【艦これ】艦天って略すとカロリー低い食材みたい 第一章【天華百剣】 (73)

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エンド・オブ・オオアライのようです ※連載中のコラボ作品(◆vVnRDWXUNzh3作)
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川д川 ウホウホ!!鎮守府に颯爽と登場した貞子ゴリラ、トランスフォームウホ!! ※前作にあたるお話
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闇 を 斬 り 裂 き い ざ 咲 き 誇 ら ん 系 の や つ
天華百剣は僕から艦これのプレイ時間をごっそり奪い取った恐ろしいゲームです。よろしくお願いします


・提督の表記は『( T)』になっています。マスク超人です
・提督はドウェイン・ジョンソン並みのマッスルです
・ブーン系要素あります
・四部構成になります

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1520554882




【とある神社】



(;T)「……」


こんにちは、マッスルです。突然ですけど私、異世界に来ました
いや『この人いきなり何言ってんだ』『行こうと思って簡単に行けるもんじゃないぞ』みたいな視線を向けるのをやめてくれ
俺だって行けるなんて思ってなかったさ。この前までは


菊一文字則宗「……刀を降ろしてください」


事の発端は、帯刀した銀髪金眼のお姉さんこと『菊一文字則宗』
身体的特徴をもう少し詳しく挙げるならば、胸元ぱっかーん開いた面白い服装と、鎖骨よりやや下の位置に漢数字の『一』がデカデカと彫り込まれているって位か
https://tenkahyakken.jp/character/?page=21


彼女は歴史上に名を残した名刀に魂が宿り擬人化した、その名も『巫剣』。艦娘みてーなもんだと思ってくれればいい
言うまでも無いが、俺達の世界に巫剣なんて存在しない。刀は刀のままだ。じゃあどうして彼女と関わりを持てたかって?

説明したいのは山々だが、今ちょっとそれ所じゃねえ


「それは出来ない相談だな。菊」


前髪パッツンのスラっとした黒髪ロングで、少し前に流行った……胸空きセーター?まぁそんな感じのインナーに
黒コートとブーツでバシッと決めた、性格キツそうな顔つきのまな板女と
https://tenkahyakken.jp/character/?page=46


「いずみーの言う通りだ。どんなカラクリかは知らねえが、『禍要柱』から出てきた以上、手放しに再会を喜べるモンじゃねえ」


跳ねっ返り気味で、眩しいくらいの金髪をワイルドに伸ばし
肩と胸元だけばっくり開き、ファーの付いた服装をしている、なんだかライオンをイメージさせる女が
https://tenkahyakken.jp/character/?page=55


(;T)「……」


今にも斬りかかってきそうな形相で、刀を喉元に突き付けているのだから

天龍「殺るか?」チャキッ


背後から天龍の声と、自身の得物を手に掛けた時の、軽い金属音が鳴る
殺るか?じゃねえよここで『うん』って言っちまったら先に俺の首が飛ぶんだけど


「貴様……!!」


ほらお前がそんな事言うからパッツンの方の殺気がマシマシになっちまったじゃねえか


夕立「て、提督さぁん……」ギュウウウウウウ


お前は怖いからって俺のケツを抓るのを止めろ。時雨と言い山風と言い白露型の宿命か何かかよ


秋雲「えっ、ちょ、アレってもしかして新選……やっべ尊い!!超かっこいい!!撮るわ!!提督そのまま!!」

( T)「撮るわじゃねえ泣き黒子むしり取るぞ」


緊張感皆無かよ。異世界着いて早々連れてくる人選間違えたって後悔させんなよ


「ゴチャゴチャうるせえぞ。ジッとしてねえとこいつの首を飛ばす」

菊一文字則宗「待ってください、この方たちは僕の友人で……」


耳元でヒュウと風が切れる音が通り抜け、すぐさま頬に鋭い痛みが奔った
ジワリとマスクに血が滲む感覚が広がっていく。謎の特殊素材製だから染み抜き大変なんだぞ


「聞こえなかったのか?」


金髪は、刀の身に薄く流れる俺の血を払おうともせず
傍らの菊さんに冷たい視線を投げかけた。容赦無しかよ


菊一文字則宗「……」


これに対し、俺らの弁明をしてくれていた菊さんからも、僅かながら殺気が立ち込める
左腰に差し込まれた、刀の鍔を親指で押し上げ――――


( T)「二、三、質問いいか?」


――――る前に、口出しすることにした。鯉口を切るっつーらしいなあの動作

「黙れ、許可なく口を開くな」


どうやらパッツンは多少頭が固いらしい。まな板なだけに固いらしい


( T)「落ち着けよお嬢ちゃん……って、そりゃ無理な話か。よくわからん柱からマスクつけたオッサンがゲンムの変身シーンみてーに出てきたら」

秋雲「デンジャラスゾンビィ……」

「局長、そこの女から叩き切る許可を」

秋雲「なんでさ!!」

「まぁ待ていずみー」


口角を僅かに上げた金髪は、尚もギラついた瞳で油断なく俺を睨めつけながら
刀の切っ先を俺の喉仏へと向けた


「慎重に質問しなオッサン。くだらねー事なら二度と囀れなくしてやっからな」

( T)「おーおー、異世界の女もおっそろしいねえ……まず一つ、タバコいいか?」

「ダメだ」

( T)「愛煙家の肩身はどこいっても狭いな」


「余程お喋りに未練が無いと見えるが」


チクリと喉の皮膚が痛み、そこから垂れた血が鎖骨の間を通りシャツへと吸い込まれていく
ここに来てまだ二分と経ってないのに既に流血沙汰。幸先が悪い


( T)「口の減らねえ野郎は小心者が多いんだよ。あんま苛めんな」

「ッハハ!!確かにな!!」

「局長」


嗜めるようにパッツンが低い声で注意する。金髪はバツが悪そうに露骨な咳ばらいをした

( T)「二つ目だ。『時雨』っつー女の子を知らないか?ちょうど、ここにいる夕立みてーな格好してゴテゴテした機械背負ってた筈だが」

夕立「ぽい……」


夕立は既に俺のケツを抓るのを止めて、不安げに俺のベルトを掴んでいる
こいつの腰にも二対の山刀が『熊のお面』と一緒にぶら下がっているが、抜く気配はとんと無い


「……知ってるぜ。ちょうど菊が居なくなった時に、アンタらと同じように禍要柱の中から出てきた」


さっきまで俺達が閉じ込められていた、半径1.5メートルほどの円柱
天辺は槍の様に尖り、カラスの面が輪になって並べられているそれだ


( T)「無事か?」


「……」


金髪はしばらく視線を明後日の方向へと泳がせた後、意地の悪い笑みを浮かべた


「『斬った』……っつったら、どうする?」

( T)「……」

菊一文字則宗「局長、それは余りにもっ……」


声を荒げた菊さんを、軽く手を上げて制止する
この手の返し方、大体の魂胆は読めるもんさ。俺と『遊びたい』らしい


( T)「それを、『俺の口から言わせる気』か?」

「ク、クッ……」


金髪は喉の奥で、腹から込み上げるモノを抑え込んでいたが


「ッハハハハァ!!小心者が聞いて呆れるぜ!!安心しな、時雨はウチで保護してっからよ!!」


やがて堪えきれずに、堰が切れたように笑いだした


( T)「そりゃ良かった。蚤の心臓なりに精一杯の虚勢を張った甲斐があったってもんだ」

「良く言うぜ……アンタ、やるっつったらやる男らしい」

( T)「買いかぶり過ぎだ。女に手なんざ怖くて出せねえよ。刃物を握った美女は特にな」

「フフン。昔、痛い目にでも遭ったのか?」

( T)「……」チラッ


天龍「?」

夕立「?」

秋雲「アーッベ、ヤッベーヨマジ……」


( T)「毎日遭ってる」

天龍「オイなんで一回こっち見た?」

「ハッハ!!いやはや、あのクソガキもそうだが、アンタらも大抵面白ぇ連中だ!!」


もう一つ、豪快に笑った金髪は刀を降ろし、刀身に伝う血を軽く振り払った


( T)「いいのか?」

「構わねえよ。禍憑は赤い血を流さねえ」

( T)「なるほど、次からはもっと穏便に確かめてくれ……所で」

「……なんだ?」


一度、完全に消えた金髪の殺気が再び放たれる
パッツンも刀を構え直し、視線を横へと流した
菊さんは、今度こそ鯉口を切り
天龍も、唯一持ってきた自身の近接艤装を抜き放つ


( T)「そこの腐ったナメクジみてーなバケモンはお友達か?」


「ンなワケねえだ……」


四方から刃が輝きを放ち、背後に現れた異形に迫る


「ろォッ!!」


脚から腰へ、そして肩から腕へと、全身に無駄なく力を伝わせた薙ぎ払いが
歪んだ狐の面を被り、赤銅色の肌を滑らせる、ボロ刀を持ったバケモノを真っ二つにし


「斬るッ!!」


黒髪を靡かせ、深い踏み込みから放たれた突きで
的のような面を着け、長槍を持ったバケモノの首を刈り取った


菊一文字則宗「ハァッ!!」


目に見えた突きの動作は一度。だが衝突音は三度
神速の剣技に貫かれた斧持ちのバケモノは、自身の得物を振るう間もなく地に伏せた


天龍「オルァッ!!」


天龍すごい。なんか渦巻仮面の棍棒の怖い奴縦に両断した

( T)「そいつが例の『禍憑』かい?」

「ああ、ゆっくり説明してやりてえが……そうも言ってられねえらしい」


今し方消滅した四体に留まらず、地面から浮き上がった黒い染みから次々と『禍憑』とやらが現れる
ある意味深海棲艦より厄介じゃねーかここ普通に神社だぞオイ


( T)「天龍、手ごたえは?」

天龍「ねえよ。ザコだなこりゃ」

( T)「だってさ夕立。やる?」

夕立「む、無理ぃ……」

菊一文字則宗「ここは僕たちに任せてください。大した数じゃありませんし」

( T)「いや大した数じゃないっつっても……」


既に禍憑とやらは二十を超え、未だ増え続けている。普段どんだけの数相手してんだよ


天龍「連れねえこと言うなよ菊さん。俺にも楽しませろ」

「ハハ、そっちの剣士も大分イカレてんだな」


立ち位置は自然と、互いの背をカバーし合うように円となった
ビビって戦う気の無い夕立と、なんかずっと興奮してる秋雲はその中に収まる

「丸腰の旦那は引っ込んでろって」

( T)「マッスルを舐めんな。肉体こそ最強の武器よ」

「あの女にして、この主ありだな……」


パッツンの吐き捨てるような呟きは、当然俺の耳にも届いた。あいつ何やったの?


「精々、死なねえように気をつけな。行くぜッ!!」


金髪の号令を口火に、俺含む五名は禍憑の包囲網へと飛び出した


(#T)「マッスル~~~~~~~~~~!!!!!割と強めキック!!」ゴウッ!!


近くにいた、赤銅のモノより一回り小さな青銅色の禍憑に前蹴りを食らわせる
大きさの割に結構な重量を感じたが、そのまま構わず蹴りぬいた


(#T)「Wasshoi!!」ゴウランガ!!


