平沢進「東京のヒラサワです」翠星石「まきますか?まきませんか?」平沢進「違います」 (525)

平沢進「」ガチャ ツーツー…

平沢進「……」
TELTELTEL…
平沢進「私です」

翠星石「まきますか!まきませんか!」

平沢進「違います」ガチャ

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1520516916

平沢進「……」
TELTELTEL…
平沢進「…私です」

翠星石『まきますか!!まきませんか!!って言ってるんですぅ!とっとと答えやがれですぅ!』

平沢進「誰かと間違えてないか?私は平沢進だそ。平沢唯じゃない」

翠星石『は、はぁ?名前なんて聞いてねーですぅ!いいからさっさと質問に答えるです!』

平沢進「さっきから喧しいぞ。私に何か質問があるならTwitterに投稿してくるといい」

翠星石『つ、つい…?何だかよく分からないですが、そこに手紙か何かを送ればいいですか?』

平沢進「好きにしなさい。では」ガチャ

ー数日後ー
TELTELTEL…

平沢進「私です」

翠星石『ちょっと!いったい全体どういうつもりなんですか!』

平沢進「うるさいぞ」

翠星石『うるさいも何もねーです!せっかくついったーに向けて頑張って手紙を書いたのに、普通に送り返されてきたじゃねーですか!ちゃんとヒラサワって名前の欄にも書いたのに!』

平沢進「Twitterはヒラサワではない。ヒラサワは癪なことに既にTwitterの一部かもしれないが少なくともイコールではない」

翠星石『なっ!?だ、騙しやがったですね!!これだからオトナは信用ならねーんですぅ!』

平沢進「勘違いしたオマエが悪い。大体、Twitterへの投稿といえば世間一般にはTwitter運営会社にファンレターを送ることでは決してない。妖怪「世間知らず」はそう思わなかったみたいだが」

翠星石『う、うるせーです!翠星石には翠星石って立派な名前があるんですぅ!あと、妖怪でもねぇです!ローゼンメイデンを馬鹿にすると後がコワイですよ!』

平沢進「あ、そう」

翠星石『きぃーっ!!やたらなめくさった態度のヤローですぅ!とにかく!今度こそTwitterに質問するから覚悟して待ってやがれですぅ!』ガチャ

ー更に数日後ー
平沢進「私です」

翠星石『ちょっと!いい加減にしやがれです!!流石にこの温厚な翠星石も堪忍袋の緒が切れるですよ!!』

平沢進「へえ、そう」

翠星石『ちゃんとTwitterに質問したのに!まきますか!まきませんか!って!それなのに全然反応がねーじゃねーですか!!今度という今度は許さねーですよ!』

平沢進「ファンと馴れ合うつもりはないので」

翠星石『はい?ファン?ファンじゃねーです!どっちかと言えばその逆ですよ、ぎゃく!あーもうめんどくせーです!早く答えるです!まくか!まかないか!』

平沢進「大体何を巻くのか。とぐろか?」

翠星石『ネジですよ!ネジ!』

平沢進「ネジ巻き?それは古典的な趣味をお持ちで」

翠星石『趣味じゃねーです!大事なことなんです!まかねーと動かないんです!』

平沢進「何故私が巻かなきゃならないんだ。オマエが巻けば済む話だろう。因みに私にはハンドパワーで骨董品を治したりする力はないぞ」

翠星石『こ、骨董品!?い、今…言ってはいけないことを言いやがりましたね…!』

平沢進「?…骨董品といってもいい方の骨董品だ。ほら、博物館とかに拘束されている、アレみたいな」

翠星石『アレじゃ分かんねぇです!というか、本気で怒りますよ!あんまりそうやって馬鹿にすると…!』

平沢進「そんなに大事なものなのか?なら、修理屋に持っていくといい。赤の他人の私にどうこうしてもらおうとするのは明らかに間違っている」

翠星石『修理ってなんですぅ!壊れてなんかねーんですよ!まくか!まかないか!ってのが重要なんです!』

平沢進「…正直、10日ほど前からずっと話が見えてこない。馬の骨どもの刺客でも無いくせにこんなに電話を掛けてくる。その上骨董品のネジ巻だけを求めてくるとは」

平沢進「たまに誤解されるが私は別に新興宗教を開いたりはしてないので。ネジ巻教なる邪教を生み出そうとする一派か何かの手先でしたらどうぞご退場を」

翠星石『あー!もうわけの分からない事ばっかり…!つ・ま・り・は!ローゼンメイデンいちの才色兼備のこの私の!マスターになる気があるかどうか!って話なんですぅ!!』

平沢進「はい?」

翠星石『だから!ローゼンメイ…あ!もしかしてローゼンメイデンを知らないですか?』

平沢進「知っている。骨董品の一種でネジを巻くと動き出す代物だ」

翠星石『そうそう…って、それは今翠星石が言ったことまんまじゃねーですか!いいですか、ローゼンメイデンっていうものはですね…』

~説明終了~

平沢進「なるほど」

翠星石『ふう。ようやく分かってくれたですか?』

平沢進「話は分かった。旧世代からの動く人形にはネジの巻き手が必要だと。が、信ずるに値する証拠がない」

翠星石『まだ疑ってるですか…もう、そんな風に疑ってばっかりだと嫌われますよ!』

平沢進「疑り深いのは否定しないが。この件においては疑わないほうがどうかしている」

翠星石『うーん証拠…証拠ですか…じゃあ、今からヒラサワの家に行って翠星石の可憐なる姿を魅せてやるです!それで信用してくれますか?』

平沢進「えー」

翠星石『えー、じゃないです!なんでイヤそうなんですか』

平沢進「いや別に。電話越しでさえ国道沿い並の騒音を発する娘に、そばに来られたらたまったもんじゃないと思っただけ」

翠星石『どストレートなイヤミじゃないですか!きぃーっ!!…こ、こほん。確かに今のはちょっとうるさかったかもですが…』

平沢進「まあ、縁が無かったということで。じゃ」

翠星石『あ!ま、待つですぅ!!』

平沢進「……」

翠星石『こ、これ以上マスターがいないままだと、翠星石はすぐ水銀燈とかにやられてしまうですぅ。だから、一生懸命色んな人に電話を掛けたんですが、誰も彼もちょっと声を聞いただけですぐ切ってしまうんですぅ…』

平沢進「私もそうした覚えがある」

翠星石『で、でも!身も蓋もなく断ったりはしなかったです』

平沢進「確かにそれはそうだが単に質問の意味が分からなかっただけで」

翠星石『う~っ…!と、とにかく!何か分からないですが電話を掛けてみてビビッと来たんですよ!』

平沢進「私には特に天啓に似たものは降りてこなかったが」

翠星石『……そうですか。…そうですよね。すまんですぅ、こんな風におしつけて…』

平沢進「…」

翠星石『何日も何日も、いろいろうるさくして悪かったですぅ…じゃあ…』

平沢進「待ちなさい」

翠星石『…?』

平沢進「やはり私も人間なので、動く人形という魅惑的な言葉に煽られた好奇心には勝てない。一応本物かどうかだけ確認するべきかもしれない」

翠星石『!!ほ、ホントですか?』

平沢進「ホント。というか最初から取り敢えず見るだけ見ておこうとは思っていた」

翠星石『ズコー!!じゃあなんでとっととそう言わないんですか!うそつきも嫌われますよ!』

平沢進「ウソツキはヒラサワの始まり。この言葉を覚えておきましょう。では今週の土曜の五時丁度、つくば駅の三番出口近くで待つ。ちゃんと場所を調べてくるように。Twが使えるならそれぐらいは出来るだろう」

翠星石『は、はぁ…。分かったですぅ!ちゃんと待ってるですよ!!』

平沢進「そっちこそちゃんと来なさい。ではまたこんど」

ーつくば駅ー PM 4:55
平沢進「……」

平沢進「喋る人形という言葉の魔翌力は恐ろしい。期待で5分も早く集合場所に着いてしまった。ヒラサワ不覚」

PM5:30

平沢進「…」

平沢進「これはまさか、あれか。寝坊か」

平沢進「ヒラサワの心は30分ぐらいの誤差を許容する程度の広さはあるので静かにしていよう」

PM6:30

平沢進「…………」

平沢進「時が止めようもなく西へ西へと流れていくのを有意的に感じるには有意義な時間だった」

平沢進「だがそれはあくまで副次的なメリットであって今回の目的はそれではない」

平沢進「……あの辺りに高品位粗食を売る店があったはずだ。一つだけ選んで、時の流れを忘れる努力をしよう」

PM7:30

平沢進「………」

TELTELTELガチャ
平沢進「一体何をしている。待ちくたび…」

平沢進「え?神様?違った。鎮さん?はい」

平沢進「いや。あ、そう。それ。じゃ」

平沢進「……」
TELTELTEL(留守電)
平沢進「東京のヒラサワです。やい、動く人形。つくば駅がいくらステルスメジャーな駅だからといって迷うのは神か人かの被造物としてどうかしている。来る気があるのなら返信されたし。どうぞ」ガチャ

PM8:00

平沢進「……」

平沢進「たまには騙されてみるのもいい経験だった。と、自分に言い聞かせるのは癪だ」

平沢進「だが、これ以上待つことに時を費やすと自律神経に多少の乱れが出るかもしれない。それはたいへん宜しくない」

平沢進「仕方がない。帰……」

ザァー…………

平沢進「……」

平沢進「たまには雨に降られるのもいい経験だ。そう思わないとやっていられない」

平沢進「さて、あろるの館まであと少し」

平沢進「雨に降られるのも悪くない。そう自身に言い聞かせる不毛な時間も終わりを迎える…はずだったが」

ザァー…………

「うっ……う……」

平沢進「排泄物!間違えた!」

「けほっ………」

平沢進「私は家の前に骨董品を並べる趣味はない。また、そういう趣味を持った隣人も居らず。しかもこの骨董品は喋っている。つまり…」

平沢進「あの得体も気もしれない電話人形に違いない」

「……」

平沢進「我が家の前に落とし物があれば、一時的に拾得した所で罪には問われないだろうか。まあ、バレなければいいか」ガシッ

「…う……さ、むい…ですぅ…」

平沢進「…人形は風邪をひくのか?俄然興味が湧いてきた」スタスタ

ーあろるの館ー
翠星石「うぅ……ん……」

翠星石「あ…あれ……ここは…?」

平沢進「あろるの館だ」

翠星石「へえ…あろるの……って、ええっ!?」ガバッ

平沢進「質問に答えただけで驚かれるとは驚いた」

翠星石「いや、驚いたはこっちのセリフですぅ!ここどこですか!?お前も誰ですぅ!?翠星石は確か、水銀燈に襲われて…つくば駅に行かなきゃ行けなかったのに…」

平沢進「だから、あろるの館。そして私は…」

翠星石「だからあろるって…!!あれ、その声…」

平沢進「人の話を高周波で遮るな。だが、私もその声に心当たりがある」

翠星石「ひ、ヒラサワ…ですか…?」

平沢進「そう、私は平沢進だ。間違っても平沢唯じゃない」

翠星石「よ、良かったです…なんとか、会えた…」

平沢進「私も同じような感想を持ったが口には出さないでおく」

翠星石「あ…わ、悪かったですぅ、集合場所に行けなくて。さっきも言いましたが、水銀燈に襲われて、逃げるので精いっぱいで…」

平沢進「水銀の化身か。それはいかにも強そうだ。掴みどころがなさそうで」

翠星石「んー、まあそんなもんですね。しかも、やたら毒を吐いてくるイヤなヤツなんですぅ。でも、悔しいですが今の翠星石じゃ全然歯が立たなくて…」

平沢進「なるほど」

翠星石「逃げることだけに全力を注いでもこのザマでした…同じローゼンメイデンで、しかも翠星石のほうが早く生まれたのに…」

あ、水銀燈って長女だった…
すみませんちょっとミスりました
そこだけ脳内変換で… 水銀党の人ゆるして

翠星石「まあ…今はいいですぅ。取り敢えずヒラサワに会えたので目的は達成です!」

平沢進「私も今日の目的は達成した。とっとと寝たいところだ。が、やはり動く人形を眼前にすると好奇心というヤツが眠気を阻害し始める」

翠星石「ふっふーん。やっぱり気になりますか?ローゼンメイデンのことが!仕方ねーですね、話してやるですぅ。ローゼンメイデンはまず、お父様が究極の乙女を創り出すために挑戦をし始めたもので…」

………

ー次の日ー
翠星石「ふぁあ~…あれ?ここどこですぅ?」

平沢進「あろるの館」

翠星石「うわっ!び、びっくりさせんなですぅ!…ああ、そういえばヒラサワの家に辿り着いたんでしたっけ…」

平沢進「昨日のことが夢かどうか、買った覚えのない骨董鞄を見ながら思案していたがやはり夢ではなかったらしい」

翠星石「そうですよ!翠星石は夢の産物なんかじゃねーですぅ。まあ、夢に見るほどの才色兼備のカンペキ乙女なのは否定しないですけど」

平沢進「ああ、そう」

翠星石「…スルーされると張合いがねーです。で、それ、何を食べてるですか?」

平沢進「高品位粗食ー1.0。カスとも呼ばれる」

翠星石「え…それ、ベーグルの半周ですよね…?」

平沢進「それは別名だ」

翠星石「…前々から思ってましたがヒラサワって凄くおかしいですよね」

平沢進「流石に人形に言われるとへこむ、なんてことも無い」

翠星石「それだけで力が出るんですか…?翠星石はその5倍は食べないとお昼までに飢え死にしてしまうですぅ」

平沢進「背丈は私の5分の1も無いのに食欲は5倍とはこれいかに。腹の中に熔鉱炉でもあるわけじゃないだろうに」

翠星石「す、翠星石が食いしん坊なんじゃねーです!ヒラサワが食べなさすぎなんですぅ!…しょうがねーですね、今度この翠星石特製のスコーンを作ってやるですう。期待して待ってるですよ!」

平沢進「えー」

翠星石「えーじゃねぇですぅ!ホントに美味しいんですよ!」

平沢進「私の腹の虫は「いいえ、粗食で満たされるので結構です」という響きの鳴き声を上げている。私も今回ばかりは渋々ながら虫の叫びに同調する」

翠星石「いーや!翠星石は知ってるんですよ?甘いものは別腹っていう名言を!材料揃えてちゃちゃっと作っちゃうので覚悟しておけ!って腹の虫にも言っておくんですね!」

平沢進「人形を虫の力で説得するのは難しかったか。と、腹の虫が嘆いております」

一旦疲れたのでここまで
見てわかるように見切り発車かつ初SSなので変だと思ったらいくらでも文句をどうぞ。あと平沢さんはこんなこと言わない!とか翠星石はこんなこと言わねーです!とかもあったらお願いします
馬の骨歴一年でローゼン知識も微妙なのでゆるして 出来れば色々教えて欲しいです
こうやって自分でどんどん予防線張っていくスタイル ほんとクソ

平沢進「では、私は珍しく朝から仕事を始める。いい加減口を閉じて静かにするように」

翠星石「む…何だかいつもうるさいみたいでちょっとムカッとしますね」

平沢進「いつもと言うほど見てきたわけではないが今のところはずっとうるさいぞ」

翠星石「んなこたねぇです!」

平沢進「ほらまたうるさい」

翠星石「む、むぅ~っ!!」

平沢進「うるさい人形とはそれはそれで人によっては趣を感じるのかもしれないが、残念ながら私は現代の2D的風雅に詳しくないので」

翠星石「ふ~ん、そうですか。まあ確かにヒラサワって現代人って感じがしないですけど」

平沢進「失敬な。Tw(hz)に酷使される私が現代人で無いなら現代人は皆古代人だ。つまり現代に生きる人はみな古代人ということになり矛盾が生じる。結果私は現代人ということになる」

翠星石「あんなのをやってるからって現代的だなんて言えねーです。現代的っていうのは…そう!お菓子を作れたり掃除が出来たりする美麗な乙女のことを言うんです!」

平沢進「ふーん、そう」

翠星石「あっ、また話を聞いてないですね!もう…!」

平沢進「いや、仕事をすると私は言って、静かにしろとも言ったので。話を聞くとは言った覚えがない」

翠星石「そ、そうでしたけど!…って、そういえば仕事って何をするですか?見た感じ、この部屋で何かするみたいですけど…」チラッ

レーザーハープ チューブラヘルツ テスラコイル

翠星石「………」

翠星石(そういえばヒラサワが何してる人なのかとか全然気にしてなかったですが…この置いてある道具は…実験器具?)

翠星石(ヒラサワはカガクシャなんでしょうか。そういえば、そんな感じの顔もしてますし。喋ることがサッパリワケわからねぇのもだからなのかも……!!まさか…)

翠星石(翠星石に、動く人形に好奇心を掻き立てられたって…!まさか、実験の道具として、とかってことなんじゃあ…?)

平沢進「………」カタカタ

翠星石「!!」

翠星石(ぱ、ぱそこん?を操作してるですぅ!知ってます、あの道具はカガクシャにのみ許された禁断の道具!あの蒼星石ですら、使うのには慣れが必要だって言ってましたし、きっと生半可なニンゲンには使えないもののはず…)

翠星石(まさか…ヒラサワは…)バッ

平沢進「……」

翠星石(恐ろしく真面目な顔で黙ってるです…一体何を見てるですか…?)チラッ

翠星石(?よく分からない記号がいっぱい…日本語はどこですか!日本語は…っと)

翠星石(あ、あそこに小さく文字がありますね。えーと…)

翠星石(サイボー…グ…!?)

翠星石「あ……あ…!!」ガタガタ

翠星石(す、翠星石は気づいてしまったですぅ…!サイボーグっていうのは、確か機械仕掛けの人形…または部品!よく考えると、どことなくローゼンメイデンに似てるです…)

翠星石(つまりヒラサワは、ローゼンメイデンを見てサイボーグを作るヒントを得ちまったって事なんです!よく分からねぇですが、今きっと画面を見ながら頭の中で翠星石を分解してるんです…どこをバラバラにしたら、上手くサイボーグにも仕組みが当てはまるかなって!)

翠星石(ここにいたら、ホントにバラバラにされてしまうですぅ!ヒラサワは変だけど良い人そうでしたが、カガクの為なら人道を忘れるのがニンゲンだって…テレビで見ましたし!)

翠星石(に、逃げなきゃですぅ…)スッ…

平沢進「そういえば」グルッ

翠星石「うぎゃあああああああああ!!!翠星石はバラバラにしても美味しくないですぅうう!!」

平沢進「…うるさいの記録を更新してもここにギネス・ブックの審査員はいないので無意味だと思われる」

翠星石「こ、これが黙ってられるですか!翠星石は、ローゼンメイデン第三ドールとしてここで倒れるわけには行かないんですぅ!」

平沢進「倒れそうなのは三半規管に不意な衝撃を受けた私のほうだ」

翠星石「あっ、ご、ごめんですぅ。じゃなくて!翠星石は気づいてしまったです!ヒラサワはカガクシャで、翠星石を科学の発展につきものの犠牲にしようとしてるってことに!」

平沢進「私は実験はしないこともないが、科学者と名乗った覚えはない。Tw(hz)でもないはずだ。たぶん」

翠星石「う、ウソですぅ!またお得意のウソで騙そうったってそうはいかんです!そこにある道具と、画面のサイボーグっていう文字が決め手ですぅ!言い逃れられるものなら逃れてみろですぅ!!」

平沢進「いや、これは」カチッ

?*¨*?.??♪
翠星石「…はへ?」

平沢進「楽器だ」

なんか音符の所が文字化けしてるけどテスラコイルの音色だと思えば納得出来るね、うん
朝から珍しく文章を書いたので短いですがここまで

翠星石「…疑って悪かったですぅ」

平沢進「気にしていない。ただうるさかったのは気にしている」

翠星石「う…で、でもでも、あんな道具を見て楽器だなんてすぐ分かるはずねーですぅ。ちゅーぶら?何とかは…あれも十分怪しいですがともかくとして、ほかの2つはどう見ても実験器具ですぅ」

平沢進「どう見ても実験器具だろうと実情は楽器なので」

翠星石「それ、本来の使い方と違うんじゃないですか?テスラコイルとか…」

平沢進「私が楽器として用いることに対して、本来の使い方を気にする必要はない」

翠星石「自分がルールブックってことですか…なんと傲慢不遜なやろうですぅ」

平沢進「いや、傲慢不遜は目の前で腕組んでる人形の代名詞だから。私はその真反対の左隅辺りに位置すると自負している」

翠星石「なんですか左隅って。謙虚とも言いきれないって事なら大いに分かりますけど」

平沢進「大いにだろうと小いにだろうと分かったのならそれでよろしい」

翠星石「む~…そういうとこですよね。澄ました感じで言いくるめてきて!もやもやするですぅ。もっとはっきりした言葉で言えってんですぅ」

平沢進「じゃあ、や~いこの骨董品。お前の母ちゃん博物館勤め~とか言えばいいのか?」

翠星石「よくないです」

平沢進「そうだろう。だからもう言わない」

翠星石「楽器については一応分かりましたけど…画面のサイボーグって文字は何なんですか?…まさかヒラサワがサイボーグだとかそういう話ですか?」

平沢進「実は…」

翠星石「え!?やっぱり!?」

平沢進「そんなわけないだろう」

翠星石「ズコー!!息をするようにウソをつくのはやめるですぅ!翠星石のツッコミ能力にも限界があるですよ!」

平沢進「へえ。ツッコミを専門職とする人形かと。というか、やっぱりってなんだ。私ほど人間らしい人間を捕まえて機械と混同するのは不適切だぞ。まあ人間らしい機械とかもいるっちゃいるかもだけど」

翠星石「えぇ…?人間らしい…?ヒラサワがぁ…?」

平沢進「たいへん不愉快です」

翠星石「で、結局サイボーグってなんのことなんです?このままじゃ気になって夢にサイボーグ・ヒラサワ・マシンが出てきそうですぅ」

平沢進「いやに具体的に夢見る人形だな。サイボーグというのは、私が昔作った楽曲だ」

翠星石「ガッキョク?…歌ですか?じゃあつまりヒラサワは…」

平沢進「そう、音楽家」

翠星石「へぇ~…じゃあ仕事ってつまり作曲のことだったんですか。…なるほど、確かに今見るとヒラサワの顔は音楽家って雰囲気を醸し出してる気がするですぅ」

平沢進「そう?」

翠星石「気がするだけですぅ。カガクシャと言ってもキョウソとか言っても正直通るような気も…まあいいです、そんなことは」

翠星石「取り敢えず謎が解けたので翠星石はまんぞくです。じゃあ、仕事頑張るですよ!翠星石は朝メシをその辺で食べてくるですぅ」

平沢進「あ、そう。では静かに出ていくように」

翠星石「あいあーい、ですぅ」スタスタ

翠星石「…いや、ちょっと待ったです」ピタッ

平沢進「いや、待たない」

翠星石「いいや、待つです!何だかそのサイボーグって曲がやたら気になりだしたです!」

平沢進「えー」

翠星石「えーじゃねーです!何か気になりだしたら朝メシも喉を通らない気持ちになってきたです!ヒラサワみたいな変な人が作る曲、気にならない方がおかしいってもんです!」

平沢進「けなしながら人を褒める、人形風のアメとムチに初めて触れた私の心はP派のようにごく微弱な感動に震えた」

翠星石「褒めてねーです!」

平沢進「あ、そう」

翠星石「とにかくちょっと聴かせろですぅ!あ!そこのぱそこんに思わせ振りなえんたーきーがありますね!」

平沢進「さして思わせ振りな素振りもしていないように私には見えるが」

翠星石「いーや、してるですぅ!あれが再生ボタンですね!とりゃー!」

平沢進「あのねぇ…」パシッ

翠星石「ふっふーん!手だけ止めても無駄ですぅ!きてっ!スィドリーム!」ピカッ

平沢進「うわっ、如雨露を屋内で振り回すとは」

翠星石「問答無用!勧善懲悪です!えーいっ!」カチッ

https://youtu.be/xov7Aia64Qk

♪サイボーグ P-MODEL(平沢進) 1985

あきらめに行こう
人魚の信者の舟で
人の世は赤い
太古の噴火のエコー
Love you ホラ吹き
夢も見れたはずに
お土産は吹き矢
バスの駅から放つ

明日までに消える
石の橋の上で
折り紙に折った
長いダイヤグラム
Love you ホラ吹き
空も飛べたはずに
おみやげは磁石
夜の砂場で回す

翠星石「………」ポカーン…

平沢進「はい、ここまで」カチッ

翠星石「………」

平沢進「もう少し流れていたら著作権料の匂いを嗅ぎつけた輩に夜襲をかけられるところだった。ヒラサワ不覚」

翠星石「……」

平沢進「あと、屋内で如雨露は振り回さないように。別にフローリングに潤いは求めてないので」

翠星石「………なんというか…ヘンな曲ですぅ」

平沢進「やっぱり?」

翠星石「やっぱりですぅ」

翠星石「…じゃあ、朝メシ行ってくるですぅ。仕事ジャマして悪かったですぅ」

平沢進「あ、そう。じゃあ、また」

翠星石「またですぅ」スタスタ フワー

平沢進「…人形は鞄に乗って空を翔ける。またひとつ平常なら知り得ないものを知ってしまった」

翠星石「………」フワー…

翠星石「………」

翠星石「……あーきらめにいーこう~♪…」

翠星石「……」

翠星石「…やっぱヘンな曲ですぅ」

一旦ここまで
感想とか指摘とか、くれてもくれなくてもいいよ

翠星石「だぁーっ!!翠星石は重大なことを思いっきり忘れちまってたですぅ!!朝メシ食べたらはっ、と思い出したです!」

平沢進「帰って早々喧しい人形だ。食あたりか何か知らないが人にあたるな」

翠星石「そっちこそうるせーです!契約ですよ!け・い・や・く!なんだかんだでウヤムヤになってましたが翠星石はそのためにヒラサワを探してたんですから!ほら、早く決めてください!まきますか!まきませんか!」

平沢進「何度もオウム返しに同じ質問ばかりで飽きないのか?たまには吐くか、吐かないかとかの質問でもいいじゃないか」

翠星石「趣旨が違うじゃねーですか!二日酔いのオジサンを気遣ってるわけでも犯人を取調室で問い詰めてるわけでもねーんですぅ!ほら、はやくっ!」

平沢進「えー。だって、まだ契約書が事務所から国際FAXで送られてきてないし」

翠星石「だってもへちまもねぇです!つーかそんなものいらねーです!質問に答えてくれるだけでいいんですぅ!また水銀燈が襲ってきたら一体どうするですか?前は運良く逃げられましたが、次はどうなるか…」

平沢進「毒を吐く水銀か。確かにあまり襲われたくない。強いて言うなら何者にもあまり襲われたくない」

翠星石「特に水銀燈はやべぇんです!血も涙もない上に陰険で性悪でそれなのに強くて…!真紅や蒼星石でも勝てるかどうか…まあ、翠星石が万全ならコテンパンにのしてやるのもカンタンなんですけどね!」

平沢進「ふーん」

翠星石「だから、ちゃっちゃと契約するですぅ。別に命まで取ろうってわけじゃねーんですから」

平沢進「いや、何か取るのか?」

翠星石「うーんと…戦うときに生命力をちょっぴり…べ、別にたまにしか命に拘ったりしないので大丈夫ですよ!」

平沢進「……」

翠星石「あ、えっとえっと…も、もちろんその代わりに翠星石もヒラサワに協力しますから!えーとえーと…」

翠星石「そ、そうです!この如雨露で館の植物を元気にしてやるですぅ!庭師の如雨露をひと振りすれば、どんな植物も軒並みアマゾン並の巨木に早変わりですよ!」

平沢進「いや、そんな早変わり求めてないので。べつに密林に理想を抱いたりしてないし」

翠星石「あ、そ、そうですか…。でも、普通にこの如雨露でお水をあげるだけでも植物は元気になるです!ど、どうですか!これでうぃんうぃんの関係ですよね!」

平沢進「ウィンと小ウィンぐらいの関係だな。もちろん小ウィンのほうが私です」

翠星石「えーと、他には…。お掃除が出来るです!舘じゅうの床をツルピカの摩擦係数ゼロなまっさらなフローリングに変えてやるですよ!」

平沢進「いや、別に自宅でのカーリングを息抜きにしてるとかも無いので」

翠星石「別にカーリングのステージを作るわけじゃねぇです!えーと、でも取り敢えず普通に掃除はできるですよ」

平沢進「小ウィンが中ウィンに。大ウィンまで出てきたらちょっと然るべき所に呼び出されそう」

翠星石「うーん、もうひと押しですか。…あ、そうだ!ヒラサワの心の樹を手入れしてやれるですよ!ニンゲン社会の競争に疲れた心を癒して綺麗にしてやるです!」

平沢進「えー」

翠星石「なんで、えーなんですか?これに限ってはいい事づくめじゃないですか!まあ、蒼星石がいないとカンペキな手入れは全然できませんけどそれでも…」

平沢進「心が綺麗になったら困るし。ヒラサワの心は捻じ曲がって太陽にそっぽ向いて舌だしてる辺りが定位置だし」

翠星石「えー…」

平沢進「えーじゃない」

平沢進「じゃあ、取り敢えず交渉は冷戦下ということで」

翠星石「そこまで緊迫したもんじゃなかったですぅ。…でも、あと一押しすれば契約してくれるですね?」

平沢進「たぶん」

翠星石「んーあと一歩…何か考えておくですぅ。水銀燈が来る前に思いつかないと…」

平沢進「まあ、頑張って。では私は休息に精を出す」

翠星石「頑張って休むってなんです…?なんかよく分からねぇですがヘンな体勢になりましたね。それ、逆に疲れるんじゃないです?」

平沢進「そういう呼吸法だから。じゃ、しばらくは喋らないので静かにどこかに行ってください」

翠星石「え、呼吸法…?つまり、波紋を出すですか!?」

平沢進「人形語は翻訳が難しく、ヒラサワ語に直すと環境依存文字が文字化けして全て???に変わる」

翠星石「うるせーです!意味が分からないってはっきり言えばいーじゃねーですか!ヒラサワ語だって日本語に訳しても意味不明のとんとんちきのくせに!」

平沢進「???、?????。人形語を真似てみたが、口蓋の舌を当てる位置が違うのかあまり上手くいかず」

翠星石「きぃーっ!!白々しいですぅ!何言ってるか分かってるくせにぃ!」

翠星石「怒ったらお腹減ったです!昼メシ行ってくるですぅ!カレーが翠星石を待っているですぅ!」

平沢進「え?なんだって?」

翠星石「もういいです!知らんです!!」

平沢進「近場にココイチがあるのでベジカレーを探すならどうぞ」

翠星石「え?あ、ありがとうです…普通にビーフカレーを探すですぅ」

平沢進「ただ英語と日本語にしか対応してないようなのでメニューを見る時は気をつけるように」

翠星石「むぐぐ……こんちくしょー!ですぅううう!!」フワー

平沢進「鞄が怒りながら舞い上がる。これが夢見がちな人によってはUFOとして記憶されるのかもしれない」

一旦ここまで
毎度更新量が少なくて申し訳ないと思っています

翠星石「ふー、帰ったです!ビーフカレー美味かったですぅ!やっぱカレーの具は肉に限るですね!」

平沢進「ベジカレー派が聞いたら怒りで目の色が虹彩色に変わるぞ」

翠星石「え、野菜カレーを食べるとニンゲンじゃなくなるんですか…ああ、だからヒラサワは…」ジー

平沢進「失礼にも程がある」

翠星石「少なくとも今は虹色じゃないですね。安心ですぅ」

平沢進「そういえばさっき恐らくオマエの姉妹の…」

翠星石「えっ!?誰かに会ったですか?蒼星石?それとも真紅?金糸雀とか…は別にどーでもいいですけど」

平沢進「蒼は赤という名前の金なのか?分かりづらいからひとつひとつ特徴を説明しなさい」

翠星石「えっと、そのまんまですぅ。見た目の色と名前はそのまんまそっくり同じなんです。どんな色のローゼンメイデンでした?」

平沢進「金色だった」

翠星石「あ、そうですか。じゃあいいですぅ」

平沢進「あ、そう?」

翠星石「金色って言えば十中八九金糸雀ですぅ。アイツはヒグラシみたいにカナカナ鳴いて、壊れたラジオみたいにかしらかしら繰り返すだけの無害な奴なんです。自分を軍師がどうとか言ってますけどあれはつまらないギャグですぅ」

