っていた事だろう。

北上「あーあ。出撃なんてなけりゃいいのにさ」

大井「今日は演習ですよ」

そう言いながら優しく私の髪にクシを通す。

北上「似たようなものでしょ」

大井「全然違いますよ」

北上「早起きならどっちも同じだよ。はぁやだやだ、大井っち一緒に二度寝しない?」

大井「着替えここに置いておきますね」

北上「ちぇー容赦ないや」

もっとも毎日起こしてくれるわけじゃない。

あくまで私が出撃やらなんやらで起きなくてはならない日だけだ。

それ以外の日は決して私の眠りを邪魔しない。

つまり

秋雲「お、北上サンおはー。おは?おはじゃないか」

北上「おそよう」

秋雲「あははそれそれ。遅ようだ」

部屋を出て右に真っ直ぐ行くと共有の洗面所がある。

このフロアだと使うのは主に駆逐艦と軽巡だ。

現在時刻は正午、を少し過ぎたあたり。

少し、随分と遅めではあるが私はまだ完全に覚めていない顔を洗っていたところだ。

秋雲「相変わらず遅いっすね~」ジャー

北上「そういう秋雲こそ遅いじゃん」パシャパシャ

お互いまずは顔を洗う。

秋雲「いやぁ、原稿がねぇ…」パシャパシャ

北上「進捗どうですか」ジャー

秋雲「ダメです」キュッ

北上「ダメじゃん」キュッ

水を止め濡れて顔を拭く。顔を濡らすより濡れて顔を吹いた瞬間の方が私は気持ちいいと思う。

秋雲「気づいたらこの手は筆ではなくコントローラーを握っていた」プルプル

北上「自制心を鍛えよう」ホイ

タオルを見失ったらしい秋雲にタオルを渡す。

秋雲「お互い様」フキフキ

北上「私は夜更かししてるんじゃないもの。寝すぎてるだけ」

秋雲「それもそれでどうなんだろ」

北上「自由な時間のために睡眠を削るんじゃなくて自由な時間をいくらか睡眠に
当ててるだけだよ」

秋雲「お、なんかカッコイイ」

北上「だしょ」

秋雲とは夕張明石繋がりで割と話すようになった。

なんというか凄く空気が読める子だ。距離感がうまい、とでも言うのかな。

凄く親しいという訳でもないけれど会話に困らない程度のいい友人である。

秋雲「北上サン今日はお仕事あり?」

北上「ヒトゴーから演習」

今度はお互い髪を結ぶ。

演習もあるししっかり結んでおかないと。ちなみに無い時はポニテか結ばないでほおってる。

秋雲「後2時間半くらいかあ」グッ

北上「適当に腹ごしらえせにゃ。秋雲はお仕事あり?」スルスル

秋雲「今日はなし。明日はあり」シュッ

北上「秋雲先生はお仕事ありあり?」ギュ

秋雲「今日も明日もありありぃ…」

北上「気を落とすならやらにゃいいのに」

秋雲「気は落とせても原稿は落とせんのです…」

北上「だれうま」

三つ編みめんどくさい…やっぱ後で大井っちにやってもらおう。

秋雲「これをやめたら死ぬのよ秋雲は。書く事と心臓が動くことは同義」

秋雲はポニテ、でいいのかな。

長いけど量は少ないので楽そうだ。

秋雲「ほいじゃまったね~」

北上「また~」

秋雲「あそーだ。今度バリちゃん達とアニメ一挙視聴やるんだけど来る?」

北上「うーん内容による」

秋雲「オーキドーキ。決まったら連絡するね」ノシ

北上「あいあい」

たっぷり寝過ごした昼の洗面所。

意外な人と二人っきりになったりしてそれが少し楽しみになっているところがあるのは否めない。

別の日。

北上「おや」

叢雲「あら」

ばったりと。

そんな唐突な出会い。

北上「おはよー」

叢雲「おはよーって、もう昼…あぁおはよう」

どうやら私のボサボサの髪とクシャクシャの顔を見て察してくれたようだ。

しかしそれはともかくとして、

北上「叢雲もおはよう?」

叢雲「えぇ、おはようよ」

そう。叢雲も同じように起きたてほやほやと言った格好だった。

北上「珍しいじゃん」

叢雲とも話す機会はそれなりに多い。

提督といると吹雪がやってきてそこに叢雲もいて、みたいなことばかりだけど。

叢雲「たまにはね。夜遅くまで遊んでたから」

二人並んで髪をとかす。叢雲もかなり髪が長いほうだ、色々大変そうである。

北上「なんでまた?」

叢雲「吹雪が皆と遊びたいーっていうから相手してあげたのよ」

北上「吹雪が?」

叢雲「吹雪が」

そりゃまたさらに意外な。真面目、優等生、学級委員長の擬人化みたいなやつなのに。

北上「雪でも降るのかね」

叢雲「あの子も人の子よ。息抜きくらいしたくなるんでしょ」

北上「息抜きねえ」

そういえば休憩中に隠れてアルコールいれたりしてたっけ。

叢雲「まったく、付き合う身にもなって欲しいわ」

北上「でも付き合うんだ」

叢雲「仕方ないでしょ」

バレないように鏡を利用して隣で髪をといている叢雲を見る。

口元がにやけてることを指摘するとまたぞろどんな言い訳が飛び出すか分からないので黙っておく。

北上「皆って吹雪型の皆で?」

吹雪型というと吹雪叢雲に雪が3人と、あれ?後誰だっけ…

叢雲「いいえ。特型姉妹の皆、よ」

北上「特型」

めちゃくちゃ多かった気がするが。

叢雲「今日仕事の娘もいるし最後まで起きてたのは10人もいなかったけれど」

十分多い。さすが駆逐艦。

北上「姉妹が多いってのも大変だね。それで何やってたのさ」

叢雲「トランプとかワードウルフとか」

北上「どうだった?」

叢雲「初雪が妙に強かったわ…」

北上「なんかわかる」

叢雲「後雷も強かったわ」

北上「それは意外。で主催者はまだ寝てるの?」

叢雲「起きたらいなかったしどうにも普通に秘書艦やってるみたいよ」

北上「え、徹夜してるのに」

仕事人間すぎるのでは。

人の子ではなく艦娘だからこそ出来る芸当、なのかな。

叢雲「ちょっとは寝たと思うけれどそういう問題じゃないわ」

北上「だろうね」

叢雲「だから朝…昼ご飯を食べたらふん捕まえてはっ倒してでも寝かせるつもりよ」

パン、と両手で頬を叩き鏡を睨みつける叢雲。

コワイ。

叢雲「アナタはなんで夜更かしを?」

北上「私は寝すぎてるだけで夜更かしはしてないよ。10時には寝てるもん」

叢雲「その睡眠欲吹雪に分けてあげてほしいわ」

北上「吹雪は欲があっても寝ないでしょ」

叢雲「そうね。だから困るのよ」

北上「さもありなん」

叢雲「よかったら一緒に来ない?私一人じゃ捕まえるの苦労するし」

北上「遠慮しとくよ。なんかあとが怖いし」

叢雲「あら、秘書艦に日頃の鬱憤を晴らす貴重な機会よ?」

北上「別に鬱憤なんかないよ。晴らすとしたら、あー…」

叢雲「ん?なにかあるの?」

北上「いや、やっぱないや」

叢雲「え~気になるじゃない」

北上「プライベートで~す。黙秘権黙秘権」

晴らすなら、謎の期待を少しやめていただきたい。

叢雲「それじゃ」

北上「頑張れー」

叢雲「応援より増援が欲しいわ」

北上「嫌厭しとく」

叢雲「残念」

なんて特に残念そうな素振りもなく手をヒラヒラとさせながら提督室の方へと去っていく。

北上「ふむ」

しかしせっかくの機会だったというのにまた聞きそびれてしまった。

艤装をしていないのにも関わらず叢雲の頭上に当然のように浮いているあのファンネル(仮)。

北上「何なんだろう」

なんなんだろう

特に物語に絡む要素ではないので明言していませんが例えば吹雪、叢雲と聞いて未改造、改造後のどちらが先に思い浮かぶかは人によりそうです。
私は前者は改造後、後者は未改造ですかね。

吹雪「それ何?って聞いたらこれ以上ここにはおれませんって飛び去っていきそうで聞けてないんですよね」

北上「鶴の恩返しじゃあるまいし」

叢雲と会った次の日のお昼。

今度は吹雪と出会った。

吹雪「何せ生まれた時からありますからね」

北上「でも海で泳いでた時は確かなかったよ」

吹雪「お風呂とかの時も消えますね。あと寝る時も」

北上「消える?消えるの?アレが?」

吹雪「消えますね。スッ…って。この前も疲れた~って布団に倒れ込んだ瞬間に消えてました」

北上「なにそれこわい」

吹雪「消える時も現れる時も気づいたらそうなってるんですよね~」

そりゃ聞きたくても聞けんわ。

北上「で、今日はなんでこんな遅くにおはようなの?」

吹雪「またまた~知ってるくせに」

北上「結構騒ぎになったものね」

叢雲の「はっ倒してでも寝かせる」はホントにはっ倒して寝かせる事だったようで、提督室で一悶着あったらしい。

吹雪「ビックリしましたよ。いきなり部屋に入ってきたと思ったらつかつかと私の前まで来てグーパンですよグーパン。右ストレート」シュッシュッ

北上「そんなにハードだったのアレ」

吹雪「めっちゃハードでした。面食らって思わず受け止めちゃいましたもの」

かわせずに受け止めた、という話なのだろうが咄嗟に防御できるあたり吹雪の練度の高さが伺える。

北上「そのまま殴り合い?」

吹雪「まさかー、そこまではやりませんよ」

やりそうだよ君らなら。

吹雪「叢雲がこう続け様に二三発打って防いでる隙に脚を払われてお終いでした」

北上「わーお」

吹雪「カッコよかったですよー。倒れ込んだ私の上に馬乗りになって胸ぐらをグッと掴んでですね、この程度もあしらえないくらいフラフラの癖に仕事なんかしてんじゃないわよ!寝ろ!って」

迫真の演技。やられた張本人だけあって臨場感がすごい。

北上「それ提督の前でやったんでしょ…?」

昨日見た叢雲のコワイ表情を思い出す。

私ならチビるな。

吹雪「私も提督もあまりの事にフリーズしましたね。その後提督がまず話を聞かせろと言うので事の発端を話して、まあ最終的に私に休暇命令がでました」

北上「ちゃんと対応したんだ提督。てっきりビビって何も出来なかったのかと」

吹雪「そこはまあ仮にも提督ですからね、提督」

北上「仮ねえ」

それくらいの信頼はおいているのか。

北上「そもそも吹雪が皆で遊びたいって言うからでしょ」

吹雪「へ?私そんな事言ってませんけれど」

北上「え」

吹雪「ん?あー」

北上「何その分かってしまったみたいな反応」

吹雪「誰から聞きました?」

北上「誰って、叢雲だけど」

吹雪「はーん。はは~ん。へへぇ~」ニヨニヨ

段々と顔が緩んでいく吹雪。

北上「まさかそのまま1人だけ納得して終わりってんじゃないよね」

吹雪「いいでしょう。可愛い妹の可愛い所を教えてあげましょう」フフン

吹雪「一週間くらい前かな。叢雲に何の気なしにポロッと愚痴ったんですよ。そういえば最近妹達と遊べてないなーって」

北上「ちなみに最後に遊んだのはいつ?」

吹雪「春頃に鎮守府で花見した時ですかね。そこからはあまり」

北上「そりゃまた随分時間が空いてるね」

吹雪「そうなんですよ。それで思わず寂しくなっちゃって、という程じゃないですけど」

北上「口から漏れちゃったと」

吹雪「ええ。次の日には言った事も忘れてましたけどね」

北上「叢雲はしっかり覚えてたってわけか」

吹雪「まさかあんなサプライズをくれるなんて、愛がヒシヒシと伝わってきますね~」

北上「案外叢雲の方も寂しかったんじゃない?」

吹雪「ん…それは、考えてなかったですね。毎日アレだけ可愛がってあげてるのに寂しいとは生意気な」プンスカ

北上「可愛がるねぇ…」

主にからかってばかりじゃん。可愛いがるのニュアンスが少し違うのでは。

北上「でもさ、そのサプライズは叢雲が企画したものなんでしょ?気が付かなかったの?」

吹雪「仕事中に白雪ちゃんから今日みんなで遊ぶんだって事を聞いただけだしたから。事の始まりも暁姉妹と漣がきっかけみたいでしたし」

北上「じゃ叢雲は隠してたのかな」

吹雪「多分そうなんでしょうね」

北上「ふーん。となると昨日私に漏らしちゃったのはそれだけ気が立ってた、ってことなのかな」

チラと吹雪の顔色を伺ってみる。

吹雪「そういうこと、なんですかねえ」

流石に困った表情を浮かべる。

吹雪「叢雲も叢雲で、恥ずかしがらずにハッキリと言ってくれればいいんですけど」

北上「確かに。なんでそんなに恥ずかしがってんだろ」

吹雪「思春期かな」

北上「青春の秋か~」

吹雪「反抗期とか」

北上「成長の秋だね」

吹雪「デレ期が来た」

北上「恋愛の秋?」

吹雪「さて、私はもう一眠りしてきちゃおっかな」

北上「まだ寝るの」

吹雪「休めと言われた以上はとことん休まなきゃ。仕事の方はどうやら叢雲がしっかりやってくれてるみたいですし」

北上「秘書艦代理?」

吹雪「ええ。あと提督の世話も」

北上「世話って…」

吹雪「ちゃーんと宿題やってるか監視しなきゃですし」

北上「おかーちゃんかっての」

吹雪「でも叢雲ってお母さんっぽさありますよね、性格は」

北上「言われてみれば。厳しそうなカーチャンだね。最近じゃそういうのバブみっていうとか」

吹雪「バブ?」

北上「ソースは夕張達なんだけどね」

吹雪「わ~テレビとかでやってる流行語大賞並に信用出来ない」

吹雪「それではおやすみなさい」

北上「いい夢を、眠り姫」

吹雪「キスで起こしに来るように叢雲に言っといてください」

北上「それじゃシンデレラだよ」

吹雪「え、白雪姫じゃ」

北上「あれ」

吹雪「まあどれも似たようなものでしょ」

姉妹愛か。それはとても、羨ましいものだ。

北上「おや」

洗面所から水の音がする。

さて今日は誰がいるのだろうか。

ひょいと中を覗いてみると白というよりは銀に近い色の髪を邪魔になるからか後ろで軽く結わえ顔を洗っているちびっ子がいた。

北上「ハラショー」

とりあえず声をかけてみる。

響「それは挨拶じゃない」

水を止め顔を拭いた後所々に黒い跡が残る顔でそう言った。

北上「ってうわ、何その顔」

響「マジックの後だよ。幸いにも油性じゃないみたいだ」

ハラショー、と私の挨拶に返してくれた。

響「電にやられてね」

北上「なんでまた」

響「プリンを食べたのがバレた」

北上「…なんでまた」

響「美味しそうだったから」

北上「情状酌量の余地なしな犯行理由だね」

響「いけると思ったんだけどね」

北上「確信犯か」

大人びているようで、むしろだからこそ根は随分と子供っぽいやつだ。

響「…」ジャー

北上「…」

響「…」ゴシゴシ

北上「…」パシャパシャ

響「…取れない」

北上「手伝おうか?」

響「いや、問題ない」

北上「でもまだ黒ずんでるよ?」

響「流石にこれは、恥ずかしいな」ゴシゴシ

北上「油性じゃなくてよかったじゃん」

響「流石にそこまではしない、と、思うよ」

北上「不安になってるじゃん」

響「悪いのは私だし甘んじて受け止めるさ」

響「…」

北上「…」

無言の空間。

多少意味合いが違うがお互い顔を洗いに来ただけだし特に喋ることもないといえば無いのだが。

響「取れた」

北上「…ホントだ」

響。

普段は4姉妹で行動していて私を見つけ次第寄ってくるウザったい奴らなのだが、

こうして個別で会ってみると対応に困る。

響「どうかな」

北上「キレイだよ」

響「何だか恋人同士の会話みたいだね今の」

北上「その発想はなかった」

北上「そういえばこの前夜通し吹雪を労る会やってたんだってね」

響「ん、知ってたんだ。吹雪の事」

北上「あーうん。叢雲と、吹雪から直接聞いちゃってね。叢雲の方は口を滑らしたって感じだけど」

響「そうか、そうかい…」

北上「どしたの?」

響「当日、叢雲に夜みんなで遊ぼうと提案されてね。勿論内緒にするように言われて」

北上「案の定だね」

響「色々と察しはついたから行動力のある暁達と影響力のある漣を最初に巻き込んで、後は流れる様に皆で集まったよ」

流石に叢雲が任せるだけあって行動が的確だ。

北上「いいねぇ、侘び寂びだねぇ。家族愛ってのはいいものだよ」

響「…そうだね。その通りだと思うよ」

北上「なにさ。さっきから少し顔が怖いよ?」

響「吹雪はね、何も言わないんだよ」

北上「何も?あんなにいつもペラペラと喋ってるのに?」

響「そういう意味じゃない。何も、話してくれないんだ」

北上「何も…」

響「忙しくてそういう機会が少ないのは確かだ。それでも同じ艦隊の仲間で、一応姉妹艦だ。なのに私達を頼ったりしないんだ」

北上「1人で何でもやっちゃうタイプか」

響「そう。でもそうじゃない。頼ったり愚痴ったりする相手がいないわけじゃないんだ」

頼ったり愚痴ったり。それはつまり

北上「叢雲か」

響「そして北上さんも」

北上「え?私?」

響「うん」

北上「いや私ゃ別に頼られたり…」

そういえば謎の期待をされてたっけ。

北上「愚痴られたり…」

色々と話してくれる事は多いかもしれない。

北上「されてるか」

響「ほら」

北上「いやでも、うーん、なんでだろ」

響「それは分からないかな」

北上「なに、嫉妬した?」

響「それも少し」

少しはしたのか。

響「私達がその役でないのは少し悔しいけど、結果として頼ったり愚痴ったりする相手がいるのはいい事さ」

北上「私としてはあんまり頼られてもなあ」

響「私達がやりたくても出来ないことをやってるんだ。頑張ってみてよ」

北上「いじわる」

響「嫉妬してるのさ」

そう涼し気な顔でニヤリと笑う。

響「おねーちゃんをよろしくね」

北上「あっこら。行っちゃった…」

押し付けて行きやがった。

子供っぽくて大人びていてちぐはぐで、人ではなく船でもなく、だから艦娘なのかもしれない。

北上「あれでも艦娘としては私より年上なんだよなあ」

ややこしい。

暁「う~~」バシャバシャ

北上「…」

暁「ん~~!」ゴシゴシ

北上「…どう?」

暁「全然取れない!」

北上「一応聞くけど誰にやられたの?」

暁「響よ!響に決まってるわ!」

北上「デスヨネー」

後日、響はしっかり仕返ししてた。

全然甘んじて受け止めてないじゃん。

暁「あーんこんなんじゃレディ失格よお!!」

北上「…ハラショー」

ダラダラと続いてゆく

書いていて好きになったタイプなので実は吹雪が鎮守府にいなかったり
そもそも特型駆逐艦が叢雲と暁姉妹以外誰もいなかったり

うおぉ…完全なるミス
こっそり電→暁に脳内変換してください

毎日ちょこちょこ書いてると話の中身がズレるのが怖い

60匹目:猫車




猫車、と聞くと日本を代表するアニメ映画に登場する足が何本も生えた猫のバスを想像するかもしれないがコレとは一切関係ない。

猫車とは手押し車の事だ。

何故猫なのかは諸説あるがそれだけ猫という存在は人に近いところにあった事がわかる。

それとは全然話が違うのだが猫は車酔いとかあるのだろうか?

少なくとも艦娘になってからの私が車で酔わない事はこの日に判明した。

そう、その日は案外早く来た。

球磨「みんなー準備はいいクマァ?」

「「「「おー」」」」

球磨姉の前に四人並んで掛け声に答える。

球磨型の長女としての行動に満足したのか誇らしげな笑みを浮かべる球磨姉の後には、

車。

あののっぺりとした、軽自動車?とかじゃなく四角い感じの大きめのやつ。

なんというのだろう。船なので車はとんと分からない。

提督「朝からテンション高いな」ファ~

吹雪「眠いなら寝ててもいいんですよ。どうせ起きてても仕事量変わらないんですし」

提督「覚めるわ~めっちゃ目ぇ覚めるわ~」

多摩「朝から痴話喧嘩とは元気いいにゃ」

木曾「見送りに来た保護者みたいだな」

北上「実際立ち位置は保護者だよね」

北上「でもよかったの?こんなにあっさりと5人で外出なんて」

吹雪「あくまで買い出しって体でですからね。そこの所忘れないよーに」

提督「まあそういうこった。それにこれからは秋刀魚漁で忙しくなるしその前にな」

北上「サンマ?」

大井「北上さーん。もう出発しますよ~」

北上「あいはーい」

振り返ると左後部座席の中から大井っちが手を振っている。

皆も既に乗り込んでいるようだ。

大井「これをこうして、ここにカチッと」

北上「おおーこれがシートベルトかぁ」

多摩「多摩達の身体なら大抵の事故には耐えられるけどにゃ」

球磨「交通ルールの問題クマ。か弱い人間に合わせるしかないクマ」

木曾「球磨姉言い方言い方」

球磨「気にするなクマ。とりあえず木曾はナビの準備頼むクマ」

そう言いながら球磨姉はミラーとかを調節してる。

座席の上から飛び出ているアホ毛がなんだか可愛い。

ちなみに席順は運転手が球磨姉。助手席に木曾。後部座席に右から多摩姉大井っち私だ。

木曾「ん?おい球磨姉、窓窓。助手席の」

球磨「窓?あー今開けるクマ」

見ると助手席の窓を提督が叩いている。

提督「最終確認だ。あくまで今日は買い出し。それを忘れない事」

球磨「はーい先生」

提督「誰が先生だ。買い物メモはさっきスマホで送った通り。追加があったらまた連絡する」

多摩「はーいお父さん」

提督「誰がお父さんだ。後いつでも連絡は取れるようにしとく事。特に北上」

北上「うっ、はーいパパ」

提督「誰がパパだ。ホントに大丈夫なのか大井?」

大井「電話の使い方は昨日みっちり教えたので大丈夫ですよ過保護」

提督「誰が過保護だつか呼び名ですらねえだろそれ。それに過保護はお前もだ」

大井「は?」

提督「あ?」

木曾「もう窓閉めてもいいかな…」

北上「いいんじゃない」

球磨「それでは!」

「「「「抜錨!」」」」


時刻はマルキュウマルマル。

季節は少しづつ色めき立つ木々とは裏腹に心地よい涼しさが戻ってくる秋。

艦娘などと名乗っておきながら1度も船に乗ったことのない私は今日、

初めてのドライブに出た。

木曾「こんな田舎道特に混むこともないし、1時間弱で着くだろう」

球磨「まだ少し暑いクマ?」

多摩「冷房はいいにゃ。窓開ければ事足りるにゃ。後今日はクマはいいにゃ」

球磨「おおそうだった」

北上「いらないの?」

木曾「処世術ってやつかな」

北上「処世術…」

ということは。

北上「2人のそのかっこうもそうなの?」

前に座る2人に向かって朝から抱いていた疑問を投げかける。

球磨「その通りだ」

普段の愛らしい言動から忘れがちなスラリと長い足にジーパンを履き、

毛皮のように広がる髪をこの時期にはまだ少し暑そうなフワフワのモッズコートで隠し、

何よりクリンとした瞳をグラサンみたいな色の伊達メガネで隠している。

木曾「変装みたいなものだけどな」

木曾も同じような服装だ。

グラサンに露出の少ない服。いかした帽子が木曾にピッタリだ。

北上「で、一体どんな意味が」

多摩「多摩が説明するにゃ」

球磨「えー」

大井「2人は運転に集中してください」

ちなみに私と大井っちと多摩姉はラフな格好だ。

(※Availファッション)

多摩「まず想像してみて欲しいにゃ」

北上「ほう」

多摩「いつもの格好の球磨が運転席に座っている姿を」

北上「いつもの」

ともすれば中学生にも見える我らがマスコット球磨姉が運転している姿。

多摩「それをお巡りさんが見たらどう思うにゃ」

北上「アウトだね」ウンウン

大井「そういうことです」

北上「なるほど」

球磨「実際大変だった」

北上「前例あるの!?」

球磨「免許取り立てで調子乗ってたんだ」

大井「前に話した4人で出かけた時です」

多摩「デパートの駐車場前で交通整理してたお巡りさんに見られたんだにゃ」

木曾「あの時の警官の表情はなんというか、正直面白かった」

球磨「でも笑い事じゃねー。こっちは職質されてんだ」

大井「お互いにすごく戸惑ってましたね」

北上「そりゃそうでしょうよ」

怪しいヤツならともかく高校生か中学生4人組が保護者なしでデパートに車で来てる図なんて想像しようにも出来るものではあるまい。

木曾「他にもナンパとか」

球磨「カード使う時もいちいち確認されて面倒だった」

北上「それでその、大人っぽいというか、イケイケな恰好なわけ」

木曾「そ。効果があるかはまだわからないんだけどさ」

球磨「今日は球磨達が保護者役だ」

多摩「クマを取れってのもそういうことだにゃ」

大井「基本的に外部の人間との会話は2人に任せることにしたんです」

北上「色々対策済なのね」

球磨「そういうことだ」

木曾「次の信号右な」

球磨「おう」

北上「免許、もってるの?皆も」

多摩「球磨型は多摩と球磨だけにゃ」

大井「持ってる人はそこそこいますね。最近だと夜戦バカが大型二輪取ったとか」

北上「えぇ…あいつが?」

いつ乗るんだ…

木曾「阿武隈とかも持ってるぞ。大型の」

北上「えぇ嘘ぉ!?」

北上「免許ってそもそも何処で取るのさ」

大井「年に一、二回くらい地方ごとに海軍で合宿があるんです。大きい鎮守府とかをしばらく借りて」

多摩「ここら辺だと、あれにゃ。最近勲章貰って話題になってた白ヒゲの提督のとこを借りるんだにゃ」

北上「へー。結構しっかりしてんだねえ」

木曾「だから見た目的にはアウトでも一応合法なんだよな」

多摩「だからこそ余計ややこしいんだにゃ」

北上「一応成人扱いなんだっけ」

球磨「球磨達は基本的に軍人だ。そして軍人は当然成人。逆説的ではあるけど成人って事になってる」

木曾「あ、次左だから車線へんこー」

球磨「おう」

大井「お酒も飲めますしね」

多摩「北上も持ってるにゃ。身分証明書」

北上「あぁこれね」

大井「それがあれば問題なしです」

木曾「確認したりするのは面倒なんだけどな」

球磨「あの時の警官も、えマジ?これが噂の艦娘?どないする?みたいな感じでえらく手間取ってた」

北上「ご愁傷様」

多摩「ちなみにこれが免許にゃ」

北上「おーなんか少しカッコイイ」

多摩「艦娘のは特別仕様なんだにゃ」ドヤァ

木曾「球磨姉、なんか曲かけるか?」

球磨「別になんでもいい。後ろのレディ達は何かリクエストある?」

北上「語尾だけじゃなくて話し方までその方向でいくの?」

多摩「海、その愛」

大井「相変わらず好きですねそれ」

木曾「CDここに入れてたんだっけ。あ、なんか飴がいっぱい入ってる」

大井「飴?」

木曾「この車って最後誰が乗ってたんだ?」

球磨「提督だと思う。ミラーとか座席が提督仕様になってた」

多摩「あー前にお偉いさんに会いに行く時に乗ってったんだにゃ」

木曾「じゃこれ吹雪のかな」

多摩「多分にゃ」

北上「吹雪の?」

球磨「吹雪のやつ乗り物ダメなんだ」

北上「船なのに?」

球磨「船なのに」

大井「むしろ船だからこそ地上の乗り物が合わないのかも知れませんね」

木曾「あ、酔い止めもあった。間違いなさそうだな」

大井「北上さんは乗り物大丈夫ですか?」

北上「うん。今のところ特になんにも」

多摩「吹雪は車移動の日だけはめちゃくちゃ機嫌悪くなるんだにゃ」

北上「そんなに嫌なんだ」

木曾「相当辛いらしい」

球磨「ありゃ。工事中だ」

木曾「げっ。っと、じゃあ2つ先の信号まで行って左折かな」

なんだろう。木曾と球磨姉のコンビって新鮮で面白いな。

木曾「後ろもなんかあるかもだぜ」

北上「こっちはしまうとこないよ」

他になにかありそうなところはー、ここか?