赤く禍々しい目玉がプクリと膨らんだかと思うと、すぐさま破裂
靴底の形にめり込んだ顔面を中心に、後頭部から汚泥の色をした体液が噴出した
外気に触れたそれは、ガソリンのようにすぐさま蒸発していく
たった一撃で死んだ禍憑の体も、黒い靄を立ち上らせながら消え始めていた


(;T)そ「ちょっと引くくらい弱い!!」


天龍がボヤくのもわかるわ。これなら素のイ級の方がほんのちょっと強い


夕立「提督さん!!右っぽい!!」

( T)「右が何!!!!??????」

夕立「こっち見なくていいから右ーーーーーーーー!!!!!」


『ごう』と風が唸り


(;T)「ッ!!」


視界の端から棍棒が迫る。咄嗟に右肘で受け止め、頭を守った

(;T)「いっ……」

(#T)「ってえなクソが!!!!!」


常人ならそのまま肘ごと頭をスイカ代わりにぶち割っただろうが、相手が悪かったな
こちとらマッスル、最強の漢よ


(#T)「ラァッ!!」


押し当てられたままの棍棒を、禍憑の右腕ごと一息に跳ね上げる
がら空きになった顔面を、左手で鷲掴みにし――――


(#T)「ザコ助がァ!!」


握り潰した。が、決定打には成っていない
先ほど蹴り殺した青銅色とは違い、多少の耐久力があるようだ。跳ね上がった棍棒を、狙いも定めず乱暴に振り落とした

しかしこちとら単調な、それも不意打ちでもなんでもない真正面からの攻撃を受けてやるほど甘くは無い
身体を捻り、軽く躱す。地面を打ったそれは、重い衝突音を響かせ砂利を舞い上げた


(#T)「フンッ!!」


手首と思わしき場所を、踵で踏み抜く。硬めの泥……つーかぶっちゃけ犬のウンコっぽい感触が靴底に広がる。きっしょ
『ぶちゃり』と粘着質な音を立て、手と腕の繋がりが断たれる。潰れた顔面から、声の枯れた烏のような断末魔が上がった

(#T)「もうッ……」


棍棒の柄を足裏で巻き込んで蹴り上げ、両手で握りしめる
狙いは胴のど真ん中。大きく振りかぶって……


(#T)「いっぱぁぁぁぁあああああああああああつ!!!!!!!」


打ち抜いた。水風船が如く弾け飛び、辺り一面に赤銅と汚泥の雨が降り注ぐ
やったぜ。今日はホームランだ


( T)「はい次……」


天龍「オラ終わり!!」ザンッ!!


( T)「はえーよ」


天龍が最後の一匹を、ちょうど今斬り殺した。俺が二匹ぶっ殺してる内に、既に女性陣がその殆どを始末していたらしい
カッコつけたのにリザルトは俺が最下位かよ……三十匹くらいいたのに二匹って……


菊一文字則宗「て……提督さん?」

( T)「うん……って、なんだお前らその顔」


菊さんを始め、金髪とパッツンがポカりと口を開け、鳩が豆鉄砲くらったかのような目で俺を見ている
なんかやっちゃったのだろうか?ズボンの尻が破けてパンツが見えてしまっているのだろうか?


「あ、あ……アンタ、人間……だよな?」

( T)「どこ行っても疑われるが、まぁ一応」

秋雲「提督人間だったの!?」

( T)「泣き黒子ちーぎれろっ♪」ギュウウウウウウ!!!

秋雲「あーーーーーーーーーーー!!!!!!秋雲さんのチャームポイントォォォオオオオオオオオ!!!!!!!!」

「奴の言っていた通り人間の皮を被ったバケモノ……斬った方が良いのでは?」ヒソヒソ

「そう……いやいや待ていずみー。その判断は母上殿に仰いでからでもいいだろ?」ヒソヒソ


( T)「聞こえてんだよなぁ……」

菊一文字則宗「お二人とも、禍憑では無いモノに刀を向ける方では無いので大丈夫ですよ。多分」

( T)「最後の二文字が無けりゃ死ぬほど安心してたってのに。で、何か可笑しな点でも?」

天龍「オメーの存在なんじゃねーの?」

( T)「やかましいわ超面白生命体トランスシップが」

菊一文字則宗「ある意味では天龍さんが正しいでしょうね」

( T)「傷つく」

菊一文字則宗「いえ、侮辱の意味は無くてですね。禍憑とは本来、巫剣にしか倒せない存在なんです」

夕立「でも天龍ちゃんが倒したっぽいよ?」

菊一文字則宗「それは恐らく、禍憑と『深海棲艦』は似た者同士……だからでは無いでしょうか?」

( T)「でもアレだぜ?深海棲艦は人間でもぶっ殺せるぜ?」

菊一文字則宗「えっ、それ初耳なんですけど」

天龍「あー、気にすんな菊さん。これレベルのキチガイ集団の話だから、大体の人間にゃ深海棲艦は倒せねえよ」

( T)「人類の深刻な筋肉不足」

秋雲「いてて……つまりアレでしょ?巫剣と禍憑は真逆の性質を持ってるから、ぶつけたら死ぬとかそういう設定なんでしょ?」

天龍「設定」

菊一文字則宗「概ね合っています。例えどんなに筋肉があって、どんなに強力な武器を持っていても、撃破までには至りません」

菊一文字則宗「達人が禍憑一体を相手して、辛うじて防御や怯ませる程度の働きしかできませんね」

( T)「それって達人が俺レベルの筋肉を持っていたら……?」

菊一文字則宗「提督さん、僕の話聞いてますか?」

「よっし!!腹は決まった!!アンタら、めいじ館まで同行願えるか?」


そうこうしている内に、話し合いのケリは着いたらしい。納刀した金髪が呼びかけてきた
『めいじ館』。表向きは洋風茶房だが、巫剣達が集い暮らす拠点だと以前に菊さんから聞いた
ウチで言う所の『鎮守府』だろう。幽霊とか妖怪とかケツを執拗に狙う巨大タコとか出ないだろうな?


( T)「そりゃ願ったり叶ったりだ。信用云々はさて置いてな」

「禍憑の中には人に化けるモノもいる。警戒は当然だ」


パッツンは刀こそ納めど、依然として鋭い視線を向けてくる


( T)「さいで……これ以上怪我しなけりゃそれで結構」

「悪かったよ、ちゃんと埋め合わせはしてやるから……ええと?」


そういや、自己紹介もまだだったか。来て数分で接敵して美女とお知り合いになるってなんだよ異世界物の黄金パターンかよ
棍棒を手放し、金髪に向かって手を差し出した


( T)「マッスルだ。好きに呼べ」

「……それが本名ってワケじゃないだろ?」

( T)「『名は体を表す』ってな」

「本名も顔も伏せてそのセリフたぁ、ますます胡散臭ぇオッサンだ……」


呆れた笑みを浮かべつつも、金髪はその手を握り返してきた


「長曾祢虎徹。よろしく、あー……マッス……旦那でいっか」

( T)「名乗った意味」

「ほら、いずみーも」

「ッ……和泉守兼定だ」

( T)「いずみーだな、覚えた」

「和泉守兼定!!」


オイオイ、弄り甲斐あるぞこいつ

長曾祢虎徹「そんじゃあ立ち話も何だし……旦那?」

( T)「何?」

長曾祢虎徹「連れのちっこい茶髪がヤベェ事になってんぞ」


秋雲「こてっ……兼さ……」ゼハーゼハー

菊一文字則宗「秋雲さん、どうしたんです!?」

夕立「秋雲が死ぬっぽーーーーーーい!!!!!」ビャアアアアア!!!


( T)「……アレは……ほら、アレだよ」

( T)「尊みが凄くてマジ無理しんどい……状態……?」


長曾祢虎徹「……?」

和泉守兼定「……?」


天龍「今のは俺でも意味わかんねえぞ」

( T)「2010年代特有の現代病を19世紀の人間にどうやって説明すりゃいいんだよ……」


明治改め、『銘治三十二年』。時刻は夕暮れ逢魔時
クソッタレ幽霊によって引き起こされた、マッスル鎮守府史上最も長い怪異が、始まったのであった





艦これ × 天華百剣


『艦天って略すとカロリー低い食材みたい』 第一章


『銘治時代にメイド服のなんかこうクソ萌えるやつ。キンニク ウソ ツカナイ ジャングル オレ マモル』



―――――
―――



【めいじ館前】デデッドン!!ボンボン!!


再会は割とあっさりだった


時雨「ああああああああああああ提督うううううううううう!!!!!!みんなあああああああああああ!!!!!」ビャアアアアア!!

:(;T):「しぐ……元気そうd……背骨……折れ……」


背骨が軋むほどの熱烈な抱擁を除けば


「何処行ってたんですか菊一さあああああああああああグバッ!!」

菊一文字則宗「あ、あはは……心配をお掛け……苦し……かしゅーさん……?」

夕立「女の子が血ぃ吐いたっぽおおおおおおおお時雨あああああああああ!!!!!」ビャアアアアアア!!!


@#_、_@
 (  ノ`)「……」


長曾祢虎徹「あー、母上殿。言いたいことはわかる。とりあえず、上げて貰っていいか?」

@#_、_@
 (  ノ`)「……見知らぬガキ数人と、血みどろ覆面男をかい?いつからめいじ館は拘置所になったんだかね?」

長曾祢虎徹「意地悪しないでくれよ。菊とそこの時雨見てわかるだろ?お迎えが来たんだよ」

:(;T):「呑気に……話す前にッ、こいつを引き剥がしてくんない……?俺にも……お迎えが来る前に……」ゴギィ

時雨「遅いいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!もう一か月ううううううううううう!!!!!!!」ビャアアアアアア!!!