平沢進「あまりにもあんまりな言いように金糸雀という鳥類のことまで気の毒になってくる」

翠星石「翠星石も鳥のカナリアが可哀想ですぅ。あんなのに名前を借りられてるなんて知らずに空を飛んでるなんて…。で、金糸雀には声掛けてみたですか?」

平沢進「多少興味はあったが衆目の中で人形に執心するおっさんを演じる気はなかったので。目線だけすれ違ってスルーした」

翠星石「ふーん、そうですか。まあそうですよね。そのうちに他のローゼンメイデンに出会う機会もあると思うので、気を落とさないでください」

平沢進「私が落とすものの中でも気はかなりのレアアイテムなので大丈夫。たぶん人生で2.3回しか落としていない」

平沢進「では取り敢えず、金色の人形は放置していいと」

翠星石「たぶん大丈夫ですね。因みにどこで見つけたんです?」

平沢進「街中をぶらついていた。思い返すとたしかにカナカナ鳴いていた」

翠星石「街中です?翠星石がカレーの旅に出てから全然経ってないですけど、どうやって街に出かけたですか?クルマももってないみたいなのに…」

平沢進「いや、普通に自転車で。コレ」

翠星石「…これ、自転車ですか?またウソですね?どうせこれもどっか引っ張ると音が鳴り出すに決まってるですぅ!」

平沢進「今オマエは日本の自転車業界の2%ぐらいを敵に回したぞ。いや、コンマ数%かもしれないが」

平沢進「というか、欧州風の装いのくせしてリカンベントを知らないのか。オマエタチが知らなかったらこいつも流石に滂沱の涙を流すだろうて。うえ~んって」

翠星石「え?これヨーロッパのものなんです?」

平沢進「欧州とか、欧米とか」

翠星石「う~ん…翠星石は見たことないですぅ。でも、ホントに自転車なんですね?コレは」

平沢進「そう」

翠星石「…なんか乗ってみたいですぅ!」ウズウズ

平沢進「えー」

翠星石「えーじゃないです!好奇心には人形もネコも勝てねぇんです!ちょっとだけでいいので!ちょっとだけ!」ピョン

平沢進「あ、こら」

翠星石「おー、いい座り心地ですぅ!」

平沢進「…ちょっとも何も、その御足ではペダルまで一両日努力しても届かないのでは。リカンベント用の足パーツが付属してるとかなら別だけど」

翠星石「そんなもんねーです!でも大丈夫!翠星石に出来ないことはねーんですから…よいしょっ!」グイッ

平沢進「……」

翠星石「うわぁ、やっぱ新しいことってワクワクするですぅ!じゃあ早速ペダルに…う~~んっ!!」パタパタ

平沢進「……」

翠星石「う~~んっ!!あれ?おかしいですぅ!全然届かねーですぅ!」パタパタ

平沢進「……」

翠星石「ヒラサワ!後どのくらいでペダルに届くです?今翠星石は一生懸命でそこを見る余裕が無いんですぅ」

平沢進「数十年待てばリカンベントのほうが妥協して縮んでくれそうだが、現状ではイリザロフ法あたりに頼るしかないだろう」

翠星石「??…つまり、足が届くことは絶対無いってことですか?」

平沢進「絶対では無くてもそれに近い」

翠星石「えー…そんなぁ…ですぅ」

翠星石「せっかく楽しそうなものに乗れると思ったのに…」

平沢進「楽しそうだと思ったところで雲には乗れない。期待だけではものを乗りこなすには燃料不足だ」

翠星石「じゃああと何が必要なんですぅ?情熱とか気品とか理念とかですか?」

平沢進「強いて言えば、背丈」

翠星石「うー…今日一番にがっくし来たですぅ」

平沢進「残念でした。ではとっとと降りなさい」

翠星石「はー……いや、ちょっと待つです」

平沢進「また嫌な予感が。私の虫の知らせセンサーがオマエの名前をブラックリストに登録したがって鳴いている」

翠星石「情熱も気品も理念も翠星石には備わってるですぅ。でもただひとつ足りない背丈…それを補う方法はあるですぅ!」

平沢進「イリザロフ法?」

翠星石「なんとか法みたいにフクザツなもんじゃねーです。…ヒラサワが代わりに漕げばいいんですぅ!」

平沢進「え~」

翠星石「うっ。そこまで嫌そうな顔しなくてもいいじゃねーですか!この才色兼備の翠星石と一緒に自転車に乗れるんですよ?」

平沢進「いや、遠目で見たらただの人形とおっさんだから」

翠星石「遠目で見なきゃいいじゃねーですか!」

平沢進「人はものを遠目か色眼鏡で見るのが常なので」

翠星石「うーまた難しいことを…ちょっとでいいんですぅちょっとで!館の周りをくるっと回るだけで…」

平沢進「御免こうむります」

翠星石「う~っ!の、乗せてくれたら今夜スコーン作りますから!」

平沢進「別に食べたいとは私も腹の虫も言っていない」

翠星石「むむむ…あ、じゃ、じゃあ!乗せてくれたら他のローゼンメイデンに会わせてあげるですぅ!」

平沢進「……」

翠星石「金糸雀とのすれ違い通信みたいな感じじゃなくて、ちゃんと喋る場所を用意するですぅ!それでどうですか…?」

平沢進「……最近、交渉力が軒並み低下してきたようで衰えを感じる。人形の提示した条件に容易く乗せられてしまうとは」

翠星石「やりぃ!ですぅ!安心してください、翠星石はちゃんと約束を守るですよ!じゃあ早速乗せてですぅ!ほらほら!」

平沢進「はい」ヒョイ

翠星石「わーい!……うわっ!なんでズタ袋みたいなのを被せるですか!」

平沢進「だって、人形とおっさんだと見栄え悪いし。ズタ袋とおっさんなら観客も注目しないだろう」

翠星石「大丈夫ですよ、観客なんていねーです!ほら、袋を取ってですぅ。袋取ってくれないと約束守らないですよ!」

平沢進「…人形に脅迫され従う私に、ご先祖も呆れるだろう」

翠星石「うわぁ~すごい!すごいですぅ!」

平沢進「別に凄くないが。速度も出てないし」

翠星石「人形にとっては早いんですぅ!」

平沢進「ふーん。じゃあ、あの辺りまで行ったら3分旅も終わりなので」

翠星石「了解ですぅ!ありがとです、ヒラサワ!」

平沢進「はい」

スィー………

翠星石「………」

平沢進「………」

翠星石「この自転車…」

平沢進「高かった」

翠星石「値段の話じゃねえです!」

平沢進「あ、そう?」

翠星石「もう、すぐ話の腰を折るですぅ」

翠星石「…ただ、空が綺麗に見えるのがいいな、って思っただけですぅ」

平沢進「ああ、そう」

一旦ここまで
平沢さんの言葉は恐ろしい知識量とセンスから繰り出される面白いけど意味不明なものが多いので、毎度頑張ってそれらしくなるように考えています あと色々Tw(hz)の過去の投稿を参考にしたりしています
だから毎度更新量が少ないんです。ゆるして

ーあろるの館(夜)ー
翠星石「いっただっきま~すですぅ!おお~今度はついにマトモな食事ですぅ」

平沢進「パスタは高品位粗食V3.0の一種だ。たまにはね。…で、三人分用意するとはどういうことなの」

翠星石「実は来客があるはずなんですぅ。さっき呼んだんです!たぶんもうそろそろ来るはずですぅ」

平沢進「なんと。家の持ち主に断りもなく夕食に人を招待するとは末恐ろしい」

翠星石「何言ってるですか!これも翠星石の、約束をちゃんと守ろうっていう気遣いの表れなんですよ?」

平沢進「約束?ということは来客は人形の」

パリーン!!! ガチャガチャ…

翠星石「あっ、来たですぅ♪」

平沢進「えー…」

「す、翠星石っ!大丈夫かい!?」ヒューン

翠星石「いらっしゃいですぅ、蒼星石!」

蒼星石「スィドリームが、翠星石が水銀燈に襲われてるから駆けつけてくれって!慌ててここまで飛んできたんだけ…ど…?」

翠星石「それはご苦労さまでした。疲れたですよね。じゃあ、そこの席に座ってくださいですぅ。パスタがもう用意してあるです。今翠星石が紅茶とスコーンを持ってくるですからね」

蒼星石「え……?あ、うん…」

平沢進「…」

蒼星石「あっ!どうも…こ、こんにちは…えっと…?」

平沢進「…窓を割って飛んでくる人形の闖入者に「こんにちは」と慈愛の心を以て返すほど私の精神は菩薩を真似ていない」

蒼星石「ご、ごめんなさい!これは、その…」

翠星石「あらあら~蒼星石!なんて事するですか!?仮にも翠星石のマスターの家を傷つけるなんて!はいこれ紅茶ですぅ」

蒼星石「えっ!?」
平沢進「えっ」

翠星石「ヒラサワは舘に固有名詞をつけるほどにこの場所を愛してるんですよ?いま、窓を割られたヒラサワの心は、地獄の釜の炎よりも深い憎しみの朱色に染まっているですぅ!はいこれスコーンですぅ」

平沢進「あ、どうも」

蒼星石「あ、ありがとう…って、この人が翠星石のマスター!?翠星石、君はもうマスターを見つけていたのかい?」

平沢進「いや、それウソですね」

蒼星石「え?う、嘘なの?」

翠星石「いーや、ホントですぅ!もう言質は取れてるです!」

蒼星石「??ごめん、翠星石。ちょっと僕よく話が…」

翠星石「まったく、仕方ねーですね。妹の為にこの翠星石が直々に説明してやるですう」

……
蒼星石「…つまり、ヒラサワさんは翠星石のマスターになるかもしれない方ってこと?」

翠星石「まあほぼ確定なんですけどね」

平沢進「いやまだ全然未定だから」

蒼星石「あはは、もう結構息があってるね。…というか翠星石、つい忘れそうになってたけど…スィドリームを使って僕にウソの伝言をしたね?」

翠星石「まあ!ウソだなんて人聞きの悪い!そんなことしてねーです。ただちょっとスィドリームへの伝言を間違えちまってただけですぅ。てへ!」

蒼星石「はぁ。翠星石、人への配慮を利用して他人を陥れるなんてよくないよ。今回は僕だったから良かったけど…」

平沢進「今回は私だったから悪かった」

蒼星石「あ!…ほ、本当にすみません。窓については、ちゃんと弁償しますから…」

翠星石「えーっ!?どうやって弁償するですかぁ?蒼星石、別にお賃金貰ってるわけでもないのにぃ!」

蒼星石「す、翠星石…」

平沢進「流石にここまで性悪だとは思わなかった。ちょっと同情」

翠星石「これは何か他のことで償うしかないですよね?寛大な翠星石が代わりに提案してやるです!うーんとぉ…」

翠星石「あっ、そうでした!ヒラサワは薔薇乙女にガクジュツテキキョーミを持ってるらしいです!窓を割ったお詫びに、何かいろいろと話をしてやるのはどうですぅ?」

蒼星石「…ちょっと待って。もしかして、ヒラサワさんとお話をするっていう事のために僕を騙したの?」

平沢進「そうらしい。恐るべきミドリの悪知恵」

翠星石「悪知恵じゃなくて戦略だと言って欲しいですぅ。天才軍師の冠はもう翠星石のものですね!金糸雀はもうただの難しい漢字なだけの二番目やろうですぅ」

蒼星石「そ、それは流石に酷いんじゃないかな…」

平沢進「金糸雀も遠くプエルトリコで嘆きの歌を奏でているに違いない。あ、鳥のほうね」

蒼星石「でも、そういうことなら最初からそうと説明して呼んでくれれば良かったのに。こんなふうにしなくても」

翠星石「いーや、どうでしょう?蒼星石もどうせまたお仕事中だったんですよね?その鋏でお庭の手入れしてたに違いねーです」

翠星石「どうせ呼んだってそっちが大事だって言って生半可な事じゃ来てくれねーです」

蒼星石「…いや、そんなことないよ。翠星石のマスター…に、なってくれるかもしれない人の為なら、僕だってちゃんと…」

翠星石「ふーん?そうですか?何か、最近何処であってもよそよそしいじゃねーですか」

蒼星石「す、翠星石…!僕は別にそんな…」

平沢進「…話の腰を折るのが趣味なので前方から口出しするが、私は人形の愛憎劇を観るために窓一枚をチケットとして差し出した訳ではない」

翠星石「あっ」蒼星石「えっと…」

平沢進「まあ、オマエタチにも色々と事情があるようなので。口出しはこれっきりに」

翠星石「こほん…そ、そうですね!今回の趣旨を忘れていたですぅ。ほら、蒼星石!ヒラサワに何か抱腹絶倒間違いなしの面白い話の一つでもしてやるです!」

蒼星石「えっ!ちょっと待ってよ翠星石、そんないきなり…」

平沢進「私の面白いのハードルは6m16cmぐらいなので。頑張って乗り越えてください。くぐるのはレギュレーション違反」

蒼星石「そんな、ヒラサワさんまで…」

翠星石「そうですよ!ヒラサワの笑いのツボは海よりも深く山よりも高いんですぅ!ヒラサワを笑わせられなかったら蒼星石は帰れねーですよ!覚悟しやがれですぅ!」

蒼星石「こ、困ったなぁ…」
ワイワイ……

……
翠星石「…あ!ふっふっふー。時に、蒼星石?ヒラサワがなんの仕事してるか分かるですぅ?」

蒼星石「え、何なのさその不敵な笑みは…ヒラサワさんのお仕事?えーと…」チラッ

パソコン チューブラーヘルツ レーザーハープ テスラコイル

蒼星石「…??…科学者とか…プログラマー、とかですか?」

平沢進「残念、ハズレ」

翠星石「あらあらあら!惜しいですねぇ~。翠星石は一目見てビビッ!と気づきましたけど!」

平沢進「うそつけ。というかなんでこの緑の娘、水を得たアマガエルみたいに手足をダバダバさせてるの」

蒼星石「調子に乗るとすぐこれなんだから、もう…。えっと、正解は何なんですか?」

平沢進「音楽家」

蒼星石「お、音楽家ですか…!それは凄いですね」

翠星石「ヘンテコな曲を作るヘンテコな音楽家ですぅ。まだ一曲しか聴いてないですけど、どうせ他の曲もヘンテコなものばっかに決まってるですぅ!」

平沢進「察しが良くてよろしい」

蒼星石「は、はぁ…」

翠星石「この前は、そこのぱそこんでサイボーグとかいうへんな曲を聴いたんですぅ。その曲名のせいで翠星石はとんだ勘違いを…ん?今日はぱそこんに違う曲名が写ってるですぅ!」

平沢進「あ、それは仕事中だから」

翠星石「問答無用ですぅ!とぉーっ!」

平沢進「あのねぇ…」

蒼星石「あ、ちょっと翠星石!勝手に人のパソコンに触っちゃダメだよ!」

翠星石「ふふーん!止めても無駄ですぅ!翠星石は誰にも止められないのですぅ!スィドリーム!」

平沢進「だから如雨露を屋内で振り回すのは止めなさいと」パシッ

翠星石「あっ!…なーんて、ですぅ!すこやかにー伸びやかに~!」パァアア

平沢進「あっ何かヘンテコな蔦が」

蒼星石「あーもう!またそんな無茶を…」

カチッ

https://youtu.be/20ZxS_vSY5A
♪夢見る力に P-MODEL(平沢進) 1995
(画面の点滅にご注意ください)

音楽が終われば
またキミは街に帰るけど
楽しげなあの世界に
蓄えた言葉はキミのため
歌うよこの歌
知ってたはずだね

喧騒の中でも
呼びかける声が耳うち
キミだけを待つ人とは
もう誰のことかはわかるよね
仕度ができたら
地平も飛び越し
ここへおいでよ
キミのこの地へ
降り立つ日々は約束しよう
旅する時もキミと響くよ
帆に風はれば船を滑らせ

幻が教える場所
深い眠りの力で
この響きの理由にも
確かなことだけを感じるね
ひとつの望みが
すべてを照らして
波間に見える
さらに深くへ
彼の地を目指し進めよ進め
ここへおいでよ
キミのこの地へ
降り立つ日々は約束しよう
夢見る力 覚えあるなら
誘う鐘におやすみ眠れ

蒼星石「うわぁ……」
翠星石「あ、あれぇ…?ですぅ」

蒼星石「…なんだか不思議だけど、素敵な曲ですね」

平沢進「そう?」

翠星石「…おかしいですぅ。思ったより普通の曲ですぅ」

蒼星石「前に聴いた曲、ほんとにへんな曲だったの?」

翠星石「ほ、ホントですぅ!もっと歌詞がぐちゃぐちゃしてて、よく分からんかったんですぅ!」

蒼星石「そうかなぁ~?翠星石って普段からそんなに音楽聞かないよね。適当に聞いて、へんって決めつけちゃったんじゃないかな?」

翠星石「んなこたねーです!真剣に聞いて、真剣にへんだったんですぅ!あ、姉を疑うですか?」

蒼星石「でもいつもイタズラばっかりしてるし。今回もそういう冗談だったんじゃ…い、いや、疑うわけじゃないけどさ」

翠星石「いーや!その目は疑ってるです!目を逸らさないでこっち見るですぅ!」

蒼星石「うわっ!ちょ、ちょっと!帽子引っ張らないでよ!」

ワーワー キャッキャッ…

平沢進「……」

パチッ

翠星石&蒼星石「わっ!?」

蒼星石「な、何にも見えない…」

平沢進「もう遅い時間なので。騒いでないで、とっとと鞄にて眠りなさい」

翠星石「げっ!?も、もうこんな時間ですか?スコーン食べ忘れてたですぅ!ヒラサワ、ちょっとだけ灯りつけるですぅ!」

平沢進「はい」パッ

翠星石「んぎゃあぁっ!?」蒼星石「うわぁっ!?」

平沢進「はい?」

翠星石「く、暗いあいだに音もなく近くにくるのは止めるですぅ!心臓が止まるかと思ったです!」

平沢進「いや、普通に近づいただけなんだが」

蒼星石「全く…翠星石ったら怖がりなんだから。君の悲鳴でこっちまでビックリしちゃったよ」

翠星石「う、うるさいです!翠星石が怖がりなんじゃねーです!暗い中のヒラサワが怖いのがズルいんです!」

平沢進「別に私が怖くても怖くなくてもいいから。あんまりうるさいとご近所に隠し子か誘拐か発狂の噂をたてられるから眠りなさい」

翠星石「は、はーいですぅ」

蒼星石「あ…じゃあ僕はこの辺で。夕食ありが…むぐっ!」

翠星石「ダーメ!ですぅ!こんな夜更けに妹を一人で帰らせるなんて姉としてできねーですぅ!ほら、今日はヒラサワ宅で寝るですぅ。ね!ヒラサワ!」

蒼星石「え…で、でも…」

平沢進「…我が家に骨董鞄が一つあろうと二つあろうと何か変わるわけではない」

翠星石「ほら、ヒラサワもこう言ってるです!」

蒼星石「………じゃあお言葉に甘えて…」

翠星石「そうするです!じゃあ寝るですぅ!ほらほら!」

蒼星石「ちょ、ちょっと押さないでよ、翠星石!じゃあヒラサワさん、お夕食ありがとうございました」ペコッ

平沢進「はい」

翠星石「おやすみーですぅ!」グイッ

蒼星石「お、おやすみ、翠星石。ヒラサワさん」パタン

翠星石「…ふぅ」

平沢進「……オマエはおやすみーしないのか?」

翠星石「…ちょっとヒラサワに言うことがあるんですぅ」

平沢進「……」

翠星石「蒼星石は翠星石の双子の妹ですぅ。だから、はっきり分かるです。最近の蒼星石は、何かを隠してて、無理してるんだってこと…」

平沢進「へえ」

翠星石「それで、今日は騙してまで無理矢理蒼星石を呼んだんですぅ。実はあんなに話したのは久しぶりだったんです」

平沢進「そうは見えなかったが」

翠星石「まあ、何があっても双子ですから!でも、蒼星石が久しぶりに笑ってるのが見れて、嬉しかったですぅ」

平沢進「そんなものかね」

翠星石「そんなもんですぅ。…ただ何を隠してるかまでは分からないんですぅ。翠星石は、そんなに頭が良くないから…」

平沢進「……」

翠星石「だから、もし良かったら…蒼星石の悩みを聞いてあげて欲しいんですぅ。翠星石に出来ないことも、きっとヒラサワなら出来ると思うんです…」

平沢進「いや、私に人形の心中を推し量る能力は無いぞ」

翠星石「別に、ちょっと話を聞いてあげるだけでいいんです。蒼星石はマジメですから、悩みや本音を抱え込んで翠星石にさえあんまり打ち明けてくれないんですぅ。それに翠星石はそういうことに気がついても、ちゃんと聞いてあげるんじゃなくてすぐ怒ってしまうんですぅ。なんでただ一人の姉にも話してくれねぇんですか!…って」

平沢進「ふーん」

翠星石「…すまんですぅ、長話になったです。もちろん今のは単なるアレです。ちょっとしたお願いですぅ。どーしても暇な時でいいんですぅ。本題は、この蒼星石の姉である翠星石が、ばっちりくっきり解決するんですから!」

平沢進「…あ、そう」

翠星石「そうです!じゃあおやすみーです!ヒラサワ!…明日は蒼星石が起きる前に起こしてくださいですよ!」

平沢進「はい。じゃあまた明日」

翠星石「また明日です!」パタン

平沢進「……」

平沢進「骨董鞄と人形二つ。抱え込むものが知らぬ内に次々増えていくのが社会の面倒だが当然の性質である」

一旦ここまで
夢見る力に はイントロが好き過ぎて何度も死にかけました
後PVについては見た後に起こる精神的な悪影響について何も責任は負いません

あと、平沢さんの笑いのツボは別に海よりも深くなければ山よりも高くないです

ーあろるの舘(早朝)ー
蒼星石「……」チラッ

蒼星石「まだ誰も起きてないよね。よいしょ…っと」パタン

平沢進「おはようございます」

蒼星石「うわぁっ!?」ドテッ

平沢進「おい、私は早起きする時にだけ現れる妖怪「三文の得じじい」じゃないぞ。妖怪と冠されたものとバンドを組んでたことはあるけど」

蒼星石「ひ…ヒラサワさん?び、ビックリさせないでください…」

平沢進「別に人形を驚かせるために早起きするほどひねくれてはないので。ただ起きてただけ」

蒼星石「そ、そうなんですか。早起きなんですね。…おはようございます」

平沢進「そちらもイヤに早起きですね。まるでこっそりあろるの館から飛び出そうとしていたよう」

蒼星石「い、いや、そんなこと…」

平沢進「だが卓上にこんなものが」ピラッ

『ヒラサワさんと翠星石へ
昨日は夕食ありがとうございました
お話もとっても楽しかったです
窓ガラスについては今日の内に直します
翠星石も 美味しいスコーンをありがとう
蒼星石より』

蒼星石「あ……」

平沢進「なんというか…」チラッ

蒼星石「!…ご、ごめんなさ…」

平沢進「…欧州生まれの割に漢字に親しみがあることに驚愕。島国生まれのくせしてタイ語に親しみを感じているどこぞのステルスもいるというのに」

蒼星石「え…ああ、それは…昔、練習したんです。日本に来たばかりの時に。マスターと円滑に意思疎通を図るには、その土地の文字が書けた方がいいと思って」

平沢進「へえ。またまた驚いた。人形とは朝から晩まで古い洗濯機のごとくガタガタうるさく喚いて、取ってつけたような敬語を用いて、勉強などは蚊帳の数キロ外に置くものなのかと」

蒼星石「ぷっ。…それ、翠星石のことですよね?」

平沢進「さあ。他にも人形がいるかもしれないし。鳥の一種とか」

蒼星石「金糸雀ですか?あはは、確かに彼女も結構賑やかかもしれませんね。翠星石といい勝負かも」

平沢進「寒気がしてきた。ヒラサワの器官は75db以上の騒音に耐えるようには造られていない。生まれる時の予算をやかましいモノへの対処に振り分けなかったので」

蒼星石「それじゃ、あの二人を前にしたら大変ですね」

平沢進「防音室に篭城するような真似は私は御免だ。何としても金か翠には蒼っぽくなって貰わなくてはならない」

蒼星石「あはは…とても無理ですよ。僕と翠星石は、何もかも真反対だから。性格も、考え方も…」

平沢進「そう?」

蒼星石「はい。見てて思いませんでしたか?」

平沢進「ヒラサワの目は本質を見極める第三の目という訳でもないので。似てるとか似てないとかは顔認証システムに聞いて」

蒼星石「そ、それは勿論顔は似てますけど…」

平沢進「色も、名からくる色相だけで見れば大いに似ている。何せ…おっと」

「あでっ!なんかつまづいたですぅ…」

平沢進「そんなこんなで早起きした古い洗濯機がお出迎えです」

翠星石「ふぁ~あ…おはようですぅ…そうせいせき…」

蒼星石「す、翠星石!?起きてたの?珍しいね…」

翠星石「いま、かおあらってきたとこです…それに…はやくおきるのは……あたりまえ……ですぅ…いもうとよりぃ…はやくおきるのが…あねのつとめ…なんです…から」カクン

蒼星石「え、いやいや。僕より早く起きたことなんて今まであったっけ。それに大丈夫なの?なんだかふらふらしてるけど…」

翠星石「やかましー…ですぅ。ふぁ……むにゃ…すいせいせきは……いつものように、げんきはつらつ、ですぅ…」ゴシゴシ

平沢進「目の上に漬物石が置かれたかのごとく瞼が落ちまくっている。はいこれ、眠気覚し」

翠星石「あ、ありがと…ですぅ…ごくっ……ってつべたっ!?」

平沢進「だって昨日作ったやつだし」

翠星石「なんでそれを翠星石に飲ませるですか!手頃な紅茶処理機にすんじゃねーです!」

平沢進「くるみ割り人形ならぬ紅茶飲み人形。少なくともバレエの題目にはなりそうもない」

翠星石「ビミョーなイヤミ言うんじゃねーです!翠星石が主演になったらアカデミー賞だかグラミー賞だか間違いなしですぅ!…まあ、とりあえず目は覚めたのでいいですけど!」

蒼星石「…ふふっ」

翠星石「あ!わ、笑うんじゃねーです!翠星石は真面目も真面目、大真面目なんですよ!さっきまでの眠そうなのは…そう、ヒラサワの催眠術ですぅ!呪術師ヒラサワの魔法で、クラッと来ちまってただけなんですぅ!」

平沢進「魔法なのか催眠術なのか呪術なのか。どれも普通免許を取った覚えはないが」

翠星石「仮免だろーと大型免許だろーとどうでもいいです!とにかく!眠そうだったのは翠星石のせいじゃねーんです!」

平沢進「あ、そう」

蒼星石「ぷっ…くくく」

翠星石「あぁーー!!また笑ったですぅ!!なんで笑うですか、翠星石はこんなに真面目に頑張ってるのに!」ブンブン

蒼星石「い…いや…ふふっ、本当に息があってるなぁと思って」

平沢進「昨日は聞き流しましたがそれは侮辱ですかね」

翠星石「何言ってるですか!最大限の称賛ですよ!!」

平沢進「称賛という皮肉とはまた高級な手を」

翠星石「皮肉でもねーです!翠星石と並び立つなんて、並ぶもののない栄誉なんですよ!」

平沢進「うそつけ」

翠星石「ホントです!」

蒼星石「ぷっ…くくっ…あははは!!」

翠星石「あ!ま、またまた笑ったです!な、何でですか!翠星石にはさっぱり分からねーですぅ!」

平沢進「オマエの顔が面白いからでしょ」

翠星石「むきーっ!!翠星石は面白い顔してねーです!どっちかといえば超絶美少女の顔をしてるですぅ!…って」

翠星石「こほん。それは置いといて」

翠星石「…ちょいと蒼星石。話があるですぅ」パラッ

蒼星石「げほっけほっ!あは、あはははっ!!」

翠星石「わ、笑ってる場合じゃねーですよ!大切な話なんです!って、むせてるじゃーねですか。はいこれ紅茶ですぅ」

蒼星石「ごほっ、こほん。ありがと…ってつめたっ!?…もう……えっと、何の話?」

翠星石「えーとですね…」ピラッ…

翠星石「…ちょっと待つですよ。えーと…」ジィー

蒼星石「…手紙?なんだかしわくちゃだけど…」

翠星石「行くですよ。すぅー…」

そうせいせき へ
すいせいせきはしんぱいです
それは そうせいせきがずっと
なにかになやんでいるのがわかるからです
そうせいせきは いい いもうとです
だから ほとんどのことはそうせいせきだけで
かいけつできるものだとおもっています
それでも そうせいせきがずっとなやんでいるのは
ひとりじゃかいけつできない なにかを
かかえているからだとおもいます

そうせいせきはまじめさんなので
ひとりでかいけつすべきだとおもっているかもです
でもそんなことないんです
まよったりこまったりしたら
たよってもいいんです
……えーと、えーと」

翠星石「えーと…えーと…なにせ、その…す」

翠星石「翠星石は蒼星石のお姉さんなんですから!いつでもこの翠星石の胸にドカンとぶつかってこいってんですこんちくしょー!ですぅ!」

平沢進「…」

蒼星石「…」

翠星石「…い、以上ですぅ!な、なんですか!文句あるなら言ってみるです!」

蒼星石「………」

翠星石「えっ!あ、あわわっ!な、何泣いてるですか!泣かせるために書いたわけじゃねーんですよ!ただ、口で喋ってるとごちゃごちゃしてくるから、それで…」

蒼星石「ごめん……翠星石…」

翠星石「な、何謝ってるですか!謝ってほしくて書いたわけでもねーんですぅ。ただ、ちゃんと翠星石の気持ちを伝えたくて…」

蒼星石「うん…ごめん、分かってるよ、翠星石…」

翠星石「ほ、ほら。ハンカチですぅ!これでシャキッとするですぅ!」

平沢進「それはティシューなるものだが。最近ハンカチという名のブランドティシューが販売されたなら別だけど」

翠星石「え、あっ!!…まあティッシュでも事足りるですぅ。ほ、ほらほら、蒼星石…」

蒼星石「あ、ありがとう…」

翠星石「よしよし…ですぅ。まったく、蒼星石も甘えんぼさんですね。…別に、いつも、こんな風に甘えたっていいんですよ」

蒼星石「………」

蒼星石「……いや」バッ

翠星石「あっ…」

蒼星石「ごめん、翠星石……手紙、ありがとう。それじゃ」

翠星石「えっ、ま、待つです!蒼星石!えっと、えっと」

平沢進「手紙だけでも良かったらどうぞ」パシッ

蒼星石「あ…」

翠星石「そ、そうです!手紙だけでも持ってくです!そこに、翠星石の気持ちがしっかり書いてあるですから!!迷ったら読み返したりしてみるですよ!…翠星石はいつでも蒼星石の味方ですから!」

蒼星石「………」ギュッ

翠星石「……またですよーー!!蒼星石!!」

蒼星石「うん…」フワー ヒューン…

翠星石「………蒼星石…」

平沢進「……人形にも涙腺があるとは」

翠星石「ルイセン?…まあ、嬉しかったり悲しかったりすれば泣くこともありますよ。ローゼンメイデンは魂のある人形なんですから」

平沢進「へえ」

翠星石「はぁ、それにしても……やっぱり、文章にしてもあんまり上手くいかねぇですぅ。頑張って考えたんですけど…」

平沢進「そう?」

翠星石「ですぅ。翠星石にも、何かはっきりくっきり心の中を伝える手段があったらいいのに…」

平沢進「……」

翠星石「…ま、気を取り直すですぅ。あとは蒼星石を信じるのみです。なんてったって、この翠星石の妹なんですからね!」

平沢進「ふーん、そう」

翠星石「ご協力ありがとでした、ヒラサワ。じゃあ翠星石は…翠星……せき……は…」

平沢進「ん?」

翠星石「……にどね…する……で…すぅ……」パタッ

平沢進「えー」

翠星石「すぅ……すぅ…」

平沢進「……」ガシッ

平沢進「人形の鞄詰め一丁。英国ではこれが静かな休日をぶち壊すアイテムとして大人気。んなわけない」

…………
蒼星石「………」ヒューン

蒼星石「翠星石……」

蒼星石「…だって、言えるわけないよ…」

蒼星石「…君と…そのマスターを……」

蒼星石「………」

蒼星石「[ピーーー]かどうかで……悩んでるなんて」

は?(半ギレ)
こういう規制ってどうすりゃええのかしら…初めてなんで分からぬ
まあ言ってることはわかると思うんだけどさ…

あと今回で話をどうするか真面目に考えだしたので蒼星石が多少情緒不安定っぽくなってるけどゆるして
指摘や感想ありましたらいくらでもどうぞ

ああ何かと思えば「殺す」が消えてるってことか
メールアドレス欄に「saga」って入れるんやで

おおなるほど!ありがとうございます!
おためし 殺す
お試しでころすってこわい

…………
蒼星石「………」ヒューン

蒼星石「翠星石……」

蒼星石「…だって、言えるわけないよ…」

蒼星石「…君と…そのマスターを……」

蒼星石「………」

蒼星石「殺すかどうかで……悩んでるなんて」

締まらないですがこれで補完お願いします
ではまた!

数時間後
ーあろるの館(庭)ー

「フッフッフッ…見ぃつけた!」

金糸雀「ついに見つけちゃったのかしら!翠星石のアジトを!」

金糸雀「よくやったのかしらピチカート♪ついに24回の失敗を乗り越えて、ようやく居場所を突き止めたわ~」

金糸雀「ふー…。最近、なんだか分からないけどすごくイライラするのかしら!まるで、どこかの誰かに四六時中陰口を叩かれてるみたいに…だから!」

金糸雀「今日は翠星石を打ち倒して、スカッとして帰るのかしら!みっちゃんのためにも、お父様の悲願の為にも!」

金糸雀「じゃあさっそく呼び鈴を押しましょう。呼び鈴を押せば家主は出てくる!計算高いカナにはこのぐらいお茶の子さいさいなのかしら!さてっと!……あら?」

金糸雀「あらあら!窓が壊れてるのかしら!なんて不用心なの。こんな風になっていたら、空き巣とか、泥棒とか、強盗とか…」

金糸雀「…この薔薇乙女いちの頭脳派である金糸雀とかにも!カンタンに入れちゃったりしちゃうのかしら!ホ~ホッホッホ!!」

金糸雀「さてさてっ!さっそく……あら?でもこの窓までどうやって登ればいいのかしら……?」

♪♪♪……

金糸雀「うーん、難問ね…この天才軍師たるカナの知識を持ってしても……あら?何やら音楽が…この窓から?」

金糸雀「?…翠星石のマスターは歌手さんなのかしら?」

金糸雀「……」

金糸雀「音楽家としてちょっと気になるかも。窓に登る手段を考えながら、聴いててみようかしら…」

平沢進「………」カタカタ

https://youtu.be/KbxO515VuUA
♪Big Brother 核P-MODEL(平沢進) 2004
路上 スタンガンの
電撃が撃つ群衆の影

ヤイヤイと人は行き
秘密裏に事は成る

聞けよ物陰で
「良き事の為」
と囁く

見えないブラザーが
暗示のようにキミを追う

列を成せ
汝従順のマシン
享受せよ
さあ 思慮は今罪と知るべし

夜景
遍く
憎悪の声は歓喜する

ヤイヤイと踏み鳴らし
逸脱の民を撃てと

聞けよ窓辺で
「良き事の為」
と連呼する

見えないブラザーが
保護者のように
キミを見る

踏み鳴らせ
汝 善良のマシン
連呼せよ
さあ 思慮は今罪と知るべし

ヤイヤイと
人 人 人の目がキミを追う
ヤイヤイと
人 人 人の目がキミを見る
ヤイヤイと
人 人 人の目がキミを追う
ヤイヤイと
人 人 人の目がキミを見る
ヤイヤイと
人 人 人の目がキミを追う


無情
明日の日は
キミの為にはあらずと

隅々に地を覆い
逃亡の夢も砕く

聞けよ目の前で
「良き事の為」
と囁く
見えないブラザーが
暗示のように
キミを見る

列に立て
汝 従順の下僕

享受せよ
さあ 思慮は今罪と知るべし

ヤイヤイと
人 人 人の目がキミを追う
ヤイヤイと
人 人 人の目がキミを見る
ヤイヤイと
人 人 人の目がキミを追う
ヤイヤイと
人 人 人の目がキミを見る
ヤイヤイと
人 人 人の目がキミを追う

金糸雀「………」(゜д゜)ポカーン

金糸雀「す……!」

金糸雀「すごいのかしら…!!」

金糸雀「初めてこういう曲を聴いたのかしら!どういうジャンルなの?見たカンジだと、機械から音楽が流れてたみたいだけど…」ジーッ

金糸雀「歌詞の意味も…どういう事なのかしら?監視についての曲?そういえばみっちゃんが前、ゲンダイ社会っていうのは監視社会なんだって言ってたけど、それについてもよく分かってないのかしら…」

金糸雀「帰ったら調べてみようかしら。天才軍師たるもの、情報収集もしっかりするのが当然のこと!みっちゃんに頼んで、ケータイの力を駆使すればきっと…てっ!!?」

窓)平沢進<●><●>

金糸雀「きゃあっ!?」ドテッ

金糸雀(ば、バレちゃった!!に、逃げなきゃなのかしら!取り敢えずその植木鉢の横に!|)彡 サッ

平沢進「……」

植木鉢|Δ`*)ジー

平沢進「…噂に違わぬ、鳥類の金糸雀も悲しむような人形だ。さて、どうしてくれようか。……ん?」サッ

「ここなの?蒼星石」

金糸雀「う、うっひゃあ!?」ガサッ

蒼星石「そうだよ、真紅。わざわざ来てくれてありがとう」

金糸雀(真紅!?それに蒼星石!?なんで一番戦いたくない二人が来るのかしら!!な、なんとかやり過ごさないと!頭脳明晰の代名詞、カナなら絶対にこの危機も切り抜けられるはず!)

