絵里「あなた達…いい加減にしなさい」 (47)

絢瀬絵里は激怒した。

絵里「説明して貰えるかしら?」

穂乃果「えっと…」

凛「あの…」

にこ「ちょ、ちょっと…やだなぁ。眉間に皺なんて寄せちゃって。癖になっちゃうわよ?ね?にっこにっこ…」

絵里「そう言うのはいらないから」バンッ

ほのりん「ひいっ」

にこ「ご、ごめん…なさい」

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何故、絢瀬絵里が激怒しているのか。

1時間前、職員室。

担任「それじゃあ、絢瀬。日直でもないのにありがとう」

絵里「いえ。お役に立てて光栄です」

絵里は担任に頼まれ職員室まで教材を運ぶ手伝いをしていたのだった。

担任「本当、いつも助かるよ。優秀だし生活態度も真面目だしな」

国語教師「生徒会長も立派にやり遂げたしな。まさかアイドルを始めるとは思わなかったけど」

絵里「それは…」カァァァ

数学教師「あっ、スクールアイドルと言えば。二年の高坂。生徒会長とかは頑張ってくれているんだけど。数学のテストももう少し頑張ってくれないかしら…」

絵里「え?穂乃果ですか?」

英語教師「高坂もですか?実は一年の星空も…」

絵里「へ?」

そして、現在。

絵里「私、職員室で恥ずかしかったんだから。聞けば穂乃果も凛もにこも赤点ギリギリらしいじゃない?」

穂乃果「それで先生に点数聞いたの?」

凛「酷いにゃ。いくらなんでも酷いにゃ」

にこ「そうよ。プライバシーの侵害よ」

絵里「煩い」

穂乃果「ええ?」

にこ「アイドルの言葉遣いじゃないわよ?」

絵里「点数は今知ったわよ。そしたら本当に三人とも赤点ギリギリなんですもの。ビックリよ」

穂乃果「別に赤点じゃないんだしいいじゃん」

にこ「そうよ。部活動には影響ないんだから」

凛「そうにゃ、そうにゃ。分かるにゃ」

絵里「よくないわよ」バンッ

ほのにこりん「ヒイッ」

絵里「全然よくないわよ」

穂乃果「う、うん。分かったから机を叩くのやめてよ」

凛「大きな音…怖いにゃ」

穂乃果「だ、だってさ、今回の数学難しかったんだもん。方程式とか訳わかんないよ」

にこ「そうよね。将来使わないし」

凛「ね?凛も英語はチンプンカンプンにゃ。だって、凛日本人だもん」

絵里「あのさぁ…」

穂乃果「あのさぁ?え?喋り方変わってるよ?そんなに怒ってるの?」

絵里「さっきから数学は難しいとか英語は出来ないとか言ってるけど。あなた達基本的に全教科の点数低いから!数学とか英語はその中でも飛び抜けて悪いってだけで基本的に全教科点数低いから」