:(;T):そ「一か……!?」

秋雲「感動の再会だねぇ天龍ちゃんwwwwwwww」

天龍「涙が出るなwwwwwwww腹が捩れてwwwwwwww」

:(;T):「てめーら後で覚えて……時雨お前絶対殺しに掛かってんああああああああああああ!!!!!」

時雨「死ねえええええええええええええええ!!!!!!!!」

:(;T):「死ねええええええじゃねえええええええええええええええええ!!!!!!」

@#_、_@
 (  ノ`)「フゥー……閉店前とは言え、店先で騒がれちゃ商売上がったりだ。入んな」

天龍「お邪魔しまーす」ステステ

秋雲「すげー、本格的な西洋館……」ステステ

夕立「うう……泣いたらお腹空いたっぽい……」ステステ

:(;T):「おじゃま……邪魔なのはお前だ放せチクショ……もおおおおおお!!!!!」

時雨「もおおおおおおおおおおはこっちのセリフだよ!!!!」

長曾祢虎徹「仲が良くて結構だな」ステステ

和泉守兼定「そのまま鎖で縛りつけてやりたい所だ」ステステ

菊一文字則宗「あ、あの……僕も、助けて……」

「バカバカバカもおおおおおおおおおおお!!!!すっっっっごい心配したんですからあああああああああ!!!!」


俺達が『抱擁』と言う名のベアハッグから逃れられたのは、連中が館内に入ってしばらくしてからだった

陽が今日の業務を終えて、三日月がやる気無さそうに顔を覗かせた頃
俺達は『めいじ館』とやらに到着した。背骨もバキ折れかけた

白塗りの壁、紺色の切妻屋根に、観音開きの雨戸が付いた引き上げ色の窓
建物に向かって右側はテラス席。窓から漏れる明かりが、木造のテーブル席を朧げに照らしていた
戸はアーチ形になっており、傍には『めいじ館』と縦書きの看板が掛けられている


( T)「しかしお前……しばらく見ない内に就職先見つけたのか?」

時雨「冗談じゃないよ……給仕の真似事なんてさせられてさぁ。僕だよ?される側じゃないかな?」

( T)「根拠を示せよ」


時雨はいつものセーラー服では無く、紅紫色をした着物にフリルエプロンを縫い付けた和風メイドみてーな恰好をしていた
そして菊さんに抱き着いていた、艶のあるショートカットの女の子も同様に。なんかさっき血ぃ吐いて菊さん共々グロいことになってるが
https://tenkahyakken.jp/character/?page=27


「時雨さんは凄かったですよ。態度は不良娘だけど本当は真面目なしっかり者……」

「とかそういう事全然なくて、来てからずっとお母さんに叱られながら渋々仕事して、それでもめげずにどこかでサボってましたからね」

時雨「薬」

「くすっ……グボァ!!」

(;T)そ「わぁ大惨事だ」


この……吐血?喀血?まぁどっちでもいいや。なんか見覚えがある
何がとは言わんが、英霊集めて人理を修復するソシャゲで……あっ

( T)「あー……加州ってそういう……」

「し、失礼しました……私、加州清光と申します」

( T)「あーーーーー……沖田総司の……」


菊一文字則宗「ほらかしゅーさん、口元の血を拭かないと」

加州清光「じ、自分で出来ますから……わ、凄くいい匂いするハンカチですね」

菊一文字則宗「柔軟剤使ってますから」

加州清光「柔軟剤?」


菊さんにせよ加州にせよ、新選組最強の剣豪が使っていた刀だ。見た目は違えど、どこか姉妹のような関係に見て取れる
しかし沖田の病弱設定が両者の間で極端すぎる。菊さんはなんかこう、割と身体弱いキャラだけなんだが
加州に到っては某人理修復ゲーのアルトリア顔よろしく吐血芸みたくなってる。目の前で血を吐かれたら正直ビビる


加州清光「さぁさぁ積もる話もあるでしょうし、どうぞ中へ!!」

( T)「ああ、お邪魔……ッ!?」


ふと、鋭い殺気を感じて振り返る。『ざぁ』と風が通り抜け、木葉が不穏を感じ取ったように騒めき始めた
『何もいない』。嫌な感じだ。これなら禍憑が出てきてくれた方が安心できたってのに


( T)「……時雨」

時雨「ん?ああ、今の?めいじ館の人……巫剣のだから大丈夫だよ。僕もここに来てから度々向けられてるし」

( T)「バリバリ殺気向けられてて大丈夫って何~~~~~~~~~?」


何?めいじ館の日常茶飯事なの?

加州清光「あ、あはは……もうバレちゃいました?」

菊一文字則宗「提督さん達は身元が知れてませんからね。気分を害されたのなら、お母さんに代わって謝罪します」

( T)「つまり監視と……当然の措置だが、ちょいと目立ち過ぎだ。謝罪はいらない」

加州清光「時雨さんと言い、向こうの人たちは勘が良すぎません……?」

( T)「自室に忍び込んでアレやコレやするバカに鍛えられてな」

時雨「ふてぇ野郎もいたもんだね」

( T)「うるせえバカ」

加州清光「確証が取れるまで窮屈だと思いますが、ご勘弁くださいね。さ、お母さんがお待ちですよ」

( T)「全く、ここでも楽しく過ごせそうだ」

時雨「ねぇ提督。その顔の怪我どうしたの?」

菊一文字則宗「それh」

( T)「禍憑にやられた」

菊一文字則宗「……ええ、禍憑に」

時雨「……ふぅ~ん。あんなザコに、ねぇ」

( T)「俺が普通の人間って事を忘れたまんまかよ」

時雨「はいはい普通普通。さて、かしゅーの飲み物に薬まーぜよっと」

加州清光「すっごく不穏な事言いながら入っていかないでください!!」


すっかりいつもの調子を取り戻した時雨は、一足先にめいじ館へと入っていき
『薬』というワードに過剰な反応を示した加州もそれに続く。薬嫌いなのだろうか


菊一文字則宗「……問題でも?」

( T)「虎徹といずみーが大怪我する」

菊一文字則宗「お二人が?めいじ館所属巫剣の中でも屈指の強者ですよ?」

( T)「そうだな、それが?」

菊一文字則宗「……なるほど、監視を付けられるのも納得です」

( T)「俺ァ逆に驚いてるよ。あのアホを鎖に繋げず今まで無事に過ごせてたことが」

菊一文字則宗「僕らのお母さんも、提督さんに負けず劣らずの傑物ですから」


そう言って菊さんは、誇らしげに胸を張ったのであった――――

―――――
―――



めいじ館とやらは、俺が想像していたより遥かに大きな館だった
館内に入って通されたのは、すぐ右手にある噂の洋風茶房。L字カウンターに幾つかのテーブル席が並んでいる
テラス席に通じる壁は全面ガラス張りになってあり、陽の光を存分に取り込める造りとなっている
天井には大人しめの装飾を施した木製のシャンデリアが吊り下げられ、『明治』時代にはかなり貴重であろう『電光』が店内を照らす
閉店前だとは言っていたが客は居らず、時雨と同じ『制服』を着た女の子が何人か後片付けをしながら此方を訝しげに伺っていた


@#_、_@
 (  ノ`)「……」

( T)「……」


そんな中、俺はリアル花園勇花にパンチパーマ掛けたような女性とテーブル席で対面しているのであった
身の丈、体格共に俺と並び立つ女性を未だかつて見たことが無かったので、ぶっちゃけ怖くて何話したらいいかわからん
結果として無言でけん制し合ってるっぽい雰囲気になり、なんかこう和気あいあいとお喋り出来そうも無かった


「お、お、お茶です……」


( T)「あ、こりゃどうも」

@#_、_@
 (  ノ`)「ご苦労だね。下がっていいよ七香」


七香「はいっ!!失礼します!!」


お茶を出してくれた筆舌しがたい複雑な服を着た女の子も、盆を抱えて逃げるように立ち去る始末だ


時雨「だんまり決め込んでないでさ、そろそろお互いの事情を説明したらどうなのさ?」

菊一文字則宗「時雨さんに同意です。この方々が敵ではない事は僕が保証します」


所がどっこい、同じテーブルに着くトラブルの当事者二人はどこ吹く風と言わんばかりにお茶を啜って話を催促する
菊さんが時雨と入れ替わったのも何となくわかるわ。肝の据わり方が同レベルだもの

( T)「えーっと、初めましてマッスルです。これ、つまらない物ですが……」


差し当たって、手土産として持ってきた仙台銘菓『萩の月』を差し出す
決して東北ミヤギから収穫したモノではなく、ちゃんとした既製品だ


@#_、_@
 (  ノ`)「賄賂かい?」

菊一文字則宗「お母さん」

@#_、_@
 (  ノ`)「冗談さ」

( T)「いえ、仙台銘菓『萩の月』です」

時雨「なんでそのチョイスなの?」

( T)「えっ……美味しいじゃん……?」


意外と高いんだぞこれ。ニ十個入り二箱用意して万札飛んだんだぜ?
こんなもん頻繁に収穫できるミヤギって金の生る木(人)じゃね?


@#_、_@
 (  ノ`)「話には聞いていたが、本当に胡散臭い男だね。時雨も本名は知らないと……言うじゃないか?」


『お母さん』は梱包を丁寧に捲り取り、箱を開け
適当に選んだ萩の月を一つ、俺に返してきた


@#_、_@
 (  ノ`)「ん?」

( T)「……」


なるほど、隙の無い人物だ。菊さんが傑物と呼ぶのも頷ける
包み紙を破り、ふんわりカステラとなめらかカスタードクリームで構築されたケーキを口にして見せた
うん美味い。高いだけあって余所のお土産とは一線を画すわ


( T)「賄賂。ええ、間違いないでしょうね。甘いお菓子ほど心を揺さぶるものは無い」

@#_、_@
 (  ノ`)「クク、言うじゃないか……いや、失礼をしたね。別の支部で毒を仕込んだ梱包物を送られる事件があったもんで」

( T)「生憎、姑息な手は好かん性質でしてね」

時雨「提督、敬語使えたんだ」

( T)「あのな、俺アラサーだぞ?」

@#_、_@
 (  ノ`)「『流石千母(ちほ)』だ。菊が世話になったね」

( T)「いえいえこちらこそ。時雨は手が掛かったでしょう?」

@#_、_@
 (  ノ`)「全くだ」

時雨「否定してよ!!」


やりとりを聞いていた巫剣や、少し離れたテーブルに座るウチの連中から軽い笑い声が上がる
堅苦しい雰囲気は大分解れたようだ。この様子だと、時雨も大きな問題を起こさず良くして貰っていたらしい


@#_、_@
 (  ノ`)「自己紹介も済んだ所で……本題に入ろうか」

( T)「……」

@#_、_@
 (  ノ`)「聞かせてもらおうか。この騒動の原因を」


『原因』。冗談みてーな幽霊が、笑えないレベルの呪いをまき散らした結果が今だ
時雨とは会えた、菊さんも送り届けた。だがこれで終わりではない。俺達は元の世界に帰らねばならない


( T)「……突拍子も無い、与太話でよければ」

@#_、_@
 (  ノ`)「与太話でも、信じる他無いね」

( T)「では」


食いかけの萩の月をお茶で流し込み、事件の発端から今に至る経緯までを話し始めた――――

最初に、俺達のいる世界について軽く説明をした
俺らが菊さんからこの世界について聞いていたように、此方でも時雨がある程度の説明をしていたようでこれはすんなり終わった

そして次に騒動の発端について。原因はご存知ジャパニーズメジャーゴースト


v川д川v<イエーーーーーー!!!メッチャホリデーーーーーーーーー!!!!