真紅「…まあ、事情が事情なのだし。蒼星石に全ての非がある訳でも無いみたいだし。それに、窓を直すなんて造作もないことなのだわ」

蒼星石「うん、ありがとう。じゃあ、御礼に…ほら、『くんくん探偵switch』持ってきたよ」

真紅「!!!………こほん。蒼星石、あなたは約束を守るいい薔薇乙女なのだわ。それに報いて、私も約束を守りましょう」パアァ…

金糸雀(!!あぁっ!窓が直っちゃったのかしら!これじゃ翠星石のアジトにも入れないし、こっそり曲を聴くことも出来ないのかしら…)

真紅「これでよし、と。…でもまさか、本当に『くんくん探偵switch』をくれるなんて思っていなかったのだわ。割に合っていないのではなくて?」

真紅「…あと、そこの植え込みから生えている黄色い物体はどうすればいいのかしら」

蒼星石「きっと隠れてるつもりなんだよ。放っておいてあげようよ」

真紅「ここに居るってことは、翠星石のマスターに害を成そうと……いや、まあ金糸雀にはそんなこと出来ないのだわ。放っておいても大丈夫でしょう」

蒼星石「それはそれで酷いね…。でも、彼女は彼女なりに、ローゼンメイデンとしての義務を果たそうとしてるんだよ。…それじゃ」フワー

真紅「……」

真紅「はぁ。金糸雀も蒼星石も…手間のかかる姉たちなのだわ」フワー

金糸雀(あ!か、帰っていくのかしら!さすがカナ!幸運も持ち合わせるのが天才軍師たる所以なのよ!ホ~ホッホ!!じゃあ今のうちにスタコラサッサなのかしら!待ってなさい翠星石!またカナは帰ってくるわよ!)ピューン

平沢進「…やっと行ったか。真剣にこのあろるの館を人形の館に改名すべきかと思った瞬間だった。だが、悩むだけで済んでなにより」

平沢進「特に黄色い鳥類。軒先にCDでもぶら下げておけば集まってこないだろうか。いや、ムリか」

平沢進「……」

平沢進「取り敢えずなにがしかの力で窓が治ったことに一周遅れの驚嘆の念を抱いて、昼の粗食を摂ることにする。鳥類人形対策は翠の娘に詳しかろう」

短いですがここまで
ホントに気軽に文句とか書いていいのよ…

記憶が曖昧なんですが窓を直せることに具体的な理屈や説明は特についてなかった気がします
たぶん…
では再開します

翠星石「う~~………んっ!!はーーー!よく寝たですぅ!!!」

平沢進「うわっ。驚いた。あんまり動かないもんだから鞄での早すぎた埋葬ごっこでもしてたのかと思った」

翠星石「は、はぁ?起きて早々やかましいです!鞄を棺桶にする気は毛頭ねーです!」

平沢進「いや、でも人形の棺桶にしてはかなり上等かと。副葬品も既に如雨露があるし。身一つ鞄一つがじいさんばあさんの最終目標とか言われてるし」

翠星石「なんで終活の話になってるですか!今の翠星石は元気いっぱいに起きたとこなんですよ?もうちょっと明るい話題をもってきやがれですぅ」

平沢進「明るい話題…では黄色く光る人形について」

翠星石「ズコー!そっちの明るいですか!…こほん。まあいいです。で、金糸雀がどうかしたですか?」

平沢進「さっきあろるの館にその姿を現し、植木鉢と木々にマクロな被害を与えたあと、逃げ去った」

翠星石「あのヤローもうここを見つけたですか!まったく、悪運の強いヤツですぅ。翠星石が起きてたらコテンパンのコンコンチキにのしてやったのに。で、逃げたのは何でですか?ヒラサワがその拳で闘ったんですか?」

平沢進「んなわけない。蒼い娘に、紅いヒラヒラしたのがやって来たら勝手に蒸発した」

翠星石「えっ!?二人が来たですか?…ああ、だから窓が直ってるんですね。というか、そっちの方がずっと大事じゃねーですか!蒼星石……それに真紅まで来るなんて」

平沢進「そう?人形の色は平安朝のごとく階級でも示すのか」

翠星石「んなこたねーですけど。真紅は第五ドールで、翠星石の二番めの妹に当たるです。普段から冷静な上に機転も効く、なかなか侮れん奴ですぅ。まあでも、翠星石が戦ったら八分二分で翠星石の勝ちってところですかね!」

平沢進「ふーん。つまり三分七分で分が悪いと」

翠星石「なんで数字が変わってるですか!まあ今のところ敵対はしてねーですし、向こうもその気はないハズです。相手にしたら厄介ですが、放っといても問題無いですぅ」

平沢進「なるほど。別に真紅とは血の歴史を歩んだから通り名となったわけではないと」

翠星石「はぁ?当たり前ですぅ。んなわけねーで…(!)」

翠星石「……」

翠星石「うーん……違うとも言いきれねーです。これはあくまでウワサなんですけど?真紅は夜な夜なマスターが寝てるとこに近寄って、ムリヤリ力を奪うらしいんですぅ。おしとやかそーなお口をかっ!と開いたその内には鋼鉄の牙がズラリと並んでて、それで…」

平沢進「……」

翠星石「ゆっくりゆっくり、気づかれないようにマスターの首元に近づいて…きゃーーっ!頸動脈にがぶりと噛み付いて、ごくごくと血を啜るんだそうですぅ!!そのおかげで、真紅は翠星石の妹のくせに邪悪なほど強くて、マスターはポックリ早死する…っていう話ですぅ…」

平沢進「……」

翠星石「うう~真紅恐るべし!コワイですぅ身が震えるですぅ!ヒラサワもコワイですよね!!ほら、よしよししてあげるですよ!」

平沢進「人形劇『エセ吸血鬼人形のヨタ話』はこれにて終幕」

翠星石「えっ!?ほ、ホントですよ!ウソじゃねーです!」

平沢進「終始のニヤケ面からホラーを繰り出されてもこちらとしては渋面を返すしかないので。これが劇場なら座布団か枕か匙を投げている」

翠星石「う~!おかしいです、なんで騙されねぇですか?チビ苺なら絶対大声で泣いて怖がってたのにぃ!あ、チビ苺ってのは第六ドール、雛苺のことですぅ」

平沢進「へえ。苺が怖がるのは害虫ではないのか。ホラーに怯える苺となればそれは希少。ブランド力に目のない農協が放っておかないだろう」

翠星石「うーん、普通に虫もきらいですね。チビ苺は怖がりで臆病なのでそういうものは大抵苦手なんですぅ」

平沢進「ふーん」

翠星石「多分ヒラサワの顔みたら泣くですよ。仏頂面のカガクシャみたいなコワモテ、チビ苺にはまだ早いですぅ」

平沢進「私の体内には意地悪い虫と腹の虫が棲んでいるため苺が怯えるのもやむ無し。しかし仏が苺にダメージを与えるとは初耳。苺はキリシタンなのか」

翠星石「むー…ホトケ様と仏頂面の違いをわかってて言ってるですね?ホトケ様がチビ苺を脅すとかいうシュールな絵面を見る気はねーです。ま、今のうちに顔の体操とかで柔和な顔の練習でもしておくですね」

平沢進「えー」

翠星石「えーじゃないです。チビ苺は泣いたらピーチクパーチクうるせーですよ。それでもいいんですか?」

平沢進「御免こうむる。だが顔の体操とかいうにらめっこの亜種に時間を費やすほどの暇はない」

翠星石「ふ~ん。…ホントは暇なくせに、ですぅ」

平沢進「私が暇ならオマエは大々暇娘だ。今のところ、濁流のごとく喋り続けること以外は量販店の人形と比べ働きには大差ない」

翠星石「な、何ですと!今ヒラサワはローゼンメイデン全てを敵に回す発言をしたですよ!!」

平沢進「敵に回したのは翠色のものだけなので。というか、実際我が家に居候してから窓割りの手伝い以外に何かしましたか」

翠星石「まったく、翠星石の多大なるお手伝いを忘れたですか?困ったヒラサワですね!えーと、翠星石はこの家に来てから……えーと…………」

翠星石「……えーと……」

平沢進「ほらみたことか」

翠星石「……あっ、そうです!スコーンを作ったです!ほっぺたが床まで落ちるようなあまーいスコーンを作れる人形なんて家電量販店どころか超高級ドールショップを覗いてもどこにも並んでねぇですぅ!ふふーん!どうです?参ったですか!」

平沢進「でも私の取り分は翠の人形の溶鉱炉に溶かされましたが」

翠星石「えっ!?んなこたねーですぅ!翠星石は昨日一個しか食べてねーんですよ?翠星石が一個、ヒラサワが一個、蒼星石が一個。ちゃんとみんなでおいしく食べたはずですぅ!翠星石は算数も分かる才色兼備なので間違いねーですぅ!」

平沢進「四則演算の法則が昨晩だけ捻じ曲がったか夜明けの内に定説を覆す新説が発表されたのなら正しいかもしれない」

翠星石「ええー?おかしいですぅ!翠星石は蒼星石とお話しながらスコーンを食べて、それでヒラサワの曲を聞いて、その後ヒラサワが灯りを消すから慌てて食べ忘れてたスコーンを……あ」

平沢進「3ひく2は1。そして1は蒼の娘の炉の中。ということは」

翠星石「………間違えてヒラサワのも食べちまってたですぅ!!あはははーですぅ!!」

平沢進「……」

翠星石「でもでも、ここは翠星石の空前絶後の可愛さに免じて許してやって欲しいですぅ?」

平沢進「…………」

翠星石「…………」

平沢進「……………………」

翠星石「…………………い」

翠星石「今からちゃんとお掃除とお庭の手入れをしてくるです」

平沢進「長すぎた沈黙にそこそこ値する答えで安堵」

短いですがここまで
短い上に展開も進まない
書いてて困りましたが平沢さんと翠星石が喋るとやたら話が長くなるので勘弁してください

TAINACO-eですね(違)

翠星石「すこやかに~伸びやかに~♪」パァアア

平沢進「因みに巨木を生み出すのは禁止で」ヌッ

翠星石「わっ!おどかすなですぅ!心配しなくても普通に水やってるだけですぅ」

平沢進「あ、そう。では私は向こうで仕事をするので静かに水をやるように」

翠星石「あいあーい、ですぅ」

平沢進「じゃ」サッ

翠星石「まったく、神出鬼没なのは癖か何かなんですかね。びっくりするからやめて欲しいですぅ」

翠星石「…それにしても」

翠星石「この館、屋内なのに植物でいっぱいですぅ。それに、みんな手入れが行き届いてて元気ですぅ。このヤシの木みたいなのも、たくさんのサボテンとかも…」

翠星石「ま、翠星石の趣味とはちょっと違うですけど。でも、植物を大事にするヤツに悪いヤツはいねーですぅ。やっぱりヒラサワに電話したのは正解…とまではいかなくても間違いじゃなかったですね」

翠星石「さてっと。多肉植物は水をやり過ぎるのはダメですから土の様子を観て…。色んな容器で水栽培してる植物は、この『庭師の如雨露』の力をほんのちょっぴり分けてやるです。きっと、今まで以上に元気になってくれるはずですぅ!」

翠星石「『庭師の鋏』がないから剪定とかはできねーですが…どうせヒラサワに無断で葉や枝を落とす訳にも行かないですし。今回は蒼星石に頼る必要もねーです!」

翠星石「おおっ?向こうにもスゴいたくさん植物があるです!まるで小さな植物園みたいですぅ!あ、あそこのは花が咲いてるです!蕾のついてるのもあるですぅ!」

翠星石「ふんふんふふ~ん♪…久々に植物と触れ合うのはやっぱりいいもんですね。ねぇ、スイドリーム!」チカチカ

翠星石「やっぱりスイドリームも嬉しいですか!ですよね、これぞ庭師の仕事…あれ?」

翠星石「なんかあそこに…ヘンなものがあるですぅ。植物じゃねーですね、えっと…」

翠星石「え……これは…?」

ストーン「……」

(※平沢さんのTwitterにて度々活動の報じられる外宇宙からの訪問者と疑われる正体不明の六本足の石)

翠星石「スイドリーム!」バッ

翠星石「なんですか、コイツは?優雅にガラスの容器にひっかかって植物を見上げているですぅ。ただの、石の飾り……?」

翠星石「…いや…違うです!」

ストーン「……」

翠星石「コイツ…足が生えてるです…!それに、六本も…!」

翠星石「足が六本ってことは…む、虫の仲間ですか?でも、こんなヘンなの見たことねぇですぅ」

翠星石「植物を襲う害虫にも、こんなヤツは覚えがねぇですし…どっちにしろ虫はイヤですぅ。近寄りたくねぇですぅ」

翠星石「……でも」

翠星石「本当に害虫なら…そこの植物を食べようとしてるのかもしれないですぅ。そんなことは、この館の庭師である翠星石の目が黒いうちに許すわけにはいかんですぅ!」

スイドリーム「?」チカチカ

翠星石「油断するな、ですか?分かってるですぅ。今はお仕事中。ヒラサワ家の植物の為にも、水やりは完璧に済ませる必要があるんですから!翠星石にはちゃんと作戦があるです…」

翠星石「ふふん…。そっと後ろに回り込んで死角から如雨露で床に叩き落としてやるですぅ!ああいうカタチの虫なら横や後ろには目が向かないはず!ゆっくりゆっくり近づけば…」

翠星石「って……あっ!」

翠星石「コイツ…死角がない…ですぅ?…」

翠星石「この石みたいな虫、どっちを向いてるかが全然分からねーですぅ!め、目はどこですか?前脚はどっちです?目印になるものがどこにもねーです!」

ストーン「……」

翠星石「それに…この堂々とした態度!さっきからピクリとも動く様子がねーですぅ。まるで、この翠星石を相手にしているのに何にも感じてないみたいに…」

翠星石「ごくり…こんな強敵、初めてですぅ。攻め手が分からねーことほど不気味なもんはねーですぅ…」

翠星石「……」

ストーン「……」

翠星石「…こうなったら、植物に当たらないように遠くから水を飛ばしてヤツを攻撃するほかないですぅ!大丈夫、翠星石は出来る子です。スイドリームと力を合わせれば…きっと…ねっ!スイドリーム!」

スイドリーム「!?…」ヒュンッ

翠星石「スイドリーム…?お、囮になってくれたですか!ナイス誘導ですぅ!今ですっ!て~いっ!!」バシャアアアア!

ストーン「……」パシッ カタン…

翠星石「!!うぎゃああああああ!!ついに動きやがったですぅ!!スイドリームっ!もっと水ですぅ!」バシャアアアアッ!!

ストーン「……」ザバァッ カタカタ…

翠星石「ひぎゃあああああああ!!!こ、こっちくんなです!!近寄んなですぅううううう!!吹き飛ばしてやるですぅ虫なんか怖くねぇですぅううううう!!!」ブンブン

バシャアアアアッ ビシャッ バシャア

翠星石「ふー…ふー…」

ストーン「」

翠星石「ふ…ふう。ようやく止まったですか!ざまぁみろですぅ!虫の分際でこの翠星石に立ち向かったのが間違いだったですね!オーホッホッホ!館の平和は守られたですぅ!」

翠星石「…ありゃ?」

ストーン「……」

翠星石「これ…本当にただの置物…?」ヒョイ

翠星石「さっきのは、ただ水に当たって動いてるように見えてただけ…」

翠星石「…なぁ~んだ!心配して損したですぅ。拍子抜けで………ってああっ、床がぜんぶビショビショですう!あわ、あわわ!ど、どうしましょうヒラサワに怒ら」

平沢進「静かに水やりをしろとゆっただろう」ヌッ

翠星石「あ…」

平沢進「あ」

…………
平沢進「今日がストーンの湯浴み日だったとは初耳」カタン

ストーン「……」

翠星石「………」

平沢進「ついでに我が家に雨季の密林のごとく水溜りが出現するとは。雨乞いの舞踏をした覚えはないが」

翠星石「あの…翠星石は水やりをしてて…それで…」

平沢進「我が家のフローリングは潤いも求めていないし水によって活性するタイプでもない。水やりの範疇が欧州と日本ではここまで異なるとは驚愕」

翠星石「ち、違うですぅ!翠星石は、水やりは真面目にやったですぅ!ただ、あの置物が虫だと思って…」

平沢進「ストーンはストーンであり炭素が含まれていたとしても虫の親類と言えるほど組成に似るわけではない。見た目にもそれが充分表れているかと」

翠星石「う…翠星石は…ヒラサワの為にただ頑張っただけで……」

翠星石「うぅ~…」

翠星石「何でですぅ……なんでなんもかんも上手くいかねぇんですか……翠星石は、ヒラサワにマスターになってもらうために、一心不乱にやってるのに……」

翠星石「翠星石は……翠星石は……っ」ギュッ…

翠星石「う~~っ!!!」シュパッパタン

平沢進「あ、棺桶鞄に。…あのねぇ」

翠星石『す……』

翠星石『翠星石は悪くねーです!!あんな分かりにくいものを置くヒラサワが悪いんです!!翠星石は一生懸命頑張っただけなんですぅ!何も悪くねーんですぅ!』

平沢進「……」

翠星石『翠星石は絶対謝らないですよ!だって悪くねーんですから!い、いくらヒラサワが怒っても、翠星石はぜってー謝らねーんですから!!』

平沢進「あ、そう」

翠星石『っ………』

平沢進「では私は仕事をするので、静かに拗ねるように」

翠星石『………』

https://youtu.be/Y5mCd2VEqNA
♪水脈 平沢進 2006

あー夜の月ほど高く
あー大樹の上 鳥さえ聞く

あまねく人の道に湧き
知られぬ水の音

あー空の星ほど遠い
あー昔の歌にまだ隠れ

あまねく夜の機微に湧き
汲まれぬ水の音

道の上に立ち鳥の声を読みうなだれ
何度澄んだ水の音を逃し望まぬ日は来た
雲の形さえ描いて示したはずだと
何度過ぎたオアシスを知らず荒れ野に立つ

あー夜の月ほど高く
あー大樹の上 鳥さえ聞く

あまねく人の道に湧き
知られぬ水の音

道の上に立ち鳥の声を読みうなだれ
何度澄んだ水の音を逃し望まぬ日は来た
雲の形さえ描いて示したはずだと
何度過ぎたオアシスを知らず荒れ野に立つ

平沢進「……」カタカタ…

平沢進「……」カタン

平沢進「さて。頼んでもいない天の祝福を処理しに出向こう」

平沢進「ん?」

平沢進「雨季に出現した水溜りが乾燥帯の砂に吸い込まれたかのごとく消えている。これはまさか、世間で絶賛値下げ中の奇跡や神といったものが我が家にも舞い降りたか」

翠星石「………」

平沢進「うわっ。神が遣わしたまじない人形?」

翠星石「ち、ちげーです!お父様が遣わした薔薇人形ですぅ!」

平沢進「ふーん、そう」

翠星石「こほん……えぇっと……ヒラサワ、その…」

翠星石「………」

平沢進「………」

翠星石「…水溜りはこの翠星石がキレイにしてやったですぅ!あと残りの植物にも水をやっといたですぅ!あ、ありがたく思いやがれこんちくしょーですぅ!!」

平沢進「……」

翠星石「え…えと…」

翠星石「……お、おこってる…ですか?」

平沢進「地球が瀉血の度に噴き上げるマントルの血飛沫のごとく怒り心頭…とヒラサワが金切り声で叫んだら?」

翠星石「え、えっと……」

平沢進「………」

翠星石「……」

翠星石「ご、ゴメンなさいですぅ!!翠星石は、間違えてヒラサワの置物と館の床をしっちゃかめっちゃかにしちまったですぅ!ぜんぶ翠星石の不覚ですぅ…」

スイドリーム「…!」チカチカ

翠星石「スイドリーム…お前は悪くねぇですぅ。さっきは置物だって教えてくれようとしてたですね。翠星石は、虫がコワイのと頑張らなきゃってキモチで、ロクに考えも聞いてなかったです…」

平沢進「…さっき絶対謝らないとか聞いた気がしたが」

翠星石「あれは…その…ひ、ヒラサワお得意の比喩を真似ただけですぅ!」

平沢進「へえ、そう」

翠星石「う………」

平沢進「………」

翠星石「う~…!ど、どうしたら許してくれるですか…?」

平沢進「………」

翠星石「翠星石に出来ることならなんでもするですぅ!だからだから…追い出したりとかは…」

平沢進「………」カタン

ストーン「………」

平沢進「ストーンは同居人である。ヤツはあろるの館を好きに放浪する。植物鑑賞も彼の主な趣味。たまに胆石になってたりもするけど」

翠星石「……?その足の生えた石のことです?それがどうしたですか?」

平沢進「ちょっと静かに。ストーンが極微細な活動電位で何かを伝えようと震えている。なに…」

平沢進「…なるほど。彼は自らの尊厳を綺麗に洗い流した人形に対し、ひどい憤りを覚えている。提示する条件を受け入れなければ、地方裁判所に民事訴訟状を叩きつけることも辞さぬ構えと」

翠星石「!!…わ、分かったです。ちゃんと聞くです」

平沢進「彼の提示する条件を、同居人である私が読み上げよう」

平沢進「『本日は晴天麗しく…』」

翠星石「すまんですぅ。序の挨拶は端折っても大丈夫ですぅ」

平沢進「そう?じゃ」

平沢進「『望まぬ祝福を吾に与えし人形の娘には、我が七本目の脚としてあろるでの旅路に寄与する事を求める』」

翠星石「え?…ど、どういうことですぅ?」

平沢進「さあ。ストーンはあろるの館を徘徊する者だが、彼にとっては巡礼の旅か何かだったのかもしれない。それを手伝えというのは彼にしても一大決心の賜物だったに違いない」

翠星石「?…つまりこのストーンを…好きな時に、色んなところに飾ってあげればいいってことですか?」

平沢進「人形語に翻訳すると、そう」

翠星石「…それだけです?」

平沢進「それだけ」

翠星石「…えぇー…」

平沢進「えーじゃない」

翠星石「だってだって、ヒラサワ怒ってたんじゃないんですか?そんな、些細なインテリアの模様替えぐらいで…ホントに許してくれるんです?」

平沢進「怒ってないですが。ヒラサワは数年ほど前から怒りを覚えなくなったので。あとインテリアではなくストーン」

翠星石「は、はぁ!?じゃあさっきのマントルがどーのこーのは…!!」

平沢進「ヒラサワお得意の比喩です」

翠星石「むきーっ!翠星石の言葉をパクんなですぅ!もう…もう!謝って損したですぅ!」

平沢進「人形が頭を下げて表示価格が下がるなんてことは」

翠星石「損ってのも比喩ですぅ!」

平沢進「あ、そう」

翠星石「む~…っ!」

平沢進「まあこれで翠の人形の仕事も増え、中ウィンが大ウィンになったことだし。そんなに立腹しても腹が減るばかりで一害あって一利無し」

翠星石「あっ、そうでした!…ってことは、これでうぃんうぃんのカンケーですね?やった!ついに翠星石も契約完遂ですぅ!これでヒラサワがマスターに…」

平沢進「いやまだ大ウィンだし。ウィンとは幾分かの距離があるかと」

翠星石「ズコー!な、なんでですか!この前、あと一歩で契約だって言ったじゃねぇですか!また騙しやがったですか!?」

平沢進「それはオマエが自分で言っただけのうえにただのお得意の比喩なので。それに人形の一歩はヒラサワの歩む一歩と必ずしも同距離とは限らない」

翠星石「む、むぅ~っ!屁理屈ばっかり!この…この屁理サワ!」

平沢進「なんとでも言うがいい」

翠星石「ちくしょーです!今に見てるですよ!ぜったい、この翠星石の力を全面的に認めさせてやるですから!覚えてやがれですぅ!!んじゃ夕メシ買ってくるですぅ!!」ヒューン

平沢進「はい。ただし窓は割らずに出立すべし」

一旦ここまでです
今回は時間かかった割に結構上手くいかなかったので
好きに感想や批判をお願いします

金糸雀「フーッフッフッフ……」

金糸雀「ふぅ…ようやく戻ってきたのかしら…翠星石のアジトに!!」

金糸雀「前は慌てて帰ったせいでつい道を忘れちゃったけど…ピチカートのおかげで、17回の失敗を経てなんとか再び辿り着けたのかしら!」

金糸雀「苦節三日と少し。何度山道で道を見失ったことか…イノシシに追いかけられた時は流石にこの知的で素敵な第二ドールのカナでさえ、生命の終わりを覚悟したのかしら…」

金糸雀「でも…そんな苦労も全て!今日この時に、翠星石を打ち破るためにあったのよ!オーッホッホッホ!」

金糸雀「さてっと!では呼び鈴を押しましょう!これを押せば家主と翠星石が出てくるのかしら!そんなことは自明の理!今日こそアリスゲームの緒戦の勝利者となって、すっきりしゃっきりして帰るのよ!」

金糸雀「うーんしょっ!あれ、呼び鈴に届かな……あ、ピチカート、代わりに押してくれるの?流石はカナの人工精霊なのかしら!」

金糸雀「じゃあピチカートっ!戦いの始まりを告げる鐘、もとい呼び鈴を鳴らすのかし……」

金糸雀「………」

ピチカート「…?」

金糸雀「ちょっと待ってね、ピチカート。このまま呼び鈴を鳴らしたら…」

金糸雀「翠星石のマスターである歌手さんとも敵対することになるのかしら。そうしたら、こんな風に庭に来ることも出来なくなるかも」

金糸雀「みっちゃんに頑張って色々調べてもらって、前聴いた曲は有名な小説をモチーフにしてるって勉強したのに。それが現代でも終わっていない問題を取り扱ってるってことも…」

金糸雀「調べれば調べるほど、音楽家としてのカナの本能が囁くのかしら!もっとこの人の曲を聴いてみたいって!」

金糸雀「……でも」

金糸雀「その為にアリスゲームを放り出す訳には行かないのかしら。みっちゃんとお父様の悲願のために…」

金糸雀「うーん!どうすればいいのかしら…」

金糸雀「うーん…うーん……」

ブオッ
金糸雀「うわぁっ!?な、何かしら?突風…?」

ヒラ…

金糸雀「あら?この黒い羽根は…」

…………
平沢進「だから。それは私の粗食であってストーンの糧食でもなければ人形のままごと道具でも無い」

翠星石「うるせーです!こんな栄養にならなさそうなものばっか食べてねーで、こっちのスコーンを食べるです!」

平沢進「だから。私も腹の虫も夕食時に食べる気は無いと」

翠星石「腹の虫は黙ってろですぅ!甘いもの用の別腹の虫は食べたいって言ってるに決まってるです!」

平沢進「別腹の虫は無口なので。最近は私に話しかけたこともない。なのでスウィーツに対し積極的に食欲を動かすこともなく」

翠星石「えぇ~ウソですぅ!甘いものが嫌いな人なんているわけねぇんですから!まして、この翠星石の作った絶品スコーンですよ?ほーら、ひとくちで良いから食べてみるです!」

平沢進「だから。そういう事以前にまず私の高品位粗食v2.0を返しなさいと」

翠星石「だからだからうるせーです!…返したらスコーン食べてくれるですか?」

平沢進「腹の虫よ応えたまえ。あ、ダメだ、粗食で非常に高い満足度を得る模様」

翠星石「じゃあ返せねぇですぅ。ヒラサワがスコーンを食べて、お互いにうぃんうぃんのカンケーになれるまで翠星石は譲らねぇですよ!」

翠星石「えぇ~ウソですぅ!甘いものが嫌いな人なんているわけねぇんですから!まして、この翠星石の作った絶品スコーンですよ?ほーら、ひとくちで良いから食べてみるです!」

平沢進「だから。そういう事以前にまず私の高品位粗食v2.0を返しなさいと」

翠星石「だからだからうるせーです!…返したらスコーン食べてくれるですか?」

平沢進「腹の虫よ応えたまえ。あ、ダメだ、粗食で非常に高い満足度を得る模様」

翠星石「じゃあ返せねぇですぅ。ヒラサワがスコーンを食べて、お互いにうぃんうぃんのカンケーになれるまで翠星石は譲らねぇですよ!」

あ、ダブった
すみませんホント…

平沢進「強情な人形が菓子を材料に強請りとは。世の惨憺たる未来の一端を目の当たりにしたようで落胆」

翠星石「何言ってるですか!翠星石の未来はもう夢と希望と元気と愛と…良いものばかりの虹色に染まってるですよ!」

平沢進「虹色も混合すれば黒なので」

翠星石「何くらぁーいこと言ってるですか!翠星石の辞書にはそういうくらぁーい言葉は載ってねぇんで…って、あっ!」

平沢進「はい。粗食は本懐を遂げ腹の虫の燃料となりました。玄米に宿る神霊に向け合掌」

翠星石「もう食べちまったですか!?食べるの早すぎですぅ!…というか、やっぱ量が少なすぎですぅ!ヒラサワがいくら霞食って生きてる仙人みたいな見た目でも足りるわけがないですよ!」

平沢進「筑波山は別に昇仙の為の仙境というワケでもないので。霞という有機化合物を食した憶えもない」

翠星石「仙人だろーが人間だろーがやっぱその量はおかしいって言ってんです!ほらほら、スコーンを食べてもっと翠星石みたいな元気ハツラツになるです!」

平沢進「いや、どこぞの人形のような拡声器擬きになるのは御免なので。自身が騒音の爆心地となることほど不快な事は無い」

翠星石「う、うるせーです!翠星石みたいになれるのが嬉しくねーわけがねーんです!ほら、早く食べるです!どうしても食べないってなら、実力行使してでも食べさせるですよ!」

平沢進「やれるものならどうぞ。そのスマートな御足をイリザロフ法に頼らず延ばす根気があるのなら」

翠星石「ああー!!今遠回しにチビって言ったですね!む~っ!その言葉は翠星石を本気にさせたですよ!」

平沢進「だって紛れも無い真実だし」

翠星石「むぅ~っ!!真実を言われて傷つく乙女だっていくらでもいるんですよ!乙女心をもっと知りやがれですぅ!」

平沢進「心について知っているのは画数が四文字ということぐらいだけなので。知りもしないことを知っていると声高に叫ぶほどに私は愚かではない」

翠星石「むー!!また屁理屈で逃げやがったですぅ!翠星石がいくら冷静沈着かつ篤実温厚だからと言って、いい加減に怒るですよ!」

平沢進「世論の皆さんの一般的な視野フィルタを通して見た結果、翠の人形は既に怒りに震えていると表現できる状態かと」

翠星石「むきーっ!!ま、まだギリギリ怒ってねーです!!翠星石はただ契約をしてほしくて……!」

「…まったく、さっきからピーチクパーチク煩い子ねぇ」

翠星石「……えっ!?」

平沢進「あ」

翠星石「…その声は…っ!」バッ

「短気は損気よぉ。仮にも薔薇乙女と在ろうものが、御菓子の一つでぐだぐだ喚くなんて…」

水銀燈「乳酸菌、摂ってるぅ?」

翠星石「て、てめぇは……!!遂に来たですか…」

水銀燈「ごきげんよう。私は薔薇乙女第一ドール、水銀燈。ノックも無しに夜分遅く失礼するわぁ」

平沢進「私は平沢進だ。平沢唯じゃない」

水銀燈「あら?これはどうもご丁寧に。最近はどこで人間に会っても、怯えられるか叫ばれるばかりでウンザリしてたのよねぇ」

平沢進「我が家の挨拶は「なんだ!」とか「やかましい!」とか「うわー」とかではないので。そういう家もあるかもしれないが」

水銀燈「へぇ、そうなの。じゃああの家は代々捨て台詞を挨拶にする家系だったのかしら…うふふ、真紅にはぴったりねぇ」

翠星石「!!てめぇ、この街で真紅に会ったですか!もしかして、もう真紅を…」

水銀燈「あらぁ?そこの床でピーピー騒いでるのは…もしかして翠星石?小鳥の鳴き声かと思ったわぁ」

翠星石「むきーっ!うるせーです!何が小鳥ですか!そんな背丈変わらねーくせによく言うですぅ!」

水銀燈「あら、そう?背丈も器も段違いに違うつもりだけど。貴女のその色違いのお目目じゃ分からなぁい?」

翠星石「色違いじゃねーです!オッドアイですぅ!」

平沢進「イリザロフ法の成功した人形ということか。やはり翠の人形も試してみるべきなのでは」

翠星石「結構毛だらけ猫灰だらけですぅ!」

水銀燈「いいえ、イリザロフ法は関係ないわぁ。私は生まれた時から他のドール達よりも強く、美しかったというだけよ」

平沢進「へえ」

翠星石「なーに言ってやがるですか!お前より翠星石のほうが強く美しーですぅ!ね、ヒラサワもそう思うですよね!」

平沢進「……」

翠星石「なに悩んでるですか!!深刻な顔すんじゃねーです!こういう時はキミが一番だとか言うところですぅ!」

平沢進「いや、ただ美とは時代と所在とシナプスの移りにより変わる為にどちらが明確に優れるとは言い難いってだけ」

水銀燈「うふふ…少なくとも、いついかなる時代に置いてもそこの子が私に優った事なんてないわよ。時代の移ろいに左右される幅を越えて絶大に、ローゼンメイデンとしての品格が違うのだもの」

翠星石「な、なっ……!」

平沢進「ふーん」

翠星石「何がふーんですか!ちっとは反論してみやがれですぅ!仮にも翠星石のマスターなんですから!言われっぱなしじゃくやしーですぅ!」

平沢進「想像上の既成事実を騙られても右眉を困惑という文字の形に傾げるしか出来ないので」

水銀燈「あら…もしかして、まだ契約してないのぉ?アハハ、そりゃそうよねぇ。こんな小煩いだけのドールと契約したい人間なんているわけないもの」

翠星石「はぁ!?このローゼンメイデンいちの才色兼備の愁眉秀麗な翠星石と契約したくない奴なんているわけねーです!ヒラサワが並外れた変わり者なだけですぅ!」

平沢進「こうるさいというのとヒラサワが変わり者という点については大いに同意」

水銀燈「まあ、そんなことはどうでもいいわ。さて、136時間18分ぶりね、翠星石…。前も思ったけど、ホントに蒼星石と一緒じゃないのねぇ。なんかハンパでミジメな感じぃ」

翠星石「ふん。てめーに言われる筋合いはねーです。蒼星石と翠星石は、近くに居なくたって繋がってるんですから」

水銀燈「へえ、それはそれは…『絆』とやらでぇ?まったく、つまらない話。真紅もそうだけど、それ以外に言うことはないのかしらぁ。きずな、きずなって見えないものばかりに縋って。傷心がちなロマンチストみたい」