多摩「飴が欲しいにゃ」

木曾「何味?」

多摩「何があるにゃ?」

木曾「あー、オレンジレモンメロン、イチゴ」

多摩「レモンにゃ」

大井「私もレモンで」

木曾「あいよ」

北上「んー」ゴソゴソ

大井「北上さん何やってるんですか?」

北上「何か挟まってないかなーって」

大井「シートの隙間って結構汚いと思いますよ」

北上「うえ、じゃあ止めとー…あ」

既に割と奥まで突っ込んでいた手を引き抜こうとした時、何かに触った。

大井「あ?」

北上「なんかあった」

大井「何でしょう」

人差し指と薬指を交互に動かしてなんとかそれを引っ張りあげる。

北上「袋みたい。飴かなー。ほら」バッ

ようやくと釣り上げた獲物を大井っちにも見えるようにスっと持ち上げたところ、

コンドーム「やあ」

大井「…」

北上「…」

多摩「どうしたに…わお」

とんでもないものが出てきた。




木曾「どうした?なんか見つかっt「なんでもない!何でもないよ!」「そ、そうね!ただの飴の袋だったわ!」お、おう、そうか」

多摩「いやこれはどう見てもコムグッ!?」
大井「どうぞ私の飴も頂いちゃってください!」

北上「…」

コンドーム。

知識としては知っている。

知っているが、まさかこんな所にいらっしゃるとは…

多摩「なんで言わないにゃ?中々面白そうなものなのににゃ」ヒソヒソ

大井「こんなもの見せてビックリして事故でも起きたらどうするですか!」ヒソヒソ

北上「前の2人絶対凄いリアクションするよこれ。ハンドルもナビも機能しなくなること受合いだよ」ヒソヒソ

多摩「そんなコンドームくらいでそんなまさか…いやあの二人なら」ヒソヒソ

北上「でしょ?」ヒソヒソ

球磨「後ろがなんか静かに騒がしい」

木曾「球磨姉は前見ろ前」

球磨「じゃ木曾が実況しろ」

木曾「ナビはどうする気だよ。とりあえず今入ってるCD流すか」ポチ

球磨「おーこれは」

木曾「俺は知らないなこれ」

球磨「アクセルを全開にしたくなる」

木曾「よし止めるか」

球磨「冗談だ」

木曾「心臓に悪い」

球磨「はーいうぇ~とぅーざーでんじゃぞ~ん」

北上「まさか提督…」ヒソヒソ

大井「いくらなんでもそれは…例えそうだとしても吹雪が許さないですよ」ヒソヒソ

多摩「もしかして外に女がいるかもにゃ~」ヒソヒソ

大井「…」

うわ、凍った。大井っちの表情が凍った。

北上「でもあのヘタレ提督だよ?」ヒソヒソ

大井「…それもそうね」ヒソヒソ

多摩「妙な信用があるにゃ」ヒソヒソ



球磨「木曾ー」

木曾「待てって、今ナビ見てるから」

北上「と、ところでさ、この車って他に誰が乗ってるの?」

木曾「提督以外だと阿武隈とか潜水艦組とか」

北上「意外なメンツしか出てこない」

多摩「阿武隈は遠征メンツで、潜水艦も似たようなもんにゃ」

大井「まとめて休暇が取りやすいグループですからね」

北上「なるほどね」

球磨「後はー夕張が使ってた」

北大「「それだ(それよ)!」」
球磨「うおう!?」

多摩「アイツなら納得にゃ」

木曾「さっきから何話してんだよ」

球磨「気になるー」

北上「着いたら話すよ」

大井「今は運転に集中を」

北上「夕張はなんで?」

球磨「夏と冬に東京に遠征に行ってるらしい」

北上「あー」

木曾「なんでも全国の夕張が一堂に会す日らしい」

北上「なにそれこわい」

下手な深海棲艦の艦隊よりも怖い集まりだ。

多摩「秋雲も一緒にゃ。たまに明石もにゃ」

球磨「多摩だけに」

多摩「うるせえ」

球磨「えっ」

多摩「そろそろデパートが見えてくるにゃ」

北上「アレでかいもんねえ」

球磨「多摩の方の窓から見えるんじゃないか?」

北上「どれどれ」

多摩「あ、アレだにゃ」

北上「大井っちちょっとごめんね」

見づらいので体を大井っちの前に倒して無理やり覗きこんでみる。

大井「危ないですよ北上さん」

北上「へーきへー…」

大井「もう。…北上さん?」

北上「あーいや、なんでもない」

球磨「どうした?」
木曾「おい球磨姉!赤赤!」
球磨「クマア゛!」キキィッ

球磨「すまん…」

多摩「気をつけるにゃ」

木曾「艦娘が事故なんて起こしたらまたぞろどっかの政治家が躍起になって叩いてくるぞ」

大井「これ以上不自由にされるのは勘弁ですね」

球磨「スマンクマ…」

北上「なんか面白いね」

球磨「北上はジェットコースターとか好きなタイプみたいだ」

木曾「球磨姉」

球磨「ハイ」

大井「あら、駐車場って裏から入った方が混んでなくて良かったんじゃなかったかしら」

木曾「そういやそうだったな」

多摩「あの時は迷った結果裏から行ったんだったにゃ」

球磨「じゃ次で左だ」

木曾「だな」

球磨「とうちゃーく!」

木曾「こっからが大変なんだけどな」

多摩「2人とも、半舷上陸するにゃ」

北上「私達?」

大井「駐車のお手伝いです」

木曾「球磨姉駐車ヘッタクソだからさ」

球磨「下手くそとはなんだ下手くそとは!運転する機会も限られてるし仕方ない!」

多摩「はーい降りるにゃー」ガチャ

大北「「はーい」」








球磨「完璧な駐車だった」

木曾「多摩姉の迫真の止まれえ゛!がなかったら擦ってたけどな」

球磨「結果オーライだ」

多摩「やっぱり多摩が運転した方がいいんじゃにゃいかにゃ…」

北上「ちなみに多摩姉の運転スキルはいかほど?」

大井「免許の試験は満点だったそうですよ」

北上「球磨姉は」

球磨「擦った」

北上「なんで受かってんのそれ…」

木曾「身内での試験なんて余程じゃなきゃテキトーに合格して終わりなんだと」

北上「海軍陸の事はテキトーなんだね」

球磨「さて。本題の買い出しだが、基本的にこのデパート内で揃うものだ。まずはそれらを先に買い車に積む。その後思いっきり遊ぼう!」

木曾「手分けするか?」

多摩「数があるし2組に分かれるのが良さそうにゃ」

大井「となると保護者役の2人をそれぞれリーダーにして私と北上さん、多摩姉さんで分かれる形ですね」

北上「当然のように私達は一組なんだね。いいけど」

多摩「なら多摩は球磨と行くにゃ」

球磨「必要数が多いものは運ぶのに人がいるし木曾達に任せる」

多摩「キーはこっちが持ってるし多摩達が先に戻るのが理想にゃ」

木曾「ならそこは随時連絡取り合って調整かな」

球磨「よぉーしそれでは、出発!」




球磨「反応が欲しいクマ」

北上「いや流石に1日に何回もやるのはね」

まさか木曾が多摩を呼び捨てとは

この話は多分やたらと長くなると思う

木曾「炭ってこれでいいのかな」

大井「えーっと、そうね。メモと同じやつみたい」

北上「網あったよ~」

大井「メモの大きさと合ってましたか?」

北上「メモってどうやって開くんだっけ」

大井「すみません私が確認します」

木曾「…とりあえずここで買うものはこれで全部かな」

北上「そもそもさ、口実だってのは分かるけど買い出しって必要なの?」

木曾「それが意外と必要なんだよな」

北上「ほほう」

大井「数や量が大きいものは業者に頼んで鎮守府に運んできて貰いますけど、細かいものまで一々やるのは面倒なんですよ」

木曾「仮にも軍だしな。手続きとか色々ややこしいんだと」

北上「お役所だねえ」

大井「だから細かい買い物はこうして自分達でやった方が楽なんですよ」

木曾「サイズ合ってた?」

大井「バッチリ」

北上「後は箒だっけ」

木曾「確かこの上のフロアだったな」

大井「あら、追加注文が来たわね」

北上「なになに?」

大井「プリンターのインクですって」

木曾「インクはもっと上のフロアだったか」

大井「あ、そっちは多摩姉さん達が向かうみたい」

北上「おや、これは」

木曾「どしたー?」

北上「見て見て~。単装砲!」

銀色のジョウロを持って片膝をつき構えをとる。

木曾「すげえ違和感がない」

北上「あんなんでも分厚い鉄板ぶち抜ける威力が出るんだから不思議だよねぇ」

大井「北上さん!私もできました!」

木曾「おい姉も!?」

北上「お、酸素魚雷かあ」

大井「連装ではないですけど」

ペットボトルを固定するバンドを太腿に巻き私と同じポーズを取る大井っち。

木曾「よし、なら俺はー…こ、これだ!」バッ

北上「…」

大井「…」

木曾「なんか言ってよ」

コースターを片目に当てながら言う。

剣でもマントでもなく眼帯をチョイスするあたり無意識に自分のトレードマークと認識しているようだ。

北上「しかもまさかお買い上げとは」

木曾「これも何かの縁さ…」

大井「何変なところで拗ねてるのよ」

木曾「拗ねてない。しかしアレだな、こうしてお金を払うという行為をするのは新鮮でいいな」

北上「鎮守府じゃ使わないものね」

大井「今じゃ精々ネットで買うくらいよね」

木曾「アレはなんだかお金を払うって感じじゃないよな」

北上「でもこれだって結局カード払いでしょ?」

木曾「店員を通してカードとはいえ直に取引をするってのはなんというかちょっとした感動すらあるぜ」

北上「私はアレだ、釣りはいらねぇよって言ってみたいな」

木曾「それって普通の店でやったら迷惑そうだよな」

大井「ここでいったん荷物をまとめちゃいましょうか」

木曾「そうだな。このままだと持ちにくいし」

大井「マイバッグとか持ってくればよかったわ」

木曾「マイバッグ持ってたのか」

北上「あ、あそこベンチあるよ」

木曾「少し休憩もしてくか」

大井「そうね」

北上「既に妙な疲れが」

木曾「慣れない人混みだからなあ」

大井「こればっかりはしょうがないわね」

北上「ふーどっこいしょ」

木曾「ババ臭い座り方だな」

北上「ババ臭いとはなんだ。これでも生まれは大正なんじゃよ」

大井「そう考えると皆ババアみたいなものなのかしらね」

木曾「そこは否定しておきたいところだが」

北上「そういえばこれどうしよう」

木曾「これ?」

北上「ほら」

近藤さん「やあ」

木曾「…なんだそれ」

北上「避妊具」
木曾「ブハッ!」

大井「よしよし、落ち着いて落ち着いて」ポンポン

木曾「いやっ、ゲホッ!…なんでんなもんを」

大井「車にあったのよ」

木曾「あぁ…それでさっき」

北上「どうせ夕張達か、秋雲辺りがくだらないことに使ってるんでしょうよ」

木曾「むしろそうでなかったら問題だろ…」

大井「こんなもの何に使う気なんでしょうか」

木曾「昔バイブ徹甲弾を作って工廠が半壊した事件があったよ」

北上「えぇ…これ大丈夫?爆発とかしない?」

大井「北上さん、見られてもアレなのでもう捨てちゃいましょう」

北上「そだね」

ベンチから離れゴミ箱へ向かう。

北上「やれやれ、ホントにすごい人だ」

デパート。

その大きさだけあって平日なのに随分と人が多い。

人。

いつ見ても慣れない。

人なんて見慣れているはずなのに、それをはっきりと自分達(艦娘)とは違うものだと認識してしまう。

行き交う人達は誰一人私が艦娘だなんて気づかないだろう。

なのに私は彼ら彼女らが自分と違うとはっきりと認識している。

大井「北上さん」

一体何がそう思わせているのやら。

大井「北上さん!」

北上「わっ、どしたの大井っち」

大井「どうしたじゃありませんよ。まとめ終わったから移動しますよ」

北上「へーい」

人とすれ違う。

人々と行き違う。

人間とは生き方が違う。

北上「あ」

大井「どうしました?」

設置されていた大きなモニターにニュースが流れていた。

そこには艦娘の2文字が確かにあった。

木曾「行くぞ、上姉」

大井「行きましょう北上さん」

北上「あ、うん」

2人の圧力に素直に従う。

口には出さなくとも確かにそういう意図があった。

関わるな、考えるな、見るな。

私達(球磨型)は、いや私達(艦娘)は世界からどう見られているのか。

こうして外には出られるが、なんというか籠の中の猫と言った感じだ。

北上「あ」

木曾「今度はなんだ?」

北上「いやあなんでもないよー」

木曾「?」

やっば、ゴム捨てるの忘れてた。

せっかくだし夕張にこれがなんなのか聞いてからにするか。

正直結構気になるし。

ものによっては大井っちにでもプレゼントしちゃおうか。

多摩「これで全部、だにゃ」

球磨「思ったより量あった」

はじめてのおつかい開始から約2時間。車のトランクがギュウギュウになるくらいには多かった。

木曾「というよりかさばるものが多かったな」

北上「これホントに必要なものなの?」

大井「勿論。多分」

このドクロのお面なんて絶対不要なものでしょ…やたらかさばるし。

球磨「流石にお腹減った」

木曾「だな。もう昼すぎてるし」

大井「逆に人が少なくなって丁度いいかもしれませんね」

多摩「北上、何か食べたいものあるかにゃ?」

北上「んーせっかくだし普段食べないものがいいよね」

木曾「イタリアンとか?」

北上「それいいね」

球磨「となればあそこ一択だ」

大井「どうせならもっとちゃんとしたところ行きません?」

多摩「質は問題じゃないにゃ。のんびり出来るのが1番にゃ」

大井「それは、まあそうですけど」

木曾「決まりだな」

大井「結構上ですね」

地下駐車場から建物のほぼテッペンまで行かなきゃいけないようだ。

北上「何度乗ってもなれないなあエレベーター」

球磨「球磨も慣れたとは言い難い」

多摩「多摩もにゃ」

木曾「お、止まった」

大井「人が乗ってきますね」

北上「はーい多摩姉お口チャック」

多摩「にゃぁ…」

球磨「じゃあ今のうちに午後どこに行くか相談するか」

多摩「!?」

北上「私ペットショップ行きたい」

大井「いいですね。私はまたお洋服見たいですね」

木曾「そういや上の方に映画館出来たらしいぞ」

球磨「おお、名案だ」

多摩「ッ!」ブンブン

北上「多摩姉が何か言いたそうです」

多摩「ー!ッー!フッ!!」ブンシュッサッ

木曾「全然伝わらない…」

球磨「あんまり暴れると周りの迷惑だ」

多摩「…」シュン

大井「行きたい場所話ですか?」

多摩「!」フンフン

球磨「あ、わかった」

多摩「!」キラキラ

球磨「トイレだ」

多摩「…」ギュッ
球磨「イタタタタ取れる取れる髪の毛取れる!」

大井「あんまり騒がないでください」

北上「あー球磨姉のアホ毛が…」

別に語尾を取れば周りから変な目で見られることもなかろうに、何故しないのか。

木曾「さー着いたぞー」

大井「並んでますね」

多摩「いっても2組位にゃ。すぐ入れるにゃ」

木曾「他の店は、同じようなもんか」

大井「なら並んじゃいましょうか」

多摩「…大人5人でいいのかにゃ?」

木曾「あー…まあ一応大人5人だが」

大井「別にお酒を飲む訳でもないし未成年って事にした方が楽じゃないかしら」

多摩「じゃそうするにゃ」

球磨「お姉ちゃんの髪の毛生きてるクマ?大丈夫クマ?」

北上「…そのうち生えてくるよ」

球磨「え?」

「オオイさまー。5人でお待ちのオオイさまー」

大井「わ、私達ですよね」

多摩「だにゃ」

大井「はーい!」

木曾「なんでおい姉の名前で」

多摩「タマもキソもクマも書くと妙に嘘っぽい感じがしてにゃ…」

球磨「確かに…」

木曾「別に落ち込むことではないだろ」

北上「私と大井っちは何となく実際にいそうだよね」

大井「禁煙と喫煙どっちにします?」

球磨「どっちでも」

木曾「空いてる方で」

北上「良かったー早めに入れて」

木曾「思ったより腹減ったなー」

「ご注文はいかがなさいますか」

球磨「どうする?」

大井「ミラノ風ドリア1つ」

「ミラノ風ドリアがお1つ」

北上「ペペロンチーノ」

「ペペロンチーノがお1つ」

木曾「マルゲリータ1つ」

「マルゲリータピザがお1つ」

球磨「ミートソース1つ」

「ミートソーススパゲッティがお1つ」

多摩「…ア」

「はい?」

多摩「アラピアータ1つにゃ!」

「アラピアーt…アラピアータがお1つ」

球磨「あ後ドリンクバー5つ」

大井「凄かったですね」

木曾「プロだな。あの定員プロだったな」

球磨「よく立て直せたものだ」

多摩「代わりに誰か言えにゃ」

というか多摩姉はなぜ頑なに語尾を取らないのだろうか。

球磨姉ほど疎かにするのもあれだが。

木曾「やはり自分の注文くらい自分でしなきゃな」

球磨「そうそう。それくらいできなきゃダメだ」

多摩「意味わかんねーにゃ。あとドリンクバー行くから早くどけにゃ」

大井「私が残っておくので先に行ってきてください」

北上「じゃあ大井っちの取ってきてあげるよ。何がいい?」

大井「ホントですか!ではアップルティーを」

北上「これがドリンクバーというやつか」

球磨「北上分かる?」

北上「これくらいは。あーアップルティーってどこ?」

木曾「お茶はあっちだ。流石にこれは分からないか」

多摩「多摩がやってきてあげるにゃ」

北上「お願ーい」

木曾「午後はどうするかねえ」

球磨「んーもう何気に1時過ぎてるからやれる事は限られる」

北上「車の移動を考えたら8時くらいまでしかいられないものね」

木曾「げっ、コーラ切れてる」

木曾「ただいまー」

北上「入れ方わかんないから多摩姉にやってもらったよ」

多摩「はいにゃ」

大井「ありがとうございます」

多摩「気にするにゃ」

大井「ところで多摩姉さん」

多摩「なんだにゃ?」

大井「1口飲んでみてくれませんか?」ニッコリ

多摩「…」タラリ

大井「…」ニコニコ

多摩「……」ダラダラ

球磨「何か入れたか」

木曾「さっきの仕返しか」

北上「皆が標的というわけだ」

球磨「北上、とりあえずそのタバスコ端っこに隔離しろ」

北上「あいあい」

多摩「不味いにゃ」チーン

大井「それは良かったです」

球磨「さて、午後はどうする」

北上「食べ終わったら2時すぎるかな」

木曾「門限は何時だっけか」

多摩「一応九時頃ってパパが言ってたにゃ」

北上「門限厳しいなあパパは」

木曾「もっと自由にさせて欲しいよなあ」

球磨「可愛い娘達を放ってはおけないんだ。分かってやれ」

大井「だから過保護なんですよ。あの人は」

木曾「そうなると移動に1時間と考えてここを8時にでなきゃならないわけだ」

北上「あと6時間か~。長いようで多分短いんだろうね」

多摩「あっという間にゃ」

球磨「木曾がさっき映画館があるって言ってた」

木曾「ああ。確か最上階にあるとか」

多摩「映画、悪くないにゃ」

大井「映画館なんて行く機会は早々ないですからね」

北上「よし映画館けってー」

木曾「いや何が何時にやってるかにもよるだろ」

多摩「今だと何が旬なのかにゃ」

大井「リアルタイムで映画なんて見ないですからねえ」

木曾「鎮守府で見るのは借りてきたやつだけだもんな。旬な映画と言われても」

球磨「あ、料理がきた」

北上「大井っちのも美味しそうだね」

大井「1口食べます?」

多摩「マルゲリータも良さそうにゃ」

球磨「みんなで一切れずつ分けるか」

木曾「俺のはどうすんだよ!」

北上「あれ、何の話してたんだっけ」

木曾「映画だよ映画。なに盗ろうとしてるんだ多摩姉」

多摩「にゃっ!」ビクッ

球磨「じゃあ映画は球磨が調べておくクマ」

多摩「語尾」

球磨「…調べておく」

多摩「それでいいにゃ」

球磨「別にここなら問題ないだろ」

多摩「意識の問題にゃ」

球磨「自分だけずりぃ」

多摩「普段から蔑ろにしてるくせに何をこだわってるにゃ」

球磨「なにを!」

多摩「やるかにゃ?」

木曾「料理冷めるぞー」

大井「北上さんはペットショップに行きたいんでしたよね」

北上「そうそう。さっき見かけたからさ」

木曾「俺もちょっと行きたいところあるな」

多摩「多摩もペットショップ行ってみたいにゃ」

木曾「猫か」

多摩「猫にゃ。いや猫じゃないにゃ」

北上「紛らわしいね」

球磨「映画はー、ドラえもんとか」

木曾「ネコ型ロボットか」

多摩「猫だにゃ。いやだから猫じゃないにゃ」

北上「何回やるのさ」

球磨「ホラーは?」

木曾「いやだ」

多摩「いやにゃ。あと猫じゃないにゃ」

北上「ダメなんだ」

大井「多摩姉さんが特に」

球磨「海外のは?」

木曾「ヒーローものか」

北上「スターウォーズとか今やってるんだっけ?」

大井「あまりグッとくるものはないですね」

多摩「大井は恋愛ものとかにゃ?」

大井「いえ、特にそういう趣味もないですね」

球磨「ほほう、意外だ」

多摩「意外にゃ」

木曾「意外だな」

北上「意外だね」

大井「えっ?」

球磨「あとは何があるか」

多摩「プリキュア?」

木曾「いや流石にそれはなあ」

大井「私って恋愛ものとか好きそうに見えます?」

北上「割と見える」

球磨「あ」

北上「お?」

球磨「君の名は」

木曾「あー」

多摩「見たことある奴はいるかにゃ」

大井「ないですね」

北上「いいんじゃない?評判良いし」

木曾「時間は?」

球磨「1時間後」

大井「席取れるかしら…」

多摩「それほど混んでるわけじゃないしいけるにゃ」

球磨「よし。球磨がひとっ走り席だけ取ってくる」

木曾「いいのか?」

球磨「それで取れたら時間までここでゆっくり出来るし行くだけお得だ」

北上「じゃあここは球磨姉に甘えちゃいますかね」

大井「そうしましょう」

球磨「ふふん、任せろクマ」ドヤァ

ミートソースをペロリと平らげて颯爽と去っていく球磨姉。

木曾「随分張り切ってたな」

多摩「お姉ちゃんっぽい事したいんだにゃ」

北上「なるほどね」

大井「普段は全然出来てませんからね」

サラリと酷いことを言う。

多摩「その通りにゃ」

北上「まあ確かに」