穂乃果「なんで二回言うのさ…」

絵里「大事な事だからよ」




彼女達は苦手教科以外も点数は低いのであった。いや、むしろ彼女達は勉強自体が苦手なのだった。

絵里「このままだとμ’sがおバカの集団だと思われちゃうわよ」

穂乃果「え~…それは大袈裟だよ」

凛「そうにゃ。そうにゃ。真姫ちゃんとか海未ちゃんとか勉強出来る人もいるから大丈夫にゃ。プラマイゼロだよ」

にこ「そうね。それにアイドルなんて少しおバカな方が可愛げもあって…」

絵里「少しじゃないのよあなた達は。真姫や海未の頑張りじゃカバー出来ないレベルなのよ。アイドルでも許容範囲ってもんがあるのよ」

穂乃果「ええ…そこまででは…」

絵里「何?」

穂乃果「あっ、いえ…なんでもないです」

絵里「よろしい」

にこ「まあ、あの…次は頑張るから。今日の所はこれくらいで勘弁してよ」

絵里「にこ?あなたに次なんてあると思ってるの?」

にこ「へ?」

絵里「いつまで次があると思ってるの?留年でもする気なの?言っておくけど私達三年生なのよ?そろそろ取り返しもつかないわ」

にこ「えっと…」

凛「でも、終わっちゃった事をいつまでも引きずってたってしょうがないし。次頑張るしかないよ」

穂乃果「うん。そうだよね?次頑張るしかないよ」

絵里「そう言ってあなた達は勉強しないでしょ?」

穂乃果「決めつけは良くないよ」

凛「そうだにゃ。良くないにゃ」

絵里「あなた達の過去の傾向から判断してるのよ」

穂乃果「だから、心入れ替えるから。ね?今日はもう練習しに行こうよ。皆んな待ってるよ」

絵里「ダメよ」

穂乃果「え?」

絵里「学生の本分は勉学に励む事よ。それが出来て初めて部活に精を出せるの。いい?これから毎日放課後1時間勉強してそれから練習に参加よ」

ほのにこりん「え~」

絵里「スクールアイドルに本気なら先ずは勉強を頑張りなさい」

こうして、絵里による強制勉強会が幕を開けたのだった。

絵里「…」

穂乃果「……」

凛「……」

にこ「……」

穂乃果「あの~…」

絵里「質問がある時は黙って手を挙げなさい」

穂乃果「えぇ…」

絵里「……」ギロッ

穂乃果「は、はい」バッ

絵里「はい。質問を受け付けます」

穂乃果「絵里ちゃんは練習に参加して来たら?」

凛「そうだよね?そこで黙って座っているくらいなら」

絵里「ダメよ。あなた達サボるから」

穂乃果「サボらないよ」

凛「そうだにゃ」

にこ「決めつけはよくないわよ」

絵里「いえ、サボるわ。私には分かるの。それと言葉を発する時は黙って手を挙げろと言ったはずだけど?」

にこ「うっ…」

絵里「他に質問は?」

穂乃果「…」

凛「…」

にこ「…」

絵里「ないなら口を動かさず手を動かしなさい」

穂乃果「…」

凛「…」

にこ「…」

絵里「返事は?」

凛「今口を動かすなって…」

絵里「返事は?」

ほのにこりん「はいっ!!!」

穂乃果(うぅ…海未ちゃんよりも怖いかも)

にこ(冗談じゃないわ。なんで私がこんな目に)

凛(早く体動かしたいにゃ)

絵里「………」

カチ カチ カチ

穂乃果「…」

凛「…」

にこ「…」

そこからしばらく静寂。時計の針の音だけが室内に響き渡る。

穂乃果「ん?」

穂乃果、ある事に気がついた。

穂乃果「ねえ?」コソコソ

にこ「…」

穂乃果「ねえってば」コソコソ

にこ「何よ?また怒られるわよ?」コソコソ

穂乃果「あのさ…絵里ちゃん寝てない?」

にこ「え?」

静寂の中、目を閉じ動かない絵里。

絵里「…」

穂乃果「あれ…寝てるよね?」

にこ「確かに…」

穂乃果「どうする?」

にこ「どうするって…寝かせといてあげましょうよ」

穂乃果「だよね!絵里ちゃんも疲れてるんだね」

にこ「そうよ。疲れてるのよ」

穂乃果「じゃあ、このままにして」

にこ「ええ。私達は終わった事にして練習に行きましょう」

穂乃果「賛成!」

席を立つ二人

穂乃果「それじゃあ、絵里ちゃん。おやすみ」

にこ「あっ、ちょっと待って。凛…あんたも早く…」

穂乃果「ああ…凛ちゃん忘れてたね」

絵里「どこに行くの?」

穂乃果「え?」

絵里「どこに行くのかって聞いているの」

にこ「な、なんで?寝ていたんじゃ…」

絵里「誰が?」

穂乃果「絵里ちゃんが…だって…目を瞑ってたし…」

絵里「考え事をしてただけよ」

にこ「そ、そんな…全部聞こえてて…それで…」

穂乃果「ち、違うの」

絵里「何が違うのよ?」

穂乃果「ほ、ほら。絵里ちゃん疲れてるのかなぁって思ってさ。寝かせといてあげるのが優しさかなって。ね?」

絵里「そう。お気遣いありがとう」

穂乃果「い、いやぁ…友達なんだし当然だよ」

絵里「で?あなた達はどこに行くつもりだったの?仮に私が寝てたとしてそれとあなた達とは関係ないじゃない?」

穂乃果「それは…」

穂乃果「えっと…」

絵里「サボるつもりだったのね?」

穂乃果「…」

にこ「…」

絵里「ねえ?どうなの?」

にこ「…」

絵里「ああ…ダメだわ。また眉間に皺が寄っちゃうわ。癖になっちゃうんだっけ?」

にこ「え?う、うん」

絵里「こういう時は笑うのよね?にこって」

にこ「そ、そうなの。にこって」

絵里「なに笑ってんの?」

穂乃果「ひいっ」

にこ「だって、絵里が…」

絵里「私が?」

にこ「なんでもないです」

二人は思い出した。最近の絵里と言うと角が取れすっかり丸くなり彼女達にとってはちょっと天然で気の良いお姉さん的な感じになっていたが元々はあのお堅い生徒会長だったという事を。