翠星石「薔薇乙女がロマンチストで何がわりーですか!……でも、その口振りだと真紅を倒してはいねーみたいですね?もし倒してたらもっと邪悪に喜んでるハズですぅ」

翠星石「ホーリエも従えてねーですし…。真紅には会ったけど勝てなかったんですね。さすが真紅ですぅ!」

水銀燈「ふん…真紅には挨拶をして来ただけよ。昔と変わらず、人間やドールと馴れ合うのがお好きなようで。まったく、無能なお友達に囲われて何が楽しいのかしらね」

翠星石「ふーんだ。てめぇには解らねぇですよ。契約もせずに、人から力を奪い取るような分からず屋には!」

平沢進「洋菓子を強請の道具に用いる人形が呟いても説得力が」

翠星石「し、しーです!今は水銀燈と話してるんですから!隙を見せたら殺られるんです、ツッコまないでください!」ヒソヒソ

平沢進「あ、そう」

水銀燈「…?」

水銀燈「…ええ。真紅の事なんか分かりたくもないわぁ。軟弱が移っちゃうもの。雛苺も、真紅も…欲しいのはローザミスティカだけ。あの子達の無意味な感傷なんて不必要なものなのよ」

翠星石「…こほん。魂だけが欲しい、ですか…ホントに悪魔みてーなやろうですね。見た目通りに!」

水銀燈「あら。それだけはちゃんと分かるのねぇ。一応お目目が二つついてるだけはあるわぁ」

平沢進「いや、天使の亞種である可能性も」

水銀燈「…!?」

翠星石「はぁ?んなわけねーですよ。どう見たって悪魔の化身ですぅ。ヒラサワ、もしかして鳥目で夜だから良く見えてねーんですか?」

平沢進「失敬な。ただ、天使とは悪魔の偽名であったり、悪魔は天使の仮装だったりする。その水銀の化身もそうなのかと」

翠星石「は、はぁ…。って!ツッコミは止めてって言ったじゃねぇですか!」ヒソヒソ

平沢進「今のは純なる傍観者からの御意見でして。平手で人の頭にお決まりの奇声を叫びながら殴打を与える軽犯罪の真似事ではない」

水銀燈「……へぇ。アナタ、中々面白いことを言うのねぇ。ま、私は神仏とは縁がないんだけど」

翠星石「え、ヒラサワの言葉が通じてるですか?センスのねー奴ですね!あんな小難しい割に意味不明なことを、マジメに聞いてる時点でお郷が知れるってもんですぅ」

水銀燈「ふん。薔薇乙女のお郷は皆お父様の手の中でしょうに。ヘタな煽りは無言よりずっとイタイわよぉ」

水銀燈「…まあ?貴女はお父様の手違いで生まれてしまったようだし、失言は仕方ないのかもだけど」

翠星石「なっ……なぁーっ!!?てめぇ、今……!!」

平沢進「あ、そうなの?」

翠星石「…んなワケねーですっ!!!翠星石は、お父様の寵愛を受けた誇り高きローゼンメイデンの一人ですぅ!水銀燈、それは翠星石と一緒に生まれた蒼星石への侮辱でもあるんですよ!」

水銀燈「そう。一つとして生まれるべきだったものが分たれて生まれたの。貴女は、欠片となったローザミスティカのそのまた欠片…」

水銀燈「貴女は最初から不完全さの写し身なの。完璧な乙女であるアリスには程遠い存在…それが生まれた時から決定づけられた上で生きるのが貴女たち。私に敵う道理がどこにあるの?」

翠星石「…いくら最初に生まれたからって、言っていいことと悪いことがあるですよ」

水銀燈「あ、怒っちゃった?図星をつかれるとヒトってすぐ頭に血が上るのよねぇ。自愛的なヒトに似るアナタ…やっぱり美しくないわ。それにいちいち煩いし」

翠星石「うるせーのはてめぇです。…スィドリーム!!」

水銀燈「あらぁ…お喋りはここまでかしら」バサッ

翠星石「ぜってー許さねーですぅ!!この翠星石の全身全霊の力を以て、なんとしても謝らせてやるですぅ!!翠星石と蒼星石が生まれたのが、間違いだなんて…!!」

水銀燈「うふふ…間違いだというならローゼンメイデン自体がみんな間違いなのよぉ。だって、誰一人お父様の求めるアリスとして生まれることが出来なかったんだもの。その中でも、貴女たちは一人じゃマトモに立つことも出来ない憐れな子…」

翠星石「黙りやがれですぅ!!翠星石は……一人でも闘えるですぅ!」

水銀燈「じゃあ、震えてるのはどうして?分かるわよぉ、初めて蒼星石抜きで闘った時、分かったのよねぇ?自分は一人じゃマトモに武器も振るえない…ジャンクだってこと」

翠星石「だ、黙れ黙れですぅ!怯えてなんかねーですぅ!勇気一杯元気一杯なのが翠星石のモットーですぅ!」

水銀燈「いいのよ強がらなくて。背中に蒼星石がいないと、怖くて足元が覚束無いんでしょう?」

翠星石「ん、んな……んなことねーです!翠星石は…翠星石は…!」

平沢進「………」

平沢進「…被造物は皆、宇宙のつまらない冗談から生まれた」

翠星石「…?」

平沢進「場酔いのノリで無窮の世界の底に沈んだ原子がぶつかり合って分子が跳ね、それらが東京の人ゴミのごとく混ざり合って原始のスープが」

平沢進「最初から何もかも手違いなのだから、今更何を怯える必要があるというのか」

水銀燈「…!」

翠星石「…それって、フォローです?」

平沢進「いや、冗談」

翠星石「ズコー!急にヒラサワがマスターらしいことをしてくれたのかと思ったのに!」

平沢進「マスターでもないのにマスターらしく出来るはずもなく。ヒラサワはヒラサワらしいだけ」

水銀燈「アナタ、さっきから中々興味深い事を言うのねぇ。最初から手違い…ね。こっちに来てからも、向こうにいた時も、面白いことを言う人間ってあんまり居なかったから珍しいわぁ」

平沢進「へえ、そう」

水銀燈「ま、だからと言って躊躇するつもりは無いけど。命が惜しかったら、頭を抱えて伏せてることねぇ。怪我の保証はしないけど、面白いお話の御礼に命の保証ぐらいはしてあげるわよ」

平沢進「それはどうも。ただ、自宅の寝台以外で床を這い蹲う趣味は持ち合わせていないので」

水銀燈「…ふーん。そう。まあいいけど」

翠星石「ふー…兎にも角にも、頭がちょっと冷えたですぅ。でも、このまま水銀燈を許すつもりはねぇですよ!行きましょう、スィドリーム!!ヒラサワ!」

平沢進「え。だからまだ私はマスターとかいう英単語の一種では無く」

水銀燈「あら、やっとその気になったぁ?ちょっと気が削がれちゃったけど…お喋りにも飽きたし、じゃあやりましょうか」

水銀燈「…このお喋りよりも闘いが長引くとは思えないけどぉ」

一旦ここまでです
好きに御批判や御意見をお願いします

大変恐縮なんですが質問とかも多分ないと思うんですがもしありましたら受け付けております
レス番の引用方法とか分かってないんですが自分の身の丈に合う程度に返答しますので気軽にどうぞ

昨日更新すると言いましたがすまんありゃウソだった
代わりに今からします

翠星石「……と見せかけて!ぽーいっ!」

平沢進「あ」

水銀燈「……はあ?」

平沢進「…あのねぇ」

翠星石「ふっふーん…騙すなら味方から、ですぅ!ヒラサワ、いま翠星石のスコーンを食べたですよね!欠片をパクって!間違いねーです!別腹の虫に聞いてみやがれですぅ!」

平沢進「なんという非道を敷く人形なのか。開いた口を洋菓子で塞ぐとは。開いた口が塞がらない」

翠星石「問答無用ですぅ!さあヒラサワ、約束を今こそ果たすですよ!さっきは一人でも闘えるって言いましたけど…一人より二人の方が心強いに決まってるですぅ!」

水銀燈「…一体なんの話ぃ?つまらなそうだから聞くつもりは無いけど、この私を前にして人形劇を始めるなんていい度胸ねぇ」

翠星石「劇じゃねぇです!うぃんうぃんカンケーの最後の橋渡しですぅ!」

水銀燈「もっと意味が分からないわ。バカみたぁい」ゴオッ

翠星石「どわぁああ!?ひ、ヒラサワ急ぐですぅ!」

平沢進「はあ。で、契約書は。まだ我が家の電話機は何も受信していないが。やはり国際FAXの為タイム・ラグが…」

翠星石「だーかーら!契約書をFAXで送るシステムじゃねーんですって!ほら、これが指輪で…うわっと!?」バッ

水銀燈「あら、惜しい」

翠星石「あぶな……っと、これに口づけすればいいだけですぅ!」

平沢進「えー……」

翠星石「えーじゃねぇです!何今までで一番のイヤな顔してるですか!今そっちに指輪持ってきますから待ってやがれですぅ!」

平沢進「だって口づけって。あのねぇ。少女漫画のテンプレートじゃないんだから…」

水銀燈「約束って、何かと思えば契約の事?面倒だしぃ、その前に終わらせて貰うわよぉ」

翠星石「げっ!スィドリーム!もっとめいっぱい世界樹の葉を出すですぅ!健やかに~伸びやかにー!」

水銀燈「邪魔くさいわねぇ。こんな草でどうにかなるとホンキで思ってるのぉ?」ズバッ

翠星石「うっ、うわぁっ!あんなあっけなく…!もっとです、スィ……」

翠星石「あ……あれ?」カクン

水銀燈「…あら♪」

平沢進「?…」

翠星石「しまった…です……ネジが…もう…きれるですぅ…!…契約してないまま…一気に力を使ったから……」

水銀燈「アハハ、貴女にはお似合いの結末よぉ。蒼星石に死に顔がどうだったかぐらいは教えてあげるから、安心して逝きなさぁい」バサッ

翠星石「く………に…逃げなきゃ……で……」フラッ

水銀燈「させないわぁ♪最後くらいは静かにしなさいな。ローザミスティカ、有難く戴くわよ」

翠星石「う…うわぁっ…!!…ひゃっ?」ヒョイ

ドスッ!!

水銀燈「…あら」

平沢進「……」

水銀燈「ふぅん…。その子を庇うのお?もう少し思慮分別のある人に見えたけどぉ」

平沢進「いや、何せ翠の人形はあろるの館前に配置されていたものをヒラサワが一時拾得しただけなので。持主の現れる前に破壊されたとあって私に賠償責任を発生させる訳にはゆかず」

翠星石「ひ、ヒラサワ……ナイス…カバー……ですぅ……でも…この持ち方は……あんまり…ですぅ…子猫じゃ……ねーんですから…」

平沢進「あ、つい」

翠星石「ま……いいですぅ……じゃあこれ…指輪…です…」

平沢進「はあ」パシ

水銀燈「!させないわよ」ドッ

翠星石「!!ヒラサワ…急いで…!」

翠星石「まきますか……?まきませんか………応えて、ですぅ…」

平沢進「…………」

平沢進「…では、何方かと言えばまく方向で」

翠星石「よし来た…合点承知之助……ですぅ!」

パァアアアッ!!

「…ふぅ~っ!」

翠星石「改めて…!!薔薇乙女第三ドール、翠星石!!いざ参る、ですぅ!共に行くですよ、ヒラサワ!」

平沢進「…光と共に蛇か蜘蛛かのごとき不完全変体が始まったりしておらず安堵」

翠星石「すかさず!…スィドリーム!最後の力で世界樹の枝を呼ぶですぅ!」パアァ…

水銀燈「きゃ……ちっ!」バッ

翠星石「今です!…ヒラ…サワ!超特急で…ネジをまくですぅ」

平沢進「はいはい」キリキリ…

翠星石「…はふ~っ!翠星石、かんぜんふっかつ!ですぅ!今までと同じだと思うなですよ、水銀燈!」

水銀燈「…あーあ、契約しちゃったの。残念ねぇ、えっと…」

平沢進「コール、ヒラサワ」

水銀燈「そう、平沢さぁん。悪いけど、頭抱えて伏せてたとしても命の保証は出来なくなったわぁ」

翠星石「って翠星石の話を聞けですぅ!…心配するなです、ヒラサワ!代わりに翠星石が命の保証をするですよ!ケガの保証までは…ビミョーですけど!」

平沢進「人形保険会社のCMか何か?生憎と間に合っておりますので」

翠星石「ちげーです!セールス文句とかじゃねーです!…んじゃ、ホンキでいくですよ…スィドリームっ!!」

ドバァアアアッ!!

翠星石「おお~っ!そうです、これです!これぞ翠星石の実力ですぅ!」

平沢進「うわっ。我が家が紛うことなき密林の巨木の仮住まいに。実に嘆かわしい」

翠星石「嘆いてる場合じゃねーですよ!後でちゃんと消しますから気にすんなですぅ。さあ、これで水銀燈をぐるぐる巻きに縛り上げてけちょんけちょんにしてやるです!」

水銀燈(…ふぅん。契約して、蔦の量も力もかなり増したわね)

水銀燈「けど…面倒になるとは言ったけどぉ、厄介だとは言ってないのよぉ?」ゴオッ

翠星石「ふん!強がりですね!ヒラサワと翠星石が契約したいま、誰も翠星石を止めることなんて…!」

ズバッ!! ズバッズバッ!!

翠星石「……へ?」

水銀燈「…いくら大きくても、草はただの草なんだからぁ」

翠星石「え…!そんな…」

翠星石「し…信じられねーです…!契約もしてないドールが、世界樹の枝をこんなふうに切り倒せるはずが……!」

水銀燈「うふふ…だから、格が違うと言ったでしょう?」

翠星石「くっ…!でも、今ならスタミナに気を遣う事もねーです!ほら、スィドリーム!葉っぱで目くらましですぅ!」

水銀燈「目くらまし?まったく、地味な手ねぇ」

翠星石「何とでも言えです!(この隙に大きな枝で狙いをつけて…!)」

水銀燈「させないわよぉ」ブオッ

翠星石「どわぁっ!?風圧で葉っぱが全部っ…!?」

水銀燈「はい、じゃあねぇ」ドスッ

翠星石「うわっとぉっあぶなぁっ!あっ!翠星石のヴェールが…!てめぇよくもっ!」

水銀燈「…ちょこまかと鬱陶しいわねぇ。羽根で部屋ごとぜーんぶ吹き飛ばしてあげようかしら」バサバサ…

平沢進「えー」

翠星石「!!させるか、ですぅ!世界樹の枝を根本から伸ばせば、そのくらいっ…!」ズゥッ

水銀燈「あら、なかなかやるじゃない。拡散した羽だと威力がちょっと足りなかったかしら?でもちょっと力を込めればぁ…」

翠星石「うそっ!?これでも受け切れないなんて…っ…あっ、危な…!ヒラサワの楽器が…!」

水銀燈「…それを護ってるの?」ニヤ

翠星石「え?…あっ!」

平沢進「……」

水銀燈「アハハ…自分で弱味をバラしちゃうなんて。だからアナタはダメなのよぉ!」ゴオッ

翠星石「ス、スィドリームっ!!如雨露をお水で満たしておくれ…甘ぁいお水で満たしておくれ…超特急で!ですぅ!」パァアアア

水銀燈「喰らいなさぁい」翠星石「ガードするですっ!」

ドバァアアアッ!! ドス!!ドスドスッ!!

翠星石「ふひー、なんとか護りきれ…っ!?」

水銀燈「隙だらけよ、おバカさぁん」ドカッ

翠星石「どへっ!痛っ…!」

水銀燈「吹き飛びなさぁい」ブオッ

翠星石「どわぁああっ!?」

平沢進「あ」

翠星石「べふっ!…ひ、ヒラサワ…もう少し優しく受け止めるですぅ」

平沢進「ヒラサワの動体視力に過度な期待は禁物。ついでに腕力も十人並以上の筋持久力を予想すべきでない」

翠星石「わかったです、ブルーカラー的な期待はしないようにするですよ!…けほっ…とりあえずありがとです、ヒラサワ」スタッ

水銀燈「うふふ…こんなカンタンな罠にハマるなんてね。やっぱり、ドールズにとって契約者なんてただの重石だわ」

平沢進「小煩い人形を鎮めるには五、六十キロの重石ぐらいでは足りないので。もう少しストーン的なものが欲しいほど」

水銀燈「あ、そ。…何だか調子狂うわねぇ。…じゃあ、私がその子に乗っかれば丁度いいかしらぁ?」

翠星石「ちょ、ちょっとヒラサワ!翠星石が頑張ってる時に茶化すんじゃねーですぅ!」

平沢進「茶化したつもりはそこまで無かった」

翠星石「多少あるんじゃねーですか!まったく……」

翠星石「しっかし…契約した全力の翠星石が、こんなに歯が立たないなんておかし…」

翠星石「…「おかし」?あっ、そうだ!やっぱりヒラサワが食べなさすぎなのがダメなんですぅ!!ほら、このスコーン全部食ってしゃっきり目ん玉開けやがれですぅ!玄米じゃアリスゲームには勝てねぇですよ!」

水銀燈「はあ?あのねぇ、菓子でアリスゲームが左右されたら苦労しないのよ」

平沢進「私もあのねぇ…と言いたいところだが癪なことに腹の虫が重い腰を上げ渋々ながら頷いている。ヒラサワは仕方なしに目の前の三角菓子に手を伸ばす」

翠星石「おおっ?力がさっきよりずっと高まったですぅ!さすが翠星石特製のスコーンですぅ!これなら……!!」

水銀燈「……下手な冗談に付き合うほど私は暇じゃないのよぉ?遊びにも飽きてきたし…いい加減に終わらせてあげるっ!」

ドバァアアアッ!! …チャララン♪
ズバァアアッ!!
ガキィイン!!

水銀燈「…!」

翠星石「え!?…や、やった!!水銀燈の攻撃を、初めて真正面から止めた…ですぅ!!」

平沢進「何やら同時にそこの窓が絹を裂くような悲鳴と共に崩れ落ちたが。私の心中を代弁してくれたかのよう。…ついでに金色の光明が見えたような気も」

翠星石「す、翠星石の攻撃が余りにも強かったせいですかね!…っていうか、ウソつくなですぅ。テンペンチーが起きてもその仏頂面が変わるとは思えんです」

平沢進「そう。だから今のはヒラサワお得意の比喩」

翠星石「むーっ!それ気にいったですか!?全部それで返されたら翠星石のツッコミする隙間が無くなるですぅ!」

平沢進「それは大助かり」

翠星石「むき~っ!!」

水銀燈(今の音色は……あの子、一体なんのつもり?)

翠星石「それより…水銀燈!見たか見たかーですぅ!!やっぱり翠星石はスゴいんですぅ!この調子で一気に畳み掛けてや…」

水銀燈「煩いわよぉ」ブンッ

翠星石「うわっひゃあ!?あべっ!…ヒラサワ、ちゃんと受け止めるですよ!翠星石の襟首は掴むとこじゃねーです!」

平沢進「余りに短周期なデジャビューの出現にストーンも私も驚嘆の念を隠せず。ノストラダムスだかヨシュアだかの預言書か何かに記されていた確定事項の一種だったのかもしれない」

水銀燈「…………はぁ」

水銀燈「まったく、せっかくノッてきたところだったのに。横槍が入るなんてね。…興が醒めちゃったわ」フワー

翠星石「え?…に、逃げるですか!?勝負はまだついてねーですよ!さっきのこと謝れですぅ!このヒキョー者!!」

水銀燈「はいはい。摘まれるのを待つだけの蕾が喚いたところで、気にする剪定者は居ないものよ。特にそれが、取るに足らない小さなものならねぇ」

翠星石「うるせ……!」

翠星石「ん…!えーとえーと、もっと優雅に…」

翠星石「…どんなに小さくても、蕾の声を聴くのも庭師の大事な能力ですぅ!葉や枝の声も聴けねぇ真っ黒くろすけには解らねーかもしれねーですけど!」

水銀燈「…へえ。少しは言葉を憶えてくれたみたいで、姉として嬉しいわよぉ。礼儀はまだ全然足りてないみたいだけど。じゃあねぇ」

平沢進「またこんど」

水銀燈「…また会いたいの?本当におかしなヒトねぇ」

翠星石「ふん!もう二度と会いたくねーですこんちくしょー!」

水銀燈「貴女には聞いてないわよ。…ふん」ビュオオッ

翠星石「…ホントに行っちまったですぅ」

平沢進「そのようで」

翠星石「……」ポカーン

平沢進「しかし、水銀の化身の割に硬派ならぬ硬羽という中々ソリッドな表現方法を用いる人形で。おかげであろるの館が鴉のそれと見紛うようなくらぁーい館に様変わり」

翠星石「……」

平沢進「…え。何顔のパーツをシリアスverに取り替えたかのごとく神妙な表情になってるの」

翠星石「うるせーです!翠星石だってたまには真面目な顔もするですぅ!ふぅー……」

翠星石「………ぃいやったああああああーーですぅ!!!」ピョーン

平沢進「うわっ。やかましい。あ、今のは挨拶ではない」

翠星石「翠星石が!この翠星石が!!あの水銀燈を追い返したですぅ!信じられねーですぅ!!」

平沢進「やはり自分も自身を疑わしく思っていたと」

翠星石「ぎくっ。…まあ、ちょびっとだけですぅ、ちょびっとだけ!翠星石の能力は攻撃向きじゃありませんし、水銀燈は真紅ともタメを張るようなヤツですし…」

翠星石「あの時は集中してて分かりませんでしたが、思い返すとアイツ全然本気を出してなかったみたいですし…気まぐれか何か知らねーですが撤退してくれて助かったですぅ」

平沢進「逃げるなと煽り文句を飛ばした癖してよくもまあ」

翠星石「あ、あれは怒ってたので仕方ねーんです!」

翠星石「…なにはともあれ!無事で済んだんですから結果オーライですぅ」

翠星石「それに、あんな風に世界樹の枝まで次々繰り出せられたなんて驚き桃の木ですぅ。やっぱり、ヒラサワと契約したのはラッキーでしたね!」

平沢進「こちらは荒めの人形劇を観ているだけで腹の虫が暴れだしたためかなりアンラッキーな状態に。空きっ腹という加護を与える指輪など、今時どの界隈でも流行らない」

翠星石「あー、それは翠星石が力をたくさん使ったからですね。でも、普通だったらもっとよろよろしててもおかしくないんですよ?お腹がすいたぐらいで済んで、やっぱそっちもラッキーですぅ!契約者の身体を慮る翠星石に感謝するですよ」

平沢進「腹の虫を衰弱させる能力を発揮されて感謝するほどに私は被虐的思想に染まってはおらず。ついでに私はまだ慮られるほどに足腰が衰弱しているわけではない」

翠星石「もーまたひねくれて…そんなら、明日の朝はベーグル焼いてやるです。翠星石特製の美味しくて栄養たっぷりの甘々ベーグルですよ!それを食べれば、きっとヒラサワも元気ハツラツ間違いなしですぅ!」

平沢進「えー」

翠星石「えーじゃねぇです!さっきのスコーン美味しかったですよね?ふふん、聞かなくてもわかるですよ!なにせこの翠星石が作ったんですから!ベーグルもおんなじぐらい美味しいのを作ってやるから期待しとけですぅ!」

平沢進「腹の虫がさっそく早朝の胃もたれの気配に怯えている。今のうちから社会的な信用の薄い神仏に一応の祈りを捧げておくべきか」

翠星石「ベーグルで胃もたれとか古今東西に至るまで聞いたことねーですぅ!無用な心配のほうが胃にダメージを負うですよ」

翠星石「まったく…ふぁあ~あ」

翠星石「……頑張ったのでなんだか眠くなってきたですね。ココアでも飲んで、もう今日は寝るですぅ」

平沢進「あ、そう。では、これ」スッ

翠星石「え?あ、ありがとですぅ…これホントにココアですか?甘い匂いのするコーヒーとかじゃねーでしょうね」

平沢進「そんな食品添加物を溶解度以上に溶かし込んだような飲料は我が家にはない。香水を角砂糖の代わりに使うような習慣もこの地域には伝わっていない」

翠星石「………信じますよ?じゃ…」ゴク…

翠星石「…え!?ホントに普通に美味しいココアですぅ!」

平沢進「驚愕するポイントが明らかに異常。人形の劇中描写的誇大表現だとしても不自然」

翠星石「いや、だってヒラサワが素直にココアをくれるなんて…」

翠星石(……もしかして、ヒラサワの楽器を守ったお礼なんでしょうか…やっぱヘンだけど良いところあるじゃねーですか)

平沢進「黙り込む人形に不気味さを感じるようになるとは。完全に薔薇蔓人形たちの毒棘に規定観念を毒された模様」

翠星石「う、うるせーです。翠星石だって時には黙って考えるんですぅ。考えたこと何でも口にだす訳じゃねーんですぅ」

平沢進「へえ。人形の口と電子頭脳は脊椎反射の如く打てば取り敢えず響く仕組みで繋がっているのかと」

翠星石「失敬ですね!ちゃんと考えて喋ってるですよ。翠星石のこの小さく見える頭脳には外からは分からなくても無限の可能性が詰まってるんですぅ!」

平沢進「……」

翠星石「そんな顔するなですぅ!はいはい無限は言い過ぎでした!」

平沢進「分かればよろしい」

翠星石「む~…」

翠星石「はあ。じゃあもう寝るです。おやす…」

平沢進「あ、そういえば」

翠星石「ん?まだ何かあるですか?」

平沢進「翠の人形の手許にゲームの参加チケットはあるようだが、今のところ受け手ばかり。この度ヒラサワという糧食を得た訳だが、攻め手に回ろうという気分はおありか?」

翠星石「…つまり、アリスゲームに参加する気があるのか、って事です?」

平沢進「人形語に訳すると、そう」

翠星石「…翠星石は他のドールを倒すつもりはねーです。アリスに成りたくないわけじゃないですが…姉妹を倒してまで成りたいなんて思わねーんです」

平沢進「へえ」

翠星石「アリスゲームは、お父様が考え出した闘いですぅ。だから従うのが当然…と思っている姉妹もいるかもです。でも、翠星石にはよく分からないんです。あんなに優しかったお父様が、ただ闘うように命じるなんて…」

平沢進「……」

翠星石「分からないままで、姉妹を倒してしまうなんて取り返しのつかないことをしたくねーんですぅ。…それにアリスゲームを完遂しようとしたら、蒼星石も倒すことになるです」

翠星石「出来る出来ないかは置いといて、翠星石はそれだけは絶対ぜったい何があろうとしないです。…それに、翠星石はケンカがもともときらいですし!」

平沢進「なるほど」

翠星石「ええっと……あとは…」

翠星石「…ヒラサワはどうしたいですか?」

翠星石「…アリスを目指すために闘うって契約者が言うなら、翠星石は……」

平沢進「御免こうむる。アリスとかいう者を待つのは奇妙奇天烈なお茶会の出席者だけでよろしい。私はそうした茶会に出席する気はさらさらない」

翠星石「…ぷっ」

平沢進「はい?」

翠星石「いや…どうせんなこと言うだろうなーと思ってただけですぅ!あははは!!」

平沢進「…あ、そう」

翠星石「あはははっ……こほん。てなワケで、ヒラサワ。志も大いに語ったことですし改めてよろしくですぅ!ほら、握手しましょう、あくしゅ!」

平沢進「はい。よろしく」

翠星石「よろ……って!何でストーンの脚を代わりに差し出してるですか!!ストーンをマスターにした憶えはねーですぅ!」

平沢進「いや、ストーンがミクロな活動電位で、日頃の奉仕に対する感謝の念を伝えたいと言ってきたので」

翠星石「んなこと後でいーですぅ!はいはい、ストーンどーもですっ…と!さあ、ヒラサワ!握手するです!」

平沢進「残念ながら左手にはストーン、右手にはソリッド・エアーが握られている為人形が手を出す隙間は存在しない」

翠星石「む~…こういうとこはどこまでいってもカタクナなやろーですね…こうなったら…えーいっ!」バッ

平沢進「うわっ」

翠星石「ふっふーん!翠星石のオリンピック並の大ジャンプ、大・大・大成功ですぅ!」プラーン

平沢進「ヒラサワの右手はジャンプ時にその身を揺らす背面跳び棒でなければ人形劇に用いられる操り棒でもない。…因みに公園のぶら下がり棒でもない」

翠星石「ち、ちげーですよ!遊びじゃねーです!結果としてぶら下がっちまってるだけですぅ!これは握手ですよ!心からの握手!」プラーン

平沢進「へえ、そう」

翠星石「そうなんです!!」

平沢進「ふーん」

翠星石「むー…」

翠星石「…ちょっと締まらないですが…とにかく!これからもよろしくですよ!ヒラサワ!」プラーン

平沢進「はい」

…………
バサバサ…

水銀燈「……」ストッ

水銀燈「………!」キョロキョロ

水銀燈「…いたわね。金糸雀、貴女一体どういうつもり?」

金糸雀「あら、水銀燈?お久しぶりね。どういうつもり…って、一体な~んのことかしら?」

水銀燈「惚けないでよ。さっき私のジャマをしたでしょ?」

水銀燈「アリスゲームに明白な決め事があるわけじゃないけれど…。無粋な横槍を入れたんだから、何かよっぽどの理由があるんでしょうね。言い訳は無いのかしら?」

金糸雀「カナは何のことだかさっぱりなのかしらー?アリスゲームに手を出した覚えなんてこれっぽちもないものー」

水銀燈「は?貴女ねぇ……」

金糸雀「知ーらない♪ 知ーらない♪ 知ーらないのかしら♪」

水銀燈「ああもう煩いったら…はぁ。まあいいわ。メインディッシュを先に頂いて、他をデザートとして取っておくのも悪くないかもね」

金糸雀「うんうん!それがいいのかしら!(ゴメンね真紅!)」

水銀燈「ちっ…。まったく、偉そうな顔しちゃって」バサッ

金糸雀「またねー!かしら!」

水銀燈「…貴女も?…今日はホントにスッキリしないわねぇ」ヒューン

金糸雀「………」

金糸雀「行っちゃったわね…ふぅ」

金糸雀「他人のアリスゲームに手を出すつもりはなかったけど…」

金糸雀「あの歌手さんの楽器に傷がつくと思うと…つい手が出ちゃったのかしら。やっぱりカナも音楽を嗜む者として、無用に楽器が傷つく様は見ていられないのよ…」

金糸雀「…あ!でもよく考えたらカナがあの楽器の時間のゼンマイを戻すだけで、いくらでも直せたのかしら…」

金糸雀「いやでも、直せるなら壊れてもいいってわけじゃないし…うーー!!」

金糸雀「頭がこんがらがってきたのかしら!今日のところはひとまず退散なのかしら!翠星石、またまた運を拾ったわね!カナは必ず帰ってくるわよ!!」ヒューン

一旦ここまでです
今回はホントに微妙な気がするので好きにご批判ご意見ご質問お願いします

レーザーハープとかのつもりでしたすみません描写不足で…

光子(フォトン)というギターを今は使ってらっしゃる…のかな?すみません勉強不足で…
平沢さんは謎の多機能シンセなど普通の楽器も使ってるんですが、一目で楽器だと分からないものの印象が強くて頭の中では全部そっちのイメージで書いてました申し訳ない…
ということで短いですがちょっとだけ再開します

翠星石「…これで終わりです…っと!」

翠星石「ふひー。ようやっと水銀燈の羽の掃除が終わったです。まったく、帰った後にも面倒事を残すなんてとんでもないヤローですね」

翠星石「あとはこの窓…んー、真紅か金糸雀にしか直せないですが…金糸雀はアレですし、真紅に声掛けるしかねぇですか…」

平沢進「普通に修理屋を呼ぶという手もある」ヌッ

翠星石「どわぁっ!?びっくりしたです……でも、それじゃヒラサワが損ばっかりじゃねーですか。こっちは悪くないのに、損だけするなんてゴメンですぅ」

平沢進「世の中は損得が等価分に分かれて分配されるわけではないので。損がたまにこちらへその無邪気な顔を向けてきたところで致し方ない」

翠星石「ふーん…そんなもんですかね」

平沢進「そんなもの」

翠星石「…じゃあ、窓はとりあえず修理屋ってことにしとくですか。水銀燈のヤツ!後で覚えとけですよ」

平沢進「窓は翠の人形が割ったとか言ってたような」

翠星石「ぎくっ!それは気のせいです!気のせい!」

平沢進「あそう。では気という曖昧模糊な漂流物の所為ということで」

翠星石「うんうん!そうです!窓は割れるためにあるんですから仕方ねーです!」

平沢進「割れるために生まれてきたとは一体どんな業を背負ってきたというのか。一度教会にて精算すべき罪の見積もりをすべきかもしれない」

翠星石「そ、そこまでは必要ねーですぅ。窓一枚直すのにいくらかかるかの電気屋でのお見積もりで十分ですぅ」

平沢進「まあ、確かに」

翠星石「えーっと、あとは…あ、そうでした!そこの多肉植物が鉢からはみ出てかけてるですぅ。翠星石も手伝うので一緒に植え替えをするですよ。…ヒラサワ、植え替えの仕方とか分かるですよね?」

平沢進「失敬な。でなければ我が家に植え物がこれほどに居座るはずもなく」

翠星石「そりゃそうですね。じゃあ、さっそくスコップと土を持ってくるですぅ。あと、大きめの鉢植と…」

平沢進「はあ。しかし多肉食な植え物の糧食は既に尽きてしまっていたような」

翠星石「あ、もう土がねーんですか。多肉植物は必要な土が特殊ですから、代用するわけにも行きませんし…うーんと」

平沢進「では、また後日にということで」

翠星石「むっ!それはダメですぅ!後日だとか言ってると気づいたら一年後とかになってるのは良くあることですぅ!ヒトにとって一年はあっという間なんですから!」

平沢進「いや、植え替えという些事を一年間意識外に置くというのは良くあることではない」

翠星石「問答無用ですぅ!こうなったら、何としてでも今日、この子のおうちを新調してやるですぅ!えーとえーと…」

平沢進「その合金鋼かのごとき強情さだけは称賛に値する」

翠星石「うーん……って!悩む必要なんてなかったですぅ!」

平沢進「はあ。そのまま悩み続ければいつか植え物の裏にある緑色の真理に到達できたかもしれないというのに」

翠星石「真理なんて知る気はさらさらねーですぅ!そんなもん知ってもまた他のことで悩み出すに違いねーです…って、んな話じゃなかったです!」

翠星石「ふっふーん。今から普通に買いに行けばいいんですよ!あのヘンテコ自転車に乗って!」

平沢進「…それも即時即応という真理の一形態かもしれない」

ホームセンター
ガヤガヤ……
翠星石「むーっ!何ですか、このカゴは!外がぜんぜん見えねーじゃねーですか!」ヒソヒソ

平沢進「何って、買い物カゴ」

翠星石「むきーっ!翠星石は売り物じゃねーです!」

平沢進「衆目の中に人形を抱えたおっさんを晒す気はないので。それに、カゴの網目から目を凝らせばモノが見えないということもないだろう」

翠星石「そりゃ、ちょびっとは見えますけど…んー!やっぱ詳しくは見えねーです!これじゃ、せっかく来たのに土やら何やらのアドバイスができねーじゃねーですか!」

平沢進「いや、普通にこうしてカゴに入れたものの説明を読めばいいだけなのでは」ガサッ

翠星石「……あ。そうですね。確かにそれで事足りるですぅ。んーと、1.5Lの『サボテンノビノビ』…ネーミングセンスはともかくとして、これじゃちょっと足りねーんじゃねーですか?」