木曾「何にせよもう少しここでゆっくりしていかないとな」

大井「何か追加で頼んじゃいましょうか」

北上「ピザ分けて食べようよ」

木曾「俺はもう食べちゃったし、フォッカチオとかでいいや」

大井「ではそれで」

多摩「ハンバーグステーキにゃ」

北上「まだそんなに食べるの」

多摩「ピッツァどう分けるにゃ?」

北上「ピッツァ2」

木曾「ピッツァ0」

大井「1で」

多摩「じゃ多摩がピッツァ3にゃ」

北上「さらに食べるか…」

木曾「球磨姉のは?」

多摩「冷めたらもったいないねえから食っちまうにゃ」

木曾「お、おう」

大井「あら、メッセージが…チィッなんだ提督から」

相変わらず反応が怖い。

多摩「なんて言ってるにゃ?」

大井「楽しんでるかーですって」カチカチ

北上「なんて返すの?」

大井「仕事しろ」

ごもっとも。

大井「こんどは球磨姉さんからメッセージが」

北上「どれどれ?」

大井「北上さん。自分のスマホで見たらいいんじゃないですか」

北上「え、なんてゆーかさ。出すのも億劫で」

大井「はあ、まあいいですけれど」ハイ

北上「さんきゅー」

木曾「画像が送られてきたな」

多摩「なんおがおうあ?」モグモグ

木曾「食べ終わってからにしてくれ」

北上「おーチケット取れたみたいだね」

大井「館の中で自撮りしたみたいですね…」

木曾「何してんだ姉さん…なんか周りの人も見てるし」

木曾「後で行ったらぜってー受付の人とかに、さっきの変な人の連れだーって見られるぜこれ」

北上「グラサンつけたイケイケなねーちゃんがやる事じゃないよねぇ」

大井「私達一応あまり目立たっちゃいけないんですけれどね」

多摩「これはお仕置きが必要だにゃ」

北上「お仕置き」

多摩「木曾」ヒョイ

隣の木曾に手を差し出す。

木曾「…え?」

多摩「木曾!」

木曾「いやわかんねえよ」

多摩「タバスコに決まってるにゃ!」

木曾「いやわかんねえよ!」

多摩「これをピッツァの最後のひとつにたんまりかけてやるにゃ」ニヤリ

大井「あまり食べ物で遊ぶとバチが当たりますよ」

木曾「多摩姉、ドリンクバー行くからちょいとどいてくれ」

多摩「にゃ」

北上「あーそっか、ドリンクバー飲み放題か」

大井「北上さんも行きます?」

北上「いくいくー」

大井「何を御所望で」

北上「メロンソーダぷりーず」

大井「了解です」

木曾「鎮守府の食堂にもこういうメニュー増えないかなあ」

多摩「パスタはともかくピッツァは厳しいと思うにゃ」

北上「お」

木曾「メニューが増えた事ってあるのか?」

多摩「何回かあるにゃ。フレンチトーストもそうにゃ」

北上「木曾木曾ー」

木曾「ん?」

北上「チクマー」ベロン

木曾「ブッwww」

多摩「な、なんにゃ…その顔は」

北上「この前食堂で事件があってさ」

木曾「めっちゃ再現度たけえ…ww」

大井「何笑ってるの。はい北上さん」

北上「サンキュー」

北上「で、最後にこんな顔でチクマーってなってたの」

多摩「それほとんど川内のせいじゃないかにゃ」

木曾「まあそうなんだが流れが完璧すぎてさ」

球磨「ただいまクマァ!」

北上「うお、おかえりー」

多摩「語尾にゃ」

球磨「ただいま諸君」

木曾「チケットは?」

球磨「えーっと、それ!」

北上「なぜ胸元から」

球磨「洋画とかにありそうだと思って」

多摩「この中で胸に挟めそうなのは大井くらいだにゃ」

大井「多摩姉さんもできるんじゃ…」

多摩「ちょっとお手洗いにゃ」ガタッ

多摩姉逃げる気か。

球磨「お、ピッツァが!貰っていい?」

多摩「いいにゃ。ご褒美にゃ」

北上「なに、ピッツァって流行ってるの」

球磨「ピッツァはピッツァだ」

木曾「ピッツァだな」

北上「どういうことだってばよ」

大井「前に出かけた時に色々あったんですよ」

北上「色々とは」

木曾「結論から言えば多摩がやらかしたんだ」

球磨「いっただっきまーす」パク

木曾「あ」

大井「あ」

あー。

づほの5周年ボイスしゅごい…

子供の時、食べ物に何か仕込むのは定番でした。
タバスコより塩コショウの方がダメージがでかいです。
まだ続く

多摩「た、ただいまにゃ」プルプル

必死に笑いをこらえている。さては遠くから見てたな。

球磨「ユルサンクマ」

机に突っ伏したまま呪詛の言葉を吐く球磨姉。

木曾「そろそろ行くか」

大井「そうね」

北上「私ポップコーン食べてみたい」

木曾「上姉も結構食べるな」

多摩「会計はどうするにゃ」

木曾「小銭とかないしまとめてでいいんじゃないか?」

大井「普段現金を使わない弊害ね」

北上「細かいのは帰ってからのがいいもんね」

北上「というわけで球磨姉ごちになりまーす」

球磨「クマァ…」

木曾「やっぱ入れすぎだったんじゃないかタバスコ」

多摩「にゃ…」

罪悪感あるならやめときゃいいのに。

球磨「もういい。とりあえずこの残ってるドリンクバーは全部飲んでけ」

北上「はーい」

多摩「律儀だにゃあ」

北上「うわ氷が溶けたせいで殆ど水だこれ」

多摩「ブッ!?ゲホッゲホッ!!」

球磨「ふっはっはー!引っかかった!そいつには同じくタバスコをぶち込んでおいた!」

多摩「き!ゲホッ貴様ァ…」


大井「行きましょう2人とも」

木曾「だな」

北上「慣れてるね2人とも」

北上「球磨姉はともかく多摩姉まであんなにはしゃぐとは」

大井「多摩姉さん外に出るとやけにテンション上がるんですよ」

木曾「気持ちはわかるけどな。らしくないというか、普段落ち着いてる多摩姉も外界の魅力には勝てないのかね」

北上「んじゃ映画館向かっちゃいますかねー」

木曾「あの二人は」

大井「まだ何かやってるわね」

店の入口で店内を振り返る。

ふと、私達のいた所とは逆の方に女子学生のグループが座っているのが見えた。

私達の制服と似たセーラー服。中学生だろうか。

セーラー服ねえ。以前海軍の軍服が元になっていると聞いたな。

何やら一人のスマホの画面を皆で覗き込んだかと思ったら急に爆笑しだした。

女子特有の甲高い声はここまでよく聞こえる。

こりゃ私達も大分周りに迷惑かけてたかねえ。

しかしまあ、なんら変わらないものなんだな。

私達も今まさに女子学生のようにこの世界を満喫しているんだ。

私達だって。

球磨「何ぼおっとしてる。早く行こう」

北上「あーごめんごめん」

2人ともようやく支払いを終えたらしい。

多摩「時間も丁度いい具合にゃ」

北上「よし行ってみよう」

北上「薄暗いね」

大井「映画館っていうのはどこもこうなのかしら」

多摩「眠くなってきそうにゃ」

木曾「買ってきたぞー」

球磨「思ったよりビックサイズがビックだった」

北上「うわホントだ」

木曾「こっちがキャラメルでこっちが塩だ」

大井「北上さん本当にいらないんですか?」

北上「ポップコーンって喉乾くからさ」

球磨「んでこっちがオレンジジュース、コーラ、カルピスだ」

木曾「ポップコーンどうわける?」

球磨「どうって?」

木曾「上姉がいらないとして、4人でこの2つをわけるわけだろ。横一列なんだから2人で1つに別れなきゃ」

多摩「じゃあキャラメルがいい人手を上げるにゃ」

球磨「ん」ノ

木曾「ホイ」ノ

大井「あら」ノ

多摩「塩は多摩だけかにゃ…」

北上「なんでキャラメル人気が」

木曾「塩は普段から嫌という程味わってるからな」

大井「もし身体が人だったら今頃塩分の過剰摂取でぶっ倒れてそうです」

球磨「あ、甘いのが好き、クマ…」

北上「おぉ…」

よもや職業柄だったとは。

多摩「じゃあ今からゲームをするにゃ。負けたヤツが塩行きだにゃ」

大井「ゲームですか」

木曾「ジャンケンとかでよくないか」

多摩「とりあえず木曾。このポップコーンをよく見るにゃ」

木曾「おう」

塩味のポップコーンを1粒手に乗せる多摩姉。

多摩「にゃ」ヒョイ

それを少し上に放り、その後素早く両手をクロスさせながらキャッチした。

多摩「さあポップコーンが入ってないのはどっちにゃ」

木曾「げ、そういうやつか。普通入ってる方が当たりじゃないのか」

多摩「塩を選んだら塩行きという事にゃ」

球磨「大井、今の見えた?」コソコソ

大井「正直さっぱり」コソコソ

実際多摩姉はかなり上手かった。でも

北上「ねえねえ多摩姉」

多摩「なんにゃ」

北上「両手、開いて」

多摩「…なんでにゃ」

北上「まあまあいいからいいから」

木曾「どういうことだ?」

多摩「さ、さっぱりだにゃ!」

球磨「ほれほれ」コチョコイョ

多摩「ニュワッ!」ポロツ


木曾「なんで2つあんだよ」

多摩「バ、バイバイン」

北上「やっぱり猫じゃん」

木曾「完全に俺をはめる気だったじゃねえか」

多摩「ぬぅー思わぬ伏兵がいたにゃ」

大井「北上さんよく気づきしたね」

北上「目は自信があるんだ」

球磨「どうやったんだ?」

北上「上に投げた時に逆の手でもう1個を掴んでた」

多摩「騙す時の基本にゃ。右手を見ろと言って左手で仕込むんだにゃ」

大井「何処で教わったんですかそんな技術」

多摩「提督にゃ。あー、うん、提督だにや」

北上「なんでそこで歯切れ悪くなるのさ」

球磨「何にせよキャラメルは球磨と大井ということで」

大井「そうですね」

木曾「あズリぃ!こういう時だけ躊躇なく妹売りやがって!」

多摩「塩からは逃れられんにゃぁ」

北上「逆になんで多摩姉はそんなに塩好きなの」

多摩「なんでだろうにゃ。なんとなくにゃ」

木曾「猫って塩はあまり良くないんだろ?」

多摩「猫じゃねえにゃ」

球磨「そろそろ時間だ」

大井「スマホはちゃんと鳴らないようにしてくださいね」

北上「大井っちー、これ鳴らないようなってる?」

大井「えっとー…まず電源がついてませんね…」

北上「わお」

木曾「やっぱ連絡取れるようになってないじゃないか…」

木曾「何番?」

大井「3番シアターだから、あそこね」

多摩「ドキドキが止まらないにゃ」

球磨「なんかメガネ貰った」

木曾「おいそれ違う映画のじゃないか」

球磨「なんと!」

大井「ちゃんと戻してきてください」

多摩「これが3Dメガネにゃ」

球磨「ちょっとかけてみる」

木曾「いいのか、勝手に使って」

球磨「おおー」

多摩「どうにゃ?」

球磨「なんか、ぼやっとしてる」

大井「そりゃ普通にかけたら何も起こりませんよ」

なんてくだらないやりとりを眺める。

北上「ほらほら早く入ろうよ」

本当に女子高生にでもなった気分だ。

目覚ましボイス…だと…?

予約は全滅してました






球磨「面白かった」

木曾「内容もそうだけどやっぱ映画館ってすごいな。迫力が違う」

球磨「女版瀧くんはなんだか摩耶を思い出した」

大井「言われてみるとそうですね」

多摩「なら男三葉は天龍だにゃ」

木曾「いやいやそれはねぇだろ」

北上「あー確かに」

球磨「近いものがある」

大井「違和感はないですね」

木曾「あれ?」

木曾「51cm砲で隕石って壊せないかな」

球磨「空想科学みたいだ」

多摩「質量の暴力には勝てんにゃ。何より下からじゃ重力というハンデもあるにゃ」

木曾「すげぇ真面目に返答された」

大井「波動砲なら」

木曾「それは違うヤマト砲だ」

北上「そういや流れ星って見たことないな」

多摩「もうすぐなんたら流星群が来るってテレビでやってなかったかにゃ?」

木曾「そうだっけ?」

球磨「北上はどうだった?」

北上「あーんー、面白かったよ。特に、時間差トリックが、ね」

木曾「あれなー、全然気づかなかったよな」

大井「でも私達も似たようなものですよね」

多摩「確かににゃ。あの戦争から、もう何年なんかにゃ」

球磨「正直イマイチピンと来ない」

木曾「俺もだ」

そう、時間差。

北上が生まれてからもう百年は経つだろう。

北上が死んでからは、この場合何をもって船を死んだと定義するかによるが半世紀以上は経ったはずだ。

北上が消えて、こうしてまた生まれるまでに時差がある。

問題はそこだ。

すっかり忘れていた、というか考えが至らなかった。

大井「次はどこ行きましょうか」

球磨「座りっぱなしで疲れた。少し歩いて周りたい」

木曾「さんせー」

多摩「にゃ~」

大井「なら服見に行きましょう!先に買っておけばその場で着て周れますし」

球磨「じゃそれでいくか」

多摩「北上もいいかにゃ?」

北上「あ、うん」

生まれ変わりというかはわからないが、何にせよ死んでから生まれるまでに時差がある。

じゃあ、私はいつ死んだ。

猫の私はいつ死んだ。

猫の寿命などたかが知れている。

10年も生きれば大往生だろう。

室内であればもう少しいくかな?

最も新しいと思われる記憶から私の飼い主は恐らく50代だろう。

例えば私がその時点から10年もの長期間を生きたとしよう。

そうなると飼い主は60代。彼が寿命で死んでいる可能性は現代においてそれほど高くはない。

問題は私が死に、北上になるまでにどれほどの時が経ったかだ。

これが10年20年ともなれば飼い主が生きている可能性は著しく下がる。

現状でさえ見つけるのが困難なのに生きていなければより難易度が上がる。

なにより、再開が果たせなくなる。

北上「糸でも繋がってりゃいいのに…」

球磨「ん?なんだ、想い人でもいるのか?」ニヤニヤ

北上「そうじゃなくてさ」

大井「糸ですか…」

多摩「何真剣に考えてるにゃ」

木曾「ほら、早く行こうぜ」

別に運命の赤い糸なんていらないよ。

リードでも繋がってりゃそれでいいのに。

【服屋】

大井「ジャン!」バサッ

木曾「おお~」

多摩「ギャップが凄いにゃ」

球磨「流石我が妹」

北上「大井っち」

大井「はい!」

北上「マフラーはまだ早いのでは」

大井「これからに備えてです!」

北上「なるほど」

振り返って改めて更衣室の中の鏡を見る。

白くて結構大きめのフワッとしたマフラー。同じく白のセーターに茶色っぽいブーツ。

流石球磨型唯一の女子力。パーフェクトだ大井っち。

正直これがセンスいいのか分からないけど。

大井「…やっぱりもう少し黒を…でもこの方が黒が映えるし…」ブツブツ

北上「あーいいよいいよこれで!これが気に入った」

大井「ホントですか!」

北上「う、うん」

一生懸命選んでくれるのは嬉しいけれどこれ以上時間をかけられても困る。

多摩「大井はそれでいいのかにゃ?」

大井「はい」

木曾「こうして見るとおい姉の方が年上に見えるな」

球磨「今度から保護者役は大井に任すか」

少し濃いめの緑ロングコートに白のレディースパンツ、黒のトップスとパンプス。

落ち着いた茶色のダブルロングと大井っち特有の雰囲気は確かにすごく大人っぽく見える。

何よりも胸が…

(※三越ファッション)

木曾「多摩姉はそれでいいのか?」

球磨「せっかくだし大井に全身コーデしてもらうといい」

大井「そうですよ。多摩姉さんの服も色々考えたんですから」

多摩「これは多摩なりのこだわりにゃ。譲れないのにゃ」

黒タイツに黒カーディガン、妙に短いスカートと艦娘の制服に近い服装。

その上に白のフードパーカーを羽織っている。

(※秋刀魚漁ファッション+α)

木曾「こだわりねぇ」

球磨「こだわり」

多摩「なんにゃ、その反応は」

大井「いえ別に」

北上「…」

フードに猫耳がついていることに、結局誰もつっこめなかった。

白を選ぶあたりは無意識なのかな、白猫は。

球磨「おー結構なお値段、なのか?」

木曾「金銭感覚ゼロだもんな」

大井「どうせお金は腐るほどありますし」

多摩「富豪の気分だにゃ」

北上「現物じゃないけどね」

木曾「よし、皆で写真撮ろうぜ」

球磨「賛成!」

大井「どうやって撮ります?」

多摩「この際だし自撮り棒でも買うにゃ」

北上「あれあれ、1階の噴水広場で撮ろうよ」

建物の真ん中を通る吹き抜けの一番下を見下ろす。

球磨「おーでっかい」

木曾「決まりだな」

大井「これでいいんですかね」

木曾「多分…このボタンで撮るのかな」

球磨「えいっ」パシャ

多摩「ウニャッ!眩しいにゃ」

北上「フラッシュはいらないよね」

大井「えーと、はい!OKです」

木曾「順番は?」

球磨「球磨が真ん中だ!」

多摩「撮るのは大井なんだから球磨が真ん中じゃダメにゃ」

球磨「なんと!?」

大井「なら球磨姉さんお願いします」

木曾「すげえ不安なんだが」

球磨「舐めるなクマァ」

多摩「不安だにゃ」

大井「北上さん!もっと寄らないと映りませんよ」ギュッ

北上「噴水映しすぎなんじゃないの?」

多摩「木曾もこっち来るにゃ」

木曾「あいよ、これでキレイに映るかな」

球磨「…」

北上「どったの球磨姉?」

球磨「こういう時なんて言えばいい?」

大井「普通にはいチーズとかでいいんじゃないですか?」

球磨「なんか味気ない」

木曾「そここだわるとこか?」

やれやれ、呑気なもんだ。

球磨「あ、いいのを思いついた」

私としてはもっとこう色々と考えたいことがあるのだけど。

多摩「ホントに大丈夫かにゃ…」

でもまあ、

球磨「任せろ」

きっと今はこれでいい。

北上「ピースでいいかな?」

木曾「お!丁度噴水が」

多摩「球磨!急ぐにゃ!」

球磨「よし!ちゃくだ~~ん…」

大井「えぇ…」

北上「よりによってそれ…」

球磨「今!」パシャ

ずっとこうしていたい。

深海鶴棲姫のボイスで笑わなかった提督0人説

その後ソロ写真をいくらか撮りあった。

北上「あれ食べようよ」

撮った写真を皆で見ていた時ふと前方の看板が目に止まった。

大井「あれ?」

木曾「クレープか」

多摩「いいにゃ」

球磨「クレジットも使えるみたいだ」

多摩「あのデカいの食べたいにゃ」

大井「多摩姉さんのお腹どうなってるんですか」

球磨「大井なんて食べて太ってはダイエいてててて!痛い痛いクマァ!」

大井「何か言いましたか?」

球磨「ナンデモナイクマ」

この姉いつも一言多い。

木曾「俺はイチゴのやつかな。でも1人で食うにはちと量が多いような」

北上「じゃ私と半分こしようよ」

球磨「球磨は多摩から少し分けてもらおう」

大井「じゃあ私も多摩姉さんから」

北上「えっ?」

大井「はい?」

北上「あ、いやなんでも」

木曾「…意外な」

大井「何がよ」

球磨「ほらさっさと買うよ」

多摩「何処で食べるにゃ」

木曾「食べ歩くか?」

大井「それはお行儀が悪いわよ」

北上「あそこテーブル空いてるよ」

木曾「俺らで席取っておくか」

球磨「頼む」

木曾「おい姉、大人しいな」

北上「てっきり私と食べたいって言うものかと」

木曾「最近あんまり上姉にベッタリじゃなもんな」

北上「女は男ができると変わるんだねえ」

木曾「で、結局提督とはどうなんだ?」

北上「私もよくわかんない」

木曾「聞いてないのか」

北上「流石に直接はね」

木曾「それもそうか」

北上「2人とも照れ屋さんだしねえ」

木曾「それもそうだな」

北上「なんか女子っぽい会話だね」

木曾「え?」

北上「恋バナだよ恋バナ」

木曾「友人じゃなく姉の恋事情だけどな」

北上「まあね」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「でっか」

木曾「見てるだけで腹が膨れそうだ」

多摩「美味そうにゃ」

球磨「とりあえず1口欲しい」

多摩「ほれにゃ」

球磨「クレープ!クレープを1口!バナナ一欠片貰ってもしょうがない!」

多摩「ほらあーん」

大井「あーん、あら。意外と甘さ控えめね」

北上「木曾ー、私も私も」

木曾「ほらよ」

北上「…え、あーんは?」

木曾「やる気かよ!?いや、流石に少し恥ずかしいな」

北上「それでも木曾か!」

木曾「どういう意味だよ!?」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

大井「結局ほぼ1人で食べましたね…」

球磨「我が妹ながら恐ろしい」

多摩「戦士たるもの食える時に食っとくもんにゃ」

木曾「これも食べるか…?」

北上「もう食べらんないやー」

多摩「いただきにゃ~」

木曾「今日だけで何カロリー食べてんだか」

北上「草とか食べる?」

多摩「なんで草にゃ」

大井「猫は草を食べるんですよ。本能的なものなので何でと聞かれると分かりませんが」

北上「消化を助けるためとか諸説あるみたいだよ」

私は草を食べてたっけな…?覚えてないや。

多摩「へえ…いや猫じゃないにゃ」

北上「よぉし次行こう次」

大井「もう移動ですか?」

北上「時間は限られてるんだしちゃっちゃといこう」

多摩「…まあそれもそうにゃ」

球磨「どこ行く?」

木曾「行きたいところバラバラだしな」

多摩「一旦分かれるかにゃ?」

大井「…そうですね」

北上「む、まあしょうがないか」

球磨「何か買いたいものがあったら球磨か木曾を呼ぶといい」

木曾「あーそっか、ならさっきと同じ分け方で行動した方がいいんじゃないか?」

多摩「多摩はとくに買いたいものはないにゃ」

北上「私も~」

大井「2人はペットショップでしたね」

球磨「なら2人は一緒で、後は各自自由行動だ」

木曾「あいよ」

大井「北上さんのことくれぐれも頼みますよ」

多摩「任せろにゃ」

うわー信用ないな私。確かに連絡を取れる自信は無いけど。

球磨「じゃ球磨は下の方にいく」ノシ

北上「じゃーねー」

多摩「…どこ行くのかにゃ」

木曾「さあね。俺は、うわ結構上だな」

北上「どこ行くの~?」

木曾「ひ、秘密だ」

眼帯、眼帯だきっと。

ん?眼帯?眼帯ってデパートにあるのか?

