戦士「うはwwwww勇者逃亡したwwwwww」 (496)

冒険始まって5分で勇者が逃亡したのでスレ立てしました。
皆さんの知恵をお借りして冒険を進めたいと思います。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1520911171

とりあえずスペック晒すわ。

俺(戦士)
・21歳童貞。
・LVは4。持ってる技能は[剣技Lv3]と[かばうLv1]。装備は[鋼のつるぎ]と[鉄の鎧]。
・パーティではそこそこ高火力で勇者の次に強い。
・しかしイケメン勇者にゴミみたいな扱いをされてる所為でパーティカーストは最も低い。

勇者
・17歳。多分童貞じゃない。
・LVは5。持ってる技能は[剣技Lv2][光魔法Lv2][自己強化Lv1]。装備は[鋼のつるぎ+2]と[勇者の鎧]。
・パーティで多分一番強い……と酒場では強気発言だった。俺を雑用係として扱う。女の子からはやたらモテる。
・さっきゴブリン(Lv5)にちょっと痛めつけられたら泣いて街まで帰っていった。

魔法使い
・17歳。綺麗。
・LVは4。持ってる技能は[炎魔法Lv3][詠唱Lv1]。装備は[樫の杖]と[魔女のマント]と[とんがり帽子]。
・俺の幼馴染。ギャルっぽい感じでノリは軽い。勇者にご執心。昔は俺とも仲良かったが最近は勇者と一緒に俺を雑用係として扱う。
・今泣いて逃亡した勇者を見て放心中。

僧侶
・14歳。かわいい。
・LVは3。持ってる技能は[光魔法Lv3]。装備は[鋼の槌]と[修道服+1]。
・無口で頭のキレる子供。聞く話によれば勇者の義理の妹らしい。勇者と一緒に俺を雑用係として扱う。
・今泣いて逃亡した勇者を見て放心中。

俺なら世界とかどうでもいいから適当な街でのんびり余生過ごすわ

勇者が逃亡した今、成人男性が17歳と14歳の少女を連れて回るのはあまりに危険では……? 憲兵にタイーホされるのでは……?

因みに今現在はなんとかゴブリンから逃げてダンジョンの端で休憩中。
街に帰るにしてもこの人数でちゃんと帰れるか不安なところ。
しかも背後では勇者が敵と遭遇する度に悲鳴を上げるので、どんどんモンスターが集まってきてる。
さっきのゴブリンもこっちを探してるらしいし、このパーティ僧侶居ないしヤベーよ。

>>5で僧侶居ないって言ったけど盗賊居ないの間違いだ
僧侶ちゃんは居るんだが

>>3
でも勇者様御一行に加われば街の施設は殆ど無料で使えるし
あとモテそうだったからさあ
勇者御一行って女の子ウケ良さそうじゃん?

>>4
お前の住んでる街だとどうだか分からんけど、俺の住んでる街だと成人は15歳からだな。
とはいえ他のパーティに見られると攫ってきたみたいに見られそうでこえーわ
僧侶ちゃんはゴミを見るような眼で俺から離れて座ってるしよ

パーティで話し合った結果、とりあえず街まで戻ることになった。
勿論話し合ったのは魔法使いと僧侶で俺は蚊帳の外。会話にすら入れてもらえてない。
アウェーはつらいぜ。

誰も[隠密]技能を持っていないので、現在松明を消して、暗闇の中を忍び足で移動中。
今現在居る[1F-始まりの迷宮]は地上が近いだけあって出てくるモンスターも弱いし、向こうも暗闇は苦手な奴らばっかりで助かってる。
とはいえ罠を踏んだりしてモンスターを引きつける事もあるから、十分に注意して進まないとな。

因みに先頭を歩いているのは俺。理由は罠解除できる人間が居ないから
つまり俺が犠牲役ってことだ。これは勇者がいる時から変わらない。
アウェーはつらいぜ。

無視すりゃいいじゃん
ろくに魔法も使えないメス餓鬼共とかほっとけよ

勇者が逃げ出して30分は経ってる。
この迷宮、大体既に探索されてる場所があって、その最深部のポータルから冒険に出ることが多いんだが、今いる場所はそう深くはない筈なんだよな。
普通ならこういう場合帰還用ポータルで脱出する筈なんだが、運の悪いことに唯一あったポータルは先の戦闘で勇者が落としちまってる。
つまり帰りは徒歩で入り口まで戻らなきゃいけない。こりゃつらい。

あんまり詳しくないんだけどさ、勇者って必要?施設が安くなるとかメリットはあるらしいけど
魔王退治なら逃げるような勇者いらなくねぇ?

>>8
確かにカースト最上位の勇者が居ない今、こいつらの言葉なんて無視して進んでも良いかもしれん。
しかし目の前でかわいい女の子がモンスターに切りつけられたり、罠を踏んで腕が吹っ飛んでったりするのを見るのは目覚めが悪いとも思うのだ。
俺が憎いのは先導して俺を弾き者にした勇者であって、こいつらは可愛いしそこまで敵意を持てんのだ。
童貞は可愛い生き物に弱いからな。

乞食や風俗で童貞卒業しないんですか!?

>>10
俺もそうは思うのだが、魔王を倒すための技能である[封印術]を扱えるのは勇者しか居ないんだそうだ
魔王は余りにも強すぎて、歴代の勇者が命を賭して封印するしか手が無いからな。
結局のところ街で宿泊代が無料になったりするのも、色々なしがらみで勇者に冒険を辞められるのが怖いからなんだろう

>>12
いや俺は、俺のことを好きな清純な処女の女の子と添い遂げて、その子で童貞卒業するんだ
貧困外に居るような花売りだのはお断りだぜ

ヤバい、ゴブリンの群れっぽい声が聞こえるな
ちょっと離席するわ

つまり戦闘が起きれば前衛は戦士しかいないって事か
それなら率先して戦ってやる事を条件に何か要求してもええんちゃう?

2人が断ったり嫌がれば前に出る必要なんてないし、なんなら最後尾からついていけばええ

自分が今先頭歩いてるんだろ?だったら二人より速く歩いて「待て」と言われるまでどんどん行け。
そんで数回無視した後「無視すんな」と言われたら立ち止まって「今まで無視してきたのはあんたらだろ」
とか言えば少しは無視はされにくくなるかもな。どうせ二人はMP切れたらまともな攻撃出来んだろうし。

そうだよ(便乗)こういうのはいち早く解決しないと両者のためにならん
仲間を下僕のようにする事をちくちく攻撃しよう
勇者の心得とか、世界を代表するのにそういった態度はどうなのかとか、死ぬ心得をしろとか

今更だけどゴブリンに負ける勇者って何か嫌だな……

今戻った
現在なんとか群れから離れて、ダンジョンのメイン通路の外れで休んでる

道を進んだ先にはやっぱりゴブリン(Lv5)が居た
しかも数がヤバい。ざっと見ただけでも6匹程度居る。しかもその奥に、まだ何匹か潜んでるのがわかった
奴らが居た道はダンジョンのメイン通路で、普段は魔物避けの魔法が施されてる
けどなんでか奴らは平然とそこに居た。魔物避けが切れてたのかな?
ゴブリン達は何かを取り囲んで、そこで魔物語で作戦会議をしているように聞こえた

さて、俺たちはそんなゴブリンを曲がり角から覗き見てた
俺と僧侶はここから取り敢えず逃げて別の道を探すってことで完全に意見が一致
ただ魔物語を聞いてた魔法使い(このパーティで唯一魔物語がわかる)の様子が途中から変になって
青ざめたかと思うと、いきなりゴブリン達に突撃していこうとすんの
流石に俺だけじゃなくて僧侶も困惑
二人で羽交い締めにして抑えてたんだけど、そんな事をしてたらゴブリンに見つかるに決まってるわな

そこからはもう大苦戦
もともと相手は数が多い上に、レベル的にも格上の相手だ
俺は前線でなんとか敵の攻撃を抑えるのに精一杯。とにかく後衛二人に攻撃がいくのはまずいから、なんとか相手を抑えてた
僧侶は必死で俺を回復してくれてたが、もともと一番レベルも低いからな。流石に回復量は追いつかない
魔法使いは必死の形相で魔法を連打してた。いつもは魔翌力が残るように調整して使ってたのに、魔翌力全開で大技連打。
当然前線にいる俺も、何度もフォローファイアを食らいそうになった。本当に勘弁してほしいぜ。
ただ魔翌力最大の[炎の矢]が2体のゴブリンを一気に始末してから、向こうも流石にその威力にビビったみたいだった。
そのうちに俺が前線の1匹を斬り殺して、まだ戦おうとする魔法使いを引っ掴んでなんとか撤退。

多分ゴブリン共が逃げる勇者を馬鹿にしたんだな。
ところで僧侶と話出来たのか?

で、今はダンジョンのメイン通路の外れで休んでる
僧侶には魔物を近づけさせない[光の結界]って魔法があるんだけど、まだこいつには使えないらしい
仕方がないから火を消して、できるだけ縮こまってる感じだ

俺は全身に結構な切り傷はあるけど、致命的な傷は幸運にも無かった。まあ頑丈さだけが取り柄だからな
ただ出血がそこそこ危なくて、戦闘終了後すぐは文字も打てないくらい手が震えてたし、頭もなんかぼうっとしてた
僧侶の回復魔法と俺がアホみたいに買い込んでた[ヒーリングポーション]のおかげで立ち直ったけど、もうこんな危ない戦いは勘弁してほしいぜ

僧侶は大きなキズらしいものは無いけど、魔力を結構消費してしまったらしい
俺が傷だらけのときはなんだかんだずっと回復魔法や傷の手当をしてくれたからな。こいつは無愛想で性格は悪いが、仕事への真面目さだけは心底尊敬できる
今は横たわってる魔法使いを手当てしてる

で、魔法使いだが
俺に抱えられて逃げてる間、こいつは本当に必死の形相で早く戻らないと、早くしないとばっかり叫んでた
なんでだよって聞いても良いから早くの一点張り。話にもなりゃしねえ
僧侶からとりあえず落ち着いてって言われた時すら、全然落ち着いた様子が無かった
こんなに取り乱したコイツは幼馴染の俺でも初めて見るぜ

今は魔力切れが祟ったのか静かに寝てやがる
散々暴れた挙げ句に寝るとか、こいつはお嬢様か何かかよ
人間の魔力はガス欠になると回復に丸一日かかるらしいし、こいつは暫く起きないだろうな

勇者が殺される話かも、早く起こして事情を聴こうず

>>15
確かに、それぐらいはする約得があるかもしれんな
魔法使いが起きたらちょっと提案してみるか
何を要求しようかな。案とかあるか?

>>16
先々進むのは良いが、罠を踏み込んで回復が間に合わないのが怖いかな……
とりあえず本当に魔力が切れてるのが痛いところだ
街でなら幾らでも切れてくれていいが、ダンジョンでやられるとこっちも困るからな

>>17
まあ勇者は、奴以外にもあと数十人は居るらしいしなあ
他の勇者達はもっとぶっ飛んだやつも居て、ずっとこのダンジョンで暮らしてるのも珍しくないらしい
もしこのダンジョンをもっと潜っていれば、他の勇者にも会えたのかなあ
とはいえ勇者がいなくなった今、パーティも帰り次第解散なんだろうが

>>18
しかも自分が強いと散々吹聴してのコレだからな……
まあ帰ったら幾らでも馬鹿にできるんだ。良い弱みを掴んだと思ってるぜ

>>20
僧侶は今は魔法使いの側で看護してるよ
話しかけたいのは山々なんだが、こいつ無口でほんと俺に話しかけないからな
魔法使いとは良く喋ってるくせによ
こっちから話しかけたいのは山々なんだが、女の子と二人きりだと思うと、会話が思いつかないんだ
こういう時、童貞はつらいぜ……

>>22
魔力が切れちまった人間は、ある程度魔力が回復するまでは目を覚ませないんだ
本当に無防備になるから、特に女性の魔法使いは、魔力はある程度温存しとくもんなんだぜ
だからこそコイツも普段は温存させてるんだよな
それをここまで焦って魔力を使うなんて、初めて見たぜ

このままメイン通路を進めば帰れるんだろうが、さっきのゴブリンが警戒して歩き回ってるのがここからでも聞こえてくるぜ……
とはいえ端道に進んだら、今度は入り組んだ迷宮が待ってる。迷宮区は殆ど探索が行われてない場所ばっかりだから、宝もあるが罠もたんまりだ
ここにずっと居ると、いつゴブリン達に見つかるかわかったもんじゃねえ

さて、どうしようかね
お前らの知恵を貸してくれ

ゴブリンって弓使う?使わないなら洞窟の上の空間に潜むという手が…

出来るだけ客観的に彼我の戦力差を教えろ

自分は敵を突破する方向で考えるから

>>26
少なくとも俺が見た群れの中には居なかった
魔物図鑑には弓を持つゴブリンの目撃情報はあるな
ただ1Fの奥底にあるゴブリンの本拠地にしか居ない筈だから、入り口付近のこの辺に居る事はまあないだろう
弓や魔法を扱うゴブリンは、奴らにとってビショップやナイトに等しいからな

あと俺は多少の凹みに捕まっていられるが、僧侶まで隠れるスペースは難しいかね……
魔法使いも背負って行かなきゃいけないんだ。これがかなりキツい

>>27
こっちの戦力は>>2に書いたままだ。追加で言うなら装備品以外の持ち物だが


・[ヒーリングポーション]*5
・[安物の砥石]*3
・[松明]*2
・[安物のナイフ]*2
・[寝具]
・[食器と携帯鍋]
あとは全員の携行食と水が4日分程度か

魔法使い
・[魔法の触媒(火/下級)]*11
・[ヒーリングポーション]*2
・[ブランドモノのナイフ]
・[寝具]

僧侶
・[聖典(下級)]
・[ヒーリングポーション]*3
・[瑞々しい薬草(4日)]*8
・[うさぎのぬいぐるみ]
・[寝具]

敵の戦力だが、正直正確には図りきれん
とりあえずゴブリン自体はLv5の魔物でもかなり弱い方だ。1体1でなんとか俺が優勢、万全の回復魔法アリなら1体2でも俺が勝てるだろう
ただ3体以上になると厳しい。奴らは近距離武器を用いての近距離戦しかしないので全く歯がたたないことはないが、如何せん前衛で数の違いは絶望的だ
遠距離の魔法や矢があれば、大分状況は好転するが……

あと、一応ゴブリンにも魔法を使うやつは居る。ゴブリンメイジ(Lv8)って奴だな
レベルを見ればわかると思うが、他のゴブリンとは一線を画するほど強いし、何より頭がいい
まあ前述した通りこいつ等は普段奥で籠もってるから、ここまで来ることは無いだろうが

狭い通路で敵を誘い出して即死攻撃繰り出したらいいんじゃない?首落とし、一刀両断、etc…

音を立ててよそ見してる間とかに奇襲(バックアタック)を仕掛けられれば回復込みで3匹行けそう
でも警戒してる奴等を倒しても、控えてる奴等が出てきそうだな……

魔法使いが起きたら昔みたいに普通に話してくれって言うのはどう?

>>29
それよく言われるけど、味方の屍も踏み越えてとにかく圧で攻めてくるようなのに対しては逆に逃げ場が無い分マイナスになる
文字通り味方を盾にして突撃してくるぞ

少なくとも言語能力がある程度の知能があるのは判ってるから交渉してどうこうするって余地もあったんだけど
肝心の交渉役がダウンしてるからどうしようもない

これ逆にダンジョン進んで下の階層の階段付近で待機して別のパーティに助けてもらうのが現実的なんじゃないかと

>>29->>30
奇襲狙うなら曲がり角だな。首落とせば叫ばれて仲間呼ばれる事も無いだろう。

ナイフは安物なんだろう?帰れれば買えるだろうし投げナイフとしてみるのはどうだ?
もしもゴブリンメイジが来たら口目掛けて投げろ。詠唱を止められるだろう。

奥へ進んだら死ゾ。>>33の戦法をやろう。
障害物は全部デリートして洞窟を抜けよう(ガンギマリ)

ついさっき、ここに偵察役のゴブリンがやってきた
装備は石斧。ゴブリンが一般的に装備してる武器だな
殺すと逆に怪しまれると思って暗闇に隠れた。一先ず見つからなかったようで安心だ
とはいえ、パーティは誰も[隠密]技能を所持していない。長くは保たないな。早く行動を決め打とう

>>29
1匹1匹ならそれでも良いだろうが、姿を見せたり音を晒せば間違いなく団体でやってくるだろう
1匹目は奇襲で殺せても、2匹目以降が不安だな
相手の総数が分からないのが怖いところだ

>>30
こっちから仕掛ける場合、それが一番良い手かもしれないな
ナイフでも投げればそっちの方を向くだろうか……
ただ奥にどれだけ居るかが判らない。ゴブリンは数の多い種族だしな

>>31
もし生きて帰れたらそうしてみよう
ただここ数年でアイツもがらっと雰囲気が変わってしまったからな
昔は俺にひっついて離れないようなおとなしい子だったんだが

奇襲をするか、奥まで進んで助けを呼ぶか、見てる感じふたつにひとつか

>>36
魔法使いが起きて普通に話してくれっていうのは面白くないから
俺達は遊びをやってるんじゃねえぞ!ってシリアスしよう

音をたてるだけならその辺にあれば石ころとかでも出来るから
ナイフを使うのはちょっと待ってくれ

自分は奇襲をする方向が良いと思う

>>32
奥に助けを求めるのは十分にアリな選択肢だと俺も見ている
ただ、この迷宮は広大だからな
奥に進んで他のパーティを見つけるまでに、果たして食料が尽きないかどうかだけが心配だ

>>33
やはり奇襲が良いだろうか
もし仮にだが、ゴブリンメイジが居たとすればもう俺たちはどうにもならないだろう
[投擲]は盗賊や踊り子の技能であるし、それ以前にレベルが違いすぎるからな

>>34-35
やはり奇襲する以外に手段は無いか
果たして奥にどれだけ敵が居るかは分からんが、やるしかない、ということだな
暫し様子を見た後、見張り役がバラけた辺りで行動してみる

あと、僧侶はどちらにせよ生かすつもりだ。もし状況が悪ければ、僧侶と魔法使いだけでも逃してやるつまりだ
俺はどうせ金儲けと女にモテるだめだけにダンジョンに潜ってるダメ人間だが、この子はまだ小さいし、未来があるし、何より可愛いからな
俺よりは生きる価値があるだろう
それに、童貞は可愛いものに弱いからな

>>37
良いね。俺程度の言葉じゃ果たして驚いてくれるかも分からんが
いつも澄ましてるあいつが怒られて縮こまるのは、それはそれで見てみたい
勿論、本気ではやらないけどね

>>38
了解した。脇道なら整備も全くされてないから、石程度なら拾い放題だ
ナイフはまだおいておくよ


とりあえず時間もないから、音を立てて奇襲というのをやってみようと思う
もしこのままレスがなければ、俺は死んだと思ってくれ
じゃあ次のレスでな

何らかの罠は張れないか?
張る時間も材料もない?そもそも罠作る技術がない?

助かった……んだろうか

大丈夫か? 怪我してるなら早急に治すんだぞ

是非とも戦士には頑張って欲しい。
もし無事に街に帰ってこれたら、俺の妹をファックする権利をやってもいい。

>>46
妹カワイソス

とりあえず奇襲の成否、現在の物資の減少とかあったら教えてくれ。

とりあえず助かったらしい
俺にもよく分かってないんだが、とりあえず状況を説明させてくれ

お前らの助言通り、石を床に放り投げてみた
迷宮は基本的に狭い通路が延々と続いてる空間だからな。たった一つの石の反響音でも、やろうと思えば結構響く
かなり遠方からの投擲だったんだが、見張り役で回ってたゴブリンが2匹、こっちに気がついたようだった

近づいてくる足音を聞きながら、俺は壁の陰にできる限り寄って、敵が近づいてくるのを待ち続けた
僧侶は少し離れて待機させた。いざと慣れば逃げられるようにな
一歩、一歩と近づいてくる足音を、息を止めて待つのは心臓が破裂しそうなほど緊張した
ゴブリンが、曲がり角に入って石を見た。不可思議そうに石を見つめる。俺にはまだ気づかない
その一瞬のタイミングで剣を振りかぶり、音もなくそれを振り落とした
もはやゴブリンにこっちを見る間すら与えない
必当の一撃。避けられない致命打。冒険者の中じゃクリティカルって呼ばれるやつだな
こんな綺麗な一振りは、多分もう数年に一度のレベルだと思う

果たして刃はゴブリンの首を切り落として、そのまま床にぶち当たった
その時の俺の頭は既にアドレナリンで一杯だったんだと思う。クリティカルの余韻に浸る間もなく、剣を横に振りかぶる
もう理性の効かない本能の一撃だった
普通のモンスターなら、回避はおろか反応すらできないほどの二連撃だったと思う
俺は二匹目のゴブリンの胴を切り落とすべく、刃を振るった


そして、その刃は止められたんだ
ゴブリンが持っていた[鋼の剣+4]によって

そのゴブリンは、他のゴブリンとは明らかに違う外見をしていた
普通のゴブリンよりも頭ふたつは高い、2mは超えるであろう身長。勿論、俺は見上げるしかない
全身はゴブリンとは到底思えないほどの筋肉で包まれていた。ただつけただけの筋肉じゃない、鍛え上げられた戦士にのみ許された肉の鎧
そしてそれらを守るようにして、[鉄の兜+3]と[鉄の鎧+3]を装備していた。いずれも、俺が装備しているより格上の装備だ
右手に所持している[鋼のつるぎ+4]は、俺の剣を受けてびくともせずに、鈍い光を放っていた
鋭い眼光は青白く光り輝いて、俺を真っ直ぐに見下ろしていた

魔物図鑑では見覚えのないモンスターだった
ただ俺は、街で他の冒険者から聞いた覚えがあった
1Fの最深部、まだ攻略の手のつかない[1F-ゴブリンの本拠地]
そこに鎮座する、数多くのゴブリンを指揮する将軍の存在を
まだ実際にスケッチが取られておらず、見た人間も限られていることから、魔物図鑑にも乗っていないモンスター
ゴブリンジェネラル
そのモンスターレベルは、推定でLv13

俺は死んだと思った

すまない、ちょっと水が炊けたから僧侶を飯に呼んでくるよ
続きは後で話す

入口付近なら多少のダメージは覚悟して走り抜けられないかな
戦士なら盾持ってるだろうし、それかざして走ればいい
洞窟内なら薄暗いだろうから松明も消せば見えにくくて攻撃も当たりづらいと思うし

>>55
耐久紙の後衛職のお荷物2人を守るって言ってる時点でその選択肢は無いよ
動きも遅い体力も無いしかも1人寝てるって時点でやれる事限られる

個人的には勇者とかいう絶対的リーダーに脳死でイェスイェス言うだけの依存しか出来ない餓鬼共なんて肉盾にでも何にでもしてさっさと逃げるに限るんだけどな
下手に情を見せて懐かれて依存対象にされても迷惑だし

入り口までの距離と地形がわかれば対策も考えられるんだけどな
そういう基本情報無しで思いつきの付け焼き刃の行き当たりばったりやっててもジリ貧で全滅するだけだろう

というか、冒険開始して5分てことは入り口から10メートルとかそこらの距離しか進んでなかっただろ
それで勇者離脱なら、とっとと入り口に戻るべきだったと思う、何で奥に進んでるんだ?

戦士今日の飯はどんなのだった?

やあおはよう、戦士だ
軽く飯を食べて仮眠を取って、ようやく身体もマシになった

続きを書く前に、この街のダンジョン構造に疑問を持っている人間も多いみたいなんで
それについてちょっと話そうと思う

俺たちが探索してるダンジョン――"迷宮"は、港町の地下に張り巡らされた巨大な地下ダンジョンだ
ダンジョンは主に中心部分となる[中心区]と、そこから四方八方に真っ直ぐ続く整備された[通路区]、そしてロビーから分岐した[迷宮区]に別れてる
丁度蜘蛛の巣みたいな感じだな
[中心区]と[通路区]は灯りもあって整備もしっかりされてる事が多い。まあ俺らが居る末端部分になると、流石に灯りが殆どついてない事も多いがな
[迷宮区]は1Fですらまだ80%程度しか探索されてない。十数年、何度も冒険者が足を運んでやっと80%だ
ここがどれだけ広いかが分かってもらえると思う

さて、俺たち低レベルの冒険者の仕事ってのは、基本的に通路の末端を広げたり、未探査の[迷宮区]を探索することが多い
まあ入口付近なんてのはとうの昔に探索されてるからな
なんで俺たちは[短距離ポータルクリスタル]ってアイテムで、ダンジョンの末端まで移動してから探索を始めるんだ
まあその辺りは>>9に簡単に書いたかな
普段は探索がキツくなると[帰還用ポータルクリスタル]で即時帰還するんだが、勇者がビビった時に落として割ってしまったので、今は徒歩で帰還してるってわけだ

一応探索者には探索予定フロアの地図が渡されるんだが、俺が探索してるのは末端部分なわけで、正直あっても微妙だな
実際今いる場所は周辺の殆どが未探査部分で、どこに何が在るのかは想定がつかん
わかってるのは街から離れてる場所ってことくらいだ

取り敢えずはこんなとこだが、他にもしダンジョンのことで疑問点があれば教えてほしいぞ

迷宮の床や壁は土と岩でできてんの?草生えてたりとか、水が湧き出てる所とか、物が落ちてたりとかないの?