平沢進「そう。だから二つ買う」ドサッ

翠星石「うわっ!あ、危ねーじゃねーですか!翠星石のパーソナルスペースをもう少し尊重するですぅ」

平沢進「カゴ一つ程度の個人領域を尊重するほどに私は器用ではない。せめて部屋一つ分程度の幅をとるべき」

翠星石「今の翠星石にはここが部屋なんですから仕方ねーです!…えーと、鉢植えはあそこのクリーム色のがいいですぅ。あの色合いならヒラサワの館に合うハズですよ!」

平沢進「あ、そう」ガサッ

翠星石「どわっ!ま、前が見えねーです!翠星石の頭は鉢植え掛け棒じゃねーです!」

平沢進「うわっ。カゴの中に何やら見慣れぬ新人形が。これはお洒落気取りの高慢な門番として知られる…ノーム?」

翠星石「むきーっ!!自分でやっといて驚いたフリすんなですぅ!翠星石をあんなサンタもどきと同列に語るなですぅ!」

平沢進「お静かに。レジストリならぬキャッシュ・レジスターが近づいてきたので、喋るまじない人形から物言わぬ普通人形に戻りたまえ。ついでに隣の麦藁カゴに逃避したまえ」

翠星石「はいはい、分かってるですぅ!隙を見計らって……とお!」ピョン

平沢進「はい、良くできました」

「ありがとうございましたー」
ピンポンピンポーン…

翠星石「…ふぅ。任務達成ですね!ヒラサワ!」

平沢進「お静かに。私は衆目の中で一人で亡霊に健気に話しかける自閉症的霊能力老人の演技をする気はない。すれ違う人々に「お気はたしかか?」という目で見られることで心の安寧を得るタイプの人間でもない」

翠星石「わ、分かったですよ。…でも、あの自転車に乗ってるだけでもビミョーに衆目を集めてる気がするですぅ。というか確実に二度見されてるですぅ」

平沢進「人とは、自らの知りえないものは存在して欲しくないために、二度見ることでそれらを既知の存在へと作り変えるのだから当然。一度見た時は知らぬものでも、パッと振り向いて見直せばそれは既に知っているものとなる」

翠星石「えー、そんな屁理屈考えてるとは思えねーですけど…。とにかく、あんまり目立っていいことはねーですからね。この辺りに他のローゼンメイデンが来てないって保証はねーんですし…」

「ありがとうございました~」
チャランチャラン♪…

「うにゅー!うにゅーなのっ!ヒナ、早く食べたいのーっ!」

「ひ、ヒナちゃん!ちょっと静かにしてね。ほら、みんなこっち見てるからっ!し、視線が痛いよぉー」

「あっ!のり、ご、ごめんなさいなの!ヒナ、ちゃんとお家まで我慢するの…」

「うふふ…えらいわね、ヒナちゃん。じゃあ早く帰らないとねっ」

「!…はーいなの!しゅっぱつしんこー!なのーっ!」

ワイワイキャッキャッ…


平沢進「…あ」翠星石「…え?」

一旦ここまでです なんて短いんだ…(呆れ)

とても短くて恐縮ですがちょっとだけ更新します

のり「ひ、ヒナちゃん、また声が大きくなってるわよ!ほら、しー!しーっ!」

雛苺「あっ!ご、ごめんなの!お家までお口にチャックするのー!」

……

平沢進「へえ。あれが例のキリシタンの苺と」

翠星石「ええ。あんなうるせーのチビ苺しかいねぇですぅ。一緒にいるのは…指輪はしてないので契約者本人ではないみたいですね。ということは、契約者の友達とか、家族とか…?」

平沢進「苺の苗床が何処だろうと誰であろうとそこまで大きな問題というわけではない。では帰るとし…」

翠星石「…いや!待つです、ヒラサワ!」

平沢進「いや、待たない」

翠星石「いいから待つです!これはチャンスですぅ!雛苺がアリスゲームをやる気があるかは…正直ギモンですが、一応確かめてみるべきですよ。その気がないとはっきり分かれば、チビ苺については何にも気にしなくて済むようになりますし」

平沢進「はあ。もしも大人しく引き下がらず、積極的にその毒蔓の先を向けてきたら?」

翠星石「えーっと、その時は……適当にあしらって帰るです!流石に翠星石はチビ苺ぐらいに遅れは取らねーです。ちょちょいのちょいではっ倒してやるですよ」

翠星石「そこで、もう近寄るんじゃねーですよ、って言って放ってくれば、たぶんもう万事OKになるはず…」

平沢進「なるほど。一分以上の隙のあるごく普通の作戦」

翠星石「イヤミ言うなですぅ!とにかく、話をしてみないと分からねーことなんですから。…でも、こんな人の多いところじゃムリですね。絶対他のヤツに気づかれるですぅ」

平沢進「私にも、観客も演者も揃った文字通りの人形劇を白昼から行う気はない。そういうものは劇場か、近世に生まれた新興邪教TVにて行うべき。若干最近は廃れ気味だけど」

翠星石「そりゃそうですぅ。うーん、じゃ、人気の少ない所に移動するのを待ちましょうか…」

平沢進「平然と準犯罪的思想を持ち出す人形に戦慄」

翠星石「う、うるせーです!翠星石はハンザイ者じゃ……ん、ハンザイ?……あっ!名案を思いついたですぅ!」

平沢進「うわっ。この底意地の悪い面は明らかに犯罪行為に赴く直前の前科者」

翠星石「ち、ちげーですって!…でも、今回はそこまで外れてないのがビミョーに癪ですぅ。だからといって、ハンザイを犯すわけじゃねーですよ。どちらかと言えばええと……そう!探偵!探偵の真似をするですよ!」

平沢進「浮気調査か何か?」

翠星石「んな安っぽいもんじゃねーです!尾行ですよ、尾行!雛苺たちのアジトを見つけ出してやるんですぅ。契約者の顔まで知っちまえば雛苺はもう棘を抜かれたサボテンですよ!戦場においては常に先手を取ったものが勝利者となるのです!」

平沢進「戦地よりもやはり浮気調査に近しいものを感じる。しかし、コレで追うのか。凄まじく気も足も進まないが」

翠星石「うー、確かにリカン弁当は隠密性はマイナスですけど…今は追いかけられる足がそれしか無いんですから。大丈夫、きっと上手くいくです。翠星石と天運に任せとけですぅ!」

平沢進「どちらも甚だ疑わしい。あとリカンベント」

のり「ふんふんふふーん…♪」

雛苺「…のり、すごいゴキゲンなの。そんなに嬉しい?」ヒソヒソ

のり「え?…ええ!ジュンくんが友達を家に連れてきたなんて本当に久しぶりだから…。それに、トモエちゃんはずっと昔から仲良くしてくれてた子だもの。ヒナちゃんも嬉しいでしょ?」

雛苺「うん!ヒナも嬉しいの!トモエが来てくれたのも、それでのりが喜んでくれてるのも、とってもとっても嬉しいのー!」

のり「あらあら、もー!ヒナちゃんったらかわいいんだから~」

…………

翠星石「…ヒラサワ!いい調子ですよ!あっちは急ぐとか何とか言っといてやたらのんびりしてますから着いてくだけなら余裕ですぅ!あとはバレないようにさえしてれば万事オッケーですね」

平沢進「しかし、バレないようにする努力のしようがない。現状のように一本道で追いかけるとなれば、いかに隠遁行為を行おうとしたところで振り向かれれば終幕。壁の中に隠遁する術を人形が備えているとかなら別だけど」

翠星石「そんなジュツねーです!それに、ここまで来たのに…。あんぱんも買って探偵気分上々なんですよ?今さら諦められるわけないですぅ」

平沢進「餡の詰まった蒸した小麦粉は探偵の象徴にあらず。どちらかと言えば錆び付いた価値観に基づいた刑事事件のセオリーであって」

翠星石「探偵も刑事も犯人を追うってことではそんな変わらねーからいいんですよ!今の翠星石は、ホームズやらとタメを張るレベルの超有名探偵気分爆発中なんですから水さすなです!初歩的なことだよ、ワトソンくん …ですぅ!」

平沢進「やかましい。ワトスンかもしれない助手と舞台で公然と量産された決め台詞について苦悩する時間帯ではない。しかもその声量では苺の蔓センサーに引っかかる。隠密性を重視すべきとの言はどこへ行ったのか。オハイオあたり?」

翠星石「あっ!し、しまったです!ヒラサワ、そういうのはもっと早く言って…」

雛苺「………うゆ?」クルッ

翠星石「げっ!?」

平沢進「ほらみたことか」

雛苺「………」( ???? )ジーッ

翠星石(み、見てます!めっちゃ見てるですぅ!)ヒソヒソ

平沢進「なにを動揺しているのか。末妹の視線にビビるとは。特異で複雑な家庭環境だったのなら仕様がないかもしれないが」

翠星石「べ、別にチビ苺にビビってるわけじゃ…!それにアイツは別に末の妹ってわけでもねーですぅ」

平沢進「へえ。あれより幼い妹がいるとしたら最早嬰児なのではなかろうか」

翠星石「たしかに…じゃねーです!確かにチビ苺はお子ちゃま並のトントンチキですけど、流石に赤ん坊並の妹とかはいねーですよ!というかローゼンメイデンは別に姉妹で見た目年齢の順番になってるわけでもねーですし!」

平沢進「姉妹に対し、コンビニに行くような手軽さで暴言を吐く人形に閉口。やはり特異で歪んだ家庭環境だったのだろうか」

翠星石「ひ、ヒラサワが言い出したことじゃねーですか!ぜんぶ翠星石のせいにすんなです!」

平沢進「………」

翠星石「って!文字通り閉口してんじゃねーですぅ!む~っ!」

雛苺「……ゆ……」

翠星石(…って!や、やべーです!んなこと言ってる場合じゃなかったですぅ。アイツ今にも叫びそうです!こうなったら無理やり口封じするしかねーですね!ほら、ヒラサワ!喋れなくなる魔術だか呪術だかを今こそ行使するですぅ!)ヒソヒソ

平沢進「だから私は祈祷師でもなければ陰陽師でもないと。大体、苺がマンドラゴラのごとく叫んだところで怯む理由がない。素知らぬ素振りで通りすがるだけ」

翠星石(で、でも、もし翠星石に気づいてたら!逆にこっちを追っかけてくるかもですぅ!平凡な街で突然自転車でデッドヒートし始めるなんてゴメンですよ!)ヒソヒソ

平沢進「リカンベントは脳を破裂させる程度の衝撃を受ける代わりにそれなりの速度が出るので大丈夫。今回は脳が二人分乗っているため燃料にも不安はない」

翠星石(何フキツな冗談言ってるですか!そんな場合じゃ…)

雛苺「ゆ……ゆ……!!」

翠星石(あー!もうダメですぅ……!)

雛苺「み、見てのりっ!UMAなのぉっ!!」


翠星石「…はぁ?」平沢進「はい?」

のり「え?ど、どうしたのヒナちゃん。…あ!すごい乗り物があるわねぇ。あれがどうかしたの?」

翠星石(げっ!やっぱり気づかれ…!?)

雛苺「乗り物じゃないの!あのヘンなのはぜったいゆーまなのっ!まえテレビで見たもん!夕方にこっそり近づいてきて、バクって頭から近くのひとを丸かじりにする、こっわーいオバケなのっ!ジュンもそうだって言ってたもん!」

平沢進「……」

のり「え、ど、どうかな…(もう、ジュンくんったら!)」

のり「あ、あのね!ほら、あそこに人が乗ってるでしょ?私も今まで見たことは無かったけど、ああいう乗り物は外国とかだとたまーに走ってたりするの。だから、テレビやジュンくんが言ってたUMAは、別の人?なんじゃないかな…」

雛苺「えー、だって!鉄の足が二本あって頭をぐるぐる回転させながら襲ってくるオバケだって…!」

のり「えっと…そ、それなら、自転車やバイクも同じでしょ?」

雛苺「……た、たしかにそうなの…でも!あれは明らかにでぃてぃーるがおかしいのっ!フツーじゃないのっ!」

翠星石「それは確かにですぅ」ボソッ

のり「か、海外のものだと結構信じられないような見た目のものも多いのよー。ほら、虹色のアイスとか、ドーナツとか、大体海外から来たものでしょ?派手だからって別に変なものってわけじゃないんだよー」

平沢進「リカンベントは米国式過剰華美の一種ではない。甚だ心外」ボソッ

雛苺「そ、そうなの……」

雛苺「…分かったの!」クルッ

翠星石「っ!?」ビクッ

雛苺「ヘンだとか言ってごめんなさいなの、UMAさんっ!」

翠星石「……」平沢進「……」

のり「だ、だからUMAじゃなくってね…って、あっ!」

のり「ひ、ヒナちゃん!また私たち声が大きくなっちゃってる!し、静かにしないと!ね、ねっ!」

雛苺「あっ!ご、ごめんなさいなの!ひ、ヒナもうお家に着くまでお口をぎゅっとおさえて開かないようにするの!」

タッタッタッ…


翠星石「………」

翠星石「……なんか気が抜けたですね」

平沢進「…生気ある人形から気が抜けてはただの人形」

翠星石「ふー、チビ苺がアホで助かったですぅ。自転車のカタチばっかり騒いで、こっちには全然目が向かなかったですね。あれで気づかれなかったなんて、ちょっと信じ難いですけど…。UMA様々ですぅ」

翠星石「それに、とかなんとか言ってるウチに…契約者の家ってここなんじゃないです?」

平沢進「らしい。たった今桜田という何の変哲もない表札のかかった何の変哲もない館に何の変哲もない人形持ちの娘が入って行ったし」

翠星石「連呼しすぎですぅ。会ったばっかの人を貶しすぎじゃないですか?ヒラサワって苗字だってそこまで変哲があるわけじゃねーですよ」

平沢進「そう。だから何の変哲もないという言葉は陰口ではない。ただの何の変哲もない台詞にすぎない」

翠星石「頭こんがらがるからいい加減やめるですぅ!もう…さてっと。じゃ、ヒラサワ、ちょっと肩借りるですよ」ピョン

平沢進「あ、こら」

翠星石「うーんっ!…こっからじゃ全然中が見えねーですね…窓にもカーテンが掛かってますし…こうなったら、どうにかして中に入るしかねーです」

翠星石「やっぱりアレですかね?庭から大声で「火事だーっ!!」って叫んでヤツらが慌てて家から飛び出してきたところをふん縛って袋叩きに…」

平沢進「純然たる犯罪的思考を自慢げに披露しだす人形に閉口。AIが社会の人間に触れ知識を吸収すると言動が犯罪者的になるというが、それと同類の現象かも」

翠星石「翠星石をロボットと一緒にするなですぅ!冗談ですよ、冗談!ただ、マンガとかの強盗の手口を真似ただけで…」

平沢進「やはり犯罪者の先触れを覗かせている。それにAIとロボットとは領域がやや重なっているだけで別物である」

翠星石「う、うるせーです!んなこといっても、ピンポン押してはいどうぞ、って入れてくれるはずもありませんし…他に名案があるですか?」

平沢進「そんなものあるわけがない。ヒラサワはその善良さの余り八百万の神の9割超に忌避される存在なので、犯罪のハの字どころかノの字の気配もない。その証拠に、神の宿るという木や草や水に今まで一度も話しかけられたことがない」

翠星石「んなの当たり前じゃねーですか!また屁理屈で言い逃れようとすんなですぅ!それにヒラサワが善良ですって?ふーんだ、へそが茶を沸かすですぅ!」

平沢進「うわっ。今とうとう人形に話しかけられた。八百万のうちの一柱がついにヒラサワに興味を抱いたとでもいうのか。結構です。できれば人形に望郷の念の如く固執する幼児の前にその姿を現したまえ」

翠星石「うるせーですぅ!突然翠星石を初対面の扱いにするのはやめるですよ!めんどくせーです!…ってあだっ!」ガサッ

翠星石「な、なんですか?なにかに躓いたですぅ!もう、これだから道路を歩くのはイヤなんですぅ…」

平沢進「…あ。名案がそこに落ちているのを人形に宿る神々の一柱の有り難きお節介により発見」

翠星石「え?これですか?…いちご大福の袋?中身も入ってるです。さっきのヤツが落としていったんですかね」

平沢進「多分。ではそれを貸しなさい」

翠星石「あ、はいですぅ。…どうするですか?それの匂いにつられてチビ苺が飛び出てくるのを待つですか?」

平沢進「んなわけない」ピンポーン

翠星石「ちょ、ヒラサワ…!?」

タッタッタッ…

のり『は、は~い!どちら様ですか?』

平沢進「えー、桜田さん。そこで苺と餡のつまった餅の入った袋を落としませんでしたでしょうか。善意に塗れた隣人としてお届けに参りました」

のり『え?あっ!…わ、分かりました!今開けます~』

翠星石「……えー」

平沢進「えーじゃない。いいからとっとと人形は麦籠に隠れなさい」

短くて恐縮です
今回もご意見ご批判ご質問何でもどうぞお願いします
頑張ってもっと上手く早く書けるようにしたいです…

ヒラサワ音楽がある限り私は不滅です
ということで再開します

ガチャ…
のり「す、すみません!買ってきたばかりなのに、そこで落としちゃったみたいで…私、うっかり屋なので…」

翠星石(今です、ヒラサワ!そいつを突き飛ばして押し入るですぅ!鯖折りを決めてやれですぅ!)

平沢進(お静かに)

平沢進「…まあ、どこぞの食欲に正直な牛の骨か馬の骨に拾われず何よりで。どこぞの人形か何かに踏まれたようで一部分だけ凹んだりしているけれども」

翠星石(…ちょ!?何でわざわざ疑われるようなこと言うですか!しー!ですよ!ヒラサワ!)

平沢進(うるさい)

平沢進「では、どうぞ」

のり「あ、ありがとうございます~!よかった、これでヒナちゃんも泣き止んで…じゃなくて!え、ええっと、とにかく本当に助かりました!」ペコペコ

平沢進「押し付けがましい隣人愛に溢れる現代人としては当然のことなので。はい」チラ

平沢進「……」

平沢進「…そういえば、えー、あなたのとこの姉弟の、えー」

のり「えっ!?……じゅ、ジュンくんですか?」

平沢進「そう。純くん。彼はえー、体調が優れないようで」

のり「え、えっと?は、はい…その…?」

平沢進「教育に携わる者として、まあ、多少気掛かりというか」

のり「あ!学校の先生ですか!すみません、わざわざいらしてくださって…」ペコッ

平沢進「はあ。まあ。それで、少し様子を観ておこうかということになりまして」

のり「え!えっと、その…大変申し訳ないんですが、今、その、お客さんが…」

平沢進「お客さん?それはまた厄介な。ただ、少し顔を見るだけなので手間は取らせませんので」

翠星石(心の声が漏れてるですよ!しー!です!ヒラサワ!)

平沢進(やかましい)

のり「え、えーっと……で、でしたら!今ジュンくんをここにお呼びしますので…」

平沢進「家庭訪問を玄関先で済ませるほどに病的な怠慢癖を持つ訳では無いので。別にそのお客さんが弟さんの異性交友相手だとしても目録に恨みったらしく記したりはしないので御安心を。…少し上がらせていただくということでよろしい?」

のり「……う~っと……」

のり「…………」

平沢進「…………」

のり「…わ、分かりました…ちょ、ちょっと、ジュンくんに話してきますねっ!まだちゃんとした格好もしてないと思うのでっ!だとしたら無礼ですからっ!」タッタッタッ…

平沢進「……お客を呼んでいて着替えもしていないということがあるのだろうか。言語を絶する怠け屋とかなら別かもだけど」

翠星石「きっと、チビ苺を隠しに行ったんですね。それにしてもヒラサワ!ナイス誤魔化しだったですぅ!よく、休んでる弟がいるって分かったですね」

平沢進「そこになにゆえか男物の中等制服がかかっているとなれば十中十一ぐらいまで弟の存在は確定。しかもそれがどう見てもパリッパリにクーリング・オフされたものだとすれば彼は暫く登校していない不良ということになる」

翠星石「おお~…すごいです!ヒラサワ、まるで名探偵みたいですよ!あとそれはクリーニングですぅ。…でも、家に入ってからはどうするですか?学校の先生だなんてウソ、すぐにバレるですよ」

平沢進「入ってしまいさえすれば問題は無い。人形さえ見つければ、持ち主達も私を通常の盗賊の如く扱う事は出来まい。闘いを挑んできた場合は、麦籠から奇襲を掛けるべし」

翠星石「おーなるほど…了解ですぅ!ヒラサワがせっかく作ったチャンス、何としてもモノにして見せるですよ!ウソも方便とはこのことですね!」

平沢進「ウソツキはヒラサワの始まり。実践的な姿を見せたことで翠の人形のウソツキ癖が強まらぬことを切に願う」

翠星石「なっ…ふーんだ!心配しなくても、翠星石はヒラサワみたいにならねーですよーだ!まったく、せっかく珍しく褒めたのに…」

平沢進「それは一安心。では呼び付けるまで大人しくしているように」スッ

翠星石「わひゃっ!?」スポン

タッタッタッ…

のり「…お、お待たせしました~!では、どうぞお上がりになってください」

平沢進「はい」

ー桜田家応接間ー

ジュン「な、なんだよ…急に先生が来るなんて、聞いてないぞ。まさか、担任のあの人じゃ…」

トモエ「あの人なら有り得るかも。熱血だし。…取り敢えず隣の部屋にいるね」

雛苺「うにゅ~が戻ってきたのは嬉しいけど…ひ、ヒナも隠れるのっ!トモエ、ヒナを抱っこするのー!」ピョン

トモエ「わっ。…うん。一緒に隠れよう」ギュッ

ジュン「わ、悪いな。すぐ済むと思うから…」

トモエ「うん」雛苺「わかったのー!」タッタッタッ…

ジュン「…ふー……落ち着け…」

ジュン「あの人が来たって、もう大丈夫だ。僕はもう変わったんだから…どんな風に、何を言われたって……よし!」バチン

タッタッタッ……

のり「……こ、こちらです~。どうぞ」

「はあ、どうも」スッ

ジュン「……」ゴクッ

平沢進「こんばんは、ヒラサワです」ヌッ

ジュン「こ、こんば……」

ジュン「…………?」

ジュン「…失礼ですけど…どなたですか?僕、あなたのこと知らないんですけど」

平沢進「でしょうね」

のり「………えっ?」

ジュン「もしかして…きょ、教育委員会の人とかですか?」

平沢進「委員会審議的なものとは相応の距離を置いておりまして。過去にそういったものに傾倒していた憶えもございません」

ジュン「え?…って、ことは…僕とどういう…?」

平沢進「まあ。俗に言うと、社会主義的な表現とは違う意味での赤色な他人という関係で」

のり「あ、あれ!?が、学校の先生じゃ…」

平沢進「学業的なものに携わっていたことが無いことも無いと言えないことも無いという表現が、あなたの脳内では学校教師に変換されていたらしく」

ジュン「………」

のり「え?え?…っていうことは、あなたは……」

のり「い…居直り強盗!?す、すみません家には特にお値打ちものは置いてなくて!さ、さっき買ったいちご大福ならそこのお皿にありますけど…」

ジュン「バカ!きっとセールスマンだよ!姉ちゃんは騙されやすい顔してるから付け込まれたんだ!それに居直り強盗じゃ意味が違う!」

のり「え!?せ、セールス!?すみません、家には余計なものを買うお金もなくて!ちょっと前にジュンくんがネット通販で買ってきたヘンなものを返品し忘れちゃって…」

ジュン「ちょ!そんなこと言わなくていいだろ!僕らが騙しやすい相手だと思われちゃうだろ!」

平沢進「大丈夫。そちらの方は騙しやすく与しやすい系ジョシだということが玄関先にて既に露呈している」

ジュン「あっ、なら大…丈夫じゃない!姉ちゃん、この人に何言ったんだよ!通帳とか印鑑とか持ち出してないだろうな!」

のり「えっ!だ、大丈夫よ、そんなもの見せたりしてないよ…あっ!」

ジュン「え!ど、どうしたんだよ!まさか…」

のり「…通帳と印鑑、前どこにしまったっけ!すっかり忘れちゃった~!どうしようジュンくん!」

ジュン「はあ!?今そんな話じゃないだろ!」

平沢進「敵宅に侵入したかと思えば、ここは新喜劇の劇場であったか。しかも、テンプレートに沿いすぎて不発ぎみ」ボソッ

<ワーワーキャーキャー
雛苺「…うゆ?」

雛苺「せんせー?が来たにしてはすごく楽しそうなのー!ジュンったら、あんなにイヤそうだったのにおかしいのー!」ヒソヒソ

トモエ「確かにおかしいね。それに、私もあの人見たことないし…本当に先生なのかな」

雛苺「え!せんせーじゃないのぉ?じゃあ……居直り強盗っ!?」

トモエ「その言い方は過激だけど…似たようなものかもね。場合によっては、私もジュンくんたちに加勢しようかな。二人とも混乱してるみたいだし」

雛苺「わ、分かったの!ヒナもこっそりここから応援するの!トモエ、ジュンとのりを助けてあげてね!えいえいおー!なのー!」

トモエ「そこまで深刻に考えなくても大丈夫だよ。…でも、頑張ってくるね」スッ

ジュン「と、ともかく!僕らは何も買ったりしないからな!ヘンな壺とかネックレスとか売ろうとしても無駄だよ!」

のり「そ、そうだよね!もうヘンなものは十分たくさんあるもんね!」

ジュン「バカ!そういう意味じゃない!あれはネットでまたどこかに流すからいいんだって!」

平沢進「はあ、変なものが足りすぎている。それは大変嘆かわしいことで。しかし案ずるなかれ。多忙で知られる『百足らず様』も、年度の変わり目という繁茂期を切り抜けて居られる。いずれこの館にも訪れ、足りすぎたものを引いて下さるかと」

ジュン「は?百足らず…様?や、やっぱりカルト宗教かなにかの押し売りか!」

平沢進「なんと無礼な。…しかし、ヘンなものの数を引くという程度では『百足らず様』の行動周期上から外れている可能性も。その場合は社会主義的でない赤の他人に押し付けるか、ゴミ収集のおじさんに押し付けるかするとよろしい」

ジュン「は、はあ…って、捨てたりしたら僕の大損じゃないか!そんなこと僕はしないぞ!何としてでもそれなりの値段で赤の他人に押し付けてやる!」


※『百足らず様』大量消費文明社会である現代において、あらゆるものが足りすぎているのにも関わらず何かが足りていないと常に錯覚する人類に警鐘を鳴らすため、あらゆる事物から何かを引いて足りていない状況を作り出す神様。詳しくはwebで

のり「じゅ、ジュンくん?そんな話じゃなかったような…」

ジュン「…あ!そうだった!まったく、セールスマンは口が上手いから、つい…」

平沢進「失敬な。私はセールスメンと付き合いはない。何故ならセールストークは家を焼く。そのウザったいほどに烈しい言葉は財産から購買欲から全てに火をつけてしまう」

ジュン「え…まあ、そうかもだけど」

平沢進「Sell(売る)Stoke(火をたく)などという職業を作り出すとは、資本主義の見えざる神様もどこまで強欲なのか」

ジュン「?…それ、英単語が違うんじゃ…」

平沢進「外来語は新たな土地に入って次第に次第に意味合いが変容するものなので」

ジュン「いや、それとは別問題というか…」

のり「ジュンくん!む、難しい話でよく分からないけど、また違う話になっちゃってるんじゃ…」

ジュン「あ…くそっ、口車に乗せられた…この人、かなりのやり手だぞ。気をつけないと…」

ガラッ。タッタッタッ…

トモエ「…二人とも。取り敢えず落ち着いてください」

ジュン「わ、おい!ちょっと、今出てこないほうが…」

トモエ「でも、このままじゃ話が終わらないでしょ。それに、この人はまだお金を出せって大声も出してないし、何かを買えって押し売り文句を言ったわけじゃないよ」

のり「た、たしかにそうだけど…」

平沢進「あ、お客さん?こんばんは、ヒラサワです」

トモエ「…こんばんは。柏葉巴です。ほら、二人とも」

ジュン「…桜田ジュン、です」

のり「さ、桜田のりです…けど…」

平沢進「ようやく会話になって何より」

ジュン「じ、自覚はあったのかよ…」

平沢進「自身の話す内容の与える影響程度を予測するのは当然。話がコンガラがれば、調停者が引っ張り出されるのは世の定理」

トモエ「!…私はそれに引っかかったということですか」

平沢進「いや。異性交友のお客さんを呼び立てる気では無かったような。…もっと小さいお客が出てくるものかと」

ジュン「え?小さいって…まさか…!」

トモエ「…私とジュンくんはただの友達です。ヘンな付き合いをしてる訳じゃありません」

平沢進「あ、そう」

ジュン「いや、気にするところはそっちじゃ…」

トモエ「だって。勘違いされたら困るから」

平沢進「ははあ」

トモエ「…何がははあ、なんですか」

平沢進「いや、言い分に納得した時に用いられる感嘆符の一つを漏らしただけなので」

トモエ「……そうですか」

ジュン「お、おい…話がズレてるぞ」

トモエ「あ。…ごめん」

ジュン「…とにかく、ヒラサワさん。一体何の目的でウチに?それに、さっき言った小さいお客っていうのは何のことですか?」

平沢進「一度に二つも質問するとは。流石歳若い者は活力が違う。私など5W1Hの私用については用法用量を守るよう義務付けられているというのに」

ジュン「ぐ…落ち着け、乗っちゃダメだ…」

トモエ「…じゃあ、まず一つだけ質問します。その麦わら籠には何が入ってるんですか?」

平沢進「これ?まあ、音の爆弾というか。そういうもの」

のり「ば、爆弾!?ふ、二人とも伏せてっ!」バッ

ジュン「どわっ!!ち、違うだろ!音の爆弾って!きっとヘンな名前でアホな人を釣ろうとする新商品の一つだよ!ホントの爆弾を僕ん家で爆発させて誰が得するんだよ!」

トモエ「……のりさん、重いです。音の爆弾って…抽象的な表現じゃ分かりません。正式な名前を教えてく……」

ドタッ!バタバタバタ…

「うゆ~っ!」

ジュン「え…!?この声…」

雛苺「ば、爆弾からみんなを守るのーっ!薔薇乙女第六ドール雛苺、ここに参上っ!なのーっ!!」

平沢進「あ、出た」

トモエ「あ」

ジュン「お、おいっ!」

のり「ひ、ヒナちゃんっ!?」

雛苺「ば、爆弾はどこなのーっ!?ヒナが蔓で外にえーいって放り出しちゃうのよ!ほら、ジュン、おしえて!みんなのためなら爆弾なんて、ぜーんぜん怖くないんだから!」

トモエ「ひ、雛苺…!」

ジュン「か、感動してる場合かよ!この状況どうするんだ、思いっ切りバレちゃったぞ!」

のり「え、えーとですね、ヒナちゃんは近頃流行りのおしゃべりの出来るお人形さんで…えっとえっと、AIが入ってて、えっと」

平沢進「はあ。そんなものが流行っていたとは初耳。そんなものが人口に膾炙するまでに後十年以上はかかるかと思っていたが」

雛苺「あ、そこのおじさんが爆弾持ってるのっ!?のり、伏せてっ!いま、ヒナが…」

平沢進「………」チラッ

雛苺「……っ…!」ピタッ

のり「ひ、ヒナちゃん!?どうしたの!?」

雛苺「こ、この人……」

ジュン「…知り合いか?」

平沢進「……」

雛苺「こ……こわいのーっ!そこのおじさん、お顔がとってもこわいのぉーっ!!」ガタガタ

平沢進「翠の人形の言った通り。国道沿いの民泊並のやかましさ」ボソッ

雛苺「爆弾は止めなきゃ…で、でも怖いのっ!!ひ、ヒナはどうすればいいのぉー!?」

トモエ「取り敢えず雛苺、こっちに…」

のり「トモエちゃん!動いたら危な…!」

ジュン「いだっ!姉ちゃん、僕に手が当たったぞ!大体、絶対爆弾なんかじゃないって!」

ギャーギャーワイワイ…

平沢進「……」

平沢進「宇宙開闢の以前、世界はケイオスと呼ばれる秩序なき状態を保っていたというが、これはその138億年来の現出であろうか。もしくは宇宙の転寝の夢として生きる我々生物は、皆このような児戯的地獄を内包しているのだろうか」

「……~~っ!!」

「あーもーっ!!しゃらくせーですっ!!」バッ

平沢進「あ」

翠星石「全員しゃらーっぷ!ですぅ!話がにっちもさっちもいかねーじゃねーですか!ほら、ちゅうもく!注目ですぅ!!」

一旦ここまでです
人数が増えた途端テンポグダグダで申し訳ない
お待たせした割に雑な気がします
好きにご意見ご批判ご質問お願いします

面白いと言ってくださって大変嬉しいです
ホントに恐縮です 精一杯頑張ります
更新が遅くなったとしてもナメクジ並の地道さで書いてるので長い目と広めの心でどうぞお待ちください
今夜あたり短いですが更新します

あと批判もいくら書いてもいいんでっせマジで

ジュン「!!…新しいローゼンメイデン!」

雛苺「!……す、翠星石…なの?」

翠星石「ですよ!久しぶりですね、チビ苺!」

トモエ「えっと、雛苺…?」

雛苺「え、えっとね!翠星石は、ローゼンメイデンの第三ドールで、それでね…」

真紅「…さっきから騒々しいわね。いったい何の騒ぎ?」タッ

翠星石「げっ!?真紅ぅ!?」

真紅「あら翠星石。18759時間28分ぶりね。ごきげんよう」

翠星石「ご、ごきげんようです!真紅もここに居たですか…」

平沢進「はあ。例の紅くてヒラヒラしており血に飢えている…って翠の人形が言っていた人形」

翠星石「し、しーですヒラサワ!…ていうか前半のほうはヒラサワが言ってたんじゃねーですか!主観と客観をごっちゃにすんなですぅ!」

真紅「…あら。知らない所で悪口を言う人は一番信用されないのよ、翠星石?血に飢えただなんて、人聞きの悪い」

翠星石「ち、違うんですよ真紅ぅ!それは、ただの比喩で言っただけで、本当に思ってた訳じゃあ…」

平沢進「あれほど真に迫っていたというのに?ヒラサワはあの語り口に恐慌をきたし、連夜悪夢に血を啜る人形が現れたが」

翠星石「は、はぁ!?ウソつくなですぅ!顔をピクリとも動かさなかったクセにぃ!そういうデタラメ連発するのはやめるです!翠星石が悪いヤツみてーに思われるじゃないですか!」

平沢進「表情を動かさずとも心が動いていないとは限らないのが人間の分かりづらさ。まあ、心より先に口がダムの水流の如く回る人形には分からないかもしれないが」

翠星石「むきーっ!翠星石だってちゃんと色々考えて喋ってるですぅ!乙女の純心をバカにすると、後で痛い目に遭うですよ!」

平沢進「あ、そう」

翠星石「む~っ!!」

真紅「……こほん。私たちが置いてけぼりにされてるのだけれど」

翠星石「…あ」

平沢進「まったく、これだから」

翠星石「す、翠星石だけのせいじゃねーでしょーが!」

真紅「こほん!」

翠星石「う……」

翠星石「すまんです…またゴチャゴチャしてきちまったです。…じゃあ!この翠星石が今から来た理由をちゃんと説明してやるから皆静粛にするです!そこのチビ苺もチビ人間も!ほらほら大人しく神妙にしやがれですぅ!」

雛苺「む~っ!ヒナはチビじゃないもん!ビッグだもん!」

翠星石「そういうところがチビなんですよ!ほら、もう一人のチビもそこになおれです!」

ジュン「…は?もしかして僕のことか?」

翠星石「他にどこにチビがいるですか!ほら、はっきりくっきり目ん玉見開いてこっち見るですよ!」

ジュン「なんだ、この失礼な人形…僕の家でエラそうに」

トモエ「私はジュンくん、そこまで小さくないと思うよ」

ジュン「そこまで…って…小さいとは思ってるのか…」

トモエ「あ……えっと」

のり「だ、大丈夫だよ!ジュンくんはまだ成長期なんだから!」

ジュン「そういうフォローは別にいいよ!」

のり「えっと、えっとぉ…」

翠星石「むぅ~っ!この翠星石が話しかけてるのに余所見するなんて無礼な…」

真紅「……」ジー

翠星石「…こほん。ま、まあいいです。んじゃヒラサワ、ちょっと頭借りるですよ」ピョン

平沢進「あ、こら」

翠星石「ふーん、問答無用ですぅ!…ヒラサワ、さっきのカオスな状況を楽しんでたですよね?わざとしっちゃかめっちゃかなこと言って…その分のツケをいま払ってもらうですぅ」ヒソヒソ

平沢進「言い掛かりも甚だしい。突発性ケイオスの乱気流をヒラサワが制御したとでも言うのか」

翠星石「ええ、そうに違いねーです!話をごちゃごちゃした責任があるんですから、大人しく頭の一つや二つ使わせろですぅ!」

平沢進「やかましい。頭蓋に高周波が無駄に響く。私の頭は英国のスピーカーズ・コーナーではないし、無償で演説場所を提供するほど私は親切ではない。だから、とっとと降りなさい」

翠星石「イヤですぅ!話するって言ったらするんですぅ!ほらほら、皆の衆、改めて注目ですぅ!!」パンパン!