貞子(贋作)である。何がホリデーだ


ある種の霊場になっているウチの鎮守府に現れたこいつは、謎のパワーアップを経て無差別に呪いをバラまいた
具体的な被害で言えば、ウォースパイトの艤装に追いかけ回されたり金玉砕かれかけたりパンツの柄を全部ハート柄に替えられたりなど
早霜に到っては憑依された上に呪い殺されかけたが、我が艦隊の誇る霊能力者やヤバめの連中、そして俺の筋肉を以てして物理的解決

しかし、重大な問題が一つ残っていた。『時雨』の失踪と、入れ替わりに現れた巫剣『菊一文字則宗』の出現である


( T)「貞子が言うには、呪いによって発生した非常に稀有な『神隠し』だそうです」

@#_、_@
 (  ノ`)「……」

( T)「あ、タバコいいですか?」

@#_、_@
 (  ノ`)「構わないよ」


ようやく一服できる

神隠しとは霊場や神域での『失踪』を意味する。古来では行方不明者を神や妖怪の仕業だと考えられていたらしい
誰しもがこの言葉を聞けば、ピンとくるだろう。ジブリ映画のタイトルにも使われているし
だが、俺が今し方『非常に稀有』と言ったように、今回の神隠しは通常のケースとは異なっていた

クソ幽霊の言葉を借りて言うならば、『神隠しとは一方通行であって、消えることはあっても現れることは無い』

時雨が消えたことは神隠しとしての説明がつくが、菊さんが現れたことに対しての説明はつかないのだと言う
例えるならば、メールの送受信。貞子は『時雨』というメールを、何処かのサーバーに送ることは出来るが
『菊さん』というメールを意図的に、それも送信と同時には受信できない。そもそも、メールとは『送信者』がいて初めて成り立つコミュニケーションだ

では何故、俺達の世界には存在しない『巫剣 菊一文字則宗』は入れ替わりとして現れたのか?


( T)「この世界と俺達の世界での神隠しが同時に発生し、この事態に到ったと」


俺達の世界で時雨が消えたのと同時に、此方の世界で菊さんが消える。これにより互いの世界で『一人分の隙間』が出来る
その隙間を埋めるように、二人は入れ替わったのではないかというのが貞子の推測だった。奴にとっても未知の出来事だったそうで、これが想像の限界らしい
時雨の原因は勿論あのクソッタレ幽霊だ。では菊さん側の原因は何か?

@#_、_@
 (  ノ`)「青く光るの禍要柱のすぐそばに居た菊が、凡そ一か月前に消えたんだったね……虎徹」


長曾祢虎徹<ワハハ

天龍<ワハハ


@#_、_@
 (  ノ`)「虎徹!!」

長曾祢虎徹「ん、お、おお!!そうだぜ母上殿。旦那、禍要柱の説明は必要か?」

( T)「霊脈とかいう謎のアレから……こう、なんか吸い上げる柱って菊さんが言ってた」

長曾祢虎徹「説明が上手いな菊」

菊一文字則宗「僕まで語彙力が無いと思われてますねこれは。原因は?」

和泉守兼光「『特異型』禍要柱の破片を京都支部に送り解析を依頼した。が、まさか結果が出る直前に戻って来るとは……」

長曾祢虎徹「それも面白集団引き連れて、な」

( T)「言われてんぞ秋雲」

秋雲「面白筆頭の自覚を持ってほしい」

菊一文字則宗「つまり今の段階では何もわかっていないんですね?」

和泉守兼定「小烏丸や副司令でさえ『前例がない』と言った事態だ。我々全員、長丁場を覚悟してたさ」

時雨「こっちは堪ったもんじゃなかったよ。一か月もさぁ……一か月だよ!!」

( T)「ごめんさっきから一か月一か月っつってるけど……ごめん、一か月?」

時雨「提督は寂しくて発狂してたんじゃないの!!!??」

( T)「落ち着け。こっちは一週間の話だ」

時雨「一週間も僕のこと放っておいてあqwせdrftgyふじこlp;@!!!!!!!」ドンドンドン!!

( T)「落ち着けって悪かったよぶっちゃけ三日位放置してた」

時雨「ぴいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!」ドンドンドドンドンドド!!!!!

( T)「遠征行けば三日いないとかザラだろ……机を叩くなお茶が零れる」


ざっと計算して俺ら世界の二日で一週間って所か。だいぶユルい精神と時の部屋かよ

時雨「っ~~~~~~~……ハァ、わかったよ。迎えに来てくれたから許すよ……半分は」

( T)「残り半分は?」

時雨「鎮守府に帰れたら。帰れるんでしょ?来れたんだから」

( T)「アハハハハ」

時雨「……ァァァァァァ」


時雨は口から羽虫のようなか細い音を上げると、ゴンと机に突っ伏し


時雨「嘘でしょ……」


ゴロンゴロンと額を転がし始めた


加州清光「えーと……難しい話はよくわかんないんですけど、そもそもどうやってここへ?」

( T)「こっちは原因が明確だったからな。貞子の呪力とやらを溜めてごり押しで神隠しを起こした」

加州清光「つまりー……そのー……力技ですね?」

( T)「うん」

時雨「いつも通りだぁー……」

( T)「心配すんな。筋肉があるから何とかなる」

時雨「死ね……」

( T)「お前が死……いや流石に今のは俺が悪かった。ちゃんと解決方法は聞いてあるさ」

時雨「ほんと!?」ガバッ

( T)「まことまこと。ただ手段が不明瞭だから今すぐにってワケにはいかない」

時雨「死ね……」ゴン

( T)「話を最後まで聞けや」

和泉守兼定「『手段』と言うのは、禍要柱を原因とした神隠しか?」

( T)「ご明察。俺が菊さんの他に面白集団を連れてきた理由もそれだ」

世界という概念には、生物と同じく二つの作用があるらしい

一つ目は、『自己修復力』。怪我や病気を自ら治す力だ
俺ら世界からの時雨の消失はこれに該当する。別世界へと転移した時雨を元に戻すために、世界そのものが引力を発するのだ
ただしその力は『個人』だけではとても弱く、自己修復力だけでは解決できない

二つ目は、『生体防御反応』。分かりやすい例としては咳やクシャミだ
菊さん世界に入り込んだ『時雨』という異物を排除しようとする力が働く
ただしこれも『個人』だけでは弱いもので、排出するよりも先にその世界の住民として『定着する』方が早いそうだ

この二つの作用を前提に貞子が提示した解決法は


( T)「えーと、まず時雨がいる場所と、この世界の住民である菊さんが発する僅かな引力を指針にしーの」

( T)「神隠し上限の五名を三日ほど溜めた呪力でゴリ押し送信しーの」

( T)「到着後は此方側での神隠しの原因を突き止め、実行に移しーの」

( T)「時雨含む五名の引力及び排出力を使って受信者の貞子の元へ。もとい、元の世界へと帰還すると」


( T)「……」


( T)「何言ってんだこいつって顔やめろ」

長曾祢虎徹「なんも言ってねえよ」

@#_、_@
 (  ノ`)「早い話が、禍要柱を使った神隠しさえ起こせば帰れるって事だね」

( T)「そうです」

@#_、_@
 (  ノ`)「……御華見衆!!気をつけェッ!!」ガタッ!!

( T)そ「ひえっ何こわい」ガガタン!!


女将の号令で、菊さんを含むめいじ館の人員が直立不動の姿勢を取った。こわい、ケジメさせられる


@#_、_@
 (  ノ`)「礼ッ!!」

( T)「えっ」


その全員が、深々と腰より低い位置に頭を下げた


加州清光「あいたっ」ゴンッ


一人は机に頭をぶつけた

@#_、_@
 (  ノ`)「苦難を承知で菊を送り届けてくれた事、感謝の念に堪えない。我々御華見衆は貴殿らの帰還を全力で支援させて貰うよ」

@#_、_@
 (  ノ`)「宿や食事はこのめいじ館で面倒を見る。経費が必要なら幾らか工面しよう」


えっ嘘……願ったり叶ったりだしその上みんな礼儀正しい……
爪の垢持って帰ってウチのヤバめの連中の飲み物に煎じたい……


(;T)「いえそんな此方こそクソガキの面倒見て戴いてその上ご支援までして戴くなんて……」

時雨「宿の当ては?」

(;T)「無い」

時雨「お金は?」

(;T)「売れそうなものは……持ってきた……」

時雨「でも信用無いから売れるかどうかわからないよ?」

(;T)「信用は無くても筋肉がある」

時雨「どの道、監視の意味でも巫剣と行動しなきゃならないんだしサッサと了承しなよ」

(#T)「なんでお前が偉そうにしてんだよお世話になったんだろが……」ギチギチギチ

時雨「あああああああああああ一か月振りのアイアンクロォォオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」


「騒がしい連中じゃな」


頭上から聞こえた声に、思わず時雨の顔面から手を放してしまう
天井を見上げると、開け放しの天窓からカラスが一羽、羽音を響かせながら侵入し


夕立「っぽ、ヒィイ!!」


よりによって夕立の頭の上に止まった


カラス「そなたが小童の言うておった『提督』とやらか?」

( T)そ「カラスが喋った……」


カラスが喋った

夕立「てってててて、提督さん、とっ、取ってぇ~~~~~……」

天龍「夕立」

夕立「て、天龍ちゃあん……」

天龍「撮るから動くなよ」

夕立「鬼!!悪魔!!」ビャアアアアアア!!!


天龍は真顔でスマホを取り出し、撮影を始める。夕立はピシリと固まり一歩も動けずにいた
生きたカラスって間近で見る事ないから意外と大きくて怖い。喋るし


カラス「スマンな。ちょうど良い所にお主の頭があったもんでの」

夕立「喋るのも怖いぃぃ~~~~~!!!!股の間から石を投げつけないと死ぬぅ~~~~~!!!!」

秋雲「夕立ちゃんそれ迷信ね」

( T)「親の死に目に会えねえとかそんなんじゃなかったか?」

時雨「いてて……シンプルに呪われるんじゃないの?」

カラス「お主ら落ち着き過ぎじゃろ。妾もうちょっと笑える反応期待してたのじゃが」

( T)「カラスってな、食えるんだぜ?」

カラス「やめんか!!怪しい覆面も相まって洒落になっとらんわ!!」


怯えるようにバタバタと羽を動かすカラス。夕立は白目を剥いた


@#_、_@
 (  ノ`)「小烏丸。止まり木の嬢ちゃんが泡吹いて倒れる前にこっちへ移りな」

カラス「ん、お、おお!?スっ、スマン!!他の連中は平然としておるから怯えていても結局は同類かと思ってつい!!」

天龍「失礼なカラスだな」

カラスは夕立の肩、そして腕を伝い女将が叩いたテーブルへと移る


@#_、_@
 (  ノ`)「ゆき」

「はいはーいっと」


カウンター席の傍にいた桃色髪の女が返事をする
時雨が身に着けているような紅紫色の制服ではなく、肌着……肌着かあれ?
なんか上半身HOT LIMITみてーなノースリーブに、ダボッとした袴をラフに着こなしている
https://tenkahyakken.jp/character/?page=83


「どうぞ!!」

@#_、_@
 (  ノ`)「ありがとよ」


おしぼりを受け取ると、四つ折りにしてテーブルに置く
カラスはその上に乗ると、?き上げるかのような仕草で足を拭いた


( T)「カラスは捌く時に黄色の糞が出てここで食欲が若干失せるし、生肉の色は赤みが濃くてグロいんだが」

カラス「解説せんでいい!!」

長曾祢虎徹「ハハッ、若旦那はあんだけ大騒ぎしてたのにな」

( T)「若旦那?」

長曾祢虎徹「めいじ館には母上殿の他にもう一人、巫剣使いが駐在してんだ」

加州清光「時雨さんの為に、城和泉さんと一緒に今日も調査に出向いてくれているんですよ」

( T)「そりゃ礼を言っとかないとな」


カラス「コホン」


( T)そ「カラスが咳払いした……」


カラスが咳払いした

カラス「自己紹介をさせてもらおう。妾は『小烏丸』。御華見衆司令部の伝令役を務めておる」

( T)「この時代のカラスは賢いなぁ。食ったら頭良くなるかな?」

カラス「事あるごとに食おうとするのをやめんか」

菊一文字則宗「小烏丸さんも巫剣ですよ」

( T)「カラスも刀を握る時代か……」

菊一文字則宗「そうじゃなくて」

小烏丸「妾は鳥を通じて会話出来る力を持っておるのじゃ……面倒くさい男よの」

秋雲「つまりケータイっすか?」

カラス「け、けぃたい?」

( T)「無視して構わん。マッスルだ。時雨が世話になったな」

カラス「妾は二度ほど顔を合わせただけじゃがの……『びすまるく顔』と言われたが、どういう意味じゃ?」

( T)「えっ、何その熟語俺も知らない」

時雨「ビスマルク顔だったんだよ」

( T)「意味わかんない」

カラス「錯乱した小童だと思っとったんじゃが、それがいつもの調子のようじゃな……さて、異世界からの来訪者よ」

( T)「はい」

カラス「話は聞いておった。めいじ館の世話になることに引け目を感じるようなら、『奉公人』として勤めてはどうじゃ?」

夕立「咆哮人……うるさい人っぽい……」

天龍「奉公な」

( T)「つまりー……俺も時雨みてーな制服を着て、喫茶店で接客をしろと?」

長曾祢虎徹「ブボハァ」ブシャァ!!!