迷宮の入口って中心区だよね 階段か何かで昇り降り出来るようになってんの?

さて、続きを話そう

ゴブリンジェネラルを見たその瞬間、俺の頭にはふたつの考えが浮かんでいた
ひとつはとにかく僧侶だけでも逃げる時間を作らなきゃいけないなって考え
だからジェネラルと目があったその瞬間、俺は振り返ることもなく僧侶に大声で逃げるよう叫んでた……んだと思う
正直記憶は曖昧だ

そしてもうひとつは、どうやって勝とうかってこと
相手のLvは13。俺とのレベル差は9もある。これは絶望的な数字だ
一対一の立会において、レベルの差は3つですら極めて厳しい状況だからな
ただ、それでもゴブリン種には"総合レベルは高くても技能レベルは低い"って特徴があるから、工夫次第ではなんとかなるかもと思ったんだ
例えばLv5のゴブリンは技能の割当が[略奪Lv2][剣技Lv1][徒党Lv1][暗視Lv1]とかなりバラけてる
だからこそ基礎レベルの低い俺でも剣技の立会に持っていけば、なんとかスキを突いて倒す事が出来るわけだ
技能レベルの優劣は、それだけを比べる場面においては基礎レベルの優劣よりも優先されるからな

ただ奴が、ゴブリンジェネラルが軽く腕を振り払った時、俺は自分の考えの浅はかさを知った
[剣技Lv3]の俺の横薙ぎはまるで児戯みたいに簡単に振り払われて、大きく姿勢をずらした俺の腹に、奴は蹴りをかましてきた
鎧が凹むほどの衝撃を受けて、肺から空気が漏れ出す。潰れた蛙みたいな声が出る
そしてそのまま、俺の身体は2m近く吹き飛ばされた

それだけで俺はもう、歴然とした力の差を思い知った
奴の[剣技]技能は、少なくともLv5以上の域にいる。俺が太刀打ちできるレベルじゃない
全身の焼けるような痛みに絶望感も手伝って、吹き飛ばされた俺は動くことすらできなかった

ただヤツの青白い目が、吹き飛ばした俺から身体を竦ませて震える僧侶に向いた時、それだけはダメだと思った
どんなに性格が悪いやつでも、可愛い女の子を目の前で見殺しにするのは、男として恥だと思った
童貞は可愛いものに弱いからな

俺は剣をとって、再び奴に斬りかかった
もう無我夢中だったんだと思う。感じた痛みを脳内麻薬がかき消して、それによって動かされる身体でより強い痛みを感じる
それを延々と繰り返していた
俺が起死回生で打った垂直打ちを、奴は剣を横に構えて受け止める
それが見えたときにはもう、次の攻撃を繰り出している
攻撃されたら終わりだから、俺はもうただ無心で、可能な限り早く攻撃を連打していた

俺が逃げろと叫んだ時、僧侶はひどく狼狽しているようだった
ただ僧侶は魔法使いを迷宮区の小脇に隠して、それから俺の後方で呪文を唱え始めた
次の瞬間、癒やしの光が俺を包む。Lv1の光魔法[癒やしの滴]
彼女は何かを言っていた、と思う。彼女が自分から俺に話しかけてきた事の珍しさと、目の前の敵に集中した頭の所為で、何を言っていたのかまでは覚えてない
ただその目には俺と同じ、決死の覚悟が見て取れた
だから俺も、彼女に攻撃が行かないように、ただ最前線で奴の攻撃を捌き続けた

それから何度攻撃を繰り返したかわからない
ただ反撃がされないよう、我武者羅に剣を振っていた
ジェネラルは適宜剣を構えて、反撃もせずに俺の攻撃を全て受けきっていた
まるで何かを待ってるみたいに

そしてついに、何かが砕ける音が響いた

それは俺の[鋼のつるぎ]の刀身が、半ばから折れた音だった
まあ当然の話なんだよな。奴が持っていたのは[鉄のつるぎ+4]。俺より4つもランクが高い武器だ
それで武器を受け続けられれば、いずれこっちの武器が打ち負けて割れるだろう
そして武器が折れてさえしまえば、戦士なんてただのおっさんだ

奴はそれを、ずっと待ち続けてたみたいだった
基本的にモンスターの表情なんてのは分かりにくいもんなんだが、その時は俺にもわかった
奴はにんまりと笑みを浮かべて、これまで受けるばかりだった剣を上段に振りかぶった
もう俺にそれを受ける手段はない
つまりもう死ぬしかない
せめて童貞は捨てたかったなあとか、そんときは考えてたよ

だから剣を振り下ろされる寸前、
石畳の床になにか硬いものが振り落とされた音が聞こえた時、俺は動きを止めたし、ジェネラルもまた動きを止めた

それはジェネラルの背後、つまり俺の正面の通路から聞こえてきたんだ
そこに居たものを見た時、俺はジェネラルを見たときよりも大きな衝撃に襲われた
そいつはゴブリンジェネラルよりも更に大きなゴブリンだった。筋肉質な四肢と、深い緑色の肌
甲冑を身にまとって、背中には赤いマントを、頭には燦然と輝く黄金の王冠を冠っている
何よりも存在感を表していたのは、両手で地面に突き立てられた剣だった
一般的に用いられる量産品の武器じゃない。迷宮で見つかる、呪いがかかった強力な剣
俺たちはそれを魔剣と呼んでいる

その肩には小さな1匹のゴブリンが乗ってた。白いドレスに身を包んで、右手には豪奢な装飾の為された杖を持ってる
そのゴブリンもまた、頭に王冠を冠っていた

俺たちを静止した音は、大きなゴブリンが魔剣を床に突き刺した音だった
大きなゴブリンが、なにかをジェネラルに話しているのが聞こえた。残念ながら魔物語はわからんかったが
ただ一言二言話したあと、ジェネラルは俺を足で突き飛ばして、背を向けてしまった
俺たちにはもう何が起こってるのか、その時点で既に思考停止気味だ

それから三匹のゴブリンは、こっちを振り向くこともなく、魔物避けがされているはずの[通路区]を進んでいったんだ
追いかけるだけの気力はなかった。というか、戦闘が終わり次第倒れちまって、5分ほど気を失ってたみたいだからな
これが、事の一部始終だ

言い忘れていたが、その時あった2匹のゴブリンは、魔物図鑑にも乗っていないし話にも聞いたことが無かった
多分新種のゴブリンなんだろうと思っている
ただ魔剣持ちのゴブリンなんて、正直初めて聞くけどな

>>43
材料も無いし、技術もあるとは言えないな
こういう時盗賊が居ない辛さが身に染みるぜ

>>45
ありがとう。今は迷宮区の暗闇に潜んで眠ってる
打撲や切り傷はアホみたいにあるんだが、致命的な欠損が無かったのは幸運としか言えないな
とりあえず僧侶に傷の手当はしてもらった

>>46
きさまゆうしゃか

>>47
結論だけ話せば、奇襲は50%くらいは成功したんじゃないだろうか
正直事態が二転三転としすぎて、俺にもどうなっているのかわからんね
ただ[1F-始まりの迷宮]の[通路区]に居たゴブリンはいつの間にか居なくなってた

物資としては俺の[鋼のつるぎ]が真っ二つに折れてしまった程度だな
今はゴブリンから剥ぎ取った石斧でなんとか自衛してる
それから僧侶の薬草を2つ消耗した

いやー無事で良かった 悪運強いねキミ

ところで帰れそう? 無理せずしっかり休んで行くんだぞ

勇者が逃亡して2日目
魔法使いはまだ起きない

とりあえず報告すべきこととして、まだダンジョンは抜け出せてない
ただ迷宮は異様なほど静かで、低レベルの昆虫型モンスター以外は全く遭遇しない
普段であればこの1F南東側は、エンカウント(モンスターと遭遇する事を冒険者はこう呼ぶ)の半数以上がゴブリン系統のモンスターであるにもかかわらずだ

今朝起きると、全身に溢れかえりそうなほどの力が漲っているのを感じた
この感覚は覚えがある
そう思って僧侶の所に行くと、俺が言葉を発するより先に彼女が俺に魔法をかけてきた
Lv2光魔法[明ける知識]。対象物の情報を表示する、冒険者にとってこの上なく重要なスキルだ
彼女の3節に至る詠唱が終わると、中空に光の文字が浮かび上がっていく

年齢:21
性別:男
適性:戦士
練度:LV5
技能:[剣技Lv3][かばうLv1][+]/+[剣技Lv4][かばうLv2][感知Lv1][自然治癒Lv1]
装備:[鋼のつるぎ(壊)-1][鉄の鎧]

間違いない、これは俺のステータスだ
見れば基礎レベルがひとつ上がっている
この溢れかえっている力の源は、想像通り限界をひとつ超えたが故のものだったようだ

レベルが上がったことによって、技能に選択用の項目が増えている
[剣技Lv4]と[かばうLv2]は、既に俺が取っている技能を伸ばすためのものだ
[感知Lv1]は前回のレベルアップでも姿を表していた。確か、近くにモンスターが居る事を察知できる技能だったか
[自然治癒Lv1]は今回のレベルアップで初めて姿を表した技能だ
いずれか一つを選んでこの[明ける知識]の発動中に特殊な文言を言う事で、選択した技能を得る事ができる

一先ずどれにするかは置いておいて、俺は僧侶に自分たちはどうなのかと訪ねてみた
僧侶はその言葉を聞いて、今度は[明ける知識]を自分たちに詠唱する
すぐに現れたのは、こんなステータスだ

年齢:17
性別:女
適性:魔法使い
練度:LV4
技能:[炎魔法Lv3][詠唱Lv1]
装備:[樫の杖][魔女のマント][とんがり帽子]

年齢:14
性別:女
適性:僧侶
練度:LV4
技能:[光魔法Lv3][薬師Lv1]
装備:[鋼の槌][修道服+1]

僧侶もやはりレベルが上がっていたらしい
さっき俺の様子を見た時に察していたみたいだから、やっぱりとは思ったんだよな

とりあえずステータスの確認をさておいて、今度は魔法使いの様子を見た
しかし相変わらずこいつは綺麗だ。ダンジョンで風呂も入っていない筈なのに、仄かに柑橘類みたいな良い香りがする
正直童貞には心臓に悪い
魔法使いはまるで眠ってるみたいに気を失ってる。普通なら魔力切れでもそろそろ起きている筈なんだが、僧侶いわくまるで起きる気配がないらしい
ただ呼吸は安定してるし、見てる感じ調子が悪そうにも見えない

ただ起きない以上、抱えて戻るしかないよな
そんな訳で今は魔法使いを抱えて、ダンジョンの道を戻ってる
ありがたいことに今は全然モンスターもいなくて、それどころかメイン通路には冒険者のひとりすら見当たらない
通路区の奥にいると思ったゴブリンも、いつの間にか居なくなってるしな

まあこの調子ならおそらく、今晩には街まで戻れるだろう
食料も資材も数が少なくなっていたし、何より俺の武装がまずい
ここでモンスターに遭遇するのは、正直ありがたい限りだぜ

ああ、あと技能はどれを習得しようかな……
どれがいいとかあったら意見をくれ

>>55
今居るここはダンジョンの末端だからな……
あとすまないが、俺は盾を持ってないんだ
高いんだよなあれ……

>>56
まあみんなお荷物というけど、俺はなんだかんだ戦闘面ではこいつらを信頼してるんだ
今は眠ってるが魔法使いの魔法の勘は目を見張る者があるし、俺が傷ついた時僧侶の存在は絶対に必要だからな
どれだけひどい扱いをされても、こいつらに助けられてるのは事実なんだよ

それに、ふたりとも美人で可愛いしな

>>57-58
ダンジョンの形状についてはさっき挙げた通りだ
加えて言うなら、ここでゴブリンの群れに囲まれちまったら、それこそ生き残る手段はないからな
慎重すぎるくらい慎重になった方が良いと思ってる。特にこういう場面では

>>59
今日の朝は携行食のソイバーと、グラスワーム(Lv2)を煮込んで保存塩で軽く味付けしたものだな
正直美味いものじゃないが、そう贅沢も言ってられん
因みに食感は西の方の特産モンスターであるプローン(Lv2)によく似てるぜ。味は比べるべくもないが

俺はゲテモンでも気にせず食えるが、僧侶は食べるのをかなり嫌がってたな
5分くらい食べるか迷ってたみたいだけど、いつの間にか食べ終えてた

>>62
階層と場所によるかな
俺が今居る[1F-始まりの洞窟]は、[迷宮区]は硬い土で覆われてて、[通路区]は石煉瓦で舗装されてる
水は湧き出てないが、[3F-セイレーンの入江]なんかは水浸しで船無しじゃ進めないと聞く

あと、迷宮区なら古代の魔法道具が落ちてる事はあるな
俺たちはアーティファクトって呼んでる
使えるものも使えないものも様々だ。良いものは換金すれば一生遊んで暮らせたりするぞ
こういうのが目的で冒険者になる奴も居る

>>63
[中心区]が迷宮の入り口になってるな。地上に小さな穴がいくつも空いてて、それら全てから登り降りできる
この穴には番号があって、番号ごとに特定の派閥が所有権を有してるんだな
例えば47番エントランスは、魔術師ギルドの所有物とか
24番エントランスは、有名貴族の個人敷地だとかな
意地の悪い団体は特定の[通路区]を封鎖して、その周辺のエントランスを独り占めして迷宮を独占してたりする
例えば[1F-ジャイアントワームの大穴]は、魔術師ギルドが周辺の[通路区]やエントランスを封鎖して中のアーティファクトを独占してるとかな
まあ、厄介な政治の話なんだろ。俺はその辺詳しくねえ

>>71
心配してくれてありがとう
しっかり休んで、今は体を動かす分には全然支障なしだ
ただ剣が壊れちまったのは参ったぜ

さて、そろそろ僧侶の息も戻ってきたし、進行を再開する
また何かあったら書き込むぜ

[中央区]の手前までたどり着いた
どうにも様子がおかしい

まず、人がいない
[中央区]付近の[通路区]にもなれば周辺は冒険者と彼らを相手に商売する露店、そしてそれらを取り締まるギルドで一杯になる筈だ
しかし現実として、今この通路はえらく閑散としてる
代わりに周辺に片付けられないまま放置された露店と、壊された商品や食事が散らばってる
なんだこれは

どう考えても尋常じゃない
鼻を利かせてみれば、[中央区]の付近から焦げたような臭いが漂ってくる
それと同時に、どこか鉄臭くもある気がする

そこはかとなく嫌な予感がする
僧侶を見れば、彼女も顔を曇らせている
俺たちは、ひとつの最悪の可能性を考えてる

とりあえず魔法使いを側に寝かせて、僧侶もそこで待機させる
僧侶は俺に色々と言ってきたけど、魔法使いを置いていくわけにいかないだろって一蹴してきた
もし俺の考えてることが真実なら、それを彼女には見せたくないし、危険だって伴うからな

俺の想像が、ただの杞憂で終わることを願ってる
それじゃ、ちょっと行ってくる

どうしよう、みんな、助けてくれ

どこから説明したら良いのかわからない
ただ、とりあえず見たままのことを伝える

俺は物陰に隠れながら、[中央区]に足を踏み入れた
そこはひどい有様だった。ありとあらゆる道具は破壊され、床や壁は所々剥がれ、何より点々と死体が転がっている
生きているものはもうそこには存在していなかった

半ば確信じみた恐怖に駆られながら、俺は13番エントランスの階段を登った
階段を進めば進むほど、饐えた臭いは強くなっていく
その向こうからは騒がしく何が聞こえてくる。港町の雑多な喧騒じゃない、絶叫と咽び泣く女の声
何かが割れる音、落ちる音、壊れる音
全部が日常じゃなかった

階段を抜けると、一面の赤が視界に広がった
一瞬夕焼けかと勘違いするような空の色。港町の澄んだ星空を、燃え上がる炎が夕焼けみたいに照らしていた
燃えていたのだ、街が
俺がいつも寝泊まりしてる、格安の宿屋があった。そこの女将はお節介な人間で、いつも金のない俺に宿代をツケてくれていた。出世払いで返してくれれば良いと、いつも女将は笑っていた
その宿屋が燃えていた。崩れていく屋根を見て、宿を取り囲むゴブリン達が耳障りな笑い声をあげていた。
冒険者達に人気の食堂があった。ダンジョンを抜けた泥臭い男の群れで、そこはいつも暑っ苦しい臭いと笑いに満ちていた。ウェイトレスの娘は可愛くて、俺は彼女が病気のお袋の為に必死で働いてるのを知っていた
その食堂が燃えていた。オークが息を荒げながら、あのウェイトレスに覆いかぶさっていた。俺を癒やしてくれたあの声が、オークの下で泣き声をあげていた
ボロっちい鍛冶屋があった。店主の親父は無口な頑固者で、いつも俺と喧嘩ばかりしていた。けど武器を作ることには本当に真面目な人で、俺は腰に差したこの剣を鍛え上げるのに彼がどれだけ気を遣ってくれたかを知っている
その武器屋が燃えていた。コボルドが店から武器を盗み出して、丹精籠もって作られたそれらをおもちゃみたいに振り回していた

俺の足元に何かが転がってくる
それは首だった。俺はその顔をよく知ってる
俺は彼をよく知っている。若い頃は冒険者だったが、片腕を喪ってからは冒険者ギルドで働いていた
何事にも厳格で、他人にも厳しく自分にも厳しい人だった。そのくせ、自分の娘にはとことん甘い人だった
小さな時分から、彼女と一緒に遊んでいた異性の俺には特に厳しかった。子供の頃、俺は彼は苦手だった
けれども冒険者になりたいと決意した時、俺に剣の道を教え、導いてくれたのも彼だった
度に出るその日、娘を護ってやってくれと約束した

その顔は、魔法使いによく似ていた

俺たちの街は
モンスターに襲われていた

正直ありえないと思った
地下にモンスターが住まう巨大な迷宮を抱えるこの街は、全体を大規模な守護魔法や魔物避けの魔法で護られてる
魔法陣は魔術師協会が定期的に点検を行っているし、実際これまで一度たりともそれが破られたことはなかった

しかし現実として、俺の目の前に広がっているその光景を作り出しているのは、普段迷宮に住まう多種多様のモンスターだった
普段俺たちが目にするゴブリンだけじゃない
[2F-豚の山岳]に住まうオーク種や[3F-セイレーンの入江]を主な生息地とするサハギン
空から獲物を襲っているハーピーは、[5F-ハーピーの狩場]に生息する極めて高レベルのモンスターだ

まぁだろうな
もう迷宮の外に逃げるしかないわ
その街が襲われてる内はモンスターもあまり居ないだろうし逃げるなら早い方がいい

出来れば他の冒険者パーティと合流したいけど、どの道街に帰ってくるパーティなんか傷ついてるか手持ちの物資が乏しくなってるかだろうし1Fで苦戦するお荷物にしかならない奴なんかかばう余裕もないだろ

あまりの光景に呆然と立ち竦んでいると、一匹のゴブリンが俺を見つけて舌なめずりをしていた
振りかぶられた石斧に、ほぼ反射神経のみでカウンターを食らわす
避けて無防備な右肩を切り落とすと、ゴブリンが甲高い悲鳴を上げた

周囲のモンスターの目が集まったことで、ようやく俺の意識も現実に追いついた

魔法使いはまだ寝たまま?親父さんの死は伝えない方がよかろうな。精神崩壊する。
まず安全なところに逃げて加勢を頼まないと。

それからはもう全速力で逃げた
臆病者だとは自分でも思うんだが、あの街の現状をどうにかするには俺は余りにも無力だった
それに正直恐怖を感じたんだ。俺を睨んだ無数のモンスターの瞳にあったのは、戦士が敵に向ける闘志じゃなくて、無力な小動物をどうなぶり殺すかっていう愉悦だった

急いで引き返して、エントランスの階段を降りる
深いことを考える余裕は無かった。兎に角、あいつらから逃げないといけないと思った
一斉に襲いかかってきた周囲のモンスター達は、幸いにも狭いエントランスの入り口で混雑していた
何より恐ろしかったのは、奴らはただ自分がより楽しみたいって娯楽感覚で俺を追いかけてきてる事だった
エントランスに群がる奴らは、まるで新しい玩具を我先にと競い合う子供みたいだったよ

言っちゃなんだがゴブリンでもこんな苦戦するのに
ダンジョンの真上に町とか正気じゃないわ…そりゃこうなるだろ

僧侶の所まで走って、魔法使いを背負い、僧侶の手を取る
全速力で逃げようとする俺の様子に、僧侶は少しだけ訝しげにしたあと、俺を追いかけてくる無数のモンスターを見てか細い悲鳴を上げた
いつも無口で澄ました彼女からそんな女の子らしい声が出るなんて珍しい事だが、まあその時はそんな事を考えてる余裕は無かったな
兎に角全速力で[通路区]を抜けて、[迷宮区]を無茶苦茶に走り回った

複雑怪奇に分岐する[迷宮区]を後先考えずに走り回ったのは、我ながら良い判断だと思う
後ろから迫ってくる足音は、その統率の無さ故に俺たちに追いつくことはなかった
加えて[迷宮区]は暗闇に包まれていて、そんな場所だと逃げる方が圧倒的に有利だ
それでも後ろから足音が聞こえてくるのは、生きた心地がしなかったな

迷宮に潜ったのか……食糧大丈夫?

まあそういった訳で、今オレたちは[迷宮区]の片隅で火を焚いてる所だ
魔法使いはまだ目を覚まさない。街に行くまではさっさと目を覚ましてくれって感じだったが、今だけは感謝してる
彼女が起きて、俺は果たして彼女にどう接すれば良いのか、まだ整理がついてないからな
僧侶は火に当たりながら、たまに俺の方を見て、何かを聞きたそうにしている。多分、何があったのかを聞きたいんだろう
俺は彼女に全てを伝えるべきだろうか

なんでこんな事になってしまったんだ

>>115
街全体にモンスターが蔓延っている様子だったから、正直街の外に出るのは厳しい賭けだ
迷宮の中から直接外に逃げるルートは、今の所発見されてないしな
勿論1Fの迷宮すらまだ完全には探索されてないから、探せばあるのかもしれないが……

>>117
まだ寝たままだ。普通人間の魔力の回復っていうのは1昼夜あれば済むはずだから、相当消耗してたってことなんだろうか
僧侶に対しても同じことが言えるんだが、果たして彼女たちに何をどう伝えれば良いのか
加勢を頼むとしたら、迷宮に潜ってる他の冒険者だな。ただ、果たして今どれだけ迷宮に冒険者が残っているか……
普段冒険者が街に帰る夜に起こった出来事だから、もしまだ迷宮に残っているとすれば、深階層で迷宮に定住してる深層パーティーくらいか

>>119
それぐらい魔物避けの魔法は完璧だと思われてたし、実質そうだったんだよ
そもそもこの街自体がダンジョンのアーティファクトを発掘する冒険者と、それを売る商人、そして輸出する船が集まって出来た街なんだ
むしろ、ダンジョンありきで出来た街なんだぜ

>>121
最悪はダンジョンに済む昆虫系や小動物系のモンスターで、なんとか飢えは凌げるが……
それよりも水が厳しいな

とりあえず、少し周囲の警戒をしてくるぜ
僧侶に話すか、魔法使いに話すかは一旦保留だ
俺自身も整理をつけたいしな

街からしか迷宮の外に行けないのかよ終わったじゃん

もう感知スキル磨いて戦闘は全部逃げてその深層パーティとやらに助け求めるか一縷の望みをかけて1Fから外に逃げれる道を探すかだろ

魔法使いが早く戻らなきゃっていうのはこうなることがわかってたのかね

勇者は逃亡したんじゃなく、これを知って何かアクションを起こしたってとこかな?ガチクズなら別だけど。
まあ深層冒険者探ししかなさそうね。僧侶ちゃんには伝えておいた方がいいだろ。自分で抱え込むには大きすぎる。

>>128
だろうね
更に言うなら魔法使いがそれを知った時点ではまだ街は無事だった可能性が高い
魔法使いが勝手にパニックになって勝手に気絶さえしなければ街の人は救えたかもね

魔法使いがちょっと足手まとい過ぎるな…
すぐパニック起こすし倒れたら丸一日以上起きないとか冒険に出すべき子じゃないわ

早く深層パーティーと合流したい。特に定住してるような奴は化物みたいに強いはず

しかし僧侶は最年少だしなぁ……現状でも結構無理してるんじゃないか
無論それは君も同じ事なのだが
伝えるべきだとは思うが表現には気を遣う方が良いと思う

街が壊滅状態でまだモンスターも蔓延ってるから戻るのは無理って事だけ伝えりゃいい
深く聞かれたら詳しくは見てない、人影はなかったからきっと皆逃げてるはずで通すしかない

魔法使いは口減らしの為にも即切り対象だけど僧侶は居ないと生存率の低下が著しい

何てこった……でもそれだけの大事件に発展してるなら近辺の街に向けて救難信号なり早馬なりが出てる可能性は高いか?
そうするとモンスターがウジャウジャな地上部からの脱出は討伐隊がやって来るタイミングを待つのが賢明かもだし
地上への侵攻の為にダンジョン内は幾らか手薄になってる筈と考えると深層パーティを探して合流できるタイミングは今しかないかもだわな

落として割れたまでは見てわかるとして使えるかどうか、今クリスタルを持っているか、クリスタルを落とした事を知ってる魔物を全部倒したかはすごく気になる
もし魔物達に回収されてるとしたらやばいかも
そして勇者の行動、逃げるなら何故一人でクリスタルを使わなかったか?逃げるには何を置いてもクリスタルは死守するべきじゃないか?