真紅「…やっと話に入れそうね」

雛苺「うゆ…」

ジュン「はあ……」

のり「え、えっと…」

トモエ「…」

翠星石「………………」

平沢進「…?」

翠星石「………」ピョンッ

平沢進「はい?」

ジュン「は?…何がしたいんだよ?」

トモエ「…鞄にまた戻っちゃった」

のり「あら、かわいいわねぇ~」

ジュン「いや、その感想言うとこか!?」

平沢進「…あのねぇ。自ら衆目の目を集めておいてトンズラとは。聴衆に天の声でも聞いていろと言うのか」

翠星石「ち、ちげーです。その……翠星石は人見知りなんですぅ。知らない人がちょっと怖いんですよ。だから、一旦ここに隠れさせてですぅ…」

平沢進「うそつけ」

翠星石「………ホントです」

平沢進「はあ。流石に人形劇の端役だけあって演技がお達者で」

真紅「……本当よ。その子は昔から人見知りな子だったの」

雛苺「うん。翠星石ってば、恥ずかしがり屋さんだもんね!」

平沢進「……えー」

翠星石「えーじゃねーですぅ…」

真紅「急に元気になったりしおらしくなったり。忙しい子ね」

翠星石「う、うるせーです。そういう性分なんだから仕方ねーじゃねーですか」

真紅「…まあ、そうね」

ジュン「人見知りなのは仕方ないとして、とにかく話してもらわないと困るぞ。こっちはムリヤリ家に押し入られたうえに実害も出てるんだからな」

のり「あ!ご、ごめんね、腕を当てちゃって…」

ジュン「い、いや、そんなに気にしてないけどさ…」

翠星石「じゃあ、別にいーじゃねーですか」ボソッ

ジュン「そういう問題じゃないだろ!」

翠星石「うわー!チビ人間が暴れるですぅ!怖いですぅ!」

ジュン「なんだと!この性悪人ぎょ…いだっ!」

真紅「やめなさい、ジュン。話が進まないでしょう。まったく、私の下僕なのだから、少しは慎みを覚えなさい」

ジュン「う…」

翠星石「そーだそーだ、ですぅ!」

真紅「あなたもよ、翠星石」

翠星石「う…」

平沢進「へえ。そこの純くん、人形の下僕なの。シュールですね、平時より人形に見下される役回りとは…」

雛苺「良くわからないけどそうなのよー。真紅は怒るとああやってすぐジュンにビンタするのー。…あ!そういえば、いまの なの、ってヒナと一緒なの!おそろいなのー!」

平沢進「…あ、そう」

雛苺「………うわぁああああん!!!やっぱりこのおじさんこわいのっー!」バッ

トモエ「あ、雛苺。……よしよし」

のり「…えっと、まだいちご大福あるから、ヒナちゃんこっちで食べる?難しいお話があるみたいだし…ね?」

雛苺「…!!う、うにゅーまだあるのっ!?食べるのー!トモエ、台所に連れてってなのー!」タッタッタッ…

トモエ「うん、分かった。むこうで一緒に食べよう。…じゃあジュンくん、よろしく」チラッ

ジュン「?…あ、ああ分かった。ちゃんと話を聞いとくよ」

平沢進「…さすが舞台人形だけはある。変わり身がお早いことで」

真紅「のりはこの家の年長者だけあるわね。抜けているようで気を遣える子なのだわ。…知らない人がジュンだけなら、翠星石もちゃんとお話できるでしょう?」

翠星石「え?……ま、まあ…」

真紅「…さて」スッ

平沢進「ん?」

真紅「改めて、自己紹介するのだわ。私は薔薇乙女第五ドール、真紅よ。姉がお世話になっているようで」

平沢進「私は平沢進だ。平沢唯じゃない。はあ、正に仰る通りで」

翠星石「そこはウソでもそんなことないって言うとこでしょーが!いつもはあんなすらすらウソついてるくせに、何度こういう時だけホンネなんですか!」

平沢進「ウソとハサミは痛いよう、とは言ったもので。あんまり使うと心が原因不明の鈍痛に襲われるので最近は食後の一回に控えるようにしております」

翠星石「それこそウソつけーですぅ!何が鈍痛ですか!ヒラサワがんなことで心を痛めるわけねーですぅ!」

ジュン「それにその諺違うんじゃ…」

平沢進「諺の引用だとは一言も言っていないので」

ジュン「……たしかにそうだけど」

真紅「…言葉をよく知っているのね。ジュンも見習いなさい」

ジュン「は?いやいや、だから間違ってるっていう…」

真紅「本当のものを知っているからこそ、わざと間違えることで面白味が生まれるのよ。あなたがたまに観ているお笑いや、遥か古代の詩や小噺、文筆業においての基本よ。アメリカン風に言えば現代のじょーくなどにも通じるのだわ」

ジュン「…は、はあ」

翠星石「…ぜってーヒラサワはんなこと考えて言ってねーですよ。顔を見れば分かるですぅ」

平沢進「おや。翠の人形にもついに数瞬限定の読心能力が?」

翠星石「ええ。ついに目覚めちまったですぅ」

平沢進「やっぱり」

真紅「…………あら、そう」

真紅「まあ、その話はいいのだわ」

真紅「……私一人だけ真面目に喋って、空気の読めない子みたいじゃない」

ジュン「へー、それは真紅でも分かるんだな…いだっ!」

真紅「じょーくはここまでなのだわ。本題に移りましょう」

真紅「では、私から聞くのだわ。翠星石、今日は何の用でこの家へ?マスターが身分を偽ってまでこの部屋まで入ってくるということは、まさか…」ス…

翠星石「え!?ち、ちげーですよ!アリスゲームをする気なんて毛頭ねーです!」

真紅「だと思ったのだわ。あなたは昔から喧嘩が嫌いだったものね」

翠星石「は、はぁ?じゃあ最初から聞かなくていーじゃねーですか!」

真紅「念の為よ。それに、あなたも私たちがアリスゲームに参加しないだろうと思いつつ、念の為に探りに来たのでしょう?」

翠星石「う……さすが真紅ですね」

平沢進「翠の人形とは大違い」

翠星石「そうそ…って!言葉を先読みすんなですぅ!」

平沢進「ヒラサワも数瞬限定で会得した読心能力を発揮したくなってしまい、つい」

翠星石「なんでヒラサワと翠星石がサイケデリックな能力持ってる設定になってるですか!

翠星石「……じゃなくて、こほん。まあ、その通りですぅ。とりあえず言いたいことは、翠星石はアリスゲームに参加しないってことと、真紅や雛苺も出来ればこっちを攻撃して欲しくねーってことです」

真紅「分かったのだわ。私たちもあなたたちに攻撃しない。雛苺は今私の下僕だから、私の決定に従ってくれるわ。あとは…」

真紅「っと、そういえば蒼星石は本当に一緒ではないの?」

翠星石「……えーっと、はいですぅ」

ジュン「蒼星石って、あの蒼い王子様みたいな格好のローゼンメイデンか。…まさか前言ってたもう一人の双子ってコイツなのか?オッドアイぐらいしか似てないじゃないか」

翠星石「なんですと!?聞き捨てならねーです!」

ジュン「だってそうじゃないか。他にどこが似てるんだよ」

翠星石「そりゃこの空前絶後の美少女フェイスとお淑やかで優美な心根ですぅ!見ればわかんでしょーが、このトントンチキ!」

平沢進「えー…」

翠星石「なんでヒラサワがヒいてるですか!おかしーです!」

ジュン「だって、誰から見ても似てないんだから仕方ないだろ」

翠星石「むき~っ!!」

真紅「こほん!!」

翠星石「あっ!」ジュン「あ…」

真紅「…話を続けるわ。……二人はいつも一緒だったのに、何だか不思議な感じね。前に蒼星石とあった時には、何か悩んでいるようだったけれど、何かあったのかしら?」

翠星石「…それが、思い当たることがねーんですぅ。…少なくとも最近のことでは。…でも!そこは心配ご無用ですぅ。妹の悩みは、この翠星石とヒラサワがばっちりくっきり解決しますから!」

真紅「…あなたも力添えしてくださるの?」

平沢進「はあ。まあ、一応協力体制が敷かれているらしく」

真紅「…そう。まあ、私には私のすべきことがあるし、蒼星石については任せるのだわ。双子であるあなたにしか分からないこともあるだろうし、頼んだわよ」

翠星石「了解ですぅ!」

ジュン「ふーん。…素直になれないヤツだよなあ」

真紅「…何かしら、ジュン」

ジュン「いや、素直にいっつも一人の時言ってた、双子姉妹が心配だって言葉も掛けてやればいいのにって…いだだっ!」

真紅「下僕のクセに生意気なのだわ。主人に意見する時はちゃんと手を挙げてからにしなさい」

翠星石「…相当な恐怖政治ですね。やっぱり翠星石の言った吸血鬼バナシもあながち間違いじゃねーかもですぅ」

平沢進「たしかに。そこの彼、月夜の枕元には注意されたし」

真紅「こほん!ただの手下への躾なのだわ。失敬な」

ジュン「まあ手下になった覚えはないんだけどな」

真紅「口を挟まないで、ジュン。話がまた逸れてしまったでしょう」

ジュン「へいへーい」

真紅「…とにかく、私は在来のアリスゲームには参加しない。私は私なりの方法で決着をつけるのだわ。姉妹どうしで争うなんて方法に頼らずに、これを終わらせるの」

翠星石「え?……そんなこと、どうやって?」

真紅「とても難しいけれど、頭の中でやり方は考えてあるわ。アリスゲームが終わる前に……できれば、誰かのローザミスティカが奪われて、完璧に始まってしまう前に、実行できるようにするつもりなのだわ。……信じてもらえる?」

翠星石「んー…………」

翠星石「…真紅はドとつく真面目ですから、真剣なところで適当な事は絶対言わねーですからね。できるできないはビミョーですが、真紅がそうしようと思ってるってことは信用してやるですぅ」

真紅「…そう。ありがとう、翠星石」

翠星石「…調子狂うですね…。ま、どういたしまして、と言っておくですぅ」

ジュン「良かったな、真紅。分かってもらえてさ」

真紅「…ええ」

翠星石「こっちも話が円滑に進んで何よりですぅ。自転車で尾行…じゃなくて探偵行為をしたかいがありましたね!」

平沢進「どちらかというと軽犯罪行使力を発揮した気もするが、まあ言い立てることで波風も立てたくないので同意しておく」

翠星石「ちょ、ちょっと!そこまでいったらもう白状したようなもんじゃねーですか!」

平沢進「大丈夫。心証が曇天の空色になった程度」

翠星石「それって結構マズいじゃねーですか!」

平沢進「空の色など人の内心によって意味合いがジェット噴射のごとく映ろうもの。灰色の完成した幸せだってどこぞの家屋にはあろう。気に病むことなどない」

一旦ここまで
話が全然進まなくてすみません
好きにご批判ご質問ご意見お願いします

おっそくなってホントすみません
更新します

真紅「軽犯罪…?ああ、押し入り未遂ということね。別に私の館に入ってからは客人として扱っているから心配しないでいいのだわ」

翠星石「あ、そっちですか…ほっ」

ジュン「ここは僕んちなんだけどな」

真紅「下僕の家なら、つまりは私の家でしょう」

翠星石「誰の家かなんてどーでもいいですぅ。…じゃ、話はとりあえず終わりですかね」

真紅「ええ。結果論だけれど、来てくれて助かったのだわ、翠星石。どう?二人とも、このあと一緒に紅茶でも…」

翠星石「お!うーん、そうですね…」

平沢進「いや、私は仕事があるので。翠の人形にも多肉食な植物を救済するという大役があったはず」

翠星石「はっ!そうでした!元はと言えばそれで外出してたのをすっかり忘れてたですぅ!んじゃ真紅、悪いですけど今日はここまでで…」

ジュン「なんだ、もう帰るのか。突風みたいなヤツだな」

真紅「仕事なら仕方ないのだわ。では翠星石、平沢、また「あー!」」

真紅「……?」

雛苺「翠星石、もう帰っちゃうの?せっかく来たのにー」トテテテ

翠星石「なんだ、チビ苺ですか。ええ、帰るです。翠星石はお前と違って多忙なんですぅ。翠星石が帰っても寂しいからって泣くんじゃねーですよ」

雛苺「むー!そんなことないのー!ヒナは泣き虫を卒業したしお手伝いもしっかりやってるんだからー!ね、トモエ!のり!」

トモエ「…えっと、うん」

翠星石「ちょっと迷ってるじゃねーですか。ヒラサワの顔見て怖がってるような脳天気おチビが泣き虫卒業だなんて十年早いですぅ」

雛苺「うう~…そんなことないもん…」

トモエ「えっと、ごめん。雛苺がお手伝いをどうやってるとかちゃんと知らなくて…」

のり「え、えっとね!ヒナちゃんは最近お手伝い張り切ってるよ!全然文句も言わずに手伝ってくれるからいつも助かってるのよ~」

雛苺「…う、うん!そうなの!ヒナは頑張ってるの!」パァッ

翠星石「ふ、ふーんだ。翠星石だってもっと大変で重大なお手伝いをしてるですぅ。そんぐらいでいい気になってんじゃねーで…あでっ!」

平沢進「はい、そのあたりに。挑発行為を副業とする人形を放っておいたら話が終わらず帰れずじまいになるので。では、またこん「あー!」」

平沢進「…人が話している時に感嘆符を食い込ませるのが人形風のマナーなのだろうか」

真紅「…少なくとも私は知らないマナーなのだわ」

翠星石「い、いまはたかれた衝撃で大事なことを思い出したですぅ!」

平沢進「え。この人形、実は前世が昭和中期の電化製品だったって?」

翠星石「んなわけねーですぅ!叩かれたら治るタイプのテレビとは何の因果もねーですぅ!」

平沢進「しかし現実にそうなった」

翠星石「う…これは…しょ、ショック療法ですぅ!」

平沢進「苦しい言い訳だがこれ以上ブツブツ言い返すのも面倒なので取り敢えず「あ、そう」と返しておく」

翠星石「前半口に出す必要あったですか!?も少し配慮だかソンタクだかをしやがれですぅ!……じゃなくて、こほん。んなこと言いたいわけじゃなかったです。翠星石にはまだやるべき事があったんです!それを思い出したです!」

平沢進「いや、もう為すべきことなどない。背中を見れば分かるように十字架やら責務やらは背負っていないし」

翠星石「いいや、あるです!そんなおも~い話を言おうとしたんじゃねーですぅ。思い出したことっていうのは……そう!ヒラサワの素性をはっきり伝えてみんなに信用してもらうことですぅ!」

平沢進「へえ」

翠星石「へえ…じゃねーです!信用されることが社会で一番重要だって、翠星石は知ってるんですよ!マンガでちゃんと読んだんですから!」

平沢進「マンガにおいて重要なことがヒラサワにおいて重要だとは限らないので。それに、信用という言葉は誠実さという言葉と同じく空想上の産物だということをご存知ない?」

翠星石「はぁ!?んなわけねーです!だって、ここに誠実さの化身、翠星石がいるじゃねーですか!」

平沢進「え、無窮の空のどこからか突然声が」

翠星石「み、見えねーフリすんじゃねーですぅ!はいはい、誠実さの化身は言い過ぎでした!翠星石は誠実じゃねーですからもう見えるですよ!ほらほら手を振ってやるです!」

平沢進「おや。突然翠の人形が現れた。三途の川岸から手を振っている。やはりまだ輪廻を乗り越え解脱に至るには早かった模様」

翠星石「なんで翠星石が瀕死で三途の川の順番待ちしてることになってるですか!…とにかく!このままじゃヒラサワは正体不明のおじさんっていう印象で終わって帰ることになるんですよ!それでいいんですか!」

ジュン「たしかに正体は分からないんだけど身も蓋もないな…」

真紅「…第一印象は妖しげ、というカンジなのだわ」

翠星石「ほらほら!言われてるですよ!こんなふうに言われっぱなしでいいっていうんですか!」

平沢進「別に結構」

翠星石「えっ!?な、なんでですか!?…百歩譲ってヒラサワは結構でも翠星石はケッコーじゃねーんです!仮にもこの才色兼備の翠星石のマスターが、怪しいっていう一言説明で終わられたら翠星石の立つ瀬がねーですぅ!」

平沢進「人形の立てるような浅瀬など元々そんなに無いのでは」

翠星石「うるせーです!とにかく!翠星石が懇切丁寧に皆にヒラサワの所業を伝えてやるです!ヒラサワも人間である以上、自己紹介とかそういうのと無縁ではいられねーんですからね!」

雛苺「え!……」

翠星石「…なんですか?」

雛苺「その人、人間なの…?」

翠星石「は!?今そこ疑問抱くとこじゃねーですぅ!確かに分からなくもねーですけど!!」

のり「…あ!怪しいって言葉で思い出したけど…もしかして…えっと、ヒラサワさんって、さっきの自転車に乗って…」

雛苺「!!?あ、あのゆーまなのっ!?やっぱりそうだと思ったのーっ!!人間の皮を被った宇宙人なのぉ!ヒナをぱくってうにゅーみたいに食べちゃうつもりなのぉ!!」ガタガタ

ジュン「こら、うるさいし失礼だぞ!UMAなんていないって。珍しい生き物や奇形の動物を見間違えただけだよ」

トモエ「雛苺、落ち着いて。この人は人間だよ…たぶん」

平沢進「そう、恐らく人間。遊星から訪れた物体Xのように、切り裂いて調べ尽くすまでは人と分からぬので夜を歩く人は全て大体人間だろうという推測に基づかれている」

雛苺「??つまり…ど、どっちなのぉ…?」

ジュン「…雛苺、あんまり深く考えないほうがいいぞ」

雛苺「そ、そうするのー…って!でも、UMAはいるって、ジュンもそう言ってたのよ!なんであの時ウソついたのぉ?」

ジュン「は?何のことだよ。僕、そんなこと言った覚えは…」

雛苺「え、でもでも!テレビでゆーまを見てた時にジュンが…」

翠星石「はいはい、どうせ馬とUMAを間違えたとかそんなことですよ。んなことは今どーでもいいんです!ほらほら皆の衆質問です!ヒラサワを見て、どんな職業の人間だと思うですか?」

ジュン「え?うーっと……」

ジュン「地方公務員?」

のり「えーっと、デザイナー…?」

トモエ「…絵描きさん?」

真紅「…民俗学者?」

雛苺「ゆ、UFOの研究家なのっ!」

平沢進「………」

翠星石「ほれみたことか、ですぅ!誰一人として何一つ当たってねーですぅ!このまんま帰ったら間違いなく正体不明おじさんの道をまっしぐらですよ!」

平沢進「やっぱり」

翠星石「……え?何ちょっと嬉しそうな顔してるですか!?さっぱり意味がわからねーですぅ!」

平沢進「ヒラサワはステルスを標榜しているので。こうして顔を晒したところで職業不定の放浪者と看做されるとは予想のとおりで。つい」

トモエ「嬉しそう?…さっきと同じ無表情に見えるけど」

真紅「……なるほどね」ボソッ

翠星石「むーっ!何でそんなことが嬉しいんですか!」

平沢進「そんなことと言われましても。ヒラサワの本懐は誰ぞに理解していただくために抱いている訳では無いので」

翠星石「ホンカイ?え、えっとホンカイっていうと……まあホンカイは理解してもらわなくてもいいですぅ。とりあえず、職業ぐらいは知ってもらわないと!」

平沢進「はあ。で、どうするの。ヒラサワは音…「おーっと!待ったですぅ!」…やかましい」

翠星石「口で説明するより耳で聞いたほうが分かるはず!というわけで、じゃじゃーん!実はこんな時のために音楽再生マシーンを持ってきてたですぅ!」バッ

ジュン「ん?ウォークマン?ってことは…」

平沢進「うわ。所有者に無断で持ち出すとは。人はそれを窃盗と呼ぶ」

翠星石「人にどー呼ばれようと知ったこっちゃねーです!さて、ちゃっちゃと流すですよ!チビ苺にも分かるように、分かりやすそうな題名の曲をちゃんと選んでやったです!」

雛苺「うゆ?」

平沢進「はあ、解り易い題名。となると…」

翠星石「問答無用ですぅ!えーいっ!」ポチ

https://youtu.be/FDNEqjYX4E8

♪地球ネコ 平沢進 2012 / 今井ゆうぞう/はいだしょうこ (作詞作曲:平沢進) 2003

ママ! 赤い夕日が沈む屋根の上
ママ! 大きい大きいネコが見てるよ

怪しいヒゲで空をちょっと撫でて
遠い国へ聞き耳をたて
僕にだけ内緒で聞かせてくれた

ママ! 遠い遠い海が波をたて
ママ! 僕を見ているよと歌うんだ

謎のシッポで風をちょっとこねて
ご覧と僕に地球を見せた
こんなにも沢山僕を守っている
地球ゾウ 地球ドリ 地球トラ ポチもいる
火山の日 雨水 竜巻 ヒトもいる

ママ! 遠い国で泣いたよ誰かが
ママ! 地球ネコが消えちゃう何故なの
ママ! 赤い夕日の道を追いかけて
ママ! 地球ネコを探しに行くよ

ジュン「………ん?」

トモエ「…………?」

のり「え?え??」

雛苺「ふゅ……!!」ガタガタガタガタガタ

真紅「ひっ……」タジ…

翠星石「……」

平沢進「……」

翠星石「お…思いっきり逆効果じゃねーですか!子供に聞かせるべきじゃねーほうの曲を選んじまったですぅ!真紅さえビミョーにヒいてるじゃねーですか!」

平沢進「オマエが選んだ癖して何を言う。しかしあれはちゃんと幼年者にも分かるよう小学年程度の熟語のみで…」

翠星石「嘘八百並べ立てんなですぅ!あーもう!せっかく信用してもらおうとしたのに…!」

雛苺「……」ブクブク

トモエ「雛苺!大丈夫!?」

雛苺「おっきいネコ…おっきいトラ…おっきいポチ……」ブクブク

真紅「っ…翠星石、あなたまさか私たちに攻撃を…!」

ジュン「いや、別に攻撃とかそういうモンじゃないだろ…それに、この曲どこかで…?」

のり「こ、これ、曲なの!?ジュンくん、お姉ちゃんよく分からないよ~…」

翠星石「あ、あわわ!ど、どうするですか!図らずも攻撃したことになっちまったです!ヒラサワ、どうやってこの場を切り抜けるですか!?」

平沢進「どうもこうもない。LARDなどの音響兵器を放った覚えもないので国連に恨まれる心配もないし」

翠星石「またヘンなことを…!うう~、こうなったら他にテキトーに曲を選んでもっかい流すしか…!お願いです、どちらかと言えばフツーの曲来てです…!」カチャカチャ

真紅「!や、やめなさい翠星石!もう大きなネコの歌は…!」

翠星石「ネコも杓子も知らんですぅ!えーい、ままよ!ですぅ!」ポチッ

https://youtu.be/0qZvASiZ2Ic

♪luuktung or daai 平沢進 2003
(【Ruktun or die】 宮本優子(作詞作曲:平沢進)1999 /平沢進ver 2001)
(【ルクトゥン or die】 平沢進 2010)

紅蓮の怒りは古から時を跨いで
KIOSKの裏の吹き溜まりでぽーんと花咲いた
仏陀よ遅いよ人類なら
はるかな昔に堕落したし
でっちあげとか
ほったらかしで
こじれて ダサくて ほどけない

新橋の駅にお目見えです「これ修羅ども」と
改札の脇の人溜まりでぴょんと一躍り
仏陀よ遅いよ人類なら
疲れてムサくてやる気ないし
かったるいほど かっぱらわれて
いじけて もつれて 戻れない

踊りましょう 貴方
いとおしい 貴方

Luuktung or daai Luuktung or daai
外来語じゃハルマゲドン
Luuktung or daai Luuktung or daai
古の振りで Pai Duai kan krap
Luuktung or daai Luuktung or daai
踊れや歌えつるんで
Luuktung or daai Luuktung or daai
古の歌で Pai Duai kan krap


功徳のチャンスは てんこ盛りでがーんと気前よく
ごみ箱の隅の新聞記事にどーんとぶちまけて
仏陀よこのまま人類なら
怠けてアホけてシケていくし
けっとばしては のんだくれては
花見の酒乱で馬鹿騒ぎ

踊りましょう 貴方
いとおしい 貴方

Luuktung or daai Luuktung or daai
外来語じゃハルマゲドン
Luuktung or daai Luuktung or daai
古の振りで Pai Duai kan krap
Luuktung or daai Luuktung or daai
踊れや歌えつるんで
Luuktung or daai Luuktung or daai
古の歌で Pai Duai kan krap

Luuktung or daai Luuktung or daai
外来語じゃハルマゲドン
Luuktung or daai Luuktung or daai
古の振りで Pai Duai kan krap
Luuktung or daai Luuktung or daai
踊れや歌えつるんで
Luuktung or daai Luuktung or daai
古の歌で Pai Duai kan krap

翠星石「ひ、ひぃー!神様…!どうか受け入れられますように…」

平沢進「ここは仏陀にでも祈ったほうが良いのでは」

真紅「………」

真紅「……なかなか面白い曲なのだわ」

トモエ「…聴いたことないタイプですが、明るくて楽しいですね。歌詞は…えっと、一度聴いただけじゃ全部は分からなかったけど」

平沢進「そう?」

のり「お姉ちゃん、こ、今回は曲だって分かったわよ!何だか東アジア風なカンジの…」

ジュン「そこ自慢げにいうとこじゃないだろ!…えーと、つまりヒラサワさんは…?」

平沢進「そう。音楽家」

のり「へ、へぇ~っ!音楽家さんなんですか!初めて会っちゃったかも!すごいね~ヒナちゃん!」

雛苺「う、うん!なんだかよく分からなかったけど楽しかったのー!るくとぅんおあだい!るくとぅんおあだい!」

翠星石「……ほっ。何とかなったみたいですね。さすがは翠星石ですぅ!天運を味方につけるなんて!」

平沢進「電子機器のシャッフル・スイッチまでも天が監視しているとは。よほど暇なのかブラックなのか」

トモエ「…英語と日本語以外の言語が混じってましたよね。あれは…?」

平沢進「タイ語」

トモエ「タイ語…ですか?」

真紅「…『ルクトゥン』とは、タイ語で『歌謡曲』などを表す語なのだわ。タイの歌謡曲といえばモーラシンなどの時に死人が出るような激しい大衆音楽が有名…つまり、ルクトゥンオアダイとは死者が出るほどの熱狂的な音楽…という意味かしら。ルクトゥンの隣に外来語である英語のダイを並べるというのがまた独特なのだわ」

翠星石「へ、へー。翠星石はもちろん知ってましたけど、真紅も結構詳しいんですね」

真紅「宗教存在を引き合いに出して人類に対する諦めかヤケのようなものを歌詞に準えておきながら、実在のものや今風の言葉を用い、リズムと韻を重視していることでそれの閉塞感を感じさせないふうに工夫されている。曲調は明るいけれど、とても悲観的な歌ともとれる…不思議な曲…」

翠星石「はあ……さっきまでビビってやがったくせによく口の回るヤツですぅ」

真紅「!…こほん。私が謡曲を聴いて怯えるはずが無いでしょう。あちらの曲も、平易な言葉を使いつつ童の未知と神秘への探求心をくすぐるいい曲なのだわ。…まったく、何と見間違えたのかしら」

翠星石「えー?だって…あーなるほど!そういえば真紅は猫が怖いんですよね!だからさっきは、地球みたいにおっきいネコを想像して勝手におっかなびっくりしてたんですね!」

真紅「………」

翠星石「図星だからって黙られると困るですぅ」

真紅「…少し見ないうちに皮肉っぽくなったわね、翠星石」

ジュン「へー。真紅ってそんなに猫が怖いのか。というか、一つ目の曲やっぱりどこかで聴いたことあるような…?うーん…」

翠星石「お!これぞステルス・メジャーじゃねーですか?聞いたことはあるけど誰が作ったかは知らない、街で見てもその人だとは気づけないってヤツですぅ!」

平沢進「何故その業界用語をご存知?まさかTw(hz)を今でも監視しているとでもいうのか」

翠星石「あ、い、いやんなことねーですぅ!ギョーカイ用語ぐらい翠星石が知ってて当然に決まってるじゃねーですか!」

平沢進「…へえ、そう」

真紅「…少なくとも私の知識にはそんな業界用語はないのだわ。それについて私が無知なだけかもしれないけれど」

翠星石「あ、あははー!そ、そうです真紅ぅ!もっと勉強しないとぉ!あ、あはは……」

真紅「……まあ、そういうことにしておくのだわ」

ジュン「………うーん、思い出せないな。後で調べるか…」

真紅「ジュンがもっと子供だった頃に聴いたことがあるのかもね。幼い時の記憶というものは、なかなかすぐには戻らないものだから。けれど、消えてしまった訳ではないのだわ」

翠星石「そうかもですね。ネコが怖いってむっかしの記憶も、真紅からは全然消えてねーみたいですし!」

真紅「こほん!…コワいのではないわ。嫌いなのよ。あんなに野蛮な生物、他にはいないわ。どこへ逃げても追い回された時のあの恐怖といったら例えようも…」

ジュン「…それって、やっぱ怖いんじゃないのか?」

真紅「……この話はここで終わり!とにかく平沢の音楽家という素性が分かってスッキリしたのだわ!」

ジュン「逃げたな」

翠星石「逃げたですね」

平沢進「人形の遁走劇とは。日曜の朝にでも相応しそうな題目で」

真紅「こほっこほん!さあ、二人とも用事があるんでしょう。立ち話している時間は無いはずなのだわ。ほら、ジュンもトモエとの勉強会があったでしょう?机に向かいなさい」

ジュン「へいへーい」

トモエ「…そういえば、そうだったね」

翠星石「…まあ、今回は許してやるですぅ」

平沢進「では、またこ…」

…♪♪

翠星石「…ん?なんか音が…あ!音楽再生マシーンを止めるの忘れてたですぅ」

真紅「曲が流れ始めてるわね。…最後にこのもう一曲だけ聴いても?」

平沢進「…まあ、まだ定時前なので。ご自由に」

https://youtu.be/7qJ9HgxJM-I

♪NO ROOM P-MODEL(平沢進) 1992

四方に無敵の歌を聴き
ウルトラなヴォイスで謎を消す
アストロの夜明けは
アウトローな意味でも
監禁の部屋ならキミには無い

OH,NO ROOM
OH,NO ROOM

希望のいかつい道に立ち
ピープルの姿で嘘を解く
千年のかたわらバスに乗り
また身を切る部屋なら
キミには無い

OH,NO ROOM
OH,NO ROOM
IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT
IN OUT IN
(NO ROOM)
IN OUT IN OUT IN

四方に無敵の歌を聴き
ウルトラなヴァイブで光を放つ
アストロの夜明けに
アウトローな意味でも
ミステリーに輝くキミを呼ぶ

OH,NO ROOM
OH,NO ROOM

IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT IN OUT IN

IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT IN OUT IN(NO ROOM)
IN OUT IN OUT

ジュン「……」

平沢進「はいここまで。近辺に著作権管理団体のレーダー探知機が無くて何より」

翠星石「…またヘンな曲ですね。まあ?この知的な翠星石には言いたいことは何もかもすんごく分かりましたけど?」

平沢進「では、アストロの意味とはなんでしょう」

翠星石「…さあヒラサワ!もうカラスが鳴くから帰るですよ!」

平沢進「言語野が手に負えんと泣くから帰りたくなった癖してカラスに責任転換とは。鳥類保護法に抵触してしまえばいいのに」

翠星石「う、うるせーです!カラスが鳴いてるのも事実だからいーんですぅ!じゃあ、真紅たち…」

ジュン「……」

真紅「……ジュン」

翠星石「…?」

平沢進「ははあ」

のり「……」

トモエ「……」

翠星石「……なんですか?みんな黙っちゃって。さっきの歌がそんなに心にずっしり来たですか?閉じ込めてる部屋なんてないからとっとと飛び出せってのがそんなに…」

雛苺「えっと…翠星石、ちょっとしーなの!しー!」

翠星石「は、はぁ?なんで黙らなきゃ…むごっ!」

ジュン「………この曲、最後が『OUT』で終わるんですね」

平沢進「はい。録音機器の不可逆的かつ有意的な不備によりそこで途切れた模様。作っておいたはずの最後の『IN』は無限の電子領域で先行き不安障を発症し迷子になってしまったようで」