絵里「さあ…どうしようかしら」

穂乃果「…」

にこ「…」

絵里「ねえ?私はどうするべきだと思う?」

穂乃果「どうするべきって…」

絵里「このままあなた達を許すのは簡単だけど…それじゃあ、いつもと同じ事だもんね?」

にこ「そ、そんな事は…」

穂乃果「ごめんなさい。許して下さい。もうサボったり絶対しませんから」

絵里「信用出来ないんだけど」

穂乃果「信用してよ。絵里ちゃんを出し抜こうなんて二度としないよ。って言うか怖くて出来ないよ」

絵里「ふ~ん。そうなんだ」

穂乃果「そうだよ。ね?」

にこ「うん。絶対にしないわ」

凛「ふわぁ~。ん~寝ちゃってたにゃ~」

ほのにこ(お前が寝てたんかい)

絵里「おはよう。凛」ピキッ

凛「ん?ん~絵里ちゃん?おはよう」

穂乃果(いや、凛ちゃん。何してんの?穂乃果でも起きてるのに)

にこ(嘘でしょ?よくこの状況で寝れたわね。どういう神経してんのよ)

凛「あっ!そうか。凛、勉強が退屈で…あっ!?」

絵里「そう?退屈だったの?」

凛「え、えっと…今のは寝ぼけてて。いや、凛は起きてたよ?うん」

絵里「へぇ~」

にこ(何を言ってるのよあんたは)

穂乃果(凛ちゃん言ってる事が支離滅裂だよ)

絵里「この時間凛にはと~~っても退屈だったみたいね?」

凛「いや…」

絵里「私のやり方が悪かったのかしら?」

凛「違っ」

絵里「そうよね?さっきからね、ずっと考えてたの。あなた達にとって何が一番いいのか」

凛「う、うん」

絵里「さっきみたいに怒りに身を任せていてはいけないんじゃないかって。一緒に寄り添って優しく導いあげるのがいいのかなって」

凛「そ、それがいいです」

絵里「それ?」

凛「優しく寄り添って欲しいです」

絵里「そう。分かったわ。じゃあ、今からマンツーマンでやりましょうか?」

凛「え?」

穂乃果「へ?」

にこ「マンツーマン?」

絵里「一対一って事よ」

穂乃果「いや、それは分かるけど。そこまでバカじゃない」

絵里「そう。じゃあ、凛?別室に行きましょうか?」

凛「え?凛だけ?」

絵里「マンツーマンだって言ったでしょ」

凛「そ、そんな…」

絵里「ほら、立ちなさい」

凛「嫌にゃ。絶対に嫌にゃ~」

絵里「早く」

凛「はい…」

穂乃果(え?ラッキー。まかさの絵里ちゃん退室)

にこ(まさか凛の居眠りがいい方向に転ぶなんて)

絵里「あっ!私はこの部屋から居なくなるけど…分かってるわよね?」

穂乃果「え?」

絵里「分かってるわよね?」

ほのにこ「はいっ!」

穂乃果「…」

にこ「…」

穂乃果「はあ…」

にこ「こっわ。え?絵里って怒るとあんなに怖かったっけ?」

穂乃果「ねぇ。絵里ちゃんっていつも優しいし陽気だから」

にこ「そうよね?同い年の私はともかくあんたや凛なんか凄い可愛がられてるもんね」

穂乃果「ねえ…」

にこ「うん…」

穂乃果「すっかり忘れてたよね。元お堅い生徒会長だったって事」

にこ「そうね。本来は陽気って言うよりもクールが似合う感じだったもんね」

穂乃果「うん」

ガチャ

凛「うぅ…グスッ…うぅ…」

絵里「…」

穂乃果「あっ、凛ちゃん。帰ってきた」

にこ「思ったより早かった…って言うか泣いてる?」

穂乃果「凛ちゃん?な、何があったの?」

凛「グスッ…。凛、ちゃんと勉強するにゃ」

穂乃果「え?」

にこ「嘘?」

にこ(え?マジで何があった訳?)