勇者が魔物避けの魔法に何かして魔物に見つけられる様にクリスタルを落としたってのは考え過ぎかな
そのクリスタル自体は使えなくても他の冒険者パーティから回収した使えるクリスタルをいくつか持っててもおかしくないし

周囲の探索を終えて戻ってきたぞ
仮拠点に戻ると、魔法使いが目を覚ましていた

とりあえず周囲の探索から

この周囲の壁は[1F-はじまりの迷宮]とは打って変わって、水気のある色の濃い土で出来ていた
大きめの岩や苔も多い。あと、歩いてるだけでも結構涼しいな。寝そべったりするとむしろ寒いかもしれん
それなりに広い範囲を歩いてみたが、ゴブリンなんかの人型モンスターとは殆ど遭遇していない

そうだった、そもそもこのダンジョン何層まであるんだ?
いや何層まで確認されてるか、なのかな
しかし今見ると>>19が……手段は分からないがやっぱり魔物避け消されてるんだよなぁ
あと深層目指す際の最大の問題は下層に待機してるであろう上位魔族だと思うぞ
正直一層から他の出口を見付けるのが安牌だと思う
僻地であれば昇ってきた奴等と鉢合わす危険も減らせるだろうしな

他の冒険者はどうしたんだよ
高レベルや熟練の連中とかもいるはずだけど、そいつらは全滅したのか?

水確保したいな
どこかに湧いてない?

とりあえず他のパーティと合流しないとどうにもならないな

そのかわり度々遭遇してるのが、ミミズに似た紐状生物
色は肌色で、表面にはぬめぬめとした粘液が纏わりついている。正直気持ちが悪い
これは動物系モンスター、[ジャイアントワーム(Lv2)]
土を分解して土中のマナを体内に貯め込むって性質をもってる

まあ見た目の気持ち悪さはともかく、強さ自体は大したことないモンスターだ
正直ゴブリンの群れを見た後だと見劣りするな
ただ大きさが人の踝程度、全長が大きいやつだと2m近くあるので、近くで見るのが気持ち悪いのと
粘液が鉄や石をゆっくりと溶かす性質をもってて、それが厄介って感じだ

で、とりあえず他の二人に話を戻す
魔法使いとはちょっと話をしたが、どうにも会話が噛み合わない
ただ話した感じからしておそらく、気絶した前後の記憶が飛んでるみたいだった
自分がなんで倒れてたのかもよく覚えていないらしい

僧侶とは軽く情報を共有した
故郷の現状を聞いてかなり動揺していたようだけど、取り乱したり、泣き出したりすることはなかった
暫く俯いた後に、今後のことについて相談しようという
あまり関わったことのない子だけど、本当に聡い子だと思う

魔法使いには現状について話さないってことで僧侶とは意見が一致してる
話して錯乱されたりしても困るし、正直俺も彼女にどう伝えて良いのかが判らない
ただ彼女には、もう少し奥を探索してみることにしたというので無理やり納得してもらってる
いつか本当のことを話さないといけない。そう思うと気が重くなる

それで当面の目標だが、深層を目指してみようと思う
まず他の出口を探さない理由だが、ひとつはそれが本当にあるかどうか怪しいこと(少なくともこれまで一度も発見されていない)、
もうひとつは外に出たとして、他の街に助けを求めるにはあまりに時間が必要だからってこと
俺たちは馬も何も持ってないからな

深層に行けば確実に他の冒険者が居るし、彼らはほぼ間違いなく帰還用のポータルを持ってる
下層に行く危険性はあれど、こっちの方が確実に、より早く街を救えると思う

とりあえず今はこんなところか
ひとまず今日は付近を探索しつつ、下層に行けるルートを探す
あと、ここが一層のどの辺りかも断定しないといけないからな

>>127
元々ダンジョンの上に街を作ってるのは、中に蔓延るモンスターを外に出さない蓋の意味合いもあったからな
今となっては全部が全部逆効果だが

技能はまだ割り振ってない。こうなった以上慎重に割り振るべきだと思って意見を聞きに来た
やはり[感知]技能が良いだろうか……
もし深層に進むなら、敵に見つからないための手段は確かに必要だ

>>128 >>130-131
魔法使いが寸前の記憶を失ってしまった今となっては、それも神のみぞ知る所だな
ただ魔物避けの魔法があるにも関わらず、なんであいつらが侵入してこれたのかは本当に謎だ
偶然魔法が弱まっていただけなんだろうか……
何か見落としている気もする

>>129
モンスターに手を貸して勇者に何らかの得があるとは思えないし
あいつも腐っても勇者だしな。それはないと信じたいが……
とはいえ気にかかっているのは、ここまで勇者の死体どころか、何の痕跡すら見てないところだ
今どこで何をしているんだろうか。生きているといいけどな
もし会えたら、色々と言いたいことが山積みだ

>>132
直近の記憶を失ってるからか、現段階では結構安定してるように見える
ただ、ちょっと不安でもあるんだ
記憶を失ってるとはいえ、あまりに安定しすぎているようにも見えるから

深層のパーティは滅多に上には登ってこないからな
ただ聞いた話によれば、深層で戦うパーティーは、本当の意味で人の限界を超えているんだそうだ
つまり、人間がたどり着けるLVの限界点……俺たち冒険者はそれをレベルキャップって専門用語で呼ぶんだが
一般的に人間のレベルキャップと言われる、LV50を超えているって言われてる

>>133
表面上は、いつもの無表情なままなんだが……
ただ故郷の街が潰されて、平然といられる筈はないと思うんだ
そう考えると、やっぱり伝えたのは失敗だったろうか……

>>134
正直な所、俺もすぐ逃げ帰ってきたから、何が起こっていたのか正確な所はまだ分かってないんだ
ただ、あの光景は彼女らに絶対に見せてはいけないものだと思ってる

>>135
外部への救援は行っていると願いたい所だな
定期的によってくるキャラバンや貿易船が来れば、外にも状況が伝わるんだろうが……
それで応援が来るまでに、果たして街のどれだけが生き残るのか
それではあまりに遅すぎる気がしている

成長は感知で確定だな。下を目指す方針も二人に伝える。
ただ、運任せで下に行っても飢える未来しかなさそうなので、何か一つ欲しいな。

まあないと思うけど、魔物が味方になる……ないか。

僧侶に魔法使いは悪くない、魔物が悪いって伝えとけ、じゃないと大変な時魔法使いを僧侶が責めちまう

>>136-139
大前提として、破損した[ポータルクリスタル]はいかなる手段によっても使えない
クリスタルはマナの回路が結晶化して出来たものだからな
破損すれば当然回路はショートするし、ショートした魔法は使い物にならない

あと加えて言うなら、仮にクリスタルでポータルを開いたとしても、モンスターが街に入ってくることは出来ないはずだ
街を守護する魔法は、転移魔法よりも遥かに高位の魔法だからな
より高位の魔法が低級魔法より優先されるってのは、魔法分野での大原則らしい
まあこの辺りは、俺には専門外なんでよく分かってないが

>>146
現時点でダンジョンの最下層として認知されてるのは、[F6-巨人の庭]と同じく[F6-妖精郷]だろうかな
深層パーティの中にはもっと深くまで行った奴も居るんだろうが、地上まで戻ってきて、詳細な地図が公開されてるのはそこまでだ

>>147
練度の高いパーティは、大抵ダンジョンの地下で拠点を作って、地上に戻らずにダンジョンを攻略してる連中が多いな
そういう奴らは年に一度くらいしか街に戻らない事が多いから、正直戻るのを待っているのは非現実すぎると俺は思う
勿論地上にも腕利きの連中は居るが、ここまでのモンスターの大群に襲われるって経験自体、誰もしてこなっただろうし、想定すらしてないだろうからな……

とはいえ腕利きの冒険者達が、まだ街で連中と戦って、市民を護ってくれてる筈なんだ
彼らが消耗するより先に、深層からの応援を呼ばないと……

>>148
俺が見てきた範囲では湧いてないな
ただ今いる周辺じゃ水気は多いから、ほんの少しの水なら採取できそうだ
大量の純水については、もっと深部で入手するしかないかな……

>>149
ざっと見た限り、周辺に他のパーティは全く居なかった
単に一層の別の場所にいるのか、既に上に応援に行ってるのか……
兎も角、より深くで探索してる奴らを探すしかなさそうだ

さて、じゃあちょっと進んでくる
また何かあったら書き込むぜ

とりあえず6層が目標地点か
1~2は逃げさえできればどうにかなりそうだけど、3層と5層が鬼門だな
感知スキルだけだと厳しいから何かしらレベルに依存しない迎撃手段やステータスを底上げする物が欲しいけど


ちなみに魔法使いは使い魔とか使役できないの?
それともその辺は別でジョブがある感じ?

そろそろダンジョン内に泉があって水浴びイベントが欲しい

不勉強ながら階層について整理してみた

1F-【始まりの迷宮】→ゴブリン、虫系モンスターなど
2F-【豚の山岳】→オーク種(オーク、コボルド)など
3F-【セイレーンの入江】→サハギンなど
4F-【???】→???
5F-【ハーピーの狩場】→ハーピーなど
6F-【巨人の庭】→???
6F-【妖精郷】→???

でおkだよな?

4Fについてと6Fのモンスターについてが分からないんだけど、どんなんだったっけ?

僧侶ちゃんのおっぱいうp

童貞に水浴びイベントとかおっぱいうpとか難しいだろ
とりあえず寝顔ぐらいからだな
武器も拾った斧ぐらいしか無いんだっけ
もう感知取って避けながら降りるか

やあおはよう、4日目の朝だ
俺たちは未だにダンジョンの中、日の光を浴びなくなって久しい

昨日は丸一日、パーティで手分けして探索していた
何しろ我武者羅に逃げ出したものだからな
現状居る場所がどこかも分からない以上、探索の有無は生存に関わる

その結果色々とわかったんだが
まずはその前に、今朝段階でのパーティのステータスを改めてまとめておこう

俺(戦士)
適性:戦士
年齢:21
性別:男
練度:LV5
技能:[剣技Lv3][かばうLv1][感知Lv1]
装備:[ゴブリンの石斧][鋼のつるぎ(壊)-1][鉄の鎧]

魔法使い
適性:魔法使い
年齢:17
性別:女
練度:LV5
技能:[炎魔法Lv4][詠唱Lv1]
装備:[樫の杖][魔女のマント][とんがり帽子]
魔法:[Lv1:灯る指先][Lv2:炎の矢][Lv3:夕焼けを熾す][Lv4:赤き刃]

僧侶
適性:魔法使い
年齢:14
性別:女
練度:LV4
技能:[光魔法Lv3][薬師Lv1]
装備:[鋼の槌][修道服+1]
魔法:[Lv1:癒やしの滴][Lv2:明ける知識][Lv3:祓の水]

>>181の僧侶の適性が魔法使いになってるな……
まあ確かに僧侶は魔法を使えるが、適性は僧侶が正しいぞ

そういえば僧侶と魔法使いは、俺がここに書き込んでることをしらない
もし知られたら色々言われるんだろうなあ

昨日は逃げ込んだ場所が偶然魔物の通りにくい死角になっていたんで、そこを拠点として探索していた
この周辺で度々出会うのが[ジャイアントワーム(Lv2)]
既に上述したが、こいつらは土中のマナを貯め込む性質がある動物系のモンスターだな
こいつら自体は驚異としては噛み付いてくるくらいなので、対処は楽で助かる

奥に行くほど土は泥濘んでいて、探索する度にぐちょぐちょ音が鳴る
魔法使いがブーツが汚れると騒いでたな
まあこれは俺もちょっと困ってる。何しろ閉鎖された空間の続くこのダンジョンにおいて、泥を踏む音ってのは想像よりも響くからだ
ジャイアントワームは目が退化している分振動や音で獲物を察知するモンスターなので、あんまり大きな音は立てたくないんだな
むしろこういう土壌だからこそ、ジャイアントワームが住み着いているのかもしれんが

あと、迷宮の通路にはいたる壁に、蓮みたいなぶつぶつがある
多い場所だと壁一面が鳥肌みたいになってる
ありゃ気持ち悪いぜ。こっちが鳥肌立っちまう

で、そういうぶつぶつはどうやらジャイアントワームの寝床らしい
触れたりすると一斉にジャイアントワームが這い出てくるから注意だな

なんでこんなこと知ってるかというと、魔法使いが興味本位でこれに触れやがったからだ
瞬間ぞろぞろと壁からジャイアントワームが這い出てきた
虫だとかゲテモノ嫌いな魔法使いが、そいつらを見てぎゃーぎゃー騒いでたのは中々面白かったぞ
あいつは頭は良いんだが、なんというかバカだよな
でもあいつがバカ騒ぎしてるのを見て塞ぎ込み気味の僧侶が吹き出してるのを見ると、こいつのバカさってのも実は凄いんじゃないかと思い始めてる

きたか!大きな問題なく無事だったみたいで何よりだ

壁一面のブツブツとか遠目に見るのも勘弁してほしいな……っていうか虫とか苦手なのによく触ってみようと思ったな魔法使いは
そういえば書いてて気づいたんだけど、ジャイアントワームがそんだけいるってことは
ひょっとして>>93で言ってた【ジャイアントワームの大穴】が近いって事だったり?

ワームを補食してる奴が出てくるのか?

勇者が離れてから、二人とは以前ほど険悪な雰囲気にはなってない
そんな場合じゃないっていうのもあるかもしれない

僧侶とは今後の作戦やダンジョンの進み方の事でよく会話する
話してて思ったが、こいつは頭がいい
魔法使いの記憶力や勉学の出来不出来に関係する頭の良さとは、また別の意味での頭の良さだ
理解力があるというべきが、柔軟さがあるというべきか
一方でプライベートだったり日常の会話は殆どしない。そういった部分に踏み入らせない壁が、彼女にはある
まあ魔法使いにはかなり懐いているようだから、誰にも話せないって訳じゃないのかな

その魔法使いとは比較的普通に話をするようになった
昔のように、とまではいかないが時々バカな話もする
ただ時々会話が途切れて、何も話せない気まずい沈黙が続くことがある
いつだったか。いつも俺にべったりだった彼女が、いつの間にか俺から離れていって、一人で魔法使いを目指し始めたあの頃によく似てる雰囲気だ
彼女にも何か思うところがあるのかもしれないし、俺自身も彼女にしている隠し事があるからな
いつか本当のことを話すのが怖い。まるで実刑を待つ死刑囚みたいだと思う

さてダンジョンの探索だが、昨日の探索でこのワームが大量にいる空間はかなり広範囲に広がっているのがわかった
迷宮の広がり方は、平べったく潰したアリの巣に近い。[1F-はじまりの迷宮]がかなり直線的で規則的な迷宮だった事に比べると、ここはかなり雰囲気が異なる
どうやら違う区画の迷宮であることには間違い無さそうだ

迷宮には今の所、罠やそれに準ずるものは見受けられない
これは自然発生系の区画によくあることで、こういった迷宮は人工の罠や兵器などよりも、大量に湧く動物型モンスターに殺されることが多い
実際迷宮を進めば進むほど、[ジャイアントワーム]の出現数は増えていく
幸い敵が雑魚なのが幸いしてるが

今は迷宮を探索しながら、地下へ降りれる場所を探している
[迷宮区]は到るところに地階へ降りるための階段や穴、機構が存在しているからな
武器の石斧は敵を切り潰す度に刃先が溶けている
一度一度は大したことないが、今は用心のために魔法使いに率先して攻撃してもらい、俺はできるだけ攻撃を控えている
前衛としてはもっとしっかりした武器が欲しいところだ

>>157
技能は散々悩んだ末、[感知Lv1]を取得することにした
現時点で奥に進む為には、この技能の取得は必須だからな
ダンジョンを潜る方針は二人にも伝えている

モンスターにも色々居るが、基本的に奴らが人の味方をする事はない
ごく一部の知能の低いモンスターは、調教することで人間が使役することも出来るらしいが
そうしてモンスターを使役するクラスのことを、俺達は調教師と呼んでる

>>158
僧侶もその辺はちゃんと分かっているみたいだ。今の所、二人の友情に亀裂が入った様子はない
ただ故郷の事で内心かなり気を病んではいるようだから、どうにか元気づけてやりたいと思う
こういう時、女性経験の低さが露骨に出るんだよな
まだ幼い子だと判ってはいるんだが、相手が異性だとどうしても緊張して上手く話せないんだ

戦士のくせに盾持ってないとか自殺願望者何かかな?

泥濘んだ洞窟を進んでいると、分岐道が姿を表した
蛇行する道が右と左に分岐し、丁字路を作っている

右手側を覗けば、泥濘んだ洞窟がまだ奥深くまで続いている
魔法使いと僧侶が渋い顔をしている。どうやらこの奥から異臭がしているらしい
女の子はこの辺、男よりも敏感だよな
左手側も同じく土で出来た洞窟が続いているが、こっち側は壁が乾いており、触るとぱらぱらと土が落ちてくる
おそらく区画の切り替わりだろう。もし左手側に進むなら、出現するモンスターの種別も大きく変わる事を意識しなければならない

僧侶と魔法使いが、どちらの道に進むかで相談している
僧侶は右手側の道に進みたいらしい。理由は出現するモンスターの特性が既に判明しているから
魔法使いは左手側の道に進みたいらしい。まあこっちの理由は服が汚れるのが嫌だからだろう

とりあえず一旦ここで休もうってことで今は火を焚いて休憩中
ふたりとも自分が進みたい理由がはっきりしてるからか、言い合いにまではなっていないが譲歩しそうにもない
まあこの二人の事だから、この程度で喧嘩することはないだろうけど
ここで俺がどちらかにつけば、無駄に時間も食わないだろうし、ついた側の女の子からの心象もよくなるかな?
逆に反対意見側の女の子からの心象は少し下がるだろうけど
或いは俺は意見せずに傍観して、二人の相談が終わってどっちかが折れるのを待つのも良いかも

さて、どうしようかね

よし、じゃあちょっと軽く様子見してくるぜ
10分して戻ってこなかったら僧侶と魔法使いに助けに来てもらうように伝えた

奥に行くと、すぐに行き止まりの部屋に出た
ここまで近づけば、流石に鈍感な俺でもわかるぜ
土の臭いと腐臭が混じったような、言いようのないものが周囲を漂ってる

部屋の奥からはかなり大型の存在を感知した
音を立てないようにして、こっそりと部屋を覗く

その部屋はまるで蟲壺みたいだった
部屋の壁を、床を、天井を、大小様々な[ジャイアントワーム]が無数に蠢いている
小さなものは4cm程度から、大きなものは2m程度まで
数多くのそれらが動き、犇めき、部屋全体を埋め尽くしている
それらの所為で、部屋の床や壁が全く見えないくらいだ
思わず鳥肌が立つ光景だぜ。もし魔法使いがこの光景を見ていたら一瞬で気を失ってただろうな

部屋の中央にあるのは、中空に浮かぶ金色のリングだ
それには薄い青色の膜がはっていて、時々水面みたいに波紋を作っている
これは[リングポータル]。ダンジョン内の階層の異なる特定の[リングポータル]と、双方向で行き来できる移動用のアーティファクトだ
普通は第三階層以降で発掘されるもので、発掘された[リングポータル]の九割以上は魔術師ギルドが保管してる
普通はこんなところにあるもんじゃない

金色の輪に巻き付くようにして眠っているのは、俺の身長よりも大きな身体と、5m近い胴を保つ[ジャイアントワーム]だ
普通のジャイアントワームとは異なり、その体表面は鮮やかな赤
体表面には乳首にも似た無数の突起があって、なんと悍ましい事にそこからはぬめりを帯びた小さな[ジャイアントワーム]が生まれている

魔物図鑑で見たことがある。ジャイアントワームの巣穴に稀に存在する個体で、通常土中に含まれるマナ以上のマナを短期間・過剰に摂取すると生まれる変異モンスター
通常壁に卵を産み付けて適切に個体数を増やす[ジャイアントワーム]と異なり、自身の身体に直接卵を産み付け、自身を媒介に大量の子供を生むという
その無尽蔵な出産から危険度は高く認識され、モンスターレベルはLv7
ワームの女王、[ジャイアントクイーン]だ

ここ潰さないと先行のハーピィよりやばい奴来るじゃん
魔法使いには無理してでも来て欲しいな

うぇぇ、ワームまみれとか相当胸が悪くなる光景だなぁ

でもこれってひょっとすると>>93で言ってた【ジャイアントワームの大穴】なんじゃないか?
魔術師ギルドが独占してるアーティファクトってのがこのポータルな可能性が高いし、ジャイアントクイーンの配置にも魔術師ギルドが関与してる可能性がある

量が量だし、下手に刺激するのは危険そうに思えるなポータルがどこに繋がってるのかは気になるけど
飛ばされた先がどうなってるかによって生死の振れ幅がデカすぎるから現状で突貫キメるのは危険すぎる
戻って魔法使いに何か知らないか聞いてみて何か分かればよし、分からないようなら一旦保留が無難なように思える

油と枯れ草と火のコンボがいかにも効きそうだが、ダンジョン内じゃダメだな、こっちに煙が来る危険がある

とりあえず元の道まで撤退して2人に意見を仰いだ方がいいな
ちなみに火攻めとなると湿気と可燃物の問題で大した火力にならない

まぁ魔法使いの魔翌力次第か、夕焼けを熾すなんて以下にも全体呪文だし
後は油分だけ確保すればどうにかなりそう

二人には話してとりあえず逆側の迷宮を見てる
モンスターの気配も無いが、下層に行くための機構も見当たらない
もしこっち側に進むなら、時間の消耗は止むを得ないだろう

>>162
知能の低いモンスターを使役するクラスとして[調教師]があるな
あとは魔力でゴーレムやサーバントを生成して操るスキルがあるぞ
魔法使い系統の技能な筈なんだが、かなりハイレベルな技能らしいからなあ

>>163
第三層や第五層は水気の多い区画があると聞くけどなあ
女子二人組も水浴びはしたいって言ってる
二層も稀にそういった場所があるようだから、そこに期待するか

>>164
基本的に深層の情報ってのは地上に殆ど持ち込まれないから、下層に行けば行くほどそこの実態はわからなくなるんだよな
名の知れた深層パーティ以外の情報は、飽くまで参考程度にしかならないし
その上で、地上に持ち込まれてる情報として冒険者全体に共有されてるのはこんな感じだ

第一層
[中央区]:中央に一箇所。地上に繋がる現時点で唯一の入り口
[1F-始まりの迷宮]:[中央区]付近から広く広がっている洞窟型迷宮。人型モンスター(ゴブリン)が生息
[1F-マンハントの巣]:広い道が続く分岐の少ない遺跡型迷宮。動物型モンスター(キラーマウス)が生息
[1F-採掘地域]:整備されている洞窟型迷宮。人型モンスター(ゴブリン)が生息
[1F-ジャイアントワームの大穴]:詳細不明。魔術師ギルドが保有
[1F-ゴブリンの本拠地]:詳細不明。

第二層
[中央区]:現時点で[1F-始まりの迷宮][1F-マンハントの巣][1F-採掘地域]と接続
[2F-盗賊の根城]:詳細不明。盗賊ギルドが保有していると推測されている
[2F-血溜まりの花畑]:植物の多い洞窟型迷宮。植物型モンスター(カニバルフラワー)が生息
[2F-蛇の洞窟]:西側に広がる分岐の多い洞窟型迷宮。動物型モンスター(キラースネーク)が生息
[2F-豚の山岳]:東側に広がる作りの単純な山岳型迷宮。人型モンスター(オーク)が生息
[2F-人間牧場]:詳細不明。

第三層
[中央区]:現時点で[2F-盗賊の根城]と接続
[3F-セイレーンの入江]:足元が水没している洞窟型迷宮。人型モンスター(サハギン)が生息
[3F-霧キノコの群生地]:一面が霧で覆われた植物型迷宮。植物型モンスター(モック)が生息
[3F-海底遺跡]:水中に沈んでいる遺跡型迷宮。魚型モンスター(カンディル)が生息
[3F-竜の墓]:極めて入り組んだ遺跡型迷宮。人型モンスター(サハギン)が生息

ああ、第三層の[中央区]は他に[2F-蛇の洞窟]と[2F-豚の山岳]に接続されてる筈だぞ

第四層
[中央区]:現時点で[3F-セイレーンの入江][3F-霧キノコの群生地][3F-竜の墓]と接続
[4F-骸の宮殿]:広大な遺跡型迷宮。不死型モンスター(スケルトン)が生息