ジュン「…そうですか」

ジュン「えっと、その…初対面の人に聞くのもおかしいんですが…」

平沢進「……」

ジュン「もし僕にしか見えない部屋があって、鍵を失くしたドアがついていて…そこから、どうやったら外に出られると思いますか?…いや、部屋なんて無いんだと信じられるようにはどうしたら…?」

平沢進「簡単。大声でそこの者に助けを求めるとよろしい。一人にしか見えぬ扉ならば、幾重もの南京錠が付いていようがいまいが、他の者は鍵を開ける必要すらなく。空気を切り分けるようにして侵入を受け、手を借り外に出るだけで良い」

平沢進「扉をすり抜け、振り返ればそこには無色の大気の端くれがあるだけでしょう。部屋が無いと意固地に思い込もうとするのでなく、無という事実を知ってしまえばその問は解決する」

ジュン「……」

平沢進「問題は、呼ぶだけの大声が出せるかどうか。今のうちより発声練習でシャウトでもするとよろしい。また、そこが四畳半の部屋ならば数千リットルの大気の端くれと声量出力が闘う必要もある。足腰と横隔膜を山男のごとく鍛えるとなおよろしい。あとは……」

平沢進「千年が傍らに居るのだから、そちらに聞けば。今のはほんの一例なので。私は三日娘の相手で忙しいのでこれ以上はコメントを控えさせていただく」

ジュン「……あ、真紅…」

真紅「………平沢」

翠星石「ヒラサワ………」

翠星石「……三日娘ってもしかして翠星石のことですか!?!?」

平沢進「さあ。ではまたこんど」

ジュン&真紅「ま、また今度…」

翠星石「ちょ、待つですヒラサワ!!何が三日ですか!翠星石は真紅より長生きですぅ!もっと色んなものを見てきたんですよ!」

平沢進「はあ、そう。では老いた人形さん、お足元にお気をつけてお玄関にお降りください」

翠星石「年寄り扱いしろって事じゃねーです!むき~っ!……じゃあまたですよ!!さいならですぅ!」

雛苺「またなの~!!」トモエ「またね」のり「じゃ、じゃあね~」

のり「………行っちゃった。突風みたいな人たちだったね…」

トモエ「ええ。…変な人でしたけど、悪い人じゃなくて良かったですね」

雛苺「顔はコワいけどゆーまじゃなくてよかったの!翠星石も楽しそうだったし!」

真紅「…そうね。とりあえず安心したのだわ。些細な表情の変化も分かるなんて、翠星石もなかなか馴染めているようだったし。人見知りなあの子にしては驚きなのだわ」

のり「…よし!じゃあ色々あってお腹も空いてきたし、お夕食の準備でもしますか!トモエちゃん、一緒に食べてく?」

トモエ「あ…流石に申し訳ないのでこの辺りで…」

雛苺「えー、申し訳なくなんかないの~!ご飯は、みんなで食べるととっても美味しくてたのしーのよ!ねえねえ、トモエも一緒に食べようよー!」

トモエ「えっと…」

真紅「…気になるなら、のりの料理のお手伝いをしてあげなさい。そうすれば、気負う必要も無くなるのだわ」

トモエ「…そうだね。じゃあ、のりさん、エプロン貸して頂けますか?」

のり「あ!ありがとうね!はいはいどうぞ~。今日は色んなことがあったし、花丸ハンバーグ作っちゃおうかなっ!」

雛苺「は、花丸ハンバーグ!?ひ、ヒナも手伝うのっ!椅子持ってって、お野菜さん洗うの~!」

トモエ「ふふっ…じゃあ、一緒に頑張ろう。ジュンくん、勉強会はまた今度で」タッタッ…

ジュン「あ…うん」

のり「あらあら~!ヒナちゃんまでありがとね!今日は腕によりを掛けて頑張っちゃうわよ~!」

雛苺「うん!ヒナも腕にお塩塗ってガンバるの~!」

トモエ「雛苺、それは全然意味が違うよ…」

真紅「…みんな元気ね。さて、ジュン」

ジュン「ああ。……面白い人…と曲だったな」

真紅「ええ。部屋なんて無いという題名なのに、出たり入ったりを繰り返しているというのがヒトの逡巡を表しているようで面白いのだわ。(NO ROOM)という掛け声は、たぶんそうして迷い続ける人に呼びかけているのね。…たぶん、だけれど」

ジュン「たぶんな。僕には耳が痛いような、はっとしたような、なんとも言えない感じだったよ。あれを言葉で言われてたら反発してたかもだけど…歌と言葉だと、なんだか違うんだな」

真紅「そうね。歌には、歌詞の全ての裏側まで分からなくとも、何故か惹き付けられるものがあるのだわ。小説や詩などの言葉にももちろんそれはあるけれど、また違う…何が違うのか、までははっきりと言えないけれど」

真紅「…これ以上は、私にも何も言えないのだわ。音楽は人の心を震わせる現実の魔法のひとつ。…でも、私は聴くことしか知らないの。だから、詳細に語る事は出来ないのだわ」

真紅「金糸雀に訊いてみれば…彼女もあんな風に見えて、音楽という人に寄り添う力について造詣が深いはずなのだし。今度会ったら、一度詳しく話をしてみようかしら」

ジュン「ふぅん。…真紅が正直に知らないから教えてって言えるかどうかだな」

真紅「…こほん。私はいつだって正直なのだわ。何に対してもね」

ジュン「へー、どうだかな?」

真紅「どうだって、よ」

ジュン「……ははっ」真紅「……ふふ」

「あ、危ないっ!!トモエちゃん、ヒナちゃんを支えてあげてっ!」

「ひ、雛苺。まったく、そんなに両手で野菜を持つから…!」

「だ、大丈夫なのっ!ヒナだって、これくらい…うわぁっ!?」

ジュン「えっ!?お、おい!大丈夫か!?まったく、何やってるんだよ!」タッタッタッ…

真紅「……」

真紅「…何度でも手を貸して、部屋から連れ出してあげるのだわ、ジュン。一進一退で、また部屋に戻ってしまっても、必ず…ジュンの心は、外へと向かっているんだもの」

真紅「アリスゲームとはまた違う、ジュンの戦い。音楽とはまた違うけれど…人に寄り添うお人形として、私には見届ける義務があるのだわ」

「真紅!そこで突っ立ってないで手伝ってくれ!」

真紅「…はいはい。分かったのだわ!…まったく、手のかかる子たちね。…ふふ」タッタッ…

翠星石「ヒラサワ!…ヒラサワ!!もう麦籠から出してくれてもいーんじゃねーですか!」

平沢進「駄目。まだ潰れかけのフリークショーに訪れる悪趣味なタイプの観客がちらほら」

翠星石「道行く人をけなしすぎじゃねーですか!?歩いてるだけでそんなカテゴリに分けられてるなんてカワイソーに…」

平沢進「人はカテゴリ分けをするのが大好きなので。そのほうが何かと楽なために。結果、互いが互いを団体の一部として見合うために最近は広辞苑の個人の項目が黄点滅しているとのウワサ」

翠星石「は、はぁ……まあ、分かりますけどね。翠星石も昔は、みんなを「ニンゲン」ってひとくくりで見てたこともあった…かもですぅ」

平沢進「へえ、そう」

翠星石「ヒラサワみたいな仙人みたいなのもいれば…のりみたいにド能天気なのもいて…トモエみたいな無口ーなのも、チビ人間みたいな何かに悩んでるのも…色々いるんですよね。それも、見た目と中身はぜんぜん違ったりしますし」

翠星石「ニンゲンってのは不思議ですぅ。何百年も見てきたはずなのに、今でもちっともよく分からねぇですぅ。今の翠星石には、カテゴリなんかじゃ全然分けられねーです」

平沢進「喋る人形という不思議の権化に不思議がられても」

翠星石「あ!ま、まあそうかもですけど!」

平沢進「それに、何かに悩んでいるのは特異なことではない。チビ人間という卑小的な渾名を付けられた彼の年代は、悩みというものがカラー・コンタクトの如く視界を覆い、見るものの色を変えてしまいがちというだけ。大体は暗めの色に」

翠星石「ふーん…」

平沢進「更にそれを他人が拭い去ろうとすれば、悩みとは他者には見えぬもののために誤って目を突いてしまうなど事故も多発する。そのため彼は、千年人形に左手を引いて貰いつつ、自らの右手で目隠しの結び目かカラコンのケースか不可視の鍵を探すのがよろしかろう」

翠星石「……まあ、何となく意味は分かったです。…ヒラサワも何かに悩んだりしてるですか?いまも?」

平沢進「当然。例えば、我が家の窓の破片は今頃何を思いこの夕闇の空を見上げているだろうか、とか」

翠星石「……あ。真紅にせっかく会ったのに直してもらうよう頼むの忘れてたです…」

平沢進「たまにはそういうこともある」

翠星石「ま、まあそうですよね!手間がかかるのもたまにはいいってもんですぅ!」

平沢進「手間を充実に変換するのもたまにはいいが、それは気休めという逃避の一手段であることも忘れてはならない」

翠星石「はいはい!次会う時にはしっかりくっきり伝えるですよ!さあ、もっとトバして帰るですぅ!」

平沢進「だから、ヒラサワにブルーカラー的期待はするなと。ホワイトな速度で二輪車を走らせるため気を多少長めにするように」

翠星石「はーい!分かったですよ!」

ーあろるの館(庭)ー

「…ぶえっくしゅ!」

金糸雀「う~、さ、寒いのかしら…!翠星石のアジトに張り込んで早半日…いつになっても家主さんが帰ってこないのかしら!窓も壊れたままなのに、いったいどこに行っちゃったのかしら……」

金糸雀「はあ…新しい曲が聴けるかなって、ちょっと期待してきたのに、最近は骨折り損の草臥れ儲けまくりなのかしら……」

金糸雀「これ以上遅れたら、またみっちゃんを心配させちゃうし…どうしよう…」

金糸雀「……へっくち!う~…っ」

金糸雀「きょ、今日のところは引き上げなのかしら!なかなか尻尾を掴ませないわね、翠星石!カナは再三再四何度でも戻ってくるわよ!オーッホッホッホ!」

金糸雀「…………」

金糸雀「……ついでに、窓も直しておくのかしら。悪気はないけどカナが壊しちゃったんだし。こんな寒い空気が部屋に入ったら大変だもの。…べ、別に翠星石が心配な訳じゃないのかしら!家主さんのことを心配してるだけ…」

金糸雀「…それもおかしいのかしら。あの人だってアリスゲームの敵対者なんだから…」

金糸雀「はあ。カナったら、一人で騒いでへんなの…」パァアア…

一旦ここまでです
相当好きな三曲をご紹介出来て喜びに打ち震えています
長めに書きすぎて前後でキャラがおかしくなってたりするかもなのでいくらでもご意見ご批判ご質問お願いします
あとルクトゥンオアダイとノールームは歌詞の表記ゆれが多くてどこかたぶん間違ってます ゆるして

あと真紅が多少の歌詞解釈をしていますがきっといろいろとそこ違わない?ってのがあると思います
まあ真紅もヒラサワさんの曲を長く聞いてるわけじゃ無いと思うので勘弁してあげてください(責任転嫁)

遅れてて大変申し訳ないです
ほんのちょっぴりだけ更新します

翠星石「んー…不思議ですぅ…」

翠星石「なんで窓が再び直ってるんでしょうか?真紅があの後超高速であろるの館に侵入して直してってくれたとは思えんですし…電気屋さんが光の速さで見積もりと修理を終えたとも考えにくいですしね…」

平沢進「電気屋に30万キロメートル毎秒の即応性を求めてどうしようというのか」ヌッ

翠星石「うわぁっ!…でも、他になんか考えられることがあるですか?まさか、金糸雀が直してくれるわけはねーですし…」

平沢進「そのまさかという可能性も。「まさか」は観測が滞ることが多いだけで、その辺に意外と転がっているものなので」

翠星石「えー?だって、金糸雀が直す理由がねーですよ。それに、この館に来たっていう証拠もないですし」

平沢進「実は証拠ならばある。これ」

翠星石「はい?ハート型の髪飾り…あ!こ、これは確かに金糸雀のいつも付けてたヤツですぅ!」

平沢進「やはり。まあ、金色の極小道具という時点でそうだろうと思っていたが」

翠星石「じゃあ、金糸雀はヒラサワが一度見つけた以降もここに来てたですか…きっと翠星石のローザミスティカを狙ってたんですね!」

平沢進「ならばなぜ窓を修繕するのか。鳥類人形が修繕を趣味とする善意の塊系人形だというなら話は別だが」

翠星石「あ…確かにですぅ。金糸雀は別に直すのが大好きってわけでもねーのに、なんで敵方の館の修理なんか…うーん…」

翠星石「翠星石とアリスゲームをする以外に、何か目的があったとか…?はっ!」

平沢進「……」

翠星石「そういえば、金糸雀は音楽に精通したヤツなんでした!きっとヒラサワの館を見て、たぶん…!」

翠星石「たくさん転がってる謎楽器を目の当たりにして、音楽家根性に火がついて盗む算段をしてたんですぅ!そうに違いねーです!だから、窓が割れてる内に他のヤツが盗みに入らないように、直しておいた…どうです!この名探偵翠星石の推理は!」

平沢進「……」

翠星石「な、なんですかその顔は!この翠星石の推理のどこに穴があったですか!」

平沢進「月の表面並みに穴だらけ。第一、体良く侵入したところで人形がどうやってこれを運ぶというのか」

翠星石「えっ?そりゃ、こうして…ん~!!お、重っ…」

平沢進「でしょ」

翠星石「……ふぅ。まあ名探偵にも間違いはありますからね!かの名探偵ホームズも、くんくんもコナンも、犯人を取り逃しちまった事はたまにあるです!そういう失敗を引きずらないのが翠星石のいいとこなんです!」

平沢進「出来ることなら囚人の足枷の如く引きずって教訓として貰いたいもの」

翠星石「うるせーです!翠星石を縛るものなんて失敗だろうと後悔だろうとなんにもねーんですぅ!」

翠星石「さて…じゃあ、金糸雀をとりあえずふん縛る算段を始めますかね!その髪飾りを囮に使えば、金糸雀は餌に釣られた野鳥のごとくあれよあれよという間に飛んでくること間違いナシです!」

平沢進「ははあ。野鳥狩りならぬ人形狩りと。野外でのそれはヒラサワも初見。安全圏から死合を眺める金持ちのごとくあろるの館内より観戦させて頂く」

翠星石「ふっふーん!任せとけですぅ!金糸雀なんかちょちょいのちょいで捕まえてやるですからね!あ…」

翠星石「あと、一つだけヒラサワにも協力して貰いたいことがあるですぅ。安心してください、カンタンなことなので!」

平沢進「…まあ、手の届く半径2m以内で済むことでしたら」

ガサガサ……ガサガサ…

金糸雀「……ぷはっ!」ポンッ

金糸雀「う~…!ここにもないのかしら…ど、どうしよう…」

ピチカート「…」チカチカ

金糸雀「そっちにも無かったの?はぁ…これで、昨日の帰り道は全部探し終わっちゃった…」

金糸雀「他に落ちてる場所があるとしたらあの歌手さんのお宅…そこにも無ければ、もう誰かに拾われちゃったとか…?」

金糸雀「みっちゃんも髪飾りのこと凄く気にしてたし…見つからなかったらきっと一緒に探しに出てくれると思うけど…お仕事で忙しいみっちゃんに、これ以上迷惑かけるわけには…」

金糸雀「はあ…」テクテク…

金糸雀「こんな情けないことでお父様から頂いた髪飾りを無くしちゃったら…カナは…カナは……」グスッ

ピチカート「…!」チカチカ

金糸雀「はっ!な、泣いたりしてないのかしらピチカート!カナは強い子なんだから…」ゴシゴシ

金糸雀「ふぅ。とにかく気を取り直して、お庭で飾りを探すのかしら、植物の緑に金の飾りだから、きっと目立つはず…」

金糸雀「……歌手さんがそれで気づいて拾っちゃってたら、その時はどうしよう…」

♪…♪…

金糸雀「……はっ!?」バッ

金糸雀「お、音楽が…!も~っ、なんでカナはこう間が悪いのかしら!これを目当てに来た時には聴けなくて、探し物に来た時に限って流れてくるなんて…」

♪…♪…

金糸雀「…まあ!とりあえず聴くのかしら!音楽は人の心を外から揺さぶる魔法なのだし!どんな曲かは分からないけれど、きっとカナの集中力を高めてくれるはず…なのかしら!」

平沢進「……」カタカタ

https://youtu.be/an2VLnLfzP0

♪狙撃手 平沢進 2003

塔の遥か上 広告の影
赤いスーツのスナイパーを見ろ
遠のくキミを飽くまで追う
ああ 逃亡の展望も砕く

ヒューと口笛吹き
路地から また路地へと
ヒューと逃げる演技
さあ軽やかに家路へと
DDT! DDT!

見渡す限り真実の墓地
さあ戦場から惨状だけ聞け
慄くキミをどこまで追う
さあ戦場から惨状だけ聞け

ヒューと嗚咽を吐き
悪夢からまた悪夢へ
ヒューと胸を鎮め
さあ弾道を読む静寂を
DDT! DDT!

安息の日も木陰で待つ
黄色いスーツのスナイパーを見ろ
行き交う人 恐怖はピーク
ああ戦場の緊張にも増し

ヒューと口笛吹き
シアターからまたシアターへ
ヒューと恐れるフリ
さあ冷ややかに観劇を
DDT! DDT!

金糸雀「……」ポカーン

金糸雀「今度もまた…凄い曲なのかしら…どっちかというとコワイ系の…」

金糸雀「これも現実に即した曲なのかしら?狙撃手っていうと戦争とか狩りとか…?DDTっていうのは何かの略称?うーん…どきどきトルクメニスタン…とか?そんなんじゃないよね…」

ガサ……ガサ……

金糸雀「うーん……」

「赤いスーツ……」ドバアッ

金糸雀「!?えっ…うわあああああああっ!!こ、これは世界樹の…!?う、動けない…」

ピチカート「!」ピュンッ

金糸雀「あっ、ぴ、ピチカート!バイオリンを…!」

「黄色いスーツときて…」パァアア

ピチカート「…!?」ギュルッ

金糸雀「ぴ、ピチカートっ!」

「ふふふ…おめーをふん縛るのは!」

金糸雀「こ、この声と能力は…」バッ

翠星石「ふっふーん!緑の装いの翠星石ですぅ!金糸雀狩り、ものの見事に大成功ですぅ!!」

翠星石「ヒラサワ、ヒラサワー!任務完了したですよ!翠星石の接近を隠すための音楽トラップもナイスですぅ!髪飾りを撒き餌に使うまでも無かったですね!」

ガラッ

平沢進「トラップなど仕掛けた覚えはない。勝手にトラップとして利用されただけ」

金糸雀「あっ!…(か、歌手さん…!?)」

平沢進「しかしこれが人形狩りと。現代のヘルシー志向にのっとり、減バイオレンス、増メルヘンとは気が利いている。まあ、食品添加物がいくら入っているかは不明だが」

翠星石「思いっきし天然だから気にすんなですぅ!それよりどうですか?猟友会もびっくりのこのお手並みは!ほらほら、翠星石をもって褒め称えるですよ!」

平沢進「よっ!退いてるねぇ」

翠星石「…はぁ?何言ってやがるです?翠星石は褒めてって言ったんです!翠星石に退いてるとこなんてどこにもねーです!」

平沢進「え。これはかの潤布が現行の中了潤布帯に移行した時分に好んで用いられた称賛言葉だが。ご存知ないとは言うまい」

翠星石「え?あ、っと……も、もちろん知ってるですぅ!退いてる退いてるです!翠星石はあらゆるところが退きまくりですぅ!」

平沢進「ふーん」

翠星石「……もしかして今の真っ赤なウソですか!?ビミョーにホントっぽい小噺はやめるですよ!紛らわしーです!」

※中了潤布帯=現行のネクタイ 潤布と呼ばれる地面を這うほどの異様に長いネクタイが長さが「足りすぎている」うえに不衛生と極まりないという理由で百足らず様によって開発指揮されたことで生まれた ネクタイの長さが「退く」ことで使い勝手が良くなったため、その時分には「退く」という言葉が褒め言葉として使われた 詳しくはwebで

平沢進「そんなことより。「そんな事じゃねーです!大問題ですぅ!」うるさい。そこの鳥類人形に用があったのでは」

金糸雀「う…」プラーン…

翠星石「はっ!そ、そうでした!まったく、ヒラサワのせいで本題を忘れるところですぅ。…じゃあ金糸雀!オメーが捕まってる理由は自分でもう分かってるですね?」

金糸雀「…カナはその、探し物に来ただけで…」

翠星石「んなことはもう知ってるですぅ、このトントンチキ!ほれ、探し物はコレですよね?」チャラ…

金糸雀「あっ!…よ、良かった…」

翠星石「良くねーですよ。まだ返すと決めたわけじゃねーんですから。この髪飾りを返して欲しかったら、あろるの館に夜毎現れる理由を説明して貰うですぅ!」

金糸雀「えっ!…な、何度も来たこともバレてたの…!?」

翠星石「当然ですぅ!そんなピカピカしたホタルみたいな格好しといて、翠星石の目を逃れられると思ってるですか?」

平沢進「気づいてなかったくせに」

翠星石「しーですヒラサワ!…ほれほれ、とっとと答えるですよ。負い目がねーなら言えるはずですぅ!」

金糸雀「え、えっと……カナは、その……」チラッ

平沢進「……」

金糸雀(音楽を聴くために来てたなんて、翠星石の前ではとても言えないのかしら…)

金糸雀(ウソをつくわけじゃないもん!ここは最初からの目的の…)

金糸雀「……も、もちろん、アリスゲームをする為なのかしら!夜な夜な翠星石のスキを伺ってたのかしら!」

翠星石「ホントですか?」

金糸雀「えっ!?な、な、なんで疑ってるのかしら!ほ、ホントに決まってるわよ!」

翠星石「………」 ジーッ

金糸雀(な、なんで翠星石がこんなに…!?まさか、読心術でも使えるっていうんじゃ…)

翠星石「……ま、とりあえずそういうことにしとくです」

金糸雀「……」ホッ

翠星石「…それにしても、よくも大っぴらにんなことを言えたもんですぅ。金糸雀が翠星石の寝首をかこうなんて十年、いや千年はええってもんです!」

金糸雀「む~!翠星石のクセになんてナマイキな…カナが本気なら、アナタ達双子だって倒してみせるんだから!」

翠星石「おーっほっほ!負け犬の遠吠えが聞こえるですね!がんじがらめのぐるぐる巻き状態で言っても見苦しーだけですよ!」

金糸雀「ぐ…く、悔しいのかしら…!」

翠星石「さてヒラサワ!金糸雀の処遇をどうしてやるです?鉢植えに金色の薔薇として活けてやるですか?それとも今夜の晩御飯のおかずの隠し味にでもしちまうですか!?」

金糸雀「ひ、ひぃーっ!!」

平沢進「……」

翠星石「……?なんですか、そのカオ…」

平沢進「…蒼の人形がかつて言ったように、鳥類と翠のが集まるとやかましいことこの上ない。私の経年劣化の進む有機受信機も不運なことにモスキート音として排除できず、そのぐらいは未だ感じ取れる模様」

翠星石「あ…!か、金糸雀!もっと静かにするですよ!ヒラサワはうるさいのが大嫌いなんですぅ!何せこの前なんて…」

翠星石「…あ!」ニヤッ

金糸雀「……?」

翠星石「…この前なんて、ヒラサワの眼前でギャーギャー喚き散らした雛苺が、ヒラサワの目からビームを受けて見るも無惨な姿になっちまったんですぅ!思い出すだけでも涙が出るですぅ…よよよ……」

金糸雀「え……え…?」バッ

平沢進「…あのねぇ」

翠星石「ヒラサワの眼光は、草を焼き鉄を焦がすおっそろしいモンですぅ…でも、真に恐ろしいのはそこじゃねーんです。ヒラサワ・アイは特殊な電磁波で、人形が浴びるとあろうことか、サイボーグに変身してしまうんですぅ!」

金糸雀「え…えっ!?……だ、だ、騙されないのかしら!す、翠星石、そんなウソでカナを騙そうとしても無駄なのかしら!て、て、天才軍師のカナは、そんな嘘八百に動じたりしないのかしらぁ!」

翠星石「信じる信じないは金糸雀の自由ですぅ…でも、この証拠を見たら信じずにいられねーハズですよ…」

金糸雀「え…しょ、証拠……?」

翠星石「この苺大福を見るです…一見なんの変哲もない大福に見えますが、実は……」

金糸雀「……」ゴクッ

「ワタシ ヒナイチゴナノー カナリア ヒサシブリナノー」

金糸雀「んぎゃあああああああああああああっ!!!!」

平沢進「そこまで。あろるの館は人形向けの青空劇場ではない。しかもやかましさが倍増している。本題を置き去りに茶番を推し進めるのは箱型電脳小教会の中だけでよろしい」

翠星石「あはははははは!だ、だって面白いんだから仕方ねーですぅ!思った通りに引っかかったんですから!あはははは!!」

金糸雀「ま、まだカナは機械になりたくないのかしらぁっ!!お、お助……えっ!?だ、騙したの翠星石!」

翠星石「あははは!…こほん。さあ?どうですかねぇ?金糸雀は天才軍師で翠星石のウソには絶対騙されないらしいですし?」

金糸雀「な、な…!こ、こんな屈辱初めてなのかしら!あ、後で覚えとくのかしら、翠星石!」

翠星石「負け犬の遠吠えも二回目じゃオチがつかねーですよ?まあとにかく、これで分かったですかね!天才軍師の冠は金糸雀なんかじゃなく、この翠星石にこそふさわし…あだっ!」

平沢進「そこまでと言っていように。いくら薔薇の化身人形とは言え、バラ・エティに会話を似せる必要などあるまい」

翠星石「ん~…まあ、このままじゃ話が進まねーですしね。金糸雀いじりはこの辺にしとくですぅ」

ここまでです
ペースを戻せるよう尽力します
ご自由にご意見ご質問ご批判お願いします

翠星石「こほん…んじゃ金糸雀。アリスゲームを挑みに来てるってことは、相応の覚悟をして来たんですよね?」

金糸雀「ひっ…も、もちろんなのかしら!さあ、煮るなり焼くなり揚げるなり好きにすればいいのかしら!」

翠星石「その言葉、偽りはねーですね?じゃあ……神妙にしやがれですぅ!」バッ

金糸雀「!!」ギュッ

シュルル…

金糸雀「…え?」

翠星石「あははは!また引っかかったですね!」

平沢進「あのねぇ」

翠星石「えー、今回は翠星石は悪くねーですぅ!だって金糸雀が好きにしろって言ったんですから!勝手にあっちが勘違いしただけですぅ、翠星石はなーんにも知らんですぅ」

金糸雀「……??えっと、なんでカナが解放されてるのかしら?だって、アリスゲームのルールに従うなら…」

翠星石「ん?まだ状況が分かってねーですか?ニブイヤローですね。だから、翠星石はそのアリスゲームをしねーってことですよ」

金糸雀「…アリスゲームをしない?」

翠星石「何度も言わせんなですぅ。とにかく、翠星石は攻撃する気はねーですから、金糸雀も大人しく…」

金糸雀「……」

翠星石「……?どうしたですか、ピーチクパーチクうるさかったのに突然黙って…」

金糸雀「それは、これから先もずうっとしないということなのかしら」

翠星石「え?まあそうですけど」

金糸雀「…個人の感情で、それが許されるものなのかしら。だってアリスゲームは、お父様が決めたことなのよ」

翠星石「…」

金糸雀「姉妹で闘い、最後に生き残った一人が至高の乙女、アリスになる。そう義務づけられて生まれてきたのが私たちローゼンメイデン…」

金糸雀「…いえ、義務づけられたでは少し違う…正確に、使い古された言葉で言うなら…それが運命、なのかしら」

平沢進「……」

金糸雀「「アリスゲームをしない」ってカンタンな事のように言ったけど…運命に抗うということは個人が思っただけでどうにかなるものじゃないのかしら」

翠星石「…んなこと分かってるです」

金糸雀「いいえ、分かってないのかしら。第一、アリスゲームを止めてどうするのかしら?私たちにとって、戦うことが生きること。生きることをやめて…時の流れに身をまかせるつもり?ただの人形として?」

翠星石「っ……」

金糸雀「ほら、応えられないのかしら。お茶会をする為に生まれてきたのならそれもアリかもしれないけど、私たちは薔薇乙女。薔薇乙女の本分を捨てることを、あなたに肯定できるだけの理由がある?」

翠星石「…もちろんあるです。翠星石はケンカがきらいです。姉妹で傷つけ合うなんて真っ平御免ですぅ。だから戦わないんです!」

金糸雀「それはただのワガママなのかしら、翠星石。ちゃんとした理由なんかじゃ…」

翠星石「んなことねーです!ちゃんとした理由ですぅ!戦いたくないから戦わない、それのどこが悪いんですか!」

金糸雀「真っ平御免でもしたくなくても、すべきことというのがあるのかしら。すべきことから、嫌だという理由で目を背けることが正しいわけがないのかしら!」

翠星石「むっ…ぐ……」

平沢進「ワガママなのは確かに同意」

翠星石「っ……ヒラサワまで…」

平沢進「何故悄気る。自ら我がままの道を選んだのなら他人に文句を言われようと気にかける必要はあるまい」

金糸雀「…?」

平沢進「この監視社会において群衆を尻目に脇道に逸れれば、「正道に戻るべし」と窘められるのは当然。その当然を前提とすれば我儘という他評を気に病む無意味さが分かるはずだが」

翠星石「!」

翠星石「…そうです。翠星石は遊びや気の迷いでアリスゲームを止めると言ってるんじゃねーんです。これは翠星石の本気のワガママなんですぅ!金糸雀がなんと言おうと、運命だろうがなんだろうが変えるつもりはねーですよ!」

金糸雀「……そう。じゃあ、話してもラチが開かないのかしら。考えが真っ向から違うんだもの」

翠星石「ふん。それはコッチのセリフですぅ。…水銀燈みたいなことを金糸雀が言うとは思わなかったです」

金糸雀「…水銀燈がアリスゲームに打ち込んでいるのは、言い換えればローゼンメイデンのすべきことに最もまっすぐに向き合っているということなのかしら。愛か憎しみかで向き合っているのかは分からないけど」

翠星石「そんなの、ただ闘いたいから暴れてるだけですよ。あのキョーアクな顔を見れば分かるです」

金糸雀「ホントに?翠星石、アナタは水銀燈のことをほとんど知らないでしょう」

翠星石「…それは確かにそうですけど。でも、あんな好戦的な顔やセリフを聞きゃあ分かるにきまって…」

金糸雀「表情や話す言葉だけで、人は測れないものかしら。誰にだって、人には話せない秘め事があるんだから。互いに心の内に誰にも見せない何かを抱えて…その上でみんなお互いにため息をつくのよ。誰も自分をわかってくれないって」

金糸雀「…あなたも、そういう経験ないのかしら?双子の蒼星石ですら、全てのことを知ってもらっているわけでもないし、全てのことを知っているわけでもない。…そうじゃないの?」

翠星石「……」

金糸雀「こほん。話が逸れた上に長話になったわね。じゃあ…今日はお邪魔したのかしら。今回は翠星石が攻撃してこなかったし、それなのにこっちから攻撃するのは道義にもとるからアリスゲームはやめておくのかしら」

金糸雀「でも、カナはアリスゲームを放棄したりしないのかしら。少なくとも今のカナには、どんな事情だって、アリスゲームをやめる理由になるとは思えないから」

翠星石「……」

金糸雀「じゃあ…」

平沢進「はいこれ。失せ物」

金糸雀「あ!…ありがとなのかしら。えっと…」

平沢進「私は平沢進だ。平沢唯じゃない」

金糸雀「…自己紹介がまだだったのかしら。カナは…私は、薔薇乙女第二ドール金糸雀。…では、さよな」

平沢進「じゃ、またこんど」

金糸雀「!っと……」

翠星石「………………」

翠星石「………またです」ボソッ

金糸雀「……またこんど、なのかしら」タッタッタッ…

翠星石「……」

平沢進「……」

翠星石「……ふぅ~っ。金糸雀も中々強情なヤローですぅ」

平沢進「しかし鳥類人形にも理はある」

翠星石「…ま、そうですね。とりあえず、あのボーッとした金糸雀から本音が聞けただけよしとしますか。アリスゲームに賛成するドールがいるのもそりゃ当然ですし。どっちかといえばこっちがヘンなんですから」

平沢進「ワガママな三男坊ならぬ三女をもってお父様とやらも霊体の頭蓋を抱えていることだろう」

翠星石「……そうでしょうか。やっぱり翠星石のやってることって、お父様に逆らうことなんでしょうか…」

平沢進「まあ、統計的手法に尋ねれば子は親に逆らうものらしいので。別段気にすることでもないのでは」

翠星石「ん…まあ、そうですかね…」

平沢進「……」

翠星石「……ねえ、ヒラサワ。ヒラサワは、運命ってのがホントにあると思うです?」

平沢進「さあ。運命というものは映画か歴史か小説の中にはリアルとして存在するが、現実に観測されたことは無く。観測出来ぬものについては「そんなもの無い派」と「そういうの有る派」が必ず闘争を始め、そしてそれに終わりはない」

翠星石「えっと、つまり…そういうの気にしても仕方ないってことです?」

平沢進「世のすべての難問に対し「可」の成績を残すような回答をされてはお手上げ」

翠星石「む…ふーんだ!別に「可」で上等ですぅ!難問を無理に解こうとしてあーだこーだ路頭に迷うより、えーいって突っ走っちゃったほうが正しいこともあるんです、きっと!ウンメーだのテンメーだのでくよくよしてたら何事も始まらんです!」

平沢進「なるほど。威力的な理屈だが論理破綻を起こしているわけでもない。翠の人形にしては高度」

翠星石「……それって褒めてます?」

平沢進「現行の日本語では伝わらなかった?では…論理が中々退いておられる。これでお分かり?」

翠星石「そっちじゃもっとワカンネーですぅ!もっと素直に褒め言葉を使いやがれです!」

平沢進「褒め言葉まで強請始めるとは。強要して手に入れることで価値の下落するものを求める様は、退き具合が足りていないと言わざるを得ない」

翠星石「はあ?退くのが足りてない…あーもう!頭がしっちゃかめっちゃかにこんがらがっちまうですぅ!ほら、頭使ってお腹減ったのでご飯にするですよ!今日は野菜でガマンしてやるですからとっとと作るです!」

平沢進「何がガマンだ。私は苦慮の末に野菜を選んでいる訳ではない。どちらかといえば粗食の範疇を超えかけている糖分過多菓子類のほうが…」

翠星石「はいはい!そんなに欲しいなら昼もスコーンかベーグルを焼いてやるです!翠星石もちょうど食べたかったとこですしね!」ヒューン

平沢進「………人形に言葉が通じないのは元よりだが、一度通じてしまうと常に通じるべきと望んでしまうのが慣れというものの恐ろしさ」

平沢進「………」

平沢進「しかし、薔薇人形が戦うために作られたのならば、何故戦いを拒む系人形と戦いを好む系人形に分かれるのだろうか。…それが作り手の趣味だと言うならそれまでだが」スタスタ