秋雲「ギャーーーーーーーーーーーーーーーッス!!!!!!!!!!!!!!」ビッチャアア!!


虎徹がお茶を吹き出し、向かいに居た秋雲がおっ被った。何か可笑しなことを言ったのだろうか?
それとも一定時間経過するとお茶を吹き出す機能でも付けているのだろうか?巫剣って面白いな

長曾祢虎徹「わっ、悪いwwww急にぶち込んでくるもんだから耐え切れなかったwwwww」

和泉守兼定「はしたないぞ局長。貴様もおぞましい事を言うんじゃない。めいじ館が潰れるぞ」

( T)「そこまでかなぁ……」

@#_、_@
 (  ノ`)「案外珍獣目当てに客が集まるかもね」

和泉守兼定「正気か母君?」

( T)「珍獣って」

菊一文字則宗「あははっ、面白いじゃないですか」

( T)「他人事」

カラス「何の仕事を任せるかは追々決めていけばいいじゃろ……どうじゃ流石の母よ。悪くない提案と思うがの?」

@#_、_@
 (  ノ`)「……」


女将は直ぐには答えず、萩の月を一つ手に取り口にする
豪快な見た目とは裏腹に、その所作には令嬢のような上品さが垣間見えた


@#_、_@
 (  ノ`)「……時雨の言葉に間違いはない」

( T)「はい?」

@#_、_@
 (  ノ`)「恩義に報いる意図も当然あるが、お前さん達がどういう立場の人間にせよ、此方は治安を守る立場としてアンタらを野放しには出来ないのさ」

( T)「ええ、それは当然かと」


また、項にチクりと刺すような殺気が放たれた。この感覚も久々だなぁ

@#_、_@
 (  ノ`)「……この一か月、時雨と接した。可愛げのないクソガキだが、めっぽう腕が立つ」

(;T)「……っあー……心労をお察しします」


不安要素の一つが見事に的中した。やっぱり暴れたらしい


時雨「ふふん。伊達に鎮守府のトップに立ってないよ」

( T)「無視して」

時雨「事実なのに」

@#_、_@
 (  ノ`)「事実かどうかはさて置き、御華見衆司令部は『艦娘』及び『提督』とやらには一定の警戒をせねばならないと判断を下した」

@#_、_@
 (  ノ`)「この子が背負ってた、『艤装』とやらも含めてね」

( T)「……」


ナリはガキか若い女。だが艤装を背負えばかつての軍艦一隻分の力を持つ面白い連中、『艦娘』
銘治三十二年。西暦が俺達の世界と同じなら百十八年も前だ
その当時の造船技術がどうだったか知りもしねえが、オーバーテクノロジーである事は確かだろう


@#_、_@
 (  ノ`)「この場を預かる者としても、司令部の意見には賛同できる。だが私は、私たちは一か月、このめいじ館で時雨と接した」


女性にしては大きな手が時雨の頭に乗せられ、くしゃりと髪を撫でつける


@#_、_@
 (  ノ`)「クソガキだが、悪い子じゃない。それが我々の判断だ。この子を育てたアンタも、同様の人間だろう」

時雨「んん!!」


邪魔臭そうに女将の手を払いのけた時雨だが、顔を見れば唇を尖らしていた
若干照れているようだ。このじゃじゃ馬が一か月も俺以外の人間の元で暮らしていた辺り
こいつも女将と同じく、めいじ館の人々をある程度信用しているのだろう

@#_、_@
 (  ノ`)「それを踏まえてもう一度頼もう。めいじ館に居てくれないかい?身勝手ではあるが、我々が『安心』する為に」

( T)「……」


俺は別に、ハナから御華見衆に敵対する気も無かったし、これ以上お世話になるつもりも無かった
元はと言えば此方の、クソ貞子が原因で起こった事件だと考えていたからだ。過失は俺ら側にあると
しかし困ったことに女将は、めいじ館の安心、安全名目の監視付きで俺らに宿を提供すると言った。『頼む』とまで付け加えて
ああ、弱った。何一つ反論の余地がない上に、この提案はめいじ館側の『自己都合』だ。俺らの『借り』にならない

断る理由も無く、断れば失礼に当たる。元々、願ったり叶ったりの提案だ


( T)「お言葉に甘えましょう。時雨共々、お世話になります」


今度は、俺が深々と頭を下げた


カラス「決まりじゃな。副司令には妾から伝えておく故、旅装を解いてゆるりと過ごされよ」

( T)「心遣い感謝する」

カラス「構わぬよ。それより、変な気を起こして巫剣に襲い掛からんようにな」

時雨「それは絶対無い」

天龍「ねえな」

夕立「無いっぽい」

秋雲「無いねー」

カラス「……お主、男色か?」

( T)「ちげーよ理性がマッスルなだけだ」


どいつもこいつもよぉ

@#_、_@
 (  ノ`)「さて……一先ず」


長曾祢虎徹「こんなビショビショになるとは……」フキフキ

秋雲「よく考えたら虎徹さんからお茶吹きかけられるってご褒美じゃね?捗るわ……」


虎徹に手拭いで髪を拭かれていた秋雲は心なしかご満悦だった。何が捗るのだろうか?


@#_、_@
 (  ノ`)「風呂だね」

―――――
―――



( T)「よっこら筋肉」ドサッ


ウチの連中が巫剣と仲良く風呂に入っている間、俺は各々に割り当てられた部屋に荷物を運んでいた
『悪いが離れは若が使っている』との事で、めいじ館二階の巫剣用居室を使って欲しいとのことだ。寝れんのなら倉庫で良いのに
いやしかし豪華なお部屋だ。ふかふかベッドにアンティーク物の古時計おじいさんの時計。暖炉まで設置してある
ここがホテルなら一泊うん万円のお値段はするだろう。巫剣は普段からこんな良い部屋で寝泊まりしてんだってから恐れ入る


( T)「ここに比べりゃウチはあばら家……いや、幽霊屋敷だな」ボフッ


あんっ……ベッドふかふか……このまま気持ちいいまどろみに身を任せてしまいそう……
だが眠る前にやることが一つ。姿の見えないもう一人の入居者にご挨拶をしてもらおう


( T)「よう、そこの嬢ちゃん灯り消してくれ。飯の時間になったら起こしてもらえねーか?」


「」


( T)「……」


「」


( T)「……お前のかーちゃんでーべーそー」


瞬きの一瞬の闇が開けると、首筋に氷のように冷たい物が押し当てられた
身体の上には小娘一人分の重さ。顔にはくすぐったい感触。ピンク色の、毛糸のマフラーだった



「お母さんを馬鹿にするのは許さない……」


初夏だと言うのにマフラーで口元を覆い隠した、黒いセーラーと黒髪と、黒づくめの少女が馬乗りになっている
瞳だけは深い赤色だったが、暖色には程遠い冷たい殺意を放っていた。閻魔あいかよ
https://tenkahyakken.jp/character/?page=91


( T)「返事をしねーからだろクノイチ。独り身の男の部屋に侵入するたぁとんだお転婆娘だ。女将も苦労するな?」

「黙って」グイッ

( T)「おいおいおいそいつぁお転婆が過ぎるぞ。自慢の一張羅を汚ぇ血で汚したかねえだろ?」

「……確かに」

( T)「素直かよ。名前は?」

「これから始末される人間に答える名など無い……!!」

( T)「茶房での話聞いてなかったのか?女将は俺らと仲良くするっつってただろ?」

「……小夜左文字」

( T)「素直かよ。マッスルだ」


SCP-835-JPみたいな見た目してんのに妙に素直な彼女も巫剣か。小夜左文字ってどっかで聞いたことがあるぞ
めいじ館を訪れてからちょくちょく感じてた殺気はこいつからか。可愛い顔してエグい腕前してやがる


小夜左文字「貴方、何しにきたの……?」

( T)「菊さん送り届けて時雨迎えに来たんだよ」

小夜左文字「お母さんを狙いにきた刺客……?」

( T)「お耳がバカなのかなぁお嬢ちゃんは?」

小夜左文字「何故私の気配に気づいたの……?」

( T)「前世は兎だったもんでな。オオカミの気配には敏感なんだ。特に、毛皮に血が沁み込んだ雌のオオカミにはな」

小夜左文字「……」


小夜左文字「そんなに臭う……?」

( T)「ジョークをまともに受け止めるんじゃねえよ会話しずらいなぁもう」

小夜左文字「貴方、面白いわ。刀を突き付けられて、そこまでベラベラ喋れるなんて……」


目元がスゥっと細くなる。そこから、笑みにしては冷たい視線が投げかけられた
何もない部屋でポツンと『おかめ』の面が飾られているような不気味さがある


( T)「御華見衆ってのは何の悪さもしてねえ奴を問答無用でぶっ殺す組織なのか?こええなぁ。戸締りしとこ」

小夜左文字「誰だって蚊に刺される前に殺しておきたいものでしょう?」

( T)「じゃあ蚊取り線香でも焚いとけ」

小夜左文字「フ、フフ……」

( T)「ワハハ」

小夜左文字「フッ!!」ガンッ!!