第五層(ここより下層を一般的に深層と呼称する)
[中央区]:現時点で[4F-骸の宮殿]と接続
[5F-魔術師の塔]:詳細不明。魔術師ギルドが保有
[5F-結晶石の洞窟]:水が張られた洞窟型迷宮。魔術型モンスター(ゴーレム)が生息
[5F-ハーピィの狩場]:水晶が生える山岳型迷宮。人型モンスター(ハーピィ)が生息
[5F-ライカンスロープの洞窟]:詳細不明
[5F-白竜の寝床]:詳細不明

第六層
[中央区]:現時点で[5F-魔術師の塔][5F-結晶石の洞窟]と接続
[6F-旧魔王城]:極めて広大な城塞型迷宮。出現モンスターの詳細不明
[6F-巨人の庭]:凍りついた山岳型迷宮。出現モンスターの詳細不明
[6F-妖精郷]:生い茂る森林型迷宮。出現モンスターの詳細不明

第七層
存在自体はほぼ確定
それ以外は詳細不明

勿論現時点でも探索されていない場所は数多くあるし、おそらくこれはごく一部に過ぎない筈だけどな
まあ深層にいくなら、とりあえず五層まで行ければ問題ないはずだ

>>165
流石にまだ14歳未成年の女の子には欲情しないかなあ
どちらかといえば妹みたいな印象

>>166
また今度僧侶がぐっすり眠ってる時に撮ってみるよ
でも見られたら今度こそ口聞いてもらえないレベルで嫌われそうだな……
一応感知のおかげか、大型の敵とは遭遇せずにここまでこれてる
ただこんな粗末な武器じゃなくて、ちゃんとした武器が欲しい所だな

>>186
確かに、言われてみればそうかもしれない
そもそも[ジャイアントワーム]の巣すら初めてみるレベルだし、ここまで巣が固まってるってことはそうなのかね
ただ結局、[1F-ジャイアントワームの大穴]の内部は魔術師ギルドだけが知ってる情報だからなあ

>>187
この区画だと、[ジャイアントワーム]以外のモンスターは殆ど居ないようにみえるな
ただ悍ましいことに、どうやらこいつら普通に共食いをするらしくてだな
魔法使いが住処を突いた時、何体かの[ジャイアントワーム]は同じ巣穴から出た他のワームを捕食してた

>>192
盾は高い上に、一人前に扱うとなると技能の枠をひとつ使うからな
勿論そういった戦い方を否定はしないが、俺には出来なかったんだ
なにせスキル[盾術]の適性がなかったからな
どれだけなりたくても、スキル適性がなければなれないのが現実だ

>>205
こいつらが上層まで襲ってきたらとんでもないことになるな
ただ街を襲ってるのは人型モンスターばっかりだしなあ
おそらくこいつらは上までは上がってこないんじゃないか?
まあこいつら自身が上層への道を見つけて、かつ魔物避けの魔法を抜け出せたらの話になるが

>>206
そもそも入ることすら困難だからな
素直にここをスルーして、別の場所から下層に降りたほうが無難な気もしている
因みに魔法使いは何も知らないそうだ。まあ魔術師ギルドに加入してるわけじゃないしな

>>207-209
調理用の油は少々残ってるが、ここを丸焼きにするにはちと足りないかな……
[リングポータル]自体の強度はそれなりにはある筈だ
相当な大きさの[ジャイアントクイーン]が巻き付いてるんだしな
ただ火で炙って機能的に大丈夫なのかは不安が残るな

>>210
地面が泥濘んでいるのがかなり痛手だな
因みにLv3の炎魔法[夕焼けを熾す]は燃料なしに12時間継続する焚き火を生成する魔法なので、広範囲の攻撃は難しい
普段は夜寝る際の暖を取るのに使ってたりするぞ
ただまあ、意外な使い方はあるのかもしれないが

とりあえず先ほどの[ジャイアントクイーン]はスルーした方が良いって意見が多かったので
それを提案して反対側の道を進んでるぞ
また奴らに致命打を与えられる方法が思いついたら教えてくれ

乾いた洞窟の方だが、モンスターの気配が全然感じられない
人間や人型モンスターが良く通る道なのか、床は木の板が張られて整備されてるな
道は細く人為的に分岐してて、等間隔に支柱や梁がある
第一層でここまで整備されてるってなると、おそらくここは[1F-採掘地域]だな
普段はゴブリン達が闊歩している道の筈だが、今は気配すらないな

坑道は所々にズリ山が作られてて、魔法使いの[灯る指先]を反射してきらきらと光ってる
ここは鉄鉱石の産出地だし、このズリ山も抽出すれば鉄が出来るんかね
ただ俺にはやり方はわからん

坑道には度々道具が投げ捨てられてるので、それを拾っておく
[古ぼけたツルハシ-1]と[ロープ(4m)-1]を拾ったぞ
あと[旧式カンテラ]を拾ったが油が無いので使えない
少なくとも魔法使いが居る間は、こいつは無用の長物だが

こっち側の道最大の問題は、飯の種になりそうなものが全く無いことだな
さっきまで居た[1F-ジャイアントワームの大穴]は何だかんだ小さな昆虫型動生物が多かったので
そいつらで飯は確保できた(女子二人ともすごく嫌そうだったが)

ところがこっち側はそうもいかない
今は数少ない保存食を切り盛りしてる状態だ
同行してる二人にも憔悴の色が見える。特に魔法使いは、最近は飯に文句すら言わなくなっていた
昨日は早く上に戻って食堂に行こうって感じだったんだが
文句を言う気力すら無いって感じだ

>>234
ゴブリンの巣なら食料、武器が有るかもね。

危ないけど

迷宮を歩いていると、下階層へ向かう階段を発見
思ったよりも早い発見で助かった……と思ったんだが
階段の前に一体のモンスターが立っている

石と鉄で出来た手足と、丸太のように太い胴体
胸の中心には深緑色の宝石が埋め込まれ、呼吸のように明滅している
瞳に当たる部分は窪みとなっており、今は光を灯していない
[創成魔法]技能によって生成される人工モンスター[スチールゴーレム(Lv8)]だ
胸の中心にあるクリスタルから、クリエイトした術者は人間であることがわかるな
因みにクリスタルが赤い場合、人型モンスターがクリエイトしたものになるぞ

さて問題は、このゴーレムにどんな命令が与えられているかだが
大前提として、ゴーレムってのは単一命令を指定する事しかできない
大抵の場合、こういった階段や出入り口の手前に配置されるゴーレムは侵入者の撃退を命令されてる事が多い
まあ階段の手前で陣取ってる事からも、それは殆ど間違いないといっていい

そういった場合、ゴーレムは基本的に近づいてきた生物は例外なく攻撃し始める
勿論そのままだと術者も同じ目にあうので、合言葉を指定しておいて、その言葉を言った生物だけを通すようにするんだな
問題はその合言葉が全くわからないことなんだが
ここまででそういったヒントがあればよかったんだがなあ

もしかしてお前って戦士適正より商人辺りの適正の方が高いんじゃね・・・?
手に入れた道具の修正値まで把握したり、一目見ただけでどれほどのアイテムか把握したりとか

スチールゴーレムか
こいつをワームの巣に誘導できればいいんだけど現実的じゃないよなぁ
でもこのゴーレムってたぶん2Fから登ってくる奴への撃退用だと思うんだよね
わざわざ2Fに降りようとする奴に対処するようなゴーレムを置く理由が無いし

人間には攻撃しないように指示出来ないなら迷惑極まりないな…

>>237
対下層の撃退用ならゴーレムや周囲に合い言葉書いてないか?

ゴーレムを処分するならロープで作ったtrapを蟲壺のそばに仕掛けて転倒させる、とかは無理そうかな?ロープを絡ましたくらいでは転けないか

>>237
魔法使いさんの意見は?

やあおはよう
レスが遅れてすまなかった。魔法使いと僧侶に隠れながらやってるので許して欲しいところだ
今日もまた色々とあったんだが、まずは俺たちの最新のステータスをお披露目しておこう

俺(戦士)
適性:戦士
年齢:21
性別:男
練度:LV6
技能:[剣技Lv3][かばうLv1][感知Lv1][+]/+[剣技Lv4][かばうLv2][感知Lv2][自然治癒Lv1][対魔力Lv1]
装備:[ゴブリンの石斧][鋼のつるぎ(壊)-1][古ぼけたツルハシ-1][鉄の鎧(壊)-1]
持物:[ヒーリングポーション]*3,[安物の砥石]*1,[松明]*2,[安物のナイフ]*2,[旧式カンテラ],[寝具],[調理油],[調味料],[食器と携帯鍋]

魔法使い
適性:魔法使い
年齢:17
性別:女
練度:LV5
技能:[炎魔法Lv4][詠唱Lv1]
装備:[樫の杖][魔女のマント][とんがり帽子]
魔法:[Lv1:灯る指先][Lv2:炎の矢][Lv3:夕焼けを熾す][Lv4:赤き刃]
持物:[魔法の触媒(火/下級)]*7,[ヒーリングポーション]*2,[ブランド物のナイフ],[創成のクリスタル(青)],[寝具]

僧侶
適性:僧侶
年齢:14
性別:女
練度:LV5
技能:[光魔法Lv3][薬師Lv1][罠師Lv1]
装備:[鋼の槌][修道服+1]
魔法:[Lv1:癒やしの滴][Lv2:明ける知識][Lv3:祓の水]
持物:[聖典(下級)],[ヒーリングポーション]*2,[瑞々しい毒消草(14日)]*12,[うさぎのぬいぐるみ],[ロープ(4m)-1],[寝具]

俺の技能候補として、[対魔力]が追加された
これは魔法攻撃を受ける時、段階的にそのダメージを減少させる技能だ
どの技能を習得、あるいは伸ばすかについては、ここで一度相談してからにしようと思ってとりあえず保留してるぜ

さて、まず今朝の話をしよう

スチールゴーレムとジャイアントクイーンの部屋に挟まれた俺達は、あれから一日じっくりと話し合った
選択肢はみっつ
ゴーレムをぶっ倒して先に進むか
ワームを殲滅して先に進むか
それともこの階層を更に探索するか

安全面で言えば第三の選択肢が最も確実だ
今対面することのある二体のモンスターは、共に俺たちの適性レベルを遥かに超えている
基本的に冒険者ってのは安全を最優先するからな
普段の探索であれば、こいつらはスルーするのが正しい選択肢だ

ただ、そうも言ってられない事情があるんだよな
今の俺達は消耗戦
数少ないリソースが尽きる前に、リソースの補充をしなきゃならない

ここまでを見てくれたみんなならある程度察しているだろうが、第一層の残リソースは本当に限られてる
なぜなら第一層は地上から最も近い階層で、アーティファクト等の絶対数そのものが少ない上に、殆どの冒険者がそれを取り尽くしてるからな
勿論未探査地域もそれなりにあるが、そこにも果たしてリソースがどれだけあるかといったとこだ

何よりいい加減、二人の精神力が底をつきかけていた
僧侶は涼しい顔をしているが、その顔色は見るからに悪い
まあ街の騒動で既に疲れ切ってる所に、風呂にも入れずこの数日間迷宮を歩き続けている
治療やステータス確認のために魔力も使ってるし、物理的な消耗も激しい
そして何より魔法使いだ。何も知らされていない分、彼女のほうが消耗しているかもしれない
松明に限りがある以上探索用の灯りや焚き火も彼女の魔法に任せていて、戦闘でもその力に頼っているのは否めない
当初は帰りたいと連呼していた口数も、殆どなくなってしまっていた

そんな訳で、満場一致でこの場を切り抜けることにする
まあ実際にはかなり悶着があったんだが
全員血と頭が回ってない状態だったので、生産性のある話は出来てない

続いての問題は、どっちのモンスターに狙いを向けるかだが
倒しやすさだけで考えるなら間違いなく[ジャイアントクイーン]だろう
それはモンスターのレベルが比較的低いのもあるが、その技能も対して強くないからだな
ジャイアントクイーンの技能は[産卵Lv4][感知Lv1][吸血Lv1][魔力の籠Lv1]
レアスキルもひとつだけ、しかも割り振りの殆どが[産卵]スキルに偏ってる
レベルは高いが、Lv7のモンスターにしては比較的弱いほうだ

一方でスチールゴーレムの方だが、こっちはむしろLv8相当の強さじゃないステータスがある
スチールゴーレムの所持技能は[鉄の身体Lv3][対魔力Lv2][鉄拳Lv2][魔導生物Lv1]
所持しているスキルは全て優秀なもので、特に身体に刃が通らない[鉄の身体]は俺にとって天敵だ
[対魔力]の関係から魔法使いの[炎魔法]も通りが悪いし、正直このメンバーでの勝ちの目は限りなく薄い

そういった理由から、当初俺と魔法使いは[ジャイアントクイーン]の討伐を予定していた
それに異を唱えたのは僧侶だ
普段口数の少ない彼女が、珍しく強気な口調で俺たちに言ったのは、幾つかのリスクと作戦

彼女は言ったのだ。
[スチールゴーレム]に確実に、しかも安全に勝利する手段があると

ワームは倒せば食えそうだが、ゴーレムはそうもいかんな
何か弱点、あるいは弱点になりそうな特徴はないの?

それから俺たちは、[1F-採掘地域]へと再び足を踏み入れた
土を踏み歩く度に、乾いた砂が舞い散っていく
積み上げられたズリ山が、魔法使いの炎を反射してきらきらと輝く
壁で赤茶色に輝いているのは、採掘され逃した鉱石だろうか

やがて、俺達の前に小さな部屋が現れる
部屋の中央にあるのは、下階層へと向かう長い階段だ
そしてその手前に、一つの大きな影が座り込んでいる
石と鉄で出来た手足と、丸太のように太い胴体
胸の中心には深緑色の宝石が埋め込まれ、呼吸のように明滅している
瞳に当たる部分は窪みとなっており、今は光を灯していない
第一層の番人のひとつ。魔法によって作られた命無き門番
鉄の魔導兵器、スチールゴーレム

俺たちが部屋へと入ると、同時にゴーレムの両目に稲光のような灯火が入る
まるで石像のように静止していた顔が、こちらへと上がる
これは意志を持って行っているものではない
ゴーレムは探知したのだ。俺たちを。いや正確には俺たちの体内を循環する、マナの奔流を
生物の身体に遍くマナを感知し、それに向けて攻撃する
それがゴーレムというモンスターだ

戦闘の開始を告げるのは、一際強く輝いた深緑色のクリスタルだった
ゴーレムはその巨体を引きずるようにゆっくりと起き上がると、俺たちを殲滅せんと足を踏み出してくる

まず、足止めするのが俺の役目だ
長く続く探索に重くなった足を引きずって、俺が前線へと身体を出す
奴よりも小回りの効く身体を動かして、石の斧を奴の腹部めがけて振りかぶる
石と鉄がぶつかり、鋭い音が部屋を鳴り響いた
ゴーレムにダメージはない
奴は――そんな筈は無いのだが――嘲るように瞳の輝きを明滅させると
右腕を大きく振り払って俺を吹き飛ばそうとする

だがその右腕に、鋭い炎の矢が突き刺さり、小さな爆発を起こした
俺を突き飛ばそうとした奴の腕が静止し、石の顔が俺の後方を見る
もはや説明するまでもない。この炎の矢は、魔法使いが放った魔法の一閃だ

魔法使いは立て続けに魔法を詠唱し始める
それと同時、ゴーレムが俺を無視して魔法使いの方へと向かっていく
これはゴーレムがより純度の高いマナの方へと向かっているからに他ならない
ゴーレムはマナの強度によって生物か非生物かを、或いはその生物が強いか弱いかを判別している
それこそがゴーレムの一番恐ろしいところだ。奴は前衛を殺さない。後衛こそを殺すのだ

魔法使いの手元に、薄い赤色の光が集まっていく
これはマナだ。魔法使いの体内に渦巻いているマナが出力され、集中し、詠唱によって変質していく

魔法というのは幾つかのプロセスに従って発動される
即ち体内に充溢するマナを特定の範囲に出力し、それを詠唱式によって具体的な形状に変質させ、攻撃する
もしマナを出力できても、詠唱式によって形状が変質していなければ、やがてマナは空気に霧散する
同じように正しい詠唱式を唱えていても、体内のマナが足りなければマナは十分な変質を出来ず、現象は中途半端に終了してしまう
魔法という行為は、中空で霧散する性質のあるマナを、詠唱式によって変質させ固定する技能なのだ

俺は全身を使って、まるで相撲のようにゴーレムの進行を押し止める
壁として攻撃を塞ぐことすら困難な立場でも、奴の動きをほんの少し遅くすることならできるはずだ
踏み縛る足は耐えきれずに交代し、部屋をずり下がっていく
完全に留めることなどできはしない。それでも、俺の体重分だけ遅く出来るなら十分だ
奴の動きが俺によってほんの少し鈍くなったことで、ゴーレムの手が届くよりもほんの数刻早く、魔法使いの詠唱が完了する
出現した矢の数は、今度は四本。空中でゆっくりと具現化した炎の矢は、くるりと空中で一回転すると、ゴーレムへ矛先を向ける。
魔法使いが俺に叫ぶ。それと同時に、俺が一歩後ろへステップする。
それと同時、鋭い音を立てて四つの赤い線が中空を奔り、 ゴーレムの右腕へと集約した。

四つの小さな爆発が立て続けにゴーレムの右腕を襲った
ゴーレムがまるで悲鳴をあげるように、瞳の輝きを曇らせる
小さな爆発はゴーレムの[対魔力]を貫き、右腕を半分以上も欠損させていた
なんという威力だろうか
通常、[炎の矢]は炎属性の魔法の中でも最も基礎的であり、そして最も威力の低い攻撃魔法だ
[炎魔法]技能自体が他の魔法系統と比べ威力が高く攻撃的な魔法が多いとはいえ、普通は[対魔力]持ちのゴーレムの腕を吹き飛ばす程の威力はない
それを行えたのは魔法使いの平均値を遥かに超えた魔力量と、卓越した魔力コントロールが為せる技だろう
普段こそそうは見えないが、魔法使いは天才なのだ
数いる冒険者の中から、勇者のパーティに選ばれ、行動をともにする程度には

凡人と天才との決定的な差に僅かに心を燻られながらも、俺は必死にゴーレムを足止めする
魔法を発動した後こそが、最も危険なタイミング
高密度のマナを出力した魔法使いは、おそらく相当な気怠さが身体に押し寄せているのだろう、動きが鈍くなっている
これこそが魔法を扱う者の最大の弱点。マナを急激に失うと、身体に強烈な気怠さと眠気が発生するのだ
これが限度量を超え、体内の魔力が完全に尽き果てると、以前の魔法使いのように気を失ってしまう
そこまでの消耗は無いようだが、彼女もまた大きなマナの消費に、身体が驚いているのだ
そして大規模なマナを消耗したということは、周囲にかすかなマナの残り香があるということ
ゴーレムの目が大きく瞬く。左腕を伸ばし、マナのある場所――魔法使いの身体を掴み取ろうとする
必死に押し返す。だが、その勢いは止まらない
開かれた掌が、魔法使いの眼前まで迫る
魔法使いがきゅっと目を閉じ、なぜか俺の名を呼ぶ、

その時

静かに、三節の詠唱が囁かれた
そして僧侶の目の前に現れたのは

巨大な、ステータスウインドウ

この相撲力・・・戦士というよりはパラディンだったか・・・

Lv2光魔法、[明ける知識]
詠唱すると対象物の情報を数値化(冒険者の間ではこれをステータスを呼ぶ)し、中空に光の文字として可視化させる
数値化した情報は冒険者の強弱を測るのに用いられる他、技能を成長させる際にもこの魔法を必要とする
言わずもがな、冒険者にとっては必須級の技能だ
故にどんな冒険者もパーティには必ず[光魔法]技能持ちを連れて行くし、或いは自身のステータスを識ることのできるアーティファクトを持ち出している

そしてこの[明ける知識]は、世界で唯一の「マナをマナのまま保持できる魔法」なのだ
通常マナというのは、ある特定の現象や物体に変質させる必要がある
それはマナ自体に長時間空間に維持される離散する性質があるからに他ならない
変質させなければ、現象を起こすまでもなく、体外に出力されたマナはそのまま霧散し消失してしまう

だが[明ける知識]という魔法は、マナをマナのまま中空に保持する
[明ける知識]によってマナが変質しているのは、情報そのものである。特定の人物の情報に変質することが、[明ける知識]の本質といっていい
しかし当然のことだが、知識は物体でもなければ、現象でもない。可視することも具体化することもできない、極めて抽象的な概念だ
"変質する"ことが性質であるはずのマナが、"変質できない"。
その矛盾を解消するために、マナはマナ自身が可視化して中空に留まることによって、間接的に情報へと変質しているのだ


……と、ここまで長々と書き連ねてきたが、正直俺にはこの理屈は半分以上理解できてない
ここまで書いたのも魔法使いと僧侶の受け売りを、自己流に解釈して書いたものだ
何言ってるのかさっぱりだと思うが、俺にもさっぱりだ。すまんな

兎に角、僧侶が詠唱した[明ける知識]によって、僧侶自身のステータスが中空に出現する
[明ける知識]はその詠唱の文句と込める魔力の大小によって、表示されるステータスの詳細が変わるらしい
簡易的な詠唱であればその人間の技能のみが表示されるし、
より複雑な詠唱と多量の魔力を用いれば、その人間が覚えている魔法の一覧を出したり、所持している道具を表記させることもできる

僧侶の目の前に現れていたのは、俺がこれまで見た中で、最も大きなステータスウインドウだった
いつも俺たちが出現させているものの、十倍はあるだろう
巨大なウインドウには性別や年齢、技能、持ち物
生年月日に血液型、身長や体重スリーサイズ、
そして彼女の14年の経歴が、長々と箇条書きされていた


適性:僧侶
生誕:魔王歴6代203年12月24日09:20:31.42
年齢:14 (魔王歴7代001年03月19日11:13:22.01時点)
性別:女
血液:A型
身体:146.2cm 37.9kg 73(A)-52-76
練度:LV5 (Exp 230516/412210)
技能:[光魔法Lv3][薬師Lv1][罠師Lv1]
装備:[鋼の槌][修道服+1]
魔法:[Lv1:癒やしの滴][Lv2:明ける知識][Lv3:祓の水]
持物:[聖典(下級)],[ヒーリングポーション]*2,[うさぎのぬいぐるみ],[ロープ(4m)-1],[寝具]
経歴:
6:203/12/24:父(神父)、母(教徒)、姉(教徒)の元に誕生
6:210/04/02:帝都第一神徒学校 入学
6:212/07/11:[闇魔法Lv1]習得
6:212/07/12:父(神父)、姉(教徒)が身焼事故にて死亡
6:212/07/12:潜在技能[記憶喪失Lv2][失語症Lv1]発現
6:212/07/12:[記憶喪失Lv2]に伴い、習得済みの技能の内――


ここまでを一瞬だけ読んで、すぐさま俺は目を離した
それは俺たちを助けるために、きっと出したくないものを無理に出したもので
それは彼女にとって、見られたくないものだろうから

彼女が出現させた光の羅列は、暗闇の中で煌煌と光り輝いていた
マナを感知するのが苦手な俺が感じ取れるほど、そこには多量のマナが費やされていた
それを作り出した彼女の顔には、色濃い疲労が浮き出ている

そして、まるでその光に吸い寄せられるが如く、ゴーレムが光の方を振り向いた
魔法使いに迫る手が、その動きを留める
その光の煌きが、どこか訝しげにウインドウを見つめている
彼女の半生を描いたステータスを

そう、ゴーレムの基本性質
ゴーレムはより多くのマナに反応し、それに近づく性質がある
それ故多くのマナを消費する魔法使いの方へと近づいていくのだ
通常、マナは変質したあとはマナとして扱われないため、高純度のマナを何かに変質させても、その瞬間にマナでなくなったものをゴーレムは追いかけない
だがこの魔法なら。[明ける知識]に限っては
マナそのものが保持されるそれに限っては、ゴーレムはそれを人間だと誤認し、そのマナが大きければ追いかけるはずなのである

ゴーレムがゆっくりと旋回し、僧侶の方へと近づいていく
正確にはその手元に出現したステータスウインドウへと
最早こちらには目もくれない。先程まで追いかけていた魔法使いなど、まるで眼中にないようだった
そして、ゴーレムが無防備な背中をこちらに向ける

呆けていた時間は一瞬だった
魔法使いが、俺の折れた剣に魔法をかける
計七節の詠唱が発生させるのは、Lv4の炎魔法[赤き刃]
刀身がまるで赤熱するように輝き出し、その灯りは陽炎のように伸びていって、マナで形作られた揺らめく刃へと変幻する
俺の手に握られていたのは、最早折れた剣ではなかった。それは陽炎を映し出す、一本の長剣であった
手元で一回転させる。以前よりは遥かに軽い。だが、石斧よりは遥かな重みが、俺の右手にしっかりと応えてくれる
魔法使いに礼を言ってから、ゴーレムへと走り出す