短くて恐縮です
何か五月病的風土病に罹った気がします
御意見御質問御批判御自由にお願いします

金糸雀「………」

ピチカート「………」

金糸雀「……あーもうっ!!カナのバカバカバカっ!」ポカポカ

ピチカート「?」チカチカ

金糸雀「あっ、驚かせてゴメンなのかしら。…はぁ」

ピチカート「…」

金糸雀「さっきはアリスゲームの話になったからつい熱くなっちゃったけど…あんなふうに辛辣に言うことなかったのに。カナだってアリスゲームを全面肯定してるわけじゃないんだから、もっと素直におしゃべり出来てれば…はぁ~……」

金糸雀「翠星石、絶対怒ってるのかしら。たぶん歌手さんも…どうしよう…こんなことになったら、流石に庭に隠れて音楽を聴くなんて出来ないかも…」

金糸雀「でも、カナの思ってたことを言っただけなんだし、別に後悔する必要なんて…でも、もう少し言い方があったかもだし…ん~」

ピチカート「……」チカチカ

金糸雀「!…まあ、そうね。過ぎたことを気にしても仕方ないのかしら。ほとぼりが冷めたころを見計らってこーっそり庭に近づけば、多分大丈夫…なハズ!またこんどって一応は言ってもらえたんだし!レッツポジティブシンキングなのかしら!」

金糸雀「じゃ、とにかく一旦帰るのかしら!髪飾りが見つかったことをみっちゃんに報告して、安心させてあげないとね!さ、ピチカート、急ぐのかしら!」

ピチカート「…」チカ

ーあろるの館ー

翠星石「…あ!そういえば、結局金糸雀がホントにアリスゲームと落し物の為だけに来たのか分からなかったです。問い詰めた時、なんか怪しいカンジだったのでやっばり他に理由がありそうな気がしたんですが…翠星石の名探偵の勘がビビッと反応したんですけどねぇ」

平沢進「勘を指標に物事を決定づけられるのは小説内の警察かその真似事に従ずる人物だけなので。証拠が無い以上状況証拠で類推せざるを得ないため、確信を持つべきではない」

翠星石「えー?でも、さっきヒラサワは金糸雀の侵入にはアリスゲーム以外の理由がありそうって言ってたじゃねーですか」

平沢進「あくまで可能性の話なので。ただしその可能性を捨て去れと強要するつもりもなく」

翠星石「ふーん、そうですか。…まあ、あんだけ真剣に語られた後だと、ホントにアリスゲームの為だけに来たってことも十分考えられる気がしますしね…取り敢えずアタマの中に、他の理由もあるかもって残しとくだけにしますか」

翠星石「さて…金糸雀はアリスゲームに賛成ってことで、水銀燈と合わせて賛成派が二人、雛苺と真紅の反対派が二人ですか…。そこに翠星石を入れたにしても、戦力的に二つに分かれましたね…」

平沢進「蒼の人形は如何に?」

翠星石「……………そりゃあもちろん!アリスゲームに反対に決まってるですよ!本人に聞くまでもねーです!」

平沢進「長すぎる沈黙が自身の言葉を疑わしく思う胸中を雄弁に物語る。蒼の人形は翠の人形と正反対であるし、そこにも確信が持てないのでは」

翠星石「う…………まあ…でも!翠星石が話せば絶対分かってくれるハズですぅ。だから蒼星石はアリスゲームに反対で決定!これで四対二ですぅ!いくら水銀燈がキョーアクで金糸雀がそれなりに厄介だとしても、これだけ居れば…」

平沢進「あ、そう。しかしあと一体の無名人形が公式に含まれていないようだが」

翠星石「あー、第七ドールは…その、一度も会ったことないのでどういう考えなのかさっぱり分からねーんですぅ。ま、未知数って感じですね。でも、ソイツがアリスゲームに賛成する側についたとしても、こっちがまだ数で優るです!…うんうん、今回の戦、もう勝ちが見えてきましたね!」

平沢進「捕らぬ狸の皮算方式を採用した敗北シーケンスの起動をここまで堂々と行うとは。最早呆れの範疇を越え憐れみさえ覚える」

翠星石「む…だって、こっちが有利なのは事実なんですからいーじゃねーですか!」

平沢進「歴史に学べば、兵力は一要素に過ぎぬ事を知るはずだが。ただ薄ぼんやりと数世紀を過ごしてきただけのとある人形には得がたい知恵かもしれないが」

翠星石「な、なぁっ!?薄ぼんやりなんかしてねーです!翠星石はどんな人間よりも濃厚な年月を送ってきてるです!」

平沢進「冗談はさておき。「冗談じゃねーです!」うるさい。ヒラサワは人形と話すことで精神の安定を図る系統の人種ではない。そのため朝から庭での金切音人形芝居を観たことで残業週80時間の従業員のごとき極度の疲労に強襲を受けている」

翠星石「へ?そんな無表情で言われても説得力がねーですぅ」

平沢進「元より分からず屋人形を説得する気は無い。というわけでヒラサワは翠と人形に染色されたあろるの館より一時逃亡し、多様性の摂取に向かう」

翠星石「多様性の摂取…?あ、つまり散歩ですか」

平沢進「保育器内で語られる喃語レベルの簡易な人形語に訳すと、そう」

翠星石「なっ!翠星石は赤ん坊じゃねーです!ばぶばぶ言うのは雛苺で十分です!」

平沢進「人形の喃語は最早鳴き声とそう変わりない。理解し難い囀りを耳にしつつもヒラサワは多様性の観点からこれを排除すべきではないとの心的啓示を受け、無言でその場を後にする」

翠星石「む~っ!また言葉が通じないフリして…!ふーんだ、もーいいです!そっちがそのつもりなら…」

翠星石「こほん。…あれぇーおかしいですぅー翠星石も今から突然ヒラサワ語がわかんなくなったですぅー。ヒラサワ、さっきから一体何を言ってるですかぁ?翠星石には読唇術の心得が無いので一切合切サッパリ分からねーです!良くわかんねーので掃除の時そのへんのキケンブツに触っちまうかもですぅ!」

平沢進「奇っ怪な囀りを目の当たりにし、ヒラサワは一抹の危惧に駆られる。喃語人形による有機ポルターガイスト現象が起きれば、ヒラサワは不本意ながら有機お祓いを清浄屋に通告しなくてはならない。そんなことになれば、まずそこに放られたどこぞの故知らぬ骨董鞄など、真っ先に質屋に投げ込まれることになろう」

翠星石「ちょ、ちょっと!!…あー!翠星石の突発性ナンチョーがとつぜん治ったですぅ!ヒラサワ、散歩行ってらっしゃいですぅ!掃除と水遣りはやっとくですし、ヒラサワの大事なものには指一本触れねーので安心して行って来やがれです!」

平沢進「あ、そう。では」

翠星石「いってらしゃいですぅ!」

翠星石「……はあ。何だかいっつもヒラサワには言い負かされてる気がするです。この手八丁口八丁の才色兼備の翠星石が、こうもカンタンにあしらわれるなんて…」

翠星石「まあ、翠星石が言い負かす相手はチビ苺とか金糸雀とかグレードの低いヤツばっかですからね…。練習相手が弱くちゃ、いくら勝っても強いヤツには勝てねーです。こんど真紅とか蒼星石とかを相手にやってみるですかね…」

翠星石「んじゃ、気を取り直してっと。掃除と水やりの開始ですぅ!ほら、そこのストーン、今日はヤシの木の脇に飾ってやるですよ。南国気分をしっぽり味わうがいいです!」

ストーン「…………」

翠星石「よしよし、そこで大人しくしとくですよ。さて、えーと、箒とちりとりはどこにしまったでしたっけ…」

チカチカ

翠星石「…ん?」

翠星石「ありゃ、パソコンがつけっぱなしですぅ。まったく、この節電が叫ばれる世の中で罪なことをするもんですぅ!」

翠星石「この翠星石が代わりに切っといてやるですよ。えっと…えっと?電源ボタンはどれでしょうか…これ?」ポチ

翠星石「うわぁあっ!?画面が真っ青になったですぅ!どうしたですか、気分が悪くなったですか?ど、どうしましょう、パソコンを病気にしちまったらヒラサワは真っ赤になって怒るに決まってるですぅ!うーんと…」カタカタ

翠星石「…何も反応しないです……」

翠星石「え、ええいままよですぅ!ほらほら、直るです、直るですぅ!」カタカタカタカタ

♪…♪…

翠星石「んあ?な、何か音楽が流れ始めたです!?まさかこれが辞世の句って奴ですか!?ぱ、ぱそこん!まだ逝くには早いですぅ、三途の川から戻ってきてですぅ!」カタカタカタ

ガタッ!

翠星石「どわぁっ!?……!!!…お、終わったです…ぱそこんの中の大切な何かが折れた音がしたです……」

翠星石「ど、どうすればいいですか…今回は部屋に水を撒いちゃったのとはワケが違うですよ…流石にヒラサワも許してくれないかも……」ドヨーン…

「……こほん」

翠星石「修正テープとか貼れば直らないですかね…バンドエイドとか消毒液もあるんですが…無理ですよね…」

「…こほん!」

翠星石「うわっ!?な、何ですか?ま、まさかヒラサワがさっき言ってたポルターガイスト!?す、翠星石を食べても美味しくないですぅ!た、食べるならそこのストーンにするです!鉄分たっぷりな上にヘルシーですからっ!」ガバッ

ストーン「………」

「…僕はポルターガイストじゃないし、そのパソコンも壊れてないと思うよ」

翠星石「え?ホントですか!?よかった…って………あれ?その声…」バッ

蒼星石「……久しぶりだね、翠星石」

♪……♪…

https://youtu.be/d9Aet_MGUaI

♪Welcome P-MODEL(平沢進) 1995

(サバイ ディー ルー!!)
Welcome to the sphere 開けましょうか
根源の園のドアをば
Welcome to the sphere 腰掛けて
電源のそばのシートへ
遥か僻地のグルを連れて
普通の人が寝てる隙に

Welcome to the sphere 見せましょうか
現象の花の秘密を
Welcome to the sphere 落ちついて
懸賞の札をなくさず
明日は電子の船をこいで
普通の人が寝てる隙に

Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉

Welcome to the sphere 開けましょうか
根源の園のドアをば
Welcome to the sphere 腰掛けて
電源のそばのシートへ
遥か僻地のグルを連れて
普通の人が寝てる隙に

Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉
Welcome to Welcome to〈Welcome to the global village〉

平沢進「…………」スタスタ

平沢進「………」

平沢進「あ。あんなところに正体不明の洋風屋敷が。薔薇園が当然の顔で付属しているとはまた豪勢な」

平沢進「…薔薇とは近頃常ならぬ因縁がある。見えない糸を見えると信ずるほどにロマンチストではないが、薔薇をただ眺める程度ならしてみてもいいかもしれない」

平沢進「…………」スタスタ

平沢進「ははあ。近場で眺めるとこれまた壮観な。余程ロマンチストな金の縁者が住居としているのだろうか。これほどの物量、維持するにも手間と手間代がかかるはず」

平沢進「…………」

「………」

「…それほどそこの薔薇園が気になりますかな?」

平沢進「はい?はあ、まあ」

お爺さん「ほほう!それは結構なことで。最近は花というものに興味関心を持つ人があまりおりませんでな。まったくけしからんことです」

平沢進「で、あなたはどちら様で」

お爺さん「おっと!これは失礼、儂は毎日この辺りを散歩道にしておる年寄りです。散歩の途中によくこの薔薇園を眺めるのですが、今日は先客のあなたが居ましたので、興味深く思って話しかけた次第です。ご迷惑でしたかな?」

平沢進「いや、別に」

お爺さん「それは良かった。では少し話しませんか。…花がお好きなのですかな?」

平沢進「好悪の感情を持っているかは生育環境により異なるので応えられませんが、多少の興味は。花は咲く場所を選ぼうとも選ばずとも、損なわれぬものを持つのが特色なので。そこが仕事に少々の関連性がある為に」

お爺さん「ほうほう。…お仕事とは、芸術の類ですかな。たしかに花には、このように場所を誂えずとも変わらぬ美しさや健気さがあります。しかし、薔薇は他の花々とは一味違いますぞ」

平沢進「へえ。なんでしょう」

お爺さん「それはですね、「トゲ」があるということです」

平沢進「…………」

お爺さん「おやおや、そう『何を分かりきったことを』という表情をされずとも」

平沢進「いや。これは『何か興味深い事物が聞けると有難いが』という顔です」

お爺さん「おや、それは失敬。ではその期待に添えるよう、意気込んで話しましょうかな。…こほん」

お爺さん「トゲがなぜ付いているかはご存知ですかな。虫や動物から身を守る刃物…だと世間一般ではよく言われております」

平沢進「……」

お爺さん「しかし、あのトゲの大きさでは虫に相対するには大きすぎる。実際虫たちは、あのトゲを気にもせず枝の上を行き来しとります。つまり、虫を防御するために発達したものとは言い難い」

平沢進「ふむ」

お爺さん「トゲが身を守る為についている、というものは人の推測に過ぎないそうです。まあ実際、野薔薇が他の植物に比べ動物には食べられにくいのではないか、という予測は正しいだろうとされております。ただ、予測は予測です」

お爺さん「他にも推論はあります。例えばトゲが薔薇の茎の生育を促すだの、トゲで他のものに引っかかり、陽に近い場所へと動きやすくするためだの…」

お爺さん「しかし、これらは全て机上の答えに過ぎんのです。明白な理屈はまだ分かっていない。…どうです?なかなかミステリアスで面白いでしょう」

平沢進「ははあ」

お爺さん「…おほん!そこまで興味深くは思っていただけなかったようですな。ただ、そのミステリアスさが、薔薇の花により味わいを齎しておるのですぞ。トゲのある女は美しい…という言葉のように、ただ痛いだけでなく、トゲに隠された謎があるからこそ、花の美しさが際立つのです」

平沢進「へえ。まあ、ただ害があるのみならば、人の手が加わった手前消滅していておかしくないもの。それが残るのには、植物の生育そのものとヒトの個人的な利益に纏わる理由があるかということになりますか」

お爺さん「…ほう。花に詳しいというのは本当のようですな。植物の生育に関わるためという推論は論じましたが…トゲを残すことで得るヒトの利益とはなんです?」

平沢進「はあ。薔薇園とは遥か以前より、金に縁のある者達により運営されてきたものでした。そして、彼らは交配という科学の行使で、あらゆる新種を生み出す力があった。トゲの消滅を目論むのに暇も金も十分にあったことでしょう」

お爺さん「ふむ」

平沢進「それをスルーしたのはもちろん倫理や慈愛の為でなく。トゲは金持ちに都合が良いからでありまして。金持ちには、薔薇の花に寄る虫のごとく、切ってきれぬ仲の仕事人が居りました。現代での名を盗っ人と」

お爺さん「…ははっははは!なるほど、泥棒から家を守るのに役立つということですか!トゲとは薔薇だけでなく、財産までも守るものなのですな。そう思うとまた、薔薇を見る目が変わるというものです。ただ…」

お爺さん「人に都合のいい部分は残され、違う色を観るために交配は重ねられるとは…薔薇には気持ちなど無いでしょうが、あんまりな仕打ちですな」

お爺さん「遥か昔より人に寄り添うものとは、ただ寄り添っているままでは居られんのですな。人に都合のいいように…。動物も植物も、その影響からは逃れられないのでしょうか」

平沢進「まあ。それが人の世の常なので」

更新遅れてホントすみません…
何か薔薇についてはそこまで自信が無いです…

♪…♪…

蒼星石「ここを押せば止まると思うよ。あと、青い背景はこのウィンドウが開いてしまってるだけだよ」カタカタ

ピ…

翠星石「お…おぉー!流石は蒼星石ですぅ!ぱそこんをあれよという間にカタカタっターンッ!と操作しちまうなんて!ピコピコした音楽も止まって何よりですぅ。英語があんだけあると翠星石は頭痛が痛くなっちまうですよ」

蒼星石「あれもヒラサワさんの曲かな。根源の園っていうのは…ネットワークのこと?でも、現象の花の秘密っていうのはなんだろう?」

翠星石「あ、こら、蒼星石!ヒラサワの歌の歌詞なんて真面目に考えたら頭がショートしちまうですよ!せっかく遊びに来たのに、すぐプシューってなっちまったら翠星石とお話が出来ねーじゃねーですか、まったくもう!」

蒼星石「…うん。そうだね」

翠星石「ほら、ヒラサワの曲は置いといて…とにかく久しぶりですねぇ蒼星石!元気してたですか?翠星石はあの後心配で夜しかぐっすり眠れなかったんですよ?」

翠星石「今日は…あ!Nのフィールドを通って来たですね。もう、普通に玄関でピンポンを押せばいいのに。入口のアレはドアの形した装飾品とかじゃねーんですから」

蒼星石「…翠星石、話があるんだ」

翠星石「ん?何ですか?…もしかしてあの悩み事についてですか?やっと相談してくれる気になったですか!まったく、待ちくたびれたですよ!ほらほら、んじゃさっそくまるっと話して見せるです!このお姉さんの翠星石が何でもかんでもバシッと解決してやるですからね!」

蒼星石「いや、それはもういいんだ。答えは自分で出したから」

翠星石「え?…そ、そうですか!流石は蒼星石ですぅ!あんなに困ってたことを一人で解決しちまったんですね!いやー翠星石も鼻高々ですぅ。…でもでも、少しくらい翠星石に相談してくれてもよかったと思うんですけど…」

蒼星石「うん、ごめん。その代わりと言ったらなんだけど、今日はその答えについて話をしに来たんだ」

翠星石「?…あ、なるほど!悩み事の解決までの一切合切を翠星石に教えてくれるってことですね。しょうがねーですねぇ、くっきりはっきり聞いてやるです。さあ蒼星石、何でもかんでもこの翠星石に話しちまうですよ!」

蒼星石「…うん」

翠星石「ほらほら、遠慮しないで、ここ座って話すです。ヒラサワに内緒でこっそりお菓子でも出してやるですから!」

蒼星石「………僕とアリスゲームをしよう、翠星石」

翠星石「はいはい、アリスゲームですね。最近はみんなアリスゲームアリスゲームって、流行ってるですかその……」

翠星石「………」

翠星石「…………え?」

ー薔薇園前ー

お爺さん「こほん!教えるつもりが逆に教わってしまいましたなあ。やられっぱなしで帰すわけには行きません。まだお時間はよろしいですかな?」

平沢進「まあ」

お爺さん「では遠慮なく!花言葉というものはご存知ですな。薔薇は先程申された人工交配によって、現在4万種以上の品種が存在しております」

お爺さん「その一つ一つに言葉をつけていたら薔薇はこの世のあらゆるものを語る植物となれたかもしれませんが、あいにくとそうは行かない。薔薇の花言葉は、その花弁の色によって分けられております」

平沢進「……」

お爺さん「黒薔薇の…まあ、実際には暗い赤色の薔薇は「決して滅びることのない愛」。その真反対の白薔薇は「恋をするには若すぎる」」

平沢進「ははあ」

お爺さん「黄薔薇ならば愛情の薄らぎ…赤薔薇は愛情、美、情熱。薄紅薔薇ならばしとやか、上品…と言った具合です」

平沢進「なるほど。血液型占い並に当てになりそうも無い指標で。…特に薄紅がしとやかとはもってのほか」

お爺さん「はは!中々手厳しいですな。…とにかく、色に関わらず薔薇に喩えられるのは、愛や気品。言葉にし難い美しさを物言わぬものに託したわけですな。喋らぬものとは口先から美しさが漏れ出す心配が無いので、綺麗な言葉を背負わすに相応しいのでしょうかな」

平沢進「はあ。人の背負うべきものを花に肩代わりさせるとは。中々人は種族として責任転嫁の能力が高い模様で。あらゆる災害を神に背負わせ運命に罪着せ、人の作り出した罪は科学に背負わせ。それほど原罪を背負って死ぬのが怖いのでありましょうか」

お爺さん「ほう……確かに、人の生み出した言葉を花に着せるのは、無責任と言えるかもしれませんな。…ではその中でも特に有名なものについてをば。青い薔薇というものがあります」

平沢進「………」

お爺さん「少し前流行ったのでこれは誰でも知っているでしょう。人工的に生み出された新しい色…これの花言葉には「不可能」「夢が叶う」「神の祝福」など…花にも人にも背負わせるには少々重い言葉が並びます」

平沢進「責任どころか理想までもを転嫁させたと。それは青い薔薇もさぞ息苦しいことでしょう」

お爺さん「……そうかもしれませんな。ただ、こうして花言葉について話したのは、薔薇とはただ美しいものとして存在するわけではないということを伝えたかったからです」

お爺さん「移り変わる色の中に、愛の良い面以外のものも共に載せる。美しさに伴う困難や失望をも身に宿らせるものが薔薇なのですよ。…当の薔薇がそこに気がついているかは分かりませんがね」

平沢進「へえ。…薔薇を他の花種に置き換えても成立する公式でもあるような」

お爺さん「う…まあ、確かに。薔薇以外の花にもかなり共通するものだったかも知れません。…元より、ただ美しいだけの花などないのかもしれませんな」

平沢進「そのようにグロテスクな存在は、土も人も生むことは難しいかと。人は理想の中に完璧な美しさを語るものの、それは実在に適応した際ただの騙りと成り下がるもので」

平沢進「理想気体の公式に従い、美しいものを秤にかけ、不純さを洗い流し、雑多さを摘み取り、ようやく疲労困憊の美一滴を絞り出そうと、水滴として足元に落ちた時、既に無色透明でいられぬものかと。それが実在気体に囚われるモノの宿命」

お爺さん「……ほお。…それは面白い。完璧な美しさはこの世に理想としてしか存在しない。しかし、人は花あるいは何かに、その理想を見出し現実として生み出そうとする…生み出せる筈もないと頭では分かっているはずなのに」

平沢進「…」

お爺さん「…ボケ防止のタネに考える議題としては、大変意義あるものかもですな」

平沢進「それはどうも。認知機能の出力低下をステルスが食い止めるとは皮肉だが、実益が齎されたのならば結構なこと」

ーあろるの館ー

翠星石「…もう!蒼星石ったら!エイプリルフールはとっくに終わってるですよ?」

蒼星石「翠星石。…僕は冗談も嘘も好きじゃない」

翠星石「っ………」

翠星石「…それは知ってるですよ。言ってみただけです。翠星石は、蒼星石のお姉さんなんですから」

蒼星石「……そうだね」

翠星石「じゃあ……その理由を、聞こーじゃねーですか」

蒼星石「僕らはアリスになるべくして生まれたんだ。理由なんて探す必要すらないよ」

翠星石「っ…でも!翠星石と蒼星石は双子じゃねーですか!昔からずっと一緒の…」

蒼星石「双子である前に、僕達はローゼンメイデンだよ」

翠星石「そ、そんな鶏が先か卵が先かみたいな事言われても翠星石には分からんですぅ!蒼星石!ローゼンメイデンだから戦うっていうなら何で今まで戦わなかったんですか!?」

蒼星石「……」

翠星石「ホントの理由はなんなんです?翠星石に教えるですよ!まさか、蒼星石のマスターが何か良からぬことを吹き込んで…」

蒼星石「マスターの事を悪く言うのは許さないよ、翠星石。それに僕だって、誰かに簡単にアリスゲームについて言いくるめられるほど子供じゃない」

翠星石「っ…じゃあ、何で!?急にアリスゲームをする決心がついたのは一体…」

蒼星石「君にも、多少なり察しがついてるんじゃないのかい?」

翠星石「……………」

翠星石「…蒼星石の悩み事に心当たりなんてねーです。あったら翠星石だって真っ先に話してるですぅ。…だけど」

蒼星石「……」

翠星石「一つだけ、頭に引っかかってることがあったです。それは関係無いことだと思って……思いたかったですけど」

翠星石「ずっとずっと昔に…言ってましたね。翠星石と蒼星石は、二人で一人。それが、本当にいい事なのかって…」

蒼星石「…そう。僕らの能力は、二つで一つ。庭師の如雨露は心の樹を育てることが出来るし、庭師の鋏はその成長を邪魔するものを切払うことが出来る。そして互いに、夢の扉を開くことも。でも、本当の能力を使うには、片方だけじゃ足りない」

蒼星石「能力だけじゃない。僕らは、ローゼンメイデンとして目覚める時も眠る時も一緒だし、契約する人も同じだった。…今回までは、だけど」

翠星石「……し、真の能力が凄いのは、二人で協力して出来る能力だからですよ。一人より二人なら、より強くなるのは当然ですぅ。…それに、マスターが同じなのは、翠星石と蒼星石の仲が良くて、離れたくなかったから…」

蒼星石「協力といえば耳触りはいいよ。それが努力によって生まれたものならね。でも、僕らが生まれた時からこの能力はあったし、手放したり拒んだり出来るものじゃなかった。…それに、離れたくなかったというのは、ちょっと違う…」

蒼星石「僕たちは、離れられなかったんだ。能力も、精神も、あまりに互いに依存していたから」

翠星石「…………」

蒼星石「ローゼンメイデンは皆不完全だけれど、僕らはその中でも際立ってる。僕らは互いに背中合わせで、一人がいなくなったらたちまち後ろに倒れてしまう。足場が無ければ立つことも出来ない、本当の人形みたいに」

翠星石「…それが何だって言うんですか。だったら、ずっと一緒に支え合えばいいだけですぅ!な、何が不満なんですか蒼星石!翠星石は、そりゃあ出来たお姉さんじゃねーかもしれねーですけど、悪いとこがあるなら口で言ってくれればいいじゃねーですか!そしたら翠星石も頑張って直すですから!」

蒼星石「ずっと支え合う…素敵な言葉だけど、僕はそれでいいと思わない。僕らは共生じゃなくて、共依存の関係なんだ。それは、赤の他人には綺麗なものに見えるかもしれないけど、本当はそんなものじゃない」

翠星石「……」

蒼星石「今回僕らは、マスターも、住む場所も、初めて別にしたね。君にとっては些細な気まぐれだったかもしれないけど、僕は、大切なことを確かめるためにこうしたんだよ。…それが何だか分かるかい?」

翠星石「そ、そんなの、分かるわけ………」

?初めて蒼星石抜きで闘った時、分かったのよねぇ?自分は一人じゃマトモに武器も振るえない…ジャンクだってこと?

?…二人はいつも一緒だったのに、何だか不思議な感じね?

翠星石「………」

蒼星石「…僕は一度、君の「水銀燈に襲われている」というウソを聞いて、助ける為にここに来たよね。でも、本来だったらルールに則るアリスゲームに手出しは無用の筈だ。だけど、僕は無視することが出来なかった」

2重かっこが環境依存文字ってマジ…?
すみませんちょっと直します

蒼星石「今回僕らは、マスターも、住む場所も、初めて別にしたね。君にとっては些細な気まぐれだったかもしれないけど、僕は、大切なことを確かめるためにこうしたんだよ。…それが何か分かるかい?」

翠星石「そ、そんなの、分かるわけ………」

『初めて蒼星石抜きで闘った時、分かったのよねぇ?自分は一人じゃマトモに武器も振るえない…ジャンクだってこと』

『…二人はいつも一緒だったのに、何だか不思議な感じね』

翠星石「………」

蒼星石「…僕は、君の「水銀燈に襲われている」というウソを聞いて、助けに行ったよね。でも、本来だったらルールに則るアリスゲームに手出しは無用の筈だ。だけど、僕は無視することが出来なかった」

蒼星石「庭師として剪定をしている時も…ずっと、違和感がつきまとうんだ。それでやっと分かった。僕らは距離は離れることができても、本当に離れることは出来ないんだ。…悪い意味でね」

翠星石「……!」

『蒼星石と翠星石は、近くに居なくたって繋がってるんですから』

翠星石「そ!それは…き、絆で繋がってるから…」

蒼星石「絆と呪縛は僕らにとって同義語だよ」

翠星石「!…」

蒼星石「これは僕の戦いでもあるし、君の戦いでもある。翠星石、僕達はいい加減に、双子人形という鎖から解き放たれるべきだ。例えどちらかが倒れることになったとしても、それがローゼンメイデンとして生まれた僕たちがすべきことだよ」

翠星石「そんな…!…す、翠星石は…翠星石は…」

蒼星石「…話はこの辺りで終わりにしよう」

蒼星石「じゃあ、明日の午後三時にNのフィールドで待ってるから。それまでに心の整理をつけてほしい。翠星石…来てくれるね」タッ

翠星石「ま、待つです!蒼星石、もっと話を…!」

蒼星石「…さっき君は言ったね。悪いところがあるなら話して直せばいいって」

翠星石「そ、そうです!話し合いで解決すれば…!」

蒼星石「話す時間なら何世紀もあった。互いにこの問題には気づいてたはずだ。だけど、僕も君も話さなかった」

翠星石「……!」

蒼星石「それは…話し合いじゃ解決出来ないって、君にも心の底で分かっていたからじゃないのかい?」

翠星石「あ……」

蒼星石「…じゃあ、またね。翠星石」

ー薔薇園前ー

平沢進「あ、そういえば」

平沢進「他人の庭に難癖をつけるのは趣味ではありませんが、一つ、気になることが」

お爺さん「おや。…何かこの庭に欠点が?」

平沢進「はい。この薔薇園、剪定ばかりが『足りすぎている』。まるで、それを専業とする庭師のみ雇っているかのようですね」

お爺さん「………!」

平沢進「いや、剪定のあまり薔薇が痩せているという訳ではなく。ただただ他に比べ際立ち過ぎているということで。手間隙がかかればかかるほど怠っている場所が顕になるものですが、優れたものが目に付くとは珍しい」

お爺さん「………」

https://youtu.be/e1WvfA-St7Y
♪課題が見出される庭園 平沢進 2000

平沢進「主人が館に居るのなら、薔薇を称賛する次いでに物陰から硝酸瓶を投げるかのごとくそれについても問い掛けてみたいもの。一体何の要素が剪定にばかり舵を切ったのか と」

お爺さん「…いやはや、中々面白い意見を聞かせて頂きました。儂は長年の散歩道として慣れ親しんだ中で、そんなことにも気付かずお恥ずかしい限りです。なるほど、「足りない」ではなく「足りすぎている」とは…」

平沢進「……」

お爺さん「はて。長話になりましたな。余り長く散歩に時を費やすと、家の者が不安がるのでこのあたりで。散歩の時間がこれほど有意義なものになって、ありがたい限りです。…あと、館の主には薔薇についての問い掛けなどせんほうが良いですよ。最近、やたら気難しくなったとの評判ですからな」

平沢進「それはお気遣いどうも。では、またこんど」

お爺さん「…ええ、また」スタスタ…

平沢進「………」

平沢進「そういえば、緑の薔薇は存在しない。従って花言葉もなく。…通りで言論に従属しない人形な訳で」スタスタ

ーあろるの館ー

平沢進「多様性の摂取量凡そ800kcal。まあ、変温動物的に保存すれば多少の月日は耐え凌げよう」

翠星石「ひ、ヒラサワ…おかえりなさい…です」

平沢進「うわ。悄気返った翠の人形がお出迎えとは。明日は磁気嵐が吹き荒れる模様。で、この度は一体何を如雨露より出る退廃の水流により錆びさせたのか」

翠星石「ち、違うですよ…翠星石は今度は何にも失敗してないですぅ…」

平沢進「あ、そう。では突如躁鬱の鬱の方が電子頭脳の前頭前野を塗り潰したとかそういうこと」

翠星石「ん、んなことねーです!翠星石はいつでも元気いっぱいべりーきゅーとです!ハイテンションになったり落ち込んだりを繰り返してるわけじゃねーです!」

平沢進「しかし現状躁鬱としか診断できぬ病状だが。悪徳医者ならばSSRIの処方に踏み切るほど」

翠星石「えすえすあーるあい…?す、翠星石は横文字にあんま強くないんですからそういう略称は使わねーでほしいです!」

平沢進「何やら躁のほうが強まり始めた模様。これは重症。しかし人形の頭脳とは獣医学か細工技師かどちらの分野なのだろうか。このままでは救急にて窓口の電話番号を聞くことすら出来ず末期の水を飲ませる羽目に」

翠星石「なんで獣医さんが選択肢に入ってるですか!翠星石は動物じゃねーですぅ!…じゃなくて、ヒラサワ。実は、その…」

平沢進「はあ」

翠星石「さっき、蒼星石が来て…その……」

翠星石「……翠星石とアリスゲームをするって」

平沢進「へえ」

翠星石「翠星石がいろいろ話し掛けて止めさせようとしたんですが…もう決心が固まってたみたいで…」

翠星石「翠星石はお姉さん失格ですぅ。甘い気持ちでいて、蒼星石の決心に気付かずいたです…いや、問題には気づいてたはずだったのに、解決しようとしなかったです…」

平沢進「ふーん」

翠星石「…それで蒼星石は、明日の午後三時にNのフィールドで待ってるって…」

翠星石「あの子は真面目さんだから、一度言ったことはよっぽどの事がない限り曲げねーですぅ。だから、時間通りにNのフィールドに行ったら、必ずその場で戦いを始めるはずです」

翠星石「翠星石は頑張って話をもう一回しなきゃいけないですが、Nのフィールドじゃ待ち伏せもできねーですし…時間前に入って探してみたところで、蒼星石が現実世界からそこに来てなかったら探しようもねーですし…」

翠星石「蒼星石が誰をマスターにして、どこで何をしてるのかすら、翠星石は知らないんです……いつもはずっと一緒で、聞く必要すら無かったから…」

翠星石「翠星石はどうすればいいんでしょうか…」

平沢進「………」

平沢進「明日は出掛ける予定があるので。NだかSだかのフィールドに外征する時間はない」

翠星石「………どこに行くですか?」

平沢進「薔薇園」

翠星石「薔薇…?」

平沢進「そう。剪定が足りすぎ、百足らず様のビジネスプランに目を付けられかけている不良物件」

翠星石「剪定が足りすぎ…?……っ!」

翠星石「そ、蒼星石は「庭師の鋏」を持ってるです…!そういえばさっき、剪定をしてるって…!もしかしてヒラサワ、そこが蒼星石の居る場所だっていうんですか?」

平沢進「さあ。私はただ、百足らず様のお通りになる手筈の道筋を観測者として辿るだけ。そこに偶然蒼い薔薇の花弁が童話の道標のように並び落ちていようと、私の気にするところではない」

翠星石「…わ、分かったです!翠星石も着いてくです!」

平沢進「あ、そう」

翠星石「そ、そうと決まったら色々と準備するです!今回ばかりは、翠星石が、自分の力で解決しなきゃ…!」

平沢進「まあ、ご自由に気張ってください。遠足前の幼児のごとく、事前疲労を溜めすぎぬ程度に」

ここまでです
矛盾とか多い気がするので良ければご指摘お願いします
あと投稿中にミスった時は無言で修正した方がいいんでしょうか?突然訂正の文が来ると読む気が削がれるとかでしたらこれからそうします。(本当はミスしなきゃいいんですが)

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