短刀の柄で顎を強く殴りつけられる。おかげで眠気でぼんやりとしていた頭がいくらか冴えた


(;T)「ってえ……」

小夜左文字「貴方がお母さんの害虫になるかどうかは、これから判断することよ。まずは……」


マスクの下に、薄手の革手袋に包まれた親指が差し込まれる


小夜左文字「ふざけた覆面に隠された素顔を暴かせてもらう」

(;T)「や、やめといた方がいいぜ……」

小夜左文字「なぜ?」

(;T)「俺のあまりの美男子振りに、今夜は眠れなくなるだろうからな……イヒ、ヒヒヒ」

小夜左文字「そう」


そっけない返事と共に片眉を僅かに上げた小夜左文字は、躊躇いなくマスクを引き剥がす
同時に、驚きで目がカッと見開かれた。悲鳴こそ上げなかったが、呼吸も一瞬だけ乱れる


「あーあー……人の忠告には耳を貸すもんだぜ小夜左文字ちゃんよ」


隠されている物の全てが美しいとは限らない。『臭い物には蓋』と言うだろ?
ワケあって焼け爛れた顔面を持つ俺もその一つだ。エルム街の悪夢新作のオファー、いつでもお待ちしています


小夜左文字「……」

「見惚れるのに飽きたら元に戻して貰ってもいいかな?」

小夜左文字「まだダメ」


今度は俺の顎を掴むと、口の中を調べ始めた。なかなか肝の据わったお嬢ちゃんだこと
他にも、耳の裏や中、瞼の裏、果てには鼻の中まで丹念に調べ上げられた後


小夜左文字「怪しい物は無い……」


ようやくマスクが元に戻されたのであった


( T)「よう、次はどこを調べるよ?ケツの穴か?それともタマの裏か?」

小夜左文字「調べて欲しいのなら、復讐用の小道具を持って来てあげる」

( T)「冗談じゃねえ。俺にそんな趣味はねえぞ」

小夜左文字「残念……」


ようやく声に感情が籠ったかと思えばこれかよ。ウチの連中も大概だが巫剣もどっこいどっこいだな

小夜左文字「今日の所は見逃してあげる……でも、忘れないことね。私はいつでも、貴方を監視してる……」


首筋から小刀が離れ、右腿に括りつけられた鞘に収まる
小夜自身も俺の体から降り、乱れたマフラーを整えた


( T)「おはようからおやすみまでってか。嬉しくて涙がでらぁ」

小夜左文字「それとは別に……今の出来事は復讐帳に書いておくから」

( T)「えっ何?」

小夜左文字「『お母さんを馬鹿にした。☆☆☆☆☆』」


罪状と思われる行為に『星五つ』と付け加え、真っ黒な背表紙の手帳にペンを奔らせる
待って怖い。復讐帳とかいうワードが既に怖い。俺らの時代ならちょっと痛い子扱いになるだけなのに刀持ってる手練れなだけで現実味が凄い増す


小夜左文字「『私をバカと呼んだ。☆☆☆☆』」

( T)「意外と根に持つな……復讐帳ってのはなんだ?」

小夜左文字「わかりやすく言うと、『いつか殺す手帳』」

( T)「ご説明どうも。破り捨てちまえそんなもん」

小夜左文字「ちなみに、星五つが最高点。『復讐帳を破り捨てろと言った。☆☆☆☆☆』」


ダメだ発言する度に殺意が増してやがる。こんな面倒なのにこれから四六時中監視されんのかよ


( T)「あー……もういいや。ほどほどに頼む……」ボフッ


急に疲れがドッと湧き出て、またベッドに身を預けた


小夜左文字「直にお風呂の順番が来るけど?それと、食事も」

( T)「お気遣いどーも……だが……今日は……寝……」


抗いがたい眠気に委ね、瞼を閉じる。銘治時代一日目は


( T)「スヤ……スヤスヤ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

小夜左文字「……『寝息がうるさい。☆☆』」


寝落ちで幕を閉じたのであった―――――

―――――
―――



( T)「スヤスヤ!!!!!!!!」


「……」


( T)「スヤァ!!!!!!!!えっ!!!!!?????シェイプ・オブ・ウォーターがアカデミー作品賞受賞?????!!!!!!!!!!」


「お早うございます!!!!!!!」


(;T)そ「うわぁ何すごい元気いっぱいな朝のご挨拶!!!!!!!??????????」


ハツラツとした起床ボイスに飛び起きる。こんなアラーム音設定した覚えはないぞ
手探りでスマホを探り、目の前の光景に寝ぼけた頭も回転を始めた。そういや菊さんの世界、『銘治時代』とやらに来てたのだった


「ありがとうございます!!この抜丸、元気だけは抜きんでている自負があります!!」

(;T)「あー……?」


ベッドの隣には、蝶を模した髪飾りを付けた少女。寝ぼけてんのかなんか知らないが、両脚の靴下の長さが違う
両腰がパックリと開いたホットパンツを穿いており、その右にはポーチ、左には刀が差さっていた
https://tenkahyakken.jp/character/?page=19


(;T)「初めまし、て……?」

抜丸「茶房でお顔を拝見しましたが……覚えておられませんか?」

(;T)「ぉぉ……悪い、昨日は疲れて周りに気を向ける余裕が無かったからな……」

抜丸「艦娘の皆さんも、昨晩は浴槽で一斉に沈んだとのことです!!」

( T)「そういや菊さんも食堂で寝落ちしてたな……」


異世界旅行は体力をエグいくらい使うらしい。俺を始めウチの連中は体力には自信がある筈なんだがな

( T)「そんで……抜丸?」

抜丸「はい!!不肖抜丸!!お母様の指示で起き抜けの挨拶に伺いました!!」

( T)「……時雨は?」

抜丸「提督さんの自室に忍び込もうとしたところを抜け目ない小夜さんが確保!!今は朝食の支度を嫌々しています!!」

( T)「嫌々」


やっぱりあの黒髪マフラー只者じゃねえ。早速早朝の悪戯に訪れやがった時雨をとっ捕まえているとは
安心半面、少々残念でもあった。残念ってなんだ?頭大丈夫か俺?


抜丸「差し出がましいようですが、朝食の前に入浴をお勧めします!!それと、お洗濯ものは此方でお預かりを!!」

( T)「洗濯?」

抜丸「覆面に血が付いたままでは、皆さん落ち着かれないでしょうし!!」


そう言ってポーチから折り畳み式のコンパクトミラーを取り出し、差し向ける
昨日、虎徹に斬られた血みどろマスクのままだった。うっかりしてたな


( T)「あー、洗濯は自分でやる。それと、ちょっとむこう向いてろ」

抜丸「はい?こうですか?」クルリ


小夜左文字はあの調子だったが、この子なんか危なっかしい雰囲気がある
指定暴力団マッ鎮組の組長なんでこういうのには乳首と同じくらい敏感なんだ。素顔は見せない方が良さそう


「よい……しょっと。替えはどこやったかなぁ」モゾモゾ

抜丸「……あの、下着を穿き替えるのは入浴後の方がよろしいかと進言します」

「ちげーよ娘っ子の背後で下着脱ぐほど変態じゃねーよ」


とんでもない誤解が生じ掛ける前に、予備のマスクに付け替える
血の染みと切れ込みが入ったこのマスク、予備にも限りがあるので捨てるわけにもいかない。後で洗って縫っておこう

( T)「お待たせ。そんじゃ、浴室に案内……」


ふと、くだらない不安が過ぎる。俺の大嫌いなラブコメの、黄金パターンの一つ


( T)「……まさかと思うが、今誰も入ってないよな?」

抜丸「ご安心を!!夜間警備に出ていた方々は既に入浴を済ませております!!」

( T)「そりゃ、結構なこって……」

抜丸「……たぶん!!!!」

( T)「……そうか」


やっぱりどこか危なっかしい雰囲気のあるこの巫剣を、信じていいのかは未だ疑問だった

時刻は六時前だが、茶房は既に開店準備に追われていた
案内役の抜丸が言うに、ここはモーニングもやっているらしく朝から大賑わいだそうだ
廊下を挟んで茶房と隣接している厨房からは、焼きたてのパンの匂いが漂い食欲を刺激する


( T)「……」


「スゥ……スゥ……」


そして廊下で寝間着姿の女の子が寝っ転がってた
https://tenkahyakken.jp/character/?page=16


抜丸「蛍丸さん!!こんな所で寝てたら風邪を引きますよ!!」

蛍丸「ん……蛍は大丈夫……スゥ……」

抜丸「ごめんなさい提督さん!!わたくし、蛍さんを自室まで運びます!!浴場は廊下の突き当りを右手に進んで頂ければ!!」

( T)「ああ、うん。大丈夫」

抜丸「お召し物は後でご用意させていただきます!!では!!」

蛍丸「スゥ……」


( T)「……」


個性に溢れすぎだろ巫剣。これマジで退屈出来ねえぞ


( T)「しまったな……浴場の確認して貰おうと思ってたんだが……」


まぁ抜丸もいねえっつってたんだから信じるか……大丈夫だろ……

( T)「ここだな」


めいじ館一階、向かって左端に浴場があった。その正面には、中央に石囲いの池がある中庭
そして浴場とは反対側に位置する場所に離れがあった。あれが若旦那とやらの居室だろう


( T)「若旦那……旦那っつーくらいだから、野郎だろうな……」


巫剣は『巫剣使い』とやらと契約することで本来の力を発揮すると以前に菊さんから聞いた
女将もかつてはその一人だったそうだが、どうやら他とは違う……なんてったっけ?いつ?なんとか?能力だとかを持っていたらしい。スタンドかよ
それに、巫剣使いはどれも武道の達人である事が条件の一つとされている。どんな漢なのだろうか。会うのが楽しみだ


( T)「よっせ」ガラッ


などと、考え事しながら脱衣所の引き戸を開けると――――




(*゚ー゚)「!?」


( T)「!?」




先客がいた。女……おt、男だ。顔が女々しすぎて一瞬ワケわかんなくなった
『二次元かよ』ってくらい整った顔立ちをした少年は、今まさに下着を脱ごうとしている最中だったらしく
そのままのポーズで固まりながら此方を見ていた


(*゚ー゚)「……」

( T)「あー……おはよう。良い朝だな兄弟?」

(*;゚ー゚)「い」

( T)「い?」


(*;Д;)「いやああああああああああああああ!!!!!ケダモノォォォオオオオオオオオオオオ!!!!!!」


( T)「スゴイシツレイ」


中身まで女々しいのかよ

―――――
―――



(*;゚ー゚)「大変失礼を致しました……」

( T)「ここに来て一番度肝を抜かれたよ」


大絶叫の後、新選組メンバーがなんだなんだと押しかけてきて更に盛り上がったり
メシ食ってたウチの連中まで集まっては『秋雲「顔が良い」』『天龍「全部脱げ」』などと囃し立てたりして、『若旦那』が落ち着くまでやや時間を要した
今はお互いに露天風呂で汗を流しているが、心なしか距離がある。まだ警戒されてる感ある