ゴーレムはゆっくりと僧侶に近づいていた。僧侶はウインドウを出現させたまま、微塵たりとも動かない
ステータスウインドウを出現させる唯一の弱点。それは移動すると、ウインドウが閉じてしまうこと
故に一歩も動かないまま、僧侶は迫りくる巨体を待ち続けている
計画では限界まで近づいたらウインドウを解除する手はずなのだが、彼女にそれを行う意思は見受けられない
そこにはどこか、痛々しいほどの自己犠牲が見え隠れしていた

未だに歩き続けるその背中に、緋色の刀身を振りかぶる
左の肩口に刃が埋もれ、5cm以上の傷をつける
そこで刃が止まる。進まない
焦りが募る。ここで奴を止めないと、僧侶が、

そう思った時、不意に刀身の輝きが強まり、周囲を明るく照らし出す
驚いて背後に顔を向ける。魔法使いが苦しそうに顔を歪めながら、こちらに手を向けて詠唱を続けている
[赤き刃]の追加詠唱。それに伴って刃が太く、大きくなる
刀身を形作る緋色はやがて剣の鍔を超え、俺の手を優しく包み込む
その暖かな温もりに、不思議と俺の心も落ち着いていく

恐れはなく、ただ確信のままに、刃を深く落としていく
ゆっくりとゴーレムの身体に、緋色の傷跡が刻まれていく
腕の筋肉は燃えるように熱く、血管は実力以上の力を出すことで千切れそうになっている
だが痛みすらも彼方に追いやり、刃を落とす

そして

俺の刃が鉄の身体を突き抜け
一瞬の間を置いて、ゴーレムの身体が二つに分断された

分断されたゴーレムはもう動き出す気配が無かった
まあそれも当然で、半身が切り落とされた途端、ゴーレムの身体からクリスタルが抜け落ちたからな
因みに抜け落ちたクリスタルは魔法使いが回収していた。何でも、魔法の触媒としてかなり優秀な素材らしい

ここからは第二層に降りてからの話になるんだけど
今日はここまで。続きは明日話すよ

>>235
[1F-ゴブリンの本拠地]に行くことは俺も考えたんだが
危険性が高いのと、そもそも行くまでに資源が保つのかって問題で今回は敬遠した
もし行ってたら、現状に対する回答もあったんだろうか

>>238
まあ、俺は魔法も使えねえし、大した技能適性も無かったからな
覚えられることは頭の片端から突っ込んで、なんとか冒険の役に立てるようにしてたんだ
それでもアーティファクトの細かい能力まではわからないけどな

[ジャイアントワーム]はマナを貯め込む性質があるし、誘い込みたくはあったんだが
基本的にゴーレムってのは決まった活動範囲を超えて生き物を追いかけたりはしないもんだからなあ
おそらくモンスターの撃退用と、あと同じ人間への威嚇・殺害用に置いてたんじゃないかな
ここの[1F-採掘地域]も、今はそうでも無いが、昔はかなり採掘が盛んだったからな
独占してたギルドが他に取られるのを防ぐために色々としていても、何もおかしくはないぞ

>>239
結構巷ではゴーレムは便利なサーバントみたいに見られるが
基本的に生き物の区別をしたりはできないものだからな
だからこそ合言葉を共有したり、特定のマナの動きで行動を制御するための技術がある
とはいえ、迷惑ってのは全面同意だ

>>240
ロープを絡ませるのは一つの手だったが、もしロープ側が耐えきれなかった時の取り返しがつかないからな
今回はより確実で的確な手段を僧侶が考えてくれたので、そっちを使った
とはいえ、当初は僧侶と魔法使いでスイッチして攻撃を受けないようにする予定だったんだが……
僧侶の行動は、こういう時にイマイチ判らない

>>241
当時は街に戻りたいって言ってた
まあ詳しく説明してないから、当然といえば当然か

あああと、俺の技能をどうするか
もし意見があったら是非教えてくれ
こういうの、悩みきりでいつも決めかねるんだよな

死霊術師のスキルがおすすめ、実質殺した相手が仲間になるゾ

剣技か自然治癒上げようぜ

現状のパーティーで物理アタッカーは戦士だけなんだから質を上げておきたい

そこら辺のものを引っ掴んでとっさに盾に使うスキルはどう?盾に使った後は相手に放り投げるとか
あとは毒があったり、不味かったりするものを食えるレベルにできる調理スキルとか、毒は取った後武器に使えばいいし

乙!今日は対ゴーレム戦で三人とも消耗してるだろうからゆっくり休めるところが見つかることを祈ってる

技能についてだけど、今日みたいな戦闘が不可避な状況がこの先ある事を考えた時に一番無駄にならないのはやっぱ自然回復かな
今回の戦闘で魔法での援護や補助を受ければ結構な攻撃翌力が出せるって分かったし
ちゃんとした武器が手に入るまでは戦闘するにも逃げるにも時間稼ぎの壁役としての役割が主だろうし
戦士の生存力をあげとくのがパーティー全体の生存力を上げるのに繋がるかと思う

>>271 >>273
戦士の技能欄>>244にある/の右側が戦士の取れる技能候補なんでないかい?

ところで、もし間違ってるなら全力で否定してくれて構わないんだが

今までは単純に防御値に換算できないから、或いは情報の必要性や重要度の低さ、スペースの問題から省かれてるだけだと思っていた、ある情報
それが僧侶ちゃんの生年月日からスリーサイズ、半生すらも記述するレベルの詳細なステータス表示にさえ記述されていない事から導き出される一つの答え

即ち、僧侶ちゃん パンツ はいて ない?

>>276
>>275の後だから僧侶のこと言ってるのか>>275を煽ってるのか解んねぇなww

スキルは感知の使用感による、目に見えて敵との遭遇率が下げれてるなら上げたいし、そうじゃないなら別のに回したい
自然回復がどうなるかだよなぁ、状態異常回復速度上昇とかじゃないの?その辺他のメンバーにもどういうスキルなのか聞いてみたい
対魔力は上げなくても大丈夫そう、というか盾スキルが壊滅的な時点でメイン盾にはなれないから闇討ち要員に徹するしかないし
優先順位としては感知(使用感あり)>自然回復(HP回復の確証あり)>剣技>感知>自然回復>かばう>対魔力あたりか

みんなおはよう、今日もいい朝だろうか
俺たちはもう朝日を忘れて一週間経つ

マナのリソースが限られてるから、時間が経てば回復出来る自然治癒が第一候補か
剣技あげて敵を一撃で倒せるようになれば反撃貰わなくなるけど、敵が複数いたらそうもいかないからなあ

>>252
既に記述した通りだが、ゴーレムはマナに向かって進む性質があるのが弱点らしい弱点だろうか
とはいえステータスウインドウを囮にするなんてのは想定外過ぎたけどな
あとこれは後から知ったことなんだが、[スチールゴーレム]の保有属性[鉄]は[炎]属性の攻撃に弱いらしい
昨日の攻撃の切断面を見ると、ゴーレムの身体は力で両断された訳ではなく、熱に寄って溶切されたように見える

>>257
まあ所詮俺の力じゃ、この巨体を押し戻すことはできなかったがな
こういう時トコトン俺の技能は中途半端だと思う
他の二人が有力な技能を持っていて、それを使いこなす頭があるから余計にな

>>271 >>273
そう言えば言っていなかったが、普通技能ってのはステータスウインドウに表示されてるものから選び取るものなんだ
俺の場合は

技能:[剣技Lv3][かばうLv1][感知Lv1][+]/+[剣技Lv4][かばうLv2][感知Lv2][自然治癒Lv1][対魔力Lv1]

こういった表記になっているが、この場合[剣技Lv4][かばうLv2][感知Lv2][自然治癒Lv1][対魔力Lv1]の何れかの習得になる
冒険者の間じゃ当たり前の話なんだが、確かに冒険者以外じゃあんまり知られない話かもな

>>272 >>274 >>279
[自然治癒]能力か
因みにこれは傷を受けた時、それの回復速度が早まる技能だな
毒や病気なんかの状態異常の自然回復力は、[免疫]技能によって回復力が高まるぞ
[自然治癒]取得が良いだろうか?

>>275
どうだろう……ステータスウインドウが表示する情報は明らかに偏りがあって、その辺どうなってるかは俺にもわからないんだ
でもそういえば、確かに僧侶がショーツの類を身に着けてるとこを見たこと無いが
いや、まさかね

>>277
[感知]はLv1時点で、壁越しに[ジャイアントクイーン]の存在を感知できたりはした
小型モンスターまでは感知しきれない感じだな
あと[スチールゴーレム]の存在も感知できなかったので、生命を持たないものには反応しないのかもしれない
勿論技能レベルによってこの辺りは強化されるだろうが

そろそろ剣技あげて攻撃技増やそうぜ。
いつまでも魔法使いの魔法に頼っているのも、魔翌力が切れたら使えないから危なくなるし、
なにより男としては自分の腕一本で女を守るのに憧れるね。

>>281
そっか、情報に偏りが……ってちょっと待て?ショーツの類を身につけてるところを見た事が……?
いやまぁ、同じパーティーにいれば直ぐそばで着替えたりするような機会もあるかもしれないけども
それにしたってショーツを身につけてるところなんて普通だったら……いや、それってつまり……ふむ


やっぱり二層での行動方針が重要になってくるよなぁ、特に気になってるのが【盗賊のねぐら】
盗賊ギルドがどんなものか知らんからアレだけど、協力を取り付けられるなら色んな問題が何とかなりそうなんだよなぁ
→武器、食料、情報、人材

戦闘のたびに体力が一定値回復なら雑魚戦繰り返すだけでどんどん回復してくから強いんだけど
一日経たないとダメなら確かに弱いかな。でも剣がないのに剣技を上げても効果はどのくらいなのか

読み飛ばしてたらすまんがかばう技能の上昇に意味はあるのか?
物理法則越えて無理矢理かばえたり被ダメ軽減効果とかあんの?

まあどちらにせよ今は剣技か治癒かな
治癒の効果速度はもう少し具体的に知りたいが

戦士の鎧は二層で壊されたのか?
ならば、状況がわからないとアドバイス出来ないよ

ひたすら逃げるとか撒くのは無理だろ。感知上げてても後衛二人がいるならある程度は戦わんとだし進むために戦わなきゃいけない状況も出くわすと思う
あと盾がない以上壁役やるにも剣技は必要じゃね。スキルは長所作れればレベルでは格上相手でも腐るってことはないだろうし

途切れ途切れで済まない
今日の朝も色々とあったんだが、これも後回しにしようか
とりあえず報告として、俺が[毒]にやられた
今は[毒消草]で治療してるんだが、あと六時間は治療に必要だな……
不甲斐ない限りだ。どうも役に立ててない感じがして、焦りを覚える

技能について色々と考えてくれてありがとう
今の所、[剣技Lv4]か[自然治癒Lv1]かで意見が別れてる感じだろうか

一応補足しておくと
[剣技]技能を上げることで上昇するのは、単純な刃物による攻撃力だ
新しい技が使えたりする訳ではないが、基本的に下層に降れば降る程[鉄の身体][硬質]を始めとする対物理技能を持つモンスターが増えるからな
そういった敵にどれだけダメージを与えられるかが[剣技]技能の数値だと考えてくれれば良い

対して[自然治癒]技能の回復は、基本的には戦闘中か否かに限らず常時適用される
ただ戦闘中は回復力が大幅に低下するので、Lv1程度なら無いのと同じようなもんだな
戦闘後の治療による魔力消費が減らせる程度と考えてくれたら良い
ただもしLv4程度まで成長させれば、戦闘中でも目に見えて傷が塞がり始めたりするぞ

とりあえず今段階でのパーティのステータスを確認していこう
昨日と殆ど変わっていないので、昨日のレスを見た人は見なくても大丈夫だ

俺(戦士)
適性:戦士
年齢:21
性別:男
練度:LV6
技能:[剣技Lv3][かばうLv1][感知Lv1][+]/+[剣技Lv4][かばうLv2][感知Lv2][自然治癒Lv1][対魔力Lv1]
装備:[ゴブリンの石斧][鋼のつるぎ(壊)-1][古ぼけたツルハシ-1][鉄の鎧(壊)-1]
持物:[ヒーリングポーション]*2,[安物の砥石]*1,[松明]*2,[安物のナイフ]*2,[旧式カンテラ]
持物:[瑞々しい赤彼岸の葉(36日)]*12,[寝具],[調理油],[調味料],[食器と携帯鍋]

魔法使い
適性:魔法使い
年齢:17
性別:女
練度:LV5
技能:[炎魔法Lv4][詠唱Lv1]
装備:[樫の杖][魔女のマント][とんがり帽子]
魔法:[Lv1:灯る指先][Lv2:炎の矢][Lv3:夕焼けを熾す][Lv4:赤き刃]
持物:[魔法の触媒(火/下級)]*7,[ヒーリングポーション]*2,[ブランド物のナイフ],[創成のクリスタル(青)],[寝具]

僧侶
適性:僧侶
年齢:14
性別:女
練度:LV5
技能:[光魔法Lv3][薬師Lv1][罠師Lv1]
装備:[鋼の槌][修道服+1]
魔法:[Lv1:癒やしの滴][Lv2:明ける知識][Lv3:祓の水]
持物:[聖典(下級)],[ヒーリングポーション]*2,[瑞々しい毒消草(13日)]*8,[うさぎのぬいぐるみ],[ロープ(4m)-1],[寝具]

さて、じゃあ昨日の段階まで話を戻そう
丁度、ゴーレムを倒してからだったな

ゴーレムを倒した俺達は、[明ける知識]で各々のステータスを確認した後、[1F-採掘地域]の階段をゆっくりと降りていった
各々の顔には疲労と緊張、そして僅かな期待が見え隠れしている
まあ俺たち駆け出しの冒険者にとって、二層以下の迷宮ってのは未知そのものだ
一層までなら何だかんだそれなりに行くことがあるからな
それだけに二層以下ってのは一層とは全く違う重みがあって、それは恐くもあり、そして楽しくもある
こんな状況で何を言ってるんだと思うかも知れないが、この未知への憧れがなかったら、結局冒険者なんて命知らずな仕事を好き好んでやってないんだよな

二層が見えてくると、同時に横風が俺たちに吹き付ける
そこは花畑だった
洞窟自体は筒状になっている。上が狭く、下が広く。円錐状、って言えば伝わるかな
俺たちは傾斜面になっている壁の一角へと出たようだった

まず驚くべきなのは、立っているのが土の上ではないこと
生い茂る草と花の下にあるのは、巨大な樹なのだ
壁から生えた横幅4mはあるであろう枝が幾重にも重なって、だだっ広い円錐状の空間に足場を作っている
枝で出来た道は俺たちが出た道を含め、八つの道に分岐していた
まずは東西南北。これら四つの道は、上方向に枝が伸びている。おそらくこれらの道は全て、別の一層に繋がってるんじゃないかな
北側に続いているのが俺たちが出てきた、[1F-採掘地域]に繋がる道
西側に続いているのは石煉瓦で舗装された比較的綺麗な道。これも一層のどこかに繋がっている筈だ
東側に続いているのは、土で出来た洞窟の道。これも一層に続いているはず

そこまで見て、俺たちは咄嗟に道を引き返した
なぜなら南側に続く道に、ある存在を見たからだ
その道だけは明確に、知性あるものが住んでいる証があった。なぜなら木の扉があったのだ
一層のどこかへ繋がる筈の入り口に扉があり、そしてその手前に、二体の人影が見えた
人型モンスター、[ゴブリン(Lv5)]。その姿を見るのも久しい気がする

ゴブリン達は俺たちに気づいた様子もなく、右手に持った石斧で肩を叩きながら、魔物語でなにか話しているように見える
とはいえ、これだけ広い部屋では流石に何を話しているのかは判らない
魔法使いにも聞いてみたが、やっぱり声は聞き取れないらしい

俺たちはゴブリンに気づかれないよう壁に隠れながら、再び周囲を探索する
残りの四つの道はそれぞれ下り道になっている
北西の道と南東の道は、入り口に鉄で出来た扉が為されている
扉には遠目からでも鍵穴が確認できるな
北東の道は、土で覆われている
土の周りには多種多様な植物が張り巡らされていて、その奥は見えない
最後に南西の道だが、なんとこの道だけ、他の道とは完全に分断が為されている
おそらくは元々あった枝の道を、火か何かで焼いたんだろう。道の分断面には焦げ跡が見える
その所為でもし南西の対岸へ行くのならば、数十メートル以上の絶壁を飛び越えなきゃいけなくなってる

……と
ここまでを観察してた辺りで、北西の扉から何かの音がする
がちゃん、と何かを開ける音。次いで鉄が掠れる耳障りな音
北西の扉が開かれたんだ
掠れた音を立てて開いていく扉の奥に居たのは、一つの人影だった

長く艷やかな黒髪を持つ、美しい女の上半身
豊満な胸元を、ビキニにも似た布で心もとなく隠している
露出された皮膚は白く、その上に黒い文様が所狭しと刻まれている
形の良い口元に浮かんでいるのは、怪しげな笑み
正直、一瞬目を奪われた。それくらい美しい姿だったんだ

ただ一方で、下半身は明らかに人間であることを否定していた
蛇なのだ。腰から下が、黒く長い蛇の下半身になっている
漆黒の鱗が艷やかに光を反射している。尻尾は地面を這いずり、ゆっくりと彼女の身体を動かしていく

二層の代表的な人型モンスター、ラミアだ
モンスターレベルは11
魔物図鑑に記述されている習得技能は[炎魔法Lv5][魅了Lv2][変身Lv1][吸血Lv1]。後の2枠は個体により変わるという

モンスターレベルを見て分かる通り、今の俺達にとっては途方も無い強敵だ
発見数の少ない二層の希少なモンスターと図鑑には表記されていたが……
まさかこんなに早く遭遇するとは

息を殺して、敵が通り過ぎるのを待つ
手を、石斧の柄に。横を見れば魔法使いは杖を、僧侶は鉄槌をぎゅっと握りしめている
ラミアが身体を揺らめかせて、北西の扉から離れていく
部屋の中央へ。そのままもしこっちに来れば、反撃の間もなく首を落とす
ゴーレムとの戦闘で休みを求める身体に鞭を打って、息を止め、意識を集中させる
ラミアがどこへ向かうのか。それを見極め、迎撃するために

しかしラミアは、俺達が居る道へは近づいてこなかった
枝の道をたどって彼女が向かうのは、南側の道
その先には木で出来た扉と、2匹のゴブリンが居る

ラミアがゴブリンの方へ近づくと、ゴブリン達がだらしなく顔を緩める
まあ、あれだけの美人が近づいてきたらモンスターだって嬉しいよな
ラミアが微笑を浮かべたまま、ゴブリン達になにか話しかける。会話はやはり聞こえない
ゴブリンたちが大げさにラミアの発現に頷いた後、木の扉を開いて、ラミアを奥へと誘導する
まるで姫をエスコートするみたいにな
ラミアが彼らに連れられて、南側の向こうへ消えていく

そうして彼らの姿が完全に見えなくなって
俺たちはやっと、溜めていた息を吐き出した

おっと、僧侶が戻ってくる
続きは後でな

毒状態!? しかもラミアと遭遇しかけたとか……二層に入って早々かなりギリギリじゃないか
焼き落とされてた通路とか鍵付きの扉とか色々と気になる事ばかりだけど、今は焦らず体を治すのに専念するんだぞ

しかし昨晩のステータスでも地味に増えてた毒消草だけど、これは二層に入って採取したって事になるのか?
だとしたら今いるところは【血溜まりの花畑】だったりするのかな?

さて、続きだ

ラミアが去ってから、まだ暫く俺たちは壁の裏側でじっとしていた
あのラミアで出てくるのが終わりとは限らなかったからな
5分経ち、10分経ち、ようやく本当に一息ついてから、俺達はそれでも小声で作戦会議をする

とはいっても、この[中央区]から行くことの出来る範囲は本当に少ない
八つの分岐道のうち、東西南北の四つはすべて一層に繋がってる
しかも一つは俺たちが入ってきた道だし、もう一つにはゴブリンとラミアが居る
今から突撃するにはあまりに迂闊だ

となれば、残りの道は四つ
うち二つは扉に鍵がかかっているし、そもそも人工物ということから向こう側にはモンスターか人が居る
片方はラミアが出てきた事からもモンスターの根城の可能性が高い
そして残りの二つのうち、片方の扉は道が焼き落とされてて入れない
壁越しに吹き抜けの穴を見れば、通路の穴は底が見えず、冷たい風が吹き荒ぶばかりだ
ここを飛び降りるなんて自殺行為だろう

ともすれば、行ける場所は一つしか無い
最後に残った下り道
植物が生えた細い通路へと、俺達は小走りで進んでいく

植物に囲まれた小さな洞窟を進むたび、若い葉が掻き分けられ、乾いた音を立てる
先程ラミアに会っていたからか、過敏になった神経がそれを過剰に聞き分ける
背中に冷や汗
奴らは全く異なる扉に入っていったと知っていても、この道を辿るのは勇気がいる

そんな思いに急かれながら、それでも前方に気をつけてゆっくりと進んでいく
やがて、通路に甘い香りが漂い始める
シュガーやクリームの、人工的な香りじゃない。花が放つ、昆虫たちを誘う罠の香り
同時に、周囲の草の様子が変わり始める。雑多とした緑から、白い小さな花をつけた草へ

やがて視界が開け、目の前に広大な丘が現れる
まず驚いたのは、"明るい"ということ
言わずもがな、ここは地下深くの迷宮ダンジョン
灯りはなく、それ故に魔法使いの[灯る指先]によって与えられた光こそが、俺たちの見える全てだった

しかしそこは、それらとは関係なく"明るい"のだ
洞窟を抜けた先にあったのは、小高い丘だった。俺たちは丘の上に立っている
丘の上にあるのは、白い小さな花の群れ。俺は知らなかったが、僧侶がこの花の名を知っていた
キンコウソウ目の多年草、イカリシア。別名[毒消草]
草の名前は知らなかったが、別名は冒険者の間で良く知られている
キンコウソウ――通称[禁香草]と呼ばれる毒花の一種で、他の[禁香草]と異なり、煎じることで薬用として用いることが出来る
そして何より、この[毒消草]は"他の繁栄している植物に寄生して"成長するのだ

丘の向こうを見る
そこには海があった
波打つ花びら
紅い海
まるで血の海のよう
強烈な甘い香りが漂ってくる

[赤彼岸]。[腐人華]。[幽霊散香]。[沙華散香]。[葉知らず華知らず]。様々な異名を持つ毒草
そして、異名の一つに[殺し白ず]
華が咲く前の草を食むことで、本人が死んだと感じる間もなく死に絶える、致死性の猛毒
毒に蝕まれたものが毒性によって鬱血し肌を白くすることから名付けられた異称
シシャカクシ目リコリシア科の多年草、リコリシア
[赤彼岸]の群草が、丘の下を埋め尽くしていた

それを見た時、俺は本当に眼前の光景を赤い海だと誤認したんだ
これを見ている皆も知っているだろうが、[赤彼岸]は希少植物
しかも葉にこそ猛毒が充溢しているが、冬場に咲く花弁は薬効があり、酒類に混ぜることで非常に高級な味が出る
[エール]に[赤彼岸]の花蜜を混ぜることでミルクのようにまろやかな味と僅かな酸味を付け足す[レッドアイ]は
高級食品を用いた美味なる飲料として、上流階級の間で嗜まれてきた
俺も一度だけ呑んだことがある。20歳の誕生日に義理の親父が用意してくれたそれは、本当に人生で一番美味い飲み物だったと思っている

そんな希少な植物が、満開の花を咲かせて俺達の目の前に広がっていた
鼻に届いてくる甘い香りは、[赤彼岸]の花が発する独特のものだ

その時、俺の意識は半分以上酩酊していた
[赤彼岸]が発する甘い香りは、生物の頭を溶かし、花の奴隷にするための成分がある
だからこそ[赤彼岸]はその有用さの割に大量の栽培が出来ず、その香りが効果を及ぼす程の香りを嗅ぐ事も無かった
しかし、その時は違った
花に届く香りが、否が応でも俺の花を刺激し、脳を刺激し、記憶を刺激する
俺の脳髄に浮かんでいたのは、既に目の前の紅い花畑ではなかった
故郷の喧騒。宿屋の女将の笑い声。食堂の男どもの汗臭さ。鍛冶屋の親父の視線。父親が出してくれた、エールの味。もう戻らない日々
その全てが目の前に広がっていた

無意識に歩みを進めていた
そこに迷いはなかった
ただ俺は、意識の何処かで求めていたあの日常に手を伸ばしていた
もう戻らないと知りながら、子供のように求めていたあの日常を渇望していた
伸ばした手の先に、街の人々を、仲間を、そして両親を見た
その手を掴もうとする
最後に映ったのは、幼い頃の魔法使い
今とは似ても似つかない、しかしどこか面影のある微笑みが、俺に手を伸ばした

そこまでを幻視して、俺は両腕に強い引力を感じて、現実を取り戻した
後ろを振り向けば、右腕と左腕を、それぞれ僧侶と魔法使いが掴んでいる
そして俺のつま先のすぐ先には、崖の終着点が見えていた
乾いた音を立てて、崖の石が転がり落ちていく