穂乃果(そんなに絵里ちゃんっとマンツーマンが怖かったの?)

絵里「さあ、凛?勉強を再開しましょう?」

凛「うん」

絵里「凛はやれば出来るんだから。ね?頑張りましょう?」

凛「うん。グスッ…凛、頑張る」

絵里「さて、じゃあ、にこ?行きましょうか?」

にこ「へ?どこに?」

絵里「だからマンツーマンだって」

にこ「い、いや。大丈夫。ここで大丈夫だから」

絵里「何を怖がってるのよ?」

にこ「だって…」

絵里「行くわよ?」

にこ「い、いやぁぁぁ」

穂乃果「ね、ねえ?あっちで何があったの?」

凛「ごめん、穂乃果ちゃん。グスッ…凛…勉強してるから」

穂乃果「ええ?嘘でしょ?あんなお説教中でも堂々と居眠りしてたのに?」

凛「うん…グスッ…心入れ替えた…グスッ」

穂乃果「そ、そうなんだ。とりあえず鼻…かみなよ。はい、テッシュ」

凛「ありがと…」

穂乃果「うん…」

ガチャ

にこ「……」

穂乃果「にこちゃん!?」

にこ「穂乃果…」

穂乃果「にこちゃん目が赤いよ?大丈夫?」

にこ「別に…なんでもないわよ」

穂乃果「でも…でもさ…」

にこ「ごめん。私も真面目に勉強するから」

穂乃果「え?」

にこ「…」

穂乃果「ちょっと待ってよ。にこちゃん?」

絵里「穂乃果?後はあなただけよ」

穂乃果「え?」

絵里「…」

穂乃果「あの…」

絵里「…」

穂乃果「絵里ちゃん?」

絵里「穂乃果は…」

穂乃果「え?」

絵里「穂乃果はどうしたいの?」

穂乃果「え?何が?」

絵里「勉強は嫌?苦手な事にはトライしたくない?」

穂乃果「えっと…」

絵里「私だって本当は勉強なんて好きじゃないわ。本当に勉強が好きな人なんてどれだけいるのかしら?」

穂乃果「それは…」

絵里「じゃあ、何で勉強するのかしら?使いどころもわからない方程式の解き方や社会で役に立つかも分からない歴史や科学の事なんて。私はね本当はそんな物は出来なくても良いと思ってるの」

穂乃果「そ、そうなの?」

絵里「ええ」

穂乃果「じゃあ、どうして勉強しろって言うの?」

絵里「可能性の幅を狭めて欲しくないからよ」

穂乃果「可能性の幅?」

絵里「例えば…この先穂乃果が何か夢を見つけた時に勉強して来なかった事が弊害となってしまう事があるかもしれない」

穂乃果「夢の…弊害に?」

絵里「そうよ。そんなくだらない事であなたが夢を諦める姿を私は見たくない」

穂乃果「でも…私はそんな事で…」

絵里「困難に直面して初めて後悔しても遅いのよ。根性論なんてのはやる事をやって初めて成り立つの」

穂乃果「うん…」

絵里「何度でも言うわ。あなたの事を大事に思っているから。私は穂乃果に将来の幅を狭めて欲しくない。いつだって穂乃果には輝いていて欲しいの」

穂乃果「絵里ちゃん…」

絵里「私の気持ち…分かってくれた?」

穂乃果「うぅ…グスッ…うん」

絵里「穂乃果…」

穂乃果「わだじ…絵里ちゃんが…絵里ちゃんがぁ…そんなにもわだしだぢのごど…思っでくれでだのに…ふざげてばっがりで…うわぁぁぁぁん。ごべんなざぁぁぁい」

絵里「良いのよ、穂乃果。分かってくれれば。ね?戻って勉強しましょう?」

穂乃果「?ん…グスッ」

そして…

穂乃果「なるほど。ここにこれを代入して…」

凛「アイ…アイ…アイハブアペン。アイハブアアッポー」

にこ「凛。そこはaじゃなくてanよ」

真姫「で?一体どう言う手を使ってあの三人をやる気にさせたのよ?あんなに熱心に勉強しちゃって。まるで別人みたい」

海未「私がどれだけ言ってもちっとも勉強しなかったのに。嬉しいですがちょっと複雑です」

絵里「ん?まあね」

真姫「なあに?言えないわけ?」

絵里「ちょっとした飴と鞭のテクニックよ」

絢瀬絵里。最近はすっかり角がなくなったとの評判だが、やはりやり手である。

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