(*;゚ー゚)「ぼ、僕、こんな顔でして……銭湯で襲われかけたのも一度や二度の話じゃなくて……」

( T)「苦労してんだなぁ」

(*;゚ー゚)「時雨さんからも『提督は男色だから気を付けなよ』と言われてたので、その……混乱しちゃって……」

( T)「そうか。あいつの言う事は半分嘘だからこれから信じるな。後でシバき回しとくから」

(*;゚ー゚)「いえ!!真に受けた僕が悪いのですから怒らないであげてください!!」

( T)「俺の問題なんだよなぁ……名前は?」

(*;゚ー゚)「椎名 美琴と申します」

( T)「嘘だろオイ」

(*;゚ー゚)「どうしました?」

( T)「いや、知り合いの変態と名前がほぼ一致してたから……マッスルだ」

(*;゚ー゚)「へ、変態さんとですか……僕、自分の名前あんまり好きじゃないんです……しぃちゃんだなんて呼ばれるし……」

( T)「あだ名まで一緒かよ」


眉毛を八の字にして口元まで湯につかり、ブクブクと泡立てる。長めの髪も相まって、拗ねた少女にしか見えない
これだけ見た目が幼く、更に性格まで気弱で、しかも女所帯に一人とは。巫剣のオモチャにされるのは想像に難くない
心身共にマッスルな俺ですら艦娘のオモチャなのだ。恐らく、そのベクトルは多少違うのだろうが

( T)「歳は?」

(*゚ー゚)「十六です」


うんまぁそんなもんだよな。それでももうちょい幼く見えるが
声も高めだしまだ変声期来てないんじゃないか?本当に男か?なんか恐くなってきた。ホルモンの分泌量がアレなのだろうか
でも俺が十六の時ってもっと色々とボーボーだった気がするんだが。ボボボーボ・ボーボボだった気がするんだが


(*゚ー゚)「……あの、覆面は外されないのですか?」

( T)「ワケありでね。ここの男手はお前さん一人か?」

(*;゚ー゚)「使いの方が訪れることはありますが、常駐しているのは僕だけです」

( T)「苦労してんだな……」

(*;゚ー゚)「いえ!!とても良くしてもらっています!!ただ……」

( T)「ん?」

(*;゚ー゚)「お、男と思われていない節が多々ありまして……その……」

( T)「ああ……なんかこう、あっぴろげなんだな」


異性ではなく同性としての付き合いを余儀なくされているらしい。大体の予想はつくが普通にセクハラだろ
どんな顔するかな……お前さんみてーな状況をハーレムっつって、娯楽作品の一ジャンルとして確立してるっつったら


(*;=Д=)「まっするさんみたいに威厳があって男らしければ違ったんでしょうが……」

( T)「俺なんてまだまだケツの青いガキさ。それに、お前さんとそれほど変わらない環境下にいるが、気苦労は絶えねえよ」

(*;゚ー゚)「そうは見えませんけど……?」

( T)「半月に一度の周期で深夜に発狂する奴とか酷く酔うと全裸でそこらウロチョロする奴とか時雨とかいるからなぁ」

(*゚ー゚)「あー……」


時雨の下りで妙に納得している辺り、この気弱な優男も相当思い知らされているみたいだ
改めて考えるとなんであいつらどいつもこいつも常識を知らないんだ。帰ったら半殺しにしてやろうかな?返り討ちかな?死んじゃうな?

( T)「っと、そういやあいつの為に色々と調査してくれてるみたいだな。ありがとよ」

(*;゚ー゚)「ほとんど進展はありませんでしたけどね……ただ」

( T)「ん?」

(*゚ー゚)「尻尾は……掴みかけている気がします」

( T)「妙な物言いだな?」

(*゚ー゚)「僕らの気のせいって線も拭えないので何とも言えないのが現状ですね」

( T)「ふむ……後で聞かせてもらえるか?」

(*゚ー゚)「勿論です」


どうやら若干拗れた案件のようだ。調査に出向いた若旦那が神妙にならざるを得ない何かが絡んでいるらしい
穏やかに解決するワケが無いとは思っていたが、これは少々筋肉張っていかねばならないだろう


(*゚ー゚)「長湯しちゃいましたね。出ましょうか」ザバァ

( T)「せやな」ザバァ

(*゚ー゚)「……」

( T)「どうした?」

(*゚ー゚)「何を食べたらそんな身体が出来上がるんですか?」

( T)「高蛋白食材、良質な油脂、熱量を補う炭水化物、ビタミンミネラル豊富な緑黄色野菜と果物」

(*゚ー゚)「ほぁー……」


なんだか熱っぽい視線を向けられたので、俺は咄嗟に乳首を隠した

―――――
―――



( T)「抜丸 is どこ!!!!!!!!!」


珈琲の匂い漂う食堂で一斉に『黒い霧』が舞った
俺の恰好を見た全員が口に含んでいた香ばしいそれを吹き出したのだ


( T)「お召し物用意しますってお前これメイド服!!!!!!!」

天龍「なんでそんなもん着てんだよwwwwwwww」

( T)「風呂から上がったら脱衣所にこれが!!!!!!!!」

秋雲「待っwwwwwちょwwwwwwスケブ取って来るから待ってwwwwww」


何故か俺のサイズにピッタリのメイド服が用意されていたのだ
風呂に入る前に着ていた服は何故か回収されており、これを着る他なかった。洗濯は自分でする言うたやんけワレェ!!


@#_、_@
 (  ノ`)「おや、どこから引っ張り出したんだかね」

( T)「こいつは何の冗談なんですかね女将!?」

o川;゚ー゚)o「お、お似合……大きさはピッタリですよ」

( T)「彼も含めて!!!!!」


新キャラかと思った?残念、女装した若旦那でした。意味わかんねえよなんで現状ここにいるたった二人の男が女装してんだよ
しかも一人は滅茶苦茶完成度高いんだよ。白粉に口紅引いてカツラまで被ってガチなんだよ。そこらのファッションモデル顔負けなんだよ
怖い……元々の素材が良くてそれをちょっと弄ったらここまで化ける男怖い……こんなんに乳首を凝視されてた事実も怖い……

o川*゚ー゚)o「このめいじ館は御華見衆の支部ですが、表向きは洋風茶房なので日中は変装をして接客業をしているんです」

長曾祢虎徹「で、有事の際にはいつもの若旦那に戻って活動するってワケだ。いやしかし……wwww」

和泉守兼定「似合わん」

長曾根虎徹「ブホッwwwwwwww」

加州清光「ゲボッwwwwwwww」


しかめ面を崩さない、いずみーの率直なご感想に虎徹は腹を抱えてテーブルへと突っ伏し、加州は笑いながら血を吐いた


菊一文字則宗「あはっ、提督さんの巨体だと女装も意味を為しませんね」

( T)「冗談じゃねえよ……そもそもなんで俺に合うサイズのメイド服があるんだよ……」

@#_、_@
 (  ノ`)「そりゃアタシのだよ」

( T)「まだ夢を見てるみたいだ俺にも珈琲をくれコールタールみてーに真っ黒でドロドロでシャキッと目が覚める奴を砂糖多めで」

秋雲「ダブルで飲むと疲れが全部吹っ飛んで驚くほどの元気が体の芯からわいてくるやつじゃん」

o川*゚ー゚)o「えと、普通の珈琲なら今すぐにでも」

( T)「悪いな」


ぱたぱたと小刻みに足を動かし、厨房の方へと向かう若旦那。もはや若女将の風貌だった
女将が「座りな」と促したので、いずみーの隣に腰を下ろす
しかめ面を更に歪ませて、身じろぎをしてやや距離を取られた。結構傷ついた


@#_、_@
 (  ノ`)「御華見衆の副司令はけったいな趣味の持ち主でね、時折可笑しな衣装を送りつけてくるのさ」

( T)「袖を通したことは?」

@#_、_@
 (  ノ`)「バカ言いな。バカ息子共が卒倒しちまうよ」

( T)「お子さんが?」

@#_、_@
 (  ノ`)「長女と末の子は夫と一緒に富士見支部で暮らしてる。双子の兄弟は横須賀の海軍で根性叩き直されてるよ」

( T)「富士見支部?」

菊一文字則宗「『みやこ屋』という湯屋です。長女の流石阿音(あね)さんはそこの支部長を務めているんですよ」

長曾祢虎徹「流石の家系は御華見衆と共にあると言っても過言じゃねえしな」

( T)「へえー……では何故ご子息は海軍に?」

@#_、_@
 (  ノ`)「鍛錬と……社会勉強も兼ねてるかね。巫剣使いとしての才能はあるんだが、どうにも組織に身を置くことに慣れちゃいない」

( T)「厳しい上下関係と、同僚との付き合い方を学ばせていると」

天龍「おめーも行ったらどうだ社会不適合者」

秋雲「上官にタメ口利くどころか罵倒するオッサンだしねー」

( T)「俺は既に海軍だし、お前らの発言は全部ブーメランだ。時雨と夕立は?」



「時雨さん達なら、台所で小夜さんのお手伝いしてますよ」



( T)「ん?」

「朝ごはん、どうぞ!!」


テーブルに差し出されたのは、お手本のようなワンプレートモーニングだ
カリッと香ばしく焼けたバターロールにハムエッグ、レタスとトマトのサラダが添えられており、デザートには半分に切ったオレンジ
おおよそ明治時代らしからぬ見慣れた朝食に面食らった俺を、昨日の上半身HOT LIMIT女は不思議そうに眺めた


「お嫌いなものでも?」

( T)「ああ、いや、余りにも旨そうなんでちょっと感動してただけだ。確かー……『ゆき』だったな?」

「はい♪不動行光と申します!!」

( T)「えっ」


ええ……不動行光ってアレじゃん……信長が持ってた九十九髪っつー唐物に並ぶオキニの短刀じゃん……
あれって本能寺の変で焼失したんじゃなかったっけか……歴史の謎が紐解けるんじゃないのか……?

不動行光「どうかされました?」

( T)「ちょっと腹の虫がのたうち回っただけだ。いただきます」

不動行光「フフッwwwどうぞ!!」


明らかに俺の恰好を見て耐え切れずに笑っただろこいつ。本当にこのまま接客業やってやろうか


@#_、_@
 (  ノ`)「今日の予定を伝えとくよ。食べながら聞いてくれて良いからね」

( T)「はい」


うめえなこのパン。筋肉(からだ)が歓喜に打ち震えはち切れそうだ
美味しいパンで体がパンパン!!!!!つってな!!!!!ガハハ!!!!!!


@#_、_@
 (  ノ`)「朝食を食べ終えたら、一先ず工房で時雨が背負ってきた『艤装』に不備や不具合がないかの確認をして貰う」

( T)「聞くのが怖いのですが、奴は一発でもぶっ放しましたか?」

@#_、_@
 (  ノ`)「忌々しい事に一発も砲撃せず自前の『クナイ』でウチのと渡り合ってたよ」

(;T)「本当にすみません……」


あいつの親の顔が見たい


和泉守兼定「親の顔が見たいとつくづく思っていたが、覆面とはな……」


いずみーがボソッと呟いたが、何言ってるのか全然わからなかった。俺は努力してる


@#_、_@
 (  ノ`)「その後は御華見衆、巫剣、巫剣使い、そして禍憑や『凶禍』などの説明を受けて貰う」

加州清光「京都支部からソボロ先生とつーちゃんの来訪予定がありますよね。打ってつけじゃないですか?」

@#_、_@
 (  ノ`)「そりゃあ良い、張り切ってくれそうだ。時雨やアンタらを連れてきた特異型禍要柱の情報も聞けるだろうし、一石二鳥だね」

天龍「上手くいきゃあ直ぐに解決するってことか」

( T)「この手の問題が上手く解決した試しがあったか?」

天龍「間違いなく長引くな」

@#_、_@
 (  ノ`)「後はー……そうだね、ここで暮らすに当たって何かと入り用の物もあるだろう。菊、虎徹、終わったら街を案内してやりな」

菊一文字則宗「了解です」

長曾祢虎徹「おう、迷子になるんじゃねえぞ?」

天龍「言われてんぞオッサン」

秋雲「ちゃんと大人の人に自分のお名前言えんのオッサン?」

( T)「オッサンってな、五歳児につけられる相称じゃないんだぜ?」

@#_、_@
 (  ノ`)「まずは服を買う事だね。代金は此方で立て替えておくよ」

( T)「何から何まですいません……」

長曾祢虎徹「まー、そっちの世界の服装はここじゃ目立つからな」

( T)「鏡見たことあるか?」

長曾祢虎徹「おっ、どういう意味だい?」

( T)「なんでもねえよ」


こいつらはテメーの恰好に疑問を抱いたことが無いらしい


<待って待って待って!!