やあおはよう
昨日はレスしながらいつの間にか眠ってしまっていたみたいだ
度重なる探索で、身体が僅かに重い……

さて、続きだ
既に一昨日の話になっているが


身を投げる寸前に意識を取り戻した俺は、一瞬の間を置いて、ようやく自分がした事を理解した
[赤彼岸]の郡草が放つ香りが、俺の脳に投身という命令を下していたこと
慄いて一歩引けば、ようやく崖の下を直視する
そこには山となった死体があった。人間のもの、ゴブリンのもの、オークのもの、ラミアのもの……
翌々見れば、死体はそこだけではなかった。崖の下に広がる美しい紅の海は、土の上に出来たものじゃない。死体の上に出来たものだった
俺はようやく、自分がどこに居るのかを理解する
第二層でも指折りの美しさを持つという迷宮区

[2F-血溜まりの花畑]

美しいと評判の割に、そこは二層でも屈指の危険地域だという
俺はそれを、危険なモンスターが存在しているからと勘違いしていた
そうではない
この花畑においては、モンスターすら只の餌に過ぎないのだ

恐ろしい考えが頭を過る
[赤彼岸]は普段、ここまでの郡草を作らない。地上では野原に稀に二・三本咲いている程度だ
だからこそ希少な植物として扱われてきた
であるならば
この[赤彼岸]は、本来はこの地下迷宮に生息していた固有種ではないか?
我々はその本当の恐ろしさを知らずに、この花を地上に持ち帰ってしまったのでないか
いや、寧ろ
"持ち帰らされた"のではないだろうか

僧侶が、ここに長時間留まるのは不味いと口にする
見れば残りの二人も、まるで酒が入っているかのごとく頬が紅潮し、目が虚ろに垂れ下がっている
先ほどの俺と違い、意識を完全に持っていかれているようではない
しかし長時間の滞在は、今度こそ俺たちを[赤彼岸]の餌に仕立て上げるだろう

俺は両手で頬を叩くと、二人の手を引いて別の道を探す
見れば幸運なことに、丘の上から小さな道が分岐して、別の空間に繋がっているようだった
若い草と白い花を掻き分けて、一刻も早くそこから離れるように移動する

暫く歩いていると、甘い香りは遥かに遠くなり、霞がかかった意識も現実に引き戻されていく
やや覚束ない足取りだった二人の焦点も定まっていき、魔法使いが頬を紅潮させて俺の手から離れる
遊んでそうな割には、こういうとこは初心だよな
僧侶は手を握られたまま無表情に歩いているが、俺が手を離して大丈夫か聞くと、無言で頷いて手を離した

草の通路を抜ければ、すぐに違う部屋が見えてくる
そこは小さな空間だった。再び暗くなった洞窟を、[灯る指先]で照らしてもらう
部屋の中央には湖が存在している。近づいてみれば、底は浅く、小魚がふよふよと浮かんでいる
手を入れてみると、驚くほど冷たい
まあ地下に出来ている湖だからな。冷たいのは当然なのだが

湖の周りには、ドーナツ状に花畑が広がっている
白い小さな花をつけたそれは、[毒消草]の花の群れだ
微かに甘い香りが漂っているが、それは先ほどの危険な甘さじゃない

女性二人組が、湖を見て甲高い声を上げる
珍しいことに魔法使いだけでなく、普段あまり大声を上げない僧侶も声を上げて喜んでいた
まあ無理もない。二人共肌は泥だらけだし、髪はぱさついて艶をなくしている
周囲をぐるっと見渡すが、どうにも危険が生物が居る様子はない
俺たちはここで、暫しの休息を迎えることにした

と、ここまでが一昨日の話だ
この後、俺たちは湖の水で身体を禊いだ後、それぞれにやるべきことをした

俺は花畑から本格的に入り乱れている[迷宮区]へと向かい、その日の食事を探す
かつて見た迷宮図によれば、[2F-血溜まりの花畑]は動物型モンスターや植物型モンスターが非常に多い地域だ
実際に探索してみれば、[迷宮区]の至る場所に背中に花を生やす豚が歩いている
[フロラルピグス(Lv8)]。[2F-血溜まりの迷宮]のメインモンスターの一体で、背中の花は擬態用に寄生させているらしい
レベルの割に大人しく、一刀で屠るのも楽だ。背中の花の侵食具合にもよるが、火を通せばかなりの可食部が期待できる

魔法使いは迷宮区の空いた小部屋で火を焚いて、捕れた魚や肉を燻製にしていく
まあ完全な密閉もできないし、簡易的なものだが
それでも食品として、暫く携帯できる程度には作ってもらうつもりだ

僧侶は[毒消草]や香辛料の採集
それから魔法使いと一緒に仮の拠点を整えてもらっている
モンスターの侵入を察知できるよう、縄と調理用具で簡単な鳴鈴を作ったりな

一昨日の食事は湖で取れた[オイルトラート(Lv4)]の香草詰め
トラートの腹を捌いて肝を抜き、代わりに[毒消草]と保存食を砕いたもの、胡椒粒を入れる
その後トラートの外側をもう一度[毒消草]の束で巻いて焼いたものだ
オイルトラートは火を通すことで油が抽出できるので、それは保存して置いておく

まあまともな食事そのものが本当に久しぶりなので、それはもう美味かった
空腹と貧しさは最高のスパイスだな
僧侶はいつも少食なくせにペロッと一尾食べきってたし、魔法使いは涙すら浮かべてた

身体も洗えたし、飯も食えたし
長時間の探索で消沈してたパーティのやる気が、一気に漲っていくのを感じた
まだやれる、それが俺たちの総意だ

今北産業 質問なんだが、深層にもギルドのポータルがあるならギルドの生き残りとかが避難+救援求めに来るとかないの?ジャイアントワームのところもそうだし。
既に誰かから聞かれてたらすまない。

さて、一日置いて
ここからは昨日の話だ
質問等は後で纏めて答えるぞ

それなりに満ち足りた食事と、綺麗で魚も多い水辺
前日までとは打って変わって幸福な眠りに身を任せていた俺たちは、僧侶が作った鳴鈴の音で目を覚ました

すぐに武器を持って、周囲を警戒する
見れば[迷宮区]の奥から、一つの人影が迫ってきている
その姿は豚を人に近づけ、直立させたものによく似ている
身体には[鉄の鎧]を着込み、右手に持っているのは[鉄の手斧+1]
所持技能は[繁殖Lv3][剣技Lv2][嗅覚Lv2][自然治癒Lv1][免疫Lv1]
二層の主要人型モンスター、[オーク(Lv9)]だ

オークは花をひくつかせて俺たちを見つけると、にたりと笑って、魔物語で何かを言っている
俺には聞き取れないが、魔法使いと僧侶を見て気持ち悪い笑みを浮かべた辺りで、大体何を言ってるのかは察した
様々な逸話にもある通り、オークっていうのはそういう事を非常に好むモンスターだからな

オークがこちらに向かって突進してくる。数は一体
その眼にあるのはぎとぎととした欲望だった
思わず魔法使いが身を引いている。まあ、気持ちはわかるよ

そして、僧侶が手に持っていた紐を勢いよく引く
見えないように花畑に隠されていたロープが、勢いを持って結ばれる
その収束点は奴の右脚だ
太い足にロープが絡み合って、オークの巨体を支えきれなくなる

奴が花畑に盛大に顔を突っ込むと同時、俺の石斧が奴の首に振り下ろされる
まあぶっ倒れて動けない相手の首なんて、木偶よりも楽だ
両断、
風切り音とともに勢いよく首が飛んで、返り血が俺の鎧を濡らした

オークの首が飛んでいくのを確認してから、俺たちは今後の行動を相談した
既に説明したが、この二層には[2F-豚の山岳]って区域がある。まあオーク種の拠点だな
オークがここに来たって事は、[2F-豚の山岳]も近くに隣接している可能性が高い

今は数が少なかったから良いが、オークってのは元々かなり個体数が多い種族だ
もし集団で見つかれば、一溜まりもなくやられちまう
この拠点に長居するのは、あまり得策では無いかも知れない

よし、まともな武器ゲットだ
・・・その手斧を泉に投げ込んだら金と銀の斧になったりしないかな

やっぱりオークはそういう生き物なのね
同族メスに欲情しろよ、ガリ専かよ

安全確保出来るならレベリングやりたかったんだがなー
正直どっかでレベリングしないと結局詰みそうなんだが

あと打算込みなんだろうけど手を引いて止めてくれたことは嬉しいな

というか巨大ワームのポータルは無視していいんかな? 後々面倒なことになりそうなんだけど

さて、続きを話そう

オークの首を飛ばした俺達は、拠点を出る準備をしながら周辺を探索した
具体的には[迷宮区]から下層への入り口、或いは別の区域への入り口を見つけようとしたんだな
[2F-血溜まりの花畑]の[迷宮区]は洞窟型で、不規則に分岐し道も暗い。その分だけ潜伏しながらの移動には丁度いい塩梅だ
ただこの[迷宮区]特有の特徴として、足元に草花が生い茂り、移動音を発生させるってことがある
移動時の靴音を減少させる[忍び足]技能が無いと、耳の良い相手には音を聞き分けられる可能性がある
まあそれは、こっち側も同じことが言えるんだが

兎も角俺たちは灯りを消し、ハイディングしながら他ルートを探した
移動している時に稀に大きな音が鳴り、背筋に冷たい汗が流れる

この[迷宮区]は高低差のある道が少ない分、横の広がりが大きい
迷宮には幾つかの小部屋が存在しており、それぞれに草花が生えている

[迷宮区]を探索して40分程が経過したろうか
不意に暗闇の中に灯りが現れ、俺達は反射的に身体を隠す
それは鉄でできた扉だった。扉の奥からは灯りが漏れ、肥溜めのような異臭が漂っている
音を立てずに近づいて、扉に耳を当てる
扉の奥からはオーク特有の、鼻に詰まったような聞き苦しい声が、何重にも重なって聞こえてくる
この扉の奥には複数体のオークが存在しているのは間違いない

そしてオーク達の笑い声の奥に、一瞬、甲高く何かの声を聞いた気がする
この唐突な直感は、[察知]技能によるものだろうか
声の正体は判らない。ただその声らしきものが聞こえた時、オーク達の笑い声が一瞬留まる
そしてまた魔物語による対話。俺には聞き取れない。魔法使いにも聞いてもらったが、詳しく判別できないという
もしこれを正確に聞き取るなら、[聞耳]の技能が必要だろうか

ともかく、ここに留まっているのは危うい
俺たちは迅速にその場所から離れる
扉が完全に見えなくなった頃、後方で扉が開く音がした
危ない所だ

引き続き迷宮を探索する
気力も充溢しているので、行けるところまで行きたい所だ
またダラダラしてたら、モンスターに見つかる可能性もあるからな

草で覆われた、道とも言えない道を進んでいく
やがて通路はどんどんと狭くなり、寝そべって匍匐で進まないといけなくなってくる
ここまでか? とは思ったが、こんな道ならばオーク達も通れはしまい
より安全を求めるために、俺達は狭い通路を少しずつ進んでいくことにした
一列になり、唯一光源を持てる魔法使いに先頭になってもらう
僧侶は真ん中、俺は殿だ

道は変わらず草で覆われ、視界を遮っている
更に土は湿り気を帯び、泥が服にこびり付く
草を掻き分けると小さな虫が現れて、口や眼に入ってこようとする
正直、この道を選んだことを少し後悔したね

しかしそんな道も、いずれ終わりを迎える
現れたのは、なんと一面の白色だった
一瞬、ただ光の中にいるのかと勘違いするほど
[赤彼岸]に似た形をした花が、床を、壁を、天井を埋め尽くしている
それを見た瞬間、思わず口元を塞ぐ。あの甘い香りを警戒してのことだ

けれども、一向に幻惑の香りが漂ってくることはない
恐る恐る手を放すが、意識が飛ばされた様子もない
残りの二人も同じように見える

安全性を確認した後、俺はじっくりとその花を観察した
花や茎の形は、[赤彼岸]によく似ている
葉はない。これもまた[赤彼岸]の特徴と一致する。赤彼岸は花を咲かせる寸前に、全ての葉を落としてしまうのだ
遠くから香りを嗅いでみる。特に匂いはしない
[赤彼岸]の亜種だろうか。花が白いということ以外、[赤彼岸]にそっくりだ
図鑑でも見たことのない植物
それが新種かどうかはわからないが、俺達は便宜的にそれを[白彼岸]と名付けた

[赤彼岸]が死体の上に咲くのに比べて、これらの花はまるでそういった様子はない
[白彼岸]が咲いているのは、一面の草原や草の上
天井まで咲き揃っていることを除けば、その咲き方は普遍的な植物と何も変わらない

そんな普遍性の中に、違和感を覚える
具体的な何かがあったわけではない
ただ直感的に、そこにある強大な存在を感知する

俺の左前方
僧侶が四つん這いになって、じっと白彼岸を観察している
[薬師]技能を持つ彼女にとっては、初めて見る植物が珍しいのだろう
その目線は、目の前の白い花畑ばかりに向いている

そんな彼女の、腹部付近の土
そこが少しだけ盛り上がった、気がする

見間違い、と理性が待ったをかける
しかしそれより早く、その存在を感知した身体が動き、僧侶を突き飛ばす
驚きと恐怖とを綯い交ぜにしたような表情、次いで俺の顔を見て抗議の色
それすらも意識することなく、鉄の手斧を振り抜く
盛り上がりが更に大きくなる、そこに斧を振り下ろす
中空に鉄の残滓が閃き、呼吸ひとつ分を置いて斧が土の中に潜っていく
手首に感じるのは、柔らかな土を掻き分けるものじゃない
繊維を突き破る、生々しい感触

斧の刃先と土の接触面から、紫色の液体が飛び散る
次いで土が盛り上がり、その奥に隠されていた巨体を顕にする

土を掻き分けて出てきたのは、巨大な茎だった
俺の身長の二倍はあろうかというほど伸びた茎が、触手のように蠢いている
茎には葉もついておらず、その根本は土に隠れて見えない
茎の先端には、二枚貝に重なった葉がある。重なる二枚の葉の間には無数のトゲが走り、その間からまるで涎のように粘液が流れ続けている
それは植物型モンスター[フライトラップ(Lv2)]によく似ていた

故に俺は最初、それを突然変異した巨大なフライトラップだと勘違いした
突き刺した鉄の手斧は、奴の捕食器たる葉に突き刺さったままだ。そこからは紫色の体液が、絶えず垂れ落ちている
奴が勢いよく地面から表れ出た所為で、斧を手放してしまったのだ

俺は石の斧を構え、その茎を分断しようとする
フライトラップはけして強いモンスターではない。例え突然変異していても、この三人なら余裕を持って勝てる筈だ

しかしその時、背後で悲鳴が聞こえた
振り返ると、同じ茎が他に三つ、地面から現れて蠢いている
フライトラップの群生、と瞬時に考える。現れた三つの茎もまた、同じように涎を垂れ流している
僧侶は足元から現れたそいつに、思わず腰を抜かしてしまっているようだった

そして、そいつは現れる
四つの茎の対角線の交わる点、即ち中心点に、もう一つ土が隆起する
五体目のフライトラップか
その予想に反して現れたのは、巨大な球根だった
球根の頂点には、生々しく滑っている眼球がくっついている
そして、球根の側面には四つの茎があった。それぞれは、今しがた出現した茎に繋がっている

そこまで見て、俺はようやく真実に気づいた
この四つの捕食器は、個別に存在するモンスターではない
一体の大型モンスターの、手足なのだ

巨大な一つ目が、ぐるりと俺を見つめた
瞼も何もない赤い虹彩が、まるで獲物を見定めるかのように

なんだこのモンスターは!

それだけが頭を過る
見たことのないモンスターだ。魔物図鑑には乗っていなかった。レベルはいくつだ、技能は。戦うべきか。いやしかし武器が
頭の中で幾つもの考えが通り過ぎていく
その一瞬の間をついて、四つの捕食器が一斉に俺に襲いかかった
鉄の斧はない。俺は再び石の斧を取り出すと、襲いかかった捕食機の一つを切り落とそうとする
しかしその右手を、別の捕食器が絡め取る

ただの植物型モンスターではない
通常、植物型のモンスターは決まったルーチンでしか動かない
しかしこいつには明確な意志があった。生々しい眼球に映っているのは、自らを傷つけた俺への復讐心だった
別の捕食器が、俺の脇腹に向けて大きな"口"を割り開いた
茎に巻き付かれながらも、回避を図ろうとする
しかしその時、腕に絡まっている茎が、驚くほどの勢いで俺を引っ張った
筋力にはそれなりに自信のある俺が、全く太刀打ちできない程の力だ
それは丁度脇腹に"口"が当るように調整されている
回避の余地はなかった

しかし捕食器が当る寸前、炎の矢が俺を束縛する茎の根本に直撃する
束縛されていた腕が突然軽くなり、俺はバランスを崩した
突如姿勢を変えた俺に擦れるようにして、"口"が背後を通り過ぎていく

魔法使いを見る
詠唱短縮の簡易[炎の矢]を唱えた彼女は、再び次の呪文を唱え始める
視線だけで礼をしながら、ベルトホルダーにしまっていた剣を取ろうとして――

――気付く。剣がない
取られているのだ、剣が
いや、荷物そのものが
見れば先程俺の背中を通過した茎が、その"口"に鞄を咥えている
先程擦れ違ったほんの一瞬で、俺の背後から荷物をスリとったのだ
只の植物にできる芸当ではない

茎は荷物をそのまま地面に投げ捨てると、ゲレゲレゲレと耳障りな笑いを発した
それは他の二つの茎にも伝染し、笑いは三重になって空間に響く
嘲笑っている。このモンスターは明確な意志を持ち、俺を嘲笑っている

魔法使いが詠唱を始める。球根ごとこいつを焼き払うつもりだ
炎の矢が空間に現れ、球根を照準する、その時
不意に魔法使いが詠唱を止めた。いや、止めざるを得なかった
地面から現れた五本目の茎が、彼女の口元に巻き付き、詠唱を禁じていた

魔法使いを助けなければ
斧を握るが、しかし俺の周りの三つの茎もまた、再び俺を拘束せんと動き始めた
とても彼女の所までいけない。三つの"口"の猛攻を、避けるので精一杯なのだ

斧を空に舞わせ、近づいてきた茎を振り払う
茎は巧みに俺の攻撃を避けていた。直線的な動きを理解し、曲線的に動いていた
攻めきりたい所なのに、蠢く多数の触手のせいで攻撃すら困難な状況
それでも一瞬のスキをつき、茎の群れから抜け出して魔法使いの元へと向かおうとする、

その右脚がつんのめる

思わずそこを見る
右脚が拘束されている
どの茎だ。思わず見渡して、愕然とした
その茎は、地面から生えていた
六本目の茎

そして体制を崩した俺の右肩に、今度こそ、
涎を垂らす"口"がかぶりつく

最初に感じたのは、熱

次いで鋭い痛みが、俺の右肩を貫く
葉の内側にある棘が、皮膚を突き破っている
貫かれる痛み。だがそれすら、前座でしかなかった

皮膚の内側に潜り込んだ"牙"から、何かが"漏れて"いる
それに気づいた時には既に、狂おしいほどの熱さが、血液に乗って全身に流れていく
じんわりと熱さが広がり、まるで身体の内側が火傷になっているかのように、その熱を増していく
熱が、痛みに変わる
痛みの奔流が、全身を駆け巡っていく
そう、痛み!

余りの熱量に、痛みに、芯から身体が燃えていく
まるで熱暴走を起こしたみたいに、全身が熱くて、痛い
最早耐えきれなかった
苦痛を身体の中に抑えきれず、俺は大声で吠えた
痛みに咽び泣いた
叫んだ

そうしてすら、この痛みは増していくばかりだ

目に見えているものが何かがわからなくなっていく
全身を巡る熱が、俺の脳を溶かしているみたいだ
だが唯一つの本能に従って、この拘束から抜け出そうと身体を揺らす
抜けない。解けない
何故か。それを考える余裕すらなく、ただ我武者羅に身体を動かす
その分だけ全身が熱く滾り、身体に溜まる何かが広がっていく
それが苦痛で、更に身体を動かす
その悪循環すら、意識することはできない

不意に、少し遠くで何かを千切る音がした
小さな女の子が、手に持った鋭い何かで、綺麗な誰かの口元にある何かを切っている
何か? 誰か?
それが何かすら判別できない

視界の橋で、赤い線が奔る
俺の右肩に、何か強烈な熱を感じた
うめき声のようなものが聞こえ、身体を縛り付けていたものが楽になる
景色が回転する。違う? もしかしたら自分が回転している
強い衝撃にぶつかるより先に、柔らかな何かが俺を抱きかかえている
俺を呼ぶ声が聞こえる。ふたつ。どちらも逼迫した声。なんとなく、珍しいなと思った
少し遠くで、何かが蠢いている。綺麗な誰かが、赤い線を奔らせてそれを遠ざける
もうひとりの女の子が、俺の右肩に触れている。暖かな光が右肩を包み込んでいく

それでも、俺の身体の芯は氷のように冷え固まっていた
どうしようもなく寒くて、微睡みはいよいよ限界に達していた
俺を覗き込むふたつの影が、ぼやける
そしてそこに、俺はみっつめの影を見た
遠い昔に死んだ、俺の妹を見た

そこで一旦、俺の意識は闇に沈む

と、そろそろ見張りが交代なのでここまで
続きは起きてから話す

やあおはよう
朝の続きを話していこう
ようやく今日の朝まで追いつくぞ

目を覚ますと、右肩に鈍い痛みを感じた
思わず右腕を身動ぎさせようと思って気付く。右腕が動かない
まるで全ての神経が焼き切れてしまったが如く、何も感じない
強烈な痛みの中で誰かが俺の右手を握っていることだけが、遠い感覚の果てに認識できる
その感覚が恋しくて、微睡みのまま右手の温もりに意識を合わせる
やがて暫くの後、右手がゆっくりと離れる。それを恋しく思う
意識が覚醒していく


ゆっくりと目を開く
ぼやける視界の中に、僧侶が映った
いつも持ち歩いている器の中で、何かの草を煎じているようだ

身体を起こそうとして、右肩に鈍い痛みを感じる
それが不快で思わず息を漏らすと、僧侶が俺に気づいて、起きなくて良いと気遣ってくれた
身体を寝かせたまま、首だけを動かして周囲を見る。[迷宮区]のどこかだろうか。見覚えのない場所だ
おそらく[2F-血溜まりの花畑]の迷宮区にある小部屋のひとつなんだろう
寝心地が良いと思ったら、地面には若い草が生い茂っている

気を失う寸前の事をぼんやりと思い出して、右肩を見る
左肩と比べて大きく膨れ上がり紫に変色したそこには、応急用の包帯が巻かれている
包帯からは薬品の臭いとともに、[毒消草]の花の香りがする

僧侶が鈴の音のような声で、静かに現状を聞かせてくれる
どうやらあの戦闘の後、彼女たちは俺とその荷物を持ってモンスターから逃げ出せたらしい
ここは[2F-血溜まりの花畑]の[迷宮区]の一角。入り口が草で見えなくなっている、隠された部屋だ
魔法使いが敵に見つからずに安全に俺を手当できるこの場所を、必死に探してくれたのだという

俺の右肩に打ち込まれたのは、Lv11相当の[消耗毒]と、Lv4相当の[麻痺毒]
どちらかの毒を保持していることすら驚異的だが、あの変異モンスターはそんな危険な毒を二種類も保有していたらしい
今は[毒消草]を少量ずつ服用しながら、毒を中和しているらしい
[薬師]技能を取っておいてよかったと、僧侶が薄く笑う

まだ霞のかかった頭でそれを聞く
僧侶が次いで教えてくれる。毒の中和自体は早い処置が功を奏して問題なく行われたが、それでも俺の身体は限界だった
即ち全身に奔る人間の許容量を遥かに超える痛みが、俺の脳を破壊し始めていたのだという
既に何らかの記憶を喪失している可能性がある。彼女はそう言っていた
記憶を手繰る。自分のこと。家族のこと。これまでの経歴。全てをはっきりと思い出せる
大丈夫だ、何の欠落もない

それを自覚しながら、会話に耳を戻す
治療するにも何をするにも、まずは俺が感じている痛みを止めないといけない
そのために、彼女たちは俺に[赤彼岸]を服用させた

既に前述した通り、[赤彼岸]の花には薬効成分が含まれている
しかしそれは花を適切な手段で煎じて、薄めてから飲むことで発揮されるものだ
逆に花を乾燥させ、強い香りを発散させるようにすると、[赤彼岸]の花は麻薬になる
今の俺はそれを服用することで、痛みなどのあらゆる感覚が鈍い状態にあるのだという
おそらくこの考えが纏まっていない霞がかった頭も、[赤彼岸]によるものだろう

僧侶は言った。俺の右肩に燻る毒は、最低でも一週間は継続される
半日程度経てば[麻痺毒]が中和され動くことは出来るはずだが、[消耗毒]の深度が非常に高いために、[赤彼岸]は継続して服用し続ける必要がある
それでも構わない。そもそも、死んでいてもおかしくは無かったのだ
生きているだけで僥倖だ。加えて、半日経てば動くことは出来るのだから

魔法使いが戻ってくる
両手には[赤彼岸]を抱きかかえていた
俺のために採ってきてくれたらしい。本当にありがたいことだ

魔法使いが俺を心配そうに見つめている
僧侶が少しだけ笑みを浮かべて、それでもこれだけ動けるなら大丈夫だと言っていた
俺もそうだと思う。この程度なら問題ない
それから魔法使いを元気づけるように、僧侶が色々と魔法使いに声をかけてくれる
魔法使いはこう見えて繊細だからな。こういう風に、気を遣ってくれる娘はありがたい

魔法使いがついぞ耐えきれないと言ったように、一つの提案を口にした
つまり、本当に一度街に戻らないか、ということ
俺の怪我もしっかりと見てもらわないといけないし、消耗品もそろそろ限界だ
これ以上潜るのは無理がありすぎる

その提案に対して、僧侶が笑いながらも、どこか困ったようにそれを否定する
その瞳が俺に助けを求めている

なんでそんな眼をするんだろう

 


俺は、それも良いな、と口にした


 

僧侶の口元から、笑みが凍りつく
その瞳孔が、まるで絶望したかのように開いていく
なんでそんな顔をするんだろう
その理由を、俺は今も分かっていない

一昨日の話はここまで
昨日と今日については殆ど何も無かったから、少し休んでから改めて話してしまおう

そんな訳で、今朝段階での俺達のステータスを晒しておく


俺(戦士)
適性:戦士
年齢:21
性別:男
練度:LV6
技能:[剣技Lv3][かばうLv1][感知Lv1][自然治癒Lv1]
装備:[ゴブリンの石斧][鋼のつるぎ(壊)-1][古ぼけたツルハシ-1][鉄の鎧(壊)-1]
持物:[ヒーリングポーション]*2,[安物の砥石]*1,[松明]*2,[安物のナイフ]*2,[旧式カンテラ]
持物:[瑞々しい赤彼岸の葉(34日)]*10,[寝具],[調理油],[調味料],[食器と携帯鍋]

魔法使い
適性:魔法使い
年齢:17
性別:女
練度:LV6
技能:[炎魔法Lv4][詠唱Lv2]
装備:[樫の杖][魔女のマント][とんがり帽子]
魔法:[Lv1:灯る指先][Lv2:炎の矢][Lv3:夕焼けを熾す][Lv4:赤き刃]
持物:[魔法の触媒(火/下級)]*7,[ヒーリングポーション]*2,[ブランド物のナイフ],[創成のクリスタル(青)],[寝具]

僧侶
適性:僧侶
年齢:14
性別:女
練度:LV5
技能:[光魔法Lv3][薬師Lv1][罠師Lv1]
装備:[鋼の槌][修道服+1]
魔法:[Lv1:癒やしの滴][Lv2:明ける知識][Lv3:祓の水]
持物:[聖典(下級)],[ヒーリングポーション]*2,[瑞々しい毒消草(11日)]*8,[うさぎのぬいぐるみ],[ロープ(4m)-1],[寝具]

>>282-285 >>288-291
色々と考えてくれてありがとう
諸々を考えた上で、今回は[自然治癒]の技能を取得した。大きな怪我を受けたので、それを早く回復させたかったのもある
次のレベルアップの際に[剣技]技能を上げる予定だ。まあ、次のレベルアップで出現する新しい技能次第だがね

>>286
どうだろうな……盗賊ギルドは黒い噂が流れて絶えない
そもそも盗賊ギルドという存在自体が、ギルド名簿に登録されていないんだ
ただ"そういう集団がある"という情報が少しずつ知れ渡って、盗賊ギルドと呼ばれているに過ぎない
実際に何をしているのか、どれだけの人が居るのか、そういったものが全くの未知なんだよな

>>289
[かばう]技能はレベルが上がるほど、味方に行くはずの攻撃が自分に行くようになるらしい
敵の攻撃がそもそも自分に行くように調節する技能って感じかな
俺たち冒険者の専門用語では、このモンスターの敵意の向きをヘイト値、それを収束させる前衛をヘイト管理って呼んでる

>>292
そういえば記述し忘れていたが、鎧はゴーレムの動きを止めていた時に傷ついたんだ
まだ着用自体に問題はないが、両腕から肩にかけてを保護する手甲が、しっかりとはまらなくなってしまった
だからこそ今オレは鎧を胴にしかつけれてないんだよな

>>293
まあ一点特化で技能を取得すれば、格上相手でも攻撃は普通に通ったりするな
盾の技能はいずれ取得したいところだ。ただ、まだ全然技能選択に出てこないんだよなあ
俺の才能が無いんだろうか

>>306
[毒消草]はこのフロアで採取したぞ
[白彼岸]の部屋にいたあの変異モンスターと遭ったことは最悪の不幸だが、[毒消草]があるフロアで噛まれてまだ良かった
これが一層なんかで遭ったものなら、おそらくどうしようもなかったろうからな

>>318
ギルドは基本的に街にあるぞ。深層にギルドを持ってるのなんて、如何わしい事をしてる連中くらいだろうな
もし何か困ったことがあって避難や救援を要請するなら、街に行ったほうが手っ取り早いと思う

>>322
[泉の精のはなし]だったか。子供の頃に読んだなあ
たしかあれ、実際にあった現象を元にして作られた小話なんだよな
脚色は入ってるだろうけど

>>323
寧ろオークは人間ばっかり襲うぞ
基本的にモンスターと人の仔っていうのは、普通よりも強い子供になりやすいからな
あと、モンスターの美的感覚的にも、人間の女を美しく思うものらしい
特に人型のモンスターは、オークに限らず人間の女を襲ったりすることは多い
嫌な話だが

>>325
この周辺に残念ながら安全域は無さそうだ
俺は一度街に戻って、回復してからもう一度出直したほうが良いと思うんだが
ただ、どうも僧侶の様子がおかしいからな……

>>326
もしあそこが[1F-ジャイアントワームの大穴]なら、変に突っ込んで魔術師ギルドにイチャモンつけられるのも嫌だからな
それに実際、あそこをどうにかする手段がな

んん、また僧侶が泣き出した
一昨日俺が目を覚ましてから、こいつは本当によく泣くようになった
あんまり感情を表に出さない娘だったんだがな

とりあえずもう一度事情を聞いてくる
この二日間、彼女に何を聞いても、はっきりとした回答を得られない
俺には話せない事なんだという
一緒にここまで冒険してきて、それなりに信頼を積み上げたつもりだったんだが、そんなに関わりを拒否されるのは少し悲しい

そんな訳でまたあとで

僧侶が居なくなった

事の顛末について話す必要があるだろう
俺たちは取り返しのない事をして、彼女にあまりにも酷いことを言ってしまったから
そして、この事態は俺が引き起こしてしまったことだからだ

昨日のあの後、俺たちは僧侶に何故泣くのかを聞いた
しかし彼女は答えない
俺に対してじゃなく、魔法使いに対しても、その心の裡を表そうとはしなかった
全てを知った今思えば当然だと思う
おそらく彼女は、全てを話した時俺たちが真実に絶えきれないと思ったんだろう
彼女は全てを自分の中で押し込めて解決しようとしていたのだろう
付き合いの少ない俺でも、それくらいはわかる

俺があの一言を発してから、パーティの雰囲気は格段に悪くなった
僧侶は塞ぎ込み、何を話そうともしない
魔法使いはその原因が俺にあると思い、僧侶を気遣いながら俺を糾弾している
俺はもう全てがわからない。彼女は何も話さないし、そして塞ぎ込む彼女にどう声をかけていいか、俺にはわからなかった
もし俺がもっと真っ当な人間であったなら、俺は彼女に適切な言葉を発することができたんだろうか
人付き合いの少なさを、心底後悔した

そして、これからの事を話す
俺たちは早く街に戻りたいと言った。勇者が居らず、リソースの少ない今、街に戻って一度立て直すべきだ
僧侶は断固としてそれを拒否した
戻ってはいけない。このまま進まなくてはいけない
何故、という問いを何度したかも判らない。ただ一度たりとも、彼女はその理由を話そうとはしなかった

その日の夜は、このパーティで最も冷たい夜になった
笑顔も、口数もなかった
ただ啜り泣く声だけが、微かに響いているだけだった

そしてその夜が、僧侶の声を聞いた最後の夜になった

朝起きた時、俺たちの枕元には一枚の書き置きが残されていた
魔法使いには、これまで妹のように扱ってくれた事への感謝。家族のように振る舞ってくれたのが嬉しかったこと。魔法使いの悲しむ顔が見たくないこと。だからもうここで道を分とうということ
俺には、かつて俺を冷たくあしらったことへの謝罪。義兄に見捨てられる事が怖かったこと。本当はそれなりに好意を持ってくれていたこと。モンスターから命を賭して庇ってくれたのが嬉しかったこと
それから決意。余所者の自分を受け入れてくれた、街の人間が好きだったこと。初めて家族という温かみに触れたこと。それらを取り戻すために、自分は深層まで行くということ
誰かに助けを求めるのではなく、自分の幸せを奪った敵を討つ為に

正直その時の俺は、その文章を半分以上も理解できていなかった
単身で深層に向かおうとする決意の元、彼女の過去の事も。そして今現在、彼女が何に追い詰められているのかも
最終行にはこんな事が書かれていた
今から戦闘を避けて三層の[3F-竜の墓]に行けば、兄の知り合いの勇者が拠点を構えているはずだ
気の難しい人だが、自分の名前を出せば遠方の街まで送り届けてくれるはず。対価に求められるものは、事前に支払っておく

街に戻らずにそうしてくれれば、安全にここを脱出できる

その文章に、彼女自身の安否は含まれていなかった
無数の疑問が頭を過った。だが、一つだけ分かっていることがある
彼女は死ぬ気だ

俺たちはどうするべきなんだろうか
僧侶のことを追いかけるべきか?
それとも彼女を見捨てて、遠方の街まで逃げるべきなんだろうか
どちらが正しい選択なんだろう

 
ここが運命の選択だ

誰か 正しい答えを教えてくれ
 

やあ、おはよう
今二層の[2F-豚の山岳]でハイディングしてるところだ
目的はただひとつ。僧侶に追いつくこと
ひとまずの目標は[3F-竜の墓]
そこは61代目の[勇者]適性持ち、通称"天秤"の勇者が居る

まずは現時点の俺たちのステータスを整理しておこう

俺(戦士)
適性:戦士
年齢:21
性別:男
練度:LV7
技能:[剣技Lv3][かばうLv1][感知Lv1][自然治癒Lv1][+]/???
装備:[オークの鉄槍+1],[ゴブリンの石斧],[鋼の剣(壊)-1],[古ぼけたツルハシ-1],[鉄の鎧-1]
持物:[ヒーリングポーション]*2,[安物の砥石]*1,[松明]*2,[安物のナイフ]*2,[旧式カンテラ]
持物:[瑞々しい赤彼岸の葉(32日)]*8,[寝具],[調理油],[調味料],[食器と携帯鍋]

魔法使い
適性:魔法使い
年齢:17
性別:女
練度:LV6
技能:[炎魔法Lv4][詠唱Lv2]
装備:[樫の杖],[魔女のマント],[とんがり帽子]
魔法:[Lv1:灯る指先][Lv2:炎の矢][Lv3:夕焼けを熾す][Lv4:赤き刃]
持物:[魔法の触媒(火/下級)]*6,[ヒーリングポーション]*2,[ブランド物のナイフ],[創成のクリスタル(青)],[寝具]

盗賊
適性:???
年齢:17
性別:女
練度:???
技能:???
装備:[投擲用の短剣]*2,[盗賊の軽装]
持物:[ヘアピン]*8,[毒粘液の瓶(残12)],[毒消草の粉末]*2

さて、昨日から今日にかけての話だ

昨日の夜、俺は魔法使いにこのスレのログを見せた
彼女はあった出来事に相当なショックを覚えているようだったが、以前のように取り乱したりはしなかった
その瞳には驚愕や憤怒、哀しみと焦りの感情が多分に含まれていたが、彼女はそれを意志力で抑え込んでいるようだった
僧侶のことがあったからこそ、ここで取り乱すわけにはいかなかったんだろう

俺が僧侶を追いかけようと言うと、彼女はまるでその言葉を待ち望んでいたかのように、しっかりと深く頷いていた
まあ同然だよな
僧侶が魔法使いに懐いていたように、魔法使いもまた僧侶を大事にしていた
まるで本当の姉妹のように

さて僧侶を追いかけることは確定したわけだが、問題はどうやって追いかけるかだな
とにかく早急に追いかける必要がある
いくら一人で潜伏しながらの移動がし易いとはいえ、僧侶はこのパーティでも一番戦闘力が無かった娘だ
敵に見つかれば、助かる確率は限りなく低い
正直な所三層の[3F-竜の墓]に辿り着くのかすら、かなりの幸運が必要になるだろう

可能な限り早く追いつく必要がある。それも出来ればこの層に居る内に
であれば重要なのは、何処から降りるかだ
既に皆ある程度把握しているだろうが、このダンジョンは上層にある幾つかの[迷宮区]が集合して下層の[中央区]に接続されている
もし僧侶が下層に降りるのなら、第三層の[中央区]で彼女を待っていれば良い
しかし問題は、二層から三層に続く接続部が、総じて敵の本拠地に存在していること
具体的には[2F-蛇の洞窟]と[2F-豚の山岳]だ
どちらも危険度の高いモンスターである[オーク(LV9)]と[キラースネーク(Lv8)]の拠点である
あとの一つである[2F-盗賊の根城]にも下層への入り口があるのは確定しているが、そもそも奴らの拠点が判らない上に管理しているのは悪名高い盗賊ギルドだ
まあ協力を望むのは非現実的だろう

ここから近いのは[2F-豚の山岳]だろう
[オーク]の所持技能は[繁殖Lv3][剣技Lv2][嗅覚Lv2][自然治癒Lv1][免疫Lv1]
[感知]やそれに準ずるスキルはないので、特別香りの強いものさえ身に着けていなければハイディングして進める
少なくとも[感知]技能に優れる[キラースネーク]の群れを進むよりかは、可能性がある筈
一人でダンジョンを進むなら尚更だ

勿論確証はない。だが、その場でじっとしていても始まらない
とにかく[2F-豚の山岳]に侵入を試みる。その路線で二人の意見は一致した
暗闇の中、足音と壁の感触、そして以前の記憶だけを頼りに道を戻っていく
[灯る指先]は使わない。傷の治癒が困難な今、敵と遭遇すれば消耗は避けられない
暗闇の中、土草を踏む音だけが響いている
会話は無い。お互いに、聞こえる音に集中している

その時、不意に遠くで声が聞こえた
女の子の鋭い叫び声
思わず魔法使いの方を振り向く。彼女もまた驚いた顔をしていた
僧侶の声かは判らない。彼女の落ち着いた声色とは、少し違った気もした
だが或いは
そう思って、早足で来た道を戻る
声の元は間違いなく[2F-豚の山岳]
オークの本拠地だ

暗闇の中を探り進んでいくと、やがて灯りが見えてくる
鉄の扉。橙色の灯りと肥溜めのような異臭が漏れ出ている
以前来た時は三人だったか。思わずそんな事を考える
だが感傷に浸っている時間はない
扉に耳を近づける。喉の奥を鳴らしているような、独特の話し声
僅かに声色が違う。一匹、二匹、三匹……聞こえるのはそれだけか
眼を閉じて集中する。その奥の存在を感知する
おそらくオーク。やはり三匹居る

魔法使いの方を振り向いて、ジェスチャーで扉に誘導する
彼女が扉に向かって慎重に耳を近づける
彼女なら、聞き取れる筈

魔法使いの艷やかな唇から、声が漏れ出ている
奥に聞こえないように囁かに
聞こえてくる声を翻訳しているからか、それは断片的に発せられている
"侵入者"、"二匹"、"雌"、"片方は逃した"、"上玉"、"弄ぶ"、"お人形"、"リーダーが独占"、"ズルい"、"もう一匹も"...

それを聞いている内に、二つの足音が離れていく。どうやら話していた三匹の内、二匹がどこかに消えたらしい
残った一匹がぶつくさと魔物語で何かを喋りながら、扉へと近づいてくる
好機だ。魔法使いと目を合わせ、無言の意思疎通。扉から距離を取ってもらう
俺は扉の影で、斧を掲げて待機

鍵が開いた後、鉄の扉がゆっくりと音を立てて開いていく
オーク。ぶつくさと文句を言っている。仕草は鈍く、どうにもやる気が無さそうに見える
気の進まない事でも頼まれたのかもしれない
その動作に昔のこき使われていた自分を想起し、思わず名も知れぬオークに同情してしまう
すまないな
そう思いながら、思い切り斧を振りかぶり、その首を狙う

オークがゆっくりとこちらを振り向き、目を見開いた
口が開き始め、何かを叫ぶ予兆
ビ……
一音目だけが発されかけ、次の瞬間、オークの首が音を立てて吹き飛んだ
首のない身体が取り残され、一瞬の間を置いて、赤褐色の液体が飛び散る

済まない、ちょっと端末の魔力が切れていた
ここ最近どうにも端末の魔力の持ちが悪い気がする

まあゆっくりと話していこう

オークの首を切り落とした俺達は、死体を外に投げ捨て、速やかに室内に侵入した
扉を後手に閉じる

肥溜めの匂いが充満する室内は、しかし一方で意外なほど文化的に纏まっていた
壁や床には木の板が一面に貼り付けられ、一種のフロアリングになっている
部屋と部屋は扉で仕切られ、簡易的な装飾すら為されている
玄関口と思わしきここすら木で出来た簡素な家具が備え付けられている

とはいえ綺麗とは言い難い。床は所々剥がれかかっているし、家具や扉も雑に扱われて消耗が激しい
丁寧に作られた内装と、しかし一方で雑に扱われるそれら
アンバランスな調和
まるで内装を作った存在と、今ここに住んでいる彼らとが別の存在であるかのようだ

そう考えると、そもそもこの場所もおかしい
俺は[オーク]の本拠地という事でここを[2F-豚の山岳]だと想定した
だがそもそも[豚の山岳]は、その名の通り山岳地形に存在する区画だ
勿論、地下に山岳そのものが在るわけではない。山岳地形型の迷宮とは言うのはつまり、山岳に見える程大規模に開けた空間のことだ
だが、ここはどうだろう
狭い迷宮の中に存在する、密閉された個室
勿論、ここがあtだ山岳地名に建てられた施設の一角の可能性はある。だがしかし、それを踏まえても違和感はある
そもそも[オーク]はどこだろう
あれだけ繁殖力に長けたあのモンスターが、何故ここに来てこれほど少ないのだ?

何か見落としている気がする
大事なことを
そう頭の片隅で考えながら、次の部屋を覗き、進んでいく
歩く度に木の板が軋み、目立つ音が鳴る
だがその音を駆けつけて奴らが来る様子も無い
やはり、何かがおかしい

複雑に分岐するフロアリングの部屋を抜けていく
やはり所々に、家具が制作された意図と実際の使用法の乖離が見られる
例えばダイニング
椅子は放り散らかされ、机は傷だらけになり、純白だったろうクロスには垢や糞が擦り付けられ床に捨てられている
例えばキッチン
パン焼き窯にはゴミが詰め込まれ、エール樽は禄に発酵されないまま中身をぶちまけられている。大豆の独特な香りが、周囲に立ち込めている
例えばバスルーム
湧き出るべき水種は枯れ、水を湧かす"水蓮花"は毟り取られている。並々と溜まった水は粘ついた茶色に染まり、一層の汚臭を漂わせている

一つ一つの文化様相は、人間のそれに極めてよく似ている
或いはそれらが正常に働いていた頃ならば、そっくりとすら言えるかもしれない
だがいま現在、その影形はなくなってしまっている
壊れた文化の隙間に入り込んでいるのは、[オーク]の汚れた生活様式そのもの

不意に、ある扉が開いたままであることに気付く
肉質のある音が、断続的に聞こえている
奥からはオークの醜悪さを凝縮したかのような、粘つく汚臭が漂ってくる
微かにオークの話し声がする。楽しそうに、しかしどこか苦しげに息を荒げて
魔法使いに周囲を見晴らせたまま、扉の隙間から奥を覗く

奴らが居る。一匹ではなく、数匹。こちらに背を向けて、目の前のモノに何かをしている
目の前には彼らとは別のモノがある

それに気付いた時、思わず吐き気がした
魔法使いが俺の異変に気づき、近づいて俺を気遣う
何があったのかを聞きながら、奥の部屋を覗こうとする
ダメだ。彼女には見せてはいけない。まだ網膜に残る醜悪な光景を振り払いながら、彼女を止める
なんにもなかった
そう言うことしか出来ない

そうだ。当然ありえる光景だ
彼女たちは既に冒険家ではなかった。人間ですらなかった
オークを主人と認識し、与えられる悦びを享受するだけの、哀れな家畜でしか無かった
憤りを感じる。だが、俺達にはどうすることも出来ない
もし仮にこのオーク達を全て滅してすら、彼女たちを救うことはできないだろう
その瞳には既に、人間としての意志も、冒険者としての誇りも無かったから

むしろ俺たちは喜ぶべきなのだ
彼女たちの中に、見知った顔が居なかったことを
僧侶が居なかったことを
もしここまでのどこかで選択を誤っていれば、それはきっと容易に起こり得ることだったのだから

未だ不審がる彼女の手を取って、別の部屋へと進んでいく
吐き気を堪える
そうだ、どうしようもなかったんだ

決して俺が見捨てたわけじゃないんだ

俺は既に、ここが本当は何処なのかを判り始めていた
だがそれを認めたくはなかった
そこの呼び名。これまで見た光景。そして、そこから推測できること
もしそれらが全て正しければ、なんて救いようのないことだろう
そしてもう、どうしようもないことだ

吐き気を堪えながら、汚臭の中を進む
魔法使いが何かを言っている。しかし、頭の片隅にしか残らない
早くここを出たい。その時の俺は、そればかりを考えていた

再び、鋭い少女の悲鳴が聞こえる
今度はちゃんと方向までわかった。近い
魔法使いを振り向くこともなく、先を急ぐ
木の板が軋み、音を立てる
背面から呼び止める音
しかし止まらない

そこは施設の一角にあった
部屋を仕切る扉は、他の扉よりも装飾がされている
扉の表面にかけられているネームタグには、人類語で「備蓄室」と彫られている
更にその下に、インクを用いて雑な魔物語が書かれている。魔法使いに聞くと、どうやら「リーダー専用」と書かれているらしい

ゆっくりとドアノブを回し、ドアを押す。幸い、音はそこまでしなかった
開いた隙間から、こっそりと中を見る

そこはとても開けた空間だった。床、壁、天井ともに、他の部屋とは違い鉄の板が貼り付けられている
部屋の所々には木で出来た棚が置かれている。その殆どは横に向けて壊されたり倒されたりしており、棚としての機能を果たしていない
そしてそれらの棚に凭れ掛かったり、或いは床に寝たりしているのは女性だ
何人もの女性が、服も着ないままに放り投げられている。みな生気を失った顔をしており、ぐったりと倒れ込んだままだ。何人かは息すらしていない
よくよく床を見れば、引き千切られた布切れがいくつも転がっていた

それらの光景は、先ほどの部屋とも良く似ていた。違うのは年齢帯が幼い娘が多いということ、顔立ちが皆整っていること、そして全員が腹部の下に小さなタトゥーを彫っている事
タトゥーは薔薇を模していた。綺麗な薔薇とそれに纏わりつく茨が、精細に描かれている

そんな裸の娘の奥に、そいつは居た
普通のオークよりも一回り大きい身体。筋肉が膨らんだ上半身と、まるで赤熱しているかのように赤い皮膚
オークの上位種。何度か目撃証言もあった。予想されるスキルは[槍技Lv3][繁殖Lv3][感知Lv2][嗅覚Lv2][自然治癒Lv1][免疫Lv1]
Lv12相当、そのモンスターの名を[ブラッドオーク]という

赤いオークの向かい側には、一人の少女が居た
年齢は魔法使いと同じくらいだろうか。身長は低く、身体の起伏はなだらかだ
服は破られ、ショートパンツの奥の右太腿には黒い薔薇のタトゥーが見え隠れしている
両手首は背中の後ろで括られ、両足もまた紐で固定されている。そんな状態でありながら、幼さの残る双眸はまだ意志を宿し、目の前のモンスターを睨みつけていた

そんな様子を見て、赤いオークが喉の奥で笑う
鼻に詰まったような声で、オークが何かを呟いている。魔物語。瞬時に魔法使いが訳してくれる
"さあ、残りはオマエさんだけだぜ"
"哀れな「イモウト」さんよ"
その単語だけは、片言の人類語で嘲笑う。おそらく、他の人間が使っていた言葉を真似たのだろう
思わず、頭に血が駆け上る。その言葉で俺が想像する人物と、オークが口にした人物は全く異なるのだろうけれど
オークはぐるりと周囲を見渡して、それからまた言葉を続ける
"頭らしいあの男もどっかに行っちまったし"
"お前みたいなガキを残して、薄情な奴だぜ"
"それとも俺のためにわざわざ残していってくれたのかな"
そう言って、さも自分が言った冗談が面白いかのようにぐつぐつと笑う
目の前の少女も、言葉はわからずともニュアンスを理解したらしい
自分の兄を馬鹿にするなと、言葉を荒げる
そんな少女の様子にオークは笑いを沈め、それから大きな右手を少女の頭に置いた
"おいおいおい、自分の状況も理解できねえのかよ?"
"訳のわかんねえ言葉で喋るんじゃねえ、俺にそんな目を向けんじゃねえ"
ぐっと少女の髪を握りしめて、オークがそれを無理やり持ち上げる
少女の肢体が、いとも容易く地面から離れた
縛られた手足をなんとか動かして抵抗しようとする少女を、オークが壁に投げつける
鈍く、嫌な音
少女が肺に溜まった息を吐き出し、枯れた悲鳴を上げる。頭部を切ったのか、壁に紅い滴が垂れ落ちる。少女の軽い身体が、地面へと自然落下する
咳き込む少女にオークが近づき、その右脚で少女の顔を踏みつける
"お前らはそうやってただ黙って鳴いてりゃいい"
"泣いて鳴いて、あとは産んで膿むだけだ。簡単だろ"
"お前らは家畜なんだから"
再び、オークが笑う

"さて、じゃあお楽しみを始めるかな"
"その憎たらしい面がどう歪むのか"
"期待してんぜ"
興奮に鼻を鳴らしながら、オークがその場にしゃがみ込む
太い右手が、少女の胸元に触れ、弄る
目の前の敵を睨みつけていた少女の目が、恐怖と絶望に歪み、次いで強く閉じられた
オークはまだ、興奮に何かを口にしている。いつの間にか、魔法使いはそれを訳するのを辞めていた

もう我慢の限界だ

斧を握りしめて、勢いよく扉を開く
魔法使いの静止の声が聞こえる。だが、止めるつもりはない
斧を振りかぶり、無防備な背中を見据える
一撃で切り落とす
今までの鬱憤を込めて、斧を振るう

その瞬間、オークがまるでそれを予見していたかのように振り向き、身体を大きく横にそらした
斧は僅かにオークの右腕に触れただけで、そのまま空を裂く
――避けられた!
渾身の一撃はすぐには止まらず、身体は大きく体制を崩す
不味いと思うと同時に、何故、とも思う
部屋に突入してから斧を振るうまで、反応したとしても、避けるほどの時間はなかった筈

だがそれ以上の思考を働かせるより先に、身体が動いた
無理な体制から無理やり身体を捻り、地面を転がる
その次の瞬間、先程まで俺が居た場所に、銀色の何かが突き抜けていく
それは鋭い音を立てて、そのまま転がる俺の肩先を掠めた
微かな痛み。だが擦り傷でしかない
転がる勢いを、利用して立ち上がる

目の前のオークは、右手に鋭い槍を持っていた
オークは突き出した槍をすぐに手元に戻すと、笑いながら俺を見る

オークが魔物語で何かを呟いている
まあ、言っていることは大体わかる。驚いたか、とかそういった所だ
詰まる所、奴は最初から俺たちに気付いていたのだ
必要以上に少女を嬲っていたのも、隠れている俺たちを誘き出すためか
いや……オークにそんな知能も無いだろう。それにあの笑いは、単純に楽しんでいただけだ

手に持っている槍を見る
アーティファクト、ではない。ダンジョンの深層じゃ人型モンスターでもアーティファクトを持っているのが当たり前とは聞くが、まだまだ二層じゃこんなもんだ
けれども油断はとてもできない
相手はLv12。俺の二倍以上のレベルがある
数の有利はある程度のレベル差をひっくり返せるとは言うが、それでも圧倒的に格上の相手だ

オークが腰を落として、槍を低く構える
不味い。そう思い、一歩後ろへ跳ぶ。元々中距離戦闘を想定された槍の射程は、近距離戦闘を想定された剣の射程よりも遥かに長い
そして、[槍技]スキルは――

ちかっ、と槍先が瞬く
その瞬間、光が空を貫いた

鋭い音を立てて、光は俺の脇腹を逸れる
[剣技Lv5]程度なら弾ける筈の鎧が、嘘みたいに削り取られていた

これこそが[槍技]スキルの特性
魔法にも属性によって特色があるように、武器を扱うための三つの基本武器技能――[剣技][槍技][弓技]にも、それぞれ固有の特性が存在する
例えば刃物を扱う[剣技]スキルは、手数と器用さに特化したスキルだ。近距離戦闘における連続攻撃と防御や捌きにも活用できる器用さこそが、[剣技]の真骨頂と言っても良い
遠距離からの攻撃を特異とする[弓技]スキルは、有効射程や攻撃範囲に秀でたスキルだ。遠くから一方的にかつ広範囲を殲滅する能力こそ、[弓技]スキルの恐ろしい点だ
では、[槍技]スキルはどうなのか
その答えこそがこれ
即ち、瞬間攻撃力と出の速さ

「防人の槍は城を落す」という言葉がある
練度の高い[槍技]の一槍は、城壁すら容易く貫いてしまう
つまりはそれほど殺傷力の高い技能であり、実際達人の放つ槍の一突きは、かの生命力に優れたトロール族は一撃で落としてしまう程だ

なんとか槍の間合いから離れながら、様子を見る
オークは槍を再び構えて、ぐつぐつと笑っていた
唯でさえレベル差がある状況。あの一撃を正面から喰らえば、一撃で落とされる
とはいえこちらは唯でさえ射程で負ける[剣技]スキル。しかも所持しているのは特別射程の弱い手斧だ
近づかないと攻撃を当てられないのに、近づくことすら難しい

その時、背後で声がする
魔法使いだ。その声に従い、射線を開ける
次の瞬間、炎の矢がオークへと直進する
Lv2の射撃魔法、[炎の矢]。しかし、これは

再び、オークの矛先が瞬く
次の瞬間、光の一閃が炎の矢を射止め、貫いた。まるで風に掻き消えるように、炎の矢が消滅する
汎用性に乏しい[槍技]スキルが、多くの兵士に愛用される訳。それこそがこの[射撃相殺]性能である
極端に高い攻撃力を持つ[槍技]スキルは、多少強い程度の射撃魔法なら打ち勝ててしまう

再びオークが槍を構える。武器を扱う技能としては[槍技]は連続の攻撃速度が最も遅い技能であるが、それでも魔法の詠唱よりかは遥かに早い
矛先は魔法使いを向いている
オークが一歩飛び出す。このままでは。反射的に身体を乗り出し、その攻撃をかばう
再びの瞬き。一条の光が、今度は俺の左肩を逸れた。光が俺の身体を少しばかり削り取り、肉片は光によって消滅する

再び距離を取って、魔法使いと並ぶ
どうしよう、と魔法使いが小声で俺に問いかける

どうするにも、集中力に差がありすぎる
本来[剣技]と[槍技]が対面する場合、[剣技]持ちは[槍技]の技を躱し、カウンターを狙うのが最も勝算のある戦い方だ
[槍技]スキルは攻撃の出こそ早いが、出した後には膨大なスキが生まれるのだから
しかし俺達はここまで、オークに見つからないように多分な集中力を消費してしまっている
対して奴はこの区画こそがホーム。何も気にせず、最も集中して一撃を放てる場所だ
そんな奴の一撃を避け続けるには、俺の集中力は余りに消耗しすぎている
もし紙一重で避けるのを狙って、魔法使いに攻撃が飛んだり俺が致命傷を負えば、それこそどうにもならない

だが、ひとつだけある
奴の動きを止め、かつ攻撃が致命傷にならない方法

魔法使いに、最大本数の[炎の矢]の詠唱を求める
最大まで詠唱しても、結局あの槍の一突きでかき消される。当然の反論だ
だがそうはさせない。放つ寸前、五秒だけ奴の動きを止める方法がある
それだけ言って、俺は再び奴に近づいていく

射程を見計らい、ギリギリ槍が届かない所で、魔法使いとオークの間に立つ
背後で魔法使いが詠唱を行う。その眼は半信半疑、といったところだ。それでもある程度信用して、詠唱してくれている
まずは時間を稼がないといけない。剣を持って、奴に一歩近づく
一閃。それを見て、すぐさま避ける。だが俺の動きは、それを完全に避けきるには余りに鈍重だ
光が今度は足を掠れ、鎧を削ぎ落としていく

魔法使いの左手に、淡い赤色の光球が一つ浮かぶ

攻撃を避けた所に、斧を振るう。射程が足りない。加えて、当てようともしていない
刃先がオークの鼻先を捉え、一筋の傷をつける
もう一撃を放つ前に、オークが再び槍を戻して構えを取ろうとする
攻撃が来る前に、オークから距離を取る。飽くまで攻撃は魔法使いに飛ばないように、射線に立って

二つ目。光球は魔法使いの左手の上に留まったまま、円を描くように、お互いを追いかけるように回転している

奴が再びこちらへと飛び近づいてくる。勢いを殺さないまま、一閃
首だけを動かして避ける。頬に一筋の傷が走り、血液が中空に散る
集中力を、避ける事だけに割り振る
攻撃を当てる必要はない
普段攻撃に割り振っている集中力すらも、全て敵の攻撃を見切ることに集中する

三つ目。光球の黄道に、仲間が加わる

槍を握ったままの腕を切り落とすべく、斧を振りかぶる
突き出した槍を戻す時間はない。与えない
だがその時、オークがにやりと笑った。その口から、突然何かが吐き出される
強烈な悪臭を放つ何かが、粘液を撒き散らしながら俺の右目を狙う。反射的に目を閉じる
顔に何かが当る。足がもつれ、思わずその場に踏みとどまろうとする
これは、歯だ。奴は自分の歯を自分で圧し折って、それを俺にぶつけてきたのだ
オークが再び構えを取った。その矛先は、正確無比に俺の心臓を狙っている
そこまでが判った瞬間、俺はほぼ無意識に、身体の動きを制御することを諦めた
踏みとどまろうとする意識を手放し、その運動に身を任せた
縺れた足が、そのまま俺を地面に転がそうとする
次の瞬間、光が俺の腹部を貫いた

オークが何かを呟いた
魔物語。正確な意味は判らない。だが、奴の嘲笑の笑みは確かにこう言っていた
"馬、鹿、め"

だが、これでいい

気を失いそうになる痛みを堪え、貫かれたまま槍を握る
それと同時に俺の後方に居た魔法使いが、四つの光球を浮かべたまま横に跳ぶ
左手の人差し指が、オークへと向けられる
オークが反射的に、槍を戻そうとする。だが戻せない。戻させない
驚いたような奴の顔に、人類語で言ってやる
馬、鹿、め

次の瞬間、四つの矢が渦を中空を駆けた
オークが槍から手を離し、その場から逃げようとする
だがその判断は僅かに遅い
四つの矢はオークの身体へと収束し、そして爆ぜた
オークの叫び声を、爆音が上書きする
熱風は接近していた俺にまで届き、吹き飛ばす
鉄の槍が熱を伝導して、滅茶苦茶痛い

爆音が収まった後、そこにはただ真っ黒に焦げたオークが存在していた
呼吸は止まっている

さて、じゃああれからの事についてを話そう

ブラッドオークを倒した後、俺は少女を開放した
少女は俺たちを呆然とした目で見つめている
まあ当然か。俺自身も状況をいまいち理解してない
ただ、敵ではない。言葉と目でそれを伝える
それでやっと少女は安堵したようだった。一言お礼を言って、頭を下げる
粗雑そうな見た目の割には、結構礼儀正しい

彼女の様子を見ると共に、ようやく実感が俺の中にも広がっていく
それは即ち、ようやく一人助けられた、ということ
そうだ。考えてみたらこれまで、俺達は一度たりとも誰かを助けてはこなかった
ただ目の前で犠牲になっていくものを見て、それを見捨てていくことしかできなかった
仕方なかったんだと
どうしようもないんだと
けれどもそんな事は言い訳でしかない。助けられないのは弱いからだ。力がないからだ
身体も、心も
行動を行うだけの能力がないのは、大義名分にはならない

だが、ようやく一人助けられた
周囲を見渡す。彼女以外はもう、人であることを諦めている。何人かは息絶えている。助けるにはあまりに遅すぎた
俺たちはまた、彼女らを見捨てなければならないだろう
だが、この少女だけはこうならなくて済んだのだ
俺たちの力で
そのたった一つの成果だけは、誇っても良いんじゃないだろうか

少女は横たわる一人ひとりに声をかけ、状態を確認している
目の前にいる人間が既に壊れている事に気付く度に、とても悲しそうな顔をする
泣きそうになりながら、深く抱きしめる。だが抱きしめられた女はそれに反応せず、力なくただ呼吸のみを繰り返している
大切な同胞なのだろう。呼吸を確かめる度に歪む彼女の顔は、ひどく痛々しい
それでも確かめることをやめないのは、生きていることを諦めないのは、彼女の強さなんだろうか

全てのモノを確認した彼女が、再び俺たちの元に戻る
彼女の後ろには誰もついてきてはいない。彼女はひとりだった

時間を掛けて悪かった、と彼女が俺に伝える
そうだ。感傷に浸る間はない
いつ奴らがこの状態に気付くかも判らない

[赤彼岸]の花を千切り、そのまま口に入れる
全身が仄かに熱くなり、脳は焼け、視界が赤くなる。腹部の痛みが遠のいていく
[赤彼岸]の花にある中毒成分が、俺の脳を蝕んでいく
意識を死の花に刈り取られそうになりながら、なんとかそれを手繰り寄せる

朦朧とした頭で考える
今槍を引き抜けば、俺は死ぬだろう
身体に空いた穴は既に致命域。熱によって肉が一時的に結合したがために今は生きているが、引き抜けば出血多量での死は免れない
だがここで槍を刺したまま移動するなど、それこそ自殺行為でしかない。このまま激しい動きをすれば、結局のところ傷は開いてしまう

逆に、もうここで別れてしまうか?
どうせ死ぬならその方が良いかも知れない。彼女らを逃がすために、ここで一つ暴れてしまおうか
俺が暴れれば奴らの注意も俺に行く。彼女らが脱出できる可能性は飛躍的に高まるだろう
それが一番得策だ

それを、頭では分かっている。

、けれども

こわい、

そう、死ぬのが怖いんだ
分かっている。こんな仕事だ。いつかは死ぬものだ
そもそも俺は、半分以上死にたいと思ってこの仕事をしてきた
妹が死んでから、俺も同じ場所で。この迷宮で死んで朽ちてやると思っていた
それを願って生きてきた

だが、それでも死ぬのは怖い

そうだ。怖いんだ
例えば為す術なく訪れる死であればよかった。どうしようもないものに襲われて、来る死であればよかった
あの猛毒にやられて死にそうな時、俺は時が来たのだと思った
その時はただ死を享受していた

だが、今は違う
俺は今、自分で死を選び取ろうとしている
槍を引き抜こうとする右手は、かたかたと震えていた
生きていたいと、全身が叫んでいた
惨めなものだ
あれだけ死を望んで潜ってきたのに、いざ時が来れば生きたいと願っている
本当に惨めだ
けれども身体の震えは止まらない

魔法使いが近づいてくる
冷ややかな目で、俺に刺さった槍を握ってくる

ああ、それはそうだろう
足手まといが出来て、そいつが生きたいと思っているなら、さっさと殺したほうが合理的だ
こいつらしい考えだと思う
だが、身体は震えている
槍を握る手に、力が籠もる
怖い、怖い、怖い
恐怖だけが全身を満ちる
錯覚か、魔法使いの目がより冷ややかなものとなる
誰か、助けてくれ、

痛いとおもうけど、我慢して
彼女は落ち着いた声でそう言って、次の瞬間、腹部に熱が満ち満ちた

感じたのは死の冷たさでなく、生の熱さ
凍えていた全身が、急激に熱くなる
焼けるような痛み、ではなく焼けている痛み
それに絶えきれず、喉の奥から掠れた悲鳴が溢れる。痛みに涙が浮かび、口元からは涎がこぼれ落ちる
鼻に漂ってくるのは、肉が焼ける異臭
思わずその元を見る。彼女の指先が、俺と槍との接触点で赤く光っている
炎魔法Lv4、[赤き刃]
その力によって槍が赤熱し、結果俺の身体を焼いていく

少しずつ、槍が引き抜かれていく
俺の身体からは漏れ、それは熱によって泡立っていく
擦れて玉になった肉が膨張し、熱によって新たな肉に生まれ変わっていく
細胞が死んで出血した側から、新たな肉が再築されていく
この熱さは死に向かう熱さではない。生まれ変わる身体の産声なのだ

惨めに涙と涎を垂れ流しながら、魔法使いを見る
彼女の顔もまた歪んでいた
当然だ。この近距離で炎魔法を維持すれば、近くにいる彼女も影響を受ける
見れば彼女の掌、珠のような肌に、大きな火傷が出来ている
皮膚から血が流れ出ないほどの高熱だ。この火傷は何れ痛みこそ無くなれど、痕はいつまでも残るだろう

痛みに、熱さに、彼女の顔が歪んでいる
それでも手は休めない
ゆっくりと、術者自身をも焼きながら、槍は静かに引き抜かれていく

からん、と音がした
身体が痙攣している。それは、あの熱さと痛みが尾を引いている証拠だ
だがもう腹部に、あの異物が入っている気持ち悪さはない

床を見る
先程まで赤熱していた槍が、いつの間にか床に転がっている
俺の腹部には何もない。風穴だけが空いている
だが、血は出ていない

魔法使いが、肩で息を吐いている
手は熱で傷だらけになっている。こんな事をすれば当然だろう
彼女が言う。大丈夫? それはこっちの台詞だ
けれども彼女の言葉によって、俺はようやく自覚した

生きている

違う、生かされたのだ
彼女が俺を生かしてくれた。足手まといになるはずの俺を、生かすための手をとってくれた
勿論、その行動は打算からだろう。それ以外で俺なんかを生かす理由なんてないから
それでも、俺は知っている
彼女がどれだけ、自分の美しさを自慢に思っていたかを
それを維持するために、どれだけの苦労を重ねてきたかを
彼女の右手を見る。それはもう、美しいという言葉で表現するのは難しい
けれども俺はそれが嬉しかった

魔法使いに感謝しながら、包帯で腹部を巻いていく
暫く大きな動きは厳禁だと言われた。まあ当然か
[赤彼岸]のお陰で苦痛はまだ和らいでいるはずだが、本来なら痛みだけで死んでもおかしくない傷だ
激しく動いて傷を開けば、今度こそ死んでしまう

簡単に処置を済ませて、少女とともに部屋を出る
見た目や状況からなんとなく予想はしていたが、彼女はこうした隠密めいた作業を得意としているようだ
どの木の板を踏めば音がならないのか。部屋の構造上どう動けば気配を察知されないのか
最も前方に立ってそれを離しながら、扉などを見つめては耳を当てて奥の気配を確認する
その姿はまさしく盗賊

俺たちのことを説明しながら、彼女についてを聞く
彼女は言った。自分たちは盗賊ギルドの人間なのだと
そして彼女は語り始めた。今、自分たちに起きたことを
盗賊ギルドに起きた悲劇を
現在を

迷宮第二層は、元々みっつの勢力が混在している
そんな説明から、彼女の言葉は始まった
ひとつは迷宮の西側にある、ラミアが支配する[蛇の洞窟]
もうひとつが迷宮の東側に存在する、オークが支配する[豚の山岳]
そして最後の一つが、それらふたつの勢力に挟まれた[盗賊の根城]
即ち彼女たち盗賊ギルドの本拠地だ

そもそも、[港町]には内政を取り仕切るための、幾つかの集団が存在する
それがギルドだ
例えば街の商品の流通を取りまとめる[商人ギルド]
例えば冒険者の登録と排出を行う[冒険者ギルド]
例えばアーティファクトの管理とその特性を調べるための[魔術師ギルド]
そうした表では6つ存在するギルドと、13の有力貴族、そして4つの教会
合計23の集団が、全て同等の権力を以て[港町]を支配している

そして彼女が言うには、港町には更にもうひとつ
7つ目のギルドが裏側に存在するのだという
それが、[盗賊ギルド]だ

彼らの仕事は、これら23の集団が表立って行えない行為の代行
即ち暗殺と隠蔽
表立って動けない彼らは、迷宮に隠れ家を作り、普段はそこで冒険者のように振る舞って過ごすのだという

そこまでを話して、そこで盗賊の少女は一旦言葉を止めた
それは無関係の俺たちに、何処までを話せば良いのかを思案しているようだった
異臭の中、無言で道を進む
周囲にオークは見当たらない。居ないわけではないのだろう。おそらく彼女が、遭遇しないように道を進んでいるだけ
かなり高レベルの[隠密]スキル

そして彼女は語りだす

盗賊達の隠れ家たる[2F-盗賊の根城]だが、その内側は一枚岩ではないのだという
[鷹]と[鳩]
今現在、[盗賊ギルド]はそのふたつの勢力に別れている

[鷹]の勢力が目指しているのは、街からの独立
彼らは[盗賊ギルド]が潜在的に持つ、街に依存するという在り方を変えようとしている
なぜなら[盗賊ギルド]には自発的に生み出せるものが無いからだ。[商人ギルド]のように他国との貿易が行えるでもない、[冒険者ギルド]のように富を生む人材が居る訳でもない、[魔術師ギルド]のように価値のあるものを専有しているわけでもない
彼らが行えるのは殺しのみ。そして殺しとはそれを必要とする者の依頼があって初めて成り立つもの
[盗賊ギルド]だけは、他のギルドという存在があり、そこから依頼があって初めて存在できるものなのだという

では彼らは何を基としてギルドを保持するのか
それは即ち、迷宮の独占である
馬鹿らしい話だ、と盗賊の少女は言った
彼ら[鷹]派の盗賊たちは、このモンスター達や罠、その他の悪意に満ち満ちた迷宮を、自分の手にできると本気で思っている

そして彼女ら[鳩]派の人間は、それに真っ向から対立する思考を持っている
それは即ち、これまで通り[盗賊ギルド]を存続させること
例え仄暗い仕事でも、誇りはあるのだと彼女は語った
殺すのは相応の理由がある者のみ、そして相応の報酬がある場合のみ
自分たちは飽くまで手段として存在していればいい
迷宮に来る冒険者を理由なく惨殺し、我が物顔で迷宮に居座り続けるのは、最早盗賊足り得ないのだと
彼女は強い意志でそう言った

暫くぶりだ、報告が遅れてすまない
戦士だ

今現在、[3F-竜の墓]に居る
知っての通り"天秤の勇者"の拠点だな

色々と報告しなければならないんだが、如何せん向こうとの取引が難航している
一言で言えば、こいつはクソほど厄介な相手だ
必ず僧侶は取り戻したいが、ちょっとばかし時間が要る

とりあえずこの端末は魔力感知される可能性があるので、奴との交渉中は使えない
申し訳ないが、1週間ほど連絡を絶たせてもらう

全てが終わったらもう一度連絡する
暫く時間をくれ

とりあえず勇者に見つかる前に切る
それじゃあな

やあ、おはよう。戦士だ
本当に暫く振りだな

とりあえず落ち着いたので、これまで起こったことの報告に来たぞ
色々な事があったので報告も長くなるが、まあゆっくりと聞いてくれ

とりあえず前回は盗賊ギルドについて話していたんだったな
じゃあその続きから話そうか

さて、前回書いた通り、今現在[盗賊ギルド]はふたつの勢力に分離している
従来の在り方を変え、港町への依存を脱却し、迷宮を支配せんと企む[鷹]派と、
これまでの在り方を貫き通し、飽くまで潔白たる仕事であらんとする[鳩]派だな
そして俺たちが助けた盗賊の少女は、おそらく[鳩]派に当たる者らしい

真っ向から対立した二派ではあったが、分離当初、勢力の多数派は圧倒的に[鳩]派が占めていた
要因は幾つかある
まず盗賊という職業は、それ自体が慎重な人間の集まりだっていうこと
[盗賊ギルド]ってのは公にされない暗殺を依頼されるギルドだ。23の権力集団が揉み消す必要のある人物を、事故や自殺に見せかけて始末する
そうした隠蔽工作を行う関係上、彼らは殆どの場合慎重で疑り深い。慎重で疑り深いってことは、派手な改革を望まないってことだ
加えて、計画に無茶な要素が多すぎるのもあった
七層以上の深層が存在する迷宮において、盗賊ギルドが全貌を把握しているのはたったの一層
しかもその第二層すら、盗賊ギルドが支配しているのはただの一角だ
入り口を巧妙に隠し、他のモンスター達に見つからないようにして、それでようやっと迷宮の片隅に存在していられる

ただそうであるにも関わらず、[鷹]派には言い知れない不気味さがあった
無茶な条件であるにも関わらず、希望論ではなく、まるで予見した結果を語っているかのような淡々とした行動
それが逆に、彼らに真実味を与えていた

とはいえ数の有利は変わらない
[鳩]派は日に日に過激化していく[鷹]派をアジトから追放し、永久に除名処分とした
[盗賊ギルド]は大きく数を減らしたが、過激派は取り残され、再びの平穏を取り戻したかに見えた
その時は

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2018年04月05日 (木) 00:57:34   ID: 899HbTyd

凄い、続きが読みたい。

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