木曾「エレベーターかなこりゃ」

北上「私達はこの上だね」

多摩「にゃ」

大井「私はその上ですね」

北上「大井っちはどこに?」

大井「ん~小物とか見たいですね」

木曾「また後で」

多摩「またにゃあ」

北上「エレベーターはー、あれか」

多摩「アレ?木曾と球磨が離れたらまずいんじゃないかにゃ」

大井「あ、確かに」

北上「そういや保護者役だったね」

大井「デパート内だったら滅多な事は起きないでしょう。多分」

北上「それに余程じゃないと私達が怪我することもないでしょ」

多摩「それくらい強いからこそ問題なんだけどにゃ…まなんとかなるにゃ」

北上「エスカレーターいいねえ。鎮守府にも欲しいよこれ」

大井「物凄く電気代かかりそうですね」

多摩「動く廊下とか楽そうにゃ」

大井「2人はもう少し積極的に動いてください」

北上「動くコタツとか欲しいなあ」

多摩「コタツ型艤装もいいにゃ」

大井「あら」

北上「どったの大井っち?」

大井「いえ、あの店。ちょっと良さそうだなって」

多摩「んー行ってみるかにゃ?」

北上「もう食べるのはいいかな」

大井「私もちょっと…」

多摩「にゃぁ、じゃあまた来た時にゃ」

北上「そだね、また、また来た時に」

【ペットショップ】

多摩「猫って、可愛いにゃ」

北上「…そだね」

自画自賛。

大井っちとも分かれて私達はペットショップの猫達をひたすら眺めていた。

生後数ヶ月程度の子猫達はそれぞれのゲージの中で遊んでいたり寝ていたり、

主にこの二択だが思い思いの行動をとっていた。

北上「生まれてからずっと商品としてここに並べられるってどんな気分なんだろ」

多摩「本人は特になんとも思ってないんじゃないかにゃ。多摩達も生まれつきのこの立場にこれと言って疑問は抱いてないにゃ」

北上「それもそっか」

多摩「あ、この子可愛いにゃ」

北上「白黒だね。ダルメシアンみたい」

多摩「ダル?多摩は牛かと思ったにゃ」

北上「猫に牛ってどうなのよ」

北上「ふふ、いいねぇ。鎮守府で猫とか飼えないかねぇ」

多摩「どうだろうにゃあ。犬とかなら番犬みたいな感じで役に立ちそうだけどにゃ」

北上「帰ったら提督に聞いてみよ」

多摩「そんなに猫が好きなのかにゃ?」

北上「多摩姉こそ、飼いたくならないの?」

多摩「可愛いけど、可愛いだけにゃ。きっと多摩達じゃこの可愛い生き物を幸せに出来ないと思うんだにゃ」

北上「…達」

それは、私も含まれてるのだろう。

多摩「あっ、ごめんにゃ。他意はないにゃ」

慌ててフォローする多摩姉。

でも別に私は傷ついたとかそういうわけじゃない。

ただ

北上「多摩姉はさ、猫に対してこう、シンパシーというか、親近感?みたいなのって感じたりしない」

多摩「猫じゃないにゃ」

北上「ふざけてるんじゃなくてさ、真面目な話」

多摩「んー?いまいち意図が読めないけれど、多分北上が言うような何かを感じた事はないと思うにゃ」

北上「そっかあ」

嘘や隠し事をしているようには見えない。

自分の前世の、白猫の事を、本当に覚えてはいないのだろうか。

いやそもそも本当に多摩がそうなのだろうか。

前に麦畑を見たことがあるような事を言っていたが、それはあの写真の事である可能性もある。

北上「だーもぉいいや!次行こう次!」

多摩「どうしたにゃ、急に」

北上「他にも面白そうなところ探そう。行こっ」

多摩「もう少しここでゆっくりしてもいいんじゃないかにゃ?」

北上「時間は有限なんだし色々見て回ろうよ」

多摩「…」

北上「多摩姉?」

多摩「今日の北上はなんか変だにゃ」

北上「そお?多摩姉だってテンション高いじゃん」

多摩「楽しいからにゃ」

北上「私もだよ」

多摩「北上は、楽しんでいるというより楽しんでいようとしている感じにゃ」

楽しんでいようと。

北上「どういうことさ」

多摩「必要以上に、無理に楽しもうとする時の顔だからにゃ」

北上「…なんでそんなこと」

多摩「多摩もその顔をよく知ってるからにゃ」

北上「多摩姉も?」

多摩「昔、鎮守府から皆がいなくなった時の事だにゃ」

北上「…」

吹雪の言っていた、前の提督、前の鎮守府か。

多摩「やっぱり知ってたんだにゃ。吹雪から?まあなんでもいいにゃ」

北上「日記、ちゃんと棚に鍵とかしといたほうがいいよ」

多摩「そうもいかないのにゃ」

北上「なんでさ」

多摩「誰かに見つけて欲しいと、そう思ったりもするからにゃ」

多摩「無理に笑うもんじゃないにゃ」

北上「教訓?」

多摩「にゃ」

北上「そっか」

これ以上は多分聞いても答えてくれないのだろう。

吹雪は口止めしていると言っていた。

北上「なんかさ」

多摩「にゃ?」

北上「人間みたいにさ、容姿相応に、パーっと楽しめるのかと思ってさ。人みたいに」

多摩「多摩も楽しいにゃ。でも楽しみ方はそれぞれにゃ。自分なりに楽しめばいいにゃ」

北上「そうだね」

多摩「北上はなんで人みたいにと思ったんだにゃ?」

北上「え?んー、なんでだろ?」

多摩「分かってないのかにゃ」

北上「なんか、あったと思うんだけどなあ。んー?思い出せないや」

多摩「ならいいにゃ」

北上「うん」

多摩「で、次はどうするにゃ?」

北上「…もう少し、ここでゆっくりしてこ」

焦る必要は無い。

私達と人とでは流れている時間が違うんだ。

決定的に。

北上「あり、大井っちから連絡来てる」

多摩「なんて言ってるにゃ?」

北上「本屋の近くを回りたいから一緒に行きませんか、だって」

多摩「受け渡しだにゃ」

北上「なんで私が子供みたいな扱いなのよさ」

多摩「不満ならスマホに慣れろにゃ」

北上「連絡ってそんなに大事?」

多摩「仮にも軍にゃ。緊急時は鎮守府に戻る必要があるし、事件に巻き込まれでもしたら後々が面倒なのにゃ」

北上「騒がれそうだもんね私達」

多摩「管理という点だけ見れば、こうして外に出すのだってあまりいいとは言えないだろうにゃ」

北上「提督が優しくてよかったよ」

多摩「全くだにゃ」

北上「はいっと」

多摩「スタンプ使えるんだにゃ」

北上「はいといいえのスタンプだけ使い方教わった」

多摩「だけ…」

北上「今何階ですか?」

多摩「ここは2階だにゃ」

北上「2と」

多摩「数字だけ…」

北上「数字は打てる」

多摩「練習しろにゃ」

北上「今から向かうので2階のエスカレーター付近で待っていてください、だって


多摩「じゃ向かうにゃ」

大井「北上さーん」ブンブン

多摩「手ぇ振りすぎにゃ」

北上「やほー大井っち。あれ?何も買わなかったの?」

大井「え?あー、はい。見て回ってただけですから」

北上「ふーん」

多摩「多摩は置物とか見てくるにゃ」

北上「また後でー」

多摩「にゃー」

大井「…またあの妙な猫の置物とか買ってくるんでしょうか」

北上「んーどうだろう」

大井「では私はこのフロアを回ってますから後でまた迎えに来ますね」

北上「はーいママー」

大井「提督と同じ扱いはやめてください」

北上「どちらかというと私の扱いが皆同じなんだけどね」

大井「北上さんはどうにも危険意識が低いからですよ」

北上「えーそうかなあ」

大井「そうです」

北上「ちぇ、大井っちは私と一緒に回らなくていいの?」

大井「北上さんと?でもあまり北上さんが見て面白そうな物はないと思いますよ」

北上「いや、ならいいんだ。またね」

大井「はい、また」

本屋に1人。

しかしどうにも気が乗らない。

北上「大井っちやっぱり変わったよね」

前なら絶対に私と回ったはずだ。

北上「考える事がいっぱいだなあ」

まーた頭ん中がぐちゃぐちゃになってきた。

とてもじゃないが本を落ち着いて読める状況じゃないや。

どうしよう。

北上「ゴムの事夕張にでも聞いてみるか」

夕張「もしもしー」

北上「あー夕張?やほー」

夕張「北上!?え北上が電話!?ホンモノ!?」

北上「失礼な。私だって教われば電話くらい出来るんだから」

本屋を一旦出て人気のない通路で初めての電話をした。

夕張「あははゴメンゴメン。えーっと、ああ街に出てるんだ。そういや買い出しとか提督が言ってたっけ」

北上「サラッとこっちの位置を特定しないでほしい」

夕張「気にしなーい気にしなーい。でなんのよう?」

北上「いやね、車に乗ってきたんだよ」

夕張「あーあれね」

北上「そこにコンドームがあってさ」

夕張「げっ!落としてたかぁ」

北上「やっぱお前かい」

夕張「年に二回各地の夕張が東京のとある場所に集まるのよ」

北上「それ大丈夫なの?」

夕張「ヤバイわよ。だから皆で場所被らないように担当決めて買い物してんだから」

北上「この情報化社会で中々にリスキーな」

夕張「多少変装はしてるしね。で、その集まりでちょっとした発明の発表会とかしてんのよ」

北上「あーオチが読めたわ」

夕張「言いたいから言わせて」

北上「どーぞ」

夕張「前回のテーマがコンドームだったのよ!」

北上「ひっどいテーマだ」

夕張「面白かったわよー。5mくらいまで伸びるやつとか発光するやつとか、ユニークなのだと段々萎んできて締め付けるのとか」

北上「拷問器具かなにかで」

夕張「個人的にお気に入りなのは使おうとしたら、北上ってゴムの使い方知ってる?」

北上「知ってても知ってなくてもここで知ってるって言ったらアウトだよね私」

夕張「そりゃそうか。袋破いて出したらね、音が鳴るやつかな。あの時はチクマーチクマーってなってた」

北上「鬼か」

軽くホラーである。

北上「夕張はどんなの作ったの?」

夕張「私?私は使うとGPSで居場所が特定出来るやつ」

北上「なんで何でもかんでも居場所特定したがるのさ」

夕張「システム使いまわせるから楽でさー。残念ながらゴムの大きさの都合上破って1時間で電池切れちゃうんだけどね。これで提督の浮気現場もばっちしよ!」

北上「もっとまともな用途は…ああゴムの時点でまともじゃないや」

夕張「ふっふっふー。RubberでLoverを見つけ出すってね!」

北上「別れはいつも唐突で」
夕張「あ、ちょ!ちょっと待って切らないで!」

夕張「袋は何色だった?」

北上「少し緑っぽい?ピンク」

夕張「なら大丈夫。グリーンは安全なものだから」

北上「色分けしてるんかい」

夕張「物騒なのもあるからね。なんかあったらヤバいからそこら辺の管理はしっかりしてんのよ」

北上「もっとしっかりすべき所は別にある…」

夕張「まあまあ、せっかくだし記念に持ってたら?」

北上「何故そうなる」

夕張「コンドームってなんか持ってると金運が上がるって聞いたわよ」

北上「ものっすごい嘘くさいんだけど」

夕張「ホントホント!あーただ聞いたってのは本当だけど話の中身が本当かはやっぱ分からないわ」

何処の夕張が言ったか知らないが夕張の時点で信用ならない気が…

北上「そもそもどこにしまえってのさ」

夕張「財布とか、スマホとか?」

北上「スマホに入れるとこある?」

夕張「ケースに、北上ケースって付けてるっけ」

北上「ないよ」

夕張「デスヨネー。今買っちゃえば?」

北上「それはアリかもね」

夕張「ゴム入れるためにケースを買うという前代未聞の購入理由ね」

北上「やっぱやめようかな」

夕張「捨てるにしてもそん時は破いて中身が何だったか教えてよ」

北上「えーここでやれと?まあいいや、じゃね」

夕張「ばははーい」

北上「…」

夕張「…」

北上「…」

夕張「切らないの?」

北上「どうやるの?」

夕張「oh…」


タッチひとつで電話を切れるとは。

でもこれ間違えて電話中にピッとおしてしまわないのだろうか。

北上「ケースかあ」

言われてみればみんなケースは付けている。形は多種多様だが。

さてそろそろ本屋に戻ろうか。

来た道を戻る。

角を曲がり、

北上「おっと」
「おっと」

曲がろうとしたら人とぶつかりそうになった。

北上「ごめんなさい」
「いやあこちらこそ」

女性だった。髪型も服装も私とは全く違う。

ただ身長が同じくらいで

北上「あれ?」
「んん?」

心做しか声も似ていて

北上「え」
「うわ」

どことなく顔も近くて

北上「マジか」
「ウソん」

というか

北上「北上?」
北上「北上?」

私がいた。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「へぇ、皆でショッピングか~。いいねえ侘び寂びだねぇ」

北上「まあね」

どうやらこの私も侘び寂びを適当に使っているようだ。

先程と同じ人気のない通路。そのベンチに2人で腰掛けた。

北上「その服ってさ、もしかして大井っちが選んだやつ?」

北上「そそ。ちょっと窮屈というか、分不相応な感じがしてムズムズするけど」

北上「あー分かるなぁそれ。だから私は髪を解いてるんだ」

北上「意味あるのそれ?」

北上「変装してる気分になるっていうかさ、違和感があることに違和感がなくなる感じかな」

北上「なんじゃそら」

北上「私も言ってて分からんくなってきた」

聞けば彼女は提督の付き添いで遠くの鎮守府からここに来たそうだ。

北上「もう一山超えたとこの鎮守府に提督が用があるらしくてさ。長い時間話すっていうからその間ここでブラブラしてたの」

北上「付き添いなのに付き添わなくていいの?」

北上「鎮守府の中なら大丈夫だよ。それにあそこまで行くと周りなんもないんだもん」

北上「昼寝とかしてたら?」

北上「そんな、猫じゃあるまいしさ」

一瞬ドキッとした。

北上「ねえ、本って好き?」

北上「本?ん~漫画とかなら読むけど」

おお、やはり同じ北上でも色々と違いはあるのか。なんか感動。

北上「私の服も大井っちが選んでくれたんだぁ。余所行きの良い奴をって張り切ってさ」

北上「大井っち流石だねえ」

私の服と違って可愛いというよりは綺麗よりな服装だ。派手な色はないがだからこそ際立つ。

北上「そうだった。大井っちへのお土産探してたんだった」

北上「どんなのを探してたの?」

北上「服とかハンカチとか、そういうのかな。ペアルックなのがいい」

北上「ペアかあ」

北上「君はそういうのしないの?」

北上「大井っちと?」

北上「そうそう」

北上「私は、しないかな」

北上「へえ」

そう言ってまじまじと私を見つめる。

向こうも自分と違う北上に思うところがあるようだ。

北上「あれ?それって」

ふと彼女の左手に目が止まる。

北上「これ?あーこれね。昨日阿武隈に噛み付かれた跡でね」

北上「そっちじゃなくて。いやそっちも凄く気にはなるんだけど」

北上「じゃあ、こっち?」

北上「そう、それそれ」

謎の噛みつきあととは逆の手にハマっている、指輪だ。

北上「ケッコンのやつだよ」

北上「結婚!?提督と?」

北上「提督と…もしかしてケッコンってしらない?」

北上「知ってるよそりゃ、結婚でしょ?」

北上「待って、多分違う。絶対齟齬があるこれ」

北上「なんと?」

北上「君は艦歴いくつ?」

北上「半年位だけど」

北上「なら知らなくてもおかしくはない、のかなぁ。まあ説明しとくか」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「へぇケッコンカッコカリか」

北上「酷いネーミングセンスだよね」

北上「確かに」

北上「こんな名前だから欲しがる娘は多くてさ。提督ラブな娘なんか特に」

北上「カッコカリとはいえケッコンだものね」

金剛さんが真っ先に思い浮かんだ。

北上「もう何人にも渡してるのにそんな特別な意味なんてないだろうにさ」

北上「いっぱいいるの?」

北上「うん。十、いや二十はいたかな。信頼関係ではあっても恋愛関係ってわけじゃないよ」

北上「その辺の違いは議論の余地がありそうだけどね」

北上「かもね。でも私は別に提督の事を好きってわけじゃないよ。極上の信頼は置いてるけどさ」

北上「極上?」

北上「極上だよ。命を預けてるわけだし」

北上「私はどうなんだろうなあ」

北上「おやおや?恋に恋する乙女的な悩みがあったり?」

北上「どっちかと言うと恋に悩めるかな」

北上「相手をどう思うとかじゃなくて、恋自体に悩んでると」

北上「流石私物分りがいい」

北上「別に無理に男女じゃなくたってさ…」

北上「なに?急にフリーズして」

北上「ちょっとこっち向いて」

北上「いいけど、一体なn!?

唇を塞がれた。

しかも唇で。

並んで座っていたというのに恐ろしく早く手慣れた手つきで私の顔を引き寄せた。

驚きで目を瞑ってしまい、暗闇にとらわれる。

えなに何やってんこいつと軽くパニクったがようく考えてみるとこれはキスというやつだ。

勿論知ってはいるが半ば空想上のモノと認識していただけにこのリアルな体験はかなりの衝撃があった。

ここが人気のないところでよかった。

うわ舌を入れてきた。世の中には魚の踊り食いなんてものがあるらしいが口の中で自分以外の何かが動くというのはこんな感じなのだろうか。

控えめに言ってもあまり気持ちの良いとは言い難い感じなのだが。

視界がゼロなせいか余計に感覚が鋭く舌の動きを脳に伝える。

実際には1分もなかったであろう時間もやたらと長く感じられた。

北上「プハッ」

北上「…」

あ終わった。

北上「恐ろしく無反応だね」

北上「拒否反応じゃなくてよかったじゃん」

北上「どう?何か感じた?」

北上「若干引いた」

北上「そうじゃなくてさ」

北上「んー艶かしい…いや生々しい。有り体にいえば気持ち悪い」

北上「えーそれだけ?」

北上「それだけ…第一何でこんなことを」

北上「私はよく大井っちとするんだ」

北上「マジで」

北上「マジでマジで」

北上「キスって好きな人とするものじゃん?」

北上「初対面の、しかも自分のドッペルゲンガーを好きだとは思わないよ私は」

北上「そうじゃなくてさ、実際にやってみたら好きとかそういうのがなんかわかるかなーって」

北上「それだけで?」

北上「それだけで」

北上「…本当、に?」

北上「…キスしてる時の自分の顔ってどんなのか気になってちゃったりしちゃったり?」テヘ

そう言ってチラリと舌を出す。

うーむこいつの前世は蛇だな間違いない。

北上「提督にはしないの?」

北上「そんなことしたら戦争が起きるよ」

北上「言わんとすることはわかるけどよく考えるととんでもない事だよね」

北上「へへ。そっちこそ提督にはしないの?」

北上「なんで私がさ」

北上「してみたら好きかどうかわかるじゃん」

北上「わかる、かなぁ?」

北上「多分ね。何の保証もしないけど」

北上「ちぇー無責任め」

北上「おっと提督から連絡だ」

北上「なんて?」

北上「そろそろお迎えに行かなきゃだ」

北上「ならお別れだ」

北上「そうだね」

北上「元気でね私」

北上「息災でね私」

北上が立ち上がる。

不思議とまた会うこともあるだろう、とは全く思えなかった。

北上「ねえ」

北上「なに?」

北上「大井っちの事どう思ってるの?」

北上「大井っち?大井っちかぁ」

少し考えた後、振り返った北上はこう教えてくれた。

北上「大好きだよ。何よりも。他の誰にも、提督にだって渡したくないくらい、ずっと独り占めしていたいくらいに」

北上が去った後も、その言葉とあのなんとも言えぬ表情がまるで蛇のように私の頭の中に絡みついて離れなかった。

同じキャラ同士での絡みって意外と少ない増えて

すり減った資源と精神にすうっと効くミニイベント

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「おかえりー」

大井「あら、本は買わないんですか?」

北上「どうも興が乗らなくてさ。大井っちは?」

大井「私も収穫はなしです」

北上「何探してたのさ」

大井「まあ、色々と」

北上「色々ねえ」

提督へのお土産と言ったところか。

北上「大井っちキスって興味ある?」

大井「キス…キス!?どうしたんですか急に!?」

北上「本で読んでさ、なんか気になっちゃって」

大井「もしかして北上さん、キスしたい相手でもいるんですか?」

北上「えー私はいないよ」

大井「でもでも!キスに興味があるんですよね」

北上「う、うん」

なんか物凄い食いつきっぷりだ。目をキラキラさせてるし。何故に。

北上「私じゃなくて大井っちの意見が聞いてみたいんだよ」

大井「そうですねぇ。ないと言えば嘘になりますね」

嘘つけ絶対興味ありありだよ。なんなら既に…

北上「まあいっか」

大井「えーそれだけですか。もっとこう乙女チックな何かないんですか?」

北上「単に興味本意だったからさ」

大井「まあいいです。次行きたいところありますか?」

北上「んー。うんにゃ、なんか疲れちゃったし休憩したいかなぁ」

大井「休憩、ですか」

北上「?」

大井「いえ。なんだかいつもの北上さんらしくって」

北上「そうかな」

大井「そうです」

おっと、大井っちにも変なテンションだと思われていたのか。

だとしたら、大井っちもやはりらしくないと言える。

言わないけど。

家具売り場の木製のゆったりとした椅子に2人で腰掛ける。

北上「おーいいなあこれ。買っちゃおうかな」

大井「買っても何処に置くんですか」

北上「図書室ならいけるっしょ」

大井「そうやって何でもかんでも放り込んでいくといつの間にか収拾がつかなくなりますよ」

北上「む~」

痛いところをつかれた。

足を突き出し思い切り伸びをしながら誤魔化してみる。

北上「こうして足を伸ばせるのは意外と貴重だね」

大井「毎日スカートというのも考えものです」

北上「ぶっちゃけ私は気にしてないけど」

大井「そこは気にしてください…」

北上「私ゃなんだか眠くなってきたよ」

大井「疲れましたか?」

北上「みたいだね、思ったよりも。慣れないことすると後から来るみたいだよ」

大井「眠ってもいいですよ。私はここないますから」

北上「そりゃ悪いよ。それにせっかくのお出かけなのに昼寝に使うなんて…ふぁ…ぁ」

大井「無理してもしょうがないですよ。もう来れないわけでもないですし、北上さんがそうしたいならそうすればいいんです」

北上「むー、それに、あれだ、スマホケース買わなきゃだ」

大井「ケースですか?なぜまた急に」

北上「ちょっとね。別に今すぐ絶対欲しいってこともないんだけどね。ついでついで」

大井「でしたら、あ、いや…急ぎでないならまたの機会でもいいでしょう」

北上「…そうしますかね~」

瞼がまるで錨のように重く垂れ下がってきた。

深く深く、意識の底まで。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

パシャッ

北上「ん?」

聞きなれない音で目が覚めた。

大井「あら、ごめんなさい。起こしちゃいました?」

スマホを持った大井っちが視界に映る。また写真を撮っていたようだ。

球磨「丁度いい。そろそろ戻る時間だ」

多摩「満喫したにゃ」

木曾「上姉も、まあ満喫したみたいだな」

北上「うん…たっぷり寝た」

まだ意識が浮上しきっていない。

みんな揃ってる?今戻ると言っていたが。

大井「もう帰る時間ですよ。北上さん」

北上「マジか」

大井「マジです」

北上「寝過ごした」

大井「それはもうぐっすりと」

北上「おぅ…」

でもなんだかすごくスッキリした。

色々あったけど、楽しかったというのは間違いない。

球磨「それじゃさっさと地下駐車場に戻」

球磨姉は最後までそれを言い切ることができなかった。

木曾「うわ揺れ」
北上「なにこれ」
大井「北上さん!」

多摩「全員店の外にでるにゃ!」

それは揺れだった。

海の上とは少し違う、うねる様な揺れではなく割れるような揺れだった。

木曾「地震か」

北上「地震、これが」

走るのが困難というわけでもなくとりあえずは周りに何も無いふきぬけ近くまで避難した。

大井「長いですね」

周りにも開けた場所に慌てて移動する人々がいくらかいた。

北上「!」

少し先で小さな女の子が転んだ。

しかし思わず乗り出した身体は多摩姉の手に遮られた。

多摩「関わる必要はないにゃ」

北上「いや、でも」

多摩「最悪ふきぬけから飛び降りるにゃ。4階程度ならなんとかなるにゃ。そしたら」

木曾「…」

大井「収まりましたね」

多摩「木曾は地震の震源と大きさを調べろにゃ。大井は津波。多摩は鎮守府と連絡取るにゃ」

木曾「おう」
大井「はい」

多摩姉がテキパキと指示を出す。流石。

ちなみに肝心の長女は、

球磨「」プルプル

丸まって震えていた。今こそ長女としての行動をすべきなのでは。

北上「…」

ちなみに私もスマホを使いこなせないのでこの場では役立たずである。

木曾「震源は隣の県だな。マグニチュード4。ここの震度は3か4だろう」

大井「津波の心配もないそうです」

多摩「吹雪からも特に招集はなしだそうにゃ」

北上「結構揺れたのに何も無いんだね」

木曾「高いところにいるとよく揺れるからな。さっき食べてる途中に来てたらもっと揺れてたろうよ」

大井「そういえば北上さん地震は初めてでしたね」

北上「うん。ビックリした」

球磨「球磨もビックリした」

木曾「球磨姉はいい加減慣れろよ…」

大井「地震大国ですからねえ」

北上「やなとこだぁ」

多摩「地震とかの大きな災害があると艦娘も色々と忙しいのにゃ」

北上「なんでさ」

木曾「人と同じ形で力はあるからな。救助に復興にと色々便利なんだよ」

多摩「本当にやばい時は上から指示が飛んでくるのにゃ。その場合は急いで戻らなきゃなのにゃ」

北上「人助け、か」

大井「そうなりますね」

北上「ならさっきなんで止めたの」

木曾「さっき?」

木曾と球磨姉がハテナマークを浮かべている。見ていなかったようだ。

多摩「緊急時、多摩達は国のために動く必要があるにゃ。個人のために割く余裕はないにゃ」

なるほど。理は通っている。大局的にということか。

私達はあくまで船の力を持つ人なのではなく人の形をした船という話。

少しだけ寂しい話。

球磨「1度揺れたらまた揺れる可能性も大きい!さっさと戻ろう!」ドヤァ

木曾「うおビックリした」

大井「急に元気になりましたね」

多摩「まあ球磨の言う通りにゃ。さっさと戻るにゃ」ヤレヤレ

確かに何度もあの揺れを体験するのはゴメンだ。

北上「やっぱ生き物は地に足つけていなきゃねえ」

木曾「船だけどな」

球磨「津波に巻き込まれるのも中々恐怖だ」

北上「さもありなん」

大井「鎮守府って耐震工事とかしてましたっけ?」

多摩「ぶっちゃけ半分くらいしかされてないにゃ」

木曾「ええ!?マジかよ」

球磨「艦娘は丈夫だしとかいって予算ケチられてると聞いたことがある」

木曾「ひでえ話だな」

北上「今日は初体験が多いや」

大井「あまりいいものじゃないですけどね」

多摩「いずれは体験するんだし早いに越したことはないにゃ」

北上「そりゃそうかもだけど」

さっきの光景思い返す。

突然の振動。揺れる家具。空気がいっぺんに不安と恐怖に染まる感覚。隙間で縮こまり震える。

可能ならば二度と遭いたくはない。

北上「縮こまる?」

思わず足を止めてしまった。

大井「北上さん?」

狭いところ。そうだ。確かあれはソファの下だ。わけのわからない現象に戸惑い、外敵から身を守るのに最も適した場所に避難したんだ。

私は。

猫は。

北上「ねえ!ここ数年で海外で大きな地震とか起きてない?」

球磨「ど、どうした?いきなり海外だなんて」

北上「場所は、えっと、殆ど地震とかのない大きな国、とかでさ」

木曾「海外って言われてもなあ。でもニュースになるような地震とかって最近見た覚えはないな」

大井「ありましたよ」

北上「ホント!?」

大井「これとか」

スマホの画面を目の前にかかげる。

そこにはある地震の記事があった。

場所も心当たりがある。そして日付は、

北上「2年前…」

多摩「よくそんなもの知ってたにゃ」

大井「たまたまですよ」

球磨「…タマ」

多摩「にゃっ」キッ

球磨「い、言わないクマ!睨むなクマ!」

球磨「歩きスマホは危ない」

北上「待ってもう少しだから」

木曾「どうしたよさっきから。地震がそんなに気になるのか?」

大井っちに貸してもらったスマホで記事を見る。

なんでもその地域では数十年ぶりの大揺れだったらしい。

この地震が私の記憶のモノと同じである可能性は高い。

つまり、

私が生まれ変わるまでの期間は短い。

飼い主が生きている可能性は高い。

北上「よし」

大井「もう、急にどうしたんですか?」

北上「色々とね」

色々とあった。

だが終わりよければすべてよしだ。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

球磨「皆シートベルトはしめた?」

多摩「バッチリにゃ」

大井「はい」

北上「あーい」

球磨「よぉっしそれでは!」




球磨「反応がないクマ」

木曾「皆疲れてんだよ」

球磨「球磨も疲れたクマ」

木曾「頼むから事故るなよ」

夜だというのに街は明かりで溢れている。

灯台いらずだ。

所々何やらイルミネーションみたいなのが飾られているが、お祭りでもあるのだろうか?

大井「北上さん。眠かったら着くまで寝ててもいいんですよ」

北上「もう十分寝たよ。それに景色が見たいから」

多摩「行きもずっと外見てたにゃ」

北上「こうして景色が変わるのってやっぱいいなあって」

木曾「確かになあ。沖に出りゃ見渡す限り海だし」

球磨「あれは確かに飽きるクマ」

多摩「語尾、はもういいかにゃ」

大井「その癖しっかり目を凝らして敵影を探さなきゃですからね」

多摩「多摩はちょっと寝るにゃ」

大井「私も少し眠くなってきました」

球磨「球磨もクマー」

木曾「運転手はダメだ」

球磨「無理クマ寝るクマみんなずるいクマ」

木曾「俺が話しててやるから耐えてくれ。曲でもかけるか?」

球磨「頼むクマ」

木曾「何かリクエストは?」

球磨「太陽にほえろ」

木曾「なんでいつも選曲が古いんだよ」

イチャラブ書きたいな

休日にまとめてできない分収集の方が辛いのでは…?
報酬がカタパルトなので取り逃しが痛くないのが救い

次第に灯りが減っていく。

街を離れ周りを建物や街頭ではなく木が囲んでゆく。

もう少しで鎮守府だ。

景色が私に教えてくれる。

目印となるものがあるというのはいいものだ。

次に何処へ行けばいいのか、何をすればいいのか。



昔、北上に乗っていたという人達も船から見える景色に退屈さを感じていたりしたのだろうか。

北上「へへ」

顔がにやける。

確証はない。が確信があった。

飼い主が生きている。

きっとまた会える。

木曾「何にやけてんだ?」

北上「色々あったけど最終的にいい事があったんだ~」

球磨「大丈夫か?さっきの地震の後からなんか変だ」

木曾「結局あの質問は何だったんだよ」

北上「内緒~」

木曾「…どう思う球磨姉?」

球磨「落ち込んでいるならともかくその逆なら深くつっこまなくてもいいんじゃないか?」

木曾「そりゃあ、そうかもだけど」

北上「あれ?」

鎮守府が見えてきた。

見えてきたのだが、

その他に見えるはずがないものも見えてきた。

木曾「どうした?」

北上「…あー、ん?」

球磨「お、鎮守府が見えてきたクマ」

北上「なんか煙出てない?」

木曾「煙!?」

球磨「煙ー?暗くてよく見えんクマ」

北上「いや絶対煙だよあれ」

木曾「あれかな、秋刀魚用のやつ試してんのかな」

北上「秋刀魚?前にも聞いたことがあるような」

球磨「七輪とか試運転してるクマ?」

北上「もう夜なのに?」

木曾「それもそうだな」

北上「後なんか黒いよあれ」

球磨「黒か。そりゃ見えんクマ」

木曾「まさか地震で火事が!?」

多摩「そんな緊急事態なら連絡がくるはずにゃ」

北上「うぉう多摩姉いつのまに」

球磨「帰ればわかるクマ」

木曾「そりゃそうだが。ん?あれ提督か?」

北上「どれどれ?」

多摩「北上、あんまり身体を乗り出しちゃだめにゃ」

北上「ホントだ。わざわざお出迎え?」

球磨「一旦止めるクマ」

鎮守府の門の前。そこで車を止め窓を開ける。

提督「よお。無事おかえりみたいだな」

球磨「当たり前だクマ。球磨がいるんだからクマ」

木曾「提督はここで何やってんだ」

提督「いやぁお前らが少し心配でなー」

北上「あの煙何?」

提督「んー。それよりちょっと車乗せてくれないか?」

球磨「どっか行くクマ?」

提督「ちょっと隠れるのにな」

木曾「はあ?」

多摩「今メッセージが回ってきたにゃ」

大井「どうしたんですか?」

北上「おっはー大井っち」

大井「おはようございます」

木曾「なんて?」

多摩「…提督が指名手配されてるにゃ」

木曾「は?」

球磨「何したクマ…」

提督「ちゃうねん…ちゃうねん…」

多摩「賞金は間宮だにゃ」

球磨「行くぞ木曾ぉ!」

木曾「おう!」

提督「待って!後生だから!!後生だから!!」

球磨「来世では間宮に負ける提督にならないように祈ることだクマ」

提督「おのれ間宮ぁ!」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

提督「地震の少し前にね、磯風が俺の部屋に七輪持ってきたのよ。ガスの」

北上「大丈夫?オチが確定したけど大丈夫?」

先程と同じ車内。なのだが場所が変わった。

鎮守府の駐車場。そこに止めた車の中で私と大井っちは提督の話を聞いていた。

提督「秋刀魚焼く道具が足りなくてさ。お前らにもおつかいたのんだろ?」

北上「そういやあったね」

提督「それで事足りるなって思ってたら磯風が倉庫から引っ張り出してきたんだよ。すっげえ古いの」

大井「それで」

あの後提督の首を狙う球磨姉達を何とかなだめ私と大井っちはとりあえず事情を聞くことにした。

提督が車を駐車場に戻し、今は運転席に提督。後部座席に私と大井っちだ。

球磨姉達は状況確認のために鎮守府に戻った。

提督「地震がさ、来たじゃん。慌てて俺は自分の机の下に隠れてさ、磯風にも早く身を隠せって叫んだのよ」

北上「正しい判断、だよね?」

大井「一応は」

提督「そしたらアイツこの七輪は!?とか聞いてきてさ。お前ら頑丈なせいか危険意識薄すぎだろ」

大井「そこは否定出来ないですね」

提督「それでさ、んなもんどっかにほおってはよ隠れろや!って言ったのよ」

北上「何その言い方」

提督「いやもっと緊迫した感じに言ったけどさ、ともかくアイツも言われた通りにしたわけよ」

北上「つまり」

提督「マジに放り投げやがった」

大井「それで」

提督「ああなった」

北上「どうしてこうなった」

提督「見事にボカンといったよ」

大井「どんな七輪よそれ」

提督「俺が知りたい」

結局提督室はそこそこ焼けちゃったらしい。

大事なものとかは特に被害がなかったらしいがそれでも火事は火事。

机とかソファーとかは全滅だとか。床や天井も貼り直さなきゃならない。

大井「磯風は?」

提督「流石は艦娘だよ。地震が来たから艤装で最低限の防御はできるようにしてたみたいでな、髪の毛がギャグマンガみたいになる程度ですんだ」

北上「提督は?」

提督「机が守ってくれた。その後真っ先に磯風を風呂に突っ込んで消化活動」

大井「そして?」

提督「磯風が吹雪にこってり絞られてるすきに逃げてきた」

北上「でも提督は悪くなくない?」

提督「俺の言い方が悪かったっちゃ悪かったし、監督責任ってやつもあるしな。俺に怒るのは仕方ない」

大井「でも、怒られるのはいやなんですね」

提督「だって俺悪くないし」イジイジ

北上「どっちやねん」

提督「被害は大した事ないって言ったけど、道具とか結構焼けちまってんだよな」

北上「あのホワイトボードとか?」

提督「そうそう。また買い直さなきゃなあ」

大井「もう少し早く燃えてれば私達が買ってこれたんですけどね」

提督「もしもの話をするなら家事を防ぐ方向でいきたい」

北上「なんなら明日また私らでかいにいこっか?」

提督「明日からは仕事だろお前ら」

北上「むむむ」

提督「俺はそうだなあ…ここで一晩過ごしちまおうかな。どうせ寝室も使えないし」

北上「燃えたの?」

提督「いや。でも復旧作業があるから今日明日は無理だろ」

北上「あれま」

大井「…」

北上「大井っち?」

球磨「ただいまクマァ」

提督「おーどうだったよ」

多摩「吹雪はそんなに怒ってなかったにゃ」

提督「マジで!?」

木曾「不幸な事故って話だしな。ただ謎の七輪については要調査だと」

北上「そりゃそうだ」

球磨「ただ」

提督「ただ?」

球磨「机の引き出しにあったいくつかの写真について話があると言っていたクマ」

提督「」

北上「写真って?」

木曾「なにかは教えてくれなかったよ。ろくなもんじゃなさそうだが」

提督「やっぱしばらくここで過ごしますはい」

北上「何隠してたのさ」

提督「黙秘権!黙秘権を行使する!」

球磨「ここに留まってると皆にバレるしさっさと戻るクマ」

木曾「だな。上姉もおい姉も戻ろうぜ」

北上「ほーい。んじゃね提督」

提督「おう」

大井「あ、私は少し残ってますね」

多摩「にゃあ?逢引ですかにゃあ?」

提督「ちげーよ!で何のようだよ?」

大井「秘密です秘密!ほら、バレたらまずいですし戻っていてください」

北上「はーい」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・

【食堂】

北上「で、さっき提督と何話してたのさ」

大井「黙秘権を行使します」

木曾「やっぱここも少し騒がしいな」

多摩「火災事故だからにゃ、仕方ないにゃ」

阿武隈「北上さーん!」

北上「おーおーどったの」

阿武隈「聞きました!?見ました!?火事!」

北上「聞いた聞いた、見てはないけど」

阿武隈「もう凄かったんですから、私ちょうど外から見てたんですけど」

木曾「それ俺も聞きたい」

あーなるほど。

食堂を見渡すとどうやらこの騒がしさは事件の事を話す側と聞く側で成り立っているようだ。

各テーブルで遠征や出撃で鎮守府にいなかった組が一部始終をここで聞いているようだった。

当然話題は晩御飯だけに収まるわけもなく。

【風呂】

神風「びっくりしましたよ。火事っていうからてっきり工廠で夕張さん達がやらかしたんだと」

北上「至極真っ当な推理だけどなんかヒドイよね」

神風「工廠は以前爆発事故で半壊とかしてますからね」

北上「うそん」

神風「ホントですって。原因は、確か宇宙の方のヤマト砲をどうとかこうとかって」

北上「波動砲かよ」

何してんだあの二人。

北上「しかし相変わらずというかなんというか、騒がしくわあるけど緊迫感はゼロだよね」

神風「日本でいう地震と同じ感じですよ」

北上「希によくあるって感じか」

神風「そんな感じですね。結局のところみんな慣れちゃってるんでしょうね」

北上「それはそれでどうなんだろうか」

神風「言ってみれば私達歩く兵器ですからね。ちょっとした事でとんでもない事故に繋がる訳ですし」

北上「本物の船もそういう事故は多かったらしいよね」

神風「艦娘の宿命って事なんでしょうね。なまじ普段から戦火に身を晒してる分この程度の事故じゃ特に危機感は抱きませんし」

北上「神風はなんか事故に遭ったりした事ある?」

神風「私はとくになにも。あーでも旗風が電ちゃんとぶつかった事があったかしら」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

【提督室前】

北上「立ち入り禁止テープってホントに貼るもんなんだ」

推理小説なんかで見る黄色いテープが入口にはられていた。

ドアは開けっ放しで中が見えるようになっている。今は暗くて見えないけど。

興味本位で来てみたが見えないんじゃしょうがない。

吹雪「気になりますか?北上さん」

北上「吹雪、どったの?」

吹雪「まだいくつか書類がここに残ってたんで回収に。せっかくだし中見ていきます?」

北上「そりゃありがたいね」

吹雪「よっと」カチッ

北上「え?」

テープを潜り中に入ると吹雪がスイッチを入れた。

すると部屋の明かりがついた。

当たり前だ。当たり前、だが

北上「電気つくの!?」

吹雪「そりゃまあ」

北上「火事だったんでしょ?」

吹雪「あー、火事って言ってもホントにしょぼいもんですよ。ボヤですボヤ」

北上「ボヤって、でもソファーとか」

部屋のソファーを見る。

背もたれにいくらか焦げた後があった。しかし半分以上は特に被害がなくちょっとした修理で使えそうに見える。

北上「机とか色々と」

提督の机を見る。

爆発で飛んできたのか銃痕のようにいくつかの黒い跡が残っていた。でもそれだけだ。

北上「ダメになって、ない?」

吹雪「ね?火事自体は大したもんじゃないんですよ」

北上「ならなんでこんなに大げさに」

吹雪「ソファー触ってみたらわかります」

北上「ソファー?」

なんだろうか。言われた通り手をソファーに押し込む。

北上「うえぇ」グチャ

濡れていた。それも尋常じゃない濡れ方で。

吹雪「ボヤで済んだのはこうしてスプリンクラーや消火作業で辺り一面水浸しにしたからですよ。部屋が使えなくなったのもそれです」

北上「なるほど、そっちは考えてなかったや」

吹雪「火で全部燃えることを考えたら必要な犠牲って感じですけどね。水はなんとか抜いたんで後は床の張替えですねえ」

北上「大変そうだね」

吹雪「そこら辺は夕張さん達の頑張り次第ですかね。でも明日中には終わると思いますよ?」

北上「意外と早い」

吹雪「腕は確かですから。あったあった」

探し物は見つかったらしい。

何にせよ部屋の被害はたいしたことなさそうだ。

北上「ん」

扉を見つめる。

この先は確かに提督の部屋になっていたはずだ。こっちは無事なのかな?

あれ、というか今更だがこの部屋入った事ないや。

吹雪「そこは、普段から立ち入り禁止ですよ」

北上「…後に目でも付いてるの?」

吹雪「そんなもの使わなくてもだいたい分かりますよ」

北上「付いてるのは否定しないんかい」

吹雪「基本的にそこは提督の許可無しでは立ち入り禁止です。鍵もかかってますし」

北上「基本的に?」

吹雪「例外的に私が合鍵使う時もあります」

吹雪「さ、行きましょう」

北上「はいはーい」

テープを潜り部屋をあとにする。

北上「てーとくどこ行ったのかね」

吹雪「知りませんよ」

少しムスッとした表情で答える吹雪。

北上「怒ってる?」

吹雪「火事の件に関しては特になにも。事故ですからね。それにまず何よりも磯風の事を優先してますし」

今度は、なんだろうか、安心というか信頼というか、言葉に表せない表情をする。

北上「そーいや写真が見つかったんだって?」

吹雪「あーアレですか。しっかり回収してやったんで安心してください。それじゃ、おやすみなさい」

北上「おやす~」ノシ

安心して?どういう意味だ?あ、大井っちの写真だったのかな。

さもありなん。

【屋上】

谷風「いやぁ大変だったよ。磯風のやつ責任取って腹を切るとか言い出す始末でね」

北上「吹雪にこってりしぼられたんだって?」

谷風「まあ事故だしね、そんなにこってりってわけじゃあないよ。ただ反応が面白いから色々といじってたら段々おかしくなってきちまってし」

北上「それ笑い事なの?」

愉快犯め。姉妹に対しても容赦がない。

谷風「そういや君は今日姉妹でデートだったんだってね。いいねぇ熱々だねぇ」

北上「まあね」

谷風「どうだった?外の世界は」

北上「楽しかったよ。相容れないなとも思ったけど」

谷風「ま、そんなもんさね。だからこそたまに行くくらいで楽しいのさ」

北上「後初めてまともにスマホに触った」

谷風「そこはもう少し努力してみてもいいと思うけどねえ。この谷風さんだってこいつはそれなりに使いこなしてるんだぜい」

北上「使いこなすねぇ」

ポケットからスマホを出す。新品同様のピカピカのそれは外の世界と同じかそれ以上に相容れない気がする。

谷風「おや?メッセージが来てるみたいだね」

北上「そうなの?」

谷風「ホントに使ってないんだね…ほらこれこれ」

北上「おー凄い。これは、提督から?」

谷風「何かあったのかね?」

北上「さあ。えー、今から会ってくれって」

谷風「ほほぉう」ニヤニヤ

うわすっごい悪い顔してる。

やれ逢引だの密会だの散々囃し立てる谷風を何とか振り切って駐車場に向かう。

そういうのは大井っち相手にして欲しいもんだ。

しかしそうなると一体全体私にどういった要件だというのか。

少しづつ駆け足になる。

気になるからだ。

それだけだ。

最後のお茶を求めて

無理だこれ

63匹目:A cat may look at a king



私は言わばなり損ないみたいなものかもしれない。

人でも船でも猫でもない。

でも、そんな私でも、ちょっとばかし夢を見るくらいの権利はあると思う。

少しくらい、いい目にあってもいいと思う。

提督「…」

北上「やほー、さっきぶりだね」

提督「だな」

北上「で、何のよう?」

車内には辛うじて運転席に座る提督の顔が認識できる程度の薄い明かりだけが灯っている。

提督「あーっと、そのだなあ」

何やら歯切れの悪い提督。

提督「…ッシ、実はその、お前にお願いがあってな」

意を決したというふうにそう会話を切り出す提督。

北上「お願いって、まあ提督の頼みなら早々断ることもないけど。でなにさ?」

お使いかなにかだろうか。まさか自分の寝巻きを持ってこいとかか?

確かにここで一晩過ごすなら必要かもしれないがよりによってそれを私にという事もあるま「パンツを見せてくれ」

ん?

北上「え?今なんて?」

提督「パンツを見せてくれ」




はい?




提督「いや、待て、間違えた。今のはなしだ。もう一度言い直す」

北上「う、うん、だよね。もう一度聞き直すね」




提督「下着を見せてくれ」
北上「変わってねぇよ」

ロスタイムに落ちた奇跡のお茶

毎度のアドバイスに感謝の気持ちしかないのです
だから頑張って書くのです

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「つまり、大井っちへのプレゼントとして下着を買いたいから手伝ってくれと」

提督「ハイ」

蚊の泣くような声で答える提督。

北上「はぁ…」

提督のあまりのぶっとんだ発言に逆に冷静になれたので一つ一つ問い詰めていくとつまりはそういうことだった。

北上「それにしてももうちっと言い方があるでしょうに…」

仮にも私達の命を預かる立場なのだ。言動に少しは気を使ってほしい…

提督「ゴメンなんかテンパった」

北上「別にパンツくらいいいんだけどね」ペラ

提督「ちょぉお!?…お?」チラ

北上「この時期は少し寒いのでスパッツを履いてみたり」

提督「くっ!」

提督「いやでもほら!普段からパンツなんて見慣れてるしな!」

北上「その通りなんだけどそれはそれでどうなのよ」

艦娘なんて半数くらいがパンツ丸見えみたいな服装だしそこは仕方ない。

というか見慣れてるとか言いつつチラ見してきたじゃんか…

北上「でもなんだって今このタイミングでプレゼント?」

提督「あいつがここに来て丁度2年くらいなんだよ。それで」

北上「へぇ」

それは知らなかった。

北上「まあ手伝うのはいいけど、私でいいの?というか私じゃない方がいいと思うけど」

提督「なんで?」

北上「私オシャレとかさっぱりだし」

提督「そりゃーほら、大井といつも一緒だし好みとかそういうの詳しいかなって」

北上「それなら球磨姉や多摩姉でいいじゃん。いや球磨姉は微妙か…でも私よりはマシでしょ」

提督「お前そんなにセンスないのか?」

北上「センスというか、興味が無い。そもそも大井っちと違って私ブラしてないし」

提督「へー、え!?してないの!?」

北上「そんなに大きくないしさ」

提督「へ、へぇ~」チラ

北上「…いや、あれだよ?ブラしてないだけでスポブラみたいな、カップ付きみたいな下着はしてるからね?」

提督「アーナルホドネー」

ブラ1つでこんなに心動かされるとは男って楽しそうだな。

北上「まあともかくそんなわけで私以外にした方がいい」

提督「ぐっ…いや待て!」

北上「なにさ」

提督「ひとつ決定的な理由がある」

北上「その心は」

提督「お前以外にこんな事頼めるやついない」

私以外に?

提督ラブな人達なら…いやそれはそれで色々問題がありそうだ。

他は大抵参考にならなそうだったり参考になり過ぎて逆に危なげだったり…

アレ?他誰がいる?



北上「引き受けた」

提督「感謝」

北上「で、私はどうすればいいの?」

ネット通販とかだろうか。

提督「明日、一緒に買いに行こう」

北上「え?買いに行くの?」

提督「そりゃそうだろ」

北上「でもいいの?提督外に出て」

提督「燃えちまったもの買い足さにゃならんしな。それにほら!俺いなくてもなんとかなるしな!」

北上「嬉嬉として言うことじゃないでしょそれは」

それに大井っちのためとはいえ私達二人で出かけるというのはあまり知られてはいけないと思うが。

提督「安心しろ。皆には内緒でいく」

北上「それこそまずいのでは?」

提督「そこら辺は任せろって。策はある」

北上「不安しかないけど…まあいっか、任せるよ」

提督「よし。じゃあ集合時間は明日の11時な。ここなら球磨型はお前以外遠征か出撃だ」

既に計画済みだったらしい。

北上「で、こっそり出てこいと」

提督「そゆこと」

北上「提督はどうすんのさ」

提督「燃えた書類関係で隣の鎮守府行ってくると言っときゃ大丈夫だろ」

北上「ホントかよ」

提督「あたぼーよ。もう吹雪の協力は取り付けた」

北上「マジか」

提督「燃えたもの新調しなきゃ行けないのはホントだしな。お土産を要求されたけど」

北上「意外だなぁ吹雪がOKだすなんて」

提督「アイツは意外とそういうやつだぜ」

北上「覚えとくよ」

提督「じゃ明日、鎮守府前のバス停って事で」

北上「りょーかい」

提督「んじゃおやすみ」

北上「おや…提督マジにここで寝るの?」

提督「ここで寝た方が明日スムーズに外でれるし」

北上「そこまでせんでも…まあいいや、おやすみ」

やれやれ妙な事に巻き込まれた気がする。

車から部屋への帰り際に掲示板に貼られていた明日の予定表を見る。

ならほど確かに球磨姉多摩姉木曾は出撃のようだ。

あれ?大井っちはいるのか。でも1人くらいなら問題なかろう。

廊下から外を見る。

真っ黒な窓には私の顔だけが映る。

北上「何ニヤけてんだ私」

イチャイチャさせよう

試合時間もう少し早くできないですかね…
度重なる夜更かしに耐えられる歳ではもうないのです。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

時刻。きっかり11時。

もちろん私が時間に正確というのではなく、慌てて準備した結果なんとか時間丁度には間に合ったという、つまり私の性格がルーズなだけである。

提督「おう、おまたー…せ?」

北上「はよーてーとく」

提督「おはよう。北上?」

北上「ん?どったの提督」

提督「髪型」

北上「あーこれね。結ぶの面倒だったからそのままにした」

提督「一瞬誰かと思ったぞ」

北上「いっつも髪は大井っちに任せてたからさ、自分でやるのはめんどくさい」

提督「それくらいはやれよ」

北上「毎日毎日やってる飽きるものだよ」

提督「そういうものか。ってやってるのは大井なんだろうが」

北上「てへ」

実は別の鎮守府の北上に感化されてたり、とは言わなくてもいいか。

北上「どーかなこれ?私的には楽でいいんだけど」

提督「あーうん、いい、と思うぞ。凄く」

北上「なんか煮え切らない反応だね」

提督「だってここでその髪型褒めたらいつものは微妙みたいな感じになりそうじゃん」

北上「言っちゃうんだ。提督にしては珍しい気遣いだね」

提督「女性の容姿を褒める時は慎重にってよく言われてるから…」

北上「ほー」

大井っちにかな。案外吹雪とか?

北上「別に私ゃオシャレとか興味ないし見たまんまの感想でいいよ」

提督「そうか?じゃーあれだ、慣れない」

北上「風呂上がりとかも髪ほどいてるし何回か見たことあるじゃん」

提督「服装までちゃんとしてると全然違うよ。普通にロングの美少女」

北上「それは重畳。これなら変装効果もあるしね」

提督「なんつーか照れくさいな」

北上「見た目変わっただけでそんなに?」

提督「うん」

北上「どーてー」

提督「うるせー」

本気で不満そうな顔をされた。

北上「…」ジー

提督「んだよ?」

北上「むしろ提督の服装の方が珍しいと思うけどね」

提督「確かにな、俺もこれ着たのすげぇ久々だ」

北上「いっつも制服かシャツだもんね」

提督「この生活じゃどうしたって機能性利便性重視になるからな」

仕事場とはいえ年がら年中同じ施設に閉じこもってるのだから服装なんて誰も気にしないのだ。

北上「こうしてみると金髪が映えるね」

提督「カッコイイか?」

北上「いやチャラい」

提督「ダメかな」

北上「金髪にしなきゃいいのに、染めてるんでしょ?」

提督「ここは譲れん」

北上「こだわるのね」

提督「お、バスが来たな」

北上「ホントだ」

あれ?そういや提督の服って部屋から持ってきたってことだよね。

取りに帰ったってことは無さそうだしこれも吹雪の協力なのだろうか。

提督「バスってのも久々だ」

北上「今日は車じゃなくてよかったの?」

提督「車だしたら目立つじゃん」

北上「あーね」

「おー嬢ちゃん。その人が前に言ってた兄ちゃんか」

提督「兄?」

北上「げっ」

まさか同じ運転手とは…

提督「兄ちゃんってのは?」

くそう全く対策してなかったい。

北上「そうなんですよー今日久々の休日でしてー」ギュゥ

提督「ッァタ!そ、そうなんすよー」

「そいつはよかったな」

北上「あはは」

提督「わはは」

提督「で?どういう事だよ」

北上「前に咄嗟の嘘で鎮守府の兄に会いに来たって言っちゃって」

提督「なるほどね」

北上「完全に忘れてたよ…」

提督「ところで捻られたケツが地味に痛い」

北上「ゴメン、マジゴメン」

バスの一番後ろ。運転手から可能な限り離れた場所に座る。

北上「窓側は譲らないよ~」

提督「なんだよ、車酔いでもするのか?」

北上「窓際と関係あるのそれ?」

提督「外眺めてると酔いにくいんだと」

北上「へ~、私は単に景色を見たいだけ」

北上「昨日皆とも話してたけどさ、私達って長時間海上にいる事が多いじゃん?景色がどこを見ても同じようなものだから退屈でさ」

提督「あー、あー!確かに、そりゃ考えた事無かったな」

北上「まあそれはいいんだけどさ」

提督「いいのかよ」

北上「それはそれだよ。でさ、提督もいっつも机で書類とか画面とかと睨めっこじゃん?退屈じゃないのかなって」

提督「俺はよくゲームの画面みてたりするけどな」

北上「これはひどい」

提督「でも、そうだなぁあんまし退屈はしないかな」

北上「そうなの?」

提督「1番目に映るのはお前らだしな、退屈しないよ」

北上「おー提督っぽい事言った」

提督「どーよ少しは尊敬したか」

北上「これが普段からならなぁと」

提督「バッカおめえこういうのはここぞという時に言ってこそなんだよ」

北上「今がその時ぃ?」

提督「違ったかな」

北上「いいけどね、私はちょっと嬉しかったよ?」

事実だ。なんというか、つい顔が綻んでしまうような嬉しさがあった。

提督「…」

北上「え、何その沈黙は」

提督「なんでもないっす」

北上「うっそだーなんだなんだ何を考えてたコノヤロウ」

提督「うわ揺らすな揺らすな」

北上「…」

提督「…今度はそっちが沈黙かよ」

北上「大井っちってさ、最近変わったよね」

提督「あ、アイツが?んなことないだろー」

棒読みくさい。

北上「前はこんな風に私が引っ付くと反応が凄かったんだ」

提督「例えば」

北上「んー一言で言えばトロけてたね」

提督「あーうん分かるわ想像つくわ」

北上「なのに最近全然そういうのなくなってさ」

提督「寂しいのか?」

北上「どっちかって言うと嬉しい」

提督「あ、そこは普通なのね」

北上「私はノーマルだよ」

提督「別にアイツもアブノーマルなんてことはないと思うんだがな」

北上「それには同意するけどね。ぽさはあるけど」

提督「何やかんやで常識はしっかり持ち合わせてるからなアイツ」

北上「だよねぇ。いつから変わったのかなあ大井っち」

提督「改ニ辺りからじゃねえか?」

北上「やっぱ変わってんじゃん」

提督「げっ」

北上「正直者だなぁ提督は」

提督「うっせ」

北上「褒めてるんだよ?」

提督「はいはい。でもさ、俺もなんで急にアイツが変わったのかよくわかんねぇんだよ」

北上「そうなの?」

これは本当っぽい。カンだけど。

提督「ま、きっかけなんて些細な事だったりするからな。俺らが話しててもわからないだろうさ」

北上「そりゃそうだ」

きっかけ、きっかけねぇ…

北上「えい」スッ

提督「…あんまり寄りかかると危ないぞ」

北上「私にもきっかけがあったのだよ」

提督「きっかけ?」

北上「もう一人の私が囁いたのだ」

提督「なんだそりゃ」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「一日ぶりだ」

提督「俺は、どれだけぶりだろうな。覚えてねぇや」

お馴染みのでっかいデパート。あれだけ新鮮だったこいつも僅か二回でお馴染みと思えるようになるんだから面白い。

提督「丁度お昼だしなんか先に食べちまうか」

北上「さんせー」

提督「何かご注文は?」

北上「タバスコ入りピッツァ以外ならなんでも」

提督「は?」

北上「エスカレーターは、あれか。いやあっちかな?」

提督「覚えてないのかよ」

北上「あんまり使わなかったからさ」

提督「あと多分北上が探してんのはエレベーターだ」

北上「え?えーっと、箱の方がエレベーター?」

提督「エレベーター。階段の方がエスカレーター」

北上「移動手段としては車と電車くらいに違いがあるのになんでこんなに名前がややこしいんだ」

提督「気持ちはわかる」

北上「そしてやっぱ場所がわからない」

提督「なら丁度いいや。エスカレーター使おうぜ」

丁度いいって何がだ?

北上「エ、スカレーターは噴水の横だったよ」

提督「噴水。あー写真撮ってたやつか」

北上「見たの?」

提督「おうよ」

昨日大井っちに見せてもらってたのかな。

北上「どうだった?」

お洒落した大井っちなんて提督もあまり見ることはないだろう。

提督「そりゃあ、うん、凄く良かったと思う」

北上「良かったって、具体的には?」

提督「か、可愛かったよ」

何赤くなってんだこの野郎。なんかイラッとする。

こういうのをちゃんと大井っち本人に言ってあげてるのかねぇ。

北上「あ」

提督「どした?」

北上「あのお店」

提督「お店、アレか」

北上「大井っちが気にしてたんだよね」

提督「噴水横のお店、なるほど。よっしあそこ行こうぜ」

流石の食いつきだ。大井っちの名前出せば月でも行くんじゃなかろうか。

北上「で何の店だろ」

提督「喫茶店じゃないか?」

北上「あ、Cafeって書いてある」

提督「じゃカフェか」

北上「Cafeと喫茶店って何か違うっけ?」

提督「カフェはカフェが出てくるんじゃね?」

北上「いやCafeくらい何処でもあるんじゃないかな」

提督「そうなのか」

北上「というかCafeってコーヒーって事じゃん」

提督「マジか。知らなんだ」

北上「今は普通に飲食店って意味で使われてると思うけど。やっぱ喫茶店と同じか」

提督「言葉ってめんどくさいな」

北上「外来語って大抵意味と響きのどっちかが置いてかれて伝わるからね」

提督「世界で統一してくれりゃいいのにな」

北上「ヤード・ポンド法とかね」

提督「何それ」

北上「夕張と明石がよく呪ってた」

提督「何それ…」

店内は木の色に近い茶色をメインにしたシックな感じで、

ところでシックな感じってつまりどういう感じなのだろうか。私としてはあーよく小説なんかである感じの落ち着いた喫茶店だーとしか言いようがない。

北上「なんか大井っちを思い出すや」

提督「なんで?」

北上「ほら、髪の色」

提督「あー、確かに似てるな」

北上「茶髪って聞くとなんとなくチャラチャラしたイメージだけど大井っちの髪って凄く落ち着いた雰囲気があるよね」

提督「それはチャっていう響きのせいだろ…それにこの色は俺にとってはやかましいイメージが強いな」

北上「そんなの提督の前だけだよ、多分」

提督「お前の前じゃ違うのか?」

北上「子犬みたい」

提督「子犬?」

北上「遠くにいると尻尾ブンブン降って物凄い勢いで近づいてくるんだ。で近くまで来ると物凄い落ち着いてゆったりしてくれる」

提督「なるほど、そりゃ子犬だな」

北上「そんな感じ、だった」

提督「今は?」

北上「どこにいても落ち着いてる」

提督「子犬から成長したとか?」

北上「かもね。っと、それよりメニュー決めようメニュー」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

提督「俺が知らねぇとこでそんな事になってたのか」

北上「最終的にゴキブリは金剛さんが捕まえて終わり」

提督「え、どうやって」

北上「素手」

提督「やだ怖い」

北上「瑞鶴さんが爆撃機取り出した時はビビったね」

提督「あいつのあの何でも爆撃しようとするクセはどうにかしたい」

「お待たせ致しました」

北上「お、きたきたきましたよ」

提督「グルメかよ」

北上「提督って意外とネタが通じるよね」

提督「俺としては北上がネタを降ってくるのが意外なんだけどな」

北上「そこはほら夕張達が」

提督「あんにゃろ余計なことばかり」

北上「余計でもないよ」

提督「それにしても…」

北上「まあ、こうなるな」

私の前にはオレンジジュースとフレンチトースト。提督の前にはコーヒーがとスパゲッティ。

北上「提督って舌が結構お子様だよね。カレーも辛いのダメだし」

飲み物を交換する。

提督「舌が若いと言ってくれ。それに普通に考えたら苦いものや辛いものを美味いと思うのってむしろ変じゃないか?」

コーヒーを飲んだ訳でもないのに苦い顔をしながらそういう。

北上「それは、言われてみるとそうかもね」

提督「それに北上がコーヒーを飲むってのも意外だな」

北上「好きってわけじゃないよ。嫌いじゃないだけ。こんな場所だしなんか飲んだ方がいいかなぁって」

提督「雰囲気の問題かよ」

北上「いつもは牛乳とかお茶とかだよ。ジュースはあんまり飲まないかも」

提督「へぇ、俺もお茶かな。あと炭酸」

北上「お酒か」

提督「俺はそんなに飲まねえよ。吹雪はやたら飲むけどな」

北上「さすふぶ」

提督「うちだと何派が多いんだろうな」

北上「駆逐艦なんかは結構コーヒー紅茶を飲む子が多いよ。コーヒーは阿武隈の影響が強いのかな。紅茶は言わずもがな」

提督「阿武隈ってコーヒー派なのかよ。意外すぎる」

北上「私としては1番以外なのは六駆でコーヒー飲めるのが電だけってとこかな」

提督「全員酒は飲めるくせにな」

北上「ねえ」

提督「スパゲッティなんて久々に食べたわ」

北上「いつも和食?」

提督「和食、というか米だな。ご飯がなきゃダメだ」

北上「私は結構なんでもかな。朝も和食だったりパンだったり」

提督「気分か?」

北上「そんな感じ。他のみんなは和食だね。多摩姉はキャットフードだけど」

提督「ええ!?嘘だろ!?」

北上「嘘だよ」

提督「おい」

北上「ジョーダンのつもりだったんだけどさ…」

提督「いやぁなんか多摩ならあるいはって思えて…」

気持ちはわかる。

北上「せっかくだしどう?コーヒー」ハイ

提督「え、それはちょっと」

北上「そんなに嫌い?」

提督「そーゆーんじゃねえけどさ。ええいままよ」ゴクッ

北上「おーいい飲みっぷり」

提督「にっげぇ…」

北上「苦いのは当たり前だよ。それが美味しいかどうか」

提督「俺はきっと生まれる星を間違えたんだな」

北上「そんなにダメか」

提督「…でもちょっと甘い」

北上「え?」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「ごちそうさま」

提督「さて。でこれが今日の買い物内容だ」

北上「んー、ん?少なくない?」

提督「被害は主に床と家具だからな。そういうのは流石に業者に頼むさ」

北上「そりゃそうか」

提督「それにあの部屋あんまり書類とか置いてないしな!」

北上「仕事しろ」

提督「実際今じゃ仕事の殆どはパソコンだし」

北上「それは大丈夫だったの?」

提督「ダメだった。でも新しいのを明石達が組み立てるってさ」

北上「…パソコンって組み立てられるものなの?」

提督「らしいぞ」

北上「流石だね2人とも」

提督「ホンマそれ」

提督「じゃあ行くか」

北上「あいあいさー」

提督「買い物は少しだしサクッと終わらせちまおう」

北上「そしたらパンツか」

提督「それはもう忘れてくれ」

北上「え~どうしよっかなぁ。吹雪とか大井っちとかに話したら面白そうじゃない?」

提督「待て、それは待てマジで待って頼むから」

北上「じゃあなんか奢りって事で」

提督「あのなぁ…今自分の上官を脅してるって分かってんのかよ。それに奢られほど金に困っちゃういねぇだろ」

北上「でもさ、だからこそ奢られるって中々ないじゃん?」

提督「なるほど。いやなるほどじゃねえよ」

北上「さあ行こう」

提督「無視かおい」

北上「とっかーんすすめー」

北上は髪解くとヤバイ

もうまる1年も経つんですねこれ
これしか書けていない…

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

提督「これ良さそうだな」

北上「ファイルとかなら夕張達がいっぱい持ってるよ。キャラものの」

提督「あの手のを仕事に使うってのはちょっとな」

北上「身内しかいない職場だしいいんじゃない?」

提督「そもそも夕張とかはその手のファイル使ってんのか?」

北上「燃えたり焦げたりの事故が多発してやめたらしいよ」

提督「それは辛い」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「ペンってやたら種類が多いよね」

提督「正直どれがいいとかわかんねぇよな」

北上「どうすんのさ?」

提督「前使ってたのと同じのでいいだろ」

北上「無難だね」

提督「そもそも今は書くより入力する時代だしなぁ」

北上「秋雲も言ってたよ。今の方が便利で良いけれど唯一性が減ったというか、絵一枚一枚が消費される時代になったって」

提督「つまりどういうことだってばよ」

北上「私も理解したとは言い難いけど、本と電子書籍とかに置き換えてみると分からなくもないかなって」

提督「なんでも電子化ってのも困りものか」

北上「一長一短でしょ。便利になったのは間違いないんだからさ」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

提督「テレビを新調しようか迷っててさ」

北上「どこの?食堂の?」

提督「俺の部屋の」

北上「部屋にテレビあったんだ」

提督「テレビっつーかモニターだな。ゲーム用だよ」

北上「まさか経費で」

提督「提督権限で」

北上「悪い大人だー。きっとこの後私が食べるアイスも経費で落とすつもりに違いない」

提督「んな細かいのするかよ。つかアイスの奢りをご所望か」

・・・
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・・・・・・・・・

北上「てーとくの部屋に入ったことないんだよね」

提督「まあ基本人は入れないようにしてるしな」

北上「なんで?」

提督「秘密の書類とかあるしな。うっかり見ちまうと命を狙われるぜ」

北上「私ら球磨型を甘く見ちゃあいけないよ。並の軍隊なら球磨姉がぶっとばしちゃうからね」

提督「大井は暗殺とか得意そうだよな。ニコニコしながらサクッとやってきそう」

北上「多摩姉はあれかな、ボケっとしてそうに見えて実は裏切り者で、とみせかけて二重スパイみたいな」

提督「北上は、そうだなあ。スナイパーとか似合いそう。バレットとかさ」

北上「対物じゃんそれ。木曾はー、木曾は、真っ先にやられそう」

提督「何故かそういうイメージになるな」

北上「強いんだけどね。なんか生き残るイメージないよね」

提督「純粋に良い奴なんだけど純粋過ぎて死亡フラグ乱立した挙句やられそう」

北上「世の中を生きていくにはあまりにもバカ正直だからねぇ」

提督「…これは悪口だろうか」

北上「褒めてるという事にしておこう。実際褒めてるし」

提督「そうだな。そうかな」

北上「いい子だよ」

提督「そうだな」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

提督「よし。買い物はこれで終わり」

北上「ではアイスを食べよう」

提督「そんなに食べたいのかよ」

北上「ちょうど小腹すいたしちょうどいいじゃんか」

提督「それもそうか。あそこでいいか?」

北上「いいよ。何食べる?」

提督「俺はバニラでいいや」

北上「じゃあ私ゃメロンでお願いしますよー」

提督「あいよお姫様」

近くの椅子に座りパツキンの背中を見送る。

周りには随分と人がいるけれど2回目ともなると少しは慣れてきたようだ。

改めて見るとカップルが多いな。

私達もそう見えるのだろうか。

北上「だとしたらやはりパツキンはいただけない」

あれ?そういえば私の飼い主も金髪だったがあれはどうだったっけな。

記憶としてはかなーり微妙な感じだ。

写真の女性は確かに綺麗な金髪だったけど。

北上「ん?」

鳴き声がした。

おっと字が違う。泣き声だ。

見ると店の横のテーブルのひとつで小学校低学年くらいの男の子が泣いていた。

側で膨れっ面になっているのは姉だろうか。

こちらも男の子の方とそう年は離れていないように見える。

「ほら、いったい何があったの」

提督と同じようにアイスを買いに行って戻ってきたらしい母親が必死にとりなす。

「お゛ね゛え゛ぢゃんがぁ!」
「違うもん!私は取り返しただけだもん!」

姉弟喧嘩というやつか。

兄弟、姉妹。いや、

北上「ケンカかぁ…」ハァ

提督「どうした?ため息なんかついて」

北上「おかえりー。って、ありゃ?都会のメロンアイスクリームってオレンジ色なの?」

提督「メロンの方は生憎と売り切れでな。変わりにオレンジにした。嫌いだったか?」

北上「うんにゃ。甘けりゃかまいませんよー」

差し出されたオレンジアイスクリームを受け取りひと舐めする。

北上「うんうん。いいねぇ、侘び寂びだねぇ」

提督「そういうのは抹茶味とかに言う感想なんじゃねーの」

そう苦笑しながら提督もアイスクリームを食べる。

私達(艦娘)は喧嘩をしない。

勿論小さな喧嘩。小競り合いというか言い合いというか取っ組み合いというか、それくらいはある。

というか日常茶飯事だ。

でも大きな喧嘩はない。滅多にない。

結局のところ少しばかり言い合いをしたり、ちょっとばかし取っ組みあったりするのはコミュニケーションのうちだ。

中には全力で拳で語り合う者もいると聞くが。

それでも本当に殴る蹴るだとか、無視するだとか、仲違いをするだなんて事が起こらないのは、私達が知ってるからだ。

それはもう刷り込まれていると言ってもいい。

戦場においてそういった亀裂は死を招くことを。自分にも、相手にも。

だから本気で本音を言い合える人間が羨ましい、と言う訳では無い。

別にどちらがいいとか悪いという訳ではなく、要は隣の芝生という事なのだ。

冷静に考えれば喧嘩なんて起こらない方がいいに決まってるのだから。

自分達にないものというのはどうにも輝いて見えるものだ。

北上「…提督はよく大井っちと喧嘩してるよね」

提督「喧嘩…喧嘩かなぁ?いや喧嘩かぁ。あんまし考えた事なかったな」

北上「いいよねえ、仲睦まじくて」

提督「そう見えるのはおかしくないか?」

北上「喧嘩するほど仲がいいっていうじゃん」

提督「まあ仲が悪いわけじゃないけどさ。ならやっぱ喧嘩じゃねえのかなあ」

北上「じゃあなんなのさ?」

提督「んー取り合い?」

北上「何の?」

提督「…秘密」

北上「えーズルいなぁ」

提督「なんでだよ」

北上「お詫びにアイス1口ちょーだい」

提督「何がお詫びだ食いしん坊め」

北上「食いしん坊といえば多摩姉だね。すごいよ多摩姉のお腹は。四次元ポケットだよあれ」

提督「猫型ロボットだったのか」

北上「えい」ペロッ
提督「うわあっぶね、零れたらどうすんだよ」

北上「うーんバニラ」

提督「そりゃバニラだからな」

北上「もっと甘いのがいい」

提督「ホント好きな甘いの」

北上「はい」

提督「?」

北上「私のメロン、もといオレンジアイスを1口やろうじゃないか」

提督「えっと、いいのか?」

北上「そんなに躊躇するとこじゃなくない?」

提督「いやだって、食べかけだしさ」

北上「そこ気にするところ?」

提督「はぁ、わかったわかったいただきます」

北上「どお?」

提督「…めっちゃ甘い」

北上「そんなにかな」

コーヒーもそうだったが提督、なんでも甘いと感じる舌でも持ってるのだろうか。

北上「でさ、考えたんだけどさ、別に下着じゃなくてもいいんじゃないって」

提督「俺も出来ればそうしたいけど他に思いつかなくてな」

提督の言わんとすることは分かる。

艦娘はオシャレをしない、しにくい。

着飾っても基本的に鎮守府の中だけ。出撃は不思議と入渠で回復する制服しか着ない。

バックなんかも使わないしキーホルダーなんかも付けるところもない。

普段から身につけてくれるようなものをあげたいとなると選択肢がヒジョーに狭いのだ。

北上「となると髪留めとか寝間着とかいいんじゃないかなって」

提督「あいつ髪留めなんか使うのか?」

北上「邪魔だからってまとめる事は割とあるよ。貰ったら積極的に使いたくもなるだろうし」

提督「北上だったら何が欲しい?」

北上「私?なんで?」

提督「参考までに」

北上「私はもっと普段使うものが少ないしなぁ」

今欲しいものかあ。本とかしか思い浮かばない。

北上「あ、スマホケースだ」

提督「スマホケース?北上とは1番縁遠い単語だな」

北上「私だってこいつと仲良くなろうと頑張ってるんですよ~。で、手始めにというか訳あってケースが欲しくて」

提督「昨日買わなかったのか?」

北上「買おうと思ったのが結構後の方でさ。大井っちにもまた今度にしたらって言われたし」

提督「はぁん、流石だぜ大井っち」

北上「え?」

してやられたというような顔でよくわからない事を言う。

提督「じゃケース買いに行くか」

北上「そんなんでいいのホントに?」

提督「下着よりはいいだろ」

北上「そりゃまあ」

提督「北上にも買ってやるよ。今日のお礼って事で」

北上「いよっ太っ腹」

提督「腹と言やあそろそろダイエットの季節だな」

北上「食欲の秋?」

提督「そゆこと」

北上「それならこの前阿賀野が減量失敗宣言してたよ」

提督「早くない!?」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「これ」

提督「相変わらず猫好きだな」

北上「可愛いじゃん?」

提督「そりゃそうだがな」

私が選んだのは猫のマークがあしらわれた黒いケース。

北上「ここにカードとか入れるポケットもあるしね」

提督「なんか入れるのか?」

北上「えーっと、今運の上がるお守りとか?」

提督「なんだそりゃ」

ゴムとは言えない。

北上「てーとくは何買うか決めたの?」

提督「モチのロン」

北上「どれどれ?」

提督「これとかどうよ」

北上「…え?」

提督「変か?」

北上「変、じゃあないけどさ」

それは私のと色違いの、白いケースだった。

提督「北上とお揃とかいいんじゃないかなって」

北上「喜ぶとは思うけどね」

提督「じゃあいいんじゃね?」

そこは普通提督とお揃いにする流れだろうよ。天然なのかこの人。

北上「じゃあこれでいっか」

提督「よっし買ってくるぜ」

北上「あいあい」

まあいいや、別に私がそこまであの二人を応援する理由もないし。

考えてみればお揃いのものなんて恥ずかしくって出来なさそうなら2人である。

北上「面倒なカップルだ事」

お店を出て入口で提督を待つ。

これで今日の買い物は終わりかぁ。

案外あっという間だ。

あっという間すぎて少々、もったいない。

提督「おまたー」

北上「意外と荷物増えたね」

提督「かさばるものも多いしな。つってもどれも軽いから問題ない」

北上「エー、スカレーターはあっちか」

提督「他になんか買いたいものあるのか?」

北上「ん?帰るんじゃないの?目的のブツは買えたんだし」

提督「いやいや、せっかくなんだしもう少しいようぜ」

北上「いいの?」

提督「多少遅くなったって問題ないだろ」

北上「ホントかよ」

提督「そのための今日だ」

北上「ふーん、そっかあ」

提督「あ、いや、帰りたいってんなら別にそれでもいいんだぞ?」

北上「まさかでしょ。せっかく、なんだしね」

提督「だな」

北上「へへ、じゃあもうちょっとだけたくさん遊びましょうかねぇ」

人間は、例えばズル休みとかそういう少しだけ背徳感のあるわるーい事を妙に楽しいと感じる生き物だ。

北上「ねっ、てーとく」ニッ

そんな背徳感は例えば秘密を共有する悪友なんかがいるとさらに気持ちよくなって、ついついニヤリと笑ってしまう。

提督「」

北上「…てーとくー、おーい」

提督「お、おう。わりぃわりぃ」

また長くなってきてる

地獄のように暑いですが夏イベまで頑張って生きましょう

提督「で、北上はどこ行きたい?」

北上「んーそだねぇ」

何処か。

大井っち達と来た時は時間の都合でそう多くは回れなかった。

夕張達の言ってたアニメやら漫画やらの店も行ってみたいし、

ペットショップじゃなくて魚や鳥なんかも見てみたい。

ブックカバーや栞なんかを探すのも悪くないかな。

他にも…

北上「ん」

提督「ん?」

北上「ほら」

提督「いや、なんだ?その手は」

北上「てーとくが連れてってよ。私が行きたい所じゃなくて、提督が連れてってくれる所に行きたい」

提督「…いいのか?俺なんかで」

北上「私が行きたい所ならまた大井っち達と、なんなら私一人でも来れるからさ。なら今は今しか行けないところに行きたい」

提督「やれやれ。責任重大だなこりゃ」

北上「そんなに固く構えなくてもいーよ。お散歩気分でいいんだよこーゆーのは」

提督「仮にも男だからな。エスコートくらいしっかりやれって言われてんのさ」

北上「…」

まぁた大井っちか…もうデートとかしたのかな。

提督「よし決めた!いつまでも女性を待たしちゃいけねえやな」

そう言って差し出した私の手をしっかりと握ってくれた。

北上「今日は提督が羅針盤だね」

提督「変なところに連れてかれないように祈っとくんだな」

北上「で、進路は?」

提督「お前ゲームとか興味あるっけ?」

北上「夕張達とやったりしてるよ、色々と。一人の時は読書優先なだけ」

提督「オーケーオーケー。ならまずは、ゲーセン行こう!」

北上「わお」

遊んだ。ひたすらに遊んだ。そりゃもうネジの二三本落っことしてきたんじゃないかってくらいに。

北上「私運転の才能ないのかな」

提督「レ、レーシングゲームで負けたくらいで運転の才能はわからんだろ」

北上「まさか曲がりたい方向に身体を傾けちゃうような奴が実在した上にそれが自分だとは…」

提督「免許取るつもりとかあったのか?」

北上「原付くらいは乗ってみたかった」

上司と部下とか提督と艦娘とか人とか船とか猫とか男女とか関係なく、気の合う友人との愉快な時間だった。

提督「死んだ…」orz

北上「情けないなあ。仮にも軍人でしょ」バババ

提督「俺は銃なんか訓練した事ねえっての。なんでお前はそんなに得意なんだよ」

北上「そりゃまあ実際に撃ってるしね」リロード

提督「え」

北上「え、あ、あれね、単装砲とかをね」バババ

提督「あーそゆこと。確かに大きさ的には銃と変わらないものな」

ゴメン、本物の銃握ってます。

北上「よしクリア。次のステージ行く?」

提督「もういいや、他のやろ」

北上「拗ねた…」

北上「リズムゲームって意味がわからない」

提督「でもクリア出来たじゃん」

北上「流れてくるアイコンに合わせて太鼓を叩くって意味なら別にそう難しくはないよ。でも曲にのってってのがサッパリ。多分無音でやっても私の得点は変わらないと思うよ」

提督「あーそういうことか。でもこればっかしは感覚的なもんだしなあ」

北上「だよねえ」

提督「うんうん」

北上「ところで提督」

提督「なんだ?」

北上「イージーでやったら?」

提督「ノーマルより下げたら負けかなって」

北上「クリアしてから言おうよそれは」

提督「これがプリクラ」

北上「お金を入れてくださいだって」

提督「お、始まった」

北上「なんか色々選べるね」

提督「おい時間制限あるぞこれ」

北上「短っ!初見殺しじゃん」

提督「とりあえずノーマルで」

北上「補正もいっぱいあるね」

提督「目の大きさってなんだよ」

北上「若さ補正まである」

提督「若さ、若さってなんだ」

北上「振り向かないことだよ」

提督「これでいいかな」

北上「うわ始まった」

提督「早くね!?早くね!?」

北上「ど、どーする?ポーズどうする?」

提督「なんかこう、かっこいいやつでいこう!」

北上「よし来た!」


パシャッ


提督「なんで2人してガイナ立ち」

北上「咄嗟に簡単に取れるかっこいいポーズ」

提督「まあそうだけど」

北上「次来た」

提督「やっぱ短ぇ!」

北上「次は?」

提督「今度は北上が指定してくれ」

北上「うわぶん投げたこの人」

提督「ほら時間ねぇぞ!」

北上「えぇえじゃ初代プリキュアで!」


パシャッ



北上「なんで咄嗟にポーズ取れるのよ」

提督「飲み会の罰ゲームでコスプレ付きでポーズさせられた話する?」

北上「kwsk」

提督「あれは大規模作戦後の夜だった…って次々!」

北上「ちくしょうちょっとは待てないのかねえ!」

提督「もっとこう2人だからこそできるポーズがいいな」

北上「プリキュアはそうじゃない?」

提督「それは忘れてくれ」

北上「はい次ー」

提督「え、えーと、知性と恍惚のポーズ!」


パシャッ


北上「ゼロいいよね」

提督「このポーズは見れないけどな」

北上「悲しいね」

提督「北上はどことなく栗栖っぽいな」

北上「胸か、胸の話をしているのか」

提督「違、わないけど」

北上「何さ提督なんてそんなに身長ないくせに」

提督「オカリンが高すぎる」

北上「次ラストじゃん」

提督「プリクラっぽい写真を1枚も撮れていない気がする」

北上「プリクラっぽいってなんだっぽい?」

提督「哲学っぽい」

北上「えーい時間ない」

提督「なんかプリクラっぽいので」

北上「じゃ、じゃあこういうの?」

提督「マジか」


パシャッ


提督「2人でハートマーク作るってもう時代遅れな気がする」

北上「正直同意」

提督「今のアベックは何が流行りなのかね」

北上「案外プリキュアとかナウいヤングにバカ受けかもよ」

提督「次はお絵描き。お絵描き?」

北上「撮った写真をコラ出来るらしい」

提督「コラって言うなコラって」

北上「うわ!提督目がデカい!」ブハッ

提督「キモっ!なんだこれ!」

北上「パツキンなのに目が!目がキラッキラしてる!プリキュアに違和感ない」ワハハ

提督「おりゃ」

北上「あー目線はズルいよ隠すなよ~」

提督「あれ、目線引いた方がなんかヤバい奴に見える」

北上「」プルプル

提督「お前さっきから笑いすぎだろ」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

提督「出来たな」

北上「会心の出来だね」

提督「じゃあボッシュート」

北上「あぁ!なぜに!」

提督「バカめ!こんな醜態をタダで晒すと思うてか」

北上「むむ、ならばどうすれば」

提督「こいつよこいつ」

北上「コイン?」

提督「そそ」

北上「さっきコインゲームで惨敗して残ったのをどういうわけか思い出とか言ってポッケに入れたやつじゃん」

提督「そこは言わなくていい」

提督「というわけで今からこいつを投げて掴む。北上は俺の右手と左手、コインを握ってない方を選んだら価値だ」

北上「え?それって」

提督「ほっ!」

北上「提督もか…」

提督「え、何が?」

北上「あーそっか、提督が教えたんだから当たり前か」

多摩姉は確かそう言っていた。

提督「もしかしてバレてる?」

北上「両手出して」

提督「バレテーラ」

北上「あと写真も出せペテン師め」

提督「チクセウ」

北上「多摩姉ちゃんも同じ事やってたんだ。そっちは普通に見破ってやったけどね」

提督「さっすが、動体視力いいなお前は」

北上「まあね」

提督「俺のはどうだ?」

北上「バレバレ」

提督「マジかよ。親父直伝の技なのに…」

こんなせこい技で落ち込まれても。

北上「そういえば姉ちゃんは提督に教わったって言ってたよ」

提督「げっ、俺かよ。ん?俺か?」

北上「あれ?違うの?」

提督「あーいや、俺か。俺だな」

北上「お、おう」

歯切れが、そういえば多摩姉も歯切れが悪かったっけ。

提督「後は、UFOキャッチャーとかやるか?」

北上「景品ものはいいかなあ。置く場所に困るし」

提督「切実な」

北上「しかしあれだね。まるで男子高校生みたいな事しかしてないね」

提督「男子高校生とか知らねぇだろお前」

北上「アニメで見た」

提督「多分だけどそれは日常詐欺のやつだ」

北上「もっとこう普通の事したいね」

提督「普通って?」

北上「デートっぽいこととかさ」

提督「」

北上「女子高生の感じは昨日味わったんだ」

提督「」

北上「男子高校生のノリは、まあ今のでいいや」

提督「」

北上「後はカップル的な事を体験しておきたいなって、提督?」

提督「ゴメン。処理が追いついてない」

北上「はい?」

一体何をそんなに慌てて…

北上「提督」

提督「はい」

北上「デートしたことある?」

提督「ナィ」

北上「うぇー…」

考えてみたら提督である。おいそれと外に、まして部下とデートでなんて出来るはずもなし。

なし?いや今日みたいにできなくもないはずなのに?

北上「提督…」

提督「やめろぉ!そんな悲しい目で見るなぁ!」

北上「いや、うん。だからゲーセンだったんだね。結果的に楽しめたから、セーフセーフ」

提督「すげぇ的確に心を殺しに来てる」

北上「まあ私も他人の事言えないけどねぇ」

いや、他人の事というよりは人の事か。

提督「いいんだいいんだ…俺は好きで提督やってんだ…」

北上「おーよしよし」

ちょっと言いすぎたかな。

北上「よし!ならばこの北上様が一肌脱ごうじゃあないか」

提督「え?」

北上「やろうよデート」

提督「え゛!?」

北上「予行練習にさ。2人でちょっと大人になろうじゃないさ」

提督「やるっつったって、何する気だ?」

北上「んーとりあえず手を繋ぐとか」

提督「他には」

北上「んー」

提督「他には」

北上「んー」

提督「お互いダメじゃねぇか」

北上「なんかそれっぽい事すればいいっしょ」

提督「適当だな」

北上「堅苦しくやるもんじゃないしね」

提督「だな。よし!やるか」

北上はもう少し自分が美少女ということを自覚して

艦娘は基本全員美少女なので基準がおかしくなっている娘が多いと思うのです。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

【洋服店】

提督「やっぱオシャレだろ」

北上「私達にとって1番難易度高くない?」

提督「だからこそだろ。さぁ行くぞ」

北上「うわぁやだやだ。キラキラしてるよ、輝いてるよ。川の魚はね、綺麗すぎる水じゃ生きていけないんだよぉ」

提督「今のお前の格好なら浮かないって。大丈夫大丈夫」

北上「う~…というか提督なんで余裕なのさ」

提督「入るのは北上だしな」

北上「え、ここは男が選ぶものじゃない?」

提督「マジで?でも女物だぞ」

北上「だからどっちが似合う?みたいなのやるんじゃないの?」

提督「あーなるほど」

北上「でしょ?」

提督「いってらっしゃい」

北上「おいこら」

「あのー、何かお探しでしょうか?」

北提「「大丈夫デス!」」

北上「どれも如何にもお洋服って感じだね」

提督「あまりに見慣れないものばかりだな」

北上「えーっと、じゃこれとこれどっちがいいかな?」

提督「ん?ワンピース、でいいんだよな」

北上「多分」

提督「白のワンピースってなんかいいよね」

北上「じゃこっちか」

提督「このての黒のワンピースってあんまり見ることないよな」

北上「ワンピースっていったら白で夏と田舎と幼馴染と麦わら帽子だよね」

提督「その通りなんだけどそこまで分かられてるとなんかやだな」

提督「鎮守府にはワンピースいないもんなあ」

北上「みんなスカートかスパッツとかだもんね」

提督「基本短いし」

北上「濡れにくいし風通しいいから楽でいいけどね。四六時中あんな格好だと見られるのも慣れるし」

提督「俺も見慣れたわ。夏なんか酷いときゃシャツとパンツだけで過ごすやつもいるし」

北上「隠す意味もないからねえ。暑かったら露出度上げればいいやって思考になるわけよ」

提督「あの金剛が扇風機の前で下着オンリーであぐらかいてたの見たときゃ暑さって怖いなってなった」

北上「大丈夫だったのそれ?」

提督「太陽より真っ赤になってガラス窓突き破ってった。しばらく大変だったよ」

北上「でしょうね…」

北上「大井っちとかワンピース似合いそう」

提督「あー分かる」

北上「こういう長いのはみんな嫌がるみたいだけどね」

提督「なんで?」

北上「短いのになれてるからね」

提督「職業病みたいだな」

北上「神風とかならいけるかな」

提督「珍しく露出度低いものな。後は隼鷹とか」

北上「あの人はドレスとかのが良さそう」

提督「ところで北上って妙に神風好きなイメージあるけどなんでだ」

北上「んー、なんかこうあの子って見てるといじりたくなるというか、ムラっとこない?」

提督「俺ここで頷いたらアウトだよなこれ」

北上「秋、というかもう冬物も売ってるね」

提督「お前ら冬もあの姿だもんな」

北上「艤装付けてる時は寒さには強いからね。暑さが弱点だよ」

提督「部屋着とかは?」

北上「ドテラとか着て後はコタツに」

提督「コタツはまだ出さねぇぞ」

北上「ちぇー」

提督「鎮守府には冬服派とドテラ派がいる」

北上「そうなの?」

提督「空母とか和服よりなやつらはドテラが馴染むんだと。まあ海外艦のクセにドテラ愛好家なのもいるけど」

北上「ほほう。駆逐艦はかなり好みが別れそう」

提督「実際そうだな。後吹雪は冬でもあの服装だ」

北上「逞しいね秘書艦」

提督「さっむ!とか言いながらも鳥肌ひとつたてずに仕事すんのな」

北上「凄いね秘書艦」

北上「お、てーとく~見て見てー」

提督「なんかいいのあったか?」

北上「じゃん!」

提督「紫外線照射装置…クソTシャツってやつか。なんでよりによってそれ…」

北上「どうせ使うのは部屋着くらいなんだしこういうネタ的なのがいいっしょ」

提督「まあそりゃそうかもだが。いやそうなのか?」

北上「てーとくはこれね」

提督「なになに、クソT?なんてクソTにクソTって書いてあるんだよ…」

北上「まさにクソTシャツだね」

提督「それになんでこれが、あ!そういうことか、曙かよ」

北上「提督的にはクソ提督呼びってどうなの?」

提督「例えばクソ親父とかクソババアってどこか愛情を感じさせるところあるじゃん」

北上「ふむ、なるほどね」

提督「1番キツいのはおいとかお前とかでしか呼ばれなくなった時。時点でロリコン呼び」

北上「なんか生々しい意見だけど実体験?」

提督「北上に似合いそうなのはっと」

無視しやがった。

提督「これとかどうよ」

北上「台風?風関係は駆逐艦の特権じゃない?」

提督「そういや台風って艦はいないな」

北上「物騒だからね」

提督「そりゃそうか」

北上「で、台風の意味は?」

提督「ニュースでよくやってるだろ?台風北上とか」

北上「うん、うん?」

提督「漢字だよ漢字」

北上「あー北上か。あー、確かにそうだね。考えた事無かった」

提督「あれ見るたびに北上が浮かぶんだよな」

北上「自分の事って案外気づかないもんだねぇ」

提督「文字入りのTシャツは川内型がよく着てたな」

北上「夜戦って文字のを着てるのは知ってるけど、那珂とか神通もなの?」

提督「元々那珂ちゃんがサイン入りの服を作る!って服に試し書きしたのが発端らしくてな。それを川内が真似した」

北上「神通は?」

提督「2人に合わせて」

北上「あーうんそんな感じだろうね」

提督「でも楽しそうだったな」

北上「2人のこと大好きだもんね」

提督「後は金剛達とかか」

北上「提督LOVEって?」

提督「その通り」

北上「わかりやすい…で比叡さんがお姉様LOVEでしょ」

提督「榛名と霧島はなんだと思う?」

北上「榛名さんもお姉様LOVE、いや、と見せかけて提督LOVEとか?」

提督「なんで分かるんだよなんか怖ぇよ」

北上「あってるんだ…霧島さんは、霧島さんは?なんだろう」

提督「カタカナでヨタロウって書いてあった」

北上「何故に?」

提督「さぁ…?」

北上「お、これは阿武隈にでもあげようかな」

提督「熊注意か。クマってだけで阿武隈なのは安直じゃないか?」

北上「ほらほら、ここにdangerってあるでしょ」

提督「デンジャーは、危険ってことか」

北上「そ、熊危ないって事」

提督「あ、危熊か」

北上「Yes」

提督「言われなきゃ気づかないぞこれ」

北上「今んとこ3着か。神風はあの服気に入ってるから着てくれないだろうなあ」

提督「っておいさっきの2着も買う気かよ」

北上「せっかくだしいーじゃんか」

提督「結局こーゆーのになるわけね」

北上「身の丈にあったものを身につけるべきだと思うのだよ」

提督「大井とかには買わないのか?」

北上「球磨姉ちゃんも多摩姉ちゃんも制服派だし大井っちは自分でお洒落してたりするし、木曾は運動着とかだしね」

北上「提督は何か買わないの?」

提督「自分のセンスが羅針盤以上に信用出来ない」

北上「それはまたなかなかに…」

提督「んーさっきのワンピースとか?」

北上「え、提督着るの?」

提督「なんでだよ!北上へのプレゼントって事だよ」

北上「あー、ビックリした」

提督「普通そうなる流れだろ…」

北上「ちなみにどっちが似合うと思う?さっきは聞きそびれたけど」

提督「黒はなぁ。やっぱ白で」

北上「ほほーう。あでも私着るつもりないからいいよ」

提督「おい」

それに私は黒猫だしね。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

提督「化粧品とかってどう?」

北上「絶ッ対に嫌」

提督「すげぇ拒否」

北上「まず口紅とか。唇に何か塗るってのがもうムリ」

提督「そんなに?」

北上「リップクリームとか好き?」

提督「嫌い」

北上「そういう事」

提督「なるほど」

北上「何が嬉しくって顔とか目とかになにか付けたり塗ったりするのかねぇ」

提督「何かが嬉しいからなんだろうな。でもそんなに嫌がるってことはやった事はあるのか」

北上「大井っちと、あと駆逐艦にやられた」

提督「どうだった?」

北上「顔を白っぽくして口紅塗ると呪いの日本人形になると分かった」

提督「日本人形…ブフッ」

北上「あ!笑った!笑ったな!」

提督「いや違う違う!いてて引っ張んなって」

北上「だぁーまだニヤついてるー」

提督「はは、お前日本人らしいっていうか、元がいいからな。変に着飾らなくていいってことだろ」

北上「…」

提督「…北上?」

北上「誤魔化せると思わないでよね」ジトー

提督「サーセン」

北上「化粧してる艦娘は結構いるんだって。程度に差はあるけど」

提督「そうだな。それこそ口紅とか俺でもわかるくらいのをしてる奴は多いと思う」

北上「服は何かあったら破けるけど化粧は緊急時でも邪魔になることはないからだって」

提督「改めて大変な仕事だな」

北上「提督がそれ言う?」

提督「俺だから言うのさ」

北上「さいで」

提督「ちなみに香水とかは?」

北上「臭いからいや」

提督「えぇ…」

北上「どうせ潮の香りの方が強いしね」

提督「じゃ化粧品はやめて他のとこに、北上?」

北上「…あの子」

提督「あの子?」

そこそこの人混みの中1人の幼い少女が立ちすくんでいた。

北上「さっきアイス食べた時にいた子だ。喧嘩してた」

提督「あーそういや声が響いてたな。そんなに気になるか?」

北上「だってほら、周りに誰もいないよ」

提督「え」

そう。周りに弟やあの母親らしき人物は見当たらない。

道の真ん中にいるあたり例えば店で買い物をする誰かを待っているとも考えにくい。

それにきっとあの肩の震えは先程の喧嘩が原因ではないだろう。

提督「行くか。北上はどうする?此処で待ってるか?」

北上「このご時世パツキンの男が幼女に話しかけたりしたら即事案だよ。私も行く」

提督「…それもそうだな。なんか悲しくなってきた」

北上「でどうすればいいの?」

提督「迷子センターとか連れてきゃいいんじゃないか?」

北上「ならそれで」

北上「やほーお嬢さん」

「!?誰?」

北上「普通の人間だよ。ただ君みたいなちっちゃなお嬢さんが1人でどうしたのかなって」

「…ママを探してるの」

提督「いや迷子なのは君n「そっかーママが迷子かーそうかそうかー」…」

「うん」

北上「じゃあさ、お店の人達にちょっと探すの手伝ってもらおうよ」

「お店の人に?」

北上「そそ、すぐ見つかるよきっと。だからほら、行こ?」

「…うん」

警戒されるだろうなぁと思いつつ出してみた手は思いのほかあっさりと小さな手に掴まれた。

提督「なんかお前が駆逐艦とかに好かれるのがわかった気がする」

北上「どーゆー意味それ」

「おじさんは誰?」

提督「おじさん!?」

北上「ぶっ!…だ、誰だと思う?」プルプル

「んー…お父さん?」

提督「oh…」

不思議そうな目で見てくる少女を前に私はしばらく腹を抱える羽目になった。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「へー、フラワーガーデンかぁ」

「うん。みんなでお花を見に来たの」

迷子センターなるものは一階にあるらしく、少女の手を引きながら下へ向かっていく。

提督「ここの屋上ってそんなに広かったのか」

北上「後で行ってみる?」

提督「それはありだな」

「すーっごくキレイだよ!」

北上「そりゃいいや」

「うん!」

北上「ところでさ、さっき弟くんとケンカしてたのを見ちゃったんだけどね」

「え」

提督「お、おい北上」

北上「仲直りできた?」

「…向こうが謝ってこないんだもん」

北上「そりゃそうか。謝ってくれなきゃ許すって言えないもんね。でもじゃあ謝ったら許すんだ」

「…わかんない」

北上「わかんない?」

「まだムカついてるもん私」

北上「ムカついてたらしょうがないね」

「うん」

北上「ねぇ、もしこのまま仲直りできなかったらどうなる?」

「…遊べなくなる」

北上「他には?」

「一緒にお話出来なくなる」

北上「他には?」

「たっちゃんとかみーちゃんに変に思われる」

北上「他には?」

「つまんない」

北上「そっかあ」

「そうだよ」

提督「…」

「あ!ママだ!」ダッ

提督「え?」

北上「アレかな?」

一階の迷子センターの窓口に小さな男の子を連れた女性がいた。

提督「先に着いてたのか」

北上「めでたしめでたしだねぇ」

提督「お前、なんであんなこと聞いてたんだ?」

北上「ん?」

提督「いやさ、なんつーかあやし方というか、子供と扱い慣れてるなって」

北上「別にそんなんじゃないよ。ただ本当に純粋に聞いてみたかっただけ」

提督「ご感想は?」

北上「人も艦娘もそう変わんないなーって」

家族だからとか姉妹だからとか、同族だからとか。そういうのじゃなくて、一緒にいたいから一緒にいられるように努力してるんだ。

「おじ、お兄さんは結局誰だったの?」

北上「ん?んー、上司かなぁ」

「じょうし?」

北上「そそ」

「ヤクザのボス?」

北上「それは知ってるんだ…」

迷子センターで母親に泣きながら感謝されて若干たじろいでいる提督を眺めながら少女と最後の会話を楽しむ。

北上「さて、そろそろさよならかな」

「えー一緒に帰ろうよー」

北上「帰る場所が違うんだよ。仕方ないさ」

「お姉ちゃんは何処に帰るの?」

北上「普通の世界にだよ」

「でもお姉ちゃん普通じゃないよ」

北上「え?」

「なんかね、キラキラしてる」

北上「キラキラ、ねえ」

一瞬焦った。子供は妙に鋭いというがまさか艦娘だとバレちゃいまいな。

北上「さて、それじゃ」

「行っちゃうの?」

北上「うん」

「…またね!」

北上「うん。さよなら」

サヨナラを言うのは三度目、いや二度目かな?

提督「いやぁ参ったぜ。俺なんか何もしてねぇのにあんなに感謝されて。悪い気はしないけどさ」

北上「…」

提督「もし名前とかそういうの聞かれたらどうしようかと焦ったけど大事になってなくてよかった。北上?」

北上「またねって言われた」

提督「?あの子に?」

北上「凄く寂しそうな顔してさ、それで願うようにまたねって」

提督「よっぽど気に入られたんだな。良かったじゃん」

北上「そうじゃなくてさ。別れたら会えないんだなって」

鎮守府にいると忘れてしまう。誰かと出会う事と別れる事を。

一度別れるとどんなに再開しようとしても中々出来ない事もあると私はよく知っているはずなのに。

北上「またね、か」

提督「寂しくなったか?」

北上「思い出したって感じかな」

提督「なんだそりゃ」

北上「ねえねえ。屋上行ってみようよ」

提督「フラワーガーデンか。でももう日は沈んでるんじゃないか?」

北上「秋だもんねぇ。まあ暗かったら諦めよう」

提督「だな」

北上「さあ行くよおじさん」

提督「まてこら」

所謂アニメ提督なのでアルペイベが羨ましい

そろそろ夏の一大イベントですが皆さん命を大切に

知らなかったそんなの
艦これを始めてからゲーム外の知識がやたらと増えていく

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

提督「ほお、こりゃすげぇ」

北上「わーお」

屋上。

空は確かに暗くなっていたがガーデンは様々な照明で昼よりも明るいのではないかというくらいにライトアップされていた。

提督「すっげぇ電気代食いそう」

北上「うわー経営者目線ー」

提督「だって、なあ」

北上「なあって言われてもよ。とりあえず色々見て回ろう」

提督「これなんて花だ?」

北上「彼岸花だって」

提督「あー聞いたことはある」

北上「花言葉なんだと思う?」

提督「サッパリだよ。女ってなんで花言葉とかよく知ってるんだろうな」

北上「さあね。ちなみに花言葉は私も知らない」

提督「知らんのかい」

北上「言葉は花に込めるより相手に伝えるものでしょ」

提督「それだと 花がない だろ?」

北上「おー、提督にしては上手いこと言うね」

北上「あ、ベンチある」

提督「休んでくか」

北上「さんせー」ヨイショ

提督「流石に疲れたな」

北上「肩こったー」

提督「なんで肩」

北上「普段からねー魚雷が重いんだよ魚雷が」

提督「艦娘でも肩はこるのか」

北上「多分?」

提督「本人が疑問持ってどうするよ」

提督「今度マッサージでもしてやろうか?」

北上「おーいいねぇ。マッサージは好き、どんどんやって」

提督「好きって事は、普段は大井がやってるな」

北上「分かってるじゃん提督。もしやるなら大井っちを超えないと満足はできませんよぉ」

提督「ハードルたっけぇなおい」

北上「目標は高く」

提督「身の丈にあったものをってさっき言ってたろ」

北上「時には無茶しなきゃ」

提督「無茶と言い切ったなコノヤロウ」

北上「てへ」

北上「…」

提督「…」

北上「明るいね」

提督「大きい街だからな」

北上「陸にはこんなに人がいるんだね」

提督「これだけの人を守るのが俺たちの仕事なんだよ」

北上「提督はさ、どうして提督になったの?」

提督「んだよ急に」

北上「言い方は変かもだけど、提督元は一般人だったわけでしょ?」

提督「まあな。一応」

北上「なのに提督なんて立派なものになるなんて何があったのかなって」

提督「立派ねえ。そうご立派なもんじゃねえよ俺は」

北上「?」

提督「昔は人手不足だったから問答無用で戦地へ送られたらしいけど、今は戦局も安定してるからな。提督を育てる学校なんてのもあるらしい」

北上「へ~。それは知らなかった」

提督「お国を守る仕事だし、給料もいいってんで倍率は高いらしい。その分内容も難しいとか」

北上「人気なんだね」

提督「そして、入った奴の八割は辞めたり諦めたりだとさ」

北上「え、なんでさ」

提督「現実を知るからだよ」

北上「現実?」

提督「周りには初めて会う異性のみ。外界からは切り離されて缶詰。知り合いはおろか親兄弟にだって早々会えないし外部との連絡もおいそれと取れたりはしない」

北上「…改めて聞くと凄まじいね」

提督「金があったって使い道なんて限られるしな。ブラック企業のがなんぼかマシだ。人にもよるんだろうけど」

北上「それを良しとする少数が提督になってくわけか」

提督「そう。提督になる奴なんてどっか変なやつばっかだよ」

北上「提督もその選ばれた少数なの?」

提督「俺はコネで提督になった」

北上「うっわ、うっっわぁ」

提督「そこまで引くなよ」

北上「大暴落だよ。提督の株が急降下爆撃だよ」

提督「でもまあ、変なやつってのは同じだよ。俺もさ」

北上「提督が変なのは知ってる」

提督「さいで」

提督「お?これは、薔薇か」

北上「流石に薔薇の花言葉は分かる」

提督「愛だろ」

北上「そそ」

提督「…なあ、北上は好きな人っているか?」

北上「へ?なになにどうしたのさ急に」

提督「いやなんとなく」

北上「好きな人、ねえ」

飼い主、は少し違うかな。ご主人様だし。

大井っちや多摩姉ちゃん達は、やっぱり違うかな。

他にも神風や日向さん、吹雪に叢雲に…

北上「いまいちピンとくる人はいないなあ」

提督「そっか」

北上「提督はいるんでしょ」

提督「断定された」

北上「流れでわかるよ」

なんてのは嘘だけど。

提督「そりゃそうか」

北上「この景色を見て俺は人類を愛してるーだから守るんだーとかいう気なの?」

提督「そんな大層なやつに見えるか?」

北上「いや全然全くこれっぽっちも」

提督「デスヨネー」

北上「何が言いたいのさ」

提督「たださ、愛する者がいたとして、それが最優先にはなるかは別問題だと思うんだ」

北上「?まあそれはそうだと思うけど」

どういう意味だろうか。提督という立場上大井っちに現を抜かせないとかそういう話?

そんなわけないかこのずぼら人間が。

提督「帰るか」

北上「いいの?懐かしの人界をもっと楽しまなくて」

提督「長らく閉じこもってたせいですっかり人としての感覚を忘れちまってよ。さっさと愛しの鎮守府に戻りたいのさ」

北上「ただ引きこもりのくせに」

提督「警備員だからな。でも守るのは自宅じゃなくて海域だぜ」

北上「随分大幅にジョブチェンジしたね」

提督「ジョブチェンジってんなら北上だって」

北上「え」

提督「軽巡から雷巡って」

北上「あーそっちかあ」

提督「そっち以外にあるのか?」

北上「いやいや何でもない」

元々の職業は猫と言ったらどう反応するだろうか。

北上「あ」

提督「どした?」

北上「うーん、いやなんでもない」

どうして提督になったのか、というのをなんだか上手いことはぐらかされた気がする。

まあまた聞く機会もあるだろう。

興味本位でつっこんでいくところじゃないだろうし。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「…ッハ、ゴメン意識飛びかけた」

提督「別に寝ててもいいぞ?」

帰りのバス。意外にも座り心地のいい座席と程よい揺れに思わず寝てしまいそうになる。

北上「ならお言葉に甘えて」コテン

提督「甘えてるのは言葉だけじゃないだろ」

北上「まぁねえ」

提督の肩に。いや正確には身長差があるため方の少ししたによりかかる。

あー、もうこのままね 眠り姫になってしまいたい。

提督「大井はさ」

北上「うぇ?」

提督「大井は何か吹っ切れたみたいだったよ。てっきり北上がきっかけだと思ってたけど」

北上「私?」

私何かしたかな?

そう言えばあの夜の大井っちは確かに覚悟というか、吹っ切れた感じはあったような。

ダメだ意識が持たない。

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

【鎮守府正面】

北上「あー着いたー」

提督「改めて鎮守府周りって暗いな」

北上「これから風呂も入らなきゃ」

提督「夜飯もくってねえや」

北上「明かりだいぶ消えてるねー」

提督「就寝時間だからな」

北上「明日も仕事だしねえ」

提督「大変だよなぁ」

北上「いや提督もだよ」

提督「大変だよなぁ…」

北上「頑張りなよそこは」

北上「あー私の部屋も明かり消えてる」

提督「あの部屋は、空母か。また飛龍達だな」

北上「常習犯なの?」

提督「瑞鶴と飛龍はしょっちゅうな」

北上「ふ~ん」

提督「そうだ、夜飯作ってやろうか?」

北上「え、提督作れるの?」

提督「意外と自炊できる系男子なんだぜ。出来るってのはあくまで食えるものが作れるって意味だから過度な期待はNGな」

北上「ほほう、モテ要素ですなあ」

提督「よせやい照れるぜ」

北上「秋刀魚食べたい」

提督「流石にさばくのは勘弁してくれ」

北上「ならメニューはシェフに任せるよ」

提督「あいよ。作ってる間に風呂入っとくか?」

北上「そーしますかね~。あり?提督っていつもいつお風呂入ってるの?」

提督「皆が入り終わったら」

北上「女世帯って大変だね」

提督「ホントにな」

北上「そうだ!」

提督「どした?」

北上「一緒に入ろう」

提督「あー」

北上「時間短縮になるしさ。お互い疲れたっしょ」

提督「せやなー」



提督「ちょっと待って」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

意外な事に私は服というものを着る行為にあまり違和感を感じなかった。猫なんて年がら年中素っ裸なのに。

やはり人としての意識が合わさったからなのか、それとも体毛の代わりとなっているからなのか、ともかく服を身に付けることに何か感じたことはなかった。

だけど逆に服を脱ぐことにも何も感じなかった。

つまり素っ裸に抵抗がないのである。

北上「これは利点なのだろうか」

提督「何が?」

北上「別にー」

背後から提督の声がする。

お風呂と呼ばれるここだが一般的には銭湯と言うべきだろう。

何せこの人数が暮らすのだ。家庭にあるような小さなお風呂では断じてない。

更衣室はあるしシャワーは沢山あるしお風呂もでかい。残念ながら露天風呂とか卓球台、マッサージ椅子はないが。

ちなみに牛乳とかを売る自動販売機はある。

その更衣室で私と提督は服を脱いでいた。

北上「ちなみに提督の右側の棚がさっき話したゴキ事件の場所ね」

提督「できれば今言わないで欲しかった」

北上「もう流石にいないでしょ」

提督「いや精神的にな」

お互い背中を向けての会話。まどろっこしいったらない。

北上「ふぅ」

絶対にタオルを巻くこと。それが提督からの条件だった。

別に私は気にしないと言ったのだけれど年頃の娘がそう易々と裸を見せるな云々と聞き入れてくれなかった。

親父か。

提督「準備できたか?」

北上「モチのロン。って別に準備ってほどの事じゃないでしょ」

提督「それはそうだけだあ゛あ゛っ!?」クルッ

こちらを向いた瞬間カエルを握りつぶしたような奇声を上げる提督。

北上「え、何その反応」

提督「何処がいいんだよ!!タオルを巻けタオルを!」

北上「巻いてるけど」

提督「腰じゃなくて!胸から!上も隠せ!」

北上「提督も腰じゃん」

提督「俺は男だろぉ!!」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「ふぃ~~」

提督「ふぅ……」

そこそこの広さの湯船も二人きりだとやたら大きく感じる。そんな大海原で二人並んで停泊する。

北上「なんでお風呂に浸かってるのにため息なのさ」

提督「お前のせいだお前の」

北上「別に隠すほどのものじゃないけどなあ。ほら谷間だってないし」

提督「だから見せるなっての。しかしこうして誰かと風呂に入るのも久々だな」

北上「昔は入ってたの?」

提督「ここに来たばっかの時はな」

北上「ほほう。吹雪とかと?」

提督「ああ。親交を深めるには裸の付き合いだーって言ってよ。勿論タオルは巻かせたけどな」

北上「なんで今はやらないのさ」

提督「むしろなんでやると思ってんだよ…」

北上「別にいいんじゃない?家族みたいなもんでしょ」

提督「どうも北上はそこら辺の意識がズレてるよな。それに一緒に入ろうものなら確実に息の根を止めてきそうな奴らが何人か思い当たるし」

北上「案外入ってみたら大人しいかもよ」

北上「ホントはこうやって髪の毛を湯船に付けるのってルール違反らしいよね」

提督「別に家の風呂にルールもクソもないだろ」

北上「じゃマナー違反かな。それで言ったらこうしてタオル巻くのもダメらしいね」

提督「それは知らなかった」

北上「だから取っていいかな?」

提督「なんで頑なに脱ごうとするんだよ」

北上「濡れた布がずっと肌に張り付いてるのって結構キモチワルイ」

提督「我慢してくれ。お互い様だし」

北上「お互い様?」

提督「気にするな」

北上「提督って意外と鍛えてる?」

提督「ん、そうか?」

北上「ちゃんと腹筋あるし」

提督「これくらいの腹筋なら割と誰でもあるんじゃないか?」

北上「提督以外の人間の裸なんて見ないからなあ」

提督「見てたら大問題だわ」

北上「それもそうだ」

提督「俺は、そうだな。朝大鳳たちとランニングしたり木曾達と剣道したりとフツーのリーマンよりは運動してるかもな」

北上「仕事はしてないくせにね」

提督「決まり文句にしないで」

北上「さてと」バシャ

提督「ん?」

北上「やっぱキモチワルイ。肌に張り付く。ぴったり張り付くまとわりつく」

提督「濡れた服みたいなものか。俺は嫌いじゃないけど」

北上「私の話をしてるんだよぉ。これだからスパッツとかも嫌いなんだ」

提督「肌に張り付くから?」

北上「そそ。履いてる娘は皆動きやすいとか言うけどそんなことないと思うんだ。ねえ?」

提督「俺に同意を求められてもなぁ」

北上「ほら、いこ」

提督「行くってどこに」

北上「体洗いに」

提督「なんで俺も?」

北上「背中洗えないじゃん」

提督「え?」

北上「え?」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

提督「鎮守府の常識と自分の常識がズレてて怖い」

北上「常識ってほどじゃ、あーでもどうだろ。みんなやってたりするのかな」

提督「確かに姉妹の繋がりが濃いというのはあるけどな」

北上「いつもは私と大井っちが背中洗いっこして、木曾と多摩姉ちゃんが洗いっこして、最後に球磨姉ちゃんの髪をみんなで洗うんだ」

提督「背中洗えよ」

北上「球磨姉ちゃん凄いんだよ。シャンプーしてるとメデューサとか作れるんだもん」

提督「完全に遊びなのな」

北上「まあね。でもさ、自分で洗うより洗ってもらった方が綺麗になるじゃん?」

提督「それはその通りだな」

北上「後ね、洗ってもらってると暇になるから色々話せるんだ」

提督「ん?それはわからんな」

北上「お互いに自分を洗ってると忙しくて話しにくいけど、片方に集中すれば話しやすくなるの」

提督「それさっさと洗って湯船で話した方がいいんじゃ」

北上「もー分かってないなあ提督は。顔を合わせずそれでいて近くにいるからこそ話せるものもあるのだよ」

提督「ほー。やっぱみんな女の子なんだな」

北上「どゆこと?」

提督「男はそんなに話さないからさ。背中洗わせようものなら絶対イタズラとかに発展する」

北上「それって、経験談?」

提督「俺だって、昔は普通の学生だよ」

北上「んじゃま、とりあえずよろしく」ハイ

提督「はい?」

北上「まずは提督が洗ってよ」

提督「え、なにをaまてまてまて取るなタオルを取るな!」

北上「えー背中ならいーじゃん。おっぱいは前についてるんだよー」

提督「…それもそうか」

北上「そうそう」

提督「そっかーってなるかボケェ!」

北上「いっそがしい人だねぇ」

提督「じゃ、じゃあ行くぞ」

北上「そんなに身構えなくても…」

まるで湿布でも貼るかのようにそっとスポンジが私の背中に押し当てられる。

そのまま背骨に沿って静かに下まで行き、まるで蝉の抜け殻でも取るかのようにそうっと背中から離れるとまた同じ位置にいき

北上「ストァーップ!!」

提督「ハ、ハイ!」

北上「提督」

提督「な、ナンデショウカ」

北上「優しすぎ」

提督「え」

北上「ゆっくり過ぎ」

提督「はい」

北上「弱すぎ」

提督「はい」

提督「スマンなんか緊張した」ゴシゴシ

北上「私の身体はガラス細工じゃないんだから。むしろ提督より頑丈だしね」

提督「だって、こんなふうに触るの初めてだし…」ゴシ

北上「気にしすぎでしょ」

いくら私の背中を流すのが初めてと言っても基本的に人間と同じなのだ。そんなに身構えなくてもいいのに。

北上「大井っちなんかは結構肉付きいいんだよ」

提督「なんでここであいつが出てくんだよ」

北上「べっつにー」

提督「変なの」

北上「まあね」

提督「…」

北上「…」

提督「…」

北上「…」

提督「あれ?話さねーの?」

北上「あ、ごめん。いっつも大井っちが話してばっかだったからつい」

提督「あいつはよく喋るからなあ」

北上「せっかくだし提督が話してよ」

提督「俺が?そーだなぁ。今日楽しかった?」

北上「遠足帰りの子供に感想求める親かよ」

提督「ブッ、確かにそれっぽいな」

北上「でも、うん楽しかった。貴重な経験だったよ」

提督「北上はもっとダラーっと生きてるイメージだったけど、今日のお前はやたら積極的だよな」

北上「鎮守府に今更目新しいものもないしね。やっぱ外は未知に満ち満ちてるよ」

提督「経験か」

北上「そ、経験」

提督「興味本位で?」

北上「そう。だけど、それだけじゃないかな。目標というか、目的が無いわけじゃないし」

人間の事を知りたいと思う。飼い主の事も含めて。

提督「それは秘密か」

北上「乙女は秘密が多いらしいよ」

提督「確かに男は少ないかもな」

提督「艦娘なら戦乙女か」

北上「ワルキューレだっけ。北欧神話の」

提督「そこまでは知らねえな。流石に物知りだぜ読書家は」

北上「ゲームのせいなんだけどね」

提督「そっちかぁ」

北上「みんなソシャゲとかやってるから自然と耳にしてさ。提督はやらないの?」

提督「スマホより普通のゲーム機の方が」

北上「仕事しなよ」

提督「今のはあんまし関係な!くはないか…」

北上「よっしこうたーい」

提督「こんなんでいいのか?」

北上「ぶっちゃけたいして汚れてるわけでもないしね」

提督「そりゃな」

北上「じゃスポンジ貸して」クルッ

提督「だからこっちを向くな!」

北上「…おっきい」

提督「なんか卑猥に聞こえる」

北上「何がさ」

提督「ナンデモナイデス」

北上「変なの」

目の前には提督の背中がある。身長差はあるがこうして互いに座ってしまえばそんなに気にならない。

と思ってた。

いやはや一応とはいえ鍛えている男性の背中というのはこれが中々ごつい。普段から華奢な女体ばかり見ているせいで余計にそう感じるのかもしれない。

北上「ゴツゴツしてる」ゴシゴシ

提督「そりゃみんなそうだろ。骨とかあるし」

北上「そうだけど、そうじゃなくて。大井っちとか、みんなは抱き心地良さそうな感じで提督のは乗り心地が良さそう」

提督「分かるような、分からないような」

北上「お加減いかがでしょ」ゴシゴシ

提督「丁度いいよ」

一応男性だしと少し強めに洗ってみるが提督はそれでちょうど良さそうだ。

しかしこれが男性の身体か。私はあの大きく太い毛むくじゃらの腕しか飼い主の身体を覚えていない。

抱っことかはあまりしなかったのかな?

北上「…」

提督「終わりか?」

北上「…」ピトッ
提督「ヒウッ!?」

なんだその情けない声は。

身体を提督の身体に宛てがう。

抱きつくというよりはまさに背負われるような形だ。

体を前に倒しているのもあってか提督との体格差で私の顔は丁度心臓の裏辺りになった。

北上「おー心臓動いてる動いてる」

提督「イ、イキテルカラナッ」

北上「私の鼓動って聞こえる?」

提督「いえ全然全く!」

おかしいな。胸が薄いと鼓動が伝わりやすいとかいう話を夕張から聞いたのだが。まあ夕張だし。

北上「あり?鼓動がすっごい早くなってきた」

提督「風呂だから!血圧とか上がってなんか心臓が早くなんだよ!体も熱くなんだよ!」

北上「へえ」

人間ってそこまで温度変化に弱いのか。

北上「じゃ次は髪洗うね~」

提督「か、かみ?あー髪か。いや髪はいいよ。わざわざやってもらうほどじゃないし」

北上「なら私のをお願いしようかな」

提督「え」

北上「ほら交代交代」

提督「マジ?」

北上「マジマジ。卍」

提督「マジかぁ…」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・


提督「えーっと、ですね。まずどうやって洗いますのです?」

北上「ふつーに?」

提督「ふつーってなんだよ」

北上「逆に提督はいつもどうやってんの」

提督「てきとーにさーって」

北上「それで」

提督「いいの?それで」

北上「それ以外にあるの?」

提督「ないか」

北上「ないよ」

提督「おっしじゃあ行くぞー」

北上「おー。提督のお手並み拝イタタタ!ストップストップ!」

提督「あり?弱かった?」

北上「違う違う!強い!雑い!」

提督「そ、そうか?いつも通りさーっとやったんだが」

北上「え、なに?提督いつもこんなふうに髪の毛わしゃわしゃやってんの?」

提督「おう」

北上「わお」

提督「こんな感じ?」

北上「そうそう。髪の毛に指を通してすーっと」

提督「これ洗えてるのか?もっと髪の毛同士でゴシゴシした方が」

北上「それやると髪の毛痛むんだって。私達には関係ないかもだけどね」

提督「ほーなるほどね。ん?」

北上「あ」

どうやら髪に指が引っかかったらし
提督「えい」ブチッ
北上「ッタァア!」
提督「あ、ごめん」

北上「ゴメンじゃないでしょ!なんで今の力任せにぐいっと行ったの!」

提督「ひ、ひっかかってるから解こうかと」

北上「雑すぎる…」

いっつも大井っちにドヤされてるのはこういうところに原因があるのかもしれない。

提督「髪長いのってホントにめんどくさいのな」

北上「神風なんかもっと凄いよ」

提督「髪長すぎるやつ多いもんな」

北上「悲しい運命だね」

提督「北上も結構。腰まであるよなこれ」

私の髪の先に手を当てたのだろう、提督の手が腰に少し触れた。

提督「あ、すまん」

北上「いや別に謝らんでも」

そういえばどうも先程から提督は極力私の身体に触れないようにしているようだ。

この扱いというのはそれだけ私達艦娘を大切に思ってのことなのだろうか?

北上「私の背中ゴツゴツしてる?」

提督「してねーよ。髪であんまり見えないけど」

北上「真っ黒?」

提督「真っ黒。いい髪してるよ」

さっきの逆だと考えると提督からしたら私の背中はさぞ小さい事だろう。やたら繊細に扱ってしまうくらいに。

改めて考えると提督は今私の真後ろにいるんだよね。

提督が髪をすくたびになんだか自分が小さく、まるで人形のように感じられた。

大井っちの手と同じで、優しく、丁寧に私を撫でる提督の手に、なんだか嬉しくなって、妙にこそばゆくて、なんというのだろうかこういうのは。

提督「これってどれくらいやりゃいいんだ?」

北上「…」

提督「北上?」

北上「へ?あーなに?どしたの?」

提督「のぼせたか?なんか顔赤くないか?」

北上「そう?気のせいだよ気のせい。うん、もう大丈夫。流しちゃって」

提督「あいよー」ザバッ
北上「ブエッ!?」

桶に貯めていたらしいお湯が一気に頭上から降ってくる。

提督「よしオッケー」

北上「…」

オッケーじゃない。

多分今鏡を見たらずぶ濡れの幽霊みたいになってる事だろう。

提督「あとは身体洗ってさっさと上がるか」

北上「そだねー」

提督「あれ、スポンジどこいった」

北上「提督がザバッとやるからながれてったんでしょ」

提督「あホントだ」

北上「もぉー」

少し後ろに流されていたスポンジを取りに椅子から立ち上がる。

ずっと座ってたからかな、なんだかふらつく。

さっきからなんだか鼓動がうるさい。

少しだけ目眩がして

北上「あ」ツルッ
提督「え?」

やっと時間が取れたと思ったらメンテだこれ

腹いせにセクハラシーンを盛り込む

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「…」

目が覚めるとそこには見知らぬ天井が。

北上「ホントに体験できるとは」

提督「やっと起きたかドジっ子め」

横に目をやると回るタイプの椅子に逆向きに座る提督が見えた。

北上「提督?ここどこさ」

提督「俺の部屋」

北上「あー」

提督「うん」

北上「…なんで提督部屋?」

提督「はぁぁぁぁ……」

地獄の様に深いため息を吐かれた。

提督「マジで死んだかと思ったわ」

北上「あーそういやツルッと転んだっけ」

提督「丁度こっちに倒れてきたからキャッチはできたんだけどさ。そのまま気ぃ失ってるし」

北上「面目ない…」

提督「まあのぼせたんだろ。ちょっと迷ったけどとりあえずこっそり俺の部屋に運んだ」

北上「のぼせるってこういう事なんだね。いい経験だったよ」

提督「お前なぁ」

北上「ごめんごめん冗談だって」

提督「でも風呂につかってた訳でもないのにな」

北上「やっぱ外行ったりして体調が変な感じになってたのかなあ」

提督「さあね。まあ無事でよかった」

北上「ところでなんでこっそり提督の部屋に?」

提督「みんな大体寝てるからわざわざ起こすのもな。それに素っ裸のお前を抱えてる状況を誤解なく説明できる自信が無い」

北上「はは、確かに…あ、もしかしなくても私今」

上半身を起こす。どうやら提督のベットらしき物に寝ていた私の身体にはタオル一枚だけが巻かれていた。

提督「取るなよ…」

北上「取らない取らない」

提督「とりあえず北上も起きたし風呂場に置いてきた着替えとってくるよ」

北上「あー、私着替えないよ」

提督「は?着替えなしで風呂はいったのか?」

北上「タオル一枚巻いて部屋に戻りゃいいかなって」

提督「嘘だろおい…」

北上「今日来てたのも洗濯物んとこに放り込んじゃったし」

提督「あれか?船ってのは服を着るって意識が薄いのか?」

北上「それは案外冗談じゃないかもね」

北上「妙案がある」

提督「聞こう」

北上「とりあえず服を貸して」

提督「ここは俺の服しかないぞ」

北上「それでいいから」

提督「…まあタオルよりはいいか。ここはお前の妙案に期待しておこう」

北上「うんうん」

提督「俺は、とりあえず飯でも持ってくるか。食えるか?」

北上「ペコペコ」

提督「オーケー、部屋に持ってくるよ。仮にも病人みたいなもんなんだしあんまり変な事するなよ」

北上「メニューは?」

提督「お粥」

北上「完全に病人扱いだ!」

提督「冗談。適当にありもので作ってくる」

ガチャリと扉を閉めて部屋を出ていく。

まさか立ち入り禁止の提督の部屋にこんな理由で入る事になるとは、願ったり叶ったり。

北上「ん、でかいな」

提督から借りたシャツは私より二回りくらい大きかった。

しまった髪留めは更衣室に置きっぱなしだ。後でとってきてもらおうかな。

北上「まあそれはさておき」

部屋を見渡す。

立ち入り禁止と言うくらいだ。何か見られたらまずいものがあるに違いない。

ここで夕張とかならエロ本なんかを探すんだろうが私にそんな余裕はない。

探すのは提督、もしくは提督の前任者なんかの記録がないかだ。

北上「ここは、おー機能的だ」

ベットの下はそのまま衣装ケースになっているようだ。

横にある机にはPCと、

北上「それだけか」

書類とかなんもない。絶対この机使われてないぞ。

横には少し大きめのテレビといくつかのゲーム機材が散乱している。子供部屋といった感じだな。

他にはタンスと、本棚。

北上「ここしかなさそうだね」

天井にまで伸びる大きな本棚には私の好む本とは全く別のものが並んでいた。

北上「うへー読んでるだけで頭痛くなりそうだ」

航海術とか海や船に関する専門書。他にも歴史とか武器兵器とかとかとか。

ここだけはなんだか提督って感じの内容になっている。読まれているかは定かではないが。

北上「これも資料かな?」

タイトルのない太いファイルを取り出す。

そこには写真が並んでいた。つまりアルバムか。

最初にあったのはどこか居心地の悪そうな提督とニッコニコの吹雪のツーショット。

しばらく飛龍さんや日向さん、多摩姉達の写真が並ぶ。提督が着任してすぐの頃だろう。

そして徐々に艦娘が増えていく。

叢雲はここか。結構早いところで着任したらしい。

1冊目のアルバムが終わる。無意識に2冊目を手に取った。

写真に映る艦娘はどんどん増え、活気が増していく。

私の知らない色々な事がここであったのだろう。

北上「お、大井っちじゃん」

ブスっとした顔で提督と並んでいる。その顔が最初の写真の提督とそっくりな顔で、それが妙におかしかった。

3冊目。少し見覚えのある風景になっていく。どうやらここからは私の知っている鎮守府らしい。

しかしどうにも私の写真が少ない、

北上「というか大井っちのが多いな」

露骨すぎる。2冊目だとそうでもなかったのに。この時期から大井っちの事を気にしだしたのかな?

写真自体の数も増えてきて3冊目がすぐに終わってしまった。

さて4冊目。なんだか変わった形だなこれ。

北上「…?人間?なんだこれ」

1ページ目にあったのは沢山の人間の顔写真だった。男も女もいて、でも全員子供のようだ。思い出、というより記録といった感じの載せ方で、

北上「!」

慌てて表紙を見る。

なるほど。

北上「卒業アルバムか」

さっき言ってたな。俺も昔は学生だったとかなんとか。当たり前っちゃ当たり前だけど。

さぁて若かりし頃の提督はどーれかなっと。並びはどうやら五十音順みたいだ。苗字はMからだから後ろの方のはず。

1組にはいなくて、2組には…いた!うわ普通に黒髪だ。こっちのがカッコイイのに…

せっかくだし提督のご両親も探してみよう。どっか写ってるんじゃないかな。

遠足に運動会。これは、文化祭か。修学旅行も。凄い、本やアニメで見た通りだ。ホントにあるんだなぁこういうの。

こっちは合唱かな?提督はどこに
北上「!?」パタンッ


壁の向こうで扉の閉まる音がした。


つまり提督室に誰か入ってきたという事。そんなのもう提督に決まってる!

慌ててアルバムを元に戻してベットにダイブする。ちくしょうアルバムに気を取られて肝心なものを探せなかった!

ガチャリと再びドアが開く。

提督「ただいブホッ!?」

北上「え」

また変な声を上げてる…

腹ばいの姿勢から顔を後ろに向けてみる。

そこには入口でいくつかの料理を載せたお盆を持ったまま顔を背けて固まっている提督がいた。

北上「何してるのさ」

提督「こっちのセリフだおい。服はどうした服は」

北上「だから借りたんじゃん」

提督「それは俺が貸したヤツだろお!」

北上「え、うん」

提督「何、それ着て取りに行くとかじゃなくてもうそれで過ごすつもりなのこの娘」

北上「上は隠したからいいじゃん?」

提督「下が丸見えだボケェ!」

北上「あー…」

ワンピース気分で着ていたが確かに今の姿勢だと提督から丸見えだ。

北上「エッチ」

提督「露出狂め」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

北上「ごちそうさまー」

提督「おそまつさん」

北上「いやはやまさかホントにお粥にするとはね」

提督「何も風邪の時に食べるだけがお粥じゃねえのさ。白だしとか入れて卵で包めばオムライスっぽくなるわけよ」

北上「他にはどんなの作れるの?」

提督「どんなのって、それなりに色々作れるけど。あーでもパスタとかは作ったことねえな」

北上「すごいね。私ゃ包丁すら握った事ないよ」

提督「両親が結構料理好きでな。教わってたのさ」

北上「提督の親かぁ。今どこにいるの?」

提督「遠いとこ」

北上「海外?」

提督「内緒」

北上「ケチー」

北上「それじゃ私はそろそろお暇しますかねー」

提督「おう帰れ帰れ。というかまず着替えろ」

北上「分かってるって、っと!?」ペタン

提督「お!おいおい、まだのぼせてんのかよ」

北上「なんか立ちくらみが」

提督「んー、よし。今日はここで寝てけ」

北上「え、いいの?」

提督「嫌ならいいけどよ。なんか体調悪そうだしさっさと寝た方がいいんじゃないか」

北上「えー提督の枕臭そう」

提督「知ってるか。下の話と髪の話と匂いの話は男のハートを著しく傷つける凶器なんだぞ」

北上「わお顔がガチだ」

北上「提督はどうするのさ」

提督「隣の部屋のソファーで寝るよ」

北上「あれ寝心地いいよね」

提督「昼寝とかならな。本格的に寝るとなるとどうだろうか」

北上「ちなみに提督の部屋で絶対に弄っちゃダメなとことかある?漁っとくから」

提督「あっても言うかそんなやつに。別にないしな」

北上「えー?いつもは立ち入り禁止だからエロ本でも隠してるのかと」

提督「どんな偏見だよ。どうせ夕張辺りの入れ知恵だろ」

北上「That's right」

北上「ダメな理由はなんなのさ」

提督「そりゃー、ほら、空母共が勝手に飲み会開いたりするし」

北上「あーよく執務室は乗っ取られてるよね」

提督「駆逐艦達がかくれんぼに使ってたりするし」

北上「前に提督の机の下に隠れてたよね。速攻で見つかってたけど」

提督「仕事中なのに躊躇なく足元入ってくるからな。この部屋開けたら確実にくるぜ」

北上「他には」

提督「ポーラの酒の隠し場所にされたりとか」

北上「え、そんな事してるの」

提督「前にあんまり使ってなかったダンボールの中に入れられててな。吹雪が見つけた」

北上「禁酒中の時か」

提督「ニッコニコで飲み干したと思ったら調理室から借りた酢を入れだしてビビったわ」

北上「想像にかたくない」

提督「さすがのポーラもアレで一週間は懲りてた」

北上「一週間かぁ。それで一週間かぁ…」

提督「まあうん、そんなわけだ」

北上「人気者は大変だね」

提督「笑って済ませらんねぇんだよ」

提督「じゃおやすみ」

北上「おやすー」


パタンと再び扉が閉まる。

ふらつくフリは思った以上に効果的だった。これで今晩はこの部屋を漁り放題だ。

しかし流石に今すぐじゃバレる。もう少し、提督が寝静まった後だ。

それまでこうして、

ベットに横になって

静かに

音を立てずに

寝て

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

「一緒にお風呂ですって!?」
「ちげえって!アイツから!アイツから誘ってきたの!!」
「犯罪者は大体そう言うんですよ」
「誰が犯罪者だゴルァ!」
「それで一体何をしたのよ!」
「し、してねぇ!何も!あいや、背中と髪を、洗った」
「洗った!?」
「それは別に悪くねぇだろ!アイツから言ってきたし!」
「それだけなの!?そこまでいってそれしか出来なかったのこのヘタレ!!」
「キレるのそこかよ!」
「いきなりお風呂プレイとは流石ですね司令官」
「プレイとか言うな!つかなんでお前ら仲良く俺を犯人扱いなんだよ!」
「共通の目的のために」
「共闘中です」
「は?」

北上「…うわぁ……」

ベット横のカーテンから光が差し込む。ここが北極付近でもない限りこれは間違いなく朝が来たという事だろう。

つまり、私はあの後ごく普通に寝てしまったという事になる。

最悪の気分とは裏腹にタップリと睡眠をとった私の体は実に心地よく目を覚ました。

身体を起こす。隣の執務室からはまた言い争いが聞こえる。

大井っちに提督、吹雪の声だ。

さてどうしよう。ここでノコノコ出ていくと巻き込まれそうだし。

そうだ!

北上「痛っ!?」バタン

ベットから転げ落ちる、フリをする。

すると案の定、

大井「北上さん!?北上さん大丈夫ですか!?」バタン

北上「あー大井っち~。おはよー」

大井「よかった無事、じゃない!北上さん!?シャツ!?シャツオンリー!?」

北上「これねー提督に借りて「提督!?どういう事!!!」」
提督「勘弁してくれー…」
吹雪「音をあげるのは早いですよ犯罪者」
提督「北上ぃ~助けてくれ~」

北上「うーん」

流石に今回は私の責任が大きいし、ちょっとフォローしとくかな。

球磨「北上ぃ!提督に襲われたって本当か!?」バタン
多摩「あの色欲魔はどこにゃあ!」

北上「うわぁ」

面倒くさい事になってるぞ。

大井「姉さんいい所に!」
球磨「ぬわあぁぁ北上があられもない姿に!」
多摩「避難にゃ!とりあえず避難するにゃ!」
提督「おいお前ら一体誰からそんな情報を!?」
球多「「大井(にゃ」」
提督「てめぇ!」

木曾「スマン、抑えられなかった」コソ

北上「いいよ、ありゃどうしようもない」

球磨「北上!早く着替えに帰るぞ!」
多摩「にゃ!」
北上「あーはいはい引っ張らない引っ張らない」

提督「ちょ、待って北上俺まだ」
北上「後は頑張ってね~」
提督「ちょっとぉおぉ!?」

面倒なので逃げる事にした。

北上「いやね、違うんだよホントは」

球磨「分かってるクマ。どうせ提督の優柔不断が原因クマ」

多摩「でもそこが提督の悪いところにゃ。少しは反省してもらうにゃ」

木曾「ありゃこってり絞られるだろうな」

北上「でも意外だね。吹雪と大井っちのコンビなんて」

球磨「確かに珍しい組み合わせクマ」

多摩「提督に対する厳しさ的に馬は会いそうにゃ」

北上「確かに」

阿武隈「あ、おはようごさいうわ!なんですかその格好」

北上「おはよー」
多摩「にゃー」
球磨「クマー」
木曾「おはよう」

阿武隈「流さないでください!なんだか提督室が騒がしいのもそれですか?」

北上「阿武隈はこれから出撃?」
球磨「今日は忙しくなるクマよー」
多摩「待ちに待った決戦の時にゃ」
木曾「決戦って」

阿武隈「だーかーらー!!」

かん高い声でまくし立てる阿武隈をあしらいながらいつもの廊下を歩く。

騒がしいながらもまた、日常が始まる。

北上「いい夢見れたなー」

多摩「そんなに良く眠れたのかにゃ?」

北上「そうじゃないけど、まあそんな感じかな」

良い夢を見れた。

私にはやる事がある。行くところがきっとある。

でもこうして、ここにずっといたいと思えるような、そんな1日だった。

艦これ二期 まさか本当に来るとは

解像度の向上で印象が変わる娘が実に多いですね。
妄想が止まりません。
個人的に1番印象が変わったのは葛城です。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの岡People?!   2018年06月11日 (月) 18:23:04   ID: h5xvEYLO

見てます

2 :  SS好きの774さん   2018年06月21日 (木) 00:39:11   ID: _aupNq4B

元スレに書いてあげて

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