( T)「ん?」


厨房から、若の慌ただしい声と二人分の足音が響く
ドタドタとした勇み足で食堂に踏み込んで来たのは


「提督ってのは誰!?」


鮮やかな赤髪をツインテールにした、ピンク色に花柄の振袖を着た女の子だった
https://tenkahyakken.jp/character/?page=57

( T)「えっ、俺だけど……?」


「むぅ……」


険しい顔をして近づいてきた女の子は、テーブル越しに身を乗り出して品定めをするかのように俺を凝視する
この恰好に気づいてないのか、それとも笑いのツボが人とは別次元の位置にあるのか定かでは無いが


「フッ」

( T)「ええ……?」


勝ち誇ったかのような『鼻笑い』は、面白さから出たものではない事だけは確かだった


o川;゚ー゚)o「城和泉!!」


やや遅れて、コーヒーカップを慎重に持ちながら若旦那も駆けつけてくる
それを極力音を立てずテーブルの上に置き、今度は『城和泉』という名前の女の子の腕を引き寄せた


o川;゚ー゚)o「ダメだよ城和泉。いくら時雨さんに煽られたからって失礼な態度を取っちゃ……」

「な、何よ!!あそこまで言われちゃこっちも黙っていられないでしょう!?」


( T)「かしゅー、砂糖取ってくれるか?」

加州清光「は、はい……ミルクは入れられますか?」

( T)「うん」

和泉守兼定「今の態度について何か言及することはないのか?」

( T)「いやぁ……まーた時雨がなんか言ったんだろうなってくらいしか……」

和泉守兼定「どういう教育をしているのだ……」


俺は努力してる

「ちょっと貴方!!」


( T)「悪いんだけど先に自己紹介から始めてくれるか?新キャラいっぱい出てきて脳が追いつかねーんだよ」

秋雲「脳あったの?」

( T)「ご存知だとは思うが、俺はマッスルだ。お嬢ちゃんの名前は?」

秋雲「無視はキツい」


城和泉正宗「城和泉正宗。ここにいる美琴の愛刀よ」


何、愛刀って。また新設定か
説明回を設けないと着いていけないだろうが


( T)「あー、城和泉。時雨が気に障る事を言ったなら謝るし、後でシバき回しとく」

城和泉正宗「そうね……出来れば一か月分の鬱憤を晴らしておきたい所だけど」

( T)「もっと早く来るべきだった」

城和泉正宗「でも!!先にハッキリさせておきたいの!!」

( T)「何を?」


城和泉は腕を振り上げると、形の良い人差し指をビシッと俺の鼻先に突き付けた


城和泉正宗「私の主である美琴と時雨の主である貴方!!どっちが優れているか勝負よ!!」

( T)「……」


主従関係ってなんだっけ。ポケモンバトルみたいな勝負に出なきゃならないんだっけ

時雨「僕は『勝負にならない』って言ったんだけどね」モグモグ


遅れて現れた時雨は、息巻く城和泉とは対照的に『やれやれ』と言わんばかりの態度を取っていた
何食ってんだこいつ。行儀悪いな人様のお宅で


( T)「何食ってんのお前」

時雨「小夜が焼いたあんぱん」

( T)「美味いか?」

時雨「やんないよ」


人の食ってるもんを欲しがるようないやしんぼに見えるのかよ


城和泉正宗「ちょっと!!」

( T)「ああ悪い。こいつの言うことは真に……」

城和泉正宗「当然!!受けて立つわよね!?」

( T)「もう君の中では勝負する流れになってんのかなぁ?」


白黒着けないと気が済まないのだろう、寝起きには若干辛い剣幕だ
身を乗り出す城和泉から視線を逸らし、助けを探してみる

天龍と秋雲は問題外、いずみーは素知らぬ顔、かしゅーは押し弱そう、虎徹はなんか既にワクワクしてる
まだ二、三言しか言葉を交わしていない不動行光を始めとした名前も知らない巫剣には頼みづらいし……となると


菊一文字則宗「?」

@#_、_@
 (  ノ`)「……」


まあこの二人だわな

菊一文字則宗「えーと、城和泉さん。提督さんはこう見えても徒手空拳で禍憑を倒す猛者なので……」

城和泉正宗「私の主が遅れを取るとでも言いたいの!?」

加州清光「菊一さん今さらっととんでもない事言いませんでした!?」

菊一文字則宗「まぁそれはどうでもいいとして、まだ出会って二日も経っていないお二人を勝負事に巻き込むのは」

@#_、_@
 (  ノ`)「いいんじゃないかい?」

( T)「えっ」

o川;゚ー゚)o「えっ」


まさかの肯定派だった。いいのかよ……


@#_、_@
 (  ノ`)「アンタの腕前は見てみたいと思っていたしね。しぃにとってもいい経験になりそうだ」

o川;゚ー゚)o「で、ですけど支部長……」

@#_、_@
 (  ノ`)「女の期待に応えるのが男の甲斐性さ。意地の一つや二つ見せてみな」

秋雲「男……?」


言いたいことはわかるが口に出すな


時雨「今ババア良いこと言ったよ提督」

( T)「お前次女将をババアって呼んだら関節逆方向に折り曲げるからな」

@#_、_@
 (  ノ`)「構わないよ。一か月この調子だから慣れちまった」

( T)「やはり折り曲げることにします」

時雨「ねぇ可笑しくない天龍?僕、美少女だよ?」

天龍「可愛いは正義じゃねえんだよ」

o川;゚ー゚)o「っ……」


『No』とは言えない雰囲気に、若と顔を見合わせる
彼が望んで手合わせしようってんなら俺もやぶさかじゃないが、今回は時雨(アホ)と城和泉が焚きつけた勝負だ
不本意な対決なんて真剣になれない。互いに挑む気持ちがあって初めて成立するものだ


( T)「……」


さて、どうしたもんかね……


秋雲「あのさー、勝負ってのはどうやって決着つけんの?」

城和泉正宗「勿論、剣の腕前を競い合うのよ」

秋雲「でもさぁ、提督って基本剣使わないのよ。それってそっち有利になんない?」

城和泉正宗「っ、それも……そうだけど……」


口を挟んだ秋雲に視線を向けると、『任せて』と言わんばかりにウインクを放つ。腹立つ
確かに剣は使わないが、俺の得物は拳(筋肉)と矛……言わば長物だ。リーチの差なら此方が有利になる
それを伝えない辺り、何かしらの思惑あってだろう。ここは静観するのが手か。悪い方向に転がらなけりゃ良いが


秋雲「だからって殴り合いさせんのもアレじゃん?秋雲リョナ属性ないし」

不動行光「りょな属性?」


やっぱり余計な情報がめいじ館に広まる前に止めといた方がいいかもしれない


秋雲「あっ、リョナってのh ( T)「泣き黒子増やすぞ」やだ待ってその脅し文句逆に怖い」

城和泉正宗「結局、何が言いたいの!?」

秋雲「提案なんだけどさー、ここにいる間に色んな勝負させてそれで決着つけりゃどうかなーって」

長曾祢虎徹「仕合の他に勝負を増やすって事か?」

秋雲「そうそう。例えば、提督は今メイド服じゃん?」

( T)「不本意ながらな」

秋雲「給仕勝負とかどうよ!!」

( T)「人前に出ろってか」

@#_、_@
 (  ノ`)「面白いじゃないか」


俺は察した。女将は悪ノリが好きだと


秋雲「城いずみーちゃん言ったじゃん?『どっちの主が優れているか』って。それってつまり腕っぷしだけじゃなくて人としての総合点を競いたいんでしょ?」

城和泉正宗「城いずみーって……え、ええ、そうね……」

秋雲「腕っぷしだけが人間じゃない!!秋雲はそう思うワケよ!!っつーことで!!」





秋雲「提督VS若旦那五番勝負!!やってみようじゃない!!」





( T)「ふむ……」


なかなか面白い提案をしてくれる。内容はともかく、勝負を分割することでお互いにとって平等な勝ち目を分配した
それに加え、今現在与えられる『プレッシャー』も軽くしている。一発勝負だとどうしても荷が重くなるからな
落としどころとしては充分だろう。今初めて秋雲連れてきて良かったと思ってる


( T)「どうする?若」

o川*゚ー゚)o「……」


不安げだった若旦那の表情も、幾らか和らいでいた。これなら……


o川*゚ー゚)o「わかりました。やりましょう」


乗って来るだろうな


( T)「よし、受けて立とう」


少々渋ったが、勝負に燃えてこそ男だ。めいじ館の若旦那の実力を見せて貰おうじゃないか
健闘を誓いあう為に、手を差し伸べた瞬間


抜丸「申し訳ありません!!抜丸、提督さんのお召し物を間違えてご用意してしまいましたぁ!!」バァン!!

夕立「てーとくさあああああああああああああん!!赤い髪と猫耳生やしたフレンズっぽい人が小夜ちゃんに半殺しにされそうっぽーーーーーーーーーい!!!!!」ビャアアアアアア!!!


やかましい二人が食堂に飛び込み、またもや場は騒然としたのであった―――――



























読み込み中……

















読み込み中……

















読み込mm*456789:CDEFGHIJSTUVWXYZcdefghijstuvwxyzヤ・㊧炎駐舶沫・圓」、・ヲァィゥェイウエオカキクケコツテトナニヌネノハメモヤユヨラリルレ矮聿褂鉅鳰
・w !1AQaq"2・B贈アチ #3R・brム


































「……また、不純物が紛れ込んでしまいましたか。禍要柱も、案外大雑把ですね」


「まぁいいでしょう。一か月前の『ハズレ』とは違い、今度は大当たりを引いたようですから」


「……フ、フフ……彼岸五将に匹敵し、尚且つ『未来』の技術を詰め込んだ新しい怪物……今度こそ、今度こそ……」





「嗚呼、待っていてください。愛しのお兄様」


「北谷と貴方だけの理想の世界を、この力で築き上げて差し上げます――――」















第二章へつづく

終わりです。お疲れさまでした
次回投下時期は未定です。ゴールデンウィークくらいまでには出来たらいいなぁ

来月で一周年を迎える天華百剣-斬-好評配信